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1963-03-13 第43回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月十三日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 伊能繁次郎君 理事 岡崎 英城君    理事 内藤  隆君 理事 藤原 節夫君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君 理事 山内  広君       小笠 公韶君    草野一郎平君       笹本 一雄君    高橋  等君       久保田鶴松君    田口 誠治君       中村 高一君    西村 関一君       受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         国 務 大 臣 近藤 鶴代君  出席政府委員         科学技術政務次         官       内田 常雄君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   森崎 久壽君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  芥川 輝孝君         総理府事務官         (科学技術庁振         興局長)    杠  文吉君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    井上啓次郎君         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  江上 龍彦君         専  門  員 加藤 重喜君     ――――――――――――― 三月十二日  国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び  薪炭手当の支給に関する法律の一部改正に関す  る請願黒金泰美紹介)(第二〇四三号)同  外三十七件(田澤吉郎紹介)(第二〇四四  号)  同外一件(淡谷悠藏紹介)(第二〇六五号)  同外一件(猪俣浩三紹介)(第二〇六六号)  同外十四件(石山權作君紹介)(第二〇六七  号)  同(稻村隆一君紹介)(第二〇六八号)  同外六十四件(川俣清音紹介)(第二〇六九  号)  同外一件(佐野憲治紹介)(第二〇七〇号)  同外一件(下平正一紹介)(第二〇七一号)  同外一件(中澤茂一紹介)(第二〇七二号)  同外一件(野口忠夫紹介)(第二〇七三号)  同(松井政吉紹介)(第二〇七四号)  同外一件(三木喜夫紹介)(第二〇七五号)  同(吉村吉雄紹介)(第二〇七六号)  同外十五件(伊藤五郎紹介)(第二一〇一  号)  同(内海安吉紹介)(第二一〇二号)  同(小澤佐重喜紹介)(第二一〇三号)  同(小島徹三紹介)(第二一〇四号)  同(佐々木義武紹介)(第二一〇五号)  同(椎名悦三郎紹介)(第二一〇六号)  同外四件(鈴木善幸紹介)(第二一〇七号)  同外一件(野原正勝紹介)(第二一〇八号)  同外一件(牧野寛索紹介)(第二一〇九号)  同(松浦東介紹介)(第二一一〇号)  同(山本猛夫紹介)(第二一一一号)  同外一件(北山愛郎紹介)(第二一一三号)  同外二十二件(齋藤憲三紹介)(第二一一四  号)  同外八件(山中吾郎紹介)(第二一一五号)  同(伊藤五郎紹介)(第二一六九号)  同(小澤佐重喜紹介)(第二一七〇号)  同外一件(小島徹三紹介)(第二一七一号)  同(佐々木義武紹介)(第二一七二号)  同外六件(椎名悦三郎紹介)(第二一七三  号)  同外九件(鈴木善幸紹介)(第二一七四号)  同(牧野寛索紹介)(第二一七五号)  同(君紹介)(第二一七六号)  同(松澤雄藏紹介)(第二一七七号)  同(高橋清一郎紹介)(第二一七八号)  同外十八件(野原正勝紹介)(第二一七九  号)  同外十二件(山本猛夫紹介)(第二一八〇  号)  同(渡邊良夫紹介)(第二一八一号)  同(淡谷悠藏紹介)(第二一八二号)  同(猪俣浩三紹介)(第二一八三号)  同(稻村隆一君紹介)(第二一八四号)  同(岡良一紹介)(第二一八五号)  同(佐野憲治紹介)(第二一八六号)  同(島本虎三紹介)(第二一八七号)  同(下平正一紹介)(第二一八八号)  同(中澤茂一紹介)(第二一八九号)  同(野口忠夫紹介)(第二一九〇号)  同(三木喜夫紹介)(第二一九一号)  同外二十七件(横路節雄紹介)(第二一九二  号)  同(吉村吉雄紹介)(第二一九三号)  同(山本猛夫紹介)(第二二五二号)  同(有田喜一紹介)(第二二五五号)  同(伊藤五郎紹介)(第二二五六号)  同(宇野宗佑紹介)(第二二五七号)  同(小澤佐重喜紹介)(第二二五八号)  同(亀岡高夫君紹介)(第二二五九号)  同(草野一郎平紹介)(第二二六〇号)  同(小島徹三紹介)(第二二六一号)  同(佐々木義武紹介)(第二二六二号)  同(椎名悦三郎紹介)(第二二六三号)  同(正力松太郎紹介)(第二二六四号)  同外二件(鈴木善幸紹介)(第二二六五号)  同(堤康次郎紹介)(第二二六六号)  同(内藤隆紹介)(第二二六七号)  同外二件(野原正勝紹介)(第二二六八号)  同(牧野寛索紹介)(第二二六九号)  同外十四件(松浦東介紹介)(第二二七〇  号)  同(松澤雄藏紹介)(第二二七一号)  同(森田重次郎紹介)(第二二七二号)  同(山本猛夫紹介)(第二二七三号)  同(淡谷悠藏紹介)(第二三一一号)  同(猪俣浩三紹介)(第二三一二号)  同(稻村隆一君紹介)(第二三一三号)  同(岡良一紹介)(第二三一四号)  同(佐野憲治紹介)(第二三一五号)  同(下平正一紹介)(第二三一六号)  同(中澤茂一紹介)(第二三一七号)  同(野口忠夫紹介)(第二三一八号)  同(三木喜夫紹介)(第二三一九号)  同(吉村吉雄紹介)(第二三二〇号)  傷病年金受給者妻等に対する家族加給に関す  る請願山崎巖紹介)(第二〇四五号)  公務員の賃金に関する請願井岡大治紹介)  (第二〇六二号)  同(緒方孝男紹介)(第二〇六三号)  同(畑和紹介)(第二〇六四号)  同外四件(赤松勇紹介)(第二一一七号)  同外三件(足鹿覺紹介)(第二一一八号)  同外三件(井伊誠一紹介)(第二一一九号)  同(井岡大治紹介)(第二一二〇号)  同(中村高一君紹介)(第二一二一号)  国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律  案反対に関する請願石橋政嗣君紹介)(第二  〇七七号)  同(石山權作君紹介)(第二一二二号)  元南満州鉄道株式会社職員期間恩給法等の特  例制定に関する請願内海安吉紹介)(第二  〇九二号)  同(田中龍夫紹介)(第二一二三号)  同外五件(愛知揆一君紹介)(第二一五〇号)  同外一件(長谷川峻紹介)(第二一五一号)  同外一件(金子一平紹介)(第二二〇九号)  同(佐々木義武紹介)(第二二一〇号)  同(堀内一雄紹介)(第二二七四号)  航空自衛隊千歳基地周辺民家移転補償促進に  関する請願島本虎三紹介)(第二一一六  号)  元満州電信電話株式会社職員期間のある公務員  について恩給法等特例制定に関する請願(大  久保武雄紹介)(第二一五二号)  建国記念日制定に関する請願始関伊平君紹  介)(第二一五三号)  旧軍人等恩給に関する請願外二十一件(高橋  等君紹介)(第二二一一号)  国立大学教官待遇改善に関する請願松浦周  太郎君紹介)(第二二一二号)  恩給年金等受給者処遇改善に関する請願外  九件(松浦周太郎紹介)(第二二一三号)  元華中鉄道株式会社職員期間恩給法特例制  定に関する請願伊能繁次郎紹介)(第二二  五三号)  元満州国等政府職員恩給に関する請願宇野  宗佑紹介)(第二二五四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三九号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第四一号)  在外公館名称及び位置を定める法律及び在外  公館に勤務する外務公務員給与に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)      ――――◇―――――
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案外務省設置法の一部を改正する法律案在外公館名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括議題として、質疑に入ります。質疑申し出がありますので、順次これを許します。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 科学技術庁長官がまだお見えではありませんけれども外務省並び科学技術庁、両方にまたがる問題として当面国民の非常に関心の深い原子力潜水艦寄港問題について、若干お尋ねをしてみたいと思います。  アメリカ原子力潜水艦日本寄港させてくれという申し入れば、数年前から繰り返し行なわれておったわけですが、今度は非常に強硬な態度日本側に迫っておるような印象をわれわれとしては受けております。このアメリカの強硬な態度に屈して、日本政府はこの寄港を認める方向に動いておるようでございますが、まず最初に、これを認めるのかどうか、日本政府態度についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 一月九日に在日米国大使から御相談がございました。格別に強硬な態度であるとかなんとかいうものではございませんで、石橋さんも御承知のように、現在の安保体制のもとでは、先方がそういう意思を持って日本寄港するということになりますると、有権的に断わる立場ではないわけでございます。また、同盟国として安保条約を運営いたしております以上は、日本立場としても、礼儀としても、断わるというようなことは穏当ではないと思います。しかし、本来事前協議対象になっていない本件についてアメリカから事前に御相談があったということは、おそらくは日本史上唯一原爆被爆国として、国民原子力につきまして異常な国民感情、感覚を持っておるという認識の上に立っての用心深い態度であったと思うのでございます。私どもとしては、許可するとかしないとかいう権限はないわけでございますが、しかし、そういった状況を勘案いたしまして、国民が御安心いただくように万全の配意を加える責任があると思いまして、安全の問題、損害補償の問題につきまして、政府側で問題となる点を先方に問い合わせたわけでございます。安全の問題につきましては、前もってお返事がありましたが、なお、それに関連して、若干向こうに確かめなければならないものもありまして、再照会中のものもございます。補償の問題につきましては、先週末先方から返事を受けたので、関係各省で今検討いたしておるということでございまして、万全の措置を講じまして、先方の要望にこたえるという方向で処理いたしておるところでございます。
  5. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 日米安保条約というものを中軸として、日米関係が軍事的にも特殊な関係を持っておるということは、何もきのうきょう始まったことではないわけであります。また、感情原爆とか原子力とかいうものに対して特殊な感情を持っておるということについても、何ら条件は変わっておらないわけであります。それを今急に持ち出して条件が変わったようにおっしゃることは、私どもとしては納得がいきません。現に一九五九年、昭和三十四年にも、外務省は、この原子力艦船日本入港の問題について、アメリカ出局に公式に申し入れを行なっておるはずです。その際の申し入れの骨子は、関係国際法規がつくられるまでは、少なくとも原子力艦船日本入港は差し控えてもらいたい、こういう申し入れをしておるというふうに私どもは聞いております。いま一つは、一昨年の三十六年六月、小坂外務大臣アメリカに行ったときに、同様に寄港申し出があったわけですが、その際も、これをはっきりと拒否しておるわけです。ところが今度は、唯々諾々と、外務大臣が今おっしゃったように、アメリカ申し入れを受け入れようとしておるところに、アメリカの強硬な態度という表現が使われるわけなんです。それに屈しておるのではないかという感じを受けるわけです。そこで、三十四年あるいは三十六年、アメリカから申し入れられたときにははっきり断わっておきながら、あるいはまた日本側から差し控えるように申し入ておりながら、今回に限ってさっさと受け入れようとするところに一番大きな疑問があるわけですから、この点については、どのように条件が変わってきたのかということについて、もう少し解明をしていただきたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 一九五九年に日本からアメリカ申し入れたという事実はございません。しかしながら、原子力利用というのがだんだんと普及して参りまして、特に艦船推進力として原子力を使うということがポピュラーになってきました。その間の時間の経過を考えなければならぬと思いますと同時に、いうところの原子力潜水艦なるものが、たびたび申し上げておりますように、大西洋水域太平洋水域にその後ひんぱんに寄港いたしておる事実がございます。これは安全上何らの問題を生じていないということもあるわけでございます。従って、以前には、日本政府としては、まだそのように原子力利用が普及していない段階におきましてこの問題を取り上げることは、ややショッキングな印象を与えはしないかという配慮があったと思うのでございますが、今日の状態におきましては、これを受け入れて特別にさしつかえがない、また、それを受けとめるだけの精神的な用意が相当国民の側にもできておると私ども感じておるわけでございまして、その後の事態の経過をふまえて、今日の段階で今政府がとっておるような姿勢をとりましても、格別支障はないものと私ども感じておるからでございます。
  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 安全性の問題については、後ほどしっかりお尋ねをしたいと思いますが、今、昭和三十四年に申し入れたことはないといっておりますけれども、これは情報ですから、私も強くは申し上げません。しかし、明らかに関係国際法規がつくられるまで原子力艦船日本寄港は差し控えるよう米側当局に非公式に申し入れている事実はあります。これに対してアメリカ側は、米国原子力艦艇日本立ち寄りは当面予定していない、もし寄港する場合は、事故防止のため日本側当局事前通告を行なう、事故防止のための善後策は万全を期する方針であるといったような意味の問答があったと聞いておるわけであります。  このことはさておいて、今お答えがなかったのですが、同じ池田内閣小坂外務大臣の当時、昭和三十六年の六月に訪米の際、アメリカ側から申し入れがあった事実は御否定にならないわけですね。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 小坂さんがいらっしゃったときにそういう話があったかのように聞いております。そのときは、まだ時期尚早で、もう少し慎重にやらなければならぬというような、はっきり拒否したわけじゃございませんけれども、こちら側としてまだ十分機が熟しないというような意味お答えであったと聞いておりますけれども、私が今申しましたように、その後二年間の経過というものを見ますと、もう従来の態度を一歩踏み出てさしつかえなかろうという判断でございます。
  9. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その点は否定なさらないわけですが、その際も非常に神経を使って、そういった話し合いの行なわれたことすら表面に出ないようにという細心の注意が払われておる、こういうふうに私ども見ております。当時の、これは昭和三十六年の七月二十二日の朝日新聞ですが、その間のいきさつを詳細に書いておるわけであります。「池田首相訪米の際の日米会談では原子力潜水艦日本寄港問題は討議されなかったということに一応なっているが、その後の関係者筋情報によって、六月二十一日の小坂ラスク会談ラスク米国務長官が、原子弾頭つきミサイルをもたないノーチラスなどの原子力潜水艦日本寄港を許してほしい旨申し入れたことが明らかになった。」というワシントン河村特派員発のニュースを載せている。なお、この記事には、「これに対して日本側予備折衝段階で、たとえそれがポラリスのようなミサイルを積んでいない潜水艦であるにしても、日本人の国民感情に触れる問題で、英国でポラリスをめぐって紛争が起こっているのと同じような政治問題が日本に起こる危険があるとして、日本寄港は断わる、日米会談議題からはずす、たとえ話に出たとしても、一切公表しない、ということを主張し、その線で了解がついていた。」といったようないきさつも書かれているわけです。それほど二年前には慎重な考慮が払われておるわけです。ところが今度は、国民感情を刺激しないだろう、こうおっしゃっているわけですが、二年の間に国民感情というものにそんな変化があったというふうに私どもは見ておりません。現にこの寄港予定地として予想されております、私どもの選挙区の方の佐世保にいたしましても、大へんな関心を持っております。二十四日には数万の人間を動員して反対運動をやるというところまできているわけです。全然条件が変わっていないということをはっきりげ申し上げておきたいと思うわけです。  そこで、少し質問を進めてみますが、この寄港にあたっては、最初アメリカの方から、日本政府招待というような形をとってくれというようなことがいわれておったわけですが、依然そういう形が最終的にはとられるわけですか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、私ども関知していないわけでございまして、私が申し上げておる通り、一月九日にライシャワー大使からお話があったので、相談を受けたわけでございます。こっちが招待をするというものではございません。また、これを最終的に日本招待の形にするというようなことも考えておりません。
  11. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、最近報道されておる寄港地として、横須賀・佐世保を希望しておる、特に最初入港佐世保を望んでおるという事実はあったのですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは承っております。
  13. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そこで、問題になるのは、まず最初寄港地として佐世保を望んでおるということなんですが、外務大臣は、佐世保の港が米軍に対して日本政府が正式に提供した地域に入ってないということは知っておられますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 私はそういう水域の点がはっきりしませんから、政府委員から答弁させます。
  15. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この問題は、本委員会において私ずいぶん質疑もしたことあるわけです。現在の佐世保の港を指定したというところに、何か謀略的なものすら感じるわけですよ。というのは、今申し上げたように、佐世保の港は正式な提供区域に入っておりません。ずるずると占領中の既成事実をそのまま継承したような形、いわば非合法の形で使われているという特殊の港なんです。そこを第一番にねらってきた。しかも、日本政府が了解して、佐世保にどうぞという形がとられるおそれがある。そういうふうな形でこれを合法化しようとしておる一つのねらいもあるのじゃないかという感じを私ども率直に受けております。佐世保の港を正式に提供すべきではないかということは、若干条約的にさかのぼって見なくちゃならぬわけですけれども、御承知通り平和条約の第六条によって、講和発効米軍使用するところの施設なり区域というものは、日米相互合意に基づかなければならぬということが定められました。これを受けて、安保条約なり行政協定なりができているわけですが、旧行政協定の第二条で、日米両国政府合意というものは、日米合同委員会でなされるという基本原則が定められておるわけです。しかも、この取りきめは、平和条約によって九十日以内に定めなくちゃならない。もし九十日以内に日米両国政府合意に達しないところは、自然に日本に返ってくる、こういう形の約束がなされたわけです。ところが、九十日以内に合意に達しない特殊なところが出てきた場合、なおかつアメリカとして使用継続を願う場合、そういう場合には、岡崎ラスク交換公文によって暫定使用が認められることになっているわけですけれども、この佐世保水域に関しては、九十日の間においてアメリカ側から使用継続合同委員会に提議していない、全然議題になってない。従って、岡崎ラスク交換公文適用も受けない、こういうことになっているわけです。だからこそ、現在法務省あるいは長崎の検察庁は、ここは正式提供水域でないとして、刑事特別法適用もしておりません。米軍が一方的に、たとえば危険水域アメリカ側の指定するところで漁業操業をやった場合、これを一方的につかまえて海上保安部に送り、検察庁に送致しても、全部釈放しております。刑特法適用はないという見解法務省はとっている。こういう特別の水域になっている。日米両国政府の全く合意に達しない、占領中の既得権をそのまま継承しておるという、不自然な、非合法な形で使われている港であるということを、はっきり御認識願っておかなくちゃならぬと思うのですが、その点、いかがですか。
  16. 安藤吉光

    安藤政府委員 御承知通り佐世保港そのものは、施設として提供しております。今御指摘水域の問題でございますが、これは、協定水域にはなっておりますが、細目等について向こうとの話し合いが確定しておりませんので、いわゆる制限水域にはなっておりません。従いまして、御指摘通り刑特法適用は除外しております。
  17. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 外務省見解としては、そういう見解をとっておられますけれども、純粋に法律解釈でいけば、法務省のような見解しか出てこないのですよ。どういうふうにして使用させるかという取りきめもなしに提供するなんということがありますか。この点を追及したら、新しい地位協定で認められることになるんだ、こんなことを言うのです。行政協定の当時に合意に達しておらない、非合法な形で使われておったものが、新地位協定で、音使っておったんだから正式提供水域だ、そんなばかな理屈はないですよ。とにかく非合法に使われている港であることは間違いありません。一応譲っても、今のような見解しか出てこないのです。そういうところに関して、もし日本政府の方で、どうぞ佐世保をお使い下さいなんということを言えば、結局アメリカの弱点をカバーしてやる格好にさえなるのです。そこがねらいで、第一に佐世保なんということを言ってきたんじゃないかという印象を受けているわけです。その点、外務大臣は全然御認識がないようでございますけれども、重要な問題ですから、軽軽に佐世保にどうぞなどということを言ってもらいたくないのです。アメリカの非合法をやや合法化するような形になるおそれがあって、私は非常に危険だと思いますから、この点を御留意願いたいと思いますが、いかがですか。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、こちらから招待するというようなことでなくやりたいと思っておるわけでございます。  条約問題につきまして、私も実は不敏にして微細な点がわかりませんが、今御注意の点は、よく検討してみます。
  19. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、この問題は、またあらためてお尋ねする機会があるかと思いますが、非常に重要な問題でございますから、外務大臣として慎重な御検討をお約束願いましたので、さらに質問をほかの方に移したいと思います。  もう一つは、先ほど外務大臣の答弁の中に、この原子力潜水艦寄港の問題は、事前協議対象にならないというように最初からおっしゃっておるのですが、これがやはりふに落ちないわけなんです。現にアメリカの方からは、いわば事前協議の形で持ち出されておるわけだ。それを日本政府の方で事前協議対象にならぬと言うのはどういうことなんだ。少なくとも新安保条約の第六条に基づく交換公文で事前協議という制度がつくられておるのは、日本に不利益にならないように、日本国民の利益を守っていこうという立場から、少しずつでも壁をつくっていこう、そういう考えから出てきていると思う。だからできればこの事前協議対象に入れていこうという姿勢が必要なんですが、最初から事前協議対象にならないなんという、どうしてそういう考え方が出てくるわけですか。
  20. 安藤吉光

    安藤政府委員 地位協定第五条によりまして、合衆国の船舶及び航空機等は日本に入ることはできるわけでございます。これに基づいて第七艦隊等が出入しておるわけでございますが、ただいま仰せの事前協議の問題につきましては、条約第六条実施に関する交換公文というのがございます。その交換公文の中で、事前協議対象をはっきり明記しておりまするが、それは「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動」というものに限定しております。ただいまお話しになっておりまするところの原子力潜水艦は、単に原子力の動力によって動くという性質のものでございます。これは原子兵器ではございません。原子兵器は確かに事前協議対象になりまするが、原子力潜水艦は、その動力が原子力で動くというだけでございまして、これは原子兵器ということにはならないわけでございます。
  21. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その程度のことは、アメリカ局長が立たなくったって、大臣も知っておると思うのです。私も心得て質問しておるわけです。だからこそ、第六条の交換公文というものを私は申し上げたわけです。  それでは、まず最初に核兵器の問題についてやりましょう。これに該当しなくても、私はほかのものに該当すると思うのです。核兵器じゃないからいいのだ、事前協議対象にならないのだ、こうおっしゃいますけれども、単に動力に原子力を使っているだけだという問題についても疑問はありますよ。明らかに軍事的に用いられておるし、特殊の原子炉であることは間違いないのですから。しかし、それはおいても、それじゃ今度入ってくるノーチラス型潜水艦に核装備がないという保証は、あなたがなさるわけですか。そうじゃないじゃないですか。ノーチラス型にもサブロックという対潜核ミサイルが積まれておることは、もう常識ですよ。ことしに入ってからも、アメリカの海軍が発表しておるじゃありませんか。世界のミサイル図鑑には全部載っておりますよ。サブロックは絶対に積んでないというのですか。
  22. 安藤吉光

    安藤政府委員 サブロックにつきましては、二月十八日にアメリカの国防省当局がはっきり言っております。サブロックは現在研究開発中である、従って、まだ実用化いたしておりません。もちろんノーチラスには積んでおりません。
  23. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういう軍事専門家のようなことをあなたはお答えになりますけれども、少なくとも核、ミサイル・サブロックがノーチラス型に積まれておるということは、これは軍事常識です。世界の常識ですよ。あなたは、アメリカが積んでないと言ったから、世界の常識に反してでもそれを信頼するというだけでしょう。
  24. 安藤吉光

    安藤政府委員 今先生がおっしゃったのは、あるいはアメリカのある雑誌にもう実用中というようなことが書いてあったが、そういったような記事があることは私も承知しております。それに関しまして、アメリカ当局はそれを絶対否認しております。サブロックは目下研究開発中であるということで、二月十八日にその実験の写真とともに発表しております。
  25. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 本年の二月十七日の米海軍の発表でも、サブロックの装備を明らかにしておるじゃありませんか。現に潜水艦から発射されておる写真まで新聞には報道されておるじゃありませんか。
  26. 安藤吉光

    安藤政府委員 私はその写真も見ましたし、それと一緒に、米海軍当局が発表したところも正確に読んでおります。それには、ただいま申しました通り、サブロックは目下研究開発中であるということが書いてございます。  なお、二月十八日ごろのAP電が、サブロックについて実用されておるということを当局筋から聞いたというようなことを書いておるようでございます。これについては、国防当局にただしましたところ、そういったようなことを言った覚えは全然ない。それからAPにただしましたところが、これはただ雑誌の記事を引用したのだということでありまして、事実は、私が申し上げました通り、サブロックは今なお開発中でございまして、実用化されておりません。
  27. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ノーチラス型の原子力潜水艦スレッシャ一号に装備されておるということは、はっきりしております。しかも、昨年の太平洋水域における一連の核実験の際に、これが実験されておることも公表されておるじゃありませんか。
  28. 安藤吉光

    安藤政府委員 スレッシャ一号で実験をしたということは承知しております。しかし、まだこれを装備しておる段階には至っておりません。
  29. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、実験して失敗したとでも言うのですか。
  30. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほども申しました通り、ただいま実験中である、研究中であるということだそうでございます。
  31. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アメリカは世界に向かっては、みずからの威力を誇示するために、実験に成功した、装備したと偽りを言っておるのだ、そうなんですか。そうじゃなしに、そちらの方が事実であって、日本国民感情を刺激しないように、日本政府に対しては偽りを言っておるというふうに理解するのが常識ではないでしょうか。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 それは非常に根本的な問題でございまして、私はこのように考えております。つまり、ノーチラス号というものに核兵器を搭載することが可能かどうかという議論は、実は御懸念のようなことが考えられるわけでございましょうが、しかし、私どもアメリカとの間には固い約束がございまして、核兵器というものは日本に持ち込まない、持ち込む場合には事前協議対象にするのだという約束があるわけでございます。同時に、日本政府としては、どんなことがあっても、核兵器の装備とかあるいは核兵器の持ち込みというようなことは一切認めないのだということを、内外に宣明しておるわけでございます。従って、日米間の同盟関係におきましてそういう基本的な信頼がくずれるというようなことがございますれば、これは安保条約になんぼ精緻な条文がうたわれておっても何も役に立たぬわけでございまして、無数の艦船と航空機が出入するわけでございますから、石橋さんのおっしゃるようでございますれば、日本政府事前に点検いたしまして、これは大丈夫だから入れということにしなければなりませんが、そういうようなことをやっておったのでは、安保条約の運営というものは私はできぬと思うのです。これは、やはり基本に日米間の深い信頼がなければならぬわけでございまして、その信頼の上に日本の防衛が成り立っておるわけでございますので、私は、この不動の信頼をくずすというようなことは、日本政府としてすべきではないと思いますし、アメリカ日本政府をだますとか、日本国民をだますとかというようなことは、こんりんざいおやりにならぬという信頼の上に立っておるわけでございます。
  33. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アメリカがノーチラス型の原子力潜水艦寄港地日本に求めてきたということのねらいの一つは、対ソビエト潜水艦作戦というものがあることははっきりしているわけです。その対ソビエト潜水艦作戦に有力な武器としてノーチラスというものが考えられておる。とすると、対潜水艦作戦で最も効果的な威力を発揮するところのサブロックというものを積まないで日本に来るなんということは、常識として考えられません。もし一歩譲って、アメリカ局長の言うように今装備されていないとしても、現に実験に成功しておる。事実これを装備しておるという発表も行なわれておる。やがてこれを装備して入ってくることは間違いありませんですよ。一、二回は装備してこないかもしれないけれども、その点の保証は全然ないわけです。しかも、このサブロックというものは小型原爆といわれておりますけれども、威力は二十キロトンです。二十キロトンといえば、小さくても広島に落ちた原子爆弾と同等の威力を発揮する。そのような装備を持ったものが入ってくることは間違いありません。しかし、あなた方は、そういうものを積んでくるときには事前協議対象になるのだ。今のところ積んでこないから、一々沖繩かどこかにおろしてくるというのでしょう、あなた方の説明によれば。そんなばかばかしいことを私どもは信ずるわけにいかないし、国民だって信じません。今のところはそれで切り抜けられるかもしれません。しかし、大へんな問題をかかえておるということを指摘申し上げておきたいと思うのです。  ところで、核兵器は積んでおらぬから、装備の変更にならぬという解釈をとるとしても、それでは、第六条の実施に関する交換公文の第一項に掲げておるところの、合衆国軍隊の日本国における重要な配置の変更にならぬのですか。なぜ、これに該当する、事前協議対象だといって、日本政府はそういう立場をとらないのですか。いかがですか、外務大臣
  34. 安藤吉光

    安藤政府委員 重要なる配置の変更ということに関しましては、陸軍におきましては一カ師団、海軍については一機動部隊、空軍については大体一カ師団といったようなことが基準になっておるわけでございます。従いまして、単に装備が、動力が原子力であるということだけで、これが重大なる装備の変更というふうにはならないと解釈されます。
  35. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 配置における重要なる変更というものがそういう量的なものだけだという解釈は、どこから出てくるのですか。日本政府としては、当然質的な変更についても事前協議対象になるという立場をとれるはずじゃありませんか。初めから、これは対象にいたしませんと言うのですか。向こうは、質的な変更で、重要な意義を持っておるからこそ、いわば形の変わったものであろうと、この第六条に基づく交換公文に基づくものとは言わないまでも、事前協議の形をとってきているじゃありませんか。相談してきているじゃありませんか。日本政府の方で、これは事前協議対象になりませんから、一般の安保条約に基づいてどうぞ御自由にお入り下さい。なぜそういうへっぴり腰の態度をとる必要がありますか。これは局長でなしに、大臣、答えて下さい。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 私ども事前協議と思っていないわけでございます。これは、最初からそのように申し上げておるようなわけでございまして、国民感情ということを考慮いたしまして、先方が好意的に、日本に対していかがでしょうと御相談があったことでございまして、私ども事前協議というふうにはとっておりません。
  37. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 しかし、少なくともあなた方の方で、日本政府の方で、アメリカは自由にお入りになる権利を持っているのですから、どうぞと言う。向こうの方は、そうじゃなしに、慎重に、この交換公文に基づく事前協議であろうとなかろうと、事前相談を持ちかけていることは間違いないでしょう。それほど、慎重な配慮を必要とするほど質的な変更をもたらすものじゃありませんか。こういうりっぱな条文があるのに、最初から日本政府は逃げに回って、事前協議対象にならないと言う。こっちからなぜそういうことを言う必要があるのかと言うのですよ。アメリカすら、日本国民感情その他を十分考慮しなければならぬような問題だと考えておるじゃありませんか。これは、質的な装備の変更であることは間違いないじゃありませんか。アメリカの今の姿勢から言ったって、日本はもう一歩進んで強い立場をとって、この第六条の交換公文に基づくところの配置における重要な変更であるからと、こういうきぜんたる態度をなぜおとりにならないのですか。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約の解釈からはそれが出てこないのでございます。問題は、安保条約上の問題でなくて、国民感情上の問題として、国民の方の御心配が解消するような万全の措置を講ずるということをやっているわけでございまして、安保条約事前協議に応じて、それに対して日本政府態度をきめるというような性格の問題ではないと思っています。
  39. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 安保条約の解釈の問題として、配置における重要な変更というのは、量的な面だけだという何か取りきめでもあるのですか。質的な重大な変更はこの中に入らぬという取りきめでもあるのですか。私どもはそういうように聞いておりませんが……。
  40. 安藤吉光

    安藤政府委員 安保条約が締結されます際に、第六条の実施に関する交換公文で、先ほど申し上げましたような事前協議対象の事項を定めております。その際の了解におきまして、量的なものとしては配置における重要な変更、これに対しては、先ほど申しましたようなこと以上のことについては事前協議をやるという了解ができております。それから質的なものといたしましては、その次に言っておる「軍隊の装備における重要な変更」ということになるわけでございますが、この装備における重要な変更ということに関しては、中距離以上のミサイル、あるいは原子力兵器というものがこれに該当するのであるという了解ができております。
  41. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 しからば、この「配置における重要な変更」というのは、量的なものだけだ、質的なものは一切扱わないと、こういうわけですか。
  42. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほど申し上げましたように、「配置における重要な変更」というのは、量的なものを考えておるわけでございます。質的なものについては、その次の「装備における重要な変更」ということが、それに該当するかと思います。
  43. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それは、両国の合意に基づいて、それ以上のものは入らぬという取りきめになっているかと私は聞いているわけです。
  44. 安藤吉光

    安藤政府委員 そういう了解になっております。
  45. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういう取りきめをしておるとするならば、そこにも問題はあると思いますよ。原子力潜水艦というような、従来の艦船とは全然異質のものです。戦力もこれによって相当倍加されるということは、はっきりしておるわけなんです。そういうものが入ってくる際に、これを重要な変更と認めないというような事前協議じゃ、全然意味をなさないですよ。アメリカにおいてすら、先ほどから申し上げているように、非常に大きな影響があると考えて、この条文には基づかないけれども事前相談をしてきているのです。それに対して日本政府が、あなた方権利を持っているのですからどうぞ御自由にお入り下さいというような、そういうへっぴり腰で、日本国民の安全が保障されますか。それじゃ、国民の安全というものは、この寄港を認めても絶対に保障できるという自信がありますか。それから聞きましょう。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 そうぞんざいに考えていないわけでありまして、私ども原子力に対する国民の感触というものを十分頭に置きまして、政府部内においても智のうをしほりまして、安全の保障の問題に万全の備えをして、御安心がいくような状態において同意をしようという態度をとっているわけでございまして、どうぞ御自由にというようなぞんざいな態度では決してございません。
  47. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ、どうぞ御自由にという態度をとらないというならば、最終的に寄港を認める場合にはどういう形がとられるわけですか。何か新しい協定でも結ぶのですか。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約のもとにおきまして、日本としてとり得る最善の事前措置を考えて、先方側の了解を得て、そして実行に移すということでございまして、どういうような姿にするかはまだきめておりませんけれども、いずれにいたしましても、これで国民は安心だという措置は講じなければならぬと思います。
  49. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は、外務大臣あるいは外務省お尋ねしているわけです。安保条約というものがあるのでありますから、どうぞ御自由にという形をとらないとすれば、何らかの両国政府の意思を現わす手段というものが出てくるわけでしょう。どういうものがあるわけですか。どれときめておらぬけれども、新しい協定を結ぶとか、あるいは交換公文を取りかわすとか、口上書を取りかわすとか、何かそういう形式があるわけでしょう。どれをとるか最終的にはきめておらぬが、こういう方法がある、この中でやりたいという程度でも御説明はつかないのですか。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 従来原子力潜水艦寄港しておる寄港先の国とアメリカとの間には、協定というようなものは、ただいま調べたところではございません。しかし、日本の場合は、これはやや特殊な国でございますので、私が申しましたように、このことは認めても心配はないのだという安心感が国民になければなりませんので、それを保障するような措置をとらなければいかぬ。今その形式をどうするかという問題でございますが、協定というようなことは考えておりませんが、両国政府の間で了解すべき事項を明瞭にいたしまして、両方の政府が責任を持ち得る何らかの形のものを取りかわしたいということで考えておるわけでございまして、今どういう形のものにするかは、最終的にまだきめていないということです。
  51. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、何らかの形で正式な取りきめがあるものというふうに理解しておきたいと思います。  ところで、先ほどの話に戻るわけですが、一昨年申し入れが当時の小坂外務大臣にあった。その際には、日本政府はこれを断わった。今度はこれを断わらないで受け入れる方向に行っておるわけですが、その間に何ら条件に変化はないと私どもは見ておるわけですけれども政府なりアメリカの方では変化があった。たとえばその一つの例として、原子力商船の建造を日本でも決定したじゃないか、こういうようなことをあげておるようでございますが、ここにも一つ私はごまかしがあるような気がしてしようがない。まず根本的な問題として、同じ原子力を動力として使う船であるとは言いながら、一般の商船と艦艇というものをわざと一緒に見せようというその態度にも問題が一つあります。それからもう一つは、日本原子力商船の建造を決定したというが、これは今から調査研究するんでしょう。できるのは九年先というふうに私は聞いておりますが、この点はいかがですか。科学技術庁長官お尋ねしたいのですが……。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 ちょっと私から……。原子力商船の建造ということを奇貨として、今度の寄港問題にそういう計画があることを援用しておるという印象のお話でございましたが、私どもはそういうことを言うておるのじゃございませんで、一般に原子力利用という点が非常にポピュラーになってきた。艦船推進力として原子力を使うということでございまするし、また同時に、今までの原子力潜水艦寄港した事跡を調べてみましても、何ら安全上心配がないという実績があるということをふまえて言っておるわけでありまして、日本原子力潜水艦の建造の計画があるからということを私どもは援用して、政府態度をきめようなどということではございませんから、その点誤解のないようにお願いします。
  53. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 大臣は言った覚えはないかもしれませんけれども、そういうふうに流布されております。  それから、さっきから何度も申しておるのですが、大臣は今まで事故がなかったと言われる。事故があったかなかったか、あとで私ゆっくり資料を御提示いたします。その問題には今触れておりません。少なくとも一般の報道機関を通じて盛んに言われておることは、日本でも原子力商船の建造をきめたんじゃないか、そういうことが盛んに言われておるのです。だから、ここにごまかしがあるということを私は今指摘しておるのです。きめたかもしれぬが、それはこれから調査研究するのであって、もう安全性が確保されたわけでも保障されたわけでも何でもない。一体つくって大丈夫かどうかということを今から研究する、でき上がるのはずっと先だ、九年先たというふうに聞いております。科学技術庁長官、どうですか。外務大臣は、原子力を動力として艦船が使うことはポピュラーになったと言っておりますが、まだポピュラーになったと言える段階ではありませんよ。大臣だってお乗りになったことはないでしょう。見たこともありませんでしょう。それはさておいて、近藤長官の方から私の質問お答え願いたい。
  54. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 ただいまお尋ねになりました原子力船の開発は、昭和三十八年度に当初の予算を計上いたしまして、大体基礎的な研究はできておりますから、それを材料にいたしまして、設計から造船にかかるわけでございます。完成いたしますのは、三十八年度以降七年間、あと二年間は運航の調査というようなことになっておりますから、それを合わせて九年ということになっております。船が建造されますのは約七年間と見ております。
  55. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その程度かかるのですよ。今から調査・研究してでき上がるまでに七年から九年、ずいぶん先の話です。大平さんはわれわれよりも頭がうんと進んでおりますから、もうポピュラーになったと言っておるけれども、九年先へ行ったってポピュラーになるかどうかわかりませんから、まだまだ特殊な船です。しかも、その安全性というものは、常識的に認められておりません。特に軍艦の場合などは、非常に無理をして原子炉自体がつくられておる、そういうふうに私どもは聞いているわけです。にもかかわらず、この寄港問題が出てから、原子力潜水艦を特別視するのは時代錯誤だといったような危険な流布がなされておることを、私は、この際まっこうから否定するために、今科学技術庁長官お尋ねをしたわけです。決してまだ安全性が保障されたわけでも何でもない。今すぐに日本原子力商船が持てるような段階に来ておるわけでも何でもないということを申し上げたかったわけです。  それから、もう一つ、今回この寄港問題がしばらくさたやみになっておったにもかかわらず出てきた理由の一つとして、先ほどもちょっと触れましたけれども、やはり軍事的な意義があると思う。その一つは、ソビエトの潜水艦作戦、ウラジオストックを基地とするソ連の一連の潜水艦群を日本海に封じ込めてしまう、こういう作戦をアメリカとしては持っており、日本の海上自衛隊の至上任務としてこれを授けておることも常識です。それをさらに強化しようという意図のもとに、サブロックを積んだノーチラスを日本寄港させる、日本に基地を求めようとしておることは間違いないわけです。ところで、もう一つは、ポラリス潜水艦というものは独自の行動をやり得るわけですが、ノーチラス型の原子力潜水艦は艦隊編成に組み込まれておる。従って、水上艦艇と行動をともにできないという不便さをかこってきた。第七艦隊の主力は普通横須賀や佐世保に入ってくる、潜水艦だけ入れないのでは工合が悪い、こういう軍事的な意義というものも私はあるかと思いますが、とにかく、対共産圏作戦、核戦略の一環として出てきておることは間違いないと思う。  それに関連して、私どもがふに落ちないのは、ことし開かれた第三回の日米安保協議委員会において、中国の核実験問題とほとんど結んだ形で、相前後してこの寄港問題が提起されてきたということです。これも非常に妙な謀略臭を感ずるわけです。中国がいかにも核武装するかのごとき宣伝を始めて、その対抗意識をあおる形の中で、原子力潜水艦の受け入れを日本国民にさせよう、こういうふうな意図的な動きがあったような気がしてならない。外務大臣もこの安保協議委員会には御出席になっておったわけですが、一体中国の核実験がそんなに早いものか。どういう情報に基づいて――どういう情報というのは、日本から出された情報なのか、アメリカから出された情報なのか、その辺を主としてお尋ねしているわけですが、どういう情報に基づいてそういうふうな判断をなさったのか、そういう宣伝を開始されたのか、この点についてまずお伺いしておきたいと思う。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 中国の核爆発というものにつきまして、私どもは的確な情報は持っておりません。ただ、先方政府が発表された、原子炉は北京の近くにあるということは承知いたしておりますけれども、核爆発がいつ行なわれるかということにつきましては、諸説ふんぷんでございまして、今年じゅうにやるとか明年じゅうにやるというルーマーはございます。アメリカの方も、時期について確たる見通しを持たれておるという確信があることでもございませんでして、この問題が問題になりましたのは、アメリカの軍事政策という面から打ち出されたわけでなくて、中国問題というものを討議した際に、たまたまそういうルーマーが話題に上ったということでございまして、これに対しましては、日本政府の国内問題といたしましても、あるいは核爆発というようなショッキングな事件が起こった場合、われわれ日本政府を預かる者としても、日本政府日本国民の心理的な動揺というような点について考えなければいかぬ問題でございまして、安保協議委員会の課題ではないということでございます。
  57. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私の質問にそのまますなおにお答え願えないわけですけれども、私が聞いておるのは、安保協議委員会において中国の核実験なり核装備の問題が議題になって、いかにもそれが早いように発表されておる。一体そのような結論を出してくるもとになった資料は、いずれの側からお出しになったのかと聞いておるわけです。発表の方法としては、志賀防衛庁長官が記者会見で失言したかのごとく装っておりますが、実際にそういうような意見の交換が行なわれて、それが一つの情勢分析のもとになったことは間違いないと思うのです。なお、あの際、日本政府側とアメリカ側とで、中国の力の評価において食い違いがあったということが言われております。私はその点とも関連しておるような気がしてならないわけです。結局、中国の力というものについて、アメリカの方がより高く評価しておったのではないか。その裏づけとして、たとえばこの核装備といったような問題が提起されたのではないか。それをいかにも日本側から持ち出したかのごとく、志賀さんに失言の格好で発表さす、そういう手の込んだことが行なわれたのじゃないかという印象を受けるわけです。なぜならば、志賀防衛庁長官は、失言の形であろうと何であろうと、いかにも中国の核実験が近い、核武装が近いようなことを漏らしておりますが、私どもが従来防衛庁から聞いておった情報では、そうではなく、北京に確かに原子炉がある、しかし、これはソビエトの援助のもとにつくられたものである。プルトニウムはおそらく中国の自由には使えないだろう、もし独自の原爆を開発するためにそういう努力を中国がしておるとするならば、北京の原子炉から出てくるのではなくて、どこか武漢の方の別のところで独自の力でつくっておる、そこから出てくるプルトニウムを利用する以外ないのじゃないか、そういうことから考えてみると、そう早く核実験が行なわれると考えないし、また、核実験が行なわれても、実際それが実用の段階にいくまでには数年かかる、こういうような説明がなされておる。それと食い違うようなことが志賀さんの口から出てきたということは、どう見ても、その出所はアメリカ側ではないかという疑問を持ちますので、お尋ねしておるわけです。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 われわれ内閣はそんな手の込んだことをやりません。そういう志賀さんの発言を通じて云々というような考えは毛頭ございませんで、私どもは愚直にやりたいと思っております。  それで、安保協議委員会は、従来形ばかり開かれておったのでございますけれども、私はこういうことではいけないと思ったのです。なるべくひんぱんに開いて、そうして、国の防衛の問題というような問題が案外国内で議論になりませんし、もう少し国民に知っていただく必要があると思いますので、協議委員会で討議したことはできるだけお知らせするようにしたいというのが私どもの考え方でございまして、記者会見を通じて、あらまし内容を公開するというふうにいたして、今後も私はそうするつもりでおるわけでございます。たまたまこの原子力潜水艦寄港問題というものと、安保協議委員会で中国の核爆発情報の交換がされたということが、何か非常に仕組んだ因果関係があるようなお取り上げ方でございますが、そういうことは全然ございませんで、極東情勢をお話ししたときに、たまたまそういうルーマーが話題に上ったということで、しかも、それは双方の国におきましても確たる証拠を握っておるわけでもございませんし、そういうルーマーが話題に上ったというにすぎないものでございまして、それ以上のものではございません。
  59. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 愚直にやりたいとおっしゃるなら、答弁も一つ愚直でやっていただきたいと思う。肝心なことは一つお答えにならないじゃありませんか。どちらの資料に基づいたのか。  それじゃ、一つ質問を変えましょう。中国の核実験は近い、核武装は近いというふうに大臣はお考えですか。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、そういうことを判断する的確な情報を私ども持っておりませんので、世上のルーマーを聞いておるにすぎません。しかし、常識といたしまして、核爆発がかりにあったとして、それが核武装に至る間におきましては、各国の例、最近ではフランスにおいても例がありますように、相当長期間を要するだろうということは常識的に言えるのではないかと思っております。
  61. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それが常識です。志賀さんが、いかにも今すぐにでも核実験が行なわれて、核装備が近いようなことを言ったのが問題なんです。だから、中国すらもう核実験は間近いのだぞ、核装備は間近いのだぞ、そういうときに、日本アメリカ原子力潜水艦寄港ぐらいでごたごた言うのはおかしいぞと言わんばかりにしてこの問題が出てきたところに、問題があると私は言っているのですよ。だから、あなたがさっきおっしゃったように、ずいぶん先のことだ、そういうお答えでけっこうです。一応私は目的を達しますから。  それで、肝心なところに入りたいと思いますが、国民に理解してもらえるという自信に基づいておられるようでございますけれども、一番国民が心配しておるのは、この安全性です。その安全性においてほんとうに国民に理解してもらえる自信があるのか。これは、外務大臣と、同時に、科学技術の総元締め、近藤長官にも自信のほどをお伺いしておきたい。それから質問に入りたいと思います。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 できるだけ手を尽くしまして万全の措置を講じますれば、私は御理解いただけると思います。
  63. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 私の立場といたしましては、寄港問題について、安全性を十分に考えていかなければならないという立場をとっておりますので、その点について、関係の間柄で措置を検討いたしておるわけでございます。今日結論が出たというわけでもございませんので、できるだけ納得のいくような安全の措置を何らかの形で講じられたいという、強い希望を持っておるわけでございます。
  64. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 希望を幾ら持っておられても、大臣自身、今絶対に安全だという自信はないわけでしょう。国内の原子炉一つつくるにしても、どんなちっぽけな原子炉をつくるにしても、非常にきびしい規制が加えられております。設置の希望が却下されたところすらあります。ところが、今度ノーチラス型が積んでくる原子炉というのは、それらのものに比べてはるかに大きいのです。日本一の原子炉が横須賀か佐世保の港に臨時にできるということになるわけですよ。原子炉というものが絶対に安全というものでないだけに、国内法できびしく規制しておるはずです。そういう立場を今後貫いていこうとするならば、科学技術庁の長官として、まず不安の方が先に立つと思う。それでなかったらおかしいと思いますよ。あなた自身が絶対に自信を持たないで、どうして国民に、安全ですという教育、啓蒙ができますか。もしあなたが絶対に安全だという自信があるというのなら、私はあるかないか今からお尋ねしますけれども、いかがですか。絶対に自信を持っておられますか。
  65. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 先ほども申し上げました通り、安全であるということは重要な問題であるというので、何らかの形において安全性が保たれなければならないという強い願望を持っておるということを申し上げたわけでございます。原子炉が危険であるということは、おそらくだれしも十二分に承知しておることでございますけれども、すでに日本におきましても原子力開発の研究所もございまして、いかにして安全に、これを平和的に利用するかということに取り組んでおるわけでございまして、何もかも危険だ危険だと言うたのでは、これは平和利用の開発にならないわけであります。安全度を十分に保ちながら、開発利用ということに取り組んでおるという形において、私は、ある程度十分な措置さえできれば安全である、だからこそ、今日開発の段階に入っている、こう考えておるわけでございます。
  66. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 平和利用立場においてもその程度の配慮が加えられるわけです。ところが、今度の原子力潜水艦というのは、平和と何の関係もありません。平和利用ではありません。軍事目的のためにつくられておる。もっときびしい規制を加えていいはずです。平和利用の目的につくろうとする原子炉、その設置においてすら、きびしい規制を加えて、あるときには希望をかなえないで、設置を許さないという立場をおとりになったあなたの立場で、軍事的に非常に粗雑につくられたといわれておるこの原子炉について、不安を持たないということはあり得ないのではないかと思う。しかも、あなたが安全性を確認するためには、少なくともその構造そのものについて知識がなければできないのじゃないですか。どういう原子炉を積んでいるのか、どういう構造になっておるのか、全然わからないまま、科学技術の分野において最高の立場に立っておられるあなたとして、内容がわからないまま自信をお持ちになれますか。この点はいかがですか。
  67. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 初めのお尋ねのとき、ちょっとほかのことを考えていたものですから、恐縮なんですけれども、もう一ぺん御質問願いたいと思います。
  68. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ほかに考えることがあるほどお若いということがわかりまして、非常に心強いものを感ずるわけです。私がお尋ねしているのは、この原子力潜水艦が安全かどうかということを知るためには、やはりその構造そのものについての知識を得る必要があるのじゃないですかと言っている。これは学者の方が国会に来ても証言をしているわけです。非常に危険だという結論を出しておられる。なぜかというと、たとえば、長い間燃料を補給しないで潜航を続ける、航海を続ける、その必要性のために必要以上に燃料を積んでいる、あるいは制御棒を抜いておるとか、いろいろなことを言っておるわけですね。しかし、それらの学者にしても、はっきり見たわけではない。設計図を見せてもらったわけでもないでしょう。しかし、いろいろ伝えられるところから、非常に大きな不安を持っておる。私はこれは当然だと思う。同じ政府の部内にあっても、技術庁という役所は、そういう科学者の良心と一致したものをやはり持たなければならぬのではないか。良心に誓って安全ですということを国民に言うためには、どういう原子炉を積んでいるのか、その構造を知りたい、そういう欲望をお持ちになっておるはずだと思う。そういう気持もなしに、抽象的に外務大臣のしり馬に乗って安全ですというようなことは言えないのではないですかということを私はお尋ねしておるわけです。
  69. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 別に外務大臣のしり馬に乗っているわけでもありません。確かにそういうことが言えると思います。しかし、ある程度いろいろな軍事上の問題があるので、それが示されないということによって、では何かほかにかわる方法がないか、何らかの方法がないかということを目下検討いたしておるわけでございまして、原子炉というものは危険であるから、アメリカでもそう粗雑なものをたくさんつくっているわけではないと思います。しかも、軍艦はその推進力だけで動くのではなくて、やっぱり相当の軍人が乗っているということになりますと、アメリカが人権をどんなに尊重する国であるかということを考えたときに、そう粗雑な原子炉で来るということは考えられないことでございますので、私は、ある程度信頼を持つということは、やはりそういうところにもあるのではないか、そう考えるわけでございます。
  70. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 まことに心細い科学技術庁長官であります。科学技術庁の元締めとしては、もう少し科学的に判断しなければ、流布されている情報に基づいて、安全でございますなんと言う、そういうのはしり馬に乗ることです。やはり、現物を確かめさしてほしい、一体どういう構造でございますか、そういう希望は出てこないのですか。科学技術庁としては全然考えていないのですか。なくてけっこう、軍事秘密でございましょうからというので、最初からしり込みですか。そういう積極的な意欲をお示しになったことがありますか。
  71. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 お言葉を返すようでございますけれども、別に何も示されないけれどもけっこうだというような意思は毛頭ございません。それならばこそ、アメリカの第一回目の回答にふに落ちない点がある、あるいは国際条約的には出過ぎたことであり、笑われることであるかもしれないけれども、この点についてもう一回の打診をしてみたい、もう一度この点についてはというので、詳細の返答を求める処置を講じておるのでございまして、ただ一回こうこうだからと言ってきたというので、それでオーケーという気持は毛頭ございません。そういうことを判断いたしまして、十二分の回答を得たいということに対しての最善の努力を払っているということを申し上げたわけでございます。
  72. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 国内で平和利用のために原子炉をつくる、学術研究のために原子炉をつくりたいという希望が出されてすら、あなた方の方で、先ほど申し上げたように却下した例すらあるのです。ところが、今度ノーチラス型潜水艦が積んでくる原子炉というのは、出力から言って日本にいまだかつてないような大きなものなんですね。そんなものについて、設計図も見ない、ただ情報だけで大丈夫だろうというようなことでお認めになるのでは、国内の規制は必要なくなりはせぬですか。横須賀や佐世保のどまん中に、日本にいまだかつてないような大きな原子炉をどかどかつくられるような格好になるわけですから、これは今までの政策と矛盾を来たしてきませんか。少なくとも、科学技術庁としては、どういう構造なのか教えてくれ、こういう気持がまっ先に出てこなければならぬと思うが、そういう気持をお持ちになったことはないのかと聞いておるわけです。
  73. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 何度もお答えしているような気がするのですけれども安全性を確認するに足るような材料がほしいということを、外務省を通じて交渉をいたしておるわけでございまして、私どもといたしましてのすべき道は果たしておると思っております。
  74. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、ノーチラス型原子力潜水艦に積んでおる原子炉がどういうものか、その構造について知りたい、できれば設計図でも見せてもらいたい、そういう強い気持はお持ちになっておる、外務省を通じて希望は述べてある、こういうことですか。
  75. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 一応そういうことを申しましたけれども、先ほど申しましたように、それが軍機に関するものであって出せない書類であるならば、何らかの方法でということを申し上げておるわけでございます。
  76. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃお伺いしますけれども原子力商船に積もうとしておる原子炉については大体研究が終わっておると、先ほど大臣は申しました。そうすると、原子力商船に積んでおる原子炉と原子力潜水艦に積んでおる原子炉とは全く同じものですか。
  77. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 そういう具体的なことにつきましては、科学に弱い私はよくわかりませんから、事務当局からお答えさせます。
  78. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私も科学に弱い。大臣に匹敵する、あるいはそれ以下です。あなたは少なくとも今相当の地位におられるから、吸収できる知識はずいぶん多いと思います。私どもにはそれもないのですから、もっと弱いですよ。その私も、日本国民の安全のために、一生懸命自分なりに勉強しようと思っております。原子力潜水艦に積む原子炉と、今あなたがつくろうとしておる、大体研究は終わっておるとさっきおっしゃった、原子力商船に積もうとする原子炉と、同じものなのか、構造上全然別のものなのか、その程度の知識は、私は、一般国民でも、科学に強くない国民でも理解のできる範囲のものだと思いますが……。
  79. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 専門的なことでございますので、間違いがあるといけませんから、政府委員からお答えをいたします。
  80. 江上龍彦

    ○江上説明員 私どもの聞いております範囲では、たとえばアメリカのサバンナ号に積んでおる原子炉と、大部分の原子力潜水艦に積んでおる原子炉とは、同じ型に属するアメリカの軽水炉でございます。
  81. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 同じ型というのではわれわれにはわからないのです。科学に弱いわれわれにわかるように説明していただきたいのですが、同じ型ということは、大体同じだということなんですか。それじゃ、軍事機密も何もありはせぬじゃないですか。
  82. 江上龍彦

    ○江上説明員 アメリカで現在使っております原子炉の型は、実用化されておるものは大きく二種類ございまして、同じ軽水型と称しておりますけれども、この中に加圧水型と沸騰水型というのがございます。陸上炉については両方がほぼ同じテンポで開発されておりますが、舶用炉につきましては、現在のところ、このうちの加圧水型、一般にPWRと称されておりますが、その型の原子炉が実用化されておりまして、そういうPWRであるという意味で同じである。しかし、構造の細部に至るまで全部同じであるかどうかは、これは原子力潜水艦の原子炉の設計図を見なければわからない。しかし、軍事用の用途のために、あるいは潜水艦という特殊事情のために、多少のバリエーションがあるということは、おそらく想像されるところであります。
  83. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私も、加圧水型が使われているくらいのことは知っているのですよ。同じものかどうかということを繰り返してお聞きするのは、同じものなら、何も軍事機密はないじゃありませんか。日本だって、科学技術庁長官、さっき、原子力商船は研究は終わって、今からつくり始めるばかりだ、こうおっしゃったじゃありませんか。その辺があいまいになるから、私はしつこく言わなければならぬのですよ。あなたばこの問題について国民に対して安全を保障する最高の責任者ですよ。外務大臣じゃありませんよ。あなたが裏づけしなければいけないですよ。大丈夫です大丈夫ですと言うからには、その程度の知識がなければならないはずです。軍事機密だからと最初から逃げ腰じゃだめですよ。同じものならば、軍事機密なんかないじゃないですか。日本ではその程度のものはちゃんと研究は終わっているとあなたはおっしゃったじゃありませんか。それを軍事機密と習うからには、構造上違う、ずいぶん手を抜いてある、無理をしてある、従って、危険だというような結論が出てきませんか。同じものであるならば、軍手機密はないはずです。その点は大臣としてどういう割り切り方をしているのですか。
  84. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 どうお答えしていいか、ちょっと御満足のいくようなお答えはいたしかねると思うのでございますが、軍事機密ということは、ただ炉の型だけということではなくて、やはり軍艦にはそういうものがあるであろうということを含めて言ったわけでございます。炉の型が同じであったらそれを明示してもいいじゃないかというおっしゃり方に対しては、お答えのいたしようもございません。そういうものを込めて、私の立場においては、安全性が十分に確保されたいということにおいて、外務省を通じての要求をいたしておるわけでございますので、そのようにお含みいただきたいと思います。
  85. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私に答えているということよりも、一般の国民、非常に不安を感じておる一般の国民、特に寄港が予定されておる地方の住民に対して御説明をするという立場を大臣はおとりになるべきだと思う。今のようなお答えでは、私自身はもちろんのこと、一般国民も納得できませんですよ。別に軍艦のよその部分についてあなたが確かめる必要はないはずです。当面安全か危険かという論議は原子炉に集中しているわけですから。どういう原子炉を積んでいるかということを知ることによって、危険か安全かという判断は、おのずからあなたの部下の有能な人たちが判断するでしょう。その判断の資料を何とかしてとってやるのが大臣の責務です。これは科学に強いとか弱いとかいう問題ではないはずです。あなたは予算をとることには自信があるとおっしゃったが、それ同様に自信を持ってやらなければならない仕事だと私は思うのです。少なくとも、この原子炉の構造についてしっかりした情報を持たしてくれ、そうしなければ自分としては責任のある説明はできない、安全だという裏づけはできない、こういうしっかりした信念にささえられておらなければいけない。今重大な段階に私はあると思う。原子炉そのものがサバンナ号に積んでいるのと同じだ、日本で今からつくろうとしておる原子力商船に積もうとしておるものと同じだと言わんばかりの答弁を事務当局がしたんですが、もしそうだとするならば、秘密はないじゃありませんか。ほかのところまで教えてくれということをあなたの立場で言う必要はありませんよ。原子炉の構造について、どういうものか一つ説明をしてくれ、その程度のことは、もうわれわれ知っているのだから、われわれも原子力商船をつくろうという段階まで来ているんだから、別に秘密じゃないと思います、そういう立場をおとりになるベきじゃないかと申し上げている。軍事機密はほかの部分にあるかもしれないけれども、原子炉についてはそれならばないじゃありませんか。
  86. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 安全性について十分納得がいきたいということにおいて交渉をしておる過程でございますから、返事が参りましたその上において、それをもとといたしまして、この程度の検討でいいかどうか、またそれによって重ねてこの点を照会しなければならないというようなことをいたしたいと思っております。まだその点についての十分の回答を持っておらないわけでございますので、この機会にそれをもってとやかく言ってみても始まらないのじゃないか、私はそう考えております。
  87. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんなことはないでしょう。もうアメリカの回答は来ておるじゃありませんか。これは三月七日の朝日新聞ですが、米側の回答にちゃんと書いてありますよ。「広範囲にわたって調査済みであり、これ以上の調査をする必要はない。」、それから、外務大臣が再三言っておる、「米原子力潜水艦は、多数の国にひんぱんに入港しているが、寄港地で海水が汚染した例はない。」、こういう回答が来ているじゃありませんか。もうこれであきらめておるのですか。
  88. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 その回答になお不審の点がございますし、満足ができない点がございますので、重ねてその点について照会をしていただく検討をいたしておるわけでございます。
  89. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ、この安全保障について、日本側はどういう質問をしたのですか。これに対するアメリカの回答も含めて、一つ御説明を願いたいと思います。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 専門家に御検討いただいて、なおコンファームすベきものだという項目について今照会中でございまして、全部がそろいまして検討が終われば、国民に申し上げなければならぬと思っておるところで、今なおそういう過程でございます。
  91. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 科学技術庁として、こういう点についての疑問をただしてもらいたいという要望がなされたと思うのですが、その点については、科学技術庁立場としてお答え願えませんか。
  92. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 科学技術庁が直接に交渉いたしておりませんので、外務省を通じてすることでございますので、外務省が発表できないことは私どもとしてもいたしかねます。
  93. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 こういう報道が出て、いよいよ国民の不安は高まるばかりですよ。それに対して積極的に説明をしていこうという姿勢はないじゃありませんか。ということは、今のところ、安全性について自信がないということになるわけですか、現在までにおけるアメリカの説明では。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 問題は、先ほど冒頭に申し上げましたように、国民に御安心いただかなければいかぬということが私どもの主眼でございますので、鋭意そういう準備をいたしておるわけでございます。で、検討が終わりますれば、国民に広くお知らせするというようにするのは当然のことと思っております。
  95. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この報道によりますと、――報道によらなくても、さっきから大臣はこのアメリカの回答を盛んに引用されておるわけです。米原子力潜水艦は多数の国にひんぱんに入港しているが、寄港地で海水が汚染した例はない、事故を起こした例もない、そういうことを盛んに言っておられますけれども、これは事実に反しておるじゃありませんか。私どもの方で調べたところによりますと、これは幸いに立教の豊田教授が整理をして下さっておりますから、それをそのまま、国民に知っていただくという意味で、私は一つ一つ申し上げてみたいと思うのですが、再三にわたって事故を起こしておるじゃありませんか。たとえば、昭和三十四年八月十五日の産経新聞の報道ですが、これはUPIです。「四月中に米東部メイン沖で演習中、ノーチラス号冷却水パイプが破れ、機関室に浸水。深度百三十メートル。」、これはアメリカ海軍の発表。昭和三十四年十月七日、毎日新聞の報道ですが、これはUPIです。「米海軍の新原子力潜水艦シー・ドラゴン号が試運転中海中で鯨と衝突、スクリューとシャフトを破損した。同艦には米原子力船の専門家リコーバー少将も乗っていた。」、昭和三十四年十月二十一日、毎日新聞、これはAPです。「原子力潜水艦ノーチラスの艦体検査中、艦内の配線に故意と思われる破損個所が多数発見された。海軍は調査を進めるとともに連邦検察局に報告した。米海軍ポーツマス基地司令官代理ジョンソン大佐発表。」、昭和三十四年十一月二日、朝日新聞、これはロイター共同です。「原子力潜水艦トライトン号に三十日夜爆発と火災が起こり、一部を破損した。水兵四名がひどいやけどを負ったが、放射能は漏れなかった。原因は推進装置の蒸気部分のバルブを動かす高圧圧縮空気管が破れ、付属機関部を破損し、管から漏れた油に引火したもの。米政府原子力委員会発表。」、昭和三十五年六月十五日、読売新聞、これはAPです。「真珠湾に停泊していたサーゴ号突然火を発し、潜水させることにより、一時間後に鎮火。米海軍当局は、損害の詳細を発表していないが、同艦は核弾頭を積んでいたと述べている。」、昭和三十六年四月三十日、毎日新聞、これはAPです。「通常航海を終えて同日ドック入りをしたセオドア・ルーズベルト号から放射能を検出した。放射能は危険を伴うほど強くないが、放射能を除去する間、同艦へ立ち入りは禁止された。放射能がどうして漏れたかは明らかにされなかった。米海軍省発表。」、それから、昨年の五月十一日、毎日新聞、これはAPです。「同日サンフランシスコ沖でパーミット号がマトソン会社の汽船ハワイアン・シティズン号と衝突し浮上したが、さしあたって危険はない。米海軍省発表。」、われわれが把握しているだけでもこの程度の情報はありますよ。アメリカが言っているのは、よその国に行ったときに事故はなかったのだ、そう言っているんだ。そんな逃げ口上は言えないはずです。アメリカの本土もしくはその周辺においてのみ事故が起きて、よそに行ったときには事故がなかった、こういうことなんでしょうか。これだけの事例があっても、はなかった、安全だ、安心せい、構造物についての知識は必要ない、おれらの言うことを信用せい、そんなことを言ったって、信用できないじゃありませんか。こういった事故については、もちろん外務省当局としても把握しておるわけですね。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 承知いたしております。しかし、原子炉の事故ではなかったということは伺っております。それから、そういう発表を公明にやるという態度はりっぱだと思います。今近藤長官も言われましたように、人命を最も尊重する国でございますし、公明にあったことをあったこととして発表し、それに応じた予防措置を次々と開発していっているわけでございますので、私は、この安全問題につきましてアメリカ政府の言明という点に信頼が持てると思っております。
  97. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 発表しているのは感心だとおっしゃるけれども、肝心などの程度の被害があったかということは発表していないのです。日本の大本営発表と同じですよ。空襲はあった、事故はなかった、――ほんとうに事故がなかったのか、そういうようなことについては把握してないでしょう。発表もしておりません。アメリカの言うことならば何でも信用するというような、そういう態度では、国民の不安を解消することはできないですよ。事故はなかったというけれども、われわれの知る限り、これだけ事故はあるじゃないですか。もっとあるはずだ。そういうものをさらに追及して、そうして真相を明らかにしていく態度がなければ、向こうの言い分に基づいて百パーセント安全保障なんということは言えないじゃないですか。先ほどもちょっと申し上げたように、この軍用原子炉というものは非常に無理がいっているということは、原子物理学者が盛んに誓いたり、あるいは国会の中で言ったりしているのです。私どものように科学に弱い者はよくわかりませんけれども、一、二例をあげてみますと、軍用原子炉は燃料交換の回数を最低限度にとどめるために、安全性を犠牲にして炉心寿命を延長するよう設計されている、こういうことも言われております。また、原子力潜水艦は航続距離を延ばすため、大量の核燃料を積み、しかも炉の暴走を防ぐ制御棒の数を減らしている、これは基本的には陸上の原子炉や原子力商船の炉に比べ安全性が低いことを意味している、――今申し上げたのは、この間の衆議院の科学技術特別委員会における立教の服部助教授の説明です。こういった説明が科学者の間で盛んになされておるということ、これに対してあなたたちは積極的に反論する何らの根拠がないじゃありませんか。構造も知らない。設計書も見たことがない。ただアメリカの安全だ安全だというお題目に歩調を合わせて、一緒に安全だ安全だとお題目を唱えているだけだ。そんな態度では安全保障ということにはなりませんよ。  それで、安全保障書というものは取りつけるおつもりなんですか、大臣。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 巨大な予算と多数の頭脳を傾けて原子力の開発をやり、そしてその安全の問題につきましても周到な努力をいたしておると思います。従って、私は、アメリカ政府の安全に対する保障、そういう点について信頼を持ちます。ただ、私どもといたしましては、なおそれでも念のために、先方からの回答に対しまして、確かめるべきものは確かめておかなければならぬということで今やっておるわけでございます。そういうことでアメリカを信頼しておって、安全の保障が保たれるか、国民の不安が解消されるかという御質問でございますが、私は、日米間に不信があったりしたらなお大へんだと思うのでございまして、国民の心配はそういうところに本質的にあるわけでございまして、先方が懸命に努力をしておりますことは尊重せなければなりませんが、それでもなお日本政府として確かめておかなければならぬことは最大限度確かめるべく努力いたしておるわけでございます。
  99. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 これも明確なお答えがないわけですが、安全保障書と私は申し上げましたが、厳密に私も専門家でないものですから、わからないのですが、安全評価書、運転基準書、そういうものを提出することは、国際的にも義務づけていく方向にあるわけでしょう。少なくとも、構造の知識を得るということと、安全評価書、運転基準書の提出を求めるということは、最も基本的な原則でなくてはならぬと私どもは聞いているわけなんです。なぜかといえば、これも専門家の知識の受け売りですけれども、通常の放射性廃棄物の海中投棄でも、あるいは海難その他による最大想定事故の発生の場合でも、原子炉とその周囲の構造物についてある程度の知識がなければ対策の立てようがない、また、炉心の分裂生成物量や廃棄物の性質は、その原子炉の運転経歴に左右される、こういうことが専門家から述べられているわけです。だから、先ほどから言っているように、最低限、原子炉とその周囲の構造物についての知識を得るということ、これが安全保障の第一原則。もう一つは、今申し上げた安全評価書と運転基準書を提出させるということ。この点については、昭和三十五年六月に、ロンドンで開かれた海上人命安全国際条約の改正会議で、新たに原子力船に関する条項が付加された際、原子力船が他国に寄港する場合は、その相手国が事前に十分安全を審査できるよう、安全評価書及び運転基準書を提出することを義務づける制度を取り入れておる、こういうような報道がなされております。これが最小限度の原則でなくてはならぬと私は思う。この条約は確かに発効はしておりません。また、軍艦を含む点でことに米ソ両国が反対をしておる。そういうことも私どもは知っておりますが、少なくとも日本側としては賛成のはずです。国際会議に臨んでは、その線に沿って動いておられるはずです。もしアメリカとの間においてその原則をくずすというようなことになったら、国際会議における発言権もこの点について弱まるのではないですか。  もう一度お尋ねしますが、この基本的な原則となりつつある安全評価書、運転基準書の提出はお求めになるつもりですか。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、安全保障をどう確保するかという点につきましては、アメリカ自体が大へんな問題でございまして、それに対する科学的な用意というものは、大へんな要員と国帑を傾けてやっておられるわけでございまして、私は、原子力関係の科学者が提起されるようなすべての問題にきつましては、すでに先方において十分の検討が行なわれておると思います。従って、アメリカ側で安全を保障いたしますということに対しては、私はまず信頼をするわけでございますが、先ほど申しましたように、それでも日本政府として現在の科学水準において疑問と思われる点は、最大限度この際これを確かめておくことがわれわれの責任だと思うわけでございまして、国内で各方面のすぐれた頭脳に判断をしていただきまして、問題点というものを一々先方紹介をいたしておるということでございまして、どういう方法でやるかということにつきましては、そういう方々の御検討に信頼して紹介をし、先方の返答を得て、この問題の決着をつけたいと思っておるわけでございまして、そういう検討が終わったところで、私どもといたしましては、当初の目的である国民に御安心がいただけるという方法においてこの問題の決着をつけなければならぬというように配慮をいたしておるわけでございますので、そういう方法は政府側におまかせをいただきたいと思います。
  101. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 おまかせするほどの自信が持てないわけですよ、国民としても。特に国際会議でそのような大原則を打ち立てている。日本側もそれに同調しておりながら、アメリカから直接言われると、全くふらふら腰、そういうふうなことでどうして安心がいきますか。  なお、この点についていろいろお尋ねしたい事項があるわけですが、これはあとで科学技術庁長官の方にお尋ねするとして、外務大臣がおられる際に、どうしてもいま一つ確かめておかなければならない問題は、損害補償の問題です。  私どもは、こういう危険なものを日本寄港させるというようなことについては絶対に承認できませんから、損害補償なんという問題は実は論議の対象にもしたくないわけですけれども、そうも言っておれない。この損害補償の問題に関連して、最近の報道によりますと、アメリカはあくまでも無過失責任主義をとらない立場を主張してくる、やはり日本政府がこれに属するという形が出るのじゃないかというふうに報道されております。これは非常に重大な問題です。どう考えても、アメリカの潜水艦に責任がなかったからといって迷惑のかけっぱなしなどということは、許されていいはずがありません。この点についても、日本政府は従来国際会議において無過失責任主義をとってきたはずです。今度に関して、この根本の柱をこれまた取り払うというお考えがあるのかどうか、この点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題につきましては、先週末回答がありましたので、ただいま関係各省の専門家に検討していただいております。まだ私のところにはっきりした検討の結果が出ておりませんが、無過失責任云々の問題につきましては、現在の地位協定に基づきまして、人命に対する損傷につきましては無過失責任があるというように思えますが、物的な問題につきましては、今御指摘のように、もし過失賠償論を先方が貫いていく場合には問題があると思うのでございます。その間隙をどのようにして埋めるかということは、当然私どもの問題になるわけでございまして、何かその間隙を埋めておかないと安心がいかないのじゃないかという考え方で、今検討しておる段階です。
  103. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 これも非常に重要な問題なんです。何度も申し上げるように、原子力船運航者責任条約がつくられた際にも、日本政府として、あくまで軍艦を含めてこの原則を生かすべきだという主張をしたはずです。また、国内においても、原子力損害の補償に関する法律もその原則に貫かれておるはずです。そういう基本原則を今度の寄港問題でくずすというようなことになったら、非常に影響が大きいですよ。今アメリカが言っているように、地位協定補償でやるのだとか、公船法によってやるのだというふうなことでは、基本原則は取っ払われるじゃありませんか。私は、この思想は最後まで貫かなければならないと考えておるわけですが、これは決意として述べられる問題だと思うんですけれども、どうなんです。これを曲げてまでアメリカ寄港を認めなければならない事情があるのですか。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 今申しましたように、現在の体制の中で救い得るものはどういうものか、それから、カバーされないものは何かという点を検討いたしておるわけでございます。その間隙は何らかの方法で埋めておかないといかぬという考えです。
  105. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 非常に抽象的なお答えなんですが、一たび事故が起こったときの損害は非常に大きいんですよ。ちょっとやそっとの損害とは考えられないと思う。だからこそ、この条約がつくられたときも、十五億ポンドですかフランですか、約一億ドルというワクの中で考慮されておった。一たび事故が起こったときの損害の大きさは想像できるんです。それを、地位協定か公船法とかいうことじゃ、全然救済されないじゃありませんか。しかも、過失相殺主義がとられている。地位協定では二千五百ドルまでしか見てもらえない。公船法になりますと、これも額としては知れておりますし、手続がまた非常にめんどうだ。損害は受けっばなしという事態すら想像される。しかも、責任があるとかないとかいうことは、こんなものを持ってきたところに責任があるんです。どっちの船がぶつけたかということなんか問題じゃない。こんなへんてこな迷惑なものを日本に持ってきたから、事故が起きるので、持ってきたことに私は責任を感じてもらいたい。日本としても非常に犠牲を払って認めるのだから、これくらいの主張は最後まで貫いてやれると思う。何か糊塗的な手段で埋め合わせがつくというような問題ではないと思う。あくまでもこの思想は最後まで貫いていただきたい。それで、来なければ来ないで幸いじゃありませんか。アメリカ側が言っておるように、単に兵員の休養あるいは水の補給くらいが目的だなんという、これはうそっぱちですが、その程度のものならば、こういう大きな犠牲を払ってまで寄港を認める必要はありません。慰安設備がどんなに日本がいいのか知りませんが、そういうところでほめてもらいたくありませんよ。  お約束の時間ですから、外務大臣はどうぞ。  先ほどの話に戻って結論をつけたいと思いますが、外国にも何回も寄港した、多数の国にひんぱんに入港したが、寄港地で海水が汚染した例はないということをアメリカはぬけぬけと言っておるわけですが、海水が汚染されないという自信がおありなのかどうか、この点についてお尋ねしておきたいと思う。これに関連してもいろいろな説明が科学者から発表されております。私たちしろうとがそういう説明を聞くと、非常に大きな不安を感ずるわけです。たとえば、先ほど引用しました服部助教授の説明によると、原子力潜水艦にたくわえられる死の灰は五キロから十キロこえると思われる、広島の原爆によってまき散らされた死の灰の量は一キロ前後であり、もし大きな事故が起こり、艦内の死の灰が漏れた場合、被害はかなり大きなものになろう、米国では潜水艦の寄港地を指定し、事故の際、艦を外洋に引航する舟の準備などを整えている、原子力潜水艦入港することは、出力五ないし十キロワットの日本最大の原子炉が国内にできることを意味するから、政府は安全保障を講じてほしい、こういうことを言っておられる。また、東大の檜山教授は、原子力潜水艦の死の灰は艦内にためられるが、原子炉の冷却水は放射能を帯びたままたれ流しにされると推定される、この放射能が魚の体内に濃縮されてたまっている、冷却水をまとめて捨てたと思われる海域では、海水中の放射能が異常に高く、その周辺の魚の中には人体許容量の数百倍という放射能を持っているものが発見されている、こういうようにも述べられておる。現に、檜山教授は、東京湾の近くで異常に放射能を帯びたプランクトンですか、魚介類を発見されたと前に報道されたのを私記憶いたしております。ところが、アメリカ側の説明によると、こういったプランクトンあるいは魚介類による、体内に入って濃縮されるというような計算は、全然無視されているように伝えられておるわけです。このようないろいろなことが説明されるにつけても、ただ事故を起こさないで入ってきただけでも海水は汚染されるのではないだろうかという不安を持つのは、これは当然です。これについても、絶対そういう心配はないという自信を科学技術庁としてお持ちになっておられますか。
  106. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 その点につきましては、ただいま御発言のように、私どもといたしましても非常に重要に考えておるわけでございまして、従いまして、重ねて照会をいたしておるようなわけでございます。  なお、専門的のことは政府委員の方からお答えをいたします。
  107. 江上龍彦

    ○江上説明員 ただいま長官からお答え申し上げた通りでございます。従って、今先生が言われたようなことも含めまして、特に固体及び液体の廃棄物の処理の方法、こういったものを非常に重要視しまして、そういう点もアメリカ側に今照会中でございます。従って、海水が汚染されるかどうかという問題は、そういった廃棄物をどういうふうに処理していくかということと密接にからみ合う、この点について、われわれとしては、現在アメリカ側の実情を確かめておる段階でございます。
  108. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この点についても、従来とも日本政府として深甚の考慮が払われておることを知っております。たとえば廃棄物については、日本原子力施設で出てくる廃棄物は、許容量濃度以下に希釈したあとでなければ、海中に放棄することを許されておらない。ところが、アメリカの方ではそうじゃない。沿岸十二マイル以内の領域において、アメリカ原子力潜水艦が海中に投棄する放射性廃液の濃度は、職業として放射線業務に従事する従事員の飲料に供する水の最大許容濃度の百倍とされている。この程度のものを認めている。同型の点についても、わが国では、固体の廃棄物はドラムカンにコンクリート詰めにするなどして、あとで放射性物質が海中に漏れないようにした上で、海中放棄を許している。ところが、向こうでは、固体の形で冷却水浄化等のイオン交換樹脂も投棄されるが、これも放射能の高い廃棄物の一つであり、沿岸十二マイル以内の海洋で海中に直接捨てられる。全然手だてが講ぜられていないように聞いておるのです。アメリカでそうやるのを、わざわざ日本に来て丁寧に日本の国内法に準拠してやるとも考えられません。もしアメリカ式でいいというならば、日本の国内法が必要以上に慎重だということになるのですか。私は、そうではなしに、科学者の知恵をしぼって、ぎりぎりの安全度というものをはかって基準ができておると思う。私は、こういう点についても、アメリカのことだからといって野放図にやられないように、深甚の考慮が払われなくちゃならない、このように考えます。とにかくアメリカのパーク作戦部長、あるいはテラー博士あるいはまたリコーバー中将、こういったそれぞれの権威者が絶えず言っているように、原子力潜水艦が人口の多い港に立ち得ること自体不都合なんです。これは禁止すべきだと思う。海軍の作戦部長自体言っておるではありませんか。また、原子力潜水艦の生みの親といわれておるリコーバー中将も言っておるじゃありませんか。こういう大原則は、われわれの上にこそ適用してもらいたいと思う。佐世保だって横須賀だって非常に人口が多い都市です。一たび事故が起きたら、港は完全に半永久的に使えなくなるというふうにさえ言われております。そういう事態になれば、もちろん地上にも影響がありましょう。こういった心配を完全に取り除く自信もないままに、科学技術庁までがへなへな腰にならないように私は強く申し上げて、本日のところ質問を終わりたいと思います。
  109. 永山忠則

    永山委員長 西村関一君。
  110. 西村関一

    ○西村(関)委員 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  この法案のねらっておる一つには、防災科学技術に関するところの総合的な中枢機関を設置しようというところにあるようでございますが、防災科学技術行政につきまして、大臣の基本的なお考えをまずお伺いいたしたいと思います。
  111. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 災害対策の重要性、また緊急性ということにつきましては、各方面からしばしば非常に注目をされておるのでございます。しかも、今日までにも総合的に各省庁間において、いろいろと防災の実をあげるような努力をされて参りましたけれども、この機会に抜本的に十二分の措置を講じたい、毎年繰り返し繰り返し起きますところの雪害あるいは風水害というものに対して、何らかの手を打たなければならないという皆さんの御要望にこたえまして、科学技術庁が、一つの防災の中枢機関として各省庁間の調整連絡の上に立って、機動的な効果の上がる防災の実を上げたいという意味で、このたび防災科学技術センターの設置を思いついたわけでございます。
  112. 西村関一

    ○西村(関)委員 今年は未曾有の雪害といわれておりますが、豪雪対策、この被害に対するところの総合的な対策につきまして、科学技術庁としてはどのような構想をお持ちになっておいでになりますか。
  113. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 今回の豪雪につきましての措置といたしまして、実際的にやって参りましたことにつきましては、具体的なことでございますので、政府委員の方から答弁をさせたいと思います。
  114. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 北陸地方の豪雪に際しましては、御承知通り、非常対策本部の方で緊急対策をやっておるわけでございます。科学技術庁といたしましては、そういう非常対策ということと関連はございますが、この際、豪雪の降りましたのを機会に、雪害防止という防災科学技術の進展をはかる、こういう意味で、特別研究調整費のうちから約二千八百万、第二回目といたしまして六百万ほど追加を出しまして、飛行機による豪雪の積雪量の実態把握、それによりまして、融雪洪水もしくは融雪地すべり、その他の災害予知ということをやります。それからまた、融雪なだれの予知をやりまして、なだれ防止の措置を講ずる。そのほか、畑その他の耕地におきます融雪の大規模実験その他をやりまして、豪雪に対します科学技術の進展をばかりまして、次に雪が降りましたときに防災の効果があるようにという技術の研究を進めて参るということでやっております。
  115. 西村関一

    ○西村(関)委員 わが国の防災科学技術並びに防災行政については、非常に立ちおくれておるという感がするのでありますが、その点につきまして、今回設置法の一部改正が出されておるこの際、わが国の防災科学技術の研究がどの程度にまで進んでおるか、この現状につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  116. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 現状につきましては、先ほど長官から御説明申し上げたように、総合的な実際にやります研究機関がございませんで、各行政省庁がそのおのおのの行政目的に従いまして防災の研究を進めておるという状況にございます。従いまして、たとえば建設省の土木研究所、運輸省の技術研究所、そういったふうに大体十余の研究所がございます。自然災害が非常に巨額に上るにもかかわりませず、この防災に関します試験研究予算は非常に乏しいものでございまして、三十六年度が一億四千万、三十七年度が一億五千万というふうなものでございます。三十八年度は比較的増加いたしまして、二億六千万程度の予算の御審議をただいま願っておるわけでございますが、はなはだ貧弱なものでございますので、この際、根本的な解決の一助といたしまして、防災科学技術センターを新設したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  117. 西村関一

    ○西村(関)委員 各省ごとに防災科学の研究機関を持っておるということでございまして、それも予算的には非常に貧弱なものである。世界有数の自然災害国といわれており、ほとんど毎年のように台風、風水害の被害に見舞われておるわが国といたしましては、きわめて貧弱な、しかも各省ごとに設けられておる現状でございまして、これを今度は総合的にセンターを設けてやろう、こういう科学技術庁のお考えのようでありますが、それにつきましても、三十八年度におきましては具体的にどういうようなことをさしずめ重点的に行なっていこうというお考えでございますか。
  118. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 防災科学技術センターの性格が、ただいま申し上げました十余にわたります各省庁の研究機関の総合的な性格であるという点につきまして具体的に申し上げます。  まず、大型の共用の設備を持たせたいと考えております。それから各省庁に重複して置くことが不適当なものを共用の設備として持たせたいと考えておりまして、来年度におきましては、まず川を取り上げたい。これは逐次雪を取り上げ、その他を取り上げていくつもりでございますが、来年度のただいまの計画といたしましては、川を電気的に再現いたしまする河川のシミュレーターを設備したいと考えておりますが、その理由といたしましては、御承知通りに、洪水が非常に多いものでございますので、川のいろいろの状況を電気的にスタディいたしまして、つまり、オペレーション・リサーチをいたしましてまず災害予知をしよう、そういう趣旨で、川のシュミレーターの予算を来年度出しております。それから次に、総合研究機関の性格というものを与えますために、わが国では初めての流動研究員制度というものを設けてみたいと考えまして、ここにわずかでございますが、三名の定員を与えております。これは御承知通り、防災科学あるいは技術の範囲が非常に広範でございます。そこで、一つテーマでは非常に必要な人間が、次のテーマではそれほど必要でないというふうなことがございます。そうなりますと、センターでそういう人間を常時備えておきまして、たとえばある省庁のあるテーマに対して派遣いたします。そのテーマが終わりますと、センターに帰ってきてもらいまして、そして次の省庁の別のテーマにその人を派遣する、そういうふうなことによりまして研究能率の増進をはかりたい、こういう意味で流動研究員制度というものを、これはまだ試みの段階でございますが、とりあえず三名程度ここに持って参りたいと考えております。  次に、やはり中核機関的存在の性格を与えるための一つといたしまして、防災のあらゆる資料を収集・整備いたしまして、各省庁の研究もしくはセンター自身の研究をやって参りたい、そう考えております。  以上総合いたしまして、来年度といたしましては、この研究所として二千八百万程度の予算を要求しております。そのほかに、先ほどちょっと申し上げました特別研究調整費の方から、防災に三千万円回すという予定でございます。
  119. 西村関一

    ○西村(関)委員 具体的な目標の一つとして川を取り上げるということでございますが、全国の数ある河川の中で、どの河川に重点を置いてのオペレーションですか、今言われた研究は、どこの洪水の防災のための研究をやるというお答えですか。今の政府委員の御答弁に関連をいたしまして、その点は具体的にどういうふうなことを考えておられますか。
  120. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 ただいま名前をあげてこれをやるというところまで実は研究が進んでおりませんが、どの川をやるかとか、その他につきましては、センターに置きまする運営委員会もしくは関係の権威ある人たちの知識を集約いたしまして、そして日本の代表的な河川をどこか一つ選びまして、それをやればなるべく応用範囲がきくというふうな河川を選びたい。つまり、たとえばその河川の上流、中流、下流の状況、またそこに配置されておる国土開発のダムあるいは電力のダム、そこらの状況が日本の代表的河川とするに足るというふうなものを選びまして、そうしてオペレーション・リサーチを進めて参りたい、そういうふうに考えております。
  121. 西村関一

    ○西村(関)委員 そのことは非常にけっこうなことだと私も考えるのですが、日本の河川をながめてみますると、東北地方のような、原始河川といいますか、ほとんどもう原始の姿のまま、堤防もない状態のところもありますし、護岸工事などが相当進んでいる河川もあり、それから上流、中流、下流という工合によってまた違ってくる。それらの一切のことを含めて、センターに設置されるところの専門家の意見によってオペレーション・リサーチをやるのだ、こういうことのようでございますが、大体それらのことを含めまして、このセンターに技術者を何名くらい置いておくか、あるいは今の流動研究員制度と申しますか、そういう人は三名と言われましたが、その他の常駐の科学者、あるいはセンターの構成の人員とか、そういうものはどの程度のことを考えておられますか。
  122. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 初年度は、先ほど予算の額を申し上げましたように、はなはだ残念ながらまだ小さいのでございまして、一応二十一名で、そして研究室の数として室を三つ、それを総合します部、それからその部の中にもう一つ調査室、そういうものを持つ程度のはなはだ貧弱なものでございますが、これを計画的に大きく発展させて参りたい、そういうふうに考えております。
  123. 西村関一

    ○西村(関)委員 当初のことでありますから、予算の関係上、そう十全を期することはむずかしいと思いますけれども、そのくらいの人員ではとうてい防災の効果を期することばむずかしいと思うのです。どうしても今まであるところの国の防災研究機関との総合的な、立体的な研究の成果を期するということを待つ面が、現在の段階においては非常に大きなウエートを占めると思うのでございます。私の見るところでは、各省間の横の連絡も十分についてないし、またおのおのの省における試験研究機関、防災研究を含むところの試験研究機関におきましても、必ずしも一体的な、効果的な試験研究ができているというふうにも思えないのであります。たとえば九州の事例だけをとってみましても、九州の北の方には水害がある、ところが南の方には旱害がある、畑地がほとんど壊滅の状態になっておる。こういうようなことなども、九州を一本として、農林省の研究所が防災的な見地から試験研究をやって災害を未然に防ぐ、あるいはその災害の被害状態を軽減する、あるいは被害を復旧するというようなことについての総合的な施策が十分にとられていない。まして、各省間の緊密な連絡提携によるところの成果が期されていない。世界有数の災害国であるところのわが国におきまして、そういう状態ではまことに心細いということを日ごろから考えておるのでありますが、そういう点について、今後センターを設けてやろうという長官の心がまえには、私は非常な賛意を表するものでございますが、それだけに非常な困難があると思うのでございまして、そういう点につきまして、大臣のお考えをもう一度お伺いをいたしておきたいと思います。
  124. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 防災センターと申しましょうか、防災研究所と申しましょうか、この構想は、すでに科学技術庁といたしましては数年来持ち続けて参ったわけでございます。と申しますことは、西村委員も仰せになりましたように、毎年々々繰り返される災害に対して、ただ手をこまねいているというような印象を与えるような処置しかできないということに対して、もっと科学的に取り組まなければならないという意図から、そういうことを構想されていたと思うのでございます。各省庁間の連絡事項というものは、なかなかうまい工合にはとれませんし、それぞれの行政機関に付設された研究所というものは、それぞれの役所の特殊な性格がございまして、その方面に対する研究は十分できたといたしましても、全般の問題としての総合的な処置、行動というものがむずかしかったということは、従来御承知通りでございます。今回これを少し高い立場に立って、各省庁間の御協力を得て国立防災科学技術センターがその機能を十分発揮していくということになりますまでには、なお幾多の年月がかかるのではないかと思うのでございますけれども、今回このセンターをつくることを期といたしまして、その省庁間の研究所が一緒に手を携えて機能を十分発揮し、科学的な処置ができ、国民の皆様方に対しても安心感を与え、災害の予測が十分にでき、それに対処できるというような方向に進めて参らなければならないと思います。当初の予算といたしましてはきわめて少のうございますけれども、むずかしい困難を克服しながら機能を発揮していこうという努力は、おそらく報いられるであろうということを期待いたしておるわけでございます。
  125. 西村関一

    ○西村(関)委員 ただいまの長官のお考えはまことにけっこうでございますが、そのようなお考えを実行いたしますためには、この国立防災科学技術センターの運営がスムーズにいかなければならぬと思います。どのような運営機構をお持ちになって、大臣の今言われたようなお考えを実行に移そうと計画をしておいでになりますか。
  126. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 防災センターは、各省庁の仕事に非常に関係がございます。そこで、運営は、行政の重複を避ける、ことに研究の重複を避けるというふうな点から、省庁のやるべき仕事をきめるものといたしまして、各省庁の研究機関の長を大体充てる予定にしております。その研究所の長からなる運営委員会というものをセンターに設けまして、そして、ただいま申し上げたような研究能率の向上をはかり、重複を避けるというふうに考えております。
  127. 西村関一

    ○西村(関)委員 今の、そのような各省庁からなる委員会を設けてやるという場合には、民間の専門家はその中にはお入れになるか、お入れにならないか、その点はどうなのですか。
  128. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 民間と申しましても、なかなか定義がむずかしいのでございますが、私の方といたしましては、権威ある方ならば、その方を排除する意思は毛頭持っておりません。ただ、先ほど御説明申し上げましたのは、各省庁との重複が非常に気になります。また、能率向上の面につきまして、各省庁とはぜひともダブらないようにしたいという点を強調いたしましたので、各行政機関に属する研究所の長からなると申し上げましたが、必要に応じまして、優秀な民間の学識経験者の御意見ももちろん参考にして参りたいと考えております。
  129. 西村関一

    ○西村(関)委員 先ほど、本センターの仕事の手始めとして、洪水災害の防止のためにオペレーション・リサーチをやる、そういう試みであるということでございましたが、今後、その他の災害について、洪水対策だけでなくて、どの範囲の防災をお考えになっておるか。本センターが対象とするところの災害の、具体的などの災害、どういう災害に対して防災の研究をやっていくというお考えですか。
  130. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 初年度に取り上げまするのを具体的に御説明申し上げますと、第一研究室におきましては、台風、高潮、洪水その他です。第二研究室におきましては、雪害その他、それから第三研究室におきましては、地すべり、山くずれ、地震等でございます。従いまして、逐次これを領域を広げて参りたいと思いますが、このセンターの取り扱いまする範囲といたしましては、自然災害というものにとりあえず限って参りたい、そう考えております。ただ、その場合に、災害の原因の中に、自然的な条件が大きく影響するようなもの、たとえて申しますと、スモッグのようなものは当然ここで取り上げて参りたい、そういうふうに考えておりますが、産業公害もしくは労働災害というふうな、純粋に人為的なものと考えられるのは、これを当分ここでは取り上げないというつもりでおります。
  131. 西村関一

    ○西村(関)委員 まず自然災害から取り上げていこうという御意図につきましては、よくわかりますけれども、人為的な災害、今お話のありましたような産業災害であるとか、労働災害であるとかいうような面につきましても――今、スモックだけは、これは気象に関係があるから取り上げようということのようでございますが、煤煙とか排気ガスとか等によるところの大気の汚染の問題、それと工場の排水並びに下水によるところの河川、海水の水質汚濁の問題というような点も、これはなかなか国民生活の上におきましても、また各種産業の伸展の面から申しましても、重大な関係がある問題であると思うのでございまして、当分の間はセンターの規模も小さいし、予算の制限もあるから、まず自然災害から取り上げていこうという御意図はわかりますけれども、少なくとも国立と名乗ってやります以上は、やはりすべての災害に対して配慮をしていって、将来はその予算もとり、人員も拡充して、自然災害、人為災害を含めて、わが国のすべての災害を排除していく、これを軽減し、なくしていく、あるいはまた災害に対するところの被害を回復していく、そういう気がまえがやはりなければならぬと思うのでございますが、その点につきまして大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  132. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 国立防災センターという名前からいたしまして、すでにこういう活字が新聞に現われただけでも、国民の皆さん方は非常な期待を寄せておられるようでございます。従いまして、初年度のこの貧弱な内容をもちまして国立防災センターと言えるのかどうかというような気持さえいたしておるようなわけでございまして、少なくともこの研究所ができたということにつきましては、西村委員が仰せになりましたように、まず手始めといたしまして自然災害を取り上げるといたしましても、国民生活に非常に関係の深い人為的な災害に対しましてもメスを加えていくのが、本来の使命ではないかという気持は十分いたしております。従いまして、この防災センターが出発をいたしまして、りっぱに機能が発揮できるようになりましたならば、自然その方面とも取り組んでいく機会が当然あってもいいのではないかと、そう考えておるわけでございます。
  133. 西村関一

    ○西村(関)委員 災害というものは、予期しないときにやってくるものでありまして、不断の備えが大事であることは申し上げるまでもございません。こういう国立の防災科学技術センターができるということは、もうすでにおそきに失しておると思うのでありまして、ちょうどいつも消防署のやぐらの上から、火事が起こらないように、起こったらすぐに措置が講ぜられるようにと見張りをしているように、この防災センターは絶えずそういう災害を防止していくという重大な任務を帯びておると思うのでございまして、今大臣の仰せになりましたように、このことが新聞の記事に出ただけでも、国民の信頼が集まってきた。それだけに責任がまた重大であると思うのでございます。ついきのうの例の江東区の異常出水のごときも、ああいうようなことが、どかんとどういうところに起こってこないともわからない。これはどんなに目を光らしておっても、そう簡単に防止できるものではございませんけれども、とにかく絶えずどこかで目を光らして研究をしている、災害の起こらないように見守っておるということが大事だと思うのでございますが、そういう点につきまして、今後一そうの御配慮と御努力を願いたいと存じます。  次に、水戸原子力事務所を設置したい、こういうことがこの法律案一つの内容でございますが、これはどういう理由で水戸に原子力事務所を設置しようというお考えをお持ちになったのでございますか。
  134. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 わが国におきまして一番大きい原子力施設の設置地域が茨城県の東海村にあることは、御承知通りでございますが、この周辺の原子力施設に対しまして検査をするとか、あるいは監督の業務を強化して能率的に行なうほか、周辺地域の放射線の監視を厳重にするというようないろいろな仕事をいたします上に、やはり近いところに事務所があることの方が適切な処置ができるというようなところから、これをつくりたいと考えたわけでございます。
  135. 西村関一

    ○西村(関)委員 この水戸原子力事務所は、どういう事務をおやりになるのか、その事務の所掌の範囲、そういうこともこの際伺っておきたいと思います。
  136. 江上龍彦

    ○江上説明員 水戸原子力事務所の所掌事務といたしましては、大きく分けて二つございまして、一つは、わが国の原子力センターでございます東海村周辺地区について、放射線の監視を厳重にいたすということでございます。それからもう一つは、原子力局として、そこにありますいろいろな施設に対して検査したり、あるいは監督したりという業務、この二つを水戸原子力事務所にやらせよう、こういうことでございます。従いまして、監視業務は事実上の行為としてモニター・カーを使いまして、常にあの辺の放射能の監視をいたすわけでございますが、検査等の法律に基づく業務は、ある範囲のものを、原子力局が従来直接やっておりました事務の一部をここへ分掌させまして、その範囲内においてはそこの所長に権限をまかして検査等を行なわせる、こういう考え方でございます。
  137. 西村関一

    ○西村(関)委員 先般、東海村の原子力施設の一部に火災があったということを承知いたしましたが、幸いにして放射能の甚大な被害を受けるというような事態に発展しなかったようでございます。この事故の原因、またこの火災の被害の状態、新聞等によって見ますと、人畜には被害がなかったということでございますが、どういう原因で火災が起こったか。これは将来も起こり得ることとしてみんなが心配しているところでありますから、この際、その点を明確にしておいていただきたい。
  138. 江上龍彦

    ○江上説明員 先般の事故の概要を申し上げますと、事故の発生の日時は、二月二十一日の十八時五十五分ごろでございます。事故発生の場所は、再処理試験室第十号室でございます。その事故発生の再処理試験室と申しますのは、半地下式二階建コンクリート、約百七十二坪の試験室でございます。十八時五十五分ごろ、爆発とともに火災が発生いたしました。受付が発見して、至急内部連絡をいたしまして、時を移さず所員がかけつけまして、火災の消火活動に当たりまして、約一時間後に鎮火いたしたわけでございます。  事故発生の原因につきましては、目下調査中でございますが、大体現在までにわかっておるデータで推測いたしますと、十号室にほかから移しかえました硝酸のドラムカンがございます。それともう一つ、TBTといいます溶剤、これは有機物でございますが、その溶剤のカンとを十号室に移しかえたわけでしございますが、その移しかえますときに、操作を誤りまして、TBTなりあるいはほかの有機物の一部が硝酸に混入したということのために、それがある時間がたちまして自然爆発した。硝酸だけ置いておいただけならば、化学的に見て、爆発する危険は全然ないわけでございますけれども、その際移しかえのときに、ドラムカンが似ておる、あるいは色も似ておるために、混入したということがあるいはあったのではないかというふうに考えられるわけでございます。従って、火災の事故としては、通常の化学工場における爆発事故のようなことでございまして、特に原子力による特殊的な事故ではなかったわけでございます。それから幸いにいたしまして、事故発生直後、モニターをいたしましたところ、放射能の異常も認められなかった、かように思っております。  なお、被害の状況といたしましては、窓ガラス等が破損いたしました。あるいは建屋の一部が破損いたしましたほか、そこにありました機械器具類が若干破損いたしました。この損害額の推定は、当時使ってないものもありますので、購入価格で見ました。購入価格で試算するのは、最大に見たわけでありますが、おおむね建屋と機械設備等を合わせまして、千五百万程度というふうに推定されております。なお、われわれが知りましてから、翌日さっそく水戸にありますモニタリング・カーが現場に急行いたしまして、現地における放射能をはかりましたところ、やはり放射能異常はなかったという報告が来ておりますから、放射能的な事故ということではなかったということは、われわれも確認いたしております。  なお、今後かかることが起こりませんように、われわれとしては、原子力研究所に対して、機械あるいは薬物、材料、こういったものの取り扱い等について厳重に注意いたしますとともに、万一の場合における防護体制等についても遺憾のないよう措置して参りたい、かように考える次第でございます。
  139. 西村関一

    ○西村(関)委員 今の事故が大事に至らなかったということば、不幸中の幸いであると思うのでございますが、しかし、その点を詳細に事故の原因を調べて、またその当時の状況等を検討せられて、再び事故の起こらないような万全の措置を講じていかれる、そういうことのためにも、今度の水戸に事務所を設置するということが必要になってくるということになりますけれども、あのときの事故の報告は、何かマイクロウェーブでやられたとかなんとか聞きますけれども、どういう方法で即刻報告があったものですか、また、その報告に基づいて処置の指令をどういうふうに出されたのですか、そういう点もはっきり一つ伺っておきたいと思います。
  140. 江上龍彦

    ○江上説明員 十八時五十五分ごろ、爆発事故を目撃いたしました東の門の警備員が、直ちに正門守衛所に事故の発生を連絡して、ほぼ同時に、事故現場に近い動力試験炉建設部員からもやはり通報があったそうでございます。通報を受けましたのは正門の警備詰所員でございますが、事務本館在室中の当時東海事務所長代理の菅田理事、それからその下の専務部長に連絡するとともに、原研内に規定しております非常事故措置規定あるいは非常連絡一覧表というので定められました現場責任者あるいは現場職員、それから放射能の関係もございますので、保健物理部員あるいは工務、安全衛生、庶務、構内の関係者等に、三台の電話で連絡いたしたわけでございます。その連絡の時間が全部完了いたしますのに約二十五分ということでございます。なお、理事長等には、すでに東京へ立たれたあとだったものですから、二十時に連絡ができたということで、時を移さず防護隊の出動となり、保健物理部員も出動して、現場における措置としては、まず機敏にとられたと思うのでありますが、われわれとしてやや遺憾に思いますことは、役所側に対する通報がおくれた。役所へ電話で連絡がありましたのが朝の九時半ごろでございまして、われわれとしては、さっそく係官を現場へ派遣いたしますとともに、一方水戸へ連絡をとりまして、モニタリング・カーを急行させた、そして係官に事故の原因等も一緒に究明させたという実情でございまして、特に役所側との連絡のおそい点に関しましては、原子力研究所側としては、原子力事故ではないということで、割に軽く見ておくらしたと思いますけれども、今後かかることのないように、厳重注意をいたしておる次第でございます。
  141. 西村関一

    ○西村(関)委員 その点はよくわかりましたが、幸いにして、その付近に可燃物がなかったということと、それから人がいなかったということなどで、被害が少なくて済んだ、また人体に及ぼす被害もなくて済んだということでございますが、そういうような場合に、原子力によるところの被害ではないといたしましても、そういうような事故が起こって、非常に大きな爆発の音がして火災になったということでございますが、それらの点についての万全の措置、これを一つの機会に、原子炉のあるところには万全の措置がざらに必要ではないかと思いますし、それからなお、その事故が、取り扱いの、つまり、担当者の落度であったのであるか、機械器具の欠陥からきておるのであるか、そのどちらであるか、検討を加えられたと思いますが、いかがでございましょう。
  142. 江上龍彦

    ○江上説明員 ただいままでの検討の結果の推論では、機械の故障あるいは操作の誤り等によるものでなくて、取り扱い者がその薬物、硝酸とかTBTの取り扱いを誤ったという可能性の力が強い、かように考えております。
  143. 西村関一

    ○西村(関)委員 やはり人間の能力というものには限りがございますから、いろいろなからだのコンディションの変化によって、思いがけない落度を犯すことも、これはあり得ると思います。そういうことも一応考慮の中に入れて、万全の措置を講じていかなければならないとともに、特に、放射能の被害をいつ受けるかわからないという心配をしながら、労働に従事しているところの、特に責任のある仕事に当たっておるところの施設の従業員に対して、特別な安全が保障される、また事故のあった場合、災害を受けた場合の補償が取りつけられるということが必要だと思うのでありますが、そういう点につきまして、本庁としてばどういうふうな配慮をしてこられましたか、また、今後どういう配慮をしようとなさっていらっしゃるか、従業員に対する安全保障の問題、それから事故を受けた場合の、そのときの特別な補償の問題、そういう点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  144. 江上龍彦

    ○江上説明員 従業員の保障の問題につきましては、まず第一に、従業員が被曝等の事故にあわない、つまり、従業員に災害を及ぼさないための体制を整えることが第一であると思いまして、特に原子炉の安全性、そのための防護施設、こういったものを十分慎重の上にも慎重に検討した上で、原子炉の設置の認可をするとか、あるいはその後の指導をする、こういうことをやっておるわけでございます。  なお、万一の場合の被曝等の事故にあたりまして、従業員の補償をいかにするか、この問題につきましては、現在原子力委員会に従業員災害補償専門部会というものを設けまして、日本の最高権威者を委員にお願いいたしましたその場におきまして、現在の労災保険法でどこまでカバーできるか、カバーできない部分はどうするか、あるいは原子力による障害であるという認定の基準をどうするか、あるいは認定のための機構をどうするか、こういったいろいろな問題を含めまして、従業員災害補償問題について鋭意検討を進めておりますので、その結論を待ちまして、制度として措置すべき点は措置して参りたい、かように考えております。  なお、従業員災害の問題とやや次元ば異なりますけれども、そういった原子炉等、万一の場合には第三者に非常に大きな影響を与えるというものを扱う人たち、つまり、そういう社会的責任がいわば加重されていて、そのためには、特別の損害賠償法等も国家が定めている、こういった職種にある人たちについては、そういった特殊な作業に従事する責任にかんがみまして、一種の特殊作業手当と申しますか、そういったようなものを支給するような方向に持っていきたいと思いまして、現在関係当局と折衝しておるような段階でございます。
  145. 西村関一

    ○西村(関)委員 日本原子力研究所と、それから日本原子力研究所労働組合との間に交換されましたところの覚書がございますし、それからまた、放射線障害予防補償についてという、放射線障害予防補償に関する答申書というものが、予防補償臨時委員会から、昨年の九月十八日に出ております。この答申書に対しまして、研究所としては独自な立場をとるということでございますが、一応本庁としては、この答申書に対して御検討をお加えになって、これに対する御意見等、結論をお出しになっておると思いますが、その点はいかがでございますか。
  146. 江上龍彦

    ○江上説明員 ただいまの答申書は、原研内部の諮問機関である委員会が答申したものであると了解いたしておりますが、その中に、いわば一定量以上の被曝の補償の問題と、被曝するかもしれないから、予防的な意味補償と、二種類のものが書かれておるように思います。その第一の問題につきましては、これは原研側と労働組合側において、昨年御存じのように、CP5の出力上昇問題にからみまして、いろいろ折衝がされまして、一応ある妥結点に達しているというふうに聞いております。しかし、その問題も含めまして、現在従業員災害補償専門部会で検討しておるのであります。  それから、第二の予防補償の問題でございますが、これは、被曝するかもしれないから、あらかじめ手当を出すかどうかという問題でございますが、その点も、先ほど申しました専門部会には、原研の労働組合代表も委員として参加いたしております。そちらから問題が提起されまして、その点についても、専門部会は取り上げて検討をしているという段階でございます。
  147. 西村関一

    ○西村(関)委員 この補償の問題につきましては、さらに十全を期していただくよう御努力願いたいと思います。  次に、今度の設置法の一部を改正する法案のもう一つの点は、「航空技術研究所」を「航空宇宙技術研究所」に改める。そして宇宙科学の技術に関するところの試験研究を加えていこう、こういうところにあるようでございますが、今日の宇宙時代におきまして、宇宙推進のわが国の基本的な方策を立てるのは科学技術庁であると考えるのでございますが、諸外国に比べて非常におくれておると思いますが、今度の改正と関連をいたしまして、科学技術庁といたしましては、宇宙開発、宇宙推進の基本的な方策という点をどういうふうにお考えになっておいでになりますが、大臣のお答えを願いたい。
  148. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 ただいま西村委員が御指摘になりましたように、わが国の宇宙開発というのは、国際的に見ましても、非常に微々たるものでございまして、全く緒についたという段階でございます。今日まで宇宙通信、あるいは気象観測、あるいは測地というような分野にわたりまして、関係各省庁の協力によって総合的な開発を進めて参ったのでございますが、今度宇宙審議会の答申の線に沿いまして、さらに躍進をし、具体的な方策について検討いたしたいという段階でございます。で、何とかしてできるだけ早い機会に国際レベルに追いついていきたいという念願を持って、具体的な検討をいたして参りたいと思っております。
  149. 西村関一

    ○西村(関)委員 宇宙開発の問題につきましては、諸外国との協力が必要だと思いますが、もちろん、これは平和利用、経済開発という、国民経済の上に寄与するところの宇宙開発ということが中心にならなければならないことは申すまでもございませんが、そういう点につきまして、具体的にこの設置法の一部を改正せられるという場合におきまして、軍事的な関心は毛頭払っていない、ただ経済的な、国民経済の上に寄与するという面から、宇宙開発をしていくのだ、また、世界の平和を促進するために、人類共通の宇宙という無限の場に科学のメスを入れていくのだ、こういうことでなければならないと思いますが、そういう点につきまして、国民経済の上にどういう寄与をするか、また宇宙開発のねらいが戦争につながるものでない、あくまでも平和利用の面から、無限に広がっているところの宇宙に科学のメスを入れていくのだということであると思いますが、その点につきまして御見解を承っておきたいと思います。
  150. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 わが国の宇宙開発が、あくまでも平和の面に役立つものであり、しかも、国民経済の上に寄与しなければならないという御趣旨に対しましては、まことに同感でございます。従いまして、今回当庁といたしまして、宇宙開発促進の具体的な話し合いをいたしましたことにつきましても、もちろんその範囲を越えているものではございません。  なお、具体的な面につきましては、政府委員の方から御説明をいたさせます。
  151. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 宇宙開発につきましては、御承知通り、世界的に見ましても、いわゆるその緒についただけでございます。すでに相当実用面において効果を上げておる、つまり、世界経済に寄与しておるのではないかと思われるような面を申し上げますと、たとえば通信でございます。御承知通り、大陸間の通信は、通信衛星を利用することによりまして、大幅にその通信の混雑を緩和することができる。それから気象でございますが、これも気象衛星を利用することによりまして、気象の予報の正確度を広く向上させることができるわけでございます。そのほか、たとえば航海におきます安全の向上など、やはり測地衛星の利用によってこれが達成できるものだと考えております。かように広く経済の発展に寄与するのみならず、さらに宇宙工学と申しますか、その関連分野も広いものでございますので、その成果といたしましては、精密工学技術が非常に伸展して参ります。あるいは電子工学、無線工学あるいは新しい材料の開発といったふうに関連部門も広いものでございまして、従いまして、諸工業の技術の水準がこれによりまして大幅に向上いたすのではないかというふうに考えます。そこで、われわれといたしましては、ぜひとも宇宙に関しまする技術を強力に推進して参りたい、そういうように考えておる次第でございます。
  152. 永山忠則

    永山委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、明十四日午前十時より理事会、十時半に委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時三十七分散会