○谷口
委員 先ほど理事会で本日の討論に私の
発言を禁止するというようにきめられたようであります。まことに不当な
決定でありまして、私は厳重にここに抗議を申し込みたいと思います。今後はそういう非民主的なことはなさらないように強く要求して、
決定は
決定としてきょうは尊重することにします。そこで、与えられましたわずかな時間に、最後の質問で、時間もありませんから、本件に対する共産党の
根本的な
考え方を申し上げて、一括して大臣の御所見を伺いたいと思います。
この
法律案は、すでに七年前からたびたび国会に
提出され、そのつど
審議未了、廃案になったいわくつきのものであります。すなわち、この
改正案が国会を通過、実施せられんか、関係労働者に不当なきわめて非人道的な労働強化を強制するばかりでなく、
船舶の
航行の安全を全く破壊し、かつわが国の気象観測業務、海難救助体制等に重大な致命的な欠陥をもたらすことが明らかになったからである。
政府・自民党、
海運業者、独占資本を除くほかのすべての識者、労働者、
国民が断固としてこれに反対したから廃案になってきたものであります。今回の
改正案は、この悪法案をそのまま持ち出したものでありまして、これを国会で再
審議するということすら非常に不当だと言っても差しつかえないものと思うのであります。そこで、私は、
先ほど申しましたように、二、三のわれわれの
考えている
問題点について一括申し上げて大臣のお答えをいただきます。
第一に、現行の
無線通信士三名、三直二十四時間勤務制を
通信士一名、一直八時間制にするかわりに、その補強施策として
オートアラームを装備するという点でありますが、この点こそ本法案の悪法たる最大の点であります。
オートアラームなるものが単なる受動的警報機に過ぎず、何ら能動的人間労働にかわり得るものでないことは、今日すでに世間周知の事実であります。また、空電、混信等による誤作動の避けがたい
性能のものであることも、当
委員会で
西崎電波監理局長が証言した
通りであります。気象上最悪の条件下にある太平洋海域を海動の舞台とする
日本の
船舶に、また海岩局の施設といい、
海上保安庁の能力といい、諸
外国に比べまして最も危険、不安全な
日本において、このような機械をもって人間労働にかえることのいかに危険かは言葉を要しません。本
改正案では、
オートアラームの作動にあたっては、いついかなる場合でも、その
受信と
通信操作の責任は常にただ一人の
通信士にあるとされ、
通信士は事実上一日二十四時間の拘束を強制、されることになりますが、その結果次のような事態が起きることは不可避のものとなるであろうと思います。すなわち、毎日二十四時間の奴隷状態におかれます
通信士は、なま身の人間の必然といたしまして心身混迷し、結果として
船舶局の
通信業務に、特に危急の場合の
通信活動に重大な錯誤を来たし、もって全体として
船舶航行の安全にきわめて危険な状態をもたらすということであります。
海員組合と
船舶通信士協会が寝食を忘れて本法案に反対するため立ち上がっているのも、まさにここに
理由があるとわれわれは
考えているのであります。
第二点はいわゆる裏時間の問題であります。一直八時間勤務制は、単純に継続八時間の勤務制ではなくて、二時間勤務二時間休憩を交互に繰り返して勤務時間合計八時間に及ぶというのでありまして、こうなりますと事実上
通信士の勤務時間は、十四時間ないし十六時間になるという問題であります。本
委員会で
西崎電波監理局長は、この問題に関する関係労働者の陳情書について、どうしてそうなるというのかその心情がよくわからぬととぼけて答えておりますが、言語道断といわなければならぬ。ここに昭和三十七年七月十五日から八月十四日までの一カ月間の外航船二百八十五隻による短波無電発信経過時間表があります。これは
船舶通信士協会の調査に基づくものでありますが、これによりますと、これらの船から発信されました発信数八千四百四十六通のうち、受付から
通信終了まで二時間以上を要した
通信数は実に五千三百四十六通であったと報告、されているのであります。法
改正後になりますと、こういう
通信は、すべて勤務時間の二時間で終了いたしませんので、必ず休憩時間に食い込むことになるのであります。このような状態がたとい一日に二、三回あるといたしましても、それだけで
通信士は中間の休憩時間のすべてをつぶされることになることは全く自明のことであります。しかして本
委員会で明らかになりましたところによりますと、
政府と
海運業者は、この矛盾に対する対策として、驚くべきことに、
船舶局における公衆
通信の規制抑圧というものを
考えていたようであります。つまり
通信を制限するというのであります。おそるべきことだと私は思うのであります。しかし船員あるいは一般の公衆
通信を制限するということは、
先ほどお話のありました
通りに、
法律違反であり、原則的にいって憲法違反になるのであります。
航行業務上の
通信をたとえば業者が自分の
経費節減の上から
考えて減らせば
航海の危険を冒すことは全く明白であります。それでもかまわぬと彼らは言っておるのであります。彼らの貧らんな態度は全く狂気のさたといわなければならない。そういう
内容を本案は含んでおります。
それから、本案が通れば
日本の気象観測上重大な
支障を来たすと証言しました気象庁長官の言葉も、この際われわれの銘記しなければならぬ言葉だと思うのであります。わが国の気象観測体制は、自民党
政府の長年にわたる失政から全く憂慮すべき状態にあります。気象庁は観測のための飛行機一台持たず、飛行機観測は米軍にたよっております。わずかに観測船としてボロ船二隻を持っておるにすぎません。従いまして、台風のどまん中におけるわが国の気象観測では、数百隻に及ぶ外航船による観測協力体制が
決定的な役割を果たしているのであります。この点私がここで申すまでもなく、
皆さんよく御
承知のところでありますが、これが今回の法
改正によってほとんどそういうことできなくなるというふうに気象庁長安が証言しているのであります。わが国の気象観測は危機にさらされることになります。
国民の生命と生活の安全に対してこれほど敵対した
政策はございません。もっとも
日本船主協会の荒木副会長が、自分
たちさえもうかるならば、
日本の気象観測がどうなってもおれ
たちの知ったことじゃない、こういうふうに本
委員会で放言いたしました。しかし、われわれにはこういう態度は許されない。共産党は気象観測体制の完全な整備の実現のために戦うと同時に、現在はなお
船舶の協力体制を断じてくずしてはならぬというふうに強く主張したいと思います。
次に、本法案のねらいは、
海運産業の
合理化、すなわち
経費節減にあるのだといった
政府及び
海運業者の本
委員会における公式の
発言に留意したいと思います。だが一体、三名の
船舶通信士を一名に減らしてどれだけの
経費節減ができるのか。私の計算いたしましたところでは、
現状を基礎にして年間約十億円余り、全船員費に対してわずかに五%、全
海運業者の営業費に対してその割合を見ますと、わずかに年間〇・五%の
節減にすぎないのであります。全営業費のわずか〇・五%の節約をして何が
合理化ですか。何が
海運基盤の強化ですか。試みに
海運資本家が造船のために
政府及び市中銀行から借り受けました資金額と、その利子の状態を調べてみるとよろしいと思います。昭和三十五年上半期における借入金残高は
政府財政資金から千五百十四億、市中銀行から千百六十八億、合計二千七百二十二億であります。そして本年は三千億を突破したといわれているのであります。そしてその利子は、本年は二百七十億をこえると荒木氏は証言しました。一方、彼らの
自己資金でつくった船は総額一千億にすぎません。すなわち、
海運資本家はその造船費の四分の三を人の金でまかなっているのでありまして、そのために実に全船員の給与費をはかるに上回る巨額の利子を毎年金融独占資本に奉納しているのであります。現在の
海運業の困難さはここにあるのであります。同時にみずからこの実体をつくり出しておいて、
海運基盤が弱いとか
国際競争力がないとか言うのは、ちゃんちゃらおかしいといわざるを得ません。それこそ
国民や労働者階級の知ったことではない、こういっても差しつかえないと思います。人のふんどしで相撲をとっておいて、なおかつ勝星をよこせと居なおるのは、まるで賭場の親分の態度であります。しかし、これはまさに彼らの要求なのであり、また
日本海運界の低
料金の上にのうのうと独占利潤をむさぼっている米日独占の要求なのでもあります。しかも彼らは、長年にわたり、
政府とぐるになって、やれ利子補給だ、やれ返済金猶予だなどと、われわれ
国民の税金から数百億の金をかすめております。今も取りつつあるのであります。
政府・自民党が、本法案によって、今後はさらに
日本の気象観測業務を破壊し、
船舶運航を危険にさらし、一切の犠牲を労働者階級に転嫁してまで、彼らのために尽くそうということに、われわれの激しい怒りを感ずるのは当然であります。
今日の
日本海運企業に
不況があるとするならば、それは自民党
政府当局の対米従属の貿易
政策、経済
政策に
根本の原因があります。従来わが国の貿易は、中小型船で十分に間に合う中国やソ連、朝鮮、東南アジア諸国との交流にあったのであります。それが自民党
政府のアメリカに屈する売国的
政策の結果、これらの諸国との間の貿易が断たれ、あるいは縮小され、かわりにアメリカの指図による大型船をもってする、主としてアメリカ対象の遠洋貿易に変化し、従ってまた、金もないのにむやみに大型船をつくらざるを得ない羽目に押し込められたのであります。そのために、
政府や独占、
海運業者は膨大な
国民の血税を使って多数の大型船をつくったのであります。今やその矛盾した基盤の上に立って、一そう
国民を収奪しようと計画したのであります。
海運業者の立場からいえば、多額の金利を金融独占に支払った上、なおかつもうけなければならぬ。金融独占は金利を確実に収奪しなければならぬ。
海運業を利用する一般
産業独占はいわゆる貿易・為替の自由化の前に、一そう低運賃を要求してきている。こういうことから彼らは、一方的に労働者階級に弾圧を加え、
合理化を促進し、
航行を危険にさらしてまで、今日のこの法案を出してきたのであります。
海運企業の
合理化は、昨年末問題となった残酷な石炭
産業の
合理化、金属鉱山の
合理化と同一のものであります。また現在重大問題化しております特殊
産業振興法案による全
産業の
合理化と一体のものであります。すなわち貿易・為替の自由化により、また対米従属、搾取と収奪によるいわゆる所得倍増計画の池田
政府政策の破綻の結果であり、同時にそれは、アメリカ帝国主義と
日本独占の至上の要求でもございます。これをすべて労働者階級に転嫁してきたのであります。だが労働者階級と
国民は、この
政策は断じて許しません。われわれは、全
国民とともにこの、池田
政府の反民族的、反人民的暴政とあくまでも戦うでありましょう。
そういう意味で、
日本共産党は本案に絶対反対するものであります。また自民党が出される修正案にも反対するのでありますが、本法案を一刻も早く撤回する意思が大臣にあるかどうか、お伺いいたします。