○纐纈
委員 ただいま求められました
道路交通法の一部を
改正する
法律案審査のための
派遣委員の報告を申し上げます。
調査班といたしましては、
永田亮一
委員長、小澤太郎、
太田一夫、二宮武夫の三
理事と私が、崎川主任調査畳を伴いまして、三月二十四日東京をたち、同二十五日大阪府及び京都府下の現地を調査いたしたのであります。
このたびの調査は、現在当
委員会で審査を重ねております
道路交通法の一部を
改正する
法律案の審査の一環として、近く供用を開始される名神高速自動車国道の実情の調査を主眼とし、あわせて大阪市及び府下の交通規制の実情を調査いたしたのであります。非常に限られた時間でありますために、十分意を尽くして調査するというわけには参りませんでしたが、現地関係者各位の熱心な御協力により、ほぼ所期の調査目的を達成することができました。
また、現地では阪上安太郎
理事並びに原田憲大蔵政務次官及び大倉三郎議員がそれぞれ参加せられ、調査の上に少なからぬ便宜を与えて下さいました。この際、あわせて厚く御礼を申し上げます。
次に、簡単に日程を申し上げますと、私どもは三月二十四日東京をたち、三月二十五日午前九時、大阪府警察本部に集合し、湯浅大阪府警本部長より、大阪市内の交通規制について、第一次交通規制の行なわれました昭和三十五年七月以来の交通事情、交通規制の実情を詳しく聴取し、午後は市内の交通事情を見るため、長柄橋を経由して日本道路公団京都南インターチェンジに到着し、高橋日本道路交団大阪建設局長より名神高速自助車国道の概況について説明を聞き、次いで名神自動車国道の京都南インターチェンジから栗東インターチェンジに至る区間を、最高時速百三十キロメートルのスピードで往復し、道路構造の調査はもとより、これから定めようといたしております高速自動車国道における自動車の交通方法の特例につきましても、不十分ではありましたけれども、実地に調査を行なったのであります。
調査はさきに述べましたごとく、名神高速自動車国道の実情調査並びに大阪市内におきまする交通事情、交通規制の状況はどうかという二つでございますので、便宜上、名神高速自動車国道の調査から申し上げます。
この路線は小牧市から西宮市に至る延長百九十一キロメートルの区間でありまして、設計速度は時速平坦部百二十キロメートル、丘陵部百キロメートル、山岳部八十キロメートルとなっております。また総幅口は二十四・四メートル、一車線の幅員は三・六メートルであり、路面はアスファルト舖装、車線数は四車線、インターチェンジは十四カ所、バスストップ三十カ所、設計荷重は自動車荷重二十トン、重要構造物としては、トンネル六カ所、長大橋二十一カ所、高架橋七十九カ所となっております。そのほか休憩
施設といたしまして、サービスエリア四カ所、パーキングエリア九カ所が設けられる予定であります。建設費は千百六十四億円、完成予定は昭和三十九年度となっております。なお、高速自動車国道におきまする自動車の交通方法の特例につきましては、すでに政府の
提案理由の説明にもありましたように、高速自動車国道におきましては、自動車以外の車両及び人の通行は禁止され、構造面におきましても他の道路等との交差はすべて立体交差方式をとること、
一般の道路との
連絡はインターチェンジによること、並びに中央分離帯を設けて往復の交通を完全に分離するなど、
一般の道路の場合とはかなり異なった交通方法をとることになっております。
さて、私どもが実地に調査いたしましたのは、名神高速自動車国道のうち、本年七月十五日から供用を開始される予定となっておりまする尼崎−栗東間七十一・六キロメートルの一部であります。すなわち京都南インターチェンジから滋賀県栗東インターチェンジに至る二十九・六キロメートルの区間でありまして、工事は一部を除いてすでに相当進捗しておりました。私どものように東京や大阪の麻痺寸前の道路交通事情、ないしわが国の劣悪なる主要幹線道路を見なれている者にとりましては、平地や山間を貫いて走る四車線二十四・四メートルの名神高速自動車国道は非常に快適な印象を与えられ、りっぱなできばえであり、実際に百十キロないし百三十キロメートルのスピードで走らせてみました結果も、その安定感は
一般の道路で四、五十キロ出している場合と大差なく、聞きしにまさる上々の安定感でございました。またわずか四十分間
程度の試験的な運転時間ではありましたが、運転者の言によりますれば、ほとんど疲れないということでありました。
次に、このたびの調査を通じて若干の所見を申し述べたいと思います。
第一点は、最高及び最低速度の問題であります。もちろん短時間のきわめて不十分な調査でありまするので、断定的な所見は避けるべきでありまするが、まず最高速度について申しますると、私どもの印象といたしましては、国産車の最高速度は、走行の安全性なども考え大体百十キロメートルが許容の限度ではないかと考えられました。
次に、高速自動車国道の設けられました
趣旨並びに安全性の見地から考えまして、多種多様な車種の存在するわが国の場合、高速自動車国道におきまする最低スピードを幾らにするかということは、なかなか技術的にもむずかしい問題であろうと思いまするが、最低速度を決定する以前の重要問題として指摘せざるを得ませんのは、前述のように多種多様な車種のあるわが国におきまして、高速自動車国道に乗り入れを許される車種をどのようにしてきめるかということであります。
次に、車種をきめたあと、自動車を安全にかつ円滑に走らせていく上での
対策の問題といたしましては、第一に高速自動車国道における円滑な走行を阻害するおそれのある性能不良の自動車を、どのようにして発見するかということでございます。
第二には、自動車の積荷の重量が許された積載重量をオーバーしておりますと、当然スピードは落ちることになり、ひいては他の自動車の円滑かつ能率的な運行をはばむことになりますが、積載重量の適否をどこでどのようにして認定するかということであります。
第三に、高速度自動車国道におきましては、
一般の道路の場合と異なり、道路上の小さな落下物といえども大惨事の
原因となりかねない危険な要素をはらんでおります。従って、積荷の方法が、最高のスピードにたえ得る間違いのない、確かなやり方であるかどうかも、高速自動車国道における危険防止上決してゆるがせにはできない問題でありますが、これまたどのような方法でこれを確認するか大きな問題だと思われます。
次に、今回実地調査を行ないました上でも依然として、はたしてうまくいくだろうかと疑念を抱かれましたのは、高速自動車国道と
一般の道路との
連絡、すなわち自動車がインターチェンジからハイウエーに入る場合の運転技術上の問題であります。少なくとも相当に高度の運転技術、経験を持つ者でなければ、最高速度で走っているハイウエーの自動車の流れの中に入っていくことはきわめて困難だろうと思われるからであります。
次に、高速自動車国道における安全性の見地から重要な問題として、
設置される道路標識の大きさ、あるいは文字ないし記号をどのようにするかということがあげられると思いますが、残念ながら今回の調査では、現地でその準備がなされなかったために、その適否を調査することができませんでした。
以上、不十分ながら所見を申し述べましたが、実際に現地の道路構造を見、直接最高スピードで自助車を走らせてみまして痛感いたしましたことは、このような高速自動車国道
において多くの自動車が安全かつ円滑に走行するためには、何よりも運転者がその義務として、完全に交通法規を順守することはもとより、高度の技術と経験、並びに高い交通道徳を身につけなければならないということであります。警察当局におかれましても、この点に今後格段の留意と御
努力をお願いしてやみません。
次に、大阪市内の交通規制の状況について申し上げます。
大阪市内の交通規制につきましては、第一次交通規制が昭和三十五年七月に、第二次交通規制が同三十六年四月十日、第三次交通規制が本年三月一日から実施されております。現在問題になっておりますのは第三次交通規制でありますが、簡単に申し上げますと、交通停滞の面からする大阪の交通事情は、昭和三十五年以来逐年深刻の様相を加えて参りまして、そのつど随時に交通規制を行ない、局面の打開に努めてきたとのことでありまして、三十五年の第一次規制におきましては、車両の増加と道路率のアンバランスの表面化によりまして、都心部及び南、北の繁華街
において小道路を含め二百十五路線の一方通行並びに幹線道路二十九路線の駐車禁止を主とした交通規制を行ないましたが、十分な成果をおさめるに至らず、次いで三十六年に入り交通事情の一そうの激化に対処するため、船場
地域内各道路における大型車両の運行禁止、北及び南繁華街におけるタクシーの流し禁止、主要幹線及び主要交差点における右折禁止を主とする第二次交通規制を同年四月十日から行ないました。この規制により一時は良好な結果を見ましたが、同年十月以降は再び規制前を上回る交通の停滞状態を現出するに至り、しかも三十七年度に入ってから、交通事情は日を追い、月を追ってますます激化し、この間交通状況の推移に応じ、ほとんど毎月駐車禁止路線及び右折禁止路線の拡大などを実施することによりまして、当面の交通緩和に努めたとのことであります。ところが本年に入りましては、一月中旬における交通停滞は、すでに前年同期の三ないし四倍となっておりまして、過去の趨勢から見ますと、本年三月には七百回
程度に及ぶ交通停滞の発生が予想されるに至り、ついに本年三月一日から第三次交通規制が実施されたのであります。この規制は三十七年十二月下旬に臨時的に八日間午前八時から午後八時まで実施された規制、すなわち大型車両については長柄橋、十三橋、淀川大橋の三つの橋によって大阪市内に入る場合の禁止及び国道一、二号線、扇町線及び都島守口線の一部区間の通行禁止を主要
内容とするものでありますが、第三次規制は、この臨時的規制に加えて、本町左専道線を追加し、大型車両を対象とする恒久的な規制として実施されたものであります。
なお、この規制の実施にあたりましては、府知事、大阪市長、大阪陸運局長、近畿地方建設局長、府警察本部長をもって構成する大阪府交通
対策協議会五者
会議ほか各方面の
意見や要望を聞いて、慎重に検討した結果、市内中心部に影響する停滞防止を第一義とし、このことによって生ずる迂回路の停滞増加はやむを得ないものとの判断のもとに実施に踏み切ったとのことであります。
しこうしてその結果は、予想
通り第二阪神国道外六路線の迂回路に停滞が相当に増加いたしましたけれども、警察当局の見解としては、これによってともかく市内中心部
においては一応の混雑緩和をはかり得たとのことであります。
しかしながら、第一次及び第二次の交通規制はともかく、この第三次交通規制につきましては、ひとり商都大阪の府下のみならず、隣県はもとより遠く全国にそれぞれ大なり小なり影響を有しておりますことから、警察当局の規制にももちろん
理由はございますが、民間の業者各位からも少なからぬ批判や要望が述べられております。
私どもはこのたび現地におきまして、業界の代表者から第三次規制についての要望を聴取いたしましたが、何分この規制は三月一日に実施されて日なお浅く、このため、これを検討するに足る統計資料にも事欠き、従ってこの規制の是非についてここに軽々に論ずることは適当でないと存じます。
しかしながら、ここ二、三年における東京の道路交通事情と、それに対してとられた規制
措置及び民間の自主的協力の経緯を大阪の場合に対比してみますと、大阪の場合、第三次交通規制をも含め、今回の規制の効果と、今後の道路交通事情の推移を、慎重に見守った上で検討する必要があると痛感せられるのであります。この
意味におきまして産業界、市民、交通取り締まり当局の三者の
相互協力によって、総合的に再検討し、急迫した事態が少しでも効率的に、かつ円満に解決されることを望んでやみません。
以上をもちまして簡単でございますが、
派遣委員の報告といたします。