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1963-03-14 第43回国会 衆議院 地方行政委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月十四日(木曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 小澤 太郎君 理事 大上  司君    理事 纐纈 彌三君 理事 高田 富與君    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 阪上安太郎君       伊藤  幟君    宇野 宗佑君       大沢 雄一君    大竹 作摩君       金子 岩三君    久保田円次君       田川 誠一君    前田 義雄君       山崎  巖君    川村 継義君       松井  誠君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 篠田 弘作君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      宮地 直邦君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         自治政務次官  藤田 義光君         自治事務官         (財政局長)  奧野 誠亮君         自治事務官         (税務局長)  柴田  護君  委員外出席者         自治事務官         (大臣官房参事         官)      松島 五郎君         自治事務官         (財政局交付税         課長)     山本  悟君         自治事務官         (税務局府県税         課長)     降矢 敬義君         自治事務官         (税務局市町村         税課長)   佐々木喜久治君         自治事務官         (税務局固定資         産税課長)   石川 一郎君         専  門  員 曾根  隆君     ————————————— 三月十三日  委員山口鶴男辞任につき、その補欠として松  前重義君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松前重義辞任につき、その補欠として山  口鶴男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十二日  地方公務員共済組合法の一部改正に関する請願  (江崎真澄紹介)(第二一三〇号)  同(池田清志紹介)(第二一五四号)  同外一件(小川半次紹介)(第二一五五号)  同(小沢辰男紹介)(第二一五六号)  同(河本敏夫紹介)(第二一五七号)  同(佐伯宗義紹介)(第二一五八号)  同(田口長治郎紹介)(第二一五九号)  同(河野正紹介)(第二一九四号)  同(田中武夫紹介)(第二一九五号)  ガス税の撤廃に関する請願外六件(加藤鐐五郎  君紹介)(第二二一四号)  花巻市の第三種空港設置に伴う財政負担軽減に  関する請願外一件(北山愛郎紹介)(第二三  二一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇一号)  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇二号)  警察に関する件(にせ札事件に関する問題)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議開きます。  地方税法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。通告がありますので、順次これを許します。阪上安太郎君。
  3. 阪上安太郎

    阪上委員 きょうは私は租税負担についてお伺いいたしたいと思います。  今回の税制改正等による国民租税負担について、どういうふうな見込みになっておるか、これを一つお聞きいたしたいと思います。
  4. 柴田護

    柴田政府委員 昭和三十八年度の国民所得に対します国税地方税を通ずる租税負担割合は二一・五%、そのうち国税が一五%で地方税が六・五%、このような計算になっております。
  5. 阪上安太郎

    阪上委員 この地方税の六・五%を所得階層別に、たとえば住民税のごとく、十三段階なら十三段階に分けて、どういうパーセンテージになっておるか。
  6. 柴田護

    柴田政府委員 地方税につきまして、六・五%の内訳をさような形で詳しく分析したものは実はございません。もし御必要でありましたら、作業をいたしまして提出いたします。
  7. 阪上安太郎

    阪上委員 実は私が今お尋ねしたいと思っていることは、高額所得者低額所得者と比較して、国税はもとより、地方税の中においても、相対的な負担低額所得者にかなり高いという懸念を持つものですから、お伺いしておるわけであります。従ってこれは非常に貴重な資料だと思いますので、作業が大へん困難であろうかとも思いますけれども、ぜひこういったものをできるだけ早く出してもらいたい。  次に、あらゆる地方税税種目を通じまして、今言ったように低額所得者に相対的に負担増になっておるというふうに私は考えるのですが、局長さんの方でそういうお考えを持っておられますか。
  8. 柴田護

    柴田政府委員 地方税というものの持っております性格から考えますと、相対的にという相対の対が何かという問題がございますけれども国税に比較いたしますれば、所得の低い段階において、国税の場合のように高額所得者との対比が明確でない、どちらかといえば、カーブがだんだんゆるやかになっておる、こういう傾向を持つのは、地方税性格からいってある程度やむを得ないと思いますけれども、ただ現在では、御承知のように市町村民税、特に貧弱市町村におきます市町村民税所得割、こういったものにつきましては、あるべき姿から考えますれば理想からほど遠い、こういう状態になっておると考えます。
  9. 阪上安太郎

    阪上委員 そうしますと、国税に比べて低額所得者の相対的な負担増ということについてはカーブがゆるやかになっている、こういうことなんですが、カーブがゆるやかであるということはわかりますとして、やはり低額所得者に相対的に負担増になっているということだけはお認めになりますか。
  10. 柴田護

    柴田政府委員 何を基準に求めるかということが一つの問題ではございますが、現状を見て、達観でございますけれども現状低額所得者負担がいいとは決して思っておりません。
  11. 阪上安太郎

    阪上委員 それでは端的に伺いますが、私は地方団体の間における課税格差、こういったものが、ゆるやかなカーブであるけれどもそういった状態を生じている原因じゃないかと思うのです。この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  12. 柴田護

    柴田政府委員 一つ原因が御指摘のような点にあることも事実ではないかというようにわれわれは考えております。ただ、それだけではない、つまり地方団体間の経済格差といいますか、所得格差と申しますか、それだけがそういったものを結果しておるわけではないのであって、ほかにいろいろ地方団体財政運営にも問題がございましょうし、また相対的の財源調整機能が完全に果たされておるかどうかという、いわば交付税配分にも問題がありはせぬか、こういったような考え方を持っておりますので、そういう零細市町村につきましてそういった点を一つ基本的に調べてみて、その上で住民税負担の較差の是正という基本問題に取り組んでいきたい、このように考えておるわけであります。
  13. 阪上安太郎

    阪上委員 私が申しておるのは、住民の一人当たりに対する財政負担意味ではないのです。やはり地方税負担の問題、これを問題にする。従って交付税等配分の問題とか、あるいは財政運営上の問題とかが、直接に税負担の問題に関係するということにはならないのじゃないか、この点どうなんですか。
  14. 柴田護

    柴田政府委員 お言葉を返しますけれども、私は実はなると考えております。と申しますのは、だんだんと時間的にもあるいは空間的にも地方団体相互間の距離が縮まって参る、これは世の中が開けて参りますれば、当然の傾向でございます。そうなって参りますと、行政の質の均等化というのは当然住民からも強く要請されますし、同時にまた負担均衡化というものも要請されるわけでございますけれども行政の質の均衡化という要請が強くて、財源措置が不十分であれば、勢い一番弾力を置かれておる住民税その他の負担に求めざるを得ない、財源がないわけですから勢いそういうものを増徴せざるを得ない、こういうことになってくるのじゃなかろうか、全然無関係ではないのじゃなかろうか。しかし、基本的にはおっしゃるように、そういう零細市町村におきまして税源を発掘するというと語弊がありますけれども税源を養っていく、つまりそういうところの地域振興、こういうものを真剣に考えていかなければ、やはり問題は根本的に解決しない、かように考えております。
  15. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、昭和三十七年度で東京大阪熊本鹿児島、これは別の県でもけっこうですが、最高と最低の府県別人口一人当たり税収入額はどのくらいになるのですか。
  16. 降矢敬義

    降矢説明員 これは私からお答え申し上げます。  三十七年度につきましては、まだはっきりしておりませんので、三十六年度について申し上げたいと思います。人口一人当たり東京府県税一万二百五十七円、それから大阪府九千四百三十二円、熊本県千六百二十二円、それから鹿児島県千二百三十九円でございます。
  17. 阪上安太郎

    阪上委員 これで見ますと、三十五年の決算における府県別人口一人当たりの税の収入額は、東京が八千百三十一円、大阪が七千四百五十七円、熊本が千三百五十九円、鹿児島が一千四十五円、こういうことになっておりまして、大地域団体間の格差というものは、三十七年度を見ましても一向に縮まっていない。こういった税収入開きというものを、これは先ほど局長が言われたように、地域間の所得格差開きだということになろうかと思うのでありますけれども税制改正をやる場合に、こういった負担格差というものを、あるいは所得格差というものを、どういうふうに税改正に反映さしていくか、このことはきわめて私は大切だと思うのですが、こういった問題を解決しないと、どうしても弱小団体におけるところの住民税負担というものは、相対的に非常に高くなるというところを是正することはできないのじゃないか。何か妙策はないのですか。
  18. 柴田護

    柴田政府委員 おっしゃる通り、税制改正の場合におきまして、お話のような配慮をして参らねばならぬということは、われわれも常々考えておるわけでございます。今おっしゃいましたような形の負担格差が縮まっていないというお話、これは三十六年、七年を単位にいたします場合には、府県税収入の大きな伸びは、やはり法人関係税収入が大きいわけでございますので、従って、そのウエートの占める割合が大きな県が、どうしても税収入伸びていく。従って数字の上では一人当たり負担格差というものが広がっていくような感じになっておると思います。しかし事実は逆かといえば、それはそうではございませんで、数字の上で現われたほどではございませんけれども、やはりその格差というものは税負担の上から見れば若干広がっていくだろうと思います。では今日の税制のもとにおきまして一体何が府県税負担の多いものかと申しますと、たばこ消費税ぐらいのものしかない。こういうものを幾ら積み上げましても、逆にいえば増面する財政需要にマッチしない。そうすると今日の税源の再配分というものももちろん課題ではございますけれども、同時にどうしてもそういう低開発地域振興というものを柱にして考えていく税制といいますか、そういうものを配慮に加えた税制というものを組んでいかなければならないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  19. 阪上安太郎

    阪上委員 今の問題で、そうしますと、たばこ消費税というのはそういう格差を生ずるところのものである。ところが今回の改正ではたばこ消費税減収補てんの方途として使っておられるということなんですから、それはあなたのお考えでは反対の方向をたどっているのじゃないですか。
  20. 柴田護

    柴田政府委員 私どもといたしまして、今回電気ガス税引きかえにたばこ消費税を使いましたことは、いわばそれしかない、独立税源であります市町村電気ガス税というものを軽減する場合に、これを埋め合わすのに何が一番普遍性に富んでおるか、また安定性に富んでおるかということになりますれば、電気ガス税引きかえとすれば、次善の策としてはもうたばこしかない、実はそういう考え方でやむを得ずとったという措置でございます。この場合、非常に心配いたしましたのは、都市方面税制というものをどうするかという問題が基本的にございます。よけいなことかもしれませんけれども、将来電気ガス税の基本問題を考えます場合には、たばこ消費税の問題が引きかえ財源として考えられるのは、むしろ町村の方である。都市についてはそれだけではいかぬだろう、何か別のことを考えなければならぬだろう、こういうような考え方を持っております。
  21. 阪上安太郎

    阪上委員 そういうことでありますならば、地方財源の問題から考えて、一方において電気ガス税を減税するという建前をとった以上は、やむを得ないたばこ消費税だ、こういう言い方になってきている。それならば伺いますけれどもたばこ消費税伸び率、それと電気ガス税伸び率というものはどういうふうになっておりますか。
  22. 柴田護

    柴田政府委員 私どもで試算をいたしましたところ、それは過去からの伸長度を基礎に置いて計算いたして参りますと、大体五年後を想定いたしますと、電気ガス税の一%分が、たばこ消費税の二%分に該当する、そういうことでございます。
  23. 阪上安太郎

    阪上委員 五年後における伸長率考えたならば、電気ガス税の一%がたばこ消費税の二%、そういうことですね。そうすると伸び率電気ガス税の方が倍——倍という言い方はおかしいかもしれませんが、そういうふうになる。地方財源を確保するために伸び率の非常にいい電気ガス税、それを捨てたといいますか、とらずに、たばこ消費税をとるということは決して得策ではないと思う。これはどうなんですか。
  24. 柴田護

    柴田政府委員 税収入だけの面から申しますならば、お話しのようなことが言い得るかと思います。ただし現行電気ガス税につきましては、かねがね問題になっておりますようにいろいろ問題がございます。その税率もかつての一〇%の税率というものが妥当かどうかということになれば、税負担の面から考えれば必ずしも妥当でない、高過ぎるということはだれでもおっしゃっておることでありまして、われわれも実は一〇%という税率は高いと思っております。これを妥当な姿に持っていかなければなりませんが、その持って行き方、どこに妥当な線を引くかという問題が一つございます。それから持っていくその行き方をどうするか、今までのやり方は漸進的に持ってきたわけであります。しかしそれだけではございませんで、免税点の線が今のままでいいかどうか、あるいは電気ガス課税の仕方が現行のままでいいかどうかというような問題もございまして、根本問題があるわけでございますので、これはどうしても基本的に負担の面、産業政策といったような面、あるいは税収入、つまり財政的な面、こういった面を総合的に考えまして、根本的に再検討をしなければならぬ段階にきておる、かように考えておる次第であります。
  25. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、この補てん財源としてのたばこ消費税を一・四%今度入れたわけなんです。こういう伸び率等考えたばこ消費税との関係をやった場合に、五年後といいながら初年度から五年間の聞こういった一・四という一定の税率でこれを処理していくということは適当じゃないのじゃないですか。何かそこに、累進的な方向というよりもそれの逆の方向、そういったものを考える必要はなかったかと思うのですが、それをお尋ねするわけです。これはどうでしょう。
  26. 柴田護

    柴田政府委員 ほかの租税関係の問題が安定いたしておりまして、電気ガス税だけの問題をつかまえてどうこうということになれば、おっしゃるような問題が起こってきたかと思います。ただ、地方税制全般につきましてはお話のようにそういう問題がございますけれども地方税制の問題として、現在税制調査会で基本問題をいろいろ検討していただいております。従って、その基本問題との関連地方税制がどうなるかという問題は、また問題をはらんでおるわけであります。そこで今回は、とりあえず当面当年度の完全補てんというものを措置をして、将来の問題といたしましては、お話のような問題も総合的に考えて合理的な税制というものを立てなければいかぬ、かような考え方でそういう処置を講じなかったわけでございます。
  27. 阪上安太郎

    阪上委員 そうしますと、この一・四という補てんは、来年度はまた変わるということなんですね。変えなければならぬということですか。変えてしかるべきじゃないですか。それはどうですか。
  28. 柴田護

    柴田政府委員 私はこの一・四の問題の変え方について、いろいろ配慮すべき点があると思うのでございます。と申しますのは、たばこ消費税電気ガス税との引きかえ問題で、やや増収になる町村につきましては、おっしゃられるような問題はむしろ起こらない。ところが都市につきましてはそういう問題が起きてくる。そういう面からどういう配慮をするかというのが別途問題になるわけでございます。
  29. 阪上安太郎

    阪上委員 そういう面から、どういう態度をとるかということが問題なんです。そこで、どうされるわけですか。
  30. 柴田護

    柴田政府委員 これは多分に個人の見解になって恐縮でございますけれども、私は今日の税制を総体的に考えます場合に、財政的に見ました場合には、都市租税体系、これは大都市を含んででございますが、そういうところに基本的な問題がある。つまり都市がだんだん行き詰まりになってきておる。そうしてこれからだんだん伸びていく町につきましてはいろいろな財政需要を持っておりますが、今日の地方税制につきましては、これと見合う税体系というものが組まれていない。そうしますと、同じ市町村税制というものについても、何かそういうところに一本欠けているのではないか。現に昭和三十七年度から大阪府というものが不交付団体から交付団体になった、こういう事実は何を物語るかということであります。従って、その辺を相関的に考えますと、何らかそういうところに血の通った税制というものを考えていかなければならぬのじゃないかというように考えておるのでありますが、今ここで私はこう考えるということを明言する段階にまで至っておりません。
  31. 阪上安太郎

    阪上委員 次に、所得割の問題なんですが、これはいわゆる応能の原則でやるべきものだというようにわれわれは考えておるのであります。負担分任考え方は、何回も言われておりますように、これは均等割で十分に達しております。所得割については支払い能力という点を頭において考えていかなければならぬ、こういうように考えられるわけです。ところが昭和三十六年度の地方税納税者が一千四百万人、それから三十七年度の市町村所得割納税者が一千七百万人、ここでもって約二〇%程度も国税の場合と比べて納税者がふえておる。つまりこの約二割の人が地方団体課税されなければならぬ、こういうことになっておるわけです。そうしますと、この所得税と遮断したということは、それ自体わからぬでもありませんけれども、こういった負担の問題から言うならば、これは非常に悪い方式じゃないか、むしろもとに戻って国税にリンクした方がまだいいのじゃないかという考え方も出てくるのですが、これはどうでしょう。
  32. 柴田護

    柴田政府委員 今日の均等割が妥当かどうかという問題が出発点になるだろうと思います。おっしゃるように、今日の均等割で、地方税の本旨とされます負担分任の精神というものは、十分果たされているのだという考え方に立つ場合は、所得割というものの持っていき方を、相当応能的な観点を中心にして考えるということも一つでございます。しかし今日の均等割が妥当かどうかということになれば、私はこれについては基本問題があるだろうと思います。もう昭和二十五年から全然いじっておりません。それからまた府県民税考えます場合に、府県民税についてあのような形の均等割をとることが、いいかどうかという問題もございます。あるいは均等割につきましてもある程度の段差をつけろという意見もございます。いろいろ意見がありまして、そういう意味から言いますと、均等割あり方というものにつきましても基本問題がございます。所得割あり方につきましても御指摘のように問題がございますけれども地方税性格からいえば、所得税と合わせて住民税というものを所得課税考えます場合には、住民団体との距離が近づくに従って、なるべく均等といいますか、比例税率的なものか、あるいは軽度の累進税率をとっていく、こういう方向が望ましいのじゃないかという考え方は私どもは捨てておりません。従いまして、住民税につきましてあまり強い累進課税を行なうのはいかがかと考えるのでございます。
  33. 阪上安太郎

    阪上委員 それはやはり負担分任考え方が頭の中に相当強く残っているということだ。少なくとも二千万人の人というのは低額所得者であることは事実なんです。そういう人がこういう住民税の中においても相対的にはやはり重い負担をしている。そこへ持ってきて、府県民税の場合には二段階比例税率ですが、ああいうものがさらにそこに加わる。超過累進課税というものが排除される。極端なものはいけないと言われるけれども、私はむしろ超過累進課税方式の方が低額所得者負担というものに対しては相対的に軽くなると思う。住民税の中にも、低額所得者に対する相対的な負担の増というものが、累進税率で出てくることは明らかである。そこで次は事業税はどうかという問題になる。法人の場合には七%ないし一二%の非常に軽い累進だと思うのです。こういったことをやっているとやはり同じ問題が起こってくるのではないかと思うのですが、これはどうでしょう。
  34. 柴田護

    柴田政府委員 個人事業税も含めましての事業税というものの考え方は、所得税の補完税的なものでございますし、一種の事業重課といいますか、そういう思想に立脚したものでございます。これは本質的にはむしろ均一税率なので、おっしゃるような段差をつけておりますのは、これは特に中小企業に対する政策的な配慮からむしろ出てきている問題であります。税そのものから言いますならば均一税率で取ることが望ましい、こういうように考えております。
  35. 阪上安太郎

    阪上委員 しかし住民税所得割と同じ理由で、むしろ累進税準を使っていくということになると、七%から一二%のわずかなものである。今言われたような中小企業には重税となるのであって、むしろ中小企業対策としてこれが用いられているというようなことにはならないと思う。それならむしろもっと幅を持たせたらどうか。それをこんなわずか七%から一二%ぐらいで押えていくということになると、むしろ逆に中小企業に対して相対的にやはり重税になる、こういうことになるのじゃないか。
  36. 柴田護

    柴田政府委員 私どもは実はそうは考えておらぬのでありまして、これはやはり法人の場合は一二%が本則であると考える。それで特に零細所得者に対しては個人所得税との均衡もあるわけであります。個人事業者法人零細所得者というものは、事業形態個人法人とで異にいたしますけれども、実態はあまり変わらない。そういう負担均衡も考慮し、それに中小企業対策というものも兼ね合わせて、特に低所得については逓減税率を使っている。これが今日の地方税体系でございますけれども、しかし所得課税標準にいたしておりますことが、おっしゃるように住民税との比較論が起こったりいろいろな議論を起こすゆえんなのであって、事業税思想からいえば、所得課税標準に使っておるのはむしろ一つの手段であって、ほかの課税標準を使うべきじゃないかという議論が本質的にございます。これは非常にむずかしい問題で、企業課税との関連でどうあるべきかという問題でございまして、現在、従来からもそうでございますが、引き続き税制調査会におきまして検討を続けておるわけでございます。私どもといたしましては、今日の所得課税標準とする事業税体系はいいとは考えておりません。むしろ改めるべきものだと考えておる次第でございます。
  37. 阪上安太郎

    阪上委員 しかし個人の場合と第一種の事業税ですか、これは五十万円の上下でもって分けられておる、こういうことでしょう。これもやはり低額者には相対的に過重なんじゃないですか。
  38. 柴田護

    柴田政府委員 個人につきましても段階税は現在やめております。ただ税率を一種、二種、三種と分けておりますのは、これは従来営業税から発展したものでございます。それで営業税を拡大したものでございますので、従来の営業税に類するものについては、やや高い税率、それから拡大された部分、準営業とみなされるもの、広い意味の事業でございますが、そういうものにつきましてはその濃度に従って若干税率を下げていく、こういう立て方をいたしております。
  39. 阪上安太郎

    阪上委員 次に、固定資産税ですが、固定資産税についてもやはり同じようなことが言えるのじゃないかと思うのですが、貧弱団体に現在重い傾向であるというようになっておると思うのですが、これはどうでしょうか。
  40. 柴田護

    柴田政府委員 固定資産税につきましては、税制という建前からいいますと、まあまあ比較的偏在度の少ない、地方税の中では割と安定した方に近い税種でございます。ただおっしゃるように、貧弱団体について過重負担になっているという事実はこれにもございまして、たとえば東北、北海道あたりの市町村では、軒並みに標準税率をこえて課税しておる。こういった状況でございます。
  41. 阪上安太郎

    阪上委員 大体どのくらいになっていますか、標準税率一・四%をこえる課税をやっておるのは、大都市にございますか。大都市にはないでしょうね。
  42. 柴田護

    柴田政府委員 大都市におきましては、標準税率をこえた課税をいたしておるところはございません。大体町村がおもでございます。市が若干ございます。大体税額にいたしまして五、六十億だと考えます。
  43. 阪上安太郎

    阪上委員 要するに標準税率をこえて課税しておるものは大都市になくて、その他の市町村には標準税率をこえて課税しているものが、大体四分の一くらいになっているのじゃないか。そうしますと、やはりこれも貧弱団体住民にとっては、相対的に大きな負担増になっている。こういうことだと思うのですが、これは認めますね。
  44. 柴田護

    柴田政府委員 貧弱団体標準税率の超過課税が多いという事実は、御指摘の通りでございます。従って、貧弱団体住民負担が重いとおっしゃれば、それもその通りでございます。ただ、なぜそういうことになっておるかというところに問題が実はある。そこには単に税制だけの問題ではございませんで、財政的な問題がひそんでおる、こういうことでございます。
  45. 阪上安太郎

    阪上委員 この辺でやめますが、国保税について相当低額所得者に対して軽減措置をとっておる、これは非常にけっこうなことだと思いますが、しかしながらこの前も小委員会等でちょっと御意見等を聞いておったのですが、まだ十分でないと私は思うのです。こういうように考えて参りますと、地方税の大部分の種目にわたって、やはり地域間の格差というものが大きな原因となって、団体間の格差というものが大きな原因になって、そうして比較的、相対的に低額所得者に大きな負担増になっておるということは、私は明々白々たる事実だと思うのです。そこでこういった問題を一方にかかえながら、一方において全体の税負担の軽減をやって、いわゆる減税をやっているというような矛盾が出てきておるわけなんです。従って、こういった問題を抜本的に解決しなければ、負担の公平などというものは保たれていかない、こういうことになると思うのですけれども、この場合に、いろいろなことを言いますが、現在のような地域間の格差がかなり広がっておる、東京鹿児島ではもう格段の相違があるのであります。そして一方において地域開発等がそのことのために進められておるのでありますが、なかなか一挙にこの格差を縮小するということは、簡単にはできない。そうすると、繰り返して言いますけれども、現在のやり方では低額所得者負担というものは高額所得者に比べて、あらゆる地方税種目の中で依然として相対的にそういう徴候が如実にあるわけであります。これを何とか是正していかなければいけないと私は思います。その是正の方法、小細工ではこれはとてもやれない。そこでこの場合、将来のこともありますけれども、こういった問題を考えてみるときに、現在のような地域開発の速度ではとてもじゃないが是正ができないのではないかと思いますが、この場合に考えられることは、やはり交付税の総額ですね、こういったものを補てん財源として一方において握っておいて、そういう考え方を頭に置いて処理していくということでなければいけないのではないか。ほかのいろいろな税種目をかわり財源として持ってくるという考え方では、何か同じところをぐるぐる回っているような感じがする、こういうことなんであります。局長として、大臣がおれば大臣にお答え願いたいと思っておったのでありますが、交付税率をこの際もっと上げていくのだということが適当であるということにあなたは同意されるかどうか、こういうことはどうなんでしょうか。
  46. 柴田護

    柴田政府委員 おっしゃるように、交付税率そのものに問題が、私個人はないとは思いません。ないとは思いませんが、直ちにおっしゃるような段階で物事を片づけなければということは、私は若干疑問を持つのであります。と申しますのは、やはり地方公共団体であります以上は、交付税という手段に訴えるのは、最終の手段にしなければならぬのではないか。でき得べくんば独立税源でもって努力する方向でものを考えていく手段方法があるのではないか。だから国と地方との間において行政事務の再配分等も頭に入れながら、税の再配分をしなければいかぬということは、必至でございます。同時に、その結果、交付税というものが現行税率を維持した場合に、どういう姿になるか、これを考えて、その上でどうするかという結論を出すべきではなかろうかという順序を、いきなり交付税に持っていくということはいかがなものであろうかと考えるのでございます。
  47. 阪上安太郎

    阪上委員 あなたはそう言われるけれども、先ほどから私は例をあげて言っておる、現在のような地域間の格差があって、これが是正されない限りにおいて、独立財源としての地方税でこれを処理しようとしても、偏在しない税種目というものはなくなってしまっているのではないか。だから税でやるということ自体が非常に無理がある。理想としては交付税額を、将来地域間の所得格差が是正されるならば、できるだけこれは行政の質その他が均質化される傾向にありますから、これは交付税を減らして独立税源を与えていくということは私はいいと思う。しかし現在のような段階で軽々に独立税源を与えるということになりますと、今のような貧弱団体は、住民負担が特に大きくなっていくということになるので、妥当でないということを私は申し上げておるのであって、従って、長い将来を言うのではなくて、現在のような状態においては、やはり交付税率を上げるというようなことによって対策を立てていくというのが、むしろ正しいのではないかということを私は言っておるのです。
  48. 柴田護

    柴田政府委員 お言葉を返すようでありますけれども、そこのところがちょっと違うのでございます。と申しますのは、先ほど私が申し上げましたように、今府県でも市町村でも、非常に困っております団体、それは開発を要する地域につきましてはもちろん困っておりますけれども、そうでなくても、現在発展しつつある都市を含む府県とその市そのもの、こういうところに地方税制度としては非常にネックがあるように私は感じます。そうしますと、そういうところに税源を与えて参りますと、当然偏在する税種しかない。しかし、ないかわりに、いなかの方にはあまり税金はいかない。そういうところには税源はいく。そういう団体税源が参りましても一向差しつかえない。そうしていなかの方には別におっしゃるようなむしろ低額所得者に対する負担の合理化という問題がある。これは一緒にやったってかまわぬじゃないか。なるほどそういうおっしゃるようないなかのほんとうに僻遠の地に対しましては、手段としては交付税源を配分するしかございませんけれども、その場合に今陥没地帯みたいな形になって、現在でも交付税をもらってやっと行政をやっておるような、発展途上にあります都市、こういったものにつきましては、むしろこれを不交付団体に持っていくような格好で税源を与えるべきじゃないか。そうすれば交付税が逆の方に流れていく、従って、そういう方向をとります場合には、いきなり交付税云々という問題は出てこないのじゃないだろうか。地方自治の立場からいいますれば、そういう意味では、むしろ税源の再配分が先じゃないかというふうに思うのであります。
  49. 阪上安太郎

    阪上委員 そうしますと、そういった貧弱団体に対しては、当然交付税で見ていく、だからそれで十分じゃないか、こういうことになると、それが逆説的に独立税を与えても、それに独立税源を拡大してやっても、これは意味がないということになるのじゃないのですか。
  50. 柴田護

    柴田政府委員 お説のお気持はわからぬでもありませんが、やはりちょっと行き退きじゃなかろうか、やはり地方自治を守るという立場に立ちますれば、でき得べくんば独立税源、それも住民に過重な負担をしいないような意味合いの独立税源というものがあれば、それを考えていくのがまず第一じゃなかろうかというふうに思います。
  51. 阪上安太郎

    阪上委員 しかし交付税は地方の財源であって、国の財源でも何でもありません。そういう意味では、今の独立税財源論にはならぬと思うのですが、それとも局長さんは、交付税は国の財源だというふうにお考えになっておりますか。
  52. 柴田護

    柴田政府委員 交付税性格をめぐるいろいろな論議がございますが、私は独立と申しますか、地方税だ、地方公共団体の共有財源だという論者の一人でございます。しかしほんとうの独立税源というものと交付税というものには、やはりその独立性に差異がある、その差異はやはり尊重すべきじゃなかろうか、かように存ずるのでございます。
  53. 阪上安太郎

    阪上委員 これで終わりますが、独立性に差異があるというところはどういうところですか。
  54. 柴田護

    柴田政府委員 自分固有のものと人様と共同のものというものは、おのずからニュアンスの相違がございます。それと同じ関係だと考えます。
  55. 永田亮一

    永田委員長 門司亮君。
  56. 門司亮

    ○門司委員 最初に聞いておきたいと思いますことは、今度県民税の改正がどうしてできなかったかということであります。これは御承知のように、非常に悪い改正が行なわれておって、高額所得者に軽減されておることは事実であります。従って、これについては各都道府県の、全国とは申しませんが、議会でも、かなり問題になっておると思うのです。そういう問題がどうして今度の税制改正で取り上げられなかったのか、その理由を先に聞いておきたいと思います。
  57. 柴田護

    柴田政府委員 実は昨日も太田先生から同じような御質問がございまして、お答え申し上げたのでございます。県民税はいろいろ御批判もございますけれども、これは所得税地方財源との財源移譲の一つの形でございます。両方考えました場合には、高額所得者につきましては必要な調整が行なわれておるわけでございますので、そのこと自身につきまして、私どもは特別に問題があるとは思っておりません。また税制調査会等におきましても、住民税の問題は、基本的にはむしろ市町村民税の問題だというような御認識のもとに、いろいろ御議論があったのでございます。私どもは、せっかく制度が新しくできたことでもございますし、その制度の趣旨そのものが、おっしゃるような姿を実際に描いているかどうか、所得税と総合してどういうことになるのかという問題は、今のところ御指摘のようには考えておらないのでございますが、その結果を見てからもし非常に不合理な面があれば、それを直す必要はございましょうが、まだ実施したばかりでどうこう言うことは早計ではなかろうかというように考えている次第でございます。問題は、むしろ市町民税にあるのではないかと考えております。
  58. 門司亮

    ○門司委員 実に不思議なお話を聞きますが、国税地方税が、負担する方の側からいえば、同じ人間が負担するから同じものだということは、一応言えるかもしれませんが、しかし税の性格からいって、その使用される目的からいって、非常にこれは大きな相違を持っているもである。国税地方税を通算して、所得が軽くなったからいいというようなことを自治省が言うべきではない。これは大蔵省ならそれくらいのことは言いかねない、池田さんならそのくらいのことは言いかねないと思います。しかし、自治省の建前として地方自治体を守ろうとすれば、国税国税としての建前があります。要するに税の使用目的が違うのでありますから、税を考える場合に、ただ負担が同じならばよろしいという考え方ではなしに、やはり税の一番最終の目的である使用目的についての考え方というものが、税制の上にかなり大きく考えられないと、住民は納得しないものです。住民を納得させようとすれば、こうした税金をとって、こういう形でここに使われているということがわからなければ、地方行政というものはやれない。地方の住民の理解と協力がなくて地方行政をやっていけといってもできない相談です。そういうことを考えると、今の答弁は非常におかしいと思う。国税がいかようにあろうと、国税国税としての一応のものの考え方を持つべきであって、地方税地方税としての一応のものの考え方を持つべきである、そういうことであろうと思いますので、まず前段でそのことを聞いたのでありますが、そうすると自治省の基本的なものの考え方としては、一体地方税というものをどうお考えになっておりますか。地方税というものの性格をお互いにもう少し掘り下げて検討する必要がありはしませんか。ことに今度の県民税というものは、明らかに一部の高額所得者が非常に楽になっているし、低所得者にはふえてきていることは計数上事実である。そして国民に納得させるのに、この税金とこの税金とをつなぎて合わせれば安いから、お前の方はよろしいということでは、住民は納得しませんよ。国で使う金と地方の都道府県で使う金は、おのずから違いますから、その考え方だけは一つやめてもらいたいと思うのです。そしてやはり県民に納得のいくようにしてもらいたい。あの家ではたくさん所得税を納めるから県民税は少なくてよろしいというような理屈が、一体どこで成り立つのですか。もしそういう考え方であるとすると、これからもう少し数字的にはっきりした御答弁を願いたいと思うのです。これはきのう発行されたものと聞いておりますが、この数字を見ましても、これは主として農家でありますが、全国の農家五千七百七十六戸を調査した場合に、所得税の問題で申告課税が、東京が七万一千円という数字が出ている。ところがこれがずっと下がって参りますと、どういう数字があるかというと、非常に少ないところでは、計数の出てないところもありますが、熊本県のごときは十五円しか出ておらない。そして県民税の場合にこれはどういう数字になってきておるかというと、東京が三千八百一円という数字が大体出ております。同じ熊本でここは四百二十三円という数字が出ておる。この開きは一体どうなっておるかということです。都道府県民税の方は、東京が三千八百一円であって熊本が四百二十三円である。申告所得税の面については東京が七万一千円であって、熊本は十五円である。こういう統計が農林省から出ておる。農林省のこの統計が誤っていないとするなら、私は非常に大きな問題だと思う。今のようなお話でこれを受け取れるかどうかということであります。所得を追っておるからよろしいのだというが、もう少しものを考えてもらいたいと思う。べらぼうに大きな開きを持っておるということを考えてもらいたい。そういう点でどうなんですか。もう少し考え直して、地方税地方税としての性格が当然ありますから、地方税性格に沿った、県民にわかりいい税金をかけるというようなことになりませんか。大蔵省のペースに巻き込まれて、そして池田さんの答弁のような答弁をここで聞くということは非常に遺憾です。この点については税の基本的な問題に触れますので、大臣に出て来てもらって、大臣が地方の財政をどう考えておるか、この際一応私は聞きたいと思うのですが、今柴田君から毛、もし何なら地方税国税関連性を一体どう考えておるか、基本的な問題を一つ教えておいてもらいたい。
  59. 柴田護

    柴田政府委員 むしろ私の方から教えていただかなければならぬのでございますが、地方の所得課税をどのように考えるかという問題について、いろいろ考え方があろうかと思うのであります。私どもは、地方の住民とその課税団体との距離が縮まるに従って、その税の負担分任というと語弊がありますが、負担分任的の色彩が強くなってきておる。そうしますと所得課税の場合におきましては、比例税率程度の累進をはかった税制というのがいいのじゃなかろうか、こういう考え方を実は持っておるわけでございます。またそういう考え方の線に沿って先般の改正が行なわれたと考えております。ただおっしゃるように、府県民税の今日の形の累進度というものがそのままでいいのか悪いのか、市町村民税の合理化の姿を考えました場合に、市町村民税府県民税と相関的に考えて、ああいう形でいいか悪いかという問題につきまして、問題が全然ないかと言われますれば、全然ないとは言い切れないかもしれません。しかし考え方といたしましては、地方税の持つ性格から考えました場合に、そういう考え方になっていくのじゃなかろうかというように私ども考えておる次第でございます。
  60. 門司亮

    ○門司委員 今のせっかくの答弁ですけれども、われわれが地方の税財源を見る場合に、地方税をふやしていただきたいという原則の中には何が含まれておるかということは、さっき申し上げた通りでありまして、住民の協力を得るには——自分の納めた税金がどういう形に使われておるかということが、如実にわかるような税金というのは地方税です。国税は、国家目的のために使っておりますから、外交の問題に使ったり、やらなくていい再軍備に使ったり、いろいろなことに使われておる。従って、自分の税金がどれくらいに使われておるかということを見る場合には、回り道が遠いのであります。ところが地方税というのは、その点は、自分の納めた税金が直ちに道路になり、学校になり、あるいは環境の整備が行なわれるという点で、近いところに税金は置くべきです。身近なところに置くべきです。従ってそういう考え方から、われわれは、たとえば交付税の問題についても、大体限度があるのじゃないかと絶えず考えておる。国からたくさんもらうことばかり考えておったのでは、地方の行政というものはやりにくくなる。いわゆる中央依存度が非常に高いということでは、住民の協力が得られない。従って、できるだけ税金は地方におろして、地方の住民負担したものが、今申し上げたような形で行なわれることが好ましいのである。またそうでなければならぬはずである。そこでおのずから税財源についても地方税国税というものは区別さるべきである、こういうふうにわれわれは考えて、今日まで税制についていろいろ議論をしてきた。ところが、何か所得税の付加税のようなものの考え方で県民税が考えられておるとするならば、これは私は基本的に誤りだと思う。事業税が云々されるのは、やはり問題はそこにある。事業税性格論から、事業税国税を追っていくように、ちょうど所得税の付加税のようなものには考えたくない。従来の付加税制度というものが、やめられて、新しい税制の確立を見たのはそこにあるのであって、自治省自身が都道府県民税というものを所得税の付加税のようなものだと考えているとするならば、これは私は非常に大きな誤りだと思う。だからこの点については、もう少し現実の問題を一つ私は見てもらいたいと思う。しかしこの問題は、今局長議論をしてみたところで始まらないので、結局大臣に出ていただいて、大臣との間でこの問題について基本的な問題を一つわれわれは考えていきたい。  そこで、直ちに私は次に移りたいと思いますが、次に伺っておきたいと思いますことは、固定資産税の問題であります。御承知の通り政府は近いうちに固定資産税に対する基本的なものの考え方を求められようとしておる。いわゆるこれを調査して、そうして価額の決定その他等については調査を進められておるように思いますが、今多くの日本国民というよりも、むしろ農民が疑惑を持っておりますのは、この政府の態度に対して——農地は昭和三十九年、家屋は四十年からですかに改めようとするそのいき方について、一体税金がふえるのか、減るのかということについて、かなり疑惑を持つというよりも深い関心を持っておるということが言えるかと思いますが、自治省の態度は、一体、今表面はできないかもしれませんが、どういう方針で臨まれるのか。税金を上げるためにああいう調査をされているのか、下げるためにあの調査をされているのか、その辺を一つこの機会にはっきりしておいていただきたい。
  61. 柴田護

    柴田政府委員 固定資産税の再評価の問題につきましては、先生御承知の通り、昨年法律改正が行なわれまして、それに基づきまして現在作業いたしております。今日の段階で申し上げますと、一応固定資産評価制度調査会の答申に基づきまして評価基準の試案を各町村に示しまして意見を聞いております。それから、かたがた基準地また基準家屋につきまして調査を始めておりますが、まだその結果がわかりませんので、全体としてどのような形になるかという傾向を実はつかめておりません。ただ再評価いたしますために評価額がおおむね上がるであろうということは、これは傾向として言えることだろうと思うのでございますが、しかし負担をどうするかという問題につきましては、あの答申にもございますように、現行制度による額以上に増収を求めるものではない。従って当然に税額調整その他の負担調整の措置を講ずべしとなっておりまして、私どもも基本的にはその態度でおります。従って、ただ負担調整と申しましてもいろいろこれは複雑な形があるだろうと思うのであります。非常にこれは問題をはらんでいると思いますので、この辺につきましては政府側に設けております税制調査会等の審議を十分尽くしまして、その結果に基づきまして適切な措置をとりたい、こういう考え方でおります。
  62. 門司亮

    ○門司委員 事務的の答弁ではそういうことになろうかと思いますが、もう少し政治的に、一体結果論として政府がただ負担均衡考えるために、こういうことにするのだということだけでは、農民はなかなか承知しないと思います。これはなぜ農村にそういう空気がだんだん出てきておるかといいますと、純農村の農地の地価というものはそう変わらぬと思います。都会を中心とした五十キロか七十キロの範囲の土地というものは例外でありますが、純然たる農山村の地価というものはそうむやみに変わっておらない。そうだとすると、税制が変えられるたびに、何か最近盛んに言われておるように都市の近傍の土地が非常に上がっておるので、そういうものに右へならえさせられるのではないかという農民の懸念のあることは私は当然だと思う。だからこういうものについて、今のような御答弁ではなくて、税金をよけい取るのではないというような答弁がもしできるなら、この際一つはっきりしておいてもらいたい。ただ負担の不均衡だけを是正するんだ、負担均衡といいますけれども負担均衡というのはいろいろの見方があって、今申し上げましたようにばかばかしく高く売れるようなところと安いところの負担均衡すれば、安いところは高くなるにきまっている。むしろこのことが、地方の税金であります関係から、地方税としてのものの考え方の上に立って、同じ地域社会における不均衡があってはならない。これを是正するんだというなら、これは話がわかる。しかし全体的の地価が上がっているからというような考え方になると、とんでもないことになるということが一応考えられる、その辺を一つはっきりしておいていただきたい。同じ是正するといっても、全体的のものをひっくるめてものを考えているのか、あるいはおのおのの地域社会における不均衡を是正しようとするのか、そういう点を、どっちなのかこの際はっきりしておいていただきたいと思います。
  63. 柴田護

    柴田政府委員 御質問の御趣旨よくわかりますが、そもそもこの問題が起こりましたのは、従来の評価制度が、いわば上から押しつけと申しますか、指示平均価格を支点とする評価の仕方をしておりましたのと、もう一つ市町村が自治大臣の示す評価基準に準じてやるという形でやっておりましたので、市町村によりましては、旧来の賃貸価格を基準にしたやり方をやったり、あるいは進んだやり方をやったりてんでんばらばらだった。そこで市町村間にも不均衡がございますし、それからまた資産間にも不均衡がある、これを直そうじゃないかというのが出発点であったわけでございます。従って、そういう意味合いから、調査会の答申では、農地につきましては従来の収益還元方式を改めて、これを売買実例価格から出発する方式に切りかえろ、ただし農村におきますところの売買実例というものは正常取引価格ではない、そこでこれにつきましては、平均収益額の限界収益に対するいわば限界収益補正と申しますか、そういうもので補正をする、そういうやり方で再評価をしろ、こういう答申になっておるわけでございます。私どももそういう形において、農地の売買実例価格から不正常な要素を差し引いただけでも必ずしも適当でない、そこでそういう補正をいたすことによって収益率による、いわば収益率的な補正をそこへ加えていく、そうしまして適正な地価を導き出す、こういうやり方でやっていく方針をとっております。  この結果でございますけれども、当然税率調整の問題も起こって参りますけれども、農地につきましてあまり今ここでどうなるということを申し上げる段階でございませんけれども、私どもとしては、その持つ性格上、そうむちゃな事態が起こるといったようなことは考えてもおりません。  それから地域社会の動向という御質問でございましたが、これは先ほど申し上げましたように、地域社会におきます税負担均衡の問題もございますし、資産間の均衡の問題も両方込めてこの際是正をしろ、こういうことでございまして、その線に従ってやっておるわけでございます。
  64. 門司亮

    ○門司委員 だんだんわかってくるように思うのです。もう少しわかりたいと思うのですが、農村の、ことに農地の問題に関する限りは、私はこれを売買価格と見るべきではないという一つの基本原則を立てるべきだと思います。今日の農地は売れないのであります。農地はある制限を受けておりまして、広さによって都道府県知事の許可、あるいは少し大きければ農林大臣の許可を受けなければ転用はできないことになっております。従って、農地の売買価格というものが中心になって固定資産税が議論されるということは、議論としては少し行き過ぎだと思います。実態としてはあるいはそういうことがあるかもしれません。しかし理論の立て方としては少し行き過ぎじゃないか。あくまでも農村の場合は収益を中心としたものの考え方の方が正しい、私はこういう考え方を持っておりますが、そういう点はどうなんですか。農地に対しては、あくまでもやはり収益還元方式をとってきめるということが、私は農地の固定資産税の場合は正しいのだという見方を実はするわけです。なぜかと申しますと、さっき申しましたように、売買は一応禁じられておるのが建前なんです。そういう建前であるにもかかわらず、政府はいや売り値がこうだからということになれば、これは売ってもよろしいという形が出てくるのであります。その辺のものの考え方を、私はもう少し政府として明らかにしておいていただきたいと思います。だから、農地に関する限りはやはり収益還元方式をとるのだという形に戻ることはできませんか。
  65. 柴田護

    柴田政府委員 土地の評価をどうするかという基本問題がその奥にございまして、土地に対する評価というものに何から近づいていくか、そのアプローチとして売買実例価格から出発をする、こういう方式に統一をして、農地もその他の土地も、全部均衡をとるようにしたいというのが調査会の主眼であると思います。しかし農地につきましては、おっしゃるような問題もありますので、そこで先ほど申しました限界収益補正と申しますか、そういう補正をして特殊性を表わしていきたい、こういう考え方であります。
  66. 門司亮

    ○門司委員 そこで問題になってくるのは、農地としてのものの見方と、固定資産税全体との関連性をどういうふうに見るかということです。農地の場合は、土地自身についての売買価格はむろんございます。財産であることには間違いはない、しかし土地自身というものから実際はそういう値打が出てくるかどうかということについては、私は疑問があるのであります。なぜかといいますと、土地、ことに農村の土地は、土地自身がじっとしておったのでは三文の価値もないのです。やはりその上に農民の労力が加わらなければならない、あるいは肥培管理をしなければならない。収益を得ようとすればそういうものが加わってきて、初めて土地の価格というものが出てくるのであります。そういうものを加えても、なおかつ十石とれるところと三石しかとれないところとがある。農村の土地の価格というものは、それによってきめられる。だとすれば、この農地自身が、社会的環境というような形で都会の土地できめられるのとは私は非常な相違を持っておると思うのです。都会の場合は、何も地主さんが土地の上を耕さなくても、骨折らなくたって、都市の発展過程の中で自然にその土地の価格というものが出てくる。農村の場合はそうじゃないと思う。従って同じ土地だといっても、農地の固定資産税を評価する場合と、都会における土地の評価の場合とは、おのずから異なった見方をするのが私は正しいと思う。そういう面から考えてみて、固定資産税とのかみ合わせをどうするかといえば、固定資産税の中にある、いわゆる事業の用に供しておる機械とか機具とかいうものも一つの財産であり、一つの物であることに間違いはない。しかし、機械というものは稼働しなければ収益というものを上げ得ない、非常に高い一つの価格は持っておるが、ほんとうにその価格としての価値は、いわゆる稼働によってのみ初めてこれが生まれてくる。農村の土地は、私は考え方としてはそう変わらぬと思う。考え方としてはそう大して違った考え方ではいけないのではないか。そうするならば、農村の固定資産税については、税率を下げるか、あるいは価格全体についての免税点を求めるか、いずれかの形が行なわれなければ、土地自身が農村の労力によって初めて収益を生む価値のあるものの間の均衡がとれなくなると思う。そういう点についてどういうお考えであるか、一応聞いておきたい。
  67. 柴田護

    柴田政府委員 先生のおっしゃるところはよくわかるのでございますが、土地全体の評価の均衡という、資産の中の均衡を保つという意味から、適正な地価を求める出発点として売買正価というものを出発点にすべしというのが答申の態度でございまして、それをきめます場合にはお話しのような御議論もあり、いろいろ激しい議論があったようでございます。私はその当時おりませんでしたけれども、聞きますといろいろ激しい議論があった。結局適正な地価を求めるというその最初の出発点をどこに置くかということにつきましては、少なくとも農地も含めて土地全体について売買実例価格というものから出発して適正価格を求めるのだ、こういう方式によるのが一番いい。しかし御指摘のように農地については特殊事情があるものですから、その特殊事情は十分反映させるような方途を講ずべし、それと限界収益率による補正、こういった形によってこれを求めたのでございます。答申の趣旨を尊重して作業にかかっておるわけでございます。なお、しかしそれだけでは、限界収益率だけでいいか悪いかという問題も一つ実はございます。たとえば積雪寒冷地帯の問題その他の問題もあるわけでございまして、そういう問題につきましてはなお慎重に検討して参りたい、かように存じております。
  68. 門司亮

    ○門司委員 私が申し上げておりますのは、これを農家の実態調査の中からずっと引き出して参りますと、各府県別の調査が——きょうは持ち合わせておりません。大きいのだけしか持ってきておりませんので、ここで数字を全部覚えておりませんが、方面別にこれを見て参りましても、固定資産税の面で小農と大農との開きが非常に実は少ないのであります。一々各地方別に数字をあげてもらいたいというのなら、これから申し上げてもちっとも差しつかえありません。きのういただいた農林省の統計でありますから、大体間違いないと思います。これをずっと調べてみますと、たとえばこれは北九州でありますが、北九州の例をとってみますと三反未満のごく小さな農家の固定資産税が三千五百八十九円になっておる。二町以上を持っておる富農のところでわずかに一万九千三百九十六円という数字が出ておる。二町と三反未満でありますから約十倍にならなければならないはずのものがこういう数字しか出ていない。六倍ちょっとの数字しか出ていない。こういう面が如実に出てきている。これは各地方別にずっと読んでみますと、大体似たような数字を持っております。南関東においても同じことであって三反未満が二千八百三十円納めて、二町以上が一万七千八十九円しか納めていない。農村の固定資産税というのは大体田畑と家屋にかけられておると思うのですが、十分の一の農家の固定資産税と、それの十倍の経常能力を持っている——収益というのは全然別ですよ。土地の広さだけです。富農や貧農ということは別にして、こういう税金が明らかに出てきておる。そうすると、どう考えてもやはり小農といいますか、少ない方に税金がよけいかかっているように数字が明らかに物語っている。これは全国みんなそうなんです。こういう問題を見てみますと、固定資産税についてはもう少し、特に農村の固定資産税については配慮する必要がありはしないか。今のお話のように、同じものだからということで同じようにやっていくとおかしいのじゃないか。むしろその範囲で控除なり何なりをもう少しはっきり見るという態度が望ましいのじゃないか、こういうふうに考えるから実は聞いておるのでありますが、税の均衡と、こうおっしゃるから、税の均衡なら直してもらいたい。そういう点はどうなんです。あなたの方にもこういう統計はあるでしょう。農林君だけが持っておるわけじゃない。
  69. 柴田護

    柴田政府委員 よくわかるのでございますが、この出発点だけを同じにしておるわけでございまして、従って、農地についてはその特殊性から、特殊の補正方法を考える、こういう基本的態度で進んでいるわけです。お話しのようないろいろな問題が多々残っていることは私どもも承知しております。従いまして答申で指摘しております収益的な補正だけで済むのか、済まぬのかという問題もあるわけでございますので、十分お話の趣旨も勘案いたしまして、慎重に評価基準の決定をしたい、こういう態度で進んでおります。
  70. 門司亮

    ○門司委員 非常にくどいようですけれども、農地の問題は、年々こうなんですね。ことしだけの統計がこう出てきているわけではないのです。二十八年ごろからこの統計がずっと出ておりますが、毎年の統計がこういう数字が出てきておる。だからやはり農村のそういうごく小さな土地しか持っていない人は、非常に割高な税金を納めておるということは事実上明らかになっておる。従って、そういうものについても、私はどこでこれが調査されておるか、調査の基礎がどこにあるかわからないが、もし自治省にもこういう統計があるとするならば、この際一つ指導される立場としては、こういう村内において不均衡の少ないように鋭意配慮願いたいと思う。これは自治省のいうように、税の均衡をやっていこうとするのには、こういうものは統計的にこういう形で現われないように一つしておいていただきたいと思う。  それから次に聞いておきたいと思いますことは、住民税負担の問題の全体の問題でありますが、これについても統計をずっと読んでみますと、少額所得者ほど非常に大きな幅の税金を納めておる。それからこれが国税地方税との関連を見てみるともっと大きく開いておる。今申し上げましたような、たとえばこれに書いてある数字をそのまま私ども一応の正しい数字として見て参りますと、国税全部を、たとえば所得税あるいは山林所得であるとか、相続税であるとか、再評価の税金であるとかいうようなものをずっと加えてみても、国税でたとえば全府県の平均というものが三千三百八十五円という数字が出ておる。ところがこれが県税になってくると七百七十九円というものが出てきて、そうして市町村民税では一万五千七十二円という数字が出てきております。農村の場合には地方税の中にある一つ事業税をかけておりません。だから形の上からいけば、私は地方税の方が少なくてもいいのじゃないかというような気がする。事業税をかけてないということと、それから農村には所得税を納めておる人が非常に少ないのでありますから、農村の統計をとるからこういうものが出てきたんだという議論もあるいは成り立つかもしれませんが、私の感じでは必ずしもそうではないのではないかという感じがする、国税地方税との均衡から考えて参りますと、特に農村の課税というのが非常に大きくなっておる。重たい形が出てきているように見受けられる。この辺を自治省はどういうふうにごらんになっておるか、国税地方税との農民の負担区分の関係をどういうふうに見ておられるか、都会との開きがどういうふうになっておるか、調査されたことがございますか。
  71. 柴田護

    柴田政府委員 その辺のところを総合的に検討をする必要があるということを私どもは感じておるわけでございますが、まだ調査したことはございません。ただ全体の傾向として市町村に参りますと、農民の場合をつかまえますと、非常に市町村民税負担が多くなっておるということはわれわれも承知しておるわけでございます。特にそういう農村に参りますと大体第二方式住民税につきましてはただし書き方式をとり、しかも超過課税をやっていることが多うございますから、その分については負担が重くなっている、かように感じております。その合理化について、どうするか、せっかく検討中でございます。
  72. 門司亮

    ○門司委員 その次にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、住民負担の中で、租税といわゆる公租公課というものとの関係です。これをどういうふうに見ておりますか。これは実は農村には、力というか、農民にとっては同じような作用をするものでありまして、公租としての税金と公課としての負担金——寄付金は別です。公課の中に寄付金が入るといえば入れてもよろしいと思いますけれども、この割合は一体どういうふうに見ておりますか。
  73. 柴田護

    柴田政府委員 それを統一的に調べたものは実は持ち合わせておりません。おりませんけれども、農村の場合を考えますと、いわゆる公課といわれる受益者負担的なものが相当多いということは、察するに余りあるのであります。と申しますのは、土地改良その他につきまして、相当農民負担の受益者負担金を徴収されておるだろうということを考えるのでございますが、公課の場合でも受益者負担金的なものは、ある程度はいたし方がないのではなかろうか、このように考える次第でございます。税外負担をどうするかという問題がそのほかにあるわけでございますが、税外負担につきましては、前々からここで政府側からいろいろお答え申し上げておるように、その解消はなかなかはかばかしくございませんけれども、これは当然解消に向かって邁進する、かように考えておりますが、受益者負担的な公課につきましては、ものによってある程度のものはやむを得ぬのじゃないかというように考えております。
  74. 門司亮

    ○門司委員 その問題ですが、実はきょう時間がゆっくりあれば、全部統計を聞いて、もう少し議論してもよろしいかと思いますが、時間もそうないようでありますから、こまかい議論は避けて参ります。  この中で、私は非常に驚くというよりもむしろ奇異に感じておるのは、市町村の割当寄付というものがどこにもあるのです。これはちゃんと書いてある。それからその次に書いてあるのが学校関係の寄付、消防団割、公民館割、道路修繕費、農業委員会費、民生事業寄付、その他の市町村寄付、こう書いてある。これはある場合にはありましょう。今のお話のように農業団体がたくさんありますから、たとえば農業団体の費用としては農業共済組合の負担金であるとか、あるいは森林組合の費用であるとか、農業協同組合の費用であるとか、たばこ耕作組合の費用というように、事業目的を持つ一つの問題があることは事実であります。ところが、この中で見のがすことのできないのは、今申し上げましたようなものと、さらに部落協議費というものがやはり書いてある。ずっとこういう関係を見て参りますと、税金の方もその通りでありますが、さっき申し上げましたような住民の経営規模の形からこれをとって参りますと、小農の方が非常に大きいのであります。富農になるほど割合は非常に少ない。これはさっきの数字でも申し上げた通りであります。これは南海でありますが、南海地方の統計を見ても、三反未満のところで、国税地方税を総合して五千七百八十九円という数字が出ております。そうして一番上の二町歩以上の耕作面積を持っておる諸君が三万六千六百九十五円という数字しか出ておらない。これは例の国税地方税を通ずる大体の割合であります。これは国税だけをとってみますと、国税の方では、三反未満が六百二十六円しか納めておらない。そうして、二町歩以上のところが大体三千百八十六円納めている。ずっと下に下がっていくと、地方税がどうなっているかというと、地方税の方の総計を見てみますと、県民税の総額がごく小さいところでは百七十四円になって、これに市町村民税が四千九百八十九円ということでございます。これは大体五千円をちょっとこえる数字になっておる。これが二町歩以上のところに出て参りますのは、県民税が二千九十八円で、市町村民税の限界が三万一千円という数字である。これは両方加えて参りましても大体三万三千円程度。その間ずっと規模別に一、二、三、四、五、六、六つの段階に分けてありますが、大体似たりよったりの数字が出ている。そうすると、さっき阪上委員からもお話がありましたような必ずしも少額所得者ということが当たるかどうかということは別にいたしまして、農家経営の形からいって、経営規模の小さいものほど割高な税金を納めているというようにはっきり数字が出ている。一体この辺をどういうふうに考えられているか。都会の場合は、案外こういう問題は少ないのであります。所得に多くは関連いたしております関係上比較的少ない。しかし、農村では何といっても経営規模というものが一つの大きな問題になっております。しかも市町村民税、県民税というものは、大体収益に課する。所得税的なものは少ない。主として土地のような、固定されたものに税金がかかってきている。だとすれば、やはり小規模のところ小規模なりに、大規模のところは大規模なりに課税あるいは徴収されるのが当然だと考える。収益に関する税金はほかでとっておりますから、国税の方に移管されているから、ここにはあまり現われてこないでしょう。にもかかわらず、こういう数字に現われているのを自治省はどういうふうにお考えになっているか、これを是正するつもりはないかどうか、もし是正するつもりがあるならばどういう形でこれをなされるか伺いたい。
  75. 柴田護

    柴田政府委員 お話の計数の基礎になっているものを実は少し検討いたしたいと、今お話を伺いながらさように私は感じたのでありますが、ただ、地方税の場合は、農村の方に行くに従いまして、どうしても負担の差が縮まっていく傾向を持つのは、地方税性格上ある程度やむを得ない。また、地方税であります以上は、ある程度そういった負担分任的な色彩を持つのもこれまたやむを得ないと思うのであります。しかし、御指摘のように、それがあまりひどい形になっておりますのは、私の考えますところでは、どうもそれは住民税じゃなかろうか。あるいは固定資産税の評価の問題もそこにあるかもしれません。そういうような問題につきましては、住民税、固定資産税ともに現在問題になっておりますし、その改善の方向に向かってわれわれ努力しておるわけであります。あまり税の負担の妙なかけ方は当然是正すべきものだというふうに考えておる次第であります。
  76. 門司亮

    ○門司委員 理屈を言うようですが、農村に行けば行くほどそういう形の出てくるのは当然のようなお話ですけれども、私もある程度のものはそういう形が出てこようかと思います。同時にまた、地方行政自身を考えてくれば、そういう問題が出てもある意味においては差しつかえないと考える。やはりたくさんものを持っているところ、あるいは力のあるところ、設備の十分、行き届いておるところは税金が減ぜられてきて、設備のないところ、これからやろうとするところはどうしても過重されてくるということが考えられる。俗に言えば、村全体がコーヒーを飲めるところならば、コーヒーを飲んでもちっとも差しつかえない。そうして、村全体番茶でなければやれないところは、番茶でがまんする、こういう地方行政自体の基本的なものの考え方についてはそういうことが言えるかもしれない。しかし、今日のところは必ずしもそうなっていないのでありまして、国税といっても地方税といっても、地方の自治体が十分に勘案してやるというようなことができないほど幅が狭くなっているのです。もう一つ大きな問題は、国から押しつけられる仕事の量というものは、大きいところも小さいところもほとんど同じような、といってはあるいは言い過ぎかもしれませんが、比較的差のない仕事が今日押しつけられている。そういうことですから、結局力の弱いところは、それだけ加重された負担が当然行なわれるわけです。原則論として農村に行けば行くほどそういうものが出てくるというのではなくて、原則論だけで今の農村の税金というものを見ていくことは、私は非常に大きな間違いが出てくると思う。だから少なくともこれらの問題について、もう少し考慮してもらいたいということと、それからもう一つの問題は、法定外の普通税がまだ残っております。これについて自治省は一体どういう措置をとっていくかということであります。これをやめさせるという措置をおとりになるのかどうかということであります。たくさんはないようでありますが、まだ五つ六つといいますか、十くらい残っております。税種目について、これは地方的にでありますから、税額では大して大きな差がないと思う。ごく少ないものだ、しかしあまり形のいいものではございません。金が非常に少ないのだから、ちょっと自治省が何かかげんしてあげれば、そういうべらぼうな、牛や馬に税金をかけることはしなくても済むのじゃないか。この親心が自治省にありませんか。何百億とか何千億とかいうなら問題ですが、全体を集めてみましてもごくわずかなものです。そういうものをとっているところは、その業種が自治体の特別の恩恵を受けて収益を上げているというわけではないのです。これは過酷な税金なんです。これをやめさせるという方向で何らかの手が打たるべきだと思うのですが、そういう御意思はありませんか。
  77. 柴田護

    柴田政府委員 御指摘のような状態のありますことは、その通りでございます。法定外普通税につきましては、だんだん整理の方針できております。御指摘でございますけれども、現在、昔に比べますれば相当減ったと実は思っております。また一般財源的に法定外普通税を起こします場合には、御指摘のように、やはり財源措置と見合って考えていかなければならぬと思っております。現に地方交付税配分につきましても、傾斜的配分を進めまして、それに見合って零細な法定外普通税というものの整理、こういう方向で進んで参っておるわけであります。ただ目的税的に起こしますものにつきましては、これは地方税法の規定の建前から申し上げますれば、そういうものにつきましては、特に支障がない限りは許可しなければならぬというような建前になっておりますので、大体そういう特異なものにつきましては、むしろ期限を切って認めていくこういう形で進めております。しかし一般的には御指摘のように整理する方針で進んで参りたいと思います。
  78. 門司亮

    ○門司委員 そういう変な答弁はちょっと困る。一ぺん見てごらんなさい。どういうところにそういう税金をかけているか。牛馬税なんてかかっているのは東北です。牛の数が多いのは、乳牛なんか神奈川県が北海道に次いで持っている。あとは新潟や長野が持っている。東北はそんなにいない。ところが東北だけにかけている。貧弱なところほどそういうものがかかってきている。そうだとするならば、これは一体全部でどのくらいありますか。一億にはならぬのでしょう。どのくらいあるのですか。はっきりしておいて下さい。
  79. 柴田護

    柴田政府委員 法定外普通税の総額は、府県市町村合わせまして約十億、ごくわずかなものでございます。
  80. 門司亮

    ○門司委員 十億あるということですが、私はそんなにないと実は考えております。しかし私の記憶が間違っておれば、それでよろしいと思います。それだけのものが東北の税種の中に書いてあります。家畜及び牛馬税と書いてある。家畜及び牛馬ということになると全部入る。こういう問題が特に東北にある。こういう問題はなくするという方針でなくしても、かりに十億あっても、そういう貧弱な農村であるだけにやめてあげたらどうか、ほかの方法で補てんする方法は幾らでもあるのです。かりに十億あるとしても、私はこの中には犬税が含まれていると思うのです。犬税がかなり多いと思います。犬は県に通ずるかもしれません。犬税として取ることはいいかもしれぬが、犬は県に通ずるからといって、普遍的なものとして犬税が含まれておる。あとの税金は普遍的なものではありません。ごく地域が限られた少数なもの。犬税などというものは、取り方によってはあるいはいいかもしれない。そう悪い税金でないと言えるかもしれません。しかし一方においては馬を飼え、牛を飼えといって、飼えば税金を取るという不都合のないように、この税金は一つやめさせるという方針、あるいはこれに財源補てんをするという方針を、はっきり出してもらいたいと思います。次官、どうなんですか、できるかできないか。
  81. 藤田義光

    ○藤田政府委員 私も御趣旨の通りに考えています。順次廃止の方向に行くべきであると考えております。
  82. 柴田護

    柴田政府委員 ちょっと私より補足して申し上げます。先生がお持ちになっておる資料は、少し古いのかもしれませんが、牛馬税は現在もうありません。現在市町村の法定外普通税の内訳を御参考までに申し上げますと、犬税を起こしておるところは百九十七市町村、商品切手発行税が十二、林産物移輸出税が九、流木伐採税が六、広告税が七、文化観光施設税が二、屠畜税が一、砂利採取税が一、立木引取税が一、砂利引取税が一、一番多いのは犬税でございます。あとは全く特別の税でございます。
  83. 門司亮

    ○門司委員 私の持っている統計が古いと申されますが、これは農林省がきのう出した本ですよ。きのう電話がかかってきて、取りにきてもらいたいと言ってきたのです。統計は三十六年と書いてある。農林省がきのうできたから取りに来てもらいたいと言った。二十八年ごろからこの統計はずっと出ております。統計をまとめたい関係から、順次これを集めておるのです。このほかに果樹税などという税金がないわけではないのですね。そういうものを勘定すると幾らでもあります。そういうものも、犬税を除くとそう大したものではないと思う。そこでこういうものをやめたい方向だったら、どういう形でやめられますか。法定外普通税だけは特殊のもので、さっき申し上げましたように、その地方公共団体が特に援助をして、異なった形から収益を上げておるというようなものについてある程度課税することは、負担分任の形からいってこの税金があってもそう悪いとは思いません。現在あるものはできるだけ整理をする。金高はごくわずかでありますから整理をしていただきたい。今の次官の答弁は抽象的です。これを交付税で見るのか、あるいはその他で見るのか、はっきりしてもらいたい。
  84. 柴田護

    柴田政府委員 一般財源補てん的に起こしております法定外普通税につきましては、おっしゃる通りそういう弱小団体に対する交付税配分をとめまして、廃止の方向で従来やってきましたし、今後もやっていきたい。ただ現在の法定外普通税の実情は、全く特殊なものに限られるような状況に減ってきております。
  85. 門司亮

    ○門司委員 その次に聞いておきたいと思いますことは、例の税外負担の問題をどの程度、いつごろなくすかということです。私は政治的に見ましても全部なくなるとは思いません。ところが現在のところあまりにも多過ぎやしませんか。ことし税外負担を軽減するために、どのくらい財政措置がされておりますか。去年かおととしか、約百億か九十億かやったと思うのだが、それからあまり財政計画の中に聞かないのですが、あれは九十億だけでやめるつもりですか、その後はやらぬつもりですか。
  86. 柴田護

    柴田政府委員 やめるつもりじゃございません。この税外負担の解消もさることながら、それを上回る必要財政需要がある。これはそっちの方に財源をとっておられるということだろうと思いますが、従来の財政計画の中に含めました数字は、私ちょっと計数は忘れましたが、百億こしていると思いますけれども、現在も維持されておるわけでございます。しかし御指摘のように、この問題は当然解消するという方向で努力をして参っておるわけでございますが、なかなか思うようにいかない。しかし実績は、まだ三十六年度の結果が出ませんけれども、毎年少しずつではございますけれども、合理化の方向に進んで参っていることは事実でございます。
  87. 門司亮

    ○門司委員 どうも政府の処置は非常に冷淡で、幾らかずつなくなっておることも事実かもしれませんが、またふえているということでは困る。やる気ならやるで、おととしでも約二百五十億くらいあるということです。われわれがずっとこの計数を各都市別々に調べてみて想定してみると、地方税との関連から見て少なくとも七百五十億くらいのものが出てくる。農家の生計実態調査等から見ても、税金とこの数字をかみ合わせてみると非常に大きいのです。二、三年前に横浜市で実際に調べてもらったことがあるのです。そのときでも税収の約一一%くらいの数字が出ているのです。こういうものをかみ合わせてみると、実際にはかなり大きな数字になるのです。しかし自治省が二百五十億と言うなら二百五十億でよろしいと思う。それを九十億だけでやめないで、二百五十億あるというなら二百五十億だけ補てんする、あるいは補てんしたという態度をとってもらいたい。これは実際にはなかなかむずかしい問題であって異論があろうと思います。どの辺までは普通の税制でまかなうべきものであって、それ以上のものは任意に行なうべきものであるという線を引くことは、非常にむずかしいと思いますが、しかし実態においてそういう声が非常に多いことですし、一方においてはさっきのお話のように、国と地方とを通じて県民税は大体安くなっているというようなことを自治省が答弁するようなことはやめて、むしろこういう税外負担をなくすることのために努力をしてもらいたいと思う。自治省は国税の心配などはあまりしなくてよろしい。それは池田さんや大蔵大臣にまかしておいたらいい。自治省は自治省なりにもう少し検討してもらいたい。  最後にもう一つ聞いておきたいと思いますが、今度の税法改正についてはごく簡単な改正であって、われわれが今申し上げたような幾つかの問題をこの中で改正することができなかった。ただ法律だけを見てみると、ある意味においては事務的の処理みたいなものにしか見えない。こういうことではいけないのであって、やはりさっきからいろいろ議論されておりますように、今実例を申し上げましたように、だれが何と言っても小額の所得者の負担というものはかなり大きいのです。これを税の均衡を保たせようとするなら、もう少し税制において配慮さるべきだと考える。しかしこれはこの際申し上げても仕方のないことだと思いますが、県民税についての改正が今度できなかったということは、私は非常に遺憾に考えております。それは私ども考えるだけでなくて、各都道府県の県会等で、ほとんど全部といっていいくらい問題になっていると思う。これの改正を一体行なわれる意思があるのかないのかということをこの際一つ聞いておきたいと思います。  それからもう一つ聞いておきたいと思いますことは、さっき申し上げました税外負担をこの際なくするというお考えがあるかどうかということです。  それからもう一つの問題は、事業税をどういうふうにお考えになっておるかということです。今日も事業税は御承知のようにきわめて零細な諸君までこれをとられておるということと、それから所得税を追っておる形を示しておりますので、ある程度小額の収入しか持たない人にもかなり重い税金がかかってきておる。こういう三つの問題について、一体自治省はどうお考えになっておるか。私どもはことに事業税についてはもう少し免税点引き上げるべきだという考え方を実は持っておるわけであります。そのことは事業税が農村にどうしてかかっていないかということ。農村には事業税はかけておりませんのは、あなたの方が御存じのように、何も一つの企業として見るべきじゃないじゃないかという考え方であって、言葉をかえて言うならば、一つの家業であると、いうような見方です。そうだとするなら都会におけるごく小規模の経営をするしておる諸君は、何も資本自身が回転することによって生計をしておるということだけでなくて、そこには家族全体の、少なくとも労力が加わっておる。いわゆる人間の労力によって収入を得られているという分の方が、資本の回転よりも多いという形が私は出てこようかと思います。そうなればそういう業種はやはり農村と同じような形で事業税というものをかけることは誤まりではないかというように考える。いわゆる資本の純益とは考えられない、労力によっての——労賃というと少し言い過ぎるかもしれませんが、資本の純益よりも、昔の労賃のウェートの方が大きくて、それで収益があるのであります。従って、それらの業種については、当然事業税は廃止すべきだと考える。しかしこれを廃止するということには問題があるかもしれません。従って、免税点引き上げていくという考え方が、税の負担の公平から考えれば私は当然そうだと思います。その三つの点についての御見解をこの際明らかにしておきたいと思います。
  88. 藤田義光

    ○藤田政府委員 第一点の、税外負担を廃止しろという御意見、その他いろいろ非常に傾聴すべき御意見を拝聴しました。  税外負担の廃止ということは、税財政当事者としては一応理想的な姿として、私たちも全く賛成です。しかし普遍的な財源として、税制一本に、税外負担現行実施されているものを集約できるかどうかということになりますと、地域の特殊性あるいはその税外負担の内容等によりまして相当複雑多岐でございまして、なかなか理想に到達することは困難ではないかと思いますが、方向としては、門司委員の御指摘のような方向でわれわれは検討すべきである、かように考えております。  第二の、県民税の問題でございますが、これは昨年度大改正を実施いたしまして、ことし試験中でございます。ことしの実績等を勘案いたしまして、将来税制調査会等で真剣に取り上げる問題であると考えます。  その次の、事業税の問題、これは門司委員もシャウプ勧告に基づいて当時立案された一人でございますが、この問題は私も同意見の点も多うございますが、税制調査会で根本的に検討すべき問題である。今直ちに門司委員の言われたような方向にいくかどうかということは、税制調査会検討を待ってわれわれの態度もきめたい、かように考えております。
  89. 門司亮

    ○門司委員 これはせっかく次官の答弁ですけれども、まん中の県民税については、少しこれは言葉じりをとらえるようで悪いですけれども、試験中ということはやめておいてもらいたい。税金を試験中でとられては国民はかないません。それだけは一つやめておいてもらいたいと思う。いいか悪いかということは議論がありましょうけれども、しかし実際は去年の県会からことしの県会を通じて、住民税をもとに戻せという意見もかなり私はあったと思います。どこの県会でもかなり議論されていると思う。しかし当局側の答弁は、おそらくさっきの自治省の答弁のように、所得税の付加税みたいな形になっておるから、これを通算すれば幾らか減っているという妙な答弁で終わっている。これでは住民は納得しないのであります。やはり国税国税としてのあり方地方税地方税としてのあり方でないと、両方ひっくるめて安くなっておるからお前たらはいいのだということを言われても、私は住民は納得するものではないと思う。ことに県民税の場合は、従来かからなかった小額所得者まで税金が及んでおるわけであります。この点を試験中と政府が言うなら、一つそういう悪い試験の結果が出たということで、直ちにそれは直してもらいたいと思います。  そのほかの問題についてもう一つだけ最後に聞いておきたいと思います。  税制配分の問題について、国と地方との税制配分について、政府は、今どういうふうに自治省としてお考えになっておるか。これもただ単に税制調査会の答申を待つというようなことで逃げないで、私は自治省は自治省としてのものの考え方がなければ、税制調査会の答申を受けて立つときにお困りになるだろうと思います。その辺のお考えはお持ちになっておると思う。やはり同じように検討が進められておるはずだと思います。だから国と地方との税財源配分についての自治省の意見を、この際一つ最後に明らかにしておいていただききいと思います。
  90. 藤田義光

    ○藤田政府委員 最初の試験しているという言葉、これは穏当を欠いておると思いますので、訂正いたしまして、実施中であるというふうに御了解を願います。  それから税制国税地方税、どういうふうに今後分けて運営していくかという質問でございますが、先般発足いたしました第九次の地方制度調査会におきまして、この問題を議題にいたしまして真剣に討議をお願いするということになっております。税制調査会と地方制度調査会の審議の状況を勘案いたしまして、政府としての態度もだんだん固めていきたい、かように考えております。
  91. 門司亮

    ○門司委員 そんなことはだれでも言えるのであって、もう少しきょうは突っ込んだ話が聞けるなと思っておったのです。そうしませんと、税制については私はいろいろな問題があろうかと思いますので、今まで課題になっているのがたくさんあるのですよ。だからそういう答弁なら、一つ一つの税目について私は聞いてもよろしいと思いますが、そうなるとかなり時間も長くなるだろうと思いますし、問題にもなって参りますから、それでは私は最後に、今の答弁をあまり追及しないで、心がまえだけを聞いておきますが、心がまえとして私は自治省に望みたいのは、こういうことです。いろいろ政府の池田さんも所得格差をなくすると言っておりますが、所得格差をなくする一つの政府の権力による行政措置としては、税制であります。税制であって、これはコントロールができるのであります。所得格差と同時に生活水準の格差をなくしていくということは、これはやろうと思えば政府は幾らでも、このことに関する限りはやれる一つの方法であります。物価を下げるとか、賃金を上げるとかいうことは、非常にむずかしいかもしれない。しかし政府が、税制の面でこれをコントロールしていこうとすれば、ある程度できるのであります。低額所得者の税金をはずして、高額所得者にその分を持っていくということになれば、それだけ格差が縮まるわけであります。だから池田さんが言っておるように、また政府自民党が盛んに宣伝をしておりますように、国民の生活水準の均衡化を保っていこうとするには、一つの大きな格差の是正に税制が役立つわけであります。従って、自治省の税制改正の方針としては、私はやはりそういう方向に向けられるべきだということは、これは今の自民党でそう言っておりますし、また池田さんもそう話をしているから私は申し上げるのでありますが、これは当然だと思います。その場合に出て参りますのが、いろいろわれわれが従来から唱えておりました、たとえば農村の固定資産税の問題として考えられる立木その他に税金がかけられないかどうかということ。非常に大きな財産を持っておる、その財産を処分するときには、所得税をかけるからいいじゃないかといえば、これはそれまでであります。しかし一つの問題として大きな問題があげられておる。  それからもう一つの問題は、多数の不特定の諸君から集めた火災保険その他の金というものが営利会社の資本、資産に還元されつつある。こういうところには税金をかけたからといって大して怒る人はない。山林地主の諸君が怒ってみたところで、一億の国民の中から見ればごくわずかな人たちだ。また保険会社の諸君がぶつぶつ言ってみたところで、保険会社の数もきわめてわずかです。しかも、これについては市町村はかなり大きな消防施設で負担をしてきておるのでありますから、そういう負担を軽減することのために、税によるコントロールである程度住民国民所得格差、生活水準の均衡化をはかっていくことの方が容易に行なわれることだと思う。地方税の中で、そういうものがありはしないか。こういう問題について政府はどういうふうにお考えになっておるか。一応この際二つの税金についてのお考え一つ聞かしてもらいたい。
  92. 藤田義光

    ○藤田政府委員 御指摘の通り地域あるいは所得、人による格差を是正するということは、一つの当面の政治の大きい問題であると私も存じております。この格差是正のために、税制が非常に大きな作用をするということも、全く同感でございます。この点に関しましては税務局長から補足答弁すると思いますが、自治省におきましても鋭意検討をしておる点でございます。
  93. 柴田護

    柴田政府委員 ちょっと補足して申し上げます。税源配分の問題につきましては、地方税の問題の合理化を考えます場合には、当然つきまとう問題でございます。私どもは、事務配分との関連もございますけれども、事務配分の問題を別にいたしましても、先ほど来御答弁申し上げましたように、国と地方との間で、積極的に税源を国から地方に移すような形で検討いたしてみたいと存じております。御指摘の立木課税の問題、これもずっと検討いたしておりますが、これには少しむずかしい課税技術上の問題がございまして、まだ解決に至っておりません。  また消防施設税の問題につきましても、いつかこの席でお答え申し上げました通りでございます。
  94. 永田亮一

    永田委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ本案についての質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  95. 永田亮一

    永田委員長 これより本案を討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。高田富與君。
  96. 高田富與

    ○高田(富與委員 私は自由民主党を代表いたしまして、地方税法の一部を改正する法律案に賛成の意を表するものであります。  国民租税負担の軽減合理化という見地から、今後とも従来に引き続いて住民負担の軽減合理化に努めて参る必要があることは言うまでもありませんが、地方財政の現状は逐次好転しつつあるとはいえ、今なおその行政の水準は低く、住民の要望にこたえて措置すべき問題が多々残されていることも看過できないのであります。のみならず、地方税制に関する根本的な改正は、国、都道府県、市町村のそれぞれの事務配分と、これに対応する財源配分とにかかっておるのでありますが、なお、現在の国と地方公共団体との財源配分がはたして妥当なりやというような根本的な問題の検討をも必要とするのでありまするし、これらの問題と国民負担力その他の事情とを勘案いたしまして将来の問題として大いに検討を加える必要があろうと思うのでありますが、現在のところは住民負担現状を把握するとともに、地方財政の実態に立脚してその実情に即して行なうことが肝要でなければなりません。  そこで本案、すなわち今回政府提出にかかる地方税法の一部を改正する法律案を見まするのに、本案は、明年度の税収入に大幅な伸びが期待できない反面、歳出に多くの増加要因が存しておることなど、地方財政の実情を考慮して、国が必要な財政措置、すなわち国民健康保険に対する国庫負担の増加、たばこ消費税の増率等の措置を講じまして、最も負担軽減の必要がある低所得者に対する負担を主として軽減することとして、国民健康保険税の軽減を初め、電気ガス税税率引き下げをはかることのほか、狩猟制度の改正に即応した狩猟者税の合理化を初め、固定資産税、不動産取得税、自動車税等について負担均衡化、合理化のため所要の改正を加えようとしておるものであり、かつ住民税につきましても、昨年の地方税法改正によって、昭和三十八年度から約百三十億円の減税が原則としては実現せられ、相当額の住民負担の軽減がなされるのでありまして、きわめて適切、妥当なものと言わざるを得ないのであります。また、地方税の徴収制度に関する改正部分につきましても、社会の進展と、従来の運営の実情にかんがみ、国税改正に準じて、所要の改善、合理化をはかろうとするものであり、納税義務の円滑な履行と税務行政の合理的な運営に資すること、大なるものがあると考えられますので、これまた時宜に適した改正と断じてよいと思うのであります。しかしながら、この改正改正として、地方税制現状には、住民税、固定資産税、電気ガス税等についてなお合理化を要する点が少なくないと考えられますので、政府においても、これらの諸点について、なお特に今後とも十分な検討を加えられんことを要望いたしまして討論を終わります。
  97. 永田亮一

    永田委員長 太田一夫君。
  98. 太田一夫

    ○太田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま審議をされました地方税法の一部を改正する法律案に対しまして、反対の意を表明いたしたいと思います。  まず第一は、住民負担の軽減、合理化に政府としては今まで努めてきましたけれども、という前置きが本法案の提案理由の説明の中にあります。しかし今まで政府は軽減に努めたよりは、増税に努めた点の方が顕著でありまして、今年度の県民税の大幅引き上げに見られるごとく、それは逆の傾向をたどっておると思うのであります。  さらに政府は、国家的要請によって地方の行政水準の向上をはかる必要があるけれども、明年度の増収は大幅な伸びがないから、電気ガス税国民健康保険税の減税にとどめたと言っておりますが、これでは住民はますます重税と低水準生活に束縛されることを余儀なくされるのでありまして、本年度のこの法改正には、希望が持たれないということを特に指摘しなければならないのであります。  昨十三日中山税制調査会会長は、本院の大蔵委員会に御出席になり、参考人として意見陳述をなさいましたが、その中で政府の所得税減税が物価高をカバーできず、逆に増税となるであろうことを批判をされたのであります。減税が行なわれた所得税であってすらそうでありますから、地方税におきまして電気ガス税の一%減税などが地方住民の要望にこたえられないということは、自明の理であります。従ってわれわれとしましては、不当に高い住民税の軽減をほうりっぱなしにしてしまっている政府の方針には、大いに反対せざるを得ません。とりわけ県民税に対しましては、本年度は増税を顕著化するおそれさえあるのでありまして、今日その対策を講じない限り、住民の怨嗟の声を解消させることはできないと思うのであります。市町村民税は、昨年改正しました方針によって、本年段階別に若干の減税となる見込みではありますけれども、本文方式はすでに死文化しておりまして、さらに高い税金となり、ただし書き方式を採用する市町村が全市町村の八二%に及び、さらに超過税率をとっている市町村は、その中の半分もあるという実情にわれわれは目をおおってはならないと思います。負担分任ということは常に言われておりますけれども、それは均等割という分担方式がありますから、それによって解決をされておると思うのであります。所得割は担税力に応じて課すべきであって、従ってこの際政府は住民税の大幅軽減の方策を講ずる必要があります。しかるにそれが今次の改正ではいささかも盛り込まれていないというのは、遺憾千万と言わざるを得ません。  また固定資産税に至っては、来年度の評価がえによってこれまた大幅引き上げが予想されている、そういうおそるべき情勢を生んでおるのでありますが、従って農民の長年の念願である農地、その中の田畑の減税を踏み切れなかったのは、やむを得なかったのでありましょう。しかしそれは踏み切れなかったのは大幅大増税の前触れではないかということをわれわれは感じます。固定資産税におきまして、標準税率一・四%をこえて課しておるのは、実は大都市でなくて地方の市町村であることは御承知の通りであります。従って地域格差の解消を考えるべきときに、残念な現象が出てきておるのでありますのに、この点を本改正で放置したままである。  それから小規模事業者に対する事業税に至りましては、納税者のうち所得七十万円以下のものが九〇%を占めておるという実情に対しまして、これが顧慮されておらない、低所得者層の対策としてでも基礎控除の引き上げは当然本改正において講ずべきであったと思うのでありますけれども、これがなされておらないのは遺憾と申さねばなりません。  減税は地方財政を弱体化するというような錯覚があるようでありますが、逆に消防施設税の創設というような合理的財源の生み出しの措置は早くからいわれているにもかかわらず、いまだに成案を見ておりませんのは、政府にはたして地方財政強化の熱意があるかどうかさえ疑いを持たせるものであります。また負担分任の精神から考えてみましても、応能的立場から見ましても、株式配当等に対する地方住民税の軽減特例等などは、この際廃止すべきものではなかったのでしょうか、それがことさら見のがされております。百五十万円の株式配当を得るものは住民税均等割程度になるという不合理と矛盾とを、この際勇気を持って是正すべきではなかったのでありましょうか。  われわれは政府が地方住民の福祉や生活水準の向上に意を用いている限り減ずべきは減ずる、減ずべからざるものは減じないという断固たる方針を立てる必要があろうと思います。そしてさらに進んで学校、警察、消防と道路建設に関して行なわれておる寄付金、分担金の重圧から住民を救う熱意を示す必要があると考えるのであります。  以上の諸点について政府案には不満の点が多々あり、とうてい本案をもって是とすることはわれわれとしてはできないのであります。従って、わが党は本案には反対をし、政府の心機一転による一そうの減税対策の立法化を強く求めまして、本改正案に対して反対をいたす次第であります。
  99. 永田亮一

    永田委員長 門司亮君。
  100. 門司亮

    ○門司委員 民社党を代表いたしまして、反対の意見をごく簡単に申し上げておきたいのであります。  提案されております法案の内容は、政府の一つの自慢とまでは申し上げませんが、考え方の中にある電気ガス税を安くした、そのかわりにたばこ消費税をふやした、こういうことがこの税法の中の一つの政府としての自慢のところではないかと実は考えるわけでありますけれども、これらの問題は、単に地方の財政の関係から申し上げて参りますと、穴埋めをしたにすぎないというだけであります。税制改正としてこれが取り上げられる大きな問題では実はないと考えておる。もとより私どもは、この電気ガス税につきましても、これの免税点をもう少し引き上げるべきだという主張を持ち、さらにたばこ消費税については一・四%引き上げて穴埋めをするということでなくて、この際政府は、もう少し思い切ってこれを上げなかったか、そうして地方財源を充実させなかったのか。従って、政府のこの法案提出の最も大きな課題の一つである電気ガス税の一%の減税に対するたばこ消費税の増額というのは、一方をやめたから一方を増額したんだという、話だけはよろしいかと思いますが、実質的には何にもならない一つの行き方であって、地方住民負担を軽減するということにはむしろほど遠いものだということが考えられる。  それからもう一つの問題は、当然自治省も十分承知しておるだろうと考えられる、先年改正されたというよりも、むしろ改悪された県民税の問題を、そのまま放置されておるという事実であります。このことは、あまりにも国税に追従し過ぎた、地方自治体のきわめて卑屈な、あるいは劣等感に基づくものの考え方であると私は考えざるを得ないのであります。自治省がほんとうに地方財政のことを考え、地方住民のことを考えるならば、私は国税に追従するような態度はこの際とるべきではないということが考えられます。  その他の問題につきましても、提案されております条項の中には、われわれが大きな問題として取り上げて議論するほどの問題は何らございません。たとえば国民健康保険税を少し安くしたからといっておりますが、これについてもまだこの程度の国民健康保険税の減税では、実際の地方自治体の運営というものは非常に困難ではないか。政府が負担すべき事務費その他はそのままの姿に置かれております。こういう形のもとでは、一部住民に対する減税をしたといいながら、地方財政に対してはより以上大きな赤字を押しつける矛盾が出てきやしないかというようなことが一面考えられる。  その他の問題は、手続上の問題でありまして、別段論議すべき問題ではないと私は思います。  こういう点をずっと勘案して参りますと、非常におざなり的の、きわめて意味のない税法改正であって、われわれの考える税法改正とは非常にほど遠いものであるということを指摘せざるを得ないのであります。  以上はきわめて簡単であり、かつ抽象的でありますが、以上の理由によって本法案に反対の趣旨を表明いたします。
  101. 永田亮一

    永田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  地方税法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  102. 永田亮一

    永田委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  104. 永田亮一

    永田委員長 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本案についての質疑は前回において終了いたしておりますので、これより本案を討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。田川誠一君。
  105. 田川誠一

    ○田川委員 私はただいま議題となっております地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党を代表して賛成の意見を述べたいと存じます。  昭和三十八年度分の地方交付税は総額五千四百九十八億円に達し、三十七年度分当初に比べますと九百十九億円と大幅に増加しております。また明年度におきましては道路整備事業、農業基盤整備事業等を初めとする各種公共事業費、生活保護費、失業対策費等の社会保障関係経費などが相当に増加しております。このほか、昨年秋から実施されました公務員の給与改定や地方公務員退職年金制度の実施などによる給与関係費の増加もございます。このような国の予算や制度の改正に伴う地方団体財政負担の増加及び交付税の増加に対応いたしまして、交付税の算定に用いる基準財政需要額を増加させる必要になったのであります。また高校急増対策事業につきましても、三十七年度に引き続き所要額を基準財政需要額に加算する取り扱いとする必要にもなって参りました。  そのためにこの法律案が提案せられたのでありまして、その内容も道路費、都市計画費など投資的な経費とか、生活保護費、失業対策事業費などの社会保障関係経費の単位費用を引き上げる、と同時に各経費を通じ給与改定等に伴う給与関係経費の増加に伴う単位費用の引き上げとか、市町村分の小中学校費の単位費用の大幅引き上げなども行なっているのであります。また高校急増対策につきましても、三十七年度と同様、三十八年度分におきましても基準財政需要額への加算する方途が講ぜられております。これらの単位費用の引き上げなどによりまして基準財政需要額を増加させることは、明年度の国の予算や地方団体関係のある制度の改正に対応して当然必要とされるものであることは申すまでもありません。一部には交付税の繰入率を引き上げるべきではないかという意見もありますが、国税の増収に伴い交付税の総額も大幅に増加しておりますし、また地方税の増収と相待って毎年度相当の基準財政需要額の増加がはかられておる現状を見ますと、地方財政の状況もずいぶんと改善されているものと考えるものでありまして、地方行政の水準はより高められていると思います。こういうことはもちろんといたしましても、国庫財政の状態をもあわせ考えますならば、交付税率の引き上げを直ちに望むことは非常に困難だと思っております。  以上申し上げましたことによりまして、私は本法律案は妥当と考え賛成いたすものでございます。
  106. 永田亮一

    永田委員長 太田一夫君。
  107. 太田一夫

    ○太田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されております地方交付税法等の一部を改正する法律案に反対をいたしたいと思います。その理由を申し上げます。  まず一つは、交付税総額に関して非常に不満があるのであります。交付税率はここ数年間据え置かれておりますけれども、経済の発展に伴いまして、地方団体財政需要伸びが大へん著しく、他面昭和三十八年度の地方税収の伸びが従来ほど期待できないということや、また地方税の中には住民税ただし書き方式採用団体等、税負担の過重にしてかつ不均衡なものもあるということなど、特に地域間の所得格差団体間の所得格差が依然として是正されない現段階におきましては、住民税負担は貧弱団体において相対的に重くなっておりまして、独立税を強化しましても税負担の公平は期し得ないのであります。従って、交付税率を引き上げるに越したものはないのでありますし、当然にこの現状から交付税率の引き上げをはかるべきであると思うのであります。交付税の総額の内容を見ますときに、その中には前年度からの繰り越しを含めて辛うじてつじつまを合わせておるのが現状でありますが、これはつまり交付税率が低いためでありまして、前年度の財政需要の規模を抑えて翌年度の財政需要をまかなうという結果にほかなりません。従って、今後はあるべき行政水準に見合う適正な交付税率を確保すべきであると考えます。  次には、単位費用に関しまして、二、三反対の理由を申し上げます。  たとえば小中学校の単位盗用の算定に用いる教職員定数のとり方でありますが、このとり方が、本改正案によっては変更されまして、従来教育に熱心であった府県が、その努力を認められないというような不幸な結果にもなっておるのであります。  また、高校急増に伴う臨時経費のための単位費用についても、進学率等を考慮に入れますときには、これまた十分とは考えられないのであります。  また、単位費用全般について、いわゆる不交付団体の特別の財政需要が、これは当然見てよいと思いますけれども、これを見ていないのであります。大阪市が不交付団体から交付団体になったということも、この際われわれとしては大いに考えなければならない問題だと思うのであります。  また、幼稚園の単位費用の積算等を分析いたしてみましても、これまた実情に合っていない点を指摘せざるを得ないのであります。  以上の点にかんがみまして、私どもとしましては、本改正案に対しては、不満の意を表せざるを得ないのであります。  以上の理由によって、本案に反対をいたす次第であります。
  108. 永田亮一

    永田委員長 門司亮君。
  109. 門司亮

    ○門司委員 私は民社党を代表いたしまして、この法案に対して反対の意思を明らかにしておきたいと思います。  賛成の御意見のように、交付税の総額が相当ふえておることは事実でありますが、これは何もこの税法改正によってふえたわけではありません。当然の結果であって、自慢するほどのものでもなければ何でもない。ただ問題になりますのは、こういう自然増だけでよろしいかどうかということが、この交付税法の論議をいたします場合に一番大きな問題になろうかと思います。われわれはかねてから交付税交付税率を現行の二八・九%を三〇%にすべきだということを主張いたして参ったのであります。従って、今回の改正は何らそれに触れていないということ、同時に改正の内容は、配分すべきいろいろな項目についての数値の移動であって、これもまた一部の事務的処理と言えば事務的処理として、これでよろしいかと考えられます。ただその中にいろいろな内容的なものとして、高等学校の問題がある、あるいは農業改善の事業等に対する問題が含まれております。学校教育というような普遍的なものは、私は何も反対すべきでないと考えます。ただ農業改善事業等に対します問題は、これは地域的に限られた一つの事業でありまして、法律は普遍的にできておるようにも思いますが、実際の本来の性質からいえば、必ずしもそうではない。同時にまた一部分の国民に適用さるべき筋合いのものである。もし農業改善事業に対してたくさんの金が要るとすれば、当然その部面から出さるべきもので、交付税の中にこれを織り込むということは私はいかがかと考えられるのであります。  それからもう一つ大きな問題は、国税伸び地方税伸びとを勘案して参りますときに、国税ほど地方税伸びないのであります。従って、国と地方との財源配分をしようとするならば、前段に申し上げましたように、やはり交付税率の増額こそが望ましい姿であって、この法案の中には何らそういう見るべきものがない、こういうふうに私ども考えて参りますと、政府の意見では、ある程度地域差が縮小されつつあるとか、あるいは個人負担の差がだんだん狭まりつつあるというような話もございますが、実態は私はそういうわけではないのではないか。むしろ逆に、その内容とするところが、国からたくさんな仕事を押しつけられて、地方の自治体は独立した財源というものがだんだん失われつつあるというのが今日の現状だろうと思います。だといたしますならば、前段に申し上げましたように、税の配分関係からいっても、地方財政の充実の点からいっても、この際は思い切ってやはり税率自身を増額していくべきでなかったかということが強く考えられて参ります。法案自体の内容はきまり切った交付税の税額をどう配分するというだけの問題であって、別段目新しいものでもなければ、新しく提案されたものでもない。私はこの際地方交付税を論議する場合には、少なくともこういう事務的の、内容の配分よりも、むしろ地方の財政というものを中心に考え交付税改正が行なわれることが当然だと思います。その点が勘案されていないところに非常に不満があります。そういう意味で本案に対する反対の意思を表明する次第であります。
  110. 永田亮一

    永田委員長 以上で討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  111. 永田亮一

    永田委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に、お諮りいたします。すなわち、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時七分休憩      ————◇—————    午後二時十六分開議
  113. 永田亮一

    永田委員長 これより再開いたします。  警察に関する件について調査を進めます。質疑を許します。宇野宗佑君。
  114. 宇野宗佑

    ○宇野委員 チ第三七号事件といわれるいわゆる千円札の偽造事件に関しまして、当局の御所見をお伺いいたしたいと思います。  このことに関しましては、すでに昨年の夏大蔵委員会で一応質問がなされておりまするけれども、しかし今日までの経緯を考えてみますると、私は大体次の三段階にこれが分かたれるのではないかと思うのであります。すなわち一昨年の暮れにこの新にせ札が出ましてより、昨年その特徴を明らかにせられまして一般に公表せられた、それまでが第一段階、その特徴の掲示によって、民間の支援を得られて捜査を進められた、そうして本年、先般静岡県におきまして新たなるにせ札が出た、それまでが第二段階、従って静岡の事件を契機といたしまして、警察当局ではいわゆる犯人とおぼしき男のモンタージュ写真を全国に手配されたのであります。従いまして、これからが第三段階ではないか、こういうふうに私は考えます。従って、すでに新にせ札の特徴が三つもあげられ、なおかつその犯人のモンタージュが出ました以上、世間におきましては、いよいよこの事件も大詰めにきたのじゃないか、こういうような憶測が乱れ飛んでおりまするし、また私たちも、それが大詰めでなければならないと思うのであります。私自身が一応この委員会を通じまして、警察当局の御所信を伺いたかったゆえんもまたここにあったわけですが、ついこの間の新聞の報道、あるいは当局の御所見等を伺っておりますると、私の質問が先か、あるいは犯人の逮捕が先か、このようなことすら考えて準備をいたしておったのでありますが、残念ながら本日に至りますまで、まだその足取りがわからないというふうな状況であります。  従いまして、まず第一点といたしましては、率直にお尋ねいたしまするけれども、今日までこのにせ札事件に対しまして、幾ばくの捜査費をお使いになったか、それだけをお伺いいたします。
  115. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 現在に至るまで、警察におきまする活動費といたしましては、約三千二百万円を使っておるのでございます。
  116. 宇野宗佑

    ○宇野委員 今日まで発見されましたにせ札は三百二十五枚でございますか、そういたしまするとにせの金にいたしましても三十二万五千円。にもかかわらず三千万円の捜査費をお使いになって、なおかつその解決が見られないということは、一応まことに残念だと思います。  そこで私が第二点としてお尋ねいたしたいことは、警察当局ははたしてこの犯人を逮捕する自信があるかどうか、これをお尋ねいたしておきたいのであります。なぜかならば、大体九月から新千円札が発行され、いよいよ伊藤博文公の御登場を願わなくちゃならないというふうなことにまでなってしまったわけですが、新千円札が発行されるとなれば、おそらく現在用いられておりまするところの千円札の印刷は、ストップされると思います。しからば、ストップされましたならば、当然このにせ札を使う機会がだんだん薄れてくるわけであります。従って、当然大蔵省といたしましても、捜査当局といたしましても、新千円札の発行によってこれにピリオドを打ちたいというふうなお考えがあっただろうと私は思っておりまするが、九月ごろまでに犯人を検挙せざる限り、おそらく行使する現場を押えなかったならば、またあらゆる物的証拠をそろえなかったならば、この犯人は逮捕することができないのでありまするが、新千円札が発行されるまでにこの犯人を逮捕できるかどうか、この点を一つお伺いをいたしておきたいと思います。
  117. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 われわれといたしましては、今御指摘のように、行使面がございますと捜査は楽でございます。また一面におきましては、そのいかがわしい人物その他機械等の基本的両面捜査におきまして、一刻もすみやかにこの事犯の解決に努力をいたしておるのでございまして、相手のあることでございますからいつまでと申し上げることは不適当かと思いますけれども、事案の性質にかんがみて一刻もすみやかに犯人逮捕に到達するよう、全国の警察の網を張りまして努力をいたしておるのでございます。
  118. 宇野宗佑

    ○宇野委員 にせ札の捜査に関しましては、まずその札をつくる機械、インク及び紙並びにその札をつくる技術、もちろんそれには製版工もいましょうしあるいは印刷工もいるだろうと思います。この四点が大体焦点であるというのが一般的な常識だろうこ思うのでありますが、その点、犯人に関しましては、当局はすでにモンタージュを発表されました。そこでお伺いいたしたいことは、こうした事件に関しましてすでにあらゆる週刊誌であるとか、あるいは小説家は小説家で推理小説を書くとか、いろんなことをやっておりますやっておりますが、一般的な考え方からするならば、私たちはまさかさようなことはないだろうと思いますが、にせ札は相当大量にばらまかれておる、しかも相当根強く、捜査の網にもひっかからないというような点から考えました場合に、これは一応経済撹乱の目的によってなされておるにせ札団であるのかないのかというような疑いも、当然起こってくるだろうと思います。しかしながら、今日までその犯人がこれを行使しました経緯を考えますと、そうした大じかけなものでないということは考えられる。しかし一面においては、あるいは香港で印刷されたのではないかというようなうわさも飛んでおりますし、またそれを印刷しておる人たちは、かつては陸軍の参謀本部の諜報課にいて、にせ札をつくっていた人ではないかとも言われておりますが、そこでお伺いいたしたいのは、このにせ札犯人は、この間モンタージュをつくったあの男一人の単独犯なのか、あるいは仲間と一緒にやっておるところの複数犯なのか、あるいはあのグループだけでなくして別のグループがあるのか、こういうことも考えられますので、その点、ただいままでにおきますところの警察の御意見を伺っておきたいと思います。
  119. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 私どもの方で今判断いたしておりますことは、にせ札の行使の状況及びにせ札のできばえ、こういうものから総合的に判断いたしまして、単数とは申しかねますけれども、そう多数の者が他の事件のごとく大がかりでこれを計画し行使しておるものとは判断いたしていないのであります。  なお具体的な、御質問にございましたけれども、つくる容疑者につきましての問題でございますが、場所というようなことも御質問がございましたが、われわれ一応外国等というようなことも想定いたしまして、御承知と思いますがICPO、パリに本部を置きます国際警察機構その他にも連絡をとりまして、関係諸国とも連絡をとって、世界的な面からもこの点は検討いたしましたけれども、諸般の状況から、この拠点が外国にあるというふうには現在考えていないのでございます。また疑わしき人物等につきましては、直ちにわれわれの方がこれを被疑者と扱いますことにつきましては、人権問題がございますので、そういうふうな扱いではございませんけれども、疑われる節というものは個々につぶして参りまして、現在の捜査段階では、相当の範囲にまでしぼってきておる実情でございます。
  120. 宇野宗佑

    ○宇野委員 私の手元の資料によりますと、昭和三十七年度の銀行券の偽造は、非常に驚くべき指数を示しております。一万円券におきまして三枚、五千円券で十一枚、千円券で五百十八枚、うちチ三七号が三百八枚、五百円券が二十枚、百円券が二十六枚、合計五百七十八枚。従いまして、昭和三十六年度の前年比におきましては四五〇%というふうな、はなはだ好ましくない現況でございます。これはわが国の通貨の信用あるいは安定のためにも、当然こうした弊害を除去し根絶しなくちゃなりません。しかしながらわれわれの知り及ぶ限りでは、戦後こうした贋造、変造等々の事犯が三十九件あったと言われますが、そのうち犯人を完全に逮捕されたのは何人でございますか。
  121. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 私のただいまの記憶では千円札に関する限り四件でございまして、最も大きい偽造団というのは千円札に集中いたしておるのでございます。
  122. 宇野宗佑

    ○宇野委員 今の御答弁によりましても、非常にこの捜査が困難であり、なおかつ勝手に描いてあるいは変造して出しておるほとんどの人たちが、全然つかまっておらないというふうな状況であります。こうしたことを考えますと、邦貨の面につきましても、あるいはまた外国紙幣の面につきましても、相当な数量がその間描かれておるわけでございますが、これから貿易の自由化だとかなんとか言われまして、単に国内流通紙幣のみならず、外国紙幣に関しましても相当な監視を怠ってはならない、私はかように考える次第でございます。  そこで私が次にお尋ねいたしたいことは、これは警察庁長官あるいは大臣及び法務省当局にお伺いいたしたいと思いますが、わが国のこうした偽造、変造等の問題に関しまして、刑法ではただ単に行使の目的を持ってつくったときにおいてのみ犯罪を構成するというふうに書かれております。すなわち第百四十八条でありますか、「行使ノ目的ヲ以テ通用ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役二処ス」ということになっておりまして、行使の目的というものが犯罪構成の一番重要なる要件になっております。こうしたところが千円札を偽造しあるいは一万円札その他もろもろの諸札を変造する最大の原因ではないかというふうな考えが私はいたすのであります。後ほど質問をいたしますけれども、ついこの間、静岡県であの千円札が見つかりましたときに、浦和において魚屋さんが百円硬貨を偽造しておるということにつきましてもあとでお尋ねをいたしますが、その魚屋さんいわくには、私は使う目的でこれをつくったのではございませんということが新聞にちらっと書いておったように思います。従いまして、使う目的を持っておったときに初めて処罰の対象になるというのがわが国の刑法であります。しかし諸外国にも当然このような、行使の目的を構成要件といたしましたところの法律も多々ございますけれども、アメリカあるいはフランス等におきましては、何らそうした問題を対象とせず、とにかつくっちゃだめですよというふうなところでやっております。私は法律の専門家ではございませんが、どちらがはたして偽造変造を取り締まるためには有効な刑法であるかということに関しましては、私は私なりの考え方を持っておりますが、今日かかるたくさんの変造あるいは偽造紙幣が、すでに昭和三十七年度に行なわれており、しかもその数が四五〇%というふうなところまできておるということを考えますと、一応警察当局の捜査もさることながら、刑法の面におきましても、私はこれは断固としてある程度改正の意図を持った方がいいのではないかというふうな考えをいたすのであります。従いまして国家公安委員長は、それに対しましてどういうお考えであるか、また法務当局はどういうお考えであるか、そのことについての御所見を伺っておきたいと思います。
  123. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 一国の通貨を、行使の目的を持って偽造しても三年以上の懲役です。大体少し軽過ぎるじゃないか。その他の選挙法等につきましても、先般の改正で罰則を相当重くしている。大体日本の刑法を見ますと、いろいろな意味で罰則が軽いという感じを私は受けております。しかし法務省としての見解があろうと思いますから、一つ法務省にお答えさせたいと思います。
  124. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 通貨偽造についての罪が、現行法並びに外国の立法例から見まして適当であるかどうか、適当でないのではないかという御疑念に御質問の趣旨があろうかと存じます。現行の刑法は、今御指摘の通りでございまして、日本の国内で通用するものと外国の通貨とを分けて二つの条文に規定してございますが、いずれも「行使ノ目的ヲ以テ」という目的罪になっております。目的罪でございますけれども、これは真正の通貨として流通に置くということなんでありまして、これはこういう目的がない場合には犯罪にならない、これは明らかでございます。しかし、この目的は、本人が自分は行使する意思がなかったのだと言えばその目的がないということになるのじゃなくて、こういう目的罪におきましても客観的な証拠によって目的があったかなかったかをきめるわけでございます。現実に使っておきながら、私はこれは趣味でこしらえたもので使う意思はありませんと言っても、それは世間に通用いたさないわけでございます。外国の立法例をずっと見てみましても、全く行使の目的、つまり真正な通貨として流通に置くという考えのない目的でつくった、たとえば映画の俳優が金をやりとりしますときの金でございますが、そういうお札のようなものをつくるとか、あるいはいわゆる見せ金と称して、ほんとうは使うのじゃありませんけれども、そういう見せ金だけに使うそういう使い方、そのために通貨のような札をつくる、こういう場合には、通貨の信用を害さない。そこに見解の相違がございますけれども害さないという建前で、とにかく無期または三年以上の懲役でございますので、重い刑でございます。そういう重い刑をもって処断すべき案件について、全く行使の目的のないようなものについて処罰するということは、刑事政策的にも妥当でないというような考え方がございまして、諸外国の立法例はおおむね行使の目的、そういう言葉を使っていないで、真正な通貨として流通に置く意思をもってという書き方をしておるものもございますが、要するに行使の目的ということでしぼりをかけております。ただ御指摘のようにアメリカの法律、ことに連邦の法律におきましては、日本や大陸法の諸国とはやや異なりまして、貨幣制度もアメリカは御承知のように違っておるわけでございます。政府が発行するものでございますから。ここでは他を欺く目的をもってということに日本語に訳せばなるわけです。そういう目的は一体何だ、やはり真正なものとして人をそう信じさせるようなことは最小限度目的としてなければならぬということでございまして、平たく言えば、日本の行使の目的というのに相当する言葉であろうと思います。これは連邦の法律でございますが、ただ金貨と銀貨、こういう硬貨につきましては、行使の目的をもって、あるいは他を欺く目的をもってというような言葉は全然なくて、金貨、銀貨を偽造すればそれ自体で犯罪になるということを規定いたしております。カリフォルニア州の刑法などを見ましても、金貨、銀貨に並べまして金塊、銀塊についても偽造行使という罰を設けております。これはもちろん行使の目的はないわけであります。そういう硬貨につきましては、そのこと自体が中身が違うというようなことで不測の損害——これは信用力の問題もありますが、同時にそういう金属に対する価値の信用、そういうものにも関係してくるという意味で、行使の目的をつけないで、将来どういうはずみからそれが金、銀あるいは金貨、銀貨として使われるかもしれないという、そういう将来の危険の蓋然性をやはり考えて行使の目的からはずしておると思うのでございますが、諸外国の立法を見ますと、今概略を申し上げたように、アメリ方法律では実際的な解決、つまり将来への危険の蓋然性をやはり考えて行使の目的をはずしておる。それに反しまして大陸系では大体において行使の目的ということでしぼり、そのかわり刑も、アメリカの刑などは、たとえば今申しました人を欺く目的で偽造したようなものは法定刑は五千ドル以下の罰金または十五年以下の懲役もしくはその併科という規定を置いておりますが、これに反しまして日本の刑法では無期または三年以上ということになりますので、無期懲役あるいは十五年——有期懲役は十五年でございますが、三年以上の無期までの法定刑で処罰するという形になっております。  現況はそういうことになっておりますが、将来の姿といたしましては、先生の御質問の趣旨にややそむいておるかとも思いますけれども、一昨年の暮れに公表いたしました刑法改正準備草案におきましては、刑法の規定をかなり整理をいたしまして、その二百二十九条に内国、外国の通貨を一本の条文でまとめまして、そうしてこの法定刑を二年以上の有期懲役、二年から十五年、——無期をはずしておるわけでございます。こういうふうに改正いたしましたのは、ちょうど一九六〇年のドイツの刑法が——国会にただいま提案、審議中でございますが、このドイツの一九六〇年の草案が全く同じ法定刑になっておりますことも確かに参考になったと思いますけれども、学者の間でいろいろ議論の末にそういうことに落ちついたのでございまして、その辺は先生のもっと重くすべきだという議論にはやや反したような結果になっておりますけれども、今後準備草案を審査いたします際には、現に起こっております事件等をも十分参酌いたしまして、法制審議会で十分議論していただきたいと考えております。
  125. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 先ほど、私法律の専門家でございませんから、軽いのじゃないかと言ったのは、実は無期の方に気がつかなくて、三年以上の懲役ということだけしか気がつかなかったものですから申し上げたのですが、無期ということがあれば決して軽いとは思わない。逆に重過ぎるのではないかと思います。
  126. 宇野宗佑

    ○宇野委員 刑事局長から非常に長い御答弁を賜わりまして恐縮しております。  私の言いたいことは、今申されました通り、一応行使の目的、これがあるかないかということは、趣味でやるかどうかということなんです。しかしほとんどの偽造は、経済的に金もうけがしたいといってやるか、あるいはやはり趣味だという人も中にいるだろうと私は思う。従いまして、将来に対する蓋然性ということを言うのならば、私といたしましては、この点に関しては、行使の目的云々ということを構成要件としない方がいいのではないか、それを私は申したいのです。  なおまた、貨幣制度に関しまして、今日本の貨幣制度とアメリカの貨幣制度と違うし、また金貨、銀貨が通用しておることは当然承知いたしております。今日の日本は金本位制度ではございませんので、兌換券ではありません。従いまして、紙幣一枚の価値の方が今日では大きい、一応信用通貨ですから。その信用通貨が趣味でやられて、趣味で偽造されて、一度使ってみようということになる、必ず。私はそういう意味合いにおいて、宮地刑事局長にお伺いしたいと思うのですが、今度はモンタージュ写真、あれが犯人だとするならば、金もうけでやっていそうな気がしない。金もうけならばもっともっと使うでしょう。危険なところまで行って使うでしょう。ところが相当芸もこまかいし、あるいは趣味でやっておるんじゃないか、あるいはまた一つの変質犯じゃないか、かような考えを起こすのでありますが、浦和の魚屋さんも同様の御答弁を新聞紙上でしていらっしゃいますが、そこを私は刑法の問題とくくりつけてお話し申し上げているのですが、あなた自体としては今のモンタージュ写真のあの犯人が趣味なのか、一つ、ぜにもうけでやってやろうというのか、どちらだと思いますか。
  127. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 この札が出ましたのは、一昨年の七月であります。それ以来今日まで出ましたのが三百二十五枚でございまして、現在まだタンス預金その他におきまして多少は隠れたものがあろうかと思いますけれども、なお多くのものが偽造されておるとは考えられないのでございます。従いまして、これをもって生計を立てるというふうなことは、われわれの方では考えられない。あるいは変質者あるいは他に生計を持っておって、かようなことを、自分の技術を誇るというようなことも考えられる。あらゆる面が想像できますけれども、少なくともこの偽造それだけで生計を立てる状態でないことは明らかだと存ずるのであります。
  128. 宇野宗佑

    ○宇野委員 今の刑事局長の御答弁よりいたしますならば、やはり法務省の刑事局長も将来そのように考えまして、一応今のような簡単なお考えじゃなくして考えていただきたいと思うのです。これはやはり国民生活に与える影響は非常に大きいと思いますから。  そこで私は次にお尋ねいたしておきたいと思いますが、やや事件の核心に触れるかもしれませんけれども昭和三十三年、青森県におきましてにせ千円札が二十三枚発見された。以来その二十三枚摘発はしたけれども犯人は今なおかつあがっておらない。今回用いているところの用紙あるいは印刷技術等々からも、その犯人と今回の犯人が同じ線にいるんじゃないかということであります。これは何も推理小説的な質問をして推理小説的な答弁をいただいて満足するものじゃございません。つまりにせ札というものをほんとうに趣味で、あるいはまたマニア的な考え方で印刷する人が今日の真犯人であるとするならば、やはり伊藤博文公もその例外でないだろうと私は思う。そうしたことを繰り返しておりましてはほんとにばからしい。しかもそれに対して、三十二万五千円くらいのことで三千万円も使い、また逆説的に言うならば、また大蔵省で言えば三十五億円もつぎ込んで伊藤博文公の新千円札を発行しようというのですから、これはやはり国家の威信の問題でもある、また国際信用の問題でもあります。従いまして、この間の経緯といたしまして、昭和三十三年に発生いたしましたあの千円札事件と今回の事件とは、関連があるものかないものか、この点を一応捜査上の問題としてお尋ねいたしておきます。  なおまた第二点といたしましては、浦和の魚屋さん、いわゆる百円硬貨を五十枚ばかりつくっていらっしゃったといわれるのですが、あれも当然今回の千円札の犯人捜査の線上において、副産物として生まれたのか、本流として生まれたのか、このことに関しましてもいろいろとやはり憶測があります。私が最初にお尋ねいたしましたのは、モンタージュ写真の単独グループではなくて、他にもグループがあるのじゃないかということも考えられます。しかしこうした国会での論議となりますると、非常に神経を過敏にいたしておりますし、私は捜査の妨害をしようとは思いませんけれども、将来のために一応、いかにこの犯人の追及がむずかしいものであったかということもお伺いいたしておきたいと思いますし、一つその辺の事情がおわかりならば、答弁せられる限り承りたいと思います。
  129. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 ただいま御指摘の青森、福島等を中心に行使されましたにせ千円札、われわれこれを二三号と申しております。この二三号につきましては、その共通点と申しますと、写真による凹版凸版の技術による、こういう点におきましては、今回の三七号事件と共通でございます。しかしながらしさいに検討いたしてみますと、直ちにこれが同一犯人であるというふうにまで決定いたしますことは、捜査上少し早計ではないかという節もあります。しかしながらわれわれが今回の三七号事件を捜査しております念頭には、常に二三号事件というものがある、これは事実であります。最初に申しました、手法において似ておるが、具体的なこまかい点になりますと必ずしも今回のものと一致してこない、こういう点において、今のようなお答えを申したのでございます。  それからお尋ねの第二点、浦和の問題でございます。御承知のようにわれわれの方といたしましては、こういうふうに行使の問題は、私の記憶で申しますと、先年の十月二十二日に新潟県にHD券が出まして以降、今回静岡に行使されるまでは新種が出てこない。しかしながら警察といたしましては、基本的に、最初申しましたようにいかがわしい人物、物、その他これらに関する情報というものにつきまして、たんねんに集積いたしまして、これを各件とも分析いたしております。その広い意味の贋幣捜査という一環におきまして、今回の浦和におきます硬貨というものが出てきた。なおこの行使犯——浦和事件につきましては、今先生御指摘の通り、最初は自分の腕をためすためにこういうふうに十九枚つくったということを申して、偽造犯でないと否認いたしましたけれども、強制捜査に踏み切りまして、証拠を突きつけての捜査に入りましたところ、やはり行使の目的を自供した、こういうことでございます。本件事犯は三七号の直ちに本流ではございませんが、広い意味の偽造犯捜査の一環として生まれてきた事件で、他にもこういう事件はあるのであります。
  130. 宇野宗佑

    ○宇野委員 最後に、もう一点だけお尋ねいたしておきたいと思います。  私もいろいろとこの問題、研究もし調査もさせていただきましたが、結論といたしましては、行使犯であるから非常に捜査が困難をきわめておるということも事実でございましょう。ことにこの間、そこまで警察が大いに追及されたその労に対しましては、われわれといたしましても非常に敬意を捧げるものであります。しかし要は民間に協力を得なくちゃなりません。より一そう民間に協力を得なくちゃなりません。そうして、私の手元にも資料として出していただきました写真が、駅だとかあちらこちらに張ってあるわけですが、私自身がこの写真を見ておりますと、千円のどこが違う。横線が違う。あるいは聖徳太子の字が違う。から草模様が違うということはわかるのですが、いわゆる偽造の真券、にせ札の真券を見ない限りは、色合いだとかすべての問題でかなりわかりにくいと思うのです。だからそういうものは非常に重大な証拠資料ですけれども、民間に協力を得るときには、これが真券だというような、何かこういう大きな写真もあるでしょうけれども、もう少し新しい方法をお考えになってはどうなんだろうか。あとから一度見せていただくならいただきたいと思いますけれども、従ってなかなかその真贋のほどがわれわれしろうとはわからぬ場合もございます。  第二点といたしましては、ついこの間静岡で起こりましたときに、斎藤知事が、もしも真犯人がつかまったならば、それに協力していただいた人には知事として感謝の意を込めて百万円出しましょう。考えによってはなかなか警察のために協力していらっしゃいます。しかし考えようによっては、私はこれは自治大臣にちょっと一言お尋ねいたしておきたいと思いますが、もちろん協力費とか感謝費ということならばよろしかろう、あるいは寄付金ということならばよろしかろう。しかしこれが一応協力ということになって——知事さん、あるいは三選か四選されて、喜びのあまりついああいうことを言っていらっしゃると思いますが、地方財政の面から考えますと、こうした贋造紙幣に対する捜査というやつは、御承知のようにいわゆる国費事犯であります。だから財政区分というものがおのずから明らかにされておらなくちゃなりません。従いまして、知事が自分のポケットマネーから出されるならばいざ知らず、県費を使うという建前においてその財政区分というものが明らかになっておるものかなっておらないものか、この点私はむずかしい問題だろうと思う。警察官に百万円上げましょう。ところがその警察官自体は——捜査の士気を鼓舞せんがための百万円の場合の解釈、これを一つお尋ねいたしておきたいと思います。この行為が悪いとは私は決して考えておりません。もしも今後にせ札が発見されました場合には、各府県においては知事が先頭に立って行く。そこら辺の意気込みを示していただくということもけっこうでございましょうが、その点について、自治大臣は両方兼ねていらっしゃいますから、一つ御所見を承っておきたい。そして、私といたしましては、今後一つさらに拍車をかけられまして、民間の協力をなお一そう得ることによって、この犯人を徹頭徹尾逮捕していただきたい。とにかくわれわれの希望といたしましては、伊藤博文が見えるまでにこれは逮捕されるのが常道ではなかろうか、かように考えますので、一つその点、先ほどから柏村長官の御所見のほども聞いておりませんから、最後に長官といたしましての御所見も承りまして、私の質問を終わっておきたいと思います。
  131. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 贋幣捜査につきましては、先ほど刑事局長からも申し上げましたように、基本的な面からの捜査と、それから行使面からの捜査をあわせまして、全国警察をあげて努力をいたしておるわけでございます。しかしながら、これは単に警察だけの力でなしに、特に行使面等につきましては民間の絶大な御協力をお願いいたしておるわけでございまして、最近、特に静岡県に行使されまして以来は、特に民間の御協力が非常に高まっておるわけで、感謝をいたしておるわけでございます。そうした民間の御協力と御声援に対しましても、われわれとしてはあくまでもすみやかにこの事件の解決を見るように努力して参りたい、こう考えておるわけであります。  今の府県の知事の賞金の問題は、自治省の関係でありますから……。
  132. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 通貨偽造の捜査に要する経費、これは警察法施行令第二条の八号で、国費で支弁するということはもう既定の事実です。今お尋ねの静岡県の知事が奨励金として犯人を逮捕したりあるいはまた偽造通貨を発見した者に対して懸賞金を出す、これは知事の善意に出たもので、結局捜査に協力するということ、あるいはまた県民の通貨に対する不安を一日も早く除こうとする善意に出たものであろうと思いますが、知事がそういう懸賞を出したか出さないかということは私よく承知しておりません。何か新聞か何かでちょっと見たことがありますが、これはどうも本筋からいうと、地方費で懸賞を出すということはあまり感心できないのではないか。しかし、捜査に協力をする、あるいはまた県民の不安をなくすという善意から懸賞金を出したということになると、懸賞金ですから、出していけないということも言えないのではないか。私はその程度の判断に立っておるわけであります。もっと法律的に詳細な解釈が必要であれば、事務当局をして答弁をさせます。
  133. 松島五郎

    ○松島説明員 お答えをいたします。  ただいま大臣からお話をいたしましたように、警察法施行令の第二条第八号のヲに、「通貨偽造、重要な有価証券偽造その他の国民経済を混乱させるおそれのある犯罪」、これの捜査等に要します経費は国費の負担ということになっておるわけでございます。ただ、今お尋ねのございましたものが、直接この捜査そのものの経費であるか、あるいは捜査を促進しますための一般的県政全般に対する配慮から出たものであるか、そこの点の判断はなかなかむずかしいところがあろうと思います。従いまして、一律にこれが違法な支出であるというふうに断定することは困難ではなかろうか、かように考えております。
  134. 永田亮一

    永田委員長 阪上君。
  135. 阪上安太郎

    阪上委員 私もごく簡単に二つばかり伺っておきたいが、あのモンタージュ写真は、どういう科学的なやり方によってつくらておりますか。警察科学研究所あたりでやっておるあのモンタージュ写真のつくり方、ああいったものと同じような周到な手続を経てあるいは捜査を経て静岡県警でつくったのか、その辺のところをちょっと御説明願いたいと思います。
  136. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 モンタージュをつくります場合、つくる方の人の問題と、つくる材料の問題と、二つあるかと思います。今度の場合には、静岡県には相当高度の技術を持った着がおりましたので、技術的には心配がない能力を持ってこちらの研究所で相当研究した者が行っておるので、他に応援が要るかどうかという点も念を押したのでありますが、客観的に見て、あの者のつくるモンタージュ写真というものならば権威があるということでございましたので、静岡県警鑑識課でじかに作成したものであります。  なお、モンタージュ写真の内容の問題であります。これはいかに技術者が技術を持っておりましても、その材料が不確かな場合におきましては、これはできません。従来の例は、見た人の記憶が相当不確かで、意識というものが必ずしも明確ではない。そのために、われわれの方の判断では、第一次行使ではないかというふうに判断される場合でも、捜査資料はできましてもモンタージュ写真はできなかったというのがこれまでの事実であります。今回の静岡において発見したものにつきましては、その顔、姿を目撃した者が約五名、そのうち二名がはっきりと——あらかじめ警察がこういう偽券が出たということを三時間前に通知してありましたため、その二名の記憶というものは比較的確かである。その他の関係者等の材料を集めまして、時間は、捜査の手段とするために短時間につくりましたけれども、十分いけるという自信を持ってモンタージュ写真を作成したのであります。
  137. 阪上安太郎

    阪上委員 モンタージュ写真の一般論ですが、正確度の高いものであるという認定は、鑑識官がやるのか、本人がやるのか、そこらのところはどうなんですか。あるいはそれに対する正確度を判定する基準といったものを警察はお持ちなんでしょうか。
  138. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 今回のモンタージュ写真は早々の間につくりましたから、あるいはほくろがある、あるいはそこに傷があるというふうな微細な点につきましては、まだ不完全なものと思います。しかしながら、今申しましたように、犯人のカンがとれるというような点につきましては、自信があると申しました目撃者に再度見せ、これでいいかどうか、さらに他の現場における者の、つまり第一に出ました清水等における目撃者、こういう者の意見を総合いたしまして、このモンタージュ写真を公表することが捜査上有効である、かように判断をいたしたのでございます。
  139. 阪上安太郎

    阪上委員 その最初のモンタージュ写真以後において、モンタージュ写真は修正されておりますか。
  140. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 修正されておりません。
  141. 阪上安太郎

    阪上委員 おそらくその後の材料等が整わないから、修正できないだろうと思うのであります。私がこのようなことを質問いたしますのは、あれはかなり正確度が高くないと他人に及ぼす迷惑というようなものは非常なものだと思うからであります。今回のあのモンタージュ写真がそういった問題を引き起こしていないかどうか。迷惑をかけたというような例は、実際にあるならある、ないならない、そのことを一つ御報告願いたいと思います。
  142. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 ただいまの御質問は、この写真を出すことによって迷惑のかかる人があったかどうかという問題でございますが、これは私の方でモンタージェ写真を出しますときに、清水の行使の場合は帽子をかぶっておらない、静岡市においてはかぶっておる、こういうふうに差異があります。従ってめがねをかけておること等も考え合わせまして、変装することは予期いたしておるのであります。従ってこのモンタージュ写真につきまして、具体的に注意は発表したのでございますが、その部分のPRが不足のために、これが変装ということが予定されないで部外に出たような印象を与えております。  それから第二点といたしまして、このモンタージュ写真につきましては、比較的特徴のない顔であるとわれわれは思っております。従って、間違われる可能性があるということを十分に留意いたしまして、われわれあくまでも民間の協力を得るという意味におきまして、あらゆる情報はいただきますけれども、その情報を直ちにうのみにし、それを被疑者扱いにするな、不審者であっても被疑者ではないという点に十分注意をいたしたのでありますが、今までわれわれの報告によりますと、たびたび職務質問を受けた、不愉快な目にあったという事例の報告に接しておるのであります。  なお、第一点の修正が可能かどうかという問題に触れて御質問があったのでございますが、この点につきましては現在目撃者につきまして、われわれの方がモンタージュ写真を修正するために、いろいろ聞きましても、これはいろいろ報道関係その他からも聞かれておりまして、先入主が入っております。先入主と申しますか、いろいろ直感的な印象というものが薄れて参りまして、かえってこれは危険なことだ、こういうふうに判断いたしておりますので、私どもの方ではそういう意味において、今まででも直感といいますか、第三者が当たらない最初の印象というものを中心にモンタージュ作成、あるいはモンタージュに至りませんでも、資料というものを作成しておるのであります。
  143. 阪上安太郎

    阪上委員 そこでできれば、非常に技術的にむずかしいかもしれないし、あるいは正確度を逆に減少することになるかもしれないけれども、めがねをかけていない場合はこういう顔で、帽子をぬいだときはこういう顔だというような修正というものはどうなんでしょう。あなた方の見解を聞きます。下手をすると大へんなことになると思うが……。
  144. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 今申しましたように、清水の場合におきましてはめがねをかけていない。ところが不幸にして、めがねをかけていない第一行使者を見た方が、その意識において行使者だという気持がございませんために、非常に不正確な表現しかできない。そのために、この第三現場におきましてつくりましたモンタージュ写真をお見せした場合でも、ある点は非常によく似ている、この点はぼけているというようなことによって、発見者の、その直接の記憶によって、めがねをかけていない写真というのを、部外に発表するような状態のものをつくり得るかどうかということは、現在検討している段階なのであります。
  145. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、ああいったモンタージュ写真によって密告といいますか、通告があった場合の職務尋問は、どういうような慎重さをもっておやりになっておるでしょうか。
  146. 宮地直邦

    ○宮地(直)政府委員 静岡県の場合におきましては、とっさの場合におきまして、相当多数の者におきまして、同一人が似ているということにおいて、その一両日間におきましては、多少御迷惑をかけた例を私どもも耳にしております。しかしながら、現場において犯人がすでに現行犯あるいは準現行犯として逮捕し得ざる状況と判断せられました以降におきましては、われわれの方におきましても各県に電話と文書をもって、単に似ておるからといって、先ほど申し上げましたように、これを被疑者にするな、やはり通報者の言葉の信憑性あるいはその裏づけをとって、慎重にこれを取り扱えということを、私の方では全国に指示をいたしておるのでございます。
  147. 阪上安太郎

    阪上委員 大体わかりましたが、うちらの委員の中にも、ああいう大久保彦左衛門みたいなめがねをかけておる者もおって、冗談にひやかされておるくらいのものなんです。そこで一つこの際お願いしたいと思いますのは、ああいったことによって迷惑を受ける人はかなりあると思うのですけれども国民が警察に協力するんだということで、これはやはり忍んでもらわなければならぬと思いますが、そういう意味のことをもっと国民に周知徹底させておく必要があるのではないか、正確度は必ずしもこれで確かなものではないのだから、あるいは間違いを起こすこともあるけれども、警察に協力してもらう意味において、早く犯人をあげる意味において、どうぞ一つそういった点について御了解を願いたいくらいのことは、あらかじめPRしておかないと、今にあっちでもこっちでも間違えられて問題を起こすようなことになりはしないか、この点一つお願いをしておきまして、質問を終わります。
  148. 永田亮一

    永田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時八分散会