○小澤(太)委員 ただいま報告を求められました
地方税法の一部を
改正する
法律案審査小
委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
本小
委員会は、
地方税法の一部を
改正する
法律案につきまして、その
住民負担及び
地方財政に及ぼす影響の重大なるにかんがみ、去る三月一日設置せられ、小委員十名が選任せられたのでありますが、三月五日第一回の小
委員会を開き、その後八日まで三回にわたって開会し、委員各位の御精進により熱心に審査を進めて参ったのであります。
審査は主として懇談的に進めましたが、まず、
政府当局より
改正案について逐条にわたって説明を聴取した後、税目別に
政府当局に対し、質疑を行なうとともに、
地方税制運営の
現状、
住民負担の実態、
税制調査会における論議の要旨、
改正案の経緯及びこの
改正案を施行した場合における影響等、広範多岐にわたり論議を行なったのであります。
審査におけるおもなる論点を申し上げます。
まず
住民税について申し上げます。
住民税については、なお多くの
市町村において
準拠税率をこえて課税が行なわれているために、それらの
市町村における
負担が相当に重くなっているほか、さらに課税
方式に
本文方式と
ただし書き方式があるために、地域によりその
負担に相当の格差があるが、かような現在する
負担の不均衡を是正するためにいかなる指導を行なっているか、
市町村民税としては将来いかにあるべきか、
ただし書き方式を廃止して
本文方式に統合する意思はないか、また現行の
準拠税率を標準
税率として法定し、超過
税率について制限をしたらよいではないかという意見があり、いずれにしても
準拠税率を超過して課税せざるを得ないというその原因を徹底的に究明し、必要な
財源措置とともに、かような不均衡状態を早急に解消すべきであるという意見が圧倒的でありました。
また、給与所得者の
負担が過重である
現状にかんがみ、ことに
ただし書き方式採用
市町村における給与所得者の
負担の軽減をはかるために・給与所得の勤労割増控除を大幅に
増額する必要があるという意見がありました。
次に、娯楽
施設利用税に関しましては、ゴルフ場の問題がありました。ゴルフ場の利用の実態は、ゴルフの普及に伴って漸次大衆化しつつあるというものの、その入会金及び利用料金の額からいっても、高所得者階級の娯楽であることは争えない。すなわち、ゴルフは奢侈的行為であって、しかも見るものにも楽しみを分かつ一般娯楽とは性質を異にすることにかんがみ、ゴルフ場の利用に対する課税は、娯楽
施設利用税でなく、別途の課税本系によって課税すべきではないか、またゴルフ場の芝に対しては、
固定資産税の評価を
引き上げるべきではないかという意見がありました。
次に、狩猟者税につきましては、今回の
改正によって狩猟地における知事の免許を受ける者に対し課税されることにより、課税対象の捕捉が困難となる結果、特に県境における狩猟について脱税行為を助長せしめるてととならないかという意見がありました。
次に、
固定資産税について申し上げます。
昭和三十九
年度より
改正評価制度による秤価額に基づいて課税が行なわれることになるが、この
改正評価制度の実施に伴い、資産によってその評価額が
引き上げられることにならないか、評価制度の
改正はいかに進められているか、評価がえに際し、従来
負担の過重となっている資産について、その不均衡を是正しているか、たとえば現行の評価
基準によれば、寒冷地における単作地帯の農地の評価は、二毛作地帯の評価の評点を
基礎として定められているため、その評価額は過重となっているようであるが、これをどのように是正しているか、また、建物も積雪寒冷地帯では広い建坪を必要とし、構造も強靱にする必要があるため、坪当たり評価額が高く、しかも実際の耐用年数は短い。これらを是正するために減価補正をやっているが、この点、
改正評価制度ではどのようになっているか、また、猛火の家屋で現在利用価値のないものについては、その
負担能力を考慮に入れて
負担の緩和をはかるべきではないか、土地及び家屋の評価に際して、いまだに賃貸価格を
基礎として評価しているところがあるが、こららの評価
方法は再検証すべきではないか、また国や
地方団体等の公共事業の施行によって生ずる土地の増価による利益に対しては、不労所得的性格を有することにかんがみ、
税制上特別な課税を行なうべきではないかという意見がありました。
次に
電気ガス税について申し上げます。
電気ガス税の
税率の引き下げは、電気料金の値上げを前提としたものではないか、
産業用電気について非課税品目の追加を
要望している向きもあり、また本税の
地方税収に占める地位の重要性や
地方財政の事情により、本税のあるべき姿をいかように考えているか、また今回の
税率引き下げは大いにけっこうであるが、反面免税点の
引き上げが忘れられているのではないか、最近の電気ガスの使用の実態等から見て免税点もいま一段と
引き上げる必要があるのではないか等の意見がありました。
次に
国民健康保険税について申し上げます。
国民健康保険税については、保険料なのか税なのか、問題があるが、今日
税負担として見た場合、この税ぐらい
負担が重くしかも逆進的なものはない。加入者の生活実態にかんがみ、保険の観念から一歩出て、むしろ社会保障の観念を導入し、国の責任において
負担の軽減をはかるべき時期にきているのではないか、また今回の
改正によって低所得者に対する
負担の軽減をはかっているが、たとえば十五万円をこえる所得のものについては保険税自体は若干
引き上げられる結果となるので、
負担の軽減が適用される階層の範囲を広げるべきではないかという意見がありました。
次に、
法定外普通税に関連いたしまして、現在京都府において
法定外普通税として自動車取得税を課しているが、これは自動車が道路損傷の
負担的性格を有することにかんがみ、道路整備の必要性から、その
財源捻出の一
方法として設けられている趣旨にほかならないと思うが、今日の自動車の著しい増加に対処して、これを法定として自動車取得税を設ける考えはないかという意見がありました。
以上のほかにも各税目にわたった有意議な論議がかわされたのでありますが、時間の
関係もありますので以上にとどめます。
これらのすべての論議に対して、
政府当局は、
政府原案の趣旨とするところを
税制調査会の答申等をも援用して説明し今日の場合
住民負担の均衡と
地方財政の
現状に照らし、もとより遺憾の点はこれなしとしないけれども、この
程度の
改正にとどめざるを得ない
実情と将来の
見通し等につき、詳細なる説明を行なったのでありますが、本小
委員会の論議の存するところについてはこれを尊重して若干のものについては将来の検討を約したのであります。
たとえば
電気ガス税の軽減については、その
方向で検討するということであり、また
市町村民税の課税
方式の一本化については、その実現を可能ならしめることを目途として検討する趣旨において、目下
市町村の
財政構造を中心とした調査を行なっているという答弁があり・小
委員会としてもこれを了としたのであります。
なお、三月八日の小
委員会には、日本社会党所属委員より
地方税改革要綱が示されたのであります。
太田委員の説明によりますと、今回の
政府提案の
地方税法改正案につきましては、これが
国民負担の軽減という建前からして、本質的に反対すべき筋はないけれども、これがきわめて不十分であって、なおこの際考慮すべき点が多々あるという意味において、日本社会党としては、これらの点について
地方税改革要綱を提示して、今後の検討を
要望したいということでございましたので、付言をいたします。
しこうして、本小
委員会としましては、本案について結論づけることは適当でないということに意見の一致を見、小
委員会の審査を終了することとした次第であります。
以上御報告申し上げます。