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1963-02-12 第43回国会 衆議院 地方行政委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十二日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 小澤 太郎君 理事 大上  司君    理事 纐纈 彌三君 理事 丹羽喬四郎君    理事 太田 一夫君       伊藤  幟君    大沢 雄一君       大竹 作摩君    金子 岩三君       久保田円次君    田川 誠一君       松井  誠君    山口 鶴男君       門司  亮君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁長官官         房長)     後藤田正晴君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      宮地 直邦君         警  視  監         (警察庁交通局         長)      富永 誠美君  委員外出席者         運輸事務官         (自動車局保障         課長)     宮永偉志男君         自治事務官         (選挙局選挙課         長)      中村 啓一君         専  門  員 曾根  隆君     ————————————— 二月九日  地方議会権限縮小反対に関する請願増田甲  子七君紹介)(第六二六号)  同(井出一太郎紹介)(第七七三号)  ガス税の撤廃に関する請願松平忠久紹介)  (第六五六号)  同外一件(横路節雄紹介)(第六五七号)  同(池田正之輔君紹介)第七一九号)  同(島本虎三紹介)(第七二〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第三  五号)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  警察法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を行います。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。太田一夫君。太田委員 警察法一部改正法案関連をしまして、特にその中で選挙取り締まりに関する関係を、警察庁当局お尋ねをいたしたいと思います。具体的な事例お尋ねをいたしますので、そのつもりでお願いをいたします。  それは現在行なわれている宮城県知事選挙関連をするのでありますが、宮城県に公明選挙推進連盟、非常に公明選挙に対して熱意を持つ団体が仙台市東四番丁にあるので、会長は半沢という方ですが、その方が実は今度の知事選挙関連をしまして、どうも事前運動とまぎらわしく、かつまた事前買収と見られるような事例が非常に顕著にあるので、これに対して選挙管理委員会としてはいかなる方針を持っておるのかという点を再々質問をいたしておるのでありますが、どうも選管考え方というのが、当面を糊塗する態度以上に出てこない、いわゆる指導方針を示さない、こういう態度に出ております関係上、かえって選挙を毒しておるというような疑いさえ見られるのです。それで非常に現地では残念がっておるのでありますが、私どもが知りました事実によりますと、昨年の五月五日に手ぬぐいが二千本つくられまして、単価三十二円、これが県内に配布された。この手ぬぐいに実は特定候補者氏名が入っておるのであります。全部氏名入りです。以下つくられた内容を申し上げますと、七月六日にできて参りましたものはタオル一千本、三十円程度のものであります。それから七月三十一日にできましたのは、手ぬぐい三百五十本で、この手ぬぐいは大体百円くらいのものだと見られております。それからその次にできましたのがふろしき、これは百円くらいのものでありまして、ずいぶん多量でありまして、おそらく何千本とつくらているのじゃないだろうかと言われておるのであります。それから十一月五日には同じく手ぬぐい一万五千本つくられた、これは大体二十八円と見られております。それから十一月十日になりますと、手ぬぐい七百本が三十二円程度でつくられておる。十二月十日の日には、タオル六千箱、一箱百円のものがつくられております。それから十二月二十二日には、やはりふろしきが、かなりのものだろうと思うのですが、百二十円くらいのふろしきがつくられております。十二月二十三日には、のれんが千七百枚つくられて、六十五円の単価と言われております。それから十二月二十六日の日には、同じようにタオルが千六百本つくられておりますが、このタオルはあまりいいものじゃなくて、三十円程度、それから十二月二十六日の日にはふろしきが、三百五十円くらいの値段だそうですが、約百枚程度つくられておる。こういうようなことで、およそ推定するところ、これは少しこまかいのですが、四百六十五万六千九百円程度のものが相当つくられておる。発注したところは県庁関係が実に多いのでありまして、たとえば農地課であるとか、税務課であるとか、調査課であるとか、道路課であるとか、母子課であるとか、社会課であるとかいうような工合に分かれておりますけれども、そういう県庁の各課から発注をされて、そしてできておる。  こういうのが県下に配られましたので、これに対しまして、公明選挙推進連盟におきましては、公明選挙推進連盟の名におきまして、こういう悪質な事前運動があって、名を入れたタオルふろしき等大量に配った事例がたくさん出ておるのだが、これは告訴するわけじゃないが、告訴しなくても、行政指導か何か手段を考えていらっしゃるべきではないか、こういうようなことをお尋ねをし、これは事前運動に該当すべきものじゃないかと考えるが、どうか、こういうようなお尋ね選管にしたわけであります。選管としてはどんな答えをしたかといいますと、「ご質問内容については慎重に検討いたしましたが個々内容についての回答は差し控えたいと思います。ただ、県選管としましては選挙はあくまで公明に行なわれるべきであり、また公明化のためには今後もあらゆる努力を傾注したいと存じます。なお、ご承知のとおり選管具体的事件に関する調査等権限がないので念の為申し添えます」と、まあ甲賀流忍術を使ったわけでありますが、こういう態度現地を非常に刺激をしまして、その後紛争、議論が絶え間なく行なわれておる。この事実は、警察庁としても刑事局長承知だと思いますが、何かこれに対して御所見がありましたら、承りたいのであります。
  3. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 ただいま太田委員が御質問の事実につきましては、現地警察本部におきましても承知いたし、私の方におきましてもこれは報告を受けておるのでございます。今御指摘の、いろいろの物品が県庁から配布され、それに特定候補名前が掲げられておるということにつきまして、現地警察当局におきましても、これにつきまして検討を加えたのでございます。しかしながら、この検討を加えました結果、いずれもその金の出所、配布先、それから時期等を総合的に検討いたしまして、これは知事通常仕事と申しますか、職務と申しますか、そういう行政行為範囲内の行為に入るものと現在の段階では判断いたしておるのでございます。
  4. 太田一夫

    太田委員 いわゆる知事通常行政行為の中に入るものということをおっしゃったですね。そういう意味からこれは適法であるとおっしゃったと思うのですが、これは自治省選挙局の出されましたところの選挙法解釈によりますと、通常一般社交程度を越える寄付などはいかぬ、こういうことなど言うておりますが、いつもあまりやっておらないのに、そういう近づいたときなどに寄付などするのは、——通常一般社交程度を越える寄付であるから、これはいかぬのだ、違反だ、処罰されるのだということを言うておりますし、われわれ世間一般に考えても、その人が行政事務に携わっていらっしゃる間、タオルを千六百本配ったり、手ぬぐいを二千本配ったりということが常時行なわれているというならばいいのですが、選挙が近づいてから行なわれておるということが、時期的に見て問題がある。潜在意識というものまでそんたく推量しなければならないだろうと思うのですが、こういうことを見のがすということが、そもそも取り締まり当局としては少しなれ合いじゃないかと思うし、曲解じゃないかと思う。これは立法の目的と反すると思うのですがね。選挙法取り締まり規定などの精神を逸脱する行為だと思うのですが、いわゆる行政行為に入るということで適法であるという考え方は、確定をいたしておるのですか。
  5. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 現地警察におきまして、そういう事実につきまして検討を加えまして、先ほど申しました通りに現在の段階におきましては通常行政行為に入ると申したのでございとます。  一般論として申しまして、事前運動選挙運動との区別の問題でございますが、その区別することにつきましては非常にいろいろな条件がございまして、個々の場合におきまして検討を加えなければならぬ。しかも従来やっていないようなことを特にその選挙の時期にいたしますと、選挙に関しての運動、すなわち事前運動のにおいが強くなってくることは事実でございますが、それだけをもって直ちに事前運動と認定することはできないと思います。
  6. 太田一夫

    太田委員 宮地さん、非常に寛大なる取り扱いというのは私はいかなる場合にも望ましいと思うのです。ところが交通事故などになるとそういうわけにいかない。片足をおろしたけれども、その片足が地についたかつかないか。君ついていないよ、片足をおろして一たん停車したと言うけれども、実はまだ車の回転がとまらなかったよということで、踏み切りなどにおける違反として五千円取るというのが警察庁指導方針に基づく各県警交通取り締まりの実態です。そこまでしゃくし定木——しゃくし定木というと語弊がありますが、そこまで法の執行を厳正にやるということがわが日本国警察のいわゆる正しい規律であるとするならば、選挙に関して、こういうところに非常に解釈例を広げて、何か寛大なることをやられるのはどうも首尾一貫しないような気がする、もっと厳正でいいじやないか。三浦という人の名前が盛んに書いてあるそうですけれども、その手ぬぐいを持ってあちらこちらにあれすることによって氏名回覧になる、ふろしきを持ってあちらこちらを持ち運ぶことによって氏名回覧になる、その者はただの者じやない、こういう行為が公然ととられるというのは公の地位を利用する、地位利用疑いもあれば事前買収疑いもある。これがいいということになったら、日本の国の選挙というものは、政権をとっておる者からすれば公然たる買収が許されることになると思いますが、それで公明選挙というものがなし遂げられるとあなたの方に自信があるのですかどうですか。
  7. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 警察といたしましては、選挙違反取り締まりにつきましては、厳正かつ公平に取り締まりをいたしておるのでございます。ただいま御質問事前運動の問題でございますが、事前運動なりやあるいは適法行為なりや、この認定の問題であろうとか存ずるのでございます。われわれ事前連動と認められる行為にして証拠の十分なものにつきましては、選挙機会ごとにこれを取り締まり、今回の統一選挙につきましてもすでにかような条件に該当するものにつきましては検挙した事例もあるのでございます。事前運動等の問題に関しましては、すでに御承知のことと存じますが、一方におきまして候補者の当選を得せしめる目的を持ってする行為につきましては、あくまでもこれは取り締まるべきことにつきましては今太田委員の御主張の通りだと思いますが、他方、候補者たらんとしておる者の日常交際とかあるいは政治活動というものにつきまして、これまたわれわれ何ら触れるべきものでなく、むしろ現在の民主政治のもとにおきましては、日常政治活動というものが一そう活発に行なわるべきことは、当然のことだと思います。その区別の問題であろうと思いますが、われわれは公正にかつ適確にその事前運動なりやあるいは日常政治活動なり交際なりや、そういう点につきまして、個々事例につきまして証拠をもって判定をいたしておるのでございます。
  8. 太田一夫

    太田委員 たとえば事前運動としてそういう名を入れたタオルとか、ふろしき等を大量に頒布したために、それが違反容疑に問われた事例というのはないのですか。
  9. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 単にタオルあるいは今御指摘のようなものを、何ら今申しましたような社会的な理由なく配られた場合におきましては、事前運動として問擬した事例はございます。
  10. 太田一夫

    太田委員 そうすると、これは理由なく配られた場合はいけないが、理由があればよろしいということになるのですか、逆に。合計七万枚というような多数のもの、四百六十五万円、五百万に近い大量の金額のものを、不特定多数の者に配っておるじゃありませんか。そういうことが理由があるということになるでしょうか。
  11. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 最初に申しましたように、これらの配布につきまして、知事職務行政行為範囲内に現在の段階ではなると判断しておる、つまりそれらの理由があるということと存じておるのでございます。また、配布された範囲におきましても、それぞれの名目の関係者配布されておる、こういうことでございます。
  12. 太田一夫

    太田委員 その事前運動禁止というものは、実は相当に厳格になされなければならないことだと思うのですが、何人も事前運動というものはすることができないのが原則です。特に公務員事前運動できないというのは、公務員そのもの選挙に関し公明選挙の手本を示さなければならないという点からいっても、さらに私は責任重大だと思う。選挙区のために不当の恩恵を及ぼし、あるいは公費を用いてその他の事前運動を行なうことは、職務遂行の適正を欠くという点からも、また選挙の公正を害するという点からも、厳格に禁止されなければならないというのが、政府当局の方としても解釈上の表現の仕方でございます。こういう解釈が、いかなる場合にも公務員事前運動禁止の中には入っておる。職務遂行の適正を欠くということ、公正を害するという点、そういう点から、選挙区のために不当な恩恵を施すようなことは厳格に禁止されなければならぬ、厳格に禁止するということは一般の知らない者がやったとかということより、民間の者がやったよりは、さらに立場上重大に取り扱われなければならないと思うのですが、それが許されますと、たとえば今後知事にしても市長にしても何にしましても、何々の祝賀会とか何々の記念式、何々の表彰式というようなことで、無数に、県民すべてあるいは市民すべてに、近づく選挙目前に迫っておる選挙に立候補する意思があると伝えられている時点において、候補者たらん者の名を入れたものを配っても、それが違反に問われないというようなことは、天下を毒するものではないかと思うのです。それはいいのですか、よろしければ、よろしいと宮地局長と柏村長官がおっしゃっていただくならば、私も天下の新聞に堂々とそのことを、わが国ではこういう方針である、もって地方自治体並びに権力者よ、安んじて大いに公費を乱費して選挙を有利に展開されたしということを——四月の選挙目前に控えてみんな心配し、百出すところを五十にして遠慮しているのだから、これは喜ぶでしょう。これどうですか。
  13. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 公務員地位利用解釈の問題につきましては、今太田委員の御指摘通り公務員がその立場を利用いたしまして特定の業者あるいは部下、あるいは特定機会に、その地位を利用いたしまして選挙運動をいたしますことは、選挙公明見地からこれは許されざることであり、かつわれわれの方におきましても十分注意をし、取り締まりをいたしておるところでございます。他面、知事という特定行政機関のその行政行為範囲内に入りますことにつきましては、これは地位利用とはならないと存ずるのでございます。今御設問のように、ただ知事なるがゆえに何でもしていいということをわれわれ申し上げているのではなく、知事職務範囲内において認められる行為につきましては、これは地位利用とはならないということを申しているのでございます。もしもそれが通常知事職務行為を逸脱いたしましたならば、これは今御指摘通り地位利用となる場合もあり、あるいは買収となる場合も一般論としてはあろうかと存じますが、現在のこの問題につきましては、今の段階においてさような事態ではないということを申したのでございます。
  14. 太田一夫

    太田委員 長官、どうでしょうね。法律論として、知事の名を冠してやることですから、たとえば非常に納税成績がいいからというので、表彰手ぬぐいタオルを何県知事何のだれ兵衛と書いて特定の者にやる、これは行政行為としても考えられる一つ方法ですが、ただ時点が悪い。当選してほんとう仕事をやる一年目から二年目というときにやらないで、任期の終わる直前にやるなんということは、神様は御存じだから、このやろうと言う。選挙取り締まり当局だけが条文にひっかかってしまって、どうも積極的な行政行為だ、こういうことになるような気がするのですが、そういうことは好ましいことでしょうか、あまり好ましくないことでしょうか。やるなら直前に多量のものを出すということをしないで、さらには自分任期の中において、自分治政の中において、滞納の方がないようにするために、納税協力をするために、何か出すというならいいのですが、どうも時期的にまずい、そういう名を入れたものを出すということは。これは何か条例があるかどうかという場合は別として、ちょっと思いつきでやるというふうに思われることはまずいじゃないですか。いわゆる好ましいことか好ましくないかという点はどうでしょう、この点に関して……。
  15. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 すべて世の誤解を招くようなおそれのあることは、好ましいことではないと思います。今お話の具体的な事例につきましては、事前運動である、選挙のための行為であるということがはっきりする、そういう証拠がはっきりするということでなければ、警察としてはこれに介入すべきものでないという見解刑事局長が申し上げておることと考えるわけでございます。
  16. 太田一夫

    太田委員 私は、長官見解というものは、抽象的だけれどもいいことだと思うのですよ。常に、取り締まり当局とか、あるいは行政当局というのは、天下万民のために向こうべき道を示すという指導者意識というのは必要でしょう。それが出たことはよろしい。法律に触れないから大体よろしいということだけではいけないけれども、指導的な何かというものは要る、指標が要る。そういう点ではやはり好ましくないというのはほんとうだろうと思うのですよ。  あなたは、それでは配った、注文した人に、向こうの宮城県警選挙違反取り締まりをするために特別の体制をしいておるのだと思うのですが、何かお調べになったでしょうか。いかなる魂胆をもってそれをしたか、その魂胆なるものをお確かめになったでしょうか。
  17. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 本件に関しましては、関係方面につきまして検討を加えたわけでございます。
  18. 太田一夫

    太田委員 検討というのは、相手を呼んでお聞きになったんですか。
  19. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 現在、選挙運動期間中でございますので、慎重にそれらの事情を考慮いたしまして、違反があるやいなやということの検討を加えた、こういう意味でございます。
  20. 太田一夫

    太田委員 念のために宮地さんにお尋ねしますが、あなたの方は、選挙法の変わるたびに取り締まり方針をもうちょっと具体的にしるした、取り締まりのしおりとか取り締まり方針とか、具体的な選挙運動監視についてとかいうような、何か基本になるものを一般関係者に流していらっしゃるでしょうか。単に法律が出たからといって、法律だけをそのままなまで地方が見て、それによって地方それぞれに解釈をしているのか、どうですか。
  21. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 一般的な問題につきましては厳正公平に取り締まれということをいっておりますと同時に、先般のごとく選挙法改正等がございますと、これらの的確なる監視、その取り扱い方針に関しましては、われわれの方から各県警本部に流しておるのでございます。
  22. 太田一夫

    太田委員 その取り締まり方針というものを、念のために御提出をいただくことはできますか。
  23. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 先般の改正につきまして、われわれの方の、地方に出しましたものにつきましては、提出して差しつかえございません。
  24. 太田一夫

    太田委員 一つ皆さん方針というものを承りたいと思いますので、差しつかえない程度のものでけっこうですから、極力資料としてお出しをいただきたい。取り締まり地方によって異なる、ないしは解釈地方によって異なるということは好ましいことではありませんし、しかも正当な解釈というものがなされない限り、公務員地位利用選挙運動厳禁という先回の改正というものが画餅に帰する。私はその画餅に帰することをおそれるのです。この問題が合法的なものと認められるような、その雰囲気の中で見のがされていくということは、先回の公務員地位利用選挙運動というものを厳禁をしたところのあの精神とは違うじゃないか。これがだんだんと骨抜きにされていくというならば、私は非常な危険があると思いますから、極力皆さんの方でもそういうことのないようにしていただくと同時に、皆さん考え方というものを承りたいと思いますから、資料がありましたら一つ提出下さい。  それで宮地さん、李下に冠を正さずということですね、日本警察には哲学はあるのでしょうが、李下に冠を正さず、選挙取り締まりという場合に一番大事なのは、微々たる証拠ではない、微々たる証拠でなくして、公明選挙ということが今盛んにいわれておる、その公明選挙方法を毒するとか阻害するというものを除去する方法というものがあると思うのです。その積極的な取り締まりというものがなされなければいけないと思う。そういう意味を盛り込んであなたの方は取り締まりに当たっていらっしゃるだろうと思うのですが、その点はそうなんですか。
  25. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 警察取り締まりにつきましては、ただいま太田委員の御発言の御趣旨の通り選挙公明に行なわれますように、警察の分野におきまして、いやしくも違反を犯す者につきましては適正なる取り締まりを加え、またさような違反の起らないように十分警告も加え、公明選挙が行なわれるように、その一翼をわれわれになっておるものと存じておるのでございます。
  26. 太田一夫

    太田委員 一つ極力公明選挙を阻害しないようにやって下さい。それは一般行政行為の概念には入るだろうというようなことで、手ぬぐいタオルや、のれんなんというものを、わずか十一月、十二月のほとんど二月間に、件数七万二百七十件ということで、七万二百七十人に配り、その金額四百六十五万六千九百円という膨大なる支出をするというようなことは、皆さん取り締まり見地からいっていらっしゃるが、地方自治の財政上の見地からいったら容易ならざる事態である。少なくとも法定費用をはるかにオーバーしたものが事前になされる。これは大へんなことだと思う。今公明選挙というものはずいぶん費用をかけておるでしょう。公明選挙に対する費用というのは、ことしは予算も非常にふえまして、幾らでしたか大したものになっていると思うのですが、何億となっている。そういう公明選挙費用が何に使われておるかといったら、単なる投票狩り出しであるということやら、何か飛行機を利用して空からビラをまくということに使われておるとするならば、こんなのは死に金ですよ。なぜもっと積極的に公明選挙をつくり出すという、そういう情勢をつくるためになされないかという点を私は特に残念に思う。特に行政行為なんということに今の問題が入るなどという見解などは、全く腰くだけの見解だと思う。もっときぜんとした態度をおとりにならないといかぬじゃないですか。力強き者に弱き態度力弱き者に強き態度を持つというのは、徳川幕府やり方ですよ。今日の皆さんやり方はもう少し科学的に、文化的になっているはずです。宮地さんなど、文化的なセンスが高いだろうと思うようなムードを持っている人が今日刑事局長に御就任されて、それがこういうことに対して弱気な態度をとられるということになると、世の識者からいささかそしりを免れぬのじゃなかろうか、がっかりさせないように、一つしっかりして下さいよ。そういう点で行政行為に入るか入らぬかという問題については、なお私は議論があると思う。このことそのものが行政行為だという。こんなことが行政行為などと認定されることなんか実に重大問題だと思うのです。これをいつまでもやっていても、あなたの方は一応は入るものと考えておると、なお余韻ありとわれわれ見ておりますけれども、こういうことは厳格に一つ解釈例を確定していただきたいと思います。
  27. 松井誠

    ○松井(誠)委員 今の選挙違反取り締まりのことに関連をしまして、私も一つお伺いをいたしたいと思うのですが、これはもう終わった事件ですから、一つ伸び伸びとお答えをいただきたいと思います。  最初に一般的な取り締まり方針についてお伺いをしたいのですが、選挙違反の中で、文書違反とかその他のいわゆる言論活動を取り締まる、言論活動規制に違反をしたという場合と、それから買収、供応などを犯したという場合と、選挙違反の中における比重というものが私は非常に違うと思うのですけれども、その点をまず一般的に、お伺いをしたいのです。なぜかと言いますと、文書選反も選挙違反買収、供応も選挙違反だ、つまり選挙違反という名前においては同じだという妙な錯覚がある。しかし私はその二つは取り締まり目的からいっても、元来全く違うものだと思うんですけれども、その点はいかがでしよう。
  28. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 選挙違反行為につきましても、その態様におきましておのずから軽重のあることは御指摘通りでございます。たとえば買収とか地位利用等の悪質なことはもちろんでございまするが、さらに軽微な違反といえども、その軽微な違反を意識いたしまして組織的に違反をするというようなものも、また悪質なものであることは当然であろうと存じておるのでございます。
  29. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その点が議論になるところだと思うんですけれども、軽微な事案だから組織的にやろうということでは悪質だと言われたのですが、それと同じような見解が実は世上あるわけです。それは一体どういうわけなんでしょう。軽い違反だからそれを組織的にやろうということであれば悪質だという考え方の基礎ですね、私よくわからないのですけれども。
  30. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 これは一般論でございますけれども、違反という認識を持ちながら、それをあえて行なうという点が悪質であるということを申し上げておるのでございます。
  31. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は法律違反一般論としてじゃなくて、今、軽いと言ったのは——軽いと言うと非常に抽象的になりますけれども、文書違反というものは一般に軽い。もっと具体的に言えば、文書違反は軽いから組織的にやろうということになっては、そのゆえに文書違反は悪質だ、買収、供応と同様に見るべき悪質なものだという考え方、具体的に言えばそういうことだと思いますけれども、今の御答弁はそのように理解してもよろしゅうございますか。
  32. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 必ずしも買収犯と同様にということを申しているわけではございませんが、やはり選挙違反であるということを意識しながら、それをあえて組織的にすることは、その態様において悪質になるということを申し上げているのでございます。
  33. 松井誠

    ○松井(誠)委員 では法律違反を意識しながらやるというのは悪質だということになれば、故意違反は全部悪質だということになるわけです。過失犯以外は全部悪質だということになる。これでは法規として何も意義はないと思う。私はむしろ、文書活動をなぜ制限するかという理由と、買収、供応をなぜ制限しているかという理由とは、根本的に違うのではないか。文書活動、言論活動というものは、元来ならば無制限に自由にやるべきものだ、しかしいろいろな理由で制限せざるを得ないという意味、ところが買収、供応というものは本来やるべからざるものだと思う。つまり買収、供応というものは有権者の自由の判断を惑わす、そういう意味ではまさに選挙を毒する。しかし言論活動というものは、有権者の正当な判断を促す意味で、いろいろな文書活動、言論活動というものは、元来許さるべきものである。有権者はいろいろなそういう言論の中から何が正しいかということを判断し得る。しかし買収、供応になると、そういう判断の芽を頭からつんでしまう。そういう意味では買収というものと文書違反というものは全く質的に違うのではないか、どうでしょう。
  34. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 今それぞれの条項の立法の趣旨についての御指摘は、その通りだと思います。われわれといたしましても、買収と、それから今御指摘のような事例とを同等にとは思っておりません。あくまでもその行なわれました個々の態様によってそれを判断いたしたいと思います。
  35. 松井誠

    ○松井(誠)委員 少しわかりましたけれども、ところが今のような点について、組織的な計画的な文書違反買収、供応と同じ悪質なんだという意味で、そしてまさにそういう取り締まり方針を強調した。もう転勤になりましたけれども、そしてもう済んだ選挙でありますけれども、新潟県の県警本部長はそれを非常に強調したわけです。その結果、労働組合とか農民組合などの、今までは通常の組合内の活動だとして許されておった文書違反というものを片っ端から摘発された。先ほどから選挙違反というものは公正に取り締まりを行なうのだということを言われました。まさに形式的にはその通りだと思う。しかし労働組合とか農民組合の中で、たとえば候補者を推薦する、そして組合員の一部にその推薦したということを知らせるということ自体は、これは事前と事後とで多少ニュアンスの違いはあっても、少なくとも事前においてそういうことを組合のいわば広報活動の一つとして知らせるということは、今まで公然とやっておった。それがたまたま筆がすべって、事前運動とまぎらわしい場合というのは確かにあり得る。しかしともかく今まではそれをやってきておった。ところが、そういうものが今度は買収と同じ悪質だということになって、警察はみな目をつけた。そうしますと、買収、供応というものは初めから公然とやる者はありません。つまり地下にもぐってやるわけでしょう。しかし文書活動というものは地下にもぐってやるわけにいきませんから、公然と組合の中に流す。従ってひっかかる。文書活動を今までずっとやっておった側がひっかかる。ですから形式的には公正だとはいっても——組織的な文書違反を取り締まるという名目で、保守革新を問わず、公正にやりますとはいうものの、結果的には文書活動に選挙運動の重点を置いておった団体が、軒並みにひっかかる。そしてそういうものに初めから重きを置かないで、手ぬぐいを配ったりタオルを配ったりしておるそういう買収、供応がひっかからないということで、非常に不公平な結果になってくる。もう一ぺん繰り返しますけれども、組織的な計画的な文書違反、これは偶発的な文書違反よりはあるいは多いかもしれません。しかしそれは買収と同列だというように考えることは、その選挙違反の本質的な違いからいって、やっぱり間違いだと思いますけれども、もう一度一つ長官に……。
  36. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 とにかく法に触れる違反は取り締まらなければいかぬ。しかしその違反内容によって、おのずから軽重がある。これも当然のことでございます。文書違反と申しましてもいろいろ種類と言いますかやり方があるわけでありまして、これがこの程度ならば罪になっても大したことはない、ほとんど不問に付されるであろうという見通しを持って違反をあえてし、しかも組織的、計画的にやるというようなものは、われわれも悪質な選挙違反として取り締まるように努めておるわけであります。そういう意味で意識しない場合でなくて、意識しておってもきわめて偶発的と申しますか、そういうようなものについて、それが広がらないように警告するとか、あるいは訓戒するというような程度にとどめるものと違った措置をとるということは、当然のことであろうと考えておるわけであります。
  37. 松井誠

    ○松井(誠)委員 文書違反の場合と買収や供応の場合とは、選挙法自体が同列に扱っていないわけです。法的な問題は別といたしましても、失格の問題を考えても、元来選挙違反の中で買収供応と、そういう普通の文書違反とは同列に扱っていない。むしろ先ほども言いましたけれども、文書活動というものは本来制限すべきものではない。しかしいろいろな理由で制限せざるを得ない。現実にたとえば参議院の全国区の候補ということになりますと、これは今の選挙法のワクの中でやったら、ほんとうに有権者に正しい判断の資料を与えるということは、ほとんど不可能に近い。そういう場合に、いわば法律の不備を補う意味でいろいろな紹介をするということは、むしろ本来はやるべきことだと思う。それと、どういう意味ででも買収、供応というものを是認すべきあれはない。そういうものを一方が組織的にやったから、何か本質的な変化をして、買収、供応と同じようなたちの悪い違反になるというようにはどうしても私は考えられない。ですから、なるほど、今非常に言論活動が不自由だ、しかしそうかといって何とか宣伝しなければ現実に選挙運動というものはできない。そういう隘路を広げる意味でやる場合と、そういう選挙運動の本来の意味なんというものは初めからもう認めようとしないで、とにかく物をくれてそれによって判断をごまかそうという、手ぬぐいだってそうでしょう。手ぬぐい名前を書いて流すということ自体が、一体有権者にどういう判断を起こさせるかということになると、これは候補者が何者であるかという名前を知らせるだけであって、その人がどういう考えを持っておるかということは、その名前自体からはどうしても出てこない。そういうことで同じ文字が書いてあっても、タオルだとかハンカチとかいうものに名前を書いただけのものと、いわゆる文書として流す文書活動というものとは全く違う。やっぱり手ぬぐいタオルを流すというのは、まさに品物によって判断をごまかそうという意味で悪質だと思う。ところが現実にはそういう組織的な、計画的な文書違反というものが買収、供応よりもたくさんあげられる。買収、供応というのは非常にこっそりやるからなかなかあがらない。しかし文書違反というものは公然とやっておるからあがる率は非常に多い。点数はかせげるかもしれません。ですから新潟県のこの間行なわれたいろいろな選挙で、そういう団体の文書違反の数はおびただしくあがっておる。しかし買収、供応というものはほかの県よりも少なかったと思う。一体、その取り締まり方針というものは、そういうことでいいものかどうか。文書違反をつかまえるということになると非常に楽です。従って、そういう意味で点数はあげやすい。しかしそれがほんとう選挙を取り締まる趣旨からいってあるべき姿かどうか、どうでしょうか。
  38. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察といたしましては、法に触れるようなことはすべて取り締まるという立場に立つわけでございまして、買収、供応のごとき悪質犯についてはもちろん見つかり次第これをやる。しかし文書違反だからこれを大目に見るというような態度はとらないわけでございます。ただ、文書違反等の非常に軽微なものになりますれば、これが広がらないように警告をして、いわゆる予防効果を期待するというような場合があり得るわけでございますが、警察の建前としましては、軽微なものは軽微ななりに、重いものは重いなりに検察、裁判の上で決定されるにいたしましても、違反というものについては、警察としては原則的にはこれを取り締まっていく。ただ非常に軽微なものについては、警告等で今後を戒めるという措置をとるものもあるということでございます。
  39. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 関連して長官お尋ねをしたいと思うのですが、実は私も先週宮城県に参りまして、仙台の町に汽車からおりたのでありますが、県庁まで参りますと、県庁公明選挙をいたしましょうというような幕が張ってあります。公明選挙についてはそういう幕が張ってあるだけでありまして、現実には特定候補名前を書いたものが、無慮十万近く県下にばらまかれておる状況を拝見をいたしまして、常識を持った一人の人間として、非常に奇異に感じたわけであります。  そこでお尋ねをいたしたいと思うのですが、今太田委員宮地さんの問答をいろいろ聞いておりますと、要は四百七十万に近い公費を使って名前入りの手ぬぐいタオルあるいはのれんあるいはふろしきをおつくりになった。それを県下にばらまいたわけでありますが、問題は知事としての行政上の行為であるから、いわゆる法律にいうところの高級公務員事前運動禁止に入るものではなくて、いわゆる通常の行政上の措置に入るものと考えられる、こういうようなお話でございました。そこでお尋ねをしたいのですが、知事という地位であれば、必然的に県の遺族会の会長にもなるでしょう。いろいろな団体の会長にもなるわけであります。そうすると知事という権限からいろいろな団体の長になる、その肩書きをつけた名前入りのタオルを、これはもう四百万なんというけちなことをいわずに一千万であろうが一億であろうが、タオル手ぬぐいのれんあるいはふろしきというものをつくって県下にばらまいても、これは差しつかえない。要すに知事という職責からして、そういうものを幾らつくっても問題はないのだ、こういうふうにお考えなのか、そうではなくて、やはり数量にはおのずから限界があって、結局四百六十万円、十万枚程度のものをつくったのでは、これは差しつかえないという、量的な範囲でそういう御判断をされておりますのか、この点をまずお伺いいたしたいと思うのです。
  40. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 お尋ねの、知事という地位があるならば、いかなることをしてもいいかどうかということでございますが、われわれといたしましても、知事であるならばいかなることをしてもいいというようなことは、毛頭考えていないのでございます。社会通念上、知事としての行政行為というものは、おのずからこれは各県によりまして多少の慣習上の差異はあろうかと存じますが、全国的に知事としての社会的な活動というものはきまっておる。その範囲内において行なわれる行為ならば、行政行為と認められるということを申したのでございまして、知事ならば全県民にいかなることをしてもいいということを申し上げたわけではございません。
  41. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、知事としての権限、またその地位について、おのずから限界があるというお話だったと思うのですが、ここの席にもりっぱに名知事として業績を果たされた方も多数おられるわけでありまして、そういう方はもちろん今回の事例のような問題は毛頭なかったことは、私ども信じておるわけでありますが、問題は、お答えですと、要するに一億とか一千万というのはいろいろ問題だけれども、四百六十万の範囲ならばこれは知事としての行政上の範囲に入るんだ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  42. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 今のトータルの数字では何とも申し上げることはできませんけれども、その個々事例を見ましたときに、遺族会あるいは道路愛護会、こういうような個々行為について、われわれの方で知事行政行為以外に出ておるということは現在の段階で考えられないということを申し上げたわけでございます。
  43. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、道路協会長あるいは遺族会長という、大体知事がそういう職名を持つことが多いだろうと思うのですが、そういう職名においてタオルをかりに一千万、一億つくってまいても、これは行政上の範囲に入るのだ、こういうことですか。
  44. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 それらの場合には、具体的にその協会の従来の活動、それから本来の設立の趣旨等から判断いたしまして、その行為が当然の、本来のその会の業務であるかどうか、こういう点から判断いたすべきものと考えておるのであります。
  45. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私、宮城県へ行きましたから聞いてみました。宮城県では通常道路協会やあるいは遺族会がタオル手ぬぐいを配る習慣があるのかと聞きましたら、そういう習慣はなくて、今回そういうものが多量に出た、こういうのです。今まで宮城県の道路協会あるいは遺族会が、タオルを何年においては何本、何年においては何本配ったというようなこともお調べの上でそういう御判断をされたのですか。
  46. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 タオルを配り、あるいは手ぬぐいを配る、従来は酒を配る、こういう従来の習慣等も、われわれの方は十分考慮に入れて判断いたしておるのでございます。
  47. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、知事ということになれば、いろいろな肩書きを持つわけですね。それらの団体の長になります。それらの団体がいろいろな活動をしておる。その活動に名をかりて、結局従来少し手ぬぐい配布したことがあるからといって、知事選挙の前になって数倍するそういうものをつくって配る、もちろん会員という限定されたものではあるかもしれませんけれども、そういうことをすれば、これは法律的に云々というお話をされればどうか知りませんけれども、常識的には事前連動のにおいが強い。ただいま長官も言われましたように、望ましいことではない、こういうお話もあったわけであります。そうなって参りますと、知事という職責に一たんつけば合法的な事前運動が堂々とできる、こういうことに通常考えればなりがちではないのですか。そういうところに国家公安委員長である篠田自治大臣も、知事の三選、四選についてはいろいろ弊害があるということをはっきり言われたことは、私は非常な名言であろうと思うのです。そういう点を見通した上での御発言であろうと思うわけです。この問題につきましては、ここで議論をする対象になりませんから、私は申し上げませんけれども、しかし今のように特定の、しかも非常に有力な地位を持ったほうが、その行政上の行為に入るのではないかと思われるようなきわめて——これも入ると明確に宮地さんも言っておられるわけじゃありませんから、太田さんも指摘したように、若干疑問をお持ちになっておられるように思いますが、そういう行為が行なわれる、それによって選挙活動が行なわれ当選をされるという事例は、決して好ましいことではないと思うのです。  ですから最後にお願いいたしますが、行為に入ると思われるというお話でありますから、断定をしているわけじゃありませんから、この点は若干疑問を持ってお答えになっているのではいなかと思いますが、この点は宮城のケースに限らず、今後ともいろいろな事態にあたって十分検討されて、普通の常識を持った人間が法の運用について疑いを持つというようなことのないように、一つお願いいたしたいと思うのであります。
  48. 太田一夫

    太田委員 それでは選挙課長さんが来ていらっしゃいますから、ちょっと選管の任務についてお伺いいたします。  今の件に関連いたしますが、選管というのは、だいぶ予算を持っているのですが、いろんな事例があったら、その具体的なことがいいか悪いかということを一々調べたりなんかして、これは適法である、そういう行為適法でないと判断を下すことは全然できないことであるのかどうか、その点。
  49. 中村啓一

    ○中村説明員 選挙局長は本日全国の公明選挙推進協議会に出席いたしておりますので、大へん恐縮でございますが、失礼をいたしました。  今お話のございました選管職務権限でございますが、お話しいただきましたように、一般的な選挙管理のほかに、常時にわたって政治教育の向上と、また選挙を控えましての公明選挙推進の仕事をやっておりまして、個々の問題についての具体的な見解表明等は、現実に個別的、具体的な調査権限あるいは権能が実際問題としてもございませんし、また選管立場としては、一般的な公明化についての周知に努めておるというのが実態であろうと存じております。
  50. 太田一夫

    太田委員 課長さん、そんなことなら、公明選挙運動なんておこがましいことをおやめになったらいかがですか。局長さんも早く帰っていらっしゃい。そんなところに行って公明選挙と言ってみたところで、宮城県では五百万近い手ぬぐいタオルふろしきを配られておるのですが、宮城県の選管はそういうことについてはいいか悪いか意見を何も言うことはできない。ひたすら公明選挙の推進を心がけておりますなんて、どうですか、今日、日本の国の国民の学問水準が下がったと私は思っているわけではないのだが、そんな公明選挙推進というのはおかしいですね。公明選挙のための予算はことしはどれくらいであるか。数億あるのじゃありませんか。数字をちょっとお示し願いたい。
  51. 中村啓一

    ○中村説明員 特に地方選挙を控えまして、昨年末予備費九千五百万円をいただきまして、鋭意努めておるわけでございます。
  52. 太田一夫

    太田委員 いや、ことしは昨年に増して一億五千万くらいふえておるはずだと思うのですが、総体の数字は幾らですか。
  53. 中村啓一

    ○中村説明員 年間の公明選挙推進関係の経費として、国費三億五千万円をちょうだいいたしました。なお本年度は参議院選挙もございまして、参議院選挙の臨時啓発費としても経費をちょうだいいたしました。なおそのほかに、昨年末、本年四月の地方選挙を控えましての各種公明選挙のための広報に充当すべき経費として、予備費もちょうだいいたしたわけでございます。
  54. 太田一夫

    太田委員 いわゆる数億というお金を使って公明選挙の推進をやる。私は、公明選挙推進はいいことであるから、大いにやってほしいと思いますが、今の各地の選管がとっていらっしゃる態度というものは、どうもふに落ちかねる。具体的にこういう文書が出たが、いいか悪いかということについて、もし疑わしい点があるならば、取り締まり当局と相談なさってもいいじゃありませんか。いけないことがあったら、照会を受けられたならば、好ましくないことだからすぐにおやめなさい、それはいいことであるから、おやりなさい——なぜ選挙民に自信と勇気を与える方法をおとりにならぬか。具体的に悪いことなら悪いということをお示しにならないで、どうして公明選挙になりますか。公明選挙というのはどんなことだとあなたの方は考えておいでになるのですか。その辺の概念が私は疑わしいのですが、なぜ一々具体例に対して、逃げていらっしゃるのであるかという点をお答え下さい。
  55. 中村啓一

    ○中村説明員 今のお話の点は、選管の実際問題としてはむずかしい面があるかと思うわけでありますが、いずれにしましても、具体的案件の違法性の有無という点につきましては、選管は差し控えざるを得ない現実であろうと存じております。
  56. 太田一夫

    太田委員 まあ局長さんがいらっしゃいませんから、あなたにはこの程度にしておきましょう。ただお帰りになって局長さんに、今後法を実際に施行する上の解釈例を明確にして、一々具体的な例について問い合わせがあった場合も、明確な指示ができるように、指導ができるように、態勢を整えられることが望ましいと考えておるといったということをお伝え下さい。  宮地さん、選管は具体的な事務だけやればいいのであって、公明選挙推進はあなたの方でおやりになったらいかがですか。
  57. 宮地直邦

    宮地政府委員 御承知通り警察は法に触れるか触れないかということを判断の限界にいたしております。いやしくも法に触れるものにつきましては、先ほど長官からお答え申し上げましたように、われわれの方は適正なる処置をいたすことを主たる任務といたしておるわけでございます。従って、その意味におきましてわれわれは公明選挙の一翼をになっておるものでございますから、選管あるいは検察庁と緊密な連絡をとりまして、太田委員の御趣旨のような選挙公明に行なわれますように格段の努力をいたしたいと思っております。
  58. 太田一夫

    太田委員 宮地さん、だいぶ答えがりっぱになってきましたから、だんだんとその方向で前進されることを強く望みます。  特に公明選挙運動は、戦前はたしか選挙粛正という言葉でもって言われておったと思いますが、どうも最近自治省が中心となって以来、向かうべき方向を明らかにしていない。公明選挙運動はあるが、内容がない。方向がない。公明選挙と書いたビラだけ出る。棄権は防止しましょう、あなたの一票は国の政治にかける橋なんてスローガンを掲げて、そのスローガンに賞金を出し、ビラ屋さんにお金を使っている。これは血税でやるのですから、おやめなさい。やるならば、はっきりと向こうべきものを、明るい公明選挙のあり方というものを啓発するところまでいかなければ使命が果たせない。そうでなければ、これは国民から非難を受けますよ。そういうことがないようにお願いしたい。従って、現在の公明選挙の推進のこの運動には、国民は非常に魅力がないのです。魅力を持たせなさいよ。あなたもお若いし………。(笑声)そうして地方選管が保守党政権のかいらいとならないように——なっていないだろうと思いますが、一つしっかりとやっていただくことを特に要望して、時間がありませんから、この問題は打ち切ります。  次は、運輸省自動車局の保障課長の宮永さんにお尋ねします。  ただいま当委員会には警察法の一部改正というのがかかっておるのですが、この警察法の一部改正は、交通の取り締まり、交通警官の増員という点に一つの重点があるのです。そこで一つ宮永さんにお尋ねしたいことは、交通事故が起きますと、いわゆる損害賠償というような問題が起きてくるのですが、交通事故が起きた場合の警察官のいろいろな活躍たるや大へんな労働でありまして、さて現場検証をしなければならぬ、事故証明書は発行しなければならぬ、現地の交通の復旧はすみやかにしなければらなぬ、大へんな苦労です。そこへ持ってきて、警察庁は巻尺も支給しなければ、投光器も支給しない。無装備状態で早く開通させろということを言っている。精神主義でやっているわけです。私たちは、そこで交通事故が最近非常に起きて、損害賠償の関係も複雑になっていると思うのですが、交通警官のあり方に関連してお尋ねするわけですが、保障課長さんの方に、最近自動車損害賠償というのは金額が少ないとかあるいは保険金の交付期間が長いとか、いろいろな意見が出ておると思いますが、そういうあなたの主管される自動車損害賠償責任保険金の件については、どのような意見が一番多くきておりますか。
  59. 宮永偉志男

    ○宮永説明員 現在自動車損害賠償保障法というのがございまして、それによって自動車事故が起きた場合に被害者を擁護するというような建前になっておりますが、現在支払い限度額が、死亡の場合に五十万円、重傷の場合が十万円、軽傷の場合が三万円、それが限度でございますが、支払い限度額が現在の社会情勢から申しまして、あまりに低過ぎるのではないか、これを引き上ぐべきではなかというような御意見がございます。それにつきましては、実は昨年の十二月二十一日に自動車損害賠償保険審議会というものがございまして、これは大蔵大臣の諮問機関でございますけれども、自賠責に関する重要事項については審議会に諮りまして決定するようになっておりますので、順序として審議会に諮るわけでございますが、昨年の暮れの審議会におきましては、各委員とも限度額を引き上げなければならないということについて異論はございませんでした。  それからもう一つは、請求がありましてから支払いまでの期間でございますけれども、保険金につきましては一応保険会社の窓口に請求いたしまして、共同査定事務所で査定をいたしまして支払うわけでございますが、それが大体一カ月以内で約六〇%、それから三カ月以内で処理されるものが約九〇%、そういうような状況でございます。  それから、そのほかに無保険と引き逃げの事故がございますが、これにつきましては保険勘定というのがございまして、これは一般のすべての自動車から賦課金というものを徴収いたしております。これが保障事業の財源になるのでございますが、引き逃げの場合と無保険の場合には、政府から一応立てかえ払いの形で被害者に対して保障金を支給するというようなふうになっております。そして、無保険の場合には、政府から一たん立てかえ払いをしましたのを、同金額を加害者の方に請求をしていく、そして回収をはかるというような状態でございますが、大体先ほど申しましたように、限度額を引き上げなければならぬじゃないか、それから支払い請求があってから支払いまでなるべく早くやってくれというような要望がございます。
  60. 太田一夫

    太田委員 一つの統計によりますと、査定額が死亡の場合で約三十万、重傷六万、軽傷一万円、これが実際の平均であるといわれている。死亡五十万、重傷、十万、軽傷三万円という法律はありますけれども、これは政令で規定されておる。政令にありますけれども、その限度いっぱいというのはよくよくでなければ支払わない。従って、むずかしい名前ですが、自賠法の第三条かなにかにあります——自賠法というのは実は単なる当面の応急の法律であって、本格的なものではないという気がするのです。それで現在裁判上の係争になっているのは自賠法の係争ではない。民法上の係争なんです。民法上の損害賠償という形で裁判上の係争になる。それは平均して二年以上かかるのです。今までの数年間の平均が二年と三カ月だと言われておる。二年もかかってやっておって、たまったもんじゃないです。なぜ民法上の争いに転化されていくのだろうと私も思うのですが、民法は七百九条、不法行為の条文と、七百十五条の使用者の責任というこの二カ条に関連をして損害賠償というふうになって、裁判上は自賠法第三条なんというのは、実際は盲腸のようなもんだという扱いを法曹界で受ける。そんなものを運輸省が自動車取り締まりの対象としての自動車の交通の安全をはかり、あわせて運行者の責任、義務を明らかにすると同時に、一般国民の権利義務を守ろうという立場から、大上段にかまえた立場からいったら、ちょっと行き足らぬと思うんです。だから引き上げることは当然、引き上げるならどのくらいまで引き上げる御所存でいらっしゃいますか。世の中では、運輸省は死亡の場合は思い切って二百万から三百万に限度額を引き上げようといっているそうだといっておりますが、その決意でいらっしゃいますか。
  61. 宮永偉志男

    ○宮永説明員 先ほど先生から御質問がございましたものからお答えいたしますが、自動車事故によります損害賠償の関係でございますが、あくまで自賠法の第三条が基礎になっているわけでございまして、加害者から被害者に損害賠償をいたしますが、一部分は、自動車事故につきましては、自動車損害賠償保険の制度によりまして支払うという建前でございますので、限度額が五十万円でございますけれども、その上積みの損害賠償額がかりに百万円でありましたならば、その上積みの五十万円につきましては民事上の訴訟の手続によって当然加害者から支払うべきものでございますが、要するに、支払い額の一部を無条件に自賠責任の制度によって被害者に保障していくというような制度であります。  それから限度額の問題でありますが、運輸省といたしましては死亡の場合には、将来二百万円なりあるいは三百万円にまで持っていきたいと考えております。  それからまたつけ足しになりますが、後遺症の場合も考えまして、後遺症の場合で最悪の場合には、死亡と同程度のところまで持っていきたいというふうに考えております。ただ、何分大蔵省と共管の関係がございまして、先ほども申しましたように、保険審議会の方に諮問いたしまして、その答申を得なければならないような手続上のことになっておりますので現在も大蔵省と折衝を重ねておりますけれども、早急に、正式に保険審議会の方に諮りまして、限度額の引き上げにつきましては一挙に二百万、三百万という線は実現ができないとしても、運輸省といたしましては最低限百万の線は切るべきではないのではないか、その上はもう非常にけっこうなことでございますので、その線を切らないところで折衝を続けていきたい、なるべく早く実現したい、将来は、二百万、三百万まで持っていきたい、そういうような考え方でございます。
  62. 太田一夫

    太田委員 課長さん、今おっしゃったことですが、自動車損害賠償保障法、いわゆる自賠法の不備な点は民法七百九条、七百十五条によられたし、そんなことでは、初めから七百九条、七百十五条でいいじゃないか。第三条に何と書いてあるか自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」、生命、身体を害した場合には、その損害を賠償しなければならないという第三条の基本原則に立って、第四条は、この損害賠償の責任は、前条のほかは、民法の規定による。生命、身体が書いてあるのに抜けておるのは何か、まず財産があるでしょう。財産上の損害は自賠法では保障いたしません。ぶつかって着物がくちゃくちゃになっても、着物の損害は賠償の中に入りません。自転車がぐしゃぐしゃになっても、自転車の損害は入りません。これらは生命身体のほかですから、だから、重傷が十万円であり、軽傷が三万円限度というのは、治療費と入院費という点に重点を置いておるわけです。薬剤代だ。だから慰謝料とか、物的被害の損害であるとか、あるいは休業補償はこの中に入ってない。だから不完全だというのです。だからこれだけのことではもう生命、身体の損害を受けた者の賠償さえ完全なものじゃないから、もっと早く限度額を引き上げて国民の要望にこたえる、いわゆる自動車事故による今の不公平な、不当な国民の権利の侵害をどこかで救わなければならない。これを思うのです。民法上の損害賠償を生命、身体に対してやらなければならないのはちょっとおかしいじゃないか。どうですか。生命、身体に対しては自賠法でやるのがほんとうでしょう。
  63. 宮永偉志男

    ○宮永説明員 この自賠法の第三条は、民法の特則的な意味を持っておるわけでございまして、一般の民法の原則から見ますれば、被害者に対しては、普通の損害賠償の場合よりも非常に手厚くなっておるわけでございます。と申しますのは、ほとんど無過失責任に近いような立場をとっているわけでありまして、たとえばこの第三条の後段にございますように、「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」それが一つと、それから「被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したとき」、そういうような三つの条件を同時に備えておらなければならない。しかもその挙証責任を加害者の方に転換しているというわけでございまして、被害者の保護については一般の民法の場合よりも非常に手厚くなっておるわけでございます。ただ対物保険でございませずに、これは対人保険でございますので、被害者の生命、身体を侵害したときということだけになっておりますけれども、たとえば一人の人がひき殺されましたような場合に、生きていたならば将来得られたかもしれないというような利益を喪失利益といたしまして、得べかりし利益も計算いたしまして一応は保険金の方から、あるいは保障事業の方から補償するという立場をとっておりますけれども、何分限度額が非常に低過ぎるということは、これはどなたも異論がないところでございます。ほんとうは民事訴訟によりまして限度額以上の上積みがとれるわけでございますけれども、今一般考え方では、現在の限度額が損害賠償額として加害者が被害者に支払う全体の額じゃないかという、そちらの方に損害賠償が引きずられていくというような考え方の誤りがございますので、その点につきましては私たちも十分まだPRしていく必要がございますし、関係法令も周知徹底させていかなければならないというふうに考えております。
  64. 太田一夫

    太田委員 それは自賠法の規定の方が実は近代交通の態様に合っていると思うんですよね。いわゆる民法七百九条、七百十五条にあとは全部上積みをぶつけるという態度そのものが若干不徹底だと思うんです。この今日の交通輻湊の時代において、民法七百九条、七百十五条をやりなさい、やりなさい、あなた死んで五十万で不足ならば、それは民事訴訟でやりなさい、いわゆる慰謝料は民事訴訟だということは、いささか交通の今日の実態に合っておらぬ、そう思うんです。だから今民間で言われておることは、おそらく近いうちに、あなた、二百万、三百万とおっしゃるけれども、そんなに一ぺんに高くはならぬだろう、当面死亡七百万、重傷五十万から八十万、軽傷十万から五十万程度までは早急に上がるだろう。この国会においてもその程度までは上がるだろうという点を期待しておるんですが、その点はどうですか。
  65. 宮永偉志男

    ○宮永説明員 実は先ほど申しましたうに、将来は死亡の場合には二百万、三百万に持っていきたいという考え方を持っておるわけでございますが、現在は保険料でまかなえておるわけでございまして、限度額の引き上げに伴いまして保険料の引き上げということが、結局それに因果関係を持ちまして生ずるわけでございますので、早急に一挙に引き上げるということにつきましては、これは保険審議会の委員の意見もまだ聞いてみませんと決定いたしかねるわけでございますが、先ほども申しましたように、運輸省といたしましては後遺症の場合を考えて、後遺症の最高の場合には死亡と同額まで持っていきたい、そして死亡の場合に百万の線を切らない線で、次回の限度額の改定の場合にも持っていきたい、そういう考え方でございます。
  66. 太田一夫

    太田委員 私も五十万、十万、三万というのは、一挙に二百万、三百万というわけにはいかぬだろうから、死亡百万、重傷五十万から八十万、軽傷十万から五十万という段階的な改正がなされるだろうという世論というものを、一応なかなか、なるほどなと思っているのです、そういうことは盛んに言われておりますから、あなたの方も死亡者百万ぐらいにとりあえずしたいという考え方でいらっしゃるなら、大へんけっこうだと思いますが、ただ百二十五CC以下のスクーターとか単車などを全然この賠償の中に入れておらない、物的損害、たとえば自動車がこわれても自転車がこわれても荷物がこわれても、いわゆる財産上の損害を入れておらないというのは、少々法的な盲点じゃないかと思いますが、これはいかがですか、お入れになるのですか。
  67. 宮永偉志男

    ○宮永説明員 財産上の損害をかみ合わせましたところの、対人保険と対物保険との御意見もございますけれども、その点は現在大蔵省と相談いたしまして検討中でございます。百二十五CC以下のものでございますが、これは俗に原動機付自転車と申しておるわけでございますが、この原動機付自転車につきましても、昭和三十六年度の事故件数で見ますと、自動車と称されるものが約二十一万件でございます。それから原付自転車が七万四千ぐらいございまして、自動車の約三分の一以上、三割五分ぐらいの事故件数を占めておるわけでありますので、原付自転車も責任保険の対象にいたしたいという強い考え方を持っております。不幸にして保険審議会の正式の答申を今日まで得られませんでしたから、法律改正が今度の通常国会には間に合わなかったわけでございますけれども、来年度におきましてはどうしてもこの原付は強制保険の対象として持っていきたい、どうしても加入させたいというふうに、運輸省といたしましては強い考え方を持っております。
  68. 太田一夫

    太田委員 その意見は進歩的ですね。従って非常にけっこうです。そういう進歩的な意見でこの自賠法そのものを完備したものにしてほしいと思うのです。しかしその場合には、反面、保険料の引き上げという問題が関連してきますけれども、必ずしも自賠法では、自動車の業者というのは強制保険加入義務をとらされておらない。いわゆる自家保険といいますか、強制でない面が相当大規模の場合にありますね。それを今度どうするかという問題があるのですが、何も自動車の損害保険というのは民間の損保会社に一任するということでなくして、これは国営にしていいじゃありませんか。そうして国家も予算上の支出をして、そうして保険料の引き上げということは必ずしも全部オーナーに持たせなくたっていいじゃありませんか。大体道を狭くしておいて、あっち曲がっちゃいかぬ、こっち曲がっちゃいかぬ。富永さんもいらっしゃるけれども、ずいぶんああいうことをお好きでいらっしゃいまして、道は片方しか通っちゃいけない、一方交通。いいんですかね。右へ曲がっちゃいかぬとおっしゃるから左へ曲がるならいいだろうと思ったら、左へ曲がってもいかぬとおっしゃる。ここまでくると、これは自動車の運転手が事故を起こした。というのは、自動車の運転手ないしはその自動車の所有者の責任じゃない、国家もそういう交通道路という設備を完全、完備しなかったという点に責任を感じて、予算上の補助金を出したっていいじゃありませんか、それくらいの支出を運輸省おできにならなければいけませんよ。私もそう思うんです。きょう、局長さんはいらっしゃいませんけれども、運輸省としては自賠法を改正する場合には思い切って保険国営の思想を打ち出し、国の補助金もその中に入れる予算上の措置も求めるというようにしませんと、これはたまらぬですよ。今の限度額引き上げでは、保険料が高くなりますからね。ガソリンは高くなるわ、保険料は高くなるわ、そして自動車は——こっちは、自治省の方ではものわかりがいいから、ただ一つ自動車の税金だけは少しでも下げよう、下げようとしておりますけれども、矛盾しておりますからね。これはぜひ国営の思想を打ち出されるべきだと思いますが、その自賠法の損害保険の国営ということはどうですか。今考え方は進んでおりますか。それともそれには触れておらないですか。どんなものでしょうか。
  69. 宮永偉志男

    ○宮永説明員 ただいま御質問ございました自動車損害賠償責任保険の問題でございますが、これは自賠法が成立いたしました当時に、国営に準ずるような組織で運営したらどうかというような意見も確かにあったように私も承っておりますが、現在保険会社の組織が全国の津々浦々まで網が張りめぐらされておりますので、これを活用すれば非常に能率的じゃないかということで現在の制度ができ上がったようにも承っておりますが、保険審議会の意見の中にも、今先生が申されましたような御意見の方もなきにしもあらずでございまして、制度の根本に触れるような大きな問題でございますので、私も帰りまして、上司ともその問題について検討を進めていきたい、そういうふうに考えております。
  70. 太田一夫

    太田委員 いわゆる補償事業を国営とするべきだという意見もなきにしもあらずだというお話ですが、なきにしもあらずという微々たるものでは困る。今は損保は赤字だと言っているでしょう。自賠法による損保なんか赤字だ赤字だ。全く社会奉仕だということをいっている。赤字だから逆に補償は査定金が下がるんじゃありませんか。死亡の場合五十万円でも低いのに、三十万円やそこらの平均では全く人をばかにした話ですよ、しかも国民は二十九万円の死亡の査定があったとすると、それだけで、この人の生命は国家は二十九万円相当だといっておるのだろうと思って、あと民法上の上積みなんということはとても考えませんよ。考えても二年三カ年もたつのだから、弁護士の費用とか、いろんな費用がかかりますから、そこで仕方がないので二十九万円泣き寝入りしているわけです。泣き寝入りさせるような自賠法をつくっておくということは、運輸省としては恥ですね。だからもうちょっと思い切って国営の方式に踏み切る努力をされるということが私は最も望ましいと思う。宮永さんは専門家でいらっしゃるわけですから、一つ局長さんや大臣にもおっしゃっていただいて、中の世論を巻き起こして、そうして補償事業は国営とする、そうして赤字なんというものは国の予算支出によって克服していく、損保額を引き上げる、国民は喜ぶ、あなたの方もいい顔ができる、交通取り締まり当局も楽になる、これほどいい話はありませんでしょう。一つ考えて下さいよ。なきにしもあらずというのではなくて、大いにあるというふうに一つ盛り上げて下さい。
  71. 宮永偉志男

    ○宮永説明員 御質問の趣旨十分了解できましたから、帰りましたら、さっそく上司に報告いたしまして、具体的に検討を進めていきたいと考えております。
  72. 太田一夫

    太田委員 じゃ、本来のお尋ねをいたしますが、警察法の一部改正に関する法律案の中で交通関係警察官の増員というのは何人でしたか、念のため。
  73. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 今回の法律改正そのものの中には交通の増員は入っておりません。
  74. 太田一夫

    太田委員 警察法一部改正の中の人数は、麻薬官関係だから入ってないが、取り締まりを強化するいろいろなことから予算上の措置として何か増員でしたね。それはいかがですか。
  75. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 その点につきましては、交通警察官は、三十年度予備費で五千名増員の措置をいたしております。三十八年度は、予算関係で残り五千名の増員措置をお願いをいたしております。総計地方警察官一万名が交通増員の予定でございます。
  76. 太田一夫

    太田委員 三十七年度五千人増員、これは大体完了した。三十八年度で五千人さらに増員する。合わせて一万人二カ年で増員になる。そこでこれは例の自動車の保管場所の確保等に関する法律、この事務に振り当てられるのはどれぐらいになるのですか。
  77. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 一万名の増員の配置は、交通行政における指導取り締まり関係等について七千名、四輪自動車の乗員が千五百人、単車の白バイ要員が千五百人という配当予定をいたしております。従って、自動車の保管場所の関係の事務に従事するものは一万名の予定の中には入れておりません。しかしながら、交通警察官が非常に不足をいたしておりますので、この増員が完了いたしますれば、勢い現在他の事務に従事しておる者からそういった事務に従事する方にくる者が内部の配置転換としては予想せられます。以上の通りでございます。
  78. 太田一夫

    太田委員 従って、第一線の要員ということですね。今まで具体的に、自動車の保管場所の確保等に関する法律ができてから、いわゆる車庫規制ができてから、どれくらいその事務がとられましたか。
  79. 富永誠美

    ○富永政府委員 保管場所の法律が昨年の九月一日から実施されて、新規登録の際に警察の証明が要るわけでございますが、現有勢力でやっておるわけでございます。それで、やり方としましては、主として第一線警察署の内勤なり、場合によりましては外勤を使ってやっておりまして、どれだけの人数でやっておるかといいますと、正確な数字ではちょっと説明しにくいと思いますが、とにかく第一線の警察官を動員してやっておるということでございます。
  80. 太田一夫

    太田委員 富永さん、そうすると第一線の警察官を動員すれば第一線の方は減るじゃありませんが、これは第一線が第二線に行ったんだからね。そうでしょう。保管場所の確保に関する法律によるところの自動車保管場所証明という行為は、第二線事務ですよ。
  81. 富永誠美

    ○富永政府委員 保管場所に伴っての増員ということは、全国的にはございませんが、実際新しく事務がふえておりますので、ふえた事務を今ある人でやっておるということでございます。
  82. 太田一夫

    太田委員 ほんとうのことを言って下さいよ。別にあなたの方を責めるわけじゃないから。今ある人でやっているというなら、今までの定員にはそんな仕事をするだけのゆとりがあったのですか。
  83. 富永誠美

    ○富永政府委員 私が申し上げましたのは、新しい事務がふえて、そのために実際問題として仕事がふえましたが、ふえただけをよそから借りるとかあるいは一般の交番とか駐在所とかいった方々にも応援いただいて、ほかの仕事、本来やっておるのをこっちに充填いたしましてやっておるということでごいます。
  84. 太田一夫

    太田委員 右の仕事をやっておった人を左に持ってきて左の仕事に変えるということは、右におった人が右の仕事をやらなくなったのだから、どこか警察行政に欠陥が生じていますね。保管場所の確保に関する法律ができて、保管場所証明事務がふえたことによって、警察仕事というのはどこか空白になったものができてきたのですね。だれか、官房長長官かだれでもいいから……。
  85. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 たとえば警視庁について見ますと、九、十、十一、十二の四カ月で証明の交付をいたしたのが一万八千二百二十八、月平均大体四千五百ということになります。そうすると、一日平均百五十件でございます。百五十件の証明に対して警視庁約九十の署ということになりますと、平均して二、三件、一署において二、三件ということになれば——交番等にその保管場所の確認をさせるわけでございますが、今までの状況では、必ずしもそのために専従の必要はもちろんございませんし、今までの仕事をはなはだしく阻害されるという状況ではないのではないか、まあ忙しい署になりますれば相当手をとられるということもございましょうけれども、平均してみますと、署について一日大体三件くらいということになるわけであります。
  86. 太田一夫

    太田委員 その数字は正しいですか。一警察署一日平均二件か三件しかない、いわゆる片手間でできるとおっしゃる。片手間でできるならば、第一線の人たちが、そんなに長くかかるなんて文句を言うはずはありませんよ。今ずいぶんひどいらしいですよ、御存じないかもしれませんが。警視庁管内は少々よいようですけれども、名古屋の管内は一番早いところでも二日より早いところはない。七日間くらいかかる。大阪に至っては二十日間くらい。東京は平均大体二、三日でできるといっておりますからよいのですよ。自動車を買おうとする者が、東京の方は比較的困難を来たしておりませんけれども、だんだん西に行くに従って、なかなか許可がおりないという事態に当面しております。だから、今警視庁の例を一日一署二、三件とおっしゃったから、これは妥当なものといたしましても、具体的な時間の点から判断いたしますと、東京の三日のところを名古屋七日、大阪二十日というこの関係が、如実に一般住民に対する便不便の姿を物語っておるではありませんか。大阪ではずいぶん不便をこうむっていると思いますが、いかがですか。
  87. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 少しこまかい数字になりますが、愛知県で、たとえば十二月の例をとりますと——先ほどの数字はちょっと間違いました。十二月一カ月で、警視庁が一万八千でございますから、大体一署当たり四倍になります。それから今お話の愛知県の交付に要する日数をとりますと、即日出しているのが四百七十九件、翌日が千三百件、三日目が千四百五十件、四日が四百三十件、五日は百三十件、六日が四十三件、七日以上というのは三十七件ということでございますので、七日以上かかっているというのは〇・九%、大部分は即日あるいは翌日、三日でやっておるわけでございます。
  88. 太田一夫

    太田委員 大阪の例はありますか。
  89. 富永誠美

    ○富永政府委員 この前の御質問のときに全国平均五日以内にやっておりますのが九〇%と申し上げたつもりでございます。そのパーセントは今日におきましても大体変わりがないのでございますが、ただ、県によりますと、たとえば今長官は愛知県と申されましたが、五日以内に九八%出しておりますので、名古屋が一週間というのはちょっと違うのじゃないか、私の方の調べでは。ただ問題は大阪でございますが、大阪は確かに他の府県よりもちょっとおくれております。五日までが、九月は八〇%くらいですが、十月、十一月、十二月になりまして七〇%よりちょっと落ちております。二十日ということは、たまたま一つのケースがそうかもしれませんが、平均はそういうあれにはなっておりません。ただ、大阪の実情も私ども今いろいろ検討いたしているわけであります。
  90. 太田一夫

    太田委員 長官、伝えるところによりますと、東京陸運局でタクシーの増車、二千三百台をめどにしてことしふやしましょうということになったというのですが、またタクシーが二千三百台ふえる、こういう問題も出てきましたね。車庫の問題というのは当然のことでありますけれども、車庫をつくることによって路上駐車が撲滅できることはお互いに考えた通りでありますけれども、少々本末転倒のそしりがないわけじゃなかったのでありますから、車庫規制にあまり力を入れ過ぎるというのも近代国家としてりっぱな態度じゃない。しかし、現在やらなければならぬわけです。やらなければならぬわけだから、六大都市における保管場所証明事務という交通警察官のやられる事務は、第一線事務じゃないのだから、これをスピードを上げてすみやかに処理する方法を考えて、第一線の交通の安全をはかる、交通指導の方に重点を置くということが望ましいと思うのです。大阪は平均五日まで八〇%が七〇%に下がった。大阪は非常に悪化しておるということも考慮に入れて、何とか改善をしなければならぬ、そちらの方に少し人を回す必要はありませんか。どうでしょう。
  91. 富永誠美

    ○富永政府委員 最初の御質問の東京の場合の増車、これは私の聞いておりますものでは、東京自動車運送協議会というのがございまして、これはオリンピックを控えてやはり車が足らない。増車の方針に踏み切ったことは聞いております。ただ、その場合の車庫は、営業車でございますから、これは完全になければならぬことは申すまでもないと思う次第でございます。  それから大阪の場合でございますが、大阪の実情をいろいろ見ておりますが、人が足らない、忙しいということはよく聞いておりますが、そのほか、これは私の推測でよそには言えないのですが、証明問題でいろいろトラブル、事故と申しますか、そういう問題も大阪に起きましたこともありまして、慎重にやっておるというふうな状況もあるのじゃなかろうかと思うわけでございます。とにかく大阪だけが少し数字の上からもおくれておりますので、検討いたしておる段階でございます。
  92. 太田一夫

    太田委員 九月からこの法律を施行しまして、その番人が警察庁当局になったわけですから、いわば他人の子供を育てていらっしゃるようなものだと思いますでの、御苦心のほどは察するに余りがあります。しかしながら、その事務が、保管場所証明事務というようなものが一週間もかかったりあるいは二十日間もかかるということは、これはもう論外のさたですよ。このことは必要あるならばやらなければなりませんからやるのですが、もっとスムーズにできてしかるべきだと思います。  そこで、先回も提案したことがありましたね。保管場所証明書に車体番号欄があるけれども、車体番号欄なんというものは書かぬでもいいじゃないかと言ったら、さすがにおひざ元の警視庁の方はこのごろ実施をされましたね。かりにあるナンバーを書いておきましても、今度ほんとうに登録するときに、それが少々変わっていても、相当変わっていても、同じ型式のものなら文句は言わぬということになった。これはいいでしょう。トヨペットクラウンならトヨペットクラウンという型式の六二年型なら六二年型、六三年型なら六三年型ということで、それではっきりしているのですから、車体の長さもあるいは高さも、幅も、そんなことは、クラウンならクラウンで一緒ですよ。それを何号の車体番号のものは何メーターという、そんなことはありませんからね。あまりしゃくし定木にならないで運用の妙を発揮していただくためには、私は車体番号欄は不要だと思う。だから、これはなるべくブレーキにならないように、これを殺す、というとおかしいけれども、これにこだわらない証明事務をおやりになることが、警察署の仕事に対して非常にプラスになるだろうと思いますが、警視庁だけはおやりになっておるそうです。そういうことで、これは非常に評判がよろしいですよ。ところが西に行くに従ってだめだ。大阪などに至ってはもう何ともならない。大阪は、運輸省がやかましいのか、警察庁がやかましいのか、それはどちらがやかましいのか知りませんが、とにかくそういうことで、この事務が非常に複雑化しておる。ところが、これは大へんなんですよ、人手というものは。これはあなたの方は片手間で右の人を左の方に回していってそれでやれる、そんなものじゃできません。今まで受付でお客さんの言うことを聞いておった人が、保管場所証明事務を片手間にやるなんというわけにはいかない。第一線の方に影響してきたらますますいけない。交通第一だから、ほかの仕事の人を刑事さんか何か持ってきてやればいいかというと、そんなわけにもいかない。してみれば、これを簡素化して能率化するためには、あなたの方で相当科学的にお考えになり、人の指導をする必要があると思いますがね。だから富永さん、今の話の車体番号欄、これはこの前あなたに相当やかましく言いましたが、このことはあまりやかましく言わないということを指導しているでしょうね。ゆとりを持って、そう無理して書かぬでも、あとで書き込めばいいよ、それでいいでしょう。
  93. 富永誠美

    ○富永政府委員 証明書の欄に車体番号の欄がございますのは、これは運輸省といろいろきめまして、運輸省の方でやはり車の同一性を見るには車体番号が要るということでたまたまなっておるわけでございます。従って、証明書の様式欄の車体番号というのがあるのでありますが、この前御指摘もいただきましたので、運輸省等とも連絡いたしましたが、今直ちに様式からすぐ車体番号というのははずすわけにもちょっといかないというわけでございますので、御質問の趣旨はできるだけ生かして運用してやっていきたいと思います。
  94. 太田一夫

    太田委員 その御方針でいいですね。わかります。警視庁のとっておる方針一つよくお調べいただいて、全国にこれを準用されるように御指導いただきたい。  あなたは新聞に何かおっしゃっておられますが、朝日新聞の二月七日号におっしゃっておられますね。 「ニューヨークやパリの交通担当者も"こんな法律を作ったらわれわれはクビだ"とおどろいたそうで、確かに問題の多い法律だ。緊急な必要から生まれたため、法文に不備な点が多いのも事実」と認めていらっしゃるというのが朝日新聞に載っていますが、新聞記者の誤報ですか。富永さんどうですか。
  95. 富永誠美

    ○富永政府委員 これはいろいろ話しておるうちに、実際そういう話がございますので、それを話したのがそのまま載ったのだと思っております。
  96. 太田一夫

    太田委員 長官、大へんですよ。富永さんはこの法律をつくった者は首だなんというように考えていらっしゃる点を——これは外国の場合の話なんですから、だから私も必要悪として、今日本の国においてはこの車庫規制法が要るということはわかります。そしてまた警察庁以外にこれを取り締まるところはない、運輸省でもできないであろう。だから一つ生かす方法を大いに考えていただきたい。そして第一線の警官の交通指導という点に重点を置きつつ、なおこういうサービス面にも、このことが国民にとって何か大きな重圧だと考えずに、警察庁も道路交通の安全化のためにこういうめんどうくさいことまで一々指導して下さるとか、やって下さるとか、めんどうを見て下さるというように国民が受け取るように運用してほしいと思うのです。だから、早く言うなら、国民から自動車を取り上げる法律というものは善なるものであるはずがない。だから悪法だ悪法だと言われるが、悪法であってもこれは日本の国では今のところいかんともしがたい、やむを得ざる立法であるともわれわれは思う。これは国民も了承しておりますから、一つ運用上だけは十分気をつけていただかなければ大へんだと思う。今東京都でタクシーを二千三百台東京陸運局でふやす。この二千三百台をふやすときに、かりに一一保管場所の証明書を出せの、それで承認書を出すの出さぬのなんてやっておるなどということは、これはまた大へんなことですよ。この前私申し上げたつもりでありますが、道路運送法によって認可を受けるタクシー業者、営業車、これはトラックもタクシーもありますけれども、ちゃんと車庫もあること、そこに入るゆとりのあること、それが道路の幅に即応しておること、あるいは防火上間違いないということを一々点検をされて、そして増車の許可、所有の許可をなさっている。これはトヨエースや小さなトラックに至るまでそうなんです。そうしてみれば、それらのトラックやタクシーやバスなどを一々証明書の欄に載せなければならぬということはちょっと考えられない。第一線業務を強化するために省略してもいいんじゃないですか。その点どうですか。
  97. 富永誠美

    ○富永政府委員 この法律からは営業車は除かれておりませんので、やはり証明が要ることにはなるわけであります。ただ問題は、今御指摘のありましたように、営業車につきましては確かに免許を受ける際に、車庫などの確認などもあるわけでございますが、今までの実情は、たとえば免許を出した際には車庫があっても、それがほかのものに変わっておる。だからトラックを道路の上に夜でも置いておるというような実情であったことは、これも事実でございます。しかし、私どもとしましては、法律を厳格に言いますと、車を一台買うごとに一々図面が要るわけでございますが、それは運用で要らないのではないか。あらかじめ車庫というものをがっちりしておけば、よほど様子が変わらぬ限りはこの車庫なら何台ぐらい入る、だからその中でのやり繰りなりでこれはいけるのではないかというわけで、事前に一回いただいておけば、そのつど一台ごとに要るとは思いませんので、そういった、ある時期に一括処理でいこうというようなことでやっていきたいというふうに考えております。
  98. 太田一夫

    太田委員 今の一括処理でいきたいということは、この問題について一々現地に見にいったりなにかしなくて、認可されたものならば書類上もすぐ判を押すということですか。
  99. 富永誠美

    ○富永政府委員 実際問題としてはそういうことになると思います。
  100. 太田一夫

    太田委員 非常に進歩しまして、さすがに富永さん善政を施されて非常にけっこうだと思います。一々車庫までいくというところにみそがあるわけで、さっきあなたがおっしゃった通り、見にいったらいろいろな問題があるでしょう。なかなか東京でもあるそうですね。人を食ったのがあるわけですから、見にいかぬわけにいかぬですね。新聞の報ずるところによりますと「行ってみたら石段や立木だった」五十七件。「場所はあったが石べいなどで出入りができない」二十三件。「地主の承諾書なし」十九件。「実在しないでたらめの場所」十七件。「業者関係の修理工場」十二件など、あらゆるインチキが顔を出しておると書いてありますが、なるほど石段や立木なんというところが保管場所なんて人を食ったのがありますから、見にいかなければならぬ。見にいくところにこの保管場所の法律のみそがある。それを一々警察官がおやりになるのだからずいぶんめんどうなことになるわけでありますが、これを能率よくさばく方法を考えなければならぬ。保管場所は認可のときにちゃんと運輸省で確認したり陸運局で確認したりする。もう一回やるということは、屋上屋のことですし、蛇足のことですから、蛇足の事務なんということはやらなくていいだろうと思うのです。けれども大体の仕事がわずらわしいので、そう一日にたくさんやれぬそうです。一人専門にかかっても処理できるのは十件そこそこだというのですね。十件そこそこだが、何でも一警察署のある人がおっしゃったことだそうですが、三十件から五十件受け付けにくる、一人か二人しかやる人がおらないから、これはとてもやれるものじゃないよ、こう言う。三十件から五十件一日に受け付けがあって、係の人が一人か二人であるし、大体限度は一人が専門にやって十件程度だ。そんなに早くやれませんよ。だからそちらの方に相当人をさくことが必要だと思うから、それをある程度さかなければ、いかぬじゃないかと思うのです。五千人白バイだ、四輪車だ、単車だと何かおっしゃったのですけれども、五千人、それもいいでしょう。けれども、こちらの方にも少し人をさかなければ、今困っている状態が大阪や名古屋や東京のひざ元に相当あるようです。皆さんの方にも交通関係警察官ですか、そういう方の人に何かやらせる方法——それは白バイをやっておって少々足の故障をしたりからだの故障した人があるでしょう。しばらく、半年か一年すれば完全なからだになる人もあるでしょうから、これはやりくりもできると思うのですけれども、少し増員されることが必要だと思いますが、そういう点はどうですか、全然お考えになっていらっしゃらないのですか。
  101. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど申し上げましたように、警視庁でいえば一日六百件ということになるわけで、署当たり大体一日七件、多いところで十件ちょっとくらいじゃないかと思うのです。そうすると、それを受け付けて、今度交番の方に書類を確認させるということでございますから、交番とすれば一日一つとか二つとかというくらいでございますので、そのために特に増員する——非常に忙しいところは署に内勤一人ふやすというようなこともあり得るかとも思いますけれども、今の数字からいうと、このために専従者を置くというほどのことはないのじゃないかと考えております。また実情をよく調べてみたいと思います。
  102. 太田一夫

    太田委員 それでは富永さん、今の長官の話からいって、交番で審査するという方式を大体とられておるのですか。
  103. 富永誠美

    ○富永政府委員 府県によって違うわけでございます。交通係が専任いたしておるところもございますし、それから署にきましたものを、実際は交番で当たって、また署に戻すというやり方をやっておる、いろいろ違いがございます。以上でございます。
  104. 太田一夫

    太田委員 だから、署によって違うということは、ばらばらだと思うのです。今、長官のお話では、交番にやらせるということになれば、交番は一日に一件あるかないかだから、そう大して専門の人をふやさぬでいい。私は専門の交通係をふやさなければならぬだろうと思うのです。富永さん、専門当局の局長としてどちら側に軍配をあげますか。両方に軍配をあげられちゃ困るのです。どちらですか。
  105. 富永誠美

    ○富永政府委員 長官一般的なことをおっしゃって、忙しいところは云々とおっしゃった通りに、実際問題としまして署を見ますと、事務がふえておりまして、忙しいところは内勤の方で専従いたしておるところもございます。そうしなければさばけませんから。ただ一般的に言いますと、実際第一線は、先ほど申し上げましたように調査まで交通係員が行なっておるところでございますが、それがほとんどの府県でございますが、外勤を使ってやっておるという府県もあるということでございます。
  106. 太田一夫

    太田委員 神奈川県では、自家用組合などにそういうことをさせておるという話も当時あった。それはやはり研究を要するということであった。私は交番の方式をとるのはいいと思う。最初近くの交番に持っていって、交番の巡査が証明すればそれを警察に持っていけば署長の判がもらえるという逆な方法、それがやはり一番いいじゃないか、やるならめんどうくさくなくてそれでいいじゃないですか。また交番の遠いところは本署に持っていって 本署から交番にやらせるというところもあるでしょう。それもいいでしょう。けれども、交番を使うということは進歩ですよ。進歩であると私は思う。事務が分散しますから。ところが今、本署中心主義でやられる場合には、交通係を少し増員しないことには一週間や二十日間かかります。大阪のようなところを調べていただければわかりますけれども、これは本署一本制度です、そうすると二十日間もかかるということは、数が多過ぎるからそういうことになる。交番でやるとなったら、今度具体的な手引書を出さなければ大へんだ。使用の本拠と保管場所との距離が、何メートル以内でなければならぬということもあるかもしれない。それは不当な見解だ。個人々々が勝手に見解をやっていてはいけません。どこどこの会社は車がある、それがはるか何キロも離れたところに車庫がある、そんなばかなことがあるか、それはだめなんだといって処理されておると実情に合わないし、そうかといって全部ばらばらでいいというわけにもいかない。使用の本拠は東京だけれども、車庫の所在は全部千葉県だといっても、それはそうですかといって判を押すわけにもいかない。そういう点は統制しなければ、交番方式についてはあなたはやりにくいでしょう。統制していらっしゃるのですか。
  107. 富永誠美

    ○富永政府委員 御指摘通りに実際問題としまして、たとえば積載許可とか、長大物件あたりの証明の扱いは、府県によりましては交番でやっておるところも実はございます。ただ問題は、保管場所の証明は、交番でやらすのがスピードはいいかもわかりませんが、それでやるか、本署に一応来て本署でやるかということにつきましては、これは十分検討していきたいと思っております。
  108. 太田一夫

    太田委員 検討するとおっしゃるのですが、もう九月、十月、十一月、十二月、一月、半年近くもかかっておるのですから、この法案によるところのいいところと悪いところ、問題点というのはもうできてきておるでしょう。ところが、これが道路交通安全確保の非常に大きなきめ手になっておることも事実なんだから、これに魂を入れる必要があるんじゃないか。それはしゃくし定木でやるということではないのです。しゃくし定木ではいけないから、その辺のところは臨機応変にやらなければいけないが、警察官に臨機応変なんというのはなかなかできないのでありまして、臨機応変なんて、やらしたら大へんだということでしょう。ほとんど裁量だ。けれども実際は臨機応変でなければいけない。だからよほどあなたの方は具体的な指導要領、指導事項を示して、こうだ、ああだ、たとえば使用の本拠と保管場所の関係は、こういう関係まではいいのだということは確定されてもいいじゃありませんか。検討ということではなく、それができておらなければいけないと思うのですがね。なぜまだできておらないのでしょうね。
  109. 富永誠美

    ○富永政府委員 ある程度基準を示してやるべきだと私は思います。あまり府県で扱いがまちまちになっても、行政に対する不信が起こると思いますので、基準を示してやって、たとえば今例におあげになりました使用の本拠と実際の保管場所との距離につきましも、実際問題として朝晩通えないようなところは、まあ工合が悪い。それならばどのくらいの距離ならよかろうという基準になりますと、これはかえって基準をきめることによって、今先生のおっしゃった運用の妙というものも、これが逆に基準をきめることによってしゃくし定木になりましてむずかしくなる面もございますので、社会通念といいますか、そういうことでいくのもかえって妙があるのじゃないかという面も私どもあるわけでございますが、できるだけは基準を示してやっていきたいというふうに思っております。
  110. 太田一夫

    太田委員 それはできるだけ基準を示すということでもいいんですが、五百メートル以上離れておってはいけないということが実際上あるのですから、五百メートルなんというのが地方できまるものなら、中央できめればいい。しかし、私は五百メートルは暴論だと思う。五百メートルがいいということはないですよ。もっと離れておったっていいんですよ。それはその人が説明を聞いて説明が納得できればいいんで、あとはときたま抜き検査というものをやればいいじゃありませんか。私は車庫の規制ができてから、道路上の駐車が減ったかどうかということをちょいちょい見ておりますが、顕著なる変化はないですね。あれはやめましょうか。車庫規制というものは、あまり顕著な効果というものは出ておらないと思うのです。出ておりますか、
  111. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私はその点はつまびらかに調べておりませんけれども、あれは新しく持つ者についての義務づけでございますので、今まで路上に駐車しておったのが、あれによって一掃されるということにはならない。しかしだんだん混んでいくであろうものは阻止し得ておるであろうというふうに思うわけでございます。
  112. 太田一夫

    太田委員 さすがにあなたは勘がいいね。そうでしょう。阻止できておるとわれわれも信じております。ですけれども、四十六都道府県全国にそれが施行されておるわけではないでしょう。従って、この網の目というものはラフであるから、漏るものは幾らもあるのでありますし、今よほど基準がはっきりしておれば別問題として、車庫はどこに置いたって自由なんだから、東京のどこの会社が使う車を埼玉県から毎朝通っては悪いという、そんな制限は何もない。手前らの車庫ははるかかなたにあることになります、そういう場合は、路上駐車はやむを得ざる場合も相当出てくると思いますし、そんなこまかいことを言っておったら仕方がない。これは国民生活の中から、車の便利というものを奪わなければいいと思うのですね。枝をためて幹を枯らすようなことにならぬように一つしてもらいたいと思うのです。  この問題については、私の見解警察庁見解と少し違うようですけれども、増員すべき必要がある府県の実情を調べて、大阪の実情を調べていただいて、あるいは名古屋の実情を調べていただいて、そうして早く証明事務が行なわれますように、国民生活にこの法律が不当な圧迫にならないように、一つ十分な配慮をしていただきたいと思うのですが、長官、どうですかね。
  113. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 実情をよく調べて善処をいたしたいと思います。
  114. 永田亮一

    永田委員長 門司亮君。
  115. 門司亮

    ○門司委員 きょうは一、二の問題を聞いておきたいのですが、太田君からいろいろ聞かれておりますので、こまかい問題で気のついたことを一、二聞いておきたいと思います。  路面電車の停留所とバスの停留所が、非常に接近しているというのが、第一であります。これはある程度交通を阻害しておるように考えられるのでありますが、その点については何か規制の方法がございますか。
  116. 富永誠美

    ○富永政府委員 路面電車の停留所とバスの停留所は、実はこれは運輸省の方の担当になりまして、会社の方から事業計画を出すわけでございます。その事業計画を見て認可をいたしております。従って、私どもも実際現実に見ますると、今御指摘のように、路面電車の停留所やバス停の位置が、たまたま交差している、非常に近いのが多いわけでございますが、そのことによって車がつかえるというふうなところにつきましては、それぞれ運輸省の方にも話しまして、停留所を変えてもらう。たとえば東京都でいいますと、今まで交差点の、電車でいいますと、手前に安全地帯がありましたのを、だいぶ交差点の向こうに移してもらったというような事例も非常に数多く出ております。バス停につきましても同じであります。
  117. 門司亮

    ○門司委員 私の言うのはそういうことでなくて、停留所と停留所と近い場合、乗客の方から言わせると、乗りかえの場所の近い方がよろしいという便がある、ところが車を動かしておる方からいえば、非常にそこに人間が交差するので、運転がしにくいという面が実は出ております。そういう面についてのお考えが何かあるかということであります。
  118. 富永誠美

    ○富永政府委員 停留所から停留所までの距離でありますか。
  119. 門司亮

    ○門司委員 はっきり言えば、たとえば電車の停留所があり、その同じ路面をバスが走っておる、それでたまたま十字路がある、それで乗りかえの便利のために電車の停留所と、バスの停留所とが案外近いところに置かれておる、そのために乗りかえその他で道路を人が行ったり来たりすることで、かなりめんどうな問題が起こりはしないとかいう危険性がある、そういう点についてどうお考えになりますか。
  120. 富永誠美

    ○富永政府委員 御指摘のような傾向といいますか、これは実際問題としてあるわけであります。従って安全地帯なりあるいはバス停留所はできるだけ交差点から離れた、また電車の安全地帯とバス停とは離した方がよいのではないかという場所もありますので、それにつきましてはできるだけ離してくれというふうに申し入れはいたしておりますが、今御指摘ございました通りに、一方におきましては、乗りかえの乗客の便不便がございますし、それから安全地帯なり、停留所一つ移すにいたしましてもなかなか、地元の関係が非常にむずかしいようになっております。ここの停留所を移されては困るというふうな地元の利害というものも、実際問題としてかなり深刻なようでございますが、私どもとしましても、御趣旨の点につきましては、同感でございますので、今後ともできるだけ車の交通が円滑にいきますように、停留所は離していきたいというふうに考えております。
  121. 門司亮

    ○門司委員 これは資料でもいいし、わかればここで答弁をしてもらいたいが、今までわれわれが見てきて、あるいは調査した中で疑問というほどではありませんが、知りたいと思うことは、事故件数に対する自家用車と営業車の割合です。これはただ統計を、一万台なら一万台の中でどういう割合で出ておるかというようなことを知らせておいてもらいたい。その中で注意しなければならぬのは、営業車といっても、貨物やなんか運んでおるものもありますし、それから人間を運んでおるのもあります。自家用車の方でも両方あると思います。自家用車は自家用車でそのままでいいと思いますが、営業車は貨物を運んでおるものとタクシーなどの二つに分けて、大体の事故件数を御報告願っておきたいと思います。  なおつけ加えて、それについて事故の原因と、それから事故の程度が知りたいのでありますが、事故の程度はわからないだろうと思います、実際は。私がなぜそんなことを聞くかといいますと、同じような方法取り締まり、同じような規格の中で扱っていても、非常に大きく事故を起こしておるのと、案外被害が少ないのとこの中にありはしないかということ。それで一応、件数がわかったら一つ知らせていただきたいと思います。  それからもう一つ、この際聞いておきたいと思いますのは、非常にこまかいことですが、気のついたことで聞いておきたいと思いますことは、駅構内の問題です。構内権の問題は、主として、当該駅を管理する駅長か、あるいは運輸省までいかないでおそらく東京の支社あたりで大体きめられるものだと思います。構内の管理権の問題です。しかし交通の方から見ますと、構内権を持っている車が非常にたくさん——私は条件は知らないのだが、おそらく条件については、構内で乗客が迷惑をしないように常時そこに大体幾つかの車がおられるようなことが条件になっていないことはないと思うのです。そうだと私は思っているのです。ところが、ある場合においては、構内に一つの車もない。構内権を持たない車に乗る場合が非常に多い。それから、混雑して参りますと、構内権の車だけでなくて、結局お客の方から見ればどの車でもいいのですから、構内権を持たぬ車でも乗らないことはないと思う。どの車でもいい。そうすると、これは、管理者といいますか整理する人がおって、そして一々整理するとしても、整理する人の言うことを聞くのは構内権を持つ車であって、その他の車は言うことを聞かぬでもよろしいということになる。そうすると、客の方からいえば、どの車でも乗れればいいのでありますから、結局来た車からどんどん乗っていく。それで行列が乱れるとか、はたから見ておるとあぶないことをするなと思われるようなことがときどきあるのですが、とまっている車から出てくるのですから、私はこういう場合にはあまり大きな事故はないと思うのです。しかし乗る方から考えると混乱をしておる。また片方、利用する方も、夕方や朝の非常にラッシュのときは、構内権があろうがなかろうが、来た車に何も文句を言わない。それから、ある場合においては、構内権を持たない営業車がそこにとまっておれば、警察権でこれを追っ払ってしまう。いつまでもとめておるのはいかぬじゃないかというようなことで、一般のタクシーは、結局最後には警察権でこれを追っ払うということになりがちなんです。こういう問題もある。構内権なんというものは取り消したらどうかと思うのです。全体の車が、いつでも、どこでも、スムーズにだれでも乗せて走るような仕組みにしたらどうかと思うのです。ごく少数の権利を持っている人の利益を守ろうとするところに警察権が利用されている向きがありはしないかという気が私はするのですが、こういう点については取り締まりの面から一体どういうふうにお考えですか。
  122. 富永誠美

    ○富永政府委員 駅構内のタクシーの問題だと思いますが、これはどちらかといいますと、やはり運輸省の系統の方の管轄になりますが、私の聞いています範囲では、たとえば駅長とタクシー会社とが話していく。つまり駅構内はやはり駅の土地でございますので、そういった形をとっておることが多いようでございます。それで、実際問題としまして、構内タクシーの権利があるわけでございますが、これを一般タクシーに開放しろ、この問題は東京でも非常に起こっております。大体開放する方向に行きつつあるというふうに私は聞いております。あるいはもう実現いたしたかもしれませんが、東京に関してはそういうふうな方向で行っておるのでございます。ですから、警察官が云々というのは、やはり一種の交通整理の見地でやっておるので、構内タクシー以外はいかぬというふうなことは実際問題としてはやっていない。混雑が起こりますからやっておるというふうな範囲で事実やっておる。もし警察官がやっておるとすれば、そういうことであります。
  123. 門司亮

    ○門司委員 それ以上私はこの問題を追及しませんが、ただ警察官の問題ですけれども、警察官の問題は、交通の整理のためにやっているということに私は受け取れないのです。やはり構内権を持つものと持たらざるものとの区別はあるわけであって、従って構内権を持たない車がいつまでも駅の前にとまっておることがいいか悪いかということは、これは考えられることでありますし、営業権を持っている方の側からいえば、結局警察権ということにたよらざるを得ない。現実に私の見ている範囲では、そういうことがありはしないかという気がする。だから、車の流れと乗客の便利からいけば、もう今の段階では、構内におる一定のものだけが権利を持つということでなくて、おそらく協会か何かでポーターをつけていただいて、スムーズに乗客が運べるようにしてもらった方がいい。ことに雨の降る日には困るのです。乗客はかなり迷惑をしている。そういう点については気をつけてもらいたいと思う。  それからもう一つは信号灯の問題ですが、信号の問題も、交通安全の問題と自動車の運行問題との関連性ですが、これについて何か特別の考え方がございますか。道路交通の安全性からいえば、どうしてもここにこういう信号灯があった方がいいということに一応考えられるが、しかし車の運行の形からいえば、そこにあったのではどうもやりにくいというようなことで、事故の原因というものが、そういうところから——どっちつかずで、あそこはむしろないほうがよくはないか、しかし片方からいうと、十字路で人がたくさん通るから、信号灯があった方がいいという問題が起きてこようと思います。だから、最近この信号灯が足りるか足りないかという問題は別として、信号灯をつけられる場合に、そういうことを十分配慮されておるかどうか。  このこととあわせて考えられるのは、深夜の信号灯であります。夜中にはほとんど人通りのないところに依然として信号灯がついておる。そうすると、そこは忠実な運転手であれば必ず信号に従いますが、比較的忠実でない連中は、深夜であるから別に人も通らなければ車はほとんど通らないということで、信号無視で通ってしまう。むろんおまわりさんも前におるわけではないから、平気で通ってしまう。こういうことがかえって信号無視の思想を生んでいやしないかということが、しばしば夜おそく通るとあるのです。われわれがタクシーに乗っていても、赤が出ておるなと思っても、夜中の一時、二時ごろになると、人も通っていないし、だれもいないから突っ走ってしまう、こういうことがある意味では考えられるのですが、深夜の信号灯と、それから信号をつけられる場合に、そういう問題は、十分業者との間に協議されておるかどうか。一方的に警察だけで信号灯をつけて、自動車の運行には何ら考慮が払われていないということになれば、幾ら信号灯をつけても事故は、減らないという結果が出てくると思います。そういう点等についてどういう取り扱いと協議がされておるか、またそういうことを指導されておりますか。
  124. 富永誠美

    ○富永政府委員 信号機の設置につきましては、信号機は、申すまでもなく、最初は車と車の交通の流れを調整するということから出発したのが多いのでございますが、その後は、あまり車が多いので、今度は人が渡れないために人を安全に渡すということも考えて現実に設置されておるわけでございます。設置いたす場合におきましては、一応地方からどうしても申請が出ますし、地元の意向も入ってきますし、一線の署からも出てきますが、それを交通量あるいは過去における交通事故の発生状況、危険状況といったものを総合判断いたしまして、全体を見て厳格に審査して設置いたしておるというふうな状況でございます。それからまたできました信号機につきましては、そのためになかなか車が能率が上がらないではないかという面も、確かにこれはないでもないのでありますが、信号機をつけましても、その方法なりあるいはサイクルの時間なり、こういったものを個々の場所につきまして具体的にきめて、交通の事情に合うように、これは一つ一つにつきましてやっておるような状況でございます。  それから深夜信号機につきましては、これは一昨年の四月十日から東京は実施いたし、現在神戸と大阪とやっておりますが、実はこれは私が警視庁におりましたときに実施いたしたもので、当面の責任者でございますが、それまではどういうふうなことになっておるかと申しますと、深夜の信号機は、ところによりまして、午後八時とかあるいは午後十時とか十二時とかいうふうに、昼間の整理信号をその時間に切りかえまして、たとえば黄の点滅なりあるいは信号機を消すという方向でいきましたが、これでは非常に深夜の交通事故が起こりやすいということで今のような整理信号に切りかえたわけでございます。もちろん切りかえる場合におきましては、今御指摘のございましたように、深夜の場合確かに横の道筋には車がおらない、ただ信号機が何か赤でくすんでおるというふうに思って、赤信号でも突破しようという危険が起これば、信号無視の風潮が起こりやしないかという懸念はずいぶんあったわけでございます。いろいろこれは考えたのでございますが、しかし結局はやはりああいうものがないと自分目的地までまっすぐいってしまう、それから交差点の出合いがしらで事故が起こるというふうなことから、そういうことがあることを考慮に入れましても踏み切ったような状況でございます。ただ、たとえばこの近所で見ますと赤坂見附のような複雑な交差点、あるいは学童とか人が横断するための信号の場合には、深夜に消したり黄の点滅をするという形にいたしておるわけです。私どもも深夜なり早朝なり見回ってみますが、私ども懸念しましたような信号無視というのは比較的少ないというふうに見ております。しかしながら深夜の場合の信号機のサイクルにつきましては、昼間と同じではこれは実情に合いませんので、できるだけ短くしていく、途中々々で区切りをつけていただくということでいきたい、まあいっておるわけでありますし、諸外国においても大体そういったことで深夜でもやっておるというのが実情でございます。
  125. 門司亮

    ○門司委員 今のお答えですが、それはそれでいいと思いますが、ただ問題になりますのは交通事故自身が、ただ取り締まりだけが厳重で施設だけがどんなに完備しても、運転している者の心がまえというものが一番大きな問題になってきようかと私は思います。信号灯をかりにつける場合でも、その地区における業者の団体もありますから、いろいろ業者との間に話し合いをして、半分というと少し悪いのでありますが、幾らかはやはり業者も事故に対しては責任を負うという建前をとるべきではないか。事故が起これば全部責任者が責任を負わなければならない、しかし施設その他については自分からは関係しておらない、一方的に警察がやったことで、悪いことというか、事故が起こったときだけ縛られるという考え方でなくて、運転者自身にも、あるいは営業者自身にも、交通道徳というものをもう少しはっきりしてもらうには、やはりこれとの話し合いあるいは接触というようなものが行なわれるべきである。そうしないといつまでたっても取り締まる者と取り締まられる者ということになって、片方はウの目タカの目で、いろいろ話がありましたようにあるいは点数を上げるために取り締まろうとする。片方は何でもいいからのがれようということでやる。その間のギャップが大きな事故を引き起こしているということが考えられる節もないわけではない。これではいつまでたっても交通行政というものはほんとうのものにならない。やはり取り締まりの方にも考えていただくし、運行者の方にも、あるいは営業者の方にも、交通事故に対しては一半の責任を背負ってもらう。それには施設その他についてもお互いに協議をしていくという形が望ましいのではないかというように考えられる。警察等においてもときどき講習会等開かれておりますが、こういう講習会等をのぞいてみても、あるいは講習会に行った連中の話を聞いても、何か条例が変わったとか、変わったことについての訓示は受けるけれども、運転者側の意見というものはほとんど聞いてもらえないのであって、聞いてもらえる時間もないんだ、警察にお説教を聞きに行くようなものだということでは、幾ら講習会を開いたって大したことはない。警察側は、教えたんだからお前ら守るのがあたりまえだとお考えになっても、聞いている方では案外自責の念というものは薄い、こういう面が非常に最近考えられる。こういうことがふえればふえるほど、やはり運転者の協力を得るという交通行政の建前になってもらいたい。そしてお互いが交通事故をなくするという建前に立たなければ、今のようなことをいつまで繰り返しておったって、事故ばかり多くて少なくなるということは問題にならない。そういう点等から一つ、御答弁はそれでよろしいんだが、考えてほんとう交通事故を少なくしていく——まあなくするということは困難でしょうから、少なくするということにお互いが努力するという方向に警察が向けていただきたいと思うんですが、もうそれで終わります。
  126. 永田亮一

    永田委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十五分散会