○大平国務
大臣 御案内のように、近来の貿易というものは、単なる物の売り買いということで一回限りで一連の取引が結了して済んでしまうというものでなくて、延べ払いというような問題が普遍的になってくるばかりでなく、その期間がだんだん延長し、あるいは
金利を低
金利にしていくということは、一般的な
傾向になっておりますことは御案内のとおりでございます。それからさらに進みまして、単なる物の売り買い、それが信用供与を含むものであるといかんにかかわらずさらに進みまして、プロジェクトであるとかあるいはプラントであるとか、あるいはいま御
指摘のように、
企業であるとかいう形における進出を伴わなければいけない形勢が出てきておると思うのでございまして、そういう新しい世界の趨勢というものを踏まえた上でわが国がどう対処するかということは、有馬さん御
指摘のとおり、私どもにとって非常に重大な問題になってきておるわけでございます。
いま御
指摘のように、それでは
一体どういうプログラムでおるのか、今後の構想としてどういうことを
考えておるのかというお尋ねでございまするが、私どもは二面
考えなければいかぬ点がございます。
一つは国内の問題、
一つは対外の問題でございますが、国内におきましては、御
承知のように生産力系列と申しますか、非常な設備の近代化、更新がここ数年来非常に精力的に行なわれている。生産力というものが非常な速度で拡充を見ておるということ、それは国内の消費であるとか、あるいは財政消費であるとか、あるいは輸出というものだけでは消化し切れないと申しますか、やはり
一つの経済協力という分野を用意しないと、
日本の経済の循環そのものが順便に参らないというように、生産力系列というものが独自の発展を見ておりますので、それを十分国内経済的に見きわめまして、経済協力というものにどれだけのウエートを与えてどれだけの市民権を確保していくかということ、これは国内の経済計画の問題であろうと思うのであります。所得倍増計画という一応のプログラムがございますけれども、これも精細に見てみますと、まだこの経済協力という問題がこれほど現実の問題にならなかった
段階に作案されたものでございまして、その点の焦点が必ずしも明確であるとは言えないと思います。したがって、私どもの課題としては、国内経済的に見まして経済協力の分野というものはどういう姿であっていいかということを模索していかなければならぬということが、私どもの
一つの問題になっておるわけでございます。全体として相当な弾力を持っておるものとは思いますけれども、それを的確に読み込んでそうして
政府の経済計画に盛り込んでいくというところまで、まだ
検討が進んでおりません。相当の経済協力的弾力があるとは思うが、しかし的確に経済計画にまでコンクリートなものにするまでには至っていないというのが、正直なところ実情でございます。
それから対外的には、あなたのおっしゃるように
一つのプログラムを持てという以上は、やはり経済協力を受ける側の国の
事情に十分精通せねばなりません。それからまたその国の希望というものを十分に踏まえてかからなければいかぬのでございますが、御
承知のように各国まちまちでございまして、また低開発国といっては失礼ですが、いまいわゆる開発途上にある国々は、みずからの方向をどのように定めたらいいか、みずからの経済計画をどのように持っていくかということで、まだ十分腰がすわっていないという
事情がございまするし、もっと根本的に申しますと、もっと能率的な
政府を持たなければいかぬし、もっとモラルがしっかりしなければいかぬし、いろいろ私どもから見ましてまだ満足すべき
状態にないことは御案内のとおりでございます。それからまたそれらの国で、インドやパキスタンみたいに、コンソーシアム方式で広く世界
銀行はじめ各国から借款を受けて、それを計画的に使っていこうというような国もあれば、たとえばインドネシアのように、そういう方式はいやだ、あくまでもバイラテラルでいくのだ、ひもつきでない協力だったら受けるのだ、債権国
会議というようなものの駆使のもとにおることはいさぎよしとしないという国もあります。したがって、いま有馬さんが提示された問題というのはまさに非常に大事な問題でありまするし、私どもが十分これを深めてしっかりしたものにしていかなければならぬ課題ではあるのでございますけれども、それではいま外務省に、自信を持って国会にこういうことで行くのだというほどまで自信のある案が固めてあるかというと、まだそういう
段階ではないわけでございます。しかし、そうかといって、そういう全体のプログラムがコンクリートになったあとでやるのだというようなことでは、経済は現に生きておりますし、そういうわけにもまいりませんので、いまやっておる系統の経済協力に対しましては、すべての問題について少なくとも
政府はポジティブな態度をとっていくのだ、そのことは官民ともに支持を得ていると私は思っているわけでございます。延べ払いの問題にいたしましても、プロジェクト・ベースの問題にいたしましても、技術協力の問題にいたしましても、それぞれ積極的にやるのだという姿勢で
各省の協力を求めてきておるのが実情でございます。将来の問題としていま私どもが
検討いたしております問題は、まさにあなたの御
質問に答えることになると思うのでございますが、いまそういうことの
検討の途中にあると申し上げざるを得ないと思います。