運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-05-30 第43回国会 衆議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月三十日(木曜日)    午後零時二分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 足立 篤郎君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       小川 平二君    岡田 修一君       金子 一平君    川村善八郎君       久保田藤麿君    田澤 吉郎君       高見 三郎君    藤井 勝志君       藤枝 泉介君    坊  秀男君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       坪野 米男君    芳賀  貢君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         外務事務官         (経済協力局         長)      甲斐文比古君         大蔵政務次官  原田  憲君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         検     事         (刑事局刑事課         長)      羽山 忠弘君         通商産業事務官         (通商局次長) 宮本  惇君         日本輸出入銀行         総裁      森永貞一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月三十日  委員田原春次辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  田原春次君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融緊急措置令廃止する法律案内閣提出第  一六二号)  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を聞きます。  金融緊急措置令廃止する法律案を議題といたします。質疑を続けます。質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まず法務省羽山課長にちょっと御質問したいと思います。この法律廃止のことについて……。三年くらい前から大蔵省からこの罰則法律廃止するという連絡があったのですか。
  4. 羽山忠弘

    羽山説明員 一昨年四月、書面で、大蔵省としては金融機関融資準則廃止したい、こういう申し出を受けたことはございます。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そのときに、どういう都合でこの法律廃止法務省は回答されなかったのですか。
  6. 羽山忠弘

    羽山説明員 ただいま申し上げましたように、金融緊急措置令廃止するというのではなくて、金融機関融資準則廃止するというお考えをいただいたわけでございます。金融機関融資準則廃止いたしますと、金融緊急措置令が、法律がございましても実効のない、ただ形の上だけで残るというふうに相なりまして、その結果は法務省所管法律となっております経済関係罰則整備に関する法律別表乙号の、このたびの法案の付則に出ておるのでございますが、二十四号がまた形だけでございまして、相当部分実効性を失う、こういうことになって参るのでございます。ところが、御承知と思いますが、経済関係罰則整備に関する法律と申しますのは、戦争中につくりました法律でございまして、それをさらに終戦直後、やはり当時非常に経済状態が悪かった時代政府による統制業務を行なうため、その統制に関する業者贈収賄、あるいは秘密を漏洩する行為というようなものを処罰する必要があるということと、それから性質上、電気事業を行なうものというような独占的なもの、これにつきましても同じような税制をする必要があること等の考慮によりまして、一部改正の上存続することになっておるわけでございますが、これらの規制を受ける団体の種類が非常に数多くございまして、一挙に、たとえば金融緊急措置令廃止いたしまして、銀行関係につきましては贈収賄は処罰しないこととする、しかしながら信用金庫等につきましては残すというようなことでは不均衡ではないかというような疑いがあるわけでございます。他方、最高裁判所の判例が、信用金庫等は、ただいま申し上げましたどちらかと申しますと、特別の法令によって設立されたもの、すなわち独占事業というほうの考え方をいたしておりますもので、その間に多少検討を加える必要がありましたことと、もう一つ、それでは銀行贈収賄廃止する、したがって信用金庫その他金を貸す業者贈収賄は全部時放しということにいたしまして、しからば電気事業を行なうものはどうかというように、派生することが非常に大きくなりまして、もし改正をするならば、全面的に一度検討さしていただきたいということを申し上げたのでございます。それから各省との連絡が非常に複雑でありまして、時間がかかってまいった、かような状況に相なっておるのでございます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 昭和十九年に、国家総動員法関係でできた法律だと思うのですが、しかし私たち戦争中のことが、そういつまでも尾を引くとは思っていなかったし、おそらくこんな法律があったということも考えなかったのでありますが、ただいま申されたような電気事業銀行というものに対しては特別な国の援助があったために、国の特別の方法で待遇を与えたという関係から、これが残っておると思って、おるのですが、しかし戦後になって、こういうものがそう長く必要だと思いませんけれども、その点の説明一つしていただきたいと思います。
  8. 羽山忠弘

    羽山説明員 御指摘のとおりでございまして、現段階におきましては、この法律はとうていこの形で維持できないのではないかと考えております。ただ問題は、この別表をごらんいただきますとわかりますように、「日本航空株式会社」というふうに、政府が出資いたしておりまする団体などを規定いたしております。本来、日本航空株式会社役職員の涜職は、むしろ日本航空株式会社法の中に規定するというのが最近の傾向でございまして、もしこれを規制する必要があるといたしましても、経済関係罰則整備法律の中に何も残す必要はないんじゃないかというようなことを考えておるわけでございます。最近刑事同長の指示によりまして、各省にその点の御意見を承りまして近い将来にこの経済関係罰則整備に関する法律の全面的な改廃を検討いたしたい、かような段階に相なっておるのでございます。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そうすると、戦後から今日までこの法律の適用を受けるような犯罪、あるいはそれにかかるようなケースはたくさんあるのですか。概略でけっこうです。
  10. 羽山忠弘

    羽山説明員 それでは一番新しいところといたしまして、この法案を提出するに際しまして調査いたしました三月二十八日現在検察庁の手元にありますものの数字を申し上げます。贈収賄だけでございますが、収賄が三十四名、贈賄が五十四名、合計が八十八名となっておりまして、一審係属中が四十八名、二審が十七、最高裁判所に上告いたしておりますのが十九名、その残り十一名が検察庁としては未処理、こういうように相なっております。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つ最後に伺っておきます。昭和三十五年か三十六年か知りませんけれども、大蔵省からこの法律廃止したいというような連絡があったその後からは、こういうように検挙される件数はどのくらいあるのでしょうか、大体でけっこうですが、わかりませんか。
  12. 羽山忠弘

    羽山説明員 三十六年の四月に通知をいただいたわけでございますが、四月以後というとわかりませんので、三十六年中の人員を申し上げます。  検察庁の受理いたしましたのは全部で六十五名でございます。そのうち起訴いたしましたのが九名、残りが不起訴その他ということに相なっております。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、ただいまも羽山刑事課長からお話があったように昭和十九年、これは戦争中の時代にあった法律が今日まで残っておったために、こういう犯罪人にされ、罪なき人が罪におとしいれられるということがあるのですが、大蔵省はなぜこの法律を残してこられたのか、いまごろになって出されるのなら早く出されたらいいと思うのです。大臣は最近なられたのですから昔のことは申しませんが、どういういきさつがあったかを大蔵大臣に伺いたいと思います。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 金融緊急措置令は旧憲法下における緊急勅令でありましたものがその後議会の承認を得たものであります。特殊な状態につくられたものでありまして、原則的にはもうこのようなものは必要ないという考え方でおるのでございます。私が大蔵省に参りましてからこの問題に対する事務当局説明があったのですが、それによりますと一年ばかり前に銀行局長名法務省当局に対して金融緊急措置令廃止したいという正式な文無をもって申し入れをいたしたわけでございますけれども、その当時の事情からしますと係属事犯があったというような問題、それから法の体制上各省にまたがるものでありますので、法体系として残すものはいま法務省当局から説明がございましたが、他の法律に譲るものは譲る、また別の法律として残すにはどうすればいいかというような問題を検討いたしておりましたので、ついに昨年の秋ごろまでには政府部内において統一的な見解ができなかったというのが過去の経緯のようであります。私はもうこのような法律が残っておること自体がおかしい、またこの法律によって事案が係属せられておるということは、この法律廃止してもまたこの種の法律に対して大きな改正を加えても、その事案とは何ら関係がないのでありまして、これらのものがあるからといって法律が必要でない、また改正が必要であるということがいつまでも野放しにされているということになれば、あすにもあさってにも、このような法律があればひっかかる者がないとは言えないのでありまして、永久にその結論が出ないということになるのであります。本法が必要であるかどうか、このような措置令一体必要なのかどうか、他の法令と比べて軌を一にしておるのかどうか、不当性はないのかというような問題を十分検討しました結果、金融緊急措置令廃止をする好機である、このように判断をして御審議をお願いしているわけです。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 田中大臣からもいろいろ御説明がございましたが、これには何かのいきさつがあるかと思いますので、事務当局からその概略のことを私の納得がいけるようにちょっと御説明願いたいと思うのです。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 経緯は私がいまるる申し述べたとおりでございまして、事務当局が私以外に知っておるという事実はございません。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それは悪い意味じゃなくて、どうも私らはいまごろこのような法律が残っておることは非常にふしぎでございますから、ただいま、田中さんが大臣になられる前からそういう問題があったということを聞いておりますから、その前のいきさつをちょっと伺いたいと思います。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 事務当局が答弁できない問題もあると思いますから私が申し上げますと、先ほども暗に申し上げましたのは、この法律が旧憲法時代のものであり、端を発するものは緊急勅令であったということで、もうこういうものは廃止すべきであるということは、大蔵省自体でもそのようにきめて文書をもって法務省申し入れをしたわけでございますが、御承知のとおり金融緊急措置令だけではなく、経済罰則云々法律さえも相当大幅に検討を必要とするというふうに考えておったわけであります。ところが大蔵省側がいま持っておりますのは本法ではなく、本法から出てくるところの政令という段階でございますので、政令、省令の改正に踏み切ってしまうと、先ほど法務省当局が言いましたように、実体のない法律だけが残るわけであります。そういう意味で、法務省当局大蔵省との間の意見がつかなかったという問題が一つございます。  それからもう一つ日本航空のような問題とか、それから戦後つくられた新しい金融機関に対しても、銀行と同じように廃止をしてもいいのか、また電力その他の件に対する問題もございましたし、これらの問題を政府部内で全部議論をまとめるということになかなか問題がありましたというのがいままで私が知り得ておる事実でございます。  もう一つ佐藤さんが、あえて言え、こう言うのは、こんなものをいままで残しておったのには何かあるのだろうということですが、先ほど私が暗に申し上げましたのは、係属事犯がございまして、そういうものにどういう影響を及ぼすかというような問題も顧慮してなかなか廃止に踏み切れなかったという問題もあるようでございます。これは私の感知したというよりも、推断をした議論でございますが、そのようなことでずるずるになってきた。ところがそういう勘定でいきますと、未来永劫に廃止できないという議論にもなりますので、ある時期には必要でない法律やその他のものは廃止に踏み切ったり大改正に手をつけるべきだろうということで、勇気をもって踏み切ったわけであります。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 戦争中の法律を戦後十八年にもなっていつまでも残しておくということは、そのために非を受ける人が出てくるわけですから、そういう人に対しては気の毒だと私は思うのです。そういう点、ただいま羽山刑事課長から聞くと多少犠牲者もあるようでございますから、戦争の前の問題はやはり戦争の前の問題として、敗戦後からは御承知のように憲法改正されましたし、それからこういう法律が残っておること自体については、これは気の毒な点があるのじゃないかと思われますので、大臣にそういういい措置をとっていただくことを希望しておくのですが、どういう御意思でございますか。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 私も、先ほど申し上げたとおり、このような問題がいままで残っておったこと自体に対してもより積極的に措置すべきであったとも考えております。それから金融緊急措置令だけではなく、経済罰則に関する云々法律につきましても、やはり戦前、戦後の特殊事情をもとにしてつくられた法律でありますから、その中の幾部分か新しい角度から見て、新しい立場で必要であるならば、法律の体系を変えて別な観点から新法の制定をお願いするということが正しいのであって、いままでの問題が、いろいろな事情がございますので大半は必要ございませんが、なかなか廃止にも改正にも踏み切れないのですというようなことはとるべきではないという考えでございます。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この法案のことについては大臣事情をよく知っておられますから、これ以上御質問いたしませんが、三、四点について大臣に伺ってみたいと思います。  それは、日本では消費者物価が非常に上がってきておる。だから、たしか三日ばかり前に東京新聞に書いてあったところによると、日本インフレ傾向だ、アメリカあたり物価は三%ぐらいしか上がっておらない、ところが日本では大体六%以上ずっと値上がりしておるから、日本現状インフレ傾向だということを木内さんが盛んに唱えております。政府いろいろ手を打って、物価の上昇についてはいろいろ配慮されておるようでありますが、実際には、現状を見ますと、なかなか物価は横ばいにならないで、だんだん上がってきておるというような問題が出ておると思いますが、大臣はその点についてどういうお考えを持っておられますか、最初に伺いたいと思います。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 物価の抑制ということに対しては十分処置しなければならないのでありまして、政府も最重点的な事項として現在検討し、また施策を進めておるわけでございます。ただいま申されたとおり、アメリカ等は非常に低い物価で抑えられておるけれども、日本が相当インフレ的な傾向であるというような御発言がございましたが、私たちはそう考えておらないのでありますし、またそうなっては困るというふうに考えております。この前の委員会でも申し上げましたが、アメリカ等でも物価は徐々に上がりつつございます。また西ドイツ等の非常に健全な状態である国でも、今年度は消費者物価において約四%、四・五%上がるのではないかというようなことが報道せられておるわけでございます。四月、五月初めの消費者物価状態を見ますと、確かに値上がりしておる面もございますし、同時に生鮮食料品のように三月、四月非常に上がりましたけれども、いよいよ時期に入りましたので大幅に下がったというものもございますので、これからの施策の適正を期しながら、政府が当初考えました二・八%という程度に押えるように万全の措置をいまとっておるわけでございます。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 物価の値上がりについては、大臣はわれわれと見解を異にしておりますが、しかし何といっても生活が苦しくなっておるということは事実であります。そこでその原因の一つは、やはり日本金利水準が高いのじゃないか。金利引き下げの問題については大臣もたびたび声明され、大臣就任以来二、三度金利引き下げがありましたが、この点について世界の金利水準から見て、日本は非常に高いという見解は、これはだれが見ても考えられる点であります。その点について大臣は、どのくらいの程度まで金利水準引き下げると、日本物価に対して影響しなくなるか、そういう問題をどのようにお考えになっておりますか、この際伺いたい。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 金利問題は非常にむずかしい問題でございますが、国際的に比べてみれば日本金利水準が非常に高い、また金利の圧力というものが相当各企業負担増を招いておるということは事実でございます。これは一つの例で申し上げますと、公定歩合の例をとりましても、アメリカは年率三%でございますし、今度四回にわたって一厘ずつ引き下げました日本の現在における公定歩合は幾らかというと、五分八厘四毛でございますか、ようやく六分台を切ったという状態でございますから、おおむね倍であるということでございます。戦前において一番安いときはどうだったかというと、日歩九厘というときもございましたし、戦後日歩一銭という時代もございました。これが理想的であるなどとはいえないかもわかりませんが、いずれにしても国際金利水準と比べてみれば相当割高であるということは御指摘のとおりでございます。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これはいろいろ理由があると思うのですが、田中さんは御承知のように民間出の、いままでとは型破りの大蔵大臣でありまして、そういう点では非常に期待されておりますが、どうも田中財政という声が出ない。何かいままで大蔵省事務官のやっておることをやっておるような感じがしてまことに残念であります。  そこであなたにお尋ねするのでありますが、中小企業金融公庫とか、国民金融公庫とか、そういうものの資金量をもっとふやして、金利の側面的なあれをやるというような方法はできないものかどうか。少なくとも田中さんは民間出の人でありまして、日本電建の社長もやっておられたし、大衆の性格をよく知っておられると思うのでありますが、そういう点について、いままでのいわゆる大蔵省的なオーソドックスではなくて、もう少し野人的なやり方をやっていただくような方法はないか。田中財政という声を聞きませんけれども、政調会長も長くやっておられましたし、それから大蔵大臣もすでに大体一年半くらいになっておるのですが、そういうような人である以上は、もう少し明るい面で大衆が喜ぶようなことをおやりになっていいと思うのでありますが、この点はどうですか。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 御質問に対しまして二つお答えします。  一つ政治論でございますが、田中財政をつくろうというような気持ちはございません。御承知のとおり、国際的に見ましても非常にデリケートなときでありますし、たいへんな経済情勢のときでございますので、政府一体になって財政金触政策に誤りなきようにということでございますし、大蔵省は特に全員一丸となって国運の隆昌をこいねがっておるのでございますから、私は田中財政などというおこがましいことは申しませんが、じみちな、堅実な方針を積極的に推進してまいる予定でございます。  第二の問題は金利その他の問題でございますが、金利というものは需要供給のバランスの上できめらるべきものでございまして、日本経済成長率が非常に高い。資金需要が非常に多い。そこに八条国の移行とか、ガットの関税引き下げとか、OECDの加盟とかいう一連の外からの動きに対処しまして、どうしても本能的にも国際競争力をつけなければいかぬというような気持ちでございますし、また昭和二十年、敗戦によって大半の国富が失われたということで、われわれの生活自体も、土地を整理し建物をつくり、内容を徐々に整備していかなければならないというような現状にございますので、資金需要というものは諸外国に比べて非常に高いわけでございます。そういう意味で、金利国際金利並みにだんだんと引き下げていきますためには、人為的に一方交通でできるものではございませんで、一面において金融環境整備安定化をはかりながら、貯蓄の増強という、いわゆる資金原資をふやす意味で格段の努力を行なっております。三十八年度の予算審議の過程において御議論賜わりました、預金利子利子課税一〇%を五%にしたり、また各般の措置をとっておりますのも、このような趣旨に出ておるものでございます。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 時間がありませんから、あと二点だけにいたしたいと思います。  一昨日掘委員からもいろいろ質問がございましたが、ただいま田中大蔵大臣は非常に協力的な話をしておられましたけれども、われわれが受け取る感じでは、大蔵大臣意見経済企画庁長官意見が非常に違ったり——黒金君からこの間注意があったと思いますが、そういう問題、それから日銀の山際さんなんかの意見大蔵大臣意見が違うような面があって——日本銀行総裁意見はこれは別でありますけれども、しかし少なくともあなたがそういう協力的な意見を言っておられる反面において、そうでない面がいろいろ出てきていると思うのですが、この点はどういうようにお考えになっておりますか、国民は不安に思っておりますので、このことをお伺いしたい。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 政府がきめました国際収支長期見通し、それから経済見通し等と、私がこの間試算いたしましたものとの食い違い、何か政府の中で見通しに不一致があるのではないかというようなニュアンスでの御発言でありましたが、そういうようなことは全然ございません。全く一体でございます。三十八年度の予算案を決定します前に、三十八年度の経済見通しを策定しまして、その上に税収を見積もって、健全財政主義を貫けるという見通しのもとに予算を編成いたしたわけでございます。その経済見通しは、物価は二・八%くらい上がるということを前提にしまして、二・八%以内に押えなければならぬというような見通しで、経済成長率を名目八・一%、実質六・一%というふうに決定をしたわけでございます。この間新聞等に報道せられたものは、私がこれからの三十九年度の予算を組まなければならない大蔵省でございますし、それから特に国際収支所管省でございますから、こういう問題に対しては、一ぺんきめたものが永久不変であるというような考え方は持たず、絶えず国際収支の長期拡大安定というものに対しては気を配らなければならないのでございまして、このような角度から大蔵省事務当局に命じまして絶えず試算をして、また政府関係閣僚にもそのような考え方を周知徹底してお互いに国際収支の長期安定に資そう、こういう考えでやっておるのであります。でありますから、政府が一月にきめました国際収支見通し、また経済成長率見通しというものと、私がつくっているものとの間に差があったり、また政府正式見通しを変えなければならぬというような問題ではないと考えております。大体私は計画経済でありませんし、こうした非常にテンポの早い時期でありますから、一ぺんきめたものを三カ月も五カ月も動かしてはならないというような考え方であるとどうもいろいろな弊害が起きると思います。通産省は通産省でもって国際収支見通しは当然やはり検討し、経済見通しというものを絶えず持ちながら、要らない輸入は押えるようにするとか、また業界との話し合いをするとか、官民一体になって私はやるべきだと思います。私はそういう意味で、私の試算をしたものが一部新聞等に報道せられましたが、これと政府経済見通しが全然相異なるものであるというような考え方は全然持っておらぬわけであります。私のほうで、少し先を見たり、少しころばぬ先のつえか、健全性というふうなニュアンスを多少よけい出しておるというふうにおとりいただければ幸いだと思います。
  29. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 にせ証紙の犯人がつかまったのでありますが、にせ札の犯人がつかまらないわけであります。現在の日本の警察にあまり威力がないことは過ぐる誘拐事件でもわかるわけでありますが、大蔵省はにせ札の問題を、どういうふうな方法でこういうことをなからしめるように考えておられるのか。新しい千円札が出るようでありますけれども、もっと抜本的にこういうような犯罪がなくなって紙幣に対してもっと信用がおけるような対策を大臣は持っておられるかどうか、この点もお伺いしたいと思います。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 紙幣の贋造の問題は非常に国際的にもどこの国にもあることですが、実に遺憾なことでございます。ましてや日本は、国際的に通貨価値の安定をはからなければならないときでありますので、国内的にもかかる不祥事が起きることははなはだ遺憾でございます。これは法律上から見ましても、大蔵大臣以外は紙幣を発行してはならないというのに、随時国民が紙幣を発行するようなことは非常にまずいことでありまして、私は就任後この問題とは非常に強く取り組んでおるわけであります。しかしこれは捜査上の問題でありまして、警察当局、検察当局の意向も十分考えなければいけませんし、私たちが独自な立場でもっていろいろなことをすることによって捜査の妨げになっても困りますので、連絡をとりつつ慎重な態度をもって臨んでおるわけでございますが、あなたが先ほど申されたとおり、そういう意味で新しい千円紙幣の印刷も行なっておるわけでございまして、これから印刷技術の向上その他万般の処置を行なうことによりまして、法律できめておる者以外が流通貨幣を発行できないように厳重な措置をいたしたい、このように考えております。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 時間がありませんから最後に一言だけ。これは大蔵省関係することでありますが、私も大蔵委員を長くやっておりますが、今度の場合のように一度に六人の局長がやめられた例はありません。何かいわれがあるんじゃないかといろいろ憶測されるわけでありますが、この点は大臣どういうようにお考えになっておりますか。珍しいことでありますから、われわれが納得のいくようにひとつ御説明を願いたいと思います。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 これは自発的に御勇退を申し出たということと、ちょうどいろいろな機関からぜひひとつ大蔵省から人をいただきたいという申し出もありましたし、また大蔵省関係から来ておる方々でもう十年余になる人もありますので、またその人たち政府関係機関以外に転出を希望いたしておりますというようなことで、できれば新進気鋭な人をひとついただけないかということもありましたので、それらを総合的に勘案いたしまして人事異動を行なったわけでございます。いろいろな御議論はございますが、私は昔の状態を十分考えてみますと、いままでのように長い、二十八年も三十年も省につとめておるということもあまりなかったようであります。大体二十年過ぎると民間にもいろいろなところに転出をして、新進気鋭な人たちが絶えず行政の第一線で働いておったようであります。新陳代謝の状態はそのように考えられます。戦後特に長くなりましたのと、もう一つは、給与制度から見ましても私は戦前と比べて、二十五年、三十年働いてもらっておる有能な諸君の待遇としても恵まれたものではないというふうに考えられますので、本人が転出を決意せられる、また相手方もこれをひとつ受け取ろうというときには、やはり本人の意向も生かしながら転換をはかっていくべきであろうと考えておるわけであります。  それからもう一つ、どうも政府関係機関などに非常に大量に天下りというような御議論もございますが、政府関係機関そのものが政府の延長でございまして、国鉄の議論などはいまいろいろなマスコミで取り上げておりますが、この一事を見れば私は十分わかると思います。政府関係機関そのものが政府の事業であり、一般会計でまかなわれておったものがだんだんと特別会計になり、五現業になり、三公社になり、公団になり、だんだんと分かれていくのでありますが、しかし公的使命が非常に大きいので、これが予算に対しては国会の議決を求めるものでございますし、また公務員法の準用を受けておるものもございますし、また官庁と同じように会計検査をやられておるようなものもあるのでありますから、それは無刷限に民間と同じものであるというような考え方ではなく、やはり政府の分身であり、人事は政府からいくとすれば、また向こうがもらうとすれば、政府の第一線の人たちを受け入れるということがすなおな議論であり、すなおな技術ではないかというふうに考えているわけであります。
  33. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 希望意見です。委員長大臣に希望しておきますが、大蔵委長会の所管大蔵大臣でありますから、三十分、四十分というようなこま切れの委員会でなくて、やはりできるだけ都合をして、大蔵委員会のあるときには大臣みずから御出席あられるように、委員長もひとつ取り計らっていただくようにお願いして、終わります。
  34. 臼井莊一

    臼井委員長 午後二時三十分に委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。   午後零時四十分休憩      ————◇—————   午後二時五十四分開議
  35. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  金融及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。有馬輝武君。
  36. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 外務大臣に三点ほど御質問をいたしたいと存じます。  その一つは、今度の五月十六日から二十一日まで開かれましたガットの閣僚会議におきまして、率直に言いまして、日本ははっきりとした態度というものを出しておりません。たとえば低開発国の諸君が、それなりの率直な要求をいたしておる中で、日本だけがなぜこういう態度に終始したかという点について、私どもは疑問点が非常に多いわけであります。宮澤さんが出かける前に、通産省と外務、大蔵との間に、意見の一致しない面も非常にあったというようなことも、漏れ聞いておるわけでありますけれども、外務大臣として、今度は総会が開かれるわけでありますけれども、これに対してどのような考え方を持っておられるか、これについて、まず第一にお伺いをしたいと思うのであります。
  37. 大平正芳

    ○大平国務大臣 基本的な考え方といたしましては、わが国のような貿易国は、関税率はできるだけ低いほうがいいという考え方を持っておるわけでございまして、関税の引き下げ問題が取り上げられたことに対しましては、相当の期待を持って、これに対しては前向きの態度で処置しようということにつきましては、各省何ら異存はございません。  第二点として、しかし日本として、特にこの会議で主張し、かつ各国の了解を求めて推進しなければならない点は何かと申しますと、御案内のようにガット三十五条の援用国がまだ若干残っております。すでにこれを撤廃いたしました諸国におきましても、まだ数量的に、日本からの輸入品に対する制限を過渡的に残している国が相当あるわけでございます。したがって、そういう関税以外の貿易障壁というものが、多かれ少なかれ残存した状況におきましては、関税を引き下げましても、端的に、それだけの利益をわが国が享受するということはできないわけでございますから、今度の問題につきましては、日本としてはまず関税以外の差別待遇措置、貿易障壁というものを、今度の会議で取り上げていただいて、それに対して、われわれが期待する効果を生み出すように努力しなければならぬということでございまして、ハーター特使がまいりましたときにも、強く要請いたしましたら、ハーター特使としても、その問題につきましては、今度の関税一括引き下げ交渉の問題に取り上げますということを約束していただきましたし、今度宮澤君がまいりまして御努力いただきました結果、御案内のように、今度の閣僚会議の結果として、この項目が正式に取り上げられ、確認され、そのために特別の委員会をつくるということがうたわれておるわけでございまして、その限りにおきましては、私は成功であったと思っております。  それから、EEC案とアメリカ案は対立の状況にありまして、そしてある段階では、この閣僚会議が流れてしまうかもしれないという雲行きが一時見られたことは、有馬さんも御承知のとおりでございますが、そういう段階におきまして、各国とも決裂は回避しなければならないという良識が働きまして、ともかくもいろいろな問題が、貿易交渉委員会のほうに残されましたけれども、一応決裂は回避することができたということもまた、私どもとしてはけっこうなことであったと考えておるわけでございます。要するに、わが国といたしましては、貿易国として関税は低率になってまいるということに対しましては賛成である、そういう方向に処置しなければならぬ。しかしわが国特有の問題として、差別待遇についてはそれ相当の考慮が払われてしかるべきであり、また払われなければならぬということを主張し、それがいれられたということでございまして、その結果について、私はともかく満足いたしております。
  38. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 満足しておるというようなお話でありますが、問題は、今度の閣僚会議が決裂しなかった、とにかく妥協案が出されて、原則的な面においては一致したというようなことが言われておりますけれども、これは決裂させないためにとにかくこう薬をちょこっと張っただけに終わっておることはまぎれもない事実であります。問題は総会にすべてが持ち越されておるのでありまして、いまお話のありましたたとえばアメリカの一括引き下げ方式に対して日本はどのような考え方を持っておったのか、またEECの考え方に対してどのような考え方を持っておったのか、そこら辺ちっとも明瞭ではございません。その点について日本としてはどのような態度で臨まれたか、関係閣僚のお一人としてその基本的な面についてお聞かせをいただきたいと思います。
  39. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国際的な話し合いの場においてどう行動するかという問題は、単にスタンドプレーであればよろしいのでありますけれども、スタンドプレーに終わらないために実効をあげてまいりますためには、わが国の寸法に合ったように行動しなければいかぬと思うのです。あまり背伸びしてやってもおかしい、かといって卑屈になってもいかぬ。これは私の根本的な考え方でございます。今度の関税会議におきましての態度は、私が先ほど申し述べましたとおりでございますが、EEC案、アメリカ案に対してはっきりとしたスタンディングを持っていなかったじゃないかというおしかりでございますが、われわれはアメリカ案に賛成でございますとか、われわれはEEC案に魅力を感じますとかいうようなことをわざわざ言う必要はないと思うのでございます。問題は、日本の基本的な利益をどう守るか、主張し、実現するかということでございまして、アメリカ案がどの程度、いかなる景況のもとにおきましても、決裂を賭してまで主張されるものかどうか、またEEC案というものは一体そういう性格のものであるかどうか、それは会議の現場に臨んでみて、全体の雰囲気を見て代表が判断すべき問題であって、政府としては、関税を引き下げるということに対して前向きでいくのだ、差別待遇の撤廃を求めるのだという日本の基本の線を把持した上で、あとは会議に臨んだ諸君にお願いするという態度でいったわけでございまして、何らそこに間然するところはないと思います。
  40. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 スタンドプレーを好まないという大平さんのお人柄についてはわかるのです。しかしじみで云々といいますけれども、じみさということと日本の態度を持たないということは別なんです。その点についてはいま一度機会を見て論議をいたしたいと思います。  次にお伺いいたしたいと考えますことは、OECDに対する態度であります。総理が二十八日この問題について積極的な推進方を指示したようなことも伝えられておりますし、また六月一日にはアデアー事務局次長ですか、これを中心とする貿易取引委員会のメンバーの諸君がこちらへ来て、日本政府との間に話し合いもされるやに聞いております。このOECDの問題につきましては、閣僚懇談会でも検討が加えられてきておると思いますので、この点に対して、基本方針だけでけっこうでございますから、お聞かせをいただだきたいと存じます。
  41. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本のOECD加盟につきましては、メンバー各国が総じて歓迎の態度を終始とってくれておりますことは御案内のとおりでございます。いよいよ具体的加盟の段取りに入ったわけでございますが、まず第一に、入る以上は、OECDというクラブの運営の規則といいますか財政といいますか、そういうものを認めてかからなければならぬことは当然でございまして、これは問題のないところでございます。第二点として、いままでOECDが決議いたしましたことがたくさんございます。それを日本がいまの段階でアプルーブするということをきめねばいかぬわけでございまして、それも十分検討いたしましたら、支障なく日本側も同意ができるということでございます。したがって、その二つの大前提は当然踏み越えたと私どもは考えておりまして、これからの問題は、いろんな問題がございますけれども、問題になり得る問題としては、いわゆるインビジブルな経常の資本取引、たとえば海運でございますとか、あるいは技術提携であるとかいうような、そういった点に対して、日本がどういう態度をとるかということ、それから経常勘定でないいわば投資と申しますか、これについてどういう態度をとるか、二つにしぼられてくるのじゃなかろうかと思うのでございますが、御案内のように、IMFの八条国移行という問題がいま進行の過程にございまして、日本も移行することにきまって、その準備をやっておるわけでございまして、このIMFで正式に日本の移行を表明するという段階より前にOECDとのコンサルテーションが始まるということでございますから、私としては、まずIMFにかかる問題につきましては、IMF当局との話が片づくまではこれは留保しておかねばいかぬ面が相当あろうと思います。事柄自体よりも手続上そういうことになろうかと思っておるのでございまして、この二つの問題につきまして、先方からミッションが参りまして、六月の初めから日本と相談に入るわけでございますが、その過程でいろいろ相互の意向は話し合いになろうかと思っております。そして問題になる点はいま言ったような問題点ではなかろうかと思っております。しかしこれは見通しとしてどうかというと、私どもは見通しとしてちっとも悲観していないので、そういうこまかい話の泥沼に入ってしまってどうにもならぬということにはならぬと思っておるわけでございます。冒頭に申しましたように、全体のメンバーが非常に好意的に日本の加盟をむしろ歓迎し促進したい気持でおりますので、わが国といたしましては、こういう空気がある以上はそんなにやっかいな問題にならずにいこうと思います。ただ、問題は、わが国の国内におきまして、こういう趨勢に応じて、これに適応してフレキシブルな態度をどこまでとれるかという問題になろうと思うのであります。その点につきましても、みんな国際的に開眼された各省のことでございますから、十分御協力いただけるものと思っております。
  42. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次に森水総裁にお伺いしたいと存じますが、三十六年度の輸出金融の仕向け地域別の内訳が出ておりまして、それによりますと、東南アジアが三五・四%、中南米が一九・八%、ヨーロッパが二六・八%、アフリカが一一・八%というぐあいになっておりますが、三十七年度はこの数字がどのようになっておりますか。お聞かせをいただきたいと存じます。
  43. 森永貞一郎

    ○森永説明員 三十七年度中の新規貸し出しについては、ちょっと手元に資料がございませんが、三十七年度の貸し付けを実行いたしました結果としての三十八年四月末の数字で申し上げたいと思います。  ただいまお示しがございました分類より少し詳しくなっておりますが、東アジアが二%、東南アジアが二八%、西アジアが六%、北米が五%、中南米が二六%、ヨーロッパが二〇%、アフリカが一三%、大洋州がほとんどゼロにひとしい、大体そんなようなわけであります。
  44. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 各地域の三十七年度のものについていま数字を示されたわけでありますが、年度当初における資金計画の中で、この地域別なりあるいは品目別の一つのめどというものを立てられるのかどうか、立てられるとするならばどのような根拠を基礎にしてやられるものか、それについてお聞かせをいただきたいと思います。
  45. 森永貞一郎

    ○森永説明員 年度当初の見込みの立て方でございますが、特殊の案件につきまして、投資計画のきまっておりますものにつきましては、もちろんその数字をとるわけでございますが、そうでない一般の輸出金融なり投資金融なりにつきましては、大体船舶とその他のプラント類に分けまして、いろいろな傾向その他を勘案いたしまして、当年度の当初の見込みを立てておるわけでございまして、国別あるいは地域別には積み上げをいたしておりません。また品目別にもただいま申し上げました程度の積算をいたしまして、当初の見込みを立てております。と申しますのは、何ぶんにも相手のある輸出金融、これが八〇何%を占めておるわけでございますが、相手国の事情がいろいろあるわけでございまして、なかなか国別、品目別には予想が立てがたい。結局ただいま申し上げました程度の大数的な観察で当初の見込みを立てざるを得ないわけでございまして、国別、品目別に詳しい積み上げはいたしておりません。
  46. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 それで、この銀行局の金融年報によりますと、インドとパキスタンにおきまして、三十六年度にインドにつきましての円借款が、八月十九日にインド政府との間に貸し付け契約ができたにもかかわらず、三十六年度中には貸し出しの実行に至っていない。また、パキスタンにつきましても、相手国の事情によりまして年度内に実行に至らなかったというようなことが報じられておりますけれども、これはどういう事情だったのですか。
  47. 森永貞一郎

    ○森永説明員 三十七年度について、当初予想いたしました数字に比較いたしまして、インドの第二次円借款関係で七十四億、パキスタンの第一次円借款関係で二十三億、合計約百億ぐらいのものが当初予想いたしましたところよりも資金の出方が少なかったわけでございますが、その詳細な事情はつまびらかにいたしておりません。けれども、いずれもインドなりパキスタン側における計画の遅延、日本からの買い付けの実行の遅延にもとづくものでございまして、その遅延をいたしましたにつきましては、各国それぞれの事情があろうかと存じますが、その辺のところの詳細はつまびらかにいたしておりません。
  48. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今度、節三次の五カ年計画分の第三年の分ですか、これについても話し合いをつけられて、その間外務、通産両省と大蔵省との間に、たとえばインドの円借款について、その額について、外務、通産両省は大体積極的に七千万ドル程度と言うのに対して、大蔵省は五千万ドル程度でいいのじゃないかというような話し合いがされた経緯を聞いておりますが、問題は、たとえば三十六年度におきまして、私がただいまお聞きしましたような件についてつまびらかにした上で、今後の円借款については検討されてしかるべきであると私は思うのであります。にもかかわらず、いま総裁からお伺いしましたことでは、何が何かはっきりしないのでありますが、この点についていま一度お聞かせいただきたいと思います。
  49. 甲斐文比古

    ○甲斐政府委員 インド、パキスタン両国とも実際の支出がおくれておりますが、その主たる原因は発注がおくれたということでございます。それはわが国ばかりでなく、ほかの各国ともみな同じようになっております。それはどういうことかと申しますと、やはりインド、パキスタン両国とも借款をできるだけ有利に使おうということから値段のネゴシエーションが非常におくれる、あるいはあるプロジェクトについて、これを日本の借款を使うか、あるいはアメリカの金を使うか、イギリスの金を使うか、最も有利なところに発注しようというようなこともございまして、そういう関係で実際の発注がおくれてきているということがこの支出のおくれている原因になっております。しかし、だんだん実際にやってまいります間に、インド側、パキスタン側でもこの借款の使い方に習熟してまいりましたので、将来はこの支出が相当スピードアップされるというふりに予想されております。
  50. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 おくれた経緯について、新しい契約をされるときにそういった点についてどのような話し合いがなされるのですか。
  51. 甲斐文比古

    ○甲斐政府委員 なお、ただいま申し忘れましたが、実はすでに出しました借款につきましては、幸いパキスタンについては去る十一月末ですべて発注契約が完了しております。それからまたインドにつきましても、既存の分は、いままでに与えました借款についてはこの六月末日までに全部発注予定になっておりますので、したがいまして、今度の借款は、今回新たに追加いたしますものは、インドにつきましては今年の四月から明年の三月に終わる、またパキスタンにつきましては七月から明年の六月に終わる分について予定になっております。
  52. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次に、外務大臣にお伺いしたいと思うのですが、ただいま森永総裁からお伺いしましたように、東南アジアなりあるいは中南米なりに対して、それぞれのパーセンテージが出ておるわけでありますが、最近、たとえばカナダに対しまして日本企業進出の話が出ておる、こういうことですが、私は、各国の事情を一番つかんでおられる外務省として、日本の市場開拓という面で長期の展望を持っておられると思うのです。また持っていなければうそだと思います。そういった中で、やはり資金計画その他につきましても、輸銀等につきましても、その基本線に沿った手当てというものが進められていくのが筋だと思うのでありますが、今後、大まかに分けまして、どのような構想を外務省としては持っておられるのか、これについてお聞かせをいただきたいと思います。
  53. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御案内のように、近来の貿易というものは、単なる物の売り買いということで一回限りで一連の取引が結了して済んでしまうというものでなくて、延べ払いというような問題が普遍的になってくるばかりでなく、その期間がだんだん延長し、あるいは金利を低金利にしていくということは、一般的な傾向になっておりますことは御案内のとおりでございます。それからさらに進みまして、単なる物の売り買い、それが信用供与を含むものであるといかんにかかわらずさらに進みまして、プロジェクトであるとかあるいはプラントであるとか、あるいはいま御指摘のように、企業であるとかいう形における進出を伴わなければいけない形勢が出てきておると思うのでございまして、そういう新しい世界の趨勢というものを踏まえた上でわが国がどう対処するかということは、有馬さん御指摘のとおり、私どもにとって非常に重大な問題になってきておるわけでございます。  いま御指摘のように、それでは一体どういうプログラムでおるのか、今後の構想としてどういうことを考えておるのかというお尋ねでございまするが、私どもは二面考えなければいかぬ点がございます。  一つは国内の問題、一つは対外の問題でございますが、国内におきましては、御承知のように生産力系列と申しますか、非常な設備の近代化、更新がここ数年来非常に精力的に行なわれている。生産力というものが非常な速度で拡充を見ておるということ、それは国内の消費であるとか、あるいは財政消費であるとか、あるいは輸出というものだけでは消化し切れないと申しますか、やはり一つの経済協力という分野を用意しないと、日本の経済の循環そのものが順便に参らないというように、生産力系列というものが独自の発展を見ておりますので、それを十分国内経済的に見きわめまして、経済協力というものにどれだけのウエートを与えてどれだけの市民権を確保していくかということ、これは国内の経済計画の問題であろうと思うのであります。所得倍増計画という一応のプログラムがございますけれども、これも精細に見てみますと、まだこの経済協力という問題がこれほど現実の問題にならなかった段階に作案されたものでございまして、その点の焦点が必ずしも明確であるとは言えないと思います。したがって、私どもの課題としては、国内経済的に見まして経済協力の分野というものはどういう姿であっていいかということを模索していかなければならぬということが、私どもの一つの問題になっておるわけでございます。全体として相当な弾力を持っておるものとは思いますけれども、それを的確に読み込んでそうして政府の経済計画に盛り込んでいくというところまで、まだ検討が進んでおりません。相当の経済協力的弾力があるとは思うが、しかし的確に経済計画にまでコンクリートなものにするまでには至っていないというのが、正直なところ実情でございます。  それから対外的には、あなたのおっしゃるように一つのプログラムを持てという以上は、やはり経済協力を受ける側の国の事情に十分精通せねばなりません。それからまたその国の希望というものを十分に踏まえてかからなければいかぬのでございますが、御承知のように各国まちまちでございまして、また低開発国といっては失礼ですが、いまいわゆる開発途上にある国々は、みずからの方向をどのように定めたらいいか、みずからの経済計画をどのように持っていくかということで、まだ十分腰がすわっていないという事情がございまするし、もっと根本的に申しますと、もっと能率的な政府を持たなければいかぬし、もっとモラルがしっかりしなければいかぬし、いろいろ私どもから見ましてまだ満足すべき状態にないことは御案内のとおりでございます。それからまたそれらの国で、インドやパキスタンみたいに、コンソーシアム方式で広く世界銀行はじめ各国から借款を受けて、それを計画的に使っていこうというような国もあれば、たとえばインドネシアのように、そういう方式はいやだ、あくまでもバイラテラルでいくのだ、ひもつきでない協力だったら受けるのだ、債権国会議というようなものの駆使のもとにおることはいさぎよしとしないという国もあります。したがって、いま有馬さんが提示された問題というのはまさに非常に大事な問題でありまするし、私どもが十分これを深めてしっかりしたものにしていかなければならぬ課題ではあるのでございますけれども、それではいま外務省に、自信を持って国会にこういうことで行くのだというほどまで自信のある案が固めてあるかというと、まだそういう段階ではないわけでございます。しかし、そうかといって、そういう全体のプログラムがコンクリートになったあとでやるのだというようなことでは、経済は現に生きておりますし、そういうわけにもまいりませんので、いまやっておる系統の経済協力に対しましては、すべての問題について少なくとも政府はポジティブな態度をとっていくのだ、そのことは官民ともに支持を得ていると私は思っているわけでございます。延べ払いの問題にいたしましても、プロジェクト・ベースの問題にいたしましても、技術協力の問題にいたしましても、それぞれ積極的にやるのだという姿勢で各省の協力を求めてきておるのが実情でございます。将来の問題としていま私どもが検討いたしております問題は、まさにあなたの御質問に答えることになると思うのでございますが、いまそういうことの検討の途中にあると申し上げざるを得ないと思います。
  54. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 外務大臣、時間がきたようでございますが、いま一問だけお尋ねいたします。  その前に森永総裁にお伺いいたしたいと思いますが、たとえばブラジルのウルブプンカの発電なり造船、こういったものが実らなかった理由についてどういう原因だったのかお聞かせをいただきたいと思います。
  55. 森永貞一郎

    ○森永説明員 おあげになりました案件につきましては、実は私どもの融資の問題になります前に政府の許可の問題として問題になったわけでございますので、詳細は政府当局からお答えいただいたほうがよろしいかと存じますが、要するに延べ払いの期間の問題がポイントであったように承知いたしております。
  56. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 外務大臣、五月二十三日にも池田総理は経団連の総会におきまして、輸出の振興のためにはたとえば所得税の減税なんかはやらなくて企業の体質改善のための租税政策を進めるのだということまで言っておるような状況なんです。その一番大きな課題である輸出振興について、総理がそういう積極的な意欲を出しながら、先ほどの外務大臣の御答弁を聞いておりますと、経済は生きものだからケース・バイ・ケースで考えていかなければというようなことを理由にして、長期の展望に立った計画がない、たとえば延べ払いの条項が出てくると、これはどうだろうというようなことで、ケース・バイ・ケースでしか、ものごとを考えない、定木のなかでしかものを見ない、そのことが日本が長期の展望に立った市場の獲得ができない大きな原因になっているのじゃないかと私は思うのです。どれを見ましてもそれこそその場当りといわれても言い過ぎではないのじゃないか。ここに私は一番の盲点があるような気がするわけであります。しかも各国の状況については外務省は十分把握しておられるし、在外公館からはそれぞれの地域に応じた、たとえば私カナダに参りましたが、カナダはカナダでそれなりの希望を出しておられる。そういったものを総合して長期の計画を立てるのが外務省、通産省の仕事ではないかと思うのであります。それをやらないでおいて、旗だけはえらく高く掲げた。ここに私は現在の政府のなまぬるさと計画のなさとが一番大きな原因をつくっておると考えざるを得ないわけであります。ですから、いま将来は私の言ったような方向に持っていくつもりだという御答弁でしたけれども、具体的にはどのように進められるつもりなのですか。
  57. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は、有馬さんとちょっと考え方が違うのですよ。ケース・バイ・ケースは非常に大事だと思うのです。計画はございましても、ケース・バイ・ケースをネグレクトしてはいけない。それは貴重な現実なんですから、これに対して最善を尽くしていかなければいかぬので、ケース・バイ・ケースに問題を片づけていくということはいつの場合でも真剣でなければならぬわけでございます。ケース・バイ・ケースで片づけておるからいけないということでは、あなたの御質問はなかろうという前提で申し上げるわけでございますが、しからば大きなプログラムを持ってやれということでございます。私は計画ということをあなたほど重視しないのです。というのは、経済というのはもともと計画なんですから、そういう先を見通してその時点において決意をするのが経済なのであります。みんな先を見通しておるわけなのであります。それにいわゆる雄大な計画を持てということ、これは悪いことでないので、現実に非常に効果的な計画ができたらそれは非常にけっこうなことなんですが、計画倒れになるといいますか、計画を非常に偏重いたしますと、から回りいたします。したがって計画を立てなければならぬというお気持ちはよくわかるし、そうして私どもは立てる以上は有効なものでなければならぬということで、国会の皆さんを驚かすような計画を立てろと言われたら今晩でも書いてきますけれども、そういうことは私はまじめな態度ではないと思うのです。したがって、先ほど私が申し上げましたように、これを受けるほうの国々の事情が、まだ私どもの頭で分析してこうだと言い切ることができるように近代化されていないわけです。たとえばわれわれが経済的な判断をする場合の分析の武器として、たとえば資本主義とかあるいは社会主義であるとかいいますけれども、しかし資本主義とか社会主義がない国なんですね。それ以前の国なんです。したがって、そういう国が非常に草味な段階からどのようにみずからの経済を樹立するかということをいま模索している段階なんです。日本のように進んだ国の理論的武器でとらえてこうだというて計画を立ててみても、あるいはそれは先方の実態になかなか合いにくい場合があるのです。しかもそういう計画を立てておる国の政府自体がまだきわめて不安定なんです。また政府の青写真をようやく持ちかけたというくらいの状態でございますから、あなたの言うように、進んだ計画を経済協力の分野でいま打ち立てろといったって、そういう材料はいま私どものところでなかなか把握しにくいわけでございます。しかしそれはむずかしいからといってなまけていてはいかぬわけでございまして、可能な限り、大使館ベースでも来ておりますし、たくさんの人が幸いにわが国をたずねておりますので、その首脳者たちとも会いまして、いろいろ私ども見当をつけまして、この国に対してのさわり方はこうあるべきでないかというようなところを見定めつつ、あなたが言うとおり、でき得ればもっと有効な計画というものを持ちたいという願望で私どもも仕事をいたしておるわけでございますが、しかし私が先ほど申しましたように、そういうものが完全にでき上って、そうだこれからひとつスタートするのだということじゃない。今日ただいま無数の商談が行なわれておるわけでございますから、私どもはそういう現に行なわれている生きた商談というものをケース・バイ・ケースで慎重に見まして、育てていくような配慮はその過程においてもやらなければいかぬということを申し上げたわけでございます。決して計画をネグるわけではないのでございますけれども、できることならばその計画は有効なものでなければいかぬ、実のあるものにしなければいかぬということが私どもの課題であるということを申し上げたわけです。
  58. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 計画というのは意味のあるものでなければいかぬし、鬼面人を驚かすような計画をつくれとかなんとかということを言っておるわけではないのです。問題は、それがなさ過ぎるから、たとえば延べ払いの条件が出てくると、アルゼンチンの問題では、大蔵省はがっちりやらなければだめだと言えば、ああそうしましょうというようなことでは一つの経済外交というものの方向の上から、それはこうすべきじゃないかということの結論は出てこないので、ケース・バイ・ケースという名目のもとに、その場その場で、まるでレールのないところを昔の煙を吐く汽車が野っ原に置かれているような経済外交だと考えるがゆえに、いまみたいな質問をしておるわけなんです。大平さんはまるでレールの上を走っているみたいなことを言いますけれども、レールも何にもありはせぬです。ここに問題があるのですが、この問題については、きょう時間があれしておるようでありますから、具体的な問題でいま一度お伺いをいたしますから、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  59. 臼井莊一

    臼井委員長 次会は来たる六月四日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後三時四十一分散会