運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-02-08 第43回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月八日(金曜日)     午後四時十三分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 足立 篤郎君 理事 鴨田 宗一君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       安藤  覺君    天野 公義君       伊藤 五郎君    宇都宮徳馬君       金子 一平君    田中 榮一君       藤井 勝志君    坊  秀男君       佐藤觀次郎君    芳賀  貢君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       武藤 山治君    横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  稲益  繁君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         郵政事務官         (貯金局長)  金澤 平藏君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月七日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として栗林  三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  税制金融等に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私は当面する金融問題について若干大蔵大臣質問をいたしたいと思います。  現在、昨年十一月ごろから手を打たれました公定歩合引き下げによりまして、大体金融引き締め前の基調金融情勢が戻って、緩和基調というものが支配的な空気であるというようなことを言われております。ことしの経済財政政策というものが来たるべき景気好転への地ならしの態勢を築き上げる、こういうような年だと言われておりまするけれども、その中で金融問題として一番大きな問題に今なりつつある問題は、低金利政策ないしはその低金利政策を可能にするための環境づくりといいますか、金融正常化、こういうような問題が当面の大きな問題点になっていると思うのでありますが、大蔵大臣に、これから先のここ一年くらいの金融見通し、どういう金融情勢かという問題と、低金利政策というものについて大蔵大臣はどのようにお考えになっておられるか、この点をまず御質問申し上げます。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 低金利政策ということが必ずしも当を得た表現であるかどうかわかりませんので、私もこの低金利という言葉の持つニュアンスを非常に気にしながら、慎重に何かいい名前がないかというように考えておりますけれども、御承知自由化に対応いたしまして、国際金利日本金利と比べてみますと確かに日本の方は非常に高いのでありますから、国際競争力をつけて自由化に対応していくためには、国際金利さや寄せをしていかなければならないということは事実でございますが、この低金利といわゆる国際金利さや寄せするということは、政府が一方的に考えてこれを進めていくというような考えでは、なかなか混乱が起きまして、事志とたがうというようなことがございますので、まず、なぜ金利が高いのかという問題をきわめまして、これに対応する処置をお互い政府民間が相協力をしながら漸次国際金利さや寄せをしていくということを考えていかなければならないというふうに、慎重な配慮をしておるわけであります。日本金利が高かったというのは、これは需要が多過ぎる。なぜ需要が多いのかといえば、これはちょうど自由化に対応しまして本能的に設備増強、体質の改善、その他あらゆる面から見て資金需要が旺盛でありましたために、このような状態になったわけであります。でありますから、企業は高い金利でもって借りる。また銀行日銀貸し出し依存をする。それだけでは足らないので、コールその他別な高い金利の金を使う。ますます資金コストが高くなりますので貸し出しも容易に下げることはできないというようなことになっておったわけでありますが、御承知輸出が非常に伸びて参りましたし、また設備投資も沈静をいたして参りましたし、同時に国民の貯蓄意欲の向上によりまして貯蓄は非常に大きく伸びております。三十八年度の政府払い超も三千四、五百億にも上るというような見通しでございますし、十月、十一月に行なわれました公定歩合引き下げによって金融界も安定をして参りましたし、金融正常化のために日銀がとりました買いオペレーション弾力的運用によって、だんだん含み貸し出しも減って参りましたし、正常な金融環境整備をせられつつありますので、低金利ということよりも正常な金利体系国際金利さや寄せ方向に行きつつある、また向けなければならないだろう、こういうふうに考えておるわけであります。  また一般金融に対しましては、先ほど申し上げましたようにいろいろな事情がありまして、三十五年、六年とに比べて三十七年度が比較的に平穏に推移をし、国際収支改善も達成されましたように、三十八年度、今の見通しでは、政府施策よろしきを得、民間との間に十分な協力体制をとって参れば、金融も比較的平穏に推移をして参るであろうというふうに考えておるわけであります。ただ、きのうきょうのIMFの理事会問題等がありますので、またぞろ預入しなければいかぬとか、とにかく自分だけは残らなければいかぬというような考え方産業界の一部にでも起こったら、これはゆゆしいことでありますので、政府民間も胸襟を開きながら、これが産業体制合理化整備に対しては十分の配意を心がけて参るということであります。同時にこの間から申上しげておるように、日銀金融機関大蔵省も今後お互い角ばった今までのように態勢ではなく、懇談会でも何でも開きながら、十分な配慮をしようというふうに前向きな姿勢をとっておりますので、三十八年度は外からくる大へんなあらしに対応する年ではありますが、金融はしごく平穏とは申し上げられませんが、平静な状態推移をさせたいという考えでございます。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 低金利ということは、人為的に公定歩合操作等を通じてされているという問題が、そのはね返りが思わないところにきて、かえって経済の摩擦を起こすようなこともある。従って、非常に慎重な態度で、むしろ正常ということに重点を置いてやっていくのだという考え方は首肯し得るし、また国際金利さや寄せしていく、こういう国際的な環境に、貿易自由化の問題、あるいはその他対外金融の一本化というような方向に進むような状態から考えて、これは当然だと思いますが、私どもが心配になりますのは、ことしも財政個人消費の伸び、あるいは輸出の増大、こういうようなことで、財政の面では非常に積極性の強いものになっておるわけであります。積極財政一般会計も非常に多いし、また特に財政投融資に至っては、昨年を二千四十五億も上回る二二・五%もふやしている。こういうようなことになりますと、特に財政投融資の問題、それからもちろん一般会計停滞ぎみ景気動向というようなものからして、税金の取り過ぎという問題もありましょうし、財政投融資の面で、公募債等の四百億の増加というようなことなどが、かなりにこの民間資金需要というものを財政の面から圧迫する要素があるのじゃないか、こういうようなことを私ども懸念するわけでありますが、財政金融の面からの景気浮揚策というようなものが金融正常化という問題とはたして両立するかどうか、こういうような問題点について見解を承りたい。
  6. 田中角榮

    田中国務大臣 戦前は御承知通り政府が非常に強力な権限を持って、法律機構に基づいて民間資金まで調整をしたいということで、ある面においては理論的に非常に調整がうまくいったと同時に、政府の一方的な干渉によって、民間資金等に対して必要以上に拘束をし、反発を招いたわけであります。ところがその反動ともいうべく、戦後は日銀法初め金融諸立法によりまして、民間資金に対してはもう政府は関与してはならないということで、金融自主性中立性というものは非常に強くうたわれたわけであります。でありますから、昭和二十七、八年までは大したことはなかったのですが、三十年度を過ぎましてから、自由化もそう遠いことではないということで、本能的に設備拡張をやらなければならないというような気持がありましたときに、財政投融資民間資金というものが理論の上、理屈の上では相互調整を行なっておりますと言いますが、過去のいろいろな問題もありましたので、私は、実際的にはばらばらに行なわれた、こういうふうに考えるわけです。でありますから、日銀フォンドが高くなったり、また六千億にも七千億にもコール依存度が高くなったり、いろいろな金融上の諸現象が現われたわけでありますが、去年の半ば以後から財政金融というものは比較的に一体に運営されておるということは、これは認めていただけると思うのです。なぜかというと、私たち大蔵省自身施策がいいとかいうこと七はなく、これは国際収支改善という戦後三回目の重大な事態にぶつかりまして、日本人自体お互いに目ざめたということだと思うのです。だから一般会計財政投融資民間資金も、お互いが円滑な運営をしなければいかぬ。金融正常化というものに対してお互いが共同して考えていかなければならぬという気持前提になって、この半年間比較的平穏な金融情勢が続いているというふうに考えるわけです。でありますから、三十八年度の財政投融資計画をやりますときも、二二・五%も大幅に組んだというけれども、三兆六千億に及ぶ前年度の設備投資というものが、民間で一体維持できるだろうかという問題もありますし、そういう意味で、民間投資が千億ぐらい減る場合に、それをカバーするためには財政支出を弾力的に行なおうという考え方も加味しながら、財政投融資においては弾力的運用ができるという考えのもとに立って、必要な設備投資の面に対する、幾分刺激的な役割も果たし得るだろうということを考えて、三十八年度の財政投融資計画を定めたわけでございます。でありますから、三十八年度は今までのように財政が刺激するようなこともないと思いますし、また一面においては、これだけの膨大なものを組んだのだから、相当刺激して過熱状態になるのではないかという議論と、もう一つは、これだけやってもなお秋を待たずして上昇なんていうけれども、そんな浮揚力にならぬと、確かにそういう面がたくさんあると思いますので、この三者が合理的な運営をはかっていけば、自由化に対応しながらも合理的な金融政策が立て得るだろう、また立てていかなければならぬ、こういうことを考えているわけであります。でありますから、うちのことを申し上げるのはあれですが、大蔵省でも今までは主計局主計局銀行銀行理財理財だったものが、もう主計理財銀行、為替、関税まで一緒でもって省議をやろう、一緒でもって金融政策考えよう、こういうふうに非常に大蔵省自体も慎重に万全の態勢をとっておるということでありますので、あなたが今言われた通り大へんな事態に処しての金融政策に対しては遺憾なきを期して参りたい、こう考えております。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私の質問の趣旨は、財政投融資面で二千四十五億も相当無理な財源調達資金調達をやっておるのではないか。簡保資金にしても郵便貯金にしても、これはみな大衆の零細なものだ、こういうものを非常に大幅に見込んで、その上に公募債というものを見込んで二千四十五億からの増加財源を得たわけであります。そういうようなことが、たとえば貯蓄の問題にも響いてくる。貯蓄増強ということを盛んに言うわけでありますが、そういうこともこの面から圧迫をしてくるじゃないか、それからその上に今度は公募債というようなものを民間における財政投融資の中に吸い上げることによって民間資金需給というものを、やはり民間の手を通ずる資金需要というものを圧迫する要因にはならないのか、それにならないとするならば、どういう根拠、つじつまをどう合わせているかということを端的にお答え願いたい。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 三十八年度の財政投融資原資をどうも過大に見積っているために民間資金圧迫にならないか、これはならないように十分配慮をいたしておるわけであります。郵便貯金問題一つでありますが、郵便貯金三十二年ごろに千百五十億、実績千二百億ぐらいのものが、今年度の予算は千五百五十億でありますが、これは千九百億まで上げているということでございます。これは私も郵政省に一年ばかりおりましたし、郵政省の部内のことも十分承知をいたしておりますが、事務当局及び出先の一線におる諸君の立場から考えても、二千億の台に乗せるということは一応無理だと考えても、千九百億というのは自然です。今までの情勢考えて、千九百億の原資調達には事を欠かないという、多少余裕を見ながら——事務当局がおりますが、余裕ないと言われるかもしれませんが、一応話し合いでは千九百億は無理をしないでやれるだろう。そのかわりに、いろいろな一般会計その他、郵便貯金の獲得に対しては、めんどうを見ようということで千九百億をきめたわけです。簡保に対しては、御承知のように集中満期がありまして、これから両三年間におきまして相当大幅な満期があるわけであります。だから、このうちどのくらい回収できるだろうということで、これら集中満期の問題を十分加味しながら計上をしたわけでありまして、多少の余裕を見込んでおるという状態だと思います。問題は千八百八十二億でございますが、この中でもって一体前年度四百億プラスをしておる民間債の問題であります。これは資金審議会に私も出まして、金融関係者が皆集まられまして、この程度であるならば私の方でもお引き受けをしましょうということを前提にしまして、償還の可能な範囲内、しかもそれは民間資金に影響しないようにということで十分の配慮をして計上をいたしたわけでありまして、これが民間資金の預貯金が去年度から非常にふえておりますし、また特に税制改正においての減税措置も行なっておりますので、ふえるものと資金需要の面のバランスを考えてみても、この四百億は、民間資金増加分に対して、非常に無理だというようなことでは困るので、できるだけ低く押えて、去年度の状態よりも多少楽日に押えておきたいという配慮をいたしたわけであります。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういう配慮をさらに強化していただくようにしたいと思うわけです。  さらに、金融情勢が非正常だと言われておる。大体現象的にはオーバー・ローンの問題、あるいは含み貸しというような異常な問題、あるいは長短金利がさか立ちしておるというような問題、あるいは金利の機能が非常に硬直しておって発揮できないというような問題とか、金融機関業務運営の問題、預貸率の問題、あるいはまた最近における企業間信用という問題が非常に巨額に上って、少なくとも十兆をこしているというような非正常な状態、あるいは公社債市場が非常に停滞をたどっておるというような問題とか、こういうようないろいろな形の非正常問題が今日重なっておるということを非正常と呼んでおるのだろうと思うのでありますが、正常化するために、そうして正常化の中から低金利というものが自然に生まれてくるような環境をつくる、そういう政策を進めようというわけでありますが、こういうふうにたくさんの問題点をかかえて、一体どれから正常化に手をつけていくのか、これはあとさき問題等がいろいろあるだろうと思うのですが、これについての大蔵大臣見解をお示しいただきたい。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 まず第一番目には、政府自身、みずからの歳出というものに対して非常に姿勢を正したり、慎重な配慮をしなければいかぬということで、季節的に、今、四月から三月の年度でありますので、公共投資等は十月以後になってから大幅に流れ出るというような問題もありますが、これを十二カ月に割りながら政府投資というものの合理化をはかっていかなければならぬという考え方一つあります。これは直ちに政府の責任でやらなければならぬ問題でございます。  それから第二の問題としては、昨年十月、十一月の二回において日銀公定歩合の二厘引き下げということを行なっておるわけであります。第三の問題としては、十一月から買いオペレーション制度という画期的な制度をとっておるわけであります。こういう問題で、第一の問題においては政府資金財政投融資民間資金の総合的な調和ある運営ということになりますし、公定歩合引き下げによって、先ほども申し上げた低金利というような方向金融の、正常化という方向に一歩進めたわけでございますし、第三の状態においては、銀行が過度な日銀依存というようなことでありましたから、この面に対しては適切に買いオペレーションによって資金供給弾力性を持たせようということでございます。こういうことをやっておりますのと、民間資金需要が沈静化されたということ、正常にだんだんとなってきた。民間でも抱いておった不用の土地の売り払いをやったり、含み的な先行き投資的なものに対しての整理をやったり、合理化を進めておりますので、資金需要には筋が通ってきたということで正常な状態になりつつあります。一時六千億、七千億といったコール市場でできておったものもだんだんと正常化しつつあるということで、コール・レートも下がっておるのであります。これをもってすぐというわけにはいきませんが、これで明らかにいたしたいのは、地方銀行としましては、市中十二行が中心であり、また六十四行の地方銀行中心であったものが、信用金庫が一兆何千億になり、相互銀行が一兆五千億をこすとか、それから県信連中心とした農協の預金が二兆円に近くなるとか、非常に大きな資金量をかかえるようになりましたので、御承知通り政府とこれらの金融機関との間にいろいろな施策を行ない、また協力を求めると同時に、買いオペに対しては日銀は当然これらの機関対象にしてもやるし、同時に日銀窓口開設をいたしまして、これらの機関に対しても地方銀行に対すると同じような体制で必要なときは資金供給を行なう。中央銀行としては全金融機関に対してほんとう中央銀行という名の通り行なえるような組織体制が、この半年間において相当強く前進的に推進されておるわけでありますので、そういう意味においては金融正常化は、今言われたようないろいろな問題に対しても相当解決方向に進んでおる、このように考えておるわけであります。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 コールは非正常化の代表のようになっておったのですが、最近では非常に下がって正常に近づきつつあるということは、これはけっこうなことです。特に日銀買いオペの問題が、新しい通貨供給の方式だというような観点からもとられるような改正をやった。これは好感の持てる池田総理の金つくり政策一つの大きな問題点だろう、あるいはこれは田中大蔵大臣の腕の見せどころであったかもしれませんけれども、この中でわれわれの側から問題点を出してみると、対象物件を非常に広げられた。しかしながら、その中で中小企業金融、あるいは農林漁業金融公庫、あるいは商工中金等債券、こういうものにやらない方針だというようなことが新聞に報ぜられておるわけです。こういうようなものは一応対象にはしておるけれども、方針としてはやらないのだという、しかも今商工中金割引債などが、あるいは利付債等が売れなくて困っているというようなことで、中小企業金融で歩積み、両建というような問題が云々されるわけでありますが、そういうようなものをどうして対象外に置くのか、こういう問題についてせっかくこういうワクを広げて買いオペをやろうと言いながら、商工中金などで一番債券が売れなくて困っているようなものを、これを対象に一応はしているけれども、やらない方針だということが新聞に報ぜられているのでありますけれども、この点についてはどういうわけですか。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 日銀買いオペレーション対象としては、金融債から電力債までやるということになっておりますので、当然行なう対象にいたしておるわけであります。この日銀が今すぐやらないということになるのは、どういうことかというと、日銀買いオペレーション制度というのは、それは初めてのものであります。これは政府余裕金の活用というようなことで、先ほど予算委員会でも問題がございましたが、財政資金によるいろいろなことは金融二元化にもなるということであるし、必要でもあるし、同時にまたいろいろな議論を呼ぶので、これらを一つにまとめたというのが日銀窓口を通ずる買いオペレーション、これは一つの新しいアイディアとして踏み切ったわけでありますが、これをほんとうに大きく、これは現在千億とか千五百億とか、一——三月に行なわれる千五百億、一カ月五百億ずつということですが、この制度ほんとう相当活用せられるということになれば、大幅に弾力的に行なわれることになるわけでございますが、今の状態においては民間、いわゆる市中金融機関との間にコールにたよっておるものを何とかしなければならぬとか、日銀依存度が非常に高いとか、そういう金融正常化のまず第一歩のためにやっておりますので、商工中金債政府関係機関のものに対しては、多少第二義的に考えておるかもわかりません。これは事務当局として答弁すれば、いやそういうことではなくていつでもやると言うと思いますが、私は政府関係機関協調融資をやったり、また民間金融機関と非常に貸出先に対して緊密な連絡がなければならないものでありますから、政府関係機関というものは市中金融機関末端機関にも商工中金債やそういうものを消化をしてもらう。またそのかわりにお互いが共同して民間に対する資金供給を行なうというような因果関係がありますので、そういう意味日銀が、あなたが今お説の通りやらないというのではなくて、やれる体制ではありながら、実際には第二義的に考えておるではないかということがありとすれば、私が今申し上げたような状態で考慮しておるだろうというふうに考えられます。事務当局からも答えさせます。
  13. 大月高

    大月政府委員 ただいまお尋ねのございました買いオペ対象でございますが、当初政府保証債だけでありましたのを、この二月二日に実行いたしました分から金融債及び電力債を加えたわけでございます。そういう意味金融債の中には、興銀債長銀債、そのほかに商工債券農林債券もあるわけでございます。ただ、オペ対象といたしまして、一年以内に発行されたものは対象にしないという原則をとっております。これは一部心配されておりますように、このオペ公債発行の手段にするのではないかというような御批判もございますので、そういう意味ではなくして、金融調節上やるのだという意味において、一年以内に発行されたものはやらない、こういうことでございます、そういう意味で、たとえば割引商工債券というような一年もの、あるいは興長銀債でも割引債券はこの中に入らないわけでございます。そういう意味で、長いものだけが対象になっておりますけれども、建前として電力債金融債政府保証債ということになっております。  なお、全体の割り振りとしましては、公債発行論というようなものに結びついたのではないかという誤解を起こさないために、今回やっております割り振りにつきましては、むしろ金融債電力債を重点的にやりまして、五百億のうちで十七億だけが政府保証債になっておる、こういうことであります。
  14. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 ただいま銀行局長から答弁がありましたけれども、こういうような商工中金等で困っておる現状に対して、それを買わない、第二義的に考えるというようなところから、やはりこの新しい買いオペ方式というものが、一種の株価対策であったり、あるいは公債発行に肩がわりするものだというような印象を与えておるわけでありまして、そういう点については、一つ十分考慮をしていただかなければならないと思いますが、これからもこういう買いオペというものをさらに拡大といいますか、発展をさせて、商工手形というようなものあるいは有力株式を見返りにというようなそういう方向までいく段階として今回のものをやられたのか、あるいはさらに進んで公開市場操作、オープン・マーケット・オペレーションというようなものを望んでおられるのかどうか、いわゆる金利機能の最大限の発揮というような方向を、どういうめどで持たれておるのか、それからこの買いオペ方式の関連について一つ伺いたい。
  15. 田中角榮

    田中国務大臣 一番初め考えるのは、やはり日銀依存という問題を解決したいということ、もう一つは、コール等に非常に大きく依存しておるものを是正していきたい、金融正常化ということで、これが手段としてとられたわけであります。先ほど申し落としましたが、今までコールに流しておった資金源というようなものにつきましても、先ほど大蔵省との間に非常に前向きの話し合いをして、これが政府保証債や公社債に対しての三%限度で持っておったものを七%に上げ、やがて一〇%まで上げましょう、私どもも銀行と同じような体制政府一つ協力しましょう、今までのようにコールに流すというような安易なものの考え方でなくて、正帯な金融機関として発展しましょう、こういうことを言っておられるわけであります。同時に、これらの機関が公社債等を保有をして、資金が必要な場合に、これに対して全然資金源が確保されないというのでは困ります。日銀は当然これらのものを対象にしなければならないし、また、窓口開設を行なうべしということで、相関関係で買いオペレーション制度を進めたわけであります。現在の段階においては今やっておるものを対象にしまして、徐々に金融正常化に資していくということでありますが、日銀総裁は十二月ころでしたか十一月でしたか、手形をオペレーション対象にするというようなことを私は直接会って聞いたわけではありませんが、新聞紙上でそういうことを報道せられております。この制度をつくった以上はそういうところまで当然議論が及ぶ、また事実検討しなければならないことは言うを待たないわけでありまして、日銀の山際総裁がそこまで検討をしておられるということは首肯できるわけでございますが、金融市場というものに対して、これがこれだけによって公社債市場にするのかという問題にもなりますし、大蔵省との間にもこういう新しいケースの問題に対しては、慎重に、また積極的な意見交換をすべきであるし、また民間金融のエキスパートの意見も十分にしんしゃくしなければならないというので、現在日銀にもしそのような意向ありとすれば、私の方でも積極的にこれが一体どう影響を及ぼすのか、将来どれだけの規模になり、公社債市場または株式市場に対してどのような影響を与えるものか、理論的に、またどういう構成になるものかということについて検討を進めて参りたい、こう考えておるわけであります。
  16. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 金融正常化の問題の中で、臨時金利調整法を撤廃すべきじゃないか、あるいは緩和すべきじゃないかというようなことが金融機関筋の強い要請になっているようでありますが、これを大蔵大臣としては、大蔵大臣の発議がなければ金利操作ができないという硬直した状態を、そういう形でやる気があるのかないのか、もしやるとするならば、その時期は一体いつごろに設定をされるのか、この点について伺いたい。
  17. 田中角榮

    田中国務大臣 臨時金利調整法の問題に対しての言及でありますが、資金調整法というものは戦後廃止されております。イギリスやその他の先進国ではこれをちゃんと持っておって、必要なときにはこれをたなからおろしてきて発動する、要らないときにはこれをたな上げしておく、こういうことになるわけですが、日本は戦前の大蔵大臣権限というものに対して非常に批判がありますので、せっかくここまで金融中立性というものが確立せられてきたときに、資金調整法などというものをつくらなければならぬという考えは、これはもう時代逆行である。しかし、また一部で、国際収支が三回目の逆調を招いたときには、こういうものが必要じゃないかというふうに真剣に議論されたわけでありますが、御承知通り、一年間お互いに努力した結果、資金調整法が必要なく、今日までの体制を築いたわけであります。臨時金利調整法に対して、これはすべて自由化になるんだからはずしてしまって、民間の自主的なものにゆだねた方がいい。これは、理論的にもよくわかります。私も自由主義者ですからそれもよくわかるのですが、しかし何もかにも自由なときでありますから、現在臨時金利調整法によって大蔵大臣が指揮権を発動したなどという例はないのであります。これはあってもなくても実に円満に運営されておるのでありますし、これからの事態に処して三者、四者でもってお互いに何でもしゃべり合おう、お互いに英知を傾けていこうじゃないかというような体制のときでありますから、議論としてはあるかもわかりませんが、これが障害になっておるわけじゃありませんし、特にその辺はいいつもりでありますので、これを今やめるとかやめないとかということは寝た子を起こすような議論であって、こんなことよりも、現実的な問題を前向きで処理していく方に重点を置いておるのでありまして、現在私の考えではこれを廃止をするというような考えはありません。ただ一、二月前に新聞で、日銀方面の意見及び市中金融機関の総会かなんかでもって、金利調整法をやめるべきであるというような意見のあったこともわかります。わかりますが、無用なものではないし、今これをやめる必要はないんじゃないか、私は政治的な立場でそう考えております。事務当局が何らかこれに対して意見があれば、答弁をさせることにします。
  18. 大月高

    大月政府委員 現在の金利調整法についてのお話だと思いますが、金利調整法によりまして、預金金利については法的に規制はされておりますが、これは過当競争を避けるためにどうしても必要かと思います。  それから貸し出し金利につきましては、最高限度はきまっておりますけれども、これはその最高限度の中におきまして協会の申し合わせで動いておるという実態でございます。今後これを自主的な協定にゆだねるかどうかというような問題はあるわけでございますが、御存じのように、現在独禁法の関係もございます。それから貸し出し金利については、現在の法定規制の中で、事実上動かしておるということもございますので、さしあたり支障はない。  それから発議権の問題でございますが、これは金利調整審議会がございまして、そこで日本銀行大蔵省、それから金融機関、消費者代表、労働者代表、みんなお集まり願って審議しております。そして金利調整審議会を開きまして結論を出す前には、関係方面の意見が一致しなければ、実際上動かないわけでございますので、発議権がどこにあるかという問題は、実際問題としては大して支障がないであろう、もう少しこの問題は十分検討して考える問題だと考えております。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その問題とも関連をするわけでありますが、金融正常化の一環として銀行業務運営に対する大蔵省の態度というものは、銀行管理行政という形で経常収支率、あるいは有価証券、現金、流動資産の保有限度、限度といいますか、これ以上持ちなさいといろ指導、あるいは店舗行政であるとか、増資、配当の規制、調整、役職員の給与に至るまで調整をする権限を持っているわけでありますが、これらの問題をどの程度緩和していく気持があるのかという問題、特に職員の給与に対する非常にきびしい大蔵省の指導というものは、これは銀行などそれぞれ金融機関には労働組合があり、団体交渉によって賃金がきまる。これを大蔵省の指導方針で自由に押えたりしていくというような問題等についてどう考えるか、その点について。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵省銀行に対していろいろな規制を行なっているということに対しての苦情も承知いたしております。また国民の側から見ての意見も聞いております。しかし御承知通り銀行は私企業であるとはいいながら、非常に公的な性格を強く持った機関でありますし、国民の生命にかわるべき財産を預かり、これを国民のために運用しているのでありますから、法律に基づいておのずから制約があることはやむを得ないことだと思うのです。でありますが、大蔵省の監査とか指導とかいうものが必要以上にだんだん重箱のすみをほじくるようなことによって銀行のコスト高になり、銀行金融機関がそういうことによって自由濶達な施策が行なえないんだということであっては大へんでありますので、私は就任後銀行の自主的な運営に対してはおまかせなさいということで、大蔵省銀行行政というもののより高くあるべきことに対してもたびたび私の意見を言って、周知徹底をはかっておるわけであります。その一つとしては、銀行の店舗行政等につきましても、少なくとも一年間くらいはまとめて自主的な状態において支店網の整備をしていけるようにということを現在考究中でございます。またこれは三年でも五年でも全部野放しにしてしまえばいいじゃないかという極端な議論もありますが、銀行はみな不動産会社を持っておりまして、いいところはみな買っておって、どうにもならぬというようなこともありますし、またこれを一行ずつしぼっていきますと、まあ大蔵省があの銀行のあの支店をきめたんだから、大体銀行というのはこの角くらいしか目をつけないだろうから、がんばっておれば高くなるというので、一行が支店をつくったら三倍も値上がりになってしまう。この調整をどうするか。私もしろうとでございますが、半年くらい事務当局に訓練をされて実情をこまかく見ると、なかなかむずかしいところがたくさんあります。でありますから銀行行政でやっているものはそれでよろしい。しかし批判のあるものに対しては、十分謙虚な立場で窓口を広げるなら広げるように、濶達に金融活動ができるようにということでやっておりますので、今言われたように大蔵省の監査がきびし過ぎるというようなことはないと思います。また私がここでこういう答弁をすれば末端まで響きますから、何かその問題があれば、あしたから正すだろうということで、できるだけ自主的な問題にまかしていきたい。  給与の問題に対てしは、これは自主的に今きめております。が、実際は給与も押えているのじゃないか、そういうことになると思いますが、これは私たちもいろいろ考えるとむずかしい問題でありますが、銀行の給与は世間一般から見て安いかというと、まあ高いというような気持でもって今まで見られておったようですが、中を見てみると、必ずしも高いということでもない。表向きよりも倍も執務をしなければならぬし、金曜日、土曜日は銀行は三時に終わると思ったら、帰るのは十時、十一時半くらいだというような状態もありますので、これらの問題はやはり事実に徴して、資金の扱い量も非常に大きくなっておりますから、そういう問題は、大蔵省も無用な制限をいたすつもりはございません。もちろん銀行の自主的な運営に持つわけでありますが、やはり先ほど申し上げたように、公的機関としての良識の範囲内、際限内で行動してもらいたいというような方針をとっておるわけであります。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 次に、問題を移しますが、国際水準に金利さや寄せしていくという、そういう方向というものは、諸般の情勢から迫られていることは了解できるし、またその方向というものは正しいわけでありますし、また大衆も望んでおるところですけれども、一体、現在アメリカやドイツの公定歩合は三%、フランスが三・五%、イギリスが四%、こういうようなものに対して、日本公定歩合は一銭八厘に戻ったといっても六分五厘からになっている。こういうような開きというものを一体いつごろまでに大蔵大臣としては一もちろんこれは実勢金利等が最も大事なのでありますけれども、こういうものを諸外国、西欧先進国といいますか、そういうところにさや寄せが、一体いつごろにできるのか、いつごろを目ざしているのか、こういう見通しはどこらに置いて、低金利政策金融正常化というものを進めていくのか、そういう点はいかがですか。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 非常にむずかしい、また重大な御発言であります。これは私の発言いかんによって国内に及ぼす影響もあるし、国外から、日本金利がいいから一つ財産を投資しようと思ったら、大蔵大臣あんなことを言うからやめようとか、なかなか大へんな問題でありまして、私も非常に慎重に検討いたしておるわけでありますが、確かに高いことは事実でございます。だから、これをいつどういうふうにして下げようということになるよりも、先ほどから申し上げておりますように、金融正常化を行なっていく。今地方銀行の間でも、小さい銀行もございますし、私たちが、銀行も合併をしなければならぬとか、銀行もどうなければならぬとかいうことを言うよりも、これは日本自由化に対応して国内的な体制整備ということが各所に行なわれておりますから、金融機関も、この例外ではないのであって、非常に前向きで、私はここで個々のことを申し上げられませんが、積極的に金融正常化をやろうということを金融機関にも考えております。大蔵省環境をつくりながら国際金利さや寄せをしていこうというのだから、少しぐらいほうっておいてもなるなというような甘い考えは持っておりません。これは非常に積極的に考えておるようであります。特に、公定歩合をすぐ引き下げればいいじゃないかという問題もありますが、これは国際収支上の問題、きのうからのIMFの判定に対する国内体制整備という問題もありますので、ここらとのかね合いも非常にむずかしいところでありますし、もう一つは、これを下げることによって、長期金利が下がるのか、また短期金利はどうなるのかという問題も十分検討しなければなりませんし、もう一つその前に、先ほどから言われておる歩積み、両建の問題も、預金者の意思に反して——預金者というよりも、両建の問題は、これは財産がありますから、財産はそのままにしておいて、見返りで貸して下さいということに対しては、それほど問題はないと思うのですが、中小企業等に対して百万円貸してずっと累算をしていくと、手取り五十万だとか六十万だとかというような議論がございますが、これは貸し出しを受ける人の意思に反して歩積みが強要されておるということでありますが、このようなものに対しては強い勧告を行なっているわけです。これは行政的に強い指導をやっておるのですが、こういうものをやることによって実質的な金利が下がるということが問題だと思うのです。もう一つは、金利は正常な金利ですが、手形を短かくしておどっている。一年間で、一カ月ずつやりますと、十二回おどって十二日ただ利息が入る。これをもっと激しくすれば、十日間、十日間といえば大へんなものになるわけですが、実際はそういうやり方に対して比較的批判はなくて今日まできておりますが、こういうことに対しては、やはりまじめにものを考えて、金利低下という問題、実質的金利を下げるというならば、まじめに対処していかなければならない。もう一つは調査費の名目とか、実質的に計算すると三銭五厘が四銭になってしまうということでは大へんですし、またそういう事態があります。こういうものを実質的にどういうふうに整理をしていくのか、こういうところから大蔵省相当目を光らせる必要があるし、ここにこそ銀行行政また金融行政というものがあるのですから、そういう問題を広範に一つずつとらえまして、大蔵省が注意をすることがあれば注意をいたしますし、実質金利の低下ということをはかって参っておるわけでありまして、何年ごろというよりも、少なくともあと一厘の公定歩合をいつ下げるのか、三月末か、こういうお話になるわけですが、そういう問題は、今私が広範に申し上げたことで、準備体制をとりながら自然に下がるときには日銀が下げるのだということで、今日一月、二月の間に公定歩合引き下げるというような状態にはないだろうというふうに考えております。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 なかなか答えにくい、また非常に影響の大きい問題だとは思います。ただしかし、めどなしにやっていることではないだろうと思うし、特にIMF八条国の完全な移行が大体三十九年の八月ごろに予定されているということであります。その前にそういう態勢を整えるつもりなのか、あるいはそのあとまでかかって相当長期のかまえでやろうと言われるのか、そこらあたりのところはどうですか。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 これはきのう、IMFの理事会の判定を受けます、こう言ったのでありますから、受けるならば具体的なものを示せ、こうくるのがあたりまえでありまして、きのうから私も非常に慎重にものを考えておるわけでありまして、金融正常化金利の低下というものの中に、先ほど申し上げませんでしたが、良質長期安定的な外資がどのように入ってくるかという問題も、一つの大きなファクターになるわけであります。これらの問題に対しても、基礎的に今各省でも話し合いをし、ガットの理事会が十八日に行なわれるわけでありますし、大使もこちらに来ておりますので、政府部内としても一つ積極的な検討を始めようということを考えておるわけであります。いつまでもいつまでもだらだらとして民間金融界正常化を待っているのだということでは話になりませんが、先ほども言ったように、打てば響くというような状態お互い議論をしよう、お互いに、こういう議論をしていることも、民間における金融機関に及ぼす影響は非常に強く刺激的に動いているわけでありますので、こういう状態の中から、少なくともIMFの理事会の判定を受けたのだ。二月十八日には何らかの意思表示をするのです。少なくとも、来年の九月をめどにして八条国移行というものに対しては、きまりをつけなければいかぬのだ、こういうことを言っておるのでありますから、おのずからその間において、これらの金融の問題に対しても結論を出さなければならないだろう、また一日も一時もゆるがせにしないで、これらに対応する諸施策お互いの努力でとっていかなければいかぬというふうに考えているわけであります。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 金融正常化のもう一つ問題点として、預金を増強しなければならないという強い要請があるだろうと思うのですが、しかし経済学者等の説をかりましても、もう昭和三十六年で個人貯蓄性向が二一・五%からになっている。これはもう世界一高い貯蓄性向である。それからさらに総所得に対する蓄積率が三〇%をこえているというようなことも世界的に最高だ。こういう中でさらに税制面等においても非常な優遇を講じて貯蓄増強をやろうとしている。ということは、一体ほんとうに預金を増強するという立場からそういう税制というものをとるのか、その以外に、やはり大資本家を擁護する、金持ちをより一そう肥え太らせるというような、そういうところにむしろ政策目的があるのじゃないかということになるわけであります。それと個人消費が最近五〇%程度、三十七年は五四%くらいになるかもしれませんけれども、そういうことなんです。しかもことしはそれを一〇%引き上げよう、個人消費を伸ばそうという目標を立てた。そういうように貯蓄をどんどんふやすということと、個人消費を伸ばすということと、これはむしろ理論的には二律背反であります。しかも現にそういうような世界的に高貯蓄率、高資本蓄積率というようなものを持っておる段階で、一体税制面等において貯蓄に対するそれほどの優遇をやることが貯蓄を伸ばすことになるのか、ほかに目的があるのか、この点を伺いたいと思います。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 貯蓄減税を行ないましたが、これは大資本擁護というようなことでは絶対にありません。これは明らかにしておきます。では何かということになるわけでありますが、これは今あなたが申された通り一八%も貯蓄率が上がっておればもう世界最高である。それがだんだん、半年のうちに二〇%になり、二一%になるじゃないか。こういうことを考えると、これはやはり日本人の堅実な将来に対する一つ——食うものを食わない、着るものを着ないというよりも確かに実質賃金の上昇、今使ってしまえばインフレを刺激し、悪循環をただ刺激するだけであるが、少なくともこれからの日本というものは、われわれが貯蓄をしておれば、きょうよりあす、あすよりあさってがよくなるのだという、こういう一つの希望を持ちながら貯蓄をしておる優秀な民族であることは、これは御承知通り。われらもまたその一員である、こういうわけでありますから、やはりそういう国民のほんとうに悲願的なものがあると思うのです。私はやはりそういうものに対して貯蓄減税を行なう。今私たちが一番注意をしなければならぬのは、去年の上期からどんどんふえておる貯蓄が、一体どういうものがふえておるか。これはほとんど零細なものが一番ふえておるのであります。そういう事実を考えますと、これはそのふえておるという事実に目をおおうてはならない。私はそういう意味において、今度の貯蓄減税というものが国民のそのような悲願に対してこたえるものであるということはまじめに前提として考えております。  それからもう一つは、これは次代の国民のためにもよりよい日本をつくろうということから考えて、しかも自由化に対応して社会資本が不足であるという事実を考え、しかもその金融が非常に非正常であるということを考えますと、これは石炭に対しても、造船に対しても、肥料に対しても、それから輸出産業や基幹産業に対しても、水道、道路、港湾その他に対しても資金が必要でありながら、コールによらなければいかぬ、赤字公債も出さなければならぬとか、減税公債を出すべきであるとか、いろいろな議論があるくらいに、社会資本が不足しておるということだけは事実であります。でありますから、これだけ大きな、過熱的だといわれる設備投資が行なわれても、それに対応するだけの公共投資が行なわれておらないということで、ことしは公共投資も相当重点を置いたわけでありますが、これはどろなわ式でそう一ぺんに片づく問題じゃない。だから少なくとも相当金利負担になっておるこれらの施設がフルに稼働するような状態にならなければならないわけでありますが、これは一にかかって資本の蓄積にまたなければならないわけであります。私は、そういう意味で外貨の一億ドル、三百六十億という金を集めるには大へんであります。アメリカの市場において一億二千五百万ドル出るのか出ないのかということで真剣に討議をしなければならない状態でありながら、国民が六カ月間に貯蓄をした実績というものはすばらしいものがあります。だからそういうことがお互いの次代に戻ってくるのだ、こういうことを前提にしての貯蓄でありますので、第一には零細な貯蓄を優遇しなければならないことはもとよりのこと、同時に実質的に日本経済が倍増され、それによって物価も安定し、円通貨の安定にもなり、実質的にわれわれの収入が増大していくのだという考え方からいいますと、これはもう文句なく将来への投資という面から資本蓄積をはかろうという考えでありまして、これが大企業中心であり、かっての財閥をつくる素地ではないかというような考え方は毛頭ないのでありまして、今大企業といっても——ここで一言申し上げますと、昔は財閥が過半数持っておりまして、これを動かしておったが、今は銀行もすべてのものが大衆資本であります。でありますから、大企業というよりも、すべての企業合理化されて、国際競争力に対応していかなければならぬ、こういうような状態です。特に貿易依存度の高い日本の現状を考えると、資本蓄積がいかに現在において大切であるか、政府施策をとったからいろいろな議論もありますが、施策をとらなければなぜとらないというくらいに重大なものだというふうに考え施策を行なっておるわけであります。
  27. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 資本の蓄積不足をだいぶ大臣強調するのですけれども、現実に経済的にながめれば、もうとにかく世界一の高貯蓄率、高蓄積率だということがはっきりしておるわけです。いわゆる社会資本が非常に欠除しておるというようなことは、これは政府政策が誤ったために過剰投資、二重投資というような問題が起きたのだから、政府がその責任を負うべきだと思うのです。それをその点に対する反省というものなしに、資本が足りないのだ、足りないのだ。足りないのならば、どうして昭和四十五年度に達成すべき民間設備投資四兆二千億というようなものを、もう三十六年に達成してしまったか。そうしてしかも今七十何%の操業率だ。ひどいところになると四割も操短しておるというような、こういうばかなことをさせておくからこそ資本が足りないのであって、——そういうことを一方においてやっておるわけです。だからそういうものに対しては、やはり政治家としての反省があってしかるべきだと私は思う。そういうものを社会資本の充足なり何なりに向ける方策というものは、政治の場においてあったはずだと思う。それをやらなかったということに対して十分一つ考えてもらわなければならぬ。この貯蓄増強というものを一体どこまでやらせるのか。そうして個人消費というものを西欧並みに六〇%から七〇%台に持っていくというような目標——貯蓄はなるほどふえておる、しかしそのかわり物価も上がっておる、そういう中で食料費というようなもののウエートが漸減をしておる。そういうようなことは、これは非常に大きな問題だと思う。それで貯蓄増強中央委員会で個人貯蓄の最近の動向という調査をした。それでどういう目的で一体零細な勤労者たちが貯蓄するかというと、まず一番多いのは病気や災害、事故に備える、こういう家庭が七四%を占めておる。子供の教育費、結婚資金、これが六一・四%、将来の生活安定が五八・八%、旅行などの余暇を乗しむなんというのは六%か七%くらいしかない、こういうような数字が発表されておるわけです。それで貯蓄の利子について優遇措置があろうがあるまいが、七四%の家庭というものは病気、災害がこわいのだということで貯金をしておるわけです。そういうような貯金というのは大体において郵便貯金というようなところに行っているわけです。  それで問題を移しますけれども、こういうような個人貯蓄の動向というものを見てみて、今度大蔵省郵政省で折衝して郵貯の利子を法定事項から政令事項に郵貯法を改正して、そういう方向に行こうということが言われておるわけでありますが、一体これについて大蔵大臣はどのように考えられているのか。特にこれを政令事項に持っていこうというのは、一般的な低金利政策一つ方向として、やがて公定歩合を一厘なり二厘なり下げる。そのときの伏線に、大体一厘ならばどうにか預貯金の利子を下げずに行けるだろうけれども、二厘下げというところまで行くと、これはもう預貯金の利子まで下げないと銀行の採算悪化ということになるだろうというような伏線で、それに備えてそういう方向というものを出しているというようなことがわれわれとして当然考えられるところであります。これを法定事項から政令事項に持っていくということは、大衆の貯蓄に対する利子を犠牲にすることによって、これをてこにしながら低金利政策を推進する、公定歩合引き下げをスムーズに持っていくのだ、こういうような関連というものをわれわれは考えざるを得ないわけです。一体郵貯法の改正を目ざしている大蔵大臣の今のほんとう考え方というものはどういうところにあるのか、この点を一つはっきり聞かせていただきたい。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 郵便貯金法の改正につきまして、私が国会で答弁をいたしましたのは、この前の臨時国会の参議院の大蔵委員会で初めてその必要性を申し上げたと思うのです。郵便貯金の利子が法定であるという問題に対しては、これは長いこと衆参両院の逓信委員会等でも議論をせられて参りましたし、またきっと当委員会でも御議論があったと思うのです。私が郵便貯金法の改正をやらなければならないというようなことを申しましたときには、非常にテンポの早い経済状態であり、金融情勢でもありますので、法定というよりも、これを政令に委任をして弾力的運用をはかるということの方が合理的じゃないかという考えで申し上げたわけであります。今日の段階は郵政省との間に意見調整を行なっておる段階でございますが、大衆の零細の預金に対して、これを下げるということを前提にして郵便貯金法の改正をして、政令にゆだねようという考えではございません。これははっきり申し上げます。これは少なくとも弾力的に運用しよう、上げなければならない場合はもちろん上げなければいけませんし、また下げなければならぬ場合もあり得るでありましょう。そういう上げ下げに対して弾力的な運用というものをやるために政令委任事項にした方がいいのじゃないかというような考えでありまして、これは低金利政策の一環として当然下げるのだ、今度法改正が行なわれれば直ちに〇・何%か下げるのだ、というような前提に立って郵便貯金法の改正をお願いしようという考えではございません。
  29. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 郵政省が来ていますから郵政省に伺いますが、今日における郵便貯金の利子、各種定期性のものあるいは普通のもの、これを市中銀行と対比させてお答えをいただきたいと思うのです。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 あとからこまかいことはお答えをいたしますが、今まで明治から長い間の慣習として、政府預金でありますので、信用度が高いということで、郵便貯金金利の方が一般市中金利よりも多少低いということであります。これらの問題に対しても長いこと議論をせられたわけでございまして、ちょうど昭和二十一年か二十二年に、今の民間資金に対して政府資金と同じように大蔵大臣調整する権限をなくする場合には、当然政府資金運用部資金として一般会計の歳出と同じような立場で使わなければならぬ問題だから、政府資金を集めるためには民間資金と競合して一向差しつかえない、場合によっては、政府資金を集めるためにはより高い金利でもいいじゃないかという議論もありましたし、これに対して、これは全く民間金融機関に対する侵害であるということで議論相分かれておったことでありますが、いずれにしても現在の状態では、政府の信用度が高いということで多少金利が低い。どの程度低いかは今事務当局から申し上げます。
  31. 金澤平藏

    ○金澤政府委員 通常貯金でございますが、これは出し入れ自由でございます。これが今三分六厘でございます。それから定期貯金、私ども定額貯金と呼んでおりますが、これが六カ月をこえたものが四分二厘、それから一年をこえたものが四分七厘、一年六カ月をこえたものが五分、二年をこえたものが五分五厘、こういうふうになっております。それから私どもの方で一年定期というのをやっておりまして、これは五分でございますが、銀行の方は五分五厘というふうになっております。今通常につきましては三分六厘と申しましたけれども、銀行のを年に直しますと二分一厘九毛、私の方がよろしいわけでございます。
  32. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大衆の預金は、一応先ほど貯蓄増強中央委員会の調査の中で、やはり少しでも利回りの高い方を選んで貯蓄をするというようなことに統計が出ておりますが、これはほとんど個人貯蓄でありますし、大衆に対する調査であります。それはやはり郵便局の場合には近くにどこにでもあるというようなことも手伝っておりますけれども、一般の場合等において、これは全般を通すれば安い利子であっても、やはり銀行に普通預金するよりは使いいいというようなことで、大衆の預金も集まる、便利だということもある、そういうようなものを何も下げていかぬでもいいじゃないか、やはり大衆の預金は大いに保護していこう。しかも、その貯蓄の目的というものは先ほど申し上げたようなところにあるというような場合に、これを機動的に運用したいということを言っておりまするけれども、今もう金融情勢が低金利を目ざす方向にいっておるのでありますから、この金利を高くするというようなことは、まず考えられないことであります。しかも、昭和三十六年の四月でありますか、この前公定歩合を下げるときに、まずまっ先にやった処置は郵便貯金の利子をまず下げるということから始めて非常な失敗をした、郵貯の利子引き下げということを一つのてこにしたような形で、それを大衆に犠牲を負わせたような形で公定歩合引き下げをやって低金利政策をやって、景気をあおり過ぎた、こういうあやまちもあるわけであります。そういうようなことを考えますと、弾力的に郵貯の利子も操作するのだ、上げる場合もあり得るのだ、下げる場合だけじゃないのだといりたって、今の段階でこれを論議する場合においては、これは下げるのだということ以外には方法はないわけであります。そうすると、やはり大衆預金者、零細な低所得階層の細々と貯蓄する者に対する冷酷な仕打というようなものがこの思想に出ているのじゃないか、こういうことはどうしてもぬぐい切れないわけであります。あくまでこの郵貯法の改正をやるつもりですか、そして今国会に提出されるつもりですか、その点を伺いたいと思います。
  33. 田中角榮

    田中国務大臣 まだこの問題に対して大臣間で話をするようなところまでいっておりませんが、事務当局間において郵便貯金法の改正に対して両省の意見を出し合って検討いたしておることは事実でございます。
  34. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 非常に逃げるような簡単な答弁をいただいたわけでありますけれども、これはやはり非常に大きな問題だと思うのです。これはこの調査の中にも一部出ているのです。郵便貯金もやはり大衆に貸付をしてもらいたいというような調査が、この希望事項の中に出ているわけです。そういうようなことをやはり郵政省が反映したのだと思うのですが、この郵便貯金あるいは簡保資金——これは簡保資金にまで今広げるつもりはありませんけれども、郵便貯金に限ってでも大衆に資金を貸し出す。これはある程度消費金融のようなものになろうかと思いますけれども、あるいはそうでないかもしれませんけれども、いずれにしても大衆の資金需要を満たしていくというようなことを要求した。これに対しては財政投融資財源の関係で強力に大蔵省が反対をして、何かさたやみになったようでありますが、やはり大衆の貯蓄する気持というものをより一そう向上させるとするならば、そのくらいの弾力的な政策というものが当然あってしかるべきだと思うのです。この点についての御所見を承りたい。
  35. 田中角榮

    田中国務大臣 郵便局の窓口貸付を行なおうというような考え方は、これは昔からあったのです。私も昭和三十二年から三十三年まで郵政大臣をやりましたときには、そういう意見を強く出したのです。これは私は強く出したのですけれども、また速記録にも載っておりますが、必ずしもこれをやろうと思って出したわけではなかったわけです。これは郵政省に私おりましたときにずっと検討してみたのですが、集めることばかり集めさせまして、実際はその運用に対しては妙味は一つもない。これはなかなかむずかしい。国家の仕事であるからといってしまえばそれまででありますが、これはなかなかむずかしいし、しかも集めるだけで大きくは社会資本としてあなたの学校になり、道路になり、水道になり、住宅になっておるのですよ、こう言っても、貸す人は別な人が貸すのでありますから、集める人は非常につらい。私はその意味でせめて大蔵省に対して予算獲得をするために窓口貸付ということを言えば、これは大蔵省は反対することはわかり切った話であります。これはさなきだに資金需要の一元化ということにも反することでありますから、当然反対だと思いましたが、私はやるぞということを言ったために、窓口整備、当時五十局しか認めておらなかった三等郵便局、いわゆる特定郵便局を二百局に上げます——ことしは三百局にしたわけでありますが、またその手数料やいろいろな問題に対して考えますというようなことで当時妥協したわけであります。今日の段階では、御承知通り自由化を前にしておりますから、だから政府資金、いわゆる資金運用部資金というもの、財政投融資がいかにわれわれの経済、産業に及ぼす影響が大きいかということを考えるとき、とにかく財政投融資がこれだけのウエートを持った場合には、国会の議決案件にしなさい、こういう議論が出てくることは非常に重要であるという立場に立っての議論でありますから、そういう状態から考えると、窓口で貸すということは一つ考え方としては成り立つのでありますが、実際の運用を考えると、郵便貯金制度というものを根本的にこわすようなことになるのではないかという考え方もあるわけであります。私はこれはもう郵政大臣の経験者でもありますから、好意を持ってこの問題に対しては考えておりますし、事実に対して深刻に考えておるのです。これはどういうことかといいますと、郵便貯金というのは非常に数が多いものですから、これは零細ですから、少しでも定期預金にしようということでもって定期預金的なものになっておるのですが、そのために政府は長期の投資資金に使っておる。これをある限度をきめて窓口貸付をやりますときに、これは地方公共団体とか、その他ちょうど農協の員外貸付的なものになって、実際はこれは郵便貯金ですから、何百口というものを、ちょっと預金証書を貸してくれということになって、今もう学校はつぶれたんじゃないか、だからあとからは返すのだからということになると、これは政府資金運用部の資金源というものに対して相当大きな狂いが出るのではないかという事実上の問題があるわけであります。でありますから、私は現在大蔵大臣でありますから、いずれにしてもこれらの問題に対しては自分で検討した問題でありますので、何らか別の処置で郵政当局のお考えをまとめてもらえないかというので、大蔵大臣なるがゆえに全然別の考えを持つという、そういう考えじゃない。これは今資金運用部資金に対するウエートというものを考えると、そう簡単に窓口貸付を行なうことによって、しょっちゅう満期がきている簡保の払い出しに対しても管理をさせる一つの手段にするのだというような観念的な考え方だけではちょっと踏み切れない。だからこれは最後に、じゃ、そういう窓口貸付ができなければ郵便貯金法の改正はできませんよ、という議論委員の中にあります。だからそれがために両省の間の意見調整に努めておるわけでありますが、この問題は長い歴史もありますし、また将来国のほんとうの投資の原資でありますので、私たちは次の時代に批判をせられないような状態で、深刻にこの事態考えて両省の意見調整を行ないたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  36. 金澤平藏

    ○金澤政府委員 今広瀬先生のお言葉の中に、さたやみということをおっしゃいましたけれども、これは新聞の記事があるいはそういうことが出ているかもしれませんが、郵政省といたしましては、この問題についてはさたやみに考えておりません。私たちといたしましては、私たちに最も理解のある大蔵大臣の御発言でございますから、お言葉を返すわけではございません。私たちの立場といたしましては、雨の日も風の日も、非常にまじめになって貯金を集めて、泥んこになって歩いている人間の苦労を少しでも軽くしたいという気持一つ。それからもう一つは、預金者の利益をあくまでも守っていきたいという気持一つ。この考えでございます。
  37. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 お答えをいただいたわけでありますが、全くその通りだと思うのです。それで大蔵大臣金利弾力的運用をはかるために政令事項に移したいということを言われておるわけでありますが、私たちはこれに対してはどうしても賛成できないわけでありまして、これはまたいずれ問題が出たときに論争しなければならない重要な問題点だろうと思いまするけれども、とにかく公定歩合をかりに二厘下るげ時期がいつになろうとも、現状よりも一銭八厘から一銭六厘になる段階、この段階においても、郵便貯金は利子を下げるということはやらない、こういうことを約束できますか。そうすれば非常に安心するのです。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなかむずかしい問題であります。今国際金利さや寄せをしていかなければならぬということは、これは全く民族の運命をかける問題であります。同時に民間金融機関金利も合理的に引き下げていかなければ、もう産業基盤の強化育成はできないわけであります。民間に対して下げなさいというような場合が起き得る場合は、結局政府資金運用部資金原資としておる各種の投資問題は、郵便貯金金利を下げるということよりも、政府が行なっておる投資の金利をどうするか、政府関係機関金利をどうするか、今中小企業三公庫に対しては直ちにそういうことを言われておるわけであります。これは一般の税金、一般会計からの繰り入れを行なえばいいじゃないか、出資をすればいいじゃないか、また減資もやむを得ないという議論もございますが、この調整は事実に対処して慎重に配慮していかなければならないわけであります。私は思想としては、大衆の零細預金を預かって、これが国の根幹をなす社会資本の面に使われておるのでありますから、これに対しては最高の優遇措置を講じなければならぬという基本的な考えに対しては、先ほどから私たちの考えをるる申し上げておる通りでありますが、これは改正しても一下げないのか、民間金利が一銭六厘になった場合にどうなるのか、私は専門家じゃありませんからよくわかりませんが、これは一銭五厘、一銭四厘、一銭三厘になるというようなことを仮定してみた場合、下げないでいいというようなことは言えないわけであります。これは下げないというような、今の金利体系はこうしておくべきである、また民間金利とは使う道が違うのだから下がっていいのだ、より優位に立つべきだという議論になるかもわかりませんし、また金利は下げても別な方法はあるのだというふうになるのか、これらの問題に対しては現在——これが実施に対しては慎重に考慮を払わなければなりません。しかし郵便貯金法の改正は今一生懸命やっておりまして、この貯金法の改正は何とか一つこの国会に出したいという気持政府部内一致した見解でありますので、あなたが今言われたようなことも十分加味しながら両省の円満な意見の妥結をはかろうと考えておるわけであります。
  39. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この問題はいずれまた後の機会に譲りまして、いろいろ金融政策で問題が取り上げられているわけでありますが、その中で中小企業金融の問題が——これはなるほど昨年は比較的買いオペ等の操作を通じて先手々々の手当をしたということで、暮れあたりはそれほど波乱なしに中小企業金融も越年したというようなことが言われておりますけれども、しかし現在やはり中小企業の問題は、ことしの経済見通しの最後のところにも経済の二重構造を打破するのだという方針が非常に強く出されておるのです。そういうような政策の非常に大きなねらいというものと見合りた形で、中小企業金融政策というものが出されていないような感じを私ども強く受けるわけであります。たとえば財投でも、国民金融公庫に三十億、中小公庫に五十億、商工中金三十億という程度の出資増加ということであるし、現在もやはり中小企業が一番困っておる問題は、企業間信用の増大こというとによってそのしわ寄せが中小企業に非常に鋭く及んでいるという実態をまず解きほぐす方法というものが、まだ今の中小企業金融に対する手当としてそこまでいっていないのじゃないかという問題が一つあるわけであります。  それからもう一つ。どうやら中小企業を生かしておく、倒産させないという程度の政策はあるけれども、二重構造を打破するというためにどれだけ中小企業に金を回して大資本にも劣らないような、差の詰まるような設備投資を促進していくか、こういうような前向きの金融政策というものが遺憾ながら今日ないのじゃないか、その証拠には、金融機関別の資金の貸出残高を最近の数字で見ましても、逐次中小企業向けのウエートというものが下がっておる、パーセンテージは少なくとも下がっている。こういうような状況というものは、これはどうしても前向きのしっかりした二重構造を打破していくのだという立場での金融政策というものが欠けておるのじゃないか、こういう点を強く感ずるわけでありまして、中小企業金融政策、前向きの問題を第二番に伺いたいと思います。どういうものを用意しているか。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業三公庫に対する資金ワクを増大したとか、御答弁することはたくさんありますが、しかしそういうおざなりなものよりも、中小企業というものに対してどうするかという基本的な御質問だと思いますから、これは基本態勢をお述べいたしたいと思います。  中小企業というものに対して、日本はほかの国々における中小企業対策と違いまして、中小企業対策イコール産業対策だ、こういうことで、私もこの問題を真剣に考えておりまして、何らか合理的なものをやらなければいかぬ、特に自由化に対応していくためには当然これを考えないとどうにもならないというふうに考えております。皆さんとともに国会が長いことかかって今ようやく中小企業基本法も日の目を見るというところにいきましたし、大企業との支払い関係に対しては支払い遅延防止法……。
  41. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それは有名無実です。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 で、六カ月以上ばということでありますが、これはこの法律で——今有名無実だと言われましたが、これが厳に行なわれるようにならなければだめなのであります。しかしこれを強く主張すればお前さんは下請にはしない、こういうことがあります。この日本の産業構造というものと、人間の考え方自体から是正しなければならない問題でありますので、政府としても、中小企業があまりにも複雑多岐であるがために、これをどういうふうに処置していけばいいのか、ただ山を見て暗然としておるだけではどうにもならないので、これはやはりつくった法律というものが実効を上げるようにしなければならぬ。私たちもそういう意味では非常に熱意を持っておるわけであります。今度は中小企業投資育成会社というものに手をつけたわけでありますが、これをもってしても何ほどの効果が上がるかどうか、なかなかむずかしい問題でありますが、とにかく一つずつ片づけていこうということであります。しかし自由化を前にして一つずつ片づけておっては間に合わぬじゃないか。中小企業というものは、普通の金融ベースからいいますと、結局経営が不安定である、信用度が少ない、同時に担保余力がない。実際、中小企業対策とは何かというと、金融と、資金量が豊富でなければいかぬ。大企業よりも金利が高い、劣る率も何段階か劣るわけです。少なくともある企業は三カ月手当のものが中小企業は一カ月だぞ、こういうことで中小企業が非常に困っておるということは私も事実認めております。なぜそうか、これに対する抜本的対策はないのか、——その六割は中小企業である、こういう問題、また中小企業というものが多様化されておって、しかも日本の中小企業は、西ドイツなどとも比較されますが、これは全然違う。私もこれに取り組んだときがありますが、西ドイツなどは、ナットはナット、ボルトはボルトばかりつくっておるのです。だから、単一工業でありますから、これをぱっと集めれば時計になる、非常に精巧なカメラになる。日本は、中小企業で二人おるところも三十人おるところも三百人おるところもふいごで原料を吹いて、原料からだんだんやって、最後には彫金工がりっぱな彫刻までやる。ゼロから一〇〇%までやるというところに、日本の中小企業の非常にむずかしさが私はあると思うのです。同時にたくましさがあると思うのです。私はそういう意味で中小企業というものを将来どういう方向にだんだん育成強化をしていくか、またそういうことをしなければ、大企業に対して親企業との間にほんとうに合理的な取引関係をつくっていくわけにはいかぬ。それと地域的な問題もあります。東京や大阪の中小企業は何とかしてスクラムを組めるけれども、雪の新潟などは、少なくとも雪の中でもって、注文したものがこないじゃないか、それは大へんなことなんだ。こういうことで、日本全国の特にめんどうを見なければならない中小企業、そういう僻地の人たちのことを考えるときに、これは日本の特殊性というものに対してやはりほんとうに深刻な考え方で、中小企業を短い間にどういうふうに再建していこうかということまで考えないと、ただ現状だけ見て、何とか要るだけ金をやっていくんだということでは、おのずから限度があるという問題で、大蔵省でも中小企業というのはとにかく百億前年度よりはふえましたからこれでいいんです、こんなことでは産業政策になりませんよということで、こちらも相当前向きで考えておりますし、それから運転資金その他に対して、今のところ中小三公庫でやっておりますが、市中金融機関、特に窓口になっておる代理貸しは市中地方銀行というよりも、金利コストの高い信用金庫とか、それから相互銀行が使われておりますから、必然的に金利が高くなってくるわけです。だからそういうものを何とかして財政資金を入れるとか、できる限りの措置をして、中小企業にはやはり絶対必要な金に対しては長期安定的な、しかも適正な金利のものを与えるというようなことをしなければいけない。特に百万円要るものに八十万円だけ渡して、あとの二十万円を市中金利というか、高利に手をそけたために元も子もなくなっている。これは事実たくさんの事例があるわけでありますから、このような問題に対して地方銀行やその他のものに対して、先ほど申し上げた三%しか持たなかった公社債を七%なり一〇%なり、やがて十何%ということになるのでしょうが、そういう場合に政府がこれに対応して、これらの機関から中小企業に貸し出すものをどうカバーしてやれるかという問題を一つ今検討しておりまして、具体的にここで申し上げられないことを遺憾といたしますが、しかしこれはやはり市中金融機関やそういうものを中小企業に向ける場合、政府相当思い切った施策をするということにならなければなかなか解決はしない。同時に無制限に広がっていくものに対して、何年、どの程度でもってめどをつけて構造改善を進めるか。農業の構造改善、中小企業の構造改善はむずかしいです。むずかしいけれども、これをやはり前提にしないとこれらの問題は解決しない。私はもう財政金融というような箱の中におさまった考え方でなく、こういう事実に対して大蔵省がやはり漸進的に片づけていけば一番話が早いから取り組んでごらんなさい、こういうことまで言っておるような状態でございます。
  43. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵大臣の御高説を伺ったわけだけれども、確かにその通りだろうと思うんです。中小企業対策というのは非常にむずかしいし、産業構造全体にこれはつながる問題だ。それから中小企業の体質という新しい発展の方向になかなか順応しないというような面もあろうかと思うのです。しかしながら、ぼつぼつそういうような新しい方向を目ざし、産業構造を改善していこうというような立場に立っての積極的なかまえというものも出ておるわけです。ところがやはり金融の面では、この数字だけ一つはっきり覚えておいてもらいたいのですが、全国銀行で三十二年の三月に六一・八%貸し出しておる、それが今では四七・五%に減っている。これは設備資金それから運転資金の合計です。それから信用金庫の場合、相互銀行の場合は若干ふえております。しかし商工中金、国民公庫、中小公庫、これのウエートというものは、パーセントとしてはほとんど横ばいなんです。何ら今大蔵大臣が言われたような方向というものが一なるほどその通りだけれども、その方向を進めるための金融というものがやはりついてないという現実だけは、一つはっきりしておいていただきたいと思うのです。  それから中小企業金融の問題として相互銀行、信用金庫、これが非常に中小企業金融民間機関として相当大きなウエートを持ってきた。資金量相互銀行では二兆円になろうとしておるし、信用金庫も一兆七千億からの資金量を持つといわれておるようなわけでありますが、一体この信用金庫とかあるいは相互銀行というものを、大蔵省方針として公社債あるいは政府保証債などをこの信用金庫や相互銀行などに相当持たせようというような指導などはやはりなされる、あるいはやがて銀行並みに買いオペ対象機関というようなことにも、もうすでに一部なっておりますけれども、これを相当広げようというようなことも含んで、非常一般銀行中小企業金融機関という特性がそういうような中から失われる可能性というものがないのか。政府保証債なりあるいは公社債などをどんどん持つ、あるいは株を持つというような指導方針が出されておるようでありますけれども、そういうものを持つことによって、その分だけは中小企業に貸し出す部分が減ってくるというような問題、こういうようなことでこの性格を将来どういう方向に持っていくか、あくまで民間中小企業金融機関としての特性をどこまで生かしていくのか、銀行並みに相当大口のところあるいは大企業の方面に資金を供給するような性格を濃くしていくのか、これからのこの二つに対してどういう方針というものを性格づけをしていくのか、この点について……。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどの御質問で中小企業向けの貸し出しが非常に減っておるということでございますが、大体全金融高十六兆三千億円に対して六兆八千五百億でございますので、四一%ないし四二%、大体各金融機関全部を合わせると貸し出しは減っておりません。それから中小金融向けの機関である相互銀行や信用金庫その他に対しまして公社債等を持つということは、今まで非常にコールに流れておったり、そういうものがございますし、資金量が非常に急速に大きくなっておりますので、その意味で三%を七%にしよう、一〇%にしようというような自発的な話でございまして、これは健全化のためにいいことだと考えております。同時に、これが日銀買いオペ対象にするということも当然でありますし、また資金が必要のときには優先して資金のめんどうを見るということも、これは当時の政府余裕金を中小金融資金源のために一時預託をしたと同じ制度でありますから、これは前向きのものである。しかしこれの資金量が非常に多くなるから、銀行に仕立てて大企業向けに融資させるという考えはありません。これは当然歴史の示す通り中小企業金融機関として専門的な機関でありますから、今よりもより合理化することによって、政府日銀やまた他の金融機関がてこ入れをすればいいんだという前向きの姿勢考えておりますが、ここでもって金の集まり方がよ過ぎるからこれを大企業にというような、いわゆる農協の員外貸付的な、そういう考え方は持っておりません。これは健全な中小企業金融機関として、今よりより合理的な機関に仕上げていきたいという考えでございます。
  45. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 最後に伺っておきますが、たとえば信用金庫等の場合に今の範囲と申しますか、行政区画等について信用金庫の具体的な範囲がきまっておるわけでありますが、これを拡大するとかあるいは店舗の増設をかなり積極的に認めていくとかいうような方針、こういうようなものをお持ちですか、そういう方向を目ざしておりますか。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申しましたように銀行の店舗行政等に対しては弾力的な設置ができるようにしたいというとを申し上げましたが、これは市中十二行のように、全国を営業範囲とするものと同じくするということではございませんが、地域金融機関として発達した特性を十分考えながら、しかし、なるがゆえにその府県に局限すべきではない。いろいろな事情がありますので、それらの問題に対してもできる限り拡大方針をとるということで、今立案中でございます。
  47. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間がもうだいぶたちまして、約束の時間がきましたから、大蔵大臣に対する質問で、まだ外貨金融の問題、国際収支問題等、さらに新産業体制といいますか、国際競争力強化法案の構想などについて伺いたかったのでありますが、その点は次の機会に譲りまして、きょうはこれで一応終わっておきます。
  48. 臼井莊一

    臼井委員長 次会は来たる十二日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会