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岡田(利)
委員 私は、ただいま議題になりました
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を
改正する
法律案に対して、日本社会党を代表して反対の討論を行ないたいと思います。
去る四月に開かれました
石炭鉱業審議会において——当初
政府は閉山規模に対する予算要求として、買い上げ四百二十万トンにさらに保安買い上げ三十万トンを要求いたしておったわけです。しかしながら、審議会に
政府原案として
提出されましたのは六百七十一万トンであり、しかもこの六百七十一万トンの閉山規模の審議に際して、九州の地域において百万トン、加えて
北海道地域において十八万トンの閉山規模を縮小して、五百五十三万トンの閉山規模を確定いたしました。しかも、これに見合う再就職
計画が労働省から同様に提案をされておりますけれども、
昭和三十七
年度の三月末で、一万八千四百人の
炭鉱労働者が依然としてその職を得ていないわけです。加えて今年は三万四千二百人の人々が就職するとしても、五万二千八百人の人々が離職をするのでありますから、結局一万八千六百人の人が
昭和三十九年に持ち越される、こういうことになりますと、この再就職
計画というものは、少なくとも
有沢調査団の
答申、あるいはまた
石炭問題が多くの人々の関心を集めてスムーズに雇用を転換する、こういうたてまえからいっても、われわれの期待しておるところと非常に離れているわけです。さらにまた、この閉山規模を確定するにあたって、特に九州における百万トン縮小については、三井の田川並びに山野と想定される二山の
企業のあり方について、付帯して一応
意見書が付されておるわけです。それは当該
会社の再建のために、この二山は第二
会社として存続を認めるべきである、いわゆる
企業形態の変更について鉱業審議会がその
意見を付するということは、あくまでも鉱業審議会の権限以上の問題であり、行き過ぎであると、私は明確に
指摘をしなければならないと思います。このような
企業形態を変更することに介入できる権限が、審議会にあるのだろうか。この審議会にはこういう権限はないわけでありまして、この点明らかに不当であると
考えるわけです。さらにまた、
政府が当初予算を要求しておるにかかわらず、六百七十一万トンという、予算を大幅に上回る閉山規模を原案として出したということは、
政府の合理化
計画のずさんさを明らかに物語っておると私は
考えるわけです。しかも六百七十一万トンというのは、一体どういう根拠に基づいた閉山規模であるか。このことをしさいに検討してまいりますと、これは明らかに、今日の
石炭企業が希望するいわゆる閉山規模が、すなわち六百七十一万トンである。今日の
石炭企業が希望する六百七十一万トンを、そのまま
政府が原案として審議会にかけた。とするならば、一体それらの
石炭鉱業の整備
計画というものが、単なる
企業の意思によって、それを
政府が受け売りをする、こういう形態をたどることは間違いないと
考えるわけです。私どもが承知いたしておるところによりますと、
有沢調査団の
答申に基づくいわゆる閉山規模の毎年次の
計画は、一応その骨格が定められておると
考えるわけです。したがって、
昭和三十八
年度閉山の四百二十万トン及び三十万トンはこの
有沢調査団の
答申に基づいて、しかも四十二
年度までを想定した年次閉山
計画に基づいて、この予算が要求されておると
考えるわけです。ですから今日
政府の
石炭鉱業の整備というものは、
有沢調査団を上回って、当初の
昭和三十八
年度を通り越して、
昭和三十九
年度もしくは
昭和四十
年度の
石炭鉱業の整備を行なっている、そういう整備を促進している、このように私どもは
指摘をしなければならないと思います。
さらにまた、いま議題になりました
法律案の
改正中、特に労働
大臣が再就職
計画を定める点について立法上
改正点として明らかに出されておりますけれども、しかしながら、
石炭鉱業審議会において再就職
計画を確定したのは、現行
合理化法の、いわゆる重要事項については審議の対象になるということで、現行
合理化法を拡大解釈してこの審議会を強行した、ここに問題があると私は思うわけです。もし重要事項がすべて
石炭鉱業審議会で審議ができるとするならば、何もこのように、労働
大臣が再就職
計画を定めて、それを
提出して審議会の審議を得る、こういう必要は全然ない、このように私は
考えるわけです。そういう意味では、この拡大解釈というものは明らかに行き過ぎであり、そういう面から
考えて私どもは、この審議会の最終
結論はとうてい了承できないわけです。このような
本法の
運用については、強く反対せざるを得ません。
特に、具体的な
改正点についての反対点として、まず第一点は、
本法の一部を
改正する
法律案中第五条の二項中、
石炭鉱業合理化整備
計画と再就職
計画との関連において、再就職
計画が実行困難な場合には、
有沢調査団の
答申によれば合理化整備
計画を調整する、このように明らかに本
委員会においても述べられているところであります。しかし
通産大臣の答弁によりますと、あくまでもこれに再就職
計画を変更させて合理化
計画がスムーズに進展できるようにする、したがって、基本になる整備
計画は変える意思はない、これを変えるのは、現行法にもあるように、著しい経済情勢の変動があった場合のみに限るのである、こういう答弁が実はなされておるわけです。このことは明らかに
調査団の
答申の
趣旨と違いますし、有沢団長が本
委員会において私ども
委員に説明した
調査団の構想とは大きく食い違っておる重要な問題点である、このような点について、
調査団の
答申を全然取り入れないで、整備
計画を優先させる、そしてあくまでも再就職
計画は机上プランであってもこれに合わせるように行き方がとられるということになりますので、特にこの点について私どもは強い反対の意思を表明する次第です。
第二の問題は、第五十七条のうちの二でございますが、
請負夫の使用の問題であります。この
請負夫の使用
承認においては、坑内にあっては、一応先ほどの答弁で、
原則として
起業工事のみに限るという
方向が出されております。しかしながら
省令案等を検討してまいりますと、この
運用については
起業工事のみに限定することは非常に困難である、このように私どもは理解せざるを得ないわけです。そういう意味では、
坑内組夫の使用は当該
炭鉱企業における
起業工事のみに限ると明確に法文化すべきである、このように私どもは
考えておる次第です。それと同時に、最近の坑外における
炭鉱の
組夫の使用、いわゆる
請負夫の使用は漸次増大をしてまいりました。
石炭産業は御存じのように、運搬産業である、こういわれております。
石炭を掘りくずして、それが商品となって消費者の手に渡るまで、すべて運搬される、そういう性格を表現いたしておるわけでございますが、今日坑口を出た
石炭を坑外の選炭機に運ぶ、さらにまた坑口から出るボタを坑外の捨て場に搬出をする、あるいはまた、選炭をした結果出る黒いボタは同様にボタ捨て場に運搬をする、これはいずれも
石炭の
販売に至るまでの、運搬工程の一貫した職場であると私どもは
考えるわけです。しかるに今日
石炭合理化をどんどん推し進めている結果、坑外におけるこれらの職場は、ほとんど
組夫に転換されつつあるわけです。白ズリの捨て場、あるいはまた、選炭の結果として出る黒ズリの捨て場への
運搬作業のみならず、その捨てる
作業、これらの
作業が
組夫に転換される、あるいはまた、これに要する炭車の恒常的な修理についても、
組夫がすべて
直轄と切りかえられて充てられておる。極端なのは、
石炭を受炭して選炭機におろす、この受炭場における
作業についても、
組夫が全面的に
直轄に切りかわって
作業している。こういう
傾向が非常に強くなってまいりました。少なくとも
直轄従業員のほうが今日どんどん首を切られるという情勢の中では、
石炭産業の工程におけるすべての
作業は恒常的なものでありますから、当然
請負夫の使用は禁止さるべきである、そういう意味で、特に
炭鉱企業の持つ性格あるいは
作業の
内容等から検討しまして、坑外についても、特定の
作業面についてはあくまでも
組夫の使用は
規制すべきである。残念ながら、
本法における
組夫使用の
制限は坑内に限っておる、このことを非常に遺憾に
考えるわけです。私は
本法改正中、特にこの二点について強く反対の意思を表明するわけです。したがって
政府は、すみやかにこれらの問題について再検討して、むしろこの
法案を撤回されて、いま申し上げました
趣旨に基づいて
本法案をあらためて
提出すべきである、このように
考える次第です。
以上申し上げまして、
本法案に対する反対の意思を表明する次第です。