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1963-06-13 第43回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第24号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十三日(木曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 上林山榮吉君    理事 有田 喜一君 理事 岡本  茂君    理事 神田  博君 理事 岡田 利春君    理事 中村 重光君       有馬 英治君    木村 守江君       藏内 修治君    齋藤 邦吉君       白浜 仁吉君    周東 英雄君       中村 幸八君    井手 以誠君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  中野 正一君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      井上  亮君         参  考  人         (国民経済研究         協会会長)   稻葉 秀三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第九二号)  電力用炭代金精算株式会社法案内閣提出第九  三号)  石炭鉱業経理規制臨時措置法案内閣提出第一  二四号)  重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置  に関する法律の一部を改正する法律案内閣提  出第一五八号)      ————◇—————
  2. 有田委員長代理(有田喜一)

    有田委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案電力用炭代金精算株式会社法案石炭鉱業経理規制臨時措置法案及び重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案議題として審査を進めます。  本日議題となっております四法案審査のため、参考人として稻葉秀三君の御出席をいただいております。  この際、稻葉参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中にもかからず、わざわざ本委員会に御出席をくださいまして、まことにありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。  それでは前会に引き続き、四法案に対する質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 ただいま当委員会で、四法案について審議をいたしておるわけです。今日まで四法案について審議を続けてまいったわけでありますが、その審議過程から特に当委員会でも問題として煮詰めている点について、参考人から御意見を聞きたいと思うわけです。  きのうの委員会で今度、重油ボイラー設置制限等に関する臨時措置に関する法律の一部を改正して延長するということで、当初単純延長をわれわれは期待をしておったわけですが、伝熱面積五十平米を百平米まで上げる、これは特に中小企業対策として万やむを得ないという内容で提案されておるわけです。もちろん燃料費から見て、中小企業の場合、ある一定の限られた業種については、比較的燃料費が高い。たとえば染めもの、あるいはまたかまを使う、そういうある限定された業種については、燃料費はなるほど高いわけです。しかし、それ以外については大体一%ないし二%の燃料費であります。これは大体設置されておるボイラーの数が、五十から百の間で九千近くあるわけです。したがって、これを一ぺんに百平米まで上げることについてはどうか。さらにまた産炭地産炭地以外との地域の問題が実はあるわけです。ですからこれは指定された地域指定された業種、こういう点を政令でむしろ定めて、実情に沿ったほうがいいのではないか、こう主張し、この点は当委員会でも煮詰まっておるわけですが、私は特に燃料費の面から見て、そのことは今日別に中小企業近代化の妨げになるものではない、こういう見解を持っておるわけです。こういう点について御意見が聞かれれば幸いだと思います。
  4. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 お答え申し上げます。実は技術的な点についてまでお答えできるかどうかわかりませんけれども石炭調査団でいろいろ検討をいたしましたときに、やはり重油の進出で石炭需要が低下をする、それを何らかの形において調整しなければならぬ、こういったような問題が起こりましたので、大体答申大綱にも書いてございますように、一つ経済的に重油の使用ができないような形をとる、簡単に申せば、西ドイツでやっておりますように、重油消費税みたいなものをかける、そして自然重油が使われるテンポをだんだんゆるめていく、こういう考え方と、もう一つは、現行の重油ボイラー規制法を延長してやっていく、このどちらかの方策をとれ、こういったようなことを勧告したわけであります。ところがその後の進行経過から見まして、御存じのように、本格的にそのどちらかがとられたということではなくて、両方相並行して進んでいるという形になっております。重油消費税は結局取れないことになったのでありますけれども、原油その他の調整をする、それにかわりまして今度は、石油の標準価格をつくって、その中に重油をはめ込む、こういったような措置をとりました。それによりまして若干防止ができる、このように考えておりますけれども、それと並行いたしまして、現実の情勢は相当重油が使われていく、こういう傾向がございますので、やはり重油ボイラー規制法を延長していただくというやり方がよいのではなかろうか、このように感じております。  そこで、いまの御質問お答えをするということになるわけでございますが、実は昭和四十二年までの需要推算をいたしました場合に、ある程度そういう経済必然性ということを考えまして、原料炭電力用炭以外につきましては需要は低下せざるを得ないだろうという傾向を、私たち年次別推算をいたしております。たとえばボイラー炭幾ら暖厨房用炭幾ら、さらにまた、セメント用炭は減らざるを得ないだろう、その十分な推算とは申しませんけれども、そういったような推算をいたしております。それからさらに、いよいよ三十八年度の需要推算をいたしますときに、実は私石炭鉱業審議会需給部会長になったわけでございますが、さらに石炭調査団で昨年検討いたしました結果と、現実に即応してどの程度推移があるか、こういったようなことを検討いたしました。予想よりも数量が減りそうなのもございますし、また、予想よりも伸びているというものもございます。ですけれども、諸般の事情を考慮いたしますと、石炭サイドから申せば、ボイラー規制法をそのまま延長して、しかもその適用をやや強くしていただくということが望ましいのですけれども、いま御意見が出ましたように、いろいろ産業上の問題もございますし、今後さらに生産コストを低くするといった問題もございますので、延長いたしましても弾力的に配慮するということはせざるを得ないのではなかろうか。そこで片や弾力的な配慮をしながら、片や石炭調査団答申の柱でございます電力用炭鉄鋼用炭につきましては、でき得る限り需要確保をはかっていく、こういう形によりまして、五千五百万トンの需要を確保していく、こういう措置をとらざるを得ないのではなかろうか。その点につきまして弾力的に重油ボイラー規制法を運用していくんだ、こういったような形でやはり延長していただくのが望ましいのではないかと思います。
  5. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 次に石炭鉱業経理規制臨時措置法案が、これも調査団答申に基づいて本委員会に提案されておるわけですが、調査団から当時この構想について私とは特別委員会でつまびらかに御意見を伺って、有沢団長から特に、この石炭鉱業経理規制はある意味においては石炭社会化の面がここには出ておる、こういう説明がなされ、しかも経理規制というものは、国がこれだけ手厚い保護をとる以上、相当シビアに経理規制を行なっていく必要がある、こういう御意見が述べられておるわけです。しかし今度出されてきている法律案は、その調査団のねらいとずいぶんはずれておるのではないか、調査団のねらっておる部面については、これはほとんど骨抜きになっておる、こう私どもは実は理解いたしておるわけです。といいますのは、いわゆる資金借り入れ残高が五億円以上で、十五万トン以上、この規定は問題ないとして、では一体何を規制するのかといいますと、一応事業計画を立て、資金計画を立てる、これを通産省に届出をするんだ、あと利益配分について承認を得るという程度のものであって、別に経理規制というほど大げさな内容ではない、しかも調査団のねらいとするところから見れば大幅にずれている、こう私は判断するわけです。むしろいま実効をあげておりますのは、社会党と自民党の間で確認をしました、残す山についても資金繰りで非常に問題がある、一般金融ベースには乗らぬという場合に、合理化事業団からそういう資金を出すべきではないか、こういう取りきめが行なわれて、これは合理化臨時措置法のほうで修正して追加することに実は決定しておるわけです。ですから、そういう面についてはむしろ実効があがってくる、こう私どもは見るわけです。したがって経理規制する場合には、単に決算における配当等制限だけではなくして、いわゆる社会投資についても、あるいはまたこれに準ずる重要な事項についても、随時これが監査できる、ここまでいかなければ、調査団がねらっている、手厚い保護をしたかわりに、この法律適用を受ける会社経理規制するという趣旨には合致しない、こう思うわけです。これは、ないよりはあったほうがましだという程度法案ではないか。聞くところによると、これは 党のほうでも問題になって、自由経済の原則からいってどうかというような点が議論されたように私どもは聞いておるわけですが、調査団が、あれだけの手厚い保護の代償として、裏打ちとして考えられた石炭鉱業経理規制考え方は一体どこにあったのかという、本法案についての稻葉さんの御意見が聞かれれば幸いだと思います。
  6. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 きょうは前の石炭鉱業調査団団長有沢さんがお見えになりませんので、かわって私参った次第でございますが、御存じのように、石炭調査団答申をまとめます過程において、御存じのように西ドイツは別といたしまして、イギリスやフランスでは石炭鉱業国有化されている。そういったような形にまで日本としても持っていかないと、ほんとうの安定はできないのではないか、こういったようなことがいろいろ論議されたことはございます。その点につきましても、当時国会で有沢さんなり私なりが御答弁を申し上げたことがございます。いろいろ議論はございましたけれども石炭鉱業調査団政府答申をいたしました線は 必ずしも石炭鉱業を公有化しなさい、国有化しなさいということではございません。御存じのように、むしろ現状ベースをもとにして、自立的にでき得る限り石炭業がやっていく、こういうようなことを推進するのが、一番の大きな目的ではなかろうか、こういうようなことを出しているわけであります。しかし自立で石炭産業昭和四十二年を目ざしてやっていくといたしましても、その間、財政資金また国の予算から相当の援助を出していかねばならぬ。したがって石炭産業全体のいわゆる経理につきましては、いままでよりも相当強い規制を加えるべきではなかろうか。したがいまして、この経理規制法律とは直接は関係はございませんが、別途御論議賜わっておりまする石炭鉱業審議会改組拡充の中では、経理部会というものを設けまして、そして大手中小を通じてどれだけの合理化及び整備計画が進展をしていく、それに対して資金需要がどの程度のものになる、その資金需要の中で財政資金からどのようにお手伝いをするか、またそれと並行して、どういったような措置をとっていかねばならないか、こういうようなものを公の場で論議をして、そしてでき得る限り進めていこう、こういうことになっております。ただ御存じのように、石炭会社の中には非常に企業格差がございまして、どうしても相当大きな一般ベースではやりにくい形をとっていかざるを得ない、こういうものもございます。したがいまして、大体基本的な考え方から申しますると、非常に採算が悪くて、そして自立するのに困難だ、こういったような会社につきましては、ある一定限度を出して、そしてもっと詳しい報告をいただく。また、それに対してある程度強い規制を加えていく、こういうことをせざるを得ないのではなかろうか。御質問意味は、今度の経理規制対象になっている会社を限定しないで、もっと幅広くやっていくのが効果的ではなかろうか、こういったようなお考え方によるのではなかろうかと思いまするけれども、当面私たちはこの限度のことでやりまして、そして経理部会のほかに経理審査委員会をつくりましてやってまいれば、相当いままでよりも強い規制ができるし、そして全体のラインに入ってくるのではなかろうか、このように感じております。
  7. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 石炭鉱業審議会経理部会あるいは審査会というものが設けられるわけでありますけれども、その審議会権限といいますか範囲というものは、やはり準拠する法律に限定されてくると思うのです。法律に定めておる以上のことはできないと思うわけです。ですから、この法律の第三条にありますように、利益金の処分については確かに規制されておるわけです。ところが社外投資その他については、全然規制をされていないわけです。そこまで立ち入ってこの経理について規制を加える権限は、審議会にもないわけです。そうしますと、実際問題として審議会は、この法案が通れば、この法案範囲内に限定されるということになるのではないか、こう私は考えておるわけです。もちろん通産大臣勧告やあるいはまた監査、こういう点がありますけれども、この点についてもある一定基準がなければ実際に、第五条で勧告ができる、第六条で監査ができるといっても有名無実になる、こう実はこの法文から私は理解をするわけです。ですから、指定会社であって特に大臣勧告する、あるいは監査をするという場合には、何を基準にして監査するのかという問題が当然出てくるのではないか。御存じのように、いま石炭企業というのは、各社ともずいぶん多角経営的な方向に伸びていっているわけです。それが自分の炭鉱労働者雇用を確保するために新たに企業を起こす、こういう点については考えられるし、あるいは石炭需要を増す努力をする、こういう場合については理解ができるのでありますが、全然そういうものと縁もゆかりもない多角経営方向指定会社が進めていくということになりますと、この経理規制のねらいの大事なところがはずれてくるのではないか。   〔有田委員長代理退席神田委員長代理着席〕 あるいは資金運用についても、ある基本については、大まかなところについては、十分これが規制でき得る権限があるという仕組みにしなければならないのではないか。それがまた調査団答申した石炭企業に対する経理規制内容でもあったのではないか、こう実は考えるわけです。これは参考人の御意見ですから、そういう点についてある程度もう少し、せっかく審議会部会をつくり、審査会もあるのですから、この五条、七条だけにとどまることなく、ある程度基準というものがつくられて、そうしてその実情に即応して、弾力的にこの石炭企業経理について十分把握ができ、サゼスチョンができ、指導ができ、場合によっては勧告規制するというのが望ましいのではないか、こう私は考えるわけです。
  8. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 一応、お答えをいたします前に、次の二つの事実を御報告申し上げたいと思います。昭和三十七年度につきまして石炭調査団で当初推算をいたしましたときには、山元で大手平均百七十円ぐらいの赤字が出るだろう、こういうふうに推算をしたのでございますが、実績は的確にはわかりませんけれども、百七十円ではなくて、大手につきましては四百円ぐらいの赤字になっているのではなかろうか。したがいまして、この大手会社の中でも指定会社からはずれるというものはございましょうけれども相当大部分の会社がこの指定会社対象になるということは、事実だろうと思います。  それからもう一つの実実といたしまして、実は調査団論議過程で、石炭会社多角経営をなさるということはよい、しかしその多角経営方向観光投資といったようなところになっているので、せっかく石炭会社に金をお貸しをしてそれが観光投資になる——それも全然マイナスだとは言えないので、やはりそれによって雇用を創出したりするというような点はあるけれども、生きるか死ぬかで国民協力をしてお助けをしなければならぬという場合において、一体そういうようなことについてはより強い監視、監督の目を光らす必要があるのではなかろうか、こういうような点も委員の間でいろいろ論議を戦わしました。  こういう事実があったのでございますが、いまの岡田委員さんの御質問に対してお答えをいたしますと、この法律が通りますと、指定会社につきましては毎営業年度事業計画資金計画全体についてこれを出していただくということになってまいります。したがいまして、多角投資の全体につきましても、これによりまして通産大臣に届け出が行なわれる以上実態は明らかになる。したがいまして、石炭会社がたとえば輸送会社を兼営されておるとか、あるいはまた今度は、離職者対策を兼ねていろいろな事業をなさるとか、また将来やはり会社が生きていかねばならぬから、観光投資をなさるとか、そういったようなことにつきましても、大体全貌がはっきりするのではなかろうかと思います。ただ、御趣旨のように、まだ経理部会が開かれましたあと審査会が開かれておりません。しかし聞くところによりますと、当面どうしても急を要する二、三の会社につきましては、やはり経理審査会を開いて事情をお聞きして、そうしてどうしても会社合理化努力と相まって、ここで相当改善をしていただかねばならぬというものについては、実態を明らかにして、やはり民間資金財政資金が入って、そして再建が軌道に乗るといったようなこともしていかねばならぬということになっております。確かに私御趣旨はもっともで、基準を設けたり、そしてここで法律に書いてあります以上に勧告をもっとはっきりして、でき得る限り実効ある手段をとるということには、私は全的に賛成でございますけれども、この法律でそれができないということにはならないんじゃないか。また、この法律通過をさしていただければ、そういったようなことで事態が非常に困難視をされておりますので、その線に即応いたしまして、いまの御意図をでき得る限り進めるようにひとつ審議もし、協力もし、また行政的にやっていただくように、今度はお役所のほうにも勧告をしたい、このように思っております。
  9. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 いまの御意見は、大体当初からそういう方針で一応調査答申もなされておることは、私も実は理解をいたしておるわけです。いま言われました経理審査会にかかる会社というのは、大体いまのところは二、三の会社に限られるんじゃないか、こう思われるわけです。問題は指定会社になっても、毎年一月一日のいわゆる借り入れ残高五億円が切れれば、すみやかに解除されるわけです。解除されてからある程度範囲を広げてやることはけっこうなんですけれども、別にそこまでは私はここでどうのこうの言う気持ちは持っておらないんですが、指定されている間は、この条文でいきますと、合理化の円滑な実施支障を及ぼすおそれがないときは、これはとにかくいいんだということになるものですから、これは非常にむずかしいわけです。合理化の円滑な実施支障があるかないかという判断は、非常にむずかしいと思うんです。しかしこれが、合理化支障がないというような場合であっても、結局企業努力の中には、労賃を積極的に切り下げるとか、労働条件を引き下げるとか、こういうことがもうずっと各社別にものすごい速度で行なわれておるわけですから、どうしてもそういう方向にしわ寄せがいくんじゃないか。そこを押えると、ある程度こちらに金を回しても合理化の円滑な実施には支障がないんだ、こういうことに私は当然資金計画上、経理計画上からはなってくると思うわけです。ですから指定されて、将来指定が解除されれば問題がないのですから、少なくとも指定されている間は、何を一体ポイントにして、この合理化の円滑な実施支障があるかないかを見るのか。たとえば労賃大手平均並みから見てむしろ低いという中で、さらに社外投資ということがいいのかどうかということのかね合いで、やはり考えなければならぬのじゃないか。したがって、そういう意味では、この合理化の円滑な実施支障を及ぼすかどうかの判定基準というものが、ある程度あってしかるべきだ。できれば積極的に政令で何か基準を、これは数字で基準を示すわけにいかぬですから、ある程度抽象化されると思うんですが、そういう基準があったほうがいいのではないか。でなければ、これは石炭鉱業審議会を信頼して、とにかくその信頼にのみまかせるという結果に実はなるわけなんです。しかし、実際問題として法律がこのようにきまっておると、私は、なかなか審議会としてもたいへんではないか、特定の二、三の会社で 審査会を通るような会社の場合にはこれはできるでしょうけれども、それ以外の指定会社については実際問題として、これは支障がないと企業が言えば、それは認めざるを得ないというのが実態だと思うんですね。しかしそういう労働条件かね合いとか全般的な、総合的な判断では、この条文では審議会としては運用できないと思うわけです。これは稻葉さんででなくても、石炭局長でもいいのですけれども、そういう場合にはどう考えられておるのか、あわせて、これは石炭局長のほうがいいと思いますが、お考えを聞いておきたいと思います。
  10. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 それでは、局長さんから後ほどお答えになりますけれどもいまのことについて私からちょっと補足さしていただきたいと思います。実は全部の会社を網にかけようかどうかといったような問題も、論議過程に出たことは事実でございますけれども、事務的にもそれはできないし、それから石炭鉱業実態から申しましても、それはおそらく困難であろう、また、石炭鉱業を前向きにやるとなりますと、どうしても重要なところについてはやはり集中的に効果をあげていくという形のほうがよかろう、こういったようなことで、ここで指定会社のアイデアといったようなものが出まして、この点確かに岡田さんのおっしゃるとおりでございまして、非常に基準があいまいで、石炭鉱業合理化事業団から借り入れ資金借り入れ残高と、それから開発銀行から借り入れられた金が五億円以上に上っているとか、そして前一年に採掘した石炭数量が十五万トン、こういったようなことになっておるわけであります。しかし先ほど申し上げましたように、実態そのものが悪化をいたしまして、やはり相当借り入れに依存をしなければ前向きに再建整備ができない、こういったような状態のもとにおきましては、むしろこの基準によりまして相当大きな効果を発揮できるのではなかろうか、このように感じます。また確かに例外的に、経理規制を受けるのがいやだから、ひとつ無理をして合理化速度も早める、賃下げもして、とにかく借り入れを減らしていこう、こういったようなことがないわけではございますまい。ですけれども、それにつきましては、むしろ経営部会なり全体の合理化計画そのものにおきましてやはり調整もできるのではなかろうか、このように感じます。したがいまして、これで必ずしも所期の効果が期待できないのだ、こういうふうには感じておりません。しかし先ほども申し上げましたように、まだ法律通過をしておりませんし、またそれに基づく具体的な措置を私たちがどんどんやっておるというわけではございません。通過をさしていただきました暁におきましては、そういう御趣旨に従いまして、やはり困難な事態を打開をするということに努力をさしていただきたいと思うのです。
  11. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いま稻葉参考人岡田先生との間で質疑応答がございましたが、この経理規制法の運用につきましては、いま御質問のあったような趣旨を十分体して、これは運用面で実際には毎年一回監査それから事業計画資金計画の届け出、それに対する、もしぐあいが悪ければ勧告、それから利益金の処分の認可、これは法律のたてまえからいえば相当会社に対する規制、監督の強化ということになっておりますから、運用面で十分に御趣旨のあるところは体して実行していきたい、こういうふうに考えております。
  12. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 本法案は、私はいまの点が一番ポイントだと思うのです。私はなかなか画一的に規制することはむずかしい面もあると思うのですが、政令で詳細に基準か何か、それで審査会経理部会でやるということになりますと、弾力的に効果があがると思うのです。それがないと、どうも実際問題として審議会でも効果をあげることはむずかしいんじゃないかというのが、私は本法案のポイントだと思いますので、これはいずれまたこれからの審議の中で申し上げていきたいと思うのです。  次にお伺いしたいのでありますが、電力会社の問題であります。御存知のように、電力用炭の代金精算株式会社法案が出されておるわけでありますが、私はずっと最近の電力会社に納めておる炭価の趨勢、それから各社別の納炭の実績の資料を実は持っておるわけですが、ここに二つの問題があるわけです。  一つの問題は、いわゆる炭鉱会社から電力会社に直売されておるのではない、もちろんされておるのもありますけれども、販売業者から相当納炭をされておる。あるいはまた九州のある会社は、もう炭鉱は閉山してしまった——もちろん第二会社、租鉱権の会社はあるようでありますが、実際問題として自分の炭鉱はない。ところがその九州のある会社が、電力会社相当量、従来と変らない炭量を納めている。これは明らかは流通上の問題があるわけです。あるいはまた、販売業者が納めている。納入権はないということは国会でも明らかになったのですが、四国電力のようにワクを買い取る。自動車の認可と同じで、認可を受ければ、その一台が百万なり二百万なり三百万なりの権利で売買されると同じに、納炭権利が売買されておる。こういう事件すらも今日出ておるわけです。三千万トンに及ぶ電力用炭昭和四十五年度には納められるわけですから、私は少なくともこの電力用炭の納炭は、流通関係が合理化されなければならない、こう考えるわけです。そうすると、当然これは生産地から電力会社に直売される、こういうシステムが大切ですし、しかも一般炭の八〇%が電力会社に納められるわけですから、当然その生産量がきまるわけで、電力用炭向けの割り当て量もおのずからきまってくる、こう実は理解をするわけです。したがって、いますぐこれを直すということは困難でしょうが、一、二年の間に生産地、生産会社、炭鉱から電力会社に直売させるという体制に組みかえるべきではないか、こう実は考えておるわけです。もう一歩進んで言うならば、一、二年の経過措置の期間を置いて、いまの、代金だけを精算する会社ではなくして、電力用炭の販売株式会社の構想をむしろ私は推進すべきだと思うのです。でなければ、これは抜本的に問題が解決しない。価格のほうはさまっても量のほうが不安定だ、あるいは引き取り条件についてもいろいろまちまちである、こういう問題が出てまいるのでありますから、そういう方向に進むべきだ、こう思うわけです。その間、行政指導で計画を立てて、いますぐ一ぺんに販売会社をなくしてしまうということは問題でしょうから、二年なり三年なりの間にそういう方向にして、将来この会社は発展的に電力用炭の販売会社まで持っていく、これが流通合理化の面から見ても最も妥当な方向ではないか、こう実は考えておるわけです。これは一般炭の場合には八〇%を占めるわけですから、どうしてもやるべきだ、こう思うのですが、御意見を承りたい。
  13. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 ちょっと御趣旨を読み違えている点がございますかもしれませんが、実は精算会社調査団の検討の過程で、次のような経過で出てきたものであります。  つまり、需要に対して供給が超過になりますと、一応千二百円引きという路線が進んでおりましても、どうしても換金をしたいといったようなことから、直接中小炭鉱また大手の炭鉱と電力会社と取り引きが行なわれまして、相当安い値段で石炭が売られてしまう。しかもそれが各社別、時期別に非常にむずかしい形になる。したがって今後の石炭産業の安定化のためには、三十八年度までは千二百円引き下げということはしていただかねばならぬし、その後も引き下げが望ましいけれども、四十二年まではやはり相当困難だろう。そういたしますると、何とか悪循環を防止をする条件をつくっていかねばならない。それには片や需要者、片や精算会社のほうをにらんで、どういうふうに満足のいく条件をつくっていただくかということで、実は相当技術的なあり方として苦労をしてみたわけであります。  一つのアイデアとしては、むしろ石炭山は、もう会社は掘るというほうに専念をしていただいて、それを山元で大中を言わず全部引き取って、一本で配給をするといったようなことをすることによって、流通機構も簡素化するし、手数料も合理化するし、また、一部中小炭鉱で安値で売られて、それがまた高く売られるといったようなことも防止ができるのじゃないか、こういうことも考えてみたのですけれども、なかなかやはりそれは、実行することはむずかしい。そこで私たちが目をつけて、これなら実行できるというふうに考えました手段は、いま岡田委員のおっしゃいましたように、将来一般炭の中心というのは電力に移っていくわけであります。したがいまして、電力の炭については、増加引き取りをして、それを各社別に振り当ててもらう、同時に供給や流通機構もでき得る限り簡素化していただく、それと同時に、金額についても相当ここでちきんとする、そうすることによってほかの炭もある程度防止ができるのではなかろうか。原料炭につきましては、それをお使いになる会社がほとんど限定をされておりますので、そこまではやらなくても済むのじゃないか。そういったような、片や数量、片や流通機構の合理化と整理というものを進めていく必要があるだろう。  そこで第二のアイデアとして、電力用炭の共販会社といったようなアイデアも出たのでございますけれども、やはり現実可能な道としては、ここで数量を増加引き取りをしていただいて、それと同時に、精算会社が介入することによって流通機構の合理化と炭価の防止を進めていく、こういったようなことで進んでいくことによりまして、相当前進をしていくということになるのではなかろうか。さらにそういったような土台の上で、共販会社に双方納得していけるということであればけっこうです。しかし、これはただ電力用炭だけではなくて、将来の石炭一つの流通機構のモデル・ケースとして、模範的なものとして、やはり双方納得の上でつくっていこう。こういうことになって出てまいりましたので、確かに論理の上から申しますと、もっと大きな共販会社にしたらいいじゃないか、また電力だけについてもそういうところへ行ったらいいじゃないか、こういうことも出てくるわけでございますけれども、大体この精算会社現実可能性があり、そして相当効果をあげる仕組ではなかろうかと考えております。  そこで私たちは、この法案通過さしていただくということを前提といたしまして、御存じのように、昭和三十八年度は従来の千八百万トンに加えまして、二百五十万トンを上乗せいたしまして、二千五十万トンを九地力に引き取っていただくということにいたしました。そして各社別のずっといままでの引き取り実績と価格というものを検討してまいりますと、やはりそこに非常にアンバランスがあるということもよくわかりました。そこでそういったような点も、これは折衝の段階で相当むずかしいことになっているのですけれども、だんだんやはり簡素化して、そして御趣旨のように、もっとその意味から流通機構の改善にも資していく、こういうことをこの精算会社を柱にしてやっていきたい、またそれでやれば相当効果をあげられるのではなかろうか、こんなように感ずるのであります。
  14. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 昭和三十七年度の実績を見ましても、大手の場合千三百十一万トン、中小が二百十三万トン、純販売業者は三百九十万トンあるわけですから、千九百十五万トンの石炭が引き取られているわけですが、それから見れば、もちろんこの中小は私はふえると思う。大手が買入れ炭をしていますから、あるいはそこの炭を納めるということで、全量納めつつある、それから銘柄を変えて納炭をする、こういう面がありますから、これは若干数字が変わってくると思いますが、ウエートからいうと純販売業者のウエートは非常に小さいわけです。中小炭鉱はスクラップされますから、これがどんどんふえていくという可能性はないわけです。ですから、そうむずかしい問題ではありませんから、大体昭和三十八年、九年ぐらいにはこの問題は解消できるのではないか、四十二年度まで待つ必要はないのではないか、私はこういう判断を実はいたしておるわけでありまして、この点これから特に需要確保、流通合理化の面で御検討願いたいと思うわけです。それと同時に、いま若干触れられました価格の問題でありますが、確かにこれはアンバランスがあるわけです。この是正ということは、実績があるだけに私はちょっとむずかしいと思う。しかしこの会社ができて代金を精算する以上、アンバランスを是正することはどうしてもやらなければならぬ問題だ、こう実は理解をするわけです。それと同時に、電力会社別の価格のアンバランスの問題と、石炭会社の特に大手中小の格差の問題がある。これもスクラップ・アンド・ビルドで 中小でもここは残そうとするものがあるわけですが、残した山の炭の価格は、大手と同じ銘柄のものであっても安いという理屈はないと思うのです。当然この大手中小の場合においても、石炭鉱業の安定ということを前提にすれば、この格差も解消されなければならぬ、こう思うわけです。これについては政府の行政指導でいくべきなのか、あるいはまた、こういう問題もやはり審議会で十分審議されて、意見というものが答申されるものか、この二点について見解を承りたいと思います。
  15. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 御存じのように、今度の合理化法の改正によりまして、従来の標準炭価が変わりまして、基準炭価にしていただくということになりました。名称変更ということだけになるのかもしれませんけれども、そうなった以上は、それを基準にして運用していく、私たちはこういう考え方に立っております。そして基準は、昭和三十三年の実績に対しまして千二百円引きでございまして、昭和三十七年度の実績に対して二百五十円引きじゃないのだ、こういう考え方に立っております。ところが、一般炭の中にもございますけれども、電力炭の中にはすでに千二百円引きという線が、現実には二百五十円下げますとそれ以下になってしまう、しかもそうしないとやはり電力会社としても採算上困る、こういったような問題が起こっております。円滑に事態を改善するということはなかなかむずかしいのですけれども、この問題につきましても、実は今度改組拡充をされました石炭鉱業審議会の需給部会で、基準単価もきめていただく。さらにその中の電力用炭については、揚げ地の電力会社と生産地に近い電力会社といろいろ違いますけれども、こういったようなことにつきましても、それによりまして直していただく。それからお引き取り願うカロリーとか品種といったようなものについても、合理化していただく、そのかわりに、生産される各山があまりにも多くの格差で代金をおとりになるということもやめていただく。そういったようなケースを実行したいし、また一〇〇%効果的に遂行できるかどうかは非常に技術的にむずかしいのですけれども、極力その趣旨に合いまするように、今度は審議会協力をさしていただきたいということで、目下その線に即応いたしましていろいろ検討さしていただいております。
  16. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 実は昭和三十七年度はすでにもう経過したのですが、特にこの産炭地の電力会社、九州、北海道の場合、まだ価格が未決定になっておるわけです。したがって三十八年度についても、当然これは未決定なわけです。一年経過してもまだその価格がきまらぬということが行なわれておるのですが、今度この会社ができますと、そういうことはあり得ないのではないか、こう実は考えるわけです。  それと同時に、契約量の引き取り問題なんですが、最近石炭問題をやっていますと、雨が降ると東京都民の水道の水が多くなるのですが、われわれは実は、こんなに雨が降ったら今年度の石炭の引き取りはどうなるのだろうという心配があるわけです。これは特にいま昭和四十二年度まで見通しますと、四十年度を前後にして電力会社石炭をたくということは、調査団の報告にも出されているように、きわめていろいろの問題点があるわけです。したがってこれが貯炭としてどんどん繰り越されていくということになると、私は事実問題として、この指向している引き取り量は引き取ることができないという事態に直面する可面性があると思うのです。  半面、石炭の貯炭の問題なんですが、電力会社では、あまりどんと引き取って貯炭経費をかけるよりも、これはそれぞれ炭鉱会社の揚げ地あるいは積み地の貯炭場もしくは山元貯炭をしてもらいたいという要請がかなり強まっていく傾向があると思うのです。しかしこの量は年々増加されていくのでありますから、当然少なくとも揚げ地もしくは電力会社の貯炭場にこの貯炭はなされ、その程度まではどうしてもたいてもらわなければならぬと思うのです。でなければこの予定されている数量の引き取りは、事実問題として困難であるというところに直面すると思うのです。しかしながら、何せ納めるほうが弱いのでありますから、それも山元に貯炭してくれ、あるいは積み地に貯炭してもらいたいということで、それがどんどんふえてくる、引き取りはできない、したがって翌年は事実問題として契約童は引き取ることができない、こういうことになりますので、この点は相当行政的に積極的な指導が加えられなければいかぬのではないか。もちろん流通合理化に関する調査を当会社はできるようになっているわけですが、会社にこれを期待することは事実問題として無理だと思うのです。これはやはり審議会においてこの点についてはある程度意見を反映されて、それを会社が実行できる、こういうシステムでいかなければむずかしいのではないか、こう実は考えておるわけです。この点についての見解を承りたい。
  17. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 御存じのように、今年度の石炭需給見通しで審議会で決定いたしました数量は、五千四百五十万トンであります。その五千四百五十万トンの中には、電力用炭につきましては九電力向け二千五十万トン、原料炭の引り七百四十五万トンというものが前提になっております。電力向けにつきましては、調査団勧告をいたしました線がそのまま九電力によって受け入れられている。原料炭につきましては、刻下の鉄鋼業の事情、特に銑鉄の減産、こういったような予定で、当初非常に少ない引き取りしかできないといったようなことだったのですが、でき得る限り数量を増加していただくというのと、輸入炭を可能な限り減らしていただくということで、七百四十五万トンということになったわけであります。  さて私たちは、電力用炭につきましては、先ほど岡田委員さんがおっしゃいましたように、石炭の安定化のためにはどうしても三千万トンの九電力向けの石炭を四十五年度には消化してほしい、そのためにはここで専焼火力また混焼火力の建設が必要だということで、その言いよよ打たれるということになってまいりました。ただ遺憾といたしますのは、雨がたくさん降っ天かたくさん出ましたときに、その水まで外へ流してしまって、そうして重油石炭を使いなさいということはなかなか言いにくいことでございまして、そういったようなことにつきましては、やはりこれを受納しなければならないだろう。率直に申しまして、今年度の需給見通しをつくりまする場合において、すでにそういったような徴候が出ておりました。さらに最近はまた長雨が続きまして、そしてその結果として電力向けの重油が減りそうだ。それから石炭も、実際引取っていただきましても、お使いになるのが少なくなりそうだという事実が、どうも三カ月ほど前に私たちが考えましたよりも多い、こういうふうに認めざるを得ないのでございます。この点につきましては、やはりでき得る限りは引き取りばしていただく。それからさらに、油のほうの使用をでき縁る限り優先的に減らしていただく。そして石炭をでき得る限りたくさん使っていただく、こういったような線で需給部会でも検討もしてまいりたいし、それからまたそれを実際の行政に反映をさしてほしい、このように感じております。  なお、需給見通しにつきましては、ただ一年ぽっきりの需給見通しだけではだめだということになりましたので、これは炭労、全炭の組合側の御要請もございまして、ただ一年きめて、そしてほうっておくというのではなくて、おおよそ三カ月ごとに需要については検討して、その線で最善の努力をしていこう、こういったような措置でひとつ御趣旨お答えをいたしたい、こういうふうに事が進んでおります。
  18. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 昭和四十五年度に電力で三千万トン引き取るという場合に、昭和三十九年度以降の、電源開発調整審議会で決定する電源開発については、やはりその前提で組まれていかなければならぬと思うのです。一応四十二年度までは大体固定化した感じなわけですが、それだけでは解決できない。ですから五十二年度の場合においても、ほんとうは当初計画以上に石炭火力の容量というものがなければならぬというのが実態だと思うのです。先般聞きましたところによりますと、大体千四百二十一万キロの火力発電所になるということでありますが、そういたしますと、四十五年度までに、これはいろいろ試算のしかたもあるでしょうし、休廃止の問題もあるのですが、まあおそらく四百万キロ程度の火力発電所はどうしてもつくらなければならぬ。数字は若干違うでしょうが、大体その前後の火力発電所をつくらなければならなぬという問題が出てくると思うのです。そのことはやはり計画的に毎年度進めていかなければならぬ問題だと思うのです。それがなくして三千万トンの引き取りはできないと思うわけです。したがって 電源開発について特に電力会社に三千万トン引き取ってもらうという前提で考える場合に、単に電力会社にまかしておくのではなくして、そういう計画というものをもういまから出していただいて、そしてそれを検討し、そのことを前提にして将来の需給体制というものを整えていくという姿勢が私は大事だ、こう思うわけです。しかしながら、一方において重油専焼、さらに今年度から原油のなまだきの試験をするということで、これも本格的に漸次操業に入っていくと思うのです。そういたしますと、どうしても総合的なエネルギー政策というものが、電力を中心にして油、石炭のコントロールがうまく行かなければ、燃料費の問題でいろいろ問題になってくるのではないか、こう考えるわけであります。したがって、いまこれから四十五年年度までを見通す場合において、いまやらなければならぬ最も大事なことは、ある程度のエネルギーのバランスの問題、さらに価格の調整の問題、それに基づいて電力を中心とする石炭と油の関係、こういうものをぴちっと方向をつけなければならぬ時期にきている。これはむずかしいでしょうけれども、必要に迫られておるのではないか。幸いに稻葉さんはエネルギー部会委員でもありますから、そういう面で、わが国の当面どうしても実際問題として必要なエネルギーの基本方向というものが、ここ一年くらい、昭和三十八年度くらいで出るものかどうか、それと、それに伴う、いま私が申し上げました点についての御意見をお伺いしたいと思うわけです。   〔神田委員長代理退席、委員長着   席〕
  19. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 御存じのように、石炭合理化に伴う一連の法律改正と並行して、総合エネルギー政策をどうするかという問題が起こりまして、それを審議する場といたしまして、産業構造調査会の中に総合エネルギー部会というものを設けまして、有沢さんが部会長になられ、また石炭鉱業調査団相当多くの方々が、私もその一人でありますけれども委員になるということになってまいりました。そうして電力、石炭、石油、そのほかのエネルギーを合わせまして、全体として大体今後日本のエネルギー需要がどうなり、そのもとにおいてエネルギー・バランスをどのように確保していくのか、こういう問題を検討中でございます。そしてその中で、いま御指摘になりましたなまだきの電力をどのように位置づけるかとか、あるいは重油によるところの電力計画をどうしていくとかいったようなことも検討いたしております。それからさらに、石炭と石油の問題についても調整をいたしております。実は初めは七月中に結論が出るということになっておりましたけれども、やや時期がおくれましたが、ことしの秋までにはその結論が出るということになっております。いま最後の審議と起草の段階に入っておるわけであります。ただ、最後的にきまっておりませんけれども、次のことだけは御報告できるのではないかと思います。  つまり石炭調査団の報告に盛られておりまする、四十五年度九電力向け三千万トンと、それにプラス・アルファーをして石炭の電力をつくっていくという方針は、これは最小限エネルギー総合計画の中に取り入れられるだろうということでございます。それからさらに私たちは、そういったような趣旨に基づきまして、少なくともそれが実行できうるような専焼石炭火力と混焼石炭火力の建設をいま通産省にお願いもし、またそれが事実となってあらわれるということを確信をいたしております。
  20. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 この間実は当委員会で冒頭に問題にした点ですが、今度審議会が開かれて、通産省の原案は六百七十一万トンのスクラップの閉山規模を提案したわけです。その結果、審議会としては五百五十三万トンの最終的な閉山規模をきめたわけです。しかも当初予算要求をしましたのは四百二十万トンで、それには保安あるいは自然消滅も入るわけですが、予算要求をする場合には、前三カ年の実績の平均をとってその規模がきまるわけですから、したがって昭和三十七年度末における実質規模とは合わないわけでございます。しかしながら大体実質換算しますと、四百二十万トンの閉山規模になるわけです。したがって百十万トン程度上回って閉山規模がきめられている。政府の原案は六百七十一万トン、ところが政府が当初予算を要求したのは、私は調査団調査の資料に基づいて、四百二十一万トンという閉山規模の予算要求がなされたと思うわけです。ところがその予算要求をした通産右が、審議会には六百七十一万トンという膨大な閉山規模を出す。審議会と通産省の関係がそういう関係にあるということは、どうも不可解だと私は思うのです。しかも今度の審議会で九州北部地域の百万トン、北海道の十八万トンをきめるにあたって、特に九州北部地域について、二山を第二会社に移行するという意見が付されておるわけです。一体審議会にそういう権限があるのだろうか、企業の変更に関する面に触れる権限が一体あるのだろうかという点を、非常に疑問に思うわけです。それと同時に、一応調査団のそういう資料をもとにして四百二十万トンの閉山規模の予算を要求しながら、六百七十一万トン出したということは、企業の言うなりになって出した。そのことは、もう当初よりも早めて閉山を促進する。ですから、極端にいいますと、ある一定企業、二山を持っている企業とこれ以外の企業との格差が非常に大きいものだから、これを何とか早く差を縮めたい、そのためにはてこ入れをしなければならぬということだけに限って行なわれた政策である、こう客観的に私は実は批判をいたしておるわけです。それは、そうなりませんでしょうか。
  21. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 非常にデリケートな問題で、お答えがしにくいのですけれども、一応これは稻葉個人としてお答えをさしていただきたいと思います。実は、でき得る限りスクラップとビルドは並行的に計画的にいくということが望ましいのですけれども、なかなか、昨年の情勢その他を見ておりますと、調査団答申は十月の上旬に行なわれたのですけれども政府措置が行なわれた、さらにそれに対しますいろいろな反対攻勢が行なわれまして、おそらく昭和三十七年度という年は、石炭合理化政策が全然推進しなかった年ではなかろうかと思います。それにもかかわらず、中小炭鉱が大規模に閉山をして、しかも三十七年度末で五千九百万トンの出炭能力がある、こういったような状態が現出する。それと同時に、先ほど私が申し上げましたけれども石炭企業赤字予想よりも非常に大きなことになっている、こういうような状態になってまいりました。しかもその間におきましては一大体私どもの要請、また労使間の措置等もございままして、三十七年度につきましては、大手の山の閉山というのは例外的にしか進行しなかった、こういうようなことであります。ところで、さらにそれに引き続きまして、ことしの一−三月で、三十八年度のスクラップ計画というものを各山から提出していただきますと、先ほどおっしゃいましたように、非常に膨大な数字が出てまいりました。はっきり申し上げますと、全体としては、中小炭鉱また大手の一部の炭鉱で、やはりスクラップを早くしていこう、いまのまま持ちこたえてもしょうがない、早く転換をしていこう、こういう空気が出てきたのではなかろうか、こう思います。そしてさらに引き続くところは、予想以上に若い人々が石炭山からお出になってしまって、このテンポが合理化そのものを効果的に進めるのか、さらに先になりますと、若い人々の労力不足で、今度は逆に石炭業に外から人を入れていかなければならぬというような状態さえ起こってくるのではなかろうか、私といたしましてはこういったような状態に推定せざるを得ないということになってまいりました。そこで、石炭調査団の、合理化のいろいろな勧告をいたしました線もございますけれども、筋からいえば、そういう情勢では、スクラップを早くして、他方においてはビルドを進めていくということがいいのかもしれないけれども、それではあまりにも社会的、経済的な影響が強いだろう、こういったような推定のもとにおきまして、まあスクラップの計画を繰り延べていただく、あるいは縮小していただくということを、審議会としては通産大臣答申をする、こういったようなことになったわけでございます。  いまおっしゃっておる一つの問題は、そういったような一般的なことのほかに、今度第二会社に移るということを勧告いたしましたそのもとの会社については、特別な理由があるのではなかろうかということでございますけれども、私は確かに特別の理由があると思います。しかし、私どもが推測をいたしますと、その会社実態は非常にむずかしい状態でございまして、やはりそうでもしなければおそらく永久に自立をしていくといったようなチャンスはないだろう、こういったようなことを考え、さらに離職者に対する問題その他を考えますと、ああいったような線で調整をするということが一番合理的ではなかろうかということを審議会で決定せざるを得なかったのだ、こういうふうにひとつ御了承になっていただきたいと思います。
  22. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 私は当委員会で、審議会が経営形態にまで及ぶことは、結果的に労使の関係にまで不当介入することになるではないか、閣議決定では、特に第二会社の問題は、組合が認める場合——これは組合が認める場合には、労使の交渉の場合に意思表示がされるわけです。そこまで触れるということは、閣議決定から見ても行き過ぎではないか、そういう一連の国会審議なり閣議決定の傾向というものが無視されて審議会意見が出されるということは、審議会委員としては資格がないのではないか、こう実は極論を当委員会として、全員改組してはどうか、こう実は申し上げたわけです。もちろん私はあなたの言われる、悪意でやったのではない、善意でやっておるということは認めるわけです。わかるわけです。しかしながら、やはり審議会の運用が、改組強化されて初めての、この一年間の計画をきめる、これからの運用にかかる問題でありまして、特にその点強く注意を喚起いたしたわけです。したがって、私どもは、石炭の問題を扱っていく場合に、できるだけ社会混乱を少なくしつつ、わが国の経済にもマイナスの面があまり大きく出ないように石炭産業の自立的安定を考えていかなければならぬ、そのことを通じて、私は私の個人の見解として、社会化方向に押し上げていかなければならぬと思っておるわけです。ところが、一方において企業の言いなりで、悪いからそこはとにかく重点対策をして自立安定をさせるのだということだけに重点が向けられますと、石炭政策というものが、調査団答申、それ以降の政府の施策、その間の労使間の問題等を考えると、いびつになって、信頼度を失うおそれがあるのではないかと非常に心配をいたしておるわけです。したがって、そういう意味で申し上げておるわけですが、特に稻葉さんは石炭審議会の重要メンバーでありますから、この面について私は特にこの機会をかりてお願いを申し上げておきたいと思うわけです。  最後に、もう一つお伺いをしたいのでありますが、この合理化臨時措置法の改正の中で、今度新しく再就職についての雇用計画審議会審議をするという問題が、法案の改正点として出されておるわけです。私どもがいままで調査団からいろいろお話を聞いた過程では、雇用情勢が非常に困難な条件が出てきた場合、年度別に繰り越されいく、しかし繰り越しをされてそのものが優先的に雇用されない、そういう雇用情勢の場合には、それに見合って合理化計画も検討していくのだ、そういう場合も十分考えられるのだという説明を実は受けておったわけです。しかし計画の変更というのは、経済事情の著しい変動の場合、法律用語として経済事情の著しい変動ということは、調査団の説明した場合とウエートがずっと違っておると実は思うわけです。この点が運用上非常に問題になってくるわけですが、何せ原案は通産省が出されるということでありまして、雇用計画は労働省が出される。通産省のほうは労働省に対してわれわれがやったあと始末をせいというような思想がやはり強いのではないかと思うわけです。労働省に言わせると、かってにやって全部雇用計画を立てろといったって、そんなむちゃなことがあるかという感じが、また強いのではないかと思うわけです。その点の調整をはかるのが、この審議会であり、総理も言われているように、普通の審議会と違って、良識と的確な審議と方針にすべてを期待しておるというのが、石炭鉱業審議会実態だと私は思うのです。その点これから、今年度一応審議会としての結論は出されておるのでありますが、四十二年度までの間の運用として、当然そういわれてきたことが生かされていくのかどうか、そういう意味においては別に制約がないのかどうか、この点もこの機会に伺っておきたいと思う次第です。
  23. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 御承知のように今度、いま提案中の法律通過さしていただきますと、政府が正式に雇用計画をきめてそれを出すということになっております。しかし私たちは、事態事態ですから、石炭鉱業審議会改組拡充いたしまして、その線に基づきまして雇用部会というものをつくりまして、また、多少法律違反ということになるのかもしれませんけれども、でき得る限り早期に労働省で今年度の需要供給、それから一体どの程度石炭離職者に対して訓練をして雇用が与えられるのかという数字を出していただくということを求めました。そして石炭鉱業審議会にはかりますのと並行いたしまして、実は私その合理化部会長代理を仰せつかっておりますので、合理化部会長の円城寺さんと一緒に、通産省側の計画と労働省側の計画をどの点において一致せしめるかということにつきまして、並行して相当協力をさしていただきました。まだ法律通過しておりませんし、準備態勢も十分ではございません。しかしこの審議会できまりました石炭鉱業の離職者に対しまする訓練並びに雇用計画は、国として責任を持っていただける数量だ、このように感じます。私たちは、一ぺんに解消したいということも理解いたしましたけれども、それはできない。しかし実質上、訓練と離職者に対する雇用の数字は、やはり前年度よりも解消の方向に向かっていかねばならぬ、これはどうしてもやっていただきたい、こういったようなことも勘案をいたしまして、確かに地域別炭田別しか審議をしないという場でございましょうけれども、そういったようなことからいたしまして、合理化計画の改定をしていただきたいということを申し入れをいたしたのでございます。
  24. 岡田(利)委員(岡田利春)

    岡田(利)委員 私は、特に審議会の運用として、一応計画はきまったと思うのですが、これは一年間を見通しておるわけです。御存じのように産炭地振興審議会のほうは、会長がいないためにいままで全然運用されておらなかった。今度有沢さんが会長に任命されて、これも七月一ぱいころまでには産炭地振興計画が出るのではないか、こういわれておるわけです。そうしますと、雇用合理化の進みぐあいというのは、一度厳密にきめたらそれでいいというというものではないんじゃないか、少なくとも上期、下期の中間には調整する面もあるでしょうし、さらに新しい条件が出てそれを前進させる面もあるでしょうし、調整しなければならない面もあると思うのです。この雇用合理化の関係については当然そういう形で審議会は運用されていかねばならぬし、通産省としてもそういう態度でやっていかなければならぬのではないか、こう思うのです。一応の計画がきまると、もうきめたんだからいいのだというんでは、人の問題が介在するわけですから、この面は一応一年間を見通して計画を立てるが、閉山の時期だって当初の予想よりもずれる場合があるでしょう。九月に閉山するやつが三月に閉山するという面も出てくると思うのです。そうすると、当然ズレがある。基本計画実施計画のズレがあるわけですね。これを私は年度の中間、上期下期の中間あたりに見通して補正をすべきだ、そういう必要条件があるのだから、七月に産炭地振興計画等が出れば、それに見合って補強をするという作業が慎重になされるべきだと思うわけです。この点について審議会としては、そういうお考えかどうか伺っておきたいと思います。
  25. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 一応私たちは、先ほど申し上げましたように、労働省といろいろ懇談もしたりいたしまして、あの数字は確実に実施可能だというふうに何べんか聞いております。しかしそれの実施状況につきましては、やはりもっとこれを調べていかねばならぬ、また現実雇用の進行過程というものも調べていかねばなりません。したがいまして弾力的に、でき得る限り前向きに事が解決をするように努力をするという点につきましては、岡田委員さんのおっしゃるように政府努力をすべきだ、また審議会としてもそれに協力すべきだ、こう思っております。
  26. 上林山委員長(上林山榮吉)

    ○上林山委員長 中村重光君。
  27. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 稻葉先生に二、三点お伺いします。  稻葉先生には、石炭調査団としてずいぶん長い間御苦労願ったわけであります。その後も審議会の中で重要な役割りをしていただいておるわけでありますが、その調査団答申大綱に基づいて、政府ではこれまた石炭政策の大綱を立てたわけで、それによって通産省が具体的な施策を進めておるわけです。ところが最近の情勢というものは、非常に需要がうまくいかないというので混乱が起こっておる状況だと思うのです。そうした情勢は、当時石炭の需給状況というのは非常に困難だった、しかし何としても国の貴重な資源である石炭の施策を進めていかなければならぬ、また雇用問題を真剣にお考えになった結果が、相当努力をしなければならぬぞという警告をされたわけであったのですが、いまの情勢と当時お考えになっておられたことと相当食い違ってきているというようなお考えを持っておられるかどうかということですね。それから、政府が具体的にやっておる施策は、調査団が期待しておったような施策を行なっておるようにお考えになっておられるか。それらの点について考え方を聞かしていただきたい。
  28. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 まず一番問題は、私は需給の面だと思います。実は五千五百万トンの生産確保ということが大前提になって、それから石炭調査団も出発をし、またそれに合わすように、でき得る限り安定需要と確保しなければならないということで努力をしてまいったわけでございますが、この三十八年度の需要見通しをつくりますときに、私たちは結論的に五千四百五十万トンという数字を出しました。生産目標としては五千五百万トンというのが採択をされ、実行に移されているわけであります。ところで現在の事態は、その五千四百五十万トンが絶対需要されないような状態なのかどうかということが問題でございますが、御存じのように、石炭需要は時期別に変わってくるわけです。それで私たちは五千四百五十万トンの場合でもやはり上期は余るだろう、下期はやや不足ぎみになるだろう、こういうふうに推定をいたしております。また電力につきましては、先ほど申し上げましたように、予想以上に水が出ましたために、かりに引き取っていただきましたとしても、さらにそれが使われないで貯炭になる、場合によってはそれが三十九年度に持ち越されるといったような状態が起こってくる、こういうふうにも推定されます。しかしそのほかの一般炭、無煙炭それから原料炭について、いま私たちはさらに検討を要請いたしておりますけれども、申し上げたいことは、需給部会で決定をいたしました線がそれほど著しく変更するとは考えておりません。むしろ最近は、御存じのように、景気好転といったようなこともいわれておりますので、むしろ普通の政策が行なわれておれば、電力と鉄鋼を除いた部面では、もう四、五十万トンくらいは石炭が売れてもよいのじゃないかとすら思います。  ところが一つ心配なことは、最近油の標準価額というものがくずれ出してきた、それがやはり間接に圧迫を加えているらしい、こういうこともございますので、私たちは同時に石油のほうの審議会委員でもございますけれども、やはりそういったような線で、それが石炭需要をマイナスしないようには措置をしてもらいたい。  それから、その全部のものについて手を打つということはなかなかむずかしいのですけれども、特にボイラー炭と、その次にセメント用炭、それから暖厨房用炭については、政府がお約束になった政策はやはり確実に実行していただきたい、そういうことになればいまのところそれほど、大きな問題が起こって、そして五千四百五十万トンを五千三百五十万トンにしろとか、五万二百万トンにしろとかいうことにはまだいかぬのじゃないか。この点は実はでき得る限り早期に、基準炭価の問題と一緒に、やはり事実を石炭鉱業審議会に出しまして、もう一ぺん御検討を賜わりたいと思っておりますが、目下のところ、私としてはそういうふうに予想をいたしております。つまり上期はどうしても余りぎみになるわけですから、その点で、ここで全部狂ってしまったのじゃなかろうかということまでは、まだお考えになる必要はないのじゃないですか。
  29. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 いまの後段のことはわかるのですが、要は政府の取り組む姿勢の問題が非常に重要だと思うのです。それで、調査団答申をしたようなことを実施してもらえばいいのだ、卒直な御意見だろうと思います。
  30. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 卒直に申しまして、私はまだ個別対策について政府がそれぞそ急所急所の手をお打ちになっているというふうには思えないのです。ですから早く法案を通していただいて、そしてそういうことができるようにひとつしてあげてくださいよ。頼みます。
  31. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 稻葉先生はずいぶん好意的な見方をしておられるわけですが、私ども急所をどんどん手を打ってもらいたい一そういうことを期待するわけですよ。ところが、いままで幾つかの政策を政府がおやりになったけれども、それが急所急所を前向きで行くのならばいいわけですけれども、急所をうしろ向きに行くような形でやられておる傾向が非常にあるわけです。たとえば具体的な問題としては、この前私が質問したことがあるわけですが、重油ボイラー規制法と例の重油消費税、これは「または」ということでずいぶん議論があったわけですが、調査団としては、必ず一つやれということじゃない、二つやってもらえばなおいいのだ、そういうことを期待しているのだというような御答弁があったわけです。これは関税とかいろいろな形をとりましたけれども重油消費税は実現しなかった。それから例のボイラー規制法の問題にいたしましても、これは単純延長したのではなくて、非常にゆるやかにして延長する、むしろやむを得ずにやるのだというしろ向きの姿勢、態度というものがそこに出てきたわけですね。そういうことは少なくとも調査団勧告というか、期待に沿うていないんじゃないか。そういうことが具体的な形で次から次に現われてくるということになってくると、私は需要供給という面は期待が持てなくなってくる、こう思うわけですから、それらの点についてひとつ稻葉先生ざっくばらんに、歯に衣を着せないで御意見を述べていただきたい、こう思うわけです。
  32. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 確かにそういう点があると思うのですけれども、一応問題になるのは需要喚起の方策で、やはり個々のセメント用炭とか、それから家庭用暖房炭とか、あるいはボイラー炭に対してどういう手を打つのか、それからさらに、政府としては責任を負われて一般のところまで及んでほしいのだけれども、せめて官公用の建物とか住宅というものについては、やはり率先して石炭を使用するという道を開いていただきたいということを申し上げておるのですけれども、これの実行につきましては、先生ほど私はシビアには考えておりませんけれども、確かに一生懸命に朝から晩まで、そちらのほうへ石炭局が向いておられるとは私は思いません。しかし、これはやはりどうしても努力をしていただきたい、こう考えます。
  33. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 中野局長、井上課長は非常に熱心に取り組んでおられるのですけれども、どうも上のほうがだいぶ圧力がかかってくるので、やむを得ずうしろ向き、こういうことにならざるを得ぬというのが卒直なところだろうと私は思うわけです。  そこで先ほど稻葉先生からお答えがありました例の千二百円のコストダウンの問題についてお尋ねしますが、これは私は通産大臣にも質問したことがあるのですけれども、情勢が変わってきた、いろいろ条件が悪くなってきた、千二百円のコストダウンではどうしても引き取る側が採算がとれない、こういう形になっている。かといって、物価はどんどん上がってくる、労賃は上げなければならぬ、こういうことになってくると、千二百円を割って販売するということは採算割れになってくる、炭鉱側がどうにもならなくなってくる、この場合どうなるのか、責任はどちらか、国が負うのかどうなのかということで質問したわけですが、その点は経済合理主義とか私企業とか、いろいろなことで要領を得ないわけです。そういう点も当時答申をされたときは検討されたことだと思うのですがこれは最後だということを特に強調していらしたわけですね。その点はどうお考えでございますか。
  34. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 先ほど申し上げましたように、三十三年度に対して三十八年度が千二百円引き、こういうことになりますと、これはいろいろ推算のしかたがありましょうけれども、おおむね三千七百円くらいの山元での販売値段、そういったような形になって、それが原料炭の場合、あるいは電力用炭の場合になって現われるのが望ましい。実は石炭調査団として昨年現地調査をしたりいろいろしたときには、三十八年度の引き下げは、石炭の自立安定というところからいくと、やめにして、三十七年度の炭価でずっと横ばいをするということをしてはどうかといったような問題も論議で起こったのですけれども、ただやはり石炭はひとり立ちするものではなくて、需要家側の協力を得なければならぬので、既定の路線だけはやっていこう、それが済んでからは横ばいで、その間に自立安定の基礎をつちかっていただこうということになったわけです。ところが現実には、先ほども申し上げましたように、ほっておきますと、どうも千二百円引きの値段よりもまだ下がりそうなんです。そこで私たちとしては、やはり三十三年度に対する千二百円引きの値段で最小限炭価を安定せしめていただきたい。ことに赤字も、先ほど言ったように非常にふえているのですから、やはり流通機構の簡素化とか合理化とか、そういったようなことを考えて、消費者値段はでき得る限り上げないで済むということを現実に実行してほしい、こういったようなことでいま検討いたしておりますが、率直に申しまして、そこまでやっていくためには相当努力が必要だと思います。しかし、いまそういう線でやっていただくように事務当局にもお願いをするし、またそれにつきましては、やはり石炭会社がその気になっていただかなければだめなんです。ところが石炭会社のほうは刀折れ矢尽きて、やはり金がほしいから、そうはなっておっても値くずれするようなことをおやりになる、それではだめなんで、生産会社一つの投資の手段でしょうけれども石炭会社もそういったようなことに全的に協力しようという雰囲気をよりつくっていって、そして需要家にも納得させていくということが、私は昭和三十八年度の石炭政策の一番大きな仕事ではなかろうかとすら思っております。実は私自身がそれの需給部会長をいたしておりますので、そういう線で努力をいたしたいと思います。しかし、なかなか保証はしかねるというほどのむずかしい問題で、その点はひとつ外からも、批評するのではなくて、どうしてもここで石炭が自立安定する最後の時期だというつもりで、鼓舞激励していただきたい。
  35. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 鼓舞激励どころではないので、できるだけ安定をさせなければならぬというところから現実に問題が出てきますから、そういう場合は調査団の真意はどこにあったのだろう——ただいまの御意見のような努力は、これは政府もしなければならないし、石炭経営者としてもやらなければならぬわけです。しかし最大限に努力しても、大きな情勢の変化というものはどうすることもできない。それに対応する政策がどうしても必要になってくる。答申の中で、そういう場合はこうするのだという価格面の保証、責任を明らかにしておられなかったので、当時もしそういうことが望ましいということでも検討しておられたとすれば、それを伺っておきたい。
  36. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 それは、価格格差金でも出せということですか。
  37. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 具体的にはそういう間問題すね。そういう点についての検討はどうだったのですか。
  38. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 私たちは、むしろ生産者と需要者が相互の場でおやりになることで、それに価格差補給金を出せということは勧告いたしませんでした。また今後につきまして、そういうことを勧告するつもりはいまのところございません。
  39. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 それから雇用計画、生産計画のことについてちょっと伺っておきたいと思いますが、雇用計画が先か、合理化計画が先か、どちらが優先するのかということについては、所管が労働省と通産省になっておるだけに、非常に議論があるところでありますし、かつまた一重要な問題であろうと思う。それで調査団答申の精神は、雇用というのに相当なウエートを置いておられる、こう私は読み取っているわけです。ところが政府側の答弁は、通産大臣は、これはもう当然合理化整備計画が先なので、雇用計画がそれに沿わない場合は、雇用計画を改めさせなくちゃならぬのだということを答弁しておられるのであります。そういう考え方もあるようでございます。一方今度は労働省、労働大臣に私が質問をしたことがあるのですが、これは当然雇用計画が優先するのだ、こういう考え方を持っておられる。しかしそうしたことは、合理化部会でいろいろ適切な検討をされるということはわかりますけれども、やはり政府側が原案を出さなくては、そのことの影響というものは非常に大きいと私は思うのです。その点に対して政府自体の見解も統一されておりませんが、先生はどのように思っておられるか、お考え方を伺ってみたいと思います。
  40. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 私の忌憚のない意見を申し上げますと、法案がまだ全的に通過していないという関係もありましようけれども石炭関係閣僚会議というのが開かれることになっておるが、どうも最近は熱が少なくなってきたのじやないか、こういう感じがしております。それと一緒に、私たちがリコメンドいたしました雇用と生産合理化調整について、各省次官からなる相談会、そういったものも行なわれる、また一番問題の多い九州地域については、やはり出先で各省全体が調整をし合うといった機能も存分に発揮をされる、こういったことが望ましいのですが、そういう方向へ進んでいないとは申しませんけれども、進み方が事態の進み方に比べておくれている、こういう感じがいたします。ですから法案通過した以上は、そういったような問題について、もっと政府側が適切な情勢判断と指導をやっていただきたい、こういう感じがいたします。  また、先生がお受けになりました、労働省側の見方と通産省側の見方がやや食い違っているという事実は認めております。それにつきまして、議会としては、先ほど申し上げましたようにある程度調整はさしていただきます。しかし、これはもっとはっきりした政府の意思となっていただかねばならない、こう思っております。
  41. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 いま一つ伺ってみたいと思うのですが、この前委員会相当論議されたのは、昭和三十八年度の合理化計画です。先ほど岡田委員からも質問いたしておりましたが、当初、予算的には四百四十万トンだった。ところが、通産省が合理化の申し出を受け付けたのが六百七十一万トン、これが案として出されたわけであります。これに対して鉱業審議会部会のほうでは五百五十三万トンという最終的な結論をお出しになった、こういうことです。これに対しては、四百四十万トンという予算措置を考えたのであるから、当然この範囲で受け付けをすべきである。ところがこれに対して通産省としては、そうじゃないのだ、業者が買い上げてほしいという希望を、いや、それはだめだというので阻止することはできないじゃないか、希望は希望としてこれを受け付けていくというのはやむを得ないことじゃないかということだった。しかしそれは事務的、形式的に考えるべきではないと思う。受け付けることはやはり優先順位に買い上げることになるというのが一つの問題点である。それから、もうこの山をつぶすのだということになってくると、労働者に非常な混乱が出てくるということになるので、及ぼす影響は非常に大きいから、そう事務的にことを考えてはならないかということで、これもだいぶん議論が行なわれたところであります。井上課長は、四百四十万トンと、最終的に鉱業審議会で決定した五百五十三万トンはイコールである、三月三十一日までに受け付けということになるので、実行は翌年回しになるから、予算上の問題は起こってこないということであったのですが、そういうことも考えられるとしても、しかし私は先ほど申し上げましたように、このこと自体も事務的に考えてはならないのじゃないか。及ぼす影響ということを考えてみるならば、真剣に取り組んでいくということが必要ではないのか。調査団答申にも、やはり計画というものを打ち立てろ、その計画に基づいてすべて進めていかなければならぬということで、やはり業者側といたしましても、政府の買い上げ価格というようなものを十分考えてそういう申し込みもするでありましよう。しかしそうじゃなくて、計画計画として立てておるけれども、やはり買い上げをしてもらいたいという申し出をするならば、それを受け付ける、そのことはやはり優先順位であるということになってくると、どうしても申し込みが多く出てくるということになるのではないかということを考えると、この点についてはそう簡単に割り切るべきものではないのじゃないか、こう思うのですが、それらに対する考え方をお聞かせいただきたい〇
  42. 稻葉参考人(稻葉秀三)

    稻葉参考人 予算ベースと閉山ベースが必ず一致していなければならないというふうに、私たちは考えておりません。たとえば来年の一月−三月に閉山をされるという山につきましては、その資金の支払いを三十九年度に持ち越すということはやむを得ない、こう思います。問題はやはり一閉山をした場合においてうまく転換ができるかどうか、こういうことがやはり主体でなければならない、こういうふうに考えております。もしもどうしてもそれで足らぬというときであれば、ひとつ国会にそういったようなこともお話をして、追加予算を出す、こういったような措置をやるべきではなかろうか、こういうふうに考えておる次第です。
  43. 中村(重)委員(中村重光)

    中村(重)委員 いま御意見は御意見として伺っておきたいと思いますがこれは非常に大きい問題だと思います。予算を出すときには、三十八年度の計画はこうなんだという見通しの上に立って予算の措置をしておられる。われわれとしても、そういうことで審議をしておるわけです。ところが、そういうことをおかまいなしにどんどん受け付けをしていく、そうなってくれば追加予算でも何でもやるのだということで買い上げをやる。それが経営者と政府側だけの問題で済むならばよろしいのですけれども、やはり雇用計画の問題も出てまいりますし、その他いろいろな面に及ぼす影響というものは、産炭地その他大きいわけであります。ですから、そう簡単にこのことは処理できないのではないか。まず慎重な調査計画というものをもって臨まなければならないのではないか、こう思うわけであります。このことに対する議論は当然起こってまいりましょうが、石炭鉱業審議会の立場におきましては、さらに及ぼす影響等を十分御勘案になりまして、御検討をひとつ願いたいということを強く要望しておきたいと思います。
  44. 上林山委員長(上林山榮吉)

    ○上林山委員長 この際、稻葉参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十四分散会