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1963-05-21 第43回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月二十一日(火曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 上林山榮吉君    理事 有田 喜一君 理事 神田  博君    理事 始関 伊平君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君 理事 中村 重光君       有馬 英治君    木村 守江君       倉成  正君    藏内 修治君       齋藤 邦吉君    澁谷 直藏君       白浜 仁吉君    中村 幸八君       井手 以誠君    滝井 義高君       細迫 兼光君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君         通商産業政務次         官       廣瀬 正雄君         通商産業事務官         (大臣官房長) 渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (石炭局長)  中野 正一君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         大蔵事務官         (主計官)   田代 一正君         厚 生 技 官         (環境衛生局水         道課長)    石橋 多聞君         農林事務官         (農地局管理部         農地課長)  大河原太一郎君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      矢野俊比古君         自治事務官         (財政局財政課         長)      茨木  広君     ————————————— 五月二十一日  委員稲富稜人君辞任につき、その補欠として伊  藤卯四郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法案内閣提出第  九四号)  臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一二〇号)  石炭対策に関する件(大浜炭鉱出水災害に関  する問題)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これより会議を開きます。  この際、先般山口小野田市の大浜炭鉱における出水災害実情調査してまいりました派遣委員から、その報告を聴取することといたします。藏内修治君。
  3. 藏内修治

    藏内委員 去る五月七日、山口小野田大浜炭鉱において起こりました炭鉱内出水災害につきまして、私、藏内修治岡田利春稲富稜人の三名は、石炭対策特別委員会から派遣され、現地調査を行なってまいりましたので、ここに調査の結果を御報告申し上げます。  まずわれわれは、十五日午後六時半東京を出発し、十六日午前六時半広島に到着、広島から荒居広島通商産業局長及び相田広島鉱山保安監督部長が乗車、以後現地小野田市までの車中約三時間、局長及び部長から災害説明及び意見を聴取し、午前十時三十分大浜炭鉱に到着いたしました。  大浜炭鉱においては、災害個所等を視察調査する予定でありましたが、現在坑内に入ることは非常に危険であるとのこと、予定を変え、上野大浜炭鉱社長から出水事故の詳細な模様や、事故以来十日間の困難な救助作業実情を聞いた後、派遣委員から質問が行なわれました。その後同鉱会館において、遭難者家族を見舞い、激励してまいりました。その際、遭難者家族の方から炭鉱夫実情説明された後、遭難者家族の今後の生活補償について御努力願いたいという強い希望がふりましたので報告いたしておきます。  次に、鉱山保安監督部長及び会社側から聴取いたしました今回の災害概要を、取りまとめ簡単に申し上げます。お手元に配付してあります見取り図をごらんいただきたいと存じます。  出水のあった地点は、一卸左坑道右七片小払いで、右七片岩盤坑道より約五十五度の上り傾斜で約二メートル繰り上がって七甲層に着炭しておりました。この払いは五月五日一番方より採炭したばかりの新しい切り羽で、六日一番方で切り羽は約四メートル進行していたが、その後切り羽の深側に重圧がかかり、高さ約二メートルの天盤が部分的に崩落し、この天盤から約四立方フィート湧水がありました。その後六日、二番方の二十二時三十分ごろ、切り羽の深側の半分は、重圧のため天盤が押えられ、ギロと称する水を含んだ泥土砂が流出してきたが、湧水は同じでありました。七日一番方でゲート坑道器材撤収中、突然ナンバー九の繰り上がり立坑下泥土の流出が起こりました。  当日、この方面作業していた従業員配置は、右七片奥の右二坑道掘進、左二坑道掘進にそれぞれ三名、またその手前坑道仕繰りに三名、右七片小払いゲート撤収作業に八名、右七片小払いエンジンの撤収に二名、右五片切り羽器材撤収作業に四名、右八片切り羽に二十二名、その他右七片から右九片の道中等に人の配置があるが、七片及び一卸のダムより奥部に係員を含めて八十八名が作業についておりました。この小払い出水により、直ちに退避警報が発せられ、全員退避をいたしましたが、右七片奥部の九名及び小払いの二名並びに右五片の四名、計十五名は逃げおくれたのであります。  出水災害の発生の報告を受けた田島保安管理者は直ちに退避命令を発し、事故現場奥部作業者十五名は退避未確認であるが、防水ダム位置まで水と泥土が押し出してきたため、十時ごろ七片ダムを閉塞しました。そしてさらに一卸方面に水か流出してきたので、十時三十分一卸ダムを閉塞し、十二時三十分左七片ダム手前馬の背手前まで出水が一部オーバーして停止していることを確認し、また一卸方面は十三時、ダム上部五十メートルの位置まで増水停止していることを確認したとのことであります。  次に、災害原因について申し上げます。現在調査中でありますが、出水した水質分析及び現在の出水量等から判断して、海水の浸入とは考えられないとのこと、この付近の深度海底下約百五十メートルであって、炭層上部の含水層が天盤軟弱部から崩落して出水したものと考えられ、なお今後も引き続き原因究明に当たっております。  次に、救出作業経過についてであります。十五名の遭難者中、右七片坑道の九名の就業者を除き、他の六名は事故後の最大水位より高いところで作業していたので、そのまま避難していると考えられ、山では何よりも排水作業にすべてをかけておりますので、その経過について申し上げます。  出水後、増水経過を見守った後、増水傾向もないので直ちに排水資材の準備、人員配置等を編成し、一卸坑道より七日十六時五十分ごろ三十馬力ポンプ排水に着手、その後五十馬力タービンポンプ等排水する一方、七片は八日五馬力自給ポンプ排水し、九日四時五十五分、一卸ダム板二枚をあけたところ、溜り水のみのように見えましたが、六時全開したところ、坑道下泥土砂約三十センチ滞り、排水をしながら一方泥土砂坑道側壁に片づけて、排水ポンプを漸次下げ、さらに排水施設を増強するため、五月十二日サンドポンプを設置して排水排土を行ない、五月十三日、一卸は左一坑道口まで不眠不休によりとりあけました。また一方、七片方面は五月十二日四時ダムを全開したところ、土砂が全面にあるため排土作業にかかって坑道とりあけを急いでおります。  五月十五日三時現在、一卸方面満水位置から百五十六・七メートル進行し、排土量四百九箱となっており、また七片方面ダムから先三十六メートル進行、排土量は四百七十箱を出し、両個所ともガスは現在安全な状況であるとなっているものの、流水とともにガス湧出危険性もあるので、これらに対する警戒を行なうとともに、再出水についても水質分析水質等その他科学的調査を行なって測定しております。  なお、現在全山を休業して救出作業に集中しております。今後の対策及び見通しについては、現在のところ原因究明と並行して検討中なので、いましばらくかかる見込みとのことであります。  以上が災害概要原因救出作業経過であります。  次に、現在行なわれております石炭鉱業合理化計画のうち、ビルド鉱に指定される海底炭鉱の占めるウエートは非常に大きく、宇部地区もその一つであります。このたび災害事故のありました大浜炭鉱昭和十二年の創業で、現在月一万五千トン、五千七百カロリーの優良鉱で、石炭鉱業合理化事業団の昨年の調査では、ビルド鉱に指定され、中小炭鉱の中でも優良炭鉱であるとされております。このような炭鉱において他にあまり類のない事故が起きたということは、今後の石炭産業構造及び保安の上からも大きな問題であります。  そこで、今回の出水災害調査の結果考えられる問題点といたしまして、まず第一に、海底炭鉱においては十分なる海底ボーリングによる地質の調査研究に力を入れ、切り羽を開く場合特に慎重に行なう必要があり、ボーリング船の建造を早急に具体化すべきである。  第二に、保安設備及び機械等の充実のため、合理化融資範囲の拡大及びその増額を考慮すべきであり、貸し付け業務の迅速をはかるべきである。  第三に、鉱山保安監督官監督業務をさらに強化する必要がある。以上三点であります。  なお、中小炭鉱においては賃金の切り下げが行なわれ、低賃金合理化に協力しておる実状であるが、一たび災害死亡が起きると、その労災補償がきわめて低く、遺家族の更生にも支障があることは十分検討されなければならないことを遺族との話し合いの中で痛感されました。  終わりに、政府においては今後の石炭政策、すなわち石炭鉱業合理化計画を行なう上に、特に保安関係行政指導及びその予算措置等を講ずるよう要望しておきます。  以上をもって報告を終わりたいと存じます。     —————————————
  4. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 石炭対策に関する件について、調査を進めます。  ただいま派遣委員より報告を聴取いたしました、大浜炭鉱出水災害に関しまして質疑通告がありますので、これを許します。細迫兼光君。
  5. 細迫兼光

    細迫委員 いまの御報告に関してちょっとお尋ねしたいのですが、大浜炭鉱の隣に本山炭鉱というのがあります。この本山炭鉱はすでに閉山をしておる。したがって、坑道には水が充満しておるのであります。しろうと考えによれば、水圧関係に何らかの変化があるだろうということが予想せられます。現に本山炭鉱労働組合の幹部と地方選挙の当時話したのでありますが、大浜炭鉱あぶないぞということが言われておりました。この本山炭鉱閉鎖によって本山坑道に水が充満したということについての対策、これに対する考慮というものが、何らか大浜において講じられたかどうか、御調査の結果いかがでございましょうか。
  6. 八谷芳裕

    八谷政府委員 この点につきましては、私どもといたしましても一応調査を進めてまいったわけでございます。今後いろいろ調査する点もまだあるかと思いますけれども、現況におきましては、本山炭鉱とは深度におきましても、地質的にも異なっておりまして、この断面図等をとりましても、全く無関係ではないか、かように考えられるわけでございまして、本山炭鉱において過去に出水もいたしておりますが、しかし、この出水状況と同一視することもできないのではないか、かように考えるのでございまして、こういう状態をいろいろ総合いたしますと、本山が廃山し、そうしてここが水没されていったということと現在の出水災害ということとは無関係であろう、かように考えておるわけでございます。
  7. 細迫兼光

    細迫委員 御調査の結果もそこに及んでおると思いますが、あそこの雇用関係ですが、下請組夫が非常に多いのです。大浜社長大倉労務関係を経上ってきた人でありまして、その経営基本方針というものが労組ぶっつぶしにあるのです。これは先年大浜が閉鎖したときに全員解雇しまして、再採用という形で新しい鉱員を組織したのでありますが、その際組合活動者は全部採用しないということによって、彼が豪語しておりますように、いま大浜鉱員はみなおとなしい優秀な人だ、つまり文句を言わない労働者だという状況になっておるのです。労働組合の強いところは災害が少ないということは、元の九大教授の向坂さんが統計によって立証しておるところであります。あそこの大浜炭鉱には組合ができない、つぶされるのです。そういう労働組合のみずからの生命の危険に対するいろいろな主張というものが経営者のほうに伝わらないというようなことが、基本的な一つ原因をなしておるのじゃないかと私は思うのであります。朝日新聞の現地からの報告によりましても、ほかの災害のケースでは、家族の者が事務所に押しかけてわいわいわめき、要求するという状況がどこでもあるものだが、大浜では家族は社宅の奥で泣いておる、事務所へ押しかけてわいわい騒ぐというようなことが見受けられないということを報告しておるのであります。そういう炭鉱における労働組合のぶっつぶし、こういうことは保安上まことに私は憂うべきことだと思うのでありますけれども、一体御当局においては、このような労使関係についてのことまでも指導勧告等を従来なされておりますかどうですか、御注意なさっておられるか、お伺いします。
  8. 八谷芳裕

    八谷政府委員 大浜炭鉱におきます災害の問題と、それから組合関係等の御質問でございますが、大浜炭鉱におきましては、御承知のとおり、大浜炭鉱自体海底下ではございますし、しかも抗道あるいは作業場に水が回ってまいりまして盤ぶくれその他非常に重圧の激しいところでございます。現在石炭鉱業合理化されましたが、鉄柱カッペというものも大浜炭鉱で初めて始まったような状況であるわけでございますが、過去におきます災害は、私どもから見ますと、これは統計的な判断でございますけれども、また、監督官も抗内に入りまして再三いろいろな点は注意してまいっておりますが、統計的に見ますと、全国あるいは宇部地方に比べまして決して多いほうではないのじゃないか、かように考えておりまして、むしろ統計面からいたしますと、災害の少ない炭鉱に属する、かように考えておるわけでございます。一応数的に申しますと、私ども災害率稼働延べ百万人当たりであらわしておるわけでございますが、三十七年の一年間のものを見てみましても、全国が百万人当たり九百十七人、ところが宇部地方は非常に少なくて、それの六割弱でございますが四百八十七、こういうふうになっておるわけでございます。ところが大浜炭鉱ではさらにその半分以下に下がりまして二百三人、こういうふうな順序でございまして、全国の半分程度が宇部地方平均である、その宇部地方のさらに平均を下回っておるということでございまして、従来の災害状況は、今回のような非常に遺憾な大災害を除きますと、非常に死傷者が少なかったのじゃないか、かように考えておるわけでございます。労働組合等に対しましては、ただいま御指摘のあったとおりでございまして、労働協議会でございますか、そういうものが結成されておりまして、その委員長は元の組合長だったとも聞いておりますけれども、今回のような災害に直面いたしますと、労働者を統率し、いろいろ会社話し合いをしていくというような中心が、他の炭鉱等と比較いたしますとやや欠けておるのではないかというような点も考えられる節もございますけれども、過去の災害状況からいたしますと、ただいまのようなことでございます。
  9. 細迫兼光

    細迫委員 これは炭鉱一般のことですが、監督官を寄せつけたがらないのですね。これは一般傾向としてお認めになると思うのですが、あらゆる手段を講じて、はなはだしきに至っては、見てもらいたくないところはばらしてしまうというようなことすらも、小さい炭鉱なんかには行なわれておる。将来、監督官を忌避するというような炭鉱側工作に対して、十分現地調査するということについて、より強硬な慎重な方針が必要だと思うのですが、何かお考えのところがあれば承りたいと思います。
  10. 八谷芳裕

    八谷政府委員 ただいま御指摘がございました、中小炭鉱のうちでも特に小さな炭鉱においては、保安監督官が来たらいろいろな工作を行なうとかいうようなこともかつてございましたけれども、結局、保安をやっていかなければ生産が順調に進まない、合理化もできない、こういうことで、最近におきましては、特に宇部地方はそういう情勢がいいかと思いますけれども、非常に監督官にも協力いたしまして、監督官が来たからいろいろな工作をするということが決してないような状態になっているということを非常に幸いに存じておりますが、今後もさらに労使と協力いたしまして、監督の面、また指導の面の実をあげて参りたい、かように考えております。
  11. 細迫兼光

    細迫委員 終わります。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 関連してこの際、石炭局長にお伺いしておきます。  大浜炭鉱といえば、実は災害復旧をしておるわけです。しかし鉱員は、危険であるという判断就業拒否をするという傾向も、私どもが帰った以後起きておるように実は聞いておるわけです。問題は、大浜炭鉱は、調査団のこれからの炭鉱近代化計画の中でも、一応ビルドアップの山に指定をされておるわけです。しかし中小炭鉱でありますから、この災害復旧相当資金を要し、相当の日数を要するものと考えるわけです。したがって、このまま放置しておくと、即閉山という事態も起きるのではないか、こう判断されるわけです。そういたしますと、年産約二十万トンの山が突如として閉山されるということになるのでありますから、現行計画にさらに二十万トンの閉山というものがプラスされる。しかも、大浜炭鉱には実に千名の人員が稼働しておる。そういたしますと、この労働者に対する対策も非常に重要な問題になってくるのではないか、こう判断をされるわけです。いまここで、これが閉山になるかどうか云々することは若干早計かもしれませんけれども、一応鉱脈からいうと十年間の採掘量があるのでありますから、そういう面ではやはり何らかの対策を立てて、この山が再建できる方途を講ずるということが第一義的に考えられなければならぬのではないか、こう私は考えるわけです。大手の場合でも、今日炭鉱資金繰りが悪くて、災害がありますと、その復旧には非常に困難を来たすのでありますから、そういう意味で、当面もうそろそろ資金対策その他の問題が出てまいると思いますので、局側として、特にビルドアップに指定されている大浜炭鉱再建についてはどういうふうに考えられておるか、お伺いしておきたいと思います。
  13. 中野正一

    中野政府委員 ただいま大浜炭鉱の今後の再建の問題について、現地調査された結果について、岡田先生から御指摘があったのでありますが、通産省といたしましても、大浜炭鉱中小炭鉱のうちでは比較的安定をした経営を今後もできる、いわばビルド山として育成をしていっていいのじゃないかという考え方に立っておったわけであります。今回の非常な不幸な災害によりまして、いま災害救助に全力を尽くさせるようにやらしておりますが、今後の大浜炭鉱再建につきまして、資金面等についていろいろ問題がある、すでにそういう話もわれわれ聞いております。特に大浜炭鉱は、従来関係会社あるいは銀行というようなところからあまり援助を受けてなくて、独立で——これは先ほど細迫先生からも御指摘がございました、昔の大倉組ですか、この系統の会社のようでございますが、そういう関係で、こういう問題が起こりますと、資金の手当てその他について、いままでうまくやっておった、あまり借金もないというようなことのために、かえって資金調達が非常にむずかしいというようなこともあるようでございます。実は今度災害が起こった新しい鉱区のほうを掘ることにつきまして、今後近代化資金あるいは開銀の資金等々、政府資金で応援をせねばいかぬのじゃないかということでいま計画を立てさしておったさなかでございます。そういうことで、さしあたりの再建あるいは今後の鉱山の掘進等にあたりまして、政府としてあるいは関係金融機関等にあっせんをする等、いろいろな方法を講じまして、できるだけこの再建についてはわれわれとしては協力してやっていきたい、こういう考え方でおるわけでございます。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまの説明で一応理解はできますけれども、私は、大浜炭鉱の場合には最悪の事態がきわめて早い時期にくるのではないか、こう判断をするわけです。たとえば山を放棄するということになりますと——すでに保安要員ですら現在なかなか就業しない、こういう事態が発生しておるわけです。そういたしますと、復旧の前にまず遺体搬出に対する努力がどの程度払われるか、こういう問題が出てまいりますと、鉱員会社関係、これは労働組合がありませんし、そういう面でまたここにも問題があるわけです。ですから、従来であれば時間の経過を待って、その結果に基づいて今後の再建策はどうかという問題について一応の結論といいますか、そういう判断をするといいますか、そういうことが行なわれておるのでありますが、今日の実情ではそうゆうちょうなことは言っておられないのではないか、私はこういう気がするわけです。たとえば豊州炭鉱をはじめその他の水没事故で、遺体搬出ができない、それでも一年ぐらいは一応その努力をする。ところが大浜炭鉱の場合には、そう長期間そういう努力が継続されるとはどうも理解できないわけです。そういたしますと、実際この山が再建できるかどうかという面については、従来の考え方を改めて、ある時期に調査団なりを派遣をして、一応この山の再建問題について早い時期に見きわめをする必要があるのではないか。従来の考え方ではもう現状には合わないのではないか、こう私は考えるわけです。この点特に私は、今日の大浜炭鉱の実態から考えて、この面を十分配慮をして、適切な措置をとられることを強く要望しておきたいと思います。      ————◇—————
  15. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 次に内閣提出石炭鉱害賠償担保等臨時措置法案及び臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案を議題として、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑通告がございますので、これを許します。滝井義高君。
  16. 滝井義高

    滝井委員 臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案並びに石炭鉱害賠償担保等臨時措置法について、二、三質問をいたしたいと思います。  まず第一に、この合理化における新しいスクラップ方式がだんだん推進をされてまいりますと、鉱業権者の負担を伴う鉱害復旧というのは、おのずから整理促進交付金範囲内でやるという傾向が非常に強くなるわけです。その結果、交付金の限度内では全部の鉱害復旧ができない、こういう事態の起こる可能性が多いわけです。すなわち究極的には無資力鉱害ですか、そういうものが非常に多くなってくることになるわけです。そうしますと一体どういうことになるかというと、まず第一に、県なりあるいは地元の市町村の支出が非常に増加をするということになります。たとえてみるならば、ことし無資力鉱害で三億四千万円くらいの予算が、福岡通産局で調べてみるとあるそうですが、それで県の支出が五千二百七十三万円になるわけです。これだけばく大なものを県が支出することになるわけです。五千二百万の純県費があれば、相当県政推進ができるわけです。ところが鉱業権者が無過失賠償責任を負うべきものが、無資力になったために、全く自分の責任でなかった県にかかってくる、それだけ県政の他の部分における力がそがれていくという、こういう形が出てくるわけです。そういうものは最後のところは何でまかなわれるかというと、ほとんどが交付税特別交付税でまかなわれていく、こういうことになるわけです。  今度地方財政法の一部が改正をされております。それによりますと、鉱害復旧事業団など地方公共団体以外の者が実施する鉱害復旧事業につき、臨時石炭鉱害復旧法の規定により地方公共団体が負担をし支弁し、または補助するために要する経費については、当分の間地方債をもってその財源とすることができるものとすることという、こういう要綱ですが、地方債を財源にしておるわけです。それから、地方公共団体が施行する鉱害復旧事業に要する経費に充てるため起こした地方債、及び前項の地方債の元利償還費の一部については——これは一部です。一部については、地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入することとすることという、これは先日衆議院を通りまして、いま参議院にいっているのですが、これを見ましても地方債か、そうでなかったらそのあと始末を交付税でやる。こういう形にしかなっていないわけです。これでは非常に事務的にも複雑になるし、金のくるのはおそい、こういう形が出てくるわけです。そうしますと、財政がだんだん苦しくなる。筑豊における自治体というものは、特に県は右から左に金を出すという気持にならぬわけです。この問題に対する解決というものをわれわれはあれだけ議論をしたけれども、先日地方行政委員会、本会議を通った改正というものはこういう状態だということです。われわれがここで幾ら言ったって、実現をしていないということです。やはり、事務的にめんどくさい地方債をやらなければならない。今度はさらに年度末になって、交付税特別交付税をむずかしい計算をしてもらわなければならない。こういう形にしか処理されていないということです。ここに、一つ、今後の鉱害対策上における負担が非常に増加する傾向にあるにもかかわらず、地方財政の軽減に対するもっと簡単な、しかも敏速な方法で処置されていないということです。  それからいま一つは、事業団の復旧の事務経費、こういうものが非常に増加をしてくるということ、これに対する対策が、わずかに事務費の中に何かまぎれ込んでおるという形、将来復旧事業団の事務費がふえることはわかっておるのですから、新しい項目を設けて堂々と計上する必要がある、そういうことがされていない。  それから、こういう形になると、暫定補償というものがぐんぐんふえてくる、こういうものも十ぱひとからげに、事業団の増加した事務費のすみに入れられておるということではいかぬと思う。こういう根本的な問題について、非常にこそくな前進しか見られていない。これではことし五百五十三万トンのスクラップ化をやろうとする政府は、いたずらに山をつぶすことに急にして、そのあと始末について積極性がないということ、根本的なところを一体どうするかということ。私たちは、こういうちゃちなというか、こそくなことでは、率直に言って五百五十三万トンの山をつぶすことについて了承できない。まず山をつぶすならば、あと始末をきちっとやるという方針を確立しておいて、それから山をつぶしてもらわなければ——いずれ雇用対策の問題その他についても論議をしますが、一番大事な雇用の面とあと始末の鉱害復旧の面が非常におざなりであるということ、そして山をつぶすことだけを非常に先行して、急である、こういう合理化方式というものは私は納得いかない。地方債をもってし、交付税をもってしていたのでは、事務が複雑だからだめです。率直に言えば、ずばり補助金で出していくこと。同じ金を出すのですから、朝令暮改的なことをやらずに、簡明率直にできる補助金が一番わかりやすい。一番早く金がくるわけです。事務もめんどくさくない。なぜそういう方式がとれなかったかということです。それから事業団等についても、どうせこれは出さなければならないものですから、こういうものについてもなぜ出さなかったか。これについて通産当局の、大臣見解ですからできれば政務次官に御答弁願います。
  17. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 石炭政策を進めてまいるにつきまして、それに関係いたしております各種の国家資金を伴います措置につきまして、十分やるべきことは御指摘のとおりでありまして、今度の法律の改正にあたりましても、そういう点十分努力をいたしたつもりでございますけれども、ただいまお話しのような、いろいろ遺憾な点が必ずしも残っていないではないと思うのであります。第一番に御指摘になりました、今後だんだん多くなることを予想されます無資力鉱害問題にいたしましても、無資力鉱害がふえればふえるだけ、地方公共団体の負担が増高していくということになりますので、これにつきましては、ただいまお話しのように、あるいは地方債でありますとか、あるいは地方交付税でありますとかいうようなことによって一応救済することにはなっておりますけれども、そのものずばりという簡素簡明な方途が講ぜられていないことは、まことに遺憾に思います。それで国家財政等の関係もございますし、各種の意見もございまして、そういったことになったわけでございますが、しかし、ただいま御指摘の点はまことにごもっともな点と思いますので、大臣からも前回お答えを申したかと思いますけれども、十分検討いたしまして、御期待に沿うべく努力してまいりたいと思っております。  それから第二にお話がございました、事業団の復旧経費の増高に伴って資金を必要とするが、そんなのを一括事務費の増率に依存しておるということは不都合ではないかというようなお話でございましたが、それも私どもは必ずしも完ぺきとは思っておりません。それと暫定補償につきまして、これまた事務費の増率に含めて考えておるわけでございますが、そういう点につきましては、将来十分検討いたしまして、つとめて御指摘の趣意に沿うように勉強してまいりたい、かように考えております。
  18. 滝井義高

    滝井委員 おざなりな答弁では困るわけです。努力する、検討をするということだけでは、これは率直な言い方をすれば、葬式を出さなければならぬわけです。これは最後の費用ですから、あした、あさってやりますというのでは間に合わないのです。やはり今日きちっとした政策を立ててもらわなければならぬ。政府としてはことし五百五十三万トンの山をつぶそうとしておりますが、この中で一体、無資力になるものというのはどの程度に見ておりますか。
  19. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 いま五百五十三万トンというお話でございましたが、鉱害補償につきましては、被害の進行が終わってからの安定という問題、いろいろそういった技術的なものを考えまして、私どもはいま昨年度の三百二十万トン、これについて当たりまして、この結果の無資力というのは、大体今年から来年にかけて出てくる。さらに五百五十三万トンは、あるいは早いのはことしじゅうに出るかもしれませんが、来年から再来年にこれが出る、こう見ておるわけであります。大体ことしといたしましては、そういう意味で、無資力鉱害の率を従来より高めまして、全体の事業量の一五%というふうに想定いたしておったわけてございますが、これはまた来年の問題になりますと、現在私どもとしては、現在の無資力実情というものを九州の局を通じて事前調査を進めておりまして、これを早急に確定して、来年の無資力鉱害対策について基礎のしっかりしたデータを得たい。この点の全体のパーセンテージが一五%というのは、この前の説明の際にも、これは上回ってくるであろうというような見通しで、確定的な数字を申し上げるところまで、いま事前調査のすべてが済んでおりませんので、量が幾らかという具体的なものについては、いまのところはお答えできないわけであります。
  20. 滝井義高

    滝井委員 一五%程度どころじゃないと思うのです。今後はおそらく中小はほとんど全部無資力になると思うのです。しかもあなた方は、大手を第二会社に移すことをどんどんお認めになった。なおけしからぬことには、第二会社は認めぬと言っておった有沢調査団が、先頭に立って第二会社を認めるという方向に向いておる。こうなりますと、第二会社がまた斤先を出せばいいのですから、これはもうばらばらです。全部無資力になってしまう。専門家の意見によると、どんなに少なく見積もったって、五割は無資力になる。どうかすると、六割か七割は無資力になるだろうと専門家は言っておるのです。そうなりますと、これだけの山が無資力になると、いまの三億や四億の無資力の金では、これはちょっと間に合わぬです。おそらく三倍も四倍もの金、十億とか十五億とかの予算を組まなければとても間に合わないという状態が出てくる。これは明らかなんです。三十七年度でいまあなたのおっしゃるように、三百二十万トンのうち一五%ぐらいだというので、三億ちょっとの金をおきめになったのだろうと思いますが、もちろん実際はこれよりはるかに多くなる。しかも、傾向としては多くなりつつあるこれはもう明らかなんです。そうしますと、そのときは当然、今年度に三百二十万トンをおやりにならなければならぬわけですが、これは当然補正予算なり予備費の流用をどんどんおやりになって、無資力のほうにお出しになるのでしょうね。
  21. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 無資力鉱害の把握がまだ十分にできて知りませんので、私どもといたしましては、現在の予算でやっていけると思いますけれども、非常に食い違った多額な経費を必要とするということになりますならば、その節また考えてみたいと思います。
  22. 滝井義高

    滝井委員 これは現実にもう出ておるのです。私がここで私自身の知っておるところを述べてみても、たとえば一億の鉱害がある、ところがこれをやるのに五年も十年もかかれば別です。いまのところでやれるのです。この前の多賀谷君等の質問で大臣が明らかにしたように、やはり三年か四年のうちにやってしまおう、こういうことになれば——三年か四年でも被害地の住民はたいへんですよ。買い上げになるまでに、どうかすると一年も一年半も二年もかかっておる。鉱害は、それよりも三年も四年も前に出ておる。ですから、鉱害を受けてから、いよいよ認定を受けて、復旧してやるぞと言われるのに五年くらいかかる。復旧してやるぞというその復旧計画に乗って、復旧に着手されるのがまた五年もかかるということで、十年かかったら、そのうちに家は倒れてしまうのです。これではいかぬと思うのです。やはり、認定をしてもらってから二年ぐらいでやってもらわなければいかぬ。ところがいま、それを五年くらいでやろうというのです。一億円ぐらいの鉱害を千万か二千万かの金を出して五カ年計画でやります。こういうことなんです。それでは納得ができないのです。したがっていま言うように、三億やそこいらではとても間に合わない。だから予備費を出すなり——この前も言ったように、警察職員をふやすのに、東京の警視庁、大阪の警視庁は予備費を出しておるのですから、交通のおまわりさんにさえ予備費を使うのだから、人間の命にかかわるような——鉱害復旧をやらなかったら、陥没して家が倒れて死ぬる場合があるのです。ちょうど交通事故と同じです。だから予算がなければ、予備費を出すのは当然なんです。これは、鉱害復旧の量がわからぬからわかったときにということでなくて、原則論を尋ねておるのです。それが四年とか五年でやるのならば足りますよ。それまで待たせればいいのですから。しかし、それまでは待てない。だから少なくとも予備費を出してでもやってくれるかどうか。ことしの三百二十万トンについて言っておるわけです。三百二十万トンの山をつぶす、つぶすのは緊急につぶすけれども、家の復旧は五年計画で、五年の後にやるというのならば、つぶすのも五年待ってくれ、こういうことになる。だから急いでつぶすのならば、急いで鉱害をおやりなさい。しりぬぐいもしっかりしてやってもらわなければ困る。だから、いまのようなあいまいな答弁ではだめなんです。これは大蔵省も来ていただいておる、農林省もおりますが、四年も五年も水がつくままの農地にしておいて、暫定補償を幾らくれるかわからぬような状態では、納得ができないのです。だからそういう場合には、買い上げてから少なくとも二年ぐらいで復旧してしまう。そうすると当然、無資力が多くなるから、三億やそこいらの金では足らない。これは十億とか十五億ということになる可能性が出てくるのです。それでは十億ないし十五億の金を本年一体支出するかどうかということです。ここの腹がまえをきめてもらわぬことには、本年の予算の四百七十万トンは、もし足らぬならば流用してでも、つぶすのは待ってもらう。あとのカラスが先になるというばかなことはない。だから、先のことを先にやってもらう。そのためには、ことし組んだ四百七十万トンの予算を流用してでもやる。こういうことをはっきりしてもらわなければ、これは納得ができない。どうですか、そこらは。予備費がだめなら、ことしの予算の流用で昨年の予算の不足を補ってでもやらなければ、どうにもならぬ。
  23. 中野正一

    中野政府委員 今後の石炭政策を進めていく上に鉱害処理ということが非常に大事である、またそれは急がなければならないという先生の御指摘は、そのとおりだと思います。その意味合いにおきまして、われわれとしても、鉱害の認定を事前調査によって急ぐ、同時に、無資力鉱害というものが非常に問題がふえてくることも確かでありますので、その意味合いにおきまして、予算上の十分な手当てをして、予算も請求したつもりでおります。したがいまして、無資力認定というようなものも急ぎまして、手続を迅速化し、これを優先的に取り上げて無資力鉱害の場合を急がせるというようなことでやりたいというふうに考えております。何しろまだ、予算が成立をして、今後の鉱害復旧を迅速化し適正に処理していくための必要な法律改正をいま御審議願っておるわけであります。私どもが前からお願いしておりますように、この法律をできるだけ早く通していただいて、そうして実施を早くやりたい。実施をやった上で予算が足りないというようなことになれば、それはそのときにわれわれとして当然考えるべきことで、いま予備費をどうせい、予算を流用せいという議論はする必要はないのじゃないかと、私は考えております。
  24. 滝井義高

    滝井委員 いまするのじゃなくて、三十七年度三百二十万トンつぶすことになって、その中で現実の問題としてすでに出てきているということです。私の知っているところも、君の付近の家屋はこれから五年しなければできません、こういうことになってきている。幾ぶん早くしましょうということにはなりつつあるが、しかし二年でやるということになっていない。幾ぶん縮めるだけのことなんです。現実に三百二十万トンと出ているのだから。今度、来年度予算で四百七十万トン、さらにそれを五百五十三万トンにおふやしになっているでしょう。無資力予算はことしは五億かそこらです。これではとてもだめだというんです。三十七年度でも、三百二十万トンの中に十億や十五億はあるとわれわれは見ている。そうすると、ことしの四百七十万トンになりますと、無資力というものは二十億から三十億になりますよ。それだけ大きな額の負担が出ようとしておるときに、先のことだからそれはまだ予備費とかなんとか言えません、できるだけ十分に優先的に早く復旧をするというだけでは、納得がいかない。現実にそれが起こっておるのですよ。そのときには五年でなくて、二年なら二年でやれるように、ことしの予算を使ってでもやりますという言質をもらわぬことには……。われわれは来年のことを言っているんじゃない。去年のことを言っているんですよ。去年ができなくして、どうしてことしができますか。鉱害の処理はいま進行中なんです。去年のをまだやってない。ですから、そこらあたりを予備費ででも、補正予算を組んででもやりますという言質を得ないことには、法案の審議をしても意味がない。大蔵省はどういう考えをこれについて持っているかということです。無資力が増加するものについて、予備費の流用その他を認めるかどうかという問題です。
  25. 田代一正

    ○田代説明員 ただいま滝井先生からいろいろお話がございましたけれども、先ほど石炭局長からお話がありましたように、大勢としましては確かに無資力という分野がふえるということは、調査団の答申にも書いてございますし、われわれもそういうふうに考えておるわけでございます。何ぶんにもそれの処理という問題に関しましては、通産省その他にいろいろ御意見も聞きまして考えなければいかぬ問題でございますので、先ほどから短兵急に、予備費を使うとかいろいろなことをおっしゃいますが、私はいまの段階といたしましては、すぐ予備費を使うということをここで申し上げる段階ではないと思っております。よく石炭局のほうの事情も伺いまして、研究をさしていただきたいと考えております。
  26. 滝井義高

    滝井委員 短兵急でなくて、現実に三十七年度の処理で起こっておるのですよ。たとえばわれわれのところで、一億の鉱害がある、家屋と農地を復旧しなければならぬ、ところが金がないから、これは五年かかりますと復旧事業団が言っている。農民は、そんなばかなことはない、買い上げられるために三年も四年もかかっておって、買い上げてから復旧が五年もかかったら、われわれ農民はどうして生きていけるんだ、われわれの家屋は雨ざらしになってしまうじゃないかという不平が出ておるのです。二年に繰り上げてくださいというのが、無資力に対する現地の要求です。したがって、政府石炭政策でことしは予算の四百七十万トンよりかさらに百万トン多い五百五十三万トンからつぶされようとしておるのだから、そのあと始末の鉱害についても無資力が多くなります。そのことはあなたもお認めになっておる。そうrると、無資力についてたっぷり予算を組んでおかなければ、われわれとしては納得がいかない。それを短兵急に言ったって予備費の流用がつきません、いまの予算でけっこうです。こう言ったって、ことしの予算はなるほど五億かそこらかもしれません、しかし去年は三億ちょっとでしょう。それでは足りませんということが現実にはっきりしてきているのです。なんなら参考人として次会にでもここに事業団の天日さんを呼んで意見を聞かしてもらったらいい。明らかですよ。やっていけない。東京で短兵急に言うな言うなといったところで、現地がそう言っているのだから、われわれはその意見を代表して言わざるを得ない。当然そういうものについては、ここで、足らなければ予備費を流用しますと言うべきだ。去年のことを言っている。ことしのことはまだ言っていないんです。その去年でさえできないのに、ことしはまた同じくらいの額を計上して、そして去年よりかさらに多い山をつぶそう、去年の二倍程度の山をつぶそうというのですから、無理なのです。そういう無理なことをわれわれは納得できませんよ。納得できないことを無理しても先におやりになろうとすれば、まず先のカラスを先に飛び立たしてくださいということなのです。これは無理でたいですよ。あなた方がどうしても明言できぬというなら、何もこの法案はあわてる必要はないのだから、われわれは言明できるまで待っておってもいいです。どうですか政務次官、私の主張は無理ないでしょう。三十七年度のことを言っているのです。それをいま主計官は、短兵急に言ったって、通産省の意見を聞かなければだめ、だとおっしゃる。しかし現地は金がないから、五年間ぐらいかかりますというのを、無理を言うて三年くらいに縮めることはできたが、二年ではやってくれない。家をだんだん復旧し始めて、隣は高く上がったけれども、隣は上がらぬで三年もほったらかしておったら、水がついてたいへんです。だから、やるなら一挙に二年くらいの間にやってもらわなければしょうがない。それの方が暫定補償の金が少なくて済むわけです。無資力になったら、迷惑料も何ももらえないですよ。家屋の復旧なんか、低地の湿気の多いところに二年も三年もほったらかされておったら、健康上にも悪い。リューマチが起こったって、国に賠償を要求したって取れるものでもないでしょう。そうすると、早くしてもらわなければならぬ。だから、三十七年度についてそういう状態があるならば、予備費を計上してでも、あるいは補正予算を出してでもやりますということの言明をもらわぬことには、われわれは引き下がるわけにはまいらぬでしょう。
  27. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 滝井委員のおっしゃることはまことにごもっともでありまして、また被害者の御難渋の立場を考えますと、当然急いでやらなければならぬ問題であろうかと考えます。そこでわれわれといたしましては、総合的に在来の予算を十分活用いたしまして、万全の努力を傾注いたしまして、そして金が足らないということになりましたならば、そこでまた何とかいい知恵を出しまして対処してまいりたい、そういうところできょうはひとつごかんべん願いたいと考えます。
  28. 滝井義高

    滝井委員 不足した場合に予備費を流用したり補正予算を組むということを、どうして言えないのですか。当然のことでしょう。しかも私は来年のことを言っているんじゃない、あるいは今年のことを言っているんじゃない。三十七年度分のことを言っている。三十七年度に三億七千五百万円くらいですか、無資力はそのくらいお組みになっているわけでしょう。それでは、現地の天日さん、鉱害復旧事業団あたりの意見をお聞きになってごらんなさい、どうにもならぬと言っている。どうにもならぬと現地で言っているのに、ここでそう短兵急に言ってもしょうがない、速急にやるだけだというのでは、われわれは下がるわけにはいかぬわけです。しかも現実に現地の末端に行ったら、いま言ったように、一億の鉱害があるのに、ことしは二千万かそこらしかできませんよ、これは四年か五年かかりますと言われているのですよ。現地の農民なり、家屋の被害者が言われているのです。だから、それではたいへんです。そんなことではとてもわれわれは納得ができぬと言って、下からわれわれのところにつき上げてきているわけです。それを言っている。あなた方の現地責任者も、とても早くできないと言うし、現地の農民なり、家屋の被害者も、いまの状態では不満足だ、こう言っているのに、政府当局が、いや三億七千万円で十分だ、足らぬときにはいつでも十分金を出しますというのでは、おかしいですよ。だから、これはあしたまで待ちましょう。もう一ぺんよく九州のほうと連絡をしてみて、それで天日さんから、これで十分です。鉱害復旧は二年くらいで無資力はやれます。こういう言明を得るならば、それでけっこうです。あしたまで質問を留保しておきます。
  29. 中野正一

    中野政府委員 いま滝井先生のおっしゃった問題は、具体的な点をあげて言っておられると思いますが、そういう具体的なケースにつきましては、われわれも事情は知っております。また被害者の立場も十分考えて、復旧事業団をして工事を急がせる、またある程度、できるだけの期間の繰り上げということも考慮しております。ただ現実の問題としては、予算の問題だけでなくて、たとえば事業団の設計能力に現在のところまだ非常に限界があるとか、工事を繰り上げるについては、いろいろ支障になる点もあるというふうに聞いておりますので、そういう点を総合的に考えてひとつ工事の繰り上げ、あるいは事業の計画の決定を急がせる、そうしてできるだけ被害者の方々の希望に沿うように、われわれとしては現実に努力をしておるつもりでございます。
  30. 滝井義高

    滝井委員 現実に努力をしておるのはわかるけれども、金がなかったらこれは動かないのですよ。これは予算がついていなければ、話にならぬですよ。法律で、予算がなかったら行政はできないんだから。それは中野さん、われわれもよく知っての上の質問ですから、子供だましでは困るのです。これはいまの答弁では満足できぬですから、委員長、あすまで留保しておきます。  それからいまのと関連をして、あなたのことばの中にもありましたが、私ちょっとお尋ねしようと思ったのだが、設計能力その他があるとおっしゃった。いまの熊本農地局、それから福岡の通産局、それから復旧事業団、合理化事業団、これらのものの能力からいって、鉱害復旧というものは、どの程度の合理化のトン数に見合った復旧能力があるのか、これが一番大事なところなんですよ。お金にしたら一体幾らぐらい、トン数にしたら幾らぐらい復旧の能力があるのか、これが大事なところです。それを、能力のことがあるから金は計上されぬというならば、まず、そこらをひとつやってもらいたいと思う。それは一体どの程度ですか。
  31. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 いまのお尋ねでございますが、トン当たりどうというようなことには、まだちょっと換算がございませんが、鉱害復旧で特に一番大きいウエートを占めるのは農地でございますが、これが、大体従来の復旧事業団を通じます実績、年間にできます能力、全国平均四百五十町歩ということであります。しかしことしの予算につきましては、これは各事業団に非常に要請いたしまして五百五十町歩、百町歩増という形で計画を組んでおるわけでございます。家屋につきましても、大体平均千戸ということでございます。この辺につきましては、幾分ふえてはおりますが、その程度の考え方になっておるようでございます。これは先ほどから局長も申し上げましたように、いろいろ設計能力の充実、技術者の拡充ということに何とかつとめなければいかぬ。私どもとして、今後の対策としては、合理化事業団も、弁済計画の作成というものを通じた設計技術者がおります。復旧事業団にももちろんおります。それから農地局あたりにも、いろいろそういう方々もおりますし、いろいろ基金制度もできたり、そういうことを通じて、技術者をプールして使って、この能力をふやすということで対策を立てていきたい。したがいまして、先生が先ほどからおっしゃっておりますように、確かに現状では、復旧事業団がいまの体制では処理できないということがあるかと思いますが、この七月以降、法律を通していただきました後に、その点をよく考えまして、まず能力の拡充を行なう。それによりまして、秋の農地復旧というものの設計を早急に、従来のテンポではなしに、繰り上げてやる。その結果、鉱害処理というものもふえてまいります。それから、無資力も先ほど五億というお話がございましたが、その辺は、現地のほうでそういう声があることも聞いておりますが、私どもとしてはその内容を、合理化交付金あるいは補助金の支出の仕方というものをよく検討いたしまして、ことしになりまして三億六千くらいの数字でございますけれども、これで十分にいけるかどうか。さらに、これは予算の基礎として出しておりますので、いわゆる一五%で何も頭打ちをしなければいかぬということはございません。したがいまして、有資力の部分の中で復旧事業団の事務経費の負担というものも今度ふえましたし、そういうものとあわせましてこれを高めていく。そういう努力をいたしましたあとでなお不足が出るということが、これからの数字で明らかになりますれば、先ほど政務次官がお答えしたように、いろいろ改善の努力を払う、こういうことに考えております。
  32. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これでどの程度の山をつぶしていいかということが、逆算して鉱害の面から出てくるのです。私たちはやはり、山をつぶそうとすれば、雇用計画、いわゆる再就職計画鉱害復旧計画がそれに見合っていかなければならないと思います。いままで鉱害復旧計画が無視されてきておった。そうすると、いまの逆算をしていくと、農地でいえば五百五十町歩が限界だ、大体四百四十町歩だが、無理をして、技術者その他をプールして使うと、五百五十町歩ぐらいいける。家屋ならば千戸だ。まさにそうなんです。そうすると、それ以外の山をつぶすことは、鉱害復旧をいたずらにおくらせることを意味する。一年にそれを越える以上の山をつぶすことは……。ここですよ。これが一つの限界です。いずれこの能力さえわかれば、今度は五百五十三万トンをつぶすときに、どのくらいのたんぽがつぶれ、どのくらいの家屋を復旧しなければならぬかということがはっきり出てくるわけです。こういう科学的な最後の締めくくりをやることを基礎にしながら、合理化計画というものは進めていってもらわぬと、何でもかんでも会社の経理のことばかり考えて、つぶしてしまえば、あと会社は助かる。しかし、あとの住民と労働者は泣いている。そういう片手落ちの政策は、保守党の政策ならばいいですよ、社会党の政策はそういう政策を許さぬ。保守党の政策ならばいい。中央直結の政治ならば、それでいいかもしれない。大企業に奉仕する政治ならば、それでいいかもしれませんが、社会党の政策は絶対にそういうことはとりません。だから、やはり私たちとしては、この復旧計画のことをもうちょっと明白にしてもらわなければいかぬ。三億六千万だそうですが、三億六千万ではできないと現地が言っているのですから、できないものをこれでどうしてもいこうということで、予備費もそれから補正予算についても一切口をつぐんで語らぬというならば、それはそれでもけっこうです。それでもけっこうですが、それは不親切というものですよ。現実にできないと言ってきているのですからね。だから、それはケース・バイ・ケースと言うけれども、ケース・バイ・ケースで、陳情したところにはやるけれども、陳情しないところにはやらぬというわけにはいかぬです。こういうものは、全部陳情政治を廃止して、平等にやる形を私はとるべきだと思うのです。これはどうもいまの答弁では納得がいかぬですから、もうちょっと留保しておきましょう。  次は、たくさんありますから重要なところから先にいきますが、第二会社です。今度有沢さんの答申大綱の中にも、政府石炭対策大綱の中にも、「石炭鉱業の第二会社化は原則として認めないこととする。ただし、雇用対策上真にやむを得ない場合において、労使双方が必要と認めるときは、この限りでない。」こういうことになっておる。「このため所要の規制措置を講じ、不当な第二会社化を抑制するものとする。」こうなっているわけですね。いまのは有沢さんのほうの答申大綱。石炭対策大綱も大体同じようなことを書いております。そうしますと、この場合にお尋ねしたいのは、まず第二会社に移行するためには、保安の臨時措置法で坑口の使用の許可が要るわけですね。附則で書いておる。これは第一会社閉山をするのです。閉山をすることは間違いないのです。閉山をして、今度そこに第二会社が生まれて、その第一会社の坑口を使用することになるわけです。そこで閉山という現実に立ちまして、閉山をしたら鉱害復旧はきちっとやってもらわなければならぬことは当然です。だから、まず第一にお尋ねをしたいのは、その第一会社の鉱区内の住民に対して、ニュー・スクラップ方式におけると同じように、鉱害の届け出をまずさせるかどうかということです。第一会社閉山方針を決定した。そうしたら、まだ閉山するまでには期間がありますから、そこで六カ月なら六カ月の期間を限って、政府は速急に全鉱区の住民に対して、鉱害被害の申告をさせてもらいたい。ちょうどニュー・スクラップをやるときには、全部させますからね。鉱害があるかどうか申し出なさいと、申し出をさせるでしょう。あれと同じようにやらしてもらえるかどうかということです。
  33. 中野正一

    中野政府委員 第二会社、これはもちろん石炭対策大綱でも、有沢さんの答申でも、好ましいものじゃないということがあります。しかし雇用対策上真にやむを得ない場合で、労使双方が合意した場合に限って例外として認めるということを言っておりまして、その通りにわれわれとしては実施していきたいつもりでおります。ただ、いま先生が御指摘になったように第二会社というのは閉山ではなくて、山としては残る形になるわけでございます。もちろんそのときも、鉱害処理等については十分行政指導によりまして実情を把握して、その鉱害処理が適正に行なわれるようにやることはもちろんでございます。ただ、そういう場合に全部鉱害の被害者から届け出をとるというようなことは、制度的にもございませんし、これは別途の方法で実情把握ということは並行して実施していきたいというふうに考えております。
  34. 滝井義高

    滝井委員 制度としてはないですけれども。これは閉山ですよ、閉山をして、今度は新しい会社ができるのですから。われわれはこれは継続しておるものとは思っていないです。全く別な会社ができるのですから、閉山であることは間違いない。だからみんな、いまの合理化審議会でも、たとえば三井三山は閉山だ、こう言っている。そうして今度第二会社が生まれる、こういう議論でしょう。これが継続しておるならかまわぬですよ。三井鉱山が全部責任を持つ、三菱なら三菱が全部責任を持つ、古河なら古河が全部責任を持つ、これならかまわぬ。そうじゃない。これは鉱業法上そうじゃない。原因というのは作為者が責任を持つのですから、第一会社のものは第二会社責任を持たない。だから明らかに違うのです。したがって第一会社のものか、第二会社のものか明確に区別するためには、第一会社閉山を宣言する前に、少なくともそういう決定を政府がする前に、ちょうどニュー・スクラップと同じですから、いわば合理化政策をやるのですから、やはり届け出をさせることは当然だと思う。もしあなた方がこれができないというなら、ぼくは一人でもがんばりますよ、そういうことにならないように。政府がかってに坑口を使用させるというなら、私はこの前も反対したのですが、これは反対します。絶対にそういうことをしてもらったらいかぬ。第一会社鉱害というものはどの程度あるかということを確認してもらわなければ、住民はたいへんです。なぜ私がこういうことを言うかというと、私自身の経験がある。私の家があるところは、かつては鈴木商店のものだったのです。ところが鈴木商店が台湾銀行から金を借りておって、そうして経済恐慌で倒れた。そうしたらこれがその次に今度はどこになったかというと、麻生鉱業になった。中間に何かちょっとありましたが、麻生鉱業になった。そうして今度は水が入ってだめになった。いわゆるたぎりに突き当てたということになった。そこで今度は、次に野上が来た。ところが今度野上の鉱区を籾井が盗掘したということになってしまった。四代かわった。そうしてわれわれの家を一体、だれが復旧をしてくれたか、やっと四代目になって復旧ができるようになった。それも二年かかって、盗掘だ、盗掘でないということを二年間通産局を中心に論議をして、ようやくきまった。しかもそれは、私という衆議院の議員がおったからこそきまった、こういう実態ですよ。だからこれがもし第一会社から第二会社に私の家の付近がなる、そうすると第二会社は、今度は租鉱権に出す、租鉱権者がまた何かわからぬところにやらしてしまうというようなことになってしまったら、これは最後は無資力になってしまって、何が何だかわからぬ。だめになってしまう。こういう強硬な、われわれからいえばドラスチックな政策をおとりになるわけです。第一会社が急に小さな第二会社に変化していくんですから、これは遺伝学的にいえば突然変異みたいなものですよ。そういう突然変異的な政策、いわばドラスチックな政策、これは社会党が天下をとってもこうはできまいという政策を保守党の政権で、資本主義下でおやりになる。資本主義下ですから、住民の権利は守ってもらわなければならぬ。だから第二会社に渡るときには、ニュー・スクラップにかかった会社に対して全住民が鉱害がありますという申告をさせるように、すべきだと私は思う。当然これはやらせるべきだと思う。法律になくても、行政指導上やらせるのが当然です。これはどうですか、政務次官、当然やらせるべきだと思う。法律にないからそんなものは私のほうは適当に処理しますということになれば、これは納得できない。
  35. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 何らかの方法によりまして、別途確認手続をとりたいと思っております。一々届け出制ということになりますとたいへんなことになりますので、事務的に何か確認のできる方途をとりたいと思います。
  36. 滝井義高

    滝井委員 たいへんでも何でもない、全部ニュー・スクラップでやっているのですから。矢野さん、やっているでしょう、全部届け出させるのでしょう。被害住民に対して届け出を一筆ごとにさせる。農地は農地、家屋は家屋と一筆ごとにやらせるのですよ。これはたいへんでも何でもない。全部やっているのです。やっているでしょう。
  37. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 お説の通り、交付金を受けて閉山する場合には、閉山決定後公示いたしまして全部申し出をさせる、こういうことになっております。
  38. 滝井義高

    滝井委員 その通りやっている。したがって、第二会社に移行することを政府が決定する前に、少なくともこれは二カ月あったらできます。それはみな目の色を変えて一生懸命にやります。それは自分の祖先伝来の家屋が生きるか死ぬかの大問題ですから。したがって、これは当然やらせることが普通で、もしここであなた方がそんなことさえやらせ切らぬということなら、第二会社は待ったをかけざるを得ないのです。有沢さんにここに来てもらって待ったをかけざるを得ないのです。どうですか、そこで言明できなければ、あす大臣と相談してもかまわぬです。これは政治的な判断で、法律にはないのですから……。
  39. 中野正一

    中野政府委員 いまの御指摘の点は、閉山で、しかも政府で買い上げる、これは旧方式と新方式とありますが、いわゆる交付金を渡すという場合に、被害者の届け出を待って、しかもその交付金を適正に未払い賃金あるいは鉱害処理、優先債権、一般の中小企業の売り掛け金等に配分するわけですから、そのときには当然これは鉱害については被害者から届けをとって、しかも買い上げを申請した会社鉱害処理計画というものをきちんと出させる、そうしてそれを合理化事業団が確認をして、しかも被害者に合理化事業団が直接に金を渡すような仕組みにしているわけです。これは当然、私はそのくらいの慎重なやり方をするのはあたりまえのことだと思う。しかしいまの御指摘の場合は、閉山ではなくて第二会社がある、残るのですから、その場合とは違えて当然だと思います。しかしこれは御指摘があったように、鉱害処理ということは非常に大事だから、第二会社をつくるときには別途の方法で鉱害がどれくらいあるか、これをどうするかということは、別途の方法でわれわれとしては調査をし、確認をして処理していかなければいかぬと考えております。閉山の場合と第二会社の場合とは事情が違うわけですから、その点は先生もよくおわかりのことじゃないかと思っております。
  40. 滝井義高

    滝井委員 それは事情は違いますよ。事情は違うけれども、臨鉱法で復旧する点については同じです。それから、無過失賠償責任鉱害を受けたという点についても同じなんです。違うところはただ、買い上げられるか、買い上げられないかの違いだけなんです。しかし、これは有権者であるということについては同じです。どちらも金を持っているということについては同じなんです。臨鉱法にかかるんです。無資力の場合も臨鉱法にかかる。買い上げられたら、金のある限度においてやらなければならないのだ。それから先は無資力になるかならぬかの問題で前は同じです。だから、同じものをあえて違うと言う必要はない。鉱害復旧をやらなければならないことは、たとえ第二会社になろうとなるまいと同じだ。滝井鉱山が第二会社をつくる、滝井鉱山は第二会社責任を持たない、連帯責任はあっても、第二会社鉱害には金は出さぬ。そんな温情ある資本家は日本にいない。第二会社が損害を与えたものにやることはない。鉱害復旧はその原因をつくった作為者でなければ持たない。だから第一会社のやったものについては、第二会社に移行するときに明白にしておく必要がある。第二会社のものはまた第二会社でやったらいいんです。私も専門家ですから、中野さん、間違いありません。ちゃんと交付金のときには金がもらえるということは全部知り尽くして質問しているのですから、これをこの期に及んで、住民から申し出させないというばかなことはない。第一、申し出なければ鉱害はわからないんですから、それを全部通産局に申し出させる。これはもしあなた方がやらぬというなら、ぼくらは国民運動としてやらなければならぬと思うんです。あなた方がやらぬというなら、全部閉山すると同時に、滝井鉱山閉山すれば滝井鉱山の鉱区内の住民に向かって、われわれは党の運動としてやらざるを得ない。これは当然政府でやらなければならぬ。そういうことさえやらぬというなら、五百五十三万トンという中で新しく追加した第二会社の分については、われわれは認めるわけには参らぬ。あなた方はそういう逃げ腰半分で重大な、人命にかかわるような問題を処理することはまかりならぬですよ。どうですか、政務次官、これは当然行政指導として全部の鉱区に出させることがほんとうだ。出させたものの中から、これは鉱害であるかどうかの認定をやったらいい。当然ですよ。それさえもできないというなら、鉱害復旧は踏まれたりけられたりです。
  41. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 先刻来お答え申し上げておりますように、何らかの行政措置によって十分確認の方途は講じたいと思っておりまするが、第二会社のための切りかえということにつきましては新しい届け出——普通の閉山の場合の届け出とは違いますので、さような方法をとりたいと思っております。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連。これは第一会社のためにも、第二会社のためにも、被害者側のためにもなるんです。なぜかというと、第一会社から第二会社に移行するでしょう。第二会社鉱害の処理のできない場合には、残った部分については無資力になる。ところが、これは無資力の判定ができないんです。なぜかというと、もし第一会社鉱害であるならば、これは第一会社という鉱業権者がいるんです。そうであるから、第一会社がおれが掘ったのではないと言えば、掘ったのでないということがはっきりみんなに確認できれば別ですが、これはなかなかうんと言わない。これはもとの鉱業権者があるから連帯責任だろうというんです。そうすると、無資力でもやれないわけです。逆にいうと。ですから第一会社から第二会社に移った際にはっきりしておいてやれば、これは第一会社分だ、それからこういうことはまあないのですが、第二会社が隆々としたという場合なんですが、こういう場合には連帯責任という問題も起こるでしょう。しかし第二会社が没落をしていった。そうすると、これは第一会社鉱害のときに発生をしてはなかったけれども、あるいはその後発生したものであるとか、あるいはすでに発生してそれが未確認であったとか、こういう問題が起こった場合には、無資力にも追いやれないという状態になる。現実にそういう例が起こっている。だからこれははっきりしてやったほうがみなのためにいい。無資力にもなれない。そして第一会社に行けば、これはおれの知ったことじゃないと言う、こういう場合はどうしますか。ですから、これは何らかの形ではっきり確認してやらないと、無資力にもできないという状態になります。
  43. 中野正一

    中野政府委員 いまの御指摘のような場合に、さっきから私がお答えしておりますように、交付金交付のときの鉱害被害者の届け出制度というふうなことは、私はとる必要はないのではないかということをはっきり申し上げます。しかし、いま多賀谷先生も御指摘になったように、鉱害責任をはっきりさせるということが、実際の鉱害処理についてはいいわけです。確認の方法は別途とりますということを私は申し上げておるわけであります。ただ誤解のないようにしていただきたいと思いますのは、それが第二会社へ移行の条件ではないということをはっきりしておいていただきたい。これは閣議決定においても、先ほど滝井先生が読み上げられたように、真に雇用対策上やむを得ない場合で、しかも労使双方が同意した場合に、政府としてはやむを得ずこれを例外として認める、こういうことになっておるわけですから、これはこれでわれわれとしては閣議決定の趣旨に沿い、また有沢調査団もはっきりそういうことを言っておるわけです。だから今度五百五十三万トンの場合、筑豊が百万トン削減したときの審議会の結論もそういうふうになっておるわけで、これはそういう話がついておるわけですから……(「そんなことは聞いてないよ」と呼ぶ者あり)例で申し上げたのでありますが、言い過ぎであれば取り消しますが、そういうことでありますので、鉱害の処理を円滑にやるための確認の方法は別途とるのが私は妥当であるというふうに考えておるわけであります。
  44. 滝井義高

    滝井委員 いまの御答弁で、届け出制度をとる必要はない、確認は別途やりますということだけれども、そんなことをしておったら、鉱業権者の言う通りになってしまう。私はこれは経験にのっとって言うのです。会社が第二会社になったら、責任者はみな東京に来て、現地にいなくなる。大手の炭鉱でもいなくなって、現地に残っているのはだれかというと、大てい責任のない者が残っている。そして、私にはそういう権限はありません、こういうことになる。第二会社に行っても、いや、第一会社のほうのことは私たちは知りません、私たちのほうは私たちがやります。こういうことになる。そしてだんだん斤先にでもなったら、目も当てられない。多賀谷君の言うように、みんな無資力になる。無資力になったらてれんばれんです。だから少なくとも政府の政策で雇用対策上ということは、政府がつぶそうとしたけれども、それだけの雇用をうまくやれないということでしょう。いまの炭鉱に働くよりはもっといいところに世話してくれるということになれば、いまの状態ならみなやめるでしょう。それができないから、やむを得ず置いておくということになる。したがって、雇用対策問題と鉱害復旧の問題は、事後処理の二大支柱です。その二大支柱の一つの問題である鉱害の問題について、第二会社に行くのだからこれはまだ生きていふと言うが、それは大違いです。もとの会社はそこでは死んでいるのです。鉱害復旧責任だけが残っている。だから、その責任の残っている範囲を明確にしておいてもらわないことにはたいへんだ、通産局の役人だけが来てやるのでは困る。住民から届け出を受けて、そして認定をしていく、こういう自主的な方法をとってもらわなければいかぬと思うのです。そういうことをやらぬから、もめが起こるのです。それが一体どうしてできないのですか。ニュー・スクラップでできて、これができないはずはない。閉山するのですから。だからそういう届け出をさせて、その届け出を採用するかせぬかは認定の問題ですから、その上で認定をしたらいい。何らかの方法で認定をされたらいい。それをここで届け出は必要ないから絶対にやりません、しかし認定は別途方法を考えます。こういうことでは住民は絶対納得しないですよ。いまでも鉱害があるのに、あとで私は触れますけれども、うんとあるのに、ないと言っている。そして和解の仲介等にかけてもなかなかきまらない。私のところに大きなお寺がありますが、門徒が全部で三百万円出してこのお寺の復旧をやった。ところが合理化にかけるときに、そのお寺のところだけぽっと切り離して、小さな炭鉱にやっちゃった。そうしてこの小さな炭鉱が掘っておったけれども、そのお寺の下をますます掘って悪くしちゃった。この掘っておった人間は、どこかへ行くえ不明になった。そうしましたところが、今度はもとの炭鉱に言いましたところが、通産局はどういう結論を出したか。それは破断角の外だからだめだ。門徒が三百万円出してやったけれども、この鉱害復旧の金はだれもくれない。そういう形になるのです。これは大手が第二会社になったところで、大手だって第二会社になってばらばらと今度は斤先に出してしまったら、それまでです。ですから、われわれそういう長い苦しみと桎梏の中に育ってきた筑豊の人間ですから、身をもって体験しておるのです。その苦難の道を体験しておるから、言うのです。あなた方みたいにのんきなことでは、第二会社に移行することをどうしても許すわけには参らぬのです。われわれ祖先伝来の受けた、踏まれたり、けられたりした、その鉱害に対しての叫びですよ。だから簡単に、届け出なんか必要ない、われわれが確認をしますということだけで、私どもは下がるわけには参らぬ。それなら池田総理を次会に呼んでもらって、大臣も呼んでもらって、ここでやりますよ。そして池田総理がなおその必要がないと言うならば、それはそれでまたいいですよ。そういうことはわれわれは絶対、地域の住民として納得できない。被害者の一人として納得できない。国会議員としても納得ができない。大きなもののためにはそういうずさんな方法をとって、小さなもののためには何もやらぬということでは、私は許されぬと思う。だから、これは絶対届け出させなければいかぬ。あなたたちが届け出をさせるかさせぬかによって、次の質問が始まるのです。そうしないと、次の質問に入れないのです。どうですか、政務次官、あなたのほうで御答弁ができなければ、届け出をさせないということになれば、私は次会にこれは総理を呼んでいただきます。
  45. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 届け出のこともさることながら、滝井委員のおっしゃることは十分私どもといたしましてもわかるわけでございますから、第二会社に移行する場合には、第一会社は第二会社と連帯いたしまして鉱害処理の責任を負って、被害者に対しまして、従前より不利とならないように十分配慮するということで、ひとつ御納得いただきたいと思います。
  46. 滝井義高

    滝井委員 その連帯責任を負うといっても、現実に、ここで私は炭鉱の名前を言うとぐあいが悪いから言わぬだけですが、大手の炭鉱が第二会社になったのは、たとえば田川の炭田、それから飯塚の炭田でも、幾らもあります。行って現地を見てごらんなさい、どういうぐあいになっておるか。あとで私は水道の問題を出しますけれども、どういうことになっておるか見てごらんなさい。一体やっておりますか。大手の会社が第二会社にしたあとにきて、全部鉱害復旧を引き受けてやっておりますか。第一会社のやった鉱害と第二会社のやった鉱害は、これは明白に区別しなければいかぬ。第二会社鉱害まで、連帯責任といっても、第一会社は見やしない。そんな石炭資本家は日本にはいないですよ。第一会社の分まで見るから、それで第二会社に移行させてくれという資本家はいない。第一会社は第一会社、第二会社は第二会社で、石炭は層が幾らもあるのですから、第一会社の掘った下を第二会社が掘るのです。そうすると、そこはおれが掘ったのじゃないという。先日井出さんが質問しておったけれども、通産局へ行っても、施業案や坑道のことなんかについて見せやしない。水かけ論です。いよいよとなれば、通産局は知っておっても知らぬ顔をしておるのです。それだけの不信感というものがあるのですから、この際やはり第一会社から第二会社に移行させるときは、届け出をさせて、そしてこれを判定したらいいのです。今度は新しい、鉱害調査員の制度ですか、そういうものができるのですから。だから連帯責任といったって、第二の掘った分までは責任を持たない、第二の堀ったもの全部待つというならば話は別です。滝井鉱山が第二会社の井出鉱山をつくった場合に、滝井鉱山が井手鉱山まで全部見てしまうというような  ことになれば、これはまた話は別です。
  47. 中野正一

    中野政府委員 先ほど来私が申し上げておりますように、第一会社から第二会社にやむを得ず移るというような場合には、その鉱害処理というものを円滑にやるために確認の方法はとります。ただ確認の具体的な方法については、先ほど来言っておられるのは、交付金をもらうときの届け出、これとは全然性格が違うわけですから、確認の一つの方法として届け出るというようなことで、いろいろ調査をするわけなんですから、その具体的な点は、石炭局でもうちょっと研究をして、いい方法を講じたい、こういうことを申し上げておるわけであります。先ほど来先生が言っておられるのは、交付金を交付する際の届け出、これは届け出をしてもらって、交付金を事業団がきめて、相手を一人々々確認をしてお金を渡しておるのです。今度の第一会社から第二会社に移る場合は山は残るのですから、いま政務次官が言われたように、第一会社、第二会社が連帯して鉱害の処理の責任を負って、被害者に従来より不利にならぬように十分配慮をするということを申し上げたわけであります。
  48. 滝井義高

    滝井委員 いまニュー・スクラップ方式で被害者に届け出させるというのは、なぜこういうことをやるのかというと、それが一番確実な方法だからなんです。その確実な方法をどうしてとらないかというわけですよ。これから滝井鉱山閉山して、いよいよ第二会社をつくろうとするときに、滝井鉱山分をひとつ確認をしてください。一番役所の事務を省くのは、住民から届けさせることです。そうすると、これは漏れなく出てくるのです。そうして漏れなく出てきたものを、実態調査をすればいいのです。それが確認の方法ですよ。それがどうしてできないのかということです。私はこだわるようだけれども、われわれはああいうような方式が一番いいという経験を持っておるのです。つけ出させることが一番いいのです。つけ出してもらいたいといってつけ出さなかったら、その者の責任なんですからね。あなた方が何らかの方法で認定したのでは、おれのほうでも鉱害があるのになぜ認定しないのだという問題が必ず起こってくるのです。つけ出さしておいて、それから先は切り捨てようと切り込もうと、これはあなた方の御自由です。科学的な根拠に基づいておやりになりさえすれば、それで納得するわけです。だから、どうして第二会社に移行するときに届け出をしないのか、われわれの経験でもこれが一番確実な方法です。だからあなた方がどうしてもできないというならば、そういう政策をおとりになった張本人の池田さんに来てもらわぬことにはお話にならぬですよ。だから、これも留保しておきます。
  49. 中野正一

    中野政府委員 再々申し上げておりますように、制度としてそういうものをつくるということになれば、私は法律改正か何かが要ると思います。(滝井委員「そんなことはない、行政指導でいい」と呼ぶ)したがって行政指導として、確認の方法として届け出なり何なりという具体的な問題は、私はやるということを申し上げておるわけであります。制度としてやるということではないわけであります。法律改正なり何なりでということになると思います。したがって確認の方法として、いま先生の御指摘になったようないろいろな方法があるものですから、これは十分研究いたします。
  50. 滝井義高

    滝井委員 法律改正をするならば、一項つけ加えてもらいましょう。いま審議しておるのですから、私は法制局と相談をしてつけ加えます。そうでなければ、われわれはこれを通すわけには参らぬですよ。法律改正をするならば、これは一行で済むわけですからね。事務手続として、第二会社に移行する場合には、必ず当該鉱業権者の所有する鉱区内の被害住民に対して届け出の義務を負わせるということを一、二行入れたらいいのです。わかりました。
  51. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 先刻来お答え申し上げておりますように、また、多賀谷委員からも御指摘がありましたように、何らかの方法によって確認するということは考えておるわけでございますが、その確認方法といたしまして、届け出をさせるというようなことも、一つの方法として十分検討いたしてみたいと思いますので、そういうところでひとつ御了承いただきたいと思います。
  52. 井手以誠

    ○井手委員 ちょっと関連して。  いま政務次官からせっかくの御答弁がございましたが、その点はこの法律案の審議に非常に大事な点だと思うのです。先般来問題になっておる上水道のこととこの点が、私は一番重点じゃないかと思っておるのです。私は当局の答弁、説明を聞いておりますと、第二会社に移させるために、そのことに目がくらんで鉱害のほうがどうもなおざりになっておるような気がいたしてなりません。あまりそんなに言われると第二会社に移すことができぬじゃないか、そういう気が先にいっておると私は思うのです。前の人が借金があった場合、すなわち鉱害を与えたような場合には、その人が鉱業権という財産を移す場合には、譲る場合には、やはりその借金を清算してから移すのが、これは世間的な常識じゃないですか。しかしそうかといって、いまの経済情勢からいって、借金を親会社が、従来の会社が払う力を持ちませんから、そこで今回のいわゆる整備資金などというものや、鉱害対策で特別の措置をしてやろうじゃないかというのが、今回の鉱害対策だと思うのであります。そうであるなら前のものが、譲ろうとする親会社が、その鉱害の処理をやろうとするなら、そこに一応のけじめをつけておく必要がありはしますまいか。あとの人が、たとえば非常に鉱区がふくそういたしておりますが、六つ、七つの坑道があるのに、その半分かあるいは二つを譲るような場合に非常に複雑になってまいりますよ。後日になって、この分は前の分の被害だとか、あるいはこの分は第二会社の分だということが明確には出てまいりません。現実問題としては鉱害は、前の親会社になかなか追及できるものではないのです。それは石炭局はよくおわかりのはずだと思うのです。そうであるなら、鉱害処理が今回の石炭対策の重要な一部面であるなら、第二会社に移行する場合には、前の人の分を一応清算するというたてまえに立って説明をなさることが、ほんとうじゃございませんか。もし石炭局長が言われるように、閉山のときと同じようにはできませんというならば、別途の方法を、みんなが安心される方法をこの機会にお示しなさることが、私は当然の責任であると考えます。  私はきょうおそく参りましたが、いまの質疑応答を聞いておりますと、それでは納得できません。私どもこの第二会社や租鉱権の鉱害対策で、お互いにずいぶん苦労してまいりました。したがって現状のまま、いまの答弁のままでは、私どもは承知するわけにはまいりませんから、どうぞ早急に対策を立てられて、そして納得のいく説明をこの審議中にお示し願いたいことを強く要望いたしておきます。
  53. 滝井義高

    滝井委員 中野さん、いま法律を改正せいということだから修正したいと思いますけれども、その前にお尋ねしたいのは、いまのニュー・スクラップ方式で届け出は法律の何条ですか。これは法律にないはずですよ。
  54. 中野正一

    中野政府委員 私ちょっと、さっき滝井先生に申し上げたのは、少し誤解を招いたんじゃないかと思いますが、いま言われたようにニュー・スクラップ方式の場合の届け出は、これは業務方法書でやります。したがって制度的にそういうものを——制度的にということを言われましたので……。私はいま井出先生もおっしゃいましたように、第一会社から第二会社に移る場合に、過去の鉱害というものの処理を十分にやっていかなければならぬということは、これはもう御説のとおりだと思います。したがってその一つの方法として、過去の鉱害についての確認ということは、ぜひやりたいというふうに申し上げておるわけであります。その一つの方法として届け出というようなことは、これはもちろん交付金の交付の際は非常に厳重な方法でやっておりますが、これは実際に鉱害被害者に金を渡すという問題でございます。第二会社の場合はそうではなくて、先ほど来申し上げておるように、鉱害の確認の一つの方法として届け出というととは十分考えられるということを申し上げておるわけであります。
  55. 滝井義高

    滝井委員 さいぜんは法律と言ったのですけれども、法律じゃないのです。業務方法書なんですよ。私も思い出したから言うわけです。そうしますと、この第二会社に移すのだって、省令か政令でお書きになったらいいのです。これはやってもかまわぬわけです。そこでいま中野さんは、法律だと言ったのだが、それは誤解があるといかぬというので、業務方法書になってきた。業務方法書でできるなら、あなた方のベースの中でできるのですから、これはあなた方のベースの中でできないはずはない。だから、何らかの方法で確認をするというなら、届け出をやらせるという答弁ができないはずはないのです。だからこれは私の勝ちだ、ですからどうです。やらしていいでしょう。
  56. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 先刻お答えしましたように、何らかの方法で確認しなくてはならぬわけですから、その一つの方法として届け出の方法というものを十分検討して御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。(井手委員「それは審議中に出して下さいよ」と呼ぶ)
  57. 滝井義高

    滝井委員 いま井出さんがいわれるように、これはぜひひとつこの法案を通すまでに確認の方法を、届け出の方式もひっくるめて出してもらいたいと思うのです。  次は、そういうように何らかの方法で確認されるというのだから、確認されますね。そうすると、当然第一会社鉱害復旧計画を立ててもらわなければならぬわけです。確認するだけではたいへんですよ、会社がもうなくなるのですからね。だからまずその次には、これに対する復旧計画を被害住民に明示してもらわなければならぬ。復旧計画を明示してもらうと同時に、今度は復旧計画に見合う財政的な裏づけをしてもらわなければならぬのです。それは、私どうしてそういうことを言うかというと、たとえば滝井鉱山というものは調査団が調べたところでは、これは日本一悪い会社であるという刻印を押されておる、そういう会社があったとします。そうすると、そういう会社が第二会社になっていって、復旧計画も何もやらぬで、鉱害を確認しただけでこの会社がつぶれたら、たいへんですからね。したがって、この滝井鉱山が生きておる間に、大臣が多賀谷君の質問に答えたように、四年ないし五年で鉱山復旧をやりますというのだから、その滝井鉱山が与えた鉱害は四年ないし五年のうちで、たとえば五十億の鉱害があったら、五十億の鉱害復旧に見合う鉱業権者の積み立て金は、きちっとやっておいてもらわなければならぬ。当然、賠償基金の法律もできましたから、国庫から金を借りるなら借りて、年度別にこういうふうにやりますということを明示してもらわなければならぬ。ここまでしてもらわないと、住民としては、おいそれとこの滝井鉱山を第二会社に移すわけにはいかぬ。これは逃げてしまいますからね。逃がすわけにはいかぬのです。これは大きな魚ですからね。へまをしておるとしっぽのところにいって、しっぽにはねられて、自分の命がなくなるのですから、被害者からいえば、これはしっかりとらえて、逃げぬように確実に最後のとどめを刺さなければいかぬわけです。そこまでこれはしてもらわなければならぬ。それはやってくれるでしょうね。まさかこれは第二会社だから逃げはしません、全部第二会社が引き受けますというわけには、これはいかぬ。だから確認してもらう。確認してもらったら、確認に基づく復旧計画、少なくとも四年か五年、その四年か五年かに復旧をする鉱業権者は、負担分の金を積む、これだけの処置を明示していただくと、これは第二会社に移行しても安心なんです。これはおやりいただくでしょうね、政務次官。
  58. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 政府といたしましてはそういうような方針で十分指導をいたしてまいりたいと思います。
  59. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、そういう方向でやっていただけますね。これは実行してもらわぬと、指導だけでは、千万とか二千万の金じゃないんです。これは、たとえば滝井鉱山なら滝井鉱山というのは、鉱害復旧でいえば百五十億とか二百億くらいあるんですから、小さい金じゃないんです。一億か二億じゃないんです。  では、ちょっとお尋ねしますが、今度第二会社に移行することを決定した会社があります。その鉱害の総額は一体どの程度とあなた方は見ておりますか。復旧費にしておおよそどの程度鉱業権者負担分について見ていますか。これはいままでおおよそ調査があるはずです。もう明治以来掘り続けている炭鉱ですから、およそ施業案その他鉱区の地図はみな出てきているわけですから、専門家が見たらおよそどの程度の鉱害があるということがわかります。だから今度五五三の合理化計画をのぼせる、このうちに相当程度の第二会社があるわけでしょう。名前を言う必要はないですから、第二会社に移行することを予定される山の鉱害総額は、一体どの程度か。鉱業権者の負担はどの程度か、おおよその額でいいです。現状から見たらどのくらいあるか。将来さらにふえることは間違いないですから、減ることはない。
  60. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 予定されておる云々ということで先ほど井出先生からお話がありましたが、非常に答弁がしにくいのですが、滝井先生が質問になられる対象を想像いたしますと、私どもとしては、これは何度も申し上げるように、会社側のほうから出たヒヤリングの結果の数字でございますので、それをわれわれが最終的な確定はしておりませんけれども、昨年の答申のベースのときに会社から聞いた範囲としましては、大体五十億、これは会社負担額でございますから、鉱害量といたしますと、大体倍額、約百億をちょっと少し上回る、こういう程度になると私どもとしては見ております。
  61. 滝井義高

    滝井委員 会社から言ったのが百億ですね。会社というのは低目に、小さ目に言うのが常識です。そうすると  五十億でしょう。滝井鉱山はたとえば有沢調査団から、これはあぶない、このままにしておったらつぶれる会社だ。大体ニュー・スクラップでどんどんやらなければならぬ、第二会社にやらなければならぬ会社は、みな経理が悪い。だから今後、次の審議のときに聞きますけれども、経理規制の法律を出すわけですね。これではっきりしているわけです。そういう会社が今度第二会社に移行するような場合は、やはり復旧計画とそれに見合う資金計画として、行政指導じゃなくて、具体的に積ましておいてもらわぬと、これは百年河清を待つことになるのです。たいへんなことです。だから、これは行政指導じゃなくて、それを確実にやらせますということにしておいてもらわぬと、たいへんです。こういうところが、どうも検討が抜けておるんです。こういうのを、ざるというんです。底が抜けてしまっておる。ざるでは困るんです。やはりがっちりとしたセメントの水ためにしておいてもらわぬと、抜けぬようにしておいてもらわぬと困る。こういうしり抜けでは困るので、これはやらしていただくでしょうね。
  62. 中野正一

    中野政府委員 第二会社に移行することによって、被害者に対して従前より扱いが不利にならないように十分配慮したい。いま鉱害復旧の第一次の責任者は第一会社なり第二会社、企業自体にあるわけでございますから、これに対して、先ほど来政務次官がお答えになったように、行政指導はいたしたいと思います。ただ、鉱害の確認をして、それに相当する金を強制的に積ませるというようなことは具体的な問題でございますから、どういうような方法でやったらいいか、必ず積ませる、金を積ましてからでなければ第二会社に移ってはいかぬなんていうことは行き過ぎでありまして、そういうことでなくて、企業自体が鉱害処理については責任を持っておるわけでありますから、それに対して十分な行政指導をやっていきたいというように考えております。
  63. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、復旧計画なり、裏づけする資金計画については、積極的な行政指導をやっていく、それができなければ、どうせ最後は政府責任を持たなければならぬことになるでしょうが、そういうところで一応納得しておきましょう。  それから、さいぜんの石炭鉱業合理化臨時措置法の三十五条の二をごらんになると、ちょっとこれは法律になっておるような感じがするのです。「当該鉱区又は租鉱区に関する鉱害について賠償請求権を有する者は、六十日以上の一定期間内に事業団に対し権利の申出をすべき旨を公示しなければならない。」と、こうなっておる。これから業務方法書がいっておるのじゃないですか。そうしますと、これは法律になるわけですね。さいぜん私もうっかりしておりましたが……。
  64. 中野正一

    中野政府委員 いま三十五条の二を読み上げられましたが、これはもちろん手続をいっておるわけでございますから、先ほど来申し上げておるように、第二組合に移る場合の鉱害の確認の方法については、行政措置で十分できるということであります。
  65. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、業務方法書で、届け出をしなさい、こうなっておる。届け出をしない人は、今度は鉱害の請求権はなくなる。ここは問題点ですから、あとで質問する予定の中に入っております。とにかく、業務方法書で具体的に届け出をするということをいま論議しておるわけです。したがって、これは業務方法書であることに間違いない。ただしかし、その根拠はこの法律で、六十日以上に届け出る。だから、第二会社は業務方法書がないですけれども、われわれは、それに準じてきちっとやってくれ、こういうことなんですから、行政指導は必ず届けをやらせる、こういうことですけれども、それをあなた方がなかなかうんと言わぬから、それをひっくるめて確認の方法をこの法案が通るまでにここで発表してください、こういうことです。大体これで第二会社になる場合確認をするということは明言を得たのですから、その確認の方法は検討していただく。それから同時に、確認をしたならば、復旧計画資金計画についても十分、住民に被害の及ばないように、迷惑の及ばないように行政指導をしてまいります。これで大体はっきりしてきました。  次は、無権者、無資力鉱害復旧と有権者の鉱害復旧との間に、臨鉱法の面からいくと差はないわけです。しかし、これが迷惑料その他の金銭賠償的な面が鉱害復旧には付随しておりますから、そういう面になると、非常に大きな格差が出てきておる。冒頭に申し上げたように、最近における傾向は、非常に無資力鉱害が増加する趨勢にあるわけです。そうしますと、この格差を何らかの形において縮めてやる必要が出てきておる。それが復旧事業団における事務費の増加あるいはその中における暫定補償を入れるとかいうことでカバーされようとしておるわけですが、まず、格差の第一に大きな問題は、調査設計費、これがいままでないために、復旧事業団では、御存じのとおり、われわれが籾井炭鉱の処理でやったように、被害者にいく金の中から無理算段をして設計その他の金を持っていっているわけです。それを持っていかなければ、とても事業団はそんな金はないわけですね。いま四・八%くらいとるのですか、四・八%では有権者分であって、無権者分というのは全然ないわけです。四・八%というのは、いわば有権者分に対する調査設計などの事務費のぎりぎりのところとして三%ないし四・八%おとりになっておると思うのです。これをもう少しふやしていくと、有権者と無権者との間の事務費上の差がまずなくなるわけです。それから、暫定補償についても同じです。そこでお尋ねをしたいのは、あなた方がことし三億六千万円程度の無資力を見込んでおられるとすると、これは三%というと、千万そこそこしかないわけですね。これでは現地に行って家屋を一筆ずつ設計をやり、農地を一筆ずつ設計をやるということになると、とてもたいへんなんですね。これは実費弁償ということにしても、二%や三%はかかる。安い金では事業団がなかなか行きたがらないのです。さいぜんあなたが御指摘になったように、家屋あたりは千戸が限界だというときに、それ以上のものをやってもらおうと無資力が割り込んでくるわけですから、それではとても復旧事業団は動かぬですよ。こんなことを言ってはなんですが、三拝九拝しなければならぬ。三拝九拝しても、手が足りなければ行かぬわけです。これは現地に行ってみなければどうにもならぬわけですが、あなた方は一体この予算を幾らお見積もりになっておるか。ことしは調査設計費として幾ら、暫定補償として幾ら。
  66. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 先ほど申し上げましたのは無資力三億云々で、まさに先生御指摘のように、大体一千万強を調査設計ということに見込むわけであります。それから暫定補償につきましては、いわゆる農地に限りますので、これはたしか農地の事業費に対して一五%を予想しまして、大体千七百万くらいが暫定補償、こういうふうになっております。
  67. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この農地の復旧については大体三百二十万トンをやる場合に、どの程度の町歩をおやりになって一千七百万ということになるのですか。復旧する農地の暫定補償を支払う反別ですね。
  68. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 先ほど大体御説明いたしましたように、全体の事業量を三十八年度予算で五百五十と見ましたので、五百五十の一五%ということになりますから、大体百町歩近く、八十町歩くらいになるのであります。そういうふうに見ていただきましたらよろしいと思います。
  69. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、五百五十のうちの百町歩、五分の一程度農地は無資力になると見ておるわけですね。それが実際は五分の二とか三くらいに、三以上になる可能性があるわけです。農地がどの程度無資力になるかということを農林省はお調べになったことがありますか。
  70. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 無資力、有資力に着目いたしまして特に農林省として独自の調査を行なったことはございません。
  71. 滝井義高

    滝井委員 ああいう重政発言があるように、農林省自身が鉱害の農地復旧に対する熱意が非常に少ないのですね。だから農民は、農地局に行ったってだめだというので、通産局にばかり押しかけているわけです。ところが通産局自身も復旧計画その他は詳しいかもしれないけれども、やはり農地のことはもちはもち屋で、あなたのほうでもう少し積極的に通産省に協力して、あとで関連質問が出てきますが、石炭局と農地局とが一体になって農地の復旧をやる方針をよくお立てになる必要があると思うのですよ。そうしますと、暫定補償は出るけれども、農地における休耕補償というのは出ないわけです。そうすると農民は、無資力がだんだんふえてまいりますと、自分の田がいつくるかわからぬ、おまえの田は来年してやるぞというので休んでおると、いや、おまえのは来年はだめだ、再来年になったのだ、こういう場合だって出てくるわけです。そうすると、あわててよその苗しろから余ったものをもらってきて植えなければならぬという場合だって出てくるわけです。それから、年々補償がないですね。無資力になった炭鉱というものは、年々補償も払っておらぬ。それから休耕補償も無資力になるから払わぬ、暫定だけだ、こういうことになると、有権者との間に非常に差別が出てくるわけです。農民は全く自分の責任でなったのではない、政府石炭政策鉱業権者責任でなったのにもかかわらず、農民が生きていくかての源泉である農地の年々補償ももらえなければ、本耕補償ももらえない、こういうように格差が出てきておるわけです。これはどうして埋められないのでしょうか。また、農林省はどうしてこれを要求しないのかということです。
  72. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 二つ問題がございます。年々賠償につきましての問題でございますが、これはいわゆる臨鉱にかかってくる前の問題、もちろん先ほど先生がおっしゃるように、臨鉱に対するテンポを早くしろということはございますが、それ以外にも、鉱害の安定ということの後に手をつけますので、その意味では、要するに臨鉱のベースにはなってこないということでございます。したがって、これは当事者でございますし、現に九州あたりでは鉱業権者と被害者の農民組合が交渉をしまして、一応の基準をもってやっておるというのが現状でございます。これについて臨鉱対象というのは、われわれとしては制度として非常にむずかしい。したがってその対策としては、今後いわゆる合理化交付金によりまして、鉱害分として五〇%留保全がございます。これの中からとにかく優先的に払っていくという形で極力この解決をしたいと心得ておるわけであります。おっしゃるとおり、そういう面から見ても、この交付金範囲の問題としまして、年々賠償額が非常に多くなってしまうということは、かえってまた問題がございますから、その意味からも、臨鉱復旧を私どもとしてば今後は、直接的な計画としてはございませんが、国としては事前調査をベースとした実質的な総合基本計画というような形でものを考えるというふうにつとめてまいります。その意味におきまして、鉱害復旧事業団の機構その他についても、そういう体制に向くようにこの法律が通りましてからしでいく、こういう考えでおります。  それから休耕補償につきましては、大体従来の議論は年々賠償と同じような取り扱いで入っておりませんし、この点私どもとしては、復旧工事の間の問題でありますし、農林省の方ともよく相談をし、いわゆる災害復旧と申しますか、いろいろの復旧工事でありますとか、そういうものとの関係等考えながら、その対象になるかならないかはいま検討をいたしております。ただ現状では結論が出ておりませんので、私は、先ほど申し上げました年々賠償と同じように、交付金留保額の中から処理していくというふうにして、被害者が無資力、有資力によってアンバランスを受けるということがないように配慮していきたい、こう考えております。
  73. 滝井義高

    滝井委員 私がここで妥協するとすれば、年々補償の方は交付金の留保のものからやってもらってもいいと思うのです。しかし休耕のほうは、いよいよ鉱害復旧に入ってしまうのです。入るころにはどのくらい休耕になるかわからぬわけです。先の問題ですから、交付金がもう配分されてしまって、そしてあとになる可能性があるわけです。したがって、農民からいえば、農地が臨鉱にかかった、かかっておる間は耕作ができないから、農民としてはたいへんなことなんですね。その間、生活保護をやったらいいじゃないかといえば、農地を持っているから生活保護にはいけない。この問題については、私はやはり暫定補償と同じように見るべきだと思うのです。そうすると、それだけ有権者と無権者との差が縮まることになる。これは私は無理じゃないと思う。年々補償はすでに過去のものなんですから、過去は一応あきらめてもらいましょう。しかし臨鉱にかかった後の休耕補償については、これは当然考えてもらわなければならぬと思うのですが、この点は大蔵省の田代さんだってヒューマニズムはあると思うのですが、どうですか、田代さん、当然私は暫定補償を事務費で入れたならば——事務費で入れることは来年以降は問題があると思うのだが、休耕補償については当然これは私はやって、もらわなければならぬと思うのです。
  74. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 農林省、大蔵省とも一応まとめましてお答えいたしますが、おっしゃるとおり、私も、そういう理由は立ち得るのじゃないかという議論、もっともだと思っております。将来、問題としてよく研究いたしてまいりたい、こういう考えでございます。
  75. 滝井義高

    滝井委員 研究してもらうのはいいけれども、もうすぐこれは実施するのですからね。そんなによけい金がかかるものじゃないと思うのです。早くやってもらえば、休耕補償はそんなに多くなくても済むわけです。したがって、鉱害復旧のピッチを上げる一つの刺激済になる。これは大蔵省はよけいに金を出さなければならなくなる。矢野さん、なぜぼやぼやしているのだ、早く復旧をやれやれということになって、大蔵省は復旧の金をよけい出すことになるのですよ、休耕補償を出さなければならぬですから。そういう点で暫定と休耕とは、今後の鉱案復旧を促進する意味から速急に結論を出してもらいたいと思う。これは来年とか再来年とかいったって間に合わない。いま進行中なんです。農民がこういうことをあまり言ってこないからといって、放置しておくわけにいかないと思うのですが、この国会でこの法案が通るまでには結論を出してもらえるでしょうね。生活の問題につながっているのですから、待ったなしですよ。休んでいる間はめし食うなというわけにいかぬのです。
  76. 井手以誠

    ○井手委員 関連して。そうむずかしい問題じゃございませんよ。裏作の場合に復旧をやるのです。稲作の場合にはずっと区分して復旧工事をやりますから、裏作の場合に休耕するわけです。麦の場合ですね。冬の間に工事をやるわけですから、稲作の補償とはだいぶん金額が違うわけです。もしできるならば、いま打ち合わせて、せっかくの質問ですから、いま御答弁ができれば幸いです。そうむずかしい問題じゃございません。大蔵省もその点は御理解いただけると思うのです。
  77. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 ただいまの問題には、私どものいま相談の結果でございますけれども、農林省の立場からいいましても、いわゆる他のこういう災害復旧と申しますか、あるいは土地改良と申しますか、そういうような問題もあるようでございまして、いますぐといわれるのは非常につらいところで、とにかく前向きの形で研究さしていただく、確かに井手先生の御質問のように、すでに裏作の問題もあるわけでありますから、早急に検討の結果を出すようにいたしたいと思います。
  78. 滝井義高

    滝井委員 どうも早急に検討するといっても、もう予算が通ってしまって間に合わぬ、やはりこれは予備費か何かで出す腹をおきめにならぬといかぬわけです。  ついでですから同じことをもう一つやりますが、いわゆる家屋と水道の迷惑料です。無資力の場合に鉱害復旧をしようとする、そうするとこの家をどっかに移転しなければならぬのです。そうすると大きな農家ならば納屋か何かがあるわけですから、そこにちょっと行ってもらっておって、本屋をあげたら今度は納屋をあげる、こういう方法があるわけです。ところが店や何かしているところは、どうにもならぬわけです。こういう場合に一文も迷惑料をやらずに、無資力だからといって、おまえの家は復旧だけしてやるからというわけにはなかなかいかぬ場合が出てきているのです。これは実地にわれわれが当たってみて、なかなか不満が出てくるのです。こういうところまで、いわばこういう迷惑料のところまで、籾井方式というのですか、籾井の処理をしたのと同じように交付金を留保しておいて、それで全部片づけていくというところまで、鉱害量が多いとなかなかいかない。そうすると、こういう場合にこれを円滑に処理するためには、私、全部と言いたいのだが、全部といってもなかなか田代さんのほうがうんと言わぬでしょうから、やはり何ぽかプールの資金復旧事業団なりが持っておって、そうして、どうしても店その他があって情状酌量せざるを得ないという場合があるわけです。あるいは生活保護者の家庭があって、どうしてもこれは金がない、わしはやれません、市役所その他に行ってもなかなかうまくいかぬ、こういう場合もあると思う。そうするとこういう場合について何らか情状酌量をして、それをうまく片づける幾分の金を——ほんとうは私は迷惑料を全部やりなさいと言いたいのだが、そこまではきょうは言いたくない。何ぽかそこに自由裁量のできる金を復旧事業団に置いておかぬと片づかぬ場合が起きてくる。その金は留保した交付金の中から出しなさい。これは使い走りのじょうずなのがおれば、そういうことまでやれるときがある。しかし全部が全部そうはいかぬ。佐賀は井出さんが受け持つと言っておるけれども、佐賀全県下になると、なかなかそうはいかぬ場合も出てくる。だからそこらあたり私は、いまの休耕補償の問題と水道の迷惑料までというとなかなか範囲が広がりますから、やはり家屋の迷惑料については非常に特定の場合で、店その他があってなかなかやれぬ場合がある。店を閉じなければならぬですから、かわりのバラック建てを建てていかなければならぬ場合が出てくるのです。そうすると、そのバラックを建てる金もないという場合がある。そういう最小限度の迷惑料的なもの、そういうものを何ぽか考慮する必要がある。行政を円滑にやる上から、そういう必要がある。だからそういう点あわせてどうですか、一つ前向きに考慮ができますか。
  79. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘のあったような場合は、交付金の中で前向きのたいのですが、たとえば一億の交付金があった。ところが鉱害は一億二千万円もある。そのほかに迷惑料とか、休耕補償とか、それから暫定補償とかいうような現金賠償分が一億になっちゃった。そうすると、実際鉱害復旧にいく金はちっともない、農地と家屋を復旧する金はない、こういう場合が今後起こり得るわけです。その場合は、あなた方がいま言う交付金の中から交付するというのは、一億なら一億の交付金があります。その中から、いま言ったような迷惑料とか休耕とか何々とかいうようなものを一応ずっと支払ってしまうと、実は全額支払えないのです。こういう炭鉱というのは何年もたまっておるのですから、全額は支払えない。そうしてそれがたとえば六千万になっちゃった。未払い賃金その他も払わなければならぬから、そういうものも全部で六千万なら六千万になった。鉱害にいく分は四千万しかないんだ、あるいは鉱害にいく分は、債権者と未払い賃金と取られてしまうとゼロになる場合があるわけです。そういう方式でやってもよろしい、こういうことなんですね。そうすると、あとは一億二千万の農地と家屋の復旧は、無資力になって全部国が見る、こういう方式でやってもよろしい、弾力的な運用はそういう方式でよろしい、こういうことに理解してよろしいですね。
  80. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 債務の弁済の公平という原則がありますので、その意味において、いま滝井先生のおっしゃったような点についてはいろいろ議論がございます。しかしながら、大局的に見れば、そういうケースもやむを得ないのではないか。したがって、そういうものを必ずそういう原則でしなければいかぬという事柄は非常にむずかしいわけでございますけれども、まさに先生がおっしゃいましたような弾力的な運用ということで、個々の被害につきまして、そういう差別のない措置考えてまいりたいと考えております。
  81. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、整理促進交付金というものは、鉱害が非常に大きい場合には、まず金銭賠償分について優先的に充当をしていく、そしてあと残りがあれば、それは臨鉱に充てるし、残りがなければそれは無資力になっていく、こういうことで一応了承いたしておきます。  次は未発生鉱害、それから再発生鉱害、不安定鉱害復旧です。ニュー・スクラップ方式では、さいぜん言ったように、一定の期間中に申請をしなければだめです。それが二カ月間、六十日となっておるわけです。そうすると、その申請をするときにはたまたま鉱害は起こっていなかった、ところがしばらくしたあとに鉱害が起こってきた、これはあり得ることなんです。神ならぬ身ですから、安定をしていると思っておったって、それが安定せずに陥没が起こる。最初陥没等ではたまたま見るところですね。こういう場合の鉱害復旧はどうするかということです。その場合が一つ。それから、復旧をした後に再発をする。たとえば私のうちなんか、このごろ復旧してもらいました。蔵だけ復旧した。ところが復旧して三カ月もたたぬうちに、もう蔵に大きな干割れが入っているのです。最も典型的なものは、福岡県田川郡糸田町のたぎりです。これは全部の農地を復旧したわけです。ところが付近の炭鉱が全部やめたために、復旧したたんぽが今度湿田になっちゃった。水がどんどんわいてきたわけです。こういう、復旧をしてしまって、再び異常な状態が出てくる。たぎりが鉱害であるかどうかということは疑問ですけれども、明らかに鉱害であって復旧をした。復旧をして、付近の炭鉱がやめたために、欠乏しておった湧水がさらに再びあらわれてきて、復旧したたんぼが湿田になった、こういう状態が出ているわけです。こういう未発生鉱害に対する場合。もう一つ、届け出はしておるけれどもあらわれていないという場合があるわけです。そうして金は、いま言ったように、もう全部分けてしまっておる。あらわれていないのですから、配分額はちょっぴりしかいかない、こういう場合もあるわけですね。こういう三通りの場合に対するあなた方の見解を御説明しておいてもらいたい。
  82. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 今回の臨鉱法の改正によりまして、先生がおっしゃいました最後のところから申し上げますが、一応交付決定当時予想されてなくて、そのあとで鉱害が起きて、しかもその会社もすでにないというものにつきましては、今度の臨鉱法改正ができますと、復旧対象になるわけです。従来これがそこまで復旧ができなかった。これは無資力鉱害と同様にするということがはっきりいたしております。それからいわゆる二次被害の問題でありますが、これは先ほど御説明のありましたたぎりのような特殊な地区は、いろいろ議論がございますけれども、その被害が明らかに鉱害の二次被害であるということであれば、これは当然復旧対象になってくるわけです。要するに特鉱でやりましても、結局そのあとにまたいわゆる採掘による影響として出てくるということであれば、二次被害としてやっておるわけであります。したがいまして、そういうようなことで処理できるわけであります。  もう一つ、一番最初に返りまして、交付決定の間に、また、交付決定といいますか、交付金の決定があって告示があり、告示のあとに出てきた場合というのがございます。これは大体私どもの方の指導でございますが、法律として、既発成鉱害につきまして六十日以内に届け出なければ交付金に対する請求権は消滅することになっております。その問題の次に出てくる予想されなかった再発生鉱害で、まだ弁済計画鉱業権者がつくっているものにつきましては、弾力的な運用で鉱業権者の弁済計画に加えていくというようなことで現在指導を行なっております。大体三点につきまして趣旨を申し上げたわけであります。
  83. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、未発生鉱害なり不安定鉱害、それから再発生の鉱害については、今度の場合だと行政運営で大体できる、こういうことですね。そうすると、たぎりの場合はどうなんです。
  84. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 たぎりの地区につきましては、この問題は、まず鉱害かどうかという点、採掘がとまったということによる被害だということの調査一つあるわけであります。もう一点は、工事を施行いたしました場合の工法上の問題ということも、一つ現地被害者から話が出ております。そこで、これにつきましては、私ども農林省と共同いたしまして、農林省はことしの三月現地調査をされました、私どもの方は通産局で現地調査を終わりまして、その結論は大体今月の末という報告を聞いております。このときには学識経験者たる野口先生も行っておりますし、いろいろ現地の被害者の意見も聞いた上で、現在報告書の作成にかかっております。この両方の調査結果を総合いたしまして、鉱害によるものか、工法上の問題か分けてこの対策考えておるということでございます。
  85. 滝井義高

    滝井委員 方向として、これは何らかの形でやるにしても、国がやることになるのですか、鉱業権者がやることになるのですか。これは鉱害かどうかの再認定が必要だとおっしゃっているけれども、とにかく鉱害であったことは間違いない。だから復旧した。そうして、復旧する当時はまだ付近の炭鉱も生きていて操業しておって、水も揚げておった。ところが、その水をあげなくなったために、今度は湧水が起こる。これは理論的には当然なんですね。いままで過去何百年にわたって湧水があって、何百町歩という田をかんがいしておったのですが、付近に炭鉱ができて枯渇してしまって、特鉱のポンプができてかんがい水を与えておった。ところが、炭鉱がやめてしまう、湧水がぼつぼつ始まる。全部やめてしまったら、湧水が激しくなり、水口も変わったために、いままで湧水しておった以外のところに湧水が起こり、湿田になるということは、地質学を少しおやりになり、採鉱学をおやりになった人なら、常識的にそういうことはあの地区では考えられるわけです。ところが、鉱業権者はもう交付金を持ってどこかへ行ってしまったのです。岡山か何か、どこかに帰ってしまったわけです。そうしてなお、合理化事業団に八千万円か九千万円の迷惑をかけておる。いま合理化事業団は鉱業権者と裁判中だ、こういうことですね。ところがこれは農民としては、決定を待てば待つほど収穫が少なくなるわけです。そうして、暫定補償その他もようもらえぬ。こういうことになると、これは農民は大へんになるわけですね。だから早急に結論を前向きに出していただいて、鉱業権者は岡山かどこかに帰ってしまって、付近にはいないのだから、そうすると国なら国が責任を持って再復旧をやる。再復旧をやるならば、やはりこれは暫定なり休耕なりを見てもらわなければならぬ。こういうことが私は出てくると思うのですが、そういう方向でぜひ早急にひとつやってもらいたいと思うのです。あまり報告書その他で議論をしておると、農家はひぼしになりますからね。
  86. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 たぎりの問題につきましては、非常に現地民としても大きいことで、私どもよく理解しております。したがいまして、さっき申しましたように、大体調査の結果が今月中にできますから、早急に結論を出すということで前向きにすべて考えております。鉱業権者も確かにおっしゃる通り動いてしまっておりますが、あれはかつての合理化買収鉱区でございますので、その意味で、もし鉱害であるとすれば、それに対する連帯責任ということで考えたい。とにかく前向きに早急に結論を出すように、私どもとしてもいま努力をさしていただいております。
  87. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 滝井君に伺いますが、農林省はまだありますか。
  88. 滝井義高

    滝井委員 まだあります。これから農林省になるんです。  いまの、連帯責任復旧事業団がおやりになる、こういうことになっておるけれども復旧事業団はなかなか金がないですよ。特にあの地区については、復旧事業団は鉱害復旧をやるのはさんざんになっておるのですよ。もう寄りつかぬですよ。なぜならば、もう九千万円もよけいに出し過ぎて、当時の支部長さんは責任をとらされているわけでしょう。今度の支部長さんはあぶなくて寄りつかぬですよ。何ぼ出さなければならぬかわからぬのだからね。それは、あそこの鉱区については歴史的な経過があるのです。あの鉱区を買い上げるときに、ぼくら反対したのです。これは大へんですよ、あんまりあわてて交付金を渡すと大へんですよと言ったのだが、あわてて渡してしまった。そういう歴史的な経過のあるところです。しかも、これは今後われわれが再発生鉱害を処理する上での一つのモデル・ケースにもなるわけでありますから、できるだけ、合理化事業団ばかりに責任を持たせずに、通産局のほうも十分ひとつふんどしを締め直して、合理化事業団とともにやっていただきたいと思うのです。  次は、特鉱ポンプと農業用のかんがい水ポンプですが、これは福岡県を見てみますと、三十四カ所くらい特鉱ポンプがあるのです。それから井出さんが指摘しておった、相対で鉱業権者と農民が契約しておるのが四百五十八カ所あります。そうすると、こういうものが今後急激に合理化が進行するにつれて、維持管理をやらなければならぬ問題が具体的に出てくるわけです。今度特鉱ポンプについては、百十九万円くらいですか計上されておるわけです。ところがこれが三十四カ所ぐらいになってくると、これはとてもそんな金ではどうにもならぬことになるわけです。この臨鉱法の七十七条ですね、「かんがい排水施設の引渡等」というこの七十七条です。いまこれが動かないのです。七十七条が動かないのです。どうして動かないかというと、金がない。復旧事業団にこんなものをやる金がないのです。ぼくらから復旧事業団に、やってくれんかと言うと、そんなものは先生だめですよと言う。農林省と通産省はこの七十七条をはさんで大激論したのですよ。そうして毎年毎年こういう水の要るものに、毎年毎年それに対応した予算を組んでおったのでは、これは間に合わぬのです。やはり恒久的な施策を講じてもらう必要がある。そういう恒久的な施策というものは何かというと、やはり責任を持った基金を積んでやるということです。これはもう全国お調べになれば、特鉱ポンプなり、あるいは相対のかんがい水ポンプというのはそう多くないですよ。これは詳細にお調べになると大体すぐ出てくる。これは年間どの程度の維持管理費が要るかということになれば、その基金をどこかにお積み立てになって、そしてその基金から出てくる利子できちっきちっと恒久的にまかなってやる方法をひとつ出してもらわなければならぬということです。そうすると、農民は安心するのです。そうしないと、特鉱ポンプの予算が国の予算に計上されているかいないかということを、毎年われわれが心配しなければならぬ。こういう問題がいろいろある。だから、農民が安心して稲作に従事できるように、かんがい排水の問題が円滑にいくように、基金を積み立てる必要がある。毎年の予算では一々大蔵省に頭を下げなければならぬ、現地の農民は一々陳情に行かなければならぬ、こういう煩瑣な陳情政治を排除するためにも、私は基金が必要であると思う。これはどうですか。ことしは予算になっているのですか。今後これは急激に出てくる。  それから、いま炭鉱の維持管理をやっているのは、毎年ポンプを敷設していくのです。ところが炭鉱が苦しくなると、ポンプを敷設してくれないのです。私たちのところの経験では、もういまごろになりますと、農民はみな集まってその鉱業権者のうちに押しかけるのです。そうしてポンプをやってくれ、ポンプをやってくれと言う。ところが、ポンプをやるとすると、どこから引っぱるかというと、川から引くわけではない。われわれの地区では多く廃坑から引く。坑内水でやるわけです。ところが今度は、坑内水をやっていると、付近のたんぽに脱水陥落が出てくる。そうすると、この脱水陥落を一体どうしてくれるかという問題が、連鎖反応的に起こってくる。こういう問題が次から次に起こりますので、やはりこれは、基金を積んで恒久的な施設をきちっとしてやっておいて、農民が安心して耕作ができる態勢をつくる必要があるが、そういうことが確立されていない。さいぜん申しましたように三十四カ所、それから相対のものが、井出さんの御指摘になったように、鉱業権者だけでも四百五十八カ所ある。佐賀県それから長崎県、常磐、山口、北海道等を加えると、この数はもっと多くなるかもしれませんけれども、これを把握して恒久処置を講じておいてもらう必要があると思うのですが、どうですか。
  89. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 特鉱ポンプにつきましては、終閉山いたしまして責任者がいなくなったというようなものに対する措置は、御承知のように八三%の助成をいたしまして予算に計上いたしております。そうして地方自治体にやってもらうということにいたしておるのでありますが、御指摘の基金につきましては、前回も井手委員から同様な御要請の御発言があったそうでございまして、ごもっともな御趣旨だと思いますので、十分前向きで検討してみたいと思っております。
  90. 滝井義高

    滝井委員 炭鉱がなかなかポンプを敷設してくれたいから、いまでも植えつけができずに困るというところが出てきているわけです。こういうものの指導というものは、農林省としては実は全然やっていないのです。もう現地にまかせっきりです。だから、農民はみな泣いているのです。よそのたんぼがどんどん植えられて、自分のたんぼに水が来ずに植えられないくらい、農民にとって悲しいことはないのです。もう夜も寝られないのです。よそのたんぼは全部水をたたえて、どんどん田植えが始まる、自分のうちは、すいてはおるけれども、まだ水が足らぬ、田植えができぬということでじりじりしている。この悲惨な状態はもう筆舌に尽くしがたいものがあるのです。こういう点をもう少し早く何とかしてやらないと、炭鉱はいまのような合理化の問題に頭がいくと、人のたんぼに水を充てるどころではないのです。自分の炭鉱の坑内の水も上げられないような状態です。電気代がたまっているのです。電力会社に対する電気代が払えぬということで、もうどうにもならぬという状態です。それを、電力をたんぼのかんがい排水にまで持っていくなんてことはとてもできない、あと回しになってしまう。こういう実態ですから、ぜひひとつ基金を積んでもらいたいと思うわけです。  それからもう一つは、こういうポンプが古くなって復旧をする場合は、一体だれが責任を持ってくれるかということです。特鉱ポンプにしても、特鉱ポンプができるときには、たとえばわれわれのところでいえば、五つくらいの山が共同して金を出してやった。ところがもう、五つの山はあとかたもなくなってしまった。ポンプもだんだん調子が悪くなって、新しいポンプにかえなければならぬ、モーターや何かもかえなければならぬという場合に、さあ田植えがきた、やってみたらモーターがだめだ、かえなければならぬというときにはどうしておるかというと、町が出しておる。農民は町まで押しかけていく。そうして国がやらぬなら町がやっておけといって、町がやるわけです。こういうように再建設をするときには、一体だれが責任を持つかということです。ここらあたりが明白になっていない。もうだんだんポンプが老朽化してきつつある。こういう再建設のときには、いま言ったように、復旧事業団が買い上げたものは復旧事業団がやってくれるというならいいのだが、そうはいかぬ。復旧事業団でも、そんな金はないという。ポンプを新しくやりかえてくれというと、金がありませんという。先日私のところでポンプをとられてしまった。配管をしているパイプをとられた。かんがい水が充たらぬ。一体これは、だれがどうするのだ。それは農民が管理をしなければ知らぬといって、鉱業権者は逃げてしまう。そこでやむなく合理化事業団に行って、炭鉱の買い上げられたところのポンプを、今度は農民が金を集めて、あれは安いですから、割合安く買わしてもらった。しかもそのパイプはどこにあるかというと、長崎県にある。福岡県から長崎県までトラックを雇って取りに行った。金は四万か五万の安い金ですが、トラックを雇って取りに行った。農民はわずか一町かそこらの田を植えるために、それだけのことをやるのです。ここらの、再復旧の場合にはだれが責任を持って、どうしてくれるかということを、先のことを考えておいてもらわなければならぬわけです。いまの、維持管理費百十九万くらい計上したらすべてこれで終わりだというわけにはいかぬと思うのです。この問題はどうしますか。
  91. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 維持管理に属することにつきましては、公共団体にやってもらうことになっておりますけれども、特鉱ポンプが始まりましたのは昭和二十六年でございますので、耐用年数を二十年くらいと考えておりますから、そういうような時期になりまして、取りかえ、改善の必要が出てきたという場合には十分考えたいと思います。
  92. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩     —————————————    午後二時十四分開議
  93. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  鉱害関係二法案に対する質疑を続行いたします。滝井義高君。
  94. 滝井義高

    滝井委員 午前中に引き続いて、鉱害処理の問題を質問いたしますが、まず上水道の問題です。三十八年四月現在で、福岡県の閉山炭鉱で水道に関係するのが幾らあるか調べてみますと、四十六あります。それから現在山が操業中のもので二十一、それからビルド山が三十九くらいある。閉山した四十六が三十八年四月ですが、最近になると、これはもっと増加をしていると思います。大体その金が二億六千万円くらいかかるのです。この閉山炭鉱の上水道に対する政府基本方針というものは、一体どういう方針でやろうとするのか。先日井手委員質問に関連をして、二割五分、臨鉱法で四分の一の国の補助ではこれはどうにもならぬ、四十六も閉山した山で、福岡県だけでも二億六千万円もかかるのですから、とても四分の一くらいの負担ではどうにもならぬが、今後のこの閉山炭鉱における水道問題の処理というものは、どういう方針政府はいくつもりなのか、四分の一ではわれわれはとても満足ができない、こういうことで、ではこれは一応相談をいたしましょう、こういうことになっておったわけです。上水道の処理の基本方針と、あわせてその財政負担が四分の一よりか前進ができるかどうか、特に無資力鉱害については前進ができるかどうか、一応の概括的な御答弁をまずいただきたいと思います。
  95. 石橋多聞

    ○石橋説明員 閉山炭鉱経営しておりました専用水道が、閉山に伴いまして経営の主体を失っているわけでございますが、これらの施設につきましては、これを関係の市町村に引き継がせるという方針をとっておるわけであります。この際、本来ならばこの種のすでに水道ができているというものに対しましては、改良工事になるわけでございますので、国からの補助金というのは、現在の制度においてはないわけでございます。したがって自己資金または起債をもってその工事を行なうほかないわけでございますが、炭鉱地におきますところの市町村の特殊事情を考えまして、これらの水道の引き継ぎに際しましては、四分の一の国庫補助金を出しまして、残りの四分の三に対しましては全額起債にし、また経営上その起債の償還にあたって赤字が出るという場合には、特別交付税の対象として考えるということに現在相なっております。
  96. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、まず閉山炭鉱の水道関係は、市町村に引き継がせる。すでに引き継いだものは、水道があるわけですから、これは特別に四分の一の国庫補助を改良工事についても出す。普通は改良工事については出さないのだが、これを出します。四分の三は起債を認めます。その起債の全額について、元利償還について特別交付税を全部認めてくれるのですか。全額について認めるのですか。地方財政法では一部しか認めぬのじゃないかと思うのですが、全部認めてくれるということになると、これは相当の前進だと思うのです。
  97. 石橋多聞

    ○石橋説明員 炭鉱の水道は、従来ならば水道料金をとっていないものが多いのじゃないかと思うのでありますが、市町村に移管しまして市町村が経営するということになりますと、何がしかの料金は徴収することが必要になろうと考えています。この際普通ならば、起債の償還分も含めまして、それに維持管理費をプラスしたものが料金の原価となるわけでございますが、これらの特殊の地域におきましては、料金をそのような考え方で取るわけにもまいりませんから、その起債の償還分の幾らかは赤字になって、補てんができないという問題が起こるわけであります。これに対しまして特別交付税を自治省のほうにおいて考慮するということに相なっております。
  98. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと、問題が非常に混乱しますから、少し分けて質問をしたいと思うのです。  まず第一に、交付金が十分にある炭鉱です。ニュー・スクラップにかかって、交付金が十分にある、こういう場合における水道の処理の問題。この場合には、まず第一に、水道管を布設をしてやる地区は、当然鉱害を認定をしてもらわなければならぬわけです。たとえば恩恵的に水道を引いておったということを理由として、炭鉱がだんだん切っていく例が多いのです。だからまず水道を現実に布設をしておるところが全部鉱害地だという認定は、必ずしも成り立たぬ場合があるということです。いよいよどたんばになると、おれの方は恩恵で敷いておったのだと言う炭鉱がざらです。そして同時に、今度は鉱害になると、専用栓でなくて共同栓に炭鉱はするのです。そうしますと、いままで一軒々々にいっておった水道の鉄管が、いよいよ最後の段階になると、共同栓に切りかえられる可能性が出てくる。これは鉱害の認定の問題にも関連をしてくる問題です。こういう問題が一つ出てくる。同時に、いま水道を、炭鉱をやっておる間は布設をしております。なぜならば、水を揚げるからそこらの鉱区の全面にわたって鉱害が起こって、水がないわけです。ところが、炭鉱をやめると井戸の水が復活するのです。そこで水道はあるけれども、今度は炭鉱をやめて、炭鉱は全部政府が買い上げてくれたのですから、もう水道は要りません。なぜならば、一軒々々の井戸をはかってみたところが、みんな一メートル水がたまっております。だからこれは明らかに、覆水盆に返らずじゃなくて、水が返っております。これはもう水道は必要ありません、こうなるわけです。そこでどういう問題が起こってくるかというと、打ち切りの問題が起こるわけです。まず、百軒家がありまして、調べてみたら五十軒、半分だけはなるほど水が井戸にある。井戸にある水が金けの水であろうと何であろうと、とにかく水があるんだからということで、この水を保健所に持っていけということになるわけです。ところが、石橋さん御存じのとおり、遠賀川の水は科学的にいうと、ペーハーではかってみると、とても飲める水じゃないのです。子供が遠賀川の絵をかく場合には、まっ黒に水を塗るのです。そのまっ黒い水をろ過して水道に送るのですから、この水はほんとうの厳重な、いわゆる水じゃない。しばらく置いておくと、においがします。そういう水ですよ。厳重な水質検査をやると、遠賀川の水は飲めるものじゃない。われわれが専門家に聞いた意見では、これは飲める水じゃない、しかし水がないからやむを得ず目をつぶって飲ませるんだという意見です。遠賀川の水道の水でさえそうなんですから、井戸の水が幾分金けがあったり、においがしても、それはよろしいということになってしまう。そうすると、五十軒なら五十軒を打ち切りをしてしまう。井戸が復活をしておるということで、打ち切りの金を出す。そうして、あとの五十軒は水が出ない。五十軒ではとても水道がつくれません。だからいっそ、五十軒にも金を相当出しますから打ち切らぬかということになる。ここでトラブルが起こってくるわけです。百軒の住民の中で、五十軒は幾分金をよけいにやって、井戸の水が復活したということで打ち切る。そうすると、あとの五十軒で水道をつくるには採算が合わぬ。だから、これはとてもできませんということで投げてしまう。こういう状態が、交付金がよけいにあるところに起こってくる。そして鉱業権者はあとの五十軒についても、できれば鉱業権者の負担分だけの打ち切りをやって逃げようとするわけです。こういう場合に厚生省は、二十世紀の後半の原子力時代ですから、もう井戸の水よりか、赤痢その他を防止するためには当然水道でやるべきだという指導を積極的にやらなければならぬ。それをやらないのです。鉱業権者も、金があるけれども、水道だったらよけいに負担がかかるからやらない。そしてできれば一万か一万五千円で打ち切りをやった方が安上がりだということになって、水道の問題は停滞をしておるのです。こういう実態があるわけです。したがっていまのように閉山炭鉱における状態はばらばらになってしまって、やみ水道ができるわけです。だからその五十軒だけについては、いままである水源地から細々ととってやる、施設だけは残そう、それでよろしいか、よけいな積立金はできぬけれども、君たちが自主的にこれを管理するというならば幾分の金はやるぞ、こういうことで片づいちゃうのです。だから筑豊地帯に行ってごらんなさい、やみ水道がたくさんある。これが交付金があり余っている鉱業権者のやり方です。一つのモデル・ケースですね。ほとんどそういう形です。水道をつくると、水源地その他からいって大へんですからね。十分交付金のある人、有資力の者に対する水道の指導を一体どうやるかということです。これをひとつ石橋さんの方で、補助金を幾らにするとかなんとかいう前に、まず基本的な指導方針を立ててもらわなければならぬ、こう思うのです。
  99. 石橋多聞

    ○石橋説明員 ただいまの先生のお話は、閉山炭鉱の市町村移管の水道と若干性質を異にします。現在水道化していないところの地区に対する問題だと思います。ただいまの閉山炭鉱の水道の市町村移管の際に、従来その給水区域であったところの社宅その他一部のところ以外に、その水道の形態として、その付近にあります集落その他でこれにあわせて工事をやったほうが便宜であるという場合には、これらを含めて水道を計画するように、私のほうとしては指導するつもりでおります。また一部には、その鉱害の認定を受けました地域に対して、一方にその閉山炭鉱の専用水道があるという場合には、これらの両方をあわせまして併合工事を行なうということも検討しております。つまり補助申請書その他を書き分けまして、二種類の補助金を合わせまして一つの水道をつくるということも検討いたしております。
  100. 滝井義高

    滝井委員 私全部言ったからちょっとわかりにくかったと思いますが、まず、交付金がよけいにあるのですから、したがってこの人は井戸の分の打ち切りなり水道の布設をみずからの金でやらなければならぬわけですね。現在水道があるのです。あるのだが、井戸が復活してくるから、今度は水道を引いておったら大へんなことになるから、やめようとするわけです。あるいはできるだけ水道を小範囲にとどめようとするわけです。そのためには、住民に、目先のくらむ人に幾ぶんよけいに金をやればいいのです。すなわちそれはどこに重点を置くかというと、井戸の水の復活しておるところです。ところが井戸の水が復活しても、これは金けの水で、十分飲める水ではないわけです。また復活も不十分なんです。ところが井戸に水が何ぼかたまってきますと、もう井戸に水があるのだからということで、無理やりに打ち切ってしまうわけです。そうすると、いま言ったように、百軒あるうち三十軒とか五十軒打ち切ってしまいますと、あとの五十軒ではもう水道は簡単な、小さなものでいいことになるわけです。これはいま五十軒の例だけれども、千軒あったとしたら、五百軒打ち切ったら、あとの五百軒の水道だから、小さな水道でいいことになるわけです。いままでみたいな大々的な水道でなくていいことになるのです。そうしますと、これを市町村に移す場合には、有資力ですから、市町村はどうするかというと、全部の鉄管を変えてくださいと言います。それから水源地もりっぱにしてください、それから五年なり七年あるいは十年の維持管理費を下さい、こうなるわけです。そうすると、水道になりますと、ばく大な金を有資力鉱業権者は出さなければならぬです。そこで、そろばんをはじくわけです。水源地をりっぱにして、全部の配管工事をやりかえなければ、市町村は受け取らぬです。改良工事といったって。そういうことになると、これは二千万、三千万すぐかかるのです。ところが打ち切りなら、一万か一万五千円で済んでしまう。三千万金のかかるものが、千万もあれば御の字で打ち切りができちゃうわけです。これをやってしまうわけです。そしてできれば、水道はいまの水道を縮小した形で、やみ水道で、住民管理の形で残してしまうわけです。この方が多いのです。それは石橋さんお調べになってごらんなさい。福岡県はこういうのはざらです。だからこれをあなた方の方では、閉山をしたら直ちに現地調査して、そういうやみ水道というものを防がなければならぬわけです。住民は何ぼか金をもらっています。八十万とか百万とかもらっておる。ところが実際は、一千万も二千万もかかるのを、百万かそこらで泣き寝入りさせられておるわけです。こういう点が、今度問題が起こるとどういうぐあいに発展してくるかというと、百万かそこらしかもらっていない農民が、何かの変動で水が出なくなる、あるいは雨が降らなくて、渇水期になって水が出なくなると、何とかしてくれと市町村に押しかけてくる。そこで今度は新規まき直しで、市町村はそこに何らかの形で水道をつくらなければならないということで、二重、三重の手間が要る。それなら初めのうらに、金がかかっても、鉱害調査してきっちりとしておくほうがいい。それをやらないわけですね。だからやみ水道が非常が多くなってきておる。こういう実態があるわけです。これは公衆衛生上からいってもよくないことでしょう。こういう指導を今後積極的にやってもらわなければならぬ。同時に、やみ水道をなくしてもらう。炭鉱のあと地に行ってごらんなさい。幾らでもあります。やみ水道ばかりです。町に移管せずに、そのままです。われわれの田川市でもありますよ。市でもあるんだから、いわんや小さな町に行ってごらんなさい。炭鉱のあった町に行ったら、幾らでもあります。住民が管理しておる。五十戸か百戸ずつ、一つの町に二つ、三つくらいありますよ。こういう点の指導を一体あなた方はどうやるのか、こういうことなんです。やみ水道をそのまま放置しておくのかどうか。
  101. 石橋多聞

    ○石橋説明員 私のほうでは全国的に農山村地区に対しまして、簡易水道の普及ということを考えておりまして、そういう鉱害その他の特殊な問題がない場合でも、一般的に農村地区に水道を普及させることを考えております。したがいまして、いま鉱害といった観点からは、一応賠償その他が終わったところの地区、その他その付近にある場合、これらを含めまして一本の水道として理想的な形態のものに持っていくように考えております。
  102. 滝井義高

    滝井委員 まあ、そうやってもらわなければならぬのです。これは矢野さんのほうの指導になるかと思いますが、いま言ったように、百軒なら百軒ありまして、変形の形で、正常な形でなくて、異常な形で、たとえばマンガンがあったり、金けですね、鉄があったりして、水はあまりよくない。坑内につながっておる水は、夏になると非常にくさいのです。私なんかしょっちゅうその水を飲まされておりますから、経験があります。こういう水が復活してしまうと、炭鉱は打ち切るのです。絶対に水道は引かない。そして一部は打ち切り、一部はいま言ったように引っぱっていくわけです。大手はそれが多いんです。こういうものについては、一貫して上水道をつくらせるという指導方針でやる。山とで農地の問題も出ますけれども、農地にもこれと類似の問題がおるのです。なるべく打ち切らせないように、その金で一貫した近代的な水道を引かせるような方法を指導する必要があると思うのです。そうしないと無知な被害者というものは、おまえのほうで何と言ったって、とても水道はできぬぞ、いま金をもらったほうが得だ、会社も東京に行って、おらぬようになる、こういうことを言われると、そうかなと思って、何人かの者が一万か一万五千の金をもらってしまうと、あとは総くずれですよ。そうして大部分の人が悪い水を飲ませられ、水がなくて泣いておるわけです。ここらの指導の一貫性を立ててもらわなければいかぬのじゃないかと思うのです。
  103. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 ただいまの滝井先生からのお話、ごもっともであります。私のほうもどちらかといいますと、厚生省から先ほど御答弁申し上げましたように、いわゆる公衆衛生というような面から、こういう井戸水に対する鉱害補償という問題については、水道が望ましい、こういう考え方で、われわれとしては現地にも指導しておるつもりでございます。しかし、なお総合的にいろいろそういう鉱害を含めた範囲の問題については十分厚生省とも連絡をとりまして、そういう方針で進みたい。現にそういう指導もしております。もちろん個々の問題で、水源問題とか、先生のおっしゃるいろいろな事態の一部起こっておることは、私どももわかっておりますが、基本方針としてはそういう態度でいきたいということをはっきり申し上げておきます。
  104. 滝井義高

    滝井委員 できるだけ水道をつくるようにしてもらわなければならぬと思います。交付金が非常に不足で、最終的に無資力になる場合は、水道ができる前に井戸があったわけですから、井戸の打ち切りについてももらえないわけですね。そうして無資力で水道をつくってもらっても、直ちに料金を払わなければならないという問題が出てくる。この場合に一体どういう問題が出てくるかというと、農家ですよ。たとえばわれわれの地区では果樹を栽培しておる。そうすると、いまごろからそろそろ果樹に対する消毒をやるわけです。ナシやブドウの消毒です。これにはばく大な水が要るわけですよ。そうしますと、いままでだったら井戸にたっぷり水があったから、その水で無料で消毒夜をつくって消毒することができた。ところが今度は水道の水を使ってやるということになると、高い料金をとられる。ここに不満があるわけです。無資力で水道をつくってもらうのはよいが、ばく大な料金を払わなければならないのではとてもかないません、これは何とか補助してくれという問題が出てくる。  同時にもう一つ、市にも不満が出る。たくさんの失業者が出、たくさんの生活保護者が出ておる市ですから、したがって、水道は二割五分を国が見て七割五分は鉱業権者だ、ところが無資力になると七割五分を半分にして、国と地元の市町村が見ることになる。そうすると地元の市町村は三七・五見なければならない。そうなると今度は、市会を通すのがなかなかたいへんです。一体何でそんなものを見なければならないのかということになる。どうしてそういう不満が起こるかというと、無資力のところと有資力のところとが、同じ町の中にある。Aという地区は無資力だから市から金が出るが、Bという地区は炭鉱が有資力で、全部炭鉱は井戸の打ち切りをやったから水道ができないということで、同じ市内で違った形が出てくる。そこで市の当局としては、行政をやる上に非常に困難が起こってくる。これを一体どうするかといって、市会で大問題になるんですよ。A地区には三七・五も市の金をつぎ込んで水道をつくってやるのはよいが、こっちは金があって鉱業権者が出さないためにできぬじゃないか、これを一体どうするのかといっても、市ばいかんともしがたい。こういうように同じ鉱害でも有資力と無資力のある場合に、市の立場からいうと、無資力の場合にはばく大な金を払わなければならない、有資力の場合は今度は住民が耐えられないので不平不満が起こってくる、こういう事態が起こってきておるのです。   〔委員長退席、始関委員長代理着席〕 だから、ここらの問題についてやはり調整する必要がある。地方自治体の行政を推進する上において、こういう点は中央であなた方が見ておられると、ちょうど水鳥が静かな水面に浮かんでいるのと同じで、何も動かしておらないようであるけれども、しかし水鳥は水の中で足を動かしておる。こういうように何も起こっていないようであるけれども、平和な市や町にそういう精神的ないざこざが、やはり目に見えない葛藤の形になってきておる。これは水の問題ですから、もう少しかゆいところに手の届くような政策としてやる必要があるのじゃないかと思います。同じ町、同じ市の中に無資力と有資力とが出て、住民の間にこれだけ違いが出てくるのですから、どうしても無資力と有資力との間に差がないように行政指導をやる、それのためには、こういう水の問題については思い切ってやはり国が金を出す必要があるのじゃないかと思います。あれこれ金を出させることは多いですが、特に水の問題に限っては、これはしようがないと思います。石炭政策で国の政策が間違っておって、いまこれを大きく直そうとしておるわけですから、その責任というものは国にある、池田内閣にあるわけでありますから、そのしりぬぐいはやはり、池田内閣が財政措置をしてもらわなければいけないと思います。こういう自治体内部における不均衡、有資力と無資力との格差、そうしてそれが自治体の財政あるいは市議会、町村議会に及ぼす影響という点についても、あなた方は考えてもらわなければならないと思うのです。
  105. 中野正一

    中野政府委員 いま滝井先生の御指摘のような有資力と無資力の併存の場合の水道の扱いの格差の問題、またやみ水道等がそういう地域に起こらないように、そういう点につきましては通産省といたしましても、厚生省と十分協議をいたしまして御指摘のような事態が起こらないような行政指導をしっかりやっていく方針でございます。
  106. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これからやみ水道が起こらないようにすることば当然ですが、一体いまのやみ水道はどうしますか。このまま厚生省はほうっておくわけにいかぬでしょう。そこで保健所はこれを摘発したいわけです。ところがあと始末が見通しがないから、知らぬ顔していますよ。みんな知らぬ顔しているのです。ところが、こういうところに今度一たん赤痢が起こったら大へんですよ。赤痢が起こったらどうするかというと、これはもとの鉱業権者のやることだからけしからぬといっても、実際はけしからぬのは保健所なんですね。いままで知らぬ顔の半兵衛をきめ込んでおるところに問題があるんです。知らぬふりをしておるところに問題があるのです。これは石橋さんのほうで福岡県の衛生部に聞いたら、幾らやみ水道があるかすぐわかりますよ。このやみ水道については速急に大幅な補助金を出して、そうしてそれを市なり町村なり、自治体に移管する必要があると思うのです。そういう方針をおとりになりますか。鉱業権者がいいかげんの打ち切りの金を地域の住民にやって、そうして自主管理をさせている水道、やみ水道というのはあれだが、自主管理をさせている水道。今後は起らぬようにすることはわかったけれども……。
  107. 石橋多聞

    ○石橋説明員 先生のただいまおっしゃられました水道は、炭鉱経営していたものではなくて、鉱害補償で、現金で補償をして地元でつくった水道だと思うのですが、この種の水道は、炭鉱に限らず、これは補償ではございませんが、部落が自主的につくったというような水道は全国にかなり多いわけでございます。そういったものとあわせて十分に対策考えたいと思います。
  108. 滝井義高

    滝井委員 水道法ではそういうのは許さぬわけでしょう。そういう水道を許すんですか。特に鉱害地では、炭鉱閉山をするときには、水の賠償としてきちんとした水道をつくることが原則なんですよ。水道法はそういうことになっておる。やみ水道をつくっていいとは書いてないわけですよ。ですから、正規の簡易水道なら簡易水道として申請をし、許可を得なければならぬです。たとえば、あるところは滝の水をとっております。そうしてそこから引いて水道にしているわけです。ところが今度これがかんがい時になると、この滝の水をかんがい地にとるのです。水道の水がなくなる。一体かんがいにとるか水道にとるかで、いつももめておる。ところがあまりこれを大きくもませると、この水道が正規のものでなく、世の中にわかってしまうからそうもできないというので、うやむやにいつも片づいていくというのがあるのです。こういうものは公衆衛生の立場からいっても、それが全国至るところにそういうものがあれば、なおたいへんなことです。水道法違反ですよ。水道というものは、町村か何かにしか経営できないのですからね。それから今言った炭鉱とか会社で専用水道を申請した場合以外には、経営できないわけでしょう。石橋さんの言われるように、そういうようにやみで水道ができるということになると、これはたいへんなことですよ。こういうやみ水道をもしあなたがいまのようなおことばで黙認をしていくということになれば、今後やみ水道がどんどん出てきますよ。これから閉山する炭鉱は、みんなそういう方向をとりますよ。金が要らないのですから。わずかの金でできるのですから。もうすでに炭鉱が古い鉄骨をしいてつくっておるわけですから。そうすると、それが今度もし復旧をしなければならぬ、全部やりかえなければならぬという、いわゆる鉄管が老朽化して漏水が多くなって、どうにも水道として役立たなくなったという場合、大問題ですよ。これは大問題だ。そういうときには必ずその市町村に言うてくることになるわけです。だからこういう問題が起こる前にあなたのほうで何らか、これは全国的にもしそういうものが多いとすれば、これはたいへんなことだから、行政指導をしてやりかえなければならぬと思うのです。いま大都市で水が足らないというので、あなたのほうでは生活環境施設整備緊急措置法ですか、こういうものをお出しになっておるけれども、やはり辺陣地、あるいはこういう産炭地における生活環境整備のための水の問題、水道整備というのは、私はやはり都市における水の問題と同様に重大な問題だと思うのですよ。農村だから、あるいは炭鉱地だからといって、放置するわけにはいかぬのですね。この問題は、いまのような石橋さんの答弁では、どうも私満足するわけにはいかないのですがね。まず、やみ水道は今後通産省としてはつくらないように指導いたしますということはわかった。そうすると、一体現在のそういう水道はどうするのだ、この処置がなければ、幾ら行政指導をしたって、現実にモデルがあるわけですから、やはりできるわけです。幾らやみ水道をつくるなといったって、現実のものを何ら処置し切らなくて何を言うかといわれたら、通産省、それまででしょう。厚生省、それまででしょう。だから、この方針を一体どうするのか、あなたがいまここで答弁できなければ、あとで局長とでも相談されてでもかまわないのですがね。
  109. 石橋多聞

    ○石橋説明員 給水人口が百一人以上の水道につきましては、必ず水道法によりまして認可を必要といたしております。水道法が改正になりましたのは昭和三十二年でございますが、それ以前にできておりました水道につきましては、百一人をこえたものにつきまして当時届け出をやりまして、認可をとったものとみなされておるわけであります。それからそれ以後につくりました水道につきましては、全部認可の手続をとっておるわけであります。また百人未満の水道につきましては、水道法の適用外でございまして、全然規制を受けておりません。また一般的にいいまして、こういった小規模の水道は、その付近に新たに簡易水道等を新設する際に、パイプをこれとつなぎまして、水源を切りかえる等の措置全国指導いたして現在やっております。
  110. 滝井義高

    滝井委員 問題は百人未満ですよ。だから炭鉱ではどうするかというと、みな小さく分けているのですよ、部落部落に管理させるように。ずっと一貰した水道を引くとたいへんになるので、いまのように水道法の規定などがあるので、小分けにしてしまう。十戸か二十戸の部落に小さくしてしまう。そうしてわずかの金をやって管理させるという方法をとっている。こういうように、法律をつくるともう全部その上を上をとやってしまうのですね。だからこれを、こういうところは行政はお手上げだといえばそれまでですけれども、もとはといえば、そのもとは大手の炭鉱だったのですから、大手のところをきちっと押えなければいかぬと言うのですよ。私の知っておるところでも、そういうふうに小分けして二つ、三つ、四つくらいに、部落々々に分けている。こういう方式で、あなた方の行政よりか上手をいく石炭業者がおるということですよ。もう少しふんどしを締め直して、この水道の問題というものは積極的にやってもらわなければいかぬと思う。今後の閉山処理の問題で、この水の問題が一番隘路ですよ。しかも補助金がわずか二割五分、四分の一しかつかないということで、市町村が積極的でない。それは手出しをすれば、やけどをするのです。自分が全部負担をしなければいかぬことになってしまう。はなはだしいところは、市が水を配っておる。水道が老朽化して、高台には水がいかないのです。だから水を配っておる。炭鉱はつぶれてしまって無資力になったために、市が水を配っておる。そういうところがある。だからこういう点は、もうちょっと石橋さんのほうで、全国的に特に炭田地帯における水道の実態の調査を精密にしていただいて、ひとつ資料を一ぺん出していただきたいと思います。お願いします。  次は、さいぜん問題になった第二会社の水道です。第一会社鉱害を起こして、町の大部分にずっと水道を引いているわけです。水道をやっている。ところが、これが今度第二会社になった。滝井鉱山が今度第二会社になったときに、一体この水道をどういう取り扱いをするかということです。だれが一体管理の主体になるかということです。しかも、その第一会社の鉱区と第二会社の鉱区が全部イコールならいいです。けれども、炭を掘るところは全然水道のある町の中と違うところを掘るというような場合に、一体この第一会社の水道の管理運営はどうなるのか。しかもその水道は、当然第二会社従業員も飲まなければならぬという実態があるわけです。これは御存じのとおり、大部分の鉱区を第二会社が引き継ぐわけです。そして相当従業員を引き継いでいくわけですから、こういう場合におけるこの水道の管理運営の主体その他の指導のしかたですね。
  111. 石橋多聞

    ○石橋説明員 ただいま先生のおっしゃいましたようなケースは、第一会社と第二会社がその地区の給水について協議の上、だれが管理の主体になるかをきめて、いずれか一方が代表となってその管理をするであろうと考えます。
  112. 滝井義高

    滝井委員 実は私が心配するのは、そういう水道というのはもう明治以来大手の会社ができて、そして水道を引いておるのですから、その水道の鉄管というのは相当老朽化しているわけです。したがってこれをかえるとすれば、何億という金が要るわけです。その場合に、両方が話し合ってどちらかが管理するというけれども、この問題は水源地の問題もからまってくるし、それから同時に、第二会社になるときは、従業員の数はたいがい第一会社の三分の一か五分の一しか使わないのですね。われわれのところで大峰とか方城炭鉱というのがありますが、たとえば千五百人とか千八百人おったのが、三百人とか五百人になってしまうのです。三分の一か五分の一に従業員はなるのです。いままで千人おるとか一万人おるとかいう炭鉱が、第二会社になったらがたっと人数が少なくなるわけですから、とても町じゅうをまかなうような水道の管理運営はなかなかできないわけです。といって、第一会社はそこにおる必要がないわけですから、ばく大な水道料その他を払うわけにもいかぬ。それからへまをすると、これは全部水道の配管が老朽化してやりかえなければならぬということなら、何億の金を出してやりかえなければならぬし、打ち切りも出さなければならぬ、水道料金も見なければならぬ、こういう問題も起こってくるわけです。だから、早いところ逃げようということになるのです。できれば第二会社に全部まかしてしまいたい、こういうことになるのです。今後これが鉱害の問題と関連をして、重要な問題になるわけです。そこで第一会社から第二会社に移行する場合における水道の処理を、今後どういう基本方針指導していくかということ、第二会社がやめた場合住民に迷惑をかけないようにきちっとしておいてもらわなければいかぬわけです。そうしないと、市が全部かぶらなければならないことになってしまう。なぜならば、水の問題ですから、水道がとまったときには一刻も住民は許さぬですよ。もう市に押しかけてきますよ。いわんや水源地が期限つきできめられているようなところなら、なおそうです。たとえば水源地は十年間だけは水をとらせますということになっておって、炭鉱が十年目にやめたというようなことになったら、目も当てられぬことになってしまう。こういう錯雑した複雑な問題が、第一会社から第二会社に移行する場合に、今度の五五三における第二会社可能性のあるようなところには、そういう問題をはらんでおるということです。こういう点をひとつ見落とさないように、十分調査研究をしてもらいたいと思うのです。そうしてわれわれが質問をした場合には、打てば響くがごとく方針を出し、それに対応した対策が立てられるようにしておいてもらわなければ困ると思うのです。それは、たとえば第一会社が第二会社に移行するときに、この水道を市に移管をしたい、あるいは町に移管をしたいという問題か出てくるわけです。そのときに、一体その負担金をどうするかという問題が起こるわけです。どの程度のものを鉱業権者が負担をするのかという問題が出てくる。こういう問題はなかなか簡単に片づかない。それは第一会社から第二会社に移そうというときには、財政が火の車ですから、石炭業者としては一文だって金を出さないほうがいいのです。だから話がまとまらないで、重大な政治問題として発展してくる可能性がある。そういうときにこの四分の一の改良費というものをもっとうんと出すようにすると、問題は解決しやすい。ところが七割五分は鉱業権者負担なんですから、なかなか簡単にいかない。それは人口が五万とか十万の市の水道というのは、千万とか二千万で片づく問題じゃない、何億とかかるのです。水源地を含めると何億とかかる。こういう問題がある。これは問題が具体化すればまた質問をしますけれども、ひとつ五五三の新しい合理化の中にもそういう問題が十分あるということをお考えになって、いまから着々と研究しておいていただきたいと思うのです。  次は、このニュー・スクラップの申請をして、交付金の決定をして、鉱害の被害者から申請が出て、そこでいよいよ鉱害復旧にかかることになるわけですが、さいぜん申しましたように、いよいよその山が閉山してから鉱害復旧が具体的に個々の家にやられるまでには、早くも三、四年はかかるのです。そんなに長くかかったのでは大へんなんです。そこで交付金の決定をする前でも、もう明白にこれはその炭鉱鉱害だとわかっておるものについては、鉱害復旧をやってもらえぬかということです。これは私は当然のことだと思うのです。いまの各山の実態を見ますと、どういうことになるかというと、鉱業権者が、ニュー・スクラップに申請しようという腹をきめたら、もう絶対に鉱害復旧はやらぬですよ。絶対にやらぬです。そして、交付金がくるまで引き延ばしてしまうのです。もとだったら、これはやっておった。ところがやらない。全部やらないですよ。だから、住民はあわれなものです。したがってその決定が早くなればいいのだが、決定するまでには、どんなにスピードでやっても、これは事務処理だけで半年はかかる。私の経験から言うと、最も早いもので半年ですよ。へまをすると、一年半から二年はかかる。そうしますと、この被害を受けた住民というものは大へんですよ。だから、明らかにその鉱業権者鉱害であるということが明白で、しかも安定をしておるものがあったら、やはりやってもらわなくちゃならないのじゃないか。ところが、それが全然行なわれない。もう鉱業権者はできるだけあとに延ばそうとする。できるだけあとに延ばせば、どういうことになるかというと、もうあっちこっちから金は取られて鉱害は私はできませんと手をあげたらいいのです。したがってこれは、前にやれる方策をとる必要があるのじゃないか。どうせ交付金を留保するのですから。もちろん交付決定ができない場合は大へんなことになるけれども、しかしその場合だって、これはどうせそういうところは無資力になるのですから、国がやらなければならぬのですから、迷惑料その他はとにかくとして、復旧だけはやってみたらどうか、そこまでの合理化政策をおやりになろうとするならば、やはり鉱害復旧については先手々々を打ってちょうどいいくらいな感じがするのです。その勇断がありますか。
  113. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 交付金制度ができまして賠償の遅延する傾向一般にあるのじゃないか、概括的には、そういうことのないように、私は特に無資力部分については石炭局というものを通じまして、そういう傾向を持たぬように十分指導はしております。  それから第二にお話しになりました、将来無資力になりそうだというようなものに対しては、これは確かにむしろ民生安定上の問題、それからまた被害を緊急に復旧しなければならぬという要請がある場合、私どもは現在事前調査を進めておりまして、いわゆる交付決定前でも現行法の弾力的運用によりましてこれを処理するという方針をすでにきめておりまして、具体的に通産局にも指示しておりますので、この臨鉱法でできると思います。ただ私どもが非常に心配なのは、あまりそういう制度を乱用することは、逆に鉱業権者の賠償の義務というものを非常に安易に考えるということがあってはなりませんので、この辺はそれがないように、具体的なケースでそういう交付決定も繰り上げるし、その間の工事も進めるようにしよう、こういうような方針も出しております。
  114. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、交付金の決定前でも臨鉱法の弾力的な運用でやる、こういうことでございますが、ぜひひとつやっていただきたいと思うんです。あなた方が中央からよほど強力な行政指導をやらぬと、復旧事業団はとてもやりきれぬですね。だからそういう点は、積極的な指導をやっていただきたいと思うんです。  それから無資力の認定手続その他については、これは合理化法に譲ります。  それからもう一つは、鉱害家屋の復旧にあたっては土盛りの経費、これは国庫補助の対象になるわけです。ところが家屋の復旧そのものについては対象にならぬわけです。そこでどういう場合が出てき始めたかというと、低地の場合は、低いところに家が建っておる場合にはよけいに金をもらえるわけです。ところが家が狂っておるのは低地と同じであるのに、高地であるがゆえに、これはあまり金が要らないのだというので、評価額を非常に安く見積もるわけですね。したがって、家の起こし方そのほかもよくないわけです。こういう問題が起こってきておるわけです。だからこの家屋の復旧についても、私は出す必要があるのじゃないかと思う。それは低地と高地と非常に差が出てきておるのですからね。
  115. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 家屋自体の復旧補助の御要望は、この委員会で先般来たびたび御指摘がございました。これは前にも御説明いたしましたように、いわゆる私有財産に対する国庫補助という考え方については、補助体系的に非常に問題がありまして、この前も多賀谷先生から、すでに臨鉱復旧というような狭い考え方判断をしてはいかぬのじゃないかというような御指摘もあったぐらいに、非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、いまの態勢からはなかなかに解決が困難なんですけれども、私ども今後の無資力鉱害対策というものは、ことしはさらに相当に充実したつもりでございますけれども、もう一歩前進して、いろいろな考え方からそういうものに対しても進められる考え方は極力進めていきたいというふうに、私ども事務当局としては考えております。現状でお話があります限りは、まずそれをやることは非常にむずかしいというお答えしかできないと思います。
  116. 滝井義高

    滝井委員 いまの答えでは、国土保全的な見地からいうとできないというけれども、いま日本は御存じのとおり、住宅が非常に不足しているわけです。したがって、やはり家を長く持たせるということは、国家経済からいっても、民生安定からいっても非常に重要なことなんです。あまりそういうふうに私有財産の国庫補助とかなんとか言わずに、たとえば最近は、災害のときは私鉄でも補助金を出しますよ。二十八年の災害のときは、われわれは松野頼三君と一緒に、熊本の私鉄にも出すようにした。私鉄にも、出すんです。ところがいま政府は第一種、第二種の公営住宅を建てるのに非常にけちくさい金しかつぎ込まない。したがって、低所得階層に対する家屋は行き詰まっているわけです。不足して困っている。そういう見地に立っても、鉱害地の住宅を整備してやる上に、ちょっと金を加えたらいい。莫大な金を加える必要はない。いまだって土盛りという名のもとにやはり壁も塗ってやるのですから、その点をもう少し弾力的に考えてやって、高地における家屋についてももう少し積極的にやってあげていいのじゃないかという感じがするんです。  それからいま一つは、家屋の移転です。特鉱法のときは割合移転が自由になっていたけれども、臨鉱はなかなか移転させない。ところが農家その他がこの機会に自分の金を幾ぶん出しての増改築は、最近は幾ぶん認めているようだけれども、移転についてはなかなか認めない。たとえば豊州炭鉱のあの陥没したところでも、わざわざ陥没した上に家を建てる。土台をがちっとコンクリートにして、うんと金をかけてやるのだ、こういうことをおっしゃるわけです。やはりそういうかたいことを言わずに、ケース・バイ・ケースで、万やむを得ないときには弾力的に、移転をしてもよろしい、農家で畑のまん中に家があるが、これを畑の端に持っていったほうが農業経営から合理的であるとだれが見てもわかるときには、その家屋の移転を許すくらいの弾力的な法律の運用と申しますか、そういう点をやる必要がある。ところが、会計検査院に見つけられたらたいへんですと、なかなかうんと言わない。こういう場合、もう少し考えて運用する必要があるのじゃないですか、どうですか。
  117. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 ただいまお話しになりました豊州の例は、私自身も人間という立場からいえば、そういうものを認めてやらなければ、墓の上に眠るということがあっても気の毒であるということで、いろいろ配慮しておりますけれども、私たちのいまの考え方としましては、さっき先生が国土保全から考えるべきではないとおっしゃいましたけれども、やはり法律のワクがありますから、たとえば高所についても、高ければ高いなりにやはり地盤復旧が必要だという形であれば、鉱害復旧ということに幾らかでもひっかかるものであれば、そういうことを認めることにやぶさかではありません。単純な移転ということになりますと、これは法律の運用及び範囲をこえてしまいます。そういう点については今後の検討問題で、いまのところ何ともできない。今後終閉山ということで進む以上、民生安定ということが大事なことであることは事実でありまして、多賀谷先生から鉱害対策審議会でも検討しろということでありますが、検討を続けるということは私どもとしても進めていきたいと考えております。
  118. 滝井義高

    滝井委員 この家屋の復旧を、現位置から、たとえば畑のまん中にある農家を畑の端に移したほうが農業経営上非常に合理的であるという場合に、その中央から畑の端のほうに移す経費は私が負担をいたします。あとはひとつ土盛りその他の金は法律の規定どおりでもよろしいです。こういうことになってもなかなかだめなんですからね。一体、これはどこに隘路があるのです。移してどこに法律上の困った点があるのですか。国土保全ということになれば、これはより合理的な保全になるわけです。畑のまん中にあって国土の能率が下がるよりか、端のほうにあったほうが農業経営上増産ができる、合理的である、移転の費用は自分で出しますというならば、私有財産の侵害にもならない。国が私有財産につけてやるということにならないから、一体これはどこに不合理があるのでしょうか。法律の運用上やれないという点があるのでしょうか。私はこの点がどうもわからないのです。
  119. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 いま先生がおっしゃいましたような具体的な例でありますが、建物のほうも鉱害復旧の際に、その地盤の中で合法的に考えるほうが民生安定的に——たとえば家が庭の東のすみにあった、しかし庭が全部陥没し、それに伴ってその地帯が全部陥没した、そういうときに家を西に移したいという場合には、若干移す経費が要ればこれは受益者負担として出してもらって、地盤の陥没した範囲であれば合法的にそういうものを認めるということは、現在でもやっております。ただ私どもが移転と申しますのは、とにかく陥没した地帯をはるかに離れまして、陥没していない地区に移るということで、これについては法律的な運用でも非常にむずかしいというふうに思います。
  120. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三百六十五番地というのが三百坪ある。その東の端から西の端に移ったほうがいいという場合、こういう同じ番地の中の移動は運用上よろしいわけですね。
  121. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 おっしゃるとおり、その三百六十五番地全部が陥没しておる、それを全部宅地として復旧するというときには、合法的に認められるわけであります。
  122. 滝井義高

    滝井委員 復旧するというのではなくして、いま東の端にある家屋を置いておけば、畑その他に影がさしてよくない、農業経営上やはりこれは西の端に移したほうがいいのだ、しかも現実にその家は東の端で鉱害を受けている、復旧は西の端のほうが安定をしておっていいからやろうという場合ですよ。移転する場合には、移転をする合理的な理由があるからこそ、農民なり被害者に特があるからこそやってもらおうというのですからね。だからこれは、国土保全の見地からいっても決して不合理なものではないわけですよ。やはり個人の財産ですから、個人に合理的でなくてはいかぬ。そういう見地からいくと、これを移してやるべきです。受益者負担のほうは自分が出す。一里も二里も先に移すというなら、これは問題があると思う。私はその場合についても考慮してもらいたいと思うのだが、きょうそこまで言うとなかなかですから申し上げませんが、その同じ番地あるいはそのすぐそばにある。なぜ私がこういうことを言うかというと、私のところでそういう例があったのです。畑のまん中に家がある、端のほうに移したいと本人は言うのだが、どうしてもだめだという。あるいは豊州炭鉱の陥没の場合でも、うんと金をかけてコンクリートの土台をつくって、どろを埋めた上に家を建てようというのですから、これは経済的に見たら実に不合理ですよ。ところが会計検査がやかましいとかなんとか言って、あえてその不合理をやろうとしておる。土台に莫大な金をかけるなら、どこかへ移してやったらいい。本人が、私は別に宅地を見つけますから、こう言うのですからね。しかも陥没して新しい家に建てかえる場合、坑内に家が埋没してしまって、家はあとかたも何もなくなっている、今度新しく復旧する、しかもそこに建てろというのですから、これはあまりにしゃくし定木ではないか。そういう場合には弾力的に、よろしい、どこか宅地を見つけなさい、こういうほうが国土保全になるのじゃないか。また、わざわざ陥没する可能性のあるところにコンクリートをうんと詰め込んで金をかけてやるよりも、あまり金をかけずに、安全な土台でやっていけるところのほうがいいじゃないか。その家の費用はその他は私が持ちます。こういう場合だって、なかなかうんと言わない。それはあまり法律にとらわれてい過ぎやしないか。私は少し臨鉱法の考え方を修正する必要があると思うのですが、あなたのほうはなかなか修正しないのです。私は何回か一軒の家のために福岡に行って、現地の最所さんとひざ詰め談判をしたことがある。しかし、なかなかこれは困難なんですね。こういう場合積極的に変えていく意思はありませんか。それはケース・バイ・ケースでかまわぬですよ。
  123. 中野正一

    中野政府委員 いまの先生御指摘の場合について、法律はきらんと地盤復旧に伴う家屋の復旧に補助金を出すということになっておりますから、その地盤復旧を伴う限りにおきまして、いま御指摘のようなケースについてはできるだけ弾力的に私としては考えていきたいと思います。
  124. 滝井義高

    滝井委員 特鉱法のときは全部、移転でやれたのですね。あれはどういう解釈ですか。
  125. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 特鉱法の場合も一応特別会計が設定されておりまして、その中にいわゆる鉱害をかかえている鉱業権者はトン当たりの納付金を出しまして、そして納付金を入れたわけです。そうして今度は、実際の補助になりますと、農地については当時八〇%でしたか、一類、二類で違いますけれども平均して八〇%ぐらいだったと記憶しておりますが、そういうような補助を出しました。しかし家屋等の被害物件によっては、納付金の入ったものでやることになっておりました。特別会計全体は国庫補助は入りますが、家屋についてはその国庫補助は使えないわけであります。そういう点でまさに鉱業権者の負担した金ということで認められた扱い、こういうことであったと私ども考えております。
  126. 滝井義高

    滝井委員 たまたま国の金がわずかばかり入ってきたのだから、わずかでもないけれども入ってきたのだから、そういう理論をいまの段階で——この法律の立法当時は土盛りをやるということで、国土保全だからというので大蔵省との話し合いでできたと思うのです。しかしいまもう石炭の様相が変わってきたのだから、そういう無理な解釈自体が時代おくれになった。それは十九世紀的な考えです。やはり二十世紀の後半における原子力時代の合理化をやろうというときの考え方は、新しい前向きの一歩前進した形でやることが必要なんですね。しかも日本は家屋が非常に不足している。しかも、農地もだんだん少なくなりつつある。そういう中で農業経営を合理的にやろう、あるいは住まいを合理的に改造しようというときには、私はやはり変える必要があると思うのです。十数年前にできた法律に、そうしがみつく必要はないと思うのです。それは戦争中の特鉱のほうが、もっと合理的な弾力的な運用をしておったわけです。だから地域の住民は、かつておれの家は特鉱でよくしてもらった、ところがその後臨鉱になったら今度はどっちにもこっちにも動かせぬ、こんな損なことはないと言ってみんなこぼしていますよ。それは特鉱の経験がなければいいけれども、みんな特鉱の経験があるのですね。だからこれはひとつあなた方に考えてもらって、合理的にやる必要があると思うのです。もう二十世紀後半ですよ。二十世紀前半にできた法律はさよならして、後半には新しい構想と創意と工夫で前進してもらいたい。これはあまり詰めませんけれども、そういう点をひとつ鉱業法改正その他のときには論議をしてもらうことをお願いします。弾力的な運用はある程度やれるようなニュアンスの答弁がありますから、ケース・バイ・ケースでそのときそのときでまた御相談します。  次は、家屋や農地の打ち切りの場合に、こういう問題が出てきておるわけです。たとえば家屋でいくと、鉱業権者負担は幾らですか。
  127. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 五〇%です。
  128. 滝井義高

    滝井委員 百万円の復旧費だとすると、鉱業権者が五十万円出すわけですね。そうするとこれを打ち切りの場合は、鉱業権者はこの五十万円の範囲内で打ち切ろうとするわけです。多くそういう方針をとるわけです。ところが復旧をしてもらうと、国の金がつくので百万円になってしまうわけです。ところが力が強いやつがいきますと、これは百万円どころか百二十万も出す。そうしておとなしい被害者だと、三十万ぐらいで打ち切ってしまう。したがって家屋の打ち切りも農地の打ち切りも、全部アンバランスだ。個人個人でみな違います。だから鉱業権者は打ち切りでやろうとするわけです。一体この行政指導をどうするかということです。特に交付金で今後打ち切ろうとする場合には、交付金をできるだけ残そうと考えるわけです。自分の財産を売ったのだから、自分のポケットに何ぼか金を入れたいという気持があることは人情です。人情は否定しません。ところがいま言ったように、鉱業権者の負担のほうで家屋なり農地を打ち切ろうとするわけです。さいぜん私は水道の問題を申し上げましたが、水道もそれと同じです。水道を引いたら金が要るから井戸で打ち切ろう、もう水が復活したじゃないか、こういうことばを用いるわけです。それと同じで家屋も、もう政府にたよっておったっていつ復旧できるかわからぬぞ、君、ここらで現金五十万もらったほうが得じゃないか、こうなるわけです。ところが相手方がどっこい強くて、そんな五十万じゃだめだ、私は絶対判を押さぬ、こうなると困るですから、そういうのには、よかろう、君だけは百二十万やるからこの辺全部君世話せぬかということになる。君だけは百二十万じゃない、二百万でも三百万でもやる、そのかわりこの付近全部君にまかせるから、君頼むぞということになってしまう。これがいわゆる鉱害ボスです。だからこういう打ち切りについても、なるほど鉱業権者と被害者との対の話かもしれないけれども政府交付金というものをきめて、六十日以内に鉱害の申請をさして、しかもその上で金をやろうというのですから、やはり一定の方針を出す必要があると思うのです。ここらあたりの指導が全然行なわれていない。もう通産局は、それぞれ鉱業権者とあとでおやりなさい、こういうことです。従って、弱肉強食です。資本主義の典型的な悪い面が、この鉱害の処理にあらわれてくるわけですね。もう最後なんです。いよいよ店じまいですよ。だから、あまり弱い者と強い者に差をつけてはいかぬです。そうなると、政府に対する不信感が起こる。鉱業権者に対する恨み骨髄の不満が出てくるのです。ここらあたりの行政指導を、この段階でやる必要がある。私たちの経験では、これは絶対にやってもらわなければいかぬ。それぞれその家が幾らになるか、幾ら復旧費がかかるかということを絶対に教えない。滝井義高なら滝井義高の家の復旧費が一体幾らになるかということを、絶対に教えない。はなはだしいのは、その鉱業権者とつうつうの業者がみんな見積もってしまって、これで通産局に出していく。なぜならば通産局あるいは合理化事業団ではそういう見積もりをやる技術者が、さいぜん矢野さんが言ったように不足している。だから鉱業権者といつも通じておる請負業者が全部免租もって、これでやってしまう。そうするとその鉱業権者の負担する額は、評価額を低く見積もれば鉱業権者復旧額は低くなるから、もう君の家はぐずぐず言っておったらいつになるかわからぬぞ、おれはもう金がないのだぞ、こういうことになると、それでは五万でも十万でもいいからということになる。はなはだしいのは、私のところで通産局に四回も五回も行った、そうして打ち切りの金をもらってみたところが二千五百円だったというのがある。その二千五百円は福岡に行く自動車代なんかのみんなの共同負担分にとられて、一文も残らなかったというのがある。それでもやはり泣く泣く、私はもう今後一切鉱害については文句を言いませんという判こをついておる。幾らとったかというと、世話したやつに八百万か何かの中から委託費を二割、百五十万もとられて、あと分けてみたところが二千五百円しか残らなかったというナンセンスがある。泣くにも泣けない。判を押したのだからしかたがありません。旅費その他を加えてみたら、二千五百円をこえておった。鉱害の運動のために損をしたというのがある。こういう実態です。それではあんまり無事の住民がかわいそうです。家はむちゃくちゃにされるわ、運動して鉱害費をとってみたら二千五百円で、運動費は三千円も四千円もかかっておった、こういうことのないように、やはり鉱業権者の負担分というものを、打ち切りの場合には一体どうするかという方針を、対々の契約であっても出す必要があると思う。国がこういう合理化方針を強行しようとするならば、きちんとみんなに金がいくような、ボスのはびこらないような行政指導をやってもらわなければいかぬと思うのですが、この点についてはどうですか。
  129. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 家屋につきましてはいろいろ御議論がありますが、原則論を申し上げれば、もちろん当事者主義ということになっておりますから、その意味で社会的に非常に弱い被害者が影響を受けるということで問題が多いのであります。実は私どもといたしまして、昨年度に耐鉱害性家屋の研究——これは政府予算五百万ばかりで、いわゆる鉱害家屋を九大で、どういう基準がいいかということで現在ほとんど検討を終えております。これはほとんど報告書をまとめる段階になっております。買収基準につきましては、鉱業法によりまして通産局長が地方鉱業審議会、現在賠償協議会でございますが、これにはかりまして基準を公表するという制度がございます。この研究の結果をそういう形で協議会にはかりまして一応の基準を公表する、こういうことに運びたいと考えております。  なお先生がおっしゃいましたように、交付金制度においていろいろ問題があるということでありますが、これにつきましては私どものほうで、通産局あるいは合理化事業団に対しまして、弁済計画の提出につきまして、もちろんこういうようなことを慎重にするのはあたりまえであると私ども考えておりますけれども、しかし同意がたとえありましても、その額自身が非常にバランスがとれていない不当な賠償である。あるいは逆にいえば、過大な要求であったというようなことがあれば、これはいわゆる話し合いではありますが、弁済計画の決定の際に十分に修正するように指導するということで処理をしております。したがって、家屋についての基準については、いま申し上げたように、現実的な研究の結果で、近く鉱害賠償協議会にかかる段階になっております。それから実質的な弁済計画は、この四月から公示が行なわれておりますから、そろそろ七月ごろから実際的に弁済計画が出るかと思いますが、それまでに極力間に合うにやりたいと考えております。さらにその弁済計画の取り扱いにつきましては、いま申し上げましたように、通産局、合理化事業団の行政にあたって、そういう点を十分配慮するということで指導しております。
  130. 滝井義高

    滝井委員 たとえば私のうちなら私のうちが幾らの復旧費がかかるかということは、それぞれ見積もらした人によって違うのです。だからこれはやはり鉱業権者が、自分といつも請負関係にある業者に見積もらしてやると、非常に低く見積もってしまうわけです。自分が請負をもらおうとするから、低く見積もってしまう。そこでこういうものについてはやはり通産局が見積もって、復旧事業団なら復旧事業団が見積もって、それを滝井義高なら滝井義高に、あなたの家の復旧費は百万円かかりますということを第一段階として知らしてもらわなければならぬ。それからいよいよ打ち切りという場合には、国の金も入っておるから、七割なら七割が原則であるというくらいの行政指導方針くらい出してもらわぬと、いま言ったように、運動してみたけれども、きたのは二千五百円だった。二千五百円もらえるかと思ったところが、運動費は四千円要ったということで、また千五百円別に出さなければならなかった。骨折り損のくたびれもうけということになるのです。しかし結局、わしらは二千五百円もらったからしかたがないわと、泣き寝入っているのです。そういうことをさせないように、いま言うように、鉱害賠償審議会なら審議会の基準をおつくりになったら、評価額その他をきちんと住民に徹底させる、お前は鉱害があると思うなら出せということで、一筆ごとに出させたら、あなたの鉱害は幾らかかります。畑については幾らかかります。家屋については幾らかかりますということを通知くらいしてもらわなければいかぬと思うのです。あるいは尋ねに来ても、問い合わせても自由に教えてやる、これだけの親切が必要だと思うのです。それを全然いま教えないんですよ。これはもう秘密ですから教えられません、こうなる。だから、その秘密だということをいいことにして、鉱業権者はよろしくやってしまうわけです。こうことは私は、フェアプレーでいかなければいかぬと思うのです。しかも地下を知らないううに掘られたんですからね。そういう点が、通産行政というものはどうも鉱業権者偏重の行政になるおそれがある。いよいよ店じまいですから、最後のお葬式をやるのですから、今後はあまり葬式をされる側を泣かさぬようにしてもらいたいと思うんです。ぜひ一つきちんとやって下さい。  次は、ようやく農林省にきましたが、懸案の果樹です。そのほか不毛田、社有田の問題もありますから、だんだん質問をしていきます。農林省は今までずっと三回やって、研究、研究で答弁がなくて、きょうで四回目です。最後ですから、一つ明確な答弁をやってもらいたいと思うのです。  まず、いままで果樹園等に対する鉱害復旧については、農地に比べて、国土保全という立場を理由にして非常に冷遇されておったわけです。そこで有資力の場合は、果樹については打ち切りが出ます。それから年々補償も出るわけです。しかしこの年々補償の評価については、鉱業権者と果樹を所有する農民との間に対々の話し合いで、別に科学的な根拠なんというものはなくて、前年これくらいとれておった、ところがあなたが炭坑をやって下を掘り出してからこれくらい減少したから、去年とことしの差額を見ようというような、きわめてあいまいもこたることで対々で解決をしていっているわけです。ところが、有資力の場合はあいまいもこたる状態でも解決をされているからいいのですが、無資力になりますと、これはもうまったくだめなんです。同じ国土、農地でありながら、一方、米のなる木は、毎年刈るんだから補償はしてもらわなければならぬ。しかし片一方は、多年にわたって国土の中に突っ立っておるからこれは、だめだ、こういうことになるわけです。それなら一つこのなっているナシの木なりカキの木を切って、かわりに毎年新しく植えかえてくれ、そうしていままで最盛期のときになっておったやつを補償してもらおう、こういうことになれば稲と同じになってしまう、こういうへ理屈も成り立つことになる。そこで、一体農林省としてはこの問題をどう処理するように研究してきたかということです。まず鉱害でどういうことになるかというと、御存じのとおり、ナシとかブドウの小さな根が切れてしまうのです。亀裂が入るのです。それから同時に、下から水分を全部取られてしまいますから、ナシが非常にかたくなるのです。これは、私自分で農園をやっておったから経験があるのですが、一等のナシがかたくて食えぬようなナシになってしまう。炭鉱がやむと、幾分それは元のようにはなりますけれども、しかし元のようなおいしいナシはならぬのです。こういう目に見えない鉱害があるのです。ナシを食ってみて初めて、ナシの味が落ちて、かたい、品質の悪いものになっているということがわかる。しかし、なるにはなるのですから、何を言うか、お前のところはナシがなっておるじゃないかと言われたら、それまでなんです。特に無資力の場合は、どうにもしようがない。こういう場合に対して、同じ国土の上だが、一方は米で毎年刈り取るからいいようなものだが、片方は刈り取らぬから何もしない、こういう差別待遇はひどいじゃないかと言ってきたのだが、農林省は研究します研究しますで、もう三、四年以上になりますよ。僕が代議士に出てから言い出したから八年くらいになるのです。年貢のおさめどきがきておりますから、ひとつ農林省の方針を御説明願いたいと思います。
  131. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 先生御指摘の点は数回にわたりまして検討を命ぜられたところでございますが、果樹園につきましては、樹園地は本来農地でございますので、これは今後復旧の対象として取り上げるように努力したいと思います。ただ樹体、果樹の木そのものでございますが、これは樹園地自体が本来の効用が戻りましても、一たび鉱害を受けました樹体については復旧しないという問題がありまして、現行法上の対象に取り上げることはなかなかむずかしいわけでございます。したがいまして、ただいま先生からもお話がございましたように、鉱業法の一般の原則に基づきまして、当事者の間の話ということになるわけでございます。ここで特に先生は無資力の場合を問題にされておるわけでございますが、この場合におきましては、土地の復旧に伴なう休耕補償につきましては、きょう午前中いろいろ御指摘なり御議論がございましたように、休耕補償の問題として前進的に考えていきたい、そういう点で御了解願いたいと思います。年々補償的なものは、これは石炭鉱整理促進交付金の合理的運用その他で考えていかなければならないと思っております。ただここで問題なのは、ただいま先生のお話にもございましたが、有資力の場合の補償の基準でございますが、永年作物でございます果樹につきましては、鉱害に基づく収穫減なり品質の低下というものを、金銭に、経済的価値に換算するという問題につきまして、なかなかむずかしい問題があるわけでございます。これは当事者の相対の話をする場合においては、たとえば鉱業法上の和解の仲介を行なう場合にも、この問題は解決をしておかなければならない問題でございまして、この点につきましては、災害の性格はやや異なるのでございますけれども、ただいま農業保険と申しますか、農業災害補償制度等におきまして、果樹を保険の対象にするという問題がただいま起きておりまして、積極的な検討が行なわれておるわけでございますが、その際樹体そのもの、果樹そのものの被害も保険の対象にするかどうか、する場合の評価をどうするかというような問題が、ただいま農林行政の面では起きておりますし、また本年度の豪雪等の場合に、果樹が非常に被害を受けておる。その場合に、被害農家に対します低利資金、国が利子補給をして営農資金を供給しているのでございますが、その場合の融資の限度等におきまして、永年作物は後年度の被害があるので、その面で融資の限度を上げるという問題が、ただいま議論になっておるわけでございます。その場合にも結局、は、そういう永年作物の後年度の被害をどう見るかという問題になるわけでございまして、果樹の場合におきまして、そういう後年度における被害の科学的な算定という点についてただいま検討中でございますので、これらのものについて早急な一つの結論を得て、基準を確立してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  132. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、まず樹園地については鉱害復旧の対象にするというのは、これは具体的に言うと、木のはえているところの果樹園の鉱害復旧といえば、たとえば凹凸ができた場合に、へこんでいるところに土を置くというのは、これはいまだってできるわけです。あなたの言う樹園地を鉱害復旧の対象にするというのは、無資力の場合について現金で金をやる。いわゆる農地の復旧をやる場合には、これは実際には国が金を出して、鉱業権者から金をとる。無資力の場合には国なり県が金を出して復旧をするのと同じように、今度は樹園地の場合は復旧するわけにいかぬのですから、金をやる以外に方法はないわけです。樹園地の鉱害復旧という場合は、現金賠償をしてやるべきだというのが私の主張ですが、その点はいかがですか。
  133. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 これは鉱害復旧とはやや異なりますが、風水害等の一般災害復旧におきましても、樹体とたなとを除きます樹園地そのものの復旧を現在行なっているわけでございます。それに準じまして、樹園地そのものの復旧というふうに考えているわけでございます。
  134. 滝井義高

    滝井委員 一般鉱害復旧において樹園地の復旧というのがちょっとよくわからないのですが、具体的に言うとどういうことをしてくれるのか。果樹園はさいぜん私が申し上げたように、あるいはあなたも言われておるように、とにかく下を掘るのですから、脱水現象が起こるということです。それから根が切れるということです。そのために急激に樹体が弱るということになる。したがって、できる品物の品質が悪くなるということですね。すなわち樹体の寿命が短かくなり、できる品物の品質が低下をしてくるという問題があるわけです。ちょうど稲の場合でいうと、鉱害復旧をしてもらったが、しかしそこでできるのは、稲を植えても、前には一〇〇できたものが、六〇か七〇しかできない、だからあとの三〇ないし四〇を暫定補償をしてくれという形があると思うのです。果樹園の場合、掘らなかったらそのナシの木は二十年の寿命がある。ところが掘ったために十二年の寿命になった。あとの八年というものはこれは下を掘ったために短かくなったんだから、その八年分について一挙に現金賠償しましょう。これならちょうど農地の復旧と同じになるわけです。だから、そういう点をもう少しはっきりしてもらわなければいかぬと思うのです。同じ国土でも、ナシの木が立っておる国土ですからね、ナシの木と土地を切り離すわけにいかぬ、切り離したら果樹園にならぬのだから。米の場合は、刈り取っても来年同じものを植えればできますけれども、樹体の場合、なくなったら苗木というか、種木を植えなければならぬ。だから極端な言い方をすれば、その苗木が太るまで補償してくださいということだって言えるわけでしょう。だから、あなたの言う樹園地を復旧の対象にするというところの具体案は一体何かわからないのです。
  135. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 先生の御質問の趣旨は、私は樹園地そのもの、この土地の復旧、樹園地としての本来の復旧ということは、これは水田その他と同じように取り上げます。ただ樹体、果樹そりものの被害は、これはどうももう回復しない。したがってこの点についてはやはり鉱業法上の相対の問題ではないかということで申し上げたわけでございます。ただその場合に、土地の復旧工事に伴なう休耕補償については、午前中も先生からいろいろ御指摘がございましたが、この点については、積極的な方向で、無資力の場合でございますが、無資力の場合に前進的な方向で検討していくということでございます。
  136. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。それなら妥協して、ここまでやってもらいましょう。樹体が非常に、下を掘ったために衰えてくる。したがってちょうど稲に暫定補償を行なわれるように、この暫定補償を何年かやってもらったらいいわけです。農民はそれで満足するのです。無資力であった場合に、一文ももらえないのですからね。したがってあなたのほうで、樹体というものを、下を掘った場合にはこの程度の衰えができる、この程度の損失ができる、したがって三年なり五年は、下を掘らなかったならばとれるであろう生産額の、たとえば減が二割とか三割とかあったならば、その分だけは五年間見るとか、そういう基準を出してもらって、その分だけを鉱業権者が出す、鉱業権者が出せないならば、の復旧に国がつぎ込むと同じように、その分だけ現金を農民にやる、そういう形になってもらえば一歩前進です。そういう方向で、現金をやるということで、農林省はいいですか。
  137. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 先生のお話は、無資力の場合は、これは交付金の中で片づけるというような問題だと思います。
  138. 滝井義高

    滝井委員 交付金の中で片づかぬのですよ。
  139. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 臨鉱制度に樹園地そのものを載せました場合は、本来やはり樹園地としての効用が回復するまでは、これは一般の田畑と同じように、やはり当然、暫定補償という問題になると思います。
  140. 滝井義高

    滝井委員 その暫定補償というのは現金ですから、そうなりますかということです。それをしてくれればよろしい。ところが、いまそれが出ないのです。暫定補償も何も出ないから、今後は田に暫定補償をやると同じように、果樹園にも、有資力の場合は暫定補償を当然くれる、無資力についても、果樹園は何ももらえないのです。農地は無資力になった場合は、復旧もしてくれれば、暫定補償もくれるのです。同じ農地の場合、果樹園は何ももらえない。復旧もしてもらえない。木が立っておるから、暫定補償ももらえないのです。だから少くとも暫定補償だけは、無資力になった場合も、有資力の場合もやる。そういうことになったならば、一歩前進だから引き下がりましょう、そういうことです。
  141. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 たてまえといたしましては、当然暫定補償は見る筋合いでございますが、先生も御承知かと思いますが、現在の暫定補償の基準でございますが、これは臨鉱法に基づく省令で定められておりますが、これは一般的な田なり畑なりの通常の利用方法に即しまして、土地本来の効用が戻らない間の労力その他の増高経費とそれから復旧後土壌がなれるまでの減収とか、そういう土地本来の効用の未回復部分を見ておるわけでございます。したがいまして、果樹園の臨鉱復旧をした場合に、果樹園として見るか畑一般として見るかという問題が実は残るわけでございますが、いずれにいたしましても、その土地が本来の効用に戻らないために生ずる減収を見るということになるわけでございます。その評価の問題については、先ほど当事者間の問題としてるる申し上げましたように、相当客観的な基準を要するという問題がございますので、その点もうしばらく研究をさしていただいたらというふうに考えております。
  142. 滝井義高

    滝井委員 あなた方が法律解釈上から土地のほうが脱水その他でうまくいっておらぬ、あるいは亀裂が入っておる、こういうことなら、農地と同じように見るというなら、それでいいです。むしろあなたのいまの御説明から、なるほどこれは果樹について凹凸ができた、ひとつ土を入れてくれというので少し土を入れてもらった、土を入れてもらったけれども、ちょうどたんぼに稲を植えてなかなか復旧ができないと同じように、これはまた根が切れたり、それから十分果樹が水分を吸収するだけの力ができていない、土は入れたけれどもできていないから暫定補償を出さなければならぬ、こういう理論でもかまわないですよ。暫定補償は今後果樹についてはやる、その基準は検討する、こういうことでわかりました。  次は不毛田、それから社有田。現在たくさんの社有田があるわけです。それから同時に滝井義高なら滝井義高の持っておる不毛田もたくさんあるわけです。それで、これが二つになるわけです。一つは、有資力の場合は、会社が臨鉱で復旧するかもしれません、そのまま放置するかもしれません。しかしその会社の持っておる不毛田にしても、もとはこれは滝井義高、井手以誠なんかが所有者なんです。そしてこれの契約を見ると、炭鉱がやめたら、それをもとの滝井義高あるいは井手以誠に返しますという一筆がある。そうすると、これは当然何とかしなければならぬという問題が出てくるわけです。あるいは今度の改正でこれはばく大な金が、農地として復旧するにはかかる。そうすると、これは宅地になるかもしれない。この場合における農林省の処理の仕方、それからこれは同時に、農業委員会の問題になってくるわけです。それで会社が簡単にそういっても、これは農業委員会が解放せいと言うかもしれない。いま築豊の炭鉱は、たくさんの雑種地を持っておる。それで雑種地は取り上げられるから、これをどういうようにしておるかというと、みんなグラウンドといっておる。これは会社のグラウンドだというので、ボタをずっと置いておる。そして戦争中にイモやらなんかわれわれが行ってつくっておったところに、みんなボタを捨てております。そして平坦地にして、これはグラウンドだ、炭鉱の社宅、炭住を建てるところだったというようなところがある。これは農民がもとおれのたんぼだから解放してくれということを農業委員会に申請する可能性がある。こういった場合に農業委員会はどういうふうに指導するか。こういう問題がすぐに起こってきますよ。われわれのところではもう起こっておりますからね。そして炭鉱はなかなかこれを放さない。炭鉱は将来工場誘致とかの問題にも頭を置くわけです。高く売る。農地解放されたら安くとられるという問題があるわけです。こういういわゆる社有田、不毛田に対する対策、これは宅地その他に変えるということは、今度の法律で二十五万円が三十五万円になって、できる可能性がおる。しかしこれを農地解放その他に要求した場合に、一体どういうことになるかという問題ですね。
  143. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 鉱害を受けましたいわゆる不毛田と申しますか、不毛の農地につきましても、経済的に許す限りはこれを復旧するということは、一般原則でございます。反当復旧限度三十五万円というふうになっておりますが、ということを申し上げておきます。ただ、不毛田につきましては、鉱害を受けて不毛田になったために、鉱業権者が金銭賠償の一つとしてこれを買い取ってしまった、打ち切り補償してしまったために社有農地になるということでございまして、これにつきましては、すでに金銭賠償が済んでおるという問題がございますが、再度農民に所有権が移った場合におきましては、その後の情勢と申しますか、二次、三次鉱害とか、そういうような点の事情がございますれば、これもやはり臨鉱復旧の対象にすることは可能であるというふうに考えるわけでございます。これが第一点でございます。  それから第二点は、社有田一般の問題についての先生の御質問だと思いますが、御承知のとおり、現在福岡県で、われわれの調査によりますと、社有田と申しますか、これは非常に境目がむずかしいのでございまして、先生は雑種地とおっしゃいましたけれども、水が出てため池的なものになっておるものと、そうでないものと、いろいろあるのでございますが、三百町歩余りのものがあるというふうに承知しております。これにつきましては、農地改革当時約一千百町歩の社有田があったわけでございますが、そのうち約八百町歩を解放した。その残りはどうして残ったかと申しますと、炭鉱付近で陥没のおそれがあるというものにつきましては、要するに収穫不安定地でございまして、解放して農家に渡しましてもその上でりっぱな自作農ができぬ。したがって、これはもう買収除外するのだということと、あとは保安用地その他で近く転用相当だ、ほかの目的に使うのだということがはっきりしているものについては、買収の除外をしたわけでございます。その考え方は現在の農地法にも引き継がれておりまして、炭鉱鉱山の付近の陥没のおそれのある農地と、それから近く転用相当の農地。転用相当の場合においては、知事が指定しております。それから陥没のおそれのある農地につきましては、農業委員会が指定しておりますが、それについては、現在やはり所有制限の例外になっております。したがって、その事情のかわらないものにつきましては、農地法上も解放という問題は起こらないわけでございますが、ただ終閉山等があった場合、それに伴って保安用地でなくなるというようなことで、知事がこれはもう近く転用相当という事態が消えた、あるいは終閉山によって鉱害が安定したというような場合には、これは何と申しますか、その陥没のおそれがなくなったというような問題があると思いますが、それにつきましては、やはり所有制限の問題が起こるということになると思います。
  144. 滝井義高

    滝井委員 今のところは大事なところですから、ちょっとお静かに願いたいのです。われわれのふるさとがつぶれるかつぶれぬかという問題ですから、簡単にいかぬですよ。今のことは、もうちょっとあとで、具体的な例で、それが起こってから農地局に相談に行きます。  次は盗掘、侵掘の問題です。合理化事業団が買い上げをしておるところにも盗掘、侵掘があるし、そうでないところにも、さいぜん私はわれわれのお寺の問題を出しましたけれども、盗掘、侵掘の問題があるわけです。ところが、これはもう鉱業権者関係なくて民法上の問題だというので、鉱害の処理をしてくれないわけです。そのために住民は非常に困っておるわけです。ところが、住民にしてみれば、これはだれが盗掘したかわからぬわけです。いつの間にかどこからかモグラのように来て下を掘って、突然家がぽこっと沈んでしまう。私自身がそういう目にあったのです。ぽかっとふろ場が陥没して、ふろがたけなくなった。一体だれが掘ったかというと、いや、先生の下は昭和二十六年に掘ったのですよということが出てきた。こういうように、深いところを掘るのですからわからないのです。ところが盗掘、侵掘は民事関係で、鉱害にならない、臨鉱法の対象にならない。それじゃ通産局は一体何をしておったかということになる。こういう問題については、明らかにこれは臨鉱法でやってもらわぬと、かなわぬわけですよ。はなはだしいのになると、鉱業権者とそれから侵掘した人が、鉱害復旧をのがれるために、こっそり話し合ってやるわけですよ。そうなったらこれはもう無政府ですけれども、そういうことが行なわれるわけです。これはもう、その上に家屋なり田地、田畑を持っておる善良なる住民は、全く知らない間にやられてしまう。通産局にいってもこれは侵掘です。われわれは知らなかった、こうなってしまう。それなら通産局がいって、それを取り締まってくれというても、取り締まりに行くとだれもいない。坑口には坑木を打ちつけて入れぬようにしている。ところが夜中になると、その坑木をはずして掘ってしまう。それでは夜中も行って監督して下さいと言っても、いや、われわれは夜中まで行って監督はできません、命があぶない、通産局はこう言うのですよ。ところが住民がいってやるわけにはいかぬですからね。警察も、これは通産局にいって下さい、こう言う。だからこういうふうに明らかにわかり切っておって、通産局にいっても通産局も監督ができないというような場合に、その住民の田地、田畑、家屋に被害を与えたら、これはやはり臨鉱法の無資力の対象か何かにしてもらわぬとかなわぬ。こんなものはざらですよ。特にこうしてどんどん山がつぶれて、大手もつぶれていって、そして浅いところに石炭が残る。またちょっと石炭の景気が冬場になってよくなるというと、すぐ洗い炭やら、こういう盗掘が出る。そういう場合に鉱害復旧というものを、臨鉱法にもかからぬからというので全然やってくれなかったらたいへんです。といって善良な住民は暴力的団なものを排除する力がない、警察もようやらぬ。こういう点で、こういう問題に対する処理を明白にしてもらいたいのです。
  145. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 ただいま御指摘の問題につきましては、鉱業法を改正いたしまして明確に救済いたしたいと思っておりますが、鉱業法も今度の国会にぜひとも改正案を出したいと思って、ただいま作業を進めております。それまでのところは、現行法で弾力的な運用によってできる限り善処してまいりたい、かように考えております。
  146. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつそうやっていただきたい。  それから炭住です。筑豊の炭住というものは、国税庁が差し押えをしております。そうしますと今度は、そこにいま住まいを持っておる労働者が、その炭住を買いたいと思うわけです。御存じの通りに、いまニュー・スクラップでは炭住は買わなくなった。旧方式では炭住も一緒に買い上げておった。合理化事業団が炭住を買い上げれば、合理化事業団と労働者の間で安く売買ができるわけです。ところが国税庁がこの炭住を押えたからには、これは評価委員が評価をしてやるので、炭住を安く売れない。こういう問題が一つ出てきた。そうすると、労働者はこれは住んでいる。それからもともとこの炭住の所有権は鉱業権者にある。者は無資力になってしまっておる。そうして国税庁がこれを差し押えしておるから、鉱業権者は動かすことができろがある。どういう抜けるところがあるかというと、この差し押えしている炭住に対して、鉱業権者が家賃をとりにくる。これは所有権は鉱業権者にあるから、家賃をとることは可能です。これを一体どう防止するかということです。無資力になっておって、鉱害その他は全部国にやってもらっておる。炭住は国税庁が押えておるけれども、その炭住の家賃をとりにくる、こういう場合が起こってきた。これを一体どうするか。炭住に住んでおる人は、全部生活保護者なんです。家賃はだれが払うかというと、市が払う。したがってこの鉱業権者は、市に家賃の取り立てにはいかない。その住んでいる生活保護者のところにいって、お前これに判を押せ、こういうわけです。私は家賃を払いたいけれども払えません、だからひとつ市に払うようにお願いしますというのを一筆書いて、判を押して市に持っていく。そうすると、生活保護者だから、市が家賃を払わざるを得ない。そこで三十万とか五十万の金が出るということになる。そういう問題が出てきている。しかもニュー・スクラップでは炭住を国税庁が押えている。政府労働者に安く事業団と同じように払い下げればいいが、国税庁はそれをやらない。きょうは時間がありませんので、いずれ国税庁は次会にやりますが、その前に、高くてもその炭住を労働者が買ったといたします。その炭住の人は全部鉱害をほうってしまっておる。そこでこの炭住の鉱害復旧ができるかどうかということです。それから同時に、この炭住には水道があるが、この水道はさいぜん言うように、もう鉱害地でない、炭鉱の用地だというので、全部鉱業権者が切ってしまう、電気も水道も切ってしまう、こういう問題が起こってくるわけです。合理化はかりは一生懸命にやるけれども、住民の生活の住まいと水の問題を炭住の中において解決しなければならぬという問題が出てくると、解決の方法がない。私たちは、いまそこで詰めてきて、この家賃をどうするかというので、家賃を払わないようにしているが、暴力団みたいなものが入ると、生活保護者はみんな力が弱いから判を押してしまう。市は無理やりに取られる。国の金を取られるのではない。生活保護者の金は、八割は市が出し、二割を国が出す。ここに水道の問題、鉱害復旧の問題が出てくる。炭住の鉱害復旧をするかどうか。合理化事業団が旧方式で買い上げるときは、炭住については鉱害復旧はいたしませんという一筆をとる。ところが国税庁が押えてほうってある炭住は取り手がない。労働者が買うと、鉱害復旧の対象になる可能性が出てくる。筑豊はもう至るところ炭住があるのですからね。そしてその炭住のまわりは、全部鉱害復旧するのです。そして無資力だったら、今度は水道がつくわけです。ところが炭住だけは炭鉱のものであるからつかない、こういう問題が出てくるわけです。そうすると、これにつけようとすれば、受益者負担で炭住の生活保護者が金を出さなければならぬ。そうするとその分は市が金を出さなければならぬ。国は金を出さぬ、こういうことになる。こういう複雑な問題があるのですよ。炭住の鉱害復旧はできるのでしょうね。
  147. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘のように、非常に複雑な問題で、簡単にこの場でどうやったらいいという結論は、いま鉱害課長とも相談してみたのですがございませんけれども、よく現地の事情も調べさせまして、何らかの解決策を知恵をしぼって研究したいと思います。
  148. 滝井義高

    滝井委員 実は、最近は大手の炭鉱では全部希望退職、いわゆる退職の募集をやるわけですね。そうしますと、この労働者はすぐに東京、大阪に行けないのですよ。全部炭住に残っています。したがって、この炭住に残留している労働者から家賃を取るか取らぬかということは、大問題ですよ。だから大手の炭鉱で希望退職をした方は、いま炭住全部家賃を払っておりません。ところが、これが、いま言ったような問題が起こってくると、家賃の問題が必ず出てくる。大手だって病院を閉鎖し、厚生施設の水道等を市に移管したり、あるいはこま切れに小さな水道にするということになると、炭住だって電気料から家賃から取らなければならぬことになってしまう、こういう問題が起こってくるわけです。閉山炭鉱にはすぐに起こってくる問題で、いまただそれが表面化しないだけですから、十分御検討になっていただきたい。  それから無資力になったならば、原則的にやはり炭住にも水道を引いてやらなければいかぬと思う。そうしないとその地区だけは水がない、こういう問題が起こってくる。そうすると、その負担の区分の問題が起こってくるわけです。われわれのところは無理にお願いして、共同栓だけを引いた。しかしその分だけ市の負担がふえた、こういう問題があるわけです。  まだたくさんあるのですが、皆さんお集まりですから、最後に一点だけ。  臨鉱法の四十八条で、急速に鉱害復旧をすることが特に必要と認める場合には、地域の指定をしますね。それから、それはたぶん三分の二以上の賛成か何かを得てやりますね。この臨鉱法では、御存じのとおり、年度に入る前に鉱害復旧計画をお立てになる。この鉱害復旧計画と特に必要と認めて三分の二の皆さんが要求をして復旧する場合との復旧計画との関係ですが、年度の途中でもこれを入れてくれるかどうか、年度の途中で入れるとすれば、その予算措置というものは一体どうなるのか、こういう問題です。
  149. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 ただいまのところ年度の途中でも、そういう問題がございますれば、当然に私どもとしてはこれを指定するということで考えております。そこでそれに伴っての予算措置についてでございますが、予算の弾力的な逆用でカバーできれば、もちろんそれで済みますが、どんどんふえていくということになれば、そういう場合には予算問題も考えなければならぬということも出てくるだろうと思います。
  150. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、年度の途中でも三分の二以上申し出て、特にこれは急速に復旧することが必要だということになれば、やっていただける。こういうことですね。復旧計画の変更もなし得る。当然なし得ると思いますが、問題は裏づけがなければ何にもならないですからね。  もう一つは、復旧工事に着手すべき地区に選定しない場合というのは、一体どんな場合ですか。三分の二の申し出があって、急速に復旧することが必要だと言いながらも、同時に四十八条二項五号の「復旧工事に着手すべき地区として選定しない」というのは、どういう場合に選定しないのですか。
  151. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 それは多くの場合、無資力鉱害の地区がこれに当たるものと考えております。有資力でございますれば、ある程度の負担ができますから、特に急速という必要性ももちろんないわけであります。したがって、無資力鉱害の地区ということが指定をする際に優先する、こういうふうに見ていただけばけっこうかと思います。ですから、無資力鉱害でないものについてはこの指定がおくれるということが、逆にあり得るわけであります。
  152. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 補充質問が井手委員からあるそうでありますから、できるだけ簡潔にお願いします。
  153. 井手以誠

    ○井手委員 鉱害は非常に切実な問題でございますので、簡単に二点だけお伺いいたします。  その一つは、ボタ山の処理でございます。閉山する炭鉱のボタ山の予防措置鉱害として取り扱いができるかどうかという問題です。例から申し上げたらいいかと思いますが、実は三十八年度の閉山炭鉱として予定されておる唐津炭鉱、このボタ山が、昭和二十八年のあの二十八年災にボタくずれがありまして、道路と河川を埋め、一部落の水田をだめにしてしまいました。そういう実績がありますし、十日ほど前の雨にもボタくずれがあって、被害が起こっております。そこで炭鉱のほうでは、排水溝や若干の防災工事はやっておりますが、地元民としてはこれは非常に困る、何とか根本的な対策を講じてもらわなければ寝られぬという悲痛な訴えを受けました。これは予防工事になるわけですけれども、危険に瀕しておるそのボタ山の鉱害防止について、これが鉱害として取り扱いができるかどうか、鉱害処理その他未払い賃金などの非常に多額の場合はなかなかむずかしい点もあるけれども会社で補償できる余裕がある場合は、当然に防災工事の完全なものをして置かなければならぬ、もしそれが不完全であった場合に、非常に犠牲を受けた場合には、その責任はだれが負うかという問題が起こってまいりますから、その点、それを含めてひとつ御回答がいただきたいと思います。私は、単に鉱山保安監督局がこの程度ならばよろしいということでは済まされる問題ではないと思います。これが一つです。  それからもう一つは、実は筑豊や佐賀、長崎の中小炭鉱、零細炭鉱閉山処理を見ますと、事業団が調査したときは支払い義務はゼロであった。ところが交付金を交付する段になりますと、いつの間にやら退職金や未払い賃金が一千万にも二千万円にもなって、すでにそれが払われたという事実を私どもは知っておるのでございます。いろいろございますけれども、その裏話はいたしません。意外にとんでもたい金額になって支払われておる。しかもその金額が労働者に支払われる場合に、今まで払っておった賃金は、実は借り入れ金で支払っておったのだから、これは取り戻しますよといって、たとえば一万円を支払う場合には九千円を天引きして渡すという事実があちらこちらに起こっておりまして、考えてみれば、これは閉山という葬式の香典どろぼうにもひとしいと私は言いたいのです。そうなってまいりますと、一方の鉱害のほうが完全に処理ができません。いま申し上げた事業団の買い上げの交付金の交付の問題については、それはあなた方に注意を申し上げておきますから、注意として受け取ってもらいたいと思いますけれども、その場合に賃金払いや退職金が膨大になったために、鉱害の支払いが非常に不足した場合にはどういう始末をつけていただけるのか、それは簡単に、無権者として認めていただけるかどうかという点をお伺いいたしたいのであります。以上二点です。
  154. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 前段の御質問に対しましては、具体的な実例を私存じませんけれども、先生のおっしゃるように、現実にそれは鉱害認定に当然なるのだということになれば、いまのケースにつきまして、いわゆる現在の臨鉱法の中に、主務大臣は特別の事情があると認める場合におきましてそういうケースを見ることが可能でございます。したがいまして、そういう点の処置をいたします。  それから第二点につきまして、いわゆる支払い賃金があとになって非常にふえて鉱害を圧迫してしまうというお話でございますが、賃金につきましては、現実に労働基準監督署の認定のもとに計算をしてまいりますので、確かにいろいろ事前調査ではない点が具体的に出てくるケースはあるようでございます。しかしそれによって鉱害が非常に圧迫されるということは、そのワクが減るわけでございますが、おっしゃるとおり、あとその鉱業権者の財産状況によりまして、これはもうそのほかに債務が多くて鉱害の処理ができないというような状況ならば、これは無資力鉱害として、復旧については無資力鉱害の取り扱いをいたします。こういうことです。
  155. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連して。先般質問をしておりました鉱害の供託金の取り戻しについて、立法趣旨と違う扱いをしておるじゃないか、供託金はいわゆる当該鉱区の鉱業権における鉱害復旧が完了したときに初めて支払わるべきものが、逐次支払われておって、米びつがからになったときに気がついても困るじゃないかという質問をしたのです。これは法制局と十分打ち合わして答弁するということでしたが、どういう結果であるか、お聞かせ願いたい。
  156. 中野正一

    中野政府委員 多賀谷先生の先般の委員会での御質問に関連をいたしまして、これは鉱業法の第百十九条の問題でございますが、条文によりますと、当該鉱区又は租鉱区に関する損害を賠償したとき供託金が取り戻せる、こういう規定になっております。この解釈につきまして、内閣法制局と打ち合わせいたしましたが、多賀谷先生のお説のとおりでございまして、その鉱区または租鉱区の損害を全部賠償したときと解釈すべきであるという法制局の見解でございます。ただ現在、鉱害の全部の賠償を完了しないときでも、供託金の取り戻しを認めておりますが、これは法律の規定にもありますように、この取り戻しは通産局長の承認にかからしめておるわけでありまして、その関係で通産局長は被害者の保護に欠けないと判断したときに、供託金取り戻しの承認を行なっておるわけであります。御注意もありましたが、今後の問題でございますが、終閉山の間近い炭鉱につきまして、現在運用されております供託金の取り戻しの結果、罹災者の保護に欠けるおそれのあるような場合には、一部取り戻しの承認を行なわないように、慎重な運用をはかりたいというふうに考えております。
  157. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その供託制度がいよいよ積み立て金制度になりますと、一時鉱業法が停止されるわけですね。ですから積み立て金の運用についても、純然たる供託金と同じ趣旨でやれとは私は言いませんけれども、これはやはり逐次積み立て金を返しておったのでは、終山時における鉱害の処理に私は十分な対策ができない、こういう状態になると思う。これはひとつ十分留意していただきたい。  もう一点は、最近の閉山における整理交付金、これを申請する場合に、御存じのように、あなたのほうで法律に基づく鉱害を請求するように公示をいたします。ところがこの鉱害の申し出を、鉱業権者のほうはきらうわけです。そうして鉱害の申し出を行なうところは復旧をおくらすぞ、こう言っておる、こういう事実がある。せっかく法律をつくって、先ほどから滝井委員もおっしゃっておりましたけれども、その鉱害復旧に万遺憾なきを期すためにある制度が逆用されておる、こういう事実があるわけです。それは鉱業権者としては、なるべく鉱害の申し出が少なくて、できれば整理交付金を現金でもらいたい、それを運転資金にしたいという気持ちはあるでしょう。しかし現実に鉱害があるのに黙っておけといって、それは一体いつ直してくれるのですか。こういう事実が相当多い。しかも大手の炭鉱にもそういう事実がある、こういうことを聞いておるわけですが、これを一体どういうように行政指導されるつもりであるか、御説明願いたい。
  158. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 いまのような事例につきましては、私も非常に遺憾に思っております。現実に先ほども申し上げましたように、大手なんかにつきましても、石炭協会なんかを通じまして、鉱害処理をいわば適正にやるような指導をしております。今後そういう事実があれば、われわれも具体的にそこによく注意をするという形で進みたいと思います。
  159. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 他に質疑通告もありませんので、これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  160. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出石炭鉱害賠償担保等臨時措置法案及び臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。  両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  161. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 起立総員。よって、両案はいずれも原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  162. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 ただいま議決いたしました両法案のうち、臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案に対して、始関伊平君外二名から附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。この際提出者に趣旨説明を求めます。始関伊平君。
  163. 始関伊平

    始関委員 私は自由民主党、日本社会党並びに民主社会党を代表いたしまして、ただいま可決せられました臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案に対しまして附帯決議を付する動議を提出いたします。  最初に案文を朗読いたします。   臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   石炭鉱業合理化の進展に伴う終閉山炭鉱の続出並びに鉱害問題特に無資力鉱害の激増等の事態により、地域住民の不安が増大している実情にかんがみ、政府は、この際民生安定の見地から、鉱害処理の抜本的対策を確立するよう早急に結論を出すとともに、次の諸点について検討を加え、必要な措置を講ずべきである。    一、第二会社に移行する場合には、第一会社はその鉱害を確認し、その復旧計画を樹立するよう指導すること。    二、終閉山後のかんがい排水施設の維持管理については、臨時石炭鉱害復旧法の規定による維持管理の方法に準じて適切な措置を講ずること。    三、終閉山後の上水道等を地元市町村に引き継ぐにあたっては、市町村の過重負担とならないよう適切な措置を講ずること。  特にあらためて御説明を申し上げる必要もないかと思いますが、鉱害復旧あるいは鉱害の賠償につきましては、本来鉱山業者、鉱業権者にその責任が属しておるのでございますが、そういうことでは累増する鉱害復旧いたしまして、急迫せる現地の要請を満たすことはできませんので、先年臨時石炭鉱害復旧法というものを制定いたしまして、鉱害復旧事業団を設ける鉱業権者の負担のほかに、国あるいは地方公共団体もそれぞれ相当の負担をいたしまして、累増いたしております鉱害を総合的計画的に復旧することを今日進めておるのでございます。ところが、最近の石炭業界の実情から申しますと、その鉱害は終閉山炭鉱の続出に伴うものが多く、したがってまた、無資力鉱害が激増するような情勢にございますので、この際政府は国土の保全あるいは民生の安定というふうな見地から、鉱害処理の根本的な問題につきましてさらに検討を加えて、抜本的な対策を確立するように早急に結論を出してもらいたいということが、この決議案の主眼でございます。項目は三つ並べてございますが、この三つの項目はこれまたきわめて重要な内容を含んでおるのでございますので、これまた慎重に検討をせられまして、至急に必要な措置を講じていただきたい。個々の項目につきましては特に御説明を申し上げることはないと存じますが、できる限りすみやかに必要な措置を講じていただきたいと考えておる次第でございます。  これをもって説明を終わります。何とぞ満場の御賛成をもって御可決あらんことをお願い申し上げます。
  164. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  これより本動議を採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  165. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。  ただいまの附帯決議に関しまして、この際政府の所見を求めます。通商産業大臣福田一君。
  166. 福田一

    ○福田国務大臣 ただいま臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案に関しまして附帯決議がございましたが、この法律の御審議の過程を通じましても、鉱害処理につきましてはその解決にいろいろと困難な問題もございまして、政府としてもその対策に腐心するところでございますが、今後この附帯決議の趣旨を尊重いたしまして、鉱害処理対策の充実に努める所存でございます。よろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  167. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 ただいま議決いたしました両法案の委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  次会は明後二十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会