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八谷政府委員 大浜炭鉱の
出水災害につきまして、
鉱山保安局から
担当課長が
現地に
調査に参りましたし、また、昨晩までの
電話連絡等を取りまとめまして御報告申し上げます。
この所在地は
山口県の
小野田市でございますが、
坑口付近を除きまして、すべてが
海底炭鉱になっておるわけでございます。
発生の日時は、去る五月七日の九時十分ごろでございまして、直接
出水の原因になりました
発生個所は、
中央幹線の一
卸左一
坑道の右七片の小払というところでございます。ただいままでに
罹災いたしました者は、十五名でございます。この
炭鉱の出炭は月産一万八千トン
程度で、
労働者七百名、
中小炭鉱では右翼に属する
炭鉱かと存じます。
まず、
災害の概況について申し上げます。
災害を
発生しました左一
坑道の右七片に設けられております。小払と称しておりますが、これは払長が約二十一メートルの小さな払でございます。五月の五日より
採炭を開始いたしまして、
災害当日の七日までにわずか二メートル、二
ワク程度の払の進行ができた
程度でございます。この払の
状況でございますが、
災害前日の五月六日の一番方で払に
重圧がきまして、払で
採炭をいたしました
石炭を落とします、いわゆるシュートと申しておりますが、ナンバー九
立坑でございます。この
立坑の下
付近が約二メートル
程度つぼ抜けいたしまして、そこから毎分三
立方程度の水が出てまいりまして、その後も
重圧が続く
状態でございまして、この三番方の二十二時三十分ごろ、夜中でございますが、
採炭の続行が不可能な
状態に立ち至ったと認められまして、三番方の
担当係員より白神と申します
採炭課長に
状況を報告いたしまして、
課長は零時三十分ごろ、七日の零時三十分ごろでございますが、
現場に到着いたしまして
状況を
調査しまして、
田島保安管理者、これは
鉱務部長でございますが、これに
状況を報告いたしまして、いろいろ連絡し合った結果、
保安管理者の
指示によりまして、
採炭を中止し
撤収するということにしたわけでございます。
災害の
発生個所でございますこの小払は、わずか二メートル
程度の払進行をやっただけで
撤収を開始する、こういう
状況になったわけでございます。三番方では、この小払内の機材の
撤収と、
ゲート坑道に
コボー木積みを行なってこの方の
作業を終了したわけでございます。この
コボー木積みと申しますのは、普通のいわゆる
空木積みにすのこを巻きまして、水がろ過しやすいような
状況にしました
コボー木積みでございまして、これを
ゲート坑道に積み上げまして、その方の
作業を終了したわけでございます。
次に、
災害当日の
状況でございますが、
災害当日は、一番方の小払担当の新藤という
係員が欠勤をいたしましたために、同
地域の他の
撤収作業個所を担当しておりました
平田という
係員が代番をするということになりまして、この小払の片の
エンジン撤収作業に二名、これは
罹災をいたしております。それから小
払ゲート関係の
撤収に八名、これは
避難をいたしております。それから若干離れた
個所でございますが、右五片払の
撤収に四名、これは
罹災をいたしております。これをありつけたわけでございます。なおこのほかの
作業個所の
就業人員は次のとおりになっております。右七片
坑道、これは小払の下を通っております下盤の
水平岩石坑道でございまして、この右七片の掘進と、それから仕繰り
関係に九名の者がおったわけでございます。これは
組夫であります。
岩石坑道の掘進でございます。これはすべて
罹災をいたしたわけでございます。それからそのほかに、この
坑道の
運搬に二名、これも
組夫でございます。これは
避難をいたしております。
それからこの
坑道の
みぞ割りに一名、それからこの
付近の
採炭個所に、これは右八片、九片方面でございますが、
採炭、掘進、
運搬等に五十四名、合計いたしまして、
避難した者、また
罹災した者合わせまして八十名の
労働者が一
卸関係に就業しておったわけでございます。この八十名のうちに
罹災者が十五名と、
避難しました者が六十五名、ほかに
係員が三名おるわけでございます。この右七片部内の
担当係員であります
平田係員より、小払の
ゲート関係の
撤収作業にありつけられました七名、これは
責任者を
国満と申しますけれども、これは七時に入坑いたしまして、第二
水平坑道で
——このうちの
責任者の
国満は、八時ごろ前日の三番方の
小坂係員に会って
作業の
引き継ぎを受けておりまして、
作業の詳細につきましては
平田という
係員に聞いてもらうようにという
引き継ぎを受けまして、八時十分ごろまた
坑内詰め所で、三番方の
平田係員と前日の
状況を話し合いまして、
現場に行ったわけでございます。そうしまして八時四十分ごろ
作業現場に到達いたしまして、この七名中二名を七片
坑道に詰め込み、他の五名を
ゲートの
作業に就業させたわけでございます。またこのほかに、この小払片の
エンジンの
撤収作業に二名が入っておったわけでございます。この小
払ゲートの
撤収作業の
責任者であります、先ほど申しました
国満というのは、
ゲートに登って
チェーンを運転して
——この
ゲートにはコンベヤーがありまして、この
チェーンを運転してみましたところ、水を含んだ泥土が出てまいりまして、また運転ができなくなり、通気も悪くなりましたために、先ほど申しましたナンバー九の
立坑の一つ手前のナンバー八の
立坑よりおりようとしたとき、下におりましたナンバー九の
立坑よりギロ
——ギロと申しますのは泥土を含んだ水とどろでございますが、これが出ているというような報告を受けまして、自分でこのナンバー九の
立坑下、
ゲート・シュートに行って見たところ、報告のとおりに水とどろが落ちかかってきたわけでございます。そこで直ちに、そばにおりました佐伯という積み込み夫に、
ゲート関係におった者を下におろさせまして、また、
組夫関係が
坑道の奥の方におったわけでございますが、水だから早く出てこいと大声で連絡をしたわけでございます。この連絡によりまして、
組夫の中の
運搬をしております中田というのが、泥水を泳ぐようにして出てきたわけでございますが、他の九名はちょうど
坑道の上から流下しております泥土を見まして、出ることをちゅうちょした模様でございまして、その奥で
罹災したままになっておるわけでございます。また、先ほど申しました
ゲート関係の者たちが
避難をしてまいりまして、
坑道の手前のほうで
平田という
担当係員に会いまして異変を知らせたわけでございますが、
平田はここで二つの処置をとったわけでございます。一つは七片、九片に大ぜい入っております人たちを救済するために、自分がそちらの方向に連絡に行く、それから一方右五片方面に、これは四人
罹災いたしておりますが、その方面に使いを走らせる、こういう処置をとったわけでございます。先ほど申しましたように、八片方面には非常に多くの人々が入っておったわけでございますが、全員が
係員の指揮によりまして、一たんは右七片の
水平坑道のほうに出てまいりましたけれども、どろの流れに出っくわしまして脱出が困難であるということから、さらに迂回いたしまして、ようやく難を免れたわけでございます。しかし一方におきまして、五片方面に連絡に行きました伝令は、どうも払の就業
状況を十分に熟知していなかった模様でございまして、的確な連絡ができないために四名はそのまま
罹災をする。それからもう一つは、小払の片に
エンジン取り片づけにおりました二名。九名と四名、二名が三カ所にわかれまして、合計して十五名が
罹災をしたわけでございます。
非常に
現場の模様が詳細になりましたけれども、以上のような
状況で
災害が
発生したわけでございます。当初私どもはこの
災害を聞きまして、これは海水とつながりがあったというようなことを直感したわけでございますけれども、現在
調査いたしましたところでは、まだ断定的ではございませんけれども、断層の上部に、これは四紀層が九十メートルございますが、この四紀層と三紀層との間の砂利層の中の水が
重圧によって崩落したところ吹き出てきた、こういうものではないかと考えられるわけでございまして、水の分析その他から海水とのつながりはないと目下のところ判断いたしております。上部
現場にございます含水層からの水の流出であると、かように考えるわけでございます。ただ今後の取りあげ
状況でございますが、現在まず排水に主力を置きまして、一卸方面から
災害個所に通じます左一
坑道を取りあげるとともに、もう一方の左七片という方面の二カ所から防水ダムを取りあげまして、排水並びに取りあげを進めておるわけでございますが、現在までに百三十四メートル
程度の取りあげ
状況でございまして、
罹災者のところに到達します
坑道の総延長が千メートルでございますので、一三%
程度の取りあげ
状況でございます。現在非常に困難をきわめておりますのは、だんだん
坑道の風化が大きくなってまいりまして、
坑道の崩落があるということと、水には炭酸ガスが含まれておりまして、この炭酸ガスが
坑道内に四、五%
程度も出てくるというような
状況で、非常に取りあげに困難をいたしておりますけれども、何とかして一日も早く
罹災者の
個所まで到達すべく、目下極力
作業を進めておるところでございます。
この種の
災害防止
対策につきましては、まだ原因の究明が
——取りあげに奔走いたしておりまして、監
督官も十分な聞きとり等もできない現況にございまして、また取りあけた
個所とその他からも総合判断しないと、にわかに断定はできませんけれども、いずれにいたしましても、この宇部地区といたしましても、非常に類例のない大量の水が出たわけでございます。
坑道をおおいましたものは、二万二千立米に及んでおります。従来せいぜい百立方フィート
程度の水がちょいちょい出てきたというようなことで、その
程度の水に対しては十分な処置ができておった。ところがこういう異例の天盤からの水ということになりまして、その地質
状況その他を十分に
調査いたしまして、今後の類似
災害の防止には万全を期したい、かように考えておるわけでございます。以上をもって御報告を終わります。