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守田参考人 ただいま御
紹介をいただきました
日本毛麻輸出組合の
常務理事守田九寿雄でございます。
本日は
毛製品の
輸出につきましてここで
意見を申し述べる
機会をお与えいただきまして、大
へんありがたく存じます。
毛製品の
輸出概況について最初申し上げまして、それから今後の
輸出市場対策並びに
輸出振興に関連する
国内対策、こういう面につきましての基本的な
対策、並びにわれわれの考え方について申し上げたいと思います。
毛製品輸出は、すでに御案内の
通り、
歴史は必ずしも古いものではございません。
昭和十年前後に
輸出が始まったような
歴史でございまして、それ以後大戦に入りましては、
輸出は試練の
時代を経たのであります。終戦後も数年間は
貿易関係がございませんでした。従って、それ以後の
歴史でございますので、そういう意味では
新興の
商品、
新興の
輸出産業と申していいのではないかと思います。昨年
毛製品の
輸出は非常に好調に
増加いたしまして
——毛製品と申し上げますのは、
トップ毛糸、毛織物、並びに毛布の一次
製品について申し上げておるわけでございます。昨年の一月−十二月間の
輸出額は一億八百万ドルとなりました。三十六年度同期の七三%増を計上したわけでございます。一二十五年に比較いたしまして、この数字は三九%の
増加となっております。
毛製の二次
製品を加算いたしますと一億五千万ドルとなりまして、ちょうど
輸入原毛代の約半分に達しておるわけでございます。この面から見ますと、まだ非常な
支払い勘定が残っておるわけでございます。従って、毛の
業界といたしましては、この
輸入原料代は
製品の
輸出でもってまかなうという
目標を一応立てまして、次の
輸出振興策なり
業界の
動きが、この
目標に向かって焦点が合わされまして、
努力され研究されておるというような次第でございます。この種の
目標が達成されました暁には、梳毛の全
生産竜の約四〇%を
輸出することになるわけでございまして、ここで
羊毛産業界の
需給の
バランスも
輸出を安全弁といたしまして調整されることができます。また、来たるべき
自由化時代に備えまして、
日本の
重要産業としての安定した態勢を確立することができると思うのであります。
次に、
毛製品の
輸出市場対策の問題でございますが、昨年の
輸出額の急増を振り返ってみますと、
欧州、これが
輸出額において倍増しておるのでありまして、
中南米、
東南アジア、この二つの地方はそれぞれ五割の
増加を見ております。
毛製品の
輸出の二大
市場と申しますのは、昨年の
実情に見ましても、北米、これが約四割、
東帝アジアも約四割でございます。他の
市場は、その
あとの残りを出しておるということでございまして、これから
開拓のでき得る
市場ということになっております。特に
欧州、
中南米、
アフリカは、ともに新しい
市場でございまして、今後
秩序ある
輸出増強をはかっていきたいと考えておる次第であります。
欧州には対
日輸入制限や
差別関税等がいまだに撤去されずに現存しております。これらに対しましては、適切な
経済外交の
推進によりまして、早い
機会に撤去されることを得まするならば、特に
欧州市場は毛にとりましては有望な
市場と見ておるわけでございます。
今後の
市場別振興
対策として特にわれわれの考えておりますことは、少数の
市場、たとえばアメリカあるいは香港といったように、少数の
市場に対しまして
輸出を集中するといったようなことは、なるべくできる限りにおいて避けていく。そうして今申し上げたようにこれら新
市場の
開拓に
努力を集中して参りたい・この三十七年度の
輸出増加の
あとを
市場別に見ますと、九十をこえるいわゆる新
市場に進出しておりまして、
輸出業者の平素の
努力によってこれらの
市場は一つ一つ
開拓されたものでございます。こういうバラエティを持つ数多くの
市場を持つということは、今後の
輸出振興にも非常なささえとなるものであります。これは英国の例に見ましてもそういうことが言えるのでありまして、
市場の
開拓こそ今後さらに
努力して築かなければならないものであると考えております。先ほどの綿の場合でもお話がございましたが、
世界のすみずみまでわれわれ
輸出業者の足跡の及ばざるなしという
市場の
開拓は、これはもう
輸出業者の職能と
努力によって初めて可能なものでございまして、この辺にわれわれの使命があるわけでございます。こういう意味合いからいたしまして、今後とも小さい
市場をも克明に
開拓していく、そうして量よりも質へ、いわゆる
市場の安定成長をはかっていかなければならないと考えております。また、品種の点におきましても、中小
企業の業態が多いのでありますが、それらの特徴を生かしまして、いわゆるバラエティに富んだということをもってマーケットの
要求にこたえていく、少量の注文でありましてもこれを積み重ねていくということが、
輸出振興に、じみではございますが、ステディな方法として
輸出振興につながっていくものと確信するものでございます。
いま一つは、
市場に対するPRでございますが、毛につきましてはPR不足の面が多分にございます。特に
欧州に対しましてその不足を痛感する次第であります。
欧州におきましては、一般に
日本の
毛製品の進出を非常に必要以上におそれておるようでございます。昨年度は、
貿易の自由化に備えまして、英、仏、西独、イタリア四国の羊毛
産業代表ミッションが多数来日しまして、われわれと
意見の交換をしたのでありますが、これらのミッション、
業界の人々は、ほとんど
日本の羊毛
産業、毛
業界の事情を知ってはいないのでございます。これは
欧州に対する
繊維商社の逸出がおくれたという
関係もあると存じます。しかし、
毛製品の対
欧州輸出は、御
承知の
通り日本側において厳重な自主
規制を行なって、あるいはまた
貿易取りきめによりまして
規制されておりまして、
市場撹乱あるいはラッシュあるいは安売りといったようなおそれは全然ございません。こういう点について説明を加え、ミッションたちも一応了解して帰ったものと思いまするが、今後といえ
ども業界人が特にこれらの
市場とは絶えず交通いたしまして、お互いによく知り合うということが大切であることを痛感した次第であります。昨年の夏に西独から参りましたミッションのうちに、西独梳毛
紡績協会の代表のハント・ハルト氏がこういうことを話されたのであります。西独は
日本と同様に敗戦の破壊から再出発をしたのでありますが、その復興は
日本のそれに遠く及ばない、
コストの安い近隣
諸国との競争のため、梳毛糸の
国内生産は五万トン——これは約一億一千万ポンドになりますが、これに対し毛糸の
輸入は三万トンである——これは六千六百万ポンドになりますが、すなわち
自国出産の六〇%を
輸入にあおいでおる、今度毛糸の方の
取引が自由化されましたので、
日本毛糸の進出を大
へんおそれまして、自分はこういった西独の苦境を訴えるのである、どうか
日本においても西独に対する
輸出については自主
規制をやってもらいたい、ということを要望しておった声を聞いたのでございますが、これは決して対岸の火として看過すべきでなく、
日本の羊毛
産業にとっても十分に味わうべきものがあると感じた次第でございます。
輸出振興に関連いたします
国内的な
対策の問題について申し上げたいと考えます。これは
輸出生産確保の問題であります。毛糸の
輸出生産は操短下にございますので、
輸出別ワク
生産という
制度がございまして、昨年来
実施をいたしておるわけでございまして、昨年の
輸出振興には少なからず付与しておることは、一般の認められておるところでございます。しかし、もともと
輸出品の
生産を制限するという、これが大
へんな不合理がそこにあります。この羊毛
紡績の
生産計画、また
需給計画が
輸出、内需を総合的に行ないまして調整しておる
現行方式では、内需の
需給調整のために——これは梳毛糸の問題でございますが、高度の操短を必要とする。設備はありながらそれだけ
輸出向け
生産をも圧縮する場合があるわけでございます。昨年
輸出が
増加いたしましたのは、こういう事態下にありながら内地の市況が非常に悪かった。昨年度のごときは内地の値段よりも
輸出値段の方が上回ったという事情がございました。
輸出が伸びたわけではございますが、もし内需が好況となった場合には、現在のごとき高率の操短下では、
輸出向け受注は非常に困難に逢着するわけでございます。今日までそういった例は何回かあるわけでございます。もっともこの問題は、
繊維需給の臨時
措置法の改廃が目下
検討されておりますので、本来の
輸出体制がいずれ
検討され、立て直されることを期待しておるものでございます。
ここでわれわれが真剣に
検討を要するという
問題点は、こういう点を
認識願う必要がある。それは、
輸出規模は非常に
拡大されており、急速な進歩
発展をいたしたわけでございますので、どうしても
輸出生産の増強が必要となっているのが
現状でございます。最近の例は、
輸出の
増加がございまして、内地の毛糸相場のささえになったというような事実もございます。従って、従来のようにこれらの計画、いわゆる
需給調整、
生産計画、そういったものが、内需にウェートをかけ過ぎた方法では、せっかく伸びようとしておる
輸出生産をまかない切れないのではないかということを痛感する次第であります。むろん
企業の
合理化や集中
生産等によって
国際競争力の強化が要請されておりますので、一年前あるいはそれ以前の
状態をそのまま持ち続けている、そういった
体制ではたして対抗していけるかどうかということが問題であろうと思うのでございます。そこで、われわれのこの点について要望したいことは、新しい
体制のできるまで、いわゆる改廃問題が決定され実行に移される前に、まず手近い方法で
輸出生産をワク外としてもらいたい、いわゆる
輸出生産を自由化してもらいたいということでございます。
輸出の注文があれば幾らでも受注して
生産できるという
体制がほしいわけでございます。この
輸出出産自由化に反対する
意見の一つといたしまして、そういう取り扱いをした場合には、玉の出回りによって内需を圧迫し、内地相場の下落を招き、かえって
市場の不安定を招くのではないかということをあげているのでございますが、これは理屈としてはそういうことも言い得るのでございますが、実際は
輸出生産をリプレイスしていくという意味合いでございまして、無制限に
生産が
増加するものではございません。また、現在
輸出の大部分は注文
生産によるものでございまして、いわゆる一般で考える見込み
生産の
増加によって極端な在庫増を招くといったようなことは、起こり得ないのでございます。そこで、重ねて申し上げますが、当局並びに
関係生
産業界におかれましても、われわれのこの要望に対しまして、ぜひ一つ英断的にお考え願いたいことを御希望したいのでございます。
それから、振興
対策、
国内対策の関連問題といたしまして、市況の安定の問題を若干申し上げたいと思います。
輸出市場を確保する第一の要件は、むろん
内地価格の安定であり、それの裏づけとなる内地市況の安定でございます。ことに
貿易が自由化されまして競争が激化いたしますと、国際
水準価格で安定する、いわゆる国際
水準価格を維持していくということが絶対の要請として
要求されるのは当然でございます。これは妙な例ではございますが、昨年は内需が非常に悪かったにかかわらず
輸出がふえたというその裏には、
内地価格が安定しておった。これは妙な言い方ですが、一年を通じまして比較的動揺がなかったわけであります。この申し上げる安定というのは、内地にとりましてはきわめて不幸な安定であったと言えるかもしれません。非常な不況のために底値をそのまま年間持ち続けた、従って内地の相場よりも
輸出の値がはるかに上値であった、こういうために
輸出が伸びたのでございまして、これは
日本の値段が安かったから
輸出が伸びたというものでは決してございません。動揺が少なかった、これが
輸出の条件をよくした一つの例であります。よく巷間申されておりますが、
日本の安売り、ことに
繊維の安売りということが論議されるのでございます。
毛製品につきましては、最近安値
輸出というような非難を買った事例はほとんどございません。これは、一つには、重要
市場に対しまして
数量規制その他の
規制関係がございまして、非常に行儀よく
取引が安定しておる。それがためにそういった問題が起こらないというのが
現状でございます。価格につきまして、
輸出窓口の価格
規制ということも論議されるのでございますが、
輸出価格を
規制するということは、これは大
へんむずかしい問題でございまして、過去にいろいろな方法で幾たびか試みられたこともございますが、決して成功はいたしておりません。
業者のいわゆるアイデア・プライスを示す程度で、お互いに自粛するといったようなことがせいぜいの行き方でございます。そこで、この
規制力の不足する面は
数量規制によって補い、現在はある程度価格の維持は行なわれております。ただ、先ほどるる申し上げました内地の価格
変動から受ける影響は、これはどうしても避けがたいのでございます。現在のごとく、毛紡の操短の伸縮によって、内地糸価の操作をはかり、しかも内需と
輸出が総合的に取り扱われていては、内需の好況あるいは不況がそのまま大きく
輸出価格に影響することになって、全く安定性がないのでございまして、絶えず動揺することを内包しておるわけであります。
輸出品の
国内価格を安定さすという見地からも、先ほど申し上げた
輸出生産のワク外自由化というものを早期に実現していただき、内需の相揚の大きな
変動がらくる影響を受けないように内需から解放てしいただくということが、重要な問題になってくると思うのであります。
次は、
輸出秩序確立の問題でございます。
毛製品の
輸出は、トップを除きまして、すべてが安
輸出承認品目に指定され、
貿易の管理下に置かれております
関係上、非常に行儀のよい
輸出が行なわれておるのでございます。重要
市場並びに
欧州向けには、
貿易管理令並びに
組合規約によりまして、ほとんどの
市場が
輸出数量の
規制が
実施され、
輸出秩序の維持がなされておるのが
現状でございます。ただ、この場合に若干問題がございますのは、いわゆる
組合外のアウトサイダーの
規制問題でございます。現在の
数量規制その他の
規制は、大体において
輸出実績を尊重し、
業者を制限しながら、また一方におきまして
業者を解放する、いわゆる
機会均等を行なわんとする、この二つのものが同居しておるというところに非常に問題があるのであります。そういった寡少の
業者、寡少の
取引が、えてして
秩序の乱れあるいは
過当競争を誘発する要因ともなる場合が間々ございます。こういった問題を解決するべく適当な
対策を必要とするのではないかと思います。
市場対策といたしましては大体以上の
通りでございますが、ここでアメリカの問題につきましてごく簡単にお話を聞いていただきたいと思います。
毛製品の
輸出は、先ほど来申し上げましたように、約四割をアメリカ
市場に出しておるわけでございます。今当面しております一番大きな問題として、アメリカにおける
輸入制限の運動がございます。一次
製品の約四割でございまして、二次
製品もその八〇%を米国に
輸出いたしておりまして、これを合わせますと七千八百万ドル程度の対米
輸出をやっておるわけでございます。これの担当業種には中小
企業も
相当ございまして、もし
規制が行なわれるということになれば、深刻な打撃を受けることに相なりますので、われわれ
業界といたしましては、非常に大きな関心を持ちまして、これに対する
対策を
検討をしておるような次第でございます。
われわれのきょうまで得ました情報によりましては、ケネディ大統領ははたして
規制に踏み切るかどうか、現在までのところでは明らかではございません。しかし
繊維出身の議員グループの
規制要求が
相当強いものがございます。また反面英、EECを初め、国際間の
貿易関係に微妙なものがございまして、
政府側もこの点かなり苦境に立っておると伝えられております。大統領の通商顧問でありまするハーターがこの
規制問題を担当しておるようでございますが、
輸出国側が英国、イタリア、EECと、これは珍しく共同の利害に立ちまして、きびしく
規制反対を申し入れておるようでございます。EECのごときは、もしアメリカが
規制を強行する場合には、これに対して報復もあえて辞せずといったようなことを真剣に
検討しておるというような報道もございます。大体アメリカが
毛製品の
輸入増ということを唱えておるのでございますが、毛織物について考えてみまする場合に、決してアメリカ側が言っておるような大きな
増加はございません。従って、どの点から見ても、きょう
規制をやらなければならないという妥当性が、われわれとしては見出し得ないのであります。ただ、そういうふうに言わなくても、問題はある程度政治問題化しておるというところに、われわれの注意をしなければならぬ
問題点があるのではないかと思います。刻々にアメリカの事情も変わっておるようでございます。きょうの伝えるところによりますと、大統領は
毛製品の
規制をやらないということを言ったということが伝えられておりますが、それに似たようなことが今まで何回も繰り返されておるわけでございます。やらなければならぬというような記者会見での発言もあったわけでございますので、そういった報道でわれわれは決して安心することはできません。今後ともこれが
対策を整え、十分な対抗策を考えていかなければならぬと思います。これにつきまして、羊毛
産業四団体が、今回各団体の代表者をもって対米
毛製品対策協議会を結成いたしました。この協議会は、アメリカ側の
規制問題に対する
対策、それから対米
輸出秩序の確立問題というものを担当いたしまして、和戦両様のかまえと申しますか、こういったアメリカ並びに各国の
動きに対応していこうという
体制を整備したわけでございます。われわれの願いは、また
動きは、米国がこの制限運動を
国家間の話し合いに持ち込む、あるいはそういったアクションを起こす前に抗議してもらいたいということに、いわゆる事前に意を決したいという意味合いをもちまして、できるだけ
海外の
輸入機関、そういった各国商工会議所等との連絡をいたしまして、民間側においてできる限りの対抗策をとっておるような次第でございます。撤回されることが実現いたしますれば幸いでございますが、しかし、また事態の変化、推移によりまして、御当局並びに国会の御支援をお願いすることもあり得ると存ずる次第でございます。
大体以上のようなことで私の話を終わらしていただきたいと存じます。御清聴ありがとうございました。