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1963-03-13 第43回国会 衆議院 商工委員会繊維に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月十三日(水曜日)     午後一時二十三分開議  出席小委員    小委員長 中村 幸八君       浦野 幸男君    海部 俊樹君       笹本 一雄君    山手 滿男君     早稻田柳右エ門君    加藤 清二君       田中 武夫君    西村 力弥君  出席政府委員         通商産業事務官         (通商局長)  松村 敬一君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君         通商産業事務官         (繊維局長)  磯野 太郎君  小委員外出席者         農林事務官         (蚕糸局糸政課         長)      中里 久夫君         通商産業事務官         (繊維局繊維輸         出課長)    亀井 義次君         参  考  人         (日本化学繊維         協会理事長)  山口 利吉君         参  考  人         (日本綿糸布輸         出組合理事         長)      美馬兵次郎君         参  考  人          日本毛麻輸出          組合常務理事 守田九壽雄君         参  考  人         (大阪化学繊維         取引所理事長) 前田 保男君     ————————————— 三月十三日  小委員久保田豊君同日委員辞任につき、その補  欠として加藤清二君が委員長の指名で小委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  繊維に関する件(化学繊維生産秩序市況安  定及び海外市場別輸出振興問題)      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより商工委員会繊維に関する小委員会を開会いたします。  繊維に関する件について調査を進めます。  本日は、本件調査のため参考人の御出席を願っておりまするが、本日の参考人中日本化学繊維協会長賀集益蔵君が御病気のため、かわりに日本化学繊維協会理事長山口利吉君が御出席になっております。他に日本綿糸布輸出組合理事長美馬兵次郎君、日本毛麻輸出組合常務理事守田九寿雄君、大阪化学繊維取引所理事長前田保男君、以上四参考人が御出席になっております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多忙のところ、当委員会の希望をいれて下さいまして御出席いただきましたことは、まことにありがとうございます。申すまでもなく、現在の繊維産業における問極点は種々あろうかと存じまするが、そのうちでも特に化学繊維生産秩序の問題、市況安定の問題及び海外市場別輸出振興の問題、以上三点の重要なる問題につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、もって本件調査参考に資したいと存じます。ただ時間の関係もございますので、お一人約十五分程度御意見をお述べ願い、あと委員からの質疑に応じていただきたいと存じます。  それでは、まず日本化学繊維協会理事長山口参考人にお願いいたします。
  3. 山口利吉

    山口参考人 ただいま御紹介にあずかりました日本化学繊維協会副会長兼理事長山口でございます。本日は私どもの方の協会賀集協会長が伺いまして親しく御説明申し上ぐべきところ、あいにく今朝来かぜのために休みましたので、私かわりましてごあいさつ申し上げるわけでございます。  本日は、国政審議に当たっておられます諸先生方が、特に繊維産業に深い関心を持たれまして、わが化学繊維工業につきまして私の陳述をお聞き下さることは、まことにありがたいことと、当業界を代表いたしまして深く感謝申上げる次第でございます。  わが国は、御承知のように米国に次ぐ世界第二位の化学繊維生産国でございまして、昭和三十七年には、六十一万トンの生産を上げております。そのうち、合成繊維は、特に発展が目ざましく、最近五年間に実に四倍以上に伸びております。十八万三千トンに達しておる次第でございます。わが国天然繊維を含めての糸の総生産量は、昭和三十七年におきまして百三十二万トンでございます。そのうち四〇%の五十三万トンは化学繊維が占めるに至っており、数年後には五〇%をこえることが予想されておる次第でございます。  また、わが国繊維製品輸出額は、総輸出額の二六%に当たる十二億五千万ドルでございますが、そのうち、化学繊維製品は四億五千万ドルを占め、その割合は、昭和三十五年に三〇%であったのが、昭和三十七年には三五%にまで増大しているのでございます。原料輸入に仰ぎます綿や毛製品と違いまして、化学繊維輸出外貨手取率が非常に高うございます。昭和三十七年にはおよそ三億八千万ドル以上の純手取りを上げたものと推定されております。また、化学繊維は、輸出産業としてばかりでなく、国内用途発展しましても、それだけ輸入繊維に代替していると考えますと、わが国際収支の上に重大な使命を果たしているのでございまして、われわれ業界としては、これを誇りと思い、同時に重い責任を痛感いたす次第でございます。  このように化学繊維発展して参りますことは、繊維産業が労働集約的な紡織業から高度の技術と莫大な資金を要します化学工業方向に重点を移しつつある姿でございまして、わが国産業構造高度化基本方向がここにも現われているものと考えるのでございます。  このような化学繊維発展は、技術革新と、積極的な需要開拓に基づくものでございます。天然繊維は農産物が原料でありますが、化学繊維化学工業の所産でありますので、技術革新が目ざましく、新しい性能の品種の創出、製造原理の転換などが急速でございます。これによって、近年の消費動向の変化や各種産業川の要求に適応した製品生産し、積極的に需要開発しつつあるのでございます。従って、化学繊維工業は、自由な創意工夫企業自己責任が最も要求される産業であるといわねばなりません。  上述しましたような国民経済上の役割や企業の性格から考えますと、化学繊維工業は、法的に規制する必要もなく、またこれに適しない産業であると思うのであります。目下、繊維工業設備臨時措置法の改廃、新立法の要否が検討されておりますが、私どもは、その際、化学繊維製造設備法的規制対象からすみやかに除外すべきであると主張いたしておりますが、それは以上の理由に基づくのであります。  化学繊維繊維産業のうちに占める比重を増加するにつれ、紡績、織布以降の各段階におきましていろいろの変動が生ずるのはいたし方のないところであります。従って、その立場々々により利害を異にすることも生ずるのでありましょうが、国民経済の大きい方向に沿い、時代に逆行しないように、それぞれの業界が賢明に対処されることを私どもは期待するものであります。  しかしながら、化学繊維工業現状欧米諸国のそれと比較して考えますと、今後の動向は必ずしも楽観できないのであります。化学繊維工業のごとき装置産業は、一般に原料から紡糸に至るまで大規模であることが有利だとされておりますが、現在のわが化学繊維企業石油化学企業は、欧米企業に比べて、規模において格段の差異がございます。しかも、欧米諸国販売価格は、コスト面相当の余力があるものと推測されます。従って、貿易全面自由化関税一括引き下げの流れの中で、今後は苦しい国際競争を覚悟しなければなりません。特に、織物、二次製品については、海外輸入制限動きを警戒せねばなりませんし、今後のわが化学繊維工業としては、原料繊維生産段階で十分な国際競争力を持つことが必要であると思われます。従って、規模拡大技術革新において欧米企業におくれをとらないよう、格段の努力が必要でございます。この点にかんがみまして、化学繊維工業は前述しましたように法的規制対象とすべきではありませんが、各企業がその自己責任を果たすためには、それぞれの企業国際競争にたえ得るよう、自主的に必要な協調をはかることが大切であると考えております。いわゆる協調方式が、その趣旨とする通り官僚統制に陥らぬ限り、この方式の実現を期待し、これによって自主調整をはかることが望ましいと考えておる次第でございます。  最後に、わが化学繊維工業の将来を左右するものとして、これに原料を供給する工業部門動向にも注目していただかねばなりません。繊維生産以降の段階におきましては、幸い伝統ある紡織部門の強力な御助力もありまして、相当の自信があるとしましても、コストに占める割合の最も高い原料部門において国際的に割高であることが心配でございます。パルプにつきましては、国内木材資源の状況から、将来の値下がりは期待しがたいので、アラスカパルプの今後の一そうの合理化と拡張に、国家的見地からの御支援が望まれるのであります。また、合成繊維原料としては石油化学工業発展に期待しておるのでありますが、この部門において国際競争力の強い出産体制ができますよう、適切な計画と徹底的な合理化が進められることを、わが化学繊維業界としては切望している次第でございます。  欧米諸国既存難業に打ちかつことは輸出振興の上から必要でありますが、ややもすればそれらの国の既存産業保護政策によって妨害を受けやすいことになります。また、後進諸国新興しつつある産業部門では、同様の保護政策の壁に当たり、また逆にあとから追いつかれる危険も多いと思われます。この点、合成繊維工業は、欧米諸国と先を争って新しく伸びつつある産業でございますから、特に原料繊維がいかに進出しても、諸外国保護政策からの反撃のおそれは比較的少ないと思われます。後進国からの追いつきも当分期待されません。  合成繊維産業世界的な勢力分野はここ数年のうらに決せられると思われます。わが国としては、これにおくれをとって悔いを残さぬよう、広い視野に立って、合成繊維工業発展を見守っていただきたいとお願いする次第でございます。  以上、はなはだ簡単でございますが、化学繊維工業現状問題点につきまして申し述べさしていただきました。ありがとうございました。
  4. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございました。  次に、日本綿糸布輸出組合理事長美馬参考人にお願いいたします。
  5. 美馬兵次郎

    美馬参考人 私はただいま御紹介にあずかりました日本綿糸布輸出組合理事長美馬兵次郎でございます。  本日私が申し上げたい点は三点ございますが、一点は綿糸布輸出取引現状とその特質、二番が一般的な輸出振興対策、三は市場別輸出振興対策、こういうことになっておりますが、時間がありませんので、三を中止いたします。ただし、これの写しがございますから、委員長に御提出申し上げることにいたします。  さて、綿糸布輸出取引現状とその特質でございますが、御承知のごとく、綿糸布輸出歴史は非常に古く、戦前戦後を通じましてわが国輸出貿易の重要なる地位を占めてきておりますが、最近十年間の綿糸布輸出数量を見ますと、綿糸布輸出世界輸出に対する比率が一八・三%から二二・三%に増加しておって、若干ながら漸増状態でありますが、もはや最近では、その輸出市場的にも数量的にも限度に達しておるということができると思います。すなわち、世界貿易は過去十年間に漸増をいたしましたが、先進国は、日本を除きまして、輸出は減、輸入増加いたしております。後進国もしくは共産圏のみが輸出がふえて、輸入が減っておるという状態でございます。現状では、綿糸布輸出市場世界各州地域にわたりまして、市場数も約六十に達しまして、ソ連、中共を除きまして可能性のある市場はほとんど開発し尽された感がするのでございます。また、これを数量的に見ますと、一九五八年から六二年に至る五年間の年平均輸出量は、綿布約十四億平方ヤール綿糸約四千万ポンドでございます。大体この辺が綿糸布年間輸出水準でありまして、最近の綿糸布世界貿易量自体も大体一定しておると存じます。インド、香港、ポルトガル等後進綿業国の台頭、化学合繊の進出、低開発諸国自国出産の向上などがございまして、今や、先進国におきましても後進国におきましても、国内繊維産業保護育成のために、綿糸布はいわゆるセンシティブ・アイテムとされておりまして、今後とも輸出量が飛躍的に伸びるということははなはだ困難な状態でございます。  特にここで触れておきたいのは、綿糸輸出取引形態についてでございます。輸出綿糸布の場合、その国内生産業者との取引は、鉄鋼などのごとくいわゆる内口銭形式取引ではございませんで、輸出業者紡績業者及び織布業者から綿糸布仕切り値形式で買い取っております。輸出取引のリスクはすべて輸出業者が負担することが紡績創立以来一貫した形態となっておりまして、輸出業者綿糸布輸出の大きなにない手であるということであります。従って、輸出業者が全く独自の責任において市場開拓輸出振興努力して、今日の立場と成果を築いてきたわけであります。輸出業者出産業者とは、それぞれ別個の歴史分野をもって発達してきたものであります。この点について特に御留意を願いたいと存じます。  先に述べましたように、綿糸布輸出市場が全世界にわたり開発開拓され、現在世界第一位の輸出国地位を占めておるものでありまして、このような輸出業者の多年にわたる苦難に満ちたいわゆるマーケッティングの努力の結晶でもあると言えるのであります。また、綿糸布輸出業界では、昭和二十七年の輸出入取引法成立以来、輸出組合を中心といたしまして、不公正な輸出取引を排除し、公正な輸出秩序を確立するため数量、品質並びに染色堅牢度及び意匠、決済条件なと各種組合規約を設定いたしまして、あるいは輸出業者協定の締結によりまして、各種広範な輸出取引規制実施し、業者協調秩序ある輸出取引を行なうことにより、限られた輸出数量範囲でより多くの外貨獲得を目ざして努力してきておるのでございますが、最近、綿糸布輸出組合では、法的規制以前の問題といたしまして、輸出取引の憲章ともいうべき八項目からたる綿糸布輸出取引に関する基本要綱というものを組合員総会で決議いたしまして、今後とも、この基本要綱の趣意にのっとって、公正にして安定した輸出取引推進をはかることといたしたのでございます。この文書につきましては皆さんにお配りをいたしますから、御一読願いたいと存じます。  なお、このように、綿糸布輸出業界は、限られた輸出量の中で、しかもセンシティブ・アイテムという種々困難な輸出環境にもかかわらず、輸出振興のにない手として、旺盛なる輸出マインドを持って、輸出内容改善新規高級品開発など、きめこまかに可能な限りの輸出維持促進策を講じつつ今日に至っておるわけであります。従って、上述のごとき実情認識の上に立って、今後とも一そう綿糸布輸出の伸長をはかるには、国内的には現在の綿糸布輸出業界秩序体制を混乱に陥れないことと、輸出が最も行ないやすい環境をつくることが、輸出振興の最大の前提であると存ずるのであります。  次の問題は、一般的な輸出振興策についてであります。  その第一は、輸出価格適正水準における安定でございます。いかなる商品の場合でも、その輸出振興をはかるためには、輸出価格の適正な水準における安定が必要でありまして、これと表裏一体の関連を持つ国内市況の安定をはかることが不可欠な要件でございます。綿糸布の場合、輸出価格自体については、輸出業者の側における輸出数量規制によりまして、間接的ながら規制が加えられておりまして、市場ごとには多少内地価格変動があっても、これをささえて安定した輸出取引努力しておるのでありますが、これには限度がございまして、国内相場が著しく低落すれば、輸出価格もこれに引きずられて不安定となるに至り、これが海外における買手の既契約の取り消しあるいは新規買いの買い控えを招きまして、反転して国内市況の一そうの低落を結果することになりまして、従って、綿糸布の場合、輸出振興にはまず国内における過剰な年産を排除いたしまして、適切なる需給調整実施することが最も肝要であると考えます。当業界といたしましては、生産者側での需給調整実施にあたっては、輸出業者意見も十分尊重するよう関係筋にも強く要望しておるのでございまするが、根本的な繊維設備規制対策とあわせ、かかる輸出業者の側としての見解を十分考慮する要があると考えるのでございます。  次には、低開発国市場対策についてであります。綿糸布の場合、総輸出量の約七〇%までがいわゆる東南アジア、中近東、アフリカ中南米などの低開発諸国向けでございます。これらの地域は、常に貿易バランスの不均衡、それによる慢性的外貨不足に悩んでおりまして、現地一次産品買付を強く要望しておるのが実情でございます。わが国といたしましても、対日輸入超過理由とする一方的な輸入制限を防止するために、これら諸国からの産品買付を大いに促進する要があると思います。そのため、一次産品輸入関税の適切な引き下げ、あるいは根本的な買付促進策の樹立とともに、技術援助及び経済協力を強化いたしまして、相手国市場育成改善を行なうことによりまして、わが国輸出が伸長しやすい基盤と環境を造成することが肝要であろうと考えられます。  次の問題は、経済外交推進市場調査広報活動充実ということであります。EECの著しい経済発展世界貿易自由化進展に伴いまして、現下の国際経済環境は急速な変貌を遂げつつありまして、わが国といたしましても、かかる事態に対処するため、強力なる経済外交推進することが肝要であり、特に相手国市場門声開放、対日差別待遇の排除が望まれるのであります。同時に、海外諸国における関税引き上げ、あるいは輸入制限実施等動向に関する情報を迅速かつ的確に把握し、不当な対日非難、対日規制要求等は事前にこれを防遏するとともに、日本の国情及び商品の正しい認識を得させるべく積極的にPR活動推進することが必要であり、このためには、存外公館の増設、経済担当官の大幅な増員、できれば問題の市場については繊維専門担当官配置等在外公館機能の一そうの拡充強化が必要であろうと考えるのであります。  次の問題は輸出保険制度強化拡充であります。輸出保険制度は、貿易活動政府が側面から援護するものとして、重要な意義がございます。特に近年はガット、IMFでの自由化論議等もあり、国家による直接の輸出助成策は次第にその分野を限定されてきているおりから、本制度強化拡充は今後の輸出振興策基本的支柱となるべきものであります。従って、今後、輸出保険制度につきましては、保険料率引き下げ担保範囲拡大等、細部にわたる改善にとどまらず、真に輸出振興に役立ち得るよう、大局的見地から制度自体の根本的な再検討を行ない、現行のごとき消極的な運用ではなくて、十分実効のある機能を果たし得るものに改めていただきたいと存じます。  それから、輸出振興租税措置でございますが、現行輸出所得控除制度は、租税特別措置法に導入されて以来、輸出振興の重要なる支柱として、輸出商社内部資本充実輸出意欲の増進に大きく寄与して参りましたが、いわゆる限時法として昭和三十九年三月末をもって廃止さるべき運命となっております。今後これにかわるべき輸出振興のための適切な施策が見られないおりから、輸出業界といたしましては、海外市場開拓準備金制度創設等租税面からの真に有効なる施策実施を要望するものであります。欧州諸国においても、間接税の戻し税等措置によって、巧妙なる輸出振興策をとっておる模様であります。わが国といたしましても、十分検討の上、諸外国に劣らない積極的な施策を講ずる必要があろうと考えます。  次は、市場別輸出振興対策でありますが、これはすこぶるきめこまかいものでありますので、これは一つ委員長に御提出いたしますから、十分御検討を願いたいと思います。  別表については、先ほど申し上げました綿糸布取引に関する基本要綱総会決議でございます。各業界の会員すべての人が、いわゆる規約以前の問題として、こういうやり方をやれば過当競争は防げるのではないかということを、みずからの自覚に立ってこれを総会で決議されたわけであります。これはすこぶる意義のあるものであろうと私は考えまして、全国に三十三の輸出組合がございますが、こういう基本要綱をつくったのはそうないのではないか、かように考えております。  なおまた、いわゆる州別輸出概況問題点とを一覧表に書いてつくってありますから、これも十分御検討願いたいと存じます。  私の申し上げたいことはこれで終わりますが、この小委員会におきましてわれわれの意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことにつきましては、大へんありがたく存ずる次第でございます。私はこれで終わります。
  6. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございました。  次は、日本毛麻輸出組合常務理事守田参考人にお願いいたします。
  7. 守田九壽雄

    守田参考人 ただいま御紹介をいただきました日本毛麻輸出組合常務理事守田九寿雄でございます。  本日は毛製品輸出につきましてここで意見を申し述べる機会をお与えいただきまして、大へんありがたく存じます。毛製品輸出概況について最初申し上げまして、それから今後の輸出市場対策並びに輸出振興に関連する国内対策、こういう面につきましての基本的な対策、並びにわれわれの考え方について申し上げたいと思います。  毛製品輸出は、すでに御案内の通り歴史は必ずしも古いものではございません。昭和十年前後に輸出が始まったような歴史でございまして、それ以後大戦に入りましては、輸出は試練の時代を経たのであります。終戦後も数年間は貿易関係がございませんでした。従って、それ以後の歴史でございますので、そういう意味では新興商品新興輸出産業と申していいのではないかと思います。昨年毛製品輸出は非常に好調に増加いたしまして——毛製品と申し上げますのは、トップ毛糸、毛織物、並びに毛布の一次製品について申し上げておるわけでございます。昨年の一月−十二月間の輸出額は一億八百万ドルとなりました。三十六年度同期の七三%増を計上したわけでございます。一二十五年に比較いたしまして、この数字は三九%の増加となっております。毛製の二次製品を加算いたしますと一億五千万ドルとなりまして、ちょうど輸入原毛代の約半分に達しておるわけでございます。この面から見ますと、まだ非常な支払い勘定が残っておるわけでございます。従って、毛の業界といたしましては、この輸入原料代製品輸出でもってまかなうという目標を一応立てまして、次の輸出振興策なり業界動きが、この目標に向かって焦点が合わされまして、努力され研究されておるというような次第でございます。この種の目標が達成されました暁には、梳毛の全生産竜の約四〇%を輸出することになるわけでございまして、ここで羊毛産業界需給バランス輸出を安全弁といたしまして調整されることができます。また、来たるべき自由化時代に備えまして、日本重要産業としての安定した態勢を確立することができると思うのであります。  次に、毛製品輸出市場対策の問題でございますが、昨年の輸出額の急増を振り返ってみますと、欧州、これが輸出額において倍増しておるのでありまして、中南米東南アジア、この二つの地方はそれぞれ五割の増加を見ております。毛製品輸出の二大市場と申しますのは、昨年の実情に見ましても、北米、これが約四割、東帝アジアも約四割でございます。他の市場は、そのあとの残りを出しておるということでございまして、これから開拓のでき得る市場ということになっております。特に欧州中南米アフリカは、ともに新しい市場でございまして、今後秩序ある輸出増強をはかっていきたいと考えておる次第であります。欧州には対日輸入制限差別関税等がいまだに撤去されずに現存しております。これらに対しましては、適切な経済外交推進によりまして、早い機会に撤去されることを得まするならば、特に欧州市場は毛にとりましては有望な市場と見ておるわけでございます。  今後の市場別振興対策として特にわれわれの考えておりますことは、少数の市場、たとえばアメリカあるいは香港といったように、少数の市場に対しまして輸出を集中するといったようなことは、なるべくできる限りにおいて避けていく。そうして今申し上げたようにこれら新市場開拓努力を集中して参りたい・この三十七年度の輸出増加あと市場別に見ますと、九十をこえるいわゆる新市場に進出しておりまして、輸出業者の平素の努力によってこれらの市場は一つ一つ開拓されたものでございます。こういうバラエティを持つ数多くの市場を持つということは、今後の輸出振興にも非常なささえとなるものであります。これは英国の例に見ましてもそういうことが言えるのでありまして、市場開拓こそ今後さらに努力して築かなければならないものであると考えております。先ほどの綿の場合でもお話がございましたが、世界のすみずみまでわれわれ輸出業者の足跡の及ばざるなしという市場開拓は、これはもう輸出業者の職能と努力によって初めて可能なものでございまして、この辺にわれわれの使命があるわけでございます。こういう意味合いからいたしまして、今後とも小さい市場をも克明に開拓していく、そうして量よりも質へ、いわゆる市場の安定成長をはかっていかなければならないと考えております。また、品種の点におきましても、中小企業の業態が多いのでありますが、それらの特徴を生かしまして、いわゆるバラエティに富んだということをもってマーケットの要求にこたえていく、少量の注文でありましてもこれを積み重ねていくということが、輸出振興に、じみではございますが、ステディな方法として輸出振興につながっていくものと確信するものでございます。  いま一つは、市場に対するPRでございますが、毛につきましてはPR不足の面が多分にございます。特に欧州に対しましてその不足を痛感する次第であります。欧州におきましては、一般に日本毛製品の進出を非常に必要以上におそれておるようでございます。昨年度は、貿易の自由化に備えまして、英、仏、西独、イタリア四国の羊毛産業代表ミッションが多数来日しまして、われわれと意見の交換をしたのでありますが、これらのミッション、業界の人々は、ほとんど日本の羊毛産業、毛業界の事情を知ってはいないのでございます。これは欧州に対する繊維商社の逸出がおくれたという関係もあると存じます。しかし、毛製品の対欧州輸出は、御承知通り日本側において厳重な自主規制を行なって、あるいはまた貿易取りきめによりまして規制されておりまして、市場撹乱あるいはラッシュあるいは安売りといったようなおそれは全然ございません。こういう点について説明を加え、ミッションたちも一応了解して帰ったものと思いまするが、今後といえども業界人が特にこれらの市場とは絶えず交通いたしまして、お互いによく知り合うということが大切であることを痛感した次第であります。昨年の夏に西独から参りましたミッションのうちに、西独梳毛紡績協会の代表のハント・ハルト氏がこういうことを話されたのであります。西独は日本と同様に敗戦の破壊から再出発をしたのでありますが、その復興は日本のそれに遠く及ばない、コストの安い近隣諸国との競争のため、梳毛糸の国内生産は五万トン——これは約一億一千万ポンドになりますが、これに対し毛糸の輸入は三万トンである——これは六千六百万ポンドになりますが、すなわち自国出産の六〇%を輸入にあおいでおる、今度毛糸の方の取引が自由化されましたので、日本毛糸の進出を大へんおそれまして、自分はこういった西独の苦境を訴えるのである、どうか日本においても西独に対する輸出については自主規制をやってもらいたい、ということを要望しておった声を聞いたのでございますが、これは決して対岸の火として看過すべきでなく、日本の羊毛産業にとっても十分に味わうべきものがあると感じた次第でございます。  輸出振興に関連いたします国内的な対策の問題について申し上げたいと考えます。これは輸出生産確保の問題であります。毛糸の輸出生産は操短下にございますので、輸出別ワク生産という制度がございまして、昨年来実施をいたしておるわけでございまして、昨年の輸出振興には少なからず付与しておることは、一般の認められておるところでございます。しかし、もともと輸出品の生産を制限するという、これが大へんな不合理がそこにあります。この羊毛紡績生産計画、また需給計画が輸出、内需を総合的に行ないまして調整しておる現行方式では、内需の需給調整のために——これは梳毛糸の問題でございますが、高度の操短を必要とする。設備はありながらそれだけ輸出向け生産をも圧縮する場合があるわけでございます。昨年輸出増加いたしましたのは、こういう事態下にありながら内地の市況が非常に悪かった。昨年度のごときは内地の値段よりも輸出値段の方が上回ったという事情がございました。輸出が伸びたわけではございますが、もし内需が好況となった場合には、現在のごとき高率の操短下では、輸出向け受注は非常に困難に逢着するわけでございます。今日までそういった例は何回かあるわけでございます。もっともこの問題は、繊維需給の臨時措置法の改廃が目下検討されておりますので、本来の輸出体制がいずれ検討され、立て直されることを期待しておるものでございます。  ここでわれわれが真剣に検討を要するという問題点は、こういう点を認識願う必要がある。それは、輸出規模は非常に拡大されており、急速な進歩発展をいたしたわけでございますので、どうしても輸出生産の増強が必要となっているのが現状でございます。最近の例は、輸出増加がございまして、内地の毛糸相場のささえになったというような事実もございます。従って、従来のようにこれらの計画、いわゆる需給調整生産計画、そういったものが、内需にウェートをかけ過ぎた方法では、せっかく伸びようとしておる輸出生産をまかない切れないのではないかということを痛感する次第であります。むろん企業合理化や集中生産等によって国際競争力の強化が要請されておりますので、一年前あるいはそれ以前の状態をそのまま持ち続けている、そういった体制ではたして対抗していけるかどうかということが問題であろうと思うのでございます。そこで、われわれのこの点について要望したいことは、新しい体制のできるまで、いわゆる改廃問題が決定され実行に移される前に、まず手近い方法で輸出生産をワク外としてもらいたい、いわゆる輸出生産を自由化してもらいたいということでございます。輸出の注文があれば幾らでも受注して生産できるという体制がほしいわけでございます。この輸出出産自由化に反対する意見の一つといたしまして、そういう取り扱いをした場合には、玉の出回りによって内需を圧迫し、内地相場の下落を招き、かえって市場の不安定を招くのではないかということをあげているのでございますが、これは理屈としてはそういうことも言い得るのでございますが、実際は輸出生産をリプレイスしていくという意味合いでございまして、無制限に生産増加するものではございません。また、現在輸出の大部分は注文生産によるものでございまして、いわゆる一般で考える見込み生産増加によって極端な在庫増を招くといったようなことは、起こり得ないのでございます。そこで、重ねて申し上げますが、当局並びに関係産業界におかれましても、われわれのこの要望に対しまして、ぜひ一つ英断的にお考え願いたいことを御希望したいのでございます。  それから、振興対策国内対策の関連問題といたしまして、市況の安定の問題を若干申し上げたいと思います。輸出市場を確保する第一の要件は、むろん内地価格の安定であり、それの裏づけとなる内地市況の安定でございます。ことに貿易が自由化されまして競争が激化いたしますと、国際水準価格で安定する、いわゆる国際水準価格を維持していくということが絶対の要請として要求されるのは当然でございます。これは妙な例ではございますが、昨年は内需が非常に悪かったにかかわらず輸出がふえたというその裏には、内地価格が安定しておった。これは妙な言い方ですが、一年を通じまして比較的動揺がなかったわけであります。この申し上げる安定というのは、内地にとりましてはきわめて不幸な安定であったと言えるかもしれません。非常な不況のために底値をそのまま年間持ち続けた、従って内地の相場よりも輸出の値がはるかに上値であった、こういうために輸出が伸びたのでございまして、これは日本の値段が安かったから輸出が伸びたというものでは決してございません。動揺が少なかった、これが輸出の条件をよくした一つの例であります。よく巷間申されておりますが、日本の安売り、ことに繊維の安売りということが論議されるのでございます。毛製品につきましては、最近安値輸出というような非難を買った事例はほとんどございません。これは、一つには、重要市場に対しまして数量規制その他の規制関係がございまして、非常に行儀よく取引が安定しておる。それがためにそういった問題が起こらないというのが現状でございます。価格につきまして、輸出窓口の価格規制ということも論議されるのでございますが、輸出価格規制するということは、これは大へんむずかしい問題でございまして、過去にいろいろな方法で幾たびか試みられたこともございますが、決して成功はいたしておりません。業者のいわゆるアイデア・プライスを示す程度で、お互いに自粛するといったようなことがせいぜいの行き方でございます。そこで、この規制力の不足する面は数量規制によって補い、現在はある程度価格の維持は行なわれております。ただ、先ほどるる申し上げました内地の価格変動から受ける影響は、これはどうしても避けがたいのでございます。現在のごとく、毛紡の操短の伸縮によって、内地糸価の操作をはかり、しかも内需と輸出が総合的に取り扱われていては、内需の好況あるいは不況がそのまま大きく輸出価格に影響することになって、全く安定性がないのでございまして、絶えず動揺することを内包しておるわけであります。輸出品の国内価格を安定さすという見地からも、先ほど申し上げた輸出生産のワク外自由化というものを早期に実現していただき、内需の相揚の大きな変動がらくる影響を受けないように内需から解放てしいただくということが、重要な問題になってくると思うのであります。  次は、輸出秩序確立の問題でございます。毛製品輸出は、トップを除きまして、すべてが安輸出承認品目に指定され、貿易の管理下に置かれております関係上、非常に行儀のよい輸出が行なわれておるのでございます。重要市場並びに欧州向けには、貿易管理令並びに組合規約によりまして、ほとんどの市場輸出数量規制実施され、輸出秩序の維持がなされておるのが現状でございます。ただ、この場合に若干問題がございますのは、いわゆる組合外のアウトサイダーの規制問題でございます。現在の数量規制その他の規制は、大体において輸出実績を尊重し、業者を制限しながら、また一方におきまして業者を解放する、いわゆる機会均等を行なわんとする、この二つのものが同居しておるというところに非常に問題があるのであります。そういった寡少の業者、寡少の取引が、えてして秩序の乱れあるいは過当競争を誘発する要因ともなる場合が間々ございます。こういった問題を解決するべく適当な対策を必要とするのではないかと思います。  市場対策といたしましては大体以上の通りでございますが、ここでアメリカの問題につきましてごく簡単にお話を聞いていただきたいと思います。  毛製品輸出は、先ほど来申し上げましたように、約四割をアメリカ市場に出しておるわけでございます。今当面しております一番大きな問題として、アメリカにおける輸入制限の運動がございます。一次製品の約四割でございまして、二次製品もその八〇%を米国に輸出いたしておりまして、これを合わせますと七千八百万ドル程度の対米輸出をやっておるわけでございます。これの担当業種には中小企業相当ございまして、もし規制が行なわれるということになれば、深刻な打撃を受けることに相なりますので、われわれ業界といたしましては、非常に大きな関心を持ちまして、これに対する対策検討をしておるような次第でございます。  われわれのきょうまで得ました情報によりましては、ケネディ大統領ははたして規制に踏み切るかどうか、現在までのところでは明らかではございません。しかし繊維出身の議員グループの規制要求相当強いものがございます。また反面英、EECを初め、国際間の貿易関係に微妙なものがございまして、政府側もこの点かなり苦境に立っておると伝えられております。大統領の通商顧問でありまするハーターがこの規制問題を担当しておるようでございますが、輸出国側が英国、イタリア、EECと、これは珍しく共同の利害に立ちまして、きびしく規制反対を申し入れておるようでございます。EECのごときは、もしアメリカが規制を強行する場合には、これに対して報復もあえて辞せずといったようなことを真剣に検討しておるというような報道もございます。大体アメリカが毛製品輸入増ということを唱えておるのでございますが、毛織物について考えてみまする場合に、決してアメリカ側が言っておるような大きな増加はございません。従って、どの点から見ても、きょう規制をやらなければならないという妥当性が、われわれとしては見出し得ないのであります。ただ、そういうふうに言わなくても、問題はある程度政治問題化しておるというところに、われわれの注意をしなければならぬ問題点があるのではないかと思います。刻々にアメリカの事情も変わっておるようでございます。きょうの伝えるところによりますと、大統領は毛製品規制をやらないということを言ったということが伝えられておりますが、それに似たようなことが今まで何回も繰り返されておるわけでございます。やらなければならぬというような記者会見での発言もあったわけでございますので、そういった報道でわれわれは決して安心することはできません。今後ともこれが対策を整え、十分な対抗策を考えていかなければならぬと思います。これにつきまして、羊毛産業四団体が、今回各団体の代表者をもって対米毛製品対策協議会を結成いたしました。この協議会は、アメリカ側の規制問題に対する対策、それから対米輸出秩序の確立問題というものを担当いたしまして、和戦両様のかまえと申しますか、こういったアメリカ並びに各国の動きに対応していこうという体制を整備したわけでございます。われわれの願いは、また動きは、米国がこの制限運動を国家間の話し合いに持ち込む、あるいはそういったアクションを起こす前に抗議してもらいたいということに、いわゆる事前に意を決したいという意味合いをもちまして、できるだけ海外輸入機関、そういった各国商工会議所等との連絡をいたしまして、民間側においてできる限りの対抗策をとっておるような次第でございます。撤回されることが実現いたしますれば幸いでございますが、しかし、また事態の変化、推移によりまして、御当局並びに国会の御支援をお願いすることもあり得ると存ずる次第でございます。  大体以上のようなことで私の話を終わらしていただきたいと存じます。御清聴ありがとうございました。
  8. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございました。  次に、大阪化学繊維取引所理事長前田参考人にお願いいたします。
  9. 前田保男

    前田参考人 私ただいま御紹介にあずかりました大阪化繊の前田でございます。  本日の課題繊維対策というものの参考人に呼ばれましたのは、取引所のおやじという格好でなしに、私ほとんど半生を繊維業者責任者として暮らして参りましたその関係から、この取引所というものが、どれだけ、ただいま詳しく御説明になりましたメーカー並びに輸出関係の方々のお手伝いをしておるかということを申し上げると同時に、昨年あれだけ泥沼の中のようなところに追い込まれました繊維相場がここまで回復したいきさつについて、取引所としての観測を申し上げたいと存じております。  ただいま皆様のお手元にパンフレットを差し上げてありますが、そのパンフレットの中に、決して満点とは申し上げかねますが、まずまず取引所の必要性というものを書いてあると存じます。メーカー初め輸出商が御活動になるについては、やはりちょうど船乗りに灯台が必要であると同じように、一つの相場と申しますか、価格というものの大体の格好を必要とするのであります。もちろん自由経済でなしに管理の形であれば管理相場というもので、ちょうどだだいまのたばこの相場と同じように——相場と言ったらおかしいのですが、ピースは四十円というふうになってしまうのでありますが、自由経済においてはこれは許されぬ形であります。それでは、取引所の相場というものが、ほんとうにその日そのときの世界情勢並びに国内情勢にどうして適合した価格が出るか、出ることを必要とするか、そういう問題でありまするが、御承知のように日本で一番歴史の古いのは大阪の三品取引所でもります。日本繊維業が世界に伸びる地盤をつくった大きな功労者でありますが、綿花にしても羊毛にしても、現地から輸入して製品に出すまでには、少なくとも四カ月から六カ月かかります。また、それを買った商売人も、製品をとり、それを二次製品にと申しますか、シャツにしズボンにするにはやはり二カ月から三カ月かかります。その間に、国内並びに国際情勢の変化に応じて相場というものは変わって参ります。それは大きな企業の方々には味わえないものでありますが、中小の機屋並びに問屋には、これはもう欠くべからざる危険でございます。その危険を何とかしてつなぎたいというのが、三品取引所——日本始まって以来の取引所のできた理由でございます。それによって毎日の相場の変動、これはすべての情勢を織り込んでできるわけでありまして、それが取引の一つの目安になる。もしこの取引所という灯台がなければ、ちょうど戦後のあの乱れた経済時代のやみ市と問屋さんの相場に二割も三割も違いがあるように、何の目安もつかないという格好になってしまうのであります。従って、事内需でござれまた輸出でござれ、事繊維関係においては、取引所相場というものはりっぱな灯台になっておるのであります。  さて、昔話ばかりいたしますといけませんので、それではこれが昨年の泥沼的のあの繊維相場からどうして立ち上がるような灯台の役目をしたか。それは、御承知のように、去年の相場なるものには、内部要因と外部要因とございます。外部要因というのは、結局業者では何ともならぬもの、つまり金融という面と、突然の自由化によって原料が流れ込んだこと、この二つが大きな原因になりまして、金は逼迫する、どんどん綿は着く、毛は着くという格好が去年の沈澱相場を出したわけでありまして、それがいろいろと業者同士の話し合い——苦しまぎれと申しては失礼でありますが、こういうときにはよくぴしゃっと内輪同士の話が合うものであります。あるいは操短に、あるいは内部規制に非常によくまとまったのであります。ことに化学繊維の中心である人絹のごときは——一時は人絹と申しますと世の中から忘れられがちになりまして、屋根の裏くらいなものだということになったのでありますが、非常に技術的に改良されまして、どんどん上級品を出す。そこへもっていって、メーカーさんたちの協調の精神というものが確立されたのと、当局の操短指導とが相待って、ここまで相場自体は直って参りました。しかし、ここで静かに考えてみなければいけないことは、去年の不況対策のうちでどの薬が一番きいたかということを、一ぺんみな考えてみなければいかぬのじゃないかと思うのです。金融逼迫から来たんだ、それが金融が緩和になったからどうのということでは、やはり解決できないのであります。もしお金で商品の価格というものを永久に操作できるというのであれば、アメリカの綿花政策のごときは、今あんな苦しい思いをしなくてもいいのであります。どこまでも需要と供給というもののほどほどの一致点を探すように業者自体が研究もし、またその監督官庁と申しますか——僕は指導という言葉はいやですから使いませんが、補導の立場にある各監督官庁が十分に話し合ってやる。と同時に、ちょうど毎日の灯台であるこの取引所の相場をよく見ていることであります。きょうの品物は高いけれども、先のものは五十円も六十円も安い。なぜ安いのだろうか。普通でいえば品物が六カ月たったら安いのはおかしいのであります。その間に金利も入れば倉敷も入る、またその問の品質のいろいろな変化もある、そういう意味合いから見れば、先の方が高いのが当然なんでありますが、そこは取引所というものの灯台の意味合いからいって、今日はこうであるけれども、やがて六カ月たったらこうなるのじゃないかという、需給バランスを始終頭に入れて札場をつくる。これは別に学者がつくるわけでもなければ何でもない。人気というものであります。人気というものはみんな命がけでものを考えての一つのエッセンスでありますので、そういうものが出ておるのでありますから、むしろ今後は、需給という面で各業者が十分に研究されると同時に、なぜ現在の相場は回復した相場がとういうふうになっているのだろうということを研究されれば、自然にどの対策薬がよくきく、少なくとも悪くしないで、持ち合いないしいい方に持っていける材料になるのじゃないか。はなはだ取引所の手前みそを並べておるようでありますが、それはほんとうでございますので、私ここへ呼ばれまして、そういう意味合いの取引所というものの使命について、ざっくばらんな言葉で申し上げた次第でございます。  御質問がございましたら、お答え申し上げます。
  10. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございました。  次に、政府並びに四参考人の御意見に対する質疑の通告がありますので、これを許します。笹本一雄君。
  11. 笹本一雄

    ○笹本小委員 ただいま参考人各位から、いろいろな御意見を拝聴いたしました。これに基づきまして、特に化学繊維工業に関しまして、その語問題について二、三質問をしてみたいと思います。  まず、繊維産業の構造上の問題として、政府が第一に取り上げている合成繊維の進出に伴う繊維間の競合調整の問題でございます。化繊協会の説明によりますと、合成繊維工業は、高度の技術と多額の資金を投入して多量の生産方式をとる化学工業として発展してきたので、その結果、合繊の生産拡大し、輸出に占める割合も年々増大しているというのであります。しかも、外貨手取り率が非常に高くて、また絶えず開拓にも努めているというととでありますが、政府の資料にも、ほぼこれと同様なことが指摘されておるのであります。このような趨勢が明らかとなっている以上、合成繊維天然繊維との競合をいかに調整するか。新旧の繊維の代替がどのように進行するか、さらには、両繊維の長短を相互に補って産業全体の水準を高めるための方策等について、根本的な検討を加える時期にきているのではないかと考えるのであります。そこで、政府はこれについてどのように考えているか。また、化繊協会においては、合繊の発展の過程において、天然繊維と利害相反する面があるため、当面の対策、特に設備規制の問題等について、若干見解の相違点が現われてくると思うが、これらの点を具体的に、率直に御意見を聞かせていただきたいと思います。
  12. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 最初のお尋ねの天然繊維化学繊維との競合の問題でございますけれども、これは競合という言葉が当たっているかどうか、その点は別にいたしまして、いろいろ御指摘がございましたように、十年前と今とを比較いたしますと、化学繊維、ことに合成繊維の伸び方は、非常にテンポが早いのであります。大体昭和四十二年度ごろになりますと、私どもの見通しでは、狭義の化学繊維合成繊維を含みました全体の化学繊維日本の全商品の中に占めます比重が、天然繊維に対しまして、ちょうど同じような比率、五〇対五〇になるというふうな見通しを立てております。そういうようなことでございまして、天然繊維化学繊維との関係をどういうふうにしていくかということは、今後の繊維業界の一番大きな問題だと考えております。これは現象的にはいろいろな形をとっておりまして、卑俗的な言葉で申し上げますと、そういうような情勢から、化学繊維天然繊維分野に進出をしているというようなことがございます。それから一つの衣料品をとりまして、従来天然繊維でございましたものが、相当早い角度で合成繊維等に切りかわっていくというような現象がございます。それからまた、あるいは天然繊維化学繊維のそれぞれ長所をとりまして、お互いの長所をとった繊維につきましては、従来のおのおのの繊維よりもずっといいところをあわせ持っているというふうなことで、総合繊維というふうな考え方もございます。いずれにいたしましても、そういうふうな天然繊維化学繊維との間に、日本の消費者の繊維消費のパターンが幾らか変わっていくというふうなことに順応いたしまして、その生産態勢等につきましても、いろいろの変化が出ておるわけでございまして、こういう点につきまして、私どもの考え方といたしましては、どの繊維がどれくらい伸びていくかということにつきましては、これは最終的には消費者がきめるという格好でございますので、消費者のそういうふうな繊維消費のパターンに即しつつ、そしてまた一方、生産企業といたしましては、天然繊維化学繊維、いろいろあるわけでございますから、そういう点に多少今摩擦的な現象も出てきておるかと思いますけれども、そういう摩擦的な点をできるだけ回避してやっていくというのが、大体基本的な考え方ではないかというふうに考えておる次第であります。
  13. 山口利吉

    山口参考人 ただいま繊維局長からお話がありましたように、基本的には、私ども業界としても同感でございます。ここで私から申し上げたいと思いますのは、日本が今、重化学工業産業構造高度化、先ほども申しましたように、そういう見地からかんがみまして、いわゆる繊維産業の体質改善というようなことから考えまして、私たち化合繊維業界としましても、紡績、織布の段階、こういうものを決して排撃するわけではございません。合成繊維も、諸先生方承知のように、フィラメント、長繊維で出る場合もございます。それからいわゆるステープル・ファイバー、短繊維で出る場合もございます。その場合には、当然紡績というものが存在しなければ糸にはならないわけで、そういう意味で、私たちの考え方としては、決して紡織業を軽視するとか、ないがしろにするとか——もう今、日本繊維廃業というものは、好むと好まざるとにかかわらず、勢いのおもむくところ、やはり産業構造高度化に重点を置く以上、当然石油化学なり、そういう方面へ立脚いたしました、つまり横の段階でなく、縦割りの系列で大いに伸びていかなければならぬじゃないか。その意味におきまして、やはり繊維の体質改善上、合成繊維というものは、私は何らの法的規制で押えるべきものではないので、それによって、おのずから、ただいまも局長の言われましたように、結局においては消費者がきめる問題でございます。われわれとしましても、綿、毛、その天然繊維のよさを決して否定するものではないのです。むしろ今後は化学繊維の長所玉取り入れ、それによって現に複合繊維時代に入っている状況でございます。繊維間の総合製品——ただ、もう一つつけ加えたいのは、今後のいろんな基本的な問題を考えます上において、綿糸紡績なら綿糸紡績立場繊維産業の今後を考えていただいては困る、こういうのが私たちの主張で、決して紡績業自体を排斥するものではない。このことだけは特につけ加えて申し上げたいと思います。
  14. 笹本一雄

    ○笹本小委員 そこで、構造上の根本問題についてでございますが、今山口さんの方から化繊業界の見解を聞いたんですが、これに従って、当面の問題となっているところの設備の措置法に関連して伺ってみたいと思うのです。  まず、現行法の対象には、制定の当時、化合繊紡績が入っていなかったが、途中三十四年にこれが規制対象となったのでありまして、その経緯と、これに関する御意見を一つ伺いたい。政府と両方から伺いたい。政府の審議会において、措置法改正の基本方針として、第一回に自由競争基盤の確立をあげているようでありますが、化繊協会としては、もとより異論はないと思いますが、具体的にどのような路線によってこれを実現させたらいいかという考えを聞きたい。先ほど化繊紡糸機は個々の規制対象からはずせというような御意見もあるようでありますが、完全な野放しを考えておられるのではないと思いますが、今後の生産の自主的調整態勢はいかにあるべきかを、重ねてお伺いしてみたいと思います。
  15. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 合成繊維の紡糸機の関係措置法に入りましたのは、今御指摘の通り昭和三十四年でございます。その間の事情につきましては、当時私、繊維局にいなかったわけでございまして、詳細は承知しておりませんが、昭和三十二年から御承知通り非常な不況がございまして、繊維関係は、ほかのものが回復したにかかわりませず、相当長い期間不況の中に低迷しておったわけでございます。そういう繊維全体の不況の中で、二十八年当時から発生いたしましたアクリル系の合成繊維が、多少一時的に過当、過剰と思われる投資があったということが原因になっておるといわれておりますが、そういうアクリル系の合成繊維の不況低迷がございまして、そういう関係もございまして、繊維としては、やはり合成繊維を含んで全体として繊維産業の安定と発展、それから市況といたしましても、そういう天然繊維化学繊維全体を含んだ価格その他の安定を考えなければいけないというようなことで、入ったのだというように考えます。
  16. 山口利吉

    山口参考人 まず第一の御質問の点でございますが、当時、三十四年の四月に、広い意味におきます化学繊維措置法の対象に乗せられましたのには、いろいろいきさつがございまして、今局長がちょっと触れられましたように、三十二、三年ころの非常な繊維の不況に当面しまして、そのときに、いろいろ繊維対策懇談会とかいうようなものが、業界と通産御当局との間でこしらえられまして、そのときに、三十三年ころ合成繊維が伸びかかって参りましたときに、今、局長からもお話がございましたように、アクリル繊維をやるものが八社も手をあげまして、それで天然繊維側の方からかなり反対が上がったわけでございます。そのときには、御承知のように、まだ綿や毛の割当制がとれらておった時代でございます。われわれ合成繊維業界としては、強く反対をしたわけでございます。しかし、決して野放しを望んでいるわけではなく、やはり計画的育成の線に沿いますと、自主調整をしなければならぬ。自主調整は、御承知のように、設備の関係になりますと投資調整カルテルになりますので、独禁法がある以上は、それに触れます。そこで時の今井繊維局長が、とにかく単独法でいくべきなんだけれども、時間的にも余裕がないし、やむを得ないからということで、措置法へ入りなさい、つまり片方は、精紡機の方の陶係は規制であるが、合成繊維はただ乱立、乱設が困る、こういうことのために、中へ入れられました。しかし、わが業界としては、強く自主運用を希望いたしました。それが独禁法の一つの防波堤になるのだ、こういうことで、中に入ることを承認したわけでございます。しかし、運用の面につきましては、強く自主運用の線を要望いたしました。自来四年間、通産御当局におかれましても、その趣旨をよく理解していただきまして、今まで自主調整をやってきたわけであります。臨時措置法というのは、御承知のように、三十一年の六月に公布されまして、三十六年六月が一応期限であったのが、三十五年の改正で、昭和三十年六月までということになっております。これは時限立法で、そのときには当然廃止さるべきものだと私たちは考えておりました。それで、今回、基本的に考える以上、われわれとしては、やはり措置法下における当主調整というのは、私たちの業界での考え方でございますが、必ずしもうまくいっているとは考えておりません。というのは、やはり法律それ自体が規制法でございますので、どうしてもワク取り競争にならざるを得ません。自主調整は、三十四年四月以降、アクリル繊維を初め、ナイロン、テトロン、それから最近に至りましてポリプロピレン、あらゆる繊維につきましての自主調整を重ねて参っております。しかし、どうしてもワク取り競争の弊がそこに強く出てくるわけでございます。これは私は、登録制というものの弊害だと思います。登録すればそこに一つの権利が出る、権利が出ればそこにプレミアムが発生する、こういうような非常なまずさが、私は当然出てくると思う。  それで次の御質問でございますが、われわれとしては、措置法の対象からはずしましても、もう四年間当主調整をやって参りましたので、経験も積んでおります。先ほども申し述べましたように、化学繊維工業というのは、御承知のように、大規模な設備と莫大な資金を要しますので、日産二、三トン程度ではとてもペイしないことは、当然なことでございます。やはり大企業でやっていかなければならない仕事でございます。しかし、野放しにしますと、やはりこれはまずいと思う。それで、今までの経験によりまして、やはり自主調整はやっていきたい。それで今の問題になっております特定産業の振興に関する臨時措置法というものが、今審議されておるように伺っております。その方で候補業種のもし指定があるとすれば、この際それに切りかえていただきたい。繊維の品種によりましては、それに乗る必要もないのです。それですから、先ほども申し上げましたように、官僚統制にならざる限りにおいて、今度の特振法をうまく活用し、協調精神はあくまで持って参りたいというのが、私たちの考え方でございます。
  17. 笹本一雄

    ○笹本小委員 次に、輸出振興対策についてお伺いしておきたいと思いますが、繊維全般として、海外におけるところの輸入制限動きを初め、種々の問題があり、政府も、業界も、輸出秩序改善について対策検討しているのでありますが、しかし、化繊業界としては、この問題が解決したとしても、なお国際競争力の上の問題は残るのではないかと考えられるのであります。すなわち、装置産業たる化学工業としての特殊性、わが国における年産規模の低位性等から、欧米諸国との国際競争上不利な点が少なくないものと懸念しているのでありますが、今後の合繊工業は、これに対処していかに実力を養成するか、この実力をいかにして有効に発揮させるかということについて、独自の構想がありましたら、それを承りたいと思います。  なお、合繊では、コストに占める原料費の割合が大きいので、その原料供給面の産業育成することが必要であることは言うまでもないのでありますが、そこで今後期待されるべき石油化学工業発展について、政府はどのような根本方針を持っているか。また、わが国欧米とでは、合繊と石油化学の発展過程が異なっております。すなわち、繊維化学工業を取り入れたか、化学工業繊維に進出したかについて相違点があると聞くが、この関係からして、わが国の合繊工業育成方向はいかにあるべきかについて、軽工業局、繊維局からもあわせてお聞きしたい。
  18. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 合成繊維輸出問題の考え方でございますけれども、これもよく御承知かと思いますが、最近三、四年間を見ますと、合成繊維輸出額は、毎年々々大体倍増いたしております。従って、この部門におきましては、一億ドルをこしたと考えております。そういうようなことで、今後とも合成繊維輸出は、相当発展性がございます。それから、ただいま綿製品でございますとか毛製品等について、海外からいろいろ声があるようでございますけれども、そういう点につきましては、今後合繊は非常に伸びる輸出産業でございますので、そういうふうな声の出て参らないように、秩序ある輸出を確保しながら、輸出を促進して参りたいと考えております。そういう点から考えまして、今御指摘のございました合成繊維産業につきまして、その国際競争力を確保するということは、非常に重要な問題であるというように考えております。
  19. 倉八正

    ○倉八政府委員 原料面を担当しております軽工業局といたしまして、お答えいたします。  繊維コストに占める比率が大きいということは事実でありまして、どうやってコストを下げて繊維国際競争力に応じ得るかということが、私の方の任務でありまして、鋭意これに力を尽くしておる次第であります。現在ナイロンの原料になっておりますカプロラクタムというのは、三社やっておりますし、アクリル繊維原料を供給するアクリルニトリルというのは、五社でやっております。規模は、今笹本先生御指摘のように、決して世界的な規模だとは言えないと思います。たとえばカプロラクタムについて申しますと、アライドケミカル、バディッシュというは、東洋レーヨンを除きましては、他の会社に比べても相当に大きい数量を持っておりまして、また、その生産形態が、石油のナフサ分解によるガスというよりも、むしろ天然ガスを使用しておりまして、相当日本よりも有利な地位に立っておるわけでありますが、値段につきましては、これは非常に秘密になっておりまして、われわれもつかみにくいのでありますが、特に大きい差はないと思います。しかし、今後ますます世界的に過剰ぎみになっていきますから、この趨勢に応じるために、通産省としましても、生産規模拡大、最新技術の導入、あるいはそれにつきますいろいろな金融面、税制面の応援をしまして、一刻も早くその趨勢にマッチしたい、こういうふうに考えております。
  20. 笹本一雄

    ○笹本小委員 今までは、ほとんど合成繊維の問題ばかりを取り上げてお尋ねして参りましたが、次に、レーヨンについて、その現状、将来の立ち直り策、すなわち、体質改善策を特に政府に伺っておきたいと思います。  レーヨンの市場安定策についてお尋ねしたいのでありますが、最近特に人組糸の価格は暴騰しているわけでございます。これは、人絹糸メーカーが人絹設備を縮小する方針をとっており、それが行き過ぎて需要にマッチしない状態となったためと思われますが、すなわち、糸を使用する織物生産者の立場をあまり考慮せずに独走しているきらいがあるのではないかと思われます。この際、中小企業の振興、輸出の振興の見地から、人絹糸の価格の長期安定策及び需給の安定策をどのように考えておられるか。  また、化繊協会にお尋ねしたいのでありますが、現在合成繊維で行なって成功しておられるような建値制ができないものかどうか、人絹糸の増産対策についてどう考えているか、人絹糸の輸出ワクを内地向けに転用する考えはないか、これについてお尋ねしたい。  次に、化繊取引所の参考人の方にお尋ねしますが、現在の人絹糸相場は、全く実情とかけ離れた思惑、投機によって踊らされているような現状であると聞くのでありますが、取引所は、こうした行き過ぎに対し、どういう自粛対策をとるべきか、政府とともに御意見を伺いたい。さっきの参考人のお話では、メーカー及びその各組合との調整があうんの間に非常にうまくいっている、こういう点においては、お話しのように何よりのように思いますが、この点について御意見を聞かしていただきたい。
  21. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 レーヨンでございますが、これも御承知通り、最近、ここ半年くらい前までは、相当不況に低迷しておったわけでございます。三十五年の生産が大体八万三千トン、それから三十六年が七万三千トンと、一万トンばかり少ないような生産でございますが、そういうふうな状況でございまして、昨年の十月までは、通産省におきまして、勧告操短といいますか、生産調整をやっておったわけであります。価格の点につきましても、これはビス一二〇Dの五百グラムでございますけれども、七月には百六十二円というふうな非常な底になったわけでございますが、その後、一般的な繊維全体の底入れ、上昇というふうな機運等にも際会いたしまして、最近におきましては、上昇的なカーブに乗っておるというふうに考えております。そういう点から、今御指摘の通り、最近価格が相当上がりまして、七月に百六十二円でございましたものが、最近は二百五十五、六円、昨日は二百五十六円ということになっております。その間、大体六〇%ぐらい高くなっておるわけでございます。そういうふうなことから、今御指摘のございましたように、末端の機屋等におきまして、物がない、あるいは原糸はあるけれども、高くて手に入らない、そういういろいろな声がございまして、そういう点、私どもといたしましても何か知恵をしぼって考えなければいけませんので、実は三月の五日に、人絹糸メーカーと糸商、それから機屋の生産団体がいろいろ会議をいたしました結果、今後の安定策としましては、人絹メーカーとしては、織物に見合う価格で人絹糸を供給していこうということにいたしたわけであります。そうして糸商といたしましても、そういうような方針に沿って、実需につながるように糸を流していくというようなことをきめたわけでございますので、今後は、通産省におきましても、この決に従いまして、その完全な履行ができるように指導いたしたいと思っております。大体価格的に申し上げますと、最近の織物の価格とにらみ合わせまして、二百十円あるいは二百二十円、その辺の価格で人絹糸メーカーとしては実需につながるような供給をやっていきたいというようなことでございます。
  22. 山口利吉

    山口参考人 私からちょっとお答えさせていただきたいと思います。  ただいま局長からお答えがございましたように、大体局長のお考えの通りにわれわれの方の業界としてもやっております。それでレーヨン、いわゆる人絹でございますが、この方も、おかげさまで非常に——その一つの原因と申しますのは、東洋レーヨンが、人絹糸の製造をこの五月の末には全廃することになっております。そういうようなこともございますし、全体としての需要も上向いて参りました関係で、ただいま局長からお話がございました五日にそういう会合を持ちましたと同時に、昨日も私どもの方の業界で相談をいたしまして、これに対しましては、やはり今局長のお話になりましたような線に沿いまして、慎重に検討しております。ただ、巷間伝えられるような心配は、私ども立場から申し上げれば、現在のところでは絶対にない。ただいまのところは、機屋さん、糸屋さんの方と実需に伴うことを主体にしまして、織物に見合う価格で出す。大体二百一円から二十円。相場の方は——これはここに前田さんがおいでになるのですが、私たちの業界としましては、なるほど取引所の存在というものは、農産物のように季節その他で左右されるとか、あるいは輸入に仰ぐとか、そういうようなものは、あるいは取引所は必要かもしれませんけれども、化合繊につきましては、季節にかかわりなく一定の品質のものを出せますので、かえって取引所があることによりまして、ごくわずかなものが、価格がそれによって左右される。化繊、合繊は、もちろん先生御指摘のように建値で、そういうあれになっておりますので、人絹、スフの場合でも、そういう必要は私たちの業界としてはないものと考えております。
  23. 前田保男

    前田参考人 ただいま現物と定期のお話がございました。御承知のように、定期は、その納会が来るまで、多少そこに波があります。そのかわりに、定期取引は全部キャッシュでその場受け取りであります。現物市場は六十日ないし九十日の手形売買が多いのでありまして、その間に価格に何がしかのギャップが出るということは、当然であろうかと存じます。  なお、ただいま人絹について取引所は要らないのだというお話がありますが、やはり先ほど申し上げましたように、価格の中心というものを出すについては、取引所以外では——なるほとお話し合いで、メーカーが少なく、六大メーカーしかないのでありますから、それを縦に並べておけば、自分の家の子郎党にお分けになるような心持ならばできるかもしれません。しかし、それがほんとうに機屋からどこへ行くといったら、これは一般の消費者に行くのであります。機屋がそのまま消費しているものではないのであります。使うととは使いますけれども、その製品は一般に大衆に流れていくのであります。従って、その閥は、この価格というものの表示なしに象の子郎党だけに持っていくという形が、自由経済に合うか、合わないか、これはゆっくり検討さして、また話し合いをさしていただきたい、こういうふうに思います。
  24. 田中武夫

    ○田中(武)小委員 関連して。今参考人の答弁等を聞いておりまして、繊維業界には相反する思想が流れておる、そういうふうに感じるのであります。生産者側の皆さんは、統制強化という方向に、たとえば中小企業団体法を強化してくれ、あるいはアウトサイダーの規制面を強化してくれ、こういうような意見、一方取引所の関係は、あくまでも自由競争の上に立ったもの、こう言うておるのです。従って、二つの相反した意見が出ておる。そこで、一体繊維というものに対して、ほんとうの自由経済でいくのか、それとも、もうすでにあるような相当の統制、あるいは協定、こういうものが手ぬるいから、もっと強化してくれ、こういうどっちの方向を向きながら繊維行政を進めていこうとしておるのか、一つ局長にお伺いします。
  25. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 ただいま御指摘の点は、非常に基本的な問題でございまして、それからまた、まさに私どもが日常悩んでおる問題点でございます。非常にむずかしい問題はあろうかと思いますが、私の考え方といたしましては、今直ちにどっちであるというふうに割り切ることは、なかなかむずかしい。御承知通り繊維産業特質といたしましては、一つはだんだんと、たとえば今いろいろ御議論がございましたように、天然繊維から化学繊維というような構造変化もございまして、ある一部の繊維産業につきましては、設備が非常に過剰になっておるという現象がございます。従いまして、その非常に過剰な設備につきまして、今直ちにそういう基盤のものとにおいて自由競争をやることは、私は困難ではないかというふうに考えております。  それからもう一つの特徴といたしましては、繊維産業が、縫製加工というふうな段階におきまして、非常に労働集約産業であるというふうな性格から当然だと思いますけれども、労働力に依存いたしましたいわば労働集約的な形におきまして、相当多くの中小企業が存在しておるわけであります。それで、機屋を中心にいたしましたそういう中小企業段階におきましても、また設備自体が過剰でありますと同時に、その産業の性格といたしまして、中小企業的な悩みを持っておるのでございます。そういう段階において、これもまた、直ちに自由競争というわけには、なかなか困難を免じて、参らないのではないかというふうに考えております。そういうことでありますが、また一方、ただいま山口参考人からお聞きのように、最近の繊維工業の、特に化学繊維原料段階におきましては、化学工業的な装置産業に移行しつつあるというふうなことで、しかも非常に大きな資本を投じました装置産業化学工業がございますと同時に、また末端におきましては、非常に労働集約的な零細企業があるというのが、繊維工業の性格でございます。従って、私といたしましては、繊維工業全体を一本の考え方、一本の筋で考えまして、そして自由競争、あるいは統制と申しますか、あるいは調整というふうなことには、なかなか割り切れないのであります。そういうふうな個々の実態につきまして、そういう実態がどういうものであるかということを見きわめまして、きめのこまかいと申しますか、実態に応じた行政をやっていくべきであると考えております。
  26. 田中武夫

    ○田中(武)小委員 その根本をはっきりしないと、私はいけないと思う。繊維行政に対して相反する二つの思想がある。たとえば今あなたが言われた繊維工業設備臨時措置法、これは独禁法の除外であって、そして無登録織機等は強権をもって封緘する。罰則がある。こういう方向でいって、なおかつ、これをもっと強化してもらいたいという意見。ところが、取引所という観念は、全く自由経済の中にのみ存在する観念であります。しかも、商品取引所法は、第二条でそれぞれの該当の品種を定めておる。これは全部繊維です。それから第十号でその他政令で定めるとなっておるが、おそらく、ここで化繊は入っていないから、政令で定められた事項ではなかろうかと思うのです。しかも、取引所自体の性格は、将来のある時期における価格を推定して、そこで取引をやろう。いわば多分に投機的なものなんです。しかも、仲買人というものは、法律による特権を持っておる。そこでこの商品取引所法は、どこが管轄しておるのです。しかも、こういう法律になって、すでに指定されたものが、なぜ繊維だけでいいのか、そういういろんな問題があります。きょうは、参考人に対して各位の質問があるようですから、私はやりません。しかし、これは根本的に一ぺん通産省と論争してみたい、このように思っておりますから、どこが専管であるか。  それから前田参考人要求をいたしたいのですが、おたくの定款及び取引所法の八十条によるところの業務規程、これを出して下さい。そしてあらためて取引所の是非、繊維産業のあり方がいかにあるべきかということは、根本的な議論をする必要があると考えております。
  27. 美馬兵次郎

    美馬参考人 私は、綿糸布立場でございますが、ただいま御指摘になりました三品の問題でございますが、繊維は、発生順でいきますと、綿糸布の生産業者と綿糸布の内需業者並びに輸出業者、このように綿糸布事業が一番に発達しておりまして、その次が毛、麻の関係で、やはり同じように生産者及びその内需業者並びに輸出業者、次には人絹糸布、それから合繊紙糸布、こういうふうに発達をしております。ただいま三品の問題を御議論になりましたが、それは生産立場取引所の立場をお話しになったようでございますが、その間に、いわゆる各品種ごとに輸出業者もおりますし、また内需業者もおるわけであります。私は、輸出業者立場取引所の問題をお話し申し上げますので、そのおつもりでお聞き願いたいと思います。  三品取引所の利用の問題でございますが、たとえばメーカーからわれわれ輸出業者が品物を仕入れる場合に、海外に物を売るのに、海外に合ったような適正なる価格で売る場合に、メーカーがいつも同じような値段、あるいはわれわれの希望する値段で売ってくれない場合が多いのであります。それを中間に立っていわゆる買いつなぐ、あるいは売りつなぐ。買いつなぐと申しますのは、紡績会社が売らないものを三品から買う。売りつなぐというのは、紡績が売ってきたものを市場へ売ると下がるから、市場へ売る前に三品にそれを預けておく、これが売りつなぎ。そうしませんと、もしこれが相対の生産者と輸出業者取引のみに限定するということになりますと、取引がそこに非常な渋滞を起こしやすくなる。これが輸出取引上における一番大きな隘路を助けてくれておるということになる。だから、そういう立場におきましては、三品取引所というものは、いわゆる化繊でありましょうが、あるいは綿でございましょうが、輸出取引には非常に必要な機関と言わなければならぬ。ただし、むろんいろいろな弊害はあろうと思いますが、その弊害を直すということにしまして、非常に必要なものを伸ばしていくということにお考えを願わなければならぬじゃないかと考えております。だから、ここで自由とか、あるいは統制とかいうように一がいに割り切ってしまうということは、非常に危険なことじゃないか、かように考えます。
  28. 田中武夫

    ○田中(武)小委員 私は、参考人意見を求めておるのじゃなくて——参考人の言われた意見参考にしましよう。しかし、問題は、私は政府施策のあり方を言っているのです。なぜ繊維関係にだけ取引所があるのか。もちろん証券取引は別です。繊維一つを見た場合に、生産者と、輸出業者、あるいは販売業者、いろいろありましょう。それぞれの役を果たしておられるのだが、一つの業界というか、一つの縦の線で見た場合の中に、二つの違った施策が行なわれているところに問題があると思うのです。それは参考人の皆さん方に聞いたりしておる問題ではありません。もっと基本的な問題としてわれわれは今後議論をする、そういうことを言っているだけなんです。それとも、ここで参考人の諸君、一つ議論をやりましょうか。どうです。取引所が必要か、必要でないかという議論に入りましょうか。いかがでしょう。
  29. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 商品取引所の所管物資は、今御指摘の通り繊維が非常に大きなウエートを占めておりますが、これも万々御承知のことと思いますけれども、水産物、農産物等がございます。
  30. 田中武夫

    ○田中(武)小委員 水産物、農産物は、どういう法律があるのか。この商品取引所法によってやるのか。そうすると、政令の指定になっているのか。農産物取引所法というのがあるかと思って調べたが、ないのだが……。
  31. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 これは同じ法律でございます。ただいま申し上げました通り、水産物、農産物の法律といたしましては、この商品取引所法による商品取引所のものでございまして、取引所法の第一条に基づいて商品の指定がございますが、その規定に基づいて水産物、農産物が指定をされておる、そういうような格好でございます。
  32. 田中武夫

    ○田中(武)小委員 一条で指定するようになっておりますか。二条二項十号でしょう。
  33. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 私、間違えました。
  34. 田中武夫

    ○田中(武)小委員 わかりました。私は、根本的にやり直すということだけを言うておきます。
  35. 笹本一雄

    ○笹本小委員 それでは結論として、化学繊維育成、振興策について、特に立法上の問題として、設備規制の法制はどうしたらいいか。生産秩序の公正が必要と考えるが、近く提案の予定になっておるところの特定産業振興法について、どう考えておるか。これについて業界の人たちの意見と、政府意見を聞きたい。
  36. 山口利吉

    山口参考人 ただいまの御質問でございますが、当業界といたしましては、先ほど来申し上げますように、化学繊維産業構造高度化という線から考えまして、化学繊維合成繊維は、規制対象から即時はずしていただきたい。しかし、その結果、野放しにしていただきたいと申し上げるのではなく、ただいまいろいろ審議されております特定産業の振興に関する臨時措置法であるとか、その促進法の方の業種指定ということがもしどうしてもやらなければならない場合には、その中に化学繊維として御指定願いたい、こういうふうに考えております。
  37. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 特定産業強化臨時措置法案によりますと、あれは候補者産業といっておりますが、候補者産業にどの産業が載るべきであるかということにつきましては、目下通産省が検討中でございます。ただいまお話の出ておりました化学繊維につきましては、まだその取り扱いをきめておりません。
  38. 笹本一雄

    ○笹本小委員 それでは次に、生糸の問題について伺ってみたいと思います。  本年初頭以来、生糸価格は人絹糸以上の異常な変動を来たして、関係業界に重大な悪影響を及ぼしているが、これに関して、商品取引所法に基づく生糸売買取引の制限または停止の措置をなぜとらなかったか、今後とる考えがあるかどうか、まず、これについて伺ってみたいと思います。
  39. 中里久夫

    ○中里説明員 生糸の価格は、最近非常な高値水準を維持しておりますが、これが、商品取引所法に照らしまして、はたして過当であるか、あるいは過当でないのか、その結果、公益にどういう影響があるかという認定は、非常にむずかしい問題でございますので、農林省といたしましても、非常な慎重な態度をもって臨んでおります。ただ、取引所の運営のあり方につきましては、問題があるごとに、横浜と神戸の理事長を蚕糸局に招きまして、適正な、公正な価格形成が行なわれるよう、そのつど指導をいたしております。取引所に対しまして、たとえば行政力によりましてこれを規制する、たとえば極端な場合には停止するというような事態につきましては、取引所本来の使命が公正な価格決定の場であるし、これがなくなった場合には、いろいろな困難な問題がございますので、私どもといたしましては、取引所の運営につきまして、その適正な価格形成が行なわれるよう、ただいま資本金の問題等につきまして、できるだけ適正な指導なり監督を行ないたいと考えております。
  40. 笹本一雄

    ○笹本小委員 それは、商品取引所法にも出ております。九十条、百二十一条によると、どうしてもむずかしいのだということだけ書いてあります。これは実は、やってもなかなか法的にむずかしいのだ。しかし、対象になるのは、もっと掘り下げていくと、出産するところの、あなた方農林省の方で持っておるところの百姓、つまり養蚕家。日本で一番養蚕をするのは、僕のところの群馬県です。これは御承知通り、今そこに松村局長もおりますが、昭和二十八年に世界絹業会議の第一回がございましたが、その当時においては、ソビエトと中共が入りませんでしたが、世界生産の八割が日本で、あと一割がイタリアだ。イタリアは、今どんどん減っています。ところが、今、中共は十二万俵以上出している。それからソビエトは四万俵以上出しております。これが入ると、今、世界生産の五六%くらいが日本の先産です。一番多いのです。糸の品質は一番いい。一番研究している。ところが、その後あちらへ参りまして各国の需要者に聞きますと、糸は高くていいが、変動をなくしてくれ、ことしは十円だ、来年は二十円だというのでは困る、変動がないようにしてくれと言われる。今度のようなこういう変動がありますと、輸出はもちろん伸びません。国内業者はどうかというと、これは生糸を使わないで、化繊の方にみんないってしまう。つくった百姓はどうかというと、私どもの群馬県は、一番生産が多いのですが、これは一つも上がっていない。ことしあたりは十九万ですか。十七万を割ったときは、政府がみんな買い上げる。それから二十三万以上になったときは、政府の持ち糸を出してそれをコントロールする。これは話ばかりで、ことし出すといったって、出すものがないのでしょう。それで今あなたの方も困っている。局長だって困っている。何とかしてくれといえば、蚕糸関係がうるさいからとか、いろいろむずかしいと書いてある。あなたの方のこれは百二十一条のことです。これは輸出の面で、国内繊維産業の面で、ましてや特に農林省でいっておるところの農村の振興のために、百二十一条を発動するぐらいの決意は持たなければならぬ。ところが、ことしあたり値がいいからといって麦畑に桑園をつくったりしているが、三年ぐらいかかります。これができた時分はまた下がってしまって、政府の言うことを聞くとみんな損をする。長野県、群馬県、みんな損する。こういうようなことではたよりにならない。あなたの方は、繭をつくるまで百姓をかわいがって、やっと糸ができたら、そのできたやつは通産省にまかしてしまう。あなたの方でニューヨークに一人行っているのは、何のためかと言いたい。そうやってみたところで、通産省はこれはむずかしいから決して喜ばないかもしれませんけれども、とにかく突っ込まれると、今のあなたのような、局長さんか課長さんか知らないけれども、そういう答弁をするしかない。もう少し今参考人の話にあったように、強権発動でもしてやれば、大きく輸出振興になる。あるいは国内産業育成になる。農村の振興になる。一方で、相場は立てても自由競争だ。今三十九万ぐらいしておるでしょう。だから、あなたの腹の中は、十九万、十七万じゃ百姓があまりかわいそうだから、ことしあたりは二十二万ぐらいにしようと相談しているのでしょう。そのくらい思っても、かけ離れていてはできない。だから、これは大きな農村振興の上において、もう少し真剣に考えて、これこそ、今だれかが言った強権ということで、これは多くの人の問題だから、強く出てやる。これをやるには、ここに書いてあるように算定するとか何とかいう事なかれでやっていけばいいと思うかもしれないが、農村は事なかれじゃだめです。真剣に一つやっていただきたいということを、課長さんのおみやげとして、帰って局長その他の者と相談してもらいたい。  それからその次に、生糸価格の安定のための恒久対策として、繭の増産対策推進する必要があると思うが、つまり農林省としての方針を伺いたい。  それから次に、現行の繭糸価格安定制度について、最低価格を引き上げて実情に合わせる等、再検討を行なう用意があるかどうか。また、これ以外に、生糸取引所に今言った禁止価格制度を復活させる考えがあるかどうか。繭糸価保証制度を設ける意思はないか。繭糸価格安定調整機関を設置する考えはないか。これについて、あなたが答弁しても約束できるかどうか知らぬが、一つお答えいただき、帰ってからまた御相談いただきたい。
  41. 中里久夫

    ○中里説明員 生糸の価格が非常な高水準を維持している理由といたしましては、今御指摘になったように、供給不足でございます。しかも、生糸はわが国だけがほとんど独占的な供給国でございますから、ほかの物資のように輸入することもございませんし、国内で念に増産するわけにもいきませんので、われわれとしては、今お話にあったように、これが対策に日夜苦慮しておる次第でございますが、いずれにしても供給量をふやすことが、需給を緩和する一番重要な要諦でございます。  そこで、農林省といたしましては、繭の比産については、昭型二十三年の当時の不況のときには、一応その生産は横ばいという見通しを立てまして、桑園の整理等を行なった次第でございますが、その後の推移にかんがみまして、昨年、長期見通しを立てまして、今後十年間における生糸の需要の安定的な成長ということを見通しまして、二割ないし四割程度の需要増が見込まれるということで、繭の生産についても、従来と異なった対策を立てることになっております。いずれにしても、繭が増産しない主たる原因は、労力の問題でございます。農家といたしましては、御承知のような高い繭価に支えられて繭の増産意欲は盛んでございますけれども、繭の生産は、労働が非常に集約的でございますから、労働節約的な養蚕技術を徹底させることが、ただいま私ども施策の最も重要な点になっております。そのために、省力養蚕法の徹底、あるいは桑園の集団化、あるいは違作対策ということで、各種施策を総合的に進めて、その結果、繭が増産できるような結果にいたしたい、こう思っております。幸いにいたしまして、今年の昭和三十八年の繭の生産の見通しは、昨年よりも三・一%程度の増加は見込めるという結果が出ておりますが、これが確実なものになるよう、生産対策あるいは連作対策等について、私ども万全を期したいと思っております。  それから繭糸価格安定の問題につきましては、今の安定帯の幅は、最低糸価十七万円、最高糸価二十四万円でございまして、政府の手持ちは一俵もございませんので、昨今における高糸価に対しまして、これを放出する糸がございませんので、有効な手段が現実にないわけでございますが、この安定帯水準の改定の問題については、ただいま出産費の集計を鋭意急いでおりまして、この生産興の結果がどういう数字が出るかわかりませんが、おそらく昨今の労賃の状況等によりまして、上昇は免れないだろうと思っております。それからさらに、ことし、あるいはことしを含めました数年後の生糸の需給価格水準も考えまして、現行の安定帯価格水準につきまして、これを修正するような準備を実は内々進めております。ただ、どの程度の水準になるか、これは計算の過程にございますので、まだはっきりわかりませんけれども、今の水準は訂正する方向検討いたしております。いずれにいたしましても、その水準は、生産費というものが一つの基準になりますので、最近のような高糸価の水準に安地帯水準を近づけることは、なかなかむずかしいと思います。そこで、今の安定法の運用では、一挙動で最低糸価水準の維持、それから最高価格水準の維持ということが、非常にむずかしくなって参りました。そこで、今御指摘のような繭糸価格の設定ということも、かつてはとられた措置でございますけれども、ただいまのところ、安定法の最高価格水準を維持したいという目的で、繭糸価格水準を設定するという気持は、私どもにはございません。やはり需給を緩和する方向で、若干限度もございますけれども、供給増という手段をとっていきたいと思っております。
  42. 笹本一雄

    ○笹本小委員 糸政課長、やはり供給増という措置は大へんだと思うのです。それには、どうしても今あなたが検討しているという最低価格の問題、労働力の問題で大へんだと思うのですが、採算は、これは心配要りません。それは将来の見通しとしては、今言っているくらいの最低価格ならできますよ。それで、ただ問題は、もう今農林省で桑園の改造をやって、桑の反収を上げるだけが問題です。だから、それは今のような指導でいけばできますが、ただ、さいぜん言いました値の問題については真剣に一つ施策を考えて、そして安心して国内産業輸出も伸びていくように努力してもらいたいと思います。これで終わります。
  43. 中村幸八

    中村委員長 次は加藤清二君。
  44. 加藤清二

    加藤(清)小委員 では簡単に。どうも参考人の皆さん、長時間にわたって御苦労さまでございます。私は簡単にポイントをつかんで質問したいと思いますから、御答弁なさる方も、簡潔でけっこうでございます。  第一番に、繊維輸出を振興するにあたってネックとなっている点は、一体何であろうか、こうながめてみますると、機場の関係では、原料高の製品安だ、こういうのです。   〔小委員長退席、山手小委員長代理着席〕 それからもう一つ、海外においていろいろ値段が問題にされまするが、この際は、内地安ならばよろしいが、内地高の外地安、内地は高値で外国に売る場合に安い。もっとも、スフ、人絹のように、綿糸も安値ではございませんけれども、こういうことが、この輸出振興の上に大へんな影響を及ぼしていると思うのです。そこで、一体それでは内地の糸ヘンのコストをどこが左右するだろうかと、こう尋ねてみますると、原因は各所に散見されますが、その最も根っ首を握っているのが、今お話の出ておりますように三品市場、この三品市場のあり方が、近ごろ輸出を振興するにあたって、コストの安定ということが叫ばれ、金融の正常化が叫ばれるようになりますと、いろいろな人が注目をするようになってきたわけなんです。  そこでお尋ねするわけなんですが、これは前田さん、おたくは化繊の方だけのようですが、一つぜひ綿の方も毛の方も代表してお答え願いたいのです。この三品市場というのは、先ほど美馬さんもおっしゃいましたように、これはつなぎの場として設けられたもののはずなんです。ところが、だんだん年を経るに従いまして、つなぎの場という本来の使命よりも、投機の場という利潤追求の場に変わりつつある。特にこれが証券市場のあおりを常に食らうわけなんです。資本が集まるときも、吸収されていきますおりも、金融の問題と証券市場とに大へんな影響を受けて、そのつど上がり下がりが非常に多い。そのことは、やがて生産においてもコンスタントに保たなければいけないという輸出、これに大きな影響を及ぼしていると思う。特に例を申し上げるまでもございませんが、ほんとうは機場でたとえばしま物をつくるということになれば、その人は組織なりあるいは柄なりをよく研究して、よりよき品物をつくるということに熱中したらいいはずなんです。それが織物部門の社長ともなりますると、午前にも午後にも頭へくるものは何かというと、ラジオとテレビに発表される三品市況です。それほど念頭に置かないと、今日では商売ができない。だから、生産部門の苦労は、原料、つまり糸の植の上がり下がりと、金融に端を発しております。これではりっぱなものができない。これじゃ価格を安定しましょうの、輸出を正常化しましょうの言ったって、それはぬかにくぎなんです。従って、今日三品市場のあり方を再検討しようではないかという声が、金融の正常化とともに起こっておるゆえんなんです。この点について前田さんに端的にお尋ねしますが、今日のあり方で三品市場は一体いいのか悪いのか。金融業界は、こぞって姿勢を正すと言うておる、正常化すると言うておる。そういうやさきにもし正常化するとするならば、三品市場は一体どこをみずから姿勢を正されるのか。  もう一点は、一体その標準価格というもの、建値というもの、標準コストというものを、どこに置いていらっしゃるのか。たとえば綿の二十番手、毛の方だったら梳毛の四八で、どの程度が相場だと、これならばと思っていらっしゃるのか。その点もぜひ伺いたい。それから最後のコストの点だけは、各業界の代表がいらっしゃるようですから、ここらあたりならばというところですわ。大体絹の三十七、八万円なんというのはべらぼうな相場で、これでもって輸出せいと言ったって無理な話なのです。それを放任しておくというのは、政府の怠慢で、与党の方からも、怠慢じゃないかという声が出てくるわけなんです。まず、最初にその点を伺いたい。
  45. 前田保男

    前田参考人 はなはだ問題の機微を十分につかまれた御質問で恐縮しておりますが、つなぐと申しましても、綿布魔がつなぐ、糸屋がつなぐというだけではございません。はっきり申し上げましたら、それは北浜あるいは兜町がおつなぎになっているかもしれません。しかし、持ち株が繊維関係のつなぎとしてある場合も、多分に想定されるだろうと私は存じます。たとえば、あなたが莫大なる紡績株を持っておられるとしたら、糸が下がれば紡績株は下がるにきまっているから、ひとまず三品に預けようという処理方法もあろうかと存じます。ただ、過当投機というものによる過当な相場というものが出ることは、取引所を預っている人間としては、その機能を消すことになりますので、はなはだ残念なので、種々気をつけております。ただ、三品の場合は、御承知のように、ベーシスの商いというもののつなぎは多分に多いのであります。機屋さん初め皆さんが、その場でもって右、左でお買いになるかわりに、まあ値段はあとできめようじゃないか、現物だけ確保しておこうじゃないか、これは、先のことはわからないのだから、ごもっともです。まず糸だけ仕入れておいて、二次製品のゆかたなりが売れたときにつなぎをはずせば右、左で済むじゃないかという心持もごもっともなのですが、そのバーシスの商いというものが、大体五割以上を占めております。それですから、今おっしゃるように、証券筋が活動してということは、これは無理なことでありまして、ことに納期に近くなりますと、現物が渡って参ります。機屋並びに業者というものは、現物が参りましても、お手のものでどういうふうにでも受け答えできますが、これは証券筋その他は受け答えはできないはずでございます。ですから、そういうわけで、相場のことですから、いろいろな意味合いでときには波立つこともございます。しかし、相場というものは、長い目で見ていただかないと困るので、そこに多少波風があったって、あそこは必ず波風が立つのだというふうに御解釈願わずに、長い目で見てもらう。昔からありますいかなる財閥が投機的に手を入れようとも性の大勢には勝てぬということを、かつて大阪のある有名人が言うたのでありますが、えてして目先の波風だけごらんになると、今の適切な御質問が出るわけでございます。どこまでも、三品といたしましても、東京繊維といたしましても、預かっている者としますれば万全の注意はしておりますが、大勢のお客さんが集まると、それが付和雷同という意味合いになりますか、ああじゃない、こうじゃないという一つの材料をプラスにプラスにとりまして、波風が高くなるという場面もありますので、なお何かと運用上につきましては——御承知のように、今の取引所法というものは、戦後まだアメリカさんが相当発言力があった時分にできておりますので、いろいろ直さなければならぬかというところかございますそれについてはまた専門家が今一生懸命に研究中でありますから、やがてどういう形かでその研究のエッセンスも出るのではないか。まあ私の今の質問に対する御返事は、この辺であろうと思います。
  46. 加藤清二

    加藤(清)小委員 お答えありがとうございました。糸価は、綿に例をとれば二十番手でどの程度ならばよろしいか、梳毛ならば、四八番のどの程度の値なら標準とお考えになっていますか。三品市場を行なっていらっしゃるところでは、そういう標準というものを立てていらっしゃらないのか。あるいは将来どうするか。現状を理解してもらいたいというあなたの意思はよくおかりましたが、それでいいのか悪いのか。将来みずから姿勢を正すとするたらば、どういう正し方があるのかという点のお答えが抜けているようでございますから……。
  47. 前田保男

    前田参考人 ただいまのお話によりますと、取引所が、いわゆる売買相場でなしに、管理相場に近いものを採用するかどうかということですが、御承知通り、今の自由市場の価格のあり方は、そこに出産と管理相場というだけの簡単なものではないのであります。あすが日に起こるであろうということを予想して、そうしてそれが相場に織り込まれるわけであります。たとえば、ただいまの三月の綿糸、毛織もそうでしょうが、やがて賃上げという問題も起こりましょうし、あるいは金利引き下げによって負担力が軽くなるということもありましょうし、いろいろそういうことを織り込んで売買相場が成立しているのでありまして、ただいま人絹関係から、お前のところはじゃまだというお話がありましたが、そうすると、結局管理相場で、つくる人の御意のままの値段で末端の機屋から消費者まで行くことが、現益の日本の経済としていいか悪いか、御相談しましょうと言って話は打ち切ったのでありますが、取引所は、どこまでも管理相場ではございません。売買相場でありますが、そのかわりに、間違ったら首根っこを押えられるのを覚悟して相場を立てるわけであります。これが自由市場であります。自由市場と統制あるいは管理市場相場との開きというものはあるということを御承知願うと同時に、私どもとしては、過当投機というものはできるだけ押えていこう。それがために、現物の受け渡しまでぶっつけていこうじゃないか、そういう規則の範囲になっておりますので、どうぞその点御了解願います。これでよろしゅうございますか。
  48. 加藤清二

    加藤(清)小委員 御説ごもっともで、きょうは討論をする場ではございませんので、討論は避けますが、確かに自由経済ではございますものの、繊維の方は、材料の輸入も自由、製品輸入も自由、ただし、生産面は、完全に公取の独禁法除外例を希望して、みずから制限を欲してああいうことになっているわけなんです。なおかつ、どんなに自由とおっしゃっても、アメリカの方へ綿製品輸出するとすれば、これは向こうからやはり規制してくるのでございます。従って、自動車が歩道に乗り上げるようなことは許されなわけなんで、私は何も官僚統制を云々するわけではございませんけれども、ただそういう状況下にあって、三品市場だけが制限なしに、交通規則なしに行って——それはストップ高というものはあるでございましょうけれども、それは一日だけの話です。こういうことがはたして今日の価格安定策に相マッチしているかどうかということは、これはわれ人ともに研究しなければならぬ時期に到達しておるわけです。  これは別な委員会で行なうこととして、今度はこまかい点を通産省側にお尋ねしてみたいと思いますが、かつて材料が統制であり、製品輸入が統制でありましたおりには、輸出振興策としてボーナス制度というものがございました。それからCリンクということが、これは確かに日本の戦後の輸出振興策に大へんな貢献をしたと思うのです。ところが、自由化と同時にこれははずされ、独自の力で輸出振興をはかっていかなければなりません。そこで、これにかわるべき、と言うては語弊があるかもしれぬが、何か取りはずされた突っかい棒の以外に、輸出振興策を考えていらっしゃるやいなや、この問題が一点。  それから二番目に、飛び飛びでまことにおそれ入りますけれども生産設備の内訳をながめてみますと、これは輸出するものも、輸出しない内需のものも、同じように土産制限が加えられておるのです。この点は明らかに、先ほどの田中君の筆法からいきますと、完全に矛盾しておるわけです。つまり統制時代であってさえも、なお幽霊織機、幽霊紡機をどうすることもできなかったわけなんです。ましていわんや、材料が今日自由になって、しかも製品輸入も、イギリスから七百万ポンドも毛製品についてはことし入れる。両端が自由になって、まん中だけがぎゅっと縮められてくる、統制されてくるということは、これはおかしいし、輸出を振興せい、輸出を擬興せいというかけ声のもとに、なおかつ、そのものは生産が制限させられておるということは、これは私のようなしろうとから見ますと、どっかに間違いがあるのではないかと思われる。従って、先ほどの守田さんのような発言になるのではないかと思われるのですが、この点、政府としては現状をこのままでいってよろしいとお考えになっているのか、あるいはこれは何とかしなければならないとお考えでございましょうか。
  49. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 繊維につきましては、一般的にとられております輸出振興施策のほかに、施策そのものといたしまして、仕組みとして変わったものはございません。ただ、御承知通り海外でいろいろ声がございまして、秩序ある輸出というものが要望されておりますが、これがある黄味で繊維についての特徴になっておりますから、そういう点で、地域別にいろいろメーカーとの関連を他の商品よりも密にしてやることが必要だということで、その点いろいろ指導をやっております。  それから設備の点でございますけれども、これはごくわずかでございますけれども、私が記憶いたしておりますところでは、設備格納の点につきまして、一般のワクと同時に輸出ワクというものをこしらえておりまして、その輸出ワクというふうなことで、輸出を設備の面からも促進しておるというようなことに相なっております。
  50. 松村敬一

    ○松村(敬)政府委員 先ほどリンクのお話がございました。これは加藤先生御指摘のように、当時、日本輸出を伸ばします上に特別の効果があったことは確かでございます。それだけに、またその後、国際的には非常に非難も受けておったわけでございます。自由化をいたしました際に、お話のようにその制度を廃止したわけでございますが、現在では、それにかわるような特別な制度を考えてはおりません。
  51. 加藤清二

    加藤(清)小委員 考えておられないのでは大へん心もとないわけで、輸出振興も、業者の一人歩きやあるいは三品市場の値下がりによって輸出が促進されたり、ささえられておるようでは、これは当局としてはあまりにも手が薄い、こう思われます。  そこでもう一つ、これは通商局長にはちょっと答えにくいことかもしれませんが、日米関係について、きょうの新聞によりますと、綿交渉が一時とぎれるということでございます。これがとぎれて、四月早々に一挙に解決に持っていくということのようた報告でございます。しかし、はたしてそのときに二国間の問題だけでおさまるかどうか。おさまろうと期待はしておっても、おさまらない場合にはどうなさろうとするのか。  次に、同じように毛製品についても、向こうは政治を先頭に立てて交渉なり会議なんかが行なおれておるようでございます。日本繊維業界は一人歩きがお好きでございますから、政治家にものをたよるということが、ほとんどないようでございます。ところが、アメリカの繊維歴史は、ほとんど政治が先頭に立っておるおうでございます。そこできょう、ケネディさんは、毛の方は制限しないと発表なさったようですが、これは制限するの、しないのという言葉の繰り返しが歴史になっておるわけです。必ずしもそれを額面通り受け取るわけには参りません。これについては、どのような対策があるか。同時に、向こうに要求するだけでなくして、こちらも考えなければならぬ点があるのです。それは、向こうの言い分は、ラッシュするからいけない、コストが安いからいけない、こう言うのですけれど竜、必ずしもコストが安いのがいけないわけじゃない。なぜかならば、日本が制限させられて自粛したあと日本よりもっと安い香港やらメキシコの綿織物をたくさんに買い入れて、七倍にも十倍にもその輸出力が伸びておる。こう考えてみますと、必ずしも値段が安いのが悪いわけじゃない。要は、ラッシュするという問題なんです。幾何級数的に伸びるという問題なんです。その幾何級数的に伸びる、ダンピングをするというこの根本原因は、商社の姿勢をただしてもらわなければならぬと思う。きょうは、幸い商社関係の人が多いようでありますから何ですが、ラッシュの原因を詳細に調べるまでもなく、これは商社の数が多過ぎるからいけないと常に言われておりますけれども、商社は三品で失敗したりいろいろして、だんだん数は減っておるのでございます。にもかかわりませず、数が多過ぎることはどういうことかというと、政府責任がある。なぜか、それは糸へんなら糸へんの専門輸出業者を指導、育成、強化するところの方策が全然ない。そこに問題がある。そとでどうなるか。各社がみんな総合へ総合へといく。よろず屋さんによろず屋さんにという競争をやっておる。それに対して、系列の金融機関が、よし引き受けたということで融資をする。だから、糸へんを扱うところの商社の頭数は減ったかもしれぬけれども、競争がいよいよ激化して、みんなが総合商社、よろず屋になっていくものだから、同じ糸へんに例をとっていえば、ここがラッシュするのはあたりまえなんです。この傾向を通産局としてはどうされるのか、あるいは組合側としてはどう考えられるのか、ここらあたりに本日のポイントがあると思うのです。この点よく御反省いただくと同時に、姿勢を直していただかなければならぬ、こう思うわけです。政府側と組合側の両者の御意見を承りたい。
  52. 松村敬一

    ○松村(敬)政府委員 先ほど私、リンクのような制度を考えておりませんと申し上げましたのは、輸出振興策は考えていないというのではございませんで、繊維局長も申しましたような市場別の繊維輸出振興対策ということは、これはいろいろ考えておりますが、ただ、いろいろ国際的に問題になりましたような、ある意味で補助金的なふうに誤解されますような、従来のリンクということを再び考えるというふうなつもりはございません、こういう意味で申し上げましたので、その点、一つ補足して説明させていただきます。  それで、綿製品協定の関係のお尋ねで、交渉がしばらくとだえるのではないかというお話でございました。これはちょうどただいま参議院の予算委員会の方で外務大臣、通産大臣からも答弁があったわけでございますが、従来交渉をやっておりましたあちらの担当官は、関税引き下げ問題の方も担当しておりますし、その引き下げ問題の関係のガットの委員会が開かれますので、それでジュネーブに行ったのだと思います。新聞の報道にございましたような、その人がいなくなって、それで交渉がとだえるというふうには必ずしも考えておりません。現在、こちらからいろいろ綿製品協定に関しましての法律的な問題点をあちらにただしておりまして、その返答が参りましてから、それによってあらためてどういう形で交渉を展開するかということを政府としてきめていこう、こういうことでございますので、もうしばらくアメリカ側の返答を待ちましてから、外務大臣は国際協定という同じ土俵で一つ話をしようじゃないか、こういうことになって、その土俵の条件を今聞いておるので、そのなにができてから一つやり方をきめる、こういう答弁を今したわけでございます。ワシントンの大使館の方からも、これによってしばらく交渉がとだえるのだというような情報が入っておりませんので、なるべく早くこちらの質問に対する問答をもらうように要求するということで交渉を進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから毛の問題に関しまして、これも新聞の報道でございまして、まだ公電を受けておりませんけれども、大統領が輸入制限をやる気はないと言ったそうでございまして、これは従来、制限したいのだと言ったり、あるいは制限することについて輸出国側の方に協力してほしいと言ったり、また御指摘のように、急に輸入がふえたからそれで制限せざるを得ないのだと言ったり、いろいろなことを言っておりますので、さっき参考人の言われましたように、その言葉だけをすぐとって、いいニュースとしてとっていいかどうか、必ずしも楽観は許さないと思いますが、こちらといたしましては、十分日本としての主張をいたしますとともに、綿製品の場合とまた違いまして、違う国が輸出国でございます。綿製品の場合でも、ほかの日本以外の輸出国ともいろいろ連絡をとって、前の交渉の会議に臨んだような次第でもございますので、今後とも、毛の問題は毛の問題で、またイギリス、フランス、イタリアというようなそれぞれの対米輸出国とも、いろいろな問題が起こりました場合には十分連絡をとって、対処いたしたいと考えておる次第であります。  最後の商社の過当競争の問題につきまして、加藤先生の御指摘の点は、まさにわれわれ輸出振興を考えます場合に、一番むずかしい問題として日ごろ悩んでおる点でございますが、ただ、現在の状態、法制、あるいは全体の仕組みといたしまして、商社がある範囲の業務を広めてほかの種類をやるということの制限をするという方法が、御承知のように法律的に、あるいは制度的にはないわけでございます。しかし、そういうことの結果、いろいろなところがみな総合化するということで、あらゆる種類の分野に非常に多くの会社が進出して、そのために日本輸出過当競争を起こし、その結果、高く売れるものも売れないということになっておることは、御指摘の通りでございまして、これについては、やはり各品目別に、また各市場別に、それぞれ話のつきますものは、何とかメーカーと商社の話し合い等で、できるだけ品物あるいは市場の受け持ちをきめて、無用の競争がないようにしていただきたいということで、これは前々そういうことをやっておるわけでございますが、今回また輸出会議の部会を開きます場合、これは三十八年度の輸出目標をつくるための会議でございますから、あわせまして、今先生御指摘のような点についても、少しでも改善をいたしますように、業種別にいろいろと御相談をしておるところでございます。
  53. 美馬兵次郎

    美馬参考人 過当競争の問題は、過去におきましては、過当競争と申しますと商社、商社では、特に海外において一番名を売っておるのは繊維で、繊維の中でも一番古いのは綿糸布、こういう関係で、綿糸布輸出取引なるものが、いつも過当競争の中心であるというように看板を高く売ったわけであります。ところで、先ほどわれわれの綿糸布輸出業界現状特質を申し上げました通り綿糸布に関しましては、あらゆる緻密な規定をつくりまして、そうして過当競争を防ぐ方法を講じておるわけであります。それを御説明する時間はございませんが、御承知の品質別による組合が、三十三ございます。そのうちの輸出綿糸布組合というのが、一番行儀がよくて、海外における過当競争で悪いということを指摘されたことは、最近はほとんどございません。欧州においても、ほとんどございません。それは、価格だけで縛っても過当競争というものは防げるものじゃございませんので、これは取引法にも規定してありますように、数量規制数量の次に意匠の問題、決済条件の問題、あるいは品質の問題、あるいは系列の問題、あらゆるものを一つにコンバインドしまして、そうして最後は価格に集約されるということにしませんと、価格だけを取り締まっていくということでは、結局何もできないことになります。それでこれは御了解願いたいと思います。  もう一つは、業者の数が非常に多いという御指摘でございましたが、綿糸布輸出業界は、最近業者がだんだん減るのです。減ると申しますのは、行儀のいいところだけ寄って、行儀の悪い人が減るということではないかと私は想像しております。現に、取引法が三十六年の国会で改正されまして、貿易連合というのができました。貿易連合というのは、私の組合で申しますと、組合員百八十名の中で貿易連合が八連合ございまして、その構成しておる会員というのは約九十社でございます。だから、百八十名のうちで九十社というものは、一つの連合で固まっておるわけです。だから、中小企業者というものは、その連合の八十人が連合の会員で、八つの連合に固まった。ということは、代表者が八つできておるということであります。これらの人の結束によりまして、組合の指導、あるいは政府の監督、いろいろな面においても非常にプラスになっておるわけであります。でございますから、もしここにいろいろな外部からの加入の問題が起こるとか、いろいろな問題が起こりますと、そういう分野を非常に破壊されるということがあります。中小企業に対するいろいろな弊害というものが、これまた露呈する。私どもの方の組合としては、九十社が、大商社二、三十社を加えまして、九〇%に相当するものを輸出しておる、こういうことになります。非常にまとまっている。ところが、何も取り締まりをしておるわけでもございませんし、加入、脱退というのは、組合の根本規約で自由になっておりますので、新規に入ってくる人よりも、出る人の方が多い。だから、減りぎみになっておるということは注目すべきであると思いますので、これは何といいますか、一つのパターンとしまして、綿糸布業界の内容を十分に御検討なさって、こういう式で他の組合にも及べば、相当効果的な輸出振興策の一端が、目的が達せられるのではないか、私はかように、手前みそではございますけれども、考えておる、こういうことでございます。
  54. 加藤清二

    加藤(清)小委員 それでは、あまり長時間にわたっても申しわけございませんので、これで最後にしたいと思いますが、それほど綿糸布輸出組合が行儀がよくてお上品でいらっしゃっても、なおアメリカはラッシュだからいけない、チーフ・レーバーだからいけないといって、あのように国家的な大問題になっているわけです。一つぜひあなたにお願いしておきたいことがありますが、せっかくここにりっぱな申し合わせ事項というものができているようです。これをぜひ確実に実行するように、正直者がばかをみないように——なぜかならは、法律で自分らに取り締まってくれといったその設備制限は、やみが百万錘も行なわれておる。そういうのがあなたたちの実態なんです。それですから、この点を正直者がばかをみないように、ほんとうにまともにこれが実現できて、アメリカの輸出も正常に立ち帰るようにしていただきたい。あなたの方は商社が少なくなった、少なくなる傾向だとおっしゃいますが、多過ぎる、多過ぎると言って、政府さんは何をおやりになるかというと、じゃんじゃんおふやしになっているのです。今、たとえば毛製品輸入のごときは、八十数社あったのです。それをまた足らぬというて、今度は二百何社も希望があるからというので、その中の七十何社を今度お許しあそばされた。何を言うていらっしゃるやらわけがわからない。ラッシュだからいかぬ、買いあさりをするからいかぬ、売り競争をやって、買いたたきをやっていかぬと言うていながら、いかぬ原因をつくっておる。それが実態なんです。と同時に、そういうことをやらかすものだからどうなるかというと、今度はメーカーさんが、よし、おれも輸出をやりたいといって、先年アメリカへ毛製品がラッシュした。柄物がラッシュするはずがないのに、どういうわけだと思って調べてみたら、無地物なんです。それは紡績さんがつくってじゃんじゃん出せば、ラッシュするのはあたりまえですよ。歩道の中にトラックが飛び込んできたのと同じです。ひっかき回されるのがあたりまえです。だれかさんが、金魚ばちの中にナマズを入れたようなものだというふうにこのことを許していらっしゃったが、そういうことが行なわれようとしておる。ここらあたりを直していただかなければならない。  それからもう一つ、先ほど美馬さんが、低開発国に対するフィフティ・フィフティの貿易については、三品の買付をせんければならないとおっしゃった。全く時宜を得た発言だと思うのであります。これをはっきり打ち出したら、これこそアメリカの交渉に非常に有利に展開する原因になると思うのです。ほんとうに三品を後進国からより多く買う。つまり原綿の買付は、アメリカさまさまだけでなくして、別の方に今後市場を求める、そういうことを確信をもって言えまするならば、ぜひ一つこの際もう一度覚悟のほどを承りたいと存じます。  最後に、山口さんにお尋ねしますが、輸出競争力の強化が叫ばれて、特定産業の問題が、今、時の問題として通産省で取り上げられておるわけでございます。お説の通り日本合成繊維は、綿や毛に比べれば大へん大きいのでございますけれども外国のこの業種と比較すると、大へん小さいわけでございます。今後ますます輸出を増進するとあなたおっしゃっておりましたが、その建前から申しますると、より一そう大きくし、コストをダウンさせるために、企業合同その他の意思、すなわち特定産業の指定を受ける意思ありやなしや。特定に材料面は、石油化学の方は、だんだんとその傾向にあるやに承っておるやさきでございます。この点を一つお漏らし願いたいと存じます。
  55. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 一番最後の点だけ御答弁いたしますが、先ほど申しました通り、通産省としては、特定産業強化臨時措置法案を今検討中でございます。従いまして、化学繊維合成繊維をこの中でどういうふうに取り扱うかということについては、まだ決定しておりません。
  56. 山口利吉

    山口参考人 加藤先生の御質問に答えさせていただきます。  先生から御指摘のように、なるほど化学繊維合成繊維とよく混同されます。それで私たちは、広義におきまして化学繊維と申し上げる場合には、もちろんビスコース関係ばかりでなく、合成繊維も入れまして申し上げておるわけでございます。それで御指摘のように、化学繊維の方の輸出のいわゆるビスコース関係ですね。もっと簡単に申しますと、レーヨン関係、人絹、スフ関係、この方は、なるほど生産としましては世界一位になっております。レーヨン・ステープルで一位で、レーヨン人絹糸で二位になっております。ところが、合成繊維の方は、量的にはアメリカに次ぐ二位になってきております。しかし、どうしても先生の御指摘のように、今後やはり——これは業界のことで、私から申し上げるのもいかがかと思いますけれども、それは私の立場で大いにそれを促しております。  それから先生最初にお話になりました、なるほど輸出の方は相当な量を占めておる。しかし、これは残念なことに、やはり内需の方の価格と二重価格になっておる。これはヨーロッパ諸国でも同じ傾向だと思います。この差が日本よりむしろもっと激しいわけです。ですから、最近は、御承知のように、レーヨン・ステープル並びにレーヨン糸というものは、十年前に、あるいは戦時中に、粗悪品という汚名を着たために、非常に苦しい立場なんです。当時の製品と比べますと、品質的には格段の違いになってきております。にもかかわらず、欧米に比べますと、やはり非常に低い価格というようなことになっております。それで、やはり輸出を獲得するために、メーカーとしましても、内需の方である程度の価格を維持すると同時に、その余力でもって輸出はどうしてもしなければなりません。そういう点が、確かに御指摘のようにございます。それで、私たちが規制対象からはずせということを大いに力説しておりますのも、そこに原因があるわけであります。どこの国においでになっても、 レーヨン・ステープルの会社が十五社も乱立しているようなところはないと思います。なるほど、先ほど来申し上げますように、数量世界一であっても、十五社が乱立し、しかも統制下に置かれれば、必ず悪平等になります。品質の改良その他最もやらなければならない化学繊維工業にあって、技術の改良、進歩、発達を押えられておるわけです。ですから、やはりこの際規制からはずされて、それでできるだけ古い設備を持っているところ、それから不良な設備を持っているところ、そういうようなところの合理化を今後はかっていかなければいけない。これは化繊について、われわれが真剣に今後取り組んで考えていかなければならない線だと思います。それから輸出競争の強化は、先生御指摘のように、合成繊維につきましても、これは日進月歩でございます。もう外国技術の進歩はほんとうに驚くべきものでありまして、今日の製法はもうあすには古くなる、こういうようなことで、業者としては日夜研さんをしております。それですから、そういう意味からいきましても、資金関係でむだな設備をすることはいかぬ、こういうような、一方において資金の合理化というようなことも考えられますが、私たちから申し上げれば、どの会社でも、二、三トン程度の設備をやられる数は、私は多いほどいいと思うのです。そのためには、二、三トンと申し上げましても、やはり十億ないし十五億くらいの金は要ります。これをしも資金的にダブるとか、むだだとか、そういう考え方は、私は強く排撃したいと思います。その点をやられた日には、どこの会社でいい技術ができ上がるか、そいつは私はわからないと思うのです。そういう意味で、そういうものに対する投資までがんじがらめに縛るということは、私は、技術の改良、進歩、発達の芽をつみ取るというふうに考えております。それで、合成繊維も、ただいま先住御指摘のように、石油化学の方の一連の関係がございます。その他やはり繊維になる段階におきましても、まだまだ合理化その他日夜研究努力をしなければならない立場にあると思います。  お答えになりましたかどうかわかりませんですけれども、大体私の考えを率直に申し上げました。
  57. 山手滿男

    ○山手小委員長代理 ほかに質疑もないようでございますので、この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、当小委員会調査のために、大へん長い間貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員一同にかわりまして、委員長より厚くお礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四後三十四分散会