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福田国務大臣 私は、
日本の
中小企業が、歴史的な、地理的な、また人口密度等の関係から、特殊の形をとっておることについては、先ほど
田中さんから言われたことを否定も何もしておりません。そういう
意味では、あなたとも同じだろうと思います。しかし、およそ事業というものには、大
企業といっても、資本金がうんと要るもの、たとえば鉄鋼業だったら、いまの世界
経済の中ではどれくらいの規模でやるのが一番合理的かというものがあると思います。その場合に、鉄鋼ではなくて、繊維
産業だったらどうだ。繊維
産業にしても、原料
産業はどうなるかということになる。これにはやはり適正規模というものがある。それ以上にふやしても効果はありません。だから、百億でも大
企業なら、一千億でも大
企業、適正規模というものがある。だから、そういうものはある一定の適正規模があるわけで、中
企業であってもうまくいく仕事もあると思う。そういう場合に、やはり適正規模があるわけですから、すべてのものを資本命で全部一緒にするなんということはできないことは、あなたもよくおわかりを願えると思う。そうすると、
従業員の場合も、また同じようなことがいわれるわけです。この点は同じようなことが
考えられる。資本金に応じて適正規模で仕事をするということになれば、大体これくらいの人が適正であるという
数字が出てくる。それに応じてちゃんと仕事が成り立っていくようになると思うのであります。こういうことから言うと、やはり
産業というものは、必然的に大きいものからだんだん小さいものに資本金あるいは人数等からずっと順次並べてみると、結局並ぶようになってしまうのじゃないかと私は思う。
そこでいまあなた方と私
たちの間で真剣に検討されているものは何かというと、その仕事の中で所属しておる人が得る利益を平等にするようにしなければいけない、それが
格差の是正といいますか、
解消といいますか、問題なんだ。規模が問題じゃないので、規模の点からいったら
傾斜的にこう並んでおるものを、一ぺんここら辺で切ってみますと、その
格差は上のほうを平均したのと下のほうを平均したのとでは、こうなります。いずれにしても、その中の一人一人の得る所得あるいはまた付加値をどれだけつけるかというようなものであって、上のほうの人が三千人使っていて付加価値が百できるなら、三人しか使わないところでも百できるようにするのが
解消だろう、これは一番いいわけであります。そういうふうに持っていくというところでわれわれは議論をすべきであって
——これは私の
考え方なんですから、あなたにそれをそのとおりのみ込め、どうしても承服せいと言わない。
断層でもって事を
考える必要はないのではないでしょうか。だから、大
企業のうちでも、やはり
格差というものがちゃんと出ております。同じ大
企業でも、鉄鋼業と精油業とでは、ずいぶん違います。そしてまた、その利益率についても、うんと違っているわけであります。付加価値もまた違っております。そういうものが
解消することは
理想であります。どこでも同じようになる、これはもう一番いいことなんで、そう持っていかなければいけません。そういうことに
努力するという
意味で、私
たちはこれを出している。しかし、その場合に、一ぺんにそういうことができるかと言えば、私は、社会主義
経済をとっても、できないだろうと思っております。この付加価値全部一緒にするなんて、そんなことはとてもできるものではない。神さまや仏さまの世界でも、できないのではないかと思うぐらいむずかしいことだと思っている。ただ、そこに
理想を置いてやらなければならない。
理想はそこまで持っていかなければならぬ。そのためには、
税制の面とか
金融の面とかで、できるだけこういうふうにやりたいのだ、こうしてくれというようなことがあれば、適正規模のものまで持っていって、そしてどんどん仕事をさせるように国も
協力する、こういうことでいくべきではないか。もしこれが社会主義であったら、ノルマを働かねばめしを食わせないなんということで
——自由
経済の場合には、本人が働く意思を持っていないのに、幾ら金をつけてやる、これを使えとか、税金をまけてやるぞと言ったって、もうけないことにはどうにもならないと思うのであります。そういうこをと
考えてみると、
断層としてものを
考えた場合にいわゆる
格差を
解消するといわれている場合も、われわれのように
傾斜的であるという
考え方に立った場合においても、
施策としては私は共通なものがたくさん出てくると思います。ということは、いま言ったように、一人が持つ付加価値をできるだけ同じにしようじゃないか、所得を同じにするようにしようじゃないかという
考え方でやるということは、これは何も
社会党と自民党と
意見が違うはずはないと思うのです。そこを
断層としてごらんになるものですから、どうもわれわれもそこのところはわかりませんよ。ボーダーラインのところは一体どうするか。二重
構造という場合に、異質のものがあるときに
断層ということばを使うので、それだから二重
構造ということばをもしあれすれば、何万という二重
構造ができるのではないか。まあこれは理屈になりますけれども、そういう感触がするわけなんで、そこのところは、われわれはそういうふうに
考えておりますが、それを直す手段としては何も皆さんと違っておらないのだから、ひとつ皆さんにも御支援を願って、この
法案をぜひ通してもらいたいと言っているので、手段、方法がまるで違っていることをやってくれと皆さんに言うているのではないのだ、こういう認識に立っているのであります。