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1963-05-22 第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月二十二日(水曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長代理 理事 齋藤 邦吉君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 澁谷 直藏君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君 理事 八木 一男君       伊藤宗一郎君    上村千一郎君       亀岡 高夫君    久保田円次君       田中 正巳君    中野 四郎君       藤本 捨助君    古川 丈吉君       松山千惠子君    米山 恒治君       淺沼 享子君    五島 虎雄君       島本 虎三君    田邊  誠君       滝井 義高君    長谷川 保君       中村 英男君    吉村 吉雄君       本島百合子君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中垣 國男君         厚 生 大 臣 西村 英一君  出席政府委員         総理府総務長官 徳安 實藏君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      野田  章君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  山口 一夫君         検    事         (刑事局長)  竹内 壽平君         厚生政務次官  渡海元三郎君         厚生事務官         (薬務局長)  牛丸 義留君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  麻薬取締法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇七号)      ————◇—————
  2. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)委員長代理 これより会議を開きます。  内閣提出麻薬取締法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 厚生省法務省の両方に質問をいたします。  まず厚生大臣質問をいたしますが、麻薬取締法等の一部を改正する法律案を出された趣旨は非常にけっこうでございます。麻薬禍を防ぐために、この法律ではいろいろなことが考えられておりますが、麻薬犯罪をする者に対する刑罰加重ということを一つの要点として、その中に書いてあるわけであります。そこで、私ども研究いたしました結果によりますと、この問題について、麻薬禍を防ぐために、刑罰加重して防ぐ点において、おもに供給を断つという方向重点が置かれております。供給を断つという点は非常に大きな影響がありますから、重点を置かれることはけっこうでありますが、需要を断つという方向について、もう少し配慮が必要ではないかと思う。というのは、麻薬の軽い中毒になり、さらに重い中毒になろうという人を少なくする、その人ができるような犯罪をなくする——いま犯罪を防止するほうだけでいっておりますが、そういう点の配慮も必要だろうと思います。本人精神状態が非常に不安定で、興味本位ですすめられたものが麻薬をさすというような人間もありますが、その中の一つのものとして、本人麻薬を使おうという意思がないのにかかわらず、暴力とかあるいは欺瞞をもって麻薬をさされてしまうというようなことが当然想像されるわけであります。そういうことをする犯罪に対してもっと厳罰を科して、そういう犯罪を少なくする、そういう被害者を出さなくするというような配慮が必要であると思いますが、この点についての配慮が足りないと考えるわけであります。それについて厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  4. 西村英一

    西村国務大臣 今回の法の改正におきしても、従来の例から見まして罰則が非常になまぬるかったということでございまして、罰則強化によって麻薬禍を絶滅させたいということは、八木さんと同じような考えを持っておりますし、のみならず今回の法の改正におきましても、従来の法に比べて格段な強化になっておることは御案内のとおりでございます。しこうして八木さんのおっしゃる、そのうちでひもつき婦女子問題等の御意見がありました。その点につきましてもこれは全然考えなかったわけでございません。大いにこの法律改正考慮の中に入れて、こういう法律案提案いたしたのでございます。しかし、私はこれを今回のことによって十分だと思いますが、また施行してみまして、その結果によっていろいろな考慮をめぐらさなければならぬことは、ただに罰則のみならず、ほかの条項におきましてもいろいろあろうかと思うのでございます。私は、罰則強化することにつきましては今回は非常に画期的なことをやった、かように考えております。御趣旨は十分尊重いたしたいと思っております。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 罰則強化することに御努力になったことはわかっておりますが、この間も、法務省関係に御質問して申し上げたときに、厚生大臣がお聞きになったような例の場合をお考えになると、厚生大臣もその例に対しては罰則は少ないというお考えになるのがほんとうではないか。たとえば暴力団が、麻薬を使う意思を持っていない婦人監禁して、暴力麻薬注射する。それを連続注射して麻薬患者にさせて、麻薬患者になりましたならば、御承知のとおり麻薬に関してちょうど精神病者と同じようになり、ほかの一切の本人意思能力が激減することになります。麻薬をほしいがために、正常な状態であったら断固として拒否すべきような売春行為をみずから進んでするようになり、そしてその収入ひもに吸い取られることになる。ただ麻薬供給を受けることだけを希望して、自分精神も肉体も全部むちゃくちゃにしてしまうということの発端が、このような暴行監禁あるいは欺瞞、そういうことによって注射されたことから起こることがあるわけです。そういうような事例は、人権じゅうりん程度においては、ほとんど殺人とも比すべき例であります。考えようによっては殺人以上に悪いと思います。貞操の問題などは、婦人の立場からすれば、人によっては命よりも大切に考える人もあるわけであります。そういう点で、自分からだ麻薬でぐじゃぐじゃになる、あるいは強要された売春、またほかの病気でぐじゃぐじゃになる、しかもからだをぐじゃぐじゃにして得た収入を全部ひもに吸い取られる。それが本人意思によらずして、監禁暴行や脅迫や欺瞞によってやられる。そういうものに対する罪の加重が、いまのこの改正案で十分であるとお考えになりますか。別なほうには無期という懲役刑を科そうという法案が出ている。片一方は影響が大きい、影響が大きいから無期という刑を科そうという原案が出たのです。しかし人権じゅうりんとか、その犯罪によって一人の人間がむちゃくちゃになるという、質的な程度では、それと同等、より以上の凶悪な犯罪、しかもそのような本人意思によらずして、麻薬患者が出るということは、麻薬禍を撲滅する道の一つ方向に穴をあける、アリの一穴で麻薬禍が断てないということになる。そういうようなことについてなぜほかのものと同じように、最高無期懲役までの刑の加重考えられなかったか、その理由を明らかにしていただきたい。
  6. 西村英一

    西村国務大臣 御意見は御意見として承りますが、そういうようなことも考えまして、出したのでございまして、その点につきまして多少の意見の相違があるかと思われるのでございますが、これは私の方と法務省、なかんずく刑罰の点につきましては、法務省関係の方々の専門とするところでございます。しこうしてそういうような場合には、他の刑罰も併科されるというようなことでございますから、必ずしもそのことのみをもって、これは全然麻薬禍が防がれないというようなことになるという断定はできないと思います。しかし御趣旨のあるところは、私も十分わかります。わかりますから、この法の施行によって、もしそういうことのために麻薬禍がうまくいくかいかないかというようなことになれば、さらに考え直すこともちゅうちょしない。また罰則のみならず、ほかのこの法律の中のいろいろな考え方におきましても、これは施行した後におきまして、悪い部分があれば、麻薬禍撲滅のために改定することもやぶさかではない、私はかように考えておる次第でございまして、あなたの考えが間違っておるというような考えではございません。私の方は、提案するまでに十分考慮をしてかようになった、こういうことを申し上げておるのでございます。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 私の考え方に反対ではないというお考え方を言われたことは、率直でけっこうだと思います。私は若ぞうで、厚生大臣よりも人生経験は薄いけれども、この問題に関しては、それが正しいという確信を持っております。すなおに受けていただく方だったら、趣旨については賛成だと言われるはずだ。それからいまあとの処置について言われました。しかし麻薬禍を撲滅するために、いろいろな方面で、非常に予算などは不十分ですけれども、まあまあ画期的なものが取られるときに、一つほかの点でゆるやかなことをやっておくと、アリの一穴で、ほかの努力が十分にされているにかかわらず、その努力が十分な実を結ばないということが起こるわけです。こういう問題について、一挙に対処するときには、すべての問題で完全な方法でやらなければ効果が薄いわけです。そういう点で、やってみて一年後というようなことは非常になまぬるいことだ、それではいけないと思います。なぜそれができなかったか。厚生大臣もいま正直に言われましたとおり、趣旨賛成だけれど、その問題については、法務省専門家であるからということが原因であるようであります。しかしながら法務省専門家であっても、麻薬禍を撲滅する、麻薬によって人間がむちゃくちゃに不幸になることを防ぐという政治責任は、厚生大臣にあるわけです。いままでの法律体系を少し変えることがぐあいが悪いというような、技術的な問題ではない。そういう問題に牽制をされて、ほんとうに正しいと思うものが進まないのであれば、あなたは政治家としてはほんとうに完全な責任を果たしておらない。いかに法務省専門であろうとも、厚生省麻薬禍を撲滅しようと思って考えておる法案については、しろうとであってもしろうとなりに、これが正しいではないかという論理を展開しなければなりません。全部法務省にまかせきりであれば、法務省というところは法律の番人でありますから、慎重過ぎる、政治的な判断ができない、それで形式的に法の体系ということを重んじ過ぎる傾向があります。法の体系を重んじることは大事でありますけれども、動いている社会に対しては、そのようなことでは間に合わないことがある。そのようなときに、その事情については、責任を持つ厚生大臣断固としてそれを主張しなければ、そういうような形式主義の幾ぶんの欠点はそのときに直すことができないわけであります。そういうところにまかせきりではいけません。厚生大臣自体、いかなる理由があって、それだけ無期までに加重することができなかったか。そういうりっぱな理由があれば伺いたいと思いますけれども、ただ法務省の解釈にしたがってそれができなかったというならば、厚生大臣としては、そのようなことでなしに、大局的な政治的判断で、麻薬禍を撲滅する方策がアリの一穴でくずれることがないように、大まかな問題ではなしに、質的に非常に個人の人権じゅうりんされるような、そういう犯罪が起こらないように、勇敢にそれを処置せられなければならないと思います。それについての厚生大臣のお考えを伺いたい。
  8. 西村英一

    西村国務大臣 法務省といって、法務省ばかりに責任をとらせるわけではございません。刑罰は重ければ重いほどいいというものではございません。刑罰の一番重いのは死刑でありましょう。しかし全部死刑にするわけにもいきません。どういうことでも無期にするというわけにもいきません。その間に刑罰はやはり刑量がおのおのあるわけでございます。そういう点につきまして、法務省専門家だからということを申し上げたので、私は全般につきまして犯罪刑罰とをにらみ合わせて、こういうことで適当であろう、こう考え提案したのでございます。しかしていまある現行法では、これは非常に手薄であった、そのために麻薬禍がこのようになったというのでございますから、今回かくのごとく画期的な強化をやったわけでございますから、そのために麻薬禍が絶滅できなかったということになれば、さらに考え直してもいい。これはほかの刑罰でも同じことでございます。したがいまして、これはただ単に法務省にまかせきりではないのでありまして、厚生省法務省その他関係省と連絡の上で十分協議をいたしまして、この法案提案いたしたものでございまして、その点についてあなたの御意見が間違っているのだということをいまさら言うだけの自信がないけれども提案をした私としては、全般のバランスを見ていいであろう、こう考えたのでございます。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 それでは具体的に申しますが、ほんとう人生を健全に生活をして、社会にも寄与し、自分も幸福を得たいという善良な婦人が、何らかのことで誘拐をされて、監禁されて、本人がいやがるにかかわらず、麻薬を強制的に注射されて、麻薬患者になって、麻薬患者の特質上、そのときには一切のほかのことの判断上の能力がなくなる。麻薬患者の禁断症状で麻薬を得たいために、ほかの一切の良識を一時的に失って、麻薬を得るために監禁者の言うなりになって、身を汚して、からだをどんどんこわしていく、そういうふうになった人があるとすれば、そういう人の人権は、おそらくいきなりなぐられて、殺された人の人権じゅうりんと、ほとんど変わりのないようなものではないかと思う。またそういう犯罪をした人間に対する処罰、また処罰をすることによってそういう犯罪を起こさせないようにすることの必要性は、殺人とほとんど同様のものであろうと私ども考えますけれども、それは極端に言うと殺人よりも、普通の傷害よりも、ずっと軽いものであるというようにお考えですか。殺人には死刑無期あるいは有期懲役があるのに、片方はどんなに極悪非道であっても、そこまでいかないということであっていいのか。そんなことをやってもばれなければ、自分はうまい汁を吸うのだ。しまいにはばれても、たいした刑ではないというので、チンピラどもがそういうことをどんどん始めて、そういう犠牲者が出てもいいとお思いになるかどうか、率直にお答え願いたい。
  10. 西村英一

    西村国務大臣 もちろんいいとは思いませんが、そういう人に対しましては、これはほんとう死刑にも相当するような場合のこともありましょう。いろいろそれはあると思います。しかしそのいまおっしゃったことだけで、ただ単なる考えから、簡単にそれは何にしたほうがいいということを私が言っても、これは私は専門家ではないのでありますから、あなたが言ったような憎むべきことは、場合によったら死刑にというような感情もわれわれは起こります。けれどもそれが法律できめられる場合には、ある法律体系をつくらなければならぬということで、そういう意味において今度の提案をいたしたものでございますから、あなたがいまおっしゃったようなまことに憎むべきものは、私はただ単に考え死刑にも相当するのではないか、こういう考えはもちろん持つのでございます。しかしそれだからといって、それをすぐに死刑にということを法律に書くには、やはり専門家意見を聞いてやらなければならぬ、こういうことを申し上げておるのであります。
  11. 中野四郎

    中野委員 関連して。竹内さんが見えておりますので、この間しり切れトンボになっておったから伺っておきたい。  ものには結果があれば原因がある。したがっていま八木君の質問しておるような、強制的に麻薬注射して、そのことによって中毒患者になるということは、現在われわれが国会で取り扱っている麻薬禍問題からいえば、非常に重要視しなければならぬ問題なんです。しかし現在の刑法の構成上、これを一体どういう観点に立って取り扱っておいでになるか。先日は傷害罪で、あるいは暴力行為でというように伺ったのですが、どうもそういう固まったものを伺えなかった。伺うところによれば、中垣君は今度法体系刑事事犯のすべてについて、大幅に改正しようということをあなた方に指揮しておられるようでありますが、これは従来の観念からいけば、そういう事例がきわめて軽視されておった感がある。たとえばいま言うような強制的に麻薬注射するということが、結果論においては非常に大きな国家的な重要問題に逢着をしておる。したがってこういうものを刑法改正の上においてどう取り扱うつもりなのか、現行法ではどういう取り扱いをしておいでになるのか、今度の改正にあたっては一体どういうお考えを持っておいでになるのか、持っていないのか、この点をまず伺いたいと思います。
  12. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 刑罰をつくり、これを実際に運用いたします場合の考え方につきまして、ただいまたいへん本質的な御質問をいただきました。私どもとしましてもありがたくいまの御質問を伺ったのでありますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、まず私は二つの点をお答え申し上げたいと思います。  その一つは、刑罰体系においてただいま御審議になっております麻薬取締法というような、私どもはこれを行政法と申しておりますが、この行政取締法の中にあります罰則、こういうものと刑法との関係をどういうふうに法体系の上で理解をしていくべきであるか、現行法はどうなっておるのかという御質問に、まず第一にお答えを申し上げたいと思います。  御承知のように刑法総則は、刑法の各則に定めてあります殺人強盗等の諸規定の現実の総則として、その各罰条をどういうふうに結合し、どういうふうに切り離し、どういうふうに刑を盛るかということを総則に書いてございます。その二つ以上のある刑罰をあるいは共犯がある場合、幇助がある場合、その加減の問題等総則に書いてございますが、この総則は単に各則の総則であるだけでなくて、すべての罰則麻薬取締法に書いてあります罰則総則としての意味を持つのでございまして、近代刑法はすべてこの総則の中にこのような刑罰をどう取り扱うかという基本的なことを規定してございまして、その規定をかぶってこの麻薬取締法罰則を理解しなければならぬ、こういうことに相なっておるわけでございます。  したがいまして、第二の問題に入るわけでございますけれども、ここにいろいろな事例がございます。ただいま八木委員からお話がありましたように、全く事情を知らない婦女子麻薬注射することによって中毒患者にし、その意思能力コントロールしながら売春をさせ、そして廃人同様にしてしまうといったような現象、これは社会現象です。この社会現象刑罰の面で整理いたしますとどういう犯罪になるか、この現象をそっくりそのまま刑罰の形であらわせ、あらわしたほうがいいではないかというのが、八木先生の御意見のように私は伺っておるわけであります。この社会現象一つ一つ取り上げてみますと、社会現象は非常に移り変わりが多いものでありまして、八木先生のいま御指摘になっておるような現象よりも、さらに悪い現象が起こらぬとも保しがたいのでございます。刑罰は一たんできますと、その刑罰をもってあらゆる現象に対処していくというのが刑罰態度でございますので、このような現象刑罰的に整理していくとどういうことになるのか、それが刑法総則でどういうふうに適用を見ていくのかということが、刑罰法令考えます場合に私どもとしては絶えず念頭に置く問題でございます。  そこでいまお話のような事例考えてみますと、まず全然知らない婦女子を誘惑して、あるコントロールのもとに置きます。コントロールのもとに置かなければ、注射を無理やりにすることはできないはずでございます。そうするとそのコントロールのもとに置きますために、あるいは営利誘拐という犯罪が成立するかもしれませんし、あるいは逮捕監禁という刑法の罰条が触れるかもしれません。事情を知らない困惑している状況において麻薬を施用する、何も知らない者に麻薬を施用する、これは明らかに傷害罪になります。これは判例もございます。さらにまたそういう状況のもとで売春をしいる、こういうことになりますと、売春防止法の困惑をさせて売春をさせるという罪にも当たりますし、場合によってはそういう女を自分の指定する場所にとどめ置くという社会現象もあるわけであります。そうなってまいりますと、管理売春犯罪にもなるわけであります。そしてもしそれが廃人同様になって、ついには死の結果を招来するということになりますれば、これは殺人罪になる場合もあります。そして中毒患者にしますためには、一回の注射だけではおそらく中毒になりませんから、何回も注射するにきまっております。そういたしますと、施用罪が幾つ幾つも重なって、このような社会現象犯罪に照らしてみますと、刑法のいま申しましたようないろいろな犯罪にも触れるし、同時にこの麻薬取締法麻薬施用という犯罪にも幾つか該当する、このような状態でもし事件が発覚いたしましたといたしますならば、これらの罪がそれぞれ一つの裁判によって、裁判されるわけであります。もしかりにいま申したようなことが一切同時に発覚いたしたといたしますならば、刑法総則併合罪規定によって併合罪加重をして、その刑期の範囲内で処断をするということになりますし、これが別の機会に発覚し、そしてそれが別罪であるということになりますと、二つの罪が成立する、こういうことになりまして、もし死の結果を招来したような場合においては、殺人の罪が優先的に適用されます。結果として死刑無期または三年以上の刑に処せられることになりますし、営利誘拐の結果、死の結果を生ぜしめたという場合、ただいまも世論が非常に騒いでおりますように、これまた殺人罪の刑を適用して処断する、こういうことになるのでありまして、このように取締法の面におきましては麻薬取り締まりという観点から罰則をつくりますので、これは麻薬が製造されて入ってきて、それが大量に取引されてだんだん流れていく過程において、中毒者が生ずるまでのその麻薬流れをいろいろな行為の形態で押えて、それに罰をかましていくというのがこの取締法のねらいでございますし、そういう過程において、いま八木先生のおっしゃるような派生的ないろいろな社会現象が出てまいります。その社会現象にはそれぞれ刑法の罰条を適用して、そうしてそれが刑法総則によって併合罪なり、共犯なり、情状の重い累犯なり、いろいろな形で刑を評価してまいりまして、その行為に対して適正な刑を盛る、これが刑法を中心とした刑罰法令体系の現在日本がとっております制度でございまして、この制度は、日本だけではなくして、西欧諸国はもちろん、近代刑法の要請するところであろうと私は確信いたします。  それで第二の問題と申しますか、去る二十日に刑法全面改正につきまして法制審議会に諮問を発して、これから数年間にわたりまして慎重な審議が行なわれるはずでございますが、この刑法改正の問題は、刑法体系の中におきましても、現行法はどちらかと申しますと、財産の侵害に対してわりあい刑が重くなっております。これは現状に適しないのではないか。もっと人格の、個々人権保護するような規定——憲法を見ましても基本的人権保護する規定はたくさんございます。このような憲法の要請にこたえるためには、人権保護に関する生命犯自由犯、名誉に関する罪、こういったような罪の刑をもっと引き上げて、個々の人の人権保護に全きを期するという基本的態度を、刑法全体の流れの中に打ち出すということが必要ではないか。これはその一つでございますが、そういう趣旨のことも申しまして、刊法改正一つの筋金、見通しをつけて、改正方向が明らかになっておるわけであります。  こういう次第で、ただいまの質問にるるお答えできたかどうかわかりませんが……。
  13. 中野四郎

    中野委員 そこが先ほどから八木委員質問しておる分岐点であろうと思います。たとえば今度の麻薬取締法改正の中に、いま言うような強制的に注射を打たれ、あるいはそのことによって廃人同様になる、あるいは社会犯罪を犯すという場面を入れるということは、ただいまの竹内刑事局長の御説明からいえば、私は少し逸しておると思う。大体麻薬取締法に対する大綱というものはきまっておる。しかしそのよってくるところの一つ犯罪に対する刑罰というものは、刑法全体から考えなければならぬ。そこで先日来私は伺うのです。刑罰の面から見て、刑法全体の面から見て、こういうような事犯に対してはどう取り扱うかということを伺っておるのです。しかしこれは先日も明確な御答弁がなかった。先ほどから八木委員質問しておるのは、麻薬取締法を出したのは厚生大臣だから、その麻薬取締法責任において、これを取締法の中に入れたらいいじゃないかという意見なんです。しかし私はここのところにちょっと、法体系の上から見ても、あなた方の言われる説明の上から見ましても、これをもし取締法の中に入れるということになると、もっと複雑多岐な問題が起こってこようと思う。これはやはり一般犯罪取り締まりとしての一つの基本的立場から、これに対する態度をばあなた方が明らかになさるのがよいと思う。もし取締法の中にこれを入れるということになりますと、まだほかになかなか複雑多岐な問題が入ってきます。なかなか容易な問題ではない。だからあなた方があえておっしゃった行政法、いわゆる刑法全体の場面から考えた場合、こういうような犯罪に対しては的確にして、しかも厳重な処置をなさるという意思表示があれば、これはおのずからそこのほうに移行されて、この取締法取締法としての一つの体制を整えることができるのではなかろうかと思いましたから、あえて八木さんの質問中失礼でしたけれども、私は関連をして伺ったわけであります。こういう点は厳に考えてもらわなければならぬ。  それから法務大臣にもおっしゃっていただきたいと思います。だいぶ中垣君も熱心にこの麻薬の問題を関心を持ってやっておいでになるようであります。先ほど来八木さんが盛んに言われるように、わが委員会においても各氏が発言するように、こういうものは時限立法でもいい。麻薬なんというものは五年も十年も百年もやるものじゃない。恒久立法でなくてもいい。場合によれば時限立法でいい。しかし峻厳をきわめ、拙速をたっとぶものです。こういう見地から大いに考慮していただいて、今後刑法改正の諮問をなさる場合にも、やはりこれは付言されたほうがよいように私は考えます。
  14. 八木一男

    八木(一)委員 いま中野委員が関連して御質問なさったことは、私も次に伺おうと思ったことで、ちょうど時間がそれで節約になりました。  そこでその問題を答弁なさっておられたところで、厚生大臣にちょっと伺いたいのですが、いま言ったように、たとえば麻薬の施用、それから営利誘拐、逮捕、監禁傷害売春防止法というようないろいろな法律で併合される併合罪になると言われるわけです。ところが厚生大臣も初めてで、尊敬する学問的先輩ではありますけれども、これを全部覚えておられなかったと思う。権威者の中野さんも聞かれたけれどもわからなかった。中野さんは大体わかっておられますけれども、きっちりわかっていない。私もそんなことです。ですから、法律家は形式だけ言われるけれども、こんなことではわけがわからぬのです。けしからぬチンピラが、一人の人間がめちゃくちゃになってもそのからだを利用して自分かってなことをやろうと考えたときに、そのチンピラを制御できるのは、つかまったらどういうことになるかということだけです。良心のない人なんだから。そのときに五つも六つも法律を並べて、これとこれとこれになるから何年になりますというようなことを説明してやる人が皆さんにいますか。だからチンピラは、傷害罪にかかるかもしれないぐらいは考えるかもしれない。ところが注射の穴が残っているくらいの傷害罪だったら、そんなものは起訴猶予になるだろうとたかをくくる。大体見つからないだろうとチンピラは思う。見つかってもそのくらいだろうと思う。しかるにいまの裁判のほうでは、ほんとうに良民の人権を擁護するよりも、犯罪人の人権を擁護する傾向のほうが強い。そういうことでたかをくくって、どんなに長くても二カ月くらいで出てこれる。ばれなければさんざんうまい汁を吸って、ばれたってそんな程度だ。そういうときに五つも六つも併合罪だというような学問的なことを言って、そういう連中にそういう犯罪を犯させないようなブレーキの力になるかどうか、厚生大臣の御判断を伺いたい。
  15. 西村英一

    西村国務大臣 それで防止できるかできないかということにつきましては、やはりこれは現行法があって防止できないから今度は改正するのでございまして、今回の改正についてわれわれはそれで防止ができると思っておるわけでございます。そこが意見の違いでございまして、だからあなたの言われることが絶対間違いであると私は言っていない。私たちはこれは各省で連絡をとって、十分であろうということで出したのでございます。したがいましてやってみて将来改正することにはやぶさかではない、かように申し上げておるのでございます。
  16. 八木一男

    八木(一)委員 政府原案を出された立場ですから、原案が検討していいものであったと言わなければならない立場がおありなようですけれども、非常に厚生大臣は率直で、その点では私はほんとうに敬意を表しております。初めは実は厚生大臣は厚生行政にはあまり御熟練してないと思っておりましたけれども、非常に御勉強にもなるし、またその人格は非常に率直でいいと思う。その点で敬意を払っているわけですが、これはあなただけじゃないですけれども、どこの大臣も、原案は非常に研究してよかったものだと言わなければならない立場みたいな風習ができている。ところがその風習がいかぬのです。やってみても、いろいろな質問が出たところで、これはもう少し考えればよかったなという感じが出たら、率直に言うのが政治家です。そうでなければ、役所でつくったものはどんなことがあっても、形式的に与党の大多数の支持を得れば、それが不十分であっても通ってしまう。翌年は附帯決議ぐらいがつく程度で出る。そういうことでは政治は動かぬ。あなたは政治家ですから、あなたの出した法律が九十五点であったって、あなたは及第ですよ。それを九十点の法律を百点だ百点だと言う必要はない。やってみたところが九十五点だと思ったら、あと五点を直すような雰囲気をあなたみずからつくらなければならない。九十五点を無理に強弁して百点だ百点だ、形式的に、あなた方は九十点だと言われるけれども私たちは百点だ、見解の相違だと逃げれば通るでしょう。それでは政治は動かない。国民のために政治を動かすためには、一生懸命考えて百点だと思ったけれども、九十五点だったら、五点足りなかった。しかし前よりはずっとましだ。前は三十点くらいな法律だ。九十五点は厚生大臣、大功績です。五点の欠点については率直に認めて、それを直してもらいたいくらい言ったらいい。もちろん言われなくたって、委員会はしなければならない。その点において、われわれの委員会のほうの自分の権限と責任と義務に対する勇敢な態度が一〇〇%ない点は、われわれも自粛自戒しなければならないと思う。しかしそのような政府の原案がそのまま通るというような間違った慣習が国会にあり、日本政治にある以上は、その衝に当たっておる方が、幾ぶんでもその弊害がなくなるような努力をされる必要があります。そういう点で、尊敬している大臣ですけれども、ぜひもう一歩率直に答えていただきたいと思うのです。  先ほどの例をあげましたときに、厚生大臣ほんとうに善人としての、そして責任のある人としての感じを言われました。ほんとう責任のある答弁ではないかもしれないけれども、感じとしてそのように個人的に思うくらいの発言をされた。それを無期にできない理由はないわけだ。無期にできない理由形式主義です。ただいま法務省のほうでは、刑法体系があるといわれた。刑法体系があると言われるけれども麻薬取締法刑法体系をはずした特別な立法をやっておるわけです。なぜこのような供給源を断つほうで特別な立法ができないか。一方でやって、一方でできないはずはない。体系を絶対に重んずるならば、処罰刑は全部刑法でやって、麻薬取締法にそんな刑法みたいなことを書かなければいい。そっちのほうはそのことをやっている。なぜこのことをできないのか、厚生大臣の御答弁を伺いたいと思う。
  17. 西村英一

    西村国務大臣 提案したものを固執するのではないが、そういう癖がある。しかしこれは癖ではございませんので、やはり提案するからには、その範囲内において、その時限において最善だと思うので提案するのでありまして、それは当然なことではないかと思います。しかし委員会の議論はそれとは別でございます。政府がいかなるものを提案いたしましても、各委員のお考えのもとにおきまして議論をされることでございますので、その議論についてとやかくは申しません。そこでいまあなたがおっしゃる問題については、これは意味はわかる。わかるけれども、無理ということを言っておるのでございまして、そういう癖があるということですが、提案しましたら、これは最善のものと思って、各委員からいやそこも悪い、ここも悪い、そのとおりだその通りだというのでは、これは商売になりません。そういうことでございまして、しかし委員会の意思と別になれば、政府としてはやむを得ないわけであります。そういうことになっておりますので、固執するのではございません。最善と思って提案をいたしたのでございます。
  18. 八木一男

    八木(一)委員 大臣の御答弁は非常に率直で、この点いまの政治界の状態としては非常に敬意を払いたいと思います。しかしそれでは政治は動かぬのです。私が厚生大臣であれば、やってみたところが、委員会の追及で、足りなければ足りない、撤回して出し直しますと言います。間に合わなければ、これは足りなかったので、この欠陥を直すための修正の努力を願いたいとみずから言います。直していかなければいけない。ほかの大臣よりは率直ですから敬意を払いますけれども政治全体が腐っております。ですから満点をあげられません。もっと満点になってください。  その次に、いま言ったように罪名が五つも六つもあって、それが防止する力になりにくい、その点についてどうお考えでございますか。
  19. 西村英一

    西村国務大臣 それは私から答弁するのはどうもどうかと思うのですが、どういう刑になるかというのか知りませんが、ちょっと質問趣旨が……。いろいろ併科されて結局どういうことになるのかということであれば、ちょっと答弁されないと思います。
  20. 八木一男

    八木(一)委員 実はある人間が、ふだんよかったけれども、悪い精神にとつつかれて、何かそういう悪いことをしてやろうと思ったときに、見つかって死刑にされたり無期懲役にされたら困るということになりますが、見つからない可能性が多い、見つかっても大した処罰を食わないということになれば、悪いことをやってやろうということになることもある。そのときにその人間が、傷害罪売春防止法と何とかと何とかと五つあって、それを固めると——悪くいってばれて、峻烈な論告を受けて、厳格な判決を食ったら、何年か牢屋でくさいめしを食わなければならぬと思うと、防止する力になる。そこのところを、ここに五つもあると、法律家はわかっているかもしれないけれども政治家でもなかなかわからないものを、犯罪を犯すようなチンピラはなおわからない。よくわかったやつで傷害売春防止ぐらいであろうと思う。注射のあとぐらいだったら、頭をかち割ったくらいの傷害と違うので——傷害が十年ですか、しろうと判断で六カ月ぐらいたてば出られるだろうと判断をして、ばれてもそのくらい、たぶんばれないだろうということで、やりたいことをやるというようなことが起こるわけです。そこで麻薬を無理やり注射したり、睡眠薬を飲ましたり、縛っておいて注射をして、一生涯無期懲役か何かで牢屋にほうり込まれてくさいめしではしょうがないから、やめておこうということになる。そういうときに単純化したもので、現象についてすぽっと刑を出しておかなければ、そういう抑止力が激減するわけです。そのためにそういう強制的な中毒患者が起こって需要が起これば、もうかるからということで法網をくぐって供給をするやつがいる。供給をする者のために輸入をする者がいる。供給のほうを断とうという法の精神賛成です。しかしそれだけではなしに、需要のほうをとめるようなことを考えなければ、アリの一穴になるわけです。  もう一つは、麻薬防止法の提案理由の説明では、さっき刑事局長が言ったような人権ということを重んじないで、普通の現象だけを重んずる。本来麻薬取締法は、麻薬人間の健康や幸福が破壊されるのを取り締まろうというのであります。この条文に薬務局が何と書こうとも、目的は麻薬による人間の不幸を防ごうということですから、自分意思によらずしてそういう不幸になることが起こらないようにするためには、刑の量がバランスを失し過ぎていると思うわけです。これは麻薬から起こる犯罪のことばかり書いてありますが、いろいろなことで人権が直接間接じゅうりんされることを防ぐためにできている。そうなればさっきあげた事例は一番の人権じゅうりんです。そういう問題について、防止する施策が手ぬるいのであれば、この点についても筋金が抜けているわけです。それについて厚生大臣の御見解を伺いたい。
  21. 西村英一

    西村国務大臣 いま言いましたような麻薬関係した社会現象の一々をとらえて、この場合はこうする、この場合はこうするという行き方、たとえば婦女子をどうしてこうしてというように一々犯罪をとらえて、その場合はこうするというような罰則の立て方になっておらないのであります。したがいまして、そういう場合はいろいろな刑法の罪が併科されて判決があるのだ、しかしそれは加害者からいえばわからぬのではないか、わからぬから簡単なものだと思って罪を犯しがちではないか、こうあなたはおっしゃるのでございますが、その辺につきましてはそういう刑法刑罰の立て方になっておらないのでございますから、一々社会現象だけをとらえて刑罰をきめることは、それは刑法刑罰法律をきめる場合にはなかなか困難ではないか、私はかように考えるのでございます。
  22. 八木一男

    八木(一)委員 いま御答弁を、私たいへん失礼でございましたけれども、ほかの重要な話をしておりまして、ちょっとぼやけておりましたので、御答弁に対してちょっと食い違って質問をするかもしれませんが、その点お許しを願いたいと思いますが、実は麻薬のほうに単純施用という罪がある。それから営利施用という罪がある。こういうふうに分けてあるときに、なぜ強制施用という罪を加重できなかったか、ちょっとバランスを失しているように私は思います。厚生大臣も思われると思います。単純施用でそいつが麻薬がほしいといったときにやったときも罪になる。それから営利の目的でやったという場合にも罪になる。そうしたら営利のために、もうけるために、向こうがやる意思がないのに無理やりにさしたという場合は、単純施用や営利施用がこのくらいなら、強制施用の罪は天井くらいにならなければならぬ。それをどうして配慮されなかったか、厚生大臣の御意見を伺いたい。
  23. 西村英一

    西村国務大臣 非常に専門的なことですから、政府委員をして答弁いたさせます。
  24. 八木一男

    八木(一)委員 政府委員の御答弁は伺いますけれども、その前に、厚生大臣、変だとお考えになるでしょう。単純施用はもうけるためじゃない、麻薬がほしいためにそれをやった。これはいけないけれども、この中で一番罪が軽いわけです。もうけるために施用した、これは罪が少し重いです。ところが相手がいやだというのに無理やりにさした、これは罪がぐっと重くなければいかぬ、そういう感じがしますでしょう。説明は政府委員に伺いますけれども厚生大臣の率直な感想を伺いたい。
  25. 西村英一

    西村国務大臣 私の感想は、いま直ちにそういうことだけで感想をちょっと申し上げにくいですから、政府委員から答弁をさせます。
  26. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣はおかしいと思っておられるけれども、それを言ってぎゃあぎゃあ向こう見ずな議論をすると困ると思って言っておられるのでしょう。厚生大臣は知らなくたって、厚生大臣専門家じゃないのだから、この点も勉強されたほうがいいと思うけれども、私はほかの点の十分な御勉強で敬意を払っていますから、私は大臣の率直な判断で、おかしいと思っておられると信ずるわけでありますけれども、おかしいとお思いになるかどうか、率直に御答弁を願いたい。
  27. 西村英一

    西村国務大臣 よく判断がつきませんから、ひとつ政府委員から答弁をさせたいと思いますから、どうぞ御了承を願います。
  28. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 類型の中に営利は書いてあるが、なぜ強制を書かなかったかという御質問でございますが、これは通常の麻薬流れ状態をとらえておるのでありまして、ただで麻薬を流すということはないので、そこには必ず利益を伴うということが考えられるわけです。それから自分が使うために持っているとかあるいは譲り受けるとかいうのもありますし、自分は打たないけれども人に打たせるために中継ぎだけで持っていたり、譲り受けたり譲り渡したりする場合があるわけです。その通常の形態のを押えておるわけです。このほかにいま八木先生のおっしゃったように、強制的にというような通常でない、特異な形の強制とか、あるいはだましてとか——だましてというのは先生おっしゃいませんでしたが、こういう詐欺的な方法でやるものがある、こういった特殊な形のものはそれにプラスして詐欺とか、いまの強制にわたります場合には、強制がただ単なる強制の場合と、それから強制を伴うことによって身体に影響を与えるような場合ですと、またそれに対する傷害とか、いろいろそういったような刑法規定が、そういう特異な場合にはそれにかぶってくるのだということを、刑法総則が定めておるわけでございます。そういうことを前提としまして、取締法で一般的に流れるルートにしたがって、その類型で刑を重くするというのが取締法の立て方でございます。そういう意味で、強制のものを考えていないのではなくて、考えておりますが、それは刑法がかぶってくるのだという考え方でございます。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、前に法務省に御要求したのですが、さっき申し上げたような強制とか欺瞞とか、そういうことで強制的に施用した、それでそういうふうに中毒患者にして、ひもになったような例について、どのような罪で検事局では裁判所に送られておるか、どういう判決があったか、そういう事例についてできるだけ早く調査をされて、資料をお出し願いたいと言ったのですが、どこかに行っているのかもしれませんが、私の手元にはまだいただいておりませんが、その経過はどうなっておりますでしょうか。
  30. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私出席いたしておりませんときに、御要望があったというふうに聞いておるわけです。全部の検察庁について調査するわけにはいきませんので、濃厚地区として麻薬事件をたくさん取り扱っておるところで至急調査をしてもらいましたところでは、ただいま先生のおっしゃったような売春をさせるために、無理やりに麻薬注射して中毒患者にして、そうしてそれに売春をさしておるというような事例は、しばしば耳にします。しかしながら具体的事件としては一件も処理しておらぬというのが、現在までわかっております報告でございまして、おそらくそれは、現実はそういう事態があるだろうと思いますけれども売春婦の施用しておりますものは、まあわれわれがいうひもというのでありまして、いわば売春婦と事実上の夫婦関係になっておるようなものでありますし、その他証拠関係で、そういうような実態を明るみにえぐり出すことができなかったために、そういう事案を受理しておらないのだと思いますが、しかし具体的事例としましては、そういうケースで事件を受け取ってそれを処理した事例はない。これはずっと古いものまで調査したのではありません。とりあえず最近検事を集めて、取り扱った事件でそういう事例に該当するものがあるかないかというような、きわめて雑な調査ではあったと思いますが、そういう事情になっております。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 質問の中途ですけれども、法務大臣あるいはかわりとして総理大臣、あるいは政務次官、あるいは最少にして官房長官、これの出席はどうなんでしょうか。
  32. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)委員長代理 政務次官は出張中、法務大臣は都合というわけですから、どうか刑事局長のほうで御質問を続けられんことを望みます。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 質問を続けますけれども状況によっては必ずこの審議の終わるまでに法務大臣、またはかわりとして総理大臣の出席を委員長の方で努力をされて、それまでは審議が終わらないようにお取り計らいを願いたい。
  34. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)委員長代理 努力はいたしますが、刑事局長もおられますから、御質問を継続せられんことを望みます。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 質問は継続いたしますが、委員の出席要求に対して該当大臣がいない、そのかわりもいないということではいけないと思う。きょうは事情があればがまんしますけれども、この審議が終わるまでに必ず、法務大臣または指定した代理者、総理大臣か政務次官、あるいは最少限官房長官の出席を要求いたしておきます。
  36. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)委員長代理 努力いたします。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 答弁が満足であれば取り下げることもあります。  それではその資料は、調査をしたけれどもなかったわけですね。それではいたし方ありませんが、今度の麻薬取締法の中で、私も専門家でありませんし、勉強不足でございますから、これは教えていただきたいわけですけれども麻薬取締法の中で処罰規定がある、それから今度この処罰規定を変えたということは、刑法総則の特別例になるわけですね。
  38. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 刑法総則の特別ではなくて、現在の取締法改正することによって刑を引き上げましても、刑法総則というのはこれをどういうふうに織りまぜて実際の適用します刑をつくり出すかということをきめたのが総則でございますので、常に総則はかぶっておる、こちらの方が変更になりましても、総則は依然として同じような形でかぶっておる、こういうことでございます。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 それではざっくばらんにしろうととしての質問をします。たとえばかりにいまの麻薬取締法の別のほうの罰則強化をやられる場合と、私の言っているような罰則強化をもし実現した場合と、刑法とか、それから学問的な刑法論との関係においては、同じ範疇に入るものであろうと思うのですが、それについてどうか。
  40. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仰せのとおりでございまして、すべて全く同じでございます。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣に御質問をいたします。いま刑事局長の御答弁をお聞きくださったと思いますが、今度の法の原案にある罰則強化の部分も、それから私の申し上げているような罰則強化をやった部分も、刑法との関係刑法論との関係は同じ範疇に入るものであるという、はっきりした御答弁がありました。そういうことですから、それがいいか悪いかはまだ意見が決着を見ておりませんけれども、ここに出ている改正案も、それから私の申し上げたものを盛り込んだ場合も、刑法との関係については同じ範疇だということです。だから刑法体系をいろいろな点でくずすとか、乱るという議論があったとしても、それはこれ自体が乱るか特別例か、言い方は注意しなければなりませんけれども、いま言ったことをやったとしても、刑法体系との関係は同じである、同じ範疇に入るということでございますから、その点ひとつ御理解を深めておいていただきたいと思います。それについての厚生大臣の御意見を伺いたい。
  42. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 ただいま私のお答え申し上げましたのと、八木先生の受け取られましたのと食い違っておりますので、あらためて申し述べさせていただきます。  私の申しましたのは、現行の罰則とただいま政府提案になっております罰則の変更がありました場合に、刑法総則が両方の罰則についてどういう立場に立つかという意味において、全く同じだということを申したのでございますが、先生の改正案というのは私はまだ存じませんが、先ほど来伺っておりますと、何か特別な、麻薬売春婦に無理に注射した場合に、そのような罪を麻薬取締法につくるという趣旨改正案でございましょうか。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 そうです。
  44. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 そういうものがかりにできたといたしますと、なるほど総則はかぶってまいるのでございますが、総則規定の中には、罪と罪とが二つあった場合に、それが結合されるか排除されるかというようなことが書いてございます。そういったような結合したものが入ってきました場合には、総則規定との関係で、非常にむずかしい法律論が出てくるということを前提として、抽象的にはかぶってくるのでございますけれども、実際の適用においては、刑法総則をどう適用したらいいかという問題が起こりまして、私は困りませんが、裁判所が困るということをはっきり申し上げます。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 それは法律技術家がほんとう考えれば、困ることを予想したら、困らないように併合するか単独で罰するか、法律技術の問題、これからのつくり方の問題であって、裁判官が困らないような法律を議会の法制局でつくればいいことです。それはかまわぬ。ただ刑法全般的な体系について、こういうような法律刑法と同じような処罰規定をつくる。現在あるし、今度加重された、そういうことと同じような範疇であるというふうに考えていいわけだと私ども思う。もちろん一つ一つ処罰の該当事項は違うわけですから、きっちり同じではありません。麻薬を利益のために密輸入した場合と強制的に施用した場合と違いますから……。しかし一般的な刑法との関係ですね。これが特別な関係だという関係においては、同じ範疇に属するであろうということを御質問申し上げまして、同じ範疇に属するというお答えをいただいたわけです。そこで今度は補足説明で、ただそれは加重するか、それだけで処罰するかという問題で、裁判官が非常にお困りになるのでありましょうという御親切な技術的な御答弁があっただけで、それはわれわれが立法するときにそういうことを困らないように立法すればいいわけです。刑法との特別の関係は同じであるということは、最初の御答弁の趣旨と変わりないと思うのですが、もう一回刑事局長から……。
  46. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 刑法総則がひとしく麻薬取締法罰則に適用があるという意味においては、変わりないわけであります。この麻薬取締法罰則の中に、ただいま先生のお述べになったような、私から申しますと、たいへん失礼な言い方でございますけれども、妙な規定が入ってきた場合に、この妙な規定刑法総則との関係においてどう理解するかということになりますと、非常にむずかして問題が起こってきはしないかということを懸念いたしますものの、刑法総則がこの罰則についてもかぶるという意味においては、同じことだと申し上げて差しつかえないと思います。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 非常に御親切な御答弁だけれども、ややこしい問題を出されたけれども、それはそれで私ども考えます。私どもばかじゃありませんから考えますけれども、いまの御親切な御答弁は善意として受け取りますが、言ったのは、刑法でいろいろな刑罰規定をやられるということを、こういう麻薬取締法というような別な法律刑罰を科するということの特別な関係は、密輸入なんかについて書いてあるものと、そういうものにもし修正なり改正をした場合の関係は、同じであるはずだと思う。そうでなければいけないので、もう一回はっきりしておきたいと思って伺ったのです。それをやったときのやり方がまずければ非常に困るであろうということは、善意の御忠告として伺っておきますけれども刑法との関係は特別例という関係で、同じであるということだということをもう一回はっきり御答弁願います。
  48. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 そのとおりでございます。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、お聞きのとおり、この特別な関係においては刑法との関係は同じなんです。普通刑法で全部やるべきものを、麻薬取締法でこういう特別な事例について、ほかの処罰規定をきめた。だからいまのような処罰規定をきめても、刑法体系をくずすといったら語弊があるでしょう。さらに補てんしていい特別例をつくったのか、あるいは形式的刑法論者から見れば体系をくずしたというか、どっちにしてもとにかくこれで一応体系が変わっている。だから、私の申し上げているようなものを入れても、この法律に関する限り変わるという点では同じなんです。ですから、厚生大臣法務省と話されたときに、刑法体系を乱ると困るというようなことをおそらく法務大臣が言ったと思う。そんなことでおじけをとられては困る。それならば麻薬取締法刑罰規定をやめてしまえばいい。そういうことで特別関係は同じなんです。ただ学者というものは、日本では非常に権威を払われ過ぎる。学者がそれは学問的に筋が違うというと、学者の形式的な権威に押されてしまって、そうですか、しかたがありません、そういうことで政治家はとまる現象がある。そういうことがないようにしていただかなければならない。そういう点について厚生大臣の御感想を伺いたい。
  50. 西村英一

    西村国務大臣 非常にむずかしい御質問で、どういう意味かはっきりしませんが、体系は一応体系として、法律体系というものはあろうかと思います。しかしそれを守るのはやはり程度の問題でして、いまあなたの言ったことがどの程度体系を乱すか、あなたのいまおっしゃったことは、ある特殊な社会現象麻薬に関する社会現象をつかまえて、それが罪がひどいじゃないか、こうおっしゃっておるのでございます。それをどういうふうな形でこの中に入れるかということで、これは体系を乱すか乱さぬかということになるわけでございまして、あなたのおっしゃっておることは、罪が重いではないか、こういうわけです。それはわかります。私たちの出した法案でも、施用の問題で、強制施用という字句を入れなくても、ほかの刑罰が併科されればそれで十分ではないか、こう考えて強制施用という文字がないわけでございます。そこの違いだけでございまして、こちらの刑罰の中に施用ということがいってあるわけです。あなたは、強制施用を入れよ、こういうことかと思う。その入れ方の問題で法の体系を乱すか乱さぬかということになるのでありまして、いまの抽象論だけでは私は乱すとも乱さぬともちょっと判断がつきかねるのであります。言う事柄はわかっておるが、それが法律的にどういうふうになるかということは、ちょっとまだむずかしいと思うのです。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 率直に無学な点も披瀝してざっくばらんに言っているのですから、厚生大臣もそんな回りくどい答弁ではなしに言ってほしいと思う。はっきり言えば、これがいいものであれば、やるときに、形式的に刑法論者がそういう特別な規定をつくられては困るということをがたがた言うておる、そういうことに負けては困るということです。法律の技術家としての権威もあるでしょう。政治家として問題に対処しなければならないという責任もあるわけです。それからお役所の方では原案を守りたいという気分もあると思うけれども、それで問題がとまってはいけない。とめてはいけないという政治家責任がある。その政治家責任が往々にして学者や役所の役所の——中で一生懸命論議されているのはわかりますけれども、役所のワク内で一生懸命論議されたこと以上に、政治家がよいということでも、これは絶対に進められないという現象がいまの政治の停滞の中にある。その政治の停滞を突き破っていただかなければならぬ。残念ながらわれわれは政権をとっておりません。政権をとっておるならば完全に突き破るつもりですけれども。いま政権をとっている政治家に突き破る責任を持ってもらわなければならない。それでそういうことを言っている。私の言っている趣旨はおわかりだろうと思う。
  52. 西村英一

    西村国務大臣 よくわかります。形式にとらわれるな。私も政治家でございます。形式にとらわれません。しこうしてまた役所にはいろいろ従来の悪い習慣があります。それは私としてもそれに従うわけではありません。いま問題の点、八木先生の御意見は十分尊重いたします。私も十分わかるつもりでおります。
  53. 八木一男

    八木(一)委員 それではもう少し具体的な問題について刑事局長さんに伺いたいのですが、監禁傷害誘拐と三つの罪のときに、おのおの単独で何年以上何年までの懲役になるか、それが併合されるときには最高どのくらい、最低どのくらいになるか、ひとつお答え願いたい。
  54. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 営利目的で誘拐をしていまのような施用をした場合が一番重いと思います。これは併合罪規定を適用しまして処断するといたしますと、一年以上十五年以下の懲役になります。それから逮捕、監禁をいたしましていまのような施用をしたということになりますと、これは懲役十五年以下でございます。下はありません。それから脅迫をして強制的に施用したというような場合でございますと十二年以下。それから暴行を加えて施用したという場合を考えますと、これも十二年以下。それから傷害を加えて施用したというような場合ですと十五年以下。これが現行法の立場でございます。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 改正案でも同じですね。
  56. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 刑法規定改正になりますともう少し重くなると思います。
  57. 八木一男

    八木(一)委員 麻薬取締法改正案ですよ。
  58. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 麻薬取締法改正案を基礎にいたしまして、いまの刑を出してみたわけでございます。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、お聞きのようなわけでございます。一番重いもので営利誘拐か何かやって一年以上十五年まで、今度は監禁が十五年以下、下はゼロなんですよ。その次に脅迫が十二年以下、下はゼロ、傷害が十五年以下、下ゼロ、こうなると、さっき言った非常な凶悪な男、またそれに準ずるようなものに対する罪は、どう考えてもほかのものに比べて軽過ぎる。私はやはりそういうような一番凶悪なものは、さっき言ったように殺人罪にしてもいいとしろうと判断で言われるようなものは、死刑論についてはいろいろ問題がありますから、やはり最高無期まで持っていかなければならぬと思う。情状がありますから必ずしも全部無期に限定するわけではなくて、無期あるいは有期にして、最低限をきめなければいけない。しり抜けであっては、そういう犯罪を防止できない。強制施用だけではもっと少ないが、監禁も入り、暴行も入り、そういうことが併科されて三つも四つも加重されて一番罪が重いので十五年、下が底抜けになる。厚生大臣は運営問題や厚生問題で練達の人でありますけれども、こういう問題についてはあまりくろうとでない。私もくろうとでない。しろうと談議ですけれどもしろうと談議でもこれは軽過ぎる。大体いままでの判例では、最高刑にいくことは少ないと言われている。人の一生を——ほんとうにまじめに幸福を得ようとしている、また社会や家庭に貢献をしようと考えている人間に、無理やりに注射をして中毒患者にさして、その中毒の形で売春をさして、また梅毒患者にさしている、そういうような殺人以上の凶悪な犯罪に対して、罪が併科されて最高刑で十五年、うまくちょろまかして逃げればゼロになる。そういうことで防止できるかどうか。併合罪でどんなにしたって無期徴役にならぬ。ぼくは人を無期徴役にすることは好きではありません。しかしこういうようなむちゃくちゃな人権じゅうりんをする者を厳罰に処して、そういう犯罪を犯させないようにする、そういう犠牲者を出さないようにする必要があると思う。そういう必要はないと言うなら、刑法一つ残らず全部やめてしまえばいい。刑法がある以上は、そういう極悪非道なものについては、やはりそういうことにしなければバランスがはずれていると思う。役所の方ではさんざんバランスを考えたと言われるけれども、私はしろうとであるかもしれないが、国民のために一生懸命考えれば、明らかにこの改正法律案ではバランスを失していると思う。それは専門家考えたとか、厚生省法務省が一生懸命考えたというようなことで、それが直らないようなことがあったら、政治家の名折れである。厚生大臣は純然たるしろうとでも、考えてごらんなさい。あなたが率直に言われたように、それは殺人罪にして死刑にしてもよいというように見る場合でも、うまくいったらゼロで済む、二年か三年で済む。そういう連中はまたそういうことを重ねる。無辜の国民の人権じゅうりんを受ける。これでは完全にバランスを失している。それを形式的な解釈によって、そこまでは及ばないでいいだろう。厚生省の一部に、そういう現象は少ないからいいだろうと考え方があってはいけない。少なくたって多くたって、国民の人権じゅうりんされることが少ないからいいだろうという考え方ではいけない。厚生省はいまからこれを撤回をして、直して出すような意思を表明される意思はありませんか。
  60. 西村英一

    西村国務大臣 私はさいぜんの答弁で、非常に極悪な、そういうことによって死に至らしめるようなことがあったら、まず感情としては死刑にも相当するというような感情も起こる、こう申し上げたのです。しこうしてあとに、そういう場合には法の刑罰として書く場合にはどうなるかわからぬけれどもと言ったのであります。気持ちはわかります。その場合に有期最高の罪、それは有期ではいけないじゃないか、無期あるいは死刑にしろ、こういう議論もあろうかと思われます。それを間違っておるというわけにはいきませんが、それだけをやったからといって、それでは無期にすれば全部麻薬禍が防止できるか、これも考え方でございます。そういうことを罪が軽いために防げぬということならば、将来また考えてもいいのではないかと私は言っておるので、そこのところは、麻薬禍をそれでもって絶対に防止しなければいかぬのではないかというあなたの気持ちはわかりますけれども、それをしたらすぐ麻薬が絶滅するのだということにもなりませんので、有期最高ということになっておりますから、その点をあなたは改正の上の欄にあげて、輸入、輸出、製造、さらに強制施用という文字も入れよ、こういう御意見であろうと思うのですが、その点は意見としては十分伺っておきますけれども、いま私はこれを改正して出し直すということは考えておりません。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御答弁、相当理路整然だ。ただ最後の点は不満です。それで、ここですぐ答弁してくださいということは無理だと思います。ですからいま申し上げたことをじっくりお考えになっていただいて、それから私一生懸命申し上げた状況も、その気持ちも含めて、形式的ではなしに、法務大臣とも御相談になり、それから総理大臣とも御相談になってけっこう、それで撤回して、それだけ直して出し直すということを考えていただきたい。それが時間的に無理で、政府や与党でできなかったら、与党にはもののわかった先生方がたくさんおられます。ですから政府のほうのいまの立場があるなら、与党のほうでそういう修正案を出して問題を解決してくれないか、そういう最大の努力をしていただきたいと思います。御考慮になって、最大の努力をしていただけるかどうか、その御答弁を伺いたいと思います。
  62. 西村英一

    西村国務大臣 提案するに至るまでには、政府で考えるのみならず、わが党といたしましても関係機関に全部はかりまして、そうして賛成を得て提案をいたしておるのでございます。その段階におきまして、私がこれを修正に努力するというようなことは、なかなか困難かと思います。ただし委員会の意見で、皆さま方がどういうふうな御意見であるかということは、これまた自由でございまして、たびたび言っておるとおりでございます。そういう意味で御了承を賜わりたい、かように思います。
  63. 八木一男

    八木(一)委員 こういうことを申し上げたのは、あるいは与党の尊敬する先生方に失礼であったかもしれません。厚生大臣がどんなにわからずやであっても、どんなにぼんやりであっても、委員会はちゃんと直さなければならないのですから、与党の方々がわれわれと話し合ってやられることです。しかし私は厚生大臣がなまけ者やぼんやりであるとは思いませんし、なまけ者やぼんやりであっていただきたくはないのです。そういう点で御考慮になった上と言いました。そういうことを全部御考慮になって、その道があったら熱心な厚生大臣として、そういう道を早く進めるために御考慮になった上での御努力をお願いしたいということです。  法務大臣にお伺いをいたします。ただいま厚生大臣には、長いことまじめな厚生大臣にやや失礼なことも申し上げて、一生懸命申し上げたわけでございます。厚生大臣は非常に御考慮になり、御努力になろうというお気持ちになっておられると私は信じております。ことばははっきり出ていないけれども、そういうことです。法務大臣に非常な御協力をいただいて、その問題を進めるようにしていただきたいと思います。  私は麻薬取締法の中の一点にしぼって御質問をしているわけです。その問題は、たとえば社会にも貢献し、家庭にも貢献して健全な生活をしたいという人が、非常な悪人につかまって監禁され、あるいは麻酔薬を飲まされて、意思能力、行動能力を失った形において、ヘロインその他の麻薬注射される、そういう状態を続けて麻薬中毒患者にされてしまう。それで麻薬中毒という形で意思能力がなくなって売春を強要され、麻薬がほしいがために、ふだんだったら絶対拒否することを、売春をみずからやるようになる。それで収益は全部ひもに吸われるというような状況があるといたします。そういうものに対する処罰規定が、今度の改正案では非常に軽過ぎるというふうに申し上げたわけであります。  その理由はいろいろ申し上げました。一つは、今度の麻薬取締法麻薬禍を断つために、供給源を断つための努力が非常に払われておる。それはけっこうであります。しかしそれとともに需要者をふやさないという方向でも締めていかないと、いろいろの施策をやったのにアリの一穴になるという点で、自分意思弱くして、自分麻薬を使いたいという連中のことは別の方法でやらなければならないけれども自分意思によらずして患者になるようなものは、断じて防がなければならぬという考え方です。それでそういうことの一環として、そういう悪らつなものに対する刑罰を重くしなければ、それはうまくいかないのじゃないかということが一つ。  もう一つは、麻薬取締法麻薬禍を防ぐということでありまして、麻薬によって最終的には人間の健康なしあわせが失なわれるということでありますから、麻薬取締法はそういう麻薬供給を断ち、需要を断つ必要が一つあるということと、ほかに、麻薬取締法提案理由には、ぼけたばかみたいなことが書いてあるけれども、根本的には人間が健康を害されたり中毒になって幸福を害されることを防ぐために、麻薬取り締まりということをやっておる。そういう点の中では、自分意思によらずして麻薬患者にされる、そういうひどい目にあった人のことが一番不幸な事例であり、そういうことを招来する犯罪が一番凶悪な犯罪です。ですからそういうものについては、いまの状態では非常に刑が軽過ぎるということです。  この刑が軽過ぎることについて法務大臣に申し上げたいのですが、一般的な刑法があるのに、こういう特別規定刑罰をきめるのは、刑法全体の体系上あまり好ましくないという学者があろうと思います。しかしそれは学者の空論であって、実際麻薬取締法の中では輸入その他について特別規定を設けている。その強制施用についての特別規定を設けても——そういう形式的なバランスをくずしたくないという立場を尊重いたしましても、しかも現象としてはそのような麻薬禍を撲滅するために、アリの一穴も許さないということと、一番人権を侵害される被害者を出さないために防犯をするためには、そういうことをする必要があると思う。この法律でやるだけですから、体系を乱りません。現状としては、たとえば一番ひどいところでも、刑を加重して併合罪でやるということを言われる、併合罪で一番重いものであっても、営利誘拐罪に強制施用がまざるもので一年以上十五年、監禁とそういうものがまざったものが十五年以下です。それから脅迫でやったものが十二年以下です。下はしり抜けですよ。一年以上じゃないのですよ。暴行のもの、傷害のものが十五年以下です。そのようなひとどいのが、最高が十五年、十二年の部分もある。脅迫の場合です。そういうことがある。それで下はしり抜けの場合が多い。営利誘拐のときだけ一年以上です。ということになれば、いままでの裁判例で最高刑になった例は、私のしろうと判断では少ないのです。そうなれば、非常に軽い罪でそのような猛烈な人権じゅうりんが処断されるようなことになります。死刑については問題がありますが、私は一番ひどいものは少なくとも無期懲役は科する必要があろうと思う。その中には諸般の事情もあろうから、全部無期にする必要はありません。有期刑の短いものが適当なものもあろうと思いますけれども無期及び何年以上何年以下の有期懲役ということで縛らなければ——凶悪犯罪を刑だけで縛るわけではありません。警察の取り締まりなどで縛りますけれども、どうもそういう点の配慮が少ない、対処のしかたが足りないということになろうと思う。  もう一つ併合罪でやりますとわからないのです。いままでの質問でも、中野さんみたいな麻薬委員長といわれる方が質問申し上げても、全部わからなかった。ぼくが質問申し上げてもわからない。厚生大臣もよくわからなかった。これとこれとが重なりますよと刑事局長さんから伺って初めてわかった。われわれでさえわからないのですから、犯罪人にはなおわからない。犯罪人は犯罪のほうの専門家だからわかると思うかもしれぬけれども、大体わからぬ。わからぬから、見つからぬだろう、もしつかまってもうまく弁解すれば何とか逃げられるだろう、いざ裁判になってもちょっくらで帰られるだろうという考えで、けしからぬ連中がそういうことをやるわけです。だからこういうことをやったら、一番重いときには無期になるぞということにならなければ、防犯にはならぬのです。だから無期または三年以上十五年以下の懲役とか、あるいは二年がいいということであれば私ども考えを変えるということもあろうし、五年がいいということになれば、ああそうかということでわれわれも考えを変えることもあろうかと思いますが、大体そういうことで改正をする必要があろうと思う。ところが政府は一回法案を出されたら、政府のメンツを重んじられて抵抗される癖がある。それはいけないということを申し上げたわけです。  政府は麻薬法の改正を出された。これはりっぱです。いままで二十点ぐらいものだったのを、九十点くらいのものを出された。これを百点だといって強弁されるよりも、九十五点でした、あとの五点くらいは直すことにしましょうといって、政府はすなおに直されるべきだと思う。九十五点でもほめてあげたい、それをなおみなの努力で百点になるようにされれば、責任をますます果たされたものとして称賛に値するでしょう。それを九十点であるとわかりながら、百点であると強弁して、あとはだめなんだということでは、政治家としての責任を果たすあり方ではないと思う。厚生大臣としては政治家としての責任を果たすような気持ちを、満点ではありませんけれども八十点くらいはお示しになりました。中垣さんが百点ぐらいお示しになれば、厚生大臣もすぐそういうお気持ちになられると思いますから、協力されて、不十分な点、いま申し上げたことを政府みずからがすぐに検討されて、二、三日じゅうに撤回されて修正をして出される。それが無理であったら、与党のわかっている先生方に、ひとつ与党のほうでやっていただきたいということを内々に交渉をされる。そういう御努力をしていただきたいのです。それについての中垣法務大臣の前向きの、形式的ではない、ほんとう政治家としての責任あるりっぱな御答弁を期待して、御答弁を求めるわけです。
  64. 中垣國男

    中垣国務大臣 八木さんにお答えいたします。売春を行なわせるために麻薬注射するという、この悪質な犯罪に対しまして、最高は無期をもって報いるべきだという八木さんのお説に対しましては、私もよく御趣旨のお気持ちはわかるのでありますけれども麻薬注射の刑事犯としての犯罪個々に発生する場合におきまして、その原因であるとか犯罪の構成とかいうようなことで、非常に種々雑多な原因によって分かれていくと思うのであります。そういうことを予想に入れますと最高を無期にするということは、これは非常に問題があると思うのです。先ほど併合罪によっての考え方には納得できないとおっしゃいましたけれども、やはり医師法違反とか、あるいは麻薬取締法の違反者であるとか、あるいは売春の強要であるとか、そういうものはいずれも相当な科刑を要求することができるのでありますから、私はその併合罪の法運営によりまして目的を達することができる、そういう考えに立ちまして、政府原案というものをば出しますときに了承をしたのであります。御趣旨はわかるのでありますけれども、どうもいま直ちにそういうことをする必要があるかどうかといいますと、そういうことをしなくても、私は現在の取り締まりの諸法律によりまして、これの運営いかんによっては十分期待ができる、私は実は率直に言いましてそういうふうに考えておるわけであります。
  65. 八木一男

    八木(一)委員 さっきはざっくばらんに急いで質問したのですが、そういう形式的な御答弁になると、やはり厚生大臣に申し上げたその倍くらいかかって、そっくり同じことを伺っていかなければならない。あなたは政治家としてりっぱな判断を持っておると思って、時間の節約上ざっくばらんに全部申し上げたわけですが、そういうことでしたら一つ一つ伺っていきます。  本人が健全なる社会的な生活をしたい、家庭を持ちたいということでやっている者が、暴力をもって監禁されて、麻薬を強制施用されて、それによって意思能力を失って、生きていれば舌をかみ切っても承知しないような売春行為をして、からだ麻薬中毒になり、梅毒となり、淋病になって腐っていく、それによって得た収入は全部ひもに吸い取られる。その人権じゅうりんは、たとえば気のふれたような、少し矯激な気違いという精神鑑定はされないけれども、普通の意思能力のあるという者によっていきなりなたでなぐり殺されたと同様な凶悪な犯罪であり、被害者にとっては人権じゅうりんだと思いますけれども、法務大臣、どうお考えですか。   〔齋藤(邦)委員長代理退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  66. 中垣國男

    中垣国務大臣 お説のとおりだと思います。ほんとうにけしからぬと思います。それといまの刑罰等は、体系の上から見ましても、バランスの上から見ましても、やはり慎重に考慮しなければならないいろいろな問題があるわけです。ですからあなたの言われることは、一にも二にも全部ごもっともだと思いますけれども、であるからといって、全部をいま無期にするということに、いまここで即座に賛成することはほんとうにできないと思いますから御了承いただきたいと思います。あなたの御趣旨はよくわかるのです。わからぬのではなくて、わかるということを前提として言っていただきたいのです。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 そういう事犯に対してはけしからぬ——おそらく立場上言われなかったのでしょうけれども、凶悪な、なたでなぐり殺したような殺人犯と似たような凶悪なものである。そういえば殺人のほうに死刑があり、無期がある以上、死刑と全然同じにしなくても、少なくとも無期までいって、同じとは扱っていないわけです。だから、ほんとう形式主義を抜きにした人間としての判断だったら、殺人に対して死刑があるならば、これに無期があってしかるべきじゃないかと思う。いろいろな立場を抜きにして考えれば、それがなぜできないか。それは形式主義であります。刑法論者が刑法体系をどうとかこうとかというような抵抗がある。前例がないというような抵抗がある。外国がどうだというような抵抗がある。外国がどうであったってかまわない。麻薬禍日本が一番多い。麻薬によって人権じゅうりんせられておる例が一番多い。外国がどうであっても、日本が率先してそういうことをやらなければならぬ。そういうことについて、たとえば刑事局長さんは、たとえば薬務局長さんは、いろいろの点でバランスや何か考えられる責任がありますから、考えられた点の誠意は認めます。認めますけれども、そういうことになると、技術的な判断、形式的な判断になって、世の中のあらわれている事象を直そう、直さなければならないという判断——そういうことがあらゆる政策に影響があると思う。政治家だけでやればずさんなものができて、あるいは七十点のものしかできないかもしれません。そうではなしに、われわれ百点のものをつくるつもりだけれども、それは自画自賛であって、七十点のものしかできない。担当者の人がやれば九十点のものができるかもしれません。しかし九十点を百点にしなければ問題はいけないのです。事務屋の人が考えた九十点の原案を、別な角度から政治家判断して、これに十点加えれば百点になる。けれども、九十点をつける能力のある人がつくったのだから——ふだんはわれわれがつくったら、七十点くらいしかつくれないというようなコンプレックスを持っている議員もあるかもしれない。そういうことではいけない。分野が違う。政治的判断というものは、ある意味で、別の意味で非常に大事だ。事務的にいって九十点できても、残り十点が足りなければ、政治的判断でこれを直していかなければならぬ。それを直そうというときに、前例がありませんとか、学者がどうであるとか、そういうことがチェックになる。今まで九十点のものをつくる点において、前例なり学者の意見は有効な作用をしている。この九十点を百点にするときには、それがブレーキの作用をしている。それを打ち破るのが政治家責任です。そういう意味で、率直に判断して、片方殺人死刑であれば、これは無期になるのがあたりまえだという、ほんとう人間としての判断がある。それをできないのを乗り越えていただくのが、政治を担当しておられるあなた方の責任です。あなた方が全部辞職されて、われわれに内閣を譲り渡せば断固としてやってみせるが、あなた方が持っている以上、あなた方がやらなければならない。そういうことを打ち破る努力をされなければならぬ。政治家は勇敢になってもらわなければならぬ。  もう一つ申し上げますが、今度の刑罰の中には、単純の施用と営利施用という罪がある。営利施用のほうが罪が重いでしょう。そうしたら今度はこっちのさされる意思がないのに強制された施用というもの、単純と営利の間にこれだけの幅があれば、われわれとしてはそれは十倍の幅がなければならぬと思う。それについて法務大臣はどうお考えになりますか。
  68. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。八木さんの御指摘のとおりに、こういう悪質犯罪に対しましては量刑を非常に重くすべきではないかというお考え、そういう考えに立ちまして関係省庁が骨を折りまして、今度の引き上げはかなり思い切った量刑の引き上げに実はなっているのであります。でありますから、全体的にごらんになっていただけば、かなり引き上げに努力をしたということをお認め願えると思うのです。今おっしゃるように、強制された場合は別ではないかという、そういうことを取り入れて、強制の場合は特に引き上げられていることも御承知のとおりです。でありますから強制の場合、併合罪がこれに付加されますから非常に重くなるわけです。ですから、今度の改正はこれで非常に効果をあげ得るという立場に立って、実は政府がこれを出しているわけであります。あなたの御主張はよくわかりますけれども、だからといって、それではすぐここでひとつ改正しましようということも、いままで数十回の会合を重ねてここまできたのでありますから、この点御理解をいただきたいと思います。
  69. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 八木君に申し上げます。初めての方はびっくりされますので、静かに質問をしてください。
  70. 八木一男

    八木(一)委員 中垣さん、いまほんとうに一生懸命申し上げているのですよ。これだけじゃないのですよ。政治の姿勢を申し上げている。これは池田勇人君には言いますが、あの人の腰が抜けて、政治家としてのしんが抜けています。とにかく政府と与党でよく考えたものを出したら、そのまま通しておけばいい、それが九十点であっても。それでほんとうに政府や与党が出したものが論議の過程の中で、非常にりっぱな人がそろっているから九十点くらいでしょう。みんな九十点くらいだけれども、五点や七点や十点の減点がわかったときにも、これでわれわれは十分だと思います、見解の相違ですというようなことを言ったり、これは前よりよくなったのだから、かんべんしてくださいというようなことを言ったり、そういうことでやっていく政治が続いている。そういうことであらゆることが不十分で、世の中は不幸な人が満ち満ちている。ただこの麻薬取締法だけではない。そういうことを直していただかなければいかぬ。社会労働委員会では西村厚生大臣や大橋労働大臣に盛んに言っております。しかし法務大臣にも言っておかないと、西村さん、大橋さんが一生懸命やっても、閣議の中でほかの連中がぼんやりしていたら、そういう姿勢が直らない。だからほんとうに姿勢を直していただくために、若ぞうではありますけれども、私ども一生懸命申し上げておりますから、右顧左べんをしないで、ちゃんと聞いていただきたい。この問題だけの問題じゃない。そういう点で直していただかなければならない。それで、直す問題が一ぱいあります。しかし予算に関係のある問題は、直すべきだと思って私どもまだ言いますけれども、その問題については予算を先にきめてしまって、あとで法案審議されるというような間違った国会運営、そういうものは直さなければならぬ。そういうものを厚生大臣も法務大臣も与党の先輩として考えて、みずから直さなければいけないと思う。しかし現状として予算をいじくるのはむずかしいだろうということを配慮して、最大限度に与党の立場を配慮して、最小限度のことを申し上げている。それまでも何とかかんとかいいかげんなことでかわされるということであれば、政治の姿勢全体について池田君に来てもらう。来られなかったらみずから総辞職をしてもらう。できなければほんとう政治家でない。その決意をたださなければいかぬ。そういうことにならないように、あなた方は池田君を教育しなければいかぬし、与党も指導しなければいかぬ。そういうことで予算に関係ないのですから、法務大臣と厚生大臣がやる気になればできるのです。それができなかったら、あなたと厚生大臣が信頼のある与党の人たちに、一生懸命与党で推進してくれと言えば、むろんこれは動きます。しかし逆の現象がこの間からあるように思う。与党の人も初めは趣旨賛成だと言っていた。ところが今日に至ってブレーキをかけるのが一、二名出てきた。それがなければ幸いです。そういう役所の動きがもしなければ幸いだけれども、役所の動きがあったかないか、法務省厚生省で厳重に調べて、そのような国会の真剣な議案の審議にブレーキをかけるような動きがあったならば、あくまでも法務省厚生省で厳重に対処するということをしていただかなければならないと思う。そういう背景です。ですからほんとうに真剣に、ほんとうにざっくばらんに、政治家としてお答えを願いたい。これはやればできるのです。行政運用で十分できるでありましょうからというようなことでなしに、それがいいとなったらやったらいい。これで九〇%だから一〇〇はがまんしてくれというようなことは、政治家としてはいけないわけです。そういうことで、殺人にも匹敵すべきものが無期にもならない。併合罪を合わせて最高十五年だ、一番下はしり抜けであって、うまく弁解すれば——逃亡してつかまらなかったものは別として、つかまったものでも助かる危険性がある。裁判所は公正な判断をされるでしょうけれども、どうも傾向としては、ほんとうに善意な国民の人権よりも、犯罪人の人権を守り過ぎる傾向があると、私どもしろうと判断している。そういうような状態で、片一方のほうを強くされたらいい。特別法になくても、麻薬取締会というのは刑法の特別法を一部含んだということで、ほかの点については刑法学者ががんがん言っても、中垣さんがそうじゃないのだと言えば、一ぺんにおさまります。そういうことで思い切って無期懲役と三年以上の有期懲役ということに踏み切る必要があると思いますが、率直な御答弁をいただきたいと思います。
  71. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。先ほども答弁をいたしましたように、政府といたしましては、今回の改正による刑罰の引き上げにつきましては、これが適当であるという考えに立って、実は提案をしておるのでありまして、八木さんの御主張はよくわかるのでありますけれども、今回はぜひともこれを通過させていただきたい、こういうことであります。それから外部からいろいろブレーキがかかっておるのではないかというようなこと、さようなことは絶対にないと信じております。そういうことはございません。刑罰の問題でありますから、見る角度によりましてはいろいろ論議が立つかと思うのでありますが、相当慎重に検討を重ねまして、あらゆる場合を想定に入れまして、十分検討した法案でありまして、決して思いつきのものではないということも申し上げたいのです。そういうことでありますので、いまここで政府原案を修正いたしまして、無期にする意思があるかどうかということに対しましては、私ども国務大臣の立場としまして、そういう意思はただいま持っていないと申し上げるほかないのであります。
  72. 八木一男

    八木(一)委員 ただいま意思は持っていないと言われることは、非常に形式的で遺憾ですけれども、いまのところ不問に付しましょう。しかしただいまの直後は、その考えを改めていただかなければならぬ。こういうことを申し上げたくなかったのですが、さっき刑事局長に聞かれましたね。ほかの点では練達な中垣法務大臣です。私ども政治家の先輩として尊敬しておりますけれども、聞かれまして、いまの強制施用については罪が重くなっているということを言われたけれども、そうではないでしょう。併合罪でしょう。ですからほかで一生懸命活躍しておられるけれども、この問題については中垣さんも西村さんもあまり知らないのだから、池田君やその他の連中が知りっこない。知らないところで陰できめられた、知らない現状できめられたものである。そんなものは権威がない。そんなものの権威を保とうとするのは間違いです。大臣は一つも知らない。中垣さん、西村さんが悪いとは言わない。いままでの大臣よりずっとましだと思っておる。けれどももっとよくなってもらわなければ国民は困る。いままでの誤りは誤りでけっこうです。われわれだって、われわれが閣僚になったらあやまちを犯すかもしれない。われわれがあやまちを犯しても、あやまちとわかったらすぐ直す。すぐ直してほしい。ほんとう政治家であれば、不十分だった、確かにあなたは御存じなかった。閣議にも論議が不十分だったに違いない。法務大臣自体が御存じない。池田さん以下不十分であった。不十分でそういう論議が出た。それを直すのが政治の常道です。直せば自由民主党という政党は、その限りにおいて政治にまじめに取っ組んでおると言える。直さないということは、権威だけ保って、国民のことを考えていない政党だということがいえる。ほんとうにまじめな内閣の閣僚であるつもりか、ほんとうにまじめな政党の領袖であるつもりか、それともふまじめな政党のリーダーであるつもりか。中垣さんの御答弁をいただきたい。
  73. 中垣國男

    中垣国務大臣 私はしろうとでございますけれども、非常に大まじめで実はやっておるつもりでありまして、一生懸命やっておるつもりなんです。ただいま御指摘なさいましたように、ここで論議の段階におきまして、これは不十分である、とても満足できない、この御趣旨はよくわかるのです。ところがここに提案をいたしますまでのいきさつから見ますと、これは妥当と認めまして、まず今回の段階はこの改正によって相当な効果をあげることができる、こういう前提に立ってやっておりますので、今回はぜひともこれを通していただきたい。しかる後に実際にこれを運営いたしまして、なおあなたの御指摘どおりのような欠陥が、社会現象となって出てまいります場合におきましては、それを再び検討するというようなことは、まじめに政治と取り組むものといたしまして当然のことと思います。そういうことでございますけれども、ただいまの段階におきましては、私どもとしましてやはり相当に慎重に審議した上ここにまいったのでありまして、この案はあなたのおっしゃるような欠陥をたくさん持っておるものではない。必ず効果をあげられると信じておるわけでございます。
  74. 八木一男

    八木(一)委員 中垣さん、西村さんにもう一回だけ一生懸命に申し上げます。それで御答弁が不満足であったら、われわれは別の処置をとらなければいかぬ。いま不満足であることは明らかです。どんなにそうじゃないといま言い直されても、そうじゃない。ですから担当の厚生大臣や法務大臣が、その問題について理解が少なかったことは明らかです。ですから閣議における説明も不十分であったに違いない。あなた方は、あなた方の内閣の首班である池田内閣総理大臣が、閣議できまったこの不十分なことに、責任を持つというようなことをさしてはいけない。池田さんを信頼されておるならば、池田さんに間違いのないように補佐をするのがあなた方の任務だ。政党人としても総裁に間違いなからしめるのが任務だ。ただ形式的に出したものを直すということは、なかなかメンツがあるということでこだわっておる。中垣さんや西村さんはメンツはどうでもいいとお考えになっても、池田君自体がメンツを考えているかもしれない。そういう総理大臣だったら、あなた方自体が総理大臣やめなさいと言わなければならぬ。池田君がいい政治家であれば、あなた方から言われたら聞かれるはずだ。あなた方はそういうことを進言できないということであれば、あなた方は池田君をばかにしておるということです。ですからあなた方はほんとう努力して、この問題について——どもひとりよがりで言ってはいけませんが、形式とかメンツにとらわれずに、検討して努力されるということを表明なさったらいい。このままにしておきますけれども、それを積極的に御両人で表明できなければ、池田さんが、自分がふまじめな政治をやるのか、まじめな政治をやる気があるのかということで、池田さんに即時来ていただかなければ、この問題についての審議を進めることはできないと思います。お二人の御見解を伺いたいと思います。
  75. 西村英一

    西村国務大臣 私たちは池田内閣の閣僚でございます。しこうして池田総理を助けて、最善の努力をいたしております。これは自信を持ってそう申し上げます。世の批評はまたさまざまでございましょう。しこうしていまあなたのおっしゃっておる特殊の刑罰についての御意見、これは委員会の議論でございますから、いろいろな議論があると思います。しかし今回とりましたわれわれの処置は、従来の麻薬禍の撲滅のためには、刑罰が軽かったから重くしようではないか、重くすべきだというわれわれは気持ちを持ってやったのであります。こうして最高刑にいたしましても、死刑までしろというようないろいろな議論もございました。しかしこういう点でもっていろいろな観点から、こういうふうに落ちついたのでございまして、私どえはいまあなたがおっしゃったようなことにつきましても、もしそういうことによって麻薬禍が絶滅できなかった、過誤があるというならば、将来考えてもいい、こう言っておるのでありまして、あなたのおっしゃったような刑罰、私も罪としては万死に値する罪だと感情では思いますけれども、しかしこれは刑罰としてやはり法定する場合にどうかといっておることでありまして、私たちは十分この麻薬禍の撲滅のために皆さんの御意見を尊重していきたい、かように考えておる次第でございます。
  76. 中垣國男

    中垣国務大臣 私も厚生大臣と同様に、池田内閣の閣僚の一人でございますから、当然のこととして池田総理を中心に、閣議等におきましては一生懸命協力をしてきておるわけであります。先ほど来申し上げましたように、従来の刑罰では軽い、こういう世論にこたえる意味におきましても、この刑罰の引き上げというものが、当然ここに改正ということになって出てまいったわけでありまして、これは先ほどから申し上げますように、今度の引き上げで相当効果を期待できる、こういう観点に立っておるのでありますから、実際にこれを行なってみました結果、御指摘どおりにどうも効果があがらないじゃないかということがありましたならば、それはそのときにもちろんまじめにもう一ぺん検討してみるということについては、私も御指摘のとおりだろうと思います。そういうことでございますので、御理解をいただきまして、本案の通過に御賛成をいただきたいものでございます。
  77. 八木一男

    八木(一)委員 いま言ったような事例で、たとえば監禁、脅迫で十二年、そういう凶悪な事犯が、たとえば裁判所は法によって裁判する。そこで放免になったり一年になったりというようなことをやる。それが一年で出てきた。ばれなかったら、悪い人間としてうまいことをやっていく。ばれても一年くらいだということで再犯をする。そういうことで健全な善良な国民が、そういう完全に殺されるくらいの人権じゅうりんを受けるということが起こった場合に、それは法務大臣の決心が鈍かったために、そういうことが起こった原因の半分くらいをつくるということになると思う。そういう人権じゅうりんされる人を、悪いことを放置する考え方を法務大臣、持たれるのですか。人権じゅうりんが起こってもいいと思っておるのですか。努力をして十分にやりますといっても、併合罪で十五年でしょう。併合罪だからわかりにくい。そういうことは、あなたがほんとう人間としてお考えになったら、いかぬです。もちろんそういう犯罪ができないような社会をつくるのが一番いいけれども、そういう現象のある間は、やはり処罰規定で防止をする必要があるという状態です。刑法の場合には、殺人に対しては有期懲役無期懲役も死刑もあることを考えれば、そういう現象があって、片方はしり抜けで無罪までいく。裁判官がまともな判断をしたら十五年になるかもしれないが、軽過ぎる傾向がある。法できめたら、たとえば三年以上無期懲役だと、どんな裁判官が判断をされても三年までいくわけです。しり抜けをされて無罪になっては困る。その現象でまん中辺の犯罪が二年くらいで、普通だったら一年くらいで済む。これでやると三年ぐらいで規制ができるということが起こるわけです。そういうことですから、政府のほうで判断をされたら最善と信ずるというような形式主義ではなしに、もっと勇敢になってほしい。  さっきはずいぶんいろいろなことを申し上げましたが、あれは本筋だと思うのです。閣僚としていろいろな立場がおありでしょう。けれども中垣さんなり西村さんがそういうことを乗り越えて、りっぱな政治家として行動されることによって、ほかの政治家が見ならうでしょう。自民党がほんとう政治をやっていただけば、われわれは政権をとらなくてもいい。そうは思いませんけれども、政権をとっておられる以上は、少しでも欠点を少なくして、ほんとうにいいことは前進してやる、悪いことは食いとめるような、正しいことをやるという大きな勇気を示していただかなければならない。いま言ったことに対して、いま審議中でもうじき上げたいと思っておるから、そんなものをやられたらかなわないとお考えになるかもしれませんが、そういうような皆さんの希望とマッチできる方法もあるわけです。あなたが総裁に、これは変えたほうがいいと言われて、総裁が自民党の各機関に、これを変えようと思うから、審議を促進してきめてくれと言われれば、それで一ぺんにできるのです。もちろん与党の先生のほうが熱心にやられるでしょうけれども、そのくらいのことを——西村さんは、さっきは前向きであったが、いまの答弁はそうではなかった。中垣さんも前向きになられて、そういうことを考えて、最善の努力をしますというくらいな答弁があれば、私ども誠意を相当程度認めたいと思う。ただこれを通していただきたい、不十分なときは後に検討します。そんなことなら何のためにやったのかさっぱりわからぬ。今晩これが終わってから、すぐお考えになっていただきたい。両大臣御相談になっていただいて、総理大臣なり与党の幹部なり、そういうところへ働きかけて、そういうような不十分なことを十分にされる努力をされるかどうか。私みたいな若ぞうの言うことは聞けないというお気持ちもあるかもしれない。若ぞうであっても、一生懸命に国民の立場から申し上げておる。りっぱな政治家である中垣さん、西村さんには、ぴしゃっと入らなければいけないと思う。ですから、いますぐでなくても、きょう考えてみて、最善の努力をするという御答弁を両大臣からいただきたい。そういう御答弁がなければ、総理大臣を直ちにお呼びを願いたい。もう一回両大臣の御答弁を願います。
  78. 西村英一

    西村国務大臣 最善の努力をするというか、これは八木さんの御意見があって以来、政府部内としては再検討をしておるわけです。こういう御意見があるが、これはどうだろうか、しかしあんな意見は、意見で何もしなさんなと言っていないのです。私は直ちに薬務局長にこういう御意見もあるから、関係個所で打ち合わせてみなさい。打ち合わせてみて、きょう私はいろいろな観点から考えてみて御答弁をしておるのです。そういうことでございますから、ただ聞き流しをしておるわけではございません。そういうことは十分御了承を賜わりたい。しかしいまの段階で私たちは、ここでそれだからあなたの意見に全面的に賛成であるから修正いたしましょう、こういうふうにいたしましょう、そこまでの考えには至っておらないわけであります。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 これからまた考えられて努力をされるかということです。
  80. 西村英一

    西村国務大臣 これは御意見を尊重いたしますということを言っておるのです。
  81. 中垣國男

    中垣国務大臣 お答えいたします。この段階でもう一ぺん総理に相談をするとか、閣議にはかつてみるとか、いうことは、私は率直に申し上げまして、そういう段階ではないと思うのです。ここへくるまでにかなり時間もかけ、あらゆる機会を通じましてここまできておるわけでありますから、御意見のようなことは当然出尽くしておるわけでありまして、そういうことを考慮に入れまして、今回の引き上げはこの程度が妥当だという結果をもって——これはあなたから見たら妥当ではないわけでありますが、一応私どものほうとしましては、世論にこたえる意味におきましても、また麻薬禍の悪質な犯罪を防止する上からも、これは当然のこととしてやらなければならぬ、そういうあらゆる場合を想定しまして、こういう案ができておるわけでありますから、今日の段階におきまして八木先生に御指摘をいただいて、それではもう一ぺんこれを閣議で練り直そうというようなことは、私は正直に言いまして、いまはその段階ではないと思います。ただ今回の改正でなお刑罰の引き上げが十分ではなかったということが将来明らかになりましたら、それをまじめにもう一ぺん検討するということは、これは当然のこととして努力しなければならないと思いますけれども、今回はこの程度のものが一応妥当なものではなかろうか、こういう見解に立っておるわけであります。
  82. 八木一男

    八木(一)委員 西村厚生大臣の方は、きょう聞いたら検討されたと言った。さらに尊重してということで、政府の形式的立場としては非常に困難な事情があるけれども、とにかくそれについて努力をするようにうかがえる御意見を伺いました。その点で答弁に関する限りは、西村さんの御答弁のほうが私はやや満足であります。中垣さんのほうは、正直に申し上げますがという前段を置いて、その点でできないから、正直に言ったほうがあっさりしているとお思いになったのかもしれませんけれども、答弁の内容については非常に不十分であります。というのは、ずいぶん議論したというけれども、国会の中でこれだけ論議して、いま私のつたない議論だけれども、あなたにはあとから来られたから簡単にしか言わなかったけれども、ある程度申し上げました。あなたとしてはそれについてのお感じがあったはずであります。また御答弁について、あなたのほうに不十分な点があったことも自覚しておられるわけであります。そういう状態でありながら、いまの段階になっては動かせないということだと、政治は形式的でしか動けないということになる。そういう政治であってはいけないということ、そういうことにならないようにさっきから中垣さんに申し上げていることを考えていただいていないわけです。どんな場合でもできないはずはない。やろうと思ったらできる。私の言っていることが全面的に悪いとおっしゃるなら、これは別です。悪いとお思いになるのだったら、あなたはこの点が悪いということを、あなたと西村さんから指摘していただきたいと思う。それで悪いということがわかれば、私もまかり下がります。そういう御判断がなければ、少なくともそれについて考えていただいて、努力をされるという答弁がなければならない。西村さんの御答弁はやや満足、中垣さんの御答弁は正直だという点で買いますけれども、非常に不十分である。そういう御答弁が続くのならば、これは即時総理大臣を呼んでいただかなければならない。もう一回御答弁いかんによって、私はこの問題について態度をきめます。
  83. 中垣國男

    中垣国務大臣 繰り返し繰り返し同じことを先ほどから申し上げておるわけでありますが、ただいま御審議をいただいております法案に対しまして、これを直ちにもう一ぺん練り直すというようなことは、私の考えではする意思がないと申し上げておるのであります。それを離れまして、全体の問題としてもっと検討すべきではないかというお尋ねでありますならば、善処いたします、私もこういうことです。ただ私はいま提案されて審議中のものを、政府みずからの手で修正するというようなことはほんとう考えていないのでありまして、御主張は御主張、また私どものほうの考え方考え方、これはその立場立場で十分御理解をいただくというほかないと思います。私がいまここで、あなたの御意見は最も適当だと思うから、では政府で修正案を出しましょうというようなことを申し上げましても、これはおそらく皆さんの仲間同士でこの委員会だけでもたいへんな問題になるだろうと思うのです。でありますから、八木さんはほんとうに何でもかんでもよく知っておられるのですから、その程度でひとつごかんべん願いたいと思います。
  84. 八木一男

    八木(一)委員 そうおっしゃっても、そういう九十点のものを百点にする努力をいままでマンネリズムでしないものをやるということは、この麻薬取締法だけではなくて、政治の全体の姿勢を変えるりっぱなことだと思う。この委員会は、少なくともいまいる人は、そういうことをしたならば政治の姿勢がそれで変わってくるから大賛成です。時間的に間に合わなければ、撤回して出されたら即決でもします。時間延ばしにこんなものを使っているわけじゃない。そういうような旧態依然たる考え方でなくして律していただきたい。ただし、さっき西村さんに申し上げたのは、そういう御事情もありましょうから、政府で撤回して出し直すことがどうしても至難の場合には、あなた方は総理大臣に働きかけて、総理大臣は自民党総裁という資格を持っておられるので、与党のほうで修正案を出すという方法があろう、そういうことについても御努力になるかということを伺っているわです。いろいろな方法があります。私は、三年以上の有期懲役無期懲役と言っていますが、二年以上がいいということになってわれわれも納得すれば、二年以上で承知しないこともない。そういうことです。そういうような点を西村さんには再三申し上げましたから、先輩にあまり失礼だから同じことを申し上げませんが、中垣さんは少しニュアンスが違う。西村厚生大臣は、とにかくいままでも検討された、これからも考えて、立場として努力をされるような口吻を漏らしておられた。それと同じような気持ちでおやりになる努力を期待するわけですが、それについての中垣さんの御意見を伺いたい。
  85. 中垣國男

    中垣国務大臣 私も国務大臣といたしまして、ただいま御審議いただいております政府案につきましては、責任を負わされておるわけであります。それを政府の手によりまして、あなたの御主張におこたえする意味で修正していくということにつきましては、先ほど正直に申し上げましたとおり、その考えはない。ただし委員会と私どもはまた別な立場に立っておるわけでありますから、委員会等でどういうことをなさろうと、それについて私がイニシアチブをとってどうこうということはございませんけれども委員会においてまた別な考え方等があるということでありましたら、それはおのずから別の問題だと思います。私のほうがそういう問題について協力したり指導したりするというのではなくて、委員会みずからの問題だと思いますので、その点はあなたベテランで、私のようなものが答弁しなくても百も知っておられるわけでありますから、この辺でひとつお許し願えませんか。
  86. 八木一男

    八木(一)委員 御答弁はちょっとニュアンスが違っております。しかし西村大臣も中垣大臣も立場上、その立場を離れて勇敢に言われないお気持ちについては、もっと勇敢になっていただきたいということを御要望しますけれども、いまの御答弁の中に、そういうものについて熟慮して、そういう空気をつくることについて陰の力になる、陰で推進するというお含みおきを持っておられるものと理解して、きょうに関する限り、この問題を終わりにします。しかし問題によりましては総理大臣に出ていただいて——一応委員長に申し上げておきますが、麻薬取締法について総理大臣が出席されることを要求いたします。  それから続いて質問がございますが、昼めしの時間になりましたので、委員長や各委員のお考えで休憩が妥当であるとお考えであれば、私の質問を保留して中断します。続けてやれというお考えでございましたら、続けてやりますが……。
  87. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 午後二時まで休憩いたします。    午後一時十分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分開議
  88. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。八木一男君。
  89. 八木一男

    八木(一)委員 午前中に引き続きまして質問を継続いたします。三十分ぐらいというお話がありますので協力しようと思いますけれども、その場合に、残ったときにはまた後日質問をいたしますので、その意思を表明いたしておきます。  今度は観点を変えて御質問を申し上げたいと思うのですが、わが党の小林進委員あるいはまた河野正委員あるいは与党の方でやられました中野委員等から御質問があったのかもしれませんけれども、全部つまびらかにいたしておりませんので、ダブった点が出てくるかもしれません。実は今度麻薬患者を収容する病院をおつくりになるそうでございますが、そこで麻薬患者がたくさん入りましたときに、その管理上で、その病院長また関係の方々が治療にいそしまれることはけっこうなことでございまするけれども中毒患者という状態において、脱走するとか、それから騒ぐとか、係員に詰め寄るとか、そういうことが起こる危険が絶無とは言えないと思うわけであります。そういう点については、厚生省としてはどのような配慮をしておられるか伺いたいと思います。
  90. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 問題は、従来の精神病院なり麻薬の収容施設に収容する場合と、それからこれから新しく国立のものをつくる計画がございますが、両方に分かれるわけでございますが、新しく今年度予算で国立の麻薬中毒者専門に収容する病院をつくる、その中では警備要員も考えておるわけであります。そのほかに一般的な問題といたしまして、ただいま御指摘のような問題につきましては、麻薬取締官を当分の間そこへほとんど常時的に派遣いたしまして、そうしてまた初めてのことでもございますから、そういう点に抜かりのないようにいたしていきたい。それからそういう職員の派遣とは別に、もよりの警察等とは常に緊密な連絡を保つようにいたしまして、不測の事態に備えていきたい、かように考えておるわけであります。
  91. 八木一男

    八木(一)委員 警備員といわれますのは、ちゃんと公務員の資格を持った人としてやられるわけですか。それは予算に入っておりますか。
  92. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 国立の麻薬中毒者収容施設は本年度つくる経費の施設費でございますから、次の年度におきましてそういう定員化を考えていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  93. 八木一男

    八木(一)委員 それで万全であればけっこうでございますが、いまおっしゃったように麻薬取締官の人数が、これは別な点で質問をしなければなりませんが、ただいまでも少ない、今度の増員も少ないというときに、別の総合的な任務を持っておられる方をそこの警備要員のようなことでくぎづけをすれば、やはりそちらのほうに手薄な点ができるのじゃないかと考えられます。ただし、そういう人でなければどうしても適切でないというお考えであれば、またその意味麻薬取締官の人員を増員しなければならないわけです。でありますので、ただ治療上とか指導上のことは病院関係者がおられますので、警備上のことであれば、これこそほかの点で人員が相当おる警察の駐在所をそこに置くとか、そういうことも考えられていいのじゃないかというふうに思うわけでありますが、それについてどうお考えになりますか。
  94. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 もちろん私のほうの麻薬取締官が常時そこに駐在するわけにはいきませんし、ただいま御指摘のように、また私が先ほど御答弁申し上げましたように、もよりの警察との関係で連絡を緊密にしていきたい。もしそういうふうな面で駐在の余裕でもございましたら、それに越したことはないと思いますが、そういう点は、実際にこれからやっていきます場所その他について、具体的に解決していきたい、かように考えております。
  95. 八木一男

    八木(一)委員 実際にやってみて考えてからという御答弁がいろんなところに出てくるわけでございますけれども、それは人間でございますから、周到に考えても百万に一件くらいは抜け穴があろうと思いますけれども考え抜いて、これはあったほうがいいということはやはり実現をしておかなければならないと思うのです。脱走事故とかいろんなことがあってからやるというようなことが行なわれがちでございますけれども、そうであってはならないと思います。まだその点についての御努力がそれほど十分でないように思いますが、それについてもう一回御答弁願いたい。
  96. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 警察の駐在所を置くというところまでは私どもはまだ考えておるわけではございませんが、しかし、もよりの警察と緊密な連絡体制はとっていきたい、それから新しくつくる国のものに対しては、国の職員として警備要員をその中につけていきたいというように考えております。しかし現在すでにそういう施設もございますから、そういうものの警備ということは、強制収容の施設が新しい制度としてできますと、これはいまの院長その他の話では、それほど心配は要らないということをいままでの経験から見て言っております。しかしこれは、ただいま八木先生御指摘のように、いかなる不測の事態が起こるかということはこれからの問題でございますから、私どもはこれで絶対だいじょうぶだと思いませんので、そういう点について現在ございます施設についても、もしその収容施設、これは財団法人なり都道府県等が現在はそういう施設を持っておるわけでございますから、そこで警備要員をつけるように指導はしていきたいと思います。しかしいろんな事情でできないような事情があるかもしれませんから、そういう点については、実際の実施の面において、警察なりあるいは私ども麻薬取締官事務所なりとの連絡を密にして、そういう不測の事態が未然に防止できるように、あるいはたとえ発生しても、直ちにそれに対して応急の措置がとれるようなことをやっていきたい、こういう点を考えておるわけでございます。
  97. 八木一男

    八木(一)委員 なお万全な御検討と善処を期待いたしておきたいと思います。  それから私、神戸の病院に委員会から派遣されまして、いろいろ見学をいたしました。そこのお話では、禁断症状がとれるまでは個室である、それから後に大部屋になるという話なんです。そこの大部屋の一つの弊害として、今度の処置で、麻薬のルートがほとんど断ち切られるということであって、心配はないというお考え方であるかもしれないけれども、そう単純なものじゃないと思いますから、これから申し上げる弊害についてお考えにならなければいけないと思うのですが、麻薬患者は一応禁断症状がとれても、麻薬を使いたいという気持ちは多分に残っていて、それで結局その院長に対しても、あるいはほかの係員に対しても、家族に対しても外来者に対しても、まことに麻薬の害をしみじみと思い詰めた、絶対に麻薬をもう用いないのだというような気持ちを巧妙に表現して、その意味における信頼をかちえて、信頼で警戒なり監視がゆるんだすきに麻薬を取り入れるルートをさがすというのが、患者の心理だというふうに伺いました。それはそうだと思います。そこで、そういうときに、そういう患者心理がある中で、どこに行けば麻薬が簡単に手に入るかという情報交換を大部屋においてなすおそれがある。治療中にすでに、なおってから外に出てまた中毒者になる道、その安易な道をお互いに情報交換をするというような傾向があるので、でき得れば個室のほうがずっといい。それと、完全にできない人も、大ぜいの大部屋じゃなしに少数の部屋のほうに行くというように、治療上及びあとの指導上の意見を伺ってまいりました。  その点、政府の今度の御計画を私はつまびらかにいたしておりませんけれども、禁断症状の間はもちろん小部屋だと思いますが、それがとれてからすぐ大部屋になるのか、あるいはそうでなしに小部屋で更生指導できるのか、そういう御計画について伺いたいと思います。
  98. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 垂水の病院の例かと思いますが、そういう大部屋で禁断病状のとれた患者同士の談話の中にいろいろ麻薬に対する悪い話が出るということは確かであろうと思います。したがいまして、できるならばなるべく小さくセパレートしていったほうが都合がいいのじゃないかと私ども考えております。しかし、これは一面におきましては経費との関係とか、それから人間の管理の問題その他で、禁断症状がとれてからあとかぎを締めておくわけにもまいりませんので、結局病院の中である程度自由にするということになれば、たとえ小部屋におってもそこから自由に出られるようになれば、その患者同士の話はできないわけじゃないわけでありますので、その辺は私どももどちらがいいか検討したいと思いますが、いま国立病院の施設で検討しておりますのは、小部屋を個室とそれからそんな大きな部屋じゃない中部屋というような部屋をなるべくよけいつくって、あまり一ぺんにたくさんの者を収容しない、そういうようないわば折衷的な形をいま案として考えておるわけでございますが、ただいまの先生の御意見等も十分拝聴いたしまして、私どものほうでも専門家意見も聞いて、その辺をさらに具体的に検討してみたいと思います。
  99. 八木一男

    八木(一)委員 施設の部屋の問題と、そこにおられる人員の問題は予算の関係があろうかと思います。思いますけれども、このように国民的に麻薬禍を撲滅しようという時代に、予算の出し方が非常に少ない。要求のしかたも非常に少ないし、査定のしかたはなおさらけしからぬし、予算の点で政府は全く勇断をふるっていないようであります。  そこで、今度は厚生大臣にお伺いをいたしたいのでございますが、厚生省のほうでは麻薬取締官や麻薬取締員の増員について、現在出されている計画よりもはるかにたくさんの人員の要求をせられたと伺っておりますが、その人員はどのくらいでございますか。
  100. 西村英一

    西村国務大臣 要求は本省の職員二十二人、それから取締官と取締員を入れて百五十人の要求でございます。
  101. 八木一男

    八木(一)委員 それが査定をされて何名に減りましたか。
  102. 西村英一

    西村国務大臣 本省は二人、それから取締官が十三人、取締員が十八人、合計三十三人、こういうことになっております。
  103. 八木一男

    八木(一)委員 要求に対して非常に大きな削減ですが、麻薬取締官、麻薬取締員と似たような任務を持つ警察官のほうの最初の要求と通った人員について知りたいわけでございますが、厚生省でおわかりでございますか。
  104. 野田章

    ○野田政府委員 警察関係では、都道府県の警察官で五百名増員が認められまして、警察庁の職員では十人、そのうち一名を身分がえをしまして外務省に派遣しましたので、実際にこちらに残りましたのは九名でございます。
  105. 八木一男

    八木(一)委員 最初の要求とそれから最後に確定した人数と、それを比較しておっしゃってください。
  106. 野田章

    ○野田政府委員 要求いたしましたのは、都道府県警察官一千名の要求で、警察庁関係の職員は十七名でございます。
  107. 八木一男

    八木(一)委員 警察のほうは約二分の一、歩どまりが少しいいわけですが、厚生省のほうは六分の一か七分の一というような人数になっております。そこで、厚生大臣に伺いたいのですが、この問題については超党派的に全国的に取り上げようということになっておった。密輸入の麻薬によって日本人が健康や幸福を阻害されるのが非常に多いし、また発生する犯罪が非常に多いし、そのほかに金の面だけにしても、国費にして非常にばく大なものが流出をするということがいわれておるわけです。その流出する金から見れば、厚生省並びに警察関係のほうで要求した人員にしたって、ほんとうにスズメの涙ほどの金額である。そういうことを要求どおりやって、それでほんとうに撲滅体制をつくるということによって非常に不幸な事態がなくなり、また国費の流出がなくなるというわけであってそういう意味でこういうものに対処するときには一〇〇%というよりも一二〇%の対処でやるべきだと思うんです。それを大蔵省あたりが形式的な査定で半分にする、あるいは変なへ理屈をつけて厚生省関係は七分の一にするというようなことは、麻薬撲滅対策上では許されないことだと思うわけでございまするが、厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  108. 西村英一

    西村国務大臣 本省の二十二人でございまするが、要求は、本省は、私たちは初め強力にやるために課を二課つくりまして、その上に麻薬部を置いて強化したい、かように考えて二十二人を要求したのでございます。ところがこれは結果におきまして麻薬部をつくる必要——これは大蔵省よりもむしろ行政管理庁の御意見が強かったと思いますが、部のほうは認められないで、人員だけわずかに二名認められたのでございます。しかし一課、二課と課の設置は認められました。そういう結果になっております。それからあと取締官、取締員を含んで百五十人の要求に対しまして三十一人の増員になったわけでございます。要求から見れば非常に少ない、厚生大臣はそんなべらぼうな要求をしておいてわずかな査定を受けて責任が持てるかということでございますが、これにつきましては、実は十二月に行政管理庁から勧告が出まして、これは全般的に麻薬取り締まりをやらなければならぬ、これは厚生省あるいは法務省、大蔵省、警察庁、海上保安庁等たくさんの関係のある役所でもって総合的にやらなければならぬ、しかし取り締まりに関する限りは、行政管理庁が監査した結果によれば、むしろ警察庁に重きを置いたほうがよかろうというような行政管理庁の勧告であったようでございます。時たまたま予算の折衝中にこの勧告が出されましたために、こういうような結果になったのでございまして、私は行政管理庁が出しました勧告に必ずしも全面的に賛成するものではございません。ございませんが、人員の査定、あるいは機構の新設強化というようなものは、行政管理庁のスクリーンを通りまして大蔵省に出たようなことで、こういうような結果になりまして、結果から申しますと、厚生省は要求よりはなはだしく少なかったという結果にはなっています。しかしその反面にまた他省に比べまして、厚生省は施設を強化すべきだというようなことはやはり相当に考えていただいたと思いまして、予算面からいきますと、厚生省はその反面格段な飛躍をした、こういうような結果になっておろうかと思う次第でございます。
  109. 八木一男

    八木(一)委員 麻薬関係全体として、これは海上保安庁も警察関係も入れて、どのくらいの予算が増額になったか、おわかりでございましたら御答弁願います。
  110. 西村英一

    西村国務大臣 昭和三十八年度の麻薬関係の対策費といたしましては、全部関係省を申しますと、厚生省、総理府、法務省、大蔵省、警察庁、海上保安庁、これらを合計いたしまして九億九千四百七十九万五千円でございます。昭和三十七年度の予算は三億一千六百五十万五千円となっておる次第でございます。
  111. 八木一男

    八木(一)委員 九億余というのは総額ですか、増額ですか。
  112. 西村英一

    西村国務大臣 予算増額ではありません。三十八年度予算総計が九億九千四百万でございます。約六億七千万円くらいな増加になっておるわけであります。
  113. 八木一男

    八木(一)委員 麻薬関係で、国外に秘密に日本の金が流出しておる、これは精密な数字はわからないと思いますが、年間七百億くらいというふうに推定をされておる書物があるわけです。そういう点を考えますと、金の点だけにしぼって見ましても、それをほんとうに撲滅するために、政府のほうがごく遠慮がちに要求した人間が減らされるというようなことがあってはならない。大蔵省の主計局というようなところは、ただ出てきたものを半分に減らすとか何とかいうようなけしからぬ風習があって、政治ほんとうに生きた形で進むことを考えておらないわけです。そういう点で、厚生省のほうの麻薬取締官、麻薬取締員の増員が認められなかったのは、行政管理庁のいろいろな意見があったと言われて、それが正しいものかどうかはお互いに検討しなければならないと思いますが、そういう御事情があった。それであれば、警察関係の一千名というのが五百名にとどまったというのは、これは説明のつかない事象だろうと思うのです。金の関係でも、七百億くらいが流出するのを食いとめるために十億程度のものを出す、それを十五億、二十億、三十億にするということは、大きな意味の国の財政ということを考えれば、大蔵省みずからそういう流出をとめるために、この問題については五十億くらい出したい、厚生省がぼやぼやしてもその倍くらい出したい、警察が遠慮がちであっても倍くらい出したいというのが大蔵省としてあたりまえな話ではないか、いまの大蔵官僚というのは、近視眼的であって、この一年間だけバランスが合えばいいということで、金を有効に使うことは考えておらない。これは厚生大臣には失礼ですが、そういう連中ですから、麻薬禍を撲滅しようと考えておる官庁の長が、よほど強腰になって大蔵大臣をしかり飛ばす、金の問題だけでもそうじゃないか。それ以上に人間が廃人になり、社会犯罪がふえる、こういう問題について、大蔵省は金をちびっているからその問題が撲滅できないで、そのような害毒がふくれたらどうなるのかというようなことで、大蔵官僚の無理解をしかり飛ばすような決意でやっていただかなければならないと思います。総額九億というようなことでは、厚生省も、警察庁も、海上保安庁も、総理府も、熱意を持ってやられたとは私ども受けとれない。大体最初の要求が少な過ぎる。それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  114. 西村英一

    西村国務大臣 厚生省の三十七年度の予算が一億六千三百万円ほどでございましたが、それが三十八年度は、六億三千二百万円でございます。しかし六億三千二百万円が多いか少ないかという問題よりも、いついかなる施設をして今後善処していくかということでございます。一ぺんに予算をたくさんいただきましても、その施設等の準備ができないところではむだにもなりますので、この予算をもってしても、なおかつ麻薬禍をなくせないということであれば、これはさらに強化をしなければならないと思っておる次第でございます。何としても麻薬禍に対しましては、金の問題にかかわらず撲滅したい。そのためには、今後情勢を見まして予算的にも強化をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  115. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど牛丸君に質問いたしましたが、そのような設備につきましても、個室が多いほうがいいということをいま病院で治療をしておる専門家が言っておられるわけです。限られた予算内でほんとうの小部屋と、ちょっと比較的狭い部屋でどうしようかということで、牛丸局長のほうは苦吟をしておられるわけです。そういう点も予算に縛られておる。そういう点で明らかに予算が不十分であることは、この一つ現象だけからも出てきておる。たとえばいま駐在所を置いたらいいという問題については警察にも予算があるでしょう。予算が十分であればそんなことは牛丸さんが回りくどい説明をしなくても、全部そこに置いてもらうことになりましたという答弁ができる。明らかに不十分な点がある。ほんとう専門家が掘り下げて全部調査をすれば不十分だらけ。不十分だらけなことを十分にするための施策を要求するために、各官庁の勇気が足りないという点と、ある程度勇気をふるって要求されたことを、大蔵省の主計局長あたりが実際上のけしからぬ権限をもって、政策というものをほんとうに生かすのではなしに、ただ政策に取っ組んだようなかっこうだけして、つじつまが合えばいいという考え方で財政を処理しようという考え方が大蔵省にある。このためにある程度の金をかげながら効果は半分になるのじゃなくて、十分の一になるということが起こりがちです。そういうことについて、もっと勇敢に政治家としては対処してもらわなければならない。今後の事態を見てやるという御意見はけっこうです。しかしただいまでも、たとえばいまのように不十分だという点が、私のようなしろうとの一分間の質問の中にも出ておる。氷山の一角です。全部やれば足りないことだらけ。たとえば強制入院について、自己負担させるという点があります。自己負担を全部公費で負担すれば別な弊害が出る。全部ただでやるから麻薬患者になっても平気だという御答弁があるかもしれませんが、そんな点は牽強付会な答弁になる。ただのほうがいい。ところが財政が十分じゃないから一部自己負担をさせる。そうしたら自己負担をさせるところとさせないところの境をどうするか。その認定をどうするという問題が出てくる。そこでほんとうはこうしてあげなければならないと思っても、予算に縛られてできないところが起こる。そういう点で明らかにこの予算は非常に不足であります。これについて今後予算を増額することについて厚生大臣はどのような覚悟で対処をされるか、伺っておきたい。
  116. 西村英一

    西村国務大臣 三十八年度には国立の病院を二カ所つくります。おおむね百ベッドぐらいを二カ所つくる。県立の病院も二カ所ぐらいつくります。その設計はまだできておるわけではございません。目下用地の選定から設計の準備にかかっておるところでございます。しこうしていまあなたがおっしゃいましたように、特別な病院でございまするから、小部屋だけでなければ——大部屋等をつくってはいけないものならば、あなたの御意見もありましたから、十分検討をいたしましてやります。ただそういうような病院としての特殊な設計をやるというようなことは、専門家意見も従来の方々の意見も生かしていかなければならぬと思いますが、そのためにせっかくよくなったものが悪くなるということがあってはたいへんでございますので、せっかくの御意見でございますから、設計に対しては専門家意見等も取り入れまして考慮いたしたいと思いまするし、それによって予算が足らないというようなことでございますれば、将来に向かって十分考慮しなければならぬ、かように考えております。
  117. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣のまじめな御努力を期待したいと思います。まじめな御努力だけでなしにいつもなまいきなことを言いますけれども、大蔵省の石頭で、つじつまだけ合わせればいい、政府で言ったことを取り上げるという形だけやればいい、完全にやり切るという腹がない。そういうような大蔵官僚に対して断固として厚生省のほうからそういう不確かな考え方に対して、皆さんの御要求が通るように、国会の要望がどんどん通るようにしていただかなければならならいと思うのです。  警察庁のほうの責任者に同じように申し上げますけれども、一千名の要求をされて五百名でなぜそれを受諾されたのか。
  118. 野田章

    ○野田政府委員 なぜ受諾したかという御質問でありますが、私どもといたしましては、できる限り麻薬取り締まり強化をしたい、そういう面で一千人の要求をしたわけでございますが、これが残念ながら五百名という決定になった、やむを得ないと思うわけでございます。しかし麻薬取り締まりに最善を尽くしていくという面で、この与えられた五百名というものを最大限度に活用してまいりたい、そういう面で今後とも大いに努力していくというふうに考えております。
  119. 八木一男

    八木(一)委員 御質問がいささか形式的には無理かと思いますけれども、いま厚生大臣に申し上げたのを、あなたのほうの官庁の最上の長官に十分に伝えていただきたい。大体大蔵省というところは石頭です。いろんな政策を並べて頭だけを出せばいい、総理大臣は、まだ研究していない、対処していますと言えばいい、そういうような頭でやっている。財政というものをほんとうに長期的に考えて、金を出した効果がどのように完全に上がるかということを考えていない。特にこういうような問題はやりかけたものはぎゅっとやって全部なさなければだめだ。一つ残してもいけない。患者を一人でもなおさないでほっといてはいけない。そういうことです。そういうことを予算面で大蔵省なり世の中がぼやぼやしておったのは非常に残念ですけれども、それについては遠慮会釈なしに追加予算の要求をなさる。それまでの間は、あなた方は御苦労ですけれども、その任務について、その予算内で最善の努力をされるということをお願いしておきたいと思う。それについて御意見を伺いたいと思います。
  120. 野田章

    ○野田政府委員 麻薬取り締まりに従事する警察官の増員の問題につきましては、本三十八年度予算におきましてはただいまの決定どおりでございます。今後の増員問題につきましては、今後とも慎重に考慮をいたしまして、できる限り努力をしてまいりたいと存じております。
  121. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっと問題点を変えまして、私もわかっているのですが、一応責任者から説明を伺いたいと思います。  いま麻薬として指定されているものがある。その最初の薬品が出たときに、どういう手続でどのような時間でそれが弊害があると認められたときに取り締まりの対象になるようになっておるか。それの法律的と行政的の順序、それからそれにどのくらいの時間を要するか、伺っておきたいと思います。
  122. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 麻薬取締法の第二条の規定によりまして、別表に麻薬というものが列挙されておりまして、それ以外に政令で指定するという形がとれるようになっておるわけであります。それでこれはアヘン系の麻薬なり大麻なりコカ系の麻薬はこれははっきりしております。そうして従来から指定されておりますから問題はないと思いますが、一番問題になりますのは、合成麻薬の新しく開発されるものでございます。これは国際的には麻薬委員会なりそういう条約によって相互に情報交換もやっております。それから私ども自体各国のそういう情報もとっておるわけでございますから、国内で不正に使用されるあるいは外国で開発される麻薬類似の新しい規制をすべきものがございましたならば、それは見つけ次第直ちに指定をしていく、そういう形をとるわけでございまして、現行法におきましても、国際的に麻薬の習慣性なり麻酔性がある麻薬のような、同じ弊害の作用を持っているというような合成麻薬につきましては時を移さず指定をいたしまして、そうして麻薬取締法の規制の中に入れていく、こういう措置をとるわけであります。それは政令によってできます。
  123. 八木一男

    八木(一)委員 それは政令だけでやるのではなくて、審議会か何かにかけるのですか。
  124. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 これは実態的にはっきりとしている問題でございますので、直ちにそういう実態がわかりましたら政令でやります。
  125. 八木一男

    八木(一)委員 そういう点で敏速にそういうような措置をしていただくように、それからそれがわかったならばすぐなさると思うのですが、わかるまでの情報が敏速に入るように行政的に努力していただきたいと思います。  それからそれに関連して、麻薬法の問題にならないで、薬事法の問題になると思いますが、最近睡眠剤等でいろいろと子供たちが中毒をしたり、またそれによって非行を行なったり、そういうことがあります。こういうような麻薬法の麻薬に指定されてなくても、健康的にも社会的にも非常に害悪のある問題についてどのようにすべきかとお考えになっておるか、厚生大臣に伺っておきたいと思います。
  126. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 とりあえず私から事務的な問題をお答え申し上げます。  睡眠薬の問題につきましては、昨年来これが少年の間に睡眠薬遊びというようなものが流行いたしまして、非常に社会的に害悪を及ぼしているということで私どもも非常に心配をしておったわけであります。そうして睡眠薬の系統の中にほとんどのものが劇薬系統のものが多いわけでございますが、これは現在でも劇薬として販売の規制をされております。しかし劇薬でないものの中でも、要指示薬品としての取り扱いを受けているものもあるわけでございますが、しかし一般の作用からいって普通薬の取り扱いを受けている睡眠薬も少数ございます。こういう普通薬の睡眠薬につきまして、昨年私どもとしてはこれを全部習慣性の医薬品という表示の義務を与えまして、販売につきましては十八歳未満の子供には売らないように薬局を指導しておるわけであります。しかし特に最近はいろいろなところからやはりそういうものをまだ依然として入手しまして、そしてそれが社会的に害を及ぼしているというようなこともございますので、さらにきびしい規則をやるかどうか、現在警察当局とも打ち合わせをやっている段階でございます。
  127. 八木一男

    八木(一)委員 つい二、三日前の日刊紙に出ておりましたが、未成年者が睡眠薬を、あなたのおっしゃるどっちの睡眠薬になるか知りませんけれども、買いに行って何か言われた例が少ない、百人のうち八十人くらいには幾らでも睡眠薬が売らている。それから二十人くらいは一言何に使うのですかと言われたけれども、適当に言ったら売ってくれたというような調査が、最近の日刊紙に載っております。そうなると、厚生省のいまの御指導をされる基準、それが実際にはちっとも役に立っていないということになるわけです。それについてどのように対処したらいいのか、これは敏速に方法を考えて対処する必要がある。それについての厚生大臣の御意見を伺っておきたい。
  128. 西村英一

    西村国務大臣 この問題はどうも——最近サリドマイドの問題も非常に大きい世の中の批判を浴びておるのでございまして、どちらかと申しますと、どうもルーズじゃないか、もう少し厳重にやるべきだ。これは麻薬のみならず、一般のいろいろ新しいものだとして出てくる薬その他のものについて非常に非難がありますので、やはりそういうことにつきましては、従来よりもさらに制度、監査、販売等を通じて取り締まりを強化する、監督を強化するということに向かわざるを得ないという現状でございますので、十分御意見のあるところは尊重いたしまして善処いたしたい、かように考えております。
  129. 八木一男

    八木(一)委員 できるだけ至急に研究になって、りっぱな対処、善処をしていただきたいと思います。ことに薬品というものは人間の健康、生命に関係があるということでありますのに、ただ売らんかな買わんかなというような商売の対象にされておるという向きが多過ぎると思うのです。そういうことじゃなしに、健康、衛生という立場から十分に指導される具体的な案を至急に立てていただきたいと思います。  それから次に警察のほうにお伺いしたいのですが、五月二十二日の読売新聞をごらんになりましたでしょうか。「麻薬患者二十四万人雲隠れ、専門病院ガラガラ」取り締まり当局も困惑という記事が載っております。これは警察のほうで関係があるのでお読みになったと思うのですが、どういう状況ですか、御説明を願いたいと思います。
  130. 野田章

    ○野田政府委員 これは私のほうの直接の関係であるかどうか、そういう問題は別としまして、お尋ねがありましたのでお答えをいたしますが、この記事の内容は、要するに麻薬中毒者が最近入院が非常に少ない、こういうことが主たる内容であろうと思います。現在まで警察で麻薬犯罪者の検挙をいたしておりますが、昨年の同期と比べますと、一月から四月までに検挙いたしました件数は、約倍くらい検挙をいたしております。ただ病院に入院する患者というものが非常に減っておるということが、新聞の記事の内容ではないかというふうに存じます。
  131. 八木一男

    八木(一)委員 時間がかかりますから全部読みませんけれども、病院だけの問題じゃないと思うのです。何か雲隠れしているような状態で、こういう麻薬に対して撲滅対策を国をあげてとろうというときに、犯罪者側が何らかのそれに対処する秘密ルートをつくったり、対処の方法を考えて、そういう現象があらわれたとするならば、これはたいへんな問題ですから、そういう問題について警察がそういう犯罪者側の裏、そういうことをさっそくに徹底的に調査をして、こちら側の取り組む姿勢の裏をかかれないように対処される必要があろうと思います。それについての方策なり御決意を伺いたい。
  132. 野田章

    ○野田政府委員 麻薬犯罪犯罪者の動きというものが最近どう変わってきているかという質問でございますが、この新聞にもありますように、確かに麻薬犯罪の手口が非常に複雑になってきた。一つは密売をする場合の縦の関係、あるいは横の関係、そういう面におきましても検挙を免れるために非常に巧妙な手口が出てきておる。したがって、従来固定した密売場所でやっておりましたのを、検挙を免れるために分散をする、あるいはある一定の地域に集団的に発生しておりましたものを、非常に広い地域に分散をする、そういうような形が最近非常にあらわれてきております。したがって、そういう面では、犯罪者を捕捉するということが昨年に比べると非常に困難になってきておるという面も確かにございます。そのほかいろいろと密売の組織を強化する、あるいは特に末端の密売人というものを、実際の暴力団の組織でありましても構成員がやらずに、いわゆる臨時雇い的なものにする、そういう形で、もし検挙をされても組織を防衛するというような形もあらわれてきております。その他特に麻薬犯罪というものの罰則が今回の法改正等によりましてますます強化されるということになりますと、当然犯罪者の手段等も巧妙になり、あるいは犯罪を免れるために犯罪者の奪還というようなことを集団暴力によってやる、あるいは検挙、逮捕に向かう捜査官を逆に攻撃するというような徴候も一部にはあらわれつつあるわけでございまして、この麻薬犯罪捜査というものが次第に困難さを加えつつあるというのが現状であります。そういう現状をいろいろの面から十分内偵を続けまして、効果的な捜査を実施していきたいというふうに考えております。
  133. 八木一男

    八木(一)委員 そういうふうに巧妙になり、暴力的になったり組織的になるという傾向に対して、なってから騒ぐのじゃなしに、前から対処しておられると思いますけれども、万全な体制を整えられなければなりません。この増員が実行されてからというようなことではおそい、先方が組織を固めておる間は、大体そういうことをつかみやすい条件がある。直ちに対処をされるように、また厚生省麻薬取締官のほうも同様に対処をされるように要望をいたしておきます。  なおこの問題について、これは後にまた御報告を求め、どういう状況か伺いたいと思いますが、きょうは次の質問者も待っておられますので、私の質問はまだ留保しておきますけれども厚生大臣にお願いしたいことは、まだたとえば国際条約の問題もございますし、密輸のルートをほんとうに断つ問題もありますし、その問題と外国の情報等の問題もやっておられますけれども、これは不十分だ。外国との協力関係の問題、それからいまの処罰の問題もそうですし、それから取り締まりの問題もそうですし、それから今度はその人をなおす問題それから事後のアフターケアの問題、そういう問題すべてについて、まだまだ御努力を願わなければならない点が多分にあると思う。  同僚の方が質問を待っておられますので、きょうは残念でございますけれども一応打ち切りまして、あとの質問を保留いたします。ことに委員長に申し上げておきますけれども、先ほど要求しました総理大臣の出席を求めましてさらに質問をしたいと思います。きょうはこれで終わります。
  134. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 田邊誠君。
  135. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 各同僚の委員がそれぞれの角度から質問をいたしましたので、重複する点を省きまして、それぞれの問題点の中で少しく漏れておったような点や、さらに違った角度で二、三の質問をいたしたいと思います。  麻薬の取り締まりを強化して抜本的な対策を講ずることが叫ばれております今日において、当局がいろいろな御苦心をされて措置せんとするところの熱意を私どもは一応うかがい知ることができますけれども、しかし麻薬の取り締まりはかなり広範囲にわたる、あるいはいわゆる一貫作業といいましょうか、最初の現状の把握から最後の措置までこれが系統的に行なわれなければ、その成果をあげることはでき得ないと私は考えるわけでございます。   〔小沢(辰)委員長代理退席、井村委員長代理着席〕  そういった点から、麻薬麻薬といわれておりますけれども、一体麻薬の取り扱われておる現状がどういう状態になっているのか。世界的に見た場合には、麻薬の密売者なり中毒患者なりが激増するという傾向にあるのか、あるいは全体的な傾向としては横ばいであるけれども、国の状態や一国の中におけるいろいろな地域的な流れというものが変わってきておる、こういうことであるのか、あるいはまた全体としてはかえって下降線をたどっておるけれども、なおかつその濃厚地帯なりが非常にふえてきている、あるいは取り扱い者のやり方なり組織がきわめて巧妙かつ悪質になってきておる、こういうようないろいろな見方があろうと私は思うのですが、日本を中心とした麻薬の現状が一体どういう推移にあるのか、まずもってお聞きしておきたい。
  136. 西村英一

    西村国務大臣 国会並びに政府等麻薬に対して非常な関心を持つようになりましてから、一体どういうふうになりつつあるのか、こういうことでございますが、これはただ単なる数字のみではなかなか解明できないのでございます。よけい検挙したからよくなったとも申せませんし、いろいろな問題があろうと思われます。したがって、その方面を日夜現場でいろいろ担当しておって、実際をつかんでおる方々の御意見を聞いたほうが正確ではなかろうか、私自身ここでいまどういう傾向にあるということを申し上げられませんので、政府委員からそれぞれ答弁させたいと思います。
  137. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 これは日本を中心にいたしました麻薬事犯の問題と、それに関連してほかの国との比較という両方の問題があろうかと思いますが、いま日本の不正麻薬のほとんどがヘロインでございまして、それも国内で製造されていない、香港なりあるいはバンコクなり、そういう東南アジア地区に原産する麻薬から製造されたヘロインが一定のルートを伝って日本へきている、それが国内において供されておる、こういう形態をとっているわけでございます。それと、日本と非常によく似ているような麻薬事犯はむしろアメリカではないかと思います。アメリカも中毒患者は六万くらいあるようなことが国連の報告にも出ておりますし、これも大体ヘロインを中心にした麻薬事犯というものが国際会議でもアメリカ代表から常に問題にされておるようなことであります。しかし、そういう日本やアメリカと同じような情勢にほかの国もあるかというと、必ずしもそうじゃないわけでありまして、ヨーロッパ諸国においては、ヘロインの密売はほとんど行なわれていないようであります。したがって、不正麻薬というものも、むしろ合成麻薬なり、国によってはコカ葉の問題なり大麻の問題が——たとえば南アメリカなりアフリカというようなところは、むしろコカ葉なり大麻がその国の麻薬問題の中心の問題になっているということで、必ずしも日本なりアメリカと同じ態様を世界の各国がやっているわけではないわけであります。  それから、その犯罪の傾向といたしましても、私どもは、日本は最近増加の傾向にあるというふうに考えて、対策を早急に樹立し、これを強化していく必要があると考えているわけでございますが、同じような考えでヨーロッパ諸国は議論はしておりません。したがって、麻薬事犯に対して罰則強化しろというような議論が国際会議に出ますのは、むしろ日本なりアメリカなりでございまして、ヨーロッパ諸国は、現実の法制においても、不正麻薬に対する罰則日本よりもむしろ軽いというかっこうになっているわけでございます。日本の置かれている特殊な一つの条件、国内で生産される麻薬はほとんど不正使用はないわけでございますが、非常に近接した地域に麻薬が原産している。そういうようなものから不正に採取され、製造された麻薬日本を市場としてねらっている。そういう環境の中に日本のヘロインを中心にした麻薬事犯が最近特に問題になっている。それが国内においては暴力団なりそういう一つの販売組織によってこれを中毒者なり利用者に供給している。そういう一つ日本の置かれた特殊の形態として、これは相当重大な問題であるというふうに認識すべきではないかと私ども考えております。
  138. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 世界的な一つ現象ではありますけれども、特に日本がアメリカと並んでこの問題に対して重大な時点にあるということはいまのお話でわかったのでございますが、確かに東南アジア等の原産地を控えておることから、日本が有力な市場としてねらわれていることはお話のとおりだろうと思うのです。しかし、日本ばかりでない、ほかにもアジア地域にそれぞれの独立国がある中で、特に日本が有力な麻薬の密輸国、密売国、そしてまた中毒患者の多発する国となっておる。こういう状態は特に戦後著しいものがあったと思うのでありますけれども、これはいま言われたのが根本的な一つの要因でありますが、直接的には何かしらやはり日本がその対象となる市場となりやすいところの原因といいましょうか、あるいは穴といいましょうか、ああいったものがあればこそ、それが激増するという状態になってきておるのではないかと思います。この直接的な、一番端的にいった一つの穴、、原因というものは、一体何だというように把握されますか。
  139. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 なかなかむずかしい質問だと思いますが、一つ考え方として、私はこういうことは言えるのではないかと思います。一つは、中国、香港なり台湾を含めまして、東南アジア地域の麻薬というものは、アヘンの吸煙が主でございます。これはきせるで煙にして吸うような習慣が昔からずっとあるわけでございまして、タイ国におきましても、新しい麻薬取り締まり法ができますときに、従来のものはそれを経過的に、現在はそうじゃないようでございますが、公認されておる。インドネシア等においても何かそういうことのようでございます。要するに、そういうアヘンの吸煙という習慣がアジアの日本以外の地域にはあるわけでございますから、したがって、ヘロインの注射というような、そういう形態の麻薬はあまり需要されてないのです。ところが日本は、これはどういう理由か知りませんが、結局持ち運びが非常に簡単だというようなことからヘロインというようなことになってたかもしれません。あるいは需要する側がアヘンよりももっと強力な毒性を持った、中毒がアヘンよりも十倍以上の力を持ったヘロインのほうが、そういう日本中毒者なり需要者の嗜好に合っているというようなことからきているか、その辺は私もつまびらかにしませんけれども、逆にいえば、東南アジアではそういうヘロインの形態では需要されない。ところが、日本なりアメリカではそういうふうな形態の需要が多いというところに、違った形態ができているのではないかというようなことは言えるのではないかと思います。
  140. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 いま局長のお話というのは、逆説的な、消極的な受け取り方の中でお話があったのでございますけれども、それはそれでよろしゅうございましょうが、それなら一体いま日本に蔓延をしておるこの麻薬中毒患者——職業的な分布というのは一応示されておりまするから、これはよろしゅうございます。私は、表に出ているのはよろしゅうございます。それは大体わかりまするけれども、一体生活の状態というものは、いままであなた方が摘発されたり、いろいろな委託の病院に入って治療されたり、そういった過去の中毒患者の生活水準なり状態というものは、一般的に一体どのような状態であるか。どうでしょう。
  141. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 これは御存じのように、統計からいうと職業的には無職が一番多いというかっこうになっております。しかし、職業別ではなくして生活状態ということになりますと、これは非常にむずかしい認定になるわけでございまして、当初は相当の生活をしておっても、中毒がだんだん進行いたしますと、結局麻薬を入手するために自分の財産もすり減らしてしまうというようなことになるわけでありますので、どの時点においてそれを見るかというような問題もあるわけでございます。しかし、この無職が一番多いということは、結局売春婦とかあるいはやくざというような、そういう階層に相当蔓延していることが一面においていえるわけでございますから、こういう人たちの生活条件というものはそう高いとは思えませんけれども、しかし最低の生活条件ではないのではないかと思います。売春婦等はちょっと違うかもしれませんけれども、男の中毒患者は必ずしも最低の生活条件ではない。まあいい暮らしではないけれども、悪いほうの少し上部的なといいますか、まあ分類すれば、低所得階層というふうになるかもしれませんけれども、そういうふうな年齢的にもまだ非常に若いわけでございますから、ちょっと生活条件だけでどういう階層かということは、一般論としては認定しにくいと思います。
  142. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 麻薬を打つ力があるというか、やむを得ず麻薬を打つにいたしましても、その過程では多額の出費をして打っておるわけでありますから、その限りでは一番最低の層だというふうには言い切れないと思いまするけれども、私はやはりこれはきわめて生活条件が悪い、あるいは言いかえれば非常に環境の悪い、そういったところに非常に起因をしておるし、またそういうものと結びつくところにこの麻薬の深刻さがあると思うのであります。私は、このことは、実は大臣はすでにお気づきだろうとは思うのでありますけれども麻薬を根絶する一貫した取り締まり並びに治療方法等の問題として、やはりまずもって念頭に置かなければならぬ重要な点ではないかと考えるわけでありまして、そういった点で実はお聞きをしてまいったのでありますけれども、一般的にいうところの社会環境等が左右するということはありますけれども、たとえば経済的な変遷がやはりある程度これに加味されてきておるのではないか。それと社会悪というか、環境の悪さというものが結びついておるということは、当然あると思うのであります。そうして大都市に特に多発をするという状態は、いま言った裏の組織との結びつきが容易であるということもありますけれども、一面においては、正常な職業がなかなかないということ、特に若い層にそういった一つの誘発をするところの原因となるような生活の正しさというものがないということ、こういったところにあると思うのであります。たとえば失業者が多発するような地域、あるいはまた大量の失業者が発生したというような場合、その後において、麻薬というものがそれに徐々ではあるけれどもだんだんと結びつくようなことが考えられないかどうか。この点は、今後の麻薬患者を私どもが病院に措置入院をさせ、それを社会に復帰させる問題と関連をさせまして私はお聞きをしておきたいのでありますが、特別なそういったことをいままで経験したことはございませんか。
  143. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 中毒患者が一般に貧困に関係があるということは言えると私は思います。はっきり断定はできませんが、しかしどちらかというと、貧困と関係があるということは言えると思います。それでまた中毒患者になればだんだん貧困になってくることは当然でありますが、しかしただいま御質問のように、失業多発地帯に特に失業との関連でその後麻薬中毒患者が多発したような例はないかということでございますが、私どもの経験では、いまそういうふうな関連は存じておりません。
  144. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 警察庁がお見えでございますけれども、いまのような麻薬のいろいろな対象となる人たち、密売の対象、中毒の対象となるこういう人たちが既存の暴力団との結びつきがあることは、しばしば指摘をされたとおりであります。しかし私は、既存の暴力団との結びつき、特にばく徒、テキヤといわれる組織と結びつくといったこともありまするけれども、どちらかというと戦後の新興暴力団といいましょうか、そしてまたそれが、いま私が申し上げたいろいろな生活条件の悪化、これらと結びついて、それが暴力団の手先となり、あるいは麻薬のルートをつなぐような仲買い人やあるいは立ち売り人等になるということは当然考えられるわけでございまますけれども、既存の暴力団が、いま言ったようないろいろな経済的、社会的な条件の悪化等もからませまして、麻薬暴力団あるいは麻薬組織に衣がえをしているという状態について、御検討されたことはございましょうか。
  145. 野田章

    ○野田政府委員 麻薬の国内における密売人組織というものは、主として暴力団の組織によって行なわれているというものが非常に多いわけでございます。この暴力団の組織によるわけですが、従来検挙いたしました例によりますと、三十六年中では約百十四団体、六百八十二人があったわけですが、昨年、三十七年では約百四十団体、九百二十九名くらいの犯罪者が暴力団の関係者として密売組織にあったわけでございます。  これらの暴力団の既存の暴力団との関係についてのお尋ねですが、やはり既存のいろいろな暴力組織の分かれと申しますか、兄弟分とか子分とかいう形で結びついているものも相当ございます。それからまたいわゆるチンピラ、ぐれん隊というような新興のものも相当ございます。要するに、先ほども御指摘がありましたとおり、麻薬中毒者麻薬密売者や犯罪者の中にも五〇何%おるという状況でございますが、これらは無職あるいは暴力団あるいは売春婦というような、いわば正常な職業を持たない者が非常に多い。一部に商人とか医者とかそういう正常な職業を持っている者もあるわけですけれども、概してヘロイン等の関税非合法上の麻薬を扱っている者は、いわば都会の非常に享楽的な、また非常に濁った社会環境と申しましょうか、あるいはゆがんだ社会環境と申しましょうか、そういう社会環境の中で日常生活をしている者に非常に多いというふうに思われます。
  146. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 ついでにお伺いいたしますけれども、いろいろな麻薬を取り締まられて、それと関連をする組織の摘発を行なっておられるわけですけれども、そういうような麻薬組織を摘発したあとの密売者なり中毒者なり、そういった者がその地域からほかへ流れていく傾向があるのじゃないかと思います。われわれは流れるのでなくて、その地域が正常化されることが望ましいと考えておるわけですが、一番中心にメスを入れられたことがあるかどうかわかりませんけれども、そういった組織のもとをつくことによってかなり中毒者、対象者がほかの地域へ流れる、こういうようなことがあったかどうかお伺いしたい。
  147. 野田章

    ○野田政府委員 従来、麻薬犯罪の非常に多く発生する地域というのは、御承知のようにたとえば神戸あるいは横浜等のある種の地域で非常に麻薬中毒者が多い、大ぜい住んでいる、またそこへ犯罪者も非常に密集するというような、いわゆる麻薬犯罪の多発地域というものが過去においてもあり、現在でも多少あると私は思います。そういうところで徹底的に繰り返し繰り返し検挙を続けていきますと、先ほども申しましたように、固定した密売所というものが壊滅する、壊滅して、当然その従事者が検挙されて監獄に入る。入る間は一時とだえる。しかしそれがまた出てくる、もしくはそれの後継者が出てきて、またしばらくすると密売組織を再建するということを繰り返しているようなことも非常にございます。  それから先ほどもお答えしたことでございますが、最近麻薬犯罪の検挙というものがきびしくなりましたために、検挙を免れる方法として組織を秘匿していく、あるいは地方に分散していく、そういうような傾向も確かに見えるわけでございます。最近三十六年と三十七年の検挙状況を比較してみましても、従来ヘロイン等は、東京、横浜、神戸あるいは大阪、福岡というような五大府県が大部分でございましたものが、最近地方の府県に増加しつつあるというような検挙状況から見ましても、麻薬犯罪というものが確かに中心部から周辺の方に移っていくというような傾向も見えているように思います。
  148. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 厚生省にお伺いしたいのでありますが、密輸の事犯やあるいは密売の事犯をいろいろ取り締まられ、あるいはまたその中毒者の措置をされておりますけれども、事犯としても、また中毒者の傾向としても、非常に再犯者が多くなり、病院から出て、再び中毒患者になるという傾向があることは、お話があったとおりでありますが、その率が、実は私の計算ですが、年々ふえてきておるのではないか。入院をしている人たち自身も二度目の入院者あるいは二度目のそういった事犯を犯して検挙された、こういったものが率として非常に多くなってきている、こういう印象を受けるわけですが、その辺はどういうふうにつかんでおられましょうか。
  149. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 たとえば三十七年の統計を見ましても、ただいま田邊先生の御指摘のように、確かに再犯の率は、麻薬中毒者につきましても、約五%くらいの増加傾向を示しているわけであります。それで、これは現在のところ、私どもとしては、結局中毒者の強制収容施設なり、そういった中毒者対策というものが現在の精神衛生法の法律体制では、なかなか思うような成果があがらない、したがって、今回そういうものの改正をお願いした次第でもございますが、結局発見をいたしましても、あるいは犯罪者として検挙した中でそれを見出しましても、それを病院にあっせんをしたり、あるいは精神衛生法によって措置入院しても、完全に治癒しないで帰ってくる、そうすると、それがまた再びもとの中毒者になってしまうというような例もございますので、そういう点から現在はどうしても再犯なり、あるいは再中毒というものが減らない、傾向としてはふえているという傾向が出ているというふうに考えます。その点は今度の法律改正によりまして、一定の期間強制収容として治療を完全にすることによって防げていくのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  150. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 実は、いままでお聞きをしましたのは、今回の法律改正や予算措置、いろいろな制度上の改善をはかりまして、いま非常に困難をきわめ、また再び中毒患者になるような状態というものをいかに防いでおるか、こういう点にかかっておるのではないかと私は思いましたので、状況を少しくお聞きしたのでございます。  そこで、大臣、いろいろな方々から質問がありましたから、これだけはちょっと重複をいたしますので、恐縮でありますけれども、ほかの点は飛び飛びにお聞きをいたしますが、そういったような現状の中で今回の措置をとられようとしておる。その措置の中には当然、最初の情報の収集あるいは取り締まりの強化、患者の入院措置、あと保護罰則規定強化、それに伴うところの予算措置、あるいは予算措置の中で十分でなかったものに対する今後の改善方法まで大臣等から言及をされたことを私は承知いたしておるわけでございます。いま薬務局長から、アメリカと日本は非常に似通っているというお話を聞きましたが、こういう諸外国の取り締まりあるいはいろいろな救済措置との比較の中において、罰則の、いわゆる規定の重い軽いという問題は、八木委員等からお話もありましたし、私はしろうとでございますから、その点は別といたしまして、もちろんこれらの総合的な施策を講ずるという観点考えられておりますけれども、その中で一番重要であると考えられてそれに対する措置を講ぜられ、今後もそれをさらに発展さしていていこうという、この対策の一番基本となる、最重点となるものは一体どこに重点を置かれてやられるようとするのか、ひとつ大臣、あれもこれもというように言わなくても、私の方でもいま一通り言いましたから、その中でいまあなたが最重点だと考えられて政府の施策として取り組んでおられ、今後も引き続きやられるというものは一体何ですか、端的にお答えをいただきたい。
  151. 西村英一

    西村国務大臣 これは私の所見でございますが、とにかくいずれにいたしましてもいま麻薬禍が一番大きいものは、日本にとりましてはヘロインといわれておりますが、ヘロインは日本にはないわけであります。したがいまして輸入しなければならない。持ってこなければならない。密輸です。それを遮断するということは最も根本的なものだと思われます。やはりこれは社会悪から出ておるものでありますから、そういうものが減ってくれば——まあ人間というものはやっかいなもので、ある程度社会悪というものはどんなことをしても起こるものでございます。やはりそれを持ってこさせないようにするということは非常に重要なことであります。したがいまして、このたびの法の改正でも、これを輸入するということは最も刑罰の重いものに属しておる。しかしこれをどうしてやるかということになりますと、さらに分類しまして、情報とか、あるいは密輸を取り締まるとか、つかまえるとかいうことになりますが、大ざっぱに言いまして、これを遮断するということが最も大事ではないか。今回の予算にそれは必ずしも現われておりませんが、今後それは強化していかなければならぬ、私はかように考えております。
  152. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大臣の一番重視をされるという点がわかりました。そういった点で一昨年来本委員会あるいはその他の場所でもって麻薬問題と真剣に取り組んでこられましたいろいろな委員会の審議等を一通り私も覚えておりますし、またおさらいをいたしましたのですが、たとえば昨年の八月三十日の社労委員会等における当局の三十八年度の予算要求は数多く述べられております。これが全的に実証されなかった点に対してはいろいろなお話もございました。しかしその中でもって特に私は薬務局長から答弁のありました諸点の中で、海外の情報収集の駐在員の設置を一つ要求する、こういうお話があったのでありますけれども、これは一体どうなりましたか。
  153. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 これは私のほうと警察のほうと双方から実は要求したわけでございます。結局は最後は警察でバンコクに駐在官を置く、現在香港に一カ所ございますが、それにバンコクを新しく追加して、バンコクと香港二カ所警察から外交官として駐在をする、そういう予算措置をとられております。
  154. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 これはそれぞれ何名ですか。
  155. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 一名ずつです。
  156. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 これは責めてもしようがありませんが、それでは問題になりませんね。あなたのほうの希望もそうではなかったと思います。公式の委員会の場所で五名と言ったかあるいは何名と言ったか、ちょっと私はここでもって何分の一だということを突き詰めて言おうというわけではございませんけれども、大臣の先ほどのおことばに合わせてみましても、最初のルートを見つけるための措置という点から、まずもって非常に不足している。その点は非常に残念だろうと思います。いま薬務局長お話を聞きましたが、警察庁の兼務ですか、外務省の派遣ですか、合計二名の駐在員を置くというかっこうになっているそうでありますけれども、一体、外国との情報交換なり、連絡なり、情報収集なんというものの窓口にはどこが当たることになっているのですか。これは中野先生の、去年でしたかの質問の中にもあったと思いますし、あるいはどなたかの書物の中にもあったかと思うのでありますけれども、外務省が当たるのか、法務省が当たるのか、警察庁が当たるのか、厚生省が当たるのかわからぬ。向こうから情報を聞くにしても精密な情報あるいはリストに載っているものをただ単に引き出すというだけでも一貫した窓口がないのではないかというお話を承った記憶が私はあるのですけれども、この麻薬取り締まりにあたってのまず第一番目のルートであるところのこの情報収集、情報交換の窓口は一体どこが当たることになっておりますか。
  157. 西村英一

    西村国務大臣 現在のところ外務省が当たっております。
  158. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 そうすると厚生省は、その情報を外務省から収集をいたしまして、これに基づいていろいろな取り締まりの方法なり方策を講ずる、こういう手はずになっているわけですね。
  159. 西村英一

    西村国務大臣 現在はさようになっております。ただし、そういうところにこの問題があるのでございます。先般の予算の要求のときも、これはどうしてもやはり遮断しなければならぬということは、麻薬禍の絶滅をはかっている役所としましては、私のほうもそう考えており、警察のほうもそう考えている。そこでおのおの外国に情報官を置くべしという要求を出したのでございますが、その置いたところがどれだけ情報がつかまるかということは、これまた別な問題でございますので、なかなかその辺について——予算折衝のときは大蔵省あたりにも意見がございますので、こっちは十分な研究ができておらなかったのでございますが、今後はやはりその情報を集めるという問題、しこうして情報の窓口をかりにいまと同じように外務省といたした場合でも、それをいかに国内にうまく利用するかというようなことは、これは今後重要な問題だと考えております。したがいまして、私たちは、いまやっておることが最善だとは思っておりません。私は、やはり遮断するということは重要だと考えまするが、将来に向かって来年度の予算のときあたりはさらに全体として研究をしまして善処したい、かように考えております。
  160. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 取り締まりの第一歩についても非常に不十分であり、なおかついろいろ窓口あたりの所管等についても、大臣の考え方が必ずしも全部貫かれておるようには見受けられない、こういうお話でありますから、これはひとつ宿題として今後積極的な取り組みをぜひお願いをいたします。一名くらいずつでもって的確な情報がつかめようはずがないことは御存じのとおりでありますから、そういう措置を私は期待をしておきたいと思います。  それから、いまお話のありました取り締まりは水ぎわで防ぐ、こういうことからいろいろと措置を講ぜられておりまするけれども、結果として、人員の配置は先ほど来の質問にありましたとおりのわずかの人員増加にとどまっておる。こういう状態で、その点になりますと、厚生省としては患者に対する収容施設に人員を最初の予定どおり、あるいは予定以上に予算措置をして施設を講ずることになっておる、こういうお話がございましたが、その点は一貫性がいささかないような気がいたしますけれども、まあよろしゅうございましょう。  しかし私は、ここで実はお聞きしておきたいのは、麻薬取締官なり麻薬取締員なりの権限と、それと警察官との連絡提携が、どうも私どもしろうとにははっきりつかめない点が残っておるのであります。たとえば密造酒を摘発する場合に、国税庁が警察庁と連絡してこれを摘発するということもありまするけれども、私は、やはりこの点に対するところのほんとうに統一をした考え方が政府にないんじゃないかと思うのであります。厚生省厚生省考え方、警察庁は警察庁の考え方、行政管理庁は行政管理庁の考え方が、ほんとうに完全な意味において一致しているとはどうも言いがたいのではないかと、実は私は御答弁を聞いておって受け取ったのでございまするけれども、しかし麻薬を扱う担当官でありまするから、何といっても厚生省がその資格においても、経験においても、この取締官に対して一定の資格なり経験なりを経た者を任命をしておるということになりまするから、そういった中でおとり捜査等が許されておる。こういうことから見ましても、捜査のほうは警察庁なり警察が主体となってやるというふうには、どうも私どもしろうとで受け取れないのであります。そういった点から緊密な連携をすればそれでいいじゃないかと言われますればそれまででありますけれども、役所が違いますと、口で緊密な連携と言っても、それがほんとうに水も漏らさないような一体の状態でやれるというふうにはなかなかならぬということが、実は日本の役所の機構の非常なまずさでございまして、そういった点からいいますならば、これはひとつ行政管理庁からまずお聞きしましょうか、この間もお聞きしたと思うのでありまするけれども、行政簡素化等の原則はありまするけれども、いずれにしても、警察庁の人間がふえた率と、厚生省の取り締まり担当官がふえた率とが比較にならぬ、こういう八木委員お話もありましたが、私はただ単に人員の問題でなくて、考え方の問題として、私がいま申し上げたような観点からこの麻薬取り締まりの主体は、手足は別です、主体は一体どこに置こうといたしておるのか、今後の考え方を政府の統一見解としてあなたのほうでもってお示し願えるならば、ひとつお示しをいただきたい。できなければ総務長官なり厚生大臣なりから伺いますが、あなたのほうの考え方を、それが政府の統一見解であるというようになっておるならば、そういう点もつけ加えて御発表願いたい。
  161. 山口一夫

    ○山口(一)政府委員 麻薬関係の取り締まり並びに中毒患者を含めまして、全体の定員を査定いたします際に、特に行政管理庁といたしましては、麻薬の問題は御指摘のとおり各省に関係のある問題でありますので、したがいまして、厚生省、警察庁、検察庁、海上保安庁、税関等の全体を見通した上で、定員の査定をするという行管長官の指示に基づきまして、私のほうはひとり厚生省関係のみならず、警察その他につきましても同時にその状況を見ました上で査定をいたしたのであります。その際、先ほど厚生大臣から御答弁もありましたが、行管の調査の結果、ある程度厚生省のほうにも御連絡をとったのであります。これはその定員の査定にあたりまして、正式の監察というようなやり方でなくて、現地麻薬関係の取り締まりを中心にした機構なりあるいは定員なりがどういう状況になっておって、それがどういうふうに動いておるかという現在の実情を中心にいたしました調査をいたしまして、その調査を厚生省にも御連絡をいたし、また私の方が査定をいたします際に、査定の当局として参考にしながら査定をいたしたのであります。その結果、特に取り締まり関係におきましては、御指摘のとおり情報の収集ということが非常に重要なウエートを持っております。と同時に、収集されました情報を各関係機関が相互に連絡をいたしまして、情報の交換を緊密にするということによりまして、その効果を十分にあげるということが必要であるという考えをもちまして、各省にわたる査定をいたしたのであります。関係各省のお話を当時伺いますところによりますと、特に中央は別といたしまして、麻薬の問題の多い東京横浜、神戸、大阪というような地区につきましては、当時までに当該地域における検察庁の担当の検事が中心になりまして、関係の各省庁の出先の関係者を集めて、随時そこで情報を交換し、また、対策を立てるという態勢ができかかっておりましたので、その態勢をさらに整備して、情報を交換しながら取り締まりを進めていくということが非常に有効であろうという判断のもとに、検察関係におきましては、検事三名並びに検事の補助をいたします事務官六名を検察関係麻薬関係の定員として査定をいたしたのであります。同時に、警察におきましては再三お話も出ておりますとおり、地方警察職員五百人、厚生省におきましては、地区麻薬取締官事務所の定員十三人並びに地方吏員十八名、これらを麻薬関係の地方における定員として査定をいたしたのであります。これらが協力をされまして十分に効果をあげていただきたいという趣旨のもとに、全体の査定をしております。
  162. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 行政管理庁、私の聞いておるのは、あなたのほうの査定の状況はわかりました。しかし私が言わずもがなで、麻薬の取り締まりは、現在の状態の中で今後どう進めようかということではないんだ。これから飛躍的にこれを発展させる、それでひとつ画期的な取り締まりをしようというのですよ。そういう中でもって、一体人員の送置はどうなるか、どうあるべきかということを実はわれわれは考えているのです。あなたの言われるように、現在の活動の状態が、いわば実績がこの程度だから、まあまあこの程度ふやしておけば、連絡をとってやればあとやれるのじゃないか、こういう考え方に私ども賛成はできません。そういった趣旨でもって今回の法改正なりあるいは政府の対策を打ち立ててきたのではないと私は思うのです。そういった点から、行政管理庁の原則的な考え方に対して、これを私はとやかく言おうとするものではないのですが、こういう国をあげての新しい対策を講じよう、そこで強化方針をここでもって打ち立てようじゃないか、こういう際に、あなたのほうがその対策に対してブレーキをかけたという結果になるならば、これは非常に重大だと思う。そういう形でもって行政管理庁が存在すべきものではないと私は思う。きわめて事務的な考えで、いままでの事態を踏襲しただけにとどまる考え方ではないかと私は思うのであります。これは政府の統一見解ですか。これは厚生大臣からお話があったほうがいいでしょうね、総務長官おいででないから。ただ単なる行政管理庁の事務官僚の考え方であるならば、まだ私は了解をいたしますけれども、これは一体政府の統一的な考え方というものがこれであるというならば、われわれはまた、これは考えが違います。考えなくてはならぬ。御答弁をお願いします。
  163. 西村英一

    西村国務大臣 私、いまのやりとりをつまびらかにしなかったのですが、大体あなたの御質問政府委員が答えたのでございまして、政府委員はそうなったことを答えたのであろうと思うのです。私たちは、政府の責任において予算が全般にこうなった、その結果きまったのでございまして、統一見解とか何とかいう意見を申し上げたかどうか私は知りませんが、統一見解らしい意見を行政管理庁から申したわけではありませんでしょうが、そういうふうに査定をしてそうなったという経過を説明したのだろうと思います。結果的には政府がこういうぐあいに全部きめたのだ、こういうことでございます。
  164. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大臣、私の質問を聞いていないというのも不見識だけれども、私は統一見解を求めたんだ。査定の状態を聞いておるのじゃない。答弁がそういうだけだ。だから政府委員で答弁できないなら、行政管理庁長官を呼んでいらっしゃい。一体政府は、今後のこの取り扱いに対して、人員配置の面、機構の面でもってどういう方針で臨まれようとしておるのか。これを私はお聞きしておるのであります。そういう中でもって、わずか取締官十三名、取締員十八名、検察庁もそれぞれ若干名をふやした、警察官もふやした、こういう話でありますけれども、これは厚生省が予算要求等でもって当初考えられてきたところの考え方と非常に大きな隔たりがある。したがって、一体これから先、麻薬の取り締まりに対するところの基本的なかまえというのは、どこを重点として、どこをひとつ部面の中心としてまず対処しようとするのか。これに対するところの政府の見解というものはどういうものか。特に行政管理庁が行政簡素化という一般的な原則に名をかりて、この問題に対してきわめて事務的に取り扱ったということは、非常に遺憾なことじゃないか、こういったことを含めて私はお聞きをしたのでありまして、大臣は大臣の所管であるいは御答弁があると思うのです。しかし大臣も池田内閣の閣僚でございますから、あなたが内閣の方針をお述べになってもけっこうでございます。いまの行政管理庁の考え方というものは、私は政府の統一的な見解でなかろうと思うのでございまして、その点はいかがでございましょうか。——もう一度答弁しますか。
  165. 山口一夫

    ○山口(一)政府委員 ちょっと補足さしていただきます。  私が申し上げましたのは、どういう考え方で査定したかという、査定にあたりましての事務的の状況を申し上げたのであります。この麻薬の問題につきましては、政府全体といたしましてもきわめて重要な問題であるという前提のものに、閣僚関係の懇談会もでき、また総理府に、これに関連した各省を一丸とする組織もできておりますので、そういう点もわれわれ十分認識いたしまして、重要問題の一つとして査定をいたしたのであります。したがって、数の点では非常に御不満を買っておるのでありますが、一般の職員につきましては非常にきびしい査定をしておりまして、ほとんど内部の要員につきましてはゼロ査定をした際に、その中におきまして厚生省では、各省にわたりまして私たちのほうでできるだけの数を認めた結果が、先ほど来申し上げておる数字でございます。問題としてこれを決して軽く見ておるわけではないのであります。査定にあたりましては、重点事項の一つとして取り上げて査定をしたわけであります。
  166. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 そんな、人をばかにしたような答弁をされちゃ困りますよ。いかにあなた、口の中でそれはかなり重点を置いたというようなことを言っても、現実にあらわれた結果がこんなことで、これでもって重点を置いたという答弁をされたって、われわれそんなことは了承できません。総務長官の出席を求めてありますし、来るということでありますから、ひとつ推進本部の本部長としては一体いかがお考えであるかお聞きしたいと思いますので、委員長お願いいたします。
  167. 井村重雄

    ○井村委員長代理 田邉委員に申し上げますが、本日は、先ほどの理事の諸君の話を聞きますと、大体四十分くらいで終わっていただけるという私なりの了解をいたしておるのです。本日は、いまから呼び出してもちょっと時間が間に合いませんが、いかがでしょう。
  168. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 それでは、議事進行に協力いたしまして、総務長官が来るまで違う問題を進めておきますが、これは委員会で答弁できるかどうかわかりませんけれども、一体取締官や取締員の処遇といいましょうか、待遇、これはどういうふうに——私も一般の官庁の状態を一通りは知っておるつもりでありますけれども、どういう状態に置かれておるのか。たとえば深夜の勤務に対する手当、あるいはおとり捜査等でもって要する費用、もちろん服装等のいろいろな面もありましょうし、あるいは食費代、こういったものを含めて、大ざっぱでけっこうなんでありますけれども、一体一人の取締官に対してどれほどの捜査に要する経費を充てておるのでしょうか、ひとつ発表できましたらお知らせいただきたい。
  169. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 取締官の処遇の問題あるいは活動費の問題でございますが、処遇の問題につきましては、大体警察官並みの一般の職員プラス調整号俸で待遇を考えております。そのほかに被服、それから活動するための乗用車等は、当然捜査用の器具機材としてあるわけでございます。それからその他おとり捜査なりあるいは情報収集に対しましては、報償費、活動費等で——たとえば全体の経費として申し上げますと、取り締まり活動費が、三十七年度におきまして二百二十三万八千円のものを、本年度は一千二百五十三万円に増額をしております。それから取り締まり旅費につきましては、三十七年度五百六十四万円の旅費を、本年度は一千八十七万円の旅費、そのほかに捜査用の器具機材の整備費といたしまして、三十七年度四百四十三万円のところ、本年度は六千四百三十七万円に予算措置をしたわけでございます。これは総額でございまして、大体それの百五十分の一くらいが一人当たりの経費というふうに、平均すれば言えると思います。
  170. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 総務長官なり行政管理庁長官にお聞きをする点はあとに残しておきますけれども、大臣お急ぎのようですから……。一体麻薬取締官なり取締員なりというものは、非常に特殊なといいますか、専門的な知識も必要だし、学歴も経験も必要だということで配置をされておるわけでございますけれども、何といっても取り締まりにあたって手足を持っておらない、警察のように警察官の配置等があるような状況でない、こういう状態でございますから、非常に取り締まりについても限度があると思うのであります。この点に対する一つの定則というものはないと思うのですけれども厚生省のこれらの担当官がやられるところの限度というものは、私は非常にあると思うのであります。こういった点で非常にやりづらい、また動きづらい、そういったことを担当者が漏らされたような、こういう事実はおありでございましょうか。私は私なりの考え方を持っておりますけれども、今後それらの担当者がより活動しやすい状態、機構なり行政的な措置なり、そういったものをつくることが必要ではないかと実は心ひそかに思っておるのでありますが、一体現状をどういうふうに把握されて、今後これらの人たちが十分な活動ができるような体制というものをつくられる、こういう御意思があるか大臣からお聞きをしたいと思います。
  171. 西村英一

    西村国務大臣 正直に申しまして、取締官は非常に努力はいたしておったと思いますが、たとえばその取締官事務所にいたしましても、あるいは機動性を持たせる点からいきましても、あるいは取り調べをいろいろする点、取り調べをしてあと収容する点、いろいろな不便があったと思われるのでございます。要するに、端的に申しましてあまり軽視はしておりませんでしたが、施設その他で少しゆるやかな点があった、そういうことのためにやはり麻薬も、こういうような犯罪がだんだんふえたというような傾向もあるわけであります。私は取締官がなまけておったとは申しませんが、十分なことができなかった、現地を見てさように感じたのでございまするから、今後は、取締官事務所にいたしましてもあるいは機動性の問題にいたしましても、十分現地を考慮してやらなければならぬ、かように考えておるものでございます。
  172. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大蔵省おいでですけれども、いま厚生大臣からお話のありましたように、これは警察庁のほうもそうだと思いますが、全般的にはたいへんな苦労があり、いろいろ装備や施設に対してさらに私は要求があると思うのですけれども厚生省の取締官の待遇に対して一応の措置はしつつある、本年度は特に旅費や手当その他でもってなされたといっても、これは私は一人当たりだと思ってだいぶはずんだと思ったら、全体だというお話を聞きまして、まことに実は驚いたのであります。特に取締官事務所や地方の取締員がいるところのそういった場所や施設といったようなものは、非常に劣悪であるということは皆さん御承知のとおりでございます。大体厚生省自身のいるところがお粗末ですからね。権力の段階によって施設がだんだん落つるのが現在の常識でありましょうけれども、こういったことを実はもう少しあったかい目でもって見る、個人個人に対するところの手だても、ひとつ思い切って活動しやすい状態に置くといったことをやってみて、それでそのあとの活動の状態が一体どうなのか、これはわれわれは注目しなければならぬと思うのでありますけれども、そういったことをやってみる気持ちはございませんか、そういう金を出すお気持ちが大蔵省にございませんか。厚生省の要求を、全部なまのまま受け入れることはあなたのほうでは困難でございましょうけれども、事この問題に対しては、やはりこの際大蔵省がかなり思い切った予算措置を講ずるところに、私は何といっても前進をするキーポイントがあると思うのです。何といったって、予算がつかなければ問題になりません。そういった点、大蔵省に対する要求というものに対して、あなたのほうで措置をされた状態というものはまことに不十分でありますけれども、今後、いまお話のあったような問題に対して十分手当てを講ずるという具体的な御意思があるならば、ひとつその構想を大蔵省の立場からお示しいただきたいと思うのです。
  173. 船後正道

    ○船後説明員 厚生省麻薬取り締まり麻薬対策の関係の予算でございますが、これは田邊先生御承知のとおり、三十七年度一億六千四百万に対しまして、三十八年度は六億三千二百万、約四倍程度の増額をいたしておるわけでございます。  その内容といたしましては、ただいま御指摘の、たとえば麻薬官事務所がはなはだ老朽しておるというような点につきましては、約一億程度の施設費を計上いたしまして、非常にいい環境のもとに置くということも配慮しておるところでありまして、その他旅費等等につきましても、これでもって十分だということはなかなか申せぬと思いますが、今後とも十分配慮いたしたいと存じます。
  174. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 その額が、前年度に比べて全体でもって約何倍かにふえたという話がありましたけれども、これはいままであまりにも少な過ぎた話でありますから、ただ単に数字上の比較をされて、それでこと足りるということには私はならぬと思うのであります。三・八五倍ですか、それは十分承っておりますけれども、それだけでは私は十分でないと思うのです。さっき行政管理庁に実は非常に声を大にしてお願いを申したのでありますけれども、これは最終的には行政管理庁の人員配置等の考え方もあったでしょうが、大蔵省が予算の査定をする立場でございましたから、最終的にお認めになったのはあなたのほうであります。あなたのほうは、一体今度の麻薬取り締まりに対して、厚生省所管でやるべき仕事のうち、何を最重点に置いてこの予算を具体的に組まれたのか。要求に対して具体的に配当をされたわけですが、あなたのほうの考えは一体どこに重点があったのですか、お聞かせ願いたい。
  175. 船後正道

    ○船後説明員 先ほど麻薬取り締まりが、警察と厚生省との間にどういうような姿であるべきかという御質問があったわけでございますが、私どもの立場といたしましては、この麻薬取り締まり強化するということは、もう政府全体の方針でございます。その線に沿いまして三十八年度の予算を編成したのでございますが、ただ機構的に競合する面をどうするか、予算の面から申しますれば組織が重複いたしましたり、あるいは活動が重複いたしましたりするのは困るわけでございまして、でき得る限り予算というものは効率的に使用していただきたい。しからば、どちらがいいのかという問題になりますと、これは何と申しましても行政管理庁が、機構、定員あるいは行政能率といった点につきましては主管しておられるわけでございますので、行政管理庁の御意見というものを尊重いたしまして、御承知のとおり厚生省の予算は、どちらかと申しますれば、麻薬中毒者の対策あるいは麻薬の正規の取り締まりルートといった点に重点を置かれておりますし、警察庁のほうにおきましては、麻薬違反の取り締まりという点に重点が置かれて編成された、こういう次第でございます。
  176. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 今後の対策というものはやはり総合的に行なわれなければならぬ、予算措置もそういった点で考えられなければならぬ、こういう私どもの強い要望の点から言いますならば、はなはだ画期的だといわれておる今年度においてすらも、私は決して十分な態勢であるとは言いがたいと思うのです。これは全体的な予算のにらみ合わせの中でもってやむを得ないというお返事はあろうかと思うのでありますけれども、問題は、先ほど警察庁の局長からもお話がありましたし、薬務局長からも御意見がありましたが、きわめて巧妙かつ悪質になりつつあるこの麻薬組織の現状に照らしてみて、いわばイタチごっこというようなかっこうでは、なかなか抜本的なこれを助ける方策にならぬと私は思うのでありまして、この際やるとするならば、先ほどの読売新聞の社説等もありましたけれども、この状態の中でもって、はたして今年度以降において、当初のあなた方が期待するような成果があげられるかどうかということになったならば、私はたいへんな危惧を持たざるを得ないのでございます。  時間がございませんから、統一的な順を追うての質問になりませんけれども、この麻薬取締法違反の摘発にあたっていろいろな困難な点があろうかと思うのであります。その中で特に暴力団と麻薬を取り扱う人たち、お医者さんなり薬剤師、そういった者とのつながりがあるのじゃないか。たとえばお医者さんが麻薬暴力団なりに圧迫をされて、その便宜をはかるような状態になっておる場合が多いのじゃないかと思いますけれども、こういう事犯というものは、巧妙になってきているといわれる組織の状態の中から、今後さらに考慮すべき一つ事例ではないかと思いますけれども、そういう点に対する現状は一体どういうふうになっていますか、見込みは一体どうなのか。
  177. 野田章

    ○野田政府委員 麻薬犯罪の中で、一つはヘロインの密売という問題と、もう一つは医療用の麻薬、モルヒネとかそういった医療用の麻薬の不正施用という問題とあると思うのです。その場合に主として暴力団の関係しておりますものは、ヘロインの密売に関するものが大部分でございます。医療用の麻薬の不正施用というのは、これは暴力団の団員の中毒者もございますけれども中毒者がヘロインなり何なり、非合法の麻薬を入手できなくなって、合法的な正規の麻薬を医者のところから盗む、あるいは医者に胆石とかその他の病気を偽って麻薬を打ってもらう、そういうケースがございます。中には医者をおどかして、脅迫して麻薬を打たせるという者もありますけれども、それを暴力団がやるというのは、いままでのところは比較的少ないわけであります。主として医療用の正規の麻薬で、いま一番多いのは盗んでいくというケースが非常に多い。もう一つは、医者に病気を偽って、痛みどめに麻薬を打つというケースが非常に多い。医者から中毒者であるから麻薬は打てないと断わられた場合に、医者を脅迫して打たせるというようなケースは比較的少ない。けれども、そういう例もありますので、いわゆる県の衛生部等と警察とよく協力して、医者をおどして麻薬を打たせるというような事案につきましては、情報の入り次第、連絡のあり次第直ちに警察がかけつけるということで、一面ではお医者さんの保護という面についても今後十分な施策を講じてまいりたいというふうに、現在指示しております。
  178. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 お医者さんは特殊な立場でございますから、麻薬の取り扱いをすることは当然な話でございますけれども、非常にまじめな真剣に取り組んでおる九九%の医師に対して、知らずして、あるいは圧迫をされてそういったものを投与する者、いろいろありましょうけれども、医者の麻薬法違反というのが非常に多い。こういう事例から見て、私は全然しろうとでありますのでわかりませんけれども、この麻薬の取り扱いを医者にさせる、これに対しては非常に厳重な措置といいましょうか、厳格な措置といいましょうか、たとえばお医者さんにどのくらいの麻薬を所持させるのか、その使用は一体どのくらいになっておるか、こういったことを、常に厚生省の側なり都道府県なりを通じて把握をすることは当然だろうと思うのです。これは万全を期しておるわけですね。
  179. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 正規麻薬の受け払いにつきましては、報告の義務を課しておりますので、各麻薬取り扱い者である医療担当者が報告し、カルテには麻薬の施用のことを書くことになっておりますので、そういう点で万全を期しております。
  180. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 いろいろお聞きしておきたいのでありますけれども、結論に入りたいと思います。  今度、収用施設に対してそれぞれの措置をされるわけでございますが、治療方針と申しましょうか、治療の方法も、どういう治療法をとるかということは専門の方々からそれぞれお話があったと思うのですが、私はやはり入院をしている間に、最高六カ月であれば——麻薬に対する一つの何というか、それを用いたいという観念がなくなるまで置くのだというお話でありますけれども、その後のアフターケアの措置とあわせて、やはり医療面だけでなくて、精神的な療法といいましょうか、作業療法といいましょうか、こういったものがある程度考えられてしかるべきではないかと思うので、そういう御用意が当然あるのではないかと思うのでございますけれども、まあ患者に治療をする意欲がなければいけませんけれども、意欲がなければ意欲を起こさせると同時に、いわば心身ともに体質改善といいましょうか、そういうことをする必要が——特に意志の薄弱な人たちがなる傾向もあるのではないかと思うのでありますが、その点も含めて、今度の法改正によって最高六カ月、こういう措置になったかどうか、そういったことに対して十分な手当てを講じよう、こういうおつもりで考えられて対策を講じられたのか、ひとつその点について……。
  181. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 入院期間の間で治療する内容でございますが、これは薬物療法のほかに当然作業療法も入っておるわけでございまして、薬物療法によって中毒の症状をなくし、それからからだを回復させることによって身体的な依存性をなくしていく、そういうことで作業療法まで含めて六カ月、それ以上は医療の意味においては必要なかろうというのが専門家意見であります。
  182. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 そのいろいろな方法をとられて万全を期せられると思うのでありますが、お医者さんの配置や看護婦、看護人等の配置もなかなか困難でありましょうから、どういった配置をされるのかお聞きをしたいのでありますけれども、大体あとは事務的にお聞きをしてもよろしゅうございますので省きます。その人たちの待遇に対しても実はわれわれは非常に心配をして、はたしてそういった看護婦や看護人等が配置できるかどうか、こういった点も実は非常に心配をいたすものでありますが、ひとつ待遇も含めて万全の措置を講じられたいということを希望しておきます。  総務長官おいででございますから、この前にも当委員会において、麻薬対策に対するところのいろいろな意見の交換がございました。実は先ほど来、今後の麻薬対策の方針として、政府の考え方をいろいろとそれぞれの所管からお聞きをしてまいったのでありますけれども、われわれとしては、非常に多岐にわたっており、またその取り締まりやその措置をする対象というものも、行政機関としては非常に数多くの機関にわたっているために、なかなか連携を深めるといっても事実上むずかしい問題が数多くあるわけでございまして、これはでき得べくんば取り締まりの一元化ということがはかれるならば一番いいのでございますけれども、そういう取り締まり体制というものが今後はかり得るものかどうかということを、私ども実は予測をすることはできません。とりあえずは昨年の十月の閣僚会議をつくられ、下部機構としての推進本部をつくられて、麻薬対策要綱等も発表されておるわけでありますけれども、やはり現在の時点の中では、連絡提携だけでは克服できない事態がおありではないかと思うのであります。特に麻薬という特殊の問題を取り扱う中でもって、警察庁や海上保安庁その他真剣に対策を講じられ、その衝に当たっておられることに対しては、私はその努力を多としたいと思うのでありますけれども、何といっても厚生省が、これに対する一つの主導的な役割りを果たすということは間違いない事実でございまして、その人員配置等に対しても実は非常に手不足であり、今年度の要求も非常に不十分である。こういう状態でございますけれども、一体この麻薬取り締まりの機構の一元化ということがはかられるか、こういうことも将来考えなくちゃならぬじゃないかと思いますけれども、そういった将来の方針がおありであるかどうか。そしてまた、当面それは当然直ちにはできない、不可能なことでもございましょう。そういった場合に、一体どこの機構を重点に置いてこの麻薬取り締まりの回転をしていこうとされておりますか。軸は一体どこにあるのですか。この軸を中心として、主導体制というものをどうやって強化されようとしておるのか、ひとつ推進本部長の立場でお聞かせをいただきたいと思います。
  183. 徳安實藏

    徳安政府委員 麻薬対策につきましては、皆さんたいへん御心配をいただき、御配慮をいただいておりまして、私どもとしましても心から感謝しておるわけでございます。ただいまの御質問、私ども常に考えておることでございまして、まことに肯綮に当たる御質問でございますが、現在、御承知のようにこの麻薬の取り締まりにつきましてはたくさんな役所が関係ございまして、しかもそれがそれぞれの任務を持ち、特異性を持っておる現状でございます。簡単に申しますならば、それらのものが一本になりまして、そうして完全な取り締まりができることであれば、それが一番いい方法だと思いますが、しかし先ほど申し上げましたように、また特別な任務を持つ役所としての性格を備えておりまして、どこをどう欠きましても欠ける点ができるということで、どこの役所だけを主にもできない関係もございまして、政府におきましても、閣僚懇談会をこしらえ、推進本部を設けまして、そうして推進本部でできるだけ各省間の摩擦相克がないように調整連絡をとるということにおきまして、今日の欠陥を補っていこうという考え方でありますが、さらにそれだけでは十分でございませんので、閣僚懇談会をこしらえまして、上のほうの段階におきましても、やはり相反するような問題、なわ張り問題等はそこらで解決をするということにしまして、一応の暫定的な行き方をいまやっているわけでございます。しかし、こうしたことがはたしていつまで続いていいのかということになりますと、私ども自身もこれはいけぬと考えておりますので、御承知のようにこれは行管が主になって対策を立てられる問題でございますし、特にただいま臨時行政調査会もこの問題を取り上げられておりますから、おそらくこれはそう、長い時期でなくて、近く結論が出るかと思います。そうしたものをよく検討いたしまして、取り締まりの面におきましても改善すべき点が相当あろうと思いますから、できるだけすみやかに改善をいたしまして、皆さんの要望にこたえたいという心がまえではおるわけであります。しかし、簡単に手をつけるわけにまいらない現在の組織、機構があるのでございますから、一応、これがなるべく現段階において調整をとり、連絡をとることにおいて機能を十二分に発揮できるようにという暫定的な行き方をいまやっておるわけでございますが、御指摘のような点は私もよく承知いたしておりますので、できるだけ早くそうした結論待ちによって結論が出ましたら、その方針に従って一元的な方面にも努力したい、かように考えております。
  184. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 総務長官はお急ぎのようですから、もう一問だけにいたします。お話の筋はわかりましたけれども、大ざっぱに言いまして、取り締まりに当たる場合、厚生省麻薬取締官なりがかなりの部面を受け持って捜査等をやっていらっしゃる。摘発等もしている。一方において警察庁も、この問題は近来の重点的な施策だと思って十分対策を講じて、摘発等に当たっていらっしゃる。これは型どおり連絡提携というものができれば図に書いたようにうまくいくわけでございますけれども、私はやはり、これはなかなかうまくいかぬ点があろうと思うのです。たとえば麻薬取締官が一つの組締なりルートなりを発見した、こういう段階までいけばもう自分たちの限界線だから、これから警察に協力を求める、応援を頼むということが必要であっても、ややもすれば、これはだれしものことなんで、自分の任務を遂行したい、最後まで突き詰めてみたい、こういう気持ちで大魚を取りのがす、こういうことは私はありはしないと思いますけれども人間的に見た場合にはあり得ることだと思います。そこで、そういったこともあるから、一般的、常識的な観念で言いますと、厚生省では合法面にあらわれた管理監督といいましょうか、そういうことだけをやってもいいのじゃないか。不正な麻薬密売あるいは麻薬中毒者、こういうところに対する摘発、捜査は警察に全部まかしたらどうか。実はこういう意見もあるわけでございますけれども、これは私どもはお教えをいただきたいと思うのですが、この点は、将来の考え方としてはそのような分け方をするのが至当なのか。私が先ほど来質問をしている中でかなり強調しているわけですけれども厚生省麻薬に対するところの専門的な知識等からくる指導的な役割、こういったものは、やはり欠くことはできないのではないかという気持ちもするわけです。時間があれば、警察庁の麻薬に対するいろいろな知識、学習や研究等の状態もお聞きしたいわけですけれども、まだいろいろ警察には警察のやらなければならぬ仕事もあるわけでございますから、そういう点からいいまして、私自身も非常にジレンマにおちいっているわけでございます。これに対して、政府はどういうような今後の方針——とりあえずの現状はわかります。現状は双方が協調しているわけですけれども、将来どちらに重点を置きかえようとされるのか。あくまでも二本立てなり三本立てなり、そういうかっこうでもってやろうとするのか。もし方針に対する何らかの考え方があれば、この際ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  185. 徳安實藏

    徳安政府委員 御指摘の点もごもっともな点でございまして、政府におきましても、閣議決定によりまして、将来のことにつきましては深く結論を得ておりませんが、目先のとりあえずの問題につきましては、閣僚一致してこういう方針でいこうという大綱をきめまして、それを示しておるわけであります。私どもはそれによりまして、各省庁関係の調整をはかっておるわけでございます。お話のように、海のほうの関係、陸の関係、それから厚生省関係、あるいは警察庁の関係等いろいろと分野が分かれており、またいかに警察が一生懸命にやろうと思いましても、厚生省でなければなし得ない分野が相当ございます。ですから、一がいに五百人ふやしたからそれでもう警察はいいのだ、麻薬取り締まりはそれでいいのだというわけにはまいらぬわけでありまして、むしろ私ども考えますれば、現在欠けている点は、厚生省のほうに相当強く欠けているのではないか。ですから、ことしの予算につきましても、増員につきまして行管のほうにも私どものほうから相当強く要請もし、大蔵省にも厚生省の要望に対してはできるだけその要望にこたえられるように側面から協力もしましたが、本省以下わずか三十三名くらいのことでございまして、まことに私ども遺憾だと思っております。しかし、では将来どっちを主にするかという問題につきましては、先ほど申し上げましたようにおのおの特異性があり、その分野でなければ発見しがたいものもありますので、にわかに断定はいたしかねると思います。これは先ほど申し上げたように、調査会等の結論も近く出ると思いますから、そうしたものをよく拝見いたしまして、そうしてどうすれば適切な処置をとれるかということを研究し、これはもう与野党を通じて非常に関心の深い問題でございますから、各方面の御意見も承りまして、大きな柱というものを立てなければならぬというように考えておるわけでございます。いまどちらが重い、どちらが軽いというようなことは私どもの口から言えませんが、ただいま申し上げましたような方針で、謙虚な気持ちで研究をいたしておりますから、その結論はしばらくお待ちをいただきたいと思います。
  186. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 総務長官のそういった御苦心もよくわかりますし、現状で満足されているわけでもございませんでしょうから、ひとつ特異性、特色も生かしながら、今後絵にかいただけではなく、実質的にもそれぞれの行政機構が一体となってこの取り締まりが完遂できるような、状態をひとつつくり上げてもらいたいと思う。そのためには、やはり私は推進本部の果たす指導の役割りというものが非常に重要になってくるのではないかと思うのでありまして、そういった点で推進本部なり閣僚会議なりの機構についても十分内容の検討をはかられて、今後に対する万全の方策をお願いしたいと思う。いろいろお聞きしたい点が残っておりますけれども、お約束の時間もございす。実は労働省の婦人局長やその他がお見えでございますので、今後の職業補導あるいは心身両面にわたる指導等に対してお聞きしたいのでございますけれども、あとにします。  最後に、先日来の質問で、アフターケアの問題に対して、はたしてアフターケアの集団的な施設というものが必要なのか、あるいは家庭に帰して善導して相談員なりを活用してやったほうがいいのか、いまいろいろ検討中だというお話がありました。私もこれは非常に検討に値する問題だと思うのでありますが、どうもいろいろな角度から考えてまいりますと、日本の現状の中で、前のうちに戻す、前の地域に戻す、前の環境にまた入れさせるということは、再び麻薬中毒なり麻薬の事犯を犯す要因になる、こういったことから考えますと、いまの状態の中でこの後保護なりというものがこのままいかれることは、私はこの麻薬対策の最後の画竜点睛を欠くのではないかと実は非常に心配をするのであります。諸外国の例から見ましても、いま局長が言われたように、アメリカでは再犯者が七、八〇%、あるいはまたシンガポールでは、病院に入っている人たちの中で再度入っている人が六〇%からあるというお話もございますし、そういった点から、せっかくこれだけの考え方をお持たれになり、われわれから見れば不十分であったにしましても、一応竿頭一歩を進めた対策の中で、せっかくのいろいろな御苦心なり予算措置なりというものが、アフターケアといいましょうか、あるいはあと保護というか、職案補導まで至るところの更生をする措置というものがとられないために、また再び麻薬の事犯に取りつかれるということになりかねないではないかと思うのでありまして、局長の答弁はよくお聞をいたしましたけれども、去年来の参考人の御意見等もあわせ考えまして、集団的であることがいいかどうか知りませんが、諸外国においてやっているような、ある程度隔離をして、一定期間それに対するところの手だてをし、あるいは職業の補導をし、でき得べくんばいままでの地域でないところにおいて新しい生業につかせる、こういうことがどうしても必要であるというような気がしてならないのであります。先日質問をいたしましたから、この点に対するくどい質問をいたしませんけれども、当面とられておるところの措置と並んで早急な御検討があって、これがいいのだという定説はないと思うのです。しかし、何らかの措置をするような方針がなければならぬと思うのであります。その点に対して、この際労働省その他から全部お聞きしたかったのでありますが、とりあえず薬務局長でけっこうでございますからお伺いしたい。
  187. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 私どもも現在のやり方で十分だとは思っておりません。ただ集団的なそういう施設がいいかどうか、あるいはそういうものをつくるとして、一体どんなふうなものをつくっていいかということは、少し勉強不足のところもございまして、自信のある答案を出すことはできなかったわけでございますが、現在各国の中毒者施設なりあるいはアフターケアのいろいろな文献を取り寄せて勉強しておるわけでございまして、わが国の具体的な、実際これからやっていく事例とも照らし合わせまして、早急に、どういうふうにしたら一番いい社会復帰への道であるかということを真剣に検討していきたいと考えておるわけであります。
  188. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 残余の質問はまた機会を見ましてすることといたしまして、私はひとつこの際総合的な対策を講ずるという観点で、厚生省はもちろんでありますけれども、警察庁なりあるいは大蔵省なり、行政管理庁なり、労働省なりが、それぞれの立場を持ち寄りながら、これに対するところの一貫作業を最後まで見届けていただく、こういう措置を講じていただくことを特にお願いをいたしまして、とりあえず質問を終わりたいと思います。
  189. 井村重雄

    ○井村委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後五時十四分散会