○
八木(一)
委員 こういうことを申し上げたのは、あるいは与党の尊敬する先生方に失礼であったかもしれません。
厚生大臣がどんなにわからずやであっても、どんなにぼんやりであっても、
委員会はちゃんと直さなければならないのですから、与党の方々がわれわれと話し合ってやられることです。しかし私は
厚生大臣がなまけ者やぼんやりであるとは思いませんし、なまけ者やぼんやりであっていただきたくはないのです。そういう点で御
考慮になった上と言いました。そういうことを全部御
考慮になって、その道があったら熱心な
厚生大臣として、そういう道を早く進めるために御
考慮になった上での御
努力をお願いしたいということです。
法務大臣にお伺いをいたします。ただいま
厚生大臣には、長いことまじめな
厚生大臣にやや失礼なことも申し上げて、一生懸命申し上げたわけでございます。
厚生大臣は非常に御
考慮になり、御
努力になろうというお気持ちになっておられると私は信じております。ことばははっきり出ていないけれ
ども、そういうことです。法務大臣に非常な御協力をいただいて、その問題を進めるようにしていただきたいと思います。
私は
麻薬取締法の中の一点にしぼって御
質問をしているわけです。その問題は、たとえば
社会にも貢献し、家庭にも貢献して健全な生活をしたいという人が、非常な悪人につかまって
監禁され、あるいは麻酔薬を飲まされて、
意思能力、行動
能力を失った形において、ヘロインその他の
麻薬を
注射される、そういう
状態を続けて
麻薬中毒患者にされてしまう。それで
麻薬中毒という形で
意思能力がなくなって
売春を強要され、
麻薬がほしいがために、ふだんだったら絶対拒否することを、
売春をみずからやるようになる。それで収益は全部
ひもに吸われるというような
状況があるといたします。そういうものに対する
処罰規定が、今度の
改正案では非常に軽過ぎるというふうに申し上げたわけであります。
その
理由はいろいろ申し上げました。
一つは、今度の
麻薬取締法は
麻薬禍を断つために、
供給源を断つための
努力が非常に払われておる。それはけっこうであります。しかしそれとともに需要者をふやさないという
方向でも締めていかないと、いろいろの施策をやったのに
アリの一穴になるという点で、
自分の
意思弱くして、
自分が
麻薬を使いたいという連中のことは別の方法でやらなければならないけれ
ども、
自分の
意思によらずして患者になるようなものは、断じて防がなければならぬという
考え方です。それでそういうことの一環として、そういう悪らつなものに対する
刑罰を重くしなければ、それはうまくいかないのじゃないかということが
一つ。
もう
一つは、
麻薬取締法は
麻薬禍を防ぐということでありまして、
麻薬によって最終的には
人間の健康なしあわせが失なわれるということでありますから、
麻薬取締法はそういう
麻薬の
供給を断ち、需要を断つ必要が
一つあるということと、ほかに、
麻薬取締法の
提案理由には、ぼけたばかみたいなことが書いてあるけれ
ども、根本的には
人間が健康を害されたり
中毒になって幸福を害されることを防ぐために、
麻薬取り締まりということをやっておる。そういう点の中では、
自分の
意思によらずして
麻薬患者にされる、そういうひどい目にあった人のことが一番不幸な
事例であり、そういうことを招来する
犯罪が一番凶悪な
犯罪です。ですからそういうものについては、いまの
状態では非常に刑が軽過ぎるということです。
この刑が軽過ぎることについて法務大臣に申し上げたいのですが、一般的な
刑法があるのに、こういう特別
規定で
刑罰をきめるのは、
刑法全体の
体系上あまり好ましくないという学者があろうと思います。しかしそれは学者の空論であって、実際
麻薬取締法の中では輸入その他について特別
規定を設けている。その強制施用についての特別
規定を設けても
——そういう形式的なバランスをくずしたくないという立場を尊重いたしましても、しかも
現象としてはそのような
麻薬禍を撲滅するために、
アリの一穴も許さないということと、一番
人権を侵害される
被害者を出さないために防犯をするためには、そういうことをする必要があると思う。この
法律でやるだけですから、
体系を乱りません。現状としては、たとえば一番ひどいところでも、刑を
加重して
併合罪でやるということを言われる、
併合罪で一番重いものであっても、
営利誘拐罪に強制施用がまざるもので一年以上十五年、
監禁とそういうものがまざったものが十五年以下です。それから脅迫でやったものが十二年以下です。下はしり抜けですよ。一年以上じゃないのですよ。
暴行のもの、
傷害のものが十五年以下です。そのようなひとどいのが、最高が十五年、十二年の部分もある。脅迫の場合です。そういうことがある。それで下はしり抜けの場合が多い。
営利誘拐のときだけ一年以上です。ということになれば、いままでの裁判例で最高刑になった例は、私の
しろうと判断では少ないのです。そうなれば、非常に軽い罪でそのような猛烈な
人権じゅうりんが処断されるようなことになります。
死刑については問題がありますが、私は一番ひどいものは少なくとも
無期懲役は科する必要があろうと思う。その中には諸般の
事情もあろうから、全部
無期にする必要はありません。有期刑の短いものが適当なものもあろうと思いますけれ
ども、
無期及び何年以上何年以下の
有期懲役ということで縛らなければ
——凶悪
犯罪を刑だけで縛るわけではありません。警察の取り締まりなどで縛りますけれ
ども、どうもそういう点の
配慮が少ない、対処のしかたが足りないということになろうと思う。
もう
一つ、
併合罪でやりますとわからないのです。いままでの
質問でも、
中野さんみたいな
麻薬委員長といわれる方が
質問申し上げても、全部わからなかった。ぼくが
質問申し上げてもわからない。
厚生大臣もよくわからなかった。これとこれとが重なりますよと
刑事局長さんから伺って初めてわかった。われわれでさえわからないのですから、
犯罪人にはなおわからない。
犯罪人は
犯罪のほうの
専門家だからわかると思うかもしれぬけれ
ども、大体わからぬ。わからぬから、見つからぬだろう、もしつかまってもうまく弁解すれば何とか逃げられるだろう、いざ裁判になってもちょっくらで帰られるだろうという
考えで、けしからぬ連中がそういうことをやるわけです。だからこういうことをやったら、一番重いときには
無期になるぞということにならなければ、防犯にはならぬのです。だから
無期または三年以上十五年以下の懲役とか、あるいは二年がいいということであれば私
どもも
考えを変えるということもあろうし、五年がいいということになれば、ああそうかということでわれわれも
考えを変えることもあろうかと思いますが、大体そういうことで
改正をする必要があろうと思う。ところが政府は一回
法案を出されたら、政府のメンツを重んじられて抵抗される癖がある。それはいけないということを申し上げたわけです。
政府は
麻薬法の
改正を出された。これはりっぱです。いままで二十点ぐらいものだったのを、九十点くらいのものを出された。これを百点だといって強弁されるよりも、九十五点でした、あとの五点くらいは直すことにしましょうといって、政府はすなおに直されるべきだと思う。九十五点でもほめてあげたい、それをなおみなの
努力で百点になるようにされれば、
責任をますます果たされたものとして称賛に値するでしょう。それを九十点であるとわかりながら、百点であると強弁して、あとはだめなんだということでは、
政治家としての
責任を果たすあり方ではないと思う。
厚生大臣としては
政治家としての
責任を果たすような気持ちを、満点ではありませんけれ
ども八十点くらいはお示しになりました。
中垣さんが百点ぐらいお示しになれば、
厚生大臣もすぐそういうお気持ちになられると思いますから、協力されて、不十分な点、いま申し上げたことを政府みずからがすぐに検討されて、二、三日じゅうに撤回されて修正をして出される。それが無理であったら、与党のわかっている先生方に、ひとつ与党のほうでやっていただきたいということを内々に交渉をされる。そういう御
努力をしていただきたいのです。それについての
中垣法務大臣の前向きの、形式的ではない、
ほんとうの
政治家としての
責任あるりっぱな御答弁を期待して、御答弁を求めるわけです。