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1963-05-14 第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月十四日(火曜日)    午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 柳谷清三郎君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君       安藤  覺君    浦野 幸男君       加藤鐐五郎君    仮谷 忠男君       草野一郎平君    壽原 正一君       田中 正巳君    中野 四郎君       藤本 捨助君    松山千惠子君       森田重次郎君   山口喜久一郎君       淺沼 享子君    島本 虎三君       滝井 義高君    長谷川 保君       中村 英男君    八木 一男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局北東         アジア課長)  前田 利一君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      和田 正明君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整課長) 安藤文一郎君         通商産業事務官         (鉱山保安局管         理課長)    河村 篤信君         海上保安官         (警備救難監) 樋野 忠樹君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月十四日  委員早川崇君、松田鐵藏君、山村治郎君及び  米田吉盛辞任につき、その補欠として草野一  郎平君、壽原正一君、仮谷忠男君及び安藤覺君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員安藤覺君、仮谷忠男君、草野一郎平君及び  壽原正一辞任につき、その補欠として米田吉  盛君、山村治郎君、早川崇君及び松田鐵藏君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十三日  ばい煙の排出の規制等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一六六号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働災害防止に関する法律案内閣提出第一  一二号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働災害防止に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 労働災害防止法に対しまして若干の質疑を行ないたいと思いますが、まず、この防止法質疑に入ります前に一言お尋ねを申し上げたいと思います点は、御承知のように、今日まで労働災害防止に関しましては労働基準法制定されておって、労働者安全衛生につきましては当然努力がなされてまいったはずであります。しかるに、ここにあらためて労働災害防止法が上程されまして、従来の労働基準法と相まって、総合的かつ計画的な労働災害防止対策を講じていこう、こういうことに相なったわけであります。しかし、卑近な一、二の例を取り上げてみましても明らかでありますように、たとえば銀座のビル工事場から鉄のパイプが落ちてまいりまして通行人が重傷を負う、あるいはまたガスボンベが爆発いたしまして工員多数が重軽傷を負う、こういうように日常いろいろな労働災害が頻発をいたしておるわけであります。もちろんその中には不可抗力的なものもございます。しかしながら、ちょっと注意すれば事故を防止し得るというような例も、実は少なくないわけであります。そこで、要は、これは経営者あるいはまた従業員側のそれぞれの自覚というものが重要な要素になるのであろう、こういうことを考えてまいりますと、なるほど今回の労働災害防止法趣旨そのものは非常にけっこうでございますけれども、あらためてこういう法律案——現在の労働基準法のもとにおきましても、労働者安全衛生というものについては当然の努力が義務づけられておる、しかも先ほど申し上げましたように、労働災害というものは日常茶飯事のごとく頻発する現況にある、そういうことを考えてまいりますと、この労働災害防止法なるものがあらためて提案された意義というものは、私は若干薄いような気もいたします。と同時に、ことばを返して申し上げますと、今までの労働基準法軽視をされるような印象も受けます。そこで、われわれは、この労働災害防止法の審議に入るに際しまして、まずその辺の点に対します御所見をひとつ十分お聞かせをいただきたい、かように考えるわけです。
  4. 大島靖

    大島政府委員 産業災害現状につきまして、ただいま御指摘のありました点はそのとおりでございます。年間約八十万件に及ぶ産業災害を見ており、災害率そのものといたしましては年々低下をいたしておりますが、このような膨大な産業災害が頻発しておるという現状は、何といたしましても残念に思う次第であります。  そこで、労働基準法並び安全衛生規則によって政府監督し、指導して、これによって産業災害防止してまいるという努力は、従来に増して私どもこれを強化し、促進しなければならぬと思うのであります。先般御可決いただきました新年度予算におきましても、この関係予算は相当大幅に増額していただいておるわけでございます。私どもといたしましては、労働基準法安全衛生規則に基づく指導監督というものは、全力を尽くして促進し、強化してまいりたいと考えております。ただ、これと並行いたしまして、経営者産業災害防止についての自主的な熱意機運を促進し、その体制整備するということ、それからもう一つは、産業災害防止についての具体的な施策というものが、一般的な法規制のみでは十分でなく、その一般的な法規制のもとにおいて個々産業個々企業により、具体的な産業災害防止措置ということがことに必要であります。その意味で、非常にきめのこまかさを要するわけであります。そういった意味合いにおきまして今回の法案ができまして、民間における自主的な災害防止体制整備とこの機運の醸成、並びにきめのこまかい災害防止措置、こういったものを促進して、先生の御指摘になりました基準法に基づく指導監督とを並行いたしまして、何とかしてこの膨大な災害防止してまいりたい、これが今回の法案立案趣旨でございます。
  5. 河野正

    河野(正)委員 なるほど趣旨については、いま局長御説明のとおりであって、われわれもその趣旨に賛意を表することについてやぶさかではございません。しかし、要は、やはり経営者なり従業員側自覚というものが大前提であって、その自覚なくして幾ら法律制定され、あるいはまた行政措置を強化されましても、所期の目的を達成することはなかなか困難ではなかろうか。と同時に、もう少しことばを突っ込んで申し上げますと、御案内のように、労働基準法制定されましたのは昭和二十二年の四月のことでございまして、すでに十五年以上の歳月を閲しているわけでございます。そういたしますと、労働基準法がすでに制定されて、労働者安全衛生というものが行政上強く進められておらなければなりませんし、またそういう法律ないし規則によって、労働災害減少ないし防止に対してかなりの成果をあげなければならぬということだろうと思いますが、にもかかわりませず、今日このような労働災害防止法なるものがあらためて制定をされる、そうしてそこで経営者の自主的熱意なり、あるいはきめのこまかい具体的な施策なりの推進をやっていこう、何か火事どろ式印象を私どもは受けますし、それからなお、先ほどのことばでございませんけれども、今日までの労働基準法ないし安全衛生規則というものが、何か軽視をされるかのような印象というものは、もうぬぐうべくもない事実であろうかと私は考えます。そこで要は、いま私が指摘申し上げますように、この法律制定ということよりも、むしろ経営者の自主的な熱意あるいは労働者側自覚、そういうものを啓発をし、そういうものを喚起するということに行政上強力な指導を行なうということのほうが先決ではなかろうか。いたずらに法律を次から次に重ねるということよりも、少なくともいままでも労働基準法なり安全衛生規則があって、そういう法律あるいは規則によって労働者災害防止というものに対して成果をあげなければならぬというたてまえになっておるわけでございますから、私がいま重ねて指摘いたしますように、そういう法律の上に法律を重ねるというようなことでなくて、むしろ行政上強力な指導というものが必要ではなかろうか。この法律そのもの精神については私どもも賛成でございますけれども、そういう法律にたよるという考え方のほうが、むしろ逆効果を来たすのではなかろうかというようなことを感ずるのでありまして、法律の上に法律を重ねるというような考え方よりも、むしろ積極的に、いままでの法律なり規則なりを中心として労働災害防止に当たるべきではなかろうか。そういうことを考えてまいりますと、この労働災害防止法の法の精神はなるほどりっぱでございますけれども、この労働災害防止法をお出しになった意味というものが別にあるのではなかろうかというような感じも、われわれは受け取れるわけでございます。巷間伝えられるところによりますと、いろいろな団体ができるわけでありますから、どうもそういう団体を政治的に利用するのではなかろうかというような、勘ぐりかどうかわかりませんけれども、そういう一説のあることも私は否定できないと考えます。というのは、いま申し上げますように、今日までの労働基準法ないし安全衛生規則相当成果をあげ得るという考え方に立ちますと、そういう意味の憶測もおのずから私は出てまいると思うのでございます。そこで、もう一点お尋ねを申し上げたいと思いまする点は、この労働災害防止法をあえて御提案になったわけでございますが、それにつきましては他意ないものかどうか、この点はいま申し上げますような憶説等もございますので、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思うわけでございます。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この法案提案理由につきましては、当委員会におきまして私からも申し上げましたし、ただいままた、先生の御質疑に対しまして基準局長からも申し上げたとおりでございまして、何ら政治的な特殊な目的をもって行なっておるものではございません。ことに労働行政運営につきましては、元来が労使に対して中立的な立場に立って行政を行なっていくというのが本来の労働省の立場でございまして、政治的な意図をもって考えるということは、われわれとしては全然考えないところでございます。
  7. 河野正

    河野(正)委員 要は、今後の法の運営いかんにあると思うのです。それにつけても、いま申し上げまするような巷間の憶説等もございますので、大臣仰せのごとく、ひとつ法の運営の適切を期していただきたいというふうに希望を申し上げておきます。  そこで、いよいよ本論に入りたいと思いますが、この提案されております労働災害防止に関しまする法律というものが、法の精神にもございますように、労働基準法と相まって労働災害防止することを目的として立法化されておるわけでございますので、問題は今後にあると思うわけでございます。しかしながら、御承知のごとく今日の経済高度成長、この経済高度成長を背景といたしまして、三十六年の労働災害発生件数というものは、先ほど局長からも若干お触れでございましたけれども発生件数というものは引き続き増加傾向にあるようであります。たとえば、政府で出されております災害月報によりましても、休業八日以上の死傷災害件数というものは、全産業で約四十八万二千件、三十五年は四十六万八千件でございますので、結局一万四千件の増加ということになっております。これを今度は規模別で検討してまいりますと、規模百人以上の事業所で発生した休業一日以上の災害件数で見てまいりますと、このほうでは一そう増加傾向が強いようであります。すなわち約一万七千件の増加を見ておる。しかもその増加率としては、二十七年以降の最高の率でございます。こういうようにこの発生件数という立場から検討いたしてまいりますと、災害というものは必ずしも減少しておらない。いま政府が示した具体的な数字をもっていたしましても、だんだんと増加傾向をたどっておる。そうだといたしますと、こういう災害件数増加原因というものがどこにあるのか。たとえば、三十六年度におきましては雇用が急激に増大をした。そういうような現象からこの災害発生件数増加してきたのかどうか、あるいはまた雇用増加以外に、そういう発生件数増加をしてきた原因が存在するのかどうか。もちろんこの災害防止法によって、今後労働基準法安全衛生規則等と相まってその災害防止するということになるわけでございますけれども、しかしやはり過去の反省というものが必要でございますから、その辺の事情についてもひとつ明らかにお聞かせをいただきたい。
  8. 大島靖

    大島政府委員 産業災害現況について、いま河野先生から詳細数字をもって御指摘いただいたのでございます。仰せのとおり災害の絶対件数は年年増加いたしております。昭和三十二年の災害件数、約七十万件でありますが、この数字を一〇〇といたしまして、指数で申し上げますと、昭和三十六年におきましては、三十二年の一〇〇に対して一一四・八という数字になっております。約一割五分増加いたしておるわけでございます。その間において雇用労働者増加は一四八、約五割の雇用増加になっておる。したがって災害率死傷年千人率、労働者千人当たり年間の災害件数でございますが、この災害率のほうは、昭和三十二年を一〇〇といたしますと七七・七に下がっております。非常に大きく下がっておるわけでございます。ただ、いま先生指摘のように災害率は下がっておるけれども、絶対数が非常に膨大である、かつこれが増加するということはまことに残念でございます。この災害件数増加原因は、いま御指摘のありましたように、労働者増加ということももちろんございますが、基本的に災害原因というものを分析いたしてみますと、行動災害によるものが大部分でございます。この行動災害原因——機械設備の不備によるものと、それから行動の不注意と申しますか、行動の面からの原因によりますものとを調べてみますと、それぞれ約八〇%ぐらいの数字を示しておるわけでございます。と申しますことは、この災害原因物心両面にわたっておるということであります。したがって、これが対策につきましても、一面におきまして安全施設整備ということをさらに強化すべきでありますし、同時に、安全についての意識の高揚、この点がやはり非常に大きな問題になります。かように考えておりますので、今後ともこういった原因分析をさらに詳細にいたしまして、その対策をさらにきわめて努力をいたしたいと思います。
  9. 河野正

    河野(正)委員 それからもう一つ頻度立場から分析をしていろいろ御意見を承りたいと思いますが、この災害発生頻度の点より考察いたしてまいりますと、その数字は、なるほど三十二年が二二・三六、三十三年が二〇・二九、三十四年が一八・七一、三十五年が一七・四三、三十六年が一七・四〇、こういうように、わずかでございますけれどもだんだんと低下を示しております。ところが中身をもう少ししさいに検討してまいりますと、三十六年の下半期は一七・二二、三十五年の下半期は一七・〇〇で、三十六年の下半期は、三十五年の下半期よりもやや上回っておる。でございますから、頻度の点から考察いたしますと若干低下を示しておるようでございますけれども中身を見ますと、必ずしもそう楽観すべき状態ではない。この点が死傷率の点から見てまいりますと、アメリカと比べればアメリカの三倍、イギリスと比べると二倍、こういうような状態であるかのように仄聞いたしておるわけです。そうしますと、頻度の点から見てもそう楽観すべき状態ではないということが、いまの数字をもっていたしましても明かなようでございます。しかも、いまアメリカないしイギリス状況等とも若干比較いたしましても、必ずしも名誉ある数字ではない。そういう点が、技術水準の相違によって死傷率アメリカの三倍であり、イギリスの二倍だというような不名誉な数字が出てまいっておるのか、あるいはまたその他に、先ほど局長指摘安全設備あるいは意識の問題からそういうようなイギリスあるいはアメリカと比べて非常に多くの死傷率を出しておるのか、この辺の事情等につきましてもこの際お聞かせをいただきたい。
  10. 大島靖

    大島政府委員 ただいま御指摘頻度の問題になりますと、非常にきめのこまかい議論になり、また災害防止対策になるわけであります。いまのお話のとおり、頻度においてもいろいろ問題があると存じます。全般的には災害率は年々低下してまいっております。このことは喜ばしいのでありますが、さらに立ち入って分析いたしてみますと、まず産業別災害率というものが非常に違うわけでございます。ことに日本の場合、産業災害率の高い産業として、私どもは鉱業と貨物取り扱い業、林業、それから建設業、この四つの産業をあげざるを得ないのであります。もちろんこういった産業は、その生産工程におきまして、あるいは自然的な条件におきまして、一般製造業等に比べまして比較的災害が起こりやすいという技術的な点もございますが、しかし同時に、これらの産業に所属しておりましても、社長さんが非常に熱心であり、その会社内における体制整備されており、施設の改善を十分行ない、安全教育を十分行なったような特殊の企業におきましては、一般的な高い災害率に比べまして、非常に低い災害率にまで努力によって持ってきておる実例を私どもはいろいろ承知いたしておるわけであります。したがって、こういった特殊に災害率の高い産業にかかわらず、われわれの努力の余地はまだ十分あると思います。この点は今後一そう努力いたしたい。  次に災害率規模別に調べてみますと、大企業中小企業では災害率が格段に違うということであります。中小企業災害率は、大企業に比べますと約倍になっております。これにはいろいろ理由はございましょうが、先ほど申し上げましたように、やはり中小企業における安全施設整備安全教育の徹底というものが、まだわれわれの懸命の努力を要請しておるものと思いまして、私どもの今後の安全活動の重点もここに置かなくちゃいかぬと思います。そういった意味産業災害率も、いま御指摘のように立ち入って調べてみますと、いろいろの問題点を含んでおると存じます。
  11. 河野正

    河野(正)委員 さらに災害状況の内容について若干検討を加えてみたいと思うのですが、いままでの統計によりますならば、災害死亡永久障害というふうな災害がだんだん減少傾向をたどっておる。そうしますと、総体的には災害件数増加しておるわけですから、そういうような永久障害とか災害死亡減少しますと、一時労働不能というのが大幅に増加してきた、こういうことが言えると思うのです。それなら、そういう休業が一日とか一週間とかいう非常に短い一時労働不能が大幅に増加しているという理由は一体どこにあるか。施設安全設備という点から見ると、どうも永久障害とか災害死亡が多くなりそうな気がするし、一日ないしは一週間程度の労働不能が多くなったということになると、若干意識といいますか、要するにちょっとの不注意ということになるだろうと思うのですが、いずれにしても、そういう災害死亡永久障害というものがだんだんと減少して、一時労働不能という簡単な災害というものが非常に大幅に増加をしてきた、こういう原因というものがどこにあるのか。これは今後災害防止する上におきましても、私は重要なポイントになると思うのです。軽症ですから、これはもう少しそういう隘路というものが解決されれば、非常に大きな成果をあげるというふうに私どもも判断をいたしますので、そういう原因というものがどこに所在するのか、そういう点についてもひとつこの際お聞かせをいただきたい。
  12. 大島靖

    大島政府委員 産業災害の結果の強度につきましての御指摘でございますが、この点につきまして、まず死亡者でございますが、死亡者はやはり毎年増加いたしております。このことは私どもが一番残念に思い、これを何とかして死亡者を一人でも絶対数を減らしたいということが、われわれの数年来の念願でございます。昭和三十七年の災害統計が一応まとまっております。ただこれは産業災害統計は、実は労災のほうの統計が治療の関係でだいぶずれてまいりますので、最終確定はもう少しおくれるわけなのでございますが、災害報告のほうの統計によりますと、昭和三十七年の死亡者は、若干でございますが、最近数年来初めて減少をいたしたようであります。三十六年が六千七百十二人の死亡者を持っておりましたが、三十七年におきましては六千百名にまで低下いたしておる。それまではずっと年々増加をいたしておったのであります。そういった意味で、三十七年初めて死亡者低下してまいっております。  さらに重症のほうでございますが、この点につきましては、重大災害——一度の災害で三人以上の死傷者を出しますのを私ども重大災害と申しておりますが、この重大災害件数は三十七年若干低下いたしておるのでありますが、これがはたして低下傾向に移るものかどうか、この点私どもはまだ疑問にいたしておるのであります。と申しますのは、この中でもいわゆる爆発とかそういった災害もございますし、ことに交通災害が多いわけでございます。こういった点で、現状から見ましてこの重大災害減少が、三十七年は減りましたけれども、はたしてその傾向が続くのかどうかに疑問を持っておりますので、この点はさらに努力をいたしたいと思うわけであります。  さらに軽症のほうでございますが、これは一つにはこういった問題もあろうかと思います。すなわち、たとえば指の先をけがしたというような問題にいたしましても、最近におきましてはどんどん医者にかかっていく。そこで統計に出てくるというような点もござますが、しかし私は、安全対策上という点で一番問題になりますのは、やはり新入工員諸君のけがだろうと思うのであります。全体の災害件数のうち約半数というものは、新しく職場につきまして一年以内に起こっておるわけであります。すなわち新入工員災害が全数の約半分を占めておるということ、この点は、新入工員に対する安全教育というものがまだまだ足りないわけでありまして、今後私ども努力は、この方面に非常に大きく集中すべきものと考えております。
  13. 河野正

    河野(正)委員 いずれにいたしましても、この災害死亡が三十七年度はやや減少傾向にあるということは、喜ばしいことだと思います。と同時に、いま御指摘のように軽症が非常に多いということは、いまも若干理由の開陳がございましたが、重症を減らすことも重要でございますけれども軽症が非常に増大をしておる傾向でもございますので、これらについては、ひとつ万全の今後の処置をお願い申し上げておきたいと思います。  それからさらに、産業災害防止新五カ年計画につきまして若干お尋ねを申し上げておきたいと思います。御承知のごとく、本年度から産業災害防止の新五カ年計画が発足するわけであります。そして毎年八・八%ずつ災害減少せしめまして、五年後の昭和四十二年におきましては、労働者千人当たりの死傷者を現在の二一・〇五人から一二・三人まで減少せしめよう、こういうような構想であるかのようであります。しかしながら、従来五カ年計画があって指導啓発、あるいはまた労働基準法等の運用によりまして労働災害防止につとめてまいったわけでありますが、しかし結果的には、たいした成果をあげることができなかった。ところが、現実の問題といたしまして、経済成長に伴いまする工場の拡張あるいは新設、それからいま局長が御指摘のように、新入工員というものが大幅に増員される、あるいは臨時工というものが増員されるとか、そのために訓練とかあるいは教育というものが十分に行き届かないというような状況のもとで、いままでの五カ年計画でもそうたいした成果はあげ得なかったわけでございますが、新しい産業災害新五カ年計画に基づいて、いま申し上げるようないろいろな悪条件の上に立って、労働災害というものが急速に減少せしめられるのかどうか。これは先ほど申し上げるように、新入工員の増員とか、あるいは臨時工の増員とか、あるいは訓練教育の不十分とか、そういう悪条件がなければ別でございますけれども、そういうような悪条件の上に立って、はたして先ほど私が御指摘申し上げるように毎年八・八%ずつの災害を減らしていく、そして五年後には、労働者千人当たりの死傷者というものを二十一人から十二人に減らしていくというような成果があげられるかどうか、これは過去の五カ年計画成果から照らし合わせても、そういう点に対して御自信がおありであるのかどうか、これはぜひあげていただかなければならぬわけでございますけれども、そういう点について、ひとつ見通し等についてお聞かせいただきたい、かように思いいます。
  14. 大島靖

    大島政府委員 新しい廃業災害防止計画は、いま御指摘のように、三十八年から四十二年までの間に災害率を約半減いたしたいという計画でございます。この計画の達成ができるかどうかというお尋ねでございますが、私どもあります。昨年で終わりましたこの五カ年計画の結果は、災害率は非常に低下いたしましたけれども災害の絶対件数はなかなか減らなかったということは事実でございますが、ただ、最後の昭和三十七年におきまして、いま申し上げましたように死亡者は若干減ってまいりました。それからまだ確定はいたしませんが、私どもの現在暫定的に取りまとめておる統計によりますれば、死傷総数の絶対件数も、若干低下するのではないかと見込んでおります。すなわち、もとの産業災害防止計画努力の結果が、ようやく最終年度においてその効果をあらわし始めたのではないかと思われるわけであります。私どもは、この際ひとつ心を新たにして体制整備して、どうしてもこの新しい災害率の半減計画を実現するということを、かたい決意を持ってぜひ発足させていただきたいと思うわけでございます。
  15. 河野正

    河野(正)委員 実は私が産業災害新五カ年計画に御自信があるのか、あるいはまた、三十八年から四十二年の間にこの死傷者を半減せしめ得る自信があるのかということをお尋ねいたしましたゆえんというものは、先ほど局長からも御発言がございましたように、重大災害というものが、災害の数を考えてまいりまする場合に、非常に大きな問題点になろうかと考えておるわけであります。ところが、最近起こってまいっておりまするような炭鉱災害、これはあとで若干触れたいと思いますけれども、かなり大きな犠牲者を出してまいっております。ところが、実は炭鉱災害について若干触れてみたいということで法律を読んでおりますと、今度の法律の中では、鉱山に関する特例として、鉱山の保安に関しましては、労働災害防止計画作成、変更等は通産大臣の所管ということになっております。そういたしますると、どうも産業災害防止対策というものに対して一貫性が何か失われておる。産業災害防止しようということでございますから、それは当然労働大臣の所管のもとに一切の施策というものが進められるべきだというふうに思うのですけれども、ところが今度の法律では、鉱山に関する特例として、鉱山の保安については通産大臣の所管に移されておる。こういう点について、私どもどうも納得のいかぬ点があるわけでございまするが、この辺の事情はいかがであるのか、お聞かせをいただきたい。
  16. 大島靖

    大島政府委員 鉱山保安については、先生承知のとおり通産省所管に相なっております。ただ、鉱山における災害の結果の労災補償については、労災補償のほうで一括いたしておるわけであります。したがって、その意味におきまして、この法案におきましては、いま先生指摘のような形にいたしたわけでございますが、要は私は、鉱山保安につきましてもその他の災害につきましても、政府部内におきましては関係の各省の緊密な連携にあると思うのでございます。その意味で、今後とも、たとえば鉱山保安につきましては、通産当局と私どもはほんとうに一体になった緊密な連絡と活動を要すると思います。その点についての先生の御注意については、今後とも一段と連絡を緊密にして、ほんとうに一体的な活動ができるようにいたしてまいりたいと考えております。
  17. 河野正

    河野(正)委員 一体となった緊密な活動、これは非常に重要な点だろうと思うのです。そういうことを理想的にやろうとすれば、やはり一元化をして、一切の産業災害防止というものは、労働大臣が一括して推進をしていくということが、一番私は強力な推進になると思う。しかし私どもが一番心配しているのは、緊密な連携といいましても、やはり役所にはセクショナリズムがあって、なかなか思うようにいかぬことは、産業災害防止に関することだけではございません。これは一般の行政の中でも、しばしば国会で論議されておる。特に人命を扱うようなきわめて重大な災害防止政策というものが、二元的に行なわれる。緊密な連携なり緊密な活動なりというような言葉はきれいでございますけれども、そういう連携なり活動というものがスムーズに行なわれるか。しかもその結果から起こってまいります現象というものが、労働者が人命を損傷しなければならないというような重大な問題でございますから、そういう重大な点を考えてまいりますと、私はやはり産業災害防止というものについては、一元化すべきではなかろうかというふうに考えるわけでございますが、この点は大臣、いかがでございましょうか。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 一元化は理想であると存じます。ただ、労働行政全般につきまして、現在の基準法のたてまえから、地下労働につきましては特に通産省の所管ということにいたしてあるわけでございます。このたてまえにつきましては、いろいろ意見はあり得ると存じますが、何ぶん長年の実情でございまするので、にわかにこのたてまえ全体をくずすことも困難でございます。しかし、それにもかかわらず災害防止ということは緊急な要務と存じますので、現在のたてまえのもとにできるだけ円滑な運営をはかっていきたい、こういう考えで立案をいたしました。
  19. 河野正

    河野(正)委員 そこで、きょうは通産省もおいで願っておると思いますから、若干炭鉱災害についてここで一、二御指摘を申し上げて、通産、労働両省でひとつお聞き取りを願いたい、かように考えます。  御承知のように、先ほど基準局長からも御指摘ございましたが、重大災害というものが頻発をする。その中でも特に目立ってまいりましたのが炭鉱災害ではなかろうかというようなことを強く感ずるわけです。最近起こりました山口県の小野田市の大浜炭鉱におきます落盤、出水によって十五名のとうとい労働者の生命というものが断たれた。それから最近起こってまいりました一、二の例を取り上げてまいりましても、佐賀県の新長炭鉱、長崎県の三菱崎戸炭鉱、こういうように百名近いとうとい人命というものが突発的に奪われておる。この際、私が特に指摘をしたいと思います点は、政府は口を開けば、新石炭政策を打ち出すにあたって、炭鉱の保安確保というものに重点を指向するということをしばしば強調されてまいったわけでございます。ところが、いま申し上げまするように、最近起こりました炭鉱におきます重大災害を見てまいりましても、百名近いとうとい生命というものが奪われておる。こういうように、いま産業災害の中でも重大災害というものが非常に問題化されておる。しかもその大部分が炭鉱災害だといたしますと、私は本法案の審議にあたりましては、この点はかなり重大な要素があるというふうに思うわけでありますが、この炭鉱災害についてどのようにお考えになっておりますのか、これは一応所管が通産省でございますから、ひとつそのほうからお聞かせをいただきたい。
  20. 河村篤信

    ○河村説明員 お答え申し上げます。  鉱山における労働者の事故ないし災害防止につきましては、御承知のように鉱山保安法によってやっております。御指摘のように、最近重大災害が発生いたしまして、非常に私ども関係者の一員として苦心しておる次第でございますが、この災害防止につきましては、先ほどからお話がございますように、私どもといたしましては、産業災害防止五カ年計画の一環といたしまして、鉱山災害防止五カ年計画を策定いたしまして、今後、昭和三十八年をベースにいたしまして、四十二年までの間におおむねこれを半減するという先ほどの方針に沿って、鉱山自体の災害をなくするためのあらゆる施策を考えております。この場合、私どもといたしましては、鉱山における災害防止の基本的な考え方といたしまして二つ考えております。その一つは、監督指導の強化ということでございます。もう一つの問題は、鉱山における自主保安の推進、こういうことでございまして、この監督指導の強化ということと個々の鉱山における自主保安の推進という、この二つの手段によりまして鉱山における災害を抜本的になくしよう、こういう考え方でございます。問題は、その監督指導の強化にいたしましても、あるいは自主保安の推進にいたしましても、その取り締まりの内容、あるいは自主保安を推進する内容自体に問題があると思います。この問題は、御承知のように現在鉱山保安法に基づきまして、災害防止災害予防のためのルールが各省令に詳細に規定されておりますが、この省令自体にもいろいろ問題があろうかと思います。私ども、ただいますでに保安法が制定されて十四、五年経過いたしておりますので、最近の実情に沿いまして、この災害を未然に防止するためのルールというものについて、あらためて炭鉱の実態と今後のあるべき正しい姿をながめながらルールについて再検討いたしまして、災害防止を強力にやりたいと思っております。  もう一つ非常に大事な点でありますが、これまでの鉱山災害における内容をいろいろ検討してみますと、働いております鉱山労働者の教育未熟のために起きておる災害が非常に多いようでございます。そこで、この新しい五カ年計画におきましては、先ほど申しましたルールの検討という問題と並行しまして、経営者あるいは保安の責任者、あるいは鉱山労働者を含めました全体の鉱山保安教育の充実強化ということをぜひ実行して、災害をなくする方向に努力をしたい、こういう考えでございます。
  21. 河野正

    河野(正)委員 なるほどことばはけっこうでございますが、しかし、実際炭鉱災害の実情に即していまの五カ年計画というものが策定をされておるのかどうか。やはりこの五カ年計画を策定せられるのもけっこうでございますけれども、策定するにあたりましての通産省の姿勢というものが、私はきわめて重大だと思う。そういう意味から、現状というものをどういうふうに御認識いただいておるのか、若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。  そういう意味で、一、二実情を御指摘申し上げて御所見を伺ってみたい、かように考えます。統計の面から見ますと、炭鉱災害というものはやや減少をしておる。ところが、その実態というものは必ずしもそうではない。たとえば一例でございますけれども、福岡県鉱山保安監督局の調査によりましても、昨年九州地区で起こった炭鉱災害というものは、死者が二百八十一人、三十六年に比べますと百十一人の減少でございます。それから重軽傷者を中心とした一般災害を検討してまいりますと、昨年は三万六千七百人、三十六年よりも千五百人減少いたしております。ところが、なるほど死亡者や重軽傷者は数の上では減少をいたしておりますけれども、その実態を突っ込んで検討いたしてまいりますと、炭鉱労働者というものが、三十六年から昨年にかけて、この一年間約二万人減少いたしておる。この事実を見落としてはならぬわけです。この事実を見落として、死亡者が昨年よりも百十一人減った、あるいは重軽傷者が千五百人減ったというふうに御判断を願うと、これは大へんなことだと思うのです。そこで実働延べ人員千人当たりの災害発生率を見てまいりますと、三十六年が〇・九三五人、三十七年が一・〇一九人、こういうふうに実数は減っておりますけれども、千人当たりの災害発生率を見てまいりますと、三十六年から三十七年にかけましてはずっと上昇しておる。この三十七年の一・〇一九人という数字は十年前の災害率と同じだ、こういうふうにいわれておる。非常に高いわけです。そこでいま九州の全炭鉱の労働者が九万人おるといたしますると、九州地区では二人半に一人は何らかの事故に遭遇しておる、こういうふうに非常に深刻な状態になるわけですね。それにかてて加えて、先ほど申しまするように、長崎の崎戸で重大災害まで起こっておる、あるいは佐賀県の新長炭鉱で重大災害が起こっておるということでありますと、大幅に率というものはふえてくる。私は、炭鉱労働者というものは非常に重大な事態の中に置かれておるというふうに、この数字から見てまいりまして、申し上げても過言ではなかろうというふうに考えるわけです。こういうような深刻な状態というものを前提にして新五カ年計画というものが策定されておるのかどうか。先ほど申し上げますように、炭鉱の労働者というものがこの一年間に急激に減少させられたということを無視して、単に死傷者が減ったということで新五カ年計画というものが策定されたといたしまするならば、私は大へんなことだというふうに考える。そこで、その新五カ年計画を策定するにあたっての心意気といいますか、通産省の姿勢とでもいいますか、そういうものを私ども承知をいたしたいわけです。それがなければ、新五カ年計画をせっかくおつくりいただきましても、それはから念仏であり、絵にかいたもちであり、私は何ら効果をもたらすわけにはまいらぬと思いますし、そのために炭鉱労働者というものはあたらとうとい生命を失わなければならぬということでございますから、いま申し上げまするような実態は十分御承知だと思いまするけれども、この際ひとつ通産省の心意気というか、姿勢というものを明らかにしていただきたい。
  22. 河村篤信

    ○河村説明員 ただいま御指摘にございましたように、確かに最近の鉱山における災害事情を見ますと、災害の絶対件数自体は大体横ばいの状況でございますが、働いております鉱山労働者というものはお話のように減少しております。したがいまして、千人率を見ますと逆に上向いておるという状態でございます。私どもこの事実を非常に心配いたしまして、災害の絶対件数を減らす努力と並行いたしまして、問題はやはり、先ほどお話しございましたように千人率を半減するということでありますので、絶対件数を減らしながら、一方鉱山労働者減少していくのに並行して、千人率自体もどうすればこれを半減まで持っていけるかという点に思いをいたしまして五カ年計画を策定したわけでございますが、五カ年計画を策定する場合の一番基本的な気持ちといたしましては、先ほど来お話がございますように、まずわれわれとしましては鉱山における重大災害、たとえばガスないしは水の災害でございますが、こういった重大災害は根絶をするいとう観点に立って策定を考えております。それからもう一つは、非常に重大なお話でございますが、たとえば鉱山における災害と申しましても、その過半数以上は落盤だとか運搬、あるいは取り扱い中の機材、工具による事故というのが大部分でございます。こういった頻発災害をできるだけ減少する、そのためにはどうすればいいかということにつきましていろいろこまかい施策を考え、それによって重大災害と頻発災害をなくする。これによって千人率を減少する、こういう考え方に立ちまして、自主保安の推進と監督指導の強化という車の両輪を円滑に推進することによってこういった災害を未然に防止する、こういう考えでございます。
  23. 河野正

    河野(正)委員 いま私が御指摘申し上げましたように、炭鉱災害というものは非常に重大な事態に置かれておる。特にこの千人率を見てまいりましても、非常に高い結果が出てまいっております。私はこういう事態を見てまいりますと、やはり災害防止というのは、先ほどから指摘いたしますように一元化をして、そうして極力にその施策を推進しなければ、なかなか思うようにいかぬのじゃないか。特にいま私が具体的な数字をもって示しましたように、炭鉱災害というものは非常に重大な事態に置かれておるということを考えますれば考えるだけ、やはり産業災害防止に関します行政措置というものは、一元化すべきではなかろうかというような感じをますます強くこの実例から持つわけです。そこで、先ほど局長からもお話がございましたが、建設業、林業、鉱業、貨物取り扱い、こういうものが四つの業種であるというような話でございましたが、この炭鉱災害というものは、特に率が高い深刻な状況にあるのではなかろうかというような感じを持つわけでございますが、こういう炭鉱災害状況を労働省としてはどういうふうにごらん願っておるのか、その辺の御所見も、ひとつこの際、いい機会でございますから承っておきたいと思います。
  24. 大島靖

    大島政府委員 鉱山保安の問題については通産省の所管でございますが、私どものほうとしては産業災害全般を見てまいっておるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、通産当局と緊密な連絡をとってまいりたい。ただいま答弁申し上げました通産省の管理課長も、安全の問題、保安の問題で私どものほうへしばしばおいでを願っておりますし、私どものほうの担当者も、しばしば管理課長のほうへ参って打ち合わせをいたしておりますが、私どものほうとしては産業災害全般の状況がわかるわけでございます。その意味合いからいたしまして、鉱山災害の特殊性というものがどうであるか、また産業災害全般としての共通性がどうであるか、そういうことを常に鉱山保安局と連携を持ちながら見ておるわけであります。そういった意味で意見を交換しながら対策を講じてまいるわけでございます。  さらに現地におきましても、たとえば福岡等におきましては、福岡の保安監督部と私どものほうの基準局あるいは監督署とがしばしば会合を持ちましてやっておるわけでございますが、全般の産業災害の趨勢と鉱山保安の特殊性、これを常に見詰めながら、現実の行政としてはできるだけ欠けるところのないような緊密な関係を保ってまいりたい、かように考えております。
  25. 河野正

    河野(正)委員 いずれあとで若干触れたいと思いますけれども、いま局長が開陳せられましたように、現地においても基準局あるいは通産局等が緊密な連携のもとにおける活動というようなお話もございましたけれども、いまの現地におきまする基準局のスタッフと申しますか、そういった陣容ではなかなか問題があろうと思う。これはいずれあとで触れます。  いずれにしても、炭鉱災害というものが非常に重大な事態に置かれておる。そこで、そのような炭鉱災害原因というものが一体どこにあるのか、若干については触れられたようでありますけれども、それに対してはどういう処置がとられているのか、これは炭鉱災害防止する上におきましてはきわめて重大な点でございますから、そういう意味からも若干お尋ねを申し上げてみたいと思います。  先ほど若干お触れになったようでございますけれども、最近炭鉱では、若い炭鉱労働者というものがどんどん転職をしていくために、炭鉱労働者の平均年齢というものは急激に上昇する。そのために体力的な限界に基づきまする災害というものがふえてくる。そういうような面もございましょう。でしょうけれども、それはそういう面もあろうと思いますけれども、しかし根本的には一体どういうところに問題があろうかというようなことを検討してまいりますと、石炭合理化政策というものが国の方針によってどんどん進められていく。ところが、そういう石炭合理化の推進と炭鉱保安設備の整備、そういうふうな合理化の促進と並行して行なわれなければならぬ炭鉱保安設備の整備、そういうものの間にズレができてくる。つまるところ、たとえば合理化政策を推進するために炭価というものを急激に下げなければならぬ。生産能率の向上というものが非常に第一義的な意義を持ってくる。そのために、坑内保安の確保という問題が軽視されていく。そこで先ほど通産省から申し述べられましたように、保安監督行政の強化というものももちろん必要でございましょう。必要でございましょうが、いま申し上げますように、基本的にはやはり炭鉱の合理化、石炭合理化政策というものが急激にずっと前進していく、そのために坑内保安というものが軽視されていく、そういうところに炭鉱災害の一番大きな原因があるのではないかと私は思う。それで合理化政策を進めていくならば、これと並行してやはり保安設備の整備というものが行なわれなければならぬ。ところが炭価を切り下げたい、生産だけを向上していきたいと思うので、どんどんとその生産ばかりが進んでいってしまって、そのために結局保安設備の整備というものが軽視されてしまう、取り残されてしまう。そういうところに今日の炭鉱災害の不幸というものがあるのではなかろらうかと私は思う。そういうように私どもは考えるわけです。そこで新五カ年計画というようなものも、どういうことがうたってあるか私にはわかりません、承知いたしませんけれども、基本的には、やはりいま申し上げますように保安設備の整備ということにまず重点を指向しなければならぬ。保安監督行政ばかりを強化するということだけではいかぬので、要は、やはり保安設備の整備ということに重点を持っていく。そういうことになりますと、これは監督行政の推進というよりも、やはりその保安設備をやらせる資金の裏づけということが優先しなければならぬと私は思う。ただ監督監督といって監督しましても、金がなければ設備ができないわけでありますし、設備ができなければ、炭鉱災害というものが次々と頻発していくという結果になります。保安監督行政というものを推進していただくことはけっこうでございます。あるいは先ほど仰せのように、教育、訓練をやっていただくのはけっうであるけれども、石炭合理化政策を進めていくなら進めていくだけ、一方においては、保安設備に対して政府があたたかい手を伸ばしていく、そうしてその資金の裏づけをしていくということにならないと、ただ訓練、教育というだけではどうにもならぬ不可抗力的な面も出てまいります。単に保安監督行政というものを強化するとか、訓練とか教育とか、そういうことではなくて——まあそういうことも必要でございますけれども、それに優先するものとして保安設備を整備していく資金の裏づけというものを国がどんどん積極的にやっていくということにならないと、これはどうしても所期の目的を達成することはできないと思うのです。ところが、そういう点はおろそかにされて、そうしてややもすると、どうもお役所仕事というものは監督行政に力が注がれていくというふうな傾向が過去においては非常に強かったと思う。ですけれども、それだけでは成果をあげることはできないわけでございますし、成果をあげなければ、炭鉱労働者がとうとい生命を奪われるということになりますから、そういう合理化と保安確保の一貫性というものが確立されなければならぬ。そういう点については、どういうようにお考えになっておるのか。これがなければ、何ぼ新五カ年計画を策定されても、これは全く絵にかいたもち、から念仏であって、所期の目的をほんとうに達成するためには、石炭合理化政策と保安確保の一貫性というものが確立されるということが、きわめて緊要な問題であると私は考えるわけです。そういう点について、ひとつ御所見を聞かしていただきたい。
  26. 河村篤信

    ○河村説明員 私どもの仕事は、先ほど来申し上げておりますように、どうすれば鉱山から災害を未然に防止することができるかということでございます。未然防止対策といたしましては、先ほどお話しございましたように、過去において発生しました災害というものをつぶさに検討いたしまして、どういう原因からそういう災害が発生したか、その原因を究明して、その原因を取り除くような施策を講ずるということが、結局われわれの担当して、おる仕事でございます。施設の改善、整備という問題も、過去の災害事例を究明いたしますと、そういう面から大きな災害が発生したことも確かに事実でございます。私が申し上げました監督指導の強化ということは、そういう法律や省令に規定されておる事項がどんなふうに実行されておるか、それを単に監督するだけではなしに、そういう問題をなくするためのいろいろな援助、アドバイスについても同時に指導の面で行なうということでございます。そういう意味監督行政の強化ということを申し上げたのであります。  そこで、いまお話がございましたように、だんだん合理化が進展いたしますと、そのために保安が逆に悪くなるのではないかという御懸念でございます。この点に対する私どもの考えは、基本的には生産と保安というのは表裏一体の関係でございまして、生産のことに専念するあまり保安がおろそかになるということでは意味がないということでございます。確かに御指摘のように、合理化施策の進展に伴いまして、えてして保安が無視されるというふうな懸念もなきにしもあらずでございますので、その点は、先ほど申し上げましたように指導の観点から、かりに炭鉱の保安設備に問題があるということであれば、われわれは単に施設が悪いということを指摘するだけでは意味がないので、その悪い施設をどうすれば改善できるかという、その辺のアドバイスも同時にやっているわけであります。具体的には、炭鉱施設整備ということについては金が伴うわけでありますから、その金が入りやすいような、そういう助成といいますか、指導といいますか、そういうこともあわせて行なっていく。現在、御承知のように合理化事業団あるいは中小企業金融公庫でこういった炭鉱の保安設備の改善のための特別融資を行なっておりますが、そういった機関を通じまして、もし保安上そういった問題がある場合には、できるだけ融資の面でそれが円滑に実行できるようにお手伝いいたした  い、こういうこともあわせて考えております。
  27. 河野正

    河野(正)委員 ことばの上では、なるほど生産と保安は一体でなければならぬということだと思うのです。ところが、現実問題としてそれが一体となっておらぬから、先ほど労働省から御指摘のように、中小企業というものは大企業よりも災害率が倍近くある、こういう現象が生まれてきていると思う。このことは、いま通産省が御指摘のように、生産と保安と一体でなければ意味がないということですけれども、現実はそのとおりいっておらぬで、中小企業のほうが大企業の倍の災害率がある、こういう結果になっておる。だから私は、ことばや演説ではなくて、現実に中小企業が生産に非常に無理をする、そのためにも災害率というものが大企業の倍になっておるわけですから、そういう問題をどうして解決するか。中小企業災害が多いその原因は、一体何だということはいろいろ究明されたと思う。思うけれども原因は究明されたが、それなら一体どうすればいいのだということになりますと、いま申し上げますように資金の面で非常に問題がある、ところが、なかなか資金面は解決しない、こういう問題が非常に多いと思うのです。ですから、理屈、理論としてはなるほど生産と保安は一体でなければならぬということはわかるけれども、生存競争ですからやはり生産をあげなければならぬ、生産をあげるためには無理をするということがあり得るわけですよ。それですから災害が減らない。そこで現実問題としては、そういうふうな現状というものを十分理解しながら、理論じゃなくて、積極的にどう解決するかという施策を推進していかなければならぬというように私どもは考える。その点については、なるほどお話のような面もございましょうけれども、そういう点がうまくいっていないから、やはり依然として災害が減らぬと思うのですよ。ですから、少なくともいままでの災害を急激に減少させるということになりますならば、いままで以上積極的に施策を推進していただかなければ、その成果をあげることはできぬと思うのです。ですから、いまのような施策で満足するということではとうてい所期の目的を達することはできぬので、われわれとしてはどうしても強力な施策の推進をはからなければならぬ。そういうことでありますと、少なくともいままでより斬新な手段をとらなければならぬということなんですよ。その意味で合理化と保安確保の一貫性というものをさらに強力に推進する使命があるということを私は強調しておるわけですから、単にいままでもそうやったのだからというような御理解でさらに新五カ年計画を推進していただいては、所期の目的を達成するわけに相ならぬと思う。でありますから、そういう点にはひとつ十分耳を傾けて、今後とも災害防止のために努力されることを強く要望いたしておきます。  そこで、今度は労働省にお聞きします。保安監督行政の推進という点が、たまたまいま炭鉱災害の中で出てまいったわけですけれども、この保安監督行政の強化というものに関連をして、先ほどちょっと触れましたけれども、一言御指摘申し上げて御所見を伺ってまいりたいと思います点は、私ども国政調査で地方に出まして、そして現場におきます基準局の局長から受けます要望というものは、大体いまの地方の基準局の陣容では思うように基準行政を進めるということは困難だ、そういう人的構成の問題が一つあります。それからもう一つは、機動力がないので、どうも思うように監督行政を推進することができない。大体この二点に集約されておる。これはどこに参りましても、まず訴えられますことはその二点だと思うのです。でございますから、この監督行政を強化して、そして今後産業災害というものをだんだん減少させていく、四十二年までには半減していくということでございますけれども、いまのような陣容と機動力で、はたしてその所期の成果があげられるものか、私どもは非常に不満に思っておるわけです。  そこで一、二の例をあげますと、この地方の監督署のごときは、職員が十名そこそこ、しかも事業所は数百の事業所をかかえておるというような例もあるようでございます。大体いまの地方の陣容ないし機動力で、はたして所期の行政を推進することができるというようにお考えになっておるかどうか。
  28. 大島靖

    大島政府委員 ただいま御指摘の基準監督職員の問題でございますが、現在私どもの組織では、職員全般で八千五百二十二人、監督官が二千三百六十二人の陣容をもって仕事をいたしております。年間監督いたします事業場の数が約三十万事業場でございます。ことに私どもの基準行政の対象が主として中小企業でございますから、膨大な中小企業の存在からいたしますと、まだきわめて不十分な状況にある。率直に申しまして、私どもも毎年この人員の問題では苦慮し、いろいろ対策を講じておるのでありますが、なかなか増員ということはむずかしいのであります。ただ、私どもといたしましては、やはり個々中小企業というよりも、むしろ中小企業の集団と申しますか、そういうものを全体として労働基準の確保、労働条件の向上を、この際大幅に早急に実現していきたいということで現在努力をいたしておるわけであります。ただ、産業災害防止関係の仕事につきましては、安全関係につきましては、いま申しました数字の中で技術系の職員が約千五百人程度であります。これは今後における確保の問題もますます困難になるであろう。さらに安全関係の仕事で、いわゆるボイラーの検査とか検定とか試験の関係に非常に忙殺されますので、出ていってその安全の監督をするということがなかなかむずかしいという現状も、御指摘のとおりでございます。  それらの点をあわせまして、私どもの今後の方針といたしましては、何とかして技術系の職員を確保する、また訓練、研修を進めていくということ、それからいま申しましたような検定、試験、検査等の仕事の区分けをしてまいります点、全般として大きな組織的に動かして、ことに中小企業の労働条件、安全の問題を仕上げていく、こういった努力をいたさねばならぬ。いま御指摘の職員の問題は、私どもの基準行政の根幹でございますので、今後ともくふうをこらして、できるだけ基準行政を伸ばしていきますように努力をいたしたいと考えております。
  29. 河野正

    河野(正)委員 せっかく通産省の鉱山保安局長が御出席でございますので、ちょっと話は戻りますけれども、先ほどから論議をいたしてまいりました炭鉱災害というものが、産業災害防止の中で非常に大きなウエートを占めておる。でございますから、私はそういう産業災害の問題の中で炭鉱災害というものが非常に大きなウエートを占めておるという点から見ましても、産業災害防止行政に関しましては、一元化する必要があるのじゃなかろうか、こういう考え方を強く堅持いたしておるわけでございますが、こういう点に対して、将来通産省の鉱山保安局長はどういうふうにお考えになりますか、ひとつこの際、いい機会でございますから、御所見をお聞かせいただきたい。
  30. 八谷芳裕

    ○八谷政府委員 ただいま保安行政の一元化ということについて先生からの御質問でございました。これは鉱山保安法が昭和二十四年に施行され、審議されます際にも、いろいろ論議があったようでございますけれども、私ども鉱山保安を担当いたしておりますものといたしましては、鉱山保安につきまして、この地下資源につきましては、炭鉱面の保安の状況を熟知しないのでありますけれども、生産と保安というものは、生産即保安であり、保安即生産であって、一つのポンプあるいは扇風機というようなものを考えましても、それぞれが密接不可分の関係になっておりまして、春闘よく車の両輪といわれておりますけれども、私は車の両輪と申し上げるよりもそのものではないか、かように考えるわけでございます。そういう点からいたしまして、従来鉱山保安法の施行以前から通産省で一元的に生産、保安というものを監督し、また助成、指導してやっておったわけでございますが、そういう観点からいたしまして、率直に申し上げまして、現在の機構のほうがよりいい監督並びに指導ができるのじゃないか、かように考えるわけでございます。いろいろ御意見もあろうかと思いますけれども、私といたしましては率直に申し上げまして、さように考えておる次第でございます。
  31. 河野正

    河野(正)委員 実は生産、保安というものが一体でなければならぬ、そういう意味から、行政もむしろ通産省が所管すべきだというような御所見でございますけれども、現実の問題として、この生産、保安というものが一体となっておらぬわけです。ですから、炭鉱災害というものが頻発し、重大災害というものが次々と起こっておる、こういう現象が生まれておるわけです。でございますから、私はやはり、そういう意味では実は今度の労働災害防止に関しまする法律も、私どもに言わせますならば、いままでも労働基準法がございますし、さらには安全衛生規則がございます。そういう法律なり規則によって当然労働災害というものは防止し得る、こう私どもは判断をしておったが、さらにそれをきめこまかくやるためには、この労働災害防止に関する法律をつくったほうがさらによろしいというようなことで、今度新しく法律提案される機運になったように理解をしておる。そういたしますと、従来生産、保安というものが一体でなければならぬ、それだから何も、依然として産業災害について、鉱山に関する面だけは通産省が担当しなければならぬということではないかと思うのです。どうすれば産業災害というものは防止されるかという点に、すべての起点は置かれなければならぬと思うのです。ですから、いままでのようにセクショナリズムに基づいてどうでなければならぬということではなくして、どうすれば産業災害というものが防止されるかという点にしぼって、行政というものは考えなければならぬと思う。ところが、今日の産業災害の中でも、石炭災害というものが非常に大きなウエートを示しておる。でありますから、そういう度態であるならば、やはり産業災害防止という一元的な行政によって強力に推進すべきではなかろうかというふうな判断を、私はするわけです。ですから、いままでがそうだからそうだということではなくて、いままではそうであったけれども、依然として産業災害はあとを断たぬ。特に産業災害の中で石炭災害というものが非常に大きなウエートを示しておるということであるならば、それならばそういう災害というものはどうすれば防止できるかというような点について、私は再検討する時期が来ておるんじゃなかろうかと思うのです。ですから、何も通産省の局長だからというような考え方ではなくて、どうすれば、いま産業災害の中で大きな比重を占めておる石炭災害というものを防止し得るかという考え方に立って、私はこの法律については再検討すべきではなかろうか。やはり今度の労働災害防止に関します法案につきましても、私はいままで労働基準法があったし、あるいは安全衛生規則があったしするわけですから、やはりよほど御検討願って、新しく法案提案するようなことに踏み切られたと思うのです。ですから、私は通産省としても従来の行きがかりを捨てて、どうすれば産業災害、石炭災害というものは防止できるか、こういう考え方でやはり十分再検討を加えられる時期というものが来ておるのではなかろうか、こういう意味で私は御指摘いたしておりますので、そういう意味でひとつお答えをいただきたい。
  32. 八谷芳裕

    ○八谷政府委員 おことばを返すようでございますが、私どもは、担当局長といたしまして、過去においてどうであったからというこだわりを捨てまして、先生指摘のとおり一人でも少ない死亡者、一人でも少ないけが人の現場をつくり上げていくというような観点から、ただいま申しましたような私の意見を申し上げたわけでございまして、生産と保安とが不離不即の全く一体のものであり、この行政におきましては、いろいろ合理化あるいは近代化のための助成というものがまた保安とも大きくつながっておるわけでございますので、この近代化、合理化というもの自体が、また保安を忘れて真の近代化、合理化は行なわれないというようなことを痛感しておるわけでございまして、決して先生のおっしゃるような観点からじゃなく、いろいろな点から申しまして、現在のような組織でやっていくほうがよりいいのではないか。ただし、最近の情勢におきまして、ややもすると現場においてもそういうところがございますが、生産重点主義というような形に見受けられる点もあるわけでございまして、また保安局からつながってまいります現地の監督機構が、通産局の中の一部課のような感じを持たせるというようなことも監督体制上もおもしろくないということで、差しあたり炭鉱災害の多い九北につきましては、昨年度におきまして監督局に昇格をさせていただきましたし、また通産局の付置をはずしていき、そうして現地には監督署というものを設置していく、こういう形で生産との不離不即の形を保ちながら、機構としては独立体制を持っていくというような姿でただいままで運営してまいったわけでございます。
  33. 河野正

    河野(正)委員 なるほど合理化政策の推進の中で、保安設備というものが密着していかなければならぬということはそのとおりだと思う。ところが、それが密着していかないから合理化政策だけ独走していく、そして保安設備の改善というものが取り残されていく。そこでやはりいまの炭鉱災害というものがなかなか減少せぬというように私は考えております。ですから、この生産と保安というものが一体でなければならぬということは、私は理屈としてわかるわけですけれども、しかし、なかなかそれが一体とならぬというところに今日の不幸というものがある。一体となっておれば、炭鉱災害というものは急激に減少しなければならぬところですけれども、なかなか減少せぬというところに、私はやはり問題があろうかというように考えます。しかし、その辺はお互いの見解の相違ですから、何もここでどっちがどうというわけにいかぬでしょう。でございましょうが、それならばこの新五カ年計画を御推進になって、その中でも目ぼしい成果があげられぬ、依然として炭鉱災害減少していかぬ、重大災害というものが次々に頻発していくというような事態がくれば、これは当然再検討なさらなければならぬのだと思うのですが、そういう時点ではどうですか。
  34. 八谷芳裕

    ○八谷政府委員 私も中途から参りまして、あるいは管理課長のほうからもいろいろお答えしたかと思いまして、その前後関係が十分に判明いたしませんけれども、ただいまの炭鉱災害が非常に多いということにつきましては、いろいろ考えてみなければならない対策があると思うわけでございます。その新五カ年計画の初年度から、特に保安教育、さらには保安不良炭鉱の廃止勧告制度の続行というような問題、それから基本的には省令の保安規則の抜本的な改正というようなことを、委員会を設けて手がけておりますし、さらに突っ込んだ災害の要因分析等も研究会で進捗させておるわけでございますが、こういう新五カ年計画の途上におきまして、さらにただいま先生からも御指摘がありましたように、ややもすると生産、保安が一体というようなことばは使いながら生産のほうに重点が置かれて、保安のほうがないがしろにされていくというようなことが決してないように、やはり保安もよくなるようなものが真の生産体制であり、合理化でなければならない、かように考えるわけでございまして、そういう点を、特に先生指摘の生産にばかり重点を置かず、保安も一緒に進むような体制をつくり上げてまいりたい、かように考えております。
  35. 河野正

    河野(正)委員 その点は見解の相違でございますけれども、いま産業災害の中で石炭災害というものが非常に大きなウエートを示しておる、そういう事態はわれわれはやっぱり憂慮しなければならぬ。それなら、そういう点についてはどういうふうに検討すべきかということをいろいろ考えをめぐらしますと、私はやはり強力に保安監督行政というものを推進していくためには、監督行政というものを一元化すべきではなかろうか、この点については意見の相違でございますからいろいろ言いませんけれども、いずれ新五カ年計画を御推進なさってどういう結果が出てくるか、その結果を見まして、私どももさらに検討をいたしてみたいと考えております。  それでは一応通産局終わりましたから、あとは留保して、昼からやらしていただきましょう。
  36. 秋田大助

    秋田委員長 本会議散会後再開することとして、それまで、この際休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ————◇—————    午後四時十二分開議
  37. 秋田大助

    秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。河野正君。
  38. 河野正

    河野(正)委員 午前中に引き続いて、若干残りの質問についてお尋ねをしていきたいと思います。  さきの質問の中でもお話をいたしたのでございますが、保安監督行政の強化に関連をして、実際現地の基準局、あるいはまた監督署の現在の人的構成ないし機動力で、十分な保安監督行政の推進ができるかどうかというふうな点について若干触れたわけでございますが、そういう質問に対しまして、若干局長からもお答えがございました。しかし現実の面を見てまいりますると、いまのような人的構成あるいはまた機材、さらには機動力、こういう状態では、ややもいたしますと、事故が起こって後の保安監督行政というものは可能であるけれども、しかし実際に未然に防止するということについては、なかなか困難ではなかろうか。たとえば、さきの答えにもございましたように、監督官にいたしましても、二千三百二十二人の監督官が三十万の事業所を担当いたしておるということでありますと、大体、監督官一名について約百五十の事業所を担当しなければならぬ、ということになりますと、私はそういう人的構成——あるいはまた地方に参りますとジープもなければ自動車もない、単車で事業所を回っておるというような実情も聞いておりますし、そういうことでは監督行政の強化もあり得ないし、また労働災害を未然に防止するような行政指導が可能かどうかというようなことにつきまして、私は若干疑問があるというふうに判断をするわけです。これは現地の声でもございますが、そういう点について、このままで労働災害を未然に防止するような行政処理というものが具体的に可能であるのかどうか、あらためてお答えを願いたいと思います。
  39. 大島靖

    大島政府委員 今朝来御指摘のあった職員の監督指導活動についての問題で、ただいまあらためて再度の御指摘でありますが、確かにお話のとおり、現地の局なり監督署の実情というものは非常に苦しい状況でありますが、特に機動力につきましては、自動車、ジープあるいは単車、ことに単車の整備につきましては、毎年の予算で五カ年計画をもって全般的に行き渡らせるようにだんだん整備をいたしております。人員の点もさることながら、機動的な活動を可能ならしめるような機械力の整備、あわせて監督官が現場へ出ていきますための障害になっております机上事務の整備、事務所内での事務、各種の書類の整備とか、そういったものを思い切って簡素化していくといった問題、それから全般的に労災業務というものが非常にふえてまいっておりますので、そういった面の手当ての問題、それからけさも申し上げましたように、指導監督行政のやり方自体につきまして、なるべく効率的に行なえますように企業集団としての形でつかまえて、労働条件を急速に向上せしめるような施策をとってまいりたい、こういう考えで臨んでおりますが、いま御指摘のように非常に重要な問題でございますので、私どもも、今後ともその点につきまして十分な意を用いて努力をいたしてまいりたいと思います。ことに災害防止の活動については、技術職員の確保と相まって、先生指摘のとおり十分の努力を重ねたいと存じます。
  40. 河野正

    河野(正)委員 いまの点についてはいろいろお答えをいただきましたけれども、私ども国政調査に参りまして、いろいろ要望を受けるわけでございますが、特にいまのような要望が強いわけであって、私どももそういう要望から察知いたしますると、いまの人的構成、機材、さらには機動力ではなお不十分な点が多いのではなかろうか、そういう感じを持ってまいっておりますので、この点はさらにひとつ御善処方を強くお願いをいたしておきたいと思います。  同時に、その点に若干関連いたしますが、労働災害防止に関しまする技術的事項については、先般もいろいろと御論議がございましたが、安全管理士及び衛生管理士が、事業主に対しまして指導援助を行なうということに相なっておるわけでございます。この技術的な指導を行ないまする安全管理士及び衛生管理士が、実際に得られるかどうかというような点につきましても、若干さきの委員会において御論議があったようでございます。その際非常勤でというようなお話もあったようでございますが、今日、労働災害防止のために、ことに今度の法律案提案しなければならなくなった経緯、従来も労働基準法あるいはまた安全衛生規則、そういうような法律ないし規則である程度やれるわけでございますけれども、それだけでは十分でないというようなことで重ねて法律提案という経緯に相なったわけでございますが、そういう事情等を考えてまいりまする場合に、さきの委員会でお答え願ったような、特に重要な意義を持ってまいりまする安全管理士及び衛生管理士等が非常勤のような形で、はたして十分な成果をあげ得るのかどうか。私どもこの法案を単にから念仏に終わらせてはなりませんし、この法案が成立いたしまする以上は、さらに労働災害防止については大きな成果をあげていただかなければならぬ。そういうたてまえから、先般もお答えのとおりで、はたして適切な災害防止が達成されるのかどうか、私も若干疑義等を持っておりまするが、そういう点に対しましてどのようにお考えでございますか、この辺も明らかにしてお答えをいただきたいと思います。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕
  41. 大島靖

    大島政府委員 ただいま御指摘の安全管理士並びに衛生管理士は、今回の法案による新しい組織の骨格をなすものだと思うわけであります。先生指摘のように非常な重要性を持っております。この安全管理士、衛生管理士というものは、十分な経験を持った高度の技術者を得たいと考えておるわけでございます。たとえば資格にいたしましても、大学、高専におきまして工学とか医学の課程を修めた上、さらに十年くらいの現場経験を持つ者、あるいは大学、高専以外におきましても、やはり必要な経験と試験を経た者、こういった形で高度の技術者を確保いたしたいと思っておるわけであります。もちろん発足当初急に得られない場合におきましては、一部パートタイムということも考えられましょうが、パートタイムのような形では決して組織の指導力というものは、いま先生指摘のように得られないと思うのです。どうしても高度の技術者を確保いたしたい。この点は基本的な組織の柱でございますので、ぜひとも、むずかしいではありましょうが、先生の御指摘のような方向において措置いたしたいと考えております。
  42. 河野正

    河野(正)委員 これはいま局長からもお答え願いましたように、この法律運営していく上におきましては大きな柱にも相なってまいるわけでございますので、ぜひひとつ希望の方向で実施ができまするように御配慮をいただきたいと思います。私どもは、この法案提案されました趣旨につきまして同意することにはやぶさかではございませんし、同時に、この法律が成立いたしました暁におきましては、その法律目的といたしまする成果というものが十二分に発揮できることを心から期待をいたすわけでございますが、しかしながら、この今日までの労働災害産業災害というものを見てまいりますると、起こるべくして起こった、たとえば安全施設というものが不十分である、安全設備の上に非常に大きな欠陥がある、あるいはまた不可抗力的な点から起こるべくして起こったというような産業災害労働災害もございます。なおまた、目に見えぬような形で、真綿で首を絞めてくるようなかっこうで起こってくるような災害もあろうかと考えます。そこで、若干小さい問題になりますけれども、次に具体的な点につきまして二、三お尋ねを申し上げておきたいと思います。  これは午前中も炭鉱災害の点につきまして御指摘を申し上げたのでございますが、同じように最近目立って起こってまいっておりまする労働災害の中に、これはさきの委員会においても一、二触れられた点でありますけれども、たとえば演劇、芸能界におきまする労働基準法違反、あるいは安全衛生規則違反、こういう事例が幾らかございました。一番近くで目立ちます点は、三十八年の三月三日の大阪劇場におきまする四十四人の重軽傷者を出しました宙づり舞台落下事件というのがございます。あるいはまた三十三年の二月には、東京の宝塚劇場でステージの幕に引火いたしまして劇場が全焼し、三人死亡、十六人が負傷するという不祥事件もございます。あるいはまた三十三年の四月におきましては、同じく宝塚劇場で、ドレスのすそが巻き込まれて、鉄製ベルトのためにおなかが切断されるというような不幸な事件もございました。このように演劇界では大なり少なりの事件が今日まで頻発をいたしてまいったわけでございます。ややもいたしますと、こういう職場では安全衛生に対しまする感覚が非常にルーズになっておる。そのために不祥事件が次々と発生をする。こういう点についても、大体こういう演劇界では、安全衛生規則がややもするとルーズになっておるというのが一般的な見方でございますから、私は行政指導でこういう問題はある程度未然に防げるんじゃなかろうかと思うけれども、なかなか次から次へと与件が発生してくる。こういう点を考えますと、先ほど私が幾たびも指摘いたしましたように、いろいろ新しい法律ができる、新しい制度ができる、新しい制約ができるけれども、なかなか運営の面については問題があるというような点を物語る一例ではなかろうかというふうに考えるわけでございまするが、こういうささいなような問題でございますけれども、結果的には四十四名も重軽傷者が出る、あるいは十六名以上の死傷者が出るとかいうような非常に重大災害になるわけであります。ですから、こういう点に対してどういうふうにお考えになっておるのか。大企業のような問題ではないのでございますけれども、結果的に起こってくる現象は、非常に重大な現象が起こってくるというようなことでございますので、こういう点についても、この際反省する意味においてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  43. 大島靖

    大島政府委員 ただいまお話しの演芸界と申しますか、芸能界における安全衛生の問題、この問題は、いまお話しのありましたように、いまここで御質問をいただきますこと自体、私どもに対する非常に強い反省になるわけでございます。ことに先般、三月大阪において起こりました事件等は、私は非常に残念に思っております。芸能界における安全衛生の問題は、御承知のとおり、非常に狭い舞台及び舞台裏で仮設の大道具小道具、いろいろな構築がございます。したがって、非常に安全上危険な点をはらんでおるわけであります。先般大阪で事件が起こりました際も、直ちに主要都市におけるそういった劇場を一斉臨検いたしまして、不備なものについては厳重な注意を促したところでございますが、もちろん芸能界における労働関係は、一般とは若干特殊な関係は確かにございましょうけれども、やはり事安全とか衛生とか、ことに人命に関するような問題でございますので、ただいま河野先生から御指摘のございましたように、私も、今後とも芸能界における安全衛生の問題につきましては全力を尽くして、そういう災害の起こりませんように努力をいたしたいと考えております。
  44. 河野正

    河野(正)委員 実は私も東京で一流の劇場を見せてもらったのです。そういたしますと、楽屋なんか行ってまいりましても、実際に火災でも起これば、とても避難できるような状態ではないという印象を受けるのです。それからまた、換気装置だって不十分でございますし、小さい部屋にたくさんの芸能人が入っておる、そうして自分の出番を待っておるというようなことで、実際ああいうふうな大事故が起こったのでございますけれども、その後安全衛生に対します行政指導というものが、ほんとうに行なわれておるのであろうかというふうな疑問を強く持ったわけです。そこで私は特にこの問題を取り上げたわけでございますけれども、あの事件以来、政府としても安全衛生に対します指導を強化したというふうなことでございますが、なお納得のいかぬ点が、私しろうとでございますけれどもございます。これは常識的にも言えるわけでございますけれどもございます。でございますから、さらにひとつ局長も実際をごらんになって、実際どういう実態に置かれておるかということを十分御認識いただいて、ひとつ格段の御指導をやっていただきたいと思います。  それからもう一つは、労働基準法違反の事実がきわめて顕著な例がたくさんございます。たとえば演劇界、放送、テレビ、こういう職場におきます深夜げいこというのは、もうかなり常識的な行事になっておるわけです。特にタレントの中にはたくさん女子のタレントもおるわけですから、そういう女子のタレントの深夜げいこというものが、演劇界あるいは放送、テレビなどにおいてはやや常識的な行事になっておる。そういうことがだんだん災害に結びついてくるということであるといたしますならば、私はこういう点も非常に重要な点だと思うのです。ですけれども、こういう点については行政指導を行なったことを伺ったことがございませんが、実際にはもうこういうことが日常茶飯事に行なわれておる。そして事故が起こっていろいろ騒ぐけれども、私は、そういう面は、やはり事故が起こる前に未然に防止するという意味指導が当然行なわれなければならぬというふうに思うわけですが、こういう方面におきます労働基準法違反とも見られます現象については、どういうふうにお考えになっておりますか。
  45. 大島靖

    大島政府委員 芸能界におきます深夜業の問題でございますが、先般大阪の劇場における災害が起こりましたときも、やはり深夜げいこの事実がございました。もちろん災害の直接の原因施設の不備にあったわけでございますが、いま仰せのとおり、こういった問題についてのけじめのなさが、やはりひいては安全とか衛生の問題にも関連いたすわけであります。芸能界における労働関係は、いま申しましたように非常に特殊な面もあることはあるわけでございます。しかし、たとえば集団的に、いわゆる有名俳優でない一般的な歌劇団の少女諸君でありますとか、そういった問題については、やはりこういった点の考慮が十分必要なのであります。もちろんそれに関連するところは非常に多いと思います。たとえば大阪の事件のときに調べました深夜業の問題にいたしましても、なぜその深夜業をしなくてはならなかったかということを調べてみますと、歌劇の演出につきまして、スターが出てまいりまして一緒にけいこをしなければいかぬ。ところが、そのスターが、汽車がおくれて、おくれて参ったというような事情もあったようであります。そういった関連する面も非常に多いと思いますけれども、やはり基本的に、ことに女子とか年少者については格別な配慮を経営者として払わなければいかぬ。そのことは、むしろ労働基準法以前の問題ともつながる問題である。あの事件が起こりましたあとにおきましても、芸能界においてこの問題についての注意を強く喚起いたしたのでありますが、引き続き、こういった問題につきまして、特殊事情は十分考慮しつつも、基本的な面についてけじめをつけていくという方針で進めてまいりたいと思います。
  46. 河野正

    河野(正)委員 ところが、実際問題としては、このタレントというのがほとんどプロダクションに所属しているわけです。そうしますと、規制する、規制するといっても、プロダクションではまるがかえですから、できるだけ仕事をさして、そうして経営を維持していこうという考え方でございますので、いろいろスケジュールなど見せてもらったのですけれども、もうびっしり詰まっている。そういう状態ですから、ビデオなんかとるのは、夜間が最もよいチャンスになっておるわけです。ですから、それぞれのタレントは、日中はフルに現場に出て活動し、夜間は主としてテレビその他のビデオをとる。そのためにびっしりスケジュールが詰まっている。ところが、最近は年少者のタレントが昔と違って非常に多い。女の子だって男の子だって、年少の未成年のタレントがざらである。そういう状態ですから、いろいろ行政指導は行なわれていると思うけれども、今の社会情勢からいいますと、なかなか防止し得るような状態ではないような気がする。ないような気がするで済めばよいのですけれども、結局そういう中で災害が起こるということになると重大な事態ですので、何とか名案がないではなかろうかということで私どもいろいろ心配をした一人なんですが、こういう点についてはもう少し積極的に御研究になる必要があるではなかろうかと思うのです。一つの大きな研究課題だと思うのです。ですから、そういう点は研究課題として、さらに災害防止法案も上程されたことでございますから、この機会に積極的に御検討を願って、そういう防止ができるような具体的な方策をぜひ見つけてほしいと思います。  もう一つ、労働省にお伺いをしておきたいと思います点は、オートメ職場の疲労についてです。このこと自身は、広義の意味では災害ではないと思う。しかし実際問題として、これがだんだん発展してきますと、労働災害に結びつく可能性が当然起こってくるわけですから、そういう意味で一、二、オートメ職場の疲労についてもこの際お伺いをして、どのような方策でございますのかひとつお尋ねをしておきたいと思います。  事務や工場の急速な機械化、こういうような機械化に伴って、そういう職場で働きまする人たちの間にオートメ職場の疲労という問題が最近非常に大きくクローズアップされてきましたことは、御承知のとおりだと思います。これには大体二つの問題があるようでございます。一つは、電子計算機のキーパンチャーのように密度の高い作業を繰り返す。そのために目や四肢、手指、精神上における刺激で大きな疲労を来たすというような一面がございます。もう一つの面は、今度は逆に鉄鋼や電力、石油工業等にございまする中央制御室の監視係、こっちのほうは刺激がなくて、無刺激によって起こってくる疲労、こういうふうに非常に刺激が強過ぎて起こってくる疲労と、一つも刺激がない、人間衛星みたいに全然刺激がないために起こってくる疲労、こういう二つの問題点があろうかと思います。最近新しく出てまいりました職場の一つのニューフェースでございましょうけれども、こういう問題が、広い意味ではこれも病的になりますと労働災害でございましょうし、それからそれが発展していきますと、具体的に労働災害に結びつく、疲労のために災害が起こってくるというようなことで、今後こういう問題は新しい問題として提起されてくると思うのです。こういう問題について今日どのような方針で臨んでおられまするか、ひとつお伺いをいたしておきたいと思います。
  47. 大島靖

    大島政府委員 ただいま御指摘の最近の機械化に伴う労働衛生の問題でございますが、御指摘のように、一面において労働密度が非常に集約、集中的に行なわれますための各種の障害、それから一面におきましては非常に作業が単純化するための、これはどっちかと申しますと精神衛生上の問題、こういう問題が逐次起こってまいっておるわけであります。たとえばいま御指摘の、ただ監視だけをしておる作業、あるいはベルトコンベア・システムによる作業でありますとか、あるいはまた、いま御指摘になりましたキーパンチャーの作業でありますとか、こういう各種の面で労働衛生上の問題となりつつあり、あるいはまた将来ならんとする問題がだんだん出てまいります。私どもといたしましては、基本的にこういう肉体的な、あるいは精神的な労働障害についての基本的な研究、物心両面にわたっての検討を労働衛生研究所に行なわせておりますが、また同時に、現実の問題といたしまして、たとえばキーパンチャーの問題につきましては、昨年来私どものほうもやはり何らかの措置を要することではないかということで詳細な調査をいたしまして、さらに現在計算機を使っております会社が全国で六百数十社ございますが、その使用いたしております会社がそれぞれIBMとユニバック、この両方のユーザー協会に所属いたしておりますので、これを招致いたしまして、私どものほうの専門家と一緒に検討させまして、そのキーパンチャーなるものの各種の検査の問題、それからパンチの速度の問題、労働時間の問題、休憩時間の問題、そのパンチをいたします作業場の照明あるいは広さ、座席その他の問題、あるいはさらに根底になりますような職場における人間関係の問題、こういう問題についてユニバックとIBM両協会の申し合わせ事項をつくりまして、この六百数十社に指示いたしまして、同時に、私どものほうも全国の基準局に指示いたしまして、そういう線で進めております。いま申しましたように、労働衛生研究所におきまする基本的な研究と相まちまして、必要に応じてこういう行政措置を講じてまいりたい、かように考えております。
  48. 河野正

    河野(正)委員 いま若干お答えをいただいたわけですが、御承知のように、キーパンチャーはいろいろと腕あるいは四肢の疼痛、しびれ、またそれが高じてまいりますとノイローゼになる場合もあるし、さらにはキーパンチャーが高いビルディングから飛びおりて自殺をしたというようなことも、このところしばしば報道されておるようであります。そういうことから、いま労働省お答えのように、行政措置に基づきまする指導というか、通達と申しますか、そういうものが出されたと思いますが、実際そういういろいろな通達ないし行政措置が行なわれました後、目立つべき効果が出てきたかどうか。この点は、今度この法律提案されましても、やはりそういうような指導、援助というものが行なわれて成果があがってこなければいかぬわけですから、そういうものが一つの行き方だと思うのです。それでありますから、労働省の行政措置的な指示が行なわれた以後、この健康管理その他の面に好影響が出てきたかどうか、こういう点について、おわかりでございますればひとつお示しをいただきたい。
  49. 大島靖

    大島政府委員 ただいま申し上げましたように、キーパンチャーについての標準的な労働衛生上の守るべき事項につきまして、最終版的なものができましたのが昨年の暮れでございます。それを実際に移しましたのが、本年に入りまして二月ごろであったかと思います。そしてその中に、随時キーパンチンャーの健康状況精神状況を調査いたしまして、その推移を見るという事項も入っております。現在実施いたしましてまだ年月がたっておりませんので、いましばらく待たなければ、その身体的、精神的な反応というものが見られないと思いますが、私ども関係者寄りましたときのあれでは、大体これでいけば、相当そういったキーパンチャーの訴えも減るのではなかろうかと思っております。いましばらく時日をおかしいただいて、その検査の結果を待ってまた御報告申し上げたいと思います。
  50. 河野正

    河野(正)委員 どのような結果が出てまいりましたか実は承知したかったわけでありますけれども、なお実施が二月ということでございますから今後の推移を待たなければならぬと思いますが、いずれにいたしましても、キーパンチャーの機械が全国で約八千四百台、パンチャーの数は一万五百人、こういうふうにいわれておりますし、その一万五百人のパンチャーの中で四七%程度が健康上の故障を訴えておる、こういうふうにいわれておるかのように承知をいたしておるわけであります。  そこで大体調整の基準は、いま労働省が指示をいたしておりまする程度でいいのではなかろうかというふうなお答えもございましたが、また一方におきましては、自主調整だけでは思うように効果があがらないので、むしろ調整基準の再検討というものが必要ではないかというふうな声があるやにも承知をいたしておるわけです。そういたしますると、調整基準の再検討というものが必要であるならば、すみやかに再検討していただかなければならぬだろうし、またそれは一部の声かどうかわかりませんが、労働省のほうでは、いま行政指導をいたしておるところの調整基準でよろしいということでございますれば、その基準でそのまま推移を見るということでございましょうが、しかし一部では、むしろ調整基準の再検討が必要じゃないかというような声があるやに承知をいたしておりますので、その辺の事情はどういう事情でございますか、お伺いをいたしたいと思います。
  51. 大島靖

    大島政府委員 昨年末こしらえました基準で私どもはいけるのじゃないかと考えております。ただこれは、いま先生も御指摘になりましたように、その後の健康診断によります結果を待たなくては、まだ正確には申し上げられないわけでございますが、私どもとしては、これでいいのじゃないかと考えております。しかし、必ずしも固執するつもりはないので、健康診断の結果を待ってさらに検討してみたい、かように考えております。
  52. 河野正

    河野(正)委員 その点は業界においてもいろいろ意見があるようでございますから、十分ひとつ傾聴していただいて、そしてできるだけ労働災害防止できるように御善処をいただきたいというふうに希望を申し上げておきます。  それから午前中からお待ち願ってて非常に恐縮でございましたが、これは労働省と直接関係はございませんけれども、少なくとも労働災害というものを防止していこう、そのために積極的に政策を推進していこう、そういう方針で労働災害防止に関する法律案というものが提案をされたわけでございます。ところが、一方におきましては、むしろ自己防衛のために、この災害が起こることもあえて辞せないというふうな考え方で起こってまいっておりまする案件もございますので、この点につきまして若干お尋ねを申し上げてみたいと思います。   〔井村委員長代理退席、委員長着   席〕  それは韓国の警備艇によりまする日本漁船の無差別捕獲というものが相次いで行なわれてまいりまして、この点につきましては、当該漁船はもとよりでございますが、国民もきわめて大きな関心を持っておりまする点でございます。ところがこの三月、福岡市を中心といたしまする中小水産会社十七社の船員、約千三百五十名でございますが、この組合が、いまのままでは出漁いたしましても片っ端から無差別捕獲を韓国艇でやられますから、生命も財産も保障されぬ、そこで自己防衛という立場から、韓国艇が捕獲しようとする際に、その一部が韓国艇に体当たりをして、その間に脱出をしようというふうな強硬な自衛のための声明というものを政府に提出した、こういう案件があるわけです。政府としては、積極的に労働災害というものを防止していこう。一方では、政府の韓国に対しまする外交上の問題もございましょうし、また海上保安庁の警備の問題もございましょうが、そういう点がなまぬるいので、みずから体当たりをやっていこうという、こういう政府の方針とは逆の方向というものが打ち出されたというふうな問題がございまして、私どももこの点につきましては非常に憂慮いたしておるのであります。こういう点について、それぞれ関係各省御出席でございますから、ひとつ御報告等をこの際お願い申し上げたい、かように考えます。
  53. 前田利一

    ○前田説明員 ただいま先生の御指摘のございました韓国側によります日本漁船の拿捕に対しまして、最悪の場合自衛の措置として体当たりも辞せない、そういうことが船員組合の声明としまして三月十八日に出されまして、私ども承知いたしておりますし、また組合の代表の方からも外務省のほうにそういう御意向が伝えられてまいったわけでございますが、私どもその直後から、そういう御方針に対して申し上げてまいってきておりますことは、ちょうど現在日韓両国の間にそういった拿捕だとかいう不祥事件が将来にわたって起こされることがないように、日韓の漁業問題というものにつきまして、双方の漁民がともに繁栄し、ともに安定した操業をやっていけるように、国際先例をも十分に考えに入れて、漁業協定というものによりましてこの問題を解決してまいろう、こういう方向で現在しんぼう強く日韓会談が続けられてまいっております。現状からいたしまして、また特に最近に至りましては、韓国側においても、日本側がいかに漁業問題の解決に重点を置いているかということを十分に了解するようになった、そういうことで新しい提案をしてまいるというような動きもあるやに伝えられておるこの時期に、そのような体当たりという性急な行動に出られることはぐあいが悪いのじゃないか。その性急な行動に出られることのないように希望はしておる次第でございまして、この点、三月十九日参議院の予算委員会におきまして外務大臣がかねて御説明申したとおりでございまして、現在もその問題の根本解決、安全操業というものは、日韓会談の漁業問題が双方の納得できる協定によって解決されていくことが望ましいので、まさにその方向に努力を重ねておるわけでございます。そのきわめて微妙な時期に体当たりという性急な行動が行なわれないように希望いたしたい、こういう考えでおります。
  54. 河野正

    河野(正)委員 漁業協定が締結されなければ安全操業について保障されないというような意味に聞き取れたわけですが、そういうように理解してよろしゅうございますか。
  55. 前田利一

    ○前田説明員 現在日韓会談が進められておりまして、先ほど御説明いたしましたように、大きな方向としましては双方の理解と認識が深まりつつある時期に、依然として韓国側が時に応じて日本漁船を拿捕して、さらに乗り組み員を長い期間にわたって抑留するという事態が絶えないことにつきましては、私どもまことに遺憾に考えておる次第でございます。そういう不祥事件の起こりますつど厳重韓国政府に対して抗議をいたしておりまして、そういうことのないように善処してほしいということは、重ねて繰り返し申しておるところでございます。そういう日本政府考え方というものが韓国側に十分理解されていきますならば、当然そういう不法不当な李承晩ラインに基づいての拿捕ということはあり得ないわけであります。遺憾ながら現実の問題としては、そういう不祥事件がときおり起こります。しかしながら、そういう事態を根本的に将来長きにわたって解決いたしますためには、双方が受け入れられる漁業協定を締結することによって初めてその問題の基本的、根本的な解決があり得る、かように考えております。
  56. 河野正

    河野(正)委員 その根本的な解決は漁業協定の締結だということかもしれませんが、実際問題として、この李ラインの設定というものの合法、非合法は別としても、李ライン外でも不法不当な拿捕が行なわれるというようなことについては、どういうふうにお考えになっておるのか。この辺はやはり明確にしていただかぬと、実際一千三百五十名の福徳船員労働組合でございますか、この諸君の生活権というものが脅かされるわけでございますから、この点はきわめて重大だというふうに考えるわけですが、そういう点についてはどのようにお考えでございますか、この際お聞かせをいただきたい。
  57. 前田利一

    ○前田説明員 ただいま先生の御指摘になりました問題、根本的に申しますと、公海上に一方的に管轄権を及ぼす李承晩ラインというものは、現在の国際法、国際慣行から考えましていかにも不法不当のものでございまして、日本側としましては、これは一九五二年の一月十八日に李承晩大統領の時代にこれが宣布されまして、以来繰り返しその不当不法なるゆえんを指摘してまいり、そういった不法不当なるラインの撤回がなければ、日韓の漁業問題の解決ということはあり得ないのだということを繰り返し申してきておるわけでございます。いずれにしろ、公海上に一方的な管轄権を及ぼす、その海域に入った漁船を拿捕するということは、まことに根拠のない不法なものでございまして、これがいわゆる李承晩ラインの内であろうが外であろうが、いずれにしろそのラインそのものが不法不当のものでございまして、かねて日本側としてはその点を指摘して、抗議を重ねてまいっておるわけでございます。時によりまして、いわゆる李ラインの外ですらその拿捕が行なわれておるということは、ただいま先生の御指摘のとおりでございますが、そういった点につきまして、私どもは、水産庁、海上保安庁とも御相談の上で、拿捕地点というものがどこであるかというようなことも十分確かめました上で、韓国側に抗議をしておるわけでございます。広い海上のことでございまして、先方の調査によりますと、ラインの中だというような事例が間々ございまして、この辺はっきりした結論が出にくい、いわゆる水かけ論になる場合もございますが、根本的には、日本政府としまして、李承晩ラインというような、公海上に一方的な管轄権を及ぼすということを認めておらないわけでございます。李ラインの外で拿捕が行なわれることがけしからんのはもちろんのこと、李ラインの中におきましても同じくその不法なる点においては変わりがないわけでございまして、この点を繰り返し抗議して、すみやかに釈放、送還が行なわれるよう、さらにそういう事態が再び起こらないように韓国政府に申し入れてきておるわけでございます。
  58. 河野正

    河野(正)委員 その点は外交上の処置におまかせする以外にないと思うのですが、もう一つ問題がありますのは、これは海上保安庁のほうにお尋ねをしたいと思いますが、それは、巡視艇が常時警備配置についておって、拿捕が行なわれるというようなことが防止できぬのかどうか。いまいろいろ外務省からもお答えがございましたが、できれば外交折衝において解決していきたいのでございますが、ところが、現実にそれだけで十分な解決が行なわれぬということになれば、これは現実にそういう不法不当な拿捕が行なわれないように善処していただかなければならぬ。こういう点について、海上保安庁のほうではいかがな処置をとっておられるのか、ひとつこの際お伺いしておきたい。
  59. 樋野忠樹

    ○樋野説明員 お答えいたします。私どもは、昭和二十七年の閣議決定で巡視船を李ライン内に派遣いたしました。当初韓国の警備艇の出動は、わりあいに度数のひんぱん度が少なかったわけでございますが、最近は常時三隻から五隻くらいの体制で李ライン内のパトロールをやっているようでございます。したがいまして、私どものほうといたしましても、これらの拿捕防止一つの動静把握の方法といたしまして、船そのものを発見して、これを見失わないようについていくというような方法をとりまして、しかも韓国警備艇の進路、速力等をそれぞれの船に巡視船から知らせて警報を発しているわけでございますが、何ぶん広い海域でございまして、これが盛況時には約三百隻の船が出るような状況でございますので、これらの海域において拿捕が絶対に起きないということは、先生の御指摘のとおりまことに至難な業でございます。私どもといたしましては、向こうの警備艇の拿捕に対して、七管区、十管区、八管区、また三、五等の隣接管区からも随時応援の態勢をとりまして、拿捕防止の万全を期したいと努力しておる次第でございます。
  60. 河野正

    河野(正)委員 もう一つ問題となっておりまする点は、それは第十五進栄丸が捕獲をされました際にも現実に起こってきた現象でございますが、最終的な指令として、船員が海に飛び込むことを司令される。そういたしますと、大体出漁いたしまするときは非常に寒い、そういう時期に海に飛び込まれますと、厳冬の海の中でございますから、海の中へ飛び込んだだけで生命そのものが保障できないというふうな事情もあって、海上保安庁がせっかく守ってはくれるが、いま申し上げますように、最終的には海に飛び込めというような指令で、非常に非時代的な、前時代的なといいますか、そういうふうな処置しか行なわれぬということに対しまする不備も若干あるようでございます。そこで、これは技術的な問題だと思いますが、救助するにいたしましても、何かもう少しうまい方法がないものか。これはやはり中小漁船船員の生活権の問題でございますので、かなり重大な問題だと私は思うのです。ところが、いま申し上げまするように、前時代的な処置しかとられぬというようなことに対しまする不満も非常に強いようでございますが、そういう点についてはいかがでございますか。
  61. 樋野忠樹

    ○樋野説明員 第十五進栄丸の船員の海中に飛び込んだ件でございますが、私どもの巡視船といたしましては、厳寒の時期等において海中に飛び込めというような指示は実はいたしてないのでありまして、福徳船員組合その他の組合でもそういうようなことが流布されておりますが、どの船からもさような指令をした事実はないのでございますが、やはり飛び込んだときに多分そういうふうな感じを受けたのではなかろうかと思っております。そういう前時代的なことは、当然常識的に考えても人命の尊重、また人命の保護に当たります私どもといたしまして、さような命令は出すわけがございませんので、極力そういうことでない方法といたしまして、煙幕を展張して逃走する、船舶の影を向こうが見失うようにする、あるいはまたどうしても接近しなければならないような場合には、当方の巡視船が警備艇との間に割って入りまして、ジグザグコースをとりまして、公船同士の衝突はいたし方ないといたしましても、なるべくそういうふうな拿捕に時間をかけて、その問に小さい船を逃がす、そういうふうな方法もとっております。それからまた、できるならば当方から洋上において漁船に横づけいたしまして、乗り組み員を移乗させる場合もありますが、できなければ横抱きにいたしまして逃走するというような方法、あるいはまた横抱きしないでも、ロープを渡して引っぱって、李ライン内は先ほど前田課長の申しましたように問題はないのでありますが、ライン外の方向に向けて最短距離を逃走する、それからまた、場合によりましては現実に船員も移乗させまして、私どもの巡視船の乗り組み員がからになった漁船に乗り移りまして、海上保安庁の勢力の完備——完備しているということは言えないのでありますが、逃走したこともございます。けさほども季ラインにおきまして漁船を引っぱって逃走いたしております。さような状況で、できる限り実力を行使しないでなし得る最善のものは、私どももこの十有一年の間に経験を積みまして、もうあとは、どなたがお考えになってもこれ以上は実力を使わなければとてもむずかしいという限度までに努力しておるつもりでございますが、しかし自分のしておることは、また人様から見れば非常にふがいない点もあろうかと思いますので、その点は十分自粛自戒しながら最善の方法はないかと思いまして、その一つの方法といたしましては、常時警戒警報を出しておれば漁船の操業ができないのはもちろんでございますので、できるだけ操業ができ、しかもいよいよの段になりましては、完全に脱出でき得るだけの期間の余裕を見まして、厳戒警報、警戒警報等を出しているわけでありますが、それらを出すことにつきましても、きわめて小刻みに、いろいろ小さいことまで漁船の乗り組み員あるいは漁労長、船長、巡視船艇長等、あるいは管区本部の職員たちが寄りまして、年数回会合を持ちましていろいろ研究しておるわけでございます。将来とも先生の御指示に従いまして、十分なる努力を傾けていきたいと存じます。
  62. 河野正

    河野(正)委員 この問題は、外交上の問題として解決することが最も望ましい。それができなければ、生活権の問題等にもつながっておりますから、したがって不当不法な拿捕が行なわれないように、海上保安庁で指示するということが必要だろうと思う。そういう意味でいろいろお尋ねをしたわけです。たとえば、いま海の中に飛び込めということを言うたとか言わぬという話もありました。どっちが真偽かわかりませんが、最近では韓国側がそれを利用して、韓国側の警備艇のほうが飛び込めといって、向こうの警備艇のほうの船に掲げるというようなことも、実は私ども承っておるわけです。けさの事件の真偽は別としても、そういう話もございます。いずれにいたしましても、いま申し上げるように解決方法は二つしかないのですから、外交上の問題は外交上の問題として、そういう事態が起こらないように、またさらに海上保安庁のほうとしても、不幸にしてそういう事態が起こってきたならば、犠牲者が出ないように最善の方法を講じていただきたい。同時に大臣は、いまこの法案というものが、労働災害を積極的に防止していこうという意味提案されたわけでありますけれども、ところが一方においては、いまの政府のやり方は手ぬるい、そこで実力行使だということで、みずから韓国艇に体当たりしょうというような強硬手段を出されておる、こういう事態もございますから、これについては、ひとつできるだけ大臣としても、労働者災害防止あるいは生活権を守るという意味で、何ぶんの御配慮をいただきますようにお願いを申し上げておきたいと思います。もしそれらの点について御所見等お漏らし願えるならば、この際お話を願いたいと思います。
  63. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この李ラインの漁船拿捕の問題につきましては、いろいろな角度から検討はされております。いずれにいたしましても、何らかの措置を講じまして、すみやかに解決する必要があると思います。閣議等におきましても極力検討いたしたいと思います。
  64. 河野正

    河野(正)委員 終わります。
  65. 秋田大助

    秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十五日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時十九分散会