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1963-03-12 第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月十二日(火曜日)    午前十一時四十九分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 河野  正君    理事 小林  進君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    加藤鐐五郎君       佐伯 宗義君    中野 四郎君       早川  崇君    松浦周太郎君       松山千惠子君    森田重次郎君       山村新治郎君    米田 吉盛君       五島 虎雄君    島本 虎三君       田邊  誠君    八木 一男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         防衛施設庁長官 林  一夫君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    沼尻 元一君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         林野庁長官   吉村 清英君         郵政事務官         (人事局長)  増森  孝君         労働政務次官  田村  元君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         農林事務官         (林野庁職員部         長)      日比野健児君         農林事務官         (林野庁職員部         福利厚生課長) 岩田松太郎君         農 林 技 官         (林野庁業務部         長)      若林 正武君         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  広瀬 忠三君         日本国有鉄道参         与         (職員局長)  谷  伍平君         日本電信電話公         社職員局長   本多 元吉君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月八日  委員浦野幸男君及び本島百合子辞任につき、  その補欠として森山欽司君及び春日一幸君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員森山欽司君及び春日一幸辞任につき、そ  の補欠として浦野幸男君及び本島百合子君が議  長の指名委員に選任された。 同月十二日  委員山口喜久一郎辞任につき、その補欠とし  て森田重次郎君が議長の指名委員に選任され  た。     ————————————— 三月七日  戦没者等の妻に対する特別給付金支給法案(内  閣提出第一一三号) 同月八日  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用促進事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二九号)  労働関係基本施策に関する件(公共企業体等  における労働問題)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出雇用促進事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 御承知のように、今審議が行なわれておりまする雇用促進事業団法の一部改正を行ないまする趣旨というものが、各国におきまする貿易自由化大勢に即応し、わが国経済の一そうの伸展をはかるために、鉱業、特に金属鉱業における体質改善というものを行なう必要性が非常に緊要になった、しかもその体質改善の過程の中で出て参りまする離職者に対してそれぞれ各般の施策というものを講じていこう、それがこの雇用促進事業団法改正趣旨であるわけでございます。ところが、労働省が先月の二十三日に発表いたしました昨年一年間の賃金、あるいは労働時間、さらには雇用の動きにつきます調査結果というものを見て参りますと、もちろんその一例でございますけれども、たとえば賃金面あるいは雇用面におきましても、景気の動向に対しまして一番敏感な製造業、特に鉄鋼、非鉄金属、機械、こういう産業面におきます変化というものが最も顕著である、こういうふうに労働省調査結果が発表されておりますことは御案内通りでございます。この石炭金属鉱業におきまする離職者にそれぞれ諸施策が及びますることはまことに同慶の至りでございますけれども、しかしながら、今わが国経済大勢といたしましても、自由化が非常に強力に促進をされつつある。従って、この自由化経済促進によって、いろいろとしわ寄せが各産業においても行なわれつつある。しかし、今度の雇用促進事業団法の一部改正によって、あらためて金属鉱業というものにその施策が及んできたということでございますけれども、実際には、わが国経済自由化という一つ方向に即応いたしまして、それぞれ各産業において、雇用におきましても賃金におきましても、非常に大きな変動が出つつあることは御案内通りでございます。しかし、今度の促進事業団法改正によりましては、金属鉱業救済されるというようなことにとどまっておるわけでありますが、そういうような一般の国の経済政策に基づきまするしわ寄せによって起こってくる離職者救済、保護というものについてはどういうふうにお考えでございますか。基本的な問題でございますけれども、この際、一つ労働省当局の御所見を承っておきたい。
  4. 三治重信

    三治政府委員 貿易自由化に伴いまして産業構造がいろいろ変わって、産業別にも、地域別にもいろいろの変化が現われてくることは、当然予想されるところでございます。そういうことを予想いたしまして雇用促進事業団法をつくりまして、雇用促進事業団でそういう変化に対応する職業援護をやるというのが政府の基本的な態度で、雇用促進事業団をつくっていただいて、現在雇用促進事業団がそれによって活動しているわけでございます。貿易自由化関係しまして今度顕著に現われましたのが非鉄金属鉱山でございますが、その他については、いろいろのことが一部に言われておりますが、まだ顕著に現われてきておるというふうには見ておりません。従って、今回におきましては非鉄金属鉱山について特別な措置をお願いするということにいたしまして、今後も、いろいろの変化に対応して、雇用促進事業団を有効に活用することによって対処していきたいというふうに考えております。
  5. 河野正

    河野(正)委員 今私が御指摘を申し上げましたし、またお答えを願ったわけでございますが、貿易自由化に応じて今後各産業における体質改善が行なわれ、そのためにたくさんな離職者が出てくるということは容易に察知されるわけでございまして、従って国の施策といたしましても、そういう前提に立って、それぞれ施策を遂行していかなければならぬということは、当然の事柄であろうというふうに考えるわけです。そこで具体的な点につきましても、この際若干お伺いいたしておきたいと思いますが、たとえば先ほど私が御指摘申し上げましたように、製造業雇用伸びというものは、三十五年を一〇〇として三十七年が一一七・二、大体前年に比べて六・九%の伸び率でございます。これは三十五年の一三・三、三十六年の九・六、こういう伸び率と比べますと、かなり低下現象を示しておる。それからさらに、労働省調査によりましても産業別では、石炭鉱業の不況が反映をして鉱業雇用というものが〇・七%、大幅な減少を示しておる。それが今度の雇用促進事業団法の一部改正によってその適用金属鉱業にも及ぶわけですが、この金属鉱業面における雇用状態は一体どうであるかということを、この際お伺いを申し上げておきたいと思います。
  6. 三治重信

    三治政府委員 非鉄金属鉱業関係の本年度離職者予想は、年度でございますが約九千七百人、一万人弱でございます。来年度予想されますのが、大体五、六千人でございます。それ以降になりますと、予想としてはほとんど平常に戻るということでございまして、今明年度における貿易自由化によるための最初の山の閉山整理ということで、集中的に離職者が出ると予想されるというふうに政府は見ておるわけでございます。
  7. 河野正

    河野(正)委員 そういたしますと、今年あるいは明年度で一応この離職者の数が通常の形に戻るというようなお話でございましたが、それでは平年度におきましてはどういう傾向でございまするか、この際承っておきたいと思います。
  8. 三治重信

    三治政府委員 今ここに、今までの過去の平年度離職者の数につきましてちょっと資料を持ち合わせませんので、あとでお知らせいたしますが、非鉄金属関係承知しておりますのは、昨年まではそう目立った離職はなかった、割合雇用状態は安定しておったというふうに考えております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 そこで、今回の法改正によって適用を受けます金属鉱業における離職者の概要が明確になりましたので、それに関連をいたしまして、基地で働きます従業員の問題につきまして、若干お尋ねを申し上げておきたいと考えるわけでございます。  安保条約におきまする駐留協定に基づきまして、国が労務を提供する責任において雇用する労働者駐留軍労働者でございますことは、御承知通りであると考えております。昭和三十二年の岸・アイク声明を受けまして、多数の駐留軍労務者離職を余儀なくされる事情にございますので、その生活の安定に資することを目的といたしまして駐留軍関係離職者等臨時措置法が制定されましたことは、これまた御承知通りでございます。ところが、先般の石炭政策、あるいはこのたびの事業団法改正、そういうものを見て参ります際に、それでは一体、国が責任を持って雇用をいたしておる駐留軍離職者に対してはどういうふうに考えられておるのか、この雇用事業団法を検討いたして参ります際に、私どもは非常に大きな疑義をはさむわけでございます。そこで、一体民間産業ではなくて、こういう国が雇用をいたしておる駐留軍離職者に対する今日までの施策が、はたして十分であるのかどうか、こういう点に対しまする御所見を、長官も御出席でございますので、この際一つ明らかにしていただきたいと思います。
  10. 三治重信

    三治政府委員 それでは労働省の方から離職者対策につきましてお話し申し上げますが、駐留軍関係離職者等臨時措置法によりまして今日までいろいろの離職者対策をやっておりますが、労働省所管といたしましては、事業団法にも駐留軍関係離職者等臨時措置法でやるべしというふうにまかされている仕事があるわけでございます。これにつきましては、特に職業訓練につきましては、昨年の十二月の十七日より炭鉱離職者並み技能習得手当別居手当を、事業団法事業団業務方法書改正によりまして新しくつけました。さらに今後も、職業訓練につきましては、炭鉱離職者あるいは非鉄金属離職者と同様に対処していく考えでございます。そのほか駐留軍基地関係上、今までは、大体政府としていろいろの企業組合をつくって自営業の育成、そのために事業の免許の援助、国有財産払い下げ米軍資材払い下げ、またそれに伴って資金を必要とする場合の融資、こういう部面について、他の産業からの離職者に見られない対策をやっているわけでございます。なお、この岸・アイク声明のときの特別な事情として、そういうあいた施設についての企業誘致も非常にやりました。さらにこれは、そのときに特別給付金が新しく設けられたことは御承知通りでございます。そういうふうにいたしましたところ、今日では、大体においてわれわれの方といたしましては、三十四年以降につきましては——三十四年は若干経過的な年でありますが、三十五年、三十六年になりますと、また今年の三十七年度におきましても、離職状況また整理状況を見てみましても、一般産業並み、あるいはそれ以下というふうに見ております。従って、現在のところ、ここ二、三年の間におきます離職者の発生の状況は、石炭非鉄とは非常に異なっておりまして、今後集中的に発生するという現象はほとんど見られないというふうに考えております。しかし、いかに数が少なくても、離職された個々の人が完全に再就職できているかどうかという問題が当然あるわけでございます。しかし、特別の新しい発展的な諸対策を講じなければならぬというふうに政府が認識するかどうかという問題になりますと、一つの重大な社会現象として、また社会的な摩擦として出てこないと、なかなか対策はとりにくいというのが、政府事務当局考え方でございます。また一面、今日においても、そういうふうなところで、他の金属や山と、割合都会地で生活されている方との違いも、若干あろうかというふうに考えているわけでございます。
  11. 河野正

    河野(正)委員 今お答えをいただきましたが、実はせっかくのお答えでありますけれども、非常に不満でございます。と申し上げますのは、御承知のように、駐留軍労働者というのは国が雇用主であるということでございますので、今局長の御答弁によりますと、今日以降に発生いたします離職者程度一般民間産業以下である。そこで、この駐留軍離職者に対します今後の取り組み方に非常に微温的な感じを受けたわけでございますけれども、その離職者本質は根本的に違っている。国が雇用主であり、使用主である、しかも米軍都合で一方的に解雇をされる立場に置かれている。そこで今日までの実情を見て参りますと、あるいは米軍の撤退、移動、縮小というような理由もあり、あるいは予算上の理由によって人員整理が要求されてくる。そういたしますと、雇用主でございます日本政府は、自動的に解雇手続をとっていく。そのために、この計画的な雇用、他産業への配置転換計画、こういう点については何ら処置がなされておらぬ。アメリカ側から一方的に、予算上の都合であるとか、あるいは撤退する、縮小する、そのために解雇という向こうの要求が出て参りますと、雇用主でございます日本政府は、単に解雇手続だけとってやる。全く私生子的な取り扱いが行なわれているというのが、私は今の駐留軍労働者立場じゃなかろうかと思う。勝手に親は生むけれども、その跡始末は全然やらぬ。私は正直に言うと、今の駐留軍労働者というものは全く私生子のような取り扱いを受けておる。そういうような国が雇用主であり、使用主であるわけですから、従って、そういう離職者については、政府みずからが再就労の場というものを確保する当然の義務があるというふうに私は思うわけです。もちろん、離職者の数がだんだん減少してきたということは事実でしょう。事実であるから、それに対する対策は、放置しておいてもよろしいということではないと思うのです。そういう本質上の相違点一般産業との間にあるわけでございますので、当然私は、駐留軍労働者についてはその法的処置というものがなされなければならぬ、こういうふうに思うわけでございますが、そういう点は、労働省としては労働行政という面から、どういうよりにお考えになるのか、あるいはまた、実際の雇用主である防衛施設庁長官としては、どういうふうにお考えになっておるのか、一つそれぞれお答えをいただきたい。
  12. 三治重信

    三治政府委員 今度の駐留軍臨時措置法が五月で切れるようになっておりますが、労働省としては、現在の臨時措置法特別対策が現在行なわれておりますし、先ほど申し上げましたように、職業訓練については石炭非鉄並み技能習得手当、それから別居手当を加えたというふうな事情がありますので、現行法のもとで、できるだけの離職者対策をやっていきたいという意味におきまして、現行法がさらに延長されることを希望しておりまして、政府としてもそういうふうな方向でやっていくように、関係連絡機関で、事務当局同士の話では一応そういうふうな申し合わせも先日いたしたところでございます。従って、何もしないということでなくて、現行法が継続されることを労働省としては希望しております。そして現行臨時措置法のもとで、いろいろの離職者対策をやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  13. 林一夫

    ○林(一)政府委員 駐留軍要員離職者対策でありますが、ただいま職安局長からお話がありましたように、駐留軍関係離職者等臨時措置法、これを中心といたしまして、これによるところの離職対策をあらゆる方面から考えまして、何と申しましょうか、きめのこまかい方法を講じましてその実効を上げるように努力して参ったのでありますが、今後ともこの点については十分に努力して参りたい、こういうふうに考えており、その対策のこまかい点につきましては、先ほどからお話がありました通り、たとえば職業訓練あるいは企業組合育成、あるいはその裏づけになるところの資金の融通、あっせん、あるいは国有財産の譲渡、貸付というようないろいろの対策もあるので、このような対策も十分に講じまして遺憾のないように進めて参りたい、こういうように考えております。
  14. 河野正

    河野(正)委員 そこで、少しずつ核心に触れてお伺いをいたして参りたいと思いますが、すでに御承知のように、ワシントン五日発の共同によりますと、アメリカ会計検査院が、日本基地で働きます労働者雇用状況についての調査報告を公表した。それによりますと、日本各地における千八百人の日本労働者が、雇用についての指針を超過をしている。そのために、約二百七十万ドルの経資というものがよけいに要っておる。しかも、人員が、今申し上げますように千八百人過剰であるけれども施設維持というものは必ずしも十分でない。そういうことで、今後このアメリカ本国要請等によって、日本基地に働きます駐留軍労働者が再び解雇されるのではないかという一つ見通しが成り立ってくるわけでございますが、こういう点についてはいかがなものでございますか。一つ一つお答えをいただきたい。
  15. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先日新聞に出ましたところの千八百人の冗員ということについての問題でございますが、これに関係しまして、米軍に照会ましたところ、在日米軍としましては、本件に関しては本国から何らの通知に接していない、まだ在日米軍としましては、現時点におきましては、この報告との関連においては特別の人員整理計画していないという回答でございます。御承知のように、この基本労務契約によりますところの人員整理は、昭和三十六年度におきましては約千六百名、三十七年度は八百四十四名ということで、ここ数年来非常に減少してきておるのであります。このような軍の状況、その他過去の実績の示す傾向等から判断をいたしまして、今後もおそらくこの程度減少予想されるのでございます。そのような点から考えましても、特にこのような報告というもの、あるいはこのような報告に基づくところの今後の考え方というものは、在日米軍に関する今後の人員整理計画について特に大きな影響はないという見通しを私どもはいたしております。
  16. 河野正

    河野(正)委員 先般の志賀長官記者会見におきましても、日本におきます米軍の話によりますと、アメリカ会計検査院は、千八百人の労務者が多過ぎるというふうな報告はしたけれども在日米軍としては過剰人員考えておらないので、千八百人の整理をするということは今考えておらぬというような記者発表もあったようでございますけれども、ところが今日まで私どもがしばしば人事問題に遭遇いたしますと、この在日米軍の権限で解決しなかったケースというものが非常に多かった。在日米軍でなくて本国の方でそうだからというようなことで、今日までの解雇問題をめぐります紛争というものがほとんど解決しない。こういうことになりますと、なるほど志賀長官はけっこうな発表をされたけれども在日米軍の話し合いだけでは、私どもは、今の千八百人の労務者解雇するとかせぬとかいう問題を、そのまま額面通りに受け取っていいかどうか疑問がある。在日米軍がそう思っておっても、本国から指令があると今まで首を切ってきたのです。そういう経緯があるわけです。そこで私は、志賀長官はけっこうな記者談話発表されておりますけれども、それを額面通りに受け取ることはできぬと考えるわけです。でございますから、本国の方で基地労務者が多過ぎるというような発言は、私はきわめて重要な要素を持っていると思うのです。なるほど、ここ最近の駐留軍労働者離職者の数を見て参りましても、三十三年当時は二万三千人をこしておったのが、三十七年度におきましては、今長官からお答えがございましたように、八百四十四名というふうに減少してきたことは事実でしょう。ですけれども在日米軍ではなくて、アメリカ本国におきましては、基地労務者が多過ぎるという判断に立っておることは、これは発表しているわけですから、この事実は否定することはできぬと思うのです。そういうことになるし、しかも今までの解雇実情を見て参りますと、ほとんどが本国事情によって解雇されてきておる。ということになりますと、私はアメリカ会計検査院指摘というものは、決して軽視することができない事実であるというように考えるわけですが、在日米軍のいっておりますように、千八百人の解雇考えておらぬということを、そのまま額面通り信用していいとお考えになっているのか、確信がございますのかどうか、あらためて一つお答えをいただきたい。
  17. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいまも申し上げました通り、今回の問題につきまして在日米軍に照会しました結果、まだそのような報告に接していない、またそのような報告関連して、現時点において特別に人員整理計画をしていないという回答でございます。また過去の実績等から考えまして、だんだんと整理離職者というものが減少しつつあるので、正確な予想はむずかしいと存じますが、このような事情から判断しまして、来年度も大体このような数字ではないか、こういうふうに私ども考えておるわけであります。そのような観点から考えまして、この際直ちに急激な整理があるというようなことは、私ども考えておりません。もちろん防衛施設庁といたしましては、このような離職者に対しては万全の措置を講じて、その就職対策あるいはその他の救済対策を講じて参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  18. 河野正

    河野(正)委員 私どもは、今日起こって参りました現象だけをとらえて申し上げるのではなくて、今日まで駐留軍労務者がたどって参りました長い歴史を前提としてお話を申し上げておるのでございますので、この点は、本国の方から在日米軍がそういう報告を受けておらぬからということでございますけれども、できれば一つ十分連携していただいて、確信のほどを示していただきたい、かように考えます。それから、せっかく大臣も貴重な時間をさいて御列席でございますので、基本的な点だけを一つ大臣にお伺いしておきたいと思います。それは、今私が御指摘を申し上げておりますように、今度の雇用促進事業団法の一部改正というものは、日本経済動向に従って起こってくる離職者に対する施策の一環でございます。ところが、この駐留軍基地に働きます労働者というものは、その雇用主は国でございます。しかもアメリカ側の一方的な予算上の理由であるとか、あるいは基地縮小、移転、そういう一方的な理由によって一方的に解雇をされる、先ほど私は、今の基地労働者というものは全く私生子のような状態に置かれておるということを指摘したわけでございますが、そういう状態であるわけであります。従って、民間から出て参ります離職者も非常にお気の毒でございますけれども離職者でも本質的に非常に相違があるわけであります。ですから、この駐留軍労働者離職者に対しては、その再就職その他については当然国が責任を持たなければならぬというふうに私ども考えるわけでございますが、この点は、大所高所から大臣はどういうふうにお考え願いますか、一つ所見を承っておきたいと思います。
  19. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 雇用問題は国の重要問題でございますので、離職者全般に対しまして国として責任を持って努力するのは、これは当然なことであると存じます。政府といたしましては、このためにいわゆる失業対策事業、それから失業保険等で一般離職者対策を講じておりまするが、駐留軍離職者、それから炭鉱離職者に対しましては特別の法規でそれぞれ手厚い保護を講ずることにいたしておるわけでございまして、これらの法律は、それぞれ対象によってとるべき施策が多少食い違いもございますが、いろいろ離職者事情を考慮いたしまして、適当と認める対策を規定いたした次第でございます。
  20. 河野正

    河野(正)委員 実は大臣も御承知のように、駐留軍労働者の場合は国が雇用主である、しかも今私が申し上げましたように、一方的な理由によって解雇されるということでございますから、一般民間産業離職者駐留軍労働者離職者というものは、その本質が違うわけです。ですから、もちろん民間産業離職者に対して国が万般の施策をとっていただくということも大へんけっこうでございますし、そういう点については私ども敬意を表するわけですが、同時に、この駐留軍労働者の場合には、当然、政府雇用主としてその離職者に対する再就労の場を確保するということが必要な措置ではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。そこで、そういう点について一つお答えをいただけばけっこうだと思います。
  21. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 雇用主として政府ができるだけ駐留軍離職者の再就職に対して努力するのは、これは当然だと思います。
  22. 島本虎三

    ○島本委員 関連。今河野委員が質問した中で、重大な問題があると思いますので、二点だけ労働省並びに林長官の方に伺いたい。  アメリカ会計検査院から指摘を受けた六一年度のよけい使ったという金額は、私どもでは、人員じゃなくて二百七十万ドルである、こういうようにも聞いておるのです。そういうような問題については、今、労務者の方に影響ないというお話ですが、これは影響ないということをはっきり認められるのかどうか、どうして二百七十万ドルよけい使ったと言われるようになったのか。これは新聞には出ておりませんが、一つこの辺の事情を明確にしておいてもらわないと、ただいまの河野委員の質問の裏づけにならないと思いますので、重ねて長官にお伺いいたします。
  23. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この会計検査機関の報告につきましては、先ほども申しましたように、どういう内容のものであるかということにつきまして在日米軍に照会いたしたのであります。在日米軍としては、まだその報告を受けていないからわからないということをはっきり言っておるのです。そのようなわけで、その数字が、何人であるかあるいはどのくらいな費用の節約というか、余剰になっておるのかということについてもわかりません。また、在日米軍としましては、このような報告との関連において、現時点においては、特別の人員整理考えていないということをはっきり言っておるのであります。このようなことから判断しまして、また、最近の退職者の数が漸減しつつあるというような傾向実績から判断しまして、そう急激に大量の整理者が出るというようなことは、私ども予想いたしておりません。
  24. 島本虎三

    ○島本委員 人員の点はそれでわかりましたが、米会計検査院から指摘された、二百七十万ドルよけい使っておるから、そういうようなことに対して完全にしておけ、こういうような指示がなかったものであるか、もしなかったらけっこうですが、あったとしたら、そのしわ寄せ労務者の方へ直接こないかという点が心配なんです。この点を重ねて聞きますが、いかがですか。
  25. 林一夫

    ○林(一)政府委員 もちろん、そういうような点につきまして、米本国から在日米軍の方には何らの通報連絡がないということをはっきり申しております。
  26. 島本虎三

    ○島本委員 またその中に理由があったようですが、理由の第一番目に、これは労働法違反をしておる事実がある、こういう指摘があったというようなことを聞いている。それをはっきりすると労働省もこれを認めたのではないか、こう思われますが、これは何か施設の運営の問題ではなかろうかと思います。こういうような指摘を受け、これを改めるというようなことになると、労働大臣もこれを知っておらなければならないはずです。駐留軍の、会計検査院からの指摘の第一項の、労働法に違反しているような事実はどのようなことでございましょうか。
  27. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 アメリカ会計検査院のことでして、私どもの方にはまだ何にも言ってきておりません。また、言ってくるべきものではないと思います。ただ、将来その内容が明らかになった場合、国内の労働行政関係のあることでございましたならば、これは私どもの発意として十分に取り調べる場合があるかもしれませんが、まだ中身がわかりませんので、何とも申し上げかねます。
  28. 島本虎三

    ○島本委員 ちょっと大臣アメリカ労働法ではない、駐留軍日本労務者は、日本にいる限り全部日本の国内法の適用を受けて働いている。国内法に違反して使用しているという事実を指摘された。それを知っておらなければ知っておらないでけっこうです。指摘された以上、政府機関ですから当然知っておられるではないか、こういうように考えて今聞いてみたのです。それで、そういうようなことは、おそらく経理上の問題になるではないか。たとえば国の機関であるから直接やればよいのをたれかにやらしておって、その費用がよけいかかったものの集積が二百七十万ドルあったというようなことの指摘ではないかと予想される。これは従業員の首切りの問題にもつながると思いますので聞いたのですが、御存じなければなんですけれども、知っておられないのですか。
  29. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まだ全然わかっておりませんから、アメリカにアタッシュ等も行っておりますので、できるだけ情報をとって調べてみましょう。
  30. 島本虎三

    ○島本委員 これで終わりますけれども、以前からのもので、駐留軍労務者に対して、就業規則と国体協約によるいろいろな法による交渉がなかったということで、一年前から指摘されておりました。この点、前の労働大臣からも、また前の社会労働委員会委員長中野四郎さんからも駐留軍に強く要請されておったわけですが、今度新しい秋田委員長のもとに再び聞かなければならないし、われわれが最も賢明と尊敬する大橋大臣に聞かなければならないわけでありますが、就業規則はできておるのか、労働協約による交渉がはっきりされているのか、この約束された事実はどのように処理されておりますか。これは両方からはっきり伺いたいと思います。答弁によってはもう一回やらしてもらいますので、これでよいように御答弁願います。
  31. 林一夫

    ○林(一)政府委員 労働協約につきましては、早くこれを制定するということに努力をいたしておるのであります。今までの折衝の経過を申し上げますと、米側の第二次案につきましては、三十五年当方に提案があったわけであります。その案に基づきまして各項にわたって再検討しまして、労働組合側の意向も入れまして、昨年の十一月に当庁の第二次案を作成しまして、軍側に提示して現在折衝いたしております。  次に、就業規則の方でありますが、これはすでに案を当庁において作成いたしまして、昨年の五月労働組合に提示してその意見の開示を待っておるというような状況であります。
  32. 島本虎三

    ○島本委員 これで終わります。大臣、こういうふうにして一年前からこの席上で社労の委員長から指摘された事実、それから労働大臣もこれを明確に指導しますと言った事実、はっきり議事録に残っているのですが、今聞いてみたら依然としてまだほったらかされている。これは急ぐべきです。首切りだけ急ぐのは当を得ません。完全な法治国ですから、この方面の手をゆるがせにせぬよう御善処を要望して、関連質問を終わります。
  33. 河野正

    河野(正)委員 そこで、質問が中断いたしましたが、二点だけ長官から明確なお答えをこの際いただいておきたいと思います。  第一点は、今労働大臣からもお答えがございましたように、駐留軍労務者というものは国が雇用をし、しかも一方的な理由解雇されるわけでございます。従って、一般労働者とはその解雇の内容が本質的に違う。そこで、国としてもこの駐留軍労務者については特別な配慮をしなければならぬ、こういうふうに考え大臣お答えを願ったわけです。その点に対する長官としての明確な態度。  それからもう一つは、いろいろ承って参りますと、さきにアメリカ会計検査院から、日本基地における労務者が多過ぎる、そのために不当な会計の支出がある、しかも、いずれ人員整理については近々検討すべきであるというふうな報告がなされた。そのことはまだ在日米軍には来ておらぬのだというようなことでございます。ところが、志賀防衛庁長官は明確に、基地日本労働者解雇しないというふうな記者発表もされておるわけでございますから、そういうことはないのだということも、この際この委員会の席上においてこれを長官から一つ明確にしてほしい。以上二点について長官の明確な御所信をただしたいと思います。
  34. 林一夫

    ○林(一)政府委員 駐留軍労務者離職対策につきましては、先ほどから申し上げております通り、この臨時措置法に基づきまして、あらゆる対策を講じておるのでございます。今後ともこの対策に万全の努力を払って参りたい、こういうふうに考えております。  次に、米国の会計検査院報告に基づく人員整理の問題でございますが、これは先ほどから申しておる通り米軍としましては、現時点においてはこの報告関連して特別な人員整理計画してはいないということをはっきり申しておるのです。それ以上のことは、この報告に関しては、当方においては承知していないのでございます。過去の人員整理状況、最近の傾向等から判断して、そう急激に大量の人員整理があるということは、私ども予想いたしていないのでざいます。
  35. 河野正

    河野(正)委員 予想をしておらぬというお答えでは満足できません。この会計検査院報告によって、そういう事態があるということに対して私どもも非常に憂慮しておるわけです。でございますから、会計検査院指摘いたしておりますように、千八百人の労働者は多過ぎるのだ、そういう発表があったけれども、日本国政府としても、在日米軍としてもそういうことは毛頭考えない、そういう過剰な不当支出はあっておらぬという前提に立って今後アメリカと折衝するのだ、こういうことにならぬと、ただ予想されないという過去の実績に基づく長官だけの見通し、そういうことでは私どもは納得するわけにいかぬ。現実に在日米軍が不当支出でもなければ過剰人員でもないという、そういう確信を持っておるならば、そういう確信で今後臨んでいきますということをここで表明してもらわぬと、過去だんだん離職者減少してきたから、おそらく今後は、そういう会計検査院報告はあっても、大量の離職者はないでございましょう、そういう長官のお考えでは私どもは引き下がるわけにいかぬ。現時点における在日米軍の実態から、そういう不当な財政の支出なり、あるいは過剰人員はおらぬのだという確信で、今後アメリカと臨んでいくのだ、そういうことから大量の解雇というものはあり得ないと思います、こういうことなら納得しますけれども、ただ過去の実績がそうですから、従って多分ないでしょう、そういうことでは、私ども小学校の一年生ではございませんから、納得するわけに参りません。そこで、今私が申しましたような点について、一つ長官の御所信をお願いしたい。
  36. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私がただいま申し上げましたのは、今回の会計検査機関の報告に関して在日米軍に照会したのでございます。そのときの在日米軍回答が、現時点においては、これに関連して特別に人員整理計画をしていないということをはっきり申しておるわけであります。でございますので、現時点においては、こういうような特別な人員整理というものはアメリカは持っていないということを、私どもははっきり信じておるわけであります。ただ、今後の問題につきましては、これは他日米側と交渉いたしまして、なるべくそのような大量の整理がある場合においては、早くその情報を察知して、これに対する対策というものを十分考えていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。現時点におきましては、米側は特別な人員整理をいたさないということをはっきり申しておるのであります。その信頼のもとに、私どもは今後対策を講じて参りたいというふうに考えます。
  37. 河野正

    河野(正)委員 実は私がどうしてその点を強調するかということ、この勧告のあとで、この時期に具体的な勧告を行なわない、しかし適当な期間を置いて再び検討することにしておる。そこであなたが、現在時点においてはとおっしゃるのが、非常に気になるわけです。それは勧告の中にも、適当な期間を置いて検討するということですから、そこで本国としても、適当な期間を置いては、今の在日米軍に対して勧告するという時期が訪れてくるだろうという見通しが立つ。そこであなたが、現時点において、現時点においてと繰り返しおっしゃるから、アメリカ会計検査院報告と合わせて考えると、いずれ近々人員整理というものが通告されてくるだろう、こういう見通しが立つわけです。そこで私どもとして、今の勧告の内容でございます財政上の不当支出、それから過剰人員ということは、絶対に認められないのだという考え方に立っていらしていただかぬと、そういう勧告の時期が必ずくる。そう書いてあるんだから、適当な機会にそういう勧告をする。ですから、現時点ということだけで私ども納得するわけにはいかぬ。そこで政府も、それから在日米軍も、今私が指摘申しましたように不当支出でもない、過剰人員でもないという考え方というものを堅持してもらわないと、いずれ勧告の時期がくるという想定でございますから、私どもはその点について、一つしっかりした確信を持って臨んでいただきたい、こういうふうに考えるわけですから、私が申し上げましたように、確信を持って臨むと一言お答えを願えればけっこうだと思います。
  38. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私が申し上げておりますのは、お説の通り現時点においては、米側としては特別な人員整理は行なわないということをはっきり言っておるわけです。もちろん将来の問題としては、当方としては極力そのようなことのないように、きぜんたる態度をもって折衝する必要があると考えております。もちろん、万一将来において大量の整理があるというような事態が起こりますれば、やはりそのときの事情に応じて、離職対策等万全の措置を講じていく所存でございます。
  39. 河野正

    河野(正)委員 万全の措置の一環が、私は例の臨時措置法というふうに考えますが、この臨時措置法も、御案内のように五月十一日には期限切れになって参ります。これに対します態度について、一つこの際お伺いを申し上げたい。
  40. 林一夫

    ○林(一)政府委員 臨時措置法の問題でございますが、御承知のように、本年度五カ年の期限が切れまして、失効するというような事態に至っておるのです。従いまして、この臨時措置法の期限を延長するということについて、政府関係省において協議を進めておるのであります。この臨時措置法は、何としましても駐留軍労務者離職対策の根本法規でございます。どうしてもこの期限を延長して、離職対策に万全の措置を講ずるということが必要でございますので、現在期限延長ということを中心として、関係各省において協議を進めておるような次第でございます。
  41. 河野正

    河野(正)委員 延長については、政府で引き続き御提案願うということでございますか。
  42. 林一夫

    ○林(一)政府委員 これは現在、内閣が中心になってその問題を扱っておるのでありますが、現在のところ、延長ということについてはほぼ政府部内の意見は一致して、期限延長ということは提案される、こういうふうに私ども判断いたします。
  43. 河野正

    河野(正)委員 そういたしますると、あとはこの内容の問題について御検討を願っておる、こういうふうに判断してよろしゅうございますか。
  44. 林一夫

    ○林(一)政府委員 その内容についても、もちろん協議、検討しております。
  45. 河野正

    河野(正)委員 そこで時間の制約もいございますので、だんだん結論に入りたいと思いますが、この臨時措置法の期間延長については、今政府で提案するとお約束でございますので了承いたしますが、それでは一体内容について実は石炭産業あるいは金属鉱業等々と対比する中で、なお検討を願わなければならぬのではないかという点が多々あると思うのです。たとえば特別給付金の制限条項の撤廃の問題もございましょう。あるいはまた、この雇用促進事業団法の内容でございます雇用奨励金の支給の問題等もございます。あるいはまた、炭鉱離職者に見ます就職促進手当の支給の問題等もございます。先ほど三治局長の方からも若干御説明もございましたが、今私が申し上げますような給付金の問題、雇用奨励金の問題あるいは促進手当の問題等々、今までの石炭政策あるいは今回の金属鉱業と対比する中で、なお改善を願わなければならぬ問題が、今申し上げますように具体的な例があると思いますが、そういう点につきましてはどのようにお考えでございますか、この際承っておきたい。
  46. 三治重信

    三治政府委員 特別給付金につきましては、施設本部長の方からお答えになると思いますが、特別給付金のワクをはずす以外の離職者対策の問題につきましては、現在のところわれわれは現行法の延長で事足りる、特別にそういう雇用奨励金あるいは就職促進手当というふうな、現在炭鉱離職者非鉄金属政府がとろうとする案を、そのまま横すべり的に駐留軍にも、今後期限の延長と関連して政府案として加えるということはしない予定にしております。  その理由は、先ほど来申し上げましたように、石炭離職者対策につきしても、それから非鉄金属離職者対策につきましても、非常に集中的に多数が発生する、これに対処してやはり不安をなからしめるというために特別対策をとる。それからやはり、その当該離職地におきましては、なかなか産業がないために就職できない。従って、他へ移転しなければならない。長年住みなれたところからほかへ住所を移転しないと再就職ができない。これに対して、基地につきましては、ほとんどそういうふうな、住所を特別移転しなければならない非常に再就職が困難であるというふうなことは、現在の基地の立地状況から見て、そういう特別な考慮が必ず必要だというふうには考えておりません。  それから今度の石炭非鉄関連しまして、これはやはり政府特別対策をとります一つ理由として、地下産業の肉体労働、他の社会と非常に離れたところに長年就業して、他産業労働環境になれない等の問題があるということから、やはり特別対策が必要じゃないかというふうに考えておりますので、そういうことをいろいろ考えてみますと、ここで、石炭非鉄特別対策をとったのは、地下産業一般産業界から非常に離れておる、しかも大量というふうなところで政府として特別対策をとるということでございますが、このいずれの条項から見ても、ここで今直ちに、石炭非鉄でやったものと同じようにというふうになりますと、何か焦点がぼける——表現は悪いわけなんですが、そういうふうなことになる。しかしながら、そういうことでなくて、やはり再就職のための駐留軍労務者に対しては、ほかの産業労務者と異なる環境状況にあり、しかも、そういうふうな基地が返還になるという場合には、そこにあらためて産業を興す特別な対策が種々盛られておるわけですから、これを整理していける態勢をとる現行法の延長でいいのじゃないか。しかも、これがまた石炭非鉄と同じように、ここ一、二年急激に大へんな問題があるというなら別ですが、先ほど長官からお答えになったように、またわれわれも、防衛庁からの情報連絡によりましても見通される範囲で、そう石炭非鉄のような集中的な離職者予想されないということでございますので、今回は遠慮したわけでございます。あまりこれもあれもと考え、すべてのことをやりますと、焦点がぼける——表現は悪いわけなんですが、この程度のことで一つがまんをしていただきたいというふうに考えるわけであります。
  47. 河野正

    河野(正)委員 実は今の答弁を聞くと非常に不満足なんです。と申し上げますのは、もちろん炭鉱の離職者あるいは金属鉱業離職者に対してそういう諸施策が及びますことは、私どもも全く同感でございます。と同時に、そういうふうな措置が講ぜられた理由というものは、集中的多数の離職者を排出する。従って、労働者の間に非常に大きな不安が醸成されるわけですから、そういう不安というものを除去するためにそういう施策が実行される。そのことは、とりもなおさず雇用が安定されるということにあると思うのです。それなら一体、駐留軍離職者雇用状況がどういう状況であるかということは、私は非常に大きな問題になってくると思うのです。  そこで私は、この点についてはいろいろ県とも打ち合わせをして、実は的確な資料等を集めて、どういう状況であるのかというふうな検討を加えてみたわけです。そういたしますと、これは福岡県の実情ですが、大体今の駐留軍離職者の平均年令というものは四十三才です。それからさらにこの離職者が再就職をする、それがどういう実情にあるかと申しますと、三十七年度が三六・九%です。これは、三十七年度はさっき長官から御指摘がございましたように、駐留軍離職者というものは非常に減少しておる。減少しておりながらその再就職率はどういう状態かというと、これは福岡県が調査してくれた資料ですが、その資料によりますと三六・九%、約三七%程度の再雇用、こういう非常に低い率を示しておる。しかも先ほど申し上げましたように、高年令層の人が非常に多い。これは炭鉱離職者よりも上です。そうしますと、なるほど今三治局長お答えになったように、移住するための移転資金の問題だとか住宅の確保だとか、炭鉱あるいは金属鉱山離職者と条件がすべて同一であるかどうかということについては、今御指摘通りに問題がございましょう。しかし少なくとも高年令層で、たとい離職者の数が減少いたしておりましても、再雇用の場というものが非常に少ない、そういう点については何とか再雇用の場を広げる施策が必要になってくる。と同時に、たとえば雇用奨励金の問題も関連いたします。  私は賃金状態を実際に調査して参りましたが、駐留軍離職者の方が再就職する場合の賃金が、平均して一万五千円です。平均四十三才ですよ。そしてそのことは、私いろいろ具体的に調査しましたが、一万円から二万円の賃金の方々が三五・七%おるわけです。それが再就職しますと、五四・八%に増加しておるわけです。そして二万円から三万円の給与の人が、基地で働いているときの比重は五二・三%です。それが再就職しますと三一・七%になる。これは下がるわけです。従って、二万円−三万円の層の人が再就職する場合には、一万円−二万円の層に下がっていくわけです。それですから、一万円−二万円の人がもともと基地では三五・七%でしたけれども、今度再就職しますと五四・八%というふうにふえていくわけです。ですから、二万円−三万円の人は逆に減っていくわけです。このことは、再就職する場合に、非常に安い賃金で再就職しておるという数字を——これは演説じゃなくて、私は資料を検討して申し上げておるのです。これは現実の数字ですから、正しい数字です。そういうように非常に安い賃金で再就職しなければならぬいう実情に置かれておる。  それから、先ほど申し上げますように、三六・九%というふうに就職率も非常に低い。ところが、その就職しておる内容を調べてみると、その中には臨時職もありますし、臨時工もおるというようなことで、必ずしも正規の職員ではない。なるほど離職して再就職するパーセンテージというものは三六・九%ですけれども、正規に採用されたものはそれよりも減少するというのですから、実態というものは、もちろん三六・九%よりも何%か減少したのが、実際のパーセンテージというふうに御指摘申し上げても私は過言ではなかろうと思うのです。これは演説ではありません。そういうように具体的な数字を示しますと、必ずしもいい条件ではない。でございますから、三治局長からも、駐留軍離職者についてはいろいろ特別の配慮をしたいけれども、なかなか炭鉱産業金属鉱業のようにうまくいかぬというお話がございましたけれども、今申し上げますようにきわめて劣悪な条件のもとに置かれておるということは、今申し上げた数字がよく示しておると私は思うのです。  そこで、期間の延長というものはお約束になったからけっこうでございますが、特別給付金あるいは雇用奨励金あるいは雇用促進手当の問題、こういう点について私はさらに検討する必要があろうと思う。全部が炭鉱産業あるいは金属鉱業のようにはいかぬでしょう。移転しないでいいのに、それに住宅移転資金をつけるということも必要ないでございましょうし、そういう面もございますけれども、今申し上げますような諸点については十分検討の必要がある条項だというふうに私は考えるわけですが、そういう点について、大臣いかがでございましょう。大臣からもお答えをいただきたいし、また長官からも適切なお答えをいただきますならば、私の質問を終わりたいと思いますけれども、そういう点について一つ明確にお答えをいただきたい。
  48. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 駐留軍離職者実情につきましていろいろ詳しいお話を承りました。実は来年度予算はすでに本院を通過しておるような状況でございますが、予算の上からも、この問題はいろいろ関係がある事柄だと存じます。なお、この雇用促進施策につきましては、特別法に規定いたしませんでも、現在の雇用促進事業団事業としてある程度やっておりますし、またそれには予算など入っておりますので、実際そういう必要がどの程度あるか、またやるとすれば予算をどういうふうに考えるか、従って法的にどういう形で取り扱っていくか、いろいろ検討すべき事項もあるようでございますので、今後また検討の上、適当な時期にはっきりしたお答えをいたしたいと思います。
  49. 林一夫

    ○林(一)政府委員 雇用奨励金の問題でございますが、これはただいま職安局長から御説明がありましたように、駐留軍労務者人員整理によるところの離職者は、先ほどから申し上げましたように、漸減いたしておりまして、この一年間は非常に減少しておる。従いまして、現在の段階におきましては、雇用奨励金を支給しなければこの事態の収拾が困難な情勢にまでは立ち至っていないという考えを持っておるのであります。けれども、将来におきましては、現在と違っったような規模の人員整理があるか一わからぬ。そのような大規模の人員整理がある場合には、その実情に即した離職者対策をとるという立場からこの問題について検討する必要がある、こういうふうに考えております。
  50. 河野正

    河野(正)委員 こういうことは言いたくないのですが、今の答弁では、私といえども納得できない。というのは、私があたえて資料を提示したのは、大量に集中的に離職者が出なくても、駐留軍労務者の平均年令が高い、それから就職率が低い、それから賃金が低い、そういう実態に置かれておるわけだから、格別な配慮をすべきだと私は言っているわけです。長官の方は、大量に出た場合はその段階では考えよう、そういうことでは困る。私はわざわざ一日帰りましてその資料を収集していただいて、演説だけではいかぬので、的確な数字を示してお願いしようということで、実は今申し上げたようなお願いをしたわけです。それでございますから、現時点においても、少ない離職者の中でも今のような非常に劣悪な条件に置かれておるわけだから、十分検討するということでございますならば納得しますけれども、将来たくさん出たならば検討しますということでは納得できません。それなら、わざわざ一日帰ってこういう勉強をしてこぬでもいいわけです。今の少ない離職者の中でも非常に劣悪な条件に置かれておる、それで何とか善処して下さいと言っているわけですから、将来は将来、現時点においてもそういう善処をするというお約束を願わなければ、引き下がることはできません。与党諸君がやめてくれと言っても、これはやめるわけにはいきません。
  51. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この駐留軍労務者離職者に対する対策でございますが、これは先ほどから申しましたように、この臨時措置法を中心としまして、あらゆる対策を講じて離職者を少なくする、並びに離職者に対しては就職のあっせん、その他の万全の措置を講じておるわけであります。そのようなことは今後ともさらに努力を重ねていきたい、こういうふうに考えております。賃金が退職の場合に少ないというようなことも含めまして、もちろん今後十分の対策を講じてそのようなことのないようにいたしたい、こういうように考えております。
  52. 河野正

    河野(正)委員 万全の措置を講じておるというふうに言い切られると、非常に問題があると思うのです。そういう意図であるが、なお不十分なものがあるということにならぬと、今やっておることが万全であるということになると納得できませんよ。今万全の処置をやりたいということでやっておるけれども、なお足らぬ点がある、そういう点については臨時処置の中で検討もするし、さらに今後、予算その他の面で問題になる点については来年度も善処いたしましょうということならけっこうですけれども、万全の処置を講じておるというふうに言い切られることになると、私は非常に問題があると思うのです。万全の処置を講じようということだけれども、なお不十分の点がある。そういう点については、予算関係等もあるので、来年度においては検討しようということでございますならば、私はしぶしぶ納得しますけれども、もう万全の処置を講じておるのだというふうに言い切られることになると、納得できないのです。十分の処置を講じようとしておるけれども、なお不十分の点がある、従って、この臨時措置法については十分措置するとともに、さらに給付金の制限条項の撤廃とか、あるいは雇用奨励金の問題、さらには雇用促進手当の問題については十分検討する、こういうことにならぬと、なかなかやめるということでやめるわけにいきませんので、やめるためにもそういう明確なお答えをいただきたい。
  53. 林一夫

    ○林(一)政府委員 臨時措置法の中にある各種の離職対策につきましては、その対策について努力を払っておるのであります。もちろん、この中には改善を要すべき点がございますので、そういう点については、今後ともさらに改善を加えていきたいと考えておるわけであります。
  54. 島本虎三

    ○島本委員 関連一つ。さっきの答弁で、これは職安局長でしたが、明らかにしておかないと困ると思うのです。大臣が知らないから、これはだれでも国際間の問題だから知っておると思うたのですが、これは知らないもののようなので、ああいう答弁をされた。法律によっても、おそらくこれは職安局長の所管のようです。あくまでも四十四条、四十五条は職業安定法違反の疑いで、米会計検査院指摘のあの四条項中一項、労働組合法違反のおそれがある云々で労働省調査しておる。こういうふうな点があったのではないか、こういうふうに思っておるのですが、職安法の四十四条、四十五条、これはボイラーの運営について業者にこれを委託させておる点で、十分違法であるということで、ある部分はやめたけれども、まだ強行しておる部分がある。こういうふうな点の強力な指示を受けたのではないか、また受けなければ、皆さんの方で調べたのではないか、こう思うのですが、知らないということではちょっと困るのです。これは局長、ほんとうに知らぬのですか、やっておらぬのですか、これはもう違反のおそれは全然ないのでございますか、これだけ一つはっきりさしていただいて、私は関連ですから終わります。
  55. 三治重信

    三治政府委員 ほんとうに知らないのでありまして、ただいま御指摘のことにつきましては、さっそく何らかの措置を講じたいと存じます。
  56. 秋田大助

    秋田委員長 吉村吉雄君。
  57. 吉村吉雄

    吉村委員 雇用促進事業団法の一部改正にあたって、内容の問題よりも、現在の雇用の情勢等についてどのように労働省が理解をし、それに対してどうその対策を進めていくかということの方が、今日まで大へん問題になっておるわけです。それは問題になるのがあたりまえだと思いますけれども、今の質疑応答の中にも出ておりましたが、労働省の失業対策というものについては、産業ごとあるいは職種ごとによって非常に相違が見られる。こういうことでは、私はいけないのではないかというふうに思います。貿易自由化によって、相当に産業構造の改善が必至な状態になっておる。雇用状態も、これに対応するかのように変動が見られる。こういう状態でありますから、雇用についての対策も、労働省としては一本大きな根幹というものを打ち立てて、そうして全職種、全産業をそれに包含した対策を立てていくということが一番大切なことではないかと思うのです。ところが、ややもいたしますと、今までも失業対策につきましては、その起こってきた事象々々について、これをこうやくばりに行なっている。こういうきらいがあるように私どもとしては見受けざるを得ないので、これらの点については、大臣として、この個々に対策を立てていくという失業対策のあり方について、一体どういうふうに考えられておるのか。私はもっと根本的な雇用政策、その一環としての失業対策というものを樹立していくということが、今最も大切なように考ておるわけですけれども、この点について、まず大臣の見解を承っておきたいと思います。
  58. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 わが国の失業対策といたしましては、昭和の初めに、いわゆる失業救済事業と申しますか、今日の失業対策のような仕事が発足いたしまして、それが引き続き現在の失対、緊就、臨就というような仕事になって参ったわけでございます。しかしながら、最近におきまする失業救済の基本的な考え方といたしましては、今までの失対事業のような方法では、失業問題の打開としては不十分である。どうしても職業訓練、職業指導並びに失業期間中の生活の保障というような総合的な措置によって、この失業問題の打開をはかるようにしなければならぬというふうな考えが、最近だんだんと出て参ったように思うのでございます。そしてこの考え方のもとに現在までは雇用促進事業団が、ちょうど石炭離職者に対する対策をきっかけとして設立せられて、引き続き今回の鉱山離職者というのは、同じような考え方が出てきております。また失対事業の改善につきましても、同じような考え方が出てきておるわけなのでございます。しかしながら、まだこうした考え方につきましては、全般的に、一般にそういう考え方が普及しておるとも申し上げかねる状況でございまして、今こういう失対事業についての新しい考え方というのは黎明期にあるとでも申してよかろうかと思うのであります。私どもは、こうした考え方が失業問題全般についての支配的な地位を占めるようになるべきものであるし、また、それがすみやかに実現することを期待いたしておりますが、まだまだ実情がそこまでいっておりませんので、むしろ石炭離職者に対する対策などの場合は、これは石炭離職者という特殊な範疇の人々に対する特殊な対策であるという注釈付で、ああした対策がとられたように思うのでございます。また、今回の鉱山離職者につきましても同じように、これは特別であるというふうに出てきたわけです。しかし、失対事業の改善に際しましては、ややこれが全般の失業者に対して広められて参りました。失業者一般に対して職業訓練、職業指導、また就職促進のための就職促進手当であるとかいうような考え方が出てきております。私どもは今後こういった考え方で努力して参りたいと思いますが、現在までの段階はまだその程度でございます。今後ともそうした方向にもっともっと努力をして、失対事業の本来のあり方はこれである、こう思いますので、そういう方向に早く進みたいとせっかく努力中でございます。
  59. 吉村吉雄

    吉村委員 ただいまの大臣の答弁あるいは今までの政府委員の答弁を総合いたしまして言い得ることは、石炭関係離職者にせよ、あるいは今回の金属関係離職者にせよ、一定の地域でたくさんの人が一時的の離職状況が生まれた。従って、特別の対策を立てざるを得ない、こういうのが答弁の主要な柱をなしておると思うのです。なるほど、そういう現象は生まれておりますけれども、しかし個人々々の労働者にとってみますと、そういうことは大きな問題ではないわけです。いかにして最も早く再就職でき得るか、最もよい条件で再就職でき得るか、これが個人々々の労働者が一番心配をする点でございます。ですから、政府考え方としては、特定の地域にたくさんの人が——といいましても、これを分解していった場合には、それは離職をした労働者に対する再雇用対策ということになるわけです。従って、これはどういう職種、どういう産業、どういう地域におきましても、早く再就職ができるようなことを望んでいるのは当然でありますから、労働省としては、これを区切ってやっていくというのは、私は正しい意味での失業対策ではない、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。この点を大臣も十分考えていただかないと、その個々の現象面についての対策に終わってしまう、こういうふうになりかねないと思います。労働者立場からすると、先ほど申し上げた通りなのですから、労働省としては、それらの個々の労働者に対する施策というものを考えて、そうしたことを重点にしたところの失業対策、こういうものを一つ総合的に立ててもらうようにしてもらわなければいけないというふうに思うのです。そこで、その点について大臣からあとで承っておきたいと思いますが、その前に、事務当局から具体的にお伺いしたいと思います。  現在のこの離職対策の中で、この委員会の論議の焦点になったものをあげてみますと、大体石炭関係離職者、今問題になっております金属関係離職者、それから失対事業に吸収をされておる労務者、これの民間への再雇用の問題、それからいま一つは、先ほど来河野委員が再三主張いたしておりましたところの駐留軍関係労務者、大別してこれらが大へん問題になっておったと思います。その他もたくさんございますけれども。この四種類の離職の問題、これに対する再雇用促進対策等について、それぞれの条件というものを出しておると思います。私は、それが幾つも幾つも、あとからあとから出てくるものですから、理解がしにくくなっておるのが現状じゃないかと思いますので、炭鉱離職者に対しては、雇用主に対してはこういう条件、当人に対してはこういう条件、それから金属労働者についてはどう、失対労務者民間に出ていく場合はどう、あるいは駐留軍労務者の場合はどう、これはだいぶ相違があるように思われますので、この内容についてどういう条件になってるいのか、まず明らかにしていただきたいと思います。
  60. 三治重信

    三治政府委員 こまかい点に入りますと非常に長くかかりますが、石炭関係につきましての一番特徴は、今度合理化計画雇用計画とを合わして、政府石炭鉱業の安定をはかるために特別の離職者対策をとる。これの一番特徴的なのは、求職手帳を発給して、離職者に対しては、離職後三年間失業就職を促進していく、これが非常に大きな特徴だと思います。  金属鉱山につきましては、そこまではいきませんで、やはり山の奥で離職されるので、他に移転しなくちゃならぬということのために移転資金、さらに住居を移転されるために住宅確保奨励金を雇用主に——これは石炭にも行なわれているわけなのですが、そういうふうな住居を移転して就職するための措置石炭並みにとるということが金属の特例措置でございます。  それから駐留軍関係離職者につきましては、現在われわれは、現行駐留軍離職者対策臨時措置法の線で、これを延長して措置していきたいというふうに考えております。  失対事業の就労者につきまましては、今度改正案を出しまして、現在就労されておる方につきましては転職訓練を重点的に行なって——この転職訓練につきましては、石炭金属、それから駐留軍関係離職者の転職訓練と同じ内容の訓練手当を支給していく。それから民間雇用していただく人には、雇用奨励金を補助金で——これは府県事業主体の方が若干負担いたしますが、補助金で雇用奨励金を石炭非鉄金属と若干支給要領は違いますが、前職賃金に近い線で雇用奨励金を出していく。こういうふうな線で、失業対策事業の就労者につきしまて転職訓練、それから雇用する事業主に対しては雇用奨励金を支給して民間就職をはかる、こういうふうに考えております。
  61. 吉村吉雄

    吉村委員 これは一年ですね。
  62. 三治重信

    三治政府委員 一年でございます。
  63. 吉村吉雄

    吉村委員 今三治局長の方から答弁がありましたけれども石炭関係労務者の場合には、一番特異的なものは、就職促進手当ということで三ヵ年というのが特異的なものだと言えると思うのです。それから金属労務者の場合にはそういうものがなくて、住宅確保資金というものを雇用主の方にという話でありますが、これは石炭労務者の場合も同じ対策でありますから、変わりはないと思います。ただ違うのは、今度の場合には、時限立法的に二ヵ年であるという点が異なっておると思います。それから失対事業労務者民間雇用の場合には、雇用奨励金的なものを一年、こういうことでございます。それから駐留軍関係についてはそういった制度はなし、こういうことになります。私が特に今このことを具体的に例をあげて申し上げますのは、これらの方々は一体どういう条件にあるのかということを考えてみますと、石炭関係労働者あるいは金属労働者については、非常に類似の条件を持っておると思うのです。やはり山で働いておる、集団生活をしておる、しかも集団で離職という結果になっておる、こういうことでございますから、数の問題については、量的な問題については相違はあるかもしれませんけれども、しかし質的な問題について、私は、金属労働者石炭関係労働者については、同じような状況ではないかというふうに考えます。  さらに、この四種の離職者に共通しているものは何かということを考えてみますと、いずれもこれは中高年令者が大半を占めているということが共通していると思います。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 中高年令者の再就職の問題が、今雇用上の重要な問題になっていることは言うまでもないわけでございますから、従って、この共通しておるところの中高年令者に対する対策として、それぞれ異なった対策をとらなければならないという理由は、私はごうもないのではないかと考えます。ほんとうに中高年令者の再就職ということを真剣に政府責任を持って考えていくとするならば、このような差をつけるというやり方は、私はこれは大へんあやまちを犯していることになるだろうと思うのです。ですから、先ほどのように駐留軍関係労務者についてもという話も出てくる、出てくるのが当然だと私は思います。もっともっと他の産業について言っても、これと同じようなことが出てくる可能性がある、こういうふうに思います。いずれもこれらは政府の政策の一環として生まれた現象でございますから、政府が共通の態度を持って、共通の責任を持ってこれらに対応していくという姿勢がなくてはならないというふうに思います。なぜ一体こういうふうに差をつけるのか、これは今までもいろいろ説明がございましたけれども雇用政策あるいは失業対策という立場考えていけば、その対象になる労働者のことを重点に考えていくのが当然なはずです。だからある地域とか、ある特定の産業とかを考えていくのは、それは失業対策ではないと思うのです。雇用対策でもないと思うのです。個々の労働者をどういうふうに再雇用させていくかということが、正しい意味での雇用政策でなくてはならない、こういうふうに私は思いますから、今までのこういう差をつけてくるところの説明ではどうしても納得できない。これをこのままでやっていきますと、今のような私の不満といいますか、政策上の矛盾というものが、もっともっと拡大をしてくると思います。ここはきちっとした方針というものを出してもらわなければならないと思いますが、いま少し納得のできる説明ができ得るならば、していただきたいと思います。
  64. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 実はこれははっきり申し上げますと、なかなか御納得のいく説明をすることは私も自信がないと申し上げなければならぬかと思うのでございます。というのは、私ども考えまして、中高年令層の離職者対策といたしましては、石炭が一番手を尽くしてあると思います。従って、できるだけ離職者対策としては手を尽くしたいのはやまやまでございますが、しかしやはり予算の問題等がございまして、全部の離職者について同じように手を伸ばすということは、事実上なかなか困難な事情があるのでございます。   〔小沢(辰)委員長代理退席、澁谷委員長代理着席〕 しかし何と申しましても、石炭につきましては最大限度手の届くようにしたいというので、石炭だけは例外だということで、一応石炭離職者対策を打ち立てたわけでございます。その後、あれは石炭だけの特別対策であって、ほかへは直ちに均霑させるべきでないという考え方があったのでございますが、同じような時期に同じような労働に従事しておられます非鉄金属関係離職問題が発生いたしました。この問題について、特に石炭並みにしてほしいという国会の決議もございますので、石炭離職者対策金属にまで延長することにいたしました。しかし、どうしても就職促進手当までつけるということができなかったわけでございます。そういう事情でございまして、私は逐次一般石炭対策のような考え方で進むようにしたいし、またそれがいいと思っておりますが、それにはだんだんにやっていくのが実際的だ、こう思っております。これは理屈でなく、実行上こうやらざるを得なかったということで御承知をいただきたいと思います。
  65. 吉村吉雄

    吉村委員 それではどうしても納得ができません。石炭労務者であるから、あるいは国会の決議があったから、それだけの理由によってやるのだとするならば、これは私は大へんなことになると思うのです。失業対策雇用政策というものについては、政府として、労働者の再就職というものについて一貫した方針がなくてはならないはずだ。それを、たくさんの人が特定の地域で離職するから特定の対策が必要である、特定の産業がこうなったから特定の対策が必要である、こういうような説明だけでございますけれども離職するのは労働者なんです。再就職を欲するのは労働者なんです。どこの地域、どの産業で失業しようとも、その労働者が失業したという現実に変わりはない。その失業者を再雇用せしめていくというのが、正しい意味での失業対策であり、雇用対策であるはずなんです。だから、そういう点からするならば、特定の措置ということは私は正しい意味での雇用政策ではない、こういうふうに言わざるを得ないと思います。政府が今までとってきた措置についての経過の説明は、私は了解します。しかし、雇用政策を推進するという立場からするならば、それは誤りであるというふうに私は考えるのです。この点は一体どうですか。
  66. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は先生と考え方は同じなんでございまして、ただそれを一時に全部やらなければいけないのだということになると、それでは石炭の方もやるわけにはいかぬ、これではやはり実際的でない。だから、ここは、これだけはとにかくやろうという話のきまったものから、一つでも二つでもだんだん手をつけていくことが、政治の実際としては大事なことではないか、こう思うわけでございます。理論的には全く同じでございますが、ただこれを実現する上におきまして、私どもの微力のために一斉に全部スタートさせることができません。できるものからだんだんにやっていこう、こういう考えでやったわけであります。
  67. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣がだいぶ急いでおられるそうでありますから、まだ私は納得するところまではいきませんけれども、次に移らざるを得ないのですが、しかし、大臣が今お認めになっておるように、雇用政策の問題と個々の対応する対策の問題というものはやはり関連をし、一貫した方針というものがないと、次々と矛盾を拡大して論争を大きくする、こういうふうになっていくと思うのです。だからといって、私は石炭労働者に対する対策がこれで万全だとか、ほかの方はこれより悪くていいのだという意味で言っておるのじゃないです。しかし、失業対策というものをやっていこうとする場合には、一貫した方針、その失業に当面する労働者をどう再雇用せしめるか、そういう立場に立った方針というものを打ち出してもらわないと困る、こういうことを申し上げておるわけです。この点については、大臣も理論上その通りでございますという答弁でありますから、そういう理論的に正しいものを実現していくように努力をしていただきたいということを、この場所では要望しておきたいと思います。  関連をして一つ伺いをしておきたいのですけれども、今回の石炭離職者に対する対策あるいは金属鉱業労働者に対する特別措置、こういうものになぜ特別措置をとらなければならないのかということに共通しているのは、国の一つの政策の結果としてこういう現象が現われた、だから国として特別な措置をとっていく、こういうことになっておると私は理解をします。そこで、少し話は飛躍をいたしますけれども、今雇用問題の中で非常に重要な要素を占めておると思われますのは、農村の労働力がどんどんと第二次産業に流入しつつある、こういうことであると思います。この農村労働力が都市にどんどん流入をして、第二次産業に吸収されるということは、これも偶然の結果として生まれている部分と、政府の政策遂行の面として現われている部面と、両者があると私は思います。私が言うまでもございませんけれども、現在の農村に対するところの政府の政策は、農業基本法がこれを裏打ちをして実施いたしておるのでありますが、御承知のように、農業基本法では農村労働力というものを第二次産業に吸収していく、そして十ヵ年の中で、純粋な労働力の移動というものを大体二百四、五十万行なっていく、こういう計画があるわけです。この計画を農業基本法が実践をすることになり、具体的に農業構造改善とか、その他の政策が推進をされておるわけでありますけれども、これによって農業労働力というものが第二次産業に、政府の政策通りといいますか、あるいは政策を越えているとさえ言われるくらい流れ込んできている、こういうふうになっておると思います。このことは、農業の年次報告にもすでに出ておるところであります。こういう点を考えて参りますと、農業労働力の第二次産業に対する流入の中で特に問題になるのは、学卒、いわゆる中卒、これは問題じゃないと思う。しかし、中高年令者の、すでに世帯主で経営主であった者が相当流れ込んできている。流れ込んできているばかりでなくて、これらの方々が就職をした場合の状態というものは、臨時雇用が他の雇用に比較して非常に多いということも、農業の報告書が示しておるわけです。こういうことを考えて参りますと、この農業労働の流動というものも、国の施策によって現われた現象である。私はこの政策に必ずしも賛成をする立場ではございませんけれども、しかし、国の政策によってこういう現象が生まれていることだけは明らかである。とするならば、この農業労働力の流入あるいはその対象になるような人たちについては、同じような国としての保護政策をやっていかなければ片手落ちになるのじゃないか。しかもこれは数の上から言うならば、非常に大きな要素を占めていると思います。これらの点については、何らの対策なり何らの施策というものもないように見受けられますけれども、今私が申し上げたようなことについて、一体大臣はどのように考えられておるか、承っておきたいと思います。
  68. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 中高年令の農村出身者が、第一次産業を離れて第二次産業に流入しつつあることは事実でございます。そうしてその者が新しい職場において占める地位は、いわゆる常用労働者でありながら、多くは臨時工あるいは社外工といったような形をとるのも、一般労働者以上に大きな割合が統計に出ております。従って、その労働条件が比較的に悪く、特に待遇も悪いということは、容易に想像されるところでございます。これにつきましては、従来から、職業紹介機関といたしましてもいろいろ心配はしてきておったと思うのでございますが、特に臨時工をどういうふうにしていくかという大きな問題がございまして、この点は従来からも、努力はしながらもなかなか効果を上げていかなったように思うのでございます。しかし、この臨時工の問題につきましては、いろいろな方面からの批判もございますので、私どもといたしましては、特にこの臨時工の取り締まりについて力を入れる、いわゆる常用労働者の実態を示しておりながら、しかも臨時工扱いをしておるというところにいろいろな問題がございますので、これをどうすれば減らすことができるか、この問題に真剣に取り組むべき時期がきておると考えておるのであります。ただ、この問題は事業主ばかりでなく、労働組合側にもいろいろ協力を得なければ、実際上効果が期待できない面もありますので、今後労働組合の諸君とも十分に話し合いまして、何とかこうした点から改めていくようにいたして参りたいと思っております。
  69. 吉村吉雄

    吉村委員 私の質問の意味が十分理解されなかったのかどうかわかりませんが、私が今申し上げたのは、石炭労務者に対する特別措置あるいは金属労働者に対する特別措置、これを再雇用してもらうために特別な措置をとらなければならないということがなぜ起こったのかと言えば、国の政策上の結果としてこういう現象が生まれたから、従って特別な措置をとっていくという、そういうことではないか。ところが、同じように雇用問題の中で非常に大きな問題になりつつあるところの農村の労働力、これはだいぶ大きく第二次産業に吸収をされつつある、農業の年次報告書によりますと、経営主、跡取り、こういうものが離農をしてどんどんと都市に流れてくるという傾向、そればかりではなしに、第二次産業の方に吸収されるという傾向、こういう状態になっておる。三十六年度実績を見ますと、七十六万人離農者がおるということも報告をされておるのです。この離職者は、工業労働者になった場合にどういう状態になっているかというと、臨時工になっている割合が非常に多い。これも年次報告書が示しておる通りなんです。私の申し上げたいことは、特定の産業について、国の政策の結果として何らか特別の措置を国がとらなければならないとするならば、農業労働力の問題についても、農業基本法は国の政策として離農を促進しているのですから、そういう観点から特別の措置をとっていかなければ、これは不公平になるのではないか、こういうことを私は聞いておるのです。この点を一つ明らかにしていただきたいというのが、私の質問の趣旨です。
  70. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国といたしましていろいろ特別措置をとりますのは、その政策の結果であるとかないとかいうことばかりでなく、実際、現在の政治としてその問題を解決するために政府が特別措置をとるべきである、こう考えてやっておるわけなのでございます。離農から生ずる新規の労働力につきましても、政府といたしましてはこれを国の有効な産業の基本となる労働力にするために、できるだけの措置を講ずべきことは当然でございまして、たとえば職業訓練等を相当力を入れて行なっておりまするし、また都市へ出た後の対策等につきましては、先ほど申し上げました通り力を入れるべきである、こう思っております。
  71. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣急いでおるというので、こちらも急ぐようなあんばいになりますけれども、農業の労働力というものを国の産業の必要な面に移動をさせていくということは、今の池田内閣のとりつつある政策ですから、私はそのことに必ずしも賛成をしないけれども、そういう政策をとるとするならば、他の産業に従事している労働者と同じような扱いをしていかなければ、その政策というものは実践をされていかないだろうし、国民に対しては不公平のそしりを免れない結果になるだろう、こういうことを申し上げている。現実にそうなっているじゃないか。というのは、農村から工業の労働者になった人たちは、ほとんど臨時工という扱いを受けている。こういう現実が事実を物語っているじゃないか。たとえば炭鉱労働者の場合には、住宅の問題についても奨励金を出す、あるいは雇用主に対して雇用奨励金を出す、いろいろなことをやっておるわけですけれども、農業の労働力につきましては、そういう対策というものは全然ない。それは、農村の方々が非常におとなしいから、今よりもちょっと町で働いた方が少し収入が多い、そういうことだけで動いているから、文句を言わないから政府の方がかまわないとするならば、私は大へんな間違いだと思うんです。やはり政治はすべての者に対して平等な施策というものが行なわれなければならない、こういう立場からしますると、この点は十分配慮をしながらやっていく必要がある。特に所得倍増計画というものを実践して、しかも農業基本法というものを実践しておる、こういう立場からするならば、この点はもっと真剣に、政府は取り組んでいく必要があるのではないか、こういうことを私は申し上げておるわけです。これは関連をして先ほど申し上げましたけれども、その事象々々におけるところの失業対策というものでなくして、全体としての雇用対策というものをどう立てるかということがない。ないから、ばらばらになっておる。その一番大きな問題として、私は農業労働力の問題があるのではないか、こういうことを申し上げたわけでございますから、特に雇用政策については一貫した方針というものを樹立してやっていくように、一つ特に要望をしておきたいと思うんです。  時間がないそうでありますから、これで終わりますけれども、何かお答えがあるならば聞かしてもらってけっこうです。
  72. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今お述べになりました御趣旨は同感でございます。今後でるだけ御趣旨に沿うように一そうの努力をいたします。
  73. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣に対する質問はこれで終わりますが、私は、委員会なんかで質疑応答をやって、やりっぱなしということをきらいます。言ったことは実践してもらう、こういう立場でおりますから、今の大臣の答弁もそういう意味で了解をして、大臣が行くことはいいと思います。
  74. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 五島虎雄君。
  75. 五島虎雄

    ○五島委員 この雇用促進事業団法の一部改正法律案が提案されて以来、ずいぶんわが党の同僚議員から矛盾点について正面から質問をし、明らかにしたことはした。労働大臣は、わが党の同僚議員に対するところの意見に賛成されたことも賛成された。そうして今後、やはり雇用安定の問題については、あらゆる問題ですみやかにその施策を実施する必要がある、こういうように思うわけです。しかし私は、大体審議が最終点に到達しておりますから、この雇用促進事業団法金属産業についての問題のみに限定して、最終的に質問をしていきたいと思うんです。ちょうど労働大臣も参議院の予算委員会に呼ばれましたが、政務次官がおられますので、私の質問に対し明快な答弁を要望すれば、時間が非常に短縮されるのじゃないか、こういうように思うわけです。  まず質問に入る前に要望しておきたいのは、小沢委員でしたか、先日、金属産業の失業者の数はどれだけかというような質問があったようでございますが、最近における鉱山労働者の在籍者数、それは各事業所別及び職務関係を含むところの資料をわれわれの手元に提示してもらいたいということであります。その資料に基づかなければ、われわれは、どういうような離職傾向であるか、あるいは今後どういうようにそれらの傾向が進展していくかという判断のしように苦しみますから、この資料を提出していただきたいということであります。  次に三十五条、金属鉱業離職者の従事する業務の限定解釈、これは「事業団は、第十九条に規定する業務のほか、当該業務の遂行のみによっては金属鉱業離職者離職した金属鉱業労働者、銅鉱、鉛鉱その他の政令で定める鉱物の掘採及びこれに附属する選鉱、製錬その他の業務に従事する労働者」のみを三十五条では該当するというふうに限定されておるわけでございますけれども、山に独立して製練所があるというような場合のごときは、当然この限定の範囲内に入るものであるとわれわれは解釈をするわけでございます。その例としましては、兵庫県の神子畑鉱山におけるところの製練所等々が、この限定の中に入るのか外にいくのかというような疑問点も生じます。しかしわれわれは、こういうところに働く労務者がもしも離職をするというような場合には、当然入るんじゃないかというように解釈されまずけれども、その解釈の問題について明らかにしていただきたいということが第一点であります。
  76. 三治重信

    三治政府委員 この製練所につきまして、山にあるものにつきましてはその事情に応じて適用していくことにしております。御指摘の神子畑につきましては、そういう対象になる該当の一つだと考えます。
  77. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると、対象になることが明らかになったら、神子畑のような直接付属製練所というようなところが、全国ではまだたくさんありますか。   〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 三治重信

    三治政府委員 若干例がございます。全然離れたところと、それから山にひっついてあるところと二つありますので、その点は実情に応じて、対象にするかしないかは、矛盾のないように合理的にやっていきたいと考えます。
  79. 五島虎雄

    ○五島委員 それが明らかになりました。  それから、この三十六条で法律は二年間の時限立法になっておるわけであります。そうすると、金属産業におけるところの離職者数がどんどんふえていく、それは自由化に基づくところの離職労働者である。そうすれば、今後自由化促進に基づいて、わが国の労働者離職するということはまことにけしからぬことであると思うのだけれども、しかしながら、これらの施策を推進していくについて、どんどん離職者が多くの鉱種に影響することが想像される。しかもこの法律自体が二年間の時限立法であるということについて、二年で処理できるというように考えられるのかどうかということです。しかも鉱種の区分によりますと、政令に委譲しておるようであります。そうすると、政令は十四鉱種を限定されているということでございます。しかも金鉱、銀鉱、磁鉄鉱あるいは褐鉄鉱、赤鉄鉱、すず鉱、長石、重晶石、耐火粘土あるいは硅石、その他いろいろな鉱種があるわけでございますけれども、これらの問題について配慮が行なわれてないということはどういう理由であるかということです。しかもこれらの十四種に限定されて、その他の鉱種からの、鉱業区からの離職があった場合、いかなる施策が行なわれるかということです。そうすると、自由化に基づくところの産業自体から失業した場合はこのように施策が行なわれるけれども自由化以外の職場から離職が行なわれた場合はこれには該当しない、こういうようなことはまことに不公平じゃなかろうかと思われます。そういうようなことについて、はっきりした労働省の見解をお聞きしたい、これが第二点の質問です。
  80. 三治重信

    三治政府委員 今一応十四業種に予定をしておりますが、従ってその予定をしているのも、そういうふうに現在法律ではっきりそれを指定るすのも落度があってはいけない、こういうことでございます。従って、このあと、政令でございますので、自由化により影響を及ぼす業種についての追加をすることについてやぶさかではありませんが、慎重に検討していきたいと考えております。なお、自由化だけというふうにお考えかもしれませんが、自由化を中心としてでございまして、たとえば硫黄なんかは自由化をしておりませんが、現実にほかの金属鉱山自由化に伴うものと時を同じくして、たまたま硫黄なんかの企業の整備が行なわれたということで対象にするということでございまするので、その点、若干われわれの方としては弾力的に取り扱っていきたいという考えでございます。なお、二年間と申しますのは、一応通産省と連絡をいたしまして、三十八年度、三十九年度で大体各企業やいろいろな状況を見て大丈夫だということでございます。しかし、その二年間で出られた方が再就職されるまでのものは有効でございまして、その法律につきまして、その間の発生の方はずっと最後までめんどうを見られるような立法にしておるつもりであります。その間の発生者というような意味の二年間の限定であります。二年が過ぎたら全然処置をやらないということではなくて、その間に発生された方についての離職者対策は、その方については、その法律が過ぎた後も再就職についての対策は進めていきたい、こういうことであります。
  81. 五島虎雄

    ○五島委員 それでその点は明らかになりました。要するに、十四鉱種以外の問題についても慎重に検討して追加する、しかも二年間の時限立法は、通産省と相談した上で当面二カ年で処理できるだろう、しかし、できない場合はさらに検討する、こういうことが明らかになりました。  次に離職者対策の問題については、その施行期日は三十八年四月一日より施行することになっておりますが、対象となる離職労働者は、もちろん、去年の四月一日以降の離職者に対してもこれが実施されるものであるというようにわれわれは判断するわけですが、  これの明らかな見解はどうですか。
  82. 三治重信

    三治政府委員 御説の通り、昨年の四月一日からの離職者について適用する考えでございます。
  83. 五島虎雄

    ○五島委員 そうしますと、すべての離職者に対してこれが適用されるということでありますか。
  84. 三治重信

    三治政府委員 安定所の紹介によって再就職される方に適用するというふうに法文上はなっております、そのために昨年からその関係者との再就職の懇談会を設けておりますので、法律の条項からいけば、安定所の紹介による者についてこれが適用される、そういうことで、安定所を中心にして再就職をされるように今いろいろ協議をしておりますので、それで全般的に対象になるというふうに考えております。
  85. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると、今回の改正によっていろいろの施策がメタル産業労働者離職者に対して行なわれるわけですが、三十七年四月一日以降に離職した者に対する施策として二つあろうと思うのです。三十七年四月一日以降に離職されてもうすでに就職した者がある、しかも就職できなかった人がある。そしてそれらは、今後労働省職安の働きによって円滑に就職できるように推進する。そうすると、一度離職されて何ヵ月か失業されて、そして職安の紹介によって就職した人にもこれが適用されるものである、しかも今後就職される人にもこれが適用されるものである、こういうふうにわれわれは考えるわけでございますが、その点は、私の考え方と同様であるかどうかということを明らかにしてもらいたい。
  86. 三治重信

    三治政府委員 この四月一日に施行になりますと、四月一日前に就職された方については、その雇用主に対してこの四月一日以降雇用奨励金を出すわけに参りません。これは安定した職場に就職されたし、雇用主の方もこの法律を知らないでそういう状況で採用されたわけですから、たとえば十月に就職された方について、四月一日から雇用奨励金を事業主に渡すというわけにはいきませんが、現在失業されておる方が昨年の四月一日以降の離職者で就職される場合には、雇用主に対して雇用奨励金が渡される、こういうことであります。なお、今まで就職された方で二、三ヵ月後離職されたとか、その後雇用の不安定のために離職された方が再就職される場合には、これの適用があるというふうに考えております。
  87. 五島虎雄

    ○五島委員 同一条件で離職し、苦しんでおる者については、公平に労働者に対する施策を講ずるということが必要であろう、こういうように考えますが、まあこれはこれでおきましょう。  次に、雇用促進事業団におけるところの業務方法書が作成されるわけですけれども、これについては、その業務方法書の作成にあたって、ただいま三治局長が言われましたように、金属離職者懇談会等々が設けられておるから、その懇談会にその業務方法書の内容の説明等の連絡を十分とって、そうしてお互いに了解し合った業務方法書を作成して、万全の措置を講ずるということがいいことではないかと思います。ところが、雇用促進事業団の中にも審議機関がございますから、そういうのと私が言うところのこの金属離職者懇談会との結びつき等々について、一番円滑な方法を講ずる意思ありやいなやということについて質問をいたしたいと思います。
  88. 三治重信

    三治政府委員 この金属鉱山離職者対策懇談会は、再就職促進のための打合会でございますので、業務方法書改正の前に、こういう内容でこういうふうな業務方法書改正取り扱いをするということは、十分趣旨を御説明する予定にしております。なお、雇用促進事業団の方の協議会その他についても、事業団をしてこういうふうな業務方法書改正というものにつきまして十分御説明して了解を得る、そういうことで業務方法書の改を正した上で、十分仕事がそつなくできるように措置したいというふうに考えております。
  89. 五島虎雄

    ○五島委員 次に、第十九条、広域職業紹介は毎年計画が立案されると思いますが、昭和三十八年度の上期計画はもうできておりますか。
  90. 三治重信

    三治政府委員 上期につきましては、現在行なっておりますのをそのまま横ばいにしていくつもりでございます。金属鉱山につきましては、大体現在のところ広域職業紹介命令地域を指定しておりますので、これを三十八年度の上期に横ばいさせていけば当面できると思いますが、さらに必要があれば随時これを指定していく。今までも、期限を限るとか、またいつでなければできないということでなくて、必要と認めたつど広域職業紹介命令を発していくようにしておりますので、それには万遺憾なきを期せられるというふうに考えております。
  91. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると、広域職業紹介の地域は十八カ所ございますか、それについて今度の金属鉱山関係はなお広範囲にわたるのではないか、こういうふうにも思われますから、この計画を再審議をして、その地域を拡大するように検討される意思があるというように三治さんは言われたようですけれども、この点をもう少し明らかにして、そうしてその計画を拡大されるように検討してもらいたいということですが、その点について御答弁を願いたいと思います。
  92. 三治重信

    三治政府委員 現在十九カ所でございますが、それについて、今後同様な事態が出れば、時機を逸せず指定していきたいというふうに考えております。
  93. 五島虎雄

    ○五島委員 わかりました。それではその他の問題にも伺いたいことがいろいろありますけれども、まだなお質問者がございますので、ただいまは金属労働者離職に伴うところのこの法律の二条か三条の一部改正の問題のみにしぼって質問をしたわけですけれども三治局長から答弁がありまして明らかになったことがあります。それで、労働大臣がおられませんから田村政務次官から、今答弁があって明らかになったことについて一つ確認をしておいていたきたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  94. 田村元

    ○田村政府委員 先ほど来の職業安定局長の答弁申し上げました点は、労働省の見解としてお受け取りいただいてけっこうでございます。
  95. 秋田大助

    秋田委員長 井堀繁男君。
  96. 井堀繁男

    ○井堀委員 私は民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっておりまする金属鉱業離職者対策に関する法案について、重要な点を一、二お尋ねをしておきたいと思います。  今度の法案は、提案理由政府が明らかにいたしておりまするように、貿易自由化を推進しようとする政府の政策転換の犠牲になる金属鉱業労働者のための措置をとろうという法律であることは、きわめて明確であります。しかも政府は、鉱業審議会の答申を十分に尊重して本案を提出いたしましたと言っておるわけであります。そこで私は、この鉱業審議会の答申案についてまず政府所見をただしておきたと思います。  この答申案を拝見いたしましたが、雇用安定の問題については、かなり具体的に、かつ積極的な答申が行なわれておるのであります。これを政府が受けて、これを尊重して提案したと言っておるのであるが、この改正案を拝見いたしますると、事業団法のごく一部分を改正することによってお茶を濁そうとしておるということは、言うまでもなく、答申案を軽視するもはなはだしいと利は思うのであります。一体そうでないという御確信がありまするならば、一つ当局の見解を伺っておきたいと思います。これは政策に関係のあることでありますから、一つ大臣にかわって政務次官から、明確なる御所信を承っておきたいと思います。
  97. 三治重信

    三治政府委員 まず第一に、この答申に書いてあります訓練の関係でございますが、「訓練期間中の生活の安定を図るため、」云々の、職業訓練手当、技能習得手当別居手当等につきましては、昨年の十二月十七日にこれが炭鉱離職者と同じようにできるように業務方法書改正したところでございますので、職業訓練については答申案通りやっておるというふうに考えております。  それから失業保険金の給付の延長措置、これは広域職業紹介活動の地域指定によってできるわけでございますが、これも昨年来出た山につきまして地域を限定して広域職業紹介活動を命令し、失業保険金の給付の延長措置をとってございます。それから移転就職用宿舎につきましては、三十八年度一般用として千七百戸を予算として計上いたしてございます。移転資金につきましても、昨年の十二月に増額いたしました。従って、こういうふうに現行法でできるものにつきましては、この中間答申が出ましたあと関係機関と連絡して、十二分とまではいかないかもしれませんが、われわれとしては石炭に準ずる、または同じ対策を昨年末に急遽いたしたというふうに考えております。  それから労使を集めての連絡協議の場も、昨年のこの答申の出ましたあと、労使、公益を含めまして、これは法律に基づくものではございませんが、再就職の相談をする懇談会を設けてございます。それから公共事業その他の問題や現地における事情につきましては、種々関係市町村からも陳情を受けておりますので、今後とも御相談に応じて、関係各省協力していろいろの対策に努めていきたいというふうに考えております。従いまして、ここに中間答申でありましたことで行政措置でできますことは、私たちとしては、できる限りこのことはしたつもりでございますが、なお、ここにも炭鉱離職者に準じてというふうに書いてある趣旨を尊重いたしまして今回提案した、こういう関係でございます。
  98. 井堀繁男

    ○井堀委員 答申の中の訓練手当てを特に配慮しておると言われておりますが、幾ら訓練手当を増額いたしましたか。それから技能習得手当及び別居手当を支給せよといっておりますが、これは金額で一体どの程度のものをどういうふうに差し上げようとしておりますか、具体的に伺っておきたい。
  99. 三治重信

    三治政府委員 訓練手当につきましては、三十七年度では一日三百円、技能習得手当は一日七十円、別居手当が三千六百円、今度三十八年度になりますと、訓練手当、技能習得手当を含めまして、月額一万二千五百五十円になります。中身は、訓練手当が、今度は休日も入れて一日三百六十円、それから技能習得手当は、出席日数に応じて一日七十円、別居手当の三千六百円も同じでございます。
  100. 井堀繁男

    ○井堀委員 来年度は多少増額しようというのでありますが、この答申の趣旨は、私はこういうふうに読んでおるのです。その見解をもう一つ伺っておこうと思います。この答申の中で非常に重視しておるのは、いわば政府の政策の転換あるいは社会的な影響に伴う、労働者の負うべき責任の全くない事柄による犠牲であるから、その措置についてもかなり積極的に、たとえばここにあります文章を見ますと、「政府は格段の配慮を払うべき」だ、という言葉を使っておる。格段というのはどういうことになるか。それから「鉱山離職者の特殊事情」の問題については、もちろん中高年令層の労働者が非常に多いということ、それから他に転職する場合における熟練労働、あるいはそれに類する資格を与えることによって就職の機会を拡大していこうという考えであることは、私どもも理解できるわけです。そこで、ここでは「炭鉱離職者対策に準じた対策を早急に樹立する必要がある。」と結んでおるわけでありますが、炭鉱労働者の場合よりは金属鉱山労働者の場合は組織もやや脆弱でありますし、世論も比較的範囲が狭いということはやむを得ぬと思うのでありますが、しかし、質的には全く同一であることは言うまでもないのであります。  そこで、私は具体的にお尋ねいたしたいと思いますのは、三百円を三百六十円に増額いたしましても、せっかく訓練の機会を与えても、訓練の期間中の生活の保障ができなければ事実上から回りするわけです。初年度は三百円、今度三百六十円で一体この精神が満たされるというふうにお考えでありましょうか、それとも何か他に訓練中の生活の保障をお考えになっておるのですか。この問題に対する考え方をこの機会に承っておきたいと思います。もちろん、ここでは金額を幾らくらい出した方がいいということは言っておりませんが、私が重視いたしますのは、特別な配慮、そして訓練中の生活の安定をはかれということを言っている。これは他にも影響してくると思いますが、一体労働省は訓練期間中の生活の安定、金額で言えば三百六十円、この点の見解を、これは政策に関連いたしますので、ぜひ労働大臣から伺っておきたいと思いまして——次官に準備がなければ、局長がかわって答えても同じことかもしれませんが、こういう問題についてはこういう機会にもっとわれわれ論議し合っておく必要がある重要な点だと思いますので、こうなりましたという事務当局のお答えを私は聞こうとするのではない。そういう政府考え方がもし許されるとするならば、われわれは他の場合においても論議しなければならぬと思う。答申案というものは、決して形式を整えればいいというのではなくて、ここは実質を尊重しての答申だと思う。このところをはっきり伺っておきたい。
  101. 三治重信

    三治政府委員 この職業訓練手当、技能習得手当別居手当は、この答申が出るまでは非鉄金属離職者にはなかったわけであります。これを昨年の十二月に、石炭離職者に対する訓練手当、技能習得手当別居手当と同額にしたわけであります。それが今度、三十八年度においては同じように値上げした、こういうことでございまして、石炭にとられておったのを昨年十二月から非鉄金属適用した、だからこれは同格になったわけであります。それから三十七年度にやっておりますのからどれだけ上がったかという問題になりますと、三十七年度では、石炭非鉄に訓練手当としては七千五百円になっておるのを、三十八年度は月額一万二千五百五十円と、相当の増額になる。なお、これにつきまして、今度の失業保険法改正におきましては、失業保険受給者につきましては、失業保険受給中に訓練所に入れば、失業保険にプラス技能習得手当が全員につきます。なお、三百六十円に満たない失業保険受給者については、その差額を失業保険の方で出して、失業保険受給者については、その失業保険からもらえるのは最低三百六十円に改正する予定でございます。そういうふうにしまして、訓練の関係につきましては、この予算措置並びに失業保険法改正で、再訓練の措置としては大幅に拡大強化したというふうに考えております。
  102. 井堀繁男

    ○井堀委員 結果をあなたが報告せられるのはいいでしょう。そこで、せっかく次官が大臣にかわって答弁しようと張り切っておられるから、三百六十円で一年の訓練期間中生活の安定ができると思っていらっしゃいますか、その点一つ伺っておきたい。できぬけれども仕方がない、この程度だというのか、予算がないからやれぬというのか、予算はあるけれどもこれで食えるというのか。この点は、これはこうしましたということを聞いているのじゃないのです。答申は生活の安定といっているのです。しかもこれは特殊な事情だ、しかも政策の転換によるいわれなき犠牲なんだから、その犠牲を救えというのが前提なんだ。だから、その期間中の生活の安定ができる金額というものであって、初めてこの答申にこたえる忠実な道だと思う。それが違っているなら違っているとおっしゃって下さい。それを聞いている。
  103. 三治重信

    三治政府委員 この訓練の関係につきましては、先ほど申し上げましたように、失業保険法改正によりまして、失業保険の受給者につきましては、できる限りその受給中に訓練所に入っていただいて、失業保険の切れてからの訓練手当は、いわば特別な人だというふうに考えております。従って、こういう離職者で訓練を受けられる方は、大部分が失業保険の受給者であるというふうにしたい、またそういうふうに持っていきたいと思っておりますし、現在においても、こういう離職者で訓練所に入って訓練を受けられる方々の大部分が失業保険の受給者であります。失業保険の受給者でありますれば、失業保険金の横ばいでずっと訓練が終了するまでもらえる。従って、この一万二千五百五十円は最低限であって、失業保険の受給者につきましては、これ以上に、その失業保険金額とプラス・アルファになるから、相当な金額がもらえることになるものと思います。  なお、職業訓練手当につきましては、現在の失対諸事業に働いておられる就労者の月の所得との関連を見ましてきめたことでありましてこれで生活の安定云々という問題については、まあいろいろ議論はあろうかと思いますが、現在の失対諸事業に働いておられる方の金額もこれと大差ないわけでございます。そういう意味におきまして、あまり格差もつけられません。大体全体の水準としては、最低としてやむを得ないものだというふうに考えております。
  104. 井堀繁男

    ○井堀委員 そんなことを聞いているのじゃないですよ。私がお聞きしているのは、失業保険にいたしましても、今の失業保険の率は低いから、それでも生活は下がるのです。だから失業保険が切れた後の問題もあるが、失業保険をもらっておっても足りないのです。だから、私はあなたにそういうことを聞いているのじゃない。それぐらいのことは私も知っている。私が聞いておるのは、答申案の中で生活の安定をはかれといっておるのだが、失業保険で生活の安定をはかれというのではないのです。私はそう思った。だから訓練中の生活の安定をはかれという答申の精神を、政府はどう受け取っておるかということを聞いておる。失業保険をやって、そのほかに三百六十円やれば生活の安定が保障できるなんて、どこにもいっておりません。そんなことじゃなくて、私が今伺っておきたいのは大事なことなんです。こういう答申はほかの場合にもあり得る。だから労働省は、こういう場合の生活の安定というものは、これでいいというふうにお考えになっておるのか、少ないけれどもいろいろな事情で工合が悪いというのか、その辺を聞いておる。だから局長はそれ以上の答弁はできぬでしょうから、大臣にかわって次官の見解を伺っておこうというのは、要するにそういう意味なんです。
  105. 田村元

    ○田村政府委員 もちろんこの金額で、ゆとりのある生活の安定がもたらされるとは考えられません。しかしながら、他のただいま職安局長が申しましたようないろいろな面との関連等におきましても、労働省としては、なし得る最大限の努力をいたしましたわけでありまして、非常に苦しい生活の姿ではあろうけれども、全然生活ができないというわけではあるまいと思います。ゆとりある安定とは考えられませんけれども、これで最小限の安定度は保たれるであろう、かように考えておる次第であります。
  106. 井堀繁男

    ○井堀委員 田村さんは代理でおいでになるからなんでしょうけれども、この政府案の大臣がなされた提案理由を伺って、最も重視しておりますのは、「昨年十月同審議会から中間答申をいただいたのであります。政府といたしましては、国会における決議及び鉱業審議会の答申を十分に尊重いたしまして、」——十分にと言っておるのです。一体十分とは何かということを聞いておるのです。今後もこういうことがあり得ると思います。しかも答申案を見ますると、一番力を入れておるのは雇用の安定の問題なんです。これは言うまでもないことなんです。常識なんです。しし営々として、永久にそこにいわゆる生活の安定を求めて働いております労働者が、しかも貿易自由化という国の大きな政策転換のための犠牲、その犠牲者に対しては特別な配慮をしなさい、さらにそれに加えて、こういう人たちが他に転職する道を選ぶのには職業訓練の道が要するに適当だと思う、訓練中における生活の安定——あなたは、今の御答弁によりますと何とかやっていけるであろう、そんな不確定なことを言っておるのではないのです。きわめて明確に答申をしている。訓練期間中の生活の安定をはかるために職業訓練手当を支給しなさい、こう言っておるのです。ただ職業訓練手当を出しなさいというだけなら、三百円を三百六十円でもよろしいでしょう。しかし、その前段にあります生活の安定をはかるためという規定があるのです。だから、そこで生活安定とはこの場合、政府は三百六十円という考え方が動かぬのであるか、あるいはそれは三百六十円に上げることによって満たされるというお考えであるとするならば、これはやはりわれわれとしては、今後の論議をする場合における政府の見解というものをはっきり知っておきたい。繰り返し言っておるように、それでは生活の安定はできぬけれども、国の財政上どうにもならぬからという従来用いられた御答弁か、あるいはそうではなくて、出せるけれどもこれでやっていけるというのか、ここら辺の問題は非常に大切なんです。ただ議論のための議論をしているのではなくて、要するに、こういうものに対する政府の基本的な考え方をこの機会に明確にいたしたいから伺っておる。ですから、一つこれをはっきりしていただきたいと思う。まさか、三百六十円にすれば生活の安定ができるなどとお考えではないと思うから聞いておる。明確に答弁して下さらないと質問の意味がありません。
  107. 田村元

    ○田村政府委員 十分に尊重するという意味は、同じような失業対策の他のいろいろな問題との均衡とか、あるいはまた、今申されたような財政上の問題であるとか、そういう面を考えて、でき得る限り最大限の努力をすることが、私は十分の尊重だと心得ております。もちろん先ほど申し上げたようにゆとりのある安定とは申されないかもしれませんが、しかしながら、こういう姿で一応やってみて、もし社会的な深刻な問題でも招くということになりますれば考え直すことも起こり得るでございましょうが、ただいま申し上げたような趣旨においての十分な尊重をいたしたわけでございます。
  108. 井堀繁男

    ○井堀委員 非常に重大な発言だと思います。しかもあなたは労働省ですよ。それは先ほども言うように、局長の答弁の中にもありましたように、失業保険と三百六十円を比較してごらんなさい。失業保険の手当だけでも、これは困難になるのです。それよりはるかに低い三百六十円です。だから失業保険の精神を理解することができるならば、失業保険が切れたら、失業保険を下回らない手当であるということでなければ一貫しないのです。もしそういうお考えであるとするならば、自由民主党の労働政策というものは首尾一貫しないのみならず、どこによりどころがあるのかということを疑うのであります。そういう意味で実はお尋ねしたのでありますが、次官はどうも不得要領の答弁で、正確な答弁がいただけぬものとして、残念ながらまたいつかの時期に大臣出席を求めて、この点だけは明らかにいたしたい。一応保留をいたします。  もう一つだけ聞いておきたいことがあります。問題は、この法案の中で二年間の時限立法としている。二年という見通しは、これはやはり政策の基点をなすものであると思う。これは政府の政策のあり方をただしていくために非常に重要な点だと思って、伺っておきたいと思います。これは議論をする余地のある非常に重大な点だと思うのでありますが、一体二年というのは、これも答申の線とはかなり離れた線だと思うのですけれども、一応二年と押えられたのはどういう根拠に基づいておるのか、一つ伺っておきたいと思います。
  109. 三治重信

    三治政府委員 三十八年度、九年度で大体通産省とも連絡し、各関係業界とも連絡したところ、貿易自由化に対処できるという大勢でございます。なお、二年間とありますけれども、実質は本年度の四月一日にさかのぼる、すなわち昨年の四月一日以降の離職者適用するということになりますので、三年間の離職者に対して処置する、しかも三十九年度が過ぎた後までもその離職者がある限りにおきまして、この再就職される措置が有効である、こういうことでありますので、離職者の発生の状況がそれで一応結末がつくということでありますので、二年の時限立法にしておりますが、しかし、実際の進行過程において長引くというような事態、同じような事態が続くということになれば、当然再考の余地があると考えるものであります。
  110. 井堀繁男

    ○井堀委員 これは事務当局の御答弁を得て私は満足するわけにいかぬ。というのは、これは今後の他の政策とも重大な関連を持つことなので、貿易自由化に伴う問題は金属工業だけではない、他にも非常に大きく響いてくるのであります。その場合に、二年とか三年とか、そういう見通しを立てるということは、政策全体の上に根拠のあるものでなければならぬ。それを、事務当局から伺った答弁でいいと思うわけにはいきません。次官のさっきの答弁で伺いたいのでありますが、同僚のことでありますから無理な答弁を求めようと思いません。いずれ責任ある大臣出席を得てこの二点も伺っておきたいと思います。  きょうは何か大へん時間がないようでありますから、お約束に基づきまして、以下保留といたします。
  111. 秋田大助

    秋田委員長 これにて雇用促進事業団法の一部を改正する法律案についての質疑は終局いたしました。     —————————————
  112. 秋田大助

    秋田委員長 次に、雇用促進事業団法の一部を改正する法律案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  これより雇用促進事業団法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  114. 秋田大助

    秋田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました本案についての委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  116. 秋田大助

    秋田委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  117. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 労働大臣がお見えでございませんから、まずもって事務的な現状把握、数字等の問題について、労働省の当局並びに公労法適用下におけるところの現業、公社の人事担当の方々に質問をしていきたいと思います。  御承知通り、ただいま公労協を中心とするところの賃金引き上げの運動が展開をされておるわけでありますけれども、事態はきわめて深刻な状態に立ち至っております。今回の公労協を中心とするところの賃金引き上げの要求というものが、昨年からの物価値上げ等によるところの生活苦に基づく実質的な賃金を六千円引き上げてもらいたい、こういう要求に基づくものでございますが、昨年来要求に基づいて、三公社五現業の各当局との間における団体交渉が行なわれて参りましたけれども、二月の十二日以降において当局から、公労協傘下の組合に対してそれぞれ回答がなされましたけれども、これが事実上のゼロ回答にひとしいものでございまして、しかもこの回答をいたしました直後において、それぞれの当局は、これ以上団体交渉を積み重ねることはきわめて困難であるから、第三者機関の公労委の調停に付すべきであるという意見のもとに、一方的な調停申請を行ない、三月五日の公労委総会においてこれが受理をされまして、以降七日から今日に至るまで調停委員会が開かれておるわけでございます。  そこでこれに対するところの政府のいろいろな見解なりがおありであろうと思うのでありますけれども、その前に、現在の公共企業体等労働関係法の適用を受けておる職員の賃金の実態は、一体どういうふうになっているのか、これをまず大ざっぱでけっこうでございますから、労政局長にお聞きをしたいのであります。というのは、別に私の資料も幾らかございますから、たとえば郵政が平均現在二万千何がしという賃金ベースである、そういう御報告ではなくて、一体民間が——民間といってもいろいろございますけれども、いわゆる大手筋の民間賃金というものと、御承知通り公務員の賃金は今回引き上げになったわけでございますけれども、この引き上げになりました公務員給与と比較をいたしまして、公労法適用組合の賃金というものの実態は、一体どのような状態になっておるか、これを一つお知らせをいただきたいと思います。
  118. 堀秀夫

    ○堀政府委員 公労協関係の紛争につきましては、ただいま御指摘のような経緯をたどりまして、目下公労委において調停手続が始められておるわけでございます。ただいま御質問の賃金につきましては、これが民間との比較あるいは公務員との比較はどうであるか、こういう御質問でありますが、民間と申しましても、必ずしもこれに対応するような実態の企業というものが正確にないわけでございまして、ただ単純に、たとえば民間で三十人以上の賃金は幾らだというような点についての比較は、物理的にはできるかもしれませんが、実態的にはあまり意味がないと思うのでございます。そこで具体的に、たとえば公務員と比べてどうであるかというような問題になるわけでございますが、これは三公社五現業におきまするところの団体交渉において、御承知のような回答がなされたわけでございますが、これは各公社、現業等におきまして、公務員とその各公社、現業の従業員の給与を、あるいは勤続年数あるいは年令というようなものを加味して比較いたしますときに、公務員のベースアップがありましても、公労協の公社、現業の方の従業員の給与の方がまだ若干上回っておる。従って理事者当局といたしましては、賃上げする必要を認めない、こういうようなやりとりがそれぞれあったように聞いております。幸いこの席に各公社、現業の理事者側が来ておられますので、私の話はまた非常に大ざっぱな話で恐縮でありますけれども、正確な比較というものはなかなかむずかしいわけでございます。また今微妙な段階にありますときに、労働省の当局からこれで間違いないのだというようなことを申し上げる点は、せっかくこうした団交の過程が終わり、さらに調停において事情聴取が始められつつある段階において、この手続その他に微妙な影響を及ぼすことも考えられますので、私といたしましてはただいま申し上げました程度お答えをするにとどめたいと思います。あと各公社、現業の理事者が来ておられますので、一つ御質問を願いたいと思います。
  119. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 それぞれ関係の御当局の御説明を承りたいと思いますけれども、その前に、それならば、昨年の仲裁裁定が出まして、公労協傘下の適用職員に対して賃金引き上げがなされたわけでございますけれども、そのときの状況を、これはおわかりでございましょうから、一つお聞かせいただきたいのであります。昨年たしか公務員の賃金が七・八%程度引き上げになりまして、仲裁裁定の中には、公務員給与との問題、民間賃金との問題が当然比較をされて、六%の引き上げの裁定が下ったと承知をいたしておるのでありまするけれども、それによって公労委は、大体定期昇給を含めるならば、公務員給与との差がややなくなってくるものと判断をする、こういうふうに裁定の中で判断をされておったと記憶をいたしておるのでございまするけれども、現状におけるところの事実認識について、御説明がしがたいということでございまするが、昨年の裁定が下った当時の事情というものはおわかりであろうと思うのでありまして、この点が今私が申し上げたような仲裁裁定の出し方、仲裁委員会としての判断の仕方の材料、そうして最後の仲裁となった、こういうふうに記憶をいたしておるのでありまするけれども、そういう工合に判断をしてよろしゅうございますか。
  120. 堀秀夫

    ○堀政府委員 昨年の御指摘の公労委の紛争解決の場合におきまして、公労委から各公社別、現業別に仲裁裁定がなされました。この仲裁裁定は、要するにその当時におけるところの民間賃金の上昇、あるいは消費者物価の上昇、あるいは公務員の給与と公共企業体の職員の賃金関係というような、いろいろな要素を総合勘案いたしまして、六%のアップを行なうべきである、このように裁定を下したわけたご、ざいます。
  121. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 今労政局長お話にありましたように、昨年の仲裁裁定というものがどの角度から見ても正しいものであったかどうかという判定は、これはまたそれぞれ批判をする側に立てばあると存じまするけれども、一応権威ある第三者機関としてなされました仲裁裁定、公労法によるところの最終的に労使がこれに従うという立場にある機関として出されました判定というものが、今お話のありましたような状態でございますから、これは今の日本の社会通念上から言いますならば、私は一つ判断の基準になるものではないかと思うのでありまして、昨年以前におきましても大体その種の方法がとられてきたことは、御案内通りでございます。そういった形でわれわれが今回の賃金引き上げの状態をながめてみた場合に、やはり三公社五現業の当局がとって参りましたところのこれに対する対処の仕方、それから賃金に対するところの現状認識と考え方、特に団体交渉を自主的に積み重ねて解決をしようとするところの努力の経過というものを、われわれはどうもまともに受け取るわけにはいかない点が多いわけでございまするが、労政局長のせっかくのお話でございまするから、郵政、国鉄、電電、それぞれ人事担当の方が見えておるわけでございますので、今私が御質問をいたしました観点で、今回の賃上げに対する当局が考えておる自分たちの職員の賃金のあり方、これを民間なり公務員なりとの比較において、あるいは消費物価値上げの生活の実態の上に立って、もちろんそれ以外に、いわゆる政府当局の行政機関として予算上、資金上いろいろと制約があることは、十分承知をいたしておりますが、承知の上に立って質問いたすのでありますから、そういった点に対するくどくどしい御説明は省いていただいてけっこうでございますから、労政局長に質問をいたしました観点に立ち、それぞれの御当局は一体どういう御見解と御認識でもって、この賃金引き上げに対処されてきたのか、お伺いをしたいと思います。郵政の増森局長一つ伺いしたいと思うのであります。
  122. 増森孝

    ○増森政府委員 お答え申し上げます。御承知のように、郵政省の職員の給与につきましては、給与特例法によって、民間賃金、それから公務員の俸給といったようなものを見合わして、またその他の事情を勘案してきめなければいけないというふうな規定がございまして、私ども組合からの要求に対しまして、その三点を主といたしまして検討して参ったのでありますが、現在の賃金ベースは昨年の四月に改正いたしたのでありますけれども、その後におきまするいわゆる物価というようなものはどうかと申しますと、われわれの検討しました点では、物価の上昇というものは三・三%であった、それから民間賃金指数は三%上がったというような結果が出ております。今度はもう一点、公務員との比較はどうかということでありますが、われわれの方といたしまして、昨年公務員の賃金ベースは七・八%上がったのでありますけれども、それにいたしましても、まだわれわれの郵政職員の俸給は低くはないというようよ認識こ立ちまして、組合に回答をしたような次第でございます。
  123. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 ちょっと突っ込んでいろいろ聞きたい点がございますが、国鉄御当局は一体いかなる見解で対処されたのでございましょうか。
  124. 谷伍平

    ○谷説明員 国鉄の給与につきましては、ただいま増森局長からお話の数字と大体同じでございますが、われわれとしましても、消費者物価指数、それから国鉄の職員の生産性の指数、それから公務員あるいは類似の民間産業との比較、最後に支払い能力と申しますか、国鉄の財政の今後の見通しという各方面から検討いたしまして、われわれとしては国鉄の給与は決して他に比較して劣るものでない、こういう主張をいたしておりまして、その点、組合と対立のまま調停申請をいたしたわけでございます。
  125. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 それでは電電の本多職員局長さんの方は、一体どういうふうになっておりましょうか。
  126. 本多元吉

    ○本多説明員 お答え申し上げます。ただいま郵政なり国鉄なりからお答えになった数字と、私ども同じでございますが、私どもの方と組合とのいろいろな対立点を調停の方に出したのでございますが、民間の給与というのはそれほどの論点ではございませんでしたが、物価の上昇の問題、国民所得の伸びあるいは公務員の人事院勧告、そういうような点が重点でございまして、私ども物価の上昇は認めておりますけれども、上昇傾向というものも昨年に比してやや鈍っておるのではないかと思っております。これは組合との間にいろいろ論争もございましたが、定期昇給等もあって、実質賃金というものは、長期的に見ますと決して下がっているものではない、そういうような観点から申したわけでございます。また人事院勧告の公務員との関係につきましては、先ほど労働省からお話があったと同じような、これは公務員の方が昨年の春闘と申しますか、これで公労協関係賃金に追いついたというふうな政府お話でございますので、私ども、そういう公務員なり、民間なりを含めての全体の視野に立っての政府お話がやはり正しいと考えますので、そういうふうに私ども回答したわけでございます。また公社の財政におきましても、決して賃上げのできるような状況でございませんので、支払い能力という点からできない、そういう点をいろいろ総合的に勘案をいたしまして、十二日の回答をいたしたい次第でございます。
  127. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 それぞれ御出席の当局から一応お話がございましたけれども、まず郵政の人事局長お話によりますと、昨年の公務員給与との関係や、民間賃金との関係、物価指数との関係、いろいろお話がございましたけれども、これはきわめて粗雑な比較論でありまして、これは政府のどなたにお聞きをしたならば、正鵠を得られるかわかりませんけれども、必要があれば経済企画庁でも呼んでいただくことになろうかと思いますが、まず第一に、消費者物価の値上げというのは、一体どういう権威ある算定によって、どの時点で三・三%という基準をあなたの方はお出しになったのですか、その資料を御提示いただきたいと思います。それから民間賃金の三%というのも、一体どことどこの産業賃金をあなたの方は目されて、三%の賃金引き上げになっておると認識をされたのか。こんなでたらめな話をわれわれ国会の場で聞くのでは、はなはだ困るのでありまして、政府の機関の発表によるところの物価の問題や全産業、あるいは製造分野におけるところの賃金の上昇という問題については、それぞれ私どもは確かめておるつもりでございますので、まず数字を明らかにされた郵政当局の、これに対する権威あるところの根拠をお聞きしたいと思います。
  128. 増森孝

    ○増森政府委員 お答え申し上げます。消費者物価指数につきましては、総理府統計局のものを基礎にしております。
  129. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 いつのですか。
  130. 増森孝

    ○増森政府委員 昭和三十七年四月から十二月までをとっております。それから民間賃金指数につきましては、労働省発表のものでございまして、規模五百人以上のものをとっております。
  131. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 それで公務員との給与の差というのは、今度公務員給与が上がりましたけれども、これでなおかつあなたの方は差がないというか、差が生じていないという御認識のようでございますが、一体郵政という現業、これは電電や国鉄にも当てはまることですけれども、これの給与というものが、非現業なりの一般の公務員とただ単に単純なベースの差、比較だけでもって、判定をすべきでないということは、あなたは人事局長だから御存じのことだと思うのであります。昨年あなた方は仲裁裁定に従ったわけですけれども、その際仲裁裁定を実施して、一昨年の人事院勧告によるところの公務員の給与との差がなくなった、こういう公労委の見解にあなた方は従われたわけですから、今回の公務員の給与の改善によって、差が生じてきておるということは当然な話でありますけれども、昨年とそういった認識の錯覚が何かあるようでありますけれども、その点、一体どういうことでございましょうか。
  132. 増森孝

    ○増森政府委員 お答え申し上げます。私の方では初級職試験を通った者を標準にして、郵政職員と一般公務員と比較しております。その結果によりましても、大体ただいま先生が申されましたように郵政職員は一般公務員とは違うということは、われわれも重々承知しております。また外務職員等につきましても、これはもちろん違うということで、外務職員等はおおむね千三百円から高いのですが、普通の内勤職員、郵政職員の普通職でございますが、それをとって初任給を比較いたしましても、一般公務員が七・八%上がりましたが、まだ私の方が高いという結論が出ております。
  133. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大臣がお見えでございますから、一つ前段は抜きにいたしまして、公労協を中心とした賃上げ問題は非常に重大なる段階に入りつつあることは、大臣承知通りでございます。いろいろな面で実は政府当局もこれに対して苦慮されておると、私はきわめて好意的に判断しておるのでありますけれども、一体この公労協の賃上げ問題に対して政府は——二月十二日以降において三公社五現業のそれぞれの回答がございましたけれども、今事務当局にいろいろお聞きしておる範囲においても、この回答の内容なり、あるいはまたその前後におけるところの交渉の状態なりというものが、万全であるとは言いがたいと私は思うのであります。大臣は自主交渉にまかしておると言われるかもしれませんけれども、しかしいずれにしても、そういう事態において調停委員会が非常に難航しておる。これは全労系の組合は応じておりますけれども、事実問題として、公労協傘下の適用職員の非常に多い組合は、これに応じていないという状態であります。そういう事実問題の認識の上に立って、一体政府はこの実態を解決するために、いかような態度と御熱意をお持ちであるか、これがお伺いしたい一番目の点であります。この点に対して大臣は経緯を十分御存じの通りでありますから、その点は省いていただきますけれども、今日ただいまの政府のこれに対するところの態度、対処の仕方について、一つこの際お伺いしておきたいと思うのでございます。
  134. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいまのところといたしましては、三公社五現業の当局側の一方的な申請によりまして、調停手続が開始をされておるわけでございます。この調停手続の開始は、団体協約に基づく使用者側の権利として申し立てられたものでございます。また調停委員会が、すでに法律に従って手続を開始いたしております。組合側からは、すみやかに仲裁手続に移行するようにいたしたいという申し出もいただいておるのでございますが、しかし仲裁手続が始まりましても、やはりこれを取り扱う機関は公労委でございますので、やはりこの問題の最終的結論をできるだけ早期に、また上手に打ち出すためには、公労委の立場考え、公労委の委員の方々の、この問題に対する気持というものも考える必要があるのではなかろうか。そしてただいま公労委の諸君のお気持としましては、これは私は新聞等の伝えるところを聞いたことでございますが、熱意を持ってこの問題を処理したいというので、せっかく今取り組んでおられるところであり、しかも取り組んだばかりの段階でございますので、労働省といたしましては、いましばらくこの問題は、公労委の手におまかせすることが適当ではなかろうか、かように感じておる次第でございます。
  135. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大臣の言われることは、筋道としてはもちろんその通りでございましょう。私も、形式的な面におけるところの手続が誤っておるというような、あるいは間違っておるというような、こういう質問をいたしておるのではないのであります。しかし今公労委が調停を発足させて、第一回の聴取が行なわれておるというさなかであることも認識いたしながら——これはいろいろな考え方なり見方の相違はございます。しかしいずれにしても、大多数の組合員を擁する公労協傘下の組合は、この事情聴取に応じていないという現実の姿があるわけでございます。私はこの事実問題というのは、もちろんそれに対して批判の意見もあろうと思いますし、あるいはまたこれが拒否をしておる原因というものは、自主交渉を積み重ねてやるべきであるという、こういう基本原則、あるいは公労委の兼子会長の昨年の、自主交渉を望むというお話から見た場合に、三公社五現業の当局が、これに対するところの方策と熱意とをお持ちでなかった、こういう面からの批判もあろうと思うのです。私はそれぞれの見方が現実の問題としてはあると思うのでありますけれども、しかし公労協は、この賃金問題を中期に解決したいという熱望のもとに、新聞等で拝見をいたしますところでは、間近く次の実力行使の計画もあるというようにわれわれは承知をしている事態の中でございますので、そういう事態の中で、私はもちろん、それならば突き詰めて、筋道が間違っていないからその通り進んでいけばいいじゃないか、二ヵ月経過すれば、その場合には労使双方が仲裁に切りかえることができるじゃないか、こういうお話もございましょうし、昨年までの公労委の調停が進行して参りましたいろいろ時間的な推移というものも、われわれは承知をいたしておりますから、そういった点で、静かに事態をながめておればいいではないかという、こういう論議も私はあろうかと思うのでありますけれども、しかし私は、少なくとも大橋労働大臣と別の機会に、組合の諸君がいろいろ会見をいたします際にも、お会いをいたしておるわけでありますけれども政府がこの問題に対して、やはり統一的な見解を今まで示してきたことは、これは疑いない事実でございます。これは黒金官房長官の口を通じてみましても、これに対するところの政府の何らかのサゼスチョンなりというものが、各当局に与えられたということも、これはわれわれは伝え聞くところでありますだけに、そういった観点から推しまして、政府がこれに対して、何といっても一つ責任あるところの立場の上に立って、早急な解決への善処というものが望まれなければならぬ、こういうことが一般の見方であろうと私は思います。私自身もまたそういう観点で、大臣のこれに対する早急な対処の仕方を迫っての質問でございます。公労委が自主的な立場に立って、それに対する裁断を下すということに対して、政府が圧力をかけることの是非等の問題も、これはもちろんあろうと思いますが、私どもはそれらを一応ひっくるめまして、なおかついわゆる現在の事態に対処する政府の何らかの腹がまえと、方策というものが望まれるのではないか、こういうのが私は国民の側から見た場合における一つの見方であろう、こういうように思うのでありまして、その上に立って、一体当面の窓口であり、責任者であるところの労働大臣として、この事態の解決のため、一段と乗り出してもらう。乗り出すという意味は、いろいろあろうと思いますけれども、あるいは具体的な、あるいは精神的な、いろいろな意味合いがあろうと思いますけれども、そういうお考え方と、政府の積極的な前向きの態度が、この段階においてあることを私どもは期待するけれども、一体大臣がそれに対して何らかの考え方がおありであるかどうか、再度お伺いいたしたいと思います。
  136. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 公正なる独立機関であります公労委が、目下この事件を預かっておるわけでございまして、しかも公労委といたしましては、すでに調停委員を任命し、調停委員をして組合また理事者双方を招致して、事情の聴取を行なっておる最中でございます。確かに公労協傘下の各組合は、この事情聴取の会合に出席を拒んでおりまして、そのために、実際上調停委員会が流会に終わっておることは事実でございます。しかしこれに対しまして公労委としては、もし早期に仲裁に切りかえなければならないのだという事情があるならば、組合側においてその事情を調停委員会に出て説明してもらいたい、こう言って呼びかけをいたしておる最中であります。この結果については、あるいはいろいろ双方の実情を十分に御承知の方とされましては、この呼びかけは、結局無効に終わりはしないかというので、結論をお出しになっておられるかもしれませんが、しかし労働行政責任立場にある労働省といたしましては、現在調停委員がかような努力をいたしております際に、その努力を頭から、これは実を結ぶことは不可能だときめ込んでしまうということは、いかがなものであろうか、かように思うのでございます。ことに、これを仲裁に移しました場合において、仲裁手続の中核となるのは、やはり同じ公労委そのものでございます。従いまして私は現在の段階におきましては、結局この仲裁が成功するか不成功に終わるか、それについて公労委自体がある程度の——結論とまでは申しませんが、ある程度見通しをみずから出す段階までは、労働省としてはこれをまかせておくということがこの際よろしいのではないか、これが私の考えでございます。
  137. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大臣は全般のいろいろな経緯に対して十分御承知のはずでございましたので、時間の関係もございまするから、実はそれを省かしていただいて、簡明率直な今後のお考え方をただして参ったのでございまするが、私は、やはり筋道としてものを形式的に見る場合と、実態的に見る場合と両方あろうかと思うのでありまして、このままの事態の中で筋道だけについての形式的な判断というのは、私は必ずしも政府の万全の対処の仕方であるというようには考えないのであります。そうなれば、やはりさっき私が申し上げたような調停に至るまでの経緯に対するいろいろな批判のやりとりということにも、さかのぼらなければならぬわけでございます。そういった点を抜きにいたしますならば、必ずしもたとえば労働大臣の職権によるところの仲裁申請というものが好ましいものではない。これは公労法のいわば例外規定とは申しませんけれども、本来の姿ではないだろう、緊急の事態でございますから。必ずしもその点を強調するわけではございませんけれども、しかし政府がこれに対処する道というのは、法律的な意味合いばかりではない。法律的にも残されておりましょうけれども、そればかりではないものが、当然あるはずであろうと私は思うのでございます。今大臣お話のように、調停委員会の推移を見てということは、一応私は大臣の話として承りましたけれども、その推移を見ながら、なおかつ、きょうの時点とは申し上げませんけれども、調停委員会の推移、公労委のいろいろこれに対する態度とこれともにらみ合わせながら、その上に立ってこの事態の解決のために、政府当局が積極的な対策をお持ちになっていただかなければならぬ状態が、刻々迫ってきているのではないか、こういうように考えるのであります。その点に対しては、当然大臣もさらに一段とこれに臨まれる気持があろうと私は判断をいたすのでありますが、本日ただいまの時点ではなくてもけっこうでございまするけれども、さらに一つ近い将来において、間近い将来において、これに対するところの具体的な対処が必要になってくるという認識の上に立って、大臣の決意を一つ伺いしたい、こういうのでございます。一つ将来の展望の上に立った政府当局の熱意あるところの対策を、あらかじめお聞かせをいただきたい、こういうふうに考えます。
  138. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働省といたしましては、労働紛争の解決がいかなる場合においても早期、自主的に円満に行なわれることを期待いたしております。ことに三公社五現業のごときは国の関係しておる事業でございますので、こうした問題はいろいろな意味から、できるだけ早期に解決さるべきものであるということは申すまでもございません。かようなる意味合いにおきまして、この問題を見詰めて参っておるのでございます。今後におきましても労働省としましては、十分事の経緯をつまびらかにしまして、必要な場合には必要な措置をとりたいと考えます。
  139. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大臣お急ぎのようでありますから、私はくどくどしく申し上げるのを避けまするけれども、私の意のあるところも十分お考え合わせいただいたと、私は私なりに判断をいたしますので、その上に立って一つ事態の推移を正確に判断をされて、これに対する十分な対処をしていただくことを特に要請しておきたいと思います。
  140. 吉村吉雄

    吉村委員 関連して。急ぐようですから、一言だけ申し上げておきたいのですけれども、公労協関係の紛争の問題については、今いろいろ質問応答がございましたが、労調法の第三条を見ましても、政府は労使の紛争については、できるだけ調停期間中といえども、その当事者の直接交渉あるいはその紛争を早期に解決をするために、努力をしなければならないという条項があるわけです。もちろん公共企業体の労働関係については、公共企業体等労働委員会がございますけれども、労調法のこの第三条の精神は、一般組合法の適用を受ける組合、あるいは公共企業体等労働関係法の適用を受ける組合にかかわらず、政府に対してそういう義務を要請をしておるというふうに私は理解をいたします。そのような観点からいたしますと、先ほど来田邉委員指摘をいたしておりますようにいろいろの経緯があって、そうして現在当局が一方的な調停を申請をしておる、こういう状態ではありますけれども、紛争の一方の相手であるところの組合側は、紛争の早期解決という観点から、この調停委員会に対する事情聴取には応じない、こういう状態でございますから、このままの状態でいきますと、相当長引いていくことは避けられない状態ではないかと思うのです。このような場合に政府としてどう対処をするかということが、この第三条の精神ではないかというふうに私は理解をいたしております。ですから、今の大臣の答弁によりますと、しばらくは調停委員会の作業を見守るという答弁でございますけれども、紛争はやはりできるだけ早く解決をしていかなければならない。これは両当事者に課せられた任務であるはずでございます。しかも政府についてもこのような定めがあるのでありますから、静観をしておって、できるだけ早い機会に紛争が解決する見通しが立つならば、これもいいだろうと思うのです。しかし一方の当事者の方は、事情聴取に応じないという態度を明らかにしている以上、このままに静観をしておったのでは、長引いていくことはわかり切ったことですから、結局のところ従来の例等から見ましても、仲裁委員会で問題を扱った方が早く解決することだけは、客観的に、常識的に言い得るのじゃないかというふうに思います。ですから、この労調法の三条あるいは二条、こういうような点から考えてみまして、政府としては、静観というよりも、もっと積極的な前進をするという意味において、政府の積極的なあっせんといいますか、そういうことで仲裁なら仲裁に移行をしていくように働きかけをするということが、この場合の解決策としては、実情に沿った方向ではないかというふうに考えますけれども、以上申し上げたような観点から見まして、大臣はどのように考えておられるか、お伺いをしておきたいと思います。
  141. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私も政府責任といたしまして、できるだけこの問題が早期に解決するように努力することは、当然であると考えております。しかしながらこの問題は、今後いろいろな手続が予想されます。ことに仲裁というようなことも、十分に予想されることでございます。仲裁に当たります機関も公労委でありまするし、また現在調停という手続をとっておりまするのも同じ公労委でございまするので、公労委がこの争議の今までの両者の主張、また経過等を十分に調査、理解するということは、究極において仲裁における結論を早く導き出すためにも必要な事柄ではないか、こうも思いまするし、またこの公労委そのものが、単なる機械設備にあらず、人をもって構成する機関でございまするから、今後のためにすみやかな結論を得ようといたしまするならば、その人たちの気持というものも十分に理解して処置する必要がありはしないか。かれこれ考え合わせまして、どうした場合に結局において最も早くいい解決が得られるかということを主眼にして、今後行動いたしたいと思います。
  142. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大臣出席が短いので、問題の突き詰め方が非常にちぐはぐでございまするけれども、事態の解決のために、当局の認識をもう少しお聞きをしておきたいと思います。  先ほど来いろいろと三当局からお話がございましたが、郵政当局の御説明に私はいろいろと疑問があり、反論をしたいのでありますけれども、時間がございませんから一応おきまして、今お話のありましたような認識の上に立って、民間、公務員の賃金との比較や物価指数の上昇とにらみ合わせてみた場合に、あなた方のよってきたるところの結論というものがおありであるというように思うのであります。そういう結果というものが、郵政は二月の十二日でしたかに出されました当局の回答となって現われたようでございまするが、この回答というものは、今のあなたのお話のありましたような条件を満たすに必要であり、かつ十分な内容であるかどうかというならば、私はきわめて不満足きわまりない内容ではないかと思うのでございます。あなたの方は最高六百円、これはいわば昇給の先食いでございまするから、昇給の額が今までよりも減っていくという格好の中で、少なくとも五年なり六年たてばゼロになるという、きわめて巧妙であるけれども、内容は空虚な回答をいたしておるわけでございます。これで一体今度の賃金引き上げの組合の要求に対して、十分な回答を与えたというように、あなた方は御認識を持っていらっしゃるのですか。増森さんどうなんですか。
  143. 増森孝

    ○増森政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、私どもといたしましては、民間給与あるいは公務員給与、物価、そういうものをながめましても、ことしは賃上げの要素が非常に微弱であるというように感じまして、あのような回答を出したわけであります。
  144. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 微弱だと言うけれども、あなた方の答弁によっても、少なくとも消費者物価は上がっておる。民間の給与は上がっておる。公務員との差ということを言いまするけれども、これはあなたは非常に認識が足らぬ。ほかの電電公社や国鉄にお伺いしたいのですけれども一般の公務員とただ単にベース上の差がないということでもって、それで足れりと言うならば、これは公労法の適用も必要なければ、いわゆる現業職員という特殊な立場というものも実は没却される格好です。そういうことの認識が必要であればこそ、労働関係においても公労法という特殊な一般公務員との違いが出て参る。実際に机の上で事務をとっておるだけではない現業職員の立場、特異な労働条件、困難な労働条件というものが加味されて、初めて給与というものの判定になるはずでございまして、そういったことから昨年の仲裁裁定の場合において、一昨年の人事院勧告に比較をして実質的な差が生じてきておる。ただ単に金額の問題ではありません。その特異な性格の中から、実質的な差が生じてきているという観点に立って、仲裁はなされたわけでありまするから、ごく常識的に判断をいたしまして、今回の千五百円から三千五百円に至る公務員の七%余の引き上げというもので、あなた方の職員との間における給与のバランスを欠いてきたこういうことは、これはだれしもが常識的に判断をするところの問題であろうと思うのでありまして、これが必要がないというなら、昨年の仲裁裁定はあなた方は忠実に実行したわけだけれども、あの場合におけるところの公務員賃金との差が縮まった、こういう仲裁裁定を忠実に履行したとは受け取れないというのが、一般考え方であろうと思うのでありますが、来年のことを考え合わせてみた場合に、これでもって足れりという認識が出てくることは、どこから推してもないのじゃないかと考えるのであります。それなら、仲裁裁定がどういうように下るか知らぬけれども、あるいは調停がどういうふうに出るか知らぬけれども、これに対してあなた方は大へん御不満でもって——この六百円の初任給引き上げで、郵政省の場合は事実上平均いたしますと八十九円にしかならない。適用者は五万七千余ですね。公労法適用組合員がたしか二十六万人くらいおりますけれども、これでもって賃金を引き上げたというようにあなた方は思うのですか。物価が三・八%、一年間に直してみて五・八%の上昇ですよ。民間賃金はもっと上がっているはずです。これは見方の相違もいろいろありますけれども。そういう状態の中で、これでもって賃金を引き上げたというあなた方の認識というものがあるとすれば、これは大へんなことですよ。こんなことで五現業三公社をお預かり願うということは、われわれとしてはきわめて不満にたえないのでありますけれども、一体これで足れりというようにあなた方お考えですか。
  145. 増森孝

    ○増森政府委員 私ども先ほども申し上げましたように、現業の特殊性ということは十分承知しております。従いまして、先ほど申し上げましたのは、同じような職種ということをとってみても、今度一般公務員が七・八%上がりましても、なおかつ若干高い。従いまして、たとえば外務職といったような現業職員につきましても、なおかつ私どもの比較しております数字よりは高いというように私感じております。
  146. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 昨年の仲裁裁定実施の場合におけるところの論点を私は申し上げたのでありますけれども、そういったことが一体考慮のうちに入っておるのか入っていないのかというのが、さっぱりわからぬ話でありますが、現実の問題として、昨年が一応その時点におけるところの、生活を維持するに足る一つの最低の給与であったというふうに認識をいたしまするならば、単純に民間給与や公務員給与や、いわゆる消費物価値上げだけを判断をいたしましても、何らかの引き上げをすることが当然の処置でしょう。支払い能力という点からいけば、公社の言うように別ですよ。あなた方は予算上いろいろ制約があるという時点については、これは別に私どもは見方をしなければならぬと思うのでありますけれども、今お伺いしておる観点に立てば、昨年来賃金引き上げをしなくてもいいという論拠はどこにありますか。公務員と普通職の場合において差がない、外務省の場合にはさらに高い。あたりまえですよ。そのために特殊の俸給表をつくって、特別会計をつくって、あなた方は仕事をやってもらっているのでしょう。そんなことを今あらためて言われなくても、十分世論が承知しておりますよ。今までなり来たった経過を見れば、その認識さえ十分お持ちであれば、今度の場合、パーセント、度合いは別といたしまして、何らかの実質的な賃金の引き上げは必要ではないかということは、当然の認識であろうと思うのです。あなた方は、もうこれ以上絶対に賃金引き上げの必要はない、こういうふうに断定されますか。これから調停、仲裁という問題も含めて、国会の場で言い切れるなら言って下さい。
  147. 増森孝

    ○増森政府委員 ただいまの時点では、先ほどお答えした通りでございますが、今後の問題につきましては、調停にかかっておることでもございますし、私から断言するということは慎むべきだと思います。
  148. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 これ以上賃上げの必要はない、これをあなたは認識するかどうかということを聞いておるのだ。調停を受諾するか、仲裁裁定を受諾するかなんということは、もちろん予測をしての話ではない。絶対に必要はないのですね。これ以上の引き上げは認めませんね。
  149. 増森孝

    ○増森政府委員 現在の時点ではさよう心得ます。
  150. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 現在の時点なんという話は、賃上げにありませんよ。これは予算上、資金上という問題があれば別ですよ。しかし賃上げの必要は認めるけれども、諸種の制約があって、これはでき得ないということであれば別ですよ。私はあなた方に、何も百パーセントものが言えないような格好でもって質問してないつもりです。十分あなた方の特殊性というものを認めた中でもって、あなた方ができ得るところの努力というものを実は望んでおるのでありまして、そういったことに対して一ぺんの話もなくて、ただ単に現在の時点ではできない、必要ないと言う。これはできないのですか、必要ないのですか。どっちなんですか。
  151. 増森孝

    ○増森政府委員 たびたび申し上げますように、私どもの資料からは、賃上げをする理由が薄弱である、従いまして今のところ賃上げということは考えておりません。
  152. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 まあ調停、仲裁という事態もございますから、一つそう回答を出された時点の中での話として私はもちろん承っておきますが、これに対するところの再考慮を十分していただかなければならぬではないかと私は考えておるわけであります。今回の事態を遷延をさせておる有力な原因は、何と言ってもきわめて人を食った当局の回答にあるわけです。これがもちろん政府のお墨付からくる、事務当局ではどうにもならぬ制約があるという伝え聞くところによる話もございますけれども、しかし私はそれぞれ当局が、自主的な当事者能力をお持ちであるという認識の上に立って、ここにおいでの三当局のそれぞれ人事責任者の、この問題に対するところの謙虚な、慎重な再考慮を一つお願いをしたいと思うのであります。  あとのいろいろの問題もございますので、私は時間がございませんから大へん不本意ですが、もう一つの問題についてだけお伺いをして、質問を終わりたいと思いますが、今申し上げたような認識で、それぞれ当局がゼロ回答された。国鉄の場合は引き直しますとわずか二十円くらいにしか当らぬというのです。電通の場合は四十円にくらいにしか当らぬというのです。こんなのが賃上げと言えますか。そういうことで一方的な調停をした。団体交渉はあなた方がどう抗弁されても、事実上は拒否をしておる。こういう立場でございますだけに、この事態の解決はきわめて困難になって参っておる。できるならば私は、今から思い直して調停を取り下げて、自主交渉をやってもらいたいというふうにすら考えておるわけでありますけれども、そういった現実の時点の中でさらに論議を深めることは、この際時間の問題があって避けますけれども、きわめて不誠意な、きわめて実は例年にないような強硬な態度を持って、当局が賃金抑制に右へならえしておるという、こういう事態というものは、政府当局も責任があるし、労働行政を指導するところの労働省の当局などは、実は大へんな責任があるわけでございまするけれども、そういう事態の中で組合がいろいろと対処いたしておりますさなかに、世論は早く解決をしてもらいたいというように考えているさなかに、二月十五日の春闘第一波のいわゆる実力行使といいましようか、その中でいろいろ職場大会等も開かれたようでございますけれども、これに対してそれぞれの当局は、きわめて過酷な処分をもって臨んで参りました。これは例年にない非常に過酷な態度であろうと私は考えるのであります。  一つ国鉄当局にお伺いをいたしますけれども、あなた方の今までの考え方から、こういう時点の中でもって、この賃金の方はゼロ回答で、出さぬけれども、処分の方はきわめて早急に出されておるという、こういう事態でございまするけれども、一体どういう観点でもって今度の処分に臨まれてきたのか。問題の解決をあなた方ははかろうという熱意と努力の経過の中で、こういった処分が出されてきたのか、事態を解決するという御熱意がおありかどうかを含めて、一つ国鉄の御当局のお考えを承りたい。
  153. 谷伍平

    ○谷説明員 国鉄の処分につきましては、当時団体交渉を継続中でございまして、団体交渉継続中に違法なる闘争をするということは、避けるようにという警告を再三いたしましたが、それにもかかわらず二月十五日に、列車の遅延等を含む闘争が行なわれましたので、日本国有鉄道法の定めるところによりまして、処分をしたわけでございます。
  154. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 あなた方は一番悪いですね。事実上のゼロ回答をほかの当局はしておりまするけれども、あなたの方はそれすらもしていない。昨年の秋から始まっていることでしょう。団体交渉している。二月の十五日の時点まで、一体どのくらい時間がかかっているのですか。大体形式的に見れば整ったようなことを言っているけれども、あなたの方は事実問題としては、これは回答もしていないのですよ。それでもって公労法に定めるところによるということで、公労法というのは、何も六法全書に載っている紙の上の字句がすべてじゃないのです。交渉を自主的に高めていく。出せるものは出すというあなた方の態度があって、初めて労使双方の対等の立場に立つ団体交渉というものが成立するのであって、事態は遷延する、回答は出さない、これではじりじりするのはあたりまえなんですよ。こういう状態の中でもって、組合がやったことだけを取り立てて、それでもって処分はいたします、こういうことで一体この問題に対する解決をはかれるかどうかという、あなた方の認識をお伺いしておるのであります。これは建前なんか知っています。あなたに教えてもらわなくても、私らは相当知っている。あなたが職員局長になる前から知っておる。いろいろな問題を国鉄に聞いておる。聞いておるけれども、一体国鉄にそれだけの解決するところの御熱意が、今までのこの団体交渉の経緯の中でおありであったかどうかということを、私は実はお伺いしておるのであります。なぜ出せなかったのですか。ほかの当局よりもおくれて出したのですか。(「一番悪いのは国鉄だ」と呼ぶ者あり)あなたは笑っているじゃないか。だめだ。委員長から注意して下さい。
  155. 谷伍平

    ○谷説明員 ……
  156. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 発言も求めないで、何ですか。委員長から注意して下さい。質問に対してにやにや笑っている。そんな者には質問はできない。私らはなまはんかなことでやっているのじゃない。冗談じゃない。
  157. 秋田大助

    秋田委員長 谷職員局長に申し上げますが、質疑の手順その他につきましては、十分御注意を願いたいと存じます。谷職員局長
  158. 谷伍平

    ○谷説明員 お答えいたします。当時ほかの公社は、御回答をされたわけでございますが、(「陳謝してからやれ」と呼ぶ者あり)国鉄としましては、団体交渉が国鉄の中でそれほど煮誌まっておりませんで、まだその時期になっておりませんでしたので、われわれとしては、他公社の御提案を検討中であったわけでございます。しかしながら、いつから団体交渉を始めたかと申しますと、十二月の末に回答が出まして、十二月から再三にわたり団体交渉を重ねておったわけであります。団体交渉の継続中に、違法な闘争を計画するということはよろしくないということで、先ほども申し上げましたように、警告したわけでございます。
  159. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 あやまらなければだめだ。私は質問をやらぬ。
  160. 谷伍平

    ○谷説明員 先ほど来私の答弁につきまして、不謹慎と見られる節がありましたことにつきましては、おわびを申し上げます。決して他意はございませんので、御了承いただきたいと思います。
  161. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 私ども、今更大な事態に直面をしておるこの問題に対して、当局の熱意あるところの態度をお聞きをして参ったのでありますけれども、私どもの質問に対して大へん御不満であり、実は大へん軽んぜられたようで、いわゆる答弁の内容ではございません。そういった態度でもって対処される国鉄に、この事態の中でもってさらに質問を続けることは、私ども委員会委員立場からいって、これはとうていその衝に当たることはできませんから、あらためて国鉄の御当局をこの委員会に御招致いただきまして、あらためて質問をいたします。あなた帰ってよろしゅうございます。  電通の当局にお伺いいたしますけれども、この第一波の職場大会等を目して、八千六百三十九人に及ぶところの処分を発表されたのでありますけれども、これは今の時点の中でもって問題を解決しようという御熱意、それとあわせて、すでに御承知と思いますけれども、ILOの理事会は、ILO八十七号条約の批准の問題とからめて、日本政府に対してしばしば勧告をいたしております。つい最近の勧告によりますならば、八十七号条約を批准するまでは、みだりに行政処分や逮捕等を行なうべうべきでないという、ILOのF項勧告というのをいたしていることは御承知の通であります。そういう事態の中で、こういった処分を次から次へとやられることは、ただ単に国内の労働者の怒りを高めるばかりでなく、そしてまたこの春の賃上げの事態を遷延させるという要素になるばかりでなくて、国際的に見た場合には、このILO批准を今や今国会において政府はいたさんという、こういう手続をいたしておるさなかにもかかわらず、この処分をすることは、ILO勧告を踏みにじったと見られてもやむを得ない処置ではないかと思いますけれども、こういった点に対する電通の本多局長の御認識は一体どういうものであるか、お伺いしたい。
  162. 本多元吉

    ○本多説明員 お答え申し上げます。組合との間の賃金の交渉の問題につきましては、いろいろお話がございましたが、私ども十二日に回答をいたしまして、その後十四日の晩もこの問題について交渉をいたしました。組合との間の意見の相違は、いろいろ御批判もございましょうが、ただ今回組合が十五日にとりました、私の方から申しますと、八時半から一時間にわたる時限ストライキというものは、これは法規の建前からいたしまして、やはり正常な業務を阻害する行為であると思います。従いまして私ども必要な法規に照らしまして、こういうような八千六百名に上ります処分をいたしたわけでございます。  なお、ただいまILOのF項との関係お話がございましたが、私ども考えといたしまして、なるほどこれは労働組合運動を理由として、逮捕とか監禁とかあるいは処分というようなことをしないような勧告のようでございますが、法律論としての政府としての御見解、これは労働省なり何なりの御見解でございますが、私どもこれを見ましても、やはり私ども労働関係としましては、国内の公共企業体等労働関係法あるいは公社法等によって規律されておるわけでございます。こういうようなものに反する違法と目される労働運動につきましては、この勧告は正常な労働運動についての問題を言っておるのではない。違法な労働運動につきましては、国内法規として公労法なりあるいは公社法なりで、必要な処分なりということはできるものである、かように考えておるわけでございます。
  163. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 電電公社は一昨年三月十五日の合理化反対闘争に対して、同じような処分をいたしておりますけれども、今回はそれを百人以上も上回る大量の処分でございます。私の言いますのは、今や賃金問題が調停委員会にかかり——あなた方は交渉が十分に行なわれたという認識のもとでありましょうけれども、一方的な調停申請をあなたの方からいたしておる。それは当局は当局なりの考えで、事態の解決を促進したいという気持であろうと考えられる節もあるが、そういう事態の中で、処分がまずもって先行してやられる。ここに大きな問題があるわけでございまして、これは違法、合法という問題ばかりでなくて、ILOの精神というものもそこに帰着をすると私は思うのでございます。郵政も同じでございますが、五千八百四十八人の処分をいたしておりますけれども、これも私はやはり同じような事態ではないかと思います。  時間がございませんから、労政局長、どうでしょう。今の事実問題として、公労法の適用を逸脱するかどうかという認識については、これはまた御当局の考え方もあろうと思いますけれども、現実の事態の中で、今や調停にかかっておる。しかも一方的に当局が調停申請をしたという、こういう事態の中で処分を発表されるということは、少なくともILOの勧告の精神に違反をする、こういうふうに私は思うし、違反をしないにいたしましても、その精神というものを無視しておるということに、これは受け取らざるを得ないと考えますけれども労働省の、今や八十七号条約を批准せんとするときにこういう態度——批准案その他の法律の改正案も国会に提出をしているという政府立場からいいますならば、私はとるべからざる措置ではないかと考えるのでありますけれども、この点に対するところの労働省の御見解を承りたいのです。
  164. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ILO八十七号条約批准関連案件につきましては、労働省といたしまして、その早期成立を心から祈っておるものでございます。ILOのいわゆるF項につきましては、これは従来から政府は繰り返して申しておりますように、F項後段につきましては、違法な組合活動を理由とする制裁についてまで述べておるのではない、このように政府としては理解しておるところでございます。今回の制裁の内容等につきまして、私ども率直に申しましてその内容は知っておりませんので、これらのことについて申し上げることは避けたいと思いますが、ILOの六十四次報告F項後段のいわゆる制裁というものは、適法な組合活動に対するものをさすのでありまして、違法な組合活動を理由とする場合はこれに含まれない、これは政府として従来かように解釈しておるところでございます。
  165. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 公労法自身が、条約にいろいろと実は抵触しているという事態の中で、私はここでもってあなたと法律論議をするならば、いろいろと実は考え方もありますけれども、これは別の機会に譲らなければならぬと思うのでございますけれども、問題は、事実問題として当局が今言ったような態度を含めて、今回はきわめて冷酷きわまりないような態度です。団体交渉も積み重ねてない、なされたことの内容は事実上のゼロ回答、そして一方的な調停申請をした。こういう事態の中で処分がなされているところに、実は問題が大きいのでございますから、こういう点を一体労働省はどういうような感覚、認識を持っておられるか、これに対して対処をしようとしているのか、今までもこれについてどういうお考え方をお持ちであったのか、この点が実はお伺いをしたい点でございまして、これはいわゆる条約の内容について、法律の内容について、いろいろと論議を重ねることは必要でありますけれども、私はこの事態の中でそれをあえてしようとは思わないのは、今言ったような観点からでございまして、そういった点から労働省が、この公労協を中心とした賃上げの運動の中で、一つこの事態を早期に公正に解決をしたいという、先ほどの大臣のその片鱗が見えた御答弁とあわせて、労働省の御見解を承って参ったのでありますけれども労政局長のきわめて事務的なお話でございまして、大へん私は不満であります。しかしわれわれとしては、この問題がさらに政府当局の積極的な熱意のもとに、解決への道が開かれてくることを私どもは強く要求をしたいと考えておるのです。
  166. 小林進

    ○小林(進)委員 関連して一つ。これは労政局長にお伺いしたいのですが、今の問題に関連いたしまして、今ILOから第十三回目の勧告を受けて、日本政府は、労働省は、わざわざそれに対する回答を、ジュネーブの自由委員会まで寄せられている。今次通常国会の開会中にこれを批准したい、批准するために努力する、こういうことの回答を寄せてある。これは労働省だけでなくて、総理みずからも本会議からあらゆる機会をとらえて、新聞の談話等でその意思を発表せられている。しかし現実のそのさなかにおいて何ですか。春闘が行なわれている。労働者の賃上げ要求は、労働者の基本権に基づいた唯一の権利行使だ。そういう権利行使の問題について、符牒を合わせたように、先ほどから質問せられているように、電電公社といい、郵政といい、あるいは国鉄といい、かつて今までにないような大きな不当な処分を出しているではありませんか。あなたはこの処分をどう考える。口でILOを批准をすると言いながら、実際行動において政府は、国内における社会党を含めた革新勢力に対する挑戦であるとともに、国民大衆に対する挑戦であるとともに、私は国際場裏におけるILOそのものに対する挑戦であると考える。批准をする意思のない政府が、事実の行動に示した意思だと思っている。そう私どもは解さざるを得ない。どうですか、局長。私はこの点をお伺いしたいのです。私どもは、やはり国際的の舞台ですから、できれば政府との交渉の段階においてILOの八十七号を批准できるような国内の空気をつくり上げたい、情勢をつくり上げたい。そして国際問題だから、できれば政府の要望もいれて、私ども今次国会において、八十七号は一つ批准をするような方向へいきたいと思っている。すでに努力している。その努力しているさなかにおいて、一番問題の多い、一番法改正を今迫られている、その中心の、いわゆる国家機関である、いわゆる公企体の機関であるところの電通や郵政や国鉄が、従来にないような不当な首切りや弾圧をやっている。これがILOの八十七号をすなおに批准しようとする政府の態度であると、あなたはお考えになりますか労働省立場でお考えになりますか。われわれはどう考えたところで、これがすなおに八十七号を批准したいという政府の態度だと考えられない。考えられないから、私ども社会党は、こうした春闘に対する政府並びに政府機関のやり方については、反撃をいたしますけれども、この問題は一切の国際的、国内的な労働問題に、大きく影響していくということを、私はあなた方に考えてもらいたいと思う。どうかつでも何でもない。私は考えておいてもらいたいと思うが、労働者立場に立って、労働者の利益を擁護する本来の労働省の基本的な立場から考えて、こういう春闘の首切りが、一体ILOの批准問題に関連して悪影響があるとあなたはお考えにならないかどうかお伺いをしておきたい。これからの一切の労働者関係の法案からILO関係の法案を審議する上において、今あなたに回答を求めていることは非常に大切でありまするから、一つ大臣になりかわって明確な御答弁を伺いたい。
  167. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ILO八十七号関連案件の本国会における早期成立につきまして、私ども政府といたしましてその早期成立を心から念願しておるものでございます。ただいわゆるILOの結社の自由委員会あるいは理事会等において、かって出しましたいわゆるF項につきましては、これはいろいろ御見解の相違もあると思いますが、政府といたしましては、これは適法な組合活動をさすものである、そのように了解しておることは、これまた申し上げた通りでございます。ILO八十七号関連案件につきまして、労使関係者が今後とも相互信頼の上に立って、誠意を持って交渉を行なうということは、まことに必要なことでありまして、私どももそれを期待しておるものであります。
  168. 小林進

    ○小林(進)委員 関連ですからこれで終わりますけれども労働省はF項該当事項でないとお考えになるかもしれませんが、私どもは国際的な労働感覚や労働常識の上に考えて、これはILOが勧告したいわゆるF項事項に該当していると思う。これは、もし国内の場においてあなたたちが適法行為であると言うなら、私どもはこの問題を国際的な機関に持っていって、F項該当事項であるかないか、はっきりさせたい。あなたの答弁だけでは私どもは満足できませんから、ILOの問題も含めて、電通と郵政と国労、そういうものに社会労働委員会に来てもらって、そして私どもが納得するまで答弁を求めたい。そこまでいかなければ私どもはILOの審議にも、すなおに応じるわけにはいかないということを申し上げておきたい。  この際、委員長にも申し上げておきます。いろいろ法案がありましょうけれども、この問題は重大ですから、電通と国鉄、郵政をどうか一つわれわれが納得できるまでこの委員会に招致になって、何回も一つこの問題に対して委員会を開いていただきたい、こういうことを委員長に要求しておきまして、関連ですから一応質問を終わりたいと思います。
  169. 秋田大助

    秋田委員長 島本虎三君。
  170. 島本虎三

    ○島本委員 これは林野庁の長官に直接関係があることです。来ておりませんので、その間の事情聴取を兼ねて職員部長、業務部長が見えておられるようですので、それぞれの立場から明確な御答弁を願いたい。それと、そのあとで必ず労働省の方のこれに対する意見なんかも拝聴しますから、労働省の方でもはっきり態度を示してもらいたいと思う。  まず鹿児島の営林署で起きた事件ですが、二月十五日に非番の人が組合の大会に出たのに対して業務命令を出した。そして非番であるのに勤務をさせるような、こういうような行為をした。これはあとからいろいろ組合の方から言っても、業務命令は取り消さないで、超勤命令に切りかえて執務を強行した、こういうような事実があったのかないのか、まずその点から伺いたいと思いす。
  171. 日比野健児

    ○日比野説明員 そういう事実は二月十五日にございました。
  172. 島本虎三

    ○島本委員 それは正しいと思いますか。正しくなければ、どういう措置をしましたか。
  173. 日比野健児

    ○日比野説明員 非番者であるということを承知せずに、職場へ来て休んでおりましたので、その管理者が勤務中のことと考えまして、職場に復帰するよう口頭で命じまして、またその後、文書による業務命令を出したのでございますが、その後、その人たちが非番であることが判明いたしましたので、直ちに業務命令を解除いたしました。
  174. 島本虎三

    ○島本委員 これは本人の申し立て及び分会で非番であることをはっきり申し上げて、抗議をしたはずです。それに対してあえて皆さんの方では業務命令を取り消さないで、超勤命令に切りかえた、そうして勤務を強行させた。これも事実だとすると、わかったということには何か矛盾がありませんか。はっきり本人並びに組合から申し込まれたときに、どうして調査して適切な処置をしないで、全部あとからわかってからそれを取り消したというような、そういうような行為をするのです。それでいいのですか。非番者を何の理由で超勤命令なんかに振りかえることができるのです。この根拠をはっきりしてもらいます。
  175. 日比野健児

    ○日比野説明員 超勤命令の点につきましては、実は私まだここに来るまで承知しておりませんので、確かめまして御回答申し上げたいと思います。非番者に間違えまして業務命令を出した点につきましては承知しておりますが、その後の処置につきましてはまだ詳しいことを連絡を受けておりませんので、調査いたしまして御答弁いたしたいと思います。
  176. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、そういうようなその後の行為はなんですけれども、取り消したという事実は、それはその行為自身が間違いだということがはっきりしたわけですね。それから労働省の方では、この非番者というものに対して業務命令を出したり、いろいろなことが最近全林野とそれから林野庁の中で発生しているようですが、この事実を皆さんの方でも十分知っておられるかどうか。
  177. 堀秀夫

    ○堀政府委員 その事実は労働省としては承知しておりません。
  178. 島本虎三

    ○島本委員 こういうような事実は、知っておられないならなおさら、あなたは往々にして答弁うまいですから、こういうようなことに対しては答弁だけでごまかさないで、この事実が明確にあって取り消した事実がございますが、これを調べて、こういうようなことがないように十分指導すべきだと思いいます。二度、三度繰り返すことは、この委員会があった以後は認められない。その点、いいか悪いか、あなたからはっきり答弁しておいてもらいたい。
  179. 堀秀夫

    ○堀政府委員 業務命令等はもとより適法な、正当なものでなければならないと思うのでございまして、今後におきまして、もとよりそのような適法でない業務命令というようなものが出されないようにすることは、当然だと思います。私どもとしても十分気をつけてやりたいと思います。
  180. 島本虎三

    ○島本委員 日比野職員部長もそれでよろしゅうございますか。
  181. 日比野健児

    ○日比野説明員 けっこうでございます。  若干事情を今ちょっと聞きましたので申し上げます。非番者に間違いましてすぐ取り消しましたのですが、その間、御本人にその命令を伝えるときに確かめたところ、勤務者だという答弁がありまして、若干その点、時間がかかりまして、取り消すのに一時間ほどおくれましたけれども、すぐ当局といたしましてはおわびをいたしまして、本人と話し合った時間につきましては、これは超勤として処理した、こういう事情のようでございます。
  182. 島本虎三

    ○島本委員 今後そういうことのないように指導すると、労働省の方でも言っておりますが、あなたの方でもそのような間違いがないように十分配意する、その決意ですかということを聞いているのです。
  183. 日比野健児

    ○日比野説明員 それは確かにこちらの手違いでございましたので、今後はこういうことのないように、十分注意いたしたいと思います。
  184. 島本虎三

    ○島本委員 同じく三十七年の三月三日に、組合の情報を盗聴するために、書記局の隣室の資材倉庫内にテープレコーダを備えつけて、録音をとったという事実がございましたか。
  185. 日比野健児

    ○日比野説明員 長野の営林署でその事実があったことを承知いたしております。
  186. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような事実に対しては、結局はどういう措置をとりましたか。
  187. 日比野健児

    ○日比野説明員 当時の庶務課長につきまして、停職処分一ヵ月か二ヵ月だったと思いますが、停職処分にいたしたように記憶しております。
  188. 島本虎三

    ○島本委員 この問題については、前からだいぶ他の方にもこういう事犯があって、注意を喚起されておったはずです。そうして当然雇用問題について当局交渉を行なう予定であった。そのために今度は組合員が集まって、その場所で討議するということは、事前にわかっておった。そういうようなときに進んでそういうようなことをやったというのは、これは許すべからざる行為なんです。これをやった責任者は一人ですか。それとも共同謀議またはいろいろな命令系統によって、多数の人が参加してそれを行なったのですか。それはどういうようないきさつになっておりますか。
  189. 日比野健児

    ○日比野説明員 共同謀議ということではございませんで、当時の庶務課長が自分の考えで部下を使いまして、テープレコーダーを隣の部屋の物置に備えた、このように承知しております。
  190. 島本虎三

    ○島本委員 その責任者は、結局はどういうふうな処分をしたことになっておりますか。先ほどちょっと聞こえなかったのですが……。
  191. 日比野健児

    ○日比野説明員 停職処分にいたしたのでございます。期間は一ヵ月だったか二ヵ月だったか、今記憶いたしておりませんが、停職処分ということは記憶しております。
  192. 島本虎三

    ○島本委員 停職一ヵ月ですか、一日ですか、三日ですか、五日ですか。
  193. 日比野健児

    ○日比野説明員 一ヵ月か二ヵ月だったと思います。
  194. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると現在はそのまま復職しておりますか。
  195. 日比野健児

    ○日比野説明員 復職いたしまして、場所は今記憶しておりませんが、転勤をしておるはずでございます。
  196. 島本虎三

    ○島本委員 その後、同じ庶務課長としての任務を果たしておりますか。
  197. 日比野健児

    ○日比野説明員 私の方ではそういうふうに考えております。
  198. 島本虎三

    ○島本委員 再びそういうようなことをするおそれがないということで、手放しにしてあるのですか、それともそういうようなことをしないように、行政的にも十分注意した上で、それを転勤させてやっておりますか。そういうような措置が、再び皆さんの手によって繰り返されることが、一番おそろしい。そういうようなことのないようにしておかないと、これはもうとんでもないことになると思うのです。これは単なる転勤ですか。そういうようなことを十分言い含めて、再びこういうことを繰り返さないようにしておりますか。
  199. 日比野健児

    ○日比野説明員 その点につきましては、当時林野庁長官におきましても、各営林局に、こういう事態については今後絶対にやらないように注意をいたしますとともに、本人に対しましては地元の営林局長から十分注意いたしまして、また転勤の際にもそういうことは、営林局長から十分注意しておると聞いております。
  200. 島本虎三

    ○島本委員 そういうようなことは再び繰り返すことがないように、十分注意すべきだと思う。労働省の方でも、こういうような点は今まで一回や二回ではないはずです。それで前にもこの社労の委員会で、そういうような事件があったことが討議され、質問され、それに対して十分注意するようになっておるわけです。こういうようなことがあって、行政的にただ単に一カ月くらいの停職で転勤させた、こういうようなことは再々今後起きてこないように、十分指導しておくべきだと思うのです。この点は特に別な問題ですけれども労働省の方でもおそらくはいろいろな関係で、皆さんの方でもいろいろ相談があるだろう、そういうような場合に、それをけしかけるような相談の乗り方は絶対してはいけない。むしろそういうようなことを制御するようにして、ほんとうの意味で組合を育成するように、民主的な組合を育てるような、そういう考え方の上に立って善処するようにするのでないとだめだと思いますが、その点、十分考えておいてもらいたいと思いますが、それはいいですか。
  201. 堀秀夫

    ○堀政府委員 業務の正常な運営をはかるためにも、労使が相互信頼の上に立って、お互いに協力するということが望ましいことは当然であります。無用な摩擦を起こすことのないように、使用者側においても十分に配意されることを期待しております。
  202. 島本虎三

    ○島本委員 もう一つ、二つだけ、念のために聞いておきたいのです。これで終わりではないのです。大臣が来てからでないと、本論に入れないのです。事実を知っておかないと困るのですが、ことに皆さんのたとえば高千穂営林署の超勤未払いという事件、相当多額の未払い事件があったように聞いております。三十五年一月から十二月までの一年間に、五十八名に対して百五十万円相当の超過勤務を命じていながら、超過勤務手当はその三分の一以下の五十万円程度だった。こういうようなことはまことに残念だということで、組合からいろいろとこれに対する要求があったはずですが、らちがあかないままになっておるいうことを聞いておるのですが、依然として組合に対しては盗聴をしたり、非番の者に対して業務命令を出していながら、ほんとうの仕事をした者に対しては、こういうような事件をほっちゃらかしてあるのですが、この事実はどうですか。
  203. 日比野健児

    ○日比野説明員 高千穂営林署の超勤未払い事件については、ちょっと今詳しいことを承知しておりませんが、おそらくほかの例と同じだと思います。案外違っておるかもしれませんが、森林手簿というものがありまして、そういうものによって超勤時間を計算せよというのが、本来の組合の要求でありますけれども、これは正規の帳簿ではありませんので、当局としてはそういう帳簿によっては認めるわけにいかないというのが、争点だったのではないかというふうに記憶しております。
  204. 島本虎三

    ○島本委員 それはいいことなのですか。それで現在そのままになっているのですか。その措置をどういうふうにしたのですか。未払いのままにほっちゃらかしてあるのですか。
  205. 日比野健児

    ○日比野説明員 そういう対立点が解決しておりませんので、現在訴訟事件になっております。
  206. 島本虎三

    ○島本委員 念のために聞いておきますが、この五十八名に対して超過勤務を命じたのですか、命じないのですか。
  207. 日比野健児

    ○日比野説明員 森林手簿そのものの効力の問題でありまして、当局におきましては命じておらないという建前に立って、組合と意見が対立しておったのでございます。
  208. 島本虎三

    ○島本委員 はっきりそれは命じたということで、訴訟事件になっておりますね。あなたは命じておらないということを今ここで言ってていますが、これは議事録に残るのですよ。むしろこれは命じても命じなくてもやった事実を確認してあるのです。しかも百五十万円ということになると、これはただ支払わないでおいていい額ではないのです。そしてこれは一月から十二月までの一年間ですからね。その間だれもその事実を指導しなかった、責任ある人がそういうような事実に対して手を加えて善処しておかなかった、これは重大な過失になる、職務怠慢になるのではないですか。それを、命じた命じないという、こんなことで争う。現にあなたたちの方では、この問題は命じたのであるけれども、森林何とかが違うということで争っているということなんでしょう。こういう点については少しはっきりした答弁を承りたいのです。
  209. 日比野健児

    ○日比野説明員 組合との話し合いでは、こちらの意見と組合の主張とにいろいろ対立がありまして、その処理といたしまして訴訟になったというのが実態でございます。こちらでは森林手簿に基づくものを全部認めるわけにはいかぬ。こちらで命じた部分については払いますけれども、森林手簿にはそれ以上時間を書いてありまして、それに基づいて払えという点につきましては払えないということで、そういう対立が出て参りまして、それがまさに訴訟の問題になっておるものと考えております。
  210. 島本虎三

    ○島本委員 それはどういうことですか。一年間そういうような、認める認めないというような状態のままでやらせていたのですか。それをやらせないのに勝手にやっていたのですか。とにかく一年間ですよ。こういうことは一体どういうふうに理解したらよろしゅうございますか。
  211. 日比野健児

    ○日比野説明員 要するに現場の事業所におきましては、事前の超勤命令というのはむずかしいのでございまして、成規の手続による超勤命令簿がありまして、そういうものに事業主任がおれば、その主住さんが書きまして営林署の方へ出すというのが、現行のルールでございますが、森林手簿は、当局といたしましてはそういうような正式の書類と認めていない。組合の方といたしましてはそれを認めろということで、意見の対立が起こったのだ、こういうふうに承知しております。
  212. 島本虎三

    ○島本委員 その森林何とかによって認めなくてもいいような作業なのですか。一年の間そういう実態で黙って働かせておきながら、あとからそういうようなものを出して、三分の一以下に超勤を削った、こういうのが実態じゃないのですか。もしそうだとするならば、今まで黙ってそういうものを認めさせておいた職務の怠慢はどうするのです。
  213. 日比野健児

    ○日比野説明員 もし訴訟の結果、正規の超勤をしたものであるという結論になりますれば、当局者はそれは当然支払うつもりでおります。現在争いになっておりますので、その結果を待ちまして処置したいというふうに考えております。
  214. 島本虎三

    ○島本委員 争いになっているとすると、その争いの結果によってきまるとこですからいいと思います。それはそのときに明確にして、こんなことのないようにするのが正しいと思いますが、この一年の間にそれを黙ってやらしておいて、そうして一年の間、職務の監督だとかその責任者は、何のためにそれをあとから三分の一くらいにして認めさせようとしたのですか。これは一年間もう働くな働くなといって注意しているのに、働いたのですか。それともやはりわからない状態にしておいて働かして、あとになってから三分の一くらいに切ったのですか。この事実は重大だと思います。あなたの方では裁判がきまっても、あとで職務怠慢というような、一つの行政処分を受けなければならないような結果になるのではないですか。これは組合だけを責める前に、管理者はまず自分を反省しなければならない要素がたくさんあるように思いますが、この事態はどうですか。
  215. 日比野健児

    ○日比野説明員 一年間そいう事実があったということでございますが、詳しいことは私承知しておりません。ただ裁判の結果、当局が敗訴と申しますか、そういうことになった場合には、その事実に対しまして管理者側に手落ちがあれば、しかるべき措置もあわせて行なわれるべきものだと考えております。
  216. 島本虎三

    ○島本委員 どうも皆さんの方の答弁は、私の話とタイミングが合わぬのです。私はとろいのかもしれない。そこでその間働いている人たちには、月給をやったのですか、日給をやったのですか。また働いた額を正当に請求したのですか。この辺は一体どういうことになっているのですか。あなたの言うのは私は理解できない。理解できなければ、私は国会議員の立場から理解するまで答弁させる権利がある。その点、残念でしょうけれども、私を理解させるまでゆっくり答弁して下さい。
  217. 日比野健児

    ○日比野説明員 実は申し上げたいことがござますが、私、事実関係についてはっきり承知しておりませんので、もし必要でしたら、後刻調べまして御答弁いたしたいと思います。
  218. 島本虎三

    ○島本委員 これはもしそうだとするると、あなたの言った言葉によると、裁判中だというのでしょう。皆さんの方が訴えられたのか訴えたのか、まあ訴えられたのでしょう。そして裁判中であるなら、そういう事実を責任者のあなたがわからないということはないのじゃないですか。だからその内容はどうなんだと聞いておるのです。むちゃなことではないと思うのですがね。森林何とかいう言葉があったようですが、その言葉によってはっきり私どもを納得せさて下さい。今の場合は、完全に働いている額が百五十万、支払っいるのが五十万程度と出ているのです。三分の一という額がはっきりしているのです。払っているのは月給なのか、日給なのか。それを毎日どういうふうな支払い方法でやったのか。むしろそれをやっていたとするならば、完全に命令を発しながら、三分の一の命令を発したかどうか知りませんが、全部やらして三分の一しか払わなければ、あと三分の二だけはどうしたのかという疑問は、当然起きるでしょう。そういうふうにして働かせながら、まだ裁判中であっても、その事態がわからないというのは、どうも不明朗なんです。私はこれでもって引き下がるわけにはちょっと参りません。この事態をあなたは御存じないのですか。
  219. 日比野健児

    ○日比野説明員 恐縮ですが、こまかい事実関係につきましては私承知しておりませんので、直ちに調べましてあとでお答え申し上げたいと思います。
  220. 島本虎三

    ○島本委員 これは長官が来てやる場合にわかるように、すぐ手配しておいて下さい。  そういうようなことを前提にして、もう一つ先の方へ進みます。これであげた例が三つですが、いろいろとやってみますと、皆さんの方ではあたりまえにしてやっているようなことが、どうもあたりまえになって出てこない場合が多いように思われるのです。当然だと思われる皆さんの答弁でも、どうも私どもは理解できないのです。それにしてみてもこれはどうですか。「労務ハンドブック」というもので、皆さんの方は労務関係を指導されておるという話ですが、これはどなたが命令してやらせたことですか。
  221. 日比野健児

    ○日比野説明員 「労務ハンドブック」というものは、実は数年前の「労務管理ハンドブック」のあれでございますが、そういう名称ではなしに、内部の資料といたしまして、そういうものをつくったことはございます。それにつきましては、その後の労使関係の進み方に合わせまして、そういうものはない方がいいということで、当局側の措置といたしまして、それは廃棄するということにしております。それが一つでございます。  それから、おそらく今御質問の「労務ハンドブック」と申しますのは、去年の六月、林野庁の課長が九州に行きましたとき、二、三の県の営林署長を集めまして講演しましたものを、その後整理いたしまして、各営林局に配付と申しますか、労務指導の資料というような意味で配ったもののことだと考えますが、そうだとすれば、だれが命じたとかだれが命じないということではなしに、担当課長がたまたま出張の途次、署長が集まってきましたときにしゃべりましたのを収録いたしまして、何らかの参考という意味で配ったものでございます。
  222. 島本虎三

    ○島本委員 参考として配ったのに、全国へ皆さんの方の職制を通じて一斉に配って、どなたが責任者かはっきりしないような行き方はないじゃないですか。これはどこどこへ配られましたか。
  223. 日比野健児

    ○日比野説明員 各営林局へ配っております。
  224. 島本虎三

    ○島本委員 全国に頒布しておるのでしょう。
  225. 日比野健児

    ○日比野説明員 そうでございます。
  226. 島本虎三

    ○島本委員 そういうふうになった場合に、はっきり皆さんの方針だということになっているからこそ、国の費用を使って全国にそれを頒布したということになるのじゃないですか。一係が勝手にこれを自分の費用でやったというならばこれは言えますけれども、国の費用でこれを必要な出先へ全部くまなく配付した。それでいながら一係が勝手にこれをやったのだ——そうだった場合には、費用の配分だとか、それに使った費用はどこで出しましたか。これはもう正しくなければ——その費用なんかもはっきりしておかないといけないと思うのですが、その点はどうなんですか。
  227. 日比野健児

    ○日比野説明員 まあ個人的なものか公的なものかということになりますれば、われわれはこれは公的なものと考えておりますが、それが林野庁の中の内部決裁と申しますか、長官までの決裁をとったという意味におきましてはそういうものではない、こう申し上げております。それをまた役所の金で配ったのはおかしいじゃないかということに対しましては、われわれとしては、そういう意味ではそれは公的なものだと考えております。
  228. 島本虎三

    ○島本委員 前に国会でこれが問題になって、内部の話し合いでこれを撤回いたしますということを言明されておったのに、再びこれを配ったということは、国会に対してあまりにも軽視していることになるのじゃないですか。この辺の事情はどうなんですか。
  229. 日比野健児

    ○日比野説明員 国会でこれを撤回するという話がどこで出たか、私存じておりませんでしたが……。
  230. 島本虎三

    ○島本委員 それは「労務ハンドブック」のはしがきにちゃんと書いているのです。これをあなたの方の費用で自分で配付しながら、それがわからないなんということは、どうなんですか。これは隅田達人という人がハンドブックにちゃんと書いているのじゃないですか。前に一回やられたけれども、これを修正してまた出し、参考になれば幸甚に存じますと書いているでしょう。それを、はっきり職階にある人が——これは林政部の労務課長でしょう。この人からはっきり配付しておいて、これはもう林野庁の意見ではないということをはっきり言えるのですか。これは個人的なものですか。今までの答弁ではまことに不可解です。
  231. 日比野健児

    ○日比野説明員 その内容というか、表現等につきましては、そのはしがきにも載っておったと思いますが、非常にきつい表現があったかと思います、問題があるとは考えますが、その言わんとするところと申しますか、流れる精神におきましては、平素われわれが内部で常に討議してやっておるところと、そう離れておるとは考えておりません。ただ、表現につきましては、それぞれの個性が現われまして、非常にどぎつい感じを受けるという点につきましては、行き過ぎではないかというふうに私は考えます。従って、そういうものが全部私的なものだというようには考えておりません。内部で労務管理の問題につきましては常にわれわれ討議しながら、相手の組合の方の御主張も聞きながらやっていくというのが常でございまして、そういう過程において出たことでありまして、ある意味では、当時九州の特殊事情にあった営林署長を前に置きまして、また九州の特殊な事情を念頭に置きましてしゃべったことでございますので、若干先生方からごらんになって行き過ぎがあったというような御意見もあろうかと思いますが、そういう事情がありまして、問題をかもしているということはわかりますけれども、その流れるところにおきましてはわれわれの考えと違ってない、このように私は考えております。
  232. 島本虎三

    ○島本委員 これは少し重大だと思うのです。それでいいとするならば、今あげる事例をはっきり皆さんによってこれが正しいということを答弁していただきます。  これは三十七年の六月十七日にやった議事録、またはその本人が書いたものか手を入れたものか知りませんが、また六月の二十九日に本人がはしがきまで付して全部配ってあるのです。その中に、正しいけれども表現が妥当じゃないところがあるとか、総体的には間違っていないとか、こういうようなことを言っておりますけれども、これには、「職場には使用者と従業員としかいないものなので、労働組合は職場の外の存在でありますし、組合員というのは労働組合の家庭の事情であるわけで、職場の中に見せている顔ではない。勿論管理者という言葉も不適当な言葉ですけれども、組合員というのと同じように公労法上の非組合員の意味で使うならば、職場において、そんな顔をするものではないので、職場ではあくまで使うものと使われるものとの関係、命令服従の厳正な秩序を確立していかなければならない。」こういうふうにあるのです。労働組合というようなものは、これはほかのもので、そうして職場の顔とそれとは全然別個のものだ、こういうようなことをはっきり言っている。それだけじゃないのです。従業員が使用者にお願いをするにはひざまずいて、いわば土下座して、——こう言っておるでしょう。こういうようなのが団体交渉のいわばはっきりしたルートだ、皆さんの方で、はっきりここに言っているのです。使用者に対して土下座しなければならないような団交がどこにあるのです。これはどうなんです。
  233. 日比野健児

    ○日比野説明員 先生が前の部分で読まれた点につきましては別に問題ないと思いますが、土下座してこいとかいうようなことになりますと、私先ほど申しましたように、非常にその言葉の表現が強いということで問題になるというふうに考えます。  それから職場には管理者と従業員しかない、組合は外だという問題につきましては、職場の上下関係というか、においてはそういうものであり、組合というものはそういう職場の秩序外にあるものだというふうな、二面性があるということを言っておるのでありまして、その点については、表現の問題はともかくとして、そういう考え方については別に間違ってない、このように考えております。
  234. 島本虎三

    ○島本委員 あなたはそれでいいですか、組合員に対して、土下座をしてこぬと団体交渉に応じてやらないという考え方が正しいですか。その点についてまず伺います。
  235. 日比野健児

    ○日比野説明員 実は先ほど申し上げた土下座してこいなんということは、表現として非常にまずいのでございまして、われわれ常に労働組合と団交をやります場合に、そういうことでは毛頭やっておりません。労使関係の正常化と申しますか、信頼関係を打ち立てようということで、常に論議を尽くしまして誠意を持ってやっている、こういう建前で常に志しております。
  236. 島本虎三

    ○島本委員 もしそうだとするならば、もう一つこの中で書いていること、これはどうですか。「売買契約を結んでしまえば、その労働という商品は経営者の手に処分権が委ねられるわけです。われわれが店に行って物を買う、買った以上はその買った物はわれわれがどう使おうと勝手です。人に呉れようが捨ててしまおうが切りきざもうが若しくは大事にしまっておこうが、そういうことは所有権にもとづいて買主が自由勝手にできるわけです。」こういうふうに言っているわけです。おそらく今の考え方と前に私が言った考え方と共通しているのです。これはもう使用権というものを絶対のものにして、あとすべてこれは対等以下のものにして、すべてこういうようなことを指導して末端まで流してやって、これでもう正常な団体交渉を行なえるものという考えなんです。おそらくこの以前にもいろいろあったわけですが、この問題については、労政局長労働省ではこういうような事実を知っておりますか、こういうような事態に対してどういうふうに思いますか、そのままにしておいていいのですか。
  237. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま御指摘のパンフレットは、実は私どもまだ全然読んでおりません。読んでおりませんが、お話を聞いておりますと、なかなか奇抜な表現があるように思うのであります。そういう点につきまして、私どもも後ほど取り寄せましてよく読んでみたいと思いますが、使用者側におかれてもさらによく検討せられることを期待いたします。
  238. 島本虎三

    ○島本委員 この以前にも、郵政省の方で、全逓に対して出した「新しい管理者」という小誌があったはずです。それに対しても労働省は全然知らなかった。そうすると「労務ハンドブック」、これも知らない。知らないけれども労働行政についてこれが正しいのだということを流されてあるのです。こういうようなことは、各省間で全然知らないで、まあ局長なんか、あとから言われると十分検討してみます、こういうようなことで済むものですか。逆に言うと、あなたの方が職務怠慢なのか、ほかの方からこういうようなことをやっていいのか悪いのかというような点は、一応労働省当局とも十分話し合って、間違いなくこういうことはこうすべきじゃないかと言うべきだが、勝手にやられているようです。これはあなたの怠慢なのか向こうの行き過ぎなのか、この点は今のままで勝手にやっておいていいものなのか、そうして一方においては正しいと言いながらどぎついことがあった、こういうことが平気で行なわれていていいものなのかどうか、労働省ではどう思いますか。
  239. 堀秀夫

    ○堀政府委員 一般的な労働行政に関する問題あるいは労働法規の解釈に関する問題、一般的な問題、こういうものは、御指摘のように労働省でその施行について遺憾なきを期さなければならない。ただいま御指摘のものは、内容は先ほど申しましたように私どもまだ読んでおりませんが、労務管理の心得といいますか、そういうようなものを書いたのではないかと思うわけでございます。これはもとより林野庁、それからそれを監督する農林大臣、その系統において十分に御監督になり、円満な労務管理を期するように御配慮になるべき問題であろうと思うのであります。労働省におきまして、そういう問題について一々これを事前に見るというような関係にはなっておらないわけであります。従いまして、もとより私どもの方にはこのパンフレットについての御相談もありませんでしたので、私どもも読んでおりません。ただ、内容はいろいろ問題があるようでございますから、私ども一つ取り寄せて読んみたいと思うわけでございます。
  240. 島本虎三

    ○島本委員 堀さん、前に同じこの場所で、全逓に対して郵政当局が、「新しい管理者」という中に使われている言葉、これは反動といわれる管理者でなければ一人前でないとか、そのほかいろいろあった。そういうようなことを、迫水郵政大臣にこの場所へ来てもらってともに聞いたときに、あなたの答弁はそういうようなものに対して今後十分話し合って指導します。間違いのないように指導しますと言ったでしょう。そのあとからまたこれが出てきておるのに、郵政省の方はどうなっているか、ほかの方からどんどんと雨後のタケノコのように出るやつを、まだ知らない知らないでそのままにしておく。また言われると十分検討します。あなた、一体こういうものに対しては、もし出す場合には一応相談してくれとか、意思をはっきりさせておきたいから何とかそのものを事前に見せてもらいたいとか、こういうようなことをはっきり言っておいて、あとから起きてきたことに対して火を消すように、こういう措置をとらなくてもいいように、こういうものははっきりしておくべきじゃないかと思うのです。あなたはいつもここへ来たらいいことを言うけれども、言ってしまったらあと居眠りしているわけじゃないと思うが、あなた自身無視されているのか、怠慢なのか、逆にそういう点をつきたくなるのです。これだけで済んでいるのか、あとからこういうものが出てくるのか。建設省の方でやっているかもしれないけれども、まだ見ていませんが、そういうものがまた出てくるかもしくれない。各省々々で好き勝手なこととは言いませんけれども、そのイデオロギーを統一しないままに労務政策を強行している。ある場合は行き過ぎている。こういうような場合を見ても、労働省の方では知りませんでした、これで済むものですか。一体労働省の指導行政というものは、こういうものに対して全然タッチしていないのですかいるのですか。今後はどうなんですか。これははっきりしておいてもらわなければ、仏の顔も二度三度、だめですよ。
  241. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この前問題になりましたときにも、私どもの方といたしましてそのようには申しました。私どもの基本的な考え方は、これは労使関係というものは相互信頼、協力の上に立つべきものである、その上に立って正常な労使関係が打ち立てられる、こういう基本的態度には変わりはないわけでございます。三公五現その他いろいろな関係者の会合があり、あるいは連絡の会合がありますので、私どもの方としては、そのような一般的な趣旨関係者には十分お話ししてあるわけでございます。そのような一般的な労働教育と申しますか、そういうことは十二分にいたしておるわけでございます。ただ、ただいま御指摘のように各使用者側において個別的なこまかな内部の業務管理あるいは労務管理等についてのいろいろな指導をすることもありましょうし、あるいは講習会というようなものもあろうと思うのであります。これは、ただいまの組織では一々そういうことまで労働大臣が事前に審査する、あるいは認可する、こういうようなことになっておらないわけでございます。従いまして、ただいま御指摘のパンフレット等についても、事前の御相談はなかったわけでございます。しかし、私どもとしては、先ほど申し上げました労働省考えております基本的な考え方は、十分に徹底するようにあらゆる機会を通じて言っておるわけであります。その趣旨に沿いまして今後もやって参りたい、かように考えておるわけであります。
  242. 島本虎三

    ○島本委員 なお、この中には「マル共のボスでありました秋田のS君とか青森のK君とか」、こういうような表現もあって、具体的に名前を示しておる。そうしてマル共だとかいう言葉が出てくるわ出てくるわ、山ほどあるんです。こういうようにして、りっぱな労使慣行を打ち立てて云々なんと言ったって、これは憎しみの表現ですよ。従ってもう自分の方へ来る、いわば第二組合をつくって、従順を旨として争いなんかなしに、上司の言うことを聞くような組織ならばよろしいけれども、進んでいろいろな条件の解決のために戦うような組合は、全部マル共と同じことだということを思わせるばかりの表現でしょう。こういうようなことでは、もう円満な労使関係を樹立するためのパンフレットなんということは、言うもおこがましいと思うのです。おそらくこの問題は十分知っておられると思う。今の堀さんの言葉の通り、十分これは指導すべきだと思うのです。悪いのは、もっともっとこういうものは出すべきではないということを強く言うべきだと思うのです。  なおもう一つは、その中にありました、職員部長が今答弁されたようにどぎつい表現だ、そういうような点もあるというのは、これを見てみれば数カ所にある、これはこのままやることは個人のものであって、庁のものではなくて、——これはやったのもあるかもしれないけれども、意思としては庁全体の意思ではないということをはっきり答弁されたようだ。もしそうだとするならば、こういうようなものは十分なものにしてやってこそ、これがいいと思うのです。おそらく庁の意思として、これはまとまったりっぱなものだとしてやったならば、皆さんの考えでいいと思うのです。しかしながら、そういうような不十分なものをなぜばらまくのですか。こういうようなものに対しては一応撤回する必要があると思うのです。こういうようなものでやったって、これでは労使の関係はうまくいかないと思うのです。これは、せっかく長官がおいでになりましたが、十分知っておられると思うのです。労働省の意向も聞いた上で撤回するのが、今の場合妥当じゃないかと思うのです。こういう考えに対してどういうふうにお思いでありましょうか、長官の御意見を伺います。
  243. 吉村清英

    吉村政府委員 私、おくれて参りまして、まことに恐縮に存じておるわけでございます。この問題につきましては、私もこの印刷物を読みまして、先ほど来職員部長から御答弁を申し上げておりますように、林野の真意のあるところを誤解を受けるということになりますことは、まことに遺憾でございます。従いまして、私どもといたしましても、先ほど御答弁を申し上げてあったかと存じますが、この印刷物は公式に出たものではございませんが、十分誤解のないように措置いたしたいと存じております。
  244. 島本虎三

    ○島本委員 先ほどのいろいろの答弁を総合してみましても、公式なものではないようです。公式のものでないのを、全部全国に頒布してあるのです。一公式なものでないものを、公式な費用で頒布してもいいものですか。これはどういうものなんですか。
  245. 吉村清英

    吉村政府委員 その点につきましては、日ごろこの労務管理について指導をいたしておりましたその中での講演——とはちょっとおこがましいわけでございますが、会議の席上に出まして話をしたことを、たまたまそういった印刷にいたしたわけでござまして、そういう点では、私どもこれは誤解が出るということについては非常に残念でございますが、この指導をしたということにつきましては、これは国費でやったことは悪いというようには考えないのでございます。そのやったことによって、林野の態勢と申しますか、労務管理に対する態度に、世間から誤解を受けるということは非常に遺憾なことでございますので、その点については誤解のないように、私この際措置をいたしたいというふうに考えております。
  246. 島本虎三

    ○島本委員 今の言葉で長官の真意はわかるような気がするのです。しかし、今までの各部長さんたちの答弁の中でも、理解できない点が多過ぎるのです。一部不穏当な表現がある、こういうふうに言っておりますが、今の団体交渉に土下座しなければやらないぞ、こういうようなことは労働省も聞いてあきれているのです。これが言葉が少し行き過ぎたとか、これは煮ても焼いてもどうでもいいんだ、こういうような、まさに前世紀的な表現を使ってみたり、物を買ったんだからおれの好き勝手にやるんだ、殺されてもしょうがないんだ、こういうような悪徳地主的な印象を受けるような表現を使っていたり、これだけのものでは真意が誤解されている点が多過ぎるのです。そのほかに特定の人の名前まであげているのです。マル共という言葉が幾つ出てきておるのですか、労働組合全部マル共ですか。これはマル共対策として共産党員にだけ送ってやったらいいでしょう。ところが、これは全部組合員にやっておる。これだったら、組合運動をやっておる者は全部共産党員だということになるでしょう。そういう不穏なことをやって、言葉が少して行き過ぎておる程度のものじゃない。基本的な考え方が行き過ぎておるどころか、間違っておるのです。だからこそ労働省の方でも、もう少しこの点は考えてやったらどうだというふうに、労働大臣は来ておりませんけれども、堀さんは考えておられるようです。こういうようなものに対しては、はっきり撤回すべきです。やらない方がいいのです。今、庁のものであるとか、また個人の意思であるとかいろいろ言っておりますが、これを出されてから約一カ月ほどしてから、本人がはしがきをつけて、そしてこれを修正した上で出すべきだということで、出して送ってあるのです。念入りに自分で一筆入れておる。そして自分のこの講演要旨を全国くまなく配ってあるのです。もしそういうふうになった場合には、はっきり言っておきたいのですが、これは林野庁の意思としてこれをやるのでない以上、この何とか課長は行き過ぎております。そして誤解を受けるようなこういうことを盛んにして、労使間をなお激発さすような傾向があるのです。こういうような人に対してそのままにしておくということは、円満な労使の慣行を打ち立てるどころか、逆に労使の慣行に水をさすようなことになるおそれがあると思うのです。こういうような点は、十分考えて善処すべきじゃないかと思うのです。本人のことにも関しますから、これを首にしてしまえとか言うことは猪突でしょうけれども、このままの状態で認めるということになると、逆にあなたはこの張本人になってしまうおそれがあります。この隅田何がしという人に対しては十分考慮しなければならないと思いますが、長官はどのようにお考えですか。
  247. 吉村清英

    吉村政府委員 その点につきましては、どこまでも私の日ごろの監督の不行き届きでございまして、私にあると考えております。ただ、先ほど来先生の御指摘の点につきましても、まことに言いわけがましくなるのでございますが、お読みになると、ひざを折ってこなければ団交に応じないというような誤解を受けるのでございますが、そこをずっとお読みいただくと、団交の場合ではないように書いてあるのでございます。そういうところがまことに不用意に誤解を受けるような話の仕方になっておるということは、私もまことに遺憾だと存じておるのでございます。また、その講演をいたしましたときの情勢と申しますか、雰囲気に若干左右されるような点もあるのでございまして、本人に私もいろいろと聞いてみたわけでございますが、その点は、やむを得ないような情勢も必ずしもなきにしもあらずというように感じておるのでございます。そういった誤解の生ずるようなことを私がうかつにしておったということは、これはどこまでも私が悪いと申しますか、監督が十分に行き届いておらなかったことによって出ておるのでございまして、今後十分に注意をいたしたいと存じておる次第でございます。
  248. 島本虎三

    ○島本委員 十分注意してもらうのと同時に、今までのいろいろな例もあることですから、こういうような人を同じような場所にそのままにして置くということは、これははなはだ当を得ませんので、その点等も十分考えておいていただきたい。そして本人に対する処分——処分ではありません、何と言ったらいいのか、どういうふうにしたという点と、あわせてこの労務ハンドブックというものに対してはどの点がどうなんだ、この点はどうなんだということに対してもう一回検討して、その検討されたことに対しての意見を付して私の方へ出してもらいたいと思います。これは調査の要求をしておきます。  それとあわせて長官にもう一つ伺っておきます。これは両部長から答弁できない問題です。これは三十五年の一月から十二月までの一年間の間に、熊本営林局の高千穂営林署で、職員五十八名に対して総額百五十万円相当に上る超過勤務を命じていながら、超過勤務手当は約三分の一の五十一万円程度より支払わない、こういうようなことがあった。これに対して、現在裁判になっているということを今言われたわけです。裁判になっているとすると、その結果については黒白が明らかになると思います。ただ期間が一年間であって、この一年間の間黙ってこれをやらしておったという点、それからその間別にそれに対して指導もしていないし、監査もしていない。そのほかに、やったのが月給であるのか日給であるのか、まだはっきりわかっておらぬということ、こういうような点、いろいろ今までの答弁の中にございました。私はそれだけではどうなのかわかりませんので、長官が来たならばこの問題に対する真意を伺いたいし、それに対する処置伺いたい、こう思ってこれをとっておいたところです。こういうような事実があったのかないのか。あったとすると、裁判にかけているという話ですが、まだこういうような問題に対して黒白が明らかになっておらないのかどうか。そのときの支払いの形態、監査の形態、こういうような問題について一年間何にもしておらなかったのどうか。この点に対して御答弁を願いたいと思います。
  249. 吉村清英

    吉村政府委員 この営林署におきます超勤の未払いの問題でございます。この点、私も十分に承知をいたしておらないのでございますが、これは超勤命令簿による超勤と手簿による超勤と、この時間の差から出てきておる争いのように考えておるのでございます。私どもといたしましては、建前として、超勤命令簿による支払いということをいたしておるのでございます。これが裁判にかかっておるのでございます。まだこの判決が出ておりませんので、この判決を待ちまして私どもは処理をいたしたいと存じておるのでございます。それで、おそらく一年間ほうっておいたということでなしに、支払いをしていって、一年後においてこの要求が出たということになるのではないかと私承知いたしておるのでございます。
  250. 島本虎三

    ○島本委員 当然やったのは実績としてそれだけ一年間に働いていた、ましてそれが職員であった、そういうような場合には、まあ一年も待たずしてそれだけの実態がわかるわけです。それを命令してもしなくても、働いた事実があって業績が上がっているならば、超過勤務は当然払ってやるのがあたりまえじゃないかと思うのです。こういうような点については、支払わない、支払わなくてもいいというふうに長官はお考えの上でこれは裁判の方に移行させてあるのかどうか、その辺の真意をはっきりさせていただきます。
  251. 吉村清英

    吉村政府委員 超過勤務は、超過勤務を命じた上で超過勤務の手当を支払うことにいたしておるのでありまして、その超過勤務の実態を十分把握いたしまして支払いをすることにいたしておるのでございます。ただいまこの裁判にかかっておりますのは、その点で私どもの方で十分に把握ができないという点から、おそらく争いになっておることと存じておるのでございます。従いまして、そういうような実態を把握いたしました上で、必要があるならば支払いはしなくちゃならぬというように考えております。
  252. 島本虎三

    ○島本委員 やはり長官と話してもその点がわからぬのですが、一年間もそれをやっておいて、そうしてその中でチェックしたり行き過ぎているからやめろとか、またそうすべきじゃないとか、正当の状態にさせることが全然できないのかどうか。これはどなたに聞いてもわからぬのです。何か特別な法律があってやっているようにも聞こえるような答弁があるのですが、その一年間の間は、駄って百五十万円もやらしておいてもわからないようなシステムになっているのですかもその点もう一回はっきりお願いしたいと思います。
  253. 吉村清英

    吉村政府委員 私、考えましても先生の御指摘通りでございまして、一年間ほっておくということは、これはないのでございまして、月々支払いをいたしておるのでございますから、そのようなことは私どもは絶対にと申し上げていいくらいないと思っておるのでございます。この争いが起きましたのは、年間の過ぎましたあとで、差額の問題で争いが起きたように聞いておるのであります。それにしても、やはり先生の御指摘のように、十分月々念を押して検討しておけばそんなことはないはずだということも、私どももさように承知いたすのでございますが、その点詳しく私の方へ上がって参っておりませんので、十分な御答弁が申し上げられないで恐縮でございます。
  254. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような点は十分注意すべきだと思うのです。  そのほかに、超過勤務ではございませんけれども、同じようなケースで、これはおそらく労務ハンドブックというものの影響であるのかどうか、私はあろうかとも思います。しかし、青森で薬剤散布の作業をさせて、それによって従業員が死亡した事件があったはずだと思うのです。そしてそういうようなことに対しては、団体交渉並びにいろいろなこれに対する折衝を何としても受けないで、一方的に、まさに業務命令で実施させておった。こういうような事実がほんとうだとすると、これはとんでもないことじゃないかと思うのです。こういうようなものに対しては、団体交渉によって、安全の防具ですか、こういうような問題や、時間や、作業方法の問題、こういうようなものも十分考えた上でやるべきが妥当です。しかし、そういうようなことをやらないで死人が発生した、こういうような事態が私どもの手元にありますが、この事実があったのかないのか。あったとすると、その責任はどこにあるのか。この点も明確に御答弁願いたいと思います。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕
  255. 日比野健児

    ○日比野説明員 青森におきまして、薬剤による火傷が原因で一人死亡になったということは承知しております。それから団交をやらずにやったということは、おそらく九州の飫肥のことではないかと思います。飫肥におきましては、団交をやらなかったのではございませんで、今記憶しているところでは、組合の方から七項目くらい要求がございまして、そのうち五項目はこちらが承知いたしまして、二項目について問題が残りましたけれども、その後一項目、地下たびの件につきましてはゴム長ぐつを支給するということにしております。残りました一点は危険手当を支給しろということでありまして、危険手当の問題になりますと全国統一的な処理を要することでございまして、営林署限りでこれを決定する権限がございませんので、これは営林署長がどうこうするわけにいかぬ、こういうことでございまして、団交を全然やらずに薬剤散布を強行さしたというふうには、われわれ承知いたしておりません。
  256. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、こういうような問題に対しても団体交渉は十分行なっておった、今後も、こういうような問題に対しては団体交渉を行なってこれを処置するものである、こういうように理解していいですか。それも団交事項以外であるからこれを受け付けないということで、業務命令によって発した事故であるかのように私がもし思ったとするとこれは私の誤解である、こういうようなことですか、その点もう一回、くどいようですが、はっきり願います。
  257. 日比野健児

    ○日比野説明員 薬剤散布の問題につきましては、御承知のように、やけどで人が死ぬということもあるように、非常に火気の注意が要請されております。従って、安全面からの問題になりますと、当然団体交渉事項になりますので、そういう面からの団体交渉を受けないということは絶対あり得ませんし、私どもといたしましても、そういうことはやるべきじゃない、こういうように考えております。ただ問題は、団体交渉でいろいろ意見が対立しまして、ずいぶん意見を詰めまして、最後の段階に至りまして、若干の問題が話がつかぬ場合に、散布の時期その他の関係がありまして、その問題が団交で最後の結着がつかぬ場合は事業を実行するな、こういう組合の御主張がよくありますが、この点につきましては、われわれといたしましては十分団交を詰めて、いろいろ問題が残れば、それはそれぞれの団交の基準に従いまして上に上げるなら上げるということでやりまして、時期が来れば、そういう若干の問題が残りましても、事業実行上の点から、ある程度こちらが賃金等きめまして仕事に着手していただく、こういう事態もあるいは起きるかと思いますが、われわれといたしましては、そういうことのないようにいたしております。
  258. 島本虎三

    ○島本委員 そういうことのないようにすると言いながら、私の調べたところによると、青森では蟹田署で一名死亡しているほかに、高鍋署では豚の流産、それからヤギの死亡、家畜に与える影響が続出しておったということも聞いているのですが、こういうようなものに対しては、やはり人の被害もあわせて人畜に多大な被害を与えていることになるので、生命に関する重要な問題なんです。こういうような問題は、業務命令によってただ単に実施さしたということであるなら、とんでもないことです。これはおそらく今団交に乗して、こういうような安全の問題に対しては完全にやる、こういうようなことに私は理解しておきたいと思うのですが、これは団交によってはっきりやりますね。こういうような問題は、長官、どうですか。
  259. 吉村清英

    吉村政府委員 労働条件に関連いたす問題は、団交によって結論を出すまで詰めて参りたいというように考えております。ただ、若干形式的に流れますが、管理運営に関する事項につきましては、私どもも団交を受けないという態度でなしに、その点は十分に話し合いをいたしまして、理解をしてもらうように努力はいたさなければならないと思っております。このやけどの問題につきましては、私ども十分注意はいたさなくちゃなりませんし、現地におきましては、それぞれ注意がなされておったのでございますが、遺憾ながらそういうような事態が発生をいたしたので、この点につきましては、私どももさらに注意を強化いたさなければならないというように考えておるのであります。  また、家畜等の被害でございますが、人体に対する影響につきましては、ある程度医学的に検討もできておりまして、そのままでは別にどうということはないようでございますが、今御指摘もございましたので、さらに念を押しまして十分その点は今後検討をいたすようにいたしますが、この薬剤の点につきましては、火気の注意ということで大体十分であるように聞いております。また使用をいたします量につきましても、国有林は大体一割程度が使われておるという程度でございまして、ほかにそれほど事故も起きておりませんので、この使用の方法をさらに注意を進めて参りますならば、私はそれほど危険なものではないというように理解はいたしておるのでございます。
  260. 島本虎三

    ○島本委員 これはやはり爆発性の薬剤であるということ、これは血液毒となり、じん臓障害を起こし、血尿となり、尿量が減少し、重症となるとけいれんを起こして死亡するに至るおそれのあるものである。それからなお、こういうようなものに対しては、はっきり前もって県なり国なりの方からそういうような指示なり、こういうものに対する効能がはっきりさしてあるものに対して、今度は安全衛生委員会なり団交なり、組合との協議機関には一切こういうものは諮らないで、これを全面的に拒否しながら強行した。そして熊本の加久藤署では団交を拒否して強行している。そのほかに、今度串間では、日雇い作業員に対しては散布の命令に反した者は首にする、こう言いながらこれをやらしている。そのほか例をあげれば手元にはずっと届いております。しかし、そういうようにして、重大なものに対しては団交なり所定のこういうような機関に諮らないで、これを実施したということがあったとすると、今長官が団交によってこれをやりますということ、それは将来の問題はやってもらってけっこうでありますが、今までやっていないということの裏づけになってしまう。これはまことに困った問題であると思うのです。ことに労働省では、去年から労働安全衛生の問題については特に気をつけて、今度は法律案を出して是正しようとしているんです。そのさなかに、同じ林野庁の方では、人畜に被害のあるような方法と毒物と言ってもいいでしょうか、薬剤でしょうか、こういうようなものによって一つの事故を起こしている。こういうようなことになりますと、これはとんでもないことだと思います。かっては労働省の中で、糞尿と塵芥、こっちの方に対する民営の問題については、ことさらに手が伸びていなかったという実態がはっきりいたしました。今度の場合は、同じ林野庁の中で薬物を使っていながら、これの人体に与える被害の点ははっきりしているにかかわらず、方法は別として、結果的に安全衛生の趣旨にもとるような行為が起きておった。こういうような点は、労働省としても黙っておけない問題じゃないかとわれわれは思うのです。方々でこういうような事態が発生してくるということは、労働省の行政の一つの怠慢と言われても差しつかえないかと思う。こういうようなことがあっては困ります。労働大臣も、かようなことがないように今後は十分気をつけてやってもらわなければいかぬと思うのです。これでまた次にやるときには、また次の例を持ってくるかもしれませんが、同じ国や地方自治体の方でやっているところで、こういうような生命を危険にさらされながら仕事をそのまま一方的にやる、ある場合には団交を拒否している、こういうことはまことに許せない。安全衛生の立場からも、また正式な労働行政立場からも、こういうような点はもっときつく指導すべきだと思います。大臣、これに対する御意見を承りたいと思います。
  261. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御趣旨の点は全く同感でございまして、今後さような趣旨に沿うように努力いたします。
  262. 八木一男

    ○八木(一)委員 労働大臣にお伺いをいたしたいと思います。  労働大臣の一番大事なお仕事は、労働者に対して、その雇用とか賃金とか、その他の労働条件あるいは関連する社会保障とか、そういう問題を、法的にりっぱに完備をした状態で、労働者がいろいろな心配なしに労働に従事できるというふうな体制をつくられることが、労働者として、またその責任者としての労働大臣としての一番大切なことではないかと思うわけでございますが、それについて労働大臣伺いたいと思います。
  263. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 確かに、仰せられたことは、労働省として大事なことだと思います。
  264. 八木一男

    ○八木(一)委員 労働者の中にはいろいろ職種の違いがあるわけでございますが、職種が割に目に見えやすいところ、それから団体の、前から非常にしっかりしていたところでは、いろいろのそういう問題が団体交渉を通じて、また政府みずからこの問題の必要性を感じて、いろいろの問題が整備をされているわけでございまするが、たまたま目に見えないところで非常に苦しい労働をしている人の問題なり、またそのような不便なところにあるので、そういう労働者の方々の結集がおくれて、運動がおくれているところの問題、そういう問題が、ただいま申し上げた点で非常に対処するべきことがおくれており、また不十分な点があることは多々あると思うのです。そういう問題については、労働省みずからそういう問題をできるだけ気をつけて、そういう日の当たらないところにある労働者の諸君が、特にそういう問題について取り残されないように、特にそういう点が十分になるように、いろいろの面で法律的に、あるいは行政的に御配慮になる必要があろうかと思いますが、それについて労働大臣の御意見を伺いたい。
  265. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働省といたしましては、特に不利な環境にあって人目に立たないというような方々に対しましては、できるだけ役所として積極的に留意をし、積極的にお助けをするような心がまえが大切であると存じます。
  266. 八木一男

    ○八木(一)委員 労働大臣のお考え、非常にけっこうだと思います。ところが大橋労働大臣の御決心は非常にけっこうなものでございまするが、歴代の労働大臣、何回もおかわりになりましたが、歴代の労働相は、この問題に十分な配慮がしておられないで、それで非常に僻村で働いている人とか日の当たらないところで働いている人が、法的に、行政的に非常に他の人よりもそういう条件が悪いという点が多いわけでございます。これは過去のことも非常に問題でございまするが、問題は、これから前向きにそういう問題について直ちに対処をして、そういう方々の雇用の問題なりあるいは労働条件の問題なり社会保障の問題が完備するように、積極的に一つやっていただく必要があろうと思いますが、労働大臣に、積極的におやりになるお気持が十分におありだと思いますが、もう一つ確認をしていただきたいと思います。
  267. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 さような考えでおります。
  268. 八木一男

    ○八木(一)委員 その問題で、特に具体的な、非常にこの問題の必要な労働者の諸君がおられることを申し上げていきたいと思います。  山林関係労働者の方が、民間の山林地主のもとで働いている労働者の方も、あるいは国有林で働いている方も、国有林の初めから林野庁職員という身分を持っている人以外は、非常にいろいろの悪い労働条件にあるわけです。ことに山の中で、私どもその山の入口まで行ったことがあるわけでございますが、私のようなものは、その途中まで登るだけでもふうふうしてへたばってしまうような、非常に傾斜のきついところ、そうしてそれは入口であります。それよりもっと奥の奥まで上がって、何日も家族と別れて山の小屋で仮泊して激しい労働に従事する、非常に危険が多くて、けがをする人が多いというような激しい労働をしている人たちがいるわけであります。そういう人たちのところで、今、日本の重要な資源でございます木材資源が実際に活用されるように伐木をされ、搬出をされて、大事な住宅問題の解決のもとをつくっておられるわけでございますし、またその切り出したあとの植樹その他のことが行なわれまして、資源を確保し、あるいは洪水等でひどいことにならないように、そういう点の非常に大事な仕事が、そういう激しい労働によって行なわれておるわけであります。ところが、そういう方々に対して、いろいろな法律が労働条件として非常に差別待遇をしている条件がございます。そういうものを取り払って、ほかの労働者と同じように、たとえば基準法の問題にしても、失業保険あるいは健康保険の問題にしても、ほかの労働者と同じようになるように、法的に整備をせられる、その不十分な法律を改正せられるというようなことがぜひとも必要であろうと思う。そういう立場にぜひ労働大臣が前向きに、積極的に、急速に勇気を持って取り組んでいただきますように期待をするわけでございますが、その点についての労働大臣のお考え伺いたいと思います。
  269. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 農林畜水産業労働者に対しましても、申すまでもなく労働基準法が適用になっておるわけでございますので、労働省といたしましては、常にこれらの方面にも労働基準の監督には留意をいたしておるつもりでございます。ただ、八木先生も御承知通り、農林畜水産業については、労働時間、休日、休憩に関しまして、国際的な一般の例に従いまして、日本労働基準法といたしましてもこれを適用しないことにしております。その他の労働基準は一般労働と同じように適用して、労働省といたしましても責任を持って監督をいたしておるつもりでございます。
  270. 八木一男

    ○八木(一)委員 現状はそうでありましょうとも、それが現状にほんとうに適さないという問題であるときには、そういう問題は変えるにやぶさかでない態度をとっていただきたいと思うわけであります。労働大臣も当然そういう態度をおとりになると思うわけでございますが、それに関連いたしまして、労働基準法の第四十一条第一号で、この山林関係労働者の諸君が適用除外になっているわけです。その適用除外をした制定当時の理由を、一つ労働省側としのて見解をお伺いいたしたいと思います。
  271. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま労働大臣から申し上げましたように、林業の関係につきましては、農業等と同じく労働時間、休日、休憩時間関係の規定が適用除外にされております。この理由は、林業等におきます作業が、自然的な条件に著しく左右されることが大きいものでありますから、そういう関係労働時間にいたしましても、休憩、休日にいたしましても、法的な規制を加えることは適当ではない、こういう趣旨適用除外にいたしております。諸外国におきましても、農業でありますとか林業におきましては、労働時間関係の規定は除外になっておる次第であります。
  272. 八木一男

    ○八木(一)委員 今自然的とおっしゃいましたけれども、それでは抽象的で、なぜ労働時間や休憩、休日その他の年次有給休暇が適用されなかったか、もっと具体的に御説明を願いたいと思います。
  273. 大島靖

    ○大島政府委員 自然的条件と申しますのは、天候その他の自然的条件に左右されますことが非常に多いわけでございます。
  274. 八木一男

    ○八木(一)委員 天候その他に左右されるから、継続的に労働ができないということですか。ちょっと答えて下さい。
  275. 大島靖

    ○大島政府委員 そういう事情でございます。
  276. 八木一男

    ○八木(一)委員 土木建築事業適用になっていますか、いませんか。
  277. 大島靖

    ○大島政府委員 土木建築の事業適用がございます。
  278. 八木一男

    ○八木(一)委員 雨やあらしでできないというのは、土木建築の場合もそういうことはあると思う。そうなると、なぜ自然的ということでそこにそういう制約をつけられたか、もっとほかの理由があるのですか。
  279. 大島靖

    ○大島政府委員 農業でありますとか林業におきましては、その左右される程度が著しく大きい、こういう事情で、農業、林業については適用除外にいたしておるわけであります。
  280. 八木一男

    ○八木(一)委員 農業も林業も、やはり経営が、いろいろな産業上といいますか、世の中の競争が非常に激しくなって、雨だからそういうことをしない、雨だからそういうことができないということでは成り立たない時代になって、雨具をつけてそういうことをやる、そういうふうに変わってきているわけです。私の存じているところだと、臨時的とか兼業的という意味でそういうことが適用除外になったように伺っているわけですけれども、そういう理由一つもなかったわけですか。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  281. 大島靖

    ○大島政府委員 もちろん天候のほかに、農業におきましても林業におきましても、植物の生長という時期的に左右される問題もございますし、ことに林業等におきましても、それはもちろん農家の兼業という問題は現在でも非常に大きいわけでありますが、しかし、そのことよりも、むしろ今申しましたような天候の関係でありますとか、あるいは対象物の生長の状況とか、そういった関係からくる制約でございます。
  282. 八木一男

    ○八木(一)委員 時間がありませんから、林業の方にしぼって申し上げますけれども、林業の方で生長という関係はあっても、日本の林業の場合には、こっちの山が生長したら切る、またこっちの山が生長して切る時期になったら切るということであって、一つの山だけで植えて、それから育って、それから、伐木の時期になったら切るというようなものではありません。それでは何十年もかかります。こっちの山がことし切る時期になる、こっちの山がこの次に切る時期になるということでやっているわけです。ですから、そういうことで労働は継続的に行なわれているわけです。だから、そういう季節的という問題は関係ないわけです。ただ、雪が降るというような問題があろうと思います。しかし、これだけ激しく木材の需要があり、それをやっている人がやはりそういうことで経営をよくやろうということになれば、雨とか、そういうときもどんどんやらしているわけです。そうなれば、自然的条件でこういうものを適用しないという理由は成り立たなくなる。昔制定当時はそうであっても、今がそうでなければ、特にそのようなむずかしい条件、そして苦しい条件で働いている人に対し、当然このような条項を適用させる必要があろう。制定当時はそうであっても、産業はぐんぐん変わっております。労働条件も変わっております。臨時的といわれたとしても、山の労働者の諸君は、僕の知っている範囲では、ほとんど全部山の労働者として働いているわけです。こっちの山を切り、こっちの山を切るというふうに、転々としてずっとその仕事は続いているわけです。雨でも切りに参ります。ですから、最初にそのようにおっしゃって除外をされた理由は、当時でもこれは不適当であろうと思いますけれども、現在は大きく事情が変わっている以上、当然これについてはこの適用を除外した理由が消えているから、その点の除外をなくする、適用するという方向にしていただかなければならないと思うのです。それについて労働大臣のお考えを承りたいと思います。
  283. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま八木委員のお述べになりました御意見は、従来の労働基準法から考えますると、非常に重要な改正であると存じます。また諸外国の立法例から申しましても、きわめて独特な規定を示唆されておると思うのでございます。しかしながら、労働基準法は、労働の実態に即応いたしまして労働者の健康を守り、生活の安定をはかる、そうして国の産業の発展を目的といたしておるのでございますから、ある事業労働基準法を適用すべきかどうかというのは、そのときどきの実態からいって、先ほど申しました趣旨と照らし合わせて、適用することが国家のために必要であるかどうかという観点できめらるべきでございまして、過去の慣行がどうであるとか、あるいは国際的の立法例がどうであるとかいうようなことばかりできめるものではないと思います。林業における労働の実態が、お話しのように変わって参りまするならば、法律の上の取り扱いも再検討をいたして一向差しつかえないのでございまして、労働省といたしましては、絶えず労働実情考えながらそうした重要問題を検討していくのも仕事であると存じますので、今後、せっかくの御意見でございますので、十分に検討を加えることにいたします。
  284. 八木一男

    ○八木(一)委員 労働大臣の、労働者の実態に思いをいたされまして、前向きの御答弁で、この点非常にけっこうな御答弁だと思います。  労働大臣のお時間がございますので、質問をほかに移しまして、あとまた各局長伺いたいと思いますが、今の問題でさらに申し上げようと思いましたけれども、とにかく林業の問題は、ほんとうに機械化いたしておりまして、それで労務管理が強化いたしておりまするし、合理化が徹底をいたしておりますし、機械技術がどんどん採用せられまして、大きな屋根の下の工場みたいに、ベルト・コンベア式のやり方になっているわけです。もう大きな工場の中の作業と同じような形態になっておりまして、そういう状態で非常に苦しい作業が行なわれておりますので、当然基準法の今の四十一条第一号の適用除外をやめにして、休日だとか休憩だとか、そういうものが適用になるようにしていただきたいと思います。その点でぜひ前向きに、できるだけ早く御検討になって、そういう非常に激しい労働で、国のため、国民のため、社会のために労働しておられる方々に、そういう条件が適用になるように、前向きに一つぜひ御検討をお願いいたしたいと思います。労働大臣の御答弁は非常に感謝を申し上げますけれども、それをほんとうに実行に移していただくようにお願いをいたしたいと思います。さらにこの問題については局長に続けて申し上げます。  次に、失業保険の問題でございますが、この点につきましても、農林漁業の労働者諸君が失業保険法からの適用をはずされておりまして、いろいろと行政的に少しずづやっていられることはわかっておりまするけれども、根本的にこういう問題がはずされているわけであります。失業保険というような社会保障は、そのような労働条件が悪くて失業になることが間々ある。それからまた、失業になったときに、前の蓄積がないために、その期間中に生活が非常に困難になるという人に対して特に必要な制度です。その特に必要な人が、このように失業保険法適用をはずされているということは非常に困った問題でございますので、法的にちゃんと適用させるように、これもぜひ法の改正をやっていただきたいと思うわけであります。失業保険法の第六条の第一号のただし書きのイ項においても、この失業保険法を林業労働者に完全に適用していただくということが、必要であろうと思います。この点について労働大臣の御意見を伺いたいと思います。
  285. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 失業保険につきましては、これを全般的に林業労働者適用する、強制適用にするということになりますると、これはいろいろ事前におきまして機運の醸成をはかるためにまず任意加入を認め、そしておる程度実積をおさめてその後に全般的に強制に踏み切るというふうに、階段的に進む必要があるのではないかと思います。こうした点につきまして、当局者でも検討いたしておりますので、その方から、お答え申し上げます。
  286. 八木一男

    ○八木(一)委員 その点について、また局長にあとで伺いますけれども、とにかく今、労働大臣のお考えは前向きの御答弁であると理解をいたしたいと思いますが、法的に完全にすぐ適用できることが一番いいわけです。それまでの間、行政的に適用されることも悪いことではありませんが、一番完全な方向に向くように、ぜひその点についても前向きな御検討をお願いいたしたいと思います。あと、具体的なことは局長伺いますけれども大臣として失業保険法を完全に適用させるための前向きの御検討をしていただくお気持を一つ御披瀝をしていただきたい。
  287. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は、こういう労働関係の保険は、できるだけ国民、労働者全部に強制適用になる日が一日も早いことが望ましいと思っております。これは、たとえば五人未満のいろいろな事業場が除外されておる保険も多いのでございますが、こうした面についても同じようにしたいと考えております。
  288. 八木一男

    ○八木(一)委員 ぜひそのように積極的に御努力をお願いいたしたいと思います。  次に、基準法の十二条の問題でございますが、平均賃金の問題であります。この問題で、第一項から第六項までちゃんと平均賃金を算定する方式があるわけでございますが、それについて第八項で、「第一項乃至第六項によって算定し得ない場合の平均賃金は、労働に関する主務大臣の定めるところによる。」というふうになっておるわけであります。現在この一項から六項までに定め得るものであっても、そういうふうにしないで、大臣なり労働省がきめてしまうというようなことが行なわれているわけでございます。この点については、後にまた局長にお伺いをいたしまするけれども、そのように第一項から第六項で算定できるものは、当然算定するようにしていただく必要があろうと思います。それについての労働大臣の御意見を概括的に伺っておきたい。
  289. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御指摘の問題につきましては、十分に今後事務当局に検討を頼みたいと思います。
  290. 島本虎三

    ○島本委員 長官にまた伺います。  林野庁の方では、われわれが知らない部面がちょっとあるようでございます。その一つには、身分差別によって一種、二種というように区別された寄宿舎があるように承っております。そうしてその待遇そのものも、だいぶ違っているように承っております。こういうような実態があるのかどうか、あったならばそれに対処する方法について、はっきり御答弁願いたいと思います。
  291. 吉村清英

    吉村政府委員 宿舎の問題でございますが、これは事業宿舎でございまして、身分によって差別待遇をしているということではございませんので、事業の継続期間等によりまして、構造等にも規制と申しますか、制限を設けておるわけでございます。
  292. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、これは労働基準法との関係がある。はっきり申しますと、これは事業附属寄宿舎規程第六条によるところの寄宿舎、こういうようなことになるんじゃないかと思うのです。これはやはり基準法に違反していないかどうか。これは基準局の方で、十分この点確かめたことがありますか、ありませんか。
  293. 大島靖

    ○大島政府委員 まだ具体的な事実を承知いたしませんので、まだ検討いたしておりません。
  294. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、この第六条による寄宿舎というようなものは、いわば身分の差別によるものはないといたしますと、これは何によって格づけされるものですか、一種、二種……。
  295. 吉村清英

    吉村政府委員 これは宿舎の使用期間によって区別をいたしておるのでございます。
  296. 島本虎三

    ○島本委員 使用期間によって区別するといたしますと、六カ月を基準にして、六ヵ月以上になるのはみんな第一種であり、それ以内のものは第二種である、こういうように理解できると思います。そういたしますと、六カ月以上にわたっても第二種の寄宿舎として使っているところがあるならば、これは基準法違反だということになります。今具体的な問題は基準局長は知らないという話ですが、あなたの手元からはっきりこの問題に対する回答が出ているじゃありませんか、これを知らないのですか。
  297. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま御説明の通り、第一種と第二種につきましては、六カ月の期限で分けておるわけであります。ただその宿舎の実態によりまして、第一種にすべきか二種にすべきか、これは実態調査によって個々的に定めるべきものだと思います。
  298. 島本虎三

    ○島本委員 これはいわゆる第一種と二種とは、それぞれ違っておるようでございます。私どもが仄聞したところてよりますと、第二種は掘立小屋である。これは言葉がちょっときついかもしれませんが、いわゆる掘立小屋のようなものである。第一種は、これまたいわゆるりっぱな建物である。こういうように聞いておるわけでございますが、それによって第二種といわれる寄席舎に長く住んでいる人から見れば、身分差別によるところの待遇を受けている、こういうように思われてもやむを得ないと思います。六カ月以上同じ場所におったところがあったと思います。あったけれども、これは今、国会の席上であるから、議事録に永久にとどまるような答弁はできなくて苦しんでおられるんじゃないかと思うのです。私の手元には、残念ながらそのデータがあるのでございます。こういうような点は、労働省の基準局長の方でも十分これを調べて、今身分差別によるところのいろいろな差はないということを言っております。そうだった場合は、あとは年数だ、六ヵ月を基準としてやるとすれば、六ヵ月以上を第二種として使っているところが意外に多うございますから、そういうようなところに対しては一種にして、十分そういうような措置をしてやるべきだと思います。これは労働意欲の高揚のためにも十分なのですが、労働省の方からそれをはっきり言ってやるのでなければ、今までの状態で、これは林野庁の方では踏み切れないような感じがする点もないわけではございません。課長の方から林野庁に対して、はっきりこれに対する見解を明らかにした文書も出ているはずです。こういうような点をあわせて六ヵ月以上にわたるもの、これはずいぶん数があると思いますが、これは明らかに是正するべきだと思います。こういうような点を、監督はうんと厳重にやってもらいたいと思いますが、まだこの点は十分調べておりませんか。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕
  299. 大島靖

    ○大島政府委員 詳細現実に調査いたしまして、早急な結論を出したいと思います。
  300. 島本虎三

    ○島本委員 ではその点はっきりした調査をして、後刻文書によって回答を願いたいと思います。  参考のために調べたデータを言っておきます。まだ二種として差別待遇を受けているのが四千百ヵ所くらいある、こういうことでございまして、それを全部法律によって一種にすると二十億ほどかかる。こういうようなことになっておるので、これをもしそのままにしておいたら、労働省の怠慢になってしまいます。これはとんでもないことになってしまいますから、この点は早目に是正させるべきだ、こういうように思います。もっとも、やらないというのではなく、調べてから善処するというのですから、今までの答弁のうちで、長官局長も一番いい答弁ですから、今後そういうような答弁をどんどん進めて議事を早めるようにしてもらいたいと思います。  それと、やる場合には、二十億というと相当の予算にもなりますので、年次計画を立てて、これを明らかに推進していく必要があるのじゃないかと思います。改善の年次計画を立ててこれを推進していく意思がおありですか、長官に承りたいと思います。
  301. 吉村清英

    吉村政府委員 この改善につきましては、従来からの宿舎等の関係もございまして、十分に進め得なかったのでございますが、すでに過去三ヵ年間、三十七年度を目標にいたしまして、年次計画を立てて整理をいたしつつあるところでございますが、さらに直営生産事業の循環等の問題もございますので、そういった事業関連もあわせまして、この不十分な点につきましては、さらに計画的に進めるように努力をいたしたいと存じております。
  302. 島本虎三

    ○島本委員 これはやはり一気に直せるものじゃありませんから、こういうような点でも、やはり組合の方と話し合いによってやったら、こういうトラブルはないのでございます。おそらく今後も、そういうような点は明らかに——これは管理権の問題だとか、または労働条件の問題だとか、いろいろこんなことではなしに、これも大きく見れば、全面的に労働条件に影響するということは、だれが見てもはっきりしておることですから、こういうような点についてはすみやかに計画を明らかにして、労使協調してこの点の実を上げるように、特に希望しておきたいと思います。その点よろしゅうございますか、もう一回。
  303. 吉村清英

    吉村政府委員 仰せの通りでございまして、私どもも管理権をむやみに振り回して、作業に出てもらいます作業員の方々の意見を聞かないというような態度では、決してないのでございます。そういう点につきましては、私ども考えも十分に徹底いたしまして、さような方向へ進めて参りたいと思います。
  304. 島本虎三

    ○島本委員 最後に一点、労使の問題に触れて、この問題にはっきり結論が出たら私はやめたいと思います。  まず、今一番大きい問題になっているのは、全幹方式による集材機の導入によるいろいろな労働条件、労働災害、こういうような問題が発生しておることだろうと思います。これに対しては、労使の中で、これは明らかに労働条件や労働災害に関係する問題ですので、十分話し合われて進めなければならない問題だと思います。この問題に対しては協議されておりますか、おりませんか。
  305. 吉村清英

    吉村政府委員 御質問の点は、問題になっております全幹集材の問題かと存ずるのでございますが、この全幹集材は、特に取り立てて非常に変わったことをやっているということでは、必ずしもないのでございます。従来は伐採をいたしまして、造材をいたした上で集材をするという過程で進めておりましたものを、伐倒をいたしましたものをそのまま集材して、その集材した過程で造材をするというような形式に変わるわけでございますが、これも、過去かなり長い間実施をいたして参っておるのでございまして、特に事新しい問題ではないのでございますが、たまたま一部におきましてそういった問題が起きまして、私もども遺憾ながら第三者の機関に御厄介になるようになって、この調停案も出ておるわけでございますが、現在はそういった段階でございまして、私どもはその調停案の線に沿いまして、さらに折衝を続けたいという考えでおるわけでございます。
  306. 島本虎三

    ○島本委員 協議がまとまらないで、第三者機関にこれがゆだねられる段階であるということは残念です。それにいたしましても長官、これは先ほど関連していろいろ申し上げました労務ハンドブックの出ている問題、そのほか超過勤務の問題だとか、それから盗聴器の問題なんかもあるわけであります。こういうような問題等につきましても、私はその中に一貫して流れているものを、この社会労働委員会委員の人は、すぐぴんと感ずるのです。労使がうまくいっているところには、案外そういうようなものがあっても、割合簡単に済まされるものです。そうでないところにおいては、もう前からやっているような方式であっても、そういうようなものはちょっとしたことでも大きくなってこれが反映してくるものです。私は今聞いていて、ある点では心配になってきているのは、そういうような点なんです。おそらく計画の策定はどこかでするでしょう。それと、実施はやはり林野庁の方で責任を持ってやるでしょう。そうなった場合には、今度それに協力する人がどういうような態度でやっておるのかということが、一番問題だと思います。計画も策定もおそらくはどこかでやられ、それを実施する場合には、労働組合との協議をどういうようにしてやっておるか。おそらく賃金の問題、それから時間の問題も当然あると思います。これは労働条件になりましょう。それから、労働災害の問題になる点もあるでしょう。それから、先ほど人一人死んだような問題さえも付随してあったでしょう。こういうような点を見ると、やはり協議は十分に尽くすべきだと思うのです。一方的に、これを業務命令なんかによって実施したりすることがないようにすべきだと思いますが、この労働組合との協議はどのようになっておりますか。
  307. 吉村清英

    吉村政府委員 確かに先生の御意見の通りでございまして、私どもも、そういう点につきまして十分に、組合と申しますか、職員に徹底をして参らなければならないと思っておるのでございます。この交渉を進めると申しすまか、話し合いを進めると申しますか、そういう段階におきましても、やはりお互いの信頼関係、これは職員だけの責めに帰するわけにはいかぬ点もあるかと思います。私どももやはり姿勢は十分に正して参らなければいかぬと思うのでございますが、組合側の協力も得まして、こういう交渉なり話し合いなりというものが、円滑に進められるように努力をいたして参らなければならないというように考えております。
  308. 島本虎三

    ○島本委員 今の意思を十分に下部にも徹底さして、そしてそれを実施するように心から要望しておきます。それが実施される場合には、私はもうすでに質問の要がございませんので、これでやめておきたいと思いますが、団交には誠意を持って当たること、それからもう一つは協議を決定しないままに一方的にあまり実施をし、こういうような労働災害を起こさないようにすること、こういうようなことが最も大事なことじゃないかと思うのです。しかし、これは普通のことなんです。今ごろ社会労働委員会の方へ来まして、誠意を持って団交をやらないなんて言ったら、さかさづりにあってもこれは世論の反撃を受けるでしょう。社会労働委員会の人は、そういうようなことについてはおそらく完膚なきまでに追及するでしょう。これはやはり誠意を持たない団交が行なわれていることがあればこそ、そういうようなことが出るのですが、ここはそれは通用しない。しかし賢明に、長官の方から誠意を持ってこれに当たるというお言葉でございますから、できるだけこれは両方とも誠意を持って団交で解決するようにして、こういうような問題に対してはあまりトラブルを起こさないようにしてもらいたい、こういうふうに重ねて私は要望しておきたいと思います。  それと今度は、一方的にこれを実施するようなことは極力避けてやってもらいたい、こういうふうに思います。労務ハンドブックを見たときに、ちょっとそれが心配なもので、今の点とあわせてこの点は強く要請しておきたいと思いますが、要請にこたえる所信を明らかにしてもらいたいと思います。
  309. 吉村清英

    吉村政府委員 私どもも、先生のお言葉のように、極力一方的に実施をするというようなことをいたしたくないわけでございます。従いまして、職員側の協力も得まして、私どもも大いにそういう点ではさらに改善をいたして参りたいと存じております。
  310. 島本虎三

    ○島本委員 では、私はこれで終わります。それで今の答弁ははっきり私も聞いておりますが、これを労働省の人たちも十分聞いてございますから、その点は、基準局長なんかも優秀な方でございますから、一つ今後ともこういうような点は十分監視して、再びここで同じようなことの指摘をされないように、お互いに有無相通じて進めておいてもらいたい、こういうふうに思うわけでございます。ことに全幹集材というのですか、こういうような方式の中には、えてして簡単なようでも中に含まれる重大な労働条件の問題がございます。労働条件の問題は、むろん賃金の問題にもからんでおります。賃金の問題がからみ、自分の生命にもかかわるような労働災害の問題があるとすると、こういうようなのは、幾ら話してもこれでいいというようなことはないはずなんです。一方的に実施しないようにするという長官の意思も十分わかりましたので、あわせてこの賃金の支払い形態については、今までの出来高でやったものを、やはり日給ですか、こういうようなものに変えていく方式なんかもはっきりしていいのじゃないかと思うわけです。忍もこういうような点を強く要請しておいてこれでやめたいと思いますが、これでよろしゅうございますかどうか、答弁によって、これで私、やめたいと思います。
  311. 吉村清英

    吉村政府委員 一方的にしないで済むように私どもも努力して参りたいということでございまして、確かに御指摘のように、労働条件に関する部分につきましては十分尽くさなければならないと思いますが、それがやはり十分に理解を得られないままに、事業そのものが確実にいいものだということがわかっていながら、なかなか進められないというような場合が、両方の理解が進められないままにある場合が間々あるのでございます。こういうことはないようにしなければならないのでございますが、そういう事態が時に起こり得ることを、私ども決していいことだとは存じておりませんが、申し上げておかなければならないと思うのでございます。
  312. 島本虎三

    ○島本委員 誠意ある団交によってこれを解決するんだ、この一点はいいですね。もう一回立っていいと言っておいて下さい。
  313. 吉村清英

    吉村政府委員 労働条件の問題につきましては、その通りでございます。
  314. 島本虎三

    ○島本委員 この監視を一切労働省にお願いをして、再びこの場所でこういうような事態が起こらないようにお願いして、これで私はやめたいと思います。なお、この事態が再び私の方に起こった場合には、もう一回全部来てもらって、本日の議事録を手元に取り寄せた上で、一つ一つ克明に追及していきたいと思います。こういうようなことのないように心から期待して、皆さんの御発展を祈って私はこれでやめます。
  315. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 八木一男君。
  316. 八木一男

    ○八木(一)委員 保険局長にお伺いいたします。先ほど労働大臣に御質問を申し上げたときに、同じく厚生大臣にも御質問申し上げる予定でございましたが、時間が少なくて、小山さんは頭のいい方ですから簡単にいきますから、簡単に満足のいくような御返事を願いたいと思います。  健康保険法、厚生年金法というような社会保障に関するものは、すべての人にそれが適用にならなければならないと思うわけです。社会保障制度審議会では、労働者と名のつく人は、雇用形態がどうであろうと、事業の規模がどうであろうと、事業の種類がどうであろうとも、労働者としての社会保険を適用する方がいいというような、勧告の中にそういうようなことを意思の表明をしているわけであります。そのような意味で、今農林漁業の方で健康保険法及び厚生年金法が適用によっていないことは、社会保障の中、特に労働者の社会保険の問題として非常に欠陥がある、急速にこういう欠陥を撤廃して、法的に健康保険法あるいは厚生年金法を適用しなければなりませんし、そのために健康保険法の第十三条一号、厚生年金法の第六条第一項第一号に、植物の栽植、栽培、採取もしくは伐採の事業というようなものを加えて、その道をどんどん確立していただきたいと思うわけです。これについての保険局長の概括的な御意見を承りたい。
  317. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ただいま先生が仰せになったような問題についての基本的な考え方は、先ほど労働大臣が申された通りでございます。特にそういった考慮は、私どもの分野で一そう必要かと思います。そういう意味におきまして、かねてから申し上げておりますように、ことし一年の間に医療保険制度については総ざらいでいろいろ問題を検討することにしておりますが、そのうち一つに、ただいまの問題はぜひとも登場させたいと思います。先ほどいろいろ先生が仰せになっておりましたように、この種の問題は入れないという立場から議論をしようとすれば、それは相当の議論もできます。しかし同時に、何とか入れようということで考えてみれば、オール・オア・ナッシングではない考え方をとりますれば、何らかの前進というものはあり得るはずでございます。特に医療保険については、いずれにしても国民の全部を被用者保険に入れるか、国民健康保険に入れるか、いずれかに包攝するという建前になっておるとしますれば、実態から見て被用者保険グループに入れる方がふさわしいということであれば、何らか方法を設けて技術的な解決をはかるということは当然だと思っております。ただ結論がどうなるかということについては、それは先生十分御承知通り、必ずしも簡単にここで申し上げかねると思いますけれども、少なくとも方向としてはそちらを目ざして進むつもりでございます。また、おそらく検討を進めていくうちにおきまして、ただいま先生が仰せになった厚生年金との関係、失業保険との関係が当然出て参ります。望ましい姿を言えば、これは三つが同じ適用範囲であるということが望ましいのでございます。しかし、なかなか、そういうことを言っておりましたのでは、どれも進まぬというふうな結果になっているのが過去の事実でございます。そうだとするならば、大体において範囲は同じにするという考え方をとりながらも、実態から見て、一歩でも進める方向へ持っていくのがまた必要なわけでございます。そういう考慮を加えるとすれば、やはり三つのうちでは、私どもの医療保険がまず少しでもそちらの方に進むという態勢でなければならぬと思うわけであります。繰り返し申し上げましたように、四月から労使を含めました社会保険審議会の部会でこの問題を検討いたしまして、今の見込みでは三十九年度に実施するという、その全般的な改正の中にこれを何とか盛り込むように考えていきたい。ただ内容は一つ検討の結果に待たしていただく、時期は少なくともそのときまでには勝負をつける、こういうことで進めて参ることに、現在すでにプログラムをきめておるのでございます。
  318. 八木一男

    ○八木(一)委員 適切な御答弁でけっこうだと思います。この問題は、ほんとうに進めようとするときに、厚生省の保険局なり、あるいは失業保険の関係では労働省職業安定局の方々なりが、労働者のことを思って、ほんとうに決意を持っていけばこれはできることであると信じます。確かに、今までいろいろな制定の過程で、役所の方がほんとうに誠意を持ってやるのだという決意を持って進めば必ず通るのです。その意味で、来年には必ずこの問題は実現するということで、もう一度強い決意を表明していただきたいと思います。
  319. 小山進次郎

    ○小山政府委員 申し上げることは全部申し上げたので、繰り返しになるわけでございますが、少なくともこの問題について、検討します、検討しますということで時期を遷延することはいたしません。これはどうしてもことし一ぱいに勝負をつけるつもりでございます。方向は、先ほど来先生仰せの通り方向考えていく。中身は、これは先生御承知通り、ここで一刀両断のもとにいくというふうにいく問題ではございません。着実に積み上げてやっていく、こういうことでいたしたいと思います。
  320. 八木一男

    ○八木(一)委員 そういうことで御努力願いたいと思って御質問をしたのですが、保険局長がおられて厚生大臣がおられないのは非常に残念ですけれども、厚生大臣にも後日、その点は御質問を申し上げますけれども、厚生大臣をりっぱに補佐されて、それが来年度に、完全に適用になることが具体化するように一つぜひお願いをしたいと思います。それとともに、現在そういう状態にないときに、日雇い労働者健康保険の擬制適用方法でもってわずかにカバーしている状態でございます。そういうものについても、それができるまでの間、労働者の医療保険が法的に適用されないで非常に苦闘をしておる方々のために、現在行政運用でも、できるならその点について外向きに、一年間持てるように最大限度の行政措置をして、医療保険の趣旨が通るようにされたいと思いますが、これについて……。
  321. 小山進次郎

    ○小山政府委員 私先ほどから申し上げていることは、決して独断で申し上げておるわけではありません。断定的に申し上げておることは、すべて大臣以下私、共通の問題で、さようお聞き取りいただきたいと思います。  それから、後ほどの適用の問題につきましては、私どもも、できるだけ実情の許す限りという気持は持っております。何分法律もありますことでありますので、必ずしも先生がおっしゃるような工合に——先生は、大体こういう場合には非常に強力な、勢いのいいことをおっしゃって、うっかりその通りいたしますと言うと、あのときに言ったことと違う、じゃないかということになりますので、気持はそういう気持で考えるということで御了承いただきたいと思います。
  322. 八木一男

    ○八木(一)委員 林野庁の長官にちょっとお伺いしたいと思います。  今、厚生年金の問題と健康保険の問題について、厚生省の方のお考えを伺ったわけですが、国有林の方では、常用雇用の人がほかに、定期就労者といいますか、それから月雇いというような雇用形態で働いている方々があるわけです。このような不安定な雇用形態自体が非常に不適当と思うわけでございますけれども、この問題を根本的に、全部常雇いにしていただきたいと思いますが、それが全部常雇いになるまでの間にも、そういう定期あるいは月雇いの方々に、諸社会保険が十分に適用になるようにしていただきたいと・思うわけです。その点で、厚生年金保険というよりは、こういう方々の場合には、常雇いの方々が共済組合の適用を受けておりますので、当然共済組合の方で適用を受けるように急速に進めていただきたいという状態があるわけですが、これについて林野庁のお考えをお聞きします。
  323. 日比野健児

    ○日比野説明員 常雇いと申しますか、常雇いにつきまして共済組合の方で進めろという趣旨の御質問でございますが、おそらく現在は、一年以上継続します場合に共済組合法に乗りかえることになっておりますので、あるいはもう少し早くやれという御趣旨でございましょうか、御質問の御趣旨がちょっとわかりかねるので、恐縮でございますが……。
  324. 八木一男

    ○八木(一)委員 そういう方々に——これは常用雇用に全部なることを一般雇用の方で進めると同時に、それになるまでの間でも、常雇雇用の方にやられるのでしょうから、共済組合法の適用を、そういう月雇いなり定期というような形態で呼ばれている方々にさしていただきたいということです。
  325. 日比野健児

    ○日比野説明員 共済組合の問題につきましては、御承知のように国家公務員共済組合法という法律がありまして、それに基づいて実施しておりますので、今すぐ、法改正をせずに、実行上のことでやるということは無理だということは先生もおわかりだと思いますが、あとは実態につきまして、その共済組合の建前と、それからあとの法律と申しますか社会保障制度と申しますか、そういうものとのからみ合いでどう処理するかということについては、今後十分検討していきたいというように考えております。
  326. 八木一男

    ○八木(一)委員 長官にもう一回お伺いしておきたいのですが、このような方々を常雇いの形態として扱うということがまず一番だし、それと同時に、共済組合法を適用して、共済組合法の年金等が適用になるということを急速に進めていただきたいと思うのです。その問題については、法改正を待たなければならない問題もありましょうし、行政的な解釈で最大限度でできる点もあろうと思いますが、どちらにいたしましても最大限度の努力をされて、問題を急速に進めていただくようにお願いしたいと思います。
  327. 吉村清英

    吉村政府委員 これは先ほど職員部長からお答えを申し上げたような次第でございまして、ただいまの共済組合法の建前からいたしましては、常用作業員でございませんと適用にならないのでございます。他の方法と申しますか、行政措置によってできますような方法がほかに何かございますようでしたら、また私ども検討をいたしたいと存じますが、ただいまのところでは、私どもとしてはそういうものも承知をいたしておらないわけでございますので、結論といたしましては、やはり雇用の安定化の方向へ極力進めて参るということになるかと考えます。
  328. 八木一男

    ○八木(一)委員 もちろん、そういう方を常用の扱いをするということが一番本筋だと思います。そのほかに、そういうことについて法的に、行政的に検討せられて、そういう共済組合の年金が適用になるように御努力を願いたいと思います。  それから、それより低い次元の問題として、共済組合法の適用を受ければ医療保障関係も解決がつくわけでございますが、現在健康保険法の適用を受け、あるいはまた後に国民健康保険法の適用を受けているというふうに、何と言いますか、月雇いの人や定期の人が両方互いに違いになるというような状況があるわけであります。それについてどのような状態にあるか、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  329. 日比野健児

    ○日比野説明員 今の御質問の意味をとりかねましたので、恐縮ですが、もう一度お願いします。
  330. 八木一男

    ○八木(一)委員 現在共済組合法が完全に適用されれば問題は解決するのですが、それまでの時点の問題として、月雇いの人や定期の人が健康保険法の適用をその時間は受けて、それが切れると国民健康保険になるというような問題があるのではないかと思うのですが、そういう状態があるかどうか。
  331. 岩田松太郎

    ○岩田説明員 私からかわりましてお答え申し上げますが、そういうような場合には、現在健康保険法とか厚生年金保険法とか日雇労働者健康保険法等の制度がある以上、そういうものでやらざるを得ないわけでございますが、御指摘のように、そういう面においては必ずしも十分と言い得るかというと、私どもも、まだまだそういう点整理を要すべきものは制度的にもあると考えております。何分にも現行制度のもとにおいては、国民健康保険で扱うほかないわけであります。その点御了承願いたいと思います。
  332. 八木一男

    ○八木(一)委員 いいか悪いかでなく、私もはっきり知りませんので、ちょっと教えていただこうと思って質問したのであります。健康保険法が強制適用になっていて、それから月雇いの人が健康保険法を継続の手続をしなければ、切れて国民健康保険になるようになっていると思っておりますが、そうではないのですか。
  333. 岩田松太郎

    ○岩田説明員 雇用期間以外の期間になりますと、これは国民健康保険に移るわけでございます。
  334. 八木一男

    ○八木(一)委員 それで健康保険の適用を受けようとすると、任意継続をしなければならないということになるわけですね、そうですね。そこで長官、その問題なのですが、健康保険法の適用を受けて、それからその健康保険法の適用をずっと受けようとすると、月雇いからはずれたときに普通なら国民健康保険になってしまう。だから任意継続制度をとって、それぞれ本人分とそれから使用主分とを払って継続しているということが行なわれておるわけです。これは定期や月雇いと言われても、林野庁長官も御承知通り、また国有林の林野庁の仕事をされるわけです。そうした問題がありますので、さっきのように雇用の問題や共済組合法の問題で根本的な解決ができれば、この問題は解決できるわけでございますが、その間に任意継続というものについて使用主分と労働者分の両方を払って、それが続けばまた健康保険になる、また国民健康保険になる、そういうようなジグザグみたいな調子になっておるのを、これを林野庁の方で、この問題について使用主分の保険料を負担し続けて労働者に健康保険が適用になる、そのようなことを御配慮願いたいと思います。
  335. 吉村清英

    吉村政府委員 雇用期間外に使用主分の負担を国が負担いたしますということにつきましては、私どもも、にわかにけっこうでございましょうということを申し上げかねるわけでございます。しかしながら、こういった制度上の問題からそういうような複雑な扱いになって参りまする問題につきましては、今後私どももさらに検討をいたして参りたいと思います。
  336. 八木一男

    ○八木(一)委員 直ちにぴたっとそうお答えになれる問題ではないと思います。しかし、第一に、継続雇用の問題として解決をする。身分をちゃんとするという問題。それから共済組合法の問題で解決する。それから今の任意継続の場合に、その期間分を使用主としての林野庁の方で納める。現実に今の低い次元の問題ですけれども、どれにしても、この問題を解決するために積極的に取り組んで御努力を願いたいと思います。御努力願うという点について、もう一回御答弁願いたい。
  337. 吉村清英

    吉村政府委員 十分に、慎重に検討いたしたいと思います。
  338. 八木一男

    ○八木(一)委員 慎重に検討はもちろんあれですけれども、慎重でおそくて、いつまでたっても解決つかなければ何にもならない。十分前向きに熱心に御検討になられるお気持だろうと思いますが、前向きに熱心に御検討になるという御答弁をいただきたい。
  339. 吉村清英

    吉村政府委員 この問題は事業全般の問題、また雇用全般の問題にも関連をいたしまして、非常に広範な、複雑な問題でございます。しかしながら、この職員の勤務状態と申しますか、労働条件を改善いたして参る方向に私どもも進んで参らなければならぬということは、申すまでもないことでございまして、そういう問題を含めまして、大いに努力をいたしたいと存じます。
  340. 八木一男

    ○八木(一)委員 基準局長にお伺いをいたしたいと思います。  先ほどの労働時間や休憩、休日、それから年次有給休暇等の問題ですね。労基法第四十一条第一号の問題ですが、こういう問題が適用除外になっておるために、非常に長時間労働が強要されるというような状況でございます。先ほど労働大臣に申し上げるときには時間が足りなくて申し上げませんでしたけれども、この基準法の四十一条の問題が一番根本になって、それがほかの問題の不適用の問題にも、考え方としてつながっているのではないかと私ども考えるわけです。この問題を至急に解決していただくことが、山林労働者の問題を解決する非常に大きなかぎではないか。今、山林労働者の人々は、そういう条件が非常に悪いためにどんどん減ってきておる。今なお減っておるわけです。そうして残っておる人は、老齢労働者が残っておるというようなことになって、ほんとうに何といいますか、住宅問題が非常に大事であって、そのための材木を出すことが非常に急速に要請されておる。また、そのための資源を確保するために、植樹その他が完全に行なわれなければならない。それで台風等のときに洪水になったりしないように、木材資源が永久に日本に残って、永久にその木材が活用できるようにするために非常に大事な問題になっておるわけです。そこで、そのことをほんとうにしっかりやる労働者が、あまりにすべての問題が悪いためにどんどん都会に流れ出る、それがとまらないで、どんどん流れ出る。残っておる人は中高年令層だけになる。その方はだんだん年をとってきますから、非常にゆゆしき問題になるわけです。今も、いろいろな雇用の問題で、方々で若い労働者が確保できないということで頭をひねっておられるところがたくさんあるわけでございますが、都会のそばにないので、気がつかれないでほうっておかれがちでございますが、ほんとうに大事な資源の開発、この資源の保存という点で非常に大事な問題について、基準法のこの問題がネックになっておるわけです。先ほど労働大臣が御決意を表明されましたけれども、その問題の実際的な担当者である基準局長から、急速にこの問題を解決されるために最善の努力を——ごく近い機会にそれが実現をされるというふうになっていく必要があろうと思いますが、それについての基準局長のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  341. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま八木先生御指摘のように、新しい山林労働力の不足、また林業における災害率がきわめて高い、こういった問題は、私どもとしても非常に痛心いたしておるところであります。山林労働における労務管理の近代化、時間の問題にいたしましても、賃金の問題にいたしましても、安全の問題にいたしましても、あるいは福利施設の問題にいたしましても、やはり労務管理全般を急速に近代化し、改善し、労働条件を向上していくということは、私は現下の必要喫緊の要務だろうと考えます。先ほど来、労働時間の問題についてもお話がございました。ことに災害の見地からいたしまして、全産業の災害の千人率をとってみましても、全産業の平均で大体二三くらいのところですが、山林業は大体七三、四という非常に高率の災害です。そういった関係から、私は、法律の改正の検討もさることながら、当面行政指導といたしましても、災害防止の見地から、労働時間を適正化していく、こういった努力をやはり林業全般について進めていくべきじゃないか、かように考えております。今後とも山林労働労務管理の近代化につきまして、懸命の努力をいたしたいと思います。
  342. 八木一男

    ○八木(一)委員 いろいろいいことを言われたわけでございますが、労基法の第四十一条の第一号の適用の除外をやめるということについて、渾身の努力をせられるという御決意をもう一回お伺いしたいと思います。
  343. 大島靖

    ○大島政府委員 先ほど大臣からも、そういった問題について検討すべきであると御答弁申し上げたわけであります。かねがね、八木先生が労働問題を論じられます場合に、長期的な観点から物事をお取り上げになって、この点につきましては私どもも日ごろから感銘いたしておるわけであります。法律は固定し現実は流動するという言葉がありますが、私は、行政というものは、常に、固定する法律と流動する現実との間の調和をいかにしてはかっていくか、ここに行政の苦心が存するものと考えております。従って、そういった意味で、私ども行政の担当者といたしましては、流動する現実というものを常に注視いたしまして法規との調和をはかる一それは法規の改正の検討もありましょうし、また現実の行政措置の問題もありましょうし、全般として、先ほど申しましたような労務管理の近代化の方向へ持っていきますように努力をいたしたいと思います。
  344. 八木一男

    ○八木(一)委員 非常によいことを言われているようですが、何かこっちの申し上げることをずばりとお答えにならないので、その点少し不満足なんです。先ほど言ったように、適用の除外をなくするよう最善の努力を急速にしていただきたいと思いますが、そういう御努力をなさっていただけるものと思いますが、これについて端的にずばりと一つ
  345. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま申しましたように、できるだけの努力をいたしたいと思います。ただ、法律の改正、検討と申しますと、非常に時間もかかりますし、詳細な調査も必要でありますので、それを待っているということではなしに、やはり行政措置として現実に積み上げていく努力を続けていきたい、かように考えている次第であります。
  346. 八木一男

    ○八木(一)委員 くどいようですが、もう一回。法律改正についてもできるだけ早く検討されるよう努力をされる、行政的にもそのような努力をせられるということであろうと思いますが、それでよろしゅうございますか。  先ほど労災の問題について言われましたけれども労働災害をなくすことがまず第一に必要でありますが、不幸にして災害にあった人の補償の問題であります。遺族補償というような補償の問題で、平均賃金が、現実に補償がどのくらいになるかということに大きな関係があるわけであります。先ほど労働大臣が御答弁になって、平均賃金の問題で、第十二条一項から六項でやるべき問題である、それでできるのに、第八項を適用して主務大臣労働省が勝手にきめてしまう、そういうことはよくないと言われました。その通りにやっていただかなければならない。一項から六項を適用できるものは、それで算定するということをやっていただかなければならないと思います。ところで、残念ながらそれと反対の方向の通達が出ているわけです。これは昭和三十一年六月七日に出ている通達であります。基発第三六九号、労働省労働基準局長から各都道府県労働基準局長殿ということで、「請負給制によって雇用される漁業及び林業労働者の平均賃金について」という通達が出ております。平均賃金の算定にあたり、困難な場合が多いので、昭和二十四年労働省告示第五号第二条に基づき次の通り定めるというふうにあって、いろいろなことが書いてあります。第十二条第一項−第六項によらないでそれをやれというような内容の通達であります。これは先ほど労働大臣の言われたことと相反していることでございます。賢明な基準局長は当然適当でないとお考えになると思いますが、こういうような通達が生きていて第一項から第六項でやることが行なわれなくなりますと困るので、こういう通達はお取り消しになるか、あるいは第一項から第六項を活用してやるべしというような通達を出していただく必要があると思いますが、それについての局長のお考え伺いたい。
  347. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま八木先生御指摘の、林業における請負制の場合の平均賃金の算定につきまして、基準法十二条一項から六項によらず八項によって処理をいたす、この点、趣旨は、山林労働の請負賃金というものは時期によって変動が非常に激しい、それから、協約によらない現物給与、これが除外されますものですから、そういうふうな協約によらない現物給与が相当多くある、こういった事情からいたしまして、平均的な賃金算定としては、一項から六項によるのはちょっと不適当であろうという見地から、昭和二十七年から第八項によることにいたしたわけでございます。八項によりまして、労働者の過半数を代表する者と経営者との間に書面の協定をいたしまして、それを基準局長に届け出まして、これによって平均賃金を算定する、こういう手続にいたしわけであります。その趣旨といたしまする点は、今申しましたように山林労働者の通常の平均的な収入を算定するには適当なものがない、むしろこうした方がよかろうじゃないかという趣旨であったのであります。その後事情もかなり変わって参ったようであります。本日また八木先生からそういう御指摘もございますので、この際一つ実情をよく調べてみまして、私どもの方でも早急に再検討いたしたい、かように考えております。
  348. 八木一男

    ○八木(一)委員 この問題については、私はこういう通牒は即時やめていただかなければならないと思いますが、その方向一つ検討していただきたいと思います。あしたその関係者の方と基準局長がお会いになるお約束があるようで、私もそれを存じておりますので、十分にそういう方々の御意見を聞かれて、通牒ですから基準局長が決心なさればすぐ別な通牒を出せるわけですから、その意味で一項−六項が活用されて、労働者が不当な損をしないようにしていただきたいと思います。現に、ほんとうの意味の一項−六項で勘定されるべき平均賃金と、そうでない状態で勘定された平均賃金は、私どもの知っている範囲では猛烈に違う。八百円と六百円ぐらい違う。そういう不幸な労災にあった人がこれだけの補償が受けられないという実情にありますので、今収入が不安定だというふうに言われましたけれども賃金が不安定な状態では生活ができませんので、労働者としては不安定でないようないろいろの労働運動をして、同じように季節的にそんなに変動のないような賃金が得られるようになっておりますから、このような事態とは断じて状況が違っておるわけです。そういう点で、ぜひこれを至急に取り払っていただきたいと思います。あしたお会いになるとき、十分お話を聞かれて、そのときに取り払うということをおっしゃっていただきたいと思うわけであります。今晩一晩お考え下さってけっこうですけれども、ぜひ労働大臣の言われた線に従って、あしたはそういう通牒を改めてやるというような御返事がいただけるように、今晩は前向きに一つ御検討願いたいと思います。この問題は、あしたこういう通牒の趣旨を撤廃して、一項から六項をやっていただけるという確認の上に立って、この問題はこれ以上はやめておきます。今の問題についての悪い点はまだあるわけです。現在ではたとえば労働者の過半数の代表者との間に締結するものであるということになっておりますけれども、つうつうの労働者を代表として認めてしまって、それで平均賃金が上がるような操作をされる、あるいは役所側が、この辺がということを最初に裏で示して根回しをしておいて、それでそういうふうにしてしまうというような傾向も多分に方々で現われております。そういうようなことで、気の毒な災害にあった人の補償が、実際より非常に少ないということではいけないことだと思います。賢明な労働基準局長が、あしたこういうものを撤廃するということをぜひ言えるように、今晩前向きにお考えをいただきたいと思います。  それからその次に、失業保険の問題について職安局長にお伺いをいたしたいと思います。先ほど、失業保険を適用するという問題について、労働大臣から適用する方向に最大の努力をするという御答弁があったわけですが、職安局長は実際にその問題を推進される責任者でありますので、ほんとうに本腰を入れて、急速に取っ組んでいただきたいと思います。先ほどの厚生省関係の健康保険、厚生年金の方も、あのように積極的に取っ組むような状態であります。労働省は、失業保険の問題について、健康保険や何かに負けないように、先に早く適用になるように、一つ職安局長から、そういう努力をされるということについての決意を表明していただきたいと思います。
  349. 三治重信

    三治政府委員 林業の労働者の失業保険の関係につきましては、先ほど保険局長さんがお答えになりましたのと若干事情が違いまして、いわゆる季節労働ということで、何と申しますか、季節的な労働である場合には、基準として失業保険の力を強制適用にするというのは、非常にむずかしい問題が理論的にあると思う。たとえば、保険ですから、完全に全員が全部毎年同じだけ失業するということはとうてい考えられないということになるわけですが、しかし、今度のわれわれの改正で、日雇い失業保険の方の制度として、何と申しますか、季節的にずっと働いておられて、そして一定の時期に全般的に失業がなくなるというような特例措置を、そういう方面で別個に考えるというようにいたしたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、林業関係労働者の問題につきまして、先ほど来先生の御発言で非常に筋肉労働が近代化しておるというわけでありますから、その実態が常用化され、近代化されていけばわれわれの方も非常に楽なんで、その点は、実態を見ながらでもできるだけ適用していくように努力していきたいというふうに考えております。
  350. 八木一男

    ○八木(一)委員 今、失業保険の問題について取っ組むようなお考えで、その点はいいのですが、もっと積極的にぜひ取っ組んでいただきたいと思うのです。ほんとうに適用されるお気持であれば、私どももそのお気持がわかるはずなんですが、そうとは思えないような事情がございます。それは昨年、農林水産業に対する失業保険の適用についていろいろな処置をとられたわけでありますが、その問題で、これは失業保険課長の名前の通達があります。各都道府県失業保険主管部長殿ということで、「農林水産業に対する失業保険の適用について」という通達であります。番号は失保発第三三号、昭和三十三年三月二十六日という日付になっております。そこで、失業保険をやりたいという認可申請が行なわれた場合のことで、ハの二号ですが、「当該団体から事務組合の認可申請が行なわれた場合であっても、当分の間は認可を見合わせること。」というような通達があります。その次に、五のロのところに「農林水産業に対する今回の措置は、あえて広報宣伝をする必要はないが、」ということが書いてあります。この制度は、根本的に農林水産業に対して適用しなければならない方向に従って、行政的に不十分な形で失業保険の適用を拡大するというような措置がとられたはずでございますが、申請があってもなるべく認可をしないこととか、それから、あえて広報宣伝する必要がないがというような、やったように見せかけてほんとうはやりたくない、ほんとうはしないのだというような内容の通達が来ているわけです。失業保険課長の名前でございますが、失業保険課長おられますか。
  351. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 はい。
  352. 八木一男

    ○八木(一)委員 一体、どういうわけでこういうことを出されたのですか。
  353. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 前半の、事務組合としての認可の申請があった場合、それを当分の間は認可をなるべくしないこと、たしかそういう表現だったと思います。それは、実は五人未満の適用対策として、事務組合制度が三十三年の法改正で設けられました。実は農林水産業の任意適用を行なう場合に、事務組合制度というものは、当初全然予定しておりませんでした。しかし、特にこれは農業の関係でございますが、雇用労働者、一農家一人、二人というところがございます。そういう単位で適用しようとしても、離職率五〇%、そういう数字を出しております。そうすると、離職率五〇%が基準とされておりましたので、農業協同組合あるいは森林組合であるとか漁業協同組合であるとか、そういう単位ごとにその離職率の五〇%、この基準をはじいてもよろしい。そこで、個々の農家なり、割合に零細経営の漁家なり、あるいは林業経営者、こういうところで事務処理能力がない場合は、事務処理を森林組合なりその他の協同組合組織でやっていただく。実を申しますと、現行法の附則何条でしたか、ちょっと記憶しておりませんが、事務組合ができまして、そこで保険料を、年間を通じまして九五%以上納めた場合は報奨金を出すことになっております。これは予算の範囲内と書いてあります。そこで、すでに林業、農、漁業の任意適用を団体を通じてやるときには、報奨金予算はきまっておるわけであります。その予算のワクがございましたために、事務組合ということは、認可といわれましても、認可したら報奨金を出さなければならぬという問題にもなって参ります。そういう関係で、実質的な形からいうと事務組合に準ずるものでございます。そこで、それに準ずる、事実は準ずるものであるけれども、報奨金は予算上ないし、出しようがないので、認可しない方が適当ではなかろうか。もう一つの問題も、実はそれに関連いたしております。予算措置の面がございますので、昨年といいますか、三十七年度で農林水産の適用に踏み切るということを積極的に検討いたしました。しかし、安定所の業務量は、季節的にどっと出て参るということもございます。そういった面、いろいろ——それから今の事務組合に対する報奨金、そこで、それぞれ林業にいたしましても、農業にいたしましても、漁業にいたしましても全国組織をお持ちになり、そういうところからいろいろお話もございます。そういうところを通じて本省が下へおろしていく、そういう線で私どもがやることにいたしまして、地方ごとになりますと、いろいろ初めての制度で誤解を生ずるおそれもある。打ち合わせは何べんもやりましたけれども、本省段階でできるだけやるから、地方段階では少ない職員を、たとえば山奥に行ってもらうということを私どもの方ではあまり強制するわけにいかぬ、そこのところが後段の方の理由でございます。非常に誤解されるような表現になっておりまして、その点につきましては申しわけありません。
  354. 八木一男

    ○八木(一)委員 三治さんにお伺いしますが、今聞いていられて、保険課長は非常に苦しい御答弁をなさっておる。事実、なさっておられて筋が通らないことは、保険課長もそう思っておられると思います。局長もそう思われると思う。こういうものは、とにかくそういう制度ができたら、やはりそういう関係者にみな知らして、こっちの人が適用になったらこっちの人も適用になるというようにしなければいけませんし、事務組合という制度があるのに、それを認可する制度になっているのに認可をしませんというようなことは、ほんとうにおかしなことだと思います。この通達は課長の通達になっていますが、課長からでもけっこうです、局長からでもけっこうですが、即刻こういう通達を直して、取り消していただきたいと思うのです。それについての局長のお考え伺いたい。
  355. 三治重信

    三治政府委員 それは昨年初めてやり始めたとき、今課長が言いましたように、第一線が非常に、何と申しますか、うちの組合もなかなか地方は強いので、予算もないのにこれだけの仕事をというふうなことを言われないための配慮だと思います。われわれの方も、そういうのをいつまでも続ける気持はありません。最初はできるだけ慎重に、しかしそれが軌道に乗れば、順次、そういうことをいつまでも続けるつもりはありませんので、三十八年度からはそういうことがなくなるように、事務的に第一線の業務が過重にならないように配慮をしながら処理方針を出すつもりであります。
  356. 八木一男

    ○八木(一)委員 いつごろ出していただけますか。
  357. 三治重信

    三治政府委員 国会の都合もございますが、われわれの方も失業保険法改正の案も出ておりますし、国会の関係が終了すれば、至急地方も集めましてやりますから、その点はできるだけ早くやりたい、こういうふうに考えております。
  358. 八木一男

    ○八木(一)委員 できるだけ早くというよりは、この間違った通達を取り消すのだったら、事務的ないろいろなことがあっても一週間もあれば十分間に合うと思いますが、来週のきょうぐらいまでに取り消しの通達を出していただきたい。
  359. 三治重信

    三治政府委員 それは初めのときの問題でございまして、今からすぐ、来週直してその促進をやるとかなんとかいっても、地方もわれわれの方も、仕事々々の年度の区切りがございますので、その点はやはり全体の失業保険の運営の問題として、去年は初めこうやったけれども、今後はこうやるのだ、ほかのものもこれに対処して全体としてこうやるのだ、こういうことでいきませんと、地方で受けても紙切れだと思われてもまずいですから、その点は一つおまかせ願って、業務の通達は新年度なるたけ早く一括してやりたい、その方が地方の仕事のあんばいもいいわけですから、それだけは御猶予願いたいと思います。
  360. 八木一男

    ○八木(一)委員 新年度の四月一日から間に合うように処理していただけるわけですね。
  361. 三治重信

    三治政府委員 その点は、われわれの方としては失業保険法改正を出しておるわけですから、法の改正が施行できるような国会の審議の状況を見、それからその状況と合わして一貫してやりたいというふうに考えております。
  362. 八木一男

    ○八木(一)委員 大体けっこうですが、失業保険法が早く成立すれば、それと一緒にした方が体裁がいいというお話だろうと思います。失業保険法が成立すればいいけれども、早く成立しないで少しずれる場合もありますから、少なくとも新年度に間に合うようにしなければ、各府県庁の方も新年度からどうやるという計画もおありになると思いますから、失業保険法がそれまでに間に合えば一緒でもかまわないけれども、間に合わない場合もあるのでありますから、新年度に間に合うようにぜひ通達を出していただきたい、それだけお約束いただきたいと思います。
  363. 三治重信

    三治政府委員 重ねてのそういう御意見でございますが、それを今、課長通達でやったから、特別に地方で押えているということでもないわけなんでありまして、その点、われわれの方としても失業保険の画期的な改善、改正をやっておりますので、それを見て全体としてあわせてやりたいということでございますので、そういう方法でおまかせ願いたいと考えております。
  364. 八木一男

    ○八木(一)委員 何回もこの問題だけであれですが、結局失業保険法が通ったときにいろいろな通達を出すときに、必ずこれをやめる通達を出すということですか。どうしても、そういうことだったらわからないでもないけれども、間違ったことを広報宣伝しないとか事務組合を認めないとか、間違ったことがそのまま残っているということはよくないと思う。ですから、そういうような時期というよりは、できるだけ早い方がいいと思うのですが、とにかくもっと早く出していただくようにしていただきたいと思うのです。少なくとも失業保険法のときに出されなければ、私どもとしては納得がいきませんので、それまでにできるだけ早い機会に出す、そのときには必ず出すというふうにもう一回おっしゃっていただきたい。
  365. 三治重信

    三治政府委員 こういういろいろの昨年度始めました場合のものも、今度の法の改正は、失業保険全般の運営ややり方の態度というものを、やはりよく集めて地方に徹底しないとまずいわけなんです。その点一つ時期を選んで——早くとおっしゃいますけれども、今からそう長く時間がかかるとはわれわれも思いませんし、失業保険の施行上の問題につきましては、まだ新制度との関連もあり、いろいろ適用の問題もあります。それを申し上げますのは、実は山林労働者関係につきましては、先日どなたからか御質問がありました日雇い保険の改正の特例のもので、相当そういう季節的な労働者に対する対策のやり方の思想も、今度の改正案で入れているわけであります。それから、今の通牒でやっている適用のものとのかみ合わせの問題もあるわけであります。私の個人的な考えから申し上げますと、先生のおっしゃる間違っているのはすぐやめたらいいということだけれども、これは私の方も消極的なもので、完全にプラスとマイナスというわけではないわけなので、その点はもう少し新法との関連——もちろん新法が通らぬ、国会が終わっても通らぬということになれば、業務全体の現行法の改善を必ず出します。それから新法が通れば、そういう季節的な労務関係、日雇い的な労務関係、それから通牒の関連の問題も、私としては考えているわけであります。それを両方、今度は今やって一生懸命宣伝させ、加入させ、適用させる、それから日雇いのものについては、今後はこういうふうな適用の問題もあるというふうなことをやりますと、非常に第一線は混乱すると言っては大げさかもしれないけれども、やはり本省はそのときそのとき思いつきのものを持ってくる、こういうことは今までもよく言われることなんです。やはり基本的な運営の態度、やり方というものを、この新法との関連で、今の季節的労務につきましては日雇い労務との関連も私は考えておりますので、そういうものとあわせて説明してやりたいというふうな気持でございますので、しばらく猶予をお願いしたいと思います。
  366. 八木一男

    ○八木(一)委員 それから現在の運用で五〇%というのが非常に問題になっている、失業保険の何か経理的な会計上でそういうことがなされていると思いますが、ほんとうの失業保険の目的というものは、失業者に対する失業補償をすることが目的であります。そういうふうなたくさんな失業の状態が出るときには、たくさん出すことがあたりまえであるけれども、経理の問題だけでそういうことをされるとなると、一番大切な失業保険本来の趣旨が、そこで薄れてしまうということになろうと思います。そういう五〇%ということではなしに、失業保険の適用を要望されるところには、今の方式による適用もどんどんされるようにしていただかなければならぬと思いますが、これについて伺いたいと思います。
  367. 三治重信

    三治政府委員 これは各界どこでもそうなんですが、季節労働でたとえば半年働いて半年その労務がなくなる、また九ヵ月やってあと三ヵ月休む、そういう方たちと一般の保険で全部やるとなりますと、保険ですから、そこに非常に見えざる、予想せざる危険負担に対してやる。もちろんそれは、一つの地域において一つ産業が急に衰退すると、そこから何万という非常な失業者が出る。これに失業保険をやるわけにはいかない。これは予想せざる失業者がたくさん出る季節労働につきましては、先生も御存じのように毎年同じようなことになる。現在も、われわれの方の五〇%の制限でも、これで保険料に対して八倍か十倍になる。しかし、これがはっきり予見される毎年の失業ということになりますと、今度は理論的に言いますと失業保険の改正になる。われわれは、予見せざる失業に対して保険を制限するということではありませんけれども、はっきり何月から何月まで、これだけの被保険者は全員こうだというのを毎年繰り返すということは、やはり保険経済上からいっても、また一般のそういうことでない被保険者からいっても、非常に問題があろうかと思います。そして現在一つもそういうことをやっていないのか、こう言われると、現在でもそういうふうな毎年繰り返されているグループが相当あるわけですが、しかしこの問題につきましては、今度の改正案につきまして、職業安定審議会においてもこういう問題についてさらに検討し、そういう保険に全然乗らないという問題は別個の処理でしっかりやるべきだ、またそういう問題についての実態を十分把握するような資料を整備すべきだ、こういうふうに言われておるわけです。この問題につきましても、やはり現在の手作業の業務からいきますれば、そういう何が毎年繰り返される季節労務かということについての資料が、常識では出ておりますが、あるいはどこまでの範囲がどうという問題については、理論的に、また実際問題としてなかなか出ない問題があるわけです。これは今度、四十年度から電子計算機を入れて、被保険者の継続関係を被保険期間の通算制度をやっていけば、そういう問題も合理的に解決する資料が出てくると思います。いずれにいたしましても、農林漁業の関係につきますこの問題で利用してほしいということになって、われわれの聞きましたのも、結局、季節的な労働ではあるけれども、失業保険でできるだけ救済をしたいということであります。これが全員ということになりますと、これは保険でなくなる。その点も、われわれの方として半分制限しているのであります。それを全員毎年ということになりますと、失業保険制度の根本の問題になりますので、その点は一つわれわれも、今後ともいろいろの実態を研究していきたいと思いますが、今直ちにこれを変えるというまでには資料は集まっていないわけであります。
  368. 八木一男

    ○八木(一)委員 あくまでも失業保険を保険と見ておられるから、そういうことになろうと思います。憲法の二十五条は、国民に健康で文化的な生活を保障して、社会保障をやらなければならぬというふうに書いてある。社会保険とは違うわけです。ところが、日本の社会保障が、残念ながら社会保険という形でそういう方法をとられたわけであって、憲法の条章によるほんとうの社会保障をしなければならないということは、厳然としてあるわけです。ところが、保険学者によって、保険だからこう、保険だからこうというようなことで、特にそういう保障が必要な人にいかないシステムで運用されている点が、根本的に間違いだと思います。これは失業保険のみでなしに、ほかの社会保険にも共通して言える点だと思います。失業保険というようなことではなしに、失業手当というような問題で、直接保険料とバランスを考えずに出されるような方法を、政府として、労働省として当然積極的に考えられる必要があろうと思いますが、そういう問題はまだ考えられていない時期においても、そういうことも配慮して、保険理論のみでなしに、ほんとうに必要な人に失業補償をするという観点に立って、ものを進めていただく必要があろうかと思うわけです。その問題については、また後日十分にいろいろと御質問申し上げたいと思いますが、今度はしぼって、全体の問題じゃなしに、山林労働者の問題でこの問題をちょっと御質問いたしたいと思います。  今のたとえば五〇%という問題の中には、職種によっていろいろの御配慮があろうと思う。山林労働者の場合には、そういういろいろの御配慮、いろいろな心配があられる問題はないのです。三治さん、これは十分御承知だろうと思いますが、そういう問題はございません。ことに国有林の方の労働者の諸君の、今言った定期あるいは月雇いという方々は、失業保険法の強制適用を受けておるわけです。その方々はやはり山林の同じ業態でやっておられるわけで、国有林か民有林の違いだけでございますから、そちらの方は、その季節五〇%どころじゃなく、非常にたくさん失業が出るわけです。そういうところに、一方は、失業保険法が強制適用されておってこういう方法適用するときに、片方では、五〇ということで制約されておるという点について、同じ山で働きながら非常にバランスを失しているというような問題もあり、失業中にほかの仕事がありながら何とかという御心配があろうと思いますが、山林の労働者の方々の場合には、ほかの仕事をするというような状況はございません。そういうような、特別に考えなければならない問題がたくさんありますので、このような五〇%というものに固着しないでこの適用考えていただくことが、非常に肝要ではないかと思うわけでございます。そういう問題について、これも、その関係の深い方々と職安局長とあしたお話し合いの場があるようでございます。そこで十分にその方々の希望、要請を聞かれて、そういう問題なしに十分失業保険法適用されるように御推進願いたいと思うわけです。どうかそういう点で御努力をいただけるというような御返事を賜わりたいと思います。
  369. 三治重信

    三治政府委員 林野庁の関係のは、失業保険の方でやっていないわけであります。政府退職手当法の関係適用になっております。それで政府退職手当法のときに、結局、退職手当の額が失業保険の金額に満たない場合にはそれまでをやるということで、間接的に援用されていると言っていいのじゃないか。従って、この方は、政府が自分の財源で退職手当にかわるものとしてやるというふうな姿勢になっておるわけであります。この点、われわれの方の保険経済としてやる部面とは、やり方が非常に違っております。ただ、先生の御指摘のように、林野庁のそういう労務者については冬季間なり休むときのいろいろの手当が出るが、民間の方はそうでもないという労働者側についてのアンバランスはあるわけでございます。この点については、今後ともわれわれの方としても十分研究をしていきたい、かように考えております。
  370. 八木一男

    ○八木(一)委員 まだまだ詰めて御質問したいのですが、時間もだいぶたちましたし、私もきょうはくたびれておりまして、いつものような大きな声が出ないので——大きな声を出そうと思ったら出せますけれども、それはやめまして、とにかくあしたの話で、十分その要請を聞いて善処していただきたいと思います。それとともに、もとに戻りまして、強制的なこういうやり方ではなしに、根本的に失業保険を山林労働者適用するという道を、ぜひ法的にも行政的にも考えていただきたい。日雇い失業保険等につきましても、根本的な一般の失業保険という問題について、山林労働者の方々から切々としたいろいろな御要望が出ると思いますが、それをあしたの会談において十分に聞き取られまして、それが前進するように御努力を願いたいと思います。労働大臣もこの点について、せっかく前向きで熱心に検討されることをお約束して下さいましたので、その実際の焦点である職安局長から、この点について一つ御努力になるという御答弁をいただきましたならば、これで終わりたいと思います。
  371. 三治重信

    三治政府委員 雇用関係が継続されて近代化されてくれば、当然そういういろいろの問題はなくなってくるわけであります。時代の進歩とともに、われわれの方も、社会保険の方も適用しやすいようになるわけであります。その点は、実態を見ながら、また現実に合うように運用できるようにやっていきたいと思います。せっかく努力していきたいというように考えます。
  372. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明十三日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後七時五十六分散会