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1963-02-21 第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十一日(木曜日)    午後一時五十一分開議  出席委員    委員長 秋田大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齊藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君 理事 小林  進君       井村 重雄君    浦野 幸男君       中野 四郎君    中山 マサ君       松山千惠子君    田中織之進君       田原 春次君    滝井 義高君       楢崎弥之助君    八木 一男君       湯山  勇君    吉村 吉雄君       井堀 繁男君    本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 西村 英一君         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         総理府総務長官 徳安 實藏君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君         法務事務官         (人権擁護局         長)      稲川 竜雄君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         農林政務次官  津島 文治君         農林事務官         (農政局長)  斎藤  誠君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         総理府事務官         (同和対策審議         会事務局長)  江守堅太郎君         法務事務官         (人権擁護局調         査課長)    池田 保之君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    佐竹  浩君         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         文部事務官         (初等中等教育         局財務局長)  岩間英太郎君         文部事務官         (社会教育局社         会教育課長)  福原 匡彦君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部振興課長) 橋本 徳男君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  和田 勝美君         建設事務官         (住宅局宅地開         発課長)    大塩洋一郎君         自治事務官         (財政局財政課         長)      茨木  広君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月二十一日  委員淺沼享子君、五島虎雄君、島本虎三君、中 村英男君及び吉村吉雄辞任につき、その補欠と して楢橋弥之助君、田中武夫君、田中織之進君、 田原春次君及び湯山勇君が議長指名委員に選 任された。 同日  委員田中織之進君、田中武夫君、田原春次君、 楢橋弥之助君及び湯山勇辞任につき、その補欠 として島本虎三君、五島虎雄君、中村英雄君、淺 沼享子君及び吉村吉雄君が議長指名委員に選 任された。 二月二十日  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件(同和対策に関  する問題)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  同和対策に関する問題について、質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 部落解放政策について、政府関係者に御質問をいたしたいと存じます。  まず、総務長官にお伺いをいたしたいわけでございますが、この非常に重要な問題について、いまだかって、今の池田内閣総理大臣が積極的に、直接にその態度を示したことを、残念ながら私どもは知っておらないわけでございます。その問題のおもな担当者としての徳安総務長官は、池田内閣総理大臣がどういう考え方でおられるかについて、御存じであったら伺わしていただきたいと思います。
  4. 徳安實藏

    徳安政府委員 同和対策重要性につきましては、しばしば政府でも御説明を申し上げ、御答弁申し上げておる通りでございまして、岸内閣以来この問題が急激に台頭し、また認識を新たにいたしておるわけであります。従来とても、関係各位の御陳情等につきましては、そのつど総理にも伝えてございまするし、十二分にその重要性は認識しておるものと考えております。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 池田内閣ができましたときに、私ども直接に伺ったわけでございますが、時の大卒官房長官、時の総務長官は福田さんでしたかに対しまして、岸内閣以来の方針通りにやるか、それ以上にやるかということを質問いたしましたところ、正式に、その方針を踏襲して一生懸命やるという答弁を得たのであります。岸内閣方針池田内閣は踏襲するということは、官房長官並びに総務長官からはっきりした確約があったわけでございますが、内閣総理大臣自体は、岸さんの時代よりもほんとうの取り組み方がぬるいとしか思えない事情がございます。と申しますのは、この問題で各委員会出席要求があったときに、みずから喜んで出席するというような状態がない。また、非常に関係の深い部落解放同盟というような大きな団体の非常にたくさんの人が出て参りまして、総理大臣に直接に陳情したいというときに、岸さんのときには会われました、ところが、池田さんは会っておられません。そういう点で、間接に総務長官官房長官から伺っておりますけれども池田さんはこの問題について取り組み方が岸さんの半分以下だ、三分の一ぐらいだというふうにしか思えないわけでありまして、ほんとう池田さんがやる気になっておられるかどうか、もう一回はっきり伺いたいと思います。
  6. 徳安實藏

    徳安政府委員 あるいはただいまのお話のような事態があったかもしれませんが、それはおそらくは周囲の者が悪かったと思うのです。今後そういう点については十分気をつけまして、総理にあやまちのないように周囲の者で努力をいたしたいと思います。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 実は本日も内閣総理大臣出席要求いたしております。ほかの事情もあったかもしれないけれども、後にというお話でございました。本日は出席をしないことを了解してくれというお話委員長を通じてございました。忙しい総理大臣ですから、そのときたまに忙しいこともあることはわかっておりますけれども、みずから積極的に、本日は出られなくても、ではいつ出るからぐらいなことは発言されるようなことでなければ、一生懸命取り組むと言ってもそれはうわべのことであって、ほんとうのことでないということになろうと思います。総務長官から池田勇人君にこの問題についての熱意不足を厳重に抗議をせられまして、池田自体社会労働委員会に出てこの問題についての質問を受けたいという意思表示をされるように、一つ御進言せられることを確約願いたいと思います。
  8. 徳安實藏

    徳安政府委員 本日そういう御要求があったことはただいま聞いたわけでありますが、きょうは外交関係か何かで、院内に初めにおいでになりましたけれども、午後からは官房長官と一緒に出ておられまして、ただいま院内におられません。あるいはいろんなお約束等があって、外国関係か何かでお出かけになっているのではないかと思います。今お話しの点は、お帰りになりましたらお伝えいたしまして、今後に善処するようにいたしたいと思います。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 この部落解放の問題が、終戦後に、ほんのちょっぴりずつ部分的に取り上げられたことはございますが、実はかなり本格的に論議になりましたのは昭和三十二年の十一月に、同じ日に社会労働委員会予算委員会でこの問題の追及が行なわれました。時の厚生大臣が非常に重大な問題であるということを痛感せられまして、十一月の末の閣議提出をされました。その問題を提起をされました。岸内閣昭和三十二年の閣議で、この問題を積極的に取り上げていくことを決定されたわけであります。その後、三十三年の二月の予算委員会で、そのときには総理大臣が何か少し病気のために、石井副総理以下関係閣僚が十何名おられるところで本格的に論議が行なわれました。越えて三月十一日に、社会労働委員会総理大臣の岸さんが来られまして、この問題の根本的な問題について論議が行なわれました。総理大臣としての確約があったわけであります。その中心点はその四回の委員会にありますけれども、一番要約をされているのが三月十一日の論議であります。それについて総務長官御存じであるかどうかをお伺いしたい。
  10. 徳安實藏

    徳安政府委員 岸首相との間に非常に熱心な御意見の御交換があり、また八木委員から非常に肯綮に当たるお話がございましたということは承っておりまして、その御熱意は承知はいたしておるのでありますが、私はまだ御質疑の問答は拝見いたしておりませんので、後日拝見いたしたいと考えております。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 その内容につきまして、総務長官に引き続き御質問申し上げたいわけでございますが、今まで十分に御存じないということは遺憾でございまするが、いろんな御用事がありましたので、今までのことはいたし方ございませんので、どうぞ、審議室長あたりほんとう補佐の任務を完全に果たす決意であるならば、その会の速記録ぐらいは集めて総務長官に読ませるように準備せられなければならぬと思いますが、この点の審議室長補佐が非常にいけないと思います。また総務長官も、取り組み方が今まではほんとうに真剣でおられなかったと思います。この点は直していただきたいと思います。  それについて、ちょっと要約してその内容を今申し上げておきたいと思います。非常に要約して申し上げますけれども、実はその間において部落の問題、徳川時代以来の問題が討議をされて掘り起こされました。それについて総理大臣自体、全部確認をせられました。また明治以降、明治大正から昭和にかけての問題が提起をせられて、確認をされました。今、差別と貧乏の問題が、一応表面的な差別がなくなったように見えているけれども、実質的な差別が依然として残っている。差別からできた貧乏のために、今度はその差別がまた再生産をされている。そのことのためにまた貧乏が起こるというような、悪循環をなしておるということが確認をされたわけであります。そしてその問題を断ち切るために、たとえば民主的な風潮の中で民主的な教育をする、そういう観念的なことだけでは、これは解決ができない。差別から生まれた貧乏であるけれども、今また差別を再生産している貧乏、この問題を根底的に直さなければ、完全に未解放部落解放はなし得ない。政府側のいわれる同和対策の完全なる達成ができないことになるということの確認が行なわれたわけであります。そういう状態を生んだ歴史的なことが論議をせられまして、そのような差別と貧乏が現在あるという問題については、差別と貧乏を受けている未解放部落人たちには一切責任はない。徳川幕府以来のすべての為政者、明治以来のすべての内閣責任であって、これを解決するのは、日本国民国民責任を持って解決しなければならない。従って、その当時の岸内閣は本腰でこれに取り組むが、その後の内閣がいかなる政党内閣であろうが、何がしが総理大臣になろうとも、すべてがその気持で取り組むべき問題である。それとともにこの問題が、たとえば自由民主党とか、日本社会党とか、あるいは日本共産党とか、そのような政党利己心をもってこれを扱われてはならない。政党利己心を全部排除して、全国民的に早急に完全な解放ができるようにやっていかなければならないということが確認をされたわけであります。非常な熱意を持って——質問追及を受けて、しぶしぶ答えたのじゃないのです。非常な熱意を持って確認をされたわけです。その問題は、いかなる内閣が次に来ようとも完全に申し送る。どのようにやってもらいたいということも言っておられます。  それから、その問題の具体的な解決のために、その当時いわれている同和対策というものは、たとえば共同のふろを直すとか、あるいはまた道の狭いのを直すとか、幾分の不良住宅を直すとか、あるいは隣保館をつくるとか、そのようなものだけではならない。そのような環境改善はしなければならないけれども、それとともに貧乏の根底をなしている問題を解決して、ほんとうにあらゆるいろいろの立場で、あるいは労働者として、あるいは農民として、あるいは漁民として、あるいはまた中小商工業者として生計が成り立つようなことをしなければならない。そういうようなことのために、一切の予算を惜しんではならないということが確認をされているわけであります。しかも、たとえば大正時代に、そのような問題が十年計画計画をされたことがある。一年五百万円ずつで、十年計画で五千万円をつくる。これは軍国時代になりましたら途中で中断をいたしました。その当時は、わずかに環境改善というようなものだけを目的としてやられたもので、その当時の金で五千万円の計画がありました。おそらく物価の指数はいろいろの論点がありますでしょうけれども、実際の物価でいえば、これは千倍に当たると思います。環境改善のみで五百億、年間五十億というような計画大正年間にすでにあったわけであります。そのような計画を上回って、環境改善だけではなしに、あらゆる生活が立ち得るような方策をやるというようなことが完全に確認をされたわけであります。  そのような経過総務長官ももっとはっきり御理解をいただきたいと思いますし、ことに、そこに出席をされた審議室長は、完全に理解をしておらなければ困ると思う。審議室長あとにいたしますが、そういうことをしなければならない。それとともに、従前環境改善がおもなので、これは厚生省がおもに当たっていた。ところが、このような観点になるときに、雇用の問題が大きく重要な点を占めます。従って労働省が深い、あるいは農民の問題、漁民の問題では農林省の関係が深い、あるいは零細企業中小企業の問題では通産省に関係がある、あるいはまた、住宅改善の問題では労働省関係あるとともに、建設省が大きく関係がある、同和教育の問題では、文部省の関係が深い、実際にやるために財政措置が必要なので、大蔵省と当時の自治庁、それの関係が深いという問題がある。そういう問題を、今気がついたことはどんどんとやっていくと同時に、その問題を根本的に総合的な対策を立て大いに強力に推進するための場として、内閣全体にわたる強力な審議会をつくるべきであるということが討議をされて、岸内閣総理大臣として確約をされたわけであります。しかしながら、その後いろいろの事情でおくれましたが、議員提出として、ここにおられる秋田氏を筆頭提案者といたしまして、自民党と社会党、民社党の共同提案同和対策審議会設置法通りました。そして今審議会が運行をしておるわけであります。そこで、その審議会委員選任についても非常に問題がございました。法案の立法趣旨ほんとうにマッチしていない選任が行なわれました。また、専門委員についてもそうであります。最初から選任についてもそのような状況でございまするから、審議会自体が、そのような全国民的な決意のもとに発足されたものであるという理解が十分であるかどうかは、はなはだ疑わしいと思うわけであります。その問題について、本日はこの審議会会長出席を求めました。ところが、内閣審議室連絡が非常に不十分である。委員部から正式に連絡をされたのに、その連絡を非常に熱意をもってされない。どうしても審議会会長用事があって出られないという返事であります。初めから会長病気の場合もあるから、会長代理に、ほかの委員でもいいから必ず出るように措置をしていただきたいということを社会労働委員長に申し上げておきました。ところが、このことについて忠実に委員部連絡したにもかかわらず、内閣審議室連絡熱意を欠いておる。この委員会の発足するまで、審議会委員出席しないという通告であります。これは参考人公述人でありません。政府説明員としての出席であります。しかしながら、こういう機関でありますから、いろいろ学識経験者でありますから、私どもは、政府の直接の公務員のごとく、どうしてもということを言ってもいいところを遠慮はいたしておりましたけれども、そのようなことでは困ると思う。このような決意で生まれた審議会国会国民ほんとう気持理解せずに立法趣旨ほんとう理解せずに、この重大な複雑多岐にわたる問題をぼやぼや——ぼやぼやと言っては失礼かもわかりませんが、ほんとう決意を固めないで、ある程度の審議をしておられるようでは、問題の解決に非常にスピードが弱まると思う。審議会会長委員は熱心に取り組んでおられると私ども期待をいたしておりまするけれども、なお熱心に取り組まれるように、その点立法者の一員としてその立法趣旨の御理解の点について質疑をして、これをただし、審議会が活発にやっていただくことを要請しようと思いましたのに、それに対して内閣審議室が非常に不熱心である。この点連絡がついておらない、そういう状態であります、これは総務長官直接御存じでありませんけれども審議室長にこの問題についての経過について、また熱意不足についての何か理由があったかについて、一つ伺っておきたいと思います。
  12. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいま御熱心なお話を承りまして感激するわけでありますが、先ほど申し上げましたように、岸内閣当時から非常に御熱心に御推進を得ておりましたことだけは承知いたしておりますが、不明にしてそう大きな論議をなさったことを、当時のそういうことを確認いたしますような記録ほんとうにまだ拝見いたしませなかったものですから、申しわけないと思いますが、さっそく拝見するようにいたしたいと思います。  ただいまのお話、これは超党派的に何人も考えておる問題でありまして、確認する事項ではない、もう当然のことでございますから、御趣旨には私どもも全く同感であることをはっきり申し上げていいと思います。  なお、審議会委員だとか専門委員等につきまして、その任命にあやまちがあるようなことをやりましては、せっかくの立法精神にも反することでございますから、また適当な機会に御意見等も伺いまして、改善すべき点がありましたり、選任等について誤りがありましたならばこれをためていきたい、かように考えますので、御指摘をいただければしあわせだと思います。  審議室の方であるいは手続上にあやまちもあったかもしれませんが、その点は審議室長から御答弁を申し上げると思いますけれども、最近非常に立て込んでおります関係から、あるいは時にあやまちがあったかもしれません。どうぞそういう点はお許しをいただきたいと思います。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 委員構成についての問題が御答弁中にございましたので、誤解を生むといけませんので、ちょっとその考え方を申し述べてみたいと思います。  個人々々の委員の方について、どうということではないのであります。それは内閣の方も御努力になってりっぱな方、熱心な方がなっておられると思う。しかしながら、この審議会は、学者といわれても識者といわれても、理解が十分でない非常に複雑な背景を持っている問題であります。従って、あの同和対策審議会設置法には、委員選任について通常の法律体系とは逆に書いてございます。この問題について経験を有する者並びに識見を有する者という書き方をいたしております。日本じゅうのどこの法律を探しても、そういう書き方をしているものはない。普通の意味学識経験では困る、その方が完全にそのものを理解されるには三年、五年かかる、だから経験を有する者が最もその審議に必要だということが三党で理解をされて、経験を有する者を先に書いたのです。ところが、委員選任の数の割り振りがそうではないように行なわれているわけであります。しかしながら、今すでに取り組んでおられる委員は熱心に取り組んでおられる。どの方が不適当であるということはないわけであります。あるかないかは存じません。熱心に取り組んでおられるだろうと思います。そういう構成上の問題であります。従って、その今の構成立法趣旨を生かすとするならば、経験を有する人の意見を非常に重んじて聞いて、そして運営をしてもらわなければならない。また専門委員においても、普通の形式的な、各省関係だからこの省から一人、この省から一人というよりも、ほんとうに何百年の間苦しみ抜いた人の気持を受け継いで、自分みずからその体験を持って、だからこういうふうに世の中を変えてもらわなければならないという運動をしてきた、そういう人たち専門委員によけい加える。今でも加わっております。しかし比率が少ない。よけい加える。しかも、ほかの委員の人も謙虚な気持で、観念理屈ではなしに——それは違う点があったら論議はもちろんすべきでありますけれども観念理屈ではなしに、その体験を持った人の意見を非常に重視して運営に当たるというようにいたさなければ、立法精神通りにいかないわけなのであります。そういう点について、審議会長に申し上げたいことがあったわけであります。  それから審議室長に続いてさっきの経緯について、済んだことはいたし方ありませんが、御質問申し上げたい。  きょうは、同和対策審議会が二時から四時まであるわけでございます。でございますから、会長なり委員が遠くにいてどうにもならないという問題ではないと思う。この委員会は夜中まで続ける予定であります。従って、審議会審議はおそらく四時に済むというような連絡を受けましたので、済まれたらすぐにこの委員会会長あるいは会長代理が来られるように審議室長は直ちに手配をして、もし無理解で、国会委員会に出ることが何かしかられるような気がして行きたくないような御理解があったら、そうではない、ほんとう審議会のことを一生懸命やっていただくために激励をする意味のそういう点であるから、必ず出られるというような措置を、責任を持って、あと質問が終わりましたら直ちにしていただきたいと思います。それについて審議室長に、審議会事務局長内閣審議室長の両方の資格において、責任を持ってお答え願いたいと思います。
  14. 江守堅太郎

    江守説明員 お話通り、ただいまから審議会に参りまして、御出席を願うよういたします。ただ、審議会は多少おくれているようでございますので、四時の予定が五時ごろになるということでありますので、その点は御了承願いたいと思います。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 引き続き審議室長にちょっと伺いたいと思います。ただいま総務長官に聞くと、この立法背景になるものについての補佐責任を十分に果たしておられなかった、審議会自体についてはどうでありますか、その問題について。
  16. 江守堅太郎

    江守説明員 先ほどお話がございました三十三年三月十一日に岸総理から御答弁のあったものについて、その後閣僚懇談会ができ、あるいは議員の御提案でこの審議会ができたという経緯は、私は十分承知いたしております。またその記録もございます。ただ、総務長官がおかわりになりましてからあと、もうすでにこの審議会が実際発足しておりまして、活発に審議を始めておりましたものですから、従来の経緯などについて申し上げる点が少なかったということに対しましては、今の御質問を承りますと、もう少し申し上げておいた方がよかったという気がいたしますが、少なくとも私ども事務当局といたしましては、その辺の経緯もよく承知いたしておりますし、記録もございます。  それから、ただいまの審議状況でございますが、御承知の通り発足が多少おくれましたために、去年の七月でありますか期限が切れますのを、さらに二年延ばしまして今御審議を願っておるわけでございます。いろいろ実態調査などにつきましても、今非常に仕事が進行しておる最中でございます。今後ますますこの審議を十分にしていただきまして、一刻も早く政府として十分な対策ができるように期待もしておりますし、私ども事務局としてもいろいろ精一ぱいのお力添えをしておるという状況でございます。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 事務局の方が御存じになっても、ほんとうの運行に当たられる委員の方が御存じなければ、何もなりません。死んだ法律にしてもらっては困ると思います。それで審議会の発足後まず最初にやられることは、この立法趣旨背景、その説明を十分学識経験者になさって、その気持でやっていただかなければならないと思う。りっぱな方ばかりでございましょうけれども、有名無実の審議会はほかにたくさんございます。そういうような話を聞いておられると、いいかげんにお茶を濁してもいいと思われる方もなきにしもあらずだと思います。しかしながら、ほかの有名無実の審議会よりは、同和対策審議会が一生懸命やっておられることを私も知っておりまして喜んでおりますけれども、問題の重要性から考えますと、取り組み方にまだ本腰の点がないと私どもは考えるわけであります。でございますから、ぜひそういう点について、この立法趣旨その他について早く事務局長から諸先生方に説明をされて、本腰に——本腰になっておられますけれども、さらにその決意を固めていただいて、それから予算措置などは、心配しないで大きな構想をつくるということでやっていただかなければならないと思うわけであります。そういう点について、今までのおくれを取り返すために、最大なことをやっていただかなければならないと思います。  それからもう一つ、審議会委員はわずかな人員ですけれども、たとえば今まで外部のこういう人たちについての意見について、どのようなところから参考意見を聞かれたか、どのようなところに意見を求められたか、どういう団体、どういうところに意見を伺われたか、そういうことについて、簡単でけっこうですから聞かしていただきたい。
  18. 江守堅太郎

    江守説明員 審議会構成しておられます委員の方々が、それぞれ個人のお立場でどういうところから御意見をお聞きになったかということにつきましては、私は存じておりません。それからまた、審議会の席上、審議会といたしましていろいろのお話を承りましたのは、関係各省からの御説明と、部落解放同盟、それから日本同和会、それぞれの関係の方々からのいろいろのお話を承りました。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 部落解放同盟の方の意見を聞かれたのは一回ですか。また何人ぐらいに聞かれたのですか。
  20. 江守堅太郎

    江守説明員 審議会の席上に解放同盟、同和会の方々に来ていただいたお話を伺ったということは、私の間違いでございます。解放同盟の代表である北原委員、同和会の代表である柳井委員お話審議会の席上承ったということでございます。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 間違いであったと率直に言われていいのですけれども、そういうことは困るでしょう。柳井さんと北原さんは委員ですよ。委員としての意見を言われているわけで、ほかの委員の方に——部落解放同盟にずっと前経営者以来取っ組んでおられますから、これが一番ですから、意見を聞かれてもかまいません。かまいませんけれども、北原さんや柳井さんは経営者であるけれども、ほかにも経営者がいるし、一人だけ聞いたら、一対一の委員——経験十分で取り組んでおられる北原さん、柳井さんと、それからほかの点では非常に学識が高くても、その問題に経験の薄い方々の意見が一対一で、理解がなければ、両方の意見が正反対であればその問題は勝負なしになるわけです。ですから、そういうことにならないように、その問題にほんとうに必死になって取っ組んでこられた諸君、たとえば解放同盟の代表の十名なり十五名なり、あるいは七名なり、いろいろの方面からの意見審議会自体で率直に聞くというような運営をしなければ、ほうとうの意味のこの問題の対策にならないと思う。そういう題問を事務的に提起されるのは、あなたの責任じゃないですか。それからまた、各政党にそういうような研究をしておられる方がたくさんおられます。わが日本社会党には部落解放政策特別委員会、自由民主党には同和問題議員懇談会ですか、そういう多くの議員の方々が寄っておられるものがございます。そういう方々に——これはいろいろな関係がございますから、審議会という関係でやるのがいいかどうかは、事務局長と運行の都合できめられるでしょうけれども、少なくともその問題に非常に熱心に取っ組んでおられ各政党のそのような部会に、公式、非公式にかかわらず、その話を腹を割って話そうじゃないか、そういうような運行をするのがあたりまえだと思う。会長はそういうことを考えられていたかどうかわかりませんけれども、実際の審議会の運行をどういうふうにしてやったらよかろうかという具体的なことを会長提起されて、会長ほんとう意味補佐されるのは事務局長の任務だ。そういうことを一つもしていない。北原さんと柳井さんがいればそれでいいということではないのです。そういう意見を聞いて、みんながそういう運動の経緯と歴史、今の状態、そういうことをそういう団体から聞かれて、そうしてそういう観念でいろいろ評価をされて、審議会自体で調査をされ、論議をされる。そういうことにならなければ、何百年来の何百万人の人の苦しみをほんとう解決することにはならない。そういう点について即刻今までの足りない点を改めて、そういう方策をとるために推進せられるかどうか、はっきりした御回答を願いたいと思う。
  22. 江守堅太郎

    江守説明員 同和の審議会は、いよいよこれからが本格的な審議に入る段階でございます。今までは実態調査その他、いわば非常に事務的な段階であったわけであります。今後におきましては、審議会の中に四つの部会を設けまして、教育部会、環境改善部会、産業職業部会、調査部会、この四つの部会を設けて本格的な審議をいたす段取りになっておるのでございます。その過程におきまして、今仰せの通り、いろいろ同和問題について経験の深い、あるいはまた特に御意見のある方などについて、それぞれの部会におきまして十分の御意見を承って今後の運営をやって参りたい、このように考えておる次第であります。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 抽象的ではなしに、部落解放同盟の代表者、先方、両方に時間的に都合がありますけれども、よく連絡をされて、十分に委員全体が部落解放同盟の代表者と話し合われる機会を持つように推進されるか、あるいはまた自民党なり社会党なり、そういうようないろいろの部会にこれは議員という資格がありますから——その委員会参考人ということにならないと思うけれども、とにかく懇談会を持って十分に論議をされるように推進されるか、これについて抽象的ではなしに、はっきりお答えを願いたいと思います。
  24. 江守堅太郎

    江守説明員 審議会委員の方々と十分御相談をいたしまして、どのような方々のお話を聞くかということはきめたいと思います。  それから、あとお話しになりましたいろいろ政党関係の懇談会などがあった場合に、この審議会として、あるいは事務局として行って十分の意見を交換するということにつきましては、そういう機会がありますときに極力出て、そういうようなことをして参りたいと思う次第でございます。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 審議会の決定は委員が決定するのですから、事務局長が決定できないことは私どもは知っておる。推進するかと伺っておる。形式的なことでなしに、そういう問題についてほんとう委員諸公が熱心に取組んでおられるから、事務局長提案したら、そんなことは困るということになるはずはない。だからあなたが推進することを決意するかどうかということを、はっきり言ってくれと言ったわけです。  それからもう一つの方、政党関係の方も、これは忙しい人だから時間については一対一ということは言えないにしても、そういうことを推進すれば、審議会委員の方が、それは困ると言われるようなことはないはずです。言われるような委員だったら、これは不適格だ。ですから、実際上権限は委員にありますけれども、あなたがほんとう決意を持って推進すれば、それは必ず実現はできる。実現させるために、ほんとうにやるかということについて、はっきりお答えを願いたい。
  26. 江守堅太郎

    江守説明員 お話しの点につきまして、事務局といたしまして十分の努力をいたすつもりであります。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 同僚委員の方がたくさん待っておられますので、総務長官に対する質問に戻ります。  本年度の予算は、これは積算とか一般経費の中の分け方によって違うでしょうけれども、前年度、三十七年度の九億四千七百万円というものから十四億八千三百万円というふうに伸びておるように私ども理解しております。これは一般の対策とごちゃごちゃになっている点があるので、分け方によって計数が少しずつ違いますけれども伸び方としては、わずかに五億円足らずのものが伸びておるということであります。これについても、総務長官は誠実なお人柄で、一生懸命御努力になったことは私も知っておりますけれども、問題の重要性から考えると話にならないと思う。先ほども申し上げましたように、大正年間環境改善だけ考えたものでも、今の貨幣価値にすれば、年間五十億くらいの予算を組まれた時代がある。さっきのような本腰の決心でされましたならば、これはもっと飛躍的にふえなければならないと思うのです。しかも乏しげに、非常に遠慮がちに出された予算が大蔵省に削られる、そういうようなことであってはならないと思うのです。予算編成の方針でいつも大蔵省主計局がけしからぬと思いますのは、前に、労働省なり厚生省なり各大臣が政策を推進したい、総務長官も推進したいというふうで、いろいろの計画をしておられるのに、大体最初の事務的な都合で、前年度の予算の五割ぐらいのものを出していただきたいというようなことが、去年、おととしからやられている。そういうような大蔵省の思い上がった態度はいかぬと思う。イージー・ゴーイングに前年度の五割増しぐらいにしてもらって、だんだん削ってきて、五分か一割か一割五分ぐらいでとめる。それはほんとうの財政の運用ではない。金というものは、そういう比率、パーセンテージなどではなしに、ほんとうにそういう政策が生きるかどうかというときには、また生かさなければならない政策のときには、前年度の三十割増しでも五十割増しでもかまわない。不要不急のものは一つもふえなくてもかまわない。それを一律に五割増しで最初は要求をしてもらって、それからだんだん減らす、そのような主計局の態度が国の政策を麻痺させる、大事な政策を進展させない。総理府あるいは労働省、厚生省、そのような新しい事態に当然ふやさなければならないものを、常に干渉していて、これは憲法違反でもある。自衛隊とか、そういうものと同じような率で前に予算要求をさせて、一律に並べてそれから査定する。そのような国の政策を自分たちのワクできめさせようというような大蔵省の態度は、実に言語道断である。大蔵大臣の責任であるけれども、主計局が、そういう点については、そういう思い上がったことをしないように戒心をして、大事な政策については、前年度の三十倍であろうと百倍であろうと、それを謙虚に受け入れて、いろいろと協議をして予算額を決定するという方策をとってもらわなければならないと思うけれども、大蔵大臣がおられないので非常に残念だけれども、主計局の人に対して、その点についての考え方があるならば伺わしていただきたいと思う。
  28. 船後正道

    ○船後説明員 今、八木先生の御質問は、予算編成の基本問題でございまして、私からはたして御満足いける御答弁を申し上げ得るかどうか心もとない次第でございますが、御指摘のように、毎年の予算編成の手続といたしましては、閣議におきまして要求段階といたしまして、おおむね各省の要求はその所管全体として前年度の五割増以内で御提出願うという申し合わせによって最近は運営されておるような次第でございます。これは財源の伸びの都合もございまして、予算全体といたしまして飛躍的にいけるものでもございませんので、各省の方におかれましても、所管全体としての五割という範囲内で、それぞれの重点施策はもちろん重点を入れて御要求願う、私どもといたしましては、その範囲内でそれぞれの年の重点施策というものは査定して参る、こういうことでございまして、個々の施策につきましては必ず五割以内でなければならないとか、そういったことはないわけでございます。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことは、前にもほかでそういう答弁を伺ったことがあります。しかしながら、各省の分け方ということに間違いがある。たとえば西村大臣が所管しておられる厚生省の所管の中で、全部重点じゃないものはありません。全部が前進をしなければならない。労働省においてもしかりです。各省別に勝手に官制で分けた、分けたけれども内閣全体のどれが重点かというときに、各省別に五割にしたら、ほんとうの問題と違いが起こる。(「要求だけだ」と呼ぶ者あり)要求だけだなんてよけいなことを言うけれども、毎年五割要求したのに対して、三割にしてくれ、二割にしてくれということで実際に予算折衝が行なわれている。それはほんとう意味で、国の政策、ほんとうに大事なものを進める点においては誤りがある。厚生省は全部大事だ、労働省は全部大事だ、ほかのところはもう少しゆっくりしていいという場合に、同じように全部五割にしたら、労働省と厚生省はそこで実際に伸びがとまる。そういうことをした方が、あなた方は計算はしやすいかもしれない。あなた方の計算のために国民の大事な政策の伸びがとまるようなことがあったら、ほんとうに国家に対する奉仕者たる国家公務員としては、国民に対して申しわけないことになる。事務的に楽だとか、まとまりが楽にいくとか、そういうことは一切抜きにして、国家の予算ほんとう国民のためになるようにやってもらわなければならないと思いますが、大臣がおられないので、主計官のあなたに伺っても気の毒でありますから、これ以上申し上げませんけれども、主計局の中でそういう考えを直すようにあなた方も努力をしていただきたいと思いますが、この問題についてはあらためて大蔵大臣に質問いたします。  ところで、その問題の一環として、同和対策の費用は、先ほどもお聞きになっておられたと思いまするが、ああした背景にあるわけです。急速に予算をつぎ込んで、急速にすべての問題を解決しなければならない。そのときに、これが約五割ですね。こういうのじゃいけない。前年度九億であっても、本年度百億にしなければならない。こういう同和問題については、そのような普通のパーセンテージというような、数字の遊戯のようなことは考えないで、ほんとうにものを解決するために、決意を持って当たっていただかなければならないと思う。当たられるのは総理府であり、また労働省であり、厚生省であり、農林省であり、通産省でありまするけれども、それを大蔵省がパーセンテージ的概念をもって、各省、また総理府が組んで各官庁が推進しようというものを、チェックせられないようにしていただきたいと思います。その点について御答弁を願いたいと思う。
  30. 船後正道

    ○船後説明員 予算を編成いたします場合には、政府といたしましての重点施策に集中的に予算を計上する、こういう基本的な態度には変わりはございません。先ほどから五割という問題がございますが、これは要求段階における所管全体の問題でございまして、個個の施策につきまして、私ども、前年に対して何%でなければならないというような先入観を持て予算を編成するというようなことはないわけでございますから、御了承願いたいと思います。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 わかっていますよ。労働省や厚生省の個々の部門について、五割以上になっているのは知っていますよ。ただ、省で何割として押えたら、厚生省、労働省みたいにどんどんやらなければならない省は、こっちが多過ぎたらこっちを押えなければならぬ。防衛庁みたいに一つも伸ばさなくてもいい、むしろ減らさなければならないようなところもあるわけです。それを同じように考えるのは間違いだ、省別に考えることは間違いだということを言っている。それは総理大臣がやられることであり、内閣全体でやられることであるけれども、あなた方が事務的な点でこれにチェックをするようなことがあってはいけないと思うので、そういうことのないように考えてもらいたいし、また同和問題については、普通の概念ではなしに、このような背景で行なわれているので、五割とかなんとかでなしに、今おっしゃったように、この問題で一ぺんに、たとえば十倍でも百倍でも必要であれば、それをぶった切るような間違った努力を大蔵省はされないで、これを受け入れるというような気持で推進していただきたいということであります。前段はけっこうでありますが、同和予算について、そのような気持で対処していだけるものと思いまするけれども、それについての主計官の立場としてのお考えを伺いたい。
  32. 船後正道

    ○船後説明員 同和対策関係費は、政府といたしましても重要な施策でございますので、予算編成に際しましては、そういう気持を持って対処して参りたい、かように考えております。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 審議会長が後刻御出席になるそうでございますから、そのときにまた引き続き質問することにして、あと、私も労働、厚生その他質問がございますが、先輩同僚が待っておられますので、一時交代いたしたいと思います。
  34. 湯山勇

    湯山委員 今の予算に関連してお尋ねいたしたいと思います。それは審議会自体予算の問題ですが、これは先般総務長官にもお目にかかったときに、当初要求しておられた段階でございますが、七百万くらいな御要求では、とても、計画になっておる調査ができないのじゃないかということで増額をお願いに行ったときに、事務当局のお考えとしては、七百万になれば、何とか重複する面もあるしするから、やれますということでございましたが、今年度の予算として要求されておるものはさらにその半分です。実態調査の費用にしても三百二十九万、こういうことになっておるわけです。これでは、当初御計画になった実態調査も計画通りできないのじゃないかということを心配しております。当然、当初御要求になった七百幾らというものはほんとうに最小限度で、むしろそれだって実際は、二十地区からの調査はできないのじゃないかということを申し上げたのですけれども、今組まれているものがあまりにも少ないので、一体どういうことでこうなったのか、それで支障なく当初計画した調査ができるかどうか。さらに、審議会としては、これでどういう作業をどうやっていって、どういう結論をどう出して、それからどうするのだという、今後のスケジュールは一体これでどうなるのか。これは特に長官には何回もお願いしたことで、長官も、当然だからやらなくちゃならないと言っておられたのですが、これが半分にも切られているというのは、いかにも了解に苦しむところなのですが、これは一体どういうわけなのでしょうか。
  35. 徳安實藏

    徳安政府委員 同和対策の諸費用つきましては、予算編成前に各党関係の熱心な各位から、ぜひ相当額を獲得するようにという後注文もあり、激励も受けました。そのつどそのお話を、あいるは大蔵省に、あるいは関係の省にも伝えまして、ともどもに各省の予算並びに総理府にも審議会の費用もございますから、それらを加えて大蔵省にはずいぶん最後まで努力したつもりでございます。お話のように、審議会総理府直轄の関係の費用が非常に少なくなっておりまして申しわけない思いますが、厚生省以下そのほかの役所につきましては、もちろん十分ではないことは申し上げるまでもございませんが、約五割ぐらいふやすべく、こうした数字が出ておるわけでございます。十分ではございませんが、あの当時の経過から考えまして、まことに残念だけれどもやむを得なかった。こう考えるのであります。この最後の総理府の審議会の問題につきましても、実は最後の瞬間まで粘りまして、最後には審議室長にすわり込みぐらいまでやってもらって、私も各省と重ねて努力をしたわけですけれども、こうした数字しか出ませんで、ほんとうに申しわけないと思います。この金額で、はたしてどの程度の運用ができるかということにつきましては、審議室長から御説明申し上げますが、力の足らなかったことはまことに恐縮に存じますけれども、来たるべき機会にはもっとがんばりますから、どうぞ一つ御了承いただきたいと思います。
  36. 湯山勇

    湯山委員 今のスケジュールはどうなっておりますか。
  37. 江守堅太郎

    江守説明員 三十八年度の実態調査の三百二十九万五千円でどういう実態調査をいたしますかということについては、まだ委員会の方で御審議をしていただいておりませんので、どういう方向でやるかということにつきましては、確定はいたしておりません。ただ、実態調査もすでに三十七年度でも、不十分ではございますが、三百万弱の金額でもって実態調査をいたしました。三十八年度は、それと同じようなものをさらに増加いたしまして実態調査をいたしたい。先ほど申しましたように、本年度の審議会は、この調査段階から本格的な審議の段階に入ってきておりますので、そういう実態をつかむというような作業は、ほぼ三十七年と三十八年度の両年度を合わせまして六百万ばかりの金額でございますが、その程度で完璧だとは申しかねるかと思いますが、作業をお進めになる上においては、決してそれで費用に困るというようなものではないというふうに心得ておる次第でございます。
  38. 湯山勇

    湯山委員 今の事務局長の御答弁では了解できないと思います。と申しますのは、当初七百万ばかり御要求になったときに、本年度がこれぐらいで四地区ですか、それから来年度は十六地区、総計二十地区の調査をしたい、さらにその上に精密調査も要るのだ、そうすれば、少なくとも三十七年度の十倍くらい要るのではないだろうかということで総務長官にもお願いに上がったわけです。ところが、七百万あれば、こうこういう事情でこうだから、実際は数がふえたからといってそれに比例してふえるものではない、従って十六地区と精密調査はできる、こういり御答弁でございましたから、それならば計画を立てていないのではなくて、ちゃんと立てておったはずです。ところが、それがこういうふうにさらに半分に切られてみると、さてどうしたらいいか、計画が立たないというのが今の御答弁じゃないのでしょうか。もしそうだとすれば、これは重大な責任問題ではないか。審議会運営なり仕事が、これによって全く手詰まりになってしまった。審議会が、はたしてこれで目的を達するような仕事ができるかどうか、そこに私はかかってくるのではないかと思います。そうではないのでしょうか。
  39. 江守堅太郎

    江守説明員 予算要求いたします過程におきまして、同和対策審議会は、三十八年度はこのように運営して参りたいということで、七百万円程度の要求をいたしたのでございますが、国の予算全体といたしまして、このような形できまったわけでございます。きまりますまでの間におきましてはいろいろの問題もございましょうが、きまりましたあとにおきましては、国全体としては、やはり同和対策審議会の経費としては、本年度はこの程度の経費でやるのが国全体の施策を考えたときに適当であるというふうに御判断になったということでございます。私どもとしては、その範囲の中でできるだけのことをして参るというふうに考えるほかはないだろうと考える次第であります。
  40. 湯山勇

    湯山委員 だから今のは、当初計画したけれども、それだけのことはこの予算ではできない、こういうことなんでしょう。それだけ言ってもらえば、あとはまたあとで……。
  41. 江守堅太郎

    江守説明員 予算要求をいたしました段階において計画いたしました調査は、この金額ではできません。
  42. 秋田大助

    秋田委員長 田中織之進君。
  43. 田中織之進

    ○田中(織)委員 先ほど八木委員から冒頭に触れられたと思うのですが、三十八年度の同和対策予算要求が約二十八億円であったのが、現実には、私の手元にある資料では十四億八千三百三十四万七千円、これを総理府、厚生、農林、建設、文部、労働関係の総計でありますが、十四億八千三百三十四万七千円しか認められていないのです。この点は、八木委員から、要求の半分しか認められておらないではないかという追及があったのですが、きょうは官房長官黒金君に来て下さるようにとくと頼んでおいたのですが、見えてないことは非常に残念であります。国務大臣として西村厚生大臣、大橋武夫さんが労働大臣としておいでになるので、私は、現内閣同和対策といわれておる部落の問題についてどういうふうに考えておるのか、その根本的な考え方を聞きたいと思うのです。  やかましく言うから、去年の九億何がしに比べれば、五割もふえておるのだからがまんをしてもらわなければならぬというようなあわれみの意味の金なら、部落民の立場から申し上げるならば、そんな金は要りませんから返上しますよ。あなたたちは、今内閣同和対策審議会の経費の問題について、湯山委員事務局長との間に応酬がありましたけれども、同じ調査費でも、旧地主の報償に関するものでは、一億九千万円も計上いたしているじゃないですか。そういう問題と、この全国に散在する三百万の、今日なお経済的、社会的に差別を受けておる同じ日本人の仲間に対する問題とを、あなたたちはどっちが、重要だと考えているのですか。その根本的な問題がない限り、わずかスズメの涙ばかりの予算をわれわれはちょうだいしたくありませんよ。国務大臣として西村さんなり大橋さんは、あなたたちの所管を問題を考えられる前に、この内閣として部落問題というものをどう考えられておるか、この際承りたいと思います。
  44. 西村英一

    ○西村国務大臣 おっしゃいますように態度の問題でございまして、予算の問題は第二でございます。私たち、決して軽んずるわけではありません。ありませんが、やはり予算面上調査費が少ないというおしかりでございますが、私、調査費のことについてはつまびらかにいたしておりませんが、全体といたしましては、同じ気持でやっておるのでございますけれども、なかなか十分にいかないのでございます。これは私が申し上げるまでもなく、政党政派を超越してやらなければならぬ問題であります。しかし、事柄はなかなかむずかしいのであります。私のところの環境整備だけの問題ではありませんので、やはり内閣全体の問題でございますから、十分取り組んでいきたいという気持には少しも変わりはないのでございます。十分できなかったことにつきましてはおわびいたしますが、いまだにこういう差別が行なわれて、そしてそれが貧乏との間で循環しておるということにつきましては、十分今後気をつけていきたい、かように存ずる次第でございます。
  45. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大橋さん、どうですか。
  46. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題につきましては、私どもも重要な問題と考えております。予算の件につきましても、努力をいたしておるのでございます。
  47. 田中織之進

    ○田中(織)委員 従来の点から見たら漸進的に進んでいるということについて、特に事務当局の諸君の努力は私も認めます。しかし、三十八年度の予算を振り返る場合に、これはまだ衆議院の議決も経てない審議中のものでありますけれども、旧地主に対する報償のための調査費として、二億円になんなんとする巨額のものが計上されておる。それから一昨日でありましたか、ようやく総理大臣の裁断が下ったという、戦争未亡人に対する今後十年間に毎年二万円ずつの手当金の問題、あるいはこの問題は、昨年の臨時国会であなた方は与党の多数の力をかりて、石炭問題の混乱のときに火事どろ式に衆議院の内閣委員会を通して、本会議を通して、参議院に送って審議未了になった、いわゆる旧金鵄勲章受給者に対する年金の復活の問題、さらには、やはりこの地方選挙、あるいは来たるべき総選挙の一つの中心的な命題になるところの韓国に対する請求権の不当な支払い計画に呼応する、朝鮮を中心とする外地から引き揚げてきた人たちの財産補償の問題等、新しい戦後処理の問題、そういう最底辺にある人たちの問題が大きくクローズ・アップされて、その頭が出てきておるのが三十八年度の予算ではありませんか。そういう中において、これはもちろん戦争前からあることです、古くから、何百年も前からの封建政治の始末を今われわれがやらなければならぬことなんですけれども、この国民の底辺をなしておる部落民の問題のために、あなたたちは、わずか一万に足らぬいわゆる金鵄勲章の受給者に対する七万円ずつの一時金の支給を、法律をつくって予算化して国会に出そうとしたかっての試みや、今度の国会に出してきておる旧地主報償の問題を考えましたならば、この問題を取り上げなければならぬということは言わずと知れた問題であります。労働大臣、あとで同僚から詳しく聞きますところの、いわゆる失対事業の改善のことにつきましても、あなたは、現在二十五万の失対事業に働く労働者のうちで、十五万人がいわゆる未解放部落民であるということを知っていますか。この人たちは、失対という一日三百八十五円しかもらえない仕事以外に就職の道がないから、失対に働いているのですよ。あなたたちは、そういうこの問題の背景考え方の上に立って、本年度各省から出ておる予算が含まれておるということを言えますか。その点についてのあなたたちの考え方を私は聞きたいのです。
  48. 西村英一

    ○西村国務大臣 御意見でございますが、内閣全体として、私たちも国務大臣として責任を持っておるわけでございます。しかし、たとえば旧地主の問題の調査費をこれこれ組んだ、それとこれとは——事柄の比較の問題はもちろんあります。しかしまた、やはり独立して一つずつの問題もあるわけであります。そういうことでございますから、これとこれとの比較ではこうだということではなしに、同和問題はやはり同和問題として——もちろん比較の問題もありますけれども、事柄々々によってまた批判を受けることもございます。同和問題につきましてわれわれが十分今後取り組まなければならぬ、しかも先生おっしゃいますように、やはり所得からいってもほんとうに貧しい方々であります。底辺の方々でございますので、せっかく審議会もこれからいろいろ出そうときめて、三十五年からある程度の計画は持って今日まで参りましたが、十分なことはできておりません。われわれも審議会等の結論を待ちまして、皆様と一緒に、これこそ政党政派の区別のない問題でございます。国全体としては非常に困った問題でございますので、十分取り組みたい、かように私自身は考えておる次第でございます。
  49. 田中織之進

    ○田中(織)委員 西村さんに私はお願いをしたいのですが、惰性というか、従来の点から見たら、小刻みであるけれども前進しておる努力を私は認めます。国の予算の中で同和対策と銘打っものが十四億、このほかに、いわゆる自治省が見ておられると思いますが、やがて月末か三月のかかりにきめる、いわゆる特別交付税の関係は、われわれの聞いておる限りでは、本年度は五億円をこえるだろうと思う。従って、三十八年度においては、それを入れますとあるいは二十億の台に乗るかもしれない。この特別交付税の問題は、やはり特別交付税算定の基準として、自治省が同和対策ということを銘打っておるのでありますから、何らか府県なり市町村が、この交付税を原資としたところの同和対策についての施策を進めなければならぬけれども、たとえば同和対策と銘打って出るものは、あるいは群馬県のようにこの交付税の半額にしか達していないところがあります。滋賀県もそうです。あるいは町村によれば、これをほかの名義で受けられておる。自治省においても、そういうように同和対策という問題を一つの重点とした交付税の算定をやるということまで進めておるので、私はそういうことを考えますと、前進していることは認めますけれども、本年度の予算から見れば、戦後処理の問題でなく、ある意味から見れば、ここいらで単なるコンマでなく、ピリオドを打つというような意味の画期的なものをあなたたちが意図されたということになれば、戦後の問題ではなくて、戦前の何百年前からある問題でありますけれども、今日なお深刻な問題なんです。部落民として差別されるために結婚できなくて自殺をしたという事件が、私ども部落解放同盟の本部にきているものだけで去年五件もありますよ。新しく人権侵害の問題では、後ほど法務省あるいは検察庁の関係質問しますけれども、過般の奈良県の知事選挙のさなかに、奈良署で酒の上でけんかして、そして被害者である部落の人に対して、警察が取り調べるために悪口雑言、差別的な言辞を弄したばかりでなく、全治二週間からの重傷を負わした。それでいて、それは酔うたまぎれのけんかで傷つけられたのじゃないかと言って、それなら被害者を取り調べているかということになれば、その事件が済んでから部落解放同盟が聞きつけて抗議をしてから、ようやく調書をとるというような形をやっておる。去年の八月末の法務委員会でも私は追及をいたしましたけれども、高知県の興津では、差別にからむ小学生、中学生の同盟休校で、校長はやはり同盟休校という形で部落の子供たちの勉強がおくれていくことを心配いたしまして、分散授業の形で、部落の消防会館に学校から机やいすを持っていかして、学校の教師を派遣して分散授業をやっていた。それを町教委が、七月の参議院の開票直後に、正常授業に戻すということで、百十戸の部落に対して二百は十名の武装警官を動員して、校長が貸し与えた机、いす約四十脚ばかりのものを撤去するのに、あたかも昔のえた狩りのような形のものをやった。あげくの果てに、けがした未成年の者を含めて十五人を逮捕して勾留いたしました。国会で取り上げた関係から、理屈はありませんから、三カ月にわたって処分もきめられなかった。そしてほとぼりのさめたころに、二日間のかすり傷を負わしたということだけで五名起訴して、現に裁判が進行中です。私も一月七日、特別弁護人として参りました。今日、検察庁においても警察においても、政府機関の中でまだ公然とそういうことが行なわれている。そういう問題について、あなた方はやはりこの機会に、現内閣こそ、この日本民族の恥である部落差別問題をなくすために、これだけのことをやるのだという、その決意を持ってこの問題に対処してもらえる用意があるかどうか。私は、残念ながら三十八年度の予算ではその片鱗すら見ることができないのですけれども、あなたたちは別の面でやられているということになれば、きょう私ども社会党議員団が中心になりまして、特に秋田委員長は与党の同和対策特別委員会の中心的な方として、与党は与党の立場で取り組んでおられるから、きょうは特に社労の正規の委員会としてこの問題を各省にわたって取り上げてくれたわけです。西村さんがたびたび繰り返す超党派的な角度の問題でありますけれども、一つ部落民の立場から僕が訴えるこの問題にあなた方が取り組んでもらえるか。今まではできなくとも、取り組まなければならぬ今日の時点に立っているということについての理解をしてもらえるかどうかということを私は伺っているのですが、この点についての御所見を伺いたいと思います一両大臣おられるわけでありますが、総務長官ももちろん閣議に出られるわけであります。いずれ私の記録ができると思いますが、きょうのこの社労の委員会で、私からあるいは社会党の同僚議員から、こういう悲痛な訴えがあったということを池田総理に伝えていただきたいと思うのです。池田総理の選挙区広島県には、特にこの部落問題では深刻な問題があるわけなんです。総理は知らないはずはないのです。どうか一つその点を、ここであなたたちとしての御所見は伺えないということであれば、いずれあらためて私は総理から伺うことにいたしますけれども、そういう問題であるということを、あなたたちは所管の仕事をやられる上においても、私は考えていただきたいと思うのです。これは希望にしておきます。  そこで、総務長官がお急ぎのようでありますから、総務長官に直接関係した問題について伺いますけれども、先ほどから湯山委員八木委員から出ておりますように、内閣にせっかく、これは三党の議員提案でこしらえてできた審議会です。一年半を経過しますけれども、実は残念ながらあまり業績は上がっておらぬ。金がないからできぬのだろうと私は思うのです。この審議会事務局長をやっておられる江守さんや野海参事官などは、骨を折られていると私は思うのであります。私どもも若干の民間団体でありますけれども、資料を持っているからいつも申し上げるのですけれども、私どもの資料も提供しましょう。ということを申し上げておるのでありますが、昨年、一応各地方庁を通じて部落の実態調査、少なくとも部落の人口、戸数、世帯数、できれば職業の状況というようなものについて、もちろん自治省からの文書による回答を求められた関係の調査を進められたと思うのでありますが、その点の集約はすでにできているのでしょうかどうでしょうか。その点についてまず伺いたいと思います。
  50. 徳安實藏

    徳安政府委員 国務大臣としての立場から両大臣が見えておりますから、その方のことはそちらからお話いただけると思いますが、ただいまお話になりました点につきましては、総理に御趣旨をよく伝えますということをお約束いたしておきます。  なお、ただいまの業務上のことにつきましては、事務局長からお答えいたさせます。
  51. 江守堅太郎

    江守説明員 三十七年度実態調査をいたしました結果は、三月の末に数字がまとまることになります。
  52. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題の今後の対策についての内閣の一員としての決心を聞きたいという御質問と思います。この問題は、お話通り、各省にわたっておる大きな問題でございます。私ども閣僚は、この問題につきましてあらゆる方面から、すみやかなる解決をはかるべく努力をいたすつもりでございます。特に労働省関係といたしましては、就職の問題あるいはまた失業対策の問題等、この問題のうちでも特に経済面において大きな関係があると存じますが、これらの問題につきましては、ちょうど全般的な対策を確立しなければならぬ時期になっておりますので、御承知のごとく失対事業につきましては、改正法案も提出いたしてあるような次第でございます。これらの新しい施策につきましては、十分に同和問題の解決ということを頭の中に置いて立案をいたしたつもりでございまするし、また、今後これを実施するにあたりましては、関係者一同力をそろえて所期の目的を達するようにいたしたい、かような決心をいたしておることを申し上げます。
  53. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今の大橋さんの国務大臣としての御決意に対して、ぜひ一つ内閣を一丸として強力に進めていただいて、池田内閣の施策によってこの問題の終末をつけるための一時期が画せるように、一つ勇断を望んでやみません。  今の事務局長の最後のお言葉、ちょっと聞き取れなかったのでありますけれども、集約はまだできていない。できているといたしますと、大体今度の集約、各市町村県等から上がって参りましたもので、部落の人口、戸数、部落の数というようなものについては、一応押え得るだけのものは現在お持ちなのかどうか。それからこれとの関連で、明年度予算にありまする実態調査費の三百二十九万円、これがまだ結論が出ていないとすれば、去年のようなものを引き続きやるという考え方か、あるいは三十七年度において問題になった重点的な抜き取り調査というようなもののために費やされる考えでありますか。この点、あるいは八木委員湯山委員質問とダブるかもしれませんけれども、お答を願いたいと思います。
  54. 江守堅太郎

    江守説明員 三十七年度にいたしました実態調査の結果は、三月の末に数字がまとまりますので、今申されたような点は、まだ私どもはわかっておりません。それから、三十八年度におきましては、本年度いたしました精密調査、これと同じ型のものを考える予定でございます。大体十二地区ぐらいはあの予算額でできるというふうに思っております。
  55. 田中織之進

    ○田中(織)委員 なお、審議会運営の問題についてでありますが、委員諸君非常に熱心に活動されておることは、私どもの組織から出ておる北原委員等を通じて承っておるわけでありますが、他の審議会委員との振り合いの関係もありますけれども、前段に申し上げましたように、この内閣によるところの強力な施策を待望するわれわれといたしましては、審議会の開催というようなこと、これは経費との関係もございますけれども、一つピッチを上げていただく意味で、具体的な運営について御配慮をいただきたい。今のところ、北原委員は上京するたびに私のところへ寄られまして、委員会の様子等については私も伺っておるわけでありますが、これをもう少し委員諸君には非常に気の毒でありますけれども委員会の開催日数等ももっと多く費やしていただきまして、この際、総理から出されている基本的方針に関する答申を急ぐようにしていただきたいと思うのでありますが、この点についての総務長官の所見を伺います。
  56. 徳安實藏

    徳安政府委員 御趣旨の点をよく会長とも相談いたしまして、ぜひ御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  57. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総務長官急がれるそうですので、関連して二点だけ伺っておきたい。  審議会ができました意義というのは、同和対策というものを総合的に前進させるためにできておるのです。それに予算編成の段階では、むしろ審議会ができたことがブレーキになっておる。審議会の結論を待って総合的に組みますという各省の考えが出てきておる。特に農林省はそうなんです。そういうことでは目的に非常に反しますから、こういう点についての長官のお考えを聞きたい。
  58. 徳安實藏

    徳安政府委員 もちろん基本的な問題につきましては、ただいまお話のような考え方に立っておると思いますが、取り急ぎやるべきものは、それにとらわれずにやるべきだと思いますから、こういう点について農林省等によく連絡いたしまして、あやまちのないようにいたしたいと思います。
  59. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今の点は、お言葉通り審議会があるということを口実にして、各省が予算を組むのに消極的になるということはもってのほかですから、十分気をつけていただきたいと思います。  二点目は、さっき審議会事務局長から調査についての御答弁がありましたが、調査を拒否しておる府県がありましょうか。
  60. 江守堅太郎

    江守説明員 そういう府県もございます。
  61. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どういう府県ですか。
  62. 江守堅太郎

    江守説明員 山形、宮崎、長崎、富山、石川の各県のうちの一部にそういうところがあるそうでございます。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっき田中委員質問に対して、厚生大臣も労働大臣も、あるいは長官も、池田内閣の閣僚としては積極的にこの問題と取り組むという所信の表明があった。今の調査を拒否しておる山形県出身の、大臣に匹敵する重要な発言権を持った方がおるでしょう。だれですか。——黒金官房長官という人の出身はどこですか、知っておったら答えて下さい。
  64. 江守堅太郎

    江守説明員 山形県の御出身でございます。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうですか両大臣、閣僚としては積極的に取り組むなんて言っておるけれども池田内閣の女房役である官房長官の出身の県が調査を拒否しておるのです。黒金官房長官の出身は米沢市です。米沢市には部落があると思うか、ないと思うか、答えて下さい。どうですか。
  66. 江守堅太郎

    江守説明員 ちょっと聞き漏らしまして何ですが、山形県にはこういった同和問題の調査の対象になる部落があると私どもは思って、実態調査をいたそうと思っておるわけであります。山形県の方では、自分の県にはそういうものはないということで、調査の拒否をしておられるのであります。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今の山形県からのそういう報告があるとしたら、これは重大問題ですよ。まず第一に米沢市にあります。栄町に百八十戸くらいの未解放部落があります。これは昭和三十三年に、解放同盟の松本治一郎委員長が実際に行かれて実態を調査されている。そしてその調査資料は、三十四年に米沢市に出しておる。これは重大問題です。それで閣僚が努力すると言っておりますが、黒金官房長官の出身市にこういうあれがあるのです。調査を拒否しておる。どう思われますか、総務長官
  68. 徳安實藏

    徳安政府委員 おそらく官房長官はそうした事実を知らぬと思います。
  69. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 知らぬじゃ困るじゃないですか。それだから熱意がないというのですよ。幾ら言葉で言ったって、実際の処理が……。そう知らぬでは困りますよ。
  70. 徳安實藏

    徳安政府委員 おそらく市の方から官房長官に、そういうふうなことは申し入れてきていないだろう。これは想像ですけれども、私は本人に聞いてみますが、おそらくそういう事情は知らないでおられるのではないかと思います。きょう聞いてみます。
  71. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今長官に聞くといわれておりますから、私はそうしていただきたいと思う。実際、今、厚生大臣なり労働大臣なり総理府長官が非常に熱意を持った所信を表明されておるのに、池田内閣官房長官の出身市に実際に未解放部落があるのに、そういう態度でおるということは実に遺憾である。それはきょう出られております両大臣なり総理府長官の責任で、黒金官房長官によくそのことは伝えていただいて、山形県がそういう部落がないということを報告してきておるなら、私は明確にしていただきたい、このように存じます。
  72. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それでは、あと各省関係で具体的な問題について、若干お伺いをいたしたいと思います。  厚生大臣にまず伺いたいのでありますが、和歌山市の平井地区という、やはり未解放部落人たちの多いところであります。そこで今月の初めからということでありますが、具体的に発見をされたのは十日くらい前からであったと思うのです。集団赤痢が発生いたしまして、一昨日までの状況を見ますと、八十八名保菌者が出まして、もちろん市の伝染病舎に収容されて、あと若干の保菌者がおるのでそういう点について検査を進めるし、自余の消毒その他の措置について、県、市をあげて努力しておるという状況でございますが、このことについては厚生省の方に報告は上がっておりましょうか。いかがでしょうか。
  73. 西村英一

    ○西村国務大臣 私はまだ聞いていないのでありますが、公衆衛生局長の所管になりますので、公衆衛生局長にすぐ聞いてみます。
  74. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今見えておりませんか。——それでは御連絡願って、その後の状況をお聞きしたいのでありますが、ここは、私が先ほど一般的に申し上げた状況と——非常に大きい、人家の密集した地区でございますが、かなり背後の山、といっても丘陵的な山に向いて、だんだん上りになっておる地区でございます。そういう関係で、かなり上部の方の井戸水で赤痢患者が発生したという場合には、勢い——やはりここはまだ井戸水なんでございます。そういう意味から、前々から、地区の人たちにはせめて簡易上水道でもということで、地区の人たちも寄り寄り協議をいたしておったのでありますが、和歌山市に、大臣も御承知かと思いますが、住友金属の和歌山製鉄所がどんどん拡張されて参ります関係から、この地区を含む区域を河西といっておりますが、この河西地区にももちろん工業用水は現在入っておりまするので、上水道関係——どちらかと言えば、新市として新しく合併したところでございます。いなかの習慣として井戸水を利用しておるわけであります。市の水道計画をこの面へ充実させようということは、かねて要求しておったのでありますが、不幸にして関係地区から約百名に近い実は罹病者を出しましたために、特に、その問題が持ち上がってきておるわけであります。全国には、実はこういう地区はまだ私、相当あると思うのでございます。そういう関係から、上水道、下水の問題を一これは大きく言えば建設省の所管ということになるわけでありますけれども、厚生省に大臣が就任されて、簡易上水道というようなものについては、むしろ厚生省が主なる所管省のような体をなしておるという点は、実は同和対策の問題からそういうように発展したという歴史的な事実があるわけなんで、今度はどろぼうを見てなわをなうような形でありますけれども、市としては、工業用水も簡単に浄化作用をつけられば飲料に供して差しつかえない、こういうことでございまするので、急速に市が処置するように進めておるようでありますが、特に一つ公衆衛生局関係でこの程度の集団伝染病の発生事故ということは皆無ではないだろうと思いまするけれども、特にこの地区がそういう問題、いわゆる劣悪なる条件がやはりそういう不幸な事態を招いた特殊なケースという点に思いをいたされまして、御処置を願いたいと思うのですが、大臣の御所信を伺いたいと思います。
  75. 西村英一

    ○西村国務大臣 さっそく取り調べますが、今は簡易水道でやれるものかどうか、地理的な問題もありましょうが、さっそく取り調べまして、そういうようなことがありますれば善処いたしたいと思います。なお、おそらく同和部落は、やはりどちらかと申しますと、今申し上げましたようなところが多いのじゃないかと思われますから、水道等につきましては特に注意をしなければならぬ、かように思っておりますから、今の田中さんから御指摘のところは、さっそく取り調べまして善処をしたい、かように思っております。
  76. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それから厚生省の関係でお伺いをいたしたい。同僚諸君からも質問があろうかと思うのですけれども関係地区は不良住宅の密集地帯で、これは都市部落、農村部落を問わず、不良住宅が非常に多い事情にあるわけです。そこで、不良住宅改良法によりますところの一種、二種の公営住宅あるいは改良住宅というようなものについて、例年施策を進めていただいておるわけでありますが、この点について、昨日予算分科会で建設省の住宅局長等から、ある程度の数字を伺ってきておるのであります。ところが、公営住宅あるいは公営アパートというものができまして、そこへ部落人たちが入るということは、今日の宅地難の時期にあるいは生活の簡素化ということにもなりますし、地区の環境整備という点から見ても非常にいいことでございますので、私どももそれを勧めるのでございます。しかし、実際問題としては、たとい公営のアパートでありましても、月々やはりアパートでは家賃を払わなければならぬわけです。従って、ちょっと台風でもあれば倒れるような、あるいは雨が降れば雨漏りするような不良住宅でありましても、狭いながらも何とかのわが家で、立体的なアパートに入ることはなかなか好みません。さらに、地区内で子供相手の駄菓子屋であるとか、あるいは荒物店であるとか、ちょっとした食料品店であるとかいうようなものを営業しておるということになりますと、なかなか、アパートの二階、三階でそういう駄菓子屋をやるわけにはもちろん参りません。そういう生活上の収入からの問題で、やはり狭くとも家賃を払うことの要らないわが家を改修して生活することができればということで、住宅の改修に対する要求というものが切実になっている。特にこの点は、もちろん与党からのお話しもあったと思うのですが、部落民の方では切実な要求なものですから、厚生省へお願いをしておいたのであります。昨日建設省から聞きますと、とりあえず住宅金融公庫で改修資金の貸し出しを計画されているやに承ったのでありますが、これは厚生省はどの程度までタッチをされ、そして全体の戸数は、私は今資料は持っておりませんが、たしか八千戸分か九千戸分であったと思います。これは、そっくりそのまま同和地区の関係に振り向けていただけるものなのか。その住宅改良資金の貸付対象というものについて、どのように押えられているか。建設省の言い分では、厚生省と十分話し合っていきたいと思うということでございますので、この点は厚生省当局から承っておきたいと思うのであります。
  77. 西村英一

    ○西村国務大臣 それは建設省からお聞きになりましたでしょうが、第二種公営住宅の所管は建設省でございます。しかし、それをどこに振り向けるかというときは、厚生大臣に建設大臣は協議をしなければならぬ。従って、その第二種公営住宅はどういう地区に回すかということにつきましては、私の方は発言権を持っております。しかし、その主管省はあくまでも建設省でございます。それからその他の住宅の問題につきましては、生活保護者の住宅につきましては住宅扶助があると私は思うのです。なおその他の詳細な点は、政府委員がおりますから、政府委員から答弁させます。
  78. 大山正

    ○大山(正)政府委員 住宅改修につきましては、住宅金融公庫から農村分その他の形で一応のワクをとっておるように伺っておりますが、これをお話のように、同和地区にどの程度配分するかというようなことにつきましては、ただいままでのところまだ私ども聞いておりませんので、この点よく建設省と連絡いたしまして、できるだけそのような地区に振り向けるように努力したいと思います。
  79. 田中織之進

    ○田中(織)委員 昨日の建設省の説明では、厚生省と緊密な連絡をとって、貸し出しの利率も六分五厘というのを六分に下げた。私、きのうのことでありますけれども、戸数はまだはっきりと覚えていないのでありますが、これはほんとうは厚生省の関係で、特に同和対策という関係でやっていただくように——委員長もうなずいておられますけれども、実は私どもは要望いたしたのでございます。頼みにしておった厚生省が、これから建設省と相談するではいささか心もとないわけでありますが、どうか一つ至急連絡をとっていただきたい。この改修資金の貸し出しというのは、同和地区のみならず、相当歓迎されるのではないかと思うのでございます。たとえば和歌山県の新宮市では、昨日も申し上げたのでありますけれども、これの貸し出しについての市としての利子補給までを考える。市だけでこういう改修資金を若干出しまして、あそこでは、駅に近いところにある地区でございまするけれども、やはり環境改善に大いに役立っておるのでございます。まさに一石二鳥ではないかという点を考えるのでございます。この点については、ぜひ一つワクを確保していただきたいと思います。  それから、大臣がおっしゃられました第二種公営住宅の問題については、三万三千七百戸を三十八年度に建設するという計画を伺いました。そのうちで、実は半端の七百だけしか同和地区へ予定しておらないということを、建設省の事務当局から——建設省から担当の住宅課長かがお見えになっておるはずですけれども、伺いましたので、それではあまり少な過ぎるのではないか。公営住宅の中でも一種ではなく、第二種住宅に対してこの地区からの要求がいかに大きいかという点から見て、従来の実績から見ても、私は、七百戸というのはあまりにも少な過ぎるということで、特に予算執行上の配慮を建設大臣出席のもとで昨日要望いたしておるわけであります。この点は、今改修資金の問題と関連をいたしまして、最近は内閣審議室ができて事務局長もできたので、同和対策の窓口は厚生省から総理府に移ったような感じになられては困ると思うので、この際私は注意を喚起するとともに、厚生大臣はもちろんでありますけれども、事務当局も御奮発を願いたいと思います。いかがですか。
  80. 西村英一

    ○西村国務大臣 今、田中さんのおっしゃることは三十八年度のことだろうと思いまするが、三万三千で同和に七百戸、それは建設省の今の腹づもりでしょう。私の方は、それとは別に要求をいたすつもりでございまして、まだ最終的な御相談は受けておりません。向こうが向こうだけの腹づもりを言ったのかもしれませんが、これからの折衝でございまするので、私たちの方は、低所得者のそういう特殊なところにたくさん振り向けたいと思っておりますが、まだ決定しておることではありませんから、御了承願いたいと思います。
  81. 大山正

    ○大山(正)政府委員 先ほど御質問のありました和歌山県の伝染病の問題でございますが、二月十一日に報告がございまして、患者が五十七名、保菌者が二十六名、計八十三名でございます。防疫対策につきまして直ちに指示をいたしておりまして、事後措置の万全を期しておりますが、なお、お話の水道の問題につきましては、さらに関係の方に私から連絡をいたしまして、十分調査するようにいたしたいと思います。
  82. 田中織之進

    ○田中(織)委員 なお、私は厚生省関係ではもう一点伺いたいのでありますが、関係地区の下水道の整備がほとんどできておらない。その特徴的なものとして、これは前回にも申し上げたかと思うのでありますが、和歌山市に芦原地区という、これは和歌山の中小の皮革工業の中心地帯でもあるわけでございます。そこで製革工場から出る汚水に夾雑物がまじっておるというような関係で、排水が悪いという事情もあるわけでございますけれども、少し雨が降りますと、大ていの家はもう床まで浸水をする。こういうような関係で、おととしの第二室戸台風のときなどは棟まで浸水して、第二種公営住宅として四階建のアパートが建っておりますので、ようやくそこに避難をして、昼間でありました関係もありますけれども、命が助かったというような場面すら出ておるのであります。この関係地区の環境整備、下水、排水というような点については、予防衛生的な見地からも特に厚生省にお考えをいただかなければならぬと思いますが、本年度の予算等の関係では、この点についてどこまで留意とせられておりますか。この点は都市計画との関係がありますので、勢い住宅問題と同じように、建設省との関連を持たなければならないと思いますけれども、その関係がどうなっておるかという点についてお伺いをしたいと思います。
  83. 西村英一

    ○西村国務大臣 同和地区に対する下水の問題は、大体こういうふうな取り組みになっております。大規模な下水道は建設省でやり、小規模なものは厚生省で受け持つということになっております。今、田中先生のおっしゃるところが、どのくらいな規模の人家のところであるかということによって、建設省でやるか私の方でやるかということをきめなければなりませんが、そこまで本年度の予算として積み上げておるわけじゃございませんけれども、下水道は相当に金がありますから、事情によっては建設省でも私の方でも十分心配はできることと思われますから、現地をもう少し詳しく後ほどでもお教えいただければ、小規模な下水、排水路というようなものですと、厚生省がやることになっております。
  84. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点は、ここは大大体三千五百戸ぐらいあります。今日ではずいぶん入り組んでおりますけれども、和歌川という川がありまして、それに平行して、そういう工場の汚水のために排水溝もできておるわけです。しかし、その排水溝よりも一般の住宅の方が——具体的には和歌山市の雄松町三丁目、四丁目、五丁目あたり、あるいは汐見町の三丁目、四丁目というような地区ではないかと思いますけれども、こういうような地区は、和歌川の堤防に沿うて布設しておる排水溝よりも実は低くなっているわけなんです。従いまして、そういう部分のものは流れない、こういう関係にありますので、一応建設省としては、大きなパイプは通っておりますけれども、それに通ずる各人の家だとか、あるいは一時の雨で道路面から測溝に寄せてくる水だとか、そういうようなものを完全に、和歌川に沿うて布設しておる排水溝まで吸収することができない。こういうようなところに今問題があるわけなんで、これはどこの所管になるかという点については、一つ具体的に和歌山県当局を呼んでいただいて、検討を加えていただきたいと思うのです。同様な事情のところは、たとえば河川に沿うてある部落というようなところにおいても、私は問題があると思うのであります。そういう意味で、この点についてはさらに格段の努力をしていただきたいということを要望したいと思うのであります。
  85. 大山正

    ○大山(正)政府委員 ただいま調べましたところ、和歌山市の芦原地区におきまして、同和対策事業といたしまして三十七年度に県と協議しまして、市の計画の一部について補助を決定いたしておりますので、多分先生のお述べになりましたのに相当するかと思いますが、なおよく調べまして、必要のある向きにつきましては計画を進めて参りたい。もしも三十七年度に出しました分であるとしますれば、こちらは来年度も引き続き見るという予定でおるわけでございます。  なお、下水、排水路の同和対策事業としての全般の予算は、来年度予算額、また個所数等も若干ふえておりますので、できるだけそういう方面の事業も拡充していきたい、かように考えております。
  86. 田中織之進

    ○田中(織)委員 同僚八木君から厚生省に対する御質問も残っておるようでありますけれども、所用あって外出しておりますから、また別の機会ということにして、ほかにさしあたり厚生省関係になければ、ほかの各省関係に移りたいと思います。
  87. 田原春次

    田原委員 関連して。私は後ほど通商産業省の関係と大蔵省の関係にお伺いするつもりでありますが、せっかく厚生大臣が来られておりますので、希望を述べて御検討を願っておきたいことがあるわけであります。  それは、言うてみれば、同和金融公庫みたいなものを新しく設ける必要があるということを私は考えております。現在、中小企業金融公庫、それから零細企業に対しては国民金融公庫、農林漁業金融公庫等がありまして、国家の資金でこれらの層の人々に長期貸付になっていることは事実であります。しかしながら、これは一般国民を目ざしておるものでありますから、むろんその中に、部落民の産業あるいは漁業等で貸してもらっているものもあります。しかし、どうしてもその割合と申しますか、やはりそれらが幾らか不便になっておるので、これらの三つの公庫から一定額を出して、新たに別個独立のものをつくってはどうかという空気が非常に関西の方で強いのです。こういう問題は、あなたの所管ではないけれども、ひっくるめて同和地区における経済産業の資金の面の援助でありますから、一つ検討しておってもらって、後ほど関係省にいろいろ質問もいたしまして厚生省に持ち込むことがあると思いますから、厚生省の所管ではありませんけれども部落が厚生省の対象になっておる。その点を今申し上げておりますが、御所見があれば御所見を聞いておきまして、後ほど他の機会に発言してみたいと思います。
  88. 西村英一

    ○西村国務大臣 低所得の方々の金融、なかんずく同和の方々に対するそういうことにつきましては、いろいろこれまでの金融の面もありますけれども、せっかくそういう御要望もございますれば、これは主として大蔵省の所管でございますが、検討してみたい、かように考えております。
  89. 田原春次

    田原委員 厚生省所管では医療金融公庫制度がありますね。従って、部落内におけるごく小規模の診療所あるいは医院、こういうものについての医療金融公庫を通じての援助はできると思いますので、一段の努力をしてもらいたいと思いますが、これはどういうところまでいっておりますか、一応お伺いしておきたいと思います。
  90. 西村英一

    ○西村国務大臣 医療金融公庫で貸すかと言ったのですか、御質問、私はちょっとあれしたのですが、医療金融公庫でもちろん医療機関には貸すわけです。御質問がちょっとわからなかったのですが、もう一回、失礼でありますけれども……。
  91. 田原春次

    田原委員 厚生大臣は耳が遠いようでありますけれども、補聴器ぐらいつけて、質問中に私語されないようにしてもらいたい。あなたの所管でなし得ることは、さしあたり医療金融公庫の面からする各部落における医療施設の早急なる整備、もしくは新設、拡充ということがあると思うのですが、そのことを今聞いておったわけです。
  92. 西村英一

    ○西村国務大臣 医療金融公庫で部落の医療機関に対する貸付はできるわけでございます。
  93. 田原春次

    田原委員 特に力を入れてやるかということを聞いておるわけです。
  94. 西村英一

    ○西村国務大臣 医療機関につきましては、それはもちろん力を入れなければなりません。十分力を入れてやるつもりです。御希望がありますれば、いつでもそういうところには応ずるつもりでございます。
  95. 秋田大助

  96. 湯山勇

    湯山委員 最初お尋ねいたしたいのは、研究指定校が、昨年通り来年度予算にも計上されておるようでございます。実際は、同和教育をどう進めていくかということは大へんむずかしい問題なので、この辺のことは議論される機会が非常に少ないと思います。そこで、現在やっておられる研究指定校について、文部省としては、それによって同和教育の成果がどう上がっているか、こういうことについてどういう御理解、御把握になっておられるか、まずこれを伺いたいと思います。
  97. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 研究指定校の制度は昭和三十四年から行なっておりまして、それぞれ研究テーマを持ちまして、たとえば同和地区の小中学校におきます学力の向上、それから進学指導の充実、道徳教育の充実、それから保健衛生の向上というような題目はそれぞれ持っておりますけれども、要は、同和教育をいかに充実していくかというふうなことではないかと思います。そういうふうなテーマにつきましていろいろ研究をいたしまして、その研究成果を得まして、いろいろなところに発表する、あるいは。パンフレットにいたしまして文部省へこれを紹介するというふうな方法をとっておるわけでございます。しかしながら、問題はむしろそういうふうな表面に現われたことよりも、同和地区にそういう中心校がございまして、同和教育についていろいろ研究しておるということが非常に重要なことではないかと思います。そういうふうな中心校がございまして、そこで実際に研究をしておって、ほかの学校が同和の問題につきましていろいろ問題のある場合には、そういうところに行けばいいというふうな、無形の効果というものがきわめて大きいものだと考えておるような次第でございます。
  98. 湯山勇

    湯山委員 今おっしゃったこともわからないこともございませんし、そうだからといって、その効果というものは確かに無形のものであって、では、あったのかどうかという判定もむずかしいと思います。こういうやり方がこれだけ予算を使ってやって、はたしていいかどうか、そういう御検討をなさったことはございませんでしょうか。
  99. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 具体的に検討したことはございませんけれども、従来から関係者あるいは先生方の御意見を聞きましても、こういうことはやはりよりどころになる中心校があるということがきわめてよいことであり、また今後こういうものを続けていくべきじゃないかというふうな御意見は承っております。
  100. 湯山勇

    湯山委員 それで今度は、同和教育指定校の指定の仕方でございますね、選び方、これは府県の方から申請があって、それによってやるということはわかります。しかし、最終的な決定は文部省の方でなさるわけですから、機械的におやりになるのか、それについていろいろな条件を設定して、その条件に合わせて御指定になるのか。それから今度は指定した場合の方針でございますね、それをどう指導していくか、これはどういうふうにやっていらっしゃるのでしょうか。
  101. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 私どもの方は、県にお願いいたしまして、県の方から御推薦のございましたものにつきまして、指定をいたしておるのが実情でございます。実態は県の方で一番よく御存じでありますので、私の方では、なるべくそういうものについて、上から高圧的にやるというふうなことはいたしておりません。しかしながら、やはり私どもの方で、ことしはこういうことを研究してもらいたいというふうなテーマがあるわけでございまして、それにふさわしい学校を県の方でお選びいただくというのが実情でございます。  なお、指導の方針といたしましては、もちろん同和教育についての根本的な考え方等は、次官通達によって明らかにされておりますので、その線に沿ってやっていただくということになっております。
  102. 湯山勇

    湯山委員 県の方から推薦してもらう場合に、どういう種類の学校あるいはどういう内容を持った学校、そういうことはなさらないで、ただこういうテーマについて研究するにはどこがいいか、こういうことでございますか。
  103. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 大体さようでございます。
  104. 湯山勇

    湯山委員 今の二つの御答弁から、文部省として、同和教育を推進していく基本的な方針というものはどういう点に置いておられるか、特に学校教育の面で、どういうところに重点を置いて同和教育を進めていかれるか、どういうふうになっておりましょうか。
  105. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 実は次官通達がございますが、ちょっと長いので、今ここで御紹介するわけにいかないのでございますけれども、基本的な考え方といたしましては、もちろん憲法、教育基本法に基づきまして、基本的な人権において、人種とか信条、性別、門地というような外的な要素によって左右されない教育というようなことを念願としてやっておるわけでございます。
  106. 湯山勇

    湯山委員 常にそういう基本的な、憲法、教育基本法の精神によってやっていくんだということは、よく徹底しておるでしょうか。最近はそういうことの御要請はなくて、ただ機械的に推薦してほしいということでおやりになっておるのじゃございませんか。
  107. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 もちろん私どもの方といたしましては、ただいま先生がおっしゃいましたような趣旨でやっておるつもりでございますが、最近そういう点が欠けておるという御指摘もございますので、そういう点につきましては十分考慮しながらやっていきたいというように考えております。
  108. 湯山勇

    湯山委員 今の点は、やはり同和教育の非常に基本的な問題で、むしろ最近のやり方を見ておりますと、今おっしゃったように、この一番大事なところが抜けているために、かえって間違った方向にいくおそれもあるわけでございますから、十分御留意をいただきたいと思います。  それから、同じく文部省でおやりになっておる研究協議会のあり方については、実は昨年も御要望申し上げて、従来やっておられる行き方は、管理者といいますか、役所の側ばかり中心にしておやりになっているが、それではほんとう同和教育の前進にはならないから、一つ現場の先生をたくさん入れるようにということと、それからその地区の父兄、そういう人たちも参加してやれるような、そういう形のものにしなければ同和教育ほんとうの目的達成は困難じゃないかということを申し上げまして、今年度は若干改善がなされておることを大へん喜んでおるわけですけれども、しかし、それでも地域との接触、そういう面では欠けておる点がまだ多いように思うのです。今度改正になった場合は、研究協議会に参加する人たち構成がどう変わるか。現場の教師がふえることだけはよくわかりました。指定校が参加する、こういうことですから、現場の教師がたくさん参加しますけれども、しかし、それはどの程度なのか、一人ずつ参加してもそういうことになるだろうと思いますし、それはどういう構成になる御予定でございますか。
  109. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 先生の御趣旨、十分わかるのでございますけれども、研究協議会自体が、これは国の仕事と申しますか、国でやるようなものでごごいますのでやはり各地方々々におきます指導者というものをここで養成するというわけではございませんけれども、指導者を中心にして、いろ研究を推し進めるというふうなことになるだろうと思います。そこで、先生のおっしゃいます御趣旨は十分わかるのでございますけれども、人数の制約もございますし、国としてこういうものをやる場合には、やはり指導者というものを中心にするというような点もございますので、そういう点も御了承いただきたいと思います。
  110. 湯山勇

    湯山委員 指導者と言われましても、同和教育専門の指導者というのではなくて、大体集まってくる人は、同和教育を担当している指導主事とかそういうことになってしまってほんとう同和教育が何であるかということがわからない人が多いと思います。そこで、今おっしゃったように、指導者ならばほんとう同和教育の指導のできる人、事務的にそういうことを担当しているということじゃなくて、実質指導のできる人でなければ効果は上がらないと思います。かえって旅費のロスになるぐらいなことです。それから先ほどおっしゃったように、重点校ということが非常に大きな力になっているのじゃないかというお考えからいっても、ただ単に名目的な、役職の上でやむを得ずやっているという人たちよりも、実質そういう人に集まってもらってやるという形にいかなければ、今おっしゃった趣旨も生きてこないと思うのですが、その辺は今度は改善されるようになっておるでしょうか。
  111. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 御趣旨につきましては、別に反対という意味ではございませんし、よくわかるのですけれども、やはり指導主事というものが、学校教育につきましては一応責任を持ってやっていただくということは当然だろうと思いますし、また、こういう同和教育というようなむずかしい問題につきまして、そういう理解を深く持っておる者が参加することもまた必要だと思いますが、そういう面から考えまして、一応当面の責任者であり、しかも深い理解を持つべきである指導主事というものを中心にして運営するということも、多少そういう支障がありましても今のところやむを得ないというような点があるだろうと考えております。
  112. 湯山勇

    湯山委員 言われることはわかりますけれども、しかし、そういう形で実際現場でやっておる人とそういう指導主事のような人を集めたときに、一体指導主事が指導できるかというと、できないと思います。ただ若干指導主事の認識を深めるだけの研究協議会、こうなったのでは意味がないと思います。  そこでもう一つ、これと関連してお尋ねしたいのは、文部省でほんとう同和教育を導門にやっておる方がございますか。
  113. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 文部省では、ただいま初等教育課で学校教育に関しましては所管をいたしております。ほんとうの専門家といわれますと、もちろん御不満はあると思いますが、私ども一生懸命やっておるつもりでありますので、一つ今後御指導のほどをよろしくお願いたします。
  114. 湯山勇

    湯山委員 課長の立場でよくやっていただいておることは了解できると思うのです。ではなくて、やはりこの教育は、効果があったかなかったかという判定さえなかなか容易ではありません。そこで、たとえば、特殊教育ならば、以前の特殊教育の課のないころはその担当者がおられましたし、特殊なものについては、それぞれの経験のあるりっぱな方がおられると思うのです。文部省としては、こういう研究会をおやりになることよりも、むしろそういう体制をおとりになるという必要があると思うのですが、これは一つ御考慮願いたいと思います。  それと関連して、これは苦情のようなことを申し上げますけれども、実は文部省でおやりになる研究協議会は、部落問題と取り組んでおる人には非常に大きな問題で、どういう研究会になるのか傍聴させてもらいたいということを昨年申し入れがありました。ところが文部省ではお許しにならない。中等教育課長もそれでは困るということで、私行って、結局局長まで行って、局長の紹介の名刺を書いてもらって、たった一枚だけで傍聴した。こういう事実があるのですが、こういう官僚的な会ではなくて、本来、同和教育それ自体が解放をねらっての催しでございますから、そういう偏狭なものにしないで、もっと受け入れる。会場が狭いというようなことは理由にならない。余裕のあるだけは外部の人も入れるという形にする必要があると思うのです。今度は、そういうことはできるようになっておると思いますが、いかがなものでしょうか。
  115. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 同和問題というのは、大へんむずかしい問題でありまして、いろいろな方のお集まりでございますので、いろいろな意見も出るわけであります。しかし、発言によりましては、公開していろいろ討議するということになると、やはりきれいごとになってしまうようなおそれもございます。ほんとうに実情をさらけ出して、腹を打ち割ったような話し合いにするということでありましたならば、やはり部内だけでやるのが、私は望ましいのではないかというふうに考えるわけでございます。しかし、先生の御意見もございますので、この点につきましては、帰りまして十分検討してみたいと思います。
  116. 湯山勇

    湯山委員 そういう問題は、よくわかっておる人を入れなければ問題にならないと思います。それよりも、新聞社の方は入っておる、そして直接そういう問題と取り組んでおる人は入れない、いかにも筋が通らない話で、これはぜひ課長の方から局長におっしゃって、局長は名刺を書いて出すくらいですから、そういう意思がないことはないと思います。もしそういうことを拒否するとか、そういう制限を設けるとすれば、おそらく局長よりももっと上の段階でそういう指示があったものと私は判断をいたしまして、厳重な抗議をしたいと思いますから、一つ十分お含み願いたいと思います。学校教育課の方は大体以上でございます。  次に、社会教育の方へお尋ねいたしたい点は、社会教育でことしも百八十九万二千円約二百万の同和地区の団体育成の予算というのが組まれております。これはどういう団体を育成なさるのか、あるいは育成された団体というのはどういうものがあるのか、これを一つお示し願いたいと思います。
  117. 福原匡彦

    ○福原説明員 お答えいたします。  社会教育で行なっております団体育成の対象となっております団体は、子供会、青年団、婦人会、その他広く成人の団体というような団体を対象といたしておりまして、これは社会教育一般で行なっております青年団、婦人会の等育成と別に、同和地区におきましてはもう少し小集団、グループに対しまして委嘱いたしまして、そういう諸団体において、子供会でございますと、非常に卑近な学力の向上とか、そういった問題を中心にする、あるいは婦人会でございますと、生活の改善とか、そういった直接その地区で関心の深い問題を取り上げましてその団体が研究を進めていく、そういう事業に対して助成しているわけでございます。
  118. 湯山勇

    湯山委員 育成した団体というのは、数はどれくらいございますか。
  119. 福原匡彦

    ○福原説明員 これは毎年、ただいま湯山先生おっしゃいました二百万足らずの予算でやっておりまして、その予算の限度で、毎年各府県から申し出がございますものにつきまして、府県とよく相談をいたしまして、はっきりあれいたしておりませんが、大体三十ないし四十くらいの団体に対して助成をしております。これは毎年対象が変わってきているところもございますし、若干のものは引き続き委嘱しているという状態でございます。
  120. 湯山勇

    湯山委員 これは助成じゃなくて、文部省自体で育成していく、こういう建前でございませんか。そうすれが今のようなことじゃなくて、ちゃんと実態も御把握になるし、どれどれのものをどうしているという、はっきりしたものがなければならないと思うのですが、どうなっておるでしょうか。
  121. 福原匡彦

    ○福原説明員 ちょっと資料の厳密なものを持って参りませんでしたのであれでございますが大体四十程度に、毎年、委嘱として出しております。
  122. 湯山勇

    湯山委員 これは一つ局長に申し上げたいのは、県を通してやるということになりますとかなり片寄ったところに出されている、そういう具体的な事例があるようでございます。せっかく文部省でおやりになる事業ですから、まかせきりにして、そういことになさらないで、十分実態調査をなさってその上でおやりになるように、と申しますのは、先ほど関係団体の意見を聞いたかどうかという中に、たとえば解放同盟あるいは同和会、いろいろな名前が出て参りました。この団体育成のことも、そういうつながり方にこだわらないでやっていくべきだと思うのですけども、どうしてもそういうこだわりがあるようです。こういうことがあれば、かえって逆な効果を生ずるおそれがございますから、これは一つ、よくそういう点を審議会等とも御相談になるし、それから審議会委員の方には、いろいろそういう運動をなさった方もおありになるわけですから、十分相談して、単に府県にまかしきりにしないように、責任は文部省におありなんですから、ただ金を出してやったんだということで済まさないように、一つ責任の持てるような運営を願いたいと思います。  それから次に、もう一つお尋ねいたしたい点は集会所の問題です。これは今年度十カ所予算化されましたが、だれが管理するかというようなことで先般お尋えしたところ、まだ手がつかない、こういうことでございました。もう翌年の予算がきまる段階で、その十カ所の集会所がまだどうもどうなるかわからないのだ、だれが管理するかもわからないのだ。できれば住み込みでやってもらえるようにしたいということですが、来年度また十カ所出ております。これなんかも、ほんとうに要請があって適切なところへやれば、そういう事態はないと思うのですけれども、これを何だかやったんだということのために、やったという印象を受けて大へん私ども憂慮しております。この集会所はどうなるのでしょうか。
  123. 福原匡彦

    ○福原説明員 これは、同和集会所につきましては、私どもは社会教育で一般的にやっております公民館の分館と、実質的には同じように考えております。その公民館の管理と同じように、町村において責任を持って管理していただく。ただ、実質的に住み込みの管理者がない場合に、せっかくの効果も期待できないということになりますと、これは御指摘の通り、せっかくの施設が有意義な活用をはかられないというおそれがございますので、これは今年度の分がだんだんそれぞれ完成いたしましたり、あるいは完成に近づいたりしておりますので、この機会に関係者よく研究いたしまして、その管理方法につきまして遺憾のないように取り計らっていきたい、かように考えております。
  124. 湯山勇

    湯山委員 これはどういうふうに管理させるといっても、てんでんばらばら、たとえば公民館に付属して公民館で一緒に管理する。あるいは町村が直接管理する、あるいはだれかに住み込まして管理させる、そういう管理の形態はどういう形でもいいわけですか、それとも、何かこれだという基本的な考え方がおありになるわけですか。  それから、ついでですが、今年度の十カ所分、同和地区の小集会所、これは配分が全部きまったでございましょうか。
  125. 福原匡彦

    ○福原説明員 ただいまの管理方法につきましては、関係の町村の御意見をお聞きいたしまして、関係町村を通じまして何か共通の方式で、管理方法といったもので何が一番有効であるという結論が出ますれば、私どもそういう方策をとりたいと思っております。今のところ、そういう関係の町村の御意見を共通してお聞きしたことがございませんので、何かの機会にそういう形にして、今後の万全を期していきたい。今のところは、関係の町村でどういう管理方法をお考えになっておるか、一応それを尊重するという気持でおります。  それから本年度の十館にきましては、全部配分がきまりました。それぞれ建設途上あるいは完成を見たところもございます。
  126. 湯山勇

    湯山委員 御要望申し上げたいと思うのですが、これは、今のようなことで非常にはっきりとしなかったためにおくれたと思います。それから隣保館などをせっかくつくっても、荒れているのが、相当ございます。せっかく発足したこの小集会所が、今のようなことだとまた荒れてしまうというおそれが多分にございます。そこで、もう少しはっきりした見通しを立てて有効に使えるようにしないと、幾らこうしてお願いして予算をふやしてもらっても、その予算が今のようなことで何に使われるのかわからない、無理に押しつけられて町村の方がもてあましている。これは文部省段階じゃそういうことはわからないでしょうけれども、そういうこともあると思います。それで、一つせっかくやることですから、しっかり役に立つように綿密に、しかも早くやるように、ぜひ来年度はやっていただきたい。私の質問はこれで終わります。
  127. 秋田大助

  128. 田原春次

    田原委員 部落内の中小企業の問題について、主として通商産業の係官方の方にお尋ねしたいわけでありますが、その前に文部省にお尋ねしたいのは、関連しておりますから申し上げますが、部落の歴史というものをはっきりやはり国民に知らせるような、特に初等中等教育においておやりになった方がいいと私は考えております。これはいろんな各種の著書を見ますと、大体部落の発生は、いわば軍事上の落伍者といったような感じがありますが、軍事上、すなわち封建時代における一勢力と他勢力との豪族間の戦いに負けた者が主である。それが漸次経済上、社会上の落伍者になっている。すなわち人種が違うわけじゃなくて、民族が違うのではなくて、経済上、社会上の境遇の違いから押し込まれた者が大半じゃないかと私は思うのです。従って、単に部落民だといって事情を知らずに差別をされておることが、特に小学校、中学校、高等学校に多いのですから、むしろ進んで各界の権威者を集めて、副読本か教師の教材にするか、いずれにしましても、部落とは何か明確な知識を持たした方がよくはないかと思うのです。まあ社会教育になりますか、初等中等教育になりますか、そういうふうな計画が望ましいと思っておりますが、何か文部省にそういう計画があるか、なければ至急やらせていただきたいと思う。どんなふうになっておりますか。
  129. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 全般的にはそういうふうなことはございませんですが、ただ、小学校、中学校の社会科におきまして、住んでおります地域のいろいろ歴史とか、そういうものにつきましては、十分指導するようになっております。そういう際に、先生のおっしゃることはまことにごもっともでございまして、そういう点に指導を徹底させるということで努力を傾注して参りたいと思います。
  130. 田原春次

    田原委員 それでは通商産業の方にまずお尋ねいたします。  去年の予算に数字が現われており、今年、昭和三十八年度の予算にも数字が出ております各種の項目のうちでお尋ねしたいのは、設備近代化補助というのがあります。続いて今度共同施設貸付金というのがあります。設備近代化補助の中で、部落中小企業零細企業に対してどの程度去年は補助をしておるか、今年はどの程度の計画を立てておるか、まずこれをお尋ねしたいと思います。  中小企業庁の人がいないようだから、それでは来られるまでに、労働大臣、ちょっと関連して一つだけ……。これは部落民の職業上の差別であります。就職上の差別でございます。全国にたくさんあります。お前は部落民だといって、雇わぬわけじゃないのですね、中には採用しておいて、身元を調べたら部落から通っている娘である、あるいは少年であるというのでは、他の理由をつけて断わっているところが、私の知っている限りでも相当あります。これは職業紹介所の一つの気をつけるべき問題ではないか、そういうふうに、部落民であるからというので、せっかく採用されてもあとで首切られることのないように指導する、なおまた、そういう例があった場合に、今後職業安定上の便宜をはからぬというような一種のなにをつけなければ、いつまでたってもそういう悲劇は消えませんよ。大橋さんの労働政策上、特に部落出身の就職について、差別撤廃に関するお考えをこの際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  131. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 就職に際しまして、偏見に基づく差別が現にあるということはまことに遺憾千万でございまして、私どもの立場といたしましても、これが是正に努めるべきものであると思います。職業紹介機構の運営にあたりまして、ただいま仰せのごとき措置をとりますことも、確かに一つの効果ある方法と考えられますので、十分に検討いたしまして御趣旨に沿うように努めたいと思います。
  132. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっと関連して。労働大臣には後ほど大原君や私からまた別な問題でお伺いしますが、今の問題に関連してちょっと伺いたいのですが、この前にも、前任の労働大臣にこの問題を、田原先生と私でいろいろ御質問申し上げました。そこで、今の職業安定所の問題もありますが、そのほかに、政府自体の機構の関係の国家公務員、あるいは関係の深い公共企業体、あるいは地方自治体、そういうところでも以前には採用についての差別がありました。今までかなり改善されているけれども、完全に改善されているとは思えない節がございいます。そういう就職上の差別をしないように、政府機関や公共企業体やあるいは地方自治体に対して、指導を強力にしていただく必要があろうと思います。それと同時に、民間の方の大企業においても非常な実際上の差別がある。部落出身だから採らないということは申しませんけれども、身元引き受け能力というようなことに籍口いたしまして、家が貧乏であるというようなことで実際上の差別をいたしております。それが若い部落の青年の意欲を喪失させ、虚無的にさせて差別の再生産のもとになる、そういうことについて、使用主、事業者に対する労働省としての教育が必要だろうと思う。そういうことについて、前任の労働大臣は積極的に取り組むと言われたわけでございますが、残念ながら寡聞にしてどのように取り組まれたかということを私ども承知いたしておりませんが、大橋労働大臣は、その問題について熱心に取り組んでいただきたいと思います。具体的に取り組んでいただきたいと思うわけです。それについての労働大臣の御見解を伺いたい。
  133. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題は、事業主の理解を促進するということ、それからまた、一般工員の理解を促進するということと関係があるのでありますが、これらの事柄は、どちらかというと、社会教育その他の施策に待つところが多いと存じます。労働省の力の及ぶところといたしましては、何と申しましても職業紹介の面であろうと存ずるのでございまして、従来から、職業紹介所はとかく職業紹介の数字上の成績を上げることに努めまして、求人先に対するいろいろな注文なり条件なりというものが、どちらかというと、なおざりでもございませんが、二の次にされておったようなきらいがあったのではないかと私としては考えておるわけでございます。そこで、ただいま関係局間で相談をしてもらっておるのでございますが、今後は、職業紹介についての条件等を、特に求人側の条件等を十分に取り調べまして、一定の標準をきめて紹介をするようにすべきではなかろうか。かつまた、申し出の条件を調べるばかりでなく、事後の基準監督その他を励行いたしまして、基準の励行上遺憾のあるような事業所等に対しては、紹介を断わるというようなこともすべきではなかろうか、こういう問題をただいま省内で検討いたしております。  ただいまの御指摘の差別問題につきましても、そういう際の一つの基準といたしまして今後の職安機構を改善いたしたい、かように存じております。まだ実績を上げるところまでいっておりませんが、十分検討の上、御期待に浴うようにいたしたいと思います。
  134. 八木一男

    八木(一)委員 今の職業安定行政の方のことは、それをどんどん進めていただくことがいいと思います。田原先生からさらに御質問があると思いますが、問題の一つの大きな点は、中学校なりあるいは高等学校なりを卒業した新卒業生の就職についての実際上の差別があるという問題、でございまするから、この問題は職業紹介所を通するよりは、最初学校を卒業したときに、すでに大量的に起こるわけであります、その問題で、たとえば国家公務員あるいは地方公務員、あるいはまた地方公共団体等でそういうことがいささかもないように労働省自体が指導される、また、労働省自体が所管でないところは閣議においてそういうことをきめられて、各省で指導をされる、あるいはまた民間に対しては、雇用問題について労働省として民間の各使用主、事業主側にそういうようなことのないように厳重に指導をされる、また通産省の方にもそれを連絡されて、そちらの方からもやられるというような、ありとあらゆる方策をやっていただく必要があろう。また、たとえば身元引き受け能力というようなものについて、そういう実際上の制約をつけることがないように指導されるとともに、現実にそういうことがあれば市町村長が保証人になる、あるいは府県知事がなるとか、そういうような方法も採用されて、そういう問題が実際的に解決をするように指導していただく必要があろうと思う。そういう全般的な問題について、雇用の問題でございまするから、労働省が雇用上の差別がないように、そしてその問題が一番部落の完全解放のためにネックになっておるわけでございまするから、こういう問題についてほんとう熱意を込めて取り組んでいただきたいと思うのでありまするが、それについての労働大臣の御見解を承りたいと思います。
  135. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まことに同感に存じます。従いまして、労働省の所管の業務につきましてはもちろん、所管外の面につきましても努力をいたします。
  136. 田原春次

    田原委員 ここに実例を一つ申し上げますと、埼玉県の川口市の大和化工機械会社で、部落出身者を採用する際、身元調べをやりまして、その調査書の中に、特殊部落出身者という付箋をつけて会社に出しておりますね、調査員が。だから会社の方でも警戒してこれを採用せぬ。なお、北九州市の井筒屋という百貨店があります。そこも新聞で女子従業員を公募して、多数の中で、ある程度の数のものを採用した。そして通勤中に、会社のやはり保安係みたいなものが、ずっと家庭を調べて、これは何々部落の出身の娘であるということで、体よく断わる。業務上何の欠点もないにもかからず断わる。こういう例が、おそらく各議員のところにたくさん出ておると思います。従って、罰則というわけにもいきませんけれども、労働政策上、特に職業安定所の所管でございまするので、何かこれを防止する、今後起こさないようにする。ちょっと先ほど大臣が言われたように、今後一切職安を断わるか何かしなければ、同時に、労務課長、人事課長等を集めて教育するというようなことをあわせていかなけれだならぬので、先ほどのあなたの御答弁の中にも、これは社会教育上の問題だから文部省でいうことは、これは将来の問題であります。現実の問題としては、やはり労働政策上の処置を何らか考えていかなければならぬと思いますので、もう一度明確に御答弁をお願いいたしたい。
  137. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私の申し上げましたのは、社会教育上の問題もあるが、労働省においても努力すべき範囲があると思いますので、その面についてはできるだけ努力をしますという趣旨で申し上げた次第でございますから、御了承願います。  ただいまの具体的にお示しになりました実例につきましては、後刻係員がこまかい点を伺いまして、労働省として至急取り調べをいたします。
  138. 田中織之進

    ○田中(織)委員 労働大臣、長く待っていただいておるのにはなはだ恐縮なんですが、法務省の人権擁護局長見えておりますね。長く待っていただいておるので、私簡単に御質問申し上げて、あと譲りたいと思うのであります。  人権擁護局、各地方の法務局の人権擁護部を通じて、部落差別問題が人権問題として提訴されておる件数は大体年間どのくらいございますか、そういう問題については、人権擁護局として法務局の人権擁護部を通じてどういうように処理されておりますか、この点をお伺いしたいと思います。
  139. 稲川竜雄

    ○稲川政府委員 昭和三十六年中に受理いたしました全国の、今御指摘のような事件は全部で二十三件ございまして、そのうち十六件を処理して、七件が未済になっております。昭和三十七年度におきましては、そういった同種の事件を新しく十九件受理いたしまして、十七件処理して、九件が未済になっています。昭和三十六年度におきましては、その処理をいたしました十六件の処理の内容を簡単に申し上げますと、そういう事実が認められたために、説示という処分に付しているのが二件ございます。それから原因となった事項を排除しておるのが二件ございます。それから事実は認められるが、その間に相当しんしゃくすべき事由があると考えたので、措置猶予という処分にしておりますのが三件ございます。それから受理はいたしましたが、調査の結果、そういう申し立てのような事実が認められないという件数が四件ございます。昭和三十七年店におきましては、受理した件数中、その原因になりました事実を排除するという措置をしましたのが二件、事実は認めらるが、その他の情状等の都合上、措置を猶予したというのが十六件ございます。そのほか、事実は認められたために説示処分にした、つまり人権を侵犯したという事実を指摘しまして、その人間に人権尊重の趣旨と今後の戒護を与えました事件が二件、それから、そういう申し立てがあったけれども、全然調べてみたらそういう事実が発見できなかったというのが三件、大体おもなものはそのような内容になっております。
  140. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私らは、ただ単に差別言動を吐いたということだけで、差別が行なわれたというふうには実は理解をしていないのです。その意味で、法務局人権擁護部を通じて受理された案件の処理状況については、もう少し案件そのものの内容等を具体的に伺って、この問題に対する法務省人権擁護局としての積極的な取り組みについて、ぜひ要望したいと思うのであります。本日は時間の関係もありますので、いずれその点は、今お述べになりました事件の内容を、すでに処理済みのものもあるわけでございますから、それを別の機会に承りまして、私ども意見を申し述べたいと思うわけです。  次いで、人権擁護局長にお伺いいたしますけれども、昨年の八月に高知県の窪川町の興津で起こりました事件につきまして、この小室部落の小中学生の盟休事件に端を発して、かような二百五十名の武装警官を動員して十五名を逮捕して、結果的には、私は国会で取り上げた以後もう忘れたころに、十月の末になりまして関係者五名を公務執行妨害傷害罪で起訴して、現に裁判が進行中でございますが、私はこうした事件を引き起こしたこと自体が人権侵害であると思う。さらに、私どもは、興津闘争に対する弾圧事件だと言っておるのでありますけれども、その過程で捜査の行き過ぎの問題であるとか、あるいは手錠をはめたまま一般公衆の面前にさらしたというようなことは、これはやはり警察の明らかなる人権侵害問題だという観点で御調査をお願いしたわけです。さらに、この同盟休校問題に深い理解を持っておった小学校あるいは中学校の教師に対して、小学校の先生が子守を雇っておったのを、部落に肩を持つような先生の家へ子供を子守にやってはいかぬというこことでやめさしたり、あるいは学校の先生の奥さんが経営している。パーマネント屋に、部落に肩を持つ教師の嫁さんがやっている。パーマネント屋はボイコットしろと、こういうことをやったことは、これは明らかに村八分的な人権侵害である。そういう意味のことを、本人から提訴があるないにかかわらず国会で取り上げたことは、一つの一般的な問題提起だという観点で、あなたの方にお調べを願うことをお約束していただいたと思うのでありますが、この件についてはその後調査を進められたのか。進められた結果ははどういう事実が判明して、あなたの方はどう処理されたのか、調査の結果に基づいて処置の問題について検討されておるのか、この点を伺いたいと思うのであります。
  141. 稲川竜雄

    ○稲川政府委員 ただいま御指摘の点でありますが、前回の委員会でいろいろ御指摘になりました。そこで直ちに調査を開始いたしまして、その調査は現に続行中でございます。たとえば、この二月の上旬も数名が参りまして調査をしておりましたけれども、まだ完結には至っておりません。従って、中間報告はございますけれども、まだ完結の報告はございません。完結の報告がありましたらば、もし不備な点がありますれば、事実を指摘して不備な点は是正するというような措置をとらなければいかぬと思っております。
  142. 田中織之進

    ○田中(織)委員 実はその中間報告も、別途本件刑事事件の公判が進んでおりますので、お漏らしをいただきたいと思いますが、これも本日はどうかと思いまするので、いずれあらためて伺うことにいたします。現に裁判が進行中でございますし、裁判の進行の過程で最初に逮捕されて、その勾留理由の開示公判で、現に裁判の担当検事でありますけれども、その検事が一種の差別的な問題を引き起こしておるわけです。いわゆる逮捕した容疑者に証拠隠滅のおそれがあるということで、部落解放同盟の幹部だから証拠を隠滅するおそれがあるから解放するわけにはいかない、今日われわれは、別に破壊団体でも何でもございません部落解放同盟という民主的な組織体の役員であるからといって、これは言葉をかえて言えば、部落民であるから、やつらは悪いことをしても、犯罪を起こしても証拠の隠滅をやるのだという形で引き続き勾留を打とうとした。しかし裁判官から、そういうものの考え方そのものが問題じゃないかということで注意されて、近藤検事はこれをしぶしぶ取り消した。容疑者はもちろん釈放になっておるわけであります。その当の近藤検事は、まだ公判検事として、この刑事事件のいわゆる公判に出ておる。これは法務省の刑事局長なりそういう人たちがおりませんけれども、警備局長がおられますから、私はこれからもう一つ奈良署の問題を持ち出すわけでありますが、そういう問題は、かつては、解決はいたしましたけれども広島の福山の地裁あるいは広島高裁でも、裁判官までがこういうあやまちを犯したという事例があるわけです。そういう点からも、ただ単に一般人の間の問題ではなくて、人権擁護問題という観点から、これらの問題については、権力による人権侵害の問題が大きな問題になるのです。少なくともわれわれの方に持ち込まれる問題は、権力と申しますか、一般人民に対するいわゆる人権侵害の問題が、人権問題のほとんど八〇%以上じゃないかと私は思うのであります。そういう観点から、これらの問題についても、人権擁護局としては当然調査なり、あるいはそういう処置をとっていただかなければならぬと思うのでありますが、この点は要望だけを申し上げることにいたしておいて、最後の質問に移ります。  これはむしろ警察当局に伺いたいのでありますが、私も実はただい申し上げました興津事件の公務執行妨害事件の五人の被告を特別弁護人として、検察側の証人調べでございましたので、一月七日に一日だけ法廷に出たわけであります。その過程を通じてみますと、警備局長、やはり私が昨年八月の法務委員会で申し上げたように、何とか盟休を解かせようということで、校長が承知の上で部落の子供たちに提供しておった約四、五十脚の机、いすを撤去するために、町教委が業務令命を出せば、それが公務だということで警察に協力してもらえるということを考えて、長滝教育長がやったというのです。その問題について当時の西川窪川警察署長は、警職法五条によってそういう場合にはできるのだと、こういうことを裁判所で証言をしておるのであります。一体警察庁当局は、こういうような場合に、警職法の五条というものをどういうように理解してこれに基づいて現地警察の行動をさせておるか、これは一般的な問題としてまずお答えを願いたい。  それから事実関係について調べてみますと、もちろん何か不測の事態が起こるかもしれないから、そういう場合にはよろしくという意味の一般的な協力要請はしておるけれども、具体的に机、いすを撤去するための、いわゆる町教委としての業務執行についての協力要請というものは、問題の起こった三日の午前六時現地でやった、こういうわけです。そのときには、もう前の日から全県下から武装警官二百五十名を動員しておるので、この点から見ましても、やはり興津事件の警察の行動というものは、何か興津の部落で不穏なことがある、あるいは差別の問題で立ち上がる部落民の行動というものを、あなたたちは、あたかも何か暴動か騒擾罪のような前提を立てて、計画的にやはり大量の警察官を動員して待ちかまえていたということが、裁判の進行過程で出て参りました。被判がなお進行過程でございますが、この問題については、やはり警察当局が現地の警察を直接指揮するのではないけれども、こういうことについては今後これを繰り返してもらわないという意味において、私は公正な立場で警察庁当局が調べてもらわなければならぬと思いまするが、この点についての警察当局の所見を伺いたい。これが私の三番目の質問の第二問であります。  それからもう一つの問題は、先ほどまだ事実を伺っておらないという警備局長のお答えでありますが、今年の一月十七日の夜過ぎ、奈良市のある劇場で、これはあまりよくないストリップ劇場だそうでありますが、一ぱいきげんでそれを見ておった大和郡山市の米沢義治さんという三十七才の人、これは部落の人であります。隣にすわっておった奈良市富雄東阪の荒木利光さんと口げんかをして、一たん劇場から外へ出されたわけです。それでもう一度米沢さんという人が中へ入ろうと、高田の万津の親類のもんだ——万津というのはやくざですか、そういう顔役の身内の者だと言うて中へ入ろうとしたけれども、あまり身なりがよくないので、このやろう何を言っているのかということからとがめられたので、不愉快になり、そのため、荒木というけんかした相手が仲直りしようと握手をしたけれども、それを断わった。そうしたら、多分警官だと思いますけれども、その米沢さんの首筋をつかんで、二人を警察のジープへ乗せて警察へ行った。そして留置場へこの米沢君というのがそのまま入れられたわけなんですが、私服刑事が、酒を飲みやがってと言ってまず顔をなぐったので、何をするんやと言うと、やにわに足払いされて倒されて、なまいきを言うなということで、馬乗りになってげんこつで顔を十五、六回なぐられた。そこで米沢君が、もう腹をすえて、殺すなら殺せ、やるならやってみろということで叫んだら、今度は靴で胸を踏んで横っ腹を七、八回けった。そして、セーターと上着を脱がして留置場へぶち込まれたのでありますが、そのときに上着の左そでを引き裂かれた。しかも、留置場へおれが入れられる理屈はないじゃないか、こう言ったら、そのときに二人の警官が「やかましいわ、ドエッタめ、牛殺し、馬殺し、お前ら死んでしまえ」こういう暴言を吐いて悪罵をかけたのであります。警官の暴行を受けたので医者を呼んでくれと本人が言っても、医者を呼んでくれなかったが、十時ごろ毛布を入れようとしたときに、あまりにも本人が苦痛を訴えるのでようやく医者を呼んだ。従って、その晩は留置場へ泊められているのです。あくる日、その人の奥さんが警官へ問い合わせて、午前十時ごろ釈放されたのでありますが、警察は自分で暴行を加えながら——その前の晩に毛布を入れに来たとき、あまり苦痛を訴えたので医者を呼んだのだが、その医者代の五百円までを米沢さんに請求しておるという事件です。この問題を、共産党の加藤充弁護士から現在告訴が出ております。ところが、それは先ほど申し上げたように荒木とのけんかの過程でけがをしたのだということで、警察はいまだにこれを取り上げようとしないのです。けんかの相手から傷を負わされたものというのなら、相手を加害者として警察が取り調べておるかということになると、これは告訴状が出てから、参考人としてようやく呼んでおるということです。従って、警察の取り扱いというものが、まるっきり部落民には一方的だと思うのです。こういうようなことが、たまたま奈良県で関係者からわれわれのところに持ち込まれておるけれども、こういうような事件はたびたびあることじゃないかと私は思うのであります。この件については、警察庁では報告を受けられておるか。この点については、奈良県下の八木代議士もおられますけれども、民主団体が立って、警察のやり方は断じて許すことはできない。しかも、自分たちがやっておきながら、けんかの当事者間でできた問題だ、こういうような形で——それならそれで加害者を即刻逮捕して調べるとかなんとかいうことならばいいけれども参考人として申しわけ的な調書をとるだけで、本人を一晩、少なくとも医者に見せなければならぬような状態に置いたということについては、当然警察が責任を負わなければならぬ問題である。興津事件で、一つは弁護士に対する扱いの問題から、あなたたちに、やはり全国の警察官に、この種の問題の取り扱いについて警告を発してもらうことを私は要望したのです。ところが、たまたま、半年もたつと奈良署でこういう問題が起こったということについては、私ども絶対に承服するわけにいかない。この問題の事情を調べておるのかどうか調べておるとすればどういうふうにお考えになるか、この点についての御見解を伺いたい。
  143. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 三つのお尋ねでございまして、最初二つは興津に関する問題でございますが、御承知のように、この事件はただいま御指摘がありましたように公判中でございますので、その事実について私どもが見解をここで申し上げることは控えて、第一の問題といたしまして、警職法五条をどういうように考えるかというお尋ねに、一般的にお答えいたそうと思います。  警職法五条は、犯罪がまさに行なわれようとするときには警告をいたすことができますし、また、それによって人の生命、身体に危害が及び、及び財産に重大な危害が及ぶおそれがあって急を要するときには、制止をすることができるということに法律上なっておるのであります。そこで、警察といたしましては、いろいろなトラブルに際しまして、その事件が人の生命、身体に危害が及ぶというようなことが予想され、しかも、その一方が犯罪をまさに犯そうとするというようなおそれがあるような事態にありましては、これは必要に応じて事前に警察官を前進待機させるそういう事態が起こって措置が間に合うような場所に置くということは間々あることでございます。そこで、ある公務所がかりに公務を執行するということを考えてみまして、その場合に、従来のその事件の経緯から考えまして、その執行が抵抗を受けるということを考える相当な理由がありまして、しかも、その抵抗の程度によって公務を執行する方の身体に危害が及ぶと思われるような事由があります場合におきましては、必要な警察措置といたしましてあらかじめ準備をし、また、そういう事態が起こりましたら、すかさず措置できるようなことにいたすのであります。それが警職法五条の問題でございます。具体の問題に当てはめまして、そういう事態が予想されないのに、ただ警察が出るということによって相手に圧迫を加えるというようなことになる、これは御指摘のように控えなければならないのでございます。  そこで、第二の点の、具体の問題にどうして警察が出たかということは、昨年の当委員会でもお答えしたわけでありますが、ただいまその問題について公判が進行中でございますので控えておきたいと思うのでございます。  第三の点は、実は申しわけございませんが、ただいま急にお呼び出しをいただきまして用意がございませんで、ここで初めて奈良の問題については承ったのでございます。事柄を聞きます限りにおきましては、刑事事件の取り扱いについて起こりました事柄で、実は警察内部の業務分担から申しますと刑事局のことでございますので、ただいま係の者に刑事局にそういう報告が来ておるかということを電話で問い合わさしたのでございますけれども、当該の課もまだ報告を受けていないということでございます。従いまして、これは当該課によりましてすみやかに調査をいたしまして、別の機会にお答えいたしたいと思います。
  144. 田中織之進

    ○田中(織)委員 興津の問題は、確かに公判が進行しておるのでありますけれども、現職の警察署長、警察官が検察側の証人として公判廷に出ております。私は出ておりませんけれども、一月九日に四人の警察官が呼ばれておりますが、警察官のうち三人までは、警察署長や長滝教育長などが私どもに七日の法廷で証言したことと、まるきり反対のことを言っている。しかも、百名から部落民が集まって石ころを投げたとか、棒切れを持って集まっていたというようなことはありません、こう言う警察官が四人のうち三人までおる。こういう問題なんですから、これは事実関係につきましても、裁判進行中とはいえ、やはり現職警官の中で、もちろん宣誓をしてやることでありますから、どっちかがうそだということになるわけですから、いずれその偽証問題も出てくるわけであります。しかし、その状況から——この点は、時間がありませんから繰り返しませんけれども、問題は、小中学校の子供の盟休のために、自習のために子供たちが学校から借りている机を取り返すということです。それは権力的なものです。百十戸の部落で、子供たちはわずか五、六十名なんです。五、六十名の子供たちが使っている机といすを取り返すために、高知県下の全警察から二百五十名の武装警官を集めて、前の日から何で待機しなければならぬか。これはどう考えてみても、率直に言って警察の黒星です。計画的に、部落解放運動というものを弾圧しようとしてあなた方が取り組んだ問題だと思う。もちろん、県警察に直接の指揮権がないことは承知しておりますけれども、これではまさに警察ファッショじゃないですか。しかも、公訴権を乱用して、二日間のかすり傷だったとこう言う。部落には、やはりそのために一週間も十日もの傷を負わされたといって、診断書を出して告訴を提起している人があるが取り上げないで、警察庁がこれを起訴している。しかも、勾留開示公判で、そういう差別事件を起こして裁判長からたしなめられる検事がある。高知地検に公判検事一人しかおらぬからということで、その裁判に立ち会っている。この問題に関する限りは、それだけじゃありませんよ。第一、公務執行妨害、どれとどれが公務執行であって、それに対して妨害したからという根拠の法律を示すことができないから、第一回の公判では、起訴状の朗読のときに検事が詰まって、あわや公訴棄却になるところまでいき、裁判所の助け舟でそれを付け加えて、現に裁判が進行しているという事件である。これは裁判所がもちろん厳正な判断を下すことを私どもは期待しておりますけれも、裁判の進行過程から見てもこういうことが見られることを、あなたたちは、自分たちの仲間がやったんだから、それは正しいんだという擁護はいかぬと思う。検事にしても私はそうだと思う。検事一体の原則から、私はこの前の差別裁判のときにも申し上げました。そういう点についてまでまだ深刻にこの問題が残っているのですから、いろいろなトラブルを直接的に受けつける警察庁として、私は、やはり十分警察官はこの問題に取り組む、問題はすぐ起こるからやかましいわい、うるさいわいという形でこの問題をほうっておかれることは困ります。積極的に取り組んでもらいたいけれども、単なるおかっぴき意識や権力をかさに着た取り扱いではなくて、この問題は真剣に取り組まなければ、警察の威信も何もひっくり返るような事態が発生するかもしれない。その意味で、奈良の問題についても、刑事の取扱いだと言うけれども、問題は劇場で起こった問題で、それは刑事事件の体をなしていない。そういうことであれば加害者がだれであって、被害者がだれであるか、その被害者を一晩留置場にほうり込むなんてばかな話はないじゃないですか。しかも、その形については、これはやはり刑事部門だとか警備関係だとか、それぞれの分野はおありでしょうけれども、そういうことじゃなしに考えて、実情を調査されて、この点はまだ末解決の問題でありますが、私は公正なる処置をせられることを望んで、私の質問はこれで終わります。
  145. 秋田大助

    秋田委員長 大原享君。
  146. 大原亨

    ○大原委員 労働大臣、非常にお待ちいただきました。労働大臣が今までお聞きいただきました中で非常にはっきりいたしておる問題ですが、つまり部落差別の問題はいわれない差別でありますけれども、しかし民主主義以前の問題として、人権に間しましては非常に深刻なる問題であります。そういう部落差別の問題が現存いたしているということが、就職の問題雇用の問題に非常に大きな影響があるということについて、私はどのように認識されておるかということについて聞きたいのです。しかしこれは賢明なる労働大臣は、今まで同僚委員のいろいろな質疑応答によって御理解になっているところだと思うのですが、さらにまた他の委員からも質疑がございますけれども、たとえば部落産業、地場産業、皮革とか食肉とか畳表とか、あるいは竹細工、そういうような部落産業が今日大きな転換期にあるわけです。そういう産業構造の改変に伴いまして、部落における雇用問題は、私はきわめて深刻な問題があると思う。私はいわれのない差別の問題からくる雇用問題あるいはそういう地場産業、部落産業の構造改変からくるところの就職難の問題、そういう問題につきましては実態に即して科学的にこれを究明した上で、現実に即するような対策を立てなければならぬと思うわけです。そういう点はこの審議会におきましても、徹底的に実態調査をした上でやっていただくということが絶対に必要であります。私が二点申し上げました、見解につきまして、特に異なった見解あるいは積極的なる見解をお持ちでありましたならば、労働大臣の方からお答えいただきたいと思います。
  147. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題につきましては、まず第一にいわれなき差別感に基づきます関係者の就職の困難を打破し、適当な職業をあっせんするということは、当然労働省としては考えなければならぬ点であると在ずるのでございます。すなわち、特に新規労働力として労働市場に現われて参りまする新規学校卒業者の就職の機会をとらえまして、適切な職業指導を加え、安定した職業生活に入ってもらうようにいたすということは、これはやはりこの大きな問題の解決の上から申しましても必要なことであり、また労働省として当然やるべき仕事であると考えるのであります。労働省といたしましては、公共職業安定所から学校と十分に密接な連絡、協力をいたしまして、新規卒業者の就職につきまして十分あっせんに努めておるのでございますが、特にこの偏見の打破ということにつきましては今後一段と力を入れて参りたいと存ずるのであります。  次に御指摘になりました部落産業が目下方向転換をしなければならぬ時期にある。なるほど現在のこの日本の経済成長の過程におきましては、特に従来から部落に育って参りましたいろいろな小規模あるいは零細規模な企業というものが採算上非常に困難な立場にあるということは十分に察し得られるところであり、その意味におきましても、この関係の方々に対して新しい職場への転換を助長しなければならぬと考えられるのであります。そこで労働省といたしましては、特に離職者対策、ことに中高年令層の離職者対策につきましては、昨年以来特に力を入れ、ことに昭和三十八年度におきましては職業指導、職業訓練等におきまして画期的な措置をとろうといたしておるのでございます。これらの実施にあたりましても、偏見打破、部落関係の方々の就職の促進ということにつきまして格段の努力をいたすよう関係機関を督励いたしたいと存じます。
  148. 大原亨

    ○大原委員 時間が迫って参っておりますから十分な質問ができませんけれども、まあ今までのお話を聞いていただいて、将来、これから職安法やあるいは緊急失対法に関する法律が出てくるわけですけれども、そういう点では一つ徹底的に議論をいたしたいと存じますが、労働省で把握になっておられまする部落関係の出身者の失対事業の登録者、そういう実態はどういうふうに御理解になり御調査になっておりますか。
  149. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 数につきましては政府委員から申し上げまするが、非常に大きな部分がこの部落出身者によって占められておると存じます。従いまして今後失対事業の改善を進めていくにあたりましては、いかにしてこれらの方々を転換職場に安定させていくか、そうしてまたその困難な方々に対してはいかにして今後の失対事業を運営し、それによって生計を立てていただくか、これらは今後の失対改善の眼目として、私どもも考え、努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
  150. 三治重信

    ○三治政府委員 失対関係の労務者につきまして、部落の方がどれだけいるかという調査をわれわれの方ではしておりません。また事業の実施の場合につきましても、その土地の産業の状態それから失業者の状況というもので、資料をとってやるわけでありまして、私の万としてはそういう方たちの調査をしたことはございません。
  151. 大原亨

    ○大原委員 微妙な問題があるから調査はなかなかむずかしいというお話だと思うのですが、その点は理解できますけれども、しかしたとえば同和対策審議会などはきちっとそういう問題はそれで調査しているはずなんです。しておらなければならぬですよ。だから、私は審議会の方はあと回しにいたしますが、未解放部落が、六千部落、三百万あるというふうに一応いわれております。主として関西に多いわけですけれども、そういう場合に失対の登録者が未解放部落との関係においてどのような実態にあるか、こういうことは大体私はわかると思う。未解放部落のそういう実態とそういう概数、失対の労働者の登録者の数、こういうものは地域的に大体わかるわけであります。そういうことがわからないと、机の上では労働省でいろいろ政策を立てることはできるけれども、今大臣が言われたように、訓練とか雇用奨励とかいうことがいわれ、広域職業紹介とか労働力の流動化ということはいわれますけれども、実際問題としては私は政策は立たないと思う。その点は把握しておられますか。私の申し上げた程度は把握をされるべきだと思うが、いかがですか。
  152. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 失対の適格者の中で未解放部落関係者がどれだけの数に上るかという問題でございまするが、労働省といたしましては、さような区別をして調査をすることが従来事業の運営上必要でもないし、また適当でもないという考えで、さような調査をいたしたことはないそうでございます。しかしながら現在失対事業に従事しておられる方々の実情につきましては、ただいま申し上げましたような区分による調査はいたしておりませんが、その実情につきましてはもちろん所管業務として調査をいたしておりますので、失対事業の関係者の現在従事しておる作業の実態なり、またその生活の実態等につきましては、ある程度把握をいたしておるつもりでございまするし、また失対事業の改善策を立てるためにあたりましては、これがその基礎になっておることを申し上げます。
  153. 大原亨

    ○大原委員 御承知のように、結局部落関係の失対事業登録者というのは、いろいろな臨時工やあいるは社外工、日雇い労働者というふうなところで、不安定雇用の中からだんだん沈澱をしたり、あるいは新しく就職できないという失業者、夫婦で別れてそれぞれ登録して働かなければならぬというふうな非人道的な現状、この問題についてもまた将来いろいろ議論をいたしますけれども、そういうこと、あるいは零細農民あるいは零細漁民、農村や漁村における部落というのは非常に零細であります。そこで失対関係に滞留している人が多いわけであります。これは秋田委員長もその点は専門家ですから、十分御理解になっておると思うのですが、そういう実態を踏まえて、家族構成にいたしましても、大きいものですから、なかなか住宅問題その他があって他に移っていくということはできないわけです。机の上でいろいろ議論いたしましても、これはなかなか進まない。労働省の資料によりますると——御存じないようなことで、これはそういう言いわけのこともわからぬことはないのですけれども、労働が雇用審議会に出しておられまする「失業対策事業の現状」という資料の中には、不届きなことが書いてあるのです。「なお、就労者の中には、第三国人、刑余者、同和部落出身者が少なからず含まれており、問題を一層複雑困難なものとしている」こういうふうに並列して書いてございますけれども、これなんかまことにけしからぬ話ですが、これはあとで問題にすることにいたしまして、雇用審議会が答申を出しました中にも、ちょうど私は今その文書がありませんが、中でも部落問題等複雑な問題がこの中にある、従ってその点についてはやはり現状に即したような対策を立てるべきだ、こういう問題を周辺の問題と一緒に出してあります。だから私は、雇用審議会等もできたのでございますけれども、できて実際活動して、序の口だという話ですが、そのことの実態を総合的に把握をしないと、机上プランでこのことをやったのでは、私は生存権、生きる権利を剥奪することになって、社会問題をますます悪循環させ、累積させることになると思う。この点についてはきょうは時間がございませんから、十分なる質疑応答はできませんが、こういうことが書いてある労働者の資料がありながら、その実態について御承知ないというようなことは、まことに私は不届きだ、遺憾だと思いますが、大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  154. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど申し述べましたるごとく、現在失業適格者として働いておられる方々の中に相当多数の未解放部落関係者があるということは、これは私どももむろん承知いたしておるのでありまして、またそれらの方々をも含めまして、失業対策事業の関係者の実情につきましては、全体としての調査はむろんいたしております。
  155. 大原亨

    ○大原委員 今の点は同和対策審議会とも十分連絡をとっていただきまして、いわゆる六千部落、三百万といわれておりますが、そういう部落関係と失対事業の登録者との数というものは、これは実態が把握できるのです。今までの既存の労働者の資料でできるわけでありますから、そういう点についての資料をつくって、一つできるだけ近い機会に資料を出していただきたい。これは無理じゃございません。当然できることです。これは資料を突き合わせてみるとできるのですから、一つ資料をおつくりいただくことを要求いたします。さらに、そういう関係における家族構成とかあるいは生活の実態等についてもできるだけこまかに実態を調査していただくように、これは今質問いたしましてもなかなかそういう認識はないようでございますし、資料がないようでございますから、その点につきましては対策審議会とも十分なる連絡をとっていただきまして、一つその点の資料を出していただきたいと思います。  それから本年度の予算部落対策のそういう雇用問題についてどういうふうな新しい努力をされておりますか。そういう同和対策部落対策に対する、労働省の具体的な予算の裏づけのあるもの、そういう点について簡潔に御答弁願いたいと思います。
  156. 三治重信

    ○三治政府委員 今大臣からも御答弁がありましたように、失対関係部落の方たちが相当数就労されて、それに相当の予算が使われておるということは先生も御承知だと思います。私の方といたしましては、事業団の方に就職資金の貸付制度というようなものがございます。これが約五千万円ほど組んでございます。それから職業安定協力員といたしまして二百万円、これはもちろん部落の方たちの就職のお世話というだけではございませんが、就職困難な農村あるいは安定所から離れた地域に職業安定協力員を置く、こういう予算でございます。それから今年度初めて、一つの試みといたしまして、学校就職の特別な就職促進費といたしまして六十万二千円ほど、これはモデル地区の試験的、調査研究的な就職促進について予算が組まれてございます。
  157. 大原亨

    ○大原委員 それは職安局長は一般的なそういう予算を言われたのであって、そういう部落の就職問題、非常に困難な就職問題を対象にした、そういう目標のはっきりした予算じゃないでしょう。
  158. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど来政府委員から申し上げましたるごとく労働省といたしましては特に部落について特別名目を打った予算というものは原則的に今までやっておりません。とにかく職業のない方には職業をお世話する、またそのために職業訓練の必要があれば職業訓練をする。さらに就職につきましてはできるだけきめのこまかいお世話をすることが適当だという意味で、ケース・ワーカーを来年度からは置くことにいたしましたし、また就職が非常に困難な方々に対しましては、それを促進いたすために、就職のための支度金の補助であるとか、あるいはまた雇い主に対する雇用奨励金制度というようなことを考えておるわけでございます。従いまして、特に未解放部落関係者の方々は、就職につきまして、現在までの実情から申しまして、一般に比べて困難の程度が高いのでございますから、従ってこれらの措置をどうしても十分に講じていく必要があることに自然となるわけでございまして、相当部落関係の方々にこれらの経費が今までも使われております。特に私といたしましてはこの同和問題の重要性にかんがみまして、今後においては労働省の仕事全体につきまして特にこの方面の関係に力を入れるようにいたして参りたい、かように存ずるのでございまして、どうぞ一つ御了承をいただきたいと存じます。
  159. 大原亨

    ○大原委員 昨年の職業安定協力員関係予算で二百万円ございますが、その中で約二千名の協力員を養成されている。その中で部落関係は大体どのくらいあるのですか。
  160. 三治重信

    ○三治政府委員 今大臣から御答弁いただきましたように、われわれの方としてはそういう就職困難な地区に置くという協力員でございまして、今お尋ねのようなそういう目的別に部落関係者のところに何名置く、人里離れた農村に何人置くというふうなことで配置をしていない。あくまで私の方は職業紹介ないし失業対策というものはそういう対象の困難性、あるいはその失業者の出方ということで処理しておりまして、特別部落の方たちにどれだけの協力員を置いてどうするというふうなことでは処理しておりません。従って予算関係におきましても大臣が仰せられたように、全体の職業安定局予算をそれぞれその目的々々の重要性に応じてできる限り解決をしていくような予算の使い方をしていきたい、こういうことを考えております。
  161. 大原亨

    ○大原委員 今の御答弁は全く満足できませんが、次に、同和地区学卒者就職促進費というのも、新規に六十万二千円ほど計上されておりますが、具体的にはどういうふうにこの予算運営していくのですか。
  162. 三治重信

    ○三治政府委員 これは文部省の方でモデル学校をつくるというふうな計画がありまして、そういうふうなモデルの学校に特別そういう職業紹介の関係連絡費、指導費というものを、モデル地区に実施してみたい、こういうことを試験的にやるということでこの予算が入ったわけでございます。
  163. 大原亨

    ○大原委員 それは文部省の指定いたしましたモデル学校に対して予算を流していく、こういうことですか。
  164. 三治重信

    ○三治政府委員 そのモデル地区の学校と協力してやる特別の安定所の経費でございます。
  165. 大原亨

    ○大原委員 私どもこれ以上たくさんお尋ねしたい点があるのですが、しかしきょうは労働大臣は終始御熱心にすわっておられて、部落問題についてのいろいろな問題点もさらにこれから続くわけですけれども、お聞きになったと思います。従ってこの部落問題というのは生活、仕事、職業、産業、住宅そういのものを中心といたしまして、これは非常に深刻かつ現実的に問題が解決されなければならぬ問題がたくさんある。従ってその中から失業問題、雇用問題が発生いたしておるわけでありまして、これは労働省がしばしば失対問題、雇用問題に関する指導の中で取り上げておりますけれども、実際はほとんど裏づけのない資料や対策なりで、そういうものを大体総合的にやるのが同和対策審議会があって、そういう実態調査についての各省の総合施策をやりながらその部落差別を現実に政治の上から解決していくことが必要なわけですけれども、しかしながらたとえば失対法あるいは職安法の改正等にいたしましても。各省の政策——今の政策にいたしましても非常に弥縫的で、それぞれ関係なしにやられておる。こういうことでは政策といたしましては全く前向きの前進を期することはできないのじゃないか、こういう点を私どもは考えておりますし、私はこういう三種の問題につきまして問題の提起をいたしておる。こういうことで将来はこの私ども審議におきまして、この点を徹底的に審議をいたしまして、そういう実態の上に立ったところの政策を進めていく。そういう点において十分調査もし、研究もし、施策についても一つ所見をまとめていただきたい、私はそういうことを強く要望いたすわけであります。失対問題につきましていろいろと世上いわれておりますけれども、しかしながらこのことだけを抽象的に取り上げまして机の上で解消するというふうなことは、全く現実に即さないものである。私が申し上げましたように、そういう実態に即して総合的科学的な政策を立てるべきである。そういう点につきまして一つ労働大臣の方から心がまえの点について御回答をいただきたいと思います。
  166. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 申すまでもなく今日部落の実情を拝見いたしておりますと、相当多数の方々があるいは失業の状態であり、あるいは不完全就業の状態であり、そしてかような経済的な貧困性がまた部落に対する偏見の原因になっておるのでございまして、この問題の根本的解決にあたりましては、かような問題に大きくメスを入れる必要があると存ずるのでございます。しこうして、いやしくもかような雇用の問題ということになりますと、これは労働省の最も重要なる使命でございますので、私ども労働省の使命の達成にあたりましては、この部落問題を頭から離して考えることはできないと存じております。今回提案いたしておりまする失対事業の改善というものも、やはりこの問題の解決の大きな一助になるものと確信いたしておりますし、またさような工合にいかなければ労働省の仕事としての意味もないものである、こう思いましていずれ法案につきましては十分な御審議をいただく機会があると存じますが、その際にまた御質問に対しまして詳しく御説明する機会を新たにいただきたいと存じます。
  167. 大原亨

    ○大原委員 最後に資料ですけれども同和対策審議会とも連絡の上で部落関係の生活の実態、家族構成の実態、仕事の事態、職業の実態、あるいは失対登録等の関係、そういうもの等について、もう少し具体的に突っ込んだ資料を出していただくことを要求いたしまして、きょうの私の質問を終わります。
  168. 三治重信

    ○三治政府委員 先ほど内閣審議室の方から御答弁がありましたように、同和対策審議会での調査も、三月末で三十七年度にやった調査がまとまる見通しだということでございまして、同和対策関係の全体としての資料は、今までにおきましてもほかの機関の資料があるかと思っていろいろみたのですが、全体としての資料はないと申し上げていいんじゃないかと思うのです。それから労働省自身につきましては、先ほど来るる労働大臣から、また私から申し上げましたように、そういう部落の方ということで調査することは、われわれの方の従来の方針といたしましても特別な調査はやらないということでございます。それで同和対策審議会の方でいろいろ調査の御計画がありますので、その方の資料ができますればわれわれも十分利用させていただきたい、こういうふうに考えております。
  169. 大原亨

    ○大原委員 僕が言っているのはできるだけの資料だけれども、いわゆる六千部落、三百万人というふうにいわれておりますが、しかしそのことについては同和対策審議会もそれぞれ調査費を取って実態を調査させているのです。私はその現実を知っておりますが、だからそれとの関連で失対登録者の実情、社会、雇用問題等についての問題点のあるところ、そういう点についてはできるだけの資料が、今の資料でもできるわけです。そういうできる範囲の実体に即する資料を出してもらいたい、こういうことを要望いたしておきます。
  170. 田原春次

    田原委員 関連して。今の問答では失対労務者関係が主でありましたが、炭鉱労働者も、私どもの調査によりますと、大手の炭鉱の約六割は部落出身であります。それから中小炭鉱になりますと、約八割は部落出身であります。これは前に三池争議の際に、第二労働組合が部落民を差別するがごとき刷りものを出したのです。そうしたところが、第二組合の中から反撃をこうおりまして、おれは部落民だからどうだといったような例もあります。さだめし調査はむずかしいかもしれませんが、実体といたしましては、炭鉱労働者の過半数は部落民であるということを記憶にとどめておかれまして、炭鉱離職者等についても同様な御配慮を願いたいということをつけ加えておきます。
  171. 八木一男

    八木(一)委員 関連して、同じく簡単に申します。その問題のほかに、臨時工と社外工の問題、この問題も関西以西においてはその大部分が、特に神戸の方の社外工なんか、あの大部分が未解放部落出身者でございます。この問題も、その背景をよく考えていただかなければならないと思いますが、一般的に臨時工、社外工というような間違った労働形態を許しておくことは間違いである、そうした問題は一般的の労働問題としても非常に重要な問題でございまするが、部落解放問題としても非常に重要な問題であります。きょうは労働大臣、大へんお待たせしましたので、これ以上申しませんけれども、その問題については後日また御質問申し上げます。労働者として、この社外工の問題、臨時工の問題を根本的に解決をして、そのような状態で搾取をされる労働者がないように、そして未解放部落の出身者が非常にそれで搾取をされているような状態がなくなるように、そのようなことについて前向きに、急速に御検討を願いたいと思います。またその資料その他についても同様であります。その点について簡単に申し上げておきまして、御決意だけを伺っておきたいと思います。
  172. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 社外工、臨時工の問題につきましては、これは現実に常用工と同じ立場にありながら、労務管理上の理由によりまして、特に臨時工、社外工というような形をとっておるものが事実上相当にあるのではないかと想像されるのでございます。これらは、労働基準法の上から申しましてもいろいろと問題があるようでございまして、今後の雇用対策といたしましては、どうしても何とかしなければならぬ大きな問題の一つであると考えまして、労働省といたしましては至急調査をいたし、そうしてこれが是正についての対策を立てたいと存じまして、先般来せっかく調査中でございます。
  173. 秋田大助

  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 同和対策の問題のうち、農林水産行政についてお伺いをしたいわけですが、先ほど来大へん長い間お待たせをしまして恐縮に存じます。まず、同和対策のうち農林行政においての対策について御説明をいただきたいと思います。
  175. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 農林省といたしましては、かねて内閣に設けられました同和対策懇談会できまりました同和対策要綱に従いまして、それぞれ関係省が分担いたしておるわけでございますが、特に農林漁業の集落を対象といたしました共同施設の設置であるとか、あるいは土地の基盤整備事業であるとか、こういった経済部面における振興施設を講ずるということにいたしておりまして、同和対策予算として計上いたして参ったわけでございます。三十八年度におきましては、それに関連する予算といたしまして六千七百五十万円を計上いたしておるわけでございますが、ここの事業を取り上げました三十五年度から本年まで、四年目になるわけでございまして、三十五年度の当初におきまして二千百万円の事業費を計上いたし、三十六年度に二千七百万円、三十七年度に四千五百万円、三十八年度におきましては、今申し上げましたように六千七百五十万円というように、年々増額いたして努力いたしておる次第でございます。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年の二月二十八日の社労委員会におきましても質問を申し上げたわけです。いろいろあのときにも要望事項を申し上げておきました、私ここで繰り返しません。局長もかわっておられませんから。……どれだけこの一年、あなた方が考えられて進歩をしたか。今金額の点は約二千万円ふえておるようですが質的にどういう進歩があったかお答えをいただきたいと思います。
  177. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 昨年度当委員会で楢崎先生の御質問のあった点は、要するにこの事業の進め方についての執行体制をどのように考えておるかということであったかと考えるわけでございますが、御指摘になりましたような行き方につきまして、われわれといたしましては関係省とさっそく協議し相談いたしたわけでございます。  そこで四月の上旬に関係省全局長の連盟で、各府県に対しまして、三十八年度において講ずべき地区、あるいはその地区における事業計画の概要等につきまして、内閣総理大臣官房審議室長あてにこれらの資料を集めるということにいたしまして、そうしてその資料をさらにまた関係省に持ち寄りまして、関係省においてどのような地区をきめていくかという措置をとることにいたしたわけでございます。これに基づきまして、御承知のようにこの地区におきましては、それぞれ関係省が総合的に施策を講ずるということになっておりますので、関連する事業が行なわれる地区を選びまして、そうしてそれに基づいて三十八年度の地区計画を定めて、その計画に基づいて予算要求をいたす、さらにそのきまった予算につきましは、関係省と具体的な地区につきましての相談をいたし、また関係府県とも具体的な地区の事業計画について相談し、事業を執行しよう、こういうふうなことで現在進んでおるわけでございます。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年いろいろ要望したわけですが、もう一ぺん繰り返さないとどうもわからないようです。まずモデル地区方式というものについて考える必要はないかということを言ったわけですが、ことしもモデル地区以外の一般予算はないじゃありませんか。昨年それを問題にした。モデル地区方式についてのあなた方の考え方を直してもらわないと、残されておる部落の数の方が多いのですからそういう要望をしたわけですが、その点についてどういうふうにお考えですか。
  179. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 お話しの通り、モデル地区以外の一般農業対策の中においても、同和対策についての十分な配慮をすべきではなかろうか、こういう御指摘であったかと存じます。私の方といたしましては、同和対策自身についての総合計画として、各省が立てられた施策の一環として推進していくという施策も必要であろう。さらにまた一般的な本件についての取り扱いにつきましては、この前も申し上げたわけでございまして、われわれの内部におきましてもいろいろ検討いたしたわけでございますが、御承知のように農業自身におきましても、現在非常に大きな変動期にありまして、特に兼業の農家、しかもそれらは大部分零細な農家でございますが、そのような農家に対しても一般農業対策として十分な配慮をすべきである、こういう見地に立ちまして、一般の施策についても零細農山漁民の福祉向上ということに意を払って参ろうこういう考えに立っておるわけでございます。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、昨年と比べて、去年はこういうふうであったけれども、ここはこうしたのだということを私聞きたいのです。今の説明は昨年の説明と同じじゃありませんか。ちっとも進歩してないでしょう。  時間がないから具体的に進みますけれども、昨年、農林大臣がお見えでなかったので中馬次官に質向をした点ですが、一昨年請願運動が行なわれて、その中で農林水産関係については、四つの請願のうち二つだけ、まことに妥当なものであるとして採択をされました。採択をされた一つは、開墾住宅費含をむ営農資金を大幅に助成すること、それから共同作業化のための設備資金を助成し、特に養豚、養鶏、果樹園芸に対し指導助成する。これについて次官は、この項目については極力こういう線に沿って可能なる点においては解決をいたしたい、こう約束をされた。どのように消化されたかや引き継がれた次官のお考えを承りたい。
  181. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 お話のような産業施設につきまして、特に最近の事情から言いますると、非常にそういう面の要望が強いわけでございます。そこでわれわれといたしまして、共同施設的なものにつきまする助成につきましては、御承知のような一般農村対策としての助成がございますけれども、特に意を払いました点については、近代化資金の創設によって、この面からの融資の積極的な促進をはかって参りたい。その際特に近代化資金によりまして、人的な関係によってこれが阻害されないような方法をとる必要があろうということで、御承知のように信用保証協会が各府県にございますが、それらの保証措置によって円滑に行なわれるようにしよう、こういうことで融資の面について特に意を払っておる次第でございます。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 去年もわれわれ指摘をしたのですけれども、同和関係ではモデル地区以外に農林省の対策はないんですね。あのときの説明には一般施策、つまり今の農業構造改善事業によってやっていく。今の近代化資金の問題にしても、これは一般的な問題じゃありませんか。しかしその一般的な問題でやるときに、農林委員会でも問題になった通りに、資金一つにしても部落の農業というものは平均三反歩以下です。そしてほとんど全部が借り尽くしてしまっている、担保もない、そういう状態で、口では今のようなことをおっしゃっても、現実の具体的な施策の点では、特別にどうするということは出てこないじゃないですか。だから部落農業は今の構造改善事業でも取り残されている。実際融資の面においても条件がないじゃないですか。ありますか。融資の点で今具体的措置として何を考えておりますか。そういう一般的に何となく答弁すればいいということじゃ承知しません。具体的におっしゃって下さい。今信用保証協会の信用の付与とかなんとかおっしゃっていますけれども、どういうふうにされていますか。たとえば担保がなくてもいい、今まで借り尽くしているというような状態のとき、いういうふうな措置を考えられておりますか。
  183. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 お言藤を返すようなことになるかと思いますが、零細農一般に対しまして、なかなか現在のところ金融がうまくいかないというようなことが、農協からの資金融通については間々あるわけでございまして、そういう面につきましてなかなか人的保証だけではいかない。特に農協と農民との間におきましては、村の事情をよく知り過ぎているというようなことでうまくいかないという面もあるわけでございます。一般的に零細農自身がそういうことになりがちでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、組合のたとえば理事者の全員の保証がないとなかなか貸し出せないとかいうようなことができるだけないように、その意味で今の保証協会が保証すれば、農協役員の全員の保証措置がなくても融通ができるということに特に配慮いたしたわけでございますから、そういうことと直接必ずしも関連いたしませんけれども、今後の農業の近代化資金につきましては、ひとり人的保証だけではなかなか借りられない物的なものがあれば、それによって金が借りられるという道を開く必要もあろうということもありまして、三十八年度におきましては、農村漁業金融公庫から特別の経営構造改善資金融通制度というような制度を設けまして、この資金措置につきましては、担保によって資金の融通もでき得る道を開いていきたいという考え方も持っておるわけでございます。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今のことは農林水産委員会ですでに審議をしておりますから、わかり切っておるのです。それは一般対策です。この部落の農業というものは、今の日本の零細農の特に集中的な存在です。それで今の構造改善事業でも十分取り残されていく運命にある存在なんです。構造改善事業そのものが、いわばわれわれの方からの見方をすれば、そういう零細農は資金的にもあるいは制度の上からも取り残されている制度になっているのです。そこで特にこの同和地区の農業については、いろいろ今までの審議の過程でも言われております通り、これは一種の政治、政策の犠牲ですから、特に考える必要があるということでわれわれは、これを取り上げておるわけです。ほかのたとえば厚生省なり建設省では、同和対策事業のうちに、モデル地区以外にいろいろ一般施策をとっておるじゃありませんか。たとえば厚生省に例をとると、三十八年度の分について、同和地区一般対策のうちの、モデル地区のあれは四四・六%になっておるわけです。モデル地区以外の一般的な同和地区の施策として五五%以上のものが見込まれておる。農林省に関しては、モデル地区以外に何もないというのはどうしたわけか、去年もそれを言ったのです。ほかの建設省のごときも、モデル地区以外の一般同和対策としては五五%ありますね。農林省関係に限ってどうしてこういうふうにモデル地区だけの施策をしないのですか。ほかの省にやれることが、どうして農林省にやれないのですか。これは昨年も指摘した点です。
  185. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 昨年も申し上げたことをまた申し上げておしかりを受けるかもしれませんが、農林省の対象になる農民自身につきまして、何といっても六百万のうち四百万程度が一町歩以下であり、五反歩未満でも二百万以上になるわけでございまして、こういう農家を対象として、全体的な農業施策をやらなければならないという性格を持っておるわけであります。開拓地についてもそうでありますし、山村振興についてもそうでありますし、あるいは漁村についてもそうであるわけであります。そこで、特にそれらの地域について、零細農漁村全般をやはりある程度対象として政府として差利なく実行する、施策全体がそういうことになっておるわけでございます。土地改良にしましても、今申し上げたような施策につきましても、そういう地域を特にはずさないで、むしろそういう地域についての今後の施策を拡充していこうという考え方に立って、今年度の予算も計上いたしたわけでございます。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年から全然進歩がないじゃないですか。あんなに委員会では考慮するとか、検討するとか、あるいは努力をするとか言われておるけれども、金額的にはふえましたけれども、これはわずかなものです。そうしてその質的な点では、ただいまのモデル方式についても、全然私どひが指摘した点が改善されていない。こういうことではまじめに同和地区の農業を引き上げようという意欲は政府には見られない。総理府の長官もお見えでございますけれども、未解放部落の七割は農村なんです。そうして七割のうちの九割方は農業をやっておるのです。全体的に見ると六割以上が農業に従事しておるのです。だから、同和対策のうち、特に農林水産行政については意を用いてもらわないと困るということを昨年も申し上げておるわけです。ところがその農林省関係は、特に建設省やあるいは厚生省に比べて低い。完全なるモデル地区方式だけで、三十八年度は何地区になっておりますか。
  187. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 昨年度は二十四市町村でございまして、三十八年度の予算要求としては三十八市町村を要求いたしたわけでございますが、予算関係がございまして、これから何市町村にすべきかをきめて参りたいと存じます。大体七割くらいに該当するのではなかろうか、こう思っております。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まことに日暮れて道遠しの感です。それじゃ、農山漁村同和対策事業費補助金を六千七百五十万つけておられるわけですが、これは大体何戸分を考えておられますか。
  189. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 予算考え方といたしましては、六千七百五十万につきましては四千五百戸を積算としては考えております。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういたしますと、三十五年から始めたとおっしゃっておりますが、そういう積算の基礎からいくと、三十八年までに何戸になっておりますか。
  191. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 三十五年度が千八百二十九戸、三十六年度が二千八一戸、三十七年度が五千四百十九戸になっておりまして、それに三十八年度の四千五百が加わるわけでございます。  ただ、ここで先生に御理解いただきたいと思います点は、御承知のように、これは地区ごとに事業計画を立てまして、そしてその事業計画を達成するに必要な予算を組む、助成もする、こういうことになっておるわけでございます。従って、一戸当たりの積算で予算は計上いたしておりますけれども、事業費が一月当たり二万六千円くらいに相なるわけでございますが、必ずしも二万六千にならなくて、一万五千円くらいで済むところもあるということになりますれば、おのずから関係戸数はふえる。予算考え方としては、今申し上げたようなことでございますが、地区別の事業計画において助成をする、こういう考え方をとっております。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今の三十五年からの経過を見ましても約一万戸ですか、われわれは未解放部落の数を大体百二、三十万戸と見ておるわけです。そうすると、これは何年かかりましょうか。一年に五千戸くらいを目当てにやってみたところで、どのくらいかかりますか、三十年くらいはかかりはしませんか。こういうことで一体、まじめに同和地区の農業を引き上げるとあなた方どんなにおっしゃっても、数学的に出てこないじゃありませんか。それで昨日も農林委員会審議において、足鹿委員から旧地主補償の問題が出された。そうときに農林大臣は、あの戦後の農地解放措置の仕方で反省すべきものがあったら直さなければいけないから、それで一億九千万円ですかの調査費を出して調査をやらしておるという。この未解放部落は、徳川以来歴代の政治の権力の座にある者から、政策的に被害を受けてきた存在なんです。地主にそのくらいの金をかけて調査をし、そうして何十億の補償をしようという政府考え方があるのに、厳然と貧乏と差別の中に存在しておる未解放部落に対しての措置としては、特に未解放部落の中の、非常に代表的な存在としての未解放部落農村に対して、こういう措置ではてんで話にならない。一体これはやらねばいけないという声があるから、まあ何とかちょっとずつでも措置をする。そうすることによってやってのるんだという姿を見せる、結果的に中こういうことになりはしませんでしょうか。政務次官も大へん長い間審議を聞いていただいておられたと思うのですけれども、どのようにお考えでございましょうか。
  193. 津島文治

    ○津島政府委員 この問題は三十四年にこういう計画が立てられまして、それから三十五年から予算に盛られたのであります。予算のさまを見ますと、かなり年々増額をされております。昨年と今年と比べましても約五割というものが増額されておるのでありますが、ただいまいろい先生のお話ばかりでなくて、ここで二時間あまりいろいろの方からお聞きしたのでありますが、これはお話のごとくなかなか容易でない問題でございます。農林省といたしまても、また政府といたしましても、よほど躍進的な考えを持って進まなければならない問題である、かように私は考えます。農民の点を今承ってみましても、非常な多数のこの未解放部落のうちの六割以上というものが農業に依存しておる。しかしながらその農業はまことに零細きわまる農業であって、生活も非常に不安定である、生活が不安定であるから、勢い今度は農業外の所得に依存しなければならないというのが、ただいま農業問題でも私承ったのでありますが、農業外にたよるということはまた非常に不安定なことでございます。やはり農業の基盤を強めて参ることが、この方々の一番のしあわせであろう、私はかように考えるのであります。従いましてこの未解放部落に対する農業の振興と申しましょうか、あるいはまた農林省の使命というものは非常に大きなものがある、かように私は感ずるのであります。そういう認識を相当得たのでございまして、この問題に関しましてはほんとうに私は、農業としましては思い切った政策をとらざるを得ないのではないかというような感を非常に深くいたす次第でございます。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間も大へんおそくなりまして、まだ農林委員会でもこれについていろいろ御相談する機会もあろうかと思いますけれども、ただいまの津島次官のお話、大へん誠意のこもったお話でございますが、しかしほんとうに苦しんでおる未解放部落農民からすると、やはりそういう言葉を聞いても、実際の裏づけの施策がないから大へん空虚に響くわけなんです。非常に誠意あるお言葉でございますけれどもそういう感じがするわけです、そこで私は昨年も申し上げたことが、ことしもモデル方式についての進歩もない。これでは何ともしようがないから、一つ明年はこれこれこういう要望を入れて、いろいろむずかしかったけれども、これだけ実質的に考えましたというような実績を示していただきたいと思うのです。構造改善事業にしても部落農民はほとんど恩恵を受けません。それはあなたが地方を歩いてみたらわかる。幾らあなたが資金的にも考えるとおっしゃっても、制度的に特別の措置があれば別として、それがない以上は借りる道はないのです。結局取り残されていくばかりです。今も次官のお話があったように、じゃ農村から出ていく、就職の自由があるかというとさっきも問題になった通りです。どうしても農村の人はやはり農村で生きていかざるを得ない。今の政府の政策でそういう施策になっているのです。だからここは一つ十分考えてもらいたい。昨年私は、三十七年度の構造改善事業に指定された地域、それに一体幾つくらいの部落が含まれておるかということお伺いしました。あなたはわからないとおっしゃった。しかしやる気があればわかります。地域指定はわずかですから、そのわずかの地域指定の市町村に依頼されたら、その市町村の中に幾ら部落があるかということは具体的にすぐ出て参ります。そういうことを私昨年も言ったのですけれども、やられましたか。
  195. 斎藤誠

    ○斎藤(誠)政府委員 私も先生の御意図なり御意見はよく承って、十分理解いたしておると思っておるわけでございます。今もお話がございましたように、三百万の六割が農業に従事しておるということになりますれば、これは相当の農家戸数になるわけでありまして、農林省としてこのような農家戸数を除いた対策はあり得ないわけであります。生活改善の面におきましてもあるいは土地基盤の整備の面におきましても、あるいは開拓山村振興の面におきましても、いずれもそのような施策を講じておるわけであります。私はむしろ、先生のお話しになりましたようなことにつきましては、農林省の施策の運用の面においてどのような配慮をいたすべきかに重点があるのではないだろうか。これは私の私見でありまして、はなはだ御無礼な言い方かと思いますけれども、資金の貸付の仕方あるいは土地の地域選択の仕方といったような、運用面におきましていろいろ配慮すべき事項があるように思うわけでございます。しかし特にその部落だけを対象とするような対策としては、今申し上げた同和対策がいわばモデル地区という形になっておりますので、そういう地区にならいながら他の一般の施策が相並行して進められ、この施策の運用にあたりましては、できるだけそういうものについての配慮をいたしていくということが、私は必要ではなかろうかと思うわけでございまして、そういう意味におきまして、今構造改善地区につきましても同様な意味で、特にそういう同和部落だけを対象にしてどのようにするかということの調査はいたしておりません。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで最後にいたしたいと思いますけれども、先ほど来何度も申し上げておりますように、むしろモデル地区に指定されないところをどうするかということの方が重大なんです。あなた方がモデル地区に指定されておるところは割といいところ、失敗のないようなところを選んでなさっておる。その選び方については、そこへいくまでにいろいろ問題があるということを昨年指摘しました。与党が勢力を伸ばすためにそういうものを利用しておるという一面もあることを指摘をいたしました。これは事実です。そこで、今年からは、沿岸の漁業構造改善事業も昨年から始められており、沿岸にも大そうあります。農業構造改善事業といい、あるいは沿岸漁業の構造改善といい、末解放部落の農漁村は取り残されていく運命にあるから、一つこれだけは特別に施策を考えてもらいたい。予算が少ないならば少ないなりに、今あなたのおっしゃった零細農が集中的な状態の末解放部落について一体どうするかということを考えていかなければならない、このように思うわけてあります、審議の最初の方にもありました通り、農林省は実態の調査をなされておらない、これは同和対策審議会で今やっております。ところがさきにも問題になったように、その調査費が三百万です旧地主の調査には幾ら出されておりますか。一億九千万。旧地主の対象者が何人おるのです。金額的に見ても、政府熱意、誠意というものが実に微々たるものである。このようにいわざるを得ないわけです。来年度現われてくる施策を見ながら、また農林委員会で別にこの問題の御相談をする機会もあろうと思いますので、このぐらいにして、秋の質問を終わりたいと思います。
  197. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっと関連して、今、楢崎委員の御質問と応答を伺っておったのですが、政務次官にほんとうに腹をきめてやっていただきたいと思うのは、今農政局長の方でモデル地区ということになっておりますと言うが、そんなものになっておりません。厚生省もほかの省もそうではないところをやっている。農林省だけが意地を張っておる。さっきから言っているように、この問題については政党政派を超越してやるということが基本原則になっているわけです。ところがモデル地区という問題が政党政派の利己心に利用されている。そういうことをしないということを総理大臣から確約をされている。それが中途でひん曲がっておる。モデル地区という法則がとられているというような農政局長考え方は改めてもらわなければならぬ。  それからもう一つ、楢崎さんも切々といわれたように、モデル地区以外の部落農村が、ほんとうに困っている状態にある。明治維新のときに土地の再配分がなかった。小作農にもなかなかなれないところを、一生懸命に努力して小作農になった。それからわずかな土地を手に入れた。手に入れた土地は少なくて、しかも山のがけであるとか、川で洪水が起きたら流れるとか、小さく点々として、こっちへ行ったりあっちへ行ったりでくたびれるとか、いろいろな悪条件の土地しか持っていないそういうことを一つも考えないで、一般的に何とかかんとか言っておられる。零細農の中にも種類があります。一町以下、五反以下、三反以下、いろいろな種類がある。大まかに全部で考えればいいというような逃げ口上は許さない。三百万の人の大部分が農村で生活をしようとしておる。土地は分けられなかった。一生懸命に努力してわずかな土地を得た。ところが国の農業政策が零細農を切り捨てるような政策をやっている、そこに苦しんでおるわけです。この特に苦しんでいる人たちに対する対策をしなければ、農林省が、農政局長が先ほどからずっと言ったような国の基本原則をひん曲げてくることになる。農政局長は反省してもらわなければならないし、政務次官は大臣と一緒に閣議の決定事項、国会総理大臣確約をした事項が侵透をしていないで、下部で曲げられているという点を厳重に変えていただかなければならない。来年度はモデル地区ではなしに、一般の零細部落農村に対する対策を必ず出す。職にかけても出す。出さないような、抵抗をする農林省の公務員諸君があったならば、そのような職からほかに転じせしめる。農林大臣がそれを聞かなければ、政務次官がみずからの辞表をたたきつけてもそれを出させる、そのような決意になってもらわなければならないと思います。政務次官の御決意を一つ伺いたいと思います。
  198. 津島文治

    ○津島政府委員 ただいまのお話、まことにえりを正しくしてお聞きをしなければならないことでございます。農林省といたしましても、決してそのモデル地区に限るものではないのでありまして、やはりモデル地区はモデル地区として、また一般の地区にも農業政策の恩典を施していかなければならないことは言うまでもないことでございます。従いまして今後におきましては、ただいまお話の御趣旨に沿うように、新たな観点に立って、決意を新たにして進まなければならないと思うのであります。ただいまお話のごとく、農林省の係官の方で悪意を持ってこれを曲げるとか、そういうようなことは私は絶対に信じられないのでございます。従いまして、農林省全般が決して悪意でやっておるのではないかということをこの機会において御了承を賜わりたくお願いを申し上げる次第でございます。
  199. 八木一男

    八木(一)委員 けっこうですが、一般地区と言われましたけれども、モデル地区でない部落、零細農民のことについてという意味で言われたと解釈いたします。
  200. 津島文治

    ○津島政府委員 はい、そうです。
  201. 秋田大助

  202. 田原春次

    田原委員 大へんきょうは長時間にわたって、なお総務長官等も何度も御出席願いまして、いろいろ御答弁をいただいて、部落問題に対して私どもの平素考えていることを非常に長く時間をかけてお聞きいただいたことを感謝いたします。なお、特に私が大蔵省並びに通産省の中小企業関係の方に大へんおそくまで残っていただいたのは、お願いを申し上げたいこともあるし、ただしたいこともあるからであります。  簡単に部落の数字を申し上げますと、普通六千部落、三百万と言っておりますが、実際には五百万くらいになっておると思います。東京都内にも少なくとも五十万くらいは来ておると推定されておるわけです。なお産業の構造は、さっき言われたように、六割が働く農民であり、残りが家内工業者とそれから労働者でございます。従って農民並びに零細企業及び労働者、この三つの対策を同時にやってもらわぬことには、経済上あるいは社会環境上の改善はなかなかむずかしいと思っております。先ほどもちょっと申し上げましたように、部落民というのは一般日本人と少しも変わっていないわけで、これはなくなった東大の久米博士あるいはなくなった京都大学の喜多博士の著書にも明らかなようであります。日本民族というものは合成民族ですから、同一民族ではありませんが、まじっているわけです。アメリカにおける黒人と白人であるとか、あるいは世界各地におけるユダヤ人と一般のヨーロッパ人とかいうように、骨格や発生の歴史が違うわけじゃないのです。差別をされたために貧乏しておる。そのためにやむを得ず小さな部落から飛び出すことができない。従って、われわれが言うのは、未解放部落と言っているのは解放してもらいたい、職業の自由、移転の自由、結婚の自由、生活の自由等を一般国民とともにやってもらいたい、というところに私どもの念願があるわけです。従って、一般の国政の中で、特に三百万の部落民に対する特殊な援助をやりましても、それはちっともおかしくないという立場から申し上げております。  そこでまず順序としまして、中小企業関係の方に、予算面に現われた範囲からお尋ねいたしますが、昭和三十七年には設備近代化補助というのが三億数千万円出ておりますね。本年はちょっと増額しているようでありますが、これは一体何に使っておるか、その中で特に部落産業、大部分は農業以外は家内工業、皮革あるいはぞうり等の仕事、そのほかの小さな家内工業でございますが、それらに対する設備近代化の補助を大体どのくらいの割合でやっておるものか、もし調査してわかっておれば、大体の割合くらいを知らしてもらいたいと思います。
  203. 橋本徳男

    ○橋本説明員 お答えいたします。  実は三十七年度は現在実施中でございまして、まだ府県の方から数字が上がってございませんが、三十五年度、三十六年度、いずれも統計が出ておりまして、特に皮革関係を中心にいたしまして、三十五年度は四組合で、貸付金額といたしまして二百九十六万円、三十六年度は七組合で一千九十万円というふうな補助金が出ております。これが共同施設でございいますが、このほかに近代化施設の補助金ということで三十五年、三十六年、それぞれ一件ずつ出ておりまして、三十五年は二十二万円、それから三十六年度は六十八万円というふうなことで出ております。さらに三十七年度といたしまして、近代化補助金、共同施設関係はまだ集計ができませんが、特殊なものといたしまして、雑貨センターを通ずる補助金というふうな形で、特にこれは人造真珠関係でございますが、こういったものに対しまして五百二十五万の補助金を日本人造真珠ガラス細貨工業協同組合というところに現在出すことになっております。話は前後いたしましたが、共同施設は、御承知のように中小企業の近代化をし、また中小企業が大企業に対しまする非常に不利な点に対抗するために共同していろんな施設をやるというものに対しまして、国が県を通じまして補助金を総工事費用の二分の一を出す。それから近代化補助金につきましては、これは共同施設ではなく、特に零細な企業を中心にいたしまして近代化の設備をしようという場合に、同じようなルートによりまして補助金を出すというのでございます。こういった補助金はいずれも補助金という名前はついてはおりますが、無利子の貸付というふうな形で一年据え置き、五年償還というふうな形で現在なっております。
  204. 田原春次

    田原委員 中小企業庁で扱っておる調査で明らかになっておる点で、部落中小企業の実態についてはわかっていませんか。
  205. 橋本徳男

    ○橋本説明員 私の方では特別そういったデータはございません。業種ごとにそれぞれの実態把握をやっておりまして、特別その業種の中でどういう形でというのはないのでございます。ただ都道府県等からそういうふうにして補助金を出した場合に、その結果が御報告になりました場合に、初めて府県としてどういうふうな出し方をしたかというところから分類いたす、こういうふうになっておるわけでございます。
  206. 田原春次

    田原委員 そうしますと、中小企業庁としては、特に部落産業を目標の施設というものはないわけですね。そうすると一般設備近代化、もしくは共同施設の貸付といったようなものの中で大体の割合はわかりませんか。
  207. 橋本徳男

    ○橋本説明員 特別同和対策のためにというものはございませんが、こういうふうに一般的に中小企業零細企業というものを対象にしておる政策でございますので、その中で特にやり方につきましては、各府県を通じて実施するということで、府県がそれぞれの形におきまして一応補助金なりあるいはその他の施策をやっておるというようなことになっております。  率につきましては、計算いたしましてから後ほどお答えいたします。
  208. 田原春次

    田原委員 そうしますと、共同施設貸付金の対象としても、部落産業を特別に調べて貸しておるわけゃないじのですね。一般条件に合えば貸しておる。
  209. 橋本徳男

    ○橋本説明員 そうでございます。
  210. 田原春次

    田原委員 問題はそれなのであります。実際上の貸付ないし補助を受ける場合における条件が、非常に数が少なかったり、程度が小さかったりするために、その選に漏れることが非常に多い。そこで、それはそれとして、もろいながらも毎年少しずついけると思うのでありますが、しかし何年かぶりに自分の方の事業に回ってくるのを待っておるわけにいきませんから、政府関係の補助金や貸付金のほかに金融面としての特別の考慮があるならば、事業といたしましても維持できる可能性が多いところであります。そこで中小企業庁の方並びに大蔵省の方に共同してお尋ねを申し上げたいのは、部落産業という特殊な環境のもとに置かれておる産業の維持のために、政府でつくっておられまする公庫、たとえば国民金融公庫、たとえば中小企業金融公庫、たとえば農林漁業金融公庫のようなものを、もう少し部落の産業に焦点を合わしてもらえないか。もちろんこれらの公庫は、特に部落であるから貸付を渋るというようなことはないに違いありませんけれども部落側から見ますと、どうしてもあと回しにされる、どうしてもいろいろな条件に合わないという不平を盛んにわれわれ聞きます。これが対策を私ども考える段階に来ておると思う。先ほど来各省にわたる実情については、それぞれ話がありますので、問題はこれからの対策でありますが、このままの形でいくか、あるいは特殊な施設等をもって少数の部落産業の維持をやらせるか、政策上の問題として大蔵省で何か従来こういう問題にぶっつかったことがあるか、また考えたことがあるか、この際聞かしてもらいたい。
  211. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 お答え申し上げます。  従来ただいまのお話しのございましたような同和対策という見地から何か特別な金融上の配慮をしたことはないかということかと存じますが、これにつきましては、もう先生先刻御承知のように、先般、三十四年でございますか、五月に同和関係閣僚懇談会というものにおきましていろいろ対策が御審議になったわけでございます。その中に、厚生省関係の更生資金の貸付でありますとか、あるいは文部省関係の育英資金の貸付とかいったようなものにつきまして、予算配賦にあたって特に同和関係対策ということを十分含んで配賦するように工夫をせよということが決定事項になっておることは御承知の通りであります。従来決定を受けておりますのはその点でありまして、そのほかの一般金融問題としては、特別な対策ということは実は考えておりません。先生御承知のように、ただいま御指摘がございましたような国民金融公庫でございますとか、あるいは中小企業金融公庫、さらには商工組合中央金庫というものが、いわゆる中小金融対策として政府関係三機関といわれておりますが、その中におきまして、なかんずく国民金融公庫におきましては、非常に小口零細の貸付について十分国民大衆の利便に資するようにという趣旨で設立されておるわけでございまして、その線に沿いまして小口零細の金融の疎通について遺憾のよいように努力いたしますとともに、さらに中小企業金融全般といたしましては、中小企業金融公庫あるいは商工中金を含めまして、できるだけその金融疎通に努める、かような基本方針のもとに従来やって参っております。御承知のように、三十七年度におきましても、当初の三機関の貸付計画に対しまして三回にわたって資金の追加をいたしております。総額五百億円に上る資金追加をいたしまして、中小金融の疎通に万全を期して、さらには三十八年度におきましても、一般的にかなり金融は緩和の情勢にございますけれども、にもかかわらず、昨年度の計画に対して一段と融資量をふやすという方針で、大体一割五部見当の増加を見込みまして、三機関とも貸付計画を組んで、ただいま財政投融資計画として御審議をいたしておるわけでございます。そういうような状況でございまして、あくまで小口零細の国民大衆全体のために資するということがただいまの金融の本旨でございまして、その点御理解をいただきたいと思います。
  212. 田原春次

    田原委員 確かにこれらの三つの公的金融機関は、その設立の目的はそうであったと思います。実際地方の窓口でわれわれ立ち会ったりして聞いてみますと、たとえば国民金融公庫は手続が非常にのろくて、五万円借りたいと思っても二カ月もして四万円くらい借りたいときに直ちに借りられるようになっていない。やはり地方の支店の責任上、非常に時間がかかるわけなんです。特に小口の融資に対しては迅速にやってもらうべきでありますが、貸し倒れというものを心配する余り、事務的にはそうなっている。それから中小企業金融公庫にいたしましても、代理貸しといいますか、取引銀行があって、そこで八割ということになりますと、取引銀行がないところ、今私が申し上げました部落産業というようなものは、いわゆる商業銀行でないところに多少の預金があるくらいのものが多いわけでありますから、自然中小企業金融公庫の設立の当初の趣旨を実際上活用してもらえない場合が多いわけです。一方、日本開発銀行あるいは日本輸出入銀行、同じく大蔵省が持っております金融機関は、大事業、大会社、大工場に対する大口の融資をやるわけです。そらして中小企業に対しては、形はつくっておるけれども活用の率か非常に少ないという不平が非常に多いわけです。これは声が大蔵省にも届いていると思います。私もしばしばこれを聞くわけであります。そこで対策について御相談をしてみたいと思います。同和金融公庫とでもいうような第四の特殊法人をつくって当ててもらったらどうか。もちろん出資をどういうふうにするか、全体的に見ればなかなか問題だと思いますが、さしあたって今できております国民金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫あたりから一定顔を預託するならするとか、そういうことはすぐできぬかもしれぬけれども、ともかく滅びゆかんとする部落産業の少顔金融面だけを扱う窓口ができてしかるべきじゃないかという気がするのです。御承知のように、北海道、青森、岩手等には部落はありません。たしか鳥取県もないのじゃないか、あってもごくわずかであります。それから、鹿児島県、宮崎県もない。関東は、多少ありますが比較的少なくて、東海道から関西、中国、四国、九州——九州でも福岡、熊本が多くて、佐賀、長崎、大分は少ない。従って全国的な規模のものでなくても——約三十数県にわたる。でありますから、かりの名前を同和金融公庫といったような特殊法人、直ちにそれが実現できないとすれば特殊な信用保証協会を認めるか、何かの形でもって、政府の補助によらざる金融機関、特に部落に対する金融を扱うような専門機関ができないとかいう気がしているのですが、これに対して中小企業庁はどう考えているか、大蔵省もあわせて聞かしてもらいたい。
  213. 橋本徳男

    ○橋本説明員 お答えいたします。  これは大きな問題でございますから、一応内部で相談をした上で御返事申し上げるのが筋だと思うのでございますが、個人的な考え方で申し上げますと、金融機関というようなものはやはりあくまでも金融機関でございますので、どういう形をつくりましても運用いかんにかかるのではないか。従いまして、現在ございますような国民金融公庫なりあるいは中小企業金融公庫なり商工中金なりというふうなものに、もしまずい点あれば、運用を改善していくということが十分じゃないか。さらに補足いたしますが、昨年こういった特に冷細な金融の円滑化をはかりますために小口保証保険というものをつくりまして、二十万円の借り入れにつきましては特に府県の保証協会で追認、銀行で貸した場合にあとでこれを保証にかけるといったような追認制度を設け、かつまた、これにつきましては保証能率を下げるというようなことで、特に小口の保証保険をつくってやっておりますので、そういった形でやって現在の形がもし運用の面におきましてまずい点があるならば、そういった面の改善をしていくというふうにやっていくのが適当ではないかと考えております。
  214. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 ただいまの先生の御構想でございますが、一般の国民金融公庫、中小企業金融公庫といったようなもの以外に、特に同和対策をもっぱら受け持つ新たな金融公庫を設立してはどうかというお話でございます。この点先生も十分御承知のことでございますけれども、金融公庫なりそういった独立した政府関係の機関を設立いたします場合、一体どういう観点からどういう必要性がある場合につくるかということでございますけれども、御承知のように、現在ございます各種政府関係機関は、実はそれぞれ役割があるわけでございます。大体中小金融関係は中小金融関係というように大きくくくっておりまして、また特殊な産業があれば、たとえば農林漁業のごときものはやはり他の産業にない特殊な性格を持つという意味におきまして、独立の金融公庫を持っております。また、さらに住宅の金融という一般の金融になかなか乗りがたいものにつきましては、これまた住宅金融公庫という独立機関を設けておるわけでございます。また輸出入の促進という意味で、輸出入銀行というものがございますことは御承知の通りでございます。そのように、金融機関の性格から申しまして、ただいまのような目的別、産業別というような区別はございますけれども、特定の方々の特別の対策と申しますか、いわば人を対象とした分け方は実はなかなかむずかしいのでございます。しいて申しますと、実は私その点はなはだ浅学で申しわけないのでございますけれども、今卒然として思い浮かびましたのは、しいて探せば、かつて農林省所管に開拓者資金融通特別会計というものがございました。これは開拓者という人を対象に考えたようにも一見見受けられるわけでございますけれども、しさいに中を見ますと、これはやはり開拓という特殊な事業のためによほどの長期低利の金が要る。つまり、他の金融機関ではそういう長期かつ低利の資金は供給できないということから、国がみずからそういう特別会計を設けて行なったものでございます。農林漁業金融公庫が設立されましてからはそれに吸収されておりますことは、先生御承知の通りでございます。そのようにいたしまして、つまり、金融の質と申しますか、よほどの長期資金が要る、あるいは低利のものが要る、民間金融機関ではまかなえないような特殊な金融が必要であるというような場合に、やはり政府関係のものが出て参りまして、民間金融の補完をいたすということでございます。先ほど中小金融の問題を申し上げましたが、これとても実は三機関で受け持っております。金額の全金融機関の中に占める割合というものは比較的軽いものでございまして、現在全金融機関の総貸出額の中で、中小金融に向けられておるのが約七兆円ございます。そのうちいわゆるただいまの政府三機関が出しておりますのが約六千五、六百億、一割をちょっと欠けるぐらいでございまして、結局九割以上のものが実は民間金融機関から出ておるわけでございます。そういう状況でございますので、中小金融関係の主体はどうしても民間金融になります。そこで、ただいまのお話でもございますが、同和関係のために先生の先ほどからのいろいろの御指摘、まことにごもっともと思うのでございますが、私どもといたしましては、できるだけ政府三機関を活用し、同時に民間金融機関というものを——近ごろは信用組合も津々浦々までございます。さらには信用金庫、農協というようなものをできるだけ活用していく。その場合に万が一それらの機関が同和対策に対して特別な、消極的な態度をとっておるとか、どうも同和ということを聞いただけで融資を渋るとかいうようなことがございましたら、これはまことにもって好ましからぬことでございます。そこはそういうことでなしに、あくまで国民大衆に奉仕するということで、部落の方であろうと部落外の方であろうと、その間に何らの差別をつけずに、国民大衆の一人ということで金融をつけて参るのが金融機関の本来の趣旨に違いない。してみれば、ここで新たに特別な機関を設けて特別な方々のためのものだということにいたしますと、かえってそれは本来差別すべからざる方々を差別をするというようなおそれはなかろうかというような心配もございますし、できるだけ一つ現在の金融機関体系のもとにおきまして、これを十分活用していく。万が一何か不都合な点がございましたら、具体的にいろいろと御指摘をいただきましたならば、私どもとしても十分監督に注意して参りまして、先生の御熱意に報いるべく努力をいたしたい、かように存じております。
  215. 田中織之進

    ○田中(織)委員 先ほど佐竹さんが言われました開拓者基金のほかに、最近では御承知のように農民の海外移住のために農業拓殖基金制度がありまして、海外に移住する人の財産の処理、その他をやっておるようでありますが、これは海外移住ということではありますけれども、国内において滅びいく産業を維持している者に対する同和資金というものは特別に考えてもらいたいということを申し上げておきます。従って、私はやはりあくまでも仮の名を同和金融公庫、これを設立すべきものと思いますけれども、さしあたっての対策としては、国民金融公庫、中小企業金融公庫、農村漁業金融公庫、ほかに医療金融公庫、住宅金融公庫等の政府五機関ないし六機関の間の同和地区に対する特別協議会のごときものでもつくられて、今盛んにあなたは万が一の問題が起こったらと言うが、一々大蔵省というわけにいかないから、現在の貸付機関の協議体でもつくって、そこで常に議論する、あるいは処理していくということも考えられると思うんですね。きょうは時間もありません。大体そういう方角に進みたいと思っておりまして、われわれの方から特殊法人を出すわけにいかぬけれども、自民党さんの御協力も得まして、あくまで部落産業のための特殊金融機関をつくるべしという気持でおります。きょうは自分の意見を申し上げておきます。
  216. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣あと五分ですか、総務長官厚生大臣にかいつまんで手っとり早く御質問をいたします。両方関係いたしますので、総務長官に申し上げたいと思うのですが、先ほど、朝からの経過同和対策審議会会長出席要求をいたしました。前から委員会から要求しておられて、きょうもその理由をあかして来ることが必要であるということで、何回も連絡をして事務局長から連絡をしてもらったところ、来ると称して姿をくらまして来られないというような状態であります。そもそも健康上の理由があれば別の委員をというところまで折れておるのにこういう状態でありますのでこういうことはほんとうにけしからぬ。立法者も、特に秋田委員長もおられるし、立法者の一員である私どももおる。その立法趣旨ほんとう同和対策審議会に反映してもらう、激励をしようということに対して、その事情をまずあかして連絡しても、姿をくらますということはとんでもないことであって総務長官から審議会会長にそのことに関して完全に改心するように厳重に即時やっていただきたい。改心をしないような会長は、委員を委嘱しておるのですから、やめさせていただきたいと思います。そのような者が会長だったら審議会は進みません。そういうことであります。そういうことについて一つ御決意総務長官から簡単に……。
  217. 徳安實藏

    徳安政府委員 先ほどこの委員会におきまして、木村同和対策審議会会長出席を求められておりまして、審議室長からその旨を十分伝えてあるそうであります。しかるに今お話しのような状態で御出席になりません。もちろん政府委員でもございませんし、公務員的な説明員というような立場で、政府委員の補助的な立場みたいなことで、こういう方には従来おいで願っておるそうでありますが、常識上そういう場合には大体そう文句なしに来てお話を聞いたり、またお話しいただくのがほとんどの慣例なのであります。何のためにきょうはそういうわかったお話があるのにおいでにならなかったかということは、私ちょっとけげんにたえないのでありまして、明日にでもさっそく会いまして御趣旨をよく伝えて、御意見の次第によりましては私としても考えなければならぬというように考えますが、一応は御本人の意思が那辺にあってきょう御欠席になったのか、一ぺん問いただす余裕を与えていただきたいと思います。
  218. 八木一男

    八木(一)委員 それから大急ぎで申し上げます。同和対策審議会は今全国的に調査をしておられるわけでございますが、その中で長崎県、宮崎県、山形県、秋田県、富山県、石川県、神奈川県が調査に対する協力を拒否しておるようであります。しかも長崎県に至っては、昭和三十七年度に同和対策事業費の補助を受けておるにかかわらず、そういう事態がないとかなんとかいって拒否をしておる。とんでもない話です。それから他の府県についても、これは大正十年の内務省の調査でこういう部落があるということをちゃんと調査しておられるわけです。それにもかかわらずそのような協力態勢でないということでございますので、総理府として、またこの問題に非常に関係の深い厚生大臣として、また自治省はいろいろ地方行政団体に対して、そのような非協力的態度はけしからぬ、協力するようにという行政指導をぜひやっていただきたいと思いますので、総理府、厚生省、自治省の方々の簡単なお答えを願います。
  219. 徳安實藏

    徳安政府委員 一応私どもの所管でありますから、至急事情を調べまして、もしゆえなくして協力しないような場合は、行政指導によりまして厳重に協力するように指示いたしたいと思います。
  220. 西村英一

    ○西村国務大臣 私もその事情はつまびらかにしませんが、これは政党政派を超越してやる問題でありますので、いかなる事情があるかしれませんが、ぜひ調査に参加するように協力したいと思います。
  221. 茨木広

    ○茨木説明員 直接私どもの所管になりますかどうか、帰りましてよく相談したいと思います。
  222. 八木一男

    八木(一)委員 帰りまして相談しますというのではなしに、これは内閣できまった方針で、そこの審議会が調査している。そして今申し述べた府県には部落があることが昔の内務省の調査ではっきりしておる。それにもかかわらず難くせをつけて調査に協力をしない。ですからほんとうの行政指導は自治省が一番当たらなければならない。総理府と厚生大臣がこれだけはっきりした答弁をなさっているのに、帰って調査をするではいけません。直ちに行政指導をするということを自治省を代表してお答えになっていただかなければ、自治省の態度としては非常に怠慢だ、内閣方針を十分理解していないということになろうと思います。直ちに行政指導をするという確言をいただきたい。
  223. 茨木広

    ○茨木説明員 御趣旨はよくわかりましたからよく相談をいたします。
  224. 八木一男

    八木(一)委員 よく相談をいたしますじゃなしに、大臣が来ないのでかわりにあなたがたが来たのだから、大臣に直ちにそれを言って、権限は大臣がお持ちになるかもしれないが、あなたとしては命がけで最大の努力をする、それだけの御答弁をなさい。相談をする、それぐらいのことで国会をなめてはいけない。権限はないから最大の努力をする、そのような答弁はできないのか。
  225. 茨木広

    ○茨木説明員 ただいまお話のありましたように、私の権限じゃございませんけれども、帰りましてよくお伝えいたしまして、努力をいたします。
  226. 八木一男

    八木(一)委員 それじゃ厚生大臣にこの問題をお伺いをします。  厚生省の方で今度いろいろのことを出しておられますけれども、前からのことであって、新しいものがあまりふえておりません。橋梁整備補助金にしても大きな集中したところが認められているだけであります。こういうことではなしに、もっと環境改善その他について努力をしていただかなければななぬと思います。厚生大臣には後に機会がありますから、こまかいことはまた後に申し上げますけれども、もっと積極的に取り組んでいただきたいと思います。それから住宅関係については建設省でやっているけれども、多く集中したところだけを建設省は考えておりますので、集中していないところについての不良住宅が適用されないという問題がございます。厚生省として積極的にそういう問題を解決するために御努力になっていただきたいと思うわけでございますが、厚生省の要求のうち不良住宅貸付補助金が金額削除をされておる。これは大蔵省は最もけしからんと思うわけでございますが、そういうことについてまた後の機会に詳しく伺うとしても、切られるというようなことではなしに、本腰の立場で努力をしていただかなければならないと思うわけでございます。  次に、厚生省の万の諸施策をずっと見て参りましたが、補助率が二分の一のもの、三分の二のものがございます。いろいろな施設を建てるものもありますし、内容はいろいろありますけれども部落が集中している市町村は、全般的に財政が非常に豊かでないところが多いのに、しなければならないことが多いのでほかのところみたいに補助率が半分でいい、三分の二でいいというようなことになれば、実際にものが動きません。市町村が貧困だからその残りが出せないということがある。またそういうところに限って一般的に財政力が非常に乏しいので、部落対策の方に回ることに理解が薄いために、ほかの人が文句を言うようなこともあるわけであります。こういう問題については極力補助率を引き上げて、実際にものが動くようにしていただく必要があろうと思う。また補助率の問題だけではなしに、施設をつくるときの単価の問題がある。国のすべての行政に関係がございますけれども、実際の建設単価よりも低く見積っておって、そのような差額を出すいろいろな能力が乏しいために、ものが進まないということがございます。それからまたこれは御質問申し上げないと——そうでないとおっしゃるかもしれないけれども、建物を建てるまでに地面の問題がまた難物であります。そういうことを実際に解決するためには、通り一ぺんの補助率とか単価でなしに、特に地区としての負担能力は皆無であり、また市町村もそういう状態で住民税が少ない、またほかに対処すべきものが多いということになると、貧困な市町村である以上、この補助率というものはほかの市町村と違って非常に高い補助率にする。単価というものはほんとうに実際に合うようにする。そしてまた建物だけでなしに、土地に対しても完全にすべて国の資金が出るということにならなければ、ものが動かないと思うのであります。時間がありませんので総括的に申し上げましたけれども、今申し上げましたこと全体について厚生大臣に全面的な積極的な御努力を願いたいと思うわけでございますが、それについての厚生大臣の前向きの御見解をぜひ承らしていただきたいと存じます。
  227. 西村英一

    ○西村国務大臣 住宅の問題につきましては午前中田中委員から御質問が出ました。しこうして今八木さんからも全般的なお話がございましたが、いずれにいたしましても、われわれがこういうことをやるのは、まことに特殊なのもに対する改善をしたいということからであります。従いまして私は今、補助率等につきましては大蔵省とももちろん単価、補助率を打ち合わせなければなりませんが、要するにこういうものを解消するという気持、そういうものから割り出しまして、あくまでも善処をしていくという前向きの姿勢で、こういうものの特殊な差別がなくなることにつきましてもう最善を尽くさなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  228. 八木一男

    八木(一)委員 今環境改善を主体にして申しましたけれども、厚生省は部落解放問題について非常に大きな部面を受け持っておられるわけであります。環境改善のほかに、生活保護の問題国民健康保険の問題、日雇労働者健康保険の問題、いろいろな社会福祉施設の問題、福祉年金の問題、これはすべての底辺の問題でありまして、部落解放政策の中の大きな部門を占めております。社会労働委員会に出てこられる厚生大臣でありますから、こまかいことはこれからどんどん追及して参りますけれども、この生活保護の問題に一生懸命取っ組む、たとえば日雇労働者健康保険法の適用を念願している鼻緒工なりくつ工なり、そういう人たちに、現在建築労働者に適用しているような方式をさらに進めて、そのような人たち労働者本人の場合には十割給付の健康保険が適用されるように、そういうようなこともろもろ全般に厚生大臣に前向きの御推進を願いたいと思います。具体的の問題については後日の委員会に譲らしていただいてけっこうでありますけれども、すべてそういう問題に前向きに一生懸命取っ組んでいただく御決意を承らしていただきましたならば、本日はこれで終わることにしたいと思います。
  229. 西村英一

    ○西村国務大臣 生活保護の問題につきましても、これを見ますと、同和部落においては実に千分の六十幾つというような、非常にお気の毒な状況でございます。これは特殊な産炭地の離職者のある福岡県を別にいたしましても、非常に高いまことに気の毒な状況でございます。私どもはこういうような生活保護者が出ておることを好みません。何とかこれらの方々に就業の機会を積極的に与えたい。むしろ施設というよりは、こういう経済的な問題、就業の問題ということにつきまして、もう少し政府全体として考えなければならないのではないかと思います。しかしながら、現実に困っている方々については、これは十分誠意を持ちまして一つやっていきたい、かように考えておる次第であります。
  230. 秋田大助

    秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十六日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後七時十一分散会