○田中(織)
委員 実はその中間報告も、別途本件刑事事件の公判が進んでおりますので、お漏らしをいただきたいと思いますが、これも本日はどうかと思いまするので、いずれあらためて伺うことにいたします。現に裁判が進行中でございますし、裁判の進行の過程で最初に逮捕されて、その勾留理由の開示公判で、現に裁判の担当検事でありますけれ
ども、その検事が一種の
差別的な問題を引き起こしておるわけです。いわゆる逮捕した容疑者に証拠隠滅のおそれがあるということで、
部落解放同盟の幹部だから証拠を隠滅するおそれがあるから
解放するわけにはいかない、今日われわれは、別に破壊団体でも何でもございません
部落解放同盟という民主的な組織体の役員であるからといって、これは言葉をかえて言えば、
部落民であるから、やつらは悪いことをしても、犯罪を起こしても証拠の隠滅をやるのだという形で引き続き勾留を打とうとした。しかし裁判官から、そういうものの
考え方そのものが問題じゃないかということで注意されて、近藤検事はこれをしぶしぶ取り消した。容疑者はもちろん釈放になっておるわけであります。その当の近藤検事は、まだ公判検事として、この刑事事件のいわゆる公判に出ておる。これは法務省の刑事局長なりそういう
人たちがおりませんけれ
ども、警備局長がおられますから、私はこれからもう一つ奈良署の問題を持ち出すわけでありますが、そういう問題は、かつては、
解決はいたしましたけれ
ども広島の福山の地裁あるいは広島高裁でも、裁判官までがこういうあやまちを犯したという事例があるわけです。そういう点からも、ただ単に一般人の間の問題ではなくて、人権擁護問題という観点から、これらの問題については、権力による人権侵害の問題が大きな問題になるのです。少なくともわれわれの方に持ち込まれる問題は、権力と申しますか、一般人民に対するいわゆる人権侵害の問題が、人権問題のほとんど八〇%以上じゃないかと私は思うのであります。そういう観点から、これらの問題についても、
人権擁護局としては当然調査なり、あるいはそういう処置をとっていただかなければならぬと思うのでありますが、この点は要望だけを申し上げることにいたしておいて、最後の
質問に移ります。
これはむしろ警察当局に伺いたいのでありますが、私も実はただい申し上げました興津事件の公務執行妨害事件の五人の被告を特別弁護人として、検察側の証人調べでございましたので、一月七日に一日だけ法廷に出たわけであります。その過程を通じてみますと、警備局長、やはり私が昨年八月の法務
委員会で申し上げたように、何とか盟休を解かせようということで、校長が承知の上で
部落の子供たちに提供しておった約四、五十脚の机、いすを撤去するために、町教委が業務令命を出せば、それが公務だということで警察に協力してもらえるということを考えて、長滝
教育長がやったというのです。その問題について当時の西川窪川警察署長は、警職法五条によってそういう場合にはできるのだと、こういうことを裁判所で証言をしておるのであります。一体警察庁当局は、こういうような場合に、警職法の五条というものをどういうように
理解してこれに基づいて現地警察の行動をさせておるか、これは一般的な問題としてまずお答えを願いたい。
それから事実
関係について調べてみますと、もちろん何か不測の事態が起こるかもしれないから、そういう場合にはよろしくという
意味の一般的な協力要請はしておるけれ
ども、具体的に机、いすを撤去するための、いわゆる町教委としての業務執行についての協力要請というものは、問題の起こった三日の午前六時現地でやった、こういうわけです。そのときには、もう前の日から全県下から武装警官二百五十名を動員しておるので、この点から見ましても、やはり興津事件の警察の行動というものは、何か興津の
部落で不穏なことがある、あるいは
差別の問題で立ち上がる
部落民の行動というものを、あなたたちは、あたかも何か暴動か騒擾罪のような前提を立てて、
計画的にやはり大量の警察官を動員して待ちかまえていたということが、裁判の進行過程で出て参りました。被判がなお進行過程でございますが、この問題については、やはり警察当局が現地の警察を直接指揮するのではないけれ
ども、こういうことについては今後これを繰り返してもらわないという
意味において、私は公正な立場で警察庁当局が調べてもらわなければならぬと思いまするが、この点についての警察当局の所見を伺いたい。これが私の三番目の
質問の第二問であります。
それからもう一つの問題は、先ほどまだ事実を伺っておらないという警備局長のお答えでありますが、今年の一月十七日の夜過ぎ、奈良市のある劇場で、これはあまりよくないストリップ劇場だそうでありますが、一ぱいきげんでそれを見ておった大和郡山市の米沢義治さんという三十七才の人、これは
部落の人であります。隣にすわっておった奈良市富雄東阪の荒木利光さんと口げんかをして、一たん劇場から外へ出されたわけです。それでもう一度米沢さんという人が中へ入ろうと、高田の万津の親類のもんだ
——万津というのはやくざですか、そういう顔役の身内の者だと言うて中へ入ろうとしたけれ
ども、あまり身なりがよくないので、このやろう何を言っているのかということからとがめられたので、不愉快になり、そのため、荒木というけんかした相手が仲直りしようと握手をしたけれ
ども、それを断わった。そうしたら、多分警官だと思いますけれ
ども、その米沢さんの首筋をつかんで、二人を警察のジープへ乗せて警察へ行った。そして留置場へこの米沢君というのがそのまま入れられたわけなんですが、私服刑事が、酒を飲みやがってと言ってまず顔をなぐったので、何をするんやと言うと、やにわに足払いされて倒されて、なまいきを言うなということで、馬乗りになってげんこつで顔を十五、六回なぐられた。そこで米沢君が、もう腹をすえて、殺すなら殺せ、やるならやってみろということで叫んだら、今度は靴で胸を踏んで横っ腹を七、八回けった。そして、セーターと上着を脱がして留置場へぶち込まれたのでありますが、そのときに上着の左そでを引き裂かれた。しかも、留置場へおれが入れられる
理屈はないじゃないか、こう言ったら、そのときに二人の警官が「やかましいわ、ドエッタめ、牛殺し、馬殺し、お前ら死んでしまえ」こういう暴言を吐いて悪罵をかけたのであります。警官の暴行を受けたので医者を呼んでくれと本人が言っても、医者を呼んでくれなかったが、十時ごろ毛布を入れようとしたときに、あまりにも本人が苦痛を訴えるのでようやく医者を呼んだ。従って、その晩は留置場へ泊められているのです。あくる日、その人の奥さんが警官へ問い合わせて、午前十時ごろ釈放されたのでありますが、警察は自分で暴行を加えながら
——その前の晩に毛布を入れに来たとき、あまり苦痛を訴えたので医者を呼んだのだが、その医者代の五百円までを米沢さんに請求しておるという事件です。この問題を、共産党の加藤充弁護士から現在告訴が出ております。ところが、それは先ほど申し上げたように荒木とのけんかの過程でけがをしたのだということで、警察はいまだにこれを取り上げようとしないのです。けんかの相手から傷を負わされたものというのなら、相手を加害者として警察が取り調べておるかということになると、これは告訴状が出てから、
参考人としてようやく呼んでおるということです。従って、警察の取り扱いというものが、まるっきり
部落民には一方的だと思うのです。こういうようなことが、たまたま奈良県で
関係者からわれわれのところに持ち込まれておるけれ
ども、こういうような事件はたびたびあることじゃないかと私は思うのであります。この件については、警察庁では報告を受けられておるか。この点については、奈良県下の
八木代議士もおられますけれ
ども、民主団体が立って、警察のやり方は断じて許すことはできない。しかも、自分たちがやっておきながら、けんかの当事者間でできた問題だ、こういうような形で
——それならそれで加害者を即刻逮捕して調べるとかなんとかいうことならばいいけれ
ども、
参考人として申しわけ的な調書をとるだけで、本人を一晩、少なくとも医者に見せなければならぬような
状態に置いたということについては、当然警察が
責任を負わなければならぬ問題である。興津事件で、一つは弁護士に対する扱いの問題から、あなたたちに、やはり全国の警察官に、この種の問題の取り扱いについて警告を発してもらうことを私は要望したのです。ところが、たまたま、半年もたつと奈良署でこういう問題が起こったということについては、私
ども絶対に承服するわけにいかない。この問題の
事情を調べておるのかどうか調べておるとすればどういうふうにお考えになるか、この点についての御見解を伺いたい。