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1963-01-31 第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年一月三十一日(木曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 大原  亨君 理事 河野  正君    理事 小林  進君       倉石 忠雄君    佐伯 宗義君       田中 正巳君    中野 四郎君       中山 マサ君    早川  崇君       松山千惠子君    山村新治郎君       米田 吉盛君    淺沼 享子君       五島 虎雄君    島本 虎三君       田邊  誠君    滝井 義高君       中村 英男君    八木 一男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 西村 英一君         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         厚生政務次官  渡海元三郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 熊崎 正夫君         厚 生 技 官         (公衆衛生局長)尾村 偉久君         厚 生 技 官         (環境衛生局長五十嵐義明君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         社会保険庁長官 高田 浩運君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 一月三十日  委員三浦一雄君が死去された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 昨日、大臣から所信表明がございましたきょうは、その所信表明に関連をして、二、三の懸案事項についていろいろ御質問をさせていただきたいと思います。  そこで、まず第一に、御存じの通り昨年の八月二十二日に内閣社会保障制度審議会社会保障制度総合調整に関する基本方策についての答申及び社会保障の推進に関する勧告を出したわけでございます。今年の予算を見てみますと、前年度比で二一・七%、三千三百十三億円の予算になっている。いわば池田内閣公共投資社会保障文教政策、三本の柱の一つをになうその社会保障予算にふさわしい程度増加があったのだ、こういうことを池田総理も言われておるし、あなたもそういう意味のことを言われておるようでございます。そうしますと、一体ことしの二割一分七厘程度増加した厚生省予算の中で、社会保障制度審議会答申内容がどういうように具体的にその緒についたのか、それを一つ説明願いたいと思います。
  4. 西村英一

    西村国務大臣 この前も申し上げ、たびたび申し述べておるのですが、社会保障制度審議会勧告は、私といたしましては努めて尊重していって参っておるのであります。具体的には、今回の予算にもそれを——もちろん全部じゃありませんが、相当取り入れてやっておると思うのであります。勧告と申しましても内容が非常にたくさんありまして、今私たちの方では、そのものに直ちに賛成のものもあります、また検討を要すべき事項もあります、また直ちに賛成しがたい、将来に向かって研究していかなければならないものもあるわけであります。しかし、その勧告終局目的は、日本社会保障が今後十年間に西欧並みに進むべきじゃないかというその終局目的があるのでありますから、その終局目的に進めまして、諸般の社会保障制度全般について均衡がとれたように順次進めていきたい、かように思っておるわけであります。
  5. 滝井義高

    滝井委員 抽象的な御答弁は、もうよく所信表明でわかっておるわけです。そこで、ことしの予算に、一体、大きな柱としては、これは基本方針ですから、従ってどういう点が基本方針として取り上げられておるかという骨を私は聞きたいわけです。骨がはっきりすれば、それからあとは筋肉がつき、血管ができてきて生々発展をしていくわけで、骨組みがなかったら、これはクラゲかナマコみたいになってぐにゃぐにゃになる。風の間に間にゆれる社会保障になってしまうのです。そこで総合調整に関する基本方策というものが出てきたのですから、その基本方策の、一体どういう基本方針があなたの厚生行政の中に取り入れられてきたのかということが知りたいわけなんです。ことしの予算がただ二割一分程度増加をしました、額にしたら五百八十七億ですか、まあ厚生予算は万々歳です、こんなことを言ったって、薄くばらばらと何も重点もなくまかれておったら、五百余億の金というものはどこに消えたかわからないようになってしまうのです。社会保障本来の目的が達成できない方向に変わる可能性もあるのですよ。たとえば農地の地主補償のような工合に、五百八十七億もの金がこれに消えたら大へんなことですよ。だからそういうようなむだな金であってはならぬ。一体どういうところにこの基本方策が取り入れられて、基本的な骨組みとなっておるかということを聞きたいわけです。あなたがことしの予算を編成するときに、この方針のここを取り入れて、こういう柱をことしの予算には立てておるというものが私は聞きたいわけです。
  6. 西村英一

    西村国務大臣 勧告に指摘されたことのうちで、医療保険についての非常なアンバランスがあるということにつきまして、国保改善相当やったのでございます。  また、一般に低所得者対策をもう少し広範囲に進めるべきだという勧告もなされております。従来の低所得者対策と申しますと、どちらかと申しますと、生活保護及びそれに連なるボーダー・ラインということを考えておりましたが、私たちとしては、また勧告にもありましたように、やはり広く低所得者対策を考えるべきではないか。広くといいますと、非常に数も多くの所得の低い人にということでいろいろ考えたんですが、そのために国保保険料を軽減するというようなことは、非常に多くの低い所得方々に恩恵を及ぼすことじゃなかろうか。  それからまた、勧告の中に指摘されておりまする一般方々に対する社会保障がおくれておる、つまり非常に環境設備がおくれておるのじゃないかということは、これは非常に特筆してあるようであります。従いまして、そのために環境施設につきましては、三十八年度を初年度として五カ年計画を立てていきたい。この予算につきましての、三十八年度の予算は必ずしも多くはありませんけれども、五カ年計画のスタートといたしましては、従来の予算に比べまして相当な増額を来たしておる、こう思うわけでございます。  それから生活保護基準引き上げにつきましても、もちろん生活保護は、やはり将来十カ年には三倍ぐらいにすべきだという勧告もありますし、また厚生省も今までそういう線でいっておりましたから、一七%の引き上げをいたしたのでございます。  また結核精神病等については、これは従来も強制入所制度がありまして、それを進めてきましたけれども、そういうものについては、やはり徹底的に国家の公費でもってやるべきだというようなことをうたわれております。従いまして、結核及び精神病等につきましても、相当強制入所あるいは入院措置の数をふやして、その予算措置を講じたと思うのでございます。  それから、勧告の中にいわれておりました身体障害者であるとかあるいはそういう方々に対して、ただ単に身体障害者を収容して保護するということでなしに、全般としてもう少し社会福祉更生自立の道を開いていくべきではないか、つまりリハビリテーションの問題ですが、そういうことにつきましても、一つリハビリテーションの第一歩として、それに従事する技術者職能訓練とか技術者の養成の設備をしたい、こういう制度を新たに開いておるような次第でございます。  それから、これも低所得対策になりますが、現在行なわれておる福祉年金の問題にしましても、老人等がますますふえる、老人のパーセンテージも相当高くなっておりますが、それを調べてみましても、老人の約五割は二万円以下の所得であるようでございます。また母子家庭にいたしましても、それから身体障害者家庭にいたしましても低所得方々が大部分でありますので、満足ではありませんでしたが、その引き上げだとか、あるいは制限の緩和等をはかって参っておるところでございます。  勧告は、さいぜんにも申しましたように各般のことにわたっておるのですが、少なくともその線に沿うていっておることは、この今回の予算を見ていただけば御了承をいただけるのではないか。十分とは申しません。二一%の予算になったから大いに私は手柄にするものではございませんが、一歩ずつ前進していっておるということについては御了承を願えるのではないか、かように思っておる次第でございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 ほとんど全部おやりになったことになって、どうも柱がはっきりしないのです。しかし、今大臣の御説明の中から、私なりに、大臣がおそらくこれはそういう点を強調したいのだろうと思う点をまとめてみますと、結局大臣は、医療保険アンバランスである、これを是正しなければならぬ、特にアンバランスを是正する場合の重点国民健康保険である、こういうことですね。いま一つは、低所得階層対策政策というものを相当広範囲にとらなければならぬだろう、そのためには老人あるいは未亡人、身体障害者、こういうような政策重点を置く。同時に、今までやっておった低所得の中の一番底辺にある生活保護者基準も上げなければならぬ。縮めて言えばこういうことでしょう。これが、勧告から自分が取り入れて今度の政策としてやっておるところだ、こうおっしゃるのだろうと思うのです。大体そう理解して差しつかえないでしょうね。
  8. 西村英一

  9. 滝井義高

    滝井委員 生活環境はありますけれども、大きな点としては、生活環境はことしは大して前進をしておるとは思わぬです。これはあなた方が要求したものがまだ建設省ともはっきりまとまっていないし、どうも私たちは、一番大事なごみにしても、これは東京都はごみの捨て場がないで困っているんですからね。今出てくるごみを処理できる、焼却できるのは二割ですよ。こういう点については、むしろあなたの方は用心しないと河野さんの下水に先を越されておりますよ。そういう点はまたあとで触れますが、私は、今あなたがちょっと環境整備、こうおっしゃっておるけれども、これは日本社会資本の充実の中で最もおくれておる点ですよ。公共投資的なもの、いわゆる独占奉仕の道路とか港湾とか用水とか下水とかが先行をして、そうしてそれと一緒に並行しなければならないいわゆる社会福祉的な公共投資というものがおくれているのですよ。これは今度ちょっぴり頭を出した程度で、大きな前進をしたとは考えられない。そこで私はわざと言わなかった。しかし今あなたが、あえてこれもおれはやっておると言えば、環境衛生をもう一つ加えて、三本でけっこうだと思います。  そこで、その三つに従って少し突っ込んで聞いてみます。そうしますと、まず日本社会保険医療保険のさか立ちを直さなければならぬ。アンバランスということは、逆な言葉で言えば、さか立ちをしておるということです。これを直すために、あなたとしては一体具体的にどういう方針をこれからやっていこうとするのかということです。基本的には一体どういうことをやっていこうとするのか。わずかに国民健康保険に、低所得者の二割について頭割り五百円ずつ一年間に保険料を免除するという、そういうちゃちな政策では、絶対にさか立ちを直すことはできない。極端な言い方をすれば、豊かな者ほど保障されておって、貧しい人ほど突き放されているというのが、今の自由民主党社会保障政策なんです。全国で困っていない地主については千八百五十億円の金を議員立法ででもやろうとするけれども、現実に九百万の世帯国民健康保険であっぷあっぷしておるのに、これに千八百五十億の金をつぎ込もうとしないのです。これについて二割の引き上げをやったけれども、わずかに本人だけについて一割五分は保障するけれども、しかしまるまる全部をやろうとはしない。まるまるやっても半年で十三億しかかからないのにこれをやろうとしない、こういうところが問題なんです。そうして選挙区に行っては一応うまいことを言うけれども、やらない。これでは血が通っておる政治とは言えない。そこで、このさか立ちになっておる医療保障を、あなたとしては十カ年間に相当前進をしてヨーロッパ並みにするというのですが、今のヨーロッパは、今から十年もすれば先に行っておる。ウサギカメならウサギが眠ることはあるけれども、ヨーロッパ諸国は眠らずに、日本の方が眠る可能性がある。ウサギよりカメの方が眠る可能性が出てくる。そこで、一体さか立ちのものを、あなたとしてはどういう筋金を入れてこのさか立ちを直そうとするのか、その根本のところを一つ西村はやるのだ、西村はこれを一つ厚生行政の中に大きな足跡として残すのだというものがあるはずです。今あなたは、この勧告の中から、医療保障アンバランスを何とかしなければならぬというのならば、一体そのアンバランスを直す力点をどこに置くのか。一つでいいのです、くどくどしい説明は要らないけれども、西村は男だ、ここをやるのだ、こういうものがある、それを一つ説明していただきたい。
  10. 西村英一

    西村国務大臣 医療保険アンバランスを来たしておる、これを是正しなければならぬということにつきましては、勧告にもまた一つその行き方方法を出しております。また、その他医師会等にも、これはどうすべきだというような方法はあります。しかし、いずれもこの是正をするということについては同じものですが、行き方においていろいろ差があると思うのです。私としましては、まだ十分な研究はできておるわけではございませんが、やはりこの被用者保険あるいは国保というものを、一本にするということを直ちに考えるわけにはいかないと思うのであります。だから被用者保険被用者保険とし、国保国保として、今までの発達の歴史もありますので、その歴史を見まして直さなければならぬということでございますが、まず第一に、何と申しましても国保が非常に悪いから、アンバランスを直すにしては、やはり国保徐々に直していかなければならぬ。(「その徐々が問題だ」と呼ぶ者あり)徐々にということにつきましては、おそいということではなしに、順を追うていくということでございます。しこうして、そのための一歩として今度国保改善をはかりましたのでございまして、引き続いて国保改善ははからなければならぬと思うのでございます被用者保険につきましては、その被用者保険の中でやはりアンバランスをとっていきたい、これは勧告の中ではそれを一本にして、一つ保険にしてというようなことを言われておりますけれども、そういう組織を一本にしてということよりも、何かやはり被用者保険の中の共通な事業というようなものがあれば、その共通な事業というようなものをまとめていって、そのために全体の保険から調整金をとるというようなことも一つ方法ではなかろうかと思うのでございます。従いまして、くどくなりましたが、被用者保険被用者保険としていく、国保国保としていく。そのおのおのの中で改善をはかるが、特に国保は最も給付内容が悪いし、財政も悪いのでございますから、それを直していって、これには国家財政もつぎ込んでそれを改善していくということが、私の今おぼろげながら考えておるところでございますが、今後一つこれは皆様方と大いに研究して、このアンバランスを早くとっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、まず医療保険アンバランスを直すためには、それぞれ歴史的な発展の過程をたどっておりますから、まず第一に国民健康保険改善を加える、二番目は、被用者保険の内部的な調整をやっていく、こういうことですよ。そうしますと、国民健康保険改善をはかる方針というものは具体的にどういうことですか。あなたの前任者時代に、森本さんが保険局長のときには五カ年計画というものをここで発表した。そうしてその森本さんが、私は来年の予算にはこれをやりましょう、こういうことを言っておったけれども、一向にそれが出てこないのですね。何回か大臣のかわるごとに長期計画を立てたけれども、やるやるといううちに、大臣はみんな朝露のごとく消えていってしまう。今度あなたもやると言っておるから、まさか朝露のごとく消えずに、七月の改造があってもお残りになることを希望するわけでありますが、国保改善というものは、一体どういう目途を持って、どういう基本方針でやるのか。それを今、七割をちょぴっとやるようなことが出てきているのですよ。本人について五割を七割に上げるくらいのことが出ているが、家族はどうなるのか、まるきりわからない。だからそこらあたりをもう少し具体的に、きちっと一ぺん言明をしたら、あなたの命がなくなっても、次の大臣がそれを実行していくような確固不動言明をしてもらわなければ困る。発表しておって、あれは前の大臣が言ったのでおれは知らないのだ、こういうことでは困る。これはあとで関連して質問を出しますけれども、まず第一に、党もやるのだが、池田内閣なら池田内閣方針があって、自由民主党政策を吸収しながら政策を出していっている。政党内閣ですから、政治は連続し、続いておるのです。保守党政権は続いておるのですから、まず先に国民健康保険をどういう内容でやる、これを一つ説明して下さい。
  12. 西村英一

    西村国務大臣 国保の七割、全世帯主に対する引き上げ給付を今度十月からやりますが、来年はこれが年度当初からフルになってくるでございましょう。その次にやはり家族も七割給付、これをやりたいと考えます。ただし、今までの五カ年計画で、前はどういうことを考えておったかよく知りませんけれども、五カ年計画をやると申しましても、厚生省だけの考え方になっておって、あんまりオーソライズされたことがないのでございます。従いまして、今後計画的にやるとすれば、それをしっかりしたものにしたいということを私は考えておりますが、いずれにいたしましても家族の七割給付をやり、これを三カ年計画でやる、五カ年くらいにはずっと本人及び家族を含めて七割給付をやりたい、かように考えておるところでございますが、計画をもう少しオーソライズしたい。厚生省だけが考えておったのじゃいかぬ、こういうことで、あなたの御指摘になるのも、厚生省だけが考えておるからやはり人のかわるたびに少しずつ変わるのじゃないか、こういう御心配が非常にあるようでございますから、私はその点は考えておるつもりでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 今の話を聞いて、私、国民が泣いておりはせぬかと思うのです。家族の七割給付をして、幾ら一体金が要りますか、大臣。今国民健康保険の総医療費は千六百億円ですよ。千六百億円でこれを二割上げても、上げたやつ全部を見てやっても三百二十億しか要らない。地主のためには千八百五十億も出す。韓国には無償で三億ドルの金を出す。しかもこれは根拠がない。根拠のないものを出す。お見舞金ですよ。同じわれわれ国民が、医療にもかかれないで売薬で泣きの涙をしておるのに、三百二十億の金も出さないのですから。それも五年の後、何というけちな政策ですか。これで社会保障と言えますか。国民健康保険はおれらにまかしておけ、こうおっしゃっているけれども、これじゃまかせられぬですよ。先日、今度老齢福祉年金改善になったのだ、皆さん喜んで下さい、御老人方が、幾ら滝井先生改善になったのですか、今度は自由民主党がうんと福祉年金改善してくれるということで期待しておりました。残念ながら千円が千百円になりましたと言ったら、みんなわっと笑うのです、みんな笑い始めた。それよりももっとこれは笑われますよ。これから五年間でやるなんという、役人諸君がみんなそんなけちな考えを持っているから、大臣にみんなそういうことを入れ知恵する。前の森本さんのときは、もうおととしそういうことをやる、それは本人家族一緒にやる計画だったのですよ。そういう情けない厚生行政では、これはとても——社会保障制度審議会勧告のように、十年たったら九割の給付にするというのですから。それも、もちろん小山さんが言う九割というのは根拠があるものかないものか、腰だめ的に九割と言っているだけでしょう。だけれども、とにかく九割はやろう、こう言っている。少なくともあなた方は来年ぐらいはやらなければ……。これで大臣社会保障に対する手のうち、熱意が大体わかりました。  それならば、被用者保険アンバランスを直すのはどうして直します。どういう方針ですか。国民健康保険はわかりました。五カ年で家族まで大体七割給付をしますということまではわかりました。そうしますと、一体被用者保険アンバランスをどういう方針でやりますか。
  14. 西村英一

    西村国務大臣 被用者保険はそのアンバランスをとらなければならぬ、アンバランスを早く直したいということで、その方法等については今後研究しなければならないと思います。今私は大体の考え方を申しましたが、その全部の被用者保険を一本にするというようなことは直ちにできないだろう。それも一つ方法であろうが、なかなかできないだろう。ただいまのその各保険の中で、やはりある程度調整金をつくって、そうしてやっていくというようなことについても、十分まだ研究ができておるわけではございません。ここで私が、それらのたくさんあります被用者保険をこうこうする、制度で直すのだという計画は、今私実は持っておりません。
  15. 滝井義高

    滝井委員 主管官庁である厚生省が、戦後十七年たって、被用者保険のアンバラスについて世論が沸騰しておるのに、まだそれに何らの方策も持たぬという、こんな情けないことはない。だから大蔵省主導権を奪われてしまう。あとで私は触れますが、みんな大蔵省厚生行政主導権を奪われておるじゃありませんか。今度あなた方が何かやろうとする場合、全部だめになりつつある。  それなら財政上の問題をちょっと尋ねますが、社会保障制度審議会の十年後における社会保障の総費用試算というものが出ておることは、大臣御存じでしょう。この試算によって見ましても、今後の社会保障費用に対する国費支出は、現在の六・三倍になるわけです。あなたの方も、かつて社会保障の十カ年計画とか長期計画みたいなものを古井さんの時代にも出しましたし、前に二度くらいお出しになっておる。それと今度の社会保障制度審議会答申の数字を見ますと、今までの厚生省の出したものに比べて、今度の社会保障制度審議会費用の算定の方がずっと多いのです。一体これは、あなたの方としては、今までのあなた方のいろいろの計画というものをお捨てになって、そして六・三倍程度にまで社会保障国費支出増加していくだけの、何かそういう検討をされたことがあるのかどうか。この答申は去年の九月に出ているのです。そして予算も、あなたの言われるようにそれにのっとっておやりになっておる。当然それは、三十八年度だけのその場限りの予算ではないはずです。長期の展望に立ったものだと思うのです。なぜならば、長期の展望に立たなければ社会保障なんてものは実現できない。もちろん、われわれが低所得階層の生活水準を高めるというのは、これは経済政策そのものがまず先行しなければなりません。りっぱな経済政策が先行しなければならぬことは当然であります。そしてその経済政策に補完的な役割をもって所得の再分配をする、十年後にはヨーロッパの現在の水準にまで社会保障を高めるという、二つのにしきの御旗を持って前進しなければならぬと思う。そうすると、ことしの予算を組むときに二一・七%だけ社会保障予算前進をしたということは、その十カ年後のにしきの御旗を目標にして組まれておらなければならぬと私は思うのです。そのためには、あなたの方も当然何か基礎的な数字というものをお持ちじゃないかと思うのですが、さいぜん、どうも被用者保険内部のアンバランスについても何もお持ちになっていないところを見ると、全然何もやっていないのかもしれませんが、何かそういうことをやっておりますか。
  16. 西村英一

    西村国務大臣 被用者保険アンバランスについて何もやっていないということでなく、私はここに発表するような確固たるものがないということを端的に申したので、結局考えはいろいろめぐらしているのですが、そう簡単でないから私はそう申し上げたのであります。  それから今の、わが国の社会保障西欧並みにするということを言っておりますが、しかしそれは数字だけで云云するわけにいかないので、やはり西欧と日本とはいろいろな点で——人口の構造の点だとか、あるいは産業の状況等が違うのでありますから、直ちに数字だけで比較するわけにはいかないと思うのであります。しこうして、厚生省が何も考えておらぬじゃないかということを申されますが、結局社会保障勧告も、三年間を費やしていろいろやったのでございます。従いまして、私たちも、それが厚生省勧告されたからといって、短時日の間にすぐそれじゃ厚生省としてはこうするのだと、全部を数字的にぴちっと張りめぐらしてやるということはなかなか困難でございます。従いまして、数字的に年度別に、四十五年にはこうなるのだというようなことを全部はじき出しておるわけではございませんけれども、十分それを尊重して、内容的に西欧諸国の社会保障に接近したい、かように考えておるわけでございます。ことしは、医療保険につきましてもおそらく非常に大事な年でございますので、十分研究をしまして、三十九年度の予算のときには、この被用者保険にいたしましてもその他の問題につきましても、やや具体的な問題が出ようか、かように私は考えておるところでございます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 少し私の説明が足らなかったので、あるいは答弁しにくかったと思いますが、実は具体的に説明をしますと、この社会保障制度審議会答申を見てみますと、たとえば一番典型的なのは、これは生活保護、この生活保護基準を、昭和三十六年の保護基準基準にして、そして十年の後に、昭和四十五年に三倍にするのです。ところが、内閣所得倍増計画やら、それからあなたの方が厚生行政長期計画をおつくりになっておる。これは三十一年から三十三年を基礎にするのです。これを基礎にして四十五年に三倍にするのです。そうしますと、昭和三十六年を基礎にしたもの、これは三十五年ごろからこう上げてきておりますから、基準は四割くらい上がっている。そうすると、この数字は、月とスッポンくらいの違いが、先になったら、十年の後には出てくるのです。こういうように、厚生省は、あなたの言うように検討していないわけじゃない、検討しておるのですよ。検討しておることを知っておるから私は尋ねておる。検討をされて、そして厚生行政長期計画なんかを文章にもされて、パンフレットにもしておりますから、僕らはくれと言ったときに、秘密にしていてくれなかった。そうしてきちっとしたパンフレットにしていますが、それをいよいよ委員会に出てみると、今度はそんなものは知りません、公のものではございません、内閣としては何もしておりません、こうなるのです。ところが、これはれつきとして出ているのです。そうして何か新聞には厚生行政長期計画というものを発表して、やっておらぬものをあたかもやっておるがごとく出している。そしてここに来てはやっておりません、こうおっしゃるのです。そういうアドバルーンを上げる、PRをやるけれども、それは山吹の花である、実が一つもないのです。そういうことでは困るのです。はたして山吹の花ではなくて、実のなき花が咲くよりか、根の張る雑草に一つ厚生省はなってもらいたいのです。踏まれてもけられても厚生行政が根を張っていく、そうでなければいかぬと思うのです。こういうように大きな違いがあるわけでしょう。三十一年から三十三年を基準にする場合の四十五年を三倍にする場合と、三十六年を基準にして四十五年を三倍にするのとは、予算がずいぶん違うのですけれども、こういうことを検討されたことがありますか、こういうことなのです。こういうところは根本のところなんです。社会保障制度審議会答申を御尊重されてこういうふうに予算にお組みになったというならば、三十六年を基準にして三倍にするのですか、それとも三十一年から三十三年を基準にして三倍にされるのですか、大臣、どっちですか。
  18. 西村英一

    西村国務大臣 その基準はともかくといたしまして、今後十年くらいに三倍にするというあれで、今までの長期計画では、長期計画の線でやりますると年率は一〇%幾らくらいになるわけです。それから三十六年度を基準にして実施してみますと、九年間でございますから、二三%くらいになるわけでございます。一三%ぐらいの年率を実質に上げなければならぬ。それから前の長期計画でいいますと、かりに三十一年、三十二年、三十三年の平均をとって四十五年に三倍ということになれば、一〇・五%くらいになったかと思いまするが、しかし私たちは、いずれにいたしましてもこの三倍にするために、その三倍が年平均ならばこうなるということで、年平均よりは早くそのスピードを出して追いつきたいということで今われわれの考え方としては進めておるわけでございまして、いずれにいたしましても、今私が、三十六年度をとってやるんだとか、前の長期計画の三十一年度から三カ年の平均をとってやるのだとかいうことについては、どちらということを今考えておりませんけれども、三倍に到達するのに早いスピードでいくということは考えておるわけでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 あなたの一人合点では困るのです。与野党が、池田さんの言うように堂々と、幹部同士のやみ取引じゃなくて、国会で論議をしようじゃないか、堂々とやろうじゃないかと池田さんは本会議場でもおっしゃっているわけですね。堂々とお互いにやるためには、どこか基準年というもので共通の土俵を持たなければいかぬわけですよ。とにかく四十五年には三倍にするんじゃということになれば、昭和二十年か二十五年ぐらいの三倍ならばすぐなっちまう。だからそこらのいつを一体基準年にするかということが大事です。これは労働省も、このごろ生産性と賃金の上昇の帰趨をぽろっと変えちゃった、そうして都合のいいようにした。そういうことでは、お互いにフェア・プレーではない。だから三十一年から三十三年までを基準にするならする。三十六年なら三十六年、三十五年なら三十五年、お互いにこれをはっきりして議論の出発点をつくり、スタートをはっきりしないとだめなんです。もう少しあなたの方も、厚生行政長期計画というものをすみやかにお立てになって、その青写真で内閣の経済企画庁、大蔵省と十分議を練って、そして国会に提出してもらいたいと思いますがね。これは歴代の大臣に私は言うのです。いつか渡邊厚生大臣のごときは、予算の施政演説の説明をしたあと質問したら、八月ごろには出します、こう言っておった。出るかと思ったら、八月には大臣はやめてしもうていなくなっちゃった。それで当時の官房長、現在の保険庁長官にも言っておいた。絶対に出してもらわなければならぬ。ところが官房長はいつの問にか出世をして、保険庁長官になって、もうあんなことは私の所管ではございません、こうなった。役人の世界、大臣の世界はきわめて都合がいい。われわれだけがいつまでも議員で、同じことを言わなければならぬ。こういうわれわれの心情も、大臣、少しはやはり考えてもらわなければいかぬのです。役人は出世していく、大臣はかわっていく。これでは議論が進まない。一番困るのはだれか、日本国民大衆が困る。だからこういう点はどうですか、大臣、あなたの任期中に腹を固めて、そして厚生行政池田内閣としての長期計画というものをおつくりいただけますか。時日をかせと言われればかしますよ。しかし、おつくりいただくという言明をいただいたら、今度は間違いなく、あなたがおやめになっても次の大臣に引き継がれていくということを、ここにいらっしゃるあなたの幕僚の全局長諸君にも確認をしておいていただきたいと思うのです。大臣どうですか。
  20. 西村英一

    西村国務大臣 三十六年度を起点として、十カ年でこうやるいうのは勧告でございます。ところが、厚生省が今までとってきた数字は前に申し上げましたようなことで、それを年次別にどういう工合に十カ年でまとめてみるかということも、これは一応やらなければならぬと思います。しかし、私はそれよりも——これはあなた方も御賛成なさると思うのですが、それよりも早いスピードでいくということを考えなければならぬと思うのでありまして、その点につきまして、私はそう思っておるのです。計画的に数字を当てはめてやることは、そのためには三十六年度を起点にするか、あるいは前のものを起点にするかということは一応考えなければならぬが、いずれにいたしましても検討いたします。検討いたしまして、この一年間に勉強して、ちゃんとしたものをつくりたいと思います。しかし根本は、それよりも早いスピードでやりたい。これは生活保護を受けておるような人たちは、あの単価を見ましても、私自身非常に気の毒だと思っておりますから、そういうふうにいたしたい、かように思っております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、十カ年計画をつくる、早いスピードでやる、こういうことになると、私がこれから質問するのはやぼくさいことになるのです。そうしますと、社会保障の充実をはかる上に十カ年計画を立てると、大臣の意見では、前半の五年に重点が置かれるのか後半の五年に重点が置かれるのか、これでまた違ってくるのです。そうすると、前半の五年に重点を置くとすると、来年、再来年、その次くらいに予算をうんととらぬと、三倍とか六倍の国費がとれないということになるのです。これがまた大半なんです。そのことは、同時に、前半に重点を置くか後半に重点を置くかは、池田内閣の経済政策所得倍増政策によって経済の腰が強くなるか弱くなるかにも関連してくるのです。だから社会保障長期計画をお立てになろうとするならば、日本の農業の構造なり日本の経済の構造なりを十分分析、把握した上で、それにマッチし、それがこの経済のひずみ、経済の生存競争によって負けて落ちてくる脱落者、こういうものをやはり救い上げて、底上げをしていくものとしての再分配的な効果をそれに加味した、いわば高度の経済政策としてこの社会保障政策というものが立案されなければいけないわけです。そういう非常に緻密な見通しのもとに立ててもらわないと、厚生省だけの独断ではいかぬわけです。大臣の言うように、内閣としてやはり大臣が、トラでも死んだら皮を残すのですから、厚生行政長期計画を、西村さんのときに名実ともにその骨組をつくって残したのだ、こりいうことを一つやってもらいたいと思うのですが、どうですか。これは、今一年くらいにとおっしゃったが、そういうものが今昭和三十八年中にできましょうか。来年度の予算を審議するときには、厚生省のほんとうの長期計画というものが、この社労委員会に提出できましょうか。
  22. 西村英一

    西村国務大臣 やはり財政にもおのずからその時によって伸縮はありますし、そう一がいにすべてできる、こういうわけにはいきませんが、まあ精神として、前に申しましたようになるべくスピードを上げてやりたい。前半期の五カ年に大部分を達成してというようなことは、今直ちにやるわけにはいきませんが、スピードを上げてというようなことでやりたい、かように考えております。
  23. 滝井義高

    滝井委員 素案でもいいですから、来年度予算を審議するときには、これが池田内閣としての厚生行政長期計画ですというものを、今のうちに関連をしてお出しいただけましょうか、こういうことなんです。その大体でけっこうです。何もきちっとまとまったもので、そうしてこれは確実だ、一分の見通しの誤りもない、神ならぬ身の人間がつくるものですから、とてもそんなものはできません。しかし、お互いに共通の土俵で議論ができるようなものをつくっていただけるか、こういうことを私は尋ねておる。かつてつくっていただけるとおっしゃった。官房長にしても前の大臣にしても、みんなやりましょうと言った。だれもやらない。やりますと言って、ここに正式に出したことはない。だからあなたの時代に、三十九年度の予算を審議するときには、素案でけっこうですから、素案というところまで譲っておるわけですから、出していただけましょうか、こういうことです。
  24. 西村英一

    西村国務大臣 生活保護社会保障の心棒でございますから、最も意を用いているところでございます。従い戻して、滝井さんの御意見も尊重いたしまして検討はいたしまするが、私が出すとこう申しましても、出すようにならなかったら今と同じような非難を受けますから、検討させていただきたいと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 きわめて自信がないので残念ですが、そういう大臣の自信のない姿が、さいぜん私がちょっと触れたように、これからも触れますが、大蔵省にやられてしまうのです。大臣御存じの通り、今あなたの方で厚生年金の改正をおやりになろうとしている。ところが、前に大きな壁ができたでしょう。何の壁ができたか、企業年金ができた。もはや厚生年金にたよっておったって、二十年間掛金をかけて退職したって月に三千四百円しかもらえぬじゃないか、こんなものではもう相手にならぬ、老後を保障することはできぬといって、大企業では企業年金をつくっちゃった。だから今度は厚生年金を改正しようとしたところが、その企業年金の壁がじゃまになってどうにもならないという状態ができて、日経連と相談をしなければ厚生省の思い通りにいかぬでしょう。一体どこがそういう企業年金をつくったのだ、大蔵省が法人税でつくったのじゃないか。今また一つ出てき始めた。何が出てき始めたか。すでに、今の健康保険国民健康保険では、重大な長期の病気になったときにはもう役に立たぬ。こういう形で生命保険会社が健康保険を今度は商品化しますよ。それを大蔵省は大体三つくらいの柱を立てている。本年三月末までに生命保険会社で健康保険の具体化をはかるわけです。生命保険会社が健康保険をやるのです。そうしてさらに年内に住宅保険をつくるわけです。住宅保険の売り出しをする。そうして五、六年後には、今度はこれに新しい構想を組み合わして老後保険にするわけです。それでその契約者はどういうことになるかというと、余世を安らかに送るために、保険団地というものに入れてやるわけです。これはアメリカにそういう構想がある。アメリカの保険街というやつです。こういうことになりますと、もう今の健康保険国民健康保険もどうにもならぬ。もう重い病気になったときには、貧乏人がたくさんおるから、中産以上の人は国民健康保険に足を縛られておったのでは間に合わぬ。政府管掌の健康保険も同じだ。中産階層は今の保険には不満なのです。だから不満な中産階層は、生命保険会社には生命保険をかけておるのですから、この生命保険の金を今度は活用して健康保険を見てくれるわけです。定年退職したら健康保険で見てくれる、今会社を定年退職したら国民健康保険に入るのですよ。そこでこれを健康保険で肩がわりするわけです。そして健康保険に同時に住宅をつけてやる、住宅もつけてくれるわけです。アパートをつくり、団地をつくってそこで老後を安定せしめる、病気になったら保険で見てくれる、こういうことなのです。そうしますと、健康保険法を改正しようとしたって、中産階級がこれで生命保険に抜かれてしまったら、健康保険前進をはかろうとしたって中産階級は反対しますよ。私たちは、今のままで低くてもいいです、保険料は生命保険会社に払っているから、それでいいです。短期の保険が生命保険に抜かれ、長期の老後を保障するものが企業年金で抜かれたら、厚生省には一体何が残りますか。もぬけのからじゃないですか。だからこそ予算折衝のときに大蔵省は何と言ったか。厚生省国民健康保険前進をはかれぬというならば、大蔵省がはかってあげましょうと言って、五人未満の事業所の健康保険を政府管掌に入れましょう、日雇い健保を一緒に入れなさい、社会党の主張と同じことを大蔵省が主張しているのですよ。生命保険会社に今度は健康保険の商品化をやらせるというようなことを大蔵省は言っているのですよ。これであなた方は一体どういう対策を打ちますか。すでに厚生年金では厚生省は負けたのですよ。厚生年金で負ける、健康保険で負けたら、一体あなたの方に何が残るのです。長期の生活保障と短期の保険で中産階級のいいところだけをみな大蔵省に抜かれたら、信託会社や生命保険会社にとられたら、一体何が残るのです。残るのは零細な階層だけじゃないですか。そうすると、零細な階層は政治的な発言が弱いからというので、国庫負担を入れぬで今のままの低医療政策、低賃金、低社会保障で押しつけていこうという考えしか出てこないことになってしまう。一体この大蔵省がおやりになっておることを御存じですか。
  26. 西村英一

    西村国務大臣 今のお話のうちで、生命保険云々ということは私は知りませんが、大蔵省予算の折衝のときに、大蔵省が日雇い保険を政府管掌の保険一緒にというような話は知っています。そういうような話があったということは知っておりますが、そういうものはこちらで受け付けておりません。やはり日雇い保険は非常に大きい問題が残っておるから、全般的な改革はしなければならぬと思うけれどもという話で、本年はそういうような話にはこちらは応じなかったわけであります。お話しの点は、厚生省がしっかりした保険制度ができないから大蔵省が云々というようなお話もございますけれども、それは少しどうも誤解じゃないかと思うのです。予算折衝のときに、それは向こうはいろいろありましょうけれども、厚生省はなかなかそう応ずるわけにいきません。しかし、今の五人未満とかいうようなこと、これは一つ考え方でございまして、大蔵省のそういう要求は、国保の軽減をするためにそうしたらどうかという話があって、そのうちの一部は取り入れるようになりましたけれども、いずれにいたしましても、医療保険の問題にしましても年金の問題にしましても、一つの曲がり角にきておるから今年は大いに一つ研究して、制度に対してある方向づけをしなければならぬであろう、かように考えておるわけでございます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 少なくとも、大臣大蔵省のこの三月末までにつくろうとする健康保険にしても、それから住宅保険にしても、あるいは住宅団地にしても、一つのビジョンを持っておる。やはりこれは日本家族制度が崩壊をして、そして日本の中産階級がよりどころがなくなった。老後を保障する道というものが非常に薄くなっておる。今の政府の社会保障ではたよっていけないのです。その微妙な人間の心理というものを、確実に生命保険会社が把握しておるわけです。いわばビジョンです。未来像です。厚生行政に未来像がないからだめなんです。自由経済だからしようがないとおっしゃっておる。それだったら、与党の中に、自由経済だからしょうがないから生命保険会社が健康保険をやっていい、そういう声が出れば、これはおしまいです。だからこういう健康保険の商品化までやられ、厚生年金はやられて——これは明らかに財政の倹約なんです。社会保障制度審議会が、十年の後には今の六・三倍もの国家支出を必要とすると言ったから大蔵省はたまげておる。それを倹約しなければならぬ。だからあなたの方もふんどしを締め直して反撃態勢をとらぬと、厚生行政の未来像というものはだれも信用しなくなりますよ。しかもそれは社会労働委員会でやるのじゃなくて、生命保険会社のこういう措置は大蔵委員会でやるのですから、あなたの手の届かないところにどんどんいってしまう。だから今の間に、こういうものが頭をもたげておるときに、閣議でがんと頭をたたいて西村厚生大臣の存在を示しておかなければいかぬですよ。厚生年金で負けたのですから、あれを奪回できればなおいいです。無期はわれわれが言って阻止しています。有期だけしか認めていませんから、まだあれはちょびっとは残っています。外堀も内堀も埋められておる。本丸くらいは残っておる。今度は健康保険が生命保険会社でやられたら大へんです。ここで、すでに言ったように、簡易保険がガンまで始めるのですから、厚生行政のやるがんセンターなんか、どんどん簡易保険事業団がつくるのですよ。厚生行政厚生省がぼやぼやしておる問に、郵政省やら大蔵省やらが、どんどん侵害してしまっていっているじゃありませんか。だから私が早く未来像をつくって下さいと言うのは、そこなんです。どうですか、こういうものについても大蔵省にがんと——田中角榮さんの方にがんと一発食らわしておいて、わが方は断じてこれでいくんだという主張はできますか。
  28. 西村英一

    西村国務大臣 今の生命保険で云々というお話は、私は寡聞にして知りませんが、何だったら保険局長は知っておるかもしれませんから説明はさせますが、厚生行政にちゃんとしたところがないから、ほかのところでもっていろいろなことを考えてやっておるということにつきましては、せっかく貴重な御意見でございます。厚生省としては、保険に関する限り、これはいろいろ御意見は各省でありましょうが、十分方法を確立したいと思います。  なお、年金等につきましては、来年は再計算の時期でもありますので、お話のありました点も、これは必ず問題になるところであろうと思うわけでございますが、十分御意見を尊重して保険制度につきまして検討したい、かように考える次第でございます。
  29. 小山進次郎

    小山政府委員 私も、滝井先生が仰せられた結論には全く賛成なんです。その意味で、そうむきになって申し上げるわけでございませんが、若干早のみ込みをしておられる点がございますので、そこを少し正確に申し上げておきたいと思います。  現在生命保険の中に委員会が設けられて、先生が仰せのようなことをいろいろ検討しているということは、これは事実でございます。起こりは、すでに先生御存じの通り、生命保険に関係をしている首脳部の人が生産性本部の計画で外国の視察をしたときに、アメリカなどで、医療の問題がそういうふうな保険の形で相当手広くやられておるというようなことを見て参りまして、あれはいける、こう思って、日本として何とかやろうじゃないかというふうに考え出したことがきっかけでございます。ただ、日本に帰っていろいろ検討してみると、どうもアメリカとは条件が違うので、そう簡単にはいかぬという気持は非常に強くあったようであります。だんだん検討いたしました結果、煮詰まってきている方向としては、一つは、現在の傷病手当金というものがどうも物足りないという感じを持っておる向きが多いようで、その証拠には、組合等で付加給付として傷病手当金の期間延長なりあるいは増額をやっているところがある、これが一つのねらいになるかもしれぬということ、それからもう一つは、差額徴収、これはおもに病室の問題でありますが、デラックスな病院に入るための差額徴収といりものを一つ何とか保険の対象として取り入れていくことが可能であろうか、大体この二つに重点をしぼっておるようであります。なおそれに加えて、一部負担というものも対象にし得るかどうかということも検討しているようでありますが、最後の一部負担の問題については、どうも日本ではあまり可能性がない。特に、今一番一部負担の多い制度国民健康保険でありますけれども、国民健康保険の加入者というものは、そういった営業用の保険の対象としては非常に不向きであるというのは、これはもう従来の経験で非常にはっきりしておりますので、これはあまりいけないかもしれぬ、こういうことで検討しておるようであります。  それで、現在のところ、私どもの大まかな結論を申し上げますと、傷病手当金問題については、これは世界にも例のあることで、このことであるならば十分ゆとりを持って考えていい問題だと考えております。それから病室の問題についても、これはイギリスでも、最近末高教授が見て参ったところでは西ドイツでも、この種のものは相相発達しておるようでありまして、そのこと自体を頭から成り立たぬというふうにきめてかかることはやや早計に過ぎるという結論のようでございますが、ただ私どもとしては、これだけはやらせないつもりでございます。それは、イギリスの一部に見られることでございますが、非常に技術のすぐれた教授等が特別に持っている病室がございますけれども、この病室の、いわば利用権というものを、ある特定の生命保険会社が独占をするということがあるようであります。これがもし日本におきまして、たとえば有名な某教授の心臓外科についての手術は全部その生命保険会社が特約をしてしまって、その生命保険会社の被保険者にならないとその手術が受けられぬというふうな格好に発展をするとするならば、これは単に保険といわず、国民医療の面から見て許しがたい作用を持つことになるので、それはさせぬ、この点は現在までの検討の結果ではっきりしておるわけであります。大体向こうも、正式に意見は聞いておりませんが、だいぶ外側の社会保保障について、学者といわれる人々の意見は、慎重に徴して進めているようでございますので、少なくとも今のところは御懸念のような結果にはならぬし、またそういう結果にはさせぬ、こういうふうになっておるのでございます。
  30. 滝井義高

    滝井委員 実は私もそういうことを知っておるから——大臣に言っておるからなんだったけれども、これはもしあなたが、傷病手当金について生命保険会社に許す、病室についてもデラックスなものを許す、こうなりますと、今度は生命保険会社はどうするかというと、優秀な医学生を養成するわけです。心臓外科なら心臓外科の一流に仕立て上げてしまう。そうしてこれを専属にするのです。それはわけなく被保険者だけを見せることができる。すでに郵政省はそれを始めている。郵政省の事業団で、被保険者だけしかそこへ行くことができないようにすればいいのですから、これは可能です。営利会社が、契約した者を、自分のところのおかかえの——昔でも請願巡査というのがありましたが、それと同じで、おかかえの専門の日本一流の外科医者を養成して、それにやらせればちっともかまわぬことになる。ですから、あなた方がそういう今の考えならば、これは大へんなことなんです。  大臣、今の保険局長の御答弁をお聞きになった通りです。これは日本社会保障をどういう方向に持っていくかという根本問題に関連してくるのです。すなわち、問題は、日本社会保障を個人保障中心のアメリカ型にするのか、あるいは完全な国家保障のイギリス型にするのか、むしろ日経連のこのねらい、生命保険会社のねらいは、個人中心のアメリカ型と国家保障のイギリス型の中間に持っていこうとするわけです。そしていわば国家財政池田内閣の低医療政策の援護射撃になるのです。こういうものをもし許しておったら大へんなことになる。もうすでに法人税で負けたんです。今度は短期のものに目をつけてきているわけです。ヨーロッパ諸国、アメリカ等を見て、これはアメリカに行ったら、もう保険会社が独自の都市計画を立てて、そこに団地をつくって優秀なアパートをつくり、それから住宅を建てるわけです。それはしかも保養地なんです。それでそこに定年になった御老人を入れるわけです。病気になれば、その保険会社の生命保険でやっていくわけです。こういうビジョンなんです。これは日本の中産階級、今の家族制度がこわれて、そして老後を保障するために、日本の中産階級にとっては非常に大きな魅力なんです。こういうビジョンを大蔵省が出しているのですよ。そのペースの中で傷病手当金と病室だけならいいでしょうというくらいの認識しか保険局長が持たなかったら、厚生省は要らないですよ。もう大蔵省に全部、われわれは大蔵委員会と一緒になって、これから厚生行政をやった方がいい。何もそこには日本社会保障に対する何らのイニシアチブもなければ、主導権も何にもないじゃないですか、それでは私は困ると思うのです。むしろ大蔵省がこういう案を出すならば、厚生省の方からこういうビジョンを大蔵省一つどうだ、こういうことでなければいかぬですよ。大蔵省から言われることではだめです。もう少し、大臣、この問題は日本社会保障の根本に関連する問題ですから、もうちょっと真剣に御検討になって、今の小山さんのような御答弁では私たちは満足することはできません。生産性本部そのもののあり方についても、われわれは非常にこれができるときから反対をし、問題にしてきているわけですが、もう生産性本部の調査によってそういうことが企画をされるということになれば、ますますこれは問題なんだ。もちろん私たちは、社会保障というものは大きな生産政策の一環でなければならぬし、経済政策の一環でなければならぬと考えております。しかしそれが、社会保障がやはり企業の労務政策に奉仕するというような形であってはならぬし、またそれが企業の恣意によって運営されても困るのです。そういう点では、もう少し厚生省、しっかりしてもらいたいと思うのです。一応これは機会をあらためてもう少し私も勉強しなければならぬと思いますが、大蔵委員会その他で出れば、言ってやりたいと考えております。とにかくこういう問題があるということは小山さんも御存じになっておるし、大臣一つ十分勉強をしてやっていただきたいと思います。  次に、私がお尋ねをしたいのは、医務局長さんの方に関係をしてきますが、去年の九月の二日に、医療法の改正が成立をしたわけです。御存じの通り、医療法は、多分公布の日から起算して八カ月をこえない範囲内で政令の定める日から施行する、こうなっているわけです。一体今この準備の状態はどうなっておるかということです。われわれが医療法を改正した目途は、現実に公的医療機関が乱立をして、そしてお互いにしのぎを削って公的医療機関同士が共倒れになっている。いわば財政投融資、公共投資というものが二重、三重に重なって、非常なロスとむだが出てきておる。これを排除して、都市の集中を排除すると同じように、医療機関の集中排除をしなければならぬ、これは日本の人口構造の老齢化その他の点から考えても、あるいはあなたのおっしゃっている都市における生活環境の非常な劣悪、悪化の状態から考えても、やはり病院の配置その他もこれにマッチしていかなければならぬ、そのためには医療機関の整備審議会と医療審議会というものが整備されなければならぬのは当然なんです。医療審議会というのは、すでに今までの医療法の中にきちっとあるわけです。ところが、これは委員も任命されていない。法律があって法律を施行しない、医務局は……。厚生省一体医療審議会の委員を、あの法律ができてから九月、十月、十一月、十二月、一月、もうすぐ二月になります、五カ月たっております、医療審議会の委員は任命されておるでしょうね。同時に、各都道府県にある医療機関整備審議会は、十分行政指導をして整備をされておるだろうと思いますが、これは一体どうなっておりますか。そういうことと、医療法の施行の準備状況はどうなっておりますか。
  31. 西村英一

    西村国務大臣 法が改正になりましてから、私の知っておる範囲内では、指定地域の問題とか、あるいはその基準の問題だとか、せっかく今検討をいたしておるようでございます。  一方、またあの当時申しましたのですが、医療制度調査会に、医療機関のあり方ということも、これは諮問をいたしておるのでございます。その諮問に対する答申は三月ころあることになっておりまするが、その医療制度調査会の答申と今度法改正になりましたものの施行と、少しからみ合っておるような結果になっておりまするが、少なくとも法改正につきまする指定の地域であるとか、あるいはその他基準の問題とか、ただいま調査をいたして五月ころにはその政令を出そうというかまえをとっておるわけでございます。  医療審議会の問題につきまして、私ちょっとどういう改正になっておるかよく知りませんから、政府委員から答弁をさせます。
  32. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 まず第一に、医療審議会の法律にありながら任命がされていないではないか、こういうふうなお話でございますが、その通りでございまして、できるだけ早くこの任命をするようにこの前の臨時国会においてもお話がございましたので、ただいま大体、局においての委員になっていただきます方の案をつくりまして、省全体としての今検討に移りつつあるところでございます。おそくとも二月中か三月ころには任命をしていきたい、こういうふうに考えて、予定して進んでおる状態でございます。年内に、実は昨年中に委員会を発足したいと思っておったのでございますが、同時にこの委員会において議論していただきますところの必要病床数の算定の基準だとか、その地域の問題、今大臣のお話のありました地域の必要病床数の算定基準とか病床数の補正の基準というような、これの原案も同時につくっていかなければならないだろうということで、そのことも同時にいろいろ事務当局案をつくる作業を並行してやっておりましたので、それがおくれておりますが、至急これは発足するようにということで、今局としての案ができたという工合のところでございます。  それから地方の府県の医療機関整備審議会の問題でございますが、これにつきましても、昨年の秋の県の医務課長会議、及びこの一月末におきましての府県衛生部長会議等におきまして、附帯決議の御趣旨を申し、また今度の医療法の一部改正の趣旨もお話ししまして、現在各県では大部分の県に医療機関整備審議会があるのでございます。その人たちの今のメンバーをやはり改めるというような問題も必要ではないかというので、十分検討してもらうということで、この基礎になりますところの府県の医療機関の分布状況の調査等と合わせて、府県衛生当局へ命じておる状態でございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大臣の答弁の中にありましたが、五月でなければ動かぬわけですね。私が言いたいのは、どうも議員立法だからといってばかにしておるのじゃないかという感じがするのです。同時に、何か大臣の答弁の中にちょっと出てきたのですけれども、医療制度調査会とからまった——こんなものはからまる必要は何もない。国権の最高機関であるから、国会が法律をつくって通してしまっておるのですから、諮問機関は諮問が出たときにあとでまた処置したらいい。内閣がそれに基づいて修正案を出すなり改正案を出すなり、自由なんです。それをまた阻止することも修正することも、国会の自由なんです。だからそんなものにからまる必要も何もない。出たらさっさとやらなければならない。ところが何かこの前から、あの法案を阻止するために、そこにおる官房長が中心になって、医療制度調査会の結論が出ないから困るとうろつき回っておる。医療制度調査会では、病院が都市に集中することは困るという中間答申を出しておる。あなたも知っておる通り、そういう中間答申を出しておるのですから、それにのっとって改正案を出しておるのですから、しかも医療審議会が委員を任命せずに動かないのは、なぜ動かないのか。私が言い始めたのは、きょう初めてではないのです。あなたの前任者の局長のときから、何回にもわたって言っておるのです。なぜならば、医療審議会というものは、公的医療機関の診療報酬を調査審議する権限があるのです。従って、医療協議会が停止しておっても、医療審議会は公的医療機関の診療報酬を出すことができるのです。それをお出しなさいと言っても、保険局の圧力で医務局が動かない。そこで、法治国家で法律がありながら無視してやっておる。私はこれはけしからぬと思うのです。そういうことならば、われわれはこれから厚生行政は全部通さぬですよ。あなた方が医療審議会で——あとでもう一つ次に出て参りますが、われわれ国会が法律をつくっても動かさぬというのなら、あと法律をつくったってしょうがないから、動かし始めてからわれわれは審議します。厚生省の法案は、全部それまでは一般質問をずっと続けていきます。法律をつくっても法律が動かない厚生省だったら、法律をつくる必要はない。つくったって動かない。しかもそれが、自由民主党なり池田内閣の都合のいいときだけ動かしていくということならまっぴらです。だからこれはどうですか、直ちに委員の任命ができぬはずはない。何回言うかわからない。医務局長、責任を持って、少なくとも予算が衆議院を通るまでには委員が任命できますか。
  34. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 今のお話で、委員の任命が五月十五日ごろになるのではないかというお話でございますが、そういう意味ではございませんで、できるなら二月中なり三月中に任命して、そうしてすぐ審議していただこう、そして今の地域の選定基準、また当該地区の必要病床数の算定基準、そういうようなものもここで審議していただく、そして基準をきめまして、府県の医療機関整備審議会もそのときに発足さしておきまして、五月十五日からこの法律が動くようにしていこうというような考え方でございまして、決して法律の施行をサボっておるというふうな意味ではないのでございます。今の私の予定では、至急に任命をするというふうなことで準備を進めておるところでございまして、必ずやるかというお話でございますが、これはぜひやりたい、またできるものだと確信しておるところでございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政令案に出てくる必要病床数の算定とか地域の病床数とか、そういうようなものを早くつくって、そして同時に、委員の任命も二月なり三月中には任命をする。地方の医療機関整備審議会についても、この整備を民生衛生部長会議ですか、そういうところで要請をしておるからこれはやってもらう、実質的に法律が動き出すのは五月になってから動きます、こう理解して差しつかえないですか。
  36. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 その予定で今準備を着々進めておる、こういうことでございます。
  37. 滝井義高

    滝井委員 大臣に確認しておきますが、大臣もその方針了承しますね。
  38. 西村英一

    西村国務大臣 私がさいぜん医療制度調査会に諮問しておる答申がそれとからまると言ったのは、言葉の使い方が悪かったのですが、そういう答申があるということだったのですが、法律は議員立法であろうと政府提案であろうと厳として通っておりまするから、今その準備に専念しておることは確かでございます。従いまして、医務局長の話のように、これはできるだけ早く法律は法律として施行するのは当然である、かように考えておる次第でございます。
  39. 滝井義高

    滝井委員 医務局長方針通り大臣も裏づけをされたので、医務局長は勇往邁進せられんことを要望いたします。これは特に勇往邁進ですよ。  次は、今度は保険局長に勇往邁進してもらわなければならない。それは医療協議会です。すでに医療協議会は一昨年ですよ。昨年じゃない。三十六年の十一月に国会で修正可決されたわけです。自来一年有半この法律は動いていない。法治国家ですよ。大臣は、法律を国会がきちんと整備して公布裁可されたならば、当然動かさなければならない。もう私は何回かこれを、あなたの前任者の灘尾さんにも強く迫りました。もうすでに二度も三度も、やがて委員を任命しますからもうしばらく待って下さいと言われるが、言われるたびに、ああそうですかと引き下がるのにも限度があるわけです。寛容と忍耐ですから、三度くらいまでは、仏の顔も三度で寛容と忍耐を示しますよ。しかし三十六年十一月から一年間経過して、また春が来ますよ。冬来たりなば春遠からじで、また春が来てもまだ春にならないのじゃ困る。一体医療協議会の公益委員の四名、他の支払い、療養担当側の八、八の二十人の任命はいつされるのですか。なぜ一体できないのか。法治国家で国会の通した法律を、どうして厚生大臣が執行できないのですか、これを一つ明白にお答えを願いたいと思います。
  40. 西村英一

    西村国務大臣 御説の通りでございます。しかし滝井さんも十分内情を知っての御質問でございますが、私といたしましても、前回も申しましたように、あなたのお尋ねに対してはできるだけ早くそれを開くように準備をする。ただしこの構成メンバーは、厚生大臣がおのおのその団体に対して委員を委嘱する問題でございますから、それらの話し合いがつかないとうまくいかないのでございます。ただ公益委員はそんなことはないのじゃないか、自分勝手にやれるのじゃないかという御意見、もとよりと思いますが、しかし公益委員だけが任命されても協議会の発足ができるものではございません。従いまして、ただいま私としては全力を傾倒いたしまして、すべての点でなるべく早く開けるように努力しておるところでございまして、そういう意味で御了承を賜わりたいと思います。
  41. 滝井義高

    滝井委員 了承できません。さいぜんも申しましたように、もう仏の顔も三度ですよ。これがいわゆる西村厚生大臣個人と滝井義高個人ならば了承します。しかし、お互いに公人ですから、日本医療行政が、これが任命できないために停滞しており、あなたは絶えず独断専行をやっておるでしょう。この委員会にかけなければならない抗生物質も勝手におやりになった。法治国家ですよ。大臣はこれができないために勝手に独断専行をやっておって、われわれにはこれができないから待って下さい、待って下さいと言う。これは断じて許せません。それならあなたの独断専行をやったものを撤回しなさい。そうしたら待ちますよ。自分では独断専行で抗生物質をどんどんおやりになっているでしょう。初めのうちは持ち回りとかなんとか、割合良心的のことを言っておったが、これは委員を任命しておやりなさいと言うんですよ。順序を踏まなければいけない。自分の都合のいいときには勝手に独断専行をするけれども、自分の都合が悪くなると待ってくれ待ってくれと言う。これがいかぬと言うのですよ。これが少数野党をばかにしておるというのです。小山保険局長は私に何と言ったか。私が、公益委員を任命して、それから出てくるところの医療担当者でおやりになったらどうですか、ほかにまだ出る人が支払い側にもおるんだから、それをお出しになる、そうすると、だれが反対しておるか世間によくわかる、横車を押しておる人がよくわかるからと言ったら、それは滝井さん、あなたが厚生大臣になったらおやりなさい、西村方式はそうじゃありませんと、こう言った。それならば、われわれは議員として今度阻止します。つくった法律を運営できなければ法律をつくったってしょうがないから、私一人になっても今度反対をして、委員会の審議をストップします。厚生行政、つくったって意味がない。(「それは横暴だ」と呼ぶ者あり)横暴じゃないですよ。大臣が横暴です。自分の権限の中で勝手に、抗生物質なんかは——それは大衆のためだからやるでしょう。これだって大衆のためですよ。しかも地域差を撤廃するのは、これができぬから九月にしておるじゃないですか。九月に地域差撤廃をしておる。しかも、医療費の状態を見て下さい。医療費は、昭和三十五年の八月に日本医師会は三円の要求をした。日本医師会ばかりではない。あなた方が非常に親密にしている日本病院協会だってそうです。三円以上要求しておった。それを二回に区切って一円五十銭程度上げた。そうして、今度はあなたの談話を見ると何と言っておるかというと、国立病院等は医療費引き上げをする状態でない、困っていないと新聞に書いている。これは出どころは健保ニュースです。健康保険組合から出ておるニュースには、あなたの談話が出ています。そんなものは困っていないどころじゃないと思うのです。国立病院だって、あるいはあなたの方の社会保険の病院だって小山さんの所管ですよ。社会保険の病院だって困っています。日赤、済生会その他の公的病院だって困っています。神崎さんたちのところから、一三・八%の経費増があるからそれに見合う経費が必要なんだ、これは公的医療機関の実態から次のごとく拡大すべきであるということを言っておる。医師、看護婦の欠員充足に要する経費とか、医療従業員の適正待遇に要する経費、こういうようなものを計上しなくて一三・八%の経費増があるんだから、これだけは補てんしてもらわなければいけない、こう言っておる。あなたは地域差をやったからいいと言うが、その地域差は四月からやるんじゃないです。九月からやる。これから九カ月後のことなんですよ。こういうことで社会保障前進し、日本医療行政が前進をすると思ったら大間違いですよ。そうして、厚生行政は、今度は二一%とったからもうこれで万々歳だというがごとき言が厚生省の中からふわふわと出てきている。そんなことではおこがましい次第である。厚生省だけでなく、各省みなふえている。おおばんぶるまいの形をとって、薄く広くまいてちっとも重点がない。だからこういう状態で、しかも全国の診療機関等が、単価の要請等はせぬで、地域差一本のつつましやかな要求をしたのに、それをもったいぶって、四月からできるのを四月からできるかのごとくに、できぬかのごとくに、やっと九月からできますというような恩着せがましいことを言って選挙対策をやっている。こんなふしだらな政治がどこにありますか。地域差撤廃のために幾らです。わずか四十億ばかりではないか、国が満々見たって……。(「わずかではないよ」と呼ぶ者あり)そんなわずかな金を出すのに、国が恩を着せてやるという政治の態度はいけないと思うのです。こういう点について、四十億が大した金ならば、千八百五十億の金を出そうとするようなことは、断固として与党の内部でも反対しなければならぬ、そういう人は……。こういう点については、もう少し大臣考えないといかぬです。  医療協議会はどうするのです。これはいつやるのです。これは私は今度は期限をつけますよ、小山さんの言もありますから。西村厚生大臣は厚生大臣のペースで行くし、滝井義高滝井義高のペースで行きます。どっちのペースがどこで勝つかです。これはあまりだまし続けていくのも切りがあるのです。臨時医療報酬調査会が必要ならば堂々と内閣でお出しになったらいい。出してここの国会で討議して、勝負を決したらいい。これが民主政治なんです。だからそこらのことを、あっちにもいいことを言い、こっちにもいいようなことを言うような政治はいかぬ。きぜんたる態度をおとりにならなければならぬ。一体あなたは何をなそうとするのですか。医療行政をどう前進させようとするのですか。あなたの任期が終わらぬうちに終わってしまいますよ。二代にわたって、たった医療協議会一つ解決できないような政治なんてありはしない。大臣、公益委員はいつ任命されますか。きょうははっきりしてもらいますよ。
  42. 西村英一

    西村国務大臣 治療費地域差の撤廃を——協議会を九月、おくれておるじゃないか、そういうことを協議会とひっかけて別に考えておるわけではございません。それは誤解のないようにお願いしたい。それは別個の点でいろいろ財政上の理由その他でそうなったのでございますから。  それから協議会の開催の問題につきましては、ただいま私といたしましては努力しておるということでございまして、これはいつ期限を切るということでなしに、法律があるのでございますから、できるだけと今申す以外に方法がないわけでございますが、その間の事情は滝井さんも十分御承知のことでございます。なるべく早く開催するようにしまして、重要な問題はこの協議会に諮らなければならぬということも十分了知しておるのでございますから、どうぞそのように御了承願いたいと思います。
  43. 滝井義高

    滝井委員 こればかりは、幾らあれでも公人としての滝井義高了承できません。じゃ任命できない理由をはっきりしてみて下さい。一体どこが反対するのですか、だれが反対するのですか。そうすればわれわれも全部行って説得しますよ。どこが反対するのですか。(「知っておるじゃないか」と呼ぶ者あり)それは知っていると言ったって、わがままというものには限度がありますよ。やはり正義というものは貫かなければいかぬ、真実というものは勇往邁進しなければいかぬです。だから医務局長に勇往邁進をお願いした。だから今度は、小山さんに勇往邁進をお願いするのはそこなんです。やはり一年以上も、法律をつくらしておってそれが動かぬというばかなことはありません。その間大臣が必要なときには独断専行でいくというのが民主政治ですか。それならば、やる方を徹夜ででも説得しなければいかぬですよ。やれることはやれると言ったって、法律ができておって——私がいつも言うけれども、憲法調査会には社会党は入っていないが、勝手にどんどんやっている。あれと同じなんです。だから入らなければ、入らぬ人は除外しておればいいのです。かわりは幾らでもいるのです。保険者は幾らでもいるのです。何も特定の反対の人に入ってもらわなくても、幾らでもいるのです。だからこれができなければ、——大臣御存じの通り物価は値上がりしました。昭和三十七年一月から十二月までの物価の値上がりは、三十六年に比べて、総理府統計局の二、三日前の発表では六・八%の上昇ですよ。国家公務員の給与も、昨年の十月から七・一%ないし七・九%上がるのです。そのほかに、公共料金もずっと伴って上がっちゃった。バス料金も上がれば、私鉄の運賃も上がるし、電気料金も上がった。それなのに一体病院の経理は、さいぜん申しますように、神崎先生あたりの日本病院協会からの経費の不足を見ても、一三・八%経費が不足しております。もういい医者は雇えません、こうおっしゃっておる。この実態で、九月から五%ないし八%の地域差の拡大によって収入がふえるけれども、その間なお物価は上がるのです。物価は上がらぬ、横ばいだとは言ってない。やはりことしも物価は上がるのです。二%や三%はどんなに低く見積もったって上がるんです。そうすると、その間、医療費はどこもやらぬでそのままですか。医療費は扱わなくてもいいのですか。公務員の給与は上がる、代議士の歳費は上がる、ほかのものはみんな上がっておるけれども、医療機関は今のままでいいとおっしゃるのですか。自由民主党の厚生大臣としてはそうおっしゃるのですか。九月から上げたらそれで医療機関は十分やっていける、こういう認識なんですか。
  44. 西村英一

    西村国務大臣 私はよく知りませんけれども、健保連のニュースか何かに発表があったのですが、病院の経理につきましても一応はいろいろ検討いたしております。十分とは思いません。しかし、その地域差の撤廃によりまして、それがまた幾分緩和できることも事実でございます。そのニュースにどういうことが書かれておったか知りませんけれども、十分改善に意を尽くしたい、かように考えております。
  45. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、医療費の改定は、必要ならば九月を待たずにやるとおっしゃるのですか。地域差の撤廃ができるのは九月ですよ。九月の前に物価が上がり、客観情勢が必要ならば、おやりになるということなんですか、現実に医療機関というのは困っておるのですから。あなたが困っていないという認識に立つならばやらなくてもいいが、困っておるという認識に立つならば——そんなことを言った覚えがないとおっしゃるならば、これは神崎先生あたりの日本病院協会の主張もあるし、それから全国の医療機関は困っておる。ことしはどうにもならぬのだから単価を上げてもらわなければならぬ、こう言っているのです。これについてあなたはどうお考えになるかということなんです。
  46. 西村英一

    西村国務大臣 病院の経理につきましては、検討はいたしておるのでございます。しかし現在のところ、とんとんにはいけるだろうというような認識に立っておるわけでございます。将来のことは将来のこととして今考えたいというわけでございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 要求いたします。それならば小山さんの健保連の病院の資料、それから全国の三十七年の国立病院の資料、それから県立病院、自治体病院の財政改善に関する意見書というもの、これは多分元自治庁の荻田保さんですか、中心になって出ているのがあるのですが、これは数字が入っていない。これを書くのには数字を相当検討しているはずです。従って、とんとんにいけるというならば、一つその証拠を示してもらいたい。厚生省から出ている資料を見てみますと、三十五年度の公的病院の経営実態という調査を医務局がおやりになりましたね。これによりますと、医療収入が医療費を上回っている、いわゆる黒字施設ですね。黒字の病院は済生会が七八・三%、従って二二%は赤字です。それから農村にできている厚生連、これは七六・九%が黒字、従ってやはり二割三分程度は赤です。それから都道府県立の病院は四九・一%が黒字、従って五割一分は赤字です。それからその他の病院三九・六%が黒字で、六一%は赤字です。こういう実態です。これは医務局長のところから出ていますよ、大臣。とんとんじゃない。医務局長、今の私が指摘した数字が間違っておるなら間違っておる、合っておるなら合っておるとまず言って下さい。これはあなたの方の三十五年の実態ですから。その後医療費が改定されたけれども、物価の増、人件費の増でこの数字というものはそうよくなっていないはずです。医務局が最近発表したのです。
  48. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 今の病院の三十五年度におきましての経営状態を、抜き取り調査によりまして調査いたしました結果、これを発表いたしましたのですが、この数字を、今あなたのお話のときには自分の方と比較する余裕がございませんので、私の方で確かにそういう各施設においての黒字の病院の全体の医療費用と医療収入のバランス、それからそれの赤字と黒字の施設の比率というようなものは発表したことがございます。それを今メモとここで比べ合わそうと思っていたところでございますが、私のメモには全体のパーセントが出ておるだけで、病院施設のパーセントがありませんし比較ができませんので、この点が正しいかどうかということをここで申し上げるだけ私も数字を覚えておりませんですが、全体の感じといたしましては、そんなお話のような数字であったように思います。なお、それはしかし一番経営の苦しかった三十五年の状態でございまして、それ以後三十六年に、先ほどお話のございましたように二回にわたりまして全体に対しまして一五%くらいの医療費のアップがあり、三十六年においては多少息をついておるというように私どもは考えております。なお、三十七年度につきましては、今の状態につきましてはいろいろ検討しておる状態でございます。国立病院の数字などもいろいろにらんでおるところでございます。
  49. 滝井義高

    滝井委員 日本病院協会というのが、六公的医療機関団体、すなわち全日病、日赤、済生会、労災病院、共済組合病院、結核予防会の病院、これら千二百二十九病院の三十六年度決算で、その後の物価上昇その他いろいろ、人件費の増を国家公務員並みのベース・アップとして補正をして出したのが一三・八%の経費増になっているわけです。従って、病院全体として見ていくと、これは中には、都市の非常に流行している病院は黒字かもしれませんけれども、その他の病院については必ずしも全般的に黒字ではない。これは多分四割くらいは赤字だという見出しで、あなたの方の出した文書の中にも出ておったような記憶があるわけですが、しかし、今あなたも裏づけされたように、おぼろげながら今のような数字のものがある。これは私はあなたの方のものを写してきたのですから間違いない。その後よくなったにしても、たとえば都道府県の病院の五割一分が赤字であるということが、これが一円五十銭くらいの単価の改定で医療費引き上げで黒字になるとは考えられないのです。だからこれは、大臣は今大体とんとんにいける、こういう認識のもとにやっていない。しかもそれは、地域差の改定が恩恵となって現われるのは九月以降なんですから、それまでの物価の変動、人件費の増等を考えれば、とてもこれは持てるものじゃないのです。だからこの点はもう一ぺんあなた方の資料を出していただいて、その上ではっきりしたいと思います。きょうは医療費を絶対に上げなければならぬというところまでは詰めようとは思いません。しかし、赤字であることは確実です。大勢は、相当の病院が赤字で悩んでいるということは確実です。だからその資料を一ついただきたい。保険局関係の病院がありますから、それと国立病院関係の、できれば三十七年のものを出してもらえば一番いい。出していただきたいと思うのです。
  50. 小山進次郎

    小山政府委員 ただいま御要求の社会保険関係の病院と国立病院については、これは資料を提出いたします。ただし、三十七年度というのはまとまっておりませんので、勢い資料としては三十六年度ということにならざるを得ないと思います。その点は御了承をいただきたいと思います。  それから自治体病院関係の資料は、しいてとおっしゃるならば、これはお取り次ぎするという立場でお取り次ぎはいたしますけれども、中身については私ども責任を持ったものになりませんので、資料をお取り次ぎするという程度にしていただきたいと思います。
  51. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしていただきたいと思うのです。  次は、今申したように、われわれの調べた範囲においては、済生会やら厚生連というようなものはまあ七割七、八分程度が黒字だけれども、あとは赤字、それからその他の都道府県の病院や医療法人その他の病院は相当のものが赤字であるという、その資料が三十五年の厚生省の統計の中から出てきておるわけです。そこで、こういう実態がありますと、これを検討する場所が厚生省の医務局なり保険局だけで、そうして中央社会保険医療協議会が開かれなければ、公に検討する場所がないわけです。六カ月に一回は必ず開かなければならぬことになっておる、それを開かないわけです。もう一年有余にわたって開かれません。だからこういう点についても、客観的な経済情勢がどんどん変わるのに、医療機関の診療報酬を決定するかなめであるこの医療協議会が動かないということは、私は大へんなことだと思うのです。だから、私は大臣政治責任において動かしてもらいたい。どうしてもそれは聞かないところがあるならば、みんなで言って、一つ国会へ来てもらってでも説得する以外にないと思います。その努力をもう大臣一人がやる段階じゃないです。これはみんなでやらなければいかぬ。だから私はここで大臣に、どうしてそれが参加できないのか、その理由を——健保連が、臨時医療報酬調査会を国会に出さないからだめだ、こういうことが一つ、それから公益委員の四名の任命が国会の承認を得るようになった、これが四名の人数も少ない、こういう点が一つ、地方医療協議会に指導監督の権限がなくなった、こういう三つの理由で出ないということが新聞報道されておりました。しかし、今問題は、国権の最高機関である国会がつくった法律で、それを、四人に公益委員がなったからといって出ないという、そんな理屈は通らぬから、それはおそらくだめだと思う。それから地方医療協議会に指導監督の問題は、この前の保険庁のできるときに、これは保険局ですか、保険局がこれを持つことになっておるのですから、きっと法律に条文を一項入れたからこれも大して問題ないと思う。そうすると、あとは臨時医療報酬調査会を出すか出さぬかということだけになってくる。これは大臣が出すか出さぬか、腹をきめたらいい。あなたが出さないということの腹をきめて向こうが絶対出ないというならば、これはもうやる以外にない。お出しになるというならば向こうは出てくるでしょうし、それは大臣政治的判断で、われわれの関知するところではないです。あなたの腹一つにかかっておるのです。私はそういう理解をしているのです。だから一切の責任はあなたにある。灘尾さんとあなたと二代にわたって私は待った。一年三、四カ月待ってこれがまだできぬなんということで、われわれ社会党が、そうでございますかと引き下がるわけには参らぬ。なぜならば、あの法案は社会党と自民党の共同修正をやった法案だから、与党にも十分責任がある法案だ。それが実施できないからといって、大臣が、待ってくれ、しばらく待ってくれ、おれにまかせてくれ、その理由はここで言えないからといって、私たちは引き下がるわけにはいきません。やみ取引はできません、この問題では。だからここで一つ堂々とやってもらいたい。しかも巷間、新聞では一橋大学の中山伊知郎先生が公益委員に出るがごとく出ざるがごとく、アドバルーンが上がるのです。こういうところも、これは火のないところに煙は立たない。不謹慎だと思う。そんなことをいえば、われわれが認めなければそれでだめなんだ、国会の承認ですから。与野党の意見が一致を見なければならぬですから、そういう点はもう少し慎重にやってもらわなければいかぬと思うんですよ。だからここで一つ大臣——私は少し粘りますよ。お気の毒だけれども勇往邁進してもらわなければならぬ、叱咤激励をしなければならぬから、きょうは少し粘ります。どういう理由か、一つ言ってもらいたいと思う。あなたが言えないというならば、言うまで待ちますよ。きょうは徳川家康をきめ込みます。鳴くまで待とうホトトギスです。どうですか、どういうところに隘路があるか、ここに全議員に明らかにして、全議員が国会に呼んででもやろうじゃないですか。  一つ明らかにしてもらいたい。
  52. 西村英一

    西村国務大臣 法律施行以来まだこれが発足できないことは、私ははなはだ遺憾と思っております。しかし、それでまああなたに一つ了承してくれということも無理だ〜思いますが、ただいま努力をしておるところでございます。しかも協議会は、円満に開かれて、円満に厚生大臣の諮問機関になるということが主眼でなければなりませんので、その辺も考えつつ努力をいたしておる次第でございます。
  53. 滝井義高

    滝井委員 じゃどうしたら一体円満にいくのです。大臣考え方は、どうしたら円満に任命できるのです。どういう条件がそろったら円満に任命できるのですか。
  54. 西村英一

    西村国務大臣 やはり各関係諸団体が、十分その了承のもとにやるということです。強行するといいましてもそれは限度がありますので、皆さん了承の上で、協議会ができましても、協議会は協議会として十分任務を尽くせるというふうにしたいので、せっかく努力いたしておるところでございます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 各団体が了承するという条件ですね、条件があるはずです、どういう条件なんですか。
  56. 西村英一

    西村国務大臣 医療担当者及び支払い団体の方にそれぞれ希望がありますので、そういうような希望を満足させて、そうして協議会ができても円満にいくということが協議会をつくる主眼じゃないかと思うわけであります。具体的な問題につきましてとやかく今言う段階は、かえって事柄を進めないことになりますので、この点につきまして御了承を得たいと思います。
  57. 滝井義高

    滝井委員 これは何も秘密取引をする必要はないです、こういう委員こそ。秘密取引をするからおかしい。ガラス張りの中でやらなければならぬ。これは医療費を決定するところです、国民の負担に関係するどころです。一円単価を上げれば一割上がるのですから、総医療費は約四千七百億ですから四百七十億に関係するのです。そんなものを、委員を任命するのに取引をする必要はない、堂々とおやりになったらいい。条件を出したら国会に条件を持ってこさせて下さい。条件はどういう条件だか、国会がつくったのですから持ってきて下さい。一体どういう条件です。医師会側にどういう希望があるのです、担当者側にどういう希望があるのです、支払い側にどういう希望があるのです。大臣のところに出てきておるはずです、もう一年以上かかっておるのですから。言って下さい。そういう秘密主義がいけない。それは官僚主義というものです。もし大臣がそういうことまでここで言わぬというならば、われわれはこれから質問しませんよ。われわれ、医者の代表でも何でもないのですから。法律をつくったら、法律を正しく施行してもらうことが国会議員の任務です。もう少し勇気を持って政治はやってもらいたいと思うのです。泥をかぶることをおそれてはいかぬです。時には泥まみれにならなければだめです、正義のためには。だからもう少し大臣、はっきりしないと、僕は党に帰って相談をしてあれしますよ。もう何回言うかわからぬのですからね。小山君のそういう発言もあったのですから。何だったら滝井さん、これはあなたが大臣になっておやりなさい、こういうあれがあるのです。だから西村大臣大臣の意見を貫く、われわれは今度われわれの主張を貫きますから。ですから大臣、これは返答ができないならできないでけっこうです。一体いつ任命するのですか、どういう条件を与えたらみな満足に出てくるのですか。それさえ国会に明らかにされないのですか。それほど秘密があるのですか。
  58. 西村英一

    西村国務大臣 いや、秘密とかなんとかいう問題じゃございません。私は、これを成立させることに努力をしたいと思いますから、そうしてそういう問題につきまして最善の努力をしておりますから、ということを言うので、一々その団体との交渉の話につきまして、ああだこうだということを今言わない方がかえって事柄を早く進める、こう言っておるわけで、何も秘密なことをして、いろいろなものを取引して誘っておるわけではございません。けれども、推薦団体の了解を受けて、そうして円満にいくということが主眼じゃないかということを言っておるのであります。あなたに、秘密なことで取引なんかしておるようなことだから言えぬというわけではないわけでございます。そういう理由で言っておるわけでございまして、努力しておる最中でございます。法律制定以来いまだにできないということは、はなはだ私の力不足でありまして遺憾でございます。従って、今努力最中でございます。
  59. 滝井義高

    滝井委員 この法律をつくるとき灘尾さんはどう言ったかというと、この法律ができさえすればすべて円満にいきますといって国会を通さしたのです。そうして通ったところが、とたんに円満にいかない。一体政治責任はどうするのだと言ったら、いや円満にやるつもりでございましたけれども、ついにどうもうまくいかなかったです、こう言うだけなんです。今度あなたになってから言うけれども、滝井君もうちょっと待てと言うでしょう。もうちょっと待て、もうちょっと待てで、あなたが大臣になってから何月になります。七月、八月、九月、十月、十一月、十二月、一月、七カ月になりますよ。この問題は、あなたが大臣になったときからの一つ懸案事項としてずっと続いてきておったのです。そうしてなお待たなければならぬのです。いつまで待つか見当がつかない。それじゃあんまり、少数だからといって、社会党が百四十二名だからといって、これは踏んだりけられたりですよ。だからもう少し……(「われわれも困っているんだ。」と呼ぶ者あり)困っておるならば困っておる理由をわれわれに打ち明けたらいいのですよ。こういう理由で困っております。健保連が臨時医療報酬調査会を出さなければてこでも動かないといっております、これだけでもいいのです。それならば臨時医療報酬調査会を出すか出さぬかで相談してみたらいい。出さなければ対策をどうするか、出したら対策をどうするか、こういう点をはっきりしたらいいでしょう。どうですか。あなたが口を緘して、カタツムリのようにからの中に閉じこもって何も言わぬというならばそれでけっこうです。それならそれでわれわれも引き下がりますから。法案の協力はできませんよ、そんなものは、法案をつくったって動かないのですから。これは大臣の不信任ものですよ。七カ月もかかって何も動かぬというばかなことはないですよ。これは医師会の立場に立つ必要は何もないのです。当然国会でやるべきものなんです。これは大臣、絶対に答弁ができませんね。この点については、いつやるということも、それからどういう理由でそれができないということも——できない、それならばこの質問はこれでやめます。どうですか、最後に念を押しておきますが、何もできないですね。
  60. 西村英一

    西村国務大臣 いつやるという日にちを切ることは、今いつやるということはなかなか困難でございます。しかし、可及的すみやかにまとめたい、かように思っておりますし、なおあなたに対して、秘密であるからということの秘密は持ってはおりませんが、関係団体との交渉を今私としては私なりにやっておる最中でございます。そういうことでございます。
  61. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一つだけ聞いておきますが、この解決の隘路が臨時医療報酬調査会に関係があるかないか、かつて出して、それを内閣が提案しなくなっておる臨時医療報酬調査会に、この問題の解決が重要な関係があるのかないのか、この点だけ一つお聞きしておきます。
  62. 西村英一

    西村国務大臣 直接にあるとは思っておりませんが、やはり間接にはあると思っておるわけであります。結局医療の問題を今後どうするかというようなことを含めまして、医療問題には多くの研究すべき問題がありますので、どうするかというようなことを一応考えなければならぬとは思っておりますが、結局調査会の方は、直接ということはないわけでございます。
  63. 滝井義高

    滝井委員 厚生省が今国会に提出する法案の件数は幾らでございますか。
  64. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 一応現在では十五本を予定いたしております。そのうち予算関係法案が十一、その他は予算関係法案ではないという形になっております。
  65. 滝井義高

    滝井委員 昨日議運に出た件数は十二件でございますが、この内閣官房から出されたこのほかに出る法案は何と何ですか。
  66. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 検討中というのが一件ございます。これは臨時医療報酬調査会法案ということで、総理府の方がら検討中という形の中に入っております。
  67. 滝井義高

    滝井委員 そうすると厚生大臣は、検討中の臨時医療報酬調査会法案を今国会に提出する意思があるのかないのか。
  68. 西村英一

    西村国務大臣 それは検討中ということに一応なっておるわけであります。
  69. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。それならば検討の結論が出るまで待ちます。他の法案も待ちますよ。ずっと続けますから。  それから次に聞きますが、特定疾患です。特定疾患について通牒をお出しになった。この特定疾患というのは、近代医学の範疇では、われわれが大学教育で習ったことがないものなんです。それを厚生省が勝手に特定疾患と、こうおきめになっておる。万国の死因の分類表か何かでおきめになっておる。従って、この特定疾患をきめるために、どれが特定疾患に入るかを医者が請求書を書くときに首っ引きをしなければならぬ。問題は、大臣にその根本をわかってもらえばいいのですが、最近何か特定疾患に対する通牒みたいなものをお出しになっておる。ところが、何かどこかから横やりが入って、異議が入ってまたそれを撤回したような話を聞いておる。私が、実はこの委員会で特定疾患というものができるときに強硬に反対した。そうして当時医療課長——松尾さんがいらっしゃるかどうか——医療課長に質問をしたのです。こういう特定疾患だけについて、初診料を五点なら五点加算をするということは問題がある。たとえば胃炎が特定疾患なんです。一体これはどういうことなんだ。感冒は、何であれは特定疾患にならぬのだ。これは説明できないですよ。それで、この特定疾患というものはたくさんあるんですよ。一つ、二つじゃない、たくさんつくっておる。そうすると、こういうものを私たちは撤廃すべきだと思うのです、実に事務が複雑です。一つ一つ見なければならぬ。何か特定疾患を勝手に、恣意的に死因の分類でおやりになっておるらしい。そんなものは大学の教育では習っていないものなんです。こういうものは、私は撤廃すべきだと思う。その撤廃すべきだという主張を、この特定疾患をつくるとき、一昨年の十二月一日から実施するときに反対したら、今度は、先生、せっかく医療懇談会ですか、何かそことの話もできておるから今度だけは、こういうことだった。こういうものは、私は事務が複雑になるばかりだと思う。そうしてこういうような話があるのです。厚生省がズルファミン剤を急性耳下腺炎には使ってはいけない、そういうことを審査委員会で決定をしたらしい。ところが東京に急性耳下腺炎がなくなったんです。みな流行性の耳下腺炎になってしまったらしい。だからそういう筆先で人間がごまかせるような制度というものは、できるだけつくらない方がいい。これは特定疾患がその最たるものです。だからそういうものをつくって、いたずらに筆先で仕事をするやつに金がよけいにいくような制度はつくらずに、全部やはり五点加算したらいい。技術料すなわち初診料は五十円ちょっとしかないのです。だから特定疾患に五点つけるなら、特定疾患をやめて現初診料に一律五点加算した方がいい。そうすれば事務も簡素化するのです。それは医務局長あたりに意見をお聞きになってごらんなさい。何か最近そういう撤回の通知か何か出しましたか。通牒を出しておって、特定疾患の解釈か何か、範囲について通牒を出して、それをまた最近撤回をしたとかいう話もあるのですが、それが実に事務を複雑にしておる。事務の簡素化をやるためにもこれは必要なんです。
  70. 小山進次郎

    小山政府委員 まず一番最後に仰せられた、そういうことについて通牒を出して撤回したことがあるかどうかという問題です。何か技術的な点について医療課長の名前で連絡したけれども、十分熟さざる点があったから、もう少し検討した上で、あらためてかちっとしたものでやる、こういう話があったことはございます。  それから特定疾患全般の問題については、私も技術の問題について、今の段階であまり断定的に言うことは控えたいと思いますが、方向としては、私滝井先生と同じ考えでございます。この種のものが診療報酬の中にいろいろ入ってくることは、方向としては望ましくないことなのでありまして、やはりこれは将来の問題として、しかもかなり早い将来の問題として、もっとすっきりとした方向に持っていくというふうに考えたいと思います。
  71. 滝井義高

    滝井委員 当然私はそうならなければいかぬと思います。ああいうものをつくっていたずらに事務を複雑化することはいかぬと思うのです。  それからもう一つ、事務の問題で、生活保護の事務です。これがもう実に複雑になってきた。そして最近は、生活保護者が特定の地域に増加をしてきた。日本でも、たとえば南海地区、東北、それから福岡のような不況産業のある地域、こういうところに増加をしてきている。全国平均千人について十七人程度のものが、そういう特定の地域については三十人程度に上ってきているわけです。はなはだしい炭田地帯になると四十六とか八、もっとはなはだしいところは千について百二十余になっている。四人に一人は生活保護者だという形になってくる。そこで生活保護の事務というものが非常に多くなってきています。そのために人員の配当がないわけです、いわゆるケースワーカーと申しますか……。そこで医療券の発行その他が渋滞してくるから、今看護婦が行って医療券を書く加勢をしている。しかも、その医療券というのが、また健康保険よりも書くことが多いのです。今や生活保護医療というものは、事務が六割か七割になってしまった、こういう実態です。これでは私はいかぬと思うのです。この生活保護の事務を、今の年金福祉事業団の理事長をやっていらっしゃる高田さんがかつて社会局長のときに交渉をして、幾分簡素化されたのです。前はやはり初診券をもらいに役場に行っておったのですが、今はそれだけはもらいに行かなくてもいいことになった。初診券をもらってから医療券をもらってきておったのですが、今は初めから医療券、それだけは簡素化された。ところが、この書く方はそうはいかぬ。そこでこの健康保険あるいは生活保護における事務の簡素化というのは、今のような特殊疾患もひっくるめて、速急にやる必要があるのです。そうしないと、日本の医者というものはだめになってしまう。日本の医者がだめになるばかりでなくて、患者さんがだめになる。こういう点も速急に改める意思が一体あるかどうかということです。この保険事務を改めるだけでも、二十億、三十億の金が浮くのです。どうですか、勇断をもってこの事務の簡素化を——これは金のかからないことなんです。金の浮くことなんです、おやりになる意思はありませんか。
  72. 西村英一

    西村国務大臣 ごもっともでございます。事務の簡素化を努めてやりたい、ことに医療保険においては特にひどいというようなことも聞いておりますので、何らかの方法で事務の簡素化をはかりたい、かように考えております。  また、生活保護の問題等につきましても、非常に片寄った地域に生活保護が発生しております。もちろん福祉事務所等の職員の増員のことにつきましても十分考えておりますが、それでも事務の簡素化は努めてやらなければならぬ。これは相当に大きい経費の節減でございますので、仰せのように検討いたしたい、かように実際考えておるわけでございます。
  73. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今の言明を実施するために、保険局長なり社会局長は、今の大臣言明を十分体して、速急に健康保険あるいは生活保護の請求事務の簡素化の具体案の検討に入っていただけますか。
  74. 小山進次郎

    小山政府委員 現に私自身いろいろ検討しております。ただ問題は、その勇断とかなんとかいうことでなくて、どうやったら解決できるかという対案を責任者自身が持たなくちゃならぬという問題がたくさんあるわけでございます。こなしてその上でやりたいと思います。
  75. 大山正

    ○大山(正)政府委員 事務的、技術的な点を検討して、十分一つ努力したいと思います。
  76. 滝井義高

    滝井委員 では、ぜひ一つ事務の簡素化を速急にやっていただきたいと思います。  それから、くどいようですが、医療協議会の問題は御答弁がいただけませんから、十分私どもの方も腹にとめておきます。  きょうは一応これで質問を打ち切っておきます。
  77. 秋田大助

    秋田委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  78. 秋田大助

    秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。河野正君。
  79. 河野正

    河野(正)委員 本日は、先日労働大臣より新年度におきまする労働行政の基本的な方針が示されましたので、いずれ各論につきましては別の機会に譲るわけでございますけれども、昨日の基本方針に関しまして若干疑義をただし、さらに労働行政の基本的な方針に対します御所信を重ねてお伺いを申し上げたいと思います。そこで大臣所信表明に応じて逐次質問を重ねて参りたいと考えます。  政府は今日までしばしば、わが国経済が長期にわたる安定成長を目ざして前進するための基礎固めの年である、こういうふうに主張をされて参ったわけでございます。もちろん私どもがお尋ねを申し上げたいと考えまする労働政策というものも、日本の経済の諸施策全体との関連において実施されていかなければならぬことは、これは当然のことだろうというように考えるのでございます。そこで本年初頭の委員会でもございますので、まずもって労働大臣が、新しい三十八年度においては労働政策の中でどういう方向に重点を指向し、また労働政策基本方針というふうに考えて御推進になろうとされまするか、その辺から一つお聞かせをいただきたい、かように存じております。
  80. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今年度の労働政策重点は、昨日も申し上げましたごとく、第一は雇用政策の転換であると考えておるのでございます。雇用の問題につきましては、所得倍増政策の進展に伴いまして、日本の産業構造にも非常な変化が現実に進行いたしており、この変化の過程におきまして労働市場の需給関係も従来と非常に趣を異にいたして参っておるのでございます。かような情勢のもとに、雇用問題につきましてはかなり数年前と事情が変わって参っておるのでございます。第一には労働力の需要の年々継続的な増大、これに対しまする新規労働力の供給の不足、こうした事態を背景といたしまして、特に労働賃金の上昇、それから中小企業におきまする労働条件の改善といったような情勢が見られつつあるのであります。  そこで今年におきまして、特に労働省といたしましては雇用問題について力を入れて参りたい。これにつきましては、今産業界の要求いたしておりまする若年労働力の不足に対処する方法といたしまして、中高年齢層の労働力によってこれをどの程度まで代替していくかということ、そうしてまた技能労働者の不足に対しまして技能労働者の訓練に力を入れる。なお、他面におきまして石炭山あるいは非鉄金属山等におきまする離職者問題が摩擦的現象として発生いたしておりまするので、これらの解決にあたりましても、先ほど申し上げましたような点を頭に置きながら解決をはかって参りたい、こういうふうに考えておるのでございまして、まず第一に今年度予算の中心として考えられるのは、私は雇用問題であると考えておる次第でございます。
  81. 河野正

    河野(正)委員 昨日の所信表明を伺って参りましても、また今の御所信を伺って参りましても、第一には完全雇用の達成、第二には労働条件の向上というようなことに、重点が指向をせられておるようでございます。ところが問題は、そういう重点というものが実際に達成されるかどうか、あるいは実現されるかどうかという点が、私はきわめて重大だと考えるわけでございます。そこで今までいろいろ振り返ってみて、われわれはそういう労働政策の目標というものがはたして達成されるのかどうかというような点について疑義を持つ点もあるわけです。そういう点の一、二について一つこの際お尋ねをして、明確な御所見もあわせて承っておきたいと考えます。  そこで第一に、そういう意味で伺っておきたいと思います点は、いわゆる最近の雇用、失業情勢についてでございます。この最近の雇用、失業情勢をながめて参りますと、必ずしも政府でお考えになっておるようになまやさしい情勢ではないようでございます。と申し上げますのは、第一には景気調整の影響というものが現われておりますし、第二には、数年来経済のいわゆる高度成長によりまする雇用情勢の変化というものがあるわけでございます。そういう二つの大きな要因によりまして、全体としては雇用改善という点については大きな変化がないように実は考えられる。そういう点についてはどういうふうにお考えになっておりますのか、一つお聞かせ願わぬと、せっかく二つの方針は示されましたけれども、方針はりっぱでございましても、実際には絵にかいたもちになるという危険性もあるわけでございますから、そういう私が申し上げました今日までの二つの大きな要因についてはどういうふうに御判断になっておるのか、この際一つ明確にお聞かせをいただきたい。
  82. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 最近数年間は、大体年々労働力の総需要といたしまして、対前年度百万ないし百二、三十万ずつの需要増が続いて参っておるような次第でございます。この傾向は、もちろん一昨年の景気調整後におきましては幾分鈍化の傾向が見られておるようでございますが、しかしながら労働の需要がなお依然として盛んでございまして、現実の労働力の使用数の増加は、決してこの傾向を変えるような状況にはなっておらないようでございます。もとより御指摘の一部不況産業におきましては相当数の離職者がでておりますけれども、しかし雇用全体の態勢といたしましては、依然として従来の状況を続けてきております。従いまして私どもも、昭和三十八年度におきましても大体ここ数年来の傾向が引き続き継続するもの、こういうふうに見込みをつけておるのでございます。来年度の政策も大体そういう見込みのもとにこれを進めて参りたいと思うわけであります。
  83. 河野正

    河野(正)委員 今大臣から御答弁いただいたわけでございますが、そういう御答弁に対して、実は私ども若干の危惧を持つわけであります。と申し上げますのは、なるほどここ数年来経済のいわゆる高度成長によって雇用情勢というものが大きく改善されてきた、そういう点は認めます。ところが最近の景気調整あるいはまた、御案内のようにエネルギー消費構造の変革、さらに貿易自由化の進展、そういう大きな変革によりまして、石炭鉱業、金属鉱業という部門におきましては相当数の離職者が出ておる。こういうことはもう周知の事実でございます。と同時に、もう一つ問題としなければならぬ点は、相当数の離職者が出てきたということだけではなくて、特に石炭鉱業あるいはまた金属鉱業、こういう部門から出て参りまする離職者というものが非常に中高年齢層の失業者だ、そのためにいろいろ今後各論的に論議される点が非常に多いと思いますが、きょうはそこまで触れませんけれども、そういう傾向があると同時に、そういう中高年齢層の失業者の再就職というものが非常に困難だということで、なかなか大臣から御説明をいただきましたような方向に進展し得るものかどうか、今後の雇用対策というものがそういう方向に進展し得るものかどうかというようなことにつきましても、私どもはかなり大きな危惧を持っておるわけでございます。そこで、どうも、大臣の御答弁をいただきましたけれども、情勢の分析というものが、現実の上で判断いたしまするとかなり甘いのじゃないかというふうな感じも特にいたすわけでございますが、そういう点から見て一つ御所見を重ねてお願いしたい。
  84. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 中高年齢者の就職は、お述べになりましたごとく従来から非常にきびしい状態がございましたし、また、現在におきましても同様であります。従いまして当分の問、将来におきましても、必ずしもこの問題は楽観を許さない状況にある、かように根本的には認識をいたしておるのであります。しかしながら、このような状況に対処いたしまして中高年齢者の雇用を促進いたしますためには、労働者といたしましてはいろいろ従来からも、また今後においても処置を講ずるつもりなのでございます。  第一に、昭和三十五年以来毎年十月を対象期間といたしまして年令別の求職、求人、就職状況の調査というものを実施いたしまして、その実情を把握するように努力をいたしております。第二に、中高年齢者につきましては、これに適当なる職場の例を選びまして、公共職業安定所に対しましては、この適例を参考としてできるだけ広く求人開拓を行ない、また若年者を求めておる求人者に対しまする中高年齢者向け求人へこれを振りかえるような勧奨を行なうということも指示いたしておるのであります。それから、政府関係機関につきましては、各種機関の理事、部長級からなりまする中高年齢者雇用促進協議会というものを設けまして、特に雇用促進月間等を設定いたし、中高年齢者を受け入れるような機運を醸成するようにしてもらうことにいたしております。  また、昭和三十七年度において新しく雇用促進融資制度を設けたのでございますが、融資総額は三十七年度は二十億円でございましたが、三十八年度予算におきましてはこれを四十億円に増額をいたしております。中高年齢者を雇い入れる事業主に対しましては、労働者住宅その他福祉施設の設置または整備に要する資金を貸し付ける、これによって中高年齢者の就職を側面的に援助いたしたいと思っておるのであります。  さらにまた、炭鉱離職者であります中高年齢者を雇い入れる事業主に対しましては、雇用奨励金を支給いたすことにいたしました。  昭和三十八年度におきましては中高年齢失業者の就職促進を重点として失業対策制度の刷新、改善をはかることにいたしたのであります。すなわち、これらの者を対象といたしまして手当を支給しつつ職業訓練、職業指導面を強力かつ計画的に行なうための職業指導訓練課程の制度を創設するのであります。これに伴いまして一般職業訓練所の拡充と職業訓練機関を飛躍的に充実いたしますとともに、公共職業安定所には専門的に職業指導を行ないますケースワーカーを配置いたすことにいたしました。これらの措置により職業安定機能の強化をはかりたいと思っております。以上の措置のために、昭和三十八年度におきましては二十一億円の経費を計上しておるわけでございます。  お説のごとく中高年齢者に対する対策はなかなか困難であるということは十分予想はいたしておるのでございますが、労働省といたしましてはこの問題の解決は刻下の急務である、かように存じまして、全力を投入いたして努力いたしたいと思っております。
  85. 河野正

    河野(正)委員 今大臣から中高年齢者の対策というものが非常に困難だというふうな御報告もございましたし、また私どもも全くその通りだというふうに考えておるわけでございます。そういう観点からいろいろと昨日も申し述べられましたし、また今いろいろ詳しく御説明がございましたように諸施策が推進されるわけでございますが、実際問題としていろいろな施策が推進されましても、現実に再雇用というものがどれくらいできるのかというようなことにつきましてはいろいろ問題があろうと考えております。もちろん、失対の場合には失対の問題として訓練課程の問題等につきましてもいろいろと論議が行なわれると私は思いますが、要は再雇用がどの程度行なわれるかという点が非常に大きな問題であろうかと考えております。そこで、その再雇用というものが一〇〇%実行できるということであるならば、これは失対の場合だって問題ないでございましょうし、またエネルギー消費構造の変革についても大した問題ないと私は思いますけれども、出てきた中高年齢の失業者を再雇用せしめるという問題は、実際なかなかむずかしい問題があろうかと考えます。そうだといたしますと、出てきた中高年齢の失業者に対する対策よりも、むしろ失業者が出てこぬという積極政策を労働省もお考えにならなければ、私はこの問題を完全に解決するということはなかなか不可能ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。石炭政策の問題についていろいろ国会でも論議をされて、生産量を拡大するとか、せぬとかいう問題等もございましたが、やはりそういう私どもの要求、炭鉱労務者の要求というものも、出てきた失業者というものはなかなか再雇用というものが困難な事情にある、そうだとするならば、やはりそういう中高年齢者層の失業者が出ないような措置をやるということがきわめて重大な問題になるでございましょうし、私は、やはり労働大臣というものはそういう方向に対してむしろ積極的に施策を向けられるということで御努力願わなければならぬのじゃないだろうか、こういうように考えるわけでございますが、そういう点に対してどういうふうに今後御努力を願い、またお考えになっておりまするか。これは私は非常に重要な問題だと思うのでございます。でございますから、その辺についての御所見も一つこの際承っておきたいと思います。
  86. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 失業者が出ないようにするということは、確かに失業問題の根本的な解決であることは同感でございます。しかしながらこの問題は、いわゆる労働行政の問題であるというよりは、経済政策そのものの問題でございます。私どもも、所得倍増政策の円滑な浸透によりまして労働需要が拡大しつつあることが、最近失業者の減少に寄与いたしておる大きな原因であるということを考え、この政策がどこまでも予想通りに成功の道をたどっていくことを希望はいたしておるわけでございます。しかしながら先ほど来お示しのございましたように石炭山、金属山等におきましては、いろいろな事情から現実に失業者が出て参っておるのであります。これらの失業者の発生につきましても、労働省といたしましてできるだけそれらの事業の実情等を調査いたしまして、使用者に対しましてあとう限り失業者を出さないような努力を希望いたしておることはもとよりでございまするし、また今後におきましてもいろいろな機会をとらえまして、さような希望をいたして参りたいと思っておるのでございます。しかしながら何と申しましても自由経済政策のもとにおきましては、かような政府の希望というものもおのずから限度があるのでございまして、最終的にやむを得ず失業者の出る場合におきましては、労働者といたしましてはこの出て参りました失業者の援護対策につきましてどこまでも努力をいたすべきだと考えております。
  87. 河野正

    河野(正)委員 失業者を出さぬという点が、失業者の出て参りますことを未然に防止することが、根本的には経済政策と大きくつながっておるということはわれわれも承知はいたしております。しかし実際問題として、そういう高度成長経済の、あるいはまた合理化政策のしわ寄せとして今日の失業者が出てきておるということを考えて参りまする場合に、われわれは労働問題と経済政策の問題というものを無関係に考えていくわけにはいかぬ。これはもう大臣もお認めになる点だろうというふうに考えております。  そこでこの日本の経済というものも、これは一部の人のための経済でなくて国民のための経済でございますので、やはり国民全般の経済というものを考えつつ、労働政策というものを考えていかなければならぬということは、これは当然でございますけれども、その場合に経済ばかりを考えて、失業者が出てくることについては最善の措置がとられぬということになりますと、これはその経済政策なるものがほんとうに国民のための経済政策であるのか、あるいは一部独占資本のための経済政策であるのか、その辺私は非常な問題点があろうかというふうに考えるわけです。  そこで、やはり政党政治であり責任政治でございますから、この労働政策と経済政策というものが密接な関連なくして進められる、そのために失業者が出てくるということでは、私は責任政治の使命を達成したものとは言いがたいというふうに考えるわけけです。そこで一つ労働大臣としては、この日本の経済政策と労働政策というものを十分かみ合わして日本政治というものが推進されるように、この点については格段の御努力をお願いをしなければ、こういうむずかしい雇用問題を抜本的に解決するということはなかなか困難ではなかろうか、私はこういうふうに考えますので、そういう点についてはさらに格段の御留意を一つお願いをいたしたい、かように考えます。きょうは総括的な問題でございますので、深くはお尋ねいたしませんけれども、中高年齢者の雇用問題というものはきわめて困難な問題でございますので、今申し上げますような方向で今後とも一つ御努力をお願いをしたい、こういうふうに要望をいたしておきます。  それから次にお伺いをいたしておきたいと思います点は、大臣所信表明にもございます労働条件の向上についての問題点でございます。この労働条件の向上を論じます場合にいろいろな問題がございますけれども、私はきょうは総括的な論議の場でございますからいろいろは申し上げません、そのうちの一つを取り上げて御所見を承っておきたいと思いますが、それは労働条件の向上を論じます場合に大きな問題として、大企業と中小企業との間におきます格差の問題がございます。もちろん労働条件の向上をはかって参ります場合に、この問題を早急に解消していかなければならぬということは、私は焦眉の急を要する問題だろうかというふうに考えております。そのためにはいろいろな方法があると思います。今私が申し上げました経済政策の面から見て参ります経済の二重構造の解消の問題、あるいはまた労働者の福祉というものを向上させなければならぬというような問題、そういうような問題があると思いますが、さらにわれわれが考えていかなければならぬし、また昨日の大臣の所見の表明の中にございましたように、最低賃金制の確立あるいは一斉週休制の問題あるいはまた一斉閉店制の問題それから労務管理の近代化、こういったようないろいろな問題があると思いますが、この大企業と中小企業の間におきます格差の問題について、労働条件の向上という立場からどういうふうな方針で臨んでいかれようとなさいますか、その辺の御所見を一つこの際承っておきたい。
  88. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お話の通り大企業と中小企業の労働条件の格差というのは、調査をいたしてみますと以外に大きな開きがあるのであります。まず賃金について比較いたしてみますと、これは昭和三十六年の労働省の調査でありますが、五百人以上の事業場の賃金を一〇〇といたしますと、四百九十九人から百人までの企業におきましては七四・五%になっております。九十九人から三十人までは六一・七、二十九人から五人までが四九・三、こういうことになっております。それから労働時間につきましては、五百人以上を一〇〇といたしますと四百九十九人から百人までが一〇三・五、九十九人から三十人までが一〇六・三、二十九人から五人までが一〇七・二、それから千人当たりの災害率は、百人以上の工場が一八・五でございますが、これに対しまして九十九人以下五人までの工場が三六・五と二倍になっております。こういった点を考えましても、労働条件の格差というものは非常に大きなものがあるということがわかるのでございます。  政府といたしましては、当面労働基準法に基づく監督行政の強化をはかることによりまして、労働基準法に定める最低の労働条件の確保をはかりますとともに、最低賃金制度の普及、それから昨日も申し上げましたように一斉週休制、一斉閉店制等による労働時間の漸進的な短縮、また産業災害の防止等の諸施策を推進して参りたいと思っておるわけでございます。  賃金につきましては、大企業と中小企業との生産性の格差による賃金格差もあるとは存じますが、しかし最近の雇用情勢からいたしまして、特に賃金面におきましてはこの規模別の格差が漸次縮小しつつあるわけでございます。この傾向の推移につきまして、当局といたしましては注意深く見守っておる次第でございます。
  89. 河野正

    河野(正)委員 今大臣から大企業、中小企業との格差の問題について、それぞれ賃金、労働時間あるいは産業災害率等について数字をあげて御説明願ったわけですけれども、そういう数字を見て参りましても非常に格差が存在しておりますし、この問題の改善なくして私は労働条件の向上というものはあり得ないというふうに断定をいたしまして過言でなかろう、かように考えておるのでございます。そこで、今御説明がございました賃金ないし労働時間の問題につきましても若干お尋ねを申し上げなければならぬと考えますが、きょうは深く突っ込んでやる時間もございませんので、一、二その問題を取り上げましてこの際一つ御所見を承っておきたいと思います。  まず労働時間の短縮について一つ承りたいと考えます。この労働時間の短縮という問題は、これは近代国家の労働者に対する政策といたしましてILOでも認められておりますし、国際的にも認められておりますことは御案内の通りでございます。それが世界の大勢でもございますし、また日本といたしましてもわが国においてもそういう方向をたどらざるを得ないというのが現状でございます。そこで私は最近問題となりました一例を取り上げましてぜひとも政府の所見を承らなければならぬ問題がございます。それは具体的な例として先般千葉県におきまして隔週土曜半休制が実は実施をされたわけでございますけれども、その隔週土曜半休制に対しまして自治省が不当に圧迫をする、自治体に対する盛督権を不当に行使をして、そしてとうとう中止せしめたという事例が起こって参りました。私はこの点は時代逆行の不当干渉である、こういうふうに理解せざるを得ない。これらについて大臣はどういうふうにお考えになっておりますか、これはきわめて重大な問題でございますから、この際一つ労働大臣としての御所見を伺いたい。
  90. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働時間短縮の問題につきましては、産業の進歩の段階によりまして時間短縮が適当に行なわれていくということは、労働者の福祉向上という見地から見まして原則的に望ましいものと考えておるのでございます。ただ先般千葉県で行なわれました土曜日の半休の問題でございますが、これにつきましては私は単なる労働時間の問題ということだけでなく、やはり公務員の勤務条件という意味におきまして国の全体の公務員との関連もありますので、これについては慎重に取り扱うべきものである、かように考えておるのでございますが、ただいまこの問題はなお地元におきまして一応問題として完全に終っておる問題ではございませんので、当局としてはこの段階におきまして意見の発表は差し控えたいと存じております。
  91. 河野正

    河野(正)委員 千葉県で起こりました問題はこれは地方自治体の問題であることは御案内の通りでございます。ところが世界の大勢としても御承知のように昨年開催されましたILO第四十六回総会におきましても週四十時間制という問題が採択されたわけでありますし、同時に地方自治体の問題であることは御案内の通りであります。方向としては当然これは政府としてはILO理事会の一員でございますから、時間短縮という方向は大臣は望ましいとおっしゃっておりますし、むしろ政府としては奨励をしなければならぬ立場にあるにもかかわりませず、今地方自治体の問題——地方自治体は地方自治体として自主的に判断をして、そういう方針というものを決定したと私は思う。そういう地方自治体の自主性まで踏みにじって、なぜ中止を勧告しなければならなかったか。この点二重に罪を犯しておると私は思う。二重にあやまちを犯しておると思うのです。時間短縮というものは一つの方向である。これは政府としても奨励しなければならぬ立場にある。それを、あえて自治省が千葉県の知事を呼びつけて、そして中止をしろと勧告をした。これが一つの大きなあやまちである。もう一つは、地方自治体が自主的に決定した、むしろ地方自治の自主性というものを政府は尊重しなければならぬ立場にあるにもかかわりませず、そういう地方自治体の自主性というものを踏みにじって中止の勧告をした。これが第二の誤りです。私は、これは二つの大きな誤りを犯しておると思う。それに対して、大臣としてはどういうふうにお考えでありますか。これは当然大臣としても、ILOに非常に大きな関心を持たれておる大臣でございますから、所見として申されても、私は一向差しつかえなかろう、かように思いますが、いかがですか。
  92. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたるごとく、週二日の休暇制というものは、現在わが国におきましても、一部の事業で現実に行なわれているところもあるやに聞いております。また労働時間の短縮ということは、これが産業の発展の段階に応じて適当に行なわれるならば、これはきわめて望ましいことであることは、先ほど来申し上げた通りであります。ただ今回の問題は、さような労働問題として処理されたのでなく、地方行政として、自治省におきまして、その見地から処理されたものなのでございまして、もちろん事柄は労働者の勤務条件に関係する問題でございますから、地元の使用者と公務員との間に、すなわち、県当局と公務員との間においては、これは一つの労働問題として、現実になお論議されておることはその通りであります。私どもは、労働問題としてのこの問題につきましては、今関係者間において論争中の問題でございまするから、この段階におきましては、意見の発表を差し控えたいと存じまするし、また政府対千葉県庁という問題は、これは地方行政という立場で行なわれた事柄でございまするので、労働省としては意見の発表もこれまた差し控えたい、かように存じます。
  93. 河野正

    河野(正)委員 もちろん、自治省と府県との問題は地方行政の問題でございましょう。しかし、現実に起こってきている問題は労働問題です。それだから、その労働問題についてそういう不当干渉が行なわれておるが、それについてどうお考えになりますか、こういうふうに御指摘をいたしておるわけでございますから、そういう労働問題として大臣がどういうふうにお考えになりますか、その辺の御所見を承らしていただければけっこう、そういう意味です。
  94. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働問題といたしましては、今千葉県庁内におきまして、県の理事者と組合との間で、この問題が処理されておるわけでございまして、私どもは、その間円満に処理されることを希望いたしておるわけであります。これにつきましての労働省の所見といたしましては、現在の段階では、差し控えることが労働行政上適当である、かように考えます。
  95. 河野正

    河野(正)委員 私は、現地に起こってきておる問題であるので、この際労働大臣としては、見解の表明を差し控えた方が適当であろうというふうにお考えでございますけれども、もしそういう論法でいきますと、私どもはこの委員会で、いろいろと労働問題を論議する余地というものはなくなってしまうと思うのです。労使間の問題なら労使間の問題を国会で取り上げる。たとえば、高い労働行政の立場から労使間の問題についてどういうふうにお考えですか、行使官としてどういうふうにお考えですか、ということを言います場合は、それは労使間の問題だから、われわれがいろいろと所見を開陳することは差し控えた方が適当であろう、こういうことになりますと、今後国会の社会労働委員会で、何のために労働問題を論議するのか、私は論議というものが、審議というものが、きわめて圧迫されると思うのです。制約を受けると思うのです。そういう意味で、国会の審議を尊重するという意味からも、やはり労働問題についてはどうだ。行政上の問題については、それは自治省と県の関係だから、自治大臣におまかせする。しかし労働問題については、労働大臣としてはどう考えるという御所見くらい承らぬと、国会議員としての使命というものが達成できぬと思う。そういう意味で、これはいろいろ差しさわりがあるかもしれませんけれども、大臣は労働行政の最高責任者でありますから、そういう立場から、一つ明快に御答弁をいただきたい。
  96. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題は、ただいま千葉県庁の中におきまして、理事者と労働組合との間で紛争中の問題であるように私は伺っております。この紛争につきまして私どもが仲裁をし、あるいはかれこれ意見を述べるべき行政上の立場にございません。もちろん、労働委員会は国権の最高機関であって、自由に御論議になることは当然でございますし、またそれに対しまして、私どもが労働行政上の立場から御協力を申し上げ、それに対しまた必要な場合は、私どもの意見を当委員会で申し上げることは、これは当然なすべきことだと思います。そこで、私の意見といたしましては、労働行政の当局者として、労働行政の立場からは、この際は、まだ意見を申し上げるべき段階ではないというのが、私の意見であります。
  97. 河野正

    河野(正)委員 今大臣の答弁を聞きましても、少し的をはずれている点がある。どういう点かと申しますと、今労使間で紛争状態にあるので、労働大臣として答弁を差し控えた方がよろしいというふうなお話でございましたが、それなら、一体労使間の紛争というものはどうして起こってきたのか、こういうことをたどっていきますと、それは労使間の問題で解決して隔週半休制を、自治省の大臣勧告によって中止させられた。自治省の大臣が中止を勧告したから、そういう紛争状態が起こってきている。紛争の責任というものは政府にあるわけですよ。労使間にあるなら、今大臣がおっしゃる通りです。ところが、紛争を起こした原因というものは、自治大臣にあるわけでしょう。政府にあるわけでしょう。政府がそういう紛争の原因をつくっておいて、そして紛争が起こっているから答弁ができぬということは、これはわれわれは納得するわけにいかない。ですから、今行政上の問題でもあるということでありますし、また他の委員からも、この問題は当然自治大臣を当委員会に招致をして、真相を究明すべきだという意見もございますから、これは委員長、いずれ別の機会に、一つ自治大臣を本委員会に御招致願って、そうして究明する機会を与えていただきたい、こういうことを委員長に強く要望いたします。よろしゅうございますか。
  98. 秋田大助

    秋田委員長 その点は、理事会に諮りまして、後日善処いたしたいと思います。
  99. 河野正

    河野(正)委員 今の点はいずれまた委員長にお願いをして、別に究明する機会を設けていただきますので、その際一つ明らかにしていただきたいと思います。  そこで、ILOに関連してさらにもう一点お尋ねをしたいと思います。御承知のように、先般池田総理がブリュッセルを訪問いたしました。その際、国際自由労連のプラウンタール書記次長と会見をいたしたのでございますが、その際、国際自由労連から池田総理に覚書が渡された。その内容としては、炭鉱離職者に対する強い関心。それからその就職あっせんに対しては政府が極力努力してほしい、こういう要望。それにもう一つはILO八十七号条約の批准を早期にやってほしい。こういうような覚書が手渡されておるわけでございます。これは、いろいろ池田総理もブリュッセルにおいて懇談されたと思いますし、その後宮沢経済企画庁長官も国際自由労連の書記次長とお会いになって、いろいろ懇談されたということのようでございますが、この点について、ILO八十七号批准等に対します方針等を一つこの際明らかにしていただきたい、かように考えます。
  100. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ILO条約第八十七号につきましては、今国会で御審議をいただきたいと存じまして、批准案件並びにこれに伴う国内法の改正案をただいま準備中でございます。近く提案の運びになるものと存じます。このことは本会議におきまして施政方針演説中、池田総理大臣から申し上げた通りでございます。
  101. 河野正

    河野(正)委員 ILO八十七号批准の問題につきましては、実はもう最近数年来、毎国会ごとに問題が出され、政府からも早期に批准いたしますというようなことで言明がされたのでございますけれども、実際にはここ数年来全然前進しないのが実情でございます。ところがすでにILOの自由委員会からは十二回にわたる勧告が行なわれておる。あるいは昨年は国際労働組織の四団体から支援のアピールが行なわれておる。あるいはまた、ことしの二月にはILOの労働者側委員が来日するというふうな事情もあるようでございます。私は、今のままでいけば日本の国際的な信用というものはまるつぶれだというふうな実情にあろうかと考えます。そこで、一体ILO八十七号批准というものはどうしてできぬのか。批准をやろうという御意思が重点であるのか、あるいは国内法の改正をやって労働者の権利というものをがんじがらめに侵していこうということが重点であるのか、私どもはどうも政府の気持に対して強い疑問があるわけです。誠心誠意批准をしようということであるならば、もうここ数年来問題になっているわけでございますから、批准は容易だと考える。ところがどうも国内法を改悪して、そして実際批准しても批准を骨抜きにしよう、そういう気持が強いので、どうも批准が阻害されておる、こういうふうにわれわれは判断せざるを得ない。そうだといたしますならば、早期批准、早期批准と始終演説では言われておりますけれども、実際実現はできないというふうな状態であるというように考えております。そこで私はこの段階ではもういつやるのだ、今外野席からもいろいろと御指摘がございますように、やはり明確に御答弁をいただかぬと、また早期批准、早期批准というようなことで糊塗されるということについては、私たちは承知するわけにはいかぬ、かように考えますが、もう少し突っ込んだ御答弁をいただきたい。
  102. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今回の施政方針演説中に特に加えられましたのは、これは単に語調の関係でちょっと入れたというような軽い意味ではございませんので、政府といたしましては今国会に必ず提出して、できれば御賛同を得たい、こういう真剣な気持からあの施政方針演説が行なわれたわけでございます。従いましてただいた事務当局といたしましては、関係法案を準備いたしておるのでございますが、これらの関係法案は条約を批准する、その批准を骨抜きにしようということではなく、それとは反対に、条約を批准する以上は、どこまでも条約の精神を責任をもって国内において励行いたさなければならぬ。そのためには必要な法律改正を行なうべきである。こういう考えで法案をただいま進行いたしておるわけでございます。従いまして今国会中、いつか必ず済むまでには出すつもりだというようなことではなく、できるだけ早く出したい、こういうつもりで今準備を進めております。
  103. 河野正

    河野(正)委員 今大臣の御答弁を承りますと、ILO八十七号批准の精神にのっとるための国内法の改正というようなお話でございますけれども、私どもが今日まで聞かされております改正案の内容というものは、むしろ八十七号批准を骨抜きにする、こういうふうに私どもは聞かされて参っております。そこで今大臣が御説明になったように、純粋にILO八十七号批准にのっとったための国内法であるならば、私はこれは問題なく解決しておると思うのですけれども、むしろ骨抜きのための国内法の改正であるので、これはもちろん国民の抵抗もございましょうし、また社会党の抵抗もあろうし、そういうことのために批准というものが今日まで遷延をしてきた、こういうふうに理解する方が私は筋が通っておるというふうに考えるわけです。ところが口は重宝なもので、いろいろ言い方はあると思いますけれども、適当な御答弁でございましたけれども、いずれこの問題はあらためてこの委員会でも論議されることでございましょうし、その際にまた私ども重ねてお尋ねをいたしていきたい、かように考えます。  それからさらに今格差の問題が出て参りました一つの項目として賃金問題がございます。そこできょうは総括でございますから、ずらりと一つ進めていきたいと思いますが、御承知のように賃金問題という問題は、今後日本国民経済の成長過程におきます一つの大きな重要な問題であることは、これは否定することはできない。従って最低賃金制の充実あるいは拡大、それから賃金体系の改善、こういうような合理的解決というものが早急に賃金問題の解決として確立されなければならない。今いろいろといわれております要求の中にはいろいろな要求がございます。一、二をあげますと、たとえばヨーロッパ並みの賃金、あるいは西ドイツ、イギリス並みの賃金、あるいはまた近代工業国並みの賃金、こういう賃金の確立というような声が非常に強いわけでございます。こういう国民の賃金問題に対します諸要求、切実な要求だと思いますけれども、そういう要求が強いわけでございますが、この賃金問題について、一つ大臣所信をこの際承っておきたい、かように考えております。
  104. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 賃金問題につきましては、御承知の通り昨年の十月に労働省におきまして日本の賃金事情を調査し、これを外務省と共同いたしまして英文に翻訳いたしまして、世界各国の政府に送致したことがございます。この中におきまして、現在の日本の賃金水準を説明いたしますために、通常行なわれる公定為替レート換算による各国の賃金を——これは製造業の労務者の一時間当たりの賃金でございますが、これを主要国について比較いたしますと、日本は三十セント、アメリカは二百二十九セント、イギリスは七十五セント、西ドイツは六十二セント、日本はアメリカの一三%、西ドイツの二分の一であります。これはただいま申し上げましたごとく、公定為替レート換算による単純なる比較なのでございます。これにつきまして労働省ではいろいろ研究をいたしたのでございますが、賃金の国際比較は単なる公定為替レートの数字の比較だけでは不十分であって、そのほかに、その国の国民所得の水準であるとか、あるいはその国の価格体系、特に実質購買力を示すところの国内の消費物価の価格、それから時間賃金以外にいかなる付加給付が行なわれているかというような事柄、それからまたその賃金を受け取るところの労働者の年齢がどういうふうであるかというような労働力構成、こういう点をも考えて比較をしないと実質的な国際比較ができない、こういうふうに論じまして、これらの比較をいたしました上で、現在の日本の賃金は西欧の賃金に比較して、伝えられるような非常な低賃金ではないということを立証いたしたわけなのでございます。私は日本の賃金事情につきましては、ただいまのところ、その調査が大体正鵠を得ておるものと心得ております。
  105. 河野正

    河野(正)委員 問題は、日本の賃金を評価する場合に、どの部門、どの階層を対象にするかということが私はきわめて重要だと思うのです。たとえば日本の場合は婦人の賃金というものが非常に安い。大体男子の賃金の四三%程度、あるいは青少年の賃金というものが安いし、臨時工の賃金が安い、社外工も安い、中小企業も安い。こういうふうに、婦人の低い賃金、あるいは青少年、臨時工、社外工、中小企業、そういうような非常に賃金の低い階層というものがある。それですから、高い安いの比較ということが問題でございますけれども、それなら一体日本の労働者の賃金をさす場合に、どの層をさして日本の労働者の賃金というのか、それと比較しなければ——それは今の製造業種みたいに、大企業なら大企業だけの賃金を持ってくれば、外国の賃金と近づくということは当然のことだと思いますが、低賃金として強く指摘されております婦人、青少年、臨時工、社外工、中小企業、そういうものの一切を含んだ賃金、そういうものを中心として日本の賃金というものを考えていただかぬと、私は非常に問題があると考えるわけです。そういう点についてはどういうふうにお考えになって日本の賃金を評価されておるのか、この際、この賃金問題は非常に重大な問題ですから、一つその御所信を承っておきたいと思います。
  106. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま河野先生の仰せられた点は、私ども全く同感でございます。従いまして製造労務者の一時間当たりの賃金を、為替レート換算によって単純に比較しただけでは不十分である。その労働力がいかなる構成によってでき上がっておるかということを調べなければいけないと申し上げましたのは、実はその点でございまして、特に年の若い労働者がたくさんいるとか、あるいは婦人の労働者が多いとか、こういうことは——全平均によって出て参りました一時間当たり三十セントという金額を評価いたします場合において、やはりその点を頭に置いて考えなければならぬものではなかろうか。特に日本の製造業の労務者とイギリスの製造業の労務者などを比べてみますと、平均年齢が十才以上違っております。従って、特に日本のように年功序列型の賃金体系を採用いたしておる場合におきましては、かりにこれがイギリスと同様な年齢構成になった場合においてはいかなる賃金水準になるかということを計算いたしてみますと、この三十セントというのは相当上回ってくるものだと考えていかなければならぬわけであります。従って賃金の実質的な国際比較をいたします場合におきましては、そういった労働力の構成というものを十分頭に置いておかなければならぬと考えるわけであります。
  107. 河野正

    河野(正)委員 このILOの統計等を見て参りましても、日本と西ドイツとの比較を見ましても、一時間当たりの賃金というものは、日本が九十三円六十銭、西ドイツの方は二百二十三円二十銭、こういうふうに非常に格差があるし、またもう一つの資料を見て参りますと、これもILOの統計でございますが、一週間当たりの労働時間、これは日本の場合は五〇・六時間、西ドイツの場合は四五・六時間、この一週間当たりの労働時間を見ても非常に西ドイツと開きがある。これはやはり賃金が安いからよけい働くという結果になっておると思うのです。それですから、現実に一時間当たりの賃金を見ても、西ドイツと比較いたしましても、ILOの統計でございますけれども、半分以下だ。そういう状態ですから、もちろん一週間当たりの労働時間というものも日本の場合は非常に多いという結果になっておると思うのです。それですから、政府の御報告もありましたが、一応私どもも国際労働機構でございますからILOの統計を見ても、今申し上げますように、日本の賃金というものは必ずしも高いものじゃないということは、大体皆さんお認め願い得る点だろうと考えるわけです。  そこで私どもがいま一つ気になります点は、政府なり資本家は、最近の状態を見て参りましても、景気状態というものが悪くなった、そういう不景気に対処し、あるいはまた貿易の自由化というものを推進していかなければならぬ、そのためには賃金は上げるべきじゃないというようなことで、何か高くもない賃金をさらに押えつけていこう、その理由は景気調整あるいはまた貿易自由化、そういうためにやむを得ぬのだというふうに、マス・コミの力を利用しての政府あるいは資本家の動向が私は最近非常に問題になってくるだろうと考えるわけです。そこでわれわれは、賃金が低いその点をまず確認願わなければならぬし、それならどうすればいいんだということでなくて、むしろ今申し上げますように、不景気あるいは貿易の自由化というもののために上げるべきじゃないというようなことで、二重に労働者がしわ寄せを受けるという傾向にあると思うのです。なお三十六年の発表を見て参りましても、労働者の所得というものが八・七%伸びた。ところが物価が三十六年におきましては五・三%上昇した。そういたしますと、差し引き実質的には三・二%の所得増であるということで、現実の姿を見ても、なかなか今の労働者の賃金は上昇しておらぬということははっきり言えると思うのです、ですが政府、資本家というものは、貿易の自由化を乗り切るためには、今不景気だから賃金は押えておくべきだ、こういう動きが非常に強く現われている。そうしますと、いつまでたったって賃金問題は解決しないということだろうと思うのです。そういう動きに対して当然労働者の生活なり権利を守っていただかなければならぬのが労働大臣の立場でございますから、従って労働大臣として、そういう日本の労働者の賃金の実態あるいはまた日本の経済的な動向に対しましては、一つ十分な御配慮というものがなされなければならぬとわれわれは考えるわけです。そういう点について、今後どういう方針で臨んでいかれようといたしまするか、それをこの際一つ承っておきたい。
  108. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ちょうどこの日本の賃金事情が発表されました当時から、景気調整に伴う労務対策の一つとして賃金問題は特に使用者側から論議されるようになりましたので、この賃金事情という印刷物を発表した政府の意図というものを、マス・コミ利用によるところの賃金抑制の一端ではないかというふうに誤解されるのも時期的にやむを得ない点があるかもしれませんが、しかし政府といたしましては、さような意味でこの調査をいたしたわけでは毛頭ございません。御承知のように、現在の日本の経済を一段と発展させますためには輸出が必要である。そしてこの輸出に対しましては、従来から各国の財界特に労働界から日本の低賃金という悪評が流布されておりまして、これが日本の貿易の伸張に対しまする大きな障害となっておるように私どもは考えたのでございます。従いまして、国民の生活水準を引き上げる根源でありまする貿易の伸張のためには、日本の現実の賃金事情の実情を正直に発表し、これについて正確なる認識を外国人に与えることによって誤解を一掃したい、こういうつもりでこの賃金事情を調査いたしたわけでございまして、調査の結果は先ほど申し上げたような次第なのでございます。従って、この賃金事情についての出版の動機につきましては、さような趣旨でございますので、一つ御了解をいただきたいと思います。  自由化乗り切りにつきまして、労働者を犠牲にすることによってこの難局を乗り切ろうとすることは、私は政府の政策としてはこれは断じて認めるべきものではないと思っております。この自由化の危機を乗り越えますためには、やはり生産性の高揚、これは設備の面におきましても、経営の面におきましても、また労働の面におきましても、この生産性を高揚させるべき事柄はいろいろ考えられると思うのでございますが、これらの生産性の高揚ということによりましてこの危機を乗り切っていくような、さような政策を考えるべきであって、使用者がその犠牲を労働者に肩がわりすることによって切り抜けようというような安易な考えをこの際許すべきではない、かように考えております。そういう趣旨で労働行政を進めておる次第でございます。
  109. 河野正

    河野(正)委員 いずれ賃金問題は賃金問題としてあらためて論議する時間があると思いますので、別な機会に譲りたいと思います。  さらに大臣所信表明の中に労使関係の問題がございます。この労使関係については、大臣は、近年相当の進歩改善の方向をたどっておる、こういうふうに御見解を示されております。なお今の未熟な面もあり、政府として従来から労働教育その他諸般の施策を通じ、自由にして民主的な労働運動の発展と、正常な労使関係の形成に努力してきたところである、今後ともかかる施策をさらに推進していく所存である、こういうふうに所見を述べられておるわけでございます。そこで、この労使関係の問題については、取り上げれば枚挙にいとまがないわけでございますけれども、先般の委員会でも取り上げて参りまして、ぜひ大臣の所見を聞きたいと思っておりました点が一点ございますので、この機会に御所見を聞かしていただきたいのです。  それは、先般の委員会でも若干事務当局の御見解は承って参りましたが、今この国会でも給与法案が出ておりますし、それに関連して起こってくる問題もございますので、私がこの際お聞かせいただきたいと思います点は、政府関係機関に属します特殊法人の労働組合と当局側の労使関係です。これは先般もお尋ねいたしましたが、この特殊法人の労働組合、いわゆる政労協と称しますが、この政労協は、労組法の適用を受け、さらに労調法の適用を受ける組合でございますけれども、実際にはその労使関係の上に承認機関というのがあって、その承認機関があるために労使間の交渉権というものが抑圧されておる、こういう事情があるわけです。特に今度給与法案等が難航いたしまして、政労協の場合は、この給与法案が成立をして後にこの問題が論議されるという結果になるという事情もございます。この労使間の問題がだんだん改善をされておるという事実は、私ども一方においては認めます。認めますが、政労協に関しては全然進歩の跡がないというのが実情でございます。労組法の適用を受け、労調法の適用を受けるということであるならば、やはり法律の額面通りの実態というものが与えられなければならない。ところが、先ほどから指摘いたしますように、形式的にはそういう権利が認められておりますけれども、実質的には承認機関というものがあって権利が抹殺されるというような事情でございます。労使間の問題について、新年度におきましても大臣が非常に努力されるということでございますならば、やはりこういう問題もこの際ぜひ御努力願って解決していただきたい、そういう希望もございます。そこで、こういう日の当たらない位置に置かれております労使関係に対しまして、今後どういう方針で臨んでいただきますか、その辺の気持を一つお聞かせいただきたい。
  110. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御質問は、公団、公庫、事業団というような政府関係機関の労使関係については、民間一般の労使関係と同じように労働三権が完全に認められておるという建前になっておるにもかかわらず、給与等について政府の認可承認、その他監督に属することになっておる、従って、団交権、労働協約締結権等が事実上制限される結果となっておるが、これを改善する考えはないかという御趣旨だと思うのでございます。その点は確かに御指摘の通りでございまして、職員の給与その他の労働条件は、建前としては労使間の自主的団交により、労働協約で決定されるということになっておるのであります。しかし、その業務の公共性、特殊性にかんがみまして、政府といたしましては、政府出資あるいは地方公共団体の出資で設立されておりますこれらの関係機関につきましていろいろ監督を加え——また、政府の交付金、補助金等も出ておるわけであります。従いまして、主務大臣なりあるいは大蔵大臣等の承認を得なければならぬ事項がたくさん留保されており、職員の給与等の決定に関しましても、使用者としては事実上——法律上は自由でありますが、事実上この監督権によって制約を受けておるというのでございます。これは、これらの法人のよってもって設立されております根本法規からいたしましてどうもやむを得ない事実上の拘束ではないか、こう思うのでありまして、私といたしましては、これらの政府関係機関の労使の当事者におかれましては、その機関が事業の性質上かような特殊性を持つのであるという点を十分に認識されて、その上で自主的、かつ、平和的に労使関係の処理に当たられることを希望する次第でございます。
  111. 河野正

    河野(正)委員 少なくとも労使の間においては、今大臣説明をされたように、特殊法人の公共性なり特殊性というものを十分尊重して団交が行なわれて自主的な解決をはかられておると私どもは解釈する。そういう認識に立たれるのが当然のことでもございますから、そういう公共性なり特殊性というものを十分頭に入れつつ交渉が行なわれていると思うのです。ところが、現実には、昨年の八月、農地開発機械公団の労使においては、団体交渉で調印をされた。ところが、承認機関が承認しなかった。そのために、せっかく自主的に団体交渉で取りまとめられました結論が全くじゅうりんをされてしまった。そうなりますと、団交権というものが実際は法律的に認められておるけれども、実質的には否認されてしまった、そういう結果になると思うのです。特に私どもが指摘したいと思います点は、特殊法人を設立する精神というものがどこにあったか、今まで特殊法人が設立されるたびに私どもが承って参りますことは、特殊法人でなければ、有為な人材というか、優秀な人材が集まらぬ、それだから、国家公務員よりもむしろ優遇措置をするんだという意味も大きく含んで特殊法人というものが設立されておる、特殊法人を設立する場合には、そういう方針が示されるわけです。ところが、結果的には、今申し上げますように、承認機関があって、せっかく労組法、労調法では権利が認められておるけれども、その権利が制限をされてしまう。やはりそういう点は、労働行政という立場からもう少し御善処願わぬと、単に公共性あるいは特殊性という美名に隠れて基本権が侵されてしまう、現実にそういう結果が出てきておるわけですから、私は大所高所から労働大臣はやはり労働者の権利を守る、権利を保護するという立場にあられるわけですから、やはりそういう問題はこの際大臣が明確に御善処されることが望ましいというふうに思うわけですが、単に公共性、特殊性、そういう美名だけでこの問題を解決すべきではない。もちろん公共性、特殊性というものは尊重しなければならぬけれども、基本的にはやはり労組法、労調法で認められた権利というものをまず守っていくということが建前でなければならぬ、こういう方針で、労働者の権利を守るべき労働大臣というものは善処をしていただかなければならぬと思うのでございますが、その点についてはいかがでございますか。
  112. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 もとより労働省といたしましては、正当なる労働者の権利を擁護するということは当然の職責であると考えております。しかしながら政府関係機関の労使問題につきましては、やはりこの法人の特殊性、公共性ということを基礎にして必要な主務大臣あるいは大蔵大臣の監督権が定められており、そしてそのもとに、その団体が設立されておるわけでございまするから、この点はやはり労使双方とも十分にこの特殊性を理解していくべきではなかろうか。またある公団におきまして、昨年労使間の協約締結に関連して行き違いがあったそうでございます。その内容につきましては私詳細に存じておりませんが、特に理事者におかれましては、こういう場合においては監督官庁と十分連絡をとって、団体交渉なり、あるいは団体協約が円滑に進捗できるように平素から心がけていただかなければならぬのではなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  113. 河野正

    河野(正)委員 もう一つその問題に関連して一つの問題点があるし、大臣が祈念されておりまする労使関係を改善していくという面において非常に大きな障害となっておる点があろうかと思うわけです。どういうことかと申しますと、承認権のために自主交渉というものが結果的には大きく制約を受ける。結局自主交渉しても最終的には承認機関が承認しなければどうにもならぬことである。そこで使用者側、理事者側は、団交権が法律では認められているけれども、実質的には否認された格好であるので、今はやりの無責任時代でございませんけれども、全く無責任な態度をとり、そのためにこの使用者側、理事者側みずからが権利を放棄する、労組法、労調法で与えられた権利を放棄する、そういうような態度にだんだんと出つつあるという傾向ができておるわけです。せっかく与えられた権利をみずから放棄するという傾向が実は理事者側の方にだんだんと出てくる。それはきちっと形式的にも実質的にも権利というものが認められれば、真摯に、まじめに、誠実に労使間で物事を解決しようという意欲がわいてきますけれども、せっかくやっても承認機関が否認するかもしれない。否認したら、われわれがせっかくやってもその努力というものは何にもならぬわけですから、そのために理事者側が自分たちに与えられた権利をみずから放棄するという傾向にだんだん出つつある、こういうおそるべき現象があるわけです。そこで、やはり労使間の問題を進歩改善せしめていくというためにも、労働行政の立場からこういう労使間の問題についてはよろしく御指導をいただかなければ、今申しますようにせっかく与えられた権利をみずから放棄するというような危検な状態が生まれつつございますので、そういう点については十分御配慮あって、今後とも一つ行政上の指導をやってほしい。  それから、この際委員長にもお願いしたいと思うのですが、そういう特殊法人という機関は、これは特殊なケースですね。でありますから、いずれ別の機会に住宅公団あたりの総裁を招致していただいて、そういう特殊機関における労使関係というものはどういう状態にあるのか、そういう審議の機会をつくっていただきたい。これは一つ委員長にお願いいたしたいし、理事諸君の御協力をいただきたいというふうに考えます。  だんだん時間も迫ってきましたので、大臣に最後の御所見を承りたいと思いますが、それは今度の国会で大きな問題となりまする中に失対の問題がございます。これは先般雇用対策の問題の中でも若干触れたのでありますが、詳しくはいずれ法案が上程され、法案が審議されるという段階でいろいろと御所見を承り、また究明いたしてみたいと考えるわけですが、その中でどうしても私どもが納得のいかない点がございます。それでありますから一つこの際大臣の御所見を承りたいと思いますが、それは政府が失対打ち切りの労働省構想に基づきまして予算案をまとめられ、すでに国会にも提案をされておるわけです。ところがその予算の裏づけとなります緊急失業対策法あるいは職業安定法、この二法を提出されようといたしておるわけです、もうすでに読売、朝日ではその改正要綱というものが発表されておる。これは発表されたかどうかは知りませんが、すでに出ておるわけです。われわれは、その中身についてはいずれ別の機会に論議する機会がありますから別の機会に譲りたいと思いますけれども、ただ現在私が非常に問題と思っておりまする点は、今日まで政府が雇用審議会に諮問をされてその答申を待っておられる段階であろうと考えるわけです。ところが雇用審議会の最終答申を待たずにすでに改正法が立案され、新聞では発表されておる。そうなりますと、この雇用審議会の審議というものを無視いたしておるし、また結果的にはもうすでに法案の内容というものができておるわけですから、今後雇用審議会で最終的にどういう答申をなさるかわかりませんけれども、そのなさろうという答申あるいはまた審議会に対して圧力をかけるという結果を生じてくる可能性もあろうかと考えます。そういう点について、一体どういうお考えでおられるのか。この点は失対問題が非常に重大な問題として提起されるわけでございますから、私は、その前段階におきまするそういう手続上の問題というものはきちんとしておかぬと、これはやはり大きな問題を提起すると思うのです。そういう意味で一つこの際その間の事情をお聞かせ願いたい。
  114. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この失業対策改善につきましては、御指摘のように法律的措置が必要となるのでございまして、この法的措置につきましては、ただいま雇用審議会に政府の構想をお示しいたしまして、御審議をわずらわしておるところでございます。近くその答申があろうと予想はいたしております。政府といたしましては、この御答申を待ちまして、その答申内容を尊重して、これを法文化いたしたい、かように思っておるのでございまして、まだ法文化ができておるわけではございません。ただ、申すまでもなく、この法案は予算関係法案でございまするから、できるだけすみやかに衆議院に提出いたさなければならぬわけでございまして、事務当局といたしましては、いろいろ答申のあった後の作業をできるだけ早期に終了いたしまするように、案文等につきましても事務的な準備は進めておることと存じます。しかし、これを外部に法案として発表いたすようなことはいたしておらないはずでございます。
  115. 河野正

    河野(正)委員 中身は別としても、手続上としては、今大臣からもお話がございましたように、諮問をされておるわけですから、雇用審議会の答申があって、そしてそれを尊重して法案を提出するということが、これは手続上一番筋が通っておるし、望ましい、中身は別としてもそういうことであるというふうに考えるわけです。ところが、もうすでに新聞では発表されておる。発表されるされないは別として、発表されておる。そうすると、結果的には政府の案というものが雇用審議会に圧力をかける、政府案はこの通りですよと。また、その言葉を返して、もし、その政府案が発表されておるが、雇用審議会から別な結論が出てきた場合に一体どうなるのかという議論も出てこようと思うのです。それだから、私は、筋としては、雇用審議会の最終答申がなされて、それを受けて政府が発表されることが望ましいが、今申し上げます手続上非常に大きなあやまちを犯しておられる。それは手続上のあやまちですけれども、結果的には、今申し上げますように、それが雇用審議会に対する一つの圧力となるというような議論も成り立つわけです。ですから、その辺をどういうふうにお考えになっているのか、これは大臣も新聞をお読みになっていると思うのですが、新聞に出ておりますね。ですから、そういう政府の方針についても、何としても納得できぬということがございますから、中身についてはいずれ別の機会に論議されるわけですけれども、そういう手続の問題につきましては、もう少しきちんとしておかないと、中身よりも、まずその前提として、手続上の問題として非常に論議をかもすと思うのであります。そういうわけでございますから、そういう点は大臣からきちんと整理をしていただきたい、かように考えるわけです。
  116. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、この失対改善の法律につきましては、法律案そのものはまだ正式にできたものはございません。ただ、審議会に対しまして、法律に規定すべき事項内容を構想としてお示しをいたしたわけでございます。と同時に、この問題につきましては一般の関心もございまするので、労働省として、かような内容の構想を審議会にお示しをして御審議をお願いしたということを新聞に発表いたした事実はございます。しかし、これはあくまでも審議会に構想をお示ししたという事実の発表にすぎないわけでございまして、これは法律案要綱ではございません。しかし、事務当局といたしましては——これは私ども事務当局の経験もございますし、かような重要な案件であり、ことに期限を限られてその起案をしなければならぬ事柄でございますから、一応さような段階になりましたならば、事務当局としては、もう法案の形ですぐにでも出せるようなものを準備するのは、これは職責上当然であろうと思います。しかし、それをかような法案であるというような形で発表するというようなことは、これはあってはならぬことでございまして、労働省といたしましては、さようなことはいたしておらぬと確信いたします。ただ、この問題につきましては、なお私もよく調べてみますが、考え方としてはただいま申し上げた通りでございますので、今後はさような趣旨で十分に留意いたしたいと思いますので、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  117. 河野正

    河野(正)委員 時間がありませんから、最後に一つ要望を申し上げておきたいと思います。  それは、せっかく雇用審議会に諮問をされたことでございますので、そういう精神というものは十分尊重していただかなければならぬということと、同時に、国会審議というものもこれは当然尊重していただかなければならぬわけですから、そういうことを考えて参りますると、大臣の御意図とは若干志が違ったと思いますけれども、そういうふうな印象をわれわれが受けたことは事実でございます。新聞にもそういう表現が用いられたことは事実です。ですけれども、大臣の気持なり精神というものは別といたしましても、そういう印象を受けたということは事実でございますから、そういう印象を受けますと、審議会に圧力をかけたのじゃないかということになり、審議会に対する尊重というものが薄らいで参りますし、また国会審議を軽視すると  いう形にもなって参ります。そこで、そういう審議会の審議を尊重する、あるいは国政審議を尊重するという建前から、今後こういう問題については、一つ大臣としても善処していただく、こういうふうにお願いして、大臣所信に対しまする私の質疑は終わりたい、かように考えます。
  118. 八木一男

    ○八木(一)委員 関連して大橋労働大臣に伺いたいと思いますが、ただいま河野委員から御質問のありました緊急失業対策法の改正を企図されているという問題でございますが、緊急失業対策法の問題は非常に複雑な問題でございます。私どもの考え方では、雇用問題であると同時に、また社会保障問題でもあるというふうに考えておるわけでございますが、労働大臣のお考えはいかがでございますか。
  119. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この考え方としては、八木先生の仰せられるごとく、社会保障の作用を営んでおる面も確かにあろうと思います。しかし、ただいまこの仕事は、行政といたしましては、あくまでも労働政策の立場から労働行政としてやっておるのでございまして、直接社会保障のためにやっておるわけではございませんから、この点はおのずから重点の置きどころが違うだろうと考えます。
  120. 八木一男

    ○八木(一)委員 雇用問題であると同時に社会保障問題であるということ、実態としてそういう問題があることは労働大臣もお認めだと思いますが、いかがでございますか。
  121. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 社会保障問題というお言葉の意味でございますが、私どもは、これは、雇用問題、労働問題として、またその政策の一環として考えておるわけでございまして、それが見る方々によりましては、これは社会保障の効果も上げる場合がある。あるいは上げつつあるというお考えを持っておられる方はそれでよろしいと思います。私どもはその社会保障というところでなく、少なくとも雇用対策としてこの問題をいかにすべきか、こういう点でこの問題を取り上げておるわけでございます。
  122. 八木一男

    ○八木(一)委員 雇用という言葉に固着して、労働問題としてのみ考えようとしておられますけれども、緊急失業対策法と法律の名前が示すごとく、この問題は失業の問題に対する問題であります。失業の問題は社会保障の中の大きな重要なテーマであることは、労働大臣、これはもう世界じゅうの常識になっておると思いますが、その点についてどうお考えになりますか。
  123. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 社会保障かどうかわかりませんが、失業は労働問題であり、雇用問題の非常に大きな問題であるということは、私十分承知いたしております。
  124. 大原亨

    ○大原委員 ちょっと関連して……。  大臣、あなたは誤解されていますよ。失業という社会的な事項に対してちゃんとした失業保障、失業手当の制度があれは——失業対策事業というものは大体あまり外国でもないわけですよ。日本では失業保険制度がある、あるいは失対事業がある、あるいは生活保護があるというのは、年金、生活保障いろいろな所得保障、その一つとして失業保障がないから失対事業がある。つまり、昭和二十四、五年の企業整備のときにやったわけです。だから失業に対する保障なんですから、それを政府の施策としてやっているのですから、やっていることは労働ですけれども、制度としては失業保障なんですよ。従って、社会保障です。そういう意味では、そういう意味のものをきちっと考えていくべきではないですか。私の申し上げることに異議ないでしょう。
  125. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 あなたがそうおっしゃられることについて私は反対はいたしませんけれども、しかし私といたしましては、この失業者に対する対策には純然たる社会保障であるところの失業保険もありまするが、労働行政として行なわれる失業対策事業もある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  126. 八木一男

    ○八木(一)委員 政府委員の方、大臣質問しているのですから、あまりとやかくかまわないで下さい。要望を言っているのですからお願いします。大臣にこちらの質問をちゃんと聞いていただかなければならない。そういうときにいろいろかまわれると、聡明な労働大臣でも注意がそちらに向きますから。  それから、実は今の大橋労働大臣が大原さんの質問に対して御答弁になったところで、とにかく雇用問題であるとともに社会保障の問題であるという実態をお認めになったと思うわけであります、それについてもう一回大橋大臣の御意見を承りたい。
  127. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは社会保障の問題ではなく、失業に対しては社会保障としての問題として取り上げる場合もありますし、また労働問題として、雇用対策の問題として取り上げる場合もあると思うのであります。たとえば、失業保険のごときは社会保障の問題として失業を考え、またその立場における対策を進めるものでございましょう。しかし、失業対策事業社会保障という面から社会保障の問題としてこれを取り上げたのではなく、あくまでも雇用問題として、雇用対策として取り上げておるものだと思うのであります。ただその対象が失業でございますから、その失業問題を解決する対策として、雇用対策上の見地から失対事業が行なわれますと、その結果は当然社会保障的な面にも影響を及ぼすことは、これは対象が一つでございますから、そういうことは十分あり得るであろう、従ってそういう面はありますが、あくまでも失対事業は現在の法制といたしましては雇用政策の点から扱っておるわけでございます。
  128. 八木一男

    ○八木(一)委員 緊急失業対策法の第一条には、「この法律は、多数の失業者の発生に対処し、失業対策事業及び公共事業にできるだけ多数の失業者を吸収し、その生活の安定を図るとともに、経済の興隆に寄与することを目的とする。」ということになるわけです。ですから雇用問題に関連のあることは否定はいたしません。しかしながら……(発言する者あり)よけいな雑音はやめて下さい。委員長、雑音は非常に進行に関係するから厳重に取り締まって下さい。  とにかく失業者の生活の安定をはかるということは、失業した者の生活の保障という言葉をわかりよく書いたものです。失業者に対する生活の保障という問題は、社会保障の大きなテーマであります。だから雇用問題にもちろん関係のありますことは否定はいたしませんけれども、同時に社会保障の問題であるということは聡明な大橋労働大臣はすでにお認めになっていると思います。もう一回……。
  129. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は失業対策事業は失業者を雇用する事業を起こすことによって失業者に賃金の支払いをする、この賃金収入を通じて失業者が自己の生活の安定をはかる、そういうことを目的とした雇用対策であると考えております。
  130. 八木一男

    ○八木(一)委員 雇用対策であることは否定はしませんけれども、失業者の生活を安定させるための方法であれば、失業者の生活保障という、社会保障の意味を持った性格のものであるということは、十分お認めになっていただく方が至当であろうと思います。
  131. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は他省の所管につきましてはよくわかりませんが、労働省の所管といたしましては、雇用対策という考えからこの事業を進めておるわけであります。それで私の所管しておる、また私の知っておることについてだけ申し上げます。それ以上のことは一つ別の問題として別の機会にお願いしたいと思っております。
  132. 八木一男

    ○八木(一)委員 予算分類でも社会保障に入っているのです。緊急失業対策法の条文をごらんになると、憲法二十五条関連法規と基礎法規が書いてあります。憲法二十五条は雇用の法規ではございません。社会保障に関連のある法規であります。このように法律的にも予算的な扱いでも社会保障として考えられているわけであります。それを一つもう一回かみしめてお答えを願いたいと思います。
  133. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほどから申し上げた通りであります。
  134. 八木一男

    ○八木(一)委員 先ほどからといいますと、少し雑音が入りましたので、私も聖徳太子ではありませんので、ちょっと聞き漏らした点がありますから、もう一回おっしゃっていただきたい。
  135. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は失業対策事業というものは、失業者のための雇用対策であると考えております。従ってそれが社会保障というような結果になる場合は十分あり得ると思います。
  136. 八木一男

    ○八木(一)委員 この労働総攬、これは、労働法令協会から出している。これは労働省の方がお使いになっている法令です。そこで関係条文で憲法二十五条、憲法二十七条と書いてあるわけです。そうなりますと、これは先に書いてあるから、大体二十五条がおもになるという解釈が成り立つと思います。憲法二十五条を根拠として、または憲法二十七条も根拠であるかもしれませんけれども、憲法二十五条と二十七条を根拠としてできた法律であるということは、労働省の方で非常に信頼を持たれておるこういう法律の方にもちゃんと出ておるわけです。法律家としての大橋さんは、そういう点も一つごらんになってお考え直しになっていただく必要があろうかと思います。
  137. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私はその法令集は存じません。
  138. 八木一男

    ○八木(一)委員 じゃ、ちょっと見て下さい。——そのようなことで、大橋労働大臣が、今唐突の御質問ですから、その点についての御答弁が、ニュアンスがこれからお変わりになっても一つも差しつかえございません。事態に即して私どもの質問もじっくりとかみしめていただいて、一つ御答弁願いたいし、これからもお考えをいただきたいわけです。言葉の行き違いなどは私ども問題といたしません。このようにして、法律的にも予算的にも、雇用問題であると同時に、非常に大きな社会保障の問題であるということを私どもは確信するわけであります。  そこで伺いたいことですが、この緊急失業対策事業法を雇用審議会にかけて諮問をしておられる。さらにその諮問後に社会保障制度審議会に御諮問になることが当然に行なわれなければならない。それについての大橋さんの前向きの御答弁を願います。
  139. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その問題は、ただいま雇用審議会に諮問中でございます。その後において社会保障制度審議会に諮問するかどうかということは、今考えておりません。
  140. 八木一男

    ○八木(一)委員 まだきまっておらないということですね。
  141. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 そういう問題を今初めて伺ったので、思いも寄らざることでございます。
  142. 八木一男

    ○八木(一)委員 それではけっこうであります。実はその意味で、雇用問題の部面もありますから、雇用審議会にお諮りになることはけっこうでございます。それと同時に、私と大橋先生の解釈の幾分の相違はあろうとも、両方社会保障に非常に大きな関係があることは明らかであります。従って社会保障制度審議会にこれを諮問なさらなければ筋が通らないではないかと思うわけです。ことに社会保障制度審議会が八月に出しました答申及び勧告には、緊急失対事業法に関するものに触れた部分がございます。これは明らかに、法律の規定に基づいた社会保障制度審議会においては、この問題に触れた部分について勧告をしているわけであります。ですから、この法律的な規定に従って、社会保障制度審議会にさらに諮問をされ、その万全を期せられたいというわけであります。今初めてお聞きになったそうでございますから、直ちに御判断できぬことだと思いますが、少々時間を延ばしてもけっこうであります。必ず社会保障制度審議会に御諮問になるということをおきめ願いたいと思います。
  143. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これはただいまのところではかけるつもりはございません。
  144. 八木一男

    ○八木(一)委員 ただいまのところかけるつもりはございませんとおっしゃったけれども、先ほどは、初めてそれを聞いたというようなことを言われた。うしろからつけ加えている人はどういう意味で言っているか知らないけれども、労働省の行政については判断をなされるのは大橋労働大臣です。うしろの補助者がよけいな差し出口をして、直ちに二分後くらいに労働大臣の答弁がニュアンスが違うような影響力を与える権限はあなた方にはありません。どういうことですか。
  145. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど初めて聞いたのでございますから、その通りお答えいたしました。それから直ちに考えました。それですぐに今私自身で結論を出したわけでございます。私の一応出した結論がもし間違っているといけませんので、その点について事務当局の感触を聞いたところ、私はこれでいいという確信を得ましたので、お答えを申し上げた次第でございます。
  146. 八木一男

    ○八木(一)委員 昔から同じ委員会で非常に聡明である大橋さんに敬意を抱いておったのですが、今の点については非常に御軽率であろうと思います。今まで考えておられなかった。しかも私は直ちに御返事を願いたいとは言わなかった。時間的な余裕についても、私どもとしては考えたいという意思表示をいたしたわけであります。それで労働大臣がどんなに御賢明であろうと、一人の瞬間的な御判断であれば非常な間違いを犯す危険性もあります。ですからこのような国会の審議の状態を十分にかみしめてお考えになって、その方向をおきめになることが至当ではないか、今の経過は非常に遺憾であります。遺憾でありますけれども、今申し上げたことをもう一回かみしめていただいて検討していただきたいと思います。雇用審議会という雇用の立場と、それからもう一つ社会保障の立場の両面が、大橋さんと私の解釈がいかようであれ、その程度の割合がいかようであれ、両面が関係が非常にあるということでございますし、またこの法律条文でお示ししましたように、緊急失対事業法というものが憲法二十五条と関連があるということは一般的にはっきり確認をされている事実であります。また予算面においても、社会保障費として分類がされているわけであります。また社会保障制度審議会においては、緊急失対事業法の問題について、八月に答申勧告をしているわけであります。そのあらゆる観点から見ても、社会保障制度審議会に諮問をされることは当然であります。もし諮問をいやがられるということであれば、社会保障の見地から非常に問題のあるそのような原案を出されて、それに対して意見を言われることをおそれられたというふうに類推せざるを得ないわけであります。もし確信をもって出される法律案であれば、雇用の関係の問題を重点とした雇用審議会にお諮りになるとともに、社会保障の観点からもこれを検討する社会保障制度審議会に積極的に諮問せられることが当然であろうと思う。おそらく局部あたりでは、そういう確信のない案を持っているためにそういうところに出すことをいやがる傾向があるのではないかと推察をするわけでありますけれども、賢明な労働大臣としては、このようなことではなしに、ほんとうにあらゆる角度からこの問題を審議されて、自信を持って法案が出されるという筋道をたどられるのが至当ではないかと思うわけであります。ただいまあのような御回答をなさいましたけれども、唐突に申し上げましたから、この問題についての言葉の行き違いを私は問題にいたしません。どうか国民のために十分な審議を経た、自信のある案を出されるために、このようにほんとうに大事な手続を経られるという気持になっていただきたいと思います。ただいま御返答になりましたけれども、私どもの委員会の審議のことを含んで、十分に前向きに御検討になるという御返答を今いただきたいと存じます。
  147. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は先ほど初めて伺ったので、そのことを申し上げ、なおそれについて考えましたところ、今の段階では、諮問を特にいたさなければならぬという必要は認めないように思いましたので、そこで今は諮問をする考えはないということをその通り申し上げたわけであります。しかしせっかく八木先生からいろいろお話もございました。もっともおそらく事務当局が十分自信がないから、社会保障審議会にかけることをいやがっておるのじゃないかということもおっしゃいましたが、そうではなく、十分自信があるので、この上社会保障審議会にかけなくとも大丈夫だ、こういう場合もあるわけでございますので、その辺はなお私もせっかくのお言葉でございますので、十分に考えまして、いずれまた適当な機会にはっきりお答えを申し上げたいと存じます。
  148. 八木一男

    ○八木(一)委員 今の事務当局が自信があるないの問題は、言葉の違いで、日本の労働省の事務当局としては自信のない案を出してもらうようなことじゃ困るわけであります。しかしながら、事務当局の考え方としては一般的に不十分であったり、また場合によっては間違うことがございますから、あらゆる角度から法律的に認められたりっぱな審議会で、あらゆる階層の意見を聞かれることが民主主義の政治のあり方として当然なことであろうと思いますので、今の社会保障制度審議会に諮問をされるということについて、積極的に、前向きにぜひお考えをいただきたいということで、きょうの御質問を終えておきます。
  149. 秋田大助

    秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二月五日午前十時より委員会を開くこととし、これにて散会いたします。    午後四時二十三分散会