○佐藤(達)
政府委員 お答え申し上げます。私どもが疑問としております根本の点を、多少思いつめた表現になるかもしれませんけれども、申し上げますと、
まず第一は、今度の改正によってわが人事行政の機構というものが相当大幅に後退するのではないか、明治
憲法時代に近い形になってしまうのではないかという心配が
一つであります。公務員
制度調査会の答申などもたびたび引用されておりますけれども、それよりもさらに上回った点があるように認められるという点が
一つ。
それからもう
一つ、これも思い詰めた表現でありますけれども、現在御審議をいただいております
地方公務員法というものとこれを比べました場合に、今度は、いままで
地方公務員よりも上回った保障を受けておったはずの
国家公務員が、大体都道府県の
職員以下、市町村の
職員よりは多少いいと思いますけれども、その中間の程度のところでの中立機関による保障を受けるということになってしまいやしないか、こういう心配が基本になっておるわけであります。
それで、これから先のことは、先ほど御指摘の河野委員あるいは森山委員にも申し上げたことばでありますけれども、現在の中立機関としての人事院の使命というものは、申すまでもなく人事行政の中立公正を確保する、あるいは
国家公務員の中立を保障するという点が
一つと、それからもう
一つは、公務員の利益を
保護する、特に
勤労者としての公務員、いわゆる団交権のない公務員、この立場を中立的に
保護してやろうというのが大きな使命であると思うのです。これらは当然第三者的な中立機関がその任に当たらなければならないものと思っておるのであります。
そういう点から今度の
改正案を見ました場合に、やはり相当の心配が出てまいります。申すまでもなく、試験だとかあるいは公平審査だとか、あるいは
職員団体の
登録だとかいう仕事は残していただいておりますけれども、そのほかに勧告権も残していただいておりますけれども、それ以外の点について、いま申しましたような原則に触れるような基準的の事項が相当
政府側に移されるようになっておる。これをたとえば
一つの手がかりといたしまして、人事院規則で従来きめておった事項という点を持ち出して考えてみますと、もちろん規則という以上は基準的な事項でありますからこそ規則の形をとっておる。処分的の事項が規則に定められるはずは実際ないのであります。相当に基準的な事項が従来中立機関の人事院の規則にまかされておった。それはいま申しましたように、先ほどの根本の使命からいって当然である。それが今度大幅にほとんど政令にまかされてしまうということは、ことばはあまり適切でないかもしれませんけれども、いま申しましたような中立的な使命を持ったそういう立場から定められるべき基準というものが
政府の手によってきめられることになってしまうのではないかということが、非常に大きな疑問の
一つになるわけです。
先ほど
地方公務員法のことにちょっと触れましたけれども、今回提案になっております
地方公務員法においては、人事委員会の権限については一指も触れられておりません。人事委員会の権限を分割するような動きは
地方公務員法については出ておらないわけであります。そして、しかも
現行制度のままに、条例についてさえも地方の人事委員会は意見を求められるという権限が保障されております。今度の政令について、われわれは何ら一言の発言権もないというような点から申しまして、どうもこれはたいへんなアンバランスじゃないか。県の
職員以下になる、中立機関による保障というものが
国家公務員の場合落ちてしまうのじゃないかという点が、われわれとしてはこれは思い過ぎかもしれませんけれども、心配になっているわけであります。
たまたまこれは規則の面から申し上げましたけれども、たとえば実体の問題といたしましても、職階制の問題、これは今度
政府の人事局に移ることになっている。
地方公務員法の場合はどうなっているか。今日の
政府案においても、それは依然として地方の人事委員会の権限に残されているというような点もございます。あるいはまた先般国会の大多数の、ほとんど全会一致の御支持によって
国家公務員の営利企業に対する天下りを規制する法案が通過いたしました。この法案の実体はまさに中立機関としての人事院を全力をあげて御支持願ったものとして私は喜んでおるわけでございますが、今度の
改正案になりますと、その
関係のことは
政府の人事局でお扱いになってしまう。これは一体国会に御
報告になるのやらならぬのやらというような点も、今度の御審議によっておきめになることでございますけれども、そういう点についても私どもは相当疑問を持っている。あるいは懲戒権の問題などにいたしましても、公務員
制度調査会では、せめて懲戒権を
要求する。各省各省に対して懲戒権の発動を求めるというところまでの権能は人事院に留保されている。あるいは中央の公務員研修機関も、公務員
制度調査会の答申ではやはり人事院に認められているというような点から、先ほど申しましたいろいろな根本の地位からだんだん出発してまいりますと――何も私どもは人事院のなわ張りを確保しようというようなことでなしに、公務員
制度、
国家公務員の
制度という点から申し上げたいことはまだたくさんありますけれども、ここではきわめて遠慮した形で申し上げておるわけであります。ただ問題としてわれわれが悩んでおるところをここで申し上げさせていただきたいというようなことでありまして、その辺のところにわれわれ悩みを持っているということだけをここで申し上げさせていただきたいと思います。