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大橋国務大臣 諸外国の例につきましては、後に
政府委員から申し上げます。
確かに
ILO条約批准に際しまして、
公務員に
団体交渉権を与えろという
議論が出ております。御承知のとおり
現行法におきましては、国家
公務員につきましては、一部の人々には協約
締結権を含む
団体交渉権が与えられております。これはいわゆる現業
関係の
職員でございます。これに反しまして、現業以外の
事務に従事する
公務員に対しましては、
団体交渉をすることは認めるけれども、
団体交渉に基づいて
政府当局と協約を
締結することはできないということに書いてあるのでございます。この
意味は、たとえ協約を
締結した場合においても、その協約は
法律上拘束力を持つものではない、いわゆる紳士協約にとどまるものだというような
意味に解釈すべきであると思っておるのでございます。もちろん団交権を与えろという主張は、この
団体交渉を通じてでき上がった
団体協約に対して、今後は
法律上の拘束力を付与すべきであるという
議論であると了解いたすのでございまするが、御承知のとおり、
現行の国家
公務員に関する
制度といたしまして、
公務員の勤務条件その他に関しましては、おおむねわが国の体制は
法律をもって規定をいたしてあるわけでございます。したがいまして、国会によって制定された
法律に規定された
事柄が他の話し合いによって、すなわち
労使間、
政府及び
公務員間の
団体交渉によってその
内容が当然に変更されるというようなことは、これは
制度上全く
考えられないわけでございまして、かような
意味において完全なる
団体交渉権、協約
締結権というようなことはもちろん問題にはなりません。したがって、
法律上の効力を認める場合において、かような
現行の
法律の
内容と異なった
内容の協約ができた場合には、いかにそれを取り扱うべきか、それに対する
法律上の効力というものはいかなる性質のものであるべきかというような基本的な問題があるわけでございます。そのほか、
団体交渉権を認めるということになりますると、いかなる範囲の
事柄について認めるか、そして先ほど申し上げましたとおり、認めた場合においても、
法律その他
現行制度との
関係をいかにするかというような問題もございます。また
公務員の従事しておる仕事の性質によりましては、
政府と
団体交渉をするということが適当かどうか大いに問題になる
職務に従事しておる人もあるわけでございまして、いろいろ
公務員につきまして
団体交渉権ということを
考えてまいりますと、今日検討を要する問題がたくさんあるのでございます。もちろんこれらについては、外国の例はそれぞれについてあるわけでございますが、しかしやはり
公務員制度は国家の行政権の根本に関する問題でございますので、それぞれの国の事情等によりまして、その取り扱いもいろいろでございます。わが国の
公務員制度としていかなるものが適当であるかということになりますと、これは
政府といたしましても今後検討すべき重要なる問題ではあると
考えますが、しかし簡単に結論の出る問題とは
考えられません。今後いろいろな
機会に、
政府といたしましてはなお十分この問題を研究してまいりたいと思いますが、いまそれについて申し上げる段階ではございません。