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堀政府委員 ILO八十七
号条約は、その
審議経過から見まして、直接
争議権の問題に触れるものではないことは明らかでございます。これは
ILO八十七
号条約の
審議経過中に、
条約案はもっぱら
結社の自由を取り扱うものであって、
争議権を取り扱うものではないということを数カ国
政府が強調したが、この主張は正当のように思われる、こういっておるところでも明らかになっておると思います。また、
日本に関する六十
号事件の問題につきまして、——本
委員会は、
結社の自由及び
団結権擁護に関する八十七
号条約または
団結権及び
団体交渉権に関する九十八
号条約が特別には取り扱っていない権利であるストライキ権一般のいかなる限度まで
労働組合権を構成すべきであるかの点について見解を表明することは要請されていないと
考える、こういっておるところでも明らかだと思います。
ただ、ただいま
お話しのようなストライキが
禁止されるような場合におきまして、これを労働者の利益を十分に
保護するための適当な保障
措置が必要であるという、そういう
原則の問題につきましては、
ILOにおきましてもときどき出されております報告の中にもそのような
趣旨を述べておるのであります。たとえば五十九年報告におきましては、——若干の労働者がストライキを
禁止されるすべての場合においては、これらの労働者の利益を十分に
保護するための適当な保障をこれらの労働者に対して与えることが必要である、と述べておるのであります。ただし
公務員につきましては、
公務員の雇用条件は法令によってきめられて、確保されておるのでありますから、公権力の
機関として行動するこれらの
公務員につきましてはストライキに参加することができないのが通例である、このように同じく五十九年の報告でいっているのであります。
そこで、ただいま
大臣から申し上げましたように、
公労法関係の
組合につきましては
争議権は
禁止されておりますが、かわりにいわゆる強制仲裁制度があることは御
承知のとおりでありますし、また
仲裁等はそのまま最近は完全実施される
原則が
確立されておるわけであります。
公務員につきましては、
ILOの述べております幾多の文書からも、直接法令で
勤務条件が保障されておるという見地から、これとはまた別個の観点で見るべきであるわけであります。しかもその上に、ただいま
お話しのありました
人事院勧告、あるいは
人事委員会の
勧告というような制度もありますから、
わが国の法制は、
ILO八十七号あるいは九十八号、あるいはその他の一般的の
考え方から申しまして抵触はしておらない、このように
考えております。