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1963-06-26 第43回国会 衆議院 建設委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月二十六日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 福永 一臣君    理事 加藤 高藏君 理事 木村 守江君    理事 薩摩 雄次君 理事 瀬戸山三男君    理事 二階堂 進君 理事 石川 次夫君    理事 岡本 隆一君 理事 中島  巖君       井原 岸高君    宇野 宗佑君       大倉 三郎君    大沢 雄一君       金丸  信君    久保田円次君       島村 一郎君    正示啓次郎君       砂原  格君    前田 義雄君       八木 徹雄君    山口 好一君       兒玉 末男君    佐野 憲治君       西村 関一君    日野 吉夫君       三宅 正一君    山中日露史君       田中幾三郎君  出席国務大臣         建 設 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         建設政務次官  松澤 雄藏君         建 設 技 官         (河川局長)  山内 一郎君  委員外出席者         建設事務官         (河川局次長) 鮎川 幸雄君         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 六月二十六日  委員山崎始男辞任につき、その補欠として西村  関一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村関一辞任につき、その補欠として山崎  始男君が議長指名委員に選任された。     —————————————   本日の会議に付した案件  河川法案内閣提出第一七〇号)      ————◇—————
  2. 福永一臣

    福永委員長 これより会議を開きます。  河川法案を議題とし審査を進めます。  前会に引続き質疑を続行いたします。西村関一君。
  3. 西村関一

    西村(関)委員 昨晩に続きまして質疑を行ないたいと思います。  法案第三条第二項に、「この法律において「河川管理施設」とは、ダム、堰、水門、堤防、護岸、床止めその他河川流水によって生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、」云々とございますが、この中のダムにつきましては、建設当局の御答弁によると、利水ダムは省かれておるということでございます。そこで農林省の御見解を承りたいと思うのでございますが、農林省関係ダム利水ダム多目的ダムで現在まで完成しているものがどれだけあるか、現在工事中のものがどれだけあるか、また着工を予定されているものがどれだけあるかということと、これらの農林省所管ダム管理につきまして、この法案の作成にあたって建設当局との間の話し合いはどういうふうになっているか。その話し合いも十分の話し合いができるということでございますから、農林省側からこの点について遺漏のない話し合いができているということの中身につきまして、お伺いしたいと思います。
  4. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  まず第一点の、三条の河川管理施設としてのダム農林ダムとの関係でございますが、この三条二項に書いてございますとおり、公利を増進し公害を除却する目的建設される施設、これにつきましては河川管理施設として了解をいたしておりまして、農林省ダムは原則といたしまして特定地域特定の農民に対します水を補給する施設でございますので、別の問題であるということにつきまして明確に了解を合わしております。  それから第二点の今回の河川法農林省立場との調整でございますが、農林省は御承知のとおり利水立場に立ちまして。河川管理に対しまして重大な関心を持っておるわけでございます。したがって河川工事の問題、あるいは河川法に基づきますところの流水占用許可あるいは工作物許可等に関しまして、非常な関心を持っておるわけでございます。したがいまして、これらの点につきましては、三十五条で関係行政機関として農林省十分協議をしていただく、こういうことにつきまして、法文上明示をいたしますように建設省といろいろお話し合をいたしまして、その点の不安、問題点はないように処理をいたしております。  なお、全般的に今回の改正にあたりまして、建設省といろいろお話し合いをいたしまして、建設省が行ないます。河川工事農林が行ないますところの土地改良事業によるいろいろの工事につきましては、事前に十分連絡をかわして、遺憾のないようにお互いに十分留意しようではないかということにつきまして、両者の了解を十分つけておるわけでございます。  それから第三点の、現在どれだけのダムが完成し、どれだけ農業用ダム建設中であるか、今後どれだけやるかというお尋ねの問題につきましては、ちょっと手元に資料を持参しておりませんので、後ほど資料で御提出をいたしたい、かように考えます。
  5. 西村関一

    西村(関)委員 現行河川法におきましてはその点が明確でなかったのを、本法案におきましては明確に法文化しておる。第三十五条の規定によりましてこれを法文化しているということでございますが、従来から建設中のものにつきましても、やはりこの法案が通りました暁におきましては、この規定適用されるというふうに考えてよろしいのでしょうか。その点建設省河川局長のお考えを承りたいと思います。
  6. 山内一郎

    山内一郎政府委員 今回の河川法案で、ただいま農地局長が説明されましたように、十分協議する事項を明文化した次第でございまして、従来ははっきりいたしておりませんが、事実上は協議をいたしておりました。したがって、現在建設中のものにつきましては、そのとおり協議も十分にいっておりますので、何らの支障はない、こういうふうに考えております。
  7. 西村関一

    西村(関)委員 その場合に、昨日もお伺いをしたのでございますが、ダム水面使用につきましては、管理者農林省であります場合におきましても、やはり農林省が、水面使用許可権は、建設省話し合いの上で農林省に委任されて許可権が行使されるというふうに考えてよろしいのでございますか。
  8. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私から先に一言お答え申し上げます。  農林省農業用ダムをつくりますのにつきましては、河川ダムをつくるわけでございますから、河川農業用ダムをつくる、工作物をつくること自身につきまして、河川管理者許可が要る。それから、そういうことでございまして、農業用に使う立場でもって許可を受けてダムをつくる。そこに今度ダムができまして水がたまります。そういたしましたときに、そのダム土地改良法によりまして土地改良財産になる。それからダムをつくりました根っこから水面の、そのダムの周囲の土地は、これは当然土地改良事業として買収をいたしまして、国有財産として、土地改良財産として——ダム及び水の周辺の土地土地改良財産として農林省管理をいたします。したがいまして、いまそこにできました水面ボートを浮かべたいという方が出てまいりました場合に、二つ問題が出てまいります。それは、土地改良財産につきまして、他の目的に使いたいという立場での問題があります。これは土地改良区が農林大臣承認を受けて、差しつかえない場合には差しつかえないという、こういう問題が一つございます。それからそこにボートを浮かべます際に、どうしても船つき場が要る、あるいはボートに乗せるための切符売り場が要る、こういうような場合には、国有財産の上に賃借りするか何かして、その土地使用収益権を使う方が手に入れる必要がございます。それは豊林省サイドの問題でございますが、その際に、その水面そのもの河川でございますから、河川工作物をつくるということは、河川法上の問題として建設省許可が別途要る、こういう関係になるかと存じます。
  9. 西村関一

    西村(関)委員 遊興施設の場合はどうですか。つまりダム魚つり場ですね。いま御答弁のあったと同じような形式を踏むわけですか。
  10. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 魚をとりますには、漁業権の問題が一つございますが、あと土地改良財産でもございませんし、その魚をとります場合に船をどこにつけるか、あるいはどこで魚の網を干すかというように、工作物が要ると同様な事情に相なります。ただ、どこか上流のほうから船でまいりまして、そこで魚をつってすっと行ってしまいまして、土地改良財産範囲内に何も工作物が要らない、こういう場合には全然無関係でございます。
  11. 西村関一

    西村(関)委員 土地改良区がダムを利用いたしまして養魚をやるというような場合ですね、それは漁業権の問題がありますが、水面と申しますか、水中と申しますか、ダムを利用して養魚施設をつくるというような場合には、どういう手続が必要でございますか。
  12. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 もう一ぺん繰り返して申しますと、ダムをつくりますそのダム土地改良財産でございます。それからそのダムをめぐりまして、水をためるに所要な水ぎわの土地は、当然国がその事業をやるために買収いたしておりますので国有財産でございまして、同時に土地改良財産になります。したがって、土地改良財産でありあるいは国有財産でありますものの財産権につきまして、何らかの使用収益権が必要であるという形におきまして、何らかの仕事を行なおうといたします場合には、国有財産法なりあるいは土地改良法との関係承認なり認可、あるいは賃借権設定、そういう行為が要ると思います。そこで養魚をやろうという場合には、いま申し上げました財産との間で何らかの権利設定関係が要るということに相なりますれば、その所要手続が要るというのが土地改良法の問題でございます。河川法上の許認可の問題は別でございます。
  13. 西村関一

    西村(関)委員 それでだいぶはっきりしてきたと思うのでございますが、最後の河川法との関係はやはり土地改良区と建設省、つまり河川管理者であるところの建設大臣許可が必要になるのでございますか。
  14. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ダム水面河川区域になった場合、普通河川区域にいたすと思うのですが、その場合には河川法適用を受けます。工作物設置その他いろいろな行為の規制がありますが、その適用を受ける、こういうふうに考えております。
  15. 西村関一

    西村(関)委員 その場合には農林省との話し合いが必要だと思うのでございますが、ただダム設置工作物設置ということは、ダムの堰堤をつくるというだけではなくて、水面工作物をつくるとか、あるいは養魚施設をつくるという場合には、建設大臣許可が要る、許可権建設大臣が持っているのだが、農林省協議をしてやる、こういうことでございますね。
  16. 山内一郎

    山内一郎政府委員 そのとおりでございます。
  17. 西村関一

    西村(関)委員 次に、これもゆうべ伺ったのでありますが、せきの問題です。このせきの中には床止めぜきとか砂防ぜきとかいうものがありますが、このほかに取水ぜき、農業用水のための取水ぜきがあると思います。これはこの規定から省かれておるということでございますが、これをこの中に入れるといろいろなむずかしい水の長年の慣行があって、この管理施設の中に入れるとかえってめんどうである。むしろこれは省いて、従来の慣行を認めるような形で農林省の監督、指導にゆだねたほうがいい、こういう見地から省かれておるのだと思います。ただ問題になりますのは、そういう場合に、水の総合管理という点に支障を来たすようなことがないであろうか、どうであろうか。この点、農林省考え方とともに、もう一度建設省考え方を伺っておきたいと思います。
  18. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  農林省立場といたしましては、河川使用者立場といたしまして、いわば発電会社電気会社と同じ立場河川法に対しては立ちまして、農林省がつくります取水施設までも河川施設とされては困るという本来の立場をとっておるわけであります。河川施設というのは、先ほど申し上げましたとおり、公利を増進し公害を除去する。したがって、農業のために水を使う手続は、河川法許可を要するものは許可をちゃんととりますが、土地改良事業としてその仕事はやってまいりたい、こういう基本的な態度で御相談を続けてまいったのであります。したがって、河川管理施設農業用取水のための施設というものは当然例示されないように整理をしたわけでございます。  それから、第二点は水の総合の問題だと存じますが、この問題につきましては、許可にあたりまして三十八条、それから四十二条までございますように、水利調整規定の問題として、本件を在来よりも手続法律上はっきりしていただきまして、関係者の納得の上に許可が与えられるように、こういうことをお願いいたしまして、そういう形で本法案は成立されておるわけであります。
  19. 山内一郎

    山内一郎政府委員 例を取水ぜきにとりました場合に、取水きの操作管理は、河川管理者以外の実際に管理される方に管理していただいたほうが、いいと思います。この場合に御心配になられておりますのは、河川全体を通じましてうまくいくかどうかという点、これは昨日も申し上げましたが、この工作物許可する場合の条件とか、あるいはそういう操作規定の問題、こういう点で十分河川管理者としては注意をいたしまして、全般的にうまくやるように努める、こういうことでございます。
  20. 西村関一

    西村(関)委員 その点はよくわかりましたが、ちょっと気にかかりますのは、公利公害という——公害はわかりますが、公利という考え方解釈ですが、農業用水公利でない、私利、そうすれば、工業用水なども公利でないいとうような解釈にもなろうかと思います。公利公害公害はよくわかりますが、公利というものの解釈、むしろそういうことにこだわらずに、ただ農業関係のものは省いてあるというならわかりますけれども、公利という立場に立つとこれは省かざるを得ない、こういう御見解のようですが、その点建設大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  21. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この公利の定義につきましても、法文上ははっきりいたしておりませんが、解釈といたしましては、不特定多数のもの、だれか特定しないで全般的に、国民全般といいますか、それの公利を増進する。農業関係で言いますと、農業土地改良区の方、それに限定されますので、そういう意味ではなくて、国民全般公利を増進する、そういうふうに解釈いたしております。
  22. 西村関一

    西村(関)委員 不特定多数ということについても、あるいは工業地帯工業用水ということも必ずしも不特定多数ということにはならないと思うのです。そういうことは比較の問題であり、ウェートの問題だと思うのでございます。そういう解釈だと若干問題が残る。そういうことは私はきょうこだわるつもりはございませんが、とにかく農業用水は除いてあるということで理解をしてまいりたいと思うのでございまして、先ほど公利公害という立場からということを言われましたので、若干私の気持ちにひっかかるところがあったものですから、念のため伺っておいたわけなんであります。  それからさらにこの機会に伺っておきたいと思いますのは、河川につくるところの魚をとるやな、これはやはり取水ぜきと同じような考え方で、これを設置する場合、あるいは除去する場合、農林省建設省相談をしてやる、こういうことになるのでございますか。
  23. 山内一郎

    山内一郎政府委員 やはりその程度によるものと思いますが、いろいろな公益性工作物設置の問題、あるいは二十九条の流水に非帯な影響を及ぼすような問題、この場合にはやはり河川管理者許可を必要とする、こういうように考えております。その場合にやはり農林省ともいろいろ相談はいたします。
  24. 西村関一

    西村(関)委員 やなの問題はなかなかむずかしい問題でございまして、漁業権にも関係がございますし、したがって沿岸零細漁民、内水面漁業に従事している貧しい漁民の生活の問題にも関係がございます。また災害地におけるところの水害の原因になる場合もございますし、その間利害が相反するというような点がありますから、これが取り扱いにつきましては、農林建設当局の緊密な連絡意思統一がなければなりませんし、公利公害という立場に立つと、両方の相矛盾する面があるという場合が非常に多いと思うのでございまして、その点について、ただ単にこの規定河川管理者が除去を命ずるとか、あるいは工作物として設置許可するとかということについては、両省の間の十分な話し合いの上に立つ取りきめが必要だと思います。その点、従来もそういうふうになされておったと思いますが、今回の河川法によってこれが明文化されましたから、さらにそのような従来の慣例が生かされていくように、法の運用にあたっては十分な御配慮を願いたいと思う次第であります。  次に、大臣にお伺いたしますが、一級河川指定の問題でございます。これは昨日も河川局長から御答弁をいただいたのでございますが、法第四条、附則第三条において、政令において指定されるところの水系のうち、一級河川指定する範囲及び区間を定めることにつきまして、必ずしもこの規定では明瞭でない点があると思うのでございます。一昨日の連合審査におきまして、宇野委員からも御質問がありました点でございますが、滋賀県の琵琶湖に注ぐ三百四十河川というもの、これは全部琵琶湖に注いでいるのでありまして、それが瀬田川、宇治川、淀川となって大阪湾に入っておる。その淀川水系がかり一級河川指定されます場合において、この三百四十河川は、もちろん知事意見を聞き、あるいは審議会意見を聞いておきめになることでございましょうけれども、事務当局としては、事務的には、これは準用河川であるから、一級河川として三百四十河川も取り扱うべきものであると考える、こういう御答弁があったようでございます。これはもちろん知事審議会意見を聞いてきめられることでありましょうが、大臣のお気持ちとしてはどうでございましょうか。この点は三百四十河川も、かりに淀川水系一級河川指定された場合には、これも全部その区域の中に含まれる、こういうふうにお考えになっておいでになるのでございましょうか、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  25. 河野一郎

    河野国務大臣 淀川水系琵琶湖の場合をいま御指摘でございますが、たとえば利根川にいたしましても、非常にたくさんの支流が集まって利根川になっておるわけでございます。これらの多数の支流をどう扱うかという場合と同じ解釈で扱っていいのじゃないか。したがいまして、淀川にしましても利根川にしましても、その本流もしくはある地域までは一級河川として直轄指定してまいることになるのでしょうが、ある段階からはこれは府県知事に委任して、そうして管理をしていただくということになるわけでございます。同様に、いまの琵琶湖の場合におきましても、その川の中で主要なものにつきましては、さらに進んで上流まで、その注ぎます川の上流まで直轄するものもありましょうし、琵琶湖に入るものでもすぐこれは知事に委任するものもあるでしょう。これはケースバイケースできめていくべきものであって、地方の実情、川の性質等によってすべて処理してまいることが適当だろう、こう考えております。
  26. 西村関一

    西村(関)委員 ケースバイケースできめていくという答えでございますが、琵琶湖に注ぐ三百四十河川の場合は、水源の保全涵養という点から申しましても、これは一体のものでございまして、もちろんそれは利根川水系においても同じことが言えると思いますけれども、どこからどこまでが一級で、どこからどこまでが二級だというようなぐあいにきめられない、一体的な関係にあるものだと思うのでございます。そういう意味合いから、従来準用河川であったものはやはり一体として、事務的には淀川水系一級河川になった場合には、そういうふうにすべきものであると考えるという河川局長のお答えでございますが、それをケースバイケースこま切れのように考えていくというのでは、やはり滋賀県の立場に立つと若干不安があると思うのです。これは災害防止の点から申しましても、あるいはその他全般の水の管理の点から申しましても、切っても切れない一体的な関係にあると思うのです。この点いかがでございましょうか。
  27. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっと私の申し上げましたことに誤解があったようでございます。この法案に示してありますとおり、水系ごとにきめるのですから、これは一級河川として全部扱う。したがって、淀川にしましても利根川にしましても、一級河川として扱う。その支流一級河川ではございますが、それをどこから上を知事に委任するかということはケースバイケースだ、こういうことでございます。いま申し上げましたように、琵琶湖に注ぐ川全部を一級河川としてこれは該当する、しかしそれを知事に委任するのはケースバイケースできめる、こういうことでございます。言葉が足りませんので誤解が生まれたようでございますから、これは是正していただきたいと思います。
  28. 西村関一

    西村(関)委員 一体として指定を行なうのであるが、どこからどこまで知事管理権を委任するということについてはケースバイケースできめていくということでございますが、そういう場合には十分地元知事意見を聞いて——地元知事はやはり地元地域住民意見を代表している。もちろん議会当局も同様でございますが、そういう意見を尊重していただいて、区域設定していただくということだと思いますが、さようでございますか。
  29. 河野一郎

    河野国務大臣 そのとおりでございます。
  30. 西村関一

    西村(関)委員 次に、法第十四条の河川管理施設操作規則でございますが、これに関連をいたしまして、琵琶湖の水を南郷の洗いぜきにおいてせきとめておりますが、この瀬田川洗いきの操作規定でございます。これは琵琶湖沿岸住民福祉と、それから下流淀川水系浴岸及び下流地域住民福祉とが必ずしも一致しない場合、洪水時、渇水時におきまして利益が相反する場合も従来においてしばしばあったのでございます。もちろん先ほども話が出ました公利という立場に立って、ウェートをどこに置くかという点から、下流の多数の住民、また基幹産業の発達のためにウェートが置かれるということはわかるのでございますが、しかし、それだからといって、琵琶湖沿岸住民利益が軽視されるということがあってはならないと思うのでございます。これはもう面積の六分の一を占めておる滋賀県の県民といたしましては、特にその沿岸にある農漁民及びその他の業務に従事しているところの人たち福祉は水によって支配されている。渇水の場合も洪水の場合もともに非常な迷惑を受けておるということは、大臣もよく御承知でありましょうが、そのために管理施設操作規定操作規則というものが設けられるわけなんでございます。特に洗いぜきの場合におきましては、ややもいたしますというと、下流利益が先になって、それが重点になりまして、琵琶湖沿岸住民利益というものが従的に考えられ、あと回しにされるという場合がいままで多かったと思うのでございますが、この点につきまして、滋賀県の住民としては、常水位琵琶湖がいつも一定の水位に保たれておるということは、これは先祖伝来滋賀県の琵琶湖沿岸住民の一つの既得権であるというような考え方があるわけなんです。水位権というものがもしあるとするならば、そういうものはずっと大昔から今日まで続いてきておるところのものでございます。これはやはり国家の産業形態の変革、またはいろいろな社会情勢の変化によりまして、必ずしもそういうことばかりにこだわっておることはできないということはよくわかりますけれども、そういう住民の固有の権利、少なくとも零位から上下三十センチくらいの水位を保っておるということは、これは琵琶湖沿岸住民にとっては不可欠のことであると思うのでございます。そういう点につきまして特別の配慮を払っていただきたい。洗いきの操作規則というものも、その点では不完全であります。それをこういう見地に立って、この法案が施行せられる機会につくっていただくということが願わしいと思うのでございますが、大臣のお考え、いかがでございましょうか。
  31. 河野一郎

    河野国務大臣 問題は、下流の水防、水利の計画が十分でないために、下流に水が豪雨時に押えられる、それが沿岸住民諸君に思わざる被害を与えるということであると思うのであります。したがって、まず第一は、すみやかに淀川水系の治水を完備するということ、第二は沿岸の被害地域にしかるべき土地改良区を設定するとか、防水もしくは洪水に対する施設を講ずるとかということ、両々相まちましてこれが紛争の種にならないような施設をすることが大事だと考えます。これには最善を尽くしたいと私は考えます。そうは申しましても、異常な洪水時があるわけでございますから、その際には、滋賀知事もしくは下流、その他の住民意見を十分参酌いたしまして、公正な立場に立って処置をするというようにいたすことが一番適当ではなかろうかと思うのでございます。なおこれにつきましては十分検討を加えまして、御趣旨に合致いたしますように善処いたしたいと考えます。
  32. 西村関一

    西村(関)委員 いまの大臣の御答弁は、洗いきの操作規則をつくる場合にも、そういう配慮で十分検討したというように理解してよろしいのでありますか。
  33. 河野一郎

    河野国務大臣 さようでございます。
  34. 西村関一

    西村(関)委員 次に、第三十二条に規定されております流水占用料の徴収の問題でございます。この点につきましては、このうちに1、2、3とありまして、2のところに「流水占用料等の額の基準及びその徴収に関して必要な事項は、政令で定める。」とございますが、3のところに「流水占用料等は、当該都道府県の収入とする。」ということになっております。この流水占用料につきましては、従来局長通牒によりますと、地方公共団体からは徴収しないというふうにされていると伺っておりますが、今回の改正案におきましては、一般企業並びに地方公共団体の区別なく徴収することができるというふうに解釈をすべきものなんでしょうか、やはり地方公共団体からはこういうものはとれないという従来の局長通牒が生きておるのでございましょうか、その点はいかがでございますか、局長から御答弁を伺ってもけっこうでございますが……。
  35. 河野一郎

    河野国務大臣 実はこの現定は、従来県が相当県の収入にいたしておりましたものが、法の改正によって不安定になってくるということを避けまして、そしてこの規定を入れたのが本旨でございます。したがいまして、従来の慣行はむろん尊重されるわけであります。したがって、いま現に公共団体等におきましてとっていないというものについては、新たにこれをとるということはあり得ないと私は解釈いたします。今後そういう場合が起これば、その場合にはそれは当然県に帰属するものということを規定いたしておるわけでありまして、公共団体がとるということを積極的に進めるという考えはございません。従来の慣行を尊重してまいりたい、こう考えております。
  36. 西村関一

    西村(関)委員 公共団体からは積極的にこれをとるという考えはない、しかし従来からあったものは認めていったらいいじゃないか、そしてまたそういう事態が起こった場合には、関係府県の長と個別に相談をしてとりきめていったらいい、こういう御解釈でありますか。
  37. 河野一郎

    河野国務大臣 そうでございます。
  38. 西村関一

    西村(関)委員 最後に、もう一点だけお伺いいたしまして質問を終わりたいと思います。河川審議会のメンバーの点でございますが、いろいろ示されておりますが、関係各府県の長、これはこの中から全部じゃなくて数名をあげるということなんでしょうか、あるいは関係するところのものは全部入る、こういうふうに考えていいのでございましょうか。その点大体きのうの局長の御答弁では関係各府県の長は全部審議会のメンバーに入るという御答弁でございましたが、大臣からもう一度その点をはっきりお示しおき願いたい。
  39. 河野一郎

    河野国務大臣 審議会につきまして、まず河川審議会をつくりまして、特別委員会をケースごとにつくるつもりでございます。その際に、その特別委員会には特別委員として関係府県の長はこれに入れる、こういうつもりでございます。
  40. 西村関一

    西村(関)委員 審議会と特別委員との関係はどうなるのですか。
  41. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川審議会の本委員会といいますか、これは基本的あるいは全般的な問題、あるいはこういうふうに法律に書いてございますようないろんな点を審議するわけでございます。その際に特別の地方のものを取り上げるという場合が相当ございます。その場合には、関係の都道府県の知事を特別に委任しまして、特別委員会の審査を願う、こういう立て方でやっているわけでございます。
  42. 西村関一

    西村(関)委員 いろいろ規定がありまして、配慮されている点はわかるのでありますが、一般にこの法案について心配されておる点は、何もかも中央集権的になって、地方の意思、自治体の意向というものが破壊されるという心配があるという意見が出ておるので、これは知事会等の意見その他民間の意見等によりましても御承知のところだと思うのです。そういう点については、そうでないのだというふうに建設当局機会あるごとに説明をしておられる。要はやはり運営の問題だと思うのです。やはり地方の各府県の、都道府県の首長なり議会の代表なりの意見を十分聞くということ。それがまた運営の面において十分に反映されていくということが前提にならなければ、どんないい法律をつくりましても、これは中央集権になるおそれがあるし、またそういうそしりは免れないと思いますから、そういう点につきまして何べんも御説明があり、大臣の御所信の御表明もございましたが、もう一度念のために伺っておきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  43. 河野一郎

    河野国務大臣 実はこの法律を制定いたしまする精神もしくは世論の要求というものは、私があらためて申し上げるまでもないと思います。したがって、必要最少限度を満たせば十分なのでございまして、それを法文化いたします際にやはり大きな波がかぶってしまうわけでございます。したがって、私といたしましては、今後これを運用する管理者といたしましては、極力従来の慣行を尊重するように、たとえば河川管理いたします場合に、先ほどもやなの問題等がございました。こういう問題は当然府県知事に委任して、府県知事は従来の慣行を尊重して、やかましく言うものはやかましく言い、やかましく言わずに従来弊害がなかったものはそのままでよろしい、そんなことでいいのではないかと思います。砂利の問題が出ます。砂利にしましても、問題の起こるような河川、現に起こっておりますところの地区につきましては、建設大臣みずから管理いたします場合もございます。しかし、直轄河川の砂利を取るのに、建設大臣が一々認可しなければならないということはあり得ない。そういうものにつきましては、当然私は地方に委任して県知事に裁量をまかしてもよろしいのではないか、まかすべきものと考えます。いま御指摘の点でございますが、これらにつきましても最大限に私は従来の慣行を尊重し、地方の意見を尊重してやるのでなければ、しばしば御発言がありましたように、水防の場合等におきまして、そこに意思の疎通、沿岸民諸君の協力なくしてできるものではございません。したがって、法の改正によりまして、地方の沿岸住民諸君もしくは府県との関係等において非常にうまくいくというようなことをどこまでも主眼にしまして、これによって中央集権したのだというようなことでなしに、中央で広域に行政をしなければならない必要最小限度を県で確保して運用するということで足りるのではないかと思っております。その精神によって運用さるべきものであるというふうに考えております。
  44. 福永一臣

    福永委員長 兒玉末男君。
  45. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私は、まず大臣に四、五点基本的な問題点についてお伺いしたいと存じます。特にいままでの提案説明なりあるいは質疑応答の中で、若干重復する面もあろうかと存じますが、特に明治二十九年制定以来何ら抜本的な改正のないこの河川法が、今回いわゆる国民の要望にこたえる画期的な改正案ということを言われておるわけでございますけれども、その盛られておる法案の内容を見てまいりますと、かなり問題点が多いように考えるわけでございますが、特に大臣がこの新河川法のいわゆる抜本的な改正に踏み切ったその努力に対しましては敬意を表するわけでございます。しかし、現在までの河川法は、この長い間やはり地域住民の福利と結びついてきながら、十分とはいえないまでも、やや国民の期待に沿うような河川法の運用というものがなされてきたわけですが、今回このような抜本的な改正をしなければいけないその必然性といいますか、その柱というものは大体どこに置かれておるのか、この点をひとつまず基本的な問題点として大臣の御説明をお聞きしたいと思います。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、まず第一に、これまでの河川法、これまでの河川行政というものは、災害があった場合にそれを補修、改良するという程度で、御承知のとおり従来のものはそういうここに終始しておった。また、具体的に申しますと、直轄しております場所にいたしましても、これは難所だ、ここらがあぶないというような場所を指定いたしまして、一つの河川でも、中流を指定してこれを直轄してみたり、または下流だけしてみたりいたしまして、ほとんど全河川に対して水系全体を通じてこれを直轄いたしておるものではございません。こういうことで一体現在もしくはこれからの、順次国民の福祉を増進し、政治の高度化をはかっていく行政に河川行政が合っていくかどうかといいますと、現行河川法をもってしては、現在もしくは将来の政治の理想から置き忘れられるんじゃないか。したがって積極的に水防の前に治水という前進したものをわれわれは考えなきゃいかぬのじゃなかろうかというところに、新五カ年計画の基盤を私は求めたわけでございます。従来のものはあぶないところを一通り直し、そうして雨が降ってもだいじょうぶなようにというようなことを考えつつも、ほとんど全国の河川について考えますならば、どの河川についてもそういった一貫した新しい時代にふさわしい河川行政というものはないんじゃないかというような意味合いからいたしまして、大きな理想を持ちましてここに治水の行政をいたします。いま申しましたように、少なくとも私はその感を深くいたしましたのは、たとえばキティ台風、伊勢湾台風によって、伊勢湾の沿岸にあれだけのえんえん長蛇の水防が完備しております。これに比べてみて、わが国の堤防は一体どうなっているかというようなことを考えてみまするに、いままで非常に径庭があるというような意味から、河川行政のおくれておるのはやはり河川法自身がおくれていることもあるというように考えまして、ひとつ思い切って水系ごとに水防の完璧を期すべきである。地方の負担も軽減してやらなきゃいかぬという点に第一点を求めました。  第二点は、かくして水を他の利水の面から申しますと、釈迦に説法でございますが、山と海の間が近い。したがって、これを高度に利用するためには、多目的ダムによって治水、利水の両面を調整してやることが必要だというような意味合いからいたしまして、多目的ダム考えつつ、さらにわが国の工業の発展からいたしまして、利水をどうするかという面を考えて、河川行政を大きく取り上げていきたいという意味合いから、今度河川法の改正を長年の検討の結果と相まって踏み切ったわけでございます。
  47. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大体大臣見解はわかったわけでありますが、いままで大臣河川法改正の意向を表明され、そのことがあらゆる機会を通じて新聞報道をされてまいりました。二月二十一日でございましたか、建設省要綱が提出されましてから、その河川法改正のいわゆる原動となりました防災等、水不足の解消とか、あるいはいま言われた水の高度利用、あるいは河川の一貫した管理体制、こういうことが大体大臣の構想として早く発表されたわけでございますが、この二月二十一日建設省の要綱が提示されてから、いわゆる地方自治体の全国知事会なり、あるいは特に関連の深い県なり、その他の各団体等から相当の反発等の突き上げがあり、それによって当初提示された要綱の内容というものがかなり後退したというふうなこともいわれているわけですが、その点は、先ほども大臣が申されましたこの新河川法制定の必然性、いわゆる治水と防災、あるいは水の高度利用、または一貫した河川管理体制、その基本的な理念というものは当初のとおりやはり貫き通せるのかどうか、その点について大臣見解を承りたいと思います。
  48. 河野一郎

    河野国務大臣 いま申し上げましたように、基本線においては後退をいたしておるとは断じて考えておりません。ただ、その後基本的に変えましたのは、当初私は勉強が足りませんで、全額国庫負担でやろうという考えを持っておりましたが、これは大蔵当局から、慣行地元負担というような関係については十分説明を聞きまして、大蔵当局意見をいれて、四分の一を地元負担にするということに、これは後退か前進かわかりませんが、変えました。これはいま申しました私の基本線に変更を加えたとは考えておりません。  第二は、水系ごとにやる線はあくまでも貫く考えであります。ただし、これをどの程度のものを一級河川にし、どの程度のものを二級河川にするか、さらにまたどこから上を府県知事に委任するかということにつきましては、これは河川審議会の議を経て決定するということにいたしました。これは当初建設省において一つのものさしによってこれらの河川一級河川にするということにいたそうと考えましたけれども、いまお話のありましたとおり、地方の知事さん等にもいろいろ御議論もあるようでございますので、いろいろ地方の実情にも合わせてこれを決定することが適当であろうということで、地方の各府県もしくは地元との話し合いを十分した上でこれを決定することが適当であると考えましたので、これをその議を経てやるということに変えましたが、しかし、それによって、じゃ全然なくなってしまうのかということはあるはずもございませんし、十分地元民の御納得を得て、御協力をいただくことのほうがよりよろしいのじゃないかというような意味合いで、そう改正をいたしました。したがって、これは前進でないかもわかりませんが、後退とも断じて考えておりません。  さらにもう一点は、この水利使用料の徴収を国庫にするといたしましたものを、国が負担するんだから国庫にするということでありました大蔵当局の主張を排除いたしまして、地元に収益は納めるということに変えました。  この三点が原案を修正いたしましたとおもなる点で、これによって私の当初意図いたしました基本線がくずれたというふうには考えていないのでございます。ただ、こいねがわくは、今後河川審議会におきまして、私と同様な意味合いにおきまして、なるべく地元民もしくは関係各官の諸君がこの精神に御協力くださいまして、この目的が達成できるように御協力いただくことができれば、非常にしあわせと思う次第であります。
  49. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いままで私たちの手元に、いろいろな団体なりまた地方の機関から、たくさんの陳情なり反対の意見がきておるわけでございますが、この中で一番強く主張されておることは、この一級河川管理権知事から国が取り上げるということ、もう一つは、慣行水利権というものが大幅に制限をされること、それに対するいままでの既得権を持っておる農民等の抵抗を排除するために、立ち入り調査などのいわゆる強制権といいますか、立ち入り検査を強化するということによって、いままでの権利というものが不当に侵害されるおそれがある。こういう第一点の管理権の召し上げということは、いわゆる官僚統制であり、中央集権であり、現在のいわゆる民主主義の方向、地方自治民主化の方向に逆行する行き方ではないか。第二点の、慣行水利権ということは、いわゆる地域住民の権限を不当に侵害するものではないか。こういう点に一番多くの意見が集中されて、われわれの手元にきているわけです。この点に対する一般的大衆の懸念と不当なる権限の収奪ということについて、大臣はどういうふうなお考えをお持ちか。
  50. 河野一郎

    河野国務大臣 すべてとは申し上げませんが、大部分は誤解に発しておると思います。たとえば慣行水利権につきましてはあくまでも尊重する。先ほど申し上げましたとおりに、従来慣行のやなをつくって魚をとることについても、私も慣行を尊重すべきものだと考えておる。慣行について、これを制限を加えるという意思は毛頭ございません。これは届け出をしていただければよろしいというので、届け出をしていただいて、なるべくひとつ十分に間違いのないように河川の保護を共通の立場においてやろうということだけでございますから、それ以外のものは何ら制限を加えていない。この点は誤解でございます。ただ、私は、率直に申し上げまして、一番この法案についてしつこく、やかましく言うていらっしゃる人に、砂利採取業者がございます。これは一番うるそうございます。ところが、これとても、弊害のないものまでその管理権を中央におさめて、これを建設大臣が一切やらなければいかぬと私は考えておりません。あまりに乱採掘をして、そして河川行政上支障を来たすようなものが全国に間々見られます。地方に対してしばしば警告を発しますが、いかんともできないものがあります。こういうものについては、中央でこれが監督をするということのほうが適当であろう。沿岸のたとえば農業用水等までが侵害されておる例が、私のような者でも聞いております。見ております。こういうものについては、当然私は、従来の水利慣行を守る意味からいきましても、適正に建設大臣としてこれを管理する必要があると考えておりますが、そうでない砂利採掘等について、一々これを建設大臣管理する、一々これを許可するというような必要は考えておりませんで、砂利はどうするかとおっしゃれば、砂利はケースバイケースで、河川ごとに、必要でないものについては府県知事に委任して一向差しつかえない、必要のあるものは建設大臣がこれを留保するということで私はいいと思うのでございまして、こういう点については、ひとつ割り切って考えていきたい、こう思いますので、従来の慣行を阻害してみたり、従来より以上に地元沿岸民諸君に不便を与える不利益を与えるというようなことは、毛頭考えておらぬのでありまして、あくまでも行政を広域にして、経済を広域的に利用する度を高めるというところに世論の要求にこたえてやっておるということが主でございまして、世論の要請のないものにまで逸脱して集権しようというようなことは、行政の指導者として毛頭いたす所存はございません。この点は明言いたしておきます。
  51. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣に、あと一問お聞きして、あと内容について局長のほうに伺いたいと思うのですが、水を治めるということは非常にむずかしい問題でありまして、いま大臣がいろいろ説明されましたが、この河川法について私なりの——法律はあまり詳しくないわけでありますけれども、水のいわゆる総合開発利用計画及び水質の保全、こういうことについていろいろな規定があるわけでございますが、たとえば水資源開発促進法とか特定多目的ダム法とかあるいは公共用水域の水質の保全に関する法律、こういうふうないろいろの法律があります。また、現行河川法の中において、ずっと法案を読んでみましたが、工事関係とか監督調整、こういうような性格を帯びた現行法になっているわけでありますが、現在、水に関する要請というものは、治水、防災あるいは利水、そのほかには地盤沈下など、非常に広範囲立場から、水に関する国民の要求というものは、階層別にあるいは地域別に非常に多面性を持っているわけです。そういう点から考えますならば、この新河川法というものが、いわゆる水を治める基本法としての十分なる性格というものを、私は完備していないように思われるわけであります。というのは、昨日の理事懇談会でも問題になりましたとおりに、岡本さんが特にこの水害常襲地帯の問題でしつこく言われたわけですが、こういう防災面のこと等含めて、現在の建設省の機構と権限、こういう一つの基本に立った中において、新河川法というものを、いま申し上げましたような水の基本法的な性格としてのいわゆる任務といいますか、目的というものを十分に達成するだけの法体系というものが完備されていないのではないか。新河川法全体を読んでこういうように感ずるわけです。この点は、もちろん現在の機構そのものから改革をしていかなければ、権限の問題として多くの隘路があろうと私は思うのですが、そういう点について、ひとつ大臣の御見解を扱りまして——抜本的な改正ということは一気にしてできるものではないことは、われわれも十分承知しているわけでございますが、この点についてひとつお伺いしたいと思います。
  52. 河野一郎

    河野国務大臣 お話のように、何ぶん長いこと放置されておりました関係から、その後たとえば農林行政にいたしましても、地方自治にいたしましても、いろいろ慣行もできておりまするし、その間に水に関するいろいろの問題が起こってきております。そういうものをこの際一挙に新しい河川法の改正によって改善するということは、言うべくしてなかなか困難でございます。したがいまして、ようやくこの程度まで保護したというふうなことで、ある程度ものによってはがまんしていただかなければならぬ面もあると思います。その後できました農地法によりましても、いろいろな法律ができてきておりますから、農林関係におきましても、土地改良法とかいろいろなものができておるわけであります。したがって、農林省との間に十分意見調整はいたしまして、ここまできて御理解ある御協力を得たということでございます。その他厚生省関係におきましても、通産省関係におきましても、いろいろ関連いたしておりますものは広範にわたりますために、まだ広げてやりたいと思うところもないわけじゃございませんが、一応基本法としてこの程度に取りまとめたということで、御了承をいただきたいと思うのでございますが、ただ昨日も岡本さんにお答え申し上げましたように、この基本法に準拠いたしまして、全国の災害常襲地帯を解決することが、私の河川行政の主眼でございます。したがって、このような解決のために新五カ年計画をつくって、そして主要河川につきその他の河川につきましても、いかにしてこれを防除するかということが河川行政の主眼でございます。でございますから、御注意、御忠告のことは十分拝聴いたしました。拝聴いたしましたが、それらの点につきまして今後十分検討を加えまして、そして明年には新五カ年計画を樹立いたしまして、そうしてこれに予算の裏づけをして、ひとつ御審議をいただくという所存でございます。私はおっしゃることがわからぬわけじゃございませんが、それが水の行政、河川行政の根幹であるこれをいかにしてすみやかに防除するかというところに、行政の主眼点があるというのでございますから、これは当然新五カ年計画の中に織り込んで、そうして御審議を願う点であると考えます。したがって、法律の内容にこれをどう規定せいというような御要望もございますが、これにつきましては、断固として積極的にやるつもりでございますから、その点はひとつ御了承いただきたい、こう昨日もお願いをいたしましたとおりでございます。お説のとおり、いろいろな不十分な点があるかもしれませんが、それらは六十年のおくれを取り戻して、一挙にして前進するということはなかなか困難と思います。これはひとり建設省関係におきましては、河川だけでなしに、道路につきましても、これまでの道路に対する考え方、新しくこれから先の道路に対する考え方は急激に変わってきております。したがって、すべて道路といい、河川といい、建築といい、みな新しい時代に準拠して法案の抜本的改正をいたしつつ、時代におくれないように、しかも非常におくれておりまする国土の建設に向かって邁進いたさなければならぬことを考えておりますので、どうかひとつこの上とも御協力いただきたいとお願い申し上げる次第であります。
  53. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それで局長に、少し内容についてお伺いをしたいと思っておりますが、いままで質問があった点もあろうかと思いますけれども、この法案の中で新しく今度は河川管理の形態というものが、その単位というものは水系という表現をとっておるわけでございますけれども、この法案をずっと読んでみますと、水系の定義ということが明らかでないように思うわけですが、この点はどうでございますか。
  54. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川の流域といいますか、流域に雨が降って地表を流れてまいる水がだんだんと集まりまして大きな川になって海に注ぐわけでございますが、そういうような相互に連絡をしている水流、水面の総称、これを水系、こういうふうに言っております。
  55. 兒玉末男

    ○兒玉委員 そういたしますと、上流地域におけるどんな支流、分流、そういうものをもすべて水系とみなすのか、実際面として今度はそういうことがいわれておるわけですが、そういうもの、すべての本流に注ぐ一切の水の流れる部分とその地域をいうのか、その辺の形態はどうなっておりますか。
  56. 山内一郎

    山内一郎政府委員 上流のほうからずっと、ただいま先生の言われましたような一切の相互連絡をしておる水流の総称、これをいうというふうに考えております。
  57. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから四条から五条、大体十条までですか、その間逐条ごとに御質問を申し上げますけれども、わが党が特に修正として出しました一級河川、二級河川の認定基準というものをどうして明確にされないのか。また特に一級河川の場合は、その規定する水系というのも何百とあるわけではないわけであって、きわめて限定された形でこの一級河川指定が行なわれると思うわけですが、そういうことになりますならば、一級、二級河川の認定基準というものを明確にするということ、少なくとも一級河川はこの法律において明確に定める必要があるんではないか。この点について局長の見解を承りたいと思います。
  58. 山内一郎

    山内一郎政府委員 実は最初の建設省の要綱におきましても、基準を設けまして建設大臣指定する、こういうような考えでやっていたわけでございますが、なかなか二、三行くらいの基準では明確に一級河川というものを表現することはむずかしい。やはり各方面の意見——この案では関係都道府県の知事さんあるいは河川審議会意見、こういうような広い意見を取り入れまして、なおかつ政令で指定する、これのほうが実際に合いました重要な水系指定できる、こういうような考え方で書いたわけでございます。ただ基準というものは一応要るわけでございますが、これをはっきりと法の条文で出すということは、先ほど申し上げましたようになかなか表現がむずかしい。いろいろ意見を聞く際に、そういうような一応の基準といたしましては、流域の面積とか延長とか洪水のはんらん区域の広さとか、あるいは人口密度、今後の開発状況、こういうものをもちろん考慮してきわめるわけでございまして、そういうような考え方からこういう案になった、こういうわけでございます。
  59. 兒玉末男

    ○兒玉委員 局長の答弁にもあったように、私たちが懸念をすることは、この一級河川なり二級河川の基準というものを明確にして、また特に一級河川の場合には法律に明文化することが、この指定にあたっても、非常に現在新産都市の指定が困難をきわめておるわけでありますけれども、河川行政というものをうまくやっていく立場からしても、当初の考え方というものを通すべきではなかったか、こういうふうに考えるわけですが、局長としては、特に当事者としてこういうふうな措置をしなくてもやっていけるという自信がおありかどうか、その点ひとつ承りたい。
  60. 山内一郎

    山内一郎政府委員 法文では「国土保全上又は国民経済上特に重要な水系こういう表現を使っておりますが、それでも大体のことはわかるわけであります。その範囲におきましていろいろ先ほど申し上げましたような御意見も取り入れてやる、これで十分できる、こういうふうに考えております。
  61. 兒玉末男

    ○兒玉委員 やはり一級河川、二級河川のことについてでありますが、いわゆる水系主義によって河川が認定されることになるわけですが、この水系主義によって一、二級河川指定を行なった場合、管理権の問題、いわゆる管理上の問題と、それから地方行政上との関係において、かなり私は問題が起きる可能性というものが、現在までの全国の知事会議なりあるいはいままできている各団体からの陳情なり、いろいろな文面を見てまいりますと、この水系主義による指定によって生ずる管理上と地方行政の問題というものを非常に懸念をするわけでございますが、その辺についての局長の見解を承りたい。
  62. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一級河川になるか二級河川になるかによってだいぶ違うわけでございますが、一級河川建設大臣管理する、二級河川は都道府県知事管理をする、こういうたてまえになっておるわけでございます。そこで、最初は、一級河川水系全般にわたりまして建設大臣管理をする、こういうことを考えていたわけでございますが、ただいま御指摘のような地方行政の問題で、上流から河口まで一貫して全部やるということは、やはり地方行政のたてまえ上問題がある、こういうことで、知事委任区間というような区間を指定いたしまして、そこで知事さんにやっていただいたほうがいいと思われる管理の業務はやっていただく、こういうたてまえで地方行政との調和も十分とっていく、こういうふうに考えております。
  63. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから河川審議会の調査審議事項の中には、現在第九条と第四十条でございますね。二つだけになっておるようですが、特に私は河川審議会の調査審議事項に次の事項をも入れる必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけです。その第一は、一級河川の、都道府県知事管理をまかせる、先ほど申されました指定区間の指定及び変更または廃止、これは新法の第九条でございます。それから二つは、工事実施の基本事項、これは新法の十六条。それから三番目は、河川保全区域河川予定地の指定及び変更または廃止、これは五十四条、五十六条に規定されております。それから第四点は、審議会の自発的調査ということをこの審議会の権限の中に与える必要はないか。五点、意見尊重ということを義務づける必要があるのじゃないか。ただ単に意見を尊重するということで、これがいわゆる大臣の判定だけで簡単に変えられるという点から考えますならば、せっかく権威ある審議会であるから、その意見の尊重ということを義務づける必要はないか。この五点を河川審議会の調査審議事項に入れることによって、住民の意思というものが十二分に反映され、よりよい運営というものができるんじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけですが、この点について見解をお伺いしたいと思います。
  64. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川審議会で審議をいたします内容といいますか、河川に関する重要事項を調査審議するということになっておりまして、重要事項はどういうものがあるか。ただいまいろいろ御指摘がございましたが、工事実施基本事項は非常に重要な事項である、こういうふうには考えております。そのほか指定区間、河川保全区域、予定区域、いろいろございますが、一応この法律でまかされておる範囲内におきまして、たとえば一級河川指定区間の問題は、都道府県知事意見を十分いれてやるというような点で考慮されているものとは考えております。ただ、実際の運用にあたりましていろいろ御意見を尊重してやりたいと思います。  なお、自発的に調査という点につきましては、いろいろ各委員からのお申し出があれば、当然建設省として取り上げてやるということにはやぶさかではございません。意見尊重の点につきましては、従来もそうでございますが、審議会意見を述べられたことは十分尊重して実際にやっております。そういう点で法文には明確ではございませんが、ただいま御指摘のような点は十分配意をいたしまして運営をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  65. 兒玉末男

    ○兒玉委員 あとから二番目に読みましたところの自発的調査ということについては、審議会からのそういう意見の申し出があれば、建設省としては随時そういうことを行なうことをはばむものではないということですね。  では次に河川区域、非常に問題が多いわけですが、河川区域の問題でいままで質問されなかった点についてお聞きしたいと思います。流水ということばはなかなかむずかしいことばだそうでございますけれども、これに伏流水を含めるのかどうか、それから、これによって河川区域の第六条の内容及び占用許可の諸規定に検討すべき問題が出てくるんじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけですが、まず第一の伏流水解釈、これに関連する河川区域の問題ですが、この点はどういうふうな解釈をなされるのか、お伺いをいたします。
  66. 山内一郎

    山内一郎政府委員 流水には、この法律でははっきりいたしておりませんが、伏流水考えております。といいいますことは、水利使用許可というような行為制限をやるということは、やはり伏流水といえどもそれを多量にとった場合には下流に影響がある、こういうような観点から、流水に含めしてやはり伏流水ということも一緒に考えているわけでございます。
  67. 兒玉末男

    ○兒玉委員 こういうことによって全然表面は水が流れてない、もちろん降雨の場合は別ですが、平生は全然水が流れてない、その地域というのは、どういうふうな関係になるわけでございますか。
  68. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川地域に関連しての御質問でございますが表面は水が流れてない、それ以外にどうようところを区域にするかという問題につきましては、地形とか草木の生茂の状況、こういういう点から判断いたしまして、流水が流れていると同じような状況のところはやはり河川区域である、こういうふうに考えております。
  69. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私はあまり専門的な用語はわからぬのでありますけれども、たしか局長の話でもあったと思いますが、河川維持水ということばをたしか申されたように聞いておるわけです。河川維持水というのは、その考え方、観念といいますか、これはどういうことでございますか。
  70. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川の正常な機能を保持するというのは、やはり河川法目的に入っておりますから、正常な機能のうちの一つといたしまして河口を正常な状態に保つようにしていこう、これはどういうことかといいますと、やはり洪水が流れる場合に障害にならないように、そういう場合には絶えず水を流しておく必要がある。その場合に、やはり計画的に河口が維持できるような最小限度の水を維持用水と考えまして、それを計画に織り込んでやっていく、こういうことでございまして、正常な機能の維持というような点から維持用水というものを考えております。
  71. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、第九条の河川管理の項でございますけれども、一級河川のうちに都道府県知事管理の一部を行なわせる指定区間の指定理由、どういう理由によって指定をする、こういうことを明示する必要があるのではないか、特に二県以上にまたがる場合等に問題が多いのではないかと思うのですが、この指定区間の指定理由の明示の条項についてどういうふうな考え方か承りたい。
  72. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一級河川の一部の区域をきめて知事管理事務を委任するわけでございますが、やはり地方行政との関連性が先ほど御指摘のようにたいへんあると思います。したがって、十分知事の御意見を入れてやるのがたてまえじゃなかろうか。いろいろ河川によりましてその区域は違うと思います。したがって、明文化するよりも、知事さんの御意見を取り入れてケースバイケースでやるほうがいい、こういう考え方で、この法文にははっきりしていない、こういうふうに考えております。
  73. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私の考えとしては、一つの基準といいますか、なぜその区間を知事管理させなければいけないかという明白な理由を示すことによって、私はこのような管理区間の指定というものがスムーズに行なわれるのではなかろうかと思うわけですが、その辺は、この区間の指定にあたって問題は生じないのかどうか、知事意見を聞くということだけでそれができるのかどうか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  74. 山内一郎

    山内一郎政府委員 やはり、先ほども申し上げましたが、河川によって相当違ってまいると思います。ある川の場合には、相当下流のほうまで知事に委任したほうがいい、あるいは場合によりますと、上流の一部に限る、こういうようなケースバイケースによって違うと思います。したがって、知事さんの意見を聞いてやる、それのほうがかえってスムーズな運営ができる、こういうふうに考えております。
  75. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、先ほどもちょっと触れましたが、工事の実施基本事項の項で、第十六条二項で工事の実施基本事項は政令によって定めることになっておりますが、やはりこういうことも基本事項でありますので、法律で明文化して、なおまた、地元との協議をするという制度を考えることが、基本事項の決定にあたってきわめて大事なことではなかろうかと思うのですが、法定化すること地元との協議制度ということについては、その必要はないかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  76. 山内一郎

    山内一郎政府委員 工事実施基本事項のどういう事項を織り込むかという問題でございますが、ただいま考えておりますのは、計画高水流量の決定の方法、それから河道計画の概要、概要といいますか、基本事項、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって、これもやはり法律事項というよりも、やはり河川ごとにいろいろ違う場合がございますので、政令事項にいたしまして、詳細に書いたほうがいいんじゃないか、こういうように考えております。  なお、工事実施基本事項について地元意見との調整をどうするかという点でございますが、河川審議会にかけます重要事項のうちの一つとして考えております。したがって河川審議会を通じまして、都道府県知事、市町村長の意見を聞く、こういうことで地元意見も十分取り入れてやるように、こういうような考え方にしているようなわけであります。
  77. 兒玉末男

    ○兒玉委員 第十六条のこの基本事項は、河川審議会の対象になっておったんですかね。
  78. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川審議会で審議をいたします重要事項の一つと考えております。
  79. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に第二十条の河川管理者以外の者の施行する工事の項でありますけれども、河川工事の施行による損失の補償の請求期限というのが第二十一条の第二項によりまして前項の規定による損失の補償は、河川工事の完了の日から一年を経過した後においては、請求することができないこういうことになっているわけでございますが、特に河川等の工事に対する補償というものは特殊な関係にあるわけでございますが、このような損失発生の特殊性ということから考えますならば、工事が完了してから一カ年以内というこの期限はもう少し検討を要する事項ではなかろうか、このように考えるわけです。道路等の場合とはかなり私は情勢が違うと思うのですが、これを一年として限定した根拠は那辺にあるのかお伺いしたいと思います。
  80. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ほかの法令も参考にはいたしましたが、道路法と同じになっているわけでございます。それでは道路法と河川法とどういう違う点があるか、いろいろ検討いたしまして、ここの内容にごらんいただきますように、「当該河川に面する土地について、通路、みぞ、かき、さく」、こういうような内容でございまして、「面する土地」ということは、工事をやる場合にはっきりいたします。したがって、そこから堤防ができたために、そのうちに入る道はなくなった、こういうようなことで明確にその影響が出る場合に限っていることでございます。したがって、道路法と同じように取り扱いまして、一年ということを設けた次第であります。
  81. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私はいままでの例もあることだと思うのですが、一年以内においてこういう補償等の問題がこじれて、いろいろなトラブルが起きた実績なり前例はないかどうか。その辺のことはいままでの例によって十分検討されていると思うのですが、そういうことは皆無であったかどうか、補償に関する問題がなかったかどうかお聞きしたいと思います。
  82. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一年をこえましてから、こういう事態が生じた、こういうことを聞いたことは記憶にはございません。
  83. 兒玉末男

    ○兒玉委員 第二十三条の流水占用許可です。これは非常に今後問題の発生するところだと思うのですが、公共用地と私権の関係を特に現行法と比較して統一解釈というものを明らかにする必要があるのじゃないか。特に今回は、現在までのいわゆる慣行水利権なり、既得権益というものは、大臣はそういう心配は要りませんということを申されましたけれども、特にこの流れの占用許可に関しては、大臣の大きな許可事項になっているわけでございますが、その点の現行法との関係における解釈、それから二十三条から二十七条に関連するのでありますが、この流水占用許可については、いろいろな立場から許可の申請がなされると思うのでありますが、このような許可を受ける場合、競願処理の場合、どちらを優先するかということがやはり私は大きなポイントになってくるのじゃないかと思うのです。たとえば工業用水道のためのダムをつくる、あるいは農業用水ダムをつくる、そのための水利権ということで競願を処理する場合には、やはり優先順位の原則というものを明確にしておかなければ、この許可をめぐって相当問題が発生すると思うのですが、この順位についての原則というものはどういうふうに考えられておるのか。もちろん、これは政令なり、あるいは準則等において大筋はきめられると思うのですけれども、非常に基本的な問題だと思うので、詳しい説明をいただきたい。
  84. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 まず第一点の慣行水利権の問題でございますが、慣行水利権につきましては、先ほど大臣も述べられたとおりでありますが、条文といたしましては、八十七条とそれから防則の第六条に規定いたしておるわけでございます。八十七条におきましては、従来一級河川あるいは二級河川でなかったものも一級河川、二級河川指定された場合、その従来の河川におけるいわゆる水利権その他の権利もございますが、それにつきましての規定でございまして、これについては従来のとおり法律許可を受けたものとみなすということになっておるわけでございまして、それと同様に、この防則の第六条におきまして、現行の河川法施行規程において慣行の水利権の効力が認められておりますが、それと同様に法律上その効力を有するというはっきりした規定を設けておるわけでございます。それによって効力が認められる、こういうふうに考えておるわけでございます。それから第二の競願処理の問題につきましては、実は私どももいろいろ検討したわけでございますが、河川法におきましては流水占用のほかに土地占用許可あるいは土石の採取、工作物設置その他いろいろ許可事項が多いわけでございます。その内容も非常に多岐にわたっておるわけでございまして、しかもその内容がいろいろと違っておる場合が多いわけでございます。その全体につきまして競願処理ということを考えることについて、いろいろ問題点があったわけでございます。したがいまして法文上は競願処理の規定は置いておりませんが、考え方といたしましては、同一条件の場合は当然先願者が優先をする、こういうふうに考えて従来もそういうような取り扱いでやっておるわけでございます。今後の運営もそういうふうな考え方でいくわけでございます。もちろんいろいろな事業の問題、水利使用の問題について、従前の水利権と関係いたしますには四十四条以下の規定によってそれぞれ処理するようになっておるわけでございます。
  85. 兒玉末男

    ○兒玉委員 少し議場が騒々しいから注意してください。
  86. 福永一臣

    福永委員長 雑談を禁じます。
  87. 兒玉末男

    ○兒玉委員 第三十二条の流水占用料の徴収の項でありますが、流水占用料等の徴収基準というものを明らかにする必要があると思うのですが、これは大体地域地域の情勢なり、いろんな客観情勢によって違うと思うのでございますけれども、この流水占用料の徴収基準というものはどういうふうにして定められるのか。これはもちろんその収入はそれぞれ地方自治体の財源となるということが、先ほど局長の説明でしたが、あったようでありますが、この徴収基準というものを明らかにしないと、地域的なアンバランスが起き、また非常に問題が起きる可能性が強いと思うのですが、この基準というものはどうなっておるのか。
  88. 山内一郎

    山内一郎政府委員 電気関係流水使用料、それから砂利採取あるいはその他の場合と、流水占用料等の中にいろんな内容が入っておりますが、おおむね従来の基準を標準としてきめたいと思っております。
  89. 兒玉末男

    ○兒玉委員 従来の基準といいますと、私もよく勉強していないのでありますが、簡単にいえばどういうものですか。
  90. 山内一郎

    山内一郎政府委員 発電の場合でございますと、現行やっておりますが、馬力数によりまして、それが一年で常時の場合は四百八十円、あるいは砂利等の場合は一立方メートル四十円、これは全国の平均でございますが、そういうようなものを基準としてきめたいこういうふうに考えております。
  91. 兒玉末男

    ○兒玉委員 第三十四条の権利の譲渡ということでございますが、「第二十三条から第二十五条までの許可に基づく権利は、河川管理者の承諾を受けなければ、譲渡することができない。」こういうことになっておりますし、二項においては地位の継承ということがうたわれておりますけれども、慣行水利権、既得水利権はそのまま引き続き認める。これは法の八十七条、八十八条にうたってありますが、事情の変化によって今後不要になる水の売却等、水利権の譲渡との関係というものはどうなるか、このことをお聞きいたします。
  92. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この三十四条を設けましたのは、水を不当に売るといいますか、そういうことを防ぐために、いま権利を持っておる以外の人が使うというような場合、河川管理者の承諾を受ける、こういうことにしたわけでございます。それは不当な売買を防ぐという趣旨でございます。  それから既得水利権の関係でございますが、それは慣行水利権についても従来と同様に尊重しておりますので、許可を受けたものは同じように取り扱うということでございます。
  93. 兒玉末男

    ○兒玉委員 第四十条でございますが、第四十条は「申出をした関係河川使用者がある場合の水利使用許可の要件」ということでございますけれども、水利使用許可優先順位についての原則を法定する必要があると思うのですが、特にこの水の水利使用ということについては、どこの地域においてもなかなか問題が多いわけです。でありますから、特にいままでこの基準というものを法律で明確にすべきだということを私は言っておるわけですが、特にこの水に関する性格から考えましても、この第四十条の場合においては特に問題が大きいと思いますので、水利使用許可優先順位について原則を明らかにする必要があるのではないかということでありますが、これについての見解を承りたいと思います。
  94. 山内一郎

    山内一郎政府委員 非常にむずかしい問題でございまして、その地域によって相当異なってくるかと思います。したがって、第四十条の適用につきましては河川審議会意見を聞かなければならない。河川審議会におきまして十分ディスカッションをやっていただきまして、それによって決定したほうがよいのじゃないか。あらかじめきめるということは非常にむずかしいという点と、地域性によって相当違ってくるのじゃないか、こういうようなことで、法文には明らかにしなかったわけであります。
  95. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それでこの条項にも一号と二号に許可をする場合の該当事項というものが書いてあるわけでございます。しかしながら、こういうことが規制されておるならば、大筋としての順位というものは、当然主管である建設省のほうにおいて——こまかく規定することはできないとしても、大体きめられるのじゃないか。そのことによって河川審議会で最終的なまとめというものが可能になるのじゃないか、非常にやりやすくなるのではないかと私は判断するわけであります。これはもちろんそれぞれの見解なり、その地域における情勢の変化ということで、画一的に規制はできないといたしましても、一号と二号において明確に該当する場合でなければ許可しないという規定づけをしておる以上は、大筋としての順位というものは考えられるのじゃないか。この一号と二号との関係について再度お伺いしたいと思います。
  96. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ここで考えておりますのは、たとえば小さな発電所がありまして、その下流に大視模な多目的ダムをつくる、こういう場合には、公益性がどっちが大きいであろうかということで判断するように考えております。その場合に、二号によりまして、その損失は当然補償しなければならない。したがって、小さな発電所がつぶれる場合には、それにかわる発電というものを多目的ダムのほうに肩がわりをするとか、そういうようなことを考えておるわけであります。
  97. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に第四十二条の損失の補償についての協議について六項にわたっていろいろと書いてございますが、特に河川使用者間の損失補償の協議については、河川管理者がその裁定者となるということになっておるわけでございますけれども、河川使用について使用許可する当事者が、このような損失補償に対する裁定権者となることは、いろいろな慣行なり例に照らしても、また、われわれの常識的な判断に立ちましても、不適当ではないかと思うわけであります。許可をする人が、いわゆる損害が発生した場合に、両者の利害相対立する関係における協議の中に入って裁定を下すということが妥当かどうか、これは見解によっても違うであろうし、また、その発生した問題の内容においても、いろいろ情勢の変化があると思いますが、これが妥当かどうかということであります。これは収用委員会ではなくて、適当な第三者的な調停機関を設置することによって、このような補償に対する協議の成立が可能になるのじゃないかというふうに判断をするわけですが、この点について見解を承りたいと思います。
  98. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この点は、裁定に立ちます場合は、水利使用許可を受けた者、それと既得権者との間の問題でございまして、河川管理者が間に裁定に立つのはおかしいじゃないかというようなお話でございますが、河川管理者としては、どちらの味方でもなく、両方に公正な立場でございますし、なお、河川を一番よく知っいる者が河川管理者である、こういうような立場から、河川管理者は裁定に立つことができる、こういうふうに考えて条文をつくったような次第でございます。  なお、裁定する場合にいろいろな点が出てくるわけでございますが、やはり単独できめるというよりも、収用委員会という第三者の機関がございますので、なお念のためにそれを聞いたほうがいいんじゃないか、こういうような点で書いた次第でございます。
  99. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私の言っているその第三者というのは、第四項に「都道府県の収用委員会の意見をきかなければならない。」となっているけれども、収用委員会ではなくて、こういうふうな紛争については、収用委員会以外の第三者的な調停機関というものの設置考えられないかどうか、こういうことを質問したわけです。
  100. 山内一郎

    山内一郎政府委員 その点はいろいろ検討いたしたのでございますが、現在土地収用法によりまして土地収用委員会というものがございますし、大体そういうようなことを取り扱っておりますので、収用委員会を活用したほうがいいであろう、こういうような見解で条文をつくったような次第であります。
  101. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に第四十四条のダム関係する条項でございますが、ダム調整については相当問題があるわけでございますけれども、特に水利使用者協議会を設置して調整の円滑化をはかる必要があるんではなかろうか。特にダムに関してはいろいろな関係者が多いわけでございますが、その調整についてスムーズな運営をはかるために協議会の設置ということを考えたほうがいいと私は思うのですが、この点はいかがでございますか。
  102. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ダムに関する特則の法律をつくります場合にいろいろ関係方面も多うございますので、通産省あたりと十分協議をしたというような次第でございます。したがって、その内容につきましては、四十四条からいろいろございますが、このあたりまでは、ダム設置する者が河川使用する場合には、当然義務としてやらなければいけないんじゃなかろうか、こういう最小限度のものを設けたような次第でございます。なお、運用にあたりましてはケースバイケースで、通産当局あるいは電力会社と十分協議をする、こういうことで運営がうまくいくというふうに考えておるような次第でございます。
  103. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私、この点質問があったと思うのですが、聞きそこなっておりましたので、重複するかもしれませんけれども、ダムの操作規程でありますが、これは非常に主観的な判断によって問題を起こすことが多いと思いますので、特にお聞きするわけです。ダム操作の基本的な原則、それから操作規程というものを明確にする必要があると思うのです。これは特に「政令で定めるところにより、当該ダムの操作の方法について操作規程を定め、河川管理者承認を受けなければならない。」というふうに義務づけをしてございますので、心配はないと思うのでございますが、この基本原則と特に操作規程の明記ということについて、この四十七条の一項だけで十分かどうか、この点をひとつお伺いしたいのでございます。
  104. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ダムの操作規程につきましては、従来、現行河川法では明文化してございませんでしたが、いろいろ問題もございますので、ここに取り入れたようなわけでございます。従来の河川管理者への届け出を承認制にした。したがって、その内容につきましても政令できめるわけでありますが、考え方といたしましては、放流の基準に関するもの、ダムのゲートの操作の問題その他必要な事項をきめるわけでありまして、それをいろいろ十分に考えて操作規程をつくりました場合に、従来よりも一そう改善をされる、こういう確信を持っておるような次第でございます。
  105. 兒玉末男

    ○兒玉委員 第四節の河川保全区域の問題でございますが、これは特に私権の制限に及ぶことでもございますので問題が多い事項だと思うのですが、河川保全区域指定をされれば、当然、行為の制限をするわけでありますが、保全区域指定すれば、この保全区域指定する理由をやはりはっきりさせることが必要だと思うのです。特に保全区域指定する理由を示すことは、当然義務づける必要があると思うのです。私権の制限に及ぶ条項であろうかと思いますので、この義務づけという点についてどういうふうな見解をお持ちか、お伺いしておきます。
  106. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川保全区域をきめますのは河岸または河川管理施設を保全するため必要である、こういうような場合に限るわけであります。この場合に、やはり民地におきまして行為制限をかけますので、必要最小限度という点は非常に注意をしてやっておるような次第でございます。  なお、補償の点につきましては、この法案作成にあたりまして関係省とも十分協議をいたしましたが、必要最小限度のことをやる場合には、やはり公共の福祉のための受忍の義務の範囲に入るのではなかろうか、指定するためだけの補償でありますが、そういうような考え方から補償の条項は入れなかった、こういうことになっております。
  107. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから保全区域指定する理由をやはり明らかにしなければいけないと思うのですが、たとえば三項等の場合においては例外事項というものも書いてありますし、また、四項においては公示するということになっておりますが、これは地域指定する区域の公示であって、なぜこれを指定区域にするかというその理由を明示する必要はないかどうか、こういうことであります。   〔委員長退席、本村(守)委員長代理   着席〕
  108. 山内一郎

    山内一郎政府委員 保全区域をつくる考え方の問題かと思われますが、河川管理施設がございまして、その付近におきまして深い穴を掘るとかいうような行為をいたしますと、いつの間にか河川管理施設が弱体化して、いつ洪水によって決壊するかもしれない、こういうような事態が発生いたしますので、河岸または河川管理施設というものを十分保護するために、その沿岸の方々に受忍の義務を負っていただく、こういうような考え方になっておるわけでございます。
  109. 兒玉末男

    ○兒玉委員 この三項で「河川区域の境界から五十メートルをこえてしてはならない。」というふうな規定づけをしておるわけでございますけれども、大体河川の幅なり、あるいは流水量によりましても、かなり情勢が変わってくると思うのですが、五十メートルというふうに規定をし、——あとのほうの例外規定はありますけれども、原則は五十メートルということであります。大体いままでの災害の例等から判断して、五十メートルということが妥当なる広さといいますか、距離であるのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  110. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川保全区域河川法にはっきり条文化したのが今度の新しい河川法でございますが、従来も河川附近地制限令、こういう命令で詳細な規定をつくってやっているような次第でございます。その場合に、従来のおおむねの基準も五十メートル程度、こういうことでございましたので、その例によりまして、それで現在までの状況を見まして、支障はないということで、従来の例をとった、こういうようなわけでございます。
  111. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、第五十九条でございますが、河川管理上、費用分担の原則というのは、大局的な観点に立って行なうべきであり、直接関連性というものを持たせる必要があるのかどうか、この第五十九条の河川管理に関する費用負担の原則について。いま少し御説明をいただきたいと思います。
  112. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この河川法案におきましては。河川一級河川と二級河川に分けて、一級河川建設大臣管理をするというたてまえでございます。二級河川は都道府県知事、そういうたてまえからまいりますと、やはり費用の負担の原則も、一級河川は国が負担する、二級河川は都道府県が負担する、こういうような原則に管理体系から費用の負担が出てまいります。こういうことでこの条文をつくったような次第でございます。
  113. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから第六十条でございますが、道路と河川とは、その形態なりあるいは管理上相当相違点があるわけですが、一級河川、二級河川に対する国の負担率というのが違えてあるわけであります。これはもう少し検討する必要があると思うのですけれども、もちろん道路においてはその目的が違うわけでありますが、負担率においてアンバランスがあると思うのです。これはどういうふうな根拠に立ってこの負担率というものが違っておるのか、この点についての見解を承りたいと思います。
  114. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一級河川と二級河川が差があるではないかというお尋ねでございますが、二級河川につきましては、従来の河川法の立て方と全く同じでございます。知事管理をいたしまして、工事ももちろん知事がやる、こういうことでございますので、費用の負担につきましても、従来の率をそのままとっておるような次第でございます。なお、一級河川につきましては、建設大臣管理をする、なお知事に委企する区間もございますけれども、従来は、その知事委任区間に相当するようなところは、この案の二級河川、現在の補助工事と同じ率でございまして、これは二分の一以内でございますが、それを三分の二に引き上げる、なお、特例を設けまして、昭和五十四年までは四分の三、そういうことにいたしまして、下流大臣管理区間と全く水系一貫して同じ率を採用したい、こういうことになっておるわけでございます。道路法との関係におきましても、大体今回はその案でまいりますと歩調が合っている、こういうように考えられます。
  115. 兒玉末男

    ○兒玉委員 第六十三条のやはり費用負担についてのことでありますが、都道府県で負担する費用の割り当てをする場合、その基準の決定、これは国と地方とのそういうふうな決定をする場合に、協議をするということを私は必要とすると思うのですが、この都道府県への費用負担の割り当てについての基準決定については、これはまあ建設大臣のほうの一方的な判断だけによってやられるものかどうか。負担割り当てについての協議ということについて全然書いてないようでございますけれども、この点はこういう条文上の規定だけでいいのかどうか。この協議ということについての見解を承りたいと思います。
  116. 山内一郎

    山内一郎政府委員 その点は、第二項で都道府県知事意見を聞くと、こういうことになっておりますが、これは、この条文はどういう場合かといいますと、大河川がございます。それが県の負担分をどういうふうに関係県に受け持ってもらうか。したがって、いろいろ考え方がむずかしいのでございますが、各県ともできるだけ少なく持ちたいというのが、財政上からいって考えられるところだと思います。そこでいろいろ科学的というような基準を設けないといけないと思いますが、洪水の治水関係といたしますと、洪水はんらん面積と申しますか、その面積の中の資産の問題、あるいは各地先の工事費の問題、そういうように実際に自分の県に、行なわれる費用がかかるというような点、あるいは経済効果の点、こういうものを勘案いたしまして、各県の知事さんの意見を聞きながらやる。こういうことでございまして、事実上は協議というようなことになりますが、法文上は都道府県知事意見を聞く、こういうことになっておるようなわけでございます。
  117. 兒玉末男

    ○兒玉委員 どうもこの点私は非常に問題だと思うわけです。いま局長の答弁では、実質的に協議ということと同じ結果になると申されますけれども、二項の条文を読みますと、ただ意見を聞かなければいけないということであって、協議という知事側の意向というものが十分にいれられるというふうにはどうしても解釈をしがたいように私は思うわけですが、実質的にそういうふうな知事側の意見が十分尊重されるということを私は特に要望を申し上げておきたいと思います。  次に、第七十八条でございますけれども、これは特に私は先ほど大臣にも申しまして、この新河川法の制定の中で一番問題になる点でありますから、七十八条二項に「前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。」証明書の提示だけで立ち入り検査ができるというようになっておりますが、河川監理官の立ち入り検査について、やはり乱用防止のため事前通告制がとられておりますけれども、身分証明書の提示ということだけで、第八十九条に規定されておるところのこの事前通告制というものがありますが、これによってはたして乱用防止ということが可能なのかどうか。これはもちろん監理官の判断によることが多いわけですけれども、往々にして過去においても問題を起こしている例が多いわけでありますが、この事項に規定されておる身分証明書の提示ということだけに限定してはたして乱用防止ができるかどうか。この点非常に私は問題の多い条項だけに、ひとつ御見解を承りたいと思います。
  118. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ただいま御指摘のような点も非常に心配されるわけでございますが、こういう条文をつくりまして、必要な限度においては報告の徴収、立ち入り検査、これは必要かと思われます。ただいま御指摘のような点の御懸念がないように、ひとつ運用にあたりまして十分注意をしてやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  119. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これはほかの人からも質問があったと思うのですけれども、罰則の適用ということで、百二条には「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金」、それから百五条では「五万円以下の罰金」、それぞれの適用の条項というものを見てまいりますと、たとえば百二条の一号の場合等は、これは主として農村地帯において発生し得る事件じゃないかと私は思うのです。特に、農村地帯といえば農民でありますが、このような、第二十三条の規定に違反した場合においては「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金」、ところが、百五条に、ダム操作上の指示に従わなかった場合には「五万円以下の罰金」、与える影響というものの客観性なりを見てまいりますと、むしろ私は百五条の第一号等の場合のほうがより甚大ではないか、一方百二条の一号の場合は、ほんとうに限られたささやかな行為である、にもかかわらず、これが「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金」という、この罰則の適用の内容というものについて、公平を欠く面があるように私は見受けるわけです。この点について、もう少しこの内容はやはり検討を加える必要があると思うのです。私もむずかしい法律は、刑法等の問題は知りませんけれども、常識的な判断として、力を持たない農民等が重い体刑なり罰金を受ける、こういうことでは、どうしてもわれわれが理解と納得に苦しむところでありますので、この立案の過程においてどういうふうな検討の結果こういうふうな罰則がなされたのか、この点についてひとつ明確なる御答弁をいただきたいと思います。
  120. 山内一郎

    山内一郎政府委員 罰則の点につきましては、現行の河川法その他刑法、一切の罰則の規定をいろいろ比較検討いたしまして、それとのバランスにおきまして、こういう案ができたような次第でございます。建設省としては、専門じゃございませんので、法務省で十分検討していただきまして、現在のところはこれでバランスがとれている。ただ、全般的に軽いというような点につきましては、今後全面的に変えるような場合にそういう機会があるのじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  121. 兒玉末男

    ○兒玉委員 特にこの罰則適用の点についてはどうしてもわれわれは納得ができない。そういうことで、罰則に関する条項は局長としてもかなり判断に苦しむ点もあろうと存じますけれども、われわれはこの第百二条と百五条の関係については、非常に不合理だ、こういう点で、この点はどうしても納得できないし、最も早い機会にこの内容の改定ということを私は強く主張いたしまして、まだたくさんの条項にわたって質問がありますけれども、あとに質問者が控えているようでございますので、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  122. 木村守江

    ○木村(守)委員長代理 佐野憲治君。
  123. 佐野憲治

    ○佐野委員 大臣のお見えになります前に事務的に二、三お尋ねしておきたいと思います。と申し上げますのも、今度の法の提案に先だちまして二月二十一日付で河川法改正要綱が配付されておるわけですが、この河川法改正要綱と今次提案になっておる法案と比較してまいりますと、ちょっと気づきます点は、まず第一に、私権対にする——流水並びに河川敷地は私権の目的とならない、こういうのが要綱の中に出ておったわけですが、法案の中からこれが削除されてまいっておる。それから第二には、一級河川、二級河川に対する認定基準をそれぞれ示しておったのが、今度の法案の中ではこれが政令にゆだねられてまいった。第三の点といたしまして、法令に違反する措置に対する問題につきまして、要綱にありました七十七条の二号、三号、これは新しいアイデアだと思いますが、こういうのが明らかにされたのが今度の法案の中からこれが消えておる、以上の三つの点につきまして、私は、これは一体いかなる見解あるいはいかなる考え方に立って要綱と法案との間にこのような変化ができてまいったのか、この点に対しまして御説明願いたいと思います。
  124. 山内一郎

    山内一郎政府委員 私権の問題につきましては、いろいろ検討したのでございますが、現行河川法におきましては、河川区域に認定した中の私権は目的となることを得ず、こういう条文があるわけでございます。したがって、新憲法におきましては認定行為ということがなかなかむずかしくなってきた。そういたしますと、どういう事態が発生するかといいますと、堤防と堤防との間の土地におきましても、私有地があるような場合には、河川区域としていろいろな規定ができない、河川附近地制限令というような別の命令によってやらざるを得ない、そういうような点でいろいろな矛盾が出てきたような次第でございまして、その点は、新しい河川法におきまして第二条に、公共用物である、こういうことで受認の義務というものが考えられるわけでございまして、河川区域内にも私有地を含めるようにいたしまして行為の規制をしてまいる、こういうような考え方になっているわけでございます。  なお、一級河川、二級河川の認定につきまして、最初の要綱におきましては、先ほども申し上げましたように、一応簡単な基準を設けまして建設大臣指定をする、こういうような考え方でやっていたのでございますが、簡単な基準だけで大臣指定するということは、なかなかむずかしいような点もございますし、なお、それ以外に、関係都道府県知事意見とか学識経験者を入れました河川審議会意見、そういうような各方面の意見を聞き、なおかつ、政令で具体的の河川指定いたしますので、関係者等の了解も十分とった上で指定をしていく、こういうほうが運用としてずっとよろしいのじゃなかろうか、こういう点で現在のような河川法案にしたような次第でございます。  第三点  第三点の問題につきまして、いま手元に持っておりませんが、当時の監督規定につきましてこれを検討いたしまして、この法案におきましては第四章に監督規定を設けております。監督規定は七十五条に一項、二項を設けまして、さらに都道府県知事に関するものにつきましては七十九条で規定いたしました。それをもってほぼこの法案目的を達するということで要綱をこういうふうに整理いたしたわけでございます。
  125. 佐野憲治

    ○佐野委員 最初の私権の問題としない、このことは、憲法が公布されましてからすでに十数年も経っておるわけです。しかし、皆さんのほうは、要綱を配付されるときにこのことを入れたわけですがね。憲法上のいろいろな疑義があることになってまいりますと、憲法の疑義はあるが、改正するのには問題だというのではなくて、そういう問題があるといたしますならば、当然これは改正されるべきであったでありましょうし、河川法もしばしば部分的な改正を行なってきておるわけです。そういうこともなさらず、しかも要綱にこれをちゃんと掲げていながら、今後の法案を提案される過程においては、憲法上の問題があるとか、あるいは補償という問題が出てくるだろうと思います。そういうことが重大な問題となって削除したのか。ほんとうの憲法の精神にのっとって、この条項は不適格だというので削除されたとは考えられないのではないか。ですから、その間においてどういういきさつで削除になったのか、こうい点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  126. 山内一郎

    山内一郎政府委員 新しい河川法案考えます場合に、現行河川法をまずもとにしてやるわけでありますが、私権の条文につきましては、いろいろな学説がございまして、各方面の権威者にもいろいろ当たってみたわけでございます。したがって、要綱をつくる段階におきましては、一応現行河川法の条文を入れておいて、それと並行して各権威者に意見を聞いて進めていたわけでございますが、なお現地の調査をやりまして、その場合にやはり現行河川法考え方よりも、そういう点につきましては新しい河川法によったほうがいい、こういうような結論を得ましたので、要綱当時はなお検討中であった。それをさらに検討を加えまして、現在のような法案をつくっている、こういうようなわけでございます。
  127. 佐野憲治

    ○佐野委員 一応私は、これは大きく公法上、皆さんのほうは憲法上問題ないという解釈をとっておられたのじゃないか。憲法発布から今日までの過程を考えてみましても、やはりここに補償問題がぶつかってまいって、財源上大きな問題にぶつかったから、そういうぐあいにすりかえられたんじゃないか、こういう感じがいたすので、一応念のためにお伺いしておいたわけです。しかしながら、この場合におきましても、おそらくこれが河川予定地なりあるいは保全区域なり、これらの問題とも関連してくる問題があろうと思います。この点につきまして兒玉委員も指摘いたしておったわけですが、特にそうした河川保全区域なりあるいはまた予定地、これを公示をるすということで公用制限、私権の制限をやっておる。何と申しますか、非常に安易な行政措置をとっておられるわけですが、この場合におきましても、土地収用法の場合においては、非常に厳格な規定を置いておるわけです。ですから、単なる公示と申しましても、行政管理庁がいろいろ勧告いたしておりますように、公示ということばが法律で出てまいりますけれども、その公示の実態は一体どうなのでしょうか。単なる官庁の廊下にはり出されておる、あるいはまた、ちょっとしたところに備えつけておく、これで公示をしたものだという解釈のもとにいろいろトラブルが発生してまいっておるということも指摘されておるところでありますが、そういう意味からこういう重大な私権を行政的に制限する、公用制限をやるという場合におきまして、やはりそれらの利害関係者の納得する措置、こういうために公示するというだけではなくて、もう少しそれらの関係者意見を聞くなり、あるいはまた現地の住民の意思が反映でき得るそういう措置がやはり必要になるのではないか。単に形式的に公示したからいいのだ。しかも、公示の場所は、これまでの例によりますと、先ほど指摘いたしましたような形でやられてしまっておる、こういう点につきまして、利害関係者のいろいろな問題があるだろうと思います。そういう管理者と利害関係者との間における問題が発生する、これを予防するために、行政的にはやはりもう一つ措置が必要になるのではないか、こういうぐあいに考えるのですが、見解はどうですか。
  128. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川保全区域考え方の問題でございますが、これも従来から河川附近地制限令、こういう命令によってやってきたというような次第でございます。この考え方は、先ほども申し上げましたが、河岸または河川管理施設を保全するために必要である、こういうふうに公共用物を保護するためにどうしても必要な区域、もちろんこれは最小限度に考えまして、広くとるという場合には、やはりただいま御指摘のような点があらわれてくるわけでありますが、最小限度の区域をとりまして公用制限を加える、こういうことはやはりその付近におられる方の住民の義務である、こういうような見解からつくっているような次第でございます。この点もいろいろ懸念がございましたので、法務省あたりの意見も十分聞きまして条文を作成したというような次第でございます。
  129. 佐野憲治

    ○佐野委員 私は私権の制限をする場合においては、そういう配慮がもっと必要じゃないかと思う。新住宅市街地開発法案の場合におきましても、やはりそういうある程度の配慮がなされておったのですが、法制局の見解からいえば公示でけっこうでしょう。しかしながら、実際問題として、農民その他が、いつの間にか河川の予定地になった、河川保全区域になったが、このことは自分は知らなかったといっても、役場とか県庁の一角に公示してあったじゃないかというのであっては、みずからの所有権を主張する生活権に関連する問題もあるだろうと思います。そういう場合においては、当然そこにトラブルが起こる。そういうことを取り除くことが非常に必要じゃないか、こういう点に対する配慮が欠けておるのではないか、私はそういう意味で、何といいますか、損害を賠償するのは非常に金がかかる。だから私権の対象とはならないというのは、めんどうだからこれを削除する、あるいはまた、その場合に保全区域なりあるいは予定地に対しまして、個人の私権に対しまして、過去にもあったし、今日においても公用制限というものは認められておるのだから、それをやればいいじゃないか、法制局なり、過去における慣例によって公示すればそれでけっこうだ、こういう簡単なことで私権というものが制限されてくるということに対して、もう少し法律をつくる場合にあたりまして、そういう配慮なりが——法律手続から申せば公示すれば事足りるかもしれませんが、そういうことではほんとうに納得する行政の運営というものは阻害されるのではないか、かようにも考えますので、一応申し上げておくわけです。  第三の点といたしまして、八十七条の二号、三号、これの中に非常に新しいアイデアだと思いますが、無過失賠償の原則を取り入れている。わが国の法典の中でこういう制度をとっているのは非常に珍しいのじゃないかというので、私も感心しながら実は読んでおったのが、法案に出てまいりますとどこかに姿を隠しておるのじゃないかという点が考えられましたので——これは非常に新しい試みだけに、各省折衝の中において相当の問題点が出ただろうと思いますので、一応念のためにお聞きしたわけなんですか、これらの問題に対しての質疑はこれで終わります。  次に治山治水十カ年計画、特に昭和三十五年度に立てられました治水計画、この計画の中でいわゆる計画の内容あるいは目標となっているものをひとつお聞かせ願いたいと思います。と申しますのも、九千三百億円による三十五年度を初年度とするあの治水計画、治山を含めた治水計画におきまして、当時における速記録を読んでみましても、建設省が今日における災害、あるいは河川のはんらんを防止するために、いま直轄河川百三十九、中小河川一千、小規模河川八百、これだけはどうしても改修しなければ、今日の台風その他に対しては万全な措置をすることはでき得ないんだ、こういう趣旨を述べておられるわけですが、これらの十カ年計画を実施いたしたとして、一体直轄河川において幾ら、中小河川において幾ら、小規模河川において幾らくらいの改修が完了するんだ、こういう目標をお立てになっておったのか、この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  130. 山内一郎

    山内一郎政府委員 現行河川法と新河川法考え方が違ってまいると思いますが、現在の治水十カ年計画は現行河川法でございますので、現行河川法によって治水十カ年計画をつくっておるわけでございます。ここれは治山治水緊急措置法によりまして、十カ年計画をつくって閣議決定も得ているわけでございますが、直轄河川につきましては昭和三十五年から十五年で全体を完了する目標で十年分を考えている、こういうことでございますので、その目標は十カ年計画が終われば七、八割くらい終わる。中小河川につきましては、その点を明記してなかったのでございますが、十五以上相当期間かかる、こういうような考え方で現在の十カ年計画はできておるわけでございます。
  131. 佐野憲治

    ○佐野委員 私の資料によりますと、この十カ年計画が完了したといたしましても、直轄においては九本、前期五年、後期五年において二十五本、合わせまして三十四本しか完成しない。それは総数に対する二四%、この程度しか目標として置けないんだということになっておるのですが、これはどうですか。
  132. 山内一郎

    山内一郎政府委員 本数で計算するのも一つの方法ではございますが、やはり毎年事業をやりますと、完成しない河川につきましても堤防は逐次高くなっているような次第でございます。したがってそういう点を考えますと、十五年目標で十年分をやるということでございますので、全水系——全水系といいますか全区間完了いたしますのは、ただいまお示しされたような数字でございますが、事業量としては七、八割できる、こういう目標でございます。
  133. 佐野憲治

    ○佐野委員 ではもう一つお尋ねいたしますが、昭和二十八年の大災害が起こりまして、その教訓の中から、昭和二十九年に計画が立てられたわけです。これが三十四年における伊勢湾台風その他に直面いたしまして、いま申し上げました新しい十カ年計画を立てるということになったわけですが、あのときは一兆九百億円だったと思いますが、このうち一体幾らくらいが推捗しておったか、この点をひとつ参考のためにお聞かせ願いたいと思います。
  134. 山内一郎

    山内一郎政府委員 二十八年に大災害が起こりまして、そのあと治山治水基本要綱というものをつくっております。これは建設省あるいは閣僚懇談会の程度におきましてつくられた計画ではございますが、政府全般、閣議でオーソライズされたものではない、こういう計画でございます。したがって、どうしても閣議決定に持ち込まなければいけない、こういうことで治山治水基本計画というものを、治山治水緊急措置法によってつくりまして、昭和三十五年度から進捗している。三十五年からの進捗はただいまところ非常に順調でございますが、二十九年につくられました計画は、ただいま御指摘のような点はあまり十分には進捗していない、こういう状況でございます。
  135. 佐野憲治

    ○佐野委員 私の資料によりますと、当時は目標に対してわずか一八%しか進捗していなかった、こういうことになっておるわけです。そこで私がお伺いいたしたいのは、昭和三十六年度の建設白書によりますと、戦前における国民所得に対する災害の被害が〇・五%であった。ところが、終戦後におきまして、国民所得に対しまして三・一%まで、ここ十年間の平均をとってみますとふえてまいっておる。特に昭和二十一年から今日まで、三兆円の災害あるいは三万人の人命を失っておる、こういう点を建設白書で述べておられるわけです。こういうことを見てまいりますと、一体今日において河川対策あるいは治山治水、この必要性が要求されておるわけなんですけれども、しかしながら、戦前におきまして、明治二十九年にこの法律ができまして、明治四十二年かに第一次治水計画が立てられておる、あるいは大正十年にも第二次治水計画が立てられておる、昭和八年に第三次治水計画が立てられておる、こういう治水計画の進捗によって、いわゆる台風その他における災害から河川を守ってまいった。ですから、国民所得に対するところの被害というものも非常に少なかったわけです。終戦後においてこのように被害が増大してまいったということ、この中で治水施設の戦時における荒廃あるいは山林の荒廃、いろいろな諸条件が出てまいっておるだろうと思います。しかし、そうした中に一貫して見られることは、終戦後におきまして、いわゆる治山治水計画が非常に忘れられておったということ、財政的な理由によって、やはりこの昭和二十九年に立てられたところの治山計画もくつがえさざるを得ない財政事情であった、あるいは三十五年度から立てておりますけれども、そういうことを見てまいりますと、今日の国民の要求している、災害から守ろうとする、そのために治水対策を充実してもらいたい、河川法にも欠陥があるのではないか、こういう声が高まっておることは、大臣の御指摘になっておるとおりだろうと思います。しかしながら、ほんとうの原因というものは、いま戦前と戦後の治水政策を顧みましても、やはり痛感されますことは、治水施設に対する財政上の理由が大きな原因となってきておるのじゃないか、こういう点を考えるわけですが、そういう意味から考えてまいりまして、今日の河川法の改正をするという、あるいは全面的に改正するという、皆さんの程度のその理由、並びにいままでの委員会の質疑を通じて見てまいりましても、どうしても納得できないんじゃないか。戦後において、現在の明治二十九年にできた河川法のもとにおいてさえも、やはり台風というもの、水害というものを防止することができ得たのではないか。戦後においてこういう大きな被害を続出させておる最大の原因というものは一体どこにあるのか。河川法そのものにあるのか、行政的欠陥として出てまいっておるのか、政治的責任の中から、今日の災害に対して河川がその任にたえることができ得ないという貧弱な姿を呈してしまったのか、どこに一体原因があるのか、こういう点をはっきりさせることが大切じゃないか、かように考えるわけです。その意味において、過去における治水政策と今日における水政策をどのようにお考えになるか、一応お聞きしておきたいと思います。
  136. 山内一郎

    山内一郎政府委員 治水事業が非常に進んでないというか、非常におくれているという点につきましては、ただいま御指摘のように、財政の面にも確かにその一つの要因はあると思うわけです。ただ、現行河川法で見てまいりますと、大河川下流のほうの区域のみ直轄工事で施行して、上流地域につきましては県が補助工事仕事をしている、こういう事態になっているわけでございます。したがって、水系を一貫としてその責任者がいまのところない。これは治水工事の面について申し上げているわけでございますが、その点はどういうふうにすればいいかと申しますと、水系一貫して、一つの河川に一つの責任者をつくっていく。一河川一責任者といいますか、そういう点で一級河川につきましては建設大臣、二級河川は都道府県知事、こういうふうに考えまして、従来補助工事で中小河川でやっている部分につきましても、水系を一貫した計画のもとにまず実施をする。一級河川の責任者である建設大臣水系を一貫した計画をまずつくる。その計画に基づきまして下流のほうの大臣管理区間、上流のほうの知事委任区間の工事をやってまいるわけでございます。そういうふうに計画の一貫性がつくられるという点、さらに、従来は二分の一以内、こういうことで国の負担率を中小河川については設けていたわけでございますが、それを上下流一貫して三分の二にする。なお、四十四年までは特例として四分の三にする、こういうことで国の負担率も一貫して設ける、先ほど申し上げましたような計画の一貫性もつくっていく、こういう点が治水の面につきましての新河川法の基本的な考え方になっているわけでございます。
  137. 佐野憲治

    ○佐野委員 私の言ったのはそうではなくて、今日災害からいわゆる国民の生命、財産を守らなくてはならない、また水の利用、開発を考えなければならない、こういう要請が高まっているのに、こたえることができない今日の河川行政、そのことを考えてまいりますと、その欠陥は一体どこにあるのか。河川法そのものにあったのか、あるいは行政の欠陥として出てまいっておるのか、政治の貧困として生まれてまいっておるのか、これらに対する——今日の河川法が施行された明治二十九年から戦前における治水、災害に対する被害状況と終戦後における今日の状況と比較してみますと、河川法そのものは古い法律ではありますし、多くの問題を持っておるし、また、憲法上の疑義があることも私もよく存じております。しかしながら、最大の欠陥は、そうした法にあるのかどうかという点に対して、やはり河川を担当する局長としてどのように考えておられるかということを、実は私お聞きいたしておるわけです。
  138. 山内一郎

    山内一郎政府委員 治水事業がおくれております点につきましては、いろいろ御指摘ございましたような要因があると思います。しかし、そのうち、やはり河川管理体系、これも治水事業のおくれている一つの原因と考えられます。したがって、その点につきまして、先ほどるる御説明をしたようなわけでございますが、それだけでは治水事業がどんどん進んでまいるかといいますと、それ以外の要因の十分な手当てをしなければいけないと思います。河川法の改正とあわせて財政の面とか、いろいろな点からまいりまして、治水事業は促進されるべきものである、こういうふうに考えております。
  139. 佐野憲治

    ○佐野委員 この問題とも関連いたしますけれども、たとえば国土総合開発法が昭和二十六年に制定されておるわけです。敗戦の痛手からようやく地域開発なりほんとうの国土開発というものが叫ばれた中から、民主的なこたえとして生まれてまいったのだろうと思います。    〔木村(守)委員長代理退席、委    員長着席〕  この国土総合開発法による水の利用なり、あるいはまた開発なり、あるいは風水害からの防災措置なり、これを基本的に定めなくちゃならない、こういうことになって、おるわけです。ところが、一体どうであるか、昭和二十六年にできた国土総合開発法によって全国計画府県計画、二つの県にまたがる地方計画、あるいは特定地域計画、この四つの計画を定めて、法の目的に沿わなくちゃならいと規定されておるにもかかわらず、一体どうなっておるのか。特定地域の開発計画は二十二、これは電源開発を中心にする朝鮮動乱の要請にこたえてこれだけが先行してきてしまっている。河川計画の中に総合開発といわれる多くのものが、電力をいかに供給するか、こういう中から生まれてしまっておるわけです。本来、国土総合開発法に指摘している点が逆になおざりにされてしまっておる。だから総合開発法に基づく府県計画もできてこない。二つの県にまたがる河川一体どう開発するのか、どう利用するのか。このために地方計画を立てなくちゃならないことになっておる。水の利用、水の開発に対して結局一体どうなっておるか、ちっともできていないじゃないですか。あるいはまたそういう点を考えてみましても、今日における治水問題の大きな点がこのような中にあるのじゃないか、私はこういうことを感ずるわけです。いま大臣がお見えになればそれらのことを中心にしてもう少しお聞きしたいと思うのですけれども、そういう点を抜きにして、いま河川法を改正するという、そして憲法上の疑義を解消したい、あるいはまた、今日における治水の全面的行き詰まりを打開してまいりたい、このようなことも言われておるわけですけれども、実際河川法を見てまいりますと、ほとんど明治二十九年の河川法の大ワクが踏襲されておるわけです。ちっとも新しい改革なんというものはここに取り上げられていない、こう言ってもいいんじゃないか、私はかように考えるわけです。ただ、あるものは地方自治に対する不信、民主主義行政に対する否認、あるいは官僚行政に対するノスタルジア、こういうものが随所にうかがい知ることができるわけですけれども、根本的な改革なり全面的な改正というものは見ることができないのじゃないか。先ほど申し上げましたように、もちろん治水を中心にする計画をもっと充実してもらいたい、あるいはまた水の利用、いろいろな問題が起こってまいっておる。ですからウォーター・ロー、こういうような法律をつくってもらいたいという考え方が出て、それらのものが一体どのようにくみ取られておるだろうか、こう考えてまいりますと、ほとんど新しい河川法にはくみ取られていなくて、ただ明らかになってまいっておるのは、河川行政が地方自治体の総合行政として非常に大きな地位を占めておる。地方の民生なり産業なり住民の生活なりに重大なつながりを持っておる、その河川行政の中から管理権を中央にすい上げる、これだけが目立って注目される、これだけじゃないか、こういうことすら感ずるわけなんです。  そこで、先ほど局長の長き経験の中から、管理権が治水を進める上において大きな障害となっておった、あるいは水系一貫するところの施策ができ得なかったんだ、これを取り除く、これが一つの大きな目的だったんだ、かようにも言っておられるわけですけれども、現行法においても一体それができ得なかったのかどうか、こういう点を私は疑問に思うわけであります。先般の委員会におきましても、私、都市計画の問題を通じて御質問いたしたわけですが、今日の河川法の中において管理権というものは国の機関委任事務として県知事に委任されておる事務にすぎないわけです。こういうたてまえがとられておる。ですから、私は憲法上疑義があると申し上げますならば、今日の憲法の趣旨から考えて、地方自治の本旨に反する法律その他をつくってはならない、こういうきびしい一章を設けておるという観点から考えてまいりましても、このような機関委任事務というものは、憲法の視定から考えると、およそかけ離れた存在じゃなかろうか。明治憲法の時代におきましては、こういう機関委任というものが取り入れられることもうなづけるわけですけれども、ドイツ、欧陸法系に見られるこういう機関委任事務をとっておるわけです。こういう強権官僚的な力を持っておる機関委事任務として管理権を国の事務として持っていながら、なぜでき得なかったのでしょうか。水系によるところの一貫した治水計画というものを立てることができ得なかった理由は一体どこにあるのか。治水計画を立てるということ、こんなことが一体どうしてでき得なかったのだろか、その点をもう少しお聞きをしたいと思うのです。
  140. 山内一郎

    山内一郎政府委員 現行河川法におきましても、原則は都道府県知事管理機関委任として都道府県知事管理をする責任がある、こういうことになっておりまして、例外的には建設大臣が直接管理をするという例外規定もございます。そのような体系におきまして、やはりどういうふうにして一貫性を保っていくかという問題になるかと思いますが、建設大臣がその例外規定をどんどん範囲を広めまして例外が原則になるようなことにまですれば、やはり現行法の解釈以上の範囲に飛び出ているのではないか、そういうことはやはり法律改正をしなければ達成できないのではないか、こういうように考えられます。例外と本則が逆になる、こういうふうな点で非常に困難がある、そこで新しい河川法の改正に乗り出したようなわけでありますが、それでは、従来でも建設大臣がつくればいいじゃないか、こういうことになりますと、やはり法律の与えられましたたてまえ上、権限上からいったほうがいいかもしれませんが、管理する者でなければやはりほんとうの計画は積極的につくっていけないのではなかろうか。こういうような管理の責任と管理の事務というものをぴったりさせる必要があるということも一つ考えられることだと思います。そういうような考え方から、新しい河川法の一つの面をつくった、こういうわけであります。
  141. 佐野憲治

    ○佐野委員 私は純法律的にやはりもう少し吟味していきたいと思うのですが、直接とか間接とか言われるのですけれども、機関委任事務でしょう。機関委任事務の場合に、大臣の指揮監督権というものの範囲、実際上、指揮監督権の中にどういう障害が起こっておるのですか。こういう点と、もう一つは、本来あなたたちが治水十カ年計画——もちろん治山を含めて配慮しておられる。ですから、治山治水の急務が叫ばれ計画が立てられておる。そういう計画の中に一貫した河域計画なり、あるいは水系を中心とする治水計画が必要であるとするなら、そんな基本計画を立てるのが当然じゃありませんか。そういうことで大臣の指揮監督権の範囲、実際上監督権を発動するにどういう障害があったかという点について、具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  142. 山内一郎

    山内一郎政府委員 現行河川法水系一貫の計画をつくります場合、やはり大河川の場合には二県以上に流れておるようなところがたくさんあるわけでございます。したがって、自分の県につきましては、つくるということは監督上できるわけでございますが、それでは県と県の境の問題とか、水系を一貫した考え方でどうするか、こういう点は、やはり一つの管理者をつくりまして、責任を持ってやらなければいけないのじゃないか、一例でございますが、そういうふうに考えるわけでございます。それでは治水十カ年計画はどうやってつくったのか、こういうことでありますが、その点につきましては、直轄工事をやる機関につきまして、これはやはり直轄事業でございますので、一応の事業計画をつくる、それから上流の都道府県の分は、知事の中小河川あるいは小規模河川というような従来の計画におきまして、知事のつくられましたものを集積をいたしまして治水十カ年計画というものができておる、そういうような内容でやっておると思います。新しい河川法ではそういう点はどういう点が違っておるか、これは一級河川全般としてやはり一つの考え方のもとに、一つの水系については何年で完了するとか、そういうような水系ごとの新しい計画をつくりまして、治水五カ年計画あるいは十カ年計画というように、新しい観点から今後の長期計画というものはつくってまいるべきである、こういうふうに考えられます。
  143. 佐野憲治

    ○佐野委員 建設省でも、道路局長の場合には、道路五カ年計画二兆一千億円、こういう計画の中に補助事業のほかに市町村道までも含めておる、単独事業も含めておる。そういたしますと、単独事業が千九百億円だ、ですから九割までは国の意思によって道路行政をコントロールする権限を持っておるんだ。実際において国が意思があるならば、道路政策を立てようとするならば、九割までは国の考える方向に向かわせることができる。現在の道路法でさえも、そういうことをやろうと思えば行政的な立場においてできる。といたしますと、この河川法によって機関委任事務として行政の責任として当然治山治水をやっていく、しかも河川は公共用物として何ら知事のものじゃなくて、管理権知事に機関委任されておるにすぎないでしょう。そうすれば皆さんのほうで治水計画を立てられて、全体としての総合計画ができてこなければならない。そこでそういう計画を府県なりあるいは地方自治団体がかってにやることがはたしてできるであろうか。いま国の地方財政計画を一つひもといて見てまいりましても、やはり直轄河川に対する財政的な補賞、これが財政計画に第一義に取り上げられておるわけです。これに絶対に財政的な欠陥が起こらないように、こういう配慮がまず優先的になされて、それから後に余った財源が一応単独事業としてどれだけの河川改修が行なわれるか、わずかばかりの単独事業費というものが計上されておるわけです。これから逸脱することは、ほとんど今日の地方財政の現状から考えて、でき得ないというたてまえになっておるわけです。そういたしますと、財政面からもあなたたちの方向に持っていくことができる。地方がかってなことをやろうといったって、財政上でき得ないという今日の財政制度になってしまっておる。しかも国の公共用物としての、しかも国民の生命、財産に重大な影響を及ぼす河川行政にあたりまして、そこに水源から河口に一貫するいわゆる治水計画を立てる。それはあなたたちの責任でもあるわけじゃないし、そこに指揮監督権というものが与えられておるわけでしょう。管理権に機関委任はするけれども、指揮監督はあくまでも大臣がとる。聞かなかった場合にはマンディマスな手続が必要といたしますけれども、やはりそこに罷権が発動できる、あるいは代執行ができる。ですから、県事の罷免はも機関の長としての罷免をすることができるという、こういう強い強制力を持つ規定があるわけでしょう。そういう今日の公選知事ではありますけれども、機関委任事務といたしましては罷免することができる、こういう権限が与えられるあなた方において河川計画ができ得ない、治水計画ができ得ない、一貫した計画ができ得ない、これは一体どこに原因があるのですか、法律的に。
  144. 山内一郎

    山内一郎政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、やはり大河川になって、たまたま数府県にまたがっておる、これが第一の障害になろうかと思われます。県ごとに計画をつくりましても、それがなかなかつながらないというような問題、やはり一貫してだれかがやらなければいけない、これが第一点かと思います。現在もそれでは中小河川工事とかいろいろやっておりますが、それは補助工事でございますので、大臣の認可をとってやっている。したがって、かってにできるというような問題ではもちろんないわけでございます。ただ、その計画性におきまして、どういう計画でやっているかといいますと、やはり中小河川のやる工事の個所に主として着目した計画、水系全般といいますよりも、その個所に着目をした計画に基づいて暫定的にやっているというのはおかしいのでございますが、計画が水系全般としての一つの柱ができないで、個所ごとに計画ができている。こういうような多小ばらばらというような形に現在なっているわけでございます。したがって、それをどういうふうに一人が責任を持ってやるか、こういうことはやはり大河川につきましては数県の知事さんに委任、おまかせをするというよりも、やはり責任は一人で持ちまして、一級河川建設大臣、なお委任できるものはもちろんするわけでございますが、計画の面につきましては、やはり一人で水系を一貫して管理体系をつくらなければいけないのじゃないか、こういうような観点から新しい河川法案をつくった次第であります。
  145. 福永一臣

    福永委員長 この際暫時休憩いたします。    午後一時二十四分休憩      ————◇—————    午後二時四十二分開議
  146. 福永一臣

    福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際申し上げますが、残余の質問の方はできるだけ簡略にお願いしたいと思います。委員長の希望としては約一時間くらい後に採決をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  質疑を続行いたします。佐野憲治君。
  147. 佐野憲治

    ○佐野委員 先ほど来河川局長にいろいろ事務的な角度から御質問しておったわけですが、大臣がお見えになりましたので、重複を避けたいと思いますが、ただ私が率直にお尋ねいたしたいのは、今日における治水対策の立ちおくれ、並びに利水、治水を一貫する総合政策の欠除、こうした世論の高まりの中で、大臣河川法の全面改正に踏み切った。と同時に、それらの機会に憲法に抵触する諸条項をも実は整備をいたした、このように述べておられるわけです。そこで私がまず第一にお尋ねいたしたいのは、今日の治山治水の面を考えてまいりましても、あるいは増大する需要に供給が追いつかないという水の利用という面を考えてみましても、これらの欠陥がいま露呈されておるその原因というものは一体どこにあるのか。一つは、それらのことが河川法が持つ欠陥としてあらわれてまいっておるのか。あるいは行政の怠慢によってこういう事態が引き起こされておるのか。第三は、政治の貧困によってこれらの事態が深刻な様相を呈しておるのではないか。大体以上三つにつきまして、過去、現在を通ずる治水政策というものをただしながら局長の所見を伺っておったわけです。この点について、たとえば建設省の三十六年度の建設白書によりますと、災害が及ぼす甚大な被害に関連して述べておるわけですが、その指摘しておるところを見ますと、戦争前におきまして、国民所得に対する災害の被害は〇・五%であったが、終戦後におけるここ十年間の平均を見てまいりますと、国民所得に対しまして三・一%に及んでまいっておる。いかに治水施設が荒廃化しておるか。戦争中におけるむちゃな山林の乱伐がどのような影響を及ぼしておるかという点にも論及いたしておるわけです。この点から見ていますと、河川は明治二十九年にできてまいっておるわけです。戦争前におきましても、河川法は治山治水に大きな役割りと任務を果たしてまいっております。と同時に、戦後もこの法が踏襲されておるわけです。しかるにかかわらず、このような台風並びに災害に対して大きな被害を惹起いたしておる。このことを考えてまいりますと、単に河川法が持っておる欠陥によって引き起こされておるのだ、こういうぐあいに断定でき得ないのではないか。と同時に、大臣の提案説明なり、あるいは他の新聞、雑誌に所見が述べられております河川法の改正の理由というものを見てみましても、全面的な改正をする、憲法に抵触する諸条項を整備する、こう言っておられることがはたして実現されておるであろうか。こういう意味から河川法を点検いたしてみましても、大臣が提案の説明として述べておられることがほとんど生かされていないのじゃないか。旧来の河川法そのままが大体踏襲されてまいっておる。しかも特異な点として指摘され得るのは、ただ一つ地方行政として重要な総合的施の地位を占めておる知事管理権を中央に吸い上げる、これだけが大きな特徴となっておる。その他においては部分的には前進した、あるいはまた政令、命令によってできていたものを本文の中に整備いたした、こういう努力は認めます。けれども根本的にはこれしかないのじゃないか。こう考えてまいりますと、現在の河川法の中におきまして、管理権というものと、治水あるいは利水に対する基本計画というものとを大臣はごっちゃにしておられるのじゃないか、これは別個の問題ではないか、かように私は考えるわけです。この点に対して管理権というものといわゆる河川の主管であるところの所管大臣——しかも所管大臣は、公有物として知事に対して管理権を機関委任しておるにすぎないで、主体はあくまでも建設大臣にある。そうして治水、利水計画を立てる行政責任は所管大臣に存在しておるわけです。だからそういう治水、利水に対する総合計画なり政策が立てられておって、その計画に対して一体管理権を委任いたしておる知事がこれに対してはたして従がわなかったかどうか、あるいはまたそういう計画に対してどういう阻害条件があるのか、こうい点が明らかにされないと、管理権を中央に吸い上げるという根拠がはっきりしないと思いますので、その点をひとつお尋ねいたします。
  148. 河野一郎

    河野国務大臣 だんだんの御質問でございますが、前段にお述べなりました点につきましては、私も必ずしもこの法律を改正することによって、もしくは現行法のために治水がおくれておるとか、阻害されておるとかいうようなことは考えておりません。またこの法律自体にいたしましても、これですべて充足することができるということも、少し言い過ぎになるだろうと思います。  要は御承知のとおり、これは治水も利水も同様でございますが、あくまでも全体の国民諸君、沿岸住民諸君の善意の御協力なくしては目的は達成できない。したがって、これを代表する府県知事の協力なくしては困難であることは申すまでもございません。ところが、戦前におきましては、何と申しましても旧憲法によりまして、もしくは旧政治形態によりまして、府県知事と内務大臣との関係そして土木局長を通じて府県の土木行政管との関係におきまして、旧河川法におきまして相当の目的を達成してまいったことは私も認めます。ところが、そこで問題になりますことは、戦後新憲法のもと、現行府県知事建設大臣との関係は必ずしも旧憲法時代の戦前とはだいぶん違うと思うのでございます。すなわち旧憲法時代におきましては、府県の財政にしましても全体が内務大臣を通じて把握せられておった今日はそうはまいりません。府県によりまして相当の富裕もしくは貧困の差異があります。府県財政に相当の長短のありますことは御承知のとおりであります。したがいまして、これに全体を通じての計画を立てまして、そして行政をいたしてまいりましても、地方の負担力もしくは知事、地方議会等のこれに対する認識と申しますか、それらのお考えのいかんによりまして、そこに水防の上におきましても、利水の上におきましても、相当の消長が出てまいりますることも御承知のとおりであります。これらとあわせまして、戦争を通じ、戦後を通じまして、わが国の財政の困難な時代もしくは終戦処理に忙殺されておりました時代等を通じて、いまお話のありましたように水防の点、災害の点等が今日こういう状態になっておりますことも私は見のがすことができないと思います。たまたま戦後十八年の経営によりまして、いまや復旧もある程度充足いたしてまいりました。いまやまさに政治は全面的に前進して、いかにして計画的にこれらを防除してまいることに努力するかという時代に入ったと思うのであります。したがって、私はここに相当の決意を持って新五カ年計画、すなわち積極的に利水をする、積極的に水の利用をするということに対する積極性を持った計画を立てる時代に入ってきた、またやらなければならぬ時代にきておるという認識のもとに、これが基本法となるべき河川法というものについてある程度可能な程度の改正を加える。何さま御承知のとおり数十年間そのままになっておりました時代と変わった時代でございますから、その間に一挙に飛躍することはなかなか困難でございます。他の法律との関係もございますし、他の行政との関係もございます。したがって、一挙に飛躍することは困難でございますけれども、われわれの意図する可能な程度の改正案をここにもちまして、そしてこれによって各方面の御認識をいただき、各方面の御協力をいただき、さらに理想のものに飛躍してまいる素地をつくるということが必要じゃなかろうか、そういう意味においていろいろ御質問でございましたが、私としてはそういう意図のもとに本法案を提案いたして御審議をいただいておるような次第であります。
  149. 佐野憲治

    ○佐野委員 大臣のお話ではありますけれども、私はやはり大臣がそういう考え方に立たれるとするなら、当然ウォーター・ロー、こういう立場に立って河川法を全面的に新しい性格のものに切りかえるというなら、これはわかりますけれども、どうもそうなっていないんじゃないか。それから河川法そのものを踏襲いたしておって、しかも憲法上いろいろな疑義があると言われますならば、まっ先に手をつけられなくちゃならないのは、いわゆるドイツ大陸系法典に見られるこういう地方自治を侵害するといわれる機関委任事務、これらに対してメスをふるうことが一番大切なことではなかったか、かようにも考えるわけであります。しかしながら、そういう機関委任の形態を制度として取り入れながら、しかもなぜ改正しなければならなかっただろうか、この点を考えてまいりますと、大臣にお尋ねいたしますが、一体大臣の持っておる指揮監督権の範囲というものをどうお考えになっておられるか、あるいは指揮監督権が実際上の運用にあたって何か阻害になっておることがあるのかどうか、こういう点に対してまず卒直にお聞きしたいと思います。
  150. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申しましたとおり、戦前の長きにわたって委任されております事務、もしくは管理委任についてこれを地方長官、府県知事に委任いたしておるものは、今日では府県知事の専管もしくは主管の事務のように慣行上なっております。したがいまして、これらをこの際明確にする必要があるということだけでも相当に考えなければならぬ点があるのではないか、こう思います。
  151. 佐野憲治

    ○佐野委員 常識的にはいろいろなことを論議する方がありますけれども、やはり立法のたてまえから考えてまいりますと、非常に強い権限だと思うのです。ですから指揮監督できる、たとえば県知事が不許可処分をする、こういう場合におきましても不許可をしてはならない、こういう指揮権、あるいはまた違法な処分に対しましてもこれを取り消す、こういう権限は与えられておる、かように解釈するわけです。  それと同時に、機関委任事務でありますから、マンディマスの手続を必要といたしますが、公選知事である県知事に対しましても、やはり機関の長としての罷免権を発動することができる、不都合な場合におきましては大臣が代執行することができ得る、こういう強い規定が設けられておるわけであります。そういう強い規定があるにもかかわらず、これがどこで阻害されておるのか、そんな条件というものが実際上あるのかどうか。法律上におきましてこれほど強い権限はないと思うのです。その権限を大臣として果たすために何かの障害にぶつかっておるのかどうか、こういう点をひとつお聞きしておきたいと思います。行政管理庁も、たとえば利根川の水の問題に対しましても、大臣は当然の権限として指揮監督権を発動できるにもかかわらず、これをしなかった政治的な生命の立場、あるいはまた諸問題を考え大臣としてやることができ得なかったから遅延したのじゃないか、こういう点を行政管理庁は指摘いたしておるわけであります。ですから、それほど強い指揮監督権を持ち、罷免権を持っておるにもかかわらず、これがどうしてじゃまになるのか、その点をもう少し明らかにしていただきたい。
  152. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見でございますが、一体そういうことがいまの日本の政治の上に可能でありましょうか。われわれ政治はなるべくみんなの了解の上に、たとえば議会運営にしても社会党さんがいろいろおっしゃれば、その御意見も十分取り入れて円満のうちに片づけていこうというのが政治であると思います。法律の姿勢にとらわれて、罷免権があるから罷免権を発動したらいいじゃないか、そういうことをやることが誠実であるかどうか、まして河川行政のように地元民の納得と理解と協力の上に立ってやらなければいかぬものを、権利義務だけの立場でやっていくことが政治になるであろうかどうか。まして多年にわたっての慣行を無視してやることもどうかという気がいたします。ことにこの機会にわれわれとして考えなければならぬと思いますことは、われわれが委任いたしております条件にいたしましても、その条件をたとえば幾らまでは府県知事に委任するということにいたしますと、こま切れにしてその許可をするというような悪例も今日ないわけじゃございません。それをしも、それであるから取り上げろ、罷免しろというような議論は絶対出るものではないと思うのであります。こういうものはよろしく本法律を抜本的に改正してやることのほうが穏当である、行政上妥当であるというものだろうと思うのでございまして、もしそれを法律改正するよりも、罷免権を発動するほうが正しいという御意見であるならば、私はいささか所見を異にするものでありますから、どうかひとつ御了承いただきたいと思います。
  153. 佐野憲治

    ○佐野委員 だから私が最初指摘いたしておりますように、憲法に抵触するような機関委任事務というものを廃止をするのだ、そうして河川法というものを全面的に変えるのだ、こういうならば趣旨はわかるのだ、こう言うのです。しかしそうではなくて、やはり機関委任事務はとっているのです。といっていながら、管理権だけを中央に吸い上げる、おかしいじゃないか、こういう憲法にも抵触するのではないかと思われる機関委任事務に対して、私はそこに大臣が指摘されるように大きな官僚的権限を与えておると思います。こういう、昔であれば、法律があるからこれを変えろというならわかるが、これを残しておくと同時に管理権だけを取り上げていく、これは一体どういうことなんですか。大臣の言っておられることは逆な意味に私は疑問を投げておるわけなんですが、どうですか。
  154. 河野一郎

    河野国務大臣 御了解のとおり、各県各県がばらばらな認可許可をするというような場合も、実はそれによって困るという場合もあるわけであります。そういうふうな、長年にわたっての慣行等によっていろいろになっておりますものをいろいろ整備しよう、そうして弊害のない程度に改めて、委任していいものは委任しよう、こういうことでございます。
  155. 佐野憲治

    ○佐野委員 どうも私よく納得できないのです。ですから問題になってくるのは、水系別の、いわゆる治水計画なりあるいはまた利水一体とする基本計画ができておれば、それに基づいて管理権一体行使しているのかいないのかここに指揮監督権が大臣にあるわけです。ですからこれをやってはならないという指揮をすることができる、やりなさいという指揮をすることができる、違法なことをやっているかどうかに対する監督権が与えられておるというわけですから、しかもこういうばらばらになるということはあり得ないじゃないですか。一貫した水系における治水十カ年計画をおつくりになっておるときに、一体そういう計画に基づいて、管理権を委任されているものはやっているのかやっていないのか、この行政責任は大臣にあるわけじゃないですか。
  156. 河野一郎

    河野国務大臣 おっしゃる段階に至るまでに、現行法におきましては非常に阻害する問題が多い。たとえば数県にわたっておりますために、その数県の調整に非常に手間がとれる。これははっきり白黒というふうに、イエス、ノーときまってしまえばよろしいが、そこに至るまでに、御承知のとおり非常に時間がかかっております。いま各方面で広域行政の必要性が主張されておりますのはその点だと思うのであります。河川法におきましても、これらの改正によってそういう点を水系ごとにひとつ広域的に運用できるようにしていきたい、こういう点に考えを置いておるわけでございます。
  157. 佐野憲治

    ○佐野委員 そうした問題は、すでに昭和二十六年における国土総合開発法によっても、水に対するところの根本的な政策を立てることが義務づけられておるために、二県にまたがる場合におきましては地方計画を立てるようになっておる。いろいろな法律が整備されておるわけだし、また建設省におけるところの治水十カ年計画において水系別にそういうのがつくられておるとするならば、何ら不都合な問題が実は起こってこないのではないか、かようにも考えるわけでございます。ですから問題は、河川というものが地方総合行政の中に占めておる地位から考えますと、やはり道路法における市町村道のように、いわゆる普通河川なり、あるいは県の河川なり、重要なものはいわゆる国の管理する河川とする、こういうぐあいに切りかえてもいいんじゃないか、そういう点を申し上げておるわけでございます。ですから計画は行政責任において立てなければならないと同時に、国が管理を直轄する場合におきましても、幹線部門だけを建設省として掌握して、他のものをそれぞれ府県知事に委任をしてもいいではないか。ですからそういうことが河川法の中に私は取り上げられるべきではなかったか、かように指摘いたすわけであります。  時間がありませんので、もう一つだけお尋ねいたしておきたいと思いますことは、大臣はしばしば、お聞きいたしておりますと、財政の問題をこれに結びつけておられると思います。貧弱府県がどうであるとかこうだとか言われますけれども、しかしながら、今日のたとえば地方財政法なりあるいは地方交付税を見てまいりましても、地方財政に対する最終責任は国が負うと義務づけられておるわけです。ですから地方財政計画を見てまいりましても、国の直轄に対するところの負担金並びに補助事業に対する負担金、こういうものは優先的に支払いの保証をなしておるわけです。もしどうしてもそれらの点が地方の負担にたえられない場合におきましては、地方制度なり地方財政の変革をする、あるいは交付税率を引き上げる、そうして国は最終的に責任を果たす、こうなっておるわけです。ですから財政の問題につきましても、たとえば慣例によって地元受益者負担をとるんだと言われる。私はこれは無意味じゃないかと思うのです。たとえ受益者負担金をとったといたしましても、そのお金というものはやはり財政計画によって、あるいは地方交付税によって、やはりこれは国が財源を保証してこれを支払っていかなければならない、こういうたてまえをとっておるわけです。ですから財源の問題ということと管理権ということ、並びに治水に対するところの根本的な計画を立てるということ、こういうことはやはりそれぞれ別個の問題として、何が合理的なのか、何が大臣がしばしば言われる国民に奉仕する道なのか、やはりこの観点から検討さるべきじゃないか。非常に不用意なことばがよく出ると思います。たとえば自衛隊の出動ということを非常に言われるのですけれども、自衛隊の場合におきましても、自衛隊法の八十三条によって当然の義務としてなされておるわけです。災害に対し派兵すべき責任を自衛隊は有しておるわけです。それに基づく出動であって、決して法を乗り越えて自衛隊自体が動いておるという性質のものではない。こういうことも大臣の先般来の質疑を通じて感じましたので、それらの点も一応指摘をしておきますけれども、私はやはりもっと根本的に考えなければならない問題がたくさんあるのではないかという点を指摘いたしまして、次の質問者も待っておりますから……。
  158. 河野一郎

    河野国務大臣 私、誤解があるかもしれませんが、私が自衛隊の出動の問題を申しましたときは、こういう場合に言うたのです。地元の人だけが水防をやる、したがって地元の人が云々ということでございましたから、そうじゃございませんで、地元の人もやっていただくが、国全体としてこれに当たっております、たとえば自衛隊が出動して水防の第一線に働かれたじゃありませんか。自衛隊が法を乗り越えてやるとは決して考えておりません、これはみんなでやっているんだ、国全体でやっているんだという意味で私は申し上げたのです。  それからいまの負担の場合でも、それはお説のようなこともあるでしょう。あるでしょうが、何にいたしましても、今日の行政、今日の政治は、あなたもしばしば経験されますように、府県の議会もしくは府県知事、それぞれの関係者の諸君の協力発意というものがなくては行政はできません。それらの御要請なくしてはできません。そうしてこれらの裏づけがなくてはできません。その場合に一貫性をもってやる場合が起こってくるから、広域的に考えてくる必要があるからこうしたいんだ、こう私は考えて、現にそれが全国各地に現実の事実としてあらわれておりますということだけを申し上げておるのでございまして、ただ抽象的に理由なくして不用意に申したという気持はございません。御了承いただきたいと思います。
  159. 福永一臣

  160. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 この法案の改正については賛成者もあり反対もある、世論必ずしも一致していないことは大臣もよく御承知であろうと思います。私は、本法の改正は旧法と管理権が逆になっている、少なくとも一級河川につきましては地方庁から建設大臣のほうへ移った、これは間違いないことですね。それから、したがいましてそれに関する限りは、この建設大臣の主管する一級河川に関する限りは、それらに付属する幾多の許可権というものが大臣に移ったわけです。申しまするならば、旧法におきましては、第六条におきまして管理の主体の原則と例外というものがあって、原則は地方庁である、例外は中央の建設大臣である。それから旧法の第十八条によれば、敷地または流水占用許可は地方庁にある。今度は一級河川については少なくとも中央に移る。もちろん河川流水占用許可については管理者がやるんですから、これは当然である。また土石の採取についても、旧法によれば地方庁であったものが、建設大臣になっている。もちろんこの河川指定についてもさようであります。多目的ダムに関する法律によっても、このダム建設しようと思えば、新法ではこれはどうせ規定されるんでしょうけれども、旧法の十八条によって水の占用権がなければ多目的ダム建設利用はできない。これらの幾多の利権といいますか、許可の特権というものが地方庁から中央に移るわけです。これを一部の人は官僚統制であるとか、権力が中央に移るとかと言って非難することに対しては、大臣はしばしばこれに対する弁明もなさっておりまして、私も聞いております。しかしそういう権利というものが地方庁から中央に移るということについてはこれは間違いのない事実であります。そこに私は問題があろうと思う。いま新聞をにぎわしておる汚職事件を見てみますると、みな許可権利を握っておる者がその特権を利用するがために事件を起こしておるんです。最近では都庁の住宅の問題の建部氏ですか、つい最近これも都営の宅地の買収の手続にからんで汚職を行なっておる。特権の座にある者によって行なわれておる。その他、私はただいま調査中でありますけれども、ひんぴんとしてこのごろこういうものの起こるのは、みな特権の座におる者がそれを悪用するから起こるのであって、私はここにこの法の最大の反対の根拠を持つのであります。なぜなれば、この間の選挙におきまして池田総理が九州のほうへ行って、政治は中央につながらなければならぬということを言われた、これは利権を利用するものである、特殊の利益を選挙に利用するものであるといって、世間ごうごうとして非難が起こった際に、中央に血のつながる政治でなければならぬと言って、中央につながる、直結する政治ということを改めて、血のつながる政治でなければならぬということを言い直した。これは弁明にはなりませんけれども。ですから、こういう、法律を変えて、そうして党利党略に利用されて、中央に来なければこういう問題が解決しないんだということになれば、私はそこに日本の政治というものが非常によごれていくんではないかと思う。私は誤解するのではない。法は、できたら、利用する者はあとの者がこれを使っていくんです。ですから私は、これは現状においてよかったのじゃないかと思う。それが第一点です。  それから法の内容を見ると、これはどうですか。法の内容を見ますると、この法の第一の目的は三つあります。河川の水による災害の発生の防止ということ——治水とは書いてありませんが、災害の防止が一つの目的。それから、河川が適正に利用されるということ。河川が適正に利用されるということは、この法律規定によると河川流水ですから、流水及び水面河川というといいますから、結局水の利用を適正にやることが第二の目的。第三の目的は、流水の正常な機能が維持されるということ。これは私はちょっとわからぬですね。私も法律をずいぶんやってきたけれども、「流水の正常な機能が維持される」というこれは、ずいぶん解釈が要るだろうと思うのですが、まあこの三つですね。それならば、洪水、高潮等による災害の発生の防止ということがありますが、これは大体先ほどから論議せられております治山治水に関する緊急措置法によって、そのほうで目的が達せられないのかどうか。それから、河川の適正な利用ということは、水の利用ということですから、これは水資源開発促進法によっても、「河川水系における水資源の総合的な開発及び利用の合理化」とあって、この第一条にいう水の利用とどこに違いがあるのか。それから、多目的ダム法も水の利用のことを書いておりまするけれども、これは河川の特例である。つまり多目的ダム建設利用に関する限りは河川の特例なんですから、ここに一つ河川の中にこの法律が飛び込んできておるわけですね。したがって、河川法律適用、運営がそれだけ阻害されるわけですね。そうしますると、この河川法の内容というものがますます狭まってくるわけですね。流水の適正なる機能を維持するということは、これはどういうことか知らぬが、私は、これは川の水の流れる河岸といいますか、たとえていうならば水の流れる器ですね、器がなければ適正なる機能は発揮されませんから、これもやはり治水に関するほうが多いのじゃないかと思うのです。そうしますると、この河川法の内容というものは一体本質的にどこにあるのか、人あるいはこれを呼んで管理法である、こう言うけれども、それははっきりしておりませんよ、あとで申しますけれども。ですから私は大臣に伺いたいのは、この河川法目的とする本質は一体何か、水資源開発法があって、水の利用開発については特別の法規がある、多目的ダム河川法の特例なんだ、治水については、先ほどの治山治水緊急措置法があるのですね。そうすると、この河川法の本質、中身というものは何が残るのか、これを伺いたい。
  161. 河野一郎

    河野国務大臣 最初からたびたびお答え申し上げておりますとおりに、第一には治水の万全を期すること、第二は水の利用度を高めて利水を完ぺきならしめることでございます。そこで、たとえば水の利用ならば水資源法があるじゃないかということでございますが、これは御承知のように、それを事業化して、財政的にはどういうふうに金を持ってくるか、そして事業はどうやるかということを規定しておりまして、河川法はあくまでもその基本になるべき法律でございますから、基本法を整備して順次他の法律についてこれに関連したものを整備してまいろう、こういうことでございます。
  162. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 これは基本法だということはしばしば大臣の口から承っております。基本法とは一体何ですかす河川に関する基本というのは一体何をいっておるのか。第一条の三つの目的がすなわち基本だろうと思うのですが、私の言うように、ほかの法律によっていろいろと機能を発揮する法律がたくさんあって、河川というものはそれらによって制約されておるわけです。残るものは何かといえば基本だ、こういうのですが、一体どこをどうするのが基本というのか。建物ならば、基礎工事だといえばわかります。河川の基本法というのは原則でしょうけれども、その原則は何か、それを伺いたい。
  163. 河野一郎

    河野国務大臣 お話しになりましたとおりに、河川全般にわたっての規定をいたしたものでございます。それがその後におきまして、基本法はおかしいじゃないかとおっしゃいますけれども、これがしばしば改正されておりますれば、他の水に関する、河川に関する法律なしに、河川法の改正によってすべてがまいったかもしれません。ところが本法の改正が非常に困難でありましたために、部分的に御承知のような法律ができております。そういうふうにいっておるわけであります。
  164. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それですから、禅問答みたいなことになって、もっとはっきりしなければならぬのですけれども、どうも私の頭にぴんとこないのです。大体私は河川管理というものが重心になっておると思う。あとからずっと申し上げていくつもりでありますけれども、河川管理の原則というのが二条にありまして、「保全、利用その他の管理」とあるのですが、管理ということは一体どの程度のものが管理ですか。ものを管理するという概念のうちには、管理人がおって、被管理人がおるわけです。管理というのは、一体河の何を管理するのですか。水の利用については水の利用の法律がある。ダム建設についてはダム建設法律がある。またそれを電力に利用するならば電発の法律がある。ですから、「保全、利用その他の管理」ということになりますと、その他の管理ということは一体何ですか。川のほうは被管理者でしょう。内容的、実質的にどういう点を管理するのですか。
  165. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この河川法は、目的にもございますように、災害の防止と利用の適正、これが目的になっているわけでございます。その目的を果たすために河川管理するわけでございますが、その目的が果たされるようにやっていく、簡単にはそういうことでございます。ただ内容といたしましては、災害の防止のためには工事をやらなければいけない、できました工事を維持管理する、そういう問題、それから河川の利用につきましては、適正にといいますか、既得の権益者の権利を侵さないように、なお今後の開発に期待いたしまして総合的な利用を促進していく、こういうために、水利使用許可の問題あるいは砂利採取の採掘の許可の問題、敷地占用許可の問題、なお工作物の新築の許可の問題、各条文につきましてずっとあとに書いてございますが、そういうもの一切の目的を達成するための河川管理、こういうふうに解しております。
  166. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうおっしゃるならば、先にそのほうを進めていきましょう。  与法にも管理というものの内容定義はない。管理の原則並びに特例とあって、管理とは何ぞやということは一つも書いてない。この法律にはやや管理の定義らしいものがあって、河川は公共のものであって、「保全、利用その他の管理」とある。それならば、問題はありますけれども、その管理について明らかにするために第二章から管理でしょう。第二章の第一節は通則、それから第二節は河川工事等、それから第三節は河川使用及び河川に関する規制、これも管理のうちに入っていますね。そこまでが管理じゃないのですか。そういうことで、工事をすることと川を使うことを管理することが内容ですね。河川の保全ということはこの中のどこに具体的に出てきますか。河川工事は入っていますよ、河川法上重心にしてありますから。
  167. 山内一郎

    山内一郎政府委員 第二章が河川管理でございまして、第一節は通則、第二節は河川工事等、第三節は河川使用と規制、第四節は河川保全区域、第五節は河川予定地、こういうふうに、まず最初に工事は御指摘のように書いてございまして、ここで工事が入ってくることははっきりいたすと思います。なおそれ以降の河川使用、それから保全区域、予定地の問題、こういうものにつきましては、やたらにいろいろな河川の利用をする場合、これの保全が荒らされる、逆にいいますと保全されない、それを保全されるような範囲において河川の制用をはかる、したがってそこに制限行為として、こういう場合には許可してもよろしい、こういう内容で保全という精神がその中に入っております。
  168. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私はなぜこの点をいま申し上げたかといいますと、河川の保全ということはあるけれども、河川の保全をしなかったことによる災害の予防ということはちっとも載っていない。社会党の岡本君もしばしば言っておるのはこの点だろうと思うのです。水は弱いところから攻めてくるのですから、災害の常襲地域指定して、そこをまずつくろうべきである。強いところには攻めてきません。ですから、河川の保全をしようと思えば、弱いところを補強しておかなければ保全にならないのです。  それがまた川のはんらんあるいは水害によるところの災害の防止になるわけです。私は、河川の保全ということは、災害の起こらないようにするのが保全であると考える。したがいまして、河川の保全ということの中には、当然予防的措置を、あらかじめ弱いところを調査して、水の攻めやすいところをこちらが防いでおくという政治的配慮、これはこの間から伺っておりますと、大臣もそれは十分するのだ、口ではこう言っておりますけれども、規則の上からいって、この管理規則の中からは、災害の予防ということが一つも出てこないから、一体これをどうするのか。河川法という以上は基本法ですから、やはりそこに触れてなければ、私はこれは基本法の価値がないと思うんです。その点を明らかにしていただきたい。
  169. 山内一郎

    山内一郎政府委員 その点につきましては、われわれといたしましては、第十六条の工事実施基本事項、これが河川工事の最初に書いてある条文でございますが、この基本事項をしっかりきめることによって、ただいま御指摘のような保全の第一歩といいますか、保全の目的を達したい。基本法でございますので、その程度しか書いてございませんが、それを実際にどういう個所からやっていくか、こういう点につきましては治山治水緊急措置法、こういうような事業計画を立てまして、実施にあたりまして逐次重要な個所からやっていく、こういうような立て方にしているわけでございます。
  170. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それは政府がいかにそういうことを御答弁になったところで、これはあなたのほうの管轄ではない。経済企画庁の管轄であろうと思うんですが、台風常襲地帯における災害の防除に関する法律、この法律は昭和三十三年の四月二十二日に施行された、五年間の時限法になっておるわけですが、自来私は建設委員会でも質問をしてきたんですけれども、それが一つも実施の計画も立たないで、この法律はもはや時限がきてしまった。ですから、治山治水緊急措置法という法律もあるけれども、あるいは、あなたはまたこの十六条によって保全計画を立てて工事を行なっていくのだと言うけれども、私ども、書いたものだけでは信用できない。ですから、具体的にこの基本法によって一条の目的を達するようにいくためには、一体これからどういう作業をしていくのか、予算の上においても、あるいは計画の上においても、もちろん実施する上においても、どう具体的になさっていくのか。
  171. 山内一郎

    山内一郎政府委員 実施は治山治水緊急措置法でやる、こういうたてまえでございますが、この法律も、実際に昭和三十五年度から治水事業十カ年計画をつくりまして、逐次実施をしている段階でございます。その計画の進捗のぐあいは、普通の計画よりもやや上回って、繰り上げて仕事をやっている、こういうことでございまして、さらに促進するためには、その計画を具体的に改定するとか、そういうことで措置をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  172. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 いまの予防措置をとらないと、私が委員会においても数回質問をいたしてまいりましたとおり、政府が調査をして、日本は台風の毎年来る土地ですから、しかも十七号、十八号というような台風が来るのですから、あらかじめここが弱いと見たら、水の攻めやすいところと見たならば、それを完全に補強しておかなければ、起こった災害は国の責任であって、国家賠償法によって賠償しなければならぬじゃないかということを私はしばしば質問をいたしてきております。先般も私のそういう質問に対して、真田法制局参事官が答えておるが、私の言うように、初めからなすべきことをなさないで災害が起こった、もしくは災害が増大した、その場合にはそれは全部政府で責任を負わなければならぬということについては、一般の学者も疑問を持っておる人もある、しかし、工事の不備によって起こった災害については、その工事を施行した責任者において、国家賠償法によって責任はあるだろうという意味のことを答弁しておる。ですから、私はこの政治的議論をしてもだめだと思うのですよ。よし、やります、実施計画を立ててこうやるんだと幾ら言ったって、政治の貧困によって国民の不幸、災いが起こるものでありますから、法律論で攻めていかないと攻め手がない。伊勢湾台風のときの場合だって、裁判所に損害賠償を請求しておりますが、政府が相手だし、損害も相当ばく大なものですから、途中でおろしたかもしれませんけれども、私は理論的にこれを支持しておる。そうしてだれが見たってそこを補強しておけばそこから水が漏れなかった、そこがこわれて大きな災害になった場合に、しなかったものに責任がある。理論的にはその点を支持する。ですから、やはりそういう責任のあるということを感じて、ただ、金がなかったからしなかったのだ、あるいはそこまで手が回らなかった、あるいはまた天災であってそれは責任がないんだというようなことでは済まされない。法律的根拠を、あるいはまたその責任を感じてもらわぬと、やはり日本の政治はよくなっていかない。そういうことで、私はこの予防措置について非常な責任を感じると同時に、ここにむしろ政治の重心がなければならぬ。水の利用とか、あるいはそのほかに対するいろいろの水の使い方については、ほかの法律規定があるのですから、この予防のことについては、十分に考慮していただかなければならぬと思います。先ほども大臣答弁を聞いておりますと、水防法の話が出ましたが、水防法については、私は先般の大会で、川を管理するものは、すなわち水を管理するのであるから、その水を管理するものがその施行を十分にしなかったがために災害が起こったら、水防の管理者地元の市町村長ですから、それを動員する。そういうことで、水を使うものは非常に利益を受けるかもしれないが、水の悪い面、害のほうだけは地元のものが責任を負わなければならぬということでは困るから、政治の上からいっても不公平ですから、その点水防については、十分にやらないとおかしいと思うと言ったら、大会で拍手かっさいいたしました。そのとおりだ、われわれに責任はないんだ、水防するということは、いま大臣のおっしゃるとおり黙っておっても国氏の責任かもしれませんけれども、法的には何の責任もないわけです。むしろ災害を起こしたほうに責任があるのであって、受けたほうには責任はないと私は思う。だから、こまかいことですが、一点触れておきますが、ここに補償の問題の規定が出てきております。二十二条、洪水時等における緊急措置のところで、これは緊急事態が目前にきてからの話で、予防の話じゃないのですが、水防に関係するからお尋ねをいたしますが、洪水の危険が切迫した場合においては、関係者の器具あるいは工作物、障害物を処分することができる。それから「附近に居住する者又はその現場にある者を当該業務に従事させることができる。」いわゆる水防よりも一歩手前の危険状態におけるところの危険防止の義務を負わしてあります。そして三項には、使用または処分によって損失を受けた者には、通常生ずべき損害を補償するとある。これは労務についてはどうなるのですか。労務については当然の義務として三日も五日も一週間も、あるいは一月もそのことに東奔西走しなければならぬかもしれない。物に対する補償はしてありますが、人の労役を使うということに対する補償は書いてないわけですが、どうですか。
  173. 山内一郎

    山内一郎政府委員 三項に損失の補償の規定が入っておりますが、二項にはただいま御指摘のございました労力の点が書いてございます。それが通常生ずべき損失に入るかどうかという点のお尋ねでございますが、ここに書いてございますのは、「第一項の規定による」という第一項に限っているわけでございます。これは資材と器具とがおもなものでございまして、第二項は入らない、こういうように考えております。
  174. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それを私が聞いておるわけです。物に対する損害の補償はする、人の労力に対する補償はしない、ただで働けということなんですね。これはやはりいまの水防法以前のことで、危険が迫ったら自分の危険ですから、それは防御をしなければならぬかもしれません。しかし物に対しては補償するけれども、人の労力については補償しないんだ、水防法の問題も、これは一級河川が国に移って、そうして水害が起こったときに水防の責任を地元の者に負わせるということも、私は水防法を改正していかなければならぬと思うのです。水を管理するのは国なんですから、使うときにはありがたい、それは神さまかもしれないけれども、害を及ぼすときには水魔、悪魔になるんです。ですからその神さまになるときだけは御利益を受けて、水魔になったときには、これに対して何らの手当をしない。しかも水防は地元の者がやれ、こういうことでは、私はこの一級河川を国家管理にするということの趣旨とは非常に遠いと思うのです。水防法の関係はよその所管になるかもしれませんけれども、政府において水防法の検討をしてもらいたい。それからいまの点も、これはやはり政令か規則か何かで書いておかないと、これは憲法の問題もやはり依然として出てきます。財産に対する補償だけれども、労務によることも一つの財産です。働いて賃金をもらえば、これは財産になるんです。だからやはりその人の労働力というものに対する補償は、何かここでしていただかなければならぬと思います。  それから大臣にちょっとお尋ねするのですけれども、河川は公共用物としてありますね。これは私はあまり聞いたことがない。公共物あるいは公共営造物ということはありますけれども、河川は自然にできたものですから、営造物でも工作物でもない。公共用物とこう書いてありますが、それはそれに違いありません。旧法にも「私権ノ目的トナルコトヲ得ス」と書いて、はっきりしてあったのですが、この条文にはそれが見えないようですけれども、まあ公共用物には違いありません。しかし財産権としての権利一体国にあるのですか、どこにあるのですか。自然にあるものにしても、あるじのないものはないと思うのです。この河川は公共用物——使用目的はそうかもしれませんが、財産権としての権利一体どこにあるのですか。
  175. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 現行の河川法におきましては、流水敷地、これをあわして河川といっておりますが、これについては私権を排除いたしておりまして、これは無主物というふうに考えております。しかしながら、今度の法案におきましては、原則的にはそういう無主物的な面も含んでおるわけでございますが、今度の河川法におきましては、従来の準用河川、それから適用河川というものが一級河川、二級河川に分かれておるわけであります。適用河川につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、準用河川につきましては、従来準用河川の敷地は国有財産というふうに考えております。したがいまして今度の場合は公共用物となっておりますが、この財産の主体は無主物的な面もございますし、それから国有財産という場合もございます。それかな河川区域内には私有地もあるという場合もあるわけでございます。
  176. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それは私有地もあるに違いありません。しかし無主物だということになると、無主物は国に帰属するわけだ。これは民法の規定によったって当然のことです。ところが本法のできる前、旧法の時代には、河川台帳というものがあって、その河川というものは府県の河川台帳に載っているわけですね。不動産ならばこれは登記法によって登記されたのと同じことです、明瞭になっているのですから。管理者すなわち所有者と私は言いたいのですが、それは無主物じゃないでしょう。今度の新法によっては、国がかってに台帳をつくれば、県の台帳に載っておったものは国に移るというわけです。無主物で、無財産で、何もないものは、空気ならばよろしい、空気はどこに風が吹いていこうが、無主物でしょう。水は利用することによって金になるのですからね。山に行って谷の水を飲めばただだけれども、水道の水を飲めば金になるのですから。だからやはり無主物というわけにはいきません。もとは天から降ってくるのだからただですが、一たん川の水に流れれば、これは一種の水利権となって変化するのです。それでいまの県の河川台帳に載ったものを今度の法律によって国が取り上げて——取り上げるというとちょっときびしいけれども、国のほうへそれが自然的に移動していくという法理はどういうことになりますか。
  177. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 従来の河川台帳につきましては、先ほどお話がございましたように、これは国によって河川区域が明示されますと、その区域内の権利は消滅をする、こういうふうに考えておるわけでありまして、その手続としましては、河川区域に入りますと、これにつきましては登記が抹消するように不動産登記法の規定がなっておるわけでございます。したがいまして、現行のほうはそういうふうになって無主物ということになるわけでございますが、今度の河川法におきましては、そういう面をそのまま引き継ぐ面が一つあるわけであります。さらに先ほど申し上げましたように、私権がそのま残まる面がございまして、しかし河川区域になって若干制限を受ける区域があるわけであります。その点の取り扱いにつきましては法務省とも協議をいたしておるわけでございますが、現行の不動産登記法につきましても若干の整備をするとともに、私権が入りましたときの登記法上の取り扱いにつきましては、さらに協議して整備をするということで話を進めておるわけでございます。
  178. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私は、一たん地方自治団体の河川の台帳にその河川区域が載れば、それが一つの県の財産だと思います。使用の道は、公共の用に供さなくて私用に供することはできないけれども、財産権としては、私は県のものだと思う。これをこの法律によって自然的にスライドしていって、それが県に移っていくのだという法理の根拠を聞いているのですよ。
  179. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 河川の性格の問題でございますが、これには学者もいろいろ意見があるわけでございまして、川を海と同じように考える学者、いわゆる公法としての公権的な支配を受けるもの、いわゆる公所有権と申しますか、そういう学者が多いわけであります。大体そういう説に従いまして——従来からもそうでございますが、そういう考え方に立って、必ずしも、これが公共団体の財産である、こういうふうには考えてないわけでございます。  なお、敷地につきましては、明治初年以来、これは国有地第三種として扱われてきておる、こういうことでございます。
  180. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それは無主物という観念の上に立っておるようですけれども、しかし河川の上には私権が設定されておるものもあるでしょう、水利権。水利権というものは無体の権利みたいなもので、別々に営造物を使うなら形がありますけれども、水利権というものは大体形のない無体の財産ですね。ですけれども、その上に一たん水利権というものが設定されたら私権が発生するのですから、もとはただのもので主人のないもので、枝葉のほうが権利が発生しておる、そういうことの理論はどうも私はちょっと理解いたしかねる。これは地方公共団体の長が少し腰のある長ならば、政府と争ってもいいですよ。これはなぜ補償しないのだということで、あり得るのですね。大臣の権威におそれてやらなければ別の問題ですけれども、河野さんがいつまでも大臣じゃあるまいし、あとでやるかもしれませんから、この点は私は理論は理論として主張はいたしておきます。  それから、これは昨日栗原君が堤外の土地の所有権の問題をやっておりました。私はこの間も参考人にも質問をして、堤外というのは堤の外かと思ったら、うちだというので、それならそれで話はわかる、ということでしたが、これは実際に私のやった訴訟事件の中にもありました。いわゆる堤外の土地に立木があり、畑があり、しかもそれが所有されて登記簿にちゃんと載っておる。そこへ砂利の権利をとって、そうして設営をしようと思ったところが、これは同業者の妨害によってつまり河川敷であるからして使用できないのだ、こういうことで、ついにそれを使うことができなかったことがあるのです。そこで、これは実際の切実な問題として後に起こってくる問題ですから伺っておくのですが、堤外の土地における私有財産については、河川にすることはわかっております、これは川にしなければ、そこへ家を建てたり畑をつくったりされては困るから。いまの財産権として補償するのかしないのか、土地収容法の適用を受けるか、そうでなくて、それは川だからいいんだ、こういう観念に立つのか、それは自然に川になってしまうんだけれども、補償はしなければならぬというのか、この点を伺っておきたい。
  181. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川区域のうちの三号の規定といいますか、堤防と堤防の間の土地、それは、河川管理者指定すれば河川区域になる、こういうことになっているわけでございます。その中に私有地がある場合、指定することによって補償を要するかどうかという点でございますが、堤防と堤防の間でございますので、洪水でたびたびはんらんするとか、いろいろな点で、やはり公共の福祉のために、その私有権を持っておられる方は、やはり受忍の義務があるんじゃなかろうか、こういう点で補償は要しない。いろいろ検討したのでございますが、そういうことで条文を書いているような次第でございます。
  182. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それは私の見解と違っておりますし、あなたと議論してもしかたがないが、堤外における登記された権利というものは、少なくとも不動産というものは私有財産であるから、憲法の規定によってこれは補償をしなければ、公共用物の河川にすることはできないというふうに私は考える。これは海の場合も一つあるんですが、それもなおかつ補償しないというならば、川がはんらんして周囲のたんぼをこわして、それが自然に川の流域になってしまうという場合には、川の幅が個人の財産の侵食することによって広くなっていく、しかしそれはもとの畑に戻るわけにいかないというような場合は、これすら補償しないのですから、政府なり府県なりでただ取り、ただもうけということになるんですね。これは海岸の場合もありますよ。海岸線は水ぎわからどれだけとちゃんとあるんですからね。それがだんだんと沈下して、海が丘へ入り込んできた場合に、これはやはり私有財産を侵すんですね。その海岸そのものに所有者があるのならば、これは自然の侵食ではあるけれども、海がそれだけ広くなっていったんですから、やはり私はそれにも補償しなければならぬ、こういう考えを持っている。それは現にたくさんあります。ですからあなたの考えとしては、堤外の土地の補償をしない、それから自然のあり方によって河川敷となったようなところは本人の損害ということなんですね。
  183. 山内一郎

    山内一郎政府委員 考え方はそういう考え方でございますが、それはやはりもうやたらに河川区域にいたしましてそういうことをやるわけにはいきませんので、それは最小限度に押える。あるいは災害によりまして荒れ地になるというような場合には、災害復旧をしたほうがいい場合には、当然災害復旧をいたしまして再び洪水が入らないようにする、こういうような措置をとることにいたしております。
  184. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それではあまり時間がありませんから、最後に一点だけ伺っておきましょう。  この河川法が、ここに書いてありますとおり、一級河川と二級河川だけにしか適用がないことは明瞭です。ね。そうするとほかの河川については何か準拠法でもできるのですか。もっと小さい川ですね、指定されない日本の川々はどうなるのですか。
  185. 山内一郎

    山内一郎政府委員 第二条にも書いてございますように、一級河川、二級河川をこの法律では主として取り扱っております。それに必要な範囲、区間の問題でございますが、当然河川法によって行為制限とか、いろいろな開発をしなければいけないという区域はできるだけこの区域に取り入れたい、こういうふうに考えております。それ以外にもなお残る区域、区間があると思います。それは地方自治法によりまして市町村長が管理をする、こういうような体系になると思います。なお、どうしても一級河川、二級河川には入らないけれども、やはり行為制限等はやったほうがよかろうというような小さな河川につきましては、準用規定というものもつくっておるような次第でございます。
  186. 福永一臣

    福永委員長 岡本隆一君。
  187. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 採決に入る前に、ただ一点私は大臣にただしておきたいことがあります。私が明日の質問で申しましたが、今度の河川法の改正案は非常に治水という点について留意の払い方が少ないということであります。そこで今度の河川法のその大きな欠点を補うために私どもが幾つかの修正案を出しましたが、その中で、一番私たちが修正の中で重要と思っておる点は、洪水常襲地帯に対するところの優先措置という問題であります。ところがそれに対するところの大臣の昨日の答弁では、その点では母法であるこの河川法において規定することは困難だから、治山治水緊急措置法を改正して、その中でもって洪水常襲地帯に対するところの措置を考えていこう、こういうふうな御答弁でございました。そこで私はこの機会に、もう一度念を押してお尋ねしておきたいのでございますが、それでは洪水常襲地帯や年々歳々水がついてくるというような地帯に対しまして、治山治水緊急措置法を、いつどのように改正することによってわれわれのその要求をいれようとなさるのか、そういう点をもう一度はっきりとお答えを願っておきたいと思います。
  188. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の点について明確にいたしたいと思います。  ただいまお話しのとおり、治山治水措置法の中に、建設大臣は治水事業五カ年計画を作成するときは、洪水による被害が多発する地域の治水事業が特に促進されるよう措置しなければならない旨の規定を挿入いたしまする改正案をすみやかに提出することを申し上げたいと思います。
  189. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 すみやかということは……。
  190. 河野一郎

    河野国務大臣 来たるべきすみやかなる機会です。
  191. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 わかりました。
  192. 福永一臣

    福永委員長 石川次夫君。
  193. 石川次夫

    ○石川委員 この河川法案の内容については申し上げたいことがたくさんあるわけなんです。しかし、時間の関係もありますし、おもな事項についてだけ御質問したいと思います。  たとえて申しますると、各条ごとの質問というわけじゃございませけれども、第一章の第一条についてみても、「適正に利用され、及び流水の正常な機能が維持されるようにこれを総合的に管理する」ということですが正常な機能」とは一体何であるか適正に利用され」ということは一体何だ、たとえば一つダムができて、その上流において河床が上昇する、この下流において河床が低下する、そのどの程度までが一体正常な機能というのか、正常な機能が維持されということになるのかというような点は、基準が明らかにされておりません。さらにまた、河川とは何ぞやという定義も明らかにされておりません。また水系というのは何ぞやということも明らかにされておりません。一級河川とは何ぞやということも、これまた基準が明確になっておりません。それから公益とは何ぞやという基準もまた明確になっておりません。それから損失補償をするといっておりますけれども、その後に来たるべき損失あるいは間接的に来たるべき損失を含めての損壊というようなものについての補償というものは、何ら規定をされておりません。それから、至るところに影響を与えることが明らかであると認められた場合にはというような文句が使われておりますけれども、これを認定する第三者の機関というものはありませんから、これは当局が一方的に認定するということでは住民は非常に不安を感ずるというような、多くの点が各条ごとに散見されるわけであります。しかしその一条一条について質問をしますと非常に多くの時間を要しますので、特に国民が大きな関心を持っておると思われる重大な点についてだけ質問したい、こう考えておるわけであります。  そのまず第一は、これは私は本会議でも質問したわけでありますけれども、一級河川の数を一体幾つにめどを持っておるのか、こういう点であります。これはいままでの答弁では大体五十ぐらいであろう、そしてそのうち陳情その他でもって漸次ふえるであろう、こういうような説明は聞いたように思うのでありますけれども、実はもっと具体的な見通しというものがないと、矢つぎばやの陳情も出るであろうし、あるいは一級河川に、現在直轄工事として適用河川に従事しておる建設省人たちが、自分たちは一体どうなるのだろうという不安があったのでは、働く意欲を失うのではないか、これは非常に大きな課題ではないかと思っております。したがって、現在はこの五十で、そのうちふえるであろうというようなあいまいな言い方ではなくて、現在直轄工事の対象になっておる河川というものは遠からず一級河川になるのだ、あるいは四十四年度の暫定措置をやっておる間には必ずそうなるだろう、この答弁を明確に要求することは無理かもしれませんけれども、しかし、この点があいまいになればなるほど、今後非常な不安な状態が続くのじゃないかと思われるがゆえに、また建設大臣が実力者大臣であるということに信頼する意味もありまして、この点についてできるだけ明確な御答弁を願いたいと思います。
  194. 河野一郎

    河野国務大臣 どうもそういう御質問を受けますと非常に不明確になってしまうと思うのであります。ふやせという御意見なのか減せという御意見なのかわからなくなってくる。ふやす地方沿岸で非常に苦情が起こって反対論が多くなる。全国各地でもって反対意見が起こってくるのじゃないか。これはどうも直轄河川を減せという御意見のようにも聞こえるのです。ところがこれを減せば、いまのように非常に問題があるということであります。そこで、私が申し上げておりますように、最も民主的に審議会の議を経て、一応のものさしは皆さんの修正案にもありますように、河川の流域の広さとかいろいろな条件があります。これはだれが考えてもこういうものを条件にして重要河川をきめることは常識であります。この常識にのっとってこれくらいの川はどうだろうかというめどは持っております。持っておりますけれども、それはそれぞれの府県知事もしくは審議会のメンバーの意見を伺わなければ、これはやめたほうがよかろうというような場合もあるかもしれません。そういうものを無理に押し切ってやろうという——陳情じゃございません、陳情の逆で、その審議会委員の発言等によって制約ざされる場合がごいますから、そこで、私はそうは言っても、いよいよこの法律ができれば大体方々で御理解願いまして、いま現に直轄の河川工事場を持っております河川、たくさん危険区域を持っております河川等については、直轄一級河川としてやると言えば、おそらく大方の御理解が得られようと考えておるのでございます。そういう意味合いからいたしまして、まず見当をつければ四、五十はやらなければいかぬだろう、まずその程度の御理解は得られるだろう、こういう意味でございまして、これをそれ以上明確にいたしますと、それこそ押しつける、圧迫を加えるとかいうことになりますから、それ以上のことは申し上げられない。ただし、審議会におきましてたくさんやれ、こういう御意見でありますれば、それはもうなるべく——私は、申し上げておりますように、その議を経て五カ年計画を樹立いたしまして、五カ年計画によって治水の完ぺきを期するようにしていきたいという考えでございますから、まずこの法案が施行されれば、すみやかに河川審議会を開いて一級河川の決定をする、その決定に基づいて五カ年計画を立てる、こうしていきたいと考えておりますから、あとから陳情によってふやす、減すというようなことはなるべくしたくない。私は、最初にきめて、それを五カ年計画に繰り入れてやっていきたい、済ましたら次の五カ年計画、途中でまた改定というようなこともあるでしょうが、とにかく一貫性を持ってやっていきたいという所存であります。
  195. 石川次夫

    ○石川委員 御趣旨は一応わかります。実は党内では、これは自民党、社会党、同じだと思いますが、極力減らせという意見もないでもない。極力ふやせという意見もあると思う。したがって、私も自分の意見でとやかく申し上げたいという気持はないわけで、現在の見通しは一体どうかということが明らかにならないと実は次の質問に移り得ないという事情もあるものですから、あえて前提として申し上げたい。  次の質問といたしましては、たとえば、これが五十あるいは極端な場合三十というふうに限定された場合に、一級河川の支派流と二級河川、これをたとえば五十あるいはそれ以下に減ったというふうな状態を想定いたしまして、自分の地元のことしか事情はよくわかりませんから、一つの例として申し上げるわけでありますけれども、私の県には利根川があるのでございます。そのほかに那珂川、久慈川というようなかなり大きな直轄工事の対象になる河川があるわけでございます。ところがこれを五十に制限をされるということになれば、那珂川及び久慈川というような川が二級河川になるという可能性が出てくるわけです。ところで当然一級河川とみなされる第一の利根川、これの支派流よりは二級河川になると予想される那珂川、久慈川のほうが、はるかに地方開発あるいは茨城県の県民に対する影響度が高い。その場合に、一級河川利根川の支派流であるがゆえに国庫負担の率が高い、二級河川なるがゆえに、県民に対する影響度も大きいし、県としても重要な河川として扱っているところの工事の国庫負担の率が低いというようなことに対して、理論的な根拠をどうやって裏づけるか、こういう問題が明らかにその次に派生してくる問題になろうかと思います。この点について伺いたい。
  196. 河野一郎

    河野国務大臣 これはもう私が申し上げるまでもなく、現在よりも悪くするというわけじゃございませんから、二級河川になりました場合でも、現在の工事をやっておりますものは現状どおりでございますから、別にそこに問題はないのじゃないかと思うのでございます。ことに国庫の補助率にいたしましても、たとえば道路にいたしましても、一級国道もあれば二級国道もある。この補助率がどういうふうになる、事業のやり方がどういうふうになるというようなこともあるわけでございますから、これはどうも同じ県内に同じように重要な川が流れておっても、一方は利根川水系であるから、これはやむを得ぬじゃなかろうか、こう思うのでございます。行政は大体そういうことですべてのものはやっておられるんじゃないだろうか、こう思います。
  197. 石川次夫

    ○石川委員 実は道路の例を引用されましたから申し上げるのですけれども、道路の場合は、国庫負担は国道四分の三、地方道三分の二でこの差はわずかに十二分の一なんです。ところがこの場合、当分の間は四分の三で片方は二分の一以内なんです。二分の一以内ということは、どういうことか具体的にはわかりませんが、かなりの差があるということは具体的に一つの問題になる。それでいまの那珂川、久慈川の場合ですと、当分の間は現在の補助率、それを上げていくということで問題は解消されるということにはなりますけれども、考え方の基本として、一級河川の支派流であれば、それは重要河川の程度のものを指定するでありましょうから、そう細い川ということはないでありましょうけれども、明らかに二級河川より一級河川の支派流のほうが重要でないと思われるものでも、理論的には一級河川の支派流のほうが国の補助率が高いということになると、非常に勘ぐった見方をすると、一級河川は大都市があるんだ、大企業の工業用水があるんだ、上水道があるんだ、これの利水を重規するから国庫負担が高いという考え方は、誤解か曲解かは別にいたしまして、成り立ち得ると思うのです。そういう考え方利水偏重ではないかという考え方にも通ずるとういようなこともありますが、これは一級河川の支派流と二級河川というものは、理論的にはやはり同じ補助率という考え方でなければならぬのじゃないか。これは考え方です。現実の問題としていろいろありましょうけれども、その場合でも道路の国道が四分の三で地方道が三分の二であるという程度の差以上につけるという理由を見出すのは非常に困難ではなかろうか、こう思うわけなんでございますが、その点は局長でもけっこうでございますが、お返事願いたい。
  198. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうふうに極端にものを勘ぐってお考えになると、すべて誤解が起こってくると思うのであります。一体、お考えいただきまして、四十、五十という河川一級河川にするとした場合に、大都市等を流れる川が一級になるだろうということにどうしてなるのでしょうか。そんなことになるはずがないと思うのであります。したがって、いまのように大都市に流れる川、そしてその川の水が工業用水に使われる川というものと、いまここで一級、二級に分ける場合に何も関係がない。そんなことを考えている人はだれもないと思う。したがって那珂川、久慈川がどういうことになるか知りませんけれども、那珂川、久慈川のような川の利用度を高めて、もう少し開発をしていくということにすみやかになって、そうして治山や治水の完ペキを期するということになることは私たちも期待いたします。私は、五十河川にいたしましても、四十河川にいたしましても、決してこれで十分と思っておりません。五カ年計画はすみやかに改定して、そして八十河川にしてさらに新しい五カ年計画をつくるという時代が来るのは早いだろう、こういうつもりでおるわけでございます。四十二年か三年まで暫定的にいくと思いますが、この暫定は四十何年かになれば改定して、さらに有利な補助率に改定されることは私は当然だと思うのでありまして、そのときになれば二分の一に下がるというようなことはあり得ぬことだ、こう私は考えております。
  199. 石川次夫

    ○石川委員 いまのは、別に私の誤解という意味ではないと思うのです。そういう考え方があるという意味で申し上げたのです。  それではその次に進みます。これはちょっと基本的な問題になるかと思うのですけれども、外国では総合的な水法というものであって水の関係を統一しております。これはいまさら御説明するまでもないと思うのですが、日本と事情が違います。地下水というものを含めないと水の総合管理ができぬということで、日本とは体系を異にしておりますけれども、この河川法が基本法だというのは、日本の災害が多いという特殊事情に基づくものとは考えますが、しかし将来はやはり河川法の特殊法としての多目的ダム法とか、もろもろの法案というものをまとめて総合水法というものにいくという先進国の方向をたどるのがほんとうじゃないか、こう考えるわけなんです。そこでこれは局長でけっこうでございますけれども、総合水法にいくということをいま直ちに考えるということは困難かもしれませんが、将来はいくべきではなかろうか、こう考えますが、その点はどうお考えになりますか。
  200. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうふうにいくべき方向にあると私は考えております。
  201. 石川次夫

    ○石川委員 この法案に対しては、例によって誤解があるかもしれませんが、地方行政関係では、これによって非常に権限を剥奪されるということではなくて、地方住民権利というものが圧迫をされるではないかという不安を現実に持っておるということは、一がいに否定はできない。そこで私は、知事会のほうからの不満があり、あるいはいろいろな陳情があるときには申し上げておるわけですけれども、もともと現在の河川法それ自体が、中央の出先機関としての知事に委任されたわけです。したがって、知事の独自の権限ではなかったわけですが、いまさら現行の河川法に比べて今度の河川法のほうが、その意味で改悪になったという根拠は、どこにもないではないか、そういう意味で私は説得するというか、話はしてある。しかし、これは現実の問題として、総合的な行政の一つとして取り上げられるというような感じを持つことはいなめない事実であると同時に、機関委任ということ自体が、憲法が改正になったときに、これは当然地方自治の尊重をたてまえとする憲法でありますから、それに伴って機関委任というものは是正さるべきであったという考え方も一つあるわけです。  それらの理屈は一応たな上げいたしまして、そういうことで私はひとつお伺いをいたしたいのでありますが、そういう点で非常な不安がないわけではありません。特に農業関係では、いろいろな不安を持っているわけです。そこで、ひとつ大臣からはっきりと伺いたいと思いますのは、経過措置でもって現行の慣行水利というものは尊重をする、これは附則第六条と一緒に考えられるのですが、どうもこの八十七条というのは、ILOと同じでちょっと不安だという声もあるわけです。まさかそういうことはないと思うのですけれども、現行慣行水利というものは、尊重するということをここでひとつ明言をしていただきたいということが一つ。  それから、私のほうで実はきのう修正案として出しましたのは、総合計画というものを立てておいてもらいたい。水資源開発というふうな法律、あるいは国土総合開発というような法律、あるいは治山治水十カ年計画というふうなものがありますが、それを少なくとも大きな水系別に、総合的に勘案して管理計画を立ててもらいたいというような修正案を、われわれのほうでは要請をしたわけであります。それがなかなかいろいろな事情で、そのままうのみはできないということで、工事実施基本事項というのを基本計画というものにのせて、できるだけ趣旨に沿うようにしようという御尽力はわかる。わかりますけれども、これは建設省としては、あくまでも工事でしょう。しかしながら、われわれがねらいましたのは、新しい近代農業というものは、たとえば畑地かんがいというようなもので大規模に水を使うという必要が今後出てくるということは、河野さんあたりも、農林大臣をやられた経験からして、よく御存じだろうと思います。そういうような新しい水利の場合に、一体これはどうなるのだろうかというような不安がないでもないわけです。したがって、私たちが総合管理計画を立ててもらいたいということを要望いたしましたのは、新しい総合計画に基づいて利水というものの計画もそこに立てる。そのときには、新しい近代経営に基づくところの農業利水というものも尊重するということが、具体的にその計画の中に盛り込まれるという配慮があれば、この慣行水利を尊重するというのとあわせて、住民に対するいたずらな、不必要な不安があるとすれば、それを抹消することに非常に効力があるのではなかろうか、こういう意味で私たちは修正案をお願いをしたわけでございます。ある程度取り入れてくれたという努力のあとは認められますけれども、工事の計画である限りにおいては、われわれの希望がその意味で受け入れられたというかっこうにはなっておりません。したがって、今度の修正案で入れられないといたしましても、将来にそういうような総合計画というものを、少なくとも利根とか淀とかいう大きな水系につきましては、立てることによりまして、地方の不安のないような、利水につきましてもこういうふうにするのだという総合計画、あるいは治山治水というものを含めるということは、建設省の権限としては非常に困難があるかもしれませんが、こういう総合的な計画というものを立てることこそが、近代国家としての水の行政の上から正しいあり方ではないか、こういうことを考えるがゆえに、われわれ要望したのでありますけれども、将来そういう点をお考えいただけるかどうかという点と、慣行水利の点について、ひとつ御答弁願います。
  202. 河野一郎

    河野国務大臣 だんだんお述べになりました点は、いずれも農業経営の上において重要な問題でございまして、私たちも、同様にこれを重要な問題として、特にそれらにつきましては、この機会におっしゃるとおりに明確に慣行の水利権を尊重するとともに、将来につきましては、水を必要とする農業、これらを想定いたしまして、農林省との間に十分打ち合わせをいたしまして、なるべく早い機会に計画を立てることにいたしたいと思います。  ただ、近代農業は、水を離れてやっていこうという方向に変わりつつあります。こういうことを言うと、おしかりを受けるかもしれませんが、現に外国の統計などでも、水田、畑作というようなものは順次なくなりまして、日本でもやめたらどうだというような意見が、だんだん多くなりつつあるのでございます。私はどういう方向にいくか知りませんが、それはそれとして、いまお話しの点につきましては、最も重要に考慮いたしまして、決して営農に支障を来たさないように、これを第一義的に考えて水の行政をやっていくことを、ここに明確にいたしておきます。
  203. 石川次夫

    ○石川委員 実は、一条から始めると、幾らでもあるのですが、いろいろな事情がありますから、たとえばという意味で一つだけ。  四十二条ですが、住民が何か損失が出た場合、損害が出た場合に、簡単に裁定をされて、一方的に押し切られてしまうのではないかという不安を持つ条文の一つといたしまして、四十二条の「損失の補償の協議等」という項がございます。これは関係河川使用者に係るものについては、水利使用許可を受けた者と関係河川使用者とが協議しなければならないが、「協議が成立しない場合においては、当事者は、政令で定めるところにより、河川管理者の裁定を求めることができる」ということになっておりますが、これもまた誤解、曲解ということがわかるかもしれませんが、協議が整わない場合が多いわけです。そうすると、一方的に裁定になる。この場合には、調停とか第三者の意見を聞く機関というものが全然ない。しかも、この損失というものは一体何かといいますと、たとえばダムの水没者だけでなくて、残った人家に対する補償ということを考えますと、この法律の文句に書いてある損失ということばでは、明らかに水が減った、あるいはふえたということによって生ずるところの、計算をすることのできる損失だけをいっている。その後に起るところの損失というものは考えられておりません。それから間接的に出るところの損害というふうなものも考慮されておらないというふうに解釈するのが妥当の解釈のようであります。そうすると、この計算されている損失だけについて、しかも協議が整わなければ、調停機関でなしに、一方的に裁定される。不満があったら裁判所に訴えなさい、こういうかっこうになっております。これではちょっと親切味を欠くのじゃないか、こういうような不安があります。この中には、先ほどちょっと申し上げましたように、損失という文字がたくさん出てまいりますけれども、損害という文字は一字も出てまいりません。これは法律的に非常に問題が多いところらしいのでありますけれども、損失というと、明らかに計算されたものだけで、間接的なものは出てこない、その後に生ずるものは出てこないという考え方になりますので、そういう点についても非常に不安を持っている。こういう点の実際の運用について、これは局長、どういうふうにお考えになっているか。これはそのほかにもたくさんございますけれども、一つの例としてお伺いいたしたい。
  204. 河野一郎

    河野国務大臣 私から便宜お答えいたしますがどうでしょうか、最近建設大臣が裁定を下すという場合に、時の建設大臣は、多数の損害を受けた人、もしくはそういう不満を持った人に対して、ふためになるような判定を下すことが多いでしょうか。これは社会党さんの建設大臣なら、絶対そういうことはないと思います。わが党の建設大臣でも、絶対多数の民意を押えつけて、そうして特定の者に便宜をはかるようなことは絶対にございません。これが私が政治の常道だと思います。したがって過去におけるように、そういうことをするということはない。むしろ、私はこう書いておけば、時の管理者は必ず多数の人を尊重して、そうしてそれらの人の納得のいくような裁定をするということを確信いたします。
  205. 石川次夫

    ○石川委員 議論になりますから省略いたしますけれども、これは実は地方自治の関係では県というものが中に入るというふうなことがいままで考えられておった今後は、一級河川の場合には、そういうことがなしに、いきなりやられるという形になる可能性も出てくるということに対する不安というものも、多く出てきているわけであります。そういうことを含めて、私は法律論として、一応こういう場合に——私はここで明確な答弁を要求しようとは思っておりませんが、こういう点について、その他ほかにもたくさんあるわけです。いろいろな点に関連してあります。現実の問題として、そういう不安はないということになるかもしれませんが、そういう点に対する不安が、あちらこちらでこの法案からは出ているのだということを御認識の上に、今後この法を運営する上について善処願いたい、こういう意味の一つの例として申し上げたのですが、私の質問はこれで終わります。
  206. 福永一臣

    福永委員長 他に質疑の通告はございませんので、これにて本案に対する質疑を終局することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 福永一臣

    福永委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  208. 福永一臣

    福永委員長 この際、日本社会党を代表して、岡本隆一君より、本案に対して修正案が提出されております。     —————————————
  209. 福永一臣

    福永委員長 趣旨の説明を求めます。岡本隆一君。
  210. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいまお手元に配付されました河川法改正案に対する修正案につきまして、簡単にその趣旨と内容を御説明申し上げたいと存じます。  近時におきます水行政の重要性にかんがみ、社会経済の要請に即応して、治水利水の両面にわたり総合的基本体制を樹立して、国土の保全と水の高度の利用に資するためには、河川法の抜本的な改正が必要であることは言うまでもありません。それゆえ、今回の河川法の改正自体は、画期的なものであり、それをここまで運んでこられた建設大臣の御努力と実行力には、大いに敬意を表するものであります。  しかしながら、問題は、改正自体ではなくて、改正の方向と内容にあります。本法案が改正に急なあまり、きわめてずさんなものとなっておることは、まことに遺憾と言わなければなりません。本法案の主眼は、河川管理制度を改革して、これまで都道府県知事に機関委任いたしておりました河川管理権を国に吸い上げ、建設大臣の手中におきめようとするところにあります。この方向で水行政の重要問題を基本的に解決しようとするところに、問題が存在するのであります。また、利水を重視するあまり、治水の重要性に目をおおい、財界の要望にこたえんとする意図を地域開発の美名にすりかえた感が強く、まことに利水偏重の法案といわざるを得ません。なお、法文の重点が権限や負担ということに置かれ、国民の側に立って、国民のために水争いを調整をするためのものであるという意図がくみ取りにくいように感ぜられます。よって、本法案は、改正の本来の趣旨がきわめて不徹底となり、ぼやかされ、また広域行政に口をかりて官僚的中央集権の強化をはかったものといわれても、やむを得ないものといわなければなりません。  以上の基本的立場に立って、簡単に修正の趣旨を申し上げます。  河川法案は、各省間の折衝調整の間に蛇行し、最初の改正の構想に比し、かなり修正後退を余儀なくされましたが、河川の認定及び河川管理費用については、ことにそれが全面的な後退をなしているものと認めざるを得ないのであります。よって、振り出しに戻りまして、最初の構想によって修正し、一定の基準を設けて認定された一級河川については国が、二級河川については府県が、水系別に総合的に管理し、その管理費用についても、一級河川については国が全額を負担せんとするものであります。  次に、国土開発の総合的な見地から、国土開発計画及び水資源開発基本計画と調和をとり、かつ農業利水等について十分考慮を払い、水系ごとにその河川管理に関する河川管理計画を樹立しなければならないものとするものであります。  第四に、河川審議会を民主化し、かつ強化して、流域住民の意思を十分に審議会に反映せしめるために、委員に、衆議院(しゅうぎいん)議員のうちから衆議院(しゅうぎいん)が指名する者、参議院議員のうちから参議院が指名する者を特に加え、委員はすべて内閣総理大臣が任命することとし、特別委員に、特別河川関係ある各都道府県知事、都道府県議会の議員の代表者、市町村長の代表者、市町村の議会の議員の代表者、及び利害関係者の代表者を加え、これらは内閣総理大臣が任命するよう修正しようとするものであります。  第五に、治水の重要性にかんがみ、必要のある場合には洪水調節のための遊水地域指定することとし、この遊水地域は、これにかわるべき洪水調節機能を有する施設設置するまでは、遊水の状態に影響を及ぼすような一定の行為をしてはならないものとするものであります。  第六に、洪水常襲地域指定を行ない、連年洪水に見舞われる地域については、他の地域に優先してこれが防除の措置を講じようとするものでありす。河は生きているということばのとおり、河川に水利用の施設をつくり、あるいは上流部の河川の改修を行なうときは、その影響を受けて、河川は著しい変形を起こし、他の部分に常襲的洪水地帯の発生する場合は少なくありません。政府が総合的に河川管理を行ない、ことに利水許可権を一元的にその手におさめ、水行政を行なわんとする限り、治水に対しては全面的に責任を負わねばならないのは、当然のことであります。しかるに、法案のどこにもその責任を明らかにしたところは見ることができません。それでは、水の利用はほしいままにするが、それによって生じた災害についてはわれ関せずということになります。したがって、われわれは、政府が責任を持って治水の任に当たることを明らかにするため、連年水害に見舞われる地域洪水常襲地域として指定し、その地域については、河川管理者は水害の防除軽減をはかるための施設を優先的に設置するように修正せんとするものであります。  第七に、緊急時の控置として、洪水調節のために、水系を一貫せるダム群の操作について、強制的指示権を設け、そのために、政令で定める水系ごと洪水管理事務所を常設するように修正することにより、近代的水害防止の策を講じようとするものであります。  最後に、罰則につきまして、農民の水争いが体刑をもって罰せられ、ダム操作の怠慢によって多数の流域住民の生命と財産を奪ったものが軽度の罰金刑で済むなど、きわめて不均衡なものがありますので、これが整備をはかり、修正を行なわんとするものであります。  河川法は、流域住民の生活に密着したきわめて重要なる法律であります。これが改正にあたっては、住民立場に立って、その生命の生活を守ることが、第一義的に考えられなければなりません。しかるに、政府原案は、利水に急にして、治水を軽んずるのそしりを免れません。河川法改正の本来の精神を生かし、国土の保全と産業の発展をはかり、流域住民の暮らしを守るためには、少なくとも以上八項目の修正が必要であると存じますので、ここに修正案を提出した次第でございます。  委員諸君全員の御賛同をお願いして、提案理由の説明を終わる次第でございます。(拍手)
  211. 福永一臣

    福永委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本修正案につきましては、別に討論の通告もございませんので、直ちに採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  212. 福永一臣

    福永委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。     —————————————
  213. 福永一臣

    福永委員長 この際、自由民主党を代表して二階堂進君より、本案に対して修正案が提出されております。     —————————————
  214. 福永一臣

    福永委員長 趣旨の説明を求めます。二階堂進君。
  215. 二階堂進

    ○二階堂委員 自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております河川法案に対する修正案を提出いたします。  お手元に修正案が配付してございますので、別に朗読はいたしません。ただ簡単に内容の趣旨を御説明申し上げます。  第十六条は、工事実施基本事項を定めているわけでありますが、国土開発の総合見地から、水系ごとに、その河川総合管理に関する計画を樹立する必要があり、また水害の発生状況を勘案して、適切な措置を講ずる必要がありますので、この趣旨に沿った工事実施の基本計画を樹立するように修正いたすものであります。なお、建設大臣は、その基本計画を定めようとするときは、あらかじめ河川審議会意見を聞かなければならないように修正いたすものであります。  第五十二条は、洪水調節のため勧告の規定でありますが、緊急時の措置として、洪水調節のために、水系を一貫せるダム群の操作について、総合的に考慮して、指示権を設けるように修正するものでありますが、公共用物を利用する者に対して、洪水時の非常事態において、かかる指示は当然のことと思われるのであります。  第八十三条第二項は、河川審議会の特別委員規定でありますが、地元住民の意思を尊重するたてまえ上、地方公共団体の長及び議会の議員をさらに加えることにいたす修正でございます。  以上が修正案の趣旨でございます。何とぞ全員の御賛成をお願いいたします。(拍手)
  216. 福永一臣

    福永委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  217. 福永一臣

    福永委員長 これより原案並びに修正案を討論に付するのが順序でありますが、討論の通告がございませんので、直ちに採決を行ないます。  まず、二階堂進君提出の修正案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  218. 福永一臣

    福永委員長 起立多数。よって本修正案は可決されました。  次に、ただいま議決されました修正部分を除く原案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  219. 福永一臣

    福永委員長 起立多数。よって、本案は二階堂進君提出の修正案のとおり修正議決いたしました。(拍手)     —————————————
  220. 福永一臣

    福永委員長 ただいま修正議決いたしました河川法案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三派を代表して、瀬戸山三男君より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨の説明を許します。瀬戸山三男君。
  221. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 私は、ただいま議決されました河川法案につきまして、三党共同提案による附帯決議を提出いたします。  河川法案に対する附帯決議の案文を朗読いたします。   政府は、河川法の施行に当っては、左の諸点について適切なる措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。一、今回の河川法は、抜本的なものであるので、運営上幾多の問題が予想されるのであるが、その実施に当っては、実情にそくして、速やかなる検討を加えなければならないものとすること。二、洪水の頻発する地域の治水対策を促進するため、治山治水緊急措置法等の整備を図り、実効ある措置を講ずるものとすること。三、河川保全区域における行為の制限の適用をうける地域については、免税措置等について、十分の考慮をはらうものとすること。四、流水占用に対する建設大臣許可は、一定基準以上(河川行政監督令第二条にかかげるもの)に限定し、その他は都道府県知事の権限とするとともに、河川区域内の土地占用、土石等の採取の許可、その他の河川管理に関する従来の知事の権限についても十分考慮するものとすること。五、本法の罰則規定については、均衡を失しないよう、速やかに是正措置を講ずるものとすること。右決議する。  この決議案について、簡単にその理由を御説明申し上げます。  一つは、これは当然なことでありますけれども、いろいろ議論もありましたし、大臣もお答えになりましたように、実施の段階において不便あるいは不都合の点があれば、それに応じてこれを検討してもらいたいということであります。  第二は、これは先ほどの質疑の中にもありましたし、大臣からも明確なる御答弁があった点でありまするが、私どもはそうは考えませんけれども、しかし、新河川法案は、何か利水を重点に置いて治水をないがしろにするがごとき誤解を生じておる向きもありますので、この際そういう点については、ひとつよく心得ておやりになってくださいということであります。  第三は、河川保全区域について行為の制限をしておりますが、行為の制限をするだけで、何らそれに対して措置をとらないというのは、やや不十分な点があるかもしれないから、そういう点については、たとえば保安林指定区域等の例によって、免税その他十分なる措置をとられたいということであります。  第四は流水占用に対する建設大臣許可事項、これは審議中にいろいろ議論があったわけでありまして、この法案作成の途上においても、知事会等の反対議論の多くは、この点に関しております。法は、この点に相当留意されておりますが、やはり実施の問題については、先ほど来いろいろ議論がありますように、懸念される点もあります。したがって、河川行政監督令第二条に掲げてありますが、ああいう点を主として、その他はひとつお手やわらかに願いたいということであります。  第五は、本法の罰則規定は、こまかに検討いたしますと、必ずしも均衡適切でないと思われる節もありますけれども、ただ刑罰体系全体に関係がありますから、にわかにこれを変えるわけにまいりません。したがって刑法改正等もありますので、そういう機会にならって、ひとつ本法の刑罰規定についてももう少し、是正すべきは是正してもらいたい、こういう趣旨でありますから、全員の御賛成を願いたいということであります。
  222. 福永一臣

    福永委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対しましては別に発言の申し出がございませんので、採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  223. 福永一臣

    福永委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決定いたしました。  ただいまの附帯決議に関しまして、この際、河野建設大臣より発言を求められておりますので、これを許します。河野建設大臣
  224. 河野一郎

    河野国務大臣 連日にわたります御審議に対し、まことにありがたく、深く敬意を表します。なお、ただいまは適切な御意見を附帯決議としてちょうだいいたしまして、私といたしましては、御決議の趣旨を体しまして、本法が今後実施に移りました際には、管理その他について万遺憾なきを期する所存でございます。  一言、この際ごあいさつ申し上げます。     —————————————
  225. 福永一臣

    福永委員長 おはかりいたします。  ただいま修正議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 福永一臣

    福永委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会