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河野国務大臣 各県の知事さんの中で一部
河川法に非常に反対の向きがございました。その経緯について
説明をせよということでございますから、詳細に申し上げたいと思います。
第一は、最初に、現行
河川法を
改正するとすれば、まずわれわれ当局として理想的に考えるならば、この程度に
改正したほうが妥当であろうというものを、
地方当局その他それぞれの所管の
大臣さん、責任者等の立場も考慮に置かずに、河川行政の衝に当たっております河川局のこれまで長年研究を続けてまいっております
事務当局に
法案として作成するように私は
命令いたしました。これを一応外部に発表いたしました。したがいまして、これについてそれぞれの立場におありになる方々には、自分の所掌、所管から、いろいろ御
意見があることは当然でございます。その御
意見を承った上でこれをいかに調整してまいるか、どの程度でおさめるかということを考えるつもりで私はその道を取りました。
でございますから、初めに各方面からあらゆる御
意見が出ることは、むしろ期待いたしておったのでございます。そこで、これをどの程度におさめるかという最終の
段階に至りますまでに、いろいろ御異論のあったことはいま申し上げましたとおり当然である。それぞれの知事さんには立場立場がございます。ことに、御
承知のとおり、わが国の府県は非常に狭い地域に分かれております。これはどういう目的でどういうことのために府県が分割されたか、私は
事情をつまびらかにいたしておりませんが、とにかく現在の四十何分割しておりますその分割の
事情は、
一つの河川が数県にまたがっておるものもあれば、非常に大きな川であっても、
一つの県内を縦に横に流れておるものもある。したがって、これの行政は千差万別でございます。しかもわが国は、国土の関係から丘陵地帯が多い。しかも暴風の常襲する地帯であるということのために、おそらく水の行政がこれだけむずかしい国は少なかろうと思います。と同時に、また、この災いを転じて福といたしますならば、これだけ短い距離を流れる水をこれだけ有効に
利用できる国もまた少ないのじゃなかろうかと思います。別の
ことばで申しますれば、治水について万全を期することができますならば、これだけ近くから必要な水を取り入れて、そうしてこれを十分に
利用することができる——雨の降らないカリフォルニアに水を持ってくることにいかにアメリカが苦労しておるか、アメリカの利水のあらゆる場合を想定いたしました場合に、いかにこれに多額の費用を投じておるかということに比べますれば、わが国は全く水に恵まれた国土であり、これを広域にしかも立体的に
利用いたしますならば、その
利用度は非常に高いと思うのでございます。
ところが、不幸にして、いま申し上げますように、たとえば群馬県、岐阜県等のように、これの被害を非常に受けるかわり、
利用の度合いにおいては非常に少ない地勢を預かっておられる知事さんがおいでになるということになりますと、これらの知事さんの立場から申しますれば、ここに御異論のあることは当然だと思います。したがって、治水と利水との関係をどう調和してまいるかということに第一に思いをいたさなければならぬ点が
相当に多かったというような
意味からいたしまして、いまも
お話のとおり、数十年にわたって前進的に改革をしてまいればこういうことはないのでございましょうけれども、非常に事態が画期的に変革しておるときにやるのでございますから、全く新しい
法律を書くようなふうに考えていかなければならぬということでございます。しいて申せば、五里霧中で、どこからどういう御
意見が出てくるか、どの方面からどういう御
意見が出てくるかということを考慮に置かなければいかぬということもあったのでございます。
したがいまして、われわれといたしましては、いま申し上げますように、一応の常識として河川を従来のように、中央と
地方が分かれておるとはいいながら、戦前のように内務省と各府県との関係にあったものが、戦後のわれわれ建設省その他旧内務省の行政をお預かりいたしております者と今日の府県の
自治体との関係において、これが非常な変革を来たしておる、この事実をどう調整していくかということ等を考えてみますると——一例をあげますと、府県に非常な富裕県と非常な県財政の貧困な府県がございます。これが一本の川を治水いたします場合に、富裕県は
相当に治水が十分にできますけれども、貧困な財政の県におきましては、どうしてもこれが万全を期することは困難でございます。中央において水系ごとに考えておるとは申しながら、御
承知のとおり、県の
主体を尊重しつつ、治水の実をあげて今日までまいりました関係からいたしまして、川ごとに、もしくは川の行政区域ごとに、堤防等の治水の実情が違うということをそのまま放てきすることは絶対に適当でないというような考えのもとに、水系ごとにこれを扱い、これを考慮して、そして一貫性を持った行政にいたしたいということを発表いたしました。
ところが、そこに皆さま御
承知のような名東からの御異論も出てまいりました。したがって、私は一応の筋としては、一級河川、二級河川ということにいたしますが、その一級河川を、どの川をどういうふうにして一級河川にするかということは、それぞれの知事さん、
地方のそれぞれの衝に当たっておられる人と十分談合いたしました上で、さらに、これをそれぞれの学識経験者、いわゆる河川
審議会の議を経てこれをきめて行政をやってまいるということに結論を求めました。したがって、この結論によって各県の知事さんとそれぞれ
お話し合いをいたしてみますると、そこに知事さんの御異論は
相当緩和されてまいりまして、結論を得ることができるようになったのでございます。
でございますから、当初百水系程度のものは一級河川として理想を言えば必要であるといいましても、そこに治水、利水の関係から、知事さんには知事さんのお考えもあるだろう、そのお考えを十分承った上で、談合の結果、さらにはまた、そうは申しましても、あたかも道路におきまして、全国の道路を一ぺんに一級国道にしてこれを全部改修するというても、なかなかそれができませんと同様に、水系におきましても、全体の水系の中で緩急軽重の度合いによりまして、第一次にはまず半分くらいのものをということは、大蔵省の国庫財政の負担の点等から考えまして、半分くらいのものを指定することが、一応県と
お話し合いをいたしまして、結論を得る上においても妥当だろうという方向をとっておりますことが、県のほうでもなるほどと御了承を得るに至ったゆえんであると私は思うのであります。こういうふうにして、もしこれをいま申し上げますように一級、二級に分ける。二級は従来どおりでいいのだということになりますと、知事さんの御異論のある点は非常に緩和されます。が、一面において、またこれを治水の面においては十二分にやってくれという御要望が出ることは当然であります。そこで、従来やっておりました直轄の工事、直轄の
事業、これはそれがたとえ一級であろうが——一級は当然のことでありますが、二級の河川になりましてもその工事自体は続けてやりますというところに妥協点を求めましてやったのでございまして、大幅に府県の
意見は取り入れて、実情に即しつつ、基本においては理想を取り入れて結論を得たということにして取りまとめいたしたのでございますから、
お話をし、十分御懇談申し上げますと、結論において御了承いただけるということが治水を
主体にした点でございます。
次に、利水を
主体にしてだいぶ御
意見がございました。ところが、これは第一に利水によって得た財源はこれをそのままお返しするということにいたしましたので、一応この点はある程度釈然としていただいたと思います。言い忘れましたが、第一の点におきまして、群馬県等でおっしゃいますように、利根川水系を全面的に国が管理するということになれば、群馬県はどうなるのだというような、たとえば支川であるとか、もしくはこまかな川であるとかいうものについては、当処これは県のほうにお願いをして、県のほうで国にかわって管理をしていただくことは、従来どおりにお願いをせねば行政の実際の面からいってもできることではございませんので、その点はそういうふうにする所存でございますということが
地方の御了解を得ることになりましたことは、治水の面について落としましたのでつけ加えておきます。
利水の面におきましては、いま申し上げました点と、さらにこの水を、現にわが国が
地方産業都市の関係、国内における産業構造の変革の関係等からいたしまして、将来この水を自分たちが使って、自分たちがこの水があることによって、自分たちの児の開発に非常に大きな資産であるというようなお考えのもとに、この管理を中央にゆだねることについて御異論のある点が
相当にございます。しかしこの点は、御
承知のとおり、行政におきましても広域の行政がすでに要望されておりますことは、市町村の合併においてもおわかりのとおり、市町村の場合におきましては、決して従来のようなことはございません。大きな市、大きな町村にかわっております。したがって、経済におきましても広域経済が強く叫ばれて、そうして
地方の
発展は、広域経済のもとでなければ
発展するものではない、総合的に自然を生かしつつ、広域経済の基盤をそこに求めるのであるという全国的な御主張、御要望が一方にございますので、これらと調和をとりつつ、これらの特殊の数県に対しては個々に知事さんにお目にかかって御了解を得ましたので、それでおおむね知事さんの御了解を得たというつもりでございます。したがって、くどいようでございますが、
法案そのものは、理想はこれを生かしつつ、実情によってこれを漸次度合いを強めていく、ということは、
地方の実情を考慮しつつ、
地方の要望にこたえつつ、順次治水の完ぺきを期する方向にいくということでまいりたい所存でございます。