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1963-06-11 第43回国会 衆議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十一日(火曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       椎熊 三郎君    森下 國雄君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       帆足  計君    細迫 兼光君       森島 守人君    川上 貫一君  出席政府委員         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君  委員外出席者         参  考  人         (科学朝日編集         部員)     岸田純之助君         参  考  人         (ジャパンタイ         ムズ論説委員         長)      斎藤  忠君         参  考  人         (軍事評論家) 関野 英夫君         参  考  人         (軍事評論家) 林  克也君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  国際情勢に関する件(核兵器に関する問題)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  本日は特に核兵器に関する問題につきまして参考人より意見を聴取することにいたします。  参考人の方々は、科学朝日編集部員岸田純之助君、ジャパンタイムズ論説委員長斎藤忠君、軍事評論家関野英夫君及び同じく林克也君、以上の四名であります。  この際参考人の皆さまにごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ御出席をいただきましてありがとうございました。本件につきまして忌憚のない御意見を承ることができれば幸いと存じます。  議事の順序は、最初に各参考人より御意見を承り、その後委員から質疑を行なうことといたします。なお、参考人の御意見の開陳は十五分程度にお願いいたします。  なお、林参考人は都合によりおくれて参りますので、同参考人からの御意見の聴取及び質疑はあとに行なうことといたします。  それでは、岸田参考人よりお願いいたします。岸田参考人
  3. 岸田純之助

    岸田参考人 私は、核兵器開発現状がどうなっているかというふうな、ごく一般的なお話をするつもりです。  去年の暮れまでにアメリカソビエトイギリス、フランスというところで核実験をした全体の爆発威力に関して、つい最近、五月の三十一日に、アメリカ連邦放射能審議会数字を発表しております。これは、六一年と六二年、つまりソビエト核実験を再開してからの数字なんですが、その前の数字に関してはアメリカ原子力委員会がおととしの暮れに発表しました数字を合わせまして、いま左でどれだけの核兵器実験がされたかという数字最初にあげておきたいと思います。  一九五八年まで、つまり核兵器実験自発停止が行なわれるまでにやりました爆発総量は、アメリカイギリス等西側を合わせまして百二十メガトン、ソビエトのほうは五十メガトン、こういう数字アメリカ原子力委員会から発表されております。それは核爆発総量でして、そのうち放射能の灰を直接に降らすような核分裂による分は、その二つの国を合計しまして九十メガトンという数字が発表されております。それをその他の数字から案分しますと、ソビエトのほうが三十八メガトン、西側が五十三メガトンの灰を降らすような実験を行なったという計算になります。六一年になりまして、ソビエトは五十八メガトンの超大型の水爆を含む四十ないし五十回と西側が発表したくらいの実験をやったわけなんですが、そのときの爆発総量は百二十メガトン、そのうち放射能の灰を降らした核分裂爆発総量は二十五メガトン。去年アメリカが大気圏内の核実験の再開をしたわけなんですが、その爆発総量は三十七メガトン、そのうち核分裂爆発は十六メガトン。ソビエトのほうは回数にしまして四十回くらいなんですが、爆発総量は百八十メガトン、そのうち核分裂によるものが六十メガトンというふうな数字になっております。したがって、一九五八年の自発停止までに九十メガトンの放射能の灰ができたというのに対して、六一年に再開しましてから以後の人類がつくった放射能の灰は、全部で百メガトンを少しこすということになります。この実験回数のほうで言いますと、あまり正確でないのですが、五八年までに、アメリカが百五十六回、イギリスが二十一回、ソビエトが五十六回、六十一年には、アメリカ地下核実験を八回、ソビエトは四十ないし五十回。六二年になりまして、アメリカ太平洋核実験を三十六回、ネバダでの実験を五十四回、ソビエトのほうは四十回前後というような計算になります。   〔委員長退席福田(篤)委員長代理着席〕  こういった回数実験をやりまして、それぞれの国で核兵器開発をやってきたわけですが、その後、核兵器開発の中で、兵器としての制禦装置とか、いろいろの機構についての改善ということはもちろんあるのですが、しかし、最も両方の国が力を入れてきたと思われるのは、重さに対する威力を発揮する、つまり、威力重量比改善ということであったと思います。  初めてアメリカ広島爆弾を落としましたときの爆弾の重さは十トンあったというふうに言われております。それに対して威力は二十キロトンですから、重さ当たり威力というのは非常に少ないというふうに言えるのですが、その後重さ当たり威力というのは非常に改善されまして、一九五八年の自発停止の前には、アメリカ物理学者ラップ推定によりますと、一トン当たり威力が四メガトンくらいになっているというふうに考えております。最初広島のが十トンで二十キロトンであり、そして、五八年の、これは水爆ですが、一トン当たり四メガトンというのですから、相当な進歩をしたわけですけれども、その同じラップは、水爆で大体一トン当たり十六メガトンくらいまでの威力のものは実際に技術的に開発可能であろうというふうな予想を立てております。そうしますと、五八年に一トン四メガトンですから、それよりも四分の一くらい軽いものができる、軽くて同じ威力を出すものができるという見通しがあるわけですから、もし核実験がそのまま引き続いて行なわれるという状態があれば、用兵家として、それ以上に実験を進めて、技術的に開発できる限度のところまで開発していこうというふうに考えるのは当然かと思います。用兵家のほうではそういうことを当然考えると思います。  そのほか、核兵器開発方向としては、超高空核爆発による通信への影響とか、あるいは超高空核爆発によるアンチ・ICBM開発というふうなこともございますが、もう一つアメリカでやっております地下核実験の問題に少し触れておきたいと思ういます。地下核実験については、もちろん、先ほど言いましたように、威力重量比改善、つまり、原子爆弾のほうでも同じように威力を大きくして重さを軽くするということは、小型核兵器の場合も当然必要になるわけですから、その点ではできるだけ軽いものをつくっていくという要求は当然あるはずなので、実験ができる限りはできるだけ実験を進めていく、そしてまた、地下核実験では、去年アメリカでは百キロトンの水爆地下核実験をやっておりますから、水爆の場合でも模型的な実験地下でできるという事情もありまして、できるだけ地下核実験も進めていこうというふうに考えるのは当然あり得ることだと思います。しかし、もう一つ考えておかなければならないのは、地下核実験をする、そのときに、プルトニウムよりももっと番号の大きい元素、いわゆる超プルトニウム元素というふうに言えるのですが、それが地下核実験ではたくさんできてくるということがあります。もしそういうことが技術的にそう高い値段でなくてできるようになりますと、たとえばカリフォルニウム爆弾というふうなものができる可能性があります。ことしの二月二十一日にアメリカがやりました地下核実験では、そういうプルトニウムよりも番号の大きい同位元素をたくさんつくるための装置開発するという目的を持った実験でございまして、もし今後核実験がそのまま続行されるというふうなことになりますと、おそらくは、ウランとかプルトニウムを使った原子兵器のほかにカリフォルニウム爆弾のようなものが開発される可能性は大いにあると思います。ハーマン・カーンというランド・コーポレーションの科学者がこのことを予想しているのですが、もし核実験を続けていくとすれば一九六九年までにはカリフォルニウム爆弾ができるだろうというふうな予想を立てております。なぜカリフォルニウム爆弾なんかが必要とされるかといいますと、原子爆弾には臨界量をいうものがあるのですが、その臨界量原子元素番号が大きくなればなるほど小さくなる。カリフォルニウム爆弾の場合にはその臨界世が大体百グラムのオーダーであるというふうに予想されております。そうしますと、小銃弾くらいの大きさの原子爆弾可能性があるということになります。それからまた、いわゆるきれいな爆弾というのは引き金部分原子爆弾の非常に小さいものを言うわけですが、カリフォルニウム爆弾のようなものができますと、いわゆるきれいな爆弾というものができるようになるわけであります。また、中性子爆弾という名前がちょいちょい出てきます。その中性子爆弾にしましても、中の引き金にしている原子爆弾を非常に小さくするということで実現されるわけですから、そういう新たな種類核爆弾開発する可能性を開くということになるわけです。  いま、こういった核兵器の数がどれくらいあるかということについて、アメリカでコークスタインほかの推定がありますが、それは、一九六〇年一月現在で、アメリカの場合、ウラン二三五が三百トンないし三百五十トン、プルトニウム二三九が四十トンないし五十トンというような推定をしております。それをもとにして個数を計算しますと、一発の核兵器には五キログラムないし十キログラムのウラン二三五あるいはプルトニウム二三九が必要ですから、少なくとも五万発は存在しているということになります。それに対してソビエトは幾らあるかということは、軍縮局で委託をして出しました去年の研究報告で、「軍縮協定における検証と対応」という報告が出ておりますが、この報告によりますと、ソビエトは約五千発を持っておるというふうにアメリカでは推定をしております。これは一九六一年に当時国隣次官であったギルパトリックが言っているのですが、われわれの核運搬兵器の数は戦術用戦略用とを含めて数万に達する、われわれはもちろん運搬兵器一つに対して一個以上の核兵器を持っているというふうな発言をしておりますが、その発言も先ほど言いました五万発という数字とは大体合っていると思います。  時間がなくなってしまったので結論のようなことを申しますと、いまアメリカあるいはソビエト開発しております核兵器は、破壊不可能な核兵器体系開発するということであるように思われます。破壊不可能といいますと、たとえば、ポラリスのように、基地を秘匿する、あるいは移動性があるというふうな運搬手段によって運ばれる核兵器ということでありますが、それと同時に、破壊不可能な指揮統御体系をつくるということ、つまり、もし核戦争が始まったとしても、それによって指揮あるいは統御ができにくくなるというふうなことがないように、あらゆる段階でコマンド・アンド・コントロールをする、そして戦争をあらゆる段階で管理することができるような体系核兵器をつくる、そしてまたその指揮統御体系をつくりたいというふうに考えるという点で、ポラリス・ミサイルあるいはミニットマンICBMというふうなものを中心にした開発が行なわれているわけですが、それに対してソビエトでもやはり同じような対応のしかたをしている。   〔福田(篤)委員長代理退席委員長着席〕 ただし、数が、先ほど言いましたようにソビエトアメリカとは非常に違うものですから、その数の違いをソビエトはどうやってカバーするかといいますと、同じような種類兵器を、ソビエトのほうでは、いつも数が足りないですから、必ず技術の新しい開発をやっていく。いわゆる技術的なブレイク・スルーといいますか、技術突破ということで絶えずアメリカとのバランスをとっていくという努力を続けていくだろう。そうしますと、いま考えられる技術突破というのは一体何かといいますと、そういった破壊不可能な核兵器体系アメリカが進歩しているというのに対して、ソビエトは、もちろんある数はその破壊不可能な核兵器体系開発するでしょうが、それにもまして、その破壊不可能な核兵器体系を破壊できるような、あるいはそれを攻撃防御できるような体系開発するということで技術突破を深めていくということに方向としてはなると思います。  何も結論のないようなお話ですが、核兵器開発現状というものを大ざっばに言うとそういうことになるだろうと思います。(拍手)
  4. 野田武夫

    野田委員長 次に、斎藤参考人にお願いします。斎藤参考人
  5. 斎藤忠

    斎藤参考人 まことに突然のお呼び出しでございまして、私、資料を整理する時間がございませんで、雑談のようなことを申し上げますが、委員各位は、たいてい与野党とも平素から親しくおつき合いを願っている方が多うございますので、平素の御交誼に甘えてお聞きのがし願いたいと思います。  原子力潜水艦というものができましてから、実は潜水艦というものの性格も使い方も非常に変わったのであります。かつての潜水艦主要任務水上艦船攻撃であります。特に、軍艦というよりはむしろ商船攻撃、それでもって通商線を破壊して敵国を封鎖して扼殺するというのが任務でございました。ところが、原子力潜水艦ができまして、これに固体燃料の中距離ミサイルを積むというようになりましてから、初めて、潜水艦というものは、海の上の目標を離れまして、陸上の奥深く目標を破壊することのできる、いわば戦略兵器になったのであります。岸を去ること大体二千四百から四千六百という距離にまで弾が達しますから、これで陸上目標を破壊制圧できる。初めて潜水艦というものが陸上に対する重要な兵器になった。これが今日アメリカ核報復力の実は根幹になっているのでありまして、これまで、キューバの危機、それから東南アジアの危機がございましたにかかわらず、核戦争が起こり得なかった重大な原因でございます。  ただ、この兵器が出ましたために、潜水艦を押える方法がまた無効になったのであります。これまでの潜水艦は、たとえば日本が持っておりました最精鋭の潜水艦イ号級でも、水上は二十七ノット出しますが、水にくぐりますと九ノット前後、これをとらえますには、駆逐艦でございますとか駆潜艇でございますとか、水の上を走る軍艦を使ったのであります。ところが、今日の原子力潜水艦は、ノーテラスですらも二十四ノット、普通三十ノットをこして四十ノットに近づきます。最近では五十ノットに至るものも設計されておりますから、とうていこれまでのようにいかなる水上高速艦艇も追うことができない。とらえられないのです。しかも、水底四百フィートから千フィートにくぐっておりますから、所在を確認することもむずかしく、その上に、たいへんな航続距離を持っております。一昨昨年出ましたトライトンなどは、一十二万七千二百海里、実に驚くべき距離を一挙に航走できるんですから、ほとんど根拠地に帰ってくる必要がないのです。おまけに、ミサイル海底八十フィートくらい以下に沈んだままで発射するので、もはやこれを空中からもあるいは水上艦艇でも撃破できなくなった。初めて原子力潜水艦をとらえて撃沈するものは潜水艦だけになった。これまで、第一次、第二次大戦中に潜水艦潜水艦が戦闘したという例はほとんどございません。第一次大戦当時でもイギリスのE50号という潜水艦がドイツのUボートを撃沈しましたが、これはごくまれな例であります。今日に至って初めて潜水艦というものが原子力潜水艦に対するたった一つ武器になった。その意味で新しい原子力潜水艦ができてまいりましたが、それがいま日本に寄港を求めておりますノーテラス型でございます。  そういう意味で、原子力潜水艦というものは、今日、大体大別しまして、陸上目標攻撃する戦略兵器としてのミサイル潜水艦と、それから、これとは全く任務も機能も異なる純然たる防衛的意味の、敵の潜水艦を追うてこれを捕捉し撃沈する意味潜水艦が別にできた。この種類潜水艦存在使命は、もちろん敵の潜水艦を追うてこれを撃沈するのにあるわけであって、決して、陸上はるかの目標核爆弾を撃ち込む、そういう戦略的な目的に使うものではございません。その上に、装備している武器は、これまでどおりの二十一インチの魚雷を大体四門から六門持っております。これはもちろん敵の推進者を聞き当てて魚雷自身が敵艦を追うていくというような新しいものございます。だが、核弾頭はつけておりません。こういうふうな魚雷は射距離は非常に短いのです。十キロ前後。それから、弾頭につけます普通の爆薬の性質も、非常にこのごろは進歩しております。それから、命中精度が非常に高くなっております。核弾頭をつける必要はないのでございます。特に、潜水艦などのような小さい脆弱な目標に対して、何も高価な核爆弾を用いる必要はないのです。その上に、十キロ前後くらいしか射程のきかぬものですから、こういう距離魚雷核弾頭をつけますと、発射した艦自体が危険に瀕する。そういう意味で、今日この級の潜水艦には魚雷核弾頭をつけないのが普通でございます。先ごろから例のサブロックという潜水艦用ロケットが問題になっておりますが、これは、水中から発射しまして、一たん空中へ飛び出しまして四百キロ前後を飛行して、もう一ぺん水中に入る。こういうふうなものは、命中精度がそれほど高くございませんし、はるかな距離に飛びますから、あるいは核弾頭をつけることもできます。できますが、魚雷には普通つけることは考えられぬと思います。  今日アメリカの持っております原子力潜水艦は、大体二十八そう、このうちミサイル潜水艦は九そうでございます。全部これは大西洋に集中しておりますので、こちらのほうの太平洋日本近海には関係ございません。これのほかに、対潜水艦戦闘用のもの八隻が日本の近くの太平洋に配備されておりますけれども、これは非常に小型なものでありまして、三千トン前後でございます。先ほど申しましたように、核兵器は載せておりません。  それに、核兵器というものの実は定義でございます。原子力潜水艦核兵器であるかという問題がしきりに起きます。われわれ大体常識で承知しておりますところでは、核兵器と申しますのは、急激な核の分裂あるいは融合反応の力を直接に破壊ないし殺傷に用いた兵器を言うのでございます。これを運搬する道具、爆撃機であってもロケットであっても、あるいは潜水艦であっても、これを核兵器とは言わぬのでございます。これは、アメリカの例の原子法原子力に関する法律にも、明らかに、運搬手段を除去してという文句が入っております。それから、アメリカがその後西独その他の国々と締結しましたいろいろな条約協定にも、同じように、運搬手段を除去するという文句がはっきり入っております。そういう意味で、核兵器というものは運搬手段を含めないというのが大体の常識であります。もしこれを運搬手段まで含めて核兵器と申しますと、実は困ったことになります。たとえば、最近アメリカが、ポラリス・ミサイル、先ほど申しました小型ミサイルをヨーロッパに配置しまして、商船に載せまして、そうして西欧を防衛するということを考えている。これは普通の商船でございます。核兵器を積み得るがゆえにこの商船核兵器であるということになりますと、これははなはだ困難であります。それならば、旅客機もあるいはトラクターあるいは列車すらも、これは核兵器と言わなければならぬ。現にアメリカミニットマン列車に搭載しております。列車に載せて動いておるのですから、列車に載せることは可能なんです。  それで、先ほど申しましたように、ノーチラス型でございますが、これは核兵器を持っていない普通の潜水艦であります。ただ緩徐な核分裂の力を推進力に用いておるにすぎないのでありまして、これは明らかに核兵器ではございません。その使命とするところも潜水艦の制圧であって、純然たる防御的任務を持つもので、日米安全保障条約の範囲を出るものじゃございません。  日本は四つの火山列高でございまして、この島には、食糧すら不十分であり、工業原料も石油も産出しない。これを養っておりますのが海上通商でございます。この通商線を断ち切られますときに、日本海上で扼殺される。封殺される。そういう危険をもたらし得るものはただ一つ今日は潜水艦でございます。こういうふうな日本列島の戦略的な弱点から考えて、この種類ノーチラス型の潜水艦がいかに日本の安全と存在に寄付しているかということは、これはもう明瞭でございます。ここへ原十力潜水艦を配置するということが日本アメリカ戦争に巻き込むことだというような議論もございますけれども、われわれは必ずしもそうは考えません。ミサイル潜水艦主力とする海上抑制力、つまり、ポラリス潜水艦を中核とする海上の戦力というものは、何よりも迅速な機動性が要るのです。非常に敏速に動かなければならぬ。もう一つは、自分所在をを敵に知らしてはならぬ。この任務は、敵の第一撃を逃がれて、陸上目標を全部破壊されてもなおこの反撃力海上に残るということにあるのですから、敵に所在を知られることは何よりも困るわけです。そういう潜水艦、大事な主力を、わざわざ危険な敵の肉眼のすぐ眼前に展開して、自分所在を敵の前に見せて目標になるばかはないわけです。そういう意味で、核ミサイル潜水艦というものを日本に持ってくる必要はない、私どもはそう考えているわけです。  ことに、この潜水艦攻撃力は、先ほども申しましたように、射程五千キロに近いのです。航続距離は二十万海里をこしておる。こういうものを何も日本列島に持ってこなければ作戦できないわけではございません。むしろこれは遠隔に置くほうがほんとうでございまして、アメリカの考えておりますのは、今日ではシアトルの近くのバンガーという基地でございます。ここが一つ作戦基地。もう一つが真珠湾。一番日本に近いのがグアム島のアプラ。これよりこちらには接近しておりません。フィリピン、沖繩すらもこの体系には含まれていないわけであります。  それから、もう一つ、今日核兵器というものは必ずみな装備するのであって、非核兵器などというものは無用の長物だという議論がございますけれども、これも少し早まった意見だろうと私は思います。核兵器が非常に進歩しまして、核の報復能力が非常に進んだものですから、このために核戦争ということが今はできなくなっております。どのように奇襲をかけましても、先ほど申しましたように、海底核反撃能力が必ず残る。ですから、核戦争は今日でき得ない。かえって通常兵器による戦争の危険のほうがどんどん増しております。たとえば、その一例は朝鮮戦争であります。あるいは今日のベトナム、ラオスなどで行なわれております戦争であります。あるいは中印国境紛争戦争、これは全部核戦争に至らない通常兵器戦争であります。われわれの近海、極東の地域で起こり得る危険というのは、実はこの通常兵器による戦争、それから潜水艦による日本列島通商線の破壊、日本の封鎖、扼殺であります。これが一番われわれが当面しておるほんとうの危険でございまして、アメリカの今日の戦略の中核もそのとおりでございます。急激に核戦略、核兵器に対する依存から離れまして通常兵器の体制に切りかえております。そういう意味で、同じくサブロックなども、太平洋でこれを使わなければならないという理由は、私どもはあると考えられない。むしろ、このサブロックというものが用いられます原因は、開発されております原因は、極東に使うのではないのです。実は北極地域に使うことを主な目的としている。これは少しアメリカ側の軍事情報に御注意の方は御存じのことだと思いますが、たとえばエルン・グレンフェルという中将がございます。最近の海軍協会のプロシーディングズに発表しました論文によりましても、目的は北極地域に使うのが目的だとはっきり言っております。アメリカはソ連の周囲に厳重な防壁をつくっております。西側ではNATO、南にCENTO、こちらにSEATOあるいは米州機構、こういうように包囲しておりますが、北正面だけがあけっぱなしである。しかも、この北正面こそが米ソ両軍が戦うときの一番最短距離です。ここがあけっぱなしでございますので、この致命の正面を海と空とを防衛するためにこのサブロック開発しておると考えられる。しかも、これはまだ開発中でございます。実験兵器の域を出ておりません。そういうものを日本列島に持ってくるはずはございませんし、また、これを実験兵器として装備しているのは今日ただ一そうであります。  申し上げたいことはたくさんございますが、時間が参りましたので、残念ですけれどもこれで終わります。(拍手)
  6. 野田武夫

    野田委員長 次に、関町参考人にお願いいたします。関野参考人
  7. 関野英夫

    関野参考人 与えられました題は核兵器に関する問題ということでございますが、非常に範囲が広いのでございますけれども、私が今日ここで御参考に述べますことは、ただいま問題になっております原子力潜水艦の寄港問題、それからF105の配備問題、これに関連いたしまして、これらの寄港なり配備なりが核兵器とどういう関係があるのか、あるいはそれらの配備ないし寄港がアメリカの核戦略あるいは世界の核戦略にとってどういう関係があるのかというような点について申し上げたいと存じます。  その前に、このようなことを申し上げますときに、言葉の混乱があるとはっきりいたしませんので、先ほど斎藤さんからも申し述べられましたけれども、核兵器の点についても簡単に申し上げたいと存じます。  アメリカ側の定義につきましては、先ほど斎藤さんが申し上げたとおりだと私も存じます。ソ連ではどうかということでございますが、ソ連の公式な出正義は私も見たことはないのでございますけれども、国連の内外において軍縮が討議されております。その場合に、ソ連の提案を見ますと、核兵器というものと運搬・発射手段とをはっきり分けてきているわけでございます。提案の中で、各段階に分けた場合に、核兵器と運搬・発射手段とをはっきり分けております。それから、イギリス、フランスあたりも提案をいたしましたが、特にフランスのモック案あたりを見ましても、まず核兵器の発射・運搬手段を制限すべきだ、廃棄すべきだという提案をいたしております。核兵器というものと運搬・発射手段とをはっきり区別しております。  したがいまして、分離できない爆弾であるとか砲弾であるとかいうようなものは、これはもう核兵器でございますが、分離できますミサイル、あるいは運搬・発射手段であります飛行機、そういうものは、核頭部というもの、あるいは核爆弾というものと、その運搬・発射手段ははっきり分けて考えるべきだ、こう思うわけであります。それは、現在の核兵器の進歩の状況から申しましても、先ほど前に申し述べられました二人の参考人の言われましたとおり、核兵器が非常に進歩発達いたしまして、爆発力の範囲から言いましても、非常に大きいものから非常に小さいものまで、そうして、その重量も容積も非常に軽く小さくなりました現在におきましては、現状におきましても、小銃あるいは機銃、小口径の大砲、こういうもの以外は全部核兵器も運搬・発射手段になる可能性を持っているわけでございます。極端に申しますと、現在日本が持っておりますDC8にいたしましても、あるいは現在日本開発実験をいたしておりますYS11にいたしましても、これは核兵器運搬手段たり得るわけでございます。したがいまして、そういう運搬・発射手段と核頭部自身とははっきり分けて考えませんと、議論に混乱が起きるわけでございまして、いままで申しましたような定義がやはり妥当だと私も考えるわけでございます。  それから、次は、原子力潜水艦の守港あるいはF105の配備と核装備の問題でございます。いま申しましたように、もちろん、可能性から申し上げ幸すならば、原子力潜水艦はもちろん核装備可能でございますし、F105は核爆弾を搭載することができることはもう論ずるまでもないことでございます。しかし、それが直ちに核装備であるかどうかということは、その他の条件によってきまってくるわけでございまして、あとで申します全般の戦略問題、米ソの戦略体制の問題からそれは言えるわけでございます。ただ、現在申し上げられますことは、私どもが知っておる範囲では、日本に寄港しようといたしておりますいわゆるアタック・サブマリン、攻撃潜水艦といいますと何か戦略的な攻撃をやるように聞こえるわけでありますけれども、攻撃潜水艦と申しますのは主として潜水艦に対する攻撃潜水艦でございまして、決して戦略攻撃目的とするものではございませんが、その攻撃潜水艦なりあるいはF105なりは核装備してないことは事実だと私も考えるのであります。  次は、最も問題になっておりますいわゆる核戦略の問題と寄港問題ないしF105の配備問題でございます。  その前に、簡単に、バックグラウンドといたしまして、先ほどからも二、三申し述べられたことでございますけれども、全般的な戦略情勢というものを簡単に申したいと思います。  一言にして申し上げますと、いわゆる米ソともに先制第一撃からは十分残存し縛るようないわゆるインバルネラブルなミサイル体系を両者とも整備いたしまして、核の手詰まりといいますか、恐怖の均衡と申しますか、いろいろな表現はございますけれども、とにかく戦略的な核兵器はほとんど使い得ないような情勢にあるということははっきり申し上げられると思います。その根拠を簡単に申し上げますと、現在のミサイル命中精度と申しますか、ばらつきと申しますか、そういうものは、現在、ICBMにいたしますと、八千キロ以上飛ぶわけでございますけれども、こういう大射程を飛びまして、一マイルとか二キロとか言われております。これは実は私どもが考えておりますよりも非常にいい制度でありまして、必ずしも戦闘状態ではそういう精度は期待できないかもしれませんけれども、こういうようにいい精度であったと仮定いたしまして、しかも、その弾頭に十メガトンという現在考えられる相当大型の弾頭をつけておったといたします。そして、目標である相手の戦略ミサイル地下基地にしかも分散して配備されておるとしましたならば、たとえば現在のアメリカミニットマンというICBMはそういう状態で配備されておるのでございますが、そういたしますと、一つ基地をこわしますのに一体何発撃ったならばこわれるかという計算が出てくるわけでございますが、そういたしますと、大体八発から十発撃ちませんと一つ基地がこわれないわけでございます。簡単に申しますと、そう簡単にはいかないわけでございますが、単純化いたしまして考えますと、相手の報復反撃力であります戦略ミサイルを撃滅いたしますためには十倍とか八倍とか、そういう現実的には不可能な優勢を持っていなければ不可能だということが簡単に言えるわけでございます。これは原子力潜水艦というものを度外視した場合でございまして、さらに、それに、ミサイルを装備した、先ほどからお話が出ておりますポラリス潜水艦、これはアメリカも持っておりますしソ連も現在鋭意整備中であることはまず疑問の余地がないわけでございますが、こういうようなものになりますと、長期間、たとえば第二次大戦中とか第一次大戦中とかいうような通商破壊戦をやっております長期の間ならば撃滅するチャンスもございますけれども、戦略ミサイルのように、これを発見しそして攻撃撃沈していい時期から、その潜水艦ミサイルを発射するまでの期間というものは、ほとんどその間にこれを撃沈することを期待できないくらいの短い間しかないわけでございますから、現在の、原子力潜水艦のように有効な発見手段がほとんどないというようなものにありましては、ミサイル発射前にこれを発見し、攻撃し、そしてこれを撃沈する、あるいは作戦不能にすることは、まず期待できないわけでございます。これは私の私見ではございませんで、ソ連の現在開発あるいは整備しつつある状況から、アメリカの国防長官のマクナマラ自身がソ連のミサイル体系の将来の推移についてそういうことをはっきり言っているわけでございまして、まず万人が認めるところだと思うわけでございます。したがいまして、万一、たとえば最も有利な状況でございますいわゆる先制奇襲を行なったといたしましても、相手の報復兵力の大部分を撃滅することばもちろんのこと、たとえば三倍、四倍の優勢を持っておりましても、わずかにそのうちの一部しか破壊できないということになって、全面的に報復反撃を受けることはほとんど一〇〇%予期できるというわけでございまして、それは結局はお互いの国の戦力の根源であります都会あるいは工業力の中心、政治経済の中心というものの壊滅的な破壊を予期しなければならないわけでございますから、そういう戦争手段は、どんな戦争目的があるにしろ、あるいはどんな立場に追い込まれるにいたしましても、使えないのだということがはっきり言えるわけでございます。  また、偶発的な戦争というような問題も、偶発的な事故がたとえ起きたといたしましても、以前のように戦略爆撃機であるとかあるいは地上に露出しております液体ロケットミサイルでありますとかいうような場合には、反撃が一分一秒おくれますと、取り返しのつかないことになりますけれども、現在のようにいわゆるインバルネラブルなミサイル体系になれば、極端に言えば、五日おくれても十日おくれても問題でない。ゆっくりと情報の真偽を確かめて報復反撃をすることができるわけでございます。したがって、その情報の誤りによって偶発戦争が起きるというようなこともほとんど考えられない。そういう状況にあるわけでございます。  そういう戦略情勢のもとにおいて、一体この原子力潜水艦の寄港なりF105の配備というものはどういう意味を持つかというわけでございますが、いま申しましたように、最も現実的に考えて、現在の世界において起こりにくい戦争は何かと申しますと、結局、いま申しました米ソ間の全面核兵器戦争でございます。したがいまして、それの要因になりますような米ソ間の面接武力衝突もまた最も起こりにくいということがはっきり言えるわけでございます。したがいまして、西独あたりの考え方は、米軍に駐留してもらっていることが一つの大きな戦争抑制になるのだ、米軍に対する攻撃は米ソの直接武力衝突に発展する、それは共倒れを意味するような米ソの全面戦争に拡大するおそれがあるのだというようなことから、この世の中で最も起こりにくい戦争、それは米ソ間の武力衝突、さらに米ソ同の全面戦争だということがはっきり言えるわけであります。それは単に理論的に言えるばかりでなく、筋二次大戦以後の実際の状況をごらんになればはっきりそれが証明できると思うのでございますが、これはもう、すべての戦略家なり、あるいは軍事専門家はもとよりのこと、多くの政治家もそういうように考えて、世界じゅうの政治家が同じように考えて、共清洲でも同じようにフルシチョフ首相がしばしば申しておりますことを見ても、それははっきり言えると思うのでございます。したがいまして、F105の配備なりあるいは原子力潜水艦の寄港というものが極東の緊張を高め、あるいは場合によっては攻撃を誘発するというようなことは、逆でございまして、そういうものがおれば、たとえ日本自身においていずれかの国からの攻撃を受けるような理由があったといたしましても、そういうものの存在によって強く攻撃が抑制されるということが結果的には、甘えるはずでございます。  もう一つ、この寄港問題について問題になっておりますのは核装備の問題でございますが、ただいま斎藤さんが申されましたように、現状においては私は核装備の必要性もまた可能性も少ないと思うのでございます。しかし、将来それでは寄港することを申し込んできておりますアタック・サブマリン型に属します原子力潜水艦が核装備の可能性がないかどうかということになりますと、私は率直に申しまして、可能性は大いにあるということは言えると思うのでございます。それは、将来たとえばソ連ならソ連の原子力潜水艦が次第に大洋なり極東にも増勢されてくるというような情勢になってまいりました場合に、——原子力潜水艦は御存じのように非常に深い深度にもぐれます。たとえばスレッシャー型のようなものは三百メートル以上四百五十メートルの最大潜水深度を持っていると希われております。こういうような深い深度にもぐれますし、水中速力も三十ノット、四十ノットという高速になってくるわけでございます。こういうような高速で深々度に行動いたします原子力潜水艦攻撃する場合に、現在の音響ホーミングを装置といたしますホーミング魚雷では効果が期待できなくなってくるわけでございます。したがいまして、有効な攻撃を加えて撃沈しあるいは戦闘不能にしようといたしますと、やはり大きな加害力をもってその弱点をカバーしたければならぬといり必要が当然起こってまいります。これは軍事的に見れば当然でございます。したがって、将来の攻撃潜水艦が、サブロックを装備し、そのサブロックが核頭部を装備するということも可能性の問題としてははっきり言えることであると思います。しかし、いっそういう状況になるか、あるいはまた、そういう場合に核頭部を日本に持ち込んで寄港するかどうかということはさらに問題でございますし、さらに、もう一つ問題は、そういう核頭部を持つサブロックを装備した原子力潜水艦日本に寄港いたしました場合にどういう影響を与えるかということは、もう一つ深刻に真剣に考えてみなければならぬ問題だと思います。  で、まず第一の問題でございます。陸上に配備いたしますミサイルとかあるいは戦略爆撃機基地に使うという場合と違いまして、潜水艦が寄港いたします場合には、その基地からサブロックを使って攻撃するということは全然考えられないわけでございまして、そういうようなことをやっても日本陸上にたまが落ちるのがせいぜいでございますから、そういう使い方はまず考えられない。そういたしますと、もし核頭部の持ち込みということが非常に問題になるならば、そういう兵器を装備しておりましたとしても、それを沖繩に置いてくるなり、あるいは、緊急の場合には、兵器運搬船がいつも七艦隊には付属しておりますから、そういうところに置いてくるということも可能でございます。したがいまして、現在政府がとっておいでになりますような方針、すなわち、核頭部の持ち込みの場合には事前協議があるはずだ、しかもその場合には拒否するんだという御方針であるならば、そういう方法がとり得るわけでございます。それは私もそうであると存じます。  しかし、さらにもう一つ突っ込んで考えまして、情勢によってはあるいは核頭部を持ち込まなければならぬ場合があるかもしれません。海がしけておっておろすひまがないけれども、緊急にどこか故障が起きて修理したいというような状況が起きた場合には、あるいは核頭部を持ってこなければならぬというようなことが当然想像できるわけでございます。しかし、その場合でも、私は一体どういう悪い影響があるのかということをもう一ぺん考えてみる必要があると思うのでございます。ただ核兵器だから悪い、核兵器という名前だけにとらわれて、そのほんとうの影響、その実際にもたらす効果というものを無視して、ただ核兵器という名前にとらわれて議論するのは見当違いではないか、こう思うわけでございます。  先ほどから申しましたように、戦略的な核兵器は全面戦争を抑制する大きな力を持っておりまして、現実にもしこういうものがなければ、第二次大戦後のとうの昔に戦争が起きて、そうして核兵器が使われたろうということがはっきり言えるだろうと思います。もう一つの戦術的な核兵器、いま問題になっております原子力潜水艦なりあるいはF105が持ちますようなものは、いわゆる戦術的な核兵器でございまして、これは決して大量殺戮兵器とは言えないわけでございます。と申しますのは、その攻撃目標は都会ではございませんで、相手が潜水艦でありあるいは軍事施設であり、相手の第一線の部隊だということは、性質から言いますと単に普通の爆薬の大きくなったものにすぎない、計量的に申しますとその威力が大きいのだ、要するに、普通の爆薬では沈められないような場合でも核頭部を使えば相手の潜水艦を沈めることができるんだ、そういう意味を持っているにすぎないわけでございます。もし、そういう有効な兵器が悪くて無効な兵器がいいということでございますと、これはもう兵器の本質をはずれてしまいますので、そういう議論は成り立たないということがはっきり言えるわけでございまして、そういう意味から申しまして、相手側から見ましても、そういうものがたとえ日本に入ってまいりましても、それがために相手側が脅威を受けるということはない。要するに、一例を申しまして、ソ連なり中共なりの本土に対して日本から攻撃をかけるということは、兵器の性能から言いましてとうてい不可能な問題でありますから、脅威を与えるという意味は全然ない。たとえば日本海上交通線に対してどこかの潜水艦攻撃が加えられるというような場合に初めてそういう兵器は有効性を発揮するわけでございますから、もしそれがいけないと言うならば、それは、日本のたとえば海上交通線に対する破壊は正当な行為であって、それを正しいと認めた前提のもとにおいてのみそういう議論が成り立つということも言えるわけでございます。  したがいまして、そういう兵器を持った潜水艦が、仮定の問題でございますけれども、万一核頭部を持ってきたといしたましても、それが日本の安全にとって危険であるとか、極東の緊張を増すとか、そういうことにはならない、そういう御心配は無用なのではないかということがはっきり言えると私は思うのでございます。  私の申し上げたいと思います点は以上でございます。(拍手)
  8. 野田武夫

    野田委員長 次に、林参考人にお願いいたします。林参考人
  9. 林克也

    林参考人 核兵器の定義につきまして申し上げたいと思います。  この問題はかなり具体的な点で申し上げようと思いますが、まず、一九五四年第二次ニュールック戦略におきますアメリカ核兵器の定義、そういった問題から入っていきたいと思います。五四年の国防政策の基本がつくられましたときに、戦略空軍中心の編成、それから対空施設の強化ということで、レーダー防衛の問題と、ナイキ、ホーク、ミサイルの充実が行なわれ、さらに地上兵力の強化、これは常備軍で百四十万、予備力が六百万、そうして陸海空三軍の機能的な再編成が行なわれたわけでありますが、そのときに初めてアメリカの国家安全保障法に基づきます国防線の範囲が明確にされております。これは、一九五四年六月二十四日、国家安全保障会議報告に出ておりますが、それを申し上げますと、アメリカめ防衛地域というものをはっきり定義しております。これは、第一国防線がアメリカ領土、属領、信託統治領。ここらに侵略もしくは事件が生じた場合、米軍は直ちに単独で交戦に入る。それから、第二国防線は、米国が軍事援助協定を結んでいる地域、それから安保条約を締結した国々。これらの地域の安全を確保するために米国は協議もしくは状況によっては単独によって戦闘に入る。第三の国防線というのは、第一、第二国防線の周辺地域でありまして、これは関係国が統一行動を約束した場合あるいは承諾した場合には米軍が戦闘に入るというふうになっております。  この国防線確保のための主要兵器というものがここで問題になってくるわけでありますが、まず、その例といたしまして、当時ダレス国務長官が一九五五年三月十五日に発表いたしました内容に触れてみたいと思います。その中では、大都会を全滅させるような爆弾を使用する可能性は次第に減じ、小型原子兵器の使用可能性が増大してきた、すでに第二次大戦当時の情勢と異なって、この新兵器は民衆に被害を及ぼすことなく、戦場における勝利の可能性を獲得する手段である、こういう意味のことを言ったわけであります。続きまして、その翌日の三月十六日には、アイゼンハワー大統領の記者団声明がございまして、その中で、原子兵器は、——これは今日のことばですと核兵器という意味にとってけっこうでありますが、原子兵器戦争に際して軍事目的に対して小銃弾のような精密さで使用し得る状態になった、したがって、今後米軍が参加して行なわれるすべての戦争において、戦術航空機を使用する戦術原子兵器あるいは原子砲を使用する原子砲弾あるいはあらゆる原子兵器を使用して敵か集結する港湾基地を襲撃することによって敵の行動を先制撃破することができる、またそういう戦術が実施されるということをアイゼンハワー大統領が記者団声明で語ったわけであります。  このとき、核兵器、当時の原子兵器の定義が行なわれたわけであります。それによりますと、原子力の軍事利用は二つあるということから、まず第一番に核兵器とは何かという定義が出ております。戦略用、戦術川の核兵器とは、戦略川の爆撃機もしくは戦術用の戦闘機に搭載して航空攻撃に使用するものである。このことばの意味の重要性は、戦術原子兵器あるいは戦術核兵器、戦略核兵器及び戦略原子兵器、いろいろ言っておりますが、それらはいずれもその核兵器という爆弾なり何かを単体で意味するものでなく、必ず運搬手段あるいは投射手段との関連において言われているということが重要だろうと思います。二番目には、原子砲弾とは何か。これは、重砲、高射砲、原子砲と組み合わせて砲弾の弾頭に使用する核兵器のことであります。第三に、核弾頭とは、ロケット兵器、無人誘導機、魚雷等の弾頭である。四番目が核爆薬で、これは秘密工作員が使用する謀略破壊工作用の携帯核爆発物である。こういうふうに言われているわけであります。  続きまして、軍用の核器材、原子器材についても説明が行なわれた。その内容は、推進動力機関、これは軍艦や航空機に推進動力として使用する。それから、エネルギーの発生装置、これは、原子力発電装置原子力発電したもの々蓄電・充電する蓄電設備、充電設備、それから配電装置、これらを含めます。それから、第三番目が軍用検査装置、これは、コバルト六〇を使用しまして、航空機、艦船、そういったものの船体、機体の強度、これを検査する装置であります。四番目が衛生保管器材、これは、医療用、殺菌用、保全川。たとえば、コバルト六〇のガンマー線を当てますと食品の腐敗が免れるとかあるいは化学的分解が阻止されるというような意味で衛生管理上使う。あるいは医薬品として使う放射性物興。これが軍用器材の全般的な内容であります。  そこで、こういった問題だけじゃありませんで、いま一九五四年、五五年の問題に触れたわけでありますから、その具体的な例としてここで二つ実例をあげて申し上げたいと思います。  その一つは、一九五四年に、金門、馬祖のときに実際に原子兵器が使用され得る状態にありました。そうして緊急のところでその使用が停止されたという事例がございます。これを御紹介いたしますと、一九五四年八月、当時アイゼンハワー大統領によりまして台湾、金門、馬祖の防衛が声明され、ダレス国務長官が膨湖島の防衛声明を出す、スタンプ太平洋艦隊司令長官が現地視察をすると言ったあと、台湾防衛の任務を帯びました第七艦隊が大型空母ミッドウエーをはじめ三万トン級の空母三隻をそろえて、原爆搭載機が十三機発艦態勢において飛行甲板でプロペラを始動したわけであります。九月三日、この金門、馬祖島に対する中国砲兵隊の総攻撃が開始されましたときに、原爆機動艦隊はいま申し上げたように原爆を搭載して待機、発艦姿勢にありまして、この日からずっとこういう状態が続いた。最後に、九月十二日、緊急の国家安全保障会議がデンバーで開かれ、このときの議長はもちろん大統領アイゼンハワーでありますが、金門、馬和島の戦闘に米軍が核兵器を持って参加するかしないかの激論が行なわれた。このときに断固攻撃を主張しましたのが、ラドフォード統合参謀本部議長、それからカーネイ海軍作戦部長、トワイニング空軍作戦部長、ダレス国務長官、それからアレン・ダレスCIA長官、ノーランド議員、これは安全保障会議のメンバーではございませんが、当時このことを強硬に主張しております。インドシナ戦争当時もそうでありましたが、台湾海峡の核攻撃に対しまして断固反対しましたのが、ベデル・スミスとリッジウエー陸軍参謀総長であります。その反対した理由はいま省略いたしますが、ともかく、こういう事態で、これは表決ではなくてアイゼンハワー議長の裁決によりまして攻撃は中止されたわけです。  同様な例がございますが、この五十四年のこの事態にかんがみまして、当時は、戦術攻撃核兵器、それから戦略攻撃用の大型兵器との使用目的の区分が明確でなかった。さっきアイゼンハワーあるいはダレス長官の声明を読みましたように、この問題のあと、いわゆる局地的な目標に対して小銃弾のように精密な個別攻撃をする核兵器の一般的使用、これが定義されます。そういう状態が今度一九五八年の金門、馬祖の問題のときに出てまいります。それをちょっと比較のために申し上げますと、一九五八年の台湾、金門、馬祖のときには、第七艦隊が六十六隻総動員されまして、そして当時相当数の核攻撃部隊が配備についたわけであります。この中身を検討いたしますと、水爆攻撃能力を持ったものが九十機、原爆攻撃能力を持ったものが九十機、さらにその他の核兵器搭載のものが配備になった。たとえば、日本本土におきましては、横田にあります第三戦術爆撃連隊、これがB57を中心に配備についた。それから、ミサイル部隊では、防空ミサイル、ナイキ・アジャックスが入っております。特にナイキ・ハーキュリーズの核弾頭装備部隊が緊急に極東に配備された。このときに原子弾頭が公表されたわけであります。さらに、攻撃用の核装備のミサイル、マタドールなどが台湾に配備されまして、ドーン陸軍少将がこの指揮を握ったわけであります。それからまた、こういうことは幾つかあるわけでありますが、こういう機会を見ますると、核兵器の定義というものは、決して、ただ単に核爆弾あるいは核弾頭それだけで問題にしてはならないということを立証していると思います。  そこで、この核兵器の定義の問題でひとつ考えなくちゃいけませんことは、たとえば、旧海軍の定義によりますと、あるいは陸軍の文書を見ますと、兵器とは何かということが書いてございますが、その一例を見ますと、海軍用の兵器とは何かという問題ですが、艦船、武器、弾薬、器材からなっております。陸軍のほうでは、やはり、武器、弾薬、器材というものが兵器であると定義しております。そうしますと、これは現在と第二次世界大戦以前と同一視することはできないわけでありますが、戦前と今日との大きな違いを一つはっきり申し上げますと、決して爆弾とか何かだけを兵器とするのじゃなくて、今日では核兵器とそれを投射あるいは発射し運搬するものを組み合わせたものが核兵器であると考えるのが一番正当な考え方であります。したがいまして、核兵器の問題を検討いたしますときには、どうしても核兵器爆弾あるいは弾頭部だけではなくして、それがいかなる装置によって運搬され、投射され、あるいは発射されるかというような問題、それから、それらの兵器を使用いたします戦術上の条件あるいは部隊の編成、装備、任務目的、こういった兵器体系の中で考えませんと、目的を逸したような議論になる、こう思っております。  以上、簡単でありますが定義といたしまして、あとは御質問のときお答えすることにします。(拍手)
  10. 野田武夫

    野田委員長 これにて各参考人からの御意見の聴取は終了いたしました。
  11. 野田武夫

    野田委員長 続いて質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。  帆足計君。
  12. 帆足計

    ○帆足委員 いろいろ参考人各位からそれぞれ誠実な御専門のお立場から御意見を伺いまして、たいへん参考になりまして、委員の一員といたしまして感謝いたします。  昨今戦略の変化はまことに目まぐるしいものがございまして、この軍事戦略の変化が国の運命、人類の運命に与えておる影響というものはいかに深刻であるかということは、過去二十年私どもが身をもって体験したところでございます。その他、技術の面におきましても、今日は非常なる科学進歩の時代でございまして、これが人間のしあわせのために使われます場合には、たとえば最近における医学の進歩、科学療法の進歩など、いかに多くの喜びと希望を人数に約束しておるかということも各位の御承知のとおりでございます。  そこで、お尋ねいたしたいのでございますけれども、とにかく、私ども間近に経験いたしましたのは、B29があらわれ、戦車の大量生産があらわれまして、日本はヨーロッパのまっただ中に置かれたと同じ状況になりまして、振古未曾有の民族の悲劇を八月十五日に経験いたしました。その日をもって歴史はとまったのでなくして、たちまちさらにそれのまた何十倍、何千倍の速度をもって技術は進歩してまいりました。B29にかわりまして音より速いジェット戦闘機があらわれ、それがまた戦略・政治に非常に大きな影響を及ぼしたかと見ると、たちまちにしてまた原爆は水爆にさらに発展し、さらに、それを輸送する手段としては、ジェット機がもうどちらかといえば時代おくれになって、ロケットの時代に移り、そのロケットがまた、またたく間に人工衛星、大陸間弾道弾となって、数年後には地球のまわりを常時回るだけでなくて月世界または火星にも足をとどめようとする勢いを示しております。こういうときに、世間の普通の形容詞で申しますならば、戦艦大和一万隻にも匹敵する戦力を待っておる原子力潜水艦が東京湾に近づこうというのでございますから、たびたびこの委員会において発言もなされましたように、まさに百年前にペルリの黒船が下田の港に近づいたと同じような大きな歴史の一こまにいま直面しておる次第でございまして、参考人各位が真剣に意見を述べられるばかりでなく、与党。甘党を問わず、こうして静かに謹聴いたし、また、新聞の社説を見ましても、硬軟いろいろの議論がありますけれども、ジャーナリストの諸君もきわめて慎重な態度をとられ、国民にこれを正確に報道され、また、特殊の政治的立場に置かれております政府当局も、従来に比べては比較的冷静に野党の意見も聞かれて、まだ慎重な研究とアメリカとの交渉を続けておるという状況を見まして、私は、一そうそのように慎重でありたいと、こう思いながら参考人各位の意見を伺います。もちろん、私ども外交委員でございますから、自然科学の事情にはうといのでございますけれども、しかし、日本の国防ということについては、もはや旧式のいわゆる軍人というものは日本にはおりません。陸軍士官学校を卒業したということは、過去においては何かの利益になったことでありますけれども、今日ではそれは誤った偏狭教育を受けた奇形児を生んだという悲しむべき結果になりまして、今日は、地球全体、すなわち人類の運命について理性を持っている人たち、また祖国の運命について深く考える人たちの意見、すなわち、ちょうど福沢論告先生が、独立の気風なくんばほんとうによい国防はできない、また個人について人格を尊重し人間性を尊重する気性なくしてはほんとうの独立民族にはなれないと言われたような意味の人間の理性が、戦略論の考慮にあたってもきわめて重要な時代になってまいりました。私は、アメリカイギリスの新聞論調などを読みましても、時代おくれの職業軍人諸君の苦いたものよりも、若いケネディ大統領の書いたことばなどの中にこの若い政治家の悩みも苦しみも希望も含まっておることを見まして、御承知のように、今日の日本の野党の立場とアメリカ大統領の立場との間には残念ながら非常に大きな見解の相違があるにもかかわらず、なおかつ非常に他山の石として慎重に大統領の教書には目を通す、こういう気持ちでございます。したがいまして、いま国防の責任に当たっておるのはむしろ外交委員各位であると言うても差しつかえのない時代である、こう思っておりますので、皆さま専門家の御意見を決しておろそかにせずに承ったつもりでございます。  さて、本日議題に供せられております問題は二つの範疇がありまして、一つの範疇は、原子力潜水艦日本に参りましたときの放射能の弊害でありますが、これはまた別な委員会で別な機会に論ずることになっておりまして、学術会議原子力委員会、物理学者原子力学者の諸君が、日本における放射能の問題について、特に、海産国として海の食料に依存する度合いの多いこの国において、この放射能の問題についてもっと慎重な態度をとりたいという態度を示されておることは御承知のとおりでありますが、これは直ちに本日の議題ではないのでございます。これは今後引き続いて当委員会において審議されることになっております。  ただいま皆さまから伺いまして大いに参考になりました問題は、第一は、原子力潜水艦並びに核装備を中心とした技術の発展と、アメリカ日本に対する要求、これに対する戦略的な諸問題、もちろん、われわれのふるさと、われわれの祖国日本の安全及び世界の平和という観点からする戦略上の問題、さらに、技術的には核装備とは一体どういうふうに解釈したらよかろうか、こうい問題でありまして、これについての悪党の接近がある程度行なわれておりませんと、せっかく善意を持って政府当局と話し合いましても、いつも小田原評議を続けまして、できるならば超党派的によい結論を出したいという意志すら、核装備の定義についての概念の開きが大き過ぎますために、話がなかなか通じない。もう一つは、非核武装地帯という考え方が、広範にかつ有力に、しかも強靱なる大脳を持っておられる人たちの間からも支持されて論議されておりますが、核装備を持って安全を考える考え方に対して、むしろ非核武装地帯を広げることによって人類を救うという方法もあるではないかという有力なる考え方がある。しかも、これは、現実に政治力も持っており、そして人数の偉大なる頭脳の幾つかといわれる人たちがこれに対して非常に熱心である。こういうことをも考慮しつつ、そういうことが本日の議題になっておるのでございます。したがいまして、順序不同でございますが、私は、せっかく参考人の方に来ていただきましたので、今後の研究についてもっと深く考えまするために、二、三御質問申し上げまして、また多少無理な御質問もいたしまして御非礼にわたる点もあろうかと思いますが、お許しを願いまして、それぞれのお立場で率直なお答えなりお考えのほども承りたいのでございます。こういう重要な問題に対しまして、人それぞれの見解があり、その見解の背後にまた職業もあり、利害もあり、教養の水準もあり、いろいろな問題があることは、今日の人類の進化の過程においてやむを得ないことでございますから、見解の相違ということよりも、お互いに誠意をもって意見の交換をするということが、今後の外務委員会の参考になろう、こういう気持ちを持って私はお尋ねしておる次第でございます。  第一に、技術的な問題を先にお尋ねいたしますと核装備の定義について依然として各参考人の方々の御意見もニュアンスの違いがありますし、政府の答弁においても、そのときそのときで必ずしも納得できないような状況でございます。そこで、それぞれ専門の方にお尋ねいたしたいのでございますが、私どもが核装備と言います場合は、もう常識的に言えば、運搬設備、核弾頭を一体としたものをいうというのがまず常識論でありますけれども、しかし、一国と一国との間に交渉が起こりまして、一つ日本に核装備を持ち込みたいような気持ちもある、片一方ではまた、強力な野党の人たちもおり、原爆の試練を受けた国でありますから、核装備をもっと厳重に定義いたして、待ち込むことを好まない政治勢力も強い、そういう舞台における論争でありますから、この定義が非常にもめますことも、私はしごく自然なことであると思っております。しかし、それにしても、やはり事の真実を明らかにしておかねばならぬ。第一に、政府自身が核装備を入れたくないと言っている。入れたくないと言っているにはそれだけの理由があるに違いありません。入れたくないならばどういう理由で入れたくないか。その入れたくないものを入れないように、そういう見地から定義をすることもできようと思います。また、技術的な定義もありましょう。定義の仕方についても、この問題には技術性や政治性が加わることもある程度やむを得ないと思いながら私は伺いますが、まず第一には、運搬・装備の問題であります。運搬することなくしては核装備というものは生きないのでございますから、運搬・装置を全然無視して核装備ということを論ずることはできない。その点において、野党側におきましては、核装備についての定義を、運搬・装備を入れていつも主張しておるということについて、そういう理由があるということは、これは理解し得ることであると私は思っております。しかし、もう一つは、そこまで言うならば、それはいろいろなものが運搬できるから、貨客船だって運搬できるじゃないかという御議論もいま承ったわけでございまして、私は、国民各位が外務委員会の議論を通じていろいろお考えになり、国の運命をお考えになるにつきましても、確かに参考人の言われたことばの中にはいろいろ考慮すべき問題がある、こう思いながら伺いました。それでは、今度は、もっと定義を小さく考えました核装備、狭義の核装備とは何であるか。そうすると、発射する装備並びに核弾頭、まあ、しろうとですけれども、そういうことになろうと思います。これらの問題につきまして、私どもは外務委員でありますから科学技術委員諸君のように専門の知識が少のうございますから、どなたか専門の方に伺いたいのですが、核装備、発射の設備というものは大体どういうふうにわれわれが理解したらよいか。一般の火薬による魚雷の発射もできる、それから核兵器もできるから、まあ同じようなことではないか、したがって、貨客船に原爆を載せ得ると同じように、核を発射する狭義の兵器装備、これも貨客船と同じだから、まあ遊覧船と同じように気楽に考えたらよいではないかという意味の御議論も伺って、私は多少理解しがたい。むしろちょっと心外に感じた。前の委員会でそういうこともございましたので、ひとつ専門の方から、どなたからでもけっこうですが、まず林さんから伺って、それから岸田さんに伺って、また参考意見がその他の方々にあれば伺いたいと思いますが、核装備、それから核弾頭というものは一体どういうものか。ソ連の核弾頭は、うわさに聞きますと、一発で最高一億トンに相当するものができたということも伺いました。多分それは非常に大きなものであろうと思いますが、いまアメリカで言われている二千キロ、四千キロ、また、先ほど議論になりました小型核兵器ということになりますと、そう大きいものでもあるまい。事態急を告げたときに、三十五時間もかかってハワイまでカボチャくらいの大きさの核弾頭をとりに行くこともあるまいから、手ごろのところに隠されていたら、一体だれがそれを監察するか。戦争は道徳を越えたものであって、むしろ非道徳、非情の極致であるということも、諸君とともに知っておかねばなりません。軍備に道徳というものは残念ながらない。また、人類の惨禍の一こまでございます戦争とは非情なものである。それを私どもは念頭に置いておかねばならない。したがいまして、核弾頭は一体どういうものであるか、どのくらいの大きさのものであって、どういう極数のものがあるか、小さいやつはポケットに入るくらいのものであるか。近ごろは四国産の小さなスイカが出ておりまして、一つ三百円ですが、こんなスイカをだれが買うかと言ったら、これは病院で患者さんが買うといいますから、ああいうものだったらちょっと隠すことも簡単にできるわけです。  したがいまして、まず核の運送・装備についての御意見。これは相当広義に解釈し得て結論しにくいかもしれません。第二には、核発射の装備というものを私どもはどういうふうに理解したらいいか。今後はそういうものの実物をわれわれも現地に行って見たいと思っております。それから、核弾頭とは、どういう種類があって、どういう大きさのものであって、大体どういうものであるか。私どもに教えるということと同時に国民の各位にもやはり教えておいていただきたいということで、林さんに申しておるわけです。それから、山岸田さんとそれから各自また御専門の方に教えていただきたい。これを第一点にお尋ね申しておきます。
  13. 林克也

    林参考人 いま実例といたしましてアメリカ空軍が発表しました核兵器体系というものを御説明してみます。これはわれわれが共同研究で書きました本の中に引用しておいたものでございますが、たとえば、水爆弾頭つき右翼ミサイルのハウンド・ドッグを装備したB52G型の核兵器体系とは何かということでございますが、これは、大型ジェット重爆というのは昔の爆弾投下の形式で、現在ではミサイル空中発射母機という形になっております。この兵器体系というものは、まず搭載いたしますハウンド・ドッグという有翼ミサイル、それから母機B52重爆G型、それから、ミサイルの発射点にまで入り、発射攻撃を完了するための通信・航法・爆撃・射撃の装備一式、それから、今度は、B52及びハウンド・ドッグの保安設備、部品及び基地要員、基地設備、訓練用設備、それから給油機、援護戦闘機を含んだものがB52及びハウンド・ドッグの核兵器体系です。これは一例にすぎません。それから、潜水艦あるいは今度参りました戦闘爆撃機のF105サンダーチーフの場合もそうであります。  次に、核弾頭の問題に入っていきたいと思います。この核弾頭というのは、先ほど申しましたように、爆弾の場合には、核分裂を中心とする俗称原子爆弾、あるいは融合反能を基本といたします融合爆弾、いわゆる熱核兵器水爆と俗に言っておるものでございますが、また、この両方合わせました三F爆弾、——一番中心部では原爆の起爆装置核分裂を起こす、その熱でもって重水素化リチウムが核融合熱反能もしくは核反能を起こす、そのために生じました多量の高速中性子で外側を巻いているウラン238が核分裂を起こす、そういった三種の爆発効果を持った三F爆弾、そういったいろいろな爆発の弾体がございます。それを飛行機から投下する場合、これを普通核爆弾ということばで言っておりますが、核弾頭と言いました場合には、一般的理解において、ミサイルの中にその爆発装置が入っている場合にはミサイル核弾頭と言います。それから、サブロックのような潜水艦から打ちますロケット魚雷、これは正確な表現じゃありませんが、潜水艦用ロケット、この場合には、その弾体頭部におさめられた爆発物が核弾頭になります。同様に、無電あるいは防空用の対空ミサイルの弾頭に使う、そういうものを核弾頭、こういう言い方をしているわけであります。  それから、どこにそういうものが置いてあるかという例では、これは具体的にいつどこに何発の核兵器を配備・保管しているという発表はいまだかつてないわけであります。それに準じた資料はここに出ておりますので御紹介いたします。これは一九五五年三月二十八日にニューズ・ウイーク誌がアイゼンハワー大統領に対するインタビューで出したものでありますが、当時、アイゼンハワー大統領は、一定条件下においては非常事態宣言が発動されて、そしてあらかじめ所定の防衛線において所定の作戦計画に従って部隊が戦闘配備についたときには、ある状態になりますと、もうその場合は現地指揮官が戦術核兵器を使用し得る状態になる、当時こういうことをきめたわけであります。それで、ニューズ・ウイークには、「アイゼンハワー大統領は当該地アメリカ軍司令官に対し、一定条件下においては——すなわち非常事態にさいし、ホワイト・ハウスの承認をまつことなく、これら原子兵器を使用する権限を委任している。」、これは現在では多少変わってきましたが、基本的には変わりございません。その場合にどういうところに置いてあるかということになりますと、やはり、さっき申し上げた核兵器体系の部隊の所在地には、必ずそれに応じた核兵器を保有・保管していると見るのが常識だろうと思います。
  14. 帆足計

    ○帆足委員 きわめて重要な問題で、またそのためにこの委員会を開いた次第でございますから、これは官民一緒に御質問もして、主観的判断よりも客観的事実を明らかにしながら進みたいと思っておりますが、ちょうど政府委員も参っておりますから、一言だけはさんでいただきたいのでありますが、政府委員はいまの核装置というものをどういうふうに定義しておられますか。また、核弾頭の大きさはどのくらいの大きさのものと考えておりますか。見たことがあるかどうか。また、写真で見たこともあるか。それもちょっと伺っておきたい。
  15. 安藤吉光

    安藤政府委員 第一の核兵器の定義については、先般当委員会に御提出いたしましたとおり、今日国際的定説と称すべきものはございませんが、一般的に次のように用いられているようでございます。「核兵器とは、原子核の分裂または核融合反応より生ずる放射エネルギーを破壊力または殺傷力として使用する兵器をいう。」、それから、サイドワインダー、エリコンのように核弾頭を装着することのできないものは非核兵器であることはもちろんでございます。オネストジョンのように、核、非核両弾頭を装着できるものは、核弾頭を装着した場合は核兵器でございまして、核弾頭を装着しない場合は非核兵器でございます。それから、ICBM、IRBMのように本来的に核弾頭が装着されるものは核兵器でございます。こういうものがかつて防衛庁より国会に提出しましたものでございますが、これをあらためて御提出しておるわけでございます。  核弾頭を見たかとおっしゃいましたが、私は見ておりません。防衛庁等についてよく調べまして、後日彼らの意見を徴してお答えしたいと思います。
  16. 帆足計

    ○帆足委員 重ねてお尋ねしたいのですが、いま、発射装備のほうは、爆薬と核兵器と兼用のものは一応これは核兵器と認めない、こういう便法を考えておる。そうしますと、しろうと考えで申しますと、これに核弾頭が入りますとこれは核兵器に転化するわけでありますから、私は、核弾頭の大きさというものは大体どのくらいの大きさからどのくらいの大きさまであるか聞いておかなければならない。検査権もないと政府はよく言われます。私は大体友を信ずるたちの者でありますけれども、しかし、戦争については、一国の防衛の問題については、軽々しく他国を信ずるほど意思薄弱な人間ではありません。したがいまして、局長ともあろう者ならば、核弾頭とは、見たことがなくても、大体どのくらいの大きさからどのくらいのものである、このくらいのことを知っておられなくては、われわれに対する答弁者として出席する資格はあるまいと私は思っておる次第でありますから、御存じないならこの次までに御勉強願うこととしてほかの参考人に伺いますが、もう一度重ねてお尋ねしておきたい。条約局長と相談してもけっこうです。
  17. 安藤吉光

    安藤政府委員 私は、軍事専門家でもございませんし、防衛庁におるわけでもございません。先ほど申しましたように、防衛庁にもよく聞いてみまして、後日御返事ができればしたいと思います。  それから、核兵器というものに対して国際的定義はございませんけれども、たとえば、アメリカとベルギー、あるいは日本アメリカ合衆国との原子力の非軍事的利用に関する協定がございます。それは現行の協定でございますが、その中に、「原子兵器とは、原子力を利用する装置で、その主たる目的兵器兵器の原型または兵器の試験装置としての使用又はそれらの開発にあるものをいう。ただし、その装置の輸送又は推進のための手段は、それが装置の分離されかつ分割されうる部分である場合には含まれない。」とあるのが一つの参考のものになるかと思います。しかし、政府は、昭和三十三年当国会に提出しまして以来、一貫して先ほど申し上げたような見解で進んでおる次第であります。
  18. 帆足計

    ○帆足委員 高文の試験をお受けになったころはそういうものもなかったわけでございますから無理もない。われわれもまた大いに勉強しなければなりませんが、学ばざれば禽獣のごとしということばもございまして、お互いにほんとうに勉強しなければならぬ。成田君が言いましたが、いまは知るは難く行なうは安し、私はある意味ではいまそういう時代だと思うのであります。知るということは行なうことの前提として非常に重要である。私は、青年時代に、あしたに道を聞けば夕ベに死すとも可なりという孔子のことばを聞いて、観念論ではあるまいか、知っただけでは何にもならないじゃないかと思ったのでございましたけれども、近ごろの激しい世の中を見ましても、たとえあしたに死ぬとも、きょう知ることが重要であり、国民とともによく知っておることがやはり民族の道を切り開いていくゆえんであるということを痛感いたします。したがいまして、ただいまの局長の御答弁には多少あきれて、それすら知らないでこの重要な問題を論議されておるということについては多少遺憾なきを得ないと思っておる次第でありますから、至急お調べを願いたい。  参考人各位にも、突然お呼び出し申し上げた次第でございますから、いろいろ無理なことをお尋ねいたしますのも恐縮でございますけれども、斎藤参考人関野参考人におきまして核弾頭のことについて何か御存じのことがありましたならばお知らせいただきたい。国民はこの一点を非常に心配しておるわけであります。もちろん、両参考人は、それが入ることが逆に一種の防止作用にもなるという御見解をお持ちで、これも一つの考え方であろうと思います。しかし、核弾頭とは一体どういうものであろうかということにつきまして、まあなでてみるという機会はなかったにしろ、写真をごらんになったり、また、御専門の見地からお調べになったことがあれば、お教え願いたい。それが問題になっておる点でどうしたら調査できるかとか、秘密に運搬されやしないかということを国民は心配しておる事態でありますから、本日おわかりでしたら御報告願いたい。また、不幸にしてそこまでお調べになっていないようでございましたら、また他日お伺いいたしますから、どうか御答弁をお願いしたいと思います。
  19. 関野英夫

    関野参考人 私も、民間におります関係から、それはほんとうかと言われましても、それはほんとうでありますと確言はいたしかねるのでありますけれども、私ども調べましたところを申し上げたいと存じます。  大型のものにつきましては、先ほど岸田さんから言われましたように、大体一トン当たりが四メガトン、これがまず現在の定説でございます。それから、どれぐらい小さいものまでできておるかということでございますが、それはもちろん各国とも秘密になっておりますけれども、実験の結果はある襟度発表されておりまして、一九五八年だったと存じますが、例のハードタックの第二実験でネバダでやりましたのが小型のものをやっております。その場合に、実験的には爆発力が一トンあるいは零トンというのがあるのであります。これは何を意味するかといいますと、核反応は起こしましたけれども、爆発力としての破壊的な力は出さなかったというのが零トンという意味であります。それから、一トンと申しますのは、起爆用に、一トンのTNT、普通の爆薬ですが、これを使っておりますので、実際問題としては核爆発としての力はほとんど出してなかったのじゃないか、しかし、核反応は起こしておる、こういう意味でございます。したがって、爆発力のほうから言いますと、一応実験的に養えばゼロまであるいは一トンまでというようなものができる。  重さでございますが、重さは、私どもも的確なことは存じませんけれども、現在実用されている最小型核兵器で私どもが存じておりますのは、例のデーピークロケットという、歩兵部隊が第一線で使います核兵器があります。これは、御存じの、歩兵が携帯いたしますバズーカ砲よりもちょっと大きいくらいのロケット砲で発射できるものでございますから、そのたまの重さはおそらく数十キログラムであろう、こういう推定がつくわけでございます。ただ、この場合に、核兵器が小さくなるから、ただいまおっしゃいましたように隠匿できる、どのようにでもなる、どういう兵器にでもつく、これは可能性の問題としては確かにそうであります。可能性の問題だけ取り上げれば、現実は核弾頭はつきませんが、ナイキ・アジャックスにもつけようと思えば技術的にはつけられることは私は否定しません。しかし、核弾頭がだんだん小さくなると一体どういうことになるのか。核兵器というものがなぜ問題になるかといえば、結局、核という名前ではなくて、その核の効果でございます。大きな破壊力を持つ、あるいは放射線の効果を持つ、あるいは残留放射能の効果を持つ、これが普通の爆薬に比べて違った性質でありまして、そういう性質があればこそ核兵器というものが問題になるのじゃないかと存じます。ところが、TNT換算にいたしまして一トンである、二トンである、十トンであるというような爆発力がそういう小さなものになりますと、その破壊効果にいたしましても殺傷効果にいたしましても、普通爆弾でありますTNTとほとんど変わらなくなってくる。要するに、その間に断層がなくなりまして、TNTと核爆薬との間が連続的になるのだということになってまいりまして、そういうものは核兵器という単なる概念で議論しては間違いになるのだ、こういうことだけ申し上げたいと存じます。
  20. 野田武夫

    野田委員長 帆足君にちょっと御注意いたします。ほかに四人の質問者がありまして、あなた一人がおやりになりますと他の方が御迷惑でありますから、御注意いたします。
  21. 帆足計

    ○帆足委員 他の同僚委員の方の御質問もありますから、なるべく簡単にしますが、いま伺ったことはきわめて重要なことでありまして、だれからもそれを聞かれるのです。どこへ行きましても、小さいのは夏ミカンくらいからスイカくらいの大きさだろうかということを聞かれる。というのは、政府が核装備として一つの単位を考えておられるならそういう質問は出ないのですけれども、核弾頭という狭義のものだけ、それが入っておれば禁止するけれども、入っていなければいい、そういうことになると、どこの座談会に参りましても、帆足さん、ひとつ専門家の方に聞いてもらいたい、夏ミカンくらいの大きさからスイカくらいの大きさのものまであるそうで、その破壊力が長崎の原爆よりも小さくても、放射脂というおそろしいものがあるから、そう簡単に考えるわけにはまいらぬ、こう言われますので私はお尋ねしたわけなんで、正確な答弁が得られませんから、後ほどどなたかもつと詳しい方に答弁を願うことにしまして、他の同僚委員の質問もありますから、あと一つ二つの質問にとどめます。一括して言います。  第二は、戦略体制のことで私ども心配しておるのですが、たびたび言うのですけれども、日本がせめてニューヨークかボストンかアメリカの向こう側におるならば、またこれもいいです。人のふんどしで相撲をとるということも、趣味としてはあまり高級な趣味ではありませんけれども、やむを得ないことでございます。しかし、日本は、サンフランシスコを隔たる五千海里の沖合い、アジアの断崖の真下の四つの島です。しかも、アッツ島のように無人島ならばとにかく、人口一億です。一億の人口の食糧、人口の密集度、海への依存度、それから御承知のようなアジアの特殊な政治的過渡期、これらのことを考えますと、私どもは、日本は非核武装地帯に接近することが身の安全を守るゆえんであって、過去の恩恵に多少あずかったということをもってアメリカとの関係があろうとも、だんだんそういう悪因縁を薄くして、非核武装地帯に接近するほうがよかろう、こういう考えを持っているわけです。これは政治論でありまして、技術者の皆さんにこのことをさらに突っ込んでお尋ねすることは恐縮ですから、むしろ、それよりも、私の伺いたいのは、日本の立地条件から見ての問題です。戦略のイロハを御存じの方ならばおわかりのはずですが、アメリカアメリカを守ろうとして日本を犠牲基地にしようとしておる。私は、「希有なる沖繩の戦略的価値」というアメリカ上下両院の軍事委員会の記録を見て、肝をつぶさんばかりに驚きました。したがいまして、最近それについての一書を書きましたのですが、もう実に驚きました。しかし、考えてみると、アメリカの軍事委員会としてはそれは当然のことでしょう。日本をどう見ておるかというと、日本を前線基地、補給基地、犠牲基地として、しかも固定の核兵器基地として、爆撃を受けたときに直ちに潜水艦その他の方法によってまた反射爆撃をし得る準備の基地にするということ。もちろん、それによって力の関係で防止し得るという議論も成り立ち得ますけれども、アメリカ自身としては、自分とモスクワは免れても、他の部分は犠牲になってもやむを得ないというような戦略方法をとっておるし、日本はまさにそれに適当な立地条件に入っておる。軍事評論家という肩書もここにいろいろ拝見しておりますので、お尋ねいたしますが、孫子の兵法の一ページでもお読みになるならば、日本の悲劇的位置は、アジアに依存して背後と結べば防衛の方法もあるけれども、現状ではどういうことになるか。私はアメリカを別に憎むわけではありません。ホイットマンを生んだ偉大なアメリカですから。しかし、立地的に、宿命的に考えるならば、アメリカの愚かな軍事委員会が論じておるように、希有なる沖繩及び日本の軍事的価値、その国民に対しては草市評論家はいささかの愛情も責任感もなく論じておるその文章を読んで、保守党の方であろうと、社会党の方であろうと、私は戦略というもののきびしさを思わざるを得ないのではないかと思う。この点について、参考人はどなたも良識ある方でありますが、あまり多くの時間を費やすと何でありますから、朝日新聞の岸田さんにインテリ代表として御所見の一端を伺って、もし私にもう一つ質問が許されるならば、もう一人の方にほんの二、三分だけ伺って、それでやめるということにいたします。
  22. 岸田純之助

    岸田参考人 私はいまの御質問にお答えするほどのものを知っていないのですが、先ほどのことに関連いたしまして、先ほど大きさをお尋ねになったのですが、核兵器の大きさというのは、臨界量というがあることを先ほど申し上げましたが、臨界量は数キログラムというふうに言われておる。そうすると、それよりも小さいものはできない。それからまた、一〇〇%の高質のものはできないのですから、二〇%とか三〇%とかいうものが最高の限度だということになるのです。そうしますと、その数倍、つまり、臨界量が五キロとか十キロとか、もっと小さいものであったとしてもその何倍かになりますから、それが最小限五キロとか十キロとかが必要だというふうになる。最初お話ししたときに、五キロあるいは十キロというふうに言ったのは、その最小限の数字を言ったのです。それに今度は制御装置をつけたり発射装置をつけたりしますから、それからどのくらい大きくなるかということはわからないのですが、いずれにしても、核兵器の進歩というのはもう限度がない。その理論的な原則はともかくも、限度がないわけですから、その辺のところまでは近づいていくということになります。ただ、その場合に、したがって、威力のほうから言いますと、先ほど関野さんが言われました一トンとか六トンとか三十六トンとかあるいは七十二トンとかいうふうな実験は確かにしているのですが、だからといって、これが核兵器通常兵器とがくっついていて同じものかというと、決してそうではありませんで、そうではないということは、実は、私たちが言っているのではなくして、アメリカの国防長官のマクナマラがそのような意味のことを言っていると私は思います。一月の三十日にアメリカの下院の軍事委員会でマクナマラが相当長いステートメントを発表したわけですが、その百何十ページにわたるステートメントの中で、彼は、ヨーロッパにおける核兵器の使用という問題を取り上げて、ヨーロッパでもし戦術核兵器を使うような事態が起これば、そうしてまた、そういう事態は、マクナマラの証言によりますと、ソビエト通常兵器攻撃を加えてきた場合にも、ある大きさの通常兵器攻撃の場合には、直ちにということばを使っているのですが、直ちに核兵器で応じなければならないような状態がいまヨーロッパにある、そういう核兵器の使用をした場合、ヨーロッパの場合にはそれによって非常にたくさんの被害、死者が出るだろうと言って、そういう事態になることをおそれて、つまり、核兵器を使えばそれがすぐ大きくたるということをマクナマラ国防長官はそのとき非常に心配をして、憂慮をしたことばを使ってその報告をしております。したがって、それが戦術兵器であろうと、いかに小さくなろうと、核兵器を使う場合には、それは通常の兵器を使ったものとは全然違うものだということは、アメリカの責任者であるマクナマラ国防長官が非常に心配していることだということをつけ加えておきたいと思います。  それから、いまの御質問に対して答えることは知らないのですが、しかし、非核武装地帯というのは、ソビエトも、もちろんアメリカ自身もいろいろと考えているようです。そしてまた、それも一つの手がかりだということを、アメリカの政府自身が考えているというふうには言えないのですが、軍事問題を考えている人たちがこれを政策にするという方向でいろいろなことを考えている。たとえば南アメリカを非核武装地帯にするとか、あるいはアフリカを非核武装地帯にするとか、これは現にいまそうですから非常に簡単なことですが、ともかくも、どこに、どの程度の非核武装地帯をつくるための可能性があるかというふうなことは、いますでに研究自身は始まっておる。したがって、そういう問題も、もちろん、日本の中でも、どこに非核武装地帯をつくるかという問題に関しては、どの部分に非核武装地帯がつくれるか、つくる場合の困難な点、あるいは、どういうふうな方法でやればその手がかりができるかというふうなことは、一つずつの地域においてその可能性とその具体策について私たちは考えて、そして研究をしていかなければならないことだと思っております。
  23. 帆足計

    ○帆足委員 委員長から御注意がありましたから、これで最後にいたします。  ただいまの非核武装地帯の問題では、私は保守党の石橋湛山氏の提案が一つのきっかけとして参考になると思っておりますが、最後に、ただいまのような日本の戦略的地位、こういうことを考えますと、これはアメリカに残念ながら戦略的に利用される前線犠牲基地になる。これをどうして軍事戦略家の諸君がいたく死ぬばかり心配しないのか、私は不思議に思う。そして、自由主義の観点から言ってよくない主義の、たとえばスターリン主義というような意味の社会主義を憎むあまりそれについての対策を必要と言う方々でも、なおかつ、日本を愛するならば、他国の犠牲基地、前線基地になるのは困ると言う。そういう考えというものは、いま朝日の方が指摘されたような考え方もあるし、ヨーロッパにも多くの考え方があるし、特にカナダのピアソン大統領の演説などを読みますと非常に深い考え方を持っております。したがいまして、私はその戦略論についてひとつ意見を伺いたいのと、もう一つ、このたび政府が発表した月に一、二回来て一週間ぐらい滞在するというのを見て、私は腰を抜かさんばかりに驚いたのですが、一体いまのような日本の世論の最中に急いで来られる理由がどこにあるであろうか、なぜあるか。私は、礼節としてもアメリカはしばらく遠慮するべきであるまいかと思う。これはきょうも良識ある大新聞の社説に書いてあります。そして、戦略的犠牲基地に供されるおそれがあること、これは軍事評論家のだれしもが一番考えなければならぬ問題であるのに、案外に論議されていない。本日などは、私は、ここに地図を掲げて論議するのがほんとうだと思うのです。地図がないということはこれは失態だと思うのです。林さんにその点簡単でけっこうですから御所見を伺いまして、私の質問はこれで終わります。
  24. 林克也

    林参考人 戦略問題というものは大へん複雑で、一般に広く戦略、戦術と言っておりますが、戦略というものはどういう意味でとらえるか、それから戦術というものをどういう意味でとらえてその中で具体的に考えるかということがあるわけです。大へん失礼ですけれども、いまの帆足さんの御質問は抽象的過ぎまして、お答えが非常に困難ですから、私が任意に考えたところで申し上げたいと思いますが、これは別に学問的な定義をするような場所でもありませんし、また、そういう必要もないと思いますから、大ざっぱに言いますと、現在極東で米軍がとっている戦略、戦術、あるいは社会主義陣営のこれに対抗する戦略、戦術というものを大づかみに言いますと、第一番に考えなければいけないのは、これはアメリカ並びにその他の自由主義陣営あたりでもそうでありますが、問題にされているのはアジアにおける社会主義体制の発展というものであり、それがアメリカにとって大きな戦略上の問題になっております。簡単に言いますと、現在のところ、ソビエトの軍事的な戦力を十分抑えて対抗できるだけの陸海空三軍の戦闘力を配備する。それから、中国の沿岸における封鎖状態を一そう強化していくために必要な部隊の配備と戦闘し得るような戦力を維持していく。さらに、東南アジアにおいては社会主義が発展していく。民族独立連動も社会主義の発展というふうにアメリカはとらえているようでありますが、たとえば、一昨年あたりからフィリピンを中心に起こりましたアジア反共運動というような中でも盛んに東南アジア各国外務大臣あたりが言っている記録を見ますと、この辺に強固な反共のバリケードをつくって、これがテーラー将軍の重要な作戦と言われるゲリラ戦争体制と結びついて、この地域に大きな反共回廊地帯をつくっていこう、こういう形で行なわれているわけでありますが、たとえば、その後のインドシナなどの戦闘を見ましても、こういうことが言えると思うのです。一つには、ゴ・ディンジェム政権の能力が非常に行き詰まって、タイと南ベトナムにいわゆる中立地帯ができましたために、切断されている状態にある。あるいはタイが後方からビルマによって抑えられて、タイの反共陣営としての軍事的価値が非常に弱くなり、また、フィリピンは戦略的に言うと背後にインドネシアを控えてあまり安定していないという中で、日本がそういった東南アジアから東北アジアにかけての軍事上の一番中心地といいますか、期待をかけられているところになっているわけであります。たとえば、ことしのアメリカの下院におきまして、後ほど記録を整備してもう一回確認して申し上げますが、一そう日本の軍事力を強化しなければならないということと、その軍事力の強化は、もっと戦力を充実した形でアジア全体の軍事力の中心になるように持っていくということ。そのために今後軍事援助の費用をどうするかとか、もっと日本に防衛費をたくさん出させる方法をどうするかというような点について、ダニエルという下院議員であったと思いますが、マクナマラ国防長官に質問しております。これがオフ・ザ・レコードになっておるので全文がわからないのでありますが、ダニエル議員の質問事項だけ読んでいきますと、要するに、いまのところ日本政府は防衛にあまり熱心でないということを言い、防衛庁の計画があまり進行しないのではないかということについて質問し、マクナマラ国防長官の答弁はオフ・ザ・レコードになっておるのでありますが、いまの質問に対するマクナマラ国防長官の返事を聞いて私は満足するような気持ちがする、そういう事態になっているならば安心であるというようなことを言っておりますから、多分ダニエル議員が満足するようなことを言ったの、だろうと思います。そういう中で日本の防衛が次第に強化されていくということは否定できないことでありますと同時に、この防衛の強化というものが、太平洋にありますアメリカ太平洋統合軍の共同作戦体制として強化されていくということを考えます。その中で、はっきり言いますと、主力は第七艦隊、それから、第五戦術空軍、第十三戦術空軍、こういったものが中心になるわけでありますが、そのためにはすでに韓国にあります部隊には核部隊が配備されて、これはアメリカではっきり言っておりますが、第四ミサイル部隊というものが三十八度線近くにある。そういう形で核戦闘体制は現在強化されておるということであります。  あとの点は、時間がかかりますので、また後ほどの質問と関連して申し上げることにいたします。
  25. 斎藤忠

    斎藤参考人 外交委員各位が国家の正大な運命を御論じになるのに深い知識と識言がなければならぬことは当然の話であります。私どもと同じように論客でございますから、外交委員各位もわれわれも正確な知識が要るだろうと思います。何も自分の手で触れ自分の目で見る必要はない。正確な知識というものはほかに知性によって得る方法があると思います。  いまおっしゃった非核武装地帯でございますが、これは大いにけっこうだと思います。ぜひそういう案は御推進願いたい。だが、しからば、なぜもう一つお進めになってソ連と米国とこの両国の核武力を全然廃止しようというところまでお進みにならないか。それがほんとうではないか。それができれば何ら問題はないのです。ただ、今日までのところはそれがどうにもできなかった。八たび軍縮会議を重ねてもそこまでいかない。いかないからやむを得ずに核抑制力にたよるよりほかに方法はない。それから、国連というものも今日のような状態ではたよりにならないから、地域的安全保障体制というものができまして、これによって今日の平和というものが維持されておるわけです。それで、今日世界で戦争が起こり得なかったのは、軍縮の成功のせいでもなし、また平和運動の効果でもない。ただ、現実は、核抑制力の効果と、地域的安全保障体制の結果でございます。これは否定し得ない現実でございまして、日本はこれに安全を託する、そういう体制と私は思います。
  26. 野田武夫

  27. 正示啓次郎

    ○正示委員 私は、時間の都合上、お二人にだけ御質問を申し上げます。  まず、林参考人は、きょうはたいへん御苦労さまでございましたが、遅参をされましたので、岸田、斎藤関野の三参考人お話をお聞きいただけなかったのはたいへん残念でございまして、そこで、若干その三人の方のお話と林さんのお話の食い違う点だけを確認をしておきたいと思うわけであります。  先ほど、斎藤参考人から、アメリカ原子力法を援用されまして、また、アメリカとヨーロッパとの条約協定等を援用されまして、いわゆる核兵器ということの定義あるいは範囲の中には運搬手段または推進手段、こういうものを除外するというお話があったのでありますが、あとからお見えになりました林参考人は、一九五四年の事実を援用されまして、むしろそれは一体的に考慮すべきだというような御発言があったかと思います。そこで、私手元にいま一九五四年のアメリカ原子力法を持っております。これは一九五九年に改正をされておるようでございますが、その第二章に定義というのがございまして、ここに、アトミック・ウエポンは運搬及び推進手段が分離可能なる場合にはそれを除去する、あるいは除外するということをはっきり法律の中にもうたっておることは、むろん林参考人も御承知だと思いますが、この事実と先ほどの御陳述とはどういう関係になりますか。その点をまず第一にお伺いしたいと思います。
  28. 林克也

    林参考人 それは実は簡単な問題でありまして、さっきも具体的な例で申し上げたと思いますが、たとえばB52が目標至近点に行きましてハウンドドッグを発射するような場合には、これは分離し得ない関係にある、この点はおわかりでございますね。だから、そういう点を考慮していただきたい。
  29. 正示啓次郎

    ○正示委員 要するに、法律の定義から言いますと、先ほど安藤アメリカ局長が帆足委員にお答えしておりましたように、日本アメリカとの条約等にもありますこと、あるいはさきに国会に提出しました政府の定義にもありますことが、一応の常識として林参考人もこれには異議がないと思うのです。先ほどお聞きになりましたことを御記憶であれば、すなわち、いま引用いたしました一九五九年に修正せられたる一九五四年の原子力法の定義というものが、先ほどの安藤アメリカ局長の言いました定義の基礎に大体なっておると思いますが、その点はいかがでございますか。
  30. 林克也

    林参考人 私さっき申し上げましたことは、部隊の実際の装備という点について申し上げたのでありますから、法律の場合には、一般的概念でさまざまな現象を律し得るように文章としてはつくられているわけであります。ですから、具体的なこういう問題は、たとえば潜水艦におけるザブロックがどうであるとか、ナイキ・ハーキュリーズの発射における核弾頭あるいは発射装置との関係はどうかというふうになりますと、また一々申し上げなくてはいけないわけです。私がさっき申し上げたのは、具体的な戦闘部隊の実例で申し上げたのであって、それは一般的法律的用語としての中に入っているし、また同時に、法律的用語だけでは律し得られない実際部隊の場合もあるということを御了解願えればけっこうです。
  31. 正示啓次郎

    ○正示委員 時間関係がありますから、一応の定義としてはノー・オブジェクションであった、実際に適用する場合にいろいろ分離可能であるかないかというような議論をしなければならぬ場合がある、こういうふうに理解をいたしまして、その次に、私は斎藤参考人に最後に伺いたいと思います。  先ほどお話しのように、日本政府が今日とっております、核兵器持ち込みを禁止する、これはどうしてもやらない、そこで安保条約において核兵器の持ち込みということの事前協議があった場合にはこれを拒否するという現在の政策について賛意を表せられたことが、われわれとしては非常に重大な問題だったと思うのであります。いま非核武装地帯等の論議もございましたが、日本はそれに対して非常に実際的な措置をとっておるわけでございます。今回の原子力推進力とするアメリカノーテラス型の潜水艦の寄港問題に対しまして、その目的とするところも先ほど来のお話ではっきりいたしたわけであります。ところが、これに対しまして科学者のグループが先般来いろいろと発言をいたしましたことが、私どももその一人でありますが、一般の知識のない者には大へんな不安を招いておると思うのであります。  そこで、斎藤参考人にお伺いいたしますが、これは斎藤さんもそういう方面の非常に御造詣の深い方でいらっしゃいますが、日本のいわゆる科学者グループが先般来一般大衆に非常に不安を与えるような発言をいたしておりますが、これはどういう科学的な基礎に立っての発言とお考えになっておるのでありましょうか。同じ科学的な知識を持っておられる斎藤参考人から所感を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  32. 斎藤忠

    斎藤参考人 ただいまのお話でございますが、これを一々お話し申し上げておりますと、実はたいへんな問題になります。結局、御心配になっておられるのは、原子炉の構造の危険性の問題、廃液を海上に流すか流さぬか、あるいた寄港地でもってイオン交換樹脂などを取りかえるか、燃料をどうするか、そういうような問題でございましょう。しかし、御承知でもございましょうが、原子炉工学というものは、素粒子理論などとはまた別個の科学で、実は科学の分野は非常にたくさん分かれていて、他の分野に入るとわかりにくい。ほとんどしろうとと同じでございます。たとえば、火山学者は、原子炉の構造についてはやはりわれわれと同じでございましょう。それから、廃液を流すという問題でございますが、これも実はわれわれが考えても常識としてあり得ないことです。私は廃液などを流すということはないと信じておりますが、もし万一放射能を帯びた廃液を海上に流して歩くということになると、原子力潜水艦自身が汚染して航跡を引いて歩く、自分存在を教えるわけです。原子力潜水艦の特性は、何よりも隠微性、人に知られてはならぬのですから、そういうことをするはずはございません。また、原子炉の構造についても、無数にございますが、これは二重、三重の安全装置がございます。一番早い例は、今度のスレッシャーでございまして、あれほどの深海に沈んで、ほとんど艦殻はつぶれておりますが、それでも、これまでの幾たびかの調査と研究の発表をごらんくださればわかりますように、海水はほとんど汚染しておりません。あれほどの衝撃にあって、あれほどの惨たんたる目にあいながら、なお危険性がなかった。これは、いろいろな意味で、私どもそうでございますが、外交問題を専門にしておりますから、ほかの分野には知識はございません。人間だれでもそうですが、科学者といえども、御自身の専門のことに関する以外は思いのほかに知識がないかもしれません。また、御自身の専門のことについても、軍事的な問題になりますとまた別個の問題になります。純粋な科学者に軍事科学の問題をあくまでも責任を持って言い得るかと言われると、おそらくは科学者にとってこれは迷惑であろうと思います。  そんなことで、幾らでも御説明申し上げますけれども、時間がありませんから申し上げませんが、私はそう考えております。
  33. 正示啓次郎

    ○正示委員 ありがとうございました。
  34. 野田武夫

  35. 穗積七郎

    穗積委員 お忙しいところをいろいろ貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。なお、私どもは、先ほど帆足君が言われたように、自然科学に対しては非常に弱いものですから、いろいろお尋ねしたいことがあります。きょうは時間が迫って御迷惑だと思いますので、簡単に二、三お尋ねをして、参考にしたいと思います。  関野参考人最初にお尋ねしますが、林参考人のおっしゃいました、原子兵器とは一体何だということに対する御意見は、お聞き取りになったと思います。時間がありませんからここで繰り返しませんが、あのお考えが非常に科学的であってかつ妥当なものだというふうに私どもは受け取っているわけでございます。すなわち、それが原子兵器であるかないかということは、一つは、総合的な設備全体の中から、それが原子兵器であるか、あるいはまた普通の貨物船・観光船であるかを区別するものであるし、さらに重要なことは、その船が戦争目的に限られていることは、これはもう明瞭なことですから、したがって、アジアにおける情勢あるいはまたアメリカの戦略的な方針等々から考えまして可能性の問題も考へるべきだ、そういう御趣旨の御意見もあなたからも開陳された。そうなりますと、すでにもう、何型でありましょうとも、軍艦であることは同違いのないことで、事実戦争目的としたアメリカ原子力潜水艦というものがすでに原子兵器の概念の中に半歩または一歩入り込んでいるというふうに規定して、日本核分裂に対する被害の経験からいたしまして、三たびこういうことがないようにさせようという点から見ますと、非常に危険なものであり、もうすでに兵器であるということについては間違いがない、こういうふうに思うわけですが、その点について、あなたの率直な御感想、結論だけでけっこうですから、伺わしていただきたい。
  36. 関野英夫

    関野参考人 結局定義の問題でございますから、定義はどうきめても、実はそれを前提にして議論すればいいわけだと私は思います。しかし、その場合、やはり、この議論がより正確になされますためには、なるべく厳密な定義が必要だということが一つの条件である。もう一つは、やはり国際的にあるいは一般に行なわれております定説をとるのが、これも混乱を招かない一つの方法だ、こういうふうに思っております。その二つから考えましても、先ほどから何べんも申し上げましたとおり、もちろん、この運搬、発射手段と、それから核頭部というものは重大な関連がございます。したがって、そういう意味議論なさいます場合に、これを核兵器と言うんだ、こう定義されますならば、これはまたその前提のもとに議論をすればよいわけでございますけれども、私どもは、やはり、国際的な一般の通念に従い、また、なるべくこまかく厳密に定義したほうが議論に間違いが起こらない、より正確な議論ができる、こういう意味から先ほど申し上げましたような定義をとっているわけでございます。  なお、どうも、議論いたします場合に、名前だけにとらわれて、それの品質なり、それの作用なり影響なり効果なりというものを見失ってしまうおそれがございますので、ただ名前だけを問題にするのは議論の本筋をはずれてしまうのじゃないか、私はこういうふうに思っております。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと私の質問の要旨を申し上げておきたいのですが、あなたは、先ほどからのお話で、核兵器を搭載したものであっても、日本の一般の者あるいは君たちが神経質になっているほどそう心配のものではない、その軍事的あるいは政治的行動というものを考えれば、必ずしもそう心配せぬでもいいというお立場に立っておられますけれども、そのことの是非はまた別の議論にしたいと思うのです。そうではなくて、私の言いますのは、この原子兵器なりその資材なりを運搬いたします列車であるとか自動車であるとかあるいはまた遊覧船であるとか、そういうものと、この、何型でありましょうとも、アメリカ原子力潜水艦というものは異質のものである、したがって、可能性を判断いたしますならば、現在入ろうとしておるある一隻の潜水艦はまだ核弾頭は装備していないということが言われましても、次に来る情勢、そのときの情勢なり、それからさらに、その寄港いたしますときの航行の順序から考えました場合には、核装備の可能性というものが非常に多いと見ておくべきではないか、こういうふうに思うわけです。そうなりますと、これをどう取り扱うかという心配をする必要がないという立場に立つか立たぬかは別として、これが他の一般の輸送機、運搬機とは違って、核兵器の範疇に入る可能性が多くなっている、あるいはその距離というものが非常に短くなっておる、こういうふうに判断しなければならぬ。それが私は賛否は別といたしまして客観的に見て妥当な判断のしかたではないかと思うのです。それを伺っておるわけでして、その点については、私のしろうと説明よりは、先ほど林参考人が述べられました点がお互いあなた方専門家同士の間において非常に適切な表現であろうと思うので、したがって、その判断から、すでに核兵器の範疇の中に入り込んでおる潜水艦であるというふうに判断をしておくことが妥当ではないかというふうに思うわけです。それに対してのあなたの御所見をもう一度伺っておきたいと思うのです。
  38. 関野英夫

    関野参考人 先ほどDC8、YS11を持ち出したのは、非常に極端な場合を申し上げたのでございまして、おっしゃるように、ある場合においては確か原子力潜水艦とは異質なものだと思います。しかし、原子力潜水艦と普通の動力潜水艦と比べてどちらが核装備の可能性があるかいう議論になりますと、これはまた非常にむずかしい問題でございまして、一体原子力潜水艦の核装備の可能性があるかどうか。たとえば、現在ソ連が持っておりますバリスティック・ミサイルを積んでおる潜水艦で普通動力のものがございます。これは明らかに核弾頭を持っておる。また、同じような攻撃潜水艦を例にとってみましても、原子力潜水艦のほうが核装備の可能性が大きいのか、普通動力の潜水艦のほうが核装備の可能性が大きいのかということになりますと、これはいろいろな要因がございますから一がいに申せないわけであります。そういう可能性の問題から申しますと、結局、どこに線を引くかということがわからなくなってしまいますので、極端に申せばDC8、YS11も核装備の可能性があるのだということを申し上げたわけであります。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 それで、私どもも、そういう可能性を含めて原子力潜水艦自身が核兵器である、そういう立場でこれを処理しておかないと、不慮の被害をこうむる、こういうふうに考えておるわけです。  次にもう一問林参考人にお尋ねいたしますが、実は、この間六日に、政府がこの問題に対してアメリカとの間に交渉した中間報告なるものを文書で出したわけです。また、大臣も口頭でそのことを説明しておりますけれども、アメリカの今度の寄港要求の理由・目的は他にあるのではなくて、単純なる補給と休養にあるのだ、だからあまり思い過ごしをしてはいけないという、裏返しすればそういう意味のことを盛んに説明しておるわけです。  そこで、私は技術的にお尋ねしたいのですが、何型にいたしましても、いまのアメリカ潜水艦航続距離あるいは日本周辺の配置の状態等を見まして、私は、休養と補給のためなら、日本の横須賀とかまたは呉の軍港へ火寄港を要求しなければ困るという事情は必ずしもないのではないか、技術的にそういうふうに思うのでございます。しかし、そういたしますと、他にまたそれとは違った目的を持ってこの寄港要求が今日になって発生してきておる。それは、言うまでもなく、先ほどあなたが言われたように、アメリカのアジアにおける反共戦略体制への政治的要求、外交的要求の中からそういうものが出てきておる、こういうふうに考えざるを得ないわけです。ですから、これについてあなたの貴重なる御意見を伺いたい。すなわち、問題は二点になるわけです。それが何型であろうと、アメリカ潜水艦というものは、日本以外の極東地域基地の配置を考えてみて、なぜ呉または横須賀へ入港しなければならないかということ。アメリカが表面言っており、政府が口移しに国民に納得させようとして言っている補給と休養のためなら、私どもは必要がないと思うのです。それが技術的に必要があるとお考えになるかどうか、その点を科学的または技術的に一点お尋ねして、それから、第二は、それがないとするなら、アメリカの寄港要求の目的というものは、実は、さらに先のものをはっきり見通し、読んでの要求であるというふうに考えざるを得ない。そのことを実は私どもは心配している。放射能日本の沿岸の海水を汚染するということは大事なことでありますけれども、それ以上に大事なことは、いま申しました、アメリカのアジアにおける核兵器戦略体系の中で、寄港を許すことによって日本自身が積極的に参加することにたる、そういう路線をはっきり防衛・外交の上でとることになるという点をわれわれは実は心配をし重要に考えておるわけです。われわれ質問者の質問の要旨を御理解の上で、その二問についてお答えをいただきたいと思います。
  40. 林克也

    林参考人 原子力潜水艦の寄港目的が補給と休養だということは、寄港の中のごく一部分の理由だと思います。それは、長い航海をするのですから、アメリカ本土でもヨーロッパでも必要だろうと思います。人間の問題ですから。しかし、問題はそういうことではないということで私はお話ししたいと思うのです。それは、具体的な潜水艦戦術が現在どういうふうになっているかという問題と、それから、現に第七艦隊の潜水艦部隊がどういう配備と任務を持っているかという点から考えなければいけないと思います。これは御承知だろうと思うのですけれども、いままでのアメリカの極東第七艦隊に配備しておりました潜水艦が、レギュラス潜が四隻、それから、通常の魚雷を搭載し、海面ではディーゼル、水中では二次電池で走る潜水艦が四隻、合計八隻、二隊配備している。これがやがて全部原子力潜水艦に切りかえられるという点から問題が考えられてきます。  まず、その前に、現在アメリカがどういう潜水艦戦術を使っているかということを申し上げたいと思います。このことは、特別私が言うのではなく、防衛庁の海幕におります筑土一佐も文章あるいは専門的な論文を書いておりまして、これはいずれもアメリカ潜水艦戦術ということでお考えくださればいいわけです。これはこの前の三月の公述のときにも申し上げましたが、現在、原子力潜水艦攻撃任務というのは、対潜戦術というのが一つの大きな問題になる。水上艦船攻撃、それから沿岸攻撃のほかに、対潜戦術の一番重要な最も効果的なのは、相手国の潜水艦根拠地に対する攻撃、ここでもって捕捉撃滅する、これが一番完ぺきだ。それから、二番目は、仮想敵国の潜水艦基地から出て配備につく、それを適当なところで海上封鎖し、あるいは海峡を利用して通峡を阻止してしまい、撃滅してしまう第三は、洋上にもうすでに出てしまうという場合には、ASWといいますか、対潜攻撃空母あるいは対潜哨戒飛行隊、それから対潜駆逐艦部隊、そういったようなもの、さらに、攻撃潜水艦を使って相手の潜水艦を洋上で捕捉撃滅する。それから、もう一つの四つ目の問題は、これは西欧陣営の戦略では補給というものが一番大きな問題になってきますから、補給船に対する相手国の潜水艦攻撃を阻止するために船団防衛ということが非常に重要になってくる。それから、五つ目は、自分の国の潜水艦基地に対して同じようにやられる可能性がある。だから、自分の本土なりあるいは領海に対する防御、すなわち、仮想敵国の潜水艦基地に対する潜水艦攻撃と同様の攻撃に対する味方潜水艦基地の防御。以上が対潜戦術の基本的な五つの問題です。  そうしますと、その問題をさらに具体的に言いまして、いままで、第七艦隊の潜水艦部隊が極東で、どういうふうな潜水艦戦術の訓練並びに配備をしてきたかということを考えますと、一昨年だったと思いますが、対潜攻撃空母が日本海に進出いたしまして、日本海で演習をやったことがあります。当時、日本の新聞が新兵器が使われた、新兵器のデモンストレーションがた行なわれたということを書いたことがありますが、それはアスロックを使用し得る対潜攻撃訓練が日本海で行なわれておる。それと前後いたしまして、昨年もそうでありますが、たとえば壱岐、対馬の海峡で、その以東を日本海上自衛隊が米軍と協力して対潜封鎖戦術の演習をやって、それから、壱岐、対馬以西を韓国海軍がアメリカの海軍と共同して封鎖演習をやっておる。そういう事例やなんかいろいろあるわけであります。現在アメリカがとっております対潜戦術というものを考え、これまで行なわれました、具体的に発表された極東における演習を見てまいりますと、今日、原子力潜水艦が極東に配備される重要な意味というものが、そこにひそんでいると思う。  地図がないのがたいへん残念でありますが、概略を申し上げますと、極東がこうあります。極東の中では何といってもウラジオが潜水艦根拠地として非常に重要視されておる。敵の潜水艦を根拠地において撃滅するというのが一番効果的な対潜戦術でありますから、そうしますと、朝鮮海峡を完全に封鎖する、青函海峡を封鎖する、その場合に、一番問題になりますのは、私は千島列島だろうと思う。千島列島はヤルタ協定の結果ソ連に返る。そうすると、あそこにソ連の島がある。アメリカ潜水艦はじめ日本の艦船が行くわけに参りませんで、どうしても離れて警戒配備に当たる。あそこから出てきまして太平洋に分散配備されると、捕捉せん滅が困難になりますから、この辺では千島列島から太平洋に出てくるソ連潜水艦の捕捉撃滅というものが戦術上大きな課題になる、そうすると、これは極東の東北方面を考えた場合でありますか、朝鮮海峡、青函海峡における対潜封鎖というものはわりあいに容易であっても、洋上における撃滅が困難であるために、どうしても、従来のような推進機関を使った潜水艦では、攻撃、行動能力、それから速力、そういった点で劣勢である。どうしても、新しい三十ノット以上の、そしてまたサブロック装備をし得るような攻撃的な原子力潜水艦が対潜戦術として非常に重要であるということであります。これはたしかアメリカの海軍協会の機関誌などにもそういう解説があります。先ほど申し上げましたように、海上自衛隊の筑土一佐なんかもそういう論文を書いております。今日潜水艦戦術でこれは常識の問題になっておる。南方、東南アジア方面の中国沿岸に対する潜水艦戦術も同様に考えられますことは、これはマニラ湾あるいはインドシナ半島の周辺で行なわれました、あるいは台湾海峡で行なわれました潜水艦戦術訓練、演習によって同じように考えることができると思っております。
  41. 野田武夫

    野田委員長 岸田参考人は御用があるそうでございますから御退席を願うことにいたしたいと思います。  どうも長時間ありがとうございました。どうぞ御退席を……。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 時間があればもう少し立ち入っていまの問題をわれわれ政治外交の面のうらはらとして伺いたいのでありますけれども、時間がありませんから他の機会に割愛をいたしたいと思う。いま伺っただけでも私どものこの寄港問題を受け取る判断のために非常に貴重な参考になりましたことを感謝申し上げておきたいと思います。  最後に関野さんと斎藤さんにちょっと同じような問題ですからお伺いしたいのですが、実は、私どもは、第二大戦後の平和とわれわれの安全というものを、戦略または武器の力、軍事力によらずして、外交の政策あるいはその背後に立つ国際的な人民大衆の政治的世論を背景にして、この団結のもとにこれが達成されると基本的には考えておる。その点は、先ほどから伺いますと、いささか、軍備の強化あるいは力の対決というものを歓迎はしないけれども、あるいは歓迎されるお気持ちがあるかもしれませんけれども、あえて言えば、歓迎しないまでもやむを得ざる平和のための手段として考えなければならないということで、その点については斎藤さんも強調されておりますし、それから、関野さんも、防衛安全のためには核武装そのものをあまり恐怖心を持ってこれを受け取ってはいけないという趣旨に伺い得る御発言もあったわけでございますが、そういたしますと、ここで伺いたいのは、アメリカ原子力潜水艦ですが、これがやがて核装備をした核武器になるとわれわれは当然判断をいたしておりますけれども、それを容認することが積極的に日本の安全のためにいいことだというふうなお気持ちであるわけですが、このお考えは、さらに発展すれば、独立と安全というものをそういう立場でお考えになるとすれば、やはり日本自身が核武装する必要が論理的に生じてくるのではないか。そういうお考えがおありになるのではないかと思うわけです。核武装なり兵力を強大にするということ、あるいはまた軍事同盟を結ぶということは、かつて戦時中にも政府から盛んに国民に訴えられたところですが、戦争目的ではない、戦争を阻止するためにも力が必要なんだ、一たん緩急事あるときにはこれを自力で防衛するだけの力を持つ、それで足らぬところは軍事同盟によって補強しなければならない、こういう論理であったわけです。  そこで、お尋ねいたしたいことは、そういうふうに考えてまいりますと、アメリカ原子力潜水艦の寄港は安保条約上やむを得ずこれを許す、そしてもし心配したようなことが起きたら補償で何とかこれを解決しようというような消極的な態度ではなくて、むしろ日本の安全と国民生活の確保のためにはこれを積極的に許容すべきである、積極的に許容する日本としての必要性なり効用があるんだという御趣旨に承ったわけです。そういたしますと、関野さんの場合は、核武装したアメリカ潜水艦といえどもこれを許容すべきである、それから、斎藤さんの場合は、さらに発展すれば、民族の独立と自主性を保つためには、日本だけでは足らぬにしても、やがて日本もまた核武装をしなければならない、するのが当然正しいことである、その効用はある、核武装したって必ずしも戦争はない、戦争を抑止する力にもなり得るのだ、こういう論理に立ってこの原子力潜水艦問題を取り上げ、しかもこれを積極的に賛成しておられるというふうに私どもは伺い得るわけです。国民もそういうふうに受け取るのではないかと思いますが、この点については、軍事外交上の日本の路線について非常に重要な基本に関連することでございますから、この際、御両氏から、アメリカ原子力潜の寄港を許容するその路線といいますか、立場というものを明らかにしておいていただくことが、きょう限られた時間で承りました両先生の御意見をわれわれが判断する場合に重要な参考になると思いますので、その点をひとつ率直に勇敢に御開陳を賜わりたいと思います。これをもって私の質問を終わりますから、簡潔に御回答いただきたいと思います。
  43. 関野英夫

    関野参考人 私から申し上げます。  これには結局根本問題があるわけでございまして、結局、私どもももちろんでございますけれども、だれでも、核戦争が起こるほうがいいとか、戦争が起こるほうがいいとかいうことを考えておる者はないと思うのでございます。ただ、それが、一体核兵器の全廃なりあるいは全面軍縮が可能であるかどうか、あるいは、もしそういうものが可能であったとしても、そういう状態になったときに、戦争というものは起こらないものであるか、あるいは核戦争というものは起こらないものであるかということが根本問題になると思うのでございます。その認識が食い違ってしまえば、結局結論も違ってくる。私ども、現実的に考えますと、現在国家間あるいは民族間あるいは国家群の間にはなお対立がある。たとえ全面軍縮というものが行なわれたといたしましても、何か非常に強力な保障、たとえば国連のもとに強力な警察軍ができるというようなものがないと、国内治安兵力でも、あるいは極端に申し上げれば、紛争の、原因があれば、こん棒でも、ピストルでも、ダイナマイトを使ってでも武力闘争というものが起きる。しかも、現在の国家の工業力あるいは文明の利器というものは常に戦力としての潜在力を持っております。半日にして、さっき申し上げましたようなジェット爆撃機が戦略爆撃機になりますし、あるいは商船軍艦にもなり、あるいは宇宙開発用のロケットはすぐに武器になるのだ、攻撃用の兵器になるのだ、こういう潜在力を持っておりますので、お互いに何もそういう抑制力がないという状態において戦争原因があれば、むしろ戦争はどんどん拡大していく。そうして、核兵器がもし全廃しておれば核兵器戦争などというものは起こらないじゃないか、こういうお考えになりますけれども、しかし、現在の原子力産業というものは、核兵器をつくるのにほんのわずかの手間でできる。しかも、ある程度の査察管理が平時において行なわれたといたしましても、戦時になってそういう紛争が起きてしまってから紛争がある程度拡大してしまってからそういう管理査察が厳重に行なわれるとはどうしても期待できない。そういたしますと、先方から先に核兵器を使われたら決定的な敗北を喫しなければならないというおそれがありますから、一刻でも早く先に使いたいという誘惑が起こる。そういたしますと、お互いに抑制力を持っていないような状態においてはむしろ核兵器戦争が起こりやすいということも言えるわけでございます。したがいまして、私どもの考えといたしましては、現実的に考えるならば、もしも世界連邦というものができて政治・経済その他のあらゆる面から可能な条件がそろっておるならば、この軍事的にも国家の主権を無視したような厳格なる査察も管理もできると思います。また、違反をした場合に即刻懲罰的な報復を加えるような強力を核兵器を持った国際警察軍の編成も可能だと思います。しかし、現実問題として、私は、軍事だけが国際連邦化することは、まだその機が熟していないのではないかと思います。そういうバックグラウンドに立ちますと、現実的に言って、戦争防止あるいは特に核兵器戦争を防止するには、やはり核のバランスもしくは核のステールメイト以外にはないのではないか、そう考えざるを得ないわけでございます。そういう前提のもとに立ちますと、先ほど御質問にありましたように、たとえ原子力潜水艦が核装備するといたしましても、日本の安全とか日本の利害にとってむしろマイナスではなくしてプラスなんだという考えに導かれるわけでございます。したがいまして、もしも独立自主的にやるならば日本みずからも核装備すべきかという御質問があったわけでございますが、もちろん純軍事的に原則論から言えばそういうことになるかと思います。しかし、これは全然軍事問題だけで考えられない問題でありますから、経済的な問題もありますし、技術的な問題もありますし、政治的な問題、あるいは日本国民の国民感情というものもあると思います。したがいまして、中立を標榜しておりますスエーデンにいたしましてもスイスにいたしましても、原則論としては中立を守るための核装備を認めているわけでございます。しかし、実際問題としては、具体問題として、核装備をするためにむしろ中立を放棄しなければならぬ、原料の問題、技術を導入いたします場合に中立性を害するおそれがあるというような観点から控えられておるわけでございますから、日本の場合にもやはりそういうことが考えられる。したがって、現実的にはやはり日米安保体制のもとに安全を保障していくのが最善の方法だと私どもは考えております。
  44. 斎藤忠

    斎藤参考人 いま穗積さんのおっしゃいましたこと、御訂正願いたいと思います。私の発言は、速記録をお読みくださればわかりますが、日本が核武装をしなければならぬということは一言も言っておりません。それから、いまでも、お話しの、軍事力にたよらずに外交の力によって戦争をなくしていくことができれば、あるいは国連によって平和を保てれば、これはもちろん理想でございます。私どもももちろん全力をあげて支持しております。特に私は国連主義者でございます。国連の完全な運営ができるならば、これにまさるいいことはない。ただ、遺憾ながら、国連の内部にちょうど第二次大戦後に起きたと同じような東西の対立が生じて、国連が全身麻痺の状態になっております。今日ほとんど能力・機能を発揮し得ない。その状態で、しかたなしに、これにかわる方法として考えられるのが、先ほどの核抑制力と、それから集団安全保障体制でございます。これは今日ただ一つの可能な現実的な平和維持の方法でございまして、これ以外にもし非常に有効なこれにかわる方法があるならば御教示も願いたいし、私もそれについて賛成もしましょう。また、これはぜひ御実現願いたいものと思いますが、現在これができない。できないから、われわれはこれに国の安全を託するよりほかに方法はない。そのために、安全保障の協定というものを国際信義の上で結びまして、結んだ以上、われわれは、ほかの種類軍艦の寄港を許しておいて、ノーチラス型の潜水艦の寄港を拒む理由はない。もしこれが核装備をして来るというならば、重大な装備の変更でありますから、そのときは当然事前協議の対象になる。そのときには日本は拒否すればよろしい。もしそうでなければ、今日の状態で、核装備を持たないものに対して、単に軍艦の一種であるからといって寄港を拒否するということは、理論として私は成り立たないと思う。それからあとは、時間がなくなりますからやめましょう。
  45. 野田武夫

    野田委員長 川上貫一君。
  46. 川上貫一

    ○川上委員 時間もだいぶ切迫しておりますから、私は簡単に関野先生と林先生のお二人にお尋ねをいたします。  いろいろ御意見を承りまして大へん参考になりましたが、参考人の方々の御意見は、なるほど一参考人としての御意見でありますけれども、国会の審議の過程での御意見は、これはかりにアメリカの場合で言えば証言と同じものだと思います。だから、お一人の主観的な御意見ではありますけれども、ただそれだけとして聞き置くにしては非常に重大なものを含んでおる。  それで、関野先生にお伺いするのですが、御意見が初めどうも私はよくわからなかった。非常に疑問を持った。まさかそうではあるまいと思っておったのです。ところが、いま穗積委員の質問されたことに対するお答えを聞いて非常にはっきりしました。私は長いこと言いませんが、いまのような情勢のもとにおいては、一口に言うて、核武装することは必要だという御意見。これは、いろいろの御意見がありましたからちょっとざわざわとしておるかもしれませんが、つづめて言えばそういうことです。経済の問題だとか国民感情の問題だとかいうのは、これは別です。基本的に核武装の必要がある、こういうことだと思うのです。これはさすがに日本の政府も言うておりません。われわれに対する国会の答弁の中で、これほどの政府の発言意見も聞いたことがない。非常に私は驚いておる。これは最後にあらためてお尋ねします。私の理解したのが間違いなのかどうか。私は間違いでないと思う。そうしますと、いまの原子力潜水艦の問題にしても、F105の問題にしても、これが今日現在核兵器を持っておるかおらぬかというようなことは問題じゃない、持っておるほうがいいということになるのです。核武装の必要があるのだから、これで防止するのだと言われるのですから、これがなかったら戦争が進むと言われるのだから、世界どこの国でも核武装をした方が戦争がなくなる、したがって、日本も核武装をしたほうが戦争がなくなる、こういう結論にならざるを得ないのですが、ほんまにそうお考えになっておられるのでございましょうかどうだろうかということを私はあらためてお聞きしたいのです。  それから、さらにつけ加えて、これはいまのお答えを聞きさえすれば要らぬことだと思いますが、防止とか、一朝事あるときにはとおっしゃいますが、たとえば林先生が述べられた金門、馬祖の問題もありますが、ああいうときにアメリカがどんとやる。やるのはどこからやるか。第七艦隊からもやるし、沖繩からもやるし、九州からもやるでしょう。そうすると、敵もやるでしょう。そこで、こちらもやるでしょう。日本がやるということをいま私は言うておるのではない。日本におるアメリカがやるということを言うておるのです。それもやはり日本のために戦争防止になるのですかどうですか。その点は、前の質問で解決するので、要らぬことのように思いますけれども、あらためてもう一つだけお伺いしておきたい。  それから、林先生にお聞きしたい。林先生のほうには、今度来る原子力潜水艦というものは、あれはほんとうにまる裸であるのかどうかということをお聞きしたい。核武装も何もないものなんだ、いざ事があるまでそんなことはちっともしないのだということであるなら、いざ事があった時分にはどのようにして核武装をするのか、アメリカはどういう戦略を持っておるのだろうか、これを御研究の範囲でお聞きをいたしたい。これが一点なんです。  それから、第二点は、林先生のほうにもう一つあるのですが、原子力潜水艦、これを日本に持ってくるアメリカの戦略目的は何でしょうか。ポラリス潜水艦や、日本の自衛隊が持っている104や、バッジ・システムというようなことをやっておるが、これはこういうものと一体関係があるのかないのか、それまで含めて、アメリカの世界戦略と、このたび日本にどうしてもこの潜水艦とF105を持ってくるという戦略的な思想、方針、これについて御意見をお承りしたい。これだけです。
  47. 関野英夫

    関野参考人 お答えいたします。  大体において私の申しましたことを誤解してはおいでにならないと思います。しかし、私の申しましたのは、日米共同の安全保障体制というものがないという場合には、日本の独立した安全を守る場合にはどうしても核装備も必要であろうということであります。これは何も日本だけの場合に限らないと思います。たとえば、ソ連にいたしましても、中共にいたしましても、そういう理論を持っていることは明らかであります。一九六一年にソ連が長い間の核実験の自発的停止、いわゆるモラトリアムを破りましたとき、何とフルシチョフが言ったかといいますと、これは戦争を防止する上において必要であるから核実験をやるんだということを言っております。ということは、核兵器戦争防止上絶対不可欠なんだということを意味しております。また、中共とソ連との間の現在イデオロギー論争が行なわれていると思いますが、平和共存と戦争不可避論というのが一つの焦点であると思います。そのよって来たるところは、いろんな要素があると思いますけれども、これを戦略的に見るならば、ソ連は核兵器を持っているから平和共存していけるんだ、中共は核兵器を持っていないからいわゆる帝国主義国家の攻撃は不可避である、したがって戦争は不可避であるという理論が成り立ってくるわけであります。したがいまして、中共は、非常な経済的な困難にあるとは思いますけれども、そのもとにおいてさえ核兵器開発を急いでおると伝えられております。これは私の単なるドグマでなくて、世界の多くの戦略家なり政治家なりがすべて、核兵器が大きな保障のもとに全廃されないという現実の情勢においては、多くの人が認めておる理論であると私は考えます。  その次の問題は、これに関連いたしておりますのでよろしいと思いますが、いかがでございましょう。
  48. 林克也

    林参考人 最初に、いわゆる攻撃原子力潜水艦が核武装して来るか来ないかという問題についてお答えいたしますと、これは、この前のときもそれでいろいろ論争があったわけでありますが、これをもっと戦術上の問題で考えてみたいと思います。  最初に、ポラリス潜のことであります。この間アメリカのほうでポラリス潜を今年度からグアム島に配備を開始するということを公表されたわけでありますけれども、ポラリス潜がおそらく近いうちに合計四十一隻配備になるわけでありますが、それの配備についてはアメリカで大体の計画というものが出たわけであります。それによりますと、一隊八隻編成で五隊編成される。そのうち三隊がヨーロッパに配備される。それから、二隊が太平洋方面に配備されるわけであります。ヨーロッパの三隊のうち、二隊は北海配備で、一隊は地中海に配備される。太平洋方面では、ハワイ以東に一隊、これはアメリカの第一艦隊が配備される区域と同じところに配備されるわけでありまして、もう一つの一隊がハワイ以西に、アメリカ海軍で言っておりますいわゆる極東海域に配備される。こうなります。  問題は、攻撃潜水艦日本に寄港問題が出ておりますノーチラス型の核装備の問題になってくるのでありますが、いままでのところ、それは核装備をして来ないとか、あるいは寄港はあくまで休養と補給だけだと言っておりますけれども、軍隊の編成と配備というものは決してそういうなまやさしいものではありませんで、外交辞令のことは別としまして、この攻撃潜水艦ポラリス潜といかなる関係にあるか、核装備をしている状態というものを考えてみたいと思います。  と申しますのは、ポラリス潜は、御存じのとおりに、ポラリスのA1型を搭載し、あるいはA2型、A3型搭載のいかんにかかわらず、長距離の二千キロ以上四千キロというようなポラリスミサイルの発射艦であります。これは決して仮想敵国沿岸へ行って撃つのではなくして、ある程度離れた位置から撃つわけでありますが、その攻撃力が抑止戦力であっても先制奇襲戦力であっても別としまして、この攻撃力は非常に重要になるわけです。その攻撃効果を十分達成させるために、攻撃潜水艦ポラリス潜と組み合わさって配備されるということが重要な問題である。なぜかと申しますと、ポラリス潜が配備されますと、これは当然仮想敵国の対潜攻撃潜水艦目標になるわけでありまして、その場合に、攻撃潜水艦ポラリス艦を援護するという任務が出てまいります。ですから、八隻編成で二隊、十六隻が太平洋全域に配備されたとしますと、一隻のポラリスには大体二隻の攻撃潜水艦がボラリス潜の援護、支援をする、そういう配備になっております。これは、近い将来数年のうちにアメリカ攻撃原子力潜水艦を百隻完成するという計画から見ましても、大体ポラリス一隻が行動しておるときには、二隻くらいが、ポラリス潜を攻撃するかもしれない敵潜水艦を掃討撃滅できる任務を持っておる。そういう場合に、この前申し上げたように、サブロックのような兵器を搭載しないではその任務を達成し得ない。したがって、極東第七艦隊に配備される攻撃原子力潜水艦は戦術部隊の配備であり、ポラリス潜水艦は統幕の直轄下にある戦略部隊でありますけれども、戦術部隊は、ポラリス潜という戦略部隊の援護、支援、防衛というものを担当する。そういう意味で、絶えず核武装をするのが常態であるということであります。これは一と二の問題を合わせてお答えしたことになりますが、よろしゅうございますか。  それから、三の問題で、バッジ・システムと原子力潜水艦ということになりますが、この問題は、いま防衛庁でバッジ・システムの問題でいろいろ討議しておるようであります。この問題は別としまして、バッジ・システムというものは、F105と、九州の新田原に配備される、防衛庁で発表しましたF104戦闘機隊、これとの関連で考える。そうした中でこれがまた原子力潜水艦とどういう関係にあるかということは、総合的な戦術問題でありますから、後ほど触れて申しますが、F105の問題から入っていきたいと思います。  これは、アメリカのほうでF105の問題を決して過小評価していない。むしろ非常に重要視しておりまして、その促進を考えておることは、過日空軍参謀総長のルメー大将が日本に参りまして志賀防衛庁長官にバッジ・システムのことで促進したということも記事に出ておりますが、とにかく、このバッジ・システムができないことにはF104戦闘機隊の行動が不可能になる。また、同時に、バッジ・システムが完成しませんと、沖繩、板付に配備したF105戦闘爆撃隊の行動が不可能になります。その理由を、アメリカ戦術空軍のいままで発表しました資料を整理してみましたので、それをもって申し上げたいと思います。  まず、F105戦闘爆撃隊の特徴と戦闘用法というものを明らかにしております。それから問題を考えていきたいと思います。まず、F105の特徴は何か。飛行機はただばく然とつくるのではなくて、かつて海軍の零戦、陸軍の九七戦闘機あるいは爆撃機がそうであったように、必ず所定の目的を計画いたしまして、その目的に合うための性能要求なり装備が計画されて、それが実際の設計製作という形になるわけであります。F105の戦闘性能がいかに計画されたかといいますと、第一の問題が、敵本土軍事目標に対する直接の戦術核攻撃が可能なこと。従来の戦術爆撃機攻撃能力を上回り、敵の軍事施設・部隊を攻撃する大型核爆弾の搭載が可能である。同時に、これは低空超音速侵入攻撃という戦闘法が可能である。高空の場合にはマッハ二による侵入攻撃が可能である。それがF105の第一の基本性格であります。第二は、敵レーダー施設、これは電子情報組織に対する攻撃を全部含めているわけでありますが、敵レーダー施設に対し、レーダー逆探知装置と、それから、相手国にレーダーが動いておりますと、それをホーミングしながら自動的に進入して核攻撃を加える。そういう逆探知装置つきのホーミング装置を有して敵のレーダー基地に対する攻撃が可能なこと。第三番が、地上戦闘部隊に対する対地協力戦闘が可能である。これは、高性能の爆弾、ナパーム弾、空対地ロケット弾、対地機関砲、そういったものによる攻撃が可能である。四番目が、防空戦闘機あるいは長距離進出の援護戦闘機として使用が可能なこと。五番目が、武装強行偵察能力を有すること。こういう形で計画され開発され、今日では九百機を目的に編成されているわけであります。  その中で問題になりますのは、F105のすぐれた性能もあるし、重大な根本的戦術的な用法上の難点もありますが、これが極東に配備されたという点から特にその点を申し上げますと、どういう点が欠点になっているか。これはアメリカの戦術空軍内部における討論の結果であります。それは、F105が入りますと、何といっても全備重量二十トン以上で高度の電子装置を持っておりますために、基地の支援器材と施設がどうしても膨大化してくる。二番目が、戦術支援能力ですが、これは、地上の戦闘部隊あるいは艦船の援護というような任務に対しては、あまりにも高級複雑過ぎる、上等過ぎる飛行機だ。それから、三番目は、一体、対地協力、地上の戦闘に協力するといっても、実際の戦闘では、たとえば一つのトーチカのその中にあるところの一丁の機関銃あるいは戦車一台の機関銃が地上部隊の戦闘を左右してしまうようなときに、超時速のF105のサンダーチーフのような飛行機がはたして対地協力が十分できるかどうか疑問である。それから、四番目として着陸性能が疑問になるというふうに思いますが、一番根本的な問題は、高度の電子装置を持っているために、戦闘作戦をいたしますときに、105特有の電子装置がありますが、その電子装置では十分活動できない。それを地上のたとえばバッジとかあるいはアメリカ本土で使っているようなセージ・システムとからみ合わせなくては十分な戦闘機能が発揮できない。これはアメリカの戦術空軍における批判であります。  したがいまして、九州にバッジ・システムが急がれるいうことは、105の配備と当然関係があるということでありまして、これはいままでもアメリカの軍事雑誌などには出ておる問題であります。また、これは、日本の104戦闘機もまだバッジ・システムがありませんため十分な戦闘性能を発揮できないという点で問題になっている。ですから、そのバッジ・システムができまして、F105が配備されると、バッジ・システムを中心に、F104とF105の戦闘爆撃機の連携性能を発揮することができる。これは、日米共同作戦という条項に基づきまして問題を考えていきますと、そういう結果が出てまいります。
  49. 野田武夫

    野田委員長 細迫兼光君。  ちょっと質問者とお答えの方に御注意いたしますが、午後二時から本会議が始まりますので、時間の途中で打ち切らなくてはならぬことになりますから、どちらも要領だけお述べ願います。
  50. 細迫兼光

    細迫委員 お尋ねしたい問題はただ一つでありまして、斎藤さんに御意見を伺いたいと思います。  問題は、原子力潜水艦がわが国に寄港を要求しておるその必要性であります。このことはすでに穗積委員から林先生にお尋ねをしましてお答えがありました。しかるに、重ねてお尋ねしようと思いますのは、斎藤さんの初めの御説明におきまして、ノーチラスは姿を隠す必要があるのだ、所在を秘匿する必要があるのだ、敵の目の前に姿をあらわすばかはいないというようなお話があったと思うのであります。だが、そのことを、いまやそのばかなことをしようとしておる。何がこのばかなことをさせるのかということについて、林さんと御意見の違ったところがあればお伺いをしたいと思います。
  51. 斎藤忠

    斎藤参考人 敵の前に姿をあらわすことを避けるべきだと申しましたのは、ミサイル潜水艦、これはポラリス潜水艦のほうであります。この戦略兵器のほうは、自分所在を敵に隠しておいて、敵の第一撃をのがれて生き残ることは何より大事な使命であります。その意味で、のこのこと日本列島の正面に出て敵の目標になるようなことはあるまい、こう申しました。しかし、いまのノーチラス型のほう、もう一つの対潜水艦用の戦闘の潜水艦、これは、先ほど申しましたように、戦略兵器ではございません。いま林さんから御説明がありましたが、あのとおりでございます。つまり、目標は敵の潜水艦で、この潜水艦はどこにおるのかと申しますと、極東の大陸の沿岸におります。ウラジオストックを中心にしまして、中国だけでも三十隻持っておりますが、ソ連は百二十隻以上配備している。これはみな大陸の沿岸に配備してあるのでありますから、この敵の近辺に行動しなければ任務を果たし得ないわけです。しかも、この種の潜水艦は、先ほど申しましたように、現在のところまだ普通の魚型水雷を使用しておる。この距離が十キロくらい。そうしますと、ごくそばに接近して作戦しなければならぬ。それで、どうしても日本近海で行動しなければ任務を果たせぬわけです。その上に、もう一つ、先ほどお話がありましたが、日本海の中に赤色海軍の潜水艦を封じ込めまして、それを外洋に逸出させないようにする。これが外洋に逸出するとすれば、必ず日本列島の周辺の海峡を通過する。この海峡を抑えることが、米国の安全でもあり、自由主義諸国間の安全でもあって、重大なことになります。その海峡を推するためには、やはり海峡の近辺に行動しなければなりません。そうしますと、この潜水艦使命というものは、結局日本列島近海を行動しなければならないのであります。そうしますと、ここに使われた、日本防衛の任務に当たっておる兵士が疲弊して、長い航海に疲れて休養を欲するときに、何もわざわざ遠くまで行くというよりは、この近辺で休養を求めるということは当然でもございましょうし、また、いろいろな意味で必要でもあろう。休養を取るということは、非常に作戦上重要なことでありますし、兵士の士気がそれによって上がるということで、対戦闘能力が上がるということは、重大な戦力でございますから、そういう意味で、林さんの御説明はそのままこちらにも流用できると思います。
  52. 野田武夫

    野田委員長 各参考人には御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見を述べていただき、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。      ————◇—————
  53. 野田武夫

    野田委員長 連合審査会開会の件についておはかりをいたします。  ただいま審査中の海外移住事業団法案について、農林水産委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたら、農林水産委員会と連合審査会を開会することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会は、農林水産委員長と協議の上、明十二日水曜日午後、二時より開会することにいたしたいと思いますから、御了承を願います。      ————◇—————
  55. 野田武夫

    野田委員長 議事進行について穗積七郎君より発言の申し出がありますので、これを許可いたします、穗積七郎君。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 きょう参考人の四人の方に来ていただいていろいろ貴重なお話を伺ったのですが、その中で特にはっきりしたのは、関野参考人の御意見に注目すべき御発言があった。これは、きょう残念ながら大臣がおられませんけれども、局長からよく大臣に、最後の私並びに川上委員の質問に対するお答え、これをよくお伝えいただきまして、また、同時に速記録も見ていただいて、次の機会に大臣からこの御意見に対する政府の御感想を開陳していただきますようにお願いをいたしたいと思います。局長、よろしゅうございますね。
  57. 安藤吉光

    安藤政府委員 そのように取り運びたいと思います。
  58. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十九分散会