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1963-06-06 第43回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月六日(木曜日)     午後一時二十九分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 福田 篤泰君 理事 松本 俊一君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    菅  太郎君       椎熊 三郎君    高橋  等君       森下 國雄君    黒田 寿男君       河野  密君    田原 春次君       西村 関一君    細迫 兼光君       森島 守人君    受田 新吉君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君  委員外出席者         外務事務官         (国際連合局管         理課長)    太田 正己君         農林事務官         (農政局参事         官)      丸山 幸一君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 六月一日  委員愛知揆一君宇都宮徳馬君、椎熊三郎君及  び田澤吉郎辞任につき、その補欠として中島  茂喜君、加藤鐐五郎君、水田三喜男君及び佐伯  宗義君が議長指名委員選任された。 同月四日  委員加藤鐐五郎君、佐伯宗義君、中島茂喜君及  び水田三喜男辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君、田澤吉郎君、愛知揆一君及び椎熊  三郎君が議長指名委員選任された。 同月六日  委員勝間田清一君、帆足計君及び西尾末廣君辞  任につき、その補欠として田原春次君、西村関  一君及び受田新吉君が議長指名委員選任  された。 同日  委員田原春次君、西村関一君及び受田新吉君辞  任につき、その補欠として勝間田清一君、帆足  計君及び西尾末廣君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 六月三日  日韓会談即時打切りに関する請願坪野米男君  紹介)(第三九七九号)  同外一件(石橋政嗣君紹介)(第四〇二一号)  同(稻村隆一君紹介)(第四〇七五号)  同(岡本隆一紹介)(第四〇七六号)  同(加藤清二紹介)(第四〇七七号)  同外一件(原彪紹介)(第四〇七八号)  同(湯山勇紹介)(第四〇七九号)  同(坪野米男紹介)(第四一〇三号)  同外一件(中村英男紹介)(第四一〇四号)  同(八木一男紹介)(第四一五二号)  同(田口誠治紹介)(第四一七三号)  同外一件(矢尾喜三郎紹介)(第四一九二  号)  同(松井政吉紹介)(第四一九三号)  同(岡本隆一紹介)(第四二一六号)  同(山中吾郎紹介)(第四二一七号)  同(稻村隆一君紹介)(第四二五五号)  日中国交回復及び政府間貿易協定締結等に関す  る請願黒田寿男紹介)(第四〇二二号)  戦時中の中国人強制連行に対する陳謝、釈明及  び遺骨送還に関する請願外十六件(黒田寿男君  紹介)(第四〇八〇号)     ————————————— 本日の会議に付した案件  海外移住事業団法案内閣提出第九九号)  国際情勢に関する件(原子力潜水艦寄港問題  等)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  森島守人君より議事進行発言を求められておりますので、これを許します。森島君。
  3. 森島守人

    森島委員 議事進行でございますから、きわめて簡単に御質問したいと思います。  五月の十五日に、私から日米両国間で交換せられた文書について資料提出を求めたのでございます。委員長も、前回の理事会において、文書をもって外務省要求するという御趣旨でございましたが、その文書とは一体いかなるものでございますか。委員長から外務省要請されました資料提出に関する文書でございますが、その内容を簡単にお示し願えたらけっこうでございます。
  4. 野田武夫

    野田委員長 森島委員にお答えいたします。  五月十五日の委員会において、森島委員から、米国原子力潜水艦寄港問題についての日米両国交渉経過についての資料提出の御要望がございましたので、理事会を開きまして協議いたしました結果、提出を求めるということに決しましたから、私は直ちに口頭をもって外務省にその経過報告要望いたしました。したがって、文書をもっていたしたということは言明いたしておりません。経過はそのとおりでございます。
  5. 森島守人

    森島委員 私は、文書でも口頭でもどっちでもけっこうなんですが、それに対して外務省のお出しになったものは、昨日外務委員会を通して私たちに配付せられましたこの書類でございます。一体これは私の要望に沿ったものであるかないかは常識をもってもおわかりになるとおり、外務大臣はこういうものをお出しになる上において一覧されたと私は思っておりますが、一体こういうものをお出しになるということはどういう影響を及ぼすか、お考えになったかどうかを私承りたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 お求めによりまして、今日までわがほうの照会に対しまして先方答えがありましたものを取りまとめて出したわけでございまして、森島委員の御希望するところは、政府意見でなくて、客観的に日米間の照会によって入手し得たものということであると思いますので、私といたしましては、この資料に関しては政府主観をまじえずに客観的な事実を御報告するというように指示いたしまして、つくり上げたものでございます。
  7. 森島守人

    森島委員 それならば外務大臣も非常に誤解をされておるのです。私が十五日に発言いたしましたのは、日米両国間において交換せられた公文についてでありまして、私は一番先に尋ねましてそのことも明確に言っております。多少私の発言の不備があったかとも思いますけれども、私の要求しましたのは、日米両国間において交換せられた文書それ自体でございます。しかし、外務省から出てきましたものは、外務省執務参考用のレジュメとかいうようなものと同じようなもので、これでは私が委員会を通じて要求いたしました資料の提示にはなっていない。私はきわめて不親切なやり方だと思う。しいて言いますならば国会をべっ視したようなやり方であって、これでは原子力委員会においてもあるいは学術会議等におきましても正確なる資料を基礎としてその見解を検討する上において不十分であると存じておるのであります。私は、あらためまして、これ以上に、日米双方の間でそのつど交換いたしました文書それ自体資料として御提出方をさらにお願いいたします。  私がこの委員会におきまして大平さんの答弁いんぎん無礼だと批評いたしましたら、たいへん御不満があったようでございますけれども、私は、こういう文書を出すこと自体いんぎん無礼やり方である、こう断ぜざるを得ないのであります。第一に、形式におきましては、往復しました文書それ自体になっておりません。第二に、実質に至りますと、さらにひどいのは、おおむねこのとおりだというふうな、「概ね」と書いておる。これは主観が入らざるを得ない。私はいまの外務大臣の御説明と食い違っておると思う。外務省主観が非常に入っておるか、あるいは主観が入らないでも外務省において取捨選択した余地があると思っておるのであります。こういう文書を出すのに、おおむねこうだというのは、国会ばかにしたもはなはだしいと私は思っておる。これは国会の軽視であると断ぜざるを得ないと思うのでございまして、御所見がありましたら承りたい。
  8. 安藤吉光

    安藤政府委員 アメリカ側質疑し、あるいは向こうから回答がございましたのは、実は正式の口上書とかそういったものでやったのではありませんで、口頭でやって、しかもそれを誤解のないようにするためにトーキングペーパーでやっております。そして、それは一つの点につきましてあるいは重複してやっているものもございます。いずれにいたしても、両者間でやりましたそういったトーキングペーパ一の内容とか、及び口頭でいろいろそれについてるる問い合わした点もございます。それから、これに関連いたしまして米側から相当膨大な資料ももらっております。それらのものを全部取りまとめまして、ことにその米側との質疑の点はできるだけ細大漏らさぬように入れまして取りまとめしたのがこれでございます。「概ね」という字について御意見がございましたけれども資料の中でいろいろたくさん重複するものもございますし、それから、あまり関係がないものもございます。その中でいわゆる概要を取りまとめた点もございますので、こういう字を使った次第であります。トーキングペーパーにつきましては、この両方とも、話し合いの関係上、そのすりものずばりを出し得ないのは非常に遺憾といたします。そのものを差し上げられないのはまことに遺憾といたしますが、しかしながら、これはトーキングペーパーでございまして、そのいわゆる口頭の点を確認するような性質のものであることは御存じのとおりでございます。ただし、その内容につきましては、全部具体的に網羅しておるつもりでございます。われわれのほうを御信頼願いまして、この資料をごらん願いたいと思います。  なお、この資料にも、最初に申し上げておりますように、いまなお質問をいろいろやっておるところでございますけれども、現在までにありましたいろいろな向この回答とかあるいは向こう説明、あるいは公表資料のこれに関連のあるものといったものを、現在までのところを中間的にまとめたものでございます。
  9. 大平正芳

    大平国務大臣 森島さんから御要請がございまして、私どもとしては可能な限と忠実に資料を取りそろえて御提出申し上げたわけでございまして、たいへんいまのおしかりは私は心外だと思うのでございます。私どもといたしましては、誠実に主観をまじえずに事柄を網羅して御報告を申し上げたものでございます。
  10. 森島守人

    森島委員 私が念願しましたのは、日米間におけるあらゆる交換公文なり文書の往復されたものをそのままずばりと出していただきたいということです。そうしなければ、学術会議等においても問題としておりますが、その点を解明するのに不十分であるというので、各関係機関における検討の上において正確なる資料を求めたのでございまして、これでは私の要請しました資料には当たりません。その上に、いま「概ね」ということがございましたが、これについても、アメリカ局長から御説明がありましたが、私は、そのまま出していただかなければ、権威ある機関において十分なる審議をするには不十分であると断定せざるを得ないのでございます。トーキングペーパーであろうが何であろうが、必要なる限度において出し得るものだ、こう私は信じておるのでございます。私は、私の要請に対しまして、こういう人をばかにしたようなものをお出しになる点において、外務省誠意を疑わざるを得ない。外務省国会を軽視しておるということにつきましては、従来しばしばこの委員会でも問題になりました。他方、私たちはこの委員会において多数の条約案等の上程されておることは承知しております。特に、外務省では政務次官が全権としてビルマに行かれた関係もあって、ビルマ賠償関係の問題を急いでほしいというふうな御要請も非公式にはあります。移住事業団法案につきましても、これに期限を切って何とかしてくれというふうな御要請もあるのでございますが、私は、外務省において国会を軽視するというこの態度に反省を加え、これを是正せられぬ限り、私個人といたしましては、ほかの法案審議にもいかなる影響があるということを懸念しておるわけでございます。法案審議を促進する上から言いましても、外務省としてはこの際根本的に国会を軽視するという従来からの独善的な官僚的な風潮を一掃されなけなければ、私は今後の審議にも影響があるということを懸念いたすのでありまして、特に議事進行に関連いたしましてこの点外務省に対して警告を与えておきたいと存じておるのでございます。御所見でもございましたら伺いたいと思います。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 はなはだ心外でございまして、私どもは、国会を軽視するどころか、国会に対しまして正確なデータを出すべく最善の努力を尽くしたつもりなんでございます。トーキングペーパーのかっこうになっていないからいけないという点が御指摘問題点だろうと思うのでございますが、相手国とのトーキングペーパー相手国の了承を得ずに出すというようなことはいかがかと存じまして、この内容には全部事実は事実として網羅いたしておるわけでございます。国会の御審議に支障のないようにいたしておるつもりでございまして、決して国会を軽視するというような不届きな考えは毛頭持っていないわけであります。
  12. 森島守人

    森島委員 これは主観の違いと私は思いますが、その主観の違いにもう一度思いをいたされまして、国会を軽視するような結果になるこういう文書取り扱い等については、下僚に対しても厳重な警告を与えていただきたいと存じておるのでございます。  それから、トーキングペーパー等については、アメリカ側了解も得なければ出せぬというお話でございますが、これは私ある程度了解いたします。しかし、私が資料提出を求めましたのは一五月十五日でございますから、すでに三週間を経過しております。その三週間の期間内においては、アメリカ側との了解をつける必要のあるものは優につけ得るだけの時間的余裕があったと思っておるのでございまして、私は、最後の結論が出ないでも中間報告として出してよろしいという外務大臣の言明を信頼しておったのでございますが、その点において私ははなはだ遺憾に存じますので、今後とも厳重にやっていただきたい。  これは非常な重要な問題である。日本安危に関する重要な問題と申しても差しつかえないのでございますから、このアメリカ側との間に取りかわれた文書、その他関係のある文書は、外務省主観的な立場から取捨選択等を加えないで、そのまま委員会を通じてすべてお出しを願いたいのでございます。この点重ねて委員長にお取り計らいをお願いいたして、私の質問を終わります。
  13. 大平正芳

    大平国務大臣 最初森島さんから御要請がございましたのは、照会いたしましたアメリカ側とのトーキングペーパーそれ自体というように私は理解していなかったのでございます。照会いたしまして今日まで確認し得たことをそのまま御報告申し上げれば足りると私は考えておりました。私は特に事務当局に何らの主観を交えずに客観的な事実それ自体国会に御提出申し上げるようにということを厳重に指示いたしました。このことは、国会の御審議にあたりまして、政府主観が入っておるということでは、要求者といたしましても御不満のことは重々承知でございますので、私はそのように配慮したつもりでございます。いま御指摘のような不心得は私は何らなかったのでございます。しかし、いまこれではてんで権威ある審議はできないということでございまして、トーキングペーパーならトーキングペーパーそれ自体を出せ、こういう御要望でございました。なるべく検討してみます。
  14. 森島守人

    森島委員 私、もう一言加えたいと思いますが、検討してみるというお話でございますけれども、これは、日本側からどの点をどういうふうに聞いたということも、これは非常な問題になるだろうと思いますし、向こうからどういう返事をしてきたということも問題になると思います。交換された公文がありますれば、それをそのまま、トーキングペーパー等につきましてもできるだけそのまま、こっちのトーキングペーパー向こうトーキングペーパー、そのままお出しにならなければ、日本国民安危に関する重大問題ですから、国民にも納得を与えることができないのじゃないか。われわれの心配しておるのも、日本の安全という点に最重点があるのでございますから、関係書類はそのままお出しになることを重ねて要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  15. 野田武夫

    野田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  戸叶里子君。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、まず最初に、ただいまの森島委員質問に関連しましてお伺いしたいと思いますが、今回出されました原子力潜水艦寄港に関する中間報告というものは、これは全く私たち国会を侮辱したものだと言わなければならないと思います。   〔委員長退席福田(篤)委員長代理着席〕 なぜならば、こういうふうな問題はすでに外務委員会等においてもお話がございましたし、私たちのお伺いしたいのは、政府がどういう質問をして、そして相手方がどういう答弁をしたか、こういうふうな質疑やりとりの中から、一体どういうふうな態度であるかというような問題、その他いろいろな問題を私たち検討することができるのであって、今度、何かわからないような文章で、英文を日本文に直したのであるかしらと思っていましたら、先ほどのお話を聞いておりますと、そうでもなくて、お話をし合ったものの中から抜粋してきたんだというようなことになってきますと、この文章をお書きになった人は一体どういう日本語を習っていらっしゃったのだろうかとさえ私は思わなければならないような文章だと思っております。もう少しはっきりした質疑応答やりとりというものをもう一度出してもらいたい、こういうことを先ほど森島委員からお話しになりましたのに対して、考えてみますという大臣の御答弁でございましたので、ぜひともこれは国会参考資料として出していただきたい、こう思いますが、外務大臣、だいじょうぶでございますね。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 外交上のいろいろな折衝の経過、その文章用語等にわたりまして詳細にわたって国会にその国の政府が御報告を申し上げるということが、外交上の慣例としていかがなものか。これは、先方了解を得てやるのでございますれば、その限りにおいて外交上の信義を破ることはないと思いますが、御要求のように、これは文章になっていないとかいうことでございますけれども、私どもは汗かいて真剣にやった問題でございます。そして国会の御審議に役立てようと思って出したものでございまして、決して、国会を侮辱するとかいうようなことは、先ほども森島先生にお答えしたように、毛頭ないのでございますから、その点は戸叶さんもひとつ御了解いただきたいと思います。  それじゃどの程度までのものをこれにつけ加えて出し得るかということにつきましては、なお検討をしてみます。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これに対してどの程度かのものをつけ加えて出すかを検討するということでございますから、やはり、日本からどういう質問をして、あちらのほうからはこういうふうな答えがあったというような形でぜひそれを出していただきたいと思うわけです。  そこで、質問に入りますが、原子力潜水艦寄港問題につきましては、一昨年池田さんがアメリカに行ったとき、それから昨年は防衛庁長官がいらしたときにお話があって、いよいよことしの初めにライシャワー大使から正式な申し出があった、そういうふうに政府がいままで説明してこられたわけでございますが、そこで、今回の問い合わせに対しましての中間報告をここに出されておりますが、政府は、安全性についても、それから万が一の損害が起きた場合の補償についても、この出された中間報告でもういいんだ、これでだいじょうぶなんだというお気持ちであるのか、それとも、これはこれまでの質問であって、今後においてもなお質問を続けながらいかなければならないんだというふうにお考えになっていられるのか、この点を伺いたいと思います。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、ここに書いてありますとおり、いままでに入手し得た中間報告でございます。現に若干照会いたしておることもあるようでございます。そういう性質のものでございます。
  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、いま大臣お話によりますと、これは中間報告で、いまなお折衝しているものがある、こういうことでございますね。それが回答があり次第、やはり国会にもう少し誠意のある形でお出しいただけますね。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 もとより国会に御提出申し上げるつもりです。
  22. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次にお伺いしたいのは、今度の発表を見ておりますと、ずっとアメリカは安全だ安全だと一生懸命になって言っているわけです。ところが、これを私たちが読んでみて、一体どこが安全なのか、少しもわからないわけなんです。そこで、こんな資料では、日本アメリカとの政府の間では、アメリカが安全だと言うんだからこちらも安全でしょうといって何とかごまかせるかもしれませんけれども国民はなかなかそうはいかないと思うのです。やはり、これを見れば、ああますますこれはわけのわからない不安全なものだというふうな疑問を持ってくる、不安を持ってくると思いますけれども、こういうふうな盛り上がってくる国民の声というものを私は率直にお聞きにならなければいけないと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、国民の一人一人が原子力科学者ではないと思うのです。それからまた艦船工学の御専門であられるわけじゃないわけでございまして、こういう問題につきましては、やはり、御専門の方々の意見も聞いて安全性を確かめてまいるということを通じて、十分精通されてない国民が御理解をいただくようにしなければならぬと思うのです。そこで、国民は御専門の方ばかりじゃないという前提で、戸叶先生みたいな権威のある方が、これは不安だ不安だということをやられること自体が、相当国民影響力があると思うのでございます。私どもは何ら主観をまじえずに客観的な事実として御提示申し上げておるわけでございまして、こういうのを国民に読んでいただき、国会でも御検討いただきまして、これについてなお究明すべきものがあってこれはどうだという御意見があれば、私のほうもこれを取り上げて検討いたしますが、私は、国民の不安がますます高まっておるというようにもとっておりませんで、国民自体は私はそんなに御専門の方ばかりじゃないと思いますので、そういうことでなくて、いま問題になっておる原子力潜水艦寄港問題というものそれ自体につきまして、国会のレベルにおきまして、あるいは政府部内で最善検討をするという万全の態度でいきたいと私は思っております。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大部分の国民といいますか、いま非常にこの問題に関心を持っております。そして、大臣は、国民は何とか納得してもらえそうだとおっしゃいますけれども、なかなかそうじゃないわけです。ことに、この原子力とか原子炉というものはやはり何といっても専門家意見を聞かなければならないと思うのです。だといたしますと、やはり国民のたよりにするのは科学者だと思います。そうすると、科学者人たちは、その安全性というものを研究するには、どうしても原子炉の構造とかあるいはその中のいろいろの問題を知らなければ、安全であるかどうかということはわからないわけです。そこで、科学者自信がないわけです。今度の原子力潜水艦寄港に対しては、こういう自信のない科学者、そういう人にたよらなければならぬ国民なんですから、当然国民としては不安で不安でしかたがなくなるでしょう。こういうふうな面から考えましても、いかに政府が、政治的な面から、これは安全なんだ、アメリカが安全なんだと言うからいいんだということをおっしゃっても、国民のたよりにする科学者も、そして国民も、不安の中においてこういうものの寄港を認めるということは、なかなかできないのじゃないか。政治というものは、もっと民の声、そしてまた専門家の声というものを聞いていかなければいかぬのじゃないかと思うのです。科学者にしても、アメリカがこう言うたから信用しなさいといって信ずるような科学者であったら、これはおよそたよりにならない科学者だと思うのです。科学者は、やはり、自身独自の形で科学的に研究して、安全であるかどうかということを見なければならないと思うのです。そういう点から見ましても、私は、今日科学者も納得できないで、政府だけが政治的にこれをやらせようとしても、ちょっと無理ではないかと思いますし、国民の声もだんだんとこういう不安なものを寄港させるべきでないということになってきておりますが、もう少し科学者なり国民の声を外務大臣は聞いていただきたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 科学的真理に二つはないと思うのです。アメリカに通用する真理が日本に通用しないはずはないと私は思います。しかし、日本科学者がみずからの手で安全性を検証しないと安心できないという科学者の気持ちもよくわかります。したがいまして、私どもは、いままで寄港している国々ではそういう問題はないと思いますけれども日本につきましてはこういう問題があるわけでございますから、これは政治として無視できませんから、したがって、科学者の御意見を聞いて、ただすべきところをただしてきて御報告申し上げておる次第でございます。ただ、たびたび申し上げておりますように、軍艦でございますから一つの限界があるということで、その限界の領域の軍事機密の中身に至るまでみずからの手で究明しなければ承知はできないなどというのは、私は国際慣例を無視したわがままであろうと思います。この点は、科学的良心から申しましてよくわかりますけれども、国際慣例もまた御尊重いただかなければならぬと思うのでございます。  そうして、われわれが窺知できないその軍事機密の領域におきましては、私どもがたびたび申し上げておるように、アメリカの科学水準、アメリカ原子力利用についての安全確保措置、そういうものはアメリカにとりましても重大な関心事であることはもとよりでございまするから、そういうアメリカの科学水準、またそれに伴う周到な措置というものに御信頼を願えますまいかと、まあ相談を持ちかけておるわけでございます。それは信頼できないというならば議論にならないわけでございますが、私はそのように考えております。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 科学者が科学的良心に忠実であるということは、私は当然なことだと思うのです。また、そうでなければ、私は非常に困る問題だと思うのです。したがって、こういうふうなことに対して、政府が、それも認めるけれども、しかし外交上の問題も考えてくれというふうな形であっては、これはちょっといろいろ問題が残ると思うわけです。日本外務大臣なんですから、むしろ、日本の国で日本科学者を総動員して、科学者の良心というものに忠実であるその人たち意見にもっと耳を傾けていただいて、そうして、よく話し合い、よく調査をしていかなければ、大きな問題が私は残ってくると思うのです。ですから、いま何もこのアメリカの基地を海の底に持ってきたり空に持っていったり核兵器を持ち込むというような危険のあるこういう問題を無理にやるべきではないというふうに私は考えておるわけでございますが、まあ外務大臣のお考えとはちょっと違うようでございまして、あとからまたその問題については追及したいと思います。  そこで、今度の損害補償の問題もちょっと一点だけ伺いたいのですが、その問題を見ましても、この中をさっと読んでみますと、事故があればアメリカの法律によって補償をされるというただ機械的な内容を示したにすぎません。私どものような原水爆の被害を受けました日本国民にとりましては、そんな補償の問題より、もっと根本的な問題があるんじゃないかと思うのです。何か事故が起きたときにどうするかというようなことはアメリカの法律によって守られるかもしれませんけれども、事故によって放射能の災害が起きたときは一体どうするか、こういうふうな問題については、何もお話しになっておらないようで、この中では書いてございません。こういう点、放射能によって起きた損害の場合には一体どうなるんだろうということまで突き詰めて交渉をされておるのかどうか。そういうことはありませんからだいじょうぶですと言ってしまったらこれはそれでおしまいかもしれませんけれども、とんでもない問題だと思うのです。私たちの一番心配するのは、アメリカの戦略戦術というものも問題ですけれども、さらに国民が不安に思っていることは、事故によって起きる放射能の災害というものに対してはどうなるんだろうということで、それには何も触れておらない。この点については一体お話し合いになっているのですかどうですか。今度の中間報告には何らそれに触れておらないようでございまするけれども、そういう問題についてはお話しになったかどうか、この点も伺いたいと思います。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 放射能損害を含むことは当然のことだと思うのです。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 放射能損害を含むことは当然ですというのは、どういう意味ですか。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 原子力による災害というものの本体は放射能による被害だと思うのでございまして、この損害補償の問題はそれを含まなければ意味がないと思います。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうだとしますと、物的損害についてはアメリカの三つの法律によって何とか損害を補償するというようなことでございますが、これは放射能による損害に対する補償にはなっていないはずです。これは事故が起きた場合の事故に対する補償であって、放射能の中まで触れておらないと思うのですが、いかがでございますか。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 その事故というのは、放射能による事故も含んでおります。
  32. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうなってまいりますと、よけい問題が出てくると思うのです。アメリカの三つの法律、物的損害に対しましてはアメリカの公船法、海事請求解決権限法、そうしてまた外国請求法という三つの法律によって補償がされるとなっておりますけれども、その内容を見ますと、最後はアメリカ国会の権限というものがあるわけでございまして、日本から交渉しても向こうがはいと言わなければそれに応じられない問題やら、それから、金額が非常に少ないという問題、ちょっと見ただけでそういういろんな問題があるわけでございまして、いましるされているようなこんな金額でとても放射能の災害なんというものはカバーできる問題じゃないと思うのです。したがって、私どもは、これを見ただけでも、一体根本的な放射能というものの災害を考えているのかいないのかということを考えるのですけれども、今度の原子力潜水艦寄港によって決して放射能の災害を受けるような事故は絶対にないという、そういう前提で外務大臣は今度の寄港をお認めになろうとしているのですか。この点を念のために伺いたいと思います。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、主観をまじえずに、現行の損害補償制度はどうなっておるかということをここにしるして提出したわけでございます。私どもは放射能の災害というようなことが起こることはきわめて少ない確率だとは思いますけれども、万一の場合を考えまして、原子力の損害というものについての補償制度はどうあるべきかということを当然政府としては考えなければいかぬことでございますが、現行の制度のもとにおきましてはこのようなことになっております。それで満たされないものはどうかということになりますと、これは政治の問題になるということは、私もたびたび申し上げておるとおりでございます。
  34. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、ここに出されておりますアメリカの補償する三つの法律につきましては、あとの機会にもう少し、先ほどお願いしたような資料が出たときに質問したい、こう考えるわけでございます。  そこで、もう一点お伺いしたいことは、今度の原子力潜水艦寄港にいたしましても、F105Dジェット機の板付配属にいたしましても、政府はこれに対してはっきりと、核兵器の持ち込みでないからこれは事前協議の対象にはならないんだ、こういうふうに言われているわけでございます。そうしますと、今回アメリカから原子力潜水艦寄港を申し入れてきたのは、どこかの条約の何かによるものでしょうか。それとも、単に国民感情を考えアメリカが申し入れてきたのだというふうにお考えになるのでしょうか。この点をはっきり答弁していただきたいと思います。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 日本国民感情を考えての政治的配慮だと思います。条約上の問題ではございません。
  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、政治的配慮であるということでございました。そこで、私この際はっきりさせておいていただきたいことは、日米間の安保条約による地位協定の五条三項というのがあるのですけれども、これには別に関係はないわけですか。これはどういうことかといいますと、合衆国及び合衆国以外の国から合衆国がチャーターした船舶とか航空機で合衆国によって合衆国のためにまたは合衆国の管理のもとに運航する船舶とか飛行機についての項目でございまして、そういう船舶あるいは飛行機が日本の港に入るときは、通常の状態では日本に通告しなければいけないというふうに書いてありますけれども、これには該当しないわけでしょうか。この点を念のために伺っておきたいと思います。
  37. 中川融

    ○中川政府委員 アメリカ原子力潜水艦日本に入る場合には、当然いま御指摘になりました地位協定第五条第三項と関係があるわけでございます。したがって、普通でありますならばこの五条によって日本に通告するだけで入ってこれるわけでございます。しかしながら、特に原子力を利用する船であるというゆえに、ただいま大臣からお答えになりましたように、政治的配慮から日本にいろいろ相談してきておる、こういうことでございます。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この五条には関係があるということですね。条約局長、そういうことですね。
  39. 中川融

    ○中川政府委員 五条に関係あるわけでございます。もっとも、施設・区域として指定されました日本の港に入ります場合は、三項よりもむしろ第五条第二項によりまして自由に日本に出入することができるという規定がございますが、施設・区域である港についてはむしろそちらのほうになるかとも思いますが、いずれにせよ、合衆国の公船につきましてはこの第五条が適用になるわけでございます。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもは、残念なことに、安保審議のときに審議を打ち切られまして、大切な地位協定というものの審議に入れなかったわけでございます。そこで、この問題をいろいろ議論するひまがなかったわけですけれども、この五条に示されているのは、合衆国または合衆国以外の船舶及び航空機とあるわけですね。船舶及び航空機の中に軍艦とか軍用機というものは入るのですか。
  41. 中川融

    ○中川政府委員 これは、合衆国の船舶あるいは合衆国が用船しておる船舶あるいは航空機ということでございますので、いわゆる公船でございます。要するに、国家が所有しまたは管理しておる船ですから、その中でも一番大きな部分としては当然軍艦があるわけでございます。しかし、要するに、軍艦以外の目的に使うものでございましても、政府が所有あるいは管理しておる船はこの条項が適用になるわけであります。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はこの機会にやはりはっきりさせておいていただきたいと思うのですが、そうしますと、軍艦とか軍用機という言葉を条約上は使わないで、こういうふうな取りきめをする場合には合衆国の船舶とか合衆国の飛行機と言うだけでいいわけですか。これは、英語では、ヴェッセルズとかエアクラフトという字を使って、別にウォー・シップとかそういう字を使っていませんけれども、そういうのを使わなくても軍艦や軍用機というものはみんな入るというふうに条約上解釈してもいいわけなんですか。
  43. 中川融

    ○中川政府委員 条約の条項の書き方でございますが、いま問題になっております地位協定の第五条におきましては、単に軍艦、軍用機だけではなく、アメリカ政府が管理し運航するもの、合衆国によってあるいは合衆国のために管理・運航されるもの、こういうふうに広くいわゆる公船というふうに定義できると思いますが、広く公船についての日本の港への出入の権利を認めておりますので、したがって、軍艦とか軍用機という言葉を使っていないわけでございます。その条項の目的によって、あるいは軍艦、軍用機という字句を使うこともございます。しかし、この当該条項では、いま申しましたように公船について規定しておる。公船の一番多い部分は軍艦でございます。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、その場合に、やはり指定された港、基地以外は許されないわけでございますね。
  45. 中川融

    ○中川政府委員 この第五条をごらんになりますと、施設・区域に入るものにつきましては第二項に規定してございます。これは出入する権利をはっきり認めております。したがって、この規定から申しますれば、日本政府に断わることなしにむしろ出入を自由にできるということになるわけでございます。しかしながら、施設・区域でない日本の港に入ります場合、これは、第三項によりまして通常の場合は日本国当局に適当な通告をしなければならないと書いてありますので、原則として事前に通告することによって入ってくる、かようなことになっております。なお、施設・区域以外の港で日本の港に入ってまいります場合は、付属の合意議事録によりまして、原則として開港であるという規定になっております。大体においては開港に通告をして入ってくる、こういうことでございます。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの地位協定の五条との関係は、条約上の解釈は一応わかったわけですけれども、そうすると、今後におきまして、いま交渉をしております交渉の内容というものをまとめた場合に、大平外務大臣にお伺いしたいのですが、それを交換公文を取りかわすか何かの形をとって、その後で寄港を認めようとされるわけですか。この点の手続の問題だけを伺いたいと思います。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 いま中間報告出し、なお照会中のこともございますので、そういったものがそろった上で、そういった問題をどのような締めくくりにするか、考えてみたいと思いますが、いまのところまだ考えていません。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はこれだけで質問を終わりますが、先ほどから伺っておりますと、公船というものの中に原子力潜水艦等の問題もありますし、それから、今回の原子力潜水艦というものは核装備ができないのだということを言われておりますけれども、私どもが聞いた範囲内におきましては、サブロックなどを積んでくる。そうしますと、知らない間に通告だけで日本の港が核装備しているというような場合もあり得るわけでございまして、こういう点をも考えてみましたときに、政府が言うように、核装備をしないのだ、核兵器を持つときには事前協議の対象にするのだと言ってみたところで、通告だけで知らないうちに核基地ができているというようなこともあり得るわけでございまして、こういう問題をにらみ合わせてみましても、外務大臣にどうかこの寄港の問題だけは慎重に考えていただかなければならないと思っております。ことに世論の声にも耳を傾けていただきたいと思います。  私は、この報告書の内容の一々につきましては次の機会に、次の形で出されたものについて質問させていただくことをお約束いたしまして、きょうはこの程度で次の委員に譲りたいと思います。
  49. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 穗積君。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは時間もありませんが、私も関連して原子力潜水艦寄港問題についてお尋ねしたいと思います。  先ほどから森島委員並びに戸叶委員から申されたように、私ども国会の権威において政府提出要求いたしました文書というのは、ここに示されたような新聞・雑誌その他のスクラップのようなものではなくて、あるいはまた、原子力委員会アメリカ政府に対して証言をした証言というような内容のものではなくて、日本政府の責任において向こうにいかなる点を質問したか、それに対して向こう政府日本政府に対していかなる責任のある回答をしておるかという問題が大事なのです。これについて外務大臣検討するということでございますけれども、この問題に対して国会すなわち国民政府寄港を許可することに対して可否を判断するについては、どういたしましても責任のある文書が必要なのですね。そういう意味で、これは検討の余地はないのであって、これを国会を通じてぜひ国民に示して、そして国民の持っておるすべての不安に十分答える、納得を得なければやらないというのが民主主義政治の当然の外交の方法ではないかと思うのです。ですから、ぜひともお出しいただきますように、私は国会の名において要求したいと思うのです。それに対して、もう一ぺん恐縮ですが大臣のお答えをいただきたいと思います。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 さっきも森島さんにお答えいたしましたように、いままで原子力潜水艦寄港した国からはこういう照会アメリカにないのですけれども日本側でいろいろな問題が出ておりますので、私どもとしては可能な限りその不安を解消すべく努力するために照会をいたしておるわけでございます。ただいままで照会いたしまして入手し得た客観的な事実を御報告申上げたわけでございます。これでは審議にならなぬとおっしゃるのでございますけれども、私は、賢明なる国会の方々でございますから、私どもが誠心誠意手続をとって、客観的な事実として、主観をまじえずに御提示申し上げたものは、お取り上げいただいて御検討いただけるものと思っておるのでございますけれども、しかし、それもまかりならぬということで、何かトーキングペーパーそれ自体を出さなければ審議しないというようなおことばでございますが、こいねがわくは、私どもの気持ちをおくみとりいただきまして、これを、主観をまじえない、客観的ないままでに入手し得た事実であるというようにおとり願いたいのであります。さらにトーキングペーパーの形でなければならぬということでございますれば、先ほどお答えいたしましたように、よくとくとくと検討させていただくというように申し上げるよりほかないと思います。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 大臣は私どもの趣旨をすなおに理解しておられないと思うのです。問題は、安全性が客観的にあるかないかをこちらが手探りで調査するのが目的で言っているのではないのです。日本政府国民に対する政治的責任を持っておって、そして、いかなる点について向こう要求をし、あるいは質問をしたか、それに対して向こうがいかなる答えをしているかということが問題なんです。向こうというのは、アメリカの政治的責任者です。それが問題なんです。といいますのは、いま最後に戸叶委員も尋ねられましたけれども、これを許可するなら許可するという場合に、そこで何らかの問題が起きたとする。いろいろな外交上の問題、政府がいままでわれわれにお答えになりましたような範囲を越えた、すなわち、日本アメリカの極東における核体制の中に巻き込まれる結果になった、あるいはまた向こうがよこした安全性資料というものがあやまちであり、あるいは不慮の事故のために被害が生じたというような場合に、一体何を根拠にして向こうの政治的責任は問うのでございましょうか。そうすると、いままで討議いたしましたトーキングペーパーについては、口頭によるものにしても外交上の責任は免れないわけでございますから、それらについての向こう側の責任を明らかにしておくことが必要なんです。それが何らなしに、事が起きましたときに、あとになって何ら向こうが責任を持つべき文書または口頭における責任のよりどころがないということでは困るわけです。国会もそれを何ら把握しないでこの問題に対しておろそかに審議をしたということでは、国民に対する責任は果たされないと思うのです。そういうわけでございますから、これを国民に発表しない、そしてまたフリートーキングの中で相手に責任も政治的なオブリゲーションも負わせない、そしてうやむやの間に入港を許可するというお考えですか。そういう場合もあり得るわけですか。いまのお話ですと、必ずしも責任のある文書の交換もしないように伺える。あるいは口頭でもけっこうですが、向こうの政治的最終責任者が日本政府の責任者に対して、ちゃんとした、あとあとのために基準になるようなよりどころになるような文書または約束というものの取りかわしがなければならぬと思うのです。それなくしてこういう重大な問題を通そうというようなことは、これははなはだしく政府態度は誤っていると私は思うのです。われわれの要求は決していやがらせではありません。私は当然明らかにすべき点だと思うのです。ですから、いままでのトーキングペーパーであろうと口頭であろうと、あるいは文書であろうとを問わず、政府の責任ある者が折衝して、そして向こうがそれに対してあとになって責任を持てるような内容の、そういう責任の所在の明らかになったものを明らかにしなければ、私は非常なあやまちだと思いますが、外交交渉上これは当然のことじゃないでしょうか。もう一ぺんお答えいただきたい。それは非常に基本に関することでございまして、こういうことでは何のために一体お互いに審議しているのかわからないわけです。文書の交換もしない、話し合いも発表しない、そしてあとになって事が起きたときに一体何を根拠にして向こうの責任を追及するのか、それすらできていない、そういうことでこういう危険きわまる寄港問題を処理していくということはあやまちである。われわれは、文書の形式ではっきり向こうトーキングペーパーに載っておるものか、あるいは口頭であるか、だれが一体だれに対してどういう責任において答えたかということが明らかにならないということは、これははなはだしく政府国会も手落ちになると思うのです。おわかりでしょう。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 いままでの照会を通じて明らかになりましたことを中間報告の形で御提出申し上げたわけでございます。このデータにつきましては、政府が全責任を持つのは当然でございます。これは責任をとらない書類であるというようなことは毛頭考えておりません。一〇〇%責任をとります。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 これは政府日本国会出し資料にすぎない。アメリカはこんな文書に責任を持ちません。事が起きたときに、個人または日本政府がそれに対する責任を追及したときに、こんな文書向こうが責任を持ちますか。六月五日日本政府国会報告した文書なんというようなものを、これをわれわれがたてにとって、こういうことを君は言っているけれども間違ったじゃないかということで責任追及する根拠になりますか。こんなものはなりませんよ。それを私は聞いている。日本政府並びに国民として、アメリカの政治的責任者に対して責任を問うことができる確たる基礎になる文書または記録というものを、約束ごとをはっきり明らかにしておくことが必要であるということを私は言っているのです。そこが焦点なんですよ。われわれが文書要求しているということは、ただ安全性に対してその資料がどうとかなんということの調査資料を求めているのじゃない。政治上の責任の問題なんです。   〔福田(篤)委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 本来、この問題につきましては、穗積さんのおっしゃるように、許可するとか許可しないとかいう問題ではないのでございまして、日本国民感情を考えて、政治的な配慮から日本に相談があったことでございます。そこで、安全性等について疑点があるから、ただすべきところはただして、先方の公式の見解を取りまとめてここに出したわけでございます。外務省はこれに対して政治的責任をとることは当然でございます。ただ、あなたが言われるような、補償の問題等につきましてこの文書で責任をとるというような、そんなことはできないことは当然でございまして、これは、一番最後にもありますように、現行の制度がどのようになっているか、アメリカ側の解釈も伺って、こうなっておりますということで、損害補償等につきましては当然有権的な法律の根拠が要るわけでございまして、これは当然のことと思います。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 向こう政府の政治的責任は、一体今度の交渉の過程でどこから出てくるのですか。何を根拠にして出てくるのでしょうか。その責任を負い合うという根拠がまだできていないでしょう。それを言っているのです。アメリカ政府日本政府の間におけるはっきりした約束ごとを立証する、そういう基礎が必要なんです。契約書もないものをもって、あと責任を追及しようというても、これは国内における隣同士の借地借家ですらできない。まして、外交上のことについて、日本政府または国民考えておったことと違った結果になったということに対して相手の無責任を追及する場合に、われわれは外交上の根拠になるようなものは何も持っていないのです。持っていないでしょう。それがあるならお出しになったらどうですか。そんな無責任なことはやっておりませんと、いまあなたはたんかを切られたのだから、それなら、相手の責任をいつでも追及のできるような、一体そういう客観的な文書なり約束ごと、——口頭でもけっこうですが、約束ごとは、何月何日だれがどういう発言をして、向こう政府の何を代表してちゃんと日本政府に公約をしたかという点を、記録でいいから明らかにしていただきたいのです。それを私ども要求しているのですよ。森島委員が三週間前の委員会要求されましたから、私は、それに関連して、先週の委員会で、ぜひその交渉の経過の責任の明らかになる文書並びに経過報告してもらいたいと言ったら、よろしいと言われたじゃあありませんか。先週の水曜日にその点を私は問題にして聞いているのです。ですから、これは前の戸叶委員の御質問に対しても関連いたしますけれども、当然のこととして、日本政府並びに日本国民に対してアメリカ政府が政治的責任を持っているという点をはっきり立証する文書または交渉の事実をこの際国会に明らかにしていただきたい。伝え聞くところによると、国会中はうるさいから国会が済んだらばたばた許可をしてしまおうという腹の中であるようですけれども、そういうことであるならば、ますますわれわれは不安を持つわけです。やるなら堂々と国会中におやりになったらどうですか。また、国会が終了してでなければできないならば、そのときには臨時に委員会その他はできるわけですから、緊急な措置をおとりになって、むしろ国民のすべての人の納得のいくような方法をとることが当然だと思うのです。その当然な審議のための材料すら、便々と、この二年にわたってやりながら何ら国民に示されていない。要求してもなお出さない。アメリカの政治的責任を問うておるのです。だれがどこで証言したなんということは、われわれ聞いているのじゃない。アメリカ委員会のだれか、あるいは兵隊のだれかがどこかの委員会や議会で安全であると証言したなんていう、そんな新聞の報道のようなことを聞いているのじゃないのです。当然じゃないでしょうか。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 この問題は、先ほど申したように、条約論ではないので、政治的な配慮から事実上相談があったということでございますが、安全性についてどのように見ておるかという点について照会をやりまして、先方の公式な見解を取って、これを御審議いただきたいために御提出いたしたわけでございます。この寄港問題についての政治的責任は当然政府にあるわけでございまして、私どもも多数の国民の支持を得ておるわけでございますから、穗積さんが御心配されるまでもなく、私どもは一〇〇パーセント政治的責任をかけてせっかく配慮をいたしておるわけでございまして、ただ、先ほど申しましたように、この問題をどのような始末をつけるかの形式の問題でございますが、これは、いませっかく照会しておる途中でございますから、こういったものがみなそろった上で考えてみたいと思って、いままだ考えておりません。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、その問題だけにとらわれておりますとあとの質問者に迷惑かけますから、私は二点について議員の立場から政府要求をして御答弁をいただきたいと思うのです。  一つは、いままでの政府間の交渉の中で、日本政府はいかなる点について疑点を持ち、いかなる点について質問をしたか、あるいは要求をしたか、それを記録に従って文書出していただきたい。そして、それに対して向こうから一体いかなる責任を持った者がそれに対していかなる回答をしたかということ。これによって責任の所在を明らかにしたいと思いますから、これはぜひ、中間でもけっこうですし、中間あるいは交渉の進展に伴って随時出していただくように要求をいたしたいと思います。  もう一点は、最後にこの問題を締めくくられますときに、拒絶するならばそれでけっこうですけれども政府のいままでの意向のように、これを許可するということでありますならば、ちゃんとした相手に責任をあとになって明らかにせしめるような手続、議事録でも交換文書でも、その形式はあとで検討するとして、内容としてはぜひそれをやるべきであると確信をいたしますから、これもぜひそういう方法で締めくくりをされるように要求をいたしたいと思います。  その二つについて大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 第一点につきましては、先ほどお答えしましたとおり、経過国会に出すということにつきましては、一ぺん考えてみたいと思います。どの程度までは出せるか、先方の了承も得なければなりませんから。  第二点につきましては、いまはともかくこういう究明をいたしておる段階でございまして、その段階になりましてまた考えてみたいと思います。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねいたしますが、政府は、これらの回答については、いままでもっと多くの資料または交渉の中で説明を受けておると思うのですが、なお交渉を続けられるということだが、どの点についてまだ疑点が残っておって交渉を続けられるのでございましょうか。いままでの回答の中で不備と思われる点はどういうことでございましょうか。これが完全に十分だというならばイエスかノーか結論を出すべきであって、まだ出せないというならば、まだ疑点が残っておるに違いない。その疑点が残っているのは何と何であるかを明らかにしていただきたいと思います。政府考えておるところでけっこうです。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 照会の段階で、どういう内容の事項について照会しておるかは申し上げられませんが、入手できましたならば、あの時点においては当然御報告申し上げます。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと聞えませんでしたから、もう一ぺん……。どういう点ですか。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 いま照会中のことが参りますれば、またそれを取りまとめて御報告いたしたいと思っております。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 どうせ国会報告するという大体のお約束をなすったようですから、何を一体聞いておられるか、いま聞いておられる点はどういう点についてですか。何についてでございますか。何についてまだ質問中なんですか。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいまそういうことを申し上げる段階でないと思うので、それは照会して、参りましたらまた御報告します。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 向こうの同等の内容はあとでいいですよ、回答がなければできませんから。しかし、今度の問題については秘密も何もないじゃないすか。国民がすべてが心配しておって、公然たることです。だから、政府としては、その国民の意向を聞いてやるんだと言っておられるのですから、国民の心配しておる点について何と何についても政府国民の意向を代表してアメリカ側質問をしあるいは回答を求めておるのですか。何の問題ですか。向こう答え内容は、答えが出てからでなければ報告できないでしょう。日本側が今取り上げておる問題は、文章あるいは口頭で詳細に向こうのしゃべったこと書いたことを全部ここで直ちに答えろと言っておるんじゃない。どういう問題についてまだ検討中であるか、質問中であるか、回答を求めておるのであるか、それを明らかにしていただきたいのです。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 政府部内でとくと相談いたしまして、安全性等に関連して若干の照会をいたしております。参りますればまた御報告します。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、ここに要約されておるものについて、いままでアメリカ政府のどういう男を相手にしてやられたかわかりませんけれども、これに対してまだ政府安全性その他補償問題等について納得ができないということですね。不安が残っておるということですね。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 相談して、なおただすべき点が若干ございますので、それを聞いております。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 だから、すなおにお答えになったらどうですか。安全性の問題、補償の問題が回答の二つの要点になっております。それについてまだ政府は納得できない、不十分であるということですね。二つとも。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 いままで得たものにつきまして、関連的にもう少し究明しておかなければいかぬようなこともございます。私が申し上げているように、ある段階が参りましたらまた御報告します。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 どうも大臣態度が私にはこの問題に対して特に納得がいかないのです。他の交渉経過外交交渉とは違いますよ。事理明らかなのですから。そういう晦渋な御答弁ではぐらかしていったり、ごまかしていくというような態度は、かえって、何かそこにあるのではないか、心配な点があるのではないかという疑惑を増すばかりでしょう。私も増さざるを得ません。もっと率直に答えていただきたいと思います。  それではお尋ねいたしますが、実は、私どもは、放射能と安全性の問題、被害の問題、それに対する補償の問題等々を心配しておる者があるということはよくわかりますけれども、私どもがさらにそれよりもっと深刻に最も大事に考えることは、休養と補給のためなら、さして必要もないのになぜ横須賀と佐世保にあえて寄港を求めるかということです。しかも、国民の中に非常に多くの反対者がおるにかかわらず、無理を押してアメリカ日本の軍港に寄港を求めなければならぬということは、何か特別の理由があるのに違いない。軍事上の理由があるに違いない。それをわれわれは心配しているわけです。すなわち、アジアにおける緊張の問題。いま寄港しようとする潜水艦が直ちに核兵器を載せておる載せておらぬは別といたしまして、この潜水艦そのものはいかなる型でありましょうとも、最近のアメリカの戦略体制の発展の段階から見て、原子力潜水艦というものは移動攻撃武器である。これを共産圏に対する最後の武器に仕立てようということで非常に必死になっているその武器です。武器の性質から見たってこれはもう明瞭です。平和的な船舶の補給・休養の寄港とは性質が異なりまして、これは明らかに作戦の必要上から来ておることなんです。そういたしますと、一体そういう必要がどこにあるのか、そのことをアメリカ側に一ぺんでもお尋ねになったことがありますか。その事実をお尋ねいたします。それに対して向こうから回答があったかどうか。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 穗積さんも御承知のとおり、これは原子力を推進力とする潜水艦でございまして、原子力を推進力とする点以外は普通の潜水艦と同じでございまして、原子力を推進力とすることがいま町勢の進歩とともにだんだん普及していっていることで、何でもないことだと私ども思うのでございます。ただ、しかしながら、原子力ということに対して日本においては特殊な国民感情というのがございまして、原子力を推進力とする動力を持っているということと関連して安全性について心配があるというわけでございますから、念を入れてそれを解明していっているわけなんでございまして、あなたがアメリカの戦略との関連に問題を一般化されておりますけれども、私どもそのように考えておりません。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 アメリカ原子力潜水艦が核兵器を搭載する目的をもってつくられたものであるかどうか、そうしてまた、現に最近つくられております型の潜水艦が全部核兵器であるかどうか、これについてはあなたも私も実は科学的には失礼ですけれどもしろうとだと思うのです。しかしながら、日本の信頼すべき原子力科学者の中には、これはもう明らかに核兵器である、単なる推進力の機構として石炭や油をたくかわりに原子力でやっているんだというような、そんな単純なものではないということをすでに断定しており、そして心配しておる学者すらあるわけですね。そういう方の御意見をお聞きになったことがありますか。あなたは何をもってこれを核兵器でないと断定されるわけですか。向こうが言うから口移しにそう言うだけのことでしょう。外務省はそういうことに対する科学的な根拠を責任を持ってお調べになり、断定なさるだけの勇気がおありになりますか。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 科学の名においての御究明ではございますが、私どもこれは常識だと思っております。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 そういう心配があるから、しかも国内においては非常に多数の人が寄港に反対をしておるのですから、この際、日米間の相互理解のためにも、これはそんなところに無理をする必要はないと思う。単に給水と休養のためなら、この間帆足君が言ったように、風光明媚で十分に役の立つハワイの港でけっこうではないか。あるいは、他の日本以外の、国をあげて賛成しておる国への寄港でけっこうなんで、なぜそういうことをする必要があるかということをお尋ねになったことがありますかということを聞いているのです。何か特別の理由がなければ、反対を押し切ってやるという必要はないじゃないですか。あなたは日本政府でしょう。日本外務大臣でしょう。そうであって、民主的にやろう、国民の納得を得た上でやろうということならば、納得しないのに無理やりにやろうとするについては、無理をしなければならぬ何かより多くの高い理由がなければならぬ。日本に対しても利益がなければならぬ。明らかに、これは武器ですから、軍事的な理由でしょう。その軍事的理由というものについてお尋ねになったことがありますかと聞いている。それに対して回答がありましたかと聞いている。それはどうですか。給水と休養だけならば、必ずしも必要はないのです。反対を押し切ってやる必要はないのですから、それは相手を説得してやめさせたほうがいいと思う。にももかかわらずやらなければならぬというのは、何かの理由が向こうにはあるはずです。それをわれわれは心配しているわけなんです。あなたは、国民の意向があるならばと、さっきそう言ったでしょう。国民に心配がある点があるならばそれを指摘してそれを相手にただしたいということを言われているわけでありますから、それをお尋ねになったことは一ぺんでもありますかと言うのです。その事実だけ答えてください。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたが言われるように無理をしてやるというのではなくて、これは向こうといたしましてはいつでも入る権利があるわけなんでございますが、先ほどのような事情があるから、日本側に政治的な配慮で相談を持ちかけられておる、日本側にはいろいろな御意見がございますから、私どもはその安全性等について照会をしてあるということでございまして、私どもは、これは、原子力が普及してまいりまして、艦船に使われるようになってきて、潜水艦にも原子力を推進力としているという、ただそれだけのことだと思っているのでございます。これはただ常識なんでございまして、それを核武装、核戦略なんかに問題を一般化されないようにお願いをしたいと思います。
  78. 野田武夫

    野田委員長 ちょっと御注意いたしますが、時間をひとり……。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ残念ですが、きょう時間がなくて十分できませんから、留保いたしますけれども、関連して明快に一点だけお答えいただきたい。  いままでの御答弁ですと、そういう軍事的、政治的な必要性についての質問は一ぺんもしていない、向こう答えていないということがいままでの審議が明らかになっている。ところが、私を含む国民の大多数の人が、あるいは団体の人が、その点を非常に心配しているわけです。そこで、あなたは日本国民全体を代表する政府外務大臣であるならば、さっき言われたように、それらの心配についてもこれを取り上げて向こう意見をただす、こういうふうな御答弁があったわけですから、われわれが個人または他の団体あるいは党の名においてこういうものをぜひ聞いてもらいたいということであるならば、それはあなたは取り次いでアメリカに責任のある回答を求める用意がありますかどうか、お尋ねいたします。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 政府におきましても、国内の専門家の御意見を十分徴して責任ある照会をいたしておるわけでございます。そういった問題については政府におまかせをいただきたいと思います。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと議事進行についてですが、大臣は何時までですか。
  82. 野田武夫

    野田委員長 あとで法案がありますから、一般質問は大体三時まで、二時間というお約束になっております。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 三時といっても、二時間前には始まっていないですよ。
  84. 野田武夫

    野田委員長 大体三時という約束をしておりますから……。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 一時四十分から始まったのすよ。
  86. 野田武夫

    野田委員長 あなたがそうおっしゃれば、あとの方を延ばすだけのことですから……。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 二時間なら、一時四十分に始まれば三時四十分ということになるので、まだ四、五十分近くありますよ。何をお急ぎになっておられるのですか。
  88. 野田武夫

    野田委員長 穗積君、発言を続けてください。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 実は、この国会提出されました文書内容について私どもははなはだしくまだ疑点を持っているわけです。ここに出ておるだけでも、——出ていないことについてはより多くの心配をしておりますけれども、出ておることについても持っておりますので、いまお話しのとおり時間がありませんから、内容に触れるのは次の機会にして、関連しながらお尋ねをいたしたいのです。  ここで向こう側が強調している安全性、それを確認するのは日本の自主的な判断においてはできないわけですか。相手はこう回答しておるけれども、この回答では不十分であり、安全であるか危険であるかについて、自主的に、日本政府なり、あるいは日本政府に能力がなければ科学者の協力を得て、その点を明らかに調査、立証するということの手続は、私はどうしても必要だと思うが、それはおやりになるお考えはございませんか。原子力委員会あるいは七人委員会あるいは原子力科学者、ことごとく口をそろえて、安全性についてはこの程度のデータはみな知っておると言っておるのです。知っておられて、権威ある信頼すべき日本原子力科学者というものは全部心配だと言っておる。それで、結論は反対だと言っておる。だから、アメリカ回答は別として、日本の自主的な判断による安全性の確認、確証というものが私は必要だと思う。それについては、今後政府はどういう手順、方法をもって安全性、危険性の問題について検討、確認をされるつもりであるか、それを伺っておきたいと思います。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 今日までも科学者の方々の御意見を聞きながら照会をしてきておるわけでございます。今後も当然そういうふうにやっていくつもりであります。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 先般、原子力委員会、七人委員会あるいは原子力科学者が出されております文書、これに対して口頭または文書をもっていままでに政府答えられ、あるいは、さらに言っておられる科学的根拠を検討された事実がございますか。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 私が再々申し上げますように、最大限政府としてただすべきはただしておるわけであります。ただ、先ほど戸叶さんにも御答弁申し上げましたように、軍事機密にわたる点については入手はできない。国際慣例上やむを得ないから、その面についてはアメリカの科学的水準を信頼いたしましょうというように申し上げておるわけでございます。  それから、科学者の方が反対だということでございますが、私どもそうとっていないので、自主的に解明できなければということが科学者の科学的良心だと思うのであります。したがって、軍事機密にわたる以外の面につきましては、できるだけ科学者意見を聞いて解明いたしておるわけでございます。私は漸次科学者の理解を得るものと思っております。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 この文書の中を見ましても、安全性の問題について三つの点に問題があるわけです。一つは、安全性は確認してあると言っておりますけれども、常に危険が伴うものであるということは、この文書の中で明確に出ておるわけです。たとえば、この報告書の三ページの中でも、特別な配慮を払っている、——特別なということは、特別な危険性を常に持っているものであるということでしょう。常に持っておるものだということを示しておるわけです。それから、第二に問題になりますのは、事故の問題です。事故というものは予測せざるものが事故であって、衝突または沈没等によって起きますそういうような事故あるいは戦闘によって起きる事故、こういうものは、予測したケース以上のものが出るのが事故なんです。だから、いかなる事故に対しても絶対安全だなんということは言えないわけです。たとえば、スレッシャー号の沈没に対して、安全だから心配するな、こう言っておるけれども、ただここでは数十年と書いてある。安全性を誇張するアメリカが言っている文章でも、無限ではなく、数十年と書いておる。数十年過ぎた後はどうなるのです。絶対安全だなんということはないということをアメリカみずからが証明しておる。それから、さらに問題になりますのは、常に予測せざる危険を伴うものであるということをこの文章の中で立証しておる。これが第三の事故の点です。第三は、運航の点その他についてでございます。運航については特別な事由のない限り夜はやらないと十二ページに書いてある。不時の運航上の理由がある場合以外は夜間を避けて昼間やる、それから日本政府の指定した航路を通ると言っておる。これは武器ですから、戦争は不時ばっかりですよ。こんなことは何の安全にもならない。その不時の一回のできごとというものがすべての運命を決定するわけです。百回のうちのただの一回でも常に不時な場合ばかりであるのが軍艦という武器の性質なんです。何の意味もないです。これは夜間を避けるとか夜は戦争せぬという規定はないわけですから。それから、政府の指定した航路以外は通らぬと言うが、不時の場合は全部そんなことはきかないということでしょう。こんなことはばかばかしいごまかしにすぎない。それから、もう一つ私がお尋ねいたしたいのは、共同調査についての問題でございます。この文書の中に出ておる共同調査について、これも当然取り上ぐべきことであると思うのです。特にいま申しました最後の二点、夜間は通らないとか、政府の指定した航路以外は通らないとか、そういうことがいかにばかばかしいごまかしであるかということは、これは明瞭だと思うが、大臣はどうお考えになりますか。軍艦自身が不時なものなんです。戦争自身が不時なことなんです。不時な場合ばっかりでしょう。そのときに予測せざる事故が起きるわけです。  それから、第二は、共同調査について、向こうは、寄港する港におけるバックグランドの調査、それから碇泊中のモニタリングの調査、こういうことは必要に応じてやっていい、材料を示していい、いわば共同調査の意味ですが、これに対しては日本測はどう取り上げるか。そのとき、私が言いたいことは、スレッシャー号の調査、これは非常に参考になる。この寄港せしめるかせしめざるか、すなわち安全性の問題、軍略的なことは別として、政府の最も国民に言わんとしておる安全性の問題について、決定前に確認をしなければならぬ事例はスレッシャー号の事故だと思うのです。これに対して、日本政府は、この文書に示されておる共同調査の精神をアメリカが文字どおり友好的に示すならば、スレッシャー号に対する共同調査というものは当然こちらも要求すべきだと思います。あるいは独自の調査、日本政府の信頼すべき科学者の協力を得た日本政府自身の調査、あるいは共同調査、これを要求すべきだと思うのです。これについてはどういうふうにお取り計らいになりますか、お尋ねをいたしたい。  時間がないと言われるから、私は先に列挙して一括して質問しておりますから、再質問しないで済むように逐次四つの問題についてお答えをいただきたいと思うのです。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたもお認めになったように、絶対に事故がないなんということはない。自動車にいたしましても飛行機にいたしましても、事故はあるわけでございまして、潜水艦に絶対に事故がないなんということを申し上げるような自信は私はございません。しかし、原子力事故というのは、これは大きな事故でございますから、特別な安全保障の措置を講ずるということは当然だと私は了解いたしております。  それから、戦争というのは不時だとおっしゃるわけでございますが、私ども、そう戦争が起きてはたまらぬのでございまして、どうして戦争を抑制するかということは最高の政治の仕事だと思うのでございます。私どもは、そういう戦争がいつ起こるかわからぬというような事態を避けるためにこそ、日本の安全保障について真剣に配慮いたしておることを御了承いただきたいと思います。  それから、運航上の安全保障の問題について、日中に限りとかあるいは指定航路とかいうようなことは必要じゃないというような御意見でございますけれども、私どもは、国民が不安がないようにいたさなければならぬということで、そういう点につきまして照会をいたしまして、そのような了解を持っておるわけでございます。可能な限りの安全保障措置をとるのは当然のことと思うのでございます。  それから、スレッシャー号のモニタリングについて、日本が自主的に、あるいはアメリカと協力して参加する意思はないかということでございますが、そういう意思はございません。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 共同調査を必要としないという理由を明らかにしてください。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、アメリカ側の発意による調査会ができておるのでございますから、その調査について出ましたら、これは御発表があることでございますから、それで承知すればけっこうだと思います。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 共同調査の提案が向こうからあったのじゃないですか。共同調査の精神というものはこの回答の中に盛られておる。当然じゃないですか。共同調査は心配があるならやってもいいと言っておる。この形は一体どこから来たのです。心配がある心配があると言うから共同調査応諾の返事がここにあったのでしょう。アメリカ局長、どうですか。
  98. 安藤吉光

    安藤政府委員 この資料にありますモニタリング、この点をよくお読み願えばはっきりすると思いますが、これは原子力潜水艦が入ってくる前に一体どれだけの放射能があるか測定しておいて、入ってきてからほんとうにこれに異常なものが加わってきているかどうかを調べる。要するに、現在のわれわれの承知しているところでは、原子力潜水艦の放射能というものは許容量以上のものはないということを向こうも言っておるようでございます。それを裏づけるために、そういったようないわゆるモニタリング、放射反応の調査をやってもけっこうでございますというのが向こうの意味でございます。いまのスレッシャー号は、御存じのとおり、九カ月のオーバーホールのあとの試験航海で潜水をいたしましたときに、ボストン沖合い二百二十海里のところで沈んだわけでございます。これについてはアメリカとしてはいま査問委員会を開きましてあらゆる力を動員してその究明につとめておるわけでござまいす。両方は全然意味が違うわけでございます。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 これでやめますけれども、それはおかしいじゃありませんか。大臣の言うように、アメリカをすべて信頼する、アメリカの科学は万能だ、アメリカの良心は全能だ、こういう立場に立って、アメリカの調査あるいはアメリカの言うことはすべて信頼する以外にない、信頼せざる者は非国民のようなことを言ってきめつける精神からいけば、この寄港地あるいは停泊中のバックグラウンドの調査も日本が加わってやる必要はないじゃないですか。精神が違うでしょう。精神を言っておるのです。そうであるならば、スレッシャー号というものは、この事故並びに危険性について寄港の判断をする上において生きた非常に具体的な事例だと思うのです。その調査の要求ができないのですか。ここに書いてあるのは違うと言う。もちろん許されたときのことなんです。しかし、許すについては、精神というものは同じでしょう。共同調査ということは、相手の自主性、相手の自主的な判断というものを認めておる精神でしょう。その精神を演繹するならば、事前の具体的事例であるスレッシャー号の事故調査というものは、当然これは向こうから進んで調査を求めて日本検討を求めるのがほんとうの友好の態度だと思うのです。自主的な日本政府態度でなければならぬとも思う。そんなことはわかっております。これは許したときのことを言っておるバックグラウンドとかモニタリングとか、そんなことは具体的なケースが違うということはわかるけれども、私の言っておることは、アメリカ日本よりもはるかに高い良心と技術を持っているから、アメリカの言うことは万能だからというので、全部大臣はうのみにしておられる。そのアメリカ自身が、自身がないから、一緒に調査しようじゃないか、こう言っておる。そこで、共同調査という精神を私は言っておる。そうであるならば、この判断をするためのスレッシャー号の自主的または共同調査というものは、日本政府として当然要求すべきだし、向こうも拒否するどころか進んでこれに応諾を与えるのがこの精神でなければならぬ、こう思うのですよ。局長、違いますよ。私の質問をごまかしては困る。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 まさか穗積先生も本気でそういうことをおっしゃっておるのではないと思います。スレッシャー号の沈没事故に日本が出張っていって調査したらどうかということでございますが、私どもはそういう必要はないと考えております。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 局長、何とかもう一ぺん……。
  102. 安藤吉光

    安藤政府委員 大臣の先ほど申されたとおりでございます。なお、共同調査ということに関連いたしまして、アメリカは、この十二ページの四にも言っておりますとおり、日本がやるときには協力する用意があるということを言っておるので、日本のほうでそういうことをやりたければ、その点はやってもけっこうでありますということを言っておるわけでございます。
  103. 野田武夫

    野田委員長 川上貫一君。
  104. 川上貫一

    ○川上委員 私は、質問をいたします前に、一つだけ外務大臣にあらためて要求しておきます。  外務委員会要求をした日本アメリカの間の原子力潜水艦に関する交渉の文書、これと今度提出された文書とは全く合致しません。この文書は、第一に、合致しないばかりでなしに、内容が、アメリカの言うたことであるのか、日本政府考えたことであるのか、故意にわからないようにつくられておる。これは非常によくない。第二に、この文書政府外務委員会要求した文書とすりかえようとしておる。それから、第三に、こういう文書出して、日米交渉経過の実体をほんとうに国民の前から葬ろうとしておる。こういうものでありますから、ただいま社会党の戸叶委員森島委員穗積委員が言われたように、あらためて外務委員会要求したあれに合致する文書提出されることを要求します。返事は要りません。要求します。  それから、これは委員長にでありますが、私はこの委員会でILOの質問をしたいと思って、労働大臣に御出席を要求したのでありますが、労働省関係は一人も出席になりませんが、どうですか。
  105. 野田武夫

    野田委員長 川上委員にお答えいたしますが、きょうは社労委員会関係大臣並びに政府委員がこの外務委員会に出席するのが時間的に非常に困難だということでございましたから、他日また機会を見て労働省から出てもらいたいと思います。
  106. 川上貫一

    ○川上委員 委員長の御返事はわかりました。しかし、労働大臣はそれは社会労働委員会に出席されるのでありましょうが、労働省関係には、大臣もあるし、次官もあるし、そのほかたくさんの当局があるのでありますから、政府委員でない場合でも場合によったらこれはあり得ることなんです。外務委員会も社労委員会も同じ国会委員会です。なるほど社労では重要な問題が審議されておるであろうと思います。しかし、そうすれば、外務委員会の私の質問は一向重要でないのか。これについては私はどうも納得できないです。労働大臣一人ではないはずです。ただの一人も出席ができない、これは委員長はどうお考えになりますか。それだけを承りたいと思います。
  107. 野田武夫

    野田委員長 川上委員にお答えいたしますが、きょう実は労働省に私直接折衝いたしました。労働大臣は、いま川上委員の御了解になっておるような事情で出席できない。しからば政務次官出してくれと要求いたしましたところ、政務次官は、ただいま外遊といいますか、田村政務次官はILOの会議に行っております。大事な会議であります。私もちょっとそこは気がつかなかったので、政務次官要求したのです。ところが、これは本場のILOの会議に出ておるようでございます。それから、なお政府委員ということでございましていろいろ折衝いたしましたが、ちょうど社労では社労関係法案が三つか四つ重なって、何かいろいろと委員会内部の折衝があるということで、どの政府委員が時間があくかあかぬかということは確約できないということでした。それで、川上委員の私に対する御質問の趣旨はわかります。委員長としての態度に対して御不満のようでございますが、私は、川上委員に敬意を表するために、大臣並びにこれにかわる政務次官並びに政府委員、ここまで限界をつけまして、その他の補助員のごときは、むしろ川上委員に対する敬意を欠くと思いまして要求いたしませんでした。その点を御了承願います。  なお、つけ加えておきますが、外務省には当然ILOの関係の方がおられますから、もしきょう御質問がありますれば、外務省限りにおいての御答弁は可能だと思っております。
  108. 川上貫一

    ○川上委員 けっこうです。それでは、残念ながら、労働大臣、次官その他政府委員の方も出席できないという委員長の御答弁でありますから、やむを得ません。外務大臣その他関係の方に政府のILO勧告に対する基本的な考え方についてだけきょうは質問をいたします。  まず第一に、ILOの勧告はきわめて控え風な勧告だと思うのです。控え目なものではあるが、その根本精神は、日本政府は憲法第二十八条に基づく労働基本権を完全に保障せよ、この一点で貫かれておるものであると解釈して差しつかえないか、外務大臣はどうお考えになるか、これをお聞きしたい。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 ILOの勧告は尊重してまいりたいと思います。
  110. 川上貫一

    ○川上委員 もう一回言ってください。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 ILOの勧告につきましては、極力尊重してまいるべきものと思います。
  112. 川上貫一

    ○川上委員 そういうことを聞いておるのではない。この勧告の根本を貫く精神は、日本政府に、憲法第二十八条に基づく労働基本権を完全に保障しなさい、こういう精神で貫かれておるのであると考えるかどうか、こう聞いておる。
  113. 太田正己

    ○太田説明員 ILOの勧告につきましては、日本政府といたしましては、もちろん、ただいま大臣がお答えになりましたように、尊重していくことは当然でございます。ただいま御指摘の憲法との関係になりますと、御質問の御趣旨は、その憲法に基づきましてできました日本の国内法規との関係に基づきましてこの勧告をどのように尊重してそれを生かしていくかということであろうと思います。この点になりますと、主管省でございます労働省にお尋ねいただきたいと思います。
  114. 川上貫一

    ○川上委員 日本政府というものは、これは労働省に聞けなんていうこが言えますか。私は政府に聞いておる。大体、ILOの勧告なんかに対する責任は労働省にあるのですか政府にあるのですか。何という答弁をするんですか。
  115. 太田正己

    ○太田説明員 外務省といたしましては、ただいま申し上げましたように、日本政府といたしましては、加盟国となっております国際機関でありますILOの勧告は尊重してまいる、こういうことでございます。この実際の態様になりますと、国内の主管省である労働省の領分になりますので、労働省にお尋ねいただきたい、こうお願いを申し上げたわけでございまして、決して、先生のいま御指摘のような、そういう……。   「外務大臣答弁せよ」と呼ぶ者あり〕
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 政府といたしましては関係省とよく協議いたしましてILOの勧告につきまして極力尊重してまいるつもりでございますということをお答え申し上げた次第です。
  117. 川上貫一

    ○川上委員 それじゃ、外務大臣答弁になりません。私はもう一ぺん言います。この勧告の根本を貫く精神は、憲法第二十八条の労働基本権を完全に保障せい、これが基本精神ではないか、こう聞いておるのです。それですから、ほかのことは要らぬ。それは基本精神だという返事をするのか、基本精神ではないというのか、これだけ言うてもらえばいい。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 ILOの憲章に基づきまして勧告が出る、それを日本政府がどう受けとめるかという場合に、川上さんは、労働基本権を完全に実施せよという趣旨だと思うがどうだ、こういう……(川上委員「趣旨ではない、根本精神だ」と呼ぶ)根本精神はそうじゃないかというお尋ねでございますが、労働基本権は、ILOの勧告をまつまでもなく、日本の憲法で明定されておるところでございますので、労働関係全体につきまして尊重してまいらなければならぬことは当然だと私は思います。それから、ILOにつきましては、労使それぞれ自主的にその組織を定め、労使関係が平等の立場で規定されていくということだろうと思うのでございまして、そういうことにつきまして、外務省といたしましても、もとより、この精神は日本におきまして普及・尊重されてまいるように希望し、かつそのように指導してまいらなければいかぬと思います。
  119. 川上貫一

    ○川上委員 憲法に沿うておらぬからILOがこういう勧告をするのです。大体、日本の労働基本権は、憲法第二十八条で完全に保障されておる。だからこそ、考えてごらんなさい。国家公務員法はいつできた。昭和二十二年の十月に制定されておる。国家公務員法が制定されたが、全労働者の争議権は、すなわちその基本権は完全に保障されておった。これが事実なんです。しかるに、昭和二十三年七月二十二日に、アメリカ占領軍は、いわゆるマッカーサー書簡というもので日本憲法をじゅうりんした。これがまた厳然たる事実なんです。そこで、続いて日本政府は二十三年の七月の三十一日にマッカーサー書簡に基づいて政令二〇一号を発布しておる。この二〇一号によって、続いて十二月の三日に国家公務員法を改悪した。前の国家公務員法では完全に基本権が保障されておった。これをいわゆるマック書簡なるものに基づいた政令二〇一号によって改悪した。続いて公企労法等をつくった。ついに法律をもって官公労働者の争議権を全面的に剥奪した。団結権、団交権を大幅に制限した。大体これは講和のときに全部改めなければならなかったものだ。それをそのままにして今日まで来て、この憲法のじゅうりん、労働基本権を踏みにじっておる。これがはっきりとした事実なんです。すなわち、こういう事実に基づいて労働者の基本権の保障をマッカーサーが奪い去ったその以前の正当な状態に引き戻せ、これが勧告の根本精神です。外務大臣はどうお考えになりますか。
  120. 太田正己

    ○太田説明員 ちょっと、その前に、私思い違いをしておったかと存じますので、川上先生の御質問、私、勧告と先生が申されましたときに、普通私どもは、ILOの勧告と申しますと、いままでに百十何件ございますが、毎年総会で採択いたしますものに条約と勧告とがございますので、それではないかと思っておりました。通例新聞報道でILOの勧告と申しますのは、結社の自由委員会報告に基づいてできます理事会の勧告でございます。日本政府に対する勧告をさしておりますあれのほうの御質問でございましたか。その点がちょっと私わかりかねます。
  121. 川上貫一

    ○川上委員 あほうなことを言うな。いまこの国会審議するのに、ILO八十七号の問題であることは明らかだ。そのくらいのことがわからぬでそこへすわっておるのか。きまったことだ。
  122. 太田正己

    ○太田説明員 私ども普通ILOの勧告と申しますと、総会に基づいてできる勧告でございます。その趣旨で大臣も私もいままで御答弁を申し上げておりまして、どうも失礼いたしました。ILOの勧告と申しますと、通例私どもはそういうようにとっております。
  123. 川上貫一

    ○川上委員 妙なへ理屈を言うな。それはへ理屈というものだ。  外務大臣にILO八十七号の精神を聞いているのだ、こうあらためて言いましょう。並びに、ついでに言うておきます。九十八号も同じ精神です。これは十年前に批准している。同じことです。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 ILO勧告の精神を、川上先生は、本来あるべき労働基本権の姿に戻すことが八十七号条約批准の意味だという御解釈で政府の見解を求められているわけでございますが、ただいままで過去におきまして政府国会がとってまいりました公務員の団体交渉権、争議権等に対する規制は、したがって許しがたいものである、そういうものをもとに返すことがこの八十七号条約に関連しての勧告の根本精神ではないか、どうだ、こういうお話だと思うのでございますが、私どもは、それぞれの行政におきまして、公務員のあり方ということにつきまして過去において英知をしぼって立法せられたことでございまして、過去において国会政府がやりましたことに対して、これは尊重してまいらなければならぬと思うわけでございます。ただ、八十七号条約を批准することによりまして、その批准勧告に関連して国内法上その精神に沿わないものは当然直していくべきものでございまして、政府が提案しております法案にもそのことはちゃんとうたわれてあると承知いたしております。
  125. 川上貫一

    ○川上委員 ILO八十七号の勧告を尊重する、そのほかILOの勧告については尊重する、こういうことなら、これを批准する場合にも、国内法を、公労法の四条三項と地公労法の五条三項を自動的に削ることによって、これでけっこう。外務大臣、そう思いませんか。ILO八十七号の勧告はこれ一本限りで済む、すぐ批准できる、これはもうはっきりとした事実です。どうお考えになりますか。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 この段階で政府の見解を問われますならば、政府といたしましては、ILO八十七号の批准案件を国会に提案してございます。問題は国会の手にあるわけでございまして、政府としては、早く御審議をいただいて、この案件が批准されることを衷心から希望しております。
  127. 川上貫一

    ○川上委員 そういうことを聞いているのではありません。政府がこの精神を尊重する、こういうことであるならば、政府は、この批准に伴って、公労法の四条三項、地公労法の五条三項、これを自動的に削る、これだけでいい、こう考えるが、どうお考えになるか、こう聞いておる。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 したがいまして、いまお答えいたしましたとおり、政府といたしましては、閣議を通じましてILO八十七号条約の批准という決意を固めて、所要の法律案、条約案を国会に提案いたしておりまするし、いまあなたが指摘されておる二つの法律の改正も御提案申し上げておるわけでございます。
  129. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、なぜ国内法をいろいろとほかに改正しなければならぬのか。四条三項、五条三項以外になぜ改正しなければならぬのか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 今日、わが国の労使関係、公務員と政府との関係の現実に照らしまして、政府が八十七号条約を批准するにつきましてはこの程度の改正をすべきを適当と認めて、それを法律案といたしまして御提案いたしておる次第です。
  131. 川上貫一

    ○川上委員 その法律がおかしい。そういうことをしてはならぬというのがILO勧告の精神なんです。そういうことをしてはならぬ。これを私は聞いておる。憲法二十八条はそういうことを認めておらぬ。これを聞いておる。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 川上さんの御見解は御見解として承りますが、私どもは八十七号条約の批准をいかにかしてなし遂げたいということで、私も内閣におりました当時苦心いたしまして、とにかく国会に御提案申し上げるまでになったわけでございます。この関連の国内立法はILO八十七号条約に違反するものであるというあなたの御見解でございますが、私どもはさように考えていないからこそ御提案申し上げておる次第です。
  133. 川上貫一

    ○川上委員 私が言っておるのは、四条三項と五条三項を自動的に削除すれば済むのだと言っておる意味は、ILOの批准ということをいまも大臣言っておられるのですが、これに藉口して、これに便乗して、あるいはこれを逆用して、そうでなくても憲法に違反して労働基本権を奪っておるのに、それをさらに一そう奪い取ろうとする国内法の改正をやろうとしておる、なぜこんなことをするかということです。公労法の四条三項、地公労法の五条三項を自動的に削りさえすれば、一ぺんにILOの批准はできる。なぜこういうより以上に労働者の基本権を奪い取るような国内法の改正までするのか、この腹を私は政府に聞いておる。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、今日の状況のもとにおきましてはこういうことをやる必要があると考えて御提案したし、そのことにつきましては、ILO本部におきましても私は反対はないと聞いております。
  135. 川上貫一

    ○川上委員 時間があまりないそうですが、ILOを何とか批准したいのだ、こう言うなら、公労法の四条三項と地公労法の五条三項を自動的に削ったらすぐ批准できる。ことしまで待つこともない。十四回も勧告を受けて、なおかつ批准せぬのです。これを言うておる。しかるに、これをやらないで、なぜより以上に労働者の基本権を奪うような国内法を改正しなければならぬのか、これを聞いておる。この点明確に答えてください。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 川上先生からILOの精神をお教えいただいて非常に奇異な感じがいたします。私どもといたしましては、先ほど申しましたように、ILO八十七号条約は批准すべきものだと心得、これを具体化すべく最善の努力をいたしたわけでございます。いま問題の国内立法につきましては、今日の環境のもとにおきましてこうやることが必要だと判断いたしましてやりましたし、しかも、それはILO本部にも逐一説明報告しておるわけでありまして、ILOの精神に反するなどということは毛頭私ども考えておりません。
  137. 川上貫一

    ○川上委員 何ゆえに、ILOの勧告、八十七号にはちっとも関係がない人事局というものをつくるのか。これはどのような関係なんです。人事局という新しいものまでつくろうとしておるといわれておる。これは何の関係がある。鉄道営業法に何が関係がある。ILOの勧告は、労働階級の労働条件に関する問題です。基本的権利の保障に関する問題です。鉄道営業法は鉄道の営業に関する法律です。なぜこれを変えなければならぬか。ILOの批准をやりたいと思うておると言うが、関係もないことをつつき回る。これすなわち、これを逆用して労働階級の基本権をもっと削ろうとしておる。これはILOを早く批准しなければならぬと思うておる精神じゃない。そういう精神ならば、こんなことはないはずです。大臣、どう思いますか。
  138. 大平正芳

    大平国務大臣 ようやく質問の核心がわかったのでございますが、つまり、ILO八十七号条約というものは、労働基本権を保護するものだということを冒頭に言われたのでございます。これは、八十七号条約の批准にかかわらず、憲法は明定しておるところであります。これを尊重するのは当然だということを申し上げたのでございますが、いま、八十七号条約の批准に関連して、これは労働基本権を保護するものだということでありますが、私はそう考えておりません。ILOの八十七号の精神というものは、労使双方は平等の立場で自由に自分たちの組織を定めて活動ができるということなのでございまして、政府が使用者の側に立って人事局をつくるということは、ILOの精神から申して当然のことで、政府、使用者にそういう自由があることは、ILOの精神にのっとっておることでございます。こういうことは、いま論議にならぬと思います。
  139. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣のこの答弁はむちゃくちゃです。労使双方が正常な状態でやるという基礎には、労働者階級は完全なストライキ権を持っておる、資本家階級はまた資本家階級としての権利を持っておる、これで初めて平等になる。ストライキ権を全面的に削除しておいて、どこに平等がある。こんなことを言いよったら、(「革命だ」と呼ぶ者あり)——革命でも何でもない。自民党の方がそういう考えを持っておるから、ILOの批准なんかこんなに困るんです。  この問題は、時間がないと言われるから、これ以上聞きませんが、そんなら、外務大臣、官公労働者の争議権を法律をもって全面的に禁止しておる、こんな国がどこにありますか。アメリカは、あの人権差別さえ平気でやっておるような国です。世界の憲兵です。戦争屋だ。これは例外だ。このほかにどこにありますか。法律をもって全面的に禁止しておる国がどこにあるか。
  140. 太田正己

    ○太田説明員 たとえば、ソ連のごときは、ストライキ権が事実上全くない。労働基本権も全く無視しておるということを結社の自由委員会から勧告を受けております。
  141. 川上貫一

    ○川上委員 どこで受けました。
  142. 太田正己

    ○太田説明員 ただいま資料を持っておりませんが、ILOの勧告を受けたことがございます。
  143. 川上貫一

    ○川上委員 どこが……。
  144. 太田正己

    ○太田説明員 ソビエト連邦でございます。
  145. 川上貫一

    ○川上委員 ソビエトでは労働基本権は完全に守られておる。法律をもってストライキを禁止した国を聞いている。法律をもって官公労の争議権を全面的に禁止しておる国はどこがある。
  146. 太田正己

    ○太田説明員 ただいま資料を持っておりませんので、後日調べましてお答えいたしたいと思います。
  147. 川上貫一

    ○川上委員 資料がないからわからぬというのですか。いまわからぬというのですか、ないというのですか。
  148. 太田正己

    ○太田説明員 ただいま手元に持っておらないのでございます。
  149. 川上貫一

    ○川上委員 そんな国はどこにもないのです。  繰り返します。法律をもって官公労のストライキ権を全面的に禁止しておる国はアメリカ以外はありません。アメリカは別じゃと言っている。人種差別さえあのくらいやる国なのです。あれはもう話にならぬ。日本はこれをやろうとしておる。これは憲法違反でもないし、基本権を尊重すると言うておる。マックの書簡なるものに基づいて政令二〇一号を出して以来これを続けておる。これが日本なのです。  私は結論を急がなければなりませんから、ここで労働大臣に言いたい。——労働大臣がおらぬのは残念です。大体、私の言うておることは冗談じゃないぞ。いいかげんなことを言うてるんじゃないぞ。これは基本的な問題なんだ。政府はこれまで、ILOのすべての勧告の精神は尊重する、こういう答弁をしておる。ILO九十八号の勧告は、ILO八十七号の勧告と、ことば、文章は違いますが、内容は同じものです。裏と表の関係です。一方はこうせよと書いてある。一方はこうこうしてはならぬと一言うてあるだけなのです。十年前に批准しておるのです。にもかかわらず、公労法四条三項も地公労法五条三項もそのままにしてほおかむりしておる。これは十年以来ILO勧告の完全な違反です。それをやって平気で来ておるのです。ILOが何ぼの条約を出しておる。百十八なんです。日本はILOの理事国の一員。この理事国の日本が一体何ぼこの勧告を批准していますか。たった二十四じゃないか。あとは全部ほおかむりしておる。八時間労働制の勧告も批准しておらぬ。最低賃金制の勧告も批准しておらぬ。口では大国だ何だと言うておるが、一体、これで、ダンピング日本、こう言われても申しわけありますか。一方においては憲法をじゅうりんして労働階級の基本的権利を踏みにじっておる。ILO勧告にそっぽを向き、あるいはこれを批准しながら踏みにじっておる。あなた方はこれを知らぬはずはない。知っておる。知っておってこれをやっておる。これはなぜかというと、自主権も何もないのです。安保に縛りつけられておる。これが日本政府のありさまだ。こういう形で大きなことを言うて、一体ほんとうの意味の外交の交渉が自主的な対等な形でできますか。貿易一つにしてもスムーズにいきますか。いきはしないのです。私はこのことを質問しておるのだ。ILO一つを言うておるのじゃないのです。外務大臣は、日本を背うておる外交の最高責任者なんだ。いいかげんなことで済ますべきことじゃないのだ。ことばじりをつかまえてあれこれ言う問題じゃない。根性をしっかりしなさい。日本人民でしょう。日本の民族の運命の将来を背負う責任者なんだ。それが、委員会でいいくらかげんな答弁をしておけばそれで済む、この態度は一体何ですか。私は、ほんとうに心を新にしてあなた方は日本民族の将来を考えなさいと言いたい。祖国の運命を考えてみなさい。ILOの八十七号を批准する場合にも、労働者の基本人権を守ろうとしてはおらぬ。より以上に悪くしようとしておる。これが事実なんだ。だから、なかなか批准ができやしないのだ。野党が絶対反対をしよるのはあたりまえだ。日本の労働者に聞いてみなさい。ILOの精神に従うと言って、これに便乗して日本の労働者階級の基本権を削るために国内法の改悪をするがごときは、いかなる事情があろうとも一歩も譲ることのできない本質を持っておる。妥協も何もありますか。そんなものじゃありません。このときに、外務大臣は、政府の責任者として、無条件にこのILOの批准を推し進め、独立自主の精神をもって憲法を順守し、国の将来、労働者階級の基本的権利を完全に保障するために、日本民族の将来をになう責任者としての責任を持たれることを要求します。委員会の単なる質問だからいいくらかげんに聞いておけばいいという問題じゃありません。あなたにも子供がありましょう。孫がありましょう。どうするのですか。将来のことを考えたら、外務大臣の責任は簡単なものじゃありません。私はこれを言うておる。これを質問しておる。私は決してあげ足とりの質問なんかしたことはない。妙なことを言ってほじくったことはないのです。外務大臣はこの際ほんとうに決心をして、外交担当の閣僚として、少なくともこの控え目なILOの八十七号を即時批准するために、国内法の改悪などははっきりやめてしまうように最善の努力を払うことを要求します。これが私の質問なり要求です。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 川上先生から御激励やら御教示をいただいたわけでございますが、いままでのILO加盟国が百七つございます。そこで、ILOで採択された条約の批准総数は、ことしの一月一日現在で二千六百九十六ございます。したがって、一国当たり大体二十五の批准ということになっておりまして、わが国の批准状況は平均の批准数まで来ておるわけです。したがって、私ども政府がILOに背中を向けておるわけじゃ決してないわけでございまして、それぞれの国がその置かれた状況のもとにおいて最大限国民の福祉を守らなければなりませんので、労使の関係だけは全然別で、あなたが言われたように純粋に施行されてしかるべきであるという考え方には、私は必ずしも賛成いたしかねるのでございます。こういう環境に置かれまして、労使関係をできるだけ整ったものにして国民全体の福祉を担保してまいらなければならぬ政府といたしましては、ILOの八十七号条約を批准する、その批准に関連いたしまして若干の点を改正するということを日本政府が自主的に考えて、私はちっとも差しつかえないと思いますし、現に、政府出しておる法案は、ILOがILOの精神に照らして御検討されて何らオブジェクションはないと承知いたしておるわけでありまして、今後も、いま言われた九十八号の問題その他、ILO機構からいろいろ御勧告があろうと思うのでございます。極力これに照応いたしまして最善の努力を尽くしてまいることは当然でございます。労働者の立場を守ってまいるということにつきましては、川上先生に劣らない熱意を持って終始いたしたいと思います。
  151. 野田武夫

    野田委員長 海外移住事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  西村関一君。
  152. 西村関一

    西村(関)委員 本日は時間がございませんので一問だけお尋ねをいたしましして、明日に私の質問保留させていただきたいと存じます。あらかじめそのことを申し上げまして、お許しを得たいと思います。
  153. 野田武夫

    野田委員長 了承しました。
  154. 西村関一

    西村(関)委員 本法案の第二十一条の三項を見ますと、「第一項に掲げる業務を外国において行なう場合には、当該国の法令の定めるところによるものとする。」、こういうことがわざわざ定められてあるのでございます。しかるに、前回私が質問の中で指摘いたしましたように、ブラジル国の一九四二年法律第四六五七号によりますと、その第十条に、「会社及び財団の如く団体の利益の目的に向けられる組織は之が設立される州の法律に従う。但しその定款が伯国政府により認可される以前に伯国内に支店、代理人又は店舗を有するを得ず。之等は伯国法に従うものとす。」という規定があるのでございまして、このことから考えますと、本法案に定められておりまする事業団のような政府機関的性格を持っている法人につきましては、ブラジル国は必ずしも歓迎するとは限らない。このブラジル国の民法の精神から申しまするならば、こういうものについてはむしろ警戒の気持を持つ疑いがあると言わなければならぬと思うのでございます。この法律によりますと、ブラジルにおきましては事業団は土地の、取得ができないということになるわけでございまして、したがって、事業団は意味をなさないということに法律上はなると思うのでございます。このことにつきまして、移住局長は、その点については従来の移住振興会社も同様であって、それは黙認されてきた、日伯友好関係が続く限りその点には心配がないのだ、また、本法案国会通過の暁には、ブラジル国政府当局は従来と同じ態度で友好的にこれを認めてくれることになっておる、在日ブラジル国大使との間にもそういう話し合いができておる、だからそういう心配はございません、こういう趣旨の御答弁がございました。私は、そのような政府当局の事前の配慮、事前の工作に対して、問題を持ちながらそれらのことをやっておられるということに対しては当然のことであると思うのでございますが、国会において本法案審議いたしまする場合に、ただそれだけの政府当局の答弁では、なお若干問題が残るのじゃないかと思うのでございます。この法案の中に、「第一項に掲げる業務を外国において行なう場合には、当該国の法令の定めるところによるものとする。」ということがうたわれておりまする以上、これと抵触するような問題があるということになりますと、それを知りながらそのまま国会においてこの法案を通過させるということは、やはり議会としては責任があるというふうに思うのでございます。この点は、ただ単に在日ブラジル国大使との間に話し合いができておるということだけでなしに、大使もいずれはかわられるでありましょうし、ブラジル国の政権も必ずしも今日の政権担当者がいつまで続くかということはだれも予測することはできないのでありまして、やはり法律がものを言うのでございますから、その点につきまして、あるいは相手国と覚え書きを交換するとか、何らかの文書による取りきめをするとかいうふうな措置がなされないと何も証拠が残らない。ただ単に出先の大使との口約束というだけでは、もう一つ納得がいかないと思うのでございます。また、先般移住局長は、現地の弁護士とも相談をしておる、弁護士もこれでよろしいということを」言っているということでございますが、どういう法的な根拠に基づいて現地の弁護士がこれでよろしいと言っているか、その点も一明らかにしていただきたいと思います。
  155. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまの点、御回答申し上げます。  まず第一に、はっきり申し上げなければいけないことは、今度の事業団ができまして現地の機構が変わるのではございません。ブラジルにおける法律上、従来の移住会社も日本の移住会社の支社としてブラジルに設立を認められないのでありまして、ブラジルの法人として、移住振興という金融機関と、それからジャミックという拓植会社と、二つのブラジル法人が設立されたのであります。そして、移住会社はこれに対する出資者となっておるわけであります。今度事業団になりましてもこの現地の二つの法人は何ら変更をしないのでありまして、他の諸国におきましては現地の機構を変えるのですが、ブラジルでは、ブラジルの法制上、現在の移住振興というブラジル法人とジャミックというブラジル法人をそのまま残しまして、そうして、出資者が従来の移住会社から事業団の名義に変わるだけでございます。そして、先ほど先生がおっしゃいましたブラジル民法によって、外国政府が圧倒的な出資をしあるいは指導している会社についての規定は、海外移住振興株式会社でも同様でございますが、これも十分承知の上でブラジル政府は移住振興及びジャミックの設立を認めているのでございます。しかし、われわわれといたしましては、今度の事業団ができます機会にこの点もう一歩日本の地歩をはっきりしたい、両国の友好関係が今日のごとくである限りは問題ないでありましょうが、万一のことがあっては困るといういまの先生のお話もございますとおり、そういう意味におきまして、われわれといたしましては、出資者の名義を変えるだけでなくて、先生も御承知かと思いますが、最近日伯移住協定もブラジルの上院、下院の協賛を経まして近く発効の手続になると思いますが、この精神をうたいましてブラジル政府に申し入れるとともに、ブラジル政府から一筆取りたいということで手配をいたしておるわけであります。  なお、ブラジルにおきます弁護士の意見では、そういう手紙を出す出さぬにかかわらず、名義の変更ということでブラジル側は差しつかえないというのが弁護士の意見でございます。
  156. 西村関一

    西村(関)委員 ブラジル法人については従来と変わらない、ただ出資者が振興会社と移住事業団と名義の書きかえで事が足りるのだということでありまして、同時に一筆取るということをいま言われましたが、その一筆の内容についてお伺いいたしたい。
  157. 高木廣一

    ○高木政府委員 この点につきましては、事業団は日本政府が移住を推進するためのサービス機関としての性格のものである、そして、日伯移住協定の第三十九条にも、「両締約国は、日本人植民者の土地への定着を促進することを主たる目的として、特に指定した団体を通じて、日本人植民者に財政的援助を与えることができる。」というような規定もございますが、日伯移住協定の精神は、何国政府が移住推進のためには積極的な財政的その他の援助施策を行なうということになっておりますので、この精神に基づいて日本政府が積極的な移住者へのサービスをやるのだということをはっきりとうたいまして、従来のように移住振興会社について何ら説明してないやり方でなくて、はっきりとうたってやるということでございます。   〔委員長退席松本(俊)委員長代理着席
  158. 西村関一

    西村(関)委員 その点につきまして、いま覆われたような趣旨を向こうに送って、向こうから、そのような趣旨であるならば差しつかえございません、こういう、ただこっちから送りっぱなしではなくて、向こうからの返答の文書と申しますか、そういうものもはっきりお取りになるという考えでございますか。
  159. 高木廣一

    ○高木政府委員 さようでございます。
  160. 西村関一

    西村(関)委員 ところが、前回も指摘いたしましたように、移住振興会社の場合でございますと民間の出資もできるわけなんでございますが、本事業団になりますと、民間の出資はできない、全部政府の出資ということに相なるかと思うのでございますが、その点も、向こうの民法と抵触しないかどうか、そういうことであってもよろしいということをあらためて確かめられるかどうか。これは、私は決して重箱のすみをようじでほじくるような意味の質問をしているのではなくして、やはり法律がある以上はその法律に準拠しなければならぬのであって、法令に従わなければならぬということがうたわれております以上、疑わしいところはこの際やはりはっきりしておくことが国会審議の任に当たる者の責務であろうと思いますからお伺いをするのでありますが、その点につきまして万遺漏はないと思いますけれども、重ねてお伺いをいたしておきたい。
  161. 高木廣一

    ○高木政府委員 私たちも先生と全く同じ考えでございまして、現在の移住会社が大多数政府の出資でなっております性格上、いま言われたブラジル民法との関係で、万一の場合の心配もあるわけでございます。現在においてはブラジル政府も認めておるのでございます。そういう意味におきましては、今度の事業団の設立を機会に、いまよりももう一歩日本の立場をはっきりとさせて、将来問題のないようにしたいということで、いま申しましたようなノートの交換をするという考えでおります。なお、これに対して、さっきも申しましたように、日伯協定の精神というものが、この移住推進のため両国政府が積極的にやるのだということでございますので、ブラジル側も問題はない、こういうふうに考えておるのですが、もしそういうことでいかぬということでありまするならば、従来の移住会社もいけないのでありますが、やり方考えるというようなことがあると思います。しかしながら、われわれがいま聞いておりますところでは、ブラジル政府はむしろこれは認めておるということでございます。
  162. 西村関一

    西村(関)委員 いまの私の質問に対する移住局長のお答えを私も一応了承したいと思うのでございますが、私の質問の趣旨は大臣もお聞き及びのとおりでございますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 移住は今日ただいまの問題であるばかりでなく今後ずっと継続的に推進してまいらなければならぬ事業でございます。したがって、今日私どもがきめてかかりますことが将来の発展を阻害するということがあってはなりませんので、いま御注意の点を十分踏まえた上で、遺漏のないように、この段階で処置すべきものはちゃんと処置して、将来混迷を招かないように心がけたいと思います。
  164. 西村関一

    西村(関)委員 私のきょうの質問はこれで終わりまして、次回に残りの質問を保留させていただきます。
  165. 松本俊一

    松本(俊)委員長代理 田原春次君。
  166. 田原春次

    田原委員 去る五月三十一日横浜出帆の大阪商船の南米移住船ぶらじる丸に私は見送りに行ったのでありますが、この船はおよそ千名近い移住者のベッドを用意しておるのにかかわらず、わずか七十人しか乗ってはいないのでございます。そうして、そこには海外協会連合会のただ一人も見送りに行っておらなかったのであります。学生や親類は行っております。海外に移住する人にとっては、千人一緒に行くから大切であり、七十人行くから大切でないということはないのであります。これは、外務省から数の少ないときには見送りに行かぬでもよろしいというような指令でも出しておったのか、まことに冷淡きわまることだと思うのですが、移住局長はどうお考えになりますか。
  167. 高木廣一

    ○高木政府委員 外務省といたしましては、横浜に横浜移住あっせん所を設けまして、外務省の役人が多数おりまして、これが出帆の前から一切お世話をし、出帆当日におきましても、全部外務省の役人でございますが、お世話をしておるのであります。
  168. 田原春次

    田原委員 戦前の例を申しますと、海外興業株式会社という純然たる民間の移民募集会社がありまして、それは各船、ことに必ず募集代理人が付き添って行って見送りいたしました。それから、単に見送りのみならず、向こうに到着いたしましてからも、うまくいっているかどうかという見舞い状を出す、定着後は嫁さんの世話をして送り出す、それから、生まれた二世が内地の留学を希望すれば、その留学のあっせんをし、保証人となり、下宿を見つけるというような世話をしておったのでありますが、最近の官営になりましてからは、まことに人間的つながりが少なくなっておるのであります。これは官営であれば行っておる者はかまわぬという御趣旨でやっておるのかどうか、これも一つ私どもは聞いておきたいと思います。
  169. 高木廣一

    ○高木政府委員 現在の移住者のお世話は、戦前よりもよくやっております。ただいま海協連から人が行かなかったというお話でございますが、それも正確でないと思います。各地方海外協会が、移住者に付き添いまして各地から参りまして、出帆の当日もこれをお送りしております。また、現地におきましては、海外協会連合会の現地支部がございまして、営農指導から、呼び寄せ雇用の方々についてもできる限りこれらの人が回りましてお世話をしておる。決して戦前よりもサービスが少ないということはございません。戦前の場合は、性格が若干違いまして、海外興業株式会社というのがございまして、これが雇用労働者を自分で募集して自分で持っていきまして、これがブラジルで労働者を必要とするところに配耕するというところまでやっておったのであって、あとは雇用主と配耕された雇用移住者との関係だけになっておるのであります。しかし、今日では、そうではなくて、一人々々の移住者について海外協会連合会現地支部がお世話をしておるのでございます。
  170. 田原春次

    田原委員 今度ぶらじる丸でわずか七十名しか行かなかったのはどういうわけであるか、これをお尋ねいたします。
  171. 高木廣一

    ○高木政府委員 これはいろいろ原因がございますが、たびたび申しましたように、根本的には、農村からの人口の非常な流出によりまして、いま非常な人手不足でございまして、実際を申しますと、県までは移住の熱意が出ておるのですが、県以下の市町村になりますと、むしろ移住で労働力を取られるのは困るというような空気の方が強いというのが実情でございます。なお、しかし、それだけではございません。昨年のドミニカ引き揚げというようなものも悪い影響を与えております。われわれわの一般的な体制にも欠陥があると思います。しかし、そういうものすべてが重なった実情だと思います。
  172. 田原春次

    田原委員 今回七十名しか乗れなかったのは、いま局長の言われた理由があるかもしれぬが、私が神戸について調べたところによりますと、ブラジルの神戸領事館の査証が間に合わないものがおよそ百名あったのでございます。これは一体なぜ間に合わないか。ブラジル側に言わせますと、決して査証を拒否しているわけではない。ただ、少なくとも乗船四十五日前に一切の書類出してもらいたいと言っている。しかるに、海外協会連合会では、もっぱら、自分が居残るか、そういう首切り問題だけに熱中しておりまして、ほとんど仕事がルーズであり、出帆わずか十日前くらいに書類を神戸のブラジル領事館に出すものもある。今回のごときは、もっとはなはだしくて、もう海協連は一切やっておれぬから、民間の業者でやってくれということで、神戸旅行社とジャパン・エキスプレス社に頼んでしまった。突然来たそういう査証関係の事務をこの両社ともできずに、結局百家族からの海外移住を決意した者はピザが取れぬために船に乗れなかったというふうに聞いておるのであります。それは事実であるかどうか、明らかにしてもらいたい。
  173. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいま先生がおっしゃったのは事実でございません。ブラジル領事が査証を拒みましたのは、たとえば、家族となっていながら、その家族でなかったりした人が入っている。主として問題になったのは沖繩からお見えになる方で、神戸へ来て、神戸からまた行かれるという人が一番大きい問題だったと思います。そのほか内地からのもございます。それから、もう一つは、呼び寄せ、——大体いま先生がおっしゃったのは主として呼び寄せの場合だと思います。海外協会連合会がお世話している呼び寄せ移住者と、民間旅行業者が自分でブラジル側の雇用者と日本の希望者とをつなぎ合わせるというケースがございますが、こういう民間の移住あっせん業者の場合の査証がきわめてきびしくなりました。これはブラジル側におきましてももっともなことでございまして、民間旅行あっせん業者の取り扱う移住者については非常にルーズなこともございまして、それがために、サンパウロあたりでも好ましくない日本人がずいぶん入っているということで、厳重にこれを取り締まらなければいけないという空気が強くなっております。これは、われわれのほうが自粛して、ブラジルの法規をくぐるような、あるいは非常にルーズな移住はこれから慎しんでいかなければいかぬ。一例を申しますと、トラホームの人はいけないとか、あるいは指の一本ない人はいけないとか、こういうのはブラジルの法律に規定してあるのです。従来、こういう者でも、法律があっても、いいじゃないかというので出すというようなこともございます。これは、現在におきましては、ブラジルの出先関係者において、理由のある者は、法律が禁じておりましても、一々政府の許可を得て許してくれるというようなこともやっておるのです。先般の場合は、そういう手がなくて、移住あっぜん所に地方から送り込まれたというようなことを聞いております。
  174. 田原春次

    田原委員 海外に移住する人を何かのかっこうで審査されてよい人を出そうという考え方のようでありますが、だれが一体その審査をするのか。一家族についてはどのくらいの審査時間をかけるのですか。ただ十分か二十分面接ぐらいして、はたして、これが有能な人でありこれが有能ならざる人であるか、どうしてわかるか。これはお役所風のものの分け方であると思うのです。海外に行きたい人を出すという方針であればいいのでありまして、いままででも、政府が審査と称してずいぶん時間をかけて、何度も県庁に呼び出し、海協連から、あるいは外務省や農林省から事務官が行きまして、厳然たる態度で調べたりしております。そうやって調べても、やはりサンパウロでは渡航後に種々なる問題を起こしております。したがって、量より質へという言い方は、ことばとしては一応受け取れるけれども、実際にどれだけの事前審査ができるか。できておりません。だから、そういうことは、日本人に対する一応の尊敬と信頼を持って、行きたい人に対しては行けるようにするのがほんとうでありまして、これを拒否する方法はよろしくないと思っておりますが、この点はどうでしょう。
  175. 高木廣一

    ○高木政府委員 日本側といたしましては、一応トラホームとかその他の問題についてブラジルの領事館が認める赤十字その他の病院で検査してもらう程度でありまして、決してむずかしくない。できるだけ出したいというのが関係者の希望です。ただ、行きます場合に、一人々々ブラジル領事の面接が要るわけであります。また、雇用契約の場合には、契約書についても、現地にいるのは親戚である、三親等と書いてあるが、ほんとうにそうなのかというようなことを調べる。これは日伯移住協定でもわれわれ認めておるのでありまして、これをブラジル側から申せば、南米はすべて移住者が主人となる国でありますし、移住者の国であります。したがって、よい移住者を自分の国へ入れるということは南米諸国の大きな主権だというふうに考えておりまして、移住者選考権は最終的にはブラジル政府、受け入れ国にあるのだという考えでおるわけです。これは結局査証というところで最後にブラジルが権限を行使しておるのじゃないか。自分の納得しないものには査証をしない、これはやむを得ないことでございます。
  176. 田原春次

    田原委員 次の質問に移りますが、先ほどの西村委員質問にもありましたが、国内では事業団となり、ブラジルにおいてはその国の法律に基づいたジャミックほか一つの現存する会社形態のものを存置する。そうすると、なぜ一体内地だけで海外移住事業団にしなければならぬのか。現在ブラジル側で相当実績をあげておるジャミックその他の有限会社があるのでありますから、それを存置して続けていけばいいじゃないか。そうしますと、問題の海外協会連合会はジャミックのサービス部としておけばいいのでありまして、特別に事業団という独立したものをつくる必要はないのじゃないかという疑問もわくわけです。にもかかわらず、どうしてもつくるというのは、どういうことでありますか。
  177. 高木廣一

    ○高木政府委員 この点は移住審議会でもずいぶん議論になりまして、われわれは、移住会社の金融ファンクションと、それからいわゆる海外協会連合会の援護のほうのファンクションとは二つに分けるべきであり、できれば二つの機構というような考えもありましたが、移住審議会の圧倒的な御意見が一本にするということで、その理由は、ブラジル側には、形式上二つでも、海外協会連合会のほうはジャミックのほうのサービス部というふうに入って一応一体化されているけれども、もとが二つであるためにどうしてもしっくりといかない、それから、もとが二つであるために、ブラジルではそれほどじゃございませんが、パラグアイのような国では、植民事業というものが、移住会社と海外協会連合会と重複するところがある、だから機構を一本にすべきであるという移住審議会の御決定をこの事業団法案はとっている次第であります。ただ、ブラジルの法律上、金融をする組織と、植民、移住、土地を買って拓植事業をする組織とは一つに分けなければいけないという法律があるために、一応現在のままの形で、出資者の名義の変更だけを考えておるのです。しかし、将来、今度の日伯移住協定が発効いたしまして、さらに一本の政府のサービス機関としての事業団の支部が直接開けるようにすれば、それは一そうけっこうなことだと私たち思っているのですが、それはいますぐできない。ブラジル以外の国は全部各国政府ともそれに賛成しておるのですが、ブラジルは、この協定も、上下両院は協賛いたしましたけれども、まだ発効もいたしておりませんし、一応いまの形でやっていくというのがわれわれの考え方であります。
  178. 田原春次

    田原委員 次に、海外移住事業団法の条文についての質問に移りたいと思います。ただし、これは逐条審議でなく、たとえば第一条を質問して第五条に行って、また思いついて第一条に返ることもありますから、逐条審議でなく条文の審議という形にしていただきたい。これは委員長にお願いしておきたい。  それから、もう一つ高木局長にお尋ねします。私どものところに英文で訳されたものを外務省から送ってきております。そのうちの移住事業団法関係の「ザ・ジャパン・エミグレーション・サービス・ビル」というのは、外務省で刷ったものと思ってよろしゅうございますか。
  179. 高木廣一

    ○高木政府委員 この事業団法が成立しました暁におきましては移住先の諸国に送りまして十分この性格を認識してもらうために英訳を用意いたしましたので、これはまだかりに準備している次第でございます。しかし、事業団の設立も近いということで、すでに現地に送りまして、各国政府にこういうことをいま考えておるのだという了解を得るためにこれを利用しているのでございます。
  180. 田原春次

    田原委員 委員長にもう一ぺんお尋ねしておきますが、逐条審議でなくて飛び飛びにやり、また前へ戻ってもよいですね。
  181. 松本俊一

    松本(俊)委員長代理 はい。
  182. 田原春次

    田原委員 それから、英文のほうもあわせて疑問のあるものはお尋ねします。これもいいですね。  それでは第一条に移ります。第一条には、「海外移住事業団は、移住者の援助及び指導その他海外移住の振興に必要な業務を国の内外を通じ一貫して効率的に行なう」、こういうことが書いてあります。そうすると、すべて事業団一本であって、従来民間で歴史を持っておるもの、たとえばプロテスタントの日本力行会であるとか、カトリックの日本カトリック移住委員会であるとか、あるいは旅行あっせん業者組合の七社の民間の業務であるとか、あるいはブラジルにあります農拓協、それから、ブラジルの現地にある各県の県人会、それとつながりのある各都道府県の海外協会、全拓連、あるいは南米開発青年隊等は、すべて従来の業績連絡等で仕事は続けるわけであるが、第一条を狭義に解釈すると、今後一貫して行なうというのであるから、すべて海外移住事業団の許可なしにはできないということになるのかどうか。これは当然起こる疑問でありますから、明らかにしておいたほうがよいと思う。
  183. 高木廣一

    ○高木政府委員 これは、民間の従来の活動を排除する考えは毛頭ないのでありまして、移住については、民間の燃え上がる自発的な運動として、戦後いろいろの団体が発展してきておるのであります。いま仰せになりましたように、力行会とかカトリック移住委員会とかその他の団体がございますが、こういうものを何もこの事業団が抑圧するのではなくて、国がこの移住を推進するために積極的に金を出して援助する場合に、その国が行なう移住推進のサービスは一本でやっていく。しかし、これは当然国内においていろいろの民間団体の活動がしやすいように協力していくことになりましょうし、それから、海外におきまして、ただいま申されました農拓協、これはブラジルの団体であって、日本の法律で日本側が一方的にこれを規制することのできないのは当然でございます。われわれの考えといたしましては、なるべく、現地の団体、移住推進のためのいろいろの団体の活動は一そう活発にしたい、こういうふうに思っておるわけでありまして、これを抑圧する考えは毛頭ございません。なお、この点は移住審議会の答申にもよくうたわれておりまして、この事業団の精神は、答申の精神そのままを行なう考えであります。
  184. 田原春次

    田原委員 第一条の援助、指導、振興とは、従来と比べてどこが違うのか、これに対する予算もしくは資金面等についての援助を考えておるのか、この点も明らかになっておらぬわけですが……。
  185. 高木廣一

    ○高木政府委員 援助、指導というのは、従来やっておりますのが援助、指導でございます。ですから、圏が一般的に移住推進のためにやっておりますところの、いま海外協会連合会でやっております仕事、及び移住振興会社が行なっております財政的な援助、この二つを合わせた機能とお考えくださればよいと思います。
  186. 田原春次

    田原委員 それから、第三条、「事業団は、主たる事務所を東京都に置く」、これは、この間も僕は大臣にも聞いたのですが、なぜ一体東京都に置かなければならぬか。なぜ日本に置かなければならぬか。私はやはりおかしいと思う。似たような例であるから申し上げますが、戦前、満鉄が、本社が大連にあり、東京に支社があった。実際の経営は大連でやっておる。東京は各役所との折衝にすぎなかったのでありますが、事業団を東京に置いて、従たる事務所をどこに置くことができるというのは、あくまで東京本位にやるというのではないか。それで一体現地に徹底した親切な援助や指導や振興ができるか。すべて書面による援助の判断あるいは書面による指導というようなことになるのじゃないか。従来とちっとも変わらぬじゃないか。それなら何も事業団をつくらなくてもよいのじゃないか、こういうことになると思いますが、なぜ一体東京に主なる事務所を置かなければならぬのか。せっかくつくるのだから、現地中心主義で置くべきだと思いますが、外務大臣、どうでありましょうか。
  187. 大平正芳

    大平国務大臣 田原先生がおっしゃるように、現地重点に運営し、主たる事務所を現地に置くという考え方ももちろんあるわけでございますが、この事業団は、政府委員がいま申しましたように、移住者の援助、指導を一貫して行なう機関として考えておるわけでございまして、東京を中心といたしまして、首脳陣容は東京におっていただくほうが、事業の目的を達するために便宜であると考えたわけでございます。しかし、先ほども移住局長から申し上げましたとおり、他の関係民間団体の活動はもとより、現地における活動というものをもちろん促進して、その協力を得て移住事業全体が円滑にまいるように配慮してまいりますことは当然だと考えます。
  188. 田原春次

    田原委員 少し飛ばしまして、今度は第八条に移ります。しかし、この第七条以前のやつはまた明日でも質問いたします。第八条として、「事業団に、役員として、理事長一人、理事四人以内及び監事二人以内を置く」。と書いてあります。これは、英文のほうを見ますと、オフィサーとしてワン・プレジデントとなっております。プレジデントというのは、われわれが習いました英語では、総裁、社長、会長をいうものだと思います。日本語の理事長一名というのを直訳しますと、チーフ・ディレクターまたはディレクター・イン・チーフとしなければならぬと思うのですが、何ゆえに英語にたんのうな外務省がこうされたのか。特に外務大臣も英語にたんのうだそうでありますが、そのたんのうぶりをここでははっきりさしてもらいたい。ワン・プレジデントというなら、第八条にも、役員として会長一名、理事長一名と書くべきであった。こういうふうに英語で書いて出す理由が一体どこにあるのかわかりませんが、お尋ねしたいと思います。
  189. 高木廣一

    ○高木政府委員 先生にそういうことを言われて私も注意して見ましたが、理事長がプレジデントとなっておるのであります。いま訳しましたときの専門家意見を聞きましたら、マネージメント・ディレクターとかなんとかでははっきりわからないので、わかりやすいように、この会を代表する人としてプレジデントと訳したということであります。これは参考のために訳したのであって、これは法案でも何でもございませんので、もし誤解を招くようであれば訳を変えていいというふうに私自身は思っておったのですが、そういうふうに軽くおとりいただけばいいのじゃないかと思います。これは、この事業団の日本文の法律とは全然別個に、どういう性質のものであるかということを外国に知らすための便宜のためにやるものでありますから、かりに訳したものであります。
  190. 田原春次

    田原委員 いまわれわれが移住の対象としておるのはラテンアメリカでありまして、大体スペイン語、ポルトガル語であります。英語は、アメリカ、ハワイ、カナダ、豪州、ニュージーランドでありまして、わざわざ英語で書かれて、田原、おまえはスペイン語がわからぬから英語にしたぞという意味かもしれませんが、われわれもそれぞれ準備をすればスペイン語でもわからないでもないわけであります。英文で書いたものを何ゆえにラテンアメリカ各国に送らなければならぬのか。これは、先ほども川上さんの御質問の中にあったように、いかにもアメリカにこびて、私のほうは南米にこういう問題を出すのですが、ミスター・ケネディ、あなたはどう考えるかということではないかと思うのですが、これはいかぬと思うのです。だから、英語で出すことはおよしになったらどうですか。後日、豪州、ニュージーランドに移住者が行けるようになった場合、それらとの移住協定ができて事業団が活動するときに、海外移住事業団とはどんなものかと言われたときには、こんなものですと英語でやることはいい。いま何をあわてて英文の説明書を持って行くのか。外務省は実にルーズ千万であると私は思う。したがいまして、いま局長の言われるように、参考案であるから引っ込めてもいいと言うのですが、無理に引っ込めませんでも、むしろゼネラル・プレジデントを置いたらいい。そして、マネージメント・ディレクターかチーフ・ディレクターを置いたらいいのでありまして、責任を持つような人を置くべきであると思う。むしろワン・プレジデントを残して、そのほかに、マネージメント・ディレクター、チーフ・ディレクターを追加すべきものであると思いますが、これについては大臣はどうお考えになりますか。
  191. 大平正芳

    大平国務大臣 この法案の起草にあたりましていま御指摘のような問題がございましたし、また、予算の審議の過程におきまして御指摘のようなことを考えたわけでございますが、これは政府のエ−ジェンシーでございます。この種の事業団を政府はたくさん持っておりまして、一応、一つの規格として、公社は総裁でいくとか、あるいは事業団は理事長にするとかいうような一つのひな型がございます。しかし、そうかと申して、海外技術振興事業団なんというのは、会長というのが別にありまして理事長が下についておる事例が例外としてございます。そのひな型に別に統一いたしているわけではございませんけれども、予算の編成の過程におきまして、あとうべくんば、その事業団のひな型、類型に合ったように考えてくれぬかというような財政当局の御希望もありまして、このようにいたしたわけでございます。もとより、いま御指摘のような考え方はあり得ると思いますし、それが悪くてこちらがいいんだというように私は思っておりませんが、いきさつはそのようなことでこのような案文にいたしたわけであります。
  192. 田原春次

    田原委員 しばしばわれわれが言っておりますように、海外移住事業は、ほとんど中南米十数カ国を直接の相手とし、また時期来たらば東南アジアにおいても移住が行なわれるかもしれないし、また、アメリカも移民法が改正されてもちと割り当てがふえるかもしれない。カナダとも折衝しておると思う。したがいまして、普通のことばにおける理事長という事務の責任者というよりも、やはり総裁、会長というようなものをつくったほうがよくはないか。これは私の意見であります。たとえば、国鉄にしても、総裁というので石田礼助氏が七十七歳の老体をもって乗り込んできている。しかしながら、われわれから言わせれば、吹けば飛ぶような島国日本の鉄道にすぎない。それに総裁がおる。しかし、中南米、日本の四十倍もあるところにこれから日本人を送ろうというのに、理事長なんて何をへり下って日本語で言うか。なおまた、予算関係と言うが、それなら総裁にあまり給料を出さなければよろしい。あなたは大蔵省出身なんだから、これはやはり全日本国民の注目を受ける意味において総裁か会長を置く、べきだと思うというようなふうに突っぱねるべきであったので、理事長をプレジデントとしてごまかすような考えはよくないと思う。いまからでもこれを直す必要があると思うが、いかがですか。
  193. 大平正芳

    大平国務大臣 私のほうのお願いといたしましては、一応このように案文をきめて御審議を願っているわけでございますが、こういうことで発足いたしまして、いま御指摘の問題は、役員構成としてこういうことではいけないということになってまいりますならば、その段階において考え直すにやぶさかでございません。政府といたしましては、一応これで御承認いただいて、すぐれた陣容を整備さしていただけばいいと思います。
  194. 田原春次

    田原委員 意見はあとにいたします。  続いて第十二条。これは大臣にお尋ねいたします。「次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。」、一として、「国務大臣国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長」、それから二は職員のことであります。これはなぜ一体国務大臣国会議員や地方公共団体の議員や長が役員になれないのか。何か悪いことをするという不安感を持ってやっておるならば、重大な侮辱であると思うのであります。第一、任命するという外務大臣自身が国会議員なんでありますから、国会議員が不適任であり国務大臣が不適任ならば、外務大臣自身が任命することができないわけであります。こういうような規定を置くということは、要するに、官僚の古手を持ってきて間に合わせに使おうというにすぎないのでありまして、従来の各種の公団や事業団がみなそういう形になっておる。そして、いわば国会議員はだめだということだが、国会議員の任期は、衆議院にあっては最長四年、解散があれば六カ月で解散することもあり、参議院は六年と任期を定められて国政に参与するものでありまして、それも、初めからにせ証紙なんか使って出るのと違って、まじめに出ておる者もあるのですから、これを初めから欠格条項とすることは、ぼくはよろしくないと思う。なぜ一体こういうものをつくるに至ったか。これは外務大臣に聞きます。外務大臣がなぜ一体こんなものを認めたか、そういう決意をされたか。これはやはり、いまから広げて、広い範囲で人選すべきでありまして、国会議員である者がいかぬというのはどういうわけか。  それから、第十三条には、理事長は、その他の役員が前条各号の一に該当するに至ったときは、すなわち当選したときは解任しなければならぬということですね。これははなはだしく国会軽視だと思う。こういう国会軽視の規則をなぜ一体国会出したか。これはおかしいと思う。ですから、こういう点についてはもう少し考えられたらどうか。実際を言うと、国会議員の中ではあまりなり手はありません。一言にして言えば、移民のことを扱えば必ず落選するということになっている。だれもおそれをなして海外移住のことを議員さんは扱わない。自分の選挙区から五人か三人送らなければならないし、うまくいけばあたりまえで、悪くすれば、あの人がぶったからこうなったのだと言う。したがいまして、いずれもおそれをなしているくらいに海外移住のことは触れられないことになっている。なり手はない。さればといって、初めからだめだというふうにすることはよろしくないと私は思う。おそらく、御答弁の中では、ほかの事業団や公団にも一般的に言ってそういうことがあるとか言うだろうと私は思いますけれども、それは国内の事業団や公団であります。そういうものと名前は同じでありましても、規模も責任も違うのでありますから、あらかじめこういうことをワクをはめておいて、そして自分たちの知った者を送り込もうなんて、そんなけちな考えはよくないと思います。せっかくつくられるならば、こういう点をわれわれから指摘されぬように用意しておくべきであったのに、何ゆえに役員になることができないことにしたのか。  なおまた、ずっと次の点にいきますと、たとえば事業団が明年あたり香川県支部長というのを香川県知事に委嘱する場合があり得るわけです。そうすると、役員にはなれぬが、その下の事務員には県知事はなれるというような、これは実に横暴不当きわまる規定だと思う。地方の県知事が役員となって、支部長となって協力しなければ、募集も何もできはしません。実際問題として、それならば、彼らに不愉快を思わせるような規定をあらかじめつくっておくことはよろしくないと思う。これは私の意見でありますが、あなたはあくまでこれを固執されるのかどうか、これもひとつお尋ねしておかなければいかぬ。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 そのようにお考え願わずに、私どもといたしましては、役員というのはこの事業団の仕事に四六時中御専念いただくということでございますので、ほかに重要な職を持っておられる方は御遠慮いただくほうが事業団のためじゃないかと思うわけでございます。  なお、国会議員を政府の監督下にある事業団の役員にお願いするなんてことは、国会議員に対するたいへんな侮辱でございまして、国会を尊重するがゆえにこのようにいたしたわけでございます。
  196. 田原春次

    田原委員 もう少しまたお尋ねいたします。  次に、十三条に、解任せねばならぬというところの3に、「理事長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、あらかじめ、外務大臣の認可を受けなければならない。」とある。そして、それは、心身の故障とか、職務上の義務違反とかなんとかがありますが、こういう場合に一体抗告はできないのか。自分では一生懸命やっているつもりだが、理事長があれは好かぬというのでかってに解任できる。地位が不安定で、理事長も外務大臣の任命、理事理事長が外務大臣の承認を得て任命しておって、任期は四年とあっても、適当にこれを取りかえるというようなことは、こういう事業団のように腰を落ちつけて半永久的にやらなければならぬような仕事に対してあまりに不安定ではないか。なぜこういうものを入れたのでございますか。
  197. 高木廣一

    ○高木政府委員 これは、心身の故障のために職務にたえられない場合、また職務上の義務違反がある場合に理事長は解任しようとするのですが、それを理事長の判断だけにまかせないで、外務大臣の認可を受けるということで、慎重を期しているわけでございます。しかし、心身の故障があってもどうしても最後までいたいのだとか、職務上の義務違反があるけれどもこの職に残りたいという者を残すことは妥当でないと思います。
  198. 田原春次

    田原委員 次にいきます。第十四条。「役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。」、たとえば弁護士、これは営利であるかないか、報酬でやるものですね。それから大学教授、これも報酬を得て自分の知識を教えている。あるいは公共的団体の役員。これらに対しては制限があるのかどうか。すべて外務大臣の承認を受けるようになっているのでありますが、外務大臣はこういうふうな範囲まで広げて役員の選考をするべきものであると思うが、どうでございましょう。
  199. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいま先生のおっしゃった通りでございまして、したがって、一応できないとございますが、外務大臣の承認を受けるときはその限りでないということになっております。
  200. 田原春次

    田原委員 本文四十四カ条、それから附則二十四カ条の中に、外務大臣の承認を得なければならぬ、外務大臣の指定を得なければならぬというのが何点ありますか。ちょっと数えてください。あまり多過ぎてぼくは数え切れない。まず第三条の2にありますね。第十条にもあります。
  201. 高木廣一

    ○高木政府委員 これは第二十七条ですが、「事業計画、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、外務大臣の認可を受けなければならない。」、これは外務大臣の認可を受けることは同様であります。それから、その次の第二十八条の、これらの書類でもそうでございます。それから、その他の第三十二条の、「事業団は、毎事業年度、長期借入金及び債券の償還計画をたてて、外務大臣の認可を受けなければならない。」、こういうことは当然のことだろうと思います。
  202. 田原春次

    田原委員 三十四条にもあります。三十五条にもあります。
  203. 高木廣一

    ○高木政府委員 これも、「事業団は、外務省令で定める重要な財産を譲渡し、交換し、又は担保に供しようとするときは、外務大臣の認可を受けなければならない。」、重要な財産の場合の政府としての最小限度の監督をこれで言っておるわけであります。三十五条の職員の給与、退職手当の支給の基準を定める場合も、やはり、でたらめをやられては困るということであります。大体そんなものであります。
  204. 田原春次

    田原委員 三十八条は、事業団に対してその業務に関する報告要求する権限、職員に対して調査のための立ち入り権、それから帳簿・書類その他物件の検査権というものが規定してある。これはそのとおりですね。第三十八条、間違いありませんね。
  205. 高木廣一

    ○高木政府委員 そのとおりでございます。これはやはり国の補助金なり交付金が出ておりますから、最小限度の国の監督はなくするわけにはいかないわけであります。
  206. 田原春次

    田原委員 そんなに認可、許可、それに立ち入り検査等でがんじがらめに縛るならば、いま移住局がありますから、事業団をやめて、旅行免許は旅券課、業務は業務課、それから援助・融資等は振興課、全般の計画は企画課がありますから、何も事業団なんかつくる必要はないじゃないですか。事業団をつくっておいてだれかを入れるのに、犯罪を犯すかもしれないという疑いのものに、あらゆるものを認可、許可で縛りつけ、しかも立ち入り検査までして、一体一流の人物が来ると思いますか、どうですか。
  207. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまの国の監督は、一応国としては免除するわけにはいかないところだと思います。これは私国会の決算委員会でもずいぶんきびしくいろいろ言われるのですが、当然であろうと思います。ただ、運用におきましては、これは十分心がけてやるということが必要であると思います。先ほど先生から満鉄のごとく現地に本社を置いて自由にやったらいいじゃないかというような御意見もございまして、この考えにも触れているのだろうと思いますが、戦前のような、軍の費用が大きくあって、自由に使えるような金があるならば、かなりいま言われたようなこともできると思いますが、今日においてはそういうことはなかなかできないのだ、そのように了解いたしております。
  208. 田原春次

    田原委員 先ほど私の意見を申し上げたときに、ことばが足りなかったのですが、現地に本社を置いた場合、放任しろと言うのじゃないわけです。たとえば、外務省から定期的に会計課長が調査に来るだろうし、また、大蔵省の主計局も定期的に来たらよかろうし、会計検査院も来るのでありまして、そういうように現地に重点を置くというのは、最高首脳者が現地にすわっているということが在留民に対していろいろな点でいいから言っているのでありまして、はるかに遠い日本の東京におって、そして指導するというのはよくないということから言っておるわけです。これは議論ですから、私は議論して勝とうというのじゃなく、そういうふうに考えておるのです。  次に、第四十一条、「外務大臣は、次の場合には、あらかじめ、大蔵大臣に協議しなければならない。」と書いてあり、いろいろ並べてありますが、協議がととのわざるときはどうするかということは書いてないのです。  それから、その次の2、「外務大臣は、次の場合には、あらかじめ、関係大臣に協議しなければならない。」と、文章だけはすなおに書いてありますけれども、とかく、各省なわ張り競争があったり、いろいろ都合があって、対等にものを言っている場合には協議だけでは何も解決できない。   〔松本(俊)委員長代理退席、委員長着席〕 現に、終戦後の海外移住に関しまして、連絡協議会のごときものを各省間につくるといっても、実際は意見の開陳にすぎないので、決定権がどこにもない。いわんや、予算に関する問題等で大蔵大臣に協議しなければならないといっても、協議がととのわないときには大蔵省の指定に従うのですか。そこに調整機関というものが何も書いていない。また、現実に、農林省は農業移民を出そうとしておる。建設省は建設青年隊を出しておる。しかもまた労働省は炭坑離職者を出すという計画もあろうと思う。そういう場合に、それは多過ぎるとか、それじゃ外交上のあれになる、じゃ必勝手にしろといって引っ込んだ場合にはどうなるか。せっかく移住をやりたいということでどんどんこれを進めていくときに、協議をしなければいかぬというけれども、この協議に対する最終決定権を持たずに一体できるのか。現地の新聞を見ましても、農林省と外務省と百年戦争と書いてある。決して喜ばしいことではない。それだけの意見の違いがあるのだろうかと思うが、それを調整する機能がどこにもないというのでは、この条文は単なる空文になるのではないか。これは外務大臣のお気持ちを聞いたほうがいいと思うのです。  要するに、この間各省関係官を呼んであなたにいろいろ聞いてもらいながら質問したのも、こういう問題があるということを聞いてもらいたかったからです。したがって、それらの省が、ああ外務省がやるなら勝手にやらせろ、お手並み拝見、おれのほうは関係ないぞということになると、さあ医者も行かぬ、学校の先生も行かぬ、技術者も行かぬということになってしまう。これらを気持ちよく行かせるようにしなければならぬ。協議機関の点について、協議ととのわぬときには総理大臣これを決するとか、何かあれば別です。なぜそういう決定機関をつくらなかったか。これは一番重大だと思うのです。お尋ねしておきます。
  209. 大平正芳

    大平国務大臣 政府関係機関政府との間の認許可、承認、報告、検査、こういうことと、それから政府部内における主管大臣と他の大臣との関係についての御質問でございますが、私どもといたしましては、一応考えられる場合、最小限度の関係を規制しておくということで起草いたしたわけでございますが、いま御指摘の協議がととのわない場合に始末をどうするのだということでございますが、これは、慣例上、協議がととのわなければ事が進まないということになっております。ただし、協議がととのわないということは事実上あり得ないことでございまして、関係大臣が合議体としての閣僚会議を持っておりますし、総理大臣のもとで政府の意思決定をするわけでございますので、いまの当然の仕組みとして、協議がととのわない場合の最終的な決定は、もとより閣議にはかるということになるわけでございますが、そういうことはめったにないことで、この規定で現実には動くものと思うのでございます。  それから、第二点として私が考えておりますことは、農林省との間の問題にいたしましても、いま先生が言われたように、過去におきましていろいろいきさつのあったことは私どももある程度承知をいたしておりますが、これはお互い役所の間の信頼の問題でございまして、一つの省がいい、一つの省が悪いというわけでなくて、根本はやはり信頼関係を推し進めなければならぬと思うのでございます。したがって、私の基本的な考え方は、いうものをりっぱにつくらしていただきまして、一つの仕事をおまかせする、それで、外務省が主管省だからほかは排除してもこの事業をやっていくということでなくて、各省が協力して事業団というものをりっぱにつくって仕事をまかしていくというように、そしてお互いの省がそれぞれ含むところなく信頼関係ができるようにいたしたい。そのような精神が育ってまいりますと、法律の運用そのものも円滑にいけると思うのでございまして、そういう空気、そういう精神状況を何としてもつくらなければならぬ。これは虚心に考えておるわけでございます。そのように農林省にもお伝えし、私の部内にもそういう気持ちになってもらいたいということを指示いたしておるわけでございます。
  210. 田原春次

    田原委員 またちょっと前に戻ります。第四章第二十一条第七、「移住者が入植するための土地の取得、造成、管理及び譲渡並びに取得のあっせんを行なうこと。」となっておりますが、その費用は一体どこから出すか、これは書いてない。従来海外移住振興会社が現地で土地を買いますその中には、山あり、谷あり、さまざまな地形であります。それを大体区切って何町歩ずつ割り当てます。道路をつくらなければならぬ。橋もつくらなければならぬ。そういう費用を全部売り値段にかけて売っております。ずいぶんぜいたくに調査をしたりいたしますものですから、これが純民間で土地を本人自身が買っておるならば倹約して費用も安くいくのでありますけれども、大ざっぱにやっておる。その造成費用というものをみなかけて、百円で買ったものを百五十円で売るというかっこうになるわけです。今度この点について費用をだれが負担するかということは書いてないのです。事業団がたとえば第七の土地の取得、造成、管理等に対して費用を見る、そうして買った値段でこれから入植する人に耕地を売るならば割り安にいくわけですけれども、こういうことついても明瞭でありません。どんなものですか。
  211. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまの点は、従来の移住会社について大いに批判されたところでございまして、かかった費用を全部移住者に負担させるというたてまえであったのであります。しかし、今度の事業団は、その点は非常な変化でございまして、そういうような管理費とかあるいは調査費とか、こういうものは国の金でやるのだ、つまり、国の援助の部面になりまして、移住者からもらうのは、土地代とかその他最小限度の費用をいただくのであって、管理費についても、従来は移住会社の一般管理費も移住者に転嫁されていたわけですが、今度はそういうことでなくて実費で分譲するというのが根本的な考え方であります。その点は非常な進化であると思います。
  212. 田原春次

    田原委員 その二十一条にはそういふうには書いてないのです。ただ、要するに、「次の業務を行なう。」というふうにありまして、いまの局長の御答弁の中にも、最小限度の費用をつけ加えるということがあった。国会答弁で最小限度となっておっても、にブラジルの山奥やパラグアイの山の奥で土地を買うときには、これだけの費用がかかったのだからこれだけでなくては売らぬというふうに言われればそれまでです。御承知のように、計画移住は、土地を見ないで、日本におりながら幾らかの金を前払いする。そうして、家族を連れて現地へ行って、それから自分の土地を見るわけです。その際、その近所にある、たとえばドイツ人の移民地であるとかあるいはイタリア人の移民地を見て、安いじゃないかと言ったときに、これは造成費がかかっているから日本側ではこれだけで売るのだと言われたらどうにもならぬ。だから、今あなたが言明されたようなことはそんな悪いことではないと思う。それならそれで、すべての造成費は国が負担する、あるいは事業団が負担するというようなことを明瞭にすべきであって、それがないのはおかしいと思う。
  213. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまの点は予算で取っております。したがって、その範囲内でやるので、どこまでの費用を国が持つかということは、この法律ではこまかく書けないのであります。しかし、少なくとも、従来の移住会社では全部の費用は移住者に転嫁するというたてまえであったのであるが、それではうまくいかない。また、移住会社が相当巨額の赤字にならざるを得なかった理由もそこにあるわけであります。そういうような欠点をなくするために、今度の事業団というものは、移住地事業を会社の融資とかいわゆる金融ベースから切り離したわけであります。
  214. 田原春次

    田原委員 それでは、次の二十一条の八ですが、「海外において農業、漁業、工業その他の事業を行なう者に対して、」云々とありますが、一体なぜ商業ということばをのけたのか。御承知のように、ずっと奥地の村へ行きますと、食料品店、農機具店等が必要であります。民間でやっておるものもあり、また協同組合式でやっておるものもあるわけです。資金の必要な点におきましてはむしろそういうところが必要なんです。農家は収穫のときでないと金がないから、前借りしなくちゃならぬということがある。したがって、商業を全然除外したということが私は納得がいかない。ほかのところにもこういうことがありますが、これはどういう考えですか。
  215. 高木廣一

    ○高木政府委員 「その他の事業」でその必要な商業あるいは商業機能の活動を援助できることになっております。移住者の発展のため、移住者及び移住者団体が農業、漁業、工業その他商業関係も、必要な場合にはこの事業団が融資できるというたてまえであります。
  216. 田原春次

    田原委員 外務大臣に御注意いたしますが、移住は移住事業団がやる、それから、現地に定着して事業をやる者には別の機関でやる、技術者が海外へ行くのは海外技術協力事業団でやるというように、日本からは三通りに専門的に分けていることが非常な弊害だ。ある技術者が行ってそれが商売人になる場合もあり、あるお百姓が行ってそれが商人になる場合がある。また、ある一定の時期がたって子供が大きくなりましたら工場を持つ場合もあるのですから、こういう点、通産省は技術協力事業団を、外務省は移住事業団をというような縦割りの国内行政を海外に持ち込むということは弊害がある。でありますから、むしろ事業団をつくらずに、海外技術協力事業団等を少し広げるか、資金面については輸出入銀行にそういう別ワクを設けるかということが考えられるのであります。それにもかかわらず特に事業団をつくらなければならぬという理由が、私は先になって必ず不便を生ずるのではないかと思う。相当大きくなったものは一切融資せぬというのか、営農だけに限るのか、そういう点を私どもは不安に思っておる。現地の人もそう言っておる。ですから、まとめてみますと、農業であれ、商業、工業、運送業、何でも援助してやらせるというならばこれはわかるのであります。それは事業団の仕事じゃない、こうなりますと、どこにも持って行き場がないということになるのではないかと思うのです。
  217. 高木廣一

    ○高木政府委員 この第八号は、従来移住会社がやっていたことをうたってあるだけであります。それから、さきの第七号は、従来移住会社がやっていたことに土地取得のあっせんを加えたことでありまして、従来移住会社がやっていたことなんであります。それを事業団がかわってやるというだけでありまして、われわれの考えから申しますと、ブラジルとかその他南米諸国において、あまりに日本政府出しゃばって行政をやるようなつもりでやるというのは本筋でないと思います。相手の国が第一次的にはやるべきであって、移住推進のために足らないところはこの事業団が補っていくべきである。移住会社の考えもその考えであったと思うのですが、移住事業団はそれを踏襲してもう少し整備した姿であります。
  218. 田原春次

    田原委員 そこは議論の分かれるところでありますが、私は先ほど委員長代理から確答を得ておりますように、これは逐条審議でなく法案全体に関しての審議でありますので、あらためてもう一回もう少しこまかく聞いてみたいことがあります。きょうはこの程度にして、次回にしたいと思います。
  219. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会