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大平国務大臣 ただいま議題となりました
海外移住事業団法案につきまして、その提案の理由を御
説明いたします。
本法案の趣旨につきましては、すでに本
会議において御
説明した
通りでございまして、
政府は、従来から、海外移住の重要性にかんがみ、移住者の援助、指導その他海外移住の振興、助成に努めて参りましたが、最近わが国
内外の情勢は著しく変化し、また昨年のドミニカ移住者引き揚げ問題の前向き解決のためにも、海外移住機構の抜本的刷新をはかるべきであるという声が強くなりました。
よって
政府といたしましては、昨年四月海外移住審議会に海外移住及び海外移住行政に対する基本的
考え方につきまして出村見を求めました。
同審議会は、八カ月にわたる慎重なる審議の結果、昨年十二月
政府に答申を提出し、海外移住は
国民に海外における創造的活動の場を与え、相手国の開発に協力し、わが国の国際的
地位と
日本国民の国際的声価を高めることを指導目標とすべきであるとし、このために、海外移住に関する行政機構の一元化をはかって行政責任の所在を明確ならしめるとともに、公的な実務機構を刷新して
政府の業務をできる限りこれに移し、活発かつ自主的運営を持って海外移住の推進を行なわしむべきであると答申されたのであります。よって、
政府におきましては、この答申の趣旨にのっとり、従来ややもすれば海外で競合的関係にありました海外協会連合会と海外移住振興株式会社の両者の業務を統合して外務省の監督下に新たに海外移住事業団を創設することといたしました。
海外移住事業団には、海外移住の推進援助に必要とする農業、経済、労働、衛生、文教等各本面の
専門家を集め、外務省は毎年関係各省と事業団の業務の
基本方針を協議決定してこれを事業団に示し、また、予算の獲得及び事業団の側より求むる協力援助は与えるが、それ以外の
政府側よりの干渉はできる限り排除し、事業団が責任をもって自主的に活動し得るよう、ここに
海外移住事業団法案を提案致した次第であります。
次に、法律の内容につきまして、その概略をご
説明致します。
第一章におきましては、海外移住事業団の目的、法人格、資本金等について規定致しておりますが、事業団の資本金につきましては、事業団を公的海外移住実務機関とする関係上、金額
政府出資とし、当初資本金は、設立に際して
政府から出資される八億円と事業団に承継される
日本海外移住振興株式会社に対する
政府の出資額との合計額とし、
政府は必要があると認めるときは事業団に
追加して出資することができるものとしております。
第二章におきましては、事業団に役員として
理事長一人、
理事四人以内及び監事二人以内並びに非常勤の
理事四人以内を置くこと、その他の役員の任免並びに職員に関する
事項を定めております。
第三章におきましては、事業団の業務の運営に関する重要
事項を審議する
委員十五人以内で組織される運営審議会について規定しております。
第四章におきましては、事業団の業務として、海外移住に関する調査、知識の普及、あっせん、移住者の訓練及び講習、渡航費の貸付及び支度金などの支給、移住者の渡航に関する援助及び指導、海外における移住者に対する指導及び定着のために必要な福祉施設の整備、その他の援助、移住地の取得、造成管理、譲渡、必要な資金の貸与、借り入れ資金の債務保証その他の援助、これらの付帯業務、その他事業団の目的を達成するために必要な業務として
外務大臣の認可を受けた業務を行うこと、並びに
外務大臣が事業団の業務の
基本方針を定めて事業団に指示すること等を規定致しております。
第五章におきましては、事業団の事業年度、区分経理、事業計画などの認可、財務所業、借入金及び債権、交付金の交付、余裕金の運用などについて規定いたしております。
第六章におきましては、事業団は
外務大臣の監督を受けること、その他
外務大臣の監督権限について規定いたしております。また、本事業団の業務の運営につきましては、関係各省と協力のため、大蔵大臣その他の関係大臣との協議を規定しております。
第七章は雑則、第
八章は罰則の規程であります。
なお、付則におきましては、事業団の設立手続き、財団法人
日本海外協会連合会及び
日本海外移住振興株式会社からの引き継ぎ、税法上の特例
措置などについて必要な規定を定めております。
以上がこの法律案の提案の理由及びその概要であります。なにとぞご審議の上速やかにご賛成あらんことをお願いいたします。
次に
関税及び
貿易に関する
一般協定の
譲許の
追加に関する第十
議定書(
日本国及びニュージーラ
ンド)の
締結について
承認を求めるの件につきまして、提案の理由をご
説明いたします。
一九六二年三月九日輪がこくとニュージーラ
ンドとの間の通商
協定を改正する
議定書の署名が行われまして際、将来両国間において若干の品目につき
関税交渉を行う旨が合意されたのでありますが、この合意に基づき、同年十月からジュネーブにおきましてガット上の
譲許を相互に
追加し合うための
関税交渉が両国代表により行われました。交渉は十二月二十八日に妥結し、その交渉結果が本件の
議定書に収録された次第であります。
わが国が与える
譲許は羊肉一品目でありまして、現行の国定税率一〇%を据え置いたものであり、その一九六一年における対ニュージーラ
ンド輸入額は五百八十一万ドルであります。他方、ニュージーラ
ンド側が行う
譲許は、水産物のカン詰、みかんのカン詰、生糸、金織物、グルタミン酸ソーダ等二十九品目であり、その一九六一年における対日輸入
実績は三百三十一万四千ドルであります。
わが国の
譲許は、国会のご
承認を得たあと
政府がガットの書記局に対して行う通告によって効力を生ずることとなっております。ニュージーラ
ンド側も近く右の通告を行う見込みでありますので、
譲許の相互引き下げの趣旨にもかんがみ、わが方もこの通告をなるべく早期に行うことが必要と
考えられます。
よって、ここにこの
議定書の
締結についてご
承認を求める次第でございます。
次に、
所得に対する
租税に関する二重
課税の
回避及び
脱税の
防止のための
日本国と
タイとの間の
条約の
締結について
承認を求めるの件につきまして、提案の理由をご
説明いたします。
わが国と
タイとの間に
租税条約を結ぶことについては、一九六一年十一月池田内閣総理大臣の対訪問の際共同声明でこれを確認し、一九六二年三月バンコックにおいて交渉を行いました結果、実質的に妥協し、わが方より早期に案文確定方申し入れていましたところ、今般案文についても最終的に合意を見るにいたりましたので、一九六三年三月一日バンコックにおいて、わが方在
タイ島津大使との間でこの
条約に署名を行ったものであります。
この
条約は、二十か条からなり、基本的にはわが国がこれまでに
締結した
租税行役の型に行ったものであり、その内容は、パキスタン、シンガポールなどとの間の
租税条約とほぼ同様の内容を有するものであります。この
条約のおもな内容及び特色は次の
通りであります。
すなわち、恒久的施設の定義を明確にし、恒久的施設を通じて事業を営むときに限り産業上、商業上の利益について相手国の
租税を課されることとしております。航空機の運用から生ずる
所得は全額相互免税とし、
船舶の運用から生ずる
所得については五〇%免税としております。配当については、子会社から受け取るものは二五%の軽減税率、配当を支払う法人が産業的企業である場合には二〇%の軽減税率とし、さらに、この場合の配当が親子会社間のものであるときは一五%の軽減税率としております。また、利子につきましては、産業的企業にかかる社債または貸付金に関するものは一〇%の軽減税率とし、使用量については一五%の軽減税率といたしております。さらに、産業的企業からの配当もしくは
政府債の利子に対する
タイの
租税の額でこの
条約の規定に基づき減免されたもの、または
タイの産業投資奨励法の規定に基づいて
免除された
タイの
租税の額は、
日本で総合
課税する際に、
タイで支払われたものとみなして、
日本の税額から控除することとしております。また、教授、留学生、短期旅行者などに対して広い範囲で免税を認めることといたしております。
この
条約を通じて
日本・対両国間の経済、学術、文化の面にわたる交流が一そう促進されるものと
考えられます。
よって、ここに
条約の
締結についてご
承認を認める次第であります。
次に、千九百六十二年の
国際小麦協定の
締結について
承認を求めるの件につきまして、提案の理由を御
説明いたします。
わが国は、一九四九年の
国際小麦協定以来、累次修正更新されてきた小麦
協定に継続して加盟して参りましたが、一九五九年
協定は一九六二年七月三十一日に失効いたしますので、これにかわるものとして一九六二年の国連小麦
会議で作成されたのが、この一九六二年の
国際小麦協定でございます。
協定の骨子は、小麦について一定の価格帯を定め、加盟輸出国は小麦の相場が高騰しても
協定の定める一定数量までは最高価格で加盟輸入国に売り渡す義務を負い、他方、加盟輸入国は自国の小麦必要量のうち
協定の定める一定の割合だけは加盟輸出国から価格帯内の価格で賢い入れる義務を負い、かようにして、加盟国の間において小麦の取引価格の安定と需給の調節をはかろうとするものであります。
この
協定は一九五九年の
協定をほとんどそのまま踏襲したものでありますが、改正点のうち主たるものは、価格帯が十二・五セント引き上げられたこと、加盟輸出国から加盟輸入国が買い入れなければならない小麦の右輸入国の小麦輸入総量に対する割合が変更され、わが国につきましては、一九五九年
協定のときの五〇%が八五%に引き上げられたことであります。
わが国は、この
協定に加盟することによりまして、安定した小麦の供給を確保するとともに、さらに、小麦の国際
貿易の安定した拡大にも寄与し得る次第であります。
よって、ここにこの
協定の
締結について御
承認を求める次第であります。
最後に、
日本国と
フィリピン共和国との間の
小包郵便約定の
締結について
承認を求めるの件につきまして、提案理由を御
説明いたします。
フィリピンは万国郵便連合の
小包郵便物に関する約定に参加していないため、わが国と同国との間では直接
小包郵便物を交換することができません。よって、
政府はかねてよりフィリピン
政府と小包の直接交換のための約定
締結交渉を進めて参りましたところ、約定案文について合意が成立いたしましたので、
昭和三十八年一月十六日東京で
日本側により、一月十九日マニラでフィリピン側により、この約定の署名か行なわれた次第でございます。
この約定は、両国間で交換する小包の種類、小包の料金、差出郵政庁が名あて郵政庁に割り当てる割当料金、禁制品、小包について行なう業務の種類及び処理方法、損害賠償等、両国の郵政庁が小包の交換を行なうために必要な業務の基本的
事項を規定いたしたものであります。
この約定の
締結により、わが国とフィリピンとの間の小包交換業務は直接に行なわれることになりますので、公衆の受ける利便が増大することは言うまでもなく、同国との間の経済上、政治上の
友好関係も一そう促進されることが期待されます。
よって、ここに
日本国と
フィリピン共和国との間の
小包郵便約定の
締結について御
承認を求める次第であります。
以上、
条約四件につきまして、何とぞ御審査の上すみやかに御
承認あらんことを希望いたします。
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