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帆足委員 まことに遺憾なことでありまして、このような
状況に置かれておりますために、自然、
社会保障にも力を注ぐいとまもなく、ここ十数年における医学の進歩に潤ういとまもないという気の毒な
南朝鮮の
状況でございます。私がかく申しますのは、
政府は三億ドルの
無償賠償、二億ドルの
有償援助等もかつてはお
考えのようでしたけれ
ども、もしそういうことをなさるならば、その金がどのようにすれば生きて使われるか、
カンフル注射をする時期よろ
しきを得ておるか、
方法よろ
しきを得ておるか、
論理の筋道がよろ
しきを得ておるか、いやしくも
国民の血税をそこへ投下するわけでありますから、それが
北朝鮮、
中国に及ぶ
連鎖反応という重大なことを一応別にして
考えましても、これは重大にしてかつ慎重なる考慮を必要とする問題であると私は思います。そうして、戦後十七年もたちまして後行なわれまする
賠償の問題については、私は、
方法論的には、低利の金を、親切に技術をつけて、そして
国民の血となり肉となるような形で
援助するような形においてなされることが望ましいのでありまして、
無償の
賠償という形のものはとかく乱費されがちでありますし、
経済上の基礎なしに
恵みの金をくれるというようなことになりますと、かつてダレスが言ったように、
恵みの金をもって復興がうまくいった例は
歴史上ほとんどない、これは彼がガンでなくなる前にみずから述懐した有名な言葉です。すでにそれに近き
状況になって、まだ五億ドルを払う前に、早くも金氏を中心といたしまして暗い
うわさが
流れておる。その
うわさは、単に
朝鮮内部にとどまらず、
日本の
賠償産業との間にすでに
うわさがもっぱらであるということを、多少は
外務大臣もお耳にされておることと思いますが、そういうことになりやすい。従いまして、
無償賠償とからんだところの
海外への資金の
援助というものはよほど慎重に
考えなければならぬ。聡明な
外務大臣が最初非常に慎重な
態度であったことを、私はよく了解しております。しかし、みずから
いかだの
船頭さんをもってたとえられた
外務大臣は、
流れに抗するより、いつしか
流れの間に問に流されて、今や、
あとを振り返ってみますと、
濁流まわりを洗っておる。まことに御心中察するに余りある次第でございます。
こういうような貧弱な
経済体制の
韓国でありますから、
結核の
感染者の数を
統計で見ますと、急を要する
患者だけで約八十万の
結核患者。もし
韓国を
援助なさるならば、こういう点を心にとどめておかねばならぬ。ジストマの
患者だけが
人口の四一%。
回虫に至っては、全
民衆の九〇%が
回虫卵を持っておる。おそらく
朴議長もあるいは
回虫に多少やられておるのではあるまいかと思われる節があるような昨今の
状況でございます。
回虫というものは、これが肺臓を食い破って
大脳の中に入りますと、
大脳の中に断層ができることもよく御
承知だろうと思います。さらに、十二
脂腸虫に苦しんでおる
人民は全
人口の四〇%を占めておる。
精神病患者は約三十万に達しておる。
南北苛烈な
戦争の跡、まるで
すき焼なべの上をオムレツが
流れたようなすさまじい
戦争の跡でございます。その上に、南には
石炭はほとんどなく、
鉄鉱はわずかに五十万トン、それも品質の悪いものである。しかも
石炭のない
鉄鉱というものは男やもめのようなものでありまして、まことに処置なきものでございます。
水力電気はほとんどありません。まああるとすれば、結局誇り得るものは御
承知のように米と
ノリでありますが、
ノリは大したことはありません。米は一千五百万石。二千六百万の
人口にしてはやはり多い
数字ではないのでありまして、副食物の少ない
民族は一人一石とよくいわれますけれ
ども、米もまた、米の
豊庫といわれた
韓国が、
春窮の民と申して、春が近づくと
政治上の不安が起こる。四月はいつも革命の月といわれておるのも、そういう点でございます。まことに、今春先に向かっておりまして、悪い時期にぶつかっている。
こういう点も、私は、単に
韓国だけではなくて、諸外国に参りましたとき、いつも一方ならぬ大使館のお
世話になるのでありますけれ
ども、いただいた
経済資料を見ますと、まことに貧弱で、
英国流の実証主義的な努力も十分貫いていないし、また
ソ連流の
社会科学的な鋭い
分析もない。やはりこれが
一つの伝統的な
外務省の
欠陥であるまいか。そして、
調査と
情報整理の
方法はおおむね昔の
内務省警保局のようなやり方でありまして、すなわち、ためにするところの
統計をつくる。たとえば、
朝鮮人帰国の問題のときも、私は思い出しますが、わが
外務委員会の
同僚議員の皆様は、
与党の方々に至るまでよくこれを
理解して、われわれは超党派的にすでに十万人近くの
帰国を実現いたしました。八万人をこえました。しかし、そのときの
内閣調査室または
外務省筋その他のお調べによりますと、まあ岩本さんと
帆足さんが超党派的に努力しているけれ
ども、大体三千人くらい帰るだろう、いいところで三万人であろう。三万人こえたら勲章をやってもいい、こういうようなことを言われたことを記憶しておるのでございますが、今はもう八万人をこえました。客観的な実証的な
調査というものがいかに重要であるかということを、この際
朴議長と金氏が第二の
李承晩たらんとする政情ただならざるときに、深く
外務省の
諸君が反省されるよすがともなれば、これはまた国のために私は幾ばくかのよい経験になることであろうと思うのでございます。
南北朝鮮が何らかの意味で
統一がなければ、これは
一つの
民族としての自立は困難でございます。従いまして、たまたま
ソ連が道を語って
国際連合を軽視して欠席しておりましたときに
国連のに
しきの御旗をとったからといって、
南朝鮮だけですべての
朝鮮を代表するといって、
実情を無視して張り切ることは
実情に即していない。幸いにして、
外務大臣は、
韓国は
韓国の今の
政治的力の及ぶ範囲であるという
見解を明確にしておられますことはけっこうでありますけれ
ども、
韓国は
南朝鮮、そして
朝鮮民主主義
人民共和国は
現実には
北朝鮮におるので、この事実を見まするならば、わが
日本社会党が言っているように、ありのままの事実に即して南と北とのそれぞれに必要なる
事務的関係を結んでいかなければならぬ。そして、万事、おごる平家は久しからずであって、今日は東西ドイツの
対立、
南北朝鮮の
対立というものは宿命的に見えようとも、時移り星変わっていくならば、
世界の
雪解けの
歴史の中において、分かれた
一つの
民族は必ず
一緒になる日があるのですから、機械的に直ちに
一緒にならなくても、
人事の
交流や
文化の
交流くらいできる常識を持った
国民になるような
方向を、
朝鮮の
南北のすべての
民衆が望んでおるように、われわれも良識を持って望む、そのくらいのあたたかい
理解と
現実認識のもとに
朝鮮とも必要なる限度の
事務的関係を持つことが適当であろうというのが私
どもの
政府に対する
警告であり、忠言であったことは御
承知の
通りであろうと思います。
朝鮮のすぐれた
愛国者といわれ、また
哲学者といわれる
朴燕巌という学者がかつて「
熱河日記」という
雷物を書いております。私は偶然書物の一ページをひもといてみたのですが、こういうことを言っております。「六鎮地方の麻布と
関西地方の絹、三
南地方の
朝鮮紙と
海西地方の綿と鉄、内浦の鮮魚と塩はすべて
人民の暮らしになくてはならないものだ。また青山・
報恩地方の無尽蔵なナツメや黄州・
鳳山地方の無尽蔵な梨、
高陽・
南海地方の無尽蔵な蜜柑、林川・
雄山地方の幾千万畝の麻畑、
関東地方の無数の蜂蜜もすべてこれ
朝鮮民衆の生活に必要な資源である。これらの物資を互いに有無相通じあおうというのに誰がこれを拒むことができようか。」、
封建時代の割拠の制度に反抗した
朝鮮の
愛国者が、
朝鮮は
一つでなければならぬということを説いた古典の文献でありますけれ
ども、私は全くそうであると思います。
こういうような困難な
事態に面したときに、私はいつも
英国を思うのです。
英国は
世界の七つの海を支配していた
世界帝国主義の総本山といわれますけれ
ども、
英国は単に老獪であっただけでなくて、やはり聡明であった一面がある、すなわち、合理的な一面があったということも
考えなければならぬ。私は、なぜわが
与党の
外交政治家諸兄が
アメリカよりも
英国を学ばれぬか、まことに不思議にたえないのでございます。もし
英国に学ばれるならば、
与党と
野党との間にまたともに話し合う共通の広場というものを持てようものを、なぜ、四十男の、今少し小金ができてなま
いき盛りの、そして
外交交渉では失敗ばかりして、財布を見せびらかし、キャバレーできらわれる
成金男のような
アメリカ外交のみに追随して、ゆう然たるすいも甘いも知っている
英国外交からなぜ学ばないのであるか、まことに残念でございます。もちろんわれわれは
英国の
保守党を賛美して言うわけではありません。われわれは、
英国の労働党には非常な
理解を持っておりますが、
英国の
保守党とは
立場が違います。
立場は違うけれ
ども、
歴史の
一つの事実としてときどき感心させられる。
保守政党ならば、せめて
英国のごとくあってもらいたいということを感ずるということを申し上げた次第でございます。
こういう点から
考えますると、
南朝鮮の今日の
事態というものは、やはり
経済の
あり方そのものに無理がある。
南北分断そのものに無理があるわけでありますから、
政府としては、やはりしばらくそっとしておいて、こういう
事態に対しては
硼酸水で湿布でもして、よい時期を待つ、そして、
朝鮮の
南北を問わず
民衆の望んでおるところのもの、
いかだの
船頭さんであるならば、
雪解けのこの
流れがどういう
方向に
流れておるかということをもう少し冷静に観察するお心の余裕がほしかったということを痛感する次第でございます。事ここに来たったからあえて大声疾呼して言うわけではありませんけれ
ども、かねて私
どもはそういうような
分析に基づいて
政府に対して
警告を発していたということを、この際よく
理解していただきたいと思うのでございます。
そこで、一歩進んでお尋ねいたしますが、まず第一には、今日の
南朝鮮の
事態にはいろいろ無理がある。
南朝鮮は、本来ならば
国際連合がこれを監視し、そしてこの
歴史の
過渡期において
世話をするのが順序であります。われわれも
アメリカ軍をかつては
国連軍のただ
首席担当官ということに
理解しておりましたのが、今は、だれしも、これは
アメリカが支配している
場所である、そして、
国連のに
しきの御族は、ただに
しきの御旗として利用されているだけであるという感を抱いておりますが、これはもうぼつぼつ再検討して、ほんとうに
国連が
世話をするならば、むしろ、
国連におけるスエーデンとかノルウェー、スイスまたはインドとか、そういう国々がこの
場所の
安全保障と監督に当たるならば、それはそれとして、
保守主義の
立場から見まして、またそれを
野党から見ましても
一つの
論理はある、こう思われるのですけれ
ども、
アメリカが今日に至るまでほしいままにこれを支配し占領しておるということは、どうしてもわれわれは納得がいかない。
一体国際連合の総会に対して
日本代表は何をしてござる。やはりこういうことについてもう少し筋を明らかにしておくならば、少なくとも隣の
場所に緊張の激化ということは多少でも防止し得るのではないか。今、
日本を取り巻く
情勢の中で一番危険なのは何といっても
南朝鮮の
政治情勢または
軍事情勢であるとは、だれしも思うておる。
外務大臣はこの問題についてどのようにお
考えになるか。すなわち、
国連軍なら
国連軍らしい
体制をとってもらうことの方が、私は
日本の
安全保障にとってよくはなかろうかと思うのですが、
大平さんはどのようにお
考えでしょうか。