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1963-02-27 第43回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十七日(水曜日)    午後三時七分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 古川 丈吉君 理事 松本 俊一君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君       川村善八郎君    北澤 直吉君       森下 國雄君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    帆足  計君       細迫 兼光君    森島 守人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覺君  委員外出席者         厚生事務局         (援護局庶務課         長)      福田 芳助君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 二月二十七日  委員周東英雄君辞任につき、その補欠として北  澤直吉君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月二十六日  関税及び貿易に関する一般協定譲許表の訂正  及び修正に関する締約国団確認書締結につ  いて承認を求めるの件(条約第一二号)  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三  十八表(日本国譲許表)  に掲げる譲許を修正し、又は撤回するためのア  メリカ合衆国等との交渉の結果に関する諸文書  の締結について承認を求めるの件(条約第一三  号) 同月二十三日  日中国交回復等に関する請願外九件(足鹿覺君  紹介)(第一五〇二号)  同外九件(大原亨紹介)(第一五〇三号)  同外六件(佐々木更三君紹介)(第一五〇四  号)  同外五件(黒田寿男紹介)(第一五〇五号)  日中国交回復貿易及び漁業の政府間協定締結  等に関する請願外三件(君紹介)(第  一五〇六号)  同外三件(淡谷悠藏紹介)(第一五八三号)  同外二百六十九件(井手以誠君紹介)(第一五  八四号)  同外五件(緒方孝男紹介)(第一五八五号)  同外六件(大柴滋夫紹介)(第一五八六号)  同外九件(久保三郎紹介)(第一五八七号)  同外四百五十二件(小松幹紹介)(第一五八  八号)  同外十件(田邊誠紹介)(第一五八九号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一五九〇号)  同外十一件(松本七郎紹介)(第一五九一  号)  同外八件(八百板正紹介)(第一五九二号)  同外二十二件(安平鹿一君紹介)(第一五九三  号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一六七七号)  日中国交回復及びアジア太平洋地域核武装  禁止地帯設置等に関する請願外一件(大柴滋  夫君紹介)(第一五八一号)  同外七件(細迫兼光紹介)(第一五八二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件 国際情勢に関する件(日韓問題等)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  帆足計君。
  3. 帆足計

    帆足委員 私は、きょう、細迫委員とともに、限られた時間でございますので、引き続いて日韓関係のことについて外務大臣に問いただしつつ、私ども見解も聞いていただきたいと思うのですが、この数日来の韓国のただならぬ政治状況は、わが党といたしましてはたびたび政府に対して御助言をし警告をいたしたことですけれども、まことに暗たんたる隣国の政治情勢でございます。しかし、政治見通しというものは、特に他国の場合にはなかなか見通しがつきかねるものでありまして、単に目前の見通しを誤ったということのみを追及して、小じゅうとのように外務大臣の責任を追及しようと、少なくとも私はそのような考えを持っておりませんけれども、しかし、こういう困難な国際情勢のもとにおいて見通しを誤らないように協力するという態度は、私は必要であろうと思います。従いまして、今後は野党の言うことに対しましてもやはり相当耳を傾けていただきたい。と申しますのは、なぜ見通しにおいて思う通りにならなかったかといいますと、一つにおいては、きょうの朝日新聞も指摘しておりますように、韓国海外駐在事務所日本にありますけれども日本駐在事務所京城になく、従いまして、まがきを隔てて探るようなものでありますから、朝鮮実情がやはり正確につかまれていないということ。もう一つは、政府当局調査がきわめてずさんでありまして、移り変わりの激しい政治情勢の把握は困難でありますけれども、その背後にある韓国経済社会状況がどうなっておるかということは、あらかた新聞記事並びに統計をもって推しはかることができようと私は思うのでございます。それらの点について外務省当局が十分な調査をなさったかどうか、また、平素なされておるならばそういう資料外務大臣に十分に提供し、あるいは与党政調会に提供し、あるいは、大野伴睦老韓国に出かけるときなども南朝鮮における経済状況社会状況等分析について資料一つぐらいは提出していたかどうか、私はこのことをお尋ねしたいと思います。  一九六一年の五月十六日突如として銃声が鳴り渡ってクーデター政権が生まれました。このクーデター政権は、李承晩を倒した四月精神を忘れるなと言っておりますけれども、あのときの京城の諸新聞を見ますと、李承晩の長い間の圧政に対してうっせきした民心は、南朝鮮において民主政治確立を求め、民生の安定を求め、あるいはまた、南北朝鮮国民が同じ同邦であるという意識のもとに、政体も違い経済機構も違っておるけれども、親子の間に文通ができるようにとか、経済交流ができるようにとか、そういう自由主義精神が許すところの常識的な民族交流についてはこれを行なおうという風潮がほうはいとして起こっていたことは御承知通りでございます。朴政権は四月精神ということをきょうも口にしておりますけれども、それでは、そのとき国民李承晩に対して求めたところの、完全な言論の自由、議会政治確立、同じ民族が兄弟まがきに争うというのはおろかなことであるから文化人事経済交流をしようとする民衆の要求、そういう四月精神の根幹になるものを朴政権が継承しておるかというと、私は、歴史の事実において相反する傾向を見て、まことによそ目から見ましてもかねて残念なことであると思っておりました。  すなわち、朴政権は、クーデターと同時に二十三の政党に解散を命じ、二千三百の言論機関を封殺し、数十万の住民を取り調べと称して投獄していたことは、周知のことでございます。あるいは、私どもは今野党立場におりますから、野党を例に引いて申し上げますと、社会党委員長崔謹愚氏を投獄し、統一社会党政治委員李勲求氏を監禁し、あるいは社会党組織部長、ちょうどわが党では江田組織部長に当たる人、すなわち崔百根という人、並びに、民族統一をとなえた穏健な有名なリベラリストである民族日報の社長、錦寿氏寺を死刑に処しておるのでございます。いわば日本の二・二六事件のあの若ざむらいが政権を取ったというような形になっておるのでございます。  日本陸軍士官学校に勉強し、狭い限界のもとにゆがめられた教育を受けました一人の教養低き職業軍人クーデターの先頭に立ったこの不幸な隣邦韓国のしからば経済社会情勢はどうであったか。私は、眼光紙背に徹して、外務大臣外務省調査機関を持っておられるのであるから、まず南朝鮮というものの経済状況及び社会状況がどうであるかということを調べておかれたならば、これに対処すべき日本政府立場というものはどの程度弾力性、とどの程度の慎重さを持たねばならぬということはおおむね見当ついたであろうものを、まことに残念なことであると思っております。私どもも、もう少し早く、具体的数字をもちまして、外務大臣にもっと切実に、もっとわかりやすい、いわゆるあげ足とりでない警告を発すればよかったものを、野党としてもまことに残念に思っておる次第でございます。  そこで、メンタルテストをするようになってはまことに恐縮でありまするけれども、やはり国民の前に今日の外務大臣認識のどういうところに欠陥があったかということを明らかにすることは、前車のわだちのくつがえるのを見て後車の戒めとなすこともできるわけでありますから、失礼をも顧みずお尋ねするわけでありまするが、韓国人口、農業、工業失業者または不急不要の労働等状況はおおむねどのようになっておるか、一、二分でけっこうです、一つわかりやすく、韓国経済の現状について国民の前に御説明を伺いたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 全体の人口ですか。
  5. 帆足計

    帆足委員 人口産業別有職人口の割合、工業稼働率などです。それくらいの数字は大体暗記しておくべき数字だと思うんです。それが念頭になければ、先方と交渉はできないはずです。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 去る六月二十日の住民登録実施以来、十一月十五日現在、登録人口は二千六百二十七万八千二十五名、世帯数は四百六十三万八千二百二十三と発表されております。  それから、就業人口は、一九六一年で全産業人口九百七十八万九千人でございます。農林業が七百八十一万三千人、七九・八%、非農林業就労人口は百九十七万五千人で二〇・二%となっております。  産業別国民総生産は、一九五五年の基準実質価格を単位といたしまして、第一次産業が四百九十四億一千ウォン、第二次産業が二百五十三億一千ウォン、第三次産業が四百八十三億二千ウォンになっております。  失業者は、現在のところ、二月九日の発表がございますが、百四十六万四千九百十三名というようになっております。これは家族を含んで、失業者及び家族となっております。  稼働率の方は、ただいま資料を持っておりませんが、後ほど調べまして……。
  7. 帆足計

    帆足委員 外務大臣の御答弁はまことに細々と何やら仰せられましたが、同僚議員諸君にも十分に徹底しなかったように思います。繰り返して申しますと、人口二千六百万、その国に、働いておる有職人口が九百七十万と承りました。そのうち農民は約八百万です。製造工業人口はわずかに四十三万、サービス業は六十五万、小売商と質屋さんと合計いたしまして六十一万。そして失業者統計によりますと四十万ないし二十万といわれておりますが、それは一日に一時間以内働いておる者。ですから、これは失業者というよりも完全飢餓状況の者です。しかし、外務大臣が言われる数字では、昨今は家族を含めて百四十六万。私はこの数字を全国民に知っていただきたいと思いますが、これは非常に無理なことです。製造工業はわずかに四十三万、サービス業六十五万、失業者家族を含めて百四十六万、こういう構成の国。何で生きておるかといいますと、貿易を見ましても、数億ドルの輸出を日本がいたしましても、輸入はせいぜい二千万ドルか三千万ドル。大部分はアメリカの特需、軍需によって生き長らえておる国でございまして、いわばアメリカ出べそをさすっておるような状況になっておるのでございます。これは、北朝鮮におきましては、御承知のように、茂山の鉄鉱石あり、有名な金山あり、平城の石炭あり、鴨緑江の全朝鮮を補うて余りある豊水ダムの水量あり、タングステンあり、ホタル石あり、しかも人口わずか一千万足らず。これに比べまして、南朝鮮の置かれている客観的条件は、たといその政権に相当の合理性があっても、なおかつ非常に困難な状況に置かれておる。ちょうど九州から切り離された日本中国地方、九州石炭から切り離された大阪あるいは四国のような状況に置かれておるのでございます。そのために経済確立しない。  その上に、社会状況はどうなっておるか。犯罪、病気、社会保障等状況について外務大臣は思いをとどめられたことがありますでしょうか。その二、三の数字でもお示しを願えればしあわせだと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま手元にございませんから、あとから取り寄せます。
  9. 帆足計

    帆足委員 まことに遺憾なことでありまして、このような状況に置かれておりますために、自然、社会保障にも力を注ぐいとまもなく、ここ十数年における医学の進歩に潤ういとまもないという気の毒な南朝鮮状況でございます。私がかく申しますのは、政府は三億ドルの無償賠償、二億ドルの有償援助等もかつてはお考えのようでしたけれども、もしそういうことをなさるならば、その金がどのようにすれば生きて使われるか、カンフル注射をする時期よろしきを得ておるか、方法よろしきを得ておるか、論理の筋道がよろしきを得ておるか、いやしくも国民の血税をそこへ投下するわけでありますから、それが北朝鮮中国に及ぶ連鎖反応という重大なことを一応別にして考えましても、これは重大にしてかつ慎重なる考慮を必要とする問題であると私は思います。そうして、戦後十七年もたちまして後行なわれまする賠償の問題については、私は、方法論的には、低利の金を、親切に技術をつけて、そして国民の血となり肉となるような形で援助するような形においてなされることが望ましいのでありまして、無償賠償という形のものはとかく乱費されがちでありますし、経済上の基礎なしに恵みの金をくれるというようなことになりますと、かつてダレスが言ったように、恵みの金をもって復興がうまくいった例は歴史上ほとんどない、これは彼がガンでなくなる前にみずから述懐した有名な言葉です。すでにそれに近き状況になって、まだ五億ドルを払う前に、早くも金氏を中心といたしまして暗いうわさ流れておる。そのうわさは、単に朝鮮内部にとどまらず、日本賠償産業との間にすでにうわさがもっぱらであるということを、多少は外務大臣もお耳にされておることと思いますが、そういうことになりやすい。従いまして、無償賠償とからんだところの海外への資金の援助というものはよほど慎重に考えなければならぬ。聡明な外務大臣が最初非常に慎重な態度であったことを、私はよく了解しております。しかし、みずからいかだ船頭さんをもってたとえられた外務大臣は、流れに抗するより、いつしか流れの間に問に流されて、今や、あとを振り返ってみますと、濁流まわりを洗っておる。まことに御心中察するに余りある次第でございます。  こういうような貧弱な経済体制韓国でありますから、結核感染者の数を統計で見ますと、急を要する患者だけで約八十万の結核患者。もし韓国援助なさるならば、こういう点を心にとどめておかねばならぬ。ジストマの患者だけが人口の四一%。回虫に至っては、全民衆の九〇%が回虫卵を持っておる。おそらく朴議長もあるいは回虫に多少やられておるのではあるまいかと思われる節があるような昨今の状況でございます。回虫というものは、これが肺臓を食い破って大脳の中に入りますと、大脳の中に断層ができることもよく御承知だろうと思います。さらに、十二脂腸虫に苦しんでおる人民は全人口の四〇%を占めておる。精神病患者は約三十万に達しておる。南北苛烈な戦争の跡、まるですき焼なべの上をオムレツが流れたようなすさまじい戦争の跡でございます。その上に、南には石炭はほとんどなく、鉄鉱はわずかに五十万トン、それも品質の悪いものである。しかも石炭のない鉄鉱というものは男やもめのようなものでありまして、まことに処置なきものでございます。水力電気はほとんどありません。まああるとすれば、結局誇り得るものは御承知のように米とノリでありますが、ノリは大したことはありません。米は一千五百万石。二千六百万の人口にしてはやはり多い数字ではないのでありまして、副食物の少ない民族は一人一石とよくいわれますけれども、米もまた、米の豊庫といわれた韓国が、春窮の民と申して、春が近づくと政治上の不安が起こる。四月はいつも革命の月といわれておるのも、そういう点でございます。まことに、今春先に向かっておりまして、悪い時期にぶつかっている。  こういう点も、私は、単に韓国だけではなくて、諸外国に参りましたとき、いつも一方ならぬ大使館のお世話になるのでありますけれども、いただいた経済資料を見ますと、まことに貧弱で、英国流の実証主義的な努力も十分貫いていないし、またソ連流社会科学的な鋭い分析もない。やはりこれが一つの伝統的な外務省欠陥であるまいか。そして、調査情報整理方法はおおむね昔の内務省警保局のようなやり方でありまして、すなわち、ためにするところの統計をつくる。たとえば、朝鮮人帰国の問題のときも、私は思い出しますが、わが外務委員会同僚議員の皆様は、与党の方々に至るまでよくこれを理解して、われわれは超党派的にすでに十万人近くの帰国を実現いたしました。八万人をこえました。しかし、そのときの内閣調査室または外務省筋その他のお調べによりますと、まあ岩本さんと帆足さんが超党派的に努力しているけれども、大体三千人くらい帰るだろう、いいところで三万人であろう。三万人こえたら勲章をやってもいい、こういうようなことを言われたことを記憶しておるのでございますが、今はもう八万人をこえました。客観的な実証的な調査というものがいかに重要であるかということを、この際朴議長と金氏が第二の李承晩たらんとする政情ただならざるときに、深く外務省諸君が反省されるよすがともなれば、これはまた国のために私は幾ばくかのよい経験になることであろうと思うのでございます。  南北朝鮮が何らかの意味で統一がなければ、これは一つ民族としての自立は困難でございます。従いまして、たまたまソ連が道を語って国際連合を軽視して欠席しておりましたときに国連のにしきの御旗をとったからといって、南朝鮮だけですべての朝鮮を代表するといって、実情を無視して張り切ることは実情に即していない。幸いにして、外務大臣は、韓国韓国の今の政治的力の及ぶ範囲であるという見解を明確にしておられますことはけっこうでありますけれども韓国南朝鮮、そして朝鮮民主主義人民共和国は現実には北朝鮮におるので、この事実を見まするならば、わが日本社会党が言っているように、ありのままの事実に即して南と北とのそれぞれに必要なる事務的関係を結んでいかなければならぬ。そして、万事、おごる平家は久しからずであって、今日は東西ドイツの対立南北朝鮮対立というものは宿命的に見えようとも、時移り星変わっていくならば、世界雪解け歴史の中において、分かれた一つ民族は必ず一緒になる日があるのですから、機械的に直ちに一緒にならなくても、人事交流文化交流くらいできる常識を持った国民になるような方向を、朝鮮南北のすべての民衆が望んでおるように、われわれも良識を持って望む、そのくらいのあたたかい理解現実認識のもとに朝鮮とも必要なる限度の事務的関係を持つことが適当であろうというのが私ども政府に対する警告であり、忠言であったことは御承知通りであろうと思います。  朝鮮のすぐれた愛国者といわれ、また哲学者といわれる朴燕巌という学者がかつて「熱河日記」という雷物を書いております。私は偶然書物の一ページをひもといてみたのですが、こういうことを言っております。「六鎮地方の麻布と関西地方の絹、三南地方朝鮮紙海西地方の綿と鉄、内浦の鮮魚と塩はすべて人民の暮らしになくてはならないものだ。また青山・報恩地方の無尽蔵なナツメや黄州・鳳山地方の無尽蔵な梨、高陽南海地方の無尽蔵な蜜柑、林川・雄山地方の幾千万畝の麻畑、関東地方の無数の蜂蜜もすべてこれ朝鮮民衆の生活に必要な資源である。これらの物資を互いに有無相通じあおうというのに誰がこれを拒むことができようか。」、封建時代の割拠の制度に反抗した朝鮮愛国者が、朝鮮一つでなければならぬということを説いた古典の文献でありますけれども、私は全くそうであると思います。  こういうような困難な事態に面したときに、私はいつも英国を思うのです。英国世界の七つの海を支配していた世界帝国主義の総本山といわれますけれども英国は単に老獪であっただけでなくて、やはり聡明であった一面がある、すなわち、合理的な一面があったということも考えなければならぬ。私は、なぜわが与党外交政治家諸兄アメリカよりも英国を学ばれぬか、まことに不思議にたえないのでございます。もし英国に学ばれるならば、与党野党との間にまたともに話し合う共通の広場というものを持てようものを、なぜ、四十男の、今少し小金ができてなまいき盛りの、そして外交交渉では失敗ばかりして、財布を見せびらかし、キャバレーできらわれる成金男のようなアメリカ外交のみに追随して、ゆう然たるすいも甘いも知っている英国外交からなぜ学ばないのであるか、まことに残念でございます。もちろんわれわれは英国保守党を賛美して言うわけではありません。われわれは、英国の労働党には非常な理解を持っておりますが、英国保守党とは立場が違います。立場は違うけれども歴史一つの事実としてときどき感心させられる。保守政党ならば、せめて英国のごとくあってもらいたいということを感ずるということを申し上げた次第でございます。  こういう点から考えますると、南朝鮮の今日の事態というものは、やはり経済あり方そのものに無理がある。南北分断そのものに無理があるわけでありますから、政府としては、やはりしばらくそっとしておいて、こういう事態に対しては硼酸水で湿布でもして、よい時期を待つ、そして、朝鮮南北を問わず民衆の望んでおるところのもの、いかだ船頭さんであるならば、雪解けのこの流れがどういう方向流れておるかということをもう少し冷静に観察するお心の余裕がほしかったということを痛感する次第でございます。事ここに来たったからあえて大声疾呼して言うわけではありませんけれども、かねて私どもはそういうような分析に基づいて政府に対して警告を発していたということを、この際よく理解していただきたいと思うのでございます。  そこで、一歩進んでお尋ねいたしますが、まず第一には、今日の南朝鮮事態にはいろいろ無理がある。南朝鮮は、本来ならば国際連合がこれを監視し、そしてこの歴史過渡期において世話をするのが順序であります。われわれもアメリカ軍をかつては国連軍のただ首席担当官ということに理解しておりましたのが、今は、だれしも、これはアメリカが支配している場所である、そして、国連のにしきの御族は、ただにしきの御旗として利用されているだけであるという感を抱いておりますが、これはもうぼつぼつ再検討して、ほんとうに国連世話をするならば、むしろ、国連におけるスエーデンとかノルウェー、スイスまたはインドとか、そういう国々がこの場所安全保障と監督に当たるならば、それはそれとして、保守主義立場から見まして、またそれを野党から見ましても一つ論理はある、こう思われるのですけれどもアメリカが今日に至るまでほしいままにこれを支配し占領しておるということは、どうしてもわれわれは納得がいかない。一体国際連合の総会に対して日本代表は何をしてござる。やはりこういうことについてもう少し筋を明らかにしておくならば、少なくとも隣の場所に緊張の激化ということは多少でも防止し得るのではないか。今、日本を取り巻く情勢の中で一番危険なのは何といっても南朝鮮政治情勢または軍事情勢であるとは、だれしも思うておる。外務大臣はこの問題についてどのようにお考えになるか。すなわち、国連軍なら国連軍らしい体制をとってもらうことの方が、私は日本安全保障にとってよくはなかろうかと思うのですが、大平さんはどのようにお考えでしょうか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 南北朝鮮統一を希求するということは、全くお説の通りでございまして、私どももそれを心から希求いたしております。ただ、現在その統一が御案内のような事情でできていないということもまた事実でございます。私どもとしては、現在の状況におきまして日韓の間はどうあるべきかということを究明し、発見していきたいということでおるわけでございます。今御指摘の、韓国朝鮮半島に対する国連の政策というものは、御案内のように、十五カ国が委員会をつくりまして討議をいたしておるわけでございまして、私どもは、国連のこういった努力、非常に困難ではございますけれども、実のある成果をこういう委員会であげていただくことを希望いたしておる次第でございます。
  11. 帆足計

    帆足委員 御答弁の趣旨を十分に私は理解しかねるのでありますけれども政府は日韓会談をお急ぎになりましたけれども、今日のようなことにぶつかっては、全く面目まるつぶれであるのみか、国益阻害になるのであります。こういう会談をいたしますのには、両方互恵平等の関係でなくてはなりませんから、まず京城日本外務省の駐在所を設けること、そしてお互いに平等の立場情勢を把握しながら会談すべきだ。今後ともこれはおそくないと私は思う。第二には、いわゆる補償額だけを先にきめてしまって、そして李ラインの問題などは一応あと回しになっておる。これはきょうの朝日新聞が指摘した通りであって、私はその通りだと思って読みました。外務大臣は、この問題について、やはり片手落ちだった、第一には、この問題はもう少し静観すべきだった、第二には、話をする順序としても、すなわち保守政党立場に立っても多少慎重を欠くるところがあったとお考えにならないでしょうか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは、日本側の措置によって事がなるのでございますれば、御指摘のようにやりたいわけでございます。在韓代表部にいたしましても、御指摘の通り、こういう機関がないということは不公平でございまするし、かつ不便でもございまするし、会談の前提としてそうあるべきことは帆足さんと全く同感でございます。が、遺憾ながら先方が応諾しないのでございます。そういう当然のこともなかなか応諾できないということは理解に苦しむことでございますけれども現実そういう状況になっておるわけでございまして、機会あるごとに先方にも申し入れてございますけれども、今なお実現を見るに至ってないことは非常に遺憾に思っております。今後もこういうことは執拗に要請して参るつもりでございます。  それから、第二の経済協力問題でございますが、たびたび申し上げておりますように、私どもはすべての懸案を同時に一括して解決したいという基本方針で臨んでいるわけでございます。どういう懸案から先に討議して一応の合意をつくり上げて参るかということは、これは交渉の手順の問題でございまして、どれが先であり、どれがあとであって悪いというわけのものではないと思います。先方と協議の上、この問題から取りかかろうということになりましたので、まず請求権問題を取り上げたということでございます。しかし、これは、第一の原則に返りまして、一括解決の方針にあるわけでございますから、一括解決いたしまして協定が調印・批准されるというときまでは一応の合意でございまして、拘束力は別に持たないものでございます。
  13. 帆足計

    帆足委員 韓国経済政治情勢がまだ非常に困難であって、複雑微妙である。しかも、交渉の途中に与党から使節を派遣した。そういう使節ならば、韓国に参りましても統計書類などをよく見、眼光紙背に徹するような状況視察をして、外務省によき助言をされるような使節を選ぶべきであるにかかわらず、結婚の祝賀会かお葬式の場合ならまことに御適任な陽気な御老人であられる大野伴睦氏を派遣された。一番困難なきびしいときには、もう少し若手の実証主義的な現実把握の能力に富む人を派遣さるべきであると私は思う。従いまして、大野伴睦老に、この陽気な御老体に恥をかかせる結果になってしまい、まことに遺憾なことと思いますが、外務大臣はどのようにお考えになるか。  それから、同時に、その補弼の責任にある外務省事務当局は、この大野さんの使節に対して、南朝鮮のこのきびしい経済社会状況についての資料一つくらいは提出して、たとい御老体の心境が憂うつになろうとも、その行かれる国の今背負っておる大きな重荷、不合理な条件、深刻な矛盾等について使節の認識を深められる努力をされたかどらか、その点をお伺いしたい。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 大野伴睦先生の訪韓は、先方からの御招待がありまして個人のお立場で行かれたのでございまして、大野先生に日韓の間の交渉をお願いしたわけでは決してございません。これはあくまで私が責任を負ってやっておることでございます。私は、両国の間の善意をつちかう上におきまして大へん御苦労であったと思っております。
  15. 帆足計

    帆足委員 時間もありませんし、細迫さんからも質問がありますから、私はたとえば沖繩、キューバ等について緊急御質問したいことがありますけれども、次の機会に譲りまして、最後にもう一言お尋ねいたしますが、金氏が東京に参りまして、その間にどんどん韓国状況はまた移り変わっておりまして、非常に深刻な心境のように新聞は伝えております。外務大臣は、この日韓会談のことに関連して、金氏と出発前に事務引き継ぎ等の意味を含めてお会いになる気か、あるいはまた、この会談については、情勢激変を痛感されまして、政府も反省期として静観して国民の声に耳を傾けてしばらく心を冷やされる気か、御心境のほどを伺っておきたいと思います。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 私の方から会見を申し込むつもりはございません。先方からも会見の申し入れはございません。
  17. 帆足計

    帆足委員 私は丁重にお尋ねした次第でありますけれども、先ほど申し上げましたように、韓国経済状況というものはきわめて深刻でありまして、これは客観的な事実でありますから、この旨を政府の情報局あたりでも韓国の悩みとしてありのままの推移を国民に知らして、そうしてこれに対処する国民の正しい態度につきましてもう一ぺん再検討されることを切に期待いたします。  それから、私は先ほど、韓国の厚生関係について、そういう経済状況であり、戦争あとであって、一番重要な問題が全く放擲されておるということを指摘いたしましたが、外務省当局韓国の厚生関係、病気、犯罪等についての適当な資料でもお持ちでありましたら、御発表願えれば参考にもなろうと思います。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 今の資料を取りそろえまして、本委員会へ出します。
  19. 帆足計

    帆足委員 今最後にお尋ねした、交渉の方はしばらく頭を冷やしてゆっくりお考えになるか、その点……。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、たびたび申し上げております通り、私どもといたしましては、誠心誠意交渉を続けて参るつもりです。
  21. 野田武夫

  22. 細迫兼光

    細迫委員 私は外務大臣に日韓問題についてやや基本に触れる問題を質問したいと思います。  私どもは、御承知のように、日韓会談は即時中止することが最上策であると考えておるのであります。しかし、やられるにしても進められるにしても、実に見ておれない気持がするのであります。まず、相手方と交渉する、折衝するという場合一番大切なことは、相手方の立場、わが方の立場、もっとはっきり言えば、お互いの強み弱み、これを分析して正確に認識することが第一だと思うのです。孫子が敵を知りおのれを知れば百戦勝たざるなしと教えておるのは、まさにこのことだと思うのであります。韓国の日韓会談妥結に対する熱望といいますか、どうしてもやりたいという度合いと、日本が感ずべきその度合いと、一体どちらがどうなのか。まずこのことを深く認識しなくちゃならぬと思うのです。つまり、現状のままで困るのはどっちか、何とか早く妥結をしなければ困るのはどっちかという問題であります。かつて李承晩が頭にきて経済断交をやったことがありますが、このことによってお手をあげたのは日本側じゃなくて韓国であった。これは事実である。これが端的に一切を集約的に結果的に示しておるのでありまして、現状のままでも、すなわち日韓会談を早期妥結しなくても、日本としてはほとんど何ら痛痒を感じない状況である。さっき帆足君も申しましたように、あちらから物を入れておるのは米、ノリ一億枚、あるいは魚類、まあそんなものであります。何も困らない。しかるに、韓国状況は、帆足君も申しましたように、何ら近代的な有効な物資を産出しない。工業も微々として振るわない。ある工場の八〇%は、あるいは休み、あるいは操業短縮しておるという状態で、失業者は文字通りちまたにあふれておるという状況。だれかが来て工場を動かしてくれること、資本をつぎ込んでくれることをのどから手が出るように飢えかつえておるのは韓国であるのです。しかるに、政府交渉態度、経過を見ますれば、あたかもこの立場と全く逆行しておるのでありまして、妥結を急ぐ、そのために、韓国側から、ここまでおいで甘酒進上という態度で、それに引き回されておる姿であります。これではいけないと思います。日本側からもいろんな財界の人たちが視察に行かれました。なるほど、税金は負けてやろうというような誘致条例のようなものをつくりまして、日本の資本の進出に歓迎的な態度をとっております。安い労働はたくさんにあふれておる。まことに日本の独占資本家にとりましてもよだれがたれるようないい条件が整っておるとも言えるのであります。しかるに、いまだ現実に大資本を持ち込んで工場を動かそうというものが出てきておりません。一体その原因はどこにあるかということも分析追及しなくてはなりません。  まず大平外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、私が申しました弱み強み彼にありやわれにありや、この点についての分析認識をいかにつかまれておるか。ただ、お隣りの国とは仲よくしなくちゃならぬという天の声に、人道主義的な考えから人情的になって、道義からこれを急いでおられるのであるか。弱み強みの分析についていかなる御認識を持っておられるか、お答え願いたいと思うのであります。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもはいたずらに妥結を急いでおるわけじゃございまん。問題は、十一年もかかっておる交渉でございまして、容易ならぬ問題だと思うのでございますが、第一義的には、細迫先生も最後におっしゃいましたよりに、善隣は友好でなければならぬ、正常な国交がないということは不自然なことでございますから、何とかして正常な国交に持っていく道はないかという点が第一義的に私どもの頭を支配しておる考えでございます。もとより、外交は、実利と申しますか、損得と申しますか、そういう配慮を忘れてはいかぬと思うのでございますが、これは正常な国交が打ち立てられたあとに結果として出てくるものでございまして、損得を第一義としておるわけではございません。相互の国の国民が互恵によって相互に繁栄するということは、今日の時点に立ちましてだけ判断すべきではなくて、長い将来の展望に立ちまして、双方がお互いに互恵の恵沢に浴するように持っていくべきではないか、そのように考えておるわけでございます。
  24. 細迫兼光

    細迫委員 的確な御答弁を得たわけではありませんが、依然として従来の態度で続けていかれる御趣旨であると受け取るほかはありませんが、まことにこれは日本の国にとりまして不利益なことであると思うのです。私が考えておることは、さっき申し上げましたように、わが方に弱みなし、何も妥結を急がねばならぬ弱点はない、かように思っておる立場から見ますれば、何ら急がねばならぬ理由はわが国としてはない。しかるに、異常な熱意を持ってこれに取り組んでおられる姿を見ると、これは日本に原因があるのではなくて、だれかの要求、だれかの希望に従ってやっておられる、刺激されてやっておられるのだというようにしか理解ができない。すなわち、それはアメリカであります。池田さんとケネディの会談、あるいは外務大臣が行かれましての話し合いというようなときに、その後明らかになりましたいわゆる中国封じ込めのアメリカ政策、これは日韓会談が中国封じ込めの政策の一環であることは客観的に否認できない話でありますが、こういうアメリカの戦略的な立場から、同じ自由主、義諸国陳営の中におると称しておる日韓に国交の正常化がないということは悲しむべきことである、これを何とか国交正常化せしめて軍事的にも有力なものにしたいという考えの現われであると理解しなくちゃならぬのでありますが、一体、池田・ケネディ会談、大平・ダレス会談等において、何か大いにやりましょう、日韓会談を促進してやりましょうという口約束でもあったのか、ほんとうに何もなかったのでしょうか、どうでしょうか。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 これは日韓間の問題でございまして、あくまでも二国間の交渉でやっていくべき問題だと思います。アメリカアメリカとしての対韓政策をお持ちだろうと思うのでございます。アメリカが日韓間の、正常化を希望しておることは事実でございます。しかし、だからといって、私どもの会談におきまして要請がましい御要求はございません。従って、今御心配のように、私どもが外的な圧力によって動いておるというような御懸念がございましたら、御一掃いただきたいと思います。
  26. 細迫兼光

    細迫委員 バーガー大使が朴最高会議議長に対しましていろんな圧力をかけておることは明らかな事実であります。おそらく、金鍾泌氏の国外旅行なども、バーガー大使あたりのかばい切れないあげくの果てに持ち出した忠告に基づいた行動だと思うのです。交渉のことでありますから、韓国に対しての圧力と同時に、日本側に対しての圧力も当然何らかの形において行なわれておると私は察しております。  それはそれといたしまして、さきの問題の弱み強みの問題でありますが、中川局長も韓国へ行かれました。経済界の人も多数御同行になりました。だれだれを御同行になったか。そして、その中で、韓国において経営をする、進出するという具体的な動きをとっておる者があるか。私はないと思うのですが、ないとすれば、その原因は何であるかということについてのお考えを中川局長から一つ御報告を願いたいと思います。
  27. 中川融

    ○中川政府委員 私は十一月の初めに韓国に参りましたが、そのときは政府の関係各省の方々とばかり参りまして、経済界の方は一緒に行っておりません。違うミッションであります。
  28. 細迫兼光

    細迫委員 さっき帆足君も申しましたように、昔から朝鮮には、春窮と申しまして、春の窮乏があるのであります。もうそろそろその時期になるのであります。私はつらつら韓国の政情を思いますのに、朴・金政権はくずれ去ることは必至でありますが、そのあと政権を樹立するその政権は、この朴・金ラインとは全然反対のラインのものは出てこないと思うのです。韓国の政情が安定するのは、南北統一を旗じるしにした勢力の政権であると思うのです。これは帆足君も指摘しましたように、南朝鮮が一国として生存しようということは、これは無理な話で、朝鮮は全体としてならば何とかやっていける資格を持った国でありまするが、まるで、それの下半身、へそから下がひとり歩きしょうというような状況でありまして、国民的な感情のみならず、経済上の要求としまして、南の民衆が北鮮と一緒になりたいという希望を持つことは、これは当然な流れだと思うのです。必然な流れだと思うのです。これは国民感情とも一致するわけでありまして、この考えに基づく動きというものは韓国からぬぐい去ることはできないと思うのです。これが四月革命の一つの意思でありましたし、その意思に基づく動きの断圧のために出てきたのが朴軍事政権であります。どうしてもこの南北統一を要求する動きというものは必ず起こってくると私は見ております。最近にあるいはそういう動きが表面化してくるかもしれませんが、あたかも、さっき申しました春窮、春の窮乏の時期に差しかかって、絶糧農家は全地域にあまねく、異常乾燥に吹きまくられたわらくずが全国に散らばっておるような状態でありまして、この立ち上がりには、おそらく百姓一揆的な、農民蜂起的な大きな規模の動きが出てくるということを予想せられます。客観的な条件は備わっておると私は思うのです。そういう展望に立ってこの日韓会談も処理しなくては、また見通しを誤ることに相なると思うのです。すなわち、別に具体的な手を差し伸べなくても、南北統一の機運をそこはかとなく援助する、これに理解をもってそれを願望する、そうして安定した政権のできるのを待って、——これは南北統一政権でなくてはあり得ないと思うのでありますが、これと交渉する。事実、平和条約に基づいて解決しなければならぬ問題は、南にあると同時に北に対してもあるのでありますから、同時にこれを全体的に交渉する時期を持つという態度を持って、あそこのあすの日もわからない政局におきましては、まず一つ静観する、十分な交渉の相手として確立せられる政権の樹立を待つという態度に出ることが、現在日本政府のとるべき態度だと私は思うのです。しかるに、民政移管の前後を問わず交渉を進める、こういう政府態度で、まことにどうも気づかわしい限りに思っておるのでありまするが、北の方との問題について解決しなければならぬ問題もたくさんあります。これらにつきましては、現状のまま、ただ自然の時期を待つということなんですか、あるいは話しかける機会をつくるおつもりがあるのですか、どうですか。北に対する態度の一端を披瀝願いたいと思います。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 政情と日韓交渉の関係でございますが、私どもは、日韓の間の正常化をはかるためには、——はからなくていいということになりますとまた別でございますけれども、私ども立場といたしまして、はかるためにはどのようにすればいいか、どういう道を発見し、これを直くしていくかということは、どの時点におきましても、韓国政府としても大きな懸案でございまするし、日本政府としても大きな懸案の一つであることに間違いはございません。従って、そういうことの討議を続けておるわけでございまして、おっしゃるように、政局が安定してからやれという立場一つあると思います。あると思いますけれども、それに、至る道程におきましても、今日の問題はやはり解決しなければならぬという責任があるわけでございまして、いかにかして正常化の道を発見するということを考えて、それに努力いたしますのは、当局者として当然の責任だと存ずる次第でございます。  それから、北の問題でございますが、ただいま、北鮮当局とはこちらから交渉する立場でもございませんし、そういう意思も持っておりません。
  30. 細迫兼光

    細迫委員 先ほど触れました彼我の弱み強みの問題に関連するのですが、日本として、弱みというか、解決を早くしてもらいたいという問題、これは少なくとも一つあると思うのです。私、山口県の出身ですが、山口県からも手紙がたびたび参ります。何でも李承晩ラインは解決してくれなくちゃいかぬ、日韓も反対しては、ためが悪いぞというような手紙が参ります。しかし、この李承晩ラインの問題は、幾ら金を出すから引っ込めてくれという性質の問題じゃないのであります。しばしば政府が言明しておられますように、不法な李承晩ライン政策、国際法違反の行動であります。これに対処する方法は、そんなむちゃくちゃな不法なことをして、日本の利益、権益を侵害する無法な国とはおつき合いできません、こう出るべき性格の問題であります。このことには、外務大臣、従来のお説から見て、反対ではないと思う。しかるに、五億供与の問題なんかでも、李承晩ラインの問題を何とか譲歩してくれという代価の意味も少し含んでおるように思う。純然たる請求権の問題ではないと思う。それは大づかみのお金であること、しかも、いかにもありそうな、請求権よりも数倍に上っておる額であると大体において私は思うのであります。この李承晩ラインの解決にあたりまして、元来対価を出すべき問題として認識なさいますか、あるいは、一方的に撤回を迫っていくべき問題であって、これに応じなければそれ相当の報復手段をこちらとしてもとるべき性格のものであるとお考えになりますか。李承晩ラインの問題の性格についての御認識をお答え願いたい。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 幾ら幾ら金を出すから引っ込めてくれというようなやりとりの問題ではないと思います。請求権の問題と李承晩ラインの問題とは全然別個の問題だと心得ております。
  32. 細迫兼光

    細迫委員 終わります。
  33. 野田武夫

    野田委員長 関連質問の申し出があります。これを許します。穗積七郎君。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 大臣の時間がないそうですから、しかも関連でございますから、ほんの一、二点だけお尋ねして、私もまた日韓問題については次の機会にゆっくりお尋ねしたいと思います。  第一は、外交交渉でございますから、常識問題として、相手があるわけです。相手はだれであり、どういう基礎に立ち、どういう方針を持っておるかということを見きわめなければ、一人相撲ではありませんから、外交交渉にはならないわけであります。この前から問題になっておりますのは、その相手として磐石な基礎を持っておると見た朴政権というものが根本的にくずれてきたわけです。  そこで、大事なことは、韓国の政情の今後の見通しです。外務省はこれをどういうふうにごらんになっておられるのか。大臣は今、交渉は継続する、静観はしない、こう言い切っておられるわけですが、どういう見通しでそういう可能性を主張されるのか。新聞の報道によりますと、ごく最近、自民党の外交関係の合同委員会で後宮局長は、結論としては、ああでもないこうでもない、わからぬ、わからぬのが実情だということでてんたんとしておられたということですが、外務大臣は一体どうごらんになっておられるのか。それをちょっと伺って、私の質問を続けたいと思います。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 軍事政権は暫定政権であって、やがて民政に移管するのだということをみずから内外に宣明したわけでございます。その場合に、朴最高会議議長が大統領になるとかならぬとかいうことが前提であったとは思いません。そして、朴軍事政権も前政権からの法統は継続されておる。だからこそ諸外国がこれを承認して外交関係を結んでおると思うわけでございます。今民主化の過程にあって、民政への衣がえをして、次に韓国の民意によってできまする政権と現政権との間には法統は連綿として続いていくものと私どもは思うわけでございます。従って、軍事政権というものは民主政権に道を譲るのだということは当然の前提であったわけでございます。そのように私どもは見ておるわけでございます。一方、民主化の過程が進みますと、政党が結成され、その活動が活発になる。従いまして、私は、日韓の問題にいたしましても、各政党がこれを取り上げてこれに対するそれぞれの身がまえを始めてくると思うのでございまして、日韓交渉の角度から見まして、今の韓国の政情は、そういう意味で、民意の上にこの問題が取り上げられる基盤ができつつあると見ておるわけでございます。これは本来軍事政権が約束いたしました民政移管への道程をたどっておる。そして、その後に民意によってできました政権は当然現政権から法統を継ぐものと思うわけでございまして、現政権を相手に交渉をしても少しも差しつかえないと思います。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 私は国家権力継承の法理論を聞いているわけではないのです。政権がかわって後のその国の国際的な責任の所在を法的に聞いているのではなくて、問題は、今まであなたが交渉をし、あてにし、信頼をしてきた朴・金政権のラインというものはくずれたわけです。しかも、まだ交渉は妥結していないのですよ。ですから、その次に出てくるものは、これからどういう態度で、どういう方針で、どういう条件で出てくるかわからないじゃありませんか。そんな法理論を聞いているのじゃないのです。その具体的な見通しを聞いているのです。この間の十八日の外務委員会で、私は朴政権というものは根本的にくずれようとしておると言ったのに対して、あなたは同席なさいましたが、池田総理大臣は、朴政権は安定しておるのだとあくまで言い切られた。見通しの判断については私の方が勝利しておるわけです。政府の方が誤っておるじゃありませんか。もう朴は出馬しないということは明確なんです。それじゃ、それにかわる政権はだれが出てきて、どういう方針で日韓会談に臨むのか、時期はいつを選ぶかということについては全く白紙でしょう。私はそういう今おっしゃった権力継承の法理論を聞いているのじゃない。朴議長の不出馬は明確であるということをお認めになりますか。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど私がお答えいたしました通り、軍事政権は民主政権に衣がえをする、それは朴氏が大統領になるのだという前提で内外に公約したものではないわけでございますから、今の政権の把持者が退場いたしましても、本来現政権が指向した方向に政情は動いておるということを申し上げたわけでございます。しからば、この過程は日韓交渉にどういう影響を及ぼしてくるか、どう判断するかということでございます。私は、先ほど申し上げましたように、この日韓問題も当然各政党がみずからの綱領の中に取り上げてくると思うのでございまして、それは韓国国民がきめることでございます。今日どういう態度でどういう要求をしてこようかというようなことを私が穗積さんに申し上げるという立場にないと思います。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 今の権力継承、継続性の問題について、あなたが言う以上は、朴政権は退陣をしてそれにかわる政権が出てくるということを前提として言っておられるわけです。そうであるならば、かわる政権が安定性があるかないかは別にして、かわる政権が出てから交渉に応ずるというのが当然だと思うのです。われわれは打ち切りをすべきだと言っておりますが、政府は継続をするのだという論理に立っている。当然のことじゃないでしょうか。あなたはかわることを前提として今の話をしておられるわけでしょう。そうであるなら、民主化に伴って、その民主主義の手続によって出てくる政権がきまってから、しかる後に、それがどういう態度で日韓会談に臨むか、どういう条件を出してくるか、それによって初めて交渉政府としては始められるのであって、政府はやろうとしたってできないじゃないですか。そういうことは当然の論理だと思うのですが、そう理解してよろしゅうございますか。政権が退場する瞬間まで、それぞれの懸案につきまして最善を尽くすのは当然だと思うのでございます。先方がこういう事情だからしばらく中止だと言わない限り、先方が熱意を示してくる限り、こちらも当然これに応対をして、どのようにすれば正常化への道が開けるかということについては鋭意検討すべきものだと思います。
  39. 野田武夫

    野田委員長 穗積委員あと一人残っておられますから、時間を見てやって下さい。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、お尋ねいたしますが、朴政権が民政移管をすることをはっきり声明をし、自分ももう出ないということを言っているわけです。にもかかわらず、朴政権がもしやろうということであるなら、そのまま乗っかって交渉を妥結するつもりですか。その点をお伺いしておるのです。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 だから、先ほど私が申し上げましたように、いかなる政権も退陣をするまで最善を尽くすのが私は責任だと思うわけでございます。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 それは非常に無責任だと思うのですね。単なる、民主的な方法によって岸さんが池田さんになるとか、池田さんがまただれかにかわるという状態とは根本的に違うのですから、しかも、前に細迫委員が指摘されたように、おそらくは革命的様相を持ってくると思うのです。これからそういう可能性のあるときに、少なくとも朴が不出馬を声明しておる以上は、それ以後の政権を相手にしなければ、だれを相手にして何を話をするのでしょうか。それでは、ちょっと続いてお尋ねいたしますけれども、今行なわれておる専門委員会並びに予備会議というのがありますね。あれは予定のスケジュールですか。予定したスケジュールでは、一週間か二週間か、もうスケジュールまできめているでしょう。それをそのままお続けになるつもりですか。そして何をお話しになるつもりでございましょうか。向こうは答えることができないですよ。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 私が先ほど申しましたのは、朴氏が出馬するとかしないとかいうことは韓国の民政移管の前提ではなかったということでございまして、軍事政権から民主政権に移るのだという場合、それは韓国の人がきめていく問題でございまして、朴さんがシャッポでなくても、私は当然そういうことはあり得ると思うわけでございます。朴さんがかわることにきまったから日韓交渉一つここらあたりで中断したらどうだ、そういう御相談でございますが、先ほど私が申しましたように、日韓の間はどうあるべきかという問題につきまして、両政府ともそれぞれの態度でどの瞬間も忘れてはならない懸案の解決に努力するのは当然ではないかと思うのです。従って、今現に予備交渉の進捗工合が事実関係としてうまくいっているかどうか、予想のようにスピーディに事が運んでおるかどうか、この事実関係とは一応別でございまして、私ども、道を開いて、そして討議すべき問題があれば討議するにやぶさかでない態度を終始持っておるわけであります。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、もう一点だけ。  こういうふうに政情が非常に不安定になってきますと、相手のあることですから、相手の情勢なり成り行きを見ることは必要なんです。先ほどもお話があったけれども日本の代表部を韓国に設置するとか、あるいは代表部という名前でなくても日本政府の責任ある者が向こうに長期滞在する、こういうことは拒否されているからやむを得ぬと言っておりますけれども、そのことが交渉継続の前提条件じゃないでしょうか。この際はそれを条件として強く主張されるべきだと思う。当然だと思う。政府の継続の論理の中に立っても当然だと思う。それはいかがですか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 今日までも先方に要請して参りましたし、今後もその努力を続けて参るつもりであります。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 交渉継続の条件とするのかどうか。問題は、それを聞いているのです。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 今後とも努力して参るつもりであります。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 条件とするるのですか、しないのですか。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう条件を立てて交渉を始めているわけではありませんが、交渉の道程におきまして今日までも努力しましたし、今後も努力して参ると申し上げておるわけであります。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 まだありますけれども、時間が何ですから……。
  51. 野田武夫

    野田委員長 戸叶里子君。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 関連質問をしたいと思います。  予備交渉の問題を私も伺いたかったのですが、今穗積委員からお聞きになりました。そこで、一点お伺いしたいことは、予備交渉のスケジュールというものは前からずっときまっているわけですか。そして、その通りにおやりになるのでしょうかその点をお伺いいたします。
  53. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 予備交渉の杉・袁会談と、その下の専門委員会の会合と、両方今行なわれているわけでありますが、初めから固まったスケジュールというのがあるのではなくて、会を一回ごとに、この次はいつ集まるというように、議事の進捗に応じてきめるわけで、長い期間にわたってのスケジュールというのはございません。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、この次の予備交渉の日というのはもうすでにおきめになったのですか。それから交渉をする相手はきまっているわけでしょうか。
  55. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 各専門委員会の方は今ちょっとつまびらかにいたしませんが、杉・袁会談は、今週は先方の都合で休みまして、来週木曜日にまたやることになっております。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 その予備交渉で、韓国の政情がこんなに不安定になったのですけれども、そういうふうな問題は少しくらいお話に出ましたか。それとも、よその国のことだからというので全然知らぬ顔をしていらっしゃったのでしょうか。この点を確かめたいと思います。
  57. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 もちろんその問題も話題に上っております。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 今後宮局長から、話題に上ったということでございましたが、その内容について韓国はどういうふうな説明をされたか。おそらく大平大臣お耳に入っていると思いますけれども韓国の政情についてどういうふうにお聞きになっていらっしゃいますか。
  59. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 おおむね新聞に出ております通りでございますが、先方といたしましては、朴議長がたとい九月に民政移管のときに退陣するといたしましても、それまでは議長として続くので、その問は、この前発表になりました九原則の最後にございます日韓交渉の超党派的推進という項目を特に強調いたしまして、それによってやっていきたいということで、そして、やっていく決意を持っている、そういうふうに思っております。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 韓国は自分の方に都合のいいような説明しかしないでしょうから、それをそのまま受ける日本の方がどうかしているのであって、私どもはその問題について今ここでいろいろ申しません。あとの機会に申し上げます。  そこで、先ほど大卒外務大臣の答弁の中で、請求権以外の問題で当然先方が応諾すべきであるにもかかわらず応諾できないので非常に了解に苦しむということを、李ラインとか竹島の問題等のことだと思いますけれども、おっしゃったわけですね。このことは、私はさらにそういうことに拍車をかけたような困難性が出てくると思うのです。なぜかと申しますと、請求権の問題につきましては、大平外務大臣と金情報部長との間で非常に苦心をされて、金さんの言うような形で全面的に要望をいれて、五億ドルという経済供与というものができたわけです。これは日本の国にとっては非常に不満であるにもかかわらず、そういうものができてきた。その問には相当の苦心があったと思うのです。その苦心を金情報部長は知っているんですけれども、その人がやめてしまえば、そのあとは、もっと日本の言うなりというようなことは聞かない人になるということは当然だと思うのです。ですから、この問題は、大平外務大臣が幾ら日本の要求というものを言ってみても、応諾できないのはおかしいじゃないか、おかしいじゃないかと言ってみても、これは、金さんがやめてしまえば、その間の苦労というものはなかなかわからないのですから、むずかしくなるのではないかというふうに私は判断しますけれども、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 誠心誠意、誠実をもって事に当たりますれば、先方も了解する線が出てくると私は期待します。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 私は関連ですからもうしませんけれども、そういうふうな甘い考えですと、日本の国が考えていたことよりも全面的にずっと後退した形でもって、先方は経済的な協力がほしいために何らかの手を打ってくるのではないかということを私どもは非常に心配をいたします。どうかそういうことがないようにということを私は望むのですけれども、そういうことを考える意味においても、私はここでこういうような政情の不安定とともにこの会談は一応打ち切るべきだということを、一応意見として申し上げたいと思います。
  63. 野田武夫

  64. 帆足計

    帆足委員 一言だけですけれども朝鮮帰国問題が円滑に進みまして、両国赤十字の御努力、国際赤十字の御努力、また日本政府当局の御理解のほどもあって順調に進んでおりますことは御同慶の至りありますが、新潟の港に数日宿泊したしまして朝鮮に帰る隣邦の友に対しまして、これが最後のなごりを惜しむわずか数泊のことでございますから、できるだけのあたたかい心持をもってこの人たちを遇することが、私は礼節でもあり友情でもあろうと存じます。しかるに、最近、物価騰貴のために、過去の予算ではとうてい通常のよき待遇が望めない状況になっておりますから、現地からの統計等も提出いたしたから、至急御検討下さいまして、大蔵省に了解も得まして善処されることを、この際御要望いたしたいと思った次第でございます。資料は提出いたしましたから、よろしくお願いいたします。
  65. 福田芳助

    ○福田説明員 在日朝鮮人の北朝鮮帰還業務の援護につきましては、事柄の本質として人道上の問題としての業務でありますほかに、帰る方々が長年住みなれた日本における最後のわずかな期間をできるだけ気持よく過ごされるように、私どもは常々努力しておるところでありますが、ただいま先生御指摘の通り、当初のころに比べますと一般的な物価高もあります。また、当初のころは、大量の人が帰るということのゆえに、一人当たりのコストが割合として安くつくということもあったわけですが、現在としてはそれが逆の状態になっておるという問題があります。そこで、過去三年間ほどの間に業務になれましたために、食べものの原材料の仕入れ価格において安く仕入れるというような運営の面の改善の点もありますけれども、何としても予算上の単価をふやさなくてはいけませんので、明年度におきましては、従前に比しまして一人当たり食費単価を増額することといたしまして、できるだけ食事の面におきましても、御指摘のように、そしてまた、帰る方々が気持よく帰っていただくように折角努力中でございます。
  66. 帆足計

    帆足委員 援護局当局の方々及び赤十字センターの現地で働いておる皆さんの御苦労に対して、われわれもその労を大いにねぎらいたいと思います。ただいまのような趣旨で御善処を下さるならばけっこうであります。同時に、まだ五十数万の朝鮮の友が日本におりますから、景気の変動、春夏秋冬の状況に従ってあるいは多くあるいは少なく、国に帰る者も多数ありますから、その辺の現実もよく認識理解されまして、よき運営のほどお願いいたします。
  67. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会