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1963-03-07 第43回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月七日(木曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 安倍晋太郎君 理事 佐々木義武君    理事 中曽根康弘君 理事 松本 一郎君    理事 山口 好一君 理事 岡  良一君    理事 西村 関一君       赤澤 正道君    菅野和太郎君       坂田 英一君    前田 正男君       田中織之進君    村山 喜一君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 近藤 鶴代君  出席政府委員         科学技術政務次         官       内田 常雄君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   森崎 久壽君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         運 輸 技 官         (船舶局長)  藤野  淳君  委員外出席者         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         科学技術事務次         官       鈴江 康平君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本原子力船開発事業団法案内閣提出第八二  号)      ————◇—————
  2. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 これより会議を開きます。  日本原子力船開発事業団法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。内海清君。
  3. 内海清

    内海(清)委員 私は、きわめて簡単でありますけれども、今回の原子力船開発事業団法につきまして御質問申し上げたいと思うのであります。  この法案によって設立されます日本原子力船開発事業団、これはあくまでも平和の目的に限られることはもちろんであります。さらに、その運営にあたりましては、原子力基本法の精神によって行なわれることも当然であると思うのであります。今日、原子力船開発、すなわち原子力船舶動力として利用することにつきましては、すでに米国におきましてはサバンナ号、ソ連におきましてはレーニン号等世界におきましてこの二隻が船舶に対しまする原子力平和利用に成功いたしておるのであります。また西独におきましても、その他の諸国においても、原子力船開発というものは着々として進んでいることは御承知通りであります。  ところが、わが国は、御承知のように、造船技術におきましては世界のトップ・クラスにあり、さらに建造量におきましても、すでに昭和三十二年以来今日まで、常に世界におきます第一位を保ってきておるような国であります。さらに海運におきましても、すでに外航船舶が七百万トンくらいになろうという世界第二位の海運国というような状況にあるのであります。原子力船舶に対する平和利用ということは、わが国海運造船の立場から申しますならば、むしろおそきに失しておる、こういうふうにさえ考えるのであります。しかし、これにつきましては、わが国におきましても、原子力船研究協会等におきまして、三十二年以来今日まで研究されて参ったのでありますが、これがようやく実を結ぶ見通しがついたということであると思うのであります。  御承知のように、原子力は、石炭あるいは石油にかわるエネルギー源といたしまして将来が非常に期待されておる。特に石油資源の乏しいわが国におきましては、エネルギー資源多様化をはかるという意味合いもありまして、当初はいわば鳴りもの入りでその開発重要性が認められて、進歩が強調されていたのでありますが、最初予想いたしましたより石油がきわめて安く手に入るというふうなことも影響いたしまして、最近原子力はややスローダウンの形になっている、こういうふうにいわれているのであります。これにつきましては、最初のそういう非常な熱を持たれた開発が途中で足踏みをしたということがあるわけでありますが、これはどういう点が今日まで一番ネックになってきたか。この原子力船舶に対する平和利用ということは、わが国の将来にとりましてはきわめて重要な問題である、かように考えておるのでありますが、それらの点につきましての御所見を一応お伺いしたいと思います。
  4. 近藤鶴代

    近藤国務大臣 具体的な詳細なことにつきましては、政府委員の方から御説明させます。
  5. 島村武久

    島村政府委員 お尋ねの要点は、原子力の将来が非常に期待され、特に船舶への利用というようなことについて非常に大きな意義があると考えますけれども世界的に必ずしもスムーズに進展しなかった、その理由はどういうことにあるのかということであろうと思いますので、私からお答え申し上げます。  原子力利用、特に発電の面で代表せられる世界の趨勢というものが今日までの大きな世界の関心でございましたし、原子力委員会で当初長期計画等をつくりましたときあたりは、いわゆる原子力に対する世界期待というものが非常に大きく、割に早く原子力時代が到来するものという予想が立てられておったわけでございますけれども、その後、御指摘のように、必ずしもそのような進展ぶりを示さなかったことも事実であろうと思います。その原因についていろいろ考えてみますと、まず第一に、やはり内海委員から御指摘になりました通り、思いもかけなかった程度に石油が非常に安く、大量に手に入るようになったというような、原子力以外の原因が一つ考えられるわけであります。同時に、原子力の側におきましても理由がないわけではございません。と申しますのは、おそらくは近く解決されるであろうと考えられておりました技術上の問題点というものが、必ずしもそのようにすみやかに解決されなかった、やはり非常にむずかしい問題があったということでございます。従いまして、たとえばイギリスにおきましても、原子力発電計画を繰り延べるというような傾向もございましたし、また、ずっと以前におきまして大きく騒がれておりましたユーラトムにおきます計画というものも、一時は消えるというような形にもなったわけでございます。これはいわゆる原子力スローダウンという言葉で批評されておりました。  実は、そういうことがあったことも事実でありますと同時に、しかし、それにもめげずと申しますか、内海委員指摘のように、原子力に対する期待というものは依然として存在したわけでございますし、各国も、そのような傾向にもかかわりませず、相変らず研究開発というような面については特段の力を入れて参りました。それが私どもの見ますところでは、やはり早くもその結果が出つつあるように思うわけでございます。と申しますのは、最近に至りまして、原子力発電のコストにいたしましても、一時考えられておりましたものよりは案外早く火力より安くなる時期がくるというふうな考え方が出始めてきております。また、アメリカ等におきましても、非常に大規模発電所が次々に建設される計画が発表されておるわけでございます。原子力のサイドにおきましても、世界的に見まして再び大きな期待が持たれ、その時期が思ったより早くくるというような観測が行なわれるようになってきたわけでございます。  わが国におきましても、その点は同じであると申しますか、エネルギー事情からいたしましても、日本におきましてはことさらにそういう面が強く影響されるわけでございまして、原子力に対する期待も、世界の平均よりももっと日本の方が強いわけでございます。最近に至りまして、この委員会でもたびたび論議が行なわれておりますように、原子力委員会の考えました長期計画の線に沿って、一時危ぶまれておりました、民間電力会社がはたしてあのような計画通り日本原子力開発をやるかどうかというような点につきましても、最近ようやく各電力会社もそれぞれの計画を発表していくという機運になってきたわけでございます。  船の方について申し上げますと、御承知通り、また先ほども指摘になりましたけれども、現在完成いたしておりますのはソビエトとアメリカと二国にそれぞれ一隻ずつにすぎないわけでございますけれども、昨年になりましてドイツからの情報も入って参りましたし、また今年に入りましてからは、イギリスもまた原子力船建造計画を発表するというようなことになって参りました。従来やや足踏み状態にありましたものが、ようやくまた再び原子力に対する期待も強くなると同時に、またその実行的な面におきましても着々計画がされつつあるというのが現状であると考えておるわけでございます。  いろいろ御指摘になりましたので、すべてにお答えできたかどうかと思うわけでございますが、とりあえずその点を申し上げておきます。
  6. 内海清

    内海(清)委員 ただいまのお話で、石油資源の低廉かつ多量の獲得ができるということから、一時的な現象として原子力平和利用に対する熱意というものがスローダウンの形になった、このことも十分わかるのでありますが、しかし、わが国におきますそういう傾向は、ただ世界のそういう傾向に影響されてそうなったかどうか、そこには多少の問題があると私は思うのであります。  そこで、ちょっとお伺いいたしたいと思いますが、わが国におきます民間における原子力研究グループ、これはどの程度ございますか。
  7. 島村武久

    島村政府委員 わが国におきます原子力研究グループをどのような形で御説明申し上げたらいいかと思うのでございますけれども、御承知通り日本原子力研究開発に手を出しましたのは原子力基本法制定以来、これは一応公式な出発と考えられるのであります。その際の政策といたしましては、何分にも巨額資金も、また大きな設備も要ることでございますから、なるべくこれを集中的にやる。いわゆる学界からも、産業界からも、政府関係機関からも参加しやすいような形という意味において、日本原子力研究所をつくりまして、これが中核となってやっていくという方針がきめられ、今日のような原子力研究所の形態、一口に申しますと、いろいろな研究用原子炉をあそこに集めて、開放して、みんなの研究に充てるという方針がとられておることは御承知通りであります。  しかしながら、何も日本原子力研究所だけで日本原子力研究がなされておるということではございませんで、同じような政府関係機関として設立いたしました原子燃料公社におきましても、これはもともと事業をやるのが主体ではございますけれども事業の前の段階として、燃料関係研究も行なっておるわけでございます。  そのほか、私どもがいわゆる予算的に調整をいたしております範囲には、国立の既存の各研究機関、これがそれぞれの分野から、非常にすそ野の広い原子力というような問題について協力的な体制を形づくっておるわけでございます。  なお、いわゆる原子力に関する学問というような形では、日本にも原子力学会というようなものが形成されておりまして、これは単にいわゆる大学関係の学者の方々だけでなく、いろいろな機関にあって研究に従事しておる方々の共同の場として存在しておるわけでございます。  さらに、大学関係は、これは私どもの直接関与するところではございませんで、文部省の関係になってはおりますけれども、やはり国立あるいは私立大学におきましても原子力研究がそれぞれなされておることは御承知通りでございます。また、その研究用施設といたしましては、もちろん日本原子力研究所施設大学のために開放されております以外に、京都大学におきましては研究原子炉を持っておられますし、またそのほか、臨界実験装置等はそのほかの大学にもつくられておるわけでございます。  産業界におきましては、もちろん原子力関係予算の中に民間産業に対します助成費というものも組まれてはおりますけれども、各企業にありましては、単に国の助成費等関係研究を進めるというだけでございませんで、これまたそれぞれ熱心に研究分野でも仕事を進めておられるわけでございます。最近原子力産業会議が発表されたところによりますと、産業界の今日までの原子力関係に対する投資は四百億をこえるというような数字が発表になっておることは、これまた御存じの通りであろうと思います。産業界におきましても、このような投資をやって原子力に関する研究を進められるというにあたりましては、何分にも各企業単独ではやれない部門もたくさんございますので、それぞれ関係の筋をたどられまして、共通な機関を持つというような傾向も現われておりますし、中には産業界の中でのそれぞれのグループ原子炉を持たれる、あるいは臨界実験装置を持たれるというような状況になっているわけでございます。  これを要しまするに、日本原子力に対する段階と申しますものは、昭和三十一年に原子力基本法に基づきまして体制づくりが始められまして以来、もうすでに八年目を迎えております。国のこの方面に対します投資産業界投資、合計いたしました大体の規模というものがわかりますと同時に、またその開発の目標というようなことにつきましても、原子力委員会の出されました長期計画の線に沿ってそれぞれ進められておるわけでございます。もちろん日本よりはずっと早くから手を尽くし、今日まではるかに大きな投資を行なってきましたいわゆる先進の数カ国には及びもつかない段階ではございますものの、日本世界的に相当な地位にまで高まってきたということが言えるのじゃないかと考えておるわけでございます。
  8. 内海清

    内海(清)委員 わが国原子力開発研究につきましては、ただいまお話がありましたような原子力研究所あるいは燃料公社、さらには原子力学会、あるいは原子力産業会議というふうな、いろいろ多種多様の面において今日まで研究をされてきていることはもちろんでございます。  ところが、御承知のように、原子力開発ということは、これはかなりの期間と多くの資金が必要だということはもちろんであります。従って、先進国におきましても、常に多種多様な炉型について非常に大きな国家資金というものが投下されて、そうして開発を進めておる。そうしてそういう国家資金大幅投下によって開発が進められてきたものが、その研究投資というものが産業界を潤しておるというのが実情であると思うのであります。ところが、わが国におきまする状態を見ますと、なかなかそこまでいっていないのであります。もちろん世界各国におきましても、今日の段階では研究成果がにわかに保証しがたい、こういう面もありましょうし、なかなかこの開発は容易でないということはうかがえるのであります。特にわが国では、原子力実用化ということが、一応外国からの技術導入にきわめて多く依存しておる。そういう関係から、一般民間におきましては技術導入ということと開発という、この二重の負担になかなか耐えられない、こういう面があると思うのであります。そういう面から考えましたときに、原子力産業会議が、ただいまお話しのように、すでに四百億を投下して、各産業界グループにおきましても、かなりのこの種研究職員などを擁して今日までやってきたけれども、なかなかこれに耐え得ないような状態が生まれてきたのではないか、かように私は考える面があるのであります。しかし、いつまでも技術導入に依存しておったのでは、技術もやがて植民地化するようなこともあると思います。私はそういうことをおそれるのでありまして、当然大幅な国家資金を投入しまして、そうしてこの開発に当たらなければならぬ。  今日までわが国状態が、そういう状態で、はたして研究機関が最も有機的に連携がとれまして、特に民間研究機関との間においてはそういうことに対するそごがなかったかどうか、こういう点において私いささか疑問を持つのであります。そういう点については、いかかでございますか。
  9. 島村武久

    島村政府委員 御指摘のような事実があるということを私どもも考えておるわけでございます。御承知通り原子力研究と申しますものは、日本以外の国におきまして、日本がまだやっていないうちにやってきたやり方と申しますものは、各国それぞれの国の中で秘密のうちにやってきたということがあるわけであります。ことに、それぞれの国では何よりもやはり軍事的な観点からこれが研究開発されたということがございますので、先進国におきましては、むしろ国機関研究開発し、その成果民間に与えて、需要に沿って民間企業原子力利用に乗り出すという形が見られるわけであります。  日本の場合は、非常におくれて出発しました中で、日本原子力研究所というようなものを国家的な機関としてつくりましたけれども日本が始めるちょうどそのころになりまして、いわゆる原子力界世界的な雪解け時代が来まして、各国めいめい自分研究開発した成果というものを逐次世界に向かって出していく。つまり原子力に関します研究成果の交流ということが始まったわけでございます。従いまして、日本で独自にいろはのいの字から開発をしていくという必要がなかった。と言いますことは、結局におきましては産業界の場合には技術導入というような形が出てくるわけでございます。私どもといたしましては、一般的に申しまして、技術導入というものは必ずしも好ましいことでなくて、日本開発した研究成果の上に日本産業というものが立っていくような形が望ましいとはもちろん考えておりますけれども原子力のように非常におくれて出発した日本が早く世界的な水準に到達いたします場合には、必要ある場合には、むしろ原子力に関する技術導入ということも非常に望ましい場合もあり得ると思うのであります。つまり巨額の金をかけて自分開発しなくても、もっと手近に安く研究成果が得られるということでありますれば、その意味におきましては技術導入もあながち排斥することではないと考えております。  ただ、内海委員も御指摘のように、原子力に関しますいろいろな施設、たとえば原子力発電所というようなものが次々にできていくということを予想しました場合に、それらがみんな技術導入によるものであるということになりますと、これは好ましくないわけであります。できるだけ早く、日本自分開発した研究成果に基づく原子炉を実用的にも使うということが望ましいのはもちろんでありまして、大体におきまして日本原子力研究所というようなものをつくりました趣旨は、むしろその後者の方にあるわけでございます。従いまして、原子力委員会で策定されました長期計画に流れます考え方と申しますのも、あくまでもそこをねらって、国の重点をそちらの方に置いて、むしろそれまでの間、そういう成果が得られるまでの間、各企業におきますところの技術導入というような形で進めていくこともやむを得ないという考え方をとっておるわけでございます。何分にも産業界にとりましては、現段階におきまして、現実の需要というものが少ないものでございまして、いわば研究開発段階であるという意味におきまして、多くの利潤が望めないということも事実でございます。日本の場合特にそういう傾向が強いように感ぜられますけれども、この傾向自身に必ずしも日本に限ったこともございませんで、過去におきましても、アメリカ等におきまして、一時原子力に手を出した企業が手を引いていくというようなことも聞きました。また最近の情報でも、ある特定の部門に関しましては、アメリカにおきます企業等原子力に関する仕事をやめるというような傾向も出ておることも聞いております。日本の場合、需要が少ないということから国内で受注競争というようなことを現出しておることも事実でございまして、外国に比べて日本の場合特にそういう傾向が多いということも考えられるわけなのでございます。私どもといたしましては、いわば現在は苦難時代であって、やがてそれを乗り越えた場合には、その苦難成果が芽をふいてくるということが当然期待されるのではないかと考えておるわけでございます。
  10. 内海清

    内海(清)委員 ただいまのお話で、わが国の現段階においては、こういう状況もやむを得ないのではないかということであると思うのでございますが、先ほど来お話しのいろいろな研究機関と申しますか、グループというものが、ほんとうに有機的に連携がとれて、そうしてこの研究開発に臨むことが最も重要なことである。特に一応基礎的な問題がある程度解決いたしますならば、多く民間研究技術というものも生かして、原子力平和利用に今後非常な発展期待する、こういうことがきわめて大事なことだと思うのであります。民間産業におきましては、先ほど申しましたような技術導入開発という、この二重の負担になかなか耐え得られないというのが現状である、私はこういうふうに考えておるのであります。  そこで、今後におきましても、政府としましては、できるだけ国家資本を大幅に投下して、そうしてこれらの研究機関の有機的な連係のもとに日本原子力産業が進むような体制をとられることが最も望ましいことである。ことに諸外国におきましても、まだ原子炉決定版というふうなもの、この型式は確立していないと思うのであります。あるいはアジア方面におきまする原子力開発を見ましても、今後はどうしてもわが国原子力開発というものが海外に出ていかなければならぬ。それには今までのような技術導入というもの、あるいは外国研究されたものをこちらでチェックするというふうな行き方では今後の発展が望めないのではないか、かように私は考えるのであります。その点につきましての御所見を一つ伺いたい。
  11. 島村武久

    島村政府委員 御説は全くごもっともで、私どもも平素からそのように考えておるわけであります。先ほど技術導入との関連におきまして考え方を申し述べたのでございますけれども、それらと関連いたしまして、いろいろな機関がやっておりますところの有機的な関係というような意味も含めまして、一、二、内海委員のお考えに対します私どものとっております施策と申しますか、その例を申したいと思うのであります。  日本原子力研究所のみならず、そういったようないろいろな機関というものは、各種の科学技術面と比べますと、原子力の場合には最もよく調整されておるというふうに考えるわけでございます。と申しますのは、これは原子力を始めます場合に、国会の御意向を受けまして、原子力委員会というものがつくられ、原子力局というものがつくられ、これが日本におきますところの、少なくとも大学研究というものを除きました以外のものについては、全部調整できるという形のもとに出発したからでございまして、こういうことをやっておりますのはほかにはないのでございます。  原子力の場合には最もそれができやすい形にあるわけでございます。従いまして、原子力についてせっかくそういういい制度ができ、試みられておるわけでございますから、私どもはそれの成果を上げるように努めなければならないと考えておるわけでございます。  実例で申しますと、三十八年度の予算の中には、国産動力炉をつくる計画の初年度の経費が、四千万円ばかりでございますけれども、認められておるわけでございます。日本の今までやってきました研究の上に立ちまして、いわゆる外国に現在実用化されておりますところの原子炉そのものでなくて、それよりもう少し進んだ原子炉日本のアイデア、日本の手でつくろうという考え方でございます。原子力開発の初期、御承知通り国産号炉日本で三番目の炉でございます。これを原研でつくり上げたわけでございますが、研究炉でなくて、今度は動力炉日本の手でつくろうという考え方に立っておるわけでございます。この計画は、原子力研究所だけでございませんで、広く産業界等との協力を得まして、密接に、内海委員のおっしゃいました有機的な関係に立って、みんなの力でやろうという企てでございます。  さらに、日本原子力に関します技術水準というものはどの辺にあるかということ、これはなかなか言いにくいこともございますけれども、ことに日本自体の考え方で申しますと、どうもまだまだおくれているところが非常にたくさんあるという気が先に立つのでありますけれども、外から見ますと、必ずしも日本技術というものも、もうそんなに捨てたものでないという面があるように外からは見られる点もございます。一例で申しますと、最近には日本アメリカとの間に研究協力をやろうという話が進んでおるわけでございます。とりあえず酸化ウランあるいは炭化ウランの関係情報を交換し合おうということにいたしておりますが、この場合、日本側でこの情報交換の計画に参加するものは、原子力研究所燃料公社だけではございませんで、民間の各企業の参加も求めており、企業側も積極的にこれに参加する体制を示しておるわけでございます。いわばそういったようなことを通じまして、私どもといたしましては、内海委員がおっしゃいましたような、各分野におけるところの研究というものを有機的に結びつけていくということに努力をいたしておるつもりでございますし、またそのためには、内海委員指摘のように、国家資金というものも将来ますます投下されなければならぬ必要もある、このように考えておるわけでございます。
  12. 内海清

    内海(清)委員 ただいまのお話によりますると、この原子力開発につきましては、いろいろなわが国研究機関のうちで、大学を別にして、有機的な連携がとれておるというお話であります。この点につきましては、それぞれの見方で、いろいろ意見もあると思います。私ども見ておりますところでは、必ずしもそれで十分ではないというふうに感じておりますが、この原子力に対する従来の政策、今後どういう政策で臨んだらいいかということにつきましては、いずれまたの機会に御意見を伺いたいと思います。  いずれにいたしましても、今回の原子力船の第一船の開発ということによりまして、民間産業との関係もきわめて密接になって参ると思うのであります。この点は、実はわが国の今後の原子力平和利用という面におきまして大へん大きく前進したものである、かように考えておるのであります。特に今回のわが国原子力船の第一船を開発するということにつきましては、この建造技術開発、あるいは運航技術の習得、あるいは乗員の養成訓練、こういうような面から見まして、まことに画期的な意義を持っておると思うのでありまして、この原子力船の将来性等から考えまして、さらにわが国造船海運の立場から申しまして、これは早期関発を推進されなければならぬ。これは国家的の要請でもあると私は考えておるのであります。  そこで、今回のこの原子力船開発計画は、大体七年を要するということに相なっておるわけであります。あと二年間、いろいろこの乗員の訓練その他のことが行なわれまして、一応九年間でやるということであります。もちろん最初の原子力船でありますから、最も慎重を要することは申すまでもございません。しかし、すでにソ連に対しては九年のおくれであるし、アメリカに対しては七年のおくれというふうなことから考えますると、これはわが国におきましてもできるだけ早く開発していくことが、今後のわが国の立場としてきわめて重要なことである。特に先ほど申し上げましたようなことで、ドイツにおきましても、すでに一九六四年には開発されようというふうな状態であります。西独とわが国の国情も非常によく似ておることでございます。造船の立場から申しましても、ドイツにこの開発がおくれるということは将来問題を残すところではないか、かように考えておるのであります。  そこで、この建造期間をできるだけ短縮するということが必要である。一応七年という目安はございますが、これをできるだけ短縮するということが私は必要だと思うのであります、しかし、一面から申しますと、短縮するならば民間負担が増すから困難だ、こういうふうなこともあると思います。それであるならば、政府負担を増すことによってこれをできるだけ早く開発する。もし政府負担を増せないならば、計画初期において政府負担をふやすというふうなことをいたしますならば、これはもっと早期開発ができるのではいなかというふうに私は考えるのでありますが、その点、いかがでございますか。
  13. 島村武久

    島村政府委員 この計画自体があまりにも長期間であり過ぎる、それについて、もう少し国の負担分を増してでも、もっとこれを切り詰めてやるという考えはないか、こういう御質問だと思います。私どもといたしましては、この長期計画原子力船建造計画自体に、要する期間と申しますものと、その資金とを直接関係づけて考えていないわけでございます。言いかえますと、この第一船の計画は、設計を始めましてから原子炉が臨界に達しますまでに約五年、すべてが全部完成いたしますまでに七年の計画ということを立てておりますけれども、この計画自体は資金関係の考慮は入っていないわけなのです。純粋に技術的に詰めて参りまして、非常に安全度を見込みまして立てた計画でございます。長い間、原子力委員会の専門部会で、専門家の方にお集まり願って、練りに練ってでき上った計画でございますので、そのような計画のもとに予算要求もいたしておりますし、さらにこの委員会でも御説明を申し上げておるわけでございます。これは先日安倍委員からの御質問に対してもお答え申し上げたところでございますが、非常に安全度を見込んで計画されておりますので、この期間を技術的に切り詰めるという可能性は相当あるというふうに考えております。これは運輸省の側においても全く同じ意見を持っておられるわけでございます。  これを切り詰めます場合に、所要資金が繰り上がって必要になってくることは当然考えられることでございますが、その点につきましては、政府といたしましても、その年度々々に必要な経費をできるだけ支出していくという方針には変わりございません。これまた、かつてこの委員会で御説明申し上げたところでございますけれども、現在初年度の計画といたしましては、所要資金一億五千万円のうち三分の二の一億円を政府が出資するということになっておりまして、残りの五千万円が産業界負担ということになっておりますが、次年度以降におきましてはそのような負担割合でなく、大体の方針といたしましては、政府が四分の三、それから民間が残り四分の一を持つという見込みを立てておるわけでございます。しかし、この四分の一を、それが繰り上がりました場合に民間にそれだけのものが負担できるかどうかということは、これは現在の状態からいたしますと非常に危惧される点でもございますけれども、現段階におきましては、産業界もこの計画に非常に協力的な態度を示しておられますし、私どもはできるだけ、そのような計画がたといつらくても、スムーズに進展できるようにということにつきまして、各方面の御理解を願うために努力いたしておるわけでございます。
  14. 内海清

    内海(清)委員 ただいまの御答弁によりますと、一般的に短縮できるというものは、これは資金の面ではない、技術的に見てもっと慎重に考慮したものであるということであると思いますが、産業界におきましては、おそらくこの原子力船開発等が一日も早くくることを従来望んでおったと思いますから、確かに今回のこの開発につきましては協力的であることは申すまでもないと思うのであります。その産業界のこの開発に対する非常な意欲を一そう強める意味におきましても、今後もちろん技術的な問題はございましょうけれども、できるだけ早期開発ということが望ましい問題である、こういうふうに私は考えるのであります。この点を十分今後御勘案願いたいと存ずるのであります。  次に、私は少し御質問申し上げたいと思いますのは、この開発機構の問題であります。これは先般来、開発機構の問題につきましても同僚委員からいろいろ御質問がありまして、将来この開発に対します主務大臣が内閣総理大臣、運輸大臣であるということにつきましていろいろ問題があるということも承知いたしておるわけであります。これらにつきましては、先般来の各委員からの御質問の趣旨を十分体せられまして開発にあたっていただきたいと要望いたしますと同時に、その他の面につきまして若干の私の考えておりますことを御質問申し上げたいと思うのであります。  第一船の開発は、これは経済的に非常に大きな資金を要しますが、それにもかかわらず、その内容というものは研究投資的な性格が非常に強い。さらに、この開発に直接関連いたしまする海運造船界の現状から見ますと、これは民間ベースではとうてい進められないという実情がありますので、このような点から現状において国が中心となってこの計画を推進する、これはまことに当を得たことだと私は考えるのであります。また、この第一船の建造、運航から得られましたいろいろな経験が、海運界、造船界を初めといたしまする原子力産業界の技術水準を大きく向上せしめる、こういうことになることも、これは当然だと思うのであります。こういうことからいたしまして、先ほど来申しましたように、これで民間産業におきまする原子力平和利用開発ということにも大きく一段と飛躍があると考えるのであります。そこで、この原子力船が建造されまして、そしていろいろなこれから得ました経験というものを、これは官民を問わず広く公開されまして、十分に活用される配慮が必要だ、こういうふうに思うのであります。  そういう点から申しますると、第一船の開発のための機構といたしましては、国を中心といたしますことはもちろんでありますけれども、これに民間が積極的に協力できるような体制がなければならぬ、こう思うのであります。これは資金の面につきましても同様であります。さらに技術と経験の活用という点から見まして、技術者でありますとか、あるいは乗員でありますとか、あるいは研究員というものにつきましては、民間から出向、協力、あるいはさらに実験、試験等につきましても、民間から協力できる機構、体制ができなければならぬ、かように考えるのでありますが、この点はいかがですか。
  15. 島村武久

    島村政府委員 第一船をこのような形で開発していきたいという考え方は、ただいま内海委員がおっしゃいました通り理由から出発しておるわけでございます。ここで研究開発されました知識、経験等は、これは産業界におきましてみんなのためのものでありたいという要望があるばかりでなく、国としての考え方も全くその通りなのでございます。従いまして、おっしゃいますように、資金的に民間の協力も得るということ以外に、実はこの事業団におきますところの職員等、いわば設計に当たり、あるいは建造を見届けていくというような仕事に当たります者自体、全部民間からの出向ということを期待しておるわけであります。もちろん政府関係からも研究者、技術者が出向することは予想されますけれども、全部この事業団固有の人間ということでなくて、各方面に人を求めまして、各方面の協力のもとに事業を遂行して参りたいと考えておりますし、またその成果というものは、当然に関係の業界にも、また関係のその他の機関にも広く公開される形式のものであると考えるわけでございます。
  16. 内海清

    内海(清)委員 ただいまのお話によりまして大体理解するのでありますが、そこでさっそくこの事業団ができます場合の役員の問題もあると存じます。これらにつきましても、「理事長及び監事は、原子力委員会の意見をきいて、主務大臣が任命する。」ということに相なっておりまするが、私ども聞きますところによると、すでに理事長にしても、これは官側から出るとか、民間から出るというふうなことも耳にいたすのであります。このことは今後の事業団の運営の上にいろいろな面が生まれてくると私は考えるのであります。これらの点につきましても十分御勘案願いまして、今後の開発に支障のないようにこの点はお考え願いたい、かように考えるのであります。もちろんまだそういう点で政府としまして十分な決定はないと思いまするが、もしこれらの点につきまして何か今お考えの点がございましたら、差しつかえなければお話し願いたいと思います。
  17. 近藤鶴代

    近藤国務大臣 ただいまお尋ねの点につきましては、仰せの通り、きわめて重要な問題でございますので、慎重に考えなければならないものだと考えておりますが、目下のところ、それに対しましての具体的な話は全然出ておりませんので、今後において十分検討すべきものと考えております。
  18. 内海清

    内海(清)委員 もちろん政府の御答弁としてはそうであると思いますが、すでに多少私ども耳にいたしまするし、この問題は事業団としてきわめて重大な問題だと思いまするので、今後の開発に支障のないように、各方面の意見を十分徴されまして御決定になることを希望いたしたいと思うのであります。  それから、次に職員の問題でありますが、大体事業団の職員はどの程度の人数に相なりますか。
  19. 島村武久

    島村政府委員 この事業団の職員の規模でございますけれども、これは事業の進展に応じまして考えなければならぬことだとは思いますけれども予算要求いたしました当時から現在まで考えております規模といたしましては、大体五十名程度を考えております。うち三十名程度が技術者、残りが一般職員というふうになっております。もちろん初年度におきましては、設計関係が一番重要な仕事の中身になっておりますので、初年度におきましての技術者と申しますものは、もっぱらそちらの方面の者が大部分を占める予定になっております。
  20. 内海清

    内海(清)委員 大体職員は五十名程度ということでございますが、これは開発機構の業務を行なうのに最も大切なところでございます。これは先ほど申しましたように、技術者、船員、その他いろいろな事務職員にいたしましても、こういうふうなものは、第一船の建造、運航によりまするところの経験を活用する、こういう見地からできるだけ民間からの出向あるいは派遣が望ましい、かように考えるのであります。今日民間産業におきましても、それぞれ相当な職員を擁しまして、これの研究開発に当たっておるところが多いのであります。これまた一つ十分御勘案になりまして、最もわが国原子力産業の発達に寄与するような方向でこれをお選び願いたい。これによって一方に偏するというふうな片手落ちがありますると、今後大きくこの事業団の運営にも支障を来たすのではないか、かように考えるのであります。結局これは、出資会社からの出向、派遣というふうなことになると思うのでありまするが、それらの点につきましても、一つ十分に御勘案願いたい、かように考えるのであります。  それから次に、第一船の発注の問題であります。これはもちろんまだ最初は設計段階でございまして、いろいろそれによって考えられることと思うのでありますが、この発注の形態として問題になると思うのは、一括発注か、あるいは分割発注かというふうなことであると思うのであります。もちろんこれは今後の開発機構がいろいろな条件を研究してきめることだと思いますけれども、それらにつきましてお考えがあれば一つお伺いいたしたい。ことに第一船の趣旨からいたしまして、建造、実験、運航、こういうような問題に対しましては、広く関連産業が参加する形態が望ましいのでありますけれども、これらの点につきまして、一つお考えがあればお伺いいたしたいと思います。
  21. 島村武久

    島村政府委員 先ほど申し述べました通りに、第一船をつくりますのは、第二船以降の技術水準の向上に備えるという趣旨が一番大きいわけでございますので、発注方式をどういう形態で行なうかという点につきましては、やはりこの事業団が生まれました趣旨というものを十分生かすような道でなければいかぬ、そういうふうに考えております。ただ、分割発注がいいか、あるいは一括して発注した方がいいかというような具体的な問題につきましては、やはり何よりもこの事業団自体の自主的な判断に待つということが望ましいと考えますので、先ほど申し述べました趣旨を一番生かし得る道を考えてもらいたいというふうに考えております。
  22. 内海清

    内海(清)委員 もちろんこの問題は今決定される問題ではないと思いますが、この問題も、本日まで産業界において、広く各方面研究に携わっておる者があるわけでございます。十分一つお考え願いまして、御決定願いたい。特に場合によっては、私どもは共同研究等も考えられると思うので、いずれこれは次の段階でございますけれども、それらにつきましても、あらかじめ十分そのことをお考えいただきたいということを強く要望いたしておきたいと思うのであります。  いろいろまだございますが、今まですでに各委員からそれぞれ御質問があったようでありますので、大体以上で終わりたいと思いますが、最後に、この原子力船の安全の問題であります。これは一九六〇年に海上人命安全条約会議がロンドンで行なわれまして、改正になっておるわけです。もちろんこの会議では、原子力船に対する安全は大体勧告の形で相当シビアーなものが出ておるようでありますので、その内容につきまして、一つ簡単に御説明願いたいと思います。
  23. 藤野淳

    ○藤野政府委員 一九六〇年、海上人命安全条約が改正されまして、今国会においてこの御承認をいただくために、目下御審議中でございます。この一九六〇年の海上人命安全条約の大きな改正点の一つとして原子力船の章が設けられたことは、われわれとしては非常に心強い改正でございます。  その原子力船の規定は、軍艦以外のすべての原子力船に適用されるものでございまして、原子力船の建造、運航、あるいは港内にあります場合、すべての場合に安全な運航ができますように、いろいろな点で原則的な規定を設けてあるわけでございます。たとえば原子炉装置の船内での使用に対する適合性でありますとか、放射線に対する安全、それから原子力船の安全説明書、原子力船の操作手引書、それから検査、証書、それから原子力船に対する特別な監督、海難の場合の措置、といったような条項がございます。  第一船の建造にあたりまして、この安全条約の原子力船に関する規定を国内法に取り入れる必要があるかないかという問題がございますが、先生御承知通り船舶安全法の一部改正を御審議中でございまして、実はこの中に原子力船に関する規定を盛り込むことも当初は考えたのでございますが、何分原子力船が実際に運航いたしますためには、関連の法律がたくさんございまして、たとえば船長の職務権限につきましては船員法、それから原子力船に乗り組む船員の資格につきましては船員法あるいは港則法、海上保安庁設置法、あるいは原子炉規制法自体も一部改正を要するものとわれわれは考えておる次第でございます。しかしながら、第一船が予定の通り建造されるといたしますと、運転が開始されますのが昭和四十三年でございますので、少なくとも四十二年までに関係法令とともに船舶安全法を改正して、第一船の安全な運航を期したい、かように考えます。  なお、第一船の建造までに対する規制は、ただいまの安全法並びに原子炉規制法の運用によりまして何ら支障なく行なわれる、かように考えておる次第でございます。
  24. 内海清

    内海(清)委員 ただいまの御説明によりますと、一応今回の船舶安全法の改正にあたって原子力船の安全についても考えたいというふうに考えておったけれども、各般にわたることが多いのでこれができなかった。いずれにしても四十三年からこれが運航されるので、四十二年までにつくればいいということでありますが、今日少なくとも原子力船開発を行なおうという際におきまして、この原子力船の安全に対する国内的なものが、いまだ何ら日の目を見ないということに対しましては、私ども遺憾に思うのであります。この原子力の安全ということにつきましては、常に当委員会におきましても、最も中心的な課題でございますが、国民もこの面につきましては常に鋭敏な感覚を持っておると思うのであります。これがわが国の国内法としての制定を見なかったということは、大へんに遺憾に存ずるのでありますが、この点は一日も早くこの原子力船に対する安全度の問題、これを一つ船舶安全法の面で取り上げていただきたい、こういうふうに強く要望いたしまして、私の質問を一応終わりたいと思います。
  25. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 村山喜一君。
  26. 村山喜一

    ○村山委員 私は、大臣に原子炉の問題についてお尋ねをいたしたいわけでございます。資料として所要資金の年度別の内容表をいただいたわけでございますが、この中で見ますと、昭和三十八年度において八千万円の建造費、これは原子炉を中心にする船体機関についての所要資金が出ているわけでございます。それと、先ほど原子力局長の方から説明をいただきました四千万円というものは、長官が説明されましたように、現在日本原子力研究所において国産動力試験炉の問題を取り扱っておる、こういうことでございましたので、多分その金額であろうと思うのであります。そうなって参りますと、国産の原子炉をつくっていくという考え方に立って参りますならば、この事業団の中で計画をされております原子炉開発関係と、それから現在まで助成をし、いろいろ研究の委託をいたしておりました民間のそういうような研究グループの実績がどのように反映をされて、この原子力船開発計画というものの中に盛り上げられているのかという点が、一つの問題になってくると思うのであります。従いまして、今度国が出資をいたします一億円、並びに民間から投資をいたします五千万円、総事業費一億五千万円で出発をいたしますこの事業団が行ないます原子炉開発という問題と、今日まで科学技術庁が中心になりましてやって参りました日本原子力研究所を中心とする原子炉開発計画というものとの間には、どういうような関係があるのかという点が第一点でございます。  第二の問題は、京都大学にこのたび原子炉研究所が新設をされることになりました。これは昭和三十六年度からたしか出発をしていると思います。が、ことしの予算まで入れますと十億をこす予算であると思うのです。そういうような大学機関におけるところの研究所が付設をされて、原子炉開発に取り組んでいることは御承知通りであります。大学で取り組んでおります原子炉開発というような問題を、やはり科学技術庁としては、総合的にそういうような成果期待しながら、これを原子力船に取り入れていくという考え方がなければならないと思うのです。  ところが、先ほど説明を聞いておりますと、局長の方からは、大学機関は別個の問題だというような説明がございました。従いまして、そういう大学原子力研究の問題と関連いたしまして、科学技術庁は、文部省に対してどういうような協力要請をされ、どのような立場で今日まで提携をしておいでなのか。この問題をやはりこの際明らかにしていただかなければ、国民の血税の中から大学研究機関用に十億をこすお金が出されておる。また、科学技術庁のこういう研究開発のために相当の多額な金が出されておる。また片方においては、事業団の事業計画の中にも出て参るわけであります。そういうような問題を有機的に取り上げていくというのは、科学技術庁の、この原子力船の主管大臣であります大臣がお考えにならなければならない点ではなかろうかと思いますので、その点についてのお考えを承りたいのであります。
  27. 近藤鶴代

    近藤国務大臣 ただいまお話の出ました原子力開発についての、大学との研究の調整と申しましょうか、の御意見でございますが、元来私どもの立場から考えてみますと、必ずしも原子力開発だけでなくして、大学研究所と科学技術庁というものは密接に手をつないで参らなければならない、きわめて有機的な関係が強くなければならないということは、十分認識をいたしておりますが、いろいろの事情、法律的な立場もございまして、今日までそれができておらない。そのことが、結局原子力開発の上にも同じ轍を踏んでおるということになりますと、労力的にも、あるいは資金的にも、その他技術的にも、むだをしておることがずいぶん多いということも考えられるわけであります。さしあたりといたしまして、今回の原子力船開発につきましての、大学側の協力というようなことにつきまして、当庁として直接に手を結んでいくというようなことにはなっておらないと思うのでございますけれども、将来の問題といたしまして、この点については十分、しかも、なるべく早い機会に考慮を払わなければならないことではないかと考えております。その他具体的のことにつきましては、政府委員の力からお答えをさせます。
  28. 島村武久

    島村政府委員 お尋ねの二点につきましてお答え申し上げます。  現在まで原子力船に対する研究を行なって参りましたその詳細につきましては、お手元に差し上げました資料によって十分御承知と思いますけれども、一般的に申しますと、直接原子力船関係のあります研究は、主として運輸省の運輸技術研究所、それから科学技術庁から民間に対して支出いたしました助成費が中心になって進められて参ったわけでございまして、その合計は、現在までに四億数千万円に上っております。個々のテーマ、どの機関というようなことにつきましては、これは別途資料をもって差し上げてあるわけでございます。  日本原子力研究所との関係でございますけれども日本原子力研究所研究は、原子力船の場合におきましてはより基礎的な面において非常に関係が深いわけでございます。いわば原子力研究所におきましての基礎的な研究の上に立って、原子力船というものについての具体的な研究が考えられるというのが大きな筋でございます。もっとも、今日までこの委員会等におきまして御承認を得て進めて参っております原子力研究所計画の中には、現在建設中のJRR4、つまりスイミング・プール型の研究炉、これは主として原子力船の遮蔽に関する研究に使いたいということで御承認を願っておるような関係はございます。もちろん直接の関係ではございませんでしたけれども、そのほかに、この春動き始めますJPDR、動力試験炉ももちろん船と関係がないわけではございません。原子力船の設計をいたします場合、あるいはいたしました後におきまして、これらの研究炉を使いまして設計の確認等を行なうということは、この第一船の建造をいたします場合にも、その計画の中に取り入れられておるわけでございまして、その点におきましては直接的にもこの第一船計画原子力研究所とのつながりがあるわけでございます。もちろん運輸技術研究所にいたしましても、原子力研究所にいたしましても、単に第一船だけでなくて、将来にわたりまして原子力船関係研究開発にも役立てていたきいというふうに考えておる次第でございます。  なお、先ほどお尋ねのございました資金関係の問題でございますけれども、この事業団の所要資金として三十八年度に考えておりますのは一億五千万円でございます。その出資割合は先ほど申し上げましたけれども、その使途は、約半額以上、八千万円ばかりが設計費でございます。あとの七千万円が人件費等を含めました運営費に当たるわけでございます。四千万円と申しましたのは、それと全然別個の問題でございまして、日本原子力研究所に新しく計上いたしました予算のことで、これは国産の発電用の原子炉日本の手でつくっていくための設計準備費として計上してある分のことでございます。従いまして、この原子力第一船の建造計画とは関係はございません。  次に、お尋ねの第二の点でございますけれども大学との関係の問題につきましては、わが国原子力開発をどのような形で、どのようにして進めていくかということが、七、八年前にこれまたずいぶん議論された問題でございます。原子力委員会設置法、あるいはその当時の総理府設置法の一部改正法律等が国会にかかりました際に、国会の附帯決議がございまして、大学研究というものとの関係から、原子力委員会予算の見積もり調整等の場合にも、大学関係のものはこれを除くようにという御趣旨が明らかにされております。従いまして、私どもの方から大学側の研究ということに対しましてとかくの御注文等をつけるというようなことはなくて、今日に及んでおります。しかしながら、大臣からも御答弁がございました通り、実質の問題といたしまして、大学関係研究というようなものと密接に連携を保っていく必要のあることは申すまでもないことでございまして、今日までいろいろと研究を行ないましたり、あるいは計画等を練ります場合にも、またその他各般の面で大学関係方々の御協力もいただいておるわけでございます。いわば法制上、予算上、原子力委員会あるいは原子力局というものは、大学の側に対してとかくの、悪い言葉で申しますと調整と申しますか、そういう機能は営むようにはなっておりませんけれども、実際の面におきましては、緊密な連絡をとって進めても参りましたし、また進めて参りたい、さように考えておるわけでございます。
  29. 村山喜一

    ○村山委員 この三十八年度の事業団の資金の内訳は、約八千万円というものは設計に要する費用だということを承りました。そうなると、どういうような炉型をきめるかということがはっきりしていないのに設計をするということも、私は非常に問題があろうかと思うのです。その炉型の決定という問題は、どういうふうになっているのか。今日まで論議されたところでは、炉型はどういうような型式のものがいいという結論が出ていない。そうするならば、それぞれの炉型に適応した設計書をつくって、それに基づいて研究を進めていくということになるのではなかろうかと思うのです。そうなって参りますと、国産の原子炉開発という問題が先行をしなければ、それを船舶につけるということにならない。そうするならば、この八千万円の資金を必要とされておるものが、はたして昭和三十八年度において間に合うだろうかという問題に関係が出てくると思うのですが、その点についてどういうようにお考えになっておるかを承りたいのが第一点でございます。  それから、もう一つは、これは大臣にお尋ねをいたしたいのでございます。この事業法案の内容をずっと見て参りますと、科学技術庁長官として総理大臣から委任をされます主務大臣としての権限は非常に少ないようでございます。第四条三項の資本金とか、あるいは業務の第二十三条の第一項第六号とか第二項とか、あるいはそのほかの財政的な手当をするときとか、こういうようなものが委任をされて、そうして肝心な、いわゆる業務運営の基準の第二十四条、その基本計画については主務大臣は科学技術庁長官ではない、これは運輸大臣だ。こういうふうに法文の上ではなっているようであります。この基本計画について事業団の業務内容が第二十三条の業務の範囲内で行なわれていくということになって参りますると、日本原子力船開発事業団というものは運輸大臣のもとにおいてほとんどの仕事が行なわれ、それを科学技術庁が助けるという仕組みのような法案になっているようでございます。この基本計画をつくる場合において、科学技術庁長官は将来非常に大きな問題が出てくるだろうと思うのです。というのは、炉型の選定については事業団がこれを選定するのだということを原子力局長はお話をなさっておいでになる。そうなって参りますと、そういうような安全性といいますか、原子力基本法に基づいて当然科学技術庁長官がいろいろとサゼスチョンを与えられたりしなければならないかと思うのですが、その基本計画をつくる場合において、その原子力委員会の決定を尊重してつくらなければならないということは述べてありますけれども、大臣はこの運輸省が主管をするような業務内容についてどのような立場で折衝をし、自分の主張というものを述べようというふうにお考えになっていらっしゃるのか、その点を承りたいのでございます。
  30. 島村武久

    島村政府委員 まず第一の点でございますけれども、この事業団の一億五千万円の三十八年度の所要資金のうち、八千万円が設計費であるということに対しまして、炉型もきまらずに設計費というのはおかしいじゃないか、炉型についてはどのように考えておるのかというお尋ねについて申しますと、従来原子力委員会でまとめておりますところの炉型に対する考え方は、軽水炉ということを言っておるわけでございます。ちょっと混線いたしておりますが、日本原子力研究所国産動力炉日本人の手でつくり上げていこうということと、この第一船に搭載いたします炉が日本でつくられるということから、やや混同される面もあると思うのでございますけれども原子力研究所が中心になりまして、今後国産の動力炉開発していこうという考え方は、これまたその炉の完成自体を八年ないし十年先に見ておる、いわば全然別個の大計画でございます。御指摘のように、その炉の完成を待って第一船に載っけるというような考え方では全然ないわけでございます。一応日本でつくる炉をこの第一船に搭載したいという考え方、つまりこの第一船に搭載しますものも国産の原子炉でありたいということは、もう一致した考え方でございますけれども、それは先ほども述べました日本独自の考え方で今後研究開発していくような、ユニークな炉を載っけるという意味ではございませんで、世界的にも現在いわば実用化段階にありますところの炉型を選びまして、それを日本でつくるという考え方でございます。従いまして、私どもがこの計画の中に初年度に設計費を計上いたしましたのは、そういう意味におきまして実施の可能な問題であるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、同じ軽水型の炉の中で、またさらにどういうタイプを選ぶかということにつきましては、私ども考え方といたしましては、できるだけ事業団の自主性、特にその責任性というものから考えまして、事業団の責任において選んでもらった方がいいという考え方をとっておりますことは、先日齋藤委員からのお尋ねの際に申し述べたことでございますけれども、さらに齋藤委員お話では、各方面で炉型を選定すること自体、軽水炉の中でまたどの型を選ぶかということ自体も、委員会がこの基本計画の中できめた方がいいのじゃないかと思うから、その点を考えるようにというお話もございます。従いまして、現在までの考え方では、むしろ事業団の責任において選んでもらった方がいいんじゃないかという考え方をとっておりましたけれども、この基本計画をつくります段階におきましては、齋藤委員のお説も十分に考慮に入れまして、あらためて考えてみることにしたい、こういうように申し上げたわけでございます。  なお、お尋ねの中に、この基本計画というものは運輸大臣がつくるのであって、その場合に科学技術庁の立場というものは運輸大臣を助けるというくらいのことにしかならないのじゃないかというようなお尋ねが、内閣総理大臣の権限委任規定との関連においてございました。実はこの二十四条でございましたか、基本計画を定める、つまり「主務大臣が定める原子力船開発に関する基本計画に基づいて行なわなければならない。」とあります場合の主務大臣と申しますのは、運輸大臣だけではないのでございまして、内閣総理大臣と運輸大臣両方を意味するわけでございます。従いまして、この基本計画自体が運輸大臣との間に十分な打ち合わせが行なわれました上で定められるわけでございますし、また実質的には、その二項によりまして原子力委員会の決定というものを尊重してつくらねばならぬというような関係にもなっておりますから、私どもといたしましては、これは運輸大臣の方により多くのウエートがかかった規定というふうには考えておりません。その間に科学技術庁としての意見も十分に反映させ得る機会がある、さように考えておるわけでございます。
  31. 村山喜一

    ○村山委員 最後の問題ですが、主務大臣は第三十八条によって「内閣総理大臣及び運輸大臣とする。」というふうに規定がしてあるのです。そして、その次の第三十九条によって、「内閣総理大臣は、次の各号に掲げる権限を科学技術庁長官に委任することができる。」ということですから、やはり委任をされない事項についての権限というのは、これは科学技術庁長官にはないと思うのですが、その点はどうですか。
  32. 島村武久

    島村政府委員 おっしゃる通りでございます。ただ、その場合の内閣総理大臣と申しますものは、これはもう御承知通り、総理府の長としての内閣総理大臣の意味であることは当然でございまして、その意味におきまして、この法律に規定せられました内閣総理大臣と申しますものは、科学技術庁以外の仕事を見るところの意味においての内閣総理大臣ではなくて、科学技術庁というものを持つ総理府としての内閣総理大臣であることは、もう言うまでもないことでございます。それを特にあらためて科学技術庁長官に委任いたしましたのは、これは先ほど御指摘もございましたように、もっぱら事務の簡素化というような意味におきまして、科学技術庁長官に対する委任が行なわれておるにすぎないのでございます。言いかえますと、内閣総理大臣であるということは、実質的には科学技術庁長官であるというふうにお考え下さっても差しつかえのない問題でございますので、私どもといたしましては、内閣総理大臣と規定せられておるがゆえに科学技術庁の意見が反映しないというふうなことは全然ないと考えておるわけでございます。
  33. 村山喜一

    ○村山委員 その問題は法律の形式論の問題になってくると思いますので、あえて申し上げる必要もないかもしれませんが、しかし、法文上は、これは科学技術庁長官がこれについて責任を持たなければならないということではない。これは委任されたものについては権限がある。そういう形になっていると思う。だから、その第二項において、辛うじて、原子力委員会のその決定を尊重しなければならない、こういうようなところから、原子力委員会の所管大臣である科学技術庁長官は、それによって行政上のチェックができるというふうに私は思うのですが、そうではありませんか。
  34. 島村武久

    島村政府委員 実質的に科学技術庁長官が、この原子力第一船の場合にも運輸大臣と並んで大きな責任と権限を持つということについては、これは変わりないところでございますけれども、法律の立て方といたしましては、あるいはちょっと逆な面もあるわけでございます。と申しますのは、原子力委員会というのは、たまたま委員長は法律上、科学技術庁長官が当たることになってはおりますものの、原子力委員会自体は科学技術庁の付属機関ではございませんで、内閣総理大臣のもとについておる機関でございます。と同時に、先ほど申しました通りに、ここにあります内閣総理大臣と申しますのは、総理府の長としての内閣総理大臣、しかも、それは同じ総理府にもいろいろな機関がございますけれども、実質的に申しますと、この場合には科学技術関係の最高責任者としての総理府を所管する大臣という意味においての内閣総理大臣でございますから、これは全く内閣総理大臣であるということは、科学技術庁という考え方があって出てきたものにすぎないわけでございます。また、科学技術庁長官は、かりに委任規定がございませんでも、総理府内部にありまして、内閣総理大臣に対して直接的に責任を持つ地位にあるわけでございまして、ことさらに内閣総理大臣と書きます以外に委任規定を置きましたのは、もっぱら事務簡素化のために置かれたものというふうに御理解願いたいと思います。
  35. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 岡良一君。
  36. 岡良一

    ○岡委員 昨日、原子力潜水鑑の安全性について、特に原子炉そのものの安全性について若干お尋ねをいたしました。これというのもわれわれがいよいよ原子力船をつくるということになれば、当然その安全性が一番重要な問題でございますので、私どもも特にこの問題に大きな関心を持っておるからでございます。原子力潜水艦の原子炉については、私どもの調査した若干のアメリカ側の記録によると、やはり十分に安全だとはいえないが、軍事的必要などからしてやむを得ないというふうな方針がとられているように察せられる。さて、日本側では、原子力委員会が安全制について特に関心を示す責任を持つ立場におられまするが、アメリカ側としては、その安全基準に関するデータは提供しない。そういうことであれば、一体どういう方法で安全性を皆さんは保証されようとするのか、これが中心の問題でございます。この点については、これから検討するという、まことにわれわれとしては不本意な御答弁でございました。いずれその安全評価についての具体的な方法がわかりましたら、私ども委員会でさらに御報告を願って、私どもの所信を申し述べたいと思います。  そこで、次には、原子力潜水艦の廃棄物に対する安全対策の問題、その次には原子力潜水艦の運航の安全保持に関する問題、その次には停泊中における原子力潜水艦の安全対策の問題が残されておる問題でございます。しかし、時間もないことでございますから、私はごく簡略に、ポイントだけについて原子力委員会としての御方針を承りたいと思います。  そこで、まず西村原子力委員にお尋ねしたいのでございます。国際原子力機関において原子力船の廃棄物の海洋投棄に関するシンポジウムがあり、また条約もつくられようとしておるか、あるいはつくられたというふうなことも聞いておるのでございます。国際原子力機関としては、原子力船の廃棄物の海洋投棄に対してどういう方針をとっておるか、この際お聞きしておきたい。
  37. 西村熊雄

    西村説明員 ウィーンの国際原子力機関で取り上げておる問題は、一般海洋放棄の国際的規制の問題でございます。そのために今日まで数回にわたりまして科学者パネルあるいは法律家パネルを開いてきております。現在までの事業の結果を見ますと、当初は、一般海洋投棄の規制のために国際条約をつくろうという考えで発足いたしましたけれども、いわゆる参加専門家の間の意見が容易に結論に達しません。と申しますのは、現段階では、まだ海洋投棄の歴史が浅くて、国際的規制をするにしても、いかなる規制をすればいいかという結論を得るために十分な科学的データが出ていないということと、もう一つは、参加専門家の一部には、海洋投棄なるものは絶対にこれを認めてはいけないという立場をとる者があったことなどが影響しまして、現段階での結論は、国際条約案に持っていくのはまだ尚早である。せいぜい考えられることは、国際原子力機関の採択する勧告という形で、要するにごくゆるやかな規制措置を各国がとるようにという趣旨のものになりそうな傾向にございます。それも規制と申しましても、むしろ考え方は、ある濃度をこえるものを海中に投棄する場合に、そのものについてのデータを国際的に収集して定期的に公表する。それがために異議を申し立てるような国があった場合には協議をする、せいぜいそれくらいのことが現在のところは考えられている規則案のようなものでございます。しかも、まだいかなる程度の濃度か、その濃度の観念につきましても科学者の間にまだ全然意見の一致を見ておりませんので、その点はまだブランクになっておるという程度のところであります。現状はその通りでございます。  この問題が取り上げられます過程におきまして、パネルにおきましては、この規則——当初は条約案と考えられていたということは申し上げましたが、こういうものをつくる場合に、これの対象に軍艦が海中に投棄することをも含めるべきかどうかという問題が取り上げられましたが、現在の法律家パネルの結論は、軍艦に適用することは困難であるということで、排除するという結論になっていると私は了解しております。  会議期間を通じまして、日本国からもパネル・メンバーとして科学者も御出席になり、また法律家も御出席になっております。その間、私が承知しておる範囲内におきましては、日本から御出席になった専門家の方は、科学者の場合にも、また法律家の場合にも、海洋投棄についてできるだけシビアーに国際規制をはかるという立場をとって奮闘して参られたのでございますが、結論は今申し上げたような方向に動いておるということだけを申し上げます。
  38. 岡良一

    ○岡委員 昨日檜山教授のお話によると、イオン交換樹脂には相当濃厚な放射能汚染がある、しかも、沿岸十二海里以上のところにおいては自由に投棄できるということでございます。こういう海軍艦船局の訓令がある。それをそのままに、日本に寄港せんとする原子力潜水艦はやっておると思う。そうなりますると、日本の沿岸は、特に日本人のようにお魚を常食としておる国民にとってみれば、ゆるがせにできない問題であろうと思う。  そういう点からいたしまして、国際原子力機関の討議のときに議題となったように、日本に寄港する原子力船は、軍艦であろうと一般船舶であろうと、いかなるものを投棄したか、それはどの程度に放射能汚染をされておったかという記録をわが方がしっかりつかまなくては、この海洋投棄に対する安全対策というものは出てこないわけです。原子力委員会としては、一体どういう方針で海洋投棄に対する安全対策を立てようとしておるのか、具体的にどういう方法を持っておられるか。この点をお聞きしたい。
  39. 西村熊雄

    西村説明員 委員会として正面からその問題を取り上げまして、委員会としてはかくかくの方針でいくべきものであるというようなものを出す意味において取り上げたことはございませんけれども、先刻御説明申し上げましたように、海洋投棄の国際的規制というものが国際原子力機関において取り上げられている問題でございますから、準備段階でございますが、その準備段階会議に出席されますわが方の専門家の方は個人として参加しておられますけれども原子力委員会の廃棄物処理専門部会でございますか、そのメンバーでもございますので、そのたびごとに、わが方から出る方がとらるべき態度については委員会として御意見を申し上げております。その方針は、先刻申し上げましたように、日本としては何とかこの問題について国際的な規制が行なわれることを希望する、行なわれねばならない。少なくとも軍艦につきましても、一般商船の場合のような規制は加え得なくても、年間幾ばくくらいのものを、どういう海面において出したかくらいの情報、データというものは国際的に公表されてしかるべきであるという立場をとってきておる次第でございます。委員会考え方としては、この問題については国際的規制というものが条約となることを期待する、しかし、現在は勧告の程度に落ちつく可能性が多いということは、申し上げた通りでございます。同時に、軍艦についても、国際的規則のあるものは適用されるようにしてもらいたい、こういう考え方できておる次第でございます。
  40. 岡良一

    ○岡委員 そんな手ぬるい問題じゃないのじゃないんですか、原子力潜水艦は今にも日本に寄港しようという状態にあるわけです。しかも、あなたは国際条約、国際条約と言われるが、私はおそらく世界じゅうで日本人ほど魚を食べる国民はないと思う。それが沿岸十二海里、おそらく日本の周辺の海は全部漁場といってもいいと思うのです。十二海里以上のところは濃厚に放射能によって汚染されたイオン交換樹脂などが自由に投棄されるのを、そのまま放任しておいて、そして国民に対する安全性を原子力委員会が保てるとはとうてい言い得ないと思うのです。しかも、アメリカのトーキング・ペーパーによれば、ノーテラス号の寄港は最初の間は月に一隻ないし二隻であるかもしれない、しかし、その回数は、今後在来の潜水艦はノーチラス型潜水艦に切りかえられていくことになるのであるから、寄港の隻数と日数は漸次増加していくものと心得てほしい、ということを言っておる。そういうことになれば、単に国際条約、国際条約ということではなく、日本原子力委員会が安全性について責任を持つというならば、この問題はまず何よりも先に国民を放射能から守るという原子力委員会の当然の任務に基づいて、具体的な対策をわれわれに示してもらわなければいかぬ。それでは先般いただいた統一見解というものは一片の空文にすぎない。原子力委員長としてどうお考えになりますか。
  41. 近藤鶴代

    近藤国務大臣 放射性廃棄物の危険ということに対しまして国民を守らなければならないということは、岡委員の御指摘通り、私といたしましても十分な責任を感ずるわけでございます。しかし、何分にもこの問題は比較的新しい問題でございますし、日本原子力開発に取り組みましてからの年数から申しましても、あまり年数もたっておらないというようなところから、いろいろ具体的な問題についての完璧を期するということはまだ十分でないかと思いますけれども、仰せの通り原子力潜水艦もやがて寄港するかもしれないという段階に参っておりますことも、私どもも十分承知しておりますので、何とかいたさなければならない、どのような具体的な方法があるかということについては、早急に取り組まなければならないということは感じておるわけでございます。
  42. 岡良一

    ○岡委員 とにかくこの世の中はレディ・ファーストの世の中だから、あまり委員長と問答しようと思わぬが、しかし「安全性について保証を取り付け、」こう統一見解ははっきりわれわれに示しておられます。であるから、この廃棄物の処理については、今申し上げたように非常に大きな影響があるということは、昨日檜山教授も申しておられます。でありますから、原子力委員会としては、このような無責任な海洋投棄に対して、国民を防衛する立場からどういう具体策を持っておるかということを、もっと具体的に次の委員会で私は示してもらいたい。あなた方の方針を向こうが納得するかどうかは別として、あなた方の責任だと私は思うから、強く要望しておきます。  その次は、原子力潜水艦の安全運転の問題。この向こうのトーキング・ペーパーによると、原子力潜水艦は横須賀、佐世保に寄港する予定だ、もし希望するのであれば合衆国は最初に佐世保に寄港することに同意する、こう言っておる。これはどちらに来てもらっても大へんなことだ。特に横須賀ということになれば、私から申し上げるまでもなく、運転の安全性、航行の安全性というものは重大問題だと思う。この点については何も原子炉の問題ではないから、安全評価基準を出せとか出さないとかいう問題ではないが、あなた方としては、向こう側に対してその航海の安全性、運転の安全性を確保するためにどういう質問書を出されておるのか。この際明らかにしてもらいたいと思います。
  43. 島村武久

    島村政府委員 昨日も申し上げました通り、質問書及び回答の具体的内容につきましては、私どもといたしましては本日この場で申し上げる自由がないわけでございます。その点につきましても、横須賀と佐世保に入りたいと言っておるがというような御質問でございますけれども、全く同じことでございまして、そうでございますともございませんとも申し上げかねる段階でございます。しかしながら、原子力委員会といたしましては、先日統一見解というような形で意見を発表しております通り、先ほどの放射性物質の廃棄問題にいたしましても、これについて制限を加えることの必要性を認めておりますし、また航行というようなことにつきましても、何らかの形で、できるだけ安全をはかる意味での制限を加える必要があるというふうに考えまして、それらの点について今具体的なことを検討中であるというふうに申し上げたわけでございます。
  44. 岡良一

    ○岡委員 向こう側から、原子炉の安全基準などについて詳しく解析したデータがくれば、それは日もかかることだと思う。しかし、原子力潜水艦が、横須賀でなくても、佐世保でもいい、日本の港に入るときに、何しろこれは大へんな出力の原子力炉が海底をのこのこやってくるのである。しかも、陸上の固定された炉と違って、いつどういう海難事故が起こるかもしれないのであるから、この航行の安全性というものに対しても、当然原子力委員会は責任があると思う。こういうものは、何もそんな解析をして結論を出す必要のない問題である。具体的にどういう手段を講じて、この安全運転というものをするように約束を取りつけるか、そういう具体案がないことはないでしょう。大てい君はそういうことを言うだろうと私は思っておったのですが、どこの港でもいい、どうなんですか。
  45. 島村武久

    島村政府委員 原子力委員会といたしましては、航行の安全を期するというような意味からも、何らかの規制を必要とすると考えておりますし、またそれにつきましては、何もデータを分析する必要はないんじゃないかというお話でございますけれども、向こうがどうしたいと考えておるのかというようなことにつきましても、いろいろと聞いてみる必要があるわけでございますから、そのために向こうに対して質問もしておるわけでございます。
  46. 岡良一

    ○岡委員 それでは、向こう側は海軍の安全運転の基準ないし規則というものを示す、という期待をあなた方は持っているのですか。
  47. 島村武久

    島村政府委員 そういうものが、もし得られますれば出してもらいたいと思っておりますし、向こうがそういうものは出せないということでございますれば、出せる範囲で聞く必要もありましょうし、また全然出せないというようなことでございますれば、岡先生がおっしゃいましたように、こちらはこちらとして、それに対する対策を考えなければならぬということになろうかと思います。
  48. 岡良一

    ○岡委員 これはやはり、アメリカの合同委員会でも問題になっておる記録を私は読んでおります。その結果、アメリカ原子力委員会原子炉安全諮問委員会と海軍の三者が協議して、原子力潜水艦の安全運転に関する基準と評価というものを出して、規則というものをはっきりつくっておる。しかも、それですらも、十分でないがというただし書きをつけてつくっておる。もちろん、これが機密であるかどうか私は知らないが、少なくとも合同委員会においては、そのような勧告が出ておるのが四年前のことなんだから、つくっておるはずです。だから、これをやはり原子力委員会としては入手して、そしてその上に立って、日本の港あるいは東京湾の特殊事情に応じて、特にまた具体的な要望なり条件というものがあってしかるべきだ。まるでそういうことは向こうまかせにしておいて、そしてあとからゆるゆるやりますなんということでは、原子力委員会が安全性に対して責任を持つ態度とはいえないと私は思うのです。全くそういう点では無責任だと思う。結局、ずるずるに潜水艦が入ってくるのを認めるというような格好になっておる。だから、こういう問題についても、われわれは具体的な内容を示し得るような調査準備というものをなされ、同時にまた、そういうことについての相手国に対する交渉を、外務省を通じてしてもらわなければならぬ。この点について、委員長の御見解を聞きたい。
  49. 近藤鶴代

    近藤国務大臣 一応外務省を通じて回答のございましたことについての検討をいたし、再度私どもとしての気持が通ずるようにという努力をいたしたいことは、十二分に考えております。やはり私どもが、最初に原子力の一番おそろしい面を経験いたしました世界じゅうでただひとりの民族であるという、この立場を考えておりますので、岡委員のお尋ねに対しましても、再三その意味でのお答えをいたして参ったわけでございまして、決しておろそかに考えておるわけでございません。けれども何分問題は非常にむずかしいことでもございますし、日本限りにおいての御返事というわけには参らないものでございますから、岡委員も隔靴掻痒の感がして、非常にもどかしくお思いになることも御無理ないと思いますが、御了承いただきたいと思います。
  50. 岡良一

    ○岡委員 なかなか了承をするわけにはいきません。  これは一九五七年の七月十二日、アメリカ原子炉安全諮問委員会委員長から、AECのゼネラル・ディレクターというのですか、それに与えている手紙の中に、こういうことを書いてあります。「海軍が、危険の問題の評価に基づいて適当な港を選び、原子力船操作のために特別な港を指定されるよう希望する。」、また同年の九月十九日の書簡では、「原子力船の数がふえるにつれて、人口稠密な港内で船を操作する危険は実に大きいということを委員会は憂慮している。原子力船操作の計画は、いずれもこの事実を考慮に入れるよう示唆があった。」こういっておるわけです。だから、向こう側が認めているわけです。人口の稠密な港に入れたりするときは、よほどの注意が必要だということを。  だから、どんな注意を向こうがしておるかということをわれわれはすっかりつかんで、その上で、さらに足らなければこうしてもらいたいという要求をするというのが、私は原子力委員会の責任を果たすゆえんじゃないかと思う。それをただ、今委員長が言われたようなあいまいもこたる形で、御了承願いたいというふうなことではいけない。委員長は科学に弱いと言われるが、私は女に弱い方だから、あまりあなたを追及することはしないけれども、もう少し具体的なポイントをつかめないですか。私は、確かに委員長の言われた通り、もどかしい。原子力委員会がもう少し責任感を自覚されるなら、もっと積極的に事実をつかんで、調査を突き詰めていくという努力があってしかるべきである。そうではないですか。  島村君、あなたは委員長の一番大事なささえの柱だが、第一、君がうろちょろしていては、いかぬじゃないか。
  51. 島村武久

    島村政府委員 岡委員のおっしゃる通り、努力いたしておるわけでございます。できるだけそのようなものにつきましても調査をいたしまして、岡委員のおっしゃいましたように、それで足りなければ、日本でこうしてくれというようなことも言いたいという意味におきまして、目下先方と交渉しておるわけでございます。
  52. 岡良一

    ○岡委員 ほんとうにやっているのですか。
  53. 島村武久

    島村政府委員 外務省を通じて交渉をいたしておるわけでございます。従いまして、私どもの方で何らかの形におきまして、これらに対する意見というものをはっきり外務省に伝え、そのことを先方が了解され、いわば日米間にそういうような具体的な点について何らかの話し合いが進められ、妥結いたすまでは、岡委員がおっしゃいましたように、のこのこと向こうが入ってくるということはあり得ないと私どもは考えております。
  54. 岡良一

    ○岡委員 この点は、さらに一九五八年の三月八日、やはり原子炉安全諮問委員長から原子力委員長にあてた書簡によると、「原子力船の数がふえるにつれて、多数の船舶が停泊する港もしくは基地の設計に考慮すべきことを指摘し、」こういっているのです。そこで、アメリカ側では、トーキングペーパーによると、大体横須賀、佐世保ならば、彼らが寄港する目的である酸素の供給、食糧の補給、あるいは乗組員の休養、あるいは電気の供給等については、新しい設備は必要ではないかとも思うが、しかし、これが長期停留するということになれば設備が必要かもしれないと言っておる。だから、こういう設備についても、あなた方は、何しろ相手が原子力潜水艦なんだから、十分考慮を払うように、原子力委員会としても責任を持ってもらいたい。  それからもう一つは、「原子力船が入港する港の数は、軍事的必要に応じ最低限度にとどめることが重要である」と言っておる。向こう側がそう言っておる。原子力潜水艦を入れる港というものは最低限にとどむべき必要があるということを、向こうの原子炉安全諮問委員会委員長原子力委員長に対して書簡をもって申し入れをしておる。であるから、安保条約の地位協定に基づく佐世保、横須賀だからやむを得ないなどというようなずざんな考え方で、うのみにしてもらっては私どもは困る。こういう点についても、その港湾のいろいろな状態、あるいはその港湾を利用する船舶の航行の実情、そういうものを原子力委員会は十分考慮して、そして安全運航ができるかどうかという考慮をして、その上で原子力潜水艦の寄港を認めるならば認める、それだけの念入りな調査をする必要があると思う。あなた方はこういう調査をする気持があるのかどうか。どうも先ほど来の御答弁を聞いておると、何もかもペンディングになっておるようだが、どうなんですか。
  55. 島村武久

    島村政府委員 全体的に見ましてペンディングであることには間違いございませんけれども、そのような点についても十分調査いたしまして態度をきめていただくようにいたしたいと考えております。
  56. 岡良一

    ○岡委員 きのう服部さんが言われたアメリカにおける原子力船の権威であるクラウチという人の本、これを「世界」の四月号に豊田という人が、運転における事故というものを非常に重大に評価して書いておるから、時間もないから今私は読まぬが、島村君、これをよく読んでおいて下さい。委員長も皆さんもよく読んでおいてもらいたい。  それから今度は、アメリカ側の言い分によると、バック・グラウンドの調査をしない、が、日本側で必要と認めるならば援助してもいい、こういうようなことも言っている。モニタリングについても、そういうきわめて投げやりなことを言っておる。向こうの方では十分調査済みであるから、従って必要はなかろうという親切なのかもしれない。  ここで一つ気にかかりますことは、万一その原子力潜水艦が二週間も三週間も埠頭におって、今度いよいよ出港しようとするときが問題であると思う。そのときにやはり一次冷却系の冷却水を放出するので、これがばかにならない量だということは、リッコーバーの仲間の人がアメリカの国会で証言している。いずれにしろ、非常に膨大なものを放出する。これは港の汚染に対して心配な影響を与えると思うのだが、こういう点についてあなた方は一体調査をし、あるいは相手方の資料の提出を求めておるかどうか。あるいはまた、それに対する安全対策ということになれば、当然横須賀なら横須賀、佐世保なら佐世保のモニタリングも必要であり、そういうバック・グラウンドの調査も必要になってくるのだが、そういうこともあわせて緊急に行なう決意がほしいと思うが、その点は一体どうなのか、伺いたい。
  57. 島村武久

    島村政府委員 かりに入ってきて、長くとどまっており、今度それが出港する場合にウォームアップするかどうかというようなことも、現在まだはっきりいたしておりません。どうもだんだん岡委員のペースで、質問の具体的な内容に触れるような気もいたしますけれども、そういうことも含めて、ただいま向こうに聞いておるわけでございます。従いまして、そのようなことがはっきりいたしました場合において、わが方の対策などもそれに応じて考えなければならぬというふうに思っております。
  58. 岡良一

    ○岡委員 原子力船の放出する水については、アメリカの合同委員会の報告の証言では、人体の許容量から見ればその百倍未満でなければならぬというようなことである。また事実それを行なうように努力はしているらしい。  しかし、それにもかかわらず、やはりただし書きがついている。やはりそうした「廃棄物放出の制限をきつくすることはいろいろな装置を必要とし、そのための船舶のスペースと重量を増加せしめることになるので、遮蔽その他の設備とともに船舶の軍事的性格をそこなうこととなる」と言っている。であるから、軍事的必要というものが、航続装置なり、制御装置なり、あるいはそういう放射能を放出しない装置なりを相当節約させているものと見なければならぬ。そういう点を原子力委員会はやはり抜け目なく十分調査して、抜かりのない手配をぜひ立ててもらいたいと思う。  それから、今あげました一次冷却系の水の放出の問題につきましても、「航行して数週間も数カ月も港に水を捨てないこともあれば、港内で維持または始動しているような場合、一度に数百ガロンも、大きな船舶では数千ガロンの水を排出することもあり得る。これらの水を海中に捨てるために保存しようとするにはより多くの面積と重量を必要としよう」から、原子力潜水艦ではできないと言っている。そうすると、やはり原子力潜水艦が長い間停泊しておって出港するというときには、放射能によって汚染された一次冷却系の水を相当放出するかもしれない。こういう問題をもっとよく突きとめてもらいたい。  男子三日見ざればまさに刮目して待つべし。この次の委員会に、もう一ぺんお尋ねするから、いいかげんなことでなくて、そのとき下手な答弁をしたら腹を切るつもりで、しっかりした御答弁をやってもらいたい。
  59. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時八分散会