○
服部参考人 私は、
立教大学の
原子力研究所、
横須賀の武山というところに一昨年
原子炉が完成いたしまして、そこでその
原子炉のお守をいたしております。
原子炉規制法によりますと、
日本では、
原子炉の
運転には、
主任技術者というものは
内閣総理大臣の
認可を受ける必要があるわけでありますが、私は
立教大学の
原子炉の
主任技術者をやっておりまして、
原子炉の
運転の保安に関する責任を負っておるわけでございます。そういう職責から申しましても、私、
原子炉の
安全性ということにつきまして、以前から非常に
関心を持っておるものでございます。この
原子力船の場合につきましても、やはりいま
西脇先生からもお話がございましたように、
安全性という問題が非常に大きな問題であろうかと思います。特に、私のおります
研究所は
横須賀の佐島というところにございますが、
横須賀につきましては、最近
原子力潜水艦の入港問題が起こっておりまして、その点からも、私は
原子力船の
安全性という問題に非常に
関心を持っているわけでございます。
多少、
原子力船開発事業団法案から話がそれるかとも思いますけれ
ども、私、実は
サバンナ号、
レーニン号、そういったものについてよりも、むしろ
原子力潜水艦についての方を多少
勉強いたしておりましたものですから、それに関しての
資料を御説明申し上げたいと思います。と申しますのは、現在世界じゅうに走っております
原子力船と申しましても、実際に
海上艦艇としては
サバンナ号、
レーニン号の二隻だけです。ところが、
原子力潜水艦というのは、すでに三十隻以上も太平洋、大西洋を走り回っているわけであります。私といたしましても、
原子力船といった場合に、むしろ非常に慎重に
設計された
サバンナ号、
レーニン号よりは、
原子力潜水艦の、特に
安全性の点で非常に大きな問題があるのではないかというふうに考えているわけです。
御存じのように、
日本の
原子炉規制法によりますと、私
たちが
原子炉を設置いたします場合には、非常に複雑な、また慎重な手続が必要でございます。まず
最初に、
設置許可申請というのを出すわけでございますが、この
申請書を書くのに、私
たち、この
原子炉を設置したい側の
立場から申しますと、大体一年以上かかるのでございます。もちろん、それはいろいろなものが内容として含ままれているわけでございますが、その中で、特に
環境に対する
立地条件、あるいは
環境に対する
説明書というもの、あるいは
安全対策書、それから万一
事故が起こった場合の
障害対策書といったもの、こういったものの
準備に時間が非常にかかっております。私
たちの
研究所の
原子炉は百キロワットという、
原子炉としては非常に小さなものでありますが、それでもやはりそういった
許可のための
安全審査ということには非常に努力を要するものでございます。それで、
安全審査会の
審査が
許可になりましても、その
あとでまた、
設計及び
工事方法の
認可といったもの、これが
原子炉の各
パート一つ一つについてその
認可を得なければならない。各
段階でもって、非常にきびしい
規制が行なわれるようになっております。また、実際に
原子炉ができ上がりまして、それを
運転いたします場合にも、これは
原子力局の非常にきびしい
規制のもとに
運転を行なっております。私
たち正直に、この
運転をする側から申しますと、非常にきびしい
規制でごいまして、やりにくい点もいろいろございますけれ
ども、しかし、私
たち、やはり現在の情勢の中では、この
原子炉を
運転していくということのためには、そういったきびしい
規制ということは当然のことである、
まわりの住民に少しでも迷惑をかけることがあってはならないということを第一に考えて、その
運転の際の安全に万全を期しているつもりでございます。百キロワット、あるいは近畿大学の
原子炉の場合でございますとわずか0・一ワットといったような非常に小さな
出力の
原子炉の場合でも、
日本の
陸上の
原子炉の場合には
安全審査ということが非常にきびしく行なわれているわけでございます。
しかし、今度は
船舶炉ということになりますと、どうしても
出力が五万キロワットとか十万キロワットとかいった、非常にけた違いに大きなものになってくるわけでございます。
東海村でつくっております
動力試験炉、あるいはその
あとの
動力炉と同じ
程度の規模のものであります。こういった五万キロあるいは十万キロといったような、大きな
出力を持った
原子炉を積んだ船が入港するということは、その港に五万キロあるいは十万キロといった
大型の
動力炉が設置されるということとまさに同じ
意味を持つことになるわけです。しかも、
船舶用の
原子炉につきましては、
陸上の
原子炉の場合に比べましてさらにいろいろな制約が伴ってくるわけでございます。
陸上の
原子炉については
海難事故というようなことはございません。船の
衝突であるとか、あるいは座礁であるとか、あるいは
船火事であるとか、そういった
海難事故ということは、これは
陸上の
原子炉にとっては考えられないことでございます。そういった
海難事故がもし起こったという場合には、場合によってはその
船自身を助けに行くことさえできないということもあり得るわけでございます。そういった
意味でも、この
船舶用の
原子炉というものの
安全性ということは、特に重視しなければならない問題であろうというふうに考えるのであります。
先ほど
西脇先生もおっしゃいましたが、
原子力船研究協会というところで、これまでも非常に多くの
勉強をしておられます。その
研究の結果が、いろいろな
資料になって発表されております。私
ども研究者として、この
勉強に対しては非常に敬意を表するものでございますが、私もずいぶんこれで
勉強させていただきました。その中で、いろいろな
海難事故の
対策というようなことも書いてございます。たとえば現在の
原子炉の
設計の
技術をもってしては、
大型の船が
真横から
衝突した場合に、十二ノットまでは
原子炉容器を安全に
設計することが可能であるが、十四ノット以上の船が
真横から
衝突した場合には、現在の
原子炉の
設計技術では
原子炉容器を安全に保つことは困難である、というようなこともしるされておるようでございます。
そういった
船舶用の、
原子炉につきましても、商船あるいはその他の民間の
船舶の
原子炉の場合でございますならば、当然この
安全審査ということが行なわれると思うわけでございます。そしてまた、先ほど申しましたような
舶用炉の
特殊性ということについては、十分な
審査が行なわれるものと思うわけでございますが、聞くところによりますと、今度
横須賀に入港いたします
原子力潜水艦については、
日本側の
安全審査ということは行なわれない、そういうことが非常にむずかしいということを承っております。そういう場合に、それでは
安全性というものをどうやって確保するか。私
たち科学者としての
立場から申し上げますならば、
データのないものの
安全性というものは議論できないわけでございます。また、
データがないということ
自身が一番心配なことになるわけでございます。場合によっては似たような
原子炉で
安全性を確かめたらどうかというふうな議論もあるかと思いますけれ
ども、
潜水艦用の
原子炉に似たような
原子炉というのは、実はございません。たとえば
サバンナ号については、ある
程度原子炉の
データというものが発表されておりますけれ
ども、これと
原子力潜水艦の
原子炉とは
かなり違っております。また
シッピングポート原子炉というようなものも、型としては加圧水型ということで、大分けすれば似たような分類に入るかもしれませんけれ
ども、
燃料自身からして違っているわけでございます。
シッピングポートとかあるいは
サバンナ号というものは、低
濃縮の
燃料を使っております。しかし、
原子力潜水艦の場合には高
濃縮の
燃料を使っております。こういった点からいっても、まず
燃料からして違うということになるわけであります。そういった似たもので
安全審査をするということになると、これは私
たち大学で
入学試験をするときに、去年通った
こいつと顔が似ているから、
こいつを入学させてやろうというわけには参らないわけでございます。似たような
原子炉で
安全審査をするということは、これはむずかしいことだと思います。
潜水艦用の
原子炉で、しいて似たものをあげますと、先年
事故を起こしました
SL1という
原子炉があります。この
SL1は高
濃縮の
燃料を使ったもので、また
設計の
基本方針や何かをいろいろ考えてみますと、これが非常に似たものといえるという
程度のことであります。
原子炉の
安全性という場合に、やはり一番問題になりますのは、
事故が起こったときということでございます。もちろん
原子炉の
設計に、初めから
事故を起こすように
設計する
ばか者はおらないわけでございますが、
事故というものは、予想しないことが起こり得る。これが
事故でございます。そして、現在
原子力船に関しましてはいろいろな本が出ておりますが、
アメリカのホームズ・F・
クラウチという人が、この人は
沿岸警備隊にいた人ですが、
原子力船の
研究をして、「
原子力船」という本を出しております。これは、
原子力船に関してまとった本としては非常にりっぱな本であります。この
クラウチの本を見ましても、
舶用原子炉の
事故というものは必ず起こると予想してかからなければいけないということが非常に強調されております。もちろん、この
原子力船で
事故が起こりましたときは、大
部分は海に対して問題が起こってくるわけでありますけれ
ども、
陸上に対しても当然問題が起こる。たとえば港に停泊している場合の
事故というものは、当然
陸上にも問題が起こってくるわけでございます。
東海村につきましては、
周辺地区の整備ということが急がれているわけでございますが、そういった
原子力船の立ち入る港というのは、当然
かなりの
人口というものが予想されるところでございます。私の住んでおります
横須賀にいたしましても、約三十万の
人口を持っております。そういった
人口の非常に多いところに
原子力船が入ってくるというところに、
一つ大きな問題が起こってくるわけでございます。
一九六二年の夏に、
アメリカの
マリタイムアドミニストレーションという
機関で、
舶用原子炉が港に入ったときの
問題ポート・オペレーション・オブ・シップボード・リアクターズというのを発表いたしております。これは、先年
動力炉の
敷地基準というものを
原子力委員会のセーフガード・コミッティが出しているわけでございますが、その
敷地基準をそのまま適用したのでは、こういう
人口の多い港に
原子力船を入港させることが非常に問題になってくるということで、ある
意味では幾分
敷地基準を
原子力船に適用するように改めたわけでございます。しかし、その場合にも非常にいろいろの
条件がついております。たとえば
原子力船が入港するという場合にはどういう
条件が必要かというようなことで、九項目ございます。まず、港の
機関からインビテーションを送らなければいけない。それから、
まわりの
環境の
条件というものについての
評価が十分になされていなければいけない。
事故が起こったときの
対策、
事故の
評価ということが行なわれていなければならない。
関係機関がすべてこれを知っていなければならない。泊地、停泊する場所を適当にスクリーニングしなければいけない。
出入港についての径路の
評価というものをやっておかなければいけない。
事故の
解析ということを非常に詳しく
準備しておかなければならない。あるいは
引き船の
準備をしておかなければならない。これは、
事故が起こった場合には船を外まで引っぱり出してしまうということであります。あるいは
事故が起ったときの
安全装置といったものも、十分にテストをやっておかなければいけない。緊急時の
対策というものが
承認を経たものでなければいけない。それから、船に入ってくる人を制限しなくちやいけないとか、あるいはそういったものをすべて
報告を出して
承認を得なければいけないというようなことがございます。
そのほかにも、こまかいことになりますが、二十四項目ほどいろいろな
条件がつけられております。その中で重要なことを拾って申し上げますと、実際の
原子炉の
出力のヒストリーというものをはっきりさせておかなければいけないというようなこと、あるいは特にある特定の
事故というものに対してその
対策を考えておかなければいけない。また、
港自身の
解析、つまりもし
事故が起ったときに
港自身に対してどういう
影響があるかというポート・アナリシスを十分にやっておかなければいけない、これがまた
承認されたものでなければいけないというような、非常にたくさんの
条件がついているわけでございます。
こういったことは、当然
アメリカ自身で
原子力船あるいは
原子力潜水艦というものをたくさん持っているわけでございますから、そういったものもきびしくやるわけでございます。そういった船が寄港するという港にも、当然それだけの
準備をしておかなければいけないのではないかと思うわけでございます。
事故が起こりましたときに非常に大きな問題が起こることは、これは
陸上における
原子炉の場合でも、
船舶用の
原子炉の場合でも同じことでございますが、
船舶用の
原子炉の場合には、特にできるだけ
航続距離を延ばしたいという要求が出てくるわけであります。そのために、特に
原子力潜水艦の場合には、私
たちの
言葉で申しますと
超過反応度を非常に大きくとるという
設計方式になっております。平たい
言葉で申しますと、
原子炉の中に余分の
燃料もたくさん詰め込んでおくということになるわけであります。それは非常に
事故の起こる確率を大きくいたしておりますし、また、
事故が起こったときの
影響というものが非常に大きくなるわけでございます。それから特に
原子力潜水艦などの場合には
制御系統を簡単にするという
意味で、
制御棒の数を減らすという
方向に最近の
設計が進んできておるわけであります。
超過反応度を大きくしておいて
制御棒の数を減らすということは、ある
意味では
原子炉の
安全性を無視した
設計ということが言えると思うのです。つまり軍艦としての
性能を増すために、
安全性を犠牲にしているということが言えるのではないかと思います。その点は、たとえば
サバンナ号、あるいは
レーニン号といった場合には、
船自身も非常に大きいわけでございますから、
安全性ということについても
かなりの
対策が立てられるわけでございます。
潜水艦の場合にはそういった点を非常に無理をしているということが、いろいろな
資料から推察できるわけでございます。
また、
原子力潜水艦は現在三十隻ほど走っておるわけでございますが、三十隻ばかりのものにしては、今までにも実際に
事故を起こしたという例が、
陸上の
原子炉と比べますと割合が多いのじゃないかというふうに私は考えております。もちろん
原子炉自体が暴走を起こしたというような
事故は起こっておりませんけれ
ども、
陸上の
原子炉であったならば当然大問題になるような種類の
事故というのは
幾つか起こっております。例をあげますと、
ノーテラス号というのが一九五八年ですか、一次
冷却回路に
故障を生じたというような
報告が出ております。また、
ノーテラス号が第二回目の
燃料交換中に、
機関の
主要部分に
故障を生じたという
報告が出ております。それから、一九五九年ですか、やはり
原子力潜水艦サーゴ号というのが真珠湾の
海軍工廠に停泊しておりましてて、岸壁に係留して
液体酸素の補給をしていたときに、
作業員の不注意により
船火事が生じて、
原子力潜水艦サーゴ号自身の
艦尾部が着底して、沈没と同様の状態になったというような
事故が
報告されております。それから、これは当然
陸上の
原子炉ではないことでありますが、やはり
原子力潜水艦の
パーミット号というのが、サンフランシスコの沖合いで
貨物船と
衝突をしたという例がございます。幸いに、このときは
原子力潜水艦自身には大した
事故はなかったようでございますが、とにかくそういった
貨物船との
衝突というようなこともすでに起こっております。
こういったことは、
陸上炉であったならば当然大問題になることであろうと思うわけであります。何しろ五万キロないし十万キロというので、しかも
航続距離が長い。たとえばスキップジャック・クラスの
原子力潜水艦になりますと、十万海里くらい
フルスピードで
連続航海ができる。そういった船が港に入ってきたというときには、大体五キログラムとか十キログラウといった
程度の
核分裂生成物、いわゆる
死の灰を
原子炉の中に詰め込んできているわけであります。私
たちの
原子力研究所の
原子炉で申しますと、百キロワットの
原子炉で、
連続運転などというとこはあまりやりませんので、一年に一グラムか二グラムくらいしか灰がたまらないわけでございます。五万キロワットの
原子炉を
フルスピードで
運転しますと、一日に五十グラムずつ灰がたまって参ります。そういうのを百日続けて
運転いたしますと五キログラムくらいに相なるわけでございます。広島で爆発いたしました
原子爆弾でまき散らされました
死の灰というのが一キログラム以下であったということを思い出しますと、五キログラムあるいは十キログラム、あるいはそれ以上というのは、非常にたくさんの放射能を内蔵しているということになるわけでございます。そういった
事故が起これば、そういった
放射性物質が外へまき散らされる可能性がある。
事故が起こらなくても、平常時の放射性廃棄物につきましても非常に大きな問題がございます。といいますのは、これは一九五九年の四月十一日と十五日に、
原子力潜水艦のスキップジャックという軍艦の中で、
アメリカの海軍の
原子炉に関する
計画に関しまして、
アメリカの上下両院合同
委員会が公聴会を開いております。その公聴会に提出されました
資料というものがございます。これを読んでみますと、その中で
アメリカの海軍省の艦船局が出している訓令というものは、非常に驚くべきものでございます。といいますのは、時間がないようでございますから結論だけで簡単に申しますと、海岸から十二海里以上離れているところだったらどんな
放射性物質を流してもかまわない。それから、十二海里以内でも、廃液中の
放射性物質の最大許容濃度をこれこれにしろという数値がいろいろと出ております。この数値というものを調べてみますと、いわゆるICRPで勧告されました最大許容量の大体百倍ということを目安にして、百倍
程度のものならば放出をしてもいいということになっております。それは放射性廃液でございますが、ちなみに
日本の放射線障害防止法というもので規定されております場合には、こういった放射性の廃液というものを流し出します場合には、流し出した周辺から外のところでこの最大許容量
——日本の
法律できめられておるのは大体ICRPの値をとっておるわけでございますが
——それの十分の一以内になるようにしろということがきめられているわけであります。しかし、
アメリカの
原子力潜水艦の場合には、十二海里より遠いところでは何を捨ててもかまわない、十二海里以内でも最大許容量の百倍
程度のものは捨ててもかまわない。つまりこれは、
あとで海の水で薄まってしまうということをある
程度考えに入れているわけでございます。これは
あとで
檜山先生からお話があると思いますけれ
ども、IAEA、国際原子力
機関で
放射性物質の海洋投棄につきましていろいろディスカッションがされております。それの中でいろいろな計算に用いられております数値は、むしろ薄まるということよりも、場合によっては、プランクトンであるとかあるいはその他の動植物でもって、そういった海中に放出されたものが
濃縮される可能性もあるということを考慮しているわけでございます。そういった点から申しまして、廃液を流す基準というものが、
アメリカの場合と
日本の場合とで大きく違っているということを私申し上げたいと思います。
それから、ただいまは放射性の廃液の場合でございましたが、これは主として
原子炉の冷却水を放出しております。大体この記録を読みますと、一カ月に一回くらいは必ず放出しておる。
潜水艦の場合は、
最初原子炉をあたためますときにどうしても水があふれてくるわけでございます。それをタンクにためることなしに、放出しているようでございます。
今申しましたのは液体でございますが、冷却水の中の
放射性物質をとるために、御存じのイオン交換樹脂というものを用いております。このイオン交換樹脂も十二海里よりも外ならば、そして走っているときに回りの三海里以内にほかの艦船を認めないで、そしてそこが既知の漁区でなければ直接海洋投棄もしていいというふうに書かれております。こういった固体の放射性廃棄物を海洋に投棄する場合につきましては、
日本の
法律によりますと、放射性廃棄物を封入した容器の比重は一・二以上であるとか、投棄する個所の海洋の深さは二千メートル以上であるとか、あるいはそういったものをどういうふうにして廃棄しなくてはいけないということが非常にきびしく規定されております。しかし、
アメリカの場合には無
条件で捨ててもいい、直接海洋投棄してもかまわないということが
アメリカの海軍省の訓令に出ておるわけでございます。そういう基準が違うということは、
日本の場合に特に注意しなければならないと思うのでございます。
それから、先ほどの国際原子力
機関の勧告でございますが、これの中にも、放射性廃棄物を出した場合に、これがどの
程度広がるかというようなことは、その場所その場所の
立地条件によって非常に違うものである。あるいは新しい水と古い水との入れかわりであるとか、潮流の速さであるとか、そういった個々の
条件によって著しく変わってくるものであるから、一般的なことを言うよりも、個々の場合についての
立地条件の十分な調査が必要であるということが述べられているわけでございます。たとえば東京湾を例にとって考えますと、これは
衝突あるいは座礁といったようなものの名所の
一つというようにいわれているわけでございますが、そういう東京湾で、もし
事故が起こったという場合についての東京湾自体の調査というようなことも、もし今後
原子力船が何隻も入ってくるという場合には、今から始めておかなければ間に合わないのじゃないかと考えるわけでございます。
そういうふうに、
舶用原子炉の
安全性につきましては非常に問題点が多いわけでございますが、
安全審査ということについては特に慎重にやっていただきたいということを私は希望するわけでございます。
今度の
原子力潜水艦につきましては、外国の港に百回以上すでに入っていて安全であるから安全である、というような見解が一部に出されておると伺っておりますけれ
ども、そういった
安全審査で済むことならば、
原子炉規制法というものを廃止していただきたいと思うわけでございます。私
たち横須賀で百キロワットの
原子炉の
安全審査をする場合には、日夜どれだけの苦労をしておるか、また、その設置のためにどれだけ苦労をしたかということを考えましても、それの何百倍という大きさの
原子炉がぽこっと入ってくるということについて自主的な
安全審査が行なわれないということについては、非常に大きな矛盾を感ずるわけでございます。たとえばデンマークのコペンハーゲンの場合におきましては、
原子力潜水艦の寄港というものを
安全性の面からはっきり拒否いたしております。こういうような例もあるわけでございます。そういうように、
舶用炉の
安全審査ということについては特に慎重にやっていただきたいということをお願いするわけでございます。
それから、これは多少本題からはずれることになるかと思いますが、最後にもう一言つけ加えさしていただきたいことは、やはりこの国会の審議の中で、
原子力潜水艦に積むサブロックというミサイルにつきまして、これは核弾頭もつけられるが、普通の火薬の弾頭もつけることができるから核兵器でないというような議論が行なわれたとか、新聞で拝見いたしました。しかし、もしそういう議論が成り立つといたしますと、私非常にちゃちな自動車を持っておりますが、私の自動車はときどき冬の朝などエンジンがかからなくなることがあります。そういうときは、私、手で押しますと、やはり動くのでございます。私の自動車はガソリンエンジンでも動くけれ
ども、手で押しても動く。従ってこれは自動車でないという議論は、おそらく通用しないと思うのでございます。サブロックという核兵器は何のためにつくったかと申しますと、四十キロも五十キロも向こうまで飛ばしてやる。それはなぜ必要かと申しますと、核弾頭であるからこそ、それを発射した
潜水艦自身が安全であるためにそういう遠くまで飛ばしてやるわけでございます。サブロックに普通の弾頭をつけることも可能であるから、これは核兵器ではないということになりますれば、たとえばポラリスにいたしましても、ポラリスの頭に何もつけないで発射することも可能なわけでございます。そうすると、ポラリスも核兵器ではないという議論が成り立つわけでございます。このサブロックは、明らかにもともと核兵器用に
設計されたものであるという点から、核兵器として、
原子力潜水艦のスレッシャー型というのはすでにこのサブロックを積んでおるわけでございます。私はこれは核兵器を積んだ
潜水艦であると考えております。
多少脱線いたしましたけれ
ども、私の申し上げたかったことは、
舶用炉の
安全審査というものは慎重にやっていただきたいということであります。