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1963-03-06 第43回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月六日(水曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 安倍晋太郎君 理事 佐々木義武君    理事 松本 一郎君 理事 山口 好一君    理事 岡  良一君 理事 山口 鶴男君       坂田 英一君    細田 吉藏君       前田 正男君    石川 次夫君       田中織之進君    村山 喜一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 近藤 鶴代君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         科学技術政務次         官       内田 常雄君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   森崎 久壽君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君  委員外出席者         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         科学技術事務次         官       鈴江 康平君         外務事務官         (アメリカ局安         全保障課長)  高橋正太郎君         参  考  人         (東京大学教         授)      西脇 仁一君         参  考  人         (立教大学助教         授)      服部  覺君         参  考  人         (東京大学教         授)      檜山 義夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本原子力船開発事業団法案内閣提出第八二  号)      ————◇—————
  2. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これより会議を開きます。  日本原子力船開発事業団法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、日本原子力船開発事業団法案について参考人より意見を聴取することにいたします。本日の参考人出席者は、東京大学教授西脇仁一君、立教大学助教授服部學君及び東京大学教授檜山義夫君、以上三君でございます。  この際、各参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、本委員会法律案審査のためわざわざ御出席下さいまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  本委員会は、ただいま日本原子力船開発事業団法案について審査をいたしておりますが、本案につきまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。なお、御意見の御開陳はお一人約二十分程度にお願いいたすこととし、その後委員各位の質疑にお答え下さいますようお願い申し上げます。  それでは、最初西脇参考人よりお願いいたします。西脇参考人
  3. 西脇仁一

    西脇参考人 西脇でございます。  法律自身のこまかい条文のことは存じませんが、趣旨を読ませていただきましたところ、かなり長期にわたりまして十分勉強して、原子力実験船開発しようというためにこの法律ができたようでございます。私どもとしましては、私、実は現在東大の舶用機械工学科におるものでございますが、非常にけっこうなことと思っております。特に日本造船工業国として、生産量では世界一でございますし、また、内容的にも造船工業はトップ・レベルにございます。そういうところにおきまして、平和目的に使われます将来の原子力船ファースト・ステップとしまして、この程度の大きさの原子力実験船を慎重に勉強して開発するということは、日本造船工業界のためにきわめて好ましいという意見でございます。すでに私どもの仲間が、この法案のできます以前から、原子力船研究協会中心といたしまして幾つかの試案をつくりまして研究し、そしてまた、一九六〇年から燃料を入れて動かしておりますサバンナ号のいろいろな実績参考にしまして、かなり開発に対して私ども造船工業界技術者自信を持ってやっていける、すなわち性能的とかそういう点で自信を持ってやっていける。それからまた、安全性に関しましても、今までのサバンナ号実績並びに私どもがいろいろと研究しましたことを考慮しますと、やっていけそうだという感じを持っております。  ただし、具体的にこんな大きなものをやりますには、慎重にやらなければいけないものですから、何段かのかまえ、たとえて申しますとペーパー・ワークというか、設計上のいろいろな段階におきましても十分検討し、また部品ごと安全性並びに性能の上からも十分研究し、さらに起こり得る災害、船に対する危険の問題なんかも十分今までやっておりますが、これからもなお十分に、慎重の上にも慎重にやっていけば、現在の長期計画——長期計画といいましても十年足らずだと伺っておりますが——でやれは十分にいくのじゃないかと思っております。  すでに、日本原子力船研究協会中心として、ここ数年来、特に安全性の問題につきましては、あらゆる分野を動員して研究しております。耐波浪性、あるいは波がきましたときのいろいろな加速度の問題なんかは、実船を使いまして研究しておられますし、それからまた、たとえて申しますと制御棒のコントロールの問題なんかも、実地のものについてかなり基礎的に研究もしておられますし、放射性物質の取り扱いも、今から七、八年前に比べますと、今日におきましては各所で非常になれておられまして、考え方も進んで参りましたから、こまかい点でまだまだ検討を要する点はあろうと思いますが、大局的にはほぼ性能的にも、安全性の点でも明るい見通しを持っております。ただし、現状では、経済性という点になりますと、私ども学校におる人間からはまだわからない点がございますので、これは時間をかけてなお研究していくべき要素ではないかと思っております。  そしてまた、この法案を拝見させていただきますと、いきなり実用船でやるのじゃなくて、実験船として、並びに訓練も兼ねて、また海洋観測もいたすような計画になっておりますが、現在の日本の状況からいって、ちょうどよい中間段階計画のように私にはうかがわれます。まだこれからもさらに詳細検討なさることでしょうが、たくさんの造船関係技術者がおられますから、あらゆる面からもう少し詳しくやっていただければ、さらによいファースト・プランニングができるだろうと思います。  従いまして、こういった船をつくるという目的日本原子力船開発事業団ができることは、むしろ私としては歓迎の方向でございます。
  4. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に服部参考人よりお願いいたします。服部参考人
  5. 服部覺

    服部参考人 私は、立教大学原子力研究所横須賀の武山というところに一昨年原子炉が完成いたしまして、そこでその原子炉のお守をいたしております。  原子炉規制法によりますと、日本では、原子炉運転には、主任技術者というものは内閣総理大臣認可を受ける必要があるわけでありますが、私は立教大学原子炉主任技術者をやっておりまして、原子炉運転の保安に関する責任を負っておるわけでございます。そういう職責から申しましても、私、原子炉安全性ということにつきまして、以前から非常に関心を持っておるものでございます。この原子力船の場合につきましても、やはりいま西脇先生からもお話がございましたように、安全性という問題が非常に大きな問題であろうかと思います。特に、私のおります研究所横須賀の佐島というところにございますが、横須賀につきましては、最近原子力潜水艦の入港問題が起こっておりまして、その点からも、私は原子力船安全性という問題に非常に関心を持っているわけでございます。  多少、原子力船開発事業団法案から話がそれるかとも思いますけれども、私、実はサバンナ号レーニン号、そういったものについてよりも、むしろ原子力潜水艦についての方を多少勉強いたしておりましたものですから、それに関しての資料を御説明申し上げたいと思います。と申しますのは、現在世界じゅうに走っております原子力船と申しましても、実際に海上艦艇としてはサバンナ号レーニン号の二隻だけです。ところが、原子力潜水艦というのは、すでに三十隻以上も太平洋、大西洋を走り回っているわけであります。私といたしましても、原子力船といった場合に、むしろ非常に慎重に設計されたサバンナ号レーニン号よりは、原子力潜水艦の、特に安全性の点で非常に大きな問題があるのではないかというふうに考えているわけです。  御存じのように、日本原子炉規制法によりますと、私たち原子炉を設置いたします場合には、非常に複雑な、また慎重な手続が必要でございます。まず最初に、設置許可申請というのを出すわけでございますが、この申請書を書くのに、私たち、この原子炉を設置したい側の立場から申しますと、大体一年以上かかるのでございます。もちろん、それはいろいろなものが内容として含ままれているわけでございますが、その中で、特に環境に対する立地条件、あるいは環境に対する説明書というもの、あるいは安全対策書、それから万一事故が起こった場合の障害対策書といったもの、こういったものの準備に時間が非常にかかっております。私たち研究所原子炉は百キロワットという、原子炉としては非常に小さなものでありますが、それでもやはりそういった許可のための安全審査ということには非常に努力を要するものでございます。それで、安全審査会審査許可になりましても、そのあとでまた、設計及び工事方法認可といったもの、これが原子炉の各パート一つ一つについてその認可を得なければならない。各段階でもって、非常にきびしい規制が行なわれるようになっております。また、実際に原子炉ができ上がりまして、それを運転いたします場合にも、これは原子力局の非常にきびしい規制のもとに運転を行なっております。私たち正直に、この運転をする側から申しますと、非常にきびしい規制でごいまして、やりにくい点もいろいろございますけれども、しかし、私たち、やはり現在の情勢の中では、この原子炉運転していくということのためには、そういったきびしい規制ということは当然のことである、まわりの住民に少しでも迷惑をかけることがあってはならないということを第一に考えて、その運転の際の安全に万全を期しているつもりでございます。百キロワット、あるいは近畿大学の原子炉の場合でございますとわずか0・一ワットといったような非常に小さな出力原子炉の場合でも、日本陸上原子炉の場合には安全審査ということが非常にきびしく行なわれているわけでございます。  しかし、今度は船舶炉ということになりますと、どうしても出力が五万キロワットとか十万キロワットとかいった、非常にけた違いに大きなものになってくるわけでございます。東海村でつくっております動力試験炉、あるいはそのあと動力炉と同じ程度の規模のものであります。こういった五万キロあるいは十万キロといったような、大きな出力を持った原子炉を積んだ船が入港するということは、その港に五万キロあるいは十万キロといった大型動力炉が設置されるということとまさに同じ意味を持つことになるわけです。しかも、船舶用原子炉につきましては、陸上原子炉の場合に比べましてさらにいろいろな制約が伴ってくるわけでございます。陸上原子炉については海難事故というようなことはございません。船の衝突であるとか、あるいは座礁であるとか、あるいは船火事であるとか、そういった海難事故ということは、これは陸上原子炉にとっては考えられないことでございます。そういった海難事故がもし起こったという場合には、場合によってはその船自身を助けに行くことさえできないということもあり得るわけでございます。そういった意味でも、この船舶用原子炉というものの安全性ということは、特に重視しなければならない問題であろうというふうに考えるのであります。  先ほど西脇先生もおっしゃいましたが、原子力船研究協会というところで、これまでも非常に多くの勉強をしておられます。その研究の結果が、いろいろな資料になって発表されております。私ども研究者として、この勉強に対しては非常に敬意を表するものでございますが、私もずいぶんこれで勉強させていただきました。その中で、いろいろな海難事故対策というようなことも書いてございます。たとえば現在の原子炉設計技術をもってしては、大型の船が真横から衝突した場合に、十二ノットまでは原子炉容器を安全に設計することが可能であるが、十四ノット以上の船が真横から衝突した場合には、現在の原子炉設計技術では原子炉容器を安全に保つことは困難である、というようなこともしるされておるようでございます。  そういった船舶用の、原子炉につきましても、商船あるいはその他の民間の船舶原子炉の場合でございますならば、当然この安全審査ということが行なわれると思うわけでございます。そしてまた、先ほど申しましたような舶用炉特殊性ということについては、十分な審査が行なわれるものと思うわけでございますが、聞くところによりますと、今度横須賀に入港いたします原子力潜水艦については、日本側安全審査ということは行なわれない、そういうことが非常にむずかしいということを承っております。そういう場合に、それでは安全性というものをどうやって確保するか。私たち科学者としての立場から申し上げますならば、データのないものの安全性というものは議論できないわけでございます。また、データがないということ自身が一番心配なことになるわけでございます。場合によっては似たような原子炉安全性を確かめたらどうかというふうな議論もあるかと思いますけれども潜水艦用原子炉に似たような原子炉というのは、実はございません。たとえばサバンナ号については、ある程度原子炉データというものが発表されておりますけれども、これと原子力潜水艦原子炉とはかなり違っております。またシッピングポート原子炉というようなものも、型としては加圧水型ということで、大分けすれば似たような分類に入るかもしれませんけれども燃料自身からして違っているわけでございます。シッピングポートとかあるいはサバンナ号というものは、低濃縮燃料を使っております。しかし、原子力潜水艦の場合には高濃縮燃料を使っております。こういった点からいっても、まず燃料からして違うということになるわけであります。そういった似たもので安全審査をするということになると、これは私たち大学入学試験をするときに、去年通ったこいつと顔が似ているから、こいつを入学させてやろうというわけには参らないわけでございます。似たような原子炉安全審査をするということは、これはむずかしいことだと思います。  潜水艦用原子炉で、しいて似たものをあげますと、先年事故を起こしましたSL1という原子炉があります。このSL1は高濃縮燃料を使ったもので、また設計基本方針や何かをいろいろ考えてみますと、これが非常に似たものといえるという程度のことであります。  原子炉安全性という場合に、やはり一番問題になりますのは、事故が起こったときということでございます。もちろん原子炉設計に、初めから事故を起こすように設計するばか者はおらないわけでございますが、事故というものは、予想しないことが起こり得る。これが事故でございます。そして、現在原子力船に関しましてはいろいろな本が出ておりますが、アメリカのホームズ・F・クラウチという人が、この人は沿岸警備隊にいた人ですが、原子力船研究をして、「原子力船」という本を出しております。これは、原子力船に関してまとった本としては非常にりっぱな本であります。このクラウチの本を見ましても、舶用原子炉事故というものは必ず起こると予想してかからなければいけないということが非常に強調されております。もちろん、この原子力船事故が起こりましたときは、大部分は海に対して問題が起こってくるわけでありますけれども陸上に対しても当然問題が起こる。たとえば港に停泊している場合の事故というものは、当然陸上にも問題が起こってくるわけでございます。東海村につきましては、周辺地区の整備ということが急がれているわけでございますが、そういった原子力船の立ち入る港というのは、当然かなり人口というものが予想されるところでございます。私の住んでおります横須賀にいたしましても、約三十万の人口を持っております。そういった人口の非常に多いところに原子力船が入ってくるというところに、一つ大きな問題が起こってくるわけでございます。  一九六二年の夏に、アメリカマリタイムアドミニストレーションという機関で、舶用原子炉が港に入ったときの問題ポート・オペレーション・オブ・シップボード・リアクターズというのを発表いたしております。これは、先年動力炉敷地基準というものを原子力委員会のセーフガード・コミッティが出しているわけでございますが、その敷地基準をそのまま適用したのでは、こういう人口の多い港に原子力船を入港させることが非常に問題になってくるということで、ある意味では幾分敷地基準原子力船に適用するように改めたわけでございます。しかし、その場合にも非常にいろいろの条件がついております。たとえば原子力船が入港するという場合にはどういう条件が必要かというようなことで、九項目ございます。まず、港の機関からインビテーションを送らなければいけない。それから、まわり環境条件というものについての評価が十分になされていなければいけない。事故が起こったときの対策事故評価ということが行なわれていなければならない。関係機関がすべてこれを知っていなければならない。泊地、停泊する場所を適当にスクリーニングしなければいけない。出入港についての径路の評価というものをやっておかなければいけない。事故解析ということを非常に詳しく準備しておかなければならない。あるいは引き船準備をしておかなければならない。これは、事故が起こった場合には船を外まで引っぱり出してしまうということであります。あるいは事故が起ったときの安全装置といったものも、十分にテストをやっておかなければいけない。緊急時の対策というものが承認を経たものでなければいけない。それから、船に入ってくる人を制限しなくちやいけないとか、あるいはそういったものをすべて報告を出して承認を得なければいけないというようなことがございます。  そのほかにも、こまかいことになりますが、二十四項目ほどいろいろな条件がつけられております。その中で重要なことを拾って申し上げますと、実際の原子炉出力のヒストリーというものをはっきりさせておかなければいけないというようなこと、あるいは特にある特定の事故というものに対してその対策を考えておかなければいけない。また、港自身解析、つまりもし事故が起ったときに港自身に対してどういう影響があるかというポート・アナリシスを十分にやっておかなければいけない、これがまた承認されたものでなければいけないというような、非常にたくさんの条件がついているわけでございます。  こういったことは、当然アメリカ自身原子力船あるいは原子力潜水艦というものをたくさん持っているわけでございますから、そういったものもきびしくやるわけでございます。そういった船が寄港するという港にも、当然それだけの準備をしておかなければいけないのではないかと思うわけでございます。  事故が起こりましたときに非常に大きな問題が起こることは、これは陸上における原子炉の場合でも、船舶用原子炉の場合でも同じことでございますが、船舶用原子炉の場合には、特にできるだけ航続距離を延ばしたいという要求が出てくるわけであります。そのために、特に原子力潜水艦の場合には、私たち言葉で申しますと超過反応度を非常に大きくとるという設計方式になっております。平たい言葉で申しますと、原子炉の中に余分の燃料もたくさん詰め込んでおくということになるわけであります。それは非常に事故の起こる確率を大きくいたしておりますし、また、事故が起こったときの影響というものが非常に大きくなるわけでございます。それから特に原子力潜水艦などの場合には制御系統を簡単にするという意味で、制御棒の数を減らすという方向に最近の設計が進んできておるわけであります。超過反応度を大きくしておいて制御棒の数を減らすということは、ある意味では原子炉安全性を無視した設計ということが言えると思うのです。つまり軍艦としての性能を増すために、安全性を犠牲にしているということが言えるのではないかと思います。その点は、たとえばサバンナ号、あるいはレーニン号といった場合には、船自身も非常に大きいわけでございますから、安全性ということについてもかなり対策が立てられるわけでございます。潜水艦の場合にはそういった点を非常に無理をしているということが、いろいろな資料から推察できるわけでございます。  また、原子力潜水艦は現在三十隻ほど走っておるわけでございますが、三十隻ばかりのものにしては、今までにも実際に事故を起こしたという例が、陸上原子炉と比べますと割合が多いのじゃないかというふうに私は考えております。もちろん原子炉自体が暴走を起こしたというような事故は起こっておりませんけれども陸上原子炉であったならば当然大問題になるような種類の事故というのは幾つか起こっております。例をあげますと、ノーテラス号というのが一九五八年ですか、一次冷却回路故障を生じたというような報告が出ております。また、ノーテラス号が第二回目の燃料交換中に、機関主要部分故障を生じたという報告が出ております。それから、一九五九年ですか、やはり原子力潜水艦サーゴ号というのが真珠湾の海軍工廠に停泊しておりましてて、岸壁に係留して液体酸素の補給をしていたときに、作業員の不注意により船火事が生じて、原子力潜水艦サーゴ号自身艦尾部が着底して、沈没と同様の状態になったというような事故報告されております。それから、これは当然陸上原子炉ではないことでありますが、やはり原子力潜水艦パーミット号というのが、サンフランシスコの沖合いで貨物船衝突をしたという例がございます。幸いに、このときは原子力潜水艦自身には大した事故はなかったようでございますが、とにかくそういった貨物船との衝突というようなこともすでに起こっております。  こういったことは、陸上炉であったならば当然大問題になることであろうと思うわけであります。何しろ五万キロないし十万キロというので、しかも航続距離が長い。たとえばスキップジャック・クラスの原子力潜水艦になりますと、十万海里くらいフルスピード連続航海ができる。そういった船が港に入ってきたというときには、大体五キログラムとか十キログラウといった程度核分裂生成物、いわゆる死の灰原子炉の中に詰め込んできているわけであります。私たち原子力研究所原子炉で申しますと、百キロワットの原子炉で、連続運転などというとこはあまりやりませんので、一年に一グラムか二グラムくらいしか灰がたまらないわけでございます。五万キロワットの原子炉フルスピード運転しますと、一日に五十グラムずつ灰がたまって参ります。そういうのを百日続けて運転いたしますと五キログラムくらいに相なるわけでございます。広島で爆発いたしました原子爆弾でまき散らされました死の灰というのが一キログラム以下であったということを思い出しますと、五キログラムあるいは十キログラム、あるいはそれ以上というのは、非常にたくさんの放射能を内蔵しているということになるわけでございます。そういった事故が起これば、そういった放射性物質が外へまき散らされる可能性がある。  事故が起こらなくても、平常時の放射性廃棄物につきましても非常に大きな問題がございます。といいますのは、これは一九五九年の四月十一日と十五日に、原子力潜水艦のスキップジャックという軍艦の中で、アメリカの海軍の原子炉に関する計画に関しまして、アメリカの上下両院合同委員会が公聴会を開いております。その公聴会に提出されました資料というものがございます。これを読んでみますと、その中でアメリカの海軍省の艦船局が出している訓令というものは、非常に驚くべきものでございます。といいますのは、時間がないようでございますから結論だけで簡単に申しますと、海岸から十二海里以上離れているところだったらどんな放射性物質を流してもかまわない。それから、十二海里以内でも、廃液中の放射性物質の最大許容濃度をこれこれにしろという数値がいろいろと出ております。この数値というものを調べてみますと、いわゆるICRPで勧告されました最大許容量の大体百倍ということを目安にして、百倍程度のものならば放出をしてもいいということになっております。それは放射性廃液でございますが、ちなみに日本の放射線障害防止法というもので規定されております場合には、こういった放射性の廃液というものを流し出します場合には、流し出した周辺から外のところでこの最大許容量——日本法律できめられておるのは大体ICRPの値をとっておるわけでございますが——それの十分の一以内になるようにしろということがきめられているわけであります。しかし、アメリカ原子力潜水艦の場合には、十二海里より遠いところでは何を捨ててもかまわない、十二海里以内でも最大許容量の百倍程度のものは捨ててもかまわない。つまりこれは、あとで海の水で薄まってしまうということをある程度考えに入れているわけでございます。これはあと檜山先生からお話があると思いますけれども、IAEA、国際原子力機関放射性物質の海洋投棄につきましていろいろディスカッションがされております。それの中でいろいろな計算に用いられております数値は、むしろ薄まるということよりも、場合によっては、プランクトンであるとかあるいはその他の動植物でもって、そういった海中に放出されたものが濃縮される可能性もあるということを考慮しているわけでございます。そういった点から申しまして、廃液を流す基準というものが、アメリカの場合と日本の場合とで大きく違っているということを私申し上げたいと思います。  それから、ただいまは放射性の廃液の場合でございましたが、これは主として原子炉の冷却水を放出しております。大体この記録を読みますと、一カ月に一回くらいは必ず放出しておる。潜水艦の場合は、最初原子炉をあたためますときにどうしても水があふれてくるわけでございます。それをタンクにためることなしに、放出しているようでございます。  今申しましたのは液体でございますが、冷却水の中の放射性物質をとるために、御存じのイオン交換樹脂というものを用いております。このイオン交換樹脂も十二海里よりも外ならば、そして走っているときに回りの三海里以内にほかの艦船を認めないで、そしてそこが既知の漁区でなければ直接海洋投棄もしていいというふうに書かれております。こういった固体の放射性廃棄物を海洋に投棄する場合につきましては、日本法律によりますと、放射性廃棄物を封入した容器の比重は一・二以上であるとか、投棄する個所の海洋の深さは二千メートル以上であるとか、あるいはそういったものをどういうふうにして廃棄しなくてはいけないということが非常にきびしく規定されております。しかし、アメリカの場合には無条件で捨ててもいい、直接海洋投棄してもかまわないということがアメリカの海軍省の訓令に出ておるわけでございます。そういう基準が違うということは、日本の場合に特に注意しなければならないと思うのでございます。  それから、先ほどの国際原子力機関の勧告でございますが、これの中にも、放射性廃棄物を出した場合に、これがどの程度広がるかというようなことは、その場所その場所の立地条件によって非常に違うものである。あるいは新しい水と古い水との入れかわりであるとか、潮流の速さであるとか、そういった個々の条件によって著しく変わってくるものであるから、一般的なことを言うよりも、個々の場合についての立地条件の十分な調査が必要であるということが述べられているわけでございます。たとえば東京湾を例にとって考えますと、これは衝突あるいは座礁といったようなものの名所の一つというようにいわれているわけでございますが、そういう東京湾で、もし事故が起こったという場合についての東京湾自体の調査というようなことも、もし今後原子力船が何隻も入ってくるという場合には、今から始めておかなければ間に合わないのじゃないかと考えるわけでございます。  そういうふうに、舶用原子炉安全性につきましては非常に問題点が多いわけでございますが、安全審査ということについては特に慎重にやっていただきたいということを私は希望するわけでございます。  今度の原子力潜水艦につきましては、外国の港に百回以上すでに入っていて安全であるから安全である、というような見解が一部に出されておると伺っておりますけれども、そういった安全審査で済むことならば、原子炉規制法というものを廃止していただきたいと思うわけでございます。私たち横須賀で百キロワットの原子炉安全審査をする場合には、日夜どれだけの苦労をしておるか、また、その設置のためにどれだけ苦労をしたかということを考えましても、それの何百倍という大きさの原子炉がぽこっと入ってくるということについて自主的な安全審査が行なわれないということについては、非常に大きな矛盾を感ずるわけでございます。たとえばデンマークのコペンハーゲンの場合におきましては、原子力潜水艦の寄港というものを安全性の面からはっきり拒否いたしております。こういうような例もあるわけでございます。そういうように、舶用炉安全審査ということについては特に慎重にやっていただきたいということをお願いするわけでございます。  それから、これは多少本題からはずれることになるかと思いますが、最後にもう一言つけ加えさしていただきたいことは、やはりこの国会の審議の中で、原子力潜水艦に積むサブロックというミサイルにつきまして、これは核弾頭もつけられるが、普通の火薬の弾頭もつけることができるから核兵器でないというような議論が行なわれたとか、新聞で拝見いたしました。しかし、もしそういう議論が成り立つといたしますと、私非常にちゃちな自動車を持っておりますが、私の自動車はときどき冬の朝などエンジンがかからなくなることがあります。そういうときは、私、手で押しますと、やはり動くのでございます。私の自動車はガソリンエンジンでも動くけれども、手で押しても動く。従ってこれは自動車でないという議論は、おそらく通用しないと思うのでございます。サブロックという核兵器は何のためにつくったかと申しますと、四十キロも五十キロも向こうまで飛ばしてやる。それはなぜ必要かと申しますと、核弾頭であるからこそ、それを発射した潜水艦自身が安全であるためにそういう遠くまで飛ばしてやるわけでございます。サブロックに普通の弾頭をつけることも可能であるから、これは核兵器ではないということになりますれば、たとえばポラリスにいたしましても、ポラリスの頭に何もつけないで発射することも可能なわけでございます。そうすると、ポラリスも核兵器ではないという議論が成り立つわけでございます。このサブロックは、明らかにもともと核兵器用に設計されたものであるという点から、核兵器として、原子力潜水艦のスレッシャー型というのはすでにこのサブロックを積んでおるわけでございます。私はこれは核兵器を積んだ潜水艦であると考えております。  多少脱線いたしましたけれども、私の申し上げたかったことは、舶用炉安全審査というものは慎重にやっていただきたいということであります。
  6. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、檜山参考人よりお願いいたします。
  7. 檜山義夫

    檜山参考人 私は東京大学の農学部の水産学科で、もともと魚の研究をしている商売だったのでありますが、昭和二十九年に例のビキニ事件がございまして、ちょうどマグロを研究しておりましたので、それ以来魚の放射能のことをやりまして、今日では魚以上に、すべての食品について、放射能がどういうふうに入ってくるか、それがまた人間にどういう影響をするかということを調べております。  本日、先ほども服部さんから原子炉を積んだ船に事故があった場合のことのお話が出ましたが、この原子力船による海洋汚染ということを考えました場合には、どうしてもやはり第一には事故というものが、これは全然ないわけではないのでしょうから、これは一つのものだと考えるべきだと思いまして、ちょうど今委員長さんのうしろに張りました資料にはそれを第一にあげたのでございますが、これは時間の関係上省かせていただきます。また、私の専門からしても、とてもどういうことが起こるかわかりません。おそらく、あまり海の水とか魚とかには関係なしに、人間への障害が及ぶことでございましょうが、ここは省かせていただきます。   〔檜山参考人、図を示す〕  その次の方は、これは前の方は確率が非常に少ないのでございますが、原子力船というものを運航するに必要な廃棄物の量がどうであるかということをここで出した数字でございます。従来とも、原子炉にしましても、アイソトープの炉にしましても、その他の原子力開発ということが、とかく人間の環境へ放射能を出すということなしにできるかのごとき印象を持っていらっしゃる方があるかもしれませんが、決してそうではありませんで、どうしても出なくちやならぬ。従って、出すからには人間としては、最も人間に障害を与えないような形でそれを出すように工夫するのが、われわれ科学者、技術者の責任ではなかろうか。それには、それがどういうふうな形でどういうふうな量に出るのか、それを見ていかないといけないのであります。それからまた、それが人間に影響を及ぼすその基礎的な研究というものも必要なのでありますが、とかく今までくさいものにふたをされたような格好で今日までわれわれ仕事をしてきたのであります。  ここに一つの例として、今原子力船が、出す廃棄物は大したこともないというようなことをお思いになっている方があるといけませんから、廃棄物があるということをお目にかけるのでありますが、データがございますのは、さっき服部さんが言われましたアメリカの議会の公聴会の記録が唯一のものでありまして、それがあとの、ここにも持ってきておりますが、アメリカのナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスとナショナル・リサーチ・カウンシルで発行したラジオアクティブ・ウエースト・ディスポーザル・フロム・ニュークレア・パワード・シップというのがあります。それに出ております数字もそれがもとになっております。それから、国際原子力機構でブリニルソン報告というのを海洋汚染に関して出しております。その報告の数字も、みなそれがもとになっておる。これはサバンナ号のものでありまして、古いものでありますから、あるいは今日違っているかもしれません。それを持ってきますと、今ちょうど廃棄物と書きました下のところにあるのでありますが、Aというのは、五十日船を走らせ、オペレーションをしましたあとに、イオン交換樹脂にたまりました放射能を海に出すのでありますが、そのときに出す量が、クローム五一が百キュリー、タンタルムの一八二が百キュリー、コバルト六〇が百キュリー、鉄五五が百キュリー、こういう数字であります。それを人間が一人当たりからだ全体にそれ以上持ってはいけないという量をICRPと申しますが、国際放射線防護委員会できめております量でありまして、もちろん日本法律はこれに従っておるわけであります。その数量からやって参りますと、その数字が赤く書いてある数字でありまして、その右に、それでは何人分に当たるか。一隻の五十口のオペレーションで一番大きい数字を申しますと、実にタンタルムの場合なんかは五百万人分、コバルト六〇は一千万人分の許容量に相当する量であります。これは五十日のオペレーションで一隻で出す量であります。従って、三十隻、あるいは将来は三百隻にもなろうという船の出すのはいかに大きな量であるか、人間に障害を起こすことは決して小さなものではないということをお思いいただきたい。そのBというのは、リアクターをウォームアップする場合に出るものでございまして、これは前の方と比べますとずっと小さい。それから、私は原子炉のことはよくわかりませんが、もう一つ出るのが書いてありますが、それはあまり量は出ておりません。これはアメリカサバンナ号について発表されました数量だけでありますが、それでごらんになりましても、コバルトが一番注目すべきものであるということがよくわかります。それから鉄でございます。そのことは、国際原子力機構のブリニソン報告にも十分書いてあります。  ところが、一千万人分もの許容量に相当するものを出すということを言うと、非常に大げさに聞こえると思いますが、それを一体われわれはどういうふうに解釈すべきかということのお話をいたしたいと思います。といいますのは、これはそのまま人間の口に入ったときの人数が一千万人分であります。従いまして、これは海の中に出しまして、もちろん薄められるわけであります。薄められ方がどういうふうになるか、何も書いてございません。私、これは国際会議に行きまして、晩にカクテル・パーティになりまして、酔っぱらったときに一生懸命食いついて聞くのでありますが、なかなか言わない。昼間は一時間も人に講演させておいて、お礼は多分にくれるのですが、こっちが晩に聞き出そうとすると、どうしても言ってくれない。従って、そこのダイメンションの工合がわかりませんけれども、逆に、先ほどちょっと服部さんが触れられましたが、海水の濃度とそこに泳いでいる魚とか、海藻とかあるいはエビやカニの類、そういうものとの関係をわれわれは濃縮係数といっております。海水にあります濃度、つまり海水一CC当たりのそこにありますキューリー数と、魚の目方の一グラム当たりの中に入ってきますキューリー数と、その比を濃縮係数とわれわれいっておるのであります。つまり魚や何かは海水からからだをつくるわけであります。従って、ものをとりますから、海水の中にわずかしかないものも魚のからだの中にはたくさん入ってくるわけであります。ここでは、タンタルムについては不明と書いてあります。また、クロームは三百くらいでありますが、あまり実験がよくできていない。よく実験をやっております。私の教室なんかでもやっておりますコバルト六〇や鉄の五五について見ますと、コバルトというのは、ものによりますと約一万倍に濃縮するのであります。鉄の五五というのはさらに悪いことに一万倍にも、無脊椎動物のある種類によっては楽に濃縮しますし、十万倍というものもざらにあります。従いまして、つまり一CC当たりの海水の濃度、これが飲料水として許容されるものがここにございますと、それをとりましても、それの十万とか一万とか、そういう濃さに魚の方がなってしまうのであります。これがどのくらいの期間でなるかということは、そのアイソトープの種類と魚の種類とで違うわけでありますが、早いものでありますと数時間、中くらいのもので数日、おそいものでありますと数週間で、その海の水とこれとの関係がこういうふうに成立するのであります。従いまして、それを非常に薄くならないうちに食べてしまう、つまり薄くならない海水のところにいる魚を魚べたら、かなり大きな障害を及ぼすということが生ずる可能性が十分あるわけであります。  そういうものを一切、放射線公衆衛生とこのごろ言っておりますが、ビキニの事件以来われわれこういうものを研究しているのであります。そういうものをどういうふうに考えたらよいかということを、この表でお目にかけますと、国民全体が当たります放射線量というものはある程度に押えよう、この考え方が例のICRPの考えで、日本でもそれに従っておりますが、それは線量率、レントゲン・パー・イヤーという単位で見るわけであります。これは絶えずその人が受けるということを前提として、一般人と職業人と区別して、日本でも法律で規定しているわけであります。そういうものを見るのには、いわゆる長寿命の核種、ストロンチウム九〇、セシウム一三七などで、あとで時間があればお目にかけますが、そういうものをずっと見ていくことが必要であります。たとい短寿命核種でありましても、コバルト六〇や鉄は中寿命であるといってもいいわけであります。実はほんとうの短寿命、数日とか数時間で消えてなくなるというのは、たくさん前にあったのですが、その表から落としてきたわけであります。そういう寿命が短いもの、人間の命と比べて短いものが絶えずそれに供給されている。つまり、原子力船が三十隻あるとして、それが海に絶えず動いているとしますと、海は絶えずよごされているわけであります。それは国民線量として評価しなくてはならない。そのサンプルはどうするかと申しますと、やはり生産市場か消費市場でランダム・サンプリングするわけであります。これは悉皆調査をもってする必要はない。ランダム・サンプリングでほんのわずか抽出してくればよいわけであります。  それから、一番向こうから二番目にこまかく書いてあるのがございます。それは東京の例を持って参りましたが、ストロンチウム九〇とセシウム一三七、この二つに関して、どういう食べものからどのくらい入っているかということを出した表であります。あれでごらんになりますと、海藻や魚はほかの野菜や穀類などと比べまして非常にわずかでございます。そういうふうなことを見ながら、これをどのくらいに押えていくかということをコントロールしていくことが必要であります。それによって将来生まれてくる日本人があまりめちゃくちゃにならないように、遺伝的な影響までも考えまして、それから、一生涯のうちに白血病になったり何かする確率をそう高くしないようにする。もうすでに広島、長崎でほかの国よりはふえております。だから、それをそんなに上げないように押える。そういうようにここでコントロールしていくことは、当然行政責任あるところのすることだと私は思います。  その次は、さっきもちょっと言いましたが、非常に濃い魚、ほんのわずかでありましても、それを食べたら一ころ——一ころという言葉は悪うございますが、一ころになるといけないということであります。放射線の量は、では、どのくらいで一ころであるかというと、大体全部死んでしまうというのが一これは実際にガンや何かのときには、数千レントゲン郷何か一度にかけるわけです。国連の科学委員会報告あたりでも、LD五〇、死亡率五〇程度のところを二百ないし七百レントゲンくらいに押えております。そしてICRPの方では、一度に二十五レントゲンかかった人はお医者さんに見せるわけです。それから、原子炉事故や何かがありましたら、われわれが飛び込んでいって、バルブを締めるとかなんとか、そういったことをやらなくてはならぬ。挺身隊が飛び込んでいくときの計画したものは十二レントゲンです。十二レントゲンかかったらすぐ帰ってくるというような計画で、われわれは飛び込むわけであります。そういうことでこれは押えておる。前のビキニのマグロの事件のときは、恐怖心ばかりあって非常に困る、というよりは、ほかに放射能がなかったから、少しでも押えようということでああいうことをやったのであります。今度は、あとでお目にかけますように、至るところに放射能がありまして、あそこに書いてございますように、ビキニの当時はずっと左の方で、もうありませんが、ビキニの当時から比べますと何十倍、何百倍と、今日皆様の骨の中にはストロンチウム九〇がふえておるわけであります。あれはニューヨークの例でありますが、日本でももちろんそうなっております。そういうふうに、あの当時から比べまして今日は至るところにあるのですから、今放射能をからだの中に入れるなといったら、物を食えないのです。水も飲めない。だから、許容量なんということを言っていましても、そこになったらだめだといったら、みんな死ななくてはならないというばかなことが起こる。従いまして、日本人の放射線公衆衛生をどのように考えるかという場合には、日本人の障害をなるべく少なくするということをわれわれ考えなくてはなりませんので、そう低いところへこれを押えることはできません。  だけれども、今日いまだに私らが不思議に思っておりますのは、ブリニルソン報告、IAEAでも、海水に対しての許容線量の割当をしているのでありますが、日本ではまだ、環境の汚染のレベルをきめて、国民を放射線から保護するというふうな立場に立っておりません。放射線審議会というのがございますが、そこでは、原子力施設から出すものはどのくらい出していいか、あるいは鉱山がありますと、それから出すのはどうしていいか、こういうふうに幾つでも同じようなものがかかってきまずから、許容量は何倍かになってしまう。それも、出す方で、出すのは幾らというふうにきめておりますから、海の水はどうだ、土の上はどうだ、食べものの中はどうだというふうにきめておりませんで、われわれの方で、アロケーション、つまり割当でございますが、海の方からくる食いものについて、ブリニルソン報告ではたしか二十五分の一かと思いましたが、割当をしております。日本は割当をしておりませんから、今日これについて魚の許容量の方は、上の方は出していない。下の方も、もちろん再三われわれかんかんがくがくで議論しておりまして、これをきめるのは、私らは計算はできますが、むしろ政治行政の上からこれをおきめいただく以外に方法がありません。  従いまして、私が申し上げたいことは、こういう原子力の開発は大へんけっこうでありますが、環境汚染なしにいけるということではないのでありますから、その環境汚染によって起こる人間の障害をなるべく少なくするような方法で、一つ原子力開発が行なわれるようにお願いしたいということであります。  ついでに、あそこに持って参りましたデータがございますが、ちょっと説明を申し上げますと、委員長さんのすぐ向こう側にありますのが、ビキニ以来海の水産物の中にありますストロンチウム九〇の量がどういうふうになつておるかというのを説明した図でございます。上の方にございますのは、黄色くなっておりますが、淡水魚でございます。そのほかの色の魚は海の魚でございますが、水色のが表層にいる魚、緑色のが中層にいる魚、赤いのが底にいる魚でございます。それから、黄色い貝は、海岸——これは愛知県の方に私どもの実験所がございますから、そこで常にはかっております。いつもきまったところからアサリのからをとって、分析しておる値でございます。この縦軸は回数でございます。従いまして、これで一口にいえることは、大体海の魚と淡水魚とは百倍くらいの濃さの違いがある。つまり淡水魚の方が濃い。というのは、原水爆の実験がありまして、上から降って参りますのは雨で降る。地面を流れ、川に入るというふうにしていきますと、海には非常に多くの量の水がありますから、それが薄まるわけであります。ところが、ビキニで不幸な核爆発がございましたために、あそこの水色で書いてあります魚、あれは表面でありますが、ビキニ当時に非常によごれた。淡水魚と幾らも変わらないくらいよごれた。それがだんだん近年になるに従って、表面の魚は減ってきておる。それは海水の量が非常に多うございまして、一時ビキニの島から出たものは、たくさんの水とまじり合いまして薄まった。その反対に、むしろ底にいる魚はどんどん上に上がっておる。ビキニの事件の当時は、底にいる魚は少なくて、上にいる魚が多かったが、今度は底にいる魚も上にいる魚と同じようになってきた。むしろ逆に、底の魚の方が多くなった、こういう現象が見えております。それから、淡水と海水とがまざり合うようなところの貝がらであります。そこのアサリとかハマグリとか、こういう沿岸のものでございますが、川がもちろん流れ込んでいる。海に入りまして非常に多くの量の水に薄められる。それがほとんどきいてこないのであります。  一番向こうの端、これは水産物とは関係ございませんが、ニューヨークの牛乳の中の短寿命核種であります。下に二つ線がございますのは、核実験の期時を示しております。それでごらん下さいますと、牛乳の中にありますいわゆる短寿命、中寿命の核種、あそこではヨード一三一、バリウム一四〇、ストロンチウム八九と、それぞれ上から順に書いてありますが、これは核実験があるたびにきゅっと上がるのがはっきり見えております。  それで、ここへ何のためにそれを持ってきたかと申しますと、原子力船開発の場合に、海の方でありますと、長寿命の核種を見ていきますと、こういうように多量の水で薄まります。ちょうどストロンチウム九〇やセシウム一二七について、陸の食べものについてわれわれが心配しなければならないような、つまり人間のからだの中にありますストロンチウム九〇は、あれだけ核実験でふやしておる。当然まだどんどん上がります。核実験の方は、上からやったものはたくさんありますので、それ以上にあまりふやしていただきたくないのです。幸いにして、海水は量が非常に多いので、海の方にはまだ包容力があり、そちらの方は安心だ。けれども、その次に、短寿命の核種に見ますように、ああいうふうにピークがきゅっと出る。そういう現象が、つまり原子力船が捨てましたものがあまり薄まらないうちに魚がそれをとりまして、先ほど申しましたように非常に多く濃縮しますから、非常に濃いのが、百万尾に一尾とか一億尾に一尾とか、そういうふうな割でぽろっぽろっとあることになる。そういう現象、それがこわいのでありまして、一般にあちらのストロンチウム九〇の人骨の中の増加を心配するような現象とは、現象が全然違うのであります。それをはっきり申し上げるために持ってきたのでございます。  大へん長い間、御清聴ありがとうございました。     —————————————
  8. 寺島隆太郎

    寺島委員長 質疑を行ないます。  田中織之進君。
  9. 田中織之進

    ○田中(織)委員 きわめて不勉強なので、しろうとくさい質問でありますけれども、三人の先生のうちどなたからでもけっこうであります。  今度日本政府が、原子力船の試作に本年から着手しようとされておるわけであります。日本の原子力開発、ことに平和利用の問題については、科学技術庁を中心にして非常な努力をいたしておりますけれども、一般国民の理解するところでは、まだその緒についたばかり、こういうふうな一般的な理解ではないかと思うのであります。そういう観点から見ますときに、原子力産業の確立という面から見て、原子力船の建造にも着手するということは、どれだけ早くやっても早過ぎるということはないと思うのであります。しかし、全体としての原子力の利用、特に原子炉設計、建造というような面についても、日本自体としてのいわゆる生産能力といいますか、そういう面においても、まだ炉そのものは外国から輸入するというような実情の段階原子力船の建造に着手することは、いささかどうかと思う、こういう感じをしろうとなりに持っておるのであります。  その点から見たら、原子力開発、平和利用というような点で、日本としては当面何を重点に置いていくべきか。優先順位というものをもしつけられるということであれば、原子力船よりももっと早く進めなければならぬ問題があるのじゃないか、こういうふうに考えるのでございますが、この点については諸先生方はどういうように健お考えになっておられますか。  この点は、同時に、いま服部先生と檜山先生の御意見を伺ったのでありますけれども、特にこれは原子炉を船に乗せて、船の推進力にするという場合の安全性の問題に主として重点を置いてお話をいただいたように思うのであります。そういうような点については、陸上の場合と海上の場合との差というものについても今触れられたわけでありますけれども、そういう安全性の確保というような観点から見ても、政府の現在の原子力開発計画を、学者的な立場で皆さん方がどういうようにお考えになっておられるか、伺いたいのであります。われわれしろうと的な立場で見るような段階において、原子力船の建造に政府が取り組むということは、いささか早計ではないかというような感じを持ちますので、ごく一般的な質問でございますが、この点についての御所見があれば伺いたいと思うのです。
  10. 西脇仁一

    西脇参考人 舶用炉立場から申し上げさせていただきます。  現在のところ、万が一の危険ということを、まあそういうことはないのですが、かりに抜きにして、安全度を多少許すならば、今日でも原子炉日本技術でつくれると思います。しかしながら、万一というか、非常に安全にやりたいというものでございますから、現在のところは、約五年なり、これから十分に勉強して慎重にやるというのが大体の構想じゃないかと予想しております。やはりこういう問題は、あらゆる角度から時間をかけて研究しなくてはいけない面がある。そういう要件を考えますと、やはりなるたけ早い時期から具体的に勉強した方がよろしい。現在日本の造船所関係、造船所のみならず電気会社、それから重工業の優秀な技術者かなり集まりまして、時間も十分かけて研究して参ったのでございますが、そういう意味から申しますと、もうぼつぼつ本物をやるという前提で慎重に研究しないといけない時期にきている。それをやりましてもかなり時間がかかります。しかも、今日、自分らが夢にというか、かなり具体的に設計しましたものをすぐつくるというのじゃなしに、それをもっと厳重に吟味するというのに時間をかけてやる。そうしますと、やはり技術者の常かもしれませんが、具体的な問題を対象にしまして、しかも安全にやるという前提でやりましても、時間がすぐたちますから、なるたけ早目に具体的に勉強していくのがいいじゃないかと、私、個人的に思っております。  あるいはすでにお聞き及びかとも思いますが、日本のある会社で圧力容器をつくる技術を一生懸命やりましたところ、向こうの連中も驚くほどきれいな溶接、それから清潔なやり方の技術開発しておりますし、そういった個々のものはかなり進んでおりますが、何しろ安全というためには非常な総合技術が必要でございまして、先ほど檜山先生のおっしゃった放射能問題のみならず、オートマチック・コントロールの問題にしましても、それからいろんな操作機構、それから水を扱うキャンド・モーター一つにしましても、あらゆる面でまだまだやらなければいけない具体的なものの積み重ねが必要であります。安全を期せば期すほど、キャンド・モーター一つにしましても、早くつくって安全を十分確かめる。それからヘリウムの冷凍関係にしましても、早く準備段階を終えて、しかも安全の段階にいくというためには、なるたけ時間をいただきたいのでございます。さあ、もうことしはよくなったからお前来年度つくれといわれるよりは、今から金を相当かけて具体的に研究したいというのが、私どもエンジニアリングに関係している人間の念願でございます。そういう意味から申しますと、あるいはこまかい点ではまだまだ審議すべき点が多いと思いますが、その点を考慮に入れても、今からじっくりと具体的に研究していく。ちょっとこの間計画書を見せていただきましたが、約八年間ほどかかってやるような一案がございますが、やはりこのぐらいかければ、かなりしっかりしたものができるという感じを持っております。すでに先例としましていろんな実例が私どもには入っております。  それから、先ほど服部先生がおっしゃいました放射能安全の問題でございますが、現在私ども関係の技術者は、原子力船に生じましたものは、極端な言い方をしますと、絶対に海水に捨てないという安全策をやっております。そのために現在原子力船は非常に値段の高い虜のはやむを得ないのでございますが、安全を第一にして、そのために非常な技術的なエネルギーをさいているという感じを持っております。そしてそれは、今後この開発にあたりましても、かなりの精力をさくと予想しております。
  11. 田中織之進

    ○田中(織)委員 西脇先生の御意見によりますと、原子力船の建造に着手するといっても、八年計画で、これから設計その他いろいろな面の研究を進めるということだから、完成するまでには相当の時日があるから、具体的なそういう面についての研究を始るということは、むしろできるだけ早く始めてもらいたい、こういう御意向のように伺うわけなんです。  その点、服部先生は、特に安全性の問題等で、私はもっと先に手をつけなければならぬ問題があるような、ごくしろうと的な考え方なんですけれども、この点はいかがでしょう。
  12. 服部覺

    服部参考人 安全性の問題もございますが、この原子力船関係の資料というようなものを拝見いたしますと、諸外国の原子力船の推進の体制というものをいろいろと御説明になっておるようでございます。この中で問題になります点は、よその国でやっておりますときに、その船の研究ということ、それから同時に、その船に積む原子炉をどうするかという研究、それからこの安全性研究、この三本建てが並行をして進められているということに、外国の場合には非常に大きな特徴があるのではないかと思っております。  この原子力船開発事業団法案によりますと、まずとにかく原子力船を一隻つくるということなんです。原子力船を一隻つくるということになりますと、それに積む原子炉というのは、この原子炉も積んでみる、あの原子炉も積んでみるということには参らないわけです。原子力船にとって大事なことは、やはりどういう原子炉を使うか、原子力船の特徴は原子炉にあるわけでございますから、その原子力をどういう原子炉で取り出すかということが非常に大事な問題です。そうしますと、この第一船に積む原子炉をどういう型の原子炉にしたらいいかということの研究は、非常に大きな問題になってくるのじゃないか。その原子炉の型をきめるときに、この安全性の問題というものは当然並行して進められていく問題になるのではないかと思います。  その点、私も詳しいことは存じませんけれども、現在のこの原子力船開発事業団法案の中で考えられている原子力船にどういう原子炉を積んだらいいかということについての検討が、少し不足なのではないかという気がいたします。もう一つは、これは結局、実際にこの原子力船をおつくりになるのは、民間のメーカーがおつくりになるわけです。そのときに、ある特定の型の原子炉をつくるときめてしまうと、ほかの会社は見向きもしないということがあるのでは大へん工合が悪いのではないか、そういう点。  もう一つは、この法案の内容を拝見いたしますと、民間資金というものがある程度入るようになっております。それがコンスタントに入るものか、初年度だけのものなのか。そういった点にも一つ大きな問題がある。今後の原子力船開発に問題があるのではないかということです。先ほど西脇先生もおっしゃいましたように、日本の場合、特に安全性に力を入れるというふうな形でこの原子力船研究が進められていくとすれば、やはり資金繰りということについても十分なものが準備されなくてはならないのではないか。だから、原子炉の型をどうしたらいいかということ、あるいはそれに伴って安全性をどうするかということについて、十分な資金繰りができますことを希望するわけであります。
  13. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点は、事業団法をこれからこの委員会で審議いたしますが、私らもしろうとはしろうとなりの立場で、当局との間に質疑を進めて参りたいと思うのです。  もう一点、これは服部先生にお伺いをいたしたいと思うのです。私はしろうとなりでありますが、私の郷里へ帰る途中の大阪の熊取にようやく場所がきまって、ただいま建設が進められておるのでありますが、例の研究用の原子炉の設置問題です。私は和歌山でありますが、関西方面が、宇治を初めといたしまして、大阪の四条畷と、場所の問題ではずいぶん問題が起こったわけであります。そのときに、地元の人たちを説得するのに、研究用の原子炉にいたしましてもそうでありますけれども、いわゆる核兵器に使う瞬間的な核物質の爆発という問題と、原子炉などで除々に燃焼していくという核物質の燃焼というものとは区別して考えなければいけないんだ、こういうことが説明されるものですから、その点からの理解が、そういう関係者の間には、広島、長崎あるいはビキニ等における核物質の瞬間的な爆発という問題と、原子炉において除々に燃焼していく過程における放射性物質の性質というものとの区別を、一般的にした形で納得をしておるのではないかというふうに理解しているわけです。しかし、先ほどの服部先生の立教大学横須賀で進められております百キロワットの原子炉の関係から出てくる放射性物質の量は一、二グラム、たとえば近く日本へ寄港しようというノーテラス、いわゆる原子力潜水艦、これは推定によるとおそらく五万ないし十万キロワットの出力のものではないかという原子炉を搭載していて、そこから出る放射能の量というものは、広島に落ちたものは一キロですか、それをはるかに上回るところからの放射性の物質が出てくる。こういう灰の量の問題について触れられたわけです。その点からいって、やはり核爆発の問題と核物質のいわゆる燃焼といいますか、そういうものとの一般的な相違点、その点が放射性物質の生成というものとの関係について国民が理解できるものがあれば、特に発電用の原子炉の問題であるとか、あるいは研究用の原子炉の問題等、熊取の問題、あるいは京大にできる関西の研究原子炉の問題のような騒ぎがなくて済んだんではないかということも考えられるのです。この点については、服部先生の御見解はいかがですか。
  14. 服部覺

    服部参考人 原子力の特徴というのは、非常にわずかの核分裂性物質から非常にたくさんのエネルギーを取り出すことができるということにあるわけです。それを、たとえば百万分の一秒といった非常に短い時間の間に連鎖反能を済まさせてしまうのが原子爆弾であり、そうしてそれを人間が制御しながらエネルギーを取り出すのが原子炉であるということは、先ほど田中先生おっしゃった通りであります。ですから、原子爆弾原子炉というものは、同じ核分裂性物質の核分裂の連鎖反応を使うということでは、全く同じ原理でございます。ただ、片方は無制限に爆発をさせ、一方はそれを制御しながら燃やしてやる。しかし、制御しながら燃やしてやるといいましても、当然核分裂を起こすわけでございますから、その中に灰がたまって参ります。爆弾の場合には、これをぽかんと一面にまき散らしてしまうわけです。しかし、原子炉の場合には、この灰は燃料棒の中にたくわえられております。もちろん、死の灰といいますものの中にも、非常に寿命の長いもの、短かいものがございます。寿命の短かいものはどんどんなくなってしまいますけれども、寿命の長いものは、やはり原子炉の場合でも燃料棒の中にたくわえられているわけです。それがふだんは直接外には出て参りません。しかし、先ほど申しましたように、何かの原子炉事故が起こったような場合——事故ということは当然あり得ることで一その事故が起こった場合、たとえば燃料棒が溶けてしまうとか、小さな爆発が起こるとか、火事が起こるといったような場合には、燃料棒の中にたまっていた非常に強い放射性物質が外へ漏れてくることがあるわけです。その中にたまっていた灰自身は、核爆発実験で空から降ってくる灰と、原子炉の中でつくられた灰と、全く同じものでございます。しかし、一方はふだんは燃料棒の中にたくわえられている、爆弾のときには一ぺんにぽかんと爆発してあたりかまわずまき散らしてしまう、そういう点に違いがございます。出てくるものは同じでございますから、事故が起こった場合にはそれが外へ出てくるという点を私たちは心配するわけです。
  15. 田中織之進

    ○田中(織)委員 先ほど、アメリカ海軍の原子力潜水艦のいわゆる放射性物質の海洋投棄の問題について、十二海里外であれば、他の艦船を三海里以内に見ない場合には無制限に投棄していい、こういう服部先生のお話がございました。これは檜山先生からお答えをいただいた方が適当かと思いますけれども、一般に海洋の放射性物質による汚染を防止するというような国際的な条約があるのかどうか存じませんけれども、国際的な連帯性のもとにおけるアメリカ海軍のそういう指示事項というものが許容されておるのかどうか。この点は、一般に海洋の放射性物質による汚染を防止するという国際的な課題から見た場合に、勢い問題になるのではないか。しかし、そういう軍事的な関係のものであれば、国際的な汚染防止の会議等においても、もうワク外の問題として触れないのかどうか。そういうような点はいかがでしょうか。
  16. 檜山義夫

    檜山参考人 私、国際法専門じゃございませんから、そういう点わかりませんが、最近ここ一、二年の間にウイーンの国際原子力機構で海洋汚染の国際法に関する会議が行なわれております。これは、専門家でありませんから知りませんが、軍艦の方はおそらくそれから除外されるものだろうと思います。船も、場合によっては入らないことはないと思いますが、そういう国際的に規制する方向はありますけれども、それに対する——私は科学者でございますから、科学者から見た誠実性がないように見えます。言い方は悪いかもしれませんが、ざる法みたいなもので、それも法律ができずに、勧告ということになりそうだと聞いております。  そちらの方のことはよくわかりませんが、さっき西脇参考人がおっしゃった、日本のこれからやろうという原子力船は、さっき私が申しましたサバンナ号のような、廃棄物といっていいか、排泄物といっていいかわからないものでございますが、それを出さないためにひどくコストのかかるようなことをやろうとしているということをおっしゃったようです。そうすると、日本は何か損するような気がするのです。というのは、ほかにたくさん原子力船がおりまして、それがなるべく自分のところには捨てずに、どんどんよそに向かっていって捨てる。足の長い船でございますから、どこにでも行けるわけです。自分のところと定まっているようなところに捨てるはずがない。そういうことをやっているのに、日本だけわざわざコストをかけてそんなにきれいにする必要はないのじゃないか。といったところで、じゃんじゃん海をよごせと言っているわけじゃございません。  ですから、結局今御質問の通り、問題は国際問題でございまして、海は世界各国が使っている。日本の特殊な立場は、もう私が申し上げることもございません。結局世界で一番魚をたくさんとっているのは日本国でございますし、それから日本人が世界で一番魚をたくさん食べております。従いまして、海洋の汚染から起こる被害は日本に一番大きいということだけは事実でごいざます。けれども、海洋をよごす原因は日本はきわめて少ないし、また、さっきからお話のように良心的に過ぎるまでの配慮をなさるのは、ちょっとつまらないような気がするわけです。
  17. 寺島隆太郎

    寺島委員長 岡良一君。
  18. 岡良一

    ○岡委員 檜山先生は国際会議にしばしば御出席でございますが、この原子炉の安全対策あるいは放射能の汚染対策等については、わが国の学者の皆さんのレベルは非常に高いものではないか、こうかねてから私は思っているのでございますが、いかなるものでございましょうか。
  19. 檜山義夫

    檜山参考人 どうも、レベルが高いか低いか、自分自身ではわかりませんが、不幸にして海洋の汚染と魚の汚染についての手のつけ方が早かったことは、幸いか不幸かわかりませんが、ビキニ事件があったということはございました。しかし、これはもちろんアメリカやイギリス——イギリスはことにたれ流し式の原子炉を持っております。たくさん仕事をやっておりますし、そういう調査研究にかけている費用は、日本とは二けた、三けた違う費用をかけております。今のところは全然太刀打ちがならない状態であります。   〔委員長退席、山口委員長代理着席〕  初めはこっちがスタートが早かったのですが、今度は向こうの方がスピードが早うございますので、問題にならない状態になっております。大部分はコンフイデンシャルで、公表しておりません。日本データはどんどん出しますので、世界で大へん重宝されて、従って、わずかな貧弱なデータでございますけれども、世界ではそれを唯一の資料としてずいぶん使ってくれているというのが現状と思います。
  20. 岡良一

    ○岡委員 アメリカ局長は来ておられますか。たしか二月中旬に、日本側からアメリカ政府に出した質問に対して答えがあった。その中の第一点は、日本側が安全評価を行なうデータをわれわれに渡すことはできない、しかしノーテラス型原子力潜水艦の安全はアメリカが保証する、こういうふうな表現の答えがあったと聞いておりますが、いかがですか。
  21. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 ただいま岡先生御指摘の通り、過般関係各省といろいろ協議をしまして、相当膨大な、いろいろな安全性も含めました諸点を質問いたしたのでございます。それに対しまして、向こうから一部その回答がございました。その回答を今いろいろ関係各省とも検討いたしますと同時に、またその内容につきましてもアメリカにいろいろ接触しておる段階でございます。今おっしゃいましたような点については、まだはっきり私ここで申し上げる段階でないと存じます。ただ、新聞その他にはちょっと出ておったようでありますが、しかく簡単な、質問というよりも、いろいろな点をまぜまして相当詳しく聞いておる次第でございます。
  22. 岡良一

    ○岡委員 これは「朝日ジャーナル」ですが、これにもはっきり安全保障書は提示できないという回答がきたと書いてあります。海上の人命の安全に関する条約の勧告の中でも、やはり原子力船安全性に関しては安全保障書を備えつける、あるいは運転の基準書を備えつける、そしてこれを自由に閲覚せしめるということが勧告されておることは御存じの通りです。  そこで、これは檜山先生にお尋ねをいたしますが、アメリカ側の回答は、私の聞いたところでは、日本が安全評価をするようなデータを出すことはできないと、こうかりにアメリカが申してくるとすれば、一体われわれは何で安全の評価ができるか。私どもしろうと考えだが、先ほど来、服部先生や檜山先生のお話にもあったように、原子炉の持つ潜在的危険性というものの評価がやはり原子炉安全性評価する場合における基本だと思う。これが全然出されない。あるいはまたこれが東京湾に入ってるということになれば、相当船舶の航行の激しいところで、しかもその入り口は難所といわれている。だから、運転基準書というものをわれわれに示してもらわなければ安全評価はできない。こういう点、安全評価書も出さない、運転基準書も出さない、しかし信用しておけ、まことにこれは非科学的な話なんですが、学者としての立場また原子力専門の学者としての皆さんのお立場から、いかがなものでしょうか。こういうことで、一体われわれは安全性というものを確かめることができるものでしょうか。率直な御所信を服部先生、檜山先生にもお聞きしたいと思います。
  23. 服部覺

    服部参考人 先ほども少し申し上げたつもりでございますけれども、私たち科学者というものは、データがなければ判断のやりようがございません。原子力潜水艦に関する限り非常にわずかのデータしか得られておりません。そのわずかのデータから判断いたしますと、私たちの判断した範囲では、この原子力潜水艦に積んでいる原子炉は、原子力商船やその他陸上原子炉と比べて非常に潜在的な危険性の大きい原子炉だということが考えられます。と申しますのは、先ほど申しましたように、非常に大きな超過反応度を持たせようとしていること、それから制御棒の数を減らそうとしていること。これはアメリカ原子力潜水艦に積んでいる加圧水型の原子炉は、最初のS2Wというのから最近S5Wの2というのまで発展してきておりますけれども、その発展の過程というのは、できるだけ超過反応度を大きくしょうということと制御棒を少なくしょうということに置かれているようであります。そういう点は、先ほど申しましたように、非常に安全性を無視した設計であるということが言えるわけであります。そういった非常にわずかしか得られてないデータからでは、非常に危険だ。極端な言い方をしますと、現在あるほかの原子炉よりも、どの原子炉よりも危険な原子炉を積んだものが入ってくる。そしてそれが同じ横須賀の中に、私たちが百キロワットの原子炉を設置して運転するときには非常にきびしい規制を受けている。しかし五万キロの非常に危険だと思われる原子炉、しかも私たちには全然データがない以上判定しようがないものが、安全審査なしに入ってくる。私たち原子炉は、横須賀かなり人口の少ないところにつくってありますけれども、今度横須賀の港に入るといたしますと、これは横須賀人口の最も稠密なところから数百メートルあるいはせいぜい一キロメートル程度のところに停泊する。それが安全審査なしで入る、そこに原子炉が置かれるということになりますと、私たちとしては非常に矛盾を感じるわけです。  と同時にまた、現在私の知っておる範囲では、横須賀港について、いろいろな立地条件その他についての調査というものは行なわれていないと思うのです。また、そういった原子力船が入ってきた場合のモニタリング、放射線の監視をどうするかということについても、何の手も打たれていない。あるいはバックグラウンドの測定といったことも、行なわれているとは私は聞いておりません。そういった状態の中に、何の準備もなしに、安全審査もなしに、最も危険な原子炉が設置されるということになりますならば、今後日本じゅうどんなところにどんな型の原子炉を設置してもかまわないじゃないか。そのくらいなら、原子炉規制法はおやめになった方がいいじゃないかという気がするわけでございます。
  24. 檜山義夫

    檜山参考人 事故の方のことは、今服部さんがおっしゃいました。私は廃棄物といいますか、排泄物といいますか、そちらの方のことを申し上げますと、私が知っておる限りのことは先ほど申し上げました。それ以上のことはわかりません、と申すよりは、発表されておりません。従いまして、今度はどういうふうなものを、どれだけの量を、どういう形で出すということがわかりません限り、われわれが日本国民の受ける障害を減らすために、あるいは除くために進むべき調査、対策、方策は見当がつきません。潜水艦はこういうものを出しますけれども、もぐっておる状態で出します。おそらく探知することは、非常な努力をしない限り無理だろうと思います。でも、そういうことをするということが、もし何かそういうものを日本の近海で出すということを制限することにでもなるなら、それはしなければいけないことかもしれませんが、ほとんど事実上不可能です。  それから、先ほど申しましたような、あるいは一ころにでもなるかもしれないような、そういうものの検出というのも全く不可能でございます。これはビキニのときのマグロみたいに、マグロというのは特別な魚でございまして、大きな船で持って参りますから、わずかの港で、当時は五つの港でありますが、そこで押えて全部検査する。今度のはむしろ、問題はマグロでございませんで、もっと多種多様の魚であります。それがしかも出現する確率が非常に低いものでございますから、その網をランダム・サンプリングでやってうまくひっかかるかどうか、これもわかりません。しかもたとえばサーベーするとしまして、どのくらいの範囲でサーベーしていいのか、これは出すほうのかたに聞かない限り、こちらでは見当がつきません。  しかも、従来とも経常的なサーベー、調査を、科学技術庁、原子力局がお世話して、水産庁あるいは水路部その他の船がやっております。大学の船もやっております。ときどきそういうようなもの、いわゆるわれわれが言っておりますホット・スポットという、非常に高い放射能のある海域が出ております。そういうのから見ましても、今すでに三十隻が動いておるのでございますから、そういうものが方々で出しているのだろうと思いますが、そういうものにたまに当たるということは、全く大チャンスでございます。その確率をどのくらいに見、押えていったらいいのか、こういうことになりますと、どのくらいの日本人が障害を受けるということまで許すかという問題になってくるわけであります。はなはだ調査の企画も立てにくい問題で、考えようがなくて困っております。
  25. 岡良一

    ○岡委員 安全保障課長なりアメリカ局長にお伺いいたしますが、今、原子力潜水艦は、現在太平洋艦隊なり第七艦隊に何隻配置されておりますか。
  26. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 アメリカ側から正式に聞いたわけではございませんけれども、新聞報道その他によりますと、数隻ということになっております。太平洋におりますのが数隻ということであります。
  27. 岡良一

    ○岡委員 さらに最近の新聞報道などを見ても、いよいよ原子力潜水艦をよけいつくるのだ、予算を見ても、アメリカの国防費の中で原子力関係の費用だけがどんどんふえている。ソビエトも、一九六〇年には原子力潜水艦ポラリス型をつくったという声明も聞いています。英国もすでに四隻の原子力潜水艦、ポラリス潜水艦の建造の予算要求をしている。こういうわけで、どんどん原子力潜水艦もふえてくる。  そこで、檜山先生にお伺いいたします。これは申し上げるまでもなく、先生の御専門のお魚の関係です。また、われわれ国民としても、お魚を常食にしておるのだから、関心を持たざるを得ないわけです。一体こういうふうにどんどん原子力潜水艦がふえて、先生の言われるように、イオン交換樹脂などは、いわゆる海の底にたれ流しという状態でやられてしまうというようなことですね。これはもう日本の漁場というものは、放射能で汚染されるということが非常に多い。こういうような状態に対して、檜山先生、一国民という立場から、どうあるべきだとお考えになりますか。
  28. 檜山義夫

    檜山参考人 今のお返事になるかどうか知りませんが、第一はストロンチウム九〇とかセシウム一二七のような長寿命核種については、まだ海にはずいぶん余裕があるように思うのであります。というのは、核実験の影響が陸に非常に強く出ておりまして、海には大して出ておりません。一番向こうから二枚目の表でごらん下さると、海藻とか魚介類からのコントリビューションはまだ大したことはございません。これは今まで幸いにして薄める役をしていたのでありますから、これを別にあげる必要は毛頭ないわけでありますが、もし核実験や何かのこと、あるいは陸上の食べものから入ってくるものと比べると、そういう長寿命核種については、将来ともどれくらい原子力船がふえ、また廃棄物をわれわれが海洋に投棄しなくてはならないか、わかりませんが、さっきちょっと申しました一ころというような現象と比べますと、割合と安全、まだそう心配しないでいいのではないか。  ところが、さっきの、いろいろな、非常にわずかな魚が非常に強い放射能を帯びるという現象が起きる。これは原子力船に限りませんで、海洋への廃棄物の投棄によっても起きるわけです。これの問題が一番大きな問題になると思うのであります。日本国民としての考えと申しますと、やり日本人が世界で一番魚を食べているということと、それから世界の海のほとんどすみずみに至るまで日本の漁船が行って魚をとっております。従って、地理的にただ日本の近海が汚染されてなければいいというだけの問題ではございませんで、問題は世界じゅうの汚染の問題になってくると思います。そういたしますと、これは日本国民としてと仰せでございましたが、世界人類としてこの問題は考えなくてはいけないのではないか。しかも、日本国民がことにそういう魚を利用するということが多いのであるならば、日本がむしろ指導的な立場に立って、世界人類の障害をどういうふうにしたら防ぐかということを真剣に考えていかなくてはいけないのじゃないかと思います。一方では、もちろんその原子力船それ自体の構造の改良というものによって事故を減らすとか、そういう廃棄物を少なくするということが行なわれ、他方において、それをどういう形にして海に捨てたらいいか、どういう形にしたらそれが魚や何かに入っていかないものになるかというような基礎的な研究、両方のサイドから攻めていく以外に方法はない。むしろ日本国民というよりも、世界人類のためにも日本国民がやらなければならないというような感じがいたします。
  29. 岡良一

    ○岡委員 それでは、最後に原子力基本法の問題です。原子力基本法の第二条は、特に当時学術会議の皆さんの強い要望で織り込まれた。平和目的に限る、あるいは民主的運営、公開を原則とする。学術会議のほんとうに強い要望で、私どもはあの第二条というものに、それをそのまま織り込んでおるわけです。  そこで、私は、学術会議の、特に原子力委員会に所属される方として御所信を承りたいのであります。原子力潜水艦日本に寄港するということは、そうした公開、民主、平和という大原則の立場から見て、たとい日本の原子力基本法というものが外国の軍事目的規制することはできないとしても、あの二条に盛られた精神というものは、学術会議の御要望であり、同時に国民の大きな悲願であり、また一つの勇気である。それがそのまま象徴的に表明されておるのがあの第二条である。そういう崇高な第二条というものの立場から考えてみて、学術会議の皆さんとして、当時、平和、民主、公開の原則を強くわれわれに要求された皆さんとして、原子力潜水艦の寄港を認めることは、安全性の問題を越えた道義的な意味において、あなた方は賛成をされるか。檜山先生なり服部先生の率直な御意見を聞かせていただきたいと思います。
  30. 服部覺

    服部参考人 私、現在学術会議の会員でもございませんしそれから学術会議原子力委員会にも直接には関係いたしておりません。ただ、本日は、原子力特別委員会委員長の坂田先生からぜひ出席していただきたいということを言われましたので、出て参ったわけでございます。ただ、例の三原則というものをつくりましたときに、私、学術会議の原子核特別委員会の委員の一人をいたしておりました。その立場を振り返ってみまして、やはり私たちは、あの三原則というのは、日本の中だけにとどめるのではなくて、これをさらにほかの国にまでも押し広げていこうではないかということがそのときの根底にあったというふうに考えております。もちろん現在の国際法、あるいは法律的な問題でいろいろなことがあるということは、私も存じておりますけれども、しかし、原子力を平和のために限ろうではないかという精神、そうしてそれを人類の幸福のためにのみ役立てていこうという精神に関する限り、今も当然その精神はつながっておると思いますし、またこれはだんだんと世界各国の支持を受けて、歴史的に見ましても、世界各国の科学者の支持をだんだんと受けてきたことは事実でございます。そういった点から考えましても、原子力を兵器として使うという意味——もちろん潜水艦原子爆弾として積まなくても、潜水艦というのは、明らかに軍事目的のためにつくられたものである。であるからこそ、横須賀の軍港に入ってきても安全審査ができないわけであります。まさに軍艦としてつくられた。しかも軍艦というのは、軍事利用というもののためにつくられたものだ。そういったもののために、何らか特別の措置がとられる。平和利用の目的原子炉に対しては非常にきびしい規制をするけれども、軍事利用の原子炉に対しては何も規制をしない。そういういわば内弁慶と申しますか、そういった態度というものは、やはり三原則の精神、つまり原子力というものはあくまで平和利用に限っていくのだという精神からは当然反するものである。軍艦というのは日本の主権の及ばないところかもしれませんが、少なくとも私たちは、横須賀の港は日本の港であるというように考えております。日本の港の中で、そういった軍事利用が許されるということは、私たち平和利用を志して、平和利用だけのために研究しておるものにとっては、はなはだ心外なことでございます。
  31. 檜山義夫

    檜山参考人 私は、学術会議の原子力特別委員会の委員ではございますが、別に坂田委員長と打ち合わせもいたしませんし、ほかの委員の意見も聞きませんので、別に委員としてのお答えは申し上げます。私個人、学者といたしましては、やはり何かいろいろなものをデータが与えられまして、それから計算して、日本人あるいは世界人類の幸福にそれがどういうふうに役立つか、障害をどう減らすことができるかということを考えたいものでございます。そういうものが知らせられない、十分のインフォーメーションを得られないということは、非常に残念なことだと思っております。
  32. 山口好一

    山口(好)委員長代理 各参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  長時間にわたり、貴重な御意見の開陳を賜わりまして、本委員会審査のため多大の参考となりましたことを、本委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。まことにありがようございました。     —————————————
  33. 山口好一

    山口(好)委員長代理 質疑を続行いたします。岡良一君。
  34. 岡良一

    ○岡委員 この原子力委員会の統一見解を拝見いたしまして、特に安全性について、原子力委員会としては国民に納得し得る結論が出れば寄港もやむなしという態度のようでございます。ところが、今お話があったように、科学的に安全性を立証するための安全評価というものに必要なデータをわれわれは持つことができない。こういうことで、原子力委員会はどうして原子力潜水艦安全性を立証されようとするのか、具体的にお答えをいただきたい。
  35. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 原子力委員会といたしまして、潜水艦の寄港の問題については、安全性について何らかの方法でそれを確かめたいという意向は、たびたび申し上げましたように、強く持っておるわけでございます。目下、その安全性の保証について、アメリカ側からの第一回の回答といたしましては適当な御返事がなかったということでございますので、重ねてこれに対しては何らかの処置をとられたいということを交渉をしようというもとに、検討いたしておる段階でございます。
  36. 岡良一

    ○岡委員 それでは、アメリカ局長にお伺いするが、二月十四日のトーキング・ぺ−パーは原子力委員会や科学技術庁にはお渡しになりましたか。
  37. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 即刻科学技術庁の方に提出いたしました。
  38. 岡良一

    ○岡委員 この原子力潜水艦安全性については、これは原子力委員会の大きな責任であろうと私は思うのであります。しかも、原子力潜水艦が、国籍がアメリカであろうとも、わが国の領海内に入り、わが国の港に入ってくる船であり、そしてそれは万一の事故があれば国民が大きな被害を受け得る可能性がある問題であって、さればこそ安全性を追及しようというのであります。その場合に、科学技術庁なり原子力委員会としては、学術会議もああして安全性を強く強調しておる実情でありますが、やはり原子力基本法の民主的にという精神に沿うて、広く専門家の意見を求めて安全性を決定するという態度に出らるべきがほんとうではないかと思うが、いかがでしょうか。
  39. 島村武久

    ○島村政府委員 お尋ねの前段につきましては、全く同じような考えで統一見解を出しましたわけでございます。安全性の面につきまして、強くこれを考えておるわけでございます。  しかしながら、ただいま長官からも御返事申し上げましたように、安全性の問題につきましては、外務省からアメリカ側の回答なるものもちょうだいいたしておるのでございますけれども、なお重ねて質問をするというようなこともやっておりますし、いろいろ検討いたしておる段階でございますので、そういうような統一見解につきまして広く一般の意見を問うというようなことを、現在において予定しておるわけではございません。まだ討検中だというふうに御了承順いたいと思います。
  40. 岡良一

    ○岡委員 外務省は、このトーキング・ペーパーをわれわれには出すことはできないというようなお話のようだが、私ども委員会としても、この問題は国民の福祉に直結する問題として重大な関心を持っており、また責任も持っております。そこで、原子力委員会はこのトーキング・ペーパーの内容を資料としてぜひわれわれに配付してもらいたい。
  41. 島村武久

    ○島村政府委員 これはいわば外交関係の文書でございまして、外には出すことのできないものという形で外務省からちょうだいいたしておりますので、私の方で勝手にお出しするわけには参りませんので、岡先生の御要求は、どうぞ外務省の方にお願いいたしたいと存じます。
  42. 岡良一

    ○岡委員 とにかく、こういう安全にかかわる問題であって、何も別にそう政治的な問題が含まれておるわけではないわけです。こういうものまでも責任をお互いが転嫁して、国民の前に隠蔽するということ、そのことがやはり国民の大きな疑惑の的となる。そういう秘密外交的なやり方、そういうエリート意識的なやり方、そういうものがこれまでの日本の科学外交の一番の不幸な点だったのです。しかし、そんなことは繰り返し申し上げる必要もないことだが……。  それでは、具体的にお聞きするが、少なくとも現在はアメリカは安全基準書は出さない。それで、原子力委員会としては、安全審査を確実にするために、さらに安全基準書を出してくれ、あるいは運転基準書を出してくれ、安全評価書を出してくれ、こういう要求をされるのかどうか、具体的に。検討中だなんというややこしいことでは困る。これがなくては安全審査ができないのだから、これをする気があるのかどうか。そこを一つ聞かしてもらいたい。
  43. 島村武久

    ○島村政府委員 具体的に、安全説明書あるいは安全保障書といったようなものを出せないと言ってきたかどうかということを、私どもの方から申し上げますことは、外務省からお話しになっていらっしゃる、回答の内容はまだ申し上げるわけにいかないというのと食い違うことになりますので、私どもの方からその点について申し上げることはできません。従いまして、そのようなことに対しまして原子力委員会としてどのような態度に出るかということにつきましては、さらに外務省の方からちょうだいいたしました第一次の回答をもとに、また質問もいたしておる段階でございますので、やはり検討中であるということ以外に申し上げるわけにいかない点を御了承いただきたいと思います。
  44. 岡良一

    ○岡委員 さっき参考人服部さん、檜山さんの御両所の一致した意見は、データーがなくては安全性評価はできない、こう言っておられる。お聞きの通りです。そこで、原子力委員会としては、こういう問題は政治的な取引の問題として使うべきではない。少なくとも原子力委員会は、やはり科学的な見地に立って、あくまでも科学的に安全性を追及し、確かめていくということが原子力委員会に与えられた私は任務だと思います。  そこで、あなた方は、安全性を立証するには、安全評価書なりあるいは運転基準書というものがなくては確実な安全性の立証ができないという立場をとっておられるかどうか。アメリカから何を言ってきたかどうかは別として、原子力委員会としてそういう立場をとっておるかどうか、これを伺っておきます。島村君じゃなしに、これはやはり政治的な責任の問題だから、大臣から一つ……。   〔山口(好)委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 私どもの今日までの考え方から申しますならば、安全保障書というものが出せないということを認めなければならないような国際上の慣例とか、いろいろなことがございました場合に、それにかわる何らかの方法で私たちが納得がいくような処置はできないものであろうかということを考えているわけなのでございますので、どうしても出せないのだ、何回交渉してみても安全保障書は出せないのだということになりました場合、それじゃもう仕方がないと言ってしまえばそれまでかと思うのですけれども、それではいけない。何かの形で、やはり私どもがある程度納得のできるような方法はないものかという形で、交渉をいたしてみたいという気持なのでございます。
  46. 岡良一

    ○岡委員 一九五七年に米国の原子炉安全諮問委員会委員長から原子力委員長にあてた手紙の中に、こういうことが書いてある。米国では、御存じのように、海軍の原子炉設計というものの安全性は、安全諮問委員会が十分に審査した上で許可するという方針をとっている。ところが、その原子炉安全諮問委員長が、「原子力船を建設、運転、修理する際、安全が保証されるかいないかは、最初に潜在的危険の可能性を正しく評価したかいなかにかかっている。」これは原子力潜水艦だけじゃない。あらゆる原子炉安全性の災害評価というものが大前提なんですね。しかも、その同じ手紙の中でこうも言っておる。「原子炉安全諮問委員会が指摘したいのは、原子力船がまだ一般大衆に危険を及ぼす可能性から完全には解放されていないことである。放射能が漏れる可能性は少ないが、やはりいつもその可能性は存在しておる。」ということも指摘しておるわけです。これは原子炉安全諮問委員会委員長が原子力委員長にあてた答申の手紙なんです。これは一九六二年のセカンド・セッションの合同委員会の速記録に載せられておるんですね。  こういうような文書を読めば、当然われわれは安全基準書というものを持たなくては、この安全評価ができぬ。それにかわるものがあるとすれば、一体具体的にどういう方法でやられるのか。
  47. 島村武久

    ○島村政府委員 もともと安全保障書なり安全説明書なりと称せられておりますものは、岡委員も先ほどおっしゃいましたように、軍艦以外の船についての条約に規定されておることでございまして、軍艦の場合にちょうどそれに合うものがあるのかどうかということも、実ははっきりいたしません。  要は、科学的に原子炉安全性というものを追及いたしますためには、名前はどうでありましょうとも、そういうことを判定できる材料があればそれはいいんじゃなかろうかというのは、当然なことであります。しかし、統一見解にも述べられておりますように、何しろ対象となりますものが原子力潜水艦というような特殊の地位にあるものでございますので、その点をどのようにして確かめるということは非常にむずかしい問題でございます。原子力委員会が非常に苦心いたしておりまして、まだ、岡先生の御質問に対しまして、的確にこのようにして確かめるんですとかいうようなことを御返事するような段階にございませんのは、そういったような意味合いから、追っかけていろいろな質問もいたしておる最中でございますから、申し上げられないということを言っておるわけでございます。原子力潜水艦というのは高度の兵器でありますから、あるいは軍機に関するようなものにつきましては、どれほどの情報なり資料を得ることができるかということと、安全審査というようなことをどのように関連づけるか、いかにして原子力委員会として安全性ということについての保証を求め得るかどうかという点が問題となっておるわけでございます。
  48. 岡良一

    ○岡委員 今も申しましたように、アメリカでは海軍の原子炉といえども、やはり原子力委員長からその建造の許可がおりている。しかも、海軍から回してきた原子炉そのものの設計上の安全性並びに安全対策については、安全諮問委員会がこれのいかんを検討した上で、よろしいという判を押して、そこで海軍が設計をしておるわけですね。ところが、その委員長が、ここに今申し上げましたように、まだこの原子炉というものの安全については確実じゃないと言っておるわけですね。しかも、この委員長は、やはり潜在性危険の評価が一番大切だと言っておるわけです。  だから、潜在性危険の評価というものは、アメリカ安全審査委員会の方へはもう海軍の方から届けられておるから、ちゃんと書類があるわけでしょう、判定をして。これをあなた方が持たないで、何か検討中、検討中という、そういう無責任なことじゃ困るじゃないですか。放射能の防護に関する事項というのは、原子力委員会設置法に書かれた重大な任務じゃないですか。だから、これが手に入らないなら、一体どういう方法で安全性を確かめるとかということは、やはり責任ある原子力委員長としては、この国会で報告してもらわなければならぬ。それをうやむやのままに、交渉中だ交渉中だなんて、そういうことでは無責任きわまると私は思う。何もこれは政治的なかけ引きの問題じゃないのだから、あなた方の合理的な科学的な態度をはっきりしていただきたい。
  49. 島村武久

    ○島村政府委員 安全性の問題を非常に重視いたしますがゆえに、ああいう統一見解が生まれたわけであります。これは方法論とまた別だろうと思うのであります。現在どのような質問をしておるかというようなことも、あるいは外務省に伺いませんと申し上げかねる点もあるかもしれませんけれども、実は潜在的な危険の評価というような意味におきまして、いきなりつながる問題かどうかとは思いますが、非常に関連の深いアメリカの当該船が審査されました場合に、最大想定事故というものをどのように考えたかというようなことも質問の中には入っておるわけでございますが、そのような点につきましても、まだ聞いておる段階では返事も来ておりませんので、こういうふうにやるんだということが今の段階において申し上げられない。いかにしてアメリカの船の安全性についての保証を得られるかというようなことについて申し上げられない段階にあるということは、これはおわかりいただけると思います。ということは、同時に、何も原子力委員会安全性の点を軽く扱っている、こういう意味でないことも御了承いただきたいと思います。
  50. 岡良一

    ○岡委員 それでは、具体的に、いま服部先生が言っておられた、もし原子力潜水艦の災害評価というものがわれわれの手に入られらないということになれは、あなた方は安易に——現在PWRで相当な熱出力を持っておるものといえば、シッビングポートかサバンナ号。だから、シッビングポートかサバンナ号原子炉の安全対策というものをあなた方は入手している。しかし、これも今、服部さんがはっきり指摘されたし、われわれしろうとだっ五はっきり言えると思うのだが、これに燃料はおそらく非常な低濃縮ウラン。これは島村君も御存じの通り、おそらく原子力潜水艦は九〇%以上の燃料を燃やしておるかもしれぬ。しかし、軍事的な必要から超過反応というものも考えなければならない。だから、そういうサバンナ号やシッビングポートの災害評価や何かで、原子力潜水艦安全性評価できますか。あるいはまた、それを基礎にしてどういう補正を加えて評価できるとあなた方は具体的に思われるか。もしあったら、技術的な手続を一つこの際発表していただきたい。
  51. 島村武久

    ○島村政府委員 おっしゃるように、何も参考人が述べられましたことは参考人だけの意見であるというふうに私どもは考えておりません。科学的に確実に安全性を追及いたします場合には、データというものがなくてできることではないと考えております。  問題は、先ほど申し上げておりますように、これは一般の商船でもない、特別の原子力潜水艦という、常識的に考えましても非常に軍機に閉ざされたものであるというようにいろいろ聞いてはおりますけれども、その間の調整、どのようにして安全性というものの保証を求めるかというところを原子力委員会として検討をしておる、というふうにお考え願いたい。
  52. 岡良一

    ○岡委員 それよりも、原子力委員会は、やはり可能な限り、日本として安全性評価し得るような原子力潜水艦データを、もう一度外務省を通じてはっきり要求すべきだと私は思う。それが国民に忠実なゆえんじゃないか、また、原子力委員会としての当然な責任だと私は思う。向こうは出せないからといったら、すぐかわるものを考えるなんという、そういうことじゃなしに、もう一度外務省を通じて要求する、そういうきぜんたる態度であるべきだと思うのだが、どうなんです。
  53. 島村武久

    ○島村政府委員 いろいろこまかくは申し上げかねますけれども、われわれといたしましては、いろいろなデータをほしいということを、外務省を通じて先方に言ってやっております。
  54. 岡良一

    ○岡委員 統一見解によると、安全性というものについて原子力委員会が国民の前に太鼓判を押せないということであれば、原子力潜水艦の寄港というものは原子力委員会としては断わる、拒否すべきである、こういう態度であると了解していいのですか。
  55. 島村武久

    ○島村政府委員 まだそこまでの議論にまでいっておりません。できるだけそういうようなことにして、いかにして安全性の保証を求めるかということについて努力しておる段階でありまして、すべてがだめになったときにはどうするかというところまで委員会として討議をした事実はございません。
  56. 岡良一

    ○岡委員 しかし、あなた方は国会に、原子力委員会としての態度をはっきりプリントして出されておるのだね。これは国会に対してお約束された。そして「安全性について保証を取りつけ」る、こういう形で書いてある。だから、あなた方がこの安全性について、われわれなり国会なりに対して納得のいく保証が取りつけられなかったら、あなた方は原力子潜水艦の寄港というものは断わるべきじゃないですか。原子力委員会として何も中途半端なことを言わないで、はっきり態度を表明していただきたい。これは委員長から一つ
  57. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 軍艦であるから再三再四の要求をすることも、あるいは法律的に、国際的には笑いものかもしれないという気もございましたけれども、それでもなおかつ、原子力委員会としては安全の問題について非常に重視しておるからというので、重ねてそれに対する回答を求めたいというところまで、私どもとしては積極的に行動いたしておるわけでございます。従いまして、その過程において、いよいよ最後どうなった場合に、絶対にその保証が得られない、何らかの形においても、何も無であったということがあった場合に、ということは実は私どもとしては考えられないものでございますから、そこまでの、それを材料としてのお話し合いを実は今までにしたことがございませんのです。それが今日までの実情でございます。また、そのような事態が参りました場合には、あらためて原子力委員会としても考えてみたいと思うわけでございます。
  58. 岡良一

    ○岡委員 繰り返しくどく申し上げるのじゃないのですけれども、私どもが統一見解を求めたら、とにかく安全性について保証金つげるということをはっきりこの委員会で示されておるわけですね。これは国会のこの委員会に示されたのじゃない。やはり国民に対する原子力委員会のお約束なんです。ですから、お約束を原子力委員会として果たすことができなければ、原子力委員会としては、特に安全性の問題でございますから、原子力潜水艦の寄港は断わるというきぜんたる態度に出られるのが、私は当然だと思う。そこで今いろいろ御折衝中だというが、その結果として、あくまでも科学的な根拠に立つ安全性の保証を取りつけられなかったら、原子力委員会としては潜水艦寄港は拒否すべきである。御存じの通り、原子力委員会の決定というものは内閣総理大臣に勧告もでき、内閣総理大臣はそれを尊重しなければならぬ。また、各省関係行政機関の長も十分にこれを聞かなければならないことになっている。きぜんとして原子力委員会はこれを拒否するというう態度に出られるのが、私は当然のことだと思う。そのことをお聞きしておるのです。
  59. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 重ねての岡委員のお尋ねでございますが、ただいまの段階といたしまして、そのような場合には原子力委員会として拒否するということをはっきりここで私、申し上げるわけに参りません。
  60. 岡良一

    ○岡委員 私どもは、当然やはりきぜんたる態度をもって、あなた方がわれわれに約束した科学的な根拠に立つはっきりした安全性についての解明ができなかったら、やはりお断わりをする、これが原子力委員会の当然の仕事だ。これは法律的にもそうだし、また道義的にも私はそうだと思うから、ぜひそうありたいということを強く要望して、海原さん、お急ぎのようでございますので海原さんに一つお尋ねします。  海原さんにお尋ねしたいのは、実はこの間から、いろいろ予算委員会原子力潜水艦のことについて非常に具体的な御意見をお聞かせ願って、私ども非常に参考にしておるものですから、この際さらに具体的にお聞きしたいと思っているわけです。  サブロックが、この間のお話ではスレッシャー型のものにのみ装備してあるということでございましたが、最近の新聞報道は、御存じの通り、ポラリス以外のあらゆる原子力潜水艦にこれを装備するという方針であるというようなことをアメリカの国防省では発表したように、私も新聞で見ておるのでございます。そういう傾向に逐次かなり速いテンポでいくのではないかと思う。そういう見通しは、いかがでしょう。
  61. 海原治

    ○海原政府委員 先般の予算委員会におきまして私がサブロックにつきまして申し上げましたのは、現在アメリカではサブロックというものについて研究開発段階である、それで私の知る限りでは、スレッシャーという潜水艦に装備しておる、それ以外についてはつまびらかにしない、こういうお答えをしたわけでございます。その後さらに調査いたしてみますと、このスレッシャーにもまだ装備はいたしておりません。スレッシャーで研究開発の実験中であるということがほぼ確実のようでございます。  それで、当時国防省で発表されましたのが、アメリカの「星条旗」、「スターズ・アンド・ストライプス」という新聞に相当詳しく出ております。これによりますと、ポリラス潜水艦に対して将来補助的な兵器として装備をするという見通しが非常に強い、こう書かれている。その新聞にも、弾頭につきましては、核と非核と同様のものである、この程度のことが報ぜられておるのでございます。
  62. 岡良一

    ○岡委員 それから、原子力潜水艦というのも、私ども日本潜水艦のことを思っていたところが、とほうもない大きなもので、トライトンが六千トンですか、ノーテラス号は三千トンくらいかと思っております。そういう大型のものになれば当然飛行機も積めるかと思います。数年前にアメリカの国会で、核爆雷の問題が非常に問題になっておりました。当然核爆雷をかかえ込んだ飛行機も積めるというようなことも考えられますが、これはどういうことになっておりましょうか。
  63. 海原治

    ○海原政府委員 潜水艦につきましては、実はポラリスを装備しましたいわゆるポラリス潜水艦が出て参りまして、従来の潜水艦の概念とは非常に変わって参りました。と申しますのは、第二次大戦までは、潜水艦というのは、敵の戦艦とか、航空母艦とか、要するに船を攻撃するものである。これには通常の魚雷を積んでおります。ポラリスというのはミサイルで、これは先般も御説明いたしましたが、現在開発しているものも含めますと、大体二千キロから四千キロも飛ぶ。水中へもぐったままで相手方の主要なところにミサイルを打ち込む。いわばミサイル発射のための船、ミサイル発射のもぐった基地、こういうことに変わってきております。  潜水艦がそういう方向になっておりますので、いま先生のおっしゃいましたような飛行機を積むということは、私どもとしてはまずあり得ないのではないかと思う。と申しますことは、この潜水艦から出ました飛行機というものが、その目標のところへ行ってはたしてその目的を十分に果たすかということになりますと、飛行機はきわめて撃ち落とされやすいものであります。それで、先ほどのお答えでございますが、こういう大型になりました潜水艦に飛行機を積んで、その飛行機がまたいろいろのものをかかえていくというようなことはおそらく実現しない、こういうふうに考えております。  なお、原子力潜水艦の大きさでございますが、これは一番小さいものが二千八百トン、現在建造に着手している大きなものが七千トン。型にいたしますと、現在までのところ十一の型がございます。
  64. 岡良一

    ○岡委員 私がただしろうと考えに考えたのは、何しろこのサブロックの射程距離が四十キロか五十キロと思ったところが、もっと遠方のようですね。相手方の潜水艦を攻撃しようとすれば、この潜水艦はおそらく精密なレーダーなどでこれを探知した場合に、飛機行でやるというようなことも十分考えられるのじゃないかと思う。しかし、そういうことは私ども専門ではございませんから、けっこうでございます。  今おっしゃった、原子力潜水艦というものが従来の潜水艦とは大いに質的に変わってきたという点、これが非常に重要な問題ではないか。われわれは、原子力潜水艦というものを従来の潜水艦という概念で割り切れるものではないということ、これが私ども原子力潜水艦に対する態度を決定する上においての非常に大きな、重要な因子になる。私どものしろうと考えだが、従来は、あるいは陸上に大陸間弾道弾の基地を設け、あるいは地下に設ける、あるいは戦略空軍を持つ、そしてB47が水爆をかかえていく。アメリカならば、そういう大量報復とでもいうような戦略体制をとる。それから、おそらくソビエトもそれに対抗するような戦略体制をとると思う。ところが、この原子力潜水艦ができてきた。そうすると、固定された地上、地下あるいは飛行場というようなものではなくて、海の中で自由に機動性を発揮する。しかも、これは海の底を動くのであるから、非常に隠密裏に核兵器も分散できる。こういう意味で、いわば将来の核戦争というものにおける原子力潜水艦というものの実現は、戦略的に非常に大きな変化を要求してきておると思う。同時に、将来の戦争ということから考えれば、核兵器のない戦争というものは私は考えられないと思う。そういう点からいうと、この原子力潜水艦はポラリスを積んでおらないとしても、やはりいわば隠密裏に機動性を発揮し得る移動的な核攻撃の基地という役割を持っている。ここに原子力潜水艦というものの意味があるのではないかということを、先般も私は委員会で申し上げたのです。これは専門の海原さんあたりの御意見はいかでしょうか。
  65. 海原治

    ○海原政府委員 先ほどの私の説明の中で若干言葉が足りませんために、原子力潜水艦すなわち核攻撃のための基地というふうにおとりになったといたしますと、それは私の説明が不十分でございまして、先ほど申しましたのは、原子力潜水艦としましては二種類ある。通常の魚雷を装備したものとポラリスを装備したもの。そのポラリスの装備につきまして前提を置きまして御説明した次第でございます。  それで、ポラリスというものは、先ほども御説明いたしましたように、長距離を飛翔するミサイルを積み込んだものであります。それは、先生もおっしゃいますように、海の中におりまして、どこにいるかわからないという形において配備されるということ、すなわち戦略的な攻撃になるわけであります。それ以外の通常の魚雷を積みましたものにつきましては、これはあくまで相手方の航空母艦であるとか、あるいは巡洋艦であるとか、対潜水艦であるとか、こういうものに対するものでございます。これにつきましては、現在の魚雷というものはホーミングと申しまして、目標を求めて行く力が非常によくなっております。従いまして、核装備、核弾頭を必要としないというふうに一般的には見られております。  先ほどお話しましたサブロックと申しますのは、一たん水中から打ち出しまして、これが空中に出て、さらにまた水中に入って目標に行くということでございますので、目標を捜索する能力において非常に精度が問題でございます。従いまして、現在なお実験中の段階になっております。これも計画で参りますと、昨年の春ごろにすでに全部の試験が済んでいるはずであります。しかし、今日なおまだ実用を研究中のものであるということでもわかりますように、一般のポラリス型以外の原子力潜水艦につきましては、やはり当分の問、非常に精度の良好な通常の弾頭をつけましたものを魚雷をもって装備される、このように私どもは判断しております。
  66. 岡良一

    ○岡委員 実は旧海軍時代にやはり日本潜水艦の建造等を直接指揮しておられた方に、偶然にお目にかかって聞いてみたわけです。そうしたら、サブロックの問題については、やはり水中から水中を伝わっていく魚雷の発射ということになると、どうしてもスピードなり、あるいはまた爆発する距離の限度がきまってくるので、そこでサブロックという形で、一たん水中から打ち上げてまた沈むという形で開発されている。しかし、これは単に対潜攻撃の魚雷というのでなく、さらにもっと大きな役割を持つものになるという点もやはり今後の大きな問題ではないか。もう一つは、サブロックというものは、現在の通常潜水艦においても幾らでも発射することができる。そこで、これもアメリカの方で開発もほぼ進んでいるのだから、おそらく通常潜水艦も、通常魚雷よりこれを装備することにだんだんなってくるではないかというのが、私がお会いをした海軍時代に潜水艦を建造しておられた最高スタッフの人が言っておられたことです。あなたのお考えとだいぶ違うのだが、しかし、こういう見解もあるということなんです。こういう見解に対しては、どうお考えでありますか。
  67. 海原治

    ○海原政府委員 ただいま岡委員の御紹介になりました御意見というものも、それは一つの御意見であろうと思います。しかし、私の方は、先ほど申し述べましたようにものを考えております。と申しますのは、通常、兵器体系を現実のものといたします場合には、いろいろな装備を持ち過ぎましても、いわゆるオーバー・キルと申しますか、意味のないことでございます。経済性も考えなくちやならないということになると、現在の魚雷は、先ほど申しましたように非常に精度がよろしいホーミングの能力を持っております。これに今開発中のサブロックというものが、どの程度まで所期のものができてくるかということの結果が出まして初めて、それを従来の通常魚雷とかえて、あるいは通常の魚雷のほかに装備するかということは、その後の段階におきまして十分に検討されるべき性質のものでございますから、場合によりましてはそういうこともあり得るかと思います。しかし、私どもといたしましては、先ほど私が申し上げましたようなことに判断をいたしております。
  68. 岡良一

    ○岡委員 この機会に専門家としてのあなたのお考えを聞かしていただきたいのだが、よく小型核兵器という言葉が何げなく使われる傾向があるわけです。そのサブロックとかあるいは核爆雷というふうなものは、これは言ってみれば、私は小型の核兵器というものに属するかもしれないとも思うわけなんです。小型核兵器というものは、どういう範疇に属するものがどういう種類のものがあるのか、その破壊力は一体TNTに換算してどの程度なのか、広島の原爆などと比較してどの程度にこの破壊力があるのか。あなた方の専門的な御見解をこの機会に聞かしてもらいたいと思う。
  69. 海原治

    ○海原政府委員 小型とか大型ということは、これは先生も御存じのように、相対的な観念でございます。人によりましては非常に違った意味に用いられております。一例を申し上げますと、今現実の装備となっておりますものは、現在ヨーロッパに展開しておりますアメリカの陸軍が持っておりますデビークロケットという、二人で持って使用できますところの砲についております小さなものでございます。これは一番小さなものでございます。  しかし、通常、小型弾頭というようなことで出て参りますと、一般に分類されておりますのは、たとえばミニットマンとかあるいはポラリス級のもの、これを一応小型弾頭として分類しておる例がございます。これにつきましては、正確なところはわかりませんが、伝えられておりますところでは、重さ約二百七十二キロ、二百七十キロ程度のものでございまして、その破壊力はTNT換算で五十万トンということがいわれております。しかし、ポラリスにつきましてはさらに大型のものが、中の改造によりまして大体一メガトン程度のものになるというような観測もございます。大型のものということになりますと、たとえばB52に積載いたしますもので、これはTNT二十メガトン相当と伝えられておりますが、この重さは五千キロであります。五千キロが現在米国が持っておりますものの一番大きなものと伝えられております。そのほかに、アトラスであるとか、タイタンであるとか、ソアーであるとかジュピター、こういうものにつけております弾頭は約二千キロ。さらに今申しました序ニットマン級になりますと、それが二百七十キロ程度。さらに今度は爆撃機、戦術ミサイルになりますとその重さが減って参りますが、これにつきましてのデータはございません。しかし、先ほど申し上げましたように、二百七十二キロ程度のものでTNT五十万トンの破壊力がございますから、それで大体のところは想像がつくのではないか。私ども資料としてはそういう程度の認識でございます。
  70. 岡良一

    ○岡委員 そこで、お急ぎのようだから、二点だけをお伺いしておきたいと思うのです。  小型核兵器ならば差しつかえがないであろうというふうな意見を、やはり政府の責任者が言われたことがあるのです。その当時、御存じのキッシンジャーあたりの核限定戦略などという書物も出ておる。しかし、実際問題として、小型核兵器であろうとも、それはぼんぼん使って撃てば——キッシンジャーは一発の破壊力はこれだけに限定しろなんというようなことを言っておったけれども一さていくさとなってぼんぼん撃てば、小型核兵器だって大型核兵器と破壊力は何も変わらない。これはきょう拝見した「世界」に出ておる豊田さんの報告の中にも出ておる。アメリカの演習においてそれが証明されておる。だから、われわれにとっては、超大型なものは別として、核戦争における小型、大型というふうな大小という概念で、小型ならばよかろう、大型ならば悪いというふうな俗論的な解釈は、核兵器の問題では私は許されないものだと思う。これが一つ。率直なあなたの見解を聞きたい。  もう一つは、核兵器の持ち込みを許さない、核兵器ならば事前協議にかける、こういうことを政府はよく言っておる。しかし、あなた方いわば軍事専門家の立場から、かりに立ち入りを認めたとして、さて船の中をそこらじゅうくまなく探してみたが核兵器はない。さあ核兵器は持っておらない。一体今の戦争において、そういう子供だましの、核兵器を捜査したけれどもなかったから安心だ、というようなことで済ませるのかどうか。これはどこにでも持ってこようと思えばすぐ持ってこれるという体制に私は入っていると思う。どこの島にあるか、そんなことを私はあなたにお聞きしないが、いずれにしましてもそういうことなんで、核兵器の持ち込みを許さないなどということも、現在の戦争の場合においてはこれは一つの隠れみのみたいなものだ。私はそう思うのだが、これはあなた方専門家の立場からごらんになって、どういうふうに思われますか。
  71. 海原治

    ○海原政府委員 第一の点でございますが、私どもは核兵器につきまして、小型核兵器あるいは大型核兵器というような分類をいたしまして、それに従いまして考え方を異にしておるというようなことは絶対にございません。  それから第二の点でございますが、これは政策的なものに関連いたしますけれども、現在の諸外国におきましては、核兵器拡散防止ということが関係者の一致した意見として考えられております。また先生もおっしゃいましたように、小型の核兵器でありましても、それが万一使用されました場合におきましては、連鎖反応的に核の全面戦争になる危険性はだれしもこれを心配しておりますので、具体的にそういうおそれのある兵器を常時持ち歩くというようなことは考えられておりません。かつ、たとえばいろいろな雑誌にも出ておりますが、そういう核兵器の万一の場合の使用の際のいろいろな手順につきましても、何重にも安全的な規則が現に施行されておるということは、一般に認められておるところでございまして、そういうことで一つ御了解願いたい、このように存じております。
  72. 岡良一

    ○岡委員 もう一点。それでは端的にお聞きします。原子力潜水艦の魚雷発射管はサブロックも発射できるということであれば、先般自衛隊が東京都の周辺にナイキ・アジャックスの基地をつくるということで相当問題になった。ところが、今度は、日本の基地にナイキ・ハーキュリーズの基地が建設されることを認めるというようなことに事実上なるのではないかとも思われるのだが、いかがなものでしょうか。
  73. 海原治

    ○海原政府委員 第一の点でございますが、サブロックがどういう魚雷発射管から発射し得ることになりますかどうか、これは先ほども御説明いたしましたように、今後の問題でございまして、私どもは、現在の段階につきまして、現在ありますところの原子力潜水艦に直ちに利用されるというふうな点につきましての認識は全然持っておりません。先般、私、個人的でございますが、ハワイでシードラゴンという原子力潜水艦に三時間ばかり乗ったわけでございますが、これには通常の魚雷が積んでございました。  第二の点でございますが、ナイキ・ハーキュリーズというものの導入につきましては、第二次の防衛力整備計画の御説明に際しましてしばしば申し上げておる通り、私どもとしましては、このハーキュリーズの導入を考えておりません。現在第一大隊を編成いたしましたのはナイキ・アジャックスでございます。さらにもう一個大隊もナイキ・アジャックスの部隊として編成を計画しております。
  74. 岡良一

    ○岡委員 海原さん、私はそういうことを申し上げておるのではないのです。ただ私が先般読んだ書物、これはあなた方の方で出しておられる防衛資料とかなんとかいうものだったですよ。要するに、原子力潜水艦はサブロックを現行の魚雷発射管で発射できる。これが日本の港に来るということになると、日本の自衛隊がナイキ・アジャックスを装備すること以上に、アメリカの基地に核弾頭をも発射し得るナイキ・ハーキュリーズが建設されたと同じことじやないのかということなんです。
  75. 海原治

    ○海原政府委員 ただいまお尋ねの点につきましては、私全然承知いたしておりませんので、具体的に調査しましてからまたお答えさせていただきたいと思います。
  76. 岡良一

    ○岡委員 そうむずかしいことじゃないのです。原子力潜水艦が、ポラリス潜水艦以外の潜水艦が、サブロックを、今持っている魚雷発射管で発射できるというものであれば、いわば核弾頭と普通の魚雷との両用の発射管を持っているものであるということになって、これは陸上においてアメリカの基地の中に、核弾頭と普通の弾頭を両方発射することのできるナイキ・ハーキュリーズが建設されたと同じことになるのではないか。
  77. 海原治

    ○海原政府委員 どうも私の理解力が足りませんので、申しわけございませんが、もしそのサブロックというものが、現在ございますところの通常の魚雷発射管から発射し得るものであるということになったらというのが一つの前提でございます。そうなれば、従来の通常の魚雷と両方使えることになるではないかということになるのは、その通りでございまして、そのことがアジャックス及びハーキュリーズの両方をかりに撃てる装備を持つことと同じことになるのじゃないか、こういうことでございますので、それはそういうことだというふうに解釈するわけでございます。
  78. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 お忙しそうですから、関連してお尋ねいたします。  結局問題は、寄港するのはノーテラスとは限っていないんですね、新聞に発表されたものを見ましても。結局スレッシヤー型も含むポラリス以外の原子力潜水艦の寄港問題が、一九六一年のラスク・小坂会談でも問題になり、今回もポラリス以外の原子力潜水艦の寄港が問題になっているわけです。ということになれば、当然スレッシャー型が入るわけですね。そういたしますと、このスレッシャー型に、岡委員が再三お尋ねをいたしましたサブロックがつけられて、しかも、実際に発射実験をされたのが一九六二年の春でございます。そういたしますと、すでに一年近くも時間が経過をいたしているわけであります。入ってくるものはスレッシャー型も入ってくる。しかも、サブロックの問題につきましては、防衛庁の防衛年鑑は、予算委員会でいろいろお尋ねしておるのを聞きましたが、間違いが非常に多いようでございますが、ジェーンというような世界的に権威のある航究年鑑でさえも、一九六一年版にサブロックは載っているじゃないですか。しかも、スレッシャー型で発射する実験は、昨年の春すでに行なわれている。私は先ほどの防衛局長の御答弁では、全くどうも理解しがたいのですが、この点はどうですか。
  79. 海原治

    ○海原政府委員 ただいまのお話の中に、昨年の春に実験が行なわれた、こういうことのお話でございますが、これは「ロケット・アンド・ミサイル」にもそういうように書いてございます。先ほど御説明いたしましたように、こういう兵器が最終的に実用兵器として採用されるまでには、いろいろな試験の段階がございます。それで、ここに持っておりますのは、先般国防省で発表されましたものであります。この表題にもございますように、サブロックはおそらくポラリス潜水艦に対するアシスタント、という言葉がございますが、補助兵器として採用されるだろう、こういう表題になっております。  そこで、先ほども御説明いたしましたが、本来であるならば昨年の春か夏ごろまでには実用兵器になるべきはずのものが、現在まだこういう実用試験の段階であるということでございますので、これが将来どういうことになるかということにつきましては、私、防衛局長という立場では、どうこうという見通しを申し上げられない点を一つ御了解願いたいと思います。  それから、ノーテラス型ということで通常言っておられますが、このノーテラスというのは、原子力潜水艦の第一艦でございます。この通常の魚雷を装備しました潜水艦には、いろいろ用法によって分かれておりますが、レーダー哨戒をするものもございますし、あるいは対潜作戦の方法論を検討する原子力潜水艦もございますし、さらにまた深々度の潜航のための潜水艦もございます。あるいは今お話にありましたスレッシャーというのは、水中高速対潜として特に開発さたものでございます。この型のものは、現在三隻就役いたしております。これに全部サブロックがつくことになるがどうかということにつきましては、今後の問題でございますが、今の段階で申し上げますと、ポラリスを装備いたしました潜水艦以外の原子力潜水艦につきましては、通常の魚雷を装備しておる、これは間違いがないところでございます。
  80. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ですから、私の言いたのは、池田総理大臣も予算委員会で、ポラリス以外の原子力潜水艦の寄港は許すのだ、こう言っておる。これはスレッシャーを含むということは当然だと思うのです。ここはやはりはっきり防衛当局も御確認しているところだと思いますが、この点ははっきり確認をしていただきたいと思います。  それから、一年前にそのスレッシャーからサブロックの実験がなされたわけです。今の科学技術の進歩から言うと、一年というのは非常に長い期間だと思うのです。一九六一年のジェーンという航空年鑑ですら、すでにサブロックという兵器自体が載っておるのです。これはお認めになるだろうと思う。とすれば、今まだ実験中であって、あしたごろ実際に使えるようになるかどうか知りませんけれども、それをつけ得るスレッシャーが入ってくることが確実である、寄港を許す範囲内に入っておる。それが一年以上すでに開発が進んでおるのだ、こういう事実だけは局長さんも御否定にならないと思う。この点はどうですか。
  81. 海原治

    ○海原政府委員 世界的にその権威を認められておりますジェーン年鑑との対比において私申し上げる資格はございませんが、ただ、ジェーン年鑑にもしばしば誤りがございます。特にその具体的な例を申し上げてもよろしゅうございますが、私どものところでいろいろ調べまして、たとえばある母艦に積んでおります飛行機の数でありますとか、あるいは現に実験段階であるものが作戦に使用されておるとかいうようなことも、間々ございます。  そこで、私が今まで申し上げましたことは、この二月の二十一日に新聞に載りました米国防省の一番近いデータというものを基礎に申し上げておる次第でございまして、その六一年版のジェーンというのは、御存じのように六〇年に出ておるはずでございます。現在の六三年の二月に公表されましたアメリカ国防省の提供にかかわる記事というものは、最も権威のあるものとして私どもはこれを尊重する立場でございますので、一つそのように御理解を願いたいと思うのです。
  82. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 スレッシャーもポラリス以外であるから、ポラリス以外の寄港を許すということになれば入ってくる範囲に入るのだ、この点はお認めになりますね。
  83. 海原治

    ○海原政府委員 ポラリスを装備した原子力潜水艦以外の原子力潜水艦ということでございましたら、スレッシャ一型はその中に入るものと考えております。
  84. 岡良一

    ○岡委員 この原子力潜水艦安全性を考える場合に、アメリカにおける原子力潜水艦事故をわれわれはやはり検討する必要があると思うのです。当然原子力委員会としてもこういう作業もしておられると思うのだが、新聞に報道せられた事故と称するものは、おおむね海難に準じたような事故が多い。また、これは私の調べた範囲内でこういうことがあるのです。一九六一年の一月五日、アイダホで原子炉が爆発して、三人死んでおる。これはさっき参考人の方も御指摘になったと思いますが、SL1という極地電源用とかいうものであります。これはなぜ一体こういう事故が起こったのか、その後アメリカ当局で発表しておるかどうか、この点。もう一つ、ウエストミルトン原子力研究所、ここでもやはり爆発火災事故が起こって、水兵が四名重火傷を負っている。このときは、トライトンに積み込む原子炉を一部破壊された。この事由はどういうところにあったのか。この点は究明されましたか。
  85. 島村武久

    ○島村政府委員 毎度同じような御返事になって恐縮でございますけれども、その点も照会をいたしておりまして、まだ返事を得るに至っておりません。照会はいたしております。
  86. 岡良一

    ○岡委員 これは一九五九年の四月に行なわれたアメリカのジョイント・コミティのヒアリングですね。この中でリッコーバー少将が証言をしておる。その中でも私ども特に関心を持ったのは、こういうことを言っておる。平たく申し上げれば、核推進艦艇の乗組員あるいは一般大衆の安全に関しての証言でございますが、こういうことを言っておる。原子力潜水艦の放射能の許容水準というものをさらに引き下げるということになると、軍事的必要もあって、海軍としては除外例を認めてもらわなければならぬと考えておる、というような趣旨の発言がリッコーバーからなされておる。であるから、海軍はいわば一般的に認められた許容量よりも上の放射能水準というものを認めてくれ。もしそうでない、もっと引き下げろというならば、快く思わない。また、軍事上の必要あるいはまたこれまでの実験結果から見ても、こういう許容水準というものをずっと持ち続けていかなければならぬということをリッコーバー少将が言っておられるわけですね。そういう証言を、原子力潜水艦の生みの親が言っておる。  そこで、さっき参考人のお話にあった、たとえば海軍艦船局では、イオン交換樹脂を十二海里以外のところならどこへ捨ててもいいというような指示あるいは訓令を出しておるということもあれば、実に一致するわけだ、こういうリッコーバーさんの証言とね。こういう点から見ても、原子力潜水艦安全性というものは非常に周到に検討すべきものと思うが、こういう点もあなた方はどう思われるか。
  87. 島村武久

    ○島村政府委員 アメリカの軍艦の許容度と申しますか、それはどれくらいのものであるかということにつきまして、従来私どもの方で調査を進めておるというようなことはございません。しかしながら、一般的に申しまして、アメリカ海軍関係等で使っておりますところのものも、アメリカにおきましては、アメリカ原子力委員会が関与しておる。少なくともアメリカ原子力委員会承認といったようなもとに行なわれておるという程度のことは存じておりますけれども、それは特別のものを使っておるのかどうか、先ほどの海中投棄の場合なんか見ますと、あるいは特別のものがあるかもしれないということは想定されるわけでございますけれども、それがアメリカ海軍の場合には一般にどの程度のものが、どの程度にゆるやかになっておるかという点につきましての資料は、持ち合わせておりません。
  88. 岡良一

    ○岡委員 なお私は、原子炉そのものの安全性について先ほど申し上げたのですが、この第一回のヒアリングから第二回のヒアリング、それぞれ一九五九年と六〇年に開かれたヒアリングでは、特に原子炉安全諮問委員長は、いつでも炉を運転する人に対して非常な重点を置いておる。よほど訓練をしろ、訓練をしろということを強調しておる。いくら訓練をしても足りるということはないというくらいに言っている。しかし、これは一つの問題点を提供しておる。問題は、人にたよるということは、正しいことのようで、一つの危険性を持っておるということ。  もう一つは、これはさっきのリッコーバー少将の証言の際に、リッコーバーさんが言っておるのだが、軍艦は、潜水艦は、その容量、重量というものを少なくするためには、やはり計測装置とか制御装置などにおいても、できるだけ能率的に簡素化しなければならぬということですね。私は、SL1あるいはトライトン号のプロトタイプの原子炉陸上において爆発事故を起こしたということは、非常にこれと関連が深いと思う。でありますから、せっかく調査しておられるというなら、こういう点を十分に一つ調査していただいて、こういう点からも、一つ安全性を確かめてもらいたい。  そこで問題は、廃棄物の問題なんだが、この廃棄物がさっき言われたようであってはまことに困るわけだ。原子力潜水艦そのものが安全であっても、これが沿岸十二海里以外で相当放射能を含んだイオン交換樹脂を投げ捨てて、自由に直接投棄できるということになれば、これは重大問題だと思う。これは漁場では放棄することをしてはならない、あるいは港に入ったときにはしてはならないという規定が、たしか私は海軍の艦船局の訓令だかにあったと思う。ところが、湾内で投棄しなくても、日本の沿岸というものは全部漁場なんだから、そういう点から、こういう海軍艦船局の十二海里より外であれば自由にイオン交換樹脂を捨ててもいいということは重大問題だ。原子力潜水艦安全性に関して重大な問題なんですよ。これに対しては、原子力委員会はどういうふうなお考えを持っておりますか。
  89. 島村武久

    ○島村政府委員 先般の原子力委員会の統一見解におきましても、潜水艦によりますところの放射性物質の廃棄の問題というようなことにつきましては、わが国の立場から制限等を加える必要がある、このように考えております。
  90. 岡良一

    ○岡委員 そういうのれんに腕押しみたいなことを言ってはいかぬ。これは現実問題なんだからね。十二海里以外で自由に捨てるということは、これに対してはいち早く、返答を求めるも何もないわけだ。原子力委員会はどういう態度を持っているか。これは漁師というものの生活問題になるし、われわれ自身だってうっかり魚を食えない。どうなんですか。
  91. 島村武久

    ○島村政府委員 お説は、岡委員のおっしゃいました通り私どもも考えております。しかし、公海において廃棄物をどうするかという問題につきましては、これは私は、原子力潜水艦がいま日本に寄港するという問題だけじゃないと思うのであります。これは先ほど来、檜山参考人からもお話がありましたように、IAEA等が中心になりまして、放射性物質の海中投棄の問題として広く世界的に討議し相談されておる、その問題というように理解いたすわけであります。しかしながら、私どもといたしましては、もちろん商船の場合は当然のことでございまして、そのような船自体から直接、たとえば放射性物質の一ぱいたまりましたイオン交換樹脂等を投棄するというようなことは全然考えていないわけでございまして、潜水艦という問題につきましても、国際的にそういう話し合いが一日も早くできるということを希望しておるわけであります。
  92. 岡良一

    ○岡委員 それでは、長官お急ぎのようだから、一点だけお伺いいたしておきます。  先般予算委員会で、近藤長官もお聞きだと思うが、辻原君の質問に答えて池田さんはこういうことを言っておる。原力潜水艦については、日本でも原子力船をつくろうというような時代になってきたのだから、まあ言ってみればそう目くじらを立てる必要はないじゃないか。こういう見解にあなたは同意されますか。
  93. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 原子力委員会原子力船開発に対していよいよ着手するということになりましたいきさつは、私よりもむしろ科技特の先生方の方が、長年にわたってこのいきさつについて十分御了承のことだと思います。そのような基礎を持って三十八年度から出発しようとした原子力船開発、原子力を開発する一つのものとして船をつくるということになりましたことは、私があらためて御説明を申し上げる必要ないと思うのです。  たまたまそういう時期に原子力潜水艦の寄港の問題が起こりましたけれども、これはきわめて偶然なことでございまして、原子力潜水艦の寄港と原子力船開発を志したことは全然無関係でございます。ただ、総理がたまたま委員会においてあのような御発言をなさいました御意思が、私も総理でないのでよくわかりませんけれども、私限りにおいて考えてみますと、日本の原子力開発あるいは日本の原子力の平和利用というものに対して、国民もだんだん深い理解を持ってきたということを念頭に置かれて、あのような御発言になったのではないかと私は想像いたしておるようなわけでございまして、原子力潜水艦の寄港と原子力船開発しようという私ども立場とは全然無関係であるということは、もし誤解があるといたしますならば、あらためて正しく御認識をいただきたいと思うわけでございます。
  94. 岡良一

    ○岡委員 これは原子力船開発事業団の法案とも関連して、私どもとしてはこの問題は聞き捨てにならないのです。言ってみれば、原子力の平和利用に便乗して原子力の軍事利用をいわば認めるという態度と言わざるを得ない。こういうことでは、総理みずから原子力基本法第二条というものを踏みにじる態度だと私は言いたい。この問題は、あなたはあなたとしての主観的な、非常に善意ある判断をしておられますが、一国の総理の発言でありますから、それだけでは済まない。  この点は、何らかの方法によって、委員長において適当に総理の真意をこの機会に明らかにしていただかなくては、われわれもこの事業団の問題について態度をきめかねる。その点をお願いします。
  95. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いま岡委員の御質問ですけれども、私はこれは二回目だと思うのです。かつて予算委員会の第一分科会で、私は、志賀防衛庁長官が、中国の核実験に対抗する意味日本国において原子力船開発することは非常にけっこうなことだ、こういうことを言われたのですが、その問題を取り上げて、こんなことは困るではないかということで、原子力開発と中国の核実験の問題ないしは原子力潜水艦の問題について長官にお尋ねをいたしました。長官は本日と同じような御答弁をされたわけです。ところが、長官がそういう御答弁をされたあと、今度は予算委員会の総括質問で、私が注意したと同じようなことを総理大臣みずからの口からああいう発言をせられておるわけです。これじゃ、私、第一分科会で質問をした意味はないと思うのです。あのとき長官は、閣内においても意見がばらばらというようなことを言われて、取り消されたこともありましたが、とにかく一度あって、また二度あったわけであります。その間、閣議において、原子力船開発と中国の核実験なりあるいは潜水艦寄港の問題とからめてものを考えることは困る、こういう御注意はされなかったのですか。
  96. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 実はそれに似たようなことなんですけれども、たまたまよく国会で取りだされます言葉の中におもしろい現象があると思うのです。  たとえて申しますと、三十八年度の科学技術庁の予算に防災科学技術センターをつくる、防災研究所をつくる。この防災研究所が三十八年度に生まれるべき素因がどこにあったかということは、これもやはり科学技術特別委員の先生方は十分御承知だと思うのです。ところが、たまたま予算書に国立防災科学技術センターという言葉が出ました瞬間から、私は国会におきまして、いろいろの先生から、豪雪というときに防災科学技術センターは何しているんだ、防災研究所はどうしているんだということをよく聞かれるわけです。言葉がそこに出てきたということを非常に安易に例としてお使いになるということを、そのとき非常に感じたわけです。防災科学技術センターはこれから生まれるのであって、今機能を発揮しているわけじゃございませんと言って、陳弁しきりに努めたことが幾たびかがございました。  それと同じように、たまたま原子力船開発するということになった、法律も出すというと、この原子力船開発ということが、いかにも何か原子力潜水艦の寄港に関連性があるようにとるのも一つのくせじゃないかと思うのです。これはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども……。この前の分科会でお尋ねがございましたときも、私はそういうふうな気持でおりましたので、別に閣議で発言いたしまして総理に真意を伺ったことはございませんけれども、私伺いましても、おそらく私が特に善意でなくて、すなおに解釈したお答えと同じことになるだろうと思いますけれども、格別な御注意がございましたので、あらためて閣議の席で総理の真意をお尋ねいたしておきたいと思います。
  97. 岡良一

    ○岡委員 近藤長官は、予算委員会平和目的原子力潜水艦があるように言われた。私は非常に善意に解釈しておると思う。確かにフランスの深い海を探る潜水艦平和目的だと思いますから、できるだけものは善意によって、あなたの言われるくせのない解釈をしようと思うが、しかし、原子力船をつくろうという法律案を審議しておるときに、しかも、われわれは基本法に忠実な立場平和目的原子力船海洋観測船をつくろうという審議をしておるときに——これは辻原君が、一昨年アメリカでケネディ・池田会談のときに原子力潜水艦の寄港問題が話題になっても公表しない、話題から落とすというふうなことの交渉があったかどうかということを聞いて、今原則的にこれを承認するという立場に変わったのはどうかと言われたら、日本でも原子力船をつくろうという機運にあるじゃないかということを言われた。これは原子力の平和利用と原子力の軍事利用を混同しておるという点で、原子力委員会としても黙視すべき問題ではないかと私は思う。われわれも、原子力船をつくることが原子力の軍事利用を合理化するというような立場に総理がおられるということでは、この事業団の審議にも応じかねるのです。この点は、この委員会で、はっきり総理の真意をこの機会に釈明してもらわなければいけない。ぜひこれはお約束願いたい。
  98. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 ただいまの岡委員の御要求に対しまして、御期待にこたえるようにいたしたいと思います。
  99. 岡良一

    ○岡委員 時間も長くなりましたから、あしたに譲ります。それではこの程度にいたします。
  100. 寺島隆太郎

    寺島委員長 山口鶴男君。
  101. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 アメリカ局長さんにお尋ねしたいと思うのです。一九六二年のブラッセル条約におきまして、日本は、原子力船運航者の責任に関する国際条約の審議の際に、軍艦も含めるべきである、こういう主張を首席代表である下田大使がなされたというふうに聞いておるのでございますが、その通りですね。
  102. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 私、正確には記憶しておりませんが、たしかその通りだったと承知しております。
  103. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 当時科学技術庁からは、杠原子力局長がやはり代表として御出席をされておるわけでありますが、科学技術庁としても、原子力船運航者の責任に関する国際条約については、軍艦も含めるべきであるという態度であった、こういうふうに了解してよろしゅうございますね。
  104. 島村武久

    ○島村政府委員 会議での発言の経過等詳しく存じておりませんけれども日本が特に軍艦を含めるということを主張しましたかどうか、その辺がはっきりいたしませんが、少なくとも軍艦を含めてやるという結論に対しましては、日本としてこれに同意しておると思います。
  105. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その態度は、現在の科学技術庁並びに外務省では変わっておりませんか。
  106. 島村武久

    ○島村政府委員 その後変わっておりません。
  107. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 私、直接この条約問題を担当しておりませんので、その後ずっと検討されておるかどうか、実は、申しわけございませんが、詳しく知っておりません。ただ、当時の条約の交渉がありました際に、ソ連、アメリカ原子力潜水艦を持っておる国がこれに反対したということで、この条約が発効する見込みが非常に少なくなったというような事態でございまして、具体的な問題といたしましては、この問題はその後問題になってきていないということでございます。
  108. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 時間もありませんから簡単に聞きますが、この条約に対して日本は単艦を含めて賛成をした。外務省から出しております「各国原子力情報」の八十五号を拝見いたしますと、「署名開放と同時に署名を行なった国は次のとおり。」といって、幾つかの国をずっと並べてあります。その後日本は署名をいたしましたか。
  109. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 私、これまた申しわけないのですが、正確なことはちょっと申し上げかねますが、していないのじゃないかと記憶しております。
  110. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 署名はまだしていないかもしれない。こういうことは明確にしておかぬと困ると思うのですが、しかし、賛成したことは事実でございますね。としますと、今度原子力船が寄港するという場合に、私、当然、当時軍艦を含めろという主張をされた日本の態度というものは青貝しなければいかぬと思うのです。科学技術庁としてはその態度は変わっていないと明確に言われました、けっこうであります。  そういたしますと、軍艦を含むすべての原子力船に対して、原子力船運航者の責任に関する条約では、いろいろなことをきめておるわけであります。たとえば事故が起こって損害が生じた場合はどうするか。十五億フランでありますから、米ドルにしますと一億ドルくらいになりますか、までは補償する。しかも、それはその災害を生じさせた国が全額補償する。それからまた、その場合の裁判は寄港を許可した国、いわば日本に裁判の管轄権がある。こういうことになるわけですね。しかも、その裁判の判決については、当然損害を生じさせた国はそれに服さなければいかぬ、こういうことが条約には列記されておるわけであります。  そういたしますと、今アメリカに対して安全保障の問題についてさらにお話を続けているそうでありますが、少なくともこの原子力船の寄港を日本政府が認めていくという場合には、このブラッセル条約の条項に対しては、あくまでも日本はこれを譲ることがない、少なくともこれだけは最低線として確保する、こういうお考えでございますか。
  111. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 先ほども申し上げました通り、この条約は第一、一番関係の深いソ連、アメリカがこれに反対をしております。そしてまた、条約として発効しておりませんので、日本としては、これに基づいて条約上いろいろ申すことはできない立場にあるわけであります。  今おっしゃいました補償の問題につきましては、先ほど冒頭に申し上げました通り、アメリカとの間に今質問書を提出し、回答を待っておる、あるいはこれを催促しておるという事態であります。
  112. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 条約の発効していないということは承知なんです。しかし、日本が主張したわけですね。軍艦を含めてこうあるべきだという主張をされたわけでしょう。しかも、その態度は原子力委員会では変わっておらぬ、こういうお話であります。といたしますと、現在の日本の安保条約並びに地位協定ではどうですか。損害が起きても、結局アメリカ政府が全部支払うわけではないでしょう。七五%しかしアメリカは支払わぬ、二五%は日本におっつける。しかも、何といいますか、その判決たるや、日本に裁判の管轄権があるわけではないでしょう。いわばアメリカの好意に期待するという以外にないじゃないですか。そういうことではいかぬというので、政府としてもいろいろ話をしておるだろうと思うのであります。  問題は、日本政府が軍艦を含めてこの条約をつくれという主張をした側から、少なくともアメリカに対して安全保障の要求をしている場合には、これを最低線として要求するのが筋だ。また、これが通らぬという場合には、日本としては絶対に承服し得ないという態度をとるのが筋ではないですか。この点の態度を一貫しておられるという原子力委員会の御態度を、私は聞きたいと思うのです。
  113. 島村武久

    ○島村政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、この条約案作成のための審議の国際会議の過程におきまして、日本側が積極的に主張したかどうか、先生のお言葉で申しますと日本が主張したというふうにおっしゃいますが、積極的にどの程度主張したかということは、私よく承知いたしておりませんが、私の申し上げましたのは、少なくともこの案がまとまりますときに賛成の立場をとったということなのであります。  原子力委員会としての感度は変わっておらぬと私が申し上げますのは、たとえば、これが意図しました責任の集中の問題であります。つまり運航者に責任を集中させるとかいったような基本的な考え方について、原子力委員会では、その後このような条約では困るというような考え方をとったことはございませんので、今日まで一貫して、あの際にあの条約草案をよしと考えた、その態度というものは変わっていないということを申し上げておいたわけでございます。  今度のアメリカ原子力潜水艦寄港の場合に、これとそっくり同じような形のものをアメリカ側に要求するかどうか、これは基本的考え方とまた別個の問題でございます。これはやり方といたしましては、日本アメリカとが特殊の関係にある立場もございますし、これがどのような形で、私どもが考えておりますような、あの草案に盛られましたところの基本的な考え方というものが生かされるかということにつきましては、必ずしもこの条約そっくりそのままというふうにも考えておるわけではございません。
  114. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 問題は、その責任を、被害を出させたところに集中をするということですね。裁判の管轄権は、それで被害を受けた国にある、日本にある。そうしてその責任、その賠償は、被害を出せた国がすべて負うのだ、こういうことが私は骨だと思うのです。そして、それは軍艦も含めるのだ、原子力潜水艦も含めるのだ、それが筋だと思うのです。  そこで、西村委員にお尋ねしたいと思うのであります。とにかく統一見解を原子力委員会ではお出しになりました。安全保障、それから放射性廃棄物の問題、その他安全の問題については厳重に注文をつけのだ、こういうことだったわけであります。といたしますと、結局原子力委員会としては、少なくとも局長が今お答えになった軍艦を含め、責任を集中し、そうして裁判の問題等についてもあくまでもがんばる。先ほどの岡委員のお話ではございませんが、それがいかぬという場合には寄港は認めぬ、こういう態度をおとりになるかどうか。少なくともそれをとらなければ、このブラッセル条約に日本が賛成したという筋は通らぬわけですからね。この点はどうなんですか。明確にお答えいただきたいと思います。
  115. 西村熊雄

    ○西村説明員 ブラッセル条約案に対する政府の最後の方針が決定されました当時、私はすでに原子力委員でございましたので、専門部会にも列席いたしておりまして、その経緯は十分存じております。  軍艦を条約に含めるという問題については、日本会議の中途まで、というよりも、この条約案ができる過程において、その態度の決定に非常にちゅうちょいたしておりました。ただ、最後の国際会議になりまして、日本として賛成するか、ノーと投ずるかという態度を決定せざるを得なくなったわけであります。棄権というような卑怯な態度はとならい方がよろしい、こういうことになりました。それで委員会として、というよりも、外務、原子力両当局問の協議の結果、棄権というような卑怯な態度はとらないことにして、賛成するか、反対するか、どちらかをとりたいということで議を重ねた結果、要するに、第三者保護の立場に重点を置くことにしたいという見地から賛成をする。主張をするというのではなくて、賛成の投票をするという趣旨の訓令になった次第であります。  しかし、委員会といたしましては、このブラッセル条約の根本原則を全体的に可としつつも、この条約について最も関係が深いソ連及びアメリカ合衆国が、その根本に対して最も強い反対をしておるということを当初から十二分に知っているわけでございます。でございますから、ブラッセル条約の根本を固執する限りは合衆国が合意するはずがないということも、委員会としては十分存じているわけでございます。  今回統一見解を出すにあたりましては、その辺の事情は委員会として十二分に承知したしておりますから、政府に御注意申し上げました安全保障と賠償確保のこの二点について、特に委員会として重視しているといって、御承知の通り意見を申し上げた次第でございます。委員会としては、日本はブラッセル条約の方針に沿いたいという立場であるし、ワシントン政府は絶対にそれでは承服できないという立場にあることを知っておりますから、実際の問題としては、外務省、それから科学技術庁当局からるる御説明がありますように、両者間でお話を十分尽くされまして、わが方の立場になるべく都合のいいようなことで話し合いが成立することを希望するというのが、委員会立場でございます。
  116. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほど問題になりました安全保障書をきめておるロンドン条約ですね、航海安全条約というのですか、その会議でまとまった案におきまして、この場合は初めてから軍艦ははずしているわけですね。しかし、少なくともブラッセル条約においては、確かにアメリカとソ連は反対はしたけれども、賛成は多数で、とにかく日本も賛成し、この条約に多数の国が今署名しつつあるわけです。   〔委員長退席、安倍委員長代理着席〕しかも、それには軍艦というものを明確に規定した上でそういう状態になっているわけであります。日本は、今のお話では、積極的に主張したのではないけれども、賛成したということであります。私は、そういう態度は、原子力委員会は、いやいやながら賛成したというのではなくて、少なくとも日本政府部内においては大きく主張したのではないかと想像いたすのでありますけれども、とにかくそういう事態になっているわけであります。これは、安全保障書の問題は、ロンドン条約の経過の経過からいっても、保障書以外の形で安全保障を証明するに足るデータを求めることはもちろんあくまでもがんばっていただく。統一見解でもそうなっていますから、それはがんばっていただかなければならぬと思うのであります。とにかく、災害が起きた場合の、いわゆるブラッセル条約にうたわれた問題については、絶対日本はがんばっていただかなければ、私は筋が通らぬと思うのであります。この点は、ちゃんと外務省の方も、下田大使が出席をして賛成しているのですから、少なくとも統一見解で原子力委員会がああいう方針を出している以上、このブラッセル条約の、しかも局長が言われた基本的な問題は、あくまでも原子力委員会として十分真剣に対処していただくことをお願いをいたしたいと思うのです。  大臣がいないのでありますから、局長からでもけっこうでありますが、先ほど言われた中心的な問題は、あくまでも原子力委員会としてはがんばるわけですね。
  117. 島村武久

    ○島村政府委員 先ほどから申し上げておりますように、わが国は、積極的に主張したかどうかは別といたしまして、ブラッセルの条約草案に対して、賛成の立場をとっておるのでございますから、その基本的な考え方はそう変わるものでないというように考えております。  ただ、アメリカ日本では、単に世界的な条約草案という形のものでいくだけがその道かと申しますと、非常に特殊な関係にある国でもございますし、それがいかなる形によって解決せられますか、先ほど西村委員からもお答えがありましたように、原子力委員会として考えておりますのは、万一の場合に被害を受けるというようなことがありますれば、その被害者の救済措置について十分な措置を講じなければならぬという態度、これはもう動かすことのできない原子力委員会の態度である、このように了解しておるわけであります。その線に沿って努力して参りたいと考えております。
  118. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 とにかく、久保山さんのときを考えましても、いわば金一封で済まされたわけです。今度も学者の先生方が来られていろいろお話がございました。それは、衝突をして非常な被害を及ぼすというようなことが、あるいは数は少ないかもしれませんが、しかし起こり得るわけであります。しかも、そのイオン交換樹脂等は絶えず海中にたれ流しをして、魚族等に大きな被害を与えておるというのが私は現実だと思う。そうなると、被害の問題は、万一の大被害ばかりが予想されるわけでもございませんで、潜水艦が寄港することによっても恒常的に被害が起きるということを考えざると得ないのではないか。そうなった場合に、久保山さんのように、ああいう形で地位協定による云々としか被害のあれができぬというようなことでは、どうにもならぬのではないか。  ですから、いろいろ外務省、西村さん、局長さんのお話を聞きましたが、私は非常に不満であります。とにかく、ブラッセル条約で日本政府が表明した態度だけは終始一貫がんばる必要がある。そういう態度がなくて、原子力潜水艦の寄港を認めるというような政府の態度であるといたしまするならば、われわれは政府の態度に対して強く抗議をせざるを得ないと思うのです。外務省の方は勉強不足のようでありますから、よく確かめていただきたい。今アメリカと現に交渉されているわけでありましょう。ですから、少なくともブラッセル条約のときに立ち返って、日本政府が断固たる交渉をされることを強く要求いたしておきます。  それから、最後に一つ聞いておきます。このロンドン条約、ブラッセル条約は、日本が、原子力潜水艦ではなくて、平和利用の原子力船をつくった場合でも、こういうものがなければ困るわけでしょう。国際的なぴしっとした条約がない中で、各国で原子力船ができるという事態は、非常に私は困ると思うのであります。少なくともロンドン条約、ブラッセル条約が早期に成立をして、各国が、条約そのままではいかぬかどうか知りませんけれども、少なくとも原子力船の運航に関する国際的な条約ができるということが私は必要だと思うのです。これについて、一日も早くその成立に努力をするおつもりであるかどうか。原子力委員会並びに外務省の御意見一つ聞いておきたいと思います。
  119. 島村武久

    ○島村政府委員 ロンドン条約に関しましては、本国会に提出いたしておりまして、御審議を経て国会を通過いたしますれば批准するということを外務省の方で考えておられまして、そのような手続をいたしておる段階でございます。  それから、ブラッセルの方につきましては、先ほど西村委員からも御説明がございました通り、これはちょっと今の段階では、ソビエト及びアメリカ合衆国が反対の態度をとっておりますから、早期に実現するという見通しを私どもとしては持っておりません。もちろんお説のように、早く国際間でこのような取りきめがなされることを私どもとしては希望いたしております。また、万一にも、私どもが考えております原子力第一船が運航いたしますまでにそのような国際的な条約ができませぬ場合には、いわゆる必要と考えられます諸国に対して、二国間協定というようなことを取り結んでいくというようなことも必要かと考えております。しかし、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、このブラッセル条約はもちろんのこと、先ほど参考人からお話がありました放射性廃棄物の海洋投棄といったような問題につきましても、広く各国みな納得をした条約というものが、できるだけ早く成立するということを期待いたしておりますし、またそのような方向に向かって努力いたしたいと考えているわけでございます。
  120. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 外務省といたしましても、ただいまと同様の考えでございます。ブラッセル条約は、先ほどもるる申し上げましたように、一番原子力潜水艦を持っている大国であるソ連、アメリカがこれに反対をいたしております。従いまして、これが実現する可能性はほとんどないと言っていいかと思います。  なお、付言しておきますことは、今御指摘の補償の問題につきましては、アメリカ側に先般質問書を出しまして、今回答を待つというか、督促している状態であることを付言さしていただきます。
  121. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 次会は明七日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時四分散会