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1963-02-28 第43回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十八日(木曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 安倍晋太郎君 理事 佐々木義武君    理事 山口 好一君 理事 岡  良一君    理事 西村 関一君 理事 山口 鶴男君       赤澤 正道君    小沢 辰男君       齋藤 憲三君    菅野和太郎君       村山 喜一君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 近藤 鶴代君  出席政府委員         科学技術政務次         官       内田 常雄君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   森崎 久壽君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  芥川 輝孝君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    井上啓次郎君         運 輸 技 官         (船舶局長)  藤野  淳君  委員外出席者         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         科学技術事務次         官       鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房総務課         長)      瀬谷  徹君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  村田  浩君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本原子力船開発事業団法案内閣提出第八二  号)  科学技術振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 これより会議を開きます。  日本原子力船開発事業団法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
  3. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 きょうは、私の質問の課題は、  日本原子力船開発事業団法案。  二つは科学技術基本法案。  三つは、近藤国務大臣所信について。その所信の内容は、一つは防災、一つ資原一つ原子力発電、もう一つはウランの粗製錬、放射線障害防止アジア原子力会議特別研究促進調整費に関し、日米科学協力に関し、それからガンの問題。  こうたくさんあるのであります。しかし、これだけきょう一日に質問しようとするのではないわけでありますが、なるべくこういう問題に対してきょうは質問申し上げまして、あとは質問をなるべくしないようにいたしたいと思っておるわけであります。  第一の、日本原子力船開発事業団についてまず最初に御質問申し上げます。この提案説明を拝見いたしますと、開発研究のためにこれを行なうのであるという御説明があったのでございます。科学技術庁原子力局から昨年の十一月に御提出になりました「原子力第一船開発計画について」というのを拝見いたしますと、その冒頭に、  「三十二年十一月二十九日原子力船専門部会を設け、研究の進め方について審議をした結果」「研究の対象として最も適当と考えられる船および炉を選定し、これについて各種研究を実施した後、実験船建造運航によって最終的な総合研究を行なうことが最良であると判断された。しかしながら最適の船種船型選定するには至らないまま、三十五年十月解散した。その後、内外における研究開発の進捗によって、技術的にも経済的にも一層明確な見通しが得られたので、三十六年四月あらためて原子力船専門部会を組織し、実験目的建造される原子力船船種と規模、開発に要する資金の額とその調達方法原子力船建造運航関係方面協力のもとに、実施する機関形態等検討し、原子力第一船開発計画を作成した。」こういうふうに書いてございます。第一回の原子力船専門部会を設けて、船種船型選定し、かつその炉を選ぼうということを計画されたのでありますが、それが結論を得ないままに三十五年十月解散した、こういうことが書かれてあるのであります。ところが、「技術的にも経済的にも一そう明確な見通しが得られたので」今度はまた原子力船専門部会を組織して今度の計画を立案された、こういうふうに書いてあるのであります。「技術的にも経済的にも一そう明確な見通しが」ついた、これは一体どういうことを意味するのでありますか。これを簡単に御説明を願いたいと思います。
  4. 島村武久

    島村政府委員 三十二年に、御指摘のように専門部会を出発せしめました当時は、いわば観念的に原子力エネルギー船舶利用する可能性というものについて期待が持てる、日本は世界で有数の海運国造船国であるというところから、これに早く手をつけなければいけないという見通しの上に立って、どちらかと申しますとやや観念的に出発したきらいがあったわけでございます。しかし、先般来申し上げておりますように、原子力エネルギー船舶利用するということの研究につきましては、アメリカ及びヨーロッパ諸国等で行なわれておりますところのものが急速に発展をしておりまして、世界的に原子力船に関する各種研究発表会というような会合も持たれまして、そういう意味におきまして、技術的にも経済的にも、三十二年、三年、四年という段階よりは、年一年とはっきりしてきた、こういう趣旨でございます。
  5. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは「三十六年四月あらためて原子力船専門部会を組織し、……原子力第一船用発計画を作成した。」こういうふうに書かれてあるのでありますが、これは炉の研究までここでおやりになって、大体どういう炉をつけたらいいかというところまで専門部会検討を加えられたのか。
  6. 島村武久

    島村政府委員 もちろん炉の側につきましても研究を重ねたわけでございますが、この計画におきまして、原子力船に搭載するのに適当な炉としては軽水型の原子炉という程度の表現をいたしております。
  7. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは逐次御質問申し上げますが、この法案をずっと見ますと、提出資料としてちょうだいいたしました、私が資料として御提出を願いましたものの中に、「日本原子力船開発事業団の行なう設計および建造範囲」というところに「日本原子力船開発事業団は、原子力第一船の開発を行なう実施機関として設立されるものであるから、本法第二十三条にいう設計建造も当然原子力第一船のそれを指すことはいうまでもないが、本事業団は実際の建造設備を有するものではなく、したがってここにいう設計建造範囲とは、具体的には基本設計仕様書の作成、発注、工事監督検査等業務をいうものである。」と書いてございます。  この日本原子力船開発事業団が、軽水型の原子炉のうちいかなる種類が適当であるかという判定もするということを意味するのでありますか、どうですか。
  8. 島村武久

    島村政府委員 一応そのように考えております。
  9. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうしますと、この第二十四条に書いてございます。これも御提出資料によるのでございますが、「第二十四条の規定は、事業団業務運営原子力基本法精神にのっとって行なわれることを、人の面における(第十三条)と同様に、業務基本の面においても確保する必要があるため設けたものである。主務大臣は、本条第二項の規定により、原子力委員会決定を尊重して基本計画を定める義務を課されているものである。なお、第二項の決定に相当するものは、現在のところ存在しないので、原子力委員会は、昨年六月の同委員会原子力船専門部会の報告を基礎とし、検討をすすめている。」こう書かれてあるのであります。今新たにその事業団をつくりまして、事業団構成というものは一体いかなる構成をもって行なうのか私はよく存じませんが、炉の形をいかなるものを採用するかという権威ある機能をこの事業団に持たせるということを考えられておるのでありますか。これはいかなる形でもって炉の選定機能をこの事業団に与えんとしておられるのでありますか。これを一つ説明願いたいと思います。
  10. 島村武久

    島村政府委員 いかなる機能とおっしゃいます意味がちょっと了解いたしかねるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、このような事業団原子力第一船建造のためにつくりました第一の実質的な理由は、何分このような大事業を遂行いたしますためには、その責任というものをなるべく一体化いたしまして明確にする必要があるというふうに考えたわけでございまして、あまり立ち入りましてその実行計画自体に容喙いたしますことは、かえってその事業団の遂行いたしました事業の結果に対する事業団責任というものをあいまいにするゆえんではなかろうかというふうに考えるわけでございます。従いまして、従来長年にわたりまして討議して参りました結論から、現在の段階では軽水炉を選ぶことがいいということははっきりいたしておりますけれども、その軽水炉の中で何を選ぶかということにつきましては、むしろこの船をつくり上げますところの事業団責任においてきめてもらうことが適当ではなかろうか、というふうに考えておるわけでございます。
  11. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私の申し上げておりますのは、原子力に関する平和利用体系を、こういう大事業をやりますときにははっきりと定めておやりになる方が、後日原子力平和利用体系の確立をはかるために基本的にいいことではないか、そういうふうに考えて御質問を申し上げておるわけであります。  たとえて申しますと、原子力委員会設置法には「原子力研究開発及び利用に関する行政の民主的な運営を図るため、総理府原子力委員会を置く。」第二条には、その所掌事務がずっと列記してあります。そしてその第十項目には「第一号から第八号までに掲げるもののほか、原子力利用に関する重要事項に関すること。」と書いてありますね。もう一つは、日本原子力研究所法を見ますと「日本原子力研究所は、原子力基本法に基き、原子力関発に関する研究等を総合的かつ効率的に行い、原子力研究開発及び利用促進に寄与することを目的として設立されるものとする」。  こういう立法精神から見ますと、この原子力船にいかなる炉をつけるかということの機能は、原子力委員会並びに原子力研究所に、もうすでに法律を制定されたときにはっきりと職権として付与されておるのではないか。それを、また新しく事業団というものを設けてこれに炉の選定権を与えるということになりますと、原子力平和利用体系というものは、そのときそのときによってできていくところの機関によっていろいろに撹乱されるおそれがあるのではないかということを私は懸念いたしておるわけであります。何がゆえに原子炉の形の選定というものを事業団にやらなければいけないのか。事業団は、原子力委員会並びに原子力研究所の総合的な結論に従って、その炉を完全につくるべく努力をすれば、それでもって原子力船というものはでき上がるのであって、その炉の選定権までも事業団に与えるということになりますと、原子力委員会並びに原子力研究所機能というものは、それによって減殺されていくという結果にならないか、私はこれを憂えるのであります。  たとえて申しますれば、アメリカサバンナ号におきましても、ちゃんとオークリッジというものかコンサルタントとして厳然として控えて、いわゆるオークリッジ研究所研究土台として炉というものをサバンナ号がつける、こういう形態をとっておるように私は聞いておるのであります。  ですから、そういう原子力委員会というものがあり、原子力研究所というものがあって、原子力平和利用開発研究というものを立法根本的精神として権限を付与されているのに、また新たに炉の選定権というものを原子力船開発事業団に付与するということになりますと、将来、非常に紛淆を来たすおそれがあるのではないかというふうに私は思うのであります。そういうことはないでありましょうけれども原子力委員会並びに原子力研究所が、これが適当であると選定したものを、原子力船開発事業団がこれを拒否した場合に、一体どうなる。そこに、いわゆる秩序ある統一的な原子力平和利用体系というものが非常に乱れるのじゃないか。私はこう思うのでありますが、これに対しての御見解を一つ承っておきたいと思う。
  12. 島村武久

    島村政府委員 事業団自体に炉型をきめさすことは将来いろいろ紛淆を来たすのじゃなかろうか、こういう御懸念からのお説と思いますし、また、そのためにいろいろとお述べになりました点につきましては同感でございますけれども、ただ、事業団に炉型の選定をまかすことなく、原子力委員会なりあるいは原子力研究所でその炉型をきめるべきであるということが法律的に初めからもうきまっておることだというお説に対しては、必ずしも同感であると申し上げるわけにいかないと思うのでございます。  先ほど来申し上げますように、事業団責任を持ってやってもらうという意味からは、私どもは炉型を選ぶにあたりましても、事業団の発意というものを尊重し、それによってやっていくことがいいと考えておるわけでございます。もちろん、将来日本原子力船がたくさんできるというような場合、これは発電の場合でも同じでありますけれども、いろいろな型の発電所があっていいかどうか、あるいは何らかの形に国家的に統一されておった方がいいかどうかということにつきましては、私どもといたしましても当然、あまりばらばらに、各種原子炉のコンクールみたいな形で日本に炉が存在するということは望ましくないというふうに考えております。しかしながら、何分にも、現段階におきましては、いわゆる試験、研究開発段階でございまして、とにかく、提案理由でも申し上げてございますように、実船によって原子エネルギー船舶に応用するということの研究開発ということを主眼にいたしております際に、将来にわたってこういう炉型というようなことをきめることは、必ずしも必要でないというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、齋藤委員のおっしゃいます点は、私どもといたしましては、齋藤委員だけがおっしゃっていることだとは実は考えておりません。そういうような御意見も方々に出ておることも承知いたしております。この法律が通りました上におきまして、第二十四条によりまして主務大臣基本計画を定めるということになります場合に、原子力委員会意見を聞いて行なうということになりますのでございますが、そのときまでには、齋藤委員の御意見も十分さらに検討いたしまして、原子力委員会として炉型まできめるかどうかということについても、十分再検討いたしてみたいと考えております。
  13. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは三十八年二月十一の日刊工業新聞でありますが、「産業界では原子力第一船に採用する原子炉型式は新しく発足する事業団で決めるには余りにも大きな問題である。炉型式が決まることは船体の建造先も決まることであるから、事業団が発足する以前にこれらの方針をたてて欲しいと要望する声が強い。」こういう記事も出ておるわけであります。これはまた企業的にものを考えたところの声であって、PWRがきまるかBWRがきまるかによっていろいろな造船会社形態もきまっていくということから、こういう声が出ておるのだろうと思うからであります。  私の今御質問申し上げておるのは、原子力局から御提出になりましたこの日本原子力船開発事業団法案についての参考資料として、今私が読み上げました第二十四条に掲げてあるところの、「事業団業務は、主務大臣が定める原子力船開発に関する基本計画に基づいて行われなければならない。」「主務大臣は、前項の基本計画を定めようとするときば、原子力委員会決定を尊重しなければならない。」これに関して御質問を申し上げておるわけであります。  この基本計画というものが、この御提出になりました資料に基づくがごとき「人の面における(第十三条)と同様に、業務基本の面においても確保する必要があるため設けたものである。」、これが一体、単に原子力基本法に基づいて平和利用に限るとか、そういう基本方針意味するのであるか。それともこの第一船というものが、事業団とはしてあるけれども、コマーシャル・ベースには乗らない、いわゆる開発研究目的とする事業団であるのであるから、それにつける炉の型式というものは、原子力委員会がその下部組織にありますところの原子力研究所その他の機能を動員して炉型をきめて、これを土台として原子力船をつくれという方針でやるのか。基本計画とあるのですから、その基本計画範囲は、一体これはどこまで意味しておるのか、こういうことなんであります。  今の原子力局長のお話のように、炉型の選定までも事業団にまかしてしまうということになりますと、何らか法律的に、もう少し画然とした原子力委員会決定というものに対してもある範囲を与えておかないと、せっかく原子力委員会及び原子力研究所原子力平和利用開発研究に今まで全力を傾注してきておる。また何らかそれ以上の機構をつくらないと、決定的な原子力船に使用すべきところの原子炉というものはきまらない。そして原子力委員会とかあるいは原子力研究所から、それは適当であるとか不適当であるとかいう意見原子力船開発事業団決定に対して出てきた場合に、そこに非常に大きな紛淆を来たすおそれがあるのじゃないか。だから、その炉型をきめるは、今までの体系からやっているのだから、そういう機関があるのだから、これに一任して、これできめてもらったものを、いかにして完全な原子力船としてそれを建造するかということを事業団にまかせる、こういう意味にこの基本計画というものが書かれているのではないか。それでないと、これは主務大臣が二人あるわけでしょう。主務大臣が二人あるわけでありますから、そういう点を主務大臣の間でがっちりときめてでもおかないと、まだどういう人間が事業団を形成するのかわかりませんけれども、そこに法体系からいって今までの原子力平和利用研究というものが非常に混乱するのじゃないか、私はそう思うのです。この問題をいつまで論議を重ねておりましても時間がたつだけでありますが、これはそういう点はまだ何もきまっておらぬと思うのでありますから、あるいはコンサルティングシステムを設けて、原子力研究所コンサルティングシステムをやらせるとか、何か明確な分野をこの開発に関する基本計画というところに設けていただかないと、原子力委員会原子力研究所も、原子力船の問題については、何か岡に上がってしまうようになりはせぬかと思うのでありますが……。
  14. 島村武久

    島村政府委員 前段で仰せられました第二十四条を置きました趣旨、これは今御指摘のように、単に精神的に原子力基本法精神を受けるというだけのものでないことは当然でございます。原子力委員会原子力に関しましていろいろ企画、審議し、決定するという任務がございまして、原子力船開発するということにつきましても当然計画を立てなければならぬわけでございます。また、その計画を実施いたしますためにつくる事業団でございますから、そこに当然、単に精神的な平和目的ということだけでなくて、原子力委員会とのつながりがある、私どもはさよう考えております。  なお、原子力研究所との関係につきましても、これは先般も御説明申し上げました通り、この仕事をやって参ります上におきましては、すでに過去におきまして国会の御審議も受けましていろいろ決定しておる、あるいは準備しておることが原子力研究所にもあるわけでございます。たとえば現在建設中のJPDRでありますとか、あるいはスイミング・プールとか、ああいう設備がこの原子力船事業団計画遂行の中に、一つ研究として織り込まれていくわけでございます。そこにも十分有機的な関係を緊密に持っていかなければならない点があるわけでございます。私どもといたしましても、このような事業団をつくりましたが最後、原子力委員会あるいは原子力研究所というものは遊離してしまうというようなことは、つゆ思ったこともないわけでございます。ただいままでに考えておりましたのは、できるだけこの原子力船事業団というものにつきまして、責任を持って事業を遂行してもらうということの必要性から、同じ炉型にいたしましても、軽水炉というところの段階まではきめておりますけれども軽水炉の中で何を選ぶかということは事業団にまかせた方がいいのではなかろうか、そういう考えでおりましたということを申し上げておるわけでございます。  しかし、各方面でいろいろ御意見もあるようでありますし、まだそう最終的にきめてしまっておるということではございませんので、今後なおよく検討して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  15. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは「第一船の設計建造は、搭載する炉も含めて国内技術によって建造されることを前提とし」てと書いてありますね。だから、そういう点から私は事きわめて重大だと思うのです。アメリカからPWRを買ってくるのだ、BWRを買ってくるのだというなら事業団にその選定をゆだねていいけれども、搭載する炉も含めて国内技術をもってやるということを前提としておるのでありますから、事業団が三年かかったらそんな判定能力が持てるか、私はなかなかむずかしい問題だと思うのです。ですから、すらっと見ればなるほどと思うけれども日本の内情をよく考えてみると、国内技術をもって原子力船に搭載するところの炉をつくるということになれば、おのずからどこにその技術があるかということがはっきりするわけであります。それをないがしろにして、事業団にその権威を与えていくのだということになったならば、もう一つ原子力研究所をつくっていかなければならないということになりはせぬかと思います。今日の原子力研究所ですら、国際原子力前提としてやるなら、いかなる炉の型がいいかということは一年か二年かからなければ結論は出ないと思うのであります。その点は一つよく御考究をお願いいたしたいと思うのであります。  昭和三十六年度においては、原船協、これはどういう性格か私はわかりませんが、沸騰水型舶用原子炉中心とした原子力船設計研究をやらしておるし、それから加圧水型舶用原子炉中心とした原子力船設計研究原船協にやらしておるわけであります。私としては、これだけの準備行動をやっておるから、結論的には原子力委員会責任を持って、原子力研究所並びにこれらの研究のデータを集めて、そして責任ある判定を下す。これは二船目とか三船目とか四船目とかいうのなら別です。そういう形できまって、いいものだということが立証された場合には、お前たちはどれでも選べということを言えるけれども、それは最初開発研究のためにやらせるというのでありますから、日本原子力平和利用に関するあらゆる機関というものは、総合的に責任を持つ体制の上に原子力委員会がさらに決定する責任を持ってやらなれけば、この体系というものが乱れるのではないか。そういうことをやることにおいて原子力委員会機能というものを責任体制の上に置かれることになるし、また、原子力研究所も、実際そういう問題に対するところの責任というものの上においてあらゆる研究の結果というものを公表するということになるのではないか。これは私がこの法案を手にいたしましてから、一番重点的にこの問題を一つ伺っておきたいと思った点でございますから、長官におかれましても、原子力委員長としての立場からも、一つこの問題に十分御注意を払っていただきたいと思うわけであります。  なお先ほどし申し上げました「第一船は実験目的のために設計建造運航されるものである」、これは私といたしましては、今回の原子力船が、御提案の説明の中にもございました通り、海洋観測船にこれを使用するのだという目標が定められたことに対しましては、双手をあげて賛成をするものであります。  速記録を調べてみますと、昭和三十六年の十月五日に、この問題について私が当委員会で質問いたしております。  「ただいま承りたいと思いますことは、原子力船の問題です。原子力船を作るということはきまっておるけれども、どういうものを作るかということは、まだきまっておらぬということを承っておるのでありますが、原子力委員長として、この第一回に作るべき日本原子力船に対してどういう御構想をお持ちになっておりますか、」ということに対して、当時の長官であります三木先生がこういう答弁をなさっております。  「御承知のように、今部会もできて検討されておりますが、これはどうしても急なわけにはいかない。まあ今後十カ年ぐらいの年月をかけなければならぬと思っておるのであります。もっと短縮できれば好ましいでしょうが、大体それくらいの期間をかけなければならぬと思っております。私は、できるならば一万トン・クラスのもので貨客船、こういうものを考えてみたらどうか、これは私の個人的な考えでございます。」と、こういうような答弁をしておられます。  私はその貨物船とか旅客船というものはもうのっけからコマーシャル・ベースにいかないのだ、そういう御構想は放擲をされまして、「そういうコマーシャル・ベースを度外視した他に何か国家利用、これなくしては国家の活動が阻害されるという目標が、私はあるに違いないと思う。そういう問題をお選びになって、第一回の原子力船を御建造なさることが、原子力平和利用を推進する上においてきわめて重大な方法ではないか、こう思うのでありますが、この点について長官はいかにお考えになっておりますか。」という質問をいたしております。  私といたしましては、昭和三十六年の十月に質問いたしました構想が、ようやく第一船の海洋観測船として実現をするということに双手をあげて賛成をするものでありますが、これは、つくったあとに運輸省に引き渡すということが書かれてあるのであります。一体どういう角度から、このできたものを運輸省に引き渡されるのですか。一つ御構想を承っておきたい。
  16. 島村武久

    島村政府委員 第一船を海洋観測船といたしましたことにつきまして、御賛成をいただいて、ありがたく思っておるところでございます。かって御説明申し上げましたように、この計画全体というものは、いわゆる設計建造というようなことを通じまして第一船を開発するというところにねらいがあるのはもちろんでございますけれども、これを動かしてみて、運航の経験を得る、あるいは乗員の養成、訓練を行なうということもあわせ目的といたしまして、それで全体が九年計画ということになっておるわけであります。私どもといたしましては、この九年間の事業が、できるだけそれ以内に、もっと短縮をして完遂されることを期待いたしておるわけでございますが、その目的が達せられました後におきましても、この船自体がなくなりあるいは老朽化するといったようなものではございません。先ほど御指摘もございましたように、ほんとうの海洋観測の用に充てたいというふうに考えておるわけでございます。  現在海洋観測に従事しておるところの船舶を持っておりますのは、政府関係では、御承知の通り方々あるわけでございますけれども、現在のところ一番多くその関係の事務に携わっておられるのは運輸省でございます。運輸省の方におかれましては、あるいは海上保安庁でありますとか、水路部でありますとか、あるいは気象庁の関係、海洋関係の観測に非常に深い関係を持っておられますので、できればそういった関係の仕事にこの船を生かして使つていただくということが望ましいことであると考えたわけでございます。運輸省におかれましても、この点につきましては全く同感の意を表せられております。何分にもまだ相当先のことでございますから、運輸省内でどこの所属にするか、あるいは運輸省内で何の用途に充てる、同じ海洋観測といいましても何の観測に充てるというところまでの詳細な御決定はないようでありますけれども、少なくともこの船ができ上がって、そして運航の経験を得、あるいは乗員の養成、訓練ということにつきましても一応の目的を達しましたあとにおきましては、運輸省においてこれを使いたいという御希望も表明されておりますので、先ほど齋藤委員が御指摘になりましたように、この船が当初の目的を達したあとはこれを運輸省に引き継ぐということを申し上げたわけでございます。
  17. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私は、レーニン号のように建造に着手して三年目に進水したとか、あるいはサバンナ号のように五年目に進水したというような時間短縮も考えられると思いますが、かりに今の計画によって九年目にでき上がって、進水して、その能力が確認された、その九年間における原子力界の推移というものを考えてみますと、今まだつくりもせぬ先から、これはでき上がったら運輸省に渡すのだ、そういうことをなぜ一体考える必要があるのか。なぜそういう約束をする必要があるのか。私はそういう約束をする必要はないと思う。ただ、原子力船というものを今つくるのに、いろいろな関係からその主務大臣として運輸大臣を入れるという御構想は、これは他に疑義があるかもしれませんが、一応納得するといたしましても、九年後に進水して稼働する原子力船を、今から運輸省に引き渡すのだということを考えたり約束する必要性はどこにあるか。九年間に世の中がひっくり返って、こんなものはとてもできないということになるかもしれない。なぜ九年先にそういうものを引き渡すということを予想したり約束する必要があるのです。
  18. 島村武久

    島村政府委員 何分にも、計画計画通りに実際動きました場合でも、いま齋藤委員が御指摘のように、九年先のことでございますから、今から何もきちんときめておく必要はないというお説もごもっともとは存じますが、また他面、こういう船をつくりますこと自体につきましては、非常な御賛成もあると同時に、一方からはいろいろな意味におきまして、何と申しますか、時期尚早といったような意味におきましての反対意見もないわけではなかったわけでございます。それらの方々の主張せられますところでは、この船ができ上がったあと、どのような目的に使われるか、どこに所属してどのような仕事に当たるのかという点を明らかにすべきだ、というようなことを言われる向きもあったわけでございます。従いまして、私どもといたしましては、この船の目的が海洋観測船であるということにいたしました関係上、最も関係の深い運輸省とも十分にお話し合いをいたしまして、おそらくは九年たった後といえども、この船は海洋観測船の中でも最優秀の船になり得るという予想を運輸省としても持たれて、運輸省でこれを使いたいという希望も表明されておりますので、そのことを率直に申し上げているにすぎないわけでございます。
  19. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私の申し上げているのは、九年間の歳月に原子力平和利用体系も進歩発達するだろうし、また、科学技術振興の建前から科学技術庁もいつまでも科学技術庁でおるまい、科学技術省に昇格をする。そういう場合に、今問題になっているところのいろいろな宇宙開発とか、あるいはその他科学技術振興に対して、一隻ぐらい海洋観測船というものがあったって、たとえば運輸省にまかしてしまって、またその船を使うのにセクショナリズムで所管争いをするなんということをやらないで、とにかく九年後において適当にこの船の所属を決定する。そのときの事態において適当に、一番効率的に活用のできる分野にこれを所属させるということでいいので、今からこれを運輸省に所属させるのだといって原子力関係が一生懸命になって苦労する必要は、私はないのではないかと思う。それよりももっと大所高所から、九年後にこれをいかに活用することが一番国家的であるかという観点からこの船の所属をきめるということの方が、私は賢明じゃないか、ベターじゃないかという考えに立っているわけです。  だけれど、どうしても運輸省に所属をきめなければ、この問題がにっちもさっちもいかないというのなら、一つその理由をはっきり示していただきたい。
  20. 島村武久

    島村政府委員 何分九年先のことでございますので、私も科学技術庁が一ぱいぐらい船を持ちましたり、あるいは幾つかの飛行機なども持ちましたり、いろいろ機動的に行動し得るような科学技術庁になっていくことを希望いたしておりますし、科学技術の進歩がだんだんに進んで参りまして、科学技術庁がそういう時期に際会しまして、今の科学技術庁通りであるわけはないと考えております。従いまして、この原子力船につきましても、世の中一般、あるいは科学技術庁そのものが、性格的にもまた実質的にも、広範多岐なこのような仕事にも深く関係していくような場合には、それはそのときの判断によりまして、運輸省とさらにお話しすることも可能でございます。現在運輸省とお話ししておりますのも、これは運輸省と科学技術庁の間で御相談しておるだけのことでございますので時勢の変化あるいは事情の変化によりまして、事態が変わることもあり得るということは当然でございます。
  21. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これも一つ長官にお考えを願いたいのです。どうも私の考え方からは、できるかできないか、九年後にどういうふうに事態が変化するかわからないのに、今からこの原子力船の所属というものは運輸省にするのだということをきめるということは、おかしいのではないかと思っている一員であります。特に今、南極観測も再開をされる、そして、南極観測の本部というものは、いかなる体系において再出発するのかということもわからない。また、いろいろな面から、資源の開発という点から、海洋観測というものは科学技術庁が独自の立場でもってやらねばならないという事態も出てくるかもしれない。そういう点から考えると、今からこれを運輸省に所属さしてしまうんだというようなことは、かりにもこういう行政を預かる立場においては言うべき筋合いのものではないのじゃないか、そう私は思うわけであります。ですから、その点は一つよく御考察を願いたいと思うのです。  ただ、ここで一つ承っておきたいのは、「第一船は、総トン数約六千三百五十トン、主機出力一万馬力、海洋観測と乗組員の養成訓練に必要な設備、補給輸送のための若干の載貨能力および耐水構造を有する海洋観測船とした。」とあるのですが、これは砕氷能力も付置させるのですか。
  22. 島村武久

    島村政府委員 耐氷ということでございまして、砕氷能力、氷を砕く能力というものを持つというわけではないということでございます。
  23. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうすると、ここには「耐水構造」とある。氷海に乗り入れそして氷に耐えるところの能力、構造を持たせるというのです。耐氷構造を持たせて、氷を砕くものを持たせないという、そんな構造というのはあるのですか。
  24. 島村武久

    島村政府委員 どの程度までが耐氷で、砕氷との差がどの程度か、実は私もつまびらかにいたしませんので、専門家の方に答えさしていただきたいと思います。
  25. 藤野淳

    ○藤野政府委員 ただいまの耐氷あるいは砕氷の問題でございますが、砕氷構造、砕氷船と申しますと、耐氷構造と根本的に違う、積極的に氷を砕く構造でございまして、外板の厚さも非常に厚いし、また前後左右にタンクがありまして、タンクの水をポンプで操作することによりまして積極的に氷を砕くという装置、機能を持っている船であります。  耐氷構造と申しますと、氷海に乗り入れても外板に重大な損傷をこうむることがない、あるいはプロペラであるとか、かじであるとか、そういうものが氷によって損傷をこうむらない程度の構造、外装を施した船ということでございまして、耐氷構造にもいろいろグレードはございますけれども、砕氷横造とは性格、グレードの異なるものでございます。
  26. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは砕氷船じゃない、海洋観測船ですから、レーニン号みたいに砕氷専門の砕氷船とは違うということは、私はわかっているわけです。耐氷能力を持つということになると、どうしても氷海に乗り入れるということを前提として砕氷能力を持たせる、ただ、氷だけには耐えるけれども、氷に閉じ込められたときに、早期に、まだ厚くならないうちにそれを破砕をして危険を脱出するという能力をある程度持たせるのか、持たせないのか、という質問をしておるのです。
  27. 藤野淳

    ○藤野政府委員 造船技術的に、砕氷構造、耐氷構造というのは一つの熟語になっておりまして、その言葉だけでどの程度のものであるかということが一般の人にはわかる言葉でございます。厚い氷の中で脱出できるかできないかという、そういうことは船の使用目的に関連いたしますので、厚い氷海の中で行動させることをこの原子力船に要求するかどうかという問題でございますが、私どもといたしましては、そのような期待は持っていない。普通の氷の散在している氷海において行動いたしましても、先ほど申しましたように、機能に重大な損傷を受けないという程度の構造であります。
  28. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これはなぜそういうことを私は申し上げておるかと申しますと、大体原子力船の問題が最初に論議されたときは、宗谷がああいうふうな状態で、南極観測もできない。この際できるならば、海洋観測を兼ねた南極観測にまでこの船を用いられるような力を持っておれば、非常に日本としても便利じゃないかというような構想から、ある一部においては原子力船、海洋観測船というような構想も浮かんできておるわけであります。ですから、技術的に耐氷能力は持たせられるけれども、砕氷能力は持たせられないというなら、これは別でありますけれども、もし耐氷能力も持ち、またある程度の砕氷能力も持ち得られるものであるとするならば、日本の造船技術というものは非常に進歩しているのですから、少しくらい金はよけいかかっても、そういう能力を持ったものにしてもらいたいと、私はそう考えておるわけです。それは不可能というなら別ですが、造船技術的にそれはどうなんですか。
  29. 藤野淳

    ○藤野政府委員 耐氷を本格的な砕氷構造にいたしますために著しく船価が上がるということはないと考えます。従いまして、そういうふうなことは、これは将来の問題でありまして、現在はそういうことは考えない、耐氷構造で今考えておるわけでございます。
  30. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 その点についても、一つ御当局に十分なる御勘考をお願いいたしたいと思うわけであります。  なお、日本原子力船開発事業団の資金ですね。昭和三十八年度は、政府出資が一億、それから政府以外から五千万円、一億五千万円というものでやる。これから、政府以外の出資五千万円をも求められていくんだろうと思うのでありますが、ここに昨年の十一月にお出しになりました年度別資金計画というのがありまして、この三年目になりますと十億一千五百万円、四年度が十億四千二百万円、五年度が八億一千八百万円と、ずっと年度割にしてありますが、一体この六十億何がしの事業団の出資別というものは、今どういうふうにお考えになっておるのでありますか。というのは、政府以外の出資がなかった場合には、全部政府で出資していくという御構想に立っておられるのですか。あるいは、どうしてもある程度までは政府以外の出資を求めていくというお考えですか。
  31. 島村武久

    島村政府委員 初年度は、今おっしゃいましたように、政府が一億、民間が五千万、いわば二対一という関係になっておりますけれども、この比率で将来もずっといくということは考えておりません。しかしながら、この事業団の資金につきましては、民間にも相当のワクを将来とも期待して参る。現在関係の業界は、必ずしもあまりゆっくりしておられませんので、御指摘のように十億といったような所要資金を必要とする年度につきまして、十分な民間からの出資が得られるかどうか、非常に問題はございますけれども、政府といたしましては、相当額を今後も民間に期待しておるわけでございます。
  32. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは、この法案提出して、三十八年度の予算に政府出資一億、政府以外に五千万円という予算を組むときに、大蔵当局とどういう話し合いがあったか。大体何割ぐらいは民間、何割ぐらいは政府というような構想がなければ、なかなか初年度の予算もつかないし、また、法案提出して原子力船をつくっていくという構想も浮かばなかったのじゃないか。政府以外の原子力船関係のあるものは、この出資に対して何らか非常に積極的に賛意を表したとか、あるいは二の足を踏んだというような話はありませんか。
  33. 島村武久

    島村政府委員 御指摘のように、予算折衝の段階において、政府の態度はきまったわけでございますけれども、はっきり申しますと、三十八年度のように二対一、いわば三分の一を民間に期待するということを将来とも続けていくということではございませんけれども、二五%程度は将来民間に期待して参りたいということを政府側として考えておるわけでございます。これにつきまして、関係の業界等に現在その方針につきまして御了解を願っておるわけでございますが、何分にも九年先まで続くことでございますので、必ずしもはっきりしたお約束というわけにも参りませんし、また、はっきりした約束というのはどういう形であるかも問題でありますが、いずれにいたしましても、原則的には、民間におきましてもこの構想に非常に賛意を表しておられまして、できるだけそれに協力していくという体制もとっていただいておるわけでございます。  私どもといたしましては、産業界にいわゆる好況、不況というようなことがあるということは十分承知しておりますけれども、できるだけ、先ほど申しましたような政府の考え方に民間もついてきていただくように努力して参りたいと考えておるわけでございます。
  34. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私は原子力関係産業界からいろいろ話を聞いたことがあるのでありますが、これはよほどしっかりした体系を持って責任の所存を明確にしてもらわないと、われわれは協力する気持になれないという声を私はだいぶん聞いたのです。それで今御質問申し上げたのでありますが、いろいろな政府以外の出資を求める場合には問題があると思いますが、とにかく先ほど来私が御質問申し上げているような点に対しましては、十分御勘考の上、毅然たる責任体系を確立して、政府以外の出資者に喜んで出資をするという体制をつくっていただかないと、私はなかなかむずかしいのじゃないかという疑念も浮かんだから、特に御質問を申し上げたわけであります。特に、何条でございましたか、出資は返さないのだし、それから事業団は質権として取ることもできないのですし、そして時限的立法ですから、九年たつとこれは解散してしまうのでしょう。そうすると、僕は法律には弱いのですけれども法律の条文からいうと、政府以外の出資者というのは寄付したということになるのですか。
  35. 島村武久

    島村政府委員 観念的には、あくまでやはり出資でございまして、寄付と違いますが、この場合、民間から受け入れますところのお金は、出資という形だけに限定するつもりはございません。出資と寄付、どちらでも考えておるわけでございます。しかし、寄付として受け取りましたものは、これは申すまでもない寄付でございますが、出資として受け取りましたものは、法律的にはやはり出資として、出資証券を発行し、出資の扱いをして臨んで参るつもりでございます。
  36. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 第六条に、持分の払戻し等の禁止、「事業団は、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。」第二項「事業団は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。」、そうして時限立法であるから、九年たつというと、この事業団は解散してしまう。そうすると、この持分というものは一体どうなるのですか。法律がなくなってしまって、事業団も解散してしまって、船だけは運輸省の所属になってしまう。そうすると、出資者というものの権限はどうなるのですか。
  37. 島村武久

    島村政府委員 第六条の持分の払い戻しの禁止の趣旨でございますが、これについては、ある見方から申しますと、非常に出資者に対して酷であるというような考え方も成り立ち得るわけでございます。しかしながら、この事業団業務運営と申しますものは、御承知の通り、事業を行なって参ります際に、出資あるいは寄付以外に経常的な収入が別途あるというようなものではございませんで、もっぱら政府及び民間のいわゆる出資に待たねばならないわけでございます。従いまして、この事業団が解散いたします前に出資者が自分の持分を返してくれということになって参りますと、資金の面からこの事業団目的とした事業運営することができなくなりますし、また、年度別に見まして、たまたま事業団が正味資産をよけい持っておるときに払い戻しを受けた者は、そうでない者に対して有利な地位に立つというようなことも考えまして、同じ出資をした者の中で不公平を生ずることになるというような趣旨から、持分の払い戻しの禁止規定を第六条に置いたわけでございます。  しかしながら、これは法律規定にもございますが、第三十七条でございますか、解散した場合に、事業団そのものに残りましたいわば資産、これは当然出資額に応じて出資者に返されることになっておりますので、その意味におきましては、純然たる寄付ではなく、出資はあくまで出資としての扱いを受けるということを申し上げたわけでございます。
  38. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうすると、これは解散のときに、残余の財産があるときに、これを出資額に応じて配分するというような、原子力船の場合にそういうことが考えられますか。原子力船ができた、六十億かかったのだけれども、百億と踏んで、そして四十億だけかりに配分する金というものを生み出すというなら別ですけれども、船ですから……。残余財産というのは、一体どういうところを目標にして残余財産ということは言えるのですか。
  39. 島村武久

    島村政府委員 ごく簡単に申しますと、この事業をやって参ります上には、いろいろなものを買って事業団の所有とするといったような場合もございますけれども、おそらく想像いたしまして、一番大きな資産となるものはつくり上げました船自体ではなかろうかと考えております。先ほどおしかりもございましたけれども、運輸省に引き継ぐ、あるいは国に引き継ぎをやります場合のその引き継ぎの仕方ということも非常に問題になるところであろうかと思います。それらの点につきましては、先ほども申し上げましたように、何分にも遠い先のことでございますから、こまかい引き継ぎの仕方につきましても、規定は本事業団法においては省略いたしまして、同じ第三十八条の三項に「事業団の解散については、別に法律で定める。」、つまりその際にあらためて国会の御承認も受けまして、最も公正な形においてこの解散ということを進めたいと考えております。  いずれにいたしましても、私ども今考えておりますのは、この約六十億の資金のうち、船価にあたります分が三十数億と予定しております。三十数億であり得るかどうか、これは大いに問題もございます。いろいろなデータを取りますために運航実験をいたしましたり、あるいは乗員の養成に使ったりもいたしますし、償却ということも考えなければならぬと思いますけれども、現在考えておりますのは、いずれにいたしましても、ただで国がこれを引き継ぐということは考えられないことじゃなかろうか。そうしますと、そこにやはり残余財産という問題も出てくるというふうに考えますので、齋藤委員のおっしゃいますように、残余財産というものなんかは考えられないのじゃなかろうかということにつきましては、私どもといたしましては、現在のところその程度の考え方を持っておるということを申し上げておきます。
  40. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 残余財産というから混乱するのですが、これは出資者に対して損を与えないということなんですか。
  41. 島村武久

    島村政府委員 損というと、なにでございますけれども、金銭的にはこれはきっと損になる可能性の方が大きいと思うのであります。先ほども申しましたように、九年たちました後におきまして、日本では原子力船というのはこれ一隻でございますから、非常に希少価値があって、引く手あまたで高く評価されるということも全然期待されないわけではありませんけれども、その間に研究開発ということにも使っておりますし、また、おそらくこれは別に国会で御審議を得てきまるということになりますが、政府はいわゆる残余財産は返還を受けない、大きな出資者であるけれども、民間だけだ、というようなことにもなりかねないのじゃなかろうかというふうに考えますと、どうも、出したものが全部返っておつりがくるということにはならない。言いかえますと、民間出資者にはお金を出してもらうけれども、一文の迷惑もかけないでお返しするというようなことは、実は考えていないわけでございます。
  42. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 では、その問題はその程度にいたしておきます。  その次に、第二章の役員。きょうの朝日新聞の社説には、「公社、公団を安易に造るな」とあって、その中に事業団が入っておる。この社説は時間の関係で読みませんが、この事業団法は九年の時限立法なんです。そして理事長、専務理事及び理事の任期は四年としてある。留任すれば別であるけれども、四年でかわる。そして、かわったあとの四年というものは別の人が来た場合、そういう事業がうまくいくかどうかということです。むしろ、時限立法ですから、九年間適任者を選んでやらせるということにしておいて、そして主務大臣または最高の諮問機関であるところの顧問会というもので不適任と認めた場合には、どんどん交代させるというようなことでないと、任期は四年あるから不適格者が四年間、無能力者——無能力者も出てこないだろうけれども、不適任者に四年間がんばられてしまったのでは、何ともならぬじゃないかと思うのです。そういう点はお考えになったかどうか。
  43. 島村武久

    島村政府委員 この事業団が時限的なものであるということ、同時に非常にはっきりとした一つ目的を遂行するという点にかんがみまして、この任期をなくして一切を預けるというような形が望ましいという考え方は、確かにあったわけでございまして、私どももその点につきましても考えてみたわけでございます。齋藤委員が御指摘になりましたように、役員にこの仕事を完遂するまでの責任を完全に負ってもらうという意味におきまして、一たん任命しました上、もし不適格であるという場合にはそれを解任する道を開いておきますれば、一番理想的でもあると思うわけでございますが、他面実際問題といたしまして、人間の適、不適その他を一律に測定し、それによっていきなり四年間この仕事に専念するつもりの人を解任するというようなことにつきましても、必ずしも弊害がないとも言えない面もございます。従いまして、一応この事業団法におきましては、先ほど申し上げましたように限時的であり、かつまた目的がはっきりしたものではございますけれども、任期の制度を置いたわけでございます。  なお、任期の期間につきましては、他のいろいろなこのような期間の中ではやや長目の方の期間を採用いたしたわけでございます。もちろんこれは主務大臣の任命に関することでございますので、私からとやかく申すのはあるいはどうかと思いますけれども、予期いたしましたように非常にりっぱな役員を迎えることができましたならば、第十四条二項の規定によって、当然再任し、その仕事が済むまでやっていただくというようなことも考えられるわけでございます。
  44. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それじゃ、第十六条の、「主務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至ったときは、その役員を解任しなければならない。」こういう公式的な条項があるわけです。しかし、原子力船をつくるのですから、原子力船という目標を定めて、九年間の時限立法でもって、六十億の金をかけてやるのですから、これは最初に適任の者がその職についたときは、立法的にも、この仕事の完了までおれはやるのだという意気を持って、責任を持ってやる体制というものが一つ考えられるのじゃないかと思う。  それからやらせてみたけれども、さっぱり当てがはずれて、どうも能率が上がらないというときには、それを解任する方法がないために、四年間重職にその人をつけておくということになったならば、これは十三年かかるということになってしまうわけなんだから、そういう点、何らかもう少し責任者に対して、はっきりした体制を確立するような構想というものがないかということなんです。私にあるかと言われれば、私にもないわけですけれども、専門的に見て、こういう目標の定まった、しかもたった一つの目標、そして時限的な立法のもとにおいてやる仕事でありますから、こういう公式的な役員任命の方法以外に何か名案というものが浮かばなかったですか。
  45. 島村武久

    島村政府委員 先ほど申し上げましたように、私もまた、齋藤委員が今おっしゃいましたようなことが、この事業団にきめられました任務を遂行する上によりいいんじゃなかろうか、そういう考慮もいたしたわけでございますけれども、やはり結論といたしましては、最も常識的に一応任期をきめておいた方がよかろうという判断に立ったわけでございます。
  46. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それはきょうの朝日新聞の社説を読んでいただいて、ここに書かれているような弊害に陥らないように十分御留意を願いたいと思います。  なお、この法案に対しましてはもう一点だけ御質問を申し上げておきたいのであります。それは、この顧問制であります。ここにちょうだいいたしました資料に基づきますと、「顧問は、事業団の最高諮問機関であって、業務運営に関する重要事項、たとえば事業計画等の作成について、参画する。」こういうふうになっております。しかも、この定数はおおむね二十人以内、そうして学識経験者をもってこれに充てる、こういうことなんでございます。この事業団の最高諮問機関である顧問というものに対して、どういう待遇を与えんとしておられるのですか。
  47. 島村武久

    島村政府委員 待遇とおっしゃいます意味がはっきりつかみかねるのでございますが、たとえば顧問をわずらわす用事ができましたときに、通常それに見合う額をきめまして、いわば謝礼としてお払いするという程度のことを考えておるだけでございます。
  48. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 ここに、「顧問は、事業団の最高諮問機関であって、業務運営に関する重要事項、たとえば事業計画等の作成について、参画する。」こうきめてありますけれども、従来、科学技術庁の顧問というのは、私も一ぺんなったことがあるけれども、これも相当な権限を持たせられたものであるが、この取り扱いに至っては、まるでひな段のだるまにもならないのです。とにかく顧問会議を招集しておいて、一カ月に一ぺんやるか二カ月に一ぺんやるか、やっておいて、そして関係資料を持ってきてぱっと配付して、黙っていると、説明が終わっただけでさようならだ。そういう顧問を置いておいて、そして事業団の最高諮問機関であって、重要な事業計画には参画させるのだと法文には書いてあるけれども、顧問なるものがそういう待遇を受けたことを一ぺんも知らない。だから、またそのていをやるつもりか、こう聞いているのです。
  49. 島村武久

    島村政府委員 どうも、ちょっと差しさわりのある御質問でございまして、お答えに窮するわけでございますけれども、現在の科学技術庁の顧問の待遇の仕方、これは大いに反省の余地のあるところかも存じませんが、原子力船開発事業団につきまして顧問をお認め願いました上は、ただいま齋藤委員が御指摘になりましたような点は十分考えまして運用いたしたいと考えます。
  50. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私は、事業団業務運営の重要な問題に参画する顧問であるならば、これは従来のようなありきたりの諮問機関でなく、一体だれが諮問するのか知らぬけれども主務大臣が諮問するのだろうと思いますが、常任顧問制度でも設けて、常に顧問会の決議というものをもって顧問全員の会議を随時開かしめて、そしてあらゆる問題に対して意見の具申ができるようにする。そうして幹事役として常任顧問を置いて、顧問に対しても責任を持たせるということであったならば、やはり学識経験者としても相当な意見が出てくるのじゃないかと思う。しかし、従来のごとき顧問制度であって、諮問しなければ意見が述べられないなんというのでは、何百人顧問をつくっても同じことだと私は思う。だから、こんなものをつくっておいて、そうして責任の一端を分担さしていこうということは、私は、制度上における従来の非常に悪い欠点だと思うのです。だから、責任を負わせるなら負わせるような、思い切った制度にしておいて、顧問というものを優遇してやるというなら、われわれも了承できるけれども、ありきたりの顧問制度なんて、あってもなくてもいいのです。そうして、何かというと、顧問会議にかけましたという。それは、うまいこと問題を解決するあなた方の手なんだ。顧問会議にかけましたというから、顧問にちょっと聞いてみると、何も相談を受けていないという。顧問会議を開いて何かごちゃごちゃと説明しているうちに、ちょこっとそういう問題をはさんで、意見も何も出ないうちに顧問会議終了ということで、顧問会議にかけました——これは私の体験から言うのです。  だたら私は、科学技術庁の顧問会議におるときには、顧問会議が開かれると、一切の資料説明はお断わりして、顧問としての意見の開陳をやることになったのだけれども、あれはどういう構成か、単に顧問を置くということでお茶を濁されておるからどうにもしようがなかったのだけれども、今度の原子力船開発事業団の顧問は、法制的に見て、「事業団の役員、顧問及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみな」して、その職務の執行を妨害し、または職務の執行につき強要したときは、その強要した者が公務執行妨害罰に問われるということでやっておるのですから、どういう待遇を受けるか。待遇というのは、ただ金だけではないですよ。どういう待遇を与えて、ほんとうに原子力船開発事業団の仕事に責任を待たせるかということです。
  51. 島村武久

    島村政府委員 御要求によりまして差し上げました資料に書かれておりますように、顧問を置きました趣旨につきましては、広く有識者の意見を取り入れてやっていくようにということでございますので、単に金銭的なことだけでなく、もっと考え方としての待遇ということでございましたならば、広くその御意見が、従来の科学技術庁の顧問に対しますように説明で終わるということでなくてほんとうの御意見が伺えるような待遇をして参りたい、こういうように考えております。  なお、顧問につきまして御指摘のありましたように、せっかくこういうような制度を設けます以上は、十分にこの制度を置きます趣旨が生きるように運営をして参りたいと考えておりますけれども、顧問に対していわゆる別途の責任、この事業団運営につきまして事業上の責任を負わせますということにつきましては、これは理事長に責任を帰一する建前から申しまして、やはり不適当であるというふうに考えまして、先ほど御発言もございましたけれども、この顧問は主務大臣の顧問ではなくて、事業団理事長の顧問という形にしてあります。また、それを諮問機関といたしたのも、そういった責任というものについての統一をはかる建前からさようにしたわけでございます。  しかし、御指摘の通り、この置きました趣旨が、広くそういう方々の御意見を取り入れてやっていくというところにあるのは申すまでもございませんので、御質問の待遇ということがそういうことを意味するものでございましたならば、十二分に御意見が取り入れられていくような待遇の仕方を心がけたいと考えるわけでございます。
  52. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは、どうせ顧問に任命されるのですから、顧問に任命された人が喜んで自分の意見を開陳して、そして顧問総員の考え方としてはいつでも理事長に進言できるような体制をとってもらった方が、理事長としても非常に仕事がやりやすいのじゃないか。従来のような顧問制の建前からは任命された人が不愉快であるし、そして自分の価値を見出すわけにいかない制度であるから、これを一つなるべく活用するように取り計らっていただきたいというのが私の趣旨であります。  大体、私がこの原子力船開発事業団について質問しようと思って勉強して参りました種は尽きましたから、これでこの問題は打ち切ります。      ————◇—————
  53. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  科学技術行政一般に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
  54. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 委員長のお許しを得まして、その次の科学技術基本法の問題について御質問申し上げたいと思うのであります。これは御質問と申し上げるよりは私の要望です。ですから、要望に対して一つお答えを願いたいと思うのであります。  科学技術基本法の制定というものは、科学技術庁が誕生したときからの問題であります。科学技術庁が誕生いたしましたときに、科学技術庁の誕生祝いとして基本法をつくったらどうかという話も出たのでありますが、それは今つくったのでは早過ぎる、やはり実績を積んだ上に基本法の構想というものを築き上げる方がいいのだというので、科学技術庁誕生以来今まで満七年間に近いのでありますが、科学技術の振興に思いをいたしておる者は常にこの法案を考えてきたわけであります。ところが、考えて参りますと考えて参りますほど、この科学技術基本法というものは私はむずかしいものだということを自分で考えているわけであります。それで、私の悪いくせではないのでありますが、速記録をずっと読んでみますと、科学技術庁長官になられた方は、必ず科学技術庁の将来のあり方に対して科学技術基本法の制定ということを口にしておられる。最近に至りましては、来国会には提出するつもりだ、来国会には提出するつもりだと言われているが、来国会がもう二回ぐらい過ぎているのです。二回過ぎたか何回過ぎたか、とにかく私たちはこの国会に科学技術基本法というものがコンクリートされて出てくるだろうという一まつの淡い希望を持っておったわけです。しかし、これは淡い希望でございまして、実質的に基本法の制定ということを考えますと、非常にむずかしい問題だと私は思う。最近どういうような状態になっておりますか、その経緯の説明を承りますと時間が非常に長くなりますから、これは委員長にお願いいたしまして、十四名の小委員会を開催していただいて、その席上ででも従来の経過を私はとくと承りたいと思っておるのであります。とにかく、われわれも小委員会をつくりまして、いわゆるわれわれの間における科学技術基本法の構想というものを一応文章にまとめたのでありますが、今読み返してみますと、なかなかそういう基本法が無事に国会を通過するなんということはむずかしいような点もたくさんあるわけで、第一、科学技術という概念すらまだ私は定まっていないのではないかと思うのであります。でありますから、一つこの際、従来もずいぶん科学技術会議等において、正式諮問ではなかったようでございますが、本会議の決議として、科学技術基本法というものはつくらなければならないのだという建前から、ずいぶん今日まで努力をせられて、各省間の事務折衝もおやりになったようでございますが、もう一段と迫車をかけて、この国会は拙速主義を排して見送るといたしましても、仏の顔も三度ということがございますから、この次の国会にはぜひともその基本法の制定というものに日の目を見せるということで、御奮闘願いたいと思うのであります。この国会もあしたから三月に入るわけでありまして、おそらく私の想像から参りますと、基本法というものの草案がまとまるということは時期的に間に合わないのではないか、そういうふうにも考えているわけであります。この国会に提案しないから、それじゃもうこれを放棄してもいいのだということでなく、この国会はぜひとも間に合わすべく努力し続けているのだという態勢で一つ基本法に取り組んでいただきたい、こう思うのでありますが、御当局はこれに対してどういうふうにお考えになっておりますか。御回答をお願いいたします。
  55. 杉本正雄

    ○杉本政府委員 科学技術基本法に関しましては、齋藤先生もおっしゃいましたように、非常に重要な問題でございまして、事務局といたしましては、おそくも今度の国会に提出できるようなスケジュールで、昨年の六月に科学技術会議の分科会が一応終了いたしましてから、総合部会で鋭意審議していただいて参ったわけであります。同時に、科学技術会議の幹事会と相談して参ったのでありますが、その間、齋藤先生が御指摘のように、科学技術の内容と申しますか、概念の問題、それから、国として行ないます場合の研究、基礎研究から開発研究までございますが、そういう分野の振興の考え方、さらに振興いたしますための基本計画というものの内容の問題、それから基本計画をつくる任に当たると考えられます科学技術会議の、基本ができましたときの機構の問題、というようなことに関しまして非常に数を重ね、慎重な審議を進めて参ったのであります。関係各省とのそういう点に関します相談もだいぶまとまってきているように感じておるわけでございます。現在でも今国会に何とかして出せるようなつもりで一生懸命に事務局はやっておりますが、科学技術会議の総合部会を終了いたします段階も、現在の順でいきますと、どうももう一カ月くらいかかりそうなふうに感じられます。仰せの通りに、計画局と文部省の大学学術局が事務局でございますが、両者一緒になりまして、最近ではほとんど毎日のように相談してやっておるわけであります。今後とも一そうの努力を続けていく所存であります。
  56. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは長官にただ聞いておいていただけばいいです。私は昭和三十七年二月、もう一年前のことでありますが、こういう質問をしたことがある。これは自分の恥をさらすような質問でございますが、  「科学技術」という用語に対して、まだ私自身が的確なる認識を得ておらないということであります。基本法の構想がだんだん熟して参りまして、基本法を制定する前提として、科学技術という用語に対するところの定義を定めなければならないということが今論議されておるのでありますが、科学技術庁設置法の第三条を見ますと、「科学技術庁は、科学技術の振興を図り、国民経済の発展に寄与するため、科学技術(人文科学のみに係るもの及び大学における研究に係るものを除く。以下同じ)に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする。」こう書かれておるのでありまして、これも、昭和三十一年、科学技術庁設置法がこの特別委員会に提案されましたときに」 問題となったのであります。科学技術振興に対する一番大きな障害をなしておる問題は、ここは省略いたしますが、この定義の確定ということがなかなかできないということであります。  「第一、この第三条の初めに書いた「科学技術」というのは、これはカッコで制約されてない科学技術、」 ですから、人文科学も何も全部含んでいる。ところが、  「その次に来た「科学技術」は、今度はカッコで制約されて、人文科学並びに大学の研究に関するものはこれを除く、こういうことでありますから、」 私の質問の要点は、こういうふうに考えていくと、  「科学技術」という新しい用語であるという認識から出発をするというのがいいのじゃないか、」 こういう質問です。ですから、科学ぽつ技術か、ぽつをとった科学技術か、一体三木長官はどっちの方を選びますかという質問に対しまして、三木長官は、  「齋藤委員の言われるように、これを分けて考えるということはなかなか困難な現状にある。だから、「科学、技術」でなしに「科学技術」こう言った方がいいと思います。これはおのずから一つの分野があるとは思うけれども、どこにピリオドを打つかということはなかなかむずかしい。だから、そこに間を置かないで、「科学技術」と一気に言った方が私はいいと思う。」 こういう御答弁をなすっておられるわけであります。  話に聞きますと、文部省と科学技術庁の間のやりとりが、これはなかなかむずかしい問題だということであります。ですから、私ここでお尋ねしておきたいのでありますが、一体科学技術庁というのは外国語では何と訳すのですか。
  57. 杉本正雄

    ○杉本政府委員 科学技術庁は、現在の外国語、と申しましても英語でございますが、サイエンス・アンド・テクニックス・エージェンシーというように訳されております。
  58. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうすると、英語ではぽつがあるわけですね。そういうところから定義があいまいになってくるわけです。一体科学技術というのは、科学ぽつ技術、いわゆるサイエンス・アンド・テクニックというのが、サイエンティフイック・テクニックというのか、あるいはテクノロジーという字で表わしていくのか。たとえばエレクトロニクスという字でもって電子工学も電子工業も全部表わしておるというふうに科学技術というものを解釈していくのか、今のようにサイエンス・アンド・テクニックでやるというと、ぽつがどうしても入らなくちゃならぬということになるわけですね。そうすると、その科学というものは一体どこまでの分野をさしていくかということになってくる。どうしても技術と不可分のものであって、しかも自然科学と、それから技術関係のある人文科学だけを取り入れて、そうして科学技術という新しい言葉で表現しているのだという定義をきめるならまだ基本法の構想もあるのですよ。しかし、従来の慣習に従って科学ぽつ技術か、それから科学技術か、しかも、その科学というのは、従来の慣習に従っての科学という言葉で解釈していくのだということになると、一体その範囲はどこまでいくのだという、まことにあいまいもこたる定義というものになってくるわけです。  だから、私がお願いしたいことは、これはここだけで論議しているわけじゃないのですよ。入れかわり立ちかわり、その長官の席にすわられる方に対しては、いつでも私はこの質問をしておる。ところが、科学技術というものの定義というのはきまらないのです。科学技術の定義がはっきりきまらないで科学技術基本法をつくるのでありますから、これはなかなかむずかしいことだと私も思う。だから、まず第一に、ここでいう科学技術というものはいかなることを意味するのだということをはっきりきめておいて、そうして基本法というものに取り組まなければならないんじゃないかと思うのです。これはなかなかむずかしいのです。  科学技術会議の答申を読んでみましても、「科学技術は、世界平和の確立と人類文化の増進に奉仕すべき英知と創造力の結晶であるということを永久にかわることのない前提として、」ということになると、人文科学も何もみんな入ってしまうと思うのです。そして、あとを読んでみると、それは自然科学に限定するのだという。だから、科学技術というものをそのときどきの得手勝手な解釈でもってお互いにやり合うから、科学技術というものに対する定義がはっきりしてこないと私は思うのです。こういうところに衆知を集めた論議を戦わして、いわゆる科学技術というものは何を意味するのだということを一つはっきりきめていただいて、それから科学技術の振興というものに対して——これはほかへ行っては大きなことは言えない。もう七年もたって、まだそんなことをぐずぐずしているのかということを言われるおそれがあります。私の忌憚のない考え方から申しますと、そういうところにまだあいまいもこたる問題が残っているのではないかと思うのでありますが、それについて一体計画局長、どうですか。
  59. 杉本正雄

    ○杉本政府委員 事務局といたしましても、齋藤先生のおっしゃる通りでございまして、今までの各方面、それから部会での、特に分科会の段階でございますが、この科学技術というものの定義に関しましての考察が非常に長い時間行なわれたわけであります。科学技術庁では、科学技術と申しますのは科学の全領域、それから技術を包括してとらえました言葉というふうにきめておりますので、私は英語には弱いのでございますが、サイエンス・アンド・テクノロジーという英語も科学ぽつ技術ではございませんで、外国でもサイエンス・アンド・テクノロジーというふうに、いつも続けて使うというふうに考えておりまして、この問題について長い間いろいろ御審議いただいた結果、現在では科学技術庁の見解は、もう一ぺん申しますと、科学の全領域、技術を包括的にとらえました表現ということに考え方がだんだん、ほとんどそれに近くなってきているような状態でございます。もう少し検討いたしますと、この定義ははっきりきまるのじゃないか。従来の科学技術は、科学技術会議の科学技術、または科学技術庁の科学技術、どちらも制限がございまして、しかも異なる制限がございました。そういうものを個別的にいろいろに考えられまして、科学技術の定義とされているような状態から、長い間審議を重ねまして、科学技術というものは科学の全領域、技術を全部含めました言葉である、というふうな見解に近づいております。
  60. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 今の御答弁は、速記録によって私も検討を加えたいと思います。時間がありませんから、今度は大臣の所信に対して御質問申し上げます。直接大臣の御答弁を必要といたしません。当該局長その他から御答弁をいただければいいと思うのであります。  実は今度の長官の御所信表明には、第一に防災問題を取り上げておられます。もちろんこの防災問題は、豪雪を眼前にいたしまして、非常に大きな問題でありますので、私といたしましても、日本の科学技術の粋を集めて、この防災科学の充実及びその効力の発揮をこいねがうわけであります。これはこの前言わずもがなであったのでありますけれども、岡委員の人工降雨の御質問につきましては、私も今までの人工降雨の実験に対しまして非常に失礼な批評を加えたわけであります。  ところが、河北新報の秋田版に、「齋藤さんのアイデア売れず」、こういう囲みものが出ております。これを読みますと、私のアイデアをもってすれば、降雪が陸地に来ないで、海の上でストップしてみんな降ってしまう、このアイデアが売れなかった。これは社会党さんが四時間にわたる質問をしたために、時間がなくて売れなかった、という記事なんであります。これは選挙区に出ておるものですから、これに結末をつけないと私の得票に非常に影響があるので、これはぜひ売れるアイデアにしなければならぬと思って、きょうはそういう意気込みで来たわけであります。  というのは、私も豪雪地帯の人間でありまして、いつでも豪雪に悩まされるわけです。気象からいいますと、豪雪警報が出て、また毎日天気予報が出る。しかも、あそこに、雪雲が来ているのに、あれを黙ってお互いが受け取らなければならぬということは、これはあまりに知恵がなさ過ぎるんじゃないかということで、私も寄り寄り防災科学ということに興味を持ちまして、いろいろエキスパートに研究を依頼しておったのでありますが、最近その結論が出て参りました。だから、その結論を今簡単に御披露いたしますので、これを長官に買ってもらいたいと、こういうわけです。予算を調べますと、防災科学に対して調整費の中に三千万円充て込んでいるわけであります。私みたいに貧乏生活をしている者は、三千万円というと非常に大金に思われるわけでありますから、一つ、こういうアイデアもあるということでお聞き願いたい。  それは、音波利用による人工降雨であります。この研究書は、あとで、私が持っておりますからごらんに入れてもいいと思うのでありますが、大体二キロサイクルの振動を与えると、一ミクロンから十ミクロンの水蒸気というものは凝集して水滴になるということが、はっきりと実験データで出ているわけです。大がかりな実験をいたしましたのは、これは公表していいかどうかわかりませんけれども、常磐共同火力株式会社の煙突で一年間実験したデータが載っているわけです。二キロサイクルの音波を与えますと、その煙突の中にある煙もちりも全部凝集して、七〇%落ちてくる。これは私も実験を見に参りましたが、ある形の水蒸気に音波を与えまして、音波の適性が合致いたしますとすぐ水滴になるわけです。ですから、今の研究者のアイデアというものは、ジェットエンジンで二キロサイクルの振動を与える、そして一・五マッハくらいの速力をもって雲の中をずっと飛翔すると、その音波振動によって、大体雲は一ミクロンから十ミクロンぐらいの粒子だそうですから、それが凝集して雨になって落ちてくる。五マッハということになると、音は全部うしろに置いていくわけですから、その振動は飛行機の飛翔によって十分効果が上がる。直ちにジェットエンジンの飛行機を飛ばすことには金がかかるでありましょうけれども、ジェットエンジンの模型みたいなものをつくって、二キロサイクルの振動を与えて、そして雲と同じ水蒸気のものをつくって実験をやれば、私はすぐ結論は出る問題だ、こう思うわけであります。  そういうような実験も方々で行なわれて、そういう結論も出ておるのであります。タンクに水を入れて、飛行機の上に積んでいって、そして雲の上から水をちょろちょろまくよりは、この方がよほど科学技術的じゃないかと私は思うのですよ。だから防災科学といっても、官庁だけに立てこもって、官庁だけのアイデアというものを相手にしておったのでは効率が上がらない。やはり広く人知を求めて、そうして適正な研究というものを取り上げてこれを実現に移していくというような、人間のアイデアというものを生かす思い切った行政措置をとらないと、私は予算だけを盛ったって、なかなか効果が上がらないと思う。この間も申しましたけれども、雲の上から水をまくよりはドライアイスが効果的だといったって、それでは一升何ぼにつくかわからない雨が降る。それから、地上から沃化銀をたくといったって、雲と沃化銀の立ち上がる方向というものは必ずしも一致しない。もちろん雲に沃化銀をぶっつければ水滴になる。けれども、私が今まで研究いたしましたこの二キロサイクルの音波と申しますか、これを一ミクロンないしは十ミクロンの水蒸気にぶっつければ、必ずそこに凝集作用を起こして水滴になってくるということは事実なんです。ですからそういう問題が起きます場合に、一つこの実験を新しい分野としてお取り上げを願って、虚心たんかいに実験をしていただけるかどうかということなんです。これは局長でけっこうです。
  61. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 人工降雨につきましてただいまおっしゃいましたが、研究を取り上げるかどうか、この場で直ちに結論を申し上げることはなかなかむずかしいと思いますが、私の方でも、御承知の通り、研究調整促進費のほか、新技術開発事業団その他いろいろの、こういう新技術開発する機関を持っておりますので、適当な機関で、内容がよければ取り上げていって当然推進すべきものだ、そういうふうに考えております。
  62. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私の御質問申し上げておるのは、研究調整費というものはそういうところへ使うべきものじゃないかという、研究調整費の性質を質問しているのですよ。新技術開発公団もありましょうし、いろいろな科学技術振興に関する発明奨励の金もありましょうが、今豪雪に悩まされ、台風に悩まされて、そして防災科学技術センターですか、そういうものまで機構を改革して、応急措置として人知を集めてこの防災に対処しなければならないという次元に立てば、そういうアイデアが生まれてきたときこそ、研究調整費というものでもって、実験をどんどんやっていく。新技術開発公団なんかに行っても、そんなものは取り入れてくれますか。取り入れてくれるのなら行きますよ。行きますけれども、みんなひもつきです。私は何回も行ったことがあるけれども。ですから、ひものつかない緊急実験に対応する金というので、苦労して研究調整費というものをとったのでありますから、こういうアイデアが浮かんできたときに、その金をさいてやるということが当局の答弁じゃないかと思うのだけれども、どうなんですか。
  63. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 アイデアを直ちに研究調整費でやりますということは、なかなかここではそう申し上げにくいかと思いますが、今おっしゃいました音波を利用します人工降雨は、先ほどもお話を伺いますと、発電会社でも相当長期にわたって研究が進んでおるようでございますし、私の方でも慎重にこれを研究いたしまして、内容がよければそれは調整費も出せるかと思うわけでございます。何分にも、今お話を承りましたばかりでございますので、この場で出すとか出さないとかいうことは、ちょっと申し上げかねるわけでございます。
  64. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは局長に文句を言うのじゃないけれども、一体二キロサイクルという音波、こう言い切ると、聞いている方はそうかというけれども、二キロサイクルの音波を見つけるのに何年かかっているかという研究者の苦心というものは、それは考えなければいかぬですね。一体二キロサイクル・オンリーで、二キロサイクルからはずれれば、それはもう凝集作用というものは雲に及ぼさないという実験なんです。だから行政官としては、そういうところにやっぱり発明奨励という立場から思いやりを深くしなければいかぬ。齋藤憲三がここへきて、二キロサイクルと言うから、そうか、そんなものは何でもないと思うかもしれないが、二キロサイクルを見つけるのは、あなた一生かかっても見つからぬ。そこが役人根性と言うのです。聞けば自分が考え出したような顔をしておるけれども実験というのはそんなものじゃない。私だって、二キロサイクルの音波を一ミクロンないし十ミクロンの水蒸気にあてるというと、それが七〇%くらい水滴になって凝集するということを発表するまでの、発明者、実験者の苦衷というものを知っておるから、そういうことをつけ加えておくのですが、よく一つ検討を願いたいと思います。  またこの次におもしろいものを見つけたらやりますが、しかし、やっぱり科学技術というものは、私はそういうものだと思うのですよ。いかに法制を完備しても、研究機関を完備しても、その中に科学技術実験をするところの創意工夫というものが生まれなければ、そんなものは研究所を大きくしたって、法律をつくったって、何にもならない。ですから、そういう点を、一つ広く人知を求めて、効果的にやっていただきたいと思うわけであります。  その次は、原子力発電に関して、昨日の日刊工業新聞に、六電力で百三十七万キロワット、工費千二百七十四億五千万円、三十七年から四十六年までに通産省でまとめる、こういうことが発表されたわけでございます。私、この新聞を見てどぎもを抜かれたのですが、一体原子力発電行政はいつ通産省に移譲されたのですか。
  65. 島村武久

    島村政府委員 原子力発電行政がいつ通産省に移管されたかという御質問でございますけれども原子力開発利用という角度から、御承知の通り、科学技術庁原子力局が置かれまして、そこで担当いたしておりますし、何も火力、水力、原子力を問わず、発電事業という感覚からは以前から通産省が担当をいたしております。また、科学技術庁から、かって国会の御審議を経るために提出いたしまして、現在法律として成立いたしております原子炉等規制法、これによりましても、原子炉の設置に関しても、発電用の原子炉につきましては科学技術庁と通産省の関係が非常に明らかに区分されて、法律上明定されておるわけでございますので、昨今急に通産省に移ったわけでもない、さように考えております。
  66. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 今の御答弁の点は、一ペん速記録を見てからやります。しかし、私から言うと、原子力発電会社をつくるとき、その原子力発電会社の機構にすら、原子力委員会というものは重大な関心を持っていろいろ国会側に折衝してやったわけです。それから、第二号炉をつくるときは、どういうふうな炉をつくるかということは、相当な談議の末、ある見通しをつけた。だから、今後の原子力発電は民間に期待するということにはなっておるけれども、いかなる形でもって原子力発電は将来行なわれるかということは、国家総合エネルギー政策の観点から、やはり原子力委員会責任を持って審議決定しなければならぬと思っておるのに、いきなり原子力発電の長期計画がこういう形になって行なわれるということの新聞を見ますと、もうすでにそういうものが原子力委員会において論議されて決定されたのじゃないかと思って、読んでみれば、そうじゃないのですね。  ですから、私は何も、通産省でこれをまとめて、昭和三十七年から四十六年までに百三十七万キロワット、工費千二百七十四億五千万でやるということが悪いと言うのじゃないのです。われわれが考えておるところの原子力平和利用体系と何も関係なしに、ぼこぼこ一方で原子力発電は歩いているんじゃないか、それじゃ原子力委員会は何しておるのかということになる。こういうのがだんだん出てくると、原子力委員会は居眠りをしておるのか本眠りかということになってしまうのです。だから、その点に対して、私たちは、原子力委員会をつくるとき一生懸命になってやって、そしてこういうふうな事態になると、何が何やらさっぱりわからなくなってしまう。だから、それは行政の問題ですから、はっきりした形をもつてお示しを願いたい、こういうわけです。
  67. 島村武久

    島村政府委員 原子力委員会との関係についてのお尋ねでございますが、御指摘のように、原子力委員会は、原子力に関しますわが国の政策を企画し、審議し、決定するという仕事をいたしております。通産省が発表したその記事自体は、私読んでおりませんけれども原子力委員会は、そのような仕事のために、御承知の通り長期計画をつくりまして、前期十年間に百万キロワット、その遂行を主として民間電力会社に期待しておるということは御承知の通りでございますが、この計画をつくりますにあたりましては、もちろん通産省等の意見も徴しますし、また民間の意見も徴しました上で作案したものでございます。従いまして、新聞に載っておりましたのも、原子力委員会が立てましたその計画に沿って、それぞれ民間会社等が自分でやる仕事の分を考えましたものを通産省として取りまとめたという程度のものであろうと思いますので、原子力委員会との関係におきまして、どっちが主でどっちが従であるかというような問題は、私どもとしてはつゆ考えていない。わが国の原子力発電でありましても、わが国の原子力政策というものである限りにおきましては、これは原子力委員会が企画し決定する性質のものであります。現在、齋藤委員が御指摘になりましたような事実は、これは原子力委員会の策定しました計画に沿って動いておる動きの一端である、そのように解しておるわけでございます。
  68. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それじゃ、まあ原子力局長の御答弁を一応了承することにいたします。  もう一つ原子力委員の方がおいでになっておられますから、これは機会があったらもっと詳細にお調べの上、一つお教えを願いたいと思いますが、三菱原子力工業株式会社の社長からの報告書がございます。  最近アメリカにおける原子力発電の態様というものが大きく変わってきた。そうして、第一に私たちが気がつきますことは、人口二万五千人以上の都市、それに対して、従来は七マイルとか七・五マイルとかの遠隔の地を選んで、原子力発電所を建設しておったというのが、最近のラベンスウッドという百万キロワットの原子力発電は、ニューヨークシティ、しかも二万五千人の人口から〇・三マイル隔たったところに建っている。ここにちゃんとこういうふうに図まであるのです。ニューヨークがあって、ニューヨークの西部へ百万キロワット、しかも、PWRですと四・九ミルと書いてある。そうして、一九七〇年には百万キロワットが完成して運転される。こういう報告書がきたのであります。  最近の世界の原子力発電の動き、特にこういうふうに〇・三マイルの地点に、ニューヨークの近郊に百万キロワットの原子力発電所ができる。こうなりますと、まあ、これはしろうとですからよくわかりませんが、原子力平和利用に対する考え方というものが、もう従来の感覚からいったのじゃいかぬのじゃないかというふうにも思えるのです。ニューヨークからちょっと離れたところに百万キロワットの原子力発電所ができて、そしてそれが四・九ミルでもって原価が計算されているという事態ですね。だから、われわれの考え方は、五年も六年も七年も前の原子力平和利用の頭でおるかもしれない。もし、そういう頭でもって原子力平和利用を国会において審議しておったということになりますと、時代錯誤とまではいかぬだろうけれども、非常に時代におくれるということになる。だから、こういうことはわれわれの手元へ届いておるのですから、原子力委員会に届いているはずなんだ。こういうものこそはっきりと事態を研究して、その安全性から、その他どういう計画でこれをやっているかということをPRしてもらわなければ、いつまでも原子力と  いうものに対する恐怖観念というものは抜けないのではないか。これが科学技術の進歩でしょう。科学技術の振興だ、科学技術振興対策特別委員会だなんていったって、こういう世界の進歩体制というものに目をおおうておったのでは、世界的認識というものに対して非常に欠けるところがあると私は思うのです。これは一つ参考のために申し上げておくのであります。私もこれは最近入手しておいたのでありますが、これの実態を一つ御究明願いたいと思うわけであります。これは御要望であります。  それからもう一つ原子力に関しまして、この国会でウラン粗製錬の予算が取れている。これはきのうでしたか、原子力次長と電話でもって非常にやり合ったのですが、あまり長くなって、とうとう電話を切られてしまった。その要点は、私は人形峠のウラン鉱を開発するということに反対をするのではない。予算が取れて、これから粗製錬のプラントをあそこにつくっていくというのでありますから、まことにけっこうなことだ。しかし、今原子燃料公社がやらんとしているあの粗製錬の方法が、いま日本で知られているところの方法のうちでベストであるか、その論争をやったのですが、局長はどう思う。
  69. 島村武久

    島村政府委員 ベストであるというような意味におきましてお答え申し上げることはできないと思います。と申しますのは、比較すべきものが比較されるような形においてないという意味においてでございます。従いまして、私どもといたしましては、必ずしも原子燃料公社のものが最高の技術であるというふうに思っておるわけではございませんが、今日あれと比較し得るような段階に達しておるものはまだないという意味におきましては、ベストである、そういうふうに申し上げるほかないと思います。
  70. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは技術的なことになりますと、私もたくさん読めない符号があるのです。だから、あまり技術的なことに対しては論争することはやめますが、一体、科学技術庁長官の所信御表明を読んでみましても、科学技術庁としての建前というものは、なるべく外国の技術というものから脱却して、日本の独得の技術が世界水準に到達するということを目標に置いて、科学技術庁は科学技術の推進をはかっているということは、私、事実だろうと思う。ところが、ベストじゃないけれども、比較するものがないからベストだと考えているなんて、そんな答弁は原子力局長の答弁としては絶対受け取れない。一体、ベストであるかベストでないかということは、その他の実験の経過というものを比較検討してみて、そしてベストであるかもしれぬということになってきたら、やはりそれに対しては注目をしなければならぬわけでしょう。  これは東京工業大学の舟木好右衛門教授が長年の間研究いたしまして、七つのウラニウム製錬の特許を取った。そして科学技術庁からは助成金が出て、今まで自己資金八百万円か九百万円を加えて、一千三百万円でこの実験を継続してきた。原鉱石は人形峠のウラン鉱だというので、その結論はこういうことが出ております。これは原子力局へ報告してあるはずです。  試験研究の結果を企業化しまたは適用した場合の効果 一、技術的効果  従来の硫酸浸出法による国産ウラン鉱の製錬法に対してより簡略化された工程により金属ウランが得られることが期待される。 二、経済的効果  低品位鉱である国産ウラン鉱を対象とした場合、工程の短縮化によってウランの生産価格を国際水準に近づけることができるであろう。 三、企業の見通し  溶媒抽出以降の工程について研究を終了したら企業化できると思う。」  ですから、今までの実験過程においては、原子燃料公社がやっておられますところのいわゆる硫酸法、しかもそれが最後の工程においてエキサー法でもってやる、オークリッジでやったあの方法ですね、あれとは全然別個の溶媒抽出、それから四弗化ウラン還元の方法、そういうものは実験もある程度進み、理論的にも立証されておる。そういうものが一方にある場合に、それが比較研究ができないからベストだ——それは方法が違うから比較研究はできないと言われるかもしれぬけれども、私の観点からいくと、硫酸法というものは、これは根本的にいうと何も新しい方法ではないのですね。しかも、エキサー法というのは、オークリッジでやっておるものを日本で買ってきたものであるから、これも公知のものである。それを原子力局でもってベストだと考える、その考え方が私にはわからないのです。  一体、日本の人間が特許を出して、ウランの製錬法について新しい角度から七つも特許をとって、科学技術庁原子力局から補助金をもらって、千何百万もかけて、現にその実験をやっておる。どっちがいいかというと、試験の結果、報告書の中には、従来の方法よりも工程が簡略化されて、こっちの方がベターだ。しかも、世界的な市価に近づくことができるであろう。最後の段階実験さえすれば企業化できる。しかも最後の実験というものは、工業大学の研究室でもって何回も実験されておる。私は何も原子燃料公社の今の一貫製錬法を排撃しようとするものではないのですよ。排撃しようとするのではないけれども、そういうものも十分に比較検討をして、これがほんとうにベストだという確信のもとでやらないと、あとでまた、何をやったのだという悪声が出てきはせぬかと思うから、そういう点には十分留意してやられておるのかどうかということなのです。最後の四弗化ウランの製造方法はヒドラジン還元によるものですから、あなたの言う通り、今までのエキサー法とは全然違う。だから、そういう意味では比較にならぬ、全然違った方法なのだ。しかし出てくるところの、金属ウランまでいくところの工程の、金属ウランまでいくところの金の勘定からいつたら、今の硫酸法よりずっとこっちの方が安いということはわかっておる。だから、そういう比較をしたかというと、方法の比較は全然別だから比較にならぬというけれども、もし比較になるような方法なら容易にまねができるのだし、特許にならぬのだから……
  71. 島村武久

    島村政府委員 私が申し上げましたのは、方法が違うから比較ができないという意味で申し上げたのではございません。私も概略を了解しておりますけれども、専門的な意味におきまして、方法論的な優劣ということを私自身が云々するのは、これは僭越かと思います。私が申し上げておりますのは、今までの研究のやってきました段階、これが違うという意味で申し上げておるわけであります。非常に卑近な例で申し上げますと、たとえば千メートル走る競走におきまして、一方の者は今八百メートル走っておる、他方はまだ、かりにでございますから数字を申し上げるのはちょっとはばかるのでございますけれども、三百か四百走っておるという意味におきまして、千メートルに着きます場合に、最後の勝ちをどちらが占めるか、これはまだわからない。ポシビリティとしては、公社以外の方法にもずいぶん期待の持てるところがあると考えるわけでございます。また、それなるがゆえに、国家的に助成の対象にもいたしておるわけであります。ただ、それが最終的に優劣がきまりましてから後に、現地で中間工業試験工場でやりますということにつきましては、単に時期的におくれるというような問題もございますので、現段階として一番早く走っておる方をつかまえる。こういう意味でございまして、一方が非常に見込みがないというような意味ではございません。  たとえて申しますと、現在行なわれております他方の研究は、スケールにいたしましても、鉱石にして五十キログラム程度のものでございまして、大いに期待は持てますけれども、まだいきなりこれをどうこう云々するというわけには参りません。他方、公社の方は、ネックと見られておりますところをとらえまして、規模におきましてもやはり一トン程度のものがございまして、そういう意味におきまして、比較することが今日の段階ではちょっと無理じゃなかろうか、そういうことを申し上げておるわけでございます。  新しいやり方につきましては、私どもといたしましても、特にそれが国産であります場合、できるだけこれを助成いたしまして、いい方法が見つかる努力ということは、今後においても続けて参りたいと考えておるわけでございます。
  72. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私は、原子燃料公社が粗製鈍プラントをつくってやっておるということに反対しておるわけじゃないのです。なければ、それで進めてもらいたいということが年来の私の願望なのです。ところがこれは古河電工でやっておるらしい。古河電工の最後の結論は、三十八年八月三十一日で最終の予定変更した実験が完了するということになっておる。その中間報告では、従来の過程よりも非常に短縮されて、そして世界市価に近づく見通しがついたということなのですね。だから、それは私もいろいろ説明を聞いたけれども、硫酸法よりもいい。その内容はあなたも知っておるから、ここで時間をかけて私は言わぬけれども、そういう見通しのあるものが出てきたわけです。  ところが、どちらがいい結果になるかということをオミットして、そして、ちょいとこっちの方には取り柄があるからこっちをやってみようという余裕が日本にはあるのかということです。そういう余裕があればけっこうです。しかし従来の考え方からいうと、そういう余裕がなかなか生まれなかったから、いかにして国際市価に近接するところのウランの製錬法を見出すかということで、お互いが苦労してきたわけです。それが理論的にも、また世界に今まで行なわれなかった方法が日本人の頭から考え出されて、これが国際市価に近づけるような簡単な方法であるということが権威ある人々から発表されておるのに、それに対して将来一体どういう取り扱いをするのか。今のようにあなたはおっしゃって、試験完了したらやはりこれもやってみるのですか。
  73. 島村武久

    島村政府委員 繰り返して申し上げておりますように、現在どちらの方がいいということを申し上げておるわけではございませんし、一方が見込みがないから取り上げないという意味では決してございません。ポシビリティというものを大いに認めておりますがゆえに、これに対して国家的な助成も行なっておるということを申し上げておるわけです。  ただ、補助金を交付いたしましたところに対しまして、現在の研究の状況、今後の研究計画等につきましても問い合わせをいたしておるわけでありますけれども、今すぐに、私どもが今度予算で御審議をお願いするために提出しておりますような内容のものにいきなり持っていくつもりはないようでございます。私どもといたしましては、現在、これは三十七年度としてなお研究中に属することで、最終的な報告が出てきておるわけでもございませんが、その結果いかんによりまして、今御指摘のように、それにつきましてもさらに中間的な試験を試みまして、いよいよ本格的に日本でウラン鉱山を開発いたしますときには、その方がいいということになりますれば、もちろんそちらの方を採用するという心がまえで参りたいと考えております。  幸いにいたしまして、ウランの製錬につきましては現在硫酸法でありますところの公社の施設、これが他の方に対しましても相当部分、後に使える点もございますので、そういう段階になりますれば、中間試験を行ないますことにも大して支障はない、そのような見通しを持っております。
  74. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 まあ、その問題はそのくらいにしておきます。  ただ、私といたしましては、科学技術庁のあり方及び日本人の創意工夫に対する助長策、せっかく日本人的な発明が出て、われわれ説明を聞くと、今やっている硫酸法よりはベターな重炭酸ソーダ法というか、ヒドラジン法というか、そういうものが出てきて、日本の特許庁が、これは世界に類例のない新しい方法で工業的な価値があるとして許可をした特許件数が七つある。しかも、それが一千三百万円の金をかけて実験をしてみると、やはりその特許にかかっている通りに、これは非常に簡単な過程を経て、従来よりは安く、国際市価に近接し得られるという報告書が出ている。そういうものに対して、私は、本来の姿からいえば、むしろ国費を使うという立場からいえば、この結果を待っていずれがベターであるかということを比較して、それから中間工業試験というものをやるのがその常道ではないか。あなたにこういうことを説法して、はなはだ失礼かもしらぬけれども、中間工業試験というものはそういうものなんだ。ラボラトリーにおいて発明されたものを十分検討して、それからベストというものを中間工業試験に移して、そしてコスト並びにマスプロダクションの構想を練っていくのが中間工業試験なんです。一体どっちがベストかというものは、中間工業試験にいく前に、ちゃんと実験と理論と、それを繰り返すことによってきまるわけでしょう。それが八月三十一日に結論が出るというのに、その結論を待たずして、今あるものをベストとして使うだけの国家に金の余裕があれば、それはけっこうなんです。しかし、一億何千万円か何億かけているか知らぬけれども、やってみて、あとでもってこんな方法というものは、こういう特許があるにかかわらず、なぜ一体こんなことをやったのだ、ばからしい方法だということになったら、この責任の帰趨するところ非常に大きな影響があるのではないか、こう私は思うわけなんです。だから、あなたの言うように、今の方法は今の方法としてやるのだ、またよりいい方法があとから出てくれば、それも取り上げてやるのだ、それだけの大きな考え方でやるのなら、私はそれでもいいと思う。しかし、私のおそれることは、もうせっかく何億という金をかけてやってしまったのだから、あとでいい方法が生まれてきても、せっかくやったのだからこの方法を採用するわけにいかないということになったら、科学技術振興の根本を破壊する行政措置になってしまうということを私はおそれているわけなんです。この点どうなんです。
  75. 島村武久

    島村政府委員 第一、第二の方法以外にも、科学技術の進歩は目ざましいものがざざいますので、あるいは第三の方法、第四の方法と、次々に出てくることを期待しても差しつかえないことではなかろうかと思います。一ぺん一つのものをやったから、あとでできたものが相当よくても、もうそこまでやる余裕はない、それはやれないというようなことで捨てておきましては、齋藤委員も御指摘のように、新しい科学技術の発達をはばむということにもなると思います。できれば、みないい結果さえ出ますれば、段階を追って、それを完成に導くということがわれわれの使命であろうというふうに考えております。  ただ問題は、国費を使ってやることでもございますので、私がそう考えたからと申しまして、次々に出てくるものみなを中間試験にまで持ち込むことができるかどうか、大いに疑問とするところでございますが、先ほど申し上げましたように、齋藤委員が今あげておられます、いわば第二の製錬法の非常にポシビリティを持った方法というものは、幸いにして第一の製錬法でやりましたものの設備がほとんど使える、継ぎ足すものはほんの少しで済むというようなことも考えられるわけでございます。それで私が、第二のものがその段階にきますれば中間試験も当然やってみるつもりであるということを申し上げておるわけでございます。  なお、現在実施中の試験の結果が八月までに出るだろうというようなことのあることも、申請によって承知はいたしておりますけれども、しかし、その結果が出ましてすぐに山元でやれる段階かどうかということにつきましては、若干問題があるようでございますので、この点につきましても、起業側の古河電工側の意見を聞いておるところでございます。そういうようなことがすべてはっきりいたしまして、山元で実施するに十分たえるような、第一の方法よりも、齋藤委員がおっしゃいましたように、確かに工程も簡略化され、実施するに十分な見通しがあるということでございますれば、私どもといたしましては、第一の試験、これは二カ年計画でございますけれども、やればすぐ結果も出ることでございますから、引き続いて第二の方法について中間試験をやることが可能である、そういうふうに考えております。
  76. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 だいぶ答弁を勉強してきたように感じられますから、その辺で及第点を与えます。  その次ですが、これは簡単ですが、一つお答えを願いたいのです。放射線障害防止のためにバーミキュライトの濾過装置をだいぶつくられたと聞いておるのですが、これは全部配布済みですか。
  77. 村田浩

    ○村田説明員 私からお答え申し上げます。御承知の通り、三十七年度予算の予備費をもちまして、天水濾過器一万八千個を用意いたしました。これは、全国の天水飲用家庭にくまなく配布するという計画で作製したものでございます。そのうちの七割五分を国が出し、残りを地方自治団体が補助するという形で、全国の天水濾過器の使用家庭へ配布しまして、濾過していただくようになっております。最近の調査によりますと、天水飲用者がおる県が全国二十九県ございますが、そのうち四県を除いて、二十五県に全部配布済みになっております。残っております県は、実は小さい離島の非常に多いところでございます。漸次配給しつつございますが、若干輸送その他の便のためにひまどっておりますが、遠からず全部配給済みになるものと承知しております。
  78. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 このバーミキュライトは、放射線障害防止対策として実験もやっていただきたいと思いますから、これは一つお願いしたいと思います。ストロンチウム九〇、セシウム一三七の体内における状態をバーミキュライトによってどれだけ除去できるかという実験をほかでやっておる。ですから、これも一つ原子力局で、どこか適当なところにやらせていただきたいと思います。  それから、アジア原子力会議は、いつから開かれて、どういうことになるか。簡単に一つ説明をいただきたいと思います。
  79. 村田浩

    ○村田説明員 アジア原子力会議は、三月十一日に開催いたします。三月十一日高輪プリンス・ホテルで開催いたすことにしておりまして、会期は三日間の予定でございます。現在各国からの参加の申し込みが届いておりますが、一応招待いたしましたアジア並びに南太平洋地域におきますIAEA加盟国十六カ国のうち、十四カ国が参加の意思を表明してきております。
  80. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 こういうのは、もっと早く知らしてもらいたいですね。  それから、日米科学協力、これは予算説明があるのですが、「日米科学協力に関しましては、昨年第二回日米科学委員会が開催され、その勧告に基づいて早期に着手すべき問題についてその後両国の政府間会議で取りきめられましたが、三十八年度については、国内の調整連絡に必要な経費及び情報部会の活動に必要な経費を計上しました。」これは日米科学会議というものは何か法制化されたのですか。
  81. 瀬谷徹

    ○瀬谷説明員 振興局長がちょっと参っておりませんので、かわってお答えいたします。  ただいまの御質問は、日米科学委員会の法制化でございますが、ただいまのところまだ法制化いたしておりません。
  82. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは三回か四回でやめるのでなく、ずっとやるつもりなのですか。
  83. 瀬谷徹

    ○瀬谷説明員 今後も続けるつもりであります。
  84. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これはもう前から問題になっておって、いやしくも日米科学委員会という名前を打っておりますから、法制化できるなら早く法制化して、十分な予算処置をとるとか、そういう御配慮を願いたいと思います。  長官、お急ぎだそうですから、あと一つだけ長官にお願いして、御退席を願いたいと思います。  これは、この委員会で取り扱う本質のものではないと思いますが、たまたまこの委員会でガンの問題が取り上げられた。そして、私たちの目的は、ガン対策というものを科学技術的な見地から大いに推進すべしという考え方でガン問題を取り上げたのですが、どういうはずみか、SICという注射薬が問題になったわけです。ところが、これは一方、ガンの権威者は鼻くそだと言うのです。それから、SICをやっている牛山という博士は、これは正当な培養方法によって注射液をつくったのだ。こういうことで、特別委員会において問題になったために、国会外にもそれが波及いたしまして、ガン学会で非常に論議が戦わされたのだそうです。  で、私はこういうことを政府当局にお願いをし続けて参ったわけです。科学技術庁では、こういう問題は調整局でもって早く実験の結末をつけてくれ。それから一方、厚生省には医務局長に来てもらって、医務局長が行政的な立場からこのSICの培養方法が、正しい培養方法であるか、インチキ培養方法であるかという一点だけを追及してくれ。そのSICがガンにきくとかきかないとかは別問題です。SICという注射薬を培養する培養の方法が、一方ではインチキだと言うのに、一方は正しいのだと言うのです。  私は物好きに、この間SICをつくっておるところを見てきたのです。私は専門象ではありませんが、多少そういうことに興味を覚えて、培養方法とか、顕微鏡をのぞくということを過去においてやった経験がありますので、そういう立場から培養方法を見て、顕微鏡でそれを見て参りますと、これはあながちインチキだとはいえないのですね。むしろ正しい培養方法と言わざるを得ないと思うのです。私がその現場を見て参りました感覚から言いますと、あれが正しい培養方法か、インチキ培養方法かということを決定するのは、岡先生でも三日頼めば、これはわかってしまうのです、専門家は。これは簡単なことなのです。それを一方ではインチキだ、一方では正しいのだと言って、これほど世の中に物議をかもしているということは、科学技術というものを重視している立場から言うと、まことに噴飯ものなんですね。なぜ一体そんな事態が世の中を騒がしているのかということになりますと、これは返答ができないのです。  それで、私なんかは、自分の選挙区へ帰りますと、この問題で非常な誤解を受けているわけです。あなたはSICで買収されているのかとか、あんなものはインチキではないかとか、癌学会の大家がインチキだと言っている、あなたはインチキにくみしているのか、これはお医者さんが私に対して言うわけです。私はそうではないと、一方のガンの大家と称する者は、あれは培養方法がインチキだから鼻くそだと言っている。一方はこれは正しい培養方法だと言っている。正しい培養方法かインチキの培養方法かということを究明するために、おれは国会で一生懸命やっているのだと言ったら、そんなものかと言うのですね。厚生省というものはそんなものか、科学技術庁というものはそんなものか、そんなちっぽけな問題に対しての国家的な判定を下し得ないということになったら、それはおかしいではないか、そんなばかなことはないはずだと言って、お医者連中がみないきり立つのです。これは事実そうなのです。速記録をごらん願えばよくわかるのです。ガンの大家がインチキ培養方法だと言い、一方はそうではないと言う。そのわずかなことが、先進国を凌駕せんとするこの日本の科学技術の建前において解決できないわけですから、これは実に不可思議なのです。  ですから、私といたしましては、事きわめて問題は小さいかもしれませんけれども、科学技術というものは実験によってその結果を了承する以外に解決の道がないので、その実験をやってくれと何べんも言い、調整局長は調整費を出しましょうと言っているけれども、厚生省はがえんじない。仕方がありませんから、長官において、しかるべき方法をお考え願います。これは、ガラス張りのうちをこしらえて、そこへ人を入れてやらせればいいのですから、わけないと思うのです。しかも、これに対してけんけんごうごうたる非難もあるし、また礼賛もあるわけです。人心を惑わす非常なものなのです。そうして、日米科学会議においてはガンを重要問題として共同研究する。実にこれはつじつまの合わない問題なのですが、これに対してしかるべく考えて善処するという御答弁でもちょうだいしておきたいと思うのですが、いかがですか。
  85. 近藤鶴代

    近藤国務大臣 実はそのお話は、ただいまここで初めて伺ったようなわけでございまして、ということは、厚生省がそれをがえんじて受けないということでございます。問題になっているというのは、新聞にも出ましたので承知いたしております。しかし、私といたしましては、その問題にあまり興味がないと言っては悪いのですけれども、あまり関心を持っておらなかったことは事実でございますが、そういういきさつのあるということを初めて伺いましたので、役所の方へもよく私聞いてみたいと思いますし、なお、厚生省の方に対しましても、齋藤委員のお考えを十分くみ取っていただくようにお話をしてみたいと思うわけでございます。
  86. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 最後にお願いを一つして私の質問を終わります。それは特別研究調整費の問題です。昨年でございましたか、一昨年でございましたか、南方に多量に生産されるラテライトの研究をこの調整費をもってやっていただいたのです。これはラテライトからクロームを除去する製鉄法であります。この間、報告書をちょうだいいたしましたところが、そのアウトラインは書いてございますけれども、これによっていかなる鉄ができたか、その鉄は使用するに足るものであったか、それから、このラテライトからクロームを抜く方法は用いるに足る実験であったのか、そういう結論一つも報告書に書いていないのです。ですから、せっかく国費を費やして、今東南アジアにあり余っているところのラテイラトからクロームを簡単にとって、そうしてこれを製鉄原料にするという実験をやっていただいたわけですから、これに対して今ここで説明をしてもらうと非常に長くなりますから、これはやめて、もっと正確な結論を表わしたものを文書でもって一つ出していただきたいと思います。  それからもう一つは、これも資源局長範囲になると思いますが、最近の所信表明及び予算説明を承りますと、食糧問題及び土壌の問題等に対してだいぶ資源局では手を染めておられるようであります。  そこで、資源局にお伺いいたしたいのは、設置法には、資源局は、カツコして(他の行政機関の所掌に属することを除く。)と書いてある、しかし、他の行政庁というのは、農林省なら農林省に関係あるものは除いてもいいけれども、農林省と通産省と厚生省というふうに三つ関係のある資源の問題は一体どうなるのでありましょうか、あるいは除かなくてもよろしいのでしょうか。
  87. 井上啓次郎

    ○井上政府委員 資源局におきましては、所掌事務といたしまして、資源の総会利用のための方策一般、いま齋藤委員が申された中では各省の専掌のものを除くという項目と、第四項に、各省に所属しない事項につきましてはこれを取り扱うというふうに規定されております。従いまして、いま齋藤先生が御指摘のような他省にわたるものは、これは一つの省に専掌しておるものではございませんので、その点は科学技術庁といたしまして十分所掌範囲にありますので、現実にそういうふうないわゆる調整というふうな機能ではございませんが、行政として十分連絡をし協力をする体制にあります。
  88. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 大へん長くなって恐縮でありますが、「都市機能の限界調査及びFAO等の主催する国民食糧消費の総合調査に関して基礎資料作成のための調査を新規に実施する」、こういうふうになりますと、結局調査だけするのか。  それは別問題として、せっかく各省庁にわたる問題は科学技術庁の資源局においていろいろ調査その他研究してもよろしいという建前であるなら、ここでお願いをしておきたいのは、最近私の県のごとき米産地で、ある一つの恐慌が起きているわけです。それは、お医者さんの意見を読むと、高血圧、ガンの敵は白米とみそづけだと書いてあるのです。そういう記事が非常に多い。白米というものが高血圧とガンを誘発する原因であるとするならば、米をつくっておる者の前途というものは非常に心細くなっていくわけです。はたして白米というものは食っちゃいけないものなのか。それは高血圧及びガンの誘因になるものだとすれば、白米食というものは国民の健康、保健の上から廃止していかなければならぬと私は思うのです。もしそういうことが起きたとしたら、農業基本法もへったくそも、根本から吹っ飛んでしまうことになりやしないかと私は内々心配しているのです。そういう点に関してはどうですか。農林省と厚生省その他に関連を持つのだが、こういうことは一体資源局としてやれるのですか。
  89. 井上啓次郎

    ○井上政府委員 今の御質問に関連いたしまして、現在やっておりますことを御説明申し上げますと、付属機関であります資源調査会におきまして、生活環境という問題で部会をつくって調査検討いたしております。これにおきましては、いま先生が申されたような一つの食物、米なら米というものについての問題だけではございません。食品の総合的な立場というものを加味いたしまして、しかも、生活環境といえば、寒冷の問題、あるいは健康上の問題、こういうものをみんな総合的に見なければいけません。従いまして、これは疫学的な面で統計数字を使いまして健康水準を判定しておるわけでありますが、それが徐々に現在の調査活動では、ある意味におきまして明らかになっておるところもございます。しかし、これを一がいに米がいけないというような判定を下すのは早計でございまして、総合的な判定をするように現在調査を進めております。なお、疫学的な意味におきまして特に成人病が最近やかましくなっておりますが、これは国連のFAOにおきましても取り上げておる問題です。食糧との関連、栄養部門のあり方、それから生活環境とのつながり方というものは当然議題になっておりまして、相当進んでおります。そういう面も加味いたしまして、全体的な姿においてこれを調査検討し、その中で必要な事項につきましては、調査会といたしましては勧告なり報告を出しまして、科学技術庁長官にその旨を伝えるというシステムになっております。従いまして、その線に沿いまして現在活動を続けておりますが、厚生省、農林省、特に関係がございますので、その点につきましては十分連絡をとりつつ活発な調査活動を期しております。
  90. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 もう質問をやめますが、白米の問題です。きょうは持って参りませんでしたけれども、私はいろいろな人が発表しておる発表文を集めておる。これはおびただしいものです。白米を食うと高血圧になる、ガンになる、短命だ、だから白米を食ってはいけないという論はずいぶんだくさんある。ですから、米でなければあとつくるものを持っていない秋田県のごとき米どころは、これによって非常に大きな影響を受けておる。格差解消どころではない。自分がつくっておる米は、将来そういうことになったら、みんな食わなくなってしまいはせぬかという不安を持つわけなんです。だから、こういう問題に対して、もし資源局がやれるとするならば、科学技術の立場からはっきりした統計なり結論なりを出していただいて、民心の安定をはかっていく。米がいけないものならば、食生活を変えていかなければならぬのです。だれも、一生懸命になって米を食って早く死にたい者はいないのだから、そういうものを的確に表明していく力というものを表わして、そして国民の生活に安定感を与えるというのが私は科学技術庁の存立の意義だと考えておるわけです。これはあまりせっついても結論は出ないだろうけれども、なるべく早く、そういうものに対して技術庁としての結論一つ出していただくように御努力願いたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  91. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 本件に関連いたしまして、岡良一君。
  92. 岡良一

    ○岡委員 せっかく資源局長がお見えだから、この次の機会に御報告願いたいと思います。  御存じのように、ここ数年のうちに石炭の需要が六千万トンを維持することはきわめて困難である、こういうようなことが政府側から言われておる。ところが、一方、石炭の利用についても、あるいは溶鉱炉で非粘結炭を使用する、あるいは電力用炭にしても、粉炭をサスペンションの形でパイプ輸送して使っているという実例もあるように聞いております。こういうようなあなた方のまじめな調査と努力が生きるか生きないかということは、石炭問題解決の大きなかぎだと思うので、あるいはその点、天然ガス等の利用も含めて、あなた方の調査研究の成果をぜひ一つこの委員会に御発表願いたい。  そういう機会をつくっていただきたいということです。
  93. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 承知しました。      ————◇—————
  94. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち、日本原子力船開発事業団法案について、来たる三月六日午前十時三十分より、参考人から意見を聴取いたし、審査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 寺島隆太郎

    ○寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十二分散会