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石川委員 実は
長官に御
質問しようと思いましたことは、きのうの
予算委員会の第一
分科会で
質問を申し上げる
予定にしておりましたところが、大
へん時間がおそくなりましたためにできなかった。そのかわり、きょうここで行なうことにしたわけであります。従って、
関係大臣がここに来ておられませんし、さらにきょうの主要な
議題は、
原子力潜水艦の
寄港問題を中心とする
原子力委員会の
統一見解ということがおもな
議題になる
予定でございますから、私の申し上げることは、ごく簡単に要点だけ
質問をしたいというふうに
考えております。
それは、三十八年度の
科学技術庁の
予算案でございますけれども、これは
歳出予算額が二十億二千九百万円ぐらい昨年に比べて増額になっている、
国庫債務負担行為額も十七億円ばかりふえておる、
増加比率で申しますと、去年の六・六%に対しまして、三十八年度は一五・九%となっておる、
予算額規模は
伸長を見たことになります、こういう
説明を受けたわけであります。
なるほどその限りにおきましては、
科学技術庁の
予算が
伸びたという点で
関係当局の
努力を多とするわけではございますけれども、しかし、この
程度で、はたして
日本のおくれた
科学技術行政というものが
外国並みに追いついていけるものかどうかという点について、非常な不安を
感じておることを率直に申し上げたいと思います。
言うまでもなく、
日本は資源も少ないし、
人間も多い。ただ
人間の非常な優秀な才能をもととして、端的に申しますと、非常に勤勉であるということ、それから低
賃金であるということに
依存をして
日本の
国際収支を伸ばしていくというような形になっておりますけれども、いつまでも低
賃金に
依存するということは、
国際情勢からいってもこれは許されないということは火を見るよりも明らかであります。さらにまた、
外国に追いついて追い越すということのためは、どう
考えても
科学技術というものを豊かに伸ばす以外に道はないということも常識だろうと思います。しかしながら、
政府の
予算からだけ見ますと、とても
外国に追いついて追い越すというのにはほど遠いのではなかろうか、こういうことを率直に感ぜざるを得ないわけであります。
たとえて申しますと、古い
資料でございまするが、
国民所得の中に占めるところの
研究費総額というのは、
日本は一・六%。これはちょっと見ますとフランス、
西ドイツと大体似たような
比率になっている。もちろん
アメリカ、イギリス、ソビエトなんかとは
比較になりません。たとえば
アメリカあたりは、六二年の
予算ですと大体百二十三億ドル、四兆五千億円という
予算が
科学技術関係の
政府支出予算として計上されておるわけであります。四兆五千億と
比較をしてどうこうということは、とても
日本の
現状からして不可能であることはよくわかっておりますけれども、しかし、ともかく
国民所得の中に占めるこの
比率から見て一・六%という中で、
民間がほとんどこれを出している。このうちの六七%を出しているという
現状になっているということは言うまでもないと思います。
アメリカあたりですと、
民間が出している割合は三〇%。それから、
西ドイツがわずかに多くても四割
程度であります。そうしますと、
日本だけが、一・六%を占めておるという中で
民間の
企業が六七%を占めておる。こういう形になっておりますから、
政府が
科学技術振興のために与えておる
予算額というものは、諸
外国に比べて非常に少ないといわなければならぬと思います。
たとえば
アメリカの別な
資料を見ますと、
科学技術の中の
基礎研究のうちで、
政府が出しておる
予算額というものは全体の六割を占めております。
基礎科学というものはどうしても、
民間に
依存をするということでは十分な
成果というものは期待することはできないのではないか。大ざっぱに申し上げますと、
資本主義の
勃興時代は、町の
発明家の
発明に
依存してどうやら
産業を伸ばすということもできるでありましょうし、
資本主義がだんだん興って参りますと、
企業内における
研究機関というものでもって大いに
産業の
伸長、
科学の発展を実現させることが可能であったわけであります。私は日立の方に
関係しておりましたからよくわかっておりますが、
中央研究所というものがありまして、これはおそらく
政府機関のどの
研究機関よりもりっぱだろうと思う。しかし、そういうようなりっぱな
研究機関だといいましても、
ほんとうの
基礎研究に十分に力を入れて行なうことができるかどうかということになりますと、これは前にも申し上げたことがあると思いますが、何といってもそれを応用して商品化し、そして
企業にプラスさせるということの方に相当の意欲を注がざるを得ないという
関係がありまして、
基礎研究を
民間の
企業に
依存するということは、どうしても十分なる
成果をおさめることができないということは言うまでもないわけです。
そうしますと、
日本の
政府で出しておるわずかな
予算で
日本人の機能を十二分に活用することを通じて
外国に追いつき追い越し、そして
日本の繁栄をもたらすということのためには、
予算の
説明書によりますと大
へん予算が
伸びたということで、これは別に
自慢をして書いたわけではないでしょうが、何か誇りを持って報告しておるような印象を私は受けるわけです。しかし、これではとても
日本が
外国に追いつくことは不可能だ。いつまでも低
賃金に
依存する宿命を負わされておるような
感じがしてならない。私は、今度の
予算の中で人当
研究費制度というものが細々ながら確立されたという点で一歩前進であるという点は認めますが、この
程度では、
ほんとうの
日本の
基礎研究ということに十分なる
成果をおさめるだけの
予算にはなっておらないということを、残念ながら指摘せざるを得ないと思います。
実はこまかい点について
一つ一つ御
質問したいという
気持もあったわけでありますけれども、基本的なこの問題について
一体長官はどういうふうにお
考えになっておられるか、その点の御
所見を伺いたいと思います。