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1963-03-27 第43回国会 衆議院 運輸委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月二十七日(水曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 佐々木義武君 理事 鈴木 仙八君    理事 細田 吉藏君 理事 山田 彌一君    理事 井手 以誠君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君       伊藤 郷一君    尾関 義一君       岡田 修一君    加藤常太郎君       川野 芳滿君    關谷 勝利君       中馬 辰猪君    福家 俊一君       増田甲子七君    加藤 勘十君       勝澤 芳雄君    下平 正一君       内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 廣瀬 眞一君         運輸事務官         (海運局長)  辻  章男君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局次長) 亀山 信郎君         参  考  人         (日本船主協会         会長)     進藤 孝二君         参  考  人         (海運オーナー         ズ協会会長)  玉井  操君         参  考  人         (朝日新聞論説         委員)     土屋  清君         参  考  人         (全日本海員組         合副組合長)  南波佐間豊君         参  考  人         (全日本海運労         働組合連合会委         員長)     松尾  隆君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 三月二十七日  委員簡牛凡夫君辞任につき、その補欠として岡  田修一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田修一辞任につき、その補欠として簡  牛凡夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  海運業再建整備に関する臨時措置法案内閣  提出第七七号)  外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法及び  日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補  給臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  海運業再建整備に関する臨時措置法案、並びに、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法及び日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を一括議題として審査を行ないます。  まず両案について御出席参考人各位に御意見を承ることにいたします。  この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわりませず御出席を賜わり、まことにありがとうございました。両法案につきましては深い御識見と御経験を有せられる参考人各位からそれぞれの立場に立って忌憚のない御意見を承り、もって両法案審査の貴重な参考に供したいと存ずる次第であります。なお時間の関係もございますので、参考人各位の御意見の御開陳はおおむね十五分程度におまとめいただくようお願いいたします。御意見の御開陳委員長指名順に御発言を願うことといたします。  なお、御意見の御開陳あと委員から参考人各位に対して質疑を行なうこともありますから、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  それでは、土屋参考人にお願いいたします。
  3. 土屋清

    土屋参考人 私はここに提案されております海運関係の二法案について全面的に賛成いたします。その理由について私の所見を申し上げることを許されましたことを非常に光栄に存じておる次第であります。  なぜこの海運に対する助成措置中心とした両法案が妥当であるかと申しますと、私は、日本海運業というものは、基本的に成長産業であると考えております。今日海運業は非常な苦境にあり、赤字状態を続けておる石炭と並んで斜陽産業視されている面もございますが、これは形が同じなだけでありまして、石炭産業の場合とは全く事情を異にしておる。石炭の方は、前途の需要がなくなって斜陽化は免れがたい大勢にあると思いますが、海運業は、前途は洋々としている成長産業であります。つまり日本輸出輸入が今後経済の成長につれて増大していけば、当然それは海運に依存しなければならない。所得倍増計画におきましても、三十五年度六百万トン程度外航船腹が、四十五年度には千三百三十五万トン、二倍以上にふえるということになっておる。しかも日本海運業は、戦前ほどではありませんが、外国海運業に比べて、それ自体としては優秀なる競争力を持っている。従ってもしも海運業成長していかなければ、日本国際収支にも悪影響があるわけであります。その反対に、海運業が順調に成長していく場合には、国際収支に寄与することが非常に期待されるのでありまして、戦前のような外貨獲得優秀産業になるということも私は決して夢ではないというふうに考えております。  ところが、そういう将来性を持った海運業が、なぜこの数年間、はなはだしい不況にあるかということが問題であります。私は、これについてはいろいろの理由があると思いますが、根本的には終戦直後に戦時補償打ち切り措置がとられまして、これは海運業のみならず、全産業に行なわれたのでありますが、時価にいたしまして、海運業は五千億円程度補償打ち切りを受けた。従って戦争の結果、船腹を全部失ったのみならず、それを再建する資力もあわせて失った、こういう状態に陥ったのであります。従って海運業再建するという場合には、資力がございませんから、借金でやらざるを得ない。その借金もなかなか民間金融機関からは得られないので、国の資金による計画造船中心にして行なう、こういう形になりました。このことが今日の海運界不況を招来した根本の原因だと思います。と思しますのは、借金計画造船中心にして船体を再建していくということになりますと、船をつくればつくるほど、金利償却負担、いわゆる資本費がかさんで参ります。御承知のように、日本金利は、外国金利に比べて割高であります。計画造船開銀資金によりますから、市中金利より安いのでございますが、それでも外国に比べれば決して安いとは言えない。最近造船に対する利子補給措置がとられましたが、それにもかかわらず、三十七年度において、海運業実行金利が、五分四厘から五分六厘程度でありまして、これは外国が四分ないし五分であるのに比べると、利子補給措置をもってしても、まだ割高だということになってくる。しかも借り入れが増大して船がつくられればつくられるほど、償却負担が加わってくる、こういうことになりますので、きわめて海運会社経理というものが悪化してくるのであります。  この際忘れてならないことは、海運業は、自由化のトップ・バッターでありまして、昭和二十四年以来、自由化の形で国際海運市場に登場した、つまり海運が獲得する運賃というものは、これは国際運賃なんだ。従って国内の措置によってどうともできない。従って非常に不利な条件のもとに自由化をすでにもう十数年前に行なったという不利なこともございます。その結果として、金利償却はかさみ、しかも運賃国際レートだということになるために、非常に海運会社経理悪化いたしまして、その結果償却不足約定償還借入金の償還不能という事態が起こりまして、利子補給対象五十四社の資本金が千七十億円でありますが、その八〇%に当たる八百四十七億円というものが償却不足になっております。それから設備資金借り入れ残高二千九百三十億円のうち、約定分の延滞が八百三十億円ということでありまして、これだけから見ますと、海運企業はほとんど破産状態にあると言っても過言ではない。従って数年間無配に転落して、なかなか前途それから脱却できる状態にないということも当然考えられるわけであります。  第二に、海運苦境に陥りましたのは、計画造船そのものの性格から来ていると思います。国が資金を出して船をつくらせるということになると、戦後の民主化時代においては、どうしても総花主義になりやすい。特定の会社を優遇するということは困難であって、比較的公平に公平にと考えることはいいのですが、その結果、総花的な割当が行なわれ、従って弱小企業が続出するという結果になりました。国際的に海運企業カルテル化、トラスト化しているときに、日本計画造船の結果として、弱小企業が続出するということは、また過当競争が行なわれるということでありまして、みずから自分の足を引っ張って、過当競争のためにますます赤字を累積するというようなことは、日本ドル箱航路といわれるニューヨーク航路等についても見られる顕著な現象であります。要するに国際的な企業規模水準に達しない小規模の企業が乱立し、それが過当競争を演ずる結果、ますます経理悪化に拍車をかけたということになっていると思います。  それから第三に借金で船をつくる、特に計画造船でつくるということになりますと、財政の余裕のある好況時によけい船がつくられる、不況時には船がつくられない、こういう結果になって参ります。また市中金融機関としても好況資金のゆとりがあるときには造船に対して自己建造資金を出す、不況のときには出さないということになってくる。そうしますと、船というものは不況のときにつくって好況のときにはつくらぬというのがわれわれの昔から聞いていたことでありますけれども、日本の場合は逆に、好況船価の高いときに船がつくられて、船価の安い不況のときには船がつくられない、こういう形になる。その結果高船価の船がかなり存在するようになる。特にこれは自己建造船においてその弊害が現われてきて、それが大きなガンになり、日本の船の国際競争力にも影響してくる、こういうことになったのじゃないかと思います。  こういう三つの原因によりまして日本海運業が非常な苦境に陥りました。しかし基本的には先ほど申しましたように成長産業でありますから、政策よろしきを得ればこの状態から脱却できるはずなんであります。前途成長する、現在は赤字だということになると、思い切ってここで政策的な助成を行なうという必要が当然出て参ります。そうして私ども海運造船合理化審議会委員をしておりますが、もう五、六年来海運についての助成策ということを毎年議論して参りましたが、しかもなかなかそれが思い切った措置として具体化してこない。その理由はどこにあるか。なぜ思い切った助成措置がとられなかったかと申しますと、第一の理由は、今申しましたように、企業弱小で数が多過ぎるという結果、助成を行なうとしても結局数の多い企業にばらまく結果として、いわゆる二階から目薬程度効果しかない。数が少なければ重点的に助成してある程度建て直しをはかり得るのですが、数が多いためになかなかその選別ができない。結局総花的な助成に落ちつく。そうなると、二階から目薬のような形で相当の助成を行なっても効果が上がらぬじゃないか、こういうことになってくる。これが第一に思い切った助成措置がとられなかった理由であります。  第二の理由は、ここに船主側の方がおられるのではなはだ申しにくいのでありますが、私はやはり企業海運再建のために思い切った犠牲を払うという心がまえが足らなかったと思います。それは海運企業としては戦時補償打ち切り等がありますから、それぞれの言い分はあるかと思いますが、私はやはりこういう苦境に陥って、そうしてしかも国の助成を大幅に受けるということになれば、国民の税金に依存する以上は、海運企業そのものが裸になってまず自分犠牲を払って、そうして国民の了解を得るということでなければならなかったのじゃないかと思う。ところが企業は依然として十年に一回海運好況であれば何とかなるのじゃないかというような気持を捨て切れない。このことはスエズの動乱によっても実際大したことがないのだということがはっきりしたのでありますが、ともかくいつか海運がブームになれば何とかなるという気持があって、なかなか思い切った合理化に進み得ない。しかも弱小企業が一ばいあるにもかかわらず、その企業合併し、あるいは減資して立て直しをはかるというようなことは最もやりたがらなかった。これは経営者としては無理もないと思うのでありますが、しかし、いつまでも無配状態でいくということが許されないとすれば、やはり相当犠牲を払って立て直しをするということに進まなければならなかったんじゃないか。この点海運企業そのもののあり方に問題があって、何回議論をしても助成措置がきまらなかったということになっているんじゃないかというように思います。  それから第三に、助成措置がとられなかったのは、これは先年の海運疑獄の影響があると思います。海運業利子補給をめぐって疑獄が発生した。だから正しいことでも何か助成措置の運動をやれば、それはまた疑獄と同じような目で見られはしないか、こういうちゅうちょがかなりありまして、思い切った措置がなかなか音頭をとってやるということにならなかったんじゃないかというように思われます。こういう理由助成措置がなかなかきまらなかったのでありますが、しかしいつまでもこの状態で置くわけにいかない。ほうっておけば海運企業は破産することは目に見えており、前途成長性がありながら行き詰まってしまうことは明らかだということでありますから、ここで一つ抜本的に海運対策を考えなければいけないという機運が強まって参りまして、昨年秋から暮れにかけて開かれました海運造船合理化審議会特別小委員会において、海運業集約化案というものが提出されたのであります。  この集約化というのは、この法案に盛り込まれておりますように、保有船五十万トン以上、用船を合わせて百万トン以上に海運企業集約化するということが骨子であります。その保有船につきましては、三〇%程度資本支配をもって合併とみなすということはいたしますが、二つ以上のオペレーター合併が前提だということになっております。この二つ以上のオペレーター合併が必要だということは、審議会答申にはなかった、あとから加えられたことでありますが、これはやはりオペレーター集約化を急ぐという意味で加えられたものだと私は考えます。そうしてそういう集約化を行なった企業に対しましては、開銀利子の五年間全額たな上げという思い切った措置を講じ、そして今後の新造船はこれら集約化された企業グループに原則として認める。その新造船については、開銀利子が四分、市中金利が六分というようになるまで利子補給を行なう、こういうのがこの法案骨子だと思います。要するに、今までの日本海運業の欠点であった弱小企業が乱立して過当競争を演じ、国際的な海運企業規模水準に達しないという弊を除きまして、海運のいわば寡占態勢を進め、その少数のグループに対して国が重点的に手厚い保護を行なうという考え方でありまして、私はこの構想に全面的に賛成であります。過去数年間の論議の結果としてこのような形をとるのでなければ、なかなか海運企業は立ち直り得ないし、また国民の理解を得ることも困難であると思う。これは海運企業にはかなりつらい犠牲がかぶることと思いますが、このきびしい条件に耐えて行なうことによって、初めてこれらの助成措置というものが軌道に乗り得るのではないかというふうに考えております。この法案成立することを希望し、それによって海運企業成長産業に転化することを期待するのでありますが、ただ、この法案成立だけによって海通企業が立ち直るものとは私は考えておりません。いろいろ問題点がなお残されております。  まず第一は、利子猶予あるいは利子補給というものは期限がございまして、たとえば利子猶予は五年間で打ち切り、六年目からは利子を払っていかなければならぬということになる。そうすると、五年間に償却不足を解消するグループに対して助成措置が認められるのでありますが、はたして五年間ぎりぎりで償却不足を解消する企業が、六年目から利子猶予がなくなって利子を払う場合に、経理が安定するのかどうか、こういう問題がある。また一定の条件のもとに、利子補給についても返済を促されますが、その返済を促すというときに、それに耐えられるのか、その耐えた場合には、またその発展性が制約を受けるのではないか、こういう心配もある。私はその意味においては、海運企業にはつらいことかもしれないけれども、できるだけきびしい条件海運企業の今後の再建を進めなければいけないと思います。弾力的、弾力的ということがよくいわれますが、これをルーズにしておくと、今度は六年目から利子猶予がなくなり、あるいはその後に利子補給返済を始めるというときになって、再びがたがたして再建が進まないということにもなる。もちろん百万トンが一トン欠けてもいけないというようなきびしさは、これは常識として要求すべきではないと思いますが、しかし、この構想基本については、やはりきびしい態度海運界がそれに耐えていくということでなければ、なかなか真の再建軌道に乗るということはあり得ないのじゃないかと思います。  第二の問題は、現在邦船の積み取り比率輸出五四%、輸入四一%というように非常に低下してきております。これは先ほどの高船価問題とも関連が一部あるかと思いますが、アメリカのようにシップ・アメリカンといったような法律的な強制によらないで、よればいろいろ問題が国際的に起こりますので、いかにして邦船の積み取り比率を向上させ、それによって国際収支の改善と海運会社経理立て直しに寄与できるか、その点の工夫をどうしても考える必要があるのじゃないかというように思います。  第三には、この法案では、現存する高船価の船についての対策が正面に出ておりません。これはグループ化の過程においてある程度吸収されるものもありますので、グループ化が進んだ後においてあらためて取り上げる、何か措置することが必要かどうか、こういう関係もありまして格別対象になっておりません。これは特に自己建造については勝手につくったものだからいいじゃないか、こういう議論も成り立ち得ると思うし、必ずしも全面的に救済しろということではないのですが、グループ化の進展に関連して、この高船価船措置をどうするかということは、今回のグループ化によって生ずる過剰船員の跡始末とともに、やはりあたたかい目でもって考えることがある程度必要ではないか、こういうふうに考えます。  そういう問題点はありますけれども、基本において、この法案の考えておる方向で海運対策を推進する以外に、一見この斜陽化しつつある日本海運業再建の基盤に乗せて、ほんとうの成長産業にすることは困難だと考えております。従って、この法案のすみやかなる成立を期待するものであります。
  4. 木村俊夫

    木村委員長 土屋参考人に対する質疑の申し出がありますので、順次これを許します。久保三郎君。
  5. 久保三郎

    久保委員 土屋参考人からいろいろお話がございまして、時間の関係がありますので二、三お尋ねするわけであります。  一つは、先ほどのお話の中で、土屋参考人がお入りになっておる海造審答申と違った点をあげられましたが、それはいわゆる二つ以上のオペレーター集約合併条件とするのが法律になっておる、必ずしも海造審はそういうことではなかった、これはオペレーター集約を急ぐということから来たのだろうという御説でありますが、この集約の仕方は、海造審はやはりある程度の幅を持って考えられたと思うのであります。海造審一員である土屋参考人としては法案成立を望むというお話でありましたが、一番大事な点の一つはやはりこれだと思う。こういう点についてのもう少し詳しいお話をいただきたいということが一つ。  もう一つは、法案は御承知のようにこの一年以内にそれぞれの形をつくる、そういうものに対してだけ恩恵を与える、こういうことでございます。大変革でございますから、こういう大変革にはいろいろな問題がつきまとうことは当然だと思うし、また最も大事なことは、日本海運未来像についてそれぞれ海運企業者構想を抱いて、その線に沿って集約合併というものがなされなければならぬと私は思うのであります。これは政府自体もそうだと思うのでありますが、とにかく今の企業財政悪化から幾らかでも恩恵というか、政府助成を受けようというだけに急務であって、今後の海運企業発展というか、経営者としての責任から構想が描けないということであっては困ると私は思うのであります。そういう点からいって、この一年の問題がある。さらに集約形態でありますが、これは先ほど申し上げた一点のほかに、この際われわれが考えるのは、なるほど定期航路においては配船調整というか、航路調整まで考えるべきだというのでありますが、それ以外に不定期船、タンカーあるいは専用船という問題がありまして、これの過当競争からのがれようとするならば、少なくとも合併した形態は六つか七つかの形態だと思うのでありますが、それはどれも同じようなすべての業種をやるということじゃなくて、業種は同じようにやるにしても、少なくとも配船地域その他については船型、船種そういうものをあわせ考えて、総合的に日本海運全体の立場過当競争からのがれていく、こういう形態が行なわるべきだと思うのでありますが、そういう点については法案はかなりきついものがあるようです。さらに最近のいろいろな傾向を見ておりますと、どうしても否定はできませんけれども、債権確保というものがどうも優先しそうだ。いわゆる金融機関中心集約が行なわれそうだというのが世間一般の通り相場になっております。もちろんそうではないと思うのでありますが、船主協会の代表である進藤参考人もおいでになりますが、残念ながら今日の海運界首脳者といっては語弊がありますが、海運界自体は言いたいことも十分言い尽くし得ない現実にあるんではなかろうかと私は思うのであります。これを無視して集約合併ということのいわゆる単なる寡占状態をつくるんだというような機械的なやり方ではどうもまずいんではなかろうか、こういうように思うのでありますが、そういう点についていかように考えられておりますか。  さらに百万トンというのは、この委員会でもたびたび論議をしているわけでありますが、しろうとのわれわれの悲しさでありますが、百万トンという目標は何か合理性があるのかないのか。これはなかなか的確な答弁も出て参りませんので、海造審一員である土屋参考人から百万トンという目標が何か合理性があるのかどうか、そういう点もあわせて伺いたいと思うのであります。  私からお尋ねしたいのは、大体そういう二、三点であります。
  6. 土屋清

    土屋参考人 お答えいたします。  二社合併海造審答申にはなかったということは、先ほど申し上げた通り事実であります。これが最終段階政府、与党の折衝の間に入ったのでありますが、私はその趣旨は、現在ある二十二オペレーターの統合を急ぐという意味において、海造審答申にはなかったけれども、けっこうなことだと思っております。と申しますのは、もう一社で保有船五十万トン以上の会社がございますから、協力的な態度をとらなければ、一社だけで、あと用船でもって百万トン以上という条件に合致する、こういうことにもなりかねない。そうするとせっかく大きなねらいである海運集約ということが、かなり効果を減殺されるのではないか、こういうように考えますので、海造審答申当時にはなかったのですが、その趣旨をはっきりさせる意味において、三社合併という最低条件が加わったことは、私はけっこうだと思っております。  それから第二のお尋ねの点は、機械的な合併はいけないのではないか、こういうお話でありまして、確かに合併というものはいろいろ人的な問題もあり、資本的な関連もあり、あるいはその当事者間の意思の疎通の問題もあって一これは海運業ばかりでもありませんが、寄木細工のようにくっつけたり離したりすることはよくない。その意味で機械的な合併は避けるということは賛成であります。ただし私が海運界の問題に多少携わってきた経験からいいますと、やはりよほどきびしい基準を設けて、ある程度機械的に方向を明らかにしないと、なかなか海運界というものはやらないですね。これは率直に言って無理もないと思うのです。海運経営者は、自分企業ですから、なるべくほかと一緒になってやりたくないという気持があるのも無理がない。普通ならばそれでよいと思う。しかし海運業が生きるか死ぬか、そういう分かれ目に来ますと、相当きびしい条件をつけてある程度機械的な進め方でもしないとまとまらないのではないかと思っております。これは海運界がそうじゃなくて自発的にやるということならけっこうですが、なかなかおやりにならない。ですから、多少摩擦があり得るかもしれませんけれども、そういうグループ化の進め方ということもやむを得ないのではないかというふうに思っております。  第三点の百万トン単位に何か合理性があるかということでありますが、これは実ば内輪の話を申しますと、最初は百万総トンだったのです。それがだんだん変化して重量トンになってしまって、どうもいろいろ変わってきたわけです。それでは百万総トンに合理性があるかということでありますが、これも百万トンでなければいけない、百十万トンとかあるいは九十万トンとか、そうでなくて百万トンだ、こういうきちっとした数字的な根拠はないと思います。しかし大体日本の外航船舶を六百万トン程度と押えまして、そして今後日本グループのあり方としては六つか七つというような形が好ましいのではないか。これはドイツとかイギリスとかの海運企業の数が三つとか四つとか、その程度でありますから、それから考えて日本オペレーター二十二でなくて六つか七つくらいということがそれでもまだ多少多いけれども、妥当であろう。そういうことになると、六百万総トンを逆算すれば一応百万総トン、こういうことになってくる。その百万総トンが審議の過程で百万重量トンに変わった、こういうことだと思うので、お話の通りぜひ百万トンでなければならぬ、九十万トンであってはならぬかという議論は起こり得ると思いますが、その点は海運再建整備審議会ですか、そこでそういう点の弾力的な配慮がなされていくのではないか、こういうふうに思っております。
  7. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんから折り返しの質問はやめておきますが、もう一つお尋ねしたいのは、先ほどお話がありました償却不足の五年後の解消の見通しであります。当委員会でもそれぞれ当局から説明を求めたのでありますが、実は説明の中で見通しでありますからなかなかむずかしいことでありますが、一応一定の仮定を前提に置いての計算からいっても、五年後の償却は非常にむずかしいという結論が大体質疑応答の中で出ているわけです。そういう将来の集約後において出てくるであろう集約のメリット、これはまだ予想できないものもありますから、単にそういう計算だけででき得るものではないと思うのでありますが、御心配のようないわゆる五年後におけるたな上げ利子返済という問題で非常にむずかしいと思うのですが、お言葉のように国民感情からしても相当きつい条件を当てはめなければこれは納得しがたいものがあるから、その点は一応了解をせざるを得ないのであります。しかし問題は、この集約の中で、御案内の通り、計画造船の所産であるところのオペレーター・オーナー間の系列強化というか、よって用船市場の硬直化の問題があるわけであります。この集約の中では、やはりこれがさらに硬直化していくという心配をわれわれは持っているわけです。その場合当然のごとく、われわれのものの考え方からいきますれば、これも多少誤っているかもわかりませんから御指摘いただきたいのでありますが、金融中心の系列化というか、集約が行なわれるであろうという前提、これはもちろん排除してもらわなければいけません。そういうことでありますから、結局オーナーの自立体制というものがある程度できるであろう。しかしそのしわ寄せば、御案内の通りオペレーターの方にはいわゆる自立体制ができるだろう。しかしその下につくところの系列の強いオーナーは、これは残念ながらそのしわ寄せを一手に引き受けていくのではなかろうか、こういう考え方を持っておるわけなんです。それからもう一つは、われわれとしては、結局オーナーの機能というものは、日本海運界の将来はどういうふうに考えるべきかという疑問を持っているわけです。今のような集約の態勢でいきますと、今までにおけるところの機能をさらに喪失して、オーナーの値打というか、存在価値、そういうものに対してどういうふうに考えたらいいのだろうか、こう思うのであります。オーナー対策はこの中にはもちろん全然見られてはおりません。この点についてはいかようにお考えでしょうか。
  8. 土屋清

    土屋参考人 お答えいたします。  確かに今までの合理化、過去数年間の合理化は、オーナーにしわを寄せることによって、用船の切り下げで大部分合理化のメリットを上げたことは御説の通りだと思っております。そしてまた今後においても、オーナーがかなり苦しい立場に置かれるのじゃないかということも、この構想から当然予想されることだと思うのです。しかしオーナーの機能というものがかつてとはかなり変わっていると思うのです。かつてオーナーは自分の金をもって船をつくった。自分の船だから管理もよくいき、オーナー・べースの方がむしろいいんだというような事態もあったと思いますが、今オーナーといっても自分の金でなくてみんな借金してやるのですから、借金してつくるとすればあまり変わらない。オーナーの特殊性というものが非常に薄れてきておる。ですから大勢としてオーナーの機能が低下していくということは私は避けられぬのじゃないか、こう思っております。
  9. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 関連して、時間がございませんようですから、簡単に二、三の点についてお伺いしたいと思います。  第一の点は、ただいま上屋さんもおっしゃったように、戦時補償が打ち切られたということが、海運界が今日高船価に悩まされ、従って企業不況に陥っておる大きな原因である、こういうことをいわゆる海運界は異口同音に唱えておるわけなんです。  そこでお伺いしたいことば、前からもそうですが、今度の助成方式というものは戦時補償を打ち切ったからこういう不況を来たしたので、従って利子補給をしてこの企業助成することは当然である。ある意味からいうと、戦時補償の代償のような考え方をもってこの助成策を扱っているのかどうか、こういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  10. 土屋清

    土屋参考人 その点私の申し上げたことがあるいは誤解を与えたかもしれないと思いますが、私は、海運界が行き詰まった原因は、要するに戦時補償の打ち切りによって自己資力がなくなった、だから借金にたよらざるを得なくなったのだ、こういうことを強調いたしたのであって、戦時補償を打ち切ったからその代償に利子補給をするとか、あるいは利子猶予をするというふうには考えておりません。私は戦時補償の打ち切りを外国では船についてしなかった国があることも承知しております。日本の場合も、そういう措置がとられたならば、ほかの国の海運業と同じべースでその点に関する限りは復興ができたということもあったと思いますが、あの終戦直後の情勢のもとで海運業だけに特例を認めるということになりますと、どの産業もみな特例を認めることになりまして、とうていあの補償打ち切りという蛮勇的な措置が実行できなかったと思う。ですから補償打ち切りで全部打ち切ったということは、これはやむを得ないと思っている。ただ海運業があまりにもその犠牲が大きかった、陸上の資産というものがほとんどないのに、海上の船舶についての補償打ち切りがひどかったということは事実でありまして、その点から計画造船ということが行なわれたんだと思うのです。つまり国家資金を低利で出して船をつくるということが補償打ち切りの代償措置なわけですね。ほかの産業開銀融資を受けているところはありますけれども、計画造船のように国の資金中心に毎年つくっていくということはやっていない。そういうことを海運についてやったというのは、それがつまり私は補償打ち切りの代償措置だというふうに考えております。従って今回の措置補償打ち切りの代償であるというふうには考えない。これはあくまでも日本海運業成長産業にするためにどこをどう押したらいいかということの理論的な検討の結果として、今回のような構想になったのだ、こういうふうに考えております。
  11. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 その点はただいまの御説明でよくわかりました。そういう考え方の上に立っておるものでないということはよくわかりました。  もう一つお伺いしたいことは、今度の集約中心は、何といっても百万トンの船腹を三つの方式において集約する、こういうことになるわけですが、これらの集約の外に漏れた弱小企業というものができると思うのです。そういう場合に、それらの弱小企業というものは捨てて顧みない、そこのオーナーがどうなろうとも、オペレーターがどうなろうとも、船に乗っておる人がどうなろうとも、それはもう大企業助成していく上から必要な悪としてやむを得ないことだ、こういうようなお考えでしょうか。これらに対しやはり国家は何らかそれの生きていくような方法を講ずる必要があるのではないか、こういうことについてはどういうようにお考えでしょうか。
  12. 土屋清

    土屋参考人 その点は、オペレーターについては、この法案対象にならないということは私は考えられないと思います。つまりこの法案対象になるような集約化に参加しなければ利子の猶予も受けられないし、新造船もできないのですから、それはその企業にとっては致命的なことになるので、おそらくいろいろ曲折はありましょうが、オペレーターは全部参加しない限り生きてくることができない。従ってこれは当然参加すると思う。お話はオーナーだろうと思います。これは先ほども申しましたように、主として用船という形でグループに入るそのオーナーが、高船価の問題を特にかかえて困難な状態にあるということも、私はよく承知しております。これは大体オーナーの船といいましても、オペレーターが債務保証ですか、どういう保証ですか、何か保証をしておって、相当深い関係があるわけなので、従ってグループ化の過程において、オーナーを一体保有船を持つオペレーターがどう処理なさるのか、それをまず自主的に決定することが先決だろうと思うのです。それによってある程度オーナーの問題が解決とはいかないけれども処理される、その成り行きを見て、なおかつどうしても問題が残る、高船価問題その他が残るということであれば、それはそのときで考えるべきであって、今それをあらかじめ考慮に入れた対策を用意するということは、今後集約化においてオーナーがどういう関係に立つかわかりませんから、私は、一応まずその点を見きわめた後において、次の問題として考えることが必要であれば考える、こういうことだと思います。  それから余剰船員については、私も先ほどちょっと申し上げましたが、いろいろこれはまたその余剰船員というか、特に陸上員の場合ですね、その転職等の問題についてはそれは別個の観点から考える必要がありはしないかというふうに考えております。
  13. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 もう一点だけ。開銀資金じゃなくて、いわゆる自己資金といわれておるもの——市中銀行から借りておるであろうと思うけれども、開銀の世話にはならないで、自分でまかなった資金造船をしておる、そうしてオペレーターをやっておる、こういう業者がないではないと思うのです。そういう人々も、もし集約化の圏外に置かれたら、これはどうなるのか。集約化の中に入れられれば、それは他の一般の問題と同じように解決されるでしょうけれども、もし集約化の中に入らぬ場合にはどうなるか、どういうようにお考えでしょうか。
  14. 土屋清

    土屋参考人 これはある意味で自己責任でつくったわけですから、その当該金融機関との話し合いによって処理されることが至当じゃないかと思っております。そしてまた、グループ化に入った方が有利だということであれば、その自己の判断においてグループ化に参加すべき問題だというふうに考えております。あくまでも今計画造船という国家の一つの政策的な問題として提起された船が中心の問題であって、それ以外、市中金融機関から金を借りて自分の責任でつくった船については同列に論ずることはできないんじゃないか、私はこう思っております。
  15. 木村俊夫

    木村委員長 内海清君。
  16. 内海清

    ○内海(清)委員 時間がないようでありまするし、なお今までの同僚委員の質問によりまして、私が御質問申し上げたいと思っておりましたことがあらかた終わったようでありますので、なるべく重複を避けまして御質疑申し上げたいと思います。  今度の集約につきましての大体今日までの経緯あるいはその内容といたしましての規模の問題等もお話しいただきましたわけでありますが、規模の問題につきまして、私、ただ一つお伺いしておきたいと思いますのは、大体百万トン集約ということでございますので、これによって再建をはかっていこうということでありますが、この規模の合理性につきましては先ほどもお話がございましたわけですが、集約はどういうふうな形に、その内容が、いわゆる定期船、不定期船、タンカー、専用船等がどうなるかということで、いろいろまちまちだと思うのであります。ただ一つ考えられるのは、これだけの船が集約されますと、その年々の償却費というものは相当なものになるのじゃないか、そうするとその償却費というふうなものによって、今後これが集約されることによって、新たに船をつくる一つの力がここに生まれるというふうに考えられるのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておりますか、ちょっと御意見を拝聴いたしたいと思います。  それからいま一つお伺いいたしたいと思いますのは、結局こういうふうに集約されて、集約の姿がどうなるかは今後の問題でございますけれども、今度は質的な問題で、集約されたけれども、その内容いかんによっていわゆる不経済船が多くなった場合に、はたしてこれが五年後に十分企業の基礎の強化ができて再建できるものになるかどうか。御承知のように、今定期船では十六ノット以下はこれはもう国際競争にたえないとされておりまするし、さらにタンカー等につきましても、二万五千トン以下では不経済船だ、もちろん高船価船もこれに入るわけでございますけれども、こういうふうな状態にあるときに、この法案では、そういうものに触れられていないということであります。従って、集約の姿いかんによりましては、この集約というものが五年後においてどうなるか、こういった問題が考えられるわけでございます。それらにつきましての御所見。  それからいま一つは、ただいま加藤先生からオーナーの問題がございました。いわゆるこの対象に入らない、つまり特定のオペレーターにつながりがないとか、あるいは大手の金融機関につながりがないとかいうようなもの、こういうようなものは一体どうなっていくかということでございます。ただいまのお話によれば、集約の過程において何とかつながりができていくのじゃないかということでございますが、しかし、御承知のように、オーナーに対するオペレーターの債務保証は六百五十億程度だといわれておると思うのでありますが、これの債務保証があります以上、これの点も十分考えませんと、集約体というものが非常に弱体化してくるのじゃないか、これに対して将来どう考えるべきかということでございます。この点に対しまする御意見をお伺いしたい。  さらにいま一つお伺いいたしたいと思いますのは、御承知のように、すでに土屋参考人からも、今日の海運不況原因の最大のものの一つとして、戦時補償の打ち切りということのお話があったわけでございます。このことは今日まで十分皆さんから指摘されたところであります。ところが、今回の助成にしても、もみにもんできて、しかも海造審においてもここ数年考えられましてもできなかったものがようやく生まれてきたわけでありまして、この前廃案になりました第一次の措置法にいたしましても、この問題はさらに俎上に上っていないということであります。ところが、二面から見ますると、今日わが国におきましてもすでに御承知のような戦後処理の問題で、農地補償の問題が起きております。あるいは未亡人に対する問題も起きておるわけでございます。これらに続いて在外資産の問題等につきましても審議会を設置しようとするような一連の戦後処理の問題も起きておるわけであります。この際この戦時補償の打ち切りという、これはまさに打ち切りであります。農地補償の問題は、価格に問題がありましても、一応買い上げ案であります。こういう点も考え合わせまして、戦後処理の問題としてこの海運業に対する戦時補償の打ち切りということに対してどういうふうにお考えになりますか、以上の点を伺いたい。
  17. 土屋清

    土屋参考人 今後グループ化された企業がはたして新造船によって収益を上げて、企業経営の改善に寄与していくことができるかどうか、こういうお話でありますが、私は当然そうならなければ困ると思う。今後の新造船は、グループ化されたものに重点的に認めることになりますし、それに対しては手厚い利子補給措置を講ずるわけですから、もしもそれが高性能の優秀な船をつくるということであれば、当然これは収益を上げて過去のマイナスを埋めていくということになるはずだと思っております。また、やはり計画造船を、どういう形かわかりませんが、やるわけですから、開銀資金を出すわけですから、それこそそういう目的に寄与よるようにそういう船をつくらせる、そういう船の造船の割当をやるべきだと思っております。従って今後はそういう新しいプラスによって過去のマイナスを埋めるということが十分考えられるんじゃないか、こういうふうに思っております。  それからオーナーの問題を重ねてお尋ねがありましたが、先ほどから申し上げておりますように、オーナーがどう処理されるのかは、これは今から予断できないと私は思うのです。オペレーターとの関係がどうなっているのか、またオペレーターがどの程度オーナーに肩入れしているのか、個々の企業によって情勢が違うと思います。一応それは自主的に解決していただくということで、その成り行きを見て、どうしても問題が残るならば、これはまた考えなければならないということもあり得ると思いますが、今の段階では、ともかくそれはオペレーター・オーナー間の折衝なり話し合いなりによって、できるだけ合理的な解決の道を見出していくということでなければならないと思っております。  それから戦時補償の打ち切りの問題でありますが、私はあの段階において戦時補償の打ち切りはやむを得なかったと思っております。海運業だけ特例をつくるということであれば、全体の打ち切りが困難になってくる。あの際打ち切らないでやれるかというと、打ち切らなければ、なかなか戦後経済の再建ということは困難であったと思う。従って、確かにあの打ち切りというのはずいぶん乱暴な措置であって、占領下だったからああいうことができたと思うのでありますが、あのときその必要性があったとすれば、一応これはそれで解決した問題として考えるべきではないかと思います。今戦後処理の問題がいろいろ出ておりますけれども、私はそうい傾向に賛成いたしません。みんな戦争によってそれぞれ利益、不利益を受けておるので、それを今全部公平に処理しようといっても、すでに時間的にも非常に経過しておりますし、また資料もさだかでないものがあって、相当それには不幸平な関係が残っていると思いますけれども、それを言い出したらきりがないのであって、私は農地補償も反対だし、戦争未亡人も反対だし、在外財産の問題を蒸し返すことも反対であります。従ってこの問題について、そういうことを蒸し返さない方がいいのではないかと思う。先ほども言いましたように、戦時補償を打ち切ったかわりに、計画造船で国は数千億円の資金を低利でもって海運業に融資してきたということがあるのでして、それでは不十分かもしれませんが、まあほかの産業より受けた被害が大きかったということは確かにありますけれども、今この問題を蒸し返すということは、全体の国の政策の上から見て適当でない、こう思っております。
  18. 木村俊夫

  19. 岡田修一

    岡田(修)委員 私は土屋参考人に御質問というよりは一つお願いをいたしておきたいと思います。  先ほど来野党側の委員の方から質問がありましたように、今度の再建整備法案でいろいろ問題がありまするが、そのうちでも一番大きな問題は、やはり私はオーナーの問題であると思います。この法律をそのまま適用いたしますると、オーナーで助成対象になるのはごく数社であります。あと対象外、これを関係の銀行がどういうふうに救済するかどうか、非常に酷に扱えば、ほとんどのオーナーがつぶれてしまいやしないだろうかと思います。実際はそうならぬだろうと思いますが、そういう心配を持っておるわけです。そういたしますると、先ほど土屋さんが御指摘になったように、オペレーターには数百億の補償をしておるわけです。四百億とか五百億といっておりますが、そういたしますとこの利子猶予で恩典を受けるのが五カ年間で五百億余りであります。その恩典が半減するような結果になる。私はせっかくこういう法律を出したのですから、できるだけ弾力的に運用してオーナーをその対象にするようにしなければならぬ、かように考えるのですが、先ほど参考人お話の中に、オーナーは戦前とだいぶ存在価値が違うんだ、おっしゃる通りなんです。戦前のオーナーというのはほんとうに自分の手金で船をこしらえた。もし海運不況になった場合は自分の奥さんの着物を質に入れてまで船員の給料を払った、これが現実なんです。戦後は、戦争ですっかり財産をなくして、全部借金で船をつくった。当時私は運輸省でその方を担当しておりまして、一体このオーナーに船をつくらすべきかどうかということでだいぶん議論があったのです。ところがその当時の海運の要請としては、できるだけ早く船腹量を回復する、こういうところにあった。そこで、占領政策もありましたけれども、郵船とか商船とか三井だけにつくらすとすると、その会社の集める資金量というものは限度がある。いわゆる船主と、船会社と名のつくものを利用してあらゆるソースから金を集めなければならない。そういうことからオーナーにも船を持たした。ところがその船が現在では不経済船になっている。あるいはオーナーがつくるときには非常に高船価のときであった。こういうことでオペレーターより以上にオーナーの立場というものは非常に苦しくなっている。私は今日日本海運がこれだけ船腹量を回復したその陰には、オーナーの非常な貢献があり、存在価値があった、これが今非常にみじめな立場に追い込まれておるわけです。今度の助成の場合でも、私ども与党の立場としてそういう点も考え、いろいろ主張したのですが、まあそうどこどこまでやるというわけにはいかぬだろう。特にオーナーとしては先ほどのお話のあった高船価対策、それから不経済船対策、これが一番大事な点なんです。これも一つあわせてやるべきではないか、こういうことを主張したのですが、一ぺんにそう何もかにもいかぬ、一応こういう方策をやってみた後に一つまた考えてみようじゃないか、これは先ほど上屋参考人のおっしゃったような議論がわれわれの中にもあったわけなんです。そういうことで今日まできたわけでございまして、今日ここまできた以上は、この集約の結果あるいは助成効果を見てみなければいけませんが、当然そのオーナーの問題が今後相当大きく浮かび上がらざるを得ないだろう、私はこう考えておるわけです。  そこで一つ土屋参考人に、ずっと海造審委員として海運を非常にあたたかい目で見ていただいておることは私はよく承知しておるのでございますが、一つ今後このオーナーについてどういうふうにしたらいいか、私ども与党の立場において十分考えたいと思いますが、参考人の方におきましても十分考慮を払っていただきたい。  大へん要望みたいなことになりましたけれども、一応申し上げました。
  20. 木村俊夫

    木村委員長 ほかに土屋参考人に対する御質疑はございませんか。  それでは次に進藤参考人に御意見の御開陳をお願いいたします。
  21. 進藤孝二

    進藤参考人 私は日本船主協会会長をいたしおります進藤孝二でございます。  ただいま国会で御審議中の海運業再建整備臨時措置法案並びに利子補給制度の強化に関する法案につきまして、私どもの考えを申し述べたいと存じます。  これら二法案は、海運会社が外航船舶の建造について日本開発銀行から融資を受けております資金利子を五年間支払いを猶予されるとともに、一方において今後の新造船についての利子補給を強化されることにより海運会社資本費負担を軽減いたしまして、企業体質の改善、国際競争力の強化に資することをはかっておりますもので、私どもといたしましては法案に賛成でございます。すみやかに成立をお願いいたしたい次第でございます。海運業は、御承知の通り、ここ十年来世界的な不況下に置かれております。海運不況の直接の原因でありまする運賃水準の大幅な低下につきましては、いろいろな見方もございますが、このような事態は単に世界的な船腹の需給関係から生じた循環的な変動によるばかりでもございません。根本的には世界海運における構造的変化に原因するものであるという見方が強くなっております。私どもそのように考えております次第でございます。私どもは市況が大幅に回復するというようなことに期待せずに、海運の構造的変化に対処いたしまして、あらゆる努力を傾注しておるのでございます。  戦後の世界における最も大きな変化は、世界の貿易構造の変化に対応いたしまして、船舶の専用船化、大型船化が急速に進んでいることでございます。船舶の専用船化、大型化は、従来からの船舶に比べますと非常にコスト・ダウンになりますので、古い型の船舶ではこれに対抗できないことになります。たとえばタンカーについては十三万重量トンという巨大な型のものが出て参りました。このような巨船はまだ少ないのでございますが、近年まで標準船型とされておりました二万重量トン型または三万重量トン型のタンカーでは、四万五千重量トン型あるいはそれ以上の大型タンカーには対抗できず、経済的には使えない状態になっております。また専用船につきましても、初めは二万重量トンというような型のものが普通とされておりましたが、次第に大型化しまして、五万重量トン型あるいはそれ以上のものが多くなりつつある現況でございます。  このような世界海運の情勢を背景といたしまして、海運の国際競争はますます激化する国際競争に打ち勝っていくためには、わが国海運企業体制の整備、資本比負担の軽減、船型、船室の革新、船員の配乗の合理化などあらゆる面で近代化、合理化を徹底して、国際競争力を強化する必要に迫られております。これを達成することによりましてわが国海運は初めて国民経済上から海運に課せられました使命を果たすことになると考えておるのでございます。  私どもは海運合理化の徹底には懸命の努力を続けております。しかし私ども業界自体の力だけではできない面もございます。幸いにして関係各界におかれましては私どもの業界の実情を御認識をいただきまして、御支援を賜わっております点に感謝申し上げておる次第でございます。政府におかれましても、この二法案によって開発銀行の利子徴収猶予、利子補給の強化措置を講ぜられようとしております。これに伴って市中金融機関利子徴収猶予措置をとっていただけることになると思います。政府の施策が早期に実施されることをお願い申し上げる次第でございます。  私どもは企業合理化に努めるとともに、一方において企業相互間における協調体制の強化に努力いたして参りました。しかしながら貿易為替の自由化の進展に伴いまして、日本産業全般を通じまして、国際競争はますます激化する情勢にあります。このような日本経済の情勢に備えて、私どもはさきに海運経営上船舶の運営単位は保有量五十万トン、扱い量五十万トン、合計百万トンを標準とすることが適当であると考え、業界体制の整備を決意し、その方向に進んでおるのであります。  このたびの法案企業集約化について規定しておりますことは、私どもの考え方とその方向を同じくするものであります。しかし法案の規定する集約化の方法はかなり制約されたものであり、具体的実施面において困難な面を生ずるおそれもありますので、企業再建立場からその運用面についての希望、意見を申し上げたいと思います。  法案会社合併を規定しておりますが、御承知の通り、会社合併などということは実際において大へんむずかしい問題でございます。企業はそれぞれのおい立ちと社風とを持ちまして、株主の構成、資産の内容も相違いたし、また人的な構成あるいは営業活動の方針においてもそれぞれの特色を持っておるのでございます。これらの会社を非常に短い期間に合併することは、かなり困難な問題を生ずることと考えておりますので、会社合併などにつきましては、合併によってかえって企業の力が弱くなるなどということがないように、実情に即して法を弾力的に運用されることを希望する次第でございます。  また法案は減価償却の不足の解消について規定しております。しかし海運企業の収支の現状などから見ますと、償却不足の解消ということは、多くの企業にとって非常に困難な問題でございます。もとより企業といたしましては、経費の節減、収支の改善をはかるほかに、減資など思い切った方法をとって整備計画を作成する所存ではありますが、同時に償却の計算方法についても実情に即した取り扱いを希望する次第であります。たとえばタンカー、再用船のようなものは荷主との間で長期間にわたる積荷契約が締結されておりますので、その契約内容を十分にしんしゃくしての運用が望まれるのであります。また企業集約化に参加しながら償却不足の解消がむずかしい会社があります。これらは特にいわゆるオーナー会社に多いのであります。先ほどもお話がありました点でございますが、これらについては整備計画の作成期限について、特に法の運用にあたって御配慮をお願いいたしたいのであります。私どもといたしましては、できるだけ数多くの会社集約体に参加して、このたびの法案による政府施策の適用を受け、わが国海運再建に力をいたしたいと念願いたしておる次第でございます。  ところで、減価償却不足の解消が困難な会社企業立て直しがむずかしいと思われる会社は、いわゆる不経済船を多く所有しており、これが企業再建を大きくはばんでおるのでございます。いわゆる不経済船と呼ばれるものの中には、いろいろの船舶が含まれております。まず戦前から今日に至るまで引き続いて使用中のもの、あるいは戦時中に建造した標準型船などの老朽船があります。これらは全部でほぼ百万総トンありまして、わが国保有船腹の一割以上を占めております。これらのうち戦標船につきましては、一昨年から財政資金の融資によりまして、代替建造計画が進められて参りましたが、その他の老朽船につきましても同様な計画が引き続きとられることを切望する次第でございます。  次に、戦後に建造されました船舶の中でも、初めに申しました通り、海運の構造的変化に伴いまして、わが国商船隊の構成上、近い将来において不要となると見られまする船腹がございます。これらは二万ないし三万重量トン型の標準型タンカー、一万重量トン型の中速貨物船など、合わせましてほぼ七十万総トンほどあります。これらの船舶の多くは、また比較的に建造船価の高い時期に建造されたものであります。それだけに企業経営面において大きな負担ともなっております。これらの船舶は運航に耐える性能は十分に持っているのでありますが、経済取引の単位が急速に大きくなったことなどのために、企業の採算の上から不利なものになって参ったのでございます。従いまして、これらの船舶の処理対策としては、これを改造して他の用途に転用をはかったり、あるいはまた経済取引の順位が比較的に大きくなく、港湾の諸設備に制約のある後進諸国へ売却をしたりすることなどが考えられるのであります。具体的に申しますと、標準型のタンカーを改造して小麦のバラ積み輸送に断てることもございます。また日本からの船舶輸出を見ますと、年に十隻以上の一万重量トン型中速貨物船の輸出がございます。この種の船について、海外からの需要があるのでありますから、商談のまとめ方いかんによりましては、日本が現在持っておる船を海外に輸出して、そのかわりに日本海運界造船界に対して大型船の新造を発注するということにしたらよいのではないかと考えておるのでございます。すなわち、エクスポート・アンド・ビルという方法でございます。  私どもは、これまで個々の企業ごとにこれらの方法を進めて参りましたし、また業界全体といたしまして、海外への輸出を促進する方法を検討しようともしております。政府当局におかれまして、先ごろこれらの方法について検討されましたが、これらの対策を大幅に促進するためには、改造工事について財政資金の融資、あるいは輸出金融の措置などが必要となって参ります。特にこれらの船舶は多額の借入金をかかえておりますので、その処理はなかなかむずかしい問題であり、個々の企業があらゆる努力を尽くして、企業自体において処理しようとしているのではありまするが、その借入金の一部を財政資金に肩がわりするようなことも必要になろうかと考えられるのであります。もしこのようにいわゆる不経済船の処理が適切に行なわれることになれば、数多くの企業再建の見通しをつけることになりますので、私どもはただいま御審議中の法案とともに、この問題が政府施策として取り上げられますことを切望しておる次第でございます。  また不経済船の処理は、日本海運全体の問題であり、わが国海運が経済的に性能の高い船隊を整備してこれにかえることができますれば、激しい国際競争に打ち勝つこととなると言えるのでございます。この問題につきまして、広く各界の御支援をお願いしております次第であります。  法案に関連いたしまして雇用の問題、特に陸上従業員の雇用問題が論議対象ともなっております。企業集約会社合併にあたりまして、最も困難な問題の一つは従業員の問題であります。しかしながら、私どもはこの問題につきましては、各社ごとに職場の配置転換あるいは関連事業への進出などを考えていると思うのでありまして、全体として処理すべき問題ではなく、またその必要も生じないであろうと思っております。  海運産業はただいま不況のもとにありますものの、私どもはわが国海運は、長い目で見れば必ず発展することを確信して、企業再建に努力いたしておる次第でありまして、有能の人材を将来に向かって大いに活用することを考えております。しかしながら合併による余剰人員で、役員、比較的老齢の従業員などが退職を希望するおりは、この法案施行の合併期間一年内に退職を希望される方々に対しての退職金などについて、免税の特別措置が講ぜられるようお願いいたしたい。特に政府に対してお願いしたい。また、法案は、主として海運企業の財務面における政府の施策と企業集約化とを規定しておるのであります。しかし私どもは、これのみをもって直ちに海運企業が立ち直るなどという安易な考え方を持ってはおりません。企業再建の根本は、収支の改善、収益の増加であります。私どもは先ほども申しました通り、政府の施策とともに、企業合理化を徹底的に行ない、また企業集約することだけで終わることなく、集約体相互間の協調提携をも強化して、その線に沿うて進めていきたいと思っております。  多数の海運企業が数個のグループ集約化されますことは、わが国海運界にとってまことに画期的なことではありまするが、でき上がりました集約体相互間で無用な競争を行なうことになれば、集約化自体効果は著しく減ずることになります。私どもは、企業集約化を進めると並行して、業界自体で自主的に集約後の体制を築き上げて、グループ相互間の連携を密にはかっていこうと考えております。これはむずかしい問題であり、関係業界の協力を必要とする面をも生じて参りましょうが、これを達成することによって、集約化効果も著しく増加することになると考えるのであります。私どもは企業合理化を徹底的に行なうことに努力しておりますが、また政府の施策が早期に実施されますことを切望しており、両者相待って海運業再建をはかろうとしておるのであります。各界におかれまして、これまで私ども海運界へ寄せられました御支援と御協力につきましてこの際深く感謝を申し上げますとともに、今後とも一そうの御支援をお願い申し上げる次第でございます。  なお、ただいま御審議中の法案は、いずれも外航海運についての政府施策に関するものであります。御高承の通り、わが国の内航海運につきましても数多くの困難な問題があり、その解決に迫られております。内航海運につきましても、近い将来において適切な政府の施策が確立されますことをこの機会を借りましてお願い申し上げる次第でございます。  御清聴まことにありがとうございました。これをもって終わります。
  22. 木村俊夫

    木村委員長 次に南波佐間参考人にお願いいたします。
  23. 南波佐間豊

    ○南波佐間参考人 私は船員の立場から海員組合を代表いたしまして参考意見を申し述べます。  結論的に申しますと、この委員会で御審議願っております二法案には賛成をいたします。しかしながら、率直に申し上げまして、この法案が今までの施策よりも前進しておるという意味で賛意を表するのでありまして、時期を失しておる。もしこういう施策が数年前に行なわれるならば、この内容においてもいいかもしれませんけれども、今日の事態になりましては、内容的にも不備な点がある。これだけでは日本海運が期待されるように再建ができるかということについては疑問を持っておるものであります。  以下問題点あるいは不備な点について申し述べます。  御承知のように、今日自由化の時代を迎えまして、産業界の体制なりあるいは企業基盤の問題なり国際競争力という問題についていろいろと強調されておりますけれども、事海運に関します限り、十数年前から全く無の状態から国際競争に対処、差し向かいまして、この問計画造船によりまして船腹の整備が行なわれまして、海運日本経済の発展の礎石となったと思いますけれども、その反面におきまして、海運企業借金の償還はできない、利息さえも満足に払えない、そういう状態でまさに瀕死の状態になっておるのであります。政府の商船隊を量的に整備をするということには成果を上げましたけれども、国際競争力という問題については配慮が欠けておったのではないか。さらに業界も船を持ちたいということに急でありまして、先ほどもお話がありましたけれども、十年に一ぺんブームが来れば、それで何とかなるのだというような業界の態勢にも問題があったことは否定できないと思います。これを政府立場から見ますれば、新しい船ができて職場がふえるという意味においてはけっこうでございましたけれども、船ができてその船が一生懸命働く。しかしながら、その状態というものは借金金利をかせぐあるいは借金を返すために働いておるという状態でありまして、他産業と比較しまして、船に働いておる船員の労働条件というものはだんだん悪くなってくる。そういう海運企業の実態が船員の労働条件に影響がないことは不可能でありまして、われわれはいろいろと努力をして、業界に対しては合理化に協力もいたして参りましたし、同時に外に向かっては、根本的な海運対策の必要を強調して参ったわけであります。しかし、この問われわれの期待するような施策も行なわれず、船員は、御承知のように過去二、三年来若い船員が海運に見切りをつけて、船員という職業に魅力を失って、陸上に転職するような傾向が顕著に現われてきたことは諸先生方御承知の通りだと思います。そこでわれわれは業界の規模を適正にする、協調体制をつくる、そういう面と同時に、海運企業の体質を改善するためには、借金の利息は五年程度免除すべきである、また一面これからできる船については、国際競争ができるような条件、少なくとも平均金利を四分以下にするような施策がどうしても必要であるということを強調して参ったのであります。そういう意味合いにおきまして、今度のこの二法案の意図するところは、基調においてはわれわれは賛意を表するものであります。しかしながら、先ほど来もいろいろと言われましたように、この法案で安心だと言うことはできないと思います。特に問題になりますのは、不経済船の問題、高船価の問題、これに対してはすみやかに有効な措置をとることが必要であろうと思います。御承知のように海運は、海運構造の変貌が行なわれまして、どんどん大型専用船あるいは自動鋼船が出て参っております。こういうふうにいい船ができれば、在来の船というものはますます不経済化してくる。物理的に動く船でもそういう面においてこれが企業を圧迫し、国際競争力に大きなマイナスになる。そういう観点に立ちまして、この不経済船、高船価対策というものをオーナー対策の一環としてもぜひ早い機会にやる必要があると考えます。  さらにこの法案海運業再建整備と銘打っておりますけれども、内航の海運に対しては何らの考慮がなされておらぬということであります。御承知のように、日本の内航海運は現在年間一億数千万トンの貨物輸送をいたしております。この内航海運の仕事量というものは、国内輸送機関の最大の役割を果たしていると思います。しかも年間一〇%以上ずつ輸送量は増加をしてきているわけであります。しかしながら、内航海運はそういうような日本の経済上において重要な地位を占めておりますけれども、実態は千社以上の弱小船主が乱立をいたしまして、しかもその中にインダストリアル・キャリアが出てくる、そういうことから市況というものは一つもよくならぬ。業界はこの道を歩んでおる。こういうことがなぜ起こったのか、今にしてこれについて対策を立てなければ、内航海運というものはどうにもならなくなる。外航についても時期を失すればより以上の困難をし、より以上の金がかかるわけですから、この際に内航対策というものを具体的にやっていただきたい、こういう点でございます。  それから海運企業集約化の問題でございますけれども、この集約というものが企業経営にとっては非常に困難な問題であり、さらにこの産業に働いておるわれわれ労働者にも関連して、いろんな問題が起こるのは当然予想されるわけでありますけれども、しかし、今日の実態を見ますときに、企業集約ということは必要であると私は考えます。先ほど来お話がありましたように、たくさんの八百万トンの船腹があるわけですけれども、この中に弱小船主が相当おって、これが過当競争をする、そして収益を下げる、こういう事態に対して国際競争にたえるような適正な規模に集約をしなければ、日本海運再建というものはこの面から非常なマイナスになる、こういうふうに考えますので、この際過当競争をやめて協調体制をつくる、あるいはそういうことによって収益を上げ、さらには投資力をつける、そういう意味において企業集約ということはやるべきだと考えます。しかし、この企業集約というのは手段であって、目的は別にあると思うのです。従いまして、今まで問題になったところのそういういろいろな問題点が解決されるような方向に集約が行なわれることが必要だと思うのであります。申しにくいことでございますけれども、これが機械的に、あるいは形式的に、あるいは官僚の独善なり、あるいは金融機関の債権確保の手段でこれがやられることはなかろうとは思いますけれども、そのためには業界自体が今日の事態というものを認識をして、経営の責任において効果的な集約体制をつくるべきだと私は考えます。  さらに、この集約によって、海陸従業員を通じて余剰ができることは当然予想されるのであります。特に不経済船の問題等を考えますならば、われわれ船員の部門においてもいろいろと雇用の問題が起こります。しかし、この問題についてはまず第一義的に労使がこれを解決をするべきだと私は考えております。その場合に、業界がこういう状態で再編成をする限りにおきましては、単なる企業の問題ではなく、業界全体の関係においてこの問題を処理しなければ、問題の解決はできない。私は海運というものは性格的には発展性のある産業であり、その地固めをする今度の措置であるならば、全体の中でこの雇用問題というものを労使が第一義的に解決に努力をし、その上に立って行政当局も援助をする、こういうことによってこの問題を解決すべきだと考えております。  さらに、ひとり海運に限りませんけれども、産業発展をするためには、労働者なり労働組合の協力なくしては不可能であろうと考えます。そういう意味合いにおきまして、一部においてこういう助成をする場合には、労働者がある程度犠牲を負うことは当然であるというような意見もございます。しかし、労働者が適正な労働条件というものを要求するのは当然だろうと考えます。特に海運産業というものは、日本国民経済なり日本の経済上に不可欠な産業であり、しかも経営も努力し、労働者も協力をしてもできないものについては、国が助成をするのは当然であろうと思います。従って、助成理由にして労使間の問題に行政当局が介入するようなことは避けるべきであって、あくまでも労使の理解と納得の上に立って協力体制をつくる、こういうことがぜひ必要だろうと思いますので、最後にこの点を申し添えまして、私の陳述を終わります。
  24. 木村俊夫

    木村委員長 次に、玉井参考人にお願いいたします。
  25. 玉井操

    ○玉井参考人 私はオーナーの代表として二、三お話を申し上げます。突然のお召しでありまして、まとまった準備をしておりませんので、お聞き苦しい点もあると思いますが、御了承願いたいと思います。  先ほど来、諸先生方からオーナーに対するまことにあたたかいお言葉をちょうだいしまして、ありがたくお礼を申し上げる次第であります。  結論から申し上げますと、今回の法案は一日も早く成立することを希望するものでございます。と申しますのは、元来オーナーの収入は用船料によってまかなわれておるわけであります。一日も早く強力なるオペレーターの出現を望んでおる次第でございまして、この法案によって強力なオペレーターが出現するということを心から希望して、この法案に賛成するものでございます。しかしながら、先ほど来いろいろお話がございましたが、われわれに関する限り、法案恩恵をこうむる数はきわめて少ないということに結論が出る次第でございます。私の話は非常に視野の狭いオーナーに限っての話を申し上げたいと存じます。海運全般につきましては、進藤会長並びに土屋参考人からお話がございました。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  現在オーナーは約八十四社ございます。今回の法案の適用を受けるであろうという会社が大体三十九社、この三十九社のうち何社が法案恩恵を受けるかという立場にございます。私どもの推定する状態においてはきわめてわずかでないかということでございます。その点いろいろ運輸省でも御心配いただきまして、償却その他いろいろの点において一社でも多くということでございまして、われわれもこれに協力申し上げておる次第でございます。  われわれが集約化に参加する場合、五年以上の長期契約で用船をするわけでございます。これはもとよりわれわれの望むところでございますが、その用船料がはたしてオーナーの台所をまかない得る用船料であるやいなやということが根本問題でございます。御承知のように、運賃市況は非常に悪い。かてて加えて、先ほど来お話しのように、持っておる船腹の八〇%が不経済船である。せっかく強力なオペレーターができても、われわれの台所をまかなうような用船料でこれを用船していただくことはとうてい不可能でございます。  そこで、先ほど来皆様からいろいろお話がございましたように、不経済船の処理という問題が大きく浮かび上がってくるのでございます。この不経済船を適正に処理することが日本海運全体の自立体制をつくる唯一の問題であると考えるのであります。オーナーの持っておる船は大体四百隻、百七十万ロングトンございます。この中の約八〇%が不経済船と推定されるのでございます。これが全部各オペレーターにチャーターされておる状態でございます。  そこでこの不経済船をどうするかという問題につきましては、この法案ができ上がる初めにおきましてこの問題を取り上げていただきたいということを申し上げたのでございますが、まず大手の集約合併その他による協力化、それに続いてこの問題を取り上げるということで、第二段目にこの問題を考えるということで、私どもはそれではまず親会社の協力化ということに賛意を表しまして、引き続いてこの問題を取り上げていただく、こういうことで私どもはそれに続いてやっていただくような方法を目下考慮中でございます。私どもは八十四社の総資本が二百二十五億ございます。借入金残が約千百五十億ございます。このうち約百八十億が造船所の延べ払いとなっております。他は金融機関の借入金でございます。これを言いかえますと、千二百七十億見当のこの金は、オーナーが海運界対にして危険分散をしておるということも言えると思うのでございます。オーナーがこれだけの借金をして百七十万総トンの船をつくった。それを日本海運に提供してオペレーターがこれを運航しておる。オペレーターはこの船を使われて航路の維持、日本に必要な物資を輸送されたということでございまして、オーナーの立場から申しますと、先ほど岡田先生も言われましたが細いパイプで最初われわれは船をつくって、だんだんそのパイプが太くなる。太いパイプを使って今度は船をつくるという形に相なったのでございまして、記録で見ますと、計画造船の五次以前までは、約六〇%の船をわれわれがつくったのでございます。その船が全部今日不経済船と相なっておることでございます。  さらに先ほど自己資金船の問題も起こりましたが、運輸省において毎年の、いわゆる政府の経済伸長に伴って毎年の輸送増強約八十万トンとされた場合に、そのうちの半分は計画造船、半分は自己資金船にたよる、こういうことでございます。私どもはその自己資金船をつくったわけでございます。それが今日の不経済船、またオーナーを不況に追い込んだ根本の大きな原因となっておるのでございます。私どもの希望といたしましては、三十九社のいわゆる利子補給対象会社以外に、四十五社の非対象会社があるわけでございます。これらもあわせて、この法案に伴って次に直ちにこれに手を向けるということをぜひお願いいたしたい、かように考えるのでございます。その方法といたしましては、私どもも数字を基礎にして、またいろいろの金融機関を通じて、また親会社を通じて、いろいろ案を練っておるのでございまして、不日その案を皆様方のお手元へ差し上げて御検討を願いたい、かような考えでおるわけでございます。私どもは、この不経済船の処理こそ日本海運の対外競争を強化する第一のものであろうと考えるのでございます。この不経済船の処理、それにかわる経済船をつくることによって対外競争が勝てるというように私どもは考えておるのでございます。私どもの今後のあり方についていろいろの話し合いが出ておりますが、私どもも現在瀕死の状態にありますことから、親会社並びに金融機関を通じていろいろのことを考えております。これも近い将来その案ができ上がることは私は考えておるのでございます。この法案ができ上がります途中において、附帯決議としてこの問題を取り上げていただきたい、かようにお願いする次第でございます。
  26. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 次に松尾参考人にお願いいたします。
  27. 松尾隆

    ○松尾参考人 全海連委員長の松尾でございます。フル・ネームで申しますと全日本海運労働組合連合会と申しまして、日本海運業を営んでおります邦船、外船の陸上従業員約六千五百名の三十六単組で形成しております主として事務職員の組合でございます。加盟いたしております総評の中でも非常に特色のある単産となっております。組合結成以来すでに十年になりますが、傘下には、郵、商、三井、川崎等大手の外航オペレーターを初めといたしまして、飯野、日東、三菱等のタンカー・グループ、さらには大同、山下、日産、新和などの不定期グループ、その他オーナーの一部を網羅しまして、また外船関係でもマッキンノン、ドッドウェル、エバレットなど、主要企業を包含いたしておりますので、組織率並びにその内容、両面に照らしまして、陸上従業員の意向を十分代表するものであると考えております。本委員会の先生方で初めて全海連の名前を耳にされる方もあろうかと思いまして、自己紹介かたがた私どもの現勢を御説明申し上げまして、本論に入りたいと思います。  日本国民経済に占めます海運産業の重要性につきましては、今さらここで申し上げるまでもなく、また不況原因金利負担の重圧、財務内容の低下など、多岐多様にわたります問題点につきましても、過般来、本委員会質疑過程で御審議いただいておりますが、再建整備利子補給、この二法案をめぐりまして、日本海運政策と、政策の一部であります助成策につきまして一言申し上げたいと思います。  今日の日本海運の惨状をもたらしました歴代政府の無策、これに追随いたしました粗雑な経営の責任、これは当然批判を受けるべきものでありまして、また現在のごとき事態を招くにまかせました野党第一党たる社会党にも責任なしとしません。しかしながら過去を問わず、現在の時点に立ちまして、日本海運再建発展のための具体的方策を考えますときに、法案自体に問題があるばかりか、利子猶予利子補給だけではなお不十分であり、さらに採択、推進、実、実現されるべき施策の数々が存在することを指摘しておきたいと思います。  まず海運政策の基本理念、大命題といたしまして、国際競争場裏におきます日本海運の市場占拠率、すなわちマーケット・シェアの維持拡大が、目的意識的に追求されるべきものであると確信いたします。米国を初めといたしまして、西欧先進諸国の海運保護政策に加えて、イスラエル、インド、ビルマ、ペルーさらにはウルグアイなど新興海運国は、自国経済に対しまする海運の重要性の認識のもとに、手厚い保護助成によります船腹の増強をはかっておりまして、さらにはまたソビエト、中共を初めとします共産圏諸国による海運進出の動きも不気味な圧力でございまして、国際競争はますます激化する勢いを見せております。一方ギリシャ船主は豊富な資金をバックとして大型油送船の建造に意欲的でありまして、便宜置籍船の増加、盟外船の跳梁は世界的な船腹過剰にさらに拍車をかけております。  かかる困難な競争条件の中で船腹構成の変革、技術革新の導入に対処しまして、世界海運の中に伍して市場競争を勝ち抜いていくためには、国際分業における日本海運の強化が精力的に推し進めらるべきでありまして、量質ともに今後の船腹増強は国民経済的な課題であると考えます。  すでに土屋先生からも御発言がございましたが、昭和三十七年の海運白書によりますと、邦船積み取り比率は、輸出におきましては三十三年度の五八%から三十六年度には五四%へ、輸入におきましては五九%から四一%へと低下いたしております。これを輸入原材料であります鉄鉱石、石炭、油類に分けてみますと、鉄鉱石は七〇%から四八%へ、石炭は六四%から三四%へと、半分であります。油類は五二%から四三%へと、邦船の相対的な市場の喪失、これはまことに憂うべきものがあると考えます。この邦船の積み取り比率の低下は、拡大成長いたします日本経済の海上輸送需要の増大に比しまして、船腹拡充がはなはだしくおくれているということを意味します。積み取り比率の低下は、すなわち貴重な外貨が流出しておるということでございます。外貨節約の意味からも、また安定輸送の確保によります国民経済への寄与という面からも、さらにはまた造船業など関連産業発展のためにも、当面積み取り比率五〇%の回復を目標船腹の増強が行なわれねばならない、このように考えます。  ただいま申し述べました船腹増強と関連いたしまして、第二番目に必要なのは技術革新の導入によります経済船腹の充実でございます。造船業の技術革新は、船舶の大型化、高速化を招くとともに、オートメーションによります定員削減が可能になりまして、におきましては定員十四名のきわめて経済的な新鋭船が設計されておる、このように聞いております。この際一つ国家的な機関を設けまして造船関係の調査を行ない、さらには船型及び補機の統一、さらにオートメーションの徹底等、これらの調査研究が必要であろうと考えます。  第三番目に取り上げねばなりませんのは、海運専業者の保護とその育成でございます。久保先生も御指摘されましたように、現在の海運業には胃袋がない。既得権の擁護と収益性の確保向上のためにも、まず第一に外航、内航の免許制、次に長期外航用船の規正、インダストリアル・キャリアに対する規制措置が検討されるべきであると考えます。  第四番目に、ぜひとも早急に実施されねばならないのは、盟外船対策としての海上運送法の改正でございます。すでに社会党から海上運送法の改正案が本委員会に提出されておると承っておりますし、今後慎重御審議をいただくことと思いますので詳しくは申し上げませんが、安定した定期サービスと運賃水準の維持は、まさに輸出入貿易の順調な発展伸長に欠くべからざるものでございます。盟外船の進出による北米定航の収入減は、一口に五十億円といわれておりますように重大な脅威であるばかりか、輸出業者にとりましても撹乱的要素といたしまして、はなはだしく厄介な存在であることをとくと御認識の上で、御検討願いたいと考えます。  第五番目に特に声を大きくして申し上げたいのは、自主外交の推進と経済外交の強化であります。国際産業であります日本海運の保護育成のためには、単に国内対策にとどまらず、外交上の諸施策が講ぜられねばならないと考えます。米国に対しては、シップ・アメリカン政策に対抗しまして、邦船の積み取り比率改善のためにも強力な交渉が要望される次第であります。また片や対欧州、英国、濠州、東南アジア貿易におきます邦船分野の拡大のためにも、自主性のある経済外交の推進が必要であります。  第六番目には、貿易構造の転換、これに十分配慮する必要があります。ソ連、中国など対共産圏貿易及びアジア・アフリカ圏貿易の開拓、発展には新しい視野に立ちまして努力を傾注すべきである、このように思います。  最後に具体的な助成措置でございますが、昨日井手先生からも御指摘がありました通りに、法案に盛られております利子猶予だけでは、五年以内に海運業の自立体制確立が可能であるとは考えられません。もちろん国民の貴重な血税を充当するわけでございますから、助成条件は、世論の納得のいくきびしいものでなければなりません。しかしながらまず第一に、優秀定期船隊整備のための建造補助、第二に特定重要航路に対しまする航路補助、第三に高船価船対策中心といたしましたオーナー助成、第四に海事信用金庫あるいは金融公庫等の検討。以上四項目が効果的に用意されてしかるべきであると考えます。進藤会長と玉井連合会長がおいでになるところで恐縮なんですが、経営と政府の悪口を申し上げるようでございますが、ただいまのところ業界は八方ふさがりでありまして、うっかりものも言えない。また局長もお見えになっておりますけれども、監督官庁でございます運輸省におきましては、各省間でも非常に苦しい立場におられるようございます。必要で、しかもなおかつ正当な助成はどしどし主張してこれをちょうだいしてくるべきである。こういう建前から海運産業を代表いたしまして一言申し上げたわけであります。  以上のように、だいぶ盛りだくさんな政策の実施を要望いたしましたけれども、私ども全海連といたしましては、わが国の社会、経済、政治体制の週化に伴いまして、労働組合はみずからの権利を固守するにとどまらず、進んで経営さらには社会に対して責任を負うべきである、このような考え方を持っております。また、この立場から拡大安定産業としての海運政策を昨年来提唱して参ったのでございます。従いまして、政府の施策あるいは経営方針に対する無批判な反対は厳に慎んでおるものでありますが、このたびの整備法案は、これは助成の前提としての合併、統合条件といい、さらにはその助成内容といい、反対せざるを得ないものでございます。  法案の持つ政策面は二つあると考えます。その政策面の第一は、合併、統合、すなわち合併と系列化、専属化を絶対条件としました寡占体制の確立であります。過当競争の排除と産業資本に対する海運企業の自主性の確立、これをねらいました改正整備の必要性、これを私どもは否定するものではございません。しかしながら海運の体制整備は、あくまでも組合員、すなわち海陸従業員の雇用安定、さらには労働条件の持続に関する十分な施策を伴いました業界の自主調整並びに関係方面の協力に基づいて行なわれるべきものでありまして、一方的な官僚統制は断固排除されねばならない、このように考えます。また、この法案は、金融資本を中心といたしました債権保全のための集約をもたらしまして、国民経済におきまする基幹産業として欠くべからざる企業の中立性、この企業の中立性を著しく阻害するおそれのあることを指摘しておきたいと思います。さらに寡占体制によりまして、中小荷主、特に北米航路あるいはアフリカ航路におきますごとき中小の輸出業者の利益保護に十分な配慮が払われなければならぬ。これは受益者にとって非常に大事なことでございますので、一言申し添えておきたいと思います。  政策面の第二は、第十四条第二項に規定いたしまする「不当な競争の排除についての必要な勧告」をなすことができる旨の運輸大臣の勧告権でございますが、これは支払い猶予の取り消しという大きな罰則をバックにいたしました強力なものと言えましょう。この勧告権は航路調整その他の行政指導には有力なきめ手になると思われますが、しかしその乱用は厳に慎まれなければならないと考えます。  最後に、陸上従業員の雇用安定と労働条件の維持向上、この二つの見地から見ましてじっくりお話し申し上げたいと思います。ただいまのところ、現在海運産業に従事しておりまする陸上従業員は約一万名と推定されております。私どもはその中で六千五百名を組織しているわけでございます。一九六二年九月期利子補給対象五十八社の陸上従業員数を申し上げますと、運航主力会社十三社、これは大手オペレーターのことでございます。五千六百八十九名。タンカー主力会社九社で千九百十九名、オーナー主力会社が三十六社、千二百七十九名、合計五十八社八千八百八十七名でありますから、私どもの組織率は割合高いと言うことができると思います。本委員会の議事録によりますと、三月十三日に關谷先生から離職者対策として何か政府に具体策がないかという御質問が出ましたところ、政府当局の方から、一万人の二、三割程度、二千名ないし三千名が、集約の結果として過剰になってくる。要らないとはおっしゃらなかったわけですけれども、過剰になってくる。これらはできるだけ関連産業への配置転換を行ない、あるいは設立を予定されておりまする国家的な海運問題の研究機関に吸収いたしまして、失業者を出さないようにしたい、こういうふうな答弁がなされております。ところが三月十五日の本委員会におきまして、加藤勘十先生の御質問に対し、綾部運輸大臣から、これは抜粋でございますが、その後折衝の過程で調査したところでは大した失業者は出ない、再建整備によってできる新事業会社はだんだんよくなって人員もよけいに吸収するものであるから、加藤さんや關谷さんが心配されるような非常な就職の問題というものは考えられない。かりに失業が出るようであれば、航路の拡張、労働、厚生問題等全体の総合した調査機関を設けてこれに吸収する。そうしてその費用が出ぬならば、石炭産業に補給したと同じように国家でその機関に対する補助をしてまかなっていく。このように答弁が行なわれました。さらに昨日二十六日の久保三郎先生の雇用対策につきましての御質問に対しまして、池田総理は、海運は拡大安定産業であるから、合併後も従業員はプールすべきであって、整理は避けるべきである旨の答弁をされております。そもそも当初伝えられました過剰人員二、三千人というきわめて大ざっぱな見込みにつきましては、私どもといたしましては大いに異論がございまして、運輸大臣に対する公開質問状と抗議文を用意をいたしました。今明日中にも大臣にお目にかかって、算定根拠を伺いたい、このように思っていたのであります。幸い委員会審議を重ねるに従いまして、雇用安定への意欲がはっきりとして参りました。昨日政府の最高責任者でございます池田総理の御確言と明確な政府の意思表明を見ましたことは非常にけっこうと考えます。  蛇足ではございますが、御参考までに私どもの資料から申し上げますと、主要オペレーター十八社の従業員数、一人当たり運航トン数、この二つについて見ますと、この点はとくと申し上げておきたいのですが、昭和三十二年三月末現在と三十七年九月現在の五年間で対比いたしますと、三十二年の運航トン数は五百六十万重量トンに対しまして、三十七年九月は九百四十万重量トン。従業員の数は、三十二年が五千七百十名に対しまして、三十七年は六千六百八十一名となっております。それから一人当たりの運航トン数を見ますと、三十二年の九百八十一トンに対しまして千四百四トンとなっております。これはすなわち五年間に重量トンでは三百八十万トン、五八%、半分以上ふえているのに、従来員は九百七十名、わずか一〇%、一割しかふえていない、こういうことでございます。いかに政府の指導と金融筋の圧力によりまして、事務の合理化が行なわれていたかということがはっきりしております。従いましてかような数字のバックでもよくわかりますように、ただいまの陸上従業員におきましては、総体として非常な労働強化が行なわれている証拠でございます。また各社の従業員の恒常的な時間外就労、これは五時半からあるいは六時からということでございますが、月大体二十時間平均と推定されております。この現象も見のがしにはできない。  従いまして、経営におきましてあるいはまた政府におきまして、慎重な綿密な調査も行なわれぬままに、目の子算式に一口に二千名とか三千名とか余剰人員が出るようなことを言われるのは全く無定見でございまして、それこそ指導責任と経営責任を問われるものである、このように抗議したいと思います。  次に、法案につきましての具体的な問題でございますが、私どもといたしましては、本法案に雇用安定と労働条件維持の一項目を第五条第四項に追加されますよう切望いたします。  また、運輸大臣の任命によって発足すると予想されます整備計画審議会には金融代表がたくさん入るようでございますが、これには必ず労働代表といたしまして一人加えていただきたい。その代表にはもちろん全日本海員組合の中地組合長をぜひお願いいたしたいと考えます。  最後に、私はこれまでいろいろ申し上げて参りましたが、海運町再発展に対します私たちの真意を正確にお伝えする意味におきまして、一月二十一日に私どもが機関決定をいたしております基本方針を朗読させていただきます。   基本方針   海運産業再建強化の為に利子猶予利子補給の前提として企業合併を軸とした集約化が強行される趨勢にあるが、これに対する全海連の基本方針は左の通り。   第一、海運集約による人員整理、労働条件低下には絶対に反対する。   第二、海運の体制整備はあくまで組合員の雇用安定と労働条件維持に関する十分なる施策を伴った業界の自主調整及び関係各方面の協力に基づいて行なわれるべきであり、一方的官僚統制を排除する。   第三、体制整備に伴い組合員の生活と労働条件に影響を及ぼす事項については、組合との事前協議を行なうよう要求する。この点は先ほどの進藤船主協会長の御意見と若干の食い違いがあると思いますが、私どもは少なくともこの点をはっきりさせまして、さらに労使協議機関、こういうものを産業内に統一して設けていくべきである、このように進めていきたい、こういうように考えております。最後に、   第四、海運再建強化のためには体制整備に止らず、全般的な海運諸施策が必要であり、その早急な実施を要求する。    全日本海運労働組合連合会こういうことであります。  どうも御清聴ありがとうございました。     —————————————
  28. 細田吉藏

    ○細田委員長代理 質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  29. 久保三郎

    久保委員 進藤参考人にまずお伺いするのでありますが、特にこの再建整備に関する法律案ですが、これによって将来少なくとも五年後自立体制と日本海運界の発展が予想されるものかどうか。これはもちろん、これから法案がもしも通れば、それに基づいて、それぞれ業界の再編成に具体的にお入りになると思うのでありますが、今までの当委員会の審議や、それからあなたの方での運輸省あるいは関係方面との折衝の中で、はたしてこれで自立体制なり今後の発展が約束できるのかどうか、というのは、御案内の通り、もちろんあなたの方にはあなたの方の言い分はあると思うのであります。たとえば戦時補償の打ち切りをどうするんだという、そういうお話もあるいはあるかもしれません。しかしその問題は別として、今この法案にかかっておる大きな国民負担は、この法案が通れば、多額の血税が海運再建という名のもとに流れていくというか、注ぎ込まれるわけです。でありますから、国民的な立場からいけば、単純に——単純かもしれませんが、少なくとも自立体制ができて、今後の海運というものはもうあまり気を使わぬでも、これによって、大きな変革だから発展性があるんだという効果というか、ねらいがやはり約束されなければならぬと思うのです。そういう点についていかように考えておりますか。
  30. 進藤孝二

    進藤参考人 お答え申し上げます。  これは私の考えでございますが、従来政府からお出しになっているいろいろな資料は、将来船をつくっていこうという点には触れていないのであります。そして現在、御承知のように、開発銀行で俗に言いますさみだれ方式、新造船を今その方式によって許可になっておるのでございますが、それによりますと、償却もできず利益も出ないというような新造船は許可されない。それがそごを来たす場合には、自己の所有不動産、有価証券その他を処分して、それでつじつまの合うような方法で許可をされておる。それで一応今つくっておる船はそろばんはとれるということになっておるのでありまして、それを計算の中へ入れますと、何とかオペレーターの大部分はそれによって自立できる状態になるだろうと思うのでございますが、先ほど申しましたように、これにはオーナーの問題がございます。数からいきますと、オーナーが非常に多い。それが自立体制ができるとは私は断言できませんですけれども、一応オペレーターが自立体制ができて、そして保証債務とかオーナー等の、先ほど玉井参考人からお話がありましたように、用船料の問題とかいろいろ問題がこんがらがって参りますので、オペレーターが自立体制に入ることに見込みがつきますと、そのオーナー関係を調整して進んでいきたいと思うのであります。それですから全部がそれによって自立体制はできないが、これは七割くらいの船腹でございますから、それが自立体制にいけば、それによってオーナーを一緒に一日も早く自立体制のできるような方法で進んでいきたい、そういう政策を監督官庁とも打ち合わし、銀行その他にも相談して進んでいきたいと思っております。
  31. 久保三郎

    久保委員 なかなかお立場上むずかしいことだと思うのであります。そこで逆になりましたが、今の参考人のどなたからもお話があったかと思うのであります。われわれもそういうふうに見ているのでありますが、というのは、海運界自体が将来の日本海運の展望、あるいはその経営のあり方、こういうことに勇気を持って、この時期をおいてはもう言う時期はない、こう私は思うのであります。ところが現実には、どうも大へん失礼かもしれませんけれども、海運界自体にはなかなか発言力がなさそうに見えているわけでありますから、この期に及んで、真に日本海運経営者として、言うべきことははっきり言って、そしてやはり自立体制というか、発展策を強行しなければいかぬと思うのです。今までお述べになったいろいろな政策自体は、むしろ再建法の前に先行させるべき一つの方策だと私は思うのです。ところが今日の海運論議となれば、この再建整備一つにかかっている。海運界また新聞その他の報道するところによりますれば、合併集約ということで、右往左往——ではないでありましょうが、それに血道を上げているようにわれわれはとっているわけです。もちろん経営者の方々は、それぞれ自社中心に、個々の海運の自立再建というか、発展性を展望をつけておやりになっていると思うのでありますが、とにかくこの利子たな上げという一つのバスに乗りおくれてはならぬということから、そういう方向がとられるとするならば、私は非常に残念だと思う。少なくともこの際、もうこの時期をおいては海運界はものを言う時期はないのではなかろうかと思うのであります。私がしろうととして一番心配するのは、さっき申し上げたように、はたしてこの二つ法律中心的に今後推進されるとして、政府が期待する、あるいはできるだろうということだけで、われわれはそうですかという立場には今日ない。くどいようでありますが、多額の税金を流して、これはもちろん今日までの政府の責任でありますが、そういうものを流しながら、約束もできないというのでは、これは大へんなことだと私は思うのであります。そういう意味でいかがですか。私が聞きたいのは、今のお話は自立体制は半分くらいはできるだろう、こういうお話なんであります。私もそうだと思う。そうだとするならば、この法案は五年間に自立体制ができるという約束が前提になっているのでありまして、この点では非常に食い違いが多いと思うのであります。  それからもう一つは、集約も、先ほど土屋参考人海造審の中での意見よりはこの方がベターである。いわゆるオペレーター同士の合併が必須条件だということはいいのだ、こういうふうにとられましたが、今寡占状態において、寡占理論からくるところの過当競争を押えるという面では、なるほどそういう見方もありましょう。しかし必ずしも寡占状態に、そういう形で置くこと自体が、日本海運の将来のためにもなるかどうか。あるいは約束されるというか、予定される六つか七つのグループ自体が、それでもういいのかどうか。むしろ集約の内容については、これは過当競争自体の分析が必要だと思うのです。言うまでもありませんが、たとえば定期航路については六つか七つで集約というか、押えることができましょう。しかしこれとても完全ではありません。むしろ不定期船専用船、タンカーを各社とも同じような形で包含した場合には、残念ながら今以上に四年間は過当競争ができるだろうという逆な見方も出てくるかと思うのであります。でありますから、むしろこの際再編成をするというならば、その中身についてもやはり検討があるべきだ。言うなれば、先ほども土屋参考人に申し上げましたが、その船の形、船の種類あるいは航路の配船地域の調整というものも含めて、もちろん定期航路配船調整とか航路調整を含めて、それを中心にして集約合併がなされることの方がよりベターではないか。私もしろうとでありますから約束はできません。しかし当面考えられる最大のものといえば、そういうふうではないかと思うのですが、この法案ではそれが約束されると思っておられますか。いかがですか。
  32. 進藤孝二

    進藤参考人 お答え申し上げます。  これは全く考え方の相違でございまして、私は寡占の状態に一応いたしまして、六社とか七社にして、そのインター・グループにおいて強力なる提携をやり、合理化を進めていく、そうすればそれが一つになるか二つになるか、そして少なくなればなるほど、寡占理論として当然のことでございますが、お互いの過当競争、不当競争を避け得られるという自信を持っておるのでございます。それですから、その線について今業者間で話し合いを進あておるのでございます。  それから第一番の問題でございますが、われわれはわれわれの考え方があるのでございますが、どうしても実現できない問題を大きく振り上げる、これは理想としては非常にけっこうなんであります。ところがある程度これならば世間も認めていただき、関係の方方に了解していただけるものという点でお願いして、あるいは社会党の先生方から見れば、何だなまぬるいことを言って、もっと大きく持ってきたならば何でもやってやるとおっしゃるかもしれませんが、いろいろの判断からいたしますと、現在の線が実現性のある点ではないか。  それからこの前の法案が出ましたときには、本法案をもって今後いかなる海運政策も助成政策もやらないということが載っておりましたのですが、あれは私は撤回になったものだと思っておりまして、今後この法案の遂行上いろいろ問題が起きてくるだろうと思うのでございます。たとえばオーナーの問題、すなわちそのオーナーの問題の裏は不経済船、高船価船の問題にひっかかっておるのでございますが、それだとか内航の問題とか、いろいろの問題が今後起きてくるから、時と場合と、いろいろ今後経済の変化もございますから、そのときに応じてまた、海運問題はこれで終わりじゃなしに、引き続きいろいろ適当なる施策を御検討をお願いいたしたいと思うのでございます。
  33. 久保三郎

    久保委員 私どもの受け取り方は、逐次やっていくというのじゃなくて、あなたも御承知の通り、海運界はもうどたんばに来たということで、これは見ようによってはその一つ対策だと思うのであります。あとの問題の方がむしろ大きいかもしれぬ。だから政府にわれわれが要求したいのは、あなたたちもそうだと思いますが、ここに十一月二十八日の「海運業界の体制整備に関する意見」というのがあなたの方から出ておりますか、これはこのうちの一部だと思うのです。全体の視野からいってどれを優先すべきかという政策が成り立たなければならない。俗に言う成り行きまかせという言葉がありますが、一つやってみようじゃないか、それでそのときはそのときでまたもう一ぺん考えてみたらどうかというふうにどうも受け取れるのです。それでは、今度は収拾がつかないというのが私たちの見方であります。いずれにしても見解の相違でありますが、問題は、私たちは五年後に再び収拾すべからざるところの事態を招かぬように、業界としても慎重に配慮すべきだと考えておる。もちろんそうだと思います。  そこでもう一つお伺いしたいのは、たしか暮れか今年になってかと思うのでございますが、日本船主協会は長文の要請書を出して、その要請書は、北米航路、いわゆるアメリカ航路におけるところの盟外船対策として、海上運送法の改正を強く要請したと思うのですが、それはいかが、それはいかがですか。
  34. 進藤孝二

    進藤参考人 お答え申し上げます。  北米航路の問題につきましては、先般この運輸委員会でいろいろ質疑がございましたように承っておりますが、われわれの考えといたしましては、現在アメリカのシッピング・ボナー・アクトその他がありまして、その法案の問題にいろいろわれわれとしては抗議をいたし——これはわれわれだけでございません、欧州の船主その他から攻撃をされておるのでございますが、今、日本でやはり同じような法案を考えていただくということになりますと、われわれが反対した建前上、今すぐそれが出ますと非常に問題を紛糾さすので、しばらくこの海上運送法の一部改正の問題は時期を待った方が国際的立場からいいのじゃないか、われわれはその前にまず盟外船に対する問題は、業者間で強度の提携をやる——これはニューヨーク航路でございますが、配船調整、共同集荷、施設の共同使用その他をやりまして、たとえば盟外船は神戸、名古屋、横浜、サンフランシスコ、ニューヨークヘ行く。われわれは神戸だけで全部が一緒になれば、神戸だけで満船になってしまう。そういうように配船調整をやれば、神戸一港積みのニューヨーク一港揚げということができますから、相当運賃は安くてもこれにたえられる、競争できる。そういうような方法をまず考えていって盟外船に対抗していく、そういう方法を先にとっていくということを今ニューヨーク関係オペレーターの間で協議をいたしておるのでございますが、その上で海上運送法の問題は考えていいんじゃなかろうか。これは東南アジアの諸国が、日本がそういう法案を出しますと、またそれについてきて、そうでなくても今いろいろ問題を提起しておる国にさらに拍車をかけて、世界の海運が収拾でき得ないような状態に陥るおそれがありますので、それがはたしていいのか悪いのかということを冷静に考えなくちゃいかないのじゃないかと思いますので、今われわれ業界の考え方はそういう方法でやりたいと思っております。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 久保三郎

    久保委員 われわれの考え方が冷静でないのかもしれませんが、船主協会としてつい最近そういう長文の海上運送法の改正の要請をされており、ただいま進藤参考人お話では、今度は冷静になった、こういうことでありますが、そういうことにわれわれはどうも不可解しごくな感じを抱くわけであります。先ほど申し上げたように、海運界はものを言えなくなったんではなかろうか。重大な段階に来て、ものが言えないようでは、残念ながらなかなか自立体制とか今後の発展といってもむずかしいのではなかろうか。こういうことを申し上げているわけで、決して非難はいたしません。お立場を深く同情いたします。ただ問題は、北米航路、特にニューヨーク航路について航路調整というか、そこまでの考えを一本化するというのでありますが、そういうものはおやりになることは当然いいことだと思うのです。しかし海上運送法の改正をせずして、これに一本化した運航をやり、なおかつこれに航路調整のいわゆる航路補助金、そういうものを要請されるということでありますが、われわれ自身は、これは問題が逆であるというふうに考えております。念のためにこの席で申し上げておきたいのは、ざるに水を注ぐような政策は、われわれは反対である、こういうふうに考えているわけであります。なるほど国内海運業過当競争は、ニューヨーク航路において、今の構想で防げるかもしれません。しかしこれは国際航路でございますから、それだけでは残念ながら問題が解決しない。なるほど多少メリットはないとは、私はしろうとでありますから言いません。言いませんが、少なくとも大きな抜け穴は何かというと、航路の秩序を乱しているところのいわゆるアメリカの諸政策、それから来るところの盟外船でありますから、これに対して防御的措置をとらずして、バケツに穴をあけたままで水をくむようなことは断じてやるべきではない、こういうふうに思っているわけであります。それから先ほど、お言葉ではありますが、私どもはなるべく多く持ってくればやってやるというようなことは言っておりません。それは誤解でありますから、この席で御解消いただきたい。われわれは決して現実的なことを無視しての問題ではなくして、できるものの努力を先にすべきである。その上に航路調整、航路補助金が必要なら航路調整の上に補助金を出す。そしてやることがいわゆる日本海運界のためであり、産業界のためである、こういうふうな考えでありますので、誤解のないようにお願いしたいと思います。  次には先ほどの雇用対策の問題でありますが、全日海との間には、南波佐間さんも来ておりますが、一応新聞の報ずるところによりますれば、労使協議会とか、そういうところで、船主団体と船員組合の間で、この船員の雇用安定策については一応結着がついたと思うのでありますが、それはその通りであるかどうか。それを今後ともこうしたいろいろ問題が出てくると思うのでありますが、これは船主団体として、やはり全日海との間に一応やっていくお考えであるかどうか、いかがですか。
  36. 進藤孝二

    進藤参考人 お答え申します。  雇用安定の問題に対しては、全日海との間には、今おっしゃいましたように、了解がつきまして、調整機関をこしらえて双方協議いたしております。
  37. 久保三郎

    久保委員 これは関連して南波佐間参考人から一つお答えいただきたいと思いますが、私たちが今申し上げたようなことで了解して、一応の安定のめどがついている、こういうふううに了解するのですが、それでよろしいかどうか。
  38. 南波佐間豊

    ○南波佐間参考人 私たちと船主団体の間では、基本的な考え方については、全体として、船主団体なりあるいは船主団体の全体として雇用調整をやるという考え方においては一致をしておりますけれども、まだ具体的に結論が出ておりません。
  39. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、これから具体的な細目というか、そういうものも取りきめて、大よそ今お二人がお話し合いになったような線で雇用安定を期していこうという決意には、両方とも変わりございませんか。まず進藤さんから。
  40. 進藤孝二

    進藤参考人 お答え申します。その方針でやりたいと思っております。
  41. 南波佐間豊

    ○南波佐間参考人 われわれのこの問題に対する態度は、結局百数十社を対象にしておりますので、各企業においては余るところも足らぬところもあるはずであります。そこでその実態をまず船主自身で調整をしてほしい。船主自身が自主的に全体の中で調整をして、その結果に基づいてわれわれと交渉をする。そのためにわれわれは実は非常に今問題になっておりますが、新採用というものを押えているわけでございます。というのは、まず入口をとどめておかないと、現在の組合員の雇用情勢というものはむずかしくなってくる。そういうことで、われわれとしては、海運発展するのですから、現在の組合員に犠牲者は出さない、そういうかたい決意を持って、またそれができると思っているわけであります。
  42. 久保三郎

    久保委員 そこで進藤参考人にお伺いするのですが、松尾参考人から先ほど陸員の問題についてお話がありました。ところがあなたの先ほどのお話では、これは各企業の自主性というか、処理にまかせていきたい、こういうことでありますが、今南波佐間参考人からのお話では、いうならば各企業で調整はまずやるけれども、あとの問題についてはいわゆる海運全体の問題として上へ上げてやる、こういうことのように聞いたわけです。そうだとすれば、陸員についてももしも今後予想される変革に即応するためには、やはり同様の措置があってしかるべきではないかと思うのですが、これはどういうことですか。
  43. 進藤孝二

    進藤参考人 お答えいたします。  組合の性質が陸と海とは御承知のように違うのでございます。片方は単一組合でユニオン・ショップになっておりまして、陸員の方は各社別になっておるのでございますから、各経営者自分のかかえておる社員に対してはあくまで全責任を持って善処すべきだ、私はそういうふうに考えております。それがどうしてもできないということになって話し合おうということになれば、われわれはそれに対して全体の意向がそういうふうになってくれば、そこで考えるべき問題であろうと存じておる次第でございます。
  44. 久保三郎

    久保委員 それでは松尾参考人にお尋ねするが、今の進藤参考人の御意見は、まず全日海の方は単一組合であるが、あなたの方は連合体であって、それぞれの企業体の組合があるから、そこでまず第一にやってきて、どうしても話にならなければ、その結論としていわゆる船主団体との関係が出てくる、こういう今のお話なんだが、そういうふうに了解していいのかどうか、今後の問題として……。
  45. 松尾隆

    ○松尾参考人 ただいまの久保先生の御質問でございますけれども、私どもといたしましては、確かに単一組合ではない。企業別の組合がたくさん集まっておる。しかしながらこの法案の審議でも明らかでございますように、集約ということになりますと、やはり六つあるいは七つの組合というふうに統合合併がこれから進められる、そういうことになりますと、現存しております各企業にそれだけの人員がはたしてスムーズに、雇用の安定という方におきまして、対策が立てていけるかどうか、これは非常に疑問だ。従いまして海運産業再建にあたりましては、やはり産業内全般での調整、こういうことを船主団体といたしましては当然考えるべきである。またその用意を始めるべき段階である。従いまして、時期が来れば、そういう必要が起こってくれば、何かそういうふうな統一的な調整機関といいますか、そういう機関を設けたいという進藤参考人の御意見でございますけれども、私は、そういうことを待っていたのではおそい、むしろ新しい考え方に立ちまして労使協調の精神で、この精神に基づきまして、今のうちにそういうチャンネルを一つ置いておきまして、陸員の問題についても周到な準備を進める必要がある、こういうふうに考えております。
  46. 久保三郎

    久保委員 今の松尾参考人お話、その通りだと思うのでありますが、少なくとも大きな変革で、企業別でいろいろ実態も違う。しかしその中にいる陸員にしても、いろいろ才能の問題もあると思います。たとえばこれから合併する場合には、資本力その他で格差があるものも合併することになるでしょう。集約されます。そういう場合に、片方の弱小といってはなんですが、弱い企業の中にも優秀な陸員がいる。こういう場合には、自主的なその企業だけの判断では——日本海運全体からすれば貴重な人材がある。しかし進藤参考人お話では、どうも各会社でやってくれ、簡単にいえば、おれの方の責任じゃないぞ、そういうことであってはならぬのじゃないかと思うのです。高い視野に立って、将来の海運界発展という立場から貴重な経験を持った陸員をそういうところに追いやることは各企業の責任ではない、むしろ全体的な立場から消化すべきだと思うのであります。それは十分御考慮いただきたいと思うのですが、いかがですか。
  47. 進藤孝二

    進藤参考人 お答えします。  全く私も、自分のかかえておる従業員に対しては非常な愛情となにを持って処理いたしておるのでございます。これは、私のことに関してはなはだ失礼でございますが、海員組合の場合は、海員は船を離れますと、これは仕事を探すのは非常にむずかしいのであります。しかし陸の場合は、ほかに非常に転換性ですか、融通性ですか、そういうものがあります。いずれも優秀なる人で、海運産業で育ち、将来も海運産業に身を投ずるという方ですから、できる限り海運産業に残っていただいて、将来の発展に資したいと思うのでありますが、ちょうど終戦直後、膨大なる船腹を持っておりまして、海陸とも相当な人数でございまして、それがみな船が沈んだとか、海外勤務の人間、兵隊に行っている人間がリュックサックを背負って、あの軍靴をはいて、われわれの会社に続々と帰って参りました。それであのときに、私たちは、船はなし、何とかしてお互いが助け合って生きていかなければならぬという、そのきびしい場面に直面しまして、いろんな仕事をそのときにやったのでございますが、あのときの気分で、今海運は非常時でございますから、われわれの会社の社員の諸君にも私は直接話をする、そのときの気持お互いにこの産業を守っていこうじゃないか、これは先ほど申しましたように、斜陽産業で将来はもうすたっていくというなら別だが、伸びていくのだから、お互いに苦しいところを分け合ってやっていこうじゃないか、一時ほかで働いてもらってもまた海運というものが伸びていくのだから、そこで一つ手を握ってやっていきたい、私はそういう気持でおるのでございます。経営者はみなそのようななにだと思うのでございますが、まず企業体でやって、そしてまたわれわれは、今お話しのありましたグループが六つとか七つできますと、そのグループ内においてお互いが助け合っていかなければならない。全体で考えるのは実行面において非常にむずかしい。これが船の場合ですと、お互い融通し合ったり、職種別に過不足があったり、右左にいくのでありますが、陸の方はそうは簡単に参りません。これは経営をやって人をお扱いになれば、それはよくおわかりになるだろうと思う。これは人をよく知っている範囲内において、内輪で融通し合って、お互いが助け合っていくというのが一番いい方法じゃないかと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  48. 久保三郎

    久保委員 人を使った経験がありませんのでよくわからないのであります。ただし使われた経験はたくさんありますので、その立場から申し上げておきたいのですが、なるほど進藤参考人のところの会社は、あなたの今のお話で了解いたします。しかし、企業にもいろいろ格差があり、種々雑多であります。そういう場合には、やはり最後にはそれぞれ船主団体として対策を講ずべきではないか、こういう考えを持つべきだと思います。これは当然やるべきだと思います。これは別にあなたの方に考えを押しつけるわけには参りませんからやめておきますが、少なくともそういうふうにしないと、かえって集約合併が手かせ足かせとなって、人員の面から来るのじゃないかという心配もあります。  それからもう一つ、これは玉井参考人にオーナーの立場からお尋ねするわけでありますが、われわれの見るところと大体同じようだと思いますが、先ほど来お述べになった御意見通り、今度の集約のメリットはオーナーにはない、むしろこれはきつくなるということであります。本来ならば集約という一大変革でありますから、オーナー対策がやはり並立してやられるべきだと思うのでありますが、どうもこれまた玉井さんを前に置いて悪いのでありますが、言いにくいことでありますが、あなたの方はオペレーターにどうしても十分にものを言えない立場にある。そこで今度の集約が出ても、まあお前らちょっと待っておれ、あとからめんどうを見てやるから——先ほどのお話を曲解すれば、正当に解したと言っては失礼だから曲解と言っておきますが、進藤参考人の御意見からいけば、大体オペレーターの自立体制ができればあとからめんどうを見てやろうという話にもなりそうだと思います。私は海運人としてオペレーターとオーナーの区別はないと思います。やはり全体として考えていくべきだと思います。  そこであなたは、あとから一つ考えてもらいたいというお話でありますが、あとから考えて間に合うのかどうか。たとえば整備計画一つ出すとしても、五年後のいわゆる自立体制を確立するというはっきりしたものでなければならない。その場合に一つの大きなウエートは運賃の問題、用船料の問題になってくると思います。用船料は今日膠着したところのオペレーター・オーナー間の一番大きな問題であります。極端なことでありますが、むしろこのきずなを切るということが先決ではないかとさえ思うのであります。しかし現実にはなかなかむずかしいかもしれない。今後そういう集約された体系の中では、さらにこれがむずかしくなる。オペレーターの自立体制をつくるのには、用船料をさらに引き下げるということが今の一番の問題です。その他の政策は一切ありませんで、この二つ法案だけですから、あとは期待するということでありましょうし、政府もその辺はあいまいでありますが、われわれ自身はその他の政策がなくてはならないと思います。ところがそれがないのでありますから、そうなれば結局オーナーが問題にするところの用船料の引き下げがある。そうなった場合にはたして自立体制ができるのかどうか。むしろこの集約によってだんだん衰亡してくるのじゃないか、こういうふうに考えますが、いかがですか。
  49. 玉井操

    ○玉井参考人 今久保先生のお話の通りでございます。私どもがつぶれるということはオペレーターの足を引っぱる形になると思います。それでまずオペレーターを強化してそれからオーナー、こういうことになっておるのであまますが、今お話のように待てない状態にあるということば事実でございます。そこでこの法案ができる前に、この不経済船を何とか織り込んでもらえないかということもお願いしたわけでありますし、運輸省で高船価対策ということも出してもらったわけでありますが、これが大蔵省で全面的に削られてしまったという結果になっております。  そこでわれわれとしましては、せっかくできたこの法案によってオペレーターが強化され、それに伴ってわれわれもやるべきだ、その間に時日の延長は許されないという立場に立って、この法案が審議されるさなかにこの問題を取り上げていただきたいということを再三再四お願いをしておるわけであります。現状では今先生のおっしゃったように、むしろ用船料は下げられつつあるわけであります。オーナー自体は人員の整理、経理の節約その他については極力、もうこれ以上できないというところまできておるわけであります。かりに人を二人、三人減らしましても、用船料が五セント値下げということでは何にもならぬ結果になるわけでありまして、そういう点も今数字に表わしまして、この法案に伴って直ちにこの問題を取りげていただく、こういう運動を今やっておるわけであります。その点御了承願いましてこの法案をまず通していただき、直だちに経済船対策をやっていただきたい、かように私ども考えておるわけでございます。
  50. 久保三郎

    久保委員 時間もありませんからなんですが、この法案をということは、大へん失礼ですが、半ば強制された立場から言わざるを得ないんではなかろうかと実は同情しているわけであります。いずれにしても、この法案ができてあと非経済船対策というものが日ならずしてできるという見通しは今日ありません。あるならば同時に提案すべきだと思うのであります。むしろそういういわゆる海運の構造的変化に対応したものをまず第一に打ち出すべきだと私は思っておるのであります。構造変化に対応したというならば、今度の再建整備法での集約という形ばかりのものの、構造的な政策も一つでありましょう。しかし、これは構造的政策になり得ない、今のお話からいっても。極端なことを言うと、それはなるほどオペレーターの一部かもしれません、ある航路の一部であるかもしれません。そういう構造的政策がちっともなされない。しかも法案成立をお急ぎになるということは、どうも自己矛盾ではなかろうかと思うのでありまして、専門家に対して大へん失礼でありますが、われわれはそういうふうに見ているのであります。  そこで、最後に進藤参考人にお伺いしますが、この法案が通れば当然系列会社がその傘下につくということでありますが、系列会社というのは、これは法案でははっきりしませんが、いずれにしても資本支配をするという形になります。聞くところによれば、程度の株式を保有するということであります。今日の海運界にはそういう株式を保有するだけの銭がございますか、いかがですか。
  51. 進藤孝二

    進藤参考人 お答えします。  新たに三割の株を持つ金は、今おっしゃいましたようにございません。これは金融機関が中に立ってその金融をあっせんするとかしていただくということになるかと存じますが、その金にいたしましても、そろばん勘定いたしますと、今後五カ年間無配の株でも金利を持ったのでは逆ざやでございますし、その辺どういうふうにいたしますか、技術の存するところでございます。これは公の席では申されない方法もいろいろあると存じます。まあ合法的にいろいろ方法もあるだろうと思うのであります。それから先ほどおっしゃいました用船料の問題でございますが、用船料が安くなるとか——日本の船といえども世界の海を走っていまして、世界用船料というものは大体のマーケットがあるのでございます。それから飛び離れて高くやれば、その動かす船は赤字が出るのは明らかなんです。それですから世界の標準から大幅に離れたような用船料は出しておりません。そしてかつ関係会社に対しては、そこが悪くいきましても、直接それがオペレーターに影響してくるのでございます。これは戦前の何も親子関係、兄弟関係のない、親類づき合いのないものならば別でありますが、今は大なり小なり全部関係がありますから、その点に対しては内容にまで立ち入って用船料の算出をいたしておるのが現状のように聞いております。
  52. 久保三郎

    久保委員 今の銭の工面の方はおやりになるそうでありますが、よしんば銭が工面されても、株を現実に持つということになりますれば、上場株にしても上場してない株にしても問題があろうと思います。なるほどお手並み拝見ということになりますが、取れればいいと思います。なかなかそう簡単にはいかぬと思うのでありますが、ただ公開の席では申し上げられないということでありますから、秘策があると思いますので、秘策に期待するよりほかないと思いますが、これは現実にはむずかしいと思っております。これも大きな問題であると思います。  それから、今の用船料のお話でありますが、別に飛び離れた商い用船料を払えという話ではありませんで、むしろ集約をやるという場合に、集約のメリットをオペレーターがつけるということならば、少なくとも用船料を引き上げるということにはならぬだろうという意見なんです。ところが、今の用船料でオーナーがやっていけるのかというと、それはやっていけないという格好でありますから、非経済船という問題もありますが、そういう対策がないままに今の用船料あるいは以下ということにならぬと、オペレーター自身もメリットを持つわけにいかぬ、効果をねらうわけにいかぬということで、必然的にオーナーにしわ寄せが来るであろうという推測をしておるわけであります。幸いにして御努力の結果、オーナーともども自立体制ができるというならば話は別であります。いずれにしても私どもはそういう心配をしておるということでありまして、私は以上で終わります。
  53. 木村俊夫

    木村委員長 加藤勘十君。
  54. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 主として進藤参考人にお尋ねしたいと思います。ここでお述べになったことに直接関係したようなことは、今久保君から聞きましたから、それに関連する事柄で、船主協会会長という立場においでになる進藤さんにお伺いしたいと思います。  実は私どもの手元に、学界の有志の名でパンフレットとその参考資料が回ってきたわけであります。それを見ますと八つの学会、東京海運研究会、交通学会、港湾経済学会、経済政策学会、国際経済学会、貿易学会、経営学会、関西の海運研究会、この八つの学会に属しておられる百六十四名の二十の大学の先生方が名を連ねておられる。そしてこのアンケートによって回答を求められております数は、回答未着のものが四十二で、保留が二で、慎重論が二で、未着、保留、慎重論合わせると四十六で、差引百十八人の学会に属する学者がアンケートを出しておられるわけです。しかもこれらの学者は三十一の専攻科目を担当しておられる学者の諸君であります。これらの諸君が大体この法案の主要なる点である集約化の問題、利子の支払い猶予の問題、法の実施について、過剰人員の処理、設備の近代化、こういう五つの問題を中心として意見を求めておられるわけであります。もちろんこの意見の中には、私どもが拝見して、ある点には賛成し得られるものもあるし、ある点には賛成し得られない意見もございますが、こういう意見が出たということは、船主協会という立場において御承知になっておられますか。
  55. 進藤孝二

    進藤参考人 お答えいたします。  実はその発起人は伊坂市助君だと私は承知しております。私が病気で、ちょっとかぜを引いて休んでおりましたときに伊坂君から電話がありまして、そういうのを見たか、こういうわけでありますが、私は旅行したりちょっと出たりしておりまして、それをまだよく読んでないのでございます。そして電話で返事しろということたったのでございますけれども、そのような次第でまだ見ておりませんのでお答えできませんが、あしからず御了承願いたいと思います。
  56. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 この法案はしばしばこの委員会においても、また皆さんがここでお述べになりました点からいいましても、日本海運にとっては画期的な大きな整理案なんです。そういうものについてその専攻の立場からいろいろ意見を述べられるということはもっともだと思います。しかもこの法案それ自体は、私から申し上げるまでもなく、合理化委員会で十分審議されて、脇村教授を中心とするいわゆる七人委員会で案が作成された、こういうことも聞いておるわけであります。もちろんここに出てくるときには政府案で出てきておりますけれども、そういう学者の意見が相当強くこの案作成に影響しておることは、これはお認めになりますね。いかがですか。
  57. 進藤孝二

    進藤参考人 実は七人委員会の中に私も入っておるのでございまして、その審議の模様については、私もいろいろと発言いたしました。ただいれられなかった点が多数ございますが、一応そこでは発言いたしまして、学者の考え方その他は承っております。同時に、本案につきましては、海運研究所というのがありまして、東京の大学の海運関係を担当されておる方がみなおいでになっておりますが、そこでもいろいろと論議されました。そこにおいでになっていない方の学者のように私は了解しておるのでございますが、と申しますのは、海運研究所においでになっている学者は一応そのトップ・レベルの学者でございまして、そこに出ておりますのは比較的お若い方じゃないか、助教授連中が比較的多いのじゃないかと了解しておるのですが、私よく読んでいないものですからわかりませんですが、学者の意見は十分われわれ業界人としても承って、それを反映しておるつもりでございます。
  58. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 本来ならばその委員会でいわゆるあなたのおっしゃるトップ・レベルの学者の皆さんが意見を述べられ、その集約としてこういう案ができたとします。その審議の過程に今おっしゃるような若い、しかも若いということはある意味からいうと企業合理化についての近代性を持ち、従って将来に関する見通しについても、若いが新しいはつらつたる見通しを持っておられる学者諸君だと思うのです。もちろんこの中には私の意見と違う点もありますけれども、そういう点は別にして、少なくとも八つの学会、三十一専攻科目にわたる広範な学者のグループ意見をまとめておられるとするならば、そういう学会の、もしくは学者の意見委員会審議の過程で取り入れられるというか、あるいは参考にお聞きになるということが妥当であったけれども——これはあなたに言うことじゃないけれども、妥当であったが、それがなされなかった。それで今度いよいよ政府案として国会の審議の過程にこういう意見が出てきたとするならば、私どもはこれらの学者の意見を十分参考に聞く必要があると思うのです。今申しました五つの主要眼目の中で「法の実施」という一点、三番目ですが、これには多くの利害相いれない海運業者の問の意見を封じたまま、いわゆる未調整のままで法案の審議を急ぐべきでない、こういう意見が盛られておるわけなんです。そうしてこの五つの項目の意見に対しては、百六十余名のうち百十八名の学者の先生方はいずれもこういう学会の有志がとられた措置を承認されており、今後の反対運動を可とする、こういう返事を出されておるわけなんです。そうすると、この問題は業界においても何かしらもやもやしたものがあり、国会の審議においても与党の諸君は政府案だから仕方がないから沈黙を守っておられるのだろうけれども、いろいろ審議していけばいくほど相当困難な問題が出てくると思うのです。しかも公平厳正であるべき学者の諸君は、なおいろいろな疑問を持っておられるわけなんです。本来ならば、あなたは先ほど賛成だとまっこうからおっしゃいましたが、何もないよりは、あるいはいいという意味においての賛成であろうと思いますけれども、案そのものはさっき久保君が申しましたように、私どもに非常に危惧の念を持つのです。実際これが今できるならば、もう今日までの過程にできたんじゃないか。さっき土屋さんがおっしゃいましたように、造船疑獄というものは一つの災いをなしておりますけれども、しかしそんなことにとらわれて公正な国会の審議がじゃまされることはないと思うのです。従ってもう少しくスムーズにいくものであるならば、今日までにすでに相当の意見が出ておった。それがなかなか出てこないで今日この案が出てきた。しかも出てみると、それに対しては業界においてももやもやが打ち消されていないし、それから私どもの方においてもいろいろな点から質問をいたしてみますが、どうもなるほどそれならもっともだというようにはっきりした気持で賛成の意思を表明するということができないし、外部における専攻の学者の多くの方々もまだ検討の余地が十分あると言われておる。ですから、こういうことに対してあなたの立場としては賛成するということをおっしゃるのはもっともだと思いますけれども、ほんとうはどうですか。これを認めることは無理だろうと思うけれども、しかし今松尾さんもここで従業員の立場から反対を表明しておられるわけなんです。だからそういう点からいきましてもすっきりしないものがあると思いますが、これは返事を求めることは無理だと思いますから、これだけの発言だけにとどめておきます。
  59. 進藤孝二

    進藤参考人 誤解があるといけませんから、発言したいのです。ちょっといきさつを御説明申し上げたいと思います。  実は学者の意見のなには、これは非常に最近になって出たものだと了解しております。私が病気したときですから。そのときにその最初のなにが出て、あとになってから今お手元にあるものが出て、私はまだ封を切ってない。これは一昨日私のところに来たように思っておるのです。そしてコンクリートなものになってしまってからそういう意見が出ましたので、おそらく委員会として取り上げる余地がなかったんじゃないか、私はその点はそう了解します。それから船主協会としての本案に対する審議のなにをお話いたしましたら御了解願えると思うのですが、私は会長として独自の意見を出すわけでもございません。これはすべての会員の意見を私が代表して申し上げておるので、この案の船主協会としての審議は必要以上に審議を重ねまして、たとえば理事会でも、もちろん常任理事会でやって理事会にかけ、それから神戸に二度ほど行きまして、阪神地区船主、これは理事になってない方がありますから、その船主をみな網羅いたしましてそこで御説明申し上げ、ここに御列席の局長からも補足的の御説明も願い、そしてまた東京でも京浜地区の船主全部集まって、やはり書いたものも出し、それで最後に取りまとめまして、これに対する反対は、御心配のような点は一人もございません。全部賛成で私に一任であります。これは自信を持って申し上げます。そこに出ております案がもし出たとしましたら、それは責任ある方の返事でないと私は了解いたします。船主協会としてはそういうふうに了解します。その点は断言を申します。船主協会としては、表ではそういうことをおっしゃっている人があっても、裏ではそういうふうにおっしゃっているのか、どちらが本心かわかりませんが、公の席で発言がないものならば、それを正しいものと私は認めます。これがいきさつでございます。
  60. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 よろしゅうございます。
  61. 木村俊夫

    木村委員長 内海清君。
  62. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろ質問も行なわれましたが、進藤船主協会長に一つお伺いしておきたいと思いますことは、ただいまのお話を聞きますと、船主協会としてはこれに踏み切られるまでには一人の反対もない、従って船主協会の会員全体の方がこの案によってみずから自主的にこの再建整備に当たるという御決意だと解釈してよろしゅうございますか。
  63. 進藤孝二

    進藤参考人 よろしゅうございます。今のところ表に現われておりますのはそういう状態でございます。
  64. 内海清

    ○内海(清)委員 そうしますと、これは五年後に再建ができるということでございますが、それに対しまする御決意は十分皆さんおありのことと思いますが、いかがでございますか。
  65. 進藤孝二

    進藤参考人 先ほど申しましたように、本案の遂行にあたりましては一人の反対もなく会長一任ということになりまして、その後の経過は理事会その他で御説明申し上げまして、皆さんそれに向かって邁進されておるのが現状でございます。
  66. 内海清

    ○内海(清)委員 それでは、今のお話によりますと、船主協会の少なくとも会員の皆さんはこの法案の精神によって五年後には必ず再建する、そうしていわゆるこの規模によって国際競争力を増し、国内の過当競争もなくする、このことははっきり皆さん御自覚になっておることと思うのであります。この点、間違いがありますと、今後におきまする海運界再建ということに非常にむずかしい問題が出てくると思うのであります。もしこれによって失敗しますならば、先ほどもありましたけれども、海運界としては再びなかなかものが言いにくいという状態にもなるかと思うのでありますが、しかし七人委員会あるいはその他の運輸当局などの発言などを見ましても、もしこれがいかなければ、さらに次々とこれを考えてやっていかなければいかぬだろうというふうなことも私どもいろいろなもので見ておるわけでありまするが、そういうふうなことについては、船主協会としてはどうお考えになっておりますか。
  67. 進藤孝二

    進藤参考人 一番最初にお話がございました船主は賛成しているが、これによってみな五年後には自立体制に入るとはこれは絶対申しません。その点はそういうお考えでしたら御訂正願いたいと思います。全部は絶対入りません。先ほども論議され、各参考人からもお話がございましたように、これは主なるオペレーターが入りまして、オーナーの一部等が入りまして、それが母体になってその入らないところをどうして早く自立体制に持っていくかということを努力するのでございますから、その点御訂正願いまして御了承を願いたいと思います。
  68. 内海清

    ○内海(清)委員 そういたしますと、次にお伺いいたしたいと思いますのは、まあオーナーも船主協会の皆さんも入っておられるわけでございますが、そういたしますと、ここに一つの問題は、まずオペレーターが十分自立体制に入ってしかる後にオーナーがこれに入るという今の皆さん方のお考えのようであります。もしこの場合オペレーターが自立体制に入っていろいろ集約されますその期間に、原資とかその他の問題において、あるいは親会社がこれをめんどうを見るとかいうことによって、若干おくれて、まあ具体的にいえば半年とか一年とかおくれてオーナーが自立体制に入り得るということに相なった場合、今の法案のこれから申しまするといろいろ期間的な制約もございます。そうすると、そういうものに制約されますと、オーナーの立ち直りということが、自立体制ということがなかなかむずかしいのじゃないか。これは船主協会会長としてその点どうお考えになっておりますか。
  69. 進藤孝二

    進藤参考人 オーナーが六年、七年くらいで入るというような先がございますね。現在われわれは、それぞれのグループの方たが検討されておるのでございますが、その場合は、それは入るような状態にしたい、自分のところはおくれてもいい、自分のところが三年でいくなら、それを四年にしても、なるべく多数の人をかかえ込んでこの法案の恩典に浴していきたいという気持であるようであります。各オペレーターとも。そうしませんと、六年でいくのを——まあ法の運用にあたって多少の点はお脅え願うかもしれませんが、そういうことは期待できませんから、まずお互いが助けていく。オーナーとオペレーター関係は、よそさんでごらんになっておるような、そう水くさいものじゃございません。長い間の営業関係で人的紐帯がございまして、底にはあたたかい水が流れておるようなものでございますから、できるだけお互いの相互扶助、その精神で参っております。
  70. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまのお言葉を聞きますと、オペレーターの自立体制が多少おくれても、オーナーに対してはできるだけの手を差し伸ばすということでございます。これはまことに心強いことでございますが、しかしオペレーターといえども、この五年以内の自立体制ということはなかなか容易でないことは御承知だと思うのです。その際にはたしてそういう今お話しのような、自分の自立体制がおくれてもオーナーに救いの手を伸ばすということが実際問題としてできるかどうか。まずオペレーターが自立体制ができて初めてオーナーに手を伸ばして、ともどもに生きることができるのじゃないかと思うのですが、その点は今のあなたのお話の点に間違いございませんでしょうか。
  71. 進藤孝二

    進藤参考人 それは金融機関がそういうふうに持っていきます。これは本案の遂行にあたりまして、まあ八対二の資本構成になっておりまして、八が借入金で二が株主でありますが、この圧迫してくる力というものは、八の力が非常に強いのでございますから、これは一つの仮定として、金融機関の発言権がやはり非常に強いと了解しなくちゃいかぬから、グループは同じ金融関係なんですから、その場合に、お前さんのところは三年半でいくのを四年にしろ、そうしてこれを入れろ、入れれば助かるのですから、そういう金融関係その他とも話し合いしますと、大体オペレーター自身が予定している単独でいくよりも、オーナーのために多少犠牲を払ってもおくれていくような傾向になると私は思います。これは今後の問題ですからわかりませんが、大体銀行筋の考えあたりを聞いてみますと、やはりそういうふうな考えを持っておるようですから……。
  72. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまのお話を聞きますと、それはオペレーター自身の強い意思よりも銀行の意思によって動かされる、こういうふうにとれますが、その点いかがでございますか。
  73. 進藤孝二

    進藤参考人 それは相互相持ってでございます。それはわれわれがノーと言えばやらなくていいのですから。経営の自主権というものは、経営者、その会社が持っているのでございますから、金融関係がいかなることを言ってもこれは拒否できまずから。(「ほんとうかな」と呼ぶ者あり)そこまでまだ海運業経営者は落ちぶれておりません。
  74. 内海清

    ○内海(清)委員 自主性は失わないということでございますが、まあただいまのような御発言がありますと、それでなくても今金融機関中心集約が行なわれておるのじゃないか、そのことは同時に金融機関の債権確保であり、あるいは系列の拡大であって、そこに再び過当競争が生まれるのではないかということが本委員会でもずいぶん論議されたわけです。この点は私は非常に重要だと思うのです。そういうことであるならば、今回のこの集約ということにも多くの問題が出てくると思うので、そういう点についてまあただいまのお話で大体私了解いたしますけれども、今回の集約というものは決してそういうものじゃないとあなたのさっきの発言からは受け取れるわけでありますが、もう一度その点はっきりお話を願っておきたいと思います。
  75. 進藤孝二

    進藤参考人 今まで申し上げましたことを繰り返すばかりでございまして、もうあくまでも経営の自主権は船会社の社長並びにその役員が握りまして、本問題に対して善処して参ります。そして一日も早く自立体制が実現できるように努力いたすつもりでございますから、本法案の早期御決定をお願いいたしましてお答えといたします。
  76. 内海清

    ○内海(清)委員 大体船主協会長としてのオーナーに対するお考えを伺ったわけでありますが、オーナーの玉井参考人が見えておりますので、大体これも船主協会一員として今日までお加わりになっておるので、特別なあれはないかとも存じまするが、結局今日オーナーの問題を私ども最も心配いたすのであります。その点は先ほど同僚委員からも御質問がありましたように、結局は用船料の問題である。ところが実際オペレーターの今日の状況かういうて、この資本支配というものは非常に困難であります。そうするならば、やはり五年間というふうな固定用船というふうなことに相なると思うのであります。しかしそれのみでオーナーを十分まかなうような用船料が決定されようとは今日また考えられぬのであります。そういう点から申しますと、オーナーとしてはいろいろな考え方もあると思うのです。たとえばオーナーの中に持っておられますタンカーでありますとか、専用船でありますとかいうような特殊船、こういうようなものは、いろいろ今日でも長期契約によってなされておると思うのです。そういうことからいたしまして、たとえば償却の問題もございましょう、あるいはまた場合によれば、用船料が下げられたおりに船価の一部たな上げというふうな面もございましょうが、そういう面をやりましても、結局は、私は資産処分をやっても、今日のオーナーの状況からいえば、やはり何か助成の道が出てこなければ、なかなか私は立ち直れぬのじゃないかというふうに考えますが、その点いかがでございますか。
  77. 玉井操

    ○玉井参考人 ただいまのお話の通りでございまして、私どもとしましては、グループ化によって各オーナーが所属いたします。その上グループ化の中でいろいろ集約その他の問題を取り上げて、今後のオーナーのあり方について研究しておるわけであります。  用船料の問題でございますが、ただいまの運賃市況から考えますと、とうてい現在以上の用船料を要求することは無理であります。さりとてオペレーターは不経済船といえども船腹は必要でございます。そこで私ども今考えておりまするのは、現在の運賃に合った用船料をちょうだいする、つまり高船価あるいは不経済船といいますと低性能船も入りますが、そういう船に見合った用船料、その用船料は船価を償還していく用船料、——つまり簡単に申し上げますと、七億の船価で三ドルの用船料である。これは金利べースの用船料である。しかるに船価を七億のものを四億に下げた場合、三ドルでオーナーは償還できると思います。そうしますとその差額の三億というものを国家で買い上げてもらうとか、あるいはその他の手段によってたな上げしてもらうとか、いろいろ案があるわけでございます。そういうふうな考え方を持っておるわけであります。一部買い上げあるいは船舶所有事業団というようなものをいろいろ考えておるわけであります。そういう考え方でグループ化しまして、われわれとしてもそういう不経済船の処理を考えていっております。同時にオーナーとしましても、現在の姿のままでは、かりにそういう助成がなされましても、てんでんばらばらの状態では、これは貴重な財政資金を受けると仮定しますと、そういうことでは受けられないという考え方から、オーナーの集約化ということもここに生まれてくるのではないか、かように考えておるのでございます。これは先ほど進藤会長も言われましたように、金融機関、親会社、オーナー、この三者があらゆる努力を払ってこれに邁進したい、かように考えておるわけでございます。従いまして、この法案に伴ってこの不経済船という問題を直ちに取り上げていただきたい、かようにお願いするのでございます。
  78. 内海清

    ○内海(清)委員 大体お伺いいたしましたが、いずれにしてもオーナーの問題はこれはやはりきわめて緊要な問題でございます。従って今申しましたようないろいろなことが考えられましょう。さらにこの不経済船の処理の問題は、これを買収いたしますとかいろいろな問題があると思いますが、これはただ単にオーナーの問題ではなしに、日本海運界の再建の問題として海運界全体で十分考えて、今日まではむしろこの面はこの法案の出て参りますまでにほとんど表面で取り上げられてない状態でございますが、今後十分これも取り上げていく必要がある。日本海運界全体としての立ち直りができるようにお考えいただかなければならぬ、かような考えでございます。  さらに最後でございますが、今度の集約化によりまして、先ほど来いろいろございましたが、いわゆる従業員の方々の中に余剰人員が出てくるということが懸念されるわけでございます。これはさっきから論議されましたから私は多く申し上げませんが、どうしてもまず第一番には、この海運界全体としてこれを処理する、海運界の責任においてこれをやるという立場がまず先決であると私は考えるのであります。その後におきまして労使間においてのいろいろな話し合いであるとか、さらにその後において、それでどうにもならないということであるならば、最後にあるいは国のそれに対する考え方でありますとか、その他が必要になって参ると思うのでございますが、何と申しましてもやはりこれは日本海運界の中で消化するというか、この問題を強く今後堅持されまして、この問題の処理にあたっていただきたい。これによりまして、かりそめにも従業員諸君の雇用の不安の問題が起き、あるいは労働条件の低下の問題が起きて参りますならば、これは決してこの企業再建に役立つものでない、大きなマイナスになるということをお考えいただきまして御処置願いたい、このことを申し上げておきたいと思います。
  79. 木村俊夫

    木村委員長 ほかに参考人に対する御質疑はありませんか。  参考人の皆様に一言あいさつを申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十八分休憩      ————◇—————    午後二時四十八分開議
  80. 木村俊夫

    木村委員長 休憩前に引き続き再開いたします。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件につきお諮りいたします。  ただいま科学技術振興対策特別委員会において審査中の日本原子力船開発事業団法案について、本委員会として同委員会に対し連合審査会開会の申し入れを行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  82. 木村俊夫

    木村委員長 引き続き、海運業再建整備に関する臨時措置法案外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法及び日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。   〔「簡潔に願います」と呼ぶ者あり〕
  83. 久保三郎

    久保委員 簡潔にという声がかかっておりますので、なるべく簡潔にお答えをいただきたいと思います。  そこで、集約については今までいろいろお尋ねしているわけでありますが、昨日の委員会お話を申し上げて資料を出していただきました。これによりましても、五年間に償却不足を解消するというのは、やはり目標であって、この計算からも、必ずしも全部が解消されるわけではない。今手元にいただきました資料によりますれば、五年以内に償却不足が解消すると見られるもの——見通しですから、これはオペレーター十九、オーナー十五、計三十四社であります。そこで、それ以外のものは、残念ながら償却不足解消というわけにはいかぬ、こういうことであります。しかし、その中には、五年以内に償却不足が解消しないが、三〇%以上一〇〇%以下の減資を実行すれば解消するものが、オペレーター三社、オーナー三社、計五社、こういうことで、甘く見ても合計三十七社が大体その線に入る、こういうふうな資料でございます。そうしますと、全体の数からいけば、これは保有船腹でいって五百二十七万総トン、これに対して大体回収される船腹で参りますと約四百万トン、こういうことでありまして、これは非常に重大なことだと思うのであります。こういう見通しだけでこの法案を処理するのであるか。法案だけ見たのでは、この償却不足を五年以内に解消するもの、こう限定されてあるが、今計算しても、どうも全部にはとてもむずかしいということでございます。結局、これは償却不足が解消できなくてもやむを得ないのだということも一部には含まれるように思うが、そういう点をどういうふうに考えているか。この点を海運局長からお伺いいたします。
  84. 辻章男

    ○辻政府委員 今回の助成措置に関連いたしまして、いわゆる総花的にやるべきではないという意見政府部内に相当強うございまして、やはり集約をすることと、それから五カ年間に自立体制ができるということによって、企業としては最大の努力を払わす、またある程度犠牲を払わして、それにパスしたものでなければ助成を与えるべきではない、そういう意見もございました。その結果として、現在提案しておりますような建前になった次第でございます。ただいま私どもの方から出しました資料についてのお話がございましたが、お説の通り三〇%以内の減資を含めまして、三十七社程度が実行可能であろう。船腹数から申しますれば、八割弱くらいが可能であろうという一応の試算によりますめどは立てておりますが、この試算は、いわゆる企業の今後やるべき合理化措置によります面と、あるいは資産処分によります等のことは要素に入れておりませんので、私どもの見方といたしましては、この三十七社と申しますのは最低である、これ以上、なお相当のものが、企業努力によりまして、五カ年間に償却不足の解消のめどが立ち得るであろう。従って、法の適用を受けられますものは、数字的には明確には申し上げかねる段階でございますが、なお相当あるのじゃないか、またそういうことを政府としても期待しておる、こういう状態でございます。
  85. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、だめを押す形でありますが、結局さっき参考人を呼んでお話を伺いましたが、特に進藤参考人からは、ある会社が三年で償却不足を解消するという見通しがあっても、事と次第では不良のものを抱きかかえて持っていくんだ、こういうような話も一部あったけれども、しかし、そういうものはあまり今のお話からは考慮さるべきではないように思うのだが、それはその通りですか。
  86. 辻章男

    ○辻政府委員 ただいま御指摘のございましたような点につきましては、この三十七社の試算の基礎には入れてございません。それで、先ほど進藤参考人が言われましたような事例は、現実問題としては間々あるのではなかろうかと、私どもは考えております。と申しますのは、御承知のように、いわゆるオペレーターは、関係のオーナーの船に対しまして、連帯保証を金融機関に約束しているものが相当ございますので、それらの関連におきまして、場合によりましてはその船を引き取って債務を全部肩がわりするというふうな事例が間々あるのじゃなかろうか、かように考えておる次第であります。
  87. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、日本海運全体の前向きというか、自立体制ということは考えられないというふうにわれわれは思うのであります。  そこで、この集約によるメリット、これもいただいた資料でありますが、大体年間五十三億程度、メリットとして収益を増すであろう、消極、積極両方入れてでありますが、その中で大きなメリットに加えられておるのは、三十五億というのはいわゆるこの集約によるものである、こういうふうに言われておるわけであります。全体としては、きのう井手委員から申し上げた通りでありまして、あまりにもメリットの計算が合わないのではないかということは、言うまでもございません。しかし、それはそれとして、ここに五十三億のうちの三十五億という集約によるメリット、特に航路配船調整というか、あるいは過当競争防止というか、そういうことによる運賃収入の増が三十五億、大半のメリットをそこにかけておるのでありまして、その他の消極的な経費節減というようなものは微々たるものである、こういうふうに思うわけであります。そこでこの三十五億というメリットに期待することが、この資料では非常に多いわけでありますが、今度の集約によって、先般もちょっと申し上げましたが、形式的な集約では三十五億のメリットもこれは不可能であろうという見方をしておるわけです。むしろ海運界の大変革というか、再編成でありますから、やはり今後の未来像あるいは適正経営のあり方というものを考えて集約は行なわれねばならぬ、こういうふうに考えるわけであります。そこで、先ほども進藤参考人等にお尋ねをしておるわけでありますが、これまたどうもはっきりした答弁が出ていない。いうなれば、極端なことでありますが、未来像なり今後の海運企業のあり方について、残念ながら集約についてはあまり定見をお持ちでないように承ったのです。ついては、この法案を出した責任上、日本海運界のあり方としての集約を当然考えるべきだと思うのですが、今までは的確なお答えはありません。そこで、私の方から書いたいのは、形式的な集約は排除すべきである。むしろ過当競争を防止するというならば、単に集約形態が数が少なくなったというだけではいけないのではないか。むしろその中身に問題がある。いうなれば、一つのそれぞれのグループが、定期船も、不定期船も、タンカーも、専用船もやるというような、いずれにも比重が同じようにかかるということでは、六つなり七つなりのグループは、過当競争の弊を免れない。今度は効率をより上げさせるためには、少なくとも中身について、船の形あるいは船の種類等によるところのいわゆる配船地域の調整、そういうものまでやっていくべきではなかろうか、そういうものを考えてこの集約の中身をそれぞれきめていくべきではないかと思うんだが、そういう考えでこの法案を出しておるかどうか、いかがですか。
  88. 辻章男

    ○辻政府委員 結論を先に申し上げますと、今御開陳がございましたような地域別あるいは船種、船型別等による集約という考えは、この法案ではねらっておるわけではございません。と申しますのは、日本の定期関係業者の今までの発達の沿革、またその現状から見まして、対米航路はほとんどのものがございますけれども、中には、いわゆる定期の大オペレーターといわれる会社は、大体みな世界的な分布においてその航路網を持っておる。これはイギリスの定期航路事業がずっと昔にさかのぼりますが、ある程度地域的な方面別に発達して参りましたのと、日本定期航路事業の発展の過程が異なっておるわけでございます。また、不定期船あるいは専用船、タンカー等におきましても、従来から定期関係者がいわゆる総合経営をしていく、そういう形態で進んで参りました。最近においては、その傾向が一そう助長されるような傾向でございます。これらの海運企業の沿革、現状から見まして、集約体としても、総合的な経営の立場集約をさせることが最も現実的ではないか、かように考えておる次第でございます。  それからまた、集約の青写真を持つべきではないかという御意見でございますが、私どもも机上論としましては、こういう姿ができれば一番望ましいというものが考えられぬわけではないのでありますが、御承知のように、企業合併しますとか、集約しますということは、会社にとりましては死活の問題でございます。これらがしつくりとした集約体になりまして、内容も充実して、その和を得て、集約効果を上げて参りますにつきましては、あまり理想にばかり走るのも不適当ではないか、そういう考え方から、今申し上げたように、現在の総合的な姿として集約を持っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  89. 久保三郎

    久保委員 結論として、あるがままの姿で集約していこう、こういうことにとってよろしいですか。
  90. 辻章男

    ○辻政府委員 大体今のような運営形態の形で集約していこうという考え方でございます。
  91. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、過去における海運政策というか、そういうものに対する批判、検討の上に立って、そういうふうな結論になったのか。あなたは今日本定期航路の発達とイギリスとの比較をされましたが、そういうものが是認されて、それが正しいのだ、今日ただいまなお正しいのだということの上に立っての今の御結論かどうか。
  92. 辻章男

    ○辻政府委員 これは現在の日本の、特に定期航路の運営の仕方を見て参りますと、やはり地域的な面よりも、世界全体的に航路網を持っていくという方向が適当である、かように判断しておる次第でございます。
  93. 久保三郎

    久保委員 私がお尋ねしたいのは、特定な地域の航路は捨てて特定なところへ回せということではございません。どうも今の御答弁では、そういうふうにとれるが、まさか誤解していないですね、いかがですか。
  94. 辻章男

    ○辻政府委員 今ちょっと、そういう御趣旨でないならば、私ども誤解をいたしております。
  95. 久保三郎

    久保委員 グループ化された中でも、あなたの今までの私が聞いた範囲では——それは私の聞き違いか知りませんが、聞いた範囲では、少なくともこのニューヨーク航路、いわゆる北米航路に六グループがみんないく、州航路も、ベンガルあるいはヨーロッパ航路にも、全部六社が頭をそろえていくような形の集約をされるのかどうかということです。それではちょっとどうかと思うというのが、私の言いたいところなんです。これは定期航路だけの話ですが、不定期航路あるいはその他の専用船についても同様でございます。六つでも、やはりこれは過当競争なんです。一つの航路に六ついけば、過当競争の弊はまぬがれない、こう思うので、そういう形はどうなんだ。
  96. 辻章男

    ○辻政府委員 これは現在の定期航路邦船の進出状況から見まして、対米航路以外には、大体五つ以内の業者しか進出していないわけでございまして、これが集約によりまして三ないし四くらいになるかと考えております。それから対米航路は、御承知のように十一社というものが出ておりますが、これもおそらく主力は五つの会社くらいに集約されてくるのではないか、かように考えておりまして、今後の日本定期航路の伸ばし方といたしましては、現在までのそれらの航路の状況を見まして、ある社は、ある方面においては非常に有力であるが、他の方面においてはそれほど有力でないというふうなそういうことも勘案いたしまして、各航路ごとに邦船の進出を考えたいと考えております。従いまして、六つグループができましたものを、いずれも、どの方面に対しても同じ比重をもって伸長さしていこうというふうな考えを持っておるわけではございません。  それから専用船等の問題でございますが、これは今までにおきましても、いわゆる荷主との関係の強弱がございまして、おそらく今後の専用船あるいはタンカーの建造というのは、そういう荷主との従来の連係においてつくられていくものと考えております。これはそういう連係によっておのおのが活躍していくということについては、特にどうしようという考えは持っていないわけであります。
  97. 久保三郎

    久保委員 やるようなやらぬような、よくわかりませんが、いずれにしても経済効果を考えるという場合には、少なくとも単に今までの航権がどうのということでこの際は考えるべきではない。むしろそういう調整というか、これが先行されなければ、グループ化しても何も意味はないじゃないかという考えもあるわけでありますから、この点も十分反省していただきたい、こう思うのであります。それからこの集約の中には、いわゆる系列会社があるわけでありますが、先ほども船主協会の代表にもお尋ねしましたが、これは系列会社資本支配ということでしょうが、運輸省の定めるところに従って、政令か何か知らぬですが、それに従って株式を保有するというか、そういうことになっておるようでありますが、これは中身はどういう政令をおきめになるつもりですか。
  98. 辻章男

    ○辻政府委員 それは第四条のところだと思いますが、「発行済株式の総数に対し運輸省令で定める率を乗じて得た数をこえる株式を保有することにより、その事業活動を支配する」という、いわゆる資本支配の点でございますが、この運輸省令は、その保有を発行株式数の三割を予定いたしております。従いまして、いわゆる支配会社とするためには、当該会社の三割以上の株式を保有しなければならないということになるわけでございます。
  99. 久保三郎

    久保委員 先ほどもこの点でお尋ねを参考人にしたのでありますが、株式の保有を大体三割以上ということになりますれば、金額にして幾ら安い株でも、相当な金になると思う。こういう保有の方法については、どう考えておるのですか。保有というのは、所有することでしょう。
  100. 辻章男

    ○辻政府委員 ここで保有と申しておりますのは、所有よりも少し観念が広うございます。これはたといみずからが所有しておらなくてもそのオペレーター会社の意思が支配される会社に反映するような、そういう株式のあり方をも含んでおるわけでございまして、こういう事例の使い方は、実は独占禁止法にもあるわけでございますが、例が悪いかもしれませんが、こういう海運会社ではそういうことはあまりないと思うのでありますが、たとえばある人が妻の名義で株を持っておるというのも保有というふうに考えるわけでございます。現実の問題としまして、ある会社がある会社を支配する場合に、その会社がたとえば株式を二割持っている、あとの一割はその会社のすでに支配関係にある会社が持っておる場合におきましても、いわゆる親会社が三割持っている、そういうふうに考えております。
  101. 久保三郎

    久保委員 非常に問題な点だと思うのです。残念ながら時間がありませんから何ですが、非常に問題だと思うのです。これは言うならば、今の保有というのは、所有じゃなくて、もっと幅の広いものだ。言うならば、人格的には第三者が持っていても、自分自身の、いわゆるオペレーターの意思が通ずればいい、こういうことでありますが、これは手っとり早く言うならば、いわゆるこの海運会社関係のある、双方に関係の深い荷主、あるいはもっと言うならば金融機関、こういうものが保有していればいいというふうになると思うのです。そうでしょう。
  102. 辻章男

    ○辻政府委員 これはケース・バイ・ケースには非常に認定のむずかしい問題があろうかと思うのでありますが、実質的に、ある会社を、この法律の要求しますような企業を一元的に運営するだけの、いわゆる親会社の意思が反映し得るような株式の保有の形であるかどうかということにつきましては、具体的な問題につきましては、両建整備計画審議会意見も十分尊重いたしまして決定していきたい、かように考えております。
  103. 久保三郎

    久保委員 いや、私が申し上げたのは一つの例であります。そういう例が非常に多くなるということですね。そうなると、なるほど形の上では、集約された中核体であるオペレーターの意思ということをあるいは反映できるかもしれない。しかし、言うならば、株式を所有するところの他のものの意思が優先するというのが、これは常識なんです。そのためには、残念ながら系列会社にとっても、その中核体であるオペレーターにとっても、必ずしもこれはその意思が十分に通るわけではないと思う。これは現実に株式を所有するということは、これは海運界は、金はありませんからおそらくできかねると思います。たとえば金があるにしても、この株式は、集めることがなかなか困難だろうと私は思う。結局そうなれば、あなたもおっしゃるように、この法案の保有という、所有と見まごうところの文句をつけて、そしてそこでやっていこう。これは、はなはだしくどうも問題の解決のためには、私はとるべき策じゃないように思う。これ以外に方法はないのかどうかという考えを持つわけです。いずれにしても、これはわれわれは同意しかねる一つの点であります。これは集約のメリットがいろいろありましょう。そのメリットは、何といっても今の海運界の自主性を尊重させるというところにメリットがなければ、何ごとも前向きにならないと思うのです。もっとも、去勢された形の海運界でありますから、株式の保有ということで他人資本によってさらに支配されるということも、万やむを得ない措置かもしれません。しかし、残念ながらほんとうの海運界の再編成あるいは前向きということでこの法案がねらおうとすれば、私は、こういうところにも大へん変な点があると思う。これ以上申し上げてもやむを得ないと思いますが、保有などという文句でいろいろと言うことはどうかと思う。  さらにもう一つは、償却不足の問題でありますが、これも政令で定める方法によって計算した償却の不足を解消する、こういうことをうたわれておりますが、どういうふうな政令になりますか。
  104. 辻章男

    ○辻政府委員 この償却の政令につきましては、現在政府部内でいろいろ打ち合わせをしておりますが、私どもとしましては、いわゆる定率償却というものを原則に考えたいと思っております。ただ、それを画一的に——それだけでは現実にも即さないわけでありまして、御承知のように、長期契約のありますものは、十年なら十年におきまして償却も可能であるのでありますが、特に当初の間におきましては、定率償却に加えまして、償却不足が出るような契約の定め方が多いわけであります。そういうふうな長期的な契約のあるものにつきましては、そういう契約の内容に即するような、場合によりましては定額を考える。そういうふうな例外措置も考えまして、実情に合うように政令をつくって参りたい、かように考えております。
  105. 久保三郎

    久保委員 今の御説明で、いろいろなケースによって政令は振り分けてきめる、こういうふうに了解するわけです。  そこで、税法との関係やら、あるいは改正商法との関係やら、これはどういうふうに考えておられますか。
  106. 辻章男

    ○辻政府委員 整備計画で定めまして、長いものでも五カ年間を区切って一つの区切りにするわけであります。この利子猶予を受けております期間は、いわゆる定率法の会社経理をとらすようにやっていきたいと考えております。
  107. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、償却はそればかりではなくて、いわゆる整備計画の認可の時期によっても、いろいろ問題があろうかと存じます。こういう点についても政令でおきめになりますか。時期のとり方についても、いろいろあるでしょう。これはどうなんですか。
  108. 辻章男

    ○辻政府委員 もちろん償却不足を算定しますには、ある時点を切らなければならないわけですが、これは大体整備計画を提出いたしまする前の決算期で現われました償却不足償却不足といたしまして、その翌朝から発生しますいわゆる償却限度額は、原則として定率償却による限度額を限度としてやっていくという考え方をいたしております。
  109. 久保三郎

    久保委員 次に、第四条で、やはり専属会社の規定がしてありますが、その中で、「これらの会社と運輸省令で定める密接な関係を有するものをいう。」というのは、これはどういう意味ですか。運輸省令で定める密接なる関係とは、いかなるものでありますか。
  110. 辻章男

    ○辻政府委員 これは大体考えておりますのは、株式の保有でございますとか、あるいは役員の派遣等のことを考えております。株式の保有は、先ほどの支配会社のように三制というふうな限定は設けない考えでありますが、そのねらいとするところは、相当な期間にわたりまして長期用船するということには、ただそれだけの契約だけでは、そういう長期の用船契約がされるということが困難ではないか。やはりそれほどの長期の契約をするのには、そのオペレーターとオーナーとの間に用船者と被用船者というだけの関係ではなしに、もう少し強い会社間の紐帯が必要である。その紐帯として、今申し上げたような役員の派遣でありますとか、あるいは株式の保有、そういうふうなことを考えておる次第であります。
  111. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、明確には株式の保有の限度とか役員の派遣とかいうのは、別に政令できめないわけですね。役員でもいろいろありますよ。そういうのはどういうふうにきめるか。政令にきめようとすることを端的におっしゃってくれればいいんです。
  112. 辻章男

    ○辻政府委員 これは役員といいましても、特に常務でなければならぬとか、そういう点まではきめないつもりでおります。役員の派遣あるいは株式の保有あるいはまた債務保証、そういう三点にしぼりまして、それが長期用船をするような、ある会社の紐帯が認られるような形であればいい、そういう考え方で弾力的に考えていきたい、かように考えております。
  113. 久保三郎

    久保委員 次に、第五条の関係でありますが、市中銀行に対して、いわゆる開発銀行以外の金融機関が「利子の二分の一以上に相当する金額の支払を猶予することが確実であると認めるとき」こう書いておりますが、二分の一以上というのは、どういうことを意味しておるのですか。開銀は全額であります。これは期待していることですか。はっきりしないですね。数字的には以上でありますから、これはどういう幅があるのですか。あるいはケース・バイ・ケースでこの幅をはかるのですか。どうなんですか。
  114. 辻章男

    ○辻政府委員 第五条の市中金融機関の猶予利子の限度と申しますか、これは二分の一を最低に考えるということであります。従いまして、それ以上、全額ならばなおけっこうである。われわれの希望としては多くを望むわけでありますが、二分の一はぜひともやっていただきたい、そういうことでございます。
  115. 久保三郎

    久保委員 そうすると、これは願望を表わしておるものですか。願望、願い、期待、そういうものを表わしたものであって、これは二分の一あればいいんだということですね。
  116. 辻章男

    ○辻政府委員 さようでございます。
  117. 久保三郎

    久保委員 その願望は達せられると思って「以上」と書いたのですか、いかがですか。
  118. 辻章男

    ○辻政府委員 これは表現の問題でございまして、二分の一以上やっていただくことが非常に望ましいことでございます。法文としまして、「二分の一」というふうな書き方をするよりも、「二分の一」以上という書き方が、最低限度をきめておる場合には、こういうふうな使い方をするのがむしろ常例でございますので、こういうふうな表現にした次第でございます。
  119. 久保三郎

    久保委員 寡聞にして、国会も口浅いので、そういう法文の文言についてはよくわからぬのです。御教示ありがとうございました。ただ問題は、この場合は、「以上」というのは願望であって、そういうものをこの中に入れるべきじゃないんですね。たとえば、今まで法律の中で、以上とか以下とかいう問題があります。これは大てい予算に関係するものです。予算の範囲内において云々というのがある。私が聞きたかったのは、「以上」とあるから、ケース・バイ・ケースで、二分の一以上の場合も出てくる、それをやってもらわなければいかぬ、こういうふうにするのかと思ったら、違うのですか。それならば「二分の一に相当する」の方がはっきりするじゃないですか。これはどうしても体裁上、「以上」ですか。
  120. 辻章男

    ○辻政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもとしては、二分の一以上できるだけ多くということを望んでおります。それで実際のケースとして、そういうこともあり得ると考えておりますので、かような表現にしたわけでございます。
  121. 久保三郎

    久保委員 あり得ると言うが、そういう要素がありますか。
  122. 辻章男

    ○辻政府委員 私は、一部にはあると考えております。
  123. 久保三郎

    久保委員 あるかないか、あとでわかりましょう。  次に、第二項で、いわゆる整備計画の実施が「承認を受けた日から運輸省令で定める期間内に、整備計画を実施し、」と書いてあるが、「運輸省令で定める期間」というのは、どういう期間ですか。
  124. 辻章男

    ○辻政府委員 第二項の省令は、承認を受けた会社集約の期日でございますが、これは四カ月というふうにやりたいと考えております。
  125. 久保三郎

    久保委員 承認を受けてから、四カ月以内にすべり出す、こういうことでございますね。
  126. 辻章男

    ○辻政府委員 さようでございます。
  127. 久保三郎

    久保委員 四カ月以内にというよりは、その前に整備計画を出して参ります。承認を与えてから四カ月でありますが、承認を受ける前に、少なくとも諸般の段取りをしてこなければならぬと思う。その場合に、整備計画がまだこれではいかぬということになれば、また手直しというようなこともありますが、その期間は別に拘束はしませんね。
  128. 辻章男

    ○辻政府委員 ここの四カ月の問題は、承認を受けた日からでございますから、いわゆる手直し等で時間がかかる問題は、この期日とは関係ないわけであります。
  129. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、この法律が発効してから、それぞれ諸般の手続をして参ります。それで、承認を受けて四カ月以内に実施するという場合には、この法律は大体一年以内にという文句があったかと思うのですが、これはどういう関係になりますか。
  130. 辻章男

    ○辻政府委員 私ども集約の完了を法律施行後一年以内という希望を持っているのでございますが、法文にはそういう明文はございません。
  131. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、その一年以内でなくとも、まあいい。ただし、海運当局としては一年以内に集約を全部実施させる、こういう方向なのであって、決して一年のあれには拘束されない、こういうことで了解してよろしいか。
  132. 辻章男

    ○辻政府委員 さようでございます。
  133. 久保三郎

    久保委員 次に、ちょうど次長がお見えでありますから少しお尋ねするのでありますが、われわれの方で実は、御承知の通り、海上運送法の改正を提案いたしております。この作業中に、実は関係筋でありますので、船主協会にもこの案を一応は示しました。しかし、この是非を問うのでなく、こういう案で僕の方ではやるつもりである、ただし御意見がいろいろあるかもしれぬが、わが方としては別に御意見をいれてこれを修正するとかどうするとかという考えはないけれども、関係筋であるから、もし御意見があれば、参考のために聞かしてほしい、こういう話で実は非公式にわが方の案を示したわけでありますが、その後、ある報道機関の報道するところによりますれば、これで会議をしたわけであります。これだけで会議したわけではないでしょうが、その席に次長がおいでになって——あるいは次長以外の外航課長かわかりませんが、次長が行って、社会党は何を考えているか、裏がわからぬから、これについては云々という話でまとまったという話を聞いている。もちろん先ほどの進藤参考人のここでの答弁のような表向きの話を——私の方に別に御返事をいただくつもりはありませんでしたが、御返事がありました。こういうことがございましたか。
  134. 亀山信郎

    ○亀山説明員 裏があるとか何とかいうことについては、全然記憶がございません。
  135. 久保三郎

    久保委員 それからもう一つお尋ねしますが、次長は、ある会合でこの問題でいろいろお話をしたあげく、これがだめならまた考えるというような意味を言いながら、あるいは国有、国営化も考えられるじゃないかというお話をされたそうですが、そうですか。
  136. 亀山信郎

    ○亀山説明員 そういう表現で話をしたことはございませんが、そのときに申し上げたことは、私の記憶に間違いがいなければ、こういう問題を考えるうちに、理論的には公有民営という考え方もあり得るということも申し上げたことは事実でございますが、あくまで一つの理論として考え方があり得るということを申し上げたのでありまして、この法律ができない場合には、国有国営をするのだということは全然言った覚えはございません。
  137. 久保三郎

    久保委員 それはそれでよろしい。  それからもう一つ、その席で、やはりこの法案の幾つかの批判が出たようであります。その際に、いやこれでやってみてだめならばまた何とか考えるというような話もされたそうでありますが、その通りですか。
  138. 亀山信郎

    ○亀山説明員 この法案を実行していく過程に、いろいろな事情が起こって、この法案の企図するところが万一できないような場合には、所要の修正を考えなければなるまいというふうなことは、質問に応じて答えた記憶はございます。
  139. 久保三郎

    久保委員 別に非難しているわけじゃないですよ。次長御心配なく。ただ自信がないということを裏づけしようと思ってお尋ねしているわけです。  ところで次の問題でありますが、約定延滞金についてはもう質問はやめましょう。いずれにしてもその考えはないようでありますし、ただきのう確認したように、局長は整備計画の中でチェックしていくのだということでありますが、チェックの仕方は、最初の答弁からみると、だいぶ変わってきているのですね。これは本心のほどをここではっきり伺っておきます。いかがですか。
  140. 辻章男

    ○辻政府委員 整備計画の条件としましては、集約と、それから五カ年間に未償却を解消するということを法律で定めておりますので、いわゆる整備計画の承認の法律上の条件として、私ども延滞解消の問題を取り上げるわけには参らぬのでございますが、整備計画を出します際の添付資料として、延滞解消の問題も十分審査いたしまして、少なくとも延滞は漸減の方向に行くように行政指導をして参りたい、かように考えているわけでございます。
  141. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、なかなか償却不足も解消できない計算でありますから、約定延滞金の解消などはなかなか困難な部類でありましょうから、問答しても益のない話であります。御忠告までに申し上げておきます。  次に、海運企業のいわゆる預貯金といいますが、あるいは資金融資といいますか、その中で歩積み、両建のものが相当にあると思うのであります。先般、これも的確な資料でないと思うのでありますが、海運当局から出していいだいたものだけを見ても、歩積み、両建というのはかなり多い。設備資金については、大体これも二割前後ある。運転資金においては、やはり同様の歩積み、両建ができている、こういうことでありまして、多いのは大体五割もやられておる。しかも両建のものは定期預金に繰り込まれているということ、あるいは歩積みにしても、この調書にはそういうのは書いてありませんが、私の聞く範囲では、当座預金に歩積みさせられているものもあるそうであります。こういう問題について、これは運輸大臣にお尋ねした方がいいと思うのでありますが、歩積み、両建の問題については、すでに海運の問題を除いて、一般的な問題として今日国会で論議をされているわけであります。ところが、一番不況にあえぐ、起死回生をここでやらねばならぬという海運に大幅な歩積み、両建があるとするならば、これは大きな問題だと私は思うのでありますが、これを御検討になっておられるかどうか、 いかがでしょうか。
  142. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 歩積み、両建の問題が産業界に及ぼす影響は、非常なものでありまして、先般閣議の席上においても、大蔵大臣がその点を指摘して、何らかの方法でこれを解消せしむるように努力する。ことに今久保さんのおっしゃるように、不況にあえぐ海運業に対しまして、さようなことは、私は今後は行政指導によりまして十分銀行当局その他と話し合いまして、そういうことを一日もすみやかに、全部解消ということもどうかと思いますが、できることなら全部解消するように努力いたしたいと考えております。
  143. 久保三郎

    久保委員 これは当局から出した調書でありますが、これも先ほど申し上げたように、不完全でわかりません、実際それぞれの会社が的確なことを知らせてはいないので。しかし、これも五十八社について一応お調べになった資料でありますが、預貯金の残高は、これは昨年の九月末かと思いますが、総額約二百二十三億あります。これは全部であるかどうか別として、五十八社で二百二十三億ほどある。その中で、定期が百十七億ほどございます。この定期の中で、二十六億というのは担保になっている定期であります。いわゆるコンクリートされた両建ですね、こういうことが行なわれており、なおかつさっき申し上げましたように、歩積みの方は運転資金が多いのでありましょうが、この歩積みがいわゆる当座で預けられるということになりますと、これは多少の建造利子補給をしても、海運界に与えるメリットというものは、大へんな差が出てくると思う。これはしさいに御検討がまだなされていないようでありますが少なくともこういう点を伏せておいての海運助成というのは、実際言って私たちは聞けない。今度の再建法律にいたしましても、毎回申し上げるようでありますが、金融機関の債権保全というのが優先される——優先されないということであっても、これは全く保全される形もとらざるを得ないのであります。償却不足の解消といい、あるいは約定延滞金の解消といい、すべてのメリットはそこへねらいがいってしまうのですね。なおかつ歩積み、両建でやられていて、いわゆる建造利子の補給を四分、六分にしても、私は何ら益はないと思う。これは一つ明確にお答えをいただきたいのでありますが、この法案以前にこれは処理すべき問題だと私は思うのであります。これはもちろん運輸大臣単独では、残念ながら金融機関に対する歩積み、両建の是正は困難かと思うのであります。しかも手かせ足かせということになっている海運企業にとっては、自力で発言できるはずはもちろんありません。言いなりほうだいの歩積み、両建をせざるを得ない。なるほど歩積み、両建の常識から言えば中小企業でありますが、いわゆる力から言えば海運界はそれと同列であります。こういうことを解決せずして、私はこういう法案を出してくることに間違いがあるのではないか、こう思うのです。これは当面の責任者である海運局長は、今までこういう問題について関心を持たれたかどうか。この調書も、私が申し上げてから調べてもらったのです。あなたの方は、助成法律さえ出せばいいんだということかもしれません。少なくとも経営分析一つ見ても、われわれにはあまりよこさぬ。よこさぬが、少なくとも今までの経営分析においても、そういうものは一言半句も触れておらない。表面的な、いわゆる金利がどうのこうの……。実質的な金利が多額に払われておる。これはどう思いますか。ちっとも反省されておらぬじゃないか。
  144. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お説の通りでございまして、歩積み、両建をやるということは、自分の金に自分金利を払っているということになるのでございまして、私は、銀行業者が非常な誤った、と申したら語弊があるかもしれませんが、とにかく正常じゃないということは言い得ますから、今度あるいは再建合理化審議会等で多数の金融業者と会う機会がありますから、私はとくとそれは注意いたすつもりでおります。これを是正しなければ、全くあなたのおっしゃるように、何のことかわかりません。それは自分の金に自分金利を払っているのですから、こんなばかげたことはありません。中小企業不況にあえぐ一つの大きな原因であると思いまして、閣議でも大蔵大臣が強力に言い、総理大臣もまた大蔵大臣を激励して、それをやらすようにして、着々と私はやっておると思いますから、おそらくは遠からずしてそういう悪弊と申しますか、従来の悪慣習は是正されることを私は期待いたしております。お説の通りでございますから、私は適当な機会に適当な方法でもってそういうことのないように努力いたしたいと思います。さよう御了承願いたいと思います。
  145. 久保三郎

    久保委員 これ以上運輸大臣に申し上げてもやむを得ないことでありますが、私は、どうしても海運局長に聞きたい。今までそういう問題について関心を強く持ったのかどうか。いまだかつてわれわれは国会へ来てからただの一度もこの問題についてはあなたからもお話がなかったし、歴代の海運局長からもお話がなかった。なるほど、あなたの目から見れば小さい問題かもしらぬが、いわゆる話の筋とすれば、これは大きな問題です。こういう問題を見のがしておいて、国民の血税を幾らかでもやって何とかしょうというようなことでは、これはどうもわれわれとしては承服しかねる。これに対してどういうふうに今まで考えておられるか。あるいはあなたの関係筋でないから、大蔵省なり何なり、あるいは計画造船建造の際にそういう点を指摘したのかどうか。おそらくただの一ぺんも指摘していないんじゃないかと思うのです。いかがですか。
  146. 辻章男

    ○辻政府委員 歩積み、両建の問題は、産業界全般の問題としてあるということは、私どもも知識として得ておったわけでございます。非常に問題がデリケートでございまして、私どもの努力が至らぬ点もあったかと思うのでございます。現在までにその実態を正確に把握していなかったことは、事実でございます。それと、今大臣からもお話がございましたように、非常に海運会社としては痛いことでございますが、全産業にかかわります一つの弊風と申しますか、といううことで、実は今までこれに対する特別な措置をとったことはないわけでございます。まことにその点あるいは怠慢のそしりは免れぬと思います。この機会に、今後こういう点につきましても十二分の注意を払っていきたい、かように考えております。
  147. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、言うだけどうも気が抜けそうですよ。実際言って、人の金だからいいということではないのです。真剣に考えてもらわなければいかぬ。こういうものについて関心を今まで持たれなかったことについても、非常に不満に思います。あなたはいわゆる日本海運界の政策の頂点に立っている方でありますから、少なくともそういう点についての合理的な処理を今までに考えておられたはずなんだが、あまりない。残念だと思います。いずれにしても、これを機会に、この法案がどうなろうとも、これ以上金融界に海運というパイプを通して資金を流すことについては、私は絶対に反対だ。国民的な世論からも、こんなものは許せない。  次にお尋ねしたいのは、いわゆる海上保険についてであります。これも要求した資料が出て参りましたが、これは一部であります。一部であるというのは、船舶保険だけの資料をいただいてあるわけでありますが、私の手元にあるのは全体の保険のようでありますが、いずれにしても、この船舶保険なり海上保険というものが、出てきた資料によりますれば、船舶保険の成績は、利子補給対象になっている会社全体で、三十七年度の損害率は四三・二〇%、支払い保険料は五十九億、約六十億になります。さらに積荷保険というか、海上保険全体を見ますれば  これはあるところでとった資料でありますが、この損害率は四九・六九になっています。これは昨年の九月三十日までの一年間でありますが、約五〇%足らずであります。支払いの保険金額は八十七億七千三百六十六万、約八十八億ございます。補てん金が、四九・六九%でありますから、四十三億六千万ほどですね。今まで海運界が、いろいろ不況に悩むというか、そういう悩み方をしてきたわけです。保険の料率の算定については、去年から改められまして、これは協定というか、そういうことになったようであります。これは必ずしもまだ現実にはそういう形の実行に移されていない。算定会の料率によって、それに準じてやっておるようであります。そこで考えてもらいたいのは、海運界がはだかになって、今度は再編成して、多大の犠牲も忍んでいこうという気がまえであるならば、むしろ関連したものは全部——までの責任からも、金融界もその通りであるから、先ほど言ったように、金融界はすべて、少なくとも歩積み、両建を全廃しろと言いたくなる。これはちっとも傷はつきません。しかし、今までの方から見れば、有利な点がなくなるわけでありますから、見ようによってはある程度犠牲かもしれない。しかし、その程度は筋からいってやらせるべきだ。と同時に、保険界についても、やはりこれは考えざるを得ないのではないか、こう思うわけです。これについてどういうふうに思いますか。保険は保険で違うのだから仕方がないということでありますか。
  148. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 非常に重要な問題でございまして、私は、先ほど問題になりましたように、償却不足の解消、あるいは延滞解消等にそういうメリットは実は考えておるのでございますが、保険業法等の関係でその実現がなかな困難でございますから、やはりこの再建にあたりましては、大株主である保険会社に対しまして、そういうことを強く要望いたしまして、それを償却不足なり延滞解消の資に供するよう努力したいと考えております。お説の通りでありまして、私は、この海運集約過当競争防止、海運会社資金的脆弱な面を、そういうようなことによって年々相当のなにが出る、こう見込んでおりまして、実は私は考えておったわけであります。それは私は強く保険会社に要望いたしまして、もし保険業法で許されるならば、何らかの措置をとりたい、かように考えております。
  149. 久保三郎

    久保委員 大臣から答弁がありましたから、それ以上とやかく言う必要はないかと思うのでありますが、少なくともこの際たとえば海運界に貸している金の金利を全部たな上げするとか——銀行と同じようにたな上げするならするとか、あるいはもう一つ海運界として積極的に考えるべきことは、相互保険の方式によって、これは考えてみてもいいんじゃないか。そうして今までの保険会社については再保険するとかいうことにすれば、そこにやはり先ほど申し上げた人員の問題等もある程度消化するしということだと思います。そういう提案というか、考えを持っておられますか。
  150. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 ただいまも申しましたように、保険業法で許される範囲内のことをやりまして、大体百三十億くらい保険料を払っているのですから、しかも危険率は五〇%以内なんですから、毎年その半額は保険会社に入っているのでございますから、私はそういうことを強くやりたいと考えております。
  151. 久保三郎

    久保委員 いろいろ損保界自体の問題もあるようでありますから、なかなか問題はそうやさしく解決はしないと思うのでございますが、少なくともここでやはり見直して考えていくべきだと思う。ただ残念ながら、海運界からは、歩積み、両建の問題も、保険の問題も、あまり声としては大きく出て参りません。それがいわゆる言いたいことも言えない海運界の今日の姿だと思うのです。こういう海運界にまかせていっていいのかという疑問を、私は今率直に言って、海運界には悪いのでありますが、持っております。たとえばこの法案のねらいの通り、政府のねらいの通り、六つのグループ集約した場合の重役陣営というものは、今の陣営でいいのかどうか、はたしてやっていけるのかどうか、ものも言えないような立場でやっていけるのだろうか、こう思うのですが、大臣いかがでしょう。
  152. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私は、今の陣営でやっていけるかいけないかということは、今後の集約に協力するかしないか、要するに自立体制にするの意欲ありやいなやということは、この法案を実施していく上におきまして、順次現われてくると思いますから、そのとき善処いたしたいと考えております。
  153. 久保三郎

    久保委員 そろそろもう時間でありますから、もう一、二点お伺いして終わりにしますが、やはり今まで運輸大臣、何回か御答弁されていることでありますが、先ほどの参考人を呼んでお話を聞いた中で、人間の問題、特に陸員の処置の問題については、慎重に事を運ばねばならぬと思うのでありますが、今までの御答弁では、やはり大ざっぱなお話でありまして、なかなかそれだけでは吸収できない面も相当あると思うのであります。なお参考人からの話では、それぞれ企業内で始末がつく、あるいは総理からのお話でも、大体そういうことであるということであるが、やはりもう少しこまかく検討されて、万全を期すべきだと思うのだが、その御用意はございますか。
  154. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 この委員会における質疑応答を通じまして、その問題の重要性を考えまして、とくと検討いたしたいと思います。
  155. 久保三郎

    久保委員 海運局長にもお尋ねしておきますが、今まで幾つかあなたに質問いたしているわけでありますが、残念ながら、なかなか的確なお答えを得られないのであります。しかし、やはり真剣に考えてもらう時期だと思います。それには、いつか細田委員もここの席でお話がありましたが、海運局だけの陣営では、しさいに検討し、あるいは新しいものをつくり出すということが、なかなか困難な態勢もあろうかと思うのであります。そういう点についても、十分考えるべきだと私も思うのです。それともう一つは、今大臣から御答弁いただいた陸上勤務員の問題にしても、あなたは、当初二、三千人出るだろう、こういう突っ放しの答弁をされているが、無責任時代というのは最近のはやり言葉でありますが、この法案自体にも、これに無責任なんだ。何らいわゆる従業員に対する配慮というものの一項目もなく出てきたことについては、あなたは一つも責任を感じないどころか、二、三千人出るだろうということで平然としていられる、その立場はどういうものだろうかと思う。ついては、今日ただいまのお考えはどうなのか。そういう陸上勤務員の問題についてどうなのか。
  156. 辻章男

    ○辻政府委員 私は、当委員会で二千ないし参千くらいが一応解雇となるだろうということを申し上げたことは御承知の通りでございますが、ただ、それがすべて離職されるというふうなことを申し上げたつもりはないのでございまして、一応これは予測でございますから、現実の集約の状況によりまして、もう少し少なくなるかもしれない問題ではございますけれども、ただ一応そういう予測でございますが、これは海運成長産業として将来船腹を増強して発展していく会社でございますから、この中の相当部分はそういうことに吸収されましょうし、また各企業の関連産業の方に配置転換される方もあるであろう。それからどうしても企業内で使うような問題につきましては、私どもとしては、全力をあげまして新しい職場へのあっせんを努力していきたい、かような考えでおるわけでございます。
  157. 久保三郎

    久保委員 これで質問を終わります。終わりますが、問題はちっとも終わっていないということを申し上げたいのであります。われわれ自身は、今まで申し上げたような点がちっとも解決されていないままに、機械的な集約によって、観念的な寡占理論によって五年後に自立体制ができるということは、ちっとも考えておらぬ。もしも私の言が誤りだとするならば、五年後の実証において私は勝負を、決着をつけたいと思う。  以上で質問を終わります。
  158. 木村俊夫

    木村委員長 内海清君。
  159. 内海清

    ○内海(清)委員 最初に委員長にちょっと申し上げておきたいと思いますが、いろいろ私の質問いたしたい事項がございますが、時間もかなり迫っておるようであります。しかも今日まで同僚委員の間で相当突っ込んだ質問もできておる。しかし多少重複しても私も十分納得いたさなければならぬ問題もあるわけでございますけれども、省略いたしまして、ごく簡単に御質問申し上げたいと思います。  この法案につきましては、すでに法案に示されておりますように、集約によりまして海運基盤の強化をして、そうして国際競争にたえ得る規模を持ち、あわせて過当競争を排除する、これが主目的だと思うのであります。御承知のように今世界におきまする産業構造がだんだん変化して参りまして、質、内容あるいは規模というものが従来と違った形で検討されておる。これは世界の経済の一つの動きだと思います。EECの発展の状況を見ましても、この対外競争力ということがその中心的な問題になっておると思います。そういう意味合いから申しまして、私は、この海運の現時点におきまするわが国の集約というものも、これはやむを得ない、今朝来参考人意見もいろいろ聞いたわけですけれども、大体そういうところに集約されるのではないか、こう思うのです。しからば、その集約の量ということでありますが、これは今日まで論議されておるところを見ますると、対外的なそういう数字というふうなものから割り出されておるのではないだろうかと思う。今の二つの目的を達するために、大体そういう姿でいかなければならぬのだろう。特に対外競争力の強化という点から見て、さらに日本海運界の今置かれておる時点から見て、どういう姿がいいか、こういうことからこなければならぬと思うのでございますが、今考えられております集約というものは、大体こういうふうな考え方で間違いございませんか。
  160. 辻章男

    ○辻政府委員 大体御趣旨の通りでございます。
  161. 内海清

    ○内海(清)委員 そこで、そういう点からわが国の海運業を見ますると、従来いろいろ航路調整その他で行なわれたと思いますが、問題がそれでは十分に効果を上げていない。そこでどうしても一つ企業の姿そのものにメスを入れて過当競争をなくしよう、そうして日本海運の持っておる力というものを十分に発揮させなければならぬ、こういうことであると思うのでありますが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  162. 辻章男

    ○辻政府委員 今御指摘ございましたように、企業集約によりまして定期航路におきまする航路等においても対外競争力をつけていきたい、かように考えておるわけであります。
  163. 内海清

    ○内海(清)委員 十分に突っ込んだ論議をする時間がございませんから、上すべりになると思いますけれども、その点お含みの上、一つ誠意のある御答弁をいただきたい。  企業にメスを入れるといたしましても、この法案がかかりまして最初からいろいろ論議になりました点を考えてみますると、将来の海運に対する政府としての青写真がなければいかぬのではないかというお話もございましたが、当局のお話では、大体の御意向では、やはり海運業者そのものが現在のきびしい内外の事態というものを十分見て、海運業のある姿、こういうふうなものを真剣に考えて、他から規制されるのではなしに、自主的に創意工夫によってこれをやる、こういうふうに指導される御意向であるように受け取っておるのでありますが、その点いかがですか。
  164. 辻章男

    ○辻政府委員 これは、私どもとしても、理想的な姿が机上論として考えられないわけではないのでありますけれども、企業合併集約ということは、企業にとりましては死活の問題でございます。また合併集約ということは、いわゆる血の通ったものでなければ、その効果は上がらぬわけでございます。海運企業の自主性を尊重いたしまして、集約をみずからの責任と創意とでもってやっていくというふうに行政指導をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  165. 内海清

    ○内海(清)委員 私が承っておりますところと大体同様だと思いますが、この点は、本日の参考人からも、ことに船主協会会長から大体そういうお話があったわけでございますが、しかし、そういう点から見ますると、現在進んでおりまするところの集約の進行状況から見て、これはこの運輸委員会でも非常に論議になりましたが、大体オペレーター中心として準備が進められて、現在の様子では大体金融機関の系列別に合併がされていくようだというふうな状態で、この現実の姿は、これは政府集約に対する意図と反するのではないか、こう思うのですが、その点についていかがですか。
  166. 辻章男

    ○辻政府委員 現在海運企業が多額の借入金をかかえておりますので、貸し出しを受けております金融機関の意向もある程度参酌しなければならぬということも事実でございます。従いまして、場合によりましては、同一の金融のいわゆる系列下における集約ということも行なわれつつある現状でありますが、私どもの見ております点では、それが金融系列的なものであるがゆえに悪いということではないのでありまして、でき上がりつつあるものがそれ自体としていいかどうかというところに、判断の基準を置いて考えておるわけでございます。現在進んでおります方向は、私は全体的には好ましい方向に進んでおると考えておる次第でございます。
  167. 内海清

    ○内海(清)委員 全体的には好ましい方向に進んでおるということでありますが、全部がそうであるかどうかというところに疑問があるし、さらにまたでき上がった姿がどうかということであって、金融機関が中心であるとかその他のことよりも、最終的なその集約のあり方というものが問題だということでありますが、しかしながら、その過程において、金融機関がもし中心だということに相なりますならば、やはり債権確保等系列の拡大強化ということは避けなければならぬ問題であります。従って、私はむしろその過程が重要なのである、こう思うのでありますが、そこらについてはどうお考えですか。
  168. 辻章男

    ○辻政府委員 先ほど申し上げましたように、多額の借入金をかかえております現状からいたしまして、金融機関の意向を全然無視した集約ということも、実際問題といたしましては困難かと考えておるわけでございます。いわゆる金融の系列内の集約であるということで、その集約効果がないという性質のものではないと思います。同一の金融の系列内におきましても、でき上がりつつあるものがりっぱなものであれば、それでよいのじゃないか。問題は、同じ金融の系列ということで、非常に無理な集約を金融機関がしいると申しますか、そういう方向に導いていくというようなことになりますれば、これは困る事態であります。現在のところ、そういうふうな金融機関のいわゆる系列的なことによりまして、非常に不合理な集約が行なわれつつあるというふうには、私ども見ていないわけであります。
  169. 内海清

    ○内海(清)委員 けさほどの参考人の話などを聞きましても、やはり金融が大きなウエートを持っておることはうなずけるのであります。これに対して今海運業者はものが言えない立場にある。従って、ほんとうの正しい姿を出現させるためには、弱いものは政府が行政指導等によって金融機関とも話をして、正しい姿に持っていくということが一番好ましいのじゃないか、私はこう思うのであります。それらに対しては今まではほとんど手放しである。その点はいかがでありますか。
  170. 辻章男

    ○辻政府委員 先ほど申し上げたように、現在進行いたしております集約の過程におきまして、特に金融機関に折衝いたしまして、ある集約を差しとめるといいますか、抑止しなければならぬような、そういう好ましくない葉約が行なわれつつあるとは考えておりませんので、私ども今金融機関に折衝するというふうな気持はないわけでございます。
  171. 内海清

    ○内海(清)委員 現在進行中であってそういうことがない。これが最後までなければけっこうであります。進行中でありますから、もしかりにそういう姿が出たときには、十分一つ行政指導をして、そうして真に海運業者として納得できるような集約ということを考えられておりますか。
  172. 辻章男

    ○辻政府委員 今後の問題といたしまして、もしそういうような徴候が現われて参りますならば、私ども全力をあげまして抑止するような方向に進みたい、かように考えております。
  173. 内海清

    ○内海(清)委員 その点を一つ強く要望しておきます。  それから、私これはけさほどもちょっと参考人に質問しましたが、時間を急いでおられたので、突っ込んだ再質問はやめましたけれども、私は、大体百万トン単位という集約ができれば、これによって年々その船の全体の償却というものは、集約の内容によっていろいろ違ってくると思いますけれども、相当の償却が出てくると思います。そうすれば、今度はあるいは新船建造に対する資用も出てきて楽になってくる、こういう点があるのでありますが、その点はどういうようにお考えになっておりますか。
  174. 辻章男

    ○辻政府委員 これは企業の規模が大きくなりますれば、償却限度額あるいは現実の償却の金額は当然ふえて参るわけでございますから、お説のように、いわゆる償却の金でもって新船建造に充当し得るというふうな金は多くなってくる、かように考えます。
  175. 内海清

    ○内海(清)委員 これは集約の内容によって違いまするが、大体どの程度償却費がかかると考えておられますか。わかりませんか。
  176. 辻章男

    ○辻政府委員 まことに申しわけないのでありますが、実はそういうふうな計算はいたしていないのでございます。
  177. 内海清

    ○内海(清)委員 今度の集約で、この点は今まで論議になりませんでしたけれども、私はやはり重要に考える一つのポイントではないかというふうに考えておるのであります。  それから、いま一つこの集約で私ども考えるのは、従来は定期船が中心に考えられた。従って収入の大部分も定期船、こういうものであった。ところが、将来集約された場合も定期船が中心にならなければいけないかどうか、この点は問題だと思うのであります。ことに集約については大体自主的にやらすということでございますので、どういう姿になってくるかわかりませんが、あるいは従来よりも定期船中心というような考え方も変わってくるかもしれない。変わった時分に、従来の定期船中心の考え方がどうなってくるか、その点一つお伺いしたい。
  178. 辻章男

    ○辻政府委員 御承知のように、現在開発銀行融資でつくっておりまする船の大部分は、いわゆる鉱石車用船でございますとか、大型タンカーでございまして、現に外航海運利子補給会社の収入状況を見てみましても、定期船の収入はその他のものよりも低目になっておりまして、収入自体から見ましても、定期船による収入というものは、率としては漸減していくのではないか、かように考えております。
  179. 内海清

    ○内海(清)委員 それでは急ぎまして、次に移ります。けさほどもお伺いしたのでありますが、結局今海運界の、ことにオーナー対策の問題は、高金利の問題と、それから不経済船の問題、この二つだと思うのです。けさほど申しましたが、定期船では十六ノット以下、あるいはタンカーでは五千トン以下、高船価の問題はもちろんであります。これは不経済船になりつつあるということであります。これの対策としては、これは法案に現在出ておりませんが、今後どういうふうに処置されるか。極端にいえば十七次船は不経済船と言ってもいいと思うのでありますが、これに対する今後の考え方を伺いたい。
  180. 辻章男

    ○辻政府委員 御指摘の通りこの法案には、そういう問題を含んでまつ正面から取り組んでおりませんし、またその予算措置といたしましても、いわゆる高船価船あるいは不経済船の問題は遺憾ながら措置できないわけであります。今後この集約の過程を通じまして、一部分はこの措置によりましてある程度のめどがつくこともあるかと思うのでありますが、この集約の推移を見守りながら、今後の問題として至急に検討いたしまして、高船価船の問題を解決するようなりっぱな案をつくっていきたい、かように考えておる次第であります。
  181. 内海清

    ○内海(清)委員 この問題はオーナー対策とともに早急に対処しなければならぬ問題だと考えておるのであります。今日まで私どももその問題の対策についてはいろいろ論議してきたところでありますが、いろいろ輸出の問題もありましょうが、一番直接的な問題としては政府の介入で解決する。解決が目的ではありませんが、そういうことでありまして、この面については、今後の計画造船の場合に、これに見合う船腹審査の第一次にして高性能化する、こういうことが私は必要だと思うのであります。これも一つの方向だと思いますが、この点いかがでありますか。
  182. 辻章男

    ○辻政府委員 そういうお説も頭に入れまして、よく検討して参りたいと考えておる次第であります。
  183. 内海清

    ○内海(清)委員 それからいま一つ、これは運賃の問題でありまして、この問題は先般も若干触れたのでありますが、いかに再建整備をしましても、利子補給をしても、そういう助成が行なわれても、適当な、妥当な運賃が長期安定的にきめられなければならぬ。もちろん総理のお話のように、運賃の問題は、わが国の経済の面からいえば痛しかゆしの問題があるわけであります。だから、適正妥当な運賃——従来のようないわゆる船の原価計算によって運賃を押えられてくるということでは、せっかくの再建整備も何ら用をなさぬということになるのでございます。しかも、特にオーナーにおいては、けさほども申しましたように、用船料というものが十分オーナーをまかなうようにきめられるわけではないのであります。そういう点からいって、この点については十分政府において考えなければならぬ問題である。しかも海運関係はいわゆる世界の海運市場においての決定がある。従って、わが国のみでこれを左右することは非常に困難である。そこで、やはり世界的な視野においてこれをきめていかなければならぬのでありますが、いわゆる国際海運会議所にもわが国も入っておりますし、世界の海運市場も、従来海運国といわれたイギリスとかわが国がリーダーとなってやっておった時代とはよほど違う。そういうことから考えまして、やはり世界の海運国に十分働きかけて、世界の海運市況の調整に努力しなければならぬ。これはわが国のみであくせくしても、とうてい解決がつかぬ問題だと思うのでありますが、これに対しまして今後どういうふうなことを考えておられるのか。
  184. 辻章男

    ○辻政府委員 運賃用船料の問題でございますが、長期契約の運賃の問題とオペレーター、オーナー間の用船の問題とは多少性質を異にするかと思うのでございます。長期の運賃の設定にあたりまして、お説のようにいわゆる原価主義ということを徹底しますならば、助成すればするほど、いわゆる荷主の方にそのメリットが流れるということになるわけでございまして、お説のように、私どもは、そのときどきの世界の水準の長期運賃の基準によりまして運賃契約をするように、行政指導をしていきたい、かように考えております。そうすれば、利子補給等によりますコストの引き下げの相当部門が海運企業のプラスになって残っていくのじゃないか、かように考えておるわけでございます。  それからまた、オペレーターとオーナー間の用船料の問題でございますが、これもお話がございましたように、一般の傾向といたしましては非常にむずかしい問題でございます。オーナーの方におきましてはなかなか収支が償わないような用船料でございますが、一面不定期船海運市況から見ますれば、これ以上出せばオペレーター赤字になる、そういう問題でございまして、これはそのときの一般不定期船の市場に適合した用船料を支払うように考えたいと思っております。  それから、世界的な運賃の安定策でございますが、これはなかなかむずかしい問題でございます。ただいつか本委員会でも事務次官から御答弁申し上げましてが、アメリカの海運政策に対しましては、私どもは西欧の海運諸国と協同して絶えず情報を交換し、またともに合議をしておるような状態でございまして、いわゆる世界の海運国におきまして海運不況を切り抜けるための運賃安定の方策等が持ち出されますならば、われわれも喜んでこれと協力いたしまして、世界海運全体の運賃の維持についての努力をしてい参りたい、かように考えておる次第でございます。
  185. 内海清

    ○内海(清)委員 これはまだ論議したい問題がございますが、きょうは採決もあり、お疲れになっておせきのようでございますが、ただ私、この問題につきまして十分考えていただきたいのは、世界海運界において船員、いわゆる従業員関係は案外統一がとれておる。ところが、船主関係におきましては、なかなかそういう相互間における統一がとれていない。このことが今日非常に海運界に災いしておる。従って、便宜置籍船の問題とかあるいはアメリカ船の問題につきましても、海運局が、業者間において国際海運会議所等を中心にして十分連絡をとって、強力にこれを推し進めていくのでなければならぬ、従来のような行き方ではとうていこれは解決つかない、私はかように考えておりますが、この点は一つ強く要望しておきたいと思います。  それから、労働問題でありますが、これはきわめて重要でありますけれども、私けさほどから、いろいろございましたし、参考人の席上質問いたしましたので、一応省略いたします。  それから、内航海運の問題も、これはきわめて重要な問題でありますが、今日まで内航海運対策一つであります船質改善のための戦標船のSB、これに対する問題、これがなかなか運輸省の予定通りに進んでいない。本年度の予算についても、大体要求額は百十四億二千万円くらいであったと思うのでありますが、それがわずかに六十九億ぐらいに減っておる。削られておるのであります。しかも老朽船対策とか戦標船、油送船対策等に関しては、ほとんど顧みられておらぬような状況でございます。この点は私はきわめて重要な点だと思うのです。これに対しましてどういうふうなお考えを持っておられるか。
  186. 辻章男

    ○辻政府委員 戦時標準船処理の問題は、昨年度から開始いたしまして、来年度がわれわれの予定いたしております三カ年計画の最後の年になるわけでございます。御指摘の通り私どもが望んでおりますだけの所要資金が得られていないのでございますが、いろいろ工夫をいたしまして、来年度中には戦標船のめどをつけていきたい。たとえば建造竣工までに至りませんでも、そのめどだけははっきりと来年度中にはつけたい、かように考えております。老朽船、それからスタンダード・タンカー改装等の問題につきましては、財政事情がございまして、来年度に着手するわけには参らぬのでございますが、これも戦標船を優先という考え方から、順位としてあとに回したような次第でございまして、戦標船のめどがつけば、引き続きそういう問題を手がけて参りたい、かように考えておるわけであります。
  187. 内海清

    ○内海(清)委員 この点は集約の目的を到達せしめる最も重要な問題であります。ですから、これは早急に対策を樹立して、来年度は必ずこれが完徹されるように御努力願います。  それから、法案につきまして一つお尋ねいたしたいと思うのであります。第七条の問題、「支払猶予を受けた会社は、猶予利子に相当する金額を日本開発銀行からの借入金の償還に充てなければならない。」すなわち猶予を受けた金額は、今度は元本の方に入れることだと思うのであります。そういたしますと、まあ開発銀行と市中銀行と両方からの資金を受けておる。開発銀行の金利については安い。市中銀行の方が高い。そうすると、この再建整備の問題からいえば、高い金利の方をまず償却するということが私は常識ではないか、こう思うのですが、この点いかがですか。
  188. 辻章男

    ○辻政府委員 利子猶予効果といたしましては、今内海先生の御指摘がございましたような方法が効果が多いわけでございます。
  189. 内海清

    ○内海(清)委員 大体今の場合を考えて、どれだけ市中銀行を優先に償却した方がいいということが、計算が出ておりますか。
  190. 辻章男

    ○辻政府委員 数字的には計算ができないのでございますが、大体開発銀行が六分五厘、市中の方が今までは利子補給金を受けましても七分一厘、中には利子補給のないものもございますので、それらの差額だけが有利になるわけでございます。
  191. 内海清

    ○内海(清)委員 これは少なくとも年間百十何億でございますから、私は相当の金額になると思う。今日こういう非常に窮迫した海運界の状況の場合に、なぜそれをやらなかったかということであります。この点お聞きいたします。
  192. 辻章男

    ○辻政府委員 利子猶予をいたしまして、これは開発銀行も一つの金融機関でございますので、利子猶予をしたそれだけは元本も減ってくる。そうしていわゆる債権保全と申しますか、そういう観点からそういう方向にすべきだということになりまして、かようなことにした次第でございます。
  193. 内海清

    ○内海(清)委員 どうも再建整備という、こういうきわめて重大なものを決定するおりの考え方としては、少し私はどうかと思う。ことに開発銀行はやはり政府関係の機関であります。いろいろ問題はあると思いますけれども、このことは政府としてなそうと思えばできる問題だ、かように私は考えるのでありまして、この辺にも、私ども、今回のこの法案に対する考え方が十分徹底しておるのかどうか、こういう点について危惧の念を持つわけであります。  時間がございませんで、大体委員長から言われた時間で終わりました。これで打ち切りたいと思いますが、いろいろ政令あるいは省令の問題もあると思うのです。先ほど久保委員からいろいろ償却の問題、あるいは税制の問題、あるいは資金の上における歩積み、両建の問題、こういう点がございましたから、私はこれらを省略いたしたいと思います。  最後に、一つ大臣に特にお伺いしたいと思いますのは、せっかくのこの法案に、すでに論議されましたが、多くの問題を持っておる。政府におきましても十分それらの点を勘案されて、そうしてこの所期の目的が貫徹できるような万全の処置を要望しておきたいと思います。御意見がございましたら一言……。
  194. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 すべての問題、なかなか現状において困難な問題ばかりを控えておりますが、この委員会の空気を察し、私は、微力でありますが、極力日本海運再建のために努力いたすことを申し上げておきます。
  195. 木村俊夫

    木村委員長 ほかに御質疑はございませんか——。ほかにないようでありますから、両案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  196. 木村俊夫

    木村委員長 これより両案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。細田吉藏君。
  197. 細田吉藏

    ○細田委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、海運業再建整備に関する両法案に対し、賛成の討論を行なわんとするものでございます。  海運業のわが国における重要性につきましては、ここであえてちょうちょう申し上げるまでもございません。また田本海運が現在置かれております立場につきましても、詳しく申し上げることを省略いたしますが、いずれにいたしましても最悪の事態であり、急速にこれが整備再建の方途を講ずる必要があることは申し上げるまでもないところでございまして、この意味から、今回の両法案は、海運業の基盤を整備し再建をはかるための最も適切なる措置であると存ずるのでございます。  本法案に盛られました政府助成策は、海運企業の過去の借入金の利子の徴収猶予と、今後の新造船に対する利子補給の強化でありまして、その助成の前提といたしまして、海運業集約企業の自立体制への自主的努力を強く要求いたしておるのでございます。すなわち、第十七次造船以前の計画造船にかかる開発銀行の利子の全額を五カ年間猶予するということは、企業の今日の状態から見まして財務面の健全化に絶対必要な措置であると思うのであります。  なお、法律案は、助成条件といたしまして、開発銀行以外のいわゆる市中銀行の融資をしておるものにつきましても、その二分の一以上に相当する金額の支払いを猶予するということを条件にいたしております点も、時宜に適したる措置であり、これが絶対に必要であると考えるのでございます。  また、利子補給の強化でございますが、これは多年の要望がここに実現されたものでございまして、これによって船舶建造に伴う金利負担がようやく国際水準並みになりまして、今後の国際競争力の強化と船舶拡充に大きな期待を持つことができるのでございまして、これまた適宜な措置であると存ずるのでございます。  海運企業集約化についてでございますが、現在わが国海運業が、多数の小規模企業乱立によりまして過当競争が行なわれ、このため収益が低下いたしましたり、また投資力が不足をいたしております。国際競争力を強化いたしますためにこの集約が行なわれ、海運企業が適正規模になりますことは絶対に必要でございます。ただこの法律によりますると、集約につきましてはもとより海運業者が整備計画を作成いたすのでございますが、これに対しまして運輸大臣が再建整備に適切であると認めたものについて助成が行なわれる、こういうことになっておるのでございます。この基準は、適切であるというような字句によって示されておるのでございますが、これは法の運用を誤りますと大へんなことになると私は思うのでございまして、こういう点につきましては、日本海運業をほんとうに再建整備するという見地から、あらゆる角度からこの適切ということを判断されるべきだと思うのでございます。もとより運輸大臣の御判断の際には、海運企業整備計画審議会というものに諮問されるのでございまして、この審議会意見を尊重してきめられるのでございますが、この審議会の運用、また運輸大臣の、本法の、適切と認められるというような措置につきましては、あらゆる角度から御検討いただいて、実情に即した、ほんとうに一本の海運再建整備に役立つという角度から、弾力的にお考えをいただきたいと思うのでございます。あわせて、これはあくまでも企業整備をする海運業者の主体性というものがなければならぬと思うのでございまして、こういった点につきましても十分の行政指導を政府がなされますと同時に、業界においても、投げやりといいましょうか、強制されたという形でなくて、ほんとうに自主的に積極的に再建整備という方面の努力をしていただく、このようなことが必要であろうかと思います。いやしくも官僚統制といったような非難を受けることのないように、法の適切な運用を期待いたす次第でございます。  集約につきましては、種々申し上げたいことがございまするが、特に集約にあたりまして、従業員の問題でございますが、従業員に対しまして打撃を極力少なからしめるように、政府におきまして十分なる配慮を払っていただくということが必要であろうかと思います。また、けさほど参考人意見にもございましたが、業界におきましても労使協調態勢をとられて、十分この辺につきましては配慮をしていただくようにお願いをいたしたいと思うのでございます。  なお、この際、特にオーナー問題についてでありますが、けさほど種々の御議論もございましたが、今回の措置によりまして、オーナーというものの立場につきまして種々検討を要する点があるようでございます。整備計画の承認にあたりましても、これらの点について十分お考えをいただくと同時に、これからあと申し上げようと思っておりますが、不経済船の対策等につきまして、特にオーナーの面につきまして、今後格段の御配慮を願う必要があろうかと思うのでございます。  さらに、今回の法案に盛られました諸措置は、これは画期的なものではございますけれども、しかし、これらの措置だけで一挙にわが国海運業再建ができ、すべてが終わったと考えるのは楽観的に過ぎるのでございまして、各般の問題が残されておると思うのでございます。  その第一点は、わが国をめぐる世界海運の状況、これをわが国海運が直接影響を受けておるこの点でございます。北米航路における盟外船の活躍あるいはシップ・アメリカンを初めといたしまして各国における自国船主義の激化、こういつたようなものがございまして、わが国海運の活動を制約いたしておるのでございます。政府は、これらの外的要因に対処しまして、適時適切な施策を講ずべきであろうと思うのでございます。この点につきましては、外交上の問題もございますし、いろいろな困難な事情もあると思うのでございますが、いずれにいたしましても、これらの問題に対しまして適切な措置をおとりいただくようにお願いを申し上げたいと思います。  さらに、老朽船あるいは非能率船、また高船価の時代につくられました船、いわゆる高船価船、こういった不経済船の処理対策でございますが、これも本委員会質疑応答の中でしばしば論議されたところでございまして、この点につきましては、引き続き政府におきまして検討され、すみやかに抜本的な措置をお考えいただきたいと思うのでございます。  さらに、最後に申し上げたいのは内航海運の問題でございますが、海運業はもとより外航だけで成り立っておるものではございません。外航、内航ともにあわせ考えなければ、ほんとうの海運業界の再建整備はできないと思うのでございます。内航海運の問題につきましては、あるいは運賃の問題、その他幾多の問題があるのでございます。この点につきましても、不経済船とか、さらにむずかしい困難な問題がたくさんございますけれども、これにつきましても同様に抜本的な措置政府におきまして早急に考究せられることを要望いたすのでございます。  以上をもちまして私の討論を終わります。
  198. 木村俊夫

  199. 久保三郎

    久保委員 私は、日本社会党を代表して、海運関係法案に対して反対の意見を表明したいと思います。  今までの審議の過程でもそれぞれわれわれの見解を申し述べてありますが、今日の日本海運界不況原因は、言うならば従来とられて参りました海運政策そのものにあるわけでございます。この海運政策そのものが世界的な、あるいは日本海運界のいわゆる構造的な変化に即応していないというところに、大きな問題があると思うのであります。でありますから、よりこの海運界をして前向きに立ち直らせるというならば、この構造的な変化に対応した対策が総体的に全般的に立てられなければならぬ、こう思うのであります。ところが、この二つ法案のねらいは、一つは、いわゆる集約という寡占理論から出た方法によって、幾つかのグループ集約しようということであります。集約はなるほど構造的な政策の一つではありますが、今までの審議の過程で見て参りますると、必ずしもこれは十分でない。さらにもう一つは、このねらいとするところの効率、効果、メリットについてでありますが、集約によるところのメリットを当局の言うように是認するにしても、それを失うところの構造的な欠陥が多い。この構造的な欠陥は何一つこれを解決しようとしない立場があるわけでございます。こういうところに多額の国費を投入しても、海運対策はあり得ないとわれわれは考えます。  さらに、もう一つ法律であるところの利子補給の増強の法律でありますが、これもなるほど一応は国際水準金利をさや寄せしようという一つの理屈にはなります。しかし、先ほど申し上げた構造的な変化に対する対応策がなくして、いかに金利を低下しても、それは今までよく申し上げた通り、日本海運界には食道はあるが胃袋は他人である、こういう構造的な欠陥を直さずして、いかに食物を流そうとも、栄養食を流そうとも、体質の改善はあり得ない。言うならば、収益力のいわゆる低下が今日の日本海運界の大きな不況原因であります。うしろ向きの財務的な面でのいわゆる構造改善策は、なるほど事態の悪化を防ぐというこうやく張り的な政策ではあるが、決して根本的な中心的な政策ではあり得ない。今までの審議の過程で、当局から出されたそれぞれの収益力の資料にいたしましても、これは高金利あるいは資本構成の劣悪というものを離れて見ても、これは効率が低い。これは、日本海運産業が効率の低い原因をつかずして、何をつこうとするのか。私は、断じてこの法案では五年後においても海運再建はなり得ないであろうという推測をしておる。そればかりか、五年後においてはさらに収拾すべからざるところの混乱を巻き起こすであろうし、さらに五年に至るまでの過程において、幾多の助成を呼ぶような策を講ぜざる場合においては、日本海運界は衰亡するであろう、こういうような心配を私は持っておるわけです。  よって要約いたしまして、以上の理由によってわれわれはこの法案には反対をいたします。以上です。
  200. 木村俊夫

    木村委員長 内海清君。
  201. 内海清

    ○内海(清)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、いわゆる海運法案に対しまして賛成の討論を行なわんとするものであります。  先ほど来申しましたように、今日世界の産業構造の変革からいたしまして、いかなる国におきましても、対外競争力ということが今後の産業発展基本になるものであります。わが国の海運業におきましても、おくればせながら今日の海運不況を打開し、わが国の経済の一そうの伸長をはかるためにこの集約をして、さらにこのいわゆる前向きの利子補給をいたしまして、海運国際競争力をつけ、同時に国内におきまする過当競争も排除しようというねらいであるのであります。  もちろん今回の法案につきましてこれで十分ということは言えぬわけでありまして、本委員会でたびたび論議されましたように、多くの欠陥があること、同時に法の運用の上におきまして、今後細心の注意をしなければ、所期の目的を達することがきわめて困難ではないか、かように考える点もあるのでありまするが、今日のわが国の海運業の現状は、そういうことによってこれをだんだんと猶予して遷延することを許さない実情にあるのではないか、かように考えるのであります。従いまして、政府におきましては、この法案の運用にあたりましては、本委員会でいろいろ論議されました点を十分勘案されまして、万遺憾なきを期していただきたい。そうして、わが国の減運の再建整備、将来大きくこれを伸長させて、国際競争に勝ち抜き得る日本海運を育成していただきたい、かように考えるのであります。特にこの法の運用にあたりまして、先ほど細田委員からもございましたが、十分実情に即した法の運用をやっていただきたいということ、さらに私先ほど申しましたような、海運業者みずからの責任によって真にこれを立て直すという、この意欲に燃えまして、みずからの責任を果たすような行政指導を特にお願いしたい。  さらに、従業員の問題でありますが、企業整備でありまする以上は、ここにいろいろ問題が起きてくると思うのであります。しかしながら、この問題は非常に困難な問題もございますが、本日私が参考人にも申しましたように、集約、このことによって海運従業員の雇用の安定をゆるがし、あるいは労働条件の低下を来たもことがあっては相ならぬと思うのであります。従いまして、これは海運界全体の中においてこれを拡大生産の方向において十分消化し、さらにこれで問題があれば労使間において、さらに問題があれば国家助成等、十分な万全なる措置を講じられて、遺憾のない処置をとられたい、かように思うのであります。  それから、外的な阻害要因といたしまして、盟外船の問題あるいは旗国主義の問題等がございます。これは外交の問題でございまして、いろいろ困難な面もあると思いますが、私先ほど来申しましたように、海運市況というものはわが国のみにおいてこれを操作できるものではございません。従って、広く世界の海運国と手をつないで、そうしてこれらの問題を強力に排除するように御処置願いたい。  さらに不経済船、高船価船の問題でありますが、これは、再建整備にとりまして、ことにオーナーにとりましては最も重要な問題であります。けさほど参考人に聞きますると、船主協会の会員はすべて一人も反対なしにこの法案に賛成したということでありまするが、しかしそれでも全部が救済できないのであります。そうすると、一部の人はみずから犠牲になることも承認いたしておるのであります。このことは国としては最も考えなければならぬ問題である。そういう犠牲者を出していいかどうか、これらを救い得るような万全な処置を十分考えなければならぬ、かように思うのであります。  さらに内航海運、これにつきましても同様でありまして、内航海運につきましては、今日すでに石炭専用船等の問題、石炭不況等の問題からいたしまして、倒産するものさえ出ておるのであります。これらにつきましては、早急に対策を樹立して、これに対して万全の処置をとられたい。以上のことを強く要望いたすわけでございます。  以上で終わります。
  202. 木村俊夫

    木村委員長 これにて両案に対する討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、海運業再建整備に関する臨時措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  203. 木村俊夫

    木村委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法及び日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  204. 木村俊夫

    木村委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  205. 木村俊夫

    木村委員長 この際、細田吉藏君より発言を求められておりますので、これを許します。細田吉藏君。
  206. 細田吉藏

    ○細田委員 この際、海運業再建整備に関する臨時措置法案に対して附帯決議を付せられんことを望みます。  附帯決議の案文を朗読いたします。    海運業再建整備に関する臨時措置法案に対する附帯決議(案)   政府は本法の施行にあたり、特に左の諸点につき万全の措置を講ずべきである。  一、整備計画の承認等本法の運用にあたっては、真に我国海運業再建整備の目的を達するよう、実情に即して、できる限り弾力的に考慮するとともに、海運業界が積極的に再建整備をはかるよう行政指導を行うこと。  一、企業集約等により海運業に従事する従業員の地位が不当に害せられることのないよう配慮すること。  一、盟外船による定期航路の混乱を防止する等海運秩序を維持するための諸施策を強化するとともに、必要に応じ海上運送法等の改正を検討すること。  一、不経済船の処理、内航海運対策等についてもすみやかに抜本的措置を考究すること。   右決議する。  理由は先ほど討論の中におきましてるる申し上げた通りでございますので、何とぞ御賛成をお願い申し上げます。
  207. 木村俊夫

    木村委員長 ただいまの細田吉藏君の動議のごとく、海運業再建整備に関する臨時措置法案に対し附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  208. 木村俊夫

    木村委員長 起立多数。よって、さよう決しました。     —————————————
  209. 木村俊夫

    木村委員長 なお、ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  210. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  この際、政府当局より発言を求められておりますので、これを許します。綾部運輸大臣。
  211. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 ただいまの御決議につきまして、政府といたしましては、その御趣旨を十分尊重して、海運業再建に万遺憾のないことを期する所存でございます。  まず第一に、本法の運用にあたりましては、海運企業再建の意欲を積極的に育てるよう周到に配慮するとともに、また海運企業の今日の不振の原因に深く思いをいたし、あたたかい思いやりをもって臨む覚悟でございまして、いやしくも法の画一的形式的な適用にわたらざるよう、十分注意をいたします。  次に、集約に伴う従業員の問題でございますが、海運業日本の重要産業として今後発展をはかるべきものと考えますので、これに携わる有能な人材を失うことなく、また安んじて海運発展に働いていただくように、十分配慮いたすつもりでございます。  次に、北米航路における盟外船の跳梁による定期航路の混乱は、日本海運にとって重大な打撃を与えるのみでなく、ひいては日米貿易にも悪い影響を与えることとなりますので、今後とも海運同盟の活動に制約を与えている米国海事法の改正について強力な対米交渉を進めますとともに、定期航路に従事している船会社問の協調関係を格段に強化するよう指導して参る所存でございます。  また、海上運送法の改正につきましては、内外の情勢を考慮し、改正の利害得失を十分検討して善処いたしたいと思います。  最後に、不経済船の処理、内航海運対策はきわめて重要な問題でありますので、現に検討中のもの、さらに関係方面の意見も十分聞き、適切な方途を講ずるよう努力する覚悟でございます。
  212. 木村俊夫

    木村委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会      ————◇—————