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1963-03-22 第43回国会 衆議院 運輸委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月二十二日(金曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 佐々木義武君 理事 鈴木 仙八君    理事 高橋清一郎君 理事 細田 吉藏君    理事 山田 彌一君 理事 井手 以誠君    理事 久保 三郎君 理事 肥田 次郎君       有田 喜一君    伊藤 郷一君       尾関 義一君    砂原  格君       福家 俊一君    加藤 勘十君       勝澤 芳雄君    下平 正一君       矢尾喜三郎君    内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 広瀬 真一君         運輸事務官         (海運局長)  辻  章男君  委員外出席者         議     員 木原津與志君         議     員 村山 喜一君         運輸事務次官  朝田 静夫君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 三月二十日  委員尾関義一辞任につき、その補欠として賀  屋興宣君が議長指名委員に選任された。 同日  委員賀屋興宣辞任につき、その補欠として尾  関義一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十日  港域法の一部を改正する法律案内閣提出第一  三八号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  離島住民旅客運賃等特例に関する法律案  (木原津與志君外十三名提出衆法第三一号)  海運業再建整備に関する臨時措置法案内閣  提出第七七号)  外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法及び  日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補  給臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  木原津與志君外十三名提出離島住民旅客運賃等特例に関する法律案を議題として、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。肥田次郎君。
  3. 肥田次郎

    肥田委員 離島住民旅客運賃等特例に関する法律案について質問いたしたいと思います。  まず、この法律案の審議の過程でお伺いしたいのは、現在離島航路整備法で国から補助を受けておる対象が三十一航路ということになっておるようですが、現在のこの法律をもって補助額をさらに引き上げるというふうなことは具体的に不可能なのかどうか、現在提案されておるこの法案の実現した際の処置について運輸省としてどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  4. 辻章男

    辻政府委員 もし御提案されておりますような離島住民旅客運賃等特例に関する法律案が実施されるとしますれば、現在やっておる離島航路補助制度をどうするかという御質問かと思うのであります。これにつきましては、現在離島航路補助金を出しておりますのは、大体離島間の海上輸送というものが、採算的に申しますと、その他のものに比べまして悪いのが常例でございます。しかしこれが経営上の困難等によりまして、この航路が廃止されれば、離島住民その他公益上非常に支障があるというような考えから、補助金を出しておるわけでございます。この法案が施行されまして、その結果として離島航路の収支の問題がどういうふうに変化するか、それによりまして離島航路補助金制度につきましては検討していきたい、かように考えております。
  5. 肥田次郎

    肥田委員 提案者の方にお伺いしたいのですが、提案者の方では、この法案提出について、要するに現在ある整備補助というようないわゆる航路業者補助することだけでは不十分であって、同時に住民利益を守るという立場も含まれておると思うのですが、本質的な問題点として、業者というもののあり方、この法律案の第二条の第三項にあるところの離島航路事業者というものの事業内容と、事業を行なう上においての関係において、ただこの差額だけで事業が継続できるかどうか、こういう点についてどういうふうにお考えになっていますか。
  6. 木原津與志

    木原議員 国庫補助指定航路になっておりますのは、現在三十七年事業者で、航路数は四十六航路になっておるのであります。これに対して赤字補助を現在まで国の負担でやっておるのでございますが、この赤字と申しましても、企業全体の年度間の決算赤字に対して国が補助をするという建前になっておるのでございますが、その赤字額認定等にもいろいろありまして、今日わずかな国庫出資金というような形になっておるのでございます。そこでこの点は航路事業者赤字補助ということを眼目にいたしておりますが、問題のわれわれが希求いたしますのは、航路事業者赤字もさることながら、この赤字を国が負担してやったといたしましても、それが即住民負担にはね返ってくるということには現在のところなっていない。御承知のように、この航路運賃認定制になっておるのであります。そこでどうしても普通の国道並み運賃負担することによって、それだけ離島住民利益をはかってやるという立場に立ちますと、何としてもやはり運賃そのものに対する国庫負担をしてやらなければ、住民が低運賃利益に浴することができないのであります。そういうところから、とりあえず国が認定した運賃半額だけを、国庫負担するという建前に立つのが、離島住民本土住民との生活上の負担均衡という立場に立って、当然ではなかろうかという考え方に立って、本法律案提出するに至った次第でございます。
  7. 肥田次郎

    肥田委員 それと、もう一つお伺いしたいのですが、そういう方法によって国庫補助という面は、いわゆる離島住民運賃の面においては行なわれる。ところが事業者がそういう状態の中で——これは私はよく事情がわからないのでお伺いするのですが、それには問題点二つあります。  要するに航路事業者というものがこの事業を継続する上において、ただその差額を国が負担するということだけで、事業が円満に継続されるであろうかどうかということが一つ。それから将来の傾向として、この事業が、要するに離島住民利益を守るような形の事業継続ができるだろうかどうか、これも一つ傾向になるだろうと思いますけれども、それらの関係についてお考えがあれば一つ承っておきたいと思います。  と申しますのは、要するにこの関連というものは、積極的な政策が立てられない限り、この事業者というものは営利目的とする場合が多いのが本質的ですから、従ってもうからない航路はやめてしまう、あるいはサービスが悪くなる、要するに航路回数が減ってくる。こういうふうないろいろな問題が起きてくることが予想されます。従ってそういう関係離島住民との利益とをどう結びつけるか。もっと積極的に言えば、そういう特殊な航路については、その企業航路経営そのものをもっと別な立場、具体的に言うと、公営的なものでやる、こういうふうな問題も生じてくるだろうと思うのです。要するに営利目的とするところの航路事業者にまかしておっただけでは、住民利益を守るには不十分ではないか、こういうことも考えられるわけです。その点についてお考えを承っておきたいと思います。
  8. 木原津與志

    木原議員 本来、肥田先生の言われるように、離島航路というのは、ほんとう住民あるいは航路事業者利益を調節していくという立場に立てば、御説のように公団の企業にする、あるいは国の直営あるいは公共団体直営にするということでなければならないという意見を提出者も持っておるのでございますが、今早急にこの立場に立つということになりますると、既存業者とのいろいろな問題があり、さらにまたこれらの既存業者経営を脅かすとか、あるいはやめる業者補償をしなければならないというような問題が起こって参りますと、これに対する国の負担が莫大な金額になろうかと思うのでございます。そこでそういうような点を考慮しながら、現段階における、より可能な方法をとるという立場に立って、私どもはとりあえずこの離島住民生活負担本土並みに軽減するという立場に立って、本立法のような形で一応の暫定的な措置とでも申してもいいと思いますが、こういう方法によって離島住民の福祉に寄与したいという考えでおるわけでございます。
  9. 肥田次郎

    肥田委員 それからこれはなかなか解釈の問題がいろいろあると思うのですが、第二条の第二項に「「離島住民」とは、離島内に住所を有する個人をいう。」というふうになっておりますが、これも離島内に居住する者だけを保護するという運賃特例ということになってくると、たとえば戦没遺家族とか何かそういう場合のみの運賃割引と同じような制度になるわけです。従って積極的な意味考える場合には、離島航路というものは特別運賃を制定して、そしてその住民だけを対象とするのではなしに、離島間の往復については特別料金、ここにあるところの趣旨の半額なら半額の、あるいはそれ以下の特別な運賃をもって離島間の航路を継続する。そういう場合に積極的に離島利益も守られるし、離島開発にもなる、こういうことが考えられるわけです。ただ消極的な意味離島から本土へ渡ろうとする場合に料金を特別に安くする。これはきわめて消極的な、要するに遺家族が東京の靖国神社へ参拝するのを運賃割引をすると同じような恩恵的なものに類することになるのですが、こういう点について、これは離島間の特別航路というようなものにまで考え方を持っておられなかったのかどうか。それからこれは海運局長にも伺いたいのですが、そういう際に、真に離島開発ということを目的にするならば、こういうような手段ではなしに、もっと積極的な意味離島間の特別運賃というものを設定する、こういうことを海運局あたりでは考えておられるのかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  10. 辻章男

    辻政府委員 現在旅客定期事業につきましては、海上運送法によりまして、いわゆる免許主義をとっております。  それから運賃につきましては、運賃を申請させまして、これを認可にかけるという制度をとっておるわけでございまして、特に離島航路につきまして、一般定期旅客事業と異なった制度をやっておるわけではないのでございます。将来にわたりましても、私ども定期航路事業につきまして、特に離島について特別のやり方をする必要はないんじゃないか。しかし離島航路先ほど申し上げましたようにいわゆる不採算航路が多うございまして、不採算だからといって、これを休廃止するようなことがありますと、公益上非常に支障がございますので、公益性の強い航路については、離島航路補助金を出して、航路の維持、サービスの改善をはからせるという方策が適当だというふうに考えておる次第でございます。
  11. 村山喜一

    村山議員 この法案の第二条で規定をいたしました離島住民の定義でございますが、「離島内に住所を有する個人」ということにいたしましたのは、法人が抜けているわけでありますが、その法人はやはり常業の形態をとっている法人が多いというようなこともございましたので、住民登録法に基づくそういうような表現規定によりまして、離島内に住所を有する個人だけを対象にして考えて、会社法人は除いてあるわけであります。そのような建前から、離島住民だけこの利益が還元をされる、こういう考え方法案はつくりました。もとよりおっしゃる通り離島住民、それに関係のあるすべての人に対象を広げるということは必要なことだと考えるわけでございますが、一応当面の措置としてそのような措置を講じたわけでございます。その理由は、肥田委員も御承知のように、離島住民生活実態というものを調べてみますと、本土住民の大体半分しか生活所得がない、こういうような状況でございますので、そのような立場から離島住民航路運賃特例措置を、第二条において対象としてはそれに限定をいたしたわけであります。
  12. 肥田次郎

    肥田委員 それからもう一つお伺いしたいのは、貨物運賃の問題です。貨物運賃の問題も、ここでは将来の問題として残しておく。要するに当面は離島居住者旅客運賃だけ、こういうことに至っておるこの関係でも、内輪な法案だということになると思うのですが、貨物運賃というものは離島生活に直接影響のある貨物、こういうものなんかの区別は考えられないで、一般貨物という解釈で将来の問題としてこれには触れられておらないのかどうか、これを一つ承っておきたいと思います。
  13. 木原津與志

    木原議員 私どもは、おっしゃる通り航路運賃とともにあわせて貨物運賃も軽減すべきであるという考え方に立って、最初立案いたしますときには、貨物運賃も二割程度引き下げるという形をとるべきだという考え方に立ったのでございますが、貨物運賃航路運賃と違いまして、航路運賃主務官庁認可、許可が要るわけで、従って航路運賃については多少業者運賃の値上げということについてチェックすることができると考えられます。しかし貨物運賃というのは届出制になっておりまして、直接主務官庁のチェックが非常に弱い。そういう関係で、業者貨物運賃をどんどん上げるという事態になりますと、かりに二割あるいは三割という割引運賃を実施することになりましても、非常に国庫負担が将来大きくなるんじゃないかという点も考慮いたしまして、とりあえず少額範囲内における国庫負担をお願いするという立場に立って、今回は貨物運賃の点を除外いたしまして、航路運賃だけに限定をしたのでございますが、さらにまた将来においては貨物運賃という問題も物価抑制その他の点とからみ合わせまして、今肥田さんのおっしゃるような形まで持っていくのがほんとうではないか、理想ではないかと考えるのでありますけれども、現段階においての立法措置として、とりあえず貨物の方を除外するということになったのであります。これはひとえに国庫負担をあまり増大することはいかがかと考えまして、除外したような次第でございます。
  14. 肥田次郎

    肥田委員 海運局長にお伺いしますが、こういう際の貨物運賃届出制を、将来こういう特殊な地域に限って、共通な問題だと思うのですが、海運局として、これらの運賃に対しての具体的な指導方針というものがありますか。
  15. 辻章男

    辻政府委員 貨物運賃につきましては、現在届出制度になっておるわけでありますが、これを現在のところ変更する考えはございません。
  16. 肥田次郎

    肥田委員 変更する考えということではなしに、たとえばこういう離島航路について貨物運賃が引き上げられるというような場合に、それをどういうように考えておるかということを聞いているわけです。
  17. 辻章男

    辻政府委員 貨物運賃の引き上げについての届出があれば、これを受理してそのまま実施させるという考え方でおるわけであります。
  18. 肥田次郎

    肥田委員 その点やはり問題になると思うのですが、今提案者側でも言われておったように、これは暫定な問題としてやむを得ず見のがそう、こういう考え方に立っている。本質的な問題は、一方では離島住民利益を守るために運賃は安くしよう、こういう法案提案されておる。一方貨物料金については、提案者側の方では、これは今の問題としてはなかなかむずかしいから見のがそう、しかし将来これは解決してもらいたいというのです。そうすると、あなたの言われるように、届出があったらそのまま認めていくということになったら、全く逆な立場が現われてくるでしょう。運賃の方は田で補助をする、貨物料金の方はどういう方針を持つか知らないが、業者が申請して上げてくる、こういう現象が起きてくるでしょう。離島住民利益を守ろうとする反面、一方貨物の方じゃ逆に値が上がってくる。結局住民利益は、生活その他のものを守るというところまでいかないということになる現象が起きてくる。だからそういう場合に離島航路についての貨物料金に対して同一の考え方を持っておったのでは、この法案が成立してもそこに何らの意味——意味というよりも、非常に法案精神が削られた結果が現われてくるわけです。その点どうお考えですか。
  19. 辻章男

    辻政府委員 今御答弁申し上げましたのは、私ども海上運送法現行法のものを前提として御答弁申し上げたわけでございます。離島住民旅客運賃等特例に関する法律案は、御承知のように議員の方からの提案でございまして、私どもこれが成立しまして施行されるという立場に立って今申し上げておるわけではないのでございます。今、現在の海上運送法によりまして定期運航事業をやっております、その法律立場において御答弁申し上げたわけでございます。
  20. 肥田次郎

    肥田委員 それからもう一つお聞きしたいのです。これは資料でもけっこうなんですが、現在いわゆる離島航路と称するものが、先ほど提案者側の方で説明のあったのはすぐわかりました。そこで離島航路に対して、運輸省のことしの予算概要説明の中で見ると、三十一航路補助対象になっていますか。それでどの航路とどの航路補助になっておるか、そこに何か資料があればちょっと概略でよろしいから聞かしてもらいたいと思うのです。
  21. 辻章男

    辻政府委員 定期航路に対しまして補助しております航路は、お説のように三十一航路でございます。今その内容についての資料は手元にございませんので、後ほど提出させていただきたいと思います。
  22. 肥田次郎

    肥田委員 先ほどから質問をしてみて、私もある程度理解ができたのですが、要するにこの法案は国の政治の貧困といいますか、離島住民に対する保護、開発というような点が非常におくれておる、こういう立場から、将来に対するいろいろな希望はあるけれども、とりあえず離島住民航路運賃だけでも国で負担してもらおう、こういう、いたってささやかな法案であるということがわかります。ですから積極的な離島開発とか、さらにその意味では離島航路については離島航路事業者利益というような関係から、サービスの点その他についていろいろな問題が将来起こるだろうが、これを積極的に解決する方法としては、これらの離島航路は国営にする、あるいはその他の事業団でもって国が積極的な補助をもってやらす、こういうこと以外には具体的な解決の道はなかろうと思います。しかし当面しておるところの離島者利益を、少なくとも少しずつでも都市に近づける、こういう意味提案されたものだというその提案精神がよくわかりましたので、私は質問はこのくらいで終わりたいと思います。
  23. 木村俊夫

  24. 内海清

    内海(清)委員 一、二御質問申し上げたいと思います。  すでに御承知のように、道路整備計画というものは五ヵ年計画もございまして、国の負担金あるいは補助金等によりまして、道路整備というものは今日急速に進んでおるわけであります。この法案にあります離島住民にとりましては、この航路唯一交通機関であって、まさにいわゆる道路に匹敵するものであります。しかも道路整備されるのに従いまして、自動車バス運行等がだんだん拡充されて、本土におきまする人々というものは、交通運輸の面におきまして、非常に今日恩恵を受けつつある。今後においてもこれはますますそういうふうになってくるわけであります。さらに鉄道網整備されるというふうなことでございますが、離島におきましては、何と申しましても、航路唯一交通運輸機関である。従って本法案に盛られておりますようなことは、離島住民にとりましてはきわめて切実な問題であると私は考えるのであります。ところが今日までこの離島航路というものは、なかなか離島住民の希望するような、期待するような航路が開かれてはいない。こういう実情も多々あるわけでございまして、この点は今後離島住民生活状況、さらに離島後進地開発という面から考えまして、十分考慮されなければならぬ問題であると思います。ところが、今まで政府で行なって参りましたものは、離島振興法というものがございまして、これが離島住民に対して後進性の打破ということで相当の寄与をしてきた。これも時限立法でございましたが、今日さらに延長されまして、今後この面に期待するところが多いのでありますが、航路につきましては離島航路整備法というものがあるのみでございまして、ほとんど今日までこれに対する国の補助、助成というものはない。しかもその整備法によりましても、きわめて限られた航路である、こういうふうに相なっております。そこでこの問題を解決いたしますのには、やはり航路補助の問題と、ただいまここに提案されております運賃の問題、この二つをあわせ考えていかなければならぬ。先ほど肥田委員からありましたような、他の何か特別な事業団等ができまして、ここに画期的な一つの方向が生まれることを私ども希望いたしますけれども、まあ一挙にそこまでいかないとすれば、この二つの面から考えていかなければ、離島住民というものは今後永久に本土住民人々と、国家の恩恵を受けます上において大きな差が生まれてくる、私はかように考えます。そこでこの航路につきましては、離島航路にいたしましてもなかなか運送業者採算面からいきまして、よい航路もありますし、また非常に経営の困難なものもあるわけであります。しかし困難だからといって、これが旅客船の航海の回数が減りましたり、あるいは離島におきます審港地というものが制限されますと、住民の受ける被害というものは非常に大きいわけでありますから、航路というものは少なくとも今日まで開かれておりますものよりもなおこれを開発していかなければならぬ、これは当然であると思います。そういう意味から考えますならば、この航路補助ということに対してなお一そう国が詳細な実態調査して、そして航路補助ということを積極的に進めていかなければならぬのじゃないか。しかしそれを進めるにいたしましても、住民の船賃に対する負担というものは、その面から申しますならば軽減しないのであります。御提案のように確かに今日汽車賃あるいは自動車賃というものもほとんど倍額に近いものが離島住民負担として支払わられておると思うのであります。それでなくても先ほどお話しがございましたが、非常に生活程度の低い、所得の低い離島住民としては、こういう非常に不便であり、さらに高い運賃を払わなければならぬという二重の負担がある。これはどうしても早急に解決しなければならない問題だと思うのであります。  まず海運局長にお尋ねしたいと思いますが、今後この離島航路につきまして、一そう実態調査をよくしていただいて、そうしてこの航路補助等についてさらに今後積極的に考え直してみるというお考えがあるかどうか、これをまず一つお伺いしたい。
  25. 辻章男

    辻政府委員 離島航路補助金につきましては、われわれもできるだけもう少しふやしていきたいということで努力して参っております。現在提出いたしておりまする予算案におきましても、前年度よりは約一千万円程度増額するような案で予算提出しておる次第でございます。なお将来の問題といたしまして、今お説がございましたように、離島航路実態につきましては一そう調査を進めまして、補助金増額等についてなお努力を続けていきたい、かように考えます。
  26. 内海清

    内海(清)委員 この航路補助にいたしましても、申請に対して査定の決算額というものがかなり開きがある。これも今日まで十分に行なわれていない。しかも予算面で見ますると、五千万円程度であると思うのであります。これではたしてそういうことができるかどうか。今日わが国におきまする離島航路の数というものはまことに多いと思うのであります。この補助が十分行なわれないから、業者サービス面においてこれを十分やることができない、回数が減る、あるいは船の設備その他が悪くなるということなのでありますが、海運局長ははたしてこの程度補助で現状においてはいいというふうな御認定がありますか。
  27. 辻章男

    辻政府委員 離島航路補助がいわゆる当該航路損失を十二分にカバーしているものでないことはお説の通りであります。そういう意味におきまして、私どもはなおこれらの補助金の増額に努力していきたいと思います。現状といたしましては、財政負担の問題もございまして、先ほど申し上げたような五千万円程度で来年度予算を実行していきたいということになっておる次第でございます。
  28. 内海清

    内海(清)委員 離島住民が今日まで産業、文化、経済の面で非常におくれた位置にあるというととは御承知だと思います。これを救いますためには、交通運輸の面を盛んにしなければどうにもならぬ問題です。このことは私がかれこれ申し上げるまでもないと思います。従って、今後この点において一つ積極的な当局の施策を強く私は要望しておきたいと思います。私ども本土住民離島住民との間におけるあらゆる面の格差というものに非常な関心を持っておるのでございます。少なくとも政治の面においては、乏しいよりもひとしくないということ、格差があるということが最も大きな問題だと私は思う。このことについては一つ当局も十分お考えいただいて、少なくとも来年度の予算においては、これらに対する十分の実態調査、さらに積極的な開発、援助ということに御留意願いたいと思う。  それから一つ提案者の方にお伺いいたしておきたいと思いまするのは、先ほどのお話によりますと、過渡的な一つの御処置だ、こういうように私は大体承ったのであります。もちろん事業団その他ができまして、そこで特別運賃などの設定ができて、これが行なわれればまことに私はけっこうであると思うのでありますが、現在は民間運賃半額を国が負担するということであります。ただこれが離島住民である、個人であるということを証明しますものは、何か特別なものをお考えになっておりますかどうですか。
  29. 村山喜一

    村山議員 離島住民であるという証明は政令にゆだねてありますけれども、市町村長が離島住民であるという証明を交付する。だから住民登録法によって登録されている離島住民については市町村長が証明ができるということになりますので、その表現方式を用いて第二条に掲げたわけでございます。
  30. 内海清

    内海(清)委員 そういうことより今のところ方法がないと思いますが、離島住民というのは、大体において大きい島でなければ業者の人もどこの人であるということは認定できると思いますが、これが少し複雑になりますと、そういう面にかなり問題が起きるのではないか。住民の人に一つはっきりした自覚が生まれておればけっこうなのでありますが、これはいろいろなところで割引券というようなものを出しましても、やはり問題があるわけでございます。そういう面につきましても一つ十分なるお考えを願いたいと思うのでありますが、この御提案の趣旨に対しましては私ども早急にこれの実現されんことを希望するわけであります。特に、先ほどお話がございましたが、貨物運賃の問題もございますし、この特例法で過渡的にはやむを得ないかもしれませんが、さらにもっと抜本的な対策が講ぜらるべきでないか、かように思うのであります。以上で私の質問を終わります。      ————◇—————
  31. 木村俊夫

    木村委員長 次に、海運業再建整備に関する臨時措置法案、並びに、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法及び日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  32. 久保三郎

    ○久保委員 先般来引き続いて二つの海運に関する法案についてお尋ねをいたしているわけでありますが、どうもお答えが大ざっぱ過ぎて、われわれには了解ができにくい面も多々あるわけであります。重ねて基本的な方向についてお尋ねをするわけでありますが、幸いきょうは朝田事務次官も見えられておりますから、朝田事務次官にも事によってはお答えをいただきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  33. 木村俊夫

    木村委員長 けっこうです。
  34. 久保三郎

    ○久保委員 それではそういうことにいたしまして、まず第一に、今回提案されている再建に関する法案のねらいは、先般もお尋ねしましたが、結局詰まるところは、日本の海運界の不況をこれによって打開しようということかと思うのであります。ついてはその不況の原因について明確な認識と対策がなくてはならぬと思うのであります。この不況の原因について、今までのお答えの中ではどうも明確でなさそうに思う。前提が明確でないから、よって出た政策もあまり明確でない、こういうふうにも思うわけであります。  そこで、この不況の原因についてでありますが、言うまでもございません、結局収益性が低いということ、収益性が低いのは何ゆえかということがまず取り上げられなければならぬ、この先般当局に要求しました資料によりましても、三十七年九月期決算によるところの収益性を見て参りますと、会社決算によるところの、いわゆる現実の決算によるところの償却をした場合、現実の償却をやって、その場合における収益率はどうかということでありますが、これは五十四社で五・〇九%の収益率であります。これがいわゆるノーマルな償却をした場合にはどういうことになるかというと、収益率は残念ながら三・〇六%、その他の産業から見ておりましても、これは言うまでもありませんが、いわゆる借入金の利子その他を払う以前の話でありますから、結局高金利その他の問題は、資本構成の問題については無関係でございます。単純ないわゆる海運企業としての利潤というか、収益率でありますから、ほかの産業に比べてもこれは一番低位ではございます。大体この海運業に見合うようなものは、一つには電気事業がございます。この収益率は、当局から提出されたものは六・九%であります。この減価償却は六・一五であります。もちろんこれは償却率は海運に比べては若干下目になっています。下目になっていますが、おおよそ一番低いのがこの電気業として六・九%。ところが海運の場合は決算そのままでいって五・〇九%、さらに正常な償却をした場合には三・〇六%というような低率なんです。この原因についてしさいに検討し、その対策を講じなかったならば、日本の海運界というものは残念ながらこれは先行き見通しは暗いというよりは、もう壊滅になるだろう、こういうふうな見方もできるわけであります。  そこでこの収益率の低い原因は何かというと、単純には二つある。積極的な意味では、いわゆる運賃収益が低いということ。収入の最大のものであるところの運賃収入が低い。さらに反面、これは言うまでもありませんが、海運企業のいわゆる資本投下、それが過大であるということ。過大であると言うと言い方は悪いですが、結局能率的な運営がなされていないという反面が出てくる。これは先ほど運賃収益が非常に低いということと密接な関係が、もちろんうらはらでありますから、あります。その原因は何かというと、一つにあげられるのは、これは過当競争だ。過当競争も、日本におけるところの海運企業内部における過当競争もあるだろう。さらには国際的な慢性的船腹過剰によるところの過当競争が出てくる。この二つの面をまず考えなければいかぬ。一つの国際的な船腹過剰対策としては、これは残念ながら今日展望はない。なかなかむずかしい。海運局長はいろいろ申されているのでありますが、努力はするにしても、これは非常にむずかしい。いうならば、まず第一に日本国内におけるところの海運企業の過当競争をいかにして排除するか、これが一つ、さらにもう一つは過当競争の結果から当然これは国際的にも関係がありますが、日本の海運業とこれの関係の荷主との関係、いわゆる運賃の問題、この問題をやはり考えなければならぬ。過当競争の結果、外国用船等もございますから、当然そこには運賃レートの引き下げが現象として起きてくる。これを利用するところの国内産業の問題が出てくる。こういう問題についてこれはどう考えていくか、さらにもう一つは、船価、いわゆる船舶の建造の資本というか、建造費というものははたして外国船に対して高いのか低いのかという問題、こういう問題を両方兼ね合わせて考えて、その結論として対策があるべきだと思うのです。この提案されたところの二つ法案一つは、五カ年とにかく利子たな上げをしてやろう、その間、元本の返還に充てて、少し身軽にしようということ、もう一つ法案は、開銀四分、市中六分まで利子を引き下げて建造利子を軽減しよう、こういうねらいでありまして、なるほどこの利子補給の改善については、一応当面低金利になりますから、この面では外国船との競争にも、計算上は、これはメリットがある。しかし、先ほど来申し上げたようなそのメリットが今日の海運業と荷主との間の関係から、必ずしも海運業のいわゆる歩どまりにはならぬではないかという観測であります。こういう基本的な問題についてどう考えるのか。さらには船価そのものが、輸出船との関係で、これは大体同じくらいになっておる。日本の輸出船といわゆる国内船との関係ではどうなのか、金利の問題は先ほど申し上げたような一つ法律によってある程度これは格差がなくなってきた。こう見るべきだと思う。しかしながら、船価そのものがはたして国内船は割高なのかどうか。聞くところによれば、輸出船に対しては、それに必要なところの鉄鋼いわゆる厚板はトン四千円の輸出奨励金が出ておるそうであります。日本船についてはこのトン四千円の格差がまず第一出てくる。こういう問題について対策が一つも今まで打ち出されておらない。しかも輸出船として建造された船は、日本内部におけるところの産業の長期用船計画を前提にしておる。この場合、当然日本の国内海運業の船との格差が出てくる。結局運賃をその分だけ引き下げられるという現象が出てくる。こういう問題についてはどういうふうに考えておるか。だから結論として将来の展望はどうなのか。この法案二つ出した展望としてはどうなのか。一つは、日本海運の将来の展望としてどういうふうに考えておられるか。なるほど法律の第一条の目的はわかったが、これに合致させるためにはどういう展望に基づいて、たとえば一つには今申し上げた日本の海運の将来の方向はどういうふうに持っていくべきか、その中身は言うまでもありませんが、主要定期航路におけるところの経営の規模はどういう規模に置いていこうという考えなのか、あるいはオペレーターの間の協調態勢というのはどういう方向へ持っていくようにするか、あるいは定期船については、その量と質、そういうものをどういうふうに置きかえていこうとするのか、あるいはそれに基づくところの将来の建造方式というか、建造の関係はどういうふうに持っていくか。さらには今後の日本海運企業のあり方としてどうなのか。全体の日本海運の姿としてどうなのか。もう一つは、今申し上げた日本の海運企業の姿というものをどうするのか。個々の企業というものをどういうふうに指導していくか。この集約によって再編成をするのだが。再編成によるところの個々の企業というものは、どういう姿を考えておられるのか。そういう点をくどいようでありますが、まずお尋ねしなければならぬと思う。いかがでしょう。
  35. 辻章男

    辻政府委員 海運企業あるいは海運企業体制のあり方という問題でございますが、私どもは、今回の法案によりまして数個の強力なグループが結成されることを期待しているわけでございます。これらが世界規模におきましても競争し得るような企業規模になり、また経理的にもいわゆる自立態勢がとれるようになりますれば、十分に国際的な競争にも耐え得ると考えております。この数個のグループにつきまして、定期船の部面におきましてもあるいはまた不定期船の部面におきましてもお互いに協調いたしまして、邦船間の過当競争を排除いたしまして、それによりまして国際的な競争にも協調していく、また国内間におきましても対荷主関係におきましても協調を保って、不当な運賃の切り下げ等のないように持っていきたい、かように考えております。特に定期船の問題につきましては、邦船間でも多数競合する航路があるわけでございます。これらにつきましては特に協調の度を進めまして、場合によりますればあるいは航路の交換等まで話し合いによって持っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  36. 久保三郎

    ○久保委員 全般的なお答えはありませんが、今の航路調整の話一つとりましょう。航路調整については、最近新聞でも、ニューヨーク航路について運航管理会社というか、一本化した管理会社をつくろうという話が出ておりますが、これは集約という法案が出たからなのかどうかという問題が一つ。あなたが航路交換までをやると言うのは、なぜそれじゃ今までやらなかったか。これはニューヨーク航路だけじゃなくて、日本が有するところの航路全体についての総合調整をはかる時期ではないか。そうでなければ、ニューヨーク航路だけをやりましても意味がない話なんです。第一それはなかなかむずかしい。しかも、この際はっきり申し上げておきたいのは、盟外船対策を何ら手をつけずに、ニューヨーク航路について一本化して航路補助をもらおうということは断じて許さるべきでないということです。打つべき手を打ってその上に国家助成が必要だとするならば、われわれはあえてそれは言わない。ところが盟外船の跳梁をそのままにまかせておいて、ここに一本化したものをやる、さらにこれに航路調整の補助金を出すがごときは、盟外船の肥やしになって、さらに運賃レート引き下げの過当競争を起こす。これは断じて国際海運の立場からもわれわれはとらざるところであります。これははっきり大臣にも申し上げる。盟外船対策については、政府は問題の本質をつかまずして今日までやってきている。われわれに言わせれば、実際いってこんな法案はものにならぬ。盟外船ばかりではなくて、今まで二、三申し上げましたような対策を講ずることが先決じゃないかと思う。あなたがおっしゃる航路交換も必要だというならば、その構想はどうするのか。グループが六つやそこらになるから協調態勢がやさしくなるなんというのは、前回申し上げた通りだ。決してこれがやさしいというふうには私どもは手放しでは考えません。だから定期航路については全般的な立場から航路調整をすべきだと思うんだが、そういう未来像というか、構想を持っておられるのかどうか。あなたは場合によればと言っている。そういう前提に基づいてこの法案を出してこられたのかどうか。いかがでしょうか。
  37. 辻章男

    辻政府委員 航路調整の問題は、非常に各会社の利害が対立するむずかしい問題でございます。私どもが今、集約をいたしました暁においてなお協調の歩を進めて航路調整にも進んでいきたいということを申し上げましたのは、いわゆる集約が完成いたしますれば、その集約されたグループの中におきましては、これは業務を一元的に運営して参るのでございますので、当然その限りにおいてはグループ内の問題として完全ないわゆる航路調整態勢ができるわけでございます。問題はグループ間の調整の問題でございますので、私どもは現在個々の会社が一応集約をしない前におきまして航路調整等の問題を考えるよりも、集約された暁において考えていく方がグループ間の協調も円滑にいく、かように考えておる次第でございます。
  38. 久保三郎

    ○久保委員 グループ内部の調整は当然できましょう。これだけは考えられます。しかしあなたがおっしゃる通り、グループ間の調整が今後たやすくなるという見通しは、実際言って何もありません。むしろ、これは見解の相違でありますが、われわれは金融機関中心の集約ということにとっております。そうなれば当然これは系列からいうところの荷主あるいは造船所、そう  いう関係が一連としてずっと出てくる。その場合にいわゆる債権保全という格好からいくならば、当然系列荷主の問題が出てくる。そうなった場合には過当競争がやはり、あなたの意見とは反対に出てきやしないかということなのです。だからそういうやさしい見通しがあるとするならば、政府において六つなら六つのグループ化した場合には、定期航路においては大体かくかくの航路調整なり協調態勢をとらせるのだというような見通しがなくてはならぬはずだと思うのです。これはどうなんですか。指導方針として持っておられるんですか、ないんですか。それとも自主的にやらせるのですか。
  39. 辻章男

    辻政府委員 各定期航路におきまする事情は、オープン・コンファレンスの問題もございますし、またクローズド・コンファレンスの運営している定期航路事業もございます。その他種々の個別的な特殊事情がございますので、一がいに定期航路事業について具体的にこういう基準でやるというようなことを言うわけには参らぬかと思うのでございます。また集約の態様も、私ども企業の自主性を尊重して、できるだけ緊密な強度な集約を望んでいるわけでございます。これは現在いろいろな動きがございますけれども、最終的にどういう姿になるかということはなおしばらく時日を要するのじゃないかと思うのでございます。これができました暁におきまして、基本的な考え方としましては、過当競争を排除して、日本全体としての海運の国際競争力が強くなるように、また個々の企業といたしましても自立態勢がとれるようにと念じておるわけでございます。これらができました暁において、協調の方向で具体的にそのときの情勢にも応じまして、また航路の事情にも適したような協調態勢をとらしていきたい、かように考えているわけでございます。
  40. 久保三郎

    ○久保委員 海運局長、今の問題で少なくともその法案提案してから今までのあなたの御答弁では、集約してとにかく過当競争を防ぐのだということがはっきりした答弁でありまして、あとは何にもありませんと言った方がいいのじゃないかと思うのであります。それではどうかと思うというのがわれわれの考えなんですよ。集約すればあとはなるようになるだろう、過当競争はとにかく、ものの計算からいけば、今日五十七社なら五十七社ありますものを六つのグループに集約するから、これだけでも過当競争は減るんです。なるほどその点はわかる。しかしもっと決定的なものは、それ以上に先に進むところの前進的な態勢というのが今まで一つも示されておらない。これはどうなのですかと聞いている。法案を出しても、少なくともどういう指導を今後やっていくかという一つの方向が示されなければ、これはちょっとどうかと思うのですね。あなたの方が提案しているところの集約を六つなら六つにするだけで、ほんとうに自立態勢ができるだろうかと私は心配しておる。だからあなたが答弁する限りでは、五年後には再び収拾すべからざるところの混乱が来るであろう、こういうふうにわれわれは予想せざるを得ないのです。これからこういうふうに指導していく、グループ間におけるところの協調態勢はこうだ、定期航路についてはこういう方向だ、不定期船並びにタンカー専用船についてはこういう方向だ、オーナーの機能はこういうところで勤めさせるのだ、そうすれば自立態勢がなっていくのだという説明をしてほしいのですよ。朝田次官、いかがですか。
  41. 朝田静夫

    ○朝田説明員 ただいまの集約後の実態について、定期航路を一例におあげになったと思いますが、定期航路の将来のブルー・プリントといいますか、そういうものを持たないで収益性が向上できるかという一つの問題を指摘されたと思うのでありますけれども海運局長が御答弁を申し上げましたように、航路の交換とか調整とかいうことは、各企業の利害関係に非常な影響を持っておるわけでございます。従いまして、今のような状態では航路の交換といってもなかなかそういうことが簡単にできないということで、少なくともニューヨーク航路の、今経営主体が九社ございますけれども、これを四つないし五つくらいに確約をいたしまして、その間における航路の合併等が、集約というものを通じて一つ航路の調整が行なわれるまず第一段階である、こういう考え方でございます。従いまして、その後の通常の方式というものを、ただいまも御指摘になりましたが、共同運営機構とかあるいはオペレーショナル・センターとかいうことをいっておりますけれども、こういう程度の、今行なわれているようなプールをするというような程度では、とうていアウトサイダーの出現に対抗して経営内容を改善しあるいは維持していけない、こういう考え方に立っているわけでありますから、この集約された四つないし五つの航路担当業者が、その間にそういった気配が自主的に出て参りましたのを、われわれがそれを取り上げて、やはり合理的に航路編成ということを考えていきたいということであります。クローズド・コンファレンスの分野におきましては、これは一社ないし二社、欧州航路におきましても三井船舶のメンバー・シップが認められまして三社になっておりますので、大体航路業者というのは限定されておるというふうに考えております。オープン・コンファレンスの分野におきましては、まことに国際的にも問題が多いわけでございますから、まず集約をいたしまして、後にその事態に応じて適切な行政指導が必要であると思います。当初からこういうブルー・プリントでいくんだ、こういう計画で強力に指導していくんだということについては、いささか私は今の段階ではむずかしい、航路の交換あるいは調整というようなことも、その集約された後の姿においてケース・バイ・ケースでものを考えていくべきであると思いますが、そこに紛争が起こりました場合には、海上運送法を改正いたしましたので、運輸大臣の調整権を発動してそういう弊害を除却して参りたい、こう考えておるわけであります。
  42. 久保三郎

    ○久保委員 なるほど、具体的にこの航路をどうするということまでわれわれは聞こうとはしないのでありますが、少なくとも全体的な航路調整ははからなければいかぬという構想はなくちゃならぬし、また再編成というか、集約した姿を見てからこれに合致した方策をとるというのも一つでありましょう。しかしわれわれが考えるのは、集約の姿というのはそういう今まで論議したような未来像をまず頭に画いて、そしてその中で集約というものは考えていかねばならないのじゃないかと私らは思うのですが、そういうものの考え方とは違いますか。
  43. 朝田静夫

    ○朝田説明員 おっしゃる通りでございまして、金融系列に即応して集約をして、日本海運のために考えて望ましい姿というものが曲げられておるじゃないかというお言葉でありますが、私どもも同感に考えます。しかし現実の問題といたしまして、これだけ借入金の過多の状況のもとにおいて、金融機関が、また特に市中金融機関におきましても、この法案で期待いたしておりますような御協力を得るわけであります。そういうところから過去におきますところの新造船の借金造船を通じて非常に密接な関係が金融機関と海運企業の間に存在いたしますので、これを無視して理想的な姿に集約をするということは、現実の問題としては非常にむずかしい問題であります。従って、あるべき理想的な将来の日本の海運の姿と、今申し上げまする現実の金融機関との関係におきまして、どう調和していくかという問題でございます。これを私ども政府計画のもとにこうあるべき姿を推進していくのだ、こういうことになりましても、企業家自体がこれは決断をし、方向をきめていくべき問題だと私は思うのであります。従いまして、その間に行政指導が行なわれましても、恣意的な行政指導をやるべきではない、官僚統制のそしりもございましょうから、その点は私どもはあるべき理想的な姿というものになるべく近づけるように現実の姿を調整していきたい。どういうところに調和点を見出すか、こういうことでまことにむずかしい問題で、企業家あるいは政府金融機関あるいは今後活動を開始されますところの整備計画審議会、こういったものがそういう御指摘の点を十分頭に置いて、その現実のもとにおいて、できるだけ理想的な姿に集約をして参りたい、こういうふうに考えておるのであります。
  44. 久保三郎

    ○久保委員 なるほど朝田次官の言う通り現実を無視してはなかなかむずかしいと思うのでありますが、私の言いたいのは、現実を全然無視しろということではありません。しかし金融機関の今日の責任もこれは問われねばなりません。不要な企業に実際に金を貸したという責任は、やっぱり金融機関にあると思うのですが、それ以前にやっぱり政府の政策の責任というものもあるのです。政府の責任は今日これで帳消しにしてほしいということでありましょうが、帳消しになるかどうか、これは国民に対してはちょっとむずかしいと思います。しかしいずれにしても、現実をあまりにも重視し過ぎて、国民的立場に立っての海運業の再建ということが、海運企業立場に立たず、金融機関立場に比重が置かれるのは、われわれ残念ながら賛成しかねる、こういうことを申し上げざるを得ない。いずれにしても、これは考えの相違でありますが、少なくともそういう方向について、もっとやはり明確に今日政府自身が方針を出さぬと、既定の事実として、今日もグループ化というか、そういうような集約化は進められつつある段取りである。その場合、それではコンクリート化された集約方針整備計画審議会にかかっても、この大方針を修正するまでの力は、運輸省というか政府にも、その審議会にもおそらく私はないと思うから、この法案がいわゆる形がつくまでの間に、少なくとも大方針は、あなたの方の考えをきっちり申し述べるべきであろうと思うのです。そうでないというと、どうも現実を重視しなければならぬというだけでいきますと、どうもそういう方向で集約の形が出てきて、申請が出てくる。出てくれば多少の手直しはできるかもしれませんが、少なくとも、その中心的なコースというものは修正不可能だと思うのです。だから結局便宜主義に陥って、法案通りにこれを全部集約してきたという形がとれたならば、政策の足らぬものを考えましょうというように、安易な道を選ばざるを得ない。そういうことになりますれば、五年後には再び混乱するだろうということを私は心配する。いずれにしても、見解の相違ということでありますが、もう少しこれは深く掘り下げて、あなたの方も御発表いただきたいと思うのでありますが、残念ながらそれ以上は出ないようでありますから、次に入ります。  この集約のメリットでありますが、今まで論議がありまして、海運局長からも大臣からも、それぞれお話がありました。しかし、それはあまりに大ざっぱ過ぎて、観念的である、こういうふうにわれわれはとらざるを得ないのであります。特にその中で、不定期船、あるいは専用船、あるいはタンカーというふうなものは、集約によるメリットは何かと聞きたいのです。どういうメリットがありますか。なるほどライナーについては、先ほど来のお話の通りに、海運界にとっては若干のメリットはありましょう。しかし不定期船あるいは専用船、タンカー、こういうものは、御案内の通り川船単位の経営が原則であり、またそうあるべきでしょう。そうなった場合に、集約のメリットというのは何に求めるべきでしょうか、いかがですか。これは朝田次官にお尋ねします。
  45. 朝田静夫

    ○朝田説明員 御指摘の通り、タンカーあるいは鉱石専用船、そういったものが一船単位であって、需要産業界とその船主との間に長期契約が結ばれ、荷物の保障があるということであるので、それは集約をしても、分離してやってもさしつかえないじゃないか、こういうことでございますが、荷主と海運業者との間の、そういった契約ができるまでの実情々考えてみますと、やはりそこに過当競争というものは存在するのであります。私どもはそう見ております。従って、こういったときに、先ほども久保先生が御指摘の通り運賃の低下ということが、やはり海運不況の一大ポイントである。こういう過当競争で、向こうが何ドルでやるなら、私は何ドルでやりましょうというようなことが行なわれて、経済界と海運界との間において対等的な、経済的な地位が向上されなければ、強いことは言えないわけであります。従って、ここで集約なり、あるいは合併、統合というようなものを通じて、一つ経営単位を大きくするということは、あるいは今まで答弁があったかもしれませんが、私は需要産業界と対等の経済的な地位が向上されるんだ、従って、言いたいことも、合理的なことであるならば言えるんだという態勢に持っていくことが必要であろうと思います。従って、石油なりあるいは鉱石なりというものに対して、従来からの海運企業の脆弱な経営の基盤からして、対等にものが言えなかったということには、いろいろ弱いこともあったわけでありましょうが、過当競争もそこに存在していた。こういう集約というものを通じて、私はやはり一船単位でものを考えるべきでない、海運界全体が経済的な地位が向上して、対等にものが言え、対等に運賃折衝もできるという状態が好ましい、こういうふうに考えております。
  46. 久保三郎

    ○久保委員 朝田次官のお話は、一つの理屈はあるようでありますが・全体的な観点からすれば、残念ながらそのメリットは、私はほとんど九牛の一毛にひとしいと、結論から申し上げたいのであります。あなたは御承知のはずだと思うのでありますが、この不定期船市場、あるいは専用船の市場、これはあなたが言うように、船腹需要者である他産業と対等の立場に立ち得ない現実というのを、やはり考えなければならぬ。ところが、あなたのおっしゃることでは、グループ化すれば、集約化すれば、これと対等に立てるというお考えのようでありますが、先ほど申し上げたように、いわゆる金融機関中心の集約化が行なわれれば行なわれるほど、残念ながら対等の立場には立ち得ずして、かえって隷属的な立場に立たざるを得ないではなかろうかと私は思うのであります。でありますから、あなたのおっしゃる、対等の立場に立てるから、運賃レートもより合理的なものができ得るということは、私はどうも残念ながら同意しかねる。そればかりではありません。不定期あるいは専用船市場においての問題は、先ほど来申し上げたように、たとえば外国用船を一つとりましても、外国用船の問題は、今日御案内の通りになっおります。ある程度の規則はありますが、それでも日本の不定期船市場というものは、これで運賃、引き下げの一つの要因になっている。さらには、このインダストリアル・キャリアの出現というものも、これは度外視し得ない現実であります。だから問題は、集約されても、不定期船、タンカー、専用船は、そのグループには現実に船はあるわけです。結局、一般単位の経営というものが否定し得ない現実です。そういうことを考えると、どうも御説明だけでは納得できがたい。だからむしろ、これを集約に関係あるなしにかかわらず、今日これに対してより効果的なものにするのには、一つは、次善の策としてこういうことがありはしないか。いわゆる用船というか、そういうものの手当は、全部海運企業に専属させる、いわゆる船腹需要者のやっているような方式は今度やめさせる、海運企業に船腹の手当は全部させるという方向に規制することが次善の策ではないか。まず第一にそういうような方向があるが、これについてどう思いますか。
  47. 朝田静夫

    ○朝田説明員 外国用船の問題でございますが、これも日本海運全体から見ると船はあるのだ、ところが外国用船をしておるというような事態も、過去においてあったのであります。現状におきまして、私は最近詳細にその数字等を承知いたしておりませんが、問題は、やはり各オーナーとオペレーターの間に、保障関係その他から結びつきができまして、御承知のような系列になっておるわけであります。これが、他の系列の船が余っていても、それを彼此融通して、外国用船に待たずして、自国海運の船腹を活用することが欠けておったということが、私は問題であろうと思うのでありまして、そういう観点からいたしましても、今度の、いわゆる集約というものを通じて、その単位を広げていくということになりますと、そういうセクショナリズムというものは撤廃されて、そこに彼此融通の範囲が拡大されていくのだというような考えに私どもは立っておるわけであります。
  48. 久保三郎

    ○久保委員 ちょっと私の質問が明確を欠いておると思うのですが、私の言いたいのは、今日は個々の荷主が用船できることになっております。そういうのはもうやめさせて、船腹を手当する場合は、みな海運業がやらなければならぬ。それは外国用船も含めてですよ。そうするならば、やはり運賃レートも妥当な道を遂げ得られるだろう、こう思うのです。これには若干法律の改正も必要かと思うのでありますが、少なくとも海運専業者にそういう船腹手当は専門にやらせる、個々の荷主の船腹手当というものはやめさせるということも一つ方法ではないかと思うが、いかがですか。
  49. 朝田静夫

    ○朝田説明員 私もちょっと問題を取り違えて御答弁申し上げたようでありますが、海運専業者でなければ外国用船の手当はできないのだというようなことを措置すべきじゃないかというお話でありましたが、これはやはり国際的に、荷物の手配、利用産業のそのときの商売のチャンス、あるいはつながり、そういったものからきまって参るのでございまして、海運業者でなければそういう手当をしないというようなことがはたしてできるかどうか、私どもは、久保先生のおっしゃるような方向に対して、好ましい方向だとは思いますけれども、これは全体の商業活動を規制いたすことになるわけでありますから、その点は、にわかにそういうことをするということをここで申し上げにくいと思います。なお検討はいたしてみたいと思います。
  50. 久保三郎

    ○久保委員 そういう問題について御検討はいただいておると思うのでありますが、どうも政府自体が外交的に弱いものでありますから、なかなかそういうことについては及び腰で、本腰が入れられないというところに問題があると思う。これを今のような形でおくならば、海運に対する助成のメリットというのは、毎回申し上げているように、船腹需要者の側にいってしまって、そういう大きな抜け道をふさがぬでいかなる助成をやっても、これは助成たり得ない。助成は助成をさらに呼び、最後には国家管理の方向にでも行かざるを得ないだろう。そういう観点からだけ日本の海運業というものを見るほかはないじゃないか。大体海運界は、今日の時点では残念ながら自主性を失って、あなたたちが期待するような方向にはなかなか行けないと私は思うのであります。これもいろいろ御異論があると思うのでありますが、いずれにしても、そういう大きな問題について真剣に御検討いただいてないのでは困ると思う。これは次回までに少し検討していただいて御返事をいただきたい。  次に、自立態勢を築くということは、先ほど私が申し上げたように、収益性を上げるということ、収益性をさらに増していかなければならぬということの一語に尽きると思うのですが、これはいかがですか。
  51. 朝田静夫

    ○朝田説明員 仰せの通りだと私は思います。
  52. 久保三郎

    ○久保委員 さすれば、収益性を減退させているいろいろな要点をやはり除去していくという点がなくてはならぬ。ところが、再建方策の利子たな上げは、これは決して収益性を増すものではありません。言うならば、集約という付録がついていて、これに若干のメリットがかけられているが、これも私たちの考え方からいえば、いわゆる定期船のみであろうということであります。そうしますと、この利子たな上げというのは、まあ自立態勢ということをうたっているが、残念ながら自立態勢のメリットは非常に少ない、こういうふうにも言えるわけであります。それは意見として申し上げて、どうせ見解の相違でありますから、押し問答しても話にならぬと思う。ただ問題は、それでは将来の収益性について、そういう整備計画の中における基準というか、そういうものはどういうようにしてきめていくか。言うならば、運賃レートについて、将来の方向としてどういう計算をして、どういう見通しに立って収益性が出てくるか出てこぬかという判定をするのですか。これは海運局長一つ
  53. 辻章男

    辻政府委員 私どもは、今回の集約によりまして、一面経費の減、それから収益の増高——この収益の増高という面におきましては、いろいろな態様があると思いますが、今後積極的に収益を上げていくという面、あるいはこのままでおれば収益が減になるものを食いとめる、そういうふうな面につきまして、各企業ごとに最大の努力を払ったものを整備計画に記載して、これについてケース・バイ・ケースに審査していきたい、かように考えております。
  54. 久保三郎

    ○久保委員 ケース・バイ・ケースというと、収益性が上がらぬという計画を出してくるものはほとんどないと思うのですが、これに合理的な判定を下すという基準がなくては、ちょっと判定がむずかしいではなかろうかと思うのです。あなたがしょっちゅうおっしゃるケース・バイ・ケースというのは、極端な言い方をすれば、なるようになりましょうということであります。だから、問題は、運賃の算定あるいは船腹の稼働、こういうものについてもやはり基準がなくては、そういうものさしがなくては、収益性が出てきたものについて上がるか上がらぬかわからぬと私は思うのですが、それはいかがですか。
  55. 辻章男

    辻政府委員 おっしゃる通り、船舶の稼働の問題その他について合理的な根拠がなければ収益性が上がるわけではございませんし、また私どもは、その点につきまして個々によく検討していきたい、かように考えているわけであります。
  56. 久保三郎

    ○久保委員 個々に検討していくというが、それでは聞きます。今の運賃レートから上向きに考えるのか下向きに考えるのか、あるいは横ばいに考えていくのか、それはどっちをとるのですか。  それから、もう一つ続けて申し上げますが、船腹の稼働は今日どういう状態か、御検討になっておりますか。
  57. 辻章男

    辻政府委員 将来の運賃の動向ということは非常にむずかしい問題でございますが、私どもの今の一応の考えといたしましては、不定期船等につきましては、現在の運賃水準というものは、過去の例から見ましても、あまりにも低いではないか。もちろん、これにつきましては、いわゆるバルク的なカーゴーにつきまして輸送構造の変更というものがございますけれども、現在のようにコストを大幅に割った運賃水準が長く続くということは、少し合理性を欠くのではないか。不定期船の運賃というものはある程度向上していくではないかというふうな考えを現在持っております。  それからまた定期船の運賃につきましては、個々の航路につきして、盟外活動その他の特殊事情がございますけれども、これも過去の例から見ますれば、大体四年ないしは五年ごとに、同盟におきましては一割内外の運賃率の値上げが行なわれております。それらの傾向は今後も続いていくのではなかろうか、かように現在のところ考えておる次第でございます。
  58. 久保三郎

    ○久保委員 不定期船は、今のレートは非常に低い、将来向上するだろう、それから定期船については、低いが、これも今までの経験からすれば四年ないし五年でもとに戻る、こういうお話でありますが、そういう理論的根拠は、何か科学的にございますか。  それからもう一つお答えいただかないのは、船舶の稼働の状況はどうなるのかということ。  それからもう一つ、定期船が低いということでありますが、御承知のように、今度は利子補給の増強によりまして、市中六分、開銀四分というように相なります。これをねらって鉄鋼業界等はすでに運賃レートの、それに見合ったいわゆる引き下げというか、これを現在強力にやっているやに聞くわけです。そこで、そういうものがいいか悪いかは別にして、今後の運賃レートのきめ方は原価計算に基づくのかどうか、そういう基準によって計算をしていくべきかどうか、そのお考えもあわせて聞きたいと思います。
  59. 辻章男

    辻政府委員 先ほど申し上げましたのは、不定期船なりあるいは定期船の一応の将来の見通しと申しますか、予想を申し上げましたが、これの根拠と申しますのは、大体定期船につきましては、過去の定期船運賃の動向、また不定期船につきましては、過去におきまする不定期船運賃の動向、それと現在の不定期船の運賃指数、そういうふうなものを勘案いたしまして、根拠にした次第でございます。  それから現在の船舶の稼働状況はどうかという御質問でございますが、ちょっとその意味がとりかねるのでございますけれども、私どもは、これは非常に一般論でございますが、船舶は定期検査なり中間検査のために大体一年間に一カ月程度は稼働できないので、あとは十一カ月稼働するというふうに考えておる次第でございます。その点稼働の意味を御説明願えれば、またお答え申し上げたいと思います。  それから現在鉄鋼業界等におきましては、利子補給が厚くなったがゆえに、なお輸送の運賃を引き下げたいという動きがあるが、それに対してはどういうことかという御質問かと思うのでございます。私どもは、利子補給を強化いたしましたのは、大体国際的な市場におきまして、日本船がそのレートで輸送をして適正な利潤を上げていけるために利子補給をやって、それによって邦船の利用を促進するとともに、また海運企業におきましても、適正な利潤を与えていきたい、かような考え方でございますので、今鉄鋼等でいろいろ検討しておられまする運賃レートというものが、現在の国際のレートに比べて不当に低いものであるかどうか、そういう点が大いに問題になると思います。これはそういうレートがかりに不当なものといたしましても、政府としてそれが不当であるというふうなことを言うべきかどうかにつきましては、非常に微妙な問題がございます。私ども関係の海運企業に対しまして、いわゆる不当なレートを引き受けることがないように十分な行政指導をやって参りたい、かように考えておる次第でございます。
  60. 久保三郎

    ○久保委員 そういうふうに考えていくというのだが、この運賃の展望というか、方針というか、そういうものがきまらなければ、収益力の増高というか、そういうことは、大きな比重ですから、できかねるものだと私は思うのです。単なる経費の節減などは、実際言って、もうこれは大したことはございません。だからそういう一番大事なところにとうも——もっとも運輸省だけできめ得られない問題もあると思うのでありますが、少なくともそういうものに対しての政府方針が大よそきめられなければ、整備計画が出てきても、あなたのおっしゃるケース・バイ・ケースで当面糊塗して五年間いくということになってしまうのではないか。  特にその中で、もう一つ方面を変えてお尋ねしたいのは、この整備計画というのは、集約された会社のそのグループの全体の効果、いわゆるメリットがあればよろしいのか、それともその百万トン単位の中には、御案内のように専属会社、系列会社がある、当然オーナーもそこに入るわけだが、そういう個々の問題は別として、集約されたグループ、そのグループの全体のメリットがあればいいのかどうか、これはどういうふうな判定をされるのですか。
  61. 辻章男

    辻政府委員 ただいま御質問のグループ全体としてのメリットがあればいいのかとおっしゃる意味は、グループ全体としてのメリットがあれば、それに参加をしておりまする系列会社でありますとか、あるいは専属会社があまりメリットがなくても、整備計画を認めていくのかというふうな御趣旨でございましょうか——その点につきましては、法律で今回の開発銀行の利子猶予措置を受けられる条件といたしまして、一定の集約とそれから五カ年間に未償却を解消するという、いわゆる自立態勢の基準というものを定めておりますので、あるグループにおきまして全体としては大いなメリットがありますけれども、専属会社であるとかあるいは系列会社のある一社が自立態勢の基準に達しないという場合には、その当該会社は、整備計画の承認が得られずに利子猶予の恩恵を受けることができない、そういうような建前になっておるわけでございます。
  62. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、集約グループ全体としても、グループの中にある個々の会社としても集約のメリットがない場合には認可しない、こういうことですね。
  63. 辻章男

    辻政府委員 例をあげて申しますと、甲と乙と丙と丁と四社が集約される。甲と乙と丙につきましては、おのおの未償却の解消という自立態勢の基準に合格するけれども、丁がその基準には合格しないという場合におきましては、甲乙丙の整備計画は承認されるわけでございますが、丁はこれが承認されない。結果といたしまして甲乙丙丁の集約自体はできますけれども、利子猶予措置を受けられるものは甲乙丙の三社になる、そういう結果になるわけでございます。
  64. 久保三郎

    ○久保委員 そういう場合もあり得るね。特に聞きたいのは、この間も申し上げたように、オーナーの問題です。オーナーの対策は何らないのか。しかも御案内の通り、用船料がその中で運賃レートと密接な関係があります。オペレーター自身はオーナーの用船料が低いほどよい。これは集約のメリットというか——集約以外のメリットがありますが、今の集約の方向でいくと、どうしてもオペレーターが自立態勢を築くためには、外へ向う対策は今日政府はあまりない。外延的なものではなくて、内向的なものはある。そこに集約のメリットを求めようとする。だとすれば、結局しわ寄せはオーナーに来るであろう。オーナーの用船料というものは、据え置きないしは低下させざるを得ない。だから今あなたが述べた甲乙丙丁、こうあった場合、甲乙丙というものがいわゆる利子猶予を受けよう、その場合には丁を引き込んでも、この中でいわゆるグループ化していった方が得だ——得だと言ってはおかしいが、そういうことになる。しかし日本海運全体の立場からいけば、丁がそういうことでは、全体の対策としては、これはあまりほめたものでない、こう思うのです。こういう問題について、とにかくオーナーの用船料というか、そういうものをいわゆる整備計画の中ではどういうふうに考えているのか。これは運賃関係がありますけれども、どうですか。
  65. 辻章男

    辻政府委員 おっしゃる通り、オペレーターとオーナー間におきまする用船料の問題は、オペレーターとオーナーと利害相反する問題でございます。しかし現実を見ますと、大体オペレーターがオーナーに支払っております用船料は、そのときの不定期船の市況を反映しておりまして、これによりまして、不定期船の市況の上下によりまして用船料も大体上下いたしております。もっとも現実の用船料の交渉は大体半年あるいは一年くらいのものが多うございますので、多少期間的なずれはございますが、傾向といたしましては、不定期船の市況というものとリンクしているということでございまして、現実のわれわれの見るところでは、オペレーターがオーナーに払っております用船料は、なるほど絶対額としては非常に低うございますけれども、オペレーターとしての運航経費というふうなものを差し引きまして、ほぼそれらのトントンというふうなのが一般の状態でございまして、今後もおそらくその状況はあまり変化はないのじゃないかというふうに考えております。従いまして、整備計画における用船料の見通しとしては、不定期船の市況とリンクするという考え方考えていきたい、かように考えております。
  66. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、この法案でいう第四条の一項一号のイ、この中にある専属会社、これはオーナーでありますが、「運輸省令で定める期間をこえて貸渡し」というのは、オーナーでございますが、期間用船という、これは大体五年以上と承知してよろしいかと思いますが、あなたが今おっしゃるように、一年ないし一年半で用船料をやはり改定するというか、その場合には、いわゆる期間用船は、用船の期間はコンクリートされるけれども、その中における用船料そのものは機動性がある、こういうことですか。
  67. 辻章男

    辻政府委員 大体第四条の専属船の専属会社がオペレーターとして契約いたしまする長期用船というものは、前に申し上げましたように、五年以上にいたしたいという考えでございます。  その内容でございますが、ここで要求いたしておりますのは、保有船も合わせて一つ企業単位として百万重量トン以上の船を運航するということを要求しているわけでございますので、その五カ年間におきましてもちろん用船のレートがはっきりときめておられるものはそれでもよし、用船料の額はきめないけれども、必ず五ヵ年間は用船をいたしますというだけでもいい、そういうふうな考え方で進んでいきたいと思います。
  68. 久保三郎

    ○久保委員 オーナーの自立態勢というものは度外視されるわけだと思うのですが、いかがですか。今の後段、五年なら五年、長期にわたっての用船料まで一応約束するということなら、それによって計算はできます。自立できるかできないか。ところがあなたの言うことは、そういうものをきめぬでもいい、とにかく用船期間さえはっきりしていればいいということでは、その場合はオーナの自立態勢は計算がしにくい、そういう場合もいいですか。
  69. 辻章男

    辻政府委員 そういうふうに用船料をきめないようた場合におきましては、現在の用船料を基準といたしまして、不定期船の運賃一つの見通しに沿って用船料が動くもの、そういうふうな条件のもとに用船料収入を計算して整備計画を出していただく、そういう扱いにいたしたいと思います。
  70. 久保三郎

    ○久保委員 その用船料の見通しというのは海運会社がやっていくわけですが、くどいようですが、そういうものの是非を判断する基準というのは、おたくでお持ちになってないのですか。持ってなければいいか悪いかわからぬと思うのですが、それはどうなんです。
  71. 辻章男

    辻政府委員 これはどういう形で運賃なりあるいは用船料の見通しを持つかという点につきましては、われわれとしてもある一つの非常にむずかしい問題でございますが、基準を持たなければ、出てきました整備計画の審査ができないわけであります。これにつきましては、定期船、不定期船については先ほど申し上げたようなことでございます。用船料につきましては、先ほど申し上げました不定期船の動向とリンクするという考え方でいきたいという考えを持っております。これは非常にむずかしい問題でございまして、今私ども考えとしては大体そういう考えでいかがであろうかという考えをいたしております。なお、海運企業整備計画審議会ができますれば、ここにお集まり願う方々にも私ども考え方を話をいたしまして、それらの御意見も伺って最終的な一つの基準をつくっていきたい、かように考えております。
  72. 久保三郎

    ○久保委員 それは一応基準をつくるわけですね。これは後刻つくるわけですな、いずれにしても。
  73. 辻章男

    辻政府委員 さようでございます。
  74. 久保三郎

    ○久保委員 それでは朝田次官に一つお尋ねいたしますが、この集約によりますれば、今まで提案された法律によりますれば、このオペレーター、オーナー間の系列はますます強くなる、こういうふうにとれるわけです。そうでなくても、日本のオーナーの機能は、計画造船が生んだ一つの特徴として、オペレーターとオーナーの系列は、早くいえば強い、そのためにオーナーの機能というものは硬直化している。こういうのが定説になっているわけでありますが、集約化によってさらに硬直化されるということになりますれば、日本の海運界におけるところのオーナーというのは、今までのオーナーの性格というか、機能というか、そういうものとは全然別個なものになるようにも考えられる。いかように考えるか。さらにオーナーの存在価値というものは、そういう場合にどういうふうに考えられておりますか、いかがです。
  75. 朝田静夫

    ○朝田説明員 まことにむずかしい問題で、答弁をどういうふうに申し上げていいか、実のところは自信がございません。しかし、御指摘のようないわゆるオーオーといいますか、自分の資金というものを導入いたしまして海運へ持ってきて、そしてロンドンのボルティック・エクスチェンジにでも引き合いに出して、世界の各国へ自由に出すというような、戦前において見られたようなオーナーの存在理由というものはすでに今はありません。日本に関する限りないと私は思う。それは累年にわたるところの計画造船の一つの片寄った落とし子であるというような見方もできましょうけれども、私は日本の中のオーナーというものは、それで存在価値がなくなってしまったとは考えません。それをどういうふうに今後オーナーというものを考えていくか、あるいはオーナー対策を考えていくかということになりますと、私はオーナーだけについての対策というものは講ずべきでないと考えて、それは日本海運全体として考えて、その結果がオーナーにはね返って、それがプラスになるというのが政策の立て方の筋であると思うのでございます。オーナーをどういうふうに救おうかということは、私はあまり合理的でないように思うのでございます。そこで従来のような定期預金をおろして船をつくったというようなオーナーは、私は戦後において今御指摘の通り存在しないと思いますし、今後もなかなかむずかしいものだと思いますが、しかしオーナーのメリットというものは、今まで言われておりましたように、経営責任者の分散、危険負担の分散あるいは従来からの父祖伝来の家業として船員の管理ということが非常に大事な仕事であったと私は思うのでありまして、現在といえども、血の通った労務管理というものがオーナーの間に行なわれる、大会社におきますところの労務管理よりも、そういうつながりといいますか、そういったところで行き届いた労務管理ができるようなメリットを持っておることが一つであろうと思います。それからまた一般管理費その他につきましても、大会社のようなベースの高いようなことでなしに、いわゆる店費の安いので運営をされておるわけでありますから、保船ということと船員管理ということとそれからもう一つはそういった今申し上げたようにコストが低い、これについては、なお私はオーナーの存在理由は今後とも継続していけるのだというふうに考えるわけであります。
  76. 久保三郎

    ○久保委員 オーナーの技量というか評価については、戦前に比べればだいぶ違う、これはその通りであります。しからば、あなたが言うように、結論としては、いわゆるコストが低いというところに存在価値があるようにも思う。あるいは危険分散という一つの効果もある。大体この二つぐらいかと思う。ところが危険分散の問題は別として、コストが低くなるということは、言うまでもなく、オーナーは今日のオペレーターをささえてきた一つの支柱になっておる、逆に言えばですよ。はたしてそれでいいかどうかということ、しかも今度の集約の体制の中では、あなたがおっしゃること自体を是認した立場でオーナーを集約していこう、オーナーの機能を拡充するとかあるいはオーナー企業を前向きにしようということよりは、何か聞けば、危険分散というのが一つある。これは資本の側から言うところの一つメリット、あるいはコストが低いのだ、店費が安いのだ、それだけではどうも集約する値打はないように思う。私の話もちょっとわかりにくいかと思うので、それじゃ逆に聞きますが、このオーナーを集約する値打、メリットは何だろうかということです。オーナーも海運企業であります。今度の集約の中心課題は、オペレーターに問題が移っていると思うのであります。そうじゃないとするならば、オーナーの集約によるところのメリットは何に求めようとしておられるのかということ、それから二番目のお尋ねは、オーナーの存在価値というのは、今次官がおっしゃるような二つだけか、そうだとするならば、これは別な方策がありそうだ、こう思うのです。いかがですか。
  77. 朝田静夫

    ○朝田説明員 オーナーを集約の対象にいたしましたのは、御承知のように日本海運企業全体をながめてみますと、オーナーというものの割合が非常に大きな比重を占めております。これを度外視して海運対策を行なうということはできない事情にあるわけでございます。それと同時に、日本の海運が立ち直るように持っていきたいというときに、この相当比重を占めておるオーナーというものを度外視しては、また相互関連でオペレーターの足を引っぱりますし、オーナーが悪化すれば、オペレーターの足も引っぱってくる。相互密接な関連が断ち切れないという意味において、私どもはやはり集約の対象にしていきたい。それと同時に、オーナー、オペレーターを問わずして、日本海運全体の再編成といいますか、地図を書きかえていくのだという考え方からしてオーナーを入れたわけでございます。  実質的なメリットは何かというお尋ねでございますが、今申し上げたような密接不可分な関係というか、強い靱帯を持っておりますので、またオーナーそれ自体がその景気の動向に従ってオペレーターの扱い船を提供する相手方を変えてみたりというようなことでは、変貌いたしますこの輸送構造にも対処できない、こういうような考え方をとったわけでございます。  その次にコストが低いからということだけでオーナーの存在理由があるかというお尋ねでございますが、これは私が先ほども申し上げましたように、船員の労務管理にやはり血が通っておるということと、自分の船であるということに対する保船の観念というものは牢固として抜けない強いものを持っておる、こういったいい点は、やはり十分持続して持って参らなければならぬということで、コストが低いということだけでオペレーターに犠牲を強要しておるというようなことは毛頭ありません。
  78. 久保三郎

    ○久保委員 犠牲をしいる考えは毛頭ないという強い発言でありますが、現実の問題として、この集約が進めば、おそらくそういう結果を生まざるを得ないであろうというわれわれの危倶は払いのけるわけにはいかぬと思う。むしろあなたがおっしゃる通り、オーナー、オペレーター間は、海運市況によってお互いに足を引っぱるという、そのきずなを切ることが双方のためではないかと思う。なるほどこれは容易でない。債務保証をどこで肩がわりするかという問題も大きな問題であります。しかし海運界の再編成ということになりますれば、しかもあなたのおっしゃる通り、オーナーの存在価値を認められているとすれば、これはむしろオペレーター中心の集約から切り離して、オーナー自体のグループ、集約化を考えるべきではないかと思う。そうすることの方がオーナーの存在価値もあるし、双方のメリットをつけるものではないかと思うのだが、こういう点についてどう考えますか。
  79. 朝田静夫

    ○朝田説明員 この法案で要求をしております過程において、オーナー同士の集約というようなことをやって参るということも、この法案の実施の段階において起こってくるのではないかと予想しておるのでございます。ただ、その強固な靱帯があるから切り離せないというような御説明を申し上げましたが、切り離してしまったらいいのではないかということにはならないと私は思うのでありまして、切り離してしまって一体どうするのだということがむずかしい問題でございます。そこで今の現実をながめて、そういう靱帯を強固にしながら、オーナーも立っていくように考えておるのでございまして、オーナー相互間におけるそういった結合というものは、ここで否定をしているようなわけではございません。
  80. 久保三郎

    ○久保委員 否定をしておらないということでありますが、しかしオーナー同士の結合というのは、この法案からは何も生れてこないと思うのですが、この中に何かオーナー同士の結合についてありますか。
  81. 辻章男

    辻政府委員 いわゆる法案の第四条の集約の条件のところには特に言及しておりませんけれども、オーナー同士が合併をしまして、これが一つの専属会社として整備計画提出することを否定しているわけではございません。そういう意味におきまして、オーナー間の合併を否定しているということではないわけでございます。
  82. 久保三郎

    ○久保委員 否定はしていないが、奨励はしていない、どうですか。
  83. 辻章男

    辻政府委員 特にオーナー間の集約、合併ということに対しまして、メリットを認めていないわけでございます。それは先ほど次官からもお答えいたしたと思うのでございますが、今回の集約が日本の海運全体を大きく再編成していこう、ところが現実にはその海運界に占めますオーナーの地位が相当高いものでございまして、これを無視した集約というものはあり得ないのじゃないか。そういうことで、海運界全体としての集約の中にオーナーもひっくるめて考えていこう、そういう考え方でございます。
  84. 久保三郎

    ○久保委員 よくわからなかったのだが、あなたがおっしゃるように、あるいは次官がおっしゃるように、集約の中に全体としてオーナーを含めていくというのは、手かせ足かせ、そごになるのはオペレーター、オーナーの系列、いわゆる靱帯、そういうものが一番問題になっているのじゃないですか。問題になっている点をそのまま包み込んで持っていくことは、将来に対しても禍根を残すじゃないか。もし日本海運業の再編成を企図するならば、しかもオーナーの存在価値を認めるならば、やはりオーナー自身のグループ化を考えるべきだとわれわれは考えている。もちろんオ−ナー自体で成り立つはずはないのでありますから、当然オペレーターの関係が出てきますが、これは新しい意味でのやはりそういう関係をつくるべきだと私は思います。今のお話は、ここには書いてないが、否定はしませんと言うのですが、奨励はしないということですか。もう一ぺん簡単に答えて下さい。奨励はしないが否定もしていない、こういうことですか。
  85. 辻章男

    辻政府委員 法文の点に触れてないことは同じでございますが、私どもの気持としましてはオーナーもやはりある程度の規模になることが望ましいわけでございますが、特にそれについてメリットを認めてないということでございまして、オーナー間におきまして合併等が行なわれることは望ましい、かように考えておる次第でございます。
  86. 久保三郎

    ○久保委員 そのメリットを認めないというのはどういうことですか。なぜメリットを認めてないか。オーナー同士の合併あるいは集約はメリットがないということか、ほんとうにわかりませんので、どういうわけかお尋ねしたいと私は思います。
  87. 辻章男

    辻政府委員 今メリットを認めないと申しましたのは、オーナー間だけの合併をすることによって利子優遇の措置は与えないのだ、集約の全体を考えまして、専属会社という形をとらなければ、利子優遇の措置を与えないということでございます。
  88. 久保三郎

    ○久保委員 提案された趣旨からいってそうだというのですね。メリットがないということでなく、与えないということですね。それなら話が違うのです。そうでしょう。恩恵を与えないということですね。だから僕が聞いているのは、メリットはないと言うから、なぜないのか、こう聞いているのです。
  89. 辻章男

    辻政府委員 どうも言葉が間違いまして、恩恵はないという意味でございまして、メリットがないということではございません。失礼いたしました。
  90. 久保三郎

    ○久保委員 今度の法案のねらいは、大きなメリットは何ですか。ばかばかしい話を聞くようですが、大きいメリットは日本海運を寡占状態に置くということですか、どうなんです。
  91. 辻章男

    辻政府委員 大きな目的は日本の海運企業を寡占の状態に置きまして過当競争を防止するとともに、それらの企業が自立態勢をとり得るように企業の基盤を強化していこうという二つでございます。
  92. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、寡占の状態によしんばこの法案で置かれても、これは法案の一側面であって全部でない。むしろその次あなたがおっしゃった自立態勢を日本の海運企業にとらせるのだという、寡占の状態に置くというのは、言うならばもう一つの側面のようだったが、これが自立態勢に置くというのがねらい、その方法手段として寡占の状態に置くということですね。そうだとするならば、さっきからお話し申し上げているオーナーに対してメリットというか、何で恩恵を与えないのか、オーナーの自立態勢を築かれるならばそこに恩恵を与えるべきだ、そういうことはどうですか。
  93. 辻章男

    辻政府委員 集約は日本の海運全体としての集約を考えているわけでございまして、オーナー間の合併というだけでは開発銀行の利子優遇の恩恵措置は与えない、そういう考え方でございます。なぜそれだけについて与えないかということでございますが、これは先ほども申し上げましたように、オーナーにおきましてもいわゆる文字通りの一ぱいだけ持っておりますオーナーよりも、通例やはり四、五万トンの船腹を擁した方が、オーナー自体の経営規模としても適当であるということが経験的にいわれておるわけでございます。しかしオーナーの数が相当ございましても、これとオペレーターとの間の折衝におきましていわゆる過当競争的な動きは現在ございませんので、特にオーナーの集約の条件としてオーナー間の合併ということを条件にするほどのことはないではないか、適正規模になるように合併されることは望ましいことではございますけれども、それを大きな条件とするほどまでする必要はないのではないか、かような考え方でオーナーの合併の問題は利子優遇措置の条件とはしなかったということでございます。
  94. 久保三郎

    ○久保委員 それは、今の状態からいけばその通りです。しかしオーナーの一番大きな問題は、朝田次官からもお話があったように、オペレーターとの靱帯を切るということであります。それをそのままにしておいては——あなたもおっしゃる通り、それがなければこのままでいいです。それはもう必要悪ということで是認するならばこれでいい。しかし日本海運界の前向きの姿勢をつくり、再編成だというのには、少し問題が残りそうだということです。だから問題は、オーナーの内部においてどういう問題があるか、オーナー自体の問題点は何でしょうか。何も問題ありませんか。何もないのなら、なるほど今のオペレーターの靱帯はそのままでいい、何の支障もないのだから。しかしそうかどうか、オーナー内部において問題がないならば、この靱帯も認めていこう、これもいい、ないのですから。いかがですか。
  95. 辻章男

    辻政府委員 オーナー自体にももちろんいろいろ問題はございますが、ただ、いわゆるオペレーターとの間の靱帯を切るということによりまして、今オーナーの直面しております問題が解決するかどうかにつきましては、いろいろと論議があると考えるのでございます。私どもの見方から申し上げますれば、現在の世界の用船料の市況あるいは不定期船の市況から申しまして、これで今オペレーターとの間の靱帯を切ったがゆえに、オーナーとしては非常に収益性のある船の回し方ができるかどうかという点について大きな疑問があるのではないか。それからまた現在のオペレーターとオーナー間の用船料を見まするに、いわゆるオペレーターが相当な運航によりまして利益を上げながら用船料を低くいただいている、そういうふうな事例はないように見受けられますので、オペレーターとオーナー間の靱帯をとるということが、オーナーの更生の非常に大きな要素になるかという点については、私ども実は大きな疑問を持っているような次第でございます。
  96. 久保三郎

    ○久保委員 靱帯のいい、悪いについては、見解の相違も多少ございます。この靱帯を切るというのは、それにだけメリットを置くという考えではない。むしろオーナー自体の内部に問題点はないのかというお尋ねをしているわけなんです。たとえばオーナー自体が今当面しておるものは、非経済船の保有という問題が一つの大きな問題でしょう。この処理は残念ながら今のオーナーの姿ではできません。それならば今度の集約によってこれが可能かどうかというと、これまたできないと思うのです。あなたがおっしゃるように用船料をことさらに引き下げることはない。ところが船腹過剰の今日の状況からすれば、自然的に、意識するとしないとにかかわらず、低用船料をしいられることは現実の姿なのです。だからこの靱帯を切って、その内部に保有するところの非経済的なものを排除するというのがオーナーの再編成でなくてはならぬと私は思うのです。そういうことについては別段お答えがないのでありますが、朝田次官どうですか、オーナーの内部にはもう問題はないのですか。私は靱帯の話ばかりしているけれども、靱帯を切ることは手段方法でありまして、これは別に問題はないのです。そういう系列を切るということ自体が一つの前提になりはしないか、そうしてオーナー内部の不良要因というものを排除することが再編成の姿ではないか、そこにメリットを置くことが先じゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  97. 朝田静夫

    ○朝田説明員 オーナーの今の経営内容から言えば、御指摘の通りだと思います。ただ不経済船があるから——不経済船でもいろいろの原因から来ている不経済船がありましょう。久保先生が初論でおあげになっておるようないろいろな理由から来る不経済船、これを一言に不経済船と申しますが、そういうものを処理するということがやはり問題の中心になると私は思います。しかし、それだけを考えると、そういう対策が必要ではございますが、まず第一にこういう再建整備措置を打って、そうして企業の中でそういう不経済船というものを合理化して吸収できるものならば、やはりそういうことが本筋である。再建整備のこういった企業の努力を通じてやる。直ちに政府が不経済船ということに手をつけないで、こういう海運再編成という大きな立場からやっていきますと、その努力の過程において解決できる不経済船もあるわけであります。不経済船というものはオーナーだけに存在するものではございません、御承知通りでありますが。オペレーターにも不経済船というものはあるわけでございます。従ってオーナーの不経済船対策なんというものは、それだけ別個に取り上げてやれるものじゃないというふうに私ども考えておるのでありまして、まずこの関門を通して、この関門を通過する過程において企業の中で吸収をしていく。そうしてあと残ったものを一体どうするかという問題が次の段階に来るのでありまして、その次の段階について私は今ここでそういう必要はないということを申し上げておるわけじゃございません。その事態の推移に応じて政府としては慎重に考えなければならぬ、こういうふうに考えます。
  98. 久保三郎

    ○久保委員 あなたがおっしゃることもその通りかもしれないが、われわれが言いたいのは、この企業集約の中で一応解決したいというが、私らは出発点が違うのであります。金融中心の集約で行けばなるほどオペレーターまでは救えるかもしれない。しかし一番系列の下であるところのオーナーは、この犠牲にならざるを得ないという前提がある。これは私の言うことが当たってくるかどうかは五年先の話でありますが、私どもは現時点から考えて、そういうしわ寄せがオーナーに来ると思う。オーナーは一ぱい船主といわれるものが多い。この一ぱい船主にしわ寄せが来るならば、これは残念ながら集約の効果というか、全体的な日本海運の姿からはどうも効果が出てこぬではないか、というよりは、これではまずいと思うのです。そこでその系列から離れて集約をしていく。系列の内部にいては今言った非経済船の処理にしてもなかなかうまくいかぬ。そういうものよりは、オペレーター自身の自立態勢が先行する、こういうふうに考えざるを得ないから、だからむしろその範疇からはずしていくべきだろうという私の考えなんです。これはあなたたちと意見が違いますから、五年先の話として私は一応そういう話をした。あのときも話をしたじゃないかということを五年後に言いたくはないのであります。もっともそのころおたくの方はおいでになるかどうかわかりませんけれども、私はおるつもりでありますから、いずれにしてもそれは五年後の課題にしておきましょう。  ところで、これは資料として出して下さい。船腹稼働の状況というのは、いわゆる積荷回転率と言うか知らぬが、汽車で言うなら運用効率、稼働したって船が十分の一も積まぬでおるのもありますし、満ぱいでいくのもある。そういう稼働状況はどうなるか。この集約によってそういうものも方法によっては稼働率を高めていくというふうになるなら、そういう方策はどういうふうになるのか、これをちょっと計算してほしい。  そこで先ほどの問題でお答えがないのは、輸出船に対するところの鉄鋼奨励金がトン四千円あるそうです。こういうものがあること自体、日本の造船業を振興させることに相なるし、いいと思うのです。しかしながら国内船の建造に対しては不当な差別であります。こういう問題について運輸大臣は、今まで何か所管大臣とあるいは閣議において方策をとられていることがあるかどうか。これは御案内かと思うのでありますが、今度金利引き下げをおやりになるわけでありますが、たとえば六万五千トンの船をつくる場合には、鋼材約二万二千トン必要だそうであります。そうなると、これは船価で約一億の開きが出てくる、こういうことであります。そういうものを放置しては、残念ながら集約してもメリットは上がらぬのではないか。というのは、日本の造船所で船をつくりまして、日本のいわゆる船腹需要者にこの船を提供するといった場合に、日本の海運界はこれに対抗できない。今の話はタンカーでありますが、すでに六万五千トンのタンカーの船価自体にも、一億の差が出てきている。これでは利子補給をさらに増強したり、あるいは利子たな上げをしたり——利子たな上げは直接関係はありませんが、これは残念ながらあまり効果が上がらぬのではないか。そういう点についてはどうなんですか。
  99. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私もその話を聞いて、まことに不合理だと考えておりますが、やはり鉄鋼事業一つの基幹産業でございまして、海運業と比肩すべき、もしくはそれ以上の多額の投資額を持っておりますから、政府といたしましてはそういうことをやっておるのだと思いますが、海運の立場から申せばまことに不合理でございますから、強く通産大臣にその是正を要求いたしております。なお、輸出振興の面からそういうことがやられておるのが重要な原因の一つだろうと思いますが、外貨事情が好転し、輸出がよくなるようなことになれば、自然にそれは通産大臣も考慮するだろうと私は思って、しばしばその話はしております。しかし、現実は残念ながら久保委員が指摘する通りであります。
  100. 久保三郎

    ○久保委員 続いてお尋ねをするわけでありますが、本日は本会議もあるそうでありますから……。  ただきょう朝田次官にお尋ねしたい重要なことは、オーブン・コンファレンスにおける盟外船対策について、私どもは御案内の通り先般海上運送法の改正を出しているわけです。これに対して政府はこの国会の初めごろは官房長の方から、非公式でありましたが、海上運送法の改正を提案するというお話でありましたが、最近はそれは取りやめということよりは、業界もこぞってそういう盟外船対策の海上運送法改正などはやってもらわぬ方がいいという空気になっているそうです。その事情については大よそわかっておりますが、なぜ当初やろうとしてだめになったのか、その事情を聞きたい。  それからあなたは今までたびたび海運関係の国際会議にもお出ましになりましたが、海洋の自由というものはどういうふうに日本政府は理解しておりますか。
  101. 朝田静夫

    ○朝田説明員 海上運送法の一部改正法律案を私ども考えて、国会に御審議を願おうと思っておったのでございますが、国際的な反響その他もさらに詳細に検討をいたしまして、今の段階におきましては、私どもが改正をしようという内容についてはなお検討しなければならぬというふうな結論に達しておるわけでございます。  そこで、海洋自由の原則というものをどう考えるかというお尋ねでございますが、これは私が一言で申し上げるのは非常にむずかしいのでございますが、およそ一国の考え方なり一国の法律でもって国際産業である海運というものを規制するということは、あるいは国家が介入するということは好ましくない。海洋自由の原則については十八世紀以来いろいろな考え方がありますけれども、そのときどきによって、時代の変遷によって変わって参ると思います。また国家が介入したり規制をいたしたりすることを排除することが海洋自由の原則だともいわれておりますけれども、言っておる国が利害関係を持っておるのでそういうことを言っておるというような見方もありまして、私どもはこういう国際的な商業活動に国が介入をいたしますと、国と国の力の争いになるということで好ましくない、こういう考え方を私どもは持っておるわけでございます。
  102. 久保三郎

    ○久保委員 おっしゃる通り、原則論としてはそういうことだと思うのです。国際企業政府の権力が干渉することは好ましくないし、またやるべきじゃない。しかしその場合、消極的な考え方として、国際企業を健全に発達させるというのは、各国政府の海洋自由の原則から見ても当然だと思う。これに対して海洋が自由であるから何らの手出しはしないでいいということであれば、真の海洋の自由はあり得ないと思いますが、そういうことについてはどうですか。
  103. 朝田静夫

    ○朝田説明員 これは、まさに御指摘のことが今世界の海運界で一つの大きな問題点になっておると思います。昨年でありましたか、イギリスの運輸大臣が、多年海洋自由の原則を標榜し、守り続けてきたイギリスも、この点についての配慮を欧州十カ国の運輸閣僚会議に持ち出しておりますことは御指摘の通りでありまして、海洋自由の原則が、自由放任主義の海洋自由の原則から、今申し上げましたように、変わってきておる。従って、海洋自由の原則を守るために何らかの規制をする、あるいはもう一つ考え方は、いわゆるアンチ・トラストといいますか、独占禁止の思想で国際カルテルを規制していこうという考え方があるわけであります。それは現実の問題として、国際カルテルというものを野放しにするということが反トラスト的な精神からも言えることである。今久保先生のおっしゃるような海洋自由の原則を守るための自衛手段といいますか、そういう考え方で規制をしていく考え方もございましょう。その二つ考え方が私はあると思いますけれども、これはやはり海洋自由の原則が、自由といっても時代とともに考え方が変わってきておる。しかも欧州十カ国においては、その問題については討議されておるという考え方からいたしまして、内容は非常に古い原則ではございますけれども常に新しい問題であると私は承知いたしております。
  104. 久保三郎

    ○久保委員 そこで海洋の自由といわゆる競争の自由というものが新しいテーマとして今日問題になってきております。これに対する識別と方向がなければ、海洋の自由は守り得ないと思うのです。やはり競争の自由に対するいわゆる反トラスト的な思想というものは、古い海洋の自由では対抗でき得ないと私は思うのです。そういう意味で私は先ほど申し上げた通りですが、政府自体は今朝田次官の御答弁の通りに今日海洋の自由を了解しているのですか。そうだとするならば、今日オープン・コンファレンスにおけるところのアウト・サイダーの規制について、海洋の自由を新しい観点から守るという立場からも、わが国は当然率先して海上運送法の改正によってこれを防ぐべきだと思うのですが、それはどうなんですか。
  105. 朝田静夫

    ○朝田説明員 そういう考え方が、あるいは私ども先見の明がないということになるかもしれませんが、今申し上げましたように、国際海運会議におきますところの一つの大きな問題点でありまして、そういう考え方を国会で御論議いただくということは、私は世界的な注目を集めるのじゃないかと思う。そういうことで、海洋の自由の原則ということに対する一つの反省というか、そういうものに対して各国がどう考えるか、それから現実の国際産業である海運というものを、一国だけの考え方で、海洋自由の原則を守るのだから規制をするのだということになりますと、みんなそういう論拠でもって規制が始まる。国家の介入が始まってくる、こういうことではたして円滑な国際産業の海運というものが自由であるだろうかという問題になると私は思うのでございます。結論を申し上げますと、こういうものに対する規制というものは、反トラスト法的な考え方と海洋自由の原則それ自体を守るための規制という考え方二つあるわけですが、そういうところから一体どういうふうに規制をしたらいいかということについては、一国だけの考え方でなしに、多数国家間の条約なり協定なりによって問題を解決すべきだ、従ってそれに対して協定なり条約が結ばれますと、それに対応して国内法も改正をしていく、こういうふうに私は考えております。   〔「名答弁だ」と呼ぶ者あり〕
  106. 久保三郎

    ○久保委員 なるほど、名答弁という声がかかりまして、ほんとうに答弁としては名答弁ですが、ただ問題は、世界の海洋の自由の中には当然わが国も海洋の自由を享受する権利がある。その海洋の自由が侵されている場合にどうするかという問題です。それをしもあなたが言うように世界各国で全部相談してという、そういう今日の情勢にあるかどうか。世界的な船腹過剰という問題一つをとっても、今日これを解消する手段、方法は見つけ得られません。  それからもう一つは、御承知のように、競争の自由という問題が非常に大きくなっている。貿易の自由化もその通りであります。さらにもう一つは、新興海運国のいわゆる権利主張、これも私は否定し得ない現実だと思うのです。そういう現実を目の前に置いて、いわゆる海洋自由の原則という、十八世紀以来の古典的な思想が頭に重くのしかかっていたのでは、冒頭に申し上げたように、わが国の海洋の自由も侵されっぱなしではないか。これに対して守るという手段は許さるべき手段であるし、正当だと私は思う。これはどうなんですか。
  107. 朝田静夫

    ○朝田説明員 現実の問題といたしましては、欧州の運輸閣僚会議先ほど申し上げましたような動きをいたしておりますし、現にこういった反トラスト法的な精神から、欧州十カ国がまずそういう国際海運調整機構というようなものを考えてみたらどうか、そこへ日本とアメリカとを参加させたらどうか、こういうことで昨年の三月に欧州各国で会議を開かれたことがあります。従いまして、理由は海洋自由の原則を守るのだから、国内法でもって規制するのだということになりますと、各国ともにそれぞれの動機でもって国際産業というものを一国の考え方で、あるいは一国だけの法律の規制でする。自由なるべきことが現実的に考えて最もいいのでありまして、そういうものに対する規制が始まりますと、海上国際交通というものが円滑に行なわれないというふうに考えるのでございます。そこで自由を守るためにそういうことを規制すべきだという御意見は私どももよくわかるのでございますが、アメリカのやっておるような海運政策というものはいけないのだ、悪名の高いボナー法というものに対して、世界各国ともにこれに対して抗議をいたしておるわけでございますから、そういう動機はなるほどいいにいたしましても、日本も同じような措置をとるということになりますと、国際的に信を失うという、少し大げさな言い方をして恐縮でありますが、従来ともに海運自由諸国と協調をいたしまして、アメリカ海運政策に対して強く抗議をいたして参りました私ども立場というものが自己矛盾を来たすという、こういう考え方をいたしておるのであります。
  108. 久保三郎

    ○久保委員 なるほどそういう自己矛盾を持っておられればふん切りがつかないと思います。  ところでこのOECDの前身であるOEECの海運憲章というか、そういうものに二律背反的なものが当時妥協としてできている。この解決はいまだにきざしはないわけですね。そういう現実を見のがして自己矛盾に悩んでおられること自体、私は不思議だと思うのであります。そのきざしを、たとえば航空におけるIATAのごときものをつくってやろうというのですが、これは百年河清を待つごときものであって、現在における競争の自由という問題は非常に大きな比重になってきていると思うのです。だからせめてこれに対抗するということでなくて、これを防衛するという立場は私は公正な立場であろうと思うのです。公正化される。それしも自己矛盾だというなら、これは話は別だと思うのです。それにしても海上運送法は今日お出しになりませんが、われわれとしては出しているわけです。これは別途また次の機会に論議をしたいと思いますが、私はこの際やはりはっきりすべきだと思うのです。いろいろな政策をやりましても、そういうものを野放しにしておいて、日本の海運界にメリットを期待するということは、先般も言ったようだが、木によって魚を求むるごときものであると言わざるを得ないのであります。もちろんいろいろあるそうであります。OECD加盟国に対して海洋自由の原則を侵すようなことであるから、どうも加盟に支障を来たすとか、あるいは報復手段を講じられる法律制度はできても、これを発動するかどうかはやはり国際的な視野に立ってやるべきであって、法律ができているからすぐにやるということではないと、少なくとも意向ははっきり表明すべきだと思うのです。この際、いずれにしてもこれは短時間で論議しても結論は出ないようでありますから、私ども提案しておりますから、あらためてもう一ぺん論議をしたいと思う。  きょうは本会議もありますから以上にしておきますが、委員長、次会に引き続いて国際的視野を持つ朝田次官にも出席してもらって、この問題並びにこの法案自体についてもお尋ねをしたいので、約束していただきたいと思います。
  109. 木村俊夫

    木村委員長 よろしゅうございます。
  110. 久保三郎

    ○久保委員 それではきょうはこれだけで、次会に譲ります。      ————◇—————
  111. 木村俊夫

    木村委員長 この際、参考人招致に関する件についてお諮りいたします。  すなわち本委員会において目下審査中の内閣提出、海運関係法案について、参考人から意見を聴取いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお参考人の人選、招致の日時、手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御提議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次会は公報をもってお知らせいたすこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十七分散会