○久保
委員 今おあげになったのは、いわゆる構造変化に伴うところの
不況の
原因の一、二である。それも
一つですよ。しかしその前に
考えていただかなければならぬのは、
日本の
海運というのは、
戦前の
海運という構想から、
船腹増強という問題をひっさげて今日まで来たわけです。そこにやはり私は
一つ問題があると思う。
戦前の
日本の
海運のシェア、これは極東周辺が主であります。ところがいわゆる極東におけるところの
海運というものは、御案内の
通り、その領域は狭められてきた。さらには
海運界の立ち直る時期もおそくて、外航に出たのは昭和二十五年からだと思いますが、そういう外航に出た時期までに、それじゃ
世界海運はどうかというと、
日本の航権は全部取られてしまったという実態です。無理からぬこともあります。だから船をつくって航権回復をするという、そういう至上命令が当初にあったと思う。ところがばかの
一つ覚えと言っては語弊があるけれ
ども、つい最近は、というより今日も、
船腹増強をすれば航権回復になるという既定概念がある。そういうもので押してきたからこそ、今日内部的な構造的な変化に対するところのしさいな
検討を怠ってきた。そこで
不況になった。ところが静かに
考えてみれば、今のような
海運市場におけるところのいわゆる変革というものは大きい。これに対応するところの
日本商船隊のあり方について、まずその
制度を
考えるべきじゃないか。さらにもう
一つは、航権を回復したというが、たとえばヨーロッパ東向きの
航路同盟の内部においてさえ、これは御案内の
通りクローズド・コンファレンスである。ところがクローズド・コンファレンスの中にやっと入り込んではみたものの、その中における権益はどうなのか。海洋自由というこれまた古典的な観念に今日
政府は押されています。だから、たとえば
一つの
航路同盟というと、当然われわれの権益は一割入れ、ばいいという問題じゃない。ところが
現実には向こうが九であってこっちが一というようなものが
相当ある。最近におけるベンガル
同盟一つとっても、三・三・三の比率である。
日本が三、インドが三、その他が三、ここにいわゆる外交の弱さがあるんだ。実際
日本の
政府は、
海運政策の中で外交政策として何をやっているか、ちっともやってはいない。弱い体質の
海運会社を先に立てて、これだけがやっていくんですよ。実際外交面で、何をやっているか。通商航海条約の調印式に行って判を押すだけの話である。航権回復をしたというのは形だけなんだ。中身はちっとも回復してない。ましてやこの対
米航路についても
盟外船対策について何をやっているか。今までいろいろと言いわけ的な説明があったが、なるほど今は出先を使ったり何かして
交渉している。
交渉の壁が厚いということはもう十分わかっている。であるなら、当然これに対する防衛的な
措置だけは最小限度許されているはずなんです。ところが海上運送法の改正も今日出てこぬ。出てこぬというより出す気が
一つもないんじゃないですか。しかもその言いわけの
一つは、OECDに加盟するから、これの加盟国が海洋の自由を唱えておるから、これに反するような海上運送法の改正は、今後池田総理が言うところのOECDに入るときの支障になるというばかばかしい話だけれ
ども、OECD加盟国は何だ、イギリスその他全部海洋の自由を唱えておる彼らは、
自分の航権を確保するための海洋の自由の論理の上に立っておるわけです。そういうものと軌を一にして、はたして
日本の
海運が伸びるかどうかということです。最も大事なところの
盟外船、特に
アメリカ航路における
盟外船、これに対する対策が
一つも出ない。
さらにもう
一つは、最近における造船技術の進歩、あるいは大量
輸送への変革、
輸送単位の変革、こういうものを
考えれば、今までのいわゆる耐用年数が二十年なら二十年の船というのはもう経済的には陳腐化している。経済的には二年の耐用年数がない。そういうところにも今日の大きな問題がある。これに対する対策が
一つも現われぬじゃないかと私は言いたいのです。
それからもう
一つ言いたいのは、さっきもお話が出たようでありますが、インダストリアル・キャリアの問題についても、これはどうなんです。
海運を育成するというならば、いわゆる陸上
産業が自前の
輸送をやること
自体にも問題があるのじゃないか。
さらにもう
一つは、計画造船の中から出てきたところのオペレーターとオーナーの系列
関係の強化ということはどうなんです。この
法案を見ると、オーナーもその中に全部入れるというわけです。そうだとするならば、オーナというものの機能は、
日本海運界においては、はっきり言って、ないのです。オーナーの機能を廃止するなら廃止するように、もう少し徹底したものを
考えたらどうか。今でさえオペレーターの系列下において、債務
補償というきずなのために、オーナーはいわゆる前向きにできないのです。またある時期にはオペレーターが債務
補償という
関係で、オーナーが足手まといになる場合が今日ある。いわゆる三すくみの格好というか、二すくみの格好というか知らぬが、こういう格好で
日本の
海運の
不況がやはりあるわけです。これを切るつもりは
一つもないわけです。しかもその膠着化したところの系列化をさらに膠着化するというところに、私は問題があると思う。これをそのまま進めれば、おそらくオペレーター中心のグループができるだろう。集約もできるだろう。オペレーターはその上に金融機関がある、あるいは荷主がある、こういうことでこれが頂点になってくる。結局わずかにオペレーターのところに歩どまりが来るかもしれないが、その下のいわゆる専属
会社なりオーナーの系列
会社というものは、これは犠牲にならざるを符ない。五年後において犠牲になった場合にどうなるかというと、これはまた再び混乱の時期が来るであろうと私は思う。こういう点についてちっとも対策がなっていない。
だからあらためてお聞きしますが、海上運送法の改正はどうして出さないのか、いかがですか。