○辻
政府委員 日本海運の弱点と申しますか、病根でございますが、現在のまず経理
状況を申し上げまして御参考に供したいと思います。
日本海運は戦争によりまして資本蓄積を喪失いたしまして、その後国民経済の要請にこたえて現在約八百万総トン程度の船腹の拡充をし来たったのでございます。この大
部分というものは自己資金を喪失しました
関係上、借入金によって参っております。従いまして、三十七年九月末現在の利子補給会社五十四社につきましての数字をはじきますと、
設備の借入金が約三千億に達しておるわけでございます。このうち約千七百五十億が開発銀行で、残りは市中
関係の金融機関でございます。これらの借入金に対する利払いは年間約二百七十億程度に達するわけでございます。それで自己資本というものは利子補給会社全体で約千億余りでございます。資本構成は二〇%が自己資本でありまして、残りの八〇%は借入金に依存しておるというような概況でございます。それから収益面で見ますと、ここ海運の不況によりまして償却不足が相当累増して参っております。普通償却で九月末で約六百四、五十億というものが不足に相なっております。また借入金の返済も順調とはいえませんで、約九百億近いものがいわゆる延滞の形になっておるわけでございます。それで九月期の決算を見ますと、大体償却の範囲額の七割程度ぐらいしか償却ができない、かような
状況になっておりまして、一言にして申せば過小資本であり、借入金の過多で、これが経理に非常な圧迫を来たして
企業基盤を弱化しているということが言えるかと思うのであります。それからまた一面業務の
状況を見ますと、定期航路等につきましても戦前の地位を相当回復しつつあるのでございますけれ
ども、無から出発した
関係上、定期航路その他のいわゆるオペレーターにつきましては弱体なものが相当多くございまして、これらが邦船間においてもやや過当競争の
傾向が見られる。たとえて申し上げれば、対米航路につきましては今十一社が進出しておるわけでございまして、ニューヨーク航路につきましても九社が出ておるというような
状況でございまして、何とか邦船間がもっと協調するか、あるいは集約して強くなるべきじゃないかという声が前々からあるような
状況でございます。
それで今回の海運の対策でございますが、これは一昨年来
——前からいわれておったのでございますけれ
ども、特に一昨年、このままでは基幹産業として海運は国民経済の要請にこたえられぬじゃないかということが、経済同友会、経団連その他
関係の財界筋からも非常にそういう強い声が起こりまして、
運輸省といたしましては、海運造船合理化
審議会にも海運の対策をはかりまして、実は今回
提出しましたような開発銀行の利子の猶予を中心としたもの、それから利子補給の強化ということにつきまして海運造船合理化
審議会からの答申もいただいて、いろいろ
政府部内でも
検討いたしまして、前国会に法案を
提出したのでございます。この程度では、海運
企業の再建というものは困難ではないかということで廃案になった次第でございます。その後も、そのとき出しました
政府の案を中心にしまして、再び海運造船合理化
審議会からの建議もございますし、
関係各方面からの御意向も参酌いたしまして、ただいま
提出しておりますような開発銀行の利子猶予の措置と開発銀行及び市中金融機関の海運に対する借入金に対します利子補給を強化していく、この二本柱をもちまして今後の海運を再建し、国民経済が必要とします船腹の拡充にこたえていきたい、かように考えておる次第でございます。