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1963-03-05 第43回国会 衆議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月五日(火曜日)    午前十時十三分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 佐々木義武君 理事 鈴木 仙八君    理事 高橋清一郎君 理事 細田 吉藏君    理事 久保 三郎君 理事 肥田 次郎君       有田 喜一君    伊藤 郷一君       尾関 義一君    加藤常太郎君       川野 芳滿君    壽原 正一君       中馬 辰猪君    加藤 勘十君       田中織之進君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 広瀬 真一君         運輸事務官         (海運局長)  辻  章男君         運輸技官         (船舶局長)  藤野  淳君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      岡本  悟君  委員外出席者         議     員 久保 三郎君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      和田 正明君         日本国有鉄道参         与         (踏切保安部         長)      渡辺 寅雄君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 三月五日  委員田中織之進君辞任につき、その補欠として  松井政吉君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松井政吉辞任につき、その補欠として田  中織之進君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月四日  福井駅構内等鉄道高架線設置に関する請願(  堂森芳夫紹介)(第一八九五号)  鹿児島県大隅半島志布志湾沿岸大型港湾建設  に関する請願二階堂進紹介)(第二〇三二  号)  古江線高須駅、根占川北間鉄道敷設予定線の  調査線編入に関する請願二階堂進紹介)(  第二〇三三号)  袴腰鹿屋間国鉄自動車路線根占川北まで  延長の請願二階堂進紹介)(第二〇三四  号)  鹿屋市に国際航空路開設に関する請願二階堂  進君紹介)(第二〇三五号)  日豊線国分駅と古江線海潟駅を接続する鉄道敷  設の請願二階堂進紹介)(第二〇三六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  船舶安全法の一部を改正する法律案内閣提出  第九号)(参議院送付)  踏切道改良促進及び踏切保安員配置等に関  する法律案久保三郎君外九名提出衆法第一  五号)  海運業再建整備に関する臨時措置法案内閣  提出第七七号)  外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法及び  日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補  給臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  船舶安全法の一部を改正する法律案を議題として審査を行ないます。  質疑の通告がありますので順次これを許します。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保委員 この前の質問の続きでありますが、質問に入る前に今手元水産庁からの要求した資料が出て参りましたので、一応概略的にこの資料を御説明いただきたいと思います。
  4. 和田正明

    和田説明員 前回委員会で御要求がございました資料をお手元にお配りをしてございますので、簡単に御説明をいたします。三種類提出してございまして、一つは昨年の八月三十一日付水産庁長官運輸省船舶局長運輸省船員局長共同通牒と、それから同じ日付で水産庁長官の出しました通牒と、それからこの通牒に基づきます居住改善増トン実績表と三つでございます。水産庁長官及び運輸省の二局長共同通牒は、全体として船員労働環境改善のための基準を示しましたものでございまして、一方の水産庁長官単独通牒は、その共同通牒に基づきます細部について、特に水産庁長官限り処置いたします事項について書きましたものでございます。  それで、その長官限りの通牒の十五ページからあとに「船員設備改善に伴う漁船大型化に関する取扱方針」が載せてございます。これに基づきまして、この通牒実施後今日までに改造を行ないました船舶実績が一枚刷りとしてこの三月一日までのものが出ております。沖合い底びき、以西底びき、大中型まき網中型サケマス流し網遠洋カツオマグロにつきまして今日まで——これは新しく建造いたします場合、または従前使っておりました船舶改造いたします場合に大型化をして居住区の改善をいたしておるわけでございますが、それを業種別に示したものが上の表でございます。その下の欄は、その大型化をいたしました百九十九隻につきましてやや詳しくトン数改造ごとに分解をいたしましてその内容を表にしたものでございます。昨年の八月に公布をいたしましてから日がまだ浅うございますので、必ずしも十分な実績を上げておるというわけには参りませんが、相当数漁船がこの趣旨に沿って居住区の改善をやっておる、こういう状況になっております。
  5. 久保三郎

    久保委員 この船舶安全法でありますが、船舶航行の安全ということ、もう一つはそこに乗り組んでいる船員の安全あるいは衛生、こういうものを目的としているのがこの船舶安全法趣旨だと思うのでありますが、今日の実態あるいは改正案について見ましても、必ずしもそういうものではない。もちろんそういう乗組員の安全なり船舶の安全というのは単にこの法律だけじゃなくて、衝突予防法なりあるいは船員法あるいは漁船特殊規則というか、そういうもので律しているのであろうと思うのでありますが、これらもまた十分でないと思うのでありまして、先般来御質問申し上げているのは、法全体の建前としては必ずしも今日の実情に合っておらぬ。合っておらぬものを、なおこのまま放置して、国際条約に抵触する部分だけ提案していいのかどうか、こういうことなんであります。  そこで一番海難の多いのは何といってもいわゆる小型船あるいは漁船が多いのであります。しかも全損というか、そういうものが多い。こういうことを考えれば、まず第一に取り上げるべきは、なるほど国際条約に準拠することも必要だと思うのだが、その精神にのっとって、むしろそういう現在法律から漏れているものをこの中で救い上げ、そうしてその安全性を高めていくというのが必要かと思うのであります。そこでこの漁船問題等も実は取り上げざるを得ない。これに対して、たとえば三十九トンのカツオマグロ船の問題を先般申し上げましたが、いわゆる安全の立場からいってこのままでいいかどうか、これは水産庁の方からお答えをいただきたい。
  6. 和田正明

    和田説明員 前回も申し上げました通り、現在の漁業法建前では、四十トン以上が大臣許可で四十トン未満のカツオマグロ自由漁業になっておるわけでございます。その制度を利用したと申しますか、そのために三十九・九九トンという四十トンとの境ぎりぎりのところの船舶が最近非常に増加をいたしまして、それが非常に海難事故等を起こしておりますことは御指摘通りでございます。従いまして、このまま放置をいたしますことは、いろいろな状況から適当でないと考えておりまして、一つには前回も申し上げました通り、現在漁業法では漁獲量の大小を示す一つ資料として、漁船トン数を考えまして、たとえばカツオマグロでございますれば、船舶一トン当たり年平均二トンの漁獲量があるというようなことを頭に置きまして、資源量その他を抑えておるわけでございますが、今御指摘のようにそこの点に問題がございますので、今後漁業法規制上、船舶規制を現在総トン数でとっておりますのを改めまして、別個の測量方式をとることによって、そこの危険性の問題を何らか配慮したいということを一つ検討いたしまして、できるだけ早い機会に漁船法あるいは漁業法等改正をいたしたいと現在準備をいたしております。そのほかに、三十九トンのカツオマグロを含めまして、カツオマグロ漁業全体の問題でもございますので、漁業法の施行に関しましては、中央漁業調整審議会という制度もございますので、その審議会特別小委員会等設置をしていただきまして、三十九トン型の問題を根本的にどう処理するかというようなことも早急に御検討をいただきまして、今御指摘のような問題点をなるべく早く改善ができるように、現在検討を進めておる状況でございます。
  7. 久保三郎

    久保委員 漁業制度の上から、三十九トン・マグロ船については検討したい、どういうことでありますが、水産庁立場からすれば、当然そういうことだと思うのでありますが、われわれが今審議しておるのは船舶安全法の問題でありますので、その面から一つ考えてもらわなければいかぬだろう、こう思うのであります。そこで考えるのは、やはりこの三十九トン・マグロ問題だけではなくて、漁船についても、最近の傾向からいけば能力以上の、いわゆる堪航性を無視したところの積載をしているという傾向がある。これは今日とうしても——小さい船は中小企業あるいは零細企業に類するかもしれません。そういうところからいって、小さい船でたくさん魚をとって帰るということが、どうしても大企業に対抗する唯一の方法である、これはいわゆる命をかけての問題だと思うのです。これがはたして近代的な今日の漁業のあり方として許されるのかどうかという問題、さらにはこれらをそういう命がけの操業ではなくて、安全操業等立場から守ってやるという漁業制度はあると思うのであります。これはその通りやってもらわねばいかぬと思う。ところが現実にそういう問題を解決する一つ手段として、今の法規制のままではなかなかそういう制度ができてこぬではないかと私は思うのであります。三十九トンでも自由にどこまでも行けるということ、あるいはマグロなら自由操業だということ、それが魅力でここに進出があるのですから、その漁業制度改正するにしても、そういう点を一つ考えていただきたいと思うのであります。そこで私はさしあたり、少なくとも漁船についても、満載喫水線を、あるいはそれに基づいたものを一つ設定したらどうか、設定することによって、いわゆるトップ・ヘビーになるようなものは救命いかだ膨張いかだを積まざるを得なくなる、こう思うのであります。そういう満載喫水線等設定が全然なければ、やはり現実には命をかけた限界までやっていくということは、どうしてもこれをやめさせることはできないであろうと私は思うのです。  さらにもう一つは、三十九トン・マグロのみならず、船体に応じたところのいわゆる操業区域というか、航行漁業区域制限というか、そういうものもやはりある程度考えてみるべきだと思うのですが、この点はどうですか。
  8. 和田正明

    和田説明員 満載喫水線が現在漁船に適用されておりませんこと、また一般の船舶と違いまして、遠洋に行きまするもの、あるいは近海で操業をいたしますものとの間に、トン数の間で区分をいたしておらないわけでございますが、御存じのように、移動性を持ちます魚を追いかけて操業をいたします関係で、そうなかなかこの線までというふうにきちんときめられませんとか、先生御自身も御指摘になりましたように、まだ資本の蓄積が十分ございませんとか、いろいろな事情がありまして、現在船舶安全法からいろいろな除外を漁船については設けていただいておるわけでございますが、反面、最近の労働情勢は、従前の漁業経営主が考えておりましたような安易なものではございませんで、やはり居住設備が不十分でありますとか、あるいは労働が過重でありますとかというような事情から、逐次乗組員不足現象を呈して参っております。そういう事情等をも前提としてお配りをいたしましたような居住改善なりあるいは労働基準衛生安全基準というようなものを設定をいたしまして、乗務員労働環境改善努力をいたしておるわけでございます。何分にも漁業特殊事情ということがございますので、今ここで先生指摘のように、直ちにそのようにいたしますというふうに申し上げるには、いろいろ複雑な事情もございますので、なお御趣旨の線に沿いまして十分検討をいたして結論を出したいというふうに考えております。
  9. 久保三郎

    久保委員 漁政部長がおっしゃること、わからないわけではございませんが、しかし命をかけての操業というのは、私はもう否定さるべきだと思うのであります。船内居住区の問題も、衛生の観点からいろいろ御努力いただいておることはわかります。しかし、どうも命をかけての操業をやむを得ないんだということで認めていくことについては、私は疑問があると思う。でありますから、満載喫水線をいわゆるこの法に基づくところのものでやるかどうかは別問題にして、やはり安全度というものをしょっちゅう注意を喚起する意味でも、これに類する表示くらいはさせて、それ以上積んではいかぬという行政指導に持っていく熱意がなければ、水産庁の今のお答えだけでは、どうもさらにこれが改められないではないかと私は思うのであります。この点はあとからまた申し上げます。  船舶局長にお伺いします。あなたの所管である船舶安全法では漁船は除かれている、小型船も除かれているのだが、これに対して安全性の問題からして考えておりますか。
  10. 藤野淳

    藤野政府委員 船舶安全法では、漁船は除かれてないのでございます。ただ国際条約で除かれておるわけであります。漁船につきましては、安全性保持のための技術基準を律する基本になります航行区域あるいは量という問題がございますが、航行区域につきましては、漁船特殊性にかんがみまして、漁船特殊規則という共同省令がございまして、共同省令でいろいろ御存じのように第一種、第二種、第三種という重量制限をもって規制をいたしております。重量制限航行区域という観念と違うのでございますが、なおその重量制限の中に漁船操業区域といったようなものを織り込むことができますれば、三十九トンのような小さな船が非常な遠洋で危険な操業をするということが緩和されるということをわれわれは考えておるわけでございまして、その点につきましては、漁船特殊規則改正問題につきまして、農林当局ともしばしば協議をいたしておる次第でございますが、ただいま農林省が御説明になったような事情もございます。なお、漁船安全操業のために積荷制限満載喫水制限を適用する問題につきましては、これはもう古くからこういう議論がございました。この必要性は私どもも十分認めておりますけれども、これを実施いたしますためには、相当複雑な調査が必要でございます。これは造船技術審議会下部機構船舶安全部会がございまして、この船舶安全部会審議をいたしまして、農林当局と意見が合いました場合には実施可能な満載喫水線規定することも考えたい、かように思っております。  なお、その他漁船の安全につきましては、先般御要求になりましてお手元に差し上げました船員設備基準の問題につきましては、農林当局協議が整いまして、従来の漁船が非常にたくさん狭いところに乗っておりまして、これが安全操業にも相当な影響があったのでございますが、一人当たりの面積、一人当たりの容積を五〇%向上させまして、これをすでに実施いたしております。漁船船員居住設備改善につきましては、相当思い切った改善を実現しておるわけでございます。それから漁船特殊性にかんがみまして、救命設備につきましては膨張型救命いかだの使用を規定に織り込みまして、これを実は改正いたしておる次第でございます。いろいろな面につきまして漁船特殊性を十分考慮しつつ、安全性向上には非常に努力をいたしておる次第でございまするが、今度の改正につきましても関係省令改正する段階におきまして、なお一そう安全性向上に十分努めたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 久保三郎

    久保委員 なるほど漁船についても規定はしているということでありますが、その規定安全性を高めることにはちっともなっておらぬ。一つの例でありますが、漁船特殊規程の四十九条には何と書いてありますか。言うならばこれは「救命器具ハ最大搭載人員ノ二分ノ一ノ人員収容スルニ必要ナル程度減ズルコトヲ得」というのです。いわゆる漁船救命具については、この規定によれば「巳ムコトヲ得ズ」と認められれば漁船の人間の半分だけ積めばいい、あとの半分のことはよろしい、これはどういう意味規定されたのですか。これはどういうことですか。
  12. 藤野淳

    藤野政府委員 先生指摘の四十九条は、これは当然改正する予定でおりますが、先ほど申し上げました狭い小さな漁船で、非常に多数の乗組員がおります漁船は、「巳ムコトヲ得ズ」というようなことで二分の一まで軽減ということが従来まで行なわれてきたのでございますが、これも実行上は全員持たせるように指導しております。これは先生指摘通りでございまして、ただいまの居住設備改善とあわせて、当然これは全員というふうに改善すべきであると考えておりまして、これは改善する予定でおります。
  13. 久保三郎

    久保委員 改正する予定だというようなことでは、ずいぶんまたのんびりしているのではなかろうかと私は思うのです。これは何も国際条約には関係ございません。むしろ私はこういう問題を取り急いでやるべきだと思うのであります。これをないがしろにしている。  さらにもう一つは、先般のときわ丸衝突事件でいろいろその後の報道もなされておりますが、一つ救命艇トタン板をくぎで押えつけてあったという。だからこの救命艇にすがりついた者は全然救われなかったという記事もあります。これはほんとうですか。
  14. 藤野淳

    藤野政府委員 これは私どもから調査に参りました者の報告によりますと、事実のようでございます。
  15. 久保三郎

    久保委員 それでどう思いました。
  16. 藤野淳

    藤野政府委員 これは非常に遺憾なことでございます。私ども検査をいたしました当時はそのようなことがないように、救命艇は避難の場合に直ちに使用できるような状態に格納しなければならぬということになっておりまして、検査当時はトタン板はなく、また板も上へ打ちつけて直ちに取りはずしできないような状態ではなかった。その後他の方面からそういう注意がありまして、トタンを張ってカバーの板が燃えないようにしたという説明を受けておりますけれども、これは私どもとしては非常に意外なことでございまして、検査当時はそういうことはちっともなかったと思います。非常に遺憾なことでございます。
  17. 久保三郎

    久保委員 この船は救命艇を積まなければならぬ規定になっていますか。
  18. 藤野淳

    藤野政府委員 救命艇を積まなければならぬ規定になっております。
  19. 久保三郎

    久保委員 それじゃ船舶設備規程の中で第三十条はどういうことになるのですか、これはどういう種類の船ですか。
  20. 藤野淳

    藤野政府委員 三十条は救命浮環救命焔でございます。
  21. 久保三郎

    久保委員 いや、それはわかった。ときわ丸はそのうちの第何種の船に入っているか。
  22. 藤野淳

    藤野政府委員 ときわ丸は第二種船でございます。
  23. 久保三郎

    久保委員 それじゃ二十二条の関係は、ときわ丸はどういうことになりますか。
  24. 藤野淳

    藤野政府委員 二十二条は第三種船でございまして、平水区域の旅客船でございまして、ときわ丸沿海区域でございますから、第二種船であります。
  25. 久保三郎

    久保委員 それからいって、救命艇は幾つ積むということになりますか。
  26. 藤野淳

    藤野政府委員 救命艇に二個積むことに相なっております。
  27. 久保三郎

    久保委員 その二個のうち一個はトタン張りだったということですか。
  28. 藤野淳

    藤野政府委員 トタン張りと申しますのは、救命艇カバーの上にトタンが張ってあったわけでございます。
  29. 久保三郎

    久保委員 検査当時はなかった、——もちろん検査当時はなかったでしょう。そんなものがあれば検査を通すわけはないのだから……。ところが指導が完全でないと私は思う。なお、新聞報道によれば、救命胴衣の大半は船倉にしまってあったという。これはそういう規定になっておるのですか。
  30. 藤野淳

    藤野政府委員 救命胴衣客席または客席の近傍で、客が自由にこれを取り出し得るようなところに格納し、また備え付けてある場所は明瞭な表示をつけるということに相なっております。
  31. 久保三郎

    久保委員 なっているけれども、それじゃそれが船倉に入っていたのは違法なんですね。それはどうなんです。
  32. 藤野淳

    藤野政府委員 入っておりましたとすれば、違法でございます。
  33. 久保三郎

    久保委員 そういう検査のときになかなかむずかしいと思うのだけれども、常時中間検査というか、抜き打ち検査というか、そういうものはやらぬのですか。
  34. 藤野淳

    藤野政府委員 抜き打ち検査はいたしておりません。
  35. 久保三郎

    久保委員 そういう検査をやらんで、定期的な検査中間検査も予告していくという場合には、船倉にあった救命胴衣を所定の位置というか、客室のわきへ持ってくる、あるいはボートのおおいも五寸くぎをはずしておおいをあけておく。こういうのを見定めがきかぬのですか、どうなんですか。
  36. 藤野淳

    藤野政府委員 安全法の第十二条によりまして、検査官は必要があります場合には、随時行って検査できることになっております。臨検できることになっておりますが、何分検査官の数が少ないものでございますから、随時というところまでは参らないわけでございますけれども、これは港内におきまして、あるいは随時海上保安庁がそういう立ち入り検査、臨検をやっております。
  37. 久保三郎

    久保委員 局長、今規則か何か読んで、初めて十二条を、提案しているあれを見て、随時検査をやることになっております、さっきはそういうのはありませんと言った。しかし人員都合上やっておりませんと言った。てっぺんから人員都合上やっておりませんと言うのならいいけれども、どうもそういう点からいっても、見つかる道理はないと私は思うので、これは、いうならば、漁船小型船を含めて全面改正の必要がある。そういう点からいけば安全条約が出たから改正するというふうなこそくな手段では、これはとてもじゃないがまかしちゃおけないと思う。これは一つ前提としてお話を申し上げる。  そこで、この安全法そのものへ入りますが、先般もちょっとお話を申し上げましたが、原子力船についての何らの規定を置かぬ、あるいは安全基準については一応政府部内で固まっているというのだが、当然船舶安全法の中へそういう問題を規定しなければ、これは問題が起きてからではまずいではないか、こういうことなんだが、この原子力船関係についてはいつまでに考えていくつもりか、そのための安全法改正はいつごろを予定されているか、これはいかがですか。
  38. 藤野淳

    藤野政府委員 原子力船の安全に関する技術基準は、ただいまのところ、政府が大部分の金を出しまして、実験を始める船をただ一隻だけつくろうという段階でありまして、あっちにもこっちにも原子力船ができるという時代ではございませんので、技術基準法制化するということは時期尚早でございますことは先般申し上げた通りでございます。しかしながら外国から原子力船日本に入港いたします場合に、何をもって安全性を技術的に規制するかという問題がございますが、これもただいま原子力船第一船を建造いたしますに際しまして、われわれが最高権威を集めて考えております安全基準に照らして規制する以外にないと存ずる次第でございます。なお、これには各国原子力船安全基準をどのように考えるかというこの技術的な情報、資料も十分入手いたしまして、自主的に国際レベル基準をもって規制したい、かように考えておる次第でございます。なお、そういう詳細の技術基準につきましては、各国ともまだ法制化はされていない状況でございます。
  39. 久保三郎

    久保委員 ノーテラス型の米潜水艦の寄港が問題になっておるわけでありますが、これについてももちろん軍艦でありますし、しかも安全条約がまだ批准の段階になっておりません。そこで、万が一これによる災害が発生した場合に、——たとえば、御案内の通り冷却水を浄化するとか、そういう場合に交換樹脂というか、そういうものを廃棄しなければならぬ。その場合の規定等もこれは別にないようでありますが、そういう損害が起きたときに、どういう措置をされるか、これは相談されておりますか。御案内の通り一九六二年にブラッセルで会議がありまして、この運航管理者というか、運航者の責任に関する条約というものは大国によって拒否されているわけでありますが、こういう問題も、これはもちろん軍艦を含むというようなことでやったようでありますが、これについて日本ではどういう態度をとったのか寡聞にして知りませんが、現実ノーテラス型であろうが何であろうが、原子力船が入ってくる。これに対する対応策がちっともないのでは、ただ安全で心配ありませんというだけで、わが方の技術者も大丈夫だろうということで寄港させた。その結果、万が一のことができた場合にそれはどうするのか。これは国際交渉だけで、らちがあかぬ交渉だけでやっていくのか。それとも日本で確立した一つ基準を設けて、これによって承認させて寄港させるというのでありますか、どっちでありますか。
  40. 藤野淳

    藤野政府委員 この問題につきましては、私どもは意見はございますが、所管ではございませんので、ただここで何とも申し上げられないわけでございます。
  41. 久保三郎

    久保委員 所管ではないというが、なるほど船舶安全ということで、この法律だけの問題ならばあるいはそういうことが言えるかもしれませんが、船舶全体の安全というか、外国の船であろうが日本の船であろうが、そのための船の安全をはかるというのがあなたの職掌であるというならば、これは所管外といって等閑視するわけにはいかぬじゃなかろうかと私は思うのですが、これはどうですか。
  42. 藤野淳

    藤野政府委員 従来から軍艦につきましては船舶安全法は適用外でございますので、個人的にはいろいろ意見はございますけれども、軍艦に対して安全法をもって規制したことは一度もございませんので、お答えいたしかねる次第でございます。
  43. 久保三郎

    久保委員 しかも軍艦には適用しないのが安全条約でありましょうが、原子力船の、いわゆるさっき申し上げたような点については、国際会議でも軍艦といえども問題になっておるわけです。それに対して無関心でいていいのかどうかという問題ですね。いかがですか。
  44. 藤野淳

    藤野政府委員 国民の一人として、また船舶安全に関することを所掌している者といたしまして、重大な関心を持っておりますけれども、何分私どもの所掌でございませんので、公式な意見を申し上げることはできない次第でございます。
  45. 久保三郎

    久保委員 原子力船の問題はそのぐらいにしておきましょう。  次にお尋ねしたいのは、この船舶安全法というのは、船舶の安全と即人命の安全、それに乗り組んでいる船員の安全というか、そういうものに限定されたものでありますか、いかがでありますか。
  46. 藤野淳

    藤野政府委員 船舶安全法は、第一条に掲げてございますように、船舶の安全及び人命の安全でございまして、人命の安全は船員だけではございませんので、船内にある全部の人の安全、さらにまた第二条にございますように、荷役その他の作業の設備につきましても規制をすることになっております。たまたま船内において作業している者の安全をも保持しなければならぬということでございます。
  47. 久保三郎

    久保委員 次に参りましょう。次に第三条関係になりますが、第三条で改正しようというのは、いわゆる満載喫水線表示の問題である。そこで今までは近海以上の百五十トンというのを、今度は沿海区域まで広げたというのが主ですね。そうですな。
  48. 藤野淳

    藤野政府委員 さようです。
  49. 久保三郎

    久保委員 沿海区域で百五十トンと切ったのはどういう根拠がございますか。
  50. 藤野淳

    藤野政府委員 満載喫水線表示は、国際満載吃水線条約に基づく規定でございまして、国際満載吃水線条約の規定トン数につきましては同じにしたわけでございます。百五十トン以上が強制船舶でございまして、しかも国際航海に従事するものだけでございますので、われわれといたしましては百五十トン以上を強制船舶にしておるわけでございます。
  51. 久保三郎

    久保委員 それ以下の百五十トン以下のものはどういうのですか。
  52. 藤野淳

    藤野政府委員 百五十トン以下のものにつきましては強制ではございませんし、また以下のものに対する表示基準設定いたしておりません。
  53. 久保三郎

    久保委員 法は取締法でありますから、これが最低の線ですね。そうだと思うのです。安全の問題ですから、そうですね。
  54. 藤野淳

    藤野政府委員 さようでございます。
  55. 久保三郎

    久保委員 そうだとすれば、先ほど来申し上げたように、いわゆる百五十トン以下の船がかなり事故が多いということは御案内の通りであります。そうだとするなら、むしろ百五十トン以下に重点を置かれるのが当然のようにも思うのですが、いかがですか。
  56. 藤野淳

    藤野政府委員 満載喫水線の問題につきましては国際航海でございまして、国際航海に従事しない船がございます場合には何万トンでも表示する必要がないと思います。また百五十トン以下につきましては、これは木造船が非常に多うございまして、木造船に対する喫水線の技術基準設定いたしますのには非常に困難な問題がございますけれども、これは先ほど御答弁申し上げましたように、小型船安全性の保持のために非常に大きな効果がございますので、この実現に対しましては、十分審議会等で研究いたしたい、かように考えております。
  57. 久保三郎

    久保委員 国際航海に従事する船はなぜ満載喫水線をつけなければいかぬのですか。それで国内のものは、あるいは百五十トン以下のものはなぜつけなくてもいいのですか。
  58. 藤野淳

    藤野政府委員 なぜとおっしゃいますと非常にお答えするのがむずかしいのでございますが、国際条約が国際航海に従事するものだけについて規制をしておるということによるわけでございます。
  59. 久保三郎

    久保委員 船舶安全法国際条約に縛られて、なお国内法でございますな。そうですね。
  60. 藤野淳

    藤野政府委員 国際航海に従事するものは国際条約に縛られ、さらに国際航海に従事しない船舶全般についての安全規制でございます。
  61. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、この法律国際条約に合わせるだけがせい一ばいという法律ですか。
  62. 藤野淳

    藤野政府委員 そういうつもりは毛頭ございませんけれども、国際基準は一十分取り入れ、なお国際航海に従事しないものについても必要な安全性の最低限度を規制するという趣旨でございます。
  63. 久保三郎

    久保委員 あまりそういう個所は見つかりませんね、重大なところでは。いかがですか。
  64. 藤野淳

    藤野政府委員 決して私どもはそういうふうに考えてないのでございまして、構造、設備その他全般につきまして必要な最低限度をきめておるというように考えております。
  65. 久保三郎

    久保委員 満載喫水線の効果は何ですか。
  66. 藤野淳

    藤野政府委員 満載喫水線の効果は、船舶に荷物を積み過ぎましたために航海において非常に危険をこうむりやすいということの見地から、満載喫水線を指定しておるわけであります。一応基本的な問題であります。貨物を搭載するのが目的の船でございます場合には、満載喫水線の指定によりまして積荷の過載を防止するという見地から安全性の効果があると思います。
  67. 久保三郎

    久保委員 それと国際条約との関係はどうなのですか。国際会議において条約で百五十トン以上ときめられて、それだけは満載喫水線をつけなければいけないということになっておる。法律もそうなっておるわけでありますが、それはどういう関係がありますか。どういう趣旨から出たものですか。今あなたの言うところの過載防止ということは、人命の安全あるいは船舶安全性ということですね。それで国際条約で百五十トンと切ったのはどういうわけですか。
  68. 藤野淳

    藤野政府委員 百五十トンを国際条約で一番小さい最下限にきめました事情につきましては、何分古いことでございますので、私はその経緯は存じませんが、いろいろ憶測することはできますけれども、どういう事情によりまして百五十トンが最低限度であるかということは、当時の議事録などを調べませんとはっきりしたことは申し上げかねると思います。
  69. 久保三郎

    久保委員 私が憶測で申し上げますれば、大体百五十トン以上くらいの船しか国際間では航海しないだろう、それで船舶安全性からいけば、過載防止と堪航性を保持するためには、やはり満載喫水線をつけることがいいのだ、しかし全部についてやることは国際間の条約では必要ない、百五十トン以下のものは国内法でその精神にのっとってやるべきだという趣旨から言って、国内法で各国で自由にやれるものを国際条約の範囲できめる必要はないということで百五十トンに切ったのだと思います。だから、ここを流れる思想というか、ものの考え方というものは、やはり満載喫水線というものはあるべきだという思想だと私は思いますが、どうですか。
  70. 藤野淳

    藤野政府委員 この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、百五十トン以下の小型の船舶につきましても、安全上の見地から満載喫水線を強制するということは、将来とも十分考えなければならないと思いまして、技術基準につきましては造船技術審議会において十分検討し、表示できるように準備したい、かように存じておる次第であります。
  71. 久保三郎

    久保委員 それでは私のものの考え方と同じですね。漁船の問題もさりながら、いわゆるその他の客船、貨物船がございますが、百五十トン以下についてはどうなんですか。漁船のことを強調されましたが……。
  72. 藤野淳

    藤野政府委員 百五十トン以下につきましても、漁船あるいは貨物船はみな同列に考えなければならぬと思います。ただ貨物を搭載することを業務としない特殊な船舶は除くのは当然であります。これは先生と同意見でございます。
  73. 久保三郎

    久保委員 そうだとすれば、第三条の改正にあたっては、せめて沿海区域航行する百五十トン未満の船はということにしたらどうか、国際航路ということで条約だけに合わせればよいという思想がここに流れておるから、これではどうも違うじゃないかと私は言いたい。どうせ改正するならば「国際航海ニ従事スル」これだけ除いたらどうです、せめて一歩前進して……。
  74. 藤野淳

    藤野政府委員 先生の御意見はよくわかるのでございますけれども小型船につきまして、ことに百五十トン未満になりますと、木造船がもう大部分でございます。木造船につきまして満載喫水線を指定する線の引き方が非常にむずかしい点がございます。先生御承知のように、満載喫水線は船の形状からきまる、つまり予備浮力という点からきまる基準と、それからどこまで積むと安全であるかという船の強度からきまる基準と二つございまして、木造船は構造が非常にまちまちでございますし、また鋼船のように一律にいかぬ点がございまして、これを簡単にやりますと非常に不公平が起こりますので、公平な基準設定いたしますのが技術的に非常に困難な問題でございまするので、できないとは申しませんが、これを集中的にやりますれば何とか指定ができるんじゃないかということでございますが、ただ法律に書く段階には現在ないというわけでございます。
  75. 久保三郎

    久保委員 法律に書くのはどうかと言われるが、こういう区別もどうかと思うのです。だから、そういう点も考えて、これは近く考えるべきだと思うのです。  そこで、もう一つお伺いしたいのは、区画満載喫水線というか、そういうものの規定も、ここにあるのですか、木材区画喫水線というか、そういうものについてはどういうふうにこの中で考えておるのですか。
  76. 藤野淳

    藤野政府委員 区画満載喫水線は、これは国際満載吃水線条約の満載喫水線ではないのでございまして、海上人命安全条約の中で規制されております喫水線でございます。これはやはり国際航海に従事いたします条約船だけに規制されておりまして、そのほかのものについては適用がございません。
  77. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 関連。——今の満載喫水線でありますが、従来は平水航路で沿海でも小型船満載喫水線がありません。しかし最近の日本船舶の現状から見て、これを無放任にすることは、今久保先生が言われたようにいかがかと思いますが、しかしこれを百五十トン未満にも適用する、ということはただ船舶の安全だけでなく、わが国においては物価の体系に変動を来たす。結局、国際のルールを国内船に全部適用した場合には、現在の積荷の状態から考えて、百五十トン未満の船は相当満載喫水線を下回ったような積荷を常時行なうことによって、運賃その他の体系が成り立っておるのであります。その関係から、これを国際の水準に引き上げる場合には、貨物運賃が相当騰貴しなければならぬ、こういうような現象も付随して起こりますから、この点に関しては、今久保さんから話があったように、従来通りこれを無放任ということにもいきませんが、これを国際と同じような水準に規制することも物価に対して相当なはね返りがありますから、当局においても今久保さんがおっしゃったような線も考慮し、また全般の営業者の立場、また社会に及ぼす運賃の変更の影響その他も考慮して、よく熟慮してやらなければならぬと思うのでありますが、いかがですか。
  78. 藤野淳

    藤野政府委員 百五十トン未満の国際航海に従事しない船舶に対しまして、かりに満載喫水線を強制いたします場合には、国際満載吃水線条約に基づく基準よりはもっとゆるやかな基準でもっと深い喫水を許容できるように当然なると思います。その理由は、国内航海に従事しております船の使用海域が国際航海の船とははるかに違いますので、現に構造の技術的な基準も国際航海の船は非常に軍構造になっておりますし、国内航海の船はやや軽減された強度構造になっておりますので、それに相応した喫水になるということに相なると思います。なお、この問題につきましては非常にむずかしい問題でございますので、慎重に研究しなければならぬと考えておる次第であります。
  79. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 今の局長の御返答で私はけっこうであります。これは相当慎重に、また各業者の意見並びに高いところから陥りやすい幣を打破するというような両面から、また輸送費の高騰という点も考慮して一律にやることは反対でありますし、今の局長の御意見に私は賛成であります。
  80. 久保三郎

    久保委員 それで、この法律改正に伴って、この部分改正にならぬと思うのでありますが、船舶設備規程は古いものであって、幾多の時代おくれのものも中にはありはしないかと思うのです。われわれまだしさいに検討しておりませんが、これは改正する用意があるのかどうか。
  81. 藤野淳

    藤野政府委員 改正する予定にしております。
  82. 久保三郎

    久保委員 しからば、いかなる点を大よそ改正しなければならぬと思いますか。
  83. 藤野淳

    藤野政府委員 改正の方針といたしましては、一九六〇年の海上人命安全条約の条項を全部包含する上に、さらに居住設備関係につきましても近代化いたしたい、かように考えております。
  84. 久保三郎

    久保委員 次に今の満載喫水線でありますが、ただいま加藤先生からもお話がありましたが、いずれにしても私は画一的に全部やれというか、経済性を無視してまでどうこういうものではございません。しかし経済性というものはやはり安全性の上から成り立たなければいかぬと思いますので、その辺のことを十分考えないとやっていけないと思います。やっても無意味になると思うのです。むしろ経済性の問題は漁業なりその他内航といいますか、そういうものの経営の実態についての根本的な対策が片面とられなければならぬと思うのです。そういう点について、これはあなたのところだけではできないと思いますが、海運局長どうですか。
  85. 辻章男

    ○辻政府委員 国際航海に従事します船舶といわゆる沿海等を航行する船舶につきましては、技術的に見ましても、航行の安全の点から内航の方がゆるやかでいいのではないかというふうにも考えられますし、それからまた先ほど委員の方から御意見がありましたように、現在の内航海運は、いわゆる国際基準満載喫水線の限度よりはある程度よけいに荷物を積みまして、これをもって経営をやっておるという実情からかんがみまして、内航船について満載喫水線規定をゆるめることについては慎重な考慮が必要だ、かように考えておる次第でございます。
  86. 久保三郎

    久保委員 慎重な考慮が必要だが、その必要性は認めますか、いかがですか。
  87. 辻章男

    ○辻政府委員 安全性の見地からは、できるならば現実とも適合するような規定が必要じゃないかと思っております。
  88. 久保三郎

    久保委員 水産庁にあらためてお伺いしますが、今の点では必要性は認めますか、いかがですか。
  89. 和田正明

    和田説明員 先ほどもお答えをいたしましたように、いろいろ船舶安全性とか乗組員の安全とかいう点を十分考慮いたしまして、技術的ないろいろな問題点もありますしまた経済的ないろいろな問題もありますし、いろいろ複雑な事情もございますので、運輸省ともよく検討いたしてみたいと思います。
  90. 久保三郎

    久保委員 大体船舶局長関係個所はその必要性は認めておられるわけですね。ただし現実に経済性の問題が両者ともおありのようであります。私はこれを全く無視しろとは言いませんが、必要性を認める限りにおいては早急にこの問題を消化すべきだと思うのであります。これは法律でも通れば直ちに折衝を開始して何らかの形をとられますか、お考えはどうですか。
  91. 藤野淳

    藤野政府委員 この問題につきましては前から必要性は認めておるわけでありますが、何分にも鋼船とそれから非常に多数の木造船がございますし、木船に対する喫水線ということは非常に技術的に困難な問題がございますので、直ちに準備に取りかかりましても、いつごろ結論が得られるかということをお約束することは困難でございますが、必要性は認めておりますので、漁船につきましては水産庁協議がととのいますならば、直ちに準備は開始いたしたい、かように考えております。
  92. 久保三郎

    久保委員 だいぶ心もとないお話でありますが、それではいつになるかわからぬということでありまして、せっかくの船舶安全法審議でありますから、一応のめどはつけてほしいのだが、ついてはこれまでに今お話しを申し上げたような点について関係個所にお話をしたことがありますか。
  93. 藤野淳

    藤野政府委員 海難防止協会から強い要望がございまして、これにつきましてはわれわれの意見を申し述べたことがございます。  なお、先ほどの答弁では非常に心もとないという御意見がございましたが、私の申し上げますのは主として木造船でございまして、木船の技術的な基準の結論を得られるのが早急にはむずかしいということを申し上げただけでございまして、意欲が薄いわけでは決してございません。
  94. 久保三郎

    久保委員 海難防止協会から強い要請があったというのですが、その要請があってどことどこへ具体的な提案でもされましたか、たとえば水産庁あるいは海運局に。いかがですか。
  95. 藤野淳

    藤野政府委員 具体的な提案はいたしておりませんが、この問題につきましてはわれわれは長くこういう問題を考えておりますので、具体的にどうこうという提案はいたしておりません。
  96. 久保三郎

    久保委員 それだからちょっと心もとないというお話を申し上げておるわけです。船舶の安全については一番関心が強くて、いろいろ御研究をいただいておる局長のところでございますから、当然この問題についても関心を持たれ、御研究をなさって、それぞれ具体的な提案もされておられたことと思ったのでありますが、それがないということはどうも変ではなかろうかと思う。私が言いたいのは、今まで少なくとも提案はされたが、おそらく意見調整ができないというくらいならりっぱだと思うのでありますが、どうも今お聞きすると、全然提案をしておらないということなんですか、もう一ぺんだめを押しますが、そうなんですか。
  97. 藤野淳

    藤野政府委員 具体的な問題でございまして、どのような喫水線を設けたらいいかという問題についての具体的な提案はしておりませんが、水産庁に対しましても、漁船に喫水線を設けたらどうかという提案はもちろんいたしております。ただどういうふうな、数字的な具体的な問題は、今申し上げたように、まだ研究の段階でございます。
  98. 久保三郎

    久保委員 水産庁に喫水線を設けたらというお話はどうなったのですか、その後進展しないのですか、それとも御回答があったのですか。
  99. 藤野淳

    藤野政府委員 先ほど漁政部長が御答弁になった通りでございまして、御検討中のようでございます。
  100. 久保三郎

    久保委員 検討——先ほど漁政部長お話は、言うならば、経済性の問題もあるから慎重にやらなければいかぬという概括的なお話なんで、それじゃちっとも話がその後進展していないと思うのでありますが、大体そうですね。
  101. 藤野淳

    藤野政府委員 これは進展してないわけじゃないのでございますが、いろいろ水産庁に重要な、複雑な問題がおありのようでございますから、協議を続けておるわけであります。
  102. 久保三郎

    久保委員 水産庁には複雑な問題があるそうだから、これ以上複雑な問題を聞いてもわからぬようでありますから、次に参りましょう。いずれにしてもわれわれは強い関心を持っているということでございまして、先ほどそれぞれの向きも十分必要性を認めるというのでありますから、これは早急に結論を得てはしい、こういうふうに思います。  それから第四条関係で、無線電信あるいは電話の取りつけ問題であります。そこでしろうとでありますから、やはり具体的な例でお尋ねした方が早わかりでありますが、この改正によっても、ときわ丸のごときものは電信電話を備えつけなくてもよろしいか、いかがですか。
  103. 藤野淳

    藤野政府委員 改正案によりましては、備え付けなくてもよろしいわけであります。
  104. 久保三郎

    久保委員 今でもその通りですね。
  105. 藤野淳

    藤野政府委員 その通りでございます。
  106. 久保三郎

    久保委員 必要性は認めますか。
  107. 藤野淳

    藤野政府委員 われわれといたしましては、国内航海の旅客船のある大きさ以上のものに対しましては、少なくとも船舶の遭難を知らせるための無線施設は必要であると考えております。
  108. 久保三郎

    久保委員 必要であるというが、ときわ丸のような事故ができて、その必要性からどういうふうな考えを持たれますか。単に必要だ、事故が起きた、法律は備え付けなくてもいい、改正後もそうだということでどういうふうに考えられますか。
  109. 藤野淳

    藤野政府委員 無線電信あるいは無線電話というこの通信施設は、この施設させる第一義は、やはり船舶の緊急通信あるいは遭難を知らせるのが第一の目的でございます。なおそのほかに、業務通信のために非常に役立っておることは申すまでもないわけでございまして、強制船舶でなくても、任意に無線通信施設を持っておる船はたくさんございます。しかし将来——将来と申しましても、この安全法改正の一環としてでございますが、これをいたしませ礼、無線通信施設を持っておりません船に対してましては、少なくとも救難信号ブイといったようなものの設備をさせるつもりでおります。この救難信号ブイと申しますのは有効通達距離が五十マイル以上でございまして、発信の持続時間も五十時間程度のものでございますので、緊急時にこれを手動または自動的に作動させることによりまして中短波が発信されまして、この海難救助が非常に能率的に行なわれる、遭難船舶が救助されるということが容易になるというような効果があるわけでございます。このようなことを考えておる次第であります。
  110. 久保三郎

    久保委員 聞けばときわ丸はりっちもんど丸と衝突したときに、その直後にいわゆる船内の電燈が全部消えた、消えたために、これは最初から認めたように機帆船ぐらいに思って、一キロも先へ行って停止し、それから戻ってボートをおろして救助に入った、こう新聞は報道しているわけです。あなたが言うところの、たええば遭難信号の何か浮標ですか、これを投げたにしても、遭難したことはわかるが、その船の中身はわからぬ、実際言って。やはり機帆船だと思うでしょう。何人も乗っている旅客船だとはわからぬ。これではなるほど遭難の事実はわかるが、貨物船か、あるいはそれが多数の旅客が乗っているのかわからぬでは、ときわ丸の事故も、これではいわゆる死んだ人に対する何らの供養にもならぬではなかろうかと私は思うのです。  そこでこの安全条約の勧告にあるが、これは勧告の二十六の「遭難呼出の聴取」の(C)、(C)には何と書いてありますか。「小型船舶における無線電話設備の備付を安全の目的で奨励するために、各締約政府は、中波無線電話帯を用いる沿岸線電話局の設立又は奨励について実行可能な限り努力する。」という。あなたの先ほどの御答弁ではこの問題にはちっとも触れておられない。これはどういうわけですか。
  111. 藤野淳

    藤野政府委員 先ほどお答え申し上げましたのは、最小限度そのようなことを考える。これは船内の電源がどのようになりましても、とにかく自動的に信号ブイが電波を発することによりまして、遭難船舶が救助を求める信号がとにかく相手船に伝わるというようなことで、救助が促進されるというふうに御説明したつもりでございますが、この先生の御引用になりました条約の条項につきましては、私どもは少なくとも、SSBとかVHFのことであると思いますが、これを備え付けるべく行政指導を今後十分やりたい、かように考えておる次第であります。
  112. 久保三郎

    久保委員 最近における海難全体から見て、やはりそういう設備が一応必要だと私は思うのであります。あなたの提案されている法律では、何らそれについても規定されておらないじゃないですか。行政指導というが、行政指導でなくて、ある程度そういうのが実行可能な範囲においては規則なり何なりをつくって、ある程度規制しなければいかぬと思うのです。なるほど船舶運航の経営者自体からいけば、そういう出費がない方がそれは得でしょう。しかし、言うならばその経営自体が不安全では、乗る人がなくなります、荷物も運送をたのむ人がなくなる、そういうことを考えれば、やはり何らかの規制というか規定を設けて、奨励の段階から実行の段階に入るべきだと思うのです。いかがですか。
  113. 藤野淳

    藤野政府委員 小型船舶に対しまして無線通信施設を施設することは、安全上からもまた業務上からも好ましいことでございまして、願わくは全部の船舶にこのような施設をしてもらいたいのでございます。先ほど申し上げましたのは、さしあたって最低限度のことの申し上げたのでございまして、現在任意に施設しておりますものが非常に多数に上っておるわけでございます。なお無線の施設につきましてはいろいろな条件がございますが、これはさしあたってラジオ・ブイを強制いたしまして、なお願わくは全船舶に無線施設を施設することが理想でございますので、その方向に努力いたしたいと思います。
  114. 久保三郎

    久保委員 努力したいということでありますが、われわれから見れば、実際言うとこの改正提案が気に食わぬ。早く言えば安全条約に抵触するところの一カ所だけだ。この第四条関係では五百トンを三百トンにした。あとは第三条の国際航路に従事するところの沿岸船、あとはあなたの方の都合船舶検査規定を簡略にしようという、これで今日の安全が守れるか。気に食わぬ、実際。しかもこの安全条約にイニシアルをやってからもう三年もたつ。あなたをしかり飛ばしても仕方がないが、こんな法律、しかも片かなで書いてある法律をそのままやる……。今の一つの問題だって当面焦眉の問題です。しかも最近は通信その他は日本の国は相当発達しているのです。そう高額な希少価値のものでない。つけさせようと思えばつけられる。こういうことであってはどうも審議する意欲もなくなる。ちっとも前進がない。前の日にお話がありましたが、これは法制局の担当者がかわったから、さしあたり国際条約に合わせるだけだという話なんだ。あるいは運輸省船舶局だけで処理される検査規定の問題を簡略にしよう、こういう法律改正でいいのだろうかどうか。政治責任としていいのかどうか。問題はたくさんありますよ。ところがどうもただいままでのお話を聞いておると、仕方がないからこれだけにしておこうというのが結論のようだ。  それで、つまらぬものでも審議するほかありませんからまたお尋ねしますが、この勧告に従ってあなたは全船舶につけさせたいと言うが、それじゃそういう形に今日電波監理局なり電電公社の設備が勧告通りになっておるかどうか。中波を思う存分使えますか。あなたの所管でないけれども、そういう面はできてきておるかどうか。いかがですか。
  115. 藤野淳

    藤野政府委員 逐次そのような施設が陸上にできる計画を聞いております。
  116. 久保三郎

    久保委員 それはどういう計画ですか。
  117. 藤野淳

    藤野政府委員 たとえばVHFにつきましては、三年計画で相当な海岸局ができるというように聞いておる次第であります。
  118. 久保三郎

    久保委員 それじゃ船舶所有者の関係はどうなりますか。今言うところの電電公社なり電波監理局のやる形に応じてつけなければならぬ船舶所有者の経済性の問題はどうなっておりますか。つけられますか。
  119. 藤野淳

    藤野政府委員 御質問の御趣旨は、どういう御趣旨でありますか。
  120. 久保三郎

    久保委員 そういう電波で、いわゆる電電公社がいうところの電波が、船舶所有者の考えているそういう設備に合うかどうか、いかがですか。船舶の所有者は、超短波がほしいとかなんとかいっているのじゃないですか。ただ、海岸局のものではそれに合わぬというのじゃないのですか。
  121. 藤野淳

    藤野政府委員 船舶の所有者の意向は、必ずしも一本にはなっていないわけでございます。ある所有者はSSBがほしいということをおっしゃっています。ある所有者は少し高くてもVHFでよろしいというふうなことをおっしゃっています。一元化されていないわけでございます。
  122. 久保三郎

    久保委員 一元化された場合に、いわゆる海岸局の整備はどうなりますか。大体大丈夫ですか。あなたに聞いても始まらないのだが、おわかりのようだからお聞きします。
  123. 藤野淳

    藤野政府委員 中短波につきましては、波長の余裕があまりないようでございます。VHFにつきましては、VHFの局で全部沿岸がカバーできるようなことになりますので、VHFに一元化されますならば可能であると考えてる鶴次第でございます。
  124. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、満足ではないですな。
  125. 藤野淳

    藤野政府委員 完全な状態ではないということでございます。
  126. 久保三郎

    久保委員 いずれ次の機会に、電波監理局、電電公社を呼んでお尋ねしますが、そういう調整ができないのに、全船舶につけようといっても無理じゃないですか、いかがですか。
  127. 藤野淳

    藤野政府委員 これは私どもの希望、念願でございまして、そのようになれば理想的であるということを申し上げておる次第でございます。
  128. 久保三郎

    久保委員 問題は、その問題を早急に解決することが一つ、それから先ほど申し上げたようにして、全船舶につけたいと思うならば、やはりつけさせるような規定を設けるなり何なりすべきだと思うのです。それはどうですか、近いうちに結論を得られますか。
  129. 藤野淳

    藤野政府委員 先ほど申し上げましたように、さしあたってはこの救難信号ブイを小型の船舶に強制することもいたしたいと思っております。  なお、無線通信施設をつける問題につきましては、なお検討させていただきたい、かように思います。
  130. 久保三郎

    久保委員 あと質問もありますから、最後に水産庁一つだけお伺いいたしますが、最近、半搭載操業ということが許されるようになりましたが、これはどういうのですか。引き舟ですか、いかがですか。
  131. 和田正明

    和田説明員 二月の一日から新しい漁業法ができまして、それに基づきます政令、省令等では、半搭載式というのはないんでございます。それで自然発生的に遠洋カツオマグロ漁業におきまして、いろいろ資源状態が悪くなったとか、釣獲率が下がりますとか、いろいろな事情から、従前から事務的に搭載式というので、昔の航空母艦のように、五百トンぐらいから三千トンくらいまでございますが、漁船の上に二十トン程度の漁艇を一隻ないし四豊積みまして漁場へ出かけます。漁場でその搭載しております小さな漁艇をおろして操業するというような形態が、自然発生的に出て参りました。先生指摘の半搭載式というのは、その母船の甲板上に積みまして漁場まで参りますかわりに、母船の船尾に半分その漁艇のしっぽをひっかけまして、固定をして、そして小艇の船尾の方は海中に入ったまま引っぱっていくという形のもののようでございます。これを搭載式の母船漁業として観念をいたすか、その他のものとして観念をいたすか、従前解釈が必ずしも明確でございませんでしたわけですが、二月一日に新しい漁業法が施行いたしましてから以後、現在十二隻ほどそういう形態の面をやっておる船があるのでございます。漁場へ着きますまでの過程における船舶安全性から考えまして、必ずしも適当なものではないと考えておりますので、今後建造、改造等の機会に、できるだけ一般の母船の搭載式と同様に上に載せるというようなことで強力に指導いたしまして、現在ございますものについては逐次解消をはかっていきたいというふうに考えております。制度的には半搭載式というものがあるわけではございません。
  132. 久保三郎

    久保委員 そうしますと漁政部長何ですか、半搭載式というのは制度的にはないにしても、お話通りやっているわけですな。これは近い将来やめさせるということですか、いかがですか。
  133. 和田正明

    和田説明員 現在企業認可を受けておりまして、船舶の建造の正式手続が出てきておらないわけでございますが、技術的に見ましていろいろ危険性もございますので、強力に指導いたしまして、逐次現実にございますものを減らしていく方向で指導したいというふうに考えておるわけでございます。
  134. 久保三郎

    久保委員 最近聞くところによれば、当初は大体母船は七百トンぐらい、それから搭載する船は二十トン以下、そういう小型なものがあった。ところが最近では七百トンというのではなくて、母船が小さくなって四百トン、それで引き舟というか、付属船といいますか、これが大体二十トンクラスになってきた、こういうことで、これは船の堪航性や人命の安全からも非常に問題があると思うのです。  そこでお尋ねしたいが、母船式の場合、搭載式の場合、当然この付属船に乗り組む者も入れた居住設備なり何なりは十分備え付けておるのですか。
  135. 和田正明

    和田説明員 搭載式の場合には、搭載漁艇は漁場に着きますまでは甲板の上に載せておきまして、漁場に着きましておろして初めて漁撈を始めるわけでございます。私も数隻そういうものを見ておりますが、居住区はすべてその漁艇の乗組員を含めた居住設備になっております。
  136. 久保三郎

    久保委員 それで半搭載なり搭載漁艇の問題でございますが、これは御案内の通り、長きは二年にわたって操業しているわけです。これは安全基準では相当規則をきめてあるのですか、いかがですか。
  137. 和田正明

    和田説明員 航海日数の長くなります度合いに応じて、いろいろとお手元にお配りしております基準で差をつけておりますが、当然一番長い日数のものとして処理をいたしております。
  138. 久保三郎

    久保委員 そうしますとこれは基準があるわけですね。安全性基準というか堪航性というか……。
  139. 和田正明

    和田説明員 現在船舶安全法に基づきます漁船は、特殊規定がございますが、それ以外に現在まだ省令にまでは法的には制度化はいたしておりませんけれども共同通牒としての基準は持って指導をいたしております。
  140. 久保三郎

    久保委員 それで船舶局長、この搭載漁艇なり半搭載漁艇に対する検査というのは、あなたの方ですか。
  141. 藤野淳

    藤野政府委員 ただいま安全法におきましては二十トン未満の漁船検査の対象外になっておりますので、搭載漁艇につきましては検査をいたしておりません。
  142. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、水産庁がその検査をするのですか。今のお話ではそうなんですか。
  143. 藤野淳

    藤野政府委員 検査をいたしておりませんけれども、全然見ないというわけではないのでございまして、甲板に搭載しておりますものによりまして一応の検査はいたしておるわけでございます。これは完全に全然見ないというようなわけではないのであります。
  144. 久保三郎

    久保委員 しろうとでよくわかりませんが、半搭載式の場合、その母船はそういう半搭載漁艇を曳航することによって安全性が保たれるかどうかというようなことについても御検査なされますか。
  145. 藤野淳

    藤野政府委員 曳航することによりまして母船の安全性がそこなわれるような状況になるかどうかということは、もちろん、これは母船の検査の際に検討するわけでございます。決して野放し、フリーということではないわけでございます。
  146. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、今の問題で、曳航する母船あるいは曳航される漁艇、この関係にはある程度の規制されたものがあるはずだと思いますが、そういうものは別段明確なものはお持ちでないのですか。
  147. 藤野淳

    藤野政府委員 現在規制基準はございませんけれども、一応技術的な見地から不自然なものは当然規制をするわけであります。技術的な基準を設けてやっているわけではないのでございます。
  148. 久保三郎

    久保委員 これはやはり公正を期すために基準を設けてやるべきだと思うのですが、いかがですか。
  149. 藤野淳

    藤野政府委員 これは先生のおっしゃる通り、近い将来何らかの技術的な基準を設けて規制しなければならぬと考えております。
  150. 久保三郎

    久保委員 それと同時に、搭載漁艇に対して、あるいは曳航される漁艇に対しても、これは当然検査基準というものを設けてやるべきだと思うのです。二十トン以下ならよろしいというんじゃなくて、今申し上げたように、長きは二年以上にもわたるものがある。そういうものの安全性にかんがみれば、二十トン未満の漁船であって、現在の法律では船舶安全法には抵触しないけれども、当然そういう新事態に合わせてこれは含むべきだと思うが、いかがですか。
  151. 藤野淳

    藤野政府委員 これは搭載します場合は、搭載することによって本船自体の安全性にも相当大きな関係がございますし、曳航する場合も、また搭載艇をおろして操業いたします船につきましても、母船と密接な関連がございますので、先生のおっしゃる通り一つの技術的な基準を設けて規制しなければならぬ、かように考えております。
  152. 久保三郎

    久保委員 規制しますね。——それじゃ一応きょうはあとの問題があるようですから、次は電電公社なり電波監理局の方々にもおいでいただいて、さらに私の質問を続けさせていただきたいと思います。  本日はこれで打ち切ります。      ————◇—————
  153. 木村俊夫

    木村委員長 次に、久保三郎君外九名提出踏切道改良促進及び踏切保安員配置等に関する法律案を議題として審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。肥田次郎君。
  154. 肥田次郎

    ○肥田委員 この踏切道改良促進及び踏切保安員配置等に関する法案は、社会党の議員提案となっておりますが、主として、この中で生じてきます運輸省の政令に関する範囲の内容について、まず質問を行ないたいと思います。  この法案の第六条の中で、末尾の方にありますように、保安職員を配置することが必要と認められる踏切道を指定をする、この内容の中で、こういうものは一体どうしたらいいのかということで質問いたしたいのであります。御承知のように、現在踏切遮断機を設置しておるところもありますし、現実にはないところもあるだろうと思いますが、要するに、具体的な例を申しますと、二車線以上の線路が、たとえば一方は国鉄で一方はいわゆる地方鉄道である。さらに具体的な例を申しますると、国鉄と京浜線あるいは国鉄と兵庫県における山陽電鉄、こういうところでよくありますように、国鉄と私鉄線とが非常に近接をしているところがあります。近接をしておる関係で、それぞれが踏切遮断機を設けている。こういうことになりますると、一方の踏切が遮断をされている場合に、一方の踏切はあいておる、こういうことが起きるのでありまして、その際に、踏切の中でとりこになるという状態が生じます。指定をする以外の考え方として、こういった具体的な問題についての新たな指定の考え方というものを持っておられるかどうか、これは一つ鉄監局長の方からお答えをいただきたいと思います。
  155. 岡本悟

    ○岡本政府委員 確かに仰せのような踏切道がございまして、国鉄と私鉄の間にはさまれまして、通行者が中でとりこになるというふうなケースがございます。これをどういうふうに解決するかということでございますが、地形上非常にむずかしい場合が多いのではないかと思います。根本的にはやはり立体交差ということで解決しなければ、ほかに解決のしようがないのではないか。あるいは立体交差にしなくても、国鉄と私鉄の踏切道の間に土地の余裕と申しますか、そういうものができないようにするという方法もございますけれども、つまり国鉄と私鉄の踏切を共通して運用することによって解決するということも考えられるのではないかと思いますけれども、交通量が少ない場合はともかくといたしまして、多い場合には、実際問題としては相当むずかしいのではないかというふうな気もいたしますが、いずれにいたしましても、私の方でこれを根本的にこうしたらいいというような解決方策を立てまして、これから具体的に法律改正なりその他の御提案をしようというところまでは参っておりません。
  156. 肥田次郎

    ○肥田委員 国鉄の方へもこの点についてはお伺いしておきたいのですが、大体国鉄の場合には、三複線あるいはそれ以上になるところがあります。たとえば東海道線と京浜線のような場合ですね、京浜線の複線ないし複々線、この間が十メートル以下というようなところがあります。そこで、双方に踏切があるわけです。ですから、国鉄の方の踏切が開いて、京浜線の踏切へずっと人が移動してくる。そうすると、京浜線の踏切が閉路をしておる。片一方の踏切があいているものですから、車と人が移動し出すと、今度片一方の踏切が遮断されておるために、そこへ人が詰まってくる。詰まってくるときに今度国鉄の方でまた踏切を遮断しなければならぬという状態が起きて参ります。実際にはその規模その他については国鉄の方がはるかに大きいのですから、そういう状態のときに国鉄としてはどのようにしたらいいと思っておられますか。今鉄監局長の言われたように、まだ具体的にそれが対策というところまではいっておりませんか。  それで、実はこれについては例の垂水ですか、昨年山陽電鉄でこういう事件がありました。場所は、詳しくはまたあとで必要なら言いますけれども、明石の踏切ですが、山陽電鉄の遮断機がまず上がったために、車が国鉄の踏切道へ向かって前進した。ところが、そこで国鉄の遮断機がおりた。おりたものだから仕方なしにそこで停車した。停車したところが、その区間が非常に狭い。おそらく五メートルもないくらいだと思います。そのうちに車の故障でバックをし出した。ところが、山陽電鉄の方がまた電車が乗出したので遮断機をおろした。結局、遮断機をおろしたけれども、車の故障でバックをし出して、そうして電車がその故障でバックをしておる車をはねたために、その踏切の中間に待機しておった親子がはねられて死んだ。要するに間接的な事故ですね。結局、自動車の故障という原因はありますけれども、その間が若干の勾配になっています。若干の勾配になっておるところで双方の遮断機がおりたために、その車がはね飛ばされて、その間で待っておった被害を受けるべきでない人が二人、親子が死んだ、こういう事件もありました。ですから、こういう種類の踏切については、先ほど鉄監局長の答弁の中にもありましたように、これを立体交差するという条件ほどには至らないような内容のところが多いだろうと思うのです。そうすると、これを解決する方法としてはいわゆる国私鉄にかかおらず、一貫した遮断機の閉鎖作業をやる以外に解決の方法はないんじゃないかというふうに考えるのですが、国鉄の方ではそこまでは考え方がいっておりませんか。
  157. 渡辺寅雄

    ○渡辺説明員 ただいまお話しのような場合は非常にむずかしい場合でございまして、国鉄と私鉄が並行して走っておりまして、その離れが非常に短い場合でございますが、お互い一種手動踏切といいますか、踏切保安掛がついておるところは、一方の締め工合、あき工合を見まして、適当に人間がある程度交通整理をしまして、そのまん中のあき地に入る範囲しか入れないというふうなやり方で連係を保っておるところもあります。  それから一般の場合、人のついていない踏切におきましては、おのおの独立の踏切としてやりました場合には、どうしてもそういったふうに中にはまり切れない場合で、渡り切れないで、線路の中間、踏切の上に停車しておるとき、あるいはそこを通っておるときに電車がやってくるというふうな非常に危険な状態が生まれて参ります。これにつきましては、その道路交通壁の模様その他を見まして、できれば双方の踏切を一体化するというようなことが望ましいわけでございます。従いまして、われわれの方の考え方としましては、両方の線路の間の間隔が非常に狭く、両方を一体に考えなければ危険であると思われる場合には、国鉄側からも私鉄側に働きかけまして、二つの独立踏切でなくて一つの踏切として運用したい。その場合どうしても遮断時分が今度はうんとふえて参ります。しかも踏切の中が一体化するために長くなります。従って別々の場合よりもお通りになる方々にとってみれば非常に不便さが増すというようなことになりますけれども、安全という見地からみますと、二つの独立踏切よりも一体化した場合が安全であるというふうに考えて、そういうふうに思われる個所は、国鉄としては積極的に両方あわせてやりましょうというような動きを示しておるわけでございます。これはお互いに立場がございますので、必ずしもこういう話が全部進んでおるわけではございません。しかし根本的にはそういったところはやはり将来、あるいは場所によりましては、急いで立体交差によってどんどん解決をはかるべきであると私は考えております。
  158. 肥田次郎

    ○肥田委員 なかなかむずかしい問題ですから、そういうことだろうと思います。ただ国鉄の、たとえば新宿あたりのようなああいう非常に長い踏切の距離、区間から見ると、やはり並行路線ではその範囲だろうと思われるところがたくさんあります。ですから、やはり安全性ということを考える以上、今おっしゃったように、一体化する遮断方法以外にはないだろうと思いますから、これは一つ国鉄当局の方も運輸省の方もただ私鉄の自主性にまかすということだけではなしに、やはり指定をする前提条件のような考え方で強力な指導が必要ではないかと思います。  その次に、もう一つお聞きしておきたいのは、これも指定の範囲の中で、これは国鉄の場合にもあるかと思いますが、私鉄の場合にでも、いわゆる同一社線で線路が分岐をしたり何かする場所で遮断機を二以上設けておるところがあります。こういうのはやはり一体化する必要があるのではないか。これは経営者側にするとむしろ経費の節減になっていいのではないかと思うのです。ただこの点は微妙なもので、その地域における住民の要望なんかもあって、その点なかなかうまくいかないところがあり、ここでも先ほど私が言ったと同じような状態が生まれてきます。一つがあいても一つが締まるものですから、中に入って中州でじっと待っておる、こういう状態はあまり格好のいいものではないし、より危険性もあると思うので、この点については同一の問題よりもより解決しよい問題として、指定の条項の中で、これらに対する指示が行なわるべきものではないかと考えるのですが、こういう点はどうですか。比較的簡単だと思いますが……。
  159. 岡本悟

    ○岡本政府委員 御承知のように、踏切道の保安設備の整備に関する省令の第三条に「踏切遮断機を設置すべきものとして指定を行なう踏切道は、次の各号の一に該当する踏切道とする。」とございまして、その第三号に「鉄道が平行しているため二以上の踏切道が近接し、」「危険性がきわめて大きいと認められる」場合には遮断機を置くことになっておりますから、当然そういう指定の仕方をいたすわけでございますが、仰せのようにこれを一体として共通運用するように行政指導する必要は確かにあろうと存じますので、今後さようにやりたいと考えております。
  160. 肥田次郎

    ○肥田委員 その次に今度は第八条の踏切保安員の選定という項で、その第二項に「前項に規定するもののほか、踏切保安員の選任に関し必要な事項は、運輸省令で定める。」いわゆる「省令で定める。」という条項がありまするので、この中で次の点を確認いたしたいと思います。  まず踏切保安員の資格の取得ということについては一体どのような経過をもって資格を与えられるのか。それから、一緒に質問いたしますけれども、その資格の中で年令とか猶予措置、こういうものについてはどのような形で政令へ現われてくるのか、まずその二点についてお伺いしたいと思います。
  161. 久保三郎

    久保議員 第八条の踏切保安員の選任でありますが、第一項は、いわゆる選任の基準というか、そういうのを省令で定める、いわゆる要件を規定するわけですが、おおむね政令に織り込まれるべきところの保安員に対する要件というのは、一つは年令的なものがありますが、年令十八才以上で鉄道事業の従業員として経験一年以上のものが必要である。それから二番目には当該鉄道事業者が課する踏切保安員として必要な一定課程の教習を終わった者。申し上げるまでもなく、踏切保安に関する教習を一定期間やりまして、これを修了した者を選ぶ。それから三番目としては、当該鉄道事業者が行なう踏切保安員として必要な適性検査、そういうものに合格した者でなくてはならぬ。それから四番目としては、身体障害者というような疾患のない者をまず選ばなければならない。大体この四つの項目に合致した者を要件を備えた者として鉄道事業者が選任する。こういう建前になっています。ただ問題は、現在その職にあるところの踏切保安員というものはこの基準に必ずしも合わぬ者もあろうかと思うのでありますが、ただしかし急速にこれを切りかえることもいかがかと思うので、政令にはさらにただし書きというか、そういうのを置きまして、現在その職にある者は一応この資格要件を備えている者ということにして、この経過的なものは処理していきたい、こういうふうに考えているわけであります。  第八条の第二項はこれに要するいわゆる必要な事項でありますが、おおむねこれは事務的な手続その他をきめるのが主眼でありまして、資格要件は第一項によってきめられる、こういうふうに考えているわけであります。
  162. 肥田次郎

    ○肥田委員 身体障害者を除外するという、これはもう当然なことだと思うのですが、これは今極端な例を申し上げることになるのですが、たとえばこの鉄道業務に従事をしておって足が切断されたとかいうような、いわゆる障害者ですね、これが踏切警手の仕事、作業をしておる者もまれにあると思うのです。これはいわゆる足の方が工合が悪いだけで、その他は五体健全なんですが、こういうものはやはり身体障害者ということでこれは資格が欠けるということになるのですか。
  163. 久保三郎

    久保議員 御説の通りでありまして、確かに肥田委員もおっしゃる通り、現在まで踏切警手というか保安員というものの地位からいきましても、さらに職務からいきましても、単に遮断機の上げ下げが職務であるというふうに理解されて参りました。そのために片足が鉄道事故でなくなった者は、お前は踏切警手にでも行ってやったらいいだろう、あるいは片手を事故のために失ったという者も使っている場合が往々にしてあるわけです。ところが現在の踏切中心におけるところの交通事故にかんがみますれば、当然国鉄にすれば運転取扱心得というのがございまして、一たん問題が起きますれば、二百メートルなり四百メートルを短時間のうちにかけていって、それぞれの防護措置を講じなければならぬというようなことにも実は現実に抵触するわけであります。でありますから、そういう身体障害者は一切この職にはつけないことが好もしいし、またつけるべきではない、こういう考えでいるわけであります。しかしこれは解釈というか運用の問題になりますが、先ほど申し上げたように、現在その職にある者はこの法律が通っても要件があるものと規定はしまするけれども、身体障害者の者は合理的な配置転換をその事業者において円満にやるべきだとわれわれは考えております。
  164. 肥田次郎

    ○肥田委員 これは身体障害者が除外されるということになれば、いうところの身体障害ではないけれども、たとえばいわゆる老年に属する年令層の踏切警手の保安要員としての就業、あるいは女子がこれに就業している、こういうような場合もあるのですが、これらについての猶予措置というものはこれは可能であると思うけれども、こういう今言ったようなほんとうの身体障害者についての猶予措置というものはこの中では出てきませんか。
  165. 久保三郎

    久保議員 御指摘になりましたいわゆる老齢というか、年令的にたとえば五十六才とか五十七才とかいうのもございましょうし、あるいは婦人がやっている場合もあろうかと思うのでありますが、現実にこの場合は先ほど申し上げた猶予措置によって要件があるものとして、一応現在の者はそのままその職にとどめておいてもよろしい、こうしますが、理想としてはあまり——もっとも生理的な年令だけでとやかく申すことではないのでありますが、やはりこういう危険度の多い、しかも重要な職にある者については、相当年令の限界も考慮すべきだと思うし、婦人についてもこれは一から十までいろいろありまして、男の職員よりは身軽で機転のきく人もおりますので、一がいには言えませんが、一応身軽でないというふうに概念的にとりますれば、将来に向かってはそういういわゆる高年令層の者とか婦人については、こういう職に置くべきではないだろう、こういうふうに考えはしていますが、先ほど申し上げたように、現在ある者についてはそのまま認める、これはさっき申し上げた四番目の身体障害者というか、そういう範疇には属さないことはもちろんであります。
  166. 肥田次郎

    ○肥田委員 それから気にかかる字句で、「踏切保安員を選任しなければならない。」こうあるのですが、これは国鉄の方へもお伺いしますが、国鉄の方では現在名称は保線工手といいますか、保線工手の中から踏切保安員を充足をしている、こういうこともあるようでございますね。踏切警手が足りない場合は保線工手で穴埋めをする、それから地方鉄道、私鉄なんかの関係では、駅掌などを随時はめておるような場合もあります。これは国鉄の場合と私鉄の場合とは、国鉄の方では主として保線工手というふうに聞いておるのですが、私鉄の場合には駅掌、駅務者をこれに穴埋めをする、こういうことにしておるようであります。そこで保安要員の選任ということになって参りますと、保安要員のいわゆる所定の教習を受けるというこの関係と、それから「選任」とは、踏切保安要員としていわゆる他の兼務というものはやってはいけないのかどうか、こういうことについて、これはまず起案者の方にお聞きをいたします。  それから国鉄の方で現在とられている措置について、そういう「選任」という解釈についてどういうふうに考えておられるか、これもあとでお伺いしたいと思います。
  167. 久保三郎

    久保議員 肥田委員のおっしゃる、たとえば国鉄で言えば線路工手を踏切保安員にたまたま充当するか、あるいはそのまま充当しているかもしれませんが、あるいは駅におきますれば駅手をそれに配置する、こういうことはどうなのかという御質問でありますが、われわれとしては臨時の交代要員も、やはり先ほど申し上げた資格要件は備えておらなければいかぬ、こういうふうに考えます。もちろんのことであります。  それからもう一つは、踏切警手を配置すべきところの「踏切」というのは、交通上重要なところでありますから配置しておるのでありますから、いわゆる兼務そのものは認めたくないというのが私どもの思想であります。たとえば先般東北線の古河駅において起きました事故を見ましても、これは適例でありますが、この踏切保安員はかたがた駅のいわゆる転轍手の仕事も一部課せられておった。そのためにこの時間帯ならばまだ来ぬだろうということで、踏切の保安要員の部署から今度は転轍手の部署に行っておった。それでかけつけたときにはすでにトラックが入り込んで、そこへ急行が衝突したこういうような事故がありますので、そういういわゆる経済的には合理性があるかもしれませんが、少なくとも運転保安上はそういう兼務は一切認めたくない、こういうことであります。  なお、「選任」というのは、先ほど申し上げたような要件に従ってこれを選ぶというか、任命するということでございまして、別段特別な意味を含んではおりません。
  168. 渡辺寅雄

    ○渡辺説明員 ただいまの踏切保安掛の選任の件でございますが、国鉄におきましては大体八割が駅持ちの踏切でございます。一種手動でございますね。踏切保安掛がついております。踏切の八割は駅持ちでございまして、二割は保線区持ちでございます。従いまして、代務といいますか、他の職種に従事しておる人間を踏切保安掛の仕事に従事させるという場合には、線路工手だけでなくて駅の場合にもございます。ただ私どもとしましては、なるべく踏切保安掛という職種の性質にかんがみまして、できるだけ専任に近づけようという努力は現在もやっておるわけでございます。やはり人間の使い方と申しますか、あるいは各職種別におのおの一定の予備率をとるというようなことはなかなか困難な情勢もございますので、全部踏切保安掛という純粋職種のみでやるということは、現在の段階では困難であり、またそこまでやることも考えていない状態でございます。しかし、なるべく踏切保安掛というものは代務者というものでもってまかなうという方向ではないわけでございまして、できるだけそれ専門の人間を充てたいということに考えておるわけであります。
  169. 肥田次郎

    ○肥田委員 この「選任」という言葉の解釈はよくわかりましたが、こういうふうなことになって参りますと、若干余分なことになるのですが、一つお聞きいたしたいのは、従来の概念からすると、踏切警手、これは俗に踏切番といいまして、いわゆるぽっぽ時代には、とにかく目と耳がありさえすれば何とか仕事になるという時代もありました。そういう時代を推移して、今度はスピード・アップに従って、あるいは車両運行の輻湊に従って、どんどん適格の条件というものが引き上げられてきた、こういう状態になってきた。ところが、しかし待避の方の概念はあまり変わっていない。特に民間におけるところの待遇というものは、踏切警手といえば最低職階、それから踏切施設そのものも、ただもう雨露をしのぐ程度の小屋の中で過ごしておる。こういう施設即待遇、こういう非常に低施設、低待遇という条件が今日まで習慣的になってきておりまして、従ってこういうふうに踏切保安要員というものが、その言うところの所定の教習を受けて、そうして踏切保安員としてとにかく重要な任務を扱わなければならぬ、こういうことになって参りますると、おのずからこれに対するいわゆる職務給の職階というようなものも、従来の概念とは変わったものになる、いわゆる引き上げられてこなければならぬ、こういうことにならなければならぬのですが、この点はこの問題とは関係ありませんけれども、そうあるべきだろうと思うのですが、どうでしょうか。
  170. 久保三郎

    久保議員 御指摘通りでありまして、踏切警手といえば、先ほどお話があったように、よその職場でも一応困るから——国鉄なとでも従来はそうであったように聞いております。そういうことでありますから、職種は職種であるという概念がまず今までの踏切道改善がちっとも進まぬ一つの側面にもなるわけでありまして、われわれとしては先ほど申し上げたような資格要件を備えて、この踏切保安員の地位もさらに向上させなければいかぬと思うので、そういう点からいきまして、御説の通り、当然のごとく一定の教習を終えて、十八才以上で、しかも経験も一年以上という制限がありますれば、当然現在の職階級のランクでは、これはその職務に対応した待遇とは言いがたいと思う。よって、この法案が皆さんの御協力で通りますれば、並行してそういう制度は直されるべきだし、また直すべきだと思います。幸いなことでありますが、国鉄では最近踏切警手の服装等についてもこれを払うようになりましたが、いまだ十分ではないようであります。私どもは、この法案では、いわゆるこの踏切保安員については、ある一定の交通指示権を持たせるように相なりますれば、当然のごとく、職階と同時にその服制についてやはり何らかの基準を設けていくべきであろう、こういうふうに考えております。以上お答えいたします。
  171. 肥田次郎

    ○肥田委員 その次に、今度は第十条の関係でお伺いしたいのですが、ここでは踏切保安員の指示権と申しますか、そういう表現が使われておりますが、「歩行者又は車両の運転者に対し必要な指示をすることができる。」ということと、それから第二項の「歩行者又は車両の運転者は、踏切保安員が前項の規定により行なう指示に従わなければならない。」とあります。要するに、ここでわれわれが感ずることは、指示権というのかあるいは指揮権というのか、ただ単に、いわゆる常識的な指示にとどまるものなのか、この点の解釈を少しはっきりしておきたいと思いますのと、それから指示に従わないということについての取り扱いは一体どうなるのか。これは一番終わりにありますところの罰則に該当するには、少しこの文章では弱いように思うのです。「指示に従わなければならない。」という、これは指示というもののいわゆる力の関係によるものであって、ただ単に指示という範囲のものならば、この「従わなければならない。」という問題が空文になってしまうようなおそれがある。だから、この第十条の一項と二項の関係について、確認をしておきたいと思うのです。
  172. 久保三郎

    久保議員 ここでいう指示というのは、一つの指示権でありまして、内容は言うまでもありませんが、通行の禁止あるいは制限というようなものが含まれると思います。先ほどお話があったように、二つの踏切があって、中にとりこになるという場合、片方の踏切は締まって遮断する、片方の踏切はあいている、しかし、いつ何どき電車が来るかわからぬという場合に、無制限に前方の踏切が締まって後方の踏切があいている場合に、踏切道の上まで通行者なり車両が続くわけでございます。こういう場合には、当然現在の踏切保安員にはこれを制止あるいは制限する権限はございません。しかし、現実には実際はやっているのでしょうが、実際権限のない者がそういうことができませんので、これにはそういう意味のことを含めて、やはりある程度の指示権を与える。あるいは一つの踏切にしましても、踏切の両側においていわゆる道路が一ぱいになっておる場合がございます。そういう場合に、ただ単に今日のいわゆる保安員の権限では、門扉の上げ下げでございますから、上げたとたんに両方から来て、踏切道のまん中で、これはにっちもさっちもいかぬということもありまして、交通をさらに渋滞させる、あるいは危険の差し迫った場合に、臨機の処置もとれない場合がございます。こういう場合には、当然踏切の保安員は、その状況に従って片側通行をさせる。片側は門扉をあけておいてもこれをとめておく、こういう権限がなくては実際にはうまくいかぬわけでございます。こういう意味の指示権をこの中に付与しよう、この指示権に従わないものの罰則はございません。罰則はございませんが、指示権に従わない場合には、当然踏切保安員の職責において、それぞれのさらに上級の段階の手続を進めることは可能であります。そこで、いわゆる処罰の問題が出てくるかと思うのでありますが、ここでは、いわゆるそういうように従わなかった場合に、直ちにそこで処罰するということはまだいかがかと思うので、その次の段階でやはり縛る、こういうことであります。  なおつけ加えておきますが、当然かかる指示権というか、踏切道における通行の安全のための指示というのは、いわゆる警察官の職責に属するものでありますから、この三項に申し述べてあるように、警察官がそこにおりまして交通整理をするという職務を行なう場合には、当然指示権はその方へ移るわけでありますから、その点の調節も必要かと思うのでありますが、一応そういうような考えでここに十条を起こしたわけであります。
  173. 肥田次郎

    ○肥田委員 もう少しお聞きしておきたいのですが、そうすると、この指示権というのはこの範囲だということになると、ここでの直接取締権ということにはならないので、従わなかった場合の摘発というようなことがあとに起こるわけですか。
  174. 久保三郎

    久保議員 その通りです。摘発というか告訴というか、それは当然行なわれるべきだと思います。
  175. 肥田次郎

    ○肥田委員 それでは次に進みまして、第十三条では、要するに原因者全額負担ということが明らかになっております。道路側であろうと、鉄道事業者側であろうと、その原因者が費用の全額を負担する、どういうことになっておりまして、第十四条へいきまして、今度は末文のいわゆる「鉄道事業者及び道路管理者が協議して定めるところにより負担するものとする。」こうあります。この解釈、これも少しはっきりしておきたいと思います。この第十三条の関係でいきますと、これはやはり原因者負担というものが協議の起点になるべきじゃないか。要するに第十三条ではそれぞれの原因者が経費の全額を負担する、こうなっておるのですから、第十四条の場合にのみ協議事項という形にならなければならないとすると、その考え方の延長は当然第十三条の原因者負担というこの考え方を起点として協議が始まる、こういうふうに理解をしてよろしいのですか。
  176. 久保三郎

    久保議員 第十三条は新たに鉄道なり道路がそれぞれのところに交差する場合でありますから、当然原因者が負担するという原則であります。第十四条については、これは現に交差をしておる、いわゆる踏切道がある場所における立体交差を正しくするということでありますが。これはいろいろと問題があると思うのでありまして、道路の交通が多くなったから、あるいは鉄道の車両運行が多くなったから、どちらかという点はむずかしい問題だと思うのでありまして、原因者をいずれかに求めるということは必ずしも妥当でない。もちろん協議段階においてはそういう問題が出ようかと思うのですが、これはまた法律できちっときめるわけには参らぬかと思うので、これについてはやはりこの十四条の通り、そういう微妙な問題を法律で画一的にやれない問題があろうかと思うので、それぞれの協議にまかせる、こういうふうにしたわけであります。原因者負担の十三条の精神は受け継いでいくことは当然でありますが、具体的にきめる場合に、法律上いずれがどうであるかというのは非常にむずかしい、こう思うので協議にまかせるわけであります。
  177. 肥田次郎

    ○肥田委員 なおもう少し突き進んだ例で聞いておきたいのですが、これは特にこの法律ができたあとで、これを執行される立場にある運輸省側にお聞きしたいのです。この協議事項についてこういう考え方もあります。要するに鉄道路線は国有鉄道であろうとそれから地方鉄道であろうと、新しく立体交差というものがやられる場合の条件はあくまで立体交差をやるというのが原因者的行為になるんだ、従って既存の鉄道路線がその経費負担をしなければならぬということにはならぬじゃないか、こういう議論があります。最近ようやく受益者負担という言葉が用いられるようになり、それから、原因者負担という言葉が用いられるようになり、だんだんこれが進歩してきましたけれども、しかしいよいよ協議ということになると、今提案者の久保議員の言われたように、その解釈を一律にきめることははなはだむずかしい。そこでさらに、そういう際に一体どういう考え方が妥当なのかという議論がよく出て参ります。最小限負担すべきものを考えると、要するに既設の鉄道路線の部分のみを負担するということが正しいのではないか。要するにその跨線部分が立体交差をする場合に、鉄道立体交差にする場合にはおのずからこれは別ですけれども、道路が立体交差をする場合に、その立体交差の部分だけ、要するに跨線の起点から起点までではなしに、立体交差の部分だけ、さらに具体的にいうと線路の幅が十五メートルあるとするならば十五メートルの部分だけを負担する、あるいは、いや、そうじゃない、十五メートルといえども、この十五メートルがなければ立体交差としての道路は役目を果たさぬのであるから、それの何分の一という考え方がいいだろう、こういう意見が出て参ります。従ってそれをずっと考えあわせると、要するに跨線部分のその何分の一かを負担するというふうなことが、これが協議の内容なんだ。だから跨線部分についての三分の二とか五分の一とか十分の一とかいうことは、これはもうとんでもない話なんだ、こういう意見が出て参ります。協議という際に、いわゆる協議しなさいということで、当局としてほっておくわけにもいかないでしょうから、そういう点が論争になった場合に、いわゆる協議をさす指導立場といいますか、どういう考え方をとられるか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  178. 岡本悟

    ○岡本政府委員 ただいまのような御意見もあるかと存じますが、しかし立体交差に要する経費というものは、やはり跨線橋、つまり立体交差部分の全部に要する経費が算定の基礎になると思います。ただし多くの場合は鉄道事業者側の関係の負担というものは、御指摘のように受益者負担というふうなことで算定されておりますので、概して地方鉄道業者のような場合について申しますれば、その負担率は非常に低いということに相なっておるわけでございます。これは事実上の問題でございますが、そういうふうになっております。それを跨線部分に限定するかどうかということは確かに問題であろうかと存じますが、やはり跨線部分だけでは立体交差というものは効用を発揮しないのでございまして、やはり前後の取りつけ部分というものがあってこそ立体交差というものはでき上がるわけでございます。これを除くということは相当やはり問題があるのじゃないかと思います。むしろ実際上の協議でそういった点は解決するよりほかないのじゃないかというふうに考えております。
  179. 肥田次郎

    ○肥田委員 鉄監局長は実際問題を目の前にしての協議というふうにいわれますけれども、立体交差を目的とした道路をつくるということになってきた場合に、いわゆる受益率と称するものは、踏切が要らなくなる。だから従来の踏切等の補修費も要らなくなった、いわゆる人件費が要らなくなった、こういう点がいわゆる受益率に現われてくると思うのです。ですから大部分の受益率というものは立体交差を指向する道路の方にあるわけなんですから、その道路をだれがつくるかということは、これは問題は別ですよ。しかし問題は、それを別にしたとしても、そういう際の受益率というものは、鉄道側についてはこれが今言ったような範囲に限られる。要するに維持費と補修費、それに人件費を含めたこの程度のものがいわゆる受益率だ。だからそれを負担すればいいじゃないか。だから道路はそういうことで一つ幾らりっぱなものでもいいからつくっていただけばけっこうではないか、こういう意見が出てくるわけです。  それから道路の方は、これはまた今おっしゃったように道路というものをつくる際には、初めから終わりまでとにかく道路をつくらなければまたがれないのだから、そのまたがれないというその原因を考えたら、いわゆる道路の跨線部分の起点から起点までといいますか、終点までといいますか、その間の経費のなんぼかを負担さすということが協議になる。全くここでは相反する二説が出てくるわけです。ですから、十三条の延長ということになると、原因者負担というこの論理を延長してものを考えなかったら、協議基準がないじゃないか。協議の起点というものが全く相反するところから始まるわけですから、協議の起点というものをつくってやらなければならないのではないか。そうすると原因者負担という論理の延長をここへ持ってくる、こういうことになるのじゃないかと思うのです。
  180. 岡本悟

    ○岡本政府委員 先ほど提案者の御説明にもございましたように、十三条は現在存在する道路に新たに鉄道が交差するとか、あるいは現在存在する鉄道に新たに道路が交差するというふうな場合の規定でございまして、これは明らかに原因者が負担するということでございます。現にそういうふうにいたしておりますが、十四条の場合は、原因者というものがいずれにあるかわからない。つまり原因者がいずれにあるかわからないと申しますと語弊がございますけれども、何十年前からか存じませんが、鉄道と道路が交差しておる、平面で交差しておる。それを交通量が非常に多くなってきたので立体交差にするということの場合が規定してあるわけでございますが、この場合には現在行なわれております通常の負担率の考え方というものは、受益者負担の受益の度合いがどうあるかということの算定が骨子であるわけでございますが、鉄道側の受益というのは、先ほど御指摘通りでございまして、踏切警手が必要なくなるとか、あるいは遮断機が要らなくなるということのための経費節減といいますか、逆にいえば受益ということを算定してはじき出す。道路側はその踏切がなくなることによって道路通行が円滑になりまして、そのことによって経済活動としての能率が上がってくる。こういうことを算定しておるようでございますが、従いまして実際上は十三条の思想とは別に関係はございませんけれども、鉄道と道路との平面交差を立体交差することによって受ける利益の度合いというものは、はるかに道路側が大きいわけでございまして、そういう観点から申しますと、御指摘のようにやはり原因が道路交通量の激増から来ておりますので、反面からいってそれだけ道路交通側の立体交差することによる利益が大きいということになりまして、多少原因者的な要素もそこに加味されておるものと解することもできるんじゃないか、かように考えております。
  181. 肥田次郎

    ○肥田委員 だいぶ私の考えと近寄って参りましたから、さらに一方の言い分を聞いてみると、平面交差という場合に、その起源というものは、道路があとからできる場合、それから線路があとから敷設される場合、これはいろいろあると思うのです。そうして時代的な経過を経まして、道路の交通量が非常に多くなった。だから第一種踏切で遮断機をつけて、踏切警手をつけて、そして道路に応じた拡幅をした踏切道をつける、こういう施設を施して、そうしてさらにそれがいわゆる平面交差では通行量をまかない切れない。従って、そこで起こってくるのはいわゆる行政指導なんですね。それで立体交差にしなさいという、このことが、これはこの指示、あるいは法令によるところの指示というものはやはり多分に原因者的な要素を持つもの、ですから、その原因者的要素を持つものがだれであろうと、国である場合には国、こういうことになるのだろうと思う。従って、いうところの、一方では道路を拡幅されれば踏切道も拡幅される、安全度は道路と同じように慎重を期して、設備も施してきた、だから立体交差というものの必要は迫られておるだろうけれども、立体交差をしなければならぬという意思は鉄道側にはない。そうすると、その立体交差をするという議が持ち上がって立体交差を実施するということになってくると、そこに意思に反した行動が起きてくるわけですから、やはり原因者、こういう議論が起こってもこれは不思議はないと思うのです。要は、そういうところからそれらの論理が認められて、そうして協議に入っていくという姿が正しいだろうと思うのです。だから、これはおっしゃられるように非常にむずかしい問題ですから、今すぐここで私はこの問題についての解釈の結論が出るとは思いませんし、何か時間の都合もあるようでございますので、この問題その他、若干問題がありますけれども、次に残して、きょうの質問はこれで打ち切りたいと思います。      ————◇—————
  182. 木村俊夫

    木村委員長 次に、海運業再建整備に関する臨時措置法案並びに外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法及び日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を一括議題として審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。細田吉藏君。
  183. 細田吉藏

    ○細田委員 私は海運関係の二法案につきまして質問いたしたいと思うのでございますが、時間があまりございません。本日はこの両法案に対する基本的な問題につきましてのみ取り上げて質疑をいたしたいと思うのでございます。  海運業の重要性でございますとか、日本の海運の置かれておる困難な地位、またこれをすみやかに再建しなければならぬというような点につきましては、すでに当委員会で従来もしばしば論議されておるところでございまして、私からこの重要性とかその他についていろいろるる申し上げるまでもないところでございます。また院外におきましても、あるいは経済団体連合会でありますとか、産業計画会議とか、同友会とか、あるいは海員組合でございますとか、いろいろな面で海運の問題につきましては種々の論議がなされておるのでございます。これらの論議が煮つまって今回両法案が政府によって提出されたと思うのでございます。  そこで第一に伺いたいことは、いわば日本の海運再建の基本構想ともいうべきものでございまして、政府としては現在の日本海運のどこに病根があり、何をしようとしておるか、大臣の両法案に対する提案趣旨説明はございましたが、さらにそれをもっとかみくだいた、バック・ラウンドになっておるような点、その他につきまして、基本的な考え方、これをどういうふうに持っておられるか、まずこういう点についてお伺いをいたしたいと思うのでございます。またあわせてこれを解決するのにどういう御決意を持っておられるかという点について、政府の所信をただしたいと思います。
  184. 辻章男

    ○辻政府委員 日本海運の弱点と申しますか、病根でございますが、現在のまず経理状況を申し上げまして御参考に供したいと思います。  日本海運は戦争によりまして資本蓄積を喪失いたしまして、その後国民経済の要請にこたえて現在約八百万総トン程度の船腹の拡充をし来たったのでございます。この大部分というものは自己資金を喪失しました関係上、借入金によって参っております。従いまして、三十七年九月末現在の利子補給会社五十四社につきましての数字をはじきますと、設備の借入金が約三千億に達しておるわけでございます。このうち約千七百五十億が開発銀行で、残りは市中関係の金融機関でございます。これらの借入金に対する利払いは年間約二百七十億程度に達するわけでございます。それで自己資本というものは利子補給会社全体で約千億余りでございます。資本構成は二〇%が自己資本でありまして、残りの八〇%は借入金に依存しておるというような概況でございます。それから収益面で見ますと、ここ海運の不況によりまして償却不足が相当累増して参っております。普通償却で九月末で約六百四、五十億というものが不足に相なっております。また借入金の返済も順調とはいえませんで、約九百億近いものがいわゆる延滞の形になっておるわけでございます。それで九月期の決算を見ますと、大体償却の範囲額の七割程度ぐらいしか償却ができない、かような状況になっておりまして、一言にして申せば過小資本であり、借入金の過多で、これが経理に非常な圧迫を来たして企業基盤を弱化しているということが言えるかと思うのであります。それからまた一面業務の状況を見ますと、定期航路等につきましても戦前の地位を相当回復しつつあるのでございますけれども、無から出発した関係上、定期航路その他のいわゆるオペレーターにつきましては弱体なものが相当多くございまして、これらが邦船間においてもやや過当競争の傾向が見られる。たとえて申し上げれば、対米航路につきましては今十一社が進出しておるわけでございまして、ニューヨーク航路につきましても九社が出ておるというような状況でございまして、何とか邦船間がもっと協調するか、あるいは集約して強くなるべきじゃないかという声が前々からあるような状況でございます。  それで今回の海運の対策でございますが、これは一昨年来——前からいわれておったのでございますけれども、特に一昨年、このままでは基幹産業として海運は国民経済の要請にこたえられぬじゃないかということが、経済同友会、経団連その他関係の財界筋からも非常にそういう強い声が起こりまして、運輸省といたしましては、海運造船合理化審議会にも海運の対策をはかりまして、実は今回提出しましたような開発銀行の利子の猶予を中心としたもの、それから利子補給の強化ということにつきまして海運造船合理化審議会からの答申もいただいて、いろいろ政府部内でも検討いたしまして、前国会に法案を提出したのでございます。この程度では、海運企業の再建というものは困難ではないかということで廃案になった次第でございます。その後も、そのとき出しました政府の案を中心にしまして、再び海運造船合理化審議会からの建議もございますし、関係各方面からの御意向も参酌いたしまして、ただいま提出しておりますような開発銀行の利子猶予の措置と開発銀行及び市中金融機関の海運に対する借入金に対します利子補給を強化していく、この二本柱をもちまして今後の海運を再建し、国民経済が必要とします船腹の拡充にこたえていきたい、かように考えておる次第でございます。
  185. 細田吉藏

    ○細田委員 ただいまの御説明ですが、これのねらっておられるところは、利子の猶予及び利子の補給の強化、またこれとうらはらをなす形で、海運の集約強化という、一言にして言うとこういうことだと思うのでございます。しかし、これは日本の海運再建のすべてを網羅しておるとは実は考えられないわけでございます。さらに幾多の問題がこのほかにあると思うわけでございます。たとえば不経済船あるいは高船価の時代にできたいわゆる高船価船といったようなものの対策につきましても、これは部分的には対策になるかもしれませんけれども、まだ残されておると思うのでございます。こういった意味で総合的な海運政策というものがこの法案も含めて行なわれなければならぬと思うのでございまして、こういう点につきましての政府としてのお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  186. 辻章男

    ○辻政府委員 ただいま御指摘のございましたいわゆる不経済船、陳腐化しました船型の船が相当日本海運の船腹構成に含まれておるわけであります。また船価の高いときにつくられた高船価船等の問題は依然として日本の海運界においては大きな障害でございます。これらの点につきましては、今回の措置によって部分的には吸収されると申しますか、めどがつく企業もあるかと思うのでございます。全体的には大きな障害でございますので、これらの今後の措置の進行を見守りながら、必要あれば今後の適当な措置をなお検討していきたい、かように考えております。
  187. 細田吉藏

    ○細田委員 この法案は現在のわが国の法体系の非常に重要な問題を含んでおると私は思うのでございます。と申しますことは、この第五条に、整備計画を承認するということがございます。「整備計画が海運業再建整備を図るため適切なものであって、その実施が確実であり、かつ、その実施について」云々というふうに書いてございまして、この適切と大臣が認める、これはもちろん第三項によりまして、「海運企業整備計画審議会に諮問し、その意見を尊重して」きめることになっておりますが、この大臣が整備計画審議会の意見を聞いてきめる、また中身としては、再建整備をはかるため適切だという非常に抽象的な言葉がございますが、これの運用いかんによりましては、戦争中の総動員法ではありませんけれども、今回の措置の対象になるかならないかというのはこれにかかっておるのでございまして、運用の仕方によりましては非常に重大な問題をはらんでおると思うのでございます。今回の再建措置、これに該当するかどうかということは、海運会社にとりましては、いわば死活問題でございます。該当しないということになれば、非常な大きな不利益、——というよりは、むしろ会社自体の、例外もあるかもしれませんけれども、まず一般的に言いますと、何と言いましょうか、会社の死命を制せられるといっていいような状況ではないかと思うのでございます。この点につきましては、先ごろ本会議で同僚岡田議員からも質問いたしましたが、本法の取り扱いにつきましては、よほど慎重にやりませんと、海運業は、申すまでもなく、自由企業中の自由企業でございますが、これに、いわば官僚統制といったようなものが加わりますことは非常に警戒をしなければならぬことだと思うのでございます。こういった法運用の基本的な考え方、これについてお尋ねをいたしたいと思います。
  188. 辻章男

    ○辻政府委員 この第五条の整備計画の承認の件でございますが、これは今御指摘ございましたように、海運企業にとりましては非常に重大な結果を招来する事柄でございまして、また抽象的な一般的な基準をつくることもなかなか困難な問題でございます。五条の三項にもございますように、運輸大臣といたしましては、海運企業整備計画審議会に諮問いたしまして、その意見を十分尊重いたしまして、実情に沿うような認定をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  189. 細田吉藏

    ○細田委員 そこでただいまの海運企業整備計画審議会でございますが、これにつきましては、ただいまのところどのような構想を持っておられるか、一般的に伺っておきたい。
  190. 辻章男

    ○辻政府委員 海運企業整備計画審議会運輸省設置法で認められておる審議会でございます。委員は、定員が八名になっております。まだ具体的な人選はいたしておりませんが、大体の考え方といたしましては、産業界、金融界及び学識経験者等をもってこの委員会を構成して参りたい、かように考えております。
  191. 細田吉藏

    ○細田委員 時間がありませんので、詳しくは後日に譲りますが、市中銀行の問題でございます。整備計画の承認の際に、日本開発銀行以外の金融機関が利子の支払いの猶予をすることが確実であるということを認めなければいかぬというふうに第五条の第一項になっておるわけでございます。これにつきましては、現在の日本開発銀行以外の金融機関の状況がどうなっておるかというような点と、またこれはややこまかくなるかもしれませんが、手続的にはどのようにして確実であると認定されるかというような点について伺いたい。
  192. 辻章男

    ○辻政府委員 現在市中の金融機関が海運に融資いたしておりまする設備資金は約千二百億余りでございます。この第五条で、日本開発銀行と協調融資をしておるものは、今申し上げた数字よりは少ないわけでございますが、これらにつきまして、協調融資のものにつきまして二分の一以上の利子の猶予をすることが確実であると認められたときに整備計画の承認が行なわれるということにしておるわけでありますが、確実であると認める点につきましては、どういう手段、方法を講ずるかというふうな御質問かと思うのでございます。これは各関係の市中の金融機関から当該整備計画を提出いたしまする海運企業に対しまして、利子猶予をするという書面を提出させるような方法を考えておるわけでございます。
  193. 細田吉藏

    ○細田委員 実は質問がたくさんございますが、きょうはこの程度で一応打ち切りたいと思います。  特に政府側に御要望申しておきたいと思いますことは、この両法案は非常に大切な法案でありますし、一日も早くこれは実施に移されなければならぬ法案だと思うわけでありまして、いろいろな点で今後こまかくまた御質問いたしたいと思うのですが、いろいろ資料等につきまして十分な整備をこの際お願いをいたしておきたいと思います。資料要求いたします内容につきましては、また別途御連絡をいたしたいと思います。本日は何しろ時間がございませんので、この程度で一応とどめておきたいと思います。
  194. 木村俊夫

    木村委員長 次会は明六日水曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二分散会