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1963-03-01 第43回国会 衆議院 運輸委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月一日(金曜日)    午前十一時六分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 佐々木義武君 理事 鈴木 仙八君    理事 高橋清一郎君 理事 細田 吉藏君    理事 井手 以誠君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君       有馬 英治君    伊藤 郷一君       尾関 義一君    壽原 正一君       砂原  格君    關谷 勝利君       中馬 辰猪君    福家 俊一君       加藤 勘十君    内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸政務次官  大石 武一君         運輸事務官         (海運局長)  辻  章男君         運輸技官         (船舶局長)  藤野  淳君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      岡本  悟君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      和田 正明君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     宮地健次郎君         日本国有鉄道参         与         (運転局長)  音田 和夫君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 二月二十八日  委員勝澤芳雄辞任につき、その補欠として石  田宥全君議長指名委員に選任された。 同日  委員石田宥全君辞任につき、その補欠として勝  澤芳雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  船舶安全法の一部を改正する法律案内閣提出  第九号)(参議院送付)  国本国有鉄道経営に関する件(信越本線にお  ける列車脱線事故等に関する問題)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  日本国有鉄道経営に関する件について調査を行ないます。  この際、昨二十八日の信越線における貨物列車転覆事故について、政府当局並びに国鉄当局より、それぞれ発言を求められておりますので、これを許します。綾部運輸大臣
  3. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 お手元に配付してあります資料によりましてごらん通り信越本線越後岩塚駅におきまして、貨物脱線転覆事故を起こしましたことは、私、責任者として、ひどく責任を感じておる次第でございます。  詳細は、国鉄当局から報告いたさせます。
  4. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 しばしば事故を惹起いたしまして御心配をおかけし、また、輸送障害を生じまして、いろいろと御迷惑をおかけいたしましたことをおわび申し上げます。  昨日の払暁、一時五十三分に、ただいま大臣からお話のございました貨物列車脱線事故を起こしたわけでございまするが、お手元の簡単な資料でございますが、その資料によって状況を申し上げたいと思います。  列車は、貨物の第四六九列車、現車四十二両を牽引いたしておったわけでございまするが、この列車がただいま大臣からお話のございましたように、信越本線越後岩塚駅構内で事故を起こしたわけでございます。そこの状況は6というところに書いてございますように、この第四六九貨物列車越後広田駅で、第四六六貨物列車と行き違いのため臨時に停車をいたしまして、八分延着、十分延発ということでございましたのですが、長島駅を十二分延で通過をいたしまして、塚山の第二号トンネルの中で機関士機関助士がいずれも意識不明となったという、ただいまのところそういう報告でございます。  それであとの方に横長図面が書いてございますが、線路断面図が入れてございます。その図面にございますように、この塚山の一号、二号という二つのトンネルを通っていったわけでございますが、時速約六十キロ——推定でございますが——二十分ほどおくれて通過をいたしました。越後岩塚駅へ二十分延着する見込みでございましたところ、停車すべきはずのこの列車停車しないで、時速約五十キロないし六十キロぐらいの速度安全側線に進入をいたしまして、機関車脱線転覆をし、続く貨車三十五両が脱線をし、うち十七両が転覆いたしまして、上下本線を支障をいたしたのでございます。この事故のため、機関士機関助士がそれぞれ負傷いたしまして、ただいま町名とも病院に入っておるような状況事故でございます。  事故原因につきましては、今申し上げましたように、関係乗務員が二人ともけがをいたしまして、病院にまだ入っておるというような状況でございますので、的確な原因の断定を下すわけには参らないのでございまするけれども、面接の原因は、とにかくこの機関士機関助士と、いずれもが窒息状態に陥っておりましたために、信号の確認もできず、また列車停車手配もとり得ないで、安全側線に突入をしてしまった、こういうことのように推定されるのでございます。  関係者は、第三ページのところにございますように、それぞれ機関士機関助士も車掌も、現職につきましたのは三十二年からでございまして、相当熟練者であると申し上げてよろしいかと思うのでございます。  それから復旧見込みでございまするが、新津と新鶴見から操重車手配いたしまして、また長岡及び直江津から救援列車を出しまして、目下作業中でございまするが、開通の見込みは、本日の夕刻になる見込みでございますが、輸送手配につきましては、それぞれ越後線経由等長距離列車、特急、急行等は動かしておりますけれども、大要はそれに書いてある通りでございます。  いずれにいたしましても、このような事故を起こしまして、大方の皆様にも大へん御心配をおかけし、また御迷惑をおかけいたしましたことを申しわけなく存じておる次第でございます。  以上をもちまして、概要、御報告にかえさせていただきます。     —————————————
  5. 木村俊夫

    木村委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。肥田次郎君。
  6. 肥田次郎

    肥田委員 この貨物列車脱線転覆は、これは幸い貨物列車であったために、人的事故がなかったということはまことに不幸中の幸いであったと思います。  そこで私は特に質問をしておきたいと思いますのは、機関士トンネル内で中毒窒息をするという、こういう状態が今日なお残っておるという、こういう問題であります。およそ国鉄では、施設近代化ということで、ずいぶん積極的な対策をしておるということを常々いわれておるのですけれども、今日なお昔あったようなこういう状態が何らの改良も加えられずに残っておるのではないか、この点について一体どういう処置を講じられておるのかということをまず質問いたします。  それからもう一つは、あまり前のことは要りませんが、われわれは、終戦直後に、炭質が非常に悪くて、それがために機関士窒息をするというような状態が北海道の新得あたりトンネルにあるということをよく耳にいたしました。最後にはここではもう乗務拒否をするという状態まで出てきました。一体こういうふうな機関士窒息状態事故が起きる、あるいは機関士窒息したけれども幸いに事故は起きなかった、こういうような件数が最近の三十年くらいの間に一体何件くらい起こっていたのか、この点についてまず質問いたしたいと思います。
  7. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまの御質問に対してお答えを申し上げますが、先ほど御説明申し上げました資料の二枚目についております横長線路断面図ごらん願いたいと思うのでございまするが、このトンネルは、トンネル手前に差しかかります手前の方に千分の十の上り勾配があるわけでございます。問題が起こったと思われます塚山第二号のトンネルは、この図面ごらん通りまん中ほどまでは千分の五ミリの勾配でございました。あと半分近くはレベルというわけでございます。こういうようなわけで、従来このトンネル窒息事故などが起こったことは一回もございませんし、こういう事故が起こるということは予想しておらなかったわけであります。そういうような関係もございまして、実は全国的に見ますと、何べんかトンネル内の窒息事故を過去において起こしたこともございますので、現在はそういうおそれのある仕業を受け持っておるような機関区には、それぞれ乗務員のためのガスマスクを配給いたしてございます。今回の事故のこの機関士が所属いたしております直江津機関区にもガスマスクは配給してあるわけでございますけれども、今まで何分にもこのトンネルそれ自身がそれほど窒息事故が予想されるようなむずかしいトンネルだとは乗務員自身も考えておらなかったところでございまするし、特にこのトンネル通過する仕業に対して必ずガスマスクを持っていけというような指定まではしておらなかったわけでございます。そういうようなこともあったと思いまするが、今回の乗務員機関区に配属されておりまするガスマスクは携行しておらなかった。それで普通の場合ならば何も事故はなかったはずなんでございます。たまたま、これは多少推測が入るわけでございまするが、トンネルの周辺には非常なただいま積雪も深うございまするし、多少トンネルの中の気流関係なんかが平常とは積雪影響等によって変わっておったかということも想像されまするし、また機関車燃料も、この機関車の場合には六〇%は練炭を使い、あとの四〇%を切り込み炭を使っておるわけでありまするけれども、そういう燃料雪等関係通常の場合よりはよほど湿気が多かったというようなことも想像されますので、それらの悪条件が競合した結果、こういうことになったのではなかろうかと推測されるのでございます。しかし、この隧道につきましても、過去二回にわたりまして隧道内の一酸化炭素含有量等につきまして調査をやっております。その調査は三十四年九月七日にいたしておりまするが、そのときに第二号トンネルの中の一酸化炭素の一番濃くなったときのパーセンテージは〇・〇一二九%ということでございましたし、第二回目にはまた三十五年二月十日に同じトンネルの中で調査をいたしておりますが、その際の最高一酸化炭素含有量は〇・〇〇二六%というようなことでございます。大体一酸化炭素恕限量は〇・〇一%ということでございますが、それから見ますと、二回の調査ともそれほど大したことはございませんし、現に従来一度もその事故が起こっておりませんでしたので、今回の乗務員自身もそういうことは考えずに仕業しておったことと思うのでございます。  なお、先年来列車安全運転確保のための方法といたしまして、御承知のように車内警報器というものを設備しておるわけでございますが、信越線のこの区間は現在C型の車内警報器設備が完備してございます。なおこの機関車にもC型の車内警報器は取りつけてあったわけでございますが、不幸にして機関士機関助士双方失神状態に陥っておったということでございます。現在の車内警報器はブザーが鳴りまして注意を喚起するような仕かけになっておるわけでございますけれども自動列車停止装置まではついておりませんので、こういうような場合には、残念ながら今のC型の車内警報器では間に合わなかったということでございます。ただこの区間につきましては、これは三十七年度から大体三カ年くらいの間に、主要線区車内警報装置を、国鉄としては全部自動停止装置を伴ったいわゆるS型の警報器にかえるという計画で現在工事に着手いたしておるようなわけでございます。三十八年度じゅうには設備の方は完了をいたします。車上設備の方は現在の計画では、三十八年度以降にわたるものも若干出て参りますが、近い将来において車内警報装置もいわゆる自動停止装置を伴うものに改めることにしておりまして、現在それに着手しておるような次第でございます。これが完成いたしますれば、今回のような事故も避け得られるのではなかろうかというふうに考えております。  なお、最近におけるこういうトンネル内の窒息事故が大体何カ所くらいで起こっておるかというお尋ねでございましたが、今ちょっと手元にその資料を持っておりませんので、後ほどまた申し上げることにいたしたいと思います。
  8. 肥田次郎

    肥田委員 ガスマスク設備されておるということですけれども、これは機関士に配給してあるのですか。それとも機関区なら機関区にだれか責任者がおって、乗務するときに配給する、こういう方法なんですか。  それからもう一つ、これはいずれにもなかなか問題点があると思うから、ことさらに追及する意味で聞くわけじゃないですが、新潟とか直江津とかに配置してあるガスマスク使用については、だれか責任者がおって、持っていきなさいとか、これはいいだろうとかいうような指導をしているのですか。この実情について聞かしてもらいたいと思います。
  9. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまガスマスク機関区に配属というか、配付してあるわけでございます。そうして機関士仕業によりまして、どのトンネルを通る場合には必ず持っていけという指定をしておるわけであります。ですから、指定トンネルを通るような場合の仕業のときには、必ずその機関士機関助士にはガスマスク機関区の方で持っていかせるわけでございます。この塚山トンネルの場合には、従来それほどむずかしい仕業トンネルだとはだれも考えておりませんでしたし、事故もありませんでしたので、塚山トンネルについては指定はしてありませんでした。従って今回もこれを持っていけという指図は、機関区の方ではしておらないわけであります。
  10. 肥田次郎

    肥田委員 結果を聞いてみますと、これはいろいろと疑問が出てきますね。ガスマスクを配備してあれば、そういうものについてはトンネル内で窒息中毒のおそれがあるということでガスマスク設備をするわけですから、トンネル向こうが直視できるようなトンネルは別にして、このトンネルの長さは千百五十五・七メートルありますね。こういう千メートル以上になると、必ずまん中が高いのですから、そういう向こう透視がきかないようなトンネルで、先ほどおっしゃったように一酸化炭素量が〇・〇〇幾らだったからということで指定はしてなかった。こういうことになると、これはやはり指定責任ということになるのではないですか。だから起こり得べくして起こった解放なのか、起こるべからずして起こった事故なのかという問題になってくると、少なくとも千メートル以上あって、そうして勾配だ、こういう工合のトンネルについては、いずれにしても換気は不十分な状態だろうと思いますから、この中で運転する場合には必ず中毒症状が起こるだろう。これはむしろ常識的にそう考えられる。ところがこれはガスマスク使用指定をしていないトンネルだという形になると、どうも納得できないのです。  それから、従ってここのトンネルには換気装置もないわけですか。  それからもう一つガスマスクですが、ガスマスクは、われわれも乗ってたびたび経験しましたが、多分の水蒸気を含んでおりますから、すぐガラスが曇ってしまう。トンネルの中で透視の必要はないわけですから、それはいいといたしましても、そういうところに非常に不便な点があって使用できにくいというような状態で、そのガスマスクの機能としてはどういうようになっておるのですか。この三点についてまず質問いたします。
  11. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 このトンネルは、図面のところに数字が書いてありますように、千百五十五・七メートルという一キロちょっとのトンネルでありますけれども、これは私あまり専門でもございませんが、このトンネルに入ります前の千分の十の上り勾配というものは、上り勾配には違いありませんけれども、それほどひどい上り勾配というほどのものではございませんし、トンネルの中は、先ほどから申し上げましたように、半分弱はレベルであるというトンネルでございますので、普通の場合ですと、大体トンネルにかかる前に石炭をくべるべきものはくべて、蒸気を上げてトンネルにかかりますので、トンネルの中でさらにかまに石炭をくべてやるというようなことは起こらないトンネルでございます。そういうことを申してはあれでございますが、通常条件のもとにおいて、通常技術石炭をたいております場合には起こらない、事実起こらなかったのでございまするが、そういうようなこともございまして、特別の換気装置とかなんとかいうものが必要であるとはだれも考えていませんでしたので、そういう設備もしてないわけでございます。  それから乗務員に使わせますガスマスクでございますが、このガスマスクは、比較的軽便と申しますか、そう戦争中の毒ガス用のああいうものすごいものではなく、割合簡単なものでありまして、それを装着して作業をする際にそれほど負担にならないようなものを現在使わせておるというわけでございます。しかしいろいろ話を聞いてみますと、やはりガスマスクをつけると、そうでない場合よりは作業がどうしてもやりにくいので、多くの場合、ガスマスクを持たしてやりましても、実際には使わずにぬれ手ぬぐいか何かで鼻をふさいで間に合わすというようなことがあるように聞いておりますが、使わせておりますガスマスクが、それをつけておったのでは作業ができないとか、作業が非常に困難であるとかいうようなものではないというふうに承知をいたしておる次第でございます。
  12. 肥田次郎

    肥田委員 そうすると、このガスマスクはもう一酸化炭素を防ぐ程度だけの、いわゆる口と鼻をおおうだけ程度のものなんですか、めがねはついていないのですか。要するに、こういうふうにかぶるようなマスクじゃないんですか。
  13. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 私が聞いたところによりますと、そういうものものしいものではない、大体鼻と口をおおうようなものだそうでございます。
  14. 肥田次郎

    肥田委員 およそ国鉄が言っておられる機械、施設近代化という中で、機関車運転士機関士に昔のほんのお茶濁しのようなマスクを配給しているというそのこと自体がやはりおかしいのです、ほんとうに。  それからあなたの方で今言われたのは、起こり得べからざるところに事故が起こったというふうな印象を与える、そういう説明でしたが、しかしトンネル内の換気実情というものは、そんな状態で固定してしまうという考え方は誤っていると思うのです。ですから、換気装置はなかったかということを聞いたんですが、これはもちろんないのですか。それから起こり得べからざるところにこういう窒息事故が起こったということについて、その他の面に問題がありませんか。たとえば機関車トンネル内の速度、その速度と、機関士トンネル内でことさらに長時間のろま運転をやろうというような、そういう状態ではないと思うのです。技術の問題というけれども機関士技術は、副総裁もおっしゃったように、長年月勤務した優秀なものだ、こういうふうにおっしゃっておる。そうすると、やはり列車の組成というものが問題になってきますね。貨車、いわゆる牽引車両が多過ぎた、あるいは積載数量が多過ぎるのではないか、そのためにスピードが出ないので長時間トンネルの中を走らざるを得なかった、こういうことになるとするならば、これは起こり得べからざる事故が起こったということにはならない。トンネルというものに対する関係者概念というものがやはり誤っておるということになる。その点はどうなんでしょうか。
  15. 音田和夫

    音田説明員 ただいま肥田先生のおっしゃいましたように、私ども技術的にいろいろかねてから検討いたしておったのでありますが、一番私どものいまだによくわかりませんのは、所定運転時間でございますと、十分なんでございます。それが、まだ正確ではありませんが、うちの方でとっております列車の時間から推定しますと、所定運転時間に対して八分の余分がございまして、十八分で運転しておるのでございます。御承知のように、勾配であまり速度を落としますと、普通の運転ができなくなる場合がございますので、私ども推定ではございますが、条件を入れましてスピード・カーブを引いてみますと、どうも十ミリ勾配を八キロくらいで上がらないと十八分の運転ができないというような状態になっております。そういったことで、そういった運転をいたしますことは、普通の場合には非常に困難が伴いますので、何か原因があったのではなかろうかということで、いろいろ調査をいたしておるわけでございます。先ほど副総裁の申し上げましたように、まだ十分の調査ができておりません。今後状態がよくなりました場合に一そう検討を加えていきたい、こういうふうに考えております。  それから列車牽引車両につきましてのお尋ねがございましたが、私どもが普通にきめております牽引定数というのは、あの区間では千トンをちょっとこえております。現実事故を起こしました列車は九百トンでございまして、定数一ぱいは持っておらなかったように思っております。ただしこれは現実に引っ張っておりました列車の中に入っております貨車積荷量というものは、御承知のようにかなりばらつきがございますので、そういった点も検討されなければならないのでございますが、目下鋭意復旧に努力している状態でございます。  それから、貨車の大部分のものはこわして復旧するようなことになっておるように思いますので、今後の調査をいたしたいとは思っておりますが、いろいろ困難な問題があるように思います。
  16. 肥田次郎

    肥田委員 この事故はやはり思い違いがあったようですね。要するに、事故が起こるべからざるところで起こったのだ、こういう一貫した説明ですから、これは一つ十分調査をされる必要があるだろうと思います。特に、事故対策としては、少なくとも今日の状態の中でこういう窒息中毒というようなことで機関士が意識不明になるというような問題があるとするならば、所要の換気装置をつける必要もあるでしょうし、それから機関士そのものが着用するところの防毒マスクにしても、あまりちゃちなものじゃなしに、もう少し近代的ないいものを、特にその点でも考案をして国鉄でつくらせて利用さすとか、そうして、少なくとも、このトンネルには使わなくてもいいだろうとかどうだろうとかいう問題は、機関士自身が一番よく知っていることなんですから、それを機関区で指定をしてやるということは、機関区はもちろん経験者がおられるところですから、私はその点に大してインチキはなかろうと思うのですが、指定するそのこと自体が私は問題を起こすもとだろうと思います。トンネル内の換気気流状態が固定している状態でないと思います。それをテストする場合は、いろいろの角度から正直にテストされておると信じておりますけれどもしかし実際は走行中の機関士助士も、二人とも窒息してしまうということが起こった以上は、今までの概念を変えなければならぬ、こういう点については十分注意をすべきだろうと思います。  それから、やはり本質的な問題は、機関士の、言うところの帝国主義日本訓練をしたという姿が多分に残っておると思います。とにかく、私は国鉄の映画なんかをちょいちょい見ましたが、トンネルの中で、ほんとう窒息寸前になってスコップで石山灰をほうり込む、その努力、しかもこれが英雄的な行為のように指導されてきた。だからそういうものが現実に残っておるのはあたりまえなんですよ、今日まで国鉄がそういう訓練をしてきたのですから。無理に無理をさせて、その人間は、たとえば機関士の場合には、もう窒息寸前までショベルを掘ってやっておることが、これが国鉄の職員なのだ、これが国鉄の誇りなのだという指導をしてきたのですから、機関士の場合でも機関区の責任者の場合でも、あるいは少なくともその一連の職場関係にある人は、そういう気持というものが抜け切れないのはあたりまえなんです。ですから、ものの考え方というものの前提がそういうところに置かれておるとするなら、近代化ということを口にする限りは、やはり本質的にそういう考え方を改めていかなければ、そういう指導をやらなければこれは直りませんよ。国鉄の職員というものは一つの型にはめて育てておるのですからね。ですから、私は事故が起きるのは、人間の失敗もいろいろあるだろうと思うけれども、そういうふうに死ぬまで努力をするとか、死ぬまでがんばるという最大限の努力をするということ、これがお前らの仕事だというふうに今日まで教え込んできたのですから、起こることはあたりまえなんです。その点を私はトンネル内の窒息事故ということで痛感をいたします。ですから防毒マスクの改良とかトンネル——トンネルも私は水平のトンネルの方が換気状態の点ではかえってあぶないと思うが、この点はもう一ぺんよく研究していただきたいと思います。それから極端に短いトンネルの場合は別ですけれども、このトンネル防毒マスクを用いなくてもいいとかどうとかいうことは、機関区で指定するんじゃなしに、機関士そのもの運転の体験上からきめるべきことだろうから、その方に重点を置かれるように、機関区の関係者に集まってもらって、よく協議される必要があるだろうと思います。幸い今度の事故は人が乗っていなかったために大きな事故にはなりませんでしたけれども、新聞の写真を見てみると、われわれが今までかつて見たことがないほど車両が折り重なって転覆をしておるのです。もしこれが客車だったらということは、だれでもが考えただろうと思う。その点は一つ十分注意をされるように要望しておきたいと思います。
  17. 木村俊夫

    木村委員長 加藤勘十君。
  18. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 今、肥田君からいろいろお尋ねしましたが、私どもは決してこういう事故が起こったことに対して国鉄の当局者を責めようという気持で質問をしておるのではないのです。あくまでも事故の再発をどうすれば防止することができるかという立場から、こういう事故に対しては極力微に入り細をうがって科学的な検討をして、二度と事故の起こらないように注意をしてもらいたいというその注意を喚起するために、いろいろお尋ねするわけなんです。  そこで、大体のことは今、肥田君からお尋ねしましたからよくわかりましたが、私のどうしてもまだ疑問に思われますることは、機関車自体に、こういう従業員が窒息するような内部の湿度であるとか一酸化炭素の量であるとかいうものと、それを防止するための設備の点が欠けておりはせぬか、それには機関車の耐用年数、要するに機関車が古くなってそういう設備を施す余地がないとか、あるいはあったけれどもなされなかったとか、そういう点が一つあると思うのですが、この機関車の耐用年数はどのくらいになっておりますか。
  19. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 機関車の耐用年数は普通三十五年ということになっておりますが、今国鉄機関単は大へん古いものが多うございまして、この機関車の場合もそれは超過しておったようでございます。ただ根本的にはやはり電化、ディーゼル化ということで、実はただいまの計画では昭和五十年までには国鉄の全線区から蒸気機関市はなくしてしまうということで、まず本線から電化、ディーゼル化に努めておりますので、根本的な解決はそれによって今後は防げることになると思うのでございます。それまでの間、ただいま御指摘のございましたように、二度とこういう事故を起こしませんように、今までもそれ相応の調査なり検討なりはしておったつもりでございますけれども、それにもかかわらず、とにかくこういうことが起こってしまったわけでございますから、こういうことを繰り返さないようにあらゆる角度から十分検討を加えまして、乗務員自身の防護のためにも、また列車事故を未然に押えますためにも、できる限りの努力をいたすようにするつもりでございます。
  20. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 蒸気機関車が将来ディーゼル等に転換される過渡期における老朽車のもたらした事故と言えば言えないこともないと思います。これによりますと、五十キロもしくは六十キロの速度で側線に飛び込んでしまった、こういうことになっておりますが、報告書にあります延着時間を見ますと、臨時停車のために広田駅で八分おくれた。それが十分おくれて出発して長島駅では十二分おくれて出ておる。さらに問題になった塚山二号のトンネルの中では二十分おくれておる。こうしてみると、勾配が千分の十ということで大したことはないかもわかりませんが、ともかく勾配がつくに従って速度が落ちておる、こう見なければならないですね。そうすると、速度が落ちたトンネルの中においての事故として、乗務員窒息という問題が起こってきたわけです。先ほど副総裁説明されたように、非常に雪が多くて湿度が高く、そうして燃料が煉炭が六〇%、こういうことであると、ここにはどういう事態が起こるだろうか、こういうことが普通ならば考えられなければならぬと思うのです。まさか窒息という事故が起こるとは予想されなかったというお話でありますが、起こりはしないだろうか、こういう疑問が直江津機関区の責任者においても当然気がつかれなければならぬし、また乗り組んだ従業員の方もちょっと考えられなければならないと思うのですが、そういう点でうかつであった。従来一ぺんもなかったから、こんな千メートルのトンネルの中で窒息というような事故が起こることはなかろう。特に一酸化炭素量についてお調べになったところによれば〇・〇一幾らと非常に低いものであって、窒息の極量には達していないから安全だという先入観があって、気がつかれなかったかと思いますけれども、やはり機関車が老朽化しておるということ、従って上り勾配においては速度が落ちるということ、速度が落ちればトンネル通過の時間が延びる、こういうことで、普通の時間で通過すればあるいは起こらなくて済んだ窒息という事故トンネルの中の時間が延びたために起こったということも考えられるわけです。そういう点で監督の衝にある人が——ことに直江津機関区ではガスマスク使用して作業することは非常に不自由だという点はあるにしても、ガスマスクが備えつけてある上いうことは、いつかそれが必要であるということを感じたがゆえに備えつけられたものであると思うのです。そうすると、雪の量が非常に多くして湿度が高い、そうしてトンネル通過の時間が普通の場合よりも延びる、そういうときにどういう事故が起こるかということは、まあ推理をしては悪いけれども、推理的に当然そういうことが考えられると思うのです。そういう点において、少なくとも監督者の注意が欠けたという点は、当局としても感じられなければならぬし、基本的には私は時間が通常の場合と同じように通過し得られるような機関車の新規交代がなされなければならぬと思いますけれども、それは今のこの問題とは直接の関係はないわけです。とにかくこういう老朽市が事故を起こした一番大きな原因だと思うのです。この機関車さえ正常な速度で走っておれば、あるいは事故が起こらないで済んだかもしれない。幸いに貨物列車だったから、先ほど肥田君が言うように世間の注意もそれほどではありませんけれども、もしこれが客車だったらとんでもないことになるかもしれないと思うのです。そういう点から、私どもとしては、新聞を見てもほんとうにおそろしいことだという感じを持ちますので、将来は絶対にこういう事故がないように少し注意をよくして、注意を大きくしてもらいたい。そうして事故が起こらないということは決して行き過ぎじゃないと思うのです。注意が足らないために事故が起こったということは、やはり一つ責任であるから、注意は幾らしても決して注意し過ぎるということはないと思うのです。そういう点について十分注意して下さって、将来再び絶対に——絶対にといっても、神様でないから絶対ということは言われぬかもしれませんけれども、ともかく当局の心がまえとしては、絶対に起こさぬというぐらいの意気込みをもって設備それから労働条件等について最善の注意をしていただきたい。  それからもう一つちょっと考え得られますことは、ついでだからお伺いしておきますが、乗務員の勤務の状況、こういう点から見ますると、この表に関する限りにおいては、それほど過労の状態ではなかったわけなんですね。だからもしトンネル内の条件が普通の条件ならば、窒息は起こらないわけです。労働の過労というような点から起こる事故はなかったはずなんです。それが起こったというところに問題があるわけなんです。だからして労働者が非常に過労で疲労しておって、普通の健康体なら耐えられるところが耐えられなかった——この数字だけ見ればそういうことはないように見られるのですが、それにもかかわらず、現実窒息という事故が起こったということは、私はそれらのいろいろな条件が重なって窒息という事故が起こって、その窒息事故が主たる原因となって、ついにこういう転覆という大きな事故を起こすに至った、こういうことになっていると思うから、労働条件、健康管理については言うまでもありませんけれども、これもまた事故防止の主要なる要素として十分に注意していただきたい。こういうことを少なくとも運輸委員会の一人としては考えないわけにいかない。そこで私は特にこういうことを当局に要望しておきます。十分注意してもらいたいと思います。
  21. 木村俊夫

    木村委員長 井手以誠君。
  22. 井手以誠

    ○井手委員 短い時間お許しを得まして、石炭対策一つの柱である火力発電についてお伺いをいたしたいと思います。  政府は、昨年の十一月の末に、石炭対策の一番大事な需要確保の一つとして「国鉄用炭の需要減退を防止するため、国鉄の自家発としての石炭火力発電所の建設促進について検討する。」という大綱を閣議で決定なさっておるのであります。内外に宣言をなさっておるのであります。そうしてその具体的なものは、通常国会までに提案をいたしますという約束を池田総理大臣は申されておるのであります。昨年の十二月十二日に私の質問に対して総理大臣は、通常国会までに——通常国会までにというのは十二月の召集までにという意味が含まっておりましたけれども、これは一月の再開劈頭まででもかまわぬわけでありますが、すなわち、今日までにはこの大事な政府の政策である需要確保、その一つである国鉄用炭の火力発電所はすでに、成案がなくてはならぬと存じますので、この機会に運輸大臣並びに国鉄総裁からお伺いをいたしておきたいと思います。——吾孫子総裁は前に出ていただきたいと思います。——運輸大臣国鉄総裁から、すでにきまったであろう火力発電所の建設問題についてお伺いをいたしたいのであります。  なお、念のためにつけ加えておきますが、こういう問題は、この国会においてきょうが非常に大事な時期になっておりますので、これは運輸大臣よく御承知であろうと思います。非常に大事な本日でございますから、特に十分お考えの上に御回答を願いたい。
  23. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 この問題は、去る臨時国会におきまして私が本会議で御答弁申し上げましたように、国鉄といたしましては、いろいろ研究いたしましたが、諸般の事情、特に採算の点、それから産炭地における電力の需要と遠距離送電等の経済的効果を考えまして、いろいろ検討をやってみましたが、現在のところにおきましては、なかなか実施はむずかしいという結論に到達いたしておるのであります。しかし、私は本会議でも申しましたように、採算を無視し、それにつきましては石炭産業の重要性にかんがみまして、さらに財政措置を別途に講ずるからやれというのであれば、やることが国家的に必要であるならば、私どもはやりたいということで各種の研究をいたしております。
  24. 井手以誠

    ○井手委員 個々の採算の問題では今日ないと思います。もちろんどの企業においても、あるいは国家機関においても、採算を無視するわけには参りませんが、もし採算がとれないというなら、国が財政措置をしなくてはならぬ政府の決意があるはずであります。御承知通り五千五百万トンの需要も困難であるけれども、これだけはあくまで確保したいというのが政府の対策ではなかったかと私は思います。大臣もさようにお心得であると思います。その需要確保のために国鉄で火力発電をしてはどうかという、やるかやらないか、どちらでもいいぞという甘いものじゃないのですよ、これは。必要であるから検討しろという大綱なんですよ。国鉄が採算に困るからそれではやれませんというような問題ではないのですよ。だから財政上何か支障があるのか。それじゃ聞きますが、どこに支障があるのです。具体的にお聞きしましょう。金が足りないのか。
  25. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 率直に申し上げまして、国鉄の現在の財政状態においては金が足りないのです。同時に、それをやらなくても現在の電力使用量ではやっていけるという、従ってより速急な国家的要請のものもありまして、かれこれ勘案いたしまして、結論的に申しますならば金が足りないということに尽きると思います。
  26. 井手以誠

    ○井手委員 金が足りないならば運輸大臣がお世話なさるのがあなたの仕事じゃございませんか。運輸大臣が閣議で強力に発言なさって——私はあなたのゆうべのテレビを見ておりましたが、宮城県知事の応援なんかにはなかなか勇ましいことを言っておりますが、あのくらい勇ましいなら、金が足りないといっても何百億円も足りないのじゃないのですよ。国鉄の火力発電というものはそんな膨大な金じゃございませんよ。国が必要であるというなら、閣議で決定したものであるなら、あなたは閣議でなお強調して、国鉄の必要な財政措置を講じてやるのがあなたの務めじゃございませんか。その決意はございませんか。
  27. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は十分決意を持ちまして、予算の折衝のときにおきましても、また閣議におきましても、これを発言いたしまして、よく事情はわかっておりますから、やりたいと思う信念には変わりありませんが、微力にして井出さんのおっしゃるような目的を達し得ないことは、はなはだ残念に思っております。
  28. 井手以誠

    ○井手委員 決意を持っておるけれどもできない。できないじゃ済まされぬですよ、こういう問題は。(「できない相談だ」と呼ぶ者あり)できない相談を政府は大綱として決定してないはずです。無理なものであっても、困るものであっても、それを克服して需要を確保してやろうというのが政府の決定じゃございませんか。それをなし遂げるのが国務大原の仕事じゃございませんか。あなたはもうそれで微力だからしようがないということですか。何かなお研究して、閣議で努力してみようというお考えですか。いかがでございますか。
  29. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 なお努力して、そういう目的を達するように努力したい信念でおります。
  30. 井手以誠

    ○井手委員 吾孫子さんにお伺いしますが、具体的にどういう支障がございますか。今結論は財政上とおっしゃいますが、財政上どういう具体的にお困りになっておりますか、お聞かせ願いたいと思います。
  31. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいま大臣から御答弁がございました通りでございまして、国鉄の現在の新五カ年計画では、輸送力増強ということを御承知のように中心にいたしまして、それに加えて最近の事故多発等の傾向から緊急補正を計画いたしまして、保安対策を最重点に充実していくということで今やっております。電力の関係につきましては、採算的に申しまして、今買電にたよることもできますし、自家発電よりその方が計算上どうも有利であるというふうに考えられますし、現在の五カ年計画並びに保安対策の緊急充足ということのための所要資金を考えますと、とうてい自家発電の方まで手を回すというような余力がないということが最大の原因でございますが、政府からのお話もございましたし、技術的にもいろいろ検討は加えておる次第でございますが、国鉄が自家発電をやるということにして考えてみますと、これはただいままでの検討の経過でございますが、発電所の単位容量は七万五千キロワット程度のもの、つくるとすればそういうことになるのではなかろうかということでございまして、他の電力会社等の大容量の火力発電に比べまして、建設費も、また発電の単価も、いずれも割高になる。従って資金及びエネルギーの合理的な利用ということを考えました場合に、やはり膨大な負荷系統を持っております電力会社が総合的に石炭火力発電所の建設を行なうことが、国家的な立場からも有利なのではなかろうか。国鉄として小さな単位のものを持つということは、そういうような角度からもなお検討しなければならないことじゃないのかということで、今までいろいろ検討しておるわけであります。その問題につきましては、さらに検討をするようにということでもございますので、なお検討はいたしておりますが、今までの検討の結果を申し上げますと、財政的にそこまで手を広げる余裕がないということで、国鉄としては買電で、大きな電力会社の方で火力発電はやっていただくことが適当ではなかろうかというふうに考える次第であります。
  32. 井手以誠

    ○井手委員 副総裁の最後におっしゃった大きな電力会社で云々ということは、私はこれは政治問題だと思います。国鉄の御発言ではないと思うのです。電力問題について、電力の機構についてはいろいろ意見がお互いございますが、いずれにいたしましても、この緊急の石炭対策上、国鉄も自家発電が必要ではないかという政府の方針が決定しておるのです。  そこで私は具体的にお伺いしますが、今いろいろおっしゃいましたけれども、それじゃ七万五千キロワット発電するのに、国鉄でおやりになって幾ら単価がかかりますか。二円九十銭くらいですか。
  33. 宮地健次郎

    ○宮地説明員 単価の検討までいたしておりませんが、七万五千キロワットの発電所の建設費は、これは大約でございますが、大体五十二、三億くらいではないかと思います。
  34. 井手以誠

    ○井手委員 大臣、今単価の点は計算しておらぬとおっしゃいました。そこに私はまだ研究していないと思うのです。検討した上での結論じゃないと思うのです。私の方も手一ぱいですから、そこまでやれませんという、そういう簡単なことでございません。どうも私はそういう気がしてなりませんよ。運輸省なりあるいは国鉄当局のこの石炭対策大綱に対してのお考えは、今鉄道は手一ぱいだから、火力発電まではもう手が届きませんよ、金も要りますからとてもだめですよ、そういう常識的なことでお考えになっておるのじゃございませんか。私はそういう気がしてなりません。国鉄が自家発電した場合に単価がどうなるのか、そして所要資金が幾ら要ってどうなるのかという精密な検討までなさっていると私は思いません。もう一ぺん検討さしたらどうですか、大臣
  35. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 御趣旨の点よくわかりまして、私ども国鉄では詳細なる単価、詳細なる買電料金おのおの研究し尽くした結果、現在の財政状態においては不適当ではないかという結論に達したものと承知いたしております。同時に、井手委員の御指摘になるように、そんなことをやっておれるひまがない、それでお金もかかるしという、そんな安易な考えではやっておりません。同時に、あなた方が御主張する国鉄の自家発電ということは、石炭需要を確保する一つの方便でございまして、かりに御指摘のようにやりましても、せいぜい年間にいたしまして百二十万トンないし百三十万トン見当が推定されるのです。そこでそのより多い需要を電力会社に復活させまして、その発電力をよけいに安くやることが国家的見地から申しましても、また石炭対策から申しましても、その方がいいと考えております。と申しますのは、たびたび申すようですが、産炭地における電力の需用がないのです。それでどうしたってそこでやった発電力というものはどこかへ持ってこなければいかぬ。しかも遠距離の電力輸送ということは、考えられてはおりますが、なかなか困難でございまして、その送電中におけるロスということを考えてみますと、みすみす国家的に不利益だということがわかっていることをやれということは、政治の局に当たる者としては言い得ないことであると思っております。
  36. 井手以誠

    ○井手委員 みすみす不利益になることをやれとは無理だとおっしゃいますが、そういうことを政府が大綱としてきめたんじゃございませんか。ロスのお話が出ましたが、これは今電力を九分割しておる結果であると私どもは考えるのです。電力を一社にしたら、そういうものは割に、ロスがないとは申しませんけれども、今九分割しておるからいろいろな問題が起きておるのですよ。しかしきょうは、そういうものは質問外でございますから、多くは申し上げません。それじゃ大臣は、いろいろ研究した結果、国鉄としての火力発電は困難であるという結論に達したとおっしゃいます。詳細については後日別の機会にお伺いしますが、そのことは閣議に報告なさいましたか。
  37. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 しばしば報告いたしております。
  38. 井手以誠

    ○井手委員 じゃ、また別の機会にします。      ————◇—————
  39. 木村俊夫

    木村委員長 次に、船舶安全法の一部を改正する法律案を議題として、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。久保三郎君。
  40. 久保三郎

    ○久保委員 まず提案になりました船舶安全法の改正のことでありますが、これは一九四〇年のいわゆる海上人命安全条約に署名をして、これの批准の手続の前提として提案されたと思うのであります。ついては一九四〇年にこれができたのでありますから、今国会に安全法の所要の改正をするというならば、当然その根拠になる条約そのものが承認を求められなければならぬと思うのでありますが、いまだに国会には承認を求める手続がしてないようであります。これはいかなる考え方でございましょうか。
  41. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 船舶安全法は、この国際条約の承認の有無にかかわらず、やらなければならぬ義務でございます。しこうして日ならずして外務省が批准の承認を求むる件を本国会に提出するものと私は確信いたしております。
  42. 久保三郎

    ○久保委員 人命の安全については、別段条約に定めがなくとも、古い法律で時代に合わぬものがたくさんありますから、当然提案されることはけっこうだと思うのです。提案されたものをおよそ見れば、どうも条約そのものに最小限抵触をしないような形だけの改正を提案していると思うのです。これは回りくどい話は別として、外務省が主になりますが、どうして条約そのものの承認を求める手続をしてこないのでありますか。担当の船舶局長お尋ねした方がいいと思うのですが、何か支障があって出てこぬのでありますか。
  43. 藤野淳

    ○藤野政府委員 一九六〇年の海上人命安全条約は、安全法の御審議をいただく前に手続をしておりまして、もうすでに閣議決定になっておりますので、日ならず委員会付託になるというふうに考えております。
  44. 久保三郎

    ○久保委員 閣議決定になっていて、国会に出てこない、そんなに手続がかかりますか。どうして条約そのものが先に出てこぬのだろうか。とにかく条約に問題があるのでありますから、条約そのものをまず審議して、これに見合って現在の安全法が抵触しているとすれば、これを直さなければならぬ。手続としては順序が狂っていると思うのです。これは船舶局長責任ではないでしょう、外務省の責任かもしれませんが、あなたは密接な関係がありますから、外務省とどういう話になっておるんですか、ざっくばらんに聞きたい。
  45. 藤野淳

    ○藤野政府委員 条約は、二十六日に閣議決定になりまして、直ちに委員会付託になったというふうに聞いておったのでございますが、なお至急措置いたしたいと思います。
  46. 木村俊夫

    木村委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  47. 木村俊夫

    木村委員長 速記を始めて下さい。
  48. 久保三郎

    ○久保委員 国会に提案しておられるというか、今委員長が言うような予定になっておるそうであります。だから本格的な審議は条約が出てからでないと、実際順序は悪い。少なくとも条約が出てこぬでは、これは大体提案するということ自体もおかしいですよ。ところが提案されたものが、先ほど大臣が言われる通り、全般的な改正で時代に合わせるというんなら、条約があとからでも一部の理屈は立つわけです。ところが今度の提案は、結局条約の定められたところに従って抵触する部分のそこだけを提案してきた、こういうふうに思うわけです。あと検査の方式が若干ありますが、これは大したあれではない、こういうことです。そこで今度それでお尋ねしますが、どうして船舶安全法は全面的改正をできなかったのか、なぜしなかったのか、これはいかがですか。
  49. 藤野淳

    ○藤野政府委員 運輸省といたしましては、船舶安全法は、当初全面改正の予定で諸種の準備を進めておったのでございますが、いろいろ事情がございまして、全面改正は時期を見て次回に延期したいというふうに決定したわけでございます。全面改正をいたしませんでも、提案説明で申し上げましたような点で、相当改善されるという内容のものでございます。
  50. 久保三郎

    ○久保委員 ちっとも中身がわからぬ、どうして延期するのですか。
  51. 藤野淳

    ○藤野政府委員 船舶安全法を全面改正いたしますためには、法の体裁と申しますか、形式が非常に古い法律でございまするので、現在省令事項になっております各般の技術基準をも法律に取り入れるという場合もあるいは生ずるかと考えられるのでございますが、これは何分膨大な作業を必要とすることでもございます。もう一つは一応全面改正の案があったのでございますけれども、法制局の方で事務的に間に合わないという点もございましたので、一部改正にとどまらざるを得なかったという筋だろうと思います。
  52. 久保三郎

    ○久保委員 間に合わないから実は提案ができなかった、こういう理由になると思うのですね。いろんな理由があるんじゃないか。しかし、その一九四〇年に署名されて持ち帰ってきて、三十六年からそれぞれ作業を始めたわけです。ずいぶん時間をかけてやっていて、なぜ間に合わないのか、こうわれわれは不思議に思う。単なる法制手続の問題だけであるのか、それともそれ以外の間に合わぬ点があるのか、どういうことなんですか。
  53. 藤野淳

    ○藤野政府委員 新しい条約は一九四八年ではございませんで、一九六〇年でございます。先ほど申し上げましたように、一応作業はいたしまして、全面改正の案もあったのでございますが、法制局の審議がどうしても時間的に間に合わないということで一部改正ということになったわけです。
  54. 久保三郎

    ○久保委員 法制局への連絡がおそかったから法制局で間に合わぬというのか、あわてて出す必要はないというのですか。
  55. 藤野淳

    ○藤野政府委員 法制局に出しましたのは昨年の通常国会を終わりましてすぐでございます。ただし、間に合いませんでした理由は、法制局の担当官の人事異動がございまして、全く最初から審査のし直しというようなことになりました事情があるのでございます。
  56. 久保三郎

    ○久保委員 そういうことは、これは法制局をあとで呼びますが、政府として怠慢の原因が法制局の人事異動にあったとするならば、その人事管理はまずい、こう思うんですね。だから、法制局の機能が一年も前に連絡しておいて、この通常国会に間に合わぬというようなことで、仕方がないから、ちょこちょこ五百トンのところを三百トンに直して、機関というのを物件に直してそれで出そうなどというのは、実際人を食った話です。これはまだ条約も出ないのでありますから、一ぺん提案を取り下げて、この会期中に全面改正の案を出すべきだと思うのだが、政務次官いかがですか。
  57. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 お答えいたします。だいぶ久保委員からおしかりがございましたが、それはごもっともでございます。こちらで内部的なつまらない事情まで申し上げまして、ほんとうに申しわけなかったと思います。これはおっしゃる通りもっと時間をかけて、たといどのような事情があろうと、全面的な必要な将来に備えてりっぱな改正をすべきであると私も考えておりますが、いろいろな内部事情がありましてこうなりましたことを一つ御了承を願いたいと思います。ただ条約が今度は最近外務委員会へ提案されて、これが通る見通しでございますので、やはりそれに合わせる必要性もございます。そういうわけで条約に合わない最小限度の改正だけをいたしまして、できるだけ早い機会に全面的な将来に備えたりっぱな案をつくりまして、さらにこれを次、あるいは近い将来に皆さんの御審議をわずらわしたい、こう考えております。その点御了承願いたいと思います。
  58. 久保三郎

    ○久保委員 最低限の条約に合わせる改正だという御説明でありましたが、条約の条文に合わせることが本件は主たる目的ではないと私は思うのです。いわゆる人命の安全というところに焦点を合わせないと、これは条約そのものの締結した意味がないわけであります。ところが今までのこの安全法そのものにも、条約に合わせればいいんだというような条項が非常に多いのであります。そういうことでありますから、今度の改正でもちっとも前進はない、というよりはもう時代から取り残された法律だ、これをもって人命安全、船舶安全というタイトルをつけた法律としては、ちっと恥ずかしいのではないか、こういうふうにわれわれは思うのです。だからこれは少なくとももう少しまじめにものを考えて、なるほどこれによって直ちに利益する面はないと思うのでありますが、この三、四日前にも、御案内の通り日本国内においてさえ衝突事故があった。その結果は実に非惨な結果に終わっている。これは枚挙にいとまがない。しかもこれから長時間にわたっていろいろ私からお尋ねをするわけでありますが、われわれが目の届かぬところにおいて船舶と人命の安全がそこなわれているという事実がたくさんある。たとえばマグロ漁船についてですが、四十トン以上が農林大臣許可であります。ところが四十トン以下の、三十九トンならば自由操業ができるというので、結局マグロとりに大西洋まで三十九トンの船が行っている。その船はどういう航海なり漁撈をしているかというと、たとえば長期操業をやっている、基地を設けて、あるいは運搬船を引き連れてやっているということでありまして、一年以上も日本の基地には帰ってこぬ、そういうものがたくさんいる。これはあとで水産庁にもお尋ねしますが、そういう事実がある。しかも最近における海難の大半は、いわゆる全損というのは沈没でありますが、沈没の多いのはどういう形の船が多いかというと、みな小さい船であります。特にその中でも漁船が多い。漁船は、御案内の通り、マグロを例にするならば、長期に操業しなければならないというので、燃料、食料あるいは網、こういうものを積めるだけ積んでいく、ところが小さい漁船には満載喫水線の規定もなければ何もないから、限界を越した船が出て行く、これで操業をやってくる。さらにもう一つは、今度はどういうことになるかというと、これがいわゆる航行の安全にも関係する。航行の安全も無視して市場の関係でまた戻ってくる、こういうこともある。それから洋上における船と船の荷物の積みかえ、魚の積みかえ、洋上転載をやっている。こういうことで安全というものに対しては今日軽視されている。しかも法律はもう長い、かたかなで書いた法律でありますから、おして知るべしであります。その中には実際言うと安全規定もない、そういう実態でいて、今度大幅な改正ができなければ、いつの日にこれが改正できるのか、心もとない限りです。しかももう一つ言いたいのは、この一九六〇年の海上における人命安全の条約によりますれば、原子力船についても、これは規定してあります。ところが原子力船については、今の安全法並びに提案された安全法では、実際規制できない。しかもこれは運輸省なり科学技術庁の関係でありますが、原子力船をつくろうということで、今度はいわゆる協会ですか、そういうものの提案をされている。ところが安全条約によりますれば、まず設計の段階から、いかなる場合においても設計の段階から検査をしなければならぬということ、ところがこれから設計を始める、事業団を起こす。ところが設計を規制するところの法律が何もない。これでいいんだろうか。原子力船についての考えはどういうことなんです。これは条約にも抵触しますよ。長年かかるからそこまで、学問じゃないが、研究しよう、研究の段階は過ぎて、いわゆる今度は事業団をつくって、実際の設計、建造に入ろうというのが提案の趣旨でしょう、いかがですか。
  59. 藤野淳

    ○藤野政府委員 原子力船につきましては、規制法に運輸大臣の権限が明確に規定されておりまして、舶用炉を含む原子炉を設置いたします場合に、いわゆる設置許可にあたりましては、運輸大臣の同意が必要でございます。設計あるいは工事の方法等につきましては、運輸大臣が船舶に対しては認可しなきゃならぬということでございます。設計の技術基準につきましては、世界各国ともまだ確立された基準はないのでございます。ただ運輸省におきましては、予算によりまして、原子力船の安全基準の作成に数年間かかっておりまして、日ならずして、一応の成案を得られる予定でございますが、原子力船の建造が可能となりまして、いよいよ建造に取りかかりますれば、設計基準、設計の認可等につきましては、現在世界各国で研究されております基準を取り入れまして、ただいま考えております安全基準を適用して、これを認可する方針でございます。なお建造その他全般の監督検査をやりますために、安全法の中に原子力船に対する具体的な規制の条項がございませんけれども、四十二年あるいは四十三年に船となりますので、それまで安全法は必ず改正いたしまして、原子力船に関する具体的な規制条項を設置する予定でございます。
  60. 久保三郎

    ○久保委員 今の御説明で、事業団設置の法律で、設計についても安全基準以外は大体できたから、運輸大臣の認可を得なければならぬという条項があるから、それでやってみる、それはちょっとおかしいと思うのです。なるほど事業団の船はそれでいいかもしれませんよ、その法律で形式論を言えば。しかし一般的な原子力船ということになりますと、これはそういう基準が明確にされて、初めて法律ができて、その法律に基づいて建造なり設計ができるわけでしょう。そういう手続の面からいっても、これはどうもあいまいだ、むしろそういう基準ができたというなら、なぜこの安全法の中に入れないのですか。安全法で縛る何ものもありませんよ、実際。だから原子力船は何によって縛りますか。どこか政府のいわゆるあれができなくても、たとえばほかの国からそういう原子力船が来る。潜水艦は軍艦でありますから安全法には抵触しないというのでありますが、国際条約にも……。これはポラリスの問題がありますけれども、これは別にします。別にしますが、一般の原子力船が、たとえば日本の安全法ができる前に、日本の原子力船ができる前に完成して、それで日本の港へ来る、活動するという場合に、何の法規でこれを規制しますか。
  61. 藤野淳

    ○藤野政府委員 現在ソ連はよくわかりませんけれども、世界各国とも確立された安全基準というものはないのでございます。ただロイド船級協会でございますとか、あるいはアメリカの船級協会でございますとかいったようなものが仮規則のようなものを公表いたしておりまして、まだ進歩発展の段階にございますので、これを法規に取り入れて具体的に縛るという段階にはまだいっていないというふうに考えるわけでございます。ただ今度の海上人命安全条約では、原子力船の国際航海に対する規制が規定してございまするが、これは現在の安全法でそういう技術基準を設けなくてもこれは可能であるというように考える次第でございます。
  62. 久保三郎

    ○久保委員 それじゃ可能であるというが、安全条約の第八章の規則第十一特別な監督ということで、これには「締約国の港に入る前及び港内において特別な監督に服さなければならない。」これは災害の場合も含めてですが、「船員、旅客、公衆、水路、食物及び水資源に対し不当な放射線」云々ということでありますが、これはどういうことになりますか。その監督の基準がありますか。そのうちに安全法を改正しますから、安全基準もつくりますから、よろしいということのように聞こえるが、あなたの推測によれば、それまでは世界の各国でも、どこでもできないという前提に立たれていると思うのですが、その前提でよろしいですか。
  63. 藤野淳

    ○藤野政府委員 外国の原子力船が日本に入港いたします場合に、海上人命安全条約の特別な監督という条項を適用いたします場合には、技術的な基準が国内法としては今ないわけでございまするが、これはそれがアメリカであります場合は、アメリカと協定を結びましてこれを規制するわけでございます。技術基準につきましては、現在原子力委員会の下に原子力安全審査部会というのがございます。これもその審査の基準は法律できまっているわけじゃないのでございまして、国内の学者その他を委員にして審査部会が構成されたのでございまするが、国内の最高知識経験をもって最良の審査をしているわけでございます。何分現在発展の段階にございまするので、具体的に基準を法制化するという段階ではないと思います。
  64. 久保三郎

    ○久保委員 それではこの一九六〇年の安全条約を批准するにあたって、国内の手続として原子力船に対する規制というか、そういうものの入らない法律をきめておいても、批准は可能かどうか、国際的な道義というものを含めていいのかどうか。
  65. 藤野淳

    ○藤野政府委員 これは各国とも国内法ができておるというふうには承知していないのでございまして、日本においても、安全条約が発効いたしましても、これによって原子力船を規制することは可能であると考える次第であります。
  66. 久保三郎

    ○久保委員 何らの基本的基準を示さぬでもいいのかということなんですか。
  67. 藤野淳

    ○藤野政府委員 基本的基準と申しましても、これは陸上の原子炉あるいは一般的に放射線能災害から人命その他を守るという規制の法則がございまして、この点につきましては、原子力船の基本的な基準を数字的に設定いたさなくても、可能であると考える次第であります。
  68. 久保三郎

    ○久保委員 どうもはっきりわれわれには受け取れないのです。苦しい答弁のように思うのであります。そういう用意も何にもなくて実際いるわけなんです。私は、安全法を改正するというよりはむしろそういう安全基準なり安全評価の問題なり、あるいは災害に対する方策なりをきちっときめることが先決だと思うのでありまして、それがきまらないで法律をどう変えてもどうにもならぬ。各国でもきまらぬから、わが方もほおかぶりということだと思うのであります。大体後進国はそういうことになっているそうですが、最近日本の国は、池田総理に言わしむれば大国でございますから、やはり大国らしく諸制度を整備しなければ、これはやはり四等国、五等国になりそうだと思うのであります。いずれこの問題はあとで言及いたします。  そこで、もう一つきょうお尋ねしておきたいのは、この条約に基づく勧告はどういう受けとめ方をしておりますか。
  69. 藤野淳

    ○藤野政府委員 勧告は、性質といたしましてこれを直ちに条約に盛り込むことが困難な、またそうするためにはいまだ熟していない事項あるいはさらに技術的あるいは広い視野から検討を要するというような事項が勧告になっておるわけでございまするが、勧告の中でもそれぞれ加盟国が研究し、し、開発することにいたしまして、この勧告を法制化することが可能なものもございます。先般の京浜運河におきまする事故について、久保委員が御質問のございましたように、タンカーのごときものを火災から守るために特殊な消防強化の手段、救命の手段というような問題につきましても、これは特殊な救命艇を開発するということは現在やっておるわけでありまして、このようなものは安全法の関係省令として織り込むことが可能である、かように考えておる次第であります。
  70. 久保三郎

    ○久保委員 研究開発に待つことは今の局長の御答弁の通りだと思うのでありまして、これが伴わぬ限りは、そういうことは勧告に従うわけには参りません。しかし、研究調査というのは技術的な問題が比重としては重いと思うのです。それ以外のものは、これはその国の実態あるいはいわゆるその国の力、そういうものを勘案して、できる限りこの勧告に従うというのが正しいと思うのです。ところが、この安全法を見ますると、そういう勧告は一切耳をかさぬということが多いと見るわけであります。その点は非常に残念だと思うのであります。その点は後刻詳細にやりますが、少なくともそういうことが積極的に行なわれぬ限りは、安全法があってもこれはどうにもならぬ、極端なことをいえば、私はそう思うのです。さっき申し上げた漁船の問題一つとっても問題がある、そういうことについて積極的な意欲がちっともないんじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  71. 藤野淳

    ○藤野政府委員 現在の条約に載っております勧告事項の中で、政府間海事協議機関——IMCOが取り上げて、研究委員会を開催しているものが幾つかございます。一例を申し上げますと、旅客船の区画復原性委員会、区画いたしまして損傷あるいは浸水の場合に、沈没、傾斜、安全が保たれるという限度をきめる区画を研究いたします区画復原性委員会、あるいはこれは安全法じゃありませんけれども、トン数、速度の問題もやっておるわけでございます。  それから勧告ではございませんけれども、情報交換に関することであります。たとえば航海等の効用に関する問題がございます。あるいは国際無線電話符号等に関する問題について、積極的に参加をしております。また技術的な事項で勧告をされておるものがございまして、これで日本が採用を考えておりますのは、一例を申しますと国際陸上施設の連結栓というものがございます。それから救命艇の復原性の問題がございます。先ほど申し上げたタンカー用の救命艇、それから音響測深器、あるいは特殊貨物の運送といったような問題は、安全法あるいは関係の省令に取り入れるつもりでおるわけでございます。なお、その安全法の改正にあたりましては、造船技術審議会の専門部会におきまして、詳細に各専門委員の間で審議されたのでございまして、いろいろ具体的な、また非常に専門的な意見が出ておるわけでございますが、決して消極的な態度で改正に臨んでいるのではないのでございます。可能なものは積極的にどんどん取り入れて、省令において、この安全法の法律の面では非常に簡単な改正でございますけれども、十分内容的には省令で補っていきたい、そしてこれは安全性を向上させるような情報を取り入れるようにしていきたい、かように考えております。
  72. 久保三郎

    ○久保委員 私が言おうとするのは、まず第一は一般勧告の二の条約の基準の特別の適用のところで、一つあります。これはあとでまた詳細にはお尋ねしますが、「膨張型救命いかだを使用することの現在の経験を考慮して、漁船の船員に対して他の船舶の船員に対するものと少なくとも同一の安全の基準を確保するための措置を講ずることを勧告する。」という積極的なものがあるわけです。これは一つの例であります。ところが、これはあるところへ救助を訴えてきた一つの外国へ行っている漁船船員の手紙です。去年の十一月にこれは来た。大体これはイタリアの近くかと思うのでありますが、ナポリでドックに入る、こういう話でありますが、トラパという港に行く前にこれは出した手紙であります。これはもう全く死にそうだという実態を訴えてきているのです。これはおそらく二年くらい向こうにいる一等機関士ですから、この船は三十九トンのマグロ船ではなさそうであります。おそらくそれよりもっと多いかもしれません。トン数は書いてありませんから、私しろうとでよくわかりませんが、この中で一つこの救命具についての問題も訴えていますが、こういふうに書いてあります。「現在(出港時より)本船の救命ボートは、船舶検査証書に記入されて居る数量より不足して居りますが、余りにも我々乗組員の人命が無視されて居るのではないでしょうか。船主の金銭的な問題の為か、不足して居るボートに代り得る筏をも積込ませては有りませんが、此れでも検査は合格して居るのが不思議でなりません。救命ボートは検査の時丈けの物ではなく、人命尊重の目的でもって法律にて定められて居るのではないでしょうか。」こういうことを一つ訴えてきております。それからもう一つは検査のことで言ってきています。「今度ナポリにて魚を積込んだ状態にて中間検査が施行されるとの事ですが(船頭の話にて会社の方より電報が有ったとの事)内地を基地としての船ならいざ知らず、外地にて二年間もの航海を行ふ様な船が積荷の状態にて中間検査を行ふのは海運局の方にて許可されたものなのでしょうか。」ということなんですが、この二つの事実について水産庁と船舶局から一つお答えをいただきたい。
  73. 藤野淳

    ○藤野政府委員 最初の御質問でございますが、一般勧告の第二の「特に、会議は、締約政府が漁船に膨脹型救命いかだを使用することの現在の経験を考慮して、」云々という条項は、これは実は日本会議に提案したのでありまして、それが採択されて勧告という形で出ております。漁船に対する救命設備の問題は、これはもう非常に大きな問題でございまして、ややもすれば漁業者の経済問題を先にして、人命を軽視するというような傾向があるようでございまして、たとえばせっかく検査のときに持っておった救命設備を、出漁のときに置いていくといったようなことをしばしば耳にするわけでございます。その点につきましては、救命艇といったような大きな重い、トップ・ヘビーになるような救命設備実情に即しないということもありまして、膨張型救命いかだが漁船に使われるように、実は関係法規の改正をしておるわけでございまして、漁船の救命設備につきましては、絶えず改善について考慮いたしておるわけでございます。また安全法の関係法令に漁船特殊規程というのがございます。これは農林省と共同でやっておるわけでございます。先生の御指摘のようなことが間々行なわれてはなはだ遺憾に存ずる次第でございますが、漁船の安全操業につきましては、安全法の適用上、常にこれは実際に励行されまするよう、また質的にもこれが改善されまするよう、厳重に留意いたしておる次第でございます。
  74. 久保三郎

    ○久保委員 局長、日本がこの膨張型いかだは提案したんだという、実際いって皮肉なことですね。規定された救命具を積まぬ船が外国のナポリかどこかあの辺まで行っている。それで政府自体は取り締まりもやるのだが、その方はもっといいいかだを積めという提案を国際会議でやっているわけです。これぐらい恥ずかしい話はないんじゃないですか。日本の沿海でやって救命具が足りなかったということが発見されたのならまだこれは国辱的じゃないけれども、政府自体は国際会議で、わが方の考えではこれが一番いいから、トップ・ヘビーになるから、この小さくなっているいわゆる膨張型ボートを積んだらいいだろう、それはいいことだというので世界各国も同意した。しかしそれはいろいろ事情もあるだろうから一つ勧告にしておこう、こうなったのだろうと思う。ところがそう言い出して船を監督しなければならぬ日本政府の管轄にあるところの日本の船が、現在規定されているところの救命具も備えつけないまま、二年の長期にわたって外国の方まで歩いているということ、しかも中間検査についてお答えがないが、魚を積んだまま検査をするというのだが、これはどうなんです。皮肉なことです。取り締まりはどうなっておるか、形式的な検査だけに終わっていると思う。この検査はだれの責任ですか。
  75. 藤野淳

    ○藤野政府委員 最初の問題、ちょっと小さなことでございますけれども、この条約は漁船に対しては適用除外になっておりまして、従って勧告ということになっておるわけでございます。  この中間検査は運輸省から検査官を海外に派遣いたしまして検査をいたしておるわけでございます。年二回海外に参っております。御指摘のような漁船が魚を積んだまま、浮いたままで中間検査を受ける、これは船体、機関状況によりましてはそのようなことが許されているわけでございます。これが修理を必要とするような状態でございましたならば、これは上架して検査を受けなければならぬ、特に船体に欠陥がないということでございましたら、そのようなことも許されておる次第でございます。  なお、救命具の問題につきましては、検査のときには厳重に実は励行いたしておるわけでございますが、たまたま漁船の出漁時に法定備品が完全に整備されていなかったかどうかということは、われわれ検査官としては確認する機会がないわけでございます。
  76. 久保三郎

    ○久保委員 よくわからないのですけれども、漁船はこの安全条約から除外される。そうしますと漁船特殊規則によるところの、いわゆる漁船の設備規則ですか、そういうもので縛られるわけですね。そうですか。
  77. 藤野淳

    ○藤野政府委員 人命安全条約では漁船は適用除外でございますが、船舶安全法並びにその体系の船舶設備規程であるとか漁船特殊規程によって規制されております。
  78. 久保三郎

    ○久保委員 私が聞きたいのは、お宅の方で監督はしないということなんですね。水産庁ですか。
  79. 藤野淳

    ○藤野政府委員 検査は運輸大臣責任でございます。水産庁じゃございません。船舶検査は漁船も運輸省が責任を持っていたしておる次第でございます。
  80. 久保三郎

    ○久保委員 その救命具の方はあなたの方の管轄じゃない、水産庁ですか。
  81. 藤野淳

    ○藤野政府委員 救命具につきましても運輸省の所管でございます。ただ特殊規程を改正いたします場合には、水産庁と協議するということでございます。
  82. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますとやはり運輸省の監督ですね。
  83. 藤野淳

    ○藤野政府委員 はい。
  84. 久保三郎

    ○久保委員 そこで、水産庁にお尋ねを先ほどしましたが、先ほどの問題に対してどうお考えであるか、しかもこういう規則を犯してまで大事な救命具の定数も積まぬというようなものについては、いわゆる漁船関係の規則あるいは規程によって、そういう許可を取り消すということは可能だと思うのですが、そういうことはあまりやっていないのですか。
  85. 和田正明

    ○和田説明員 先ほど運輸省の方から御答弁がございましたように、漁船も船舶安全法の体系の中で処理をされておりまして、御指摘の救命いかだのことも、運輸省と農林省との船舶安全法に基づく共同省令で処置をいたしておるわけであります。検査等は、これは全部運輸省の専管でお願いをいたしておるわけでございますが、検査時に積載してございました救命いかだをおろして出航するというような、御指摘のような不心得な船が間々ありますので、運輸省とも御相談をいたしまして、十分船主側を指導をいたしております。今後も引き続き強力な指導をいたしたいというふうに考えております。
  86. 久保三郎

    ○久保委員 漁政部長、あなたが一番よく御存じだと思うのですが、さっきトップ・ヘビーの話をちょっと局長がしましたが、これはトップ・ヘビーということは何かというと、いわゆる魚をたくさんとるというのが漁船の目的だから、これはいい。しかしその限界を越して、能力に応じてとるなら別だが、能力以上にとるということがまず先決。そのために船内の容積を狭くするところの安全設備等は、これはできるならば積まぬ方がいい。それからもう一つは、たとえば航海に出る場合に、いつかもありましたが、目一ぱいの燃料と生水、そういうものを積み込んで、できる限り長期にわたって操業しようというようなことも、安全に関係してくる。もう一つは今度は安全と衛生の問題になるが、船内の居住設備も、これは定員に応ずるところの所要の居住設備どもしない、あるいはその他の衛生福利というか、そういうものもやらぬ、とにかく船倉をうんと大きく持とう、こういうことが多いと思うのであります。こういう問題に対して、適切な指導をしていくというか、これはもう最近始まったことではないのであります。これは私が言うように、そういうものを見つけて規制をするということが、まず建前でなくてはいかぬ。ところが、指導する、ではもうなまぬるいのであります。  それではお尋ねしますが、前通常国会において船員法の審議の際に、いろいろ漁船の問題も話に出ました。これに基づいてお宅の方は、運輸省とも協議の上、結局この漁船船員の労働環境改善の措置要項を出された。さらに漁船特殊規則を改正されたというが、その改正のきき目はありましたか。いかがですか。
  87. 和田正明

    ○和田説明員 漁船の安全設備あるいは居住区につきましては、御指摘のように従前漁撈を中心にいたしますために、いろいろな面で無理がかかっておりまして、御指摘のような問題点があったのでございますが、昨年の秋に、居住区につきましては、御承知のように現在漁船はその総トン数で漁獲努力を表示するようにというふうに考えておりますので、漁業法上の各種の許可は総トン数でいろいろ処置をいたしております関係上、大きくいたしますとすぐに漁獲努力に影響いたしますので、それを制限いたしておりますが、居住区の改善のためにその制限を越えて大きくなること、俗に私どもボーナス・トン数と呼んでおりますが、そういうものを与えまして、居住区の改善のための特別措置を現在とっております。またそのほかに漁船特殊規程の改正等もあったわけでございますが、実は現在、今申しましたように漁船の各種の許可の制限等は総トン数でいたしておりますことが、魚倉を大きくするとかあるいはトップ・ヘビーになりますとか、操業上のいろいろな問題を起こすという事実にかんがみまして、今後漁業法上の各種の許可の制限を総トン数制によるのではなくて、むしろほかの尺度で考えまして、それが漁獲努力を表現し得るような方法がないかというようなことで現在検討をいたしております。全体としては御指摘のような遺憾な点が多うございますので、運輸省ともよく協議をいたしまして、いろいろな事情がございまして一挙には参らないのでございますが、逐次改善をいたすように今後とも努力をいたして参りたいというふうに考えます。
  88. 久保三郎

    ○久保委員 漁政部長、ボーナス・トン数ということでありますが、これは大体百トン以上のものでありましょう。問題が多いのはやはり三十九トン型、そういうものはボーナス・トン数がありますか。
  89. 和田正明

    ○和田説明員 ボーナス・トン数は百トン型以上ということではございませんで、大臣許可漁業全体について考えておりますから、十五トン以上程度の船についても適用をいたしております。ただ先生御指摘の三十九トン型というのは、カツオ、マグロ漁業でございまして、これは現在制度上、四十トン以上は大臣許可ということになっておりまして、三十九トン型というのは自由漁業でございますので、それをボーナス・トン数で大臣許可漁業の中へ直ちに入れますことは、カツオ、マグロの漁業の漁獲量なり資源問題なりに関係ございますので、その点についてはボーナス・トン数を与える措置はいたしておらないのでございます。ただ三十九トン型につきましては、とりあえずは外国での陸揚げなり洋上転載等を省令で禁止をいたしまして、作業上の危険を防止するように措置をいたしておるわけでございますが、本来自由漁業にいたしておきました趣旨は、沿岸であまり遠方へ出ませんで、カツオ、マグロをとります船ということでやっておりましたわけですが、沿岸の資源の状況等で最近経営難から遠方へ出かけていく船が著しく増加をいたしましたので、現状のまま放置をすることは適当でないと考えまして、先ほど申しました漁船のトン数の計量の仕方を工夫いたしますとか、あるいはこれらの三十九トン型を抜本的に措置いたすべく、現在検討をいたしております。
  90. 久保三郎

    ○久保委員 検討をいたすということでありますが、カツオ、マグロの三十九トン型、これはボーナスのこともありません。それからあなたの御指摘のように、カツオ、マグロ漁に出るものが多いのです。しかも近海というか沿海では、こういうものは大きい会社が行って網を張っちゃうのですから、結局大西洋まで出てくるということです。先般政府の、運輸省の役人かと思うのでありますが、スペインまで行ったら、そこへそういう船が来ていたそうです。私もスペインへ行ったときにそういうものが出ておった。こういう実態はこれから研究するでは、どうもわれわれとしては何のための人命安全かと言いたくなる。こういうことについてちっとも積極性がない。膨張いかだの勧告を出した国の船が外国へ行くのに、今の最低限の救命具の積み込みも実はやっておらぬ。私が手紙を読んだのは、おそらく百トン以上だったと思います。大型です。小型じゃありません。三十九トン型じゃありません。しかも先ほどの中間検査は、あなたがおっしゃったように、二年間も歩く船が魚を積んだままでいるなんという状態はありはしないじゃないかと私は思うのです。これは専門家でないからわかりませんが、これらの船は不安にかられて帰る。何とかして帰るが、とにかく一等機関士でありますから、そう簡単に問題は解決しないと思う。帰りたいが帰れない。殺されてしまう。この訴えは具体的な人名が響いてありますから、この人に迷惑がかかるといけないからお見せするわけには参りません。しかしこれ一つとっても、安全というのはどこにあるのだと言いたくなる。魚をとることもけっこうだが、人間の命を犠牲にしてやっておること自体に問題がある。そういう点について、どうもわれわれはこの安全法の審議に入る前に、そういう問題をまず第一に取り上げざるを得ない。実際残念だと思う。  そこで、きょうは本会議も間近でありますから、資料要求だけいたしておきます。  先ほどボーナス・トン数の問題が出ましたが、このボーナス・トン数に関係して、これを実施してからの実績はどうなっておるか、水産庁から提出していただきたい。  それから、あなたの方で漁船特殊規程ですか、去年改正されていろいろやっておられる。その漁船規程の改正のものを提出してほしい。  それからもう一つは、海上保安庁がいないけれども、これは船舶局に聞いてもわかると思いますので、海難のいわゆる全損というものはトン数別でどの程度か、トン数別の年間の統計、これを出してほしい。  それから先ほど船舶局長が言ったように、安全の基準、いわゆる原子力船の安全基準というか、これができつつあるというから、できつつあるところのものをこの次に資料なり何なりで公表してほしい。  今日の資料要求は大体これであります。
  91. 木村俊夫

    木村委員長 次会は公報をもってお知らせいたすこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十二分散会