○横川正市君 ただいま
提案されました公務員
給与の
改正五
法案に対しまして、
日本社会党を代表し、
総理初め大臣並びに人事院総裁に、数点にわたって御
質問をいたしたいと思います。
まず、
総理にお尋ねをいたしますが、今日、
政府と
政府職員で構成をいたしております
団体間に、相互に信頼感が保たれていないと思われるようなできごとが累積をいたしているわけであります。一例を申し上げますと、
職員団体は、先般、
政府は勧告
体制を口実に、公務員代表との交渉に応ぜず、陰で、勧告の準備を進める人事院に対して、日経連とともに牽制と干渉をはかり、勧告まぎわの六日には、官房長官談話まで発表して、異例の勧告延期を押しつけたと抗議をいたしまして、
政府に対する不信感を訴えているのであります。ことに、年ごとの
給与改定問題をめぐりまして、
政府と
職員団体との紛争が激化するのでありますけれども、
職員の納得する
賃金がなぜ
政府においてきめられないのか。その原因は何であるのか。
総理のお
考えをこの際率直にお聞きいたしたいと思うのであります。
また、今日までに、公務員
団体の
要求する、主として
給与をめぐって起こる紛争から、司法
職員、国税庁
職員並びに国鉄、郵政、農林、電電公社、専売等に、公務員法または公労法等の違反事案として、行政上の処分が行なわれ、しかも、これらもまた累積されているのであります。このために、最近のそれぞれの官庁では、労務
対策に忙殺をされまして、
国民に対するサービスの向上とか、事務
能率についてどうとかいう問題については、低下する傾向があるといわれ、最近、行政管理庁の指摘事項にもなっているのでありますけれども、
総理としてどうこの問題についてお
考えになっているのか。また、その
対策について、この際所信をお聞きいたしておきたいと思うのであります。
また、人事院の勧告をめぐって、公務員
団体から、大きな不満が表明されております。私は、
総理が公務員の
雇用者の立場に立って、常時とはいわず、ときに代表とひざを交えて会いまして、
政府内における
総理の立場からの事情を納得するまで語り合うとか、あるいは代表から
職員生活の事情を聴取して、それらについて、
誠意を尽くして話し合いをいたしながら、その中から、
国民の期待にこたえて、
責任を果たし得るところの、公務員の
一般の行政に対する仕事に熱意を持たせるというふうな、こういう率直な方法がとられてしかるべきと思いますけれども、
総理の意見をお伺いいたしたいと思います。
次に、
総理は、このたびの欧州訪問旅行で、日本の労働
賃金について、いささか理解を深めたという記事を私どもは見たのであります。その中で、
総理の言う、「日本の労働
賃金は、西欧並みになった」と、こういうふうに言われておりますけれども、これは一体どういう根拠で言われたのか、事情をお尋ねいたしたいと思うのであります。
総理が、出発にあたって、労働省その他の
関係の向きで製作したものを携行したという日本の
賃金事情、この
説明書きの
内容は、「西欧並みの
賃金」という
総理の
報告と合致するものであったのかどうか。また、このパンフレットの中に、それぞれ基礎を置いておりますけれども、名目
賃金は比較できないので、食料比較
賃金をもって対照したと言われております。その理由と、西欧での
賃金実体の、
総理の理解した
内容を、具体的にこの際お聞きしたいのであります。
ただいまのところ、日本の公務員、また
一般産業
労働者でありましても、
総理の言われたように、日本の労働
賃金は、西欧並みになったと
考えていないのであります。ことに近年、西欧との交流も盛んとなりまして、
労働者間には、西欧諸国の
賃金は、日本の二倍ないし三倍と
考えているのが、これが常識となっているのでありまして、この間の事情をお聞きいたしたいと思います。
また、去る衆議院本
会議において、石山議員に
総理から答えられました
内容は、私どもの理解するところにはならないのでありまして、この際、具体的にこの問題に触れてお答えをいただきたいと思います。
日本の公務員の現在の
賃金水準を一例をもって示しますと、たとえば初級試験に合格をいたしまして採用になった者が、十年勤続をいたしまして一万九千百円であります。高校卒業後十年といえば、それぞれの
職場においては二十八才の中堅幹部であります。しかも扶養家族は二人以上を保有することになるのでありまして、
総理の
考えでは西欧とどう比較されたか御
説明をいただくとともに、日本の
賃金の現状を
総理としてはどうとらえているのか、どう
考えておるのか、この際御意見をお伺いいたしたいと思うのであります。
さらに、
総理の所得倍増計画は一体今どういうふうになっているのかこの際明らかにいたしていただくとともに、これからはどういうふうに進められるのかお聞きいたしたいと思います。
この際ですから、あわせお答えをいただきたいと思いますが、ちょうど
総理の所得倍増計画が出されるに先行いたしまして発表されました、当時中労委会長をしておりました中山伊知郎さんの
賃金三倍論について、
総理の所見をお聞かせいただければ幸いだと思うのであります。
国民やその奉仕者は、実は
政治について時々発表される
政策や施政が、これが人気取りやあるいは
政治的な含みであるということについては、もう全くこれは期待をいたしておりません。いわば国力というものが前面に出て参りまして、それに見合った、実質的な、しかも不公平でない、平等な
生活を願い、
賃金が豊かといわなくとも、人並みな
生活を保障してほしいと願っているのが、これが、月並みではございますけれども、公務員の願いであります。所得倍増が物価倍増だと世間でいわれているようなことでは、たえられない、絶対に困る問題であります。
総理は
賃金の上がらない先に物価が上がるという世論に対して、どうお
考えかをお聞かせいただきたいと思います。現実に物価の騰貴に対してどう対処され、これを
解決される方針をお持ちであるならば、この際具体的に
説明をいただきたいと思います。
今の公務員の生計は、以前に
総理が理解されて演説された
内容、すなわち、消費水準の高くなるのは実質的に消費者の収入が増加したからであると言われておりましたけれども、それは実は理屈どおりには行っておらないのでありまして、ますます
生活の実態は苦しくなってきているのであります。たとえば、家庭での
近代化や電化は、周囲の事情から、まさにこれは普通のことであり、ぜいたくではなくなったということは、
総理もお
考えであろうと思うのでありますけれども、これらに対するやむを得ない支出というのは一体どうして出されているかといいますと、従来の
賃金の一部のほかに、その足りない分は、さらに
生活の必需品の切り詰めから行なわれているというのが実態であります。もちろん、
総理も御案内のとおり、これらのすべての購入方法は、月賦で購入するというようなことでまかなわれておりまして、実際の
生活はぎりぎりであるというのが偽らざる事実であります。しかも、今日
生活には欠くことのできない必需物資、これの値上がりが逐次高まってきております。しかも、追い打ちをかけるように、公共料金、米価の値上げ等が出て参っておりまして、これでは、切り詰めた上にも切り詰めようのない
生活に追い込まれていると言って過言ではないと思うのであります。実態は、
総理の理解する公務員の
生活と
賃金との
関係はどうなっているのか、この
考え方をお尋ねいたしたいと思います。
ただいま
政府職員の
賃金は、三十七年四月を例といたしまして、平均二万六千七百二十円となっております。しかし、これは全体の平均でありまして、職種別に見ますと、三十一才男子の行政職(一)で平均一万五千六百円、三十九才男子の技能職乙で二万五十三円、五十一才の労務職甲で二万百四十円、五十才の労務職乙では一万五千六百七十三円、中には、これは例外でありますけれども、三十四才の五人家族でわずかに九千八百円という
職員もいるわけであります。こういうような日本の公務員の実態から、
総理のちょうど旅行中に、PSIの代表が日本に参っておりまして、日本の
賃金の実情というのを見て、「非常に劣悪だ」と指摘している事実があります。また、これは
労働大臣も知っているようでありますけれども、米国公務員組合長のサンダー氏が、「日本の公務員はアフリカ並みの
労働条件だ」と述べているのでありまして、西欧での
総理の発言と外国の労働組合の代表が日本へ来ての発言とは、どうも少し違うのでありまして、この点をひとつお伺いしたいと思うのであります。
さて次に、
総理と
労働大臣にお伺いいたしたいと思いますが、人事院の勧告の実施期日というのは、実はもう数年前から、内閣委員会等を通じて、勧告の実施期日というのはこれは明確にすべきである、それをコンスタントにして初めて公務員の
生活を防衛する
賃金というものはきめられるのだ、こういうことが論議に論議を重ねられて、初めて人事院の勧告には、三年前から、五月一日にこれは上げてもらいたいという勧告になったのでありまして、こういうような国会の
審議の経過から
考えてみますと、十月一日とするということは、これはきわめて私は遺憾なできごとだと思うのであります。同時に私は、このことがどれだけ公務員に大きな損害を与えているかといいますと、大体夏季
手当を入れまして、実質的には一人当たり一万四千六百六十円くらいの減収になっております。大体、五月実施から十月まで五カ月間延びるわけでありますから、こういうことは非常に公務員の
生活に大きな影響を与えることになります。同時にまた、もう
一つ総理に知っておいていただきたいのは、この勧告は、実は当面変わればすぐ対処できるという勧告ではなしに、一年前の
賃金に見合ったものであります。ですから、五ヵ月延びるということは、これは実に一年六、七カ月の間、この間、公務員はきわめて民間との間に大きな格差の
賃金をもらっておったということになるのでありまして、私はこれはゆゆしき問題だと思うのであります。加えて、私は、このことが、公僕として日夜精励しております公務員の
業務に対する奉仕の気持にいささかでも消極的なことが出てくるとすれば、これは大きな損失だと言わなければなりませんので、
政府の所見をお伺いいたしたいと思うのであります。また、これは言いづらいことでありますけれども、最近の新聞で、
大蔵省は、旧地主の
補償等については、これを
予算化する方向に踏み切ったように報道されております。私が先般ここで
質問いたしましたときに盤谷副
総理からそれぞれお答えがありましたのと比べてみますと、この方向は、非常に国会無視、または
最高裁の判決無視、こういうようなことが平気で行なわれようといたしております。その真意は、圧力
団体に抑えつけられたということ以外には理由がないようであります。国の
政治のあり方としてはきわめて遺憾でありますが、こういうようなことが日本の
政治の中で通っているのに、多くの公務員が、労働三権をはぎ取られて、今言ったような実態の中に置かれては、
生活の防衛もできないというような、こういうことが日常の議会活動の中で行なわれているということは、私はきわめて遺憾であります。私は、
労働大臣に、この際でありますから、労働三権を復活すべきではないか、この意見を申し上げまして、お答えをいただきたいと思います。
また今回も、公共の福祉の問題を理由にいたしまして、
現行どおりということならば、公務員の
生活を保障するための具体的な方法を明らかにいたしていただきたいと思います。
次に、人事院総裁にお答えをいただきたいと思います。公務員
団体は、人事院に対して、きわめて遺憾なことながら、肉親から背任されたような不信感を持っております。このことについて総裁のお
考えをお伺いいたしたいと思います。さらに、第一に初任給の問題でありますが、公務員の
賃金が低いことは万人が認めているのでありまして、その要因は、初任給がきわめて低いというところにあると思います。ことに官民との差は著しく、人物採用の大きな欠陥となって現われているのでありまして、この初任給の大幅な改善を行なう
考えがあるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
また、当面重要問題となっております
石炭離職者等の国家
機関への採用の隘路は、この初任給にあると思いますが、
労働大臣、同時に、
給与担当大臣の
考え方としては、人事院に特別俸給表等による初任給の
決定をすみやかに行なわしめるように申し入れる
考えがないかどうか、あわせて人事院総裁の御意見をお伺いいたしたいと思います。
時間が参ったようでありますから、最後に、今回の勧告をもってしては追いつかない問題として、交通費の値上がりの問題があります。これを大幅に改定する
考えがあるかどうか。それからもう
一つは、東北の公務員に対しまして現在薪炭
手当の制度がありますけれども、これは
石炭を支給して、少なくとも零下線上で
生活をする東北の公務員に対して、
石炭をたかしめるような方法がとられることが妥当だと思いますけれども、この点についての総裁のお
考えを
質問いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕