○大倉精一君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
総理並びに
関係閣僚に対し、第二回
日米経済会議ほか数点について御
質問を申し上げます。初めに、先ほどの同僚阿具根君の
質問に対しまして、
総理は、わずかに三分間ぐらいでお済ましになりましたが、
総理は、私に対して
答弁をされるという気持じゃなくて、この壇上から
国民に対して
答弁をされるつもりで御
答弁を願いたいと思います。
まず第一番に、第二回日米
貿易経済合同
委員会についてであります。結論から言えば、この
会議の結果は、
国民に対し、ただ失望と不安を与えたにすぎないものであります。
国民諸君がこの
会議に期待していたものは、大臣が六人もお出かけになったのであるから、従来、対米
貿易経済上
懸案になっている幾多の諸問題について、何らかの朗報をもたらしてくれるであろうということを期待しておったのでありまするが、結果においては、アメリカのほうから、自由陣営におけるアメリカの役割とドル防衛のお話を承っただけで、
わが国が国際収支の周期的な赤字に苦しんでいる
事情については、わずかに共同声明の中で留意してもらったにすぎないのであります。私は、この
委員会の性格について少なからず疑問を持っているものであります。本来この
委員会は、両国の国際
経済政策の食い違いを除くための手段
方法を話し合う場であると私は
承知をしておったのでありまするが、団長格の大卒
外務大臣のワシントンにおける談話を拝聴しまするというと、この会談は、特定の問題に関する話し合いをする場ではない、こう強調されておるのでありまするが、はたしてしからば、六人もの大臣がアメリカまで何の話し合いに行ったかという疑問を私は持つわけであります。あるいは、この
会議は、日米
貿易経済会議というような、いかめしいものではなくて、夫人同伴の日米懇親会のつもりでお出かけになったのではないかと思うのであります。それゆえにこそ、
日本での大騒ぎに引きかえまして、米国の新聞はほとんど興味を示していなかったのであります。あるいは
総理は、そのとおりだ、懇親会だとおっしゃるならば、日米に横たわる諸問題は、たくさん深刻なものがあるのであります。そういう余裕はないはずだ。私は
総理にお伺いいたしまするが、この
委員会のこのような実態は、かえって一方的に相手方に乗ぜられ、ひいては
わが国の威信にもかかわりかねないことを懸念いたすのでありまするが、
総理は、この際、この
委員会を再検討し、真に
国民の期待にこたえ得る、実効のある、自主性のある対米
経済外交を
確立するため、特段の考慮を払うべきと思うのですが、
総理の御
所見をお伺いしたいと思うのであります。
運輸大臣にこの際お尋ねしますが、苦境にあえぐ
わが国海運の北米航路には幾多の問題が山積していることは、すでに御
承知のとおりであります。当然運輸大臣は参加されると思っておりましたが、参加されていないということに対して、私は非常に疑問を持っております。であるがゆえに、あえてこの際、参加されなかった理由、及び北米航路における諸問題に対するあなたの対策について明らかにしていただきたいと思います。
次に、三日の昼食会における
ケネディ大統領の発言についてお伺いをいたします。
総理は、ケネディ発言は当然のことであって驚くに足らずと、軽く受け流すゼスチュアを示しておられます。しかし、聞くところによりますと、
先方に参りました閣僚諸君の中にも驚いた人がおいでになるそうでありまするが、そうすれば、これはまことにおかしなことになるわけであります。そうして、私に対する
答弁もおそらくそうなるでありましょう。が、しかし、キューバ問題等、最近のできごとを想起しながら発言の
内容をしさいに検討し、さらにその夜の大平・ラスク秘密会談、あるいはホワイト・ハウスが、スピーチの中の中準人民共和国に関する部分の発表を一時拒否した事実等、私は、
総理のように当然のことで驚くに足らずとして片づけてしまうには、あまりにも事の重大さを痛感する次第であります。
総理は六日の記者会見で、ヨーロッパではわれわれの想像以上に共産主義の拡大をおそれている。NATOもこうした連帯感から生まれたものだ。だから
ケネディ大統領は、ヨーロッパでは心配ないがアジアでは心配だと言うのだ、という工合に発言をしておられますが、あなたは日米間には安保条約があるから大丈夫だと、こうおっしゃるかもしれません。しかし
ケネディ大統領はさらに突き進んだ役割を
日本に要求していることは明らかであります。すなわち、
ケネディ大統領は、中華人民共和国の脅威に対して
日本に求めているものは、
経済的役割とともに、日韓台軍事同盟、すなわちSEATOを通じての軍事的役割に踏切ることを期待していると受ける取ることは、これは私の思い過ごしでありましょうか。もしこれが思い過ごしであるなら、
総理はこの壇上から、アジアの情勢あるいはアメリカの国内情勢、その他しさいに説明を願って、私の思い過ごしであるというその理由を明らかにしてもらいたいと思うのであります。
総理はおそらく、あるいは、
日本は
日本の
事情があるから、アメリカが何と言ったって
日本は自主的に判断して事をきめるのだとおっしゃるかもしれません。しかし、不幸にして私はあなたのそれを信ずることができないのであります。なぜかといえば、私
どもは過去において苦い経験があるからであります。軍隊ではない、戦力ではない、戦力なき軍隊、防衛のための戦力は憲法違反ではない等々の過去を忘れてはおりません。さらに安保条約によって対米軍事従属がますます強くなったことを知っております。そうしてまた、アジアではアジア人に戦わせよというアメリカの名言も私は忘れてはおりません。私の心配は
国民諸君のひとしく心配するところであると私は確信しております。この重大なるときに、
日本の
総理大臣は、アメリカ大統領の危険な要求を毅然として拒否して、もって
日本とアジアの平和のために偉大なる役割を果たす
決意をされるべきであると信ずるが、
総理大臣の御
所見を
国民の前に明らかにしてもらいたいと思います。
次に、賃金問題について
総理並びに
関係各大臣にお伺いいたします。
まず初めに、
総理はヨーロッパの訪問中、
わが国の賃金水準はすでにヨーロッパ並みになっていると
言明しておられますが、はたしてしからば、現に実在するヨーロッパ以下の賃金については、早急にヨーロッパ並みに引き上げる
施策を行なう用意があるか、
総理大臣にまずもって端的にお伺いする次第であります。
次に、当面の問題として、公務員給与の改定について
総理並びに
関係大臣にお伺いをいたします。私は率直に申し上げて、
国民に奉仕するという名のもとに、賃金
労働者でありながら
労働基本権を否定されている公務員諸君に対する人事院並びに
政府の
態度は、きわめて不可解であり、強い憤りを覚えるものであります。
労働基本権を否定された公務員の
生活権、
労働権の維持向上は、もっぱら人事院並びに
政府の重大なる
責任であります。しかるにもかかわらず、給与改定特等に見られるごとく、人事院並びに
政府の
態度はきわめて事務的であり、冷淡であります。現在公務員諸君の給与改定が問題になっておりまするが、官民
労働者の給与格差は、
労働省の統計によれば一三・三%でありまするが、八月の人事院勧告の基礎は九・三%と、あえて低く押えております。しかも人事院は、格差を九・三と押えながら、勧告は実施期において七・一%になっているのであります。さらに官民給与の格差の比較は四月の調査統計によったものであるにもかかわらず、勧告は実施期を一カ月ずらして五月一日といたしております。かかる不可解なる、人事院にしんにゅうをかけているのが、実施期を十月一日にずらした
政府の
態度と言わなければなりません。公務員諸君は、いうなれば、官民格差において一三・三を九・三に値切られ、九・三からさらに七・一に値切られ、実施の期日において一カ月のサバを読まれ、加えて
政府によって実施期日を五カ月も値切られております。
労働基本権を否定された公務員という名の
労働者の
生活権と
労働権は、一体どこでだれが保障してくれるのでありましょう。公務員諸君がむきになって世間に訴え、
国会に訴え、
政府に訴えている姿を、奔命に疲れている姿を、人事院並びに
政府は何と見ておるのか。公務員の長である
総理大臣は、こういう事態をどういう工合に御認識になっておるのか、お伺いいたします。さらに
総理にお伺いいたしまするが、公務員給与改定の期日が、
閣議決定のとおりに、十月一日になりますると、公務員一人平均一万円、さらに加えて夏季手当の〇・一の増額分がフイになることによって、これまた一人平均三千円、薄給の公務員諸君が合計一万三千円の収入を失うことになるということを
総理大臣は御存じであるかどうか。さらにまた 公務員諸君の初任給が民間に比して非常に低い。したがって、公務に携わる人材を得るに非常に困難をきわめ、かつは、民間への転職が続出しておるという事実を
総理大臣は御存じであるかどうか。
総理はこの際、公務員給与改定の実施時期を繰り上げて、少なくとも人事院勧告どおり五月一日として、あわせて初任給についての格段の考慮を払うべきと思うが、
総理の御
所見をお伺いする次第であります。
次に、ILO八十七号条約についてお伺いをいたします。
十一月のILOの理事会においては、
日本政府が過去十一回にわたって本条約の批准を約束しておきながら、いまだに批准していない事実に対し、きびしく非難をしているのでありまするが、あるいは来たるべき
通常国会においてなお批准しない場合においては、
調査団の派遣という、きわめて不名誉な事態さえも察知できるのであります。
総理にお伺いしますが、かくのごときは、まさにもって国際信義に反するものであり、
政府は
責任を持って次の
通常国会において批准の手続をとり、あわせて
関係法規をILOの精神にのっとって改正すべきであると信ずるが、
総理の御
所見をお伺いする次第であります。
次に、年末を控えてきわめて
深刻化しておる中小
企業の問題についてお伺いいたします。
中小
企業庁の調査によれば、最近における公定歩合の引き下げによる金融緩和
措置にもかかわらず、下請中小
企業に対する親会社の支払い
状態並びに下請条件は非常に悪くなっております。これがため、資金の流れは上層部までにとどまって、下請中小
企業の
段階までは流れてこないのであります。これがため、年末を控えて中小
企業の窮状は容易ならぬものがあるのであります。中小
企業が唯一の頼みとしておるものは、
政府関係のいわゆる金融三機関でありまするが、これら三機関の年末貸出目標が昨年の実績を二七%も下回っているという事実は、中小
企業にとって最も大きな痛手となっているのであります。この際、
政府は、との六月に改正された下請代金支払遅延防止法が、
仏作って魂入れずに終わらぬように、特段の
措置を早急に講ずること、及び金融緩和
措置が下請中小小
企業の
段階にまで及ぶよう、ひもつき融資を考慮すること、及び中小
企業金融三機関に対しさらに
財政資金を追加するため早急に補正予算を組むこと等々、年末を控えて、一連の
措置を早急に行なうべきと
考えまするが、
総理大臣並びに
関係大臣の御
所見をお伺いする次第であります。
さらに、この際、特に
総理にお伺いしておきたいことは、
総理の訪欧並びに日米
貿易経済委員会の結果、ガット三十五条援用撤回、OECD加入促進、ガットの関税一括引き下げ協定参加、
自由化の促進等、一連の成果を誇張しておられるのでありますが、体質の虚弱な
わが国の中小
企業者は、これがためによってきたる影響を非常に心配をして、深刻なる不安感に襲われておるのであります。
総理は、中小
企業のこの不安に対し、いかなる
施策をもってこたえんとされるのか、
所信を明らかにしていただきたいのであります。
次に、農業の問題について一言お尋ねいたします。
政府は、本年度より農業改善事業を開始いたしましたが、農民は、全面的に批判的であり、不信を抱いているのであります。すなわち、補助金のワクが期待はずれであり、融資の条件がきわめて窮屈であり、さらには、土地
基盤整備の
事業費がわずかに五割の補助率にすぎません。
政府はこの際、農畜産物の
価格安定を中心に、補助金、融資等の条件を大幅に改善すべきであると思うが、
総理の御
所見をお伺いしたいと思うのであります。
次に、二重構造の底辺にあえいでいる漁民の当面の問題についてお尋ねいたします。
政府は、沿岸漁業構造改善事業を開始すると言っておりまするが、これは、農業の場合と同様に、零細漁民を切り捨てて、漁業
資本に沿岸漁業を支配させるという結果になるのではないかと思うのでありまするが、
総理の御
所見並びに
関係大臣の御
所見をお伺いする次第であります、さらに加えて、大
資本の進出による沿岸の工業地帯造成に伴い、煤煙、ガス、騒音、汚水などにより、さらでだに困窮の一途をたどっている沿岸漁民は、まさに生死の問題に直面しているのであります。たとえば、四日市の石油コンビナートのために、三重県の沿岸漁民は、漁がほとんどなくなり、とれた魚も油くさくて売れず、まさに壊滅的な悲境に追い込まれているのであります。これら漁民の諸君は、いわば
政府の成長
政策の犠牲に供せられているのでありますから、
政府は、正当にして十分なる補償をするとともに、汚水、煤煙に対しても、当該
企業に必要な
措置を義務づけ、さらに、水質二法の改正をも含めて、根本的な
施策を積極的に推進しなければならぬと思うのでありまするが、
政府の御
答弁、
総理大臣の御
所見を伺いたいと思うのであります。
最後に、時間がありませんから、最近頻発している国鉄の事故について、一言だけ御
質問を申し上げます。
国鉄事故は、さきの三河島事件以来依然として減少のあとを見せておりません。かえってますます頻発をする傾向にある事実は、もはや黙視することができないほどきわめて憂慮すべき
段階にあると思うのであります。そのよってきたるところにつきましては、この際、抜本的に追及しなければなりませんが、私は、端的に申し上げて、国鉄はすでに公共性を喪失して、営利
企業に堕してしまったのではないかと思うのであります。こういうところに根本的な問題があると思います。
この点、
総理並びに運輸大臣はどういう工合にお
考えになっているか、この際お伺いしておきたいと思うのであります。すなわち、営利追及のために、要員を減らし、あるいは安全施設をさぼり、分に不相応なダイヤを組み、スピードアップにうき身をやつしていることが、事故を頻発させ、尊い人命を犠牲にしていると思うのでありまするが、
総理は、あるいは運輸大臣はどういう工合にお
考えになっているか。国鉄当局はこの際、上層幹部の独善を押しつけることをやめて、現場において生命の危険にさらされながら日夜苦労をしている職員諸君の代表とも十分話し合いをして、実効のある対策を立てるとともに、
政府は、
総理みずから深い関心をもって積極的に方策を講ずべきであると思うが、特に
総理大臣の御
所見をお伺いする次第であります。
以上をもって私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕