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1962-12-11 第42回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十二月十一日(火曜日)    午前十時二十二分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三号   昭和三十七年十二月十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件   (第二日)   ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関   する件(第二日)  一、日本放送協会経営委員会委員の   任命に関する件  一、運輸審議会委員任命に関する   件  一、公共企業体等労働委員会委員の   任命に関する件  一、中央更生保護審査会委員任命   に関する件  一、社会保険審査会委員長及び回審   査会委員任命に関する件   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————・————
  3. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)、  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。阿具根登君。   〔阿具根登登壇拍手
  4. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、日本社会党を代表いたしまして、目下懸案中の日韓会談並びに本国会中心課題であります石炭対策及び非鉄金属等々の問題について、順次政府所見をたださんとするものであります。  まず最初は、日韓会談についてであります。  質問の第一点は、過去十年来、日本外交の大きな課題の一つとして、わが国内外にしばしば論議を巻き起こしてきた日韓会談は、昨年の六月、軍事クーデターによって成立した朴政権との間に、従来に見られぬほど具体性を帯びてその交渉が進められており、いわば最後の段階に立ち至ったものだといわれております。きのう韓国に行った大野副総裁と金韓国情報部長との間に、来春三月ソールで調印、夏に国会提出というスケジュールも話し合ったと報道されているのであります。日本外務大臣が二人いるかのような感がいたします。また、大野氏はいかなる資格で交渉をされているのか、お伺いいたします。前国会においてわが党の河上委員長が、南北両鮮の民衆がいかに平和な統一を願い、民族の悲願としての南北統一後まで日韓交渉は進むべきでないことを警告したのであります。しかし、政府はこれに耳を傾けないばかりか、逆に帰期妥結へと邁進しているのであります。しかるに、朴軍事政権は、三十八年度夏に、清新かつ良心的な政治家政権を移譲することを内外に宣言しているのであります。私は、南北両鮮の統一まで延期せよというわが党の主張こそ、真に朝鮮民衆の幸福に通じ、アジアの緊張緩和に役立つ平和への道であると信じているのでありますが、統一の見通しが立たぬという政府主張を考慮し、今かりに百歩を譲ったとしても、韓国に少なくとも、民主的な、そうして民生の安定が見られるまで日韓交渉を延期したとしても、何ら弊害があるとは思えませんが、政府基本的な態度についての考え方をお聞かせ願いたい。また、もしこれが、今次日米経済会議においてケネディ大統領が述べた中共封じ込め政策と相通ずる、反共とりでとしての軍事的な利用価値あるいは資本市場としての経済的な利用価値を念頭に浮かべての日韓会談であるならば、日本が過去朝鮮に対してとってきた植民地支配と何ら変わることなく、歴史に逆行するものといわなければなりません。  質問の第二点は、財産請求権の問題であります。去る三十六年十一月、池田朴会談が行なわれた際、「請求権は、合法的な、法律的な根拠のあるものとしよう」という原則的な一致を見たと発表しているにもかかわらず、政府は、請求権積み重ね方式では交渉がまとまらないので、高度の次元でこれを解決したいと、再三国会委員会において答弁をしております。その高度の次元での解決とは一体何をさすのか。十一月二十九日の各新聞が一斉に報道しているごとく、大平外相は、請求権問題の処理については、無償供与三億ドル、有償供与一億ドルの線で妥結したいと、池田首相裁断を求めた。しかし、他の東南アジア諸国への経済協力と均衡を欠く点その他で裁断を留保したとのことでありますが、この際、明確に妥結への構想を聞かしていただきたい。なお、政府は、財産請求権に名をかりて、無償供与長期借款経済援助にすりかえようとしているのではないかと思うのであります。請求権としての解決を望んでいる韓国と、無償供与長期借款の形で出そうとする日本の間で、表現さえうまくいけば、あながち名前にはこだわらないということを仄聞しておりますが、その方法、その手口は、タイ特別円の協定をめぐっての忌まわしい悪例を再び繰り返そうとする魂胆ではないか、お尋ねいたしたいのであります。  質問の第三点は、李承晩ライン及び竹島の領土問題についてであります。李ライン竹島の領土問題も、韓国国際法を踏みにじって一方的にきめた措置であります。その上、韓国日韓交渉を有利に解決せんとする道具にこれを利用している感があり、その不当なやり方は卑劣であり、きわめて遺憾に思うものであります。政府はこれらの問題を請求権処理と同時に一括解決するといっているのでありますが、その決意のほどをいま一度聞かしてもらいたい。  特にお尋ねしたい点は、請求権処理に重点を置くのあまり、李ライン竹島問題等同時解決がしり抜けになりはしないかという点であります。たとえば、朝鮮水域の防衛という口実で、再びクラーク・ラインあるいはマッカーサー・ラインのようなものが作られるのではないかと心配されるが、そんなことはないと総理は確約できるかどうか、お尋ねいたしたい。さらに、竹島の問題は、国際司法裁判所解決するのが最も妥当な方法であると政府はいっているが、韓国は依然として応訴の意思を示さないばかりか、国際司法裁判所解決するならば感情が残るので、第三国のあっせん主張している。この食い違いに対して、政府はあくまで当初の考えどおり国際司法裁判所解決を貫き通す気があるのかどうか。また、総理帰国早々日韓会談は、急がずあせらず、早くまとめると言っているが、一体これはどういう意味なのか、真意をお聞きしたい。  敗戦によって韓国に残した私有財産は没収され、竹島問題では、国際司法裁判所に対して提訴することもなく一方的に占領され、また公海にラインを引き、それに触れる日本漁船は拿捕され、そのまま没収されている。さらに、操業中の漁民は、長期間服役させられているのに、一方、韓国よりは続々とわが国に密入国が行なわれている。検挙された者だけでも三十五年度に一千八百五十一名、三十六年度一千七百五十三名、本年も六月末で七百二十六名に上っているのでありますが、この交渉は一体どうなっているのか、お尋ねいたしたい。  次に、石炭問題についてお尋ねをいたしたい。  その第一点は、総合エネルギー政策確立についてであります。おそらく総理は、今回の欧州旅行によって、欧州各国が国の重要物資であるエネルギー源確保と、その安定的な供給のために、いかに努力し、また、いかに強力なエネルギー政策確立しているか、つぶさに見聞してこられたことと推察するものであります。そして、こうした欧州各国エネルギー政策と比較して、わが国エネルギー政策がいかに貧困であり、政策という名に値しないかを痛感されてきたところであろうと思うのであります。かって私もイギリスをたずねたとき、イギリス政府は、エネルギーポリシイ基本方針として、「低廉なエネルギーを安定供給し、輸入エネルギーは極力抑え、社会的変動はできるだけ少なくするととに置いている」と主張しておりました。そうして、「エネルギー産業は常に健康にしておかなければならない。もしも不健康であれば、健康にするのが、政府責任であり、仕事である」と強調していたことを記憶しております。その言葉は、政治の衝に当たる者として深く味わうべき言葉ではないかと思うのであります。まず、総理エネルギー政策に対する基本的な考え方をお伺いいたしたいのであります。  次に、第二点として、鋭角的な首切り貿易自由化のあらしに直面して、首切り合理化が強行されている石炭産業及び金属鉱業対策についてお伺いしたいのであります。  雇用の安定を第一義考え石炭政策決定版を作成すると意気込んだ有沢調査団は、結局は、資本に有利な、しかも雇用問題の解決に前進のない答申となったことは、世間周知のところであります。答申は、「労働者の安定をはかるためには、まず石炭産業を安定した自立産業にしなければならない」と、巧みに論理をすりかえ、日本経済新聞の社説でさえ指摘しているように、企業にとってけっこうづくめの答申となったのであります。明らかに、この答申は、国の責任で借金は返してやる。合理化資金は二千五百億必要であるが、その市中調達が困難な場合は、低利長期財政資金を貸そう。石炭需要先は見つけてやろう。労働者首切り資金も出してやろう。そうして合理化が終われば、君たちの利潤は六十億計上できるという、まさに、けっこうづくめであり、資本にとっては至れり尽くせりの決定版であります。しかし、労働者にはまさに七万六千名の首を切るという首切り決定版となったのであります。「石炭政策基本は、雇用の安定を第一義考える」という、あの四月六日段階における総理炭鉱労働者に対する言明にもかかわらず、合理化のしりを、十八万の炭鉱労働者とその家族に負わせ、資本自立のみを求めようとする答申大綱は、明らかにあなたの確約を踏みにじったものであり、この答申を尊重したと称する今回の閣議決定に至っては、まさに論外であると考えます。雇用確保に対する基本的な見解を伺っておきたいと思います。  さらに、政府離職者について責任を持つと言っているのでありますが、一体その保証はどこにあるのでございますか。一昨年のあの三池争議の際、千二百名の離職者に対して、政府責任を持って雇用転換を約束いたしました。労働省も真剣に就職あっせん努力いたしました。しかし、結果は、政府努力を通じて得た職場は約二百名であり、日雇い緊急就労に三百六十名もいるのであります。総理はこの現実をどう見られるでありましょうか。保証のない責任の実体は、まさにかくのとおりでございます。最近の数字をあげてみても、昭和三十四年末には二十六万人いた炭鉱労働者が、現在では十八万人台に減少しております。わずか二年半の間に八万人の首が切られ、その生活はおそるべき状態に放置されているのであります。このように七万六千人という大量解雇に、いかなる責任をとろうというのか。三池の一千二百名に対し、労働省を総動員してもこの数字であります。まして、調査団答申が、日雇い労働者緊急就労転換職場として考えていないというのであれば、三年後は生活保護に落ち込む以外にないではありませんか。福岡県だけを例にとってみても、三十四年に三万四千名の生活保護者がいたのが、三十七年には六万一千名と激増し、その大部分は炭鉱離職者が占めているのであります。総理は、就職のできない者に対し、政府関係機関に全員採用するか、あるいは就職決定まで生活を保障すると約束ができますかどうか、お尋ねいたします。  さらに私は、ここで時間短縮の問題に触れておきたいと思います。時間短縮は、今日では世界の常識であり、欧州各国を歩かれた総理は、その労働時間の短いのに驚かれたことだろうと思うのであります。中でも、特に危険な作業であり、重労働石炭鉱山地下産業労働者は、各国とも労働時間の短縮を実施していることは、すでに御承知のとおりであります。今かりに、炭鉱労働者に、一カ月四日の有給休暇を与えた場合、答申案出炭能率で計算しても、労働者十四万人としても一カ月七十二万トンの出炭減となり、二万人の炭鉱労働者が職を奪われずに済むのであります。暖冷房の中で机の上の作業をする人々に土曜日の半ドンがある今日、地下数千尺で、太陽も見ず、爆発と落盤の危険に生命をさらされている労働者にこの程度の政策的ささえをしても、決してぜいたくではないと思うのでありますが、(拍手総理及び関係閣僚答弁をお聞かせ願います。  さらにお尋ねいたしたいことは、流通機構についてであります。石炭値段が高いので油と競争できないということで、一千二百円のコストダウンが至上命令となっておりますが、現在産炭地の九州、北海道において電力会社に売買されているのは、一トン当たり二千五百五十六円であります。それが東京での小売値段では、高いところで一万六千円もするといわれております。むろんカロリーの差はありましょうが、産炭地の六倍もする価格は、どこから生まれてきているのか。私は、流通機構一元化により、産炭地に見合う炭価で一般需要者供給できるとすれば、ガス二カ月分の費用で一年間ふろが沸かせる結果になると思うのでございますが、この運賃並びに二重三重の販売機構を廃して、国の責任による流通機構一元化をいかに考えられているかお尋ねいたします。  さらに強く私が申し上げたいのは、政府昭和三十四年に、五千五百万トンと、二六・二トンの能率で十七万人の炭鉱労働者が必要であることを政策として掲げましたが、その基本になるものは、重油トン当たり八千四百円としてのことでありました。しかるに、その後、重油は、国際資本市場争奪のもとに急激な価格の低下を見、ついに六千円を割る状態になり、一部の精製会社を除いては、この九月決算では実質上全部が赤字を出し、わずか残された民族資本の某石油会社も、ついに外国石油会社に身売りをするようになったのであります。この最悪条件下調査団作業は行なわれて答申がなされ、政府閣議決定がなされると、直ちにC重油トン当たり八千三百円と急騰を見るに至ったのであります。それは答申案により、消費税をおそれての業者の行為か、あるいはダンピングにより、石炭を極度に追い詰め、答申がなされ、閣議決定を見たので、安心して一挙に千五百円以上もの値上げを行なったものと考えられるのでございます。とすれば、調査団答申は根本からくつがえってくるのでございますし、三十四年の合理化の線でやっていけるのでございます。ということは、一人の首も切らずにできるということでございます。総理はこれをお認めになりますかどうか。  また、一方、わずかの石油業者と、その背後の米英資本によって、あるときは八千五百円に、また、あるときは六千円台に油の価格を増減して、政府調査団国会までも振り回わされている。しかも、極端に生活権まで奪われる人が七万人も出ている。こんなことで日本政策があるといえるでしょうか。そして、このしわ寄せが国民の税金でまかなわれる、まるで踏んだりけったりではありませんか。これは確固たる政策を持たぬ池田内閣の大失政であると思うのでございます。(拍手)  次に、石炭対策とともに忘れてならない政治的課題は、産炭地域振興対策であります。総理も御承知のごとく、産炭地域経済は全面的に石炭鉱業に依存しており、その盛衰はそのまま地域経済盛衰につながるという特殊な条件のもとに置かれております。昭和三十三年から今日まで、すでに三百に上る炭鉱が閉山のうき目を見ておりますが、これらの地帯では、文字どおり、死の町、飢餓の村を現出し、深刻な社会不安におびえているのであります。特に関係自治体では、閉廃山に伴って税収入は年々減少していくのと反対に、社会保障や失対事業費は急増し、はなはだしき自治体では、年間予算の五〇%以上をこれらの支出に取られ、地域経済の痛弊は、まさに目をおおうばかりとなっているのであります。第四十通常国会では、こうした産炭地域振興をはかるために、産炭地域振興臨時措置法の制定を見たわけでありますが、仏作って魂入れずのたとえのとおり、ほとんど効果をあげていない現状であります。今回の石炭対策大綱でも、振興計画を作成するとか、早急に検討するとかの段階で、重症患者を目の前にして、これから医学書を読んで特効薬でも探し出そうかといった、のんびりした状態ではないでしょうか。私は、産炭地の今日の窮境を救う道は、国が計画的に産業を興こし、産炭地域自治体に特別の財政資金を交付する決意があるかどうかにかかっていると思うのであります。この際、総理から強くその決意を伺いたいのでございます。  さらに私は、石炭産業国有化について、その所信をただしておきたいと思うのであります。私が冒頭申し上げましたように、総合エネルギー政策制度的確立なしには、かりに答申を完全に実施したとしても、石炭企業安定自立は困難であり、危機はますます深まるでありましょう。まさに、調査団答申が言いたいのは、雇用の安定と石炭の地位を確立する道は、石炭産業生産体制自体にメスを入れる以外にないということだろうと思います。明らかに利潤追求第一義とする私企業では、すでに限界にきていることは、有沢調査団長もはっきりと申しております。国民の蓄積たる国家資金を大量に投入して、かつ、雇用問題一つ解決し得ない石炭企業を、これ以上、私企業のままに放置しなければならない理由はどこにもないではございませんか。抜本的な解決策をとろうとすればするほど、私企業としてのワクがおもしとなってかぶさって参るのであります。石炭国有化は、決してイデオロギーの問題として申し上げているのではございません。イギリスはすでに国有化しておりますし、フランスも公社化しているのであります。キリスト教民主党政府をとっているイタリアでも、この七月、電力国有化法案国会提出、つい最近下院を通過しているのであります。石炭産業国有化は、まさに総合エネルギー政策確立の主軸となるものであり、石炭政策確立が必然的に求める帰結であります。池田総理は、勇断をもって石炭産業国有化国民に約束し、国民経済発展基盤確立すべきであると思いますが、その決意をお伺い申し上げます。  次に、私は、第二の石炭問題化しつつある金属鉱業対策について総理考えをただしておきたいと思います。第四十国会には、「貿易自由化を目前に控え、わが国金属鉱業安定的発展雇用の安定を図り、あわせて関連産業地域経済振興を図る」という国会決議が可決され、金属鉱業政策確立に一歩前進いたしました。さらに、この国会決議に基づいて設立された金属鉱業審議会が、先般中間答申を行なって、金属鉱業政策基盤が一応樹立されたのではないかと思うのであります。しかしながら、地下資源開発価格支持政策など、来年四月に予定している自由化実施以前に講じなければならない数多くの問題をかかえているのであります。総理もすでに御承知のように、最近の不況の深刻化自由化の促進は、昨年度三千五百名もの首切りをみましたが、こうした合理化は今年に入ってさらに激化し、大手鉱山を含めて、五千名に上る大量首切り計画が進められているのであります。金属鉱産物日本経済に占めるウエートは比較的小さいのですが、埋蔵鉱量は相当豊富でありますから、最近の旺盛な需要量から見ましても、きわめて重要な国内資源であります。一般わが国金属鉱産物が国際的に見て割高であることは否定できません。したがって、このまま自由化に突入し、その衝撃を直接加えることは、わが国金属鉱山潰滅的崩壊危機を招き、雇用の面でも大きな障害を引き起こすことは明らかであります。しかも、鉱山山間僻地に存在するという特殊な事情を考慮いたしますと、このことは単なる経済問題ではなく、政治問題にまで発展することは、まさに指摘した石炭の例を引くまでもないと思うのであります。したがって、この際、抜本的な金属鉱業政策確立し、価格安定政策の樹立と金属鉱産物資源開発について、強力な法的、予算的施策を講ずることが、きわめて緊急の課題であると考えますが、所見を承りたいのでございます。  以上で私の質問を終わりますが、答弁のいかんによっては再質問をいたしたいと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  日韓交渉につきましては、われわれは年来の主張で、早くまとめたいということで来ておるのであります。したがいまして、急ぎません。しかし、私はできるだけ早くまとめたい、しかも、各種の案件一括同時解決に持っていく、この方針で進んでおります。具体的問題は外務大臣よりお答えいたします。  また、エネルギー政策でございまするが、これはやはり経済性の高いものでやっていく。これが一番でございます。経済性の高い、すなわち安価であり供給確保であり、これが、そのもとをなすのであります。ただいまのところ、個々のエネルギーについていろいろ政策を立て、そうして総合的に今後のあり方をただいま検討中でございます。有沢調査団報告は私は一応妥当のものと見ております。これによりまして今後の施策をやっていこう。産炭地振興対策につきましても、昨日の私の所信で御了承願いたいと思います。また、石炭国有化は私は賛成いたしません。これはイギリスの例をお取りになり、あるいは最近のイタリア電力国営ということをお取りになりますが、これはやはり政治情勢のあれからきておるわけであります。イタリアキリスト教民主党だけでなく、社会党と連立的な方法をとっておりますので、下院だけは通過しておることは承知しております。これにはいろいろ議論があります。私は日本ではこういうことはすべきではないと考えておるのであります。  なお、非鉄金属につきましては、石炭鉱業とは実態が違っております。したがいまして、探鉱費の増額とかあるいは精錬所合理化とか、石炭以外の方法非鉄金属に適した措置を今後とって、そうして失業者が多量に一度に出るということのないように努力いたしたいと思います。(拍手)   〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓交渉は御承知のように十年の長い交渉でございまするが、先方に長く反日政権が支配しておりましたような事情もございまして、一向進展を見せなかったのでございまするが、近来になりまして、国交の正常化とそれの前提になりまするもろもろ懸案解決に、誠意をもって現実的な配慮を加えようという態度先方も示して参りましたし、私どももこれに応じまして、鋭意、正常化前提になるもろもろ懸案解決に今努力をいたしておるわけでございます。この問題を南北朝鮮統一まで待てという御議論でございますが、南北朝鮮統一は、それは朝鮮半島の問題でございまして、南北政権統一をどうするかという方式につきまして見解一致をみていないということは御案内のとおりでございます。私どもはそういうことを希求いたしますけれども、それまでの間におきまして、今までの現在のような日韓関係の不自然の状態をそのまま放置しておいてよいとは考えていないのでございます。  それから、請求権問題でございまするが、御指摘のように法律的根拠があるものに限るということが合理的なことだと思うのであります。しかし、御案内のように、法律関係の基礎となりまする事実関係が終戦後長きにわたりまして捕捉しがたい状態にありますことも、阿具根議員案内のとおりであります。したがって、私どもはこの請求権問題という複雑な内容を抱えた問題を解決する方式といたしまして、将来に向かって日本韓国に対しまして有償無償経済協力をするということによりまして、一切の請求権問題は解決するというような工合にいかないものかということで、目下鋭意折衝中でございます。金額云々の問題がございましたが、ただいま折衝中でございますので、この機会で言明は差し控えたいと思います。  それから、今総理も言われましたように、もろもろ懸案は一括して同時解決するという基本方針に変わりはございませんので、漁業問題につきましても、竹島問題につきましても、先方からも御提案がございまして、いろいろ検討いたしておりますが、いずれにいたしましても、国民の納得するような内容をもちまして同時に解決いたしたい、こういうことで進んでおるわけでございます。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  7. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 石炭離職者の問題でございますが、現在離職者の多発しております産炭地域におきましては、経済社会活動の形態により雇用情勢も悪化いたしておりますが、他方、新興または既存の大工業地帯等では、技能者を中心として労働力は不足の状況にあるのでございます。このために、今後は転職訓練、広域職業紹介等の集中的かつ効果的な実施と合わせまして、大量の移転就職用の住宅を建設し、他地域、他産業の安定した職場への転換を強力に進めたいと存じております。また御指摘のとおり政府関係機関におきましても、積極的に離職者を収容するよう現に準備を進めております。しこうして、就職に至りますまでの期間、生活の安定をはかる趣旨で、就職促進手当を離職後も三年間支給することにいたしております。これらの施策によりまして、再就職の意思と能力のある限り再就職せしめる決意で、政府はただいま準備を進めつつある次第でございます。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  8. 福田一

    国務大臣(福田一君) 流通機構一元化をはかってはどうかというお話でございますが、流通機構一元化する意味が、一手買い取り、一手販売のやり方だといたしますならば、これは石炭の生産および販売に全面的な統制を行なうことになりますので、政府としては、石炭鉱業の自主性を尊重し、そしてこの合理化を達成するということに相なりませんので、こういうような機関を設置する考えは持っておりません。ただし、この流通機構合理化について、石炭専用船を作ったり、あるいは配船の調整をいたしたり、あるいは銘柄の整理をいたしたりすることや、揚げ地でありますところの京阪神地区のハウス・コールの経営の合理化ということにつきましては、近代化資金の融資を行なって、生産者および消費者の共同の配給基地を設けるような共同化、合理化を進めていくようにしたいと考えておるのであります。なお、産炭地の対策が不十分である。また産炭地市町村や中小企業者、農民までいろいろの生活の不安におびえておるというような御質問でございます。これにつきましては、政府としては特に今まで十分注意をしておりますが、さらに十一月二十九日の閣議においても決定いたしましたとおり、道路、工業用地、用水等、産業基盤の整備をはかりますと同時に、企業を導入したり、そして導入した企業を助成したり、また、ボタ山の処理事業を行ないますと同時に、石炭鉱業合理化によって影響を受けます産炭地域の中小商工業者や農民等に対しましても、事業資金、転業資金の確保、農地鉱害の復旧等について、特段の配慮を加えることにいたしておるわけでございます。  なお、石油の問題についてお話がございましたが、これにつきましても、業法の許す範囲内におきまして、政府としては強力に行政指導をいたしまして、そのようなことのないように処置をして参りたいと思います。(拍手)   〔国務大臣篠田弘作君登壇拍手
  9. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 産炭地地帯の公共団体のいわゆる財政の需要に対し特別立法をする必要はないかというお尋ねでございます。現行制度におきましても、財政収入が減少した場合には普通交付税が自動的に増加することになっております。その他、生活保護、失業対策費等の財政需要の増加に対しましては、普通交付税のほかに、当該団体の財政需要に応じまして特別交付税を増額交付する等の処置が行なわれておりますので、現行法で十分処置できるものと考えております。(拍手)   〔阿具根登登壇拍手
  10. 阿具根登

    ○阿具根登君 再質問いたします。  まず、私が舌足らずであったかもわかりませんが、総理答弁に対して満足できませんので、一言だけ申し上げてみますが、昭和三十四年に合理化法が出されたときに、十七万人の炭鉱労働者が必要である、油の値段を八千四百円と見て二六・二トンの能率にしてもらいたい、こういうことで首切りがなされたわけです。ところが、調査団が調査されるころは、油のトン当たり値段が六千円台を割った。そこで有沢調査団長も、「もう企業の限界に来ている。しかし、サンキース委員会でなく、私はこれを国営でやるか、あるいは私企業でやるかという質問でなくて、現在の中でやれといわれておるから、もう一ぺん私企業でやらしてもらいたい」ということを委員会で説明されたわけです。それだけ下がった油の値段が、答申案がなされ、閣議決定がされたら、小売は急に、これは段階がありますが、八千三百円になった。大手で七千七百円になった。そういたしますと、政府政策として掲げた三十四年の状態でもいけるのではないかということです。それが第一点。  それから第二点は、近々この一、二年の間に、政府が対策を立てる裏から裏から価格が変動し、経済を麻痺さしているのじゃないか、そのためにたくさんの失業者が出ている。そのあとを政府は追っかけ回している。国会もそれに振り回されている。調査団は何のために調査したかわからないようになってきたのじゃないか。そういうあり方でいいのかどうか。たとえば答申案で、消費税をかけねばならぬという声がかかってくれば、六千円で売っておったら、あるいは千円、千五百円の消費税がかかるかもしれないということで、これを政策的に上げる。あるいは、そうでなかった場合に、もう石炭はここまでたたいたから、もう石炭政策は変わらない。ここで油はこれまでの損を取り返せということで、勝手に千五百円も上げる、こういう状態を許しておいていいのかどうかということです。  それから労働大臣に質問いたしますが、労働大臣の失業者に対する説明はわかります。しかし、これは三池の場合でもそうでございました。三池の場合でも、ほんとうに労働省はよくやっていただいたと私は思います。あれだけ真剣にやっていただいた。責任を感じられたけれども、千二百名のうちのわずか二百名が政府あっせんによって就職しただけだ、三百六十名というのが緊就なり一般失対でおるわけなんです。そうすると、八千戸の家を作ってやるとおっしゃるけれども、出てくる人は七万六千名です。どうしてそれに収容できますか。けたが違うのです。そうすると、政府は、もしも私が懸念しているような姿になった場合には、政府の機関において責任を持って全員採用するのか。また、そうでなかったなら、就職がきまるまで生活の保障をするのかということを尋ねているわけなんです。そうしないと、これだけ仕事を持ってきた、しかしお互い考えてみて、その仕事はどれでも自分に適するとは思われない。そうした場合に、どこかで切り捨てられる。切り捨てられた者全部生活保護になるではないか。生活保護で救うような金があるならば、なぜこの一番苦しんでいる地下産業労働者に有給を認めてやらないか、こういう二つの問題です。  以上の点について御答弁願います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  昭和三十四年の石炭対策を講じましたときは、お話のとおり八千円程度の重油でございました。したがって、三十八年度までに千二百円下げれば、大体二十二トンないし二十六トンの出炭量でまかないがつくという計画であったのであります。これは阿具根さんも御存じのとおり。しかるところ、八千数百円の重油がお話のように先般六千円までに下がった。この六千円という重油は、世界的の価格から見てどうかというと、これは異常でございます。こういう価格はございません。しかるところ、その六千円の価格が、重油消費税あるいは原油関税等の問題もありますし、また、石油販売におきまして、有力会社が相当乱売を始めました。そのために六千円になった。その乱売がおさまって、片一方では課税論があるから、八千四、五百円になった重油値段は、これもまた異常でございます。こういうふうに移り変わりがありまするから、たとえば三年、四年前にドイツが重油関税を三割かけた例も私は知っておりますけれども、しかし、そういうことをするのは、エネルギーからいって日本経済にどういうふうな影響を及ぼすか、今検討をしております。だから、こういう異常な状態を上下とらえて、これじゃどうにもならぬと言っても、これは世界経済自由化その他でいろいろ起こってくるのでございますから、こういう問題を考えながら、今度有沢調査団報告に基づいてわれわれは善処しようとしておるのであります。したがいまして、今後はこういうことのないように、大体ただいまのところは、有沢調査団のあの方向でいけば、各方面ともうまくおさまる。そうして重油と原油の価格につきましては、今後措置をしようとしておるのであります。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  12. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 今回の離職者対策といたしましては、労働省では特に広域職業紹介の仕事を拡充いたしまして、職業紹介の努力をいたしまするとともに、職業訓練を強化いたしたいと思っております。  さらに、従来、広域職業紹介の隘路でございました住宅問題に力を入れる等によりまして、職業紹介の能率化をはかりますと同時に、他面、政府機関におきましても、できるだけ離職者を吸収いたしまするよう努力することにいたしまして、ただいま準備を進めておるような次第でございます。したがいまして、政府といたしましては、これらの施策を講じましてもなお就職の困難な場合においては、離職後三年間に限りまして、生活の安定のために手当を給し、この期間内に必ず全員再就職をさせると、かような決意で進んでおることを御了承いただきたいと存じます。(拍手
  13. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 石田次男君。   〔石田次男君登壇拍手
  14. 石田次男

    ○石田次男君 私は、総理所信表明に対し、特に石炭問題につき、公明会を代表して質問を申し上げるものであります。  戦後十八年、石炭問題の歴史は、まことに波乱万丈でありましたが、今日いよいよその結着を迫られるに至りました。  私は、詳細に現地を調査し、たんねんに各界の意見を聴取しましたが、難問山積の実情については、官民、政府、与野党の区別なく、よくよく御承知のとおりであります。すなわち、企業全体の危機であり、労働者二十万の危機であるばかりか、産炭地全住民三百万人の危機そのものであるからであります。したがいまして、石炭企業の立ち直りに五年の歳月を費しているうちに、いな、それどころか、すでに産炭地域は荒廃し、重大なる経済問題と社会不安が起こりつつあるのが現状であります。これに対して、政府はどう認識し、いかなる救済の具体策を持っているのであるか。まず最初にこれを総理にお伺いするものであります。  次に、政府は、今後七万人の整理やむなしとしておりますが、労働省では、そのうち実に四万人が来年中に集中離職すると推定しているのであります。加うるに過去の離職者中の失業者が五万人・このきびしい現実に対して、吸収すべき雇用対策は、現在何一つ具体的には準備ができていないのであります。はたして政府は来年中にこの九万人の再就職を実現できるのかどうか、労働大臣にその見通しをお伺いいたします。  これに関し、政府は職業の再訓練をうたっておりますが、今までの再訓練が全面的に失敗であったことを御承知であるのかどうか。問題の中心地福岡県においては、完全就職者はわずかに三割であります。あと七割は、失対事業、生活保護・請負組夫、現地に舞い戻って転落中の人、こういった人々ばかりであります。一体、数万という大量の再訓練が来年中にできるつもりでありますか。また、年令、学歴、単純労働の習慣等によりまして、せっかく再訓練をしても、失敗して舞い戻る人が実に多く、職業再訓練は一部の人以外には不可能であることが、現地ではすでに常識となっているのであります。しからば、職場保証する方策は、徹底的に単純な労務の道を開く以外にないことが明らかであります。来年約十万人分その用意ができるのかどうか、労働大臣より明確にお示しをいただきたい。  石炭問題の中心地は、御存じのとおりに、筑豊炭田であります。調査団のスクラップ計画中、大半が筑豊に集中しまして、百六十六鉱中、閉山が百五十七の予定で、実にわずか九炭鉱が生き長らえるだけであります。その結果はどうでありますか。筑豊九十万人中、六割に当たる五十数万名が直接に生活不安人口となり、残る三十数万名もそれとすれすれに追い込まれるのでございます。しかも、来年中にはほぼそうなるのでありますが、この重大事態を目前にしまして、総理はいかに対策せんとするものでございますか。  また、市町村財政の破綻は決定的であります。たとえば田川市の場合・予算十五億のうち、十億円が失対事業費と民生保護関係に食われております。中間市では、予算三億六千万円に対し、主として大手二鉱の滞納によりまして、一億四百万円が徴税不可能の赤字であります。しかも、市民の半数が生活保護者になりかけているのであります。  炭鉱だけの町村では、すでに保護者が八、九割というところも出現しております。これに伴って、地域の商工業者の売り上げは五、六割落ちて、破産続出であります。  今まで申し上げた事情を判断するならば、石炭企業のビルドアップよりも何よりも、まずまっ先に産炭地域振興が中心政策として一切に優先してとられるべきであることが明白であります。  すなわち、新産業の導入、土木事業による緊急就労の完全化、この二本建による産炭地振興を差しおいては、雇用対策も企業合理化もできないのであります。首相、蔵相、通産相、労働大臣、自治相、経企長官、それぞれ所管上からする御意見はいかがでございますか。  次に、もう一歩具体的に伺いますが、最近閉山した紋珠丘山炭鉱では、退職金もなく、未払い貸金ももらえず、全員そのまま生活保護に横すべりをいたしました。最近このような事例が非常に多いのであります。通産大臣にお尋ねいたしますが、政府は、今後こういうのを完全に防止できるかどうか、さらに遡及適用して手当を支給する用意はございませんか。明確にお答え願います。  次は、総理に伺います。政府案では、鉱区調整をあげておりますが、その基本方針として、前近代的な租鉱権制度をまっ先に廃止し、中間搾取の下請制度を禁止すべきであります。政府案のごとく特例を認めるならば、必ず下請会社が横行して、第二会社規制が有名無実となるのであります。よって、完全禁止に進むべきであり、また、請負組夫も同じく全面的に禁止すべきでありますが、御所見はいかがでありますか。  次に、総理と自治大臣に伺います。  土地の住民が四散することは、県も各市町村も一致して反対であります。ところが実際は、抜き打ち閉山によって、経済は混乱し、住民は四散し、市町村当局は、残された所施設の管理に手をやいております。これをいかがいたしますか。また、閉山には予告期間を置くべきでありますが、いかがでありますか。  また、閉山後、老朽社宅は取りこわし、あとは極力活用すべきであります。土地家屋は市町村と居住者に払い下げ、極力離職者の転出を防いで、土地の振興を強化せよというのが、各現地の一致した要望でございます。この要望に、政府はどうおこたえになりますか。  一方、会社は、社宅から出て行くまで退職金を五割しか払わず、これを追い出しの手段としているところがあるのであります。支給金に関する会社のこの種の横暴は、禁ずるのか禁じないのか、また、罰則はどうするのか、その点をお伺いします。  次は、大蔵並びに自治大臣にお尋ねします。産炭地各市町村の三十七年度財政赤字は、総額幾らと踏んでおりますか。また、これはどう処理する予定でありますか。また、さきの田川市の例によるまでもなく、失対事業費、保護費等、特別財政需要は地方財政の負担能力の限度外であります。これらについては、全額国庫負担とする以外にないはずでありますが、どういたしますか。  通産大臣に伺いますが、閉山後のボタ山管理と鉱害復旧の点であります。炭鉱が操業中は、ボタ山は何とか保っておりますが、一たん閉山したあとは、保安上まことに危険であります。夏の潜龍炭鉱の例のごとく、一朝豪雨があれば、人命、家屋、田畑、道路、諸設備を問わず、瞬時にのみ込む危険なボタ山が数多いのであります。この保管と防災処置の責任所在はどこにいたしますか。また、その費用は要求どおりに出しますか。また、閉山後の鉱害復旧の責任所在はどこにいたしますか。これは総理大臣にお答えを望みます。  次に通産相に伺います。閉山となる炭鉱に対する商工業者の売掛金は膨大であります。その金額は鉱山ごとにはっきりしておりますが、その集計数字政府は持っておりますか。また、その債権確保については、特別措置を講ずる用意はありませんか。また、講ずるならば、どうする方針でありますか。  次に、経企長官と自治大臣に伺います。産炭地市町村は、おのおの現地振興計画を持っておりますが、現地の事情に最も詳しい当事者の立案は、これを指導改善してできる限り採用して、実現をはかるべきであります。市町村は、いずれもこれら計画への早急なる資金手当を望んでおりますが、これを取り上げる用意が政府におありかどうか。  また、産炭地の市町村は、行政事情が急速に変化しつつあります。これを救うために、町村合併を強く推進して対処打開すべきであります。たとえば、中間市の場合は、北九州市へ合併して単独採算を禁止するならば、市の財政だけは救済できるのであります。このような立場から、産炭地の行政区域の再編成を進めることはお考えにならないかどうか。  最後に、今度の予算処置についてでありますが、わずか三十一億円であります。それも、大半が企業手当資金であって、失業対策費はたった二億、一番根本であるべき産炭地振興の費用は、何と一億円にすぎないのであります。幾ら緊急手当とはいえ、これでは、ただ名目を飾ったにすぎないのであります。ゆえに、もし来年強力なる資金手当をしなければ、産炭地全住民三百万人は、政府に完全に見殺しとされ、総理みずから、人づくりの大理念を破棄するのであります。政府は、そのような無慈悲な政治は決してとらないということを、国民に確約すべきであります。その立場から、来年度予算において、石炭対策関係費は一体どれくらい出すつもりであるか、その概略を示し、それを説明していただきたい。これを総理にお尋ねいたしまして、私の質問を終了いたします。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 石炭問題は、お話のとおり、単に経済問題のみならず、実に大きい社会問題でございます。すなわち、失業者に対する対策とか、あるいは産炭地の対策、あるいはまた、産炭地域振興事業団の仕事等々、いろいろございます。私は、有沢調査団の御報告に基づきまして、こういう経済問題のみならず、社会問題全般にわたりまして、画期的な措置をとる決意でおるのであります。  予算の問題につきましてもお話がございましたが、補正予算ではそう多額に上ってはおりませんが、来年度の通常予算には相当きめこまかに出てくることと御了承願いたいと思います。  なお、特に御質問の租鉱権設定によります第二会社の問題、これは私は、原則としてはそういうものは認めないつもりでございまするが、しかし、実際問題といたしまして、雇用対策上やむを得ない場合もあるのであります。しかし、そういう場合には、例外的には私は認めていきたいと考えております。また、組夫等が通常の仕事に従事するということは、これは規制するつもりでございます。  また、ボタ山の処理の問題も、これは本年度から事業団のほうで予算を組んでやることにしております。これが閉山当時の鉱業権者の責任であるとかなんとかということは、これは原則でございますが、実際上は、やはりこれを措置しなければならぬと考えますので、法律の規定にかかわらず、われわれは予算であらゆる措置をいたしたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  16. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 石炭鉱業合理化に伴います離職者で、現在公共職業安定所に求職中の者は約一万六千人となっております。また本年四月から九月までに一万八千人の労務者の減少を見ておりますが、今後はこれを下回るものと予想いたしております。昭和三十八年度においても同様な推移をたどると考えられますので、御指摘の九万人という数字労働省の見込みとは相当開きがあるように存じます。しかし、いずれにせよ、今後とも合理化の過程でなお相当数の離職者が発生することは十分見込まれるところであります。そこで、これにつきましては、石炭鉱業における合理化計画策定に際しましては、これに見合う雇用計画を策定することとし、石炭鉱業審議会に付議する方針に相なっておりますこの雇用計画の策定にあたっては、一般産業界における労働力需要の動向を十分考慮することにいたしており、この計画に沿って転職訓練、職業紹介などの再就職諸対策を集中的に実施いたしまして、広く一般産業への再就職を強力に進めて参ります。すでに職業訓練については拡大実施の方針決定いたしており、また職業紹介の強化も方針決定いたしておりまするので、今後合理化に伴い離職も余儀なくされる炭鉱労務者につきましては、産業界全般の労働力需要に応じまして的確なる転換職場確保できるものと考えております。(拍手)   〔国務大臣篠田弘作君登壇拍手
  17. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 三十七年度の産炭地市町村財政の赤字は幾らか、また、その処理方法はどうであるか、こういうお尋ねであります。三十七年度の産炭地の市町村の財政状況はちょうど年度中途でございますので、明確な見通しを立てることは目下のところ困難でありますが、三十六年度は、全国約百六十の産炭地市町村のうち赤字を出した市町村は十六市町村であります。その総額は四億三千六百万円でありましたが、三十七年度はそれを上回るものと考えております。その処理につきましては先ほど申しましたが、当面の財政需要の増高に対しましては、普通交付税の増額による措置、あるいは地方債、あるいはまた特別の財政需要については特別交付税の増額等について処置いたす考えであります。産炭地振興につきましては、産炭地市町村の窮状を打開するためには地域経済力の振興をはかることが最も急務であると考えますが、これはさきに産炭地域振興臨時措暦法を制定したのでありまして、この法律に基づき適切なる具体的処置を進めていくつもりであります。  次に、産炭地市町村のいわゆる合併問題、行政区域の再編成の必要はないか、こういうお尋ねであります。石炭鉱業の不況によりまして、石炭の産出地域の市町村につきましては、特に市の合併の特例に関する法律というものを制定いたしましたときに、自治体の地盤強化を考慮して行政区域の再編成が可能になるようにすでに処置してあります。現に福岡県の飯塚市を中心とする一市二町一村の産炭地域の合併につきましても、すみやかに再編成されるよう努力しておる次第でございます。今後ともこの法律の運用によりまして優遇措置を講じながら、行政区域の再編成を進めてゆきたいと思っております。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  18. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 石田さんから御質問がありました部分で、総理大臣からお答えになられた部分を除いて一点申し上げます。  産炭地振興及び市町村等の財政の問題でありますが、ただいまも自治大臣が申し述べられたとおり、全額国庫負担ということで市町村の財政赤字を補てんするという必要は、現在の段階においては認めてはおりません。しかし、特別交付税の配分等に際しましては、十分配慮して参るつもりでございます。  なお、今年度の産炭地振興、救済その他の事業費に対しては非常に少ないのではないかということでありますし、三十八年度の予算の概略を示せということでありますが、三十八年度の問題に対しては、先ほど総理からお答えになりましたとおり、現在編成作業を進めておりますが、去る日にきまりました石炭対策大綱に基づきまして十分配慮して参るつもりでございます。  なお、今次の補正予算に対してわずか一億というようなお話でございましたが、御承知のとおり三十七年度当初予算に、一般会計から五億、それから資金運用部資金から五億、計十億円計上し、現在まだ使われておらないものにプラス・ボタ山整理の事業費として一億五千万円の追加をいたしたわけでありまして、これで万全と考えておるわけではないのでありますが、今年度はただいままで御審議をいただいておるものを合わせて十一億五千万円であることを申し上げて、答弁にかえます。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  19. 福田一

    国務大臣(福田一君) 産炭地域振興対策につきましては、先ほど阿具根先生にお答えをいたしたところで御了承を願いたいと存じます。  次に、離職者のお方が一文も金がもらえないで困っておるような例があるが、これをどうする、そういうものは起きないようにできるかというお話でございますが、御承知のように、今度の補助金のうちで二割というものは優先的にこの離職者に対する賃金として支払うことになっております。さらにまた、今回は離職金に加えまして最高十万円まで増額支給する方途を講じておりますので、御心配のようなことはあり得ないのではないかと存じておる次第でございます。  なお、商工業者の閉山炭鉱に対します売掛金について、調査ができておるかというお話でありますが、本年度中に閉山を予定いたしております二十八炭鉱について、石炭鉱業合理化事業団が調査したところによりますと、大体、債務総額は十五億円ぐらいでございます。  その他のものも今調査中でありますが、これらにつきましては、中小商工業者の売掛金の処理方法としては、きのうも衆議院でも申し上げておりますが、債務執行上貸し倒れの認定を早めるというような措置をとったり、あるいはまた事業遂行上所要資金が必要であるという場合には、国民金融公庫や中小企業金融公庫等の政府関係金融機関から融資する等、その他特別の措置を考慮するつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  20. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 全国総合開発計画に基づきまして、地方及び府県の開発計画を作ります際に、御指摘のような点は、私ども努めてそういうふうに考えて参りたいと存じます。(拍手
  21. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 大倉精一君。   〔大倉精一君登壇拍手
  22. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に対し、第二回日米経済会議ほか数点について御質問を申し上げます。初めに、先ほどの同僚阿具根君の質問に対しまして、総理は、わずかに三分間ぐらいでお済ましになりましたが、総理は、私に対して答弁をされるという気持じゃなくて、この壇上から国民に対して答弁をされるつもりで御答弁を願いたいと思います。  まず第一番に、第二回日米貿易経済合同委員会についてであります。結論から言えば、この会議の結果は、国民に対し、ただ失望と不安を与えたにすぎないものであります。国民諸君がこの会議に期待していたものは、大臣が六人もお出かけになったのであるから、従来、対米貿易経済懸案になっている幾多の諸問題について、何らかの朗報をもたらしてくれるであろうということを期待しておったのでありまするが、結果においては、アメリカのほうから、自由陣営におけるアメリカの役割とドル防衛のお話を承っただけで、わが国が国際収支の周期的な赤字に苦しんでいる事情については、わずかに共同声明の中で留意してもらったにすぎないのであります。私は、この委員会の性格について少なからず疑問を持っているものであります。本来この委員会は、両国の国際経済政策の食い違いを除くための手段方法を話し合う場であると私は承知をしておったのでありまするが、団長格の大卒外務大臣のワシントンにおける談話を拝聴しまするというと、この会談は、特定の問題に関する話し合いをする場ではない、こう強調されておるのでありまするが、はたしてしからば、六人もの大臣がアメリカまで何の話し合いに行ったかという疑問を私は持つわけであります。あるいは、この会議は、日米貿易経済会議というような、いかめしいものではなくて、夫人同伴の日米懇親会のつもりでお出かけになったのではないかと思うのであります。それゆえにこそ、日本での大騒ぎに引きかえまして、米国の新聞はほとんど興味を示していなかったのであります。あるいは総理は、そのとおりだ、懇親会だとおっしゃるならば、日米に横たわる諸問題は、たくさん深刻なものがあるのであります。そういう余裕はないはずだ。私は総理にお伺いいたしまするが、この委員会のこのような実態は、かえって一方的に相手方に乗ぜられ、ひいてはわが国の威信にもかかわりかねないことを懸念いたすのでありまするが、総理は、この際、この委員会を再検討し、真に国民の期待にこたえ得る、実効のある、自主性のある対米経済外交を確立するため、特段の考慮を払うべきと思うのですが、総理の御所見をお伺いしたいと思うのであります。  運輸大臣にこの際お尋ねしますが、苦境にあえぐわが国海運の北米航路には幾多の問題が山積していることは、すでに御承知のとおりであります。当然運輸大臣は参加されると思っておりましたが、参加されていないということに対して、私は非常に疑問を持っております。であるがゆえに、あえてこの際、参加されなかった理由、及び北米航路における諸問題に対するあなたの対策について明らかにしていただきたいと思います。  次に、三日の昼食会におけるケネディ大統領の発言についてお伺いをいたします。  総理は、ケネディ発言は当然のことであって驚くに足らずと、軽く受け流すゼスチュアを示しておられます。しかし、聞くところによりますと、先方に参りました閣僚諸君の中にも驚いた人がおいでになるそうでありまするが、そうすれば、これはまことにおかしなことになるわけであります。そうして、私に対する答弁もおそらくそうなるでありましょう。が、しかし、キューバ問題等、最近のできごとを想起しながら発言の内容をしさいに検討し、さらにその夜の大平・ラスク秘密会談、あるいはホワイト・ハウスが、スピーチの中の中準人民共和国に関する部分の発表を一時拒否した事実等、私は、総理のように当然のことで驚くに足らずとして片づけてしまうには、あまりにも事の重大さを痛感する次第であります。総理は六日の記者会見で、ヨーロッパではわれわれの想像以上に共産主義の拡大をおそれている。NATOもこうした連帯感から生まれたものだ。だからケネディ大統領は、ヨーロッパでは心配ないがアジアでは心配だと言うのだ、という工合に発言をしておられますが、あなたは日米間には安保条約があるから大丈夫だと、こうおっしゃるかもしれません。しかしケネディ大統領はさらに突き進んだ役割を日本に要求していることは明らかであります。すなわち、ケネディ大統領は、中華人民共和国の脅威に対して日本に求めているものは、経済的役割とともに、日韓台軍事同盟、すなわちSEATOを通じての軍事的役割に踏切ることを期待していると受ける取ることは、これは私の思い過ごしでありましょうか。もしこれが思い過ごしであるなら、総理はこの壇上から、アジアの情勢あるいはアメリカの国内情勢、その他しさいに説明を願って、私の思い過ごしであるというその理由を明らかにしてもらいたいと思うのであります。総理はおそらく、あるいは、日本日本事情があるから、アメリカが何と言ったって日本は自主的に判断して事をきめるのだとおっしゃるかもしれません。しかし、不幸にして私はあなたのそれを信ずることができないのであります。なぜかといえば、私どもは過去において苦い経験があるからであります。軍隊ではない、戦力ではない、戦力なき軍隊、防衛のための戦力は憲法違反ではない等々の過去を忘れてはおりません。さらに安保条約によって対米軍事従属がますます強くなったことを知っております。そうしてまた、アジアではアジア人に戦わせよというアメリカの名言も私は忘れてはおりません。私の心配は国民諸君のひとしく心配するところであると私は確信しております。この重大なるときに、日本総理大臣は、アメリカ大統領の危険な要求を毅然として拒否して、もって日本とアジアの平和のために偉大なる役割を果たす決意をされるべきであると信ずるが、総理大臣の御所見国民の前に明らかにしてもらいたいと思います。  次に、賃金問題について総理並びに関係各大臣にお伺いいたします。  まず初めに、総理はヨーロッパの訪問中、わが国の賃金水準はすでにヨーロッパ並みになっていると言明しておられますが、はたしてしからば、現に実在するヨーロッパ以下の賃金については、早急にヨーロッパ並みに引き上げる施策を行なう用意があるか、総理大臣にまずもって端的にお伺いする次第であります。  次に、当面の問題として、公務員給与の改定について総理並びに関係大臣にお伺いをいたします。私は率直に申し上げて、国民に奉仕するという名のもとに、賃金労働者でありながら労働基本権を否定されている公務員諸君に対する人事院並びに政府態度は、きわめて不可解であり、強い憤りを覚えるものであります。労働基本権を否定された公務員の生活権労働権の維持向上は、もっぱら人事院並びに政府の重大なる責任であります。しかるにもかかわらず、給与改定特等に見られるごとく、人事院並びに政府態度はきわめて事務的であり、冷淡であります。現在公務員諸君の給与改定が問題になっておりまするが、官民労働者の給与格差は、労働省の統計によれば一三・三%でありまするが、八月の人事院勧告の基礎は九・三%と、あえて低く押えております。しかも人事院は、格差を九・三と押えながら、勧告は実施期において七・一%になっているのであります。さらに官民給与の格差の比較は四月の調査統計によったものであるにもかかわらず、勧告は実施期を一カ月ずらして五月一日といたしております。かかる不可解なる、人事院にしんにゅうをかけているのが、実施期を十月一日にずらした政府態度と言わなければなりません。公務員諸君は、いうなれば、官民格差において一三・三を九・三に値切られ、九・三からさらに七・一に値切られ、実施の期日において一カ月のサバを読まれ、加えて政府によって実施期日を五カ月も値切られております。労働基本権を否定された公務員という名の労働者生活権労働権は、一体どこでだれが保障してくれるのでありましょう。公務員諸君がむきになって世間に訴え、国会に訴え、政府に訴えている姿を、奔命に疲れている姿を、人事院並びに政府は何と見ておるのか。公務員の長である総理大臣は、こういう事態をどういう工合に御認識になっておるのか、お伺いいたします。さらに総理にお伺いいたしまするが、公務員給与改定の期日が、閣議決定のとおりに、十月一日になりますると、公務員一人平均一万円、さらに加えて夏季手当の〇・一の増額分がフイになることによって、これまた一人平均三千円、薄給の公務員諸君が合計一万三千円の収入を失うことになるということを総理大臣は御存じであるかどうか。さらにまた 公務員諸君の初任給が民間に比して非常に低い。したがって、公務に携わる人材を得るに非常に困難をきわめ、かつは、民間への転職が続出しておるという事実を 総理大臣は御存じであるかどうか。総理はこの際、公務員給与改定の実施時期を繰り上げて、少なくとも人事院勧告どおり五月一日として、あわせて初任給についての格段の考慮を払うべきと思うが、総理の御所見をお伺いする次第であります。  次に、ILO八十七号条約についてお伺いをいたします。  十一月のILOの理事会においては、日本政府が過去十一回にわたって本条約の批准を約束しておきながら、いまだに批准していない事実に対し、きびしく非難をしているのでありまするが、あるいは来たるべき通常国会においてなお批准しない場合においては、調査団の派遣という、きわめて不名誉な事態さえも察知できるのであります。総理にお伺いしますが、かくのごときは、まさにもって国際信義に反するものであり、政府責任を持って次の通常国会において批准の手続をとり、あわせて関係法規をILOの精神にのっとって改正すべきであると信ずるが、総理の御所見をお伺いする次第であります。  次に、年末を控えてきわめて深刻化しておる中小企業の問題についてお伺いいたします。  中小企業庁の調査によれば、最近における公定歩合の引き下げによる金融緩和措置にもかかわらず、下請中小企業に対する親会社の支払い状態並びに下請条件は非常に悪くなっております。これがため、資金の流れは上層部までにとどまって、下請中小企業段階までは流れてこないのであります。これがため、年末を控えて中小企業の窮状は容易ならぬものがあるのであります。中小企業が唯一の頼みとしておるものは、政府関係のいわゆる金融三機関でありまするが、これら三機関の年末貸出目標が昨年の実績を二七%も下回っているという事実は、中小企業にとって最も大きな痛手となっているのであります。この際、政府は、との六月に改正された下請代金支払遅延防止法が、仏作って魂入れずに終わらぬように、特段の措置を早急に講ずること、及び金融緩和措置が下請中小小企業段階にまで及ぶよう、ひもつき融資を考慮すること、及び中小企業金融三機関に対しさらに財政資金を追加するため早急に補正予算を組むこと等々、年末を控えて、一連の措置を早急に行なうべきと考えまするが、総理大臣並びに関係大臣の御所見をお伺いする次第であります。  さらに、この際、特に総理にお伺いしておきたいことは、総理の訪欧並びに日米貿易経済委員会の結果、ガット三十五条援用撤回、OECD加入促進、ガットの関税一括引き下げ協定参加、自由化の促進等、一連の成果を誇張しておられるのでありますが、体質の虚弱なわが国の中小企業者は、これがためによってきたる影響を非常に心配をして、深刻なる不安感に襲われておるのであります。総理は、中小企業のこの不安に対し、いかなる施策をもってこたえんとされるのか、所信を明らかにしていただきたいのであります。  次に、農業の問題について一言お尋ねいたします。  政府は、本年度より農業改善事業を開始いたしましたが、農民は、全面的に批判的であり、不信を抱いているのであります。すなわち、補助金のワクが期待はずれであり、融資の条件がきわめて窮屈であり、さらには、土地基盤整備の事業費がわずかに五割の補助率にすぎません。政府はこの際、農畜産物の価格安定を中心に、補助金、融資等の条件を大幅に改善すべきであると思うが、総理の御所見をお伺いしたいと思うのであります。  次に、二重構造の底辺にあえいでいる漁民の当面の問題についてお尋ねいたします。  政府は、沿岸漁業構造改善事業を開始すると言っておりまするが、これは、農業の場合と同様に、零細漁民を切り捨てて、漁業資本に沿岸漁業を支配させるという結果になるのではないかと思うのでありまするが、総理の御所見並びに関係大臣の御所見をお伺いする次第であります、さらに加えて、大資本の進出による沿岸の工業地帯造成に伴い、煤煙、ガス、騒音、汚水などにより、さらでだに困窮の一途をたどっている沿岸漁民は、まさに生死の問題に直面しているのであります。たとえば、四日市の石油コンビナートのために、三重県の沿岸漁民は、漁がほとんどなくなり、とれた魚も油くさくて売れず、まさに壊滅的な悲境に追い込まれているのであります。これら漁民の諸君は、いわば政府の成長政策の犠牲に供せられているのでありますから、政府は、正当にして十分なる補償をするとともに、汚水、煤煙に対しても、当該企業に必要な措置を義務づけ、さらに、水質二法の改正をも含めて、根本的な施策を積極的に推進しなければならぬと思うのでありまするが、政府の御答弁総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。  最後に、時間がありませんから、最近頻発している国鉄の事故について、一言だけ御質問を申し上げます。  国鉄事故は、さきの三河島事件以来依然として減少のあとを見せておりません。かえってますます頻発をする傾向にある事実は、もはや黙視することができないほどきわめて憂慮すべき段階にあると思うのであります。そのよってきたるところにつきましては、この際、抜本的に追及しなければなりませんが、私は、端的に申し上げて、国鉄はすでに公共性を喪失して、営利企業に堕してしまったのではないかと思うのであります。こういうところに根本的な問題があると思います。  この点、総理並びに運輸大臣はどういう工合にお考えになっているか、この際お伺いしておきたいと思うのであります。すなわち、営利追及のために、要員を減らし、あるいは安全施設をさぼり、分に不相応なダイヤを組み、スピードアップにうき身をやつしていることが、事故を頻発させ、尊い人命を犠牲にしていると思うのでありまするが、総理は、あるいは運輸大臣はどういう工合にお考えになっているか。国鉄当局はこの際、上層幹部の独善を押しつけることをやめて、現場において生命の危険にさらされながら日夜苦労をしている職員諸君の代表とも十分話し合いをして、実効のある対策を立てるとともに、政府は、総理みずから深い関心をもって積極的に方策を講ずべきであると思うが、特に総理大臣の御所見をお伺いする次第であります。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  御質問の第一は、日米経済合同委員会についての問題です。これは、会の性格につきまして、大倉さんは誤解があるようでございます。これは、外務大臣の答えたとおりでございます。特別の案件をここできめるというものではないのであります。これは交渉ではなくて、お互いに意見を交換し合って、そして参考にするということでございます。そういう会を置くことがいいか悪いかという御批判は御自由でございますが、私は日米間におきまして、こういうことが行なわれることは適当だと考えまして、昨年きめたわけでございます。なお、こういう会は私はカナダとも話をしておるのでございますが、先方の都合で来年の一月というのが延びたようであります。やはりこれからは、各国がその状況によりまして意見を交換し合うということが非常に必要であると私は考えるのであります。  次に、ケネディ大統領の発言でございまするが、アジアにおける共産主義の侵略をどうして阻止するかということは、これはアメリカの問題ばかりでなしに、日本自体の問題でございます。したがいまして、こういう問題についてどうして阻止するかということは、それぞれの国の置かれた地位、能力によってきまる、そうして研究し合おうということは当然のことだ、何も驚くべきことじゃございません。それを驚いたというのは、私は参りました各大臣から聞いたら、とんでもないことだと言っておるのであります。どうぞそういう意味におきまして御了承願いたいと思っております。それで、この発言によって日韓が軍事同盟を結ぶとか何とかということは、これは思い過ぎも牽強付会も最たるものだと思います。日本の憲法はアメリカもよく知っております。また、われわれの気持も十分知っております。わが国の安全と極東の平和のためにわれわれは安保条約を結んでおる、これで十分であると考えておるのであります。  なお、公務員の給与につきましては、従来どおり人事院の勧告によってやっておるのであります。  また、ILO問題につきましては、ただいま与野党の間で話をいたしまして、私としては、ぜひとも次の通常国会には提案いたしたいと準備をいたしておるのであります。  次に、賃金問題でいろいろ御質問がございましたが、日本の低賃金というのは、もう今年になりましてから——五・六カ月前に参りましたロンドンの商工会議所の会頭のキルマーノック氏は、今までイギリスは、日本の低賃金と言っておりましたが、日本は低賃金じゃないと言っている。また私がヨーロッパへ参ります四、五日前に、アメリカの経済開発委員会のハウザーは、日本は低賃金じゃないと言っております。そこで、もしヨーロッパ並みにいっていないと言うのなら、それをヨーロッパ並みにしろということは、日本でも賃金格差があるということを御存じない議論だと思います。私は、大体イタリアに近くなっているし、日本の最近の賃金の上昇率は——経済の成長に驚いておると同じように、世界の人は日本の賃金上昇率に非常に驚いております。今にイタリアをこしてくると思います。  次に、中小企業の金融についてでございますが、中小企業の金融につきましては、大蔵大臣が先ほど来答えておるとおりでございます。  それからガットヘの加入、OECDへの加入等につきまして、いろいろ心配しておる方がおありでございましょう。しかし、日本の進むべき道は、平和と自由貿易のほかに日本の進むべき道はない。これをどうやって日本がやっていくかというので、私は、数年来、日本貿易自由化をしなければ、これ以上伸びないというので、自由化を徐々にやってきておるのであります。その徐々にやってきた結果が、世界の信用を得て、ガット三十五条の援用を撤回したり、あるいはOECDに加入が行なわれることを認めようという機運になってきておるのであります。いろいろな弊害はございましょうが、苦しいところもございましょうが、これを飛び越えていくところに日本の発展があるということを御了承願いたいと思います。  なお、国鉄の運営につきましては、いろいろ批判すべき点もございましょうが、徐々にこれを改めます。そうして、国鉄本来の使命に適するよう努力を続けていきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日米貿易経済合同委員会のことにつきましては、総理から御答弁がありましたとおりでございまして、私どもは、こういう会を重ねるに従いまして、日米間の意見調整が進んで参ると思うのでございまして、日米間にこのような意見調整の場を持っておることを慶賀すべきだと思います。  それからケネディ発言の問題でございますが、日米間には広範な協力関係がございますが、軍事的には、総理が申されましたとおり、安保条約というワクがちゃんと設定されてあるわけでございまして、それ以上のものでもなく、それ以下のものでもございません。したがいまして、今度の発言は、この更改を迫るものではございませんことは御案内のとおりでございます。また、日米間は、アジアの他の国に対しまして協力いたしまして経済並びに技術の援助をしようということで、今日まで鋭意続けて参りましたわけでございます。われわれは、今後も引き続き、一そう拍車をかけて経済技術援助に進みたいということを念願いたしておるわけでございまして、こういう本筋の日米協力関係には何らの改変がないと承知しております。(拍手)   〔国務大臣綾部健太郎君登壇、   拍手
  25. 綾部健太郎

    国務大臣(綾部健太郎君) お答え申します。  日米貿易経済合同委員会になぜ行かなかったかというお話は、昨年行なわれました箱根会議で、両国の間できめられた大臣が行くことになって、運輸大臣はその中に入っておりませんから、行かないのであります。  それから、北米航路に対する運賃の値下げでは、非常に海運事業に対して困っておる問題でございまして、シップ・アメリカの壁を破るようにわれわれは努力いたしたいと思います。  それから、国鉄の根本方針につきましては、先ほど総理が述べられたとおり、御指摘のような点がありとするならば、これを改善することに努力するということを申し上げます。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  26. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 賃金の問題、またILOの問題につきましては、総理から申し上げたとおりでございます。  また、公務員給与の引き上げに関しまして、ただいま御提案中の案件は、その実施期日におきまして、人事院の勧告と異なっているのでございますが、これは本年度の財政事情により、やむを得ない次第でございまして、したがって、これが繰り上げにつきましては、政府といたしましては、遺憾ながらまことに困難であると考えております。(拍手)   〔国務大臣重政誠之君登壇拍手
  27. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 農業構造改善事業を強力に推進をいたしますために、御質問になりました補助率の引き上げでありますとか、あるいは融資条件の改善というような問題につきましては、運用によりまして、できるだけこれの実質上引き上げが可能になるように、あるいはまた、市町村に対する起債の許可の範囲を拡大するとかいうような問題について、関係当局と折衝いたしております。さらに融資条件につきましては、長期低利の金融制度を始めたい、こういうふうに考えて目下検討いたしておるわけであります。  第二に御質問になりました沿岸漁業の問題でありますが、沿岸漁業を資本家漁業化するようなおそれはないかという御質問であります。そういうおそれはございません。  それから第二には、水質汚濁等に関しましては、公共用水域の水質の保全に関する法律及び工場排水等の規制に関する法律の通常によりまして、沿岸漁民の保護に万全を期して参りたい、こう考えておる次第であります。(拍手)   〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  28. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 四日市の水域につきまして御指摘のような問題が確かにございますので、水質保全法に基づきましてすでに調査をいたしております。年度末までに調査を完了いたします。なお、これに関連いたしまして補償の問題が起こりました節には、先般、東京都のノリの漁場で例のございますように、和解の仲介に付すのも一案かというふうに考えております。(拍手)   〔大倉精一君登壇拍手
  29. 大倉精一

    ○大倉精一君 ただいまの総理の御答弁に対しまして、二点だけ再質問をいたします。  第一番には、ケネディ発言に対しまして、私は、軍事的役割を要求されるおそれはないのか、そうではないのか、こういう質問に対しまして、総理は、思い違いもはなはだしいと、こういう御答弁でございます。しかし私は、質問にも申し上げたとおりに、国民も非常に心配しております。あらゆる情勢から、いろいろな問題から考えてみますというと、私はそう考えざるを得ない。あなたは、たとえばコンテインという英語を、これはいわゆる封じ込めじゃないんだと、防ぐんだということをおっしゃっております。が、しかし、私は英語は堪能じゃありませんが、コンテインというのは、コンテナーと変わって参りまして、包む物です。そしてこれは、軍事的にはいわゆる牽制をするという意味があります。かつてトルーマンも封じ込め政策のときには確かにコンテインという言葉を使いました。でありますから、もう少しみんなにわかるように、私がはなはだしい思い違いであるということを、根拠を示して御説明を願いたいと思います。  もう一点だけお伺いいたします。いわゆる自由化等に対しまして、いろいろな犠牲はあるが、その道を進むとおっしゃいましたが、私の聞いておるのは、その犠牲の前面に立つのは中小企業であるから、この犠牲の前面に立つ中小企業の対策はどういう対策を立てておやりになるか、こういうことを聞いておるのであります。  この二点について再びお答えを願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ケネディ大統領の食事の際における発言につきましては、外務省が正確な翻訳をしております。それには、今の巻き返しとかなんとかいうことを使っておりませんので、阻止と書いております。それからきのうも問題になりましたマンス・アヘッドの問題も、ある新聞は数カ月後と書いておったようでございますが、外務省はそういうように翻訳いたしておりません。いずれにいたしましても、共産主義の侵略を防ぐということはケネディ大統領と同じでございます。そして、いかなる措置をとるかということはわれわれがきめることでございます。ケネディ大統領がこう言われたからどうこうしようとか迷うべきものじゃございません。日本人はそれだけしっかりしておるのであります。  それから、貿易自由化によっていろいろ犠牲が起こると、こういうお話でございます。私は十数年前にあの切符制度から自由主義経済に国内を持って参りました。いろいろ犠牲でお苦しみになった方もおられましょうが、日本の今日の経済の発展は、あの統制切符制から自由主義になったのが大きい原因じゃありますまいか。そうしてまた、日本がこれ以上伸びるためには、世界の趨勢に従って貿易・為替を自由化することは、何人も阻止し得ない勢いでございます。この勢いに乗っていって日本経済を拡大するために、どういうところに犠牲がいかなる程度起こるかということは、研究いたしまして、自由化につきましても徐々に摩擦が少なくなるように、利益が大きいように努力して、随時に自由化してきているのであります。どうぞその点御心配でございましょうが、政府はそういうことを考えていろいろ手を打ちながら徐々に自由化して犠牲を少なくしようといたしているのであります。(拍手)   —————————————
  31. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 基政七君。   〔基政七君登壇拍手
  32. 基政七

    ○基政七君 私は、民主社会党を代表しまして、昨日述べられました総理所信表明について質問し、あわせて御所見を伺うものであります。  第一に、外交問題についてお伺いいたします。  総理は、今回の所信表明において、日韓問題については、今日まで両国間でたび重なる交渉を続けてきたにもかかわらず、何ら具体的な報告がなされないばかりか、肝心の政府方針がわれわれの前に全く提示されないということであります。私は、まずもってこのような秘密外交に強く反対するとともに、あらためて日韓問題に対する総理の明快な所信を伺いたいと思うものであります。総理は、去る六日の記者会見において、「日韓交渉はあせらず、じっくりと進めたい」と言われました。この点に関する限り、われわれは全く賛成であります。私たちは、日韓両国間に多くの懸案をかかえているというまぎれもない事実からして、必ずしも南北朝鮮統一を待たず、日韓両国の間に懸案解決と国交調整のための交渉を進めること自体は、当然なことと考えるものでありますが、現在政府が進めつつある交渉方針には、幾多の不安と疑念を抱かざるを得ないのであります。   〔議長退席、副議長着席〕 そこで、私がこの際、総理に申し上げたいことは、日韓交渉を進めるにあたって、政府は、韓国の真の安定のためにも不可欠な民主化を強く要求し、その過程を見きわめつつ、次の諸点について、慎重な配慮と十分な検討を加えることが肝要と信ずるものであります。  竹島問題は、国際司法裁判所等において、わが国の正しい主張を貫徹すること。互恵平等の経済協力を積極的に推進すること。軍事協力は一切排除すること。李ラインの撤廃と、公海の自由を相互に確認し、わが国漁民の不安を一掃すること。在日朝鮮人の法的地位を明確にすること。以上これらの諸原則を堅持すべきであると考えるものでありますが、総理並びに外務大臣見解を伺います。  次に、総理は、米国のバイ・アメリカン政策について、いかなる見解を持っておられるか、お伺いいたします。過日開かれました日米経済貿易合同委員会において、政府代表は、全く米国側に押し切られたかの印象を国民に強く与えております。本年春のギンガムの輸入制限、トラック特需の中止、衣服品の輸入制限強化など、米国の対日貿易制限は依然として強行されております。バイ・アメリカン政策が米国の海外軍事援助のむだと浪費のしりぬぐいの役割を果たしていることを指摘して、積極的に抗議すべきではないか。米国がとっているバイ・アメリカンは、日米経済のむしろ大きな障害となっている点を指摘すべきではないかと考えるものでありますが、総理並びに外務大臣所見を伺うものであります。  第二に、国内問題について伺いたいと思います。  国内問題の第一に私がお尋ねいたしたいことは、海運及び造船産業に対する政府方針であります。政府は、前国会提出した海運企業整備に関する臨時措置法案が審議未了、廃案となったために、第十八次計画造船を早急に実施する方針を十月にきめたのであります。しかしながら、十八次計画造船の決定遅延により、これらの建造をもくろんでいた各造船所は、から船台がふえ、大型船台六十七基のうち、三十七年九月末現在のから船台数は三十二基に達しました。このため、アイドル発生による臨時工、請負工の解雇問題までが表面化し、造船関連工業の工事減は急迫の度を加え、重大な社会不安を起こしたことは、ひとえに政府の怠慢に起因するものであります。しかも十八次計画造船は、当初計画の五十万総トンが三十五万総トン程度に減少する模様であります。このことは、全国主要造船会社の稼働能力二百五十万トンに対し、約百五十万トンそこそこの稼働しか行なっていない現状を、さらに悪化するものであります。政府はこれらの状態をどのように見ており、どのような抜本的対策を用意されているか、計画造船の建造量を当初計画の五十万トンに戻すための財政資金のワクを拡大する用意はないか、総理並びに関係大臣の見解を承りたいのであります。  さらに日本海運業は、四面海に面しているわが国にとって、国の存立を左右する基幹産業であって、邦船の積み取り比率の維持向上をはかることは、貿易収支に寄与する上からも、緊急課題と申さなければなりません。貿易自由化が進み、輸出入物資の急増することが予想される現在、政府わが国海運業のあり方をどのような形にすることが最も適切であると考えておられるか、またその場合のわが国の外航船腹は何トンくらいに策定されているか、総理並びに関係大臣の御所見を伺いたいのであります。  次に石炭問題についてお伺いいたします。政府は、補正予算案における石炭対策費は、離職者対策費をも含めてわずか六十億円足らずにすぎません。本年度租税自然増収分が一千億円をこえると政府が確認している現在、もっと石炭予算を増額すべきではなかったか。さらに産炭地域対策は、政府の言うような振興対策の実施以前に、救済対策が緊急に必要であります。この点、調査団答申も、閣議決定政策大綱も、何ら触れておりません。常磐、北九州、長崎、佐賀等の市町村のうち、炭鉱の疲弊、終閉山のために財政難に陥っているものが多く、産炭地域特別交付税交付金制度を暫定的に制定すべきであり、かつまた暫定的に生活保護と失対事業についての国庫負担率を四分の三に引き上げるべきであると思うのでありますが、この点について、関係大臣の御答弁を伺います。  また産炭地域の中小企業経営の売掛金未回収分が累増していることは、今や単なる債権債務という経済問題を越えて、社会問題になっております。私はこれに対し、本年末から年度末に向けて、財政資金の緊急融資を行なう必要があると考えますが、政府はいかなる救済援護策を講ずるのか、大蔵、通産両大臣より御答弁を求めるものであります。  最後に、消費者物価政策について総理にお伺いをいたします。政府は、国民の総反対を押し切って消費者米価を値上げしたのであります。わが民社党はこれに反対し、あくまでも値上げ撤回を要求します。昨年も本年も消費者物価は六%も連続上昇し、公共料金とサービス料金の値上げが周期的、循環的に行なわれている。私は、政府の明年度の経済見通し、明年度の予算編成の双方にわたって、国民の福祉の実現を最大目標とし、まず消費者物価の値上がりを予防して国民の実質所得を守ること、これを大前提とするよう強く要望するものであります。この点についての総理見解を承りまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  御質問の第一は日韓交渉の点でございまするが、お話のとおり、互恵平等、あるいは公海自由の原則、あるいは法的地位といいましても、国際的に見ても適当なこと等、お考えを体しまして折衝を重ねておるのでございます。もちろん先ほど申し上げましたように、日韓交渉で軍事同盟その他はもう全然考える余地はないのでございます。そういうことは考えておりません。  次に、バイ・アメリカン政策の問題でございますが、御承知のとおり、世界貿易の支柱をなしておりますこのドルの安定ということは、これはもう世界的にどうしても守らなければならぬ問題でございます。これはアメリカばかりではございません。われわれ自由国家群ももちろんでございます。そこで、このドルの国際的価値を維持するために、アメリカが自由諸国に対しまして、軍事援助、経済援助をしながらこのドルの価値を維持するということはなかなか困難なことでございます。したがって、われわれといたしましては、バイ・アメリカン政策というのは、通常貿易、いわゆる輸出入を制限するという意味じゃない、アメリカの経済政策、為替政策でやっていることでございますから、しかもそれがドルの価値維持という立場からするならば、私は一応これは協力すべきことだと思います。ただそのバイ・アメリカンが行き過ぎまして、輸入を制限するとか、あるいは国内産業を保護するとか、そういう別の目的に使われる場合におきましては、これはわれわれとしても黙っておられないのであります。したがいまして、今回の日米の会議におきましても、私はこの問題はやはり論議せられたと思います。また、論議せられていろいろ研究題目が出てきたと思うのでございます。われわれはその根本の趣旨においては協力いたしますが、これが他の目的に使われるということにつきましてはこれは反対して、そうして日米間の関係がうまくいくことを期待いたしておるのであります。  次に第十八次造船でございまするが、御承知のとおり、今の海運会社のあり方では、これはなかなか民間銀行も金を貸さない、海運会社のあり方をもっと合理化していかなければならぬというので、法案を提出いたしたのでございまするが、不幸にいたしまして、ほとんど審議せられません。したがいまして、私は十八次造船とかいう計画的にやってはだめだ、十八次造船をやめて、作れる資格のある者、金を借りて作れる者には作らしたらいい、それにはお金を貸しましょう、こういうことに切りかえました。したがいまして、十月からでございますから、今五十万トンの計画どおりにはいきませんが、三十五万トンないし四十万トンくらいには行っておりましょう。また、今後におきまして、作りたいというので、しかも民間の銀行が金を貸すというのならば、政府資金は五十万トンをこえて出しても差しつかえございません。できるだけ船は作りたいというのが私の考えでございます。なお、輸出船につきましても、今、船台があいているというような場合におきましては、それが不当な安価でない限りにおきましては、私は条件等を勘案いたしまして輸出船も作ることに大賛成でございます。そういう方針で進めております。したがいまして、私が船舶の造船を進めていこうというのは、その次の質問日本の積取比率でございます。これは、日本の輸出入額の、おととしは半分以上やっておりましたが、去年から半分以下になりました。このままほうっておきますと、国際収支に大影響がございますので、私は、先ほど申し上げましたように、計画造船をやめてでもできるだけたくさん作る。五十万トン、六十万トン、けっこうです。そうして積取比率を多くしようとしておるのであります。所得倍増計画におきましては、四十三年は、今の六百五、六十万トンの外航船をその倍くらいに計画しておるのであります。私は、その計画は適当だと思って、造船には今後とも力を入れていきたいと考えておるのであります。  それから、石炭問題は、関係閣僚にお答えしてもらうことにいたしまして、消費者物価でございます。これは、御承知のとおり、国民所得が急増し、雇用も増大し、賃金も非常に上がってくる場合におきまして、農産物あるいはサービス料が上がってくるための消費者物価の上がることは、ある程度——好ましくはございませんけれども、ある程度やむを得ない。これは、日本の物価体系が近代化され、先進国化される状況でございまして、急激に行ってはいけませんが、ある程度はやむを得ない。私は、それよりも、その消費者物価高を十分まかなえる所得の純増をねらっておるのであります。したがいまして、昨年、一昨年、非常な所得の増加がございまして、その結果、一年おくれて物価が上がって参りましたが、ただいまでは、小売消費者物価は、ある程度上昇率が減って参りました。おととしに比べて去年のような状態ではなくて、去年に比べて、ことしは、それよりもだいぶん落ちつきつつあるのでございます。今後におきましても、政府はこの生産とか流通体系に極力意を用いまして、消費者物価の値上げをできるだけしないようにしていきたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣大二平正芳君登壇拍手
  34. 大平正芳

    国務大臣(大平正君) 私にお尋ねの件は、今総理からお答えいただきましたので、蛇足を加える必要はございませんが、ただ、何か秘密にやっておるじゃないかということでございますが、私どもは、可能な限り、政府方針国会を通じて、またはマスコミを通じまして、御理解をいただくように努力いたしておるわけでございまするが、外交上交渉にわたる段階におきましては、先方に対する信義から、申し上げないということにいたしておるのでございます。しかし、一たん案件がきまりましたならば、これを公正な論議にゆだねて、十分御究明をいただくという態度をとっておるわけでございまして、決して秘密外交をやっているということではございません。(拍手)   〔国務大臣綾部健太郎君登壇、   拍手
  35. 綾部健太郎

    国務大臣(綾部健太郎君) お答え申し上げます。  海運政策基本につきましては、ただいま総理がお述べになったとおりでございまして、十八次計画造船は、五十万トンの計画は、船主側の応募者その他の金融情勢から四十万トンくらいに減る見込みでございますが、それによって、ただいままで非常に危機感のありました造船業者に対する一応の危機を解除し得たものと、もしくは緩和し得たものと考えております。  それから、今後どういう策をやるかということにつきましては、目下、私どもといたしましては、群小の船主の整理統合ということを行政指導でやっております。そして、それが許可になったものにつきましては、ただいま総理も言ったように、金は要るだけ国家から出す、こういう決意でございます。  なお、将来の見込みといたしましては、石油その他いろいろな輸入物資等を考えまして、政府の所得倍増計画が所定どおりに参りますというと、大体四十三年度には千三百三十五万トンになるということの想定のもとに計画を進めております。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  36. 福田一

    国務大臣(福田一君) 石炭対策について十分な予算措置がなされておるかどうかというお話でございますが、通産省に関係いたします限りにおきまして、今回は、一般会計において二十八億四千万円また財政投融資で五十五億円、ほかに開発銀行の資金といたしまして四十五億円等の補正予算案を臨時国会提出をいたしておりまして、また、来年につきましても、石炭産業自立並びにその需要の確保等々についての資金の要請をいたしておる次第でございます。  また、産炭地域の中小企業者の売掛金未回収分に対する財政資金を出してはどうかというお話でございますが、売掛金の問題につきましては、税務執行上の貸し倒れの認定を早めるというような税負担の軽減をはかる措置を行ないますと同時に、事業を継続する意思を持っているものに対しましては、転業その他のものと同様、各種の機関より金融の措置を講ずるように十分配慮をいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  37. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えをいたします。  石炭対策費が少ないという問題については、今通産大臣がお答えを申し上げましたが、一般会計において三十一億を追加計上いたしておるわけでありますし、失業保険特別会計において四十六億、財政投融資において百億でありますので、合計百七十七億の追加計上でありまして、石炭問題につきましては現在の段階において十分処置できると考えておるわけであります。  なお、産炭地における中小企業の問題につきましては、通産大臣からお答えをいたしたとおり、中小企業金融公庫等、国民金融公庫等、政府関係機関の特別ワク、その他によって十分配慮して参るつもりでございます。  それから、失業対策事業の補助率三分の二を四分の三に引き上げてはどうかという問題でございますが、御承知のとおり、事業費の増加によりましては財政負担のかさむ市町村におきましては、その財政収入の一定割合をこえる部分については、三分の二をこえて五分の四という高率補助をもうすでに適用することになっておりますので、現在の段階において三分の二を四分の三に引き上げる考えはございません。(拍手
  38. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————・————
  39. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) この際、日程に追加して、  日本放送協会経営委員会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  内閣から、放送法第十六条第三項の規定により、楠山義太郎君、千葉雄次郎君、平塚泰蔵君、松木重治君を日本放送協会経営委員会委員任命したことについて、本院の同意を求めて参りました。  本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  41. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。    ————・————
  42. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) この際、日程に追加して、  運輸審議会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  内閣から、運輸省設置法第九条第三項の規定により、中大路俊安君を運輸審議会委員任命したことについて、本院の承認を求めて参りました。  本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  44. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。    ————・————
  45. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) この際、日程に追加して、  公共企業体等労働委員会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  内閣から、公共企業体等労働関係法第二十条第四項の規定により、金子美雄君を公共企業体等労働委員会委員任命したことについて、本院の承認を求めて参りました。  本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  47. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。    ————・————
  48. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) この際、日程に追加して、  中央更生保護審査会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議なしと認めます。  内閣から、犯罪者予防更生法第五条第三項の規定により、尾崎士郎君、一木ゆう太郎君を中央更生保護審査会委員任命したことについて、本院の承認を求めて参りました。  本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  50. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。    ————・————
  51. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) この際、に追加して、  社会保険審査会委員長及び同審査会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  52. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  内閣から、社会保険審査官及び社会保険審査会法第二十二条第三項の規定により、川上和吉君を社会保険審査会委員長に、細田徳壽君を同審査会委員任命したことについて、本院の承認を求めて参りました。  本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  53. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会    ————・————