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田上松衞君 時間がないようですから、できるだけ簡単にいたします。
まず、今回の
改正案について感じた私の率直な意見を一言申し上げますると、この
改正の目的をうたっておる前文、これはよく書かれておる、一読して。こういう工合に社会情勢の正確な認識ができるようであるならば、多くの
国民がことごとにどうせ役所のやることだということで、まあ期待と関心をそらしておる。この中にあってこれはまんざらでもないなという感じがいたしたのであります。相当いかすじゃないかということすら感じたくらいだったのです。ところが、だんだん次に触れてきますると、実際率直に言ってがっかりしちゃった。こういうような、くどいようですけれども、前文の中に書いてあるのは、「
行政運営の適正円滑化を確保する上において最も重要な基礎となるものである。」「国の
行政組織は、」それであるから「常に時の要請に応じて改善
整備さるべきものである。」こうしておいて、「特に、最近、農林
水産漁業と他産業との間における
生産性及び所得水準の格差は拡大し、他方、農林
水産物の消費構造の変化、農林
漁業人口の他産業への移動現象がみられる等農林
水産業及びこれを取りまく諸情勢は急激に変化しつつある。」、そのとおりです。的確な認識だと思うのです、さっき申し上げましたように。ところが、一体これにどういう工合にそれならば対処するかという点を探ってみますると、全くがっかりしちゃう。問題はこれに対処する道の中身が一体どうなんだ、われわれが感ずるのはその点だけなんですよ。まあずっとこの中に正直に書いてあるように、前文では農林
水産あるいは農林
水産漁業と、いかにもつかんであるけれども、
あとになってみると、これはほとんど農林
行政に関するだけのことでございまして、
水産に関しては全く目をつぶっている現状であるということなんです。これは全然こういうような
考えではこの情勢を認識されたこれに対処するやり方としてはもう似ても似つかぬものだと私は酷評したいと思うのです。しかし、こういう問題は、ただ私が要請をかねて次に
質疑いたすことに関連するのだから、この程度だけに言わしてもらったわけですが、念のために言いますけれども、なぜこう言うかといいますると、証拠をあげなければならぬ。これは
改正の要旨の中の「一」の「
農林省の
機構の
整備」、その「五」の中にイ、ロ、ハ、ニでこう分けて、わずかに「
水産庁の
機構及び
所掌事務の
整備」、これをうたっておるわけなんです。見てみると、何のことはない、これは
所掌事務上のことだけであって、こうした激しい変化をしておりまする中に対処する点が全然書かれていないということなんです。その中の
一つといたしまして、私は先刻
指摘いたしました
水産庁次長制の廃止という問題が言えるわけですけれども、この点については、さっき
長官もあるいは
大谷政務次官も認識を新たにしてこれには善処するという旨の
答弁を得たのでありますから、今さらこれを繰り返す必要はない。問題は、この場で言いたいことは、こういう中にあってやる問題は、これら
漁業に従事するところの労務者というもの、これにどう対処するかという点であります。私が知る
範囲においては、今まで
漁業労働
関係は
漁政部に属しているところの協同組合の中に置かれてある労働班といいますが、班というけれども、それは実質は単なる係で、一人かそこらしかいないものが担当していた。非常にこれは心細いことだと思っておったのですが、こういう時局に対処するのには、こうした中身こそひとつ目を向けてもらわなければならぬはずだと思うのです。先刻もそれとなくこれに触れましたように、
日本の
漁業というものが国際的な大きな
性格を持っておるということで、いろいろなことに縛られておる
関係から不祥な事件が起こるわけです、次から次へ。食うためにやっておることが船が拿捕されてしまうという、ただでさえも板一枚下地獄という中で働いておるのに、ましてよその国で拿捕されて、実に聞くに忍びない残酷な状態の中に置かれておるわけですが、こういう人々の血によって
日本の多くの
水産関係というものをどうにか成り立たしていかなければならぬ状態です。これら御本人は言うまでもなく、これらの家族のこの問題に向ける期待といいますか、要望というものは相当強いものがある。多くの
説明を要せずして血の気のある者だったらわからなければならぬはずのものなんです。私は、近代的な行き方をするならばこのほうをまず第一に
考えていかなければならぬと思うのです。多く見られるところの、大きな圧力を加えていくことのできない彼らの立場にもっと真剣に目を向けなければ困ると思うのです。ところが、これを見ますると、一体どうなっておるかというと、今までそうした
漁業組合の中に置かれた、そこでやっておったのが、ただ今度は
改正案で新設されるところの企画課にこれを移してきた、これだけのことです。中身は何も変わってないのだ。これはただ
事務を移しているそれだけのことでしょう。こんなことで、くどいようですが、さっき言った、こうした激しく変化していく、この困難な複雑な労働
行政というものが、一体
完璧なものであるといえるか。期待ができるか、こう
考えているのですが、一体これらに対する
大臣の的確な認識を正直にひとつ表明していただきたい。