○岡田利春君 私は、ただいま提案
理由の
説明のありました
石炭関係四
法案について、
日本社会党を
代表して
質問を行なわんとするものであります。
本院は、
昭和三十年八月に、
石炭鉱業を整備し、石炭坑の近代化を促進し、坑口の開設を制限し、未開発炭田の急速かつ計画的開発を促進することによって、
石炭鉱業の
合理化をはかるために
石炭鉱業合理化臨時措置法を制定いたしましたが、その後、
政府は、石炭需要の拡大に伴い、
石炭鉱業の整備と近代化を無原則におくらせ、坑口開設の制限は、逆に不安定な粗鉱炭鉱の乱造となり、未開発炭田の開発指定は今日まで完全に放置されて参ったのであります。また、
昭和三十三年に策定されました
合理化基本計画は、その生産規模を五千五百万トンに押え、
昭和三十八年度までの五カ年間で千二百円の炭価の
引き下げをはかるという二本の柱を打ち立てたのでありますが、その前提として、
政府の
施策による、流通部門における二百五十円の経費の節減と公共料金及び諸物価については横ばいと想定いたしたのであります。ところが、年を越えずして、公共料金、諸物価の値上がりが相続き、流通経費節減の
施策は見送られ、逆にコスト高となって現われ、千二百円の炭価
引き下げは、今日実に千八戸円の炭価の
引き下げに相なっておるのであります。その結果、
昭和三十四年度当初の稼行炭鉱数は七百三でありましたが、今日四百九十となり、二百十三の炭鉱がつぶされておるのであります。在籍労務者は、
昭和三十四年度当初の二十九万三千八百三十人が、今日では十七万人台となり、十二万人の
労働者がすでに山を追われて、
産炭地は今日文字
通り惨たんたる現状を呈しておるのであります。
今
国会は石炭
国会といわれ、
国民はひとしく石炭問題の抜本的解決を望み、
炭鉱労働者とその家族及び
産炭地住民は祈りに似たような眼をもってこの
国会を注目をいたしておるのであります。私ども政治をあずかる者として、
池田総理が言われました、石炭問題は心を入れかえて、という深い反省の上に立って、迅速、かつ、適切にその
施策が打ち出されなければならないと信ずるものであります。私は、
政府決定の
石炭対策大綱は、石炭危機に対処する当面の確固たる具体的緊急
対策がないところにその重大なる欠陥があると
考えるのであります。(
拍手)
ただいま提案の
法律案は、求職手帳
制度による就職促進手当の新設、移転者用住宅の建設と職業訓練の拡充、ケース・ワーカー
制度の設置及び
ボタ山処理事業並びに
離職金支給に関する
改正のみであって、これだけでは、山に働いている
労働者の不安を解消することはできないのであります。
私は、まず
労働大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、四・六閣議
決定に基づく労使休戦協定締結以来、今日まで二万人に及ぶ
労働者がすでに山から追われ、
産炭地周辺には五万人をこえる失業者が滞留し、このまま進めば三月末までにさらに一万二千人の
炭鉱労働者が山から離れなければならないというとき、
政府は当面確固たる具体的な
雇用計画を一体お持ちなのかどうか、あるとするならば、その
雇用計画をお示し願いたいと思うのであります。
雇用計画がもしないとするならば、当然実効ある
措置が伴わないのであります。労使休戦協定は存続させる義務があると思うが、その
見解を伺いたいのであります。
第二に、就職促進手当についてでありますが、その手当額の最高が日額四百五十円と定められております。今日、
炭鉱労働者の平均年令は三十七才を数え、その扶養率は他産業よりも高く、三・八人となっておるのであります。一カ月当たり最高で一万三千五百円の手当では、まさしく
生活保護基準以下であるといわなければなりません。
政府は、食えない手当だから、
労働者は苦しまぎれに
仕事を求め、就職が促進されるだろうと思っておるのでありましょうか。私は、就職促進手当はこの際最低月額二万円を
保障し、あわせてその扶養率に応じて家族手当の
制度をつくるべきであると思うのであります。原案によりますと、きびしい
支給条件が示されている以上、就職ができるまで手当を
支給して、
池田総理が
炭鉱労働者に約束をいたしました
雇用と
生活を
保障するという
責任を果たすべきであると思うのであります。
また、炭鉱災害の激増と
労働条件の劣悪な結果、身体障害者、未亡人、公傷、私病療養者は、その在籍者が一万人をこえているのであります。山ぐるみの失業、あるいはこれらの人は直接
合理化の対象にされやすいでありましょうが、その扱いについて、一体どのように
措置されようとしておるのか、その
見解を承りたいのであります。
炭鉱労働者の
雇用の安定に関して、
政府は石炭閣僚
会議を常置して、改組される
石炭鉱業審議会に託しているのにかかわらず、その法の
改正が今
国会に提出されなかったことに強い不満を私は覚えるものであります。
調査団の答申によれば、毎年度、地域別、炭田別に
合理化実施計画を策定しまして、
政府の
責任においてそれに見合う
雇用計画を作成し、前年の
離職者中
雇用されなかった人員については優先的に
雇用実施計画に乗せ、
雇用計画の立たない人員については
合理化計画をスロー・ダウンしてその企業がかかえるとありますが、
政府はこの方針を一体確認しておるのでありましょうか。さらに、法
改正による審議会の改組までの期間、今年度並びに来年度計画はいかなる機関で、いつどのように
措置をされようとするのか。また、審議会の
構成とその運用についてはどのように
考えられているのか、通産、労働両
大臣の
見解をお伺いいたしたいのであります。(
拍手)
現行の
石炭鉱業合理化臨時措置法の第六十二条に、通産
大臣の生産数量の制限に関する指示についての定めがありますが、
合理化を進める過程においては、生産制限が逆にコスト高を招き、より一そう
雇用を不安定に陥れるのであります。生産制限は、平常採炭標準労働時間を定め、特別休業日を設定し、国がその
平均賃金を
保障し、
雇用の
確保とコスト反転を防ぎ、需給の調整をはかり、計画的、かつ、弾力的に
合理化を進めるべきであると思うが、この点についての通産
大臣の
見解を承りたいのであります。通産
大臣は、わが党の勝間田氏の
質問に答えて、時間短縮及び操業短縮の休業補償は、自由主義経済の
建前として
政府としてはとらないところであると答弁されましたが、西ドイツでは、石炭危機にあたり、一九五八年、その政策の一環として、他産業にさきがけて週五日、四十時間労働制を採用しました。一九五九年以降のスクラップ計画に対しては、一九五八年二月より一九五九年九月まで週二日間の操業短縮の休業日を設定し、七千五百マルク、すなわち七十億円に近い
財政措置をして、
賃金の七〇%を休業手当として
政府が
保障いたしておるのであります。
次に、私は、鉱区の整理統合についてお伺いしたいのでありますが、新鉱、増強、維持炭鉱を問わず、また、その炭量の多い少ないにかかわらず、その坑口と基幹坑道の展開を中心にしてその経済的採掘可能区域を設定し、その間の鉱区をすみやかに整理、統合して、長期的、かつ経済的採掘
条件をすみやかに整備すべきであると思うが、鉱区調整に関する
基本的態度を承りたいのであります。
なお、
ボタ山処理事業は下請機関で行なわせるという構想のようにお聞きいたしますが、
雇用の安定を
保障するそのための
職場であるとするなら、当然
産炭地
事業団の直轄
事業として行なうべきであると思うが、この点について
見解を承りたいのであります。
政府は、すでに
石炭鉱業緊急金融
対策を閣議
決定いたしました。これによると、今年度追加分として百二億五千万円をきめ、その資金の一部を早期に融資することになっております。しかしながら、一般金融ベースだけでは解決できないと見られる企業が、大手だけでも、大正炭鉱、貝島炭鉱、杵島炭鉱、三井鉱山と数社予想されるが、
政府はこの際、炭鉱と
雇用の維持のために、
合理化事業団を通じ、
政府の
責任における特別金融
制度を確立すべきであると
考えるが、
大蔵大臣の所見を承りたいのであります。
さらに、答申にも示されている重油消費税の創設については、単なる石炭
対策の
財源を求めるだけでなく、外国にも見られるように、石炭産業の保護
措置という
立場からも検討されるべきであると思うのであります。また、答申にある石炭会社の既往債務の返済猶予、会社経理の規制及び監督についての臨時立法
措置については閣議の
決定がなされておりませんが、これはいつどのように
措置をされるのか、この点あわせて御
見解を承りたいのであります。
わが国の石炭産業は、その
産炭地が九州、北海道に偏在して、需要地が遠いために、ヨーロッパ諸国に比べて流通経費がかさみ、これが大きな弱点となっておるのであります。さきに
政府は私鉄運賃の通算制をきめたが、運賃値上がりの延納
措置については、この際運賃補給、もしくは特殊料金制として軽減すべきであると思うのであります。また、国鉄の電化、ディーゼル化計画に見合って、国鉄の自家用発電所を早急につくって、国策としての石炭需要の
確保と石炭産業の安定に寄与すべきであると
考えるが、運輸
大臣の
見解を承りたいのであります。
今日、
産炭地の
振興対策は、
合理化テンポに比べ極端なおくれを見せております。また、
産炭地
市町村財政は、失対
事業、
生活保護、要保護児童
対策等々、特別な
財政需要が増加している反面、
市町村民税、鉱産税、固定資産税等の主要
財源が減収となり、
財政破綻の寸前に追い込まれ、悲痛な訴えが寄せられておるところであります。閣議
決定は、さらに実情を
調査して
所要の
対策を立てるとあるが、これは
合理化計画の総合性の欠除を証明する以外の何ものでもないといわなければなりません。私は、石炭
合理化計画は、その総合性を高め、
産炭地
振興対策と
市町村財政措置が並行的かつ総合的に行なわれなければならないと思うが、
産炭地出身の
自治大臣の決意と所信を伺いたいのであります。
池田総理は、わが党の勝間田氏の
質問に答えて、
政府の石炭
対策は画期的なものであると言われましたが、私は、画期的なものは、わずか十年の間に十八万人の
炭鉱労働者の首切りをするという、諸外国にも例のない鋭角的な
合理化政策だけであると思うのであります。(
拍手)ヨーロッパ諸国の長期的な総エネルギーの年率平均
伸びは三%ないし四%と想定をされ、エネルギーの流体化、エネルギー源の自由選択の傾向を是認した想定でも、OHEC加益国総体として、一九七五年度において六二%以上の国内エネルギーの供給率を保つと見込まれ、イギリスにおいても、最近来日したイギリス中央電力庁総裁ヒントン卿の言によれば、石炭のみで総エネルギーの七〇%を、将来ともに優先
確保する方針が明らかにされておるのであります。わが国の総エネルギーの年率平均
伸びは七・八%と見込まれ、一方国内エネルギーの供給率は
昭和三十四年の六六・四%から、
昭和四十五年度には、四一・二%と急速に低下することが予想されておるのであります。過去十年間の年率
伸びは八・七%であって、石炭は
昭和二十五年度の三千九百三十三万トンから五千百六万トンと、一千百七十三万トンの、三割の
伸びを示しておるのであります。さらに、
調査団答申は、原料炭生産を
昭和三十四年度を基準にして、一般炭にかわり、五百万トンの増産を見込み、なおかつ、百万トンの不足を指摘されておるのであります。私は、エネルギーの安全
保障、国内資源の活用、国際収支、
雇用の
確保、エネルギーのバランス、あらゆる側面から
考えても、総合エネルギーに占める石炭の位置は低いと断ぜざるを得ません。私は、重油ボイラー規制法の延長、重油消費税の創設、セメント産業の需要の
確保、国鉄の自家発電、電発等による石炭火力発電所の建設等の
措置をとれば、五千五百万トンの需要は当然拡大できると
考えるが、
総理の所信を承りたいのであります。(
拍手)
最後に、私は、
政府は誠意を持って、本
国会を通じて総合エネルギー政策の
基本的方向を示すべきであるとともに、石炭諸
対策についても具体的な方向を示して、無用の混乱を避け、
炭鉱労働者と
産炭地住民の不安を解消してその政治
責任を果たされるよう強く要望いたしまして、
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕