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1962-12-12 第42回国会 衆議院 文教委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十七年十二月八日)(土曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 床次 徳二君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 竹下  登君 理事 長谷川 峻君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 村山 喜一君 理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    石田 博英君       大村 清一君    坂田 道太君       田川 誠一君    中村庸一郎君       花村 四郎君    濱地 文平君       濱野 清吾君    松永  東君       松山千惠子君    南  好雄君       米田 吉盛君    井伊 誠一君       杉山元治郎君    高津 正道君       前田榮之助君    松前 重義君       三木 喜夫君    鈴木 義男君       谷口善太郎————————————————————— 昭和三十七年十二月十二日(水曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 上村千一郎君 理事 長谷川 峻君    理事 八木 徹雄君 理事 村山 喜一君    理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    坂田 道太君       田川 誠一君    中村庸一郎君       濱野 清吾君    松永  東君       南  好雄君    井伊 誠一君       杉山元治郎君    高津 正道君       松前 重義君    三木 喜夫君       谷口善太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房長) 宮地  茂君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (体育局長)  前田 充明君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   谷川 寛三君         文部事務官         (社会教育局         長)      斎藤  正君         厚生事務官         (社会局保護課         長)      小池 欣一君         自治事務官         (財政局財政課         長)      茨木  広君         専  門  員 丸山  稲君     ————————————— 十二月十二日  委員松前重義辞任につき、その補欠として佐  々木更三君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐々木更三君辞任につき、その補欠として  松前重義君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  学校教育に関する件(高校生急増対策に関する  問題等)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  この際、国政調査承認要求の件についてお諮りいたします。  衆議院規則第九十四条の規定によりまして、本委員会といたしましては、本会期中、学校教育社会教育体育学術研究及び宗教、国際文化交流並びに文化財保護に関する各事項につきまして、議長に対し国政調査承認要求をいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、承認要求書提出等、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  しばらくそのままでお待ちをいただきまして、手続をいたします。      ————◇—————
  5. 床次徳二

    床次委員長 それでは引き続き学校教育に関する件等について調査を進めますが、この際荒木文部大臣より発言を求められておりますので、これを許します。荒木文部大臣
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 高等学校生徒急増の問題は国民的な関心事になっておりまして、文部省としましても、一昨年来懸命の努力をいたしてきておるつもりでございますが、御案内のごとく三十七年度の予算——国予算及び地方財政計画を通じまして、三十八年度から始まる高校生徒急増に対処する対策に対する財政措置をいたしておるわけでございますが、年度の進行につれまして、都道府県における高校施設の建設の実情に顧みまして、当初の財政措置との間に数字的な開きができてきておるということは周知のことに相なっておるわけであります。それにつきましては、かつての委員会でも御答弁申し上げたと思いますが、知事会側文部省自治省、三者、その相違点につきまして、克明に数字を詰めながら最近に参りました。それに対して具体的な財政措置あるいは財源措置を講ずる必要があったことは御承知の通りであります。これに対しまして最近一応の結論を得ておりますので、そのことを御報告を申し上げ、御了承をいただきたいと思うのでございます。  公立の高等学校生徒急増対策につきましては、本年一月二十六日の閣議了解によりまして全体計画を立て、三十七年度分については百五十四億円——交付税九十一億円、起債五十億円、補助金十三億円、合計百五十四億円をもって措置してきましたが、今申し上げました通り施設者側からの要望もございまして、文部省としましては、自治省とともに、進学率単価構造比率等について全体計画を修正し、従って三十七年度分についても追加財源措置を行なう必要を認めて、大蔵省折衝をいたしましたところ、今回設置者の三十七年分資金繰り手当として、起債六十億円の追加措置をとることといたしました。また用地費につきましても、当初の四十億円の予定に六億円を追加して、四十六億円といたしたのであります。なお全体計画改定の基礎となる進学率単価構造比率等につきましては、三十八年度予算編成に関連して、引き続き関係各省と協議して取りきめたいと思います。  この際、文部省としてはこれらの改定について最大限の努力をしたいと思っておることを、御報告、御了承を得たいと思うわけであります。
  7. 床次徳二

    床次委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  8. 村山喜一

    村山委員 私は初めに大臣に対しまして、大臣国民要望の声をどういうふうに考えておられるかということをお伺いをいたしたいのであります。荒木大臣はいつも、日教組の諸君とは、倫理綱領を改めない以上問題にしない、こういう発言をされておることは周知の事実でありますが、今度四日の日から八日にかけまして、高校全入運動というのが行なわれました。そこで前もって私の方から内藤次官の方にお話をいたしまして、大臣会見についても御努力を願うように内々話を進めて参ったのでありますが、ちょうど五日の日でございますか、大臣に会うように参りましたところが、大臣は、この全入の代表と会う考え方自分としては持っていない、こういうようなことで、この高等学校急増対策をめぐりまして、各都道府県においては、それぞれ何千名あるいは一万名をこええる中学浪人が出るんじゃないかという心配を持ちましたPTAやあるいはお母さんたち代表がやって参りましたのにも、全然会わないという態度を終始とっておられる。しかもそれだけではなくて、今度政務次官会議にまで話が発展をいたしまして、全入の人たちとは会わないんだというようなことが、政務次官会議で話がきまったようであります。そこでいろいろと折衝をいたしてみますと、それは自民党の力からそういうような話があったので、荒木大臣が会わないという以上は、自分たちも会わないようにした方がいいんだという話が——これは篠田自治大臣の方から、自分としては会うつもりでおったけれども、党の方から会うようにしない方がよろしい、こういうようなことであったから、自分としては会わないんだ、こういうような話で、とうとう大臣とは話ができなかった。そこで非常に不満を感じた人たちが、八日の日には文部省抗議文を持っていくという状態が出て参ったわけです。そこで、その後私たちがいろいろ、政務次官にも会いまして、実質的に話し合いを進めたのでありますが、八日の日に文部省に行ってみますと、全入運動の人と文部省当局との話し合いはすでに終了いたしましたから、もう皆さん方と会いませんというはり札がしてあるわけです。ということは、今まで文部省当局は会わないのだという線で進めてきておりながら、はり札には、もうすでに会ったから、もう皆さんはお帰り下さいというはり紙がしてある。こういうような非常につじつまの合わない形の中で、この国民教育要求に対するところの声が大臣の耳に入っていない。そういうような代表人たちはそっちのけにいたしまして、私たちお話をお聞きいたしますと、荒木大臣も、自民党佐々木秀世氏の案内によりまして、北海道お母さん方とは別個の形で会っておられる。こういうような相矛盾したところの行き方というものをとられている。私たち社会党議員案内していく、それに対しては会わない。あるいは自民党の有力な議員が紹介をしていくと、篠田自治大臣もやはり会っている。荒木文部大臣も会っている。こういうような形の中で、自分たち考え方に忠実な者、あるいは自分たちがこれをコントロールできるような人たち、そういうような圧力団体に対しては積極的に会うけれども、自分たち意見と少し食い違いがある、反対をするような代表人たちとは会わないのだということに相なって参りますと、これは一体、日本民主政治というものを荒木大臣は育てていこうとしているのか、それとも反対の者の声は聞く必要はないということで、国民階層から出て参りましたそういうような人たち代表意見をあなたが忠実にお聞きにならないということになって参りますと、暴力革命でも何でもやりなさい、おれたちはおれたちの道をいくのだということで、日本民主政治を育てていこうという気持は、私は大臣気持の中にないのではないかということを残念に感ずるのです。そういうような態度というものは、どのような考え方に立っておいでになるのか、もっとそのあたりを明確にしていただきたいと思うのが第一点の問題であります。
  9. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私は常に憲法趣旨に従って行動すべきものと自分心がまえの基本を定めております。その例外はいまだかつてないつもりでおります。全入運動人々が会いたいといってきておられるということは聞きました。聞きましたが、それは日教組の集団であると承知しておりました。その先頭には務台理作氏が立っておる。そして務台理作氏の名前で会いたいということで聞きました。だから会わないと申したのであります。務台理作氏は教師倫理綱領執筆者である。教師心がまえを、共産党のお先棒をかつぐことにあるという信念で書いたものとして、責任を持って表現しておる人である。そういう人が指導者になっておるような運動は一体どんなものだろうというところにもむろん疑問を持ちましたが、務台理作氏に会う必要を認めない、そういう根本的な考え方憲法趣旨と違う人と会って何すると考えましたから、そこであのときはそういう人々にお付にかからないと私が申しました。  院内議長応接室で、北海道の方だということでしたが、佐々木君から、陳情団が来ているから、ちょっと会ってくれということを言われまして、入り込んでいきました。それがいかなる種類の人々であるかは私もつまびらかにしないまま、たまたま院内でございましたから、議運の委員長がそう申しますので、入ってお話を聞き、私も意見を申し述べたわけであります。これは会うとか会わないとかいうことを考えるべき対象ではないと私は考えておりましたから、入っていってお目にかかったのであります。
  10. 村山喜一

    村山委員 務台理作先生がどういうような思想を持っておられるか私はよく存じません。あの人が共産党員であるかどうかということもわかりません。共産党員ではないと私は思っている。そうしてこの高校全入運動というものが進められていく中で、私たち憲法の線を逸脱するような範囲の中で国民教育要求というものをいたしているつもりはない。あくまでも憲法に沿うた国民教育を受ける権利の要求文部省に実現をしてもらいたいということで運動を展開している。これは高校全入運動という運動に私たち社会党が取り組んでいるところからお考えを願いたいと思う。そういうような点でわれわれが責任を持って大臣へのそういうような陳情に連れてきた、それに対して会わない。もちろん会う会わないというのは自由でありましょう。しかし今大臣が、自分憲法範囲の中において動いていると言われた。こちらの方だって憲法範囲の中において動いている。そうしてそういうような率直な声というものをあなた方はお聞きになるのが正しい日本民主政治を育てることに相なるのではありませんか。それを、自分たち考え方とは違う、こういうふうに一方的に判断を下して、そういうような毛色の変わった者たちとは会う必要はない。地主の要求であるとか、あるいは引揚者の要求であるとかいう自分たちの統制できる外郭団体になるような連中とは好んで会う。国民教育ほんとうに憂えてやってくる連中とは会わない。こういうような形の中でけじめをつけていかれるならば、それは日本民主政治というものを破壊していく方向に持っていくのだということを意図しておられることではありませんか。もう一点その点をお尋ねをしておきたいと思う。
  11. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私は、この間文部省に会いたいといってこられたときに、村山さんでしたかが連れてこられるという話は聞きました。村山さんにならいつでもお目にかかる、これは当然のことであります。そこで集団的にこられるというのが、さっき申し上げたように、私がお伺いしましたのは、日教組が集団的に会いたいといっているのだ、そういうことでありましたから、それならばお会いせぬでもお会いしても同じことだから、お目にかかるまい、務台理作先生先頭だということならなおさらのことだ、こういう考えでお断わりをしたのであります。憲法趣旨に従って行動しているとさっき申し上げた通りでございまして、国民からの陳情、請願、平穏にやられる限り、それに応ずることは、私たちの立場からいっても、もう当然の義務だと心得るのであります。しかし、それにはおのずから時と場合があり、限度があることも当然でありまして、そういう今申し上げた気持に立って私はお断わりを申し上げました。
  12. 村山喜一

    村山委員 日教組代表であるならば、日教組代表として大臣に会いたいということで会見要求してくるはずです。しかしわれわれは、国民運動の、そういうような要求組織団体として、カンパニアン組織としてのいわゆる代表文部大臣に会いたいということですから、では代表の人が大勢押しかけていってもあまりごちゃごちゃになるから、代表の人だけ御案内しましようということで、社会党議員責任を持って大臣のところに連れていこうということで話を進めてきたのです。前までは、大臣が会わないときには次官が会いましょうということをお話しになっていた。ところが文部省内におきましても、大臣が会わないというのに事務当局の方が会うということになると、大臣事務当局の間がうまくいかない、こういうような印象を世間に与えるので、これは事務当局においても会うわけにいかぬじゃないか、こういうふうに相なってきたのです。そういうような日教組組合員ももちろん入っております。しかしPTA人たちも入っている。あるいは総評の労働者人たちも入っている。国民階層の、非常に広い範囲における人たちが、自分たち子供高等学校教育は受けさせたい、それには中学浪人が出るこの急増期に生まれた子供たちのそれが、政治の上において解決されなければ何ともならぬじゃないかという、真剣な国民教育要求というものに耳を貸そうとしない。国民文部省はそういう態度なんだということを強く印象づけて全国に帰している。こういうようなことは、文教の府を預かる文部大臣としてなさるべきではないのではないか、もっと虚心たいかいにそういうような人たち意見——大臣も忙しいのですから、時間的に制限をされるのはやむを得ませんが、そういうような声であるならば、一つお母さん方意見も聞いてみようじゃないかという気持を持ってもらいたいと思う。それがほんとう国民教育を守って国民に奉仕するところの文部省のあり方じゃないでしょうか。私はそういうような意味から、今回とられました、高校全入の国民運動全国に起こり、五百万の署名簿を持って集まってきた、そしてその代表人たちが東京には約三万五千人ぐらい集まった、そういうような人たちに会おうともしないで、不平、不満を持たせながら国に帰らしていくという行き方は文部省のためにもならないということを率直に申し上げて、今後の御注意を喚起しておきたいと思うのです。  第二の問題は、一体今度の高校急増対策と銘打っております問題について、国の方はほんとう責任を感じてやってもらっているだろうか。先ほど大臣から、当初財政的に措置する百五十四億に加えて、今度新たな起債として六十億円、それから用地費として四十億円前に計画をされておったのにさらに六億円追加した。しかし新聞の報ずるところによりますと、これは補助をやらないかわり——初め伝えられておりましたのは五十億円でございますから、十六億円は補助をやらないかわり起債の増額を認めることになった、こういうように伝えているわけです。そこでこういうような起債政策というものによって三十八年度の予算要求にも相なっているようであります。ところがこの内容を調べてみますと、起債内容というものは、一体政府責任によるところの起債であるのか、それともわれわれが心配をしておる銀行のいわゆる公募債というものがこの中に入っているのではないか。そうなると、政府債であるならば利子の上においてはある程度安いわけでありますが、一般市中銀行からお金を借りてやるものがこの中に入っているならば、非常に割高な金利を払ってやらなければならないということになる。そうなれば、都道府県でそれぞれ指定金庫あたりがあるのですから、そういうようなところで金を借りればそれと何ら変わりがない、こういうことに相なるのではないか。とするならば、この起債六十億の中身は、政府のいわゆる政府債によるものか、それとも銀行あたり公募債によるものか、その点を明らかにしてもらいたいと思う。しかも今度都道府県計画をずっと見てみますと、政府の方が今度措置された全部で百五十六億の起債、それから交付税で九十億、それに補助金で十三億円、これだけでは足りない。都道府県計画適債事業としてあなた方の方に要望として出て参りましたのは百四十八億円です。この百四十八億が起債として認められることによって——補助金がないかわりに百四十八億の起債が必要だということを言っている。にもかかわらずそれを六十億でちょん切られる。起債というのは将来借金として返さなければならない。とういうような問題について自治省あたりにおきましては、この前の休会中の委員会において藤田政務次官は、この起債の問題については、災害特例債——災害債起債であるとか、あるいは辺地におけるところの公共債特例に関する起債がありますが、そういうような将来交付税において何らかの措置考えていくんだ、こういうようなものと同じ考え方のもとにこの起債の問題を取り上げて参りたいということも委員会で言明をしておいでになるとするならば、との起債の償還が将来そういうような形において実質半額負担対象になるような方向というものが、大臣としては、大蔵自治大臣と話をされた中において、すでにそれらの約束を、何らか将来に希望が持てるようなものを取りつけになっておいでになるのかどうか。そういう財源的な措置というものが十分に考えられた上で六十億という起債に対してこれでよろしいという大臣承認を与えられたのかどうか。適債事業が百四十八億、こういうことを都道府県知事会議の方では言っているわけですので、その間の隔りというものをどういうふうにして財政的に措置をしようとお考えになっているか。一般財源の見通しは地方自治団体においては約八十億くらいのお金は十分見られることが可能であるのかどうか。この点は、自治省の方からもお見えになっておるし、大蔵省の方からもお見えになっておりますので、そういうような起債の性格をめぐる問題、なお都道府県地方計画との差をめぐる問題を御説明願いたいと思う。
  13. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 大蔵自治大臣と話をしましたときに、今言われるような六十億ないし六億、合わせて六十六億の財源措置起債財源そのものが何によるのかということまで具体的に打ち合わせばいたしておりません。しかしながら当然の常識範囲内であろうと私は存じておりまして、ことさらそのことに触れませんでしたが、極力低利長期資金を引き当てに起債財源考えて協力するということは当然のことと思います。ただそれは具体的にどれだけがたとえば資金運用部資金の裏打ちのあるものであるかどうかということにつきましては、その担当省の方で考えられるほかない課題でございますから、一般常識論としてできるだけ低利長期のものが考えられるであろう、そういう期待を持って、また一方におきましては、知事会議の方におきましても、とにかくこの際差し迫った時期としては金がほしい、財源がほしいということが切実な要望でもありましたので、知事会側とも、事後の了解ではありますが、話し合いをいたしまして、大体了承を得た線が六十六億円でございます。それぞれの都道府県地方財政自体では貧富のけじめがあるわけでございまして、具体的な地方公共団体で、将来にわたって六十六億の財源措置やり方いかんによって、いかなる影響が出てくるかということに対する課題は残ろうとは思いますが、これはひとりこの問題に限らず一般的な地方財政財政切り盛りの問題として対処すべきことは当然のことと心得ております。なおそれ以上の具体的なお答えは、必要あらば政府委員から申し上げます。
  14. 茨木広

    茨木説明員 ただいまの地方債の問題でございますが、その内容は三十億は政府資金その他公庫、そういうように承知いたしております。ただいま政務次官お話がありましたが、私どもの段階におきましては、国庫補助にかわる地方債という考え方はいたしておりません。従って今後の問題はそれぞれの団体財政状況等において判断し考えるべき問題であろうというふうに考えます。現段階におきましては、先ほども大臣から御答弁がございましたようなそれぞれの進捗の状況を見まして、資金措置として建物関係等を中心に五十八億、それから土地の方を二億ということで追加いたし、そのほかに当初五十億の政府資金起債考えておったわけでございますが、そのほかに、その後の情勢からいたしまして、土地関係のものについて四十億程度のものを考えるということで、それぞれの団体の方から希望をとっておったわけでございます。それが査定いたしまして、四十六億ということで六億をふやした。合わせまして六十六億ふえたことになるわけです。そういうふうになっております。
  15. 谷川寛三

    谷川説明員 ただいま文部大臣財政課長さんから詳細な御説明がありましたので、私からつけ加えることもないかと存じます。お二方からお話がありました通り、この一月に政府が大よそのめどといたしまして、急増期間中におきますところの事業量、並びにその財源措置の見当をつけたのでございますが、その後県当局でもいろいろ情勢推移等がございまして、単価を上げてほしいとかいろいろ御要望がございました。しかしいろいろ考えました結果、さしあたり私どもといたしましては、先ほども大臣お話にもありましたように、資金繰りの問題といたしましてお困りのところもあるかもしれぬので、起債の方で措置をいたして参りたい。これによりまして、来年度御入学になります子供さんのための前向きの措置が十分可能であるというふうに考えまして、三省間で話し合いをいたした次第でございます。
  16. 村山喜一

    村山委員 今自治省茨木さんの話では、六十億の中身は、半分は政府資金でまかなうけれども、あとの半分は民間の銀行資金でまかなうのだ、こういうことをお聞きしたわけです。そうなりますと、当然その起債の中身が二つの種類に分かれて、片一方は安い政府資金でまかなう、片一方は高率の起債でまかなうということになる。そうするならば、その配分を受ける都道府県によって差が出てくるわけですが、そういうような方法をとらなければならない理由、当然政府責任を持ってやるのだったら政府資金でまかなう。なお足らなければ一般銀行から金を借りるという手も考えられますが、その場合における利子補給、差がつかないように措置をしなければ、その起債の配分をめぐって非常に問題が出てくるのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  17. 茨木広

    茨木説明員 起債の配分につきましては、いろいろ考え方があるわけでございます。当面としては、今内部で理財課の方において検討中でございます。御意見のように種類が二色に分かれますので、実質的な負担の点についてそういう差が生じて参りますので、そういう点については、御意見の点もよく勘案いたしまして、十分検討をいたしたいと思っております。
  18. 村山喜一

    村山委員 私は大臣に、もっと率直に、そういうような自治大臣大蔵大臣と話をされるときには、起債でまかなうのだということになるならば、その起債の中身は政府資金でやるのだ、安い金利でやってやらなければいかぬじゃないかということをあなたまかせでなく、強く主張をされる責任文部大臣にあるのではないかと思うのです。六十六億で、あとで了解都道府県知事会議の方から得た、こういうようなことでございますが、全体の地方計画を見てみると、一千四百五十億という計画なんです。文部省計画はその半分にも足らないじゃないか、今後国民の間における高等学校の全入運動というものが当然進んで参ります。そうして六一・八%にいわゆる進学率をお定めになったようでありますが、その線がさらにまた今後上回ってくるんじゃないか、そういうような状態が出て参った場合には、いわゆる入準率を六〇%というのを六一・八%にされましたが、実情に合わせて各都道府県の方からそういうような積極的な要求の声が上がってきた場合には、それを受け入れてその全体の計画を修正される用意があるのかどうかということを承っておきたい。
  19. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 さっきもちょっと申し上げましたが、三十七年度の各都道府県の実施状況も勘案しながら、知事会と文部省及び自治省の、年度初頭に考えました計画とのそごを、数字的に詰めました結論が、進学率で六一・八%、さらに構造比率、単価等もそれぞれ検討を加えました基礎に基づいて推算しましたものと、知事会側との間における実質的な意見のそごはないわけであります。御指摘の通り、出初の知事会側の数中は相当膨大な開きがありましたけれども、その中身にはいろいろな要素が入っておりましたのを取捨いたしまして、今申した通りの結論に到達した数字でございまして、今直ちに、今申しました積算基礎をさらに変えるという考えはございません。もとより、さらに年度が進み、実情が明確になりました場合に、そのままでいいかどうかという再検討すべき機会は、当然将来くるとは思いますけれども、今直ちに現在の条件に基づいて、今申したことを再検討すべしとは考えておりません。
  20. 村山喜一

    村山委員 私は必ずそういうような情勢がくると思う。そのときには、日本全体の教育水準を引き上げていくんだという建前は、文部省が中心になって推進をしてもらわなければならないと思う。だから積極的にあなた方が、都道府県地方計画ができ上がって、それに基づいて財源的な措置をし、世話をしてやろうという気持で、この問題と取り組んでいただきたいということを要望として申し上げておきます。  それから本会議の席上、大臣が九四%の入学率ということを言われたのですが、あれは九六%ですか、四%ですか。
  21. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 九六%でございます。
  22. 村山喜一

    村山委員 従来九六%くらいの入学率があったようです。今度もその線を確保するんだ、それは十分できるんだということですね。
  23. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 九六%の入学率は確保できる見込みであります。
  24. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、十二月九日の毎日新聞の記事によりますと、公立の高等学校の競争率だけですが、北海道、埼玉、東京、これは一・七倍、それから一・五倍以上のところが茨城、神奈川、福岡、一・三倍以上が岩手、栃木、群馬、新潟、大阪、岡山、広島、山口、鹿児島、一・二倍が青森、秋田、千葉、山梨、滋賀、徳島、高知、一・二倍以下は、わずかに静岡と島根と長崎だけ、こういうような数字が出されておる。これにはもちろん私立学校が含まっておりませんから、私立学校を入れますと競争率は低下すると思いますけれども、このような状態の中において、はたして大臣が言われたように、九六%の入学率を保持することができるだろうか、私はその点を非常に懸念をするわけです。その点は心配はないかどうかということを、初中局長からでもけっこうですが、承っておきます。  それから、百二十三万のうち三分の一は私立学校において救済をするんだということになっております。六日の新聞の伝えるところでは、東京部内の私立高校は、授業料を平均三百円から四百円上げる、入学金も二千円から五千円上げなければならない、こういっておる。そうするならば東京都の場合には、公立と同じように私学に対しましても非常に優遇措置をやっておりまして、施設設備についてまで措置をして、二十七億も三十七年度においては助成をしておる。二十七億円という大へんな助成をしながら、東京都においてそういう高等学校の授業料が値上がりをせざるを得ない。こういうことになって参りますと——国民の期待というものは、できるだけ安い金で高等学校教育を受けたいのだという希望が出ておるわけです。私立学校の経営の苦しいという点もよくわかります。そういうような点から人件費等の値上がりによってやむなく授業料を値上げをするのであろうとは思います。しかしながら、片方において公立高校の競争率というものが、ひどいところになると一・七倍以上、私立の場合を含めたら何とかはいれるけれども、その場合には入学金を五万円も出さなければならぬ。こういう事態が出ておるということは、この全体計画の六、四、いわゆる三分の二が公立で三分の一が私立という、その計画改定をするか、あるいは私学に対するところの何らかの方法をとることによって、この入学金なり授業料を公立の場合とつり合いのとれたような形において現在よりもさらに大きく拡大をするというのではなくて、もっとそこに何らかの方法を考えて、全体の計画というものをおつくりになる必要があるのじゃないかと思うのですが、その私学の値上がり、これに対するところの対応策、それと公立高等学校の競争率、これとの問題をどういうふうにとらえておられるかということをお尋ねしておきたいと思うのです。  それともう一つは、これは厚生省の方からも見えておりますが、いわゆる僻地、それから働く青少年対策というものが文部省においては全然考えられていないのじゃないか。都道府県地方計画の中では、定時制の教育振興というのに七億円の設備計上がなされております。ところが、文部省のにはそういう定時制の教育の振興という点は全然考えられておりません。ところが、今、定時制に学ぶ青少年がだんだんふえている。しかも僻地から大都会に行って、そして働きながら学んでいく、こういう実情が出ているわけです。第一次産業の中心になっているところの都道府県の子弟は高等学校になかなか行けないので、中学を卒業して都会に出てくる。ところが、その場合においてはすでにもう定時制の試験は済んでおる。一年間遊ばなければならない。こういうような状態が現実に出ているじゃありませんか。そういうようないわゆる働きながら学ぶところの青少年の立場というものは、文部省自体は全然高校急増対策の中においては考えられていない。しかも僻地になればなるほど高等学校進学率が悪いのです。それは僻地に高等学校がないからです。僻地に高等学校をつくれということは言いません。これはある程度の学校の規模というものが必要であります。しかし僻地に住んでおればおるほど、その子弟を教育をさせるのには高等学校の寄宿舎というものが必要になるでしょう。ところがその寄宿舎も全然考えられていない。しかも育英資金をもらう能力を持っておりましても、あれは自宅通学ということから計算をされております。ところが、寄宿舎でもありました場合は別でありますが、島から下宿でもさして高等学校に行かせるということになると一万円要る。そういうような僻地の場合においては、育英資金というようなものは、それを特殊なものとして考えられていないのです。だから僻地になればなるほど高等学校にも行けない。そうして大都会にいわゆる働く青少年として行った場合には、かたく定時制の門戸は閉ざされておる。こういうような形の中において大都会中心の、しかも金持ち中心のものは能力がなくても私学にはいれる。一方、優秀な能力を持ちながら、僻地に生まれたがゆえに取り残されていく。こういうような状態の中に文部省高等学校教育というものを置いておるということは間違いじゃないかと思う。  それと、厚生省の方にお尋ねをしたいのは、いわゆる生活保護を受けるところの家庭の子弟の問題であります。その場合には、将来生活保護を受けないで自立し得ると思った場合には、世帯を分離して、その子供は別世帯で奨学資金か何か受けながら高等学校に行けるのだというようにする方法をとられているようです。ところが、この取り扱いをめぐってやはり問題が出ております。一体これは、高等学校に入れることによって、この子供たちには将来親が生活保護を受けるのを救済ができるかどうか、これらの解釈は一定の基準というものがなければならないと思う。それから、働きながら定時制に通う子供が一定の収入以上になった場合には、今度は親を扶養しているということで、そちらの方から生活収入があるのだという認定をする。そうすることによって、両面から学習をしようという青少年の意欲を阻害をしているという事実が出ているじゃないですか。とするならば、今日都会においてその青少年が一人前の生活をしていくのには、収入の繰り入れをするしないをきめる場合には、一体どれだけの基準というものをあなた方は設定をしているのか、こういう点を明らかにしてもらわないと、今後の働く青少年の高等学校教育に対する熱意に報いる体制というものが十分でないのではないかということを国民に印象づけると思うのです。その点も明らかにしていただきたいと思うのであります。
  25. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私立学校と公立学校の経費負担の相違、格差の問題は、御指摘のような実情があると承知いたします。望ましいことであるとはむろん思いませんけれども、今の私学のあり方を現行制度のもとにおいて取り扱っておるのが是なりとする前提に立ちます限りは、生徒がふえる、学校施設設備が人的にも物的にも増加するという場合、民間の浄財にたよる以外の財源は、授業料収入に依存するということはやむを得ないことだと思うのであります。将来の問題として検討するしないの課題はございましょうけれども、私学を現行の制度のもとにとらえます限りにおいてはやむを得ないことであろう、かように考えます。  僻地の居住者たる生徒が教育の機会に十分に恵まれないといううらみがあることはよくわかるのでありまして、これは以前から極力考え続けておることではありますが、十二分とはむろん申せませんので、今後に向かって努力をいたします。明年度の予算につきましても、僻地の教育施設の充実についてはある程度重点を置いて対処したいと考えてもおるわけでありますが、御指摘のような不便を与えないような努力を今後も続くべきものだ、かように心得ておることをお答えにいたします。
  26. 福田繁

    ○福田政府委員 先ほどお尋ねのございました高等学校の入学率の問題についてお答えいたしますが、これにつきましては、御承知のようにここ三年ぐらいの間、大体全国的に見ますと、公私立合わせまして志願者の九五%ないし六%が入学しているという実情でございます。従って、御指摘のように個々の学校あるいは地域によりましては、何倍というようないわゆる有名校への集中という問題もございますけれども、全国的に全体から見ますと、志願者の九六%程度が入学しているというのが実情でございます。従って、今後の問題としては、やはり子供の進度やあるいは特性というものを十分考えた進学指導ということが非常に重要でございます。急増対策の私どもの計画考え方としては、現在の九六%程度が入学できる、この程度は入学可能にするという考え方計画を進めておるわけでございます。従って大臣がお述べになりましたように、九六%は入学可能であろう、こういうように考えております。  それから定時制の問題について御指摘がございましたが、これは私ども定時制教育の振興につきましては、いろいろと今までもやって参りましたけれども、御指摘のように必ずしも十分とは申し上げられません。従ってこの急増期に関連しまして、定時制をなおざりにするということはもちろん許されません。従って働きながら勉強する定時制高等学校につきましても、急増対策としては、少なくとも従来の定員程度はこれを急増対策として受け入れて、それに必要な施設設備等の充実については、必要な予算を計上して財源措置を講じていく、こういうような考え方急増対策としては取り上げているわけでございます。従ってそういう施設設備の整備、あるいはまたいろいろその定時制教育の振興の面におきましては、その実態に応じたいろいろな振興方策があろうと思います。たとえば夜間の生徒等につきましては、給食の問題ももちろん重要でございます。そういった意味では、最近は定時制の高等学校の生徒が年々全体としては減少しつつあります。しかしながらこの急増期におきましては、少なくとも従来の規模においてはこれを受け入れていけるだけの整備をいたしまして、十分その充実をはかっていきたいという考え方で進めておるわけでございます。
  27. 小池欣一

    ○小池説明員 生活保護の問題につきましてお答えを申し上げます。生活保護法の運用の中におきまして、御指摘のありましたように、保護を受けておる方々の自立更生をはかるということは非常に大切な分野であろうと思います。従いまして高校に進学される人をかかえている要保護世帯の取り扱いにつきましては、非常に慎重を期しておるわけでございます。現在の処遇の方法といたしましては、育英会の資金なり、あるいは厚生省でやっておりますが、母子福祉資金によります就学資金、こういうような資金やこれに類する資金も他にいろいろございますけれども、こういうような資金を受けて高校に進学をいたしております場合には、生活保護全体の適用をその世帯にする、こういうような考えで現在いたしておるわけでございます。  また御指摘のありました、働きながら高校に行っておる、あるいはだれか親戚なりなんなりから仕送りを受けて高校に行っている、そうして生活も自分でやっている、こういうような場合におきましては、これを一つの世帯の中におきますと、収入の認定の関係からいろいろ問題がございますので、世帯を分離いたしまして、高校に行っておる生徒だけを単独世帯として取り扱いをいたしておるような次第でございます。その場合に、その高校生が昼働いて収入を得るというような場合に、これの収入の認定をしておるのではないか、こういうようなお話でございますが、これは世帯が別でございますので、同じ世帯としての収入認定はいたしません。その子供が出ておりますところの世帯につきましては、これはその世帯だけの単位で収入の認定をいたしておるのでございます。そういうような場合におきまして、大きな収入があるというようなことももちろん考えられないのでありまして、問題があるといたしますと、かりに非常に大きな収入がございますれば、扶養の問題というような形で問題が起こる可能性がございますけれども、現実の問題といたしまして、そういう場合におきましては、高校に進学する経費、日々の生活の経費だけで一ぱいであるというのが通常の状態であろうかと思います。ただいま御指摘のような問題が起こる場合は非常に少ないのではないか、かように考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、生活保護法の基本的な考え方もございますけれども、その中におきまして、自立更生できますように処遇をよく工夫いたしておる次第でございます。
  28. 村山喜一

    村山委員 時間の関係もございますので、私はこのあたりでやめたいと思いますが、文部大臣が九六%のいわゆる入学率については保障するということでございますので、その点につきましては私は確認をいたしておきたい。  ただ高等学校のいわゆる選抜の問題をめぐって、これは大臣も表明をされておりますが、奨学制、それから男女共学制、総合制、この問題と、それから例の初中局長の、これは諮問機関になっているのですが、高等学校教育対策研究協議会、こちらから答申をされた内容、そういうようなものを見てみますと、私は今の受験地獄といいますか、これがますます強化されて、そして親も子も先生もへとへとになるまで今やっておりますが、それに拍車をかけるようなことで、——方策が講ぜられていないのではないか、九六%もいわゆる入学率を保障する対策としては、かえって逆効果をしておるような答申がなされ、そういうような方向大臣もお考えになっているのではないかということを懸念するわけです。というのは、やはり小学生あるいは中学生の総合選抜制度でありますから、学校差をなくする、同一市内に五校の普通高校があった場合には、それにはやはり学校差をなくするような方法というものを講ずるように行政指導をされるべきであって、有名校に片寄り、有名校は有名校として存続をさせておいて、あとはA、B、C、D校というように学校の格差をつけて、しかも教職員の充実は同じようにしなさい、施設の充実も同じようにしなさい、こういうようなことは、私はつじつまが合わない話じゃないかと思う。その点は十分今後これらの高等学校の選抜方法をめぐる問題でありますので、いろいろと中学浪人を出さないような方法というものを第一義的に考えていただいて、十分対策を講じていただく、このことをお願いを申し上げておきたいと思います。  私の質問は終わります。
  29. 床次徳二

  30. 山中吾郎

    山中(吾)委員 高校全入ないし高校急増の問題については、なお三木委員、小林委員から次会に大臣に対して質問が続行されると思いますが、私はきょうは大学管理の問題について、ぜひ大臣にお聞きしておきたいことがあるので、それを中心としてお聞きしたいと思います。  新聞紙上において大臣が現行法上のそのままにおいても、大学総長の任命権の拒否権があるということを新聞で発表されておりますが、この点は間違いないですか。
  31. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 大学の人事について文部大臣が任命権を持っております。これは現行法で明記されておりまして、疑いのない点と思っております。
  32. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いま一度お聞きいたしますが、任命権がある、大臣の今の答弁の中には、当然拒否権があるという意味でお答えになっているわけですか。
  33. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もちろんそうでございます。
  34. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、現在大学の管理機関によって学長が選考されるという規定との関係はどういうように解釈しますか。
  35. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 従来の大学における一般的な慣例上、評議会等が選考しまして、たとえば学長であれば、その候補者を申し出る、その申し出に基づいて任命権が行使されるという関係に立とうかと思います。その場合に、任命権者である立場において、国民責任も持つ立場から拒否する場合があり得る、さように考えます。
  36. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大学管理機関において学長が選考されるということの規定と、大臣が任命することができるという二つの規定を考えるときには、これは形式的に大臣が任命する権限があるので、実質的に拒否権があるという解釈を当然されるということについては、どうもおかしいと思うのですが、その点もう一度法律的に説明していただきたい。
  37. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 教授会、評議会等の推薦されます過程を経て、その推薦する内容を、任命権者の立場において最終的な任命行為をするという関係だろうと思います。従って最終的に、まれではありましょうけれども、ノーという場合もあり得る、そういう解釈をするのが当然の解釈であろうと心得ます。
  38. 山中吾郎

    山中(吾)委員 当然の解釈というならずいぶん大胆な解釈をされるようでありますが、そうしますと、大臣が中教審に諮問をされておる、それに基づいて大学学長に対する大臣の任命権も明らかにするという意味を持って今まで諮問をされたと思うのですが、そういう諮問などの答申を受けないで、現行法上大臣が当然任命権があるというならば、答申をしておるというのは、その中教審をばかにしていることではないか。答申の結果はどうでもいいのだ、当然現行法上拒否権があるというならば、一体答申をするという意図は、何かごまかしをするためか、あるいは形式的に、うるさいから答申を待って何とかするというよけいなことをおやりになっておると思うのですが、その点はいかがですか。
  39. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 任命権そのものの存否について諮問されたわけではないと思うわけであります。教授会、評議会の職務権限も明確でない、構成も明確でない、そういうところについて中教審の御検討を願った、さらに任命権の行使についてもより慎重な考慮が必要であるということを、現行法でも当然そうですけれども、そのことを特に注意的に答申を受けた、さように考えております。
  40. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうしますと、大臣の諮問事項の中には任命権があるかいなかという諮問は含んでおられないわけですか。
  41. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 任命権というのは現行法上明確になっておるわけでありまして、任命権の作用は何だというならば、イエス、ノー両面含んでおる、これは一般論として当然のことと思います。ただ大学であるがゆえに、教授会その他の慣行上の手続が前提としてある、それが尊重さるべきことはむろん当然であります。それを尊重しながら、なおかつ慎重に行使をすべきであるという答申をいただいたわけです。その意味において非常に重大な問題もありましょうし、答申をいただく価値があったと思います。
  42. 山中吾郎

    山中(吾)委員 要するに実質しの任命権があって、拒否権は当然あるので、あるかないかの答申は諮問はしていない、これは明確ですね。
  43. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その点は、私は疑義のないところと心得ております。
  44. 山中吾郎

    山中(吾)委員 重大な御答弁で、これは簡単にここで解決できない重大問題があるので、それはそれとしておきたいと思うのですが、先ほど当然にあるという理由に、国民に対する責任があるから当然だ、こういう立法精神といいますか、そういう理由を述べられたのですが、その意味はどういう意味ですか。学長の任命に対して、当然に拒否権も含んで任命権があるという解釈の根本の理由は、国民に対する責任があるから当然あるんだという御答弁ですが、国民に対する責任があるというのは、どういう意味ですか。
  45. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 これはすべて公務員の身分決定につきまして、国民と無関係にはあり得ないという建前が憲法趣旨かと思います。大学といえども学長、教授に至るまで国家公務員であることに間違いない。国家公務員の身分を与える行為は任命という行為であろうと思います。その任命という行為は、いわば国民にかわってなされる本質を持っておると思います。従って、それがゆえに現行法で文部大臣に任命権を与えておる。任命権を与えておるということは、天皇の国事行為みたいな一種の儀式ではないと思います。しかしながらさっき申し上げた通り政治以来の日本における大学内の慣行、そういうものがありますから、それを尊重するということは、一般の公務員の任命権の内容とはいささか異なるものがあることは当然だ。しかしまれにではあろうけれども、任命権としての作用のイエス、ノーの、ノーの形が、通俗的にいうところの拒否権という形となって現われるということは、これは国家公務員の任命が国民の立場において、国民の名において、いわば行なわれると解釈します限り当然のことである。ただし大学の人事であるがゆえに慎重でなければならないということが答申の趣旨である、かように思うわけであります。
  46. 山中吾郎

    山中(吾)委員 国家公務員であるから、当然に行政権によって任免権があるのだ、こういう解釈ですが、しからば裁判官についてはどうですか。裁判官については国家公務員であるけれども、その任免については一定の裁判の手続とかそういう法律の規定によってのみ、単なる行政権によって左右されない地位を与えておるのであるから、国家公務員であるから当然に行政権の首長である文部大臣が、任免権があるということは、あまりにも私は素朴な常識の解釈であって、そういう単純な解釈で、現行法上当然文部大臣は学長の任免権がある。これは国民に対する責任だ、そういう論理は私は受け取れないのです。その点は、国家公務員の国に対する責任の関係については、判事に対するあり方の結果もあるわけですから、その点私はおかしく思うのですが、いかがですか。
  47. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 国家公務員の中でも行政官、司法官、検察官等種類があるわけでしょうが、それは三権が分立しているので、一般行政官以外の人事と、一般行政官の手続とに差異があることは、これはやむを得ないことだと思いますが、裁判官以外の国家公務員についての基本的な考え方は素朴だとおっしゃいますが、法学通論の範囲のことではないかと思います。
  48. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは、大学の教授は、いわゆる一般の公務員という以外に、憲法によって学問の自由を保障された特殊の身分を持った国家公務員であると思いますが、その点はいかがですか。
  49. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 それはその通りだと思います。ですけれども国家公務員であることに間違いない。
  50. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その点は判事だって、検事だって国家公務員じゃないですか。そういうことを私はお聞きしているのではなくて、大臣一般の国家公務員を一からげに今のようなことを言っておる。だから、憲法で学問の自由を保障された、当然そこで別な取り扱いをすべき特殊の身分を持った国家公務員であるということは確認されるでしょう、いかがですか。
  51. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その点は、私は教授会あるいは評議会等の一応のふるいにかけるということで、特別の考慮が制度上払われている意味においては、他の国家公務員とは違う、その意味で、慎重な考慮が払わるべきであるという特色はあると思います。
  52. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そんな観念的に慎重に取り扱っておるということでは何にもならぬのでして、大臣は、選考は形式上選考だけれども、現行法上においては実質的に拒否権がある、ノーが言えるのだということを言っているのじゃないですか。そうすると、気分的に慎重にすることで憲法の学問の自由ということについてはちゃんと筋が通してある、こういうお答えにならないですか。
  53. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 学問の自由というのは、一般的に国民一般が学問することが自由であるというのが、憲法の二十何条かの規定の趣旨だろうと思います。最高学府といわれる大学における学者の研究の自由が典型的なものではありましょうが、学問の自由は一個人たる国民ことごとくにある、それが憲法の趣意だと思います。
  54. 山中吾郎

    山中(吾)委員 憲法を少しも勉強なさらないで、そんな大胆に、現行法上文部大臣が実質的に任免の権限があるなんて、もってのほかですよ。今何ですか、憲法の学問の自由というのは、一般の人が学問する自由があるということでございますから——そんなこと、どこに書いてありますか。どこの憲法学者が言っておりますか。憲法上の学問の自由を、文部大臣として責任のある答弁をして下さい。速記録に載りますよ。
  55. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 学問の自由は、私は大学の教授に限らないと思います。国民が学問をすることは自由であるということを憲法が保障しておる、こう思います。
  56. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、国家公務員である教授はどうなりますか。国家公務員である教授、助教授と学問の自由の保障との関係はどうなりますか。
  57. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 教授、助教授の学問の自由、読んで字のごとくと思います。学問することの自由を、何人といえどもこれを制限し、じゃまするわけに参らない、そういうことだと思います。
  58. 山中吾郎

    山中(吾)委員 せめて学問の自由は、国家公務員であるところの教授、助教授であっても、高等学校以下の先生と違って、これは論議があると思いますが、研究の自由、教授の自由、これは含んでおるぐらいは解釈されなければ、憲法を少しも知らぬということになるじゃないですか。その点いかがですか。
  59. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 憲法の学問の自由は何だとおっしゃいますから、一般的な解釈と考えることを申し上げました。大学における学者の研究しておる状態、教授しておる状態と、高等学校、小中学校の先生が学問し、研究し、教授することとは、制度そのものの差異があります限りにおいての相違はむろんございますが、学問の自由とは何ぞやといえば、国民全体だれでも学問することは自由である、こういうことであると思う、こう申し上げたわけであります。
  60. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは思想の自由という憲法の別の保障の解釈ならわかるのです。思想の自由以外に、新しい憲法は学問の自由ということを新たに加えているじゃないですか。そして原文のアカデミック・フリーダムという言葉から学問の自由という日本語の表現が出ておるので、その点は今おっしゃるような文部大臣の素朴な解釈では国民は指導できませんよ。そうすると、たとえば大学の教授がマルクスの思想あるいはマルクス、レーニンの一つの原理というものを自分の経済学あるいは世界観の思想体系として教授するということについては、学問の自由の中に含んでおりますか、含んでいませんか。
  61. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 学問の自由は、言葉を置きかえれば私は真理の探究の姿だと思います。その意味において、マルクスの経済学をその学問的真理の探究の限度において研究し、かつ教授する、それはもちろん自由の中に含むと思います。
  62. 床次徳二

    床次委員長 山中君、時間の都合がありますので、なるべく早く質疑を終わっていただきたい。
  63. 山中吾郎

    山中(吾)委員 真理を探究する限度においてというのはどういうのですか。何かそれは限界があるのですか。
  64. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 大学教授が大学において何をなすかは、学校教育法に行動半径はきまっておると思います。研究し、教授すること、その研究することは真理の探究を目標とする、それが学問の自由の中身だろうと思います。   〔委員長退席、上村委員長代理着席〕
  65. 山中吾郎

    山中(吾)委員 戦前に、たとえば京大の滝川教授が、刑法の講義の中にいわゆる唯物思観的なものが入っておったということで問題になって、鳩山文相が休職命令を出したというので大騒ぎした。美濃部博士が天皇機関説を出すことによって問題になった。すべてそういう講義内容が時の政府から見ておもしろくないということで、文部大臣が任免権を発動して、そしてこのことが日本の学問の自由を阻害したのです。内容は、文部大臣の任免権を実際に発動した歴史的事実と、今後の見通しについても、そういう思想について大学の先生が講義をするという内容がいつも問題になって人事権の発動が行なわれてきておるわけです。そこで新しい憲法が、そういう過去の学問に対して政治が思わしくないような干渉をしたということの中から反省をして、大学におけるところの学問の自由が新しく規定された、これが明確なる新しい憲法の設定の事由だと思うのですが、その点は間違いないですね。
  66. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 それは新旧憲法の違いの一番の特徴点だろうと思います。さっきも申し上げましたように、真理の探究という態度において、学者ならずとも、学問するということ、この自由、何人といえどもこれに干渉することは許されない、そう解釈します。
  67. 山中吾郎

    山中(吾)委員 また答弁がほかに移ったと思う。研究とか一般の人の思想の自由と同じような解釈で思想の自由の論議をしておるのじゃなくて、学問の自由を今論議しておるので、国立大学の教授が講義をすることについての問題を論議しておるわけです。  そこで、大臣は今歴史的な事実という中で、僕が聞いたことについては、一般のいわゆる学問の研究の自由は当然だという答弁のずらし方をしておるのですが、いま一回聞きますが、国家公務員である大学の教授があらゆる自分の思想を体系をもって講義することについて、文部大臣が身分を動かすようなことはできないという、そういう憲法の保障であると思うのですが、そう思っていないのですか、どうですか。
  68. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 真理を探究し、学問的に教授することは自由だと思います。そのことについて文部大臣が気に食わないからノーと言うことはあり得ない。あっちゃならない。戦前といえども、私は京都の大学で資本論の講義を聞きましたが、戦前すらもなおかつしかり、研究し教授するという自由、これは文部大臣だろうとだれだろうとかれこれ言うべからず、こういうものだと思います。
  69. 山中吾郎

    山中(吾)委員 事実に反するじゃないですか。滝川刑法学者も京大でやられているじゃないですか。美濃部さんだってそうじゃないですか。文部大臣の答弁は事実に反するのですよ。
  70. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 帝国憲法のことを私は申し上げているわけじゃございません。戦前すらもそういうことであったと、例外もありましたろうが、新憲法のもと、さようなことはあるべからずというのが新憲法と旧憲法の違いだろう、かように思っておると申し上げたのであります。
  71. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そこで僕は大臣の答弁に矛盾が出てくると思うのです。ところがそういう憲法で、いわゆる講義の自由というものを保障されていることが、学問の自由という人権を新しく加えたのであるのだから、従って文部大臣は現行法において実質的に大学の学長、教授に対する拒否権とか、任命についての実質の権限があるということは矛盾が出るでしょう。やれるということだった。あるべからずという理念を聞いているのじゃないのです。法制上、制度上、大臣が現行法上でも拒否権があるということは、そういう研究、教授の自由ということの中でそれを実質上、どうもあれはいかがわしい、歴史的事実はそうとしかやってないのですから、そういうときはやれるというあなたの解釈になるのじゃないですか。
  72. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 現行法上任命権の作用とし、イエス、ノー両面を含むという解釈であるべきだというのは、法学通論的な疑いをいれない論理だと思います。それから山中さんから指摘される学問の自由あるいは大学における研究、教授の自由、そのことがさっき申し上げた通りであることと、任命権の作用としてイエス、ノー両面あるということとは矛盾しないと思います。いささかの矛盾もない。研究、教授の内容それ自体がけしからぬからノーと言うことはあり得ない。あらしめてはならない。それ以外の理由ではノーと言うことが制度論としてはあるべきである。しかしそれは大学人というものは日本一のトップ・レベルの人々であるべきはずですから、教授会その他の議を経て出てきたものに欠陥があろうはずがない。原則としてそうだと思います。きわめてまれに、もし万一の誤りでもあったときに主権者たる国民が一言も言えないという法はあるまい。その国民的一言言うべきときの、いわば保障措置としての任命権の作用としてのノーと言う機会は与えられておるべきだ、それが任命権の解釈であろうと私は思います。
  73. 山中吾郎

    山中(吾)委員 平行論議をやっているわけですが、あるべきはずはない、こうあるべきだというその理念を大臣は言っておられるので、制度的に大学の自治というものが学問の自由というものを保障するために絶対必要だということが、一つの憲法の解釈の中に通説として出ているわけなんですが、現行法上大臣が実質上の拒否権があるということを一方に言っておるので、そういう大臣の解釈の中には、荒木文部大臣はやるかやらぬかそれは知らない、また変な大臣が現われて、そうしていわゆるマルクスの講義をやっているとかいうことでやろうと思ったらやれるという制度、そういう制度だという解釈が大臣の答弁の中に入っているじゃないか。それでこうあるべきでないというようなことを言ったって、それは始まらないですよ。政治家の答弁です。
  74. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今、山中さんが例示されたような、たとえばマルクスの資本論講義をしておる教授があるからこれはだめだという大臣が出てきたとすれば、その大臣憲法違反を犯しておるということであって、制度の問題としては任命権の中にはイエス、ノー両面含むべきである。しかし、およそトップ・レベルたるべき人々の総合判断として推薦してきたものに万に一つも誤りなかろうと期待はするが、人間のやることだから万一の一が起こらぬとも限らぬ。そのときの保障に任命権の作用が残されていないならば、主権者は一体大学全部についてつんぼさじきではないかということになりはしないか。その意味において任命権の作用が、まれにであろうけれどもノーという拒否権を発動する場合があり得る。その道は残されておるのが、任命権の任命権たるゆえんだ、かように考えることを申し上げておるのであります。日本人が人を殺すことはあるべからざることですけれども、万一あったらば社会が困るから、社会の秩序が保てないから刑法にその規定を設けておるのと、趣旨としては同一趣旨だと思います。
  75. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣のおっしゃる中に矛盾があるんですよ。それは実質で拒否権はある。しかしおそらくそういうことはないだろうというだけの話でして、大学におけるところの学問の自由というのが保障されている限りについては、法律規定の中に、もし大臣がその身分について影響を与える権限のある行為をするならば、これこれの場合という制限列挙的な規定でもない限りにおいては、私は、現在のそういう法的基礎がない限りにおいては、一般的に大臣に任命権があるのだ、そうして大臣常識からそういう場合にはやらないのだという、そういう解釈はおかしいと思うのです。だから現在、大臣の任命権について憲法の学問の自由という規定の中から出た制限列挙事項も何もないわけですから、原則としてそういう拒否権はないと解釈しなければ憲法の建前から成り立たない。もしどうしてもそれが必要であるというなら、新しい特別の法律をつくらなければいかぬと思う。現在の大臣の解釈を言えば、そういう場合についていろいろの理屈をつけても、私は学問の自由を拘束するような任命権の発動が可能だ、そういう解釈を大臣の答弁の中から考えざるを得ないわけですよ。こうあるべきだ、そうでないはずだという大臣のお答えだけではないですか。私の一番最初の質問の要旨は、従って現行法上においても拒否権があるかないか。あなたはあると言っている。あると言って、そのあるというのについて何らの制限を加えていないのです。あとは大臣常識によるとかいう一つのあなたのあるべき理念を述べているだけです。旧憲法下においては、旧憲法の行政法概念ならば、その大臣の答弁について私は抗議を言う根拠はないと思う。学問の自由という新しい基本的人権が保障された新憲法の解釈としては、大臣の解釈は私は憲法に合った解釈にはならないと思う。そういう解釈をされるなら、もっと具体的に法律的に一つの事項が規定されていなければ私は言えない。その規定がない限りは原則としてないのだ、形式的任命権しかないのだと解釈するのが正しいと思うのですが、その点はいかがですか。
  76. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 かくかくの場合には、まれにでもあろうがノーと言うことがあるのだ。そこでそういうことがあるべきだとおっしゃることは、私もそう思います。しかしそれはその制限列記的なことが特別に現行法上ないというだけのことであって、だからといってノーという作用はあるべからずということにはならない。任命権はイエス、ノーの両面だ。しかし大学においては、さっき申し上げた通りのことを繰り返すのは省略しますが、まれにしか起こるまい、まれにでもあろうけれども、起こった場合にはノーという作用が発動することはあり得る。これは新憲法下の解釈として当然のことだ、私はそう思うのであります。それならば、それを法律に書いたらどうだとおっしゃることは、また別途の問題としてあるかもしれません。現行法でかりに言うならば、国家公務員法がございます。国家公務員法は大学の教授だろうと、学長にだって適用されると思いますが、国家公務員法上の適正を欠く場合だって、これは現行法上ある。そういうことが、かりに適用さるべき具体人が推薦せられた場合にも、なおかつノーと言えないということは、主権者たる国民の立場からは割り切れないことだろうと思います。ですから新憲法の解釈からいきますれば任命権の作用はまれにではあっても、大学に関してもノーと言う場合があり得る、こう考えるのがむしろより憲法的であって、三権在民の理念を貫くゆえんだろう、かように考えることを申し上げておるのであります。
  77. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると憲法解釈上、高等学校以下の教職員と大学の教職員も同じだということですね。
  78. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 それは違いがあると思います。高等学校、小中学校につきましては教師の行動半径、教育活動というものは法律に明記された範囲以上に出るはずがない。大学においては学問の自由、研究、教授の自由ということが特に与えられておる。ですから山中さん御指摘のような意味において、大学においては特殊な存在だと思うのであります。そこで今度人事、身分に関しましては、小中校と違って教授会等のふるいにかけられた者が出てくるということは、慣習法上尊重され続けてきておるし、今後も尊重さるべきことは当然であるという意味において、小中校とはその点が違うと思うのであります。
  79. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、大学の学問の自由というのは大学の自治というものを保障しておると解釈されておられますか、いかがです。
  80. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私は学問の自由と大学の自治というのは、概念及び内容として別物だと思います。
  81. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大学の自治というものと学問の自由とは別だということは、それはどこの学説か知らないですが、いつもそういうつもりで新聞に発表されておることが今わかってびっくりしたわけですが、大学の自治は尊重するというととが新聞にしばしば載っておったけれども、あれは憲法に関係なくあなたの思想としておっしゃっているわけですか。
  82. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 憲法は学問の自由を憲法的に保障しております。ただし概念的、内容的に大学の自治とは別だということは、憲法からしても明らかだ。ただし相関関係がゼロだというふうにはむろん思いません。その意味において、慣習法上存在するであろうところの大学自治というものが尊重さるべきだ、そういうふうに考えておるのであります。
  83. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これは憲法論ですから、アカデミック・フリーダムという言葉が学問の自由として日本語に訳されておるわけなんですが、その点少しも大臣は勉強されていないように思います。もう少し勉強して下さい。  それから学問の自由ということは、行政権において身分を左右することができないという保障をしない限りにおいては、学問の自由はゼロだと私は思うのですが、いかがですか。
  84. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もちろんそうだと思います。
  85. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると行政権者である文部大臣に任命権が実質上あるんだ、いつも拒否権があるというあなたの思想とは合わないじゃないですか。新聞では学問の自由、大学の自治は尊重するということをしばしば言いながら、今のように当然に任命に関する拒否権、実質の権限があるんだと言われていることは、全く相いれない思想だと思うのであります。現行法上それでいいという前提の中に、一方に中教審に諮問をしてみたり、あるいは大学協会その他の関係についていろいろと答申を尊重するとか言ってみたりするのは、私はどうも一方に腹の中ではそうではないのだというふうな思想が出ておると思う。もしかりに学問の自由というものについて、国の国民に対する責任大臣が何らかタッチをしなければならぬという思想ならば、一方に文部大臣は在職中党籍を離れるべきであるとかという思想を発表されないと、何か文部大臣の思想の中に、真理を探求する学問を保障するなんて言っているけれども、自民党の領袖であり、ことに荒木さんというのはずいぶんとニュアンスがほかの人と違うような言動を吐いておられるわけですけれども、そういうことを前提として今のような論議を聞いたって、だれも信用できませんよ。文部大臣は党籍を離れて、在任中各政党政派から離れる、そういう一つの制度をとっておるから、大学の学問の自由という立場から言っても、例外の場合、あるいは講義、研究というふうな内容については絶対任命権はないけれども、人格、品格その他について大学の学長として思わしくないときにはこれこれという明らかな法的規定があって、そうしてそこの関係を調和するという思想をお持ちになるなら、これは別です。大臣の今お答えになっておることなら国民はだれも信用しないと思うのです。その点いかがですか。
  86. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私が真理を申し上げておっても、御信用なさらないということは、私は言いがかりだと思います。これは私の不徳の至すところで、むろん顧みる必要もありましょう。そういう問題であって、憲法の解釈なりあるいは文部大臣としていかにあるべきかということとは別問題だと思います。私に党籍を離脱しろとおっしゃいますが、いつかどなたかからそういうお話がございまして、離脱しておりませんが、教育基本法第八条の趣旨に基づいて行動するという意味においては、党籍を離脱しておるのと同じことだ、そう心得て今日まで参りました。例外は一つもない、逸脱したことなしと私だけとしては思っております。そういうことは要らぬことのようですけれども、今おっしゃいましたから弁明をさせていただきたいと思うわけでございまして、学問の自由、研究、教授の自由、そのことに難くせをつけて任命権の作用が現われることはあるべからず、これはきわめて明確なことだと思います。しかし他面国家公務員であるということを考えました場合に、たとえば先刻触れましたように、国家公務員法に規定されておる不適格条件がある人があやまって推薦された場合は、ノーと言う保障がないならば、主権者たる国民は一体どうするのだということに関連して、まれにではありましょうけれども、その作用が制度上認められておるべきだ、それが現行法である、こう思うわけであります。
  87. 山中吾郎

    山中(吾)委員 国家公務員の国民に対する責任については、大学の教授の場合は真理を探求するということが、いわゆる大学の教授の身分を持った国家公務員の国民に対する責任だと私は思うのです。上司の命令に従うとか文部大臣の御意向に従う、従わないということが国家公務員の責任ではない。大学の教授として学問の自由というものを保障されて、そうして現在の政治に都合いい悪いは別にして、長い民族の発展のためには真理を探求するということを保障しなければならないという一つの立場の中に、学問の自由の保障があると思うのであって、その学問の自由を背骨に与えられておる大学の教授の国家公務員としての責任は、真理を探求することによって国民に奉仕することだ、それ以外にないと思うのですが、いかがですか。
  88. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もちろん仰せの通りだと思います。真理の探求をすることが本来の職務であり、国民に対する責任内容だと思いますが、だからと言って、国家公務員として許されさることがなし得る権利が与えられておるはずがない。欠格条項というものは、その学問あるいは研究、教授の自由、そういうこと以外の作用として出てくることはあり得る。おそらくはそんな人はないと思いますが、万に一つもあることがなしとは言えない。そういうことに関することでありまして、仰せの通りの大学の教授なら教授が真理探求することについては何人もかれこれ言えない。文部大臣といえども言えない。そのことには一点の疑いもないと思います。その他の作用として不適格事項があった場合すらも、なおかつ真理の探求者なるがゆえに許される治外法権を持つ立場ではない、かように思うわけであります。
  89. 山中吾郎

    山中(吾)委員 治外法権という言葉が出てきたのですけれども、真理を探求することによって国民に奉仕するということは認められた。私も大学の国家的、社会的機能は認めねばならぬと思う。象牙の塔の中に趣味として学問をするところではないと思うのです。  そこで治外法権という言葉を使われたことについては、あなたの先入主の中に何か行政権が大学の教授に及ぼすのでなければ治外法権だという先入主をお持ちになっているのじゃないか。そういうことはたとえば国原公務員である判事とか、そういう人たちは行政権が及ばない、法律が及んでおる。法律というふうな国会が承認したものによって身分が保障されておるという姿の中に、治外法権的立場でなくて、日本の国原組織の中においてちゃんと連絡をつけておるじゃないですか。最高裁判所の判事にしても、国民投票という姿の中で国民と国家公務員との関係を結びつけておるじゃないですか、大臣はもう何らの疑問を持たないで、行政権というものがタッチできなければ治外法権だ、そういうふうにお考えになっていると思うのですが、その点はそうでないのですか、もっと違った広いお考えなのですか。
  90. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 行政権が大学内に侵入していかなければ、それを許さないという姿が治外法権だとは思いません。あくまでも民主憲法のもと、法治国日本においては、法律制度の定むる限度内において行政権も存在するわけですから、何人が文部大臣になりましょうとも、その人間の解釈によって行政権が及ぶ及ばないといという問題じゃないと思います。裁判官に対して国民投票が許されておるのは、主権者たる国民が、裁判官についてその人事、身分に口ばしを入れる機会がないことはおかしいからそうなっておると思います。大学の教授、学長等につきましても、やはりその理論は同じことだと思います。国民投票という制度がないだけであって、いわばそれにかわるべき主権看たる国民の立場が文部大臣の任命権の作用としてイエスもしくはノーという形で現われる。そのノーという場合が先ほど来るる申し上げておるような場合には作用することがあるであろう、そのことが留保されておる、それが任命権だ、こう思います。
  91. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私申し上げておるのは、行政権がタッチしなくても、国家公務員であるところの教授の国民に対する関係は、結びつける方法は幾らでもあると私は思うのです。国会という立法機関において設定した法律によって、大学の学長は学内の選挙によってきめる、そういうことを法律に明確にすれば、それは治外法権じゃないでしょう。いかがですか。
  92. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もちろんそうでございます。私は今までの慣習法上、慣例上認められておること及び現行法だけを中心として申し上げているのであって、たとえばさっき引例されましたように、裁判官と同様大学教授は国民投票によってその適否を定める制度をつくることも一つの方法かもしれません。立法論としてはいろいろ新機軸を出すことはあり得ると思いますけれども、それは別個の問題として今までの慣習、現行法、それだけに限って、それを根拠に申し上げれば、今の任命権というものは、私が申し上げたような趣旨に解釈さるべきであろう、こう申しておるのであります。
  93. 山中吾郎

    山中(吾)委員 論議をしておる間に、大臣はあまり狭い考えでもないことは少しはわかった。ただ当然のごとく国の税金を払っている国立大学である、国立公務員の教授であるから文部大臣は当然行政権によって監督指導をしなければ筋が立たない。そうでなければ治外法権だという常識を発散されておるので、それで聞いてみたわけです。  次に結論に入っていきたいと思うのですが、慣行上こういうようになっているというようなお考えなんです。現在旧制大学というのは数十年の慣行の中に一つのものが確立されてきている。戦後の新制大学は十数年の歴史しかない。   〔上村委員長代理退席、委員長着席〕 そうすると大臣の法律的解釈は別にして、そういった学問の自由その他の関係から考えて、良識のある大学の学長、教授に、運営の中でそういう伝統を形成することを期待するという思想を大臣考えておるのじゃないか、それが大臣の答弁の中で一番筋の通った考えだと私は思うのですが、新聞においては、いや大学管理法を出して法律的、画一的に定めるというふうなことを通常国会において提案するという意味において、言われておる。今の御答弁の中には、そういう大学の関係からいえば、大学の伝統形成の中に、憲法の筋と、今言った国家公務員の関係するようなものは、上から法律的規定によらないで、われわれが大学の運営に期待する、そうして軽率に一つの法律でどうこうというふうなことをしないという思想に大臣考えておられるのか、聞いてみたのですが、そうでなくて、やはり通常国会において法律的規定をするというお考えなのか、どっちなんですか。
  94. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 昭和三十五年の五月二日に、松田文部大臣が諮問されて、答申が続々と出てきております。その答申を受けて、慎重にかつすみやかに立法措置を講ずべきものはしまして、国会の御審議を願う、これは水の流れるがごとく当然のコースだと思います。このことは今のお尋ねに直接お答えしていないとむろん考えますけれども、一方において、御指摘の通り、大学の問題は、大学の自流にまかせるという気持で管理運営がなさるべきことをむろん期待します。さらにまた国立大学長会議等で話が出ておりますように、自分たちが他の大学のことにまでアドバイザーとしての機能を果たす一つの手段として何かしら一つの機構をつくって、自分たちだけでできるだけ万全を期するような努力をしたいと言われていることは非常にいいことだと思います。だからといって立法措置が要らないということにはならない。立法措置も講じ、さらに大学みずからも言われておるがごとき努力をされ、それと手を相携えて、大半というものを、大学人のためにも、学生のためにも、国民のためにもよりよくする努力をすることが私どもの責任だ、そういう考え方に立って立法措置を講ずべきものは講ぜねばなるまい、こう考えて今検討しておるところであります。
  95. 山中吾郎

    山中(吾)委員 だから大学の現行法において拒否権もあるという解釈の文部大臣の思想と、それは立法措置をするという考え方に矛盾があると思うのです。現行法上そういう解釈だという、権威的解釈をされておるならば、あとは伝統形成に、運営に待って、そうしていわゆる世間から学問の自由を拘束するような、そういう疑いを受けないように慣行の成立を待っているというならばわかる。現行法上そういう実質的権限があるとおっしゃるならばわかる。ないというならば立法措置というふうな政治感覚が出るのだと思う。大臣の今のお答えはどっちなんですか。
  96. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 これは大学の管理運営の問題だけをとりましても、その課題文部大臣に拒否権ありやなしやの問題だけじゃないのでございまして、なるほど古い大学には慣習法的に大学の管理運営に関連する事柄が確立され、もしくは確立されつつあることはだれしも知っておることでございますけれども、それにいたしましても、たとえば教授会の構成にいたしましても、あるいは学長会議、評議会ということにいたしましても、その機能なり責任の限界なりあるいは権限というか、そういうこともきわめて不明確である。不明確であるがゆえに大学の管理運営が終戦以来、新制度になりましてから十数年たっておりますけれども、きわめて望ましからざる状態がある。それは特に新制大学に多いようでございますが、それが制度を整備することによって大学自体も努力はしますが、制度の改善と相待って、よりスピーディによくなるということが期待されます限り、必然これは国の立場において大学に協力する意味で立法措置が講せられるべきだ、かような考え方に立つわけであります。ことに今の制度が、ことに小中高につきましてはいつかも触れましたように、おりに触れて、日本の現状にマッチするような改善措置が講ぜられながら十数年を経過しております。大学制度については、昭和二十二年の春スタートしまして以来、制度的にはそのままでございます。スタートしますときには、管理、運営に関する部分に限って特に立法措置が講ぜられていない、はなはだしきは文部省令にゆだねられておるというがごときことも、扱いとしていかがであろう。現在の文部省令に規定されておりますことは、憲法趣旨からいうならば、法律をもって国会で御審議願ったものとして制度が取り上げられるべきではなかろうか。ところが当時早々の際でございましたために、それが命令の規定にゆだねられておることも妥当じゃあるまいという点も特に考えられねばならないのじゃなかろうか、そういうことから大学の管理、運営に特にすみやかに制度的考慮を必要とするというわけでございます。中教審も特にそういう意味において管理、運営のことが取り上げられ、慎重な考慮が払われ、国立大学の学長協議会の意見も取り入れて、御承知のような答申が出ておるわけでございますから、そのことは大学人の希望でもあり、中教審の三年越しの勉強の結論をちょうだいに及んで、文部省として措置すべきことも、その点だけから申しましても当然のことであって、これをなさないというならば、これは大学人のためにも忠実でない、かように思うのであります。ですから、間に合います限りにおいては、通常国会において十分御審議願って、大学人と大学の学生の利益のために、また主権者たる国民の利益のために十分のご審議を願って、よき制度を打ち立てたい、こういうことでございます。
  97. 床次徳二

    床次委員長 次の質問者の関係もありますから、すみやかに結論をお願いいたします。
  98. 山中吾郎

    山中(吾)委員 きょうは文部大臣が重大な答弁をたくさんされておるので、あと速記録をよく見て論議を続けていきたいと思います。現行法上実質上拒否権があるということ、にもかかわらず法律でさらに規定しなければならぬということだと、それから憲法の学問の自由について十分明確に研究されていないんじゃないかという節もありますし、それから法律規定をしなければならないということは当然だというふうなお考えの中に、私はもっと質疑を掘り下げて、そして日本の大学の将来にあやまちのないような慎重な態度を私は大臣要望しなければならぬと思うので、次の機会に譲りたいと思うのです。  なお、大臣のおられる間に質問をされる通告があるので、大臣に関する質疑はこれで終わりたい。あと、いなくなったあと局長関係に、名城大学の問題それから図書館短期大学の問題その他お聞きする質問を保留しておきたいと思います。
  99. 床次徳二

    床次委員長 きょうは時間がありませんから次会にお願いして——先ほど理事の間の交渉によりまして、十四日の午前中に開くことになりました。引き続き御質疑を願うことになっておりますから……。
  100. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは名城大学を一言だけ聞きます。あなたは明確な答弁をされたらそれでけっこうですが、法律が施行されて六カ月たっておる。だんだんと名城大学の卒業の時期、入学の時期になってきておる。それで一方、大橋という人がどういう人か知らないけれども、来年の入学学生の募集停止か何か変な訴訟を提起しておるとか、またいろいろ裁判上のことで文部省の方では複雑に解釈して、そうしてじんぜん日を送るというようなことがあちらこちらにうわさがあるので、それについて新しく法律が、実質的な名城大学のために国会であらゆる論議をしてできたものであるから、この法律を忠実に施行して、手続によって来年度の入学その他に間に合わすように解決をするというかたい方針で今検討されておるかどうか、続けておられるかどうか、それをお聞きしたいのです。
  101. 杉江清

    ○杉江政府委員 ただいま仰せのような方針で、調停を鋭意進めております。
  102. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣、今局長が言ったことについては、大臣も同じ方針ですか、それをお聞きします。
  103. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もちろん、心がまえとしてはそう思っております。
  104. 床次徳二

    床次委員長 次に三木喜夫君。
  105. 三木喜夫

    三木(喜)委員 時間も十分前までということでございますので、五分間ではお話もできないと思いますので、また大臣ないしはその他の方もいろいろ本会議予算委員会の準備もあろうと思いますから、私はこの次十四日に大臣に御出席いただいて、きょうはそのかわり無理をしないということで質問を保留したいと思います。なお谷口さんもおありになるようでございますが、同じように保留することが本会議一時に対処する方法だと思いますので、そのように取り計らっていただきたいと思います。
  106. 床次徳二

    床次委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  107. 床次徳二

    床次委員長 速記を始めて。三木喜夫君。
  108. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そうしますと、簡単に大臣の決意と私たちの要請を織りまぜて申し上げたいと思います。  第一は、高校急造対策に対しまして、四十国会からいろいろ審議されて参りました。その審議の過程を私たちは顧みましたときに、大臣は、四十国会において参議院の本会議にも衆議院の本会議でも、非常な熱意を持って私は高校急造対策に全面的に取り組んでおったけれども、ついに負けましたという答弁をされております。従いまして、私は、この高校急造対策について大臣が今なお熱意を持って、この臨時国会あるいは四十三通常国会予算に対処されておるかどうか、簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  109. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 負けましたと言った記憶がありますが、あの表現はどうも適切でないから取り消さしていただきましたから、お許しを得たいと思いますが、しかしその言葉いかんにかかわらず熱意をもって取っ組むべき課題であることに変わりはないと心得ております。
  110. 三木喜夫

    三木(喜)委員 なお、大体二十二年に生まれました者が二百五十万余りある。二十一年に生まれた者よりも五十四万人余り中学生が現実に多いのです。その者が高校へやって参りますので、私たちは主としてこの問題を政治災害、このような取り組み方で要請をして参っておったのですが、大臣は今もそういう考えからこの問題に対処されるのかどうか、お聞かせ願いたい。
  111. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もちろんそうでございます。冒頭に、当委員会でももうおととし以来重大な関心を持っていただいておりますので、御質問を待たずして昨日結論を得ましたことを御報告申し上げて御了承も賜りたいと申し上げたゆえんでございまして、今後に対しましてもこの問題には今までと同じ熱意をもって対処したい、かように考えます。
  112. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そこで政府、いわゆる中央の責任と、それから地方自治体の責任に分けて明確にしたい点がありますので、お聞きしたいと思います。  第一点は、知事会は三十六年から四十年度までに千四百五十億円の高校急増に対するところの予算を実質的に要求して参っております。三十八年度は新設に対して約百三十三億、増設に対して百四十三億の要求をしておるようでございますが、この知事会、なお全国教育会議も中学校長会議も大体要求が似ておると思いますが、この要求に対してどのように対処されようとしておるか、この点をお聞かせ願いたい。
  113. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先刻もちょっと触れましたが、知事会側文部省自治省さらに大蔵省とは常に意見調整をしながら今日に参っております。そして六十六億円の財源措置にいたしましても、知事会側の率直な気持からいけば、幾分不満の点があろうかと思います。ですけれども、ただじんぜん小田原評議とは言えませんが、どうだ、こうだとへ理屈ばかり述べ合って時間をとるばかりが能じゃあるまい。むしろある程度の御不満はあろうとも、われわれの努力不足の点もあるかもしれませんけれども、六十六億の財源措置を講じ得るならば、当年度としては現実問題としてがまんができるということであるならば、早くその結論を出して早く整備することが急がるべきだろうということで、いわば妥協といえば妥協をいたしたような次第でございます。この問題は三十八年度の予算の問題以後にも続くことでございまして、同じ熱意をもって極力この急増対策に対処したいということでお答えにしたいと思います。
  114. 三木喜夫

    三木(喜)委員 具体的な問題で政府案としては大体二百八億を予定しておる。八十二億を新設に、増設に百二十六億、起債が百五十億、大体二百八億くらいな予定を持たれておるやに聞くのですが、その辺の真偽をお聞かせ願いたい。
  115. 杉江清

    ○杉江政府委員 ただいまの数字についてはちょっと理解に苦しむ点がございますが、政府計画においては百五十四億の財源措置をいたしたわけでございます。その内訳は十三億円の補助金と五十億円の起債と九十一億円の地方交付税への積算への組み入れ、こういう措置をいたしたわけでございますが、今回はそれに対しまして建物建築費に対して六十億円の起債ワクの増の措置がとられ、政府計画においても別ワクとして考えられておりました土地買収費に対する大よそ四十億円の起債措置に対して、今回はそれに加えて六億増の措置がとられたわけでございます。
  116. 三木喜夫

    三木(喜)委員 あとで言われた問題は、これは三十七年度、追加予算じゃありませんか。
  117. 杉江清

    ○杉江政府委員 さようであります。
  118. 三木喜夫

    三木(喜)委員 三十八年度予算に対するところの額を聞いておるわけであります。
  119. 杉江清

    ○杉江政府委員 三十八年度の計画といたしまして、私どもは事業費総額としましては三百八億の総事業費計画として全体を考えております。そのうち補助金といたしまして産振関係と工業の普通校舎に対する補助金文部省としては要求いたしておる次第でございます。
  120. 三木喜夫

    三木(喜)委員 その要求されたのは具体的に幾らですか。
  121. 杉江清

    ○杉江政府委員 工業の普通校舎に対する補助金要求は十七億でございます。そのほかに産業教育振興法関係の要求といたしまして約六十一億円の要求をいたしております。
  122. 三木喜夫

    三木(喜)委員 大臣が冒頭述べられました、非常な熱意をもってやることは変わりがないということですが、私は昨年度の要求が通らなかったときに、急に大臣がこの高校急増対策というものは政府責任よりもむしろ設置者責任にすべきではないかというようなお話をされておったのが、現実三十八年度予算にも出て参っておるような感じがするわけなんです。そこで冒頭そういう質問をしたのですが、このことに対する考えにつきましては十四日に申し上げることにいたしまして、きょうはこの辺で意見はやめたいと思います。  そこで次に率直に地方の責任問題について一つお聞きしたい。すなわち高校急増対策その他の問題につきまして、地方の財政を圧迫するような措置はよくないということが、自治省大蔵省との話し合いの中にできておると思うのです。しかしながら現実昨年度におきましては、地方の自治体の財政を著しく圧迫しております。小さな町村におきましては現実一億三千方円くらいの地元負担をして、土地の買収から建築まで地方が責任を持って高校を増設、新築をしておる例があるわけなんです。こういうようなのは随所にあるので、それであのような自治省文部省との間の申し合わせ、いわゆる税外負担で地方住民から番付行為は一切やってはいけないという、こういう通達が有名無実になっておる。この責任は先がた私が申しました中央の責任か、地方の責任かということが明確でない、ここからきていると思うのであります。それに対する文部省責任はどういう工合にお考えになりますか。責任ないと言われますか、どうですか。
  123. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 責任政治的にあることはもう当然でございます。ただ形式的に申せば、ことしの正月二十六日の閣議了解の線は、補助金でいく形をやめて、本来の設置責任者たる都道府県みずからが責任を持ってやるという形になった。ただし財源につきましては、交付税の積算におきましては、生徒急増に対する仕事量を総合的に念頭に置いて年次割をきめてはじき出したものをつける。さらに起債財源措置にいたしましても、国の立場から高校急増の事業量を念頭に置いて起債ワクを提供する。そういうやり方で、形は違いますけれども、国が責任を負っておる。そういうことで仕分けをされたのが、この正月の政府としての態度決定の線であることは申すまでもございません。そこで残るところは産振法に基づく助成ないしは高等学校の校舎についてだけ例外的に補助金の制度ができておりますから、それを通じて補助金の形における国の責任を果たしていくと同時に、起債ワクなりあるいは交付税の積算なりというものを計画的にはじき出したものをつけることによって協力する。そういうやり方のわけでありまして、形式は違いますけれども、実質的な国の責任は果たしておる、かように心得ております。
  124. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういう行政措置がとられたことに対して、違反が現実行なわれておることに対してどういう措置をとられますか。まずそれが実質行なわれなければ、ああいう通達を出しても、これはもうほんとうに見せかけだけに終わってしまうわけなんです。予算の裏づけはしておる、このようにおっしゃっておりますけれども、文部省としてはそれにどう対処されますか。
  125. 杉江清

    ○杉江政府委員 先ほどのような三十八年度の全体事業量考えまして、文部省としては先ほど申し上げたような補助金要求をいたしておるわけでございますが、他の部分については自治省の方で起債その他の措置をお考えいただいております。具体的には自治省考えられることでございます。
  126. 床次徳二

    床次委員長 大体時間が参りましたから、結論をお願いします。
  127. 三木喜夫

    三木(喜)委員 今の問題については、これは自治省責任ということで受け取っていいですね。これはまた地方行政の方で質問をします。  それから、二つ簡単に御答弁いただきたいと思うのですが、文部大臣は先日の本会議で、高校の入学希望者の九六%までは責任を持つとおっしゃいました。村山委員も今それに触れましたが、私はこれはどういう積算基礎からこの九六%が出たかということが知りたい。現実に各県において学級は何学級増をしておる、それが文部省のトータルに今出てきておる、従って全国希望者数はこれだけで、そうして収容人員はこれだけだ、私立はこれだけだというような、その積算の基礎がなければ、文部大臣のああした保証にならぬと思う。従いまして、きょうはここでお聞きすることはやめますが、あとでその数字をはじき出したものを出してもらいたいと思います。それによって私たちも検討し、再度御質問申し上げたい、このように考えております。  もう一点は、来年度の起債、それから交付金のひもつき財源、これをどのように考えておられるか。今は補助金等の問題が出たのですが、その点一つ聞かしておいていただいて、後日の質問の資料にしたい、こういうように思います。
  128. 茨木広

    茨木説明員 二点について申し上げたいと思います。  第一点の来年度の地方債の問題でございますが、これは現在一応現行の政府計画というものをどうするかという問題が一つあるわけでございます。その問題についてはなお各省間で検討中でございまして、結論を得ておりません。現在、来年度地方債計画を立てます上については、一応ことしの当初の額からさらに相当増額いたしましたものを相談いたしております。全体といたしましては、やはり現在の政府計画をどうするかということをきめました上で、その中を国庫補助地方債と、それから一般財源とでどういうふうに振り分けるかということできめるべき問題だろうと思っております。  それからもう一点申し上げたいのは、先ほどの税外負担の問題でございます。自治省責任だというふうにおっしゃいましたけれども、それについては多少異議がございます。やはり各省のそれぞれの責任がございます。国庫補助についての問題をどう考えるかという問題もあると思います。地方債あるいは一般財源等で考えていくべきもの、こういうものについては、自治省といたしましてもやるべきものについてはやったつもりでございます。その他について若干の問題がやはり残っておるんじゃないかというふうに私は考えております。  それから、税外負担が生じております問題については、国だけの責任というわけにもいかない問題があると思います。そこはいろいろ政府の力で計画いたしております高校急増の計画と各団体において行なわれております進行速度の間においては、それぞれ食い違いがあります。そこはそれぞれ政治の問題が入りますから、各住民の要望と各団体の財政のいろいろのやりくりがございますから、その辺の関係において、現実には資金を持っておりましても、それぞれの従来の慣例が寄付を求めておったから、新しくできる学校だけについて寄付を求めてはいかぬということも言えないようなところもあるようでございます。具体的にはそれぞれの事情によって、御意見のようなところもありますし、それからことしからさっぱりと寄付を取らないというような態度をとった府県もございます。それぞれ団体内容によって違っておるようであります。私どもの基本的態度といたしましては、やはり何としても寄付はやめてもらいたい、こういう態度を強くとっております。ただこれをやめます上については、いろいろ全体的な問題があると思っております。われわれが強く各省に要望しております国庫負担の、あるいは補助金単価の是正、こういうものについてもぜひやってもらわなければいかぬと思っております。そういうものをやっていただけぬからだんだんしわが寄ってきて住民に負担をかけていく、こういうことになろうと思います。やはりそういう問題については文部省についてもあろうと思っております。ですから、そういう問題について各方面の是正が行なわれませんと、国としましてはただ現存のワクの中で仕事をやらなければいかぬ、また住民の方の要望も非常にこの高校問題については強うございます。従って非常に無理をして学校をつくる、そこでそういうような問題がやむを得ず出てくるという点もあると思います。その辺のことは私の方の省としましても非常に努力をしております。その辺のところを一つ御了解いただきたいと思います。
  129. 床次徳二

    床次委員長 これで終わって下さい。時間がきましたから。
  130. 三木喜夫

    三木(喜)委員 地方の住民に要望があるということはよくわかりました。今の御答弁、全体についてよくわかったのですが、ただ自治省に一言だけ言っておきたいのは、要望もあるから一律にはいかないという考え方は、要望をようしないところはどうなるかということも自治省の頭の中にはなければいかぬ。この点はいずれ地方行政委員会で詳細に申し上げて御検討いただきたいと思います。  私は質問を保留いたしまして、時間がきましたのでこれでおきます。
  131. 谷口善太郎

    ○谷口委員 議事進行について。質問じゃなしに、私もきょう質問をやるつもりだったのですが、次会にやらせていただきますが、私の質問内容は、産炭地における教育事情ないし対策ということですから、次会に文部大臣はもちろんのこと、労働省、通産省、自治省などの関係の方に出ていただきたい、こういうふうに思いますからよろしくお願いいたします。
  132. 床次徳二

    床次委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十四日金曜日開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時九分散会