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参考人(
大野勝三君) それでは、
昭和三十六年四月から本年の三月に至ります一年間の数字を基礎にいたしまして、まず、営業の概況について申し上げます。
御承知のとおり、国際電信電話会社は、国際電信電話その他国際
通信全体を扱っておるのでございますが、その第一といたしまして、国際電報でございますが、三十六年度中に扱いました総数四百三十九万余通でありまして、前年度と比較いたしまして六分三厘の
増加でございます。加入電信は約五十四万度扱いましたが、これは前年度に比べまして三割七分の
増加でございます。国際電話は二十万余度扱いました戸が、これは前年度比較三分の
増加でございます。専用電信回線は二十五回線ございますが、この回線数もまた前年度に比較しますと八分六厘の
増加となっております。営業収入は、三十六年度におきまして八十八億八千三百余万円でありまして、前年度に比較いたしまして一割四分の
増加と相なっております。
国際電報、加入電信、電話とも、いずれも会社発足以来の一番多い取り扱い量を記録することとなっておりますが、これはこの年度における
日本経済の動向が国際
通信需要にも反映した結果にほかならないかと存じます。国際電報の取り扱い数を過去数年間について概観いたしますと、
昭和三十三年度を谷間といたしまして、以来順調な上昇を続けまして、三十六年度もほぼこの上昇過程を踏んだことになります。しかしながら、三十六年度を前後二期に分け、その動向を観察いたしますと、下半期の伸びの鈍化が注目されるところであります。これは加入電信業務の発展に伴う影響もさりながら、やはりわが国経済の動向に影響されるところがあったのではないかと考えられます。
三十六年度における加入電信は、対前年度比三割七分の
増加でありまして、これを三十五年度のその前年度の
増加率四割七分五厘に比べますと、その
増加率は若干低下いたしております。新しい業務といたしまして高い
増加傾向を示しておる次第でございます。しかしながら、三十六年度下期においてその
増加率が若干低下していることは、冬期の
電波伝播の悪化に伴う回線疎通力の減退の影響がおもなる原因と思われますが、そのほかに貿易の動向が影響していることも、無視できなかったと考えるのでございます。
国際電話は、三十六年度の取り扱い数が
昭和二十八年——すなわち会社発足の年でありますが——のころにちょうど匹敵する業績を示しております。二十八年度のころは、御承知のとおり特殊のコール数が非常に多かったので、割合に国際電話は繁忙でございましたが、その後やや漸減の傾向をたどっておりますのが、ただいま申し上げましたとおり、だんだんそれを取り戻してきておるという趨勢でございます。
専用回線業務は、会社発足当時わずか四回線を数えるのみでありましたが、以来国際航空路線の
拡充等に伴いまして需要が急速に
増加して参っておるものであります。
三十六年度取り扱い概況は以上のとおりでございますが、その後今日までの状況をあわせて考えますと、わが国の国際電気
通信は、一般貿易事情等にきわめて密接な関連を持つものであることは明らかとなるのでありまして、したがいまして、今後の動向もわが国の経済あるいは貿易の伸展いかんに非常に
関係して参ることと存ずるのでございます。
三十六年度中には、諸
外国との間に電信二回線、加入電信十回線、電話五回線、専用電信六回線、合計二十三回線の新しい回線を設けましたが、これによりまして同年度末現在の回線数は、電信が四十四回線、電話四十四回線、加入電信五十九回線、専用電信二十五回線、その他写真、音声
放送伝送、専用電話回線を含めまして総回線数が二百二十二となりました。これは会社発足当時の回線数に比較いたしますと、ほぼ三・八倍、四倍に近い数字になっております。なお、従業員は三十六年度中に新たに採用した者を含めまして同年度末総数三千五百二十八名となっております。
次に、会社の経理の概況について申し上げます。まず、三十六年度中の
収支状況でありますが、さきにも述べましたように、営業収入は八十八億八千余万円でありまして、その内訳は、電信収入七十七億三千余万円、電話収入十億七千余万円、そのほか七千万円となっております。さらに営業外収入二億六千余万円を合わせますと、総収入約九十一億五千万円となりまして、三十五年度の総収入に比べまして十二億円余の
増加となりました。一方、支出は七十一億六千余万円でありまして、前年度比較約八億六千万円の
増加となっております。
また、会社の
資産状況について申し上げますと、三十七年三月三十一日現在、
固定資産百三十七億二千余万円、
流動資産十七億四千余万円となっておりまして、そのうち
固定資産につきましては減価償却引当金約五十七億余円を差し引きますと、正味約八十億円余の資金となります。一方、
負債につきましては、
流動負債十六億二千余万円、
固定負債十八億五千余万円、この
固定負債のうちで十六億七千余万円は退職給与引当金であります。また、
資本金は創立当初より変更なく三十三億円でありまして、十九億一千余万円の諸
積立金を計上いたしております。
次に、太平洋海底線
建設関係について申し上げます。本海底線に関しましては、
昭和三十七年一月、郵政大臣の認可を得まして、
アメリカ電話電信会・社と
建設保守に関する基本協定の正式の調印を終わりました。そうして日米双方におきましてそれぞれの
建設の準備を進めておるところでございます。
日本陸揚げ地点と予定いたしております神奈川県二の宮に所要の土地を先般購入いたしまして、今後この二の宮陸揚げ地点から東京の関門局との間におきます連絡線の
建設、あるいは陸揚げ局の
施設、関門局における端局
施設などの連絡
施設の
建設をいたすこととなるわけでございます。
本
建設のための所要の資金は、総額約百三十五億円でありますが、そのうち海底線
関係で対米支払いに充当いたします二千五百万ドルの金、これは邦貨に換算いたしまして九十億円でありますが、この外貨二千五百万ドルは、先般米国金融機関と借款の協定が成立いたしまして、近く調印の運びとなっております。さて、この太平洋海底線でございますが、ただいまのところ、一九六四年、すなわち明後年の四月に開通の見込みと相なっております。この海底線が開通いたしますれば、対欧米国際電気
通信疎通上には画期的な効果をもたらすものと
期待いたしておる次第でございます。
宇宙
通信に関する試験研究につきましては、社内におきまして種々取り進めておるのでございますが、去る六月郵政大臣より正式に試験の開始についての御指令もあり、米国航空宇宙局と
日本国
政府との間に衛星共同利用等について近く取りきめがかわされるやにも伺っておりますので、それらが整いましたら、当社といたしましても、すみやかに実験体制を整備したりしまして、実験に着手することになる、そういうことにいたしたいと存じております。実験に必要な土地、機械
施設等につきましても、ただいまそれぞれ手当て中でございます。
以上簡単でございますが、概況を御
説明申し上げました。