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国務大臣(
田中角榮君) 山際総裁が
衆議院の
大蔵委員会でどういうふうに御発言になられたかはつまびらかにいたしておりませんが、ちょっと私たちの先ほどの
答弁に不足があったようでありますから、あらためて申し上げますと、国際収支が確かに逆調になって、国際収支の均衡をはからなければならなくなったことは御
承知のとおりであります。そして、一年ばかりの間に確かに国際収支の均衡も保てるようになり、数字的には国際収支がすでに均衡したんじゃないかという
議論もありますけれ
ども、その過程において、国際収支の均衡を保つために出血輸出を奨励したというようなことはございません。これだけははっきり申し上げておきます。おそらくはそういう行政指導もいたしておりませんし、またそういう考えは毛頭ありません。そうでなくても、
日本の
品物はどうも薄利多売で、安かろう悪かろうと言われておる状況から考えまして、いい
品物を合理的な
価格で輸出をすることこそ奨励をいたしておりますし、そういうことでなければ国際信用をつなぎ得るゆえんではありませんから、オールマイティなものの考え方で、輸出の体質改善をしながら国際的な経済競争に打ち勝っていきたいという考え方でありますから、過渡的な現象としてでも出血輸出を奨励したような事実は全然ございません。しかし、先ほ
ども御発言がありましたように、一、二の例をとってみても、出血輸出じゃないかというように見られるところもあるじゃないかという御説に対しては、確かに過去の
日本の輸出の中には出血輸出というような面がなかったとは断じ得ませんと。こういうものは早急に直していかなけりゃならない。本質的に
日本の輸出産業の体質改善や底力をつけることに努力をいたしたいということを考えておるわけであります。
それから、山際さんの発言で申された、国際収支も、
昭和三十六年の十二月には——三十五年の初めにはピークで二十億
ドルの手持外貨があったと思いますが、それが三十六年の十二月には十四億八千六百万
ドルといううような非常に低い数字まで落ち込みまして、過去一年間を通じてみると十億
ドルも輸入がふえたじゃないかという御説があったことは、御
承知のとおりであります。そういう
立場から、国際収支の均衡ということをはかり、五月には統一見解も発表しながら今日まで参っておりまして、七月の末では手持ち十六億三千五百万
ドル、また六月の末には、経常収支の尻において非常に差が縮まりまして、赤字四百万
ドル、これが七月には二千二百万
ドルの黒字になっておる。これが普通の状態からいいますと、六月、七月、八月、九月ころは非常に輸出としては時期が悪い時期でありますけれ
ども、そういうときにさえ輸出が伸びておりますので、輸出好況期にある九、十、十一、十二月までは十分例年よりも以上に輸出が伸びるでありましょう、こういう
政府見解を明らかにいたしております。そういう意味で、
昭和三十七年の三月末に対しては、輸出は四十七億
ドルよりも確かに上向きになるであろうと思いますし、四十八億
ドルで押えられるかどうかわからないという
議論をさられておった輸入も、四十八億
ドル以下で押えられて、双方の尻で二億六、七千万
ドルの赤字を予定しておったものが、少なくとも一億
ドル以上、これは差は縮まるだろう、もう少しよくするようにしなけりゃいけないのじゃないかというふうに考えております。
もう
一つ、ちょっと申し上げますと、その出血輸出をしたために輸入も非常に抑えておるのじゃないか、そういうことをやっておると、いやでも応でも出血輸出をまた続けていかなくちゃいかぬし、その上なお輸入を抑えますと、自由化に対応できない。これはもう非常に深刻な御発言でありますが、私たちがきょうの経済閣僚会議でもって数字を発表いたしましたものは、昨年の五月、六月、七月、八月、九月までの間に、約五億
ドルに近い輸入がふえておるわけであります。この輸入は、原材料、中に二、三——二億
ドル以上思惑輸入というか、いずれにしても自由化に対応した原材料の輸入が促進せられたために、大幅な外貨の赤字があったわけであります。でありますから、現在の段階で考えますと、国内消費というものはもう頭打ちになっておるようでありますし、輸出は順調に伸びておりますが、その反面、去年の飛び込み輸入といいますか、思惑輸入といいますか、去年非常に輸入をした在庫を食いつぶして現在の輸出が行なわれておるのでありまして、現在私たちが考えておるような、期末までの輸出輸入のバランスが今のように順調にいくであろうというものの考え方の中には、自由化によって輸入が伸びるであろうということも算に入れての計算でありますから、今の
政府の考え方で、輸出を伸ばすためには、国内を犠牲にしようとか、それから輸入を特にケース別に押えていこうというような考えのないことを明らかにいたしておきます。