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1962-08-24 第41回国会 参議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月二十四日(金曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————   委員異動  八月二十三日   辞任      補欠選任    亀田 得治君  野溝  勝君  八月二十四日   辞任      補欠選任    津島 壽一君  熊谷太三郎君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐野  廣君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            永末 英一君    委員            青木 一男君            太田 正孝君            川野 三暁君            熊谷太三郎君            田中 茂穂君            高橋  衛君            林屋亀次郎君            日高 広為君            堀  末治君            森部 隆輔君            大矢  正君            佐野 芳雄君            柴谷  要君            野々山一三君            大竹平八郎君            鈴木 市藏君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   政府委員    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵政務次官  竹内 俊吉君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    大蔵省理財局長 稲益  繁君    通商産業政務次    官       上林 忠次君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    通商産業省企業    局次長     高島 節男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業投資特別会計法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 佐野廣

    委員長佐野廣君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  昨二十三日、亀田得治君が辞任、その補欠として野溝勝君が選任せられました。また、本日、津島評一君が辞任、その補欠として熊谷太三郎君が委員に選任せられました。   —————————————
  3. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、昨二十三日衆議院から送付せられ、本委員会に付託されました。  それでは、これより本案質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言願います。  なお、ただいま出席政府委員は、大蔵大臣田中角榮君、通産政務次官上林忠次君、大蔵省理財局長稲益繁君、同じく主計局法規課長上林英男君、外務省アメリカ局長安藤吉光君、以上でございます。  本日はお暑いときでございますので、委員の方、政府側の方も、どうぞ上衣を脱いで御審議をお願いいたします。
  4. 大矢正

    大矢正君 私は、産投会計改正案の具体的な質問に入ります前に、政府側に一点だけただしておきたいことがあります。それは、産投会計改正案でありますから、この法案を通してもらいたいという、そういう強い希望の立場というのは中心が大蔵省になることと私は思うのでありますが、大蔵省の一体これはどこが責任を負っておられるか、この産投会計法改正案に対して。
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと御質問趣旨が明らかでありませんが、大蔵省の各部局をいうのでありますか。大蔵省における産投会計最終責任は私が負っております。
  6. 大矢正

    大矢正君 それじゃ、大臣、あなたが責任を持っているわけでしょうからね。実はこの委員会産投会計改正案提出されて——もちろん政府側からでありますが、提出をされておるのでありますが、今までこの産投会計法改正案に対して大蔵省からどんな資料を出されたのか、今度の国会に。まず、それからお伺いしたい。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 委員各位からの御要求資料は全部提出をいたしております。
  8. 大矢正

    大矢正君 この資料要求というのは、委員要求しなければ出せないものですか。と申しますことは、これはもちろん私も先般の委員会で、初めて提案理由説明がなされました際には、資料要求をいたしました。しかし、今日まで出されているものは、衆議院における一、二の資料、これは私の手元にありますけれども、これだけであります。法律を通してくれというのは政府側であり、そして大蔵省でしょう。そうすると、法律を通してもらうからには、具体的にその経過にどうなのか、内容はどうなのかという資料を、もっと積極的に出してもらわなければいけないのではないか、私はこう思うのです。御存じのとおり、確かに産投会計改正案というのは第四十国会に引き続いたものでありますから、そういう意味では前の国会にも多少の資料は出ておりますが、しかし、御存じのとおり、参議院半数改選が行なわれまして、私ども社会党半数大蔵委員は新しく当選をされてこられた方なのであります。私自身も、前の国会のときには文教委員長でおりましたために、大蔵委員会には委員になっておらなかった。そういう立場から考えてみましても、衆議院は別としても、参議院だけはこの産投会計改正がなぜ必要なのかという資料や、そしてその経緯や、そういうものの資料をもっと大蔵省は積極的に出す必要性があるのじゃないですか。政府が通してくれというのだから、議員立法じゃないのですから、政府が通してくれというからには、それに対する、要求するとしないにかかわらず、資料をやはり出すべきじゃないですか。何にも出してないですよ、まだ。もちろん、私たちが要求した資料はまだできてきておりません。大蔵大臣、あなたどう思いますか。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大矢さんの言われる御趣旨はよくわかりますが、これは国会政府との法律上の関係でありますので、政府とすれば、法律で定めておる法律案提出をすることでなくてはならないのであって、今までの経過説明するような書類は、常識の上では、参考資料として、半数改選があったのでございますから、御提出を申し上げることがいいのかもわかりませんが、これは法律に基づいて院の要求のあった場合に出さなければならないということでありますので、御要求があれば、できるだけ早い機会に取りそろえて提出をいたします。
  10. 大矢正

    大矢正君 まあ私は、あなた方のほうは一日も早く法律を通してくれと、こう言っているのですから、そうすればですね、私ども要求するとしないとにかかわらず、もっと積極的なやっぱり立場に立ってね、こういう資料も出すからひとつ検討して早く通してくれという立場がほんとうじゃないでしょうか、大臣。私はそう思いますよ。これはね、大蔵省に限らず他省でもそうだと思うが、資料を出し渋って出さないということは、意識的にあまり論議をしてもらっちゃ困るというそういう先入観念があって、出す資料によってさらに論議が発展しちゃ困るというそういう気持があるのじゃないかという気が私はしますがね。まあ私はそのことについてはあまり時間をかけるわけにいきませんから、私は強く大蔵大臣に、これからは、政府側の出す法律ですからね、もっと積極的に参考資料提出すべきだと、こう思います。  そこで、私は、きょうはこの産投会計審議の初めてでありますから、あまり具体的なこまかい問題に立ち入ることは、これからの審議関係上かえって困ると思いますので、一般的な概括的なことの、特に問題点だけをあげて、それぞれの御答弁をいただきたいと思うのでございますが、まず第一にお伺いをいたしたいのは、終戦直後から昭和二十六年までの間続けられたこの対日援助——という華がはたして妥当かどうか私も疑問がありますが、俗称対日援助といわれておるガリオア・エロアというものは、当時アメリカのどういう予算項目から出されているのか、この点質問いたします。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府委員から答弁をさせます。
  12. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 概括的に申し上げます。ガリオアといわれるいわゆる対日援助は、アメリカ陸軍軍事予算法から出ております。ただ、そのガリオアを規定いたしました陸軍の一九四七年陸軍軍事予算法、それができます前わずかの間プレ・ガリオアというものがございます。これはやはり当時の米国陸軍予算によりまして民間供給という項目がございまして、それから出ております。それから、いわゆる俗にエロアということがいわれております。これは一九四九年の同様の陸軍予算法の中にやはりガリオアという項目の中で、経済復興産業振興のためにも使い得るという項目が一つ追加されまして、さらにそういった物資が入ってきたというわけでございます。
  13. 大矢正

    大矢正君 また今のあなたの答弁からいくと、軍の予算と、こういうお話ですが軍のどういう予算から出ておるのですか。
  14. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ただいま申し上げました、毎年々々陸軍軍事予算米国できまるわけでございます。その予算の中にガリオアといいます、ひとつ英語で恐縮でございますが、ガバメント・アンド・リリーフ・イン・オキュパイド・エリアズという項目がございます。その項目の中にいろいろな支出目的が書いでございます。大体行政費的なものがだいぶあるのでございます。その十四くらいある項目のたとえば一九四七会計年度のやつをとってみますと、その項目の十四番目くらいに、占領地救済復興に使い得るというのが書いてございます。それによりましてこの対日援助というものが行なわれたわけでございます。
  15. 大矢正

    大矢正君 陸軍予算から支出をされておると、こういうことでありますとですね、結局これは占領目的遂行のために、あるいはそういういわば経済的な危機食糧危機というものが、駐留をしているその国の治安に重大な影響を与えては困るというそういう立場からの、占領目的遂行のために支出をされたものだという、一般的にはそういう解釈を私は持つのが当然だと思うのでありますが、その点はどうですか。
  16. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 広義におきまして、米国占領しておる場所におけるその住民のいわゆる飢餓、これを救う、これを救済するという大きな目的があることはもちろんでございます。ただ、この今申し上げました陸軍予算というのは、毎年々々審議されたのでございまするが、その審議の際いいろいろなことが言われております。それで、ある場合におきましては、向こう国会におきましては、この援助は必ず返すというそういう条件をつけなければいけないというふうな議案が提出されました。しかし、そういうことをすれば、これは非常に固くなって、一銭一厘といえども取り返すということになるから、それはいけないということが言われると同時に、こういった援助日本に対し、あるいはドイツに対する援助は他日返済される、何らかの形で返済されるものだということを、いろいろ審議過程におきまして政府当局証言いたしております。  そのうちの有名なのは、まあ御存じの、昭和二十二年だと記憶いたしまするが、マッカーサー元帥声明を出しまして証言をいたしております。その証言に、米国予算からの支出日本債務となるということを言っておりまして、それは当時司令部からも発表されておりましたし、また日本の新聞にも大きく出ていたのでございます。  これらの経緯を見まして、こういったものは返す、何らかの格好で返済されるものだということが、当初から向こうほうでも言われてきたわけでございます。
  17. 大矢正

    大矢正君 この点は、実はあとからの私の質問と関連をして参りますから、一応ここでとめておいて、あとでもう一回質問をいたします。  次に、この対日援助総額というものにつきまして、アメリカがいう数字と、それから日本政府が積み上げた数字というものの間に、最後まで一致点が見出されなかったはずでありますが、その経緯についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) アメリカ側の計上して参りましたのが十九億五千万ドルであり、日本側通産省証憑書類その他によって得たものは十七億九千五百万ドルでありまして、その数字に対して突き合わせを行ない、最終的には別な数字決定をいたしておりますが、その間の詳しい事情に対しては通産当局をして御答弁いたさせます。
  19. 高島節男

    説明員高島節男君) ただいま大蔵大臣から御答弁がございましたが、若干補足いたしますと、アメリカ側のほうで、決算資料としまして、決算をベースにいたしました対日援助額であるとして出して参りましたのが十九億五千四百万ドルという額でございます。それに対しまして、通産省のほうで、当時占領中でございますし、援助の範囲、その証憑書類、非常に苦労いたしましてかき集めまして、一応計算を立てました総額が十七億九千五百万ドルということでございます。そしてその両者を突き合わせるという感じではむしろございませんで、その二つの数字が出て参りましたから、十七億九千五百万ドルというものを一つのスタートとして、アメリカ側のほうも日本側のほうも、これは百パーセント返済するわけではなかろうという観点から、日本側数字を基礎として話を進めていったという経緯になっております。先方の十九億五千四百万ドル、これに対しまして当方の作業いたしましたものが十七億九千五百万ドル、こういう過程であります。
  20. 大矢正

    大矢正君 外務省の方、ちょっと質問しますがね。あとへ戻るんだけれども、さっきのアメリカのどういう予算項目からこの金が支出をされておるかということと関連して、あなたの答弁では、昭和二十二年にマッカーサーが、これは日本側にとっては将来債務となるものであると、こういう声明をされたとおっしゃるのですがね。それでは、昭和二十二年にマッカーサーがそういう声明をされる以前は、一体日本側はどう考えておったのですか。
  21. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) お答え申し上げます。  そもそも、この対日援助物資日本に渡されますときに、向こうからスキャッピンといわれる覚書が出ております。その覚書には、その支払い方法及び経理については後日決定するというのが出ているわけであります。要するに、後日何らかの形において支払い金額あるいは条件等をきめて処理されるものだということが、当初より向こう指令ではっきりしているわけであります。日本政府はそれに基づきまして、物を受け取って、そして受取書を出しているわけであります。で、いわゆるスキャッピンによるそういった明確的なことがはっきり出ているわけでございます。これは性格的に当初よりこれは無償のものではない、後日支払い条件及び経理をきめるということが書いてございます。ただし、初めから向こう贈与であるといったたとえば学童用脱脂ミルクなどについては、はっきりこれは贈与であるということを書いてあります。したがいまして、贈与の分は、これは削除したということははっきりしております。また、その根本におきまして、昭和二十年に連合国最高司令官に対する初期の対日政策あるいは極東委員会決定、そういったものがございます。これには日本輸出代金は非軍事的輸入のほうの返済に充当されるものだという趣旨のことが言われております。  これら以上申し上げましたような点から、この対日援助物資は当初より無償のものではなくて、後日何らかの形において処理されるものだ、いわゆる支払い条件及び経理は後日きめるべきであるという性格のものである、これを承知の上で政府でもおったわけであります。
  22. 大矢正

    大矢正君 そうすると、アメリカ側のそういう、いうならば通告なり、それからまた覚書というものに対して、日本政府側からも何らかそれに対して意思表示があったのですか。
  23. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ただいま申し上げしたスキャッピン、そういった今申し上げましたような支払い条件及び経理は後日決定するということははっきり書いてあり、それを承知の上で受取書を出したということは、それ否定しなかったということになるかと思います。  と同時に、当時の経緯を見てみますと、当時は終戦食糧生産等は半減し、何百万という日本人が外地から帰ってきて、御記憶のとおり、当時の日本食糧事情は惨たんたるものでございます。歴代内閣は総司令部に対して食糧輸入というものを懇請して参ったわけでございます。日本の懇請に対して向こうはそういった援助をしたという経緯もございます。  以上申し述べましたような観点から、この援助というものは、当初よりいわゆる債務性を持ったものであるということがはっきりうたわれておるわけです。ただし、全額をそのまま返すわけではなくて、したがいまして、いわゆる債務性は持っておるが、そのまま直ちに全部債務となるわけではございません。
  24. 大矢正

    大矢正君 私が聞いているのは、日本側から当時のアメリカに対して、あなた方の意思は将来返してくれということなんだがということについて何らかの意思表示をしているのか、していないのかということです。政府があったんでしょう。日本の国は政府がなかったわけじゃないでょう。政府があったのに、その政府アメリカ意思表示をしていないということはないわけでしょう。しているでしょうそのことをお聞きしている。
  25. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 御指摘の、日本政府は明らかに手紙とかあるいは公文書をもちまして、債務と心得ますとか、あるいは処理いたしますとか、そういったことがあるとは承知いたしておりません。しかしながら、私が今るる申し述べましたように、そもそもこの援助というものが歴代政府の要請によってなされたという経緯もございますし、それから向こうから来ましたスキャッピンに先ほど申し上げましたような支払い条件及び経理については後日決定するということが書いてある。それをちゃんと承知の上で当時の貿易庁責任者がこれに対する受取書を出しているということによりまして、日本政府もやはりそういった性格のものとして受け取っておるということは言えるかと思います。
  26. 大矢正

    大矢正君 あなた、冗談じゃないですよ。受取書を出すのはあたりまえでしょう。品物向こうから受け取ってきて、私は受け取りましたというのはあたりまえでしょう。私はそんなことを聞いているわけじゃない。受取書を出したか出さないか。品物をもらって受取書を出さないばかはおらぬですよ。向こうだって、やったのだから、渡したのだから、それは債務だろうがあるいは債務でなかろうが、渡したからには受取書を取るのはあたりまえでしょう。どこへ行っているかわからないですよ、受取書をもらわなかったら。だから、そんなことを聞いているのではなくて、日本政府というものがあったのだから、その政府アメリカのそういうもの対して、渡しました、それじゃ一時お借りいたしましょう、将来その返済については私どもも考えて払いましょう、そういうものがあったのかなかったかということを聞いている。大蔵大臣、どうです。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたとおり、昭和二十一年七月二十九日付で総司令部覚書一八四四−A号で、この物資に対しては支払い計算に対しては将来行なうという一方的条件が書いてありました。しかし、それに対しては、政府はこれに対してその覚書を順守して将来行ないますというような意思表示は全然やっておりません。また、その後の昭和二十一年から二十四年にわたって数回アメリカ議会その他において行なわれたマッカーサー元帥及びヴォルヒーズ陸軍次官補その他の証言においても、政府としての公式見解も全然先方に通じておりません。日本政府はこの問題に対して債務と心得るというふうに申し上げたものは、従来一貫して、国会審議過程において御質問等に対して、時期が来れば何らかの形で処理または返済をしなければならないものでありましょうということを国会において申し上げておるだけであって、相手国に対する意思決定はその間においてはございません。
  28. 大矢正

    大矢正君 そうすると、国会はあったけれども政府はなかったということになるんじゃないですか。政府は何も意思表示をしていない、国会意思表示したけれども。もっとも国会意思表示はずっとあとです。国会あとになって意思表示をしたけれども政府は何も意思表示しないままに受け取っていた、こういうことになる。これはおかしいと思いませんか。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、昭和二十一年から二十四年時代は占領軍治下にあるのでありまして、占領軍からは日本政府に対しては一方的に指令が出されておったことは御承知のとおりであります。これはこの問題だけでなく、追放の問題でも、すべて一方的なものが出されておったわけでありますが、この問題は後日両国において何らかの形でもって支払い計算等を行なうということしか記載してなかったのでありますから、政府は、こちらが払えるような状態が来るまでは、これに対して公式見解向こうに通じなくても一向差しつかえないという態度をとっておったわけであります。
  30. 大矢正

    大矢正君 そのときに、日本側政府を代表して、当時の駐留軍アメリカとその問題について話し合ったことがあるのですか。たとえばマッカーサー声明もしくはその以前の、これは将来日本債務となるものであるからまあ返してもらわなければならぬことになるだろう、こういう意思表示に対して、日本政府側は話し合ったということがあるのですか。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私の知る限りでは、昭和二十八年の十月、池田・ロバートソン会談で本件に関する交渉を行なう旨意見一致をしたということ以前には、そのような公式の問題は全然ないように聞いております。
  32. 大矢正

    大矢正君 私は、大臣は今度逃げ場を政府から国会のほうへ持ってきて、あたかも国会というものがそれじゃ自主的な立場を表明したり、それから自分意思表示を当時の駐留軍に対してできるような、アメリカに対してできるようなふうにあなたは逃げてこられてきているようだけれども、私はやはり政府自分がみずからの意思に基づいて、アメリカがどう言おうと、政策を行なうことのできなかったという当時の情勢は、国会も私は同じだと思うのですよ。それに対して、政府がいささかもそのことに対して全然みずからの意思を表明しないというのは、極端なことをいえば、政府がないと同然じゃなかったですか。人はいたかもしれないけれども政府はなかった。日本国政府というものは事実上なかったのだ。人間はおったけれども、なかったということを言われても仕方がないのじゃないですか。どうです。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうも考えません。これは占領軍治下における特殊な事案でありますし、占領軍司令部覚書に、明らかにそのような字句が書いてある。また、当時の日本政府も、国の現状として援助物資の急送を要請しておったのでありまして、あえてその決済方法その他に対にして、当然これが債務となる場合には、国会承認を憲法上得なければならない問題でありますし、向こう覚書にもその後の議会における発言にも、いつの日にか、何らかの方式で計算及び返済等の問題に対して検討すると一方的に言われているのであって、日本政府援助物資を受け取るほうが現実的に急であって、覚書に対する日本政府公式見解、非公式でもこれを発表しなければならないというような段階になかったと思いますし、今までの記録にはそのようなことは、国会において例の質問に対する発言以外には全然なかったと考えます。
  34. 大矢正

    大矢正君 政府のほうが合意点に達して支払うということをきめて、その協定国会承認をしたから、話は別ですけれども、もし国会がこの協定承認しなかった場合のことを考えたら、どう思いますか。もし、国会がそんな協定承認できないという態度の表明を行なったら、一体この問題はどうなるのですか、結果としては。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは承認をいただいたので、非常に政府としてはありがたいのでありまして、承認がされないというようなことはたいへんなことであります。しかし、両国間における協定書には両国の国内的手続を全部終わってということが前提になっておりますので、明らかにこの協定発効に対しては国会における議決を前提としております。
  36. 大矢正

    大矢正君 そういうことを聞いているのじゃなくて、もしかりに国会がこのことを承認しなかった場合には、結果としてはどういうふうになっていくのか。この債務はどういうふうになっていくのか。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 承認をいただいたのでありますから、承認をされない場合というと全然将来の問題になりますが、この種の問題、国が債務を外国に負う場合には、憲法上の、憲法八十五条であったと思いますが、この規定における国会の議決がなければ支払いができないということになります。
  38. 大矢正

    大矢正君 国会がもし否決をして支払うことができないということになった場合には、そうすると、ガリオア・エロア対日援助というものの内容はそのあとは一体どういうふうになっていくのですか。もし国会が、とてもこれは払えませんと、こうなった場合には、どういうことになります。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは現実的に国会は議決をして協定承認いただいたのでありますから、もし得られない場合というのは、ガリオア・エロアに関しては全然ないわけであります。この種の問題が将来起きた場合の仮定論しかお答えができないわけでありまして、ガリオア・エロアに対しては、協定承認を受けているわけでございます。産投会計法改正法案が通らなかったという場合は問題になりますが、協定に対しては前国会で議決を経ておりますので、このような議論は起こらないと考えます。
  40. 大矢正

    大矢正君 あなたの言うことは一般論ばかり言って、だめだから、当局でいいから、外務省でもいいですよ。これは日本国会がだめです、こういうことになった場合には、その問題はどう発展していきますか、その場合はどうなるかということを聞いている。
  41. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ただいま大蔵大臣が申されましたとおり、戦後対日援助に関する協定は前国会の御承認を得ております。したがいまして、この協定そのものはもう国会承認を受けておるんでございますから、そのような議論は対日援助に関する限りはないと思います。
  42. 大矢正

    大矢正君 私は、このガリオア・エロアの返済協定がどうのこうのと言っておるんではないですよ。一般論として、もし協定というものが国会承認を得られなかった場合にはどうなるんだということを聞いておるんです。それにどうして答弁できないの。おかしいじゃないの。
  43. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 一般論といたしまして、条約あるいは協定、しかもこういったもので国会の御審議を必要とするといった性質のものは、かりにその条約あるいは協定が署名されておりましても、批准手続が通らないことになりますから、その場合は……。
  44. 大矢正

    大矢正君 私の聞いておることは、そんなことはわかり切っておるはずだ。子供じゃないので、そんなことはわかっておる。その後どうなるか。対米債務というんだから、それはどうなるか。払わなくてそのままだらだらいつまでもいけるものですかどうかということを聞いておる。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国と国との債務に対しては、憲法で明らかに処理方針がきまっておるわけでありますから、これに対しては協定政府間で行なった場合は、この発効は憲法の条章に基づいて国会の議決を経なければならぬ。でありますから、国会において承認ができない場合には、事務当局も私も答えましたとおり、憲法上の条件が具備せられないわけでありますから、債務として支払うことはできないことになります、こういうことを言っておるわけであります。しかし、ガリオア・エロアに関しては、前国会で憲法の条章に基づく議決が行なわれておりますので、そのような問題は起こりません、こういうことです。
  46. 大矢正

    大矢正君 そんな答弁では納得しませんよ。そんな答弁では、決して私は納得しませんよ。私が聞いておるのは、法律の内容を聞いておるんではない。承認されなかった場合にはどうなるのかということを聞いておる。いいですか。債務と心得ると、政府はそう言っておるけれども、われわれは債務だと思っていない、もちろん。あなた方が心得ておるだけでしょう。債務と確定したのは、日米間の協議が合意点に達して、しかも協定が批准をされて、初めて債務になったわけですから、正確にいうと、それまでは債務と心得ていた、債務と感じていた。池田さんの答弁もそうでしょう。いつも心得ておる。債務と感じておる。感ずるとか心得るという答弁は、大体おかしいんですけれども、しかし、それで押し通してきたんだから仕方がないけれども、いずれにしても、私の言うのはそうならない以前の段階の問題で、なった場合はどうなるかと聞いておる。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御発言の要旨がよくわかりました。現在の段階ではない。いわゆる昭和二十一年、二十二年当時品物を受けておる、いわゆるこの覚書を一方的にもらいながら、どんどん受けておって、これが債務だと心得て、まあ時期的にはあとからでありますが、債務と心得ておるという考えで国会承認を受けなかったらどうなるかということでございますが、それは当然協定国会を通過しない場合には支払うことができない。また、相手方も日本の憲法を知っておる問題でありますから、両国間の批准が国会議決手続が行なわれなければ、この債務は返ってこない。これはあにこの問題だけではない。一般的な対外問題全部そうでありまして、両国の国内手続が終わらない場合は返ってこないかもしれないということを前提として、一方的に急送しておったわけであります。
  48. 大矢正

    大矢正君 アメリカ局長ね、今のお話のとおりに、協定合意点に達する以前において、国会承認を得られる以前においての話のことを、仮定にして今大臣が御答弁下すった。私もそういう趣旨質問だったんです。そこで、もしこの問題について、日本側は払えないと、これは払えませんと言った場合に、この問題はどういうふうに発展をしていきますか。もし日本側政府が、政府もそれから国会も、もし払いませんと、こういう状態になった場合には、これはどういうことになるわけですか。
  49. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 先ほど申し上げましたように、この対日援助性格というものが、最初から支払い条件及び経理は後日決定するといったような条件でわれわれは受け取っていた、そういった性格のものでございます。したがいまして、これは何らかの形で処理しなければいけない。いわゆる後日時期が来れば債務額を確定し、支払い条件等をやはりきめて、そして処理しなければならぬといった性質のものであったわけでございます。したがいまして、やはりそういった性格のものでございまするから、われわれとしてはこの処理ということがなされることが最も必要であり、したがいまして、前国会におきましても十分御審議を願いまして、その債務額を正式に確定していただいたわけでございます。
  50. 大矢正

    大矢正君 まああなたの言っていることは、協定がもう承認されたから、だから要は承認されたという前提に立ってものを考えろと、こういうことなんで、あなたの言うのはそうでしょう。もう承認されているじゃないか。されているものをもう今さら何を言うんだという、そういうあなたの表現からいくとそういうふうになる。まあそれはそれで仕方がないと思います、あなたの言うことは。しかし、いずれ私はこの問題はもう一度具体的に質問をいたしたいと思うんですが。  そこで、先ほどこのアメリカの対日援助総額というものは十九億五千万ドル、それから日本側計算をした対日援助総額というのは十七億九千万ドルだと。両者に金額における、援助総額における食い違いが出ていますね。しかも、それは最終的に協定をされても、なお残ってますね、この食い違いは、援助総額の食い違いは。これは援助総額一致できないで、それで債務だから支払わなければならぬといって急いで支払わなければならぬものですかね。たとえば、われわれが借金しておる。何ぼ借金したんだかわからないと、こっちの言い分と向こうの言い分と違っているんだと、にもかかわらず借金は払いましょうなんていうことは、これは普通、あなた、通用する話じゃないでしょう。援助総額に対する開きはそのままぶん投げておいて、そして支払いましょうという協定はおかしいと思わないですか。
  51. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたとおり、確かにアメリカ側決算数字十九億五千万ドル余と日本側政府の、日本側で集計をした十七億九千万ドル余との間には開きがあります。これに対しては、全然その両国の数字が一銭一厘も違わないようにまず総ワクを決定しなければ支払いに関して協定が行なえないということにはならぬと思うんです。これはまあ理想的には両方ぴしゃっと合うほうが一番いいのでありますが、いずれにしても、総額払うという考えではなく、引くものは全部差し引いて、合理的な数字の基礎に立って、その間の何割しか最後まで払わないという立場に立って協定を行なっておるのでありますから、総ワクに対して理想的には両方の意見が一致しなければならないと思いますが、実際の支払い総額の誤差というものがそう不可分の関係があるとは考えておりません。
  52. 大矢正

    大矢正君 大臣、あなたね、両者の間の援助総額の開きというのは一億六千万ドルですね。これは五百億円以上の金ですよね、一億六千万ドルですから。そうすると、五百億も六百億もの膨大な、両者に対日援助を受けた内容の相違があるんですよ。五百億以上も。あなたは一年間に二兆四千億とか二兆八千億とかいう膨大な金ばかりを計算しているから、五百億ぐらいの金はたいした金にならぬかもしらぬけれども、しかし、五百億以上の金といったら、一般の国民に感じさせればたいへんなものですよ。一億六千万ドルなんてドルで言うからわからないけれども、具体的に日本の円貨に換算していったら五百億も、金が入ったのか、受け取ったんだか受け取らないかわからないなんていう、そんなどんぶり勘定で国民が納得すると思いますか、大臣
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたの言うことよくわかりますが、それと今度協定されたものとの関連に対しては、あまり関係がないように考えます。(「冗談じゃないですよ、とんでもない」と呼ぶ者あり)十九億と十七億です。五百億違うということは、元来この中には、御承知のとおり、初めから贈与というような粉ミルクとか学童用給食とか、そういうものがあって、実際の計算無償であるというようなものの総額を、こちらで計算したものでありますが、四千九百万ドルというようなものを差し引きまして、そうして実際受け取ったものは十七億四千六百万ドルという数字を言っておるのでありますから、いわゆる十九億五千万ドル払った場合は、これはたいへんですが、そうじゃなくて、払うのは四億九千万ドルなんです。今の日韓交渉においても向こうは十何億ドルと言っておりますが、こちらは七千何百万ドルとか、新聞のあれで大きな開きがありますが、この数字がぴしゃっと合って、裏づけの証票が全部合って、両国が何億何千何百何十何万何千ドルという数字までやらなければ協定をしてはならない、協定は非常にたいへんだというような考えにはならないと思うのです。
  54. 大矢正

    大矢正君 あなた、十九億五千万ドル、すなわち援助総額というものと、協定によって成立をした十五カ年間における支払い総額というものと直接関係はないとおっしゃるけれども、それはそうじゃないのですよ。援助総額が幾らであったのかという数字がまず議論をされて、それを積み上げてそういう数字になって、お互いに話をされたのじゃないですか。腰だめでもって、どのくらい払うか、片方は六億ぐらいでいいだろう、こっちは四億ぐらいでいいだろうということできめたのじゃないですよ。援助総額は幾らになるか、それじゃ日本はどれだけ払ってもらえるか、あるいは払うのかという話をきめたのじゃないですか。あなたの話を聞いていると、四億九千万ドルはさっぱり関係ないように言っておられるが、私はそれじゃ聞いておられない。
  55. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 関係がないと言っているのじゃありません。向こうからは十九億五千万ドル余、こちらから出たのは十七億四千六百万ドルということで、お互いがその間の事情を十分説明をし合い、理解をし合って、その中から差し引くものは差し引き、あとからも、きっと御承知だと思いますが、韓国に送られたものとか、沖繩に送られたものとか、その他のものをずっと引いてきて、四億九千万ドル十五カ年の分割払いということをきめたのでありまして、向こうが提示をした十九億五千万ドルというものをそのままのんで、それを基準にして、現在今四億九千万ドルをはじき出したのではありませんので、一番初め十九億五千万ドル、こちらが十七億四千六百万ドルという数字の開きがあったことは、二人以上の複数の間にこの種のものを交渉する一番初めの段階においては、この種のケースは間々あることだと申し上げたのであります。
  56. 大矢正

    大矢正君 間々あることだなんてあなたに言われて、引っ込んでいるわけにはいかない。通産省に対する質問になると思うのですがね、さっき外務省の話によると、品物を受け取ったものは全部受取書を発行した、こう言っているのですよ。それはそうすると、その受取書というものは、全部今日なお残っているでしょうね。もちろん、これは昭和二十四年三月以前の話です。
  57. 高島節男

    説明員高島節男君) 先ほどお話しの、品物を受け取りましたときは受け取りを出している。受け取りを出しておりますうちでの、おそらく御質問趣旨は、それが今日に残っているかということでございましょうか。ちょっとそこのところは、今日そのデータが通産省に残っておるかどうか……。現在どれだけのものが援助であったかということの判定、これが非常に証拠書類上困難ではありましたが、物を受け取りました場合の一応のデータというものにあとう限り当たりまして、その中から援助と認められる証票がチェックできるものを集計するという作業でやって参りました。
  58. 大矢正

    大矢正君 できる限りとかなんとか言うが、昔の話ですから、できる限りということではない、残っておるのか残っていないのかということを聞いているのですよ。
  59. 高島節男

    説明員高島節男君) 若干散逸はいたしておりますが、大部分のものは残っております。
  60. 大矢正

    大矢正君 どのぐらい残っているのですか。
  61. 高島節男

    説明員高島節男君) レシートにつきましては、まず問題を分けて申しますと、受けておるという受領証は大体大部分残っているという感じでございますが、多少、長い間司令部から引き継ぎましたりなんかしました関係で、漏れているものも若干はあると思います。しかし、これは大部分、おおむねはある。その中で援助と認められるものをどう計算するかという方法、これは非常に苦労いたしておりまして、数字をかき集めて先ほど申し上げました十七億九千五百万ドルということに到達いたしております。しかし、これは全部が全部そうであったか、内輪の数字になりますけれども、全体がそうであったかどうかということは問題を残します。
  62. 大矢正

    大矢正君 あなたのところに残っていた資料数字は幾らになっているのですか。
  63. 高島節男

    説明員高島節男君) 資料数字と申しますと、その受け取りの総計の意味でございましょうか。
  64. 大矢正

    大矢正君 そうです。
  65. 高島節男

    説明員高島節男君) 援助も商業輸入もひっくるめての受け取りの数字は、ちょっとここに持っておりません。たいへんなレシートがあったというふうに引き継いでおりますが、全体漏れなく保管されたかどうかということには若干、先ほど申し上げましたように疑問がございます。
  66. 大矢正

    大矢正君 あなたのところに資料が残っているというのでしょう。残っているのを出せというのです。何ぼなのか、どうして出せないのです。
  67. 高島節男

    説明員高島節男君) 残っておりますうちで、援助総額として算定して妥当であると認めて集計いたしましたものが十七億九千五百万ドルであるということでございます。
  68. 大矢正

    大矢正君 十七億九千万ドルなんという数字あとから出てきた数字で、あなたのところで受け取ったとして残っている数字はどのぐらいあるのかということを聞いているのです。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が聞き及びましたものに対しては、先方側の決算数字は十九億五千万余であり、日本通産省で証票に基づいた数字が十七億九千五百万ドルであります。しかし、散逸したものその他がございますので、実際の数字でもらったものは十七億九千万ドル以上であったかもわかりませんけれども、証票がないのだから、現在証拠物件をもって算定できるものは十七億九千五百万ドルであります。それから、贈与というものの指示のあったものとか米軍に返還したものとかという四千九百万ドルを引いて、実際有償の対象になるものとして、しかも証票の手元にあるものとしての全受領額は十七億四千六百万ドル、こういう数字でございます。
  70. 大矢正

    大矢正君 さっき外務省のアジア局長は、全部受取書を出していると言うのです。だから、受取書を幾ら出しているのだと聞いているのです。
  71. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 受取書を出したものが十七億九千五百万ドルであり、三百五十冊に全部集計してあるそうであります。
  72. 大矢正

    大矢正君 そうすると、なくなったというのは何がなくなったのですか。全部受取書から何からみんなあるわけだね。そうすると、なくなったのは何がなくなったのですか。
  73. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 通産省の御所管でございますが、私が前から関係して聞き及んだことを申し上げれば御了解願えると思います。十九億五千万ドルというのは、アメリカ決算数字で、これを向こうの会計検査でちゃんと精査したもので、これだけ出たということは事実でございます。ところが、わがほうといたしましては、通産省が数年にわたって営々苦労されまして、残置資料、あるいは通産省資料突き合わせまして、いわゆる受け取りもあり、これは対日援助物資であると認定されたもののみを集計されたわけであります。その作業におきまして、先ほども大蔵大臣が申されましたとおり、三百五十冊の大きなファイルを一枚々々くりまして、これは受領証がある、たとえばTOGという名称がついておるものとか、そういったものを全部集計されまして、十七億九千万ドルになったわけであります。これが先ほど通産省から申されました、これだけが対日援助かというと、実際はその資料というものが散逸していて、あるいはこれよりも非常にふえる可能性も多分にあるわけであります。しかしながら、今ある資料は、これは確かに受取書とかその他の資料突き合わせまして、もらったものに違いないという最小限度のものを集計したのが十七億九千万ドル。ふえることがあっても、この数字は最小限度でございまして、向こう書類突き合わせたりなんかしますと、ふえるおそれは多分にあるわけであります。
  74. 大矢正

    大矢正君 ふえるか減るかということを聞いているのではないのですよ。受領証がどのくらい残っているかということを特に聞いているのです。そこで受領証というのは、一体それじゃ、これが対日援助だと、すなわちガリオアだと、こう言われて、それで出したものなのか、そうでなくて、来たものは全部受領証をぼんぼん一括して出したのか、その点はどうなんですか。
  75. 高島節男

    説明員高島節男君) 向こうから参りましたのに受領証を出しておりますが、その受領証のつづられている契約別ファイルを見てみますと、単に受領証だけでなくて、アメリカ陸軍省から関連の機関への民間供給計画の承認書といったような、手続上向こう援助関係がある援助であるということが認定されるような証拠書類になりますものがついておるもの、あるいは購入の稟議のパーチェス・コミットメントと申しますか、そういうものがついておりまして、それによってこれはなるほどアメリカからの援助の形で来たものであるなということが認定されるもの、あるいは先ほどアメリカ局長がおっしゃいましたようなTOGと申しますか、引き取り指令書、あるいは積荷目録等にそういった差異がはっきり出ているものを、それを集計して参りましたということでございます。それが十七億九千五百万ドルということであります。
  76. 大矢正

    大矢正君 そうすると、資料はもうきちんとそろっているわけですね。あなたの言う解釈からいうと、そういう解釈になりますね。いいですか、そういう解釈をして。
  77. 高島節男

    説明員高島節男君) 十七億九千五百万ドルに関する資料を整理しましたほかに、受け取りがあるか援助のようなものがあるとかいうことにつきましては、書類を集め得る限りでやりましたもので、十七億九千万ドルについて整理したということでございます。
  78. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今最初に企業局次長の言われるのと、それから外務省関係のおっしゃることと、若干違っておると思うのです。紛失したというものが若干あるとか、まあいろいろな言葉で通産省関係のほうは言われたわけです。それから、アメリカ局長のほうの答弁を聞いておりましたら、その散逸したものは、十九億五千万ドルとそれから十七億九千万ドルとの差が約一億六千万ドル、その受取書は紛失をしておって、あと資料は全部通産省に残っている、こういうふうに確認をしていいわけですか。
  79. 高島節男

    説明員高島節男君) ちょっと御質問趣旨があれでございますが、十九億五千と十七億九千の差という意味でございますか、今おっしゃいましたのは。
  80. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうでございます。
  81. 高島節男

    説明員高島節男君) その分がなくなったのじゃないかと、こうおっしゃるのでございますか。
  82. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 君が紛失したということを言ったわけだ。だから、紛失したものは、じゃ、何だというなら、逆算していえばそういうことになるが、いいか、こう言っておる。
  83. 高島節男

    説明員高島節男君) 紛失という言葉はあるいは穏当ではないかもしれませんが、確かにそういう書類があるものというものを積み重ねましたところが十七億九千五百万ドルということでございまして、片方のアメリカ側の申します十九億五千万ドルは、これは向こう決算資料でございます。向こうが対日援助として金を使ったところの決算額、それが十九億五千万ドルだと、こう申しておりますから、こちらが物を受け取ったベースとベースの違いがございます。その差が、散逸しているのかどうか、そこのところがはっきり正直のところわかりませんが、時点の差もございますから、全部がこちらがなくしたのだということではないと思いますが、大体そういう推定をつけることは可能でございます。しかし、それ以上には入り得ない問題だと思います。
  84. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 関連ですから、あまりとやかく言うわけにいかないのですが、そうしますと、この場合に商業ベースのものと援助ベースのものとぴしゃっと資料は分かれておる。そういうものは、今伺っておりますと、通産省のほうには全部資料というものが整っておる、不明なものはないんだと、こういうふうに明確に——初めのうちはちょっとおかしかったのだ。資料が失われるとかなかったとか、いろんなことを言っていたが、だんだんやってきたら正確にわかってきたのですが、そうしますと、あるいはまた衆議院答弁等もわれわれは速記録をもって承知しておるのですが、衆議院のほうではそういうふうに言っておみえになりませんね。それがここに来たら、はっきり商業ベースのものも援助ベースのものも、全部資料のあるものを資料に基づいて計算をして出たものが十七億九千万ドル。とにかくいろんなことを言うけれども、証拠書類はあるのだ、こういうことをわれわれは確認をしていいわけですね。
  85. 高島節男

    説明員高島節男君) 今おっしゃいますうちで、商業ベースというお言葉がございましたが、商業ベースについては、これは確認をいたしておりません。援助であるということが確かなものを積み重ねて援助総額を出すということを作業の目的にいたしましたので、これは援助であるなというものだけを整理いたしまして積み重ねております。
  86. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 委員長、関連。そんなばかな。受領証があるでしょう、あなたのほうには。だから、それは商業ベースのものか援助ベースのものかということを区別して、そうして整理したんでしょう。だから、商業ベースのものもあり援助ベースのものも全部あるということだけは、もう証拠としてはあるということだ。それを、まず証拠書類というものは完全にそろっているのだ、日本側資料は。アメリカ資料のことを言っておるわけじゃない。日本資料というものは全部あるのだというふうに了解していいのか。これは衆議院のほうでしばしばこの問題が議論されて、そうして不明であるということを言っておみえになったんです。大体債務と心得えたということは、不明確だから債務と心得たということを言っておる。それがここへ来たら、どんぴしゃり、資料はございますと、こうなっちゃったのだから、われわれのほうも、それなら今までの言ったことは全部御破算になって参ります。衆議院答弁と食い違ってくるから、だから、確認を迫っておる。
  87. 高島節男

    説明員高島節男君) 衆議院のほうでは、今回この問題に触れませんでございましたので、前国会の(「冗談じゃない」と呼ぶ者あり)前国会のことを、ちょっと私かわりましたのではっきり記憶をいたしておりませんが、今作業の過程を申し上げますと、商業物資援助物資か不明確なものが多い中で、そういう証拠書類をはっきりきめて、そうしてこれが援助であるということで援助のほうだけを確定的にきめていこうという努力をしたということでございます。したがって、アメリカ側のほうの数字と若干の食い違いが出てくるのは、むしろ下目に食い違いが出てくる可能性があるという感じでございます。
  88. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あんた、先ほど若干だが紛失したものがあるとか、いろいろなことを言われたのは何ですか。それじゃ、そういうものはないじゃないですか。あなたが紛失したものと指摘するもの、あるいはどうも概算だとかいろいろな言葉を使ってみえたが、それは一体何を言っているのですか。でたらめなことを言いなさんな。
  89. 高島節男

    説明員高島節男君) 受領証のありますものだけを集計いたしておりますので、あるいは受領証が紛失しておるかどうかの突き合わせが、これは全体としてきかないわけでございます。それで、先ほどからそういう意味のことを補足して申し上げまして、かえって御混乱申し上げたのは、ちょっと申しわけございませんが、これは十七億九千五百が援助である、援助としての算定のベースになるということに努力してきたわけでございます。
  90. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 どうもだんだんわからなくなってきたので、またわからなくなってきた。あんたは最初は、受領証があるかと、こういって聞いたら、そうでなくて、その受領証の中から失われたものもあるだろう、どうもわからぬものがあるのだ、こういうお話だった。そうしましたら、アメリカ局長の方が、いや、そうじゃないのだ、資料は完全にあったのだから、それを寄せたらこういうふうになったのだということを私は報告を受けておると、こういう助け船を出された。そこで、今度こっちに戻ってきたらどうおっしゃるかというと、今度そうきまったのだから、受領証は全部あるのだと、こうなっちゃった。実際はないのでしょう、ほんとうのことをいうと。わからないのがあるのでしょう。
  91. 高島節男

    説明員高島節男君) 説明申し上げますと、この十七億九千五百に関する限りはございます。話を少しほかに誤解いたしまして申しわけございませんが、十七億九千五百万に関する限りはございます。それで、これを交渉の基礎にするということにいたしております。
  92. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますと、それは商業ベースと援助ベースと二つに分けて、そうしてその資料に基づいて十七億九千万ドルというものを計算したのだと、こういうことになりますね。  それじゃ、もう一つは、それじゃそのときに、ついでにお聞きしておかなければならぬのは、受取書の中には、だから、商業ベースのほうのものもあるわけですから、その分はそれじゃ数字としてどれだけになっておるのか。これは今ここでもし資料を持っておみえでなければ、後日資料としてお出し願えればけっこうです。
  93. 高島節男

    説明員高島節男君) 援助物資の算定を目的といたしまして作業をいたしましたので、援助物資と認められるものを集計するという作業をずっと続けてきたわけでございます。輸入のトータルの数字から、援助物資の額が一応十七億九千五百万で、むしろ内輪目だと思いますけれども、それを差っ引きまして、むしろ残りが商業だろうという推定が可能だということだろうと思います。したがって、怪しげなものは一応商業であるという格好になっており、もしかりに資料が何か抜けておりましたら、それは商業のほうの計算に入る、こういった関連がございますので、先ほどから少し詳しく申し上げておりますが、十七億九千五百万の援助額を確定する目的でやっておりますから、残りが必ず商業であるかどうかということの議論は出てくると思いますが、一応商業と推定できるということだと思います。
  94. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、あなたのほうは資料を出さぬというように持っていこうというのですが、私は、受領証がある、ですから、この受領証の一それは円レートの問題がいろいろありますから、計算は非常に困難かもしれませんけれども、少なくとも総額ですよ、それは商業ベース、援助物資、いろいろなものになってくるが、日本アメリカから受け取った総額というものはどれだけかということは計算されるのがあたりまえだと思う。その資料というものはある。だから、その計算も当然——そんなことを作業としてやらぬというのは怠慢な話ですよ。あたりまえの話なんだ。そうしてそのうちからこれがガリオアで、そうしてこれが余剰農産物資で、これが払い下げ物資たというふうになってきた。それを引きますと、残ったものが今度商業ベースの問題になる。それ以外にほかのものはありっこないのですから。だから、そういうものは受領証として総トータルは幾らになり、そしてそのうちから十七億九千五百万ドルはこうだ、こういうことで当然出てくる数字なんです。そうすれば、商業ベースは幾らになるかというトータルが出てくる。そういう資料というものは計算せずにおるということはあり得ない話なんですから、それに対して今ここで答弁できなければ、後日資料としてお出し願いたい。
  95. 高島節男

    説明員高島節男君) 私が答弁いたしておりますのは、この統計の計算の基礎がいろいろ出て参りますが、今唯一の資料として当時のものが残っておりますのは、御承知のように、司令部でやっておりましたJES統計、これは通関ベースで商業もあれもひっくるめて出しております。そうして私どもが算定いたしました、援助だと算定できる書類のある十七億九千五百万ドルというものを差し引いて、残りが大体商業ベースだ、こういう計算になってくると思います。JES統計の資料は、御要求もありますので、あと提出いたしたいと思います。
  96. 大矢正

    大矢正君 このアメリカ側が十九億五千万ドル援助したのだと、こういわれているが、日本側は十七億九千万ドルしかない、こういう。そこで、アメリカ側の十九億五千万ドルという数字はどういう具体的な裏づけに基づいて出されているのですか。
  97. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 米側のいわゆる数字と申しますのは、先ほど申しましたように、一九四七年以降陸軍予算で対日援助をしてきたわけでございます。それを、向こうはその決算を会計検査院がちゃんと確認して、その決算資料に基づきまして推計してきた数字でございます。
  98. 大矢正

    大矢正君 そうすると、もとより逆に日本側が発行した受取書向こうは受け取っているわけですから、そういうものを積み上げてきて十九億五千万ドルというものをアメリカが出したのですね。
  99. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) アメリカの会計検査院は精密にアメリカ支出を検査しておるわけでございます。そうしてその関連資料というものは相当膨大なものがただいまアメリカのカンサス州の陸軍の何といいますか、資料保存所にあるというふうに聞いております。
  100. 大矢正

    大矢正君 あなたは、アメリカ側の十九億五千万ドルという援助総額ですね、これは正しいと考えておるのですか、これは正しくないとお考えになっているのですか。
  101. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 各国とも会計検査院というものは峻厳にその国の経理を監査するわけでございます。アメリカがやはりこういった軍事予算法に基づきまして歳出をされましたそれについて、アメリカの会計検査院が厳密に監査したものは一応信憑性があるというふうに見られるのは当然かと思います。
  102. 大矢正

    大矢正君 そうすると、十七億九千万ドルという日本側資料というものは、これは不正確なものだということになるのですか。
  103. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 日本側といたしましては、アメリカ側のこの数字をそのまま基礎にして交渉するかどうかということに対しては、非常にわれわれとしては考えたわけでございます。まあわれわれというか、交渉の経緯の長い間に考えたわけでございます。そこで、日本側として一体幾らもらったかとわれわれは勘定すべきであるかということを、先ほど通産が言われたような方法で計算したわけです。もちろん、長い年月がかかっておりますので、通産としては先ほど申されましたように残っておるいろいろな資料を積み重ねまして、これだけは対日援助に違いないと確認されるもののみを集計されましたのが十七億九千万ドルでございます。そのほかに疑わしいもの、あるいはそういったものは全部それに取り入れませんでしたし、あるいは資料が残っていないもの等でやはり対日援助というふうに見られるものがあったかもしれません。したがって、十七億九千万ドルはこれよりふえるかもしれないという可能性はあると思うわけでございますが、少なくともこの金額は、日本側としていろいろな証拠を調べたところによれば、これだけは対日援助に違いないということが言えるわけであります。したがいまして、日本側としてはこれを頭に入れましていろいろ交渉を進めたわけであります。
  104. 大矢正

    大矢正君 あなたの話を聞いていると、アメリカは最初から、これは日本にとっては債務なんだ、いずれは支払ってもらうのだ、こういうことを言うておったというのですから、そうすると、これはいわば借りたものでしょう。借りたものに対して、資料がなくなって、資料がなくなるというのは受取書その他がなくなった、数字がはじけないというのは、話がおかしいじゃないですか。人からものを借りておいて、その借りたものは幾ら借りたのかわからないようにしておくという、そんなばかな話がありますか。
  105. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) アメリカの対日援助額に関する米国決算ベースに基づく資料、それも一つの信憑性のある資料でございます。で、たとえばドイツの場合はこれをそのまま押しつけられたわけです。ドイツは、当時アメリカからこういう返済要求がありましたときに、このアメリカ決算ベースの資料をそのまま押しつけられたと申しますか、のまされて、それを基礎にして十億ドルを払ったわけであります。日本といたしましては——もちろんドイツも日本と同じような努力をしたらしいんですけれども、なかなかはっきりした結論が出なかったようであります。日本のほうにおきましては、通産の多年にわたる努力によりまして、とにかく日本側の試算、これによれば、これだけはあるに違いないという確認を受けているもののみを集めましたのが十七億九千万ドルとして、米側としても日本の労作というものは認めておるわけであります。それで、交渉の過程におきましては、この二つを頭に置いて交渉したわけでございますが、日本側としては、交渉の過程におきましては、この日本数字というものを頭に入れて交渉してきたわけであります。
  106. 大矢正

    大矢正君 大蔵大臣、これはあなたに貸したものですよと最初から念を押されて受け取っている品物の代金や、品物を受け取る過程におけるいろいろな書類上の手続というものは、そういうものは政府が紛失したとか散逸したとかというのは一体どういうことですかね。これはたとえば、今日本政府だって、それはかりに一千万円の金だってもし不正不当行為があったら、これは会計検査院はびしびしやるでしょう。最初からこれを返さなければならぬものだとわかっておるのに、どうして資料がなくなるのですか。
  107. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 質問の御趣旨がどこにあるかちょっとわかりませんが、私が考えたものを率直に申しますと、借りたものを、当然将来払わなければならないものに対しては、支払い条件とか支払いをいつやるとかということはきめておるのだから、受け取ったほうは当然証票を保存する責任に任じなければならないのは、これは一般論であって、当然のことであります。がしかし、この件に関しては、占領軍時下にあったという特殊な状況にありますから、その時期までは占領軍がこれを管理しておったというこういう事情もあるので、この間の事情は一般的な議論とは、事実上の問題を考えてみるときには、そう一般論だけでは押せない。しかし、アメリカ側から要求される数字が十九億五千万ドルというときに、十九億五千万ドルというものを基礎にして一体今の協定をやったかということになると、問題があると思うのですが、こちらのほうは十七億九千万ドルというものを主張いたしまして、最終的には十九億ドルと十七億ドルというものがいずれが正しいかということはペンディングのままでしたが、実際この四億九千万ドルという数字をはじき出した基礎は、十七億九千万ドルというものを基礎にしてずっと引いてきて、四億九千万ドルという数字が現実に出されたのですから、この日本政府の手続において国民に迷惑をかけるとか会計法上間違いがあったということはあるまいと思うのです。  しかも、十九億五千万ドルと十七億九千万ドルとの間の差額はどうかというと、まあ向こうの十九億五千万ドルというのも、会計検査院が証票に基づいて決算をした決算数字でありますから、これはもう確定的な信憑性のある数字だろうというのは、一般論的には当然そう言わざるを得ませんが、こちらの十七億九千万ドルは、残った証票を基礎としてずっと積み重ねたものであって、しかもその金網その他単価においても違うんです。一体、この物資は破損しておったから減耗分だけは引かなければいかぬとか、一般的な基礎物資に対してはIMFの当時の統計によってこの数字を単価とすべきだというような、合理的な基礎数字に数量をかけて集計したのが十七億九千余万ドルでありますから、私は、この十九億五千万ドルというアメリカ政府の提示金額と、日本の十七億九千万ドルという提示金額に開きがあっても、われわれが提示した金額を基礎として今日の協定がなされておるということから考えると、非常にやむを得ざる状況下において妥当な結論を出したと、こうお認め願いたいと存じます。
  108. 大矢正

    大矢正君 あなたの言っているのは政治論ばかり言って、四億九千万ドルと十七億九千万ドルを比べればずいぶん安いじゃないかということばかりの発言だけれども、私の言っているのはそういうことじゃなくて、金を払ってもらうんだということをアメリカから言われておるのに、それに対して具体的に——アメリカがかりに自分物資を持ってきてどんどんまいて歩いたなら別ですよ。全部やはり日本政府を通して、日本政府から国民は渡されておるわけです、食糧にしても何にしても。それなのに、将来は払わなければならぬのに対して、そういう資料がないということはおかしいじゃないかということを言っておるわけです。  そこで、それはそれとして、次に、昭和二十四年三月以前の、これは通産省になりますが、日本の貿易の状況についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。で、もとより私はその時代は国会議員じゃありませんから、当時のことはわかりません。ですから、あなたにお尋ねをするわけですが、その当時日本の貿易というものは一体どういう形のもとに、どういう内容で行なわれていたのか、それをひとつ克明に御説明願いたいと思う。
  109. 高島節男

    説明員高島節男君) 当時私も貿易の関係にタッチいたしておりませんでしたが、その後勉強いたしましたところで整理してお答えいたして参りたいと思います。  当時の貿易は、御承知のように、全面的に司令部の管理下にございまして、外貨の勘定は全部司令部側のほうにございました。それから、日本側のほうは、大ざっぱに申し上げますと、貿易資金特別会計というものを設置いたしまして、これの運用によって輸出入貿易をまかなっておったわけです。  当時の輸入のほうで申しますと、ただいま御議論がありましたように、援助物資で入ってくるものも、商業物資で入ってくるものも、一括いたしまして司令部のほうへ参りまして、それが日本側へ受け継がれて、それを国内に対して、公定価格と申しますか、当時インフレーションの最中でございましたから、割合生活物資あたりは相当安く払い下げていく、あるいは公定価格に準じて払い下げていくという操作をいたしまして、それによって円貨が貿易資金特別会計へたまる。片方、輸出をいたして参るわけでありますが、輸出をいたして参ります際に、外貨のほうの輸出代金の勘定は司令部のほうに入っておりましたが、日本側のほうで輸出業者に対して代金を払っていかねばならぬ、その円の支払いをこの貿易資金特別会計からやっておる、こういった経理になっております。  当時の統計といたしましては、司令部のやっておりましたJES統計と俗称しておりますものがございまして、それによって輸出入がドル価格で、二十四年の二月の一本レートがきまるまでが終戦直後から統計として出ておりますが、これは大体輸出が六億五千万ドル程度でございまして、輸入のほうは十七億四千万ドルというふうな数字になっております。したがいまして、当時の貿易は完全に民間貿易というのはない。そして司令部の管理下に為替レートはないままで貿易の取引が行なわれて、円とドルはある意味において遮断されているという形で操作が行なわれていたのでございます。
  110. 大矢正

    大矢正君 そこで、日本の国からアメリカに輸出をした品物の内容や、それからまたそれに伴って生じてきたたとえば補給金ですか、輸出に対する補給金というものが問題になってくると同時に、また輸入の面では、アメリカから入ってきた物資の価格というものがはたして当時適切であったかどうかということも問題になってくるわけです。あなたのほうでそういう面について資料の持ち合わせがあると思うのですが、御説明いただけませんか、そういう面について。
  111. 高島節男

    説明員高島節男君) どの点から入って参りましょうか。輸出関係から申し上げますか、それとも輸入関係のほうから……。
  112. 大矢正

    大矢正君 どうぞ御自由に。
  113. 高島節男

    説明員高島節男君) 非常にこまかい内容の内訳がございませんので、われわれも把握するのに苦労いたしましたが、輸入のほうの状況を申しますと、ドルで受け入れました物資を国内へ払い下げます場合には、先ほどちょっと申し上げましたように、国内のマル公というものが生活安定のために相当に低いところできめられております。それに準じて払い下げて参っております。ただ、為替レートが三百六十円ときまりましたのが二十四年の四月で、それ以前の円のレートというものが一体幾らであるかということは、これは見当のつかないままに行なわれておりますから、どの程度これが国の財政といいますか、そこで補給された形で払い下げられているかは非常につかめない状態でございますが、いずれにしても、相当安目に輸入は国内へ向けて円貨で払い下げられておるという状態、これが一つ当時の特色であるかと思います。しかし、安いとはいいながら、そこに円貨で払い下げますと、援助の代価及び商業物資輸入の代価というのが円で積まれて参ります。その積まれました円貨が、今度は輸出品を買い取って参ります場合の代金として支払われて参っているわけでございます。で、当時の状況は、私もよく十年昔でぴんと参りませんが、国内のインフレのおかげで相当に国内の物価が上がっているので、企業の採算点としてはむずかしい点があったんだろうと思います。物によりましては、相当に円安に買っていかないと採算がとれないというものもございますが、これは為替レートでつないだ関係でございませんので、そこの状況ははっきりいたしませんけれども、要するにそういう形で、輸出物資の代金を、結局輸入物資を安目に国内に払い下げておるその代金を積んだもので支払っていった。こういった貿易状況を続けて、二十四年の三月までの時期をつないできたという経緯になるかと思います。  それで、こういう状況でございますと、為替レートがないために日本の産業の基礎がわからない。採算が合う企業であるかどうかわからない。その辺が産業官庁等としては非常に問題でございますし、また輸入しておりますほうも、込みの勘定でございますから、これもはたしてどれくらい補給しているのかわからない。とにかくそういう会計の操作でやっていたのはきわめて不明確でございますし、一本レートをきめます機会に、対日援助見返資金というものを設けまして、そして三百六十円で、とにかくドル価だけのものは受け取ったことにして、見返資金を積んでいく、こういった経緯に直って参ったわけでございます。  なお、至りませんところがございましたら、御質問に応じてお答えいたします。
  114. 大矢正

    大矢正君 たとえば、かりに、アメリカから日本輸入をした品物が、当時のアメリカの国内価格と比較をして、入ってきた価格というものは一体どういうのか。それからまた、日本から生糸とかその他輸出をされておるものもありますし、たとえばカメラというようなものもあったように私は承っておりますが、そういうような品物アメリカに行って、アメリカの当時のそういう市販価格と比較をしてどうであったのか、そういう点について御説明願いたい。
  115. 高島節男

    説明員高島節男君) 当時、管理貿易の中にございまして、めくら貿易をやっておりました悲しさ、非常に資料のとり方がむずかしゅうございまして、これは私が手元で多少の勉強をしてみましただけの材料でございますが、状況を一、二の例について見てみますと、まず輸出関係でございますが、ミシンあたりで、二十三、四年の例でございます。これは、たくさんある例の中から抜いてきたわけでございますけれども、二十三、四年の例を拾って見てみますと、FOB二十二ドル五十ぐらいで出ておるようでございます。それに対して、アメリカの国内卸は三十六ドル程度のところで売れているようだということでございます。三十六年ごろは大体どうであるかというところを見てみますと、量産しまして、かなり下がってきておる点もございまして、日本のFOB価格が十三ドル八十ぐらいのところで出ておりますが、それがアメリカの国内の卸価格では二十九ドルぐらいのところになっております。これは、こういったものが末端のほうに届いていくまでに、相当何回も段階がございます。粗原材料のように需要家がまとめて買うという形のものでございませんので、こういった加工度の高い軽機械類は、非常にFOB価格とアメリカのドル価格との間に開きが出て参りますが、二十三、四年のこの数字の状態と今日の状態というものと比べてみて、さしたる格差はないという感じではないかということを一つ申し上げたいと思います。それから、陶磁器等につきましても、大体向こうの卸とこちらの卸と、こちらのFOB価格といったものの開きが三倍見当あるいは二倍半見当といったような事例がございますが、これも、やはり現在においても、似たような開きを示しているといったようなことが指摘できるかと思います。  それから、輸入のほうの例をとって参りますと、当時のアメリカの小麦は大体、日本の国内に入った時期でいろいろございますが、ドル価格で一応推定いたしまして、おおむね百十ドルあるいは百十五ドルといった見当のところが、今回の計算の積み重ねの一つの材料に相なっております。当時アメリカの内陸価格は大体七十ドル見当でありましたことが、当時のアメリカにおける統計あるいはIMFの統計といったようなもので調べて確認できるわけでございます。それに対しまして、アメリカのFAS価格と申しますか、船へ載せるところまでのインランド・チャージが、およそ二十七、八ドルから三十ドルくらいかかっているようでございます。そういたしまして、運賃が大体十四、五ドルといったような感じで、大体百十五ドルくらいで参っております。アメリカのインランド価格が七十ドル見当である。一ブッシェル一ドル九十ぐらいの見当になるかと思いますが、そういったものが当時の相場というように聞いております。それとにらみ合わせてみますと、日本着で百十ドル、百十五ドルぐらいになるということは、大体妥当なところではないだろうか。こういったような計算が、小麦あたりについて一つ出て参ります。そういったようなところに、輸出入の価格という点の問題の材料があるわけでございます。  以上御説明申し上げました。
  116. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 関連して。これに関して、私は資料要求を実はしているわけなんです。早く出していただくのが非常にいいと思うのですが、いつごろ、私あるいは大矢君の資料については、出ましょうか。ちょっと速記を……。
  117. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  118. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記を起こして。
  119. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今の大矢君の質問にからんでいるわけですが、大体二十四年三月までに輸入されたもの、それは援助贈与かは別として、大体、あなたのほうの今の御答弁でいいますと、それは全部で十七億四千万ドルである。その内訳は、援助が、アメリカのほうのJES統計によって、十一億九千七百万ドルになっている。商業ベースのほうは、五億四千三百万ドルになっている。それが日本資料によると、援助のほうが八億四千万ドルになっているのだと、こういうふうに今度資料をお出しになっておりますね。そこで、こういう食い違いが出てきた一番大きな原因はどこにあるというふうにお考えになっているのか。たとえば大蔵大臣の御答弁を聞きますと、アメリカの言っていることも正しいのだ、日本では物的証拠に基づいて、こう言っている。ですから、私は両方とも正しいと思うのですね。しかし、食い違いのあることは事実でございまして しかもちょっと大ざっぱに計算しましても三億五千万ドルというお金は莫大なお金なんです。そういうふうなところでどうしてこんなふうになったかということについて、検討をされたものと思うのですが。
  120. 高島節男

    説明員高島節男君) アメリカ側のほうの数字は、これは先ほど申し上げましたように、会計検査院のあれを得てはおりますが、こちらの計算のほうは積み重ねで、物資の引き取りをベースにしておるわけです。向こう予算で落とした時期がベースになっております。その間に若干の時間的な食い違いがあるのじゃないかということが一つございます。ただ、どちらにあるかということを追及してもうまくつめられない性質のものではないかと存じます。  それから、第三点といたしましては、向こうは確かに出したというつもりでございましょう。ただ、こちらのほうの資料関係で若干それは漏れておるものもあるかもしれない、これはちょっとよく想像がつきません。したがって、こっちの証拠の確かなものだけ積み重ねたというものとの間に、こちら側が落としておるものもあるかもしれない。  それから、第三点として、価格の関係で、多少こちらが少し値切りましたり、あるいは値切るというか、向こう数字よりも想定を入れましたものが差額を生じたというもの、引き下げてきたというような点があるいはあるかもしれない。価格のわからないものが多量にあります。それをとったというところまでの証票はございますが、価格が幾らというものがわからないのが大部分でございますから、価格を推定いたします際に、価格の操作は先ほど小麦の例について申し上げましたように、あれを加えております。そういたしますと、そこで単価を相当下げておるかもしれない。  そういった要因が積み重なって、時間のズレというものもございますが、両者の間に開きが出てきたのではないか。こちらはただかき集めて作業したわけでございますが、期せずして値切ったという感じになっておるのじゃないかと思います。
  121. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 二十四年の三月までの問題については、資料が出て参りましたら、これはやることにして、ひとつお預かりしておくことにいたしますが、それまでにあなたのほうは、資料を今のところ何ですか、一体見返資金特別会計ができるまで、それまでの問題は貿易資金特別会計でやっておる、その事務引き継ぎというものが実際問題として行なわれておれば、私はある程度わかったと思う。一体そういうときの事務引き継ぎと申しましょうか、占領軍がやっておったのだ、それが見返資金になってくる、こういうようなときの事務引き継ぎといいますか、そういったような——アメリカが貿易管理をしたわけですね。そういうものの事務引き継ぎというのは正確に行なわれておるのかおらないのか、その点非常に私疑問があるわけですが、どうなんでしょうか。
  122. 高島節男

    説明員高島節男君) 外貨の関係、すなわちこちらが輸出をいたしましてコマーシャルでドルをかせいだもの、これは司令部の管理で、外為特別会計ができるときでございますが、大蔵省のほうに引き継がれておる。これは外貨が何億ドルということで引き継がれております。あと、円経理とドル経理とそういうふうに離れておりますから、日本側のほうは貿易資金特別会計であくまでもやってきた。ただ、為替レートがございませんから、ものさしがないようなものでございます。そこの経理がつかみにくいことはございますけれども、それをやって、いよいよ貿易資金特別会計が終わりましたときに、それを今度は一般会計のほうに引き継いでいくと同時に、今度は見返資金を別途積むという特別会計を設けて二十四年三月引き継いだ。だから、円の会計としましては非常に込み入ってどういう要因かということの探求は非常にむずかしゅうございますけれども、円は円側としてずっと引き継いできております。ドルは司令部の管理から外為特別会計のほうへ、二十四年の初めでございましたか、引き継がれているという形になっております。
  123. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 僕は、食い違った一つの原因として、事務引き継ぎが正確に行なわれていなかったのじゃないかという点を疑点として持っておったのですが、そういうことはないわけでしょうか。
  124. 高島節男

    説明員高島節男君) 私も当時のを、十年昔でございまして、あれしたのではございませんが、円会計は円会計として次々にその残高を引き継いで参っていると思います。
  125. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 初めからやり直しなんですが、えらい恐縮なんですが、なぜその食い違いが出てきたかということについての、複数レートだとかいろんな問題をおっしゃいますが、私は、アメリカ軍も占領中であったといえども資料というものは絶えず持っておったと思うのです。それが見返資金なりあるいは外為に行く場合に、正確な数字やあるいは資料を引き継がれておるならば、そういうような間違いというものはなくて、計算をすればすぐ出てくることですから、レートはそのときに幾らになったのだ、そのときには輸入補給金は幾ら出しておる、輸出補給金は幾ら出したのだということは明確に行なわれておったのじゃないだろうか。貿易特別会計のときでも、ですから、そのときの資料がはっきりと残っておれば、今あなたたちがいろんなもので苦しまれずにスムーズに算定することができたのじゃないだろうかと、こう思うわけですけれども、その辺のところをどうもわかりかねるわけですが、これはそうじゃなくて、正確な資料が残っておれば、何もかも資料というものを引き継いだのだということで、金だけこれだけもらったのだということじゃなくて、私の言うのは帳簿のことを主としてさしておるわけです。
  126. 高島節男

    説明員高島節男君) 今申し上げましたように、この特別会計から特別会計へつながっていくところの経理上の数字は、これは残って参りますが、その裏打ち及び取引の行なわれましたところの証拠書類は、年限の関係もございまして、司令部のほうから引き継ぎましたものは、向こうが日銀へ置いて参った、それを引き継ぎを正式に受けたのではございませんけれども、日銀に残置されたところの資料を見て、それでそこから作業をしていくより仕方がなかったという状況でございます。したがって、援助を算定するのに向こうが言います決算数字というものよりも下ではないかというがんばりをしてみる一つの外交上の材料は出て参りましたけれども、全体につきましては、当時の、年限が非常にたちましたことでもございますし、むずかしい点が相当残って、引き継ぎが必ずしも百パーセント完全という格好ではない事情じゃないかと思います。
  127. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これはどうしてこういうことを言っておるかというと、一つの食い違いの問題もさることながら、一体輸入補給金をどのくらい使ったか、輸出補給金をどのくらい使ったのかということがわかりますか。
  128. 高島節男

    説明員高島節男君) そこが御関心の焦点だろうと思いますけれども、これはいかに資料がございましても、この為替レートというものが三百六十円ときまったのが二十四年四月で、それまでの間には為替レートというものがないわけですね。そういたしますと、何が輸入補給金かということを、若干資料を出してお話ししようかと思っておりますけれども、あくまでもこれは推定でございます。それで、たとえばある物資が国内で千円で売れておった。しかし、これは生活必需品だからむしろ安くという感じで千円で売れておった。そうすると、それ、ドル為替に比べてみてどうだろうかというような突き合わせで、推定としてこれはできるわけでありますが、それが直ちに輸入補給金につながっていくというわけにはいかない。それで先ほど申し上げましたように、まず輸入をしまして、その物資を払い下げて、円が入ってきて、それを輸出の買い取りに使った、こういう形でございますから、完全なるどんぶり勘定なんです。ですから、輸出の補給金を幾ら出すのか。輸入の補給金を出した結果、残りの分だけいただいておるわけでございますね。その結果、円貨を払って輸出をまかなっておるという状態でございますから、かりに輸出補給金は幾からということは、理論的にはこれは査定が困難だということでございます。ただ、いろいろな面からある程度当時の国際価格等と比較いたしまして、国内のこの値段だったら単位当たり幾らくらい補給金が出ておっただろうか、このおもなものを調べてみよという先生の御要求でございましたので、これは今作業をちょっとおりまして、次の機会に御説明できるかと思います。
  129. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 またこれは資料が出てから議論をいたしたいと思いますけれども、今あなたのお話を聞いておって、実は私がなぜ事務の引き継ぎのことを言うかというと、もし事務の引継ぎが完全にできておったら、Aの物資を入れますね、そうしてこれを国内に払い下げたときに、数量というものはきまってきます。ですから、幾らで入れたかということが大体まあわかりまして、それが記録として残っておって、それを国民に幾らで払い下げておるかということがわかるわけです、記録で。だから、日本政府は幾らで引き継いだ、そうして、それが今度幾らで返ってくるかということが、事務的な処理として私は数字というものを一つ一つの物資について残しておかなくちゃならぬだろう、こう思うのです、普通で言うならば。だから、事務引き継ぎが完全に行なわれておったとするなら、そういうようなものが全部あっていいのじゃないかと思うのですが、それがないということは、まあ金はこれだけになったのだ、どんぶり勘定でこれだけ残ったのだ。その残高は実は残っていないけれども、逆に赤字になって返ってきたのだ。金だけ引き継いだ、これが事務引き継ぎだというのですかね。二十四年三月にそうなったのじゃないか。見返資金特別会計、外為特別会計で、金だけ引き継がれた、あと経緯はこういうことになっているのだというようなことば、貿易資金特別会計のときの資料というようなものは、何もなしに引き継がれたのじゃないだろうか、こう言っておる。それはそうじゃなくて、資料があるのだと、こうおっしゃるなら、それはまあいろいろなことで作業をおやりになるのに、あなたのほうも楽だし、われわれのほうもそれを知りたいことが知れると思うのですが、その辺のことはどうなっているのですかということです。
  130. 高島節男

    説明員高島節男君) 貿易特別会計ができます前、貿易資金特別会計時代に、その経理の受け払いで、経理のほうから見ました資料というものは、これはずっと引き継いで参りますから、特別会計という形で残されております。ただ一つ一つの物資につきましてのデータ、これはまあいろいろなものになってくるだろうと思いますが、それについては、現在のところ作業を踏み込んでやってはおりません。したがって、一々の物資の取引の内容を明らかにするほどのものは残っていないと思います。ただ援助に関しましては、援助とどうしても推量上認められる——価格その他には問題は残りますが、これは援助だなというものを推量的に探しまして積み重ねるということはできた。それが今日の事務当局としてやり得るところの一番シュアーな道である。あとは非常に推量が入り、資料の内訳としては膨大になると同時に、資料としても残っているかということも十分に申し上げかねる、こういう状態かと思います。
  131. 佐野廣

    委員長佐野廣君) それでは、午前はこの程度にいたします。午後は一時三十分再開いたしますが、大蔵大臣は二時まで他の委員会に御出席に相なります。なお、外務大臣は午後一時半にこちらにお見えになります。その他の政府委員も同様でございます。  暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩    ————————    午後一時四十二分開会
  132. 佐野廣

    委員長佐野廣君) これより委員会を再開いたします。  午前に続き、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を議題とし、本案に対する質疑を続行いたします。  質疑のおありの方は順次御発言願います。  なお、この際御出席政府関係の方を申し上げておきます。外務大臣大平正芳君、大蔵政務次官竹内俊吉君、通商産業政務次上林忠次君、大蔵省理財局長稲益繁君、同じく主計局法規課長上林英男君、外務省アメリカ局長安藤吉光君、同じく条約局長中川融君、以上でございます。
  133. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、質問をいたす前に、一言前提的に申し上げたいのでございますが、終戦国会が開かれまして今回は四十一回を迎えておるわけでございますが、その四十一回の国会を通じて見まして、この法案とうらはらなものでございますガリオア・エロア協定問題ほど、おそらく国会始まって以来といっても私は過言でないところの議論が集中せられた協定というものは他に見ないのでございます。おそらく、私の知る範囲におきましては、あらゆる機会におきまして百数十回くらいの議論というものは、いろいろな場合において論議がされていたと。事ほどさように重大なこの問題につきまして、その一体基本というものはどこにあるのかということを私どもは考えますと、どうしても終戦並びに終戦後の一つの悪夢をおのおのの立場で追うというようなことに私どもは尽きておるのではないかと、かように考えておる次第でございます。  そういう意味におきまして、私はガリオア・エロアの協定に賛成をいたしましたもの——私自身も賛成をいたしました。また、その裏づけ法案でございまするこの産投の問題につきましても、政府の主張をいたしまする債務一点張りのその主張というものに対しては賛成をしておるものの、従来の経過終戦直後のいろいろな状況等を見ると、必ずしも私は全面的に賛成をしておるものでなく、何かそこに割り切れないものがある、かように考えておる次第でございます。これを保守党の立場から申し上げましても、ただ飢餓が救われたということに対しまするアメリカへの感謝の感じは、これはもう申すまでもないと思うのでございますが、またその反面におきまして、終戦後は、御承知のとおり、ほとんど日本人全体が、上は総理から全国民に至りますまで、全く自主権というものはないのであります。そういう意味におきまして、極端に申し上げまするなら、連合軍の生殺与奪の権がそこにあったというように、こういうように考えられるのでございまして、その間に結ばれましたこのガリオア・エロアの協定の問題ということに対しましていろいろな議論というものが出てくるということは当然だ、かように考えておる次第でございます。それからまた、反対をいたしまする立場から申しまするならば、そういう日本の国民全体が自主権を奪われておるというようなさなかになされた援助物資というものは、これは当然贈与でないかという感じをお持ちになるというのも一面のまた理があると、かように考える次第でございまして、そういう意味におきまして、この問題に対するところの議論というものが非常に広く深いものであることは言うまでもない、かように考えておる次第でございます。  そういう意味で、今まで衆議院におきましても、また本院におきましても、ずいぶん意見が戦わされて今日まで来ております。したがって、私は両院の速記録は全く見ておりませんので、私がこれから質問をいたす問題も、そういう意味において、ただ産投法案それ自体といたしましては必ずしもそうむずかしい問題ではないと思うのでございますが、その表紙になりまするどうしてもこの処理協定の問題に言及をしませんと昭然といたさない面というものが非常に多くなってきておるのではないか。こういう意味で、あるいは御列席の大臣を初めといたしまして政府委員の諸君におきましても、もうその質問はたびたびわれわれは聞いておるのだというようにお思いになるかと思いますが、私もできるだけ整理をいたしまして申し上げるわけでございますが、何回もあるいは繰り返して御答弁になったという筋もあると思うのでございまするが、どうかひとつその点は懇切に御答弁を願いたい。前段が長くなりましたが、そういうことを前提にいたしまして、私は若干の質問をいたしたいと思うのであります。  まず、この援助処理協定の問題から移りたいと思うのでありますが、われわれに政府がいろいろ資料をたくさん出していただいております。ことに、この論争の中心をしぼってみまするならば、政府側はあくまでもこれは債務と心得ておるのだという主張の一点張りできておるわけでございます。そこで、その主張をしておりまするところの資料に基づきまして、まず伺いたいと思うのでございまする。  第一に、米国政府は戦後日本に提供した援助に対して贈与をしたと言明したことはない、こういうことをその資料の一つとして、いわゆる債務問題の第一としてあげられておるのでございますが、私の知る範囲におきましては、たしか二十四年と記憶いたしておりますが、当時総司令官でございましたマッカーサー元帥アメリカ国会証言をせられておる中に、日本人は慈善は求めないということをはっきり言っておるようでございまして、私はそういう点を根拠にして政府側がこういう解釈をしておるのではないかと、かように考えておるのでありますが、しかし、当時は、皆さんも想起をせられるでありましょうが、マッカーサー元帥自身といたしまして、日本人はまだ十二才の子供だということを世界に向けて声明をいたしておることは私どもが忘れることのできない言辞でございます。そういうような立場に立って、これが贈与であるとかあるいは債務であるとかいうような判断というものは、当時の日本政府として私はあり得ないのじゃないか。こういう点にかんがみまして、贈与と言明したことはないというこの点につきまして、まずひとつ伺いたいと思うのであります。
  134. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今、大竹先歩から、本問題をめぐる終戦後の状況につきまして御感想がございました。全く同感でございます。長い間の問題でございまして、私どもといたしましては、戦後処理の一環としてなるべくすみやかにこういう懸案は解決しておきますことが、わが国の国際的立場から申しましても、また自主性を回復いたしまして世界に自主的な主張をして参る上におきましても、なるべく早くこういう懸案は解決しておくほうがいいんだというような気持で、今日まで続けて参ったわけでございます。  今御指摘の、贈与アメリカが言明したことはないかという御質問でございまするか、これはガリオア・エロア援助の中にはいろいろな項目がございまして、ものによりましては、学童給食のように贈与であるということをはっきり先方から申しておるものもございます。全部について贈与であるというような言明があったということは、私ども承知いたしておりません。
  135. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 進行の関係から、私はなるべく繰り返しては申し上げたくないと思いまするから、そういう意味でひとつ御答弁を願いたいと思います。  第二の問題といたしまして、援助物資の引き渡しについて、連合軍総司令部日本政府あての覚書に、支払い条件については後日これを決定するというただし書きがついておるのでありますが、この点は局長でもよろしいですか、ちょっと御答弁願いたいと思います。
  136. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ガリオアが最初に参りましたときの一九四六年七月二十九日におけるスキャッピン一八四四−Aというのがございますが、これに明らかに支払い条件並びにその経理については後日決定するということが明記してございます。その他、その前に来ましたプレ・ガリオアにつきましてもそういうことが明記されておりますし、他の援助物資についても同様でございます。
  137. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 第三の点でございますが、二十二年の六月十九日の極東委員会決定の「降伏後の対日基本政策」、それは日本輸出代金は、占領に必要な非軍事的輸入であって降伏以来すでに行なわれていたものの費用に対して支払うことができる旨を述べておるのでありますが、この点についてひとつ明快な御答弁を願いたいと思います。
  138. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 極東委員会というのは、当時日本占領行政をするについての最高の委員会でございます。この極東委員会が、今御指摘のとおり、「降伏後の対日基本政策」というものを二十二年の六月十九日に出しております。今申されました日本輸出代金、これが非軍事的輸入の費用に使用することができる。こういう非軍事的輸入というのは、その当時までにすでに受けておりましたところのいわゆる対日援助物資等を当然含むものと言えるわけでございます。
  139. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 先ほど申し上げましたとおり、いろいろ日にちとかその他前後が混同するかもしれませんが、ひとつその点は御了承を前もって願っておく次第であります。  次に、本案産投会計改正案の問題に移りたいと思うのでありますが、これは衆議院でもしばしば質問もあり、特に本案審議する上において東要の点であろうと思うのでありますが、対米債務支払い産投会計で行なわなければならないというこの根拠についてお尋ねをいたしたいのでありますが、産投会計は経済の再建、それから産業の開発、それから貿易の振興のために国の財政資金を投資する、いわゆる融資会計として設置せられたことは言うまでもないのであります。しかも、その一条の第一項及び二項に明白でございますが、対米債務支払い産投会計経理とすることにつきまして、非常に今まででも論議があったわけでございます。支払い会計を別に設置するとか、あるいは例の賠償等特殊債務処理特別会計で支払うということにつきましては、これは開発銀行等の関係もございまして、テクニックの上からいいましてもいろいろ問題があると思うのでございまするが、この点に関しまして、特にこの問題の中心でございますので、別会計を設けずに産投会計経理を適当とした根拠について、この際、たびたび御言明があったと思いますが、本委員会においてひとつはっきりさしていただきたいと思います。
  140. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答え申し上げます。  対米債務確定の協定国会に提案をいたしますときに、政府の考え方といたしましては、この対米債務産投会計の負担として支払うことが適当と認めて、法律改正案を御審議いただいているわけでございます。その根拠は、たびたびお話もあり、政府側もお答えをいたしておりますとおり、いろいろな債務がありまして、その中で連合軍から物資を受け入れたものについては一般会計を通じたりまた賠償等特別処理会計を通じたりして払ったものもございますが、この産投につきまして、ガリオア・エロアにつきましては金額が二千八十五億円に当たるものを十五カ年間三十回の分割払いにいたすわけであります。  これにつきましては、一体この払わなければならない対米債務のもととなったものは一体どこにあるのかということをつまびらかにいたしますと、御承知のとおり、昭和二十四年に設置をしました対日援助見返資金特別会計でこの相当部分を受け入れてため込んでおったわけであります。それが昭和二十八年に産投会計の設立に対して全部引き継がれまして、現在産投会計の中で大きな資金源として運用せられ、現に運用収益をあげておるわけでございます。この二千八十五億円の十五カ年三十回の分割払いの財源を、その元金の取りくずしをしなければいかぬのか、あるいは運用収益だけでまかなえるのかということを計算してみますと、元本には手をつけないで運用収益だけでもって十分まかなえるという計算が成り立つわけであります。十五カ年間において二千二百二億円の運用収益が見込まれ、それでもって返済した場合元金はそのまま残り、その後も引き続いて日本の産業経済発展のために投資をせられ、出資をせられたままで、運用収益をあげつつあるのであります。  また、特にこの債務に対しては二重払いではないかというような議論も長いこと行なわれたわけでありまして、これらの対米債務を払う場合、国民の理解を得ることも当然必要であると思います。衆議院審議過程においても、運用収入があるのだから、その運用収入を一般会計に繰り入れて一般会計で払ったほうがいいじゃないかという議論も成り立つし、また賠償等特殊債務処理会計の中に繰り入れをして、法律改正をして、その会計から払うことが、かえって会計法上筋じゃないかというようなことが言われた面もございますが、国民の方々には、この債務のもととなった金は産投会計の中にこうして今積み立てられておるのでありまして、この収益金だけでもってまかなってなおこれだけ残るのでありますということをやることが、より国民各位の理解を得ることでありますので、産投会計の負担にしたい、こういう考えに至ったわけであります。  しかし、産投会計法は、第一条に明記してありますとおり、産業、経済、貿易の振興等をやるのであって、支払いの義務を会計に持たすことはよくないのじゃないかという議論もありましたけれども、これにつきましては余剰農産物資金融通特別会計がありまして、同じく余剰農産物の受け入れ払い下げ代金、国民に渡した代金をそのまま当会計へ受け入れて、他にいろいろな政府機関に融資もしくは投資をしておるわけでありますが、この収益金をもって債務を弁済しておるという、他にも例がございますし、例があるというより、より国民の理解を求めるためにも妥当な方法であると考えて、産投会計の負担といたしたわけでございます。
  141. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、これは外務大臣にお尋ねするようなことになると思うのでありますが、返済金の使途について、これもいろいろ論議があったようでございますので、したがって、そういう論議過程を通じまして、あるいは当初のお考えよりも非常にその点が明確になってきたのではないか、こう思うのでありますが、たとえてみまするならば、円貨払い九十億円でございますが、その使途について、聞くところによりますと、日米教育文化交流基金を早急に設置をして、そうして運用益で学者の交流等を行ないたいといわれておるようでございまするが、従来の答弁等を聞いておりますというと、この重要な問題、しかもこの多額の金額を使用するにもかかわらず、その協定とかあるいは話し合いというようなものがほとんどめどもついてないということは、私ども非常に納得いかない点なんでございまするが、この点についてひとつ大臣の御答弁を願いたいと思います。
  142. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今回、御審議をいただいておりまする産業投資特別会計法改正案の成立を待ちまして、私どもとしては、前に可決いただきました協定の発効手続をするわけでございます。そうして、それが発効されましてから、今御指摘の二つの交換公文でございます、円貨払いの二千五百万ドルと、それから支払い金の使途に関する交換公文につきまして、アメリカ側と折衝をするという順序になると思うのでございます。したがいまして、今、私どもの急務は、まずこの発効の手続を実施して参るということでございまして、それを受けまして、その交換公文の趣旨に沿って日米間の協議を鋭意進めたい、こう考えております。
  143. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 この日本と今のアメリカ立場でございますが、御承知のとおり、経済貿易合同委員会等も開かれまして、関係閣僚がすでに第一回を箱根で会合をせられた。また、最近開催されるようにも聞いておるという工合で、きわめて御当局同士は密接不離な立場にございますので、そういう意味におきまして、この文化交流の基金が、かりに協定とか話し合いの中にないにいたしましても、米国自身にはすでに私は相当な計画というものがあるのじゃないかと思うのでありますが、それくらいは今のアメリカ日本政府立場においてこれは進んで向こうのほうから報告なり、あるいはまた話し合いに乗ってくれということが、私は当然ではないかと思うのでありまして、その点をどうも私ははっきりしないというのは、実に何かわれわれに言えない何かあるのじゃないかというように感ずるのでありますが、ひとつその点はいかがですか。
  144. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 協定が発効になりましてから私どもは御相談に入るのが順序だと思っておりまして、先方からも、そういう段階を経ていずれ御相談を持ちかけてくるものと期待いたしております。
  145. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 何か政府でなく、あるいは団体等にアメリカのほうがそういう企画をゆだねておるというようなことはないのですか。これは局長でけっこうですが。
  146. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ただいまのところ、具体的に向こうがいろいろ研究はしておるようでございまするが、まだそういった具体案があるような話は聞いておりません。ただ、しかし、この今度の教育文化交流会議に関する基金という、このものの根本になりまするところの相互教育文化交換法というのが昨年の九月にできております。これは従来のフルブライトを改正したものでございますが、これによりまして国務長官が、日本から受け取ったこういう金を教育文化交流に使い得るという権限法でございます。その権限法によりますと、教育交換にのみならず、研究の助成、専門家、芸術家、スポーツマンの相互訪問、国際的会合、展覧会の参加、文化学術資料の交換、学術研究機関ないし文化技術センターの設置等々、いろいろなものを例示的に述べております。いずれこの法案が成立いたしまして条約が発効するようになりました暁には、ただいま大臣が申されましたように、向こうもあるいは成案を得るでございましょうし、われわれもいろいろな研究をしておりまして、双方の意見をいろいろまじえて話し合うということになるかと考えております。
  147. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 大臣衆議院の本会議に行かれる都合もありますので、大臣にもう一点。  今の返済金の使途に関連してでありますが、相当経済援助という問題が前回よりもかなり具体化しつつあるということは、私どもは聞いておるのでございまするが、この返済金の米国の歳入予算に組み入れられる、そうして対外援助法によって使用せられるということを私どもは聞いておるのでありますが、そこで、あの協定の第二条の第三項でしたか、ちょっと記憶いたしませんが、束アジアというような言葉を使っておるのですね。東アジアということは、東南アジアとはだいぶ違うわけなんです。そこで、NEATO等の軍事同盟強化の線に沿うて援助が与えられるのじゃないかというような、こういう議論も一応出てくると思うのでありますが、東アジアとはっきり書いてあるのですが、東アジアというものは、具体的には一体どことどことどこの国なんですか、これをひとつ御答弁を願いたいと思います。
  148. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 正確を期する意味で、条約局長から説明します。
  149. 中川融

    政府委員(中川融君) 交換公文の第二項にございます東アジア諸国の経済開発が、日本アメリカ双方におきましても関心を有する問題である、そのために緊密な協議を今後も引き続きやるというのが第二項でございますが、この際の東アジアというのは、別に特定の地域あるいは国家を限定して書いたわけではございません。常識的に申しまして、アジアの東の大体半分、大体インド、セイロンぐらいに線を引きまして、それから東のほうのアジア諸国ということになるわけでございまして、東のこちらのアジア諸国、つまり日本に近いほうのアジア諸国、こういうものに関心があるということでございます。特定の国を特に予定しておるわけではございません。
  150. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 まことにわかり切った質問で何ですが、ひとつその国の名前をちょっとあげてもらいたい。
  151. 中川融

    政府委員(中川融君) 大体東アジアに入ります国といたしましては、先ほど申しましたが、大体インド、セイロン辺で線を引くということかと思います。したがって、インド、セイロン、ビルマ、タイ、カンボジア並びにラオス、ベトナム、南に行きましてマラヤ、インドネシア、それから北に上がりましてフィリピン、さらに中華民国、韓国、こういうふうなところが——そのほか香港とか、そういう地域もございますが、大体国としてはこういうところが東アジアに入ることになります。
  152. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そこで、先ほど局長より日米教育文化交流の問題について御答弁も伺ったのでありますが、今中川局長のお話の国々でありますが、この経済援助という問題でありますが、これらの今あげた諸国に対して、この経済援助というものがどれだけ具体性を——これは直接アメリカ側責任においてやるわけでありますが、しかしながら、支払うべき日本立場というものも尊重して、そうしてある程度のことはこれは東アジア、特に一衣帯水の関係日本との立場はありますが、前もっていろいろ先方から話し合いがあるということは、これは当然と考えるのでありますが、この点はいかがでございますか。
  153. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ただいまのお話は、いわゆるこの支払金の使途に関する交換公文の対外援助の問題かと思います。  御承知のとおり、この協定が成立しまして発効いたしましたあと、この交換公文の第一項によりまして、この資金の大部分を低開発諸国の経済援助に使用するということは、一九六二年対外援助法の六百十八条にはっきりと日本国の対日援助に対する返済金は開発援助に使うということが明記されておりまして、そしてそれが対外援助法に定められておりますから、それに従いまして、いわゆる対外援助による開発借款、開発贈与、開発調査、投資調査その他のものに使われることに当然なるわけでございます。  それが具体的にどういうふうに使われるかということに相なろうかと思いますが、日本からの返済も今後の問題でございますし、それからことに東アジアについての双方の関心があるから、十分協議をしていこうということについては、従来も一般論としてはやっておりましたが、今後さらにまた密接にあらゆる機会を通じてやっていくことになると思います。現在のところ、具体的にまだどれほどというような具体的な話し合いはいたしておりません。
  154. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今その程度なんでしょうか。つまり、将来具体的にその施策が講じられる場合において、日米間で話し合うということはこれはむろん当然のことと思うのでありますが、これはどういう機関を通じてですか。何か協議する機関でも将来設立をするとか、あるいは何か外交交渉を通じてやられるのか。むろん、アメリカ側としても援助のやりっぱなし、あるいは日本に無断で援助を具体化すということは、これは今の日本のこの償還の性質からいって、そういうことば私どもあり得ないと思うんですが、そういう場合には何か機関でも別に設置をせられるのか、従来の外交の窓口を通じてそういうことを日本のほうから聞くのか、あるいは向こうから通告をしてくるのか、その点はどうなんでしょう。
  155. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ただいまの交換公文の第二項、要するに双方の密接な協議を行なうものとするというか、具体的なやり方はどうなるんですかという御質問かと思います。従来も外交ルート等によりまして、いろいろ東南アジアの援助等については、連絡協議をしておるわけであります。今後もやはり外交ルート等を通じましてやることでございます。ことに、この十二月には、御存じのとおり、日米経済閣僚会議もございまして、これもまたこういったことが話し合いに出る適当な場かと思います。現在のところ、特に特定のこのための委員会とか機関を作るという考えはございません。
  156. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そういたしますと、さしあたっては日米経済合同委員会に非常にわれわれは期待して、その問題の向こうの通告は、その会議に期待していいということは言えるんですか。
  157. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 私は、普通外交ルートでいろいろ話し合うべき性質かと思います。しかし、この十二月の日米経済合同委員会もまだ具体的に何を話すということはきまっておりません。こういう機会も非常にこういったものを話す適当な機会ではないかということを申し上げたわけでございます。
  158. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、これと関連をいたしまして、西ドイツの場合は、これは経済援助という性質のものがあったのかないのか、この点を伺いたい。
  159. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 西ドイツは、約三十億ドルの援助に対しまして、十億ドルをそのまま無条件で返しております。したがいまして、日本の場合のような支払金の使途に関する問題とか教育云々の問題ということは、西独に対する援助の返還に関する協定には何らうたってございません。ドイツは無条件で、ただアメリカに返すということになっております。
  160. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうすると、全く無条件だというわけですね。
  161. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) そのように承知しております。
  162. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、対米支払いの第二回分は繰り上げの償還をするのかどうかという問題でありますが、第一回を三十八年の三月に支払うということになりますと、第二回分が九月になるが、米国の六十三会計年度に合わせるために、また日米教育交流基金を早く設置するために第一回分を全額円払い、これは大体七十九億円とするのか、九月分を六月に繰り上げて償還するというような考えがあるようでありますが、すでに米国との交渉が続けられておるのか、その間のひとつ支払いのいきさつについて伺いたいと思います。
  163. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 先般対日援助に関する日米間の協定が当国会におきまして御承認を得まして、ただ産投会計のほうが御承認を得るまでに至りませんでした。当時、たしか五月初旬だと思いますが、アメリカ側からその間の事情について外務大臣事情を聞きに参ったのでございますが、その際、もちろん諸般の事情説明しましたところが、向こうのほうでは、教育文化の基金ができるのがおくれることが非常にこれは残念であるということを言うし、こういったものが早くできるのが望ましい。もちろん日本のほうとしましても、この円は全部日本で使われるわけでございまして、こういった活動が早くできることが望ましいのでございます。そしてその際、外務大臣から、産投会計法が通り、また予算の措置等ができるということを条件にして、政府としてはこの教育文化に関する資金が向こう会計年度、すなわち来年の六月までに支払われる、二千五百万ドルが円貨で支払われるようなことに考慮してみたいという意向であるということを述べた次第でございます。
  164. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、支払いに関連してでございますが、協定の第一条の四項に、「未払元金の全部又は一部の支払を繰り上げることができる。」、こういう点があるのですが、これはむしろ大蔵大臣にお伺いするほうが妥当だと思うのでありますが、西ドイツの場合等もあるのでございますが、これは一にかかって日本の財政の状況にもよると思うのでございます。十五年という長い月日でございますので、また逆の場合も行なわれると思うのでございますが、私がお尋ねいたしたいことは、その第一条四項による、いわゆる全部または一部の支払いを繰り上げることができるということに対して、日本の財政がそういう環境になるならば、一時にお支払いするというあれがありますか、それともあくまでもこの協定どおりのいわゆる十五年でいかれるのか、その点ひとつ大臣にお答えいただきたい。
  165. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えをいたします。  確かにこの協定では繰り上げて全額支払うこともできるようになっております。西ドイツはその例にならって、八億ドルか繰り上げて払ったのでありますが、日本の状態、財政当局として考えますと、非常に長い十五年三十回払いという協定が妥当なりということで決定をいたしておりますので、常識的に考えると、繰り上げて払うということは考えられないのではないかと思います。なぜかといいますと、支払いの原資が産投会計の中で運用されておりますし、その運用収益だけをもって払うというふうに計算をいたしておりますのと、それから利息が四億九千万ドルに対して二分五厘でありますから、二分五厘以内で借りられるような原資ができて返したほうがより有利であるという場合は別でありますが、常識的にそのようなことは考えられないと思いますので、特殊な状況でも出ない限り、十五年の協定どおりで支払うという考え方でございます。
  166. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 これはまた外務省にお尋ねをするのでございますが、日本の戦争処理費というものが大体概算して五千億円云々ということをいわれているのでありますが、これはあくまでも被占領者としてわれわれが泣き寝入りでいくのか、今度の問題等に、協定の問題等に関しまして、この問題等が日本当局のほうからどういう形で出されたのか、あるいは今秋の述べましたとおり、全く泣き寝入りで、この問題には一言も触れなかったのか、この点をひとつ伺いたい。
  167. 中川融

    政府委員(中川融君) 大竹先生の御質問の御趣旨は、おそらく十億にも上る賠償の問題が別にある。その際に、さらに今回のガリオア協定で四億九千万ドル払うということになったわけだが、ほかに払わなければならない賠償等の問題、これを一体考慮に入れてもらったのかどうかというような御趣旨かと思いますが。
  168. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 終戦処理費です。
  169. 中川融

    政府委員(中川融君) これは、終戦処理費の問題は、これはどう見てもガリオアの問題とは全然別個の問題であるということに考えざるを得ないのでございまして、日本終戦処理費を負担はいたしましたけれどもガリオアというものは全く別個の根源に基づきますいわゆる債務と心得たものでございます。終戦処理費とは特に関係せしめないで、これはこれなりに片づけたということが経過でございます。
  170. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そこが私は非常に問題があるというのは、いわゆる……。
  171. 中川融

    政府委員(中川融君) 少し御質問趣旨を取り違えたようでございますが、終戦処理費を、米ドルにいたしまして十五億ですかくらいの終戦処理費をすでに払っている。それを結局全額日本は負担することになったのかどうか、その際少しは引いてもらったのかという御質問かと思いますが……。
  172. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうではない。非常に頭悩明晰をうたわれている中川さんにしては、どうもちょっとどうかと思います。終戦処理費というものは、あなたの言うとおり、いわゆる占領費ですね。占領費というものは莫大な金紙である。これは、そのこと自体はまたガリオア・エロアとは違うものではあるけれども、しかし、これだけの——日本終戦の中に、ほんとうにもう国民全体が飢餓の一歩手前のときに、これだけの莫大なものをやらなければならなかったという、こういう状況から考えて、そうして非常な経済的に恵まれているアメリカが今度は債務としてガリオア・エロアの問題の解決を迫ってきた、こういう中において、私は交渉の過程において、こういうふうな実態をアメリカ側に示して、何かもう少しく交渉の余地はなかったのかということです。そういうことがはたして交渉の過程に行なわれたのか。
  173. 中川融

    政府委員(中川融君) 御質問趣旨がはっきりわかりましたので、あらためてお答えさしていただきたいと思いますが、法律的に申しますと、やはり終戦処理費とガリオアとは別ものであるということが、これはいなみ得ないと思うのでございますが、日本終戦直後の困難な際にあれだけの支出をしまして、いわば占領に協力したというようなこと、これはもちろんアメリカでも十分知っているわけでございまして、また、日本のその当時の経済力その他につきましての資料等は、長い交渉の過程におきまして、ガリオアの交渉の過程におきまして、先方にも十分知ってもらっていたわけでございます。結局十七億あるいは十八億のガリオア援助が四億九千万というようなことに落ちついたのは、これは諸般の状況を勘案いたしまして、アメリカも大局的に考えて、こういういわば非常に少ない数字で最終的には手を打ったということは、やはりそういういろいろな事情を勘案した上でのことであると、われわれは推測でございますが、考えるわけでございます。ある意味では、そういう事情も勘案した上ではないかと考えております。
  174. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうすると、私が先ほど申しました点は、あなたは最初の答弁は私の質問をよくお聞きになっていなかったので、ああいう答弁が出たと思うのですが、四億九千万ドルというものには、多分にこういう同情的なとにかく措置がとられたというように解釈してよろしいのですか。
  175. 中川融

    政府委員(中川融君) いろいろな状況、事情を勘案いたしまして、四億九千万というふうにアメリカ側から、いわば落ちついたということであろうと思います。
  176. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大竹先生のお話は、五千百六十八億円というような大きな終戦処理費をこちらでまかなっておるのだが、これは一体どうかというのですが、これは対日平和条約でもって、これは当然日本の負担とする、こういう明確な処理をいたしたわけでございますが、まあこれは条約上そうであっても、一体これはガリオア返済金の四億九千万ドルをきめるときに考慮されたかというと、これは考慮されたということを明確には申し上げられないと思いますが、この普通戦勝、戦敗両国の歴史を見れば、賠償というものがあるのですが、賠償に対しては全然触れておりませんが、対日戦に対する賠償は全面放棄を規定しております。そういうものとまあ平仄を合わせような、あと数字を見ますと、十八億ドルから五億ドルを引いて十三億、それに三百六十円を掛ければ五千億に近くなるというような数字が一応考えられますので、論拠として明確に申し上げることはできませんが、アメリカ日本に対して相当譲歩をしておるということは看取せられるわけでございます。
  177. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 よくわかりました。そこで、これに関連してなんですが、理財局長にお尋ねいたしますが、四ドイツの場合はたしか二億ドルだと記憶しておるのでありますが、この日本人の在米資産ですね、まあいろいろ東京海上のものとか、あるいは東京銀行とか、あるいは個人のものもあると思うのですが、これは一体今どのくらいあるのですか。
  178. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ただいま御指摘のように、ドイツのアメリカにおいて凍結されております資産は約二億でございます。日本のは向こうの敵産管理委員会の調べによりますと約六千万ドルになっておりますが、いろいろ事情を聞いてみますと、いわゆる維持費とか、あるいはすでに諸経費等に使った残りが、時価にいたしまして、中には値下がりしたものもございますので、約三千万ドル余あるというふうに聞いております。
  179. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 ドイツの援助物資決済の場合におきましては、これはその在米資産の二億ドルというのはどうされたのですか。
  180. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 在米資産の問題とドイツの米国よりの経済援助の処理とは全然切り離して、経済援助の処理は経済援助の処理として別個にされております。ドイツの在米資産二億ドルは、現になおアメリカに保管されているわけでございます。
  181. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうすると、日本の今残っておる三千万ドルというものは、今度の交渉の過程においては全然これをドイツと同じように触れなかった、こういうわけでありますね。
  182. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 法律的に申しますと、ドイツの場合もそうでございまするが、日本の場合も、いわゆる米国にあった日本の資産というものはアメリカに取られてしまう、日本は放棄するということが平和条約においてきまっております。で、この対日援助の問題とは別個に、そういうふうに平和条約できまっておるわけでございまするが、ドイツのそういった在外資産、在米資産、それから日本の在米資産については、アメリカのほうで自発的にこれを返したらいいじゃないかという議論が国内のほうにもございまして、国会のほうにもございまして、ほとんど毎国会のごとくそれを返す法案を議員の方がお出しになるわけでございます。ところが、今までずっとその法案は流れてきておりまして現在に至りまして、向こうのそういったような措置はとられていないというのが現状でございます。
  183. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今の問題につきまして、何か特に外交処置として交渉せられた経過がありましたら、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  184. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 法理的に申しますと、平和条約で日本は放棄しておるわけでございまして、これはまっこうからこれを返せと言う日本は権利はないわけでございます。しかしながら、先ほども申しましたように、向こう国会でそういったような議論があり、現にそういったような法案がほとんど毎国会のごとく出ている。われわれはこういった人たちの善意がひとつ実を結んでもらうように希望しており、また期待する次第でございます。
  185. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、大蔵大臣にお尋ねいたしますが、産投会計の今後の原資対策についてお尋ねいたしたいのでございますが、産投会計は、対米債務支払いのため本来ならば増加することが、固有の原資の減少というようなことになって、産投に対する財政資金の需要が、今非常に国会でも問題になっておりまする造船の問題とか、その他日本の産業の発展過程においていろいろと出てくると思うのでありまするが、明年度の原資対策としてはどういう点をお考えになっておりますか。
  186. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、ことしの産投会計は五百三十二億円を予定をいたしておりまして、その中に一般会計から二百三十億円の繰り入れを今御審議を願っておるわけでございます。来年度からは、この協定が通りますと、百五十八億円ずつの対米債務支払いがこの会計の負担によってなされるわけでございまするので、来年度の財源を見ますと非常に窮屈な状態でございます。しかし、まあ産投会計の融資の対象、出資の対象というようなものは、政策画からいろいろ検討をしなければならない問題でありますし、昭和三十八年度の産投会計予算についてもこれから検討すべき問題ではありますが、常識的に考えて、ことしの四百九十億ないし五百三十億というような見通しをつけて、それよりも一体少なくなる要素があるのか、もっと多くなるならばどのくらい多くなるのかという御議論になると思いますが、産投会計に対しては別に一般会計から繰り入れをなすのか、産投会計法に明記してあります他の財源処置等を行なわなければならないのかということは、現在慎重に検討しておりますが、余剰財源として予想せられるものは大体四十億程度でありますので、相当の財源措置を行なわなければならないと予想せられるわけでございます。
  187. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そこで、これも相当論議になったと思うのでありますが、特に新聞等もいろいろ書いておるのでありますが、そういう点から考えまして、産投国債とかあるいは産投外債の発行とか、さらに開銀債や輸銀債の発行の問題、さらに一般剰余金繰り入れのいわゆる制度化とか、補給金の切りかえ、こういうような問題につきまして検討する余地はございましょうかどうか。
  188. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、産投会計の持つ重要性、三十八年度の予算においてどのようにウエートがかかるかという問題に帰一するわけでありますが、常識的に見て、産投会計必要性はこれはもう当然でありますので、財源措置に対しては検討しなければならないと考えます。しかし、ときどき私が申し上げておりますように、現在の段階において産投国債は発行するかという問題に対しては、産投国債はただいま発行を考えておりませんということを申し上げておるわけでありますが、ただいま御発言になりましたとおり、いろいろなまだ財政的な処置、原資を得る道もあるわけでありますし、これらの関連その他は、金融財政一般に及ぼす影響も非常に大きいので、あらゆる角度からいずれに財源を求むるが一番いいのかということをこれから検討をいたしたいと、こういうふうに考えております。
  189. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そこで、財政投融資計画の明年度の財源対策について少し伺いたいと思うのでありますが、予算編成期もだんだん近づいて参りまして、特に昨日ですか、大臣からいろいろ所信の表明がございまして、自然増収の非常に少ない点とか、したがって、財源難がいろいろと云々されたわけでございますので、財政投融資計画についても、原資の増加要因として、御承知の郵便貯金、あるいは厚生年金、それから国民年金等の伸びもありますが、反面、簡易保険の満期償還、大体これが四百億円といわれておるのでありますが、それと今の対米債務支払いというこのマイナスの面というものも考えていかなければならぬと思うのでありますので、明年度の既成投融資は、社会資本形成のための、それから公共事業費とか、それから政策金融部門でございまする今の輸銀、開銀、中小公庫、あるいは国民公庫等の資金需要というものも高まるということも考えなければなりません。それから、計画規模が一割増大いたしましても、今年度の約八千六百億円に対して九千五百億円という程度になるのでございまして、明年度の財源対策を率直にひとつ御披瀝を願いたいと、かように思う次第であります。
  190. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 予算関係につきましては、きのうから申し上げておりますように、来年度の見通しを今立てることは非常にむずかしく、また八月の末をもって各省庁からの概算要求提出を求めておる段階でありますから、にわかに申し上げるということはできないと思いますが、いずれにしても、今年度以上の財政投融資を必要とするであろうということは想像できるわけでございます。にもかかわらず、簡保の集中満期とか、いろいろな財源面ではたいへん苦しい状態でありますので、新しい角度から財政投融資の原資をいかにして獲得するかという問題に対しては検討していかなければならないと思います。  財源に対しては、先ほども申されたとおり、産投国債を発行するのかという御質問に対しては、産投国債を発行いたしませんと、こうお答えしておるわけです。では、そのほかに建設公債、国債を発行するのかというと、今の段階において国債、建設公債を発行する考えはございません。今の国債に対する、戦後の非常に強い拘束、制約をいたしております現実というものが、一体これからまた現在の日本の国情に合うか合わないかは、これは別といたしまして、別な角度から検討すべき問題でありますが、三十八年度の財源を得るためにどうかと言われれば、現在国債、建設公債の発行は考えておりません。そうすると、一体どうするのか、やらないのかという問題にもなりますが、この中には政府保証債や金融債の問題を一体どういうふうに処理をしたほうがいいのか、もっと処理に対して合理的なやり方はないのかという問題もありますし、外債でまかなえるものは、きのうも申し上げたとおり、電電公社の問題とか、開銀の金融債の問題とか、いろいろありますが、外資によってまかなえるものはどのくらいあるのかというような問題を十分検討しながら、三十八年度の財源確保をはかっていきたいというふうに考えるわけであります。
  191. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そこで、この開発銀行の機能あるいはその業務のあり方について、今後どうお考えになられるのかということについて伺いたいと思うのでありますが、まあ開発銀行の目的は、私が申し上げるまでもなく、長期資本の供給を行なうにあることは言うまでもないのでありまして、経済の再建及び産業の開発を促進するために、一般の金融機関の行なう金融を補完しまたは奨励することにあるのでありますが、その業務内容を見ますと、鉄鋼、電力、海運、石炭部門の四業種が中心で、最近は地域開発あるいは特定機関向けの融資というものが増加をしておることは御承知のとおりでございます。このような貸し出し対策が拡大されていくために、いわゆる長期信用銀行などの民間金融機関や中小公庫などの政府関係金融機関との競合というものが相当表面化されてくると思うのであります。また、長期運転資金貸し出しの要望も非常に強いといわれておるわけであります。こういうような面から、即発銀行の機能とか、それから業務内容について、すでに再検討をすべき時期に来ておるのではないかと思うのでありますが、この点について伺いたいと思います。
  192. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 開発銀行の目的につきましては、ただいま仰せられたとおりであります。しかし、その後いろいろな法律ができまして、新産業都市建設法とか、低開発地域開発促進法とか、産炭地開発促進法とか、北海道、東北、北陸、四国、九州、中国というような地方開発の法律案等、各種のものができたわけであります。この中で特殊なものとしては、北海道東北開発公庫がありまして、西日本の問題等に対しては、じゃ、どこを窓口にするかという問題は、一時国会で議論もせられておったわけでありますが、一応開発銀行の窓口で暫定的に行なうということで、昨年から行なわれたのであります。  そういう意味で、いろいろなものをもうしょい込んでおります開発銀行としては、一体今までの開発銀行の状態でいいのか、新しい角度から検討しなければならないのかといえば、私は、もうここらで新しい視野、新しい角度に立って開発銀行の将来というものを見通しながら、この財源処置等に対しても、相当見通しの立った措置を行なえる状態で再検討をすべき段階だと思います。これは開発銀行、だけではなく、戦後必要性によって作られました——まあいろいろな問題がございます。勧銀、興銀のような特殊銀行が一般銀行に入ってしまった。また、興銀と同じようなものが、長期信用——長銀が発足をした。また、中小企業二公庫と東北開発公庫の問題、また東北開発公庫と開発銀行との問題、いろいろな問題がありまして、これらの機関はその時の必要によって、テンポの非常に速いときに作られたものでありますので、これの関連は、競合もあり、いろいろなところがあるわけでありますから、金融制度そのものに対して、やはり日本の経済的な長期見通しを立てながら、財政金融の調整ということが十分計算に入れられて金融体系を作らなければならないことは、これは論を待たないと思うのであります。  そういう意味で、金融制度調査会においても、日銀法の改正そのものに対しても、舟山試案なるものもすでに発表されて久しいのでありますが、そういう意味で、これらの諸問題を、合理的にかつ理想的な体系に再建整備を行なうという段階に来ておる。特に開発銀行に対してはそういうことが言い得るのではないか。今たな上げを御審議を願っておる海運の問題それから開発銀行にやっておる石炭鉱業の問題は、一体開発銀行でまかない得るのか。これは全然別の状態のまま、まあはっきり申し上げますと、別な金融機関というものを作ってやらなけりゃいかぬのかというようなことで、産炭地事業団というようなものができているわけでありますが、そういう意味で開発銀行のこれからの目的、機構等に対しても十分検討を必要といたすというふうに考えております。
  193. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そこで、開銀の主たる対象は、先ほど申し上げました四大部門、そのうちに特に最近大きな政治問題になりつつあるのがこの海運業の問題ですね。これは所管はお違いになるかもしれませんけれども、ぜひひとつこの際聞いていただきたいのでありますが、海運白書によりますと、三十六年の末の海運企業五十三社の普通償却不足の累計が約五百七十二億、それから約定償還の延滞額が八百三十億円といわれている。こういうわけで、今大臣がちょっと申されました今審議中の措置法ですね、これくらいのことでやってみたところで、特に今私が申し上げた数字は、これは三十六年度末のことで、その後の海運界というものはさらに悪化をしているわけですね。そういうようなときにあたって、アメリカとか、イギリス、フランス、西独、イタリア等におきましても、運航補助とかあるいは建造の補助とか利子補給とかというようなことに相当政府が積極的に乗り出して、これがむしろ救済なんですね、救済策をやっているというようなときで、これは単に一省にまかしておくべき私どもは段階じゃないと思うのですが、ことに今問題になっている措置法の問題等も、これをしさいに検討をいたしてみれば、一体、幾らですか、二分の一の利子のたな上げ、三十六億だと思うのでありますが、ほんとうに均霑をするというものは私は少ないのじゃないかと、こう思うのですが、せっかく今海運の話が出て、ことに開銀との関係等もありますので、これはいわゆるただ大蔵大臣という立場だけでなく、大きく国務大臣という立場からひとつ今後のこの海運をどうするかということをお答え願いたい。
  194. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 海運に関しましては、前国会から海運基盤強化のための法律案を御審議願っているわけでありますが、この国会では、現在の段階において漸進的な方向として現在御審議を願っている法律案をぜひ政府原案のとおりお通し願って、幾分でも海運法盤の強化、再建整備に資したいという政府は考え方を持っているわけでございます。  しかし、この海運という問題は、これはなかなかむずかしい問題ではありますが、同時に、海国日本といわれてきた過去の歴史から見ると、自由貿易をもって明治初年からやってきた百年の歴史の中で一番大きいのは海運の業界でありまして、私たちも広い視野に立って海運政策を進めなければならないというふうに考えております。しかも、海運がどうしてこういうふうに悪くなったかというのは、申すまでもなく、戦時の補償、現在の価額に勘案して七千億、九千億というものが打ち切りになっておるということ。日本が戦争に敗けた国であって、船を徴発をせられたまま海のもくずとなってしまった、海外に繋留せられておったものは全部没収されたというような、非常に大きな痛手があります。それはわれわれの生活も何もみな同じことじゃないかという議論はありますが、それよりも海運というものが日本政策面にどういうふうに貢献するかというウエートの重さを考えますと、海運基盤はこのままでいいとは考えておりません。現在でも貿易外収支でもって一番大きく赤字になっておるのは、海運収入というものが、ほとんど外国の船舶によって運搬をせざるを得ないようになっておる。これから大きく輸出を伸ばすというようなことを考える場合、また日本経済が大きくなれば当然輸入も伸びていくのでありますから、これから長い将来の海運収入というもの、日本国民を一体海の上でどれだけ働いてもらうかということを考えると、高度の政治的な立場でこれを考えなければならないと考えております。今開発銀行でも相当の資金負担をしておりますし、特にそれ以上に市中金融機関も負担をしておるわけでありますが、今度の法律が通れば、開発銀行の利子のたな上げが行なわれれば、市中金融機関さえもたな上げに応じようというくらいに、各界こぞって海運の再建に熱意を示しておるときでありますので、今度の法律案が出たことによって、直ちに海運基盤強化のために万全が期せられたとは考えておりませんが、できるだけ政府もこれが再建整備に努力をして参りたいという考えでおります。
  195. 佐野廣

    委員長佐野廣君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  196. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記を起こして。
  197. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 外務大臣もお見えになりましたので、話をもとに戻しまして、私は大蔵大臣にお伺いすることは大体よろしいです。ほかの方の関係はどうか知りませんが、私は大蔵大臣はまた別の機会に……。
  198. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  199. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記を起こして。
  200. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 外務大臣がお見えのようでございますから、外務大臣に伺いたいのでありますが、ガリオア・エロアの協定は先般の国会で通ったわけでございますが、そこで、問題の産投のほうは本院においてああいうような状態から廃案になったということで、一説には、何か憲法第七十三条の問題を適用いたして、そうしてむしろやったらいいじゃないかというような議論があったように私どもは聞いておるわけであります。七十三条の正号ということは「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会承認を経ることを必要とする。」、この私は三号のただし書きを言うのではないかと思うのでありますが、政府としてそういう議論が強く出たように聞いておるのでありますが、もし大臣が当時御在職中でなかったならば、だれかほかの方でよろしゅうございますが、知っておる範囲でひとつお答え願いたい。
  201. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これはいろいろ協定の発行手続を産投会計法改正案の成立を待たずにやったらどうかという議論があったかどうかという御質問のようでございます。当時、産投会計法案の改正案審議未了になりましたときに、政府部内でこの法律改正案の成立を待って発効手続をとるかどうかについて協議がありましたことは事実でございます。しかし、国会に対しまして産投会計を通じて支払いをするという態度をきめて御審議をお願いいたしましたが、ああいう事情で廃案になりましたけれども、最近の機会においてその御承認をいただくという、筋を通してから発効するほうが適切だと判断いたしまして、臨時国会に再び御提案申し上げるようなことになったわけでございます。で、法律的な解釈としてそうでなければならぬという筋合いのものではないと思いますけれども、このような所定の国内手続を一切終えたあとで発効手続をとるほうが適効である、そういう考えでお願いをいたしておるわけでございます。
  202. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 この産投法案が前国会で廃案になった。その直後、間もなくライシャワー米大使が小坂外務大臣を訪問して遺憾の意を表したということがあるのでありますが、その後、今の大臣の御解釈によって、何かアメリカ側が、ことに在日大使であるライシャワーにその政府の意向を、産投自体は廃案になったということで、今述べられましたようなことをアメリカ側に何か通告をいたしたことはありますかどうですか。
  203. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 前国会の末期において産投会計法改正案審議未了になったときに、ライシャワー大使がお見えになりまして前大臣と会見をされたことは事実でございます。これはどういう事情でこのようになったのか、今後日本政府としてはどういうお考えですかということを駐日大使として関心を持っておられたので、お聞きに参上されたと思います。そこで、政府としてはせっかく産投会計を通じまして処理しようということで国会にお願いしておる事情もあり、予算もそのように組んであるし、したがいまして、既定の方針を変えずに、もよりの国会に再び提案申し上げて御承認をいただいた上で発効手続をとろう、こういう御趣旨のことを申し上げたと承っております。
  204. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 話がまた最初に戻りまして、ガリオア問題に入りたいと思うのでありますが、英連邦の——これは御答弁通産省になるのかあるいは外務省になるのかわかりませんが、英連邦の放出物資でございますが、これは賠償特別会計から支払ったことは御承知のとおりでございます。もしこれが売買契約でございますならば、産投で払う必要はないのじゃないかということが今度の場合にも言えるのでありまするが、その点についてひとつ伺いたいのであります。
  205. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 御指摘の英豪軍の払い下げ物資でありますが、これは売買ということでありまして、したがいまして、当時のこういった貿易、何と申しますか、貿易物資の売買に運用する特別会計でありました貿易資金特別会計でこれを支払ったということでありまして、いわゆるガリオア債務とは全然別個のものでございます。
  206. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そこで、当時の価格の算定の問題なんでありますが、これは企業局だと思いますが、お尋ねをいたしますが、アメリカ側日本側との累計は非常な大きな相違があるわけでありますが、アメリカ側の算定の基準と、それから日本側の算定の基準というのは、どういう相違があったのか。したがって、日本側はどういう基準で算定をして、十七億九千五百万ドルという数字を出したのか。それから、その間におきまして、アメリカ側との折衝というものはなかったのかどうか。わずかの違いなら国民は何とも思わないのでありますが、こういう大きな相違であるし、それから当時の状況といたしましては、私が先ほど来言うとおり、そう日本側で自主権を持っているわけではないので、大体アメリカ側の指示価格というものがいずれも一般的に通用していたようにわれわれは考えておるのでありますが、この点について明細なひとつ御答弁をいただきたい。
  207. 高島節男

    説明員高島節男君) お答えいたします。  アメリカ側提出いたして参りました援助総額は、午前中御説明申し上げましたように十九億五千四百万ドル。これの基礎は、アメリカ側のほうで予算の実行といたしまして決算上出て参りました数字でございます。それに対しまして、日本側のほうの提出いたしましたところの資料は、当時手元に残っておりますところの資料援助と認められ得るもの、何かの方法で援助と確認ができるのを受け取り等から洗いまして、それを集計いたして参ったという形になっております。その結果、十七億九千五百万ということになりまして、アメリカ側のほうの決算資料との間にこれだけの開きが出たということでございます。  開きの原因がどういうところにあるかという点でございますが、これは午前中も御質問がございまして、非常に推定むずかしゅうございますけれども、まずアメリカ側資料決算資料でございますから、時点、及び向こうから出てきたところという場所で資料を押えておりますが、こちら側は受け取ったところをとらえているという、そういう本質的な差があったわけでございます。それから、こちら側のほうも、ドル関係資料は御承知のようにスキャップ側——司令部側のほうにございまして、それを正式の引き継ぎではなく、残置資料として日銀に残されましたものを材料にいたしまして整理をいたしておりますから、あるいは漏れがあったのかもしれないということも、これは想像でございますが、言える。それから、もう一つの要因は、今申し上げましたのは、あくまでも数量、分量の問題として確認されたものでございまして、これに対する価額については、価額が記載してございません。それが非常に計算上の問題がむずかしくなったゆえんでございまして、その価額をいろいろな方法等で集計をいたして参ったわけでございます。その結果が、向こう側の言いますところの十九億五千万というものよりだいぶへこんできた形になっておる。これで全部であるかどうかということの点が、むしろ交渉上は私の承っておりますところですと議論にならずに、十七億九千五百万と日本側が言うのならそこから交渉を始めてみるかという形で、あと、返しましたようなものを控除いたしましたり調整いたしまして、西独なみの三三%でございますかの比率をかけて出しました数字から、さらに日韓のオープン・アカウント等の残を差し引きまして、四億九千何百万でありましたか、大体四億九千とラウンド・ナンバーでとらえられる数字計算上持って参った、こういう経緯になっております。
  208. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、あなたのほうの算定の十七億千六百万ドルについて、見返資金の設置前と設置後の金高はわかっていないのですか。
  209. 高島節男

    説明員高島節男君) 見返資金設置前は八億四千七百万ドル、見返資金設置後が八億六千九百万ドル、それを合わせまして十七億千七百万ドルに相成ります。これがいわゆるガリオア系統の援助ということでございます。そのほかに若干米軍の払い下げ物資とか、あるいは食糧増産等の余剰報奨物資として出しましたもの等が七、八千万ドルございまして、総計が十七億九千五百万ドルということになります。
  210. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、昭和二十四年の四月一日から二十四日までですがね、このドルの換算率がちょっと違うのですね。たしか三百三十円ですか、たしか四月二十四日前には三百三十円だと思うのですが、それ以後が三百六十円になって、今日のいわゆる正式な為替レート、こうなっておるわけですが、これはどういう根拠でこういう換算率が出たのか。これは向こうからの決定かもしれませんけれども、その当時のいきさつをひとつお知らせ願いたいと思います。
  211. 高島節男

    説明員高島節男君) 私の引き継ぐそのまた前でございまして、ちょうどその時期のことを正確に把握できておるかどうかと思いますが、為替レートがきまりましたのは、たしか四月二十五日くらいだったと思います。会計年度が始まりましたよりも若干おくれたころと思います。で、その間に何日分でございますか、二十数日のところは、たしか見返資金をもう積んでおりますが、しかしその場合、司令部のほうからたしか指令が参っておりまして、その際には為替レートがきまっておりませんから、三百六十円ということは日本側は想像がつかなかったわけでございますが、三百三十円ということで積み立てろということであとから書類を送って参りました。そういうスキャッピンで積み立てました。
  212. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 あとから……。
  213. 高島節男

    説明員高島節男君) あとから見まして、そういうようにとれますが、どういう経緯でございますか、十分に把握しておりません。
  214. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後に一点、やはり次長に伺いたいのですが、貿易特別会計の概略でいいんですが、わかりましたら、ひとつ知らしていただきたい。資料が出ておればあれだし、出ていなければ資料で出してもいいが、ちょっとそれによって質問があるから……。
  215. 高島節男

    説明員高島節男君) 貿易特別会計でございますか、貿易資金特別会計が終わりましたそのあとを引き継いで、援助物資を除きました分を貿易特別会計と申しますから、そのほうの経理は二十四年度から二十五年度にかけて存在しておったわけでございますが、その間で、総額で収入が四千四百二十二億円でございまして、それに対する支出が四千三百五十四億、六十八億程度のプラスを残しまして、会計をあと一般会計に、貿易特別会計が済みましてからあと引き継いでおります。この分は全部いわゆる商業輸入ということになるわけです。貿易資金特別会計自体は援助と、それから商業輸入とが、午前中御説明いたしましたように、一緒になりまして、それをこの機会に援助物資の処理のほうは、見返資金を積み立てて参ることにいたしまして、別に分けまして、純然たる商業輸入と商業輸出というものの性格に貿易の会計が変わって、今度は貿易特別会計ということになりました。その動きが今申し上げましたような形に相なっております。
  216. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 なお質問がございまするけれども、後日に保留いたしまして、総理大臣にお尋ねしたいことがありますので、きょうはこれで私の質問は終わります。
  217. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 僕はちょっと、あらためていろいろなことをお尋ねしたいのですが、時間もありませんから、若干の時間外務大臣を中心にひとつお尋ねしたいと思います。  これは主として外務委員会でおやりになったことかと存じますが、一応参考としてお聞きしたいのですが、対米折衝ですね、対米折衝に入られた。あなたのほうのお出しになった資料によりますと、アメリカが、昭和二十九年ごろしばしばこの問題について折衝をしたいという申し入れをしてきた。それに対して日本は、賠償等の問題も解決しておらないから、やむを得ずにおった。そうしたら、昨年に、小坂外務大臣のときに、イニシアチブをとって、そうして対米折衝に入られたような資料をいただいたのですが、そこで、最初にはどんなことを向こうから言ってきたか、今度は日本からどういうことを言っているかということが、会談がおよそ何回ぐらい持たれたかということが、その間およそ数回ということが出ておりますが、御答弁願いたいのは、アメリカがしばしば昭和二十九年ごろに言ってきたことと、それから小坂さんが今度折衝をされて、何回ほどおやりになって、数回というのではなくて、何回おやりになっているか、そうして、その中ではどんなことが主としてやりとりが行なわれたか、そうして協定文ができ上がったかというようなことについての、あらましの経過報告をお聞きしたい。事務当局のほうからでもけっこうです。
  218. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) たいへん恐縮ですが、事務当局のほうから説明さしていただきます。
  219. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ただいまお話のございましたとおり、最初に向こうから正式に申し入れがございましたのは昭和二十七年の十月でございます。その当時、今おっしゃいましたような、日本は賠償も済んでいないという事情もございまして、話が進捗いたしませんでございました。二十八年に池田政務調査会長——当時の政務調査会長が特使として行かれましたときに、やはりこの問題は出ております。そのときには、東京において近い将来日米両国代表が会合することにいたしましょうといったような共同声明が出ております、それによりますと。その後二十九年に至りまして、五回にわたりまして、日米事務当局の間で公式会談を行なったわけでございます。これもいろいろ事務的に検討いたしましたが、ついに交渉の結論を見出すことができずに、五回で会談が終わっております。その後昭和三十年に重光外務大臣がワシントンに行かれましたときに、やはりこの話が出まして、当時出されました重光・ダレス共同声明にも、この交渉を早期に妥結せしめるために極力努力することに意見の一致を見たという共同声明が出ておりますが、そのような話があったわけでございます。自来、日本から有力な閣僚あるいは各大臣が行かれるたびにこの話が出ていたわけでございまするが、昨年の五月にこの話が、いよいよ開こうではないかということになりまして、五月十日に交渉が始まることになりまして、その後約一カ月間種々交渉いたしまして、六月十日に、四億九千万ドルで十五年払い、四億九千万ドルでこの問題を解決するということで妥結した次第でございます。  この昨年の五月十日から六月十日までの交渉の過程におきましては、いわゆる支払い金額を幾らにするかということを結論を出す経過におきまして、いかなるものを控除するか、いかなるものを差っ引くか、あるいはそういったいろんな交渉もいたしまして、それから結局年限の交渉もいたしましたし、種種なる交渉をいたしまして、御存じのとおりの協定に到達したわけでございます。協定の骨子ができたわけでございます。それが六月十日でございまして、六月十日に覚書が仮署名されたわけでございます。その後協定そのものについて、種々両国間で折衝いたしまして、ついに本年の一月九日にガリオア協定が署名された次第でございます。  以上御説明申し上げます。
  220. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、日本側がいろいろな点で——私たちが反対の立場に立って政府にものを言っているわけですが、日本政府アメリカに対して日本立場を相当強く主張されたものと私は思うわけです。そういうようなことについて、初めからもう十七億あったんだということで、それをまけよということではなくて、もっと正々堂々と、これはヘーグの陸戦協定においてはこうなっておるではないか、当然こういうものはかくかくであるから、これは日本政府として負担すべきものじゃない。あるいは阿波丸事件ではお前のほうに棒引きしてあるじゃないか、だからこうではないか。あるいは在外資産がどうなっておって、これを放棄したではないかということで、相当国民の立場というものを国民の側に立って主張されたものと考えておるわけです。しかし、そういうような日本側の言い分ですね、対アメリカに対して、そういうことを主張されたのではないのかどうか、そういうことを全然やらずにおられたのかどうか、その辺はどうですか。
  221. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 交渉は、御存じのとおり、先ほども申しましたとおり、昭和二十九年に公式会談をやっております。そのときには、まあいろんな問題が事務的に提起されて検討されたことは事実のようでございます。もちろん、交渉いたしますについては、自分のほうの立場を十分宣明するということは当然でございます。それから、いろいろな問題を提起することも当然でございます。ただ、今仰せられましたいろんなわがほうの主張として、たとえば陸戦法規の点なんかを指摘したかどうかと。私は当時の交渉のこまかいことは存じませんけれども、この陸戦法規自体についてもいろいろ問題がございます。これは従来からいろいろ御説明申し上げておりますとおり、なるほど陸戦法規には占領軍がいわゆる支障のない限り、できる限り民生の安定をはかれということは書いてございますけれども、これはできる限りということは書いてあるが、一方、これを無償でやれとは書いてない、といったいろいろな議論があったかと思います。しかし、結局そういったやはり法的な問題は法的な問題としてやはり処理せざるを得ないし、結局まあ金額の問題にいたしても、向こうがいきなり、四億九千万ドルと言ったやつを、ああそうですかといってのんだわけではございませんので、それには言うに言われぬいろいろな折衝をいたしたわけでございます。それで、日本側としては、これならば妥当である、これならば納得できるという数字が四億九千万ドルという、しかも十五年間にわたって払えばいいのだという点、まあこれなら妥当なところではなかろうかということで、妥結した次第でございます。
  222. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、こういうようなことに関して、対米折衝をされたことについての議事録なんというものは残っておると思うんです。あると思うんです。そういうようなものをここに参考資料としてお出しになるというようなことはお考えになりませんでしょうか。これは事務当局のことではなくて、私は大臣のほうに御答弁を願いたいと思うんです。  なぜこういうことを言うかというと、独善外交だとか、秘密外交ということではなくて、片一方では国民外交でいかなくちゃならぬじゃないか、こういうことが叫ばれておるわけです。なるほど協定ができましたよ。こういう協定ですが、できましたと。だから、国会はこれに対して賛成せよとか、反対せよとか……。反対じゃ困るんだと、賛成せいといって脅迫をしておるわけです。にしきの御旗を掲げて、国際信義とかいって居直り強盗みたいな格好で出ておるわけですが、それじゃなくて、私は大臣は秘密外交とか独善外交とかいわれるのはこういうことじゃないかと思うんです。したがって、日本政府日本国民の立場として、アメリカに対しては私たちはこういう主張をしたんだと、ところがアメリカの言い分はこうこうだと、したがってこうなったんだというようなことを、やはり国民の前に明らかにしておく、国会を通してそれを明らかにしておくということが、私は、何というんですか、超党派外交ということもいわれておるわけですが、そういう姿勢のほうが非常にいいじゃないかと思うんですが、これはこの問題は資料を出せるか出せないかという問題が一点あるんですが、もう一つは一般論として国民外交にしていくという一つの基本路線というものに対して、ものの考え方は賛成です、国民外交はけっこうです、超党派外交は望ましいですということではなくてそういう言葉があるとするならば、それを具体的にやっていくのはどういうことにあるのかというと、私はこの際などはこういう並々ならぬ努力をされたものと思うんです。したがって、そういうものを明らかにしてもらえば、先ほど大竹さんも、条約には賛成したけれども、国民感情としてどうもうまくいかぬものがあるんだと。こういうことになってくると思うので、その辺のところ、基本的な考え方、それからもう一つ議事録のこと。
  223. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ガリオア・エロア協定をめぐる折衝におきまして、議事録を作るというようなことはいたしていないと聞いております。また、会談の折衝の内容につきましては、慣例上発表しないというようになっておることも聞いております。ただ、成瀬委員がおっしゃるように、国民を基礎にした外交でございまするし、国民の願望を貫くような外交でなけりゃいかぬし、国民の納得を得られるような外交でなければならぬという意味におきまして、私は全く同感でございまして、これは当事者たる政府が院内外の世論の帰向をよくわきまえてベストを尽くすべきものと思うんでございます。したがって、政府並びに政府当局者に対する信頼にかかる問題じゃないかと思うんでございまして、それだけの責任と信頼を受けた当局者といたしましては、最善を尽くすのが当然だと思うんでございます。  で、余談になりますけれども、私は、先ほど大竹委員が御指摘されたように、戦後の政治状況におきまして一体ガリオア問題ほど論議を呼んだ案件は少なかったように思うということを御指摘になりましたが、私どもは今後長く、対米外交ばかりでなく、世界に対して日本の自主的な外交を展開して参るという上におきまして、日本政府としてはやるべきことをやったということにしておかないといけないと思うわけでございまして、ずいぶん議論を呼んでおりました案件というものを、戦後処理の最大の一環であったと思うんでありますけれども、これをできるだけ早く始末をつけて、そうしてアメリカに対しも、大竹委員も言われましたし、成瀬委員からも今指摘されておりますように、自主的な外交ができるような状況を作ってかからなければならぬという気持を、今度の協定の処理にあたりまして強く感じておるわけでございます。もとより国民外交ということを趣旨としてそうでなければなりませんし、またそれを遂行していく上におきましてそういうかまえでなければなりませんし、またその局に当たるものといたしましては、院内外の世論を十分体して最善を尽くすべきだと考えております。
  224. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 事務的な話は別として、大筋として、国民外交でなければならない、独善秘密外交はいけないということは、私は異論のないところだと思うのです。そこで、それを具体的にやる場合にどういうことかといえば、それは与野党の討論の中で、質疑の中で明らかにしていきさえすれば、経緯というのはおのずから明らかになっていくじゃないか、こういう考え方もあるかと思いますけれども、実際はこれは自民党と社会党と正反対な立場に立って議論するわけですね。私は、これをよそから見て、二つに分かれていくと思うのです。国論が二分された形になる。こういう点は好ましい姿じゃないと思うのですよ。われわれのほうも、何も反対のための反対じゃないのです。筋が通っているか通っていないかという点を明らかにしたいと思うのです。そしてその答弁を承っていくと、どうも筋が通らぬじゃないかということになる。  そこで、これからの外交のやり方というものは、少なくともそのときの権力を握っている与党の任務と申しますか、今は政党内閣ですから与党の任務になると思いますが、最大多数党の政党がとっていく外交に臨む姿勢というのは、少なくとも、議事録があるないはこれは別として、こういう立場に立って折衝したのだ、こうなったのだというような点は、私は明瞭に政府はお言いになったほうがいいのじゃないか。それを隠して、陸戦協定の考え方はこうだった、いや、それじゃ実は全部わかっちゃったと。何かアメリカ側に立っての答弁みたいに聞こえるのです。そういうことは非常に好ましいことじゃないと思うから、路線として国民外交でなければならぬという意見は一致している。それを今度は具体的にそれをやっていくのにはどういう方法があるかといえば、私は今ここに当面しているガリオア・エロアの問題でいくならば、そういう問題についてはこういうような経緯、いきさつ、こういうふうなことを自分は言ったと、それに対してアメリカはこう言ってきたと。なるほど発表できない点もあろうかと思いますが、それだったら秘密会でやってもよし、何らかの形がある。今みたいな形で、とにかく全部包んでしまって、でき上がったものだけ持ってきて出すというような格好になっているわけです。もちろん、こういう問題は総理にも行くと思うのですが、大臣としては具体的にこれを実行に移していく、何と申しますか、やり方について、今私が言うようなことがやっていただけないものであろうか。プリンシプルは意見が一致だと思うのです。国民外交でやる、秘密独善外交はいかぬということでね。それを具体的にやる場合にはどういうそれじゃ……。それじゃない、そういうことじゃないとおっしゃるならば、どういう方途がそれじゃ他にあるかという問題なんです。その点をひとつ伺っておきたい。
  225. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ガリオア・エロアの援助債務性があるかないかというような問題で、債務性がないのじゃないかというような御質問に対して、いや、こういうわけであるのだというようなやりとりが行なわれてきたわけでございます。それでなくして、今成瀬委員のおっしゃるのは、それよりも次元を変えて、もう少し政府側から交渉の経緯というようなものにつきまして、国会に対して十分説明をするようにしろ、そうするほうが国民外交を具体化し展開していく場合において望ましいのじゃないか、こういうお考えでございます。私もごもっともだと思います。で、私も外交のしろうとで、一体今までの外交慣例上このようにやっておりますということで、そうかというわけで承っておるわけでございます。今御指摘になられたような問題についてもっと工夫をこらす余地があるかないか、ここで私が今ひとつ工夫してみましょうというほど自信がないのでございます。今御指摘されたような問題について、私ももっと勉強さしていただきたいと思います。御趣旨はよくわかります。
  226. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや、なるほど、大臣は、外務大臣になったのは、私は、なられて日浅いと思うのですよ。しかし、議員は相当長くやっておられる。しかも、自民党の中では枢要な地位をしばしばおやりになっておられるのです。ですから、外交路線をどうするかということについては、くどいようですけれども、国民外交でなければならぬということについては考えておいでになると思う。それを具体的にやるのは、それじゃどうやったらいいかというふうな抱負経綸というものは、お持ち合わせでおみえになっていたと思うのです。しかし、大臣に今なったのだから、大臣立場で言うとなかなか言いにくい、裸にしてくれれば何でも言う、そういうことではなくて、抱負経綸を持っておいでになったら、大臣としてそれをおやりになったらいいと思うし、大臣になったらそういうことをおやりになったってさしつかえないのじゃないか。研究してこれからやるのだというような、そんなことじゃ、大臣として無責任じゃないかと思うのです。ですから、大臣として、私はそういうことじゃなくて、低姿勢内閣の、何でもこれから勉強してというようなことじゃなくて、私は抱負経綸は多分にお持ちの外務大臣だと思うのですよ。ですから、したがって、そういうことについての抱負と申しましょうか、そういうものをお聞かせ願えれば非常にいいのじゃないかと思います。あんまり慣行にとらわれる必要ないじゃないですか。
  227. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 与党と野党と、政府と野党の間において、今までのようなあり方でいいか悪いかということになりますと、私も成瀬委員と同じように、こういうことでいけないのじゃないかと思うのです。もう少しやり方があるのではないかと思いますので、まあせっかくのお話でございますし、私どもも従来からもっと工夫をこらすべき余地はありゃしないかということを考えておりますので、外務大臣を拝命して今ちょっとかたくなっておるときでございますが、私自身ももっと工夫をこらしてみたいと思いますので、しばらく余裕を与えていただきたいと思います。
  228. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 どうも、私たちが言いたいことは、官僚独善主義じゃないか。それはイコール秘密外交になってくると思うのですよ。悪いですけれども、ここにお見えになる方を攻撃するのじゃなくて、一般論。特定な個人をさしているわけではなくて、一般論としてひとつ聞いておいていただきたいと思うのです。何かの単行本がかりに出たとすると、そうしますと、実はこうこうこうだったということが、何年かの後に出てくるのですね。立法府におる者と行政府の側と、どちらが一体どうなっておるのか、変な話になってくるのです。私もあまり外国の例をどうのこうのということは、私は知らないのですが、日本ぐらい秘密に隠して、勝手に官僚の特権意識を振り回されて、大臣が知らずにおって、ものを言いたくても、それは先例がないということで、たがをかけられちゃう。私は、今の大平さんは相当野人で、相当思い切ったことをおやりになるほうがいいじゃないかと思う。今まではとかく外交の専門家と称される人たちが大臣になられると、とかくそういうふうになってしまうと思うのですが、そうじゃなくて、やはり国民外交を展開していくという、グレート・コースにのっとってそれを着々実行に移していくという、そういう方向を確認をしていただき、そして大臣、そうかたくならずに、もうすでに、あなたなんかも度胸がいいほうですし、何もそんな、外務大臣がどうこうというわけではなくて、総理大臣になられてもうれしいほうでもないでしょうから、私は、相当いろいろなことをやっていたと思うのです、またあなた方に期待しないと期待する時がなくなると心配しておるわけで、大臣にうんとそういう点でやっていただきたい、こう思うのです。これは希望になりますが、また私はこういう問題については総理に御出席いただいてひとつ伺ってみたいと思います。  そこで、事務当局に、議事録は今大臣はなかったというお話ですが、議事録なしでやるということになると、一体一ぺんもこれは議事録をとらずにやってしまったのですか。こんなばかな外交がありますか。
  229. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) この交渉の妥結いたしますまで、たとえば従来も御説明申しております控除項目の範囲の問題とか、あるいは対韓請求権の問題とか、まあいろいろ問題を提起していろいろ議論したわけでございますが、こういった交渉に必ずしも議事録というものはあるわけじゃございません。事実、議事録というものは作っておりません。  それから、交渉の内容に関連いたしまして、なぜ四億九千万ドルになったかということにつきましては、従来も御説明申し上げたかと思いまするが、日本側といたしましては、この十七億九千五百万ドルというものを基礎に考えまして、それから返還したものとか、あるいは贈与を受けたものとか、そういったものを引く、またそのほかにスクラップ分を引かすとか、あるいはまた琉球に転送した分を引かすとか、あるいは石油運賃減額分、これは御説明すると長くなりますから省略いたしますが、そういったような項目を引かすとか、あるいは英連邦から買った物資の一部を米軍に引き渡した、そういったものを引かせるとか、このほかにいわゆる見返資金から出していたいわゆる米側諸計画、こういったものを、たとえば連合軍住宅の建設費とか、あるいは特定教育計画費とか、学童給食費、そういったものを引かせる交渉をしたり、あるいは韓国、琉球向けの建設資材費を引かす交渉をしたり、さらにはまた、大きな問題でございますが、日韓の清算勘定残高、これをネット控除するという問題、同じく琉球に対する清算勘定残高をネット控除するという問題、そういった交渉をずっとしたわけでございます。しかし、議事録は作っておりません。
  230. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 議事録なしでやるというと、メモか何かでやっているわけですか。何もなければ私はおかしな話だと思う。普通、私らはこれこそ全くのしろうとなんですが、普通外交折衝をやられるには、議事録というものをとらないのが原則なのか、とるのが原則か、どちらですか。
  231. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) たとえば国際会議等になりますと、議事録を作りまして、それを両方が確認いたしまして公式議事録というものを作ります。まあそういうのが常でございましょう。しかし、今度の交渉というものは非常に、何と申しまするか、こういった長い長い懸案の問題の交渉でございまして、いろいろこういった今申し上げましたような控除項目あるいは差引問題等が、十分これは従来も事務的にも検討されていた問題でございまして、最後の交渉の段階におきましては、これらを引くということについては、簡単な議論があった上で、そして総額の問題——失礼いたしました。返還債務、確定債務額の問題等について相当の議論があったわけでございます。特に議事録を必要とするような状況はなかったわけでございます。
  232. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、これはもうまことに何にもなしで……。まあしかし、あなたのほうではメモ的なもの、外務省としては、日本側としては、そういうメモ的なものをおとりになっておるということはございましょうか。それもやっていないですか。
  233. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) まあその会議にたまたま列席していた者が、自分のメモとしてとっておることは事実でございます。しかし、今度の交渉は、先ほど申しましたように控除項目の一々についてのいろいろの話とか、これらが簡単にございまして、主点はいわゆる支払い年限の問題とか、あるいは総額支払い額の問題というのがしぼられて交渉の主眼点になったわけでございまして、こまかい非常にややこしい問題というほどのものではなくて、いわゆる議事録なるものは作っておりません。
  234. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それはわかりました。そうすると、何にもなしで、ただプライベートのメモ的なものはあるけれども、そうでないものはないということだけわかりました。  それで、局長、あなた方は日本立場というものは何も主張せずに、債務性を初めからきめ込んじゃっておられたのかどうかわかりませんが、そこで債務と心得るという言葉が一番最初に出てきたわけです。その債務と心得るというその内容がどういうところから出てきたか。これはほんとうの意味でいうと、何を——債務と心得るとしたということは、どういうことなんですか。外交的にいうと何をさしているわけですか。
  235. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 御存じのとおり、この対日援助物資日本に渡されますときに、総司令部からの覚書が参っております。たとえばガリオアについてはスキャッピン一八四四−Aというこの第四項に、「支払い条件及び経理については後日決定する」ということが書いてあります。そのほかくどくなりまするが、いろいろマッカーサー証言とか、極東委員会決定とか、向こう国会議会ガリオア予算審議の際のいろいろな証言とかございます。  要するに、この対日援助物資については、これはただでないのだ、後日時期が来れば何らかの形で処理しなければならない。もっと具体的にいうならば、他日交渉してあるいは支払い金額条件等をきめなければならない。しかし、もらったものそのものが直ちに債務になるわけではないのであります。と申しますのは、米側の資料によりますと十九億五千万、あるいは通産省資料日本のベースで計算しましたところによりますと十七億九千万というものが、そのまま全部直ちに債務になるのではございません。したがいまして、これは債務とは言えないわけです。後日交渉した上でそうして債務額は幾らかということをきめたときに初めて債務として確定されるわけです。その際に、また支払い条件等もきまるわけでございます。この間のこの実態を、たしか国会において政府側から債務と心得ているという表現でかつて御答弁があったのでございますが、この対日援助性格というものは、まあそういった言葉で表現されるのが最も適切な、いわゆる将来何らかの形で処理しなければならない、しかし今直ちにこれが全額債務になるものではない、しかしただではない、そういう性格を、債務と心得るというふうに表現されたものであるというふうに考えております。
  236. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ずばり言って、アメリカは十九億、日本は十七億、約ですね、端数ははしょって。あなたのお考えを聞いておりますと、スキャッピンがあって、初めから債務だ。だから、日本資料に基づけば十七億が債務だ。債務と心得るというのは、こんなことは日常われわれの社会の中では通用しない言葉です。とにかく新しい言葉を作られてきたわけですけれども、どうもその点がはっきりしないのです。普通なら、来たものなら、向こうは、スキャッピンでこれは後日清算するとくれば、これは全部日本としては債務となるわけだと思うのです、普通なら。それが債務と心得るという特別な熟語ですか、言葉を、新語を作られた意味がよくわからないわけです。それには私は何か深い根があると思う。そのことを聞いている。
  237. 大矢正

    大矢正君 関連して。今の成瀬委員質問に関連して、私は一年ばかり大蔵委員会を空白にしていたから、はたして私がもらっていないのかどうかわかりませんけれども、あなた方のほうで債務と心得るといつから言い出したのか。私も正確にはわかりませんが、心得るとか感ずるとか言い出した、その債務として心得たり感じたりする裏づけとなるアメリカ日本との間のいろいろな取りかわした文書なり覚書なり、そういうようなものを出してもらえますか。
  238. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) けさほども説明申し上げたかと思いまするが、そういう明確な契約とかあるいは正式の文書はございません。しかしながら、先ほども申し上げますとおり、日本政府が当時非常に食糧に困っておりまして、歴代政府はずっと食糧輸入の促進を要請してきた実情にございます。総司令部といたしましても、日本の民生安定、救済のためにそういう物資日本に渡す際に、先ほども申しましたように、スキャッピン支払い条件及び経理については後日決定するということが言われているわけであります。これは支払い条件及び経理を後日決定するということは、ただではないのだ。しかし、これはそのまま全額、たとえばさっき申しましたような、向こう数字でいえば十九億五千万、こちらの数字でいえば十七億九千万、それがそのまま総額直ちに債務となるわけではなくて、将来時期が来れば交渉して、これを幾らにしましょうと言ったときに、初めて金額が債務として確定されるわけでございます。したがいまして、こういった性質のものを債務と心得るという表現で言われたわけでございます。
  239. 大矢正

    大矢正君 あなたはそういう文書がないとおっしゃるが、けさからあなたが盛んに昭和二十二年には何が来たとか、マッカーサーがどうしたとか、いろいろ説明されているんだから、そういう資料は出してもらえるんですか。
  240. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) お出しできると思います。そのいわゆるマッカーサー指令書をここに持っておりますが、あとでまた……。
  241. 大矢正

    大矢正君 今のは、それは別に膨大な資料じゃないんでしょう。日本に対しての通告でしょう。これはお前たちから金を払ってもらうんだぞと、こういう、いうなれば通告だけでしょう。
  242. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 確かに提出いたします。
  243. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 実は、私、議事録でもあれば、何かいただけば非常にいいじゃないかと。あるいはもっと率直に、私は、日本立場というものはこういうことを主張されたんじゃないかというようなことをあなたのほうからおっしゃるかと思ったんですが、何にもおっしゃらないんですが、実際交渉の席上、——あなたから聞いておると、ここに、韓国にどうかしたとか、あるいは琉球にどうだとか、あるいは沖繩にどうした問題だとか、あるいはAA連邦がどうとか、あるいは石油の運賃がどうだったとかいうような問題は折衝したと、こうおっしゃる。そうでなくて、私はもっと基本的な問題として、一体、日本の国民感情からいえば、終戦処理費を約四十億ドルも負担しておると、それだのに援助は約十九億ぐらいじゃないか、そうすると、差し引きずると倍ぐらい持っとるじゃないか、国民感情としてはこういう問題はどうだとか、このヘーグの陸戦法規において民生安定のためにそういうことをやるのはあたりまえのことじゃないかというような、日本国民として言いたいことは言ってみえると思うんだ。——言いっこなしなんですか。ああ、ごもっともと、事務的にやっておみえになるのか。その辺のひとつ交渉経過を明らかにしてもらいたいんです。そうでないと、日本国民の立場で外交をやってみえるんですから、私は相当日本の国民の立場、素朴な感情と申しますか、そういうものについて、へ理屈かもしれませんけれども、相当なことを言ってみるんじゃないかと思うが、何もやってみえぬですか。
  244. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 先ほども申し上げましたように、この総額をそのまま全部払うわけじゃございません。したがいまして、諸般の点を向こうもやはり頭に描いて、われわれとしてもいかにしてこれを最小限度の金額で妥結できるかということに最も頭を費やしたわけでございます。ただ、これが全額債務じゃなくて、先ほどもちょっとお話がございましたように、債務と心得てきた経緯がございます。そういった性格のものでございまして、それで四億九千万ドルにわれわれはいかにして、何といいますか、この債務確定額をいかにしてできるだけ妥当な少額の数字にしぼるかということについて努力したわけでございまして、したがいまして、米側の数字をとりまするならば、約その四分の一に当たる四億九千万ドルにしたということは妥当ではなかったかと思うのでございます。
  245. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 何か私は非常に情ないような気がするんですがね。実際問題として、ですから、そういうことで、ほんとうはやっておっても、国会答弁として……。そうじゃなくして、技術的な問題として解決されたようなふうに私は聞いておるわけです。そうじゃなくて、私はもっと政治論としておやりになるのが常識だと思うのですが、そうじゃなくて、非常にあなたのほうは技術的にやっておみえになるようですが、ほんとうにそうなんですか。
  246. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) この対日援助につきましては、先ほども大竹先生からお話がありましたように、自来長い間国会でもいろいろ議論があったわけでございます。したがいまして、この交渉にあたりましても、こういった議論があることを背景に考えまして、十分頭に置いて、いかにして妥当な、安い、いかにして最小限度の金額でこの債務額を決定するかということに努力を集中したわけであります。
  247. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなた方が頭に描いた描いたというから、頭に描いたことを非常に技術的におやりになったのか。やっぱり原則論というものをある程度お持ち出しになって、そうしておやりになったんじゃないか。たとえば領土の問題にしても、大西洋憲章じゃこう言っておるじゃないか、ポツダム宣言でもこうなっておるじゃないか、ところが講和条約ではこうなっておるじゃないかというようなことを、アメリカに対して、私らが折衝しておったら、まずそういう原則論というか、政治論を相当議論して、棒引きの話ですわな。初めから幾らか払おうなんていうけちな考えじゃなく、差し引きもうちょっともらわなければならぬ。私は率直にいって、それが国民感情じゃないかと思うのですよ。だから、そういうことをおやりにならずに、減らせばいいんだという何か情ない根性じゃなくて、もうちょっと、もっと大きくといっちゃ私も言葉が悪いのですけれども日本は損しておる。もうけておるのはアメリカじゃないか。日本としてはもっと、たとえば貿易上の問題にしても、私は相当な言い分があると思うのですよ。そういうことは一言も言わずに、技術的にこれを幾ら幾らに減らしていこうというような、そんなことをやるのが、それが外交折衝なんですか。外交折衝というのはもっと政治論じゃないですか。
  248. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 対日援助というものの性格については、先ほども申し上げましたように、後日何らかの形においてこれを処理しなければいけない、交渉して債務額を確定する、いわゆる債務と心得ている、これが政府の一貫した態度でございます。したがいまして、この債務をいかに妥当な数字に押えるかということを事務当局としては鋭意努力したわけでございます。
  249. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そういうのが外交折衝だったら、これはだれでもやれるということだ。そろばんを持ってやればいいんだからね。私はもっと政治論的のものでやられるのが外交折衝と実は考えておる。それが常識だと思うのですがね。まあしかし、そういうことはやらなかったのだ。頭に描いておったのだ、こうおっしゃるだけで、口には出さずに片一方のほうの事務的なことで解決をされたということに尽きるようですから、これ以上何べんやっても押し問答になってしまうから、大臣、先ほどあなたがおっしゃったように、ひとつぜひあなたが任期中に国民外交をいかに展開するかということを、大臣ひとつ責任を負ってやって下さいよ。野党のわれわれとしては……。与党のほうでそういうことはどうぞ。
  250. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  251. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記を始めて下さい。  本日はこの程度にし、散会いたします。    午後四時九分散会    ————————