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衆議院議員(井手以誠君) 提案者の井手以誠でございます。
ただいま議題になりました
ぼた山崩壊防止法案につきまして、提案の
理由及びその要旨を御
説明申し上げます。
本年七月八日の集中豪雨によりまして、長崎県江迎炭鉱のぼた山が崩壊し、江迎町の中心部住宅二百戸以上、国鉄、国道を埋没するという大惨害を起こしたほか、佐賀県伊万里市でもぼた山二カ所が崩壊して水田、県道が埋没する被害が起こっております。このように崩壊の危険があり、緊急
措置しなければならないぼた山は、唐津、北松炭田だけでも六十五に上っております。
従来、鉱業権等のないぼた山は地すべり等防止法によって崩壊防止
工事を行なうことになっておりますが、今日まで対策はほとんど講じられていないのが実情であります。しかし今回崩壊したぼた山は現に採掘し、または鉱業権者等が現存しているものでありますが、鉱物資源開発を
目的として坑内保安を建前とする現行
鉱山保安法の運用実態をもってしては、鉱害防止の
実効を期することは到底困難であり、特に今日の石炭危機の事情において、鉱業権者等の責任に期待することは不可能に近いものと
考えられます。すなわち事極めて緊急を要しますので、国土保全と民生安定のためこの特別立法によって、ぼた山の崩壊を防止しようとするものであります。
以上がこの
法律案を提案いたしました
理由でありますが、次にその要旨を御
説明申し上げます。
まず第一に、建設
大臣または農林
大臣は、ぼた山のある区域で公共の利害に密接な関連のあるものを、ぼた川崩壊防止区域に
指定することにしました。
第二に、都道府県知事は、その防止区域を管理するとともに防止
計画を作成して、ぼた山の切り取りその他防止
工事及び附帯
工事を行なうことを規定いたしました。
第三に、建設
大臣または農林
大臣は、その規模が著しく大であるとき等、国土保全上重要と認めるときに直轄
工事を行なうこととしました。
第四に、防止区域内で立木竹の伐採、のり切り、切土、土石、鉱物の掘採または集積を行なうとき等は、知事の許可を受けねばならないことにしました。
第五に、都道府県知事は、ぼた山崩壊の危険があるときは、居住者に立退きを指示し、家屋等の移転または除却を勧告することとしました。
第六は、都道府県知事の行なう
工事または直轄
工事の費用は、国が五分の四、都道府県が五分の一を負担することとしました。
第七に、鉱業権者または租鉱権者は、崩壊防止
工事及び防止区域の管理に要する費用の四分の一を納付することにしました。
第八に、都道府県は、家屋等を移転または除却した費用の三分の一(畜金、収納金等は二分の一)、国はその三分の二を
補助することにしました。
第九に、家屋の移転者等には住宅金融公庫から資金の貸し付けを行なうこととし、また農業用の家屋その他
施設の資金は都道府県が無利子の貸し付けを行ない、国は
補助金を交付することとしました。
最後に、崩壊防止区域内にある鉱業権者または租鉱権者のぼた山については、本法は
鉱山保安法に優先して適用を受けることとしております。
なお、
ぼた山崩壊防止法案と関連して提出しております鉱山法安法の一部を
改正する
法律案は、ぼた山が今後崩壊のおそれのないよう
規制を強化し、鉱業権者の義務として、捨石集積場の位置並びにその高さ及び傾斜度の
措置を行なうことを加えて、鉱害防止を期待することにしたものであります。
以上が
ぼた山崩壊防止法案及び
鉱山保安法の一部を
改正する
法律案の
提案理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。