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阿部竹松君 九州班につきまして、私から御
報告申し上げます。
赤間委員長、椿
委員、奥
委員及び私の四名は、去る十月八日から十三日まで六日間の日程をもちまして、大分県及び宮崎県下に参りまして、臨海工業地帯、低開発地域工業開発地区の問題を主として、あわせて金融鉱業及び電源開発問題等について
調査を行なって参りました。以下その要点について簡単に御
報告申し上げます。
まず初めに工業開発の
関係についてでありますが、新産業都市建設促進法に基づく地域指定に関しては、大分・鶴崎臨海工業地帯と日向・延岡臨海工業地帯を、また低開発地域工業開発促進法に基づく地域として、宮崎・高鍋工業地区をこのたび視察したわけであります。
大都市における人口及び産業の過度の集中を防止し、既成工業地帯の生産活動の行き詰まりを打開し、あわせて地域格差を是正するため、いわゆる百万都市建設の構想が唱えられ、この趨勢に対処して第四十回国会において新産業都市建設促進法が成立し、これに基づいて近く地域指定が行なわれる段階にあることは、皆様御
承知のとおりであります。
大分、宮崎両県
当局においては、それぞれ、これまでに相当額の先行投資を行ない、新しい工業地域の形成に努力してきており、いずれもこのたびの新産業都市建設促進法による地域指定を受けることを切望しております。
大分・鶴崎及び日向・延岡の両地帯とも、いずれも広大なる工業用地を準備し、しかも良質、低廉、豊富な工業用水に恵まれ、その他港湾建設についても、きわめて好条件に恵まれており、加えてエネルギー供給事情、労働事情等きわめて有利な
状況下にあるのでございます。鶴崎市には、すでに鶴崎パルプ、三善製紙その他が操業しており、臨海地帯の埋立地については、埋め立てを終わった一号地に近く九州石油が建設に着手するのを初めとして石油化学コンビナート、富士製鉄の進出等が予定されております。
また、日向・延岡地帯では、御
承知のように、すでに旭化成が四十年前から延岡に立地し、ベンベルグ、レーヨン、旭味、火薬、化成品等を中心に、豊富な用水と電力と労働力を利用して、人口十二万の工業都市を作っていますが、宮崎県では、その隣接の日向市の細島とあせて一大工業地帯を建設すべく昭和二十七年以来、非常な熱意をもって用地の造成工事を
実施して、工場誘致に努力してきたのでありますが、最近に至り、鉄興社の進出が
決定して、ようやく内容の充実に進んできたという実情になっておるのであります。
私ども現地をおたずねして、この地方に対する従来の考え方というものについて認識を新たにしたものが若干ありました。それは、従来九州地方は一般的に台風常襲地帯として、その影響を強く受けていると考えられ、これらの臨海工業地帯についても、その面の心配があると考えていたのでありますが、現実は、案に相違して、これらの地帯はその特殊な地勢的
関係から、過去において一度も台風による被害を受けたことがない地帯であるばかりでなく、細島のごときはむしろ避難港として好適の場所とされてきているとのことであり、私どもの抱いていた危惧は完全に払拭されたのであります。この他、両地域ともきわめて美しい自然の環境に恵まれておるところから、県
当局はインダストリアル・パークを策定し、美しい工業地帯ということに、特に意を用いていることに私ども大いに共感を抱いた次第であります。また僻遠の地と称せられていたところも、交通、殊に航空路や海路の発達で、必ずしも遠くはないという事態も生まれて参っておるのであります。これらはほんの一例でありますが、今後の新しい工業基地の建設にあたっては、新しい観点に立った新しい考え方というものがきわめて大切であるということを痛感して参った次第であります。新産業都市の建設は、単なる工場誘致ではなく、理想都市の建設であるだけに、その拠点都市を育てるためには、道路、
鉄道等の交通網の整備を初めとして、資金面、事業面からの国の積極的な援助が必要でありまして、そうでないと、せっかくの地元が先行投資の形で莫大な資金をつぎ込んだ都市建設の計画が、中途半端な結末に終わるおそれがあると思われるのであります。
次に、宮崎、高鍋工業地域については、いずれも低開発地域工業開発促進法による開発地域としての指定を受けているものでありまして、本
法律に基づく低開発地域における工業の開発促進のために着々とその実をあげているところであり、たとえば、本田技研の子
会社である本田ロックを初めとして、中
規模の優秀な工場の進出が実現しており、今後の開発が大いに期待されているところであります。
次に、耳川水系発電所について申し上げます。
宮崎県下を流れる耳川水系は、開発がよく行なわれているためでもありましょうが、
年間を通じて水量に変化が少なく、水力用の河川としては、きわめて良好なものでありまして、九州地区における水力用電量は
年間を通じてこの耳川水系が最大のものであります。発電所は一番上流の上椎葉を始めとして七発電所、計二十九万キロワットの出力を持っておるのであります。このうち諸塚発電所は、揚水発電所としての特色を持ち、また、上椎葉発電所は事業
会社によるわが国最初のアーチ式ダムであることは皆様御
承知のところと存じます。この耳川の水は、河口の日向難に至る間において七つの発電所のエネルギー源としての効能を果たした後に、さらに冒頭に御
報告申し上げました細島臨海工業地帯の存立を支える豊富な工業用水としての任務をも持っておるものでありまして、自然の高度利用という問題に興味を抱いた次第であります。
最後に、
日本鉱業佐賀関製錬所について申し上げます。当製錬所は臨海の製錬所としては最大の
規模でありまして、銅、鉛、硫酸を始めフェロニッケル、金、銀その他の製錬を行なっておるのであります。ここで
一つ私どもの印象を申し上げてみますと、技術革新の影響ということでありまして、設立当時の立地条件としては、半島の突端であるため、煙害の心配がないということに最大の利点があったのでございますが、その後の技術革新により、排煙回収接触式濃硫酸製造を行なうことにより、煙害を防止することができるとともに、硫酸を製造することが可能となったのであります。このため、現在の立地条件としては、もはや煙害はほとんど考える必要なく、むしろ海上輸送により原料産地、消費地に接近するということが製錬所の立地条件としては第一に考慮されるべきものとなっていることであります。ここにも時代の推移とこれに伴う産業の進展の現実というものを、あらためて直視する必要があるということを考えた次第であります。昨今
自由化に関連いたしまして、
金属鉱業の危機ということがいわれ、大量の人員整理が行なわれておる
現状でありますが、
経営者及び労働者のそれぞれの立場からの
金属鉱業の前途についての見解を聴取して参りました。
以上、きわめて簡単でありますが、その概要を御
報告申し上げた次第であります。
なお、現地では懇切なる案内と御説明をいただき、また豊富なる資料等もいただいて参りました。それらたくさんの資料は、
調査室において整備しておりますので、必要に応じて御利用いただければ幸いと存じます。以上で終わります。