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1962-11-13 第41回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十一月十三日(火曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————   委員異動  十一月十二日   辞任      補欠選任    藤原道子君   瀬谷 英行君  十一月十三日   辞任      補欠選任    佐藤 芳男君  石原幹市郎君    鈴木 一弘君  小平 芳平君    瀬谷 英行君  阿具根 登君     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加瀬  完君    理事            鹿島 俊雄君            高野 一夫君            小柳  勇君            藤田藤太郎君    委員            石原幹市郎君            加藤 武徳君            紅露 みつ君            高橋進太郎君            竹中 恒夫君            丸茂 重貞君            山本  杉君            阿具根 登君            杉山善太郎君            瀬谷 英行君            柳岡 秋夫君            小平 芳平君            林   塩君   国務大臣    労 働 大 臣 大橋 武夫君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    警察庁警備局長 三輪 良雄君    通商産業省軽工    業局無機化学課    長       田辺文一郎君    通商産業省石炭    局長      中野 正一君    労働省労政局長 堀  秀夫君    労働省労働基準    局賃金部長   辻  英雄君    労働省職業安定    局調整課長   北川 俊夫君    労働省職業安定    局失業対策部長 和田 勝美君    労働省職業訓練    局長      村上 茂利君    日本国有鉄道職    員局長     谷  伍平君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○参考人出席要求に関する件 ○労働情勢に関する調査  (失業対策に関する件)  (東鉄管内における不当労働行為に  関する件)  (新日本窒素肥料株式会社における  労働問題に関する件)  (大正鉱業株式会社における退職者  問題に関する件)  (零細企業下従業員賃金遅欠配  及び年末一時金対策、ILO第二十  六号条約に基づく最賃制確立並び  に低所得者階層労働者住宅対策  に関する件)     —————————————
  2. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ただいまより開会いたします。  委員異動についてお知らせいたします。  十一月十二日藤原道子君が委員辞任せられ、その補欠瀬谷英行君が、十一月十三日佐藤芳男君が委員辞任せられ、石原幹市郎君が、鈴木一弘君が辞任をせられ、小平芳平君が、それぞれ選任をせられました。     —————————————
  3. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 理事補欠互選の件を議題といたします。  委員異動に伴い、理事が一名欠員となっておりますが、その補欠互選は、成規の手続を省略して、理事の指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 御異議ないと認めます。それでは、理事小柳勇君を指名いたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  5. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 速記を起こして。     —————————————
  6. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 参考人出席要求に関する件を議題といたします。  東京鉄道管理局管内における不当労働行為に関する件調査のため、東京鉄道管理局長立花文勝君、同局総務部長名波克郎君を参考人として決定し、その御出席を要求したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 労働情勢に関する調査議題といたします。  質疑の通告がございますので、順次御発言を願います。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働省は、今度、失業対策制度刷新改善に関する構想というものを雇用審議会に諮問されておるようでありますけれども、この内容について少し御説明を願いたいと思います。
  10. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 十月三十日の日に、労働大臣から雇用審議会に対しまして失業対策制度刷新改善に関する構想を諮問いたしまして、ただいま雇用審議会審議を受けておるところでございます。  中身といたしましては、刷新改善基本方針といたしまして、最近におきますわが国の労働市場状態が、いわゆる経済高度成長を反映いたしまして、非常に改善をとげて参っておる。このことが現在の失対制度の創設をいたしました昭和二十四年ごろと非常に大きな差異を示してきた。今後におきましても、一時的な最近のリセッションはございますが、長期的に見ますれば、労働力の需給は一段と改善をするであろう。こういう前提をまず第一に立てております。  こういう状況に関連をいたしまして、今後の失業問題といたしましては、できるだけ通常雇用の場に就職をば促進するという、積極的な雇用対策を行なうことを重点といたしまして、特に若年層はむしろ求職者が少ないという状況でございまして、中高年令者に対する就職促進措置というものが重要な問題になってきておりますので、今後の失業対策問題といたしましては、中高年令者に対しまして職業上の指導または職業訓練という機会を十分に与えることによりまして、失業者就職を容易にしていくようにしていきたい。しかも、その職業上の指導あるいは訓練を受けております間につきまして、その方々生活の安定をはかるためのしかるべき手当支給をしていきたい、こういう考え方でございます。  しかしながら、こういうような積極的な雇用の場を提供し、雇用機会を作ることによりましても、事情によりましては、どうしても通常雇用につき得ないというようなこともございますので、そういう方々に対しましては、就労の場を国または地方公共団体において提供することが必要である。しかも、その就労の場は、労働力にふさわしい、労働能力にふさわしい事業のあり方を検討をいたして、能力に応じた事業についていただく、こういう考え方をば今回の構想基本方針といたしておるような次第でございます。
  11. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この雇用審議会に諮問された内容について、いろいろの問題点指摘をされているわけでございますけれども、たとえばここに出て参りまする、今あなたの言われたのは、中高年令層が失対事業に流れるから、これを事前に食いとめて、職業訓練就職をやるのだということを前提にして、そして一般失対福祉失対というのですか、そういう格好でやっておられ、基本的には、通常雇用への復帰促進ということをここで述べられておるわけですけれども、たとえば通常雇用とはいかなるものか、こういう問題が一つ出て参ります。それから、一般失対賃金福祉失対の賃金はどういう見通しを立てているか、期末手当というようなものは、今までのあれと違ってどうやろうとしているのか。それから、新しい、失対に入る前の訓練中の手当をどうするか。訓練を終わったけれども就職がない場合の待機的な時間における待遇をどうするのか。社会保障的なものだとおっしゃるのだが、福祉失対の社会保障賃金というような格好の最低の生活保障をどうするのか、または家族……。今までは適格審査があったわけだけれども、これを見るとどうもはずすような格好なんだけれども、しかし何といっても訓練所に入れるというのだから、今のような民間を含めて全部総合して十六万の訓練であって、半失業者といいましょうか、潜在失業者がどう見ても七、八百万から千万近くおるという現状で、それじゃ一番最初の入口は訓練であるが、訓練所の設備もないし、政府計画している十六万ぐらいのことで、十年いったって百六十万というようなもので、これであなた方の言われている理想が、じゃ、満たされるのか、そういう問題も出てくるわけであります。このような問題点をひとつ、これに付随して関係して出てくる問題だが、これをひとつ解明をしてもらいたい。
  12. 和田勝美

    説明員和田勝美君) ただいまの御質問のまず第一の点は、通常雇用ということでございますが、これは現行失対におきましても、将来におきましても、国または地方公共団体といたしまして特別に失業者のために就労の場を作る、そういうような状態でない民間あるいは政府の普通の雇用、こういう意味合い通常雇用という言葉を使っております。したがいまして、民間または政府が普通に雇う場ですね、そういうところを通常雇用という言葉で言っておりまして、失業者のために政府が特に作る現在の失対事業、こういうところでない場面という意味合い通常雇用という言葉を使っております。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっとその点だけ、もう一度。民間とか官公庁とかで行なわれている通常雇用という問題は、あなた御存じのとおり、身分が保障された通常雇用というのが一般の場合の通常雇用という。社外工あり、臨時工あり、日雇いありという格好のものも含めて通常雇用と言うのですか。
  14. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 形といたしましては、今御指摘のようなもの全体を含めますけれども、三十七年度におきまして、私ども失業対策事業就労者方々に対する雇用奨励を三十七年度予算で始めておりますが、その雇用奨励でやっておりますのは、常用雇用への復帰ということを前提にいたしております。それから、通常雇用という言葉は、一般の中には今の藤田先生の御指摘のようなのはございますが、安定所努力をいたします方向といたしましては、常用雇用への復帰、こういうことを前提にいたしたいと考えております。  二番目の賃金の問題でございますが、賃金の問題につきましては、将来の考え方といたしましては、失業者就労事業高令者等就労福祉事業と二つの事業に分けておりまして、その賃金のきめ方をばそれぞれ異にいたしております。まず失業者就労事業につきましては、就労者に支払われます賃金は、その就労者の質に対応いたします作業内容考えまして、基準として地域別作業別賃率決定することにいたしたいと思っております。その賃率労働大臣決定をいたしますが、決定にあたりましては、学識経験者によって構成をいたします審議会意見を聞いてきめて参りたい。したがいまして、現在の失対事業で行なっております——同一地域の同一職種に払われる賃金に対して定率賃金方式をとっておりますが、それをただいま申し上げましたように変更して参りたいと考えております。  それから、高令者等就労福祉事業につきましては、ここに働かれる方々は、一般雇用の場にはほとんど働くことのできないような労働能力だけしか持っていらっしゃらない、非常に低い労働能力だけしか持っていらっしゃらないということを前提考えております。したがいまして、今申しましたような就労事業のように、普通の賃金的な形態をとることができないと考えます。それを前提といたしまして、社会保障的な見地をば十分に留意をいたしまして、それに若干の作業手当をプラスをする、そういうようなことで高令者等就労福祉事業賃金考えて参りたい、かように考えております。  それから、訓練中の……。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと、賃金の問題は、緊急失対法の十条ですか、これが一般賃金の八〇−九〇ということにきめているのだが、一般失対作業別賃率をきめているということであるが、これがまず障害になっております。これをどうするか。この緊急失対法という法律の条項、この法律自身をどうするか。それから、作業別賃率をきめるというのだけれども基準法の建前からいって、対等の立場労使労働条件をきめるというのは憲法、基準法の大原則なんだが、この点は少しおかしいのじゃないか。それから、PWをどうするか。こういう点の説明をしていただきたい。
  16. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 私どものほうで構想いたしておりますような賃金のきめ方にいたしますれば、現在の緊急失業対策法の十条に規定いたしておりますものは改正を要するものと考えております。ただ作業別に、地域別作業内容考え賃率決定するということになりますと、相当慎重な事前準備が必要である、かように考えておりますので、十分な準備を整えた上でこれらの点については実施をいたして参りたいと考えております。  それからなお、賃金決定方式でございますが、実はこの失業対策事業は、失業者の方のために就労の場を提供するということを前提といたしておりまして、通常経済原則によりまする労働力の提供を受けてそれに対して賃金を払う、そこに経営原則があるというようないわゆる労使立場におけるものと非常に違った様相就労の場であると考えております。そういう意味からいたしまして、いわゆる労使によって賃金がきめられるという通常のきめ方とは、事業の性質上おのずから違うものがあるのじゃないか。しかも、国が政策としてやります事業でございますから、各事業主体自主性を認めつつも、あまりにもばらばらな賃金がきめられるということにつきましてはいかがかと考えております。そういう意味からいたしますと、全国的な統一的な賃金決定方式というものをとることが当を得ておるのではないか。こういうような点を考え合わせますと、いわゆる普通に行なわれておりますような労使による賃金決定方式というものとは違ったきめ方をすべきであろう。現行失対法におきましても、そういう立場から労働大臣がきめることになっておりますが、今後におきましても、失業対策事業という性格が貫かれる以上、今申しましたような理由によりまして、労使によってきめられるというよりも、何らかの基準を設け、それに対して学識経験者意見を聞きまして、労働大臣が統一的なきめ方をするということのほうが当を得ておるのではないかという意味合いにおきまして、先ほど申し上げましたような賃金決定方式をとることにいたしておるわけであります。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もうちょっとその点を詰めておかなければいかぬのですが、それは私はまだ意見のあるところですが、これは追及をいたしません。あらためてやりますが、期末手当はどうなりますか。それからPW
  18. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 期末手当につきましては、いろいろな解釈がございますし、現在の失業対策事業の運営におきましても、厳格な意味におきます期末手当というものは先生御存じのとおりにないわけであります。ただ、世上一般期末手当が失対にあるということになっておりますので、そういう意味合いにおきます期末手当につきましては、私ども構想におきましては、類似の労働者に支払われます期末手当をば十分調査検討いたした上で、先ほど申しました賃金決定の際の審議会意見を聞きまして労働大臣がきめる、こういう格好にいたして参りたい、さように考えております。  それから、PW問題は、これは単に失対だけのことじゃございませんので、御所管の基準局のほうでお考えをいただいております。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、だから、さっきの質問の次。
  20. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 訓練をいたします間の手当につきましては、現在すでに訓練手当がその他の労働者方々のために支払われておりますが、それと同じようなお手当の支払いの仕方をいたしたい、かように考えております。  それから、訓練を受けておられる間は訓練手当が参りますが、訓練を受けておられない間の就職活動に対しましては、求職手当——まあかりの名前でございますが、そういったようなものを支給をいたしまして、求職活動中におきます生活の安定ということを考えて参りたい、かように考えております。  それから、最後に、適格要件につきましては、現行失対には、失業者であることと主たる家計担当者であることが要件になっておりますが、新しい、これから出てこられます失業者に対しましては、まず中高年令の方あるいは特別な事由によりまして就職困難な条件を持っておられるような若い方につきましては、まず安定所におきまして、その方の能力、そういうものをば調査をいたした上で、就職訓練指導課程というものを作りまして、その中で、その方にふさわしい職業は何であるか、あるいはどういう訓練を受けたらばこの人は就職がしやすくなるかというような指導をいたして参りたい、かように考えております。したがいまして、その指導を受ける対象は、今申しましたように中高年令者、それ以外には特に就職困難なハンディキャップを背負っておられる方々、こういう方だけでございまして、ただ、一定の手当をば支給いたすことになりますと、これは他に相当の収入のある方にまで国ないし地方公共団体手当支給するのもいかがかと思いますので、そこにはしかるべき方式が必要であると思いますが、そういうような方に対しましては、そういう今申しましたような一つの課程を設けて就職活動安定所が極力行い、就職活動をやりましてもどうしても通常雇用につかれない方につきましては、先ほど申しましたような失業者就労事業就労をしていただくということになるわけでございまして、従来の意味合いにおけるような主たる家計担当者というような条件は設けない予定でございます。  なお、それに関連いたしまして、訓練施設等が非常に不足するのではないかという御指摘をいただいておりますが、これらにつきましては、現在の訓練所だけでなくて、十分な意味におきまして訓練施設充実整備をはかって参ることがきわめて重要なことである、かように考えておりまして、いろいろな条件考え合わせて訓練所その他の充実をはかっていく。なお、訓練につきましては、単に公共職業訓練だけでなくて、委託訓練あるいは職場適応訓練、いろいろの訓練方式を取り入れまして、その充実をはかっていきたい、こういうように考えております。
  21. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、問題は、あなたのおっしゃる方式を具体的な面に合わしてみますと、これからは、池田さんに言わせると、経済高度成長倍増計画だというのでありますから、国民の所得も拡大していく。そうすると、所得の低い人は、他に就職がないから、主として中高年だと思うのですけれども、職が見つからない農民もありましょうし、または商業、零細企業もありましょうし、今日また半失業的の方もあるでしょう。今まできびしい適格審査でやられておったのだが、これからはどんどん窓口に出てくる。そうすると、それは訓練所へ入れましょうというその訓練所がまず足りないということです。そうすると、訓練所の玄関、窓口待ちという人が膨大にできるということになるのではないか。あなたは努力するとおっしゃいましたけれども、今日の事態では、そういう現象が起きるのではないかという心配をするわけです。このような方式でおやりになるのには、特別に訓練局で、中高年訓練を今年はたとえば二十万なら二十万ふやすというようなことが、これと並行して計画されているわけですか。これは訓練局長のほうからお聞きしたほうがいいと思います。
  22. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 失業対策と関連いたしました訓練施設充実につきましては、現在、職業安定局と緊密に連絡を保ちながら訓練施設充実をはかりたいという趣旨で、大蔵当局とも目下いろいろ折衝をしている次第でございます。  なお、訓練方式といたしましては、訓練所という施設を新設拡充して行ないます方法以外に、たとえばすでにございますところのいろいろな教習所とか学校を利用いたしまして委託訓練を行なうというような方式、そういった弾力的な方法を用いまして、訓練多角的運用をはかりたい、かように考えております。  なお、問題は、対象者中高年令者でございますので、若年層に対する訓練とおのずから職種選定あるいは運用につきまして十分な配慮をする必要があると存じます。この点につきましては、すでに労働省職業訓練審議会におきましても、中高年令層職業訓練についていろいろな意見を建議しておられますので、そういった趣旨をも考慮いたしまして、訓練職種選定及び指導方法、教科書、教材等作成等につきまして特別の考慮を払いたい、かように考えている次第でございます。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、あれもする、これもするということをおっしゃいました。しかし、どうなんでしょう。この雇用審議会にお持ち出しになりましたら、雇用審議会で必ず問題になると思う。窓口は自由だといって受け付けて訓練所へ入れるのだ、適格審査はやらないのだ、そういうことになると、学校といわれても正規の学校があるので、その中で、特に農村地帯なんか考えてみても、そんな工業的な学校はないわけだし、そういうことを考えてみますと、私はやはり相当問題があるのじゃないか。だから、こういう方式をとっていこうというならば、かくかくの訓練をやって技術者——ある程度の、一人前できなくても、要するに労働力移動、そうして生産に受け入れられる体制で訓練していくのだというぴちっとした計画がなければ、絵にかいたもちになってしまうということを私は考えるのでありますから、今のお答えの程度ではなかなか納得ができない。これは雇用審議会で議論されるところでしょうけれども、もっともっと、やはりおのおのが勝手なことを考え勝手なことを出すということでなしに、総合的に具体的にどうなるのだということを立ててもらわなければいかぬのじゃないかということを一言申し上げておきます。  それから、あまり私ばかり時間をとるわけにはいかぬので、問題点だけを指摘しておきたいと思うのですが、たとえば社会保険の問題はそれじゃどうするのか。たとえば一般失対の問題は健康保険に入れていくのか、厚生年金やその他の関係をどうしていくのか、そういうことのお考えはどうか。基準法との関係その他。それから、財政上の区分をどうするか。地方自治体との関係ですね。地方自治体との関係財政上の区分をどうするか。これは私は非常に重大な問題だと思うのです。今までの三分の二対三分の一じゃ、地方財源がなければ、国が資金を出しても地方財源が持たないから、事業が行なわれない。二十二日とか二十一日半とか就労日をきめても、それは地方財源がなければ、十八日になったり十五日になってしまう。そういう形になるから、地方自治体財政負担はどうしているのか。この二点をまず聞きたい。
  24. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 課程をやっております間は社会保険問題等ございませんが、失業者就労事業につきましては、社会保険関係の問題は現在の失対事業と同じ様相になる、こういう前提を立てております。現在のようにいわゆる日雇い失業保険、あるいは日雇い健康保険、そういうものがそのままかかる。それから、基準法につきましては、やはり雇用形態はいつでも民間雇用復帰するということが前提でございます関係上、雇用形態が日々雇用という格好になると思いますので、この点につきましても、現在の私ども考えております格好では現在の失業対策事業と同じような状態になると考えております。  それから、財政区分につきましては、地方財政で非常に負担がかかります部分、そのために就労日数が国が予定をいたしますようなことができないという状況につきましては、地方公共団体十分話し合いをいたしまして、国の施策として行なっておりますような就労日数の確保のできるように努力をいたして参りたいと思いますが、非常に地方財政に対する圧迫が強いという面につきましては、高率補助制度考えて参りたい。現在でも一部についてやっておりますが、三分の二をば五分の四に上げまして、高率補助をする。さらに、その五分の四の裏側の五分の一につきましては、交付税のほうで九〇%、九五%まで見てもらっておりますので、地方財源プロパーの問題としては非常に少ない負担になっておる、こういうふうに考えておりますが、そういう制度について新しい事業につきましても考えて参りたい、かように考えております。
  25. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その失業対策事業、二つに分けて、一般失業は、労働の質と量とによって、通常の生産に対する貢献度合いによって、職種別にきめられております窓口は、通常日々紹介ではなしにむしろ固定した職場に長期にわたる場合もありますが、そういう格好で紹介事務を行なっていこうということなんでしょうか。それでいって、日々雇用であって失対の社会保険にとどめておくのだという理屈は、一般失対のところでは成り立たぬのじゃないか。そういう不公平な取り扱いをするということはどうでしょうか。
  26. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 紹介方式につきましては、現在は、自宅から安定所へ参りまして、それから現場に行くということで、その間非常に時間的なロスも多いというようなことを考えまして、安定所に毎日々々出てこられるのが就労者にとっても非常に負担でございますので、まあ一定の期間その行く先をできるだけ特定するようなこともいいんじゃないかということで、計画紹介方式をとりたいと考えております。しかし、この計画紹介方式の詳しいことにつきましては、なお検討中でございますので、本日は中身については差し控えさせていただきたいと思いますけれども、それは紹介方式としてそういうことを考えておりまして、雇用事業主体である地方公共団体が雇います形式は、いつでも民間雇用復帰できるような状態にするということが前提でございますので、私どもとしては、雇用形式は日々雇用のほうが当を得ておるのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  27. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 あまり長く議論はいたしませんけれども、しかし、ものの考え方というものを、私はやっぱしこういう案を立てるなら改めなければいかぬと思うのです。今日、基準局の関係、あなたの関係だとおっしゃらないかもわかりませんけれども、二カ月を繰り返して、臨時工というものは五年も六年も官庁の職場ですら繰り返されておる。こんなことは、認められていいのかどうかという議論も、あなた方こそそういうものを排除していくという建前に立たなければ私はならぬと思うのです。それにもかかわらず、正常な業務に、民間一般の業務に常用雇用のほうに転換されていこうという努力をされるわけです。しかし、失対事業は日々紹介でなしに計画紹介という格好でして、そして需要と供給の関係賃金も、職種別にその労働の能力に応じて賃金が支払わられようという形式をとろうとしていて、そして社会保険的な比率についてはまた昔のもとに返っていく、これは少し理屈に合わぬのじゃないかと私は思う。これはうんとひとつ考えて、雇用審議会で議論されると思いますけれども、それまでに基本的に私はそういう問題は考えてもらっておかないと困る問題ではないかと思う。  それから、地方財源の問題にいたしましても、交付税、特別交付税というものがあります。ありますけれども、今、市町村は非常に財政上アンバランスです。アンバランスの状態の、地域、自治体ごとにアンバランスの状態の中で、ここへ問題がおろされていく。特別交付税でめんどうをみるといったところで、それは十分にみられていない、こういう問題があるから、こういう事業の主体は、三分の一、三分の二というようなことでなしに、事業をやるにかけては、私は国が四分の三とか、五分の四とか持って、主体的な事業は国がめんどうをみるのだ、補完的なものをその地方自治体が進めるのだということでなければ、中央で統一的な方式を立てても、それは実現をしないのではないか。それが今日までの経験上具体的な問題ではなかろうかと私は思う。だから、そういう点もよくお考えになっていただかないと、結局絵にかいたもちになりはせぬかということを考えるわけでございます。  それから、先ほど、繰り返しますけれども、問題は、やはり失対事業に働いている方々生活の問題が出ている。この生活を存続する、生活を維持するという立場からすれば、その福祉失対がどの辺のところで生活が守られるか、社会保障の要素というのに作業手当くらいのものをつけ加えてというなら、どのくらいの賃金考えているのかという議論が一つここで出てきます。それから、一般の失対については、今のような格好ですから、ここで労働大臣がきめるということでなしに、むしろ一般賃金とあわせて、働いている者と使っている者との関係においてやはり労働条件はきめなければならぬというようなのは、国際的な、世界的な原則ですよ。こういうところにも原則をはずしてやろうという、無理を押そうというのが、少し私は労働省としても努力が足らぬのじゃないか。何とかその国際的な原則にのっとって私は進めていくということでなければいかぬのじゃないか。  それから、何といってもそういう能力を百パーセント生かしてもらいたいというなら、そういうやはり民間においてILOの、ここへきょうもらった労働時報のILOの今度の時間短縮の勧告を見ても、四十八時間以上のところは直ちに政府はやめよと、四十時間労働制にできるだけ早く努力せよという二つの並行的な決議がされておる。ところが、今日週に四十八時間以上働いているのが二千五百万人もおる。そういうのがおりながら、事業主、労働者含めて年間十二万以下の所得の人が一千万近くおるというような状態、私は、労働行政としてはそういうものを直さなければならぬ一つの問題として、この失対事業で今度おやりになるのに、そういう安い賃金を主体にしてものを考えていくということじゃなしに、やはり働いてもらう、労働を生産に提供してもらうなら、最大限の賃金でその方々生活を保障するのだ、そういう立場から、むしろ政府事業が先鞭をつけて、その働いている労働者生活を守っていくという方向を私はつけなければならぬのじゃないか。それから、訓練の問題だと私は言いたいことがたくさんあるのですが、私はこれに書いておることを、今は深く言いません。雇用審議会審議されると思いますから、深くは言いませんけれども、私が指摘した問題でもそれぐらいあるのですから、どうかひとつこういうものを立てようとするなら、そういうやはり裏づけなしには失対労務者の不安というものは取り除かれない。結局は失対が体裁のいい格好で今働いている者は職場から追い出されるのだという格好になりかねないと思うのです。だから、そういう不安を除くためには、私はやはり努力によってそういういろいろの問題点を解消して、雇用審議会にはかくかくやるのだ、雇用審議会からこっちに上がって、国会で次に審議になると思いますけれども、そういう問題が、やはりどうも帳面づらだけ、表面だけ合わすような格好の流れしかないように思いますので、特別な配慮をひとつとってもらわないと困る。私はきょうはこの程度で終わりますけれども労働大臣がお見えになったら一言お聞きしたいと思っておりますけれども、特別な問題点指摘しましたから、そういう点は直すようにしてもらいたい、こう思います。  大臣がお見えになりましたから、私は一言聞いておきたいと思う。今、失業対策、失対事業の問題について、あらましの説明を受けたわけであります。私は今指摘したことを繰り返しませんけれども、たとえばこのような構想の中でいきますなら、いろいろのたくさんな不安があると思うのです。たとえば中高年職業訓練をやるのだといっても、職業訓練をする場がない。だから、職業訓練所の窓口待機という格好になるような意見もあります。それから、また、賃金の問題にしても、憲法や基準法原則からいって、大臣がおきめになるということでありますけれども、全体の手続は、働いておる者の意思がその賃金決定にやはり明確に入っていくという姿でなくてはならないと思います。そういう問題点指摘しますと、たくさんあるわけです。ですから、そういう内容を今失対部長にいろいろと考えてもらいたいということを指摘しておいたわけでありますけれども労働大臣にお聞きしたいことは、私は、こういう満たされない生活の問題、やはり将来満たされない問題が解決されないままにこのような失対の事業が繰り返されていくということになれば、結局は今働いている事業にしてみれば、失対事業からわれわれが追い出されて、打ち切りというものと変わらないのだという不安をこの失対労務者が持っていると思う。ですから、私は、そういう今まで指摘したような問題が雇用審議会にかかっているわけですから、雇用審議会の中を通じていろいろと改善努力されると思いますけれども、今の失対事業の労務者がいまだに不安に思っている失対打ち切りということに積み重ねていったらなるのだという不安を解消するために、一段の努力をするという決意のほどを私は大臣から聞いておきたいと思う。
  28. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) ただいま御指摘の点につきましては、私どもも慎重に留意すべき事柄であると考えております。したがいまして、調査研究会の報告を来年度以降におきまして実施いたしたいと考えておりますが、これにあたりましては、現在失対に働いておられる方々に非常な不安を与えることのないように、十分あらゆる点を考慮をいたしたいと存じます。
  29. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、前回並びに前々回から問題になっておりますところの国鉄の不当労働行為問題について質問をしたいと思います。  十月十一日に行なわれた社会労働委員会会議録によれば、小柳委員不当労働行為の問題についての質問に対して、国有鉄道吾孫子副総裁から答弁がございました。その要旨は、不当労働行為的な差別待遇というようなことがあってはならない、こういう指摘については、仰せのとおりでございますので、できる限りの注意もし、また、指導もしておるつもりでございまするが、具体的には私自身、管理局長も更迭をいたしましたので、新しい管理局長に対して直接に注意もしておりまするし、現場のほうでもそういうことのないように注意もさせております。少なくとも、全体として、よほど従来とは様子が変わってきておるというふうにお考えいただけるのではないかと思っておりますと、こういう意味の御答弁が吾孫子副総裁からございました。それから八月の三十日には、十河総裁から、国鉄を改善をしていくためには、どうしても労使が共同の立場に立って協力をしなければならない、われわれの労働管理もそういう方向に従ってやっていこうということを言っております。したがって、不当労働行為のような問題が起こらないように絶えず戒めている。いやしくもそういう疑いを受けるようなことをしちゃならぬぞということを戒めておるというようなことを念を押して答弁をしております。これは政府委員の答弁でありますから、当然守られなければならないと思うのでありますけれども、職員局長もかわったことでありますので、こういう指導方針、あるいは国鉄当局の答弁は、間違っても不当労働行為的なことはやらないし、指導も行なわないということを再度明確に約束をされたものというふうに解釈をしてよろしいかどうか。当然のことでありますが、職員局長にお伺いをしたいと思います。
  30. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) お尋ねの件につきましては、総裁、副総裁から御答弁申し上げましたとおり、いやしくも現場において不当労働行為がないようにという指導を、私、先々月職員局長を拝命した者でありますが、会議において話をし、また、今後もその方針で指導して参るつもりであります。
  31. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 十月十一日の社会労働委員会のあとで、十月二十二日でありますけれども、金沢の鉄道管理局で、管内の不当労働行為事案に関する紛争の処理について、社会党の国会議員団と鉄道管理局と国鉄労働組合の三者が協議の上で申し合わせが行なわれて、共同で新聞記者会見を行ない、発表をいたしました。その内容としては、「本紛争を円満に解決し、今後前向きに正常な労使関係を確立することについて、基本的に意見の一致をみた。」ということ、「しかして、具体的な方策についても種々協議したが、これは右方針に基づいて、さらに現地労使間ですみやかに協議し、実行することになった。」、こういう新聞発表を行ない、北国新聞であるとか、向こうの新聞に全部この内容が出たわけであります。こういう趣旨で申し合わせが現地で行なわれたということに対して、国有鉄道当局は承知をし、あるいは了承されるものかどうかについて御質問をしたいと思います。
  32. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) ただいまお読み上げになりました新聞発表の内容については、字句の細部の点は記憶いたしておりませんが、大体そういうふうな内容で、管理局長と議員団とが共同で新聞発表したということは承知をいたしておりますが、管理局長と議員団の先生方との間に申し合わせというようなことが行なわれたようには私承知をいたしておりません。
  33. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 現地の労使間で、従来の行きがかりを捨てて、労使関係の正常化についての約束や申し合わせができた場合には、当局としてこれを尊重する気があるのかどうか。それによって前回もしくは前々回以来、当社会労働委員会で問題になってきた北陸方面の不当労働行為問題は、一応円満な決着がつけられると思うのでありますけれども、この問題について、私が今申し上げたように、現地の労使間で話し合いがついた場合には尊重する気があるかどうかという点について御答弁願いたいと思います。
  34. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) 金沢、新潟のいわゆる不当労働行為問題につきましては、御承知のように、七月に公共企業体等労働委員会の救済命令が出されておりますことは、もう御承知のとおりでございますが、この救済命令の処理につきまして、目下国鉄労働組合本部と私どもとの間に、どうすれば円満に事態が解決できるかということで話し合いをしております。今お尋ねの管理局長と、それから、それに対応する国鉄労働組合の地方機関との間に申し合わせができた場合のことでございますが、大筋は本部と国鉄本社との間の取りきめで大体の軌道を敷いて参りたいと思いますので、もちろんそのワクの中で管理局長は地方本部と話し合いまして取りきめますことについては、十分尊重をいたして参るつもりでおります。
  35. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 現地の労使間では、この問題については、もう社会労働委員会でも八月以来問題になっておることでもあるし、公労委の救済命令が当局の提訴によって法廷でもって長々と、これから先何年かかるかわからぬという状態であれば、正常な労使慣行というものが確立されないままにずるずる日を延ばすということになる。これはお互いに不幸なことじゃないだろうかと思うし、また、委員会でもって総裁なり副総裁が再三答弁をされておる趣旨にも反することじゃないかというふうに思われるわけです。したがいまして、この現地でもって書面でもって取りかわしたかどうかということは別にいたしまして、大筋の話がきまったのならば、現地の話し合いの内容というものを、当然本社のほうにおいてもこれは尊重をして決定をされるというふうに解釈をしたいのでありますが、そのようなお考えでこの話し合いに臨まれておるというふうに解釈をしてよろしいですか。
  36. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) 現在、国鉄本社と国鉄労働組合本部との間に行なわれております話し合いは、過般議員団が金沢へ行かれまして、管理局長との間にいろいろ話し合いが行なわれたその模様を十分頭に置きまして話し合いを進めております。
  37. 小柳勇

    小柳勇君 昭和三十五年、二年前からですが、当委員会で国鉄の不当労働行為について、再三再四国鉄から来てもらって、問題になりました。私どもとして、まことに遺憾なことでありまして、国鉄総裁も副総裁も遺憾の意を表されたのであります。金沢の問題、新潟の問題については、今具体的に話し合いがつきつつありますが、原則的にこのようなことが——このようなことといいますと、具体的には非組合員である現場長、助役、あるいは運輸長、あるいは管理者が、権力をもって、あるいは金銭、酒食を供応して、第二組合を作るべく、国鉄労働組合、あるいは動力車労働組合から脱退を慫慂するというようなことについては、一体新しい職員局長は、いいとは思わぬと思うんですが、その経営方針として、どのようにお考えであるか、原則的なことを聞いておきたいと思います。
  38. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) ただいまのお話につきましては、事柄としてそういうことが妥当かどうかという私の判断の御質問であろうかと存じますが、これは国鉄の労使関係を正常にするという見地からいたしまして、法律、あるいはそれに基づく行政解釈、慣例、そういうものが明らかに不当労働行為であるというふうに定められております事柄につきましては、絶対に管理者からそういうことを働きかけるということはよろしくないと存じますので、お尋ねの点につきましては、今後の私の仕事の面におきまして順守していきたいというふうに考えております。
  39. 小柳勇

    小柳勇君 それに関連して、公共企業体等労働委員会から救済命令が出まして、救済命令には、明らかに現地における不当労働行為が認められております。国鉄当局の言い分は、この不当労働行為については事実誤認の点もあるという申し開きによりまして、現在裁判に提訴中でありますが、その問題が起こっておって、これを解決する努力労使双方でなされておる。なされておるにかかわらず、また最近ちらほらそういう話が出て参っておる。で、私は、管理者一体の原則によりまして、過去の管理者がいい悪い、現在の管理者がかわったからどうということは言いませんけれども、私どもとしては、二年も三年もこの種問題がこの委員会で論議されること自体が、まことに遺憾であります。過去の問題については、早急にこれを処理してもらうと同時に、現在もしそういうことが起こっておるとするならば、これは直ちにこういう問題が問題とならぬように解決してもらわなければなりません。もし将来そういうことが起こる可能性があれば、これを管理者として根絶すべく努力してもらわなければなりませんが、現在の問題なり将来の問題に対して、職員局長の決意をお聞きいたします。
  40. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) この問題につきましては、現在国鉄地方総連合、職能総連合という二つの組合が、いわば膨張過程と申しますか、少しずつ組合員がふえておりますので、いろいろと現場におきましてフリクションがあることは事実でございます。これがいやしくも国鉄当局側の何らかの働きかけというようなものによってそういう事態が起こるというような疑いを持たれないように、くれぐれも下部機関には指導をいたして参っておりますが、今後ともそういう事態につきましては、できるだけすみやかに誤解を解くようにいたして参りたいと考えております。
  41. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 前回の会議録によりますと、小柳委員から労働大臣に対して、民間でも、たとえば水俣の闘争等においても第二組合を作らせて、そうしてうまく経営者とやっていこうという動きがあった事例が一つ出ておりまして、それに関連をして質問をされており、労働大臣も第一組合、第二組合、こういったような場合に第二組合を擁護するといったようなことは、公平のまあ原則からいってそういうようなことはやらぬ、そういう指導はやらぬという意味のことをお答えになっております。今、職員局長からも答弁がございましたけれども、国鉄にとって現在一番大事なことは、事故防止対策の万全を期することではないかと思うのであります。第二組合、第三組合と、いろいろな組合ができたために、職場でトラブルが起こっておるということを今お話になりましたけれども、もし、この種の不当労働行為の事案が、使用者とか管理者にその意思がなければ、あえて公労委の救済命令を待つまでもなく起こるはずのないことだと信ずるのでありますが、最近、東京鉄道管理局管内、この周辺でありますが、不当労働行為的な事例の訴えをひんぴんと聞いておりますので、この際はっきりさせておきたいと思うのでありますが、職員局長東鉄管内における不当労働行為的な事例を聞いておるかどうか、そのような報告を受けておるかどうかについてお聞きしたいと思います。
  42. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) 東京鉄道管理局の報告は、最近、先ほど申し上げますように職能総連、国鉄総連への脱退加入がふえておるという数字的な報告をもらっておりますし、また、それに関連をいたしまして、国鉄労働組合の地方本部のほうから、これは個々の事案については詳しく報告は聞いておりませんが、現場の管理者が今申し上げました二つの組合に加入をするようにという慫慂をしておる。それをやめさせてくれという国労東京地方本部からの訴えがあるということは報告を受けております。
  43. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国鉄の中でも時に東京鉄道管理局は最もまあ重要な個所でありまして、事故防止あるいは安全運転という点からも一番注意をしなければならぬ個所であるということは今さら言うまでもないことだと思います。ことに秋から冬にかけて、あるいは年末年始の繁忙期の輸送をどう円滑に行なうかということも重要な問題だと思います。昨年の年末年始輸送の場合も、東京周辺では労使が協力をしてお互いに休みを返上して年末年始の輸送に取り組んでおるという事実がございます。現場長等においても、こういう労使の協力体制というものを歓迎をしているというふうに聞いておりますが、それにもかかわらず、最近一部の管理者の中には、事故防止や輸送推進の本来の使命を忘れて組合の組織の分裂に狂奔をしておるという者があることを聞いております。一般の職員よりも高い月給をもらって、本来の仕事をやらずに、第二組合、第三組合を作って、その数字をお互いに競い合うというふうな風潮が出てきたことは、これはゆゆしい問題だというふうに考えられますし、たとえ懸案事項等があっても、こういう事故防止なり繁忙輸送等、緊急を要する場合には労使の協力を当局としても何ら拒否する理由なしというふうに考えるのでありますが、その点、職員局長としてはどのようにお考えになりましょうか。
  44. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) 基本的な国鉄の労使関係は比較的、百点ではないにしても相当うまくいっているほうじゃないかと、われわれのうぬぼれかもしれませんが、存じておりますが、ただ、部分的には非常に国民に御迷惑をかけるような事態がないとはしないのであります。それらについておのずから批判の声があるのではなかろうかと推測をするわけでございますが、今御指摘のとおりに、組合が、たとえば年末年始の非常輸送でございますとか、あるいは事故の場合の緊急輸送でございますとか、そういうものについて協力の姿勢を示す者につきましては、われわれとしても、あえて事をかまえてどうこうということは考えておりませんので、基本的には今の平和な労使関係を維持して参りたいというふうに考えております。先ほど来申し上げますように、組合の勢力の分布の変動につきましては、われわれは何らの積極的な意図もございませんので、その点は重ねてお断わりを申し上げたいと存じます。
  45. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 特に東鉄の場合は職員の数も一番多いわけでありますし、まあ輸送の能力が限界点に達して、非常に、三河島事故といったような不幸な事件もございましたが、現在でも事故の危険とは紙一重の状態で無理な輸送が行なわれておるということは当局者として当然御存じのことだと思います。そういう職場環境では、特に人の和とか、職場内のチーム・ワークというものが一番要求をされるというふうに思うのでありますけれども、それが組合の分裂によって職場内で対立あるいは敵視、反目、相互不信といったような空気が生まれたならば、事故防止の面でも非常に危険だと思うのであります。ですから、特に非組合員、これは具体的に申し上げますと、運輸長とか駅長、助役、こういう職制上の立場にある者が本来の使命を忘れて、その地位と職権を利用して、組合員の脱退を慫慂したり分裂を策するということは法の精神にそむくだけではなくて、国鉄業務の面からいってもきびしく取り締まらなければならぬというふうに考えるわけであります。当局が運輸長とか、駅長とか、助役とか、あるいは局の課長であるとか、そういう職務のいかんを問わず、職務に名をかりて組合の内部干渉や分裂策動等を行なうことは絶対に許していない、そのような指導ももちろん行なっていないというふうに、これは念を押すのでありますが、解釈してよろしゅうございますか。
  46. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) 職場の体制をがっちりとやっていきますためには、時として管理者とそれから従業員との間に激しい議論を戦わすことは避けられないところであると思います。仕事をどうしたらうまくやるかということについて、いろいろと年令なり、あるいは立場なり、育ちなりというようなことで考え方の違いが出てくるのはやむを得ないところであると思います。そこで、そういう議論をお互いに戦わした上で、最終的には管理者がこうだというふうに決定した線に沿って一致して業務を遂行するのが正しい仕事のやり方だというふうに考えております。でありますから、これまでの国鉄の指導にいたしましても、事なかれ主義で、管理者がまあまあというてくさいものにふたをして、かりそめの職場の平和を現出して、それによって当面を糊塗するということはよろしくないというふうな指導をいたしておりますので、あるいは現象面でいろいろ職場に議論が戦わされるというようなことが、今御指摘の事故防止問題その他にもあまり望ましい姿じゃないのじゃないかというふうに外部から目に映ることもあるかと思いますが、これはもう雨降って地固まるということで、そういう職場における一つの議論といいますか、そういうものを避けないで取り組んでいくように指導しておる次第でございます。したがいまして、そういう議論の過程でいろいろ組合運動のいき方といいますか、そういうものについて管理者が意見を表明するということは、これは避けられないことであると思います。お説のように、それから逸脱をいたしまして、組合の加入問題につきまして何か強圧を加えるとか、あるいは利益誘導をするとかいうことは、あくまで法の認めないところでございますので、そういう行き過ぎのないように指導しておりますし、また、今後もその考え方指導していきたいというふうに考えております。
  47. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 今、職員局長から、雨降って地固まるということが言われました。おそらく従来のいろいろな問題について、職員局長としてもいろいろなことを聞いておられると思うのであります。雨降って地固まればいいのでありますけれども、逆に地すべりを起こして災害を巻き起こすというようなこともあるので、そういうことのないようにしてもらわなければいけないと思います。そこで、もう一度念を押しておきますが、八月の社会労働委員会では、十河総裁が、不当労働行為の疑いを受けるようなことは絶対にやっちゃいかぬ、いましめておるということを再三再四言っております。それから十月十一日の社会労働委員会では、副総裁がまた同じ趣旨のことを言っており、今後ともそういうようなことはやらぬと言っておるのであります。そうすると、当局の方針というものが、不当労働行為的な、特に管理者がそういう分裂策動を行なうというようなことは絶対にやらせていないし、やるべきじゃないという方針をとっておるというふうに解釈できるのでありますが、それにもかかわらず、現場の管理者のところで不当労働行為が現に行なわれたという事実が明らかになった場合には、当然これはしかるべき処分の対象になるというふうに考えられるのでありますが、どうでありましょうか。
  48. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) ただいまお話のございました総裁、副総裁の答弁につきましては、私も直接に承っておりまして、その趣旨指導しろということを言われておりますので、十分承知をして指導しておるつもりでございます。現実に紛争につきましては、先ほど申し上げましたように、個々の事案についてまだ詳細の報告を受け取ったわけではございませんので、事案につきまして、もしそのような紛争が現場で起こっておるとしますれば、詳しくさらに報告を聞きたいと考えております。
  49. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 事例はたくさんあるのであります。たくさん出ておりますが、時間もかかりますので、具体例をごく簡単に申し上げますと、たとえていうならば、上野駐在運輸長並びに駐在運輸長付が、助役、運転係を集めて脱退を慫慂し、各人に対してその意思の有無について回答を強要したという事実、あるいはまた横浜駐在運輸長付石渡何がしが同様な事例を行なったという事実、あるいはまた芝浦の駅長、品川の機械区助役、これらの者が具体的な不当労働行為と完全に目されるようなことを行なったという事実は、私どものほうに証人をあげて報告が参っております。このことについておそらく組合から局長に対しても当然厳重な抗議が行なわれたというふうに考えるのでありますけれども、これはまあ一例でありますけれども、たくさんの事実がございますから、こういう事実は国鉄当局者の従来の国会答弁とも合わせ考えまして、当局としてもはっきりとした処断をしてもらわなきゃならぬと思います。  それからもう一つ念のために申し上げますが、事実を調査する場合、不当労働行為を行なった当事者が直接監督の立場にある場所には、その事後の昇給とか、昇職とか、そういったようなことで仕返しをされるということをおそれまして現場の組合員というものは沈黙をするということが多いのであります。それだけに証言、証人をはっきりとここに出すということがむずかしいわけです。富山における不当労働行為の問題にしましても、公労委で調べてはっきりとした事実があったにもかかわらず、一応当局の調査によればそのようなことはやっておりませんというおざなりの答弁をしております。ですから、事実をやはり調べていただきたいが、その事実を調べる場合には公正を期してやってもらわなきゃならぬと思うのであります。つまり、その不当労働行為を行なった人間が自分たちの上司である場合には、あとのたたりがおっかないわけじゃないけれども、お礼参りをされてしまったら引き合わないと、こういう疑念が出てくるわけでありますから、公正を期して被疑者に対して犯罪事実の調査を依頼するというような形になってしまってはしようがありませんから、その点、当局のほうでもあくまでも峻厳な態度で臨んでいただきたいと思うのでありますが、その点について職員局長の見解をお伺いしたいと思います。
  50. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) 調査をいたします場合のただいまの御注意、十分頭におきまして調査を進めて参りたいと思います。
  51. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は職員局長にお尋ねをしたいのですが、今、瀬谷委員からも申し上げ、また小柳委員からも申し上げましたように、私は国鉄の労使というものは、今、局長のお話を聞くとうまくいっているということをいわれた。ところが私の記憶を振り返ってみましても、昭和三十五年、たとえば金澤管理局を中心に生まれたあの不当労働行為、総裁、副総裁以下職員局長方々、当局の責任者の方々がここにお出でになって、具体的な例証を取り上げて、たとえば労働法の二条の精神からいってもそういうことはやってはならぬ行為でございますからということで改められた。改められて、そして一応のいい方向が出たように思ったわけであります。ところが、また今度東鉄管内で、今、瀬谷委員がいわれたように具体的な、私のもらった資料には、上野駐在運輸長、運輸長付というのが常磐線地区の助役会を開催した席上、約四十人の運転係、組合員に対して五月中に国鉄労働組合を脱退するように、そうして各人に起立を求め、脱退の意思の有無をその席で回答を強要したというようなことが平気で、一つの例ではありますけれども、行なわれている。総裁、副総裁、本社の関係において、職員局長も含めて、そういうことはいたしません、労使関係は対等の、フェアな立場で進んでいるんだと、こうおっしゃるけれども、裏では、国鉄の労働組合を脱退し、第二組合に入るように慫慂している例がたくさんあるわけです。こういうことを、なぜ国鉄当局としてはやらなきゃならぬのか。あなたが知らないとおっしゃるなら、それじゃ、国鉄の機構の問題を私は聞きたい。総裁以下、本社の皆さんがおいでになって、それはやらない、やらないと天下に声明をされておって、管理局がたくさんある、管理局は好き勝手なことをやっていいんだというようにわれわれは解釈していいのかどうか。それじゃ、国鉄全体の規律というのはどこにあるんだということを私は言わざるを得ないのであります。しかし実際に、国鉄の交通の業務をつかさどっているのは、何といっても職員の皆さんである。労働者の皆さんである。現場、局というようなところが具体的には運転の業務を担当されているわけであります。それを監督されている管理局というものが、国鉄の業務の柱だと思うのです。総体的な監督は本社で行なわれているでありましょうけれども、その具体的な現場において、こういうことが平気でやられる。本社ではそんなことはやらぬと言って言い切られる。そしてこういう具体的な事例が、どんどんと行なわれるということになってくると、これはどういうことになるのですか。私は国鉄の機構の規律の問題をお聞きしたいということになってくると思うのです。この前のときは、事実を指摘して、あの当時は、副総裁以下が、職員局長調査役の方々ですか、現地に派遣をされて、そしてその非をただされて処置されたという、この現実が、あの当時の問題を解消したと私は思うのです。それでこそ、今、職員局長言われるように、国鉄の組合と当局の間は正常な労使関係なんだ、労使関係一般的によいほうだということを言われても私はいいと思う。こういうことは、監督も何もされてないのだということだけをここでおっしゃっても、これは意味をなさないことだと私は思う。だから、名実ともに、ここで、総裁以下が、今の労組法の原則に基づいて不当介入をしない、こういうことをおっしゃるなら、私はどんな小さな現場に至るまで、法で認められた労働組合と皆さん方当局との関係があるのですから、そこにはこういう間違いが起きないように、監督というものがきちっと行なわれて、きちっと知っておられるという状態でなければ、われわれとしては納得できないと思うのです。ですから、私はきょうは当事者の東鉄局長もお見えになっていないので遠慮をしていたわけでありますけれども、いずれ私は来てもらって、この具体的な一つ一つの例について解明をしていただかなければ私たちは納得ができない、こういう感じを持っているわけであります。ですから、この次までには、どうしてもこの例証について一つずつ解明をしていただいて、調査していただいて、これはやはり明らかにしてもらわなければ、われわれ納得できないと思うのです。職員局長が今までおっしゃっていることはりっぱなことです。りっぱなことですが、具体的に、この事象というものを、どういう工合に——あなた、ここで初めて聞いたということではないと思うのです。ここで初めて聞いたということなら、私はあなたを責めません。責めませんから、どうぞ、この事態を明らかにして、ひとつ社会労働委員会のこの場でしていただきたい。きょうとは申し上げません。それはぜひお願いしたいと思うのです。何か御所見があったらお聞きしたい。
  52. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 関連して。私も東鉄局長出席をしておりましたら、さらに具体的に聞きたいと思っておったのですが、きょうは職員局長だけであります。東鉄局長は出張をしているというようなことでありますので、これはやむを得ないと思います。しかし再度申し上げておきますけれども、こういう問題が出たために、第二組合、いわゆる職制を通ずる第二組合ができて、処置に困って、じゃ何とかこの第二組合から身を守るために第三組合を作ろうなどという者も出てくる。あるいは一つの職場に第三組合まで、三つも組合ができたのでは何とも去就に困るからというので、第四の中立グループを作るとかいうふうに、一つの職場の中でたいへんに厄介な問題になってきているわけです。人によると、気の弱い人は板ばさみになってノイローゼになるという者が出てくる。これから秋冬繁忙期に差しかかって、国鉄の輸送もますますたいへんになってくるのでありますが、職場の中がこういうふうに暗くなってくるということは、ぜひ避けなければならぬと思う。今申し上げたような事例は調査していただかなければならないし、峻厳な態度で臨んでもらわなければならぬのでありますけれども、もみ消しなどが行なわれたりすると、かえってこれはまずいということになると思います。だから職制あるいは職権にものを言わして、もみ消しをしたり、あるいは組合員の口を封ずるといったようなことをしないように、次回までには、東鉄局長出席をしていただいて、問題が解決すれば、あえて私は国会で追及をする必要はないと思いますので、問題が解決をする方同に向かって努力をしてほしいということを希望しておきたいと思います。
  53. 谷伍平

    説明員(谷伍平君) 両先生から御指摘のありました点につきましては、十分配慮して参りたいと存じます。
  54. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 東京鉄道管理局長立花文勝君、同局総務部長名波克郎君を参考人として御決定をいただいたのでありますが、業務出張のため出席が不能とのことでありますので、次回に出席をしていただくことにし、午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後は一時より再開をいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時九分開会
  55. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ただいまより再開いたします。  委員異動についてお知らせいたします。  本日瀬谷英行君が委員辞任せられまして、その補欠に阿具根登君が選任せられました。     —————————————
  56. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 午前中に引き続いて、労働情勢に関する調査議題といたします。  質疑の通告がございますので、順次御発言を願います。
  57. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、水俣問題について御質問申し上げたいと思いますが、その前に、現在約半年、労使の紛争が続いておりますが、現在どういう情勢になっておるか、御報告願いたいと思います。
  58. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 水俣の新日窒の争議につきましては、これは経過は御承知だと思いますが、会社側が定安賃金に関する提案をいたしまして、それに対し労働組合側がこれを拒否いたしまして、その結果、この六月以来双方が争議態勢に入っておるわけであります。特に、八月以降におきましては、組合が全面的にスト態勢をとり、会社側はこれに対しロックアウトを実施しておる、こういう状況でございます。  その間におきまして、六月に中労委がこの問題につきましてこれをあっせんするかどうかという問題について取り上げたのでございまするが、これは不調に終わりまして、その後、現地の熊本の地労委におきまして双方から事情聴取を行なっておる、こういう段階でございます。  その間におきまして、これも御承知のごとく旧労働組合から新しい労働組合が分裂をいたしまして、その後現地におきましてはこの新労の従業員の手によりまして、ある程度の生産が再開されておる、こういう状況に相なっております。  労働省といたしましては、この間に介入いたしまして双方の当事者に対しまして熊本の県庁等を通じまして、不当、違法な行為のないように双方気をつけてくれという勧告をいたしますると同時に、現地の地労委においていろいろ事情を聴取しております。この経緯を非常な関心を持ちながら目下見守っておる、こういう段階でございます。
  59. 阿具根登

    ○阿具根登君 本委員会で数回質疑が行なわれておりますので、それにあまり重複しないように質問をいたしたいと思いますが、基本的な問題で御質問申し上げたいと思います。  会社側が出した要求書をながめてみますと、たとえば昭和三十七年度は同業会社六つあげてございますが、同業会社の平均賃金の妥結より五百円減じた額、昭和三十八年度はその妥結額に五百円を加算した額、あるいは四十年、四十一年は同じく千円を加算した額、こういうことは一体いいのであろうかということを考えるわけです。自分の事業が非常な黒字になってきた、あるいは赤字になってきた、そういう中で賃金問題を争われるのが常態だと思います。ところが自分の企業というものは横に置いて、他の企業がどのくらい上がったならば自分のところはどのくらい上げるとか、あるいは下げるということがいいのであるか悪いのであるか、と申しますのは、逆にこれを見る場合、他の企業が全部それをやったら一体どうなる。これは六社あげております。その六社が全部これと同じ要求書を組合に出した場合、これは一体どうなるか。またもう一つの見方から見れば、自分の企業が赤字になろうと黒字になろうと、そういうのはおかまいなしで、この競争の激しい、しかも貿易の自由化に乗ってしかも合理化の波で、企業というものは二年先、三年先の目標をつかみ切れないのが私は現実だと思うのです。それを自分の企業がどうなろうと、そういうものは問題じゃないのだ、よその企業がこういう賃金をきめたならばそれ以上の賃金を払うということが、基本問題として考える場合正しいのであるかどうかという問題について、御意見をお伺いしたいと思います。
  60. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) これは非常に微妙な御質問でございまするが、会社側の言うところを聞きますると、まあこの貿易自由化その他のいろいろな最近の情勢にかんがみまして、この数年間は企業をどうしても安定していかなければならないという問題と、それからこの新日窒の賃金というものが、他の同業各社と比べまして低位にあるというような条件をからみ合わせて、以上のような提案をしたものである、こう承知しておるわけでございます。  私どもは、この賃金形態がいかなるものが適当であるかという点については、いろいろな観点があると思います。特にただいま御指摘のごとく、たとえば他の同業各社とみな同じような要求をしたらどうなるかということになりますると、これは賃金形態としてはきめることが困難になるという問題も出て参ろうと思うのでございます。ただしかし、他の各社におきましては、現在このような形態はとられておらないというところで、このような賃金アップの基準というものは成り立つことは成り立つわけでございます。しかし、それが適当かどうかという点になりますると、これは見る人の角度によりましていろいろな問題が出て参ると思います。私どもはこれは率直に申しまして、現在この安定賃金というもの、新日窒の安定賃金の会社側の考え方というものをめぐりまして、その点が目下この新日窒争議の最も焦点になっておる問題でございまするので、これらの問題は労使双方のさらに折衝に待つ。したがいまして、労働省といたしまして、この内容がよいとか悪いとかいうようなことを、この段階において申し上げることは差し控えさしていただきたい、このように考えておるわけでございます。
  61. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働省がこの問題について私は中に入れとか入るなとか、そういう問題じゃなくて、労働問題から考えた場合に、まあ普通いわれておる言葉を使うならば、人のふんどしで相撲をとる、よその組合、よその企業はストライキをやらせる、そこできまった賃金のどのくらい上をやるとか下をやるとかいうそのものが、私は労働組合法の精神に違反している、私はこう思う。新日窒がこれをやったからあとの住友やあるいは東圧やあるいは日産や宇部、これがこういうことをやってできないということは言えないはずだ。どこの企業だってそう持ってきたら一体どうなるか、どこが一番最初に賃金をきめるのか、こうなるわけなんですね。ストライキをやってもらうよりも、やってもらわなくて、そうしてよそがやったやつに対してどのくらいかの賃金をきめるというのは、私は経営者の最も下の下のやり方だと思うのです。そういう点から考えてみて、こういう要求を出して組合がのめなかった、ストライキに入った、ロック・アウトをする、これでいやなら、あなた方やめなさいということなんです。仕事をしてもらう必要はない。そういう理論が労働組合法に制定されたときの精神に沿っておるかおらないかということを今度はお聞きいたします。
  62. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) いわゆる安定賃金考え方、すなわち、たとえば数年間を指定いたしまして、その間における賃金決定基準というものを協約に織り込みまして、この間において争議行為はしないというような問題が、いわゆる相対的平和義務条項という問題でございます。この問題につきまして、あるいは組合の争議権というものを奪うのではないか、不適当じゃないか、こういう御議論もあることは私ども十分承知しておるわけでございます。しかし、これが違法かどうかという問題になりますと、ある一定期間中に賃金の具体的な決定基準というものをきめまして、その問題について組合がこれをのめば、その間はその協約を結べば、その間はその問題について争議はしないということがその結果として生まれてくるのでございまして、これが違法であるとは申せないわけでございます。その内容が適当かどうかという第二の問題に入るわけでございます。しかし、これは先ほども申し上げましたとおり、目下この内容をめぐりまして、目下当事者が激しく争っておる、こういう段階でございます。その間において、地労委の事情聴取等も行ないつつある、こういう段階でございますので、この段階におきまして、その内容が適当かどうかという私ども意見は差し控えさしていただきたい、このように考えておるわけでございます。
  63. 阿具根登

    ○阿具根登君 そのスト権、賃金問題はあとで十分お聞きしたいと思うのですが、まず私が最初言っておりますのは、こういう要求書を出して、要求をすることを私は違法であるとは思わないですよ、要求することについては。しかしそれがのめなかったからロック・アウトまで持っていくということは、これは私は組合法を知らない人のやり方だと思うのです。当然労働力を売っておる人であったら、それは二年先、三年先不安のある労働力の問題については拒否することは当然できるわけです。会社自体だってわからないはずなんです。わからないはずですね、政府だってわからぬでしょう。石炭問題も御承知のように、三十一年には七千百万トン使うと言った。これは政府が言った。三十四年五千五百万トン、二六・二トンでよろしいと、こういうことを言った。今度は三十六年になってきますと、同じく五千五百トンでも、二八・二トン出してもらわなければならない、こういうふうに二年先、三年先はわからないのです。それを、労働者が不安がっておる賃金を押しつけてくる。しかもそれが、自分のところの企業の状態を見きわめて、一年後はこれだけの事業ができるのだと、二年後はこれだけの事業ができるから、このくらいの賃金でいってもらいたいというならば、これはわかる。ところがそういう説明をせずに、よその会社が賃金を幾らにきめたら私のところは幾らにきめましょう、こういうことは労働法上から見て精神を逸脱していやしないか、こういうことを考えるわけです。  もう一つは最後に平和協定とおっしゃったのですが、こういう協約は三年ですね、御承知のように。ところがこれは四年間出しておる。そういうことも平気で出しておるわけです。ということは、労働組合の何たるかも御存じない業者のやり方だと思う。知っておったら早晩、これは直ちにわかったならば、直ちに変えなければいけない、要求を変えなければいかぬはずです。そういうこともやられておらない。まるでがむしゃらに、お前たちおれたちの言うことを聞かなかったならば、会社に入ってもらわなくてもよろしい、こういうあり方が非常に強く出ておる。今までのもつれた労働争議の中で、私はこのくらい何といいますか、法を無視した経営者の要求というものはあり得ぬと思う。そこで、労働省として今地労委に出しておるからとおっしゃるけれども、地労委に出したのをどちらがけったのか、なぜ虚心たんかいに地労委の言うことを聞かないのか、会社がけっておるのです。自分たちが不法な要求を出しておいて、ロック・アウトしておいて、世間にうんと迷惑をかけておいて、そうして地労委が入ってきようとするのを断わっておるわけです。これは一体どういうことなんですか、その精神を聞いておるわけです。労働省としても、私は窓口として、当然労働組合法の制定された当時の精神から考えてみても、これは少し行き過ぎじゃないかという気持がするのですが、それはいかがですか。
  64. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 第一番目にいわゆるこのような提案をして、ロック・アウトをするということが不法ではないか、こういう御質問でございます。これが違法なりや適法なりやという問題につきましては、いわゆるロック・アウトの正当性の限界という問題でありまして、いろいろ御承知のように学説等も分かれるところでございますが、一般的には労働者側が争議行為を現に行なっておらず、また行なうおそれがないにもかかわらず、使用者が自己の主張を貫徹せんがために先制的、攻撃的にロック・アウトを行なうというような場合には、これは正当でないというのが通説でございます。しかし、争議行為があって、これに対抗して行なうロック・アウトは、これは違法ではない、こういうのが通説でございます。したがいまして、一般論といたしましては、私どもは今のようなのは通説でございますので、労働省といたしましても、その通説の考え方に従っておる解釈をとっております。ただし、私がこう申し上げるのは、これをもって会社側が絶対正しいというような意味で申し上げているのではございません。ロック・アウトが違法なりや、あるいは違法でないという問題についての考え方を申し上げますれば、今のようなものは通説でございまして、私どももその通説に従う解釈をとっておるわけでございます。  次に、この労働協約の有効期間の問題でございますが、これは御承知のごとく、労働組合法の第十五条に、労働協約には三年をこえる有効期間の定めをすることができないと書いてありまして、三年をこえる有効期間の定めをした労働協約は、三年の有効期間の定めをした労働協約とみなす、このように書いてあるわけでございます。また、もう一つ十五条の後段のほうにおきまして、有効期間の定めがない労働協約については、双方一定の通告期間を設けた上で、解約をいつでもすることができる、このようになっていることは御承知のとおりでございます。会社側の提案四年という話を聞いておりまするが、これがかりに具体的に労働協約になりました場合に、四年というような期限がもしつけてありますれば、これは申すまでもなく組合法十五条の第二項によりまして、三年というふうに読みかえられるわけでございます。ただ、これがかりにこのような内容で、組合がのんで妥結した場合におきまして、どのような形を持った労働協約が具体的に作られるかという点は、またその第二の問題であろうと思うのでございまして、その場合の定め方によりまして、あるいは有効期間の定めをつけないというような形になるかもしれません。その点はいろいろ技術的に考え方があると思いまするが、ただいま御懸念の四年というような点をもしきめまして労働協約を結んだといたしましても、それは当然三年というふうに読みかえられることになります。これは組合法第十五条の解釈から申しまして、当然のことであろうと考えるのでございます。  以上のような状況でございます。なおさらにその内容が突き進んで適当なりや適当でないという問題につきましては、先ほどの趣旨によりまして、私どもはそれ以上の具体的見解を申し上げることは御遠慮申し上げたい、このように考えます。
  65. 阿具根登

    ○阿具根登君 ロック・アウト問題だけをおとりになればそのとおりです。これはロック・アウトは、ただいま局長がおっしゃったとおりなんですが、このロック・アウトに至る過程において、よその会社がどのくらい上げたら、それに対して私のところは幾ら上げますということが原因になっているわけなんです。そういうことがいいかというのです。自分の事業をここまで持っていきたい、どうしたいという意欲はわかる。その中において、自分独自できめてからでけっこうなんですが、ところが、そういうものはほおっておいて、よその会社が幾ら賃金を上げたら私のところは幾ら上げましょうというその要求、根本が私は労働組合法に間違っておる、こういうことを言っておるわけなんです。もしも、これを否定しなかったら、先ほど言いましたように、六社が全部、あとの五社がたとえば千円上げたら私のところは二千円上げると言ったら、だれがこの労働賃金を一体きめるのですか。そういう要求書は、私は労働組合法の精神に違反しておる、こう思うんです。それが出発点なんです。たとえば今の問題です。今、賃金をどのくらいしか上げられない、組合はどのくらい上げろと言って全面ストライキに入った、ロックアウトした。そういう問題を言っておるのじゃない、それはあたりまえです。ところが、三年、四年先まで、よその会社が幾ら上げたら私のところは幾ら上げますという、そういうやり方が間違っておると私は考えるわけなんです。それが正しいか、正しくないかを言ってもらえればいい、精神問題です。
  66. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) お話しのように、たとえば他の各社が全部同じようなことをやるというような場合には、これは結局、相互に依存することになりまして、具体的な賃金決定基準としては、物理的に不可能になろうと思うのでございます。ただしかし、現在のところでは、他の各社においては別のきめ方がなされておるわけです。したがいまして、これらの平均をとって、それを基準にするというような考え方が、物理的には不可能でないわけでございます。この点につきましては、特に新日窒の賃金水準というものが他の各社より低いのではないか、こういうような問題が一つの大きな問題として取り上げられておる関係もありまして、会社側は、先ほど申し上げたような根拠で、このような提案をしたと承知しておる、このように私ども聞いておるわけです。  そこで、この内容が適当かどうかという問題になります。実は、他産業の例を見ましても、そのような提案をして、一時的にそのような賃金決定が行なわれておる例も二、三聞いております。したがいまして、これは他に例のないことではないわけでございます。しかし、その内容が適当かどうかという点につきましては、いろいろな考え方があるわけでございます。私どもは、阿具根先生の御意見も一つの有力なる御意見であろうと思うのでございます。しかしながら、この点につきまして、これが適当なりやいなやという点につきまして、会社側は以上の論拠で主張をしておる、これに対して組合側が、それはいけないということで反対しておる、こういう段階でございますので、私どもは、これがただいま適当なりやいなやというようなことを申し上げるのは、結局、どちらかに軍配を上げる、率直にいえばそういうことになると思うのでございます。微妙な労使紛争の目下過程にあるわけでございまするから、私どもはこれが適当であるかどうかという点についての見解を表明することは御遠慮申し上げたい。ただ、違法なりや、あるいは違法でないかというような点につきましては、これははっきりさしていきたい、このように思っておるわけでございます。
  67. 阿具根登

    ○阿具根登君 何回言っても堂々めぐりですが、こういうことをやっておるところもある、私も知っております。私は、これはいいことではないと思っております。しかし、組合もこれを了解してやっておる今日、ここは組合は了解しないのです。了解しないのに、他の企業がこれだけ賃金を上げたらこのくらい上げてやるからということでストライキに入り、ロック・アウトまでやり、地労委が入ってくるのを会社はお断わりする。これは行き過ぎじゃないか、これは労働組合法の精神に違反していると私は思うのです。そういうことが許されるとするならば、どこの組合だってそれはやる。それは、組合法も何もあったものじゃない、私はそう思うのですが、どうも局長とは意見が食い違っているようです。しかし、これははっきり記録にとどめていただいて、いずれ、それぞれの専門の方々にもお伺いしてはっきりしたいと思います。  もう一つ、先ほど局長がちょっとお触れになった平和条項のこの場合に、この要求書には出ておらないようですが、ストライキをやめてくれという前提の話し合いがあった。ストライキをこの四年間やるなという前提で話し合いがされたとするならば、私は、これは違法だと思うのですが、いかがですか。
  68. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) これにつきましては、先ほどもちょっと私の話の中で触れたところでございますが、いわゆる相対的平和義務の問題でございます。たとえば、いわゆる安定賃金という形態を数年間にわたって実施するという提案がありまして、それを組合が承知いたしまして労働協約を締結したという場合におきましては、その結果といたしまして、その間にこの問題について争議行為を行なうということは、この相対的平和義務の違反になる、こういうことになるわけでございます。私は、この問題につきましては、ただいまのような提案があって、組合がそれを承知して協約が結ばれた場合には、これは有効である、このように考えております。ただ、それが非常に長期にわたるというような問題につきましては、それらの問題をも考え合わせまして、労働組合法十五条の規定がこれは厳として存するわけでございまするから、その範囲内に法律的効力としては限られる、これはまあ当然のことでございます。したがいまして、組合といたしまして、この会社側の提案に対しまして、これを了承する自由もありまするし、あるいは、これを拒否する自由もある。そうして、これを了承いたしまして協約が締結されましたならば、その定めは有効である、このように考えております。
  69. 阿具根登

    ○阿具根登君 その説もわかりますが、それでは、この会社側がストライキをやるなということだけで交渉に入ることができますか、要求することができますか。
  70. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただ組合側に対してストをやるなという提案だけで、その間の、たとえば一番大事な内容である賃金についてはどういうふうにするという提案がない場合には、これはどうも適当でないように思います。ただ、その場合において、このような基準賃金決定いたしたい、これをのんでくれれば、これについてストはやってくれるな、こういう提案は、これはあり得ると思います。
  71. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは逆なんです。賃金を、たとえば一定の賃金を出して、それが労使双方でのんだならば、これはストライキをやれないのです。ところが、たとえば、今のまま賃金を上げることもできず、下げることもできない、しかしストライキをやってもらっちゃ困る、あるいは、賃金を下げなければならない、ストライキをやってもらっちゃ困る、だから、ストライキをやらないという前提賃金をきめることができるか、経営者がストライキをやるなと言うことができるか。憲法の示す団結権の問題です。賃金と別個にしても考えられるわけなんです。賃金をきめた場合に、双方が了解して賃金をきめた場合は、これは平和条項です。これはストライキをやることはできません。そんなことを言わなくても、一年間なら一年間の賃金をきめたらストライキをやることはできない。ところが、そうじゃなくて、ストライキをやるなということが前提になっておる交渉があるかということです。これは憲法違反じゃないかということを言っておる。
  72. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ストライキ権を含みまして団体行動を行なう権利は、これは言うまでもなく、憲法の基本権として保障されておるところでございまするから、使用者側がそのような申し出をいたしましても、組合がそれを了承しないという場合には、当然それはスト権を奪われるものでない、これはお説のとおりであると思います。
  73. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、会社側のこの要求の裏づけになっているものは、前提となっておるものは、ストをやるなということです。ストをやるなということははっきり言われておる。四年間ストをやってもらっては困ります。ストをやってもらっては困りますけれども賃金はそのかわり、ストをやらなかった場合にはこれこれの賃金を払いましょう、こう言うておるのですね。だから、まず組合が反対しておるのはスト権の否認に対する反対だ。これは一体どうなりますか。
  74. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 私どもは、この場合におきましては賃金はこのようにして決定されるようにいたしたい。したがってその間においてはこの問題についてストをやってもらっては困ると、こういう提案だったように聞いております。ただこの問題を離れまして、まあ一つの仮定の問題といたしまして、使用者側がストをやってもらっちゃ困るという提案をするというだけの場合があったといたします。そのような提案はそれは適当でないだろうと思うのでございまするが、このある一定期間内におけるところの賃金というものはこのようにして決定されるようにいたしたい。その間においてそれを組合においてのんでもらえば、その間においてこの問題についてストを行なうということはやめてもらいたい。こういう提案はあり得ると思うわけでございます。
  75. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはあり得ることではあるけれども、そういうことをする必要はないですよ。四年間の賃金をきめたならば、その賃金の問題について四年間ストライキをやることができない。賃金に触れないでしょう。四年間きめたのだから、四年間この賃金で了解いたしました、私のところこれでやりますと言っておるなら、なにもスト権のことを云々するわけはない。それが前提に、ストをやるなということが前提になっておるからこうなってきておる。双方この協定書に、この協約書に判こを押して、この協約になったら、そんなことは言わなくてもストライキはやれない、賃金協定したのだから。ところが交渉の過程においてストライキをやるなという前提になっておる。気持はわかりますよ、気持は。こういう貿易の自由化によって自分たちは新しい会社づくりをやっていくのだから、当分三、四年の間ストライキをやってくれるなという気持はわかりますよ。それから出て、ストライキをやらないということを言いなさい、賃金はよそのやつを見習っていく、ということになれば違法ではないか。賃金と団結権を別個に離しているのではないか。そういう会社の考え方はこれは憲法違反であり、労働組合法ではこれは認めないと私は思うのですが、どうですか。
  76. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 一般的に申しまして、ストをやってくれるな、この提案だけを行なうというのはこれは適当でないと思われる。その場合におきましては、そのかわりにその期間中にはたとえば賃金というものはこのようにして決定されるようにする、あるいはその他の労働条件はこのようにするというような問題が一緒に結びついておりまして、そうしてそのストをその期間はやってくれるなというような提案は適当であろうと思う。ただこの新日窒の場合におきましてどのような提案をしたか。この点についても私どももただいまお話しのいろいろな裏面的な、裏からのお話につきまして、正式な情報は持っておりませんけれども、やはり会社側といたしましては、たとえば四年なら四年、四年が適当なりやいなや、法律上有効なりやいなやという点についての問題は、先ほど触れたとおりでございますが、この一定期間内における賃金決定方式というものはこのようにしてもらいたい、それをのめばストライキをやるな、この問題についてストライキをやってくれるな、こういう提案であったのではないかとこのように思っておるわけです。しかしかりにこれが逆でありまして、ある一定期間はストライキをやってくれるな、しかしその間の賃金決定というものはこのような基準にしてきめるからというような裏返しにしたような提案でありますが、これもまあ法律的には同じようなことであろうかと思います。
  77. 阿具根登

    ○阿具根登君 この問題は四年間というのは、当初第一組合、第二組合でない場合にはそういう要求書を出されたわけなんです、御承知のように。そして第二組合と締結されたやつは三年になっておるわけです。そうすると、自分の要求したのは誤りであったということをもう会社は認めておるわけですね。四年出したのは、これは誤りだった、これは労働組合法十五条によって三年にしておくべきだと。私はそうだと善意に解釈します。それならなぜ今のようにしてこじれておる第一組合のほうには四年を撤廃しないのか、なぜそんなにいこじにならねばならぬか、こういう問題が出てくるわけです。そういうことから推しはかっていって、要求そのものが私は組合法の精神に違反しておると、最初から指摘しておりますように。自分の業績がこうだったらばいいですよ、当然経営者は自分のところはこれだけしか利潤はない、だから賃金はこれだけにしたいということは、業者として当然の言い方だと思います。ところがそういうことは示さないで、よその会社が幾ら上がったから幾ら上げるということは、これは労使対等の話し合いの場じゃないと思うんです。私はそうじやないと思うんです、そういう現われがストライキをやめて下さい、やめて下さいという言い分は、これは自由ですよ。しかしスト権を剥奪する権利はない、これは憲法で規定されておる、それはない。だからこういう協約が成立した場合に、これはまあ蛇足になるかもしれぬけれども、組合はその間はストライキはやりませんということをやるわけなんです。でこの一貫として流れておるものは、私が今指摘しました三点の問題から見てみても、組合法も憲法も考えなくて、とにかくおれの言うとおりついてこい、それがいやだったら、やめてよろしい、こういう思想が今度の問題に私は一貫して流れておる。だから今日半年も双方にらみ合ってストライキを続けておる、ロック・アウトを続けておる、こういうことになっておると思うんです。そうでなかったなら自分のほうからこういうものを出しておって、そうして県民、国民にこれだけ心配かけておって、地労委が中に入って事情聴取に来ても、それに答えもしない、相当おそいです、答えたのは。そうしてそれはだめだ、じっとしておれば組合が参るから、入ってくれるな、こういう言い方があるだろうかど私は思うんですがね、少しむちゃだとお思いになりませんか。
  78. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただいまお話しのように、スト権を使用者側の申し出によって剥奪するというようなことは、これは憲法上保障されております基本権についてそのようなことは許されないことである、これはもうお説のとおりであると思います。したがいまして、そのような申し入れをのんで協約を締結するかどうかということについては、これはこれをのむ自由もありまするし、それからこれをのまない自由もあるということになろうと思うのでございます。その点についてはこれは労使でよく話し合いを尽くすべきものである、このように思います。これが適当であるかどうかという御質問でございまするが、これは先ほどから毎度申し上げておりますように、その問題が目下この争議の中心問題でございます。私どもはこれが違法なりや、違法でないかということについての見解ははっきりさしていかなければならないと思っておりまするが、それが適当であるかどうかという問題について労働省として見解を申し上げるべき段階ではない、このように思っております。
  79. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは労働省としては地労委か、中労委かが出した線が正しい、こういうようにお考えになるわけですね。そうすると、今日半年以上も続いておるんですが、地労委は再三にわたって調査を要求しておるし、地労委があっせんを申し入れておる。それに対してまだこういう平和条項の問題でこれだけもんでおるということに対して、労働省としては公平な地労委のあっせんを受けなさいと労使双方に言うくらいの考えはありますか、それともこれは労働省は見ておるだけだということなんですか。
  80. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) この問題につきましては、労働省といたしまして、これがすみやかに早期に解決するという事態が一刻も早いことを期待しておるものでございます。そのような観点からこの争議の経緯につきましては、深甚な関心を持ってその日その日の情報を目下見守っておる、こういう状況でございます。結局この争議が解決いたしますために、まあその争議の解決については、これはもう先生御承知のように非常にデリケートな問題でございまして、そのタイミングというような点も問題になりましょうし、いろいろむずかしい点があり、微妙な問題があるわけでございます。私どもといたしましては、そういうような立場でこの争議の早期解決を念願しつつ事態を見守っておるという段階でございまして、ただいま熊本の地労委におきましても、いろいろ公式あるいは非公式に努力をしておられるように聞き及んでおりまするので、私どもはこの問題についていましばらく推移を見守っていきたい、そうしてこの事態の早期解決というものをはかるように助成して参りたい、このように思っております。
  81. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はね何も労働省がこういうストライキに対して介入しろということではないのです。ところが今おっしゃるように、労働省としてはこれに対する解決策持っておらないのですね。そういう基本問題であるなら、今のままで労使を置いておったら、これはいつまでたっても並行線ですよ。並行線ですよ、ことし限りならことし限りの賃金をきめるとか何とかというなら、これは私は今局長が言われた線でいいと思う。ところがそういう線であるから、地労委も数回にわたって、地労委があっせんいたしますということを申し入れておるわけなんです。それをどうして、地労委のあっせんを受けろと言えないのか。地労委がそんなに不信任なのか。中労委が信頼できないのか。自分のほうから要求して、しかもこういう疑問のある要求を出しておいて、そうして公平なる地労委が入ってあっせんをしようというのを、なぜ逃げるのか。それだけ自分のほうに弱みがあると思う。それで力で解決しようとしているのでしょう。私はこう思うのです。そうじゃなくて、いやしくも経営者であるならば、私は地労委が出てくると思うのです。あるいは中労委が出るというなら、それを受けてみるべきである。私はそう思う。かりに組合なら組合がこういう問題を出されておって、いやこれは違法な問題だ、これは組合法はこれで骨なしになってしまう、だから私は受けませんというならこれはまた一理あるかもしれません。ところが一方、出したほうなんです、出したほうが、なぜ自分が紛争の種をまいておって、そうして地労委のあっせんを受けないといって逃げて回るのか。それを、微妙な問題であるからといって労働省はその成り行きを見詰めて、自然解決するまで手をこまねいておるということが親切な労働行政であろうかと私は思うわけなんです。一方が受けると言っておるなら、なぜ一方に対して、地労委の裁定を受けなさい、あっせんを受けなさい、それが世間に対する業者でありあるいは組合員である人のやっぱり一つの責任であり義務であるというぐらいのことは、なぜ言えないのだろうかと私は思うのですがね。これは労働省から一切口いれないのですかこの問題に対して。
  82. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 労働省といたしましては、先ほどから申し上げておりまするように、この争議が早期に解決するということは、これは人一倍念願しておるわけでございます。したがいましてその間におきまして、たとえば地労委がそのいろいろ事情聴取を行なうというような場合におきまして、これは公式あるいは非公式に、たとえば資料等を提出するという要請に応じてはどうかというような話を当事者にいたしたこともございます。いろいろ内面的あるいは側面的にこの争議の早期解決について、私どもとしても今までできるだけの手を打ってきつつあるわけでございます。地労委におきましては、今いろいろこの段階におきまして、当事者双方に意見を聞くというような手を打って目下努力しておられる段階でございます。そういうような微妙な段階でございまするので、私どもといたしましては、いましばらくとの段階ではこの地労委の活動というものをもう少し見守っていきたい、このように思っております。
  83. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはわかりますが、そうするとどういう段階になったらば、労働省はそういう一日も早く円満に妥結できるような考え方を発表されるなり、あるいは指導されるなりするのですか。半年たった今日まだそういう段階でないとおっしゃるなら、一体どういう段階になったら、労働省は地労委なら地労委、中労委なら中労委のあっせんを受けなさいというようなことを指図されるのですか。
  84. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 諸般の情勢を見まして、そうしてこれが解決に適当な時期に至ったと、事態の打開のために適当な時期に至ったということを判断いたしまして、なるべくすみやかにそういうような機運が参りますれば、直ちに手を打って参りたい、このような考え方で事態をいましばらく見守って参りたい、このように思っております。
  85. 阿具根登

    ○阿具根登君 並行線ですからこれでやめますが、いずれにしましてもただいままで申し上げましたように、この問題は単に新日窒だけの問題でなくて、これは労働法にとっても私は非常に大きな危機だと思うのです。もしも同じような産業をやっておるととろが、この問題で、もしも力で解決するというなら、とことんまでどちらもいくでしょう、おそらく。しかし、こういう問題が正しいということになってくれば、どこの業者も自分の組合はストライキやらせないようにして、よその組合はなるべくストライキやってもらって、そうしてよその会社はうんと損すると、そのときにきまったやつに対して私のところやりますと、こういうことやると思うのです。これは私鉄でも御承知のとおりあります。私鉄でも、ほかの私鉄はうんとストライキやって、うちだけはストライキやってくれるな、その間できまった賃金はわしのところで保障する、こういうことでやっておるところ私も知っております。これがもしも、こういう姿でもしも労働省がこれを認めておるというようなことになってくれば、私は労働法も何もない、憲法の精神も何もかもこれで踏みにじられてしまうのだ、こういう基本的な私は考え方を持っておりますので、この点については十分労働省でもひとつ今のような御答弁でなくて、労使どうだということでなくて、憲法が制定した団結権と労働組合法できめておる争議権あるいは協約に対する考え方、こういう問題については、もの言えばどちらが損するどちらがもうけるという問題じゃないのです。私はこの問題ではかりに組合が損してもけっこうだと思う、それが憲法上正しい、あるいは組合法上それが正しいのだったならば。だからですね、微妙な段階であるから、私が発言すればだれが損する、かれがもうかるという考え方は、一つの一方的な考え方になっておると思うのです。そうでなかったならば、私が今まで質問したこの問題について、それはそうだ、あるいはそうじゃないという言葉が出てくるはずなんです。今までの質問ではどちらにも局長ははっきりした答弁をされておらないと私は思うのです。だからこの問題は新日窒だけの問題ではございませんので、今日まで本委員会でやられた問題外の基本的な問題として三点触れましたが、あとは、私も現場にまた参りますが、またお伺いしたいと思います。これでやめます。
  86. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は労働省がつかんでおられる情報の範囲について二、三まず確かめておきたいのであります。それは新労と旧労がどれぐらいの数になっておるか。現在新労が全部、一人残らずすでに就業、工場に入って作業に従事しておるかどうか。その点をまず労働省でお調べになった範囲で伺いたいと思います。
  87. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただいまの御質問でございまするが、正確な数は今ちょっと手持ちしておりませんが、大体のところは旧労が約二千五百名程度でございます。それから新労が大体九百名程度でございます。現在工場に入りまして生産活動を行なっておる者は大体、日によって違いますが、大体六百名程度ではないか、このように承知しております。
  88. 高野一夫

    ○高野一夫君 その旧労の二千五百名ですか、その中でどの程度が水俣を中心としたいわゆる地つきの、ずっと前からあのかいわいにいる、工場付近に居住を持っている人たちであるかどうかのおおよその比率はわかりますか。私の聞くところでは、旧労の関係者は大部分がその土地の人である、こう聞いておりますが、大部分じゃ、わからぬので、大体六〇%か八〇%、あるいは九〇%、一〇〇%なのか、その辺はどうなのか。
  89. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただいまお話しのように、大部分がその土地の人でございまするが、何割ぐらいかという点につきまして、ただいまちょっと手持ちの資料がございませんので、後刻直ちに御報告いたします。
  90. 高野一夫

    ○高野一夫君 それで、今日経営者か、あるいは労組に参考人としておいでを願って、直接確かめれば一番手っとり早いと思いますが、現在まだその時期にあらずと考えられる節が多分にあるようでありますから、遠慮して呼ばない。それでまた私がほのかに聞くところによりますと、六百名ないし七百名の新労関係が作業について、それで争議前の生産の七〇ないし七〇数%を取り戻しているというようなことを聞いておりますが、そういう事実がありますか。お調べになった結果はどうですか。
  91. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) この内容につきましては、実は会社側におきまして大体現在の生産状況についての発表を十月の末にいたしております。それに対して旧労の組合側もこれに対する見解を発表しております。それを申し上げますると、大体会社側は平常の七割程度の生産が行なわれておる、このような発表をいたしました。組合側はそれに対していやそうではない、平常の三割程度の生産にすぎない、このようなことを発表しております。私どもこの内容につきましては、具体的に調査しておりませんので、詳細はつかんでおりません。
  92. 田辺文一郎

    説明員田辺文一郎君) ただいまの生産量の問題でございますが、ただいま労政局長もお話しになりましたように、現在われわれがつかんでおりますものは、会社側の発表いたしました約七割という数字でございます。で、生産動態統計によります調査は、現在九月中分を取りまとめておりますので、まだ十月という数字ははっきりいたしませんので、現在では大体会社側の数字しかつかんでおらないという状態でございます。
  93. 高野一夫

    ○高野一夫君 現在新労九百名のうちの大体六百名程度が作業について、そうして平時の七〇%の生産を上げている。これは会社側が発表している。大体その程度だろう、こういう御判定であるといたしますれば、そうすると平時に戻るためには、あとわずかが就業すればいいということにも受け取れないでもない。そうすると七〇%が八〇%になり、九〇%になり、一〇〇%に復活するためには、あとどれくらいの従業者が戻ればいいのか。どういうふうに会社は考えているかということを何かお聞きになったことはありませんか。それにあと二千六百人がまだついていない。新労九百人のうちのわずか六百人がこの作業について七割の復活をしている。それならば一〇%、二〇%、三〇%戻すのには、一体幾らあればいいか、一体幾ら従業員が戻ればいいかということになれば、おおよその見当がつくような感じがする。そういう見当を会社はつけているのかどうか。そういう点についてはどうでしょう。
  94. 田辺文一郎

    説明員田辺文一郎君) 先ほど申しましたように、現状の生産状況をできるだけつかむようにはいたしておりますけれども、ただいま指摘のありましたような現状の生産と現在の従業員の数と将来の問題というような点は、会社の方針等は聞いておりません。
  95. 高野一夫

    ○高野一夫君 これは今度はひとつ労働省の堀さんにお調べの点を伺いたいのでありますが、これで現在会社が言っているとおりに、六百人程度が戻って七割のいわゆる生産率が上がっているということを会社側が言うならば、平常に戻るためにはあと六百人は要らないような感じがする、常識で。そこで、あるいは六百人戻り、千人戻り、二千人戻らなければあと三〇%が非常にむずかしい、三〇%の復活は非常に困難なのかどうか、およその見当は、私は会社でついているのじゃないかしらと思う。もしも万一ここで企業合理化あるいはオートメ、いろいろなことをやる。そうすると人手が減ってくるのは、これは当然のことであります。それを考えておって、そうして人手だけでもありますまいが、今までの何分の一かの作業員で済むようなことになるという考え方を会社が持っておるならば、私は早く会社はその線を出すべきである。そうして、出して、あと二千人は要らない、千葉なら千葉の工場に向けるのだ、こういうのか。二千人は十分の退職手当を出してひとつどこかへ転職してもらいたいのだ、こう考えておるのか。それとも争議の調停でいろいろな話がまとまれば、全部会社に戻ってこないか、こう考えておるのか、その辺のところが杳として私どもにつかめない。それは労働省としてどういうふうにつかんでおられるか。私はこの点非常に大事に考えているので、つかんでおられる範囲でけっこうですから、おっしゃっていただきたい。
  96. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) この問題につきまして、会社側の公式な見解というものを、私どもは聞いておりません。ただ、いろいろな情報等聞きますると、会社側の一部にただいま先生の指摘されたような感想を述べておる人もあるというようなことを情報としてつかんでおる程度でございます。会社側は、この点について公式に表明をし、あるいは労働省に対してそのような意見を述べたというようなことはございません。したがいまして、私どもははたして会社が正式にどのような考え方を持っておるのか、その点についての会社側の意向というものは承知しておりません。
  97. 高野一夫

    ○高野一夫君 そうしますと、私は、六百人で七割復活という会社側の声明について一つの疑問を持つわけなんです。でありますから、そこに将来の問題としてのまた疑問がわいてくるわけです。そういう、人が要らなくなるというなら率直に人は要らなくなる、こう言ったらいいのだ。それをもとにしていろいろな対策を相談されることでなければ、ほんとうの私は抜本的の解決はできないと思う。そこで、私は先ほど伺った二千六百人の旧労のいわゆる大部分、一〇〇%近くが地元の人である。これもまた一つの問題にしなければならない。その地元の人たちが、ここで水俣の工場から職を去らなければならぬという事態が万一起こった場合は、あのかいわいは、御承知のとおりほかの仕事につくような場所はございません。そうするとこれは、ほかに新日窒が工場でも作って新しい事業でも起こして、その配置転換をやろうかといってみたところで、水俣付近に二千数百人の人が居住して、自分のうちを持っておる。あるいは百姓をしておる。そして工場に通っておる。それが千葉なりなんなりに直ちに配置転換に応ずるということは、私は実際問題として参らぬだろう。そういうことを考えますると、この二千六百人の旧労の人たちが今後一体どうなるか。地元の人たち、外から流れてきたのじゃない、その地元の人たちの将来の問題について、会社側も労働省もひとつ考えてもらわなければならないと思うのです。それならば、今言った六百人で七割というのが大体妥当だとするならば、どうも非常に人が余っちゃっているような印象を受ける。そうすると、一体余るのか余らぬのか、それも会社の生産計画と工場規模をこれから拡大するのか縮小するのか、それによってはっきりと私は計画はもうすでにあるはずだと思う。そういたしますと、かりにまあ余らなければけっこうです。余るとするならば、余った者は行き所がない。首切るわけにもいかぬし、配置転換にも応じられぬというならば、それじゃ私のところで終生かかえ込んでおきましょうと、こうおっしゃるのかどうか。そして仕事があってもなくても、それは手当を出してかかえ込んでいく、こういう腹がまえで労組に折衝されているのかどうか。あるいは余るなら余るで、その余った分についてはこうこうこういう計画があるんだということで、ひとつ相談をしようとされているのか。その辺のところはどういうふうに、何かお聞きになっておりませんか。
  98. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 先ほど会社側が発表いたしましたところによれば、七割生産ということでございます。しかし、その内容がはたしてどうであるかという点につきましては、私どももまだ調査しておりません。あるいは通産省のほうでさらに調査しておられるかどうか、その点は存じませんが、私どものほうでは、まあこれは会社側の発表として開いておるだけでございます。かりにそういう事態を前提として考えれば、ただいま先生御指摘のようないろんな問題点が今後出てくるだろうと思うのでございます。ただ、会社側がこれについての、具体的に自分らはこうしたいというような考え方はまだ全然発表しておらないように聞いております。ただ、最初の組合に対する提案の安定賃金を提案いたしましたときに、その最後のほうに、組合は企業の合理化に協力するものとし、会社はこれがための人員整理は行なわないというようなことが申し入れの最後に載っておりますので、この段階におきましては、先生が言われましたように、人員の余剰はあっても人員整理は行なわないでかかえていくという気持であったのではなかろうか、このように推察いたします。最近におきまして、会社側がどのような考えを持っておりまするか私どもはまだ聞いておりません。
  99. 高野一夫

    ○高野一夫君 それは私は非常に大事な点だと思うのでありまするが、前は人員過剰があってもかかえ込んでいく方針であるというつもりであったかもしらぬけれども、すでに半年たった今日どういう考えを持っておられるかわからぬ。ことに、先ほど来くどくど言うとおりに、現在六百人の従業員で七割回復しているということを言う以上は、私はそこに何らかの一つ意図といいますか、将来に対する一つの計画の腹がまえができているに違いないと思う。それをはっきりつかまないことには、私はほんとうの調停はできないだろうと思う。でありますから、そのあと旧労の千六百人の人たちはかかえ込んでいくんならかかえ込んでいくということを言わなくても、仕事があってもなくてもかかえ込んでいきますという態度を明確にするか、そういうわけにはいきませんから配置転換でかんべんしてもらいたい、あるいはやめてもらいたい、こういうふうにするのか、その三通りによって、旧労にしても新労にしても私は考え方がいろいろ変わってくるだろうと思う。この三通りについての会社側の、いわゆる経営者としての立場からのほんとうの気持を明確にされない限りは、いつまでたっても私は暗中模索に終わるんじゃないかと、こう考える。われわれがかりにこの問題がどっちがいいとか悪いとかという判定を下そうといたしましても、一体そういう点についてどう考えておられるのか。もう争議の発端、経過の是非は別として、今後の問題としてどういうふうなお考えを持っておられるかわからぬから、何とも言いようがないんですよ。そこで、言いようがないのでありますから、私はこれは通産省にもお願いするし、また特に労働省の労政局のほうでおやりを願うべき問題だと思うのでありますが、ひとつ十分その腹を聞いてみてもらわなければならない。六百人で七割回復したというのはどういう意味だということを聞いてみて下さい。どういう意味ですか。あと三割を回復するには、一体それじゃあと何百人戻ればいいのか、あとはどうするんだと。それをはっきりつかんで、それをもとにしてのいろんな争議の相手方との間の折衝の腹組みもこさえ、そしていろんな条件も出し合うというんでないと、たとえば私どもが心配するように、かりに配置転換やると言ったって、二千六百人近くの水俣居住の人の配置転換いきますか。いかない。そこで今度は、それじゃやめてくれといったところで、今度就職というわけには参りません。そうすると、二千名余りの人たちを、労働省はいろいろなあっせんや奔走をして、どっかにまた仕事を探してあげなければならなくなる。それでは今度また労働省はその責任を負わなければならないことになって参るだろうと思う。その前に、もう少し突っ込んで、労働省調査してもらって、相手方の意向を聞いてもらう。地労委が出るかどこが出るかは別といたしまして、はっきりした今後の考え方構想を聞かないと、私はいつまでたっても見通しがつけられる段階はこないのではないか、こんな感じがする。私も地元ですから、いろいろな話を聞きますから。どっちにひいきするわけでもありませんが、それが一番心配だ。それで、あと簡単に申し上げますが、それで、それはそういうようなこと。  それじゃ、今度もう一つ配置転換のこと。地元で配置転換をやりますとか、あるいは新たな他の事業を起こしますという計画が、あるいは経営者側にあるのかもしれぬ。それも一向われわれは聞くことができない。これは労働省が職権をもって行なっていいと思う。そこで、もしも地元に新規の事業計画があって、そこに配置転換をするのだ、だから遊ばしておくとか、余る人はなくなるのだ、みんな必要なんだ、こういうのならば、どういう事業計画であって、どの程度の規模であって、いつごろそれができて、いつごろ仕事にかかれるのかどうかというような具体的な計画を確かめなければなるまいと思う。それをもう少し私は労政局で調べてもらいたいと思うのですが、調べてもらわないと、どうもいつまでもいつまでもずるずるべったりになりますと、ここに経営者側からも、また旧労、新労からの代表者にもおいで願って話を聞かなければならない時が来ちゃうかもしれない。それを極力私は避けている。避けているが、やはりこれにもある限度があろうかと思いますので、ですから、われわれもはっきりしたひとつ経営者側なら経営者の立場からされる計画なり構想をつかみたい。それは労働省にひとつ。参考人として今呼びたくないと考えているわけですから、労働省にお願いして、労働省でつかんでもらいたい。結局、労働省でつかんで、われわれにはっきりしたところをお示し願わなければ、御本人たちをお呼びしなければならない段階がきてしまうのではないか。それが結果的にいいか悪いか、これは別問題だが、いい結果が得られそうもない。だから、避けたいと思うのでありますが、しかし、どうもはっきり御連絡がつかないで——労政局が中に立ってつかんで、ほんとうはこういう計画なんだ、だからこれを基礎にして今後の争議の調停なり、いろいろなあっせんなり、あるいは相談に応ずるのだ、断固応ずるのだというようなことを正直なところをつかんでもらいたい。これはぜひ次の機会までに労政局のほうで、責任をもってもっと突っ込んで聞いてもらいたい。あるいは聞いておいでになるならば、差しつかえない限りここで御説明願えればいいのですが、あまりその辺までわかっておりませんか。
  100. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただいまの点につきまして、会社側にそのような見通しがあるかどうか、そういう問題につきまして、御趣旨に沿いまして、通産省とも相談の上、会社側に確かめてみたいと思います。
  101. 高野一夫

    ○高野一夫君 それはぜひ。次の委員会のときに、それじゃあなたから伺うが、あなたの説明でなおわれわれが納得できなければ、それは経営者側におっしゃってもいいが、こちらにおいでを願わなければならない時期が到来するかもしれない。これはひとつ、私どもなるべくそれを避けたいと思うので、争議の最中ですから避けたいと思うので、労働省を仲介にして、いろいろな情報などで、正確な判断をできるだけわれわれはつかんでやりたいと思うのです。  もう一つ、労働省では、モスコーから水俣の調査に何名か来るという情報がわれわれ入っておりますが、それはつかんでおられますか。
  102. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 実は、先日国際自由労連のアジア地域会議がありましたときに、その関係者が現地へ参ったという事実は承知しておりますが、モスコーからの話は私どもまだ聞いておりません。
  103. 高野一夫

    ○高野一夫君 それでは、モスコーから何名か水俣を訪問されるという情報が入っている。これははっきりしたところわからぬ。そこで、もしもその事実があるかどうかということと、やはり水俣の争議に何らか関与する意図があって視察に見えるものか、あるいは日本の工場視察とか、一般労働情勢の視察で来られるのであるか、その辺のところぐらいは労政局でひとつつかんでおいてもらわぬと困ります。これは次回までに詳細にひとつ調べておいていただきたい。
  104. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) その点につきましては、さっそく調査をいたします。
  105. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、どうも堀労政局長のお話を聞いておって、まだ地労委がどうのこうの……。この前やってから一カ月以上たっているのですね。それに今時分そんな話をしている。それはちょっと聞こえませんと言いたい。今高野委員が取り上げられた問題一つとってみても、私は通産省の人に聞きたい。どういう形であそこで生産をしているものの中を詳しく調べて、あなた現地へ行って調べて七〇%と言われているのか。
  106. 田辺文一郎

    説明員田辺文一郎君) ただいま申しましたとおり、七〇%は、業者の報告の発表の数字を承知しているだけでございます。
  107. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 業者が報告した数字だけを言って、通産省はそれじゃ七〇%生産しているとこういう場席で言えるのですか。
  108. 田辺文一郎

    説明員田辺文一郎君) ただいまの生産の正式の統計につきましては、その出そろうときにはっきり判明いたすと思いますので、そのときにはっきりつかめると思います。先ほどそれを信用しておるといった意味で申したのではなくて、われわれとしては、ただいま手元には、十月末の現在でこういう生産であるという業者の報告を得ておると申したわけなんでございます。
  109. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 通産省というのは、今その何パーセント生産をしているかというものは、何に影響しているかくらいのことは、あなた判断しなきゃいかぬのじゃないか。単なる雑誌に会社が報告したくらいのことを言うなら、技術的にあなたのところが、直接監督しておられる通産省の言うことが、形式的にも実質的にも正しいと国民は判断し、われわれも判断をする。その通産省の責任ある方が、七〇%生産をしていますと、こう言う。問い詰めてみりゃ、会社の報告だけだったという。あなた、そういう通産省というものは——生産には労働力がなくては生産できないんですよ。労働者の保護、そういうものが、ILOにしてみたってそうですよ。生産にはいかなる条件のもとに物ができてくるかということを、単に機械や設備さえあれば物ができるというものの考え方で通産行政をやったら、とんでもないことですよ。それだけ言っておきますよ。もっと厳密に……。
  110. 田辺文一郎

    説明員田辺文一郎君) 生産の実態につきましては、出先を利用するなり、直接の統計なりの方法によりましても、できるだけ実態の把握に努めたいと思います。
  111. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ですから、今議論されていることはどういう段階なんだ、そういうことをよく御判断願って、そしてやっぱり実態を正確にこういう議論の中には報告してもらわなければいかぬ。労働省はその直接監督官庁じゃありませんから、聞いたらこうだと言うのはわかりますけれども、私は、通産省ともあろう方が、こういう議論の中にそういう報告を軽々にされることは、ほんとうに遺憾だと思う。もっと通産行政と労働関係がどういう関係にあるかということをよくひとつお考えをいただきたいと思う。  労働省に私は申し上げたい。全体が三千五百人近くの従業員の中で、その六百人で生産をして七〇%あげているということは会社から聞いている。普通の常識からいえば、あなたは疑問を持たなければならぬはずですね。そういう生産が行なわれているところには労働基準法が守られているかどうかという問題が、まず頭に浮かんでこなければ、労働行政としては何をやっているかということを言いたくなる。そうでしょう。ねえ、そこのところはどうなんです。
  112. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) これは先ほど私が詳細に条件をつけて申し上げたところでございます。すなわち、十月末の会社、組合双方の発表が、会社側の発表によれば平常の七割程度の生産をやっていると言っている。組合側の発表によれば、そうではなくて平常の三割程度であると発表している。こういうことを申し上げただけでございまして、私どもその内容につきまして、これは私どもも責任持って実際はこの程度であるというものを判断すべき立場にはないわけでございます。私どもはつかんでおりません。両者がそう発表しているということを申し上げただけでございますので、御了承願いたいと思います。
  113. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 あなたのほうが七〇%と会社から聞いて発表したということに、私は異議を申し立てているんじゃない。しかし、そういう話を聞けば、三千五百人で一〇〇%のところを六百人で七〇%を生産をしているということが事実かどうかということを、あなたのほうは監督官庁じゃありませんから調べなくてもいいでしょうけれども、調べることはできないでしょうけれども、そういう状態で七〇%もしも生産をしているというなら、どういう現状でやっているのか、無理な生産が行なわれていないか、労働関係基準法の安全衛生の関係がそこなわれていないかというところに、まず目をつけるべきではなかろうかということを私は言っているのです。それはどうですか、おやりになりましたか。
  114. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 生産の額につきましては、これは私ども資料を持っておりませんし、またその点についての監督権もございません。したがいまして、通産省のほうからさらに詳細はお聞き願いたいと思います。  なお、基準関係の問題につきましては、基準局からお答え申し上げます。
  115. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ただいま御指摘のございましたように、生産の量につきましては私ども十分に正確に承知をいたさないのでございますが、労働基準法の労働時間が守られておるかどうかということにつきましては、重大な関心を持っておるわけでございます。現状について申し上げますと、争議に入ります前から、労働基準法三十六条に基づく時間外労働の協定がございまして、その範囲の中でやられておるように理解をいたしておりますし、なお会社側に対しましてもその旨は再々注意をいたしておるというところでございます。
  116. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、労働省に言っていることはね、その生産が七〇%行なわれていますという報告を聞けば、三千五百人のところを六百人でやっているというような話を聞けば、こういう条件の中で七〇%生産ができるというその状態にあるのかどうか、普通の正常な安全衛生の状態にあるのかどうかというところに、まず労働行政の立場から心をいたされてこそ、初めて労働行政ではないかということを言っている。七〇%が正確であるかどうかとか、あなたを詰めているのではない。だから、そういう問題が出てくれば、直ちに現地の実態調査をして、監督行政の調査をして、そうしてかくかくの条件のもとに、たとえば七〇%行なわれているなら行なわれているという話をされるのが労働行政ではないか、私はそう言いたい。それを言っているわけですよ。だから、今のお話では、現地においても、実際に現地に入って状態を把握してないということですね。
  117. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) 現地の基準局におきましては、現地に参ったこともあるわけでございますけれども、時間外労働の点につきまして現地で調べておるかどうか、私実はその辺の手続までは承知いたしませんが、先ほど申しましたように、現在三十六条に基づきます従来の時間外労働協定のワクの中でやられておるということと、なお、会社側に対して時間外労働の違反がないように厳重に指示をしておるということを報告を受けておる、こういうことでございます。
  118. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それは厳密に安全衛生の立場から厳格に行なわれているかどうかということを至急に点検をしていただきたいと私は思うのです。通産省は厳密に全体の生産の中で七〇%行なわれているということですから、現地に行って的確にそれを調べていただきたい。私はそれだけ申し上げておきます。ただ問題は、私は、阿具根委員も取り上げておりましたが、賃金の問題があります。それから相手と、要するに会社側と組合との関係においてこういういきさつの争議なんというものは、ほんとうに法律がきめているのに、何のどっからも干渉を受けないでこういう争議がやれるということならば、労働者は三法以前、今の人権保護の憲法以前の問題に逆戻りする以外に何もないと私は思う。口では、私らの聞いている中では、ロックアウトを六カ月やったら全部会社から除籍してしまうのだという極端なことをしていると聞くわけです。高野委員も言われたように、今の水俣の二千五百人の今後の生きていく道はどうするか、こういう問題も出て参ります。それどころか、あの会社のやっていることは現地の人は全部こう言う。監督の位置以上の人は全部よそから持ってきてやっているというような経営だそうであります。そして今の二千五百人の第一組合と、第二組合に行った人は、前の工場長の、現在の市長の口自身から、その地元のつまはじきになった人が第二組合に百何十人行った。それ以外に行くはずがありません。会社のやり方が悪いということを前の工場長の、現在の市長の口から私と鹿島委員とにそれをきちっと言っているわけであります。そういう状態で、私もこの前報告したと思う。そういう格好で争議が行なわれている。しかし、そういういろいろの問題はさておいて、労働基準法の建前から言っても、労組法や労調法の建前から言っても、自主解決が一番いいでしょう。自主解決ということが、労使対等でやるということがいいでございましょうけれども、片一方はロックアウトで一切の門戸を閉鎖してしまっている。おれの言うことを聞かないものなら実際ロックアウトで除籍してしまうのだという考え方でこれに取り組む。だから、あっせんであろうと、そういう問題にあなたは地労委のあっせん云々と言われたけれども、われわれ参議院社会労働委員会を代表した私たち二人に言った。会社は一切あっせん、調停は受けませんと言って会社を代表している副社長がわれわれに言明しているのですよ。言明しているその考え方がどれだけ変わったのかどうかということを聞かなければ、あっせん、地労委との関係が進んでおりますから、もうちょっともうちょっとと言うて、これどこまでいくんですか。私はこの前からそのお話をしているはずでございます。一カ月たって同じ話しか私は労働省から聞かない。団体交渉の協議は労組法の六条できちっとあります。不当労働行為で。しかし、法律があってもやらない。法律を違反しっぱなしだ。それに対して法を守る労働行政や労働委員会が何の権限もなしにこれに手をさかないということであれば、法律というものはどうなるのです。私はそういうことを言いたくなるわけですよ。ちゃんと労働行政の中の一つの労働委員会には権限を持ってあっせん、調停、救済ということがきしっときめられている、法律で、権限で。その点についても何ら手をさいていないじゃありませんか、今日まで。私はこの前も委員会から派遣されて現地の意見を聞いてきて、何とか自主交渉をという問題がむずかしければ調整事項の舞台に載せて、そのためには労働省は最大の努力をすべきではないかということを言って、そういたしますと、大臣もここで努力を約束されたはずであります。ところが、まだ大臣の御意見を承っておりませんけれども、もうちょっともうちょっとということでどこに持っていくのですか。だから、いろいろの出てきている現象は一つ一つ間違いは取り除かなければなりませんけれども、全体の争議を解決するという、これは国の経済立場から言っても、またその直接の関係ある当事者から言っても、重大な問題だ。争議をまず解決する。この問題に対しては皆が力を合わせてその解決の方向に大いに努力しない限り、この問題は解決しないのじゃないですか。直接の行政の担当者である大臣や労政局長がこんな格好ではどうにもならぬのじゃないか。大臣のひとつ御所見を承りたい。
  119. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 本問題につきましては、前回におきましてもお答え申し上げたところでございまして、労働省といたしましてはこの問題がすみやかに解決することを念願いたしておるのであります。したがいまして、もとより自主的に解決いたしますことが理想ではございまするが、しかし、それが望み得ないという場合におきましては所定の手続に従ってあっせん、調停等できるだけ有効な措置を構じたい。かように考えましてその機会をとらえようと思っておるのでございますが、不幸にいたしまして現在までのところ、労使の態度がなかなか強硬のようでございますので、介入する機会を握ることができなかったというのが今までの状況でございます。
  120. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大臣のお気持はわかりました。わかりましたけれども、今日までそういう機会を見つける努力をしてきたけれども、見つけることができなかったということで、今後この問題をどうしていくかという決意のほどを聞かないと、私はこの問題の将来どうしていくかという結論が出てこないと思う。それを聞かせていただきたい。
  121. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 今後におきましても争議解決の機会をできるだけつかみたいと思っております。現在におきましては熊本の地労委におきまして事情聴取をやっているようでございまして、おそらくその結果何らかの行動がとられるのではなかろうか。これが解決の端緒になることを期待いたしております。
  122. 小柳勇

    小柳勇君 私は大正炭鉱のあとの処理の問題を中心に離職対策と失業保険の問題、そういう問題で質問いたします。  まず、石炭局長お急ぎのようでありますから、石炭局長に。おかげで通産省、労働省の御努力によりまして長い間紛争を続けておりました大正炭鉱の退職金の問題が一応解決をいたしました。問題は相当残っておりますけれども、今日までとられました御努力に対しまして心から敬意を表し、謝意を表したいと思います。そこで残りました問題でありますが、退職金の支払い協定が結ばれましたのを見ますと、五十カ月の分割払いであります。そこで、生業資金あるいは更生資金、転職資金にするのにはあまりにも少ない。ほとんど生活資金にしかなりません。この問題は、単に大正炭鉱だけではなくして、今後買い上げられる、閉山されるであろう炭鉱労働者生活不安になっておるのであります。この大正炭鉱の一人の労働者は書き置きをいたしまして、せっかく退職金を楽しみに働いてきたけれども、分割払いで望みもないからといって、書き置きをして今行方不明になっております、一名——この人は五十四才になる労働者でございますが、せっかく御努力をしていただきまして、退職金が頭金だけ二万七千円払われまして、今後五十カ月の分割払いとなった。ところが、生業を営むには資金がない、転職するにも転職訓練も十分に受けられないという労働者が書き置きを書いて行方不明になっているという事実、これは今後また続発する危険性もございますが、私の言わんとするところは、もう少し政府が責任をもって、退職金については生活資金としてと同時に、転業資金、更生の、立ち上がり資金としてまとめて支給できるように、政府が責任をもって支払うような態勢がとれないものであろうか、これが第一点の質問であります。
  123. 中野正一

    説明員(中野正一君) 大正鉱業の問題につきましては、今、小柳先生から御指摘がございましたように、十一月の初めにようやく地労委のあっせんによりまして、会社側も退職者同盟もこのあっせん案を受けまして協定ができまして、六日と七日に、当初約束の一人当たり二万七千円というものが支払われたのでございます。また生産のほうも十月の終わりから大体順調に生産が開始されまして、なお、まだいろいろ坑内の不整備等もございますので、そういう面は生産は順調に入っておりませんが、逐次立ち上がり資金等の手当をいたしまして、一日も早く会社の経営、またそこに働いておられる方々生活が安定するようにわれわれとしても努力をしたいというふうに考えております。  それから、御指摘の、退職者についてのあとの未払いの退職金等につきましては、会社側の生産が順調に参るということになりますれば、逐次退職金を支払われるというふうに期待をしております。また協定書にもありますように、残りの退職金の支払いにつきましては、石炭鉱業の合理化事業団から整備資金を借り入れることについて誠意をもって努力する。これが実現をしたときには、逐次それを払っていくという協定もございまして、現在通産省のほうで会社の今後の生産の見通し、合理化事業団からの整備資金の借り入れにつきましても、これが条件、あるいは返済の条件等についていろいろ検討しておりますので、そういう面でできるだけ退職者方々に既定の退職金が早く払われるような状態に持っていきたいというふうにして今後努力をしたいと考えております。
  124. 小柳勇

    小柳勇君 生産が軌道に乗るということは、生活の不安がない、労働者が働いて生活が不安がなくなるということがまず第一だと思いますが、整備資金の融資は生産が上がってからというようなこともございましょう。したがって、整備資金の融資についても通産省から努力してもらうし、五十カ月の協定はあるけれども、更生資金なり生業資金のためにもできるだけまとめて退職金を払うように今後とも努力すると、このように理解してよろしゅうございますか。
  125. 中野正一

    説明員(中野正一君) 今御指摘がありましたような方向でわれわれとして努力したいと思います。
  126. 小柳勇

    小柳勇君 この問題は、佐藤通産大臣の時代に田中氏を社長にして、退職金を早急に支払うようにということから問題が紛糾したことでもございますから、その責任上からもただいま石炭局長が明言されたように、今後もできればまとめて退職金が支払われて早急に立ち上がることができますように御努力を願いたいと思います。  次の問題は、石炭鉱業合理化臨時措置法によって買い上げられましたときに、まだ、今決定しておりませんけれども、買い上げられたときに、その時点以前に退職した者に対する賃金債務が当然この措置法の三十三条の適用を受けると解釈するが、はたして交付金からこれが支払われるかどうか、こういう点についての見解をお聞きいたします。
  127. 中野正一

    説明員(中野正一君) 閉山で合理化事業団で買い上げになりました場合は、買い上げ資金の二割を限度としてこれを未払いの賃金、退職金に優先的に充当することになっておりますので、この範囲内でできるだけ賃金の支払いが適正に行なわれるようにわれわれとしては措置しておるつもりでございます。
  128. 小柳勇

    小柳勇君 大正炭鉱に類する問題も、今後とも発生して参りますから、通産省の、特に石炭局長の格段の御努力をお願い申し上げる次第であります。  通産省に対する質問は以上で終わります。  それから、警察庁に質問いたしますが、せっかく労働大臣や通産省の担当官が御努力になりまして、退職金の問題が一応解決いたしました。協定が結ばれた直後、退職者同盟の者三名が威力業務妨害罪並びに暴力行為等、法令違反の容疑で逮捕されました。この問題については、三日前に警察庁のほうに取り調べをお願いいたしておりますが、現状並びに当時の実情について調査された点を警備局長から御報告願いたいと思います。
  129. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 大正炭鉱の、いわゆる退職者同盟員の方の中で起こりました事件につきまして、三名検挙をいたしまして、三名任意取り調べをいたしておるのでございますが、それらの概要を申し上げたいと思います。  一つは、九月五日から八日までの間、同盟員約三百五十名が中鶴炭鉱の新一坑、同新二坑、巻上場の中にすわり込みまして、巻上機の運転を不能にした。同じく同盟員の約二百五十名が九月二十から十月の十三日まで同じ場所におきましてすわり込んで、同様巻上機の運転を不能にいたしたわけでございます。これらは何回も会社側から、作業ができなくなるということで要請をし、警告をいたしましたが、その大人数の人が巻上機のところにおりまして作業ができないということで、威力業務妨害ということで九月五日、九月二十日それぞれ告訴が出ておるようでございます。  次に、十月の十三日に、これは実はその間に四次にわたりまして仮処分の申請を会社からいたしまして、それぞれ決定があり、その場所に立ち入ってはいけない、あるいは指定の場所を執行吏の占有に移しまして、これで会社業務を妨害してはならないというような執行が三回までわたり、四回目が執行される寸前でございましたが、十月の十三日から十月の二十二日までの間、今度は二十五名でございますけれども、今までの場所から変えまして、新一坑の坑口から坑内に入りまして、同坑内四百馬力のエンドレス巻運転誘導車付近にすわり込みまして、また、その誘導車に鉄のアーチ・クリップ・チェーンを突っ込むというようなことをいたしまして、この誘導車の運転を不能ならしめたということで、これが十月十三日に告訴が出ておるわけでございます。さらに十月十三日でございますが、この同盟員の立ちのきを要求いたしますために、同社の採炭係長が三名の者を連れまして現場に参りまして、作業をするのだから、そこを立ちのいてもらいたいということを言ったのでございます。ところが周囲を取り囲み、お前たちをくくりつけて運転してやるとか、のこぎりを現に示しまして、こののこぎりでひいてやるというようなことで、多数の威力を示しまして脅迫をいたしました。三名の者は逃げて、一名だけが取り囲まれてそういうようなことを長くやられたようでございます。なお、次の事件は十月の二十五日でございますが、四名の者が大正鉱業の山ノ上クラブ奥の間で重役四名と会議中でございました。同社の坑長の宮原という人に対しまして、坑内すわり込みに参加した二十五名、つまり二十二日に坑から出ておりますので、その三日後でございますが、すわり込みに参加した二十五名が一ぱいやろうということで、昭和寮に待っているから二万五千円貸してくれということを申したのでございます。これを断わりますというと、わずかな金ができないことがあるかということで、四十分間にわたって口々に言い続け、困惑して六千円を出しますというと、ばかにするな、そんな金で引き下がれるかというようなこと、さらにお前たちを打ち殺してしまうぞというようなことを言ったというので、非常に危険を感ずるような状態で、さらに同人から二万一千円を交付さした。これは恐喝に当たる容疑があるわけでございます。それから十月三十日に、同盟員の一人の人が、これは夜中でございますが、街路上で、相当酒を飲んでおったようですけれども、会社側の保険組合の書記、それから保険係員というような会社の職員二名に対しまして酒を飲ましてやろうと申し入れましたが、これを断わりますというと、非常に憤慨をいたしまして、はいていたげたで両名の顔、背中等を殴打をいたしまして、片ほうの者に頭部左側及び右顔面打撲傷、左指擦過傷、全治二週間の傷害を与えた、これは暴行傷害の容疑でございます。以上のようなことが起こりましたわけでございますけれども、前の四つの問題につきましては、坑内におりましたし、または坑外に二十二日出ましても、出ました際は、医者の診断で健康に障害がある、おそれがあるということで勧告をして出て参り、なお入院をして一日ないし二日の診断を受けておるというような状況もございましたので、告訴はございましたけれども、時期を見ておりましたところが、さらに二十五日そういう事件があり、三十日に今申しました暴行傷害があるということで、これにつきましては警察として放置できないという考え方に立っておったのでございます。十一月の三日に、そういう事柄が妥結をいたしましたわけでございますけれども、従来のそういった事柄につき、告訴事件は告訴事件として処理しなければなりませんし、告訴がございませんでも、今のような暴行、恐喝、傷害というような問題につきましては、これは争議解決とは別に、警察として責任を追及するという立場で三名の人を逮捕いたしております。それから三名はさらになお任意で取り調べておるという状態でございます。
  130. 小柳勇

    小柳勇君 問題は三点のようでありますが、第一は、威力業務妨害として逮捕された、そのときに同盟員、すなわちこれは労働組合法の適用を受けておる組合でありますが、組合事務所を捜索されておる。したがって、緊急避難として入りました、これは警官四百名の動員の中での緊急避難だと組合は言っておる。それを、巻上機にすわり込んだために作業ができないからこれは威力業務妨害である、これが私どもの察知したところの容疑の理由のようであります。私は先般の委員会でも発言したのですが、仕事をやめて退職金で生活する人たちが退職金をもらうために交渉する、しかも八百九十名という多数の人が組合を作って交渉しておる。で、その作業場の中に入ってすわり込むということが違法であるかどうかについては、法的にも争いがあるところと思われます。それを問題が解決した直後、今まで退職金を払えなかったものについては、社長に対して何ら警察権力をもって拘束しようとしなかった警察庁が、問題が解決した直後、その過去の問題を取り上げて威力業務妨害罪容疑として組合事務所を捜索し、逮捕したということは、あまりにも処置が一方的ではないか。容疑については問題は残りましょう、法的には残りましょうが、あまりにも一方的な仕打ではないか。いわゆる警察権力の不法な介入ではないか、行き過ぎではないかと思いますが、この点いかがですか。
  131. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 四百名の警察官が来たので緊急避難で坑内に入ったというお言葉であったように拝聴いたしましたが、四百名の警察官は、実は先ほど申しました四回にわたる仮処分のうち、第三次の仮処分の執行吏が参りまして、執行吏の占有に移すということで執行をいたそうとしたのですけれども、これに応じない模様であり、そういうことで法令に基づきます執行の援助要請があって警官が出たのであります。それからその十月十三日から坑内に入りました二十五名という方々は、実は十月十三日から二十二日まで入っておられたのでございまして、緊急避難で何か急性な侵害を受けたから、その場を避けるということでその場を去ったというような状態ではないのでございます。つまり第一回の仮処分がございまして、これが最初にすわり込んでおった場所から立ちのかなければならないということになりますと、実は別の場所で同じように巻き上げができない状態になる。レールの上に今度はすわり込むことも避け得ないということになりますと、今度は広くそういう処分の出ますその際に、今度は戦術を変えまして、坑内深く入ったというような状態を私どもは承知をいたしておるのでございます。お言葉の中に、会社側が退職金を払えなかったということに対して何らの処置を警察はしないで、この労働者側の違法行為をそれだけ追及したというお言葉でございますけれども、事柄全体といたしまして私ども拝聴いたします限り、非常にこの退職者といいますか、現に職にある方々を含めて、労務者がお気の毒であるということはよく理解できます。しかしながら、警察が退職金の金繰りがつかないで支払えないという場合に、これは一日も早く解決することを望む以外に、実は警察的な力で社長をどうするということはできないわけでございまして、相当長く退職金が払えずに、こういう事柄が長く続いたことは誠に遺憾とするわけでございますけれども、それに対して警察が処置をするということは、こういうように事実上できないのでございます。また、争議がせっかく解決した直後に、この組合側だけの違法な行為を取り扱うのが一方的だというお言葉でございましたかと思いますが、これは実はいつの時期に、そういう争議に伴いますいずれの側の違法行為でも同様でございますけれども、措置をするかということは、これは争議そのものに相当影響を事実上与えるということは考慮しなければならないと思います。そこでしばしば、争議の重大な段階にかかわらず、関係者を逮捕したのは何事かというおしかりをよく受けることがございます。今回は解決をいたしました数日後に検挙に当たったのでございますけれども、お言葉のように、長くかかった争議が解決した直後にやるのは酷ではないかというお言葉は私も理解できますが、これは先ほど来御説明いたしましたように、全体として警察として見のがすことのできないような種類の行為でございますので、全体としてお気の毒だということはありましても、このこと自体は放置できません。そこで、警察といたしまして一番適当な時期に、関係者の健康等の状態も十分わかりました上で踏み切ったと承知いたしておるのでございます。
  132. 小柳勇

    小柳勇君 先般、県警の本部長に会いましたときに、まだその逮捕がなかったものですから、逮捕の前日だったものですから、一番初めに、紛争があって、警察官が武装して出動したことについてここで取り上げましたが、直ちに、その後非常によくなっておる、円満に解決したからといってお礼を言って実は帰ったわけです。その翌日逮捕されました。この第一段階にありました会社のほうも退職金を払わなかったことは、われわれとしてはいたしかたないという意向の表明がありました。あれだけの紛糾をいたしましたのは原因がありましたことで、普通、警察権力は、労働問題でも新聞などで騒ぎますというと直ちに捜査に入るわけです。その場合に、退職金は、御存じのように労働基準法でも二十三条に、賃金その他は現金で支払わなければならないと書いてある。それは労働者生活を守るという大きな立場でしょう。そうして百二十条には罰則が規定してあるわけです。その罰則ということは警察権力なりその他が告発しなければなりません。告発しないでも警察が手を入れる例はあるわけです。片一方のそういうふうな根本原因については全然見向きもしないで、あとに派生した問題について手を入れている。このことを私は発言したのです。  第二の問題の威力業務妨害罪を適用いたしました緊急避難の問題は、会社の申請をいたした地域外に緊急避難をしておる。転々逃げておるわけです。警察官との摩擦を避けるために逃げておる。それをあとから追いかけて逮捕したようなことですが、この協定書を見ますというと、この協定書の中に盛られておる思想は、この解決——まあいろいろ問題はあったろうけれども、同盟側も問題は水に流しなさい、そのかわり会社のほうも問題を水に流せ、仮処分申請などあるならこれを全部取り下げなさいと書いてある。そうして円満に解決したあとで逮捕されて、しかも一名の者は同盟の副委員長です。組合の指導者です。この威力業務妨害の適用はおそらくその副委員長だと思います。あとの暴力行為については問題はもう少しあります。あとで論じますけれども、その警察権力の、しかも任意出頭とすれば逃げ隠れしなかったといっている。あと一人は同盟の委員長がつれて出しているわけです。それを任意出頭をかけないで、いきなり事務所を捜索して直ちに逮捕している。そうして失業している諸君の憤激をかっている。これはあまりにもやり方が行き過ぎでもあるし、お粗末ではないか。こういうことを第一点では問題として取り上げているわけです。
  133. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 今の最後にお述べになりました、逮捕しなくてもいいではないか。逃げ隠れしないじゃないかということでございますけれども、御承知のように、警察が関係者数人にわたります事件について事件を処理いたします際には、これは任意で正確な証言を得られればそれにこしたことはないのでございますけれども、しかし通常警察が取り調べをいたしまして、そのままその日に中途で帰るということになりますと、関係のあります者がお互いに相談するというようなことがあるのでございます。そこで、翌日また今まで言ったことが変わってくるというようなことが、くだいて申しますと事実上再々ございますので、そこで重要な関係者については、警察の言葉で申しますと、通謀を防ぐというような意味で、これは法令的な言葉で申しますと、証拠湮滅を防ぐというような意味で逮捕いたすことがしばしばあるわけでございます。今回の場合も、御指摘のように二名逮捕されたその後の一名の方は、責任者がつれて出てこられたのでございますが、令状も出ておりました関係で、しかも他の二名はすでに逮捕されております関係で、この三名につきましては逮捕いたしたのでございます。なお他の関係者につきましては、これは前に申しました三人と役割がやや違いますので、これは任意で取り調べるということで逮捕に至らなかったというふうに承知いたしているのでございます。
  134. 小柳勇

    小柳勇君 今論争している問題の中心は、警備局長は、今後もあることでございましょうが、退職して、首切られて退職金を全然もらってない者が組合を作って退職金を出しなさいという要求をやる。その場合に、職場に入ることもあるでしょう、昔の職場ですから。昔の職場ということは、まだ債権がありますから、労働組合としては当然入っていいものと私は考えますが、これに入って、そうしてその生産点において、入ったために機械がストップした。こういうものについては行き過ぎだとお考えになりますか、その点だけを聞いておきたいと思います。
  135. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 職場内にもとの職場の人がそこにただ居すわっているということだけで、直ちに威力業務妨害であるかどうかということは、これは直ちに言えないと思うのでございます。そういう状態におきましても、ある期間相当の人が、あるいは行為の態様によって、その場において退去の要求を聞かないというようなことになりますれば、これは今まで幾多の判例にもございますように、威力業務妨害として問題にされる場合があるわけでございます。今回の問題は、実はなかなか関係が微妙のようでございまして、残留と申しますか、退職しなかった方々との間の妥協ができて、仕事が再開をいたしました後、今度、退職同盟の人たちがその現場にすわり込むためにその仕事もできないという状態が続いておったようでございます。一般的に今後もあるということで、一般論としてのお尋ねといいますか、御意見がございましたが、これは最初にお答えいたしましたように、元来がその職場にいるべき人が争議のためにそこを直ちにどかなかったということで、すぐ威力業務妨害が起こるというふうには考えておりません。
  136. 小柳勇

    小柳勇君 第二点の問題は、山ノ上クラブの重役などが話しているときに、同盟の人が行って退職金をよこせと言って、そうして二万何がしかもらって帰ってきた。これを脅迫と考えておられるように発言の中にありましたが、こういうものも罪の中の一つの要素として捕えていると思いますが、あしたの生活、きょうの生活が暮らせない退職者が、たまたま重役会議があっているから、その山ノ上クラブに行って退職金よこせと大きな声で言う。向こうのほうも数名でしょう。こっちのほうも数名です。われわれも経験あるわけです。言葉は悪い。荒い言葉で、あるいは炭鉱の労働者諸君は朝晩にきさま殺すぞぐらいのことは言うわけです。そういう言葉で、これを脅迫だ。二万というのはまだ退職金に足らない金額です。多い人は五十万また百万の退職金がある。その中で二万円もらって帰った。当然取るべき権利のある金を二万円取ったために、脅迫してその金を引ったくっていったということも告訴する人は言うでしょう。告発するでしょう。そういうことも逮捕の理由になっているようですが、そういう点もあまり警察は片手落ちではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  137. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) なるほど退職金がごく一部しか出ておりません事情はお気の毒に思います。しかしながら、これは四名の人が行って、退職金の残りの中から生活費を要求したという格好のものではございませんで、先ほど申しましたように、坑内にすわり込んでおりました二十五名が出てきて、これが一ぱいやるということで、それがために、初めは貸せということであったようでございますが、七時三十分から九時ごろの間、一時間半くらいの間にわたって、ただ一人、これはだれからでもということではなくて、坑長を名ざしてやったわけでありますが、これを四名で取り巻いて、先ほどのように、非常に荒い言葉で脅迫がましいことを申したということでございます。これは山では通常もうそういう言葉は普通だとおっしゃられれば、どうもそういう点は私も承知をいたしませんけれども、しかし、通常使っております言葉でも、その雰囲気によってまた受ける印象も違うと思います。現に一時間半にわたってそういうことを言われた結果、初め六千円出し、それでもだめだということで、二万一千円か何か集めて出したのだと思いますが、そういうことがあったということになりますと、これは退職金が少なかったから、その残りだというふうな解釈で、また、言葉が非常に通常荒いのだからということでこれを見のがすわけには警察としてはいかないわけでございます。
  138. 小柳勇

    小柳勇君 現在逮捕されまして、今審理中であるようでありますが、拘置されております同盟の諸君なり労働者の諸君も、これは気の毒だということで、釈放の要求などはやっているようであります。  第三点は、根本的な問題ですが、あしたの生活がどうなるかという不安にあるものが、その団体ですね、そういう団体は、それは言葉もひどくなるでしょう、あるいは行動も激しくなるでしょう。私は、むしろそういうことよりも、この貧乏な、失業であすの生活がどうなるかという者を見殺しにするものこそ罪人ではないかと思う。その立場をとるなら、現象的に出たそういうふうなものだけにとらわれないで、せっかくここで解決いたしまして、不満ではあるけれども、五十カ月払いの協定でがまんしていこうという、そういうふうな労働者の素朴な気持がきまりました直後にこれを逮捕されたのでございますから、問題はたくさんありますけれども、時間もありませんが、早急に釈放するように、ひとつ警備局長も最善の努力をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  139. 三輪良雄

    説明員(三輪良雄君) 御承知のように、検事に送致いたしますと、検事が要求をいたしまして拘留いたすわけでございます。これは警察側で釈放いたしましようというような約束はできない。検事の持ち時間でございます。しかし、ただいまのお言葉のように、実は全体を通じまして、非常にお気の毒な立場にあったということは、これは今後検察庁においても裁判所においても、情状は酌量されることであろうと思いますが、そういう意味で御趣旨を地元警察にはよくお伝えいたしまして、また、検察庁とも連絡をとるように私どものほうからもしたいと思います。
  140. 小柳勇

    小柳勇君 警察庁のほうには要請だけ最後に私いたしますが、これに類似いたしまして、労働運動に介入するといいますか、警察権力が入りまして、客観的に見ましても、あまりにも一方的だという例がそのほかにもありました。私は、再三刑事局長にも警備局長にも来てもらっておりますが、特にこういう追い詰められた労働者生活権擁護の運動に対しては、あくまでこの紛争が発生したときの治安を主として考えてもらって、その他は警察官でありますから、生活を守る方向にひとつ加勢してもらいたい、率直に言いますと。でないと、一番の労働運動の敵は警察であるというような誤った考えがはびこっております。そういうことで、この問題はなお問題がまだ残っておりますが、質問はいたしません。詳細については、私よりも、むしろ警備局長のほうが事実は詳しいと思いますから、願わくば、警察庁のほうにもまたいろいろ私も意見を申しまして、即時釈放のために働きますが、警察官のほうも、そういう方向の今後の配慮を願いたいと思います。  以上で警察庁に対しては質問を終わります。  次は、労働省のほうに二、三点御質問をいたしますが、大臣には、このほど大正炭鉱の問題を御努力を願いましてありがとうございました。解決いたしましたが、さっき申し上げましたように、退職金が五十カ月の分割払いで、転業もできないということで、今遺書を書いて行方不明の人もあります。これは一人だけの考えではなくて、全部の退職者の共通した気持ではないかと思います。月々の生活資金しか会社から退職資金として支給されない、それで一体おれたちはどうなるかという問題があるわけです。そこで関連して質問しますのは、失業保険がどうなるかという問題と、職業訓練がどうなるかという問題、次の就職がどうなるか、この三つの問題があとの処理として残るわけですが、まず初めに、失業保険を三〇%くらいアップしようということが今新聞でちらちら出ておりますが、この失業保険金のアップの実現の問題、それに家族が多いところは、失業保険ではなかなかやっていけないが、家族が多いものにはどういうふうに考えておられるか、これをまず第一に大臣のお考えをお聞きいたします。
  141. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 事務的な問題になりますので、ひとつ課長から御説明申し上げるようにしたいと思います。お許しいただきたいと思います。
  142. 北川俊夫

    説明員(北川俊夫君) 失業保険の日額につきましては、現在最高七百円、最低百二十円、こういうことになっておりますが、最近の賃金の上昇その他の実態を勘案いたしまして、現在約三〇%以上の引き上げを法律の改正によって実現いたすべく検討いたしております。御指摘の扶養加算の点につきましても、諸外国の例その他を参考にいたしまして、今回の法改正には含むべく検討いたしております。
  143. 小柳勇

    小柳勇君 第二点は、失業保険の延期の問題でありますが、広域職業紹介を受ける場合は延期をされますが、適用条件がむずかしいために、全部が全部失業保険の支給延期にならない。このワクを広げて、適用条件などはあまりむずかしく言わないで、皆が広域職業紹介に応ずるものと理解して失業保険の支給ができないものであろうか。この問題についてはいかがでありましょうか。
  144. 北川俊夫

    説明員(北川俊夫君) 現在失業保険の特別延長措置につきましては、御承知のように、広域職業紹介命令が出ております。職業安定所の管内につきまして、全国の失業率の二倍以上の地域、そういうものについて最高九十日まで特別に延長をいたしております。ただ、当該失業率の高い地域の隣接地域につきましては、二倍という基準を非常に弾力的に運用をいたしております。現在約九カ所の安定所を指定いたしまして失業保険の延長措置をやっておりますが、その中にも、一部、たとえば八幡等は近接地域ということで、基準は弾力的に解釈いたし、含めておる次第でございます。したがいまして、全般的に基準を下げるというよりも、当該地域就職が非常に困難であるから失業保険を延ばすという、そういう制度でございますので、その地点及びそれに付随する隣接地域について、基準の弾力的適用、現行の措置で十分まかなえるのではないかと考えます。
  145. 小柳勇

    小柳勇君 これを今後発生する失業者に適用できるのですが、この失業者の皆さんは、ほかに適当な仕事があればどこにでも行けるわけです。何もみずからどこでなければならぬというようなことは、おそらく言わないと思うのですが、そこで、まあ失業保険については、根本的な問題もございますけれども、特に炭鉱失業の問題については、もう少し適用を広げてもらいたいと思うのですが、そういう方向で検討されておるかどうか、端的に御説明願います。
  146. 北川俊夫

    説明員(北川俊夫君) 基準について、そのものを改定いたす考えはございませんが、運用上の弾力性を加えることは十分検討いたしたいと思います。
  147. 小柳勇

    小柳勇君 次の第三点の問題は、訓練手当の増額と技能習得手当の増額、これはいつも問題になっている問題ですが、これは大蔵省などの意向はどうでしょうか。
  148. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 技能習得手当につきましては、現在が七十円という形になっておりますが、従来の実施状況にかんがみまして、できるだけ引き上げを行ないたいという見地から、百円という額を要求しておる次第でございます。また、職業訓練手当につきましては、現行三百円でございますが、これを五百五十円程度に引き上げてもらうように予算要求中でございます。
  149. 小柳勇

    小柳勇君 それから、第四点は別居手当の増額です。これも今縁故に別居している人が、あとの家族の問題で困っておりますから、大蔵省などに対する交渉の現在の見通しについて御答弁願います。
  150. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 現在の別居手当は、訓練所の寄宿舎に入所しました場合に、寮費とか、あるいはまかない費とかいうことで納めます金額を基準にいたしましてきめておるわけでございます。   〔委員長退席、理事高野一夫君着席〕 それが大体三千円程度になっておるわけでございますが、その額を基準にいたしまして、現在の別居手当は三千六百円にいたしておるわけでございます。名称は別居手当でございますが、実質は、訓練所の寄宿舎に入りまして訓練をする場合を一応の基準にいたして考えております制度でございますので、まあその基本的な考え方の問題もあろうかと存じますが、一応現状の額で予算要求はいたしておる次第でございます。
  151. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、別居手当の増額については、今のところは考えておらないと、こういうことでございますか。
  152. 村上茂利

    説明員村上茂利君) さようでございます。
  153. 小柳勇

    小柳勇君 どうでしょうね。家が今足りません。労働省は一生懸命がんばっておるようでございますが、家が足らぬのですが、別居手当の増額について検討して、別居してしばらく仕事にがんばるというような方針についてはいかがですか。
  154. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 別居と申しますか、訓練のための別居でございますが、できるならば訓練所の寄宿舎にお入りいただくのが一番訓練に便宜なわけでございまして、その際に寄宿舎でいただきますまかない料などは、これは三千円程度のものでございますので、そういった事実を考えますと、そう増額する必要はない。訓練所は三千円しか取らない、こういうことでございますから、そういった状態を中心にして考えますと、増額要求というのは、なかなか問題があろうかと思います。また、訓練所の寮に入れるのじゃなくて、めいめい好きな所に別居させるという体制を認めますにしても、おのずから限度がございまして、どういった状態を標準的なものとしてとらえるかということになりますと、いろいろこれは見方があろうかと存じますが、労働省としましては、できるだけ寄宿舎にお入りいただくという建前を前面に押し出しまして、それとの関連において手当の額をきめて参るということにいたしておるわけでございます。   〔理事高野一夫君退席、委員長着席〕
  155. 小柳勇

    小柳勇君 入って、御主人だけの問題はそれで解決しますが、あとに残っておる家族の問題がそれではなかなか解決できませんから、この問題もまた後日問題にいたします。  先を急ぎますが、四十才以上の高年令層の就職問題、職業訓練の問題について質問いたしますが、私どもいろいろ考えるのですけれども、適当な訓練科目もないわけです。ところが、中高年令層の人が今一番問題でありますが、この年令の高い人たちの訓練については、現状としてどういうことをお考えになっておりますか。
  156. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 先生御指摘のように、四十才以上の年令層になりますと、肉体的にもいろいろハンディキャップがございまして、訓練職種につきましても、その選択には慎重な配慮を必要とすると考えておりますが、現在、たとえばブロック建築工、それから配管工、熔接工等がございまして、また、個人的な能力いかんによりましては、ブルドーザー運転とか、あるいは起重機運転等、幾つかの職種考えられるわけでございます。そういった訓練職種につきまして、地元県とも相談いたしまして、地元県の需要をも勘案いたしまして、具体的に個別的にきめて参りたいと、かように考えておりますが、一方におきまして、そういう年令の方々が入れるような定員を確保するということが非常に重要なことでございまして、これは一般的に放置いたしておきますと、そういった訓練のむずかしい方を好んで入所させないということがございますと非常に問題でございます。したがいまして、今後定員の増加をはかります際に、そういった面を十分勘案して参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  157. 小柳勇

    小柳勇君 たとえばブロック建築とか塗装などを習得いたしまして、自分で仕事をやるような方が、生業資金、あるいは企業組合を作る資金がないためにできない、こういうのには生業資金を、たとえば十万円なら十万円貸してやるような特別の措置については考えられないか。
  158. 北川俊夫

    説明員(北川俊夫君) 炭鉱離職者の生業資金の貸付につきましては、現在の炭鉱離職者臨時措置法によりまして、雇用促進事業団の業務として今まではあっせんを行なうということが規定してございました。しかし、今まであっせんして成果が実る、こういうものがそうございません。今後中高年層につきましては、先生御指摘のように、自営業への転換ということが必要な対策と考えまして、労働省では、今回石炭調査団の答申が出ましてからの炭鉱離職者の充実という面で、たとえば国民金融公庫にそういう炭鉱離職者の自営資金の貸付の特別ワクを設けるとか、あるいはそういう場合に雇用促進事業団で債務保証をやる、そういうようなことができるように現在大蔵当局と折衝中でございます。
  159. 小柳勇

    小柳勇君 それから、就職訓練をいたしましたあと、公共企業体などに特別あっせんしてもらって仕事をやれるような方向に、個人だけにまかせないで、公共企業体の事業などに積極的に入っていけるように、たとえばこの前、全駐労の離職対策として、全駐労の離職者については、県庁、市役所などの仕事を優先的に企業協同組合を作って世話してやろうというようなことをいたしました。そういうことを——これは民間の炭鉱離職者でございますが、特に配慮願えないものであろうか、いかがでしょうか。
  160. 北川俊夫

    説明員(北川俊夫君) 今の点につきましては、たとえば産炭地域振興事業団が、産炭地におけるボタ山の処理、そういうものを今後行ないますけれども、それの請負は、先生の御指摘のような、離職者で作りました企業組合にやらすようなことを現在検討をいたしております。
  161. 小柳勇

    小柳勇君 それから、具体的な問題二つであります。それで質問を終わりますが、一つは、中間市の離職者が大正炭鉱で千名、これに前におりました者を加えますと、千五百名ぐらい職安の出張所が扱っておるようでありますが、八幡まで職業訓練所に行くには非常に遠い。しかも、人数が多うございますから、職業訓練所の出張所、分所などを設けて、出張して職業訓練を施してくれないかという現地の切なる要望があります。これに対していかがでございましょうか。
  162. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 今回の炭鉱離職者対策に関連いたしまして、職業訓練施設の拡充強化をはかりたいと考えております。その具体的な拡充個所等につきましては、県当局と緊密な連絡をとってやっておる次第でございます。中間市におきましても、その事情につきまして、さらに県当局と連絡をいたしまして、至急調査いたしたいと考えております。
  163. 小柳勇

    小柳勇君 最後の問題は、求職手帳を交付するということが今新聞に出ております。これは石炭鉱業調査団の報告に基づいて制度化されるようでありますが、閣議決定が四月六日でありますから、それ以降の者に適用するというようなことが言われておりますが、その大正炭鉱の離職者は六月以降に発生している失業者であります。その者にも、当然この求職手帳というものが適用されるものと考えるが、いかがでございますか。
  164. 北川俊夫

    説明員(北川俊夫君) 求職手帳制度については現在検討中でございますが、先生の御指摘のように、石炭鉱業調査団の答申によりますと、四月六日以降の合理化解雇者にこれを対象として交付する、そういうことになっております。なお、合理化解雇者の解釈といたしましては、現在までのところ、希望退職を使用者側がつのって、形はたとい自己退職のようにいたしましても、これは解雇者として従来扱って参りました。大正炭鉱の場合に、はたして求職手帳の対象になるかどうか、これは実態をよく調べまして、検討いたします。
  165. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、私の意見を言っておきたいのですが、御存じのように、大正炭鉱は、あの当時では、実際を言うならば整理はできなかったわけです。ところが、それを特に通産大臣の意向などによりまして離職者をつのりまして、三百名くらいを離職させようとしたところが、九百名になってしまったわけであります。したがって、あれは実際言うならば起こらなかった離職者でありますから、今回の石炭調査団の報告に基づく離職者と同等に考えてもらっていいのではないか、これは私の意見です。  それからもう一つは、就職する、あるいは訓練所に入ろうとする手続が非常に複雑で、書類を何回も作らなければいかぬ。それでもううるさいわけですね。労働者というのは、書類を作るのが一番めんどうくさいわけですから、一回作ったならば、それでほうぼうに利用できるような制度にしてもらいたい。でないと、書類を作るために、おれはいやだからということで、職業訓練就職の手配もしないということのようです。これは事務的なことのようでありますが、その点まで、ひとつごめんどうでしょうけれども、格段の御配慮を願いたいと思います。  以上で質問を終わりますが、重ねて大正炭鉱の例でありますが、今千名近くの人が食うや食わずの非常な大きな問題でございまして、将来もこういう類似のものが発生しますから、格段の御努力と御配慮をお願い申し上げて私の質問を終わります。
  166. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 さっそくでありますが、労働大臣に二、三の点にわたってお伺いいたしたいと思います。  まず、お尋ねしたい第一点は、私の見るところでは、ことしの年末は、言うならば景気調整の浸透性と申しましょうか、特に中小企業、零細部面は言うに及ばず、この面においては不況の色が非常に濃いのじゃないか、こういうふうに伺っております。特に中小零細企業部面の中で、たとえば生産、流通の両部面では、具体的な問題として、売掛金が、あるいははなはだしきはこげつきがどんどん出てくる。そういうような関連の中で、悪いときには弱り目にたたり目で、注文はだんだんと減ってくる。その連鎖反応で、悪循環で在庫量がふえてくる、ますます資金繰りが苦しくなってくると思います。かてて加えて、大企業の圧迫で、好むと好まざるとにかかわず、やはり中小企業の業績が悪化してくる。そこで、経済資金といいますか、運転資金というものについては、とにかく火の車だ。そういう関連の中で、商売がかわいいから何とかしてやりくりをしていこう、ただ問題になるのは、ぎりぎりの時点にいきますと、賃金の支払いという問題については、まあまあ分割払いでかんべんしてくれとか、あるいは遅配であるとか欠配であるとか、そういったような状態が起きてくると思うのです。昨年度に比較して、景気調整のてこ入れは、将来の展望の上ではさることながら、今日的な年末の時点では、かなり谷間に落ち込んでくるのだ。そのしわ寄せが、ただでさえ低賃金構造の中で痛めつけられておる。中小企業のほうはまだしもので、その底辺である零細企業労働者は、なかなか踏んだりけったり、こういうような面から、言うところの労働不安や社会不安というものが起きてくるのだ。申し上げるまでもないことでありまするが、日本の産業構造は二重になっておるのだ。ことに産業構造は、零細小企業というものが、組織を乗りこえて非常に多いのです。そういうような点について、時間がありませんから、具体的に煮詰めて一口に申し上げまするならば、ことしの年末時における——中小企業のもとで働く労働者はさることながら、一番底辺で働いておるところの零細企業の非常に数多くの労働者賃金の遅配、欠配、分割払い、ないしは、私どもが越年資金といって、越すに越されぬ年というものをどうして越すか、これを年末一時金といいますが、こういったような問題について親切な親心を示していただいて、労働大臣からひとつくれぐれも親切な、たとえば銭のことは大蔵省女金融のことはおれのほうじゃないというような冷たいお答えにならぬように、できる限りサービス行政のセンターであるその最高長官である労働大臣は、その辺について、ひとつうまみを示してもらいたい、そういうような点についてお伺いをしておきたいと思うのです。
  167. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 景気調整の進行に伴いまして、いわゆる金詰まり現象が一般化して参りまして、ことにこの秋以来は、相当各方面に心配なような状態が出て参ったわけでございます。したがいまして、年末資金につきましては、特段の配慮が必要であるというふうに政府といたしましても考えたのでございまして、この点につきましては、先般政府といたしましては、特に今年は早目に中小企業に対する年末の金融の資金を投入することにいたします。これは国民金融公庫、あるいは中小企業金融公庫等に対する政府からの融資でございます。それから、さらに一般投融資の面におきまして、電力会社が相当関連産業に対する支払い等に困難いたしておるというような事情もございまするので、政府といたしましては、それに対しましても支払い資金を特に融通するというような措置を講じておるわけでございます。大体年末の金融対策といたしましては、ただいままでに講じた措置が、大体十二月初めまでには相当末端まで浸透するものと考えておるわけでございますが、なお、今後とも情勢を注意して参りたいと思います。
  168. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私も長い間労働運動のプロで、三十数年やって参りまして、毎年ノイローゼぎみで、このために非常に苦労しておるわけでありますが、今日的に、たとえば地方銀行協会は、去る三十日だと思いますが、昨年の二割水増しで千二百五億というものを中小企業向けのワクとして設定しておるやに聞いております。また、政府の点については、今、大臣が言われたとおりと思いますが、ただ、問題となるのは、銀行屋さんは金貸しが商売でありますので、常に利益ということを考えております。貸した金は必ず利益を取って回収は確実だ。そういう点、政府のほうでも、系列の機関を通してそれぞれ国民の金をそちらのほうにお回しになるのだから、貸した金は完全に回収しなければなりません。先ほど私が質問の時点で、中小企業はさることながら、その底辺であるところの零細企業のもとで働く従業員は、たとえば具体的に言って、私どもの意欲からいけば、全部組織労働者にしたい。しかし、組織、未組織のすれすれの線の中で、しかも金融の面では、御承知のように、たとえば末端では、信用保証協会であるとか、そういったようなものも、あるいは担保があるとか、信用があるとか、あるいは保証協会のその手の込んだ保証がなければ、いわゆるこの私の言うところの零細企業というものは、能力もある、政治性も持っておるけれども、二十人、三十人、五十人の従業員を使って良心的な運営をやっているけれども、前段簡単に申し上げましたような事情のしわ寄せからして、弱小企業であるがゆえに弱い。企業主も困っているのだが、そのもとで働くところの従業員は、政府の流す資金、それから金貸し商売の地方銀行協会の流すところの資金というものが、これが浸透してきていないのだ。その一番底辺の層というものに非常に問題があるので、そういう点について率直に申し上げて、政治の面でやはり——これは時間がありませんから、端的に申し上げておきますけれども、たとえば法が一つの保護を加えておるところの労働金庫といったようなものについても、これはもともと一つの労働者の組織的な相互金融機関でありまして、ここへ出る幕ではないと思いますけれども、そういったような点についても、この時点ではこれを最大限に活用すべく、大蔵省のほうへ十分ひとつ——これは私はとうしろでありますからわかりませんけれども、ただ、その低賃金構造の底辺の中で、ほんとうにこれは政府がこういうふうに中小企業向けの金を手放しに早く出しておるけれども、あるいは地方銀行協会はこれに手を打っているけれども、それのおしめりにあわないところのそういう層から社会不安や労働不安が出てくるのだから、そういう点について最大限に配慮してもらいたいのだ。この点は強く要望申し上げておきます。まあその点について、政府といっても、あるいは労働省だ大蔵省だといっても、率直に言って、やはりこういう層を十分ひとつ、あるものは活用するというような点で、その網の目に漏れてしまったそういう層を、私が今前段で申し上げたような、つまり一番底辺の零細企業のもとで働く、しかも社内預金だというきれいごとでありますけれども、これは賃金の先渡しの、しかも企業がつぶれてしまったならば棒引きになって、何らの保証のない社内預金というものにさせられてみたり……分割はまだいいほうです。遅配です。あとでもう一点お伺いいたしますけれども賃金構造が非常に低賃金構造で、ただでさえ質八を置いてやりくっているところへ、年越し資金、年末一時金、その正当な労働の報酬である賃金でさえ、払わないと言わないけれども、金詰まりの都合上払ってもらえないのだから、年越し資金といっても、年末一時金といっても、なかなか払ってもらえない。こういうことについて、たとえば今政府系列の機関ではそれぞれ手を打っておられると思いますが、その一番もっともな点について、労政局長もお見えになっておりますけれども、ひとつその辺のところを、金のことはなかなかデリケートでありまして、さいふの元締めはおよそ大蔵省だと思いますので、簡単にはいくまいと思いますけれども、私どもとしてはそういう層を、ことにこのごろでは救貧から防貧だということに社会保障の相場を上げなければならないということになっておりますから、そういう点について、きょうは時間切れでありますが、労働大臣もおつき合い願っておるので、超スピードで、もう一つ重要な質問がありますので、この点は私の顔色を見ていただいて、言わんとするところを十分現実の上で答えてもらえばいいわけです。ことしも年末にあと幾ばくもありませんから、そういうことで申し上げておきますが、残りものに福があるたとえで、何かいいニュアンスがあるということをお聞かせいただけばその点についてはけっこうであります。もう一つ質問がありますけれども
  169. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 昨年の年末金融措置といたしまして、労働金庫に対しまして政府資金を回したようでございます。本年はまだその運びは決定しておりませんが、今後の状況をよく考えまして、大蔵省とも十分相談いたしたいと思うのでございます。現に労働省といたしましては、その必要があるんじゃないかという考えで今折衝をいたしておりますが、はっきりしたお答えを申し上げるところまでいっておりません。できるだけこれはやりたい、こういうふうに考えております。
  170. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 あるものは最大限に活用して、政府の家庭事情は、労働省、大蔵省、いろいろありましょうけれども、最大限に大所高所から、社会不安や労働不安がそういうところに根源があるんだということをついて、最大限御配慮をいただくことを強く要望を申し上げておきます。  次は、第二点のお伺いをいたすわけでありますが、私の見るところでは、日本資本主義は、明治、大正、昭和の今日に至るまで、低米価、低賃金の政策をとってきたことは、私たちだけではなくて、世界周知の事実であろうかと思います。私は、昨今非常に遺憾と思いますのは、たとえば昭和三十四年以来、最低賃金法が施行実施されておる。今日的に見ても、なおかつ、言うところの低賃金構造の質的な変革といいますか、改変がなされていない。政府はそれをしようとして、勇気を持って前向きで歩いておられないじゃないか。特に労働大臣には悪いですけれども、あなたは賃金担当大臣でいらっしゃる。そういうところから、この辺でひとつ勇気を持って前向きで、たとえばきれいごとでありますけれども、ILO第二十六号条約賃金条項に深く根をおろした、いわゆる本格的な最低賃金の底を上げるべく、ひとつ勇気を持ってこの辺でやっていただくことが必要じゃないかと思います。私が何でこんな紋切り型的なお伺いをしますかというと、たとえば社会保障制度審議会から答申をされたあの条項に見ましても、結局根底を流れるところの思想というものは本格的な最低賃金が一日も早くこれが日本において施行実施されることを強く要求をし、また、そのことを慎重に注視をしておるということが、いろいろ項目はありまするけれども、そういうことが一つの根底になっておると思う。で、特にまあ労働大臣が諮問されたのだと思いまするけれども、たとえば失業問題調査研究会ですか、あの答申の中で、先ほど申し上げましたように、今なおこの低賃金構造が維持されようとしておる具体的な例を私なりに申し上げますが、たとえば失対労働者の低率制賃金原則をまあ廃止する。それは廃止しようとする中で、最近中小都市においては、やはり失対労働者賃金一般民間企業の賃金に上回わってきた。だから、そういう中で、具体的には、たとえば労働者の、これは失対労働者の場合でありまするが、労働の質と申しますか、体力や技能というものに応じて、地域別、産業別の賃金を設定しようということになっておるのだ。このことは、とりもなおさず最近の中小企業都市に進められておるところの、いわゆる業者間協定の水準にくぎづけておるというような、やはり悪い意味には私はとりたくないと思いますけれども、言うところの低賃金構造というものを、やはり前向きの姿勢で解消をして、いわゆるILOの賃金条項に根をおろした方向に——前向きではない、うしろ向きの処置ではないか、こういうふうに伺っておるわけであります。一々質疑応答式にやりたかったりでありますけれども、それはできません。たとえばきょういただいておる日本の賃金事情、これは労働省と外務省の合作のように受け取っておりますけれども、池田さんはいい気なもので、それで西ドイツでエアハルト副首相と、賃金とコストという問題についていろいろお話になっておるようであります。私どもは私どもなりに、いろいろな情報は得ておりますけれども、そういうような中で、結局私の言わんとするところを、きょうは時間がありませんので、すべて言い尽くしませんけれども、この問題は今後に残しますけれども、特に申し上げておきたいことは、私は、前段申し上げましたように、たとえば今なおこの日本の賃金事情という中で、この二項の中に日本の賃金水準という一つの項が設けてありまするけれども、やはりこれといえども、前向きで最低賃金というものを、やはり本格的な最低賃金を実施する姿勢ではなくて、特にこの中でうたってあるということについて私が納得のできない点は、日本には、やはり農産物であるとか、あるいはいろいろなサービス料金ですか、サービス料金や一般消費資財が、まあ米国は別として、欧州諸国と比べてみてたいへん安い。かてて加えて、たとえば退職金であるとか、あるいは賞与であるとか、その他もろもろの福施利設を持っておるのだから、これらの付加給付をプラスすれば、実質的に、名目賃金はどらあっても、仮設数値と対比して、日本の労働者の購買力はそう低くないのだ。しかも、日本のとにかくこの付加給付であるところのやはり農産物であるとか、あるいはサービス料金であるとか、一般消費財が安いのだ、福利厚生施設があるのだといったようなことが日本の一つの特定な重視すべき慣行のようにお考えになっておると考えますけれども、そういうことが書いてあると思う。これはよく調べてみますが、私が非常に遺憾と思いまするのは、それは過去にはそういう実情はあったと思いますが、昨今、今日的には、たとえば公共料金は非常に上がってきておるのだ。その他もろもろの、ことに生鮮食料品であるとか、あるいは加工食品であるとか、あるいはサービス料金というものは、たとえば労働組合が当然な経済行為の中で賃金要求をやって、一二・六%というような、あるいは一〇%以上賃金が上がっても、最近の物価の値上がり高には、とてもその賃金というものは追いついてないのだ。そういうような事実からいって、それから、また、社会保障審議会が答申しておるあの勧告の内容から見ましても、少なくとも二十八年度を一つの底辺として、十年過ぎなければ外国の——外国といっても欧米諸国の社会保障に日本は追いつかないのだ。だから、そういうような点を対比較して考えてみるときに、たとえば賞与であるとか、あるいは退職金であるとか、あるいは社宅があるとか住宅があるとかいっても、そういうようなものを比較対照しても、やはり諸外国の労働賃金の水準と、それに対する高い社会保障というものを対比較してみても、いかに日本の労働者が低賃金水準のもとに痛めつけられておるか、そういうふうに私は私なりに、さらにこのパンフレットの中でもそういうふうに私はうかがわざるを得ないのでありますが、こういう点について若干のひとつ——いや、君はそう言うけれども、そんなことはないのだというふうにお受け取りになっておるが、ただ私がお伺いしたい点は、すぐかりにできないにしても、ことに業者間協定の点につきましては、基準局長もお見えになるかどうか知りませんけれども、私の知る範囲においては、大体この業者間協定のやはり対象人員は、百七十万から百八十万の範囲だと思いまするが、その範囲の中で、いわゆる業者間協定のあれは大体三百円以下が大体八、九〇%だと、こう思うのですよ。私は新潟県選出でありまするから率直に申し上げますが、新潟の燕市における洋食器企業というものについては、アメリカへ旅行しても、それから西欧へ旅行しても、大体それがノー・マークであっても、日本で生産されておる洋食器はまず燕で生産される。その業者間協定が二百円ですよ、実際問題は。新潟の、たとえば三者構成に基づく賃金審議会さえ、三百円以下のやはりこの業者間協定がこの審議会に出てきた場合については、その労働者出身の審議委員審議を拒否するのだ、人を小ばかにしておるのだ、こういうふうに言っておるわけでありまして、私は意気込んでおりまするけれども、言わんとするところは、今日的に言ってみても、やはりこの貿易の自由化が、たとえば八八%から九〇%、一〇〇%になって、今こういう「賃金事情」というパンフレットまで英文にして諸外国におまきになっても、日本の低賃金構造の底辺である低米価、低賃金というものに対して姿勢を正しながら、やはり率直に申し上げまして、新産業秩序の確立はもちろんのことでありまするけれども、その底辺であるところの産業や、いわゆる賃金の二重構造というものをもうこの辺で手直しして、そうして本格的な最低賃金をやはり前向きで、つまり本格的なということは、全国一律の、まあ総評がいっていることをすぐそのままやれなどということを言うのじゃないのです。いわゆる理念的に見て、やはり業者間協定というような、低賃金をくぎづけにしてしまうようなものは漸次姿勢を正しながらいこう、こういうことなんであります。でありまするから、時間がありませんので、超スピード的に一括質問をいたしましたけれども、それなりに、ひとつこの第二の点は、もうこの辺でILOの賃金条項に根ざした本格的な最低賃金にひとつ大臣も勇気をもって取り組んでいただく時期がきているのじゃないか。そうしてもらわなければ、おそらくソシアル・ダンピングの温床というものに対する根っこというものが絶やされなければ、どんなに貿易の自由化率が高まっても、国際市場における日本の国際信用や日本の商品の信用というものは、貿易の自由化率は上げたが——池田さんは西欧諸国へ行って、いろいろ数字に強い人ですから、行ってきても、そう簡単にいくものじゃないのだ、そういうふうに私は考えまして、この辺でILO、現在のやはりこの業者間協定というものに手直しを加えながら、それをステップとして本格的に最低賃金にひとつ勇気を持って食い込む姿勢をひとつとるべき時期であり、段階ではないか、そういうふうに私考えまして、一応労働大臣にこの辺のところをお伺いしたいと思うのです。
  171. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 賃金事情に関しまするパンフレットにつきましては、ことしの秋になりましてから、現在の日本の賃金の実情を調査する必要があると考えまして、これはきわめて便宜的な調査でございましたが、できるだけ現状に即したものを作ってみたわけなのでございます。この調査の目的は、わが国の賃金の水準それ自体を如実に把握したいという趣旨にほかならないのでございまして、それをそのとおりしるしたものがこのパンフレットなのでございます。ところで、現在の賃金の水準が、それではわが国として、はたして低いと見るべきであるか、あるいはわが国としては当然適当と見るべきであるか、これについての意見をそこへ書いたわけではございません。ただ、特にわが国として低過ぎるとして、外国が貿易上日本に対して差別的な待遇を与えるような根拠はないということだけをはっきりしたい、こういう意味でこしらえたものなのでございます。したがって、今後の政府賃金政策として、日本の賃金をどういうふうにやっていくかということは、直接そのパンフレットに書いたつもりはございません。ただいま杉山先生からは、このパンフレットをもとにされまして、日本の賃金は低賃金ではないか、また、低賃金政策が引き続き行なわれておるではないかというふうな御意見がございましたが、これはまたおのずから別途の問題である、こういうふうに考えておるわけなのでございます。  そこで、最低賃金について御指摘があったのでございますが、なるほど業者間協定によりまする現在の最低賃金は、御指摘のごとく、ずいぶん低いものがあるようでございます。私どもは最低賃金趣旨から申しまして、かような低い水準に業者間協定を固定さしておくということは、この制度趣旨から見ていかがであろうか、こういうふうに考えます。この原因は、賃金水準の低かった当時にきめられたものがそのままになっておるためでございますから、これは現状に適合するように、すみやかに引き上げられるべきものではなかろうか、こういうふうに考えまして、ただいま労働省といたしましては、さような特に低いと認められる業者間協定につきましては、地方機関を通じまして、現在の水準に合うような線まで引き上げますように行政指導を加えておる次第なのでございます。で、労働省といたしましては、最低賃金制度というものをできるだけすみやかに完備したい、こう思いまして、来年度におきましては適用範囲も広めたい、そのために必要な経費等も要求をいたしておるような次第でございます。したがいまして、できるだけすみやかに各業種を通じまして、現状に適合したような真の最低賃金を作るようにいたしたい、かように存ずる次第でございます。
  172. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一点だけ申し上げますが、これに関連をしてでありますが、また生きた事例でありますが、たとえば先ほど私は燕の洋食器の例を申し上げましたが、最近自民党の代議士先生で、やはり新潟の選出で小沢辰男さん、衆議院の社労に席を置いておられるはずでありますが、欧州へ行って帰って来たはずでありますが、まあ新潟に籍を持つものですから、新潟の洋食器というものは、みんなどこへ行っても見るわけでありますが、僕もその後直接本人に会っていませんけれども、新聞を通じて伺っておるわけでありますが、スイスの輸入に関する一番の大商社だと、こういうのですが、その中で、とにかくノー・マークであるけれども、それが燕から出ているところの洋食器だと、それに対して向うの商社のまあ支配人でありますか社長ですか、これはまあ品質もいいし、それからスタイルもいい。しかし、問題は、質も意匠もスタイルもこれでいいですから、もう少し値段をどうかしたらどうか、値段を上げてもどんどん私のほうでははけるのだというふうなことを言っているのだと、つまりスイスの担当官に会ってみるというと、どんどんと君のところの洋食器は伸びてくるのだけれども、質はこのままでいいから、もう少し値を上げてくれないというと、おれのほうでも制限しなくちゃならぬのだ、そういうふうに言っているそうであります。この点は私は、やはり一事が万事で、日本の低賃金構造というものが、そういう面に意識するとしないとにかかわらず、出てきているということは、非常に容易ならぬ問題だと、こう思うのです。でありまするから、日本の中小零細企業は体質が弱いのだし、もともと生まれながらの弱体児なんだから、格好は悪くても、いいものを作っているのです。であるから、もっと値段を上げて、さらに労働者にやはりいい賃金を与えて、よりいいものも創意性、自発性を生かすならできるのだというような点について、これはやはりそういう面から大いに行政指導もされ、理屈ばかりではなく、今申し上げたように、賃金も二百円と、僕もそういうことを聞いたから、そこで業者間協定というものについて目を向けたならば、非常にいい洋食器を作っていて業者間協定が二百円という、そんなべらぼうな話はないのだと、そういうふうに思いますので申し上げておくわけであります。
  173. 辻英雄

    説明員(辻英雄君) ただいま御指摘のございました燕の具体的事情につきましては、私どもそのお話のところまでは不勉強でございまして、なお勉強さしていただきたいと思います。最低賃金の最近できます業者間協定の額の中で、やや古くにできましたために低いものもございまして、先ほど大臣から申し上げましたように、これにつきましては、時間がたって古くなったものにつきましては改定をさせるように、鋭意行政指導をいたしておる次第でございます。  なお、全体の最低賃金の業者間協定を中心として今日までやって参りましたのでございまして、それなりの効果もあったと思うのでございますが、いろいろ先生から御指摘のあったような点を含めまして、御意見のある向きも多いので、昨年の秋に中央賃金審議会の中に、最賃法の進め方小委員会運営小委員会というのが設けられまして、そこで労使等三者構成で昨年の暮れ以来御検討をいただいておるわけでございますので、そういう御検討の結果とも並行いたしまして私どもとしても検討さしていただきたい、かように考えております。
  174. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もうこれで終わりますが、たとえば総評を軸とした、それから中立系組合なども含めて、秋、年末から来年の春にかけていろいろまあ諸要求がなされるわけでありますが、そういう中でも五千円という数字をあげて、大幅な賃上げだといっておりまするけれども、その戦略目標は、いわゆる低賃金構造を排除して、高い水準に、西欧並みに持っていくべきだということと、一日も早くこの低賃金構造の、それが意識的でないにしても、結果として足を引っぱるような現行の業者間協定というものを改廃整備して、本格的に一律制の最低賃金をというところに大きな主張があると、私は過去において労働運動者であるがゆえに、そういうふうに、はだ身につけておりますので、これを政治なり行政の面で、最大限ひとつ大所高所から御配慮いただきたいと思います。きょういろいろ質問はしたがったのでありますし、問答式に行ないたかったのでありますが、問題は、年末といえば、もう十二月になっちゃどうにもこうにもなりませんので、前段の零細小企業に対しては、格別な御配慮を特に要望申し上げて、後段の賃金構造その他の問題については、十分お伺いを立てながら、私も真剣に勉強して、そして皆さんとともにひとつ研究していきたいと、こういうふうに考えております。  私の質問を終わります。
  175. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 他に御発言はありませんか。御発言もないようでありますので、本件に対する調査は、本日のところはこの程度にとどめおきます。  これにて散会いたします。    午後四時十一分散会