○北村暢君 赤の出ない方策というのは、なかなかむずかしいことはわかりますけれども、実際問題として、累年五十億近いような赤字が出てくる、これでは幾ら肥料工業が、今言ったように、大臣がおっしゃるようにつぶしたくないと、こういってみても、ひとりでにつぶれてしまうのじゃないかと思います。こういう膨大な赤字をかかえて、おそらく硫安の専門メーカーですと、これはもう、にっちもさっちも動きがとれないということにおそらくなってしまうのじゃないかと思うのです。
それで私どもも、今大臣のおっしゃるように、硫安工業というものをつぶすということを考えているのではもちろんない。何とかしてこれが立っていくような方策を考えなければならない、こう思うのですが、その場合に、どうしても国際競争に太刀打ちしていくということになれば、発足の当初はそれほど輸出のために赤字は出ておらぬわけです。あのときの見通しでは、何とかやっていけるのじゃないかと、量産さえすれば、国際競争に太刀打ちできる。こういう見通しで発足したものが、その後における各国のダンピングその他が起こって、四十ドルを割るような国際価格のために、国内価格が五十ドルちょっと出るぐらいである。そうしたら、もう当然赤字というものは出てくるわけですね。これと競争しながら輸出をする、輸出をすることによって、この硫安の工業の
合理化をやる、量産によって内容的にも
合理化する、こういう
計画なんですから、輸出がなければ、それじゃ
合理化せぬかというと、簡単にそうはいかないわけです。そこで非常にむずかしい問題になってしまったわけなんですが、その場合、今おっしゃるように、各国とも、西ドイツにおいてもイタリーにおいても、ほとんど全部これは
政府の援助がなされているわけですね。そういうことで、各国の硫安工業というものは成り立っている。しかしこれも国際競争が激しいのですから、
政府の援助している内容というものは、各国においてはっきりしない。幾ら
調査してもわからない、こういう状態です。したがってどの程度やっているのだかちょっとわからないわけですが、援助していることはもう大体間違いない。これは各国が、そういう立場をとっているわけです。そうすると日本の硫安工業が歌州の各国と比較して、それほど
合理化が進んでいないわけじゃない、相当
合理化は進んできている、ある程度いけば国際競争に太刀打ちできるというところまでいっても、なおかつ今いったような形で必然的な赤字が出てくるという
状況なんですね。そうすれば私はやはりここでもう問題の所在というものははっきりしておるのですから、今の硫安工業だけにまかして、
合理化メリットを国に転嫁してもなおかっこの赤字解消というものは簡単にいかない、農民に高い肥料、
合理化メリットを負わしても、なおかつこれは解消しない問題だ、赤字は残ってくる、これはまあ残り方が多いか少ないかの問題だと思うのです。現在の国内の
合理化した中における
生産費が五十ドル近くになりますから、そうして国際価格が四十ドル割るということですから、
合理化メリットを全部国内価格にかぶせても私は赤字はやはり出る、こう思うのですよ。
ですからそういう点になりますと、それでもなおかつ、
政府の
政策として硫安工業というものを、このように
生産を続けていくということになれば、どうしてもここで
政府の特別な処置というものが絶対に必要になってくるわけなんですよ。したがって、これを毎回の肥料審議会で、
政府にその処置をしろという、基本対策を出せという要求なんです。まあ大臣は、ことしの肥料
年度はもうすでに始まって、
予算ももう実行して、来
年度予算でなければどうにもならないというのですが、これはもう昨年からこの問題は出ているので、ことし始まった問題じゃないわけなんです。ですから今の
福田大臣は、最近大臣になって、これはどうにもしようがない、前のことだと言われれば、それまでのことなんですけれども、それでは許されない問題に実はなっているわけですね。しかもぼやぼやしているうちに、これは今の法律は終わってしまうですよ、来肥料
年度で終わってしまうのですから。何となく終わってしまえば何とかなるだろうと、こういうことでは、私どもも非常に了承できないのでありまして、この法律が時限立法で、来肥料
年度で終わるのですから、終わるときに、一体新しい今度の肥料
年度に、今の肥料二法はどういう形になっていくか、これは非常に関心のあるところなんです。これがまあ、普通の基本対策として私は出てくるべきだ、スムーズな形で新しい法律に切りかえられていくべきだ、こういうふうに思うのです。そのためにこの基本対策というものをきめて、
——もう時限立法として終わろうとしているこの肥料二法をスムーズに、混乱なしに切りかえていく、こういうことが必要なために基本対策というものが要請せられている、こう思うのですね。
でありますから、その場合私は、もうこの赤字問題というものについては、
政府が長期
資金として特別な融資の
措置を講ずるか、そうでなければ
補助、助成をやるか、もうこれ以外に手はないのじゃないかと思うのですよ、そこまできているのですから。ところがほかの
石炭産業その他のいろいろな
産業との関係で、肥料工業にだけべらぼうに、輸出というような形でこういうことができないということで、大蔵
当局は全般の関係からいって、そういう財政
支出することはまかりならぬと、これはまあ肥料工業自体でやるべきだと、こういう非常に強硬な意見があることもわかりますけれども、しかし私はもうその段階ではないと思うのです。何としてもやはり
政府は決断をもって、この赤字処理をする抜本的な基本対策というものを立てるべき時期にきている。このように思うのです。
したがって、今聞くところによりますというと、肥料審議会以外に、肥料問題の懇談会を設置して、そして検討しているのだ、こういうことのようでございますけれども、肥料問題懇談会というのは一体どんな性格のものか。肥料審議会があって、なおかつ肥料懇談会でやっていかなければならないということではない。まことに有能な役人、通産省ではあれだけの機構を持って、手足を持っているのでありますから、何も懇談会を設けて意見を聞かなくたって、あれくらいは作れるはずですし、その案を肥料審議会にかけて基本対策を練るということは当然のことだと思うのです。そういうことで、悪く解釈すれば、この肥料審議会がありながら肥料懇談会を設けるというのは逃げの一手だ、そこへ逃げてしまうのじゃないか、こういうふうにすら考えられるのです。したがって、今の大臣の
説明からいけば、どうもこの十日の肥料審議会には、基本対策は間に合わないようで、懇談会でのんびりかかろうと、こういう腹のようでございますけれども、これは簡単に私ども了承するわけにいかぬですよ。したがって、この懇談会というのは、一体どんなものなのか、いつごろ結論を出して肥料審議会にその案を諮れるようになるのか。その見通しをひとつお伺いしたいと思います。